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1954-12-03 第20回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月三日(金曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 高橋 禎一君 理事 井伊 誠一君    理事 古屋 貞雄君       押谷 富三君    高橋 英吉君       林  信雄君    猪俣 浩三君       神近 市子君    木下  郁君       岡田 春夫君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君  委員外出席者         警察庁長官   齋藤  昇君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         公安調査庁次         長       高橋 一郎君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君         参  考  人         (警視総監)  江口美登留君         専  門  員 村  敬三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十月十四日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員選任された。 同日二十二日  委員森三樹二君及び木下郁選任につき、その  補欠として木原津與志君及び辻文雄君が議長の  指名委員選任された。 同日二十六日  委員辻文雄辞任につき、その補欠として木下  郁君が議長指名委員選任された。 同日二十七日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として井  伊誠一君が議長指名委員選任された。 同日三十日  委員田嶋好文辞任につき、その補欠として森  清君が議長指名委員選任された。 十一月十三日  委員井伊誠一辞任につき、その補欠として辻  文雄君が議長指名委員選任された。 同月十五日  委員辻文雄辞任につき、その補欠として川島  金次君が議長指名委員選任された。 同月十九日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として中  原健次君が議長指名委員選任された。 同月二十七日  委員中村梅吉辞任につき、その補欠として安  藤正純君が議長指名委員選任された。 十二月一日  委員森清君、三木武夫君、吉田安君、川島金次  君及び中原健次辞任につき、その補欠として  中村梅吉君、福田赳夫君、山本正一君、井伊誠  一君及び風見章君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員安藤正純君が委員辞任した。 十二月三日  委員風見章辞任につき、その補欠として岡田  春夫君が議長指名委員選任された。 同日  理事田嶋好文君の補欠として花村四郎君が理事  に当選した。 同日  井伊誠一君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 十一月三十日  刑法の一部を改正する法律案八百板正君外百  三十四名提出、第十九回国会衆法第十三号)  売春等処罰法案堤ツルヨ君外十一名提出、第  十九回国会衆法第三四号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  国勢調査承認要求に関する権  国連審査会開会に関する件  小委員会設置に関する件  法務行政及び検察行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選任を行いたいと存じますが、先例により委員長において御指名するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なければ……。    花村 四郎君  井伊誠一君を理事に御指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 小林錡

    小林委員長 次に国勢調査承認についてお諮りいたします。   一、裁判所の司法行政に関する事項   二、法務及び検察行政に関する事項   三、国内治安及び人権擁護に関する事項   四、上訴制度及び違憲訴訟手続に関する事項   五、外国人出入国にかんする事項   六、交通輸送犯罪に関する事項   七、弁護士法及び執行費用に関する事項   八、戦犯服役者に関する事項 について調査いたしたい旨、衆議院規則第九十四条により、議長に対し国政調査承認要求書提出いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  5. 小林錡

    小林委員長 御異議なければそのようにとりはからいます。     ―――――――――――――
  6. 小林錡

    小林委員長 次に小委員会設置に関しお諮りいたします。  今国会も前国会同様場訴制度違憲訴訟並びに外国人出入国に関し調査をするため、上訴制度に関する調査小委員会違憲訴訟に関する小委員会をそれぞれ設置いたしたいとぞんじますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  7. 小林錡

    小林委員長 御異議なければそのように決定いたします。  なお小委員及び小委員長選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  8. 小林錡

    小林委員長 御異議なければそのようにとりはからいます。     ―――――――――――――
  9. 小林錡

    小林委員長 次に法務行政及び検察行政並びに人権擁護に関し、委員より発言申出がありますから、順次これを許します。  この際お諮りいたしますが、江口警視総監を本委員会出席発言のため参考人といたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  10. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めそのように決しました。  それでは準じ発言を許します。佐瀬昌三君。
  11. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 法務行政の一問題といたしまして、最近のストライキと警察関係を子の機会に東京証券取引ストライキ問題を中心に承つておきたいと思います。  東証ストを契機として警察官行動が、その域を脱していわゆる人権蹂躙ではないかという世論があるようであります。この問題を本委員会において究明するに先だちまして、まずもつて東証ストの実態がどうであつたかという概況について、警察当局から承つておきたいと思います。
  12. 齋藤昇

    齋藤説明員 具体的の東証ストの模様につきましては、あるいは御質問に応じて警視総監からお答えがあろうと思います。総括的に私が最近のストをめぐるピケラインに対する警察考え方及び警察処置の仕方、あるいは取調べ方について申し上げてみたいと思いますが、労働争議関係いたしまして、警察がどちらにも加担をしない、いわゆるこれに介入しないという根本方針は、どこまでも守り抜いて行かなければならない問題だと考えておるのであります。ただ争議をめぐりまして、法律あるいは憲法保障された人権が、争議のために守られないというような事柄が当然であるかのような印象を与えることに相なりましては、治安の面から考えましてもまことに憂慮すべきものがありますので。最近の争議状況は、経済事情の反映でありましようが、相当苛烈に相なつて参つております。従いまして警察といたしましては、争議がどこまでも法律の許された範囲内で、民主的秩序を守りながら行われるということを警察といたしましても確保といいますか、保障をしなければならないという考え方をいたしておるのであります。  そこで労働次官通牒警察取締り関係でございますが、労働次官通牒に先立つて労働大臣談話というものが新聞に発表いたされましたが、これらはかねがね労働者中心とされまして、今までの判例その他から、スト限界というものをまとめて、これを労働者教育に資したいという考えでやつておられたのであります。私どもといたしましては、それとは無関係に、先ほど申しまするような方針で今までの判例その他によつて検討をいたしまして、できるだけ争議が正しく行われるように取締り面も確保して行こうというので、それぞれ処置をいたしておつたのであります。従いましてわれわれの取締り考え方というものは、何ら背馳するものではありません。まつた考え方を一にしておるものでございますけれども、しかしわれわれの取締りが、労働次官通達によつて定められた、またあの次官通達によつて取締りをするのだというものではございません。それぞれ独自の立場からいたしておるのでございます。ことに東証事件に見ましたように、ストに伴うピケ限界というものは、もちろんスト労働力の提供をしないということによつて事業主に打撃を与えるという方法は許された方法でありますが、少くとも第三者の自由を抑制し、第三者業務を妨害するというようなことは、ピケによつて正当化されないのであります。従つてさようなことのないように警察といたしては措置をすべき事態になればすべき措置をするというので、東証事件において警視庁はあのピケライン証券取引をしようという業者の入場を実力をもつて阻止し、警告を発しても聞き入れられないというので実力をもつてこれを阻止をいたしたのであります。また東証の構内から、管理表から立ちきのを要求されても立ちのかないというようなことから警察権発動をいたしたのでありまして、これは私は警察のなすべき当然のことをしたにすぎない、かように考えております。この際に警察官が限度を越えて暴力を加えた、あるいは取締りに行き過ぎがあつたというような意見を耳にしたことがありますが、警視庁の方面にも十分聞いてみましたが、さような事実はまつたくなかつたというような報告を受けておりまするし、われわれの調査をいたしました結果も警視庁の言われる通りさような事実はまつたくなかつたと私は信じております。詳細は御質問によりまして、東証事件につきましては警視総監から何らかの答弁があることと思います。
  13. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 ストの場合における人権蹟躍は、ストに携わつておる人々に対する憲法保障労働権侵害、それからその人々に対する取締り過程において人身損傷を来すという二つの形になつて現われるわけでありますが、あとの東証ストの場合において人身傷害といつたような警察官の行き過ぎがなかつたということは、ただいま国警長官説明でわかりましたが、なおこの点については直接の責任者である警視総監から詳細に報告を承るとともに、一方の労働権侵害になりはしないかという点につきましては、労働次官通牒中心にこの際スト正当性限界ということについて、将来の取締り基準ともいたしたいためにこの機会にその点を明確にしておきたいと思います。まずもつてつておきたいのは、この次官通牒は、スト合法、非合法限界についてある程度具体的な解釈を下しておるようであります。これについてはあらかじめ検察庁あるいは警察とこの通牒を出す以前において打合せをした結果出たものであるかどうか、ただいま法務省関係責任者は見えてないようでありますから、警察側からその点を御説明願いたいと思います。
  14. 江口美登留

