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1954-07-06 第19回国会 参議院 労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年七月六日(火曜日)    午前十一時六分開会   —————————————   委員の異動 六月九日委員松本昇君は死去された。 六月十一日議長において深水六郎君を 委員に指名された。 同日委員寺本広作辞任につき、その 補欠として石川清一君を議長において 指名した。 六月十四日委員深水六郎辞任につ き、その補欠として大野木秀次郎君を 議長において指名した。 六月十五日委員河井彌八君辞任につ き、その補欠として早川愼一君議長 において指名した。 六月十六日委員山下義信辞任につ き、その補欠として田畑金光君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     栗山 良夫君    理事            井上 清一君            田村 文吉君    委員            吉野 信次君            阿具根 登君            吉田 法晴君            赤松 常子君            田畑 金光君   委員外議員    厚生委員長   上條 愛一君   国務大臣    労 働 大 臣 小坂善太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君    厚生省保険局長 久下 勝次君    労働政務次官  安井  謙君    労働省労政局長 中西  実君    労働省労働基準    局長      亀井  光君    労働省職業安定    局失業対策課長 村上 茂利君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○本委員会の運営に関する件 ○労働情勢一般に関する調査の件  (日雇労務者夏季手当に関する  件)  (近江絹糸株式会社における労働問  題に関する件) ○参考人の出頭に関する件   —————————————
  2. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。  本日の委員会に付しまする案件は、労働情勢一般に関する調査でございます。その内容といたしましては、第一、石炭、造船、繊維その他の不況産業を中心とした失業対策一般に関する件、第二は近江絹糸株式会社における労働問題に関する件、第三は日本国有鉄道における労働問題に関する件、第四は日雇労務者夏季手当に関する件等でございます。更に本件につきましては明七日も続行をいたしまして、明日は当委員会として議員派遣に関する御相談も申上げたいと、かよう考えておるわけであります。  委員各位にお断りを申上げたいのでありますが、本日並びに明日委員会を開会いたしまする件につきましては、閉会中でもございましたし、又十九国会の終りにおきまする特別な参議院の院内の状況もございましたので、十分閉会中の委員会の開催について御意見を承わつておく余裕がなかつたわけであります。従いまして委員長といたしましては、さよう状況を勘案いたしまして、過日各会派の理事の方々に個別に御相談を申上げまして、本日委員会を開会いたしまするように御了承を得た次第でございます。この点は併せて御了承頂きたいと存ずるわけであります。  ちよつと速記をやめて下さい。    午前十一時八分速記中止    ——————————    午前十一時三十一分速記開始
  3. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を起して下さい。  小坂労働大臣及び愛知通商産業大臣出席を求めてありますが、只今閣議中でございまして、出席になつておりません。間もなく閣議が終了すると、こういう報告がございました。今確めておりますので暫らくお待ち願いたいと思います。
  4. 田村文吉

    田村文吉君 議事進め方は、あれですか、ここにある順序、第一失業対策に関する件、第二、国鉄における労働問題に関する件というよう順序調査事項として出ているのですが、議案としては順序をどういうふうにお進めになりますか。
  5. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 進め方は公報に掲載されておりまする順序でいたしたいと思います。
  6. 田村文吉

    田村文吉君 そうすると、はつきりともう一度……。
  7. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) もう一度申上げます。第一、失業対策一般に関する件、第二、近江絹糸労働問題に関する件、第三、日本国有鉄道における労働問題に関する件、第四、日雇労務者夏季手当に関する件、第五が議員派遣要求に関する件、この順序に従いまして今明日の委員会において議事を進めたいと考えております。
  8. 田村文吉

    田村文吉君 大臣出席都合もありますから、大臣出席が遅れるならば、失業対策問題に関する件は、これは非常に私は広汎であり、是非両大臣出席、場合によつたら大蔵大臣出席も願いたいと考えております。順序を変更されても私はかまわないと思います。近江絹糸の問題なりを第一に取上げておやりになつたらどうでしよう
  9. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじや進行についてと申しますか、ちよつと御相談を申上げておきます。一つは明日の日程のうちですが、国鉄における労働問題に関する件について伺いますと、労働省それから国鉄当局、これがまあ呼ばれておるという話であります。問題はこれは労働問題でありますから、労使関係をいたすのでありますので、使用者側だけでなしに、これは人数は申しませんけれども、そう多くは要しないと思いますが、国鉄労組側もお呼び頂くようにお取計いを願いたい。
  10. 赤松常子

    赤松常子君 近江絹糸の問題は、私は労働大臣が御出席になつて頂きたいと存じます。
  11. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) かしこまりました七
  12. 赤松常子

    赤松常子君 特に今度労使の斡旋をして頂いておるよう関係もございますので、是非大臣の御出席を願いたいと思います。
  13. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今赤松委員からお話がありました点は、委員長もさよう考え只今手続きをいたしております。  それから吉田君から御提案のありました国有鉄道における労働問題に関する件は、政府当局及び運輸省当局国有鉄道当局においで願うことにいたしておりますので、更に労組側も代表一名を呼びたいというお話がございますが、よろしうございますか。    〔『異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ではさよう手続きをいたします。
  15. 田村文吉

    田村文吉君 只今よう赤松委員の御発議がございますれば、大臣出席しての上ということでございますならば、一つ大臣のお揃いになつたところから第一の問題から予定通りにお進め願いたいと思います。
  16. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) わかりました。  日雇労務者夏季手当に関する件につきましては、政府側がどういうお考えをお持ちになつておるか。これは失業対策全般の中の問題ではありますけれども、取り出して別にしてありますので、これを一番最初大臣がおいで願う前にやりまして、それから大臣からその趣旨をあとで御説明するということで如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 吉田法晴

    吉田法晴君 その前に一つお伺いしたいのですが、これは答弁というか、説明を願わなくてもいいのでありますが、先般来当委員会から労働大臣宛て基準法施行規則の改正問題について申入れがなされております。七月一日からすでに基準法施行規則は改正実施されておるやに聞いております。委員会には、この何と申しますか、説明があつたと私覚えておりません。新聞等では拝見をいたしておりますが、この点についても、今明日中何らかの機会一つ説明を頂きたいと思います。
  18. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 労働省のかたよろしうございますか……。   —————————————
  19. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それでは第四の案件であります日雇労務者夏季手当に関する件を議題にいたします。本件につきましては、その直接対象者でありまする全日本自由労働組合からも労働省にそれぞれ請願がせられておることと存じますが、その間の事情を含めて、先ず労働省から御説明を頂きたいと思います。
  20. 安井謙

    説明員安井謙君) ちよつと始まる前に委員長にお伺いいたしますが、私ども本日は大臣出席を求められておりますが、委員会出席閣議のため遅れておりまして、それで終りますれば、直ちに参つて説明をいたします。  先ほどちよつと伺つておりましたが、本日政府出席は、これは国会成規手続きによる委員会出席要求されたものと心得て御答弁申上げてよろしうございますか。
  21. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その通りです。
  22. 安井謙

    説明員安井謙君) それでよろしうございますね。  失業対策の問題についてでありまして、特に日雇労務者夏季手当をどうするかという問題についての政府の態度或いは最近の経過というものについての御質問でございますが、従来から日雇労務者に対する夏季手当の問題につきまして、大体約十日間を標準に要求がしばしば繰返されておる次第でございます。政府といたしましては、いろいろな事情考えまして、只今のところ、そういつた要求には、まあ全面的に財政上の都合もございまして応ずるわけに行かないので、目下最大支給し得る限度というものについて熟慮いたして決定をいたしておる次第でございます。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 非常に簡単な御説明ちよつと唖然としたのですが、十日分のまあ要求をされておる。それに対して何か決定されておるようでありますが、どういうことで何日間に決定されておるのか、又そのほかにこれに関連して七、八月の完全就労とか、有給休暇とか、或いはあぶれをなくして首切りをしてくれるなということも、これをも含めて陳情要求されておると思いますが、それについてもつとはつきりと御説明されたいと思います。
  24. 安井謙

    説明員安井謙君) お答え申上げますが、失業対策事業は、民間及び公共事業におきまして、就労機会を得ない失業者のために特別就労機会を造出する事業、日々雇用する建前といたしておるのでございます。従つて夏季手当や年末手当支給は、事業の性質上、これは本来から申しますと認め難いものなのでございますが、従来夏季又は年末の日雇労務者生活状況実態に鑑みまして、就労日数増加、或いは賃金増給といつたような形でできるだけ実質手取賃金を殖やすというふうな措置を図つて参りましたことは御存じ通りであろうと存じます。併しこれらの措置にしましても、失業対策事業費予算とそのときの失業情勢を勘案しまして、失業対策就労者就労日数を減少するようなことがなく、又新たに発生しました失業者に対しまして、通常の措置をなし得るという限度においてでなければ、この手当支給ということもできなかろうと存じておる次第であります。失業対策事業費一本の経理の枠内において、こういつたことは操作されておる次第であります。それで本年度は前年度における経済及び雇用の情勢と異なつてデフレ傾向が非常に顕著になつて参つております。失業者増加も予想されるところでございまして、失業対策事業の運用に当りましても、就労日数の確保と、新たに発生する失業者に対する就労機会の供与を第一義に考え、これが万全の策を期しておることは当然でございます。  その本年度夏季対策を考慮するに当りましては、上述の点を先ず考慮いたしましてれ他方かかる要求に鑑みまして、夏季特別措置としてなし得るでき得る限りの財源をみずから求めておる次第でございます。一般民間事業状況は、企業整備倒産等による人員解雇相当に上つており、解雇せざるものにありましても、夏季手当どころか、賃金の遅欠配が相当広汎に認められておるところでございまして、失業対策事業就労者夏季手当措置を講ずるに当つても、これら民間における状況も又併せて考慮せざるを得ない事情にございます。そして従来の失業対策における夏季対策は、事実上一般物価の動向や公務員夏季手当を考慮しつつ、財源の可能な範囲で措置して来たのでありますが、本年度政府の諸施策、或いは物価の動き、或いは最近における物価指数の下降の傾向もございますし、又公務員夏季手当も昨年同様〇・七五カ月分の支給にとどまつたよう事情でもございます。只今日雇労務者に対します夏季手当実質的支給限度につきましても、昨年と同様の三日分を支給いたすよう決定をいたした次第でございます。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 只今の御答弁でもありましたように、まあ必然的にこれは失業の問題に入つて行つたわけでありますので、基本的な質問になつて来るのですが、今の答弁を聞いておりますと、何か失業者政府施策関係でなくて、漫然と殖えて来たよう感じを受けるわけなんです。予算面から見ても、失業者が、新らしい失業者が出て来た云々というようなことを聞いておるのですが、第十九国会の初頭に当つてこの問題は労働省はつきり我々に答弁されておる。我々はその当時に今の政策で行くならば、失業者は非常に多くなる、失業者をどうするかという問題は、相当突つ込んで質問をやつておる。その場合に、政府は今までの数字、今後の見通し等から睨み合せて横這いである、失業者は殖えないということを断言されておる。それを今になつて失業者が殖えたからと言われることは、政府政策がどこにあつたか、我々としては怪しまざるを得ない。第十九国会の当初にはつきり失業者が殖えておることは指摘してここで論争したこともございます。このときに、政府は一切それに対して数字を示して、そして失業者は殖えないと、こういう見通しを持つて予算を組まれたはずであります。それに対してどういうお考えを持つておられるか。
  26. 安井謙

    説明員安井謙君) 阿具根委員にお答え申上げますが、おつしやる通りでございまして、政府は新しい緊縮予算を執行いたしますに際しまして、或る程度の失業傾向というものが増加するすることは、すでに予想しまして、予算におきましても失業対策において約一割の増額を見て、予算を組んでいる次第でございます。ただこれがどの程度増加するとか、或いは予算で間に合うかどうかといつたような問題につきましては、従来までの失業者の現出の実態から申しますると、只今政府予算内で処理し得るものであろうというよう考えておる次第でございます。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 新聞で見た数字だけを言つたんでは、これははつきりしたことを言えないと思いますので、それでは只今の御答弁によると、予算内において失業者を吸収できると仰せられましたので、その内容を詳細に一つ説明願いたい。
  28. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと阿具根君にお打合せいたしますが、失業問題の点は、あとで総括的にやつて参りたいと思いますので、できればそのときにお譲りを願いたいと思います。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 いいです。
  30. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それで、労働省ちよつと私からお尋ねいたしますが、只今自由労務者夏季手当というものは、ほかの公務員との関係があるので、三日に決定したと、こういう工合におつしやつたのでございますが、その三日に決定されたことについては、もう全然増額の余地はないかどうか、この点を一つはつきりさせて頂きたい。
  31. 安井謙

    説明員安井謙君) いろいろ御要望もございましたし、又当該団体からの要請もございまして、極力財政状況その他の事情も勘案した次第でございますが、只今のところ三日以上に実質的に殖やし得る限度というものはないという事情でございます。
  32. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そうしますと、三日ということが昨年の例、或いは今年の公務員との比率等を理由にして言われたわけでございますが、そういたしますと、実際の自由労務者諸君就労状況ですね、こういうものもやはり条件が下回つて工合が悪いと思いますが、そういう意味で要請されておる七月、八月の完全就労をどうするかとか、或いはあぶれ、首切りというものを全然なくするとか、そういつたような問題について、はつきりした御答弁がないわけでございますが、その点は労働省としてどういう工合にお考えになつておりますか。
  33. 安井謙

    説明員安井謙君) 只今お尋ね夏季手当支給する一方、その自由労働者に対する失業条件の低下や、或いは新たに発生した失業者に対する手当手落はないかどうかというお尋ねであろうと存じますが、政府といたしましては、現在確保しておりまする自由労働者の月の稼働日数二十一日は、従来通り確保して参り、更に新しい発生者に対しましてはその都度適切なる措置をとつて参りたいと存じております、
  34. 田村文吉

    田村文吉君 ちよつとお伺いいたしますが、自由労働者というものは相当顔が始終変つているのですね。その場合に、今の半期末なら半期末に三日分の就労日数を殖やすとか、或いはそういう手当をやるということは、どういう基準でそういうことができるのですか、やれるのですか。実際におやりになつておる状況一つ……。
  35. 亀井光

    説明員亀井光君) 私からお答えいたします。建前といたしましては先ほど政務次官から御答弁がございましたように、日々雇い入れられるものでございまして、その就労する労働者中身と申しますか、それも相当交替がございます。従いまして、いわゆる手当というものは、建前としては認め難いのでございますが、夏季とそれから年末には、特に就労日数増加する、或いは賃金増給措置をとる、そのいずれかの方法によりまして、手取を殖やして参つたわけでございます。今田村委員の御質問の中には支給対象の問題が含まれておるようでございますが、一応支給基準といたしましては、支給する前の月において十四日以上失業対策事業就労したもの、若しくはその前月を含めまして、つまり二カ月間において十四日以上を失業対策事業就労した者を対象といたしまして、この特別措置を適用する。かように存じておる次第であります。
  36. 田村文吉

