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1954-08-06 第19回国会 参議院 労働委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月六日(金曜日)    午前十時十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君            田畑 金光君    委員            早川 愼一君            阿具根 登君            吉田 法晴君            村尾 重雄君            市川 房枝君   国務大臣   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    通商産業大臣  愛知 揆一君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    通商産業省鉱山    局長      川上 為治君    通商産業省石炭    局長      齋藤 正年君    労働省労政局長 中西  實君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省婦人少年   局婦人労働課長  谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   —————————————   本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件  (デフレ政策影響雇用安定に関  する件)  (総合的失業対策に関する件)  (近江絹糸株式会社における労働問  題に関する件)   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  本日の会議に付しまする主なる事件は、労働条件一般に関する調査、昨日に引続きまして、デフレ政策影響雇用安定に関する件、総合的失業対策に関する件であります。  今日は通商産業大臣出席を求めておりましたところ、十一時三十分まで出席を願えることになりました。只今経済安定委員長と打合せをいたしまして、十一時四十五分まで経済安定委員長のほうは了承して頂きましたから、さように御了承願います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。  通商産業大臣及び経済審議庁長官としての愛知大臣に一言申上げます。実は七月の七日の委員会に御出席を願う予定をいたしておりましたが、御都合が悪いために、当時の古池政務次官が御出席頂きまして、只今問題になつております点について所信を質し、質疑応答をいたしたわけであります、そのときに古池政務次官から責任を以て御約束を願つておりますので、その点について一言申上げたいと思います。  只今問題になつておりまするデフレ経済政策影響産業の萎縮の面は勿論でございますが、これに付随いたしまして相当重要な失業問題を今提起しておるわけでありまして、従つて委員会といたしましては、労働省中心にして総合的な失業対策立案を願い、それを聞いているのでありますけれども、こうなつて参りますと、単に失業対策だけでは問題の解決にならない、どうしても経済政策と申しますか、産業政策というようなものが明らかになつて、このデフレ政策の底を大体いつ頃において、そうして雇用量の増加に向うような政策がとられるか、そういうような問題、更に金融引締め政策経済政策産業政策産業振興に関する関連性というようなものも明らかになりませんと、徒らに大勢の国民に不安或いは動揺を与えるだけだと思いますので、こういう点について実は七月の七日の委員会におきまして古池次官からも表明がございましたが、当委員会といたしましては経済審議庁通産省労働省大蔵省、その他関係各省と十二分に連絡を取つて一つ総合的なデフレ経済影響雇用の安定に関する件という積極的な対策、それから一つは総合的な失業対策、この二本建で御研究を願いたいということになつているわけでありまして、爾来新聞等によりますと若干御研究を頂いているように存じすが、今日は一つ責任長官であられる愛知さんから一つ詳しく御説明を頂いて、あと質疑に答えて頂きたい、こういうことに御了承頂きたいと思います。
  4. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 只今お話に対しまして私からざつと御説明申上げたいと思います。  先ずこのデフレの問題でございますが、第一に政府といたしましては一月来実行いたしておりまするデフレ政策についてこれを変更するということは全然考えておりません。と申しまするのは御承知のようにこの政策の終極の目標といたしておりますところは国際収支改善ということに大きな重点をおいておるのでありますが、御承知のごとく六月、七月と相次いで久しぶりに日本国際収支が黒字になつて参りましたし、その方面においてその後顕著な成果を挙げておるというように考えるわけでございます。いま一息の努力と存じまするので、今後根本的な考え方デフレ政策を遂行するということは変えないで参りたいと考えております。  併しながらあとでもいろいろとお話が出ると存じますけれども、例えば物価の問題にいたしましても、或いはその他の面におきましても或る程度のひずみと申しますか、或いは下降現象が起つている。それを、そのひずみを成るべく起さないようにというような点について具体的或いは総合的な対策というものは常々心がけて行かなければならないことである、こういうふうに考えておりますので、政府といたしましても新しいこの状況の下において振り返つていわば新らしい経済政策を、更に一段と現在やつておりまする政策を補強する意味で新らしい政策を最近において立案して国民の批判を仰ごうということを考えておるわけでございます。その時期は成るべく速かにと考えておりますが、恐らく八月中、或いはもう少し最近のところで発表することができると考えております。その際これらの新らしい考え方を盛り上げますると同時に、或いはそれに先んじて、只今御指摘の通り労働問題につきましては、昨日も最近の経済事情について説明を或いはお聞き取り頂いたかと思いますが、労働調査によりましても、五月の完全失業者が五十八万人というような数字が出ておりまするし、そのほか公共職業安定所求人求職状況、その他から見ましても、或いは賃金の支払の趨勢等から考えましてもかなり憂慮すべき状態にありまするので、先般来この問題については取りあえず総合的な立場から労働問題を取り上げなければならないという観点から、経済審議庁各省協力の下に労働問題協議会ともいうべきものを取りあえず設置いたしまして、関係各省知慧を集めて当面する失業問題、労働問題に対する具体的な手を打つことにいたしたいと存じます。  その手初めといたしまして、例えば公共事業等による失業者吸収措置強化という問題についてはすでに協議会でも一案を作りまして、開議決定をして各省に指示をし、或いは予算配賦等について特段の措置をするというような具体的な執行の運びに入つておるようなわけであります。それから更に根本的には大企業、それから特に中小企業等を通じて安定策を講じたい。企業倒産等についてもできるだけこれを防止する。失業者の発生を未然に防止するような措置を根本的な考え方としてとりたいと思うのでございますが、併し一方重要産業企業経営合理化等を重点的に推進しなければなりませんので、その合理化計画確立等に関連いたしまして、職員その他の退職等の問題についてやはり十分事前配慮して、関係方面連繋をした施策を講じなければならない、又退職金その他の問題につきましても十分な金融上その他の配慮をしなければならないというふうに考えておるわけでございますが、止むを得ず発生する失業者につきましては、例えば物の考え方といたしましては、輸出振興策なり或いは新規の産業育成策によつてその吸収を図るというような考え方は勿論でありますけれども、例えば公共事業或いは鉱害復旧事業といつたようなものを、企業のほうの合理化と併せて一環措置として、連繋を緊密にして失業対策事業をやらなければならない、そういう方向配慮を必要といたしまして、先ほども申しましたが、その一部についてはすでに政府考え方をとりまとめて実行に移すようにいたしたいというような関係にあるわけでございます。  一応簡単でございますが、最近の私どもの考え方並びにとつております措置は以上の通りでございます。御質問に応じていろいろお答えいたしたいと存じます。
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 質問に入ります前にちよつと一点だけ伺つておきますが、実は八月四日の東京新聞に「政府与党政策立案を急ぐ」というので経済三カ年計画に対して相当詳しい記事が載つておりますが、これは只今大臣がおつしやつた八月中には何とかまとめたいとおつしやつております内容の一部か、或いは全部かを伝えたものと理解してよろしうございますか。
  6. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 八月中に政府与党を通じて経済政策について考え方を取りまとめたいと考えていろいろやつておりますことは事実でございますが、まだこれは新聞に伝えられるほど固まつたものではございません。それぞれの役所、例えば経済審議庁通産省大蔵省といつたようなところ、或いはその他の面におきましてそれぞれ受持の面から見ますとこういう点に配慮を必要とするということを取りまとめていることは事実でございますが、またこれをつき合せて総合的に編成をする運びには至つておりません。
  7. 田村文吉

    田村文吉君 断片的に一つ伺つてみたいのですが、大蔵大臣の御意向では或る程度物価を下げつつある。そうして二割程度下げないと輸出というものの振興ができないような状況にある。二割下げるためには今年は六分とか七分とか下げるというようなことでいつておられるのですが、今のような不況の状況を、一体大蔵大臣の言われるように二年も待つているなんてことでは大抵のものは皆参つてしまうだろうと思う。そこでどうしても根本的に、どうして輸出振興をして国内産業振興せしめるか、こういう問題が起つて来ると思うのです。そこで通産省でも或る程度考えになつて、いろいろな方法をお考えになつているようでありますが、第一に国際貸借改善という点からいつて、成るべく一つ贅沢品やそういう物は輸入されないことが第一に考えられる。昨今新聞でも国産品愛用運動というものが盛んに起つている。そういう問題について通産大臣無論御同感だと考えるのですが、さりとて余りに世界的にこれを何か狭い考え方のように、国産愛用外国品は使わないのだというふうに取られることは不本意でありますが、さりながら今日の状況からいつたら、どうしたつてみんな国産品を使うというふうになつて行かなければならない。これはひとり通産省の問題だけではありませんが、何かそれに対して通産省はお考えになつている点があるかどうか。例えば一番大きな問題として昨日も石炭業関係の諸君の公述で聞いたのですが、石炭原価で千円も安くなるというようなことを言つておられたのですが、石炭自体が昔の物価指数の割合からしてまだ高いところにあつたから非常に今苦しみをしておられるということでありますが、一面そういう点についての努力苦しみをされるとしても、一方において単に設備ができていないというようなことから困るということの理由で重油を入れなければならんということもこれは実際考えられるのですが、こういう点からして、第一点は石炭燃料のごときは何とかして国内石炭の単価を下げ得るものは或る程度下げさせて、その代り国内石炭というものはフルに一つ生産をやりなさいということを考えて行くことが一例であると思う。それから不要不急の物を入れないということも、これは一つ国産奨励ということから見ますが、やはり非常な必要なことになつているのですが、どうもそういう点について為替で或る程度までチエツクをしていらつしやるようなことは承わつておりますが、また非常にそういう点についての政府施策がのろいと思う。今日いわゆる国民耐乏生活をせざるを得ないというようなことで、今日も新聞を見ますというこ京都府では職員賃金の七分をお預りなする、せざるを得んというような状況になつて、これは恐らく日本中に拡まつて行くような状況下にあると思うのです。これも或る程度止むを得ざるデフレ下における当然な帰結ではあるのでありますが、一面において何とかそういう点について輸出振興及び国内産業がそれによつて起るというような方法考えて行かなければならないと思うので、いろいろ御対策もおありと思うのでありますが、輸出振興に対してどういうことをお考えになり、又輸入品防遏に対してはどういうふうに実際にやつておられるかと思うのですか、そういう点をできるだけ一つ詳細にお知らせ願えれば結構だと思います。
  8. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この輸出振興、それから輸入防遏国産品愛用運動といつたことについては、只今お話のような根本の御趣旨においては全く御同感でございます。なかなかテンポがのろいという御批評がございまして恐縮なんでございますが、これは先ず第一に、やはり常道の手段として外貨予算編成の当時において御説明いたしたと思いますが、いわゆる不要不急品という物は徹底的に輸入する外貨割当を取つたわけでありまして、例えば乗用自動車完成品を初めといたしまして、例えばテレビでございますとか、そのほかのそれに類する物は全然外貨割当をしないことにいたしました。それから、併しながら外国との通商協定等によつて、例えば若干のイギリスのウイスキーでありますとかいうようなものは両方の話合い或いは通商協定関係から、どうしても止むを得ないものはこれは協定上認めておりますし、その輸入は若干はいたしておりますが、それ以外の物は原則的にやらないことにいたしております。これは金額としては累次詰めに詰めて来ておりますから、その全額割当内といたしましてもその額はそう大きなものではございませんが、これは精神的にも非常な効果があるものと考えておるわけでございます。  それから原材料等輸入については、今年の日本全体の生産活動を維持するに足るだけのものは入れなければなりませんが、大体計画の当初において三十億ドルの輸入計画相当シビアなものではなかろうかと懸念いたしましたが、その後半年、四月以降半年になりますが、四月以降の状況を見ましても、金融の引締め或いは国内生産活動推移等から鑑みまして、大体この程度が合理的な水準であつたというふうに今翻つて考えております。  それから例えば重油問題等につきましては、これも詳しくはいずれ又お話が出るかと思いますけれども、今年の六月に入りましてから例えば大体三十万キロ・リツトルの庫出実績、出荷の実績になつて、おるようでございまして、行政上の指導とそれに対する国民協力といいますか、需要者側協力がだんだん具体的に成果を挙げて来ているように見受けるわけでございます。従つてこれらの点についても不必要に多くの外貨割当られないで済むのみならず石炭対策等の強調で或る程度維持して進んで行くことができるのではなかろうか、こういうふうに考えております。  それから国産愛用の問題については、先般発行いたました経済白書にもたしか出ておるはずでございますが、総じて百円の買物をすれば十七円乃至十八円は外国産のものである。こういう事態にも考えまして、できれば消費を節約し、或いはその消費の中でも特に外国品を或いは材料に使つているような製品を買うことを抑制して行かなければならないという運動を展開したということで、最近におきましても労働関係機関等において、相提携して、政府側とも協力をいたしましてその運動も始めたような次第であります。  それからもう一つ申上げたいと思つておりますことの一つは、今年の当初以来私の考えでは経済政策の焦点を、一つの大きな柱は、何としても輸出振興にあると考えましたので、できるだけ短い期間においてできれば二十億ドルということを目標にして正常の輸出をできないものかどうか、それについて先ず目標作つて計画的に作業をし分析して見る、そして飜つて国内経済政策をどういうふうに展開したらいいかということを併せ考えるということでずつと研究を続けて参りましたが、一応の目標として、昭和三十二年度において正常なる輸出が十七億ドル余り、十七億四千万ドル近く期待できると、これはいわゆるリンク制であるとか、補助金或いは補給金とかいういわゆる人為的な術策を用いずして正常なる輸出努力を積み重ねることによつてこの程度は達成可能の目標になり得るという結論が出ましたので、これを飜つて産業部門等について、更に業界に、これをなし遂げるためにはどういう具体策が必要であるかということを詳細に只今研究いたしております。で先ほど申上げましたようにできれば今月中に打出したいと考えております。政府全体の総合施策の中の一つ中心課題として取上げることにいたしたいと思つております。でこれは例えば輸出目標制を採用する、輸出目標制というものも具体的にどういうふうにやつたらいいかということは更に研究をいたしておりますが、その目標を策定し、そうして計画的に輸出の伸長の期待できる産業を助成して行くということに力を向けて参りたい。又具体的な問題としては生産業者輸出業者を一貫した輸出のための協定というようなものを作ることを容認いたしましとて、生産輸出体制強化するということを以て考え方中心にして参りたい。そういう関係から或いは輸出入取引法改正というようなことも次の通常国会のときにはお願いいたしたいと考えております。それから貿易商社強化輸出金融改善というようなことについては先般来或いは声明し、或いは具体的な措置を講ずる等相当の進度でこの点につきましては行政上の施策も進めておるつもりであります。  大要以上申しましたような点を我々の努力中心課題としておるような次第でございます。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 いろいろ御苦心になつている点は了とするのでありますが、輸出の問題になつて参りまするというと、幸いにこの六、七月の二カ月はちよつと小康を得たというように私拝見するのですが、まあいろいろ事情もあり、又季節的な問題もあつて楽観は許されない、こう考えるのであります。殊にこの昨今におきましては相当出血輸出状況を感じられますので、原価が下つて来て正常価格が出ておるならばよろしうございますが、相当出血輸出をしておる、こういうふうな状況もあるので、果してこれは回復するかどうかということの問題、それが一つと、もう一つは現在のアンバランスが、まだ特需というものを見ておりますので計算に入つておりますが、特需というものはまあだんだん減ると見るのが常識でありますし、どうしても日本の独立ということになる限りにはよほど乾坤一擲の、いわゆる吉田さんの乾坤一擲方向輸出というものが展開されることを考えないと、なかなか今の特需が減つて来たような場合、或いはなくなつて来たような場合において国際収支をやつて行くということはできないというように私は考えるのであります。  そこで輸出振興で一番、そう言つちや何だが、邪魔になるのは独禁法だ、独占禁止法というものがあるために何かにつけてすべてが邪魔をしておる、こういうわけでありますが、ああいう非常に押し付けられた法律があるために輸出のほうも阻まれるのみならず、国内におきましても経済が、仮に日本としては余るときには一遍に余つており、足らんときは一遍に足らん、こういうことがありますので、こういうものを或る程度消化できるということが業者自体でできるようになつておらんというと経済というものはうまく行かんと思う。これは前の政務次官にもあなたによくお伝え願うように話しておいたのでありますが、今までの経済、過去おいて我々いろいろの経済の恐慌にも会い、又不景気にも会つて来たのですけれども、今日のように一方において労働問題で非常に経営者というものは経営の自由の手腕をとることができない状況になつておる。一方において独禁法によつて抑え付けられておる。こういうことでは浅い日本経済としての運行ができないのだ。それを平気でただ金融の引締めさえやれば物価が下るのだという非常に甘い、単純な考え方でやつて行かれたのでは困る、こういうことを心配しておつたのでありますが、通産大臣は多少そういう点についてはお考えになつて、特に産業経済生産者と十分に御接触の機会もあるのでよほど御理解はあると、こう私は信じておるのでありまするが、どうもそういうような一つの大きな根本的にその考え方が狂つておるような私気がするのですね。それで今度の一体不景気なんというものが金融の引締めで以て不景気が起つたと思つておるというようなこと自体が非常なる大間違いである。無論それは動機になり、きつかけにはなつたけれども、今まで日本経済というものがだんだん伸びて来て、先ず生産飽和点に達したというときに、こういう時期に丁度金融引締めというものをむやみやたらに言い出されたということが今日の非常な困つた状況になつているんです。だからこういう場合には現在の生産指数が一五〇幾つになつておりますか、こういうものをなお一体継続して行き得るというお見込みがあるかどうか、これも一つの問題でありまするが、そういうような点からして、この問題はそう簡単に行くわけではないのでありまするから、ただ金融引締め一本でこれをやろうとすれば必ずほうぼうにそういう問題が起きて来ると、こう思うのであります。  先ず一番我々は可能性のある問題は、独占禁止法というようなああいう厄介な法律が今日輸出の面においても又内地の需給の調節の面においても非常に邪魔をしておると、こう考えるのでありまするから、これは一日も早く全廃されてくれれば一番結構なんでありますが、できない。我々はこれに対して解決する方法考えなければならない。それで輸出の場合になりますると或いは輸出振興に関する特別の会社を作つて、そうして輸出に対してはいわゆる独禁法というものからは除外されて、而も窓口一本で国外に出て商社が競争するというようなことをすると同時に、輸入に対しても国内業者が非常に競争して高い物を買い付ける、こういうことにならないような方法一つ考えて頂くというようなことで、輸出入に関する法律一つ作る必要があるのではないか、こんなふうに考えておりますが、今総合対策の中の一環としてですね、通常国会というお話もあつたのですが、私はこの経済の問題はそんな悠長に待つていられない。実はもう町に相当失業者があつて、毎日の三面記事を賑わしておるように自殺をする人が出て来たり、随分実際困つている場合が多いんです。単にこれは失業者公共事業吸収すればいいんだという簡単な方法ではいかん。どうしてもこれらの産業というものは或る程度安定させる方法考えて行かなければならないと、こう思うのですが、それでどうも通常国会まで待てばいいのではないかということも言い得ないので、通産省としてのやり得る現在の法律下においてどういうふうに一つつて行く方法をお考えになつていらつしやるか、多分各種の御考慮もあると思いますが、その辺のところはどうですか。
  10. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この独占禁止法の問題につきましては、かねがね田村委員の御意見は私もずつと前から拝承いたしておりまして、敬意を表しておるんでありますが、ただ今日この独占禁止法を全面的に廃止するというようなことは政府としては考えておりません。  それからその改正等についても、申すまでもございませんが、前々国会でございますかに相当改正が施されておりまするので、運用の面や或いは公正取引委員会の何と申しますか、運営の考え方なりかまえ方によつて改善される面も非常に多いように私は思うのでありますが、それは先ほどもちよつと申しましたように十分一つ改めて考えまして、将来の措置考えることにいたしたいと思うのでありますが、ただ先ほどまあ申しましたように、輸出についての輸出取引を安定する、且つこれを強化する、そういたしました場合に、例えば生産者の段階において価格なり数量なりその他の事項について協定をするとか、それから輸出組合の場合にアウト・サイダーに対する規制を行うというような問題、こういうようなことについては、これは私は輸出入取引法のほうで改善措置考えたい。それから又中小企業の安定については中小企業安定法の運用というようなことによつて相当これは通常国会法律案の問題とする以前の行政上、運営上の問題としてもいろいろやれることは私はあると思いますので、この分を取りあえず行政上取上げたい、併せて将来法律全体の改正ということも考慮をして参りたい、こういうように考えておるわけでございます。  それから生産の見込等についてはなかなか微妙なところで的確な見通しをつけ切つておりませんけれども、やはりこの時期においては生産の或る程度の縮小、それから国際収支等についてもやはり縮小均衡といつたような考え方はどうしても止むを得ないと思うのでありまして、この時期をできるだけここ暫らくの間は切り抜けて、その上に拡大均衡というものができるように考えて参りたいというように存じておる次第でございます。
  11. 田村文吉