    江口参考人 最初のお尋ねは、東証事件に関しまして、警察がこれの取締りにあたつて、不当の人権侵害あるいは相手方に傷害を加えたということはなかつたかというお尋ねでありますが、警察庁長官お答えいたしましたようにわれわれ十月二十六日にそういう事件が起きまして非常に心配いたしましたことは、そういうことによつて傷害を受けた者が出て来たのでははなはだ困つたものであると考えまして、私みずからただちにそういう事項がなかつたかということを調査させたので、ありますが、係の方から見ましても、あるいは日本橋署に問い合してみましても、そういう傷害者は一人もなかつた、こういうような回答を得て、大人数がもみつた割にはうまく行つたなと私自身実は喜んでおつたのであります。ところがその後数日たちまして、傷害者があつたということを組合側から医師の診断書を添えて、国会方面みもいろいろ取調べを願いたいという申出があつたようでありますが、警察当局としましては傷害者があつたということを存じておりません。またそういうものがが出ますれば、従来の例から見まして、必ず当該警察署なり検察庁なり警視庁に対して抗議が提出されるのが普通でありますが、一度もそういうものは来ていない。数日後に痛んで来た者が出たかもしれませんが、目に見える当座傷害は少しもなかつた、こういうふにわれわれは判断いたしております。組合が言うておりまするような傷害程度もいろいろあるようでありますが、その程度のものは警察官側にももちろんあるので、警察官といたしましても診断書を備えてございますので、お調べがございますればまたお目にかけたいと思います。警察官自体診断書をとるまでに至らない、たとえば目に砂を入れられるとか、棒で打たれるとかいうこともあつたのでありまして、大勢の者がもみつたのでございますから、多少の擦過傷、あるいは多少の打身程度のものはあつた、かように考えますが、当座における傷害事件というものにつきましてはそういう状態でございますし、その後七名の者を検挙いたしましてこれの取調べをいたしましたが、取調べの際におきまする人権問題というふうなことも少しもなかつたということは、私もさように聞いております。その点は御安心をいただきたいと考えております。
  15. 齋藤昇

    齋藤説明員 労働次官通達につきましては、警察の方は以前に内容について連絡を受けております。その趣旨警察取調べにも関係することでありますから、従来の警察取締り解釈とあるいは違つておるということがありましては困りますので、そういう意味から連絡を受けました。また法務省自体の問題は法務当局からお答えがありましようが、警察法務省と十分協議して、それぞれの立場から異存の点はないということで出されたものと考えております。あの中にはもちろん警察が全然関係しない部分も入つておると思います。取締り関係のない点も入つておりますが、取締り関係すること、あるいは法務省に関する事柄はそれぞれ各省々々において異存がないということで、出されたものと御了解をいただきたいと思います。
  16. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 第一組合員警官の弾圧によつて人身傷害を起したといつたようなことについて、人権擁護局に対して何か調査要求といつたものがあつたかどうか、この点を伺つておきたいと思います。
  17. 戸田正直

    戸田説明員 東証スト事件については人権擁護局の方には何ら申告もございません。
  18. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 この次官通牒だけによつて警察当局が取締るのではない。判例その他法律趣旨等から独自の解釈のもとに取締りの衝に当られるということは私ども同感でありますが、問題はその通牒等にも示されておるように、特にピケの問題には、いわゆる平和的ピケ合法である。それから先は非合法であるというようなことで、具体的な場合に臨み、その解釈がいずれになるかきわめて困難な場合をしばしば惹起するわけであります。かつて三越ストの場合においてその解釈がまちまちであつてはいかぬというので、たしか検事総長と当時の警視総監とがそれに対する一つ基準をきめたやに承つてつたのでありますが、そういう事実があつたかどうか、またその解釈は今日まで生きているのかどうか、その点をただしておきたいと思います。
  19. 江口美登留

    江口参考人 昭和二十六年の三越争議に対してのピケ取締りに関する問題につきまして、当時警視総監検事総長とが打合せをしたかどうかという問題については詳細なことは存じておりませんけれども、その当時の話合いがあつたせいかもしれませんが、その根本方針につきましてはそのまま警視庁としても踏襲して参つているのでありまして、取締り方に特段の憂更を加えて参つた経過は聞いておりません。労働次官通牒が出ましたのも実は東証事件の当日ということで、その日の労働大臣談話をその日の夕刊で知つたような次第でありまして、われわれ独自の立場で二十六日の取締りをしたものであります。ただ三越事件のときには、今度のように不退去罪あるいは業務妨害罪ということは問題にならずに、公務執行妨害罪ということで数名を検挙したように聞いております。当時からそのピケのあり方がもう少しひどくなれば業務妨害の方向に進みはしないか、業務妨害として検挙しなければならないようになるかもしれないという考え方はあつたようでございますが、ただちに警察官実力行使をいたしますとすぐに通路をあけまして、労働を希望する者、あるいはお客さんがさつと中に入るということができましたので、業務妨害は成立するに至らずして、その際に多少警官もみつた者を検挙したということでありまして、今度の場合は結局実力を行使しましてもなかなか撤去せずして、スクラムを組んで大声を張つて、入ろうとする者を入れない。明らかに三越事件のときと比べると威力の程度が行き過ぎておつたと認められましたゆえに、指揮者において今申し上げました罪名をもちまして、検挙いたした次第であります。
  20. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 今回は業務妨害容疑として取調ベ中とのことでありますが、大体こういう場合の非合法ストは、そのストの対象の業務を妨害するという場合と、さらにもう一つは非合法運動に対する警察権発動に対する業務妨害公執行妨害の二通りあるわけでありますが、現在お調べ東証ストはそのいずれか、あるいは二つとも含んでいるのかどうか、捜査の過程でまだ十分究明がついていないかもしれませんが、できる範囲で御発表顕いたい。
  21. 江口美登留

    江口参考人 先ほども申し上げた通りと思いますが、今回公務執行妨害罪容疑は、建物不退去罪公務執行幼害罪二つをもつて取調べ中であります。
  22. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 今回のストは、三越ストの場合よりは確かに行過ぎがあつたという御説明でありましたが、これは全国の各種のストを通じてそういう感が非常に強いのであります。いわば計画的、組織的なるスト、しかもその方法合法性の域を脱するように思われるものもしばしばある。これはいわゆる経済的ストにあらずして政治的ストではないかという疑念を持たざるを得ないのでありますが、最近のスト傾向左翼運動との関連がどうなつているか、この点について公安調査庁当局からこれに対する一般的な、また東証に関する個別的な説明を承りたいのであります。
  23. 高橋一郎