    田村文吉君 それで、今は十四日というお話でしたが、二十五日も働いたような人が稀にはあるかと思うのですが、そういうような人には、特に余計やるとか、十四日の人にはどうとかいうような、二月に亙つて十四日であるというような人と、それから二月に亙つて三十日も働いた人というような区別はないのですか。
  37. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 先ほど政務次官から二十一日の稼働を確保すると、こういうお答えがありましたが、その中身でありますが、失業対策事業の割当は、一般民間日雇求人、それから公共事業駐留軍その他の日雇求人を全部総合して考えておるわけであります。仮り民間日雇求人相当ありました場合には、失業対策事業費はそう使わんでよろしいということに相成つております。で、安定所に登録しておりまして、月の大部分を民間日雇求人のところに参つた或いは公共事業で働いたというような人も相当あるわけでございますが、その場合、失業対策事業に十四日以上働いておる者に対しては、これを支給対象とする。特別措置の適用の対象とする、かようにいたしておる次第でございます。なお、その二十五日以上働いた云々という御質問でございますが、一応失業対策事業で吸収いたします基準は二十一日でございますが、只今申しましたように、民間日雇求人或いは公共事業駐留軍関係といつたようなものを総合いたしまする関係上、個人的に見まするならば、その一月に働いた日数は二十五日以上になるかも知れません。失業対策事業に働いた日数から見ますれば、そういつた点はないのでございます。
  38. 田村文吉

    田村文吉君 ちよつとわからんのですがね、十四日働いた場合に十七日分をくれてやるというようなのは、十七日働いた人には二十日分もくれてやるというのか、結果としてどうなるんですか、それを聞きたい。
  39. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 結果はそういう方法、なべて、平均にですね、三日分に相当する賃金増給或いは就労日数を増す、こういうわけでございます。つまり仮りに二十日だけ働いた労働者もございますし、一方においては二十一日働いた労働者もございます。そういつた差は多少ございまするが、この特別措置対象となるのは三日だけでございます。三日分をみんな同じよう支給する、こういう考え方でございます。或る者は一日分、或る者は三日分というような格差をつけない。十四日以上ですね、失業対策事業就労したものに対しましては、三日分に相当するものを支給する、こういうようなことでございます。
  40. 田村文吉

    田村文吉君 わかりました。わかりましたが、私ども一番心配するのはですね、働きたくても仕事がなくて、十三日しか働けなかつた。十二日しか働けなかつた。こういう人はそういう恩典をこうむらん、こういうことになるのですね。ところがそういう人が一番不幸なんで、困ると、こういうことなんでありますが、そこに一つの何か調整するよう考え方方法というのはないものですかね。
  41. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 御指摘の通りでございまして、我々実際やります場合も、十三日はどうか、十二日はどうかというので、その線を引く場合に、なかなかむずかしい問題がございます。私どもといたしましては、特別措置を行いましたのは、一昨年の年末手当からでございます。その際に、その十四日という線を打ち出したのでございます。で、すでにその要領で、三回、一昨年の年末を昨年の夏、昨年の暮と三回実施して来ております。従来同様十四日で線を引きたい。かよう考えておる次第でございます。
  42. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ次官から三日分の手当と申しますか、或いは就労日数なり、或いは賃金増給の形でと、こういうまあ説明でございます。昨年の事例はこうであつたと思うのですが、これは年末であつたか、夏季であつたか、はつきり覚えておりませんけれども就労日数のことであつたかも知れませんが、就労日数を二十二日かに確保して、そして三日分については賃金増給の形でと、こういうような形であつたかと思うのであります。二十一日で三日分、それはいずれにしても、こういうことになりますと、昨年の事例よりも実際問題として多少落ちるのではないかと、こういうまあ感じがするのであります。就労日数の点、その他考えられております点がございますかどうか、その点一つ重ねて伺いたい。
  43. 安井謙

    説明員安井謙君) 昨年も同様二十一日にプラスの増給或いは稼働日数増加三日という形で、実は御存じ通りに昨年は最初二日ということになつておりまして、一般公務員関係の給与に多少の変更があつた、繰上げ支給ようなこともございまして、その均衡上三日ということに増給されて来ております。ベースは大体昨年と今年と同じようにとつておる次第でございます。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君  私は個々の例を挙げますることは、どうかと思いますが、たまたま福岡におきます日雇労務者の或る人の窮状を、私どもに訴えられて参りましたし、御披露申上げて参考にいたしたいと思います。これは福岡市の西のほうに姪の浜という、まあ炭坑近くにございますが、炭坑仕事をなくしましたのかどうかは明らかでございませんが、父親日雇労務者で働いておる。月に二十日働けばせいぜいだというその二十日、最大三十日働いておりました主人が病気をいたしまして、収入が減つておる。二十日働いたときに五千六百円そこそこ、五千まあ数百円というので、それが病気をして働けなくなりましたから、五千円は勿論切つて参る、で、それは細君から手紙が来ておるのですが、私が働くとといいのですが、三つになります子供を生んだときに、早く立上りましたので、今日にいたるもまだ一月分で働けるような状態になつておらん。で、去年の冬は残つてつた唯一の財産であるふとんを売つた。これは父親病気になりましたので、収入がなくてふとんを売つてしまつたので、残つておりますのは蚊帳とそれから麻の袋が二つ。それで今子供たちはどうにかして過しておるけれども子供が、夜ふとんがないのでありますから、股の中に手を突込んで、かあちやん寒いと言つているのを見ると、母親としてたまらん。まあ冬は何とかそれで過して来たが、雨が降つて来て三人の子供が学校に行く。さして行く傘がない。ズックもない。そこで上の子はまあ家庭の事情もわかつておるのか、食うものも食つておらん。弁当も持つてつておらん。まあ近くで買つて食うのかどうかそれまで書いてございませんが、お金ができたら傘とズックを買つてくれということを一年生になつた小さい子がせがむ、今まで頑張つて来たけれども、やつぱり方法がない。そこでまあこういうことを、私——吉田法晴ですが、先生に申上げるべきではないと思い、父親も又それを叱る。併しほかに方法がないので、まあ選挙のときに働く者の味方というか、或いは貧乏人の味方といつた私どものあれを覚えておつて、この梅雨の中、傘を一本だけでいいから買つてくれということを言つて参つたのであります。まあ問題は個人の問題というよりも或いは失業対策の問題であり、或いは社会保障の問題でもあると思うのですし、福岡市なり或いは福岡市会議員にも連絡をいたしております。二十日働いて五千数百円というのでありますから、これは最大限の日雇労務者の実際の生活だと思う。それが一たび病気になりますと、殆んど恐らく全部こういう状態に置かれておると思う。で、金が、予算云々、或いは民間産業において遅欠配が行われておると、成るほどあとで問題に取上げまするけれども、閉山もいたしまして仕事を休んだ炭坑の附近には、食うものもなくなつておる、こういう実態でございますけれども、遅欠配も行われておるから、或いは公務員夏季手当も去年と同じように〇・七五で終つたから、ひたすらデフレ政策を堅持して参りたいからということで、三日分やつたら、それでいいじやないかと、こういうことでありますならば、私は依然とし自由党の政府には涙がない、或いは先ほどの説明を聞いておりますと、三日分もやつたけれども、併し失業対策費は限りがある。公務員夏季手当云々と、まあ理由を見付けてやらないことに努力しようという態度であるならば、私どもは、先ほどまあ具体的な例を引いて恐縮でありますけれども、抗議をしなければならんと思う。就労日数の点、その他の点についてなお考慮せられる余地があるのかどうか。それから恐らくこういう実態から、自治体において或いは府県においても、昨年の年末、私ども福岡県においても一日分でありましたけれども措置をした事例もございます。そういう点についてどういう工合考えておられるのか。木で鼻をくくつたようお話でなくて、一つ誠意ある何と申しますか、御答弁といいますか、それを聞かしてもらいたい。
  45. 安井謙

    説明員安井謙君)  吉田委員から実例をお挙げになりまして、今の自由労務者の非常に窮状のお話もございました。非常に我々も深い関心を持つて聞かせて頂いておる次第でございますが、何分にもいろいろな状況から考えて考慮するというのではないかというお話をし、それから或いは地方での措置についての所見を伺つたのですが、それについて何ら誠意が示されずに、むしろ五千円以下の収入よう日雇労務者であるならば、その生活扶養等について考えなければならんであろう、考えるであろう。こういうお話でしたが、二十日働いておりますものが、この生活保護が受けられるということであるならば、これは労働大臣の御言明でございますから、一つそれは厚生省から通牒を出して頂きたいと思います。今までの失業対策でございますと、二十日働いておりましたら、生活保護法を受ける余地はなかつた。大変新らしい重大な御方針をお示し頂いた。それは若しそういうことであるならば、厚生省から一つ通牒を出して、閣議決定をお願いいたしたい。
  46. 安井謙

    説明員安井謙君)  これは御承知の上でお聞き違いになつたのであろうと存ずるのでありますが、私の申上げましたのは、二十日或いは二十一日の就労日数病気その他で欠く、そういつた就労ができないために、月の収入が非常に少いというよう状況にあるか頂きたいと思う次第であります。更に病気その他によりまして、例えば六千円に満たないよう収入にしかならないというようなことになりますと、これは或いは失対手当ということよりは、生活保護法のほうでも又救助するよう方法考えなければいかんのじやなかろうかというふうにも考えておる次第であります。
  47. 吉田法晴

    吉田法晴君 三日の点はさつき聞いたのでありますが、その他の点について考慮するというのではないかというお話をし、それから或いは地方での措置についての所見を伺つたのですが、それについて何ら誠意が示されずに、むしろ五千円以下の収入よう日雇労務者であるならば、その生活扶養等について考えなければならんであろう、考えるであろう。こういうお話でしたが、二十日働いておりますものが、この生活保護が受けられるということであるならば、これは労働大臣の御言明でございますから、一つそれは厚生省から通牒を出して頂きたいと思います。今までの失業対策でございますと、二十日働いておりましたら、生活保護法を受ける余地はなかつた。大変新らしい重大な御方針をお示し頂いた。それは若しそういうことであるならば、厚生省から一つ通牒を出して、閣議決定をお願いいたしたい。
  48. 安井謙

    説明員安井謙君) これは御承知の上でお聞き違いになつたのであろうと存ずるのでありますが、私の申上げましたのは、二十日或いは二十一日の就労日数病気その他で欠く、そういつた就労ができないために、月の収入が非常に少いというよう状況にあるかたは、むしろ日雇いということでなくて、別途にそういう方向と違つた生活保護法の適用の方法による補助の仕方もあると、こう申上げましたので、これを併用するというような意味で申上げた次第ではないのでございます。
  49. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、二十日働いても五千円、六千円を切るよう収入のものは、むしろ生活保護を受けたほうがよろしいと、こういう御方斜なのでございますか。
  50. 安井謙

    説明員安井謙君) 言葉民と申しますか、説明が非常に不十分で申訳けないのでありまするが、病気その他で日雇労務者として不適当だと、いわゆる仕事をやるにもやりようのないというようなかたに対しましては、それじやそのうちの一週間なり十日なりでやると、それで全部過さなければいかんというふうになつちや困るので、そういうかたに対しましては、いわゆる失業手当という面でなくて、扶助料のほうへ切替える、生活保護法へ切替えるという方法もあろうということを申上げた次第でございます。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 生活保護法に切替えますと、これはまあ末端でそれぞれの生活の実情に応じて失対事業で働いて生活を立てなさい、或いは働けなくなつたら、むしろ生活保護を受けなさい。こういうことで民生委員なら民生委員が働いてくれることなんです。私は労働政務次官に失対政策問題で質疑をしておる。市の民生委員よう答弁をここで安井政務次官に求めてはおりません。政府を代表して、ここで御答弁になるならば、失業対策事業について労働省の方針についてお示しを願い、我々はそれを質問している。民生委員答弁ようなことならば、私ども何も安井さんに答弁して頂かなくても、市の担当の民生委員に行つてお願いします。失業対策事業としてこういう実態にある。それはまるます働いて、福岡市においてまるまる働いても五千数百円にしかならんという実態なんです。而もその中でちよつと病気をすれば蚊帳も売つてしまつて子供を夜泣かせなければならん、或いは傘も買うことができないような状態に追込まれなければならん。そういう実態の中で、夏季手当をどうするかと、こういうけれども、そんならば三日分について考慮の余地はないか、或いは三日分についての考慮の余地がないなら、そのほかのことで考慮する余地はないか、こういうことの御答弁を求めておる。ここでそういうような民生委員答弁を求めておらん。
  52. 安井謙

    説明員安井謙君) 民生委員答弁をいたそうとするつもりじや毛頭ないのでございまして、吉田委員も御承知の通り、今の政府としましては、失業対策としては二十一日の稼働日数を確保しておるということに対して、病気その他で働けない場合には、どうだというお話がございましたので、誠にそういつたお気の毒な状況のおかたに対しては、これは失業手当という形でなくて、別途で国としてもやつて頂く場合があり得る。政府としては極力今の二十一日で六千円内外の実収というものを目標にやつて頂くように努力をしておる点をお答えした次第であります。
  53. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 只今日雇労務者の問題は、今問題になつた点だけは労働省のほうからお答えになつたわけでありますが、要するに、本日の委員会で取上げております総合的な失業対策の中に、これが当然入るべき問題でありまして、就労日数が今後失業者が激増して参りますれば、只今の失対予算ではこれは激減せざるを得ない。従つて失対予算そのものをどうするかというようなことにも当然波及するわけであります。従つて、一時日雇労務者の問題はこの程度で打切りまして、総合失業対策の中で、更に確めて行くようにいたしたいと考えますので、よろしゆうございますか。
  54. 吉田法晴