    田村文吉君 今の最後のお話の問題でありますが、これは私ちよつと考え方が違うのですが、一応縮小均衡ということをお考えになるのは無理はないと思うのです。又或る程度輸入の贅沢品を減らすという考えから輸入が減るのですから、当然そういう意味においての縮小均衡ということも考えられないわけはないのでありますが、今国内で八千六百万の人たちがどうにか食つて行かなければならない問題に当面している。まあ甚だ言葉が悪いのですが、成る程度鎖国的な考えでもいいんだから、国内国内で生きて行くということを一つ考えなければならない。ただ食糧は足りない、食糧はできるだけ国内で需給するけれども、外国から持つて来るものは止むを得ない。やはり食糧は入れる。これに対抗してやはり輸出というものもできるだけ一つやる。今日一五〇幾つになつておる生産指数は下げないで、一つこれを維持してやつて行く方法はないか。こういうところが私一番今日の政策の分れる問題じやないか。或いは私の申上げることが放漫だとお考えになるかも知れないけれども、私はもうここまで来ると、これを縮小してしまえば失業者は町に溢れるのはきまつている。きまつているので、じや溢れても或る程度止むを得ないのじやないかということはちよつと言い得ないのでありまして、無論公共事業で或る程度吸収なさるとおつしやつてもやはり予算を伴う問題でありまして、公共事業吸収ということは言うことはやすいが、なかなか実際問題としては困難である。できるだけ自由主義経済においては自由に、お互いに創意工夫によつてこれを活かして、できるだけ失業をなくして仕事を活かして行く、こういうことが必要なのです。先ず第一に、それでさつき申上げましたように外国から持つて来んでいいものを外国から持つて来てやるということはこの際とめてしまうということ、国内石炭原価を下げてもらう、労働者に耐乏生活をしてもらうが、生産費も安く上げて、これを外国から持つて来るのはやめてもらう。こういうことになれば炭鉱というものは生きて来る、こういう考え方に持つて行くべきだ。これは私自分の関係している仕事を申上げては恐縮なんですけれども、人絹パルプにいたしましても、外国から七万トン以上の輸入品を持つて来る。業者に言わせると、輸出するから輸入がそれくらいあつてもいいんじやないか。今日の日本輸入状況考えると、外国からパルプを持つて来んで、国内にあるパルプでそれでやつて行こうじやないか。一、二年しているうちにどうにか日本経済というものも非常に落着いて来るのじやないか。こういうように、こういう場合においてはそういうようなことが非常に多いのじやないかと思う。国内においては無論物価が下るということは私ども結構なことだと思うのですが、そうかといつて仕事がなくなるということにならないように、物価が下つても下つたで、お互いの経済をがつちりと一つ苦しいながらも辛抱して、失業者を余り出さないようにやつて行けると、こういうことが願わしいように思うので、或る程度まで甚だ鎖国経済みたいな形になるかも知れないけれども、その点は一つ考えになつて頂いていいのじやないかと思うのでありますが、今の経済の一五〇幾つのものを一三〇にするとか一〇〇幾つに縮められたのでは、これは又非常に失業者も今以上に殖えることになるので一応心配なんで、ただそれを公共事業吸収すればいいじやないかという簡単なことじやなかなかいかないのじやないかと、こう思うのでありまして、まあ甚だ意見を申上げて恐縮でしたがもう一度大臣にそういう点についてのお考えを願えれば結構だと思います。
  12. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 川村さんの御意見は一つの御意見といたしまして十分参考にいたしたいと思いますが、ただ私もこれは政府を代表してというようにまでは申上げかねると思いますが、私はこの経済合理化というようなことは、やはり合理主義の基礎に立つて飽くまで考えるべきものである。で、失業の問題或いは雇用の問題ということも考え企業体が合理化というものを考えて行くというと、そこにこう焦点がずれて来るのじやなかろうか。そこで私は失業の問題は全体の総合対策の中で政府が一応これに対して、できるだけの配慮を払つて行かなければならん問題でございますが、私企業体の企業合理化という点については、この点はもう少しこの合理主義で徹して考えて行つたほうが、却つて全体を何と申しますか、割切つて進むことができるのじやなかろうかというような感じもするのでありますが、只今の御指摘の点は実は私も非常に問題にしているところでありまして、井上財政当時においてこういうふうな問題が国内でどういうふうに考えられ、どういうふうな結末になつたか、これらの点についても過去の経験を十分調べて今後のやり方についての参考にしたいというような面も、政府部内でも深刻に検討している問題でありますことだけ申上げておきます。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 労働問題から出発して経済政策、その他政府の全般的な施策に対して質問をするわけですが、私は第一に、昨日労働大臣にお尋ねをしたのですが、労働省として操短に伴う一時帰休制度を考える、或いは公共事業失業者吸収する措置考える、こういうまあこの辺が労働省考えられた当面の対策のいわば骨子のようであります。そこで昨日も労働大臣に、雇用というものを全体としてどういう工合に考えられるのか、再軍備を伴いますデフレ政策を行うと申しますのは、単なるデフレ政策ではない、軍備或いは軍需という方面にはインフレ政策がとられながら、その他の部面については強硬なデフレ政策がとられる、こう私ども理解をするのですが、そのデフレ政策の結果、商業部面或いは中小企業のみならず、大企業にもそのしわ寄せが、結果が及んで参ります。で具体的に言いますと、炭鉱から始まつて造船、鉄鋼のみならず、全国的に深刻な様相を示して参つている。私どもが九州の炭鉱等を見ますと、或いは或る炭鉱のごとき労働者が炭車だとか、或いはレールとか、これを売つて退職金なり或いは賃金不払金に充てているといつたような事態もございます。或いは県等も心配をしていろいろやつて参つたけれども、もう県或いはその炭鉱の労働組合の何と申しますか、もう暫らく待つてくれというのを乗り越えようとする事態までも起ろうとしている。いわば労働問題、社会問題が治安問題にまでなろうとしていると言われる原因であり、ゆえんであります。  そこで通産大臣と申しますか或いは経審長官としては全体の雇用をどういう工合に考えておられるか、出て参ります失業者、これは先ほど完全失業者五十八万という数字も大臣が挙げられましたが、これをどういう工合に考えられておるか。今、田村委員質問に答えて、合理化は合理主義に貫かれなければならん。雇用のことを考え合理化考えると焦点がぼけると、こういう説明ですと、賃金を引下げる或いは労働条件を強化する、特に首切りの前に躊躇逡巡したのでは合理化はできないじやないか。これは冷酷に過ぎ、そうして出来た失業者をどういう工合に吸収するか、それを或いは考えられているような帰休制度或いは公共事業吸収をする、こういうことで、そういうふうに考えられておると、こういう御方針のようでありますが、そうでございますかどうか。若しそういうことだと、これは曽つて池田さんが言われたような、失業者はどんどん出ろ、その中から或いは一家心中が出て来ようとも或いはどういう事態が出て来ようとも、これは当然合理主義の結果である。かようになると思うのであります。田村君が言われましたけれども、石炭或いは鉄鋼、造船その他中小企業にいたしとましても、この日本の現実の中にある産業、或いはその中にある労働者というものを維持することが問題であり、その中で或いは合理化は結構でございましよう、或いは生産費の引下げ、或いはそれによる工業の進展ということも考えなければならんと思うのでありますが、縮小再生産か縮小均衡か、或いに拡大生産経済規模の拡大かという、こういう基本的な問題もございますが、多少田村委員質問に答えられましたけれども、雇用問題に関連して重ねて御答弁を願いたいと思のであります。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私が先ほど申上げましたように、私の個人的な考え方としては今申上げましたように考えられると思うのであります。併しこれは一つ政策として展開いたします場合には、受入態勢なり、他に吸収できるところの職場というものが別個に用意されておるという前提がなければこれを徒らに推進することはできないのでありまして、そういう場合におきましては非常な社会不安が起るということは申すまでもございませんし、そういうものを起そうと考えているわけでも毛頭ございません。  それから前にも、国会開会中にも御説明申上げたのでありますが、昭和二十九年度中におけるところの生産の見込等から申しますと、完全失業者の殖える殖え方というのは殆んどネグリジブルであるというような計画をしておるのでありますが、その点はその後の情勢の推移に応じまして多少見方を変えなければならん必要も起つて参るかと思いますけれども、今後におきましても差当りのところにおいて厖大な失業者を巷に吐き出すというふうには私は考えておりません。先ほど田村委員から御指摘の通り、理窟はともかくとして、現実の生産の指数もそんなに下つておらないというような状態でございます。それから又他の面から申しましても、デフレ効果の非常によく現われているところもありますが、逆に今金融独走だ、金融の引締めだけで物を行なつているというようなお話もありますが、具体的に数字の上で見ますると、日銀の貸出しも殖えておれば、市中銀行の貸出しも殖えているというような状況でございますので、実際の政策の展開の上におきましては十分いろいろの条件を勘考して、余りドラステイツクにならないようにということは今後もやはり続けて行くべきだと考えております。
  15. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点はこれは完全失業者の増大は大して予想しておらなかつたが、多少見込み違いがあつた。そこでまあ対策を立てるに併しそうドラスティツクな様相は呈しない、こういう極めて楽観的なあれでありますが、併し中小企業或いは石炭、鉄鋼、その他相当この治安問題に近付きつつあるという様相が出て来た。私これはもう否定できないと思います。それに対して多少の対策と言えば、帰休制度にしても公共事業吸収にしましても弥縫的な対策でしかないと思うのであります。昨日両方併せて十五、六万の吸収が可能であろうと言われましたが、帰休制度のごときは殆んど今まで申出がない。恐らく公共事業吸収にしましても、緊急失業対策法の欠陥から十五、六万の吸収なんというのは到底これは不可能だろう、細かいことはともかくといたしまして、恐らく所期されるような効果は出て来ないじやないか。  そこでまあ問題は根本方針に帰つて参るのでありますが、新経済政策と銘を打つてこれから立てようとする政策、このことについては多少触れられましたけれども、伺つておりますといろいろの疑問が出て来るのですが、基本的な、例えばこの自衛隊その他の増強、私どもの言います再軍備は、恐らく来年も二万前後殖やされるのではなかろうか、こういう話も伺つております。そういう軍事費は殖やしながら他、の財政投融資、或いは国民生活に関係のあります部分については縮小して行く、こういう政策は変えないで、例えば自由経済計画経済かという根本議論は、公式的にはいたしませんけれども、多少その輸出入なり或いは重油削減の点等についても政府の言い分では、大方針の下における部分的な行政的指導と申しますか、こういう言い方をされるだろうと思うのでありますが、行政的な措置による多少の統制的な面も出で来るのであります。まあいわば自由主義的な基本方針の中における行政的統制方式といいますか、こういう形なのか、多少、そういう理解をするのでありますが、デフレ政策はやめない、ただ出て来た極端な矛盾に対して多少の手直しをする、これが新経済政策かと思うのであります。その点がどういうことでございますか……。  それから例えば、それに伴つて財政規模は来年度も一兆円を維持するということを言われておりますが、その新経済政策に伴つてそれを来年度予算編成まで待つのか、或いはデフレ政策修正の要望が極めて強く、曽つて愛知通産大臣の手直し論と申しますか、これが非常な反響を呼んだほど待望されている。従つて経済政策を立てるときには臨時国会でも開いて、二十九年度中に多少の予算或いは財政政策についても変更をされるのかどうか、これは時期にも関連します。伺つておりますと、例えば貿易の点は今までのコストを引下げる或いは運賃を引下げる、そのために賃金を引下げ、これによつて輸出を、増大するということでありますが、コストを引下げるという点で何が一番大きな問題か、方法か、財政投融資をやるという一つ方法もありましよう。ところが財政投融資はむしろ二十九年度より減らされた、これも来年度或いは今後とも殖やされるのかどうか、若し減らされるとするならば、その方面からするコストの引下げといいますか、機械化による生産性の向上は困難になる。そうすると生産の規模が問題になる。一炭鉱のことでありますが、一万五、六千トン出れば大体とんとんに引合う。これは炭価三千円にならないくらいの石炭でありますが、引合う。ところが実際には五、六千トンくらいしか出ていない。一万五、六千トン出る炭鉱に五、六千トンくらいしか出なければ引合わないことは間違いない。ところがそれが石炭なら石炭産業全部について今のようなことが言える実情じやないか、或いは造船についてもそうであろう。  そこで今の田村さんの生産規模の縮小か拡大かという問題でありますが、生産規模を縮小しながら、これは財政投融資をしないでコストを引下げると言つたつて不可能である。そうすると今のように賃金だけを引下げる或いは人員だけを引下げる、若し財政投融資もしない、生産拡大もしないということになれば、労働者にしわ寄せされる。失業者はどんどん出る、或いは労働条件を強化するという今までの方針に大童になろう。それを合理主義という名で呼ぼうと或いは冷酷な独占資本的な方策と呼ぼうと同じことだ。必然的にそうなつて参ると思うのであります。そこで生産規模を拡大する、日本経済規模を拡大するということになりますと、貿易の規模ということになつて参ると思うのであります。それには今のコストの引下げ等もございます。ございますが、経済規模の拡大を図りながら貿易の拡大を図るということになれば、大きなこれは外交方針にも関連をいたしますけれども、最近自由党でも言われておりますけれども、中共貿易或いは東西貿易も含んだ貿易の拡大、これはポンド地域も含んで貿易の拡大に思い切つた措置を講じなければならない。この点についてはイギリス或いはアメリカさえも或いは中国その他についても立遅れようとしている、これが実際じやないか。その点非常に憂慮を払うわけでありますが、これらの点について根本的な貿易政策に関連して転換の御方針がありますのかどうか、これらの点を一つお尋ねいたしたいと思います。
  16. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 非常に広汎なお尋ねでございますので、或いは答弁がカバーしきれるかどうかわかりませんが、先ず第一に新らしい政策考え方一つ考えてみようというふうに政府考えておりますゆえんのものは、過去半年余りにおきまして国民的な御協力の下において、先ほど申しましたようにいわゆるデフレ政策相当の効果を生んでいるように思うのであります。併し同時にこれから先どういうふうなところを目標にして我々は我我の経済を持つて行くのかということについての国民的な御懸念も非常に強いようでございますから、少し長い目で見て、我々は日本経済をこういうふうな筋書に持つて行きたいという点をできるだけ明確にいたしたいというのが、改めて一つ政策についての政府としての意思を統一してみようということになつたゆえんのものでございます。多少長い目で見たいということと、いま一つは先ほど来御指摘にありますような労働問題等についても総合的な視野に立つて、各部門を総合してやつて行くということを今一つの狙いにしておるわけであります。そういうような考え方の下に、先ほど申し申しましたごとく、私は通産省なり或いは経済審議庁の立場だけで申し上げるのでありますが、その私の受持のほうから申しますならば、やはりこれは輸出振興ということを最重点に考えさして頂きたい。そこで輸出については、数字的に申しましても、向う三年の間に一つ目標を設定することが何よりも大事である。それに応じたものの動き方ができるように諸般の財政経済政策をそれに向けて調整して行くということをはつきりさせたいものであるということを考えております。従つて財政投融資の問題にお触れになりましたが、財政投融資についても私はやはりこれを従来よりも、二十九年度より増すというようなことは例えば三十年度あたりにおいては考えられないと思うのであります。併し同じ程度の額でありましても、その内応に対して、先ほど申しましたような考え方から、財政投融資にいたしましても計画的に長期化するというようなこと、そうして殊に基本的な例えば輸出振興についてはどういう産業にこれだけの合理化をしなければならんかということが当然出て来るわけでございますから、そういうものについて計画的に長期化した財政投融資ということを確保する。額を殖やすことができなくとも、そこに非常な工夫の余地があるのではないか、こういうふうに考えます。又それによつてコストの引下げということにも相当の効果が出て来る。又最近デフレ下において特に私はそうであると思うのでありますが、例えば金利の負担が総体的に非常に企業の重圧になつておりますが、そういう点に改善の余地があるのかどうかというような点も十分に検討する必要があると思うのであります。それから更にこれも又額が余り多くなればいろいろの問題があると思うのでありますが、外資導入の問題につきましても、最も効率的に投資の効果が期待できるという面に限定して、有利な条件で借りることができるならば、その方面への努力を大いにやつてみたいと考えております。昨日も経済審議庁にございます経済審議会においても論議が交わされたのでありますが、我々としては将来の財政投融資にいたしましても、その投資効果というものをはつきりつかまえて、投資効果のいいもの、そうしてそれを計画的に長期的にやるということがこれから進むべき途の一つではないかと考えております。  それから第二の点でございますが、貿易の面で中共その他の、要するに貿易の対象分野を地理的に拡げるという問題でございますが、私は西欧諸国を足並を揃えまして、できるだけそういう方面への貿易の伸張を図るべきであると考えております。ただ併しながら私は大いに強調しなければならんと思いますのは、相手が中共であり或いはソ連圏でありましいも、日本輸出については常に良質、廉価であるということが最も必要な要件であります。これはただ単に領域が拡つたとか、或いは拡がる期待を持つて、そこに安易な夢を持ち得ない。これは地域が拡がれば拡がるほど日本輸出については良質廉仙であつて、且つ国際的に信用のおけるものでなければならない。改めてこの点は強調されなければならない点だと思うのであります。そういう意味におきまして、私はひとり経営者だけでなく、当然これは国民的にも、労働階級に対しましても生産性の向上その他について国家的な立場から協力を求めるべきである。これはあながち公式的な労働条件の悪化であるとか何とかということではなくて、この今の日本の置かれている立場や、或いは将来の目標のために必要な協力というものを求めなければならない、こういうふうに私は考えます。
  17. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  18. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を始めて。
  19. 田畑金光