    高橋説明員 まず日本共産党が、労働運動一般、特に労働争議に関連してどのような方針をとつておるかという問題につきまして、第一に現在の情勢をどう見ておるかという問題、第二に運動指導する場合の組織の面をどうしておるか、これは特に統一委員会方式の転換を示しておるので、その点を御説明したいと思います。それから現実争議指導がどうなつておるかという問題と、最後争議に通常行われる方法について触れたいと思います。  第一の、現在の労働情勢を党がどう見ておるかということは、十一月三日のアカハタ主張、「公務員労働者闘争の新しい段階――国の政策を転換させるための闘い」というのに集中的に現われているように思います。同じような趣旨が十一月五日のアカハタ主張の「労働政策本質と民主主義的自由のための労働者闘い」というものにも詳説されております。これによりますと、今までは争議の場合に、結局賃上げ要求に対して、総額における何ほどかの譲歩をして、そのかわりそれを配分する場合に、上に厚く下に薄いというような配分をすることによつて組合を分裂せしめる結果を来しておつたのであります。ところが現在では経済情勢の変化によりまして、このような総額において若干の譲歩をするというような相対的譲歩段階ではなくなつて、もう一銭も上げられないという絶対的搾取の段階になつた、このために、従来組合が上級の者と下の者と分裂しがちであつたのが全体的統一をする機運になつて来た、こういうふうに見ておるのであります。それが事実と合致し、また正しい見方であるかどうかは別問題といたしまして、党の方はそのように主張しておるのであります。  それから第二に、組織問題でありますが、十月十五日に日教組関係日教組中央グループ指導部、これは党の方の機関でありますけれども、その機関紙教育情報において、従来ありましたところの日教組関係全国教育戦線統一委貴会を解散するという方針を出しておるのであります。これは党の一般的な方針でありまして、十月二十五日付の党のヒマラヤという労働運動指導機関機関紙のメモの第二十号において、「統一委員会活動について」という論文を出しておるのでありますが、これが日教組中央グループ指導部機関紙の言つておるところと同様であります。なぜこのように統一委員会が解散されることになつたかという理由は、要するに、統一委員会という組織昭和二十四年の国鉄、全逓のレッドパージを含む行政整理、それから二十五年の報道関係重要産業一般公務員関係レッドパージによりまして組合から赤色分子が追放されて参つた、それに対抗しまして、組合外に出た党員組合内の残留分子と結んで元の組合に党の影響を浸透させるための組織としてつくられておつたのであります。ところが現在はそのような特別の組織を必要としないでも常の影響組合に比較的容易に浸透し得る状況になつた従つてそのような場合に、なぜこのような特別な組織を設けておりますかというと、結局組合内における分、派というふうな形になつて統一を害するというのが、統一委員会解散理由であります。この経過によりましてもおわかり願えるように、統一委員会がなくなつたから党の組合に対する影響が弱まつたというふうには絶対に見られないのでありまして、むしろ実際はその反対であります。今後は統一委員会活動にかわりまして、組合内の覚員グループによるいわゆるグループ活動というものがより活発化するだろうと思つております。たとえば日教組関係で申しますと、従来の統一委員会は解散され、従いまして、その機関紙教育労働者というのは廃刊になるわけであります。そのかわり日教組中央グループ指導部活動が活発化し、その機関紙教育情報が大いにその宣伝の役割を努めるであろうというふうに見ておるのであります。労働争議指導にあたりましては、党は一応現在の国際的ないわゆる平和政策に同調しまして、現在当面第一の問題は、労働戦線、特に労働組合戦線統一を破らないことであるということを一応方針としてはうたつております。そのために、スローガン社会党あたりとも同調し得るような程度の低いスローガンにしておるのであります。しかし実際の争議指導にはどうであるかと申しますと、常に高度の要求を掲げて、そして組合員大衆を引きまわしまして、特にその場合に、いわゆる青年行動隊実力的な行動を扇動いたしまして、予定の計画を強行するという傾向がしばしばみられるのであります。そのために労働者個人々々の現実の生活というものに責任を持たないという態度に出ますので、反対に第二組合の発生をみることもしばしば見られる現象であります。現に党は最近のアカハタにおいて、今全国でこのような争議の結果、日産自動車を初め八十二の第二組合ができておるというふうに申しておるのであります。従つて一応統一ということを目標としながらも、実際の指導は決してそのようになつておりませんので、組合戦線統一ということも決して順調に進んではおらない実情であります。ただこのような苛烈な闘争を経験いたしますところにおいては、組合が場合によりましては分裂する、分裂しないまでも団結がゆるむというようなことが起きます半面において、やはり何と申しましても、党員あるいは高度の同調者というような統制力が多かれ少かれ伸張する傾向にあるということは注意を要すると考えるのであります。  最後労働争議の場合の方法の問題でありますが、この点についても注目すべき問題は、党が終戦直後にしきりに宣伝しておりましたいわゆる業務管理戦術あるいはこれと本質を同じくするところの実力ピケとか工場占拠とかいう方法が、現在の労働運動において相当普遍化したという問題であります。たとえば六月二十五日の総評機関紙の「総評」二〇〇号において高野実氏が署名入りで、「賃上げ労働プランによる就労闘争」という主張を掲げております。その中でこういうことを申しております。「もう一つの戦略目標は完全雇用だ、」「仕事を出さないならこつちで仕事を計画し、実力行使で仕事をやつて行くぞ、こういう労働運動に発展して行く、」「首切り反対をどこまで闘つても、しばしば勝利し得ない性格の闘争にぶつかつている。それじやどうするか。ぼくらはイタリアの逆スト、すなわち市民、農民の切実な要求を代表して、実力行使で作業を計画してやり遂げる大衆闘争に似た労働運動を考え出していいのじやないか」というようなことを言つておるのであります。党外大衆団体であります総評指導者の一人である人がこのようなことを言うということは、党のいわゆる業務管理戦術という方式が相当一般に蔓延しておるということが言えると思うのであります。しかもこのような労働争議の中にありまして、虎がしきりに現在の政府の施策はすべてファッショであるというふうに見て、これに対する反ファッショの抵抗闘争を宣伝し、その組織として従来のいわゆる軍事組織にありました軍事要員というものが組合内の青年行動隊などに潜在して、行動の中核となるように指導しておる。たとえば四月二十二日の共産党の軍事機関紙であります。「国民の星」の四五号の主張において、「青行隊や諸サークルに参加し内部からこれを意識的に強めよ。」、さらに六月二十二日の四九号の主張において、「労働組合の強化と防衛のために闘おう。」というようなことに現われておりますように、実力で自分の計画を強行するというような方法をとつておるのでございます。これが先ほど申しましたような、一般にこれは必ずしも共産党というのではない立場組合員大衆にも、割合にこの業務管理方式あるいはこれに準ずる方式が放漫に考えられておるのではないかというふうに考えておるのでございます。
  24. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 時間もありませんし、他の同僚からも質疑をしたいという御希望があるようでありますが、私は一、二点最後に簡潔に承つておきたいと思います。ただいまの説明で明らかにされたようでありますが、要するにストが政治的意図を持つたり、またその方法組織的であつたり、あるいはまたいわば暴力主義的であつたりするということは、まことに日本経済、産業の発展のために、また政治的にも憂慮すべき問題であろうと思います。そこでその戦術方法としての業務管理、またその前提としての工場占拠といつたようなことは労働三法の上から見、その他の関係法規から見てもかなりこれは行き過ぎの労働争議ではないかというように考えるのでありますが、警察当局としてはそういう場合にどういう態度をもつて臨まれるか伺つておきたいと思います。
  25. 齋藤昇

    齋藤説明員 警察といたしましては、先ほど申しましたように労働争議はどこまでも法律の許容する範囲内で、その土俵内で行わるべきだ、かように考えておるのであります。ただいま御例示になりました工場管理というような場合においては、必ずこれには不法なピケが伴うわけでありまして、平和的説得の域を越えたピケというものは必ず行われると思います。さような際にはあるいは業務妨害あるいは公務執行妨害等によつて、平和的説得を越えたピケというものを排除しなければならない段階が必ず来ると思いますし、また事業場の管理者の意に反して工場を占拠するという場合には、管理者が退去の命令を出すという場合には不退去罪が成立するわけでありますから、この場合は不退去罪として検挙するというような事態に発展をして行くだろうと考えるのであります。どこまでも民主的なルール、法律の許す範囲内、これを逸脱して法令に触れるという場合には、警察は現在の段階では相当強い考え方をもつて臨まなければならない、かように考えております。
  26. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 もとより民主警察のあり方として取締りの一決、範囲にいやしくも人権蹟といつたような非難を受けざる態度をもつて臨まれることを私どもは衷心から、しかも強く当局に希望するのでありますが、同町に封建的な経営者に対して、正当な範囲方法、目的のもとに労働者憲法保障する労働権を、また生存権を主張されることはもとより当然あり、われわれはただ限界を越えないことを望むだけのことであります。ただ取締りの局に当られる各位が現在の法律制度の上において適正にその職務の執行ができるかどうか。先ほど申し上げましたように、政治ストと経済スト限界いかんとか。あるいはまた経済ストであつてもその手段方法において今日の法制の上においてはどこまでが適法であり、どこから先が非合法であるか、その具体的な場合について判定に苦しむことも多々存すると思うのであります。これらの事情を総合して、何らかここに特別なスト対策立法といつたようなものが必要ではないかというふうにも一面考えられるのでありますが、取締り当局としてのこれに対する感想はどうであるか、最後に伺いたい。
  27. 齋藤昇

    齋藤説明員 取締りに当りまして、警察官人権蹂躙とかあるいは不当な行為のないようにということは、これは口をすつぱくして教養に努め、また実際の監督に当つておりますので、その点は御了承いただきたいと思います。最後お尋ねの点でございますが、これは私個人の考えでございまするが、現在はただいまおつしやいましたように、どこまでが合法でどこからが非合法かという点、どこまで行けば刑罰に触れるようになるか、警察権発動できるか、非常に微妙なむずかしい点がございまするが、先般の労働次官通達等によりまして、労働争議が民主的なルールで法律を守つて行われるというような傾向に向つて参りますならば、私は現行の法制でいいのではないかと考えますけれども、しかし政治的な背景その他をもちましてそういう方向に向わないというような場合には、現行の法制ではどうもむずかしい点が若干あるわけであります。根本的には、ピケあるいはストというものの段階を逸脱して、当該のピケ張つている組合以外のものに対する、大きく言いますと憲法保障された人権が非常に蹂躙されるという場合もあるわけであります。根本的に人権蹂躙をされているが、しかし現行法では何ともしようがないという事態、また非常にしにくいという事態もありますので、今後の推移を見ましてそういつた場合に備えるような立法が必要ではないだろうかという感じを私は持つております。しかしそういうような事態になりますことは、日本の労働運動といたしましても、他の全体の民主的な行き方にも非常に残念な結果を来しますので、そういうことがないように望んではおりますが、事柄傾向のいかんによりましては、さような立法をお願いした方がいいような場合もありますので、さような考えで私個人としてはただいま考えております。
  28. 小林錡

