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1954-09-10 第19回国会 参議院 労働委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月十日(金曜日)    午前十一時十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君    委員            早川 愼一君            阿具根 登君            吉田 法晴君            赤松 常子君            石川 清一君            大山 郁夫君            市川 房枝君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    調達庁長官   福島愼太郎君    経済審議政務次    官       森田 豊壽君    経済審議庁次長 石原 武夫君    労働省労政局長 中西  実君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (駐留軍労務者の労働問題に関する  件)  (新経済政策に関する件)  (新労働政策に関する件) ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) じや速記を始めて下さい。  間もなくこの問題、駐留軍労務者の問題について関心を持つておられ、特に今度の発言の用意のあることを通告せられておりました吉田委員もお出になることと思いますが、その前に、その後の駐留軍労務者の問題がどういう工合になつておるか、経過についてお話を頂きたいと思います。特にこの前は退職金の問題が保留のままになつておりますから、これに対する経過見通し等について特に明確にせられたいと思います。
  4. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 先般当委員会で御報告申上げました以後の情勢につきまして報告申上げたいと思います。  現在駐留軍労務者の問題と一口に申しますわけでありますが、これには大体二つの大きな非常に重要な問題が絡んでいるわけでございます。一つは御承知の通り米軍計画を持つておりまするところの大量の人員整理の時期がそろそろ近付いて来ておりまして、その最初の整理者がこれはまあ北海道で出て来るわけでありますが、九月の十四日には出て来るという関係、もう一つは、それに関連はいたしまするが、そういう大量人員整理を前にして組合側から提案されておりますところの特別退職手当制度をこの際新設せよという要求がどういうふうに処理されつつあるか、この二つの問題であろうかと思うのであります。人員整理の点につきましては、先般の際にもいろいろ申上げたわけでありますが、これは繰返しますとアメリカ側陸軍予算日本における陸軍予算が二五%の削減、本会計年度において二五%の削減に伴いまして、日本人労務関係においても若干の予算削減をせねばならん。従つて人員整理を必要とするという事態に立ち至つたわけでありまして、二五%と申しますことは、陸軍関係人員が十一万何千という数になつておりますわけでありますから、二五%そのままであれば二万八千人程度整理が必要ということになるわけであります。そこに人員整理ではありますけれども北海道から撤退するという問題が別にあります。又そのほかにも予算関係を伴わなくても、従来から過剰の人員を擁しておつた施設そのものが廃止されるとか、そういうところがありまして、これらの整理と絡み合つているわけでありますが、併しまあ予算節約額を弾きますという見地からいたしますると、北海道撤退とかほかの理由で整理するものであつても、予算節約には当然貢献するわけにはなりますので、予算節約からの関係から出て来てない、ほかの関係から出て来ている整理でありますけれども、これが当然二万八千のうちの部分を占めることになるわけであります。二万八千という数字は単純に二五%ということで申上げたわけでありますが、実際には予算削減額を呈示しまして、各部隊からそれだけの予算削減をするためにどれだけの人員節約をしなければならないかということで集まりました数字は二万五千、二万五千までは本当のところは参らないのでありますが、大事をとりまして二万五千ぐらいの数まで行けばいいということになつておりますので、二万五千人が減れば、予算節約の目的を達するものであれば、北海道からほかの事情によつて既定計画として減る人員、その他過剰人員として減る人員その他を控除いたしました残りをどうするかということになるわけでありまして、北海道関係が四千三百人、その他の過剰人員既定計画として出て参りましたものが二千くらいございますから、これらを差引きました残りの一万数千の問題を予算上のいろいろ工夫をして、節約額との関係において人員整理のほうを減らして参ろうという努力をいたしておるわけでありまして、現在までの段階では、今申上げました北海道撤退とかその他の既定計画に基く整理通告をいたしました。これが大体六千数百というところまで来ておりまして、それからその後予算上のいろいろな問題を解決して、最終的に一万九千になるか、一万七千になるかということがきまつておらないので、残り予算節約に伴う人員整理ができないわけでありますが、併し零になるわけではないわけでありますから、その二万五千と初めに計画いたしました半数までは全般的な調整が済まないうちなら人員整理の決定をし、通知をしても差支えないのみならず、きまつたものは早くやつたほうが予算節約の効果はあるわけでありますので、この九月の十五日頃までには一万二千程度人員整理通告はするということになつております。通告いたしましてから四十五日目に整理になるわけであります。従いましてこれから半数済んだ残りの一万一、二千について自然減員による数を控除するとか、予算を工夫して人員整理を減らすとかいう作業にかかるわけでありまして、一万二千ぐらいまでは北海道の分を含めてどの道整理しなければならないということが確定しておるのが現在の状態であります。今後残つた一万二千数百について、これを七千で食いとめるか八千で食いとめるかということになるわけであります。台計いたしますと北海道の分その他も含めまして二万名を若干越す程度の大量な人員整理があるであろうということは事実になるわけでございます。これらは十一月の十五日までには完了するであろうと考えております。十一月の十五日までに完了するであろうと申上げました意味は、九月の十五日までに申上げましたその第二段の処置までいたします。十五日以後に残つた数についての調整をしまして、月末までに結論を出す、月末までに結論を出して、日本側にその通知をして来れば四十五日目に解雇になる。従つて十一月の十五日までには完了するであろうと、こういうことになるわけであります。  この解雇に関連いたしまして、組合の要望しておりました特別退職手当の問題が早急に解決されなければならないという事態に立ち至つたわけであります。特別退職手当の問題と申しまするのは、組合口駐留軍労務者公務員待遇との関係において駐留軍労務者の現在の待遇というものは、その後ベース・アツプその他は重ねて参つたわけでありますが、待遇制度の基本は昭和二十三年にきめたものであるわけであります。その当時駐留軍労務者勤務の性格が公務員のような永続的なものでないということ、又勤務公務員よりも激しいのではないかということ、それらの点を考慮して、公務員制度を若干上廻る点にきまつたわけです。資金ベースにおいても、公務員の現在の賃金ベースは一万五千円、駐留軍労務者のべースは一万八千円、かように決定したわけであります。退職金制度公務員制度を若干上廻る占にきまつたわけであります。そこで組合側要求というものの根拠は、二十三年に駐留軍労務者特殊性を考慮して公務員より或る程度上廻るという原則が承認され、従つてきまつた。その後公務員退職制度行政整理に際しては八割増、若しくは待命制度、そういうような改訂が加えられたわけであつて、現在公務員制度駐留軍労務者が追い越されたというわけではないかも知れ、ないが、併し曾つてこしらえた差が縮まつてしまつたのであるから、それを元通りの差に回復しなければならないという議論から出発して特別退職手当という制度が提案されたわけであろうと考えておりますが、そういう意味の問題があるわけであります。ところがそれを我々が聞き取りまして、アメリカ側との交渉をいたしておるわけでありますが、組合要求するような八割増の特別退職手当というものはなかなか簡単には軍の承服するところにもなりませんし、又我々自身といたしましても、なにがしかの調整は必要であろうと考えておりますけれども昭和二十三年当時の公務員駐留軍労務者との待遇の差というものが一応承認された原則であるとするならば、それに戻すために八割の増加が必要であるかどうかということについて数学的に立証することができないという見解をとらざるを得ませんので、これは我々としても相当美瑛に困難があろうかと考えております。軍との交渉上これ以外調達庁と申しますか、日本政府と申しますか組合を離れて、我々独自がこれを批判する場合にどういうことになるかという点に主眼をおきましていわゆる調達庁案をこしらえて軍との折衝を続けておるわけであります。問題の根本は、公務員行政整理に伴う退職手当を改善いたしました際に表向きは八割増ということが言われておることは事実でありますが、実際には恩給の控除とかその他の関係もありまして、現実に殖やしたのは二割しか殖やしておらない。従つて曾つての中が二割程度つて来たということは言えても、八割縮つておるからということは言えないというわけであります。それからアメリカ側の理論といたしましては、二十三年に公務員駐留軍労務者との間の中を設けたことは事実であり、その原則は承認するのであるが、そうして又その後公務員側退職金に関連する制度変つて状況に変化を来たしたということも事実であるけれども、同時に又駐留軍労務者側においても、それ以前においては対象になつていなかつた失業保険給付対象というような措置も昭和二十七年に至つて入るようになつたのであつて駐留軍労務者状況も変つた両方変つたのであるから、一方が二割程度殖えたからといつてそれで差が縮まつたということは言えない。比較さるべき両方が変化したのであるから、その差が曾つて差通りになつておらないといういわれはない。むしろ曾つての差より開いておるくらいだという議論になつて来ているわけであります。我々といたしましては今日まで組合との交渉も重ね、組合の八割増という案は絶対動かせない性質のものであるか、これが通らなければ他のものも容認しない案であるかどうか、それから又八割増というものが若し絶対に動せないものとすれば、その数字的根拠はどうかという点について折衝を重ね、一方軍に対しましては、失業保険給付というのものは退職金に算入すべきものではない。アメリカにおいてはそうであろうけれども日本においては環境が違うのであるということで議論を重ね今日米に至つておるわけであります。今日なお結論が出ていないと一応申上げざるを得ないと思いますが、本日もここへ参りますまで、最後という意味ではありませんが、ストライキをやつたからといつて交渉を打切るというような根性は持つておりません。最後とは思つておりませんけれども、その以前における最後交渉もいたしたわけであります。軍側組合の八割増案というものを容認することができないという態度を変えておらない。又我々の取上げておりますところの失業保険給付という問題を退職金に算入すべきでないという議論に対しましても、昨晩あたりは多少の希望も持つてつたのでありますが、なお実は昨晩のところでは、態度がこれを容認する時期に達しておらないという状況になつておりまして、この問題につきましては、本日組合ストライキ前の一応の同等をすることになつておりますけれども組合側の満足するような回答現実のところできない状態にあるということを申上げなければならないと思う次第であります。  一応の状況はさような次第でありまして、なお申し残している点もあろうかと存じますけれども、御指摘に従いまして申上げることにいたします。
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そういたしますと今のままで行きますと、駐留軍労務者話合いがつかないで、結局ストライキに自動的に入つて行くというとになりますか。
  6. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 只今のままでございますと、駐留寅労務者は八割増という案を固執しておる。そこでこれでなくて、その何分の一かで、半分で折れるとか、三分の一で折れるのだという話が出て参りませんと、アメリカ側との話は私はできなかろうと考えております。
  7. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 米軍のほうは駐留軍労務者組合話合いをつけてストライキを回避したいというようなそういうような意向は出ておりませんか。
  8. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 昨晩までそういうことで私どもアメリカ側を説いたわけでありまして、ストライキを「されてしまつたのではお話にならない。アメリカ側も硬化するであろうし、組合口側も簡単に旗を巻くわけに行かないであろうし、ストライキ以前において具体的な線が出ないならば、抽象的な問題についてでも成る程度の線を相互で承認することができないかということで努力したのでありますが、昨晩私は家に帰つて寝ましたときには、大体そこまで来たという心証を得て帰つて、今朝こちらに伺うことにもなつておりましたので、それ以前に相当な縦をつかんで伺えると実は考えておりまして、その線で本日の組合に対する回答等も用意し、文書等も用意して参つたのでありますが、今朝になりましてもアメリカ側態度というものは、一応組合が折れる形勢を示してない以上は本日は断るという態度で臨みたいということに変つて来ておるわけであります。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 この問題はそういうふうに不幸にしてストライキまで発展したような場合に、解決なさる方法というのは何か手があるのですか、日本の国がやるということになるのですか、斡旋、調停方法は何か開かれているのですか。
  10. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 駐留軍労務者と申しますのは公務員でございませんので、従いまして労働三法に従う通常労務関係ということになりますから、通常調停制度、中労委その他の関係は適用できるということになつておるのであります。従いまして従来からこの関係をそういう調停関係にお願いしたこともあるのであります。ただそれは日本法律上の雇用主たる日本政府労務者との間の関係になりまして、アメリカ側が聞かなければどうにもならないという結果になりますので、形式はともかくとして、実質的にはその調停関係制度というものの実効は余り期待し得ないのじやないか。ただまあそういう調停関係制度によつてアメリカ側に何と申しますか、社会的な圧力をかけるということは考えられ得ると思います。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 これは雇用関係政府となつておるわけですね、そうすればアメリカのほうがどうしても組合要求に対して要求を容れることができない、こういつた場合に、政府はただアメリカ側組合要求を容れないから仕方ないのだ、こういうような態度でおつていいかどうか、その点も少し詳しく説明を願いたいと思うのですが……。
  12. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) この点がかなり重要な問題なわけなんでございますが、曾つて駐留軍労務者公務員特別職という建前平和回復まで処理して来た時代があるのです。この形でおりますれば、政府責任というものはかなり明確になつていたと思うのです。その後講和回復以後、組合側主張もありまして、公務員特別職関係を捨てて純然たる私契約関係ということになりまして、従つて適用する法律労働三法ということになつたわけであります。スト権その他も出て参つて来たわけであります。それでいわゆる労務基本契約なるものも、これも米国軍日本政府との間の公の関係ではなくて、私法上の契約ということになつておるわけです。これが各労務者米軍との間の契約のいわゆるマスター・コントラクトで代表契約になつているわけです。従いまして飽くまでアメリカ側から金を受取つて、これを取次いで払うという契約建前になつておりますので、現在のままではアメリカが払わなければ政府側に……、その契約アメリカが履行しなければ政府責任は出て来ると思いますが、その契約以外の金について政府責任というものは、政府が払うという建前にはなつておらないし、なつておらないがなるようにしたらどうかという考え方が出て来るかと思いますが、こうなりますと政府の金で、政府一般予算の中から給料を払うという関係になりますと、その身分関係は当然に公務員との関係という面を生ずるであろうし、賃金ベースにおいても公務員以上のベースというものが承認されるかどうか。ストライキその他の労働条件について公務員の持つている以上の条件というものを今日のように承認されるかどうかといつたような問題を捲き起しますので、政府予算によつて賃金を受取るという面は、それらの点についてよいと覚悟があれば取上げることのできない問題ではないと思いますけれども、今日まで、私も本当を申上げますと駐留軍労務関係は新らしいのでございますが、今日まで七、八年の間駐留軍労務の流れて来た流れから申しますと、政府関係を離れて私法上の労務契約関係従つてスト権もある。従つて賃金ベースも違う、こういう考え方で流れて来たと考えております。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ長官のお考えを聞いておりますと、二十三年に一般公務員よりも優遇するようにしたのだ。それでまあ一般公務員並みに八割増の特別退職金要求することは少し無理だ。なお米軍のほうでは失業保険にも入つたので差は大きくなつているのじやないか。それで組合のほうの言うのが少し無理じやないか、こういうようなお考えを持つておられるようでありますが、そうですが。
  14. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 組合側は結局これは初めからそういう考えを持つてつたということにいたしてもいいのですが、極く最近の主張といたしましては、現在の退職金制度を改革しろという議論ではないのだ、米軍がぽつぽつ引揚げるという時期が近付いて来たので、一朝にして今までの勤務関係がなくなるという時期にも際会したのであるから、通常退職手当制度以外に特別退職手当というものを新設してプラスしろ、今までのものが公務員に比較して少いから公務員並みにしてくれとか、そういう議論ではないのであります。御苦労賃が欲しいのだ、こういう議論変つて来たと言つては怒るかも知れませんが、最近ではそういう言い方のほうが強くなつているわけでありまして、恐らく組合側としても公務員並みにしろという議論だけでは説明がつかないというふうには自覚しておられるだろうと思うのです。
  15. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私この問題は長官の大体整理してお話し願つた通りだと思うのです、実情としましては。併し駐留軍労務者そのもののことを考えてやりますと、とにかくああいう特殊な職場で十年近い間働いていたことは事実なんです。而もその間においては日本人日本人同士労使関係を作るのと違いまして、精神的にもいろいろな苦痛もあつたろうと思うのです。そこで今そういう労務に従事しながら、突然集団的に二万人とか或いは三万人に近い人が整理されているということは、或る意味においては日本占領行政を円滑にやり得るための犠牲者であつた言つても過言でないと思うのです。  そういう人が生じたことになるわけであるから、特別な金を欲しいという要求ですね、私は総額の問題は別といたしまして、考え方としては自然に出て来る無理のないものじやないかと思うのです。これを米軍がみるか日本政府がみるか。もらうほうはどちらからもらつてもかまわないものでしようが、そういう特別退職金という思想ですね、これを何とか取上げてやるという方法はないものでしようかね。あなたがおつし、やつたような非常に真正面から行きますと公務員扱いになるのか、こういうことになつて来ますけれども、そういう恰好でなくて、駐留軍労務者が十年間働いた特殊な、これは前代未聞の労務関係ですね、そういうものの終始符を打つ場合に対して何かみてやれないものか、こういう考え方というものは起きないものでしようか。
  16. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 日本政府として何とかするという考え方からしますと、現在の情勢日本政府の費用を出すということは、私どものレベルでは容易に考えられないことなんでございますが、同時に又おつしやるようなことはアメリカ側でもわからなければならん筋合いではあると思うんです。  そこで私ども組合にお願いしておりますのは、これは八割増案というのは、何もそれは頭から理窟がないとか何だとかということを言つているわけではないが、それがまあ通らないということを考えざるを得ない情勢であるとすれば、それから又何もこの交渉も、組合も直接米軍とも交渉し、いろいろ努力もしているわけであるけれども、私もその一端をかつてアメリカにぶつかつているわけなんで、その際にまあ額は別として、何とかしないかということで、アメリカ最後努力ができるような地位に私は置いてくれないか。組合が八割以外は何物も容認しないということであつては、私はこれができなければ調達庁長官は勤まらないと考えているくらいなんですが、それにしてもまあ本当意味での私の考えというものをアメリカ側に、その価値について評価さしたことが実はないのであります。組合は八割増を言つている、調達庁は別な案を考えてはいる。軍としては、調達庁案を呑めば組合ストをやらないか、それは今のところではやると言つているわけです。ですから私ども考えていることは、調達庁案というものを申上げれば、調達庁案の威力は乏しいわけであります、ですから組合のほうが、額はこだわらないが、それはこだわらないと言つても、一遍に我々の案を承認するとかどうとかということにはなりますまいが、額は相談に乗るけれども、それで不服ならば最後ストということになるかも知れませんが、それは別として、とにかく制度の改革という意味で何とかでつち上げてくれないかということでありますれば、軍に、組合案調達庁案とが二つつて組合案というのは容認できないんだが、調達庁案ということを若し認めれば組合ストはやらないのかと言うたときに、それはどうもわからない、恐らくやるでしよう、それじやお前損じやないか、両方とも拒否したところでストをする。調達庁案を呑みますと今度は軍としては五億角余計かかる。五億の散財をするという約束をしてもストをする、馬鹿馬鹿しいから両方断わるというようなことに私どもの案が会つているわけであります。私どもとしては一つそういう面の、卑近な言葉で申しますれば組合・案のあおりを食わない状況において、調達庁案一つのメリットとして軍とぶつかつてみたい、そういう状況をこしらえてくれんかということを頼んでいるわけであります。そういたしませんと、調達庁案軍自体としては容認されておりませんが、それ自身裸でぶつかつてつたことはないというわけなんであります。
  17. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 調達庁の案というのはまだ全然公表されておりませんか。
  18. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 公表はしていると思います。組合の諸君には全部知らせてあるわけでございます。調達庁案というものを一応御説明申上げましようか……。調達庁案と申しますのはこういうことなんです。退職手当制度というのは、一年の人に何割とか、カーブで申しますと、こういうふうに一応のカーブができているわけでありますが、それに公務員制度と並行したカーブができるわけですが、公務員制度がどう変つたかと申しますと、実質的にはそれは二割程度ちよつと動いたということが言えるわけですが、そのほかに最低保障制度というものができたわけであります。これは二十九年でございます。今年の制度、それで四年以下のものは比例してしないで、一審最低の保障は例えば二・七カ月分とか、そういう保障ができて来たわけです。一年のものは三・六カ月とか、従つて下へ厚くなつて来ている。そこで駐留軍労務者公務員との斜度そのものの幅は議論しないで、公務員制度というものは最低保障という変つた制度を入れたために、カーブの書き方が下べ来てこうなるようなカーブになる。駐留軍もそれを採用しなければいかんじやないかということで、駐留軍労務者に対しても公務員の最低保障という案を入れて案を提示しているわけであります。そういたしますと、組合の言う八割増案調達庁の案とは最低のところで、つまり四年以下では大体同じ線になるわけであります。むしろ半年とか一年とかいう点になりますと調達庁案のほうが率はいい、いいんですが、四年以上になりますと全然いじくつてない。ですから元の通り。私どもの一応の理窟としては、四年以上は元通りでも、併し公務員より相当多いということがわかつているからまあいいじやないか、それが一つと、それから現在は平和条約のときに一応雇用関係を清算いたしましたので、駐留軍労務者というものは二年半以上の人は一人もいない。ですから四年以下の退職金制度を改革すれば、これに該当しないという人は一人もおらんじやないか。九月の十三日にはもう北海道で首が出るというので急ぐんだが、そこのところで問に合うじやないか。六年、七年の人の制度はちつとも改良しておらんけれども、我々も、制度は改良したわ、該当者は一人もいないわというのは第一身が入らんし、そういう話を持つて来ているからアメリカとの話が非常にむずかしくなる。該当者のいないのにむずかしい話を持出して、先方が御破算というよりも、むずかしいところは幸いにして該当者はいないんだからまあ放つておこうじやないか、あとでやろうじやないかということになるわけでして、調達庁案組合案とは、最低保障という意味におきまして、四年以下の分については金額においてさしたる逕庭はないということは組合側でも了承しておりますが、古い者について、五年、六年、七年、八年という者については何ら顧慮していないという点で叱られているわけであります。ただ交渉上そういうことのほうが私どもは当面の問題は解決できるし、当面といつても明日から駄目だというならばこれは何ですが、一年半はもつじやないか。それからもう一つは、駐留軍労務者というものは二年半じやなくて、本当は七年半くらいになるけれども、講和発効のときに元はといえば組合要求であつたもののそのときに退職金は一遍支払つた。併し今日の者は年限が短い。七年勤めた者は退職金五年と二年と分けて清算をして、トータルは損になることはわかつている。だから損になつているので、あんなことを要求して、七年半で清算をしたから何も問題はないじやないか、その点にちよつと弱点があるのですけれどもね。
  19. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと私わからない点は、そうしますと大部分の者は二年半以下である、殆んど大部分だとおつしやるんですが、そうすると二年半以上、もつと言いますれば四年以上の者、そういう者は現実にあるにはあるんですか。
  20. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 一人もおりません。全然おらない。
  21. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますと、組合のほうが七年間の長期のものまで認めているのに、講和発効を境にして一応退職金について、身分関係において満算されたと政府なり米軍考えている。組合のほうでは、退職については占領中からずつと通算しろ、こういう意思なんですか。
  22. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) そういう意思は全然ありません。むしろその点につきましてはアメリカのほうが文句を言つているわけでして、二年半前に清算したときに清算したんだから、それから新規採用になるので、給与なんかも元に戻るべきだと言うんです。定期昇給で積上げて来たその金額というものは元へ戻らずじまいであるわけです。退職金は清算しちやつた、昇給で積上げて来た金額はそのままということは、むしろ組合に有利に解決したじやないかという点も一つある。
  23. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それからもう一つストライキに入る時日ですが、調達庁のほうでいつという工合にお考えになつておりますか。
  24. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 十三日の月曜日の午前六時からという通告を受けております。
  25. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) この十三日の午前六時までには、殆んど交渉らしい交渉といいますか、問題の解決点を見出し得るような交渉というものは、大体もうないと見なければなりませんか。
  26. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 私どもは八日にその通告をもらいましてから十三日まで努力するつもりで、昨日も、又本日もやつてつたわけでありますけれども、ここへ来まして、金曜、土曜、日曜ということもございますが、十三日まででは、只今までの線以上の線が出て、組合との間にストを延期というような見込は、そういう線で更に組合お話はいたしたいと考えておりますけれども、むずかしいのではないかという気持を持つております。  私は組合に対しましては、これは組合としては言えないかも知れないが、私自身は仮に八割でなくても七割だ、六割だ、五割だという話もあるのだし、それが一割になつて組合も承知できないだろう、二割か三割というところでとどまるということもあるし、まあ八割という線にこだわらないで何ができるかという交渉最後までやつて行きたい。アメリカのほうも、これは普通の人間でもそうでありましようが、それでなくてもそれ以上に軍人だつたり、又わけがわからなかつたりする関係もあつてストライキを食わしてしまえげ更に話がむずかしくなるということも考慮されるので、私の立場として組合ストライキをやめてくれとか何とかいうそういう権限もなければ、又必要もないことであるけれども本当に私が手を挙げて、どうにもならんというふうに、それも一月待ての、半月待てのというわけには、行かないが、四日、五日、六日でももう一応の努力をさせてもらいたい。それには表向きに八割でやるのじやないのだということを言つたのでは工合が悪いかも知れないが、八割の問題にも含まれ、又調達庁案にも含まれている原則、例えば失業保険給付などは退職金に算入すべきでない。算入すべしというアメリカ議論に対して我々は算入すべきでないということで闘つておる。これは八割のためとか何とかいうことでやつているのではない。私どもはここで組合の諸君に面と向つては悪いかも知れないが、組合案のためではなくて、調達庁案のために頑張つているつもりだけれども、それを組合の諸君が組合案のために頑張つていると解釈してもいい。その原則さえ一応通してしまえば、それに基いて更に八割の案をあとで頑張つて来てもかまわない。そういつたような両者に共通した、少くとも調達庁案の持つている内容を成立させるために必要な原則上の交渉というものをもう十日間やつてみたいと言つたところで、それは組合にも事情があつてできないだろう。私としてはこの金曜、土曜だけでもう万事休したというのではちよつと良心が誉めるので、少くとももう三日か四日やつてみたいという心境にあるわけです。そういうことを組合がやらしてくれるだろうかということを今日会つて頼んでみたいと思つております。
  27. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうすると調達庁案で実施をするとすれば、失業保険金は枠の外に出るという一応仮定の下に考えますと、二年以下の者は勿論、四年以下の者は全部ひとしい、そういう考えに立つて、而も調達庁案でも、総額の話でしようが、組合の八割要求と大体同じだ、こういうことになりますと、組合案調達庁案との間で話合いといいますか、了解がつかない最も大きな要点はどういう点で話がつかないのですか。
  28. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 組合のほうはこれは飽くまで八割で……、これはまあそう言つては悪いかも知れませんが、一応表向きかも知れないが、調達庁でもう一案出せということを言つている。現在の調達庁案でなくて、更に歩み寄つたもう一案を、はつきり言つているわけではないのですが、そういうふうに私どもは了解している。そこで我々としては調達庁案ですら軍が呑む、又呑ませ得るという確信が、今の失業保険関係その他でまだ議論が済んでいない。我々が当面軍と議論しているのは、調達庁案の持つている数字について議論しているのではない。その基礎をなす失業保険給付はどう考えるべきか、公務員待命制度はどの程度の範囲で考えるべきであるか。公務員は恩給をもらつているのに対して組合員は恩給がないのだからその差というものはどう考えるべきか、そういう議論をしているわけです。そういう議論が一々勝負が付いて行きますと、従つてそこで数学的に調達庁の線がきまるから、或いは組合の人にしたら組合の線をそのときになつて主張してもいいと思います。そういうことになろうと思います。従つて抽象的な線で議論をしているわけで、軍に数字的な解釈を与えずに原則を確立したいということでやつておりますので、今軍との関係その他において調達庁案程度が卒業した上でなら組合との関係もあつて一遍は調達庁案は上げるが、併し軍が呑まない先から調達庁案を上げるということはどうか。それよりも組合のほうは苦しかろうけれども、三割、四割まで下げられたのでは整理が付かないが、少くとも八割でなくても、八割という数字には固執しないが、できるだけ近くとか何とかいうことは言えないかということが我々の組合に対する要求なんです。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると八割ということはもうとても軍は了解はしない。それで組合のほうが八割の線を引込めてそうしてそのまま任してくれんか、こういう考えだということになれば、交渉は軍と交渉ということでなく、調達庁組合口交渉になつているわけなんですね。
  30. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) そういうことでございます。組合のほうが八割という線はまあとにかく一応引込めてくれんか、軍との話は私どもに任してくれないか、その上で話をして来た案が二割だつたらそのときに、君二割だから駄目だということを言つて来てもそれは我々仕方がない、三割だから駄目と言われても仕方がない、五割だから呑んでやれと言われれば結構だ、別に八割は固執しないが、あとはどういう話が付くかやつて見てくれないかということで、きまつたことは必ず呑まなければならんということを言つているわけじやない。いずれにしてもそういう努力をして見なければ、軍としては今日の事態において八割は断わるということはぴつた言つているわけでございます。軍は今日それを発表するだろうと思います。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると組合組合のまあ考え方、或いはいろいろな面を検討してこの当面の八割ということを決定として要求をしているけれども、その当面の日本側責任者としての調達庁長官は、すでにそれは無理であろう、こういう結論を下している、こういうことになるわけなんですね。
  32. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) その通りでございます。
  33. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると軍も調達庁もまあ組合に対してこの要求は容れられない、こういうふうな形に私はなつていると思うのですが、そうなんだとすれば、これは組合員として非常に私は不幸なことになりはしないかと思つているんです。この問題についてそれは調達庁でもその仲介の見込のないものをあつちべ持つてつて向うに叩かれて来る、できなかつたというような子供のお使というようなことはできない、これもわかるけれども組合言つている叫びを、当初から見通しを持たれてそうして組合員の八割というのは多過ぎるんだ、こういう見解であつたとするならば、組合は非常に調達庁を信頼していることは私は知つております。併し私は組合員にこの信頼をなくするような結果になつて来て、この争議を激化させるようなことになりはしないか、こういう心配をするんですね。極端に申上げますれば調達庁もこの組合の気持、或いは今まで努力して来た、そうして軍が引揚げるからこそ止むを得ず彼らは失業して行くんです。その失業に対して反対しているわけじやないのです。失業はいたします。併し我々にこれだけのものを出してくれ、ほかのところであつたならば失業はしないんだ、首切り応対だという闘争をやるのが組合なんです。それを我々は仕方がないから失業いたしましよう、その代りにこれぐらいのことはしてくれというこういう叫びだと私は思つておりますから、それについてはやはり調達庁としてもその線によつて十分軍とも交渉してみた、来たのだ、こういう立場に立つてそうして組合に対しても今まで来た仕れども、どうしてもこれは拙いんだというような話がなされて然るべきじやないか。それを当初からそれは八割というのはとても軍も呑むまい、又君たちの、要求も無理だということになつて来れば、先ほど申しましたように却つて組合は引込みが付かないようになるといいますか、当初の考え方をそのまま進めて激化して行く、こういう結果にならないかと思いますが、その点をどういうようにお考えになりますか。
  34. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) その点につきましてはまあ私も第一労務関係の専門でもございませんし、調達庁関係も暫しいといういろいろな点で私の至らない点が多いのだと思うのです。併しながら組合の八割増案というものについては、まあ私自身がどうしても納得できないという点がありまするし、又軍のこれを断わつておる理由についてもこれは又私としても非常な不満を持つているわけで、理論上根拠が少いと考えざるを得ない点が多いわけでありまして、両方にまあ実を言うと不満を持つておるわけであります。或いは見通しの過りであつたとも言えないかも知れませんが、八割が動かせないということに、この土壇場まで来て八割が動かせないということにこれほど困難があるということはちよつと想像がつかなかつたわけなんであります。一応の組合の八割増案を構成しておりますところの理由その他から考えて来まして、これはまあ理由さえ承認されれば、数字上の問題は八割を仔細に検討した結果七割五分になつたところで、甚だしきは五割になつたところで、数字が動いたら承知せんという筋合いのものではないということで出発しておつた点に私自身の間違いがあつたかも知れないのです。まあ非常な困難に逢着したということで、まあ組合に対してもその点は端的に申しますれば私のほうが悪かつたかも知れませんが、大きく不満は持つているし、又軍に対しては私としては組合とは又違つた意味でそれ以上の不満を持つている、こういうことを告白せざるを得ないのであります。
  35. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は長官の意見を頭から何でもかんでも否定するという意味言つておるわけじやないのです。ただ首切られて行く人の気持、組合の立場から考えた場合に、最初からハンデイーが付いておる。いわゆる長官自体が最初からそれは無理だという考えがあるならば、軍のほうは当然出さんということは、これはもう最初からわかり切つておる。長官も反対している、調達庁も反対している、これに対して軍が出すという気振りを見せることは、これはあり得ないと思う。そういう場合に調達庁のほうが、我々が八割で交渉するというような腹がまえがあつた場合、こういうことがある前にですよ、そういう場合にあつて組合としても考え方も私は生まれて来ると思うのですけれども、当初から組合組合全般から気持を聞いて決定した問題で、それを調達庁自体が交渉以前にそういう結論を出されるということは、もうすでに相手側に対して軍配を上げられるという形になつて来るわけです。そうしてそれは又組合交渉したあとで、例えば八割ができなかつた、これだけやつたけれどもできなかつたということになれば、組合としてでもやはりそれは考え方も起ると思いますけれども、当初から私が申しておりますように非常に組合というものはもう進むより以外に途がない、こういうところに組合自体が追い込まれて来た、こういうような非常な心配を持つておるわけです。これに対して八割できるとかできんということは抜きにして、組合がこれだけの気持を持つておるということについて八割で皆さんと一緒に交渉しましよう、こういう気持はないのですか。
  36. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 組合の申しております八割案というものを調達庁が取次いで軍と交渉したことが全然ないということではないのです。これは今年の初めですか、二月頃にもともとこの退職規程と申しますものは労務基本契約の中に当然入つておるわけなのです。それの附属書三の中に入つておるわけです。それで附属書三の交渉というものは御承知の通り去年の秋以来やつておるわけです。その道程におきましては八割増案ということで、組合の案を一応調達庁も採用しまして軍と交渉して来たわけです。で、それが軍が承認いたしませんので長引いて夏近くまでかかつて来たわけです。そこへ例の大量整理或いは北海道引揚という問題が起つて来ましたので、それまでの経過に徴しまして、八割増案をやつてつたんでは、これは到底間に合うはずがないという結論に達しましたので、その基本契約における附属書三の中における条文はそのままといたしまして、その経過状態のままとしておきまして、将来における基本契約交渉状況はそのままに寝かしておいて、現行の基本契約の一部を暫定的に現在の調達庁の案のように改訂したらどうかという別途の交渉を開始したわけなんです。これには新墓本契約ができるまでの暫定契約ということをはつきり頭から謳つており、暫定的にやる、その趣旨において調達庁案というものの立場もあるというふうに、これは組合の諸君も暫定契約という意味でやることに同意をしてくれておるんですが、そういう経過を辿りましたもので、八割増案なるものも、これは今日の退職手当問題を討議しておる状況と違いまして、半年前にやつたと申しましても、毎日毎日やつたわけではないのでございまして、半年もやりましたと簡単に申上げることは語弊があると思いますけれども、半年間やつてつたことはこれ又事実なんです。
  37. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  38. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。
  39. 赤松常子