    ○田畑金光君 簡潔に御質問申上げたいと思いますが、只今吉田君の御質問に対する御答弁で、新経済政策政府考え方というものについて一応了解がついたわけでありますが、同じ政府の下でデフレ政策をやり、而も又同じ政府の下で新経済政策が出て来ること自体我々としては奇異な感じを持つわけであります。併し只今の御答弁によりますと、日本経済の自立を貿易振興という点を中心として進めて行こうとする、構想については我々としても了解ができるわけであります。そこで当面の問題といたしまして日本経済規模というものが実力以上に膨脹した。従つてこれを日本の国力に相応した経済基盤に建て直すという考え方経済施策が進められているわけでありますが、併しこの政策を進めて参りますと、どうしても国民生活の問題、雇用水準の問題、中小企業の問題、こういう問題が具高的に出て来るわけであります。そこでお尋ねしたことは、輸出振興三年計画ということを政府考えられておりまするが、今のデフレ的な経済の運営というものは一応大蔵大臣等の言葉を借りますと二年前後、こういうことを聞いておりまするが、どの程度現在のようなデフレ経済を維持して行かれようとするのか、それが一つであります。  それから現在のこの縮小生産の過程というものが三年計画でしなければ、拡大生産の基盤が据えられないのかどうか。そういたしました場合、現在の、先ほど申上げましたような、国民生活の問題、失業の問題、中小企業問題等につきまして、どういう具体的な手を打たれようとする御方針であるか。  それから私は具体的にお尋ねしたいのでありますが、只今の御答弁を承わつておりますると、融資の状況でも、日銀或いは市中銀行の貸出しは殆んど変りはないのだ、従つて生産指数も殆んど落ちてない。生産活動も維持されておるのだ、こういうようなお話でありますけれども、成るほど二兆七千億を越える融資に上つておりまするが、その融資の内容を検討いたしましたときに、これは非常に系列融資であり集中融資になつておるわけであります。いわゆる銀行資本の背景を持つ独占企業のみが融資を受けておる。中小企業というものは殆んど銀行の窓口から閉出しをくらつておる。地方銀行に参りましても同様であります。例えば信用金庫或いは相互銀行等の支払準備金を見ましても、基準率の二〇%を割つて一六%乃至一七%に低下しておる。先ほど大臣は中小企業の倒産を防止する、こういうことをお話になりましたが、やはり私は金融の面が中小企業の一番命取りになつているのじやないかと思うのでありますが、具体的に金融の面から中小企業に対しまして政府はどういう方針をとつて行かれようとするのであるか。  更に只今吉田君の質問等に関連いたしますが、現在の具体的な石炭不況の問題について申上げますと、十九国会の節に愛知通産大臣は、石炭不況克服策について本国会終了時までには具体的な成案を作つて我々に呈示したい、こういうお話があつたわけであります。ところがその後大臣からも通産当局からもこれぞという政策を我々は示されておりません。御承知のように今日の石炭不況の問題も政府の総合的な救済の計画性の欠如、或いは総合的な燃料政策が欠けていた点にあると思うわけであります。昭和二十六年以降の高炭価問題解決として重油に転換した、この政府の方針が石炭市場を圧迫して今日の需給のアンバランスを生み出している。ところが又その政府外貨の逼迫等の事情も手伝つて、今回は重油石炭に転換されようとされているわけであります。この際当面する石炭不況に関しまして通産大臣は具体的にどういう政策を以てこれに対処されようとしておられるのであるが、具体的に私は御答弁を願いたいと思いますが、同時に先般来重油消費規制をやつておられまするが、その経済効果がどうなつておりまするか。又石炭が非常に暴落いたしております。現在の炭価の問題と重油の市場価格との関連等を見ましたときに、これらの点がどういう均衡関係になつているか。現在のような石炭価格からいたしますならば、これは経済効率の点から申しましてもコストの面から申しましても、当然に燃料というのは国内炭に転換すべき段階に来ているのではないかと思いますが、こういう点に関しまして通産当局はどういう御方針でおられるか。  更にもう一つ私はお尋ねいたしたいのであります。電気料金の問題であります。本年の四月一日に電力会社から一割四分四厘の値上げ案が通産当局に提出されたわけであります。十九国会の節におきまして公益事業局の関係者は、政府としてはどういう方針に出るかは不明だけれども、折角現行制度に基いて作業をやつている、こういうような御答弁であつたわけであります。成るほど現行料金が昭和二十七年の五月の値上げ改正以後据置かれて、而も昭和二十八年の或いは昭和二十九年の新電源開発等を見ましたときにも、電力会社の資本費の負担というものも了解できるわけであります。併しながらこれに対しましては政府といたしまして開発銀行の金利の引下げの問題、或いは法人税、事業税、固定資産税の減税措置によつてカバーしよう、こういう考え方で七月六日の閣議においては通産省の六分八厘の値上げ案というものが一応見送りになつたと我々は聞いていたわけであります。ところがその後の情勢を見ますならば、現行制度の下において、形は如何にも据置のような形をとりながら、或いは石炭条項を停止するとか、或いは夏冬料金の一本化を図つて実質的には、五分乃至六分の値上げを招こうという方針をとつておるわけであります。こういうことではデフレ政策というものに一体どういう政府は信念を持つてやろうとされておるのか、我々としては疑わざるを得ません。殊に昨年度の電力九会社の経営状況を見ましてもすでに百億を超えた渇水準備金を積立てておる。上期の一割五分、下期には一割二分の配当をやつておる。実際の純益を見ましても上期に三十三億余、下期には八十八億八千万円こういう黒字を計上しておる。而も昭和二十九年度の五月以降の状況はどうかというと異常豊水期になつておる。こういうようなことを我々見ましたときに、政府が電気料金を実質的に引上げられるということが炭鉱に影響し、鉄鋼に影響し、化学肥料に影響し、日本のいわゆる基礎産業という産業は勿論、国民生活自体にも大きな反響を捲き起しておるわけであります。こういうような点が我々といたしましては、一体デフレ政策を堅持すると申しながら、こういう面において府政みずから破綻を示しておる。これらの点が我々納得行かないのでありますが、こういう点に関しましての政府の方針を承わつておきたいと考えます。
  20. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 第一のこのデフレ政策と新らしい政策との関係でございますが、これは全然背馳するものではございませんで、冒頭にも申上げましたように、デフレ政策は最近までの成果に鑑みても是非これを続けて行きたい。更にこれを推進し補強する。それから歪みがあるような場合にはそれに具体的な措置を講ずるというようなことで参りたいと思つておりますことは先ほど来縷々申上げた通りでありまして、更に将来に亘つて一つ経済自立に行くべき途を我々としては描いてみたい、こういうふうな考え方でございます。なお、私といたしましてはできるだけ近い機会にそういう政策というものを発表したいと思つております点を念のために申上げておきたいと思います。  それからその次の、然らばそのデフレ政策はどこまでやるのかというお尋ねでございますが、これは当初来考えておりますことは、大体総じて申しますならば物価を昨年暮なり、今年の正月くらいの程度物価を大体二割見当は下げて参りたい。併し余りにドラスティツクなことをやるべきではございませんので、この昭和二十九年度は総じて五乃至一〇%の物価の引下げということを狙つてつて参つたわけであります。その後の経過に鑑みますと、例えば繊維その他のものを比較してみますと、繊維のごときはすでに国際水準というものまで行つている、或いは下廻つているとさえ言えるわけでございますから、そういうふうにいろいろの物価について具体的な結果が現われて来、その間には不均衡も起つておりますから、これらの今度は具体的な施策といたしましては、例えば価格相当下つたというものについては需給の安定というふうなことを中心にした施策を打たなければなりませんし、又十分下がつていると思われない、例えばセメントのごときものに対してはその購売の方法改善、その他も加えまして、業界とも了解を進めて建値を引くということの工作をするとか、いろいろやるべき施策は具体的に今なつて来ているわけであります。そして私は大体今後一年或いは一年半という程度でこういう関係がずつと調整されて、そして日本経済の基礎というものがかなり強靱な体格になるのではなかろうか。その強靱な体格の上に、一方将来の構図を今から考えておきまして、その積極面かその強靱になつた体格の上に組立てられるように準備と努力を今から進めておこう、こういうような気持でおるわけであります。  それから縮小生産とその他の関係の話が出ましたが、これは本年初頭以来国会におきましてもその当時縷々御説明申上げましたように、そうして又先ほどちよつと申上げましたように、純粋な理窟だけで言えば生産活動はもつと急激に減らなければ本当のデフレ効果は現われて来ないと思うのであります。併し政策とし政治といたしましては、只今物価の点も申上げましたようになだらかに、余りにドラステイツクにならん程度において政策を進めなければなりませんから、自然この生産活動の上昇過程を下降向けにするという努力なりテンポなりはそう急激にいたすべきじやない、こういうふうに考えているわけでございますし、事実がそういうような結果に現在なつていると思うのであります。  それから中小企業の問題につきましては、これはいつも申すことでございますが、この対策一つやればそれで万全の効果が現われて来るというようなそういう名案は私はないと考えております。従つて言いふるされたことが非常に多いのでありますが、ありとあらゆる考え得る措置を取上げて参りまして、総合的な効果を期待することが最も適当だと考えております。  第一に中小企業自体についてはその企業の組織化をすることが私は一番基本的な必要な施策ではなかろうかと思います。そのために政府のほうのやるべきこととしては企業診断というようなことに非常な今力を進めているつもりでございまして、すでに数万件の企業診断の実績ができております。又それはただ単に診断をしてカルテを作ればいいのではないのでありまして、診断をするに応じて組織化ということに向けるような努力と、更に政府の斡旋によりまして特殊の中小金融機関からの融資ができるだけ円滑に流れるようにという努力を併せ用いるというようなやり力をやつております。  それからその次の考え方として中小企業安定法の運用につきまして先ほども縷々触れたのでありますが、いわゆる調整組合につきましての自主的な調整の強化の指導ということが必要ではなかろうかというように考えているのでありまして、これにつきましてはその業種その他について具体的に行政上の問題といたしましてその手を進めている次第でございます。それから中小企業金融の円滑化の問題でございますが、例えば石炭につきましても中小企業金融公庫に対しまして特に先般来九州方面石炭業については特殊の指令を出しております。これは再建計画が十分であり、優良なる中小炭鉱の場合におきましては相当の活用が願えるのじやなかろうか、又相当の効果を挙げているように考えております。  それからその次のお尋ねは、石炭重油関係でございますが、この点について国会休会中においても私どもとしては誠意を尽して対策を立て、又その結果なり中間的な御報告を申上げるということをやつておりましたのでありますが、七月早々の当委員会には他の案件等のために私は出席できませんので甚だ申訳なかつたのでありますが、その後の経過をざつと申上げますと、数字等について若し何でございましたら事務当局から補足して説明いたしたいと思いますが、六月に入りましてから重油の出荷の実績は大体三十八、九万キロ・リツターの程度でございます。これは前回にも申上げたと思いますが、これは政府が期待いたしておりましたよりもほんの少量だけ出荷の実績がオーバーしておるのでありますが、まずまず大勢としては消費者側にも相当協力が願えたのではなかろうかと思つております。それから一方石炭につきましては、御案内の通りと思いますが、七月の実績がまだ私の手許にもございませんが、大体上、中旬のところから私がざつと勘ではじいたところによりますと、生産は三百三十万トンぐらいではなかろうかと思います。そして荷渡しが恐らく三百二十万トン程度になるのではなかろうか、従つて貯炭の増が十万トン程度で七月は推移したのではなかろうかと私は想像いたしております。貯炭の増が六月までよりも大分減つてつております。で、だんだんと全体の傾向といたしましては、勿論非常にまだまだ大問題ではございまするが、多少好転する兆候が見受けられるように思つております。今後のところ各用途別に、各工場別は勿論でございますが、例えば使用の用途別に、鉄の関係で言えば、例えば平炉用がどのくらいになるとか、或いは加熱用がどのくらいになるとか、或いはボイラー用がどのくらいならいいであろうかというような点について更にずつと作業を続けて、全体の推移と睨み合せて作業を続けておりますので、八月一ぱいぐらいの間にはかなり具体的な数字を挙げて御説明することができ、又将来の目標お話申上げることができるかと、こういうふうに考えております。  それからその次の問題は電気料金のお尋ねでございますが、これは経過につきしては今いろいろお尋ねがございましたが、一番最終の政府として決定いたしました結論を先ず御説明申上げたいと思います。この問題につきましては、政府といたしましても随分長くの日数と非常に慎重な検討を重ねまして、次のような基本的な考え方を結論としてまとめたわけでございます。未だこれによりまして現実の料率表等を作りますまでに至つておりませんので、本日のところは考え方だけを御披露することにいたしたいと思います。明年の三月末目までは全国平均といたしましては現行料金ベースに据え置くのでございます。それから来年四月以降の料金につきましては、電力会社側の一層の企業努力を期待いたしまして、更に細部に亘りまして政府側としても検討いたしたいと思います。それから一方税及び金利負担の軽減等の措置によりまして、低物価政策の趣旨に基いて再検討を行うことをきめたわけでございます。それからその次に本年十月以降におきましては、現行の割当制度を廃止いたしまして、これに伴いまして料金制度を合理的に改正いたしたいと考えております。併しこの改正に際しましては、その影響については十分調整措置を考慮しなければならないということを申合せておるような次第でございます。  大体以上のお尋ねであつたかと思います。
  21. 阿具根登

    ○阿具根登君 約束の時間が非常に迫つておりますので端的に質問申上げます  通産大臣に同じような御質問を申上げたくないのでありますが、第一回第二回、第三回と通産大臣の答弁を聞いておれば、その都度その都度希望を持たせるかのごとき御答弁であり、その後に現われた問題は一つも希望を持つておらない数字である。極端に申上げるならば、当初御質問申上げたときには、石炭四千八百万トン使用するということを断固としてやるということを言い、その次には、それは自分の、はつきりした数字をつかんでおらなかつたので誤りである。そうして重油に対しては五百三十七万キロ・リツトルという数字は架空のものである。石炭が四千八百万トンは使えないけれども、四千六百五十万トンだとか或いは四千七百万トンとか、四千八百万トンに近い数字を出します。四千三百万トンということは現在考えておらない。而もその数字は二、三日中に出す、こういうようなことをはつきり仰せになつておる。而も同席しておられた川上鉱山局長は、六、七、八、九の各月の重油消費量は三十一万トンとはつきり申しておられる。それに只今通産大臣のお答えでは三十八、九万キロ・リツトル使つておる、三十九万キロ・リツトル使つておる。田畑君の質問に重複いたしますけれども、すでに上期は終らんとしておる。この今日にまだ重油がどのくらい使えるのか、石炭をどのくらい使うのかはつきりとした数字を示しておらない。そのために中小炭鉱は非常な苦しみにあえいでおる。いわゆる何か思わせぶり的な、何か対策があるみたいなことを言つておるために、金券なり或いは賃金遅欠配に、或いは一家心中をしかねない現実になつておることは御承知通りである。而もこの答弁を頂いたのは五月の二十日である。五月二十日にはつきりと数字まで挙げて示しておられる。そういうその場その場で何か希望を持たせるような答弁の仕方に対しては、私は三度目でありますので納得がどうしてもできないのであります。而も現地に行つてどういう現況になつておるか、昨日も申上げましたが、業者の中でも二人も自殺意が九州で出て来ておる。そういう現実を我々は見て来ておる。それにまだしても五月の二十日には二、三日待つてもらいたいということを通産大臣ははつきり言つておられるにもかかわらず、すでに八月も半ばにならんとしておる今日にまだはつきりした数字を出して頂けないということは、これは石炭を何トン出したらいいのか、どれだけ取るのか、只今のお答えでは、七月三百三十万トンで三百三十万トンの荷渡しで、十万トンの貯炭だということを言つておられますけれども、その間につぶれる山は、相当の山がつぶれて失業者が溢れておる、又生死の境になつておる炭鉱労働者は、三カ月、四カ月の賃金遅欠配にあえいでおる。こういう現実に対してはつきりした見通し、責任ある回答を通産大臣にお願いしたいと思うのであります。  それから第二点は、帰休制度を政府は今日通達されておられますが、これによりますと三カ月間の帰休でそのあとは採用できるような見通しを持つておられるのでありますが、三カ月たつたならば今のデフレが緩和されるのであるか、或いは石炭、造船その他の見通しが非常に明るい傾向にあるかどうかお示しを願いたい。  次にもう一点、最近の新聞で地方に流されているもので炭価は六千カロリーで四千二百円ということを政府で打出しておられますが、これに対する根拠をお示し願いたい。  最後に、九州地方は特にひどいのでありますが、鉱害の復旧に対する通産大臣考え方、時間が過ぎておりますので、一応質問はこれで打切りますが、お答えは慎重に願いたいと思います。
  22. 田畑金光