    小林委員長 猪俣浩三君。
  29. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 先ほど佐瀬委員質問警察庁長官及び警視総監は、例の東証争議について何ら警察官の暴行がなかつた、また労組員の中に傷害を受けた者がなかつたというような証言をなさつておるのであります。しかしこれはすでに東証労働組合の執行委員長細谷の名前によりまして、十一月二十四日に東京地方検察庁に告訴が出ておる。こういう告訴の出ておることを御存じであるかないか。被告訴人は日本橋警察署長漆間仙平である。こういう事情を御存じであるかどうか、警視総監から御答弁を願います。
  30. 江口美登留

    江口参考人 検事局に告訴が出ておるということは、係の方から内面的に聞きましたので承知をいたしております。しかし告訴が出たからと申しまして、検察庁の方から正式にそのことを警視庁通達があるわけでもございませんし、そういうことをするということがそれに対する警察側措置を固めさせという意味もございましようし、特に正式に通知がございませんが、告訴が出されておるということは人ずてに聞いております。
  31. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いやしくも告訴状が出ている以上は、何らそんな行為はなかつたんだというようなことは、少し言い過ぎの言葉ではないかと存じます。告訴状の内容を読んでみますならば、全部で十九人が傷害を受けております。また当時現場におりましたたくさんの証人がある。これは明らかである。その中には、たとえば組合員の吉田静雄君、四十歳の人でありますが、この人に対して警察官は、上着のえりや頭髪をつかんで、くつでけり上げ、警棒で同人の頭部を欧灯して引倒し、よつて同人の右大腿部に全治一週間を要する打撲傷を負わせた上、同人の上着、えり、ポケツトを引きちぎり……、こういう事実で、一週間の傷害を与えております。なお組合員鈴木松司、二十九歳の人間の左手を持つて引倒そうとし、さらに左足を足げにし、よつて同人をして全治一週間を要する左下、挫傷の傷害を負わせている。これらにつきましてはみな東京証券健康保健組合診療所の医師が診断書を明白に出している。私どもは一週間の傷というものは傷害だと思うのであります。しかも医者がちやんと証明書を出している。かようなりつぱな証明がついて検察庁へ告訴が出ている。しかもあなたの部下である日本橋の警察署長であります。この内容につきましてあなたが調査をしないというようなことは、私ども不可解に存ずる。警察官自身がけがをした場合にはいろいろ調査をするが、一般の労組員のけがした者なんかは、ほつたらかして調査しないでもよろしいというように相なのであるか、すでに検察庁へこういう告訴状が出ている以上は、その内容について、あなたはその部下について詳しく調べなければならぬ必要があるのではないか、事の善悪にかかわらず、事の動機のいかんにかかわらず、官憲が労働組合員労働争議に際して傷害を与えるということは容易ならざることであります。そんな告訴状が出たようなうわさも非公式に聞いているがというような程度で、当法務委員会において何ら傷害を与えたようなことはありませんというような答弁をされるそういうこと、自体に私は問題があると存じます。いやしくも部下は告訴され、十九人の人たちが医者の診書を添えて告訴している事実について、どういうわけであなたはこの内容を調査なさらなかつたか、その御意見を承りたい。
  32. 江口美登留

    江口参考人 告訴がありましたという問題は、ただいま申し上げましたように、間接に聞いたのでございますが、その組合員の中に十数名の負傷者が出ており、しかもそれについては医師の診断書もついておるというお話でございますが、そのことは、二週間ほど前に衆議院の労働委員会において、委員長から詳細その申立護並びに診断書が読み上げられましたので、私ども十分承知いたしております。しかし先ほども申し上げましたように、その事件がありました翌日、ただちに私は負傷者がなかつたかということを、警視庁の係の方並びに日本橋署を通じまして調べさしたのであります。それが一番気になることでありますから……。ところがそういう事態は生じていなかつたと認められる、そういうことがあれば、必ず警察にしろあるいは警視庁にしろ、そのけがをした人間にほうたいをして、あるいは医者を連れて抗議に来ているのが例でございます。それが一人も来ていないのであります。その労働委員会において、私は委員長その他の方々からいろいろ猪俣さんのお話のようなことを承りましたので、その後もけが人はほんとうに警察調べでないのかということを念を押しておりますが、調べようがないのであります。もうすでに今日では痕跡もなくなつておる者もありましようし、組合側連絡をとるにも、本人に出てもらうにしましても、医者について当るにしましても、それだけ詳細に調査する余裕がないのでございます。あるいは警察官側にも相当の負傷社を出しておりますので、警察官としましても、自分らのことは調べずに、組合のことだけを調べるということについても多少逡巡したのかもしれませんが、とにかく私の今日まで入手いたしておりますところでは、表に現われるような傷害者は出しておらなかつたということを報告されておりますので、そのことを先ほど佐瀬さんにも申し上げたのでございます。事実そういう負傷者がもし出ておりまするならば、はなはだ遺憾だと思いますし、私は遺憾の意を表したいと思いますが、先ほど申しましたように、われわれの目の前に本人としてあるいは証拠としてそういうものが現実に出て参つておらぬのでございます。その点を御了承願いたいと思います。
  33. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私どももこの傷害を与えたと称しまするその日に、総監に親しくお目にかかりまして、どうぞあまり警察力を使用しないように、ことにこの労働組合というものはできたばかりで大した組合でもないのであるから。あまりおどかさぬようにしてもらいたいという要請をいたしました。総監もその意を了とせられたのであります。ところがほとんどそこから何分もたたぬうちに、こういう乱暴が行われております。私は総監がいいかげんなその場のがれの答弁を私どもになさつたとは思いませんが、何か総監と現場に臨んでおる連中との間に連絡があまりないのじやなかろうか、総監の意思が第一線の連中に徹底していないのじやなかろうかということを私は遺憾に思うのであります。なお今労働委員会でお知りになつたということであるが、ここに労働組合員立場からいたしますと、非常に一種のひがみが出て来るのであります。労働組合員のだれかがこの証券会社の重役のだれかにかすり傷でも負わせたら、警察調査しないでおいでになるであろうか。それこそそれを口実に全部一網打尽におやりになるであろう。だれがやつたかわからぬから、全部これをひつくくる、こういう態度をおとりになつたであろうと思うのであります。今までの争議においてみなそうであります。しかるに労働組合員側が官憲そのものによりまして十数名の重軽傷者を出しているにもかかわらず、労働委員会で読み上げられるまではわからなかつたということに、われわれは労働組合員に対しまする人権尊重の観念がはなはだ乏しいといううらみを持ちます。これを所をかえてあなた方が考えていただきたい。労働組合争議の際に、相手方の会社側の者が何かちよつとでもけがをしたということになるならば、これは大量の逮捕になるでありましよう。あるいは徹底的の調査を行うでありましよう。それを中心にそれこそ数十名の人が勾留されるでございましよう。それと一体つり会いのとれた態度であつたかどうか、人権尊重の意味から私ども遺憾に存じます。江口総監が民主的な総監であることは私も疑いませんけれども、どうも前線の鉄かぶとをかぶつている連中が非常に勇猛果政であつて、警棒をひつさげて突入することをうずうずと待ちかまえている。このときの模様も私は見ておる。最初警棒を振り上げてだつと押し寄せて行つたんだけれども、何かのことでそのときはやめた。これはおどかしだけだと思つてつたら、そのうちに飛び込んで行つた。その勢いの猛烈果敢なことは、さすが背由兵戦で勇名をとどろかした人たちの後継者だという感じを深くするのであります。とてもこんな貧弱な労働組合員などは一ぺんに縮み上つてしまいます。とにかく三、四百人の労組員に対しまして、千名近い警察官を動員して、その数からいつても、これだけのけが人が出る公算は大であります。そういう多数の警察官が、何もしないでスクラムを組んで、手を動かしておらなかつた労組員に、警棒を振り上げてなぐりかかるのですから、けが人が出なかつたら奇跡です。けが人が出なかつたから安心したとおつしやるけれども、それ自体あなたが現場の空気、情勢をごらんにならぬ証拠である。労組員はピケ張つて手を組んでおるから、手が動かせません。そして並んでおる。あるいはすわつておる。そこへ鉄かぶとぬ警察官が警棒をもつてなぐりに入るのですから、けが人の出ることは第一に想定しなければならぬ、それで出なかつたら奇跡であります。俄然やはり十九人というけが人が出ておる。あなたがもし告訴せられておるというようなことを聞いたら、さつそくそのことの真相、何人がけがをしたか、どんな状態で一体ピケを解くように警察官活動したか、その乱暴の程度警察官自身の実力行使程度を御調査なさるだけの親切気をもつて人権蹂躙に対する問題について神経過激になつていただきたい。これは済んでしまつたことでありますが、私は強く要望する。こういうことから労組員は、自分たちがけがをしても警察は加害者について調査もしない、重役にちよつとでもけがをさしたらそれこそ自分たちは全部ひつくくられるという感じを打つのであります。私はとうに十分に御調査が済んでおるものと思いましたら、まだ今のような御答弁でありますので、実際何人がこれらの人に暴行を働いたか、これはほとんどはつきりしておいでにならぬと思いますから、これ以上お尋ねいたしましてもしようがありませんから、やめますが、はなはだ遺憾の意を表しておきます。  それから齋藤警察庁長官お尋ねいたしますが、昭和二十九年十一月六日付で、あなたの名前で極東米軍テンプル少将あてに、「駐留軍労働者ストに伴うピケツトに対する警察措置について」という通知を出されたかどうかお伺いいたします。
  34. 齋藤昇