    ○赤松常子君 退職金制度がございますとおつしやいましたが、その割合はどれくらいになりますか。それと八前とはそう開きがあるんでございますか、どうでございますか。
  40. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 駐留軍労務者の退職規程を詳細に、又私簡単に御説明する能力もございませんのですが、現在の過職規程は使用者側の、つまり米軍の都合によつて退職いたします場合には、本人が自己の意思で退職するものの一〇〇%増、倍という制度はあるわけでございます。それを具体的に申上げますと、現在どういう比較の仕方をいたしますか、この比較の仕方になかなか問題があるのでございますが、例えば簡単な比較を申上げますと、国家公務員賃金ベースは一万五千円、駐留軍労務者賃金ベースは二万八千円ということから、一万五千円と一万八千円を一応基礎といたしまして比較いたしますと、六カ月在勤して自己の意思にあらずして整理された国家公務員の場合には、六カ月在職者は四万五百円、現行の駐留軍労務者は二万七千円、それから組合要求する場合は八割増によりますと四万八千六百円、それから調達庁案主張しております最低保障という金額になりますと六百万六千六百円ということになります。それから一年のものになりますと、国家公務員は五万四千円である。駐留軍労務者は三万六千円である。組合要求は六万四千円である。調達庁要求しておるのは八万二千円であります。それから、この辺から少し変つて来るのです。二年になりますと国家公務員は六万七十五百円である。現行の駐留軍労務者は六万一十二百円であります。組合要求駐留軍労務者は十一万百六十円、調達庁考えておりますのは九万九千円であります。三年になりますと国家公務員は八万一千円である。現行の駐留軍労務者は八万二千八百円、組合考えております駐留軍労務者は十四万九十四十円、調達庁考えておりますのは十一万五千二百円ということでございます。いずれにいたしましても現行の国家公務員退職金よりは、まあ当面の問題が三年という人はおりませんので三年以下だけ申上げたわけでありますが、三年以下におきましては現行の国家公務質より二年以下の人は少い。二年の人は国家公務員が六万七千円に対して現行の駐留軍労務者は六万一千円である。一年の人は国家公務員が五万四千円であるに対して片方は三万六千円である。こういうことなのでありますが、ここにアメリカの申しております失業保険給付というものが入りますと、全然様相が変つて来るということ、国家公務員は恩給はあるかも知れんが、失業保険給付は一番低い人に差額がもらえるだけで、一応失業保険の給付の対象にはならないということを言つていいわけなんです。駐留軍労務者失業保険の給付はまるまる対象になる。二万八千円を駐留軍賃金ベースといたしますれば、その六割の六カ月分がもらえるという規則でありますから、駐留軍労務者は各人が六万四千円ずつはこれ以外に権利があるということ、従いましてとれをとりましても現行の制度で、例えば一番短いものは国家公務員は四万五百円でありますが、この人は失業保険との差額をもらえるわけでありまして五万四千円までは権利があることになります。駐留軍労務者のほうは二万七千円という人はそのほかに六万四千円というものを考えられるわけでありますので、九万一千円になるということで、失業保険給付の問題の所在如何によりまして、現在の公務員制度と、それから駐留軍労務者の退職の制度の比較が全然様相が変つて来るということになるわけでございます。
  41. 赤松常子