    ○田畑金光君 関連して……。先ほどの私何項目かについて質問いたしましたが、通産大臣の御答弁を承わつて感じましたことは、阿具根君が只今申上げたと同じような印象を受けるわけであります。第一私は非常にこれ又疑わしく思いますのは、新経済政策をお立てになると、こういう政府の御方針でありますが、経済計画を持たせるということは独裁国家のやることであつて経済は水物であるから、そういうようなものは水の流れに任せなくちやならん。これが吉田総理の今までとつて来られた態度であつたのであります。六月二十一日にアリソン大使がアメリカから帰つて参りまして、そうして吉田総理と面談の結果、アメリカの援助を受けようとするならば、もう少し具体的な資料で経済計画を立てなさつて交渉なさらんと無駄ですぞと、こういうような話があつたので、急遽その日のうちに愛知通産大臣を呼んで経済計画を立てろと、こういうような指令があつたことを私は新聞で見たのでありますが、そういうような猫の目のように変る計画であつては我々としても行先を案ずるわけであります。政府のとられた食糧増産五カ年計画もその後どうなつておるのか。十七国会において政府の立てられた災害復旧については昭和二十八年度は三割、二十九年度は五割、三十年度は二割というこの方針はいつの間にか消え去つておる。こういうようなことを見ましたときに、燃料政策の変化といい、動力政策の移り変り方といい、非常に我々は政府の今言われておる計画というものに対して疑問を持つわけでありますが、新経済政策は、殊に輸出復興三カ年計画等は、愛知通産大臣政府の必ずやり遂げようとするだけの政治力を持つて、政治力については疑問がありますけれども、強い信念を持つてやり遂げようとなされておるのであるかどうか、これが一点。  第二点は、石炭の問題について私はお尋ねいたしましたが、八月中には作業をやつておよそ見当がつくんだというお話でありますけれども、もうこれは間に合わんと思います。十九国会の最中に会期末までには成案を得るというお話でありましたが、八月中ということになつて参りますと、今度は冬場に入つて参りますので、自然的にも或る程度炭価というものは明るい見通しに入りますが、併し八月中ということでは到底、どうも今までの通産大臣の誠意ある御努力からいいまするとかけ離れておりまするが、もう少し私は具体的内容についてお尋ね申上げたい。  それから電気料金の問題に関しましても、これ又新聞で先般発表された通りでありまして、新聞を見れば、この程度は私たちも政府のとろうとする政策は注意いたしておりまするからよく理解しておるわけであります。私のお尋ねしたいことは、政府のこの三項目の内容につきまして、実質的に料金が上るのか、現行で行くのか、或いは下るのか、この点について御答弁を求めているわけであります。一つお答え願います。
  23. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ずこの石炭重油の問題でございますが、これは先ほども申しましたように、私どもとして何もやつていないわけではございませんで、これは作文を書いたり、ただ架空の数字だけで処理できるものではございませんので、言うまでもございませんが、その日その日でできるだけの手配をやつておるつもりでございます。ただその中間的な移り変りの御報告が私どものほうの関係で、そういう機会に私どもから御報告ができなかつたことについては先ほど申しましたように遺憾と存じておる次第であります。そこで先ほども申上げましたが、例えば金融の問題につきましては中小企業金融公庫に対するいろいろの私どもとしての対策も勿論やつておりますが、例えば或る銀行に対しての日本銀行からの資金の供給というような非常に具体的な問題と、それから又根本的な適正出炭規模の問題というような当面の具体的な問題と、それからかなり長期の政策的な問題と両方あるわけでございますが、この出炭の目標については、私は今でも日本経済の再建の基幹計画として四千八百万トンを以て出炭の適正規模にしたいということについては現在も私は一つの強い考え方を持つておるわけでございまして、これを成るべく具体的にそういう線に早く近付けるような努力は続けておるわけであります。ただ遺憾ながら二十九年度の出炭は、恐らく二十九年度を振り返つて見ましても到底この数字には及ぶまいと思いますが、これにつきましては最近、例えば重油の転換から潜在的には石炭に対する需要は相当出て来ておるように思うのでありますが、ただ金融措置が十分伴わないために荷渡しの状況が非常にアブノーマルであるというようなことがございますので、更にそういう場合におきましては金融上の手を打たなければならないというふうに考えておるわけでございまして、先ほど八月一ぱいと申上げましたのは相当細かい、今度は工場別だけではなくて、更に用途別の業者の需要の見込、或いは規制の見込というようなものを作りたい、これがなければやはりどうも確信のあることが申上げられませんので、だんだんと細部に亘りまして資料等を積み重ねておるということを申上げたのでありまして、八月一ぱいかからなければ全然何もできないんだというわけではございませんので、御了承願いたいと思います。  第二の帰休制度の問題は、これは労働省のほうからお答え願つたほうが適当かと思いますが、将来の見通しと全体の経済の見通し等については先ほど来申上げておるようなふうに考えております。  それから第三点は、実は私はちよつとここで初めて伺つたのでありまして、非常に迂濶でございますが、そういうことを今まで聞いておりませんでしたので、調べまして事務当局からお答えいたしたいと思います。  それから第四の鉱害復旧事業の問題でございますが、これは先ほど申しましたが、経済審議庁に新たに設置いたしました労働対策協議会におきましても勿論取上げておるのでありますが、鉱害復旧事業を特に石炭の地域におきまして失業問題と併せて並行してできるだけ実施の時期を繰上げたり、或いはその地点を選別したりすることに通産省としても事務的な措置を講じつつあるわけであります。  それからその次の計画経済の点でございますが、先ほど申したように私は実は就任以来、輸出振興計画について早く数字を付した見通しを作り、又輸出目標制度を作りたいと思いまして、さように努力をして参つたのでございまして、先ほど御指摘のようなことから出発したわけでは毛頭ございません。又従来におきましてもいつも申上げることでございますが、外貨予算編成にいたしましても、財政投融資の計画にいたしましても、或いは電力五カ年計画、食糧対策、合成繊維対策、すべてこれ計画性を持たないものはないと、私はこういうふうに考えておるわけであります。  最後に電力料金につきましては御説明が足りませんでしたが、来年三月までの間においては全国平均としては現行料金ベースは据置でございますから、全国平均としては上りも下りもいたしません。ただたまたま本年十月から料金制度を合理的に改正することになつておりまするので、その際に上るものと下るものがあると思います。これは併しながらできるだけ合理的にその料率を作ることにいたしたいと思いますが、また数字が本当にはじき出されておりませんので、正確に申上げることはできませんが、例えば全国を通じまして家庭用の定額とそれから中流以下の家庭の従量電灯等につきましては据置き、又は東京等におきましては値下りになる見込でございます。従いましてこの関係においては上るものと下るものがございますので、家庭用等におきましては据置き、又は引下げになる、こういうふうに考えております。それから来年四月以降の分については、原価主義を建前として資本費の増嵩をカバーしようといたしますると、丁度来年四月以降いわゆる夏料金制度をやめて冬料金制度を続けて行くという程度のことをいたしますれば、原価主義を貫いて、この電源開発の関係と料金の関係がきれいに解決することができるわけでございます。併しながら低物価政策ということを推進して参りたいという配意からそういうこともやらずに行けるように、改めて国会でも十分御審議を願つて、税制上の措置を講じたい、或いは金利の引下げも考えたい、又更にそれにもまして電力会社の企業努力について当局側としては具体的な要請をして参りたい、要するに四月以降は未定の状態でございます。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 たくさんまだあるのですけれども、聞き漏した点がありまするので……。  重油の見通しですね、下期の重油の見通しをどう考えておられるか。それから田畑君が先ほど申上げました重油の単価と石炭の単価の問題にもなりますが、重油に対して関税を免税されている、これに対する考え方、これを一つ説明願いたいと思います。
  25. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この重油のその見込の数字につきましては鉱山局長から申上げたほうがよろしいかと思いますが、先ほどもお叱りがございましたが、私といたしましてはこの八月以降におきましてもできるだけ三十万キロ・リツトル台で、三十万キロに近いようなところで収めて参りたい、こういうふうに考えております。  それからもう一つ、最後の石油の関税につきましては、これは個人的な見解を申上げるようで甚だ恐縮なんでございますが、私はこれを取つて然るべきではないか、つまり今の関税定率法の臨時に免除しておりますものの必要は漸次なくなつて来たのではなかろうかというような私は考え方でございますが、これは衆参両院の大蔵委員会、農林委員会等にもいろいろの御意見がございまして、従つて政府部内の意見もまだまとまつておりません。私は通産省の立場から申しますれば、これは関税を取られて然るべきではなかろうか、こういうふうに考えております。
  26. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 政府委員はお残りを願うことになつておりますので、大分時間が経過もいたしましたので、御退席を願います。
  27. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の大臣の答弁で、私はまあ追つかけて質問したいと思つたが、時間が時間ですから失礼いたしました。潜在的の石炭に対する需要が殖えておる、それで用途別、工場別にその需給を調査して行かなければならない、こういうふうなお話でありましたが、その前に貯炭融資をされるかのような言葉がございましたが、貯炭について融資をする考えがありまするのかどうか、そういうように私はちよつと聞き取れた。  それからもう一つ経済政策について私は前に質問をしたのですけれども、大臣の答弁の中になかつたのですが、これは例えば鉱害復旧というものにいたしましても金が伴わない。三十年度の事業を二十九年度にやつてもらいたい。こういう要望も入つているが、金が伴わない。それからそのほか、これは労働省にも関連あるのでありますけれども、例えば公共事業吸収する云々といつてもお金が伴わないが、経済政策を八月一ぱいに取りまとめるということですか、それと予算との関係はどうなるのか、いろいろ集約して参りますと、八月一ぱいかかつてまとめられるとしても、それをやつて行くためにこの予算という問題が出て来る。恐らくそれは今のところでははつきりした答弁はできないということになるかも知れませんが、予算が伴う場合には予算措置を講じて二十九年度中にはやると、こういう御方針なのか、新経済政策とそれと予算との関係をどういう工合に考えておられるのか、御答弁を願いたいと思います。
  28. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) お答え申上げます。  その前に先ほど大臣が答弁されました重油の規制の問題について調査の問題をちよつと申上げておきますが、これは上半期にどの程度の出荷々するかということはもうすでにきまつております。これは鉱山局長からあとで答弁願つてもよろしい問題でございますが、五百三十七万キロ以上は使わないということはきまつておるわけでございます、ただ大臣の言われましたのは、長期に亘つて石炭重油との調整をする場合には今までの基準でなしに、もつと精密な基準が必要だと、その精密な基準を策定するために今個別的調査をやつておるのだということを申上げたわけでございます。現在重油消費量がきまつておらないということはございませんので、上半期につきましては、毎月これだけでできる、工場別についてこれだけということははつきりきまつておるのであります。  それから今の御質問に対してお答えいたしますが、貯炭融資をやる考えがあるかどうかという御質問のように伺いましたが、これは貯炭について一般的に融資をするというふうなことはこれは全然考えておるわけではございません。ただ企業の再建と申しますか、その立直り資金と申しますか、こういうふうなものを出しまする場合に貯炭がその担保の一部になるということは、これは十分考えられることでございます。  それから鉱害復旧の問題についてお尋ねがございましたか、来年度の分を繰上げてまあやるのでございますが、その繰上量が非常に少なければ、御存じのように公共事業費は一〇%の節約を受けております、その節約の復活の範囲ならば予算なしにできるわけでございますが、併しその程度ではまあ我々のほうからいたしますればどうも大分足りないように考えます。そういたしますと当然これは予算の問題になるわけでございますが、これは併し必ずしも新規に国会の御承認を得て予算を取るという方法のほかに予備費という方法もございますので、我々としてはどちらで今後処理されるか知りませんができるだけ早く決定して、金も資金も出してもらうようにいたしたいと思つて努力しておる次第でございます。  なお新経済政策一般の問題につきましては私の答弁いたす範囲ではございませんが、ただ大臣の申されましたのは、これは相当根本的な問題でございますので、これは勿論国会の御承認を得ての問題になることと思う次第でございます。
  29. 田村文吉

    田村文吉君 関連して。何ですか、今のお話で五百万キロ・リツトルを年間入れる計画になつておると、重油ですが、それに対してさつき大臣は、月三十万キロ・リツトルにとどめるように一つ努力したい、こういうふうに言つておりましたね。それで現実の状態は少し自分の思つておるよりは余計入つている、こういうことだからという申添えがあつたのですが、それはどうなんですか、五百万キロ・リツターというものを、為替としてはまあ入れる余地があるということに決定しているんですか、これをカツトしようということになつているのですか。
  30. 川上為治

    説明員(川上為治君) 年間計画で、外貨のほうで五百三十七万キロになる、これが決定になつております。それからそのうちで、大体三十数万というのを、昨年度の、即ち三月まで少し外貨を食つて使つておりますので、ですからそれを差引きますというと、これはずつと五月頃のこの委員会でも申しましたように、約五百万くらいの消費計画になるということになるわけでございます。今お尋ねの年間五百三十七万キロ・リツターというのはこれはきまつておる。五百三十七万キロ・リツターというのをこれを変える考えは毛頭ない。又大臣のお話としましては、成るべく五百三十七万ということになるようにやつて行きたいというわけでございまして、これは大臣は大体三十万、三十数万くらいで何とか抑えて行きたいとおつしやつたのですが、大体我々のほうで六月から九月までの計画を見ますというと、六月は三十九万四千七百、これは計画であります。これは実は先般の五月頃の委員会におきまして、丁度これはこの数字をきめる最中でありまして、どれくらいにすべきかということをいろいろ検討をしつつあつたのですが、そのときの数字というのは、元売業者の、細かく言いますと第二次基地の販売数量を大体七月以降三十一、二万で抑えたい。そういうことをやつたのですが、それからいろいろ検討いたしました結果、決定をしました数字としましては、元売業者の末端在庫の、その第二次基地でなくて、それより先の末端在庫のところからの販売数量というものを六月三十九万四千七百、七月三十四万八百、八月三十三万三千三百、九月三十二万九千四百というような数字が削減をいたしまして、これで現在その実行をいたしておるわけでございます。この三十九万四千七百に対しまして、先ほど大臣がおつしやいましたように、実績としましては三十九万一千四百、これは大臣の数字はちよつと前に私申上げておいたのですが、大体計画通り、少し上廻るかも知れないと申上げておいたのですが、実際締切つた数字を見ますと、三十九万四千七百に対しまして三十九万千四百という数字が出ております。七月はまだ数字はよくわかりませんが、相当最近におきましては非常な窮屈な状況になつておることは事実であります。それからその効果につきましても、先ほどいろいろその話がありましたが、もう重油に対しまして石炭のほうから転換するということは、一切これは新らしく併用設備を設けるということはなくなつた。これは逆に最近におきましては石炭のほうへ切換えて行こうというような傾向に大分なつておるように聞いております。現にその併用設備を持つておるところにおきましては、九州方面の炭鉱に対しまして、これは宇部の或る工場でありますが、相当数量の石炭の注文があつたということも私は情報として聞いておりますが、まあそういうような状況になつておりますし、又何とかして我々のほうとしては七月、八月、九月、こういうような計画で進みたいと考えておるのですが、ただ問題は、非常にその季節的な需要というものが例えば漁業関係とかいうようなものについてはありますので、この漁業関係の需要につきましてもやはり三十四万とか三十三万の内枠としてやつておりますので、これはどういう形で急に現われて来るか、或いは又中小企業につきましては、やはりその方針としては転換させる方針でやつているのですが、これは金融その他の面からいたしまして少しずれて行くのじやないかというようなふうにも考えますので、そういう点を考えるというと七月、八月、九月、これがどういう実績になるかという点につきましては、相当なお我々としましては検討しなければならん点があるのじやないかというふうに考えております。従つて七月、八月、九月とか、そういうような状況を見まして下期の計画を我々のほうでは立てて行きたいというふうに考えております。
  31. 田村文吉

    田村文吉君 ただ問題は、そんなに初めの予定が五百三十余万であつたから、どうしてもこの程度まで入れるということでなしに、今三十万で間に合うなら三十万で一つ間に合わせることを考えて頂くことが、今日のいわゆる石炭を救済するというだけの意味じやありませんが、国際収支を直すという点からいつて非常に必要だ。そういう意味から私もお尋ねしたのですが、これは今の五百三十余万のうちで、一体石炭に代替し得ると考えられる、それは今時期的なずれがあるとか、いろいろ事業用のもので止むを得んとかいうものは引いて、石炭に替えたら替えられる、値段が引合さえすれば替えられるのだという数字はどのくらいでありますか
  32. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) お答えいたします。これは先ほど答弁いたしましたように、現在どういう使い方で重油が使われているかという、鉱工業用の分でございますが、鉱工業用に使われているものがどういう使い方で使われているかということの調査をやつているわけであります。これがはつきりいたしませんと、どの程度まで技術的に削減し得るかというめどが立たないかと思います。現在鉱工業用に使われておりますのは年間で約三百万キロ・リツターというふうに我々考えております。そのうちでそれが正確にどの程度まで純粋に技術的にやり得るか、経済問題を離れて……、という問題は、先ほど申しましたように、今の工場別の調査が完了いたしませんとはつきりしたことはわからないのであります。
  33. 田村文吉

    田村文吉君 それは非常に私、今日国際貸借が非常に悪化しているような時代にですね、どのくらいまで切換ができるのかというようなことが、どうも調査してみないとわからないじや困るので、やはり勘でもいいから、どのくらいまでは替えられるということと、それから値段が、今の現在の重油というものは石炭に面した場合に、三百万キロ……、三十万とか、五百万とかいうそれはかまいませんが、一キロ・リツターというものは石炭に換算してどのくらいに価値としてあるのか、そういうような点が、おわかりには無論なつていると思いますが、そういう点から勘定して、どうも鉱工業用のここに三百万キロ・リツターあるのだが、どうも内容は、使途はわかりませんじやこれはちよつと問題だと思うのですが、至急そういう問題を、若し放つて置いては私、今日の迫つた国際貸借の上からいつて困るので、およその勘でもいいからわかりませんか。
  34. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) これは鉱山局のほうからは又別な見方があるかと思いますが、我々の考えでは、先ず百万キロ程度のものは削り得るのではないかと思います。それは大よそどういつたところに油が使われているかという点の大体の見当はわかりますので、それから考えますれば、その程度のものは縮減し得るのではないかと思いますが、これは全く下から積み上げた数字じやございませんので、今申上げましたように、今月一ぱいぐらいで下から積み上げた数字ができると思います。その際にはもつと明確に御答弁できると思います。
  35. 田村文吉

    田村文吉君 今月一ぱいにはその統計は作れるのですか。
  36. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) これは部内の所管が違うので恐縮でございますが、官房のほうで調査をいたしております。そのほうの話によりますと、大体今月一ぱいでできるようになつておりますそうでございます。
  37. 田村文吉

    田村文吉君 それで問題は三百万のうち百万ぐらいは代替できるというようなお考えのようなお話ですが、我々は鉱工業というなら、先ず例えば電気が足りないために重油エンジンを廻すというようなことはこれはまあ止むを得ない、ちよつと代替できないかも知れないけれども、これも電気の多いときにはそんなものを使わんでもいい。渇水時においてそういうものを廻さなければならんということが起ると、あとは大部分はあれじやないでしようか、ボイラーに石炭の代りにくらべているのではないでしようか。
  38. 川上為治

    説明員(川上為治君) 今申上げましたように、石炭局長から言いましたように、私のほうとしましてもやはり正確な数字をどうしてもつかまなければ、この百万切るべきか或いは五十万切るべきか、八十万切るべきかというようなことはどうしても出て来ないわけでありまして、現在大工場等につきましては、各原局は直接いろいろ調査をやつておりますし、又中小企業につきましては各通産局のほうからいろいろ調査をいたします。特に中小企業につきましてはこの調査がなかなかはつきりした数字がつかみにくいのでありまして、調査も非常にむずかしいのですが、そのために又中小企業、大体本当にどれくらい使つておるかということもなかなか我々のほうで現在においてもなおつかみにくい状態にありますが、いずれにしましても、大工場につきましては今月末まで、中小企業につきましても成るべく早くその数字をつかみまして、その数字をつかんだ上で今の五百三十七万というのをどの程度下期においては圧縮して行くかということを我々のほうでは早急に立てたいと考えておるのでありまして、決してこの五百三十七万、外貨を取つておるから五百三十七万だけは使えるのだと、それ以下にする必要はないのだというふうな考えは我々のほうでは毛頭持つていないのでありまして、やはりこの石炭企業との関係において成るべくこの五百三十七万というのをもつと一つ少くしてやりたいというふうに、私どものほうではその点は十分考えておるわけでございます。それから大口の工場につきましても、例えば発電用とか或いはガスとか或いは硫安とか、いろんなそういうような問題以外に、今お話がありましたように大部分の工場につきましてはボイラー用として勿論使つておるのでありますけれども、これを今直ぐ併用設備を持つていないものをいきなり切換えて行くということはこれは炉をとめるということになりますので、やはり我々としましてはだんだんこれを切換えさせるように持つて行きたいということ、締めて行くというような考えで現在やつておるわけでございまして、成るべく重油から石炭のほうへ切換えて行くようにという考え方について毛頭変つていないわけであります。
  39. 田村文吉

    田村文吉君 ただ石炭の値段が高過ぎたために、結局外国石炭を入れたり、又重油を入れるということをするようになつてしまつた。もとは大体日本国内石炭でどうやら間に合つて行く状態であつたのが、大体国内石炭が途方もなく値が高い。高いから結局そういうことになつて行つたというのが現在の状況だろうと思うのですね。ですから私はこれはボイラーをみな持つているのじやないか。かまの様子をちよつと変えたというようなことになつているんだが、そろばんさえ引合えば結局又石炭に帰つて行くと、こう思うのです。そこで今の何ですか、一カ月三十万キロ・リツターというのは、一体石炭に換算したら数量はどのくらいになるのですか、六千カロリー……。
  40. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) これは勿論油にもよりますし、石炭の何にもよりますけれども、大体我々の計算では、先ず重油が一〇〇といたしました場合に、石炭を六千二、三百の、丁度標準カロリーのものとして六〇ぐらいに考えて計算をしております。
  41. 田村文吉

    田村文吉君 そうすると三十万ということは五十万トンになるね、約そのくらいに考えたらいいですか、六割とおつしやるから……。
  42. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) 大体まあお話のような計算になるかと思います。
  43. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 実は両局長に私申上げたいのですが、実は五月にこの委員会重油の問題で具体的な計数を出してもらうようにお約束してあつて、今お聞きしていると、まだ数字もはつきりしないようなんですけれども、これは田村委員は今勘で出せないかとおつしやつたのですがね、私は勘で出し得ると思うのです。どうして出ないのか、非常に不思議に思うのですが、例えば鉱工業以外のエンジンに使つているものでしたらば、これは戦後新らしくできたものばかりですから、自動車にしましても或いは漁船にしても、大体調べればすぐ台数その他から出て来る。それから工場にいたしましてもああいうボイラーのメーカーというものは大体わかつているし、それから各地方局においては企業の診断をどんどんやつているわけですから、熱管理の面、両方からいいましても、地方局では十分各工場わかつているはずです。ボイラーのあるくらいの工場ならばですね。従つてそんなに下積みから積上げて来なくても、大体勘どころよりももう少し正確な数字というものはつかめているのではないか。今おつしやらないのは何かはかに差し障りがあつて言えないんじやないですか。私はそういうように考えるのですが、その行政の、而も産業のエキスパートばかり集つている通産省が、我々素人が考えつて一週間もあれば出そうな数字が五月以来全然出ないというようなこと私ちよつと理解しかねる……。
  44. 川上為治