    吉田法晴君 それで結構ですが、私は具体的な例をも挙げて再考を要望したのは、日雇労務者の生活の実態を、或いは代表でここに上つて来ておる日雇労務者の代表の態度から、或いは労働省その他が一つの偏見を持つて見ておるのじやないか、実態の生活はこうだということを、私はたまたま昨日、今日もらつて、その窮状に対して私個人としてできるだけのことをしております。しておりますけれども、それは個人でなし得ることじやない。これは政府がやらなければならん問題である。そこで担当者であります労働省政務次官に訴えておつたわけなんであります。再考を促しておつたわけであります。その点は一つ十分今後具体的な措置の上に、或いは予算の上に、或いは年末、或いは夏季手当の上に、それが金額であれ、或いは日数であれ、何であろうと、これは一つ今後考え、更に増額といいますか、生活がもう少し人間らしいというところまで参りませんと、なかなか参りませんけれども、併し今の実情の中においても、運用の面で考え得るところ、なし得るところがあると思います。それを率直に申上げて再考を促したわけであります。その点を一つお汲みとりを願いたいと思います。
  55. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 委員長としましては、田村委員からの御要求もありましたので、失業対策全般の問題を扱いますときは、予算関係の点がありますので、大蔵大臣出席を求めるよう只今手配をいたしまして、それから産業政策の面におきましては、勿論通商産業大臣出席を求めたいと、こう考えます。それではこれは後刻に譲りますから御了承願いたいと思います。   —————————————
  56. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 次に、近江絹糸株式会社における労働問題に関する件を議題といたします。  近江絹糸株式会社労働問題につきましては、すでに当委員会におきましても、労働基準法違反、不当労働行為等の諸問題につき調査をして来たところでありまして、更に第十九国会の会期末におきましては、閉会後議員を派遣して現地において実情調査を行うべく予定をいたしておりましたが、国会の会期末における諸問題に関して各会派の意見の一致を見るに至らず、労働委員会におきましても、遂に議員派遣は一応延期いたすことになつたのであります。然るに今日図らずも近江絹糸において争議が勃発をいたし、新聞、ラジオ等、連日に亙り重大事件として報道をせられ、社会的問題となつて参りました。而も今回の争議は、従来の一般労働争議と著しくその性格を異にした、いわば労働組合法以前の労働者の基本的人権の確立を要求した極めて特殊な争議であり、又新聞紙等の報道によりますと、争議に際して暴力団と解される第三者の介入に伴う傷害事件等の発生も起つておる模様でありましたので、委員長といたしましては、従来の労働委員会における近江絹糸調査の経緯等に鑑み、このまま傍観することは許されないことと考えまして、去る六月十八日より三日間、近江絹糸彦根工場、大垣工場、津工場等を視察いたし、労使の争議に関する意見を求めると共に、労働省、県労働部、労働基準局、地方労働委員会及び警察官署等、関係各官署等に従来の近江絹糸の労務管理の実情、労働基準法、労働組合法、公共職業安定法、その他の法律違反の事実の有無、及び今回の争議の経過に関しまして、関係官庁のこれに対する態度等につき意見を求めましたところ、会社の従来の労務管理の面におきましても、又今回の争議の方法等につきましても、極めて重要なる問題があることが明瞭となりました。例えば労務管理の面においては、基準法違反の数は各工場においても極めて多く、且つ同一違反を繰返し、而も法律違反すれすれの管理方法を採用しており、監督の立場にある公務員が、近江絹糸は全く遵法精神を持つていないと嘆ずるほど、極めて悪質な例は枚挙にいとまのないほどでありました。又今回の労働組合、これは今回の争議中の第二組合に限らず、従来の第一組合或いは第三組合も新たに要求をしておりまするが、これらの要求しておるごとく、基本的人権の問題、或いは会社の不当労働行為及び争議手段の問題等、労使関係における労働法以前の問題が数多く存在する事実が明瞭となりましたので、当委員会におきましても引続き調査を行い、問題を明瞭とすると共に、これが善処を政府に質し、且つ社会的にも又国際信用の上にも重大な影響を及ぼす慮れのある今回の争議の速かなる解決についての政府の対策を質すべきであると考えた次第でございます。  近江絹糸株式会社における労働問題に対して、当委員会調査をいたしたいと考えました点は、過去数年間に亙る問題の山積の結果がたまたま争議の恰好において発生いたしまして、そのあとになりました点は甚だ遺憾でございますけれども、一応この問題につきまして、労働省におかれても熱心に只今対策を立てて頂いておるようでございまするから、問題の経過並びに労働大臣としてとられようとしておりまする措置等につきまして、一応先ず御説明を頂きたいと考えるわけであります。
  57. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 近江絹糸という会社の争議の問題がいろいろ報道機関等におきましても強く取上げられておりますことは、この会社の経営方針なり、或いは過去長きに亙つての労働組合問題に対する諸種の紛争が少し特異の点があつたということに起因すると存ぜられまするが、この会社のやつておりまする法律違反の問題、労働基準法違反というような問題につきましては、役所といたしまして十分これについて質すべきは質し、是正させるべきものは是正さしておりまする次第でございまするが、今回の争議を通じて見ましても、違反というようなことがありますれば、これは十分質さねばならんことでありまするが、現在は争議中でありまするので、これにつきましては、今後十分調査をするということで、目下は措置ということについては差控える段階と考えておるのであります。従来も司法事件として処理したものはございまするのでございまして、彦根工場におきましては、昭和二十三年十二月の十三日、女子年少者時間外労働に関する件、又昭和二十六年六月三日に起きました映写の際の火事によりまして女子工員二十三名が圧死した事実も生じましたので、これらにつきましては刑法第二百十一条違反の被疑事件として起訴いたしておりますること、又中津川工場におきましても、大垣工場におきましても司法事件として処理いたしました事件はございまするが、併し現在は争議の段階でありまするので、これにつきまして役所といたしまして、そうした法律的な問題は処理いたしますが、役所の立場といたしまして、労働争議というものは飽くまでも労使間の良識によつて労使間の問題として処理すべきものである、こういう態度はこの会社の争議に対しても堅持いたしておるつもりでございます。本委員会におかれましても、この争議の特異性、或いは社会的な反響の重大性に鑑みて、国勢調査の観点からお取上げになるということは結構と存じまするけれども、やはり私どもといたしましては、役所が不介入であると同様に、国会も争議自体に対して介入するということは、これは私は立法府の建前として飽くまでも調査という段階を超えるべきではないと、かよう考えておるものであります。  今までの事件の発生の経過等につきまして簡単に御報告を申上げたいと存じます。近江絹糸株式会社の一部従業員によりまする会社の封建的労務管理に対する反対闘争は、昭和二十四年一月頃に端を発し、今日に至つておるのであります。その間昭和二十六年六月に彦根工場の映写会において女工二十三名死亡という不祥事件が起きまするや、全国繊維産業労働組合は七月に近江絹糸民主化闘争委員会を設置いたしまして、爾来今日に至るまで会社側の労務管理につきましてその封建的な点を打破せよということを目標に、外部から反対闘争を展開して参りましたのであります。更に本年に至りまして全繊はパンフレット「現代女工哀史」を発行いたしまして、又兵庫県加古川の化繊工場設置反対、海員組合との共闘による東南アジア向商品輸送のボイコツト等多面に亙る戦術をとつて参りましたのでございます。  今次の争議の経過概要を申上げますると、本年六月二日、本社組合を結成いたしまして、これは直ちに全繊に加盟を決定いたしておりまするが、これを皮切りといたしまして、各事業場内に相次いで新組合が発生いたしたのでございます。新組合は直ちに要求を提出いたしたのでありまするが、会社側は全面的にこれを拒否いたしまして、よつて新組合は無期限ストに突入したのであります。それに引続いて会社側はロックアウト、給食停止の措置とつたために、事態はますます紛糾いたしましたのであります。更に新組合側の応援隊増強と、会社側の人夫採用によります工場整備強化の対抗手段がとられまして、このために数次に亙る暴力事件の発生を見たのであります。全繊同盟側は六月十一日に帰朝いたしました夏川という社長との間に団体交渉を希望いたしておりましたのでありますが、十七日に至りまして、ようやく会社側の若干の譲歩によりまして、会社側は社長を、新組合側は全繊代表二名をそれぞれ含め、双方計五名づつ出席して団交を開くということにいたしたのであります。併しそういう協定ができましたにもかかわらず、翌十八日会社側は突然社長の工場視察ということを理由に、本日の団交には社長出席せずということで、全繊側に申入れましたために、団交は開かれなかつた次第であります。かかる状況の下におきまして、同じく十八日、労働省は事態拾収のために、当時派遣中の調査団を通じまして団交を速かに再開いたしまするように申入れを行いまして、速かに平和的に解決せられたいということを夏川社長に勧告をいたしたのであります。夏川は、これに対しまして労働省側の勧告は基本的には了解するが、各工場を見てからにしたいという意向を明らかにいたしました。その後、全繊側は資金カンパ、街頭宣伝、真相発表会等を計画いたしまして、又二十四日には大垣工場で出荷ストを行なつたのであります。他方会社側はこれに対しまして六月二十二日岸和田工場の閉鎖、二十八日には長浜工場の閉鎖を実施いたしました。このようなふうに事態は少しも好転いたしませんので、私といたしましても、この問題につきましては何らかの措置をとる必要を感じまして、千金良三菱銀行頭取、堀勧銀頭取、岸同和鉱業副社長の財界三氏に調停を依頼いたしたのであります。六月二十七日右の三氏と夏川社長との会談が行われました。引続いて二十八日、千金良、岸、夏川、斉藤全繊同盟書記長、なお、役所側から次官、労政局長が参集いたしまして、左の事項をとりきめたのであります。  夏川社長は次の日程に基き工場視察を行う。六月三十日、中津川、七月一日大垣、七月二日長浜、七月三日岸和田、なお、この視察には岸氏が調停役を代表して同行するほか、労働省係官、全繊同盟幹部も立合う、この視察中組合側は社長の工場出入を責任を以て保障するというのであります。七月五日東京で団交再開の予備交渉を行い、六日以降東京で正式団交を開く。併し社長の健康上の理由で夜に亙つては行わない。  給食中止のため、事態が悪化している岸和田、中津川両工場には社長が直ちに給食を再開させる。  大阪本社の西村専務、大垣工場の夏川工場長の事業場出入を組合側はピケなどで妨げるようなことはしないということであります。  なお、七月一日以降、夏川社長は岸斡旋役とともども、又全繊の高山氏、佐藤氏とともに各工場を視察したのであります。視察につきましては種々今までのいきさつ上の問題はありましたようでありますが、岸斡旋役も非常に努力せられまして、曲りなりにも行程を四日に終えたのでございますが、四日の行程を終了する直後、岸和田工場におきまして暴行がありまして、夏川という社長は頭部に負傷をしたと申しておりまして、その後入院したということでありますので、その間の事情もありまして、六日に団交を開くという予定が若干その健康の都合上延引しておる、こういうような事態でございます。  私といたしましても、冒頭に申上げたよう政府が一会社の争議に介入するというようなことは避けるという方針は堅持いたしまするが、やはりこうした問題を長期に亙つてそのままにおきますということの持つ影響等は十分に考慮いたしておりまして、かかることを一日も早く円満妥結に参りまするように今後も努力を続けたいと考えております。
  58. 吉田法晴

    吉田法晴君 実質的な点についてはあとで各委員から御質問がございましようが、今の労働大臣説明の中で気になる点がございますので、一二お尋ねしておきます。  冒頭説明せられましたように、近江絹糸の各工場の中で、或いは基準法違反、それから場合によりましては、特殊な場合でございますが、刑法に触れるような事案等もございます。一般的に言えることは普通の争議であるか、或いは労働法以前と申しますか、或いは争議以前の、普通の争議以前の事態であることは、これは一般に認められるところでありますが、それに対して労働大臣は、労働争議だからこれには介入しないのだと、政府もそういう態度だから、国会調査ということにとどめるべきであつて、介入すべきではない、こういう指図までなさいましたが、これは要らんことだと思いますので返上いたしますが、基本的な、普通の争議以前であると言われておる、或いはそういう事態に対しても、普通の争議と同じように、国としては、政府としては介入しないと、こういう基本的な態度であるのかどうか、その点を第一に伺いたい。で、これは名前は四方というのですか、労働省から調査団として行かれて、そして団交を速かに開いて平和的解決に努力せられたいという異例の勧告がなされております。私は、普通の争議のように給与を上げてもらいたい、給与を一万円上げろ、いや、会社の事情でそれは三千円しかしげられない、こういつたような問題でありますならば、これを政府が幾ら上げるのが妥当である云々ということは、これは政府の任務ではない。併しながら、法の違反があり、或いは中には刑法違反までもあるような事態、こういつたものについて、これは当然その事態を直すことは政府の責任だと思う。又それを理由にして起つて参りました争議について、団交を速かに開いて解決をしろということは、当然のこれは態度だと思うのであります。従来の労働省のとつて来られた調査団なり、或いは団交開始の勧告等にもかかわらず、なお介入しない、それにはこれは普通の争議であると、こういうふうに考えられるのかどうか、その点を一つ承わりたい。  それからもう一つは、調停について、小坂労相は、三人のいわゆるまあ何と申しますか、実業界代表といいますか、いわば近江絹糸と特別の関係のあります二つの銀行の頭取、それからこれは直接関係のないようでありますけれども、いわゆる会社の労務管理のベテランといわれる岸氏を起用して、調停を依頼された、こういう事態もこれは異例であります。従来、争議であるならば、その争議の調停、或いは斡旋等をすべき労働委員会なりそういう制度があり、或いはそういう考え方があることは私が申上げるまでもございません。法律までもあるわけであります。それに特にこの近江絹糸関係のあります、而も大株主である三菱銀行頭取、或いは勧銀頭取、或いは労務管理のベテランといつたような諸君を、これは労働大臣がやられる調停を代つてつてもらうのかどうか知りませんが、調停を依頼された姿は労働大臣仕事を三人に委嘱されたと、こういうことには間違いはないと思うのですが、その辺の心組みなり、或いは現在の法律なり、或いは制度と違つた特別のそういう調停方法をとられようとした理由と、それから真意を伺いたいと思います。
  59. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) この組合の要求事項が二十二項目ございますることは、お手許に資料がございますから申し上げるまでもありませんが、いずれを見ましても、誠に尤もなる要求なんであります。こういうことが行われないというところにこの争議の特殊性があると思うのであります。併しこれは会社と組合の問題でありまするので、こういうことをいかんと言つて政府が裁くことはいいでありましよう。又法律上適切に処置することも当り前であると思います。併しそれだけで解決しない問題があると思うのであります。問題はこの一万三千人のそこの近江絹糸という会社で働く諸君が、今後も十分によい改善せられた条件の下で働いて行くようにしてあげると、こういうことが政府として一番考えるべき重点ではなかろうかと思つておりまするので、そこで先ず私として一番必要なことは、経営者としてこの新らしい労働法ができてからですね、終戦後のこの労働関係というものについて、どういうふうな感覚を一般が持つているのかということを、むしろ仲間の人から聞いてもらつて、これを成るほどと納得してもらうことが私は一番近道じやないか。やはり経営者自身がその気持になつてつてくれれば、今申上げたようなそこに働く人たちも、幸福な労働環境の下において働いて行くことが、将来できるようになるのじやないか。そこで、そう思いますので、こうした労働環境を作るということが、この争議の発生した原因でもあり、要求でもあるのでありますから、その根本にメスを入れるということのためには、政府がこれはいかんとか、これはどうすべきであるとかいうことよりも、真に納得を得る方法とつたらどうか、こういう考えが私の気持の根本にありまするのでございまして、そこで政府としては、先ず第一に団交を早く開始するようにということも申しましたし、それが聞かれんということでありますれば、種々の事情を、一応この人がこう言うのだから、これは止むを得ないのではなかろうかと思うような人から言わせれば、私は実は幸か不幸か夏川という男には一面識もありません、知らん者が官権を笠にして申しまするよりは、長年の付き合いのある者から話をされるということのほうが適当である、こういうふうに思いまして、まあ調停役といいますか、そういう人に、三人のかたに斡旋の労をとつてもらうように委嘱いたしたのでございます。で、三人のかたは、千金良三菱銀行頭取、堀勧銀頭取でありますが、この二人のかたは、一人は現在の銀行協会の会長でありますし、一人は前回の銀行協会の会長でありまして、金融界において非常に信用のあるかたでありますので、特殊関係があるなしにかかわらず、そうした立場から、こういう方々がむしろ大きな債権者としての立場からも、どう思つているかということも聞いてもらうのもよかろうと思うのであります。岸君におきましては、これは今お話もありましたように、労働関係において非常にいいセンスを持つておられるということを聞いておりますので、御依頼をしたわけであります。私としましては、とにかく団交をするべきだ、これは介入でも何でもないのでありまして、団交しろと、これは当然やつて事態を収拾しろと、そういうことを要望いたしましたが、それがなかなか軌道に乗らんので、軌道に乗せるよう一つ斡旋してもらいたいとこういうことで、軌道に乗りましたならば、その後におきまして種々のこの労働委員会の制度もございますから、或いは中労委なり地労委なりという制度の活用ということも考えられますのでありますが、この問題はそこまで行つておりませんので、とにかくそうした交渉を軌道に乗せるべく斡旋を依頼した、こういうことでございます。幸いにいたしまして、各工場を見てからでないと団体交渉に応ぜられんと言つておつたのが、各工場の視察を終りましたわけでありますから……。ただ非常に残念なことでありましたが、最終段階において暴力事件の発生をみたということがありまして、これさえなければ、今日は当然団交に入つているわけでありますが、まあちよつと言いがかりをつけられるよう状況になつておりますので、これにつきまして、無理矢理に押すということも如何かと思われますから、一応その状況状況として認めて、暴力事件の発生ということは、これは遺憾なことでありまするから、遺憾なことは遺憾なこととして処置する、そうしてその気分のよくなるのを待つて、団体交渉に入つてもらうということで、だんだんこれは軌道に乗りつつあるかに私は思つているのであります。さような趣旨でございます。
  60. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、こういうことですか。調停役を頼んだ三人は労働大臣の代りとしてやつてもらうのだ、そこをさつき聞いたわけです。  もう一つ、今のお話では事態はまだ労働委員会なり何なりにかかるような事態ではない。軌道に乗らないので、そこで労働関係調整法以前の問題を以後の問題になるように三人に頼んだ、こういう解釈のようでありますが、その辺の労働関係調整法なり現在の労働委員会なり労働問題を取扱う制度と、それから特別のこの関係についての労働大臣の所見を承わつたわけであります。  それからもう一つは、労働関係調整法以前の問題である、或いは労働基準法違反である、或いは刑法違反の問題である等と言われるのでありますが、まあ概括的に言うと、労働法違反と労働関係調整法以前の問題である。それをまあ大臣は軌道に乗つておらんから軌道に乗せる、こう言われたわけであります。従つてその法以前の問題を団交を開いてやれ、軌道に乗せるために労働省として団交を開いてやれ、こういうことを言つたのであります。従つてそれは関係が労働関係法以前であるから、それを乗せるために労働省として勧告もした。或いは調停も大臣に代つて三名を頼んだ、かよう説明であつたようでありますが、そういうことでありまするかどうか、もう一度重ねて御答弁願いたいと思います。
  61. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 三人のかたに御委嘱いたしましたのは、政府に代つてとかそうした意味ではないのでありまして、今申上げたよう政府としましては団交を速かに開いてやれということの勧告をいたしておるのであります。ところがそれにつきまして種々遁辞を設けておる。併しそうしている一方、事態は悪くこそなれ、よくなることはないという状況でありますから、そうした政府が団体交渉を早く開けという気持を汲んで、従来昵懇な人の間柄の中から、或いは同じ経営者としての立場に立つものの中から、こういうことを考えたらどうかというふうな、穏かな話合いによつて夏川社長の気持をそちらのほうに向けてもらうように、物事をすつと円滑にしてもらうようにさせるための方法として一つ労を煩わしたい、こういうことなんであります。  それからなお、組合の二十二項目の要求というものについては、これは組合側としてここに書いてある通りだとすれば、これは誠にその通りだろうと思いますが、会社には会社の言い分がある、こういうことでありますから、そういうことならば成るべくなら早く話合いなさい、こういうことであります。併し争議があるのでありますから、争議につきましてはあとどうするかというような問題で当然問題が出て来るだろうと思います。そういう問題はそれぞれ調停の機関があるのでありますから、そういう問題が起きたときには、中労委なり地労委なりという調停機関にそれぞれ委せる、こういうことであります。
  62. 赤松常子