    ○赤松常子君 今御説明を伺いましたのですが、それの適用者の数が問題になると思うのでございますが、トータルはどうなるのでございますか。
  42. 福島愼太郎

    説明員福島愼太郎君) 適用者のトータルこいうことになりますと、現在いわゆる駐留軍労務者と申しますのは、米軍関係のは十七万五千くらいでございます。それに国連軍関係が一万二、三千・一万三千円と申上げていいと思いますがございます。国連軍関係も当然米軍関係のシステムに均霑いたしますので十九万五千と考えてよろしいかと思いますが、十九万五千ほどおるわけでございますが、現在適用されるということになりますと、当面の整理の目標が最大限度二万五千人でございますので、二万五千人の人がこれの適用の対象になるということが言えるわけでございます。その場合に行政整理の場合には指名解雇ではございません。従いまして勤務年限の順序によりまして勤務年限の少い者から整理して行くこいうことになります。従いまして私どもの申しております最低を保障するということは、六カ月とか一年とかやるのは又はんの僅かなんだから、それよりはやはり五年、六年のほうが大事だという議論も一方においてありますけれども、この勤務年限の短い者が二万五千人おる。勤務年限の順に逆から取ることになりますと必ずかかるというカテゴリーに入りますと、私どもの申しておる最低補償もまんざら意味はないことはないというふうに考えておるわけでございます。
  43. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) これは問題点はこういうことだと思いますが、違いますかね。組合のほうがどうしても八〇%を譲らないという意味は、今ここで駐留軍労務者が全員解雇になつてしまえば十七万名、そうすればやはりいろいろな物の考え方があろうと思います。ところがまだ今すぐ全員解雇にならない。これから何年続くかわからない。こういうときにはやはり基本的な退職金制度というものはやはり確立しておかなければならない。こういう考え方一つ出ておると思います。それから福島長官のほうはそのことはおわかりに勿論なると思いますけれども、当面の二万五千名をどうして円満にやめさせるかということのほうが重点になつて来る、こういう工合に私は考えるわけです。そこに少し話合いのつかないようなところがあるような気がするのですね。速記をやめて。    〔速記中止
  44. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  十二時過ぎましたので、これで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩    —————・—————    午後一時五十九分開会
  45. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 委員会を画開いたします。  当委員会はもう六月以来、政府のデフレ政策を批判いたしますと共に新経済政策或いは又失業対策等につきまして、政府の答弁を尊重しながら、早くその具体案の発表について期待をいたしておりました。ところがまだ政府から正式な御回答を頂く段階に至つていないようでありますが、本日は経済審議庁からその政策の大綱につきまして説明を煩わすことになつております。従つて先ず最初に経済審議庁の森田政務次官から最初に概括的な御説明を頂きまして、それから石原次長の説明を伺うことにいたします。
  46. 森田豊壽