    説明員(川上為治君) これはそうお考えになることも御尤もだと思うのですが、実際この一年半くらいの間に非常に重油に対しまして転換いたしておりますので、本当に現在におきましてはどこの工場がどういう設備を持ち、どういうように転換しているかということは、これはよほど時日をかけまして調査をしなければはつきりなかなかしないのでありまして、例えば中小企業関係のものにつきましても、大体月に六、七万はどうしても要るというようなふうに一応我々はふんでおりましても、ところが果して本当にそれだけ要るのか、或いはもつと切替えていいのか、もつと石炭のほうに切替える余地がどの程度あるかという点は、これはもう少し詳しく調べませんというと、簡単に我々としましてこの数字を断定することは非常に危険だというふうに考えておりますし、又一遍私なら私が、じやこの数字はこれだけだということを勘で申上げますと、それがあとあとまでもずつと続いてそれでおるということになりますというと、これも私としましても非常に困つた問題でありますので、我々のほうとしましては、私は官房に対しましても、一日も早くこの調査をやつてもらいたいということで、完了してもらいたいということを再三言つておりますので、これはやはりその数字がはつきり出た上でやつたほうが私はいいんじやないかというようなふうに考えております。又一方その重要産業方面からもこれは猛烈なこの問題に対しましては反対も出ておりますが、我我としましては別にそういう反対が、たとえ政治的な反対がありましても、別に既定の方針を変える考えは毛頭持つておりませんので、私のほうといたしましてはそういう関係もありますから、やはり数字につきましては正確を期して行きたい。決して私どもがその裏に何かあつてその数字を申上げないというわけではございません。その点一つ十分御了承願いたいと思います。
  45. 阿具根登

    ○阿具根登君 鉱山局長の話を聞いているとそれは正確な数字は一年たつてしまつてあとを振り返つてこうだと見れば一番正確なんです。誰でもできるのです。既成事実を作り上げてから答えをしようと思つておられる。実際我々が質問したときでも五百三十七万キロ・リツトルの外貨割当はあつておらないということは通産大臣もはつきり言つておる。実は前回はそう答弁したが、かくかくのわけで五百三十七万キロ・リツターの外貨割当があると言つているけれども、そんなことは誰も言つていない。五百三十七万キロリツターを目標として上半期だけ割当てておりますという言い方なんです。いつのまにあとの下期の外貨割当ができているのですか、誰もそんなことを言ていない。それを五月二十日の答弁ではつきり言つている。そういう良心的でない答弁ならば、私たちは聞く必要がない。これについてはどう思うのですか。はつきり出ていますよ。あなたの答弁は……。
  46. 川上為治

    説明員(川上為治君) 五百三十七万キロ・リツターの年間の外貨の問題につきましては、私がちよつと申上げるのを正確に申上げなかつたと思うのですが、この五百三十七万キロ・リツターというのは、成るほど一応はそういうようなことに決定されております、ただその上期の外貨につきしましてはつきり申上げられますが、下期の外貨につきましては、石油の消費状況とか或いは石炭との関係とか、そういうようなことにおいて九月の初めなり或いはもつと遅く、この五百三十万の下期分が正式にきめるかということはそのときにきめるわけでありまして、今あなたがおつしやる通りであります。私の申上げたことが少しこれは非常に誤解を生じたと思うのですが、それはその通りであります。五百三十七万キロ・リツターというのは一応年間の数字としてそういうことになつておるわけです。  それからその次の六月三十九万、七月三十四万、八月は幾らという数字につきましては、当時私が申上げたときはまだ決定した数字ではないわけでありまして、私は大体三十一万で何とかやつて頂きたいというふうに答弁いたしたと思うのでありますが、その三十一万ということにつきましては、先ほど申上げましたように元売者業の第二次基地、ここから出す数字を大体もとにしてそういうふうに考えたのでありまして、それから先の末端在庫、これは当時在庫も或る程度つておりますし、そういうものを引括めて、この六月におきましては三十九万四千、七月におきましては三十四万、八月におきましては三十三万三千、こういう数字はそのあとにおいてはつきりと決定いたしたわけでありまして、私が申上げました三十一万という数字と、今申しました七月、八月、九月のこの数字というのとは取り方が若干違うのですが、末端在庫の分を入れますと大体同じというふうなことになるわけでございます。
  47. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすれば、この前の答弁ではこういう数字を列べられて、これが上期に五百三十七万キロ・リツターの半分の数字だということをはつきり言つているとするならば、今の列べられた数字は九百三十七万キロ・リツターをオーバーしていると思うのですが、すでに上半期で五百三十七万キロ・リツターの半分は過ぎた、食い込んだ、こういうわけですね。
  48. 川上為治

    説明員(川上為治君) 全然そういうことにはならないのでありまして、これはもつと計数的に細かく御説明し、又検討いたしますというとおわかりになると思うのですが、上期の九月末におきましては約三十六万という在庫を持たせるということは何ら変りはありません。この三十六万幾らというものを在庫として持たせることとして、それから当時の末端在庫の在庫分とか、そういうもの入れていろいろその五百三十七万キロの上期の分を基礎としてはじいて来るというと今申上げましたように六月が三十九万四千七百、七月三十四万、こういうような数字になるわけでまりまして、決して五百三十七万のベースを、これが殖えておるということには全然なつておりません。
  49. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすれば四月の四十八万キロ、五月四十五万キロ、三月までに三千六万キロ・リツター食い込んでいる。九月末までに三十六万キロは是非とも必要である。そうして六、七—九に三十一万キロを組んで、二百九十くらいになるわけです。二百九十キロ・リツターくらいになるわけです、そうでしよう。それであなたは組まれたわけです。それでは今言われた六月に三十九万になつている、そういうやつはオーバーしておることにならないのですか、どうでしようか、その数字は……。
  50. 川上為治

    説明員(川上為治君) これは計数的にもう少し一つよくお話申上げますとよくわかるのでありますが、四月におきまして五百三十七万キロ・リツターの上期の計画で行きますというと、それから三月までに食い込んだ数字も入れまして計画を立てますというと、四月が五十万二千、五月が四十九万千八百、それから六月が三十九万四十七百、七月が先ほど申上げましたような数字になつておるわけであります。実際この数字は四月、五月はこれを集計いたしますというともつと余計実は食つておりまして、四月は五十万四千八百、五月は五十万四千一百というようなふうに、さつき申上げました四十五万とかというようなものより若干余計に食つておりますが、この食つた数字というものは、やはり一つは我々のほうにおきまして概算の数字を最初とつておるということと、あとで精算いたしまして若干数字が違うということが一つ。もう一つは従来も何遍も申上げましたように、元売業君の第二次基地までのもののやつを今まで計算して取つていたのですが、今回の数字につきましては末端在庫、その先の在庫の数字を取つておるという点につきまして若干の数字の狂いはあると思うのですけれども、決して五百三十七万キロ・リツターの上期分をオーバーしておるということにはなつておりません。なお詳細な数字につきましては私は今持つて来ておりませんが、私のほうの事務当局のほうで十分はじいておりますので、又の機会に十分お話申上げたいと思います。
  51. 阿具根登

    ○阿具根登君 数字の問題は又の機会お聞きいたにすことにいたしますが、私たちがここで質問する場合には、あなたの言われたものを本当の数字だと考えていつも計算して御質問申上げておる。私が今申上げたのはあなたが五月二十日にはつきりとここで言われた数字である。而も五百二十七万キロ・リツターの半分の上半期にも見合う数字であります。それが今になつて来れば、六、七—九の数字が約十万キロぐらい多くなつても数字は合うように御説明になつておる。私たちはどれを信用していいかわからない。なおその当時通産大臣が御発言になりましたのも、はつきりと数字は申されておられないけれども、その当時も百万キロ・リツターの節約をするのだ、百万キロということは言われておりませんが、新聞等にもその当時書かれたように、又私たちの質問の中にもそういうニユアンスを十分含まれて御答弁になつている。今になつて来れば全然そういうことが政治的な答弁というのかも知れませんけれども、それに迷わされた中小企業者は非常にみじめな状態に追い込まれておる。こういう政府の中枢であるところの通産省が、はつきりした計画を立てていないで、そのしわ寄せが中小企業、労働者に来て、その跡始末を労働者が一生懸命になつて拭い行わなければならん。私は数字を発表される場合には責任を持つた数字であり、目標目標として、それに対する数字が違う場合においては我々はそういうことを言うことはできないのですが、併しはつきりしたこういう資料を示される場合には、もう少し私たちも信頼のおけるような答弁をして上頂きたいと私は思います。これ以上は討論になりますからやめまして、あとでお伺いいたしたいと思います。
  52. 田村文吉

    田村文吉君 昨日石炭業者の方がお話なつた、原価は三千六百円につくものを二千五百円に売つている、こういう話をされたのですが、京浜市場で使つておる石炭というものは二千五百円……、仮に山元で運賃を千五百円加えても四千円ですね、そんな安いものはまあちよつと出ておらんように思うのですが、何か販売組織、そういう点、金融の点等の問題で私はやはり或る程度石炭が安くならなければ、やはり重油を確保するということは困難で、私は安くならなくちやいかんと思つておるのですが、これは齋藤さんどう考えておられますか、石炭の実際の山元の値段というものと今売つておる値段というものと……。
  53. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) 今のお話二千五百円というような話でございました。これは御存じのように非常にまあ金詰りでございますので、この金詰りの特にひどい場合には相場を無親した、いわゆる投げ物相場というものが出て参ります。今田村委員お話もそういう投げ物相場だというふうに私は考えられます。これは大手筋、中小を問わず、長期契約の比較的安定した需要、例えば国鉄でありますとか或いは電力会社でありますとか、そういつたところのものをとりますとそんな数字にはなりませんので、これは大体が国鉄の場合には坑所から駅までの荷出しの費用が入つているというようなことになります。それでやはり六千カロリーの平均的なものでありますと、先ず六十銭乃至七十銭カロリー当りそういうことになつております。それから考えましてもちよつと安過ぎるような気がいたします。ただ今のお話では西九州あたりの、レールまで非常に遠いような所では荷出しの費用が別にかかりますので、それとそれから恐らく現金売買のものではないか、そういたしますと、手形のものに比べると相当やはり安くなる。なお消費者渡しの場合には当然消費者から手数料その他を取りますので、そういうものが全然絶無だとは私は考えませんけれども、一般的な基準的なものではないように考えます。
  54. 田村文吉

    田村文吉君 無論昨日の御説明でも原価三千六百円に上るものを二千五百円に投げ売りしておる、早く言えばそういうことなんですが、仮に三千六百円にこれがつくものとすれば、どうやら一万五千円のベースも払えそうだという勘定だ。ところが事実は二千五百円に売つておるのだから、実際の手取りは五千円乃至六千円についておらん、こういう説明をしておられた。そこで問題は余りに山元で売つておられる原価なり、販売の投げ売りの価格は別問題としても、原価なりはそれほどに上つていないにかかわらず、割合にそれじや国鉄に買われる、又中央に来て売られる値段というものは相当の値段になつておりますね、六十銭以上になつておる。そういう点に何か金融上の欠陥があるのかというような問題があるのか、そういう点について局長さんのほうでは何かお考えになつておることはございませんか。
  55. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) 先ほど申しましたように国鉄とか電力とか、或いは鉄鋼、ガスというふうな大口の需要は従来から或る程度長期に亘つて契約をいたしております。こういうところの需要は非常なまあ好景気と申しますか、高炭価の際にもそう余り極端に上ることはございませんが、その代りに炭価が下落いたしましても極端に又下げないという形になつております。そのほかにセメントその他大口需要は大体今のような形になつております。そうでなしにまあ何と申しますか、業界ではスポツト物というふうな言葉で言つておりますが、そのときどきに商社を通じて販売するものというものは非常に強く景気の動向を影響を受けるわけなんです。そういうものは今申しました基準炭価に比べて非常にまあ大きく懸け離れる場合がございます。これは何も中小炭鉱に限らず、大手炭鉱でもそういつた長期の安定した需要に売込む、全部売込めるわけではございません。どうしても若干残つて来る分は、或る程度今私が申上げました基準よりもかなり安いもので売つているものがあるようでございます。
  56. 田村文吉

    田村文吉君 くどく伺うのは、つまりオン・レール五十五銭とか六十銭とかいうものが重油と比較した場合それは高いのじやないか、そこに私は昨日あなたおいでにならないから実は炭価を如何にして切下げるかという問題を研究して行かなければならない、というのは昭和十年の基準年度に比べて石炭というものは約一千倍になつておる。これはほかの物価に比べて非常に高いということを私は言つたのですが、或いは間違つておつたらあれですが、そういう点がアメリカから重油を持つて来てそれが引合うとか、アメリカから石炭を持つて来てそれが引合うとかいうことの不自然を招致した根本的な問題なんだ、だからこの際外国から油を持つて来るとか石灰を持つて来るとかいうことはやめると同時に、国内でも一体何が故にこんなに炭価の高騰を来したか、これは根本的に一つ問い詰めてみなければいかんということを実は昨日も話したのですが、その意味で私がお伺いしておるのは、石炭局ではそういう点についてはどうお考えになつておるか知りませんが、私の一遂に思い込んだ関係もあるかも知れませんが、石炭が千倍、鉄鋼は八百倍というふうにもうずつと三、四年来思い込んでおる、それは数字がなくてやつたのじやない、或る根拠の数字を捉えて言つたのだ、これが日本産業の大事な根幹をなしておるにかかわらず、どうも上り過ぎた。これは根本の問題はいろいろございますよ、いろいろございますが、そのために日本産業というものは非常に困つて、今日アメリカから重油を持つて来てそれを燃料に焚いておるというような不自然なことをやらしておるというようなことなんです。それを私は憂える。それだから一体山元で仮に三千六百円というものが正しいか正しくないか知りません。そうした場合、今度関西大阪、或いは関東東京に持つて来た場合に、一体どのくらいで行けば外油との釣合が取れるのだ、それによつて私は国内石炭産業というものが競争ができる。外国から油を入れて頂かんでもいいということが言えると思う。なかなか工場でも経営する人はそろばんを取りますから、如何にいろいろなことをおつしやつても結局は重油のほうが非常に安いということになると通産省に泣きごとを言つて、もう設備は大体できませんから、どうしても一つ生かしてくれということを言つて来たり、そこで私は価格の点からいつてどうなつておるのか、その点を疑いを持つておる、ちよつとおわかりでしたら一つ
  57. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) 重油との比較につきましては実は何と申しますか、使用上の便宜というような問題がございます。例えばコントロールとか払い過ぎるとか、運搬費が少くていいとか、そういつたこともございますが、これは殆んど計算ができませんので、その分を除外しまして、主としてカロリーと熱効率の関係からだけを試算いたしまして、六月末の石炭の我々の考えておる標準的な価格重油の大体の相場というものを基準にして調査いたしてみました。そういたしますと、一般炭で見ますと北海道、九州の産炭地では今申しましたカロリーと熱効率だけで見ますと、むしろ石炭のほうが安くなつております。
  58. 田村文吉

    田村文吉君 どのくらい。
  59. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) 北海道で約二千円、九州で約千五百円くらい安いという計算であります。但し京浜、阪神の消費地で比べますと大分又今度は石炭が高くなつておりまして、京浜地区では九百円くらい重油のほうが安いという数字になつております。ところがこれは一般炭でありまして、転換しました重油のうち相当大きな部分は発生炉用の重油でございます。ところが御存じのように発生炉炭はちよつと品質的にも又処理も少し手がかかつておりますので、発生炉炭のほうが若干割高になつておりまして、それと比べますと北海道で約八百円、なおそれでもまあ石炭のほうが安い。それから九州では百円くらいまあ石炭のほうが安い。併し京浜地区へ持つて参りますと千五百円くらい石炭のほうが高いというような数字になつております。ただ我々の考えでは、これは今申しましたようにカロリーと熱効率だけで考えたわけでございますが、そのほか使用上の便宜という点も併せ考えますと、なおこれの比較よりも更に一割乃至二割くらい安くなければ本当に消費者が完全に等価だと考えるところまでは行かないのじやないかというふうに考えております。
  60. 田村文吉

    田村文吉君 発生炉炭はどのくらいの比率ですか。今の五百何十万トンですね、発生炉炭というのは少い……。
  61. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) 発生炉を使いますものの一番大きなものは鉄鋼でございます。で、そのほかにはまあ窯業、その他或いはガラスとかセメントとかいう窯業に或る程度発生炉炭を使つておりますが、そのほか余り多くございません。鉄鋼関係重油が大体九十万キロから百万キロくらい使つております。
  62. 田村文吉

    田村文吉君 二割はあれですね、約五百三十万キロ・リツターのうち二割は発生炉用の重油である、こういうことでいいですか。
  63. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) これはさつき答弁いたしましたように鉱工業用の重油は三百万キロ程度、そのうちで九十万乃至百万鉄鋼用、これがまあ殆んど大部分でございます。
  64. 阿具根登

    ○阿具根登君 田村先生の御質問に関連してですけれども、昨日から石炭が千倍で、何が千倍になつておるかというような御質問がありましたので、私も賃金の問題は調べて参りました。併しもう半年くらいになるかと思いますが、佐久局長がお答えしたことを今議事録を探しておるけれどもわからない。ところが労働面においては二百五十倍です。それからたしか佐久局長が言われたのは輸送賃、電力、その他等を勘案すれば四百倍になつておるというような御答弁をされたと、私は議事録を調べておりますけれども急でわかりませんが、その点について局長どういうように何が千倍になつておるかということをはつきり一つ説明願いたいと思うのですが。
  65. 田村文吉

    田村文吉君 この機会にはつきり言つておきたいと思う。なぜ僕が千倍という説を言うかというと、その当時の山元の値段というのは二円から二円五十銭くらいであつたということを私は記憶しているもだから、そうすると今日仮に販売値段が二千五百円とおつしやれば千倍、そこで何がそうさせたかということを昨日から私は研究して行きたいと、こういうのですが、まあ併し石炭局長さんのほうにはそれは数字が間違つておる。昭和十年においてはそんなことはないとおつしやりやこれは一つまあ互いに数字を示し出してみてですね……。
  66. 阿具根登

    ○阿具根登君 私もそうしたいと思うのです。
  67. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど来問題になつておる石炭の販売価格の問題或いは原価の問題でありますが、すでにこれは先般の委員会において通産当局から明確に御答弁がなつておるわけであります。昭和十年前後は確かに田村委員お話のようにトン当り十円前後でありまするが、これを基礎といたしました場合に現在の石炭原価はどの程度に値上りをしているかというと六百五十倍になつているわけであります。販売価格の値上りは幾らだ、こう見て行きますと四百六十倍前後こういうことか明確になつているわけでありまして、私は佐久石炭局長の御答弁の資料の中から拾つて言うわけでありまして、昨日来の田村委員の一千倍ということはちよつと数字が大き過ぎるのでこの点は御訂正なさつたほうが賢明じやないかと思うわけであります。販売価格が大体四百六十倍、こういう石炭局長の私たちは権威ある資料の御答弁でありますから、一応これを基準に考えておりますので、若しこれに間違いがあるならば、石炭局長は権威ある資料を以て御訂正願いたいと思います。
  68. 田村文吉

    田村文吉君 今のお話は京浜における値段というものは鉄道運賃というものはその割合に上つていないのです。山元の値段は一体どうかということで、私は山元は二円五十銭ぐらいであつたろう、こう思うから、今日二千五百円になるというと千倍になるということを私は言つているのであります。
  69. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 齋藤局長、しばしばこの委員会で問題になつているのですが、昨日事務官を通じてあなたのほうへ連絡をとつてもらつたのです、今日答弁を願いたいということを。……その数字は現在価格に換算して戦争前の状態における石炭生産単価の構成内答を一とおいて、終戦後こういうふうに石炭が不況にならない状態のとき、野放しで生産したものがどんどん出て行つた、そのときの生産原価の内容構成は戦前に対してどれくらいの比率にそれが変つてるか、人件費や諸経費やいろいろ変つておるが、石炭が不況になつた今日においてどうなつておるか、締めて今田村さんが言われたように、戦争前に比較して千倍になつておるのか、五百倍になつておるのか、その点の数字を明らかにして項きたい、こういうことを調べてもらいたい、こういう話をしたのです。ところがなかなか通産省ではまだ数字ができていないらしいので、近いうちにそれは調べましよう、調べましようが、今日は一つ口頭でやりますというお話だつたのであります。若しできていなければ成るべく早く一つこの委員会で問題になつておる点は重要な点ですから、生産面からなる主なる単価構成のエレメントについて一つ一応出して頂きたい、こう考えております。
  70. 齋藤正年