    赤松常子君 私労働大臣に簡単にお伺いいたしたいのでございますが、今しばしばおつしやいますように、今度の問題は労働争議以前の問題でございますし、人権闘争と言われておるくらい誠にささやかな可憐な要求を出して争議が起つた次第でございます。こういう問題が中小企業にございます場合にはいろんな事情がございますから許す点もございますけれども近江絹糸は御承知のように一流中の一流の紡織会社にのし上つている会社の職場に、而も現場が七つ、それから事務所が三カ所、こういうところにまだこういう人権を要求しなければならないような、過酷な奴隷労働が存在しているということは私は今労働大臣の言われるようにそこに働いております労働者自身の自覚もさることでございましよう。併しこの近江絹糸の従業員の年齢層は、この調査にもございますように、非常に年若い人々が多い関係から、そういう自覚を持たせるということも容易なことではないのですが、まあそれは勿論一つ条件でございますけれども、もつとこの労働行政が或いはその監督署或いは労政局、そういう監督を含めた労働行政がもつと忠実に行われておりましたならば、こういう問題は根を絶つているはずだと思う次第です。わがこの労働委員会でももうすでに一昨年からしばしばこの問題を取上げて発言しておるのでございますけれども、一向にその跡を絶たなかつたということは、私は労働行政の一大汚点であるし、怠慢ではないかと思う次第でございます。今民主化の叫ばれておりますこの現代に、まだ一流会社の職場にこういう低い谷間があつたということに対し、労働大臣は責任をお感じになりませんでしようか、伺いたいと思います。
  63. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) これはこの二十二項目の要求を見ますと、例えば信書の秘密を犯しておるとか、そういうようなことがありまして、これはもう当然人権蹂躙ということであれば、これはよくないことにきまつておる思うのであります。併しいろいろなまあ言い分は双方からあるのでありまして、なお、この例えば信書開封というようなことについてもそのことだけ捉えれば、確かにこれは悪いのですが、まあ年の行かない若い女子の工員さんを妙な道に陥れないために会社のやつた深情けだというような議論もあるのでして、そういうことは実態がこういうふうに明らかになつてみないと、役所としてはちよつとわからない。組合が全部一色でありまして、そうしてそんなことはありませんと、調査に行つたものが言われれば、それつきりなんです。今度は第二組合が大きくなりまして、その発言がこうやつて取上げられるようなつたので、こういうものが問題になつて来た。役所としては従来から調査をしておりますのですが、資料にも申上げておりまするが、監督回数も、彦根工場九十二回々初めとしまして、各工場で調査をいたしておるのでございます。やはりそういうところは組合が単一一色になつておりまする場合には、なかなかそういことが表面に出て来ないのであります。で、この問題もまだ係争中でございますので、私どもの立場、政府としての立場から、それはあまり断定的なことを申上げるのも少し差控えなきやならん事情もあろうかと思うのでございまするが、事情が明らかになりますれば、政府はその非違のところは決して解決するにやぶさかでないということは申上げておきます。
  64. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連して。大臣は労働組合の要求或いは言い分が云々ということを言われましたが、今赤松さんが言われました労働省の態度或いは労働省の末端であります基準監督局を含めてでありますが、この問題は今度の争議以前の問題であります。これはこの際、大臣その他に申上げますが、従来近江絹糸の問題について主として労政局長答弁に当つておられました。この労政局長答弁等については、委員会としてこれは公式に遺憾の意は表しませんでしたけれども、並んでおりますものが一様にその不誠実について問題にして参つたのでございます。これはまあ言い方云々と言われればそれまででありますが、その辺を具体的に今問題にしておられるのでありますが、私も今日もらいました資料のほかに、先般調査に参りました調査員が持参いたしました滋賀労働基準局の近江絹糸彦根工場関係書類というのを拝見をいたしますというと、違反状況はこと細かに書いてございます。これの中に、これは全部で五十七回というのですか、五十七回、百五十三件摘発をしたと書いてございますが、正確な数字調査員の調査の結果を見なければわかりませんが、この中で起訴をいたしましたのは、この書類によると、一件でございます。それは二十四年の一月十七日に送致しました事件で、三十二条三十五条、六十二条、三十七条違反であります。判決は池原という工場長が懲役三カ月、執行猶予一年、夏川社長は罰金五千円、ところがその後お話通りに、今大臣からも報告ございましたが三十二名も死亡いたしました映写機からの発火事件もございますが、なお、この摘発しました違反状況の簡単な摘録だけを読んでみましても、或いは女子労働者の時間外労働或いは深夜業或いは年少者の時間外労働、その他悪質な労働基準法違反が繰返されておることは、この彦根工場の関係書類及び滋賀労働基準局が勧告いたしましたものにも明らかでございます。これを見ておりますというと、何遍勧告をしても或いは請書をとつても、私どもの言葉でいうと蛙の面に水をかけたように、これは繰返し行われておる、基準法違反が……。そういう点について赤松さんは前から委員会で問題にして来ておるのに、労働省の態度が不徹底であるから依然として直らないで、今日に至つたのではないか、こういう御質問だと思うのです。具体的な事例を挙げて再答弁を求める次第であります。
  65. 亀井光

    説明員亀井光君) 只今質問のございました、特に彦根工場をとりまして御質問でございました。当委員会におきまして御質問のございました際にも、いろいろ御説明を申上げたのでございまして、近江絹糸自体の工場に関します監督については、決して我々手を抜いておるわけじやございませんので、ここに御報告ございますような回数を経て監督を実施して参つて来ておる、そして又その違反につきましては、その都度是正をさして参つております。それも又確認をしております。ただ問題が非常にデリケートな問題に入りますると、従来の労働者のこれに対しまする答弁が非常にあいまいでございまして、違反の事実を是認するような実は労働者からの供述がとれなかつたのでございまして、従つてこれに対しまして、司法処分といたしまするには証拠が不十分でございまして、我々としてこれについて十分な確証を得ることに従来も努めて参つたのでございまするが、先ほどのような、お話申上げましたよう労働者側からのこれに対する供述が十分とれなかつたために、証拠としての的確性を欠いて来たのでございます。で、今後の問題としましては、先ほど大臣からも申上げましたように、第二組合ができまして、労働者が自由な発言ができるような立場といいまするか、そういう状態になつたわけであります。目下これにつきまして我々が証拠固めをいたしておる状況でございます。これらの点がまとまりましたならば、我々としましてとるべき措置はとりたい、かよう考えております。
  66. 赤松常子

    赤松常子君 私、先ほど労働大臣お尋ねしております御返事をまだ伺えないわけですが、こういう社会問題にも発展し、国際問題に発展しております近江絹糸の問題に関して、労働行政の当局者として責任をお感じにならないかどうかということを伺いたいのでございますが、それの御答弁をお願いいたします。
  67. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) この争議につきまして、十分今円満に解決をするように図つておる際でございまして、別に責任ということは考えたことはありません。
  68. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと委員長から……。もう三年間の問題ですから、赤松君が御質問になつておる点を私から附加えておきたいと思いますが、実はその近江絹糸において労働基準法違反がしばしばあるということは、もう問題になつておる。而もそれらは投書等を通じて耳にしているわけでありますが、そういう不確定なものではいけないので、労働省はもつと全力を挙げて調査をしろ、調査をした結果を委員会には遅滞なく報告をせられたいということが、しばしば委員各位から労働省に要請せられていたのであります。ところが先ほども引合いに出されておりましたけれども労働省のほうにおいては、当労働委員会からみまするというと、極めて御熱意のないようにしか受取れなかつた。従つてそういうふうで日を送つている間に、今度のこの大争議が勃発をしてしまつた。従つて労働省としては過去三年間労働委員会がしばしば警告をしているにかかわらず、適当な行政処置をおとりにならなくて、こういう大争議を起されたことに対して責任を感じられないか、こういう工合なことであつて、起きたあとの事態の収拾というよりは、それ以前の労働省のこの問題に対する、いわゆる責任の問題について質問をされている、こういうふうに私は理解をいたしますので、この点は一つ率直にお答えを願つておきたいと思います。
  69. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) この近江絹糸の争議発生までの経緯につきましては、先ほども申上げた通りでありましてこの会社の組合が御用組合であるのだから、もう少し組合自身の自覚に基いた組合を作ろう。そうしてそれが合繊に加盟したいという要求が一方にあり、現在ある組合というものは、そうした御用組合ではないのである。従つて第二組合というやつは殊更に事実を強いているものであるという会社側の意思がありまして、その間の軋轢というものが、この争議に発展したのであると私は考えております。  労働条件その他につきましては、法の観点からみまして、適正な監督を私どもは行なつておる。而して罰すべきものは罰しておる、こういうふうに申上げておるのでありましてこれについての見解の相違を以ちまして、私の責任を追究せられても、私としては答えのしようがないのであります。
  70. 赤松常子