    説明員(森田豊壽君) 経済新政策の概略を御説明申上げます。  先ず最初に経済新政策樹立の前提につきまして申上げたいと思うのでございます。  昨年末以来実施して参りました緊縮政策は、物価の引下げ、国際収支好転の面に見られるごとく漸次効果を現わして来ているのでありまするが、他面それによる企みも次第に現われて参つているのであります。従つて今後は総合的な施策を講ずる必要があると考えられるのであります。  次に国際情勢についてこれを見ますると、平和的機運の回復に伴いまして各国間の貿易競争はますます熾烈の度を加えようとしており、而も英国或いは西独等におきましては近く通貨の自由交換制を回復しようという情勢にあるのでございます。このような国際環境におきまして、いわゆる底の浅い経済基盤に立つておりまする我が国が、諸外国との競争に伍しまして国際収支の均衡を川復して行くためには、一日も早く経済体制を整備充実しなければならないと思うのでございます。以上のような観点からいたしまして、この際新たな経済政策を展開する必要があると考えるのでございます。  次にこの経済新政策の目標について申上げて見ますると、先ず第一の目標は、できるだけ早期に正常貿易による国際収支の均衡を回復することであります。これがためには輸出の増大、輸入の抑制が必要であることは勿論でございまするが、又これが実現を容易ならしむるためには、我が国におきまする物価の国際的割高を是正しなければならないと思うのであります。従つて第一点の輸出の埴大のためには、輸出目標制の採用並びに輸出産業の優遇、更に商社の統合強化、経済外交の推進等の措置を講じて参りたいと考えているのでございます。第二点の輸入の抑制につきましては、三十年度以降の当面の輸入規模を本年度並みといたしまして、原材料等については重点主義をとると共に、他面食糧並びに合成繊維等の自給度の向上、或いは貯蓄奨励等によりまする消費抑制等の措置を講じて参りたいと考えているのであります。第三点といたしまして、只今申上げましたことに関連する産業につきましては、一層投資の重点化並びに効率化を図つて行くと共に、基礎産業等につきましては外資の効率的な導入を図つて参りたいと考えているのであります。第四点の物価につきましては、統合的物価政策を確立し、公共料金並びに特定物資の価格を中心といたしまして低物価の維持、価格の安定を図つて行きたいと考えているのであります。  次に第一の目標につきまして申上げますると、差当り正常貿易によりまする国際収支の均衡が不可能でありまする現状に鑑みまして、過渡的なものといたしまして特需の計画的確保を図ることであります。  第三の目標は、我が国産業の基礎を強化することであります。これがためには、再評価の促進並びに社内留保の増大等によりまする資本蓄積の促進、更に生産集中、財政投融資の重点化、効率化等の措置を講ずる必要があると考えられるのであります。  第四の目標について申上げますると、適切な雇用対策を講ずることによりまして、社会不安の除去に努めることであります。このためには失業対策並びに中小企業対策に十分なる配意を行なつて参りたいと考えているのであります。  次に経済新政策の基調について申上げたいと思うのであります。本政策は、政府及び国民全体の総意によりまして実行されなければ成果を期しがたい関係上、到達目標及び手段を明確に示すことが肝要だと思うのであります。又本政策を実行する上におきまして所要の範囲におきまして経済に計画性を賦与する必要があると考えるのであります。例えば輸出目標制度の採用並びに輸入節約目標の策定、或いは主要産業別生産目標の設定、更に産業に対する投融資の計画化、食糧増産の計画的推進及び外航船の計画的建造、防衛産業の計画的整備育成等がこれであります。更に本政策遂行のため、必要な場合におきましては臨時的に一定期問を限り法的処置を講ずることも考慮したいと考えるのであります。  例えば税法について申上げて見ますると、輸出振興のため、輸出所得に対する課税を経減し、企業の社内留保の増加並びに資本蓄積のために資産再評価の促進或いは貸倒準備金制度の拡大、償却に対しまする特別措置、更に交際費課税の拡張、預金利子等に対しまする非課税措置等を行い、中小企業の育成のため、中小企業に対する税負担の合理化を図り、消費抑制のため贅沢品等に対しまする間接税の引上げを行い、失業対策費の不足を補うため、要すれば既存税目の税率の引上げ、又は目的税を新設する等の自的のため法人税法、所得税法、その他関係税法に所要の改正を加え、輸出組合を強化する等のため輸出入取引法に所要の改正を加え、低物価の維持及び価格の安定を期する目的上、公共料金等の一元的決定を行い得るようにするために、価格関係法規に所要の改正を加えるほか、法的措置を行いたいのであります。中小企業の保護育成のため、中小企業協同組合法と中小企業安定法との調整を行い、又中小企業信用保険法を改正して同制度の拡充を図るほか、小売業者保護の見地から百貨店法を制定する等の措置を講じたいと考えておる次第でございます。
  47. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) 只今政務次官からこれの概略大綱について説明がございましたので、あと具体的なことにつきましてできるだけ簡単に主な点について御説明を付加させて頂きたいと存じます。  その前に一言お断り申上げておきたいのですが、以下御説明いたしますような具体的な対策につきましては、実は政府部内におきましても勿論関係各省がおありになるわけで、その辺の意見の調整をまだいたしておりませんので、一応経済審議庁として考えております程度を本日お手許に資料として差上げてございますので、いずれ政府としてきめます際には関係のそれぞれの専門のところとも御相談することに相なろうかと思いますので、従つて政府としては或る程度これと違うような具体的な対策ということに相なるかも知れません。ただ先ほど政務次官がお述べになりました大綱につきましては少くとも経済審議庁としてはこういうふうに考えておるというふうに御了解願つて差支えないと考えております。以下十数項目について分れて書いてございますので、一つ一つ朗読するような説明は余り時間を要するかと思いますので、成るべく簡単に御説明をいたしたいと思います。  第一は輸出振興対策でございますが、これは先ほど政務次官がお話になりましたように、今後の政策が経営的な正常貿易による均衡回復ということにございますので、最も力を入れて考えなければならん問題だというふうに考えております。それでその一つといたしまして三十二年度までに一応現在のところでは十七億四千万ドルという数字が出ております。これはまだ多少検討の余地を残しておりますので、多少変るかも知れませんが、一応さような目標を三十二年度に立てまして、輸出目標制度を採用する、これは余り詳しい説明をするのは時間がかかりますので如何かと思いますので、簡単にお話いたしまするが、実は通産省が中心になりまして、各商品ごとに、市場別に現在の見通しから言つてこの程度輸出を増加し得るだろう、勿論それに必要な対策は併せ講ずるというのが前提でございますが、成るべく実現性のある案にしたいということで、各商品別に、市場別に検討して作つたものでございます。一応三十二年度までに十七億四千万ドルという数字になつております。これはこの数字が大きいとか小さいとか、いろいろ批判はあるようでございますが、当初はもう少し大きな数字を目標として輸出の増進を図りたいという気持もございましたが、具体的に作業をいたしてみますると、一番問題になりますのは、東南地域が日本としては最も重要な輸出市場でございます。従いましてさような方面につきましてはこの計画に織り込んでおります数字よりももう少し大きい数字の輸出が可能であろうかというふうにも算定できますが、相手国の輸入力と申しますか、或いは我が国と当該相手国との貿易のバランスというようなものを考えますと、なかなか当該相手国の輸入力が少いというようなことから東南アジアに対する輸出というものを或る程度控え目にいたしましたので、さような点が大きく響きまして、一応十七億四千万ドルとなつております。一応これを政府として目標をきめまして、今後輸出の政府としての対策を立てる一つの目標にし、又民間としてもそれぞれそれを目標にして輸出の増進を図つて行く、かように考えるのであります。  あとここに書いてございますのは、海外の輸入原料を特に確保するとか、輸出金融の問題、或いは先ほど御説明申しましたように輸出所得に対します現在でも或る程度の優遇措置を講じておりますが、更にこれを強化するというような点、或いは商品別に輸出組合を作る、或いは輸出入取引法を改正いたしまして、輸出の面におきましてはもう少し強い協定ができ、而もアウト・サイダーも必要によればこの協定に縛り得るような措置を講ずるというようなことで輸出の促進を図つて行きたいというふうに考えております。更に経済外交推進につきましては、これは特に御説明申上げるまでもございませんが、すでに現在におきましてもまだ日本が不当なと申しますか、非常に不利な関税の取扱いを受けているところもございますし、今後東南アジアとの経済協力というようなことで経済的に進めて参ります上におきましても、これは外交的に更に措置を要する点が多々あるわけでございまして、又中南米等の新市場の開拓につきましても同様の問題があろうかと思います。  次に輸入の抑制対策でございますが、これはやはり今後できるだけ正常貿易によります国際収支のバランスを回復するということになりますと、どうしても輸出がそれほど伸びませんので、やはり輸入の枠にどうしても限度がございます。現在考えておりますのは、大体本年度並み、本年度は二十億ドルぐらいの輸入ということに一応限度として考えておりますが、多少の数字は将来のことでございますので、動くかと思いますが、これが大幅に増加するというようなことは不可能であろうと思いますので、従つて輸入は或る程度本年実行しておりますように不急不要品等を中心にできるだけ抑制をして行きたいということで今後計画をいたす考えでございます。  それに関連いたしまして自給度の向上ということによりまして輸入の節約を図るという問題が当然あると思います。それが三番目に「国内自給度の向上」と書いてございまして、第一は食糧の増産でございます。これはすでに現在におきましても相当量の輸入をいたしておりますが、約年々百万殖える人口の増加によりまして、当然食糧の増加輸入が必要になるわけでございますが、その面をできるだけ国内の食糧増産によりまして、少くとも人口増加による程度の食糧は国内で増産を図りたいというふうに考えております。ただ又食糧の増産の計画はいろいろ農林省等に案があり、すでに発表になつておられる点もございますが、現在のような財政の状況でその計画はなかなか実行が困難でございますので、果して食糧がどの程度国内で三十二年度までに増産するかということは、財政の面もございましてまだ未定でございますが、先ほど申上げました輸出目標を十七億四千にいたしまして、輸入二十億というようなことを考えておりました際には、大体外貨としては現行の輸入所要資金の範囲内ぐらいに一応収めたい、こういうことでございます。量的には多少まだ国内の増産で全部カバーできるかどうかについては検討の余地があると思いますが、御承知のように食糧は最近国際的に非常な過剰になつており、価格も相当下落の傾向に現在もございます。なお今後も多少下落をするのではないかと予想されます。併し或いは将来におきましては食生活の改善というようなことも考えられる余地があるかと思いますので、さような面で輸入食糧の外貨総額としては三十三年度におきましても大体この程度にいたして行きたいというふうに考えておりますが、さような意味で食糧の是非国内で増産に努めて行きたい。  それから今国で非常に繊維原料の輸入が非常に大きなウエートを占めておりますが、それをできるだけ節減いたしますために、羊毛なり綿花なりの代替といたしまして合成繊維の増産を図つて行きたい。これはアセテートと称するものを含んでおりますが、これで一応現在考えておりますのは三十二年度におきまして合成繊維のアセテートを含めまして一億ポンド、これを今の棉花代用に一部代替になりますので、それを一応の推算をいたしますと約五千万ドル弱という数字になります。五千万ドルちよつと切れるかと思いますが、それぐらいの数字の繊維輸入原料の節約ができるということで計画を進めております。なお今申しましたのに関連いたしまして、かような合成繊維を国内で増産いたしまして、それによつて内需を主として賄つて参りますためには、やはりかような新規産業の需要と申しますか、それの安定した需要を確保するという必要が是非あろうと思いますので、将来は、或いは場合によりまして混紡というようなことを或る程度何らかの方法で強制して行く必要があろうかというふうにも考えております。これは今直ちに強制するというほどでもないと思いますが、現在の生産数量はさように大きくございませんので、ただ非常に大きくなりました際にいろいろな関係で、繊維等は個人の趣味もございますので、果してそういうものがそれだけ簡単に国内で需要されるかという点は多少の私としては不安もございますので、さような際には将来輸入原料の混紡というようなことも相当考えて行かないと、なかなか国内の急速な増産が困難であるというふうに考えております。  その他輸入外貨の節約ということで、一つは外航船舶、これは相当大きな金額に達します。これは今後どの程度の外航船舶を毎年建造して行くかにつきましてはまだ確定的に政府としてはきまつておりませんが、仮に毎年二十万トンくらいずつ外航船舶を作つて行くといたしますると、一年に二十万トンできますと、外貨の節約額と申しますか、或いは手取額と申しますか、千五百万ドルくらいに相成るのでございます。従つて三十二年までやりますと、これも約五万ドル近くの節約ということに相成ろうかと思います。  そのほか国産機械或いは自動車等の工業の国内産業の育成を図つて、現在相当これらの輸入をいたしておりますが、さようなものを国産に振り替えて行きたいというふうに考えております。  なお新らしい技術をできるだけ国内で奨励し、起しまして、それによつて或いは或るものについては輸出の増進に役立てる、或るものについては国内自給度の向上に資したいというふうに考えております。  それから四番目が産業基盤の強化策でございまするが、これは今後輸出を伸ばしますためには、日本経済全体の健全な発達を図りますためにも、どうしても現在の国内産業の基盤を強化いたしまして、製品コストの低下、或いは品質の向上を図りまして輸出力を増進する必要があろうと思います。さような観点からいたしまして、第一には資本蓄積の増進、これは先ほど御説明ありましたような再評価の問題、或いは企業の内部留保の問題等について税法上の特段の措置を講じたいというふうに考えております。それから二番目に企業をそれぞれ強化いたしまして又この合理化を促進いたしますために、生産をできるだけ量産化する必要があろうと思いますので、これは製品をそれぞれ専門的な生産に移すとか、或いは企業の統合が必要であれば統合を促進するというようなことで、できるだけさような面からのコストの引下げも考えたいというふうに考えております。それからその次に三番目に、何分さような合理化をいたしますためには相当の設備に資金を投ずる必要がございまするが、今の緊縮的な財政経済政策の中ではさようなものを調達いたしますにはどうしても重点的に必要な部面に資金を流すという措置を講ずる必要があろうと思いますので、財政の投融資につきしては今後さような重点的な効率化を図つて行きたい、かように考えております。又資金の質的、統制と申しまするか、重点化と申しまするか、さようなことをいたしますにつきましても或る程度の将来の見通しということは必要であろうと思いますので、主要産業別に生産の目標を作りまして、資金の質的な調整、外貨の割当等についての基準にいたして参りたいというふうに考えております。それからなお国際的な観点から見まして、製品の過当な騰落によつて輸出が阻害されるということもままございますので、かような過当な競争の防止につきましては、先ほどもちよつと触れましたように、輸出組合法等の改正或いはその他の措置でそれの防止対策をとつて参りたいというふうに考えております。一々申上げると時間を要しまするので、若し後ほど御質問があればその際に補足してお答えさして頂くことにして、主な点だけについて、各項目について御説明さして頂きたいと思います。  従つて、五番目の財政投融資の問題でございますが、財政投融資につきましても今後重点的に考えまして、第一に輸出の振興或いは自給度の向上のために必要な資金、中小企業の関係の資金、或いは輸出入銀行の資金を先ず優先的に確保するようにいたしたいと考えますし、財政投融資に当りましても、今後それによる効果が十分把握し、実現するようなことも一つ考えて行きたいと思います。それと共に資金の量に制限がございますので、不必要と申しますか、不急の面については徹底的に抑制をいたしまして、重点的に、国全体から見まして資金効率のいい面に資金を流して行きたい。これにつきまして必要があれば何らかの、ここには「投資調整委員会」と書いてありますが、何かかような資金の調整委員会的な組織を設けまして今まで非難もございましたが、単なる資金の量的規制でなくて質的規制を加味して今後の資金に対する計画をやつて参りたいというふうに考えます。その次は金利でございますが、金利は御承知のように国際的に比べて高く、まあこれはいろいろ比較によりまし逢いますが、倍くらいの金利であるということは御承知の通りであります。これは金融機関の合理化ということにも関連いたしますが、我々といたしましては漸次金利も一つ引下げて参りたいというふうに考えます。その他償却等については先ほど触れましたが、我々といたしましては中小企業の租税負担は現在のところ実際上は大企業に比べまして高いのではないかというふうに感じておりますが、これは財政全般の問題もありますので、如何なる案が可能か、なお今後検討をしなければなりませんが、考え方といたしましては、この面についてはもう少し税制についても改正をいたす必要があろうというふうに考えます。  それから次に六番目の物価の対策でございますが、これは緊縮政策を実行して参ります上に総合的な物価の対策が必要であろうと思いますので、第一には公共料金を中心にいたしまして、何かかようなものについて一元的に取扱い得るようにいたしたらどうかという点を今検討中でございます。それからなお物価の問題の中に今後の見通しから申上げますると、やはり或る程度でこぼこができる、輸入が或る程度制約がございますために、輸入原料の中で或いは物によつては値下りを予想されるというふうなものもございましようし、或いは中には国産的な商品でありましても割高と申しますか、非常に高い価格が維持されるというような問題も起るかと思います。これは現在でも国産品についてもすでに御承知のようにセメントにつきましては非常に高い価格が維持されるということで問題になつております。さような面も今後起るかと思いますが、これらにつきましても何か指示価格を作る、或いは勧告等を考え、何らかの一つ措置を考える必要があるのじやなかろうかというふうに考えます。  それからその次に書いてございますが、二番目に書いてございます物価の問題と関連して我々の考え方といたしましては、経済の建直しをいたします間につきましては、物価も一般的に下がることがございます。給与についてはできるだけ建前としては従来のように非常に大幅に引上げるということは一つ下げるように何らか考えたいというふうに考えます。これは別に我々のほうも何か法令でも考えるとかいうようなことは全く考えておりませんが、具体的な施策の方向としてはできるだけ暫らくの間そうした方向にすべての点が向けられるように考えておりますし、なお争議等につきましても現在のような段階では非常に労使の間に意見が合わずに長い間争議の状況が続きますことは、労使双方とも非常な痛手に相成ろうかと思いますので、又国としても損失になるかと思いますので、何らかの、さような場合に第三者が入つた形で早く合理的な解決がつくような方法もこの際考えたらどうかというふうに考えておるわけであります。  それから七番目が失業対策であります。これは現在緊縮政策を実行して参りまして、或る程度物価が下つたというような面もございますが、失業の問題は漸次問題化しておると考えております。これらにつきましては現在労働省でいろいろ御心配になりまして、公共事業につきましての吸収でございますとか、或いは現在すでに既定の予算の範囲内におきまして公共事業費等の、特に失業の状況の悪化しております地域に対しまして、何らかの繰上げ措置を講ずるというような方針で具体的に今御検討を願つておりまするが、特にさような点につきましては、例えば炭鉱地帯でありますとか造船地帯でありますとか、機業地帯でありますとか、相当失業者が集団的に発生しておるというような点につきましては、特別の措置を考えなければならんと考えております。なお少し先の問題といたしましても、今後今のような政策がとられて行く上におきましては、相当失業の面或いは雇用の面につきまして十分な配慮をいたしませんと、そもそももとの基本の計画自身がその面から崩れて来るという御心配もあろうかと考えておりますので、来年度予算等におきましても十分それらの点は配意をする必要があろうかと考えております。さような場合に、できれば勿論全体の現在の財政の下において、その枠内において十分なかような措置が講ぜられることが望ましいと思いますが、非常にそれがむずかしい場合におきましては、一部増税してでもかような面に十分な配意をして然るべきだと、一応そういうふうに考えまして、いろいろその点は財政の問題でございまするので、検討する余地が多分にございまするが、さような問題も一つ問題として今検討いたしておるわけであります。  それからその次は消費の抑制対策でありまするが、これは御承知のようにこういうような政策を今とつておりまするが、それにいたしましても全体の購買力というのは余り落ちておらない。従つてどうしても今後この緊縮政策を効果あらしめるためには、消費の節約を図りまして、その貯蓄されました資金を経済全体が建直るような方向に使用させて行くということが是非必要だろうと思いまして、これは具体的な対策としては非常にむずかしい問題であろうかと思いまするが、何らか今後さような面に力を入れて案を考えて行きたいというふうに考えております。  それから九番目が中小企業の対策でございまするが、これは申すまでもなく、先ほどの失業、雇用の現象というような問題と関連いたしまして、今の政策がいわゆる中小企業のほうに非常にひどく影響を持つておりますことは事実だと思いますので、中小企業の対策につきましては更に今後も力を入れるべきだというふうに考えております。ここに書いてありますような対策を、これは特に新らしい問題でもございませんが、力を入れて促進をして行きたいというふうに考えております。  それから十番目が財政の関係でございまするが、これにつきましては三十年度以降の予算につきましても更に再検討をいたしまして、重点化を図りまして、均衡財政の線を崩さないようにして行きたいという方針でございます。これはあとの点につきましてはすでに申上げました点と重複いたしますので、省略さして頂きますが、失業対策等については所要の経費を充当するとか、なお国の財政の緊縮に伴つて地方財政についても同様に何らか今後措置が必要ではなかろうかというふうに考えております。  その次は十一が租税の対策でございまするが、これにつきましては先ほど政務次官からもお話がありましたし、各項目に殆んど触れておりますので一応御説明を省略さして頂きたいと思います。  十二が農業の対策でございまして、これは特段のあれがございませんが、先ほど申しましたように更に資金の効果的な活用を図りまして、食糧の増産に力を入れたいということと、なお食糧価格につきましても、物価全体の対策と調和のとれたような決定をして行きたいと思います。なお三番目にございますのは肥料でございますが、肥料につきましては、これは目下肥料審議会が審議中てございますので、考え方といたしましては、農産物価の安定というような点から、できるだけ低廉な価格で供給できるような措置を講じて参りたい、そういうふうに考えております。  十三は外資の導入でございまするが、国際収支の関係から申しましても、外資の導入に当つては、将来の負担にもなることでございまするので、できるだけ厳選をしなければならないと思いますが、一面現在非常に脆弱化している我が国の経済基盤を強化する意味、或いはコストの低減、品質の向上に役立つ点もございまするので、電力、石炭、鉄鋼、機械、その他につきまして、或いは農業等につきまして外資の導入を図りたい。これはすでに御承知のように世界銀行と、かようなものについて交渉が明衣開始されているような状況でございます。  それからその次の防衛産業でございますが、これは防衛力の漸増の方針に従つて防衛産業の整備をして行こうということでございますが、ややもすると非常に過剰な投資と申しまするか、非常に設備が余計できるというような心配もございますので、今後かような新らしい防衛産業が整備される際にはその辺の点は十分考慮をいたしまして適正規模で産業が起るというふうにいたしたいと思います。  以上一応概略でございます。
  48. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今一応説明を頂いたわけでありますが、これから主要なる点について質疑を行いたいと思います。  私、ちよつとこの政策をお聞きした中で気付いた点二、三お伺いしたいと思います。この政策を拝見していますと、政治的な質問を申上げたい点もありますが、今日は大臣もお見えになりませんので、その点はまあ省略いたします。併し過日発表されたあの政策等を見ましても、吉田総理大臣はこれは刻も早く、こういう政策の転換をやられるならば、国会を開いて国会に諮られるべきであるという考え方を私は申述べて置きたいと思います。  そこで物価の引下げの方法について経済審議庁はどうお考えになつているということを一点伺いたいのです。それは私が最近調べたところによりますと、大体我が国の経済状態は、いろいろなフアクターから調べましても、全部世界的には優位に立つていないわけでありますが、その中で非常に不幸な事柄だけは世界的に優位に立つております。例えば人口が多いとか、輸出が伸びないとか、いろいろな点は立つてると思いますが、そういうような優位に立つている中で経済問題を審議する場合は、是非とも考えなければならんと私が思つております点は、国民総所得のうちで金融或いはサービス業から出る所得の割合か世界で最高だということであります。大体私の持つている資料によりますと三六%、アメリカでも三五%、この三六%の生産以外の仕事によつて所得が上げられているということはですね、逆に言うと、人の作つた品物をあちこち動かすことによつてマージン稼ぎで上げている収入と極端に言えば表現できる。従つてそういうような産業構造を放置しておいて、まあ生産工場の窓口において物価を引下げても、賃金を抑えようと人員を減らそうと、こう考えましても、最終の消費者のところへはなかなか物価が下つて届かない、こういう工合に考えるのですが、その点一体どういうふうにお考えになるかということ。例えば一つの繊維或いはその他の主要な生活必需品を例にとつて考えになればわかりますが、生産工場の窓口と、小売店の店先とにおける値幅というものは戦争前の状態よりは遥かに大幅になつている。これは途中で幾つかの門をくぐるためにこういうふうな状態になつている。これも或る意味において浪費になつている。そういうものをもつと生産面へ移して行くようにして、そういう政策をとらなければ、物価は本当に下らないというふうに考えますが、この点をどういう工合にお考えになりますか。
  49. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) 只今の御質問は非常にむずかしい問題で、相当日本の経済のあり方の将来の根本に触れる問題だと思いますが、十分なお答えはできませんが、私限りの一応お答えをさして頂きます。  お話のように非常に中間の段階が多くて、従つて生産から消費の間におけるマージンと申しまするか、そこに或る程度の所得が生れて来るということは、そういう形であるということは、これは勿論望ましいことではないのでありますが、ただ現にどうしてさような形が日本の経済にとられているかということを考えて見ますれば、やはり今委員長からもお話がありましたように非常に過剰な人口がいる。それでそれがおのおの生活をして行かなくちやならん。従つて人口が非常に多くても、それに相応する生産が起り、従つてそこに生産部門に人口が吸収できさえすれば問題はないのでありますけれども、なかなか日本において、殊に終戦後いろいろな面で経済力は弱くなつておりまして、又御承知のように輸出は戦前に比較いたしましても非常に縮小しているというような現在の経済状況におきまして、生産を急速に伸ばすということにつきましても、内地の需要も、或いは海外の市場もないというようなことで、生産自体は現在或る程度の生産よりそう急速に増大をすることは不可能だ。従つて非常に過剰な人口がさような面に向けられて、そうして今お話のような非常に大きな高い比率を占めているというような形になつているだろうというふうに考えております。従つて根本的にはやはり今のような、かような面に相当あります人口を本当に生産の面に吸収して、漸次生産のほうの人口比率がもつと殖えて行くという形に持つて行かなければならんだろうと思いますが、そのためにはやはり日本の経済の生産を殖やして行くという必要があることは当然でありまして、そこで現在の、例えば昨年度につきましても、日本の一番の問題は、去年で見れば国際収支がああいうふうにバランスいたしませんで、三億ドル余の赤字になつているというようなことで、今後の我が国の生産なり、日本の経済をチエツクする最大のポイントは日本の輸入力だろう。これを従来の蓄積だけで食つて行くということは今後到底許されませんし、そうするとやはり将来日本の輸出、或いはその他を入れまして、輸入力によつてどうしても制約されるというふうに考えております。従つて輸入力を増大しないで、国内だけで非常に生産を殖やすということは、インフレーシヨンをやれば別ですが、なかなかそういうような方法はないので、まあ我々といたしましては非常に遠廻りだという御批判があると思いますが、やはり輸出を伸ばし、輸入力を殖やして生産を殖やして、さような面に過剰な人口を吸収して行く以外にはないのだ、そういうふうに考えております。
  50. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それからもう一つそれと関連しますが、最近私が物価の引下げの状況を見ておりますと、これは普通のレギユラーな経済活動の姿を出していないと思う節がありますので、その点についてのお尋ねをしたいと思います。デフレ政策を、金融の面で締めたために、要するに企業活動が不清澄になるのが出て来る。そうしてそこに失業者が出て来る。国民大衆の生活が圧迫をされて購買力が落ちて来る。こういう現象が出て生産は勢い縮小せざるを得ない。縮小主産過程に入りますというと生産の能率が下りますから、そこで下つておるということは、個々の生産される品物の単価は逆に土つておることになつておる。上つておるにもかかわらず物価が下るということは、これは止むを得ず公正な資本蓄積とか、資本活動ということを度外視して当面暮らして行くために止むを得ず資本が活動している、こういう工合に考える。従つてこれを極端に推して行きますというと、個々の企業の中では黒字経営からゼロ経営になり、更に赤字経営にどんどん入つて行く、これは不可避的に入つて行く。そうして赤字経営に入つていたのが維持できなくてどんどん倒れて行く。こういう現象が出て、従つて只今のデフレ経済というものが、経済政策の面で飽くまでも企業整理をやつて行く、系列整理をやつて行く、こういうお考えの下に組まれているのか。今のままで行けば私はそうなると思う。或いはそうでなくて、各企業を一応生産活動の保障をしながら公正な意味の拡大再生産の恰好で物価を引下げて、そうして経済活動を維持して行くという工合に考えられておるのか、この点の考え方が大分物価の引下げ論について違つておるように思いますので、その点を一つつて置きたいと思います。  実は過日大蔵大臣がこの委員会で答弁をせられたときには実に楽観的な答弁をやつて帰られた。大蔵大臣にお尋ねしようと思つておりましたけれども、時間がなくてそのままに今日までなつております。今の質問をもう一遍私申上げますと今のような経済政策で物価の引下げをやつて行けば、これは相当な企業、今、生産面に更に人口を吸収するような政策をとらなければいけない、こういう工合におつしやつた。おつしやつたのですが、それも理論的には正しいことだと思いますけれども、それが逆に生産面からますます人が離れて行つて、そしてサービス面へ移つて行く。そうして好ましくない現象がとかく経済面に出て来る。私はその矛盾を感じておるわけでありますが、どうお考えですか。
  51. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) 只今の御質問は誠に御尤もでございますし、又今後の、今やつております緊縮政策なり今後の経済政策の根本に触れる問題だろうと思いますので、或いはこれは大臣からお答えを願わなければならん問題かと思いますが、或いは適当な機会に大臣がお見えになりましたら大臣から一つお聞き取り願うほうが或いは適当かと思いますが、それで今、日本の経済は、我々のほうで出しております白書にも書いてございますが、昨年度は非常に生産にしても雇用にしても、雇用は率としては少いのでございますが、いろんな生産活動その他非常に殖えて参りましたのですが、その尻が、殆んど物価がそれほど上つて行くといういわゆる価格インフレーシヨンではないと私は思います。物価は僅か数パーセントしか土つておりませんが、その尻が殆んど貿易赤字ということにしわ寄せされておつたのだろうと思います。それで国際価格に比較いたしましても現在非常に割高だということは事実でございます。昨年のような政策が継続できないことは、日本の外貨保有状況、その他輸入力の面から見て当然な帰結で、どうしてもさようなわけには参りません。そうして日本の経済の生きる途といたしましては、非常に資源も乏しいし、やはり貿易に相当の依存度が高いと存じますので、どうしても日本の経済を長い目で発展さして行くためには、輸出を伸ばして、それによつて輸入力を殖やし、生産活動を殖やして行くという方法が残されている唯一の途ではないかというふうに考えているのでございます。それで現在といたしましてはそのような面で日本が貿易で立つて行くためには、やはり日本の産業なり或いは製品のコストをできるだけ国際的な水準にまで持つて行くということがどうしても必要であろうと思います。さような方向でないと日本の自立経済ということは考えられないのではないかということで、差し当り日本の経済の正常化を図らなければならんという趣旨で、今の緊縮政策をやつておるのです。ところが今お話のように、緊縮政策をいたしますると、現に倒産であるとか失業でありますとか、さような面が非常に出て来ておりますと共に、お話のように縮小過程にございます。現に生産はまあ非常に落ちておるということでもございませんが、指数で見ますれば、本来三月一七二まで上つておりましたものが現在一六一ぐらいということでございますし、年間を通じますとほぼ昨年と同じくらいかと思いますが、やはり一番活動の活発であつたときに比べますれば生産は縮小すると我々は一応予想をいたしております。従つてお話のように生産活動が縮小をいたし、縮小生産ということになれば、それによるコスト高があるのじやないか。従つて今の物価政策と矛盾するのじやないかということは一応尤もでございまするが、我々といたしましては、一応非常にふくれ上つた経済を正常化する過程におきまして或る程度の犠牲が出ることは止むを得ない。企業の中には必ずしもみんな健全な経営の企業ばかりということでもございません吊れ一部不健全な企業がその影響を受けるということはこれは止むを得んじやないかというふうに考えております。ただその出て参りました犠牲については、これは何らかの措置を講じて参らなければならんことは、これは当然でございまするが、産業全体といたしましては、或る程度この際健全化をし、そこを再出発点にいたしまして、国際的にも競争力があるということで拡大生産に持つて行こうというふうに考えておるわけです。  ただ今のデフレ政策にいたしましても、或いはそれの政策の程度と申しまするか、進度如何によりましては、本来健全であるべき企業も巻き添えを食つてこの際倒れてしまうという危険も勿論ないわけではございませんので、若しさようなことになりますると、これが非常に大きく波及いたしますると、経済全体の大きく言えば混乱と申しまするか、或いはそこまで行かなくても、本来健全であるべき企業までこの際巻添えを食い、つぶれてしまうということでは甚だ面白くないことでございますので、その辺の兼合と申しまするか、という点は非常にむずかしいと思いますが、概括的に申しますれば、一応緊縮政策によりまして企業の健全化を図り、そうしてその上に更に輸出を伸ばして拡大生産べ持つて行きたいというのが今の考えでございます。
  52. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そこでですね。大体わかりましたが、然らば今生産活動を活発にし、そうしてそこに相当な人口を吸収して行こうと思いますと、やはり輸出は勿論その中に入るわけでありますが、購買力というものをやはり政策的に圧迫するにも限度というものがなければいかんと思うのですね。購買力を極端に抑えてしまつたのでは企業は発達できなくなりますから、従つて購買力をどの程度に抑えるのですか、その基準をどの程度考えるか、それを伺いたい。  僕としては今のようにどんどん失業者を作つて、或いは労働者の生活を圧迫して、最低生活を脅やかすところまでも購買力の圧迫をするということは行き過ぎではないか。やはり国内の購買力というものを、贅沢になつちやいけませんけれども、或る基準に、やはり最低生活を切らない程度の基準に抑えて行く。そうして経済活動というものをやつて行かなければ、国の内外の市場がうんと弱くなつてしまつて、共倒れになる虞れがありはしないか、こういう工合になる。  ところが最近の経済活動を見ておりますと、先ず日本で一流だと言われるような大メーカーでも、おやりになつていることは何かというと、海外の技術と提携をして日本の経済では到底受入れのできないような贅沢品の輸入、製造販売と、そういうようなことに狂奔されておつて、そうして地道な生産というものはなかなかやらない。先ずテレビジヨンだとか、そういうものにいたしましても、よく売れますからこれは作る。最近の電気洗濯機の製造台数を御覧になつてもわかる。又製品を無理に売り込んでいる。非常に激甚な競争をして売り込んでおる。こういうことを一方に放任しておいて、そうして大衆生活の圧迫のほうはどんどんやつて行く。こういうことではなかなかうまく行かないと思いますので、従つてデフレ政策をやり、国民に耐乏を強要して来ますが、その強要して行く限度、いわゆる国民の最低生活を切るような強要というものはしないという政策でなければいけないと思いますが、そういう点はどういうふうに考えておりますか。
  53. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) 勿論今お話のありましたように国民の最低生活を切るような耐乏生活ということはこれはどう考えましてもさような実行をすることはなかなかむずかしい、できないことじやないかというように考えますので、私も別に最低生活を切るような耐乏生活というようなことは考えておらないのであります。今購買力のお話がございましたが、これは個々について見ますると、それぞれいろいろ勿論問題があるわけでありますが、極く概括的に申しますと、我々の感じでは、今緊縮政策で物価も一部下つておりますが、購買力全体というものは割合に高いのじやないか、これは実は昭和の初めにありましたときのデフレの際には物価は割合急速に各方面殆んど全部に亙つてつております。従つて購買力も減るというような形で、あの当時は全くの自由経済と申しますか、もうあらゆる面に割合急速に、でこぼこなしに下つております。ところが現状においてはむしろデフレ政策は或る方面にしわが寄つて、必ずしも平均的に今の影響が現われていない。そこに私は問題があると思う。全体の購買力としてもむしろ割合減らないで、従つて物価の引下げ政策自身が、購買力がもう少し落ちないとうまく実行ができるかどうかということを実は心配しておるわけです。  我々としては先ほどもちよつと申しましたように現在のいろいろな情勢下に賃金を現在より積極的に引下げるというような政策はなかなかとれるものではないと思いますし、又農産物の価格にいたしましても、これを現在の価格よりも更に相当下げるということの政策も又これもとれないと思います。従いましてできるだけ所得の中から貯蓄をしてもらつて、消費の節約を図つて貯蓄をし、それを更に重要な方面に振り向けるというような、考え方としては考えざるを得ないのじやないか。購買力が非常に急速に下るということは実際問題としてはなくてむしろ国民全体の購買力は割合にあるのじやないか。それが全部発動しますと、先ほど申しましたように輸入を二十億ドル程度に抑えるということでございますと、需給の関係から申しましていつかは物価は反騰しはしないかというような虞れをむしろ抱いておる次第であります。全般的にはむしろ所得が偏在化して、すぐ購買力になることを、できるだけ消費の節約を願つて貯蓄に廻して行くような考え方をいたしたい、そういうように考えておりまする  ただ今お話のありましたように個々の場合につきまするといろいろ影響は異つておるわけであります。さような面につきましては今後のデフレ政策の政策自身も、今までのような主として財政金融の引締めという一本槍で行くことについては問題があろうかと思いますので、さようなしわが寄つて来る、或いは価格が引下がり過ぎる。例えばよく問題になります繊維製品等は最近少し反騰して来ておるようでありますが、一時国際価格を下廻つてしまつた日本としては非常に大事な輸出品について今の緊縮政策の結果国際価格よりも下廻る。元来の目的から申しますれば国際価格よりも下ればそれ以上下げる必要は輸出品についてはないわけであります。さような点もありましてそれぞれ違つたそれぞれの具体的な面を考えまして必要な対策を講じなければならん。まあ今お話のように一部最低生活についてどうこうという問題が或いは起るかと思いますが、それらの点については個別的にできるだけの配慮をしておかなければならん、かように考えております。
  54. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちよつと一、二私お尋ねしたいのでございますが、今これについて御説明頂いたのでございますけれども、大変いい政策がたくさん列べてございますけれども、これは一応何年か続けてなされるおつもりなんでしようか。
  55. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) これはいろいろたくさんございますので、全部について何年計画ということは、必ずしもそういうふうに計画的に考えて、三カ年計画、四カ年計画というものが全部についてあるというわけではございませんが、先ほど申しましたのは、一応輸出等につきましては三十二年度という目標を置いてやつております。勿論三十二年度になればこれらの政策が要らなくなるかと言えば、さようではございません。差当り輸出については三十二年度までを一応の目標にして、それ以後も何らか日本としては輸出振興ということを勿論努力しなければならんのですが、大分先になりますると或いは情勢が変るかも知れません。従つて対策等につきましても、勿論将来更に再検討をする余地が十分に出て来るかと思いますので、輸出等につきましては差当り三年、それから国内自給度の向上につきましても先申しましたように、合成繊維等につきましては一応三年というふうにしておりますが、食糧増産等につきましては或いは五年とか、或いは長い計画も一応立てて見る必要がありはしないか、三年というところに限らず、一応三年の目標も必要だと思いますが、食糧増産等においては、相当時間もかかりますし、少なくとも五年くらいの計画ということが必要ではないかというように考えるので、個々の項目につきましてそれぞれ今後具体的にどの程度の期間でどの程度計画で作るか、今後一つ勉強をして参りたいというふうに考えております。
  56. 赤松常子