    説明員(齋藤正年君) 大変申訳ございませんが、今調べておるのでございます。戦前のこの原価分析、アイテムと現在異つておりますアイテムがぴつたり合いませんので、正確な比較が困難でございます。なおこの点はもう少し戦前のものをもつと細かく分析いたしませんと正確なものはできないと思いますが、いずれできるだけ早く出したいと思います。  ただ田村委員お話の千倍の問題でございますが、現在消費地値段は御承知のように日銀調査の卸売物価指数によりますと三百九十倍、これは極く最近の数字でございますが、それぐらいになつております、一般の値上り率が三百六十倍くらいでございますので、一割ぐらい全体の平均値上り率よりも高いし、田村先生御指摘のように運賃特に鉄道運賃は三百六十倍になつておりませんので、今田畑先生のお話がありましたようにたしか四百四五十倍ぐらいでなかつたかと、そういうふうに記憶しております。いずれにいたしましても千倍というようなところにはなつておらない、
  71. 田村文吉

    田村文吉君 それは役所でどういうふうにおつしやるか知らんけれども、私は自分でも炭を買つて自分でやつて来たから一番よく知つている。それで山元で一トン二円五十銭の炭を山元から軽便鉄道で運んで来て小樽で貯炭する、小樽で貯炭したものを運賃をかけて持つて来ている。こういうような費用で最低のときには一トン七円五十銭ということもあつた。もつとひどいのは六十カロリーというので五円五十銭というような役げ売もあつた。これは今やつているような役げ売です。それは標準にはならないでしよう。そこで炭鉱主はたまらないというので、昭和石炭会社というのを作つて、何とか一つ救済しようじやないかというのでできたのが十円の値段なんです。そこで大体石炭は当時品質からいうと六千二、三百カロリーのものが、これは今の標準なんですね、それでまあそれぐらいの値段で入つた。それで山元の炭価は結局二円五十銭ぐらいについておる。そこで昨日も聞いてみると、販売原価が二千四百円ぐらい、こうおつしやる。そうすると販売原価が二千四百円ならこれは十倍になるのです。私の山元の二円五十銭というのが嘘だということになると、むしろ私は阿具根君あたりがよく知つておられると思うのですが、その時分は昭和十年頃には、トン山元では二百五十円以下じやなかつたかと私は思うのだ。
  72. 阿具根登

    ○阿具根登君 僕は経営のほうはわかりませんけれども、田村先生おつしやるのは昭和四、五年の撫順炭が入つて来た頃のことをおつしやるように私は思えてしようがないんですがね。
  73. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 要するに今のようなことをやつていると数字がはつきりいたしませんから、石炭局で一つ、あなた方エキスパートなんですから、私どもが一遍で見て成るほどと感心できるようなやつを二つ成るべく早く作つて頂きたい。それで計算の基礎が違うというようなことをおつしやるけれども、それは違つても、構成要素はそう大きな違いはないはずで、例えば戦争前の労働基準法がないときと今日との違いとか、いろいろな点はあるでしようが、大体横へ同じような状況で比較ができると考えるので、その点はあなた方の技術を信頼しますから……。
  74. 田村文吉

    田村文吉君 私は石炭局長に申上げたいのは、実際は日銀の指数が示すように三百六十倍とか四百倍程度でこれにとまつているならば、外国から原油を持つて来るということは起らない、又起すようなこんなばかなことはない。米も約四百倍から五百倍になつている。そういうことを考えると、決して石炭というのは不当に上つているのじやないのですから、それならば私は議論なしで外国から原油を入れることはおやめなさい、こういうことをはつきり申上げたい。ところがそうでないので私は非常に理解に苦しむものがある。だから今おつしやつたように石炭の日銀の指数が三百六十何倍でございますというようなことをおつしやつたが、どうもそういう統計資料のとり方がどういうところからとらえているのか私はわからんけれども、自分は自分で実感したことを申上げているので、そういう点をできるならば一つ究明してもらいたい、その点ははつきりと……。
  75. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは二時まで休憩いたします。    午後一時五分休憩    —————・—————    午後二時二十一分開会
  76. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 委員会を再開いたします。  先ほど東京都の議会議長窪寺傳吉君から失業対策事業の実施強化に関する陳情がございました。私が代つて承わつておきましたので御報告申上げます。  陳情の要旨は、   東京都における失業人口は、潜在失業者を合わせて、今日数十万人と推定せられ、今後、企業合理化、人員整理等に伴い失業者は、漸増の傾向にあり、更には、稼動人口の大都市集中並びに就労適齢人口の増加は、失業状勢にますます拍車を加えている。   失業者の増加に伴う社会不安を除去して民生安定に万全の施策を講ずることは刻下の急務であるが、現在の財政経済事情の下において、本都にあつては、失業対策事業実施の義務的経費の捻出にさえ甚しい困難を来している実情にある。   国会においては、右の実情を十分勘案せられ、本事業費の増額並びに事業種目の拡張等の措置を講じられるよう左記事項の実現について特段の配意をいたされたく請願する。  一、失業対策事業費の増額  二、大都市における特別の失業対策事業の実施  三、知識失業者失業対策事業の実施以上でございます。  只今大蔵大臣出席せられましたので、本日の当委員会調査案件でありまするデフレ政策影響雇用安定の問題及び総合的失業対策に関する問題等につきまして、大臣の所信を承わりまして、そのあとで質疑をいたしたいと、こう考えております。
  77. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間は何時まででございますか。
  78. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 時間は三時まででございます。
  79. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 失業問題に対しましては、私どもが今の一連の経済健全化政策を行なつて行く結果、私どももうでき得るだけ失業者の出ることを少くするように、言い換えますると、この一連の政策から出て来る副作用とか摩擦を少くいたしたいと考えておるのでございまするが、併し若干どうしてもそういう部分が出て参りまするので、これにつきましては、十分な配慮をいたしたいと考えておる次第でございます。  大体御承知のごとくに、二十九年度予算では、二十八年度に比べまして失業保険金を初めとし、人員において五%の増加を見込んでおりまするし、更に又若干予備費等も見て、例えば失業保険費の予備費は三十三億八千万円というような工合にもなつておりまするので、そういうようなものを見込みますと、只今のところどれくらいの予算になるか、その結果はちよつと予測を許しませんが、余り大きな不足を示すようにも見えませんが、予備費の使用を見ない場合に若干の不足をすることは免れないと考えております。従いまして数日前でございましたが、公共事業費等の使い方によつて失業者をできるだけ吸収し得るようにということで、実は閣議決定をいたした次第であります。これはたしか題目は公共事業等による失業吸収措置強化についてと、こういう閣議決定を行いまして、できるだけその方面努力するということに申合せたのでございます。従つてまあそういうことでやりたいと思つております。  私どもが実はこの一連の経済健全化政策を行なつて行く事情につきましては、もうすでにたびたび申しましたから述べませんが、先般私が関西地方、中部地方等に参りまして知つたことも、その後いろいろ人が行つて知つたことも、少し欠けておる点がこの対策にあるのではないか、その言われておるのは、大体失業者に対してはもう少し特別な考慮がいるのではないかということを言つておる、中小企業に対しては少し金融措置について欠くところがありはしないか、この二点であります。今の中小企業者に対する問題は、主としてこれは金融の問題でございます。併し失業者に対する問題は予算を要する問題でありますが、只今申上げたような工合に、予備費等も相当見込んでおるような関係もございまして、只今のところは一応これでやつて行くという考え方を持つておりましたが、併しこれが現実にどうもそれでやつていけないんではないかという不足を生じますような見込ができました場合は、勿論或いは臨時国会、又冬の国会等で御承認を得て、御協賛を得て予算措置をとる必要があると、かように考えておる次第でございます。  一応まあ簡単に私どもの考えておることを申上げますと、さような次第でございます。
  80. 吉田法晴

    吉田法晴君 概括的に一応御説明を頂きましたが、今考えても、あれで若干の不足が出るかも知らん、それも一応予備費で賄つて行きたいが、それでも足らんかも知らん、それでまあ臨時国会か、通常国会か知らんけれども、予算の補正について御相談申上げることになるかも知れないというお話でございましたが、昨日から労働大臣、或いは通産大臣等に質疑をいたして参り、最近の政府考え方と申しますか、これも近く明らかになる。この前に先月の初め頃、委員会を開きました時に、すでに労働委員会としては、労働問題が社会問題を起して、治安問題になろうとしている、こういうことをみんな確認をしておつた。その後私も地方に帰りまして、炭鉱等、極端に今のデフレ政策影響を受けております地方、或いは炭鉱、その従業員等について見たのでありますが、言われておりました或いは聞いて想像いたしました以上に深刻なものがあり、或いは治安問題云々というような点がもつと端的に出て参りました。或る炭鉱では労働者が炭車、或いはレール等を売つて生活費に充てている、こういう事例もございました。或いはまあまあ県なり、国なりがやつてくれる政策を待つてくれ、こういうことを言つておりますが、もう昨年の十月からの賃金遅欠配で、何遍も待つてくれ待つてくれということで、それを信用して来たけれども、一向対策が講せられない、もう法的にでもそういう財産或いは設備等を抑えてやつて行く以外にないじやないか、こういう空気が非常に強くなつているところ等も実は見て参つたのであります。そこでこの事態に対します対策については、或いは帰休制度とか、或いは先ほどお話公共事業吸収するとか、それから又朝来通産大臣は新経済政策と、こういうお話がありました。併しその全貌というものもまた承わることができないで、今月一ぱいかるだろう、こういうお話であります。それから公共事業吸収をするという案にいたしましても、これで十五万、現在五万ほど安定所で把握しておるので、増加を考えられるのは十万、その事業費は公共事業費でありますから、賃金の点は考えなくとも、例えば言われておりますように、山の中でありますとか、或いは都会から相当離れておる。そうすると、輸送費を失業対策費として考えなければならない。或いは補導訓練をしなければならない。こういう点は恐らく大蔵省に折衝をしておるのだろうと思うのでありますが、いずれにいたしましても、本当に十万なら十万、更に公共事業吸収するためには、十億に近い金が要ることに間違いないと思うのです、それから鉱害復旧々やつて、福岡、佐賀、山口等で、これは人数にいたしまして五万を越すと思うのでありますが、吸収をしよう、こういうことであります。金額にいたしますと十八億の三十年度予算を繰上げ実施すると、こういうことになります。で、その中、国が負担いたしますものが全部ではございませんけれども、十八億のうちやつぱり十億近いものになると思います。或いは失業対策費を繰上げて実施して参る、こういうことになるかと思うのでありますが、その穴埋めを予備費をなさるとして、大臣も先ほどお認めになりましたけれども、恐らく若干の不足が生じて来るということも これも間違いないことです。経済政策にいたしましても、或いは総合的な失業対策にいたしましても、結局は金になつて来る。そこで私はまあ百九十九億の実行予算、これによる公共事業費の節減等も、これは恐らく予算予算でありますから、速急実施せられることだと思うのですが、いずれにせよ、補正予算というものは必要になる。そこで時期はまあ野党、与党、いろいろございますけれども、臨時国会を開いて、百九十九億なり、或いはこのデフレ政策影響を食いとめる——まあ食いとめる範囲は、政府なり、或いは我々と所見を異にするかも知れませんけれども、お話通り失業対策或いは中小企業、その他についても、これは金の問題になつて参ります。必然になつて参ると思うのでありますが、これらの点について大蔵省として、大蔵大臣として、どのように考えておられますか。
  81. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今吉田さんのお話なつた点、私ども炭鉱地方については相当事情は聞いておりまして、まあ中以上のところはいいようでありまするが、小炭鉱等、相当つておられる事情は、よく聞いております。ただこの問題につきましては、またこれは具体的に、それではこう、あるということを、所管省から実は相談を受くるに至つておりません。従いまして大蔵省としては、どういうふうにするかということについての、まだ意向を取りきめておりませんが、いずれ所管省のほうから相談があることと存じます。  それで、それにつきまして、まあいろいろ考えたいと思つておりますが、先ほどちよつと吉田さんの言葉のうちに、実行予算についても、例えば自然失業者が殖えるのじやないかという意味のお話があつたように聞いたのですが、併しあの実行予算という言葉は、御承知のごとく、物価を五分乃至一割を下げるということが目標になつておりまして、例えば尤もに思うのは、建設予算であります。これは吉田さん御承知通り……。ところが例えば木材にすれば、いわゆる三割五分下つておりますし、鉄材にしても一割以上下つております。砂利石のごときもすでに一割以上下つておるのでありまして、ただ下つておらんのが、割合にセメントで、セメントも何か最近三百円下るようであります。そういうようなことでありまするので、仕事の量は減らさずに、この程度減らし得るものということからスタートしておりますから、従つて私どもこれをいわゆる俗にいう実行予算、これはその影響は来ないものと考えております。つまり物の面から見た点で、ああいうふうにいたしておるのでございますので、これはさような影響は来ないものと考えております。  それからなお、補正予算についてのお話がございましたが、只今のところ、もう少し実情を見まして、それからこれも卒直に申上げれば、さつき五億殖やしたやつが来年三月までの分がまだあるのでございますので、従つてもう少し実情を見まして、失業が起つて来るということがはつきりいたしますれば、そのときに所管省とも相談の上で、これを出したい。出す必要があれば出すべきだ。決して必要な予算措置を取らんという考えは持つておりません。必要な予算措置は取る考えは持つておるということを申上げておるのであります。
  82. 吉田法晴

    吉田法晴君 実行予算のために失業者が殖えるじやないかということを申上げたというよりも、むしろ実行予算で百九十九億ほどへずられた点は、これは仕事の量は減つておらんというお話でありますが、私ども了解するところは、仕事の量の減つているところもあるし、復旧、復活と申しますか、なされる点もあるだろうし、補正予算を組まなければならん要素として、あの実行予算というものになつたのじやないかということをお尋ねしたわけです。ですから補正予算をお組みになる必然性或いはお気持があるかどうかということを先ず伺いたい。  それからその経費のことについて、失業対策について、或いは労働省なり、通産省から話がまだあつておらん、こういうお話ですが、例えば公共事業失業者吸収する措置強化といつたようなものについて閣議決定、そこで大臣もお話なつた、これに関連する予算措置というものは、それはまあ予備費から出るか、どこから出るかはとにかくとして、これは恐らく話がないとはいわれない。大蔵大臣も了承しているとさつきもいつた。それが金にならんというのなら別問題で、ものの輸送、賃金支払というような点もありますが、それらの点も結局は筋になつて予算を伴なつて参る。そこでそういう点については労働省からも折衝をいたしておると思います。それがまあ大臣のところまで来ているかどうかはわかりませんが、これについては閣議決定がございますから、十分大蔵大臣としても協力を頂けると、こういうことになるでしようか。それともやつぱり渋い顔をされるのか。  もう一つ鉱害復旧問題についても十八億という数字を挙げましたが、先の通産委員会の際には、おれは知らんというふうなお話であつたそうでありますが、これはまあ時期からいいましても、大臣としてまだ聞いておらんという段階ではないと思う。労働問題が社会問題或いは治安の問題になろうという今日、我々が大臣に出て来て頂きました所以のものは、まあありきたりのお話を願うのじやなくて、それらの点については、大蔵大臣としても努力すると、こういうまあお話と申しますか、御方針を承わりたいのですが、もう少し一つ詳細に。
  83. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 吉田さんがいわれるお心持ちはよくわかります。私どもも勿論国民の皆さんの幸福のためにお預かりしておる所管の仕事でございますから、話がありますれば、十分親切に考えるつもりでございますが、併し実はまだ話を受けておりません。少し率直に申上げておきます。また具体的な話が出ておりません。  なお、今お話なつた閣議決定になつた分につきましては、数字的なものは何もなくて、ああいうふうに出されたので、これは事柄としては非常に結構だということで、私は賛同しておるわけでありますが、今の吉田さんの話から見ると、つまり事業そのものが負担する部分も相当ございましよう。併し或いは国家が負担しなければならん分も出て来るのじやないかと、こう思われます。さような場合には十分考えたいと思つております。ただその節一度労働大臣から話があつたのは、この頃東京、これは多分東京辺だろうと思いますが、それは具体的にこちらへ出して下さい、それで御相談しますといつたのは、或いは私が申すことが間違つているかも知れませんが、十数カ所の窓口に毎日職業を求めるものが三十人以上のものが一つの窓口に集まつて来る。それは非常に実際においても困難を感ずるので、もう少し窓口を殖やしたい、十五か二十殖やしたい。そうすると、三千も押しかけちや仕事がはかどらないのが、もつとよく仕事がはかどつたり、心持ちがよくなるかも知れない。実際金は大体七、八千万円程度のものでいいのですから、それについて特に考えてもらいたいということで、それは一つ十分考えましよう。どう考えても一つの窓口で三十人も求めて来られたら、実際係りのかたも困られる。これは又思想が荒つぽくなるのは、それは避け難いので、それは十分考えましよう。それは具体的に一つ出して下さいといいましても、それ以外には金銭について、全然金のたかについて何も聞いておりません。このことはまあ事実でございまするから、そのまま申上げておきます。併し今話がありましたから十分一つ考えたいと思つております。  先ほど実行予算編成について、補正予算のことも考えたのか、こういうお話、これは私自身誤解しておりましたが、これは仮に補正予算で……これは私ども実行予算を減じましたのは、一方でいろいろ国会のほうの御審議の結果、審議が未了で終つたり、それから又或いは時期が遅れたりいたしまして率を変えられた等で収入減を来す分がありますのと、それから他方で支出の実行期が遅れた等で支出の増加を来す分がございます。それらいろいろな点から考えまして、むしろ物価がそういうふうに下つて行くときであるし、調弁価格についても十分配慮をするということになれば、あの程度減じ得るのだが、事務費とその施設費というものの点から参りますと、そこで特に失業対策費を念頭においたという次第ではございませんが、予算といたしますると、俗にいう一兆円予算の中でも割振る余地が出て来た、吉田さん多分そういう気持でおしやられると思うが、それならその通りでございます。但し補正予算を心構えにしてこういうふうにしたのかと仰せになると、それはそうでなくて、一方で歳入減、他方で物価の下落等を見込みまして、先ほども丁度申しました通りに、私は当時実行予算を相談いたしましたときも、今申上げました材木で二割五分、砂利石も下る、それから鉄鋼も一割、建設資材も下つているというような事情等もございましたので、それで施設費、或いは事務費、こういうことで減じ得るものを減ずるという建前でいたした次第でございます。
  84. 田畑金光