    齋藤説明員 出したことは事実でございます。
  35. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その中に「駐留軍労務者のストに関するビケツトの取締りの徹底を期するため、全国都道府県警察、及五大市警察に対し、早急に右決定方針に基ずく取締り方を指示すること、しているので、貴方においても日本警察取締りについて協力をお願いしたい。」これはどういう意味です。
  36. 齋藤昇

    齋藤説明員 協力という意味は、米軍の方で刷つてつたという書類だけではわからぬのでありますが、この裏には、駐留軍が一体日本の労働争議というものについて十分理解をし、そして行き過ぎた憲兵による取締りとか、あるいは争議者を興奮させるような行為とか、いろいろそういうことのないように、われわれがどういう取締りをやるわけだから、あなたの方とされてはそういうことのないようにしてもらいたいというのが協定の趣旨でありまして、テンプル少将の方から米軍の全体に対しまして出された通達の中には、その趣旨のことが入つておるのであります。まず第一は、米軍の軍人、軍属はストに際して厳正中立の態度を堅持をする、軍の方は、スト前たるとスト中たるとを問わず軍用車にスト当日の就労希望の労務者を乗せて施設には入らない、争議中は軍用軍はもちろん私用車にも日本人は運転手として使わない、米軍軍人、軍属は自動車で人がきを突き破つたり、生命に危害を与えるようなおそれのあるスピードで自動車を運転をしない、あるいは米軍の憲兵をビケ・ラインに出動させて違法ピケの排除等の実力行使を行わないというような約束が裏面にあるわけであります。そういう意味で協力を願いたいと言つたわけであります。この約束が果されませんと、警察といたしましてはいろいろなトラブルが発生をし困ることが多いので、さように要望いたしたのであります。
  37. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私が手にいたしておりますこのテンプル少将あてのあなたの通達というものには、今あなたがおつしやつたようなことは見えておらぬようであります。ただこれは労働大臣のビケに対する法的見解と同日にこのテンプル少将へのあなたの通達がなされておる。この労働大臣ピケに対する限界なるものの見解は、今までのピケをして不法なるものと思わしむるような内容が多々含まれておるものであつて労働運動に対する弾圧の一つの契機であるというふうにわれわれは考えておるのでありますが、それと軌を一にいたしまして、あなたはこういう通達をテンプル少将に出して、しかも取締り方に対して協力してくれということを申し入れておる。極東米軍では、このあなたの申し入れをプリントにして、一々労働組合員に配つて歩いておるということが報告されておるのでありまして、あなたの言うような趣旨とは非常に違つているのでありますが、そのテンプル少将にやられましたほんとうの、今あなたが申されたようなことの書いてある全文がありましたら、当委員会へお示し願いたいと思うのであります。
  38. 齋藤昇

    齋藤説明員 駐留軍の力から駐留軍労務者に配付をされましたという書類は、全駐労の方も知つておりますし、おそらくそれはお持ちだろうと思いますが、その通りであります。テンプル少将から、軍の方からはこういう措置をするからということを言つて来ておるのであります。私の方から出した書類はそれだけで、何らつけ加えるものはございません。   〔委員長退席、林(信)委員長代理着席〕
  39. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお警察庁長官お尋ねいたしますが、この全駐留軍労働組合ストに対しまして、埼玉県の朝鶴町の米軍キャンプの人たちが傷害を与えておるという事件がありますかありませんか、お尋ねいたします。その事情を御説明願いたいと思います。
  40. 齋藤昇

    齋藤説明員 その事実はございます。朝霞でストに入る前日に、ビケ・フインをめぐりまして向うの憲兵と駐留軍労務者の間にそういう行き違いがありまして、憲兵が傷害を与えたという事実はあるのであります。これはわれわれといたしましては、憲兵司令部、米軍の方に、ああいうことはきわめて遺憾である、今後繰返さないようにしてもらいたいという申入れをいたし、また警察措置といたしましては、検察庁と一緒にこの事件取調べておるのであります。あとは検察庁措置をせられたのでありますが、私の聞いておりますのでは、検察庁が事実を取調べ、そしてこれは駐留軍の施設内の行為でありますので、それに対する処罰について米軍に申入れをしておるというように聞いております。今度のテンプル少将あての私の書簡、テンプル少将から私の方に約束をされた書簡、そういうものが行われますにつきましては、われわれの方といたしましては、朝霞の事件とか、あるいはその他労働争議に対する理解あるいは見解が十分でないことからときどき起つておる無用なトラブルに対して、米軍側に十分な理解と今後そういうあやまちを繰返さないような措置をとつてもらいたいという希望を持つており、米軍の方といたしましては、争議関係のない軍人、軍属あるいは郵便車というようなものがとめられたり、いろいろな争議行為いわゆるピケの行為を逸脱した行為によつて米軍が非常に迷惑をこうむつておるということから、正当な取締りをしてもらいたいという申入れがあり、両方が合致をいたしまして、それではお互いに話をし合おうというので、米軍関係者と、われわれの方といたしましては警察、検察、労働省、外務省が一緒にまして、いろいろ個々の事態について検討をいたし、日本側としてやるべきこと、米軍側としてやるべきことを申し合せたその結果がかようになつたのでありまして、これは労働次管通牒とは何ら関係がございません。われわれといたしましては、従来の事例その他から、ピケ限界、われわれの今までの取締り方針というようなものを検討いたしてつくつたものでありまして、たまたま十一月六日という、日は一致をしておるのでありますが、私ども労働次官通達がいつ出されるかということは全然知つておりませんでした。また日米両当局のいろいろ研究の結果、私の書簡として出しまするのも、いつ出すかというようなことについては何ら打合せ労働省その他ともせずにおつたのでありますが、たまたま日付が一致をいたしましたから、さようなお感じを与えたかもわかりませんが、それぞれの目的は、別個の目的で、別個の作業で、別個に出したものでございますから、さように御承知を願いたいと存じます。
  41. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 日本人に対するアメリカ軍人の暴行傷害についての裁判権その他につきましては、私は異論がありますが、これは法務大臣に質問することにいたしまして、その点は打切ります。  先月の二十二日に中野区野方町におりまする沢井松司なる者が、血のにじみ出るような手紙を私のところへよこしております。この内容によりますれば、十一月の十六日――これはたしか吉田総理大臣の帰国の前の日ですか、午後の五時半ごろ彼が勤務いたしておりました羽田の空港のガソリン・ドラムの集積所の付近に何か小型の爆弾が落ちていた。これを彼が拾つて届けをしたところが、さつそくアメリカの憲兵の活動となり、爾来彼自身が被疑者として調べられ、実にたいへんな人権的な調べ方をされたというて、涙の手紙を私によこしておるのであります。そうしてこの調べの主任がアメリカの准尉か何かで、しかも黒んぼで、それに日本警察が立ち会つておる形で調べられた。そこでそれがほとんど一週間くらい調べられて、まつたく心身ともにへとへとになつてしまつた最後に、この手紙には書いてありませんが、この手紙を私に出してから、いま一度アメリカの憲兵隊に調べられて、うそ発見器というものにかけられて、ほとんどそこに気絶するようなひどい目にあつたというのであります。そうしてまつたく自分は職務を忠実に果しただけで、そんな爆弾をそんな所へ持ち込むなんということはあり得べからざることであるが、どういうわけであるか、自分に嫌疑をかけておる。自分は共産党員でもないし、今まで何らそういう過激な運動に加担したこともない。まじめに勤務しておる人間にすぎない。ほとんど自分の生活と平安が一挙にして蹂躙されてしまつて、あすの命さえ心配の状態に陥つてしまつた。何とかしてこれを救い出してもらいたいという訴えであります。そこでこれは蒲田警察署その他警視庁でも関係されておりますがゆえに、警察庁長官でも警視総監でもよろしゆうございますが、これは一体どういう経緯なのであるか。これがまつたく無実な人間をかように調べたとするならば、これは完全な人権蹂躙だと思うのであります。前後の事情から彼に疑いをかけるということ自身が実に非常識の状況で――詳しく手紙に書いてありますが、あなた方お調べになつておると思いますから私は申し上げませんが、警備員である彼自身、しかも最初にそれを発見して憲兵隊に届け出ました彼自身を、容疑者としてかくのごとく、まるで拷問に類する調べをやるということは、まつたく常識上判断ができません。彼は血の涙でもつて私に訴えて来ておるのでありますが、との実情について御説明願いたい。
  42. 江口美登留