    ○赤松常子君 今の御説明でわかつたのでございますけれども、これにはやはり序列が必要だと思うのでございます。一応重点主義と申しましようか、緊急を要する問題からお取上げになることは大事だと思うのでございます。私ども先だつての視察に参りまして、殊に中小企業問題で非常に憂慮すべき実態を見て参りましたのですが、失業対策、それから社会保障制度、それから今の御説明の中に、不健全になつた企業は犠牲になつても止むを得ないとおつしやつたのですが、それに対する具体的な救済政策というようなものが私先行をして行くべきじやないかと思うのでありますが、ございませんですからこの通り倒産、破産相次いで起つておりますし、失業者はどんどん出ております実情を見て参りましたのですが、そういう順序というものをもつと具体的にお考えになる必要はございませんでしようか。そういう救済政策に対してどれほどの努力をしておられるのでしようか、それを伺いたい。
  57. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) これはお話のように、一応現在といたしましては、すでに二、三年も考えましてこの際一応我々としてはかようなことを検討し、具体化する必要があるのじやないかというようなことを考えた項目を羅列したのであります。実は自由党のほうでも政策を御発表になつておられましたが、我々といたしましては、政府全体のことになりますが、これらを各省でもお考えになり、或いは党でもお考えになるのでありましようが、それらの政策を一本にしまして、お話のようにその緩急順序をきめまして、この際でも至急に実施するもの、或いは来年度に予算措置を講じて来年度から実施して行くもの、いろいろ緩急がございますので、それらはいずれ我々のほうといたしましても整理をいたしまして、或いは法律をどうしても要する事項とか、それから予算を伴う事項とか、さように整理をいたしまして、時期、順序等を考えまして、さような整理の仕方でもう一度整理をして進めて行きたいというふうに考えております。
  58. 赤松常子

    ○赤松常子君 犠牲はどんどん出ているのでございますから、本当にそういう面の対策を早急にはつきり見付けて頂きたいということを重々申上げる次第でございます。それからこの中にございます十ページでございますけれども、これは今頂きました中で、十ページの最後の行の「右の場合必要に応じて企業に対する政府の監督権の強化を考慮する。」とございます。私これは自由党の今の政府経済政策計画経済と申しますか、そういう方向に行かざるを得ないということが気付かれているのではないかと思うのでありますが、これは具体的にどういうようにお考えになつておるのでございますか、十ページの最後のほうです。
  59. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) これは御承知のように従来からも財政投融資というのは相当出ております。民間企業に対しましても御承知のように開発銀行から相当毎年多額の資金が出ております。それで今後も合理化を進めて参りますためにやはり財政的な、政府資金的なものをそうした必要な場合に出して行くというのは必要だろうと思います。当然さようになろうと思いますが、その際に従来からでも或る程度つておられたはずでございますが、相当多額の政府資金を出していながらそれだけの効果が果して現われているのかどうか、或いは個々の企業としては効果が現われておつても、果して消費者のところまで行つているのかどうか、その辺が非常に不明確なことだと非難される点があろうかと思いますので、今後は苦しい財政の中から民間のために金を出して行く際に、その計画計画通り果して金が使われており、その効果が上つているかどうか、更に効果が上つている場合に、それが消費者と申しますか、価格の面と申しますか、そういつた点にどういうふうに予定通りつているのか、或いはそれが食い違いを生じているのか、その辺を政府としても財政資金を出す上から責任を以てよく把握する必要があるだろうというふうに考えまして、それに必要な措置を講じて行きたいというのがこの趣旨でございます。
  60. 赤松常子

    ○赤松常子君 今までこういうことが余り厳重に監督できていなかつたということがいろいろ言われている問題でございます。私よくわからないのでございますけれども、現在政府が投資しているいろいろの企業に対して、その貸本の行先、使われ方というものはどういう機関でどういう機構で監督されているのでございますか、そこはどういうものでございましようか。
  61. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) 今お尋ねの点がはつきり呑み込めませんで、若し答弁が食い違つていましたら再度お尋ね願いたいと思いますが、現在例えば政府が直接出しておりますのはこれは政府でわかるわけであります。会計検査院の検査もございますが、主として民間に政府の資金が出た場合の問題でございますが、例えば開発銀行で申しますと、開発銀行の融資できるその限度、全体の金額はきまつておるわけであります。これは国会等にも出ているはずでございますが、それを一応閣議で開発銀行の融資方針というものをつけまして、こういうものに開発銀行は融資をするのだという抽象的な方針をきめまして、これを大蔵大臣から開発銀行にさような指令を出しております。それから全体の資金に対し、例えば造船ならば造船に百億とか、今年は百七十億でございますが、電力は三百二十五億、その他鉄、石炭、機械、合成繊維というような主な産業についてはトータルで金額は幾ら、その他について幾らということをきめまして、それを開発銀行に示して、その範囲内で開発銀行が前に申しました政府の、閣議決定方針と金額の枠とを睨み合せまして金を貸しておるわけでございます。その際実際の問題といたしましては、関係の各省と或る程度連絡をとつて、開発銀行としては関係各省の意見を聞いて貸出をきめておるようでありますが、個々の会社については決定権は開発銀行にございます。  それからなお開発銀行のほかに中小企業の金融公庫とか国民金融公庫とか、そういうところにも政府資金が勿論出ておりますが、中小企業金融公庫につきましては、これは銀行を通して貸しておりますので、個々の企業に対して貸出しますのは、これは銀行が選択をして貸して、ただ中小企業のかようなものに設備資金に投資、融資をするという条件ではございませんが、その場合に具体的な誰に貸すかということは、これはまあ銀行の選択ということになつております。なお今申しましたこれらに対する監督も、例えば開発銀行で申せば大蔵省とか、それぞれのところが一応監督することになつております。
  62. 赤松常子

    ○赤松常子君 そういうことはいろいろまだ私自身勉強してみたいと思つております。  それからこれにございます十一ページでございますが、十一ページの5の項でございます。これから輸出を振興して参ります場合に、製品の価格が輸出の増進のためには相当高くなつてはいけない、高くなるのが輸出を阻害する原因と書いてございます。まあ私或る程度これはそうだと思うのでございますけれども、最近ガツト加入に対しまして日本が拒否されております理由に、日本労働条件が非常に低いからということがガット加入を阻んでいる向う側の理由になつているわけでございます。こういう国際的な動きと、それから日本の自立経済のために、今ここに書いてございますような線の推進ということが必要なんでございますけれども、そこの兼合と申しましようか、経済審議庁はどういうふうに考えていらつしやいましようか。
  63. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) ちよつと御趣旨はわかりかねる点もございますが、御承知のように現在相当……、今ガツトの問題を御引用になりましたが、日本の商品は非常に価格が安くてダンピングだと言われる点がございます。それは今の日本の業界なり業者なりが非常に力がないために、それで一応景気が悪くなると、とにかく換金したいということでコストにも関係なく売る。或いは非常に競争が多いために次々に値段を下げて行つて売るというようなことが現状相当あるのであります。それは日本の輸出を全体的に見まして伸ばすゆえんでもない。相手から言うと、買うほうから申しますと、更に下つた場合には、前に輸入した人が損してしまうというようなことから、或る程度価格を安定することが輸出を伸ばすゆえんでもあり、又国全体の外貨手取りから行つて不当に安く売る必要はない。国際水準の価格で以て売ればいいわけであります。それ以下に特別に濫売をすることは、個々の企業者として損であるし、国としても損である。さような場合にそうした過当な競争を防止をしよう、これはいろいろ中小企業の関係するような面も非常に例は多々あるようでございますが、さような場合に輸出組合、ああいう制度を使いまして、或る程度の協調を保つて、輸出の場合には一つ不当な競争が行われないようにしようということでございまして、これによりまして国内の生産業者のコストを特別下げようとかいうような考え方ではございません。むしろ放つておく、自由に放つておきますと不当に下つてしまうものを、合理的な国際的な線で維持して輸出の安定を図り、増進を図りたいという趣旨でございます。
  64. 赤松常子

    ○赤松常子君 そのためにまあこの中にも書かれております商社が非常に多過ぎる傾向等が不当競争の原因になつているわけでございまして、そういう輸出にもつと国の意思と申しましようか、統制と申しましようか、そういうことも或る程度私は必要じやないかと思うのでございますが、そういう点、商社の問題もこれに書かれておりますけれども、具体的に何かもつとお考えでいらつしやいましようか。特に商社がたくさんあるということが今言つたような原因でもございますし、又商社が多過ぎるということが、最近輸出関係にございますいろいろな企業の破産は、直接調べてみますと、商社の倒産から来ているということ、その影響が随分ございますのですが、こういうことが非常にまあ今事実起きております中小企業の倒産、破産にも関連性がございますので、もつと具体的にどういうふうに手を打つておいでになるか、伺いたいと思います。
  65. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) 只今の点は輸出の面につきまして、輸出商社につきましては御承知のように現在、今お話ございましたように戦前に比べても何か数倍のたしか商社の数があるはずでございまして、輸出品の価格は、むしろ数量では少いにもかかわらず、商社のほうが数が多いので、お話のようにむしろ弱小の商社があるため、貿易上むしろ不利になつているという点はお話通りであります。ただこれを政府が何か意識的に数を半分に減らすとか何分の一に減らすかということを直接にやるわけに参りませんので、差当りは六ページに書いてございますが、輸出の面におきましては商品別に地域別に輸出組合というものを作りまして、それらの商社が組合に入りまして、統制のとれた組合を、実質的な統制のとれた活動をするように、従つて商品について或いは或る地域の輸出につきまして、先ほど申しましたような不当な過当な競争をやつて値崩しだけをやるというようなことを、こういうことによつて防止をして行きたいというふうに考えております。現在でもかような商社の輸出組合法というものがございまして、或る程度そのようなことができることになつておりますが、必ずしもそれが現在までのところ十分運用されていないという点もございますし、なお又輸出組合は現在任意的に加入をして組合を作る制度になつておりますので、組合の外、アウト・サイダーで自由な活動をされますと、やはりそれに対外的に申しますと、日本から安いオツフアーをすれば、全部その値段でということになりますので、組合ができておりましても、アウト・サイダーが或る程度ありますると、結局組合だけの範囲内では十分な効果が収められない。この際特に必要があればアウト・サイダーも一緒に縛られる法的な規制の下に置こうというふうなことも今後考えて行きたいということで、それも政策の中に書いてございます。
  66. 赤松常子

    ○赤松常子君 それからもう一点、十九ページでございますけれども、外貸導入対策、これに向うから入つて参ります外貨が適切なところに流れて行くように、これが大変大事な関門だと思うのでございますが、今まででございましたら、その外貨が入るか入らないかが……、不要不急、贅沢な方面に流れ過ぎている。それで高級自動車が氾濫し過ぎたり、不急なビルデイングが建つてみたりしていると思うのでございますが、ここが私は大切なネツクだと思いますが、この外資を適切な方向に流すという機会をもつと具体的にどういうふうにお考えでございましようか。
  67. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) 今のお話二つあるかと思いますが、一つは、例えば自動車が入つて来ているとか、或いは先ほど来栗山先生からお話がありました贅沢品が入つているという点は、自動車等につきましては、実は政府が外貨予算というものを作つておりまして、これは年に二回、上期と下期と作つておりますが、外国から完成品を買いまして輸入する場合には、外貨予算で買う品目ごとに金額をきめまして入れておるわけであります。これは今までお話通り自動車等も或る程度つておりますが、今後はできるだけさような不急不要と申しますような方面につきましては抑制をいたして参りたいと思いますので、それの運用は外貨予算の面で、外国為替をかような商品の輸入については許可をしないということで抑えて行きたいと思います。  それから外資のほうはこれは外国から金を日本の業者が長期に亙つて借りるとか、或いは資本が入つて来るとか、或いは技術の提携をするとか、提携をしますればそれの対価として何らかのローヤリテイを払わなければならないのでございますが、さようなもので製品を買うのじやなくて、企業的な結付きとか或いはそうしたものの入つて来る場合におきましては、現在外資法というのがありまして、それの許可が要るわけであります。それの許可がないとさような外資は入らない形になつておりまして、さような面は外資法の運用でできるわけでございますが、今お話のような、日本の国内に外資が入つて来てやる企業が、日本の経済の発展のために必ずしも必要じやない外資が入るということは、利払い等で当然外貨負担が将来起る問題でございますので、さような面については従来ともそういう方針であつたかと思いまするが、今後更にその厳選をいたしまして、将来の外貨負担ができるだけ少くなるように、必要真に止むを得ないもだけに許可をして行くという形でやつて参りたいと考えております。
  68. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働大臣がお見えになりましたから、あと経済審議庁のほうへお尋ねをしたいことがまだたくさんあろうかと思いますが、どういたしましようか。私もう二点だけちよつとお尋ねしたいと思いますが、よろしうございましようか……。十ページの所ですね、「新技術の発明を奨励し」云々ということがございますが、私はこの「国内自給度向上対策」の隅つこにこういうことが書かれてあるだけのことについて、私は非常に不満に思います。これは日本の技術振興ということは、輸入抑制にも関係があれば、輸出振興にも関係があれば、国内自給度の向上にも勿論関係がある。これなくして何も私はできないと思います。従つて経済審議庁がどうしてこういう重要な問題を「国内自給度向上対策」の隅つこに置かれたか、それを先ず第一にお伺いしたい。それで若干私のお伺いしたいことを申上げますと、私ども本当に国内の製品の向上を図つて、外国にも輸出促進をやろうと思えば、これはやはり先進国のうちでも一番右翼にある米国なりイギリスなり、ドイツですね、そういうところの技術と競争をして、それぞれの本国で十分に品質的にも対抗のできるようなそういう製品を作らなければ、幾ら口に貿易振興を唱えたつて私は駄目だと思う。それをやろうとしますと、今のような日本の産業構造の中において技術の振興を叫んだつて私はこれは駄目だと思う。国が本当に特別立法措置を講ずるくらいの決意を持つて技術の水準の向上のためのあらゆる施策を私はしなければいけないと思う。それは勿論発明の奨励も必要でしよう。それから今まであるいろいろな発明の企業化も必要でしようし、それから意匠等の、育成、指導等も必要でしようし、更には生産管理の指導等も必要でしよう。そういうものを総合して、これこそ他の財政金融政策、或いはその他の重要な政策と並んで政府が力を入れなければ駄目じやないか。従つてそれをもつと突きつめて行きまするならば、輸出品等については、でき上つた品物はやはり国が製品検査を行なつて、そうしてソシアル・ダンピングのそしり、或いは悪貨のそしりをみずから国内で防いで行くと、それくらいの体制がなければ到底できないんじやないか。私はできるならば(5)なんという項目は一番あとに置くなら置くでよろしいが、漢字の三の次に四くらいの格付をして、それは字に書いたつて駄目なんです。それくらいに経済審議庁なり通産省が重要視してやらなければならんと、そういうふうに考えることが一つ。  それからもう一つ、時間がありませんから関連して伺つておきます。それから第二には、農業対策の所なんですが、九ページの一に食糧増産のことが書かれてある。併し食糧増産は書かれてあるが、食糧の質的改善ということは何も書かれておりません。政府はそういうことはおやりになる御意思がないかどうか。例えば私は最近も或る人から伺つて非常に感心しているんですが、戦争中に多数の労務者を持つている工場で、味噛汁の中に全然秘密裡に煮干の粉をうんと入れて食べさした、そうして米の減る量を計つたところが、随分減つたという経験談を私は聞いたことがあります。これは米から蛋白質をとるのに非常にとりにくいので、煮干の粉で与えた、従つて米の量が減つたということになるわけです。従つて今でも米麦の増産は必要ですけれども、それだけをやらないで、そのほかに更に家畜だとか、そういうものの増産をやり、又奨励をして、食生活の改善ということを政策にやはり取上げなければいかんのじやないか。特にお百姓さんが五合も六合も米の飯を食べているようなことでは、農業人口はこれは半分あるわけだから、とても食糧の自給対策なんというものはできないと思う。それでこの間私が遊説に出たときに、或る山間部に入つたところが、実は肉を食いたいんだけれども、今日の状態では牛から山羊を殺すまで屠殺法があつて全然殺せない。折角食べようと思つてつたのですが、町へ持つてつて屠殺場へ入れなければならん。買うときには町より高い肉を買わなければ食えない、こんなことでは食糧の質的改善はできないじやないか、栗山の演説は成るほど聞くには非常にいいけれども、今そういうことはできないんじやないか、なぜもつと簡易屠殺を許さないかというような質問を受けたことがあります。そういう意味の食糧の質的改善、従つて五億ドルの食糧輸入をそういう面から抑えて行く、そういう考えというものはお持ちになつておりますか。
  69. 石原武夫