    ○田畑金光君 大蔵大臣の御答弁で一応考え方は了解されるわけでありますが、只今お話によりますると、関係者から具体的に失業問題等についての予算の増額等の要求が現実には来ていない、だからして大臣としてもまだそういう点までは考えていない、こういうようなお話でありますが、そのようであることを我々も信じたいのでありますが、併し事実は、我々の見るところは、大蔵省の一兆円予算堅持というこの緊縮財政方針というものが強く他の省に圧力というか、影響を与えて、当然この政策の犠牲となる部門の増額要求等に対してもブレーキをかけているのではないか、こう私たちは見ているわけであります。そこで私は大臣にお尋ねいたしまするが、先般大臣が関西出張の節に新聞談話として発表されたものと見ておりますけれども、若しこのデフレ算予を実施した結果、失業者が増大し、社会不安、治安の問題等に波及するようなことを考えるときには、取敢えず既定予算を本年度一杯で充当して、そうして更に後半期に予測される失業者の増大については補正予算等を考慮して善処しよう、こういうような新聞記事を私たちは見たわけであります。さすがに大蔵大臣だと思つて敬意を表したのでありまするが、大蔵大臣といたしましては、失業対策問題については、このような考え方で臨まれるのかどうか、これが第一点。  次にお尋ね申上げたいのは、今も申上げましたように、この金融引締め、緊縮予算施策の結果、どうしても犠牲となる面が出て来るわけであります。例えば先般全国におきまして、結核患者が東京都庁初め各県庁に居坐りをやつて、厚生省の通達に対する撤回を申入れているわけであります。この運動方法については、とかくの批判もありましようけれども、併しながら現在の要入院結核患者が百三十七万名七万八千にすぎないという、この結核予防対策の不足が誠にこういう社会的な不安を醸していると思うわけであります。厚生省等におきましては、この事例に鑑みて来年度は少くとも三割乃至五割の予算増額を大蔵当局に求めるという方針を内定したようでありますが、本年度すでに結核対策費が二百三十三億に上つているはずでありますが、こういうようなデフレ財政の実施の結果、社会保険、社会保障の費用というものが非常に犠牲になつております。こういう点についてどういう救済策を考えられようといたしておるか。  更に又中小企業の問題につきましても、大蔵大臣は先ほどいささか触れておられましたが、午前の通産大臣お話によりますと、中小企業救済策について幾つかの方針を述べられているわけであります。併し我々の見る当面の問題は中小企業金融の問題だと思つておりますが、成るほど金融の総額においては日銀或いは市中銀行の貸出は殆んど変りはないわけであります。併しその貸出されておる内容を見ましたときに、これは系列融資であつて、中小企業は殆んど向いていない。地方銀行にもこれが影響し、そして地方銀行の貸出を見ましても、所在の中小企業に対する貸出は殆んど抑えておる、こういうようなことを見ましたときに、こういうような中小企業に対する金融措置或いは税制措置、こういうような面に対しまして、大蔵大臣としてはどうお考えになつておられるか。  私はこのような具体的な問題についてお尋ねするわけでありますが、特に先ほどの吉田君の御質問にありましたところの当面の失業問題を中心とする補正予算を出すかどうかという問題であります。この点は先般労働省でも二十八年度の労働白書を発表いたしておりましたが、この労働白書を見ますると、すべてが結構ずくめであります。就業労働人口も四千万に到達した、労働者の実質賃金も名目賃金も高まつた、雇用量も拡大した、いずれも結構ずくめでありますが、併し二十八年度、いわゆる政府の言葉を借りて言うと、見かけの繁栄であつた。ところが鉱工業第二次生産部門における労働力の状況を見ますると、昭和二十五年度に比較いたしまして、なお非常に低い水準にある。昭和二十九年度においては二六%の就業率を持つておりましたが、昨年度においてはなお全国の労働人口の中で、鉱工業生産部門の占める就業率は、労働人口の吸収率は二二・三%であつた。ところがその鉱工業生産というものも、先ほどの石炭局の資料によりますならば、一五%前後の生産縮小が現われておる。こうなつて参りますると、どうしても鉱工業の生産縮小という面からして就業者の減少というものが出て来るわけであります。こういうような問題を考えましたときに、大蔵大臣といたしまして、先ほど新聞談話で発表されたように、若し関係官庁から今日の事態というものが既定予算の枠内においては到底処理することができない、予算の増額ということが要求された場合に、大蔵大臣といたしましては、そのような客観的な情勢に対処するだけの準備を用意されておるかどうか、改めてお尋ねしたいと思います。
  85. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 最初に失業者が今後増大した場合等について必要な予算措置をとるかどうかという問題でございましたが、このことは私新聞にどう書かれておるかよく存じませんが、私の心持を率直に申上げれば、今後の推移を見まして、実際においてこの予算が足らんという、例えば失業保険その他につきましても、そういうものが足らんということがございますならば、これは必要な予算措置について考慮しなければならん、これを検討して盛るべきであると考えております。  それからその次に肺結核患者云々についてでございますが、これは一遍、厚生省の当局とも、相当意見もあるのでよく打合せた上でないと御返事ができかねます。  それから社会保険とか社会保障をどうするか、これは誠に御尤もなことでありまして、社会保障等については十分な考え方をしなきやなりませんが、同時に国としてはやはり今日の日本におきましては、この日本の財政を緊縮するということが止むを得ざる措置でございまして、この私どもとつている一連の経済健全化政策の範囲において、できるだけの、最善の措置をいたしたいと考えております。  それから中小企業の問題についてのお話でございますが、金融につきましては恐らくすでに話がありましたでございましよう。私どもといたしましては、六、七の両月の指定預金を、これを引上げないことにいたしましたほか、この八月に又期限の到来する分が十六億からございますが、これも更に四カ月延長する所存でおります、今までは六、七のものをそれぞれ四カ月延長いたしましたが、更に八月到来の分についても、十六億幾らでございますが、これも延期する所存でございます。それから更に一番大きいものは、中小企業者の金融としましては、なんと申しましてもいわゆる普通銀行、その他銀行であります、金融機関であります。この銀行等の貸出に対する分については、中小企業者に対する貸出の分については貸付金額の千分の五だけはこれは無税で税金は取らない、利益金として計上せずに、滞り準備金として残すことを認めている。言葉を換えて言うと、保険金の作用をこれはするのでありますので、これは今後は実際問題として円滑に事が運んで行くのではないかと考えております。更に中小企業金融公庫更には国民金融公庫、商工中金等に対する資金源の増加も図つておりますが、特に昨年から、まだ出たばかりの中小企業金融公庫も、今月は二百七十億円の貸出し総額になつておりまして、これは昨年からスタートしたのは御承知通りであります。相当働いていることは御了承願えるかと思うのであります。併しいずれにしても、中小企業というものは金融が極めて大切でございますので、今後も十分これについては考えて見たい、こう存じております。  更に税制の問題でございますが、これも皆さんの御協賛によりまして大体それぞれ今軽減措置を取つてつておりますけれども、なお、なさなければならん点もあるかと存じますので、これは次の国会等にまで、できるだけ一つ取調べまして御協賛を仰ぐことにいたしたいと存じております。
  86. 阿具根登

    ○阿具根登君 国際収支のバランスによるデフレ政策ということを言われておりますが、これに対する見通しを簡単に、いつバランスが取れる見通しであるか、今のままで行つてどういう考えを持つているか、お聞きしたいと思います。  それから具体的な問題といたしまして、中小企業の問題は出ておりますから触れませんが、労働金庫に対する預託増加を考えておられるかどうか。それから同じく中小企業で、只今の大臣のお話でも木材等では二割五分も下つているところがあると、こういうような国際価格に下廻るようなところが出たところに対する考えはどういう意図を持つておられるか。以上三点について御答弁願います。
  87. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) この国際収支の均衡ですが、問題はまあすでに御了承願つているものと存じておつたのでございまするが、御承知のごとくのいろいろ仮定をしなければならん問題がございます。例えて申しますれば、特需というようなものがどういうふうになつておるか、これが前年でありますると八億ドルもありまして、本年はこれは七億一千万ドルぐらい見ておりましたが、只今までのケースだとこれは恐らく六億ぐらいに減るのじやないかと思われますので、かれこれまた交渉いたしておりまして、これをどういうふうにするかということは多少過程を要しまするが、この点に変りがないといたしますると、大体本年の外貨予算編成の方針から申して、例えば二十億ドルの輸入、その後の情勢で一月と六月とは大体昨年同期に比べまして三割輸出が増加いたしております。三〇%増加いたしておりますから、従つてこの割合で行けば十四億を超えると思いますが、仮に十三億と見ましても、先ず本年は特需に変りがないといたしますれば、一億ドルちよつと以内であります。特需が更に変れば多少これが殖えるでございましよう、一億何千万ドルかにこれが殖える、まあ一億ドル以内の赤字ですむことに相成つております。明三十年度はこれは私どもが一切均衡を得る所存であります。従いまして言い換えますと、日本としては三十年度で国際収支の均衡を得る、こういうことになりまして、三十一年度から私どもの言葉で、又皆様もよく仰せになつておる、日本がこう縮まつては仕方がないと仰せになる際です。拡大均衡という線に持つて参りたいと考えておる次第でございます。只今までのところではこの一連の政策相当効果を示して参りまして、物価においても相当下落し、輸出の面においては一、六月は只今申上げた通り昨年同期に比して三割増加をいたしております。  それから労働会庫の問題でございますが、労働金庫につきましては、担当しておる省とも打合せておるのでありまするが、大体金融のベースに乗らんところはなかなかやりにくいのでございまして、只今考えておるのは、例えば造船でございますると、計画造船というものは、あれは一つ金融ベースに乗つて来るものでもございまするので、このほうについては措置をとつてはどうかということで検討しております。なお、ほかの分についても金融ベースに如何にして乗せるかということで検討いたしております。
  88. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働金庫の問題を出したのは、運用資金の中には相当の労働者の金が入つておるはずなのであります。而も労働者がこのデフレ政策によりまして非常な遅配、欠配で苦労している、そして労働金庫に非常に頼つておる。そうするならば、優先的にそういう中から労働金庫に預託していいのではないかというような考えを持つておるので、特に労働金庫というようなことを出したのでありまして、運用資金の運用につきまして、もつと考慮を払う余地はないか、こういう点、私は質問しておるのであります。その点を一つ……。
  89. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 御趣旨はよくわかります。ただ私どもといたしますると、労働金庫に対しましても金融ベースに乗らんやつは非常にやりにくいのじやないかと思うので、只今申上げた通り、はつきり金融のベースに乗つて来るものについては、できるだけ早くやつて行こう、併しあとの分についても十分考える、こう実は申上げておるのでありまして、どういうふうにすれば金融のベースに乗るようになるかということについて検討いたしたいと思つております。
  90. 田村文吉

    田村文吉君 私は先ず希望を一つ述べるのですが、国際収支の問題から、為替の許可を大体大蔵省がされておるのですが、昨今国産品の愛用という言葉が盛んに言われておりますが、いわゆる国産品で代用できるものは、先ず例を言いますと重油に対する石炭でございます、その他の類似のものは大分あると思います。これは大蔵大臣から一つ大いにこの際勇気を奮つて国際収支改善のために、そういう国産品の愛用ということを進めて頂きたい、こういう希望を持つております。  それから今日の新聞に、IMFへあなたがおいでになるかのようなことを書いているんですが、そこでちよつと伺つておきたいのは、今度は正式にIMFに加入されるということになるんですか。そこでそうなつた場合において、日本として、例えば為替のレートを変えるような場合が、あなたにはそういうことを言うと非常に嫌われるんだが、そういうよう問題等についての責任……、大体一割以上の場合には許可を要するとか何とかいう条件がついておるんですが、そういうような問題についてどういうお腹を持つていらつしやるのでございますか、これをちよつとお伺いしたい。合せて、外資の導入というものが幾らか日本経済に、役立たんと言つては甚だ何ですが、機械などを実は持つて来てもらつては困る。余ほど日本でできないような、特別に合理化に役立つようなものは別ですが、そうでないというと、余り機械なんか持つて来てもらつても、大して国内の失業救済にならない。今度そうかと言つて、それを見返りにして日本で円をお出しになればいわゆるインフレーシヨンになる虞れがある。こういう点について、ちよつと私ども心配しておるんですが、その点を一つお聞かせ願いたい。
  91. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今のお話ですが、国産品の愛用について田村さんのお話、誠に御尤もでございまして、これは一つ各閣僚とも相談いたしまして努力いたしたいと思います。  なお、IMFの問題は、すでに加入してしまつておるんです。これは一昨年加入いたしまして、メキシコで開かれたときに池田君が大蔵大臣として行きまして、これへ加入いたしております。日本も基金を出しております。正式に基金を出しておりまして、私は昨年行つたのは三回目で、これはIMFの私の名前がガヴアーナーという名前になつておる、ガヴアーナー・オブ・ジヤパンということになつておる。同時にIMFと同様に申上げますれば、いわゆる世界銀行というやつですね。あのほうも日本が出資いたしております。これは五十数カ国でやつておりまして、これも日本とセイロン、タイを代表して、日本側の理事が一人、向うのほうへ湯本君が出ております。やはりこれも日本では大蔵大臣がガヴアーナーになつております。これは同じようなもので、同時にいつも開かれします。昨年もワシントンでしたが、本年もワシントンで開かれるので、ですから私が行くか行かんか、まだいろいろ国内の情勢もありまするから何でありまするけれども、誰かこれは必ず行かなければならんことになつておる。行く資格者とすると私が資格者ということになつておる次第でございまして、行くと私ははつきり言つたわけではございません。正式な招待状が来ておるので、あの話が出たかと思います。これは田村さんもお話のごとくに、いろいろ、IMFは、例えば為替レートを切下げるというような問題がありりますれば勿論IMFの許可が要ります。例えば四月の十九日でしたか、メキシコがやりましたね。あのときでもIMFに来まして、IMFのほうで許可いたしております。どういうことで許可したか、この間ちよつと聞いておりましたが、これは何かの機会に申上げることにいたしたいと存じます。いずれにしても許可がないとやれません。勿論日本はこれは繰返し言う通り、私は為替レートの切下げ、さような意思は毛頭持つておりません。  それから外資の導入のことでございますが、今のところ外資導入については民間で行われておる外資がございます。例えば東京電灯が火力発電の機械、千数百万ドルを入れました。民間のほうのこれは外資導入で、世界銀行にはこれは何も関係はありません。恐らく今おつしやつているのは世界銀行の分かと思います。この世界銀行の分につきましては、丁度私は只今ここへ来る前にドール氏に会つておつたんです。二十分ぐらい話をしまして、いろいろ話をしておつたのでありますが、このほうは一口に言いますると、食糧増産、それから電源の開発、鉄鋼、石炭の改良と申しまするか、増産に対する分等も含んでおります。そのほか機械類についても若干考えておるようでございますが、今それぞれ政府のほうで話をいたしております。これはまだそのうちの農業だけが調査団が参りまして、この間関西から愛知地方、近畿も行きました。京都の巨椋池ですか、或いは愛知用水とか八ケ岳、皆それぞれ農業地を見ております。更に北海道及び八郎潟なども調査するはずでありまして、これはまだ結論的なものは何も出ておりません。今後の調査にまつわけでございますが、若干のことをしてくれることと考えておるのであります。  それからあとの電力、電源のほうは、これはたまたまこの前調査団が来ておりますが、火力の関係で来ておつたのが調査して行きました。これはまた結論を聞いておりませんが、向うへ調べを持つてつております。そのほかのものは今後調査団が来ることになろうと思います。  それからもう一つ、まあこれは外資導入という言葉で言い得るかどうかわかりませんが、よく言われるけれども、いわゆる余剰農産物の関係の分、これを日本国内でその外資を使わすということになれば、外資導入の役をするのじやないかと思います。この場合の問題等についても、これはまた本当は話はそう固まつておりませんし、全然途上でございまするので、この話は具体的なものは何も持ち合せておりません。併しいずれにしても考えております。ただ田村さんのおつしやつた機械を買うことは迷惑だということなんですが、これについては、実は向うでは、私ども一番希望するのだけれども、インパクト・ローンと称する、日本側で自由に金が使えるということを承認しないのです。これは御承知のごとく、もとの起りはIMFと全く同じような考え方で、為替の金が足らない、いわば外貨の足らんものを弁ずるというのが世界銀行の建前になつております。併しながら必ずしもアメリカから機械を買う必要はございません。ドイツから買つても結構ですが、機械とかそういうものを買うということが、つまりそれが為替関係で不足を生ずるのだから、そのフアイナンスをするというのが主になつております。そんな関係で要るのでありますが、併し日本の妨げになつては困りまするので、こういう機械を入れる場合には、スタツクと言いますか、通産省関係の、あそこでこれは日本になくて是非入用だというものは買つております。何でも向うのものは外資導入だから買つて来るという考え方は全然ございません。そういう考え方を申上げておきます。
  92. 田村文吉

    田村文吉君 ただ一つそういうことを入用がないというわけじやないが、そういう借金をするから、いつまでたつても為替の尻はなおらんのじやないか。逆に私はそういう逆説が言いたいのです。たから一体そんな金を借りることを考えなくて、自分で自力で一つやるということを考えたらいいのじやないか。もう一つはそれを見返り円にして国内に円を増発なさるわけですが、これは一つのやつぱりインフレーシヨンを起すことになるので、国家が公債を発行すると同じようなことになる。その点についても、どうも外資の導入ということについて非常に熱心に今まではおやりになつているが、どうもちよつと現在の状況には合わない点がありはしないか。どうしてもこういう特殊の機械を入れなければ、日本ではできないのだから、外国から持つて来て日本産業構造を全部なおすというようなことであれば、これは意味があるのですが、そうでないというと、どうも外資の導入、外資の導入とおやりになつても、そういうことをなさるから、いつまでたつても、国際貸借はなおらんじやないかと、こういう反対論を、逆説を持つているのです。
  93. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今のお話ですが、私どもが今申上げた趣意は、向うから機械等を入れておりますその金だけを借りるのでありまして、それに必要な円資金ですね、国内で例えばそれが農業開発に使用するとすれば、農繁開発に対する円資金が要ります。これは国の財政でやりませんと、お話のインフレになりますから、これは国の財政資金か、何かその他の調達によつて、これは賄う考えであります。さもなく、単純にそれは今の一番私が希望するのは自由に使えるのが一番希望するところでありますから、インパクト・ローンということを言つておるのでありますが、インパクト・ローンだとやり方如何によつてインフレになります。併し今の機械その他のものしか入れないということになりますと、それ自身何らインフレになりません。ただこれに伴う予算措置が悪いとインフレになるのでありまして、この点はどうか誤解なさらんようにお願いいたしたいと思います。
  94. 田村文吉

    田村文吉君 借金をするから機械を買うということになりはせんか、こういうことです。
  95. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) それは入用だから買うのでありまして、借金をするために借金をするのでないことは御了承願いたいと存じます。
  96. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 大蔵大臣一つ簡単に……。実は今度のデフレ政策の目的は大体二割物価を下げたいという大蔵大臣のお考えだ、こういうことを承わつておりますが、もう現実に先ほどあなたがおつしやつた通り二割以上下つておるわけですね。木材にしても繊維にいたしましても、国際価格の水準以下に到達しているのがあるわけです。そういう企業が依然としてこのデフレ政策のあおりをくつて非常に難儀をしておる。続々倒産の浮目に遭つているというわけですが、こういうものは一応目的を達した産業から何とかして転換策を講じて行かないと、非常に経済界の動揺の原因を作つて行くんじやないかと考えますが、それらの収拾策は一体どう考えておられるか。  それから第二の点は、これくらいデフレ政策の強い影響を受けて、社会的にも、或いは経済界においてもいろいろな意味で相当国民的な不安を醸成しているわけですね、こういう場合には、やはり大蔵大臣として一応早期に臨時国会を召集して、国会を通じて国民の不安というものを解消せられるということが一番必要じやないかと思うのですが、大蔵大臣は臨時国会の召集をいつ頃やつたら適当とお考えになつているか、それを伺いたい。
  97. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 先ほどお話がありましたが、私は二割下げるとは思つておりません。五分乃至一割ということを考えておりまして、そこで五分乃至一割で、一番ピーク時に比べますと、もうホーセイル・プライスの卸売価格で八割何厘か下つているということが昨日の朝日新聞に出ております。それで大体目的のごとくなつております。お話はよくわかりますが、その通りに私も考えます。もうすでに国際市価まで下つておる、繊維品のごときものは何ら下げる必要はないのじやないか、私もその通り考えておるのでありまして、この間私大阪へ行つて、一番繊維品について希望されるのは、価格の安定ということである。価格の安定というものが、一番希望される。これ以上は私も希望しないし、望ましくないということを言つております。なぜ言つたかと言いますと、下げるということが注文したものを取り消しますから、だからそのときに言つておいた次第であります。特に紡績というものは多年政府の力を借りずに行つた、独立でやつて来られたことは委員長承知通りです。そのことを特に、阿部委員長等に十分やつてもらいたいということを述べておきました。それについて政府が何らかお手伝いする必要があるなら、お手伝いをも辞さないと言つたわけでありまして、その点私どもはひとり繊維に限りません。国際市価にまで下つておる。これは全部下つて来ております。これはあなたと全然同感だと思つております。ただ国会の問題ですが、これは私どもは何もそう、不安のところもありましようが、これはあなたもお歩きになつておわかりだと思うが、大体日本の農村はデフレ影響はどこにも何にも出ていないということは、これは皆さん御承知通り。これは農村を中心とした小都市、地方都市には何もデフレ影響が出ていないことは御承知通り。又経済のほうから見て、指数の上からも、どの程度から見ても、まだ私どもは、全般的に不況であり、この不況が是非とも国会の御協讃を仰がなければならないような事態になつているとは、実は考えておりません。従つて私は、これは国会召集のことは一応大蔵大臣からかれこれ申上げる事態でもありませんが、私自身の心持を委員長に率直に申上げさして頂けば、今その時期にあらずと考えております。誠に失礼いたしました。   —————————————
  98. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 続きまして前回の委員会のときに経過報告を受けておりましたが、その後大分事態の変化があるようでありますから、近江絹糸の労働争議につきまして、全般的な経過並びに見通しの報告を受けたいと思います。
  99. 中西實