    江口参考人 ただいまの沢井某についてのお話でございますが、確かに十月十六日の午後六時ごろ、その者の警備しておりまする羽田の米軍の、もちろん基地の中でございますが、その警備地域にクリーム・パン大の爆発物と申しますか、燃焼物があつて、火をふいていたのを発見した。それでその警備員がただちにいわゆるMP側にそのことを報告し、その翌日蒲田署に対しまして本件の調査の依頼があつたのであります。蒲田署におきましては、現在なお調査中でございまして、沢井某につきましても、数回にわたつていろいろな点からいろいろ事情を聞いておるのでございますが、その供述にもいろいろ矛盾があるような点もありますし、それからそこにそういうものがあり得るはずがないのであります。そばを通つた船から投げ込まれたということを沢井某が申しますので、その船の通つたと思われるものについてもいろいろ調査してみましたけれども、どうしても根源がつかめないでおる事情にあるのでございます。ただいま拷問というようなお話がございましたが、私自身蒲田署長につきまして十分聴取いたしましたところ、日本側といたしましては、そういう苛酷にわたる取調べは絶対にいたしておりません。むしろ本人は、この事件警察が独自の立場で捜査しておることがわかつた。今までは向う側と共同して捜査をしておるのかと思つたら、警察警察で独自の立場で捜査しておることがわかつた警察の取扱いは個々の面においても非常に慎重であり、不平不満は毛頭抱いておりません。今後ともこの事件の捜査には私は全面的に協力いたしましよう。こういうことを本人は蒲田署の係長に申し出ておるのでありまして、拷問がいつどの辺で行われたということについては、警視庁としては一向関知いたしておりません。御了承いただきたいと思います。
  43. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 蒲田署に沢井がそういう申立てをした、まことに警察調べは慎重でありがたい、今度は大いに協力いたしますという供述をしたいというのは、いつでございますか。
  44. 江口美登留

    江口参考人 それは数回にわたつて取り調べておりますが、十一月二十四日の取調べの際にそういうことを申したように報告が出ております。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 この手紙によりますと、十六日の日は、彼は警備の当番であつたが、五時半過ぎにそれを発見するとともに憲兵隊に連れて行かれて、その翌日の十七日の四時までその黒んぼの准尉とやらに調べられた、それから家へ帰されましたが、ただちに十二時からまた調べられて、午後の七時まで調べられたというような猛烈な調べを十七、十八、十九とやつておりまして、そこで自分の身はどうなるのであるかというようなことから、私には二十二日にこの手紙を出しておるのであります。ところが二十三日か四日、私の留守のときに事務室へ参りまして、私の秘書にうそ発見器にかけられて、もうほとんど心身衰弱の極に達しておるということを訴えて帰りました。それ以来私のところへ出入りいたしません。あなたから聞くと、二十四日にそういう表明をするようになつたというのであるがどうも私は妙な予感がするのであります。  何か警察が私のところに来たようなことを察知されて、何かの手を打たれたのじやないか。場合によつては何か強制的にそんなふうなことを言わせて調書をおとりになつたのじやなかろうか。そうすると彼がそんな、あなたが言うように、警察調査に感謝するようなことと――この手紙をひとつお読みなさい。言々句々涙の手紙であります。もしこれが真実だとすれば、彼はまつたくの二重人格で、私もあきれ返らざるを得ないのでありますが、私の三十年の弁護士生活の経験からいいますと、おそらくあなた方が都合のいいように本人に自白せしめたという公算がはなはだ大であります。ですから二十四日にうそ発見器にかけて締め上げたあと、彼をしてすでに抵抗力を失わしめた上で警察に感謝せしめたのだろうと思う。それをあなたはもう少しお調べなさらぬと、それをもつて得意になつておられると困る。それ以来私のところに大体来ないのです。何かそこにあつたと私は考えまするが、事実無根のことであるならば、まことにおめでたいことでありますけれども、これはよく御調査願いたい。また人権擁護局長がおいでになつておりますが、人権擁護局としてもお調べ願いたい。詳しいこの手紙を局長に差上げますから、警察とは別に調べてください。警察の言うことには相当かけひきがあるので、私は今までの長い経験から信用できない。まつた警察に感謝しているというのに、こういう手紙で見ず知らずの私のところに訴えて来る道理がありません。鹿地亘の事件におきましても、向うの報告によれば、彼は身の危険を感じてアメリカの友人に保護を頼んだのだ、こういうようなことを発表しております。警察もそういうふうにおとりになつて、その発表を支持しておられたように私は記憶するが、内容はまつたく違つてつた。沖繩まで軍用機で運ばれておる、こういうような始末なんです。沖繩の友人をたよつて彼は爆撃機に乗せられて行く道理がない。そんなことで身の安全をはかつたなんということは荒唐無稽の話でありますが、由来どうも警察の発表するものはちつとそういう傾向があるのであつて、江口さんは正直な方であるから、その部下の言うことを真に受けて喜んでいらつしやるかもしれぬが、もつとそれは調査していただきたい。おそらくこの手紙は二十二日に出ておる。二十四日に警察にそういうことを言つて、ぴたつと私のところに来ません。どうもその間に何かの工作が行われている。まさか殺したのではなかろうけれども、何か工作が行われているのではないか。これを御調査願いたいと思います。人権擁護局にもお願いしておきます。この問題はまだ捜査中であると存じますので、私はそれ以上は追究いたしません。  今度は、公安調査庁高橋さんがおいでになつておりますが、これは実はあなたに私が人名を申し上げると、はつきりした御答弁が願えるのでありますけれども、どうも人名を申し上げることは、まだ二十四、五才の大学卒業し立ての純良な青年でありますために、そしてまた今の青年は相当公安調査庁を恐れています、赤でもない、何でもない人間が恐れている。警察も恐れています。何で因縁つけられるかわからぬということで、名前は出したくないと言うのであります。ちよつと上の方の方々はただきれいなことだけをごらんになつているのかもしれませんが、ひとつお含み願いたいことは、事ははなはだ小さいことでありまするけれども、現在の反動的な空気の中にありまして、公安調査庁全体の職責というものから考慮いたしますと、こういうことが全国的に行われておるのではないかという心配があるのであります。たまたまこの事実が特殊の関係から私の耳に入つたので、一応お聞き願いたい。ちようど警察のお歴々もおいでになつて便利だと思う。  それは古い話なんです。昭和二十八年三月八日の話。この男は、大和証券の名古屋支店に勧めておつた大学出のインテリであります。そこへある日三十数才のふちなしめがね、合オーバーを着た一見サラリーマン風の男がたずねて来て、この勤め人を呼び出して、株の取引をするがごときことを、言うて、その日はそれで帰つたそうですが、翌日また現われて、その会社の近所のすし屋に呼び出して、きようは折り入つてあなたにお願いがあるんだ。あなたは一体だれだ。それは聞かんでくれ、あなたが私に協力すると言えば自分の職能を明らかにする。何だと言うと、とにかく組合の内部や共産党の内部なんかについてあなたが知つていることがあつたら通報してくれぬか。そこでそんなスパイのようなことは私はいやだと言つたところが、がらりと態度がかわつて、お前は赤だ、お前のことは全部役所で調べが済んでいる、お前は全学連の委員をやつていたじやないか、そういう前歴をお前は全部隠してこの会社に入つた、協力しなければ、ただちにこの旨を会社の経営者におれは告げる、お前はただちに首になるだろう、これでお前とは二度と会わぬ、お前が協力してくれれば、物質的には決して困らせない、こういうことを言い置いて別れたそうであります。その後約十日た値ちますと、その十日間に、あとの調べでわかつたが、この大和証券で彼の母校である名古屋大学の法学部に対して彼の在学時代の活動調査したらしい。そこで当時名古屋の支店長中島氏に呼び出されて、君は共産党ではないのかという質問をせられた。とともに、君はもうすぐ首にしたいと思うけれども、しかし今まで非常にまじめによく仕事をしたから、まあ首はつないでおくがというようなことです。その後何か身体検査を会社の医者にさした。ところが結核のきみがあるというので、休養を命ぜられた。三箇月たつてつてみると、まだだめだという。また三箇月の休養を命ぜられた。六箇月目に完全になおつたからといつて、復職を願つたところが、いやお前はもう六箇月病気で休養して休んだから、社内の規定に従つて半年以上欠勤した者は退社することになつておるから、退社だということで、首になつてしまつた労働組合はあるけれども、御用組合だから、そんなものはてんで取上げてくれぬ。そこで彼は失職してしまつたのであります。そこで彼の母親と私の家内が学校の同級生であつたために、就職運動のために私の家内のところへお母さんに連れられて来た。そのときの雑談にこれが出て来た。それを私に訴えて来たんではありません。そこで私は本人に会つてそれを話しく確かめましたところが、以上の事実がわかりました。  一体この三十幾つのふちなしめがねの合オーバーの男は何人であるか。おそらく公安調査庁調べ人に違いない。それでなければ、彼の身の上をすつかり知つてつたそうですから、知つている道理はございません。また生活に困らせないというふうなことを言う道理はない。何の関係もなしにこんな男をたずねて行つてスパイになれと言う道理はない。おそらくかようなことを公安調査庁では――あるいは警察かもしれない、こういう特高的な、東条内閣時代のような、また平清盛が放つたという三百の地頭と同じようなスパイを市中に放つのではないか、いや現に放つておるのではなかろうか。私は実に慨嘆にたえません。かようなやり方は絶対したことはないのか、あるいはこういうふうに何人かに口をつけて、それを公安調査庁が共産党の秘密を探るとかあるいは労働組合内部を探るとかいうことに御使用になつておるかどうか。私はある程度は必要だと思う。皆さんはそういう危険なる思想の持主、破壊活動をやらんとする者を取調べるのが目的であるとするならば、スパイ政策も必要であると思いますけれども、こんな善良に、平安に勤めておりまする二十四、五歳の若い社員に対し、かような脅迫をし、加うるに利をもつて誘導し、彼をして最も卑劣なるスパイ行為をさせるがごときことは容易ならざることだと思う。これは大きなる人権侵害であります。かようなことを調査庁は過去においてやつたことがあるかないか、現在やつておるかないか、やつてつたとすれば、将来これを根絶する意思があるかないか、これを御答弁願いたい。
  46. 高橋一郎