    説明員(石原武夫君) 只今お叱りを受けて甚だ恐縮でございますが、の振興につきまして一番最後にちよつと書いてあるということで、今お話ありました点は誠に御尤もで、ただこれを整理する都合上かようなことになつたわけであります。お話の点は御尤もで、私どもといたしましても今後の産業の発達ということにはどうしても技術の改善が伴わなければならない。従つて先進国並みの商品が生産されるということは不可欠の要件でございますので、今折角のお話もございましたし、経済審議庁といたしましても、できるだけさような方向に今後努力いたしたいと考えております。  なお具体的に機械の検査の問題でございますとか、或いは又発明の試作その他にしても、労務管理、生産管理等、これらの各方面に亙りまして生産性の向上と申しますか、さようなことが今後の日本の産業にはどうしても必要である。これは必ずしも或る一部面に限りませんで、企業経営全般に亙つて改善をし、従つて生産性を向上させるということが必要で、今栗山先生からもお話がありましたが、戦後欧州の諸国、イギリス、フランス、西独というような所は、当時一番さような意味でいろいろな研究が進んでおりましたアメリカに、経営者とか技術者、労務者を入れまして、そうした技術団を派遣いたしましてアメリカ状況を研究いたしまして、それぞれの国の生産性の向上を図つたということがございます。日本も非常に遅れておりますので、この際今諸外国がやつたようなことを研究中でございます。まだ結論が出ておりませんので、果してどういうふうに最終的に決定するかわかりませんが、現在の日本の段階としては、どうしても経営全般に亙つて生産性の向上ということを図らなければならんということで、近く何らかの形でさような方式を決定するように聞いております。今のお話は御尤もで、十分御注意を拝承いたしまして、今後研究をさして頂きたいと思います。  それから次にお話がございました食糧の質的改善と申しまするか、或いは食糧の改善、これは当然のことでございます。今お話通りでございまして、実はこの案文を作りますときにも、当初は食生活の改善ということが入つておりましたが、何かの整理のときに落ちたのが一つと、実は普通に食生活の改善ということにつきましてはいろいろ内容があるようでございます。只今栗山先生から御指摘のような点も勿論非常に重要な点だと思います。又よく俗に食生活の改善ということで、米と麦との粒食をやめて粉食にというような趣旨でも一部使われておるようでございます。これにつきましても、現在のところは私は大体さような方向で考えられておるかと思いますが、いずれにいたしましても、今後人口増によります追加的な食糧を国内で賄つて行くということは非常になかなか実際問題として困難であります。ここ数年の間はともかくといたしまして、少し長い目で見ますると、国内におきまして人口の増による追加的な食糧需要を必ず国内で賄うということは非常にむずかしいことだと思いますので、只今の御趣意の点誠に御尤もで、十分その点も今後力を入れて行きたいと思つております。
  70. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それではどうぞ労働大臣に対する質問を……。
  71. 市川房枝

    ○市川房枝君 労働大臣に二、三の点についてお伺いをしたいのですが、先ず第一の問題は、この間八月の三十日に、労働大臣から任命されました中央労働基準審議会の委員の問題であります。今まで基準審議会には婦人の委員が一人ずつと入つておりました。今度御任命の名前の中には婦人の委員が入つておりません。これは一体どういう理由によりますか。この基準審議会では、いわゆる基準法に関する問題を審議することになつておるようでありますが、今度の新らしい基準審議会には、安全衛生規則の改正の問題或いは事業附属寄宿舎規則の改正に関する事項が労働省のほうから提案されておるようでありますが、そういうふうな規則は、非常にこの婦人の働く人たちには関係が深いと思うのでありますが、そういう場合に、特に今度婦人をお加えにならなかつた御趣旨を伺いたいと思います。
  72. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 御尤もな点でございまして、その点につきましては、私ども中央労働基準審議会は、御承知のように労使、公益の代表二十一人を以て組織いたしておるのでございますが、主として労働基準法及び関係諸規則の改正につきまして御審議を煩わしておるわけでございますが、従来法律学者を委員として選任しておりませんでしたために、法令に関する審議に際しまして十分でない点も認められまして、今回は従来の経験に徴しまして、法律学者を委員の中に加えましたために、定足数に余裕がございませんで婦人代表を加えることができなかつたのでございます。勿論このことは婦人の地位を軽んじたとか或いは婦人を無視したというような意味は毛頭ないのでございまして、婦人の御意見をこの審議会に反映させることにつきましても、従来とも婦人少年局とも密接に連絡を保ちまして、婦人少年局を窓口といたしまして婦人の意見を取入れることに努めまして、目的を大体において達して来ておるのでございますが、今後は更にこの点に留意をいたしますると共に、必要がありまする場合、只今仰せのごとき場合には婦人の代表に御出席を頂きまして臨時委員としてでも御出席を頂きまして直接意見を開陳して頂くことを考えたいと考えております。  なお、只今の御意見につきましては、誠に私どもとしても御尤もな点があると存じまするから、今後一カ年の審議の状況によりましては、この次の改選期には婦人の代表を入れるようにいたしたいと考えております。繰返して申上げますが、今度の場合、法律家を入れるためにどうもそういう事情になつたのでございますが、この点に関しましては御意見の趣旨に副いまして、一つそうした婦人に特に関係のある問題を審議する際には、臨時委員としてお加わり願うことを考慮したいと思います。
  73. 市川房枝

    ○市川房枝君 今労働大臣に一応伺いましたが、実は今まで基準審議会の婦人委員をおきめになります場合に、それこそ省内の婦人少年局に意見をお聞きになつたようであります。これはもう当然のことだと思いますが、今度は何ら婦人少年局に対して意見をお聞きになつていない。実は新聞で見たものですから、頂く婦人少年局へ電話をかけて聞いたのですが、何も実は知らないということであります。これも今度に限つて婦人少年局を無視してお聞きにならなかつたということは、どうも少し納得が行かないのですが、それから前に委員でありました人に対しての多少の非難もあるやに伺い、それも御本人について実は伺つてみたのですが、そこにも少し納得のできないことがありまするけれども、まあそれはここでは私これ以上追及はいたしません。まあこの次の機会には必ず考えるという労働大臣のお言葉を信用してそれは追及をしませんが、ただ基準審議会のほうの委員の任命より少し前に、職安のほうの中央職安審議会の委員の任命をされておるようであります。このほうには婦人の人が一人入つております。で、これはまあ職安法を拝見しますると、まあそれには一人以上必ず婦人の委員を加えることという法の規定がありますので、その法の規定に従つてお入れになつたのかも知れませんが、まあ職安法のほうにそういう具体的な規定があり、労働基準法にそういう規定がないというのは、まあ法律の制定の当時にどういう事情がありましたか、私実はよくわからないのですが、これは御関係の局のほうで若し御存じでありましたらそれを伺いたいのですが、若しこういう規定が労働基準法のほうにあれば、これは労働省当局としては当然婦人を入れなければならないわけでありますけれども、この点もちよつと伺つておきたいのでございますが、どういうふうにお考えになつておりますか。労働基準法のほうが婦人という関係からいえばまあ重要ではない、職安のほうが重要だ、婦人を必ず入れなければならん、法律では少くともそういうふうにはつきり書いておりますけれども、その点についての御意見をお伺いしたいと思います。
  74. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 職安法によりまする場合と、基準法によりまする場合と、審議会委員の構成についての問題につきましては、その当時の立法事情は私もよく存じないのでございまするが、まあ結論的に申上げますると、法律に書いてあるなしにかかわらず、やはり婦人に関係することが多いのでございまするから、これは入れるのが妥当であろうと思うのでございます。併し今申上げましたように、全く他意はないので、法律関係の人を入れているうちにそういうふうになつてしまつたので、この点は私も少しうつかりしておつたかも知れないと、率直に申上げる次第でございます。なお、今申上げましたように、臨時委員としてでも加えますように配慮いたしたいと思います。次回におきましては是非御趣旨もございますし、その点はつきり考慮いたしたいと思つております。
  75. 市川房枝

    ○市川房枝君 その問題についてはその程度にしておきましよう。この間の八月の委員会のときに、私から労働大臣に内職の問題のことをお伺い申上げました。そのときに、すでに対象のはつきりした所は内職を斡旋するというような方向に行きますように考えてもらいたいということで、今実は協議をしておりますというようなお答えを頂いておりますが、労働省のほうにおいて御発表願います程度に具体的になりましたかどうか伺いたいと思います。実はこの間質問申上げましたあとで、婦人少年局のほうから、家庭内職調査報告が出まして、それを実は頂いたわけでございます。これはまあ婦人少年局と職安局との御協力によつて東京都内の家庭内職の実情を調査したもので、まだ全部詳しくは拝見しておりませんが、非常に結構な調査でございます。今までこういう調査はなかなかございませんので、実態が実はつかめなかつたのでございまするが、まあこれで或る程度実態が出ておるわけであります。内容を拝見しますと、いろいろな問題がここから取上げられるのでありまするが、とにかくこの調査だけでも家庭内職をしております人の中の三分の一近い人は全然無職、職業がない。それを家庭内職によつて生活を補つておるというような数字が出ております。そのほかは結局収入が少い、それを補うという意味においてやつておるわけでありまして、東京だけで大体十万世帯という推定が出ておりますが、全国の都市或いは農村でも実際問題として家庭内職が相当行われておるわけです。日本全国から言いますると相当なこれは数になるわけであります。今まで実際に法律の何らの保護なしに放置されて来ておるといいますか、という問題なんでありまして、この問題について調査をお始め頂いただけでも結構でございますけれども、更にこれに対して具体的に対策を立てて或る程度お話が出ておる進んでおるということをこの間伺つたわけでありますが、若し具体的に或る程度できておりましたら一つ伺わせて頂きたいと思います。
  76. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 先般もお話申上げましたように、又只今も御質疑がございましたように、この問題につきましては私どもも引続き努力をいたしたいと考えております。具体的に現われましたといいますか、着手をいたしました面におきましては、今日実は閣議で決定してもらつたのでございますが、八千万円ばかり予備費を使うことに大蔵省の同意を得まして、場所的にはこれは特に大都市が中心になると思いまするが、安定所に窓口を殖やす、簡易職業紹介所のようなものを殖やすように、全国ではまあ二十二カ所程度でございますが、殖やすようにいたしたのでございます。その簡易職業紹介所というようなものが婦人の内職等についても、相当まとまつてこうしたことをしたいがというようなお話があれば、それを御斡旋いたしますることも機構的にはできるだけのものが努力によつてできるのじやないか、かように期待をいたしまして、そういう方面について研究をしたいと考えております。  ただ内職といいますものは、家庭でやつておられるのでなかなか表面に現われて参りません。やはり内職をされます方がそれぞれお話合いになりまして、できれば安定所に来て頂きますと、安定所といたしましても御連絡が便利になりまするし、そこから途が開けて行くのではないかと考えております。いずれにいたしましても、できるだけこういう方面につきましてそうした安定所の活動としまして、内職問題にも深くタツチして参りまするように努力したいと思います。
  77. 市川房枝

    ○市川房枝君 まあその問題もう少しはつきりいたしましたら又伺つてあれしたいと思うのでございますけれども、もう一つは、この前の十八臨時国会でありましたか、本会議で同僚の深川議員から質問を出して、労働大臣から人身売買を少くするということのために、労働省としてそういう人たちがそういう境遇に落ちないために或る程度の融資をするというようなことを考えておるというような御答弁がございました。それからこの委員会で私、政務次官にその問題を御質問いたしましたら、今研究中だということでございましたけれども、その問題について何かその後進展がございましたかどうか伺いたいのです。
  78. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 只今の問題は婦人少年局におきまして、その後も実は貸付法案という法律案を作りたいということで、いろいろなお話がございます。私どもも趣旨において非常に結構と思いまするのですが、只今これは財政当局のほうとの折衝の問題で、率直に申上げまして進展を見ておりません。併し趣旨において同感でございまするから、なお今後において折衝を続けさして頂きたいと思います。
  79. 市川房枝

    ○市川房枝君 それは或る程度の法案の具体的な内容というものができておいでになりますでしようか。
  80. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 労働省の省議決定というものではないのでございますが、婦人少年局のほうではそういうようなものを作つております。ただそれを持廻りまして省議決定してしまいますと、その裏付がどうかということになりますが、裏付のほうの折衝をしまして、その見通しによりまして労働省としての決定、こういうふうになるわけでございます。そこまでどうも至りませんので……。
  81. 市川房枝

    ○市川房枝君 その問題は結局は融資をする予算の問題に関係して来るんでしようけれども、それはその点での障害といいますか、そこに問題がおありになるわけで、問題そのものとしては、趣旨といいますか、内容といいますか、それ自体労働省としては御賛成といいますか、それを取上げようとしておいでになりますかどうか、これは大臣のお考えかも知れませんけれども、それをちよつと……。
  82. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 趣旨は私は非常に結構だと思うんで、これは主として大蔵省との予算折衝の問題でございますので、この貸付対象がどういうふうにまとまるか、或いは貸付の場合の基準によりましては相当の財政負担にもなりますので、又余り少くてはどうも大海の目薬のごとくのようなことにもなりますので、やる以上は相当きちんとしたものでやりたいと思つておりますが、私としましては今申上げたように結構と思います。来年度の予算要求の内容にはこれを入れてあるのであります。併しこれも見通しがつきませんと法案を決定するというわけには行きませんものですから、主としてそのほうの折衝にかかつておる、こういうことでございます。
  83. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと今の市川委員の質問の中で内職の問題ですが、この点について一点労働大臣に伺つておきます。  労働者の婦人少年局が中間報告せられております内職調査報告書ですが、これは将来ずつと続行して行かれる御意思がありますかどうか。
  84. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) これは始めたばかりで不完全な点もございますけれども、将来更にこれを正確なものにまとめ上げて参りたいという考えでございます。
  85. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それからもう一つお尋ねしたいのは、家庭内職が、各家庭の主婦或いは子弟が寸暇を割いて若干の収入を挙げておるというのも相当あろうかと思いまするが、併しこういう工合に経済状態が悪くなつて参りましたために、家庭で以て内職専業によつて生計の維持をしているという人、或いはしたいという人ですね、そういう人が相当にあるんじやないかと私は思います。ところが一方において私ども、過日議員派遣で現地でこの問題を調べましたときにも、内職の工賃と申しますか、報酬と申しますか、これが不景気になればなるほど下つて来る。非常に労働的にも工合が悪い、収入的にも工合が悪い、こういう状態が出て来ておるということを聞きましたのでありますが、労働省としてはこういう非常に隠れたところで苦しい労働をしておる諸君が、やつと生計を維持するために何とかしたいという努力をしておるわけでありますから、こういう人に余りひどい搾取が及ばないようにする一つ方法として、何かお考えがないかどうか、私が今思い付いておりますことは、政府が、各内職にはいろんな種々雑多な状態があるわけでありまするから非常に困難だと思いまするけれども一つの標準工料というものをお作りになつて、その標準工料に対する標準報酬というものは一体どのくらいが正しいか、こういうような一つの発表、要するに通産省でよくおやりになりますところの指定価格であるとか監督価格であるとか、こういつたこれに類するようなものをおやりになるという考え方がないかどうか、これを一つ伺いたいと思うわけであります。おわかりにならないといけませんのでもつと具体的に申上げますと、例えばマツチの箱はりをやりまする場合には、千個やれば一体どれくらいが標準報酬として正しいのか、そういつたような一つの標準を労働省で発表される、そういうようなことはできないものか、それを……。
  86. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 本当に結構な御着想だと思いますけれども、内職の場合、非常に、どちらかと言えば消費者需要であるわけでございますね。そのためにこの政府が標準工料というものを発表いたしましても、それじやその内職に頼むのはやめると言われればそれまでなんで、まあ私ども考えといたしましては、そうした形を作りまするのも一案でございまするけれども、差当り、さつき市川先生に申上げましたように職安が中へ立つ、職安の窓口へおいで頂いて、職安を通して御斡旋申上げるといたしますれば、政府が中へ立つことでございますから、そうひどいこともなかろうかと思つております。そういう趣旨で当座やつてみたいと思いますが、なおその進行状況を見まして只今のようなお話を研究はいたしてみたいと、こんなふうに考えております。
  87. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) まあいろんな方法があるでしようから御研究を願つて、こういう隠れた悲惨な人が救われるように一つ御留意を願いたいと思います。御要望申上げます。
  88. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちよつと大臣に、それから亀井さんにお尋ねしたいんでございますが、今の市川委員からもおつしやつたその問題でございますが、単に婦人の委員が出た出ないということでなく、もつと私はその奥に重大な傾向を察知するからこの問題を私取上げたいんでございますが、今まで折角婦人が出ておりましたその婦人の姿も消されてしまつたということ、中央労働基準審議会の婦人委員のかたでございますが、言うまでもなく婦人労働者は随分数が多うございますし、そういう問題に関連性のあるこの中央基準審議会にどうして婦人が出なかつたかということは、大臣はうつかりしていたとおつしやつたのでございますけれど、事務当局は一体どう考えていらしたんでございましようか。人選に入つていたんでしようか、初めから入つていなかつたんでございましようか、伺いたいと思います。
  89. 亀井光