    赤松常子君 私今の委員長の言われましたように、もうこれは三年来の問題になるのでございます。それで監督署が勧告しておる、その報告は受けておると言つておられますけれども、私はその監督自体にも非常に今度大きな抜穴があるということを具体的にさまざま調べて参りました。そのことにつきましては、あとから又亀井局長及び中西局長にも、よくお尋ねしたいと思つておる次第でございます。  その一端を申上げますと、実は昨日も彦根工場に私いたのでございますが、たまたま自由党の議員の先生方の視察がございました。そういたしますと、丁度昼前後でございまして、女子工員が食堂に入つたわけです。私十一時から女子工員と座談会を開いておりまして、食事の人は行つていらつしやい、そうしてやつたのです。それから食事を済ましてすぐ又座談会に参りまして、まあ面白いことがあるのですよ。今日はお昼御飯のために食堂へ行つたら、御飯が真白なんだ。今日はお祭かしら、何があるのか、大変嬉しかつた、今までないことですから……。そうしたら傍らの人が、あすこに偉い人が来ているらしいのよ。それでふつと見ると、十人ばかり男のかたが来ておられる。そして男工員の人が、あれが今日国会から視察に来た自由党の先生らしい、こういう囁きを聞いたというのです。そういたしまして、五分ぐらい立つておられたらしい。それで食堂から出られた途端に、黒い御飯に変つちやつた。(笑声)それで座談会に行きますと、半分の子は白い御飯を食べた。それからあと子供は黒い、麦が六分、米が四分という御飯に変つちやつた。それを飛んで帰りまして、私に報告しましたから、まだその先生がたは事務所にいられる時間だからその黒い御飯を持つて行きましようというわけで、男子工員が食堂に馳け込んで、そうして黒い御飯を持つてつて、今これが出ているのですよ、あなたがたの御覧になつているときは白いが、あなたがたの姿が見えなくなると、こういう黒い御飯なんですよと言つて見せたというのです。食堂の関係の人も連れて行つて一体どういうわけで掌を返すようにこんなことをするのかと、こちらが質しましたら、いや、これは朝の御飯の残りだ、こう言うのです。ところが温かいから今炊いたのだというので、そこで押問答が始まつたというのです。こういうことで五分間、十分間の時間の差で、こういう作為的な上手な抜け方をするのでございます。  そういうわけで、本当に監督官のかたの監督の仕振り、労政局のかたのいろんな勧告の仕振りというものが、ただ、表面を撫でて、そうして本質的のものにちつとも触れていらつしやらないということは、これはたつた一つの例なのです。挙げろとおつしやれば、幾らでも……。私は監督の実際上、実に徹底していないということを、今度実情を掴んで参つたのでございますが、そういうふうなことがずつと放置されていたということなんです。そういうことに対し労働行政の責任者の大臣が、それでよかつたとお思いになるのか、それを悪かつたとお思いになるのか、これを伺いたいと存じます。
  71. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 食事云々のことは、(赤松常子君「それは一つの例ですから……」と述ぶ)私のほうの自由党の諸君が行つていることですから、その人に聞いてみなければわかりませんが、そういうことで一体世の中をごまかして渡れるということを考えておるとすれば、これは非常に浅はかなことで、そういう事実を前提として言うのですが、非常に浅はかなことで、私も余り利口じやありませんが、そういうことでごまかされるくらい馬鹿でもないつもりでおります。私どもとしては労働行政をお預りしておる立場から、できる限り厳正公平にこの適用を実態に即して、剔決すべきものは剔決するということは、今申上げた通りでありますが、近江絹糸の場合は、先ほど申上げたように、組合が完全に会社側の掌握下にあつて、若い工員さんであつても掌握下にあつて、そこで基準局長が今申上げたように、それに対する投書等があつて、それに対して調べに行つても、それに対する裏付がないという場合には、当局としてもこれは投書のほうが正しいのだという裁き方もできないことは、御想像がつくと思います。その意味で私はそういうことまで言われても私としては何としてもいたしかたがない、こういうのであります。  そこで問題を一つ私のほうからも申上げたいのでありますが、この問題は、解決を是非とも早急にしなければならない。解決の後はどうなるかと言えば、よい労働条件の下に、而も会社が相当に栄えて、このことからよい労働条件も伴つて生れて、そうして働く人が幸福な労働環境を楽しむというふうに持つて行かなければ、本当の解決にならんと思う。経営者を叩いて会社をつぶしてしまう、これではやはりあとどうなるかと言えば、本当の解決にはならんと思います。問題は、経営者の頭をどう切替えてもらうかということ、私はそのことに一番今重点を置くべきときではなかろうかと思います。幸いにいたしまして、夏川社長が団交を承諾して、工場の実態を見ていろいろ感じたところもあると思います。帰つて来て話合おうとしている際でございまするから、既往に悪いことがあれば悪いとして、あとでやればいいのであつてこの段階において、いろいろ言い合つてみて、そこに更に感情的なものをつまみ出してみても、事態の解決にはならんと私は思うのであります。この際はできるだけ、言分というものは双方にある、片方がそういうことを言えば、片方のほうは又言分があろうと思います。片方が実に経営者として苛酷な労働条件を押し付けると言えば、片方のほうは相当暴力的だということを言う。それぞれに言分が出て来る。そういうことの出ないよう、早急に私は解決したいと思うのであります。こういう問題につきましては、折角軌道に乗つておるところでございますから、これを一日も早く円満な解決をみるように、今申上げたようなところのちえの線で、経営者の頭を近代的な労働感覚によつて切替える、こういうことで、解決ができまするよう一つ御協力を頂くほうが……。自由党が来たらどう言つたとか、社会党が来たらどうしたとか、そうした党派的な問題にまで持ち込みますと、問題が崩れて来ると思いますので、冒頭申上げたように、成るたけ当事者間で解決をしたいという気分を盛り上げて解決する、こういうふうに持つて行かないと、実際上いかんのじやないかと、こういうふうに思うのであります。
  72. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣が言われることは非常に双方が立場の差こそ違え、双方非常にまじめな或いは普通の場合のことを考えておられると私は思うのです。先ほどの責任問題云々とありますけれども、今その例の一端を赤松さんが言つたように、白飯が五分間の間に麦飯になつように、今まで三年間もここでやられた。私は一年間になりますけれども、その間に数回この問題を出されておる。そういう場合でも調査に行つた場合は、掌を返したようにいいところだけ見せられるので、どうもわからないのだ、こういうことが盛んに言われておつたわけです。それが今度の争議で殆んど前面に出て来たわけなんです。こういう事態なり、問題もたくさん出て来たわけなんです。これに対してももつと積極的な手を打たなければならん。例えば新聞社は赤であるとか、或いは警察も赤に加勢しておるとか、或いは我々にピストルと戦車を貸せというような、こういう常識を欠いておる、私は現場に行つておりませんが、併し新聞その他を見ても、常識を欠いておる人だと、私は思うのです。そういう場合に、今まで三年間も問題になつて来ておつたこの近江絹糸問題がこういう事態になつて来たこの場合に、今までこの委員会でも相当この問題を、不当労働行為があつたのじやないか、法律違反もあつたのじやないかということを、盛んに労働省に対して言つておるのに対しても、そういうことで、調査も不十分であつたとすれば、この現実から見て、今までそういうことがあつた、指摘されておつた通りあつたということは、十分おわかりになつておると思う。そういう態度を一つ明らかにして頂いて、そうして今度は団体交渉を双方がやられるのはいいでしよう。或いは最後の場合でもいろいろ批判のある場合もあるでしよう。併しそれにしても、ほかの合繊関係の待遇、それから現在の近江絹糸の待遇、年齢の問題、勤続年数の問題等々も考えて見るなら、ほかの所でできないことをやつておられるという現実は、当然おわかりになつておると思う。それならもう少し積極的な方策はないか、こういう点を二つお尋ねしたいと思うのです。
  73. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) よくわかりました、あなたの気持は……。で、私も政府という立場でものを考えておりますので、これは非常に限られた幅でなければ、私はものを言えない立場にあるということを御了承願いたいと思います。そこでかなり思い切つてつておるつもりでございますが、私の考えは大体おわかり願えるのではなかろうかと思つておつたのでございますが、問題は現在争議中でございまして、この状態がよいとか悪いとかというのは、争議中の状態を基準にして直ちに判断するということは非常にむずかしかろうと思います。  問題は今申しましたように、近代的な大規模産業の労使関係というものについて、経営者も十分に反省するところがないか、組合側もこれはまだできたばかりでありますから、その組合側のあり方というものに対しても、だんだんに訓練を経ていく、こういう環境を早く作ることが非常に必要である、こう思つておりますので、現在役所がいいとか悪いということを断定することは、私はちよつと時期としてはまずかろうと思つております。
  74. 田畑金光

    田畑金光君 労働大臣の御答弁に若干不満を感ずるわけでありますが、先ほどの赤松さんの御質問の趣旨に明確なお答えがないと考えておるわけであります。勿論この争議を契機といたしまして、近江絹糸ような大企業の職場が近代化されて、労使関係が正常な一般的な健全な水準に達するように努力することは当然のことだと考えるわけであります。同時に又この争議を契機といたしまして、飽くまでも企業自体の健全な発展を願うことは、誰しも同様のことでありまして、この争議を機会として或いは企業自体の存続を危うくするような行動とか考え方、こういうようなものは全然ないと思うのであります。  問題は終戦後のこの長い間、而も民主化された社会組織の中において、労使関係についても相当程度成長した今日までの過程において近江絹糸ような、まさに労働争議以前の人権争議が操り拡げられたという悲しい事実について、労働省といたしては何らかの労働政策面における欠如が或いは破綻がここに現われたんだという点において、行政上の責任というものを感じないのかどうか、こういうことだと思うのであります。この点は飽くまでもこの事件を契機といたしまして、今後どうするかという問題の前提として、私は当然本日のこの委員会において、労働大臣からこういう事件を、国際的にも国内的にも恥ずべき争議を起したというこの労働政策について、何らかの責任の表明があつて然るべきではないか、こう考えるわけであります。  先はどの答弁によりますると、労働大臣は従業員の個々の諸君が監督官庁の調査に対しても十分に協力しなかつた、或いは事実を事実として述べることの勇気がなかつた、こういうようなことで、監督官庁としては精一ぱいの努力をやつて来たんだから責任はないのだ、このように言われておりますけれども、併しこの国会におきましても、再々問題に取上げられておるし、而も昨年の国会においても、衆議院からも実情調査に参られておる、こういうような事実を見ましても、監督官庁の手抜かりというものは当然労働行政上の責任に通ずる問題だと考えておるわけであります。どうも労働大臣の御答弁を聞いておりますると、責任というものが全く抹殺されているような印象を受けるわけでありまするが、これは非常に遺憾なことだと思つております。現内閣のやり方を静かに振り返つて見ますると、どうも責任は反対党にある、野党にあるかのごとくすべて律していこうとする態度が強く浮び上つておるわけであります。先般の乱闘国会の騒ぎにおいても、或る外務省の役人が政府与党にも一班の責任ありということを書いたので、Y項追放に処せられたということも聞いておりますが、更に又世上伝うるところによると、夏川社長というのは吉田総理とまるつきり似ておるというようなことも聞いておるわけでありまして、誠にどうも遺憾なことだと考えるわけであります。  今判断して見ましても、過去数年間の吉田内閣の労働施策の中においてこの問題が解決されず、たまたま今回内部における労働組合員の目覚めた諸君が蹶起したことによつて、このように問題が大きくなつて参つたわけであります。そういうことを考えたときに、今後の解決策をどうするか、或いは今後労使関係はどうなければならんかという前提の前に、私は少くとも労働大臣としては、過去の労働行政に対して何らかの責任というものの表明があつて然るべきだと思うわけでありまするが、この点につきまして、もう一度労働大臣の所信を承わつておきたいと思います。
  75. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) お話を承わりますと、何か私が悪かつたと言わないから、御質問があつたというような気もいたしますが、これはどうも少し与野党の関係を強調し過ぎられるのじやないかと思うのであります。  大体近江絹糸の争議というものは、これは人権争議であるというふうに言われております。ただそれだけで片附けばよいのかどうかというと、これはほかにもいろいろ意見がある、そういう議論は非常に大きいのでありますが、ほかにも意見があるのでありまして、その一つを御紹介いたしますと、これは全繊に加盟したいという組合の一部の動きを四年間に亙つて抑えて来た。それが出ると、それを潰した。ところがいわゆるふくろう労働と称するものの発明を契機として、これが一気に不満が爆発して、そうして第二組合の発生となつた。そこで会社側はロック・アウトをかける。そのロック・アウトのかけ方がそれがまさに人権蹂躙式なのでありますが、飯を食わさんというふうなロック・アウトのかけ方をする。そこで或いは又暴力団も入れるというような非常に遺憾なことをしたことは事実であります。ところが一方においてもピケについては、これは組合員以外の者まで全部暴力的に組織しておるというようなことがあつて、そういうような暴力が伴つておるということは、非常に社会的に大きな問題である、こういうことになつておるのでありまして、そういうことについては、非常に政府の態度ももう少しそういう問題について明らかにしたらいいじやないかというような説もあるのであります。そこで私は人権を侵害するようなことがあれば、これは徹底的に処罰しなければならん。法の示すところに従つて処置をすると言つておるのであります。過去においてあつたかないかということは、これは証拠がなければ言えない。そのことをあつたと断定して、その処分の責任を問われることも、これは行き過ぎではなかろうかと思う。今の争議ということについては、問題はそうした要求を充たして上げるということが一番政治としては必要なことでありまして、そうした要求を充たされるような環境を早く作つてあげる。現在のような争議の状態、紛議の状態というものをできるだけ早く円満に解決してあげるということが、むしろ政府の大きな責任でなかろうか、こういうふうに私は思つております。
  76. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  77. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記を起して。  それでは二時まで休憩いたします。    午後一時二十分休憩    ——————————    午後二時二十八分開会
  78. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 休憩前に引続き会議を開きます。
  79. 吉田法晴