    高橋説明員 公安調査庁はその職責として、破壊団体の構成員は、これは個別に調査しております。ただその調査にあたりまして、党員たることがまつたく明らかというようなものではない人を、これを党員であるというようなふうに本人にもあるいは第三者にも示すようなことは、これは絶対にやつておりません。それからまたもちろん公安調査庁調査に協力してくれる人々もありますけれども、協力しないからといつて、不当にこれを失職せしめるような方法は絶対とつておりません。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 まあ、あなたはとつておりませんと言うけれども、これは一体生き証人がある。どうしてもあなた方は否認するなら、対決するよりしかたがない。現在ちやんと何も知らなかつた経営者に――この人は共産党でも何でもありません。ただ若いとき、やはり一般の学生にあるように、全学連の委員か何かになつて、気勢をあげたことがあるかもしれませんが、りつぱな会社員になつて、まじめに有能に働いている人物です。そのお父さんは法務省の役人であります。名前を言えばあなた方がわかるんです。りつぱな家庭の人です。お母さんも教養ある人です。この人間は、私は会つてストしておりますが、そんないわゆる皆さんが恐れるような人物では絶対にない。学校を卒業してやつと就職して、やれやれと胸をなでおろした青年が、こんなことのために失職して、そうして就職運動をやつて歩かなければならないという、この師走の風の吹くときに、あなた方は一体これをどう考えるか。やつていないと言つたつて、被害者は現われている。どこまでもあなた方が拒否するならば、これは対決するよりしかたがない。全部これは明らかにするよりしようがない。まあ、しかし当委員会であなた方がそういうことをやつていますとも答弁できませんでしよう。だから私はそれは留保いたしますが、しかしこういうことは厳に慎しんでいただきたい。この青年をこの委員会へ出すことは、私はやはり忍びませんから、従つてこれ以上あなた方を追究できません。できませんが、かようなことを過去においてもしやつたとするならば――これは昭和二十八年三月の話でありますから、今おやめになつているかもしれません。やつてつたらどうぞおやめになつていただきたい。これを私は強く要望して、これ以上どうも私の方の弱みがあつて出せませんが、荒唐無稽のことを言うておるのではありません。もしどうしても荒唐無のことだとお思いになるならば、私はあなたのところにその青年を静かに連れて参りまして、その青年からその実情をよくお聞きとり願いたい。そうしてそういう間違つた功をあせる意味において、そのあなたの部下たちが情報をとると何か金一封になるのじやないですか、何か功をあせる意味においてこういう無理なことをやつておる。それはあなた方の指令ではないでございましよう。ないでしようけれども、十分にこういう事実があるということを察知されて、さような無理なことのないように御注意願いたい。私はきようはこの警告だけにとどめておきます。なおこういう事実が続々と現われました際は、当法務委員会の特別な調査をお願いいたしまして、日本の特高化防止のために徹底的に追究しなければならぬことをあらかじめ警告しておきます。  それから、これもやはり日本の特高化と関係あることでありますから、警察庁長官も、それから高橋さんも、もうちよつとそこにお残り願いたい。これは質問は援護局長にいたしますけれども、あなた方に関係がある。これは今年の十月十九日の東京新聞に大々的に報道されました。引揚者の思想調査、舞鶴援護局に暗い印象、こういうことが詳しく発表になつております。それは援護局の方じやないかもしれぬが、法務省の役人が来て、この興安丸の引揚者の問題についてというのを何の話であるかと再三お聞きになつておる。私はまたこんなことは人権擁護の本家でありますから、法務省でもちやんと調査なさつてつたのだろうと思つてつたのだが、全然何もわからぬという仰せであります。これは遺憾であります。というのは、この新聞に大々的に出ておりますように、中共が好意を持つて抑留日本人を帰すという、その引取りに行つた船の中に、どうも向うの事情をスパイせよというような命令を受けて行つているような者がある。その証拠を中国の宜憲に握られたという意味なのであります。これはこういう大きな新聞に出ているのだから援穫局の方でお調べになつていると思いますが、一体、事の次第を御説明願いたいと思う。
  48. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 事件の概要を簡単に御報告いたしますと、九月の十五日に舞鶴から引場船興安丸が出発したわけでございますが、そのときに薬を積んで参りますので、その薬を積み込んでつる人に託しまして、援護局の職員がま紙を舶側に渡したのでございます。手紙を受取つた人は輿安丸の乗組員であります。船員でございます。その手紙が輿安丸が先方の港に入港した際中共側の官憲に発見せられまして、押収せられたのでございまするが、中共側はその書簡を見まして説明を求めました。説明いたしましたところ、後日その手紙を持つておりました事務官に対しまして、手紙の問題はもう何も問題はないと言いまして、その手紙は現物を向うで撮影いたしまして、その本物を船に乗つてつた乗船代表に返してくれたのでございます。その手紙の内容と申しまするのは、簡単に申しますと、今度帰つて来る人たちの内訳は軍人、軍属、一般邦人でどうなつているか、また、どういう地点から帰つて来るか、それからまだ先方に残つている人についての名薄なりあるいは日本人で向うで死んだ人の遺骨の状態などについてのいろいろの資料、人がわかつてつたなら、その人の名前を知らしてほしい、それから業務協力済を知らしてほしい、この業務協力者というところに括弧がついていまして、船内において引揚者と接した際の感じと、先方から話に来られたような主として反動的な者を対象としてください、こういう言葉があるのでございます。この反動的という言葉が思想調査ということにあるいは誤解を受けたのかと思いまするが、実はこの意味は未帰環者の消息についていろいろといい資料を持つている人という意味に察せられるのでございます。(笑声)と申しますのは、舞鶴援護炉におきましては従来から多数の状況不明者についての生死の状況を明らかにするために、帰つて来た人から残留者の生存の資料あるいは死亡したという資料をとることに非常に重点を置いて仕事をいたしております。ところが、昨年大品の引揚げがありました際に、残念なことには引揚げた方からこの点についての十分な御協力が得られない事情があつたのでございます。いろいろ調べまするというとそれは思想調査である。軍事調査であるということで、まことに残念なことでございますが、多数の留守家族の期待に反しまして、いい資料が集まらなかつたという経験がございます。舞鶴援護局の係官も、協力してくれる人を多数の引揚者から探し出しまして、そしていろいろお話を伺うということに非常に力を注いだわけでございます。ところがこの舞鶴援護局の一般の空気といたしましては、いろいろいい資料を持つている方々が、局側に協力して事情をおしやべりになりますと、どうもあれは反動だというような一つの言葉ができておりますので、その事務官もついそういう言葉ご使つたのではないかと思われるのでございます。これは決して悪意があつてつたわけじやないのでございまして、仕事熱心のあまり――これは個人的にやつた仕事でございますが、熱心なあまりそういうことをやつたのではないかと思うのです。