    説明員(中西實君) お手許に近江絹紡糸績株式会社の労働争議概況をお配りしてございますが、これで御覧頂きたいと思います。表紙を入れまして三枚目、数字の8というところに夏川社長の工場視察を七月の上旬に行いました。このへんまでは前回御報告を申上げたところかと思います。  その後工場視察の最後の段階で社長が頭部を竿でたたかれたというようなことがありましたので、予定の団体交渉が延びておりましたが、いつまでも遷延しておいてもきりがございませんので、その次のページの10でございまするが、七月の十一日千金良、堀、岸ら三斡旋委員が西村専務等に会見いたしまして、平急に交渉を開くよう要請したのでありますが、会社側は全繊代表の参加を認めない。ピケを解かなければ駄目だ、一週間程度の余裕を置いてくれという条件を申し出たのでございます。更に十三日三人の斡旋委員が再度西村専務らに交渉の開始を要請したのでありますが、会社側の委員はやはりピケを解かなければいけない。第二組合とだけなら話合いをしよう、こういうことで、ついにその日三人の斡旋委員は斡旋の打切りの声明を発表いたしました。それで七月十五日全繊同盟は緊急中央執行委員会を開き闘争を強化するために資金カンパ、組合幹部の工場への配置等を決定いたしました。七月十五日労働大臣は中労委会長に対し事態の処理につきまして尽力かたを依頼いたしました、なお、同日全繊同盟の瀧田会長から会社が団体交渉に応じない。従つて労組法七条二号違反の不当労働行為だ、これも救済申請を中労委に行いました。七月十七日総会を中労委において開かれまして、中山会長小島委員が公益側の代表、それから労使それぞれ二名の代表を選びまして、六人の斡旋委員を決定いたしました。即日直ちに斡旋の打合せを行いました。七月二十六日中労委会長は労使双方に対して別紙三の申入を行いました。別紙三が四と書いてございますが、これは三の間違いで、別紙三の申入、つまり労使双方各三名、それに中労委の公益側の斡旋委員が一人、それから全繊の代表が一人加わつて会談をする、期間は五日間、その間休戦をすると、休戦の際の条件は、ピケを解いて組合側は組合員以外のものを工場施設外に撤去せしめる。会社側は又従業員以外のものを撤去せしめる。それから会社は物資の搬出入を行わない。労使双方とも組合員獲得のための説得をしない。会社側は操業しないが、組合側は機械の保全に協力する。給食については現状のままにする。なお、休戦の条件が実施されておるかどうかを監視する役は地元の地労委会長或いはその代表者、こういうことを趣旨とした申入をいたしました。これに対して二十七日の午前に双方とも受諾の回答をいたして参りました。そこで中山中労委会長は話合いを二十九日の午後一時から行うと、更に休戦は午前七時から実施するということを通告いたしました。  それからずつとその紙が飛びまして、終りから四枚目の紙にございまするが、そこでいわゆる予備会談を東京ステーシヨンホテルで第一回七月二十九日、第二回七月三十一日、第三回八月二日と三回に亘り持たれたものでありましたが、交渉は進展を見なかつたのであります。  そこで第三回の予備会議におきまして、中山会長から中労委の斡旋による間接の団体交渉をしよう。更に休戦の期間をもう二日間延長したらどうかという提案がなされました。で、中労委が斡旋による間接団体交渉、斡旋団交というような新しい言葉が生れたのでございますが、当事者同士が顔を合わせないで、中労委が中に入つて両方の言い分を別々に聞いて相手方に伝えるという間接の団体交渉のやり方でございます。  それで今月に入りまして二日より徹宵で労使の意見調整を行いました結果、八月三日、別紙四のその次に附いております、別紙四の最後的斡旋案を提示したのでございます。この斡旋案に対しまして、四日午後に双方が中労委に受諾の回答をいたしまして、一応幾多の話題をまきましたが、近江絹糸の争議もまあ解結とは行きませんが、平常な状態に返つたというような経過を辿つたのでございます。  で、斡旋の際に一番問題になりましたのはやはり今後の団体交渉に全繊の代表が入るかどうかという問題、それから争議中のいろいろの損害、組合から言いますれば、宿舎なり食堂から締め出しを食つたそのために、組合員が宿舎なり給食を代つてやることになつて、そのために非常に金がかかつた。会社は会社で又それぞれ損害があつたというようなことを申しておりますが、この斡旋案のさつきの三、これが非常にまあ問題になつたわけであります。  それから更に八、いわゆる一年労働契約の労働組合員、これは男子工員で晩ばかり勤務する、つまり深夜ばかり勤務する男子工員の問題でございます。一年契約だから一年の契約期間完了と共に解雇することは別に法律的に差支えないわけでありますけれども、実は今度の争議の中核隊もこの男子工員が中核になつてやつた。これが全部若しも解雇されるということになれば、組合運動も壊滅するというようなことで、非常に組合員もこの八の問題については真剣に考慮してもらいたいということを言つておつたわけであります。  九、十の問題、これは結局まあ立上りのための資金というか、会社側はこれは困ると、せいぜい貸付金ならいいというようなことを言つておつたようであります。併し組合員といたしましてはどうしても成る一定額の金をもらわなければ困るというので、この表現は極めてあいまいでございまして、「現在組合員の生活困窮の実情と将来に亘る労使協力の実を上げるための金額については」というのは、どんな金額かさつぱりわからないのでありますが、中労委、会社、組合間において協議してきめるということになつております。  そこで受諾後昨日、今日と中労委を中心にしましてこの十の問題それからこの三の問題、これにつきまして話合いが進められておりますが、未だに会社側は組合はピケを完全に解いてないと言つたり或いは会社は一年契約のこの組合員に対して解雇通知を出したというようなことを言い合いまして、なかなか話は進捗しておらないようであります。まあこれだけこじれた争議でございまするので、そう短日月に最後まできれいに片附くとは思われませんが、だんだんと根気よく当事者間で話合いが行われれば、ぼちぼちと解決に向うんじやなかろうかというふうに考えております。  以上近江絹糸の御報告に代えます。
  100. 田村文吉

    田村文吉君 簡単に聞きますが仕事は始めたのですか。
  101. 中西實

    説明員(中西實君) 仕事を始めることになつたわけです
  102. 田村文吉

    田村文吉君 なつたわけですか。
  103. 中西實

    説明員(中西實君) 始めております。
  104. 田村文吉

    田村文吉君 始めている、各工場が……。
  105. 中西實

    説明員(中西實君) はあ、ただ、今言いましたようにピケを解かないとか何とか言つて、そういう部門で若干の紛議はございますが、お互いに、仕事は始めております。
  106. 市川房枝

    ○市川房枝君 昨日ちよと労働大臣に御質問したのですが、時間が十分ありませんので、細かいことは直接の担当のかたから伺うほうが適当かと思つて、今日に延ばしたのでありますが、私まあ心配しておりますことの一つは、失業者がだんだん殖えて来て、頂きました資料、最近における雇用、失業状況を拝見しましても、完全失業者の動向のところでも殖えて来ております。まあ公共職業安定所の求人の状況でも殖えて来ておりますが、その数字がまあ男女両方の合計の勿論数字となつておりますが、性別のこの数字はちよつとわからないのでございますが、これは安定局長に伺いたいと思います。
  107. 江下孝

    説明員(江下孝君) ちよつと今日は内訳の資料を持つて来なかつたのでございますが、私の記憶いたしておりますのは、完全失業者のうち、やはり三分の一程度が、三分の一から四分の一……。資料がありましたのでわかりました。例えば本年の四月に関しまして、完全失業者の総数が五十一万でそのうち女子が二十一万という数字に相成つております。
  108. 市川房枝

    ○市川房枝君 やはり半数近いわけですね、五十一万の……。まあ新聞その他の最近のもので見ますと、やはり首切りという場合に、やはり一番弱い女を首切る。まあその首切り、切り方もいろいろあるようでありますが、勧告という形で首切る、或いはまあ停年制、或いはまあ共稼ぎの場合、或いは結婚している者を雇わないというような、いろんな事態があるようでありますが、最近、今の数字を伺つたのですけれども、だんだん婦人の数が前に比較して殖えて来ているというようなふうにお認めになるのですか。
  109. 江下孝

    説明員(江下孝君) お手許に差上げておりますこの失業保険初回受給者の男女別数というのが三月から五月までのものが一応出ております。それでまあこれによつて見ますと、初回受給者について見ますと、女子が全体の三八%ということになつております。それで毎月の比較がございませんけれども、正確なことは申上げられませんが、特に非常に女子が率が殖えたというようには私ども聞いておりません。それで大体いろいろ企業整備の基準とかいうようなものを拝見いたしますと、女を先にするというような基準は、これは憲法違反でもございますので、ないようでございますが、ただ中小企業等におきましては或いはそういう現象があるかも知れませんが、そこまでなかなか私どものほうでは比較できないわけでございます。なお、谷野課長見えておりますから、谷野課長から御説明申上げます。
  110. 谷野せつ

    説明員(谷野せつ君) 只今職安の局長から御説明頂きましたが、失業保険の初回受給者の最近の資料を見ますと、受給者の約三八%が女子でございますが、雇用者に対する女子の割合が二八%でございますから、少し女子の比例も多いようには見えますけれども、これは産業によりまして大分変化がございますし、失業保険の受給者というものはいろいろな事情によつて変化いたしますから、これだけの資料では特に女子が多いということは認められないように思います。ただ最近企業の中で少し女子に対しまして、例えば規約の中で、制度が女子に退職の事項などを若い停年制にいたしますとか、或いは又結婚したらやめるというようなことを少し入れるようなことがぼつぼつ起つているという意味で労働組合などから訴えられることもございます。私どもといたしましては、この問題につきましては非常に残念に思つておりますし、法律の違反ではございませんが、好ましい傾向であるとは考えておりませんので、訴えられましたつど、私どもは非常に慎重に事情を解決するように努力をいたしております。  なお、婦人の職業の問題につきましては、最近の企業整備が特に女にしわ寄せがあるということは考えられませんけれども、そういうことが起ります事情につきましては、婦人労働者自身の中にやはりいろいろ反省しなければならない問題もございますので、とりわけ女子の職業に対して、もつとはつきりと働く心構えを持つて、そうして職場で能率をあげて働くようにという考え方を皆様に持つて頂くためにも、或いは又そういう扱いがなくなりますように、職業の意識を高める運動というものを、年々実施いたして参りましたが、この九月、十月にかけまして、婦人の職業意識を高める運動を実施いたしまして、そういう問題の解決に向いたいと思つております。
  111. 市川房枝

    ○市川房枝君 この前の委員会のときだつたと思いますけれども、失対の問題が議題になつておるときに、その中に、婦人のそういう、つまり非常に数が多い、ところがあまり役に立たないというような話がありまして、そのとき吉田さんから、たしかそれじや女を首を切つて男にかえるというような考えを持つているのじやないかというような御質問があつて局長からその何はないというような御答弁だつたと思いますが、失対のほうなんかも、やはりだんだん女が殖えて来るという様子はありますか。
  112. 江下孝

    説明員(江下孝君) 最近はそういう現象はありませんが、非常に女のかたが殖えたという時期がございましたけれども、最近は男のかたも非常に失業しまして、特に女子が殖えているということはございません。
  113. 市川房枝

    ○市川房枝君 将来だんだん特に婦人のほうで言いますならば、婦人の失業者が特別多くなれば、そつちのほうも殖えて行くということにはなるかも知れませんね。その失対での特に婦人の労働者に対する扱いと言いますか、男の労働者との間の扱いの相違というものは、どんなふうになつておりますか。
  114. 江下孝

    説明員(江下孝君) 女子も男子も能力に応じて適当な仕事で働いてもらうということになつております。勿論その能力に応じました賃金を支給するという建前になつております。併しどうしても女子でございますから、やはり荒作業は無理でございますので、比較的軽易な作業に女子のかたは従事しておるというのが実情でございます。
  115. 市川房枝

    ○市川房枝君 それからもう一つ、これは昨日もちよつと申上げたのですけれども、失業の問題から、結局内職が多くなる。今までも相当多かつたのですけれども、だんだん多くなる。これは男の内職する人もありますけれども、女の場合が非常に多いのでありますが、内職に対しては何らの法の保護がないわけですね。これはどこがこういう問題は所管をして調査することになりますか。
  116. 江下孝

    説明員(江下孝君) 私のほうといたしましては、職業斡旋という面で内職に関係が、若干あるわけでございますけれども、私のほうの自営業とか、そういうものでなくて、人に雇用される者が主でございますから、内職の斡旋ということは安定所では今いたしておりません。併したしかに仰せのような点についても、今後安定所も或る程度仕事の面で考えられる点があれば、やつて行かなければならんじやないかということは、前から私ども考えておるのですけれども、なかなかつかみにくいものですから、一応私どもとしては現在は内職の点については扱つてないという状況でございます。
  117. 谷野せつ

    説明員(谷野せつ君) 内職につきましては、婦人少年局の組織規程の中に家内労働に関する事項が入つております。私どもは家内労働というものに対しての解釈がまだはつきりいたしておりませんが、内職はその中の一つであるという意味におきまして、内職の調査を、過去四年くらい……家内労働の調査を過去三年実施いたしまして、今年の三月は家庭内職の調査に限つて調査を実施いたしました。
  118. 市川房枝

    ○市川房枝君 家内労働と内職とどういうように分けておりますか。
  119. 谷野せつ

    説明員(谷野せつ君) 家庭内職を調査いたします場合に、私どもは一応調査の家庭内職の定義をつけたわけでございますが、それは調査上の定義でございます。製造業者或いは仲介人から材料若しくは簡単な器具でございますね、工具を受けて参りまして、自分の選んだ場所——家庭で簡単な修理加工をする仕事、それを家庭内職というふうな意味に定義をつけて実施いたしました。
  120. 市川房枝

    ○市川房枝君 家内労働というとどうなるのですか。
  121. 谷野せつ

    説明員(谷野せつ君) 家内労働の中には、家庭内職も含めて、私の考えでございますが、手工業的ないわゆる家内工業も家内労働の中に入るという意見を書いていらつしやる人もいらつしやいます。それは調査の場合とか、或いは法律を作りました場合に、どういうものを家内労働と考えるかということにも書かれているように思いますが、私は調査上一応そういう定義をいたしました。
  122. 市川房枝

    ○市川房枝君 手工業であつたら、五人以上であつたら基準法では適用されておりますか。
  123. 谷野せつ

    説明員(谷野せつ君) 手工業の場合、労働基準法に定義された労働者であれば、労働基準法の適用の対象になると思います。
  124. 市川房枝

    ○市川房枝君 内職の問題は、労働状態と言いますか、今のお話のように、中間の搾取が、賃金が非常に安いと言いますか、それから賃金の未払の場合がだんだんできておる。仕事を出すのは中小企業なんですね。そうすると、中小企業がこういう状態になつて来た。結局そのしわ寄せが内職をやつておる人たちに来る。この際の賃金の不払が、どこでもその場合何ら考慮されていないという実情があるわけですが、基準法が適用されておれば、監督署のほうで法に従つて或る程度の保護の途が講ぜられておるようですけれども、これは基準局長の御意見を伺いたいのです。どうにもしようがないわけですか。
  125. 亀井光

    説明員(亀井光君) 現行法の建前から申しますと、いわゆる家内労働者につきましては基準法の適用がございません関係上、基準法の二十四条に基きます監督の措置によつて賃金不払を解決する手段は実はないのであります。
  126. 市川房枝

    ○市川房枝君 委員長にお願いですが、この問題は未組織労働者の問題と言いますか、私も非常に心配な問題だと思いますので、委員会で将来一つそれぞれの関係者をお招き頂いて委員会として調査して頂きたいと思います。
  127. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今家内労働について実情調査を更に一段と掘り下げてやりたい、こういう御提案がございましたが、よろしうございますか。
  128. 吉田法晴

    吉田法晴君 異議ありませんが、ちよつと伺いますが、市川先生の家内労働或いは家庭労働について、今の滔々たる逆コース、そうして人権問題をも含む問題については何らかの方法はないか、これは労働省のほうでお考えなつたかどうか存じませんが、家庭労働に関する法律をどこかが考えておる、こういう新聞記事を曾つて見たことがありますが、そういうお考えはないのか、まあ局長は今のところでは基準法の適用のない所については、どうもしようがないのだ、こういうお話ですが、立法論を含んでの市川先生のお話だつたと思います。
  129. 亀井光

    説明員(亀井光君) 今のお話新聞記事がどういう内容でありますか存じませんが、いわゆる家内労働者の保護につきまして何らかの立法措置考えろということにつきましては、昭和二十七年労働基準法を改正する際に、中央労働基準審議会に諮問をしましたその諮問に対する答申の中に建議として現われて来ております。我々もその建議に従つていろいろこの問題を研究いたしてみたのでございますが、非常に限界と申しますか、家内労働の実態がなかなかつかみにくい、又それを保護するの遂につきまして非常にむずかしい問題がたくさんございます。只今におきましては研究をしておるという段階でございます。またこれに関する結論は得られておりません。併し研究は引続いて続けたいと考えております。
  130. 田村文吉

    田村文吉君 今の一つ用語をはつきりきめられたらどうかと思うのですが、内職というと、家内労働者とか、家庭労働者とか、これは入るとか入らんとか、限界ははつきりしないとおつしやるのだが、これは労働省としてはつきり用語をおきめになつて頂いたら、今後の処理の上に都合がいいと思います。法律ができますればはつきりすると思いますが、それにしても今の市川先生の内職というのは、事実我々が一般に言いならされておる内職、それと家内労働者ということが一体同じなのかどうかということを、はつきりして頂きたいと思います。
  131. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働省のほうで一遍研究を願つて………。本当ならば、内職労働者というのがわかりやすい。一番よくわかる。労働という字をつけたければ、一番わかるけれども、適当な言葉を、余りむずかしくて字引に追加しなければならんのも困りますがね。只今の問題は、殊に盲点になつているものですから、一応実情調査をいたすことにいたしまして、提案者であられる市川委員とよく打合せをいたしまして善処いたしたいと思います。  それからこれで二日間の委員会の議事は大体終了いたしたわけであります。閉会いたしたいと思いますが、その前に次回の委員会につきまして、御意見を承つておきたいと思います。
  132. 吉田法晴

    吉田法晴君 今月はこの前懇談いたしましたが、来月は適当なる時期に委員長においておきめ願いたいと思います。
  133. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次回の委員会は九月に、諸情勢を勘案いたしまして、適当なる時期に開催いたしたいと存じますが委員長に御一任願いたいと思います。  本日はこれで閉会いたします。    午後三時五十八分散会