    吉田法晴君 人権擁護局から折角御出席になつておりますので、法務省でお調べになつたところ、それから法務省として今後この解決の方向に努力せられます措置等について一つ承わりたいと思います。
  80. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) お答えいたします。  今度の近江絹糸の争議がいわゆる人権争議といたしまして非常に社会的に大きな問題となりまして、人権擁護局といたしましても、今までの争議と違いまして、争議の根本的な理由が人権の問題であるということに深い関心を持つておるのでございます。この問題が新聞紙上に報ぜられまして、新聞による情報、ニュースと、組合、全繊、それから近江絹糸の新組合等からの陳情がございまして、この問題を取上げるようなつたのでございまして、そこで人権擁護局といたしましては、争議自体には勿論介入すべき筋合ではございませんので、いろいろ要求事項に盛られておりまする人権に関する問題に対しては、やはり私どものほうとしてはこれは捨てておけない問題でございますので、十分調査をいたしたい、かよう考えました。  そこで御承知の近江絹糸の工場が各地に散在いたしておりますので、関係各法務局及び地方法務局に調査を指示いたしまして、又本省からも彦根等に参りまして、只今事件の調査をいたしておるような次第でありまして、まだ全部の調査が終つておりませんので、結論までに至つておりません。先ほど申上げましたように人権擁護局といたしましては人権に関する問題、このたくさんの要求の中で、主として仏教の強制、それから結婚の自由、それから就学の自由、私物検査、それから外出の禁止等の寮生活の自由、これらの点に大体限定いたしまして只今調査をいたしておるような次第でございます。
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 調査中というお話でありますが、新聞の報ずるところによりますと、当初これは或いは口頭によります説明なり或いは文書その他による調査の結果かも知れませんけれども、私ども聞き及んでおりますところでは、むしろ労働省以上にはつきり人権問題について問題がある、こういう御意見であつたかと承知をするのでありますが、今まで調査せられましたところ、或いはそれが書類でありましようと或いは口頭でございましようと、それから今まで彦根その他へ行つて調査になりました結果でありましようとも、中間的にも御所見その他は承わりたいと思うのであります。  それからなお今挙げられました中に我々の聞き及んでおりますところでは、或いは信書の秘密が侵されておるのではないか。こういう点は、これはその信書の秘密を破る衝に当つておつた者の証書等もございますし、これらの点は私どもが手許に拝見いたします資料だけでもはつきりいたすことだと思うのでありますが、もう少し具体的に御所見を一つ承わりたいと思います。
  82. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 信書の開封の問題、只今落しまして甚だ恐縮でございます。これについても只今調査をいたしております。そこで調査中でございますので調査中と申上げたのでありますが、御承知のこの問題は非常に微妙な問題をたくさん含んでおりまして、調査に非常に実は困難を来たしておるのであります。御承知の働く立場にある中に組合が幾つもできて、別々の違つたことを実は言つて参つておりますので、なお、それから勤続年数がすでに御承知と思いますが、彦根においては一年と七カ月、一・七、富士宮においては一・四、又各地におきましても、大体全部と言つてよいくらい三年以下が平均年数でありまして、十七、八の而も若い女工が主でありますので、これが主として東北、九州、四国、松江、長野というような各地に散在しております。そこでこうしてやめて帰つた人たちを調べるのに実は非常に困難をいたしておりまして、現在までの調べましたところでは、いわゆる第二組合と称せられる組合の方について、これを数多く調査いたしたのでありますが、会社側と第一組合のほうにつきましてはまだ十分な調査ができておりません。多少調査いたしたのでありますが、これを全面的に否認をいたしておりますので、この確証をつかむのに非常に困難をいたしておるのが率直なところだと思います。  そこで私どものほうとして、結論を得るというには到底参りませんので、結論的なお話を申上げることは、これ又いろいろ支障があろうかと存じますので、これは一つお許しを願いたいと思いますが、今までの第二組合等について調べたところでは、新聞等に報ぜられておるところとやはり同じように、私どものほうに言われて来ておるのでございますが、何しろ確証をつかむのに非常に困難であります。例えば結婚の自由を侵されたというような問題につきましても、今までの私どもの調べたところでは、この問題は殆んど出ておりません。恐らく大阪の本社における社員の中でそういうことがあつたのではなかろうかという程度で、工員間におきましては、この問題は私どもの今まで調べたところでは殆んど見当らないというわけで、ただ仏教の強制、これも結論は申上げられませんが、今まで調べたところでは仏教を強制したのではなかろうかという点の疑がこれはかなりあるやに考えられるのであります。手紙の問題にしましても、これも私どものほうとしては確証を得ておりません。いろいろ第二組合の人たちの話によりますと、開封せられて渡されたと言つておりますが、これがなかなか具体的につかむことが困難でありまして、今のところそういうことがあつたかどうかということに対してはまだはつきり申上げられないのであります。又電報等、例えば親が危篤だという電報が来た。これをすぐ渡せられなかつた。そのために親の危篤に会えなかつたというよう事例がたくさん言われております。又冨士宮におきましても、その電報が偽電報じやなかろうかというので、職業安定所に聞き合したところが、職業安定所ではそれは偽じやないというので、それから手紙を渡したというようなことも言われておりますが、これも昭和二十七年の実はことでありまして、果してそれを職業安定所にそういうことを聞き合せたかどうかということも只今調査中でありまして、これはまだ報告が参つておりませんので、いろいろそういう疑があるようには聞いておるのでありますが、確証をつかむというところまでには参らないのであります。  又私物検査等につきましても、盗難があつたという場合に、工員全部の荷物をすべて一切合切各寮長等がこれを調べる。又作業中のいない者はいないままに全部私物を引出して調べておつた。そこで盗んだ者盗まれた者すべて両成敗にやめさせられたということもあるというようなことも言われておりますが、これ又確証をつかむというまでには参りませんで、只今その方面につきましても十分調査をいたしておるような次第でありまして、いろいろな点がございますが、まだ私どもの立場としては結論的にこうだという段階までには只今参つておりませんので、成るべく早くこうした事案につきまして具体的に調査をいたすように鋭意努力いたしているような次第であります。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 大変容疑と申しますか、私どもの伝え聞いておる法務省の態度と、今のは正式でしようが、御答弁とは大分逕庭がございます。法務省或いは人権擁護局が果してどうされようとしているのか疑問を持つのでありますが、成るほど調べにくい、而もやめてしまつた過去の従業員のことについて調べにくいという点はわからないことはございません。併しながら先ほど挙げられたような或いはまだほかにもございますけれども、人権問題について問題がある、人権蹂躪の慮れがある、こういうことで或る程度の調査がなされ、そして或る程度の事実が明らかになつて来るならば、これは単なる調査だけでなしに正式に或いは告発をすると申しますか、取扱もできるわけであります。そうしましたら或いは調査についてももつと有権的になし得る面もございましようし、今のようなもう問題が起つて調査に行かれた或いは調査しておられてもう相当の時日がたつておりますのに今のような御答弁を聞きますというと、果してこれは法務省というか、人権擁護局というか、いつまで調査するつもりなのか。二年も三年も労働省ように御調査になるつもりならばこれは問題の解決には相成りません。そこでどういう見通しを持つておられるのか、或いはどうすることによつてそうした人権問題をなくしようとされるのか、それを実はまあお尋ねしたわけであります。個々に答弁せられました中でも、電報の点について或いは証人がはつきり出て来ないということは或いはあり得るかも知れません。職業安定所に調べたところが、それは間違いないので渡した云々というようお話を今な去れましたけれども、併し私どもが聞いたところと申しますか、或いは読んだところでも、現に自分が会社のその仕事をして封筒を開けておつた、開かないものについては蒸気で糊付けをしたところを解いて、そして中を見ておつた、こういう人が名前も挙げて出て来ております。そうすると信書の秘密が侵されたということはその限りにおいてはつきりいたして参る。或いは仏教の問題についてもクリスチャンであろうと……、クリスチャンの数も、今手許にありませんが、何か出ておると思うのですが、或る工場にクリスチャンが何人あつた。而もそれが実際的に仏間に入ることを強制され、そして仏教的な行事に参加せしめられた、こういう点は明らかになつておる。或いは結婚の自由を阻害したかどうかという点が明らかになつておらんと言われますが、結婚したら同居を許さないで転勤させておる、こういう事実もこれは少くとも私どもが十分じやございませんが、聞き知つたところでも明らかであります。こうして具体的に或いは仏教の強制或いは結婚の自由を事実上妨げた、或いは同居を許さないで別居をさせ、転勤をさせて行く、或いは信書の秘密を破つた、こういう点が明らかになりますならば、明らかになつたところでその責任を法的に追及するという方法なり、或いは告発をし、起訴の上で調査をいたして参るということも、これはできると思うのであります。それをやらないで荏苒ただ調査々々と言われるならば、これは二、三年かかつてうやむやにするつもりかと、こう言われてもこれは仕方がなかろうと思う。個々の事例を含んでどうされようとするのか、その辺をもう少し具体的に御答弁願いたいと思います。
  84. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 決して人権擁護局では荏苒調査に事をかりてこれを延ばしておるというようなことは全然ございません。この問題につきましては人権擁護局としても極めて重大な問題で、こういうことを申上げたいのですが、今までになく人権擁護局としても非常に力を入れて調査をいたしておるのでございます。これは新聞等においてもすでに御承知かと存じますが、人権擁護局の極めて小ちやな機構と予算にもかかわらず、かなり人権擁護局としては力をいたしておりまして、慎重に調査をいたしておるのであります。事が先ほど申上げたように曾つてないような人権を争議の目標にして起ち上つたということは、殆んどこれは今までにないことでありまするので、私のほうとしてもこれは真剣に実は進めておる問題であります。  そこで先ほど申上げましたように、私どものほうとしては一生懸命やつておりますが、具体的にこうだということの結論をつけるまでには、先ほど申上げたように同じ労働者の中に幾つにも立場が違つておるものがある。甲はこういう事実があると言いながら、乙はこういう事実はないという場合に、私のほうとしてはこれをどれをとるか、最も慎重にいろいろ問題を調べ諸般の問題を調べませんと、今の段階で直ちに結論を出すということは、如何に人権の問題で資料を持つておりましても、結論を出すということは実は困難であるということを先ほど来私は申上げておるのでありまして、決して調査に事をかりて時間を延ばそうということは考えておりませんし、只今なお各地の法務局におきまして非常に努力し、なお人の足らないところを法務局からも応援させて実は調べておるのでありますが、争議の性質又は調べる対象になるものが非常に数が多いというようなことで、なかなか私のほうとしては非常に困難であるということを申上げただけで、決して長く引張る気持はございませんで、今後も成るべく早い機会に結論を出したいということは私のほうとしても考えておる次第でございます。そこで争議中の人たちの意見もお話も勿論必要でありますが、すでにやめておられる人たちについても、もつと公平なあれが聞かれるのじやないかというので、そういう方面につきましても只今実は調査をいたしておるのであります。  そういうわけで結論がまだ出ないということは大変申訳ないと思いますが、事件の性質等から見てまだそこまで参つておりませんので、私が直ちに結論を出すということは少し軽卒じやなかろうかというので、まだ最後の意見を申上げるまでには参つておらないのでございます。これは私の率直な意見でありまして、決してこれはさつきから申上げているように徒らに日を延ばす、又これをいい加減に考えておるというようなことは決してございません。個々のいろいろの細かい点につきましても、かなり詳細に中間的なものはできておりまするが、いずれも一方的な意見だけで、両方の意見、又客観的な第三者等のいろいろものも調べたりしてそして結論を出しませんと、本当の正しい意味の調査、慎重な調査ということにはならないのじやないか、かようなことで只今慎重に而も急いで調査をいたしておる次第でございます。
  85. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちよつと関連して。非常にむずかしいのだというようなことを仰せになりましたが、全部が全部私はそういうことじやないのじやなかろうと思うのです。例えば就学の問題一つ取上げて見ても、それじや外部にどれだけの人が就学しているかいないか、そういう点ははつきりしていると思うのです。そういう点はどうですか。
  86. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 就学の点につきましても私のほう調査をいたして中間報告は受取つたのでありますが、今ここに細かい資料を手許に持つておりませんが、彦根の東高校に最初はかなり大勢の工員が就学しておつたのでありますが、その後どういう理由かはこれははつきりわかりませんが、退学、休学等をした者がかなりございます。それらの点等から想像して来ますと、或いは他の学校に就学されることを妨げられたのじやなかろうかというようなことも一応は考えられるのでございますが、なおそこでこういう問題を裏付けるためにいろいろの人たち、又いろいろの事情を調べたいというので、実は調べさしておるのでございます。  先ほど申上げたように各地に工場がたくさんあるということも又問題がいろいろたくさんあるということで、ただ一つ一つだけ調べて、その都度に私のほうで意見を出すというわけに参りませんので、これを全体の問題として、私のほうで実は考えておりまして、早い機会に各地の各工場における実態、それからいろいろたくさんの問題ございますが、成るべく基準法の関係につきましては、これは労働省の方にそれをお願いしなければならんし、又刑法に触れるような問題がありますれば、これは検察庁、取締当局のほうにお願いしなければならないし、私のほうとしては成るべく人権に関する範囲で十分に調査いたしたい。かよう考えておりまするが、問題がいろいろございまするので、私のほうじや早くこれを調査して、そして全体的として一つ結論を出したい、かよう考えておる次第でございます。
  87. 阿具根登

    ○阿具根登君 全体として結論を早く出したいと言われることはわかるのですけれども、それは先ほど吉田委員がおつしやられましたように、全体としての結論を出すためには、相当な時日を要することと、こう思うのであります。その前に個々の問題は次々にもう調査済みのものがあるはずなんです。殊に外出の問題につきましても、これは当然もうわかつていると思います。第一組合に聞かなくても、第二組合に聞いても、その中の御本人で出られなかつた人がおる、学校の問題では、私は学校に行きたいけれども行けないのだという人の率直な声があるはずなんです。自由な立場で聞ける人がおるはずなんです。それを聞いたならば、その人だけの人権がすでにもう擁護されておらないという結果が明らかになつていると思います。そういう点はどうなつておるのですか。
  88. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 私が先ほど来申上げておりますのは、例えば手紙の問題にいたしましても、これは開けられたんだ、会社側に開封されて渡されたんだ。仮にこういう問題を一つ取上げたと仮定いたしまして決して議論いたすんじやございませんが、この手紙が切られて渡されたんだと、かように一方のほうは言つておる。ところが片方、会社側のほうは切つた覚えがないという場合に、これが果して会社側によつて切られたものであるか、或いは先ほどお話がありました蒸気で開けた、或いは封書が開けられて、あと糊か御飯粒が付いておつたから、これは開けられたんだというようなこともいろいろ言われておりますが、これを私どものほうで確証付けるにはただそれだけではどうも、相反する二つのものがある場合に、これは確かに開けられたんだと言う、それだけで結論を付けるということは、私のほうの立場としては少しまだ早いのじやないか。そこで、それが間違いなく開けられたかどうかというようなことは、これは大勢そういう人が出れば又それも一つの有力なあれでございましようし、又事実私が開けたんだというようなあれが出て来ますと、これ又一つの有力なあれだと存じますが、ただ開けられたんだということだけで、これが直ちに会社側で開けたということになるかどうかというぎりぎりの線に来ますと、なお私どものほうでまだ結論は出せないと申上げただけで、いろいろの、例えば男工に女の名前で来たような手紙は開けられておる。又女工に男の名前で来た手紙が開けられておるとか、写真を取られておるとか、家庭のほうから三同手紙を出したがどうも行つていないようだというようなこともいろいろ言われております。そこで問題は非常にたくさんありますので、私どものほうでは早く全体をまとめて実はあれしたい。余りたくさんの問題がありますために、私ども非常に調査に実は困難を来たしておるのでございますが、これらのものも早くしつかりしたものを私どもつかんで、結論を早く出したい、かよう考えておるのでありますが、今暫らく時間をかりませんと、こうした具体的なものを極手と申しますか、こうだと言つて役所の立場においてこれを極付けるというわけには行かない。もう少しいろいろの事情を調べないとはつきり申上げられない、かよう考えておるのでございます。
  89. 阿具根登

    ○阿具根登君 その問題についてもう一点御質問申上げますが、私ども新聞で見た範囲内では、その信書を開ける役目におつた人が、私はかくかくして開けたんだ、開けるように命令を受けておつた、こういうことを言われておつたのを新聞で見たんですが、そういう点は追及されたことがありますか、調べられたことがありますか。
  90. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) それらの問題につきましても、多分その問題は大垣であつたかと存じますが、これは岐阜の法務局で実は調べているのでございますが、まだ報告書というものが各地からまとまつて来ておりませんので、大変こういうところでどうかと思いますが、実は私のほうで今調べております例えば法務局の職員にいたしましても、大体三名ぐらい、事務官が多いところで二名ぐらい、あと雇というようなことで、この争議の最中に大勢の人たちを調べて、そして本省のほうに報告書として送るということになかなか非常に困難があるのじやないか。私のほうも、実はお叱りを受けるかもわからないのですが、一生懸命やつているんですが、なかなか手が足りない、僅か三者ぐらいでどうして極付けるまでのあれをつかむかということに実は苦労してわりまして、できる限り私のほうとしても応援できるところは応援し、本省からも或いは又地方のほうからも借りてもやる。旅費等におきましてもこれは非常に限られておりまして、実はこういう内輪話を申上げるのはどうかと思うのですが、非常に困難をしております。できるだけ私のほうとしても、この問題は人権擁護局としては、これは非常に深い関心を持たなければならない問題でありますので、非常に慎重に、而も力を入れて、そしてできるだけ速やかに調査を申上げる。で、私のほうとしては、これが争議にどうかということは考えておりません。私のほうの結論が争議にいい影響を与えるか悪い影響を与えるかどうかということは、私のほうの考える問題ではございませんので、私のほうとしては根本の問題になつている点について、できるだけ信用のあるしつかりした結論を出したい。こういうよう考えまして実は調査をいたしております。皆様の御期待に副うようなまでにまだ行かないので、御不満もあるかと存じますが、気持としては今案は一生懸命やつておりますので、もう暫らく一つ時間をおかし願いたい。決して二年や三年とか、何年とか何ヵ月先とか、決して調査に籍口して荏苒日を過そうというようなことは毛頭考えておりませんが、私のほうの努力いたしている点も一つ御理解願いまして、暫らく一つ時間をおかし願いたい、かように思います。
  91. 阿具根登