ただ結果においていろいろ誤解を生じ、興安丸の、輸送なり、あるいはその後における引揚げ業務の円滑な遂行にいろいろ支障があということではいけませんので、こういうことは向うからも注意を受けたところでございますからわれわれとしてもかようなこととのないように、今後とも十分注意をして参りたいと思つております。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなた方は誤解だとおつしやるが、そういうふうに簡単にはかぬ。それはあなたも引湯援護局に御関係ならば御存じでありましよう。本の占領中、また占領が終つて独立した後におきましても、シベリアあるいは満州、あるいは中国本土から引揚げて来た者に対しまして、アメリカ側がいかなる調査をやつたか。この協力者が援護庁である。中には一箇月くらい東京にとめられまして、微に入り細に入り、満川のこと、中国本土のことを調べられたはずである。みな引揚者であります。そしてそれに協力して、アメリカの調査団に引渡す役をやつたのは、あなた方援護庁の人たちである。これが一時人権蹂躪問題になりまして、私が質問したことがあり、その後やめましたが、相当長い間、一箇月の長きにわたつて足どめを食らつて調べられた。非常に困つた人がずいぶん出ました。呼びに行くのは地元のおまわりさんで、連れて来るところは東京の援護庁の部屋なんです。そこからアメリカ軍に引渡された。あなた方はそういう片棒をかついでおつた。そういう前例があるのです。そこから考えますると、援護局はこの引揚者に対して、これが国内に散らばつてしまえばわけがわからなくなるから、まず船にいるうちにその言動に注意して、いわゆる反動と思われる人たちをつかまえて、向うのことを根掘り葉掘り聞こうとする。あなたは今反動的なものを対象としてという言葉に対して妙な説明をなさつて、ちよつと笑い声が出たようで、あるが、非常識な御解釈である。先方から話に来られたような、主として反動的な者を対象として、そして業務協力者になつてくれ、こういうのです。そうすると、反動的な者は業務協力者だし、進歩的な者は援護局の敵だ、こういうふうにとれる。そうすると、これはどうもはなはだ穏やかじやないということは、常識ある者はわかることです。今までのやり方、それからこの手紙の文句、これを冷静に判断してごらんなさい。今あなたが説明したようにはとれない。これは占領政策の延長としてたくみに引揚者の中に入つて、一部の人間を協力者としていろんな事情を引出そうとしたのではないか、そういう疑いを持つことは、援護局の過去の実績に徴して当然のことなんです。かようなことは中国と日本の国交上、ことに向うが好意を持つて今日本に働きかけている際に、何人に依頼を受けるのか知らぬが、そういうひそかなる行動までして、向うの実情を調査する必要はない。これはあなた方御存じでありましよう。今台湾海峡風雲ただならぬものがある。そしてアメリカとソ連方面、あるいは中国方面のスパイ戦は熾烈をきわめ、昔の上海が東京に移つていまして、スパイと賭博と淫売の巣になつてしまつた。そういうところに日本の位置があるのでありまして、私どもは日本の東京を上海のようにしたくない。ところがその片棒を、当局がになつておるということになると容易ならぬことであります。  私はアメリカに対してもソ連に対しても、日本の官憲は中立を守るべきものだと思うのでありますが、ことにこういう風雲ただならざるときに、みずからかような危険なことをおやりになるということはまことに遺憾しごくであるが、今の御答弁ではさような考えはないということであります。  なお最後お尋ねしますが、この中国側から受けた疑惑に対し、政府並びに援護局はどういうふうな釈明の方法を尽されたか、もう一ぺんそれを御説明願いたい。
  50. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 お答えいたします。中国側に対しましては別段釈明はいたしておりません。問題はないという回答があつたわけでありますので釈明いたしておりません。なお厚生省といたしましては多数に上る未帰還者の中で状況不明者が大部分を占めておるわけでありまして、留守家族はその都度期待を持つて舞鶴に参りまして、何らかの消息、手がかりを必死に求めておるような状況でありますので、帰つて来た方々から、できるだけ未帰還者の消息を明らかにするということについて、一生懸命努めております。その点については引揚者の方々も十分御協力下さるということを期待いたしまして、それは先ほどのお話にありましたような反動的であるとか、進歩的であるにかかわらず、すべての人々に対して、そういうことを求めております。今後もその力針で進むつもりでございまして、その点、われわれの方でやつております調査は、思想調査、軍事調査と直接何らの関係もないことを申し添えておきます。
  51. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 引揚者の状態を知るならば何も反動者だけに協力を求めなくとも、進歩的な分子ならなお詳細に言うだろうと思う。それをわざわざ反動者とここに書いてあるところが問題なのでありまして、あなたの釈明だけでは私も釈然といたしませんが、ただ今後こういう誤解を受けるようなことをなさらぬように強く要望いたしておきます。これ以上あなたを責めてみてもしかたがない。吉田内閣全体がそういうのかもしれませんから、それはいたしかたがないのでありますが、さようなことは国交上実に私どもは悔いを千載に残すことになります。  大体私の質問はこれだけで終つておきますが、最後にちよつと警察庁長官警視総監に一言申しますると、どうも皆さんを御非難するような質問ばかりやつて心苦しいのでありますが、最近警察関係でおやりになつております暴力団狩り、ヒロポン製造の摘発、これは実に私ども心から警察関係の方に感謝いたしております。両警察首脳のほんとうに大きな手柄だと思います。つまらない赤化思想などというものを追いかけておいでになるよりも、これこそ警察本来の任務だと思いますので、どうぞこの点はいかなる圧迫にも屈せず、徹底的にこの根源を突きとめていただきたい。私ども法務委員会といたしましても、何か御協力申し上げることがあるならば、喜んで御協力を申し上げねばならぬと覚悟をきめておりますがゆえに、これにつきましてはいろいろと、ことに右翼団体からはいろいろの政治的圧迫があるかもしれませんが、これは万人が心から決裁を叫び、また警察をほんとうに信頼して来るようになりますのは、この点からでありますから、ヒロポンの退治と暴力団の徹底的撲滅、これを強く要望するとともに、今までの活動に対しましてこれは私個人でありますが、深甚なる敬意を表します。これで終ります。
  52. 林信雄

    ○林(信)委員長代理 それでは暫時休憩いたします。    午後一時十一分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十八分開議
  53. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。労働委員会より交通輸送犯罪に関する件について、本委員会と連合審査会を開会いたしたい旨の申入れを受けておりますから、本日は委員会はこれにて散会し、ただちに右連合審査会を開会することといたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決しました。  それではただいまより連合審査会を開会することとし、法務委員全はこれにて散会いたします。    午後二時三十九分散会