    説明員(亀井光君) 経緯につきましては先ほど大臣から御答弁申上げました通りでございまして、初めから意識的に落すとかいうふうな方針をきめてやつた問題じやございません。従来の審議の経過を見ますると、法律学者がいませんために、法令の細かい解釈上の問題になりますと非常に我々不便を感じて参つておる関係上、どうしても今回法律関係の教授の方々を入れたいという気持があつたわけであります。そうして人選をいたしておりますと、各学校との関連がございまして、各学校の調整を図つておりまするうちに、どうしても定足数七人に充たなかつたということで実は落ちたわけでございます。初めから婦人を落す方針の下にやつたわけではございません。その点一つ御了承を頂きたいと思います。  又事後の措置につきましては、只今大臣から御答弁がございましたように、必要な条項或いは規則の改正の審議につきましては婦人の代表のかたの御出席を頂きまして十分御意見をお聞きしたいというふうに考えております。
  90. 赤松常子

    ○赤松常子君 私余り申上げたくないのでございますが、学校を選考するうちに、あちらの学校を入れれはこちらの学校も入れなければならぬというように、学校が大事であつたというような印象を受けるのですが、学校よりも婦人のほうが大事でなかつたのでございましようか。大変私今の御答弁で不可解且つ不満でございます。私これ以上追及いたしませんから、どうぞ今後その審議会の開かれるたびに大事な寄宿舎規則が議題に上るのでございますし、又安全問題が上るのでございますから、是非とも出席するように、その人選は婦人少年局に御諮問頂いて適当なかたを是非お願いしたいと深く要望いたしておきます。
  91. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働大臣に御質問申上げますが、十六国会でスト規制法を作られて、電気産業並びに石炭関係の猛烈な反対を押切つて通過されたのですが、これ以上のスト規制を、一般産業に対するスト規制を考えておられるようですが、昨日の構想をお聞きいたしましてもそういうのがちらほらしておりますね。新聞等を見ましても労働法の第五条を変えるとか、或いは労調法によつて申請中は争議行為ができないというような労働大臣の考えておられますことを私たちが推察すると、労働者がストライキをやることが一番労働大臣はお嫌いのようでございます。労働者も好きでストライキをやつておる者は一人もおらないと思うのですが、その点率直に私は申上げるのですが、すべての問題に対して単にストライキをやるからいけないのだ、或いは労働者が悪いのだというようなことのみが結果として現われて来ておる。相手側に対する懲罰は何も現在まで現われておらない、こういうような考えを持つのですが、今度の労働法改正ですか、こういう問題について、そのスト規制法といいますか、この点についてはどういうようなお考えをお持ちか伺いたい。
  92. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) スト規制法の御審議を頂いております際にしばしば私は申上げましたように、あの問題は日本国民全般が要望するという、輿論が高まつたと私どもは認識をいたしまして、その輿論を背景といたしまして法案を御審議頂いて現在のように公布されておるわけでございます。併しあの法案審議の過程で申上げましたように、そうした輿論が現実に起つて、いわゆる社会通念が成熟していないものについてはそういうことは考えない、こう申上げておりまするので、これを他に及ぼす考えは、今もその当時の言明通りつておらないのでございます。ただ私として考えますることは、無駄なストライキといいますか、労使双方がそのために何ら益するところのないようなストライキがあるとすれば、そういう問題は日本経済、日本国民全般の立場から考え直してもいいのじやないか、そういう気持なんでございましてイギリス等におきましては、調停を申請しておるということは、結局誰かに仲裁してくれということなのでありますから、その際はストライキをやらないのだ、こういう慣行になつておるのでございますが、日本の場合は、一方が手を握りたいと言いながらも飽くまでストは続けられておる、こういうようなことはやはり考え直してもよくはないか、こういう気持なんであります。日本が置かれておりまする立場からいたしまして、経済の再建ということは必要なんだから、そのために無駄なストライキ……というとこれは語弊があるかも知れませんが、それがために、例えば尼崎製鋼で見られますように、それをやつておりまする間に会社がつぶれてしまつて労使双方が職を失う、こういうようなことは何とかして避けたいとこういう気持なんでございます。決して労働者側が悪いとか資本家側が悪いとか悪くないとか、こういうような気持は持つておりませんが、要するにこういう考え方はどうかという構想を出しております。これについていろいろご意見を承わつておりまする過程において、それはこういうことをしたら却つて労使の健全な慣行をこわすということがありますれば、私どもは坦々たる気持でこれに対処するという気持を持つております。
  93. 阿具根登

    ○阿具根登君 御答弁はそういう御答弁があるものと思つておりましたのですが、私が考えるのでは、スト規制法のときは別といたしまして現在大臣が言つておられることは、大臣の考えのように輿論が成るべくなるように盛んに新聞等でもやつておられますし、あちらこちらでも相当大臣の考えを述べられて、そうしてそれに賛成者を作りつつあられる。いわゆる輿論は大臣が作つておられる。そうして大臣の気持通りのことをやらんとしておられる。こういうように私は考えるわけなんです。今その問題でそれでは輿論がどうかなつておるかというと、全然こういう問題で輿論は起つておらないと私は思います。輿論を起すのは誰かと言えば、大臣みずからではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。  例えば、その次の質問でございますが、今までの法律制度は労働組合の育成であつた、これではいけない。労働組合の育成が中心であつたために労働者個人の福祉が置き去りにされた、こういうことを言われておつた。労働組合は労働者の福祉に対しては何も考えておらないかのような印象を与えておられる。組合は勿論組合法によつて御承知のように労働者の労働条件の維持、改善、生活の向上等を目指して、組合ならば当然その福祉を考えてやつているものと私は思つております。当然組合員もその気持で組合をそうやつて育てて来た。こういうふうに考えておりますが、大臣のお考えでは、組合が強くなつた、組合ができて来たために、個人が何か非常に損をしておるような印象を受けますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  94. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) この点はまあ一言にして言えば、民主的労組のあり方をはつきりしたい、こういうことなんでございます。労働組合というものは労働者個人の経済的な地位の向上、生活の改善ということが目的であるのだから、労働法規の運営についてもそうした気持でやりたいのだと、こういうことなんでございます。一部の組合におきまする指導者が非常に政治的な偏向でも持ちますると、一つの例としてさつきも申上げましたが、何か尼鋼のように会社全体がつぶれれば労働者個人が皆職を失うわけであります。そういうふうな行き過ぎの争議の指導というものは、これは労働組合法の運営に当つても十分監視せられたいと、こう思つております。労働貴族を作るということでなくして、労働者全体を保護すると、そういう方向に労使共に、又政府もそういう方向を見出して努力するということが国の現在から見ましても非常に必要ではなかろうかと、こういう気持でございます。
  95. 阿具根登

    ○阿具根登君 たくさんの組合のある中で、或いは大臣が考えておられるような行き過ぎだというような組合があるかもわかりません。併しそれによつて全部を律して行く、法律でそれを縛つて行くということは結果においてどういうことを生じて来るか。例えば、それでは尼鋼なら尼鋼が、大臣が言われるような結果であつたといたしましても、それではそのために経営者の失敗によつて閉鎖しなければできない。或いは経営者の我がままによつて会社がつぶれて行く。或いは一つの経営をやつている人が他の方面に大きな手を拡げて会社がつぶれて行つた、こういうふうな問題、或いは政府のデフレ政策によつて会社が遂につぶれなければできない、こういうふうな問題に対して、それでは失業して行く人に対してどういうふうに考えておられますか。組合がやつたためにつぶれたからこういう法律を作るとおつしやるならば、或いは政府がやつて会社がつぶれた資本家がやつたために会社がつぶれたという場合にはどういう処分の対策を考えておられるか。相当大きな処分を考えておられると、かように考えますが、その点どういうふうなお考えを持つておりますか。
  96. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 誠に御尤もでございまして、政府も、経営者といいますか、資本家も或いは労働組合も、又労働者個人も皆これは責任があるわけでございます。それで政府なり経営者なりというものが方途を誤つた場合には、これに対する制裁は無論あるわけであります。併し労働者も無論、この政府なり資本家が誤つているという場合は別でございますが、これが健全に運営していると、この方策を誤つていないという場合には、やはりこれに対して労働側からして会社をつぶすようなことのある場合は、これは労働者全体に対してよくない影響を持つことなんだから、そういう点は労働側としての問題として考えるべきだと、こういうふうに思うのです。私はたまたま労働関係を持つておりますから、労働関係を持つ者としてはこういうことを考えたらどうか。現に先ほども申上げましたような、イギリスとか或いは西ドイツとかの労働組合の運営を見ておりますと、どうも非常にストライキをやるというようなことについては慎重にやつておる。日本の場合にはどうも少し今の経済状態その他からすれば、そういう争議が過剰ではないかというようなことを言う人も非常に多いのでございますから、そういう点については一つお互いに反省して行かなければならない、こういう気持で申上げたのであります。  ただ私は輿論を作るというような大それた気持は持つておらないのでありまして、私も労働問題を見渡している立場からこういうことが問題点でありましようと、こういうことを申したのでありまして、それによつて盛り立つて行こうという大それた指導者原理というものは実は私は嫌いなのでありまして、私は毛頭そういう気持は持つておりません。
  97. 阿具根登

    ○阿具根登君 英国や西ドイツの問題も昨日から再三しておりますが、それでは日本の労働運動を見ておりましても、極端に申上げまして、炭鉱が一番ストライキが多い。それでは英国には炭鉱のストライキがないか、ない。何のためにないか、これは御承知の通り。西ドイツにはないか、ない。何のためにないか、御承知の通り。そういうような、やらなくてもいいような政策をちやんとしてあるからこそやらない。それを日本では最も貧弱な炭鉱であり、最も貧弱な経済の中にある日本が放漫なままで放置されておつて、そうしてストライキだけできないというのは非常に矛盾していると思う。英国や西ドイツのことをお考えになるならば、あの地方の労働事情がどうあるか、経済がどうなつているかということを先ずお考え願わなければならない。ただストライキができないということだけでなくて、労使が協調しなければできないんだということでなくて、どうすればそうなるかという問題が私は第一義の原因でなければならない。それを法律によつてできないようにするというのか。或いは先進諸国がやつておるようなもつと前進した考え方で、そういうストライキが起らんような、起らんでいいような措置を考えてやるべきではないかと、こう思うのですが。
  98. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) お話の点はよく私にもわかるわけであります。その諸般の政策等につきましては、日本の経済を何とかもう少し繁栄せしめるように、これはその場その場において努力すべきであると思います。ただ私が申上げますのは、例えば争議行為の開始の要件等につきましても、これはもう半年も、甚だしきに至つてはそれ以上あります。以上しておつて、少数の人がいつでも自分の意見で以てやれるということは元来民主的ではないんではないか。やはりそれだけ組合全体に相当な負担をかけ、場合によつては大きな犠牲をも強いるようなことは、組合員一人々々の意思を十分表明されたストライキをやる、こういうような考えでいつておるのでありまして、別にそれによつてストライキができないということではない。要するに民主的な組合、個人の意思を十分組合に通ずるようなことが、そういう方途を講ずることが一番いいのではなかろうか、こういうことでございます。
  99. 阿具根登

    ○阿具根登君 その問題では、これは論争すれば切りがありませんから、まあ大臣はそれが民主的な組合でないという御見解をお持ちのようでありますが、私は組合をいつも廻わつておるのでありますが、大臣が考えておられるような民主的でないということは当らないと私は思うのです。成るほど要求を出す場合に、要求書というものが全部の組合員の意見を聞いてそうして組合員の総意によつて要求を出し、そうしてその後にスト権に集約をいたす場合が非常に多いのであります。併しそれらの交渉の逐一は全部組合員に流されておる、或いは機関にかけられている、総会にかけられている。そうして最後にこれ以上進めぬという場合は再度機関にかけられている、こういうことを私たちはよく知つております。又大臣には私たちの知らない声だけが入つておりますが、私たちは事実組合の中を廻つておりますが、大臣が考えておられるような非民主的な組合はないとかように思つております。  それからもう一つお伺いいたしたいと思いますのは、解雇制限法の問題が出ておりましたが、これについても私相当な疑問を持つておるのてすが、その中に一つ審議会をお作りになるようでございます。審議会をお作りになるのは、これはまあ多数の意見を聞くということで、或る二面においては非常にいいことだと私は思います。併しこれを誤まれば、悪く取ればこれは責任の転嫁をするのだ、いわゆる輿論を聞いたのだ、例えば三者なら三者の意見を聞いたのだ。併し今までの審議会の実態から見て、三者の意見がまとまつたということは極く僅かではないか。或いは皆無ではないか。そうなるならばただその意見を聞いて、大臣は大臣の考え通りにやつて行かれる、こういう弊害が来る。もう一つ言いますと、大臣はこう考えておるけれども、それを面接に打出すということは非常に危険である。それで審議会の意見を十二分に聞く。ところが審議会では意見はまとまらん。結局大臣が考えておる、政府考えておるような線で施策をやつて行くのだ。併し国民に対しては審議会の意見を十分に聞いたのだということで責任を転嫁されておる。こういうような考え方を持つものであります。例えば今のようなお二方から出ました、従来審議会に婦人がたつた一名出ておられる婦人がなくなつた。例えば私が仄聞するところによれば山中篤太郎氏なんかも今度は落されたということになれば、政府の御意見に逆らうような人は次々に落されておる。私は人事面の問題で余りとやかく言いたくありません。併しこういう審議会というものを考える場合に、そういう面が現実現われて来つつあるということは、先ほど申しましたような三者構成の審議会を作つて一つ結論もでき得ない。そうして出て来たものは政府考えておつた通りのものである。こういうような考え方を持つものでありますが、その審議会についてもつと強力な何かを考えておられるかどうか。ただ諮問だけの問題か、この点をお尋ねいたします。
  100. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 解雇制限法の問題は昨日も申上げましたようにまだ研究の過程でございまして、幾多問題があると私は思います。今仰せのような委員会といいますか、諮問機関が果して如何なる構成にしたらば最も国民の中正な意思を表し得るものかという点に非常に問題が多くあるものと思います。西ドイツの場合では認可機関を労使中立二、二、一というようなことでいたしておりまするが、この場合は経営協議会がありまするので、労使それぞれの意見を交わしてこの認可機関に問題が持込まれるわけであります。日本の場合そうしたものはございませんので、そこに多くの問題があると思います。そこで私は解雇というものの社会的な妥当性を果して万人の納得し得る立場において決定し得る機関が作り得るかどうか、まだ僕は疑問を持つております。そこでまだこの問題は研究している点だと考えておりますが、又この場合審議会というような諮問機関に関しまして労働大臣或いはその他の大臣というものの個人的な意思によつてその合理性を判定するということになりますと、私はかなり矛盾を生ずると思います。でありまするから仮にそういう機関を置くとすれば、これは認可機関で、そのものが独自の判断において認可するということにならなければならないと思う。政府はこれに対して不介入ということでなければならんと思つております。  併しいずれにいたしましても今申上げたようないろいろな点がございます。その問題はまだ表面に出るというよりも十分検討さして頂きたいと思う。ただ私は考え方として問題を提起するということにとどめておきたいと思います。今後の研究に待ちたいと思います。
  101. 阿具根登

    ○阿具根登君 解雇制限法の問題についてはまだ構想の範囲で以て事実そういうことを実施する考えは毛頭ないというので、意見だけ私は申上げて置きたいと思います。  こういう法律ができるならば、今の状態においてこれは解雇制限でなくて、新聞にもでておりましたが、解雇無制限だ、いわゆる解雇の合法化である、こういうように考えます。そういうように必らずとられると私は思いますので、こういう法律は絶対にお作りにならんように、御提案にならんように私は希望を申上げておきます。  それから基準局長でいいと思いますが、労災問題で、労災保険に入つておらないために、災害で死んだ人にまで約半額とか或いはそれ以下の金額が渡つておる。こういう実情に対してどういう対策を立てておられるか。それからもうデフレ政策で失業者がこれだけ出て来ましてからすでに半年になつて失業保険が切れておる人が続々と出だして来た。それに今のようなただ対策だけをここで論議しておつたり或いは机上で言つてつても、もうすでにその日から食えない人がたくさん出て来ておる。これに対してどういう考えを持つておられるか。例えば一時給付なんか私たちはあれに反対でありますが、こういうことを法的に見ましたならば、ああいうことにも相当疑問があると思います。併しこの問題にはあえて触れませんけれども、ああいうことまで考えますならば、事実切れて生活ができない、而も給料も退職金ももらつておらない、こういうような実態がすでにできて来ておる、これに対してどういうような対策を考えておられるかお尋ねいたします。
  102. 亀井光

    説明員(亀井光君) 先ず第一点の労災保険の給付制限の御質問についてお答え申上げます。御承知のように労災保険は労働基準法で定められておりまする使用者の賠償責任の裏付けをいたします制度として実施されておるわけでございます。従いまして労災保険は飽くまでも使用者の負掛におきまして運営されて参るわけであります。若し仮に使用者が労災保険の負担ができない場合におきましては、労働基準法に戻りまして、その使用者個人においてその賠償をいたします責任があるわけであります。これは引続き労災保険で補償しない場合に残つて参ります。  そこで労災保険の事業運営の上から申しますと、毎年の保険料率というものはその年におきまする支出と見合う料率を以て定められておるわけでございます。従いましてその中に若し保険料を滞納する事業主があるとすれば、保険経済におきまして大きな影響が来るわけであります。その分が他の労働者に悪い影響が来るわけであります。そこで法律の規定によりまして、そういう場合の給付制限をいたす規定があるわけであります。併しながら給付制限を受けました分につきましては、労働基準法に戻りまして使用者の責任があるわけでございますから、法的には一応労働者の保護に欠くるところはないということは形式的には言えるわけであります。ただ実質問題になりますと、使用者の支払能力その他の問題がございまして、いろいろ問題が別に生じて来る慮れもございます。そこで我々としましてこの給付制限、従来のやり方は、滞納をいたしておりまする機会に事故が発生をいたしますると、例えば療養の給付でございますると三年間は給付の制限をされるというような従来の取扱いをして来たわけであります。これは多少運用上無理があるのではないか、そこで保険料をその後完納いたしました場合におきましては元に復しまして、労災保険における給付を復活するということが必要じやないか。併し他面又完納したからすぐに労災保険で給付するということになりますと、これ又悪意の使用者がこれを濫用するということもございまして、最近通牒を出しまして、滞納をいたしておりまする期間に発生した事故につきましては、その給付制限を一年間に限定をいたしまして従来の三年間も引続き制限をしておりましたものを、せめて一年間程度にこれを短縮いたしまして、その円滑の運営を図るような措置を講じた次第であります。今後はその面におきまして相当この問題から参ります摩擦は減つて参るのではなかろうかと思います。
  103. 江下孝