    ○阿具根登君 人権擁護関係で非常に慎重にやつて頂いているのは、私は非常に結構だと思うのです。反対側から見れば片一方に対する又人権擁護でもありますから、これは仰せられることもよくわかるし、又非常に人手も足りなくて非常に苦労されていることも私はわかるのでありますが、それならばそれなるほどに、僅かの人間でそして確証をつかむために、例えば氷山の一角に出て来たやつをより正確に早くつかむべきだと私は思います。そのために今新聞で発表された、私は信書を見られました、又私は信書を見ましたという人がおつたなら、早くそれを取上げて、それをやるべきことが私は一番早道だ、こう思うのです。それをまだできておらん、こういうことであれば、慎重にはやつておられるけれども、余り深いところまで調べられておつて、出たところもあとでどうなるかわからんような結果になつて行く虞れもありますから、そういう証拠の出ているところを早くてきぱきと、これはどうだということを出して頂いて、それから深く進んでもらいたい、私はこう思うのです。今のままではやはり吉田委員が心配するように、当局としてはそういう心配ないようにやつておられるとは思いながら、人権擁護は特にむずかしいことだと思うのです。逆の方面からも又その点を突付かれます。その点早く私はそういう問題を解決してもらいたい、かように思います。
  92. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 上條委員長から発言を求められておりますので、これを許します。
  93. 上條愛一

    委員外議員(上條愛一君) 委員外の質問をお許しを願いたいと思います。私は主として厚生関係のことを申上げたいと思うのでありまするが、先ほど来小坂労働大臣の御答弁の中で、私腑に落ちない点がありまするので一点だけ御質問を許して頂きたい。  それは今回の問題は、大臣もおつしやつているように、労働条件の維持改善の問題でなく、憲法が保障されているかどうかという人権擁護の問題と、それから労働基準法が適正に守られておらないという点、いま一つは御用組合であつて、自主的の労働組合がなかつた、団結権の問題であります。そこで議会として、我々国会の議員の一人として重要に考えたい問題は、我々が国会において作られたるところの法律が適正に行わておらないというところから今回の争議が起つておるという点であります。そこで同僚議員から、この点について小坂労働大臣は責任を感じないのかという質問があつたわけであります。ところが労働基準局長は、これらの点については調べたけれども、事実が挙がらないから困難であつた、こういうお答えでありました。そこで私も事案を似て申上げたいのでありますが、例えば寄宿舎において、労働基準法によりますれば、一人は一・五の畳の広さを要する、こういうことであります。ところが事実において十二人きり収容できない部屋に十五人を収容しておるという投書があつて、訴えがあつてそれを基準局で取調べに行つております。そうすると、会社は部屋の前に十二人きり草履を置くことを許さないのであります。それで基準局が来たらば十二人でございます、こう言え、あとは知りませんと言え、こういう命令を下しておるのであります。そこで基準監督官は、一応形式的の調べによつてこれを終つておる。ところがこれはもう少し熱意を持つて調べられれば明らかに事実はわかる。何故ならば、寄宿舎の畳数というものははつきりしておる、それから人数は幾人収容しておるかという問題は、配給米その他を調査をすればこれは明らかになるのであります。そこでその収容しておる人数と畳数とをお調べになれば、これは明らかに基準法違反であるかどうかということは簡単にわかるわけであります。それからいま一つ私がずつと廻つて参りましたうちの二、三の点を申上げれば、中津川工場のごときは、寄宿舎の部屋へ入つて見ると、布団を畳んで部屋の隅にみな置いてある。これはどうしたかと言うて質問するというと、布団をしまうところの押入がないというわけであります。かくのごときはこれは明らかに見てわかる基準法の違反である。それから又寄宿舎のすぐ脇の二階の廊下の所に原綿を積んであるのであります。このようなことは明らかに基準法の違反であつて、これは現在も行つて頂けばすぐわかるのでありますが、こういう事実が存在しておる。それから又顔を洗う場合に、顔を洗う人数に応じてその水口がこれは幾つあつたら間に合うかというようなことは、これはわかるはずであります。ところが中津川などへ行つて見ると、洗顔用の水口が少いために、規定の時間に起きたのでは出勤に間に合わないと言うのです。これは二時でも三時でも、便所に行つたときに顔を洗つて又寝ておる、こういうような実情であります。それから又長浜工場のごときも、これも行つて御覧になればすぐわかります。洗面所と洗濯所とが同じであります。その脇にすぐ食器洗場というものをちやんと明示して洗場ができておるという、こういう実情であります。こういう例を挙げろと言えば私は幾らでも挙げますが、かくのごとき、明らかに調べなくても行つて見ればわかる。  こういう基準法の違反というものを今日そのままに放置されてあるということは、これは一つは今日の争議の原因をなしておると言わなければならない。我々は先般内閣委員会において、基準監督官を減らそうという行政整理の問題が起つたときに、我々としては、今日なお基準法が中小工場において適用されておらないという事実があるので、基準監督官というものは現在よりも殖やすべきであつて、減らすというようなことでは、折角我々が議会において作つたこの基準法というものが死文化してしまうのじやないかという質問をしたときに、労働省の当局は、いや、それは数の問題じやなくて質の問題だという御答弁をなさつておつたのであります。今日このよう情勢に放置せられておるということは、国民はもはや、殊に労働階級は、法治国として法律があつてもこれを信頼できないということなんであります。この甚だしいものが近江絹糸であると言わなければなりません。私どもは現在中小企業においてこのような状態に放置されている幾多の実例を知つております。併しこれは中小企業として非常に経済的に逼迫しているという事実もありましようから、これは別といたしまして、近江絹糸のごときは、御承知の通り戦後これは非常な利益を挙げて発展したところの、一万二千以上の従業員を持つておるところの会社であります。このような会社が、このような福利施設ができないという実情ではないのであります。それを今日労働省所管においてこの法律が適正に行われておらんということが、これが今回の争議の原因であります。この点について労働大臣は、今日までの処置について責任を感じないとおつしやるならば、これは非常な、我々この問題がどのように一時解決がつきましても、政府がこのように議会において作られたる法律が適正に行われないところの事実があつても、これを責任を感じないというようなことであれば、これは将来において由々しい問題でなければならないと、こういうふうに私は考えるのであります。  いま一つ、今回の争議が起りましてからの一つの問題として、私はこれは労働大臣に報告して、指示を仰いでもらいたいということを申上げた問題でありまするから、労働大臣も御承知だとは思いますが、今回の争議において寄宿舎を追い、それから食堂を閉鎖して給食を支給しないという問題が起りました。これは単に合繊に入つてストライキに参加したという理由によつてこのような処置がとられておるわけであります。私が申上げるまでもなく、ストライキをやつて全繊に入つたということであつて、雇用契約は継続されておるのであります。従つて居住権を奪い、而して給食を断つてその生活を脅かすという問題は、これは人道上の問題のみならず、私のここに特に労働大臣に申上げたい問題は、これは明らかに労働基準法の違反であると言わなければならないのであります。幸いにして富士宮においても津においても、そのように寄宿舎を出て新らしい組合に参加された諸君が、寄宿舎を追われ、そうして食事を断たれましたけれども、これはまあ全繊同盟が幸いにしてこれに居住を与え、食物を給したからよろしいようなものの、これはどういたしますか、十七、八歳の小さい子供らがこのような処置にされてどうするかという問題は重大な問題だと私は思う。  そこで私は事実を申上げますると、私が参りましたときに、中津川工場においてすでに貼出しが出まして、今後は食堂を閉鎖する、銘々材料をやるから各自煮て食え、こういうことでありました。大垣工場に参りましたときにも同様な掲示が出されました。それは朝のことであります。昼の食事までは供給するが、夜の食事からはそうせよということでありました。その前日にも同様なことが貼出されて、これは千八百名の全繊の組合員が夕方食堂に参りまして、我々は食事を供給してもらいたいということで頑張りましたので、漸くにして夜の十時から午前二時の間に夕飯が給供されたという事実であります。そこで岐阜の基準局長にお目にかかりまして、午後二時であります。それでこういう問題が起つた、これは明らかに私は労働基準法の違反だと思う。何故ならば、事業附属寄宿舎規定によれば第二十四条において、三十人以上を寄宿舎にとめておく場合においては食堂を設置すべしと、こう書いてある。そうして二十五条において、その食堂にはこれこれの設備をしなければならないという衛生、通風、その他の事項十七項目を掲げてあるわけであります。そこでこれを裏から見れば、寄宿舎の食事というものは食堂を通じてやらなければならないと、こういうことであります。そこでお前たちに対しては食堂は閉鎖するけれども材料はやるから煮て食えと、こういうことであります。併し材料が揃つておるかというと、焜炉も私が参りましたときに続々外から持ち運んで来るという現状であります。而も夜からは食事を出さないと、こういうことでありますから、基準局長に会いまして、直ちに労働大臣の指示を仰いでもらいたい。こういうような不当なことをやつておるのに労働大臣が放任するというのであれば、我々は法治国とは認めない。これを報告したあとに、こういうことを付け足しております。私が、若し労働大臣がこのような不当な処置に対して黙認しておるということならば、これは止むを得ないから、我々千八百名の組合員を見殺しにできないのであるから、食堂を管理して組合で食堂を通じて食事を供給するからそういうことを承知してもらいたいということを、報告のあとに付け足してもらいたいということを私は申上げました。併し労働大臣の指示を仰いでいると時間がかかる、併し事は今夜の問題である。そこで基準局長基準法の適正なる実施をすることはあなたたちの責任であるから、この大垣工場の今夜からの食事についてはあなた方の権限において会社に指示してもらいたいということを私は依頼いたしました。それで基準局長は工場長に向つて食事は従来通り供給すべしという申入れをいたしたようであります。ところが工場長はこれを蹴りましたので、私どもは止むを得ず八時に食堂を管理いたして食事の用意をし出しました。そうすると会社が折れましてそれでは従来通り暫時暫定的に供給しようと、こういうことでありまして、工場長が今留守だから工場長の帰るまでということでありました。翌々日工場長が帰りまして、依然として従来通り食堂を閉鎖する、銘々勝手に食えと、作つて食えと、材料だけはやると、こういうことでありましたので、止むを得ず中津川においても、大垣工場においても組合が管理いたしまして食堂を通じて食事を供給したという事実であります。  そこで私が申上げたいのは、会社は成るほど食料を絶つたのではない。給食を絶つたのではない。それは材料をやるから、食堂は閉鎖するけれども材料はやるからお前たち銘々が食事を作つて食えと、こういう言い逃れであります。ところが御承知の通り寄宿舎というものは食事を作る設備はありません。洗面所とそうして洗濯所以外には水を供給する場所はないのであります。それから又焜炉で、石油焜炉或いは普通の炭の焜炉で煮炊きをして食えと、こういうのであります。このようなことを千八百名、大垣のところは二千数百名おる従業員おのおの寄宿舎において焜炉を使つて食事を作るというようなことになれば、これは火事の憂いが十分ある。私はこの点については警察署長にもお目にかかつて、このようなことは、あなた保安上責任を持てますかということを警察署長にも申上げました。併しこういうことの報告は、これは労働大臣の手許に行つて指示を仰いでおると思いまするし、又指示がなくても、このようなことは御調査の結果おわかりになつておると思うのでありまするが、このような問題に対して、労働大臣の先ほどからの御答弁を聞いておりまするというと、争議最中であるから、いろいろな点については処置を控えておる。そうしてこの争議が早く解決することに全力を注ぐべきであると考えておる、こういうお話でありましたが、私はこのような労働基準法の違反が行われておるのに対して、争議中といえども労働大臣は適切なる処置をとるということが、この争議をやはり早く適正に解決する途であるというふうに私は考えておるのでありますが、果して労働大臣はこのような問題に対して報告を受けられたかどうか、報告を受られたのに対してどのような処置を指示せられたかどうかということを先ず第一に一点お伺いいたしたいと思います。
  94. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 種々の御質問でございますが、私先ほどから申上げておりまするように、基準関係の監督につきましては、彦根工場九十二回を初め、中津川、大垣関係三十数回、各工場とも監査をいたしまして、違反につきましては基準法第四十二条、四十三条関係或いは九十六条関係、三十二条関係或いは三十七条関係、三十五条、六十条、六十一条関係、六十二条、三十四条関係につきまして指示をいたしております。違反の発見の都度この是正に努めて参つている次第でございますが、なお富士宮工場におきましては十分是正が行われていない、こう認めまして、その後も厳に警告をいたしておつたわけであります。又事件の性質によりましては司法事件として起訴しているものもありますことは先ほども御報告申上げた通りであります。  私は、こうした監督を一方においていたしながら、根本の問題といたしましては、やはりその経営者が自覚をしてもらうことが一番必要である。如何に外部の監督がありましても、先ず馬に水を飲む気持にならせないと、川の辺までは連れて参りますが、その目的は達することができないのですから、とにかくそうした自覚を持つて本当に労働者諸君を愛して、近代的な大工場の労務管理というものはこういうものだということを経営者自身に納得してもらうということに私は重点をおいて、今後の争議においても指導し、従来もそのつもりでおりましたが、今後の争議においては特にその点に重点をおいて、早期の争議解決を図つている次第でございます。  只今の御指摘の給食の問題につきましては、報告のありました都度即時指示をいたしております。御承知のことと存じますが、工場を巡視いたしております夏川という社長は、七月一日からはいたすということに、その当時合繊側も入れて話をまとめておりますことは御承知の通りであります。ただこの争議が非常に当初以来感情がからまつておりまして、その争議の過程におきましても更に感情があやなしているということで、こういうことではいけませんから、早期に感情を水に流して、解決に全力を双方において努力する。そういう方向をとりますることが先ず第一ではなかろうかと私は思つております。まあ争議期間中であろうと争議解決後であろうと、違反は違反でありますから、これは遠慮なく剔出いたすことは勿論でありますが、殊更にどちらかに政府が味方をしたような強い印象を与えては、解決をいたしましても、そのしこりはあと残つて参りますから、現在の企業の性格上、やはり企業が健全に運営されて行かなければその保障はなかなかないのでありますから、これは企業者の企業努力、組合員諸君の企業に対する愛情、そうしたものがよつて以て高揚されたところに企業の発展があると私は考えますので、早くそうした環境を打立てませんと、これは法律の違反を剔抉した、併し会社はつぶれた、そうして組合員の一万三千人が不幸な事態になるというようなことではこれは終局の目的は達せられないと思いますので、そうした方向で事件の解決をしたいと思つて努力しておりますが、私は勿論政府という中立な立場でございますので、何かこの野党の方の御意思に副わんようなことを考えるということも毛頭ないのでございますし、さりとて野党の方のおつしやるままに全部を進めて行くという立場もとりませんので、この間政府というもののあり方については十分慎重な態度を以て臨みたいと、こう思つております。飽くまでも法を護り、法を施行する者としての立場はこれを厳として貫きたい、こう思つております。
  95. 上條愛一