    説明員(江下孝君) 昨日も大臣から申上げました通り、無論失業問題が将来楽観を許さないわけであります。特に私どもといたしましては、大量の失業者が発生いたしましたのが、この四月から現在まで相当出ておりまするが、これらの失業保険金が切れますのが大体今年の暮から来年の初めになります。それからもう一つ考えなければなりませんのは、失業の様相というものは、これは全国に均一に出て参るものではないのでございまして大体におきまして大都市とか、或いは今問題になつております石炭とか造船とか、非常に特殊の機業地と、こういう所に固まつて失業者が出て参ります。  そこで今後の考え方といたしましては毎々申上げておりまするけれども、まあ失業対策の最低線でございます失業対策事業だけはこれは絶対に確保して行きたいと思つております。そこで必要な経費につきましては、この第二・四半期におきましても若干追加をいたしまして実はやる予定にいたしております。第三・四半期以降におきましても相当この経費は殖えて参ると思いますので、その点につきましては大蔵省とも折衝いたしまして、十分この最後の線を確保するという点に欠けないように実はやつておるつもりでございます。それと併せまして、実は失業対策事業だけですべての対策をやるということは必ずしも各種の様相を呈します失業情勢に対しまして適当でないという場合がございます。そこでそういう場合に対して私どもは公共事業の有効活用ということを考えて行きたい。公共事業ということにつきまして先般閣議決定によりまして、取りあえず現在行なつております公共事業につきまして失業者を優先的に斡旋するという措置を考えております。勿論これだけでは十分というわけではございませんので、今後新らたに公共事業というものについてどいうふうに実施して行くかという点について考えておるわけでございますが、やはり大都市或いは失業情勢の特に深刻な地方等においてはそれに適切な公共事業を起して行くということがやはり必要じやないか。現在経審、労働対策連絡協議会、通産省で提案されております石炭鉱害復旧費繰上げの問題、これなどは私は石炭地帯におきまする最も有効適切な失業対策ではないかと思います。労働省におきましてもこの点を強力に推進をいたしておりますが、大蔵省と事務折衝が固まりませんので、我々としてはこういう線を今後も出して参りたいということを考えております。  なお最近御承知の通り非常に地方財政が苦しいということで失対の補助率があれでは困るというようなことが相当言われております。これが一番実は地方財政の問題と関連して苦慮しておる問題でありまして、大蔵省とも何回も折衝しておりますが、大蔵省も非常に苦慮しております。すらつと考えますと、これは地方財政の問題として、地方負担分については当然地方財政の面から、例えば起債の枠を拡げるなり、或いは特別交付税で交付するという形で行くのが、これが本筋だろうと思いますけれども、併し現実の問題といたしましてはそうなかなか的確に行かない場合もあるということもありますので、一方において失業問題がとにかく一番やかましい問題であるということになりますと、単にそういう手段だけで行つても的確な効果は納めがたいという場合もあると思います。そこで補助率をどういうふうにして行くかという点も実は検討を今いたしております。ただ先ほど申しましたように、非常に技術的にむずかしい問題がございますので非常に急いでやつておりますが、取りあえずやれますのは起債の枠の拡大なり特別交付税の決定を早く自治庁にやつてもらう、あとは予算の問題と関連いたしますが、補助率の問題、こういうことで実は進んでおるわけでございます。  なお来年度の失業対策の問題につきましては、昨日大臣から申上げましていろいろ考えておりますが、なお慎重に検討いたしまして、今後失業情勢の推移に応じましていろいろ基本的な政策をきめて参りたいというふうに考えております。
  104. 阿具根登

    ○阿具根登君 基準局長の労災問題についての御答弁は、まあ一年間の給付の削減ということを言われましたが、実際労災保険を納めきらない、企業は殆んど危機に瀕しておる。そうしてただ企業を持つているだけで、賃金も払えないというところが労災保険も払いきれないのであります。そういうところで不幸にして死んだ、或いはけがをした。私が聞いておる範囲内では死んだ人に対しても僅か半額しか労災保険が払われていない。そのために子供を抱えて帰るに帰れない、こういうような窮乏なところも出ておる。こういうのに対して何か特別な考え方を持つておられるか。一年間待てとか、そういうことはとても不可能だと思います。或いは経営者が保険金を払うだろうと、払つたら直ちにやる、そういうことも一応言われたようでありますが、そういう問題でないのです。もう払う能力のない人のところでそういう労災の問題が起きておるわけですが、こういう問題に対してどういうふうにお考えになつておるか。
  105. 亀井光

    説明員(亀井光君) 労災保険は他の社会保険と違いまして、その点が非常に社会保障的な性格が比較的薄いのであります。というのは、先ほども申上げましたように、使用者の本来持つておりまする補償責任の肩代りでございます。労災保険制度がない場合には当然使用者自体がこれは補償しなければならん責任があるわけでございます。従つて保険料の算定、これはその年におきまする給付の見合におきまして保険料というものはさまつておるわけであります。そこで滞納者が殖えますると、結局保険経済というものが赤字になつて参りまして、他の労働者にその影響がすぐに移つて参ります。この点ほかの社会保険と非常に性格の違うところであります。而も料率が産業別に細かく区分されてきめられておりますだけに、非常に実施の上でむずかしい点があろうと思います。従つて一方に今のような御意見を入れますると、保険制度そのものの根本に遡つて検討し直して行かなければならんということになるわけであります。このことは労災保険制度そのものの生い立ちから考えると非常にむずかしい問題だと思うのであります。  そこで我々がせめて従来の取扱いを緩和いたしましたのは、そういう趣旨から緩和したのでございます。この趣旨は端的に申しますと、事故者が発生しない場合は保険料を納めない、事故者が出ますと翌る日その保険料を納める、そうすると給付がもらえる。こういう悪意の経営者もあるのでございます。従つてそういう悪意の経営者も又この制度で保護するということは、その影響が他の労働者にも保護に欠けて行く虞れもありまして、そこで一年間というところで両方の立場を考えながら、一年というふうに一応短縮をしたわけでございます。今のお話の個々の問題になりますと、結局は基準法上の残りの補償の問題になるわけでございます。そこで使用者の支払能力との関連になつて参るのでありますが、この問題になりますれば、当然基準局がその支払責任を履行させる行政上の義務がございますので、監督署としまして、できるだけその支払を確保するように努力をいたしております。従つて今の御趣旨をそのまま容れますることは、労災保険の根本の建て方を崩すわけでございまして、ちよつとむずかしい問題ではないかというふうに考えております。
  106. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと今の労災保険の問題ですが、デフレ経済ならデフレ経済によつて企業が非常に行き詰つて来て、こういう現象が起きているわけです。大きな目で見れば、これは資本家側にも労働者側にも或る意味では責任がないかも知れない。特に過去何年か労災保険をかけて来て、そうしていよいよこういう状態のときに、けがをした人がもらえないというのでは、甚だ以て私はそのけがをした勤労者に残酷だと思うのです。勤労者としては、そういう不時のときがいつ来ようと一応の安定ができるという楽しみがあるからこそ長い間保険をかけて来ているわけです。そこで今使用者がかけないというお話がありますが、使用者がかけない場合には労働省がもつと強い態度で従来取立てをせらるべきであつたと思うのです。何も労働者には責任はないわけです。従つてもう少し保険経済の基本になる点だから、保険経済の基礎を危くするからできないということで以て答弁されておりますが、保険制度のできて来た根本的な必要性というものから立脚して、もう少し考えて頂かなければいかんじやないかというように思いますが……。
  107. 亀井光

    説明員(亀井光君) この保険は全額使用者の負担でございます。労働者は何ら保険料の負担をいたさないのでございます。この点が他の社会保険と違うところであります。で、この法律の十八条を御覧頂きますと、「故意又は重大な過失によつて保険料の納付を怠つたときは、」というふうに出ておりまして、その間に経営者が保険料を納めるについて故意があつた。納めないことについて故意があつた。或いは納めるについて、この程度努力をしたけれども、善意の経営者として納めることができなかつたという事実の認定の問題が出て来るわけであります。そういうところから判断して、どうしても納め得なかつたということが実証されます場合には、この法律の規定から申しまして、その点の義務制限の問題も、法律にございますようにすることができるというふうな条文になつておりまして、事実認定の問題もそれに一つ加わつて参りまして、ケース・バイ・ケースで、その問題が或る程度私解決できる問題というように考えております。
  108. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私の申上げたのは、労災保険は勿論そうですが、失業保険でも大体同じようなことがあるんです。或る一定の期限以上に保険金を納めないと切られてしまう。これはやはり勤労者の負担でもないわけですから、従つて保険をああいう工合に法律化した必要性ですね、そういうところから考えて、一つ含みのあるように運営の努力をせられたいということを申上げたわけです。
  109. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働中央金面の問題ですが、労働大臣の構想の中にあるようでありますが、この労働金庫は商工中金や農林中金のように考えて中央に作りたいと、こういうようなお考えがあるかどうか、お尋ねいたします。
  110. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 労働金庫の利用につきましては各方面から非常な期待を持たれておりまして、殊に最近政府の預託について種々御要望があるのであります。私どももそういう御要望に応えまして、全幅的に一つ活用できまするような体制を作りたいと、こう考えております。併し現在の機構では、政府の預託と申しましても、なかなかこの国民の税金を預託するのでございますから、やはりそこにはつきりした主体がなければいかんというのが一つの問題、それから経済状況がどういうように変化するか、これは私どもは悪くならないようにやつているつまりでありますが、どういう際にも、非常な変動があつたという場合、又非常に勤労者の汗の結晶でありますこの預金に若しかのことがあつてはいけない、そうした観点から、上安全性の確保を図るという趣旨で中央金庫を作りたいという、こういうのであります。
  111. 阿具根登

    ○阿具根登君 中央労働金庫を作つて、これに預託するというのは、大蔵省の資金運用部の金だと私は思うのです。当然それは労働者諸君の血と汗の金でありますから、当然労働金庫に預けなければできないと私は思つておりますが、それを非常にいい意味において言つておられると思うのです。大事な金だから間違いのないようにと言つておられますけれども、大事な金だから、労働者に使えるような、或いは労働者が安心されるような制度にしてもらいたい。そうしなければその大事な金を、又政府が自分の思う通りに、労働者のほうにじやなくて、反対側のほうに使われる。或いはそれも又或る意味においてはいいこともあるかもわからんけれども、労働者の金であるから、労働者が安心するような金庫にしてやる、こういうことが私は第一条件だと思うのです。それであつたならば、その趣旨の中央の労働金庫であつたならば、労働組合が反対するわけはない。ところがどうも労働大臣の構想では、何か市中銀行と変らないような、政府の紐付きの金庫にされるなど、こういうようなにおいが相当あるから、そのために非常な反対を受けておるのであります。こういう点を考えまして、労働金庫を作られるということについては私は賛成である、作つて頂きたい。併し今までの銀行のような考え方で作つて頂くならば、それこそ労働者は自分たちの金を今度は又心配なところに預けねばできない、そういうことじやなくて、労働者自体が運営できる、労働者自体がその中で十分に発言できるような金庫にする、今四十一カ所ができております。各種の掛金を自主的に労働金庫に対して労働者は安心して金を預けつつあるのであります。立派な金庫が四十一も現にできている。この金庫の意見も十分聞いてそうして労働金庫というものは作つてもらいたい、私はこういう考えを持つておりますが、これに対して労働大臣はどういうようにお考えになりますか。
  112. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 私は誠に善意でですね、労働者の預託、預金したものが保全せられるように、それには政府というようなものがはつきり担保するという考え方から労働中金の構想を持つているわけでありますが、これはやはり金融でございますから、非常に技術的なものである。従つて労働者自身が運営すると申しましても、おのずから限度がありまして、金融的な観点から安全を担保して置かなければできませんと思うのです。そうした趣旨の善意から出ている構想です。併し従来労働金庫を作られるについて非常に努力され、又その運営において努力されている方々については一つのそういう新たなる機構を作る喜びというものがあるだろうと思う。そうした一つの運動としての労働金庫、この熱意をやはり活かすような方向で努力したい、こういうふうにまあ思つているのです。併し政府がいたします場合に、政府がこれをはつきりした中央機関としていたしまする場合に、そこにはやはりおのずから逕庭があろうと思いますから、そうした御意見も伺いつつ今私が考えているようなはつきりした中央金庫の構想というものを盛り込んで立派な案ができますように努力をいたしたいと思います。さよう御承知を願いたいと思います。
  113. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると労働金庫の人選、機構等、どういうふうにお考えになつておりますか、人選と機構ですね。
  114. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) この人選等につきましては、まだ今後の問題でございますけれども、私はやはり人事が先になつて機構ができるということよりも、機構そのものについて十分なる合理性を持たして新たなる中央金庫を考えるというほうが筋じやないかと考えるのです。先ほど申上げましたように、それにつきましてはいよいよ運営されるという際におきましては、いろいろ従来からの金庫運動といいますか、そうした新らしい機関を作るという熱意を長きた亙つて持たれた方々の意見を十分尊重したいと思います。併し機構については誰がやるからいいということじやなくて、中央金庫という中央的な金融機関の性格をどうするかという、機構的な制度的な問題を十分に他との関連もございますから考えたいと思います。
  115. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうすると機構の構想は大体どういうふうになつておりますか。
  116. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) まだこれは大蔵省ともいろいろ意見を事務的に折衝いたしている段階でございまして、今のところこの席で十分申上げる具体化したものはないわけでございます。一応新聞に出ておりますが、あれはまだ非常にいわゆる素案中の素案とも言うべきもので、まだ今後において十分考えるべきものであると思います。
  117. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますと今の労働金庫は中央連絡協議会のようなものでありまして一応その運営については自主性を持つておるかに私は聞いておりますが、今労働大臣がその構想されている労働中金というのも、直接利害関係を持つ労働者の団体の発言が運営の上に十分反映できるような、そういう機構を労働金庫の全体の機構の中へ含まれるようなお考えがあるかどうか、それを伺つておきたいと思います。
  118. 中西実

    説明員(中西実君) 中金の構想は一応はございますが、先ほど来大臣がおつしやつておられますように、大蔵省、それから金庫関係の人たちとまだほんの下交渉しているという程度でございます。で、我々中金を考えておりますのは、実は最近でありませんで、もう今の金庫法制定当時の実は構想であるわけなんであります。そこで我々の中金に対する期待は、結局今大金庫はともかく、地方には小さい金庫も相当ありまして、これあたりは実は自主的にと言いましても極めて貧弱な状況になつております。これあたりのためにやはり中金というものは必要じやなかろうか。更に又いろんな労働者の厚生福祉施設、こういうものに対して長期低利な融資ということが是非必要なんでありますけれども、今の労働金庫、これの連合会というようなことではうまく行かないのじやないか。更にこれは又或いは将来の問題かも知れませんが、最近この委員会でもよく言われております融資に対する保証の制度、これはやはりやる場合にはどうしても中金というような組織でなければ興行はできないというようなこともありまして、我々は実は全くの善意でこの中金というものを考えているわけであります。  ただ今の労働金庫法の中に連合会を作り得る規定がございまして、従つて現在の労働金庫の幹事役の方々がこの連合会を作るということでずつと進んで来ておられます。そこで、ここで今回若し中金をやるということになりますれば、連合会をそつちのほうに変えなければいけませんので、その間やはり利害その他でいろいろ意見があるわけでございます。我々としましては勿論中金を若し作るといたしましても、各府県の労働金庫が出資その他密接なる関係を持ちますので、これらの意向というものを無視してはなかなか実行は困難だと思います。目下十分に意見を徴しつつ、できれば我々の理想とする中金をまあ作りたいというふうに考えております。ただ非常にほうぼうにいろんな意見がございますので、目下素案によりましてその意見を調整しつつあるという段階でございます。
  119. 赤松常子

    ○赤松常子君 問題は別でございますけれども、大臣はいろいろと政案お進めになる際に世論を聞いてやつて行きたいとおつしやつておりますことでもありますし、大変結構だと思つております。ところが最近中央基準審議会で三者で決定いたしました事柄で、その後大変変更されている問題がございまして、ちよつと私そのいきさつをお伺いしたいと思うのです。というのは新入工に対しまして賃金規則とそれから寄宿舎規則及び就業規則は見せなくちやならないということは三者で意見が一致して答申いたしておりますのに、七月から施行いたされました基準法の中に寄宿舎規則だけ見せなくてもいいということに変更されておりますことはどういうわけなのでしようか。
  120. 亀井光

    説明員(亀井光君) 答申のございましたときにおきましては、お話のように施行規則の第五条の第三号に入舎の条件を書くというふうなことでございますが、その後使用者側のほうからあのとき賛成をしたのは、実はその内容について誤解をしておつたので賛成をしたのであるから、あの賛成は取消すという正式な申出がございまして、従いまして実質的には三者の意見が一致しなかつたという結果になつておるわけでございます。従いまして我々としましてその問題をどういうふうに考えるかということでいろいろ検討いたしたわけでございまするが、公聴会等の意見もございまして一応全部削除いたしました。その代り目下中央基準審議会会におきまして審議を頂いておりまする事業附属寄宿舎規程におきましては、あの答申の通り一条新たに設けまして、寄宿舎に入舎いたします労働者につきましては寄宿舎規則を明示する義務を使用者に課する一条を設けたい、かように思つておるのでございます。
  121. 赤松常子

    ○赤松常子君 事実上は見せることになつたのでございますね。
  122. 亀井光

    説明員(亀井光君) 事業附属寄臓舎規程の改正ができますれば見せることになります。
  123. 赤松常子

    ○赤松常子君 私、使用者側の委員は任期が切れている人があとでそういうことを申し出たということを聞いたのでありますが、正式には委員の時代を過ぎて、委員の資格が消滅した後に驚いて申入れられたということを聞いたのでございますが、そういう正式な委員でない人の意見が取入れられるということを私非常に不思議に思うのでございますが、その点はどうだつたのでございましよう。
  124. 亀井光

    説明員(亀井光君) 時間的には或いはそういうこともあろうかと思いますが、実は労働者側からも同じような、賛成をしたことが実は反対であつたという申入れもございまして、これは坑内労働につきましての時間計算の第二十四条の規程、従いましてこれも同じくやはりあとで出ておりまするが、やはりそのときの委員でございますので、そのときの委員としての御発言というふうに我々は考えまして、これも又その御意思を入れまして、答申と違いまする結果、即ち二十四条につきましては改正参をしないことにいたしまして、そのまま残したのでございます。従つて形式的には今任期が切れたと申しましても、実質的には前委員でございますので、我々はその実体を主体としましてその御意見というものを尊示したのでございます。
  125. 赤松常子

    ○赤松常子君 私、あとのほうは新らしい事実と考えまして……、私、そういうことを、労働者側もあつたし、経営者側もあつたということを両方つたのでございますが、併し委員でない人が言うことをそのまま取入れるということが前例にならないでしようか、いずれにあつても私はいけないことではないかと思うのですが……。
  126. 亀井光

    説明員(亀井光君) 答申そのものはかねがね御答弁申上げた通りに、答申そのものに従つて政府はいろいろな改正なりを考慮しなければならないという実は法律上の義務はないわけでございまして、答申に言うまでもなく労働大臣の諮問に答えまする答申でございまして、政府はその中から全員の意向というものを汲み取りまして、できるだけ答申の線に沿つて実質的な改正その他を考えるという従来の立て方をとつております。そこで形式的には或いは任期が切れているかも知れませんが、現実的には従前申上げた委員でございますし、それから又現実にそれに当つて反対の意向が出ますと、我々としてはやはり実質的なものとしてその御意見を尊重して問題を考えて行かなければならん義務があるのではないだろうかというふうな気がするのでございますが……。
  127. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  128. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて下さい。  只今具根委員から懇談のときに御提案がありました中小炭鉱の危機打開に対して直接事情を聴取いたしまするために、明日直接関係者の諸君を参考人として当委員会で招致いたしまして、実情を調査いたしたいと思います。呼びまする参考人の人数或いは氏名等は委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 御異議ないと認めましてさように決定をいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会