    委員外議員(上條愛一君) 労働大臣お話で、無論この労使関係というものは労使の協力、理解によつて産業が健全に発達することを私どもは期待いたします。従つて大臣のおつしやるように経営者も啓蒙し、新らしい民主的の運営に目覚めて行くということに対しては異議ありません。又本当に自主的の労働組合が存在いたしておりますれば、やはりこのような人権擁護、労働基準法の違反、このような状態に放置されては来なかつたと思いまするので、我々は決して政府の力によつて労働者の権利が護られることのみを希求いたしておりません。併しながら今回の少くとも近江絹糸の問題については、これは明らかに国会において作られたる日本の法律が適正に行われておらないところが、万人が見てそのような再実から起つておる問題であつて、このようなものを放置して来たということは、これは何と言つて政府当局の責任であるということは御痛感願わなければならないと考えるわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)ところが先ほど労働大臣お話を聞いておるというと、その点については一つも明確なる御意見がなかつたから私は今改めてこの問題を申上げたのであります。十分責任を以て法律を公正に今後実施せられるという御決意でありまするならば、私はもうそれでこれ以上申上げたいとは考えません。  それから甚だ申訳ありませんが、もう一点だけ私の厚生委員としての所管でありまする点について厚生当局に御質問いたすことをお許し願いたいと思います。それは中津川工場でも長浜工場でもそうでありますが、健康保険組合がありまするが、この健康保険が適正に実施されておらないという事実であります。一、二の例を申上げますれば、中津川工場のごときは約九百名の従業員を有しておるのでありまするが、一人の医者がおるわけであります。ところがこのお医者さんは腹が痛いと言えば誰にでも同じ薬を盛つておる。それから甚だしいものには服の上から聴診器を当ててみるというような状態である。(笑声)そこで保険医を信頼できない、会社の医者は信頼できないというので、他の町医者にかかりたいと思いまして行くというと、健康保険証は銘々に渡しておらず、会社が保管しておつてなかなか渡してくれない。それで非常な重病人になりますと証明書をくれまして、その会社の証明書によつて、医者の証明書によつて町医者にかかり得る、こういうよう事情であるわけであります。これが争議が起りまして組合の要求によりまして、六月二十九日からは健康保険証を銘々に渡しておるようでありまするが、そういう実情であります。  それから長浜工場のごときは四百名の従業員を持つておりまするが、これは病室も何もありません。で寄宿舎規程によりますると五十名以上寄宿させる場合には病室を作らなければならないとありまするが、病室もない。そこで医者もおらない、病気になると嘱託医と称して外から嘱託医を雇つて参りまして、そこで漸く病気を見てもらう、こういう実情であります。従つて私が参りましたときに、今月の三日でありますが、三日に行つてみまするというと二週間前に検便によつて十五名の保菌者が出ております。これも彦根工場の土屋という会社の医者が参りまして検便をして、十五人の保菌者が出ております。ところがこの保菌者には同じ寄宿舎に寝起きさせて、そうして便所の消毒もいたしておりませんし、食器の消毒もいたしておりません。それで組合が問題にいたしましたならば、私が参りました三日の午後の十時半です、初めて消毒器を車に積んで参りまして、便所の消毒をこれからやろう、こういうことでありました。ところが夜遅くでありますから、二、三人の者が、あんな大きな器械を持つて来ましても動きが取れんから翌日に廻しまして、組合員が手伝うから翌日便所の消毒をやつてもらいたい、こういうことでありました。食器のごときも二、三日前に漸く消毒を実施しているという現状であります。それで保健所長に、日曜でありましたが、保健所を訪れましてお会いしました。それから市長にもお目にかかりました。このような保菌者が出たのに届出が出ているかということを申上げたところが、いや、何らの届出も連絡もない、こういう話でありました。保健所の人の話によりますと、或る医者が、長浜工場に保菌者が出ているということを知らしてくれて、あれは放置したのでいけませんという話であつたから、自分から出かけて行つて、そうして検便を要請したけれども、いや、彦根工場の医者に再検便をさせるつもりであるからということで拒否された。僅かに十五名の従来の保菌者だけを強いて検便をさせてもらつて十三名だけ検便をした。その結果は菌が薬によつてなくなつておりました、こういう話でありました。組合の要請によりまして、併し非常に不安だというので、二日の午後に彦根の最初の医者によつて全員の検便をいたしました。それで四日の私の手許の報告によりますと、四日に漸くこの検便の結果がわかつて、二十六名の保菌者を出した。前の者はその中に入つている、こういう報告であります。  そこで私の厚生当局に申上げたい問題は、果してこういう健康保険が適正に実施されているかどうかということについてこのような大会社の実情を調査されているか。で、調査されているならば、調査した結果明らかに違反と認められる点についてはどのような会社に向つて処置を命ぜられているかどうかという問題であります。特に私がこの点を強調いたしたい問題は、夏川社長は厚生施設については殆んど意を用いておらない、経済的な余裕があるにかかわらず用いておらない。機械とかその他何でもすぐ生産に役立つものについては相当な金をかけているようであります。厚生施設については全くこれは封建時代、ちよんまげ時代の考えで、人間というものはいつでも替えられる。これは御承知の通り一カ年契約で、臨時工ではありません。常用工を一カ年契約で雇うております。そうして一カ年の後にその他の組合と連絡をとるとか、会社に不満を平素表明したというような、或いは技術が不良だというような者については一カ年後に皆国へ帰して、そうしていい者だけを残している。そうしてあとから又雇うて一カ年契約で行く、こういうことでありまして、従つてその寄宿舎の施設であるとか、健康保険の問題であるとかいうようなことについては殆んど無関心である状態であります。それで中津川工場なんかに聞いて見ましても、医者は病名も言わずに、重つて来るというと国へ帰してしまう、こういう実情であるということを多くの組合員が申しております。こういう点について現在まで厚生省は健康保険について適正に行われているかどうかということについての監督をどのようにされているか、そうして又そういうことがわかつた場合にどのよう措置をとられたかどうかということを承わつておきます。
  96. 久下勝次

    説明員(久下勝次君) 私からお答えを申上げます。  近江絹糸関係事業所に健康保険組合が設立されておりまして、本年四月現在におきまして被保険者総数は男女併せて一万二千八百四十四人でございます。なおこれは直接の近江絹糸の事務所及び工場のみでなくて、傍系の会社が二社ほど同じ組合に加盟をいたしておるわけでございます。只今御指摘になりました医師の診療態度の問題でございますが、これは率直に申上げまして、医師の診療の態度につきましては、医師法の定めるところによりまして法律上の処置が行われるのでございまして、そういう意味合いにおきましては保険局としての私どもの立場ではございませんけれども、なお建前といたしましては、患者に対する医師の診療態度というものは原則的には医師の良識に任すという建前になつておるのでございます。これが刑法上の不正な診療、不正行為に該当いたしますような場合にいろいろ問題になり或いは又医師の品位を害するというような程度になりますれば、行政上の措置もそれぞれの関係法律によつて行われるのでございます。従いまして保険の立場から申しますると、医師の診療態度そのものを問題には余りいたしておりません。ただ診療を行いました結果、只今御指摘のようなことで被保険者からいろいろ不平不満がございますれば、私どもの立場からも当該医師に対して、保険医でございますので、注意をするというような程度に過ぎないと思うのであります。  この組合につきましては設立の認可をいたしましたのが大正十五年、相当歴史の古い健康保険組合でございます。私のほうは法律に基きまして常に毎年報告をとり、予算の認可、規約の改正の認可等もその都度いたしておるわけでございます。なお業務の実施の状況につきましては、中央と地方とそれぞれ手分けをいたしまして、随時関係事業所の監査をいたしておるわけでございます。最近の監査の実情を申上げますると、昨年の秋大阪府におきまして大阪のこの会社の本部を監査をいたしております。それから同じく昨年の九月に岐阜県では中津川の支部を監査をいたしておりまするし、本年に入りまして二月に滋賀県彦根支部と長浜支部とを監査をいたしておるのであります。  業務の実施の概況は、この会社は一般紡績工場平均に比較いたしますると非常に標準報酬が低いということが特徴でございます。例を挙げて申上げますると、男子被保険者の平均標準報酬は紡績工場全体の平均が一万五千一百三十四円でございますが、この会社は六千二百四十二円、非常に極端に低い標準報酬になつております。女子一般の紡績工場の平均は六千九百八十四円になりまするが、この会社は五千二百五十五円というふうに低い率になつております。それから保険料率も千分の六十以内で適宜にきめるようになつておるのでございますが、現在千分の四十六でやつておるわけでございます。即ち事業主と被保険者が折半いたして千分の二十三ずつ負担することになつておりまして、この保険料率につきましても、紡績工場平均に比較いたしますとよほど低く相成つております。業務の実施の状況はそういう関係で料率が非常に低いために、監査の都度関係の県から報告をとつておりまするが、いずれも保険財政が心配であるということで、もつと料率を引上げるような警告をその都度関係事業所にいたしておるような次第でございます。ただこういう低い料率で事業が経営されておりまするのは、私どものこれは想像でございまするけれども、この会社の従業員が比較的若い者が多いということでございますが、只今御指摘のような点もあるのだと思いますが、被扶養者が非常に一般より低いのでございます。大体一般紡績工業では被扶養者が被保険者一人当り〇・六人でございますが、この会社は〇・五人でございます。こういうふうに一般よりも被扶養者が低いという点で割合に低い料率でもどうやらやつて行けるのではないかと思いますが、監査の結果は、財政も不安でございますので、料率の引上げを指示をいたしておるようなわけでございます。  なおこの工場で先ほど御指摘のございました外部の保険医の受診をすることを妨げるような行為があるやに今お話でございましたが、これは正当な行為とは考えておりません。若しもそういう事実がございますれば、私どもとしても警告をいたしたいと思つております。  この会社は彦根と大垣にそれぞれ比較的小規模の病院を持つておりまして、富士宮と津の工場にそれぞれ医師一人の診療所を持つております。他の工場には直営の医療施設は持つておりません。全体として私ども調査をいたしましたところでは、一般の外部の保険医にこの健康保険から支払をいたしております額を十五といたしますと、直営の今申上げたような四カ所の病院及び診療所に支払をいたしております金額が十になつておりまして、外部の保険医に支払をいたしております額は直営医療施設に払つております金額の十に対して十五というふうに高額になつておりまするので、相当巾広く外部の受診もしておるのに違いないと思うのであります。ただ直営の医療施設を持つておりまするところと持つておりませんところとがございまするから、その辺は個々についてもう少し検討を要するかと思いますが、私どものほうの調査の資料といたしましては、各事業所別の収支の関係只今わかつておりません。その辺はなお御注意もございましたので関係府県に調査をいたさせるつもりでございまするが、結論的に申上げますると、先ほど私が申上げました通り、保険料率が他に比較して非常に低いために健康保険組合の財政状況は必ずしも安定をしていないというのが各地方における監査の結果でございます。  その他の点につきましては、特別に監査をいたしましても指摘をするようなところはないのでございまするが、なお今後この種の問題につきましては、御指摘の点はもとよりでございまするが、もう少し一般的にも十分注意をして参りたいと思つております。
  97. 上條愛一

    委員外議員(上條愛一君) 時間がありますので私は簡単に申上げますが、医者の態度とか何とかということはただ附属的に申上げたのであつて、健康保険証を自由に従業員に使用させないというような点、それから病室のないというような点、それから中津川のごときは病室はありまするけれども附近に便所も何もないというような点、そういう施設及び健康保険組合の運営について厳格に、公正に監督をしてもらいたい。  なお私はいろいろ申上げたいけれども、行つて御覧になればわかりますが、如何に近江絹糸の医療施設といものが貧弱であり、従業員の健康という問題について意を払つていないかということがおわかりだと思います。そういう点についてもう少し厚生省は公正に監督を願いたい。一度厚生当局は中央からも視察をしてみて頂きたい。如何にこれが不合理であるかということがおわかりだと思います。  私は委員外でありまするので、以上を以ちまして終ることにいたします。
  98. 田村文吉

    田村文吉君 只今私の尊敬する上條先生から実際に御覧になつ状況について近江絹糸実態を御報告を頂いて大いに啓発されるところが多かつたのでありますが、たまたま今日正午前に、吉田先生から自由労働者福岡における非常に悲惨な、つまり子供が親父の腿の中に抱かれて寝なければ寒を凌げないというような悲惨な、又蚊帳一つで生活しておるような非常に悲惨な、月に六千円の収入があるかないかというような悲惨な問題が一方において今日は御披露になりまして、私はこの二つが非常に現在の世相を物語つている大きな問題だと考えておりますけれども、第一には一日も早くそういうような不幸な人をなくするように、政治がもつと豊富に行われることを私はお願いいたしたいのでありまするが、今の近江絹糸の問題につきましては、私も実は近江絹糸というものを知りませんし、いわんや夏川社長という人は全然未知の方でございますから、どういう信念を持つておられるか等は、ただ新聞によつてその業績を拝見しているだけで、詳しいことは今お話を伺つたのでかなりわかつたつもりではおるのでございまするが、ただ私の感じますることは、いわゆる今度の争議の突発しましたことは全繊組合から何か火をつけたような恰好に見える。そういうようなことからこの争議が突発して参りましたのですけれども、併しこれに至るまでには前年、約三年くらい前から赤松先生から近江絹糸についてのお話もあり、調査等のお話もあつたのでありまするから、全然わからなかつたわけではないのですが、今度は主として内部の問題よりは外部からの働きかけでかよう状況に相成つて参つたようでありまするが、無論私ども新聞で拝見しておりますところでは、夏川社長という人は相当な頑固な方で、随分横紙破りの方であるように拝見できるのであります。でありますから、いわゆる全繊からも最も狙われる方であり、又新聞等にもいろいろ世論からの攻撃を受け、又基準局等からもかなりきついお灸をすえられつつあるように思われます。又同業者のいわゆる十大製糸というものに対しても、新しい紡績会社として出発いたしまして、今日の地位を得たという関係上からもかなり白い眼で見られているということについては、私は間違いない事実であろうと考えておるのでありますが、かようなことでありまするが故に、この問題の解決に対して労働省が、先刻大臣の私は御答弁で了承いたしたのでありまするが、かるが故にというので、余りにこういうことについてただ組合側の主張を通さんがためにすべてをその線で解決をなさるということは、即ち近江絹糸だけの問題でなくて、この次に来たる第二、第三、第四、第五の中小企業というものはたくさんある。この企業というものが若し政府のこの際の方針を誤られまするというと、非常に危険な状況にある。さつきお話のあつた五千円、六千円の収入も得られなくて親子飢えに悩んでいるよう状況下に、今日日本の至る所に見られている状況下にありますのに、若しこういうことのために中小企業というものが第二、第三、第四として槍玉に挙げられて行くということになりますると、私は日本の経済のために非常に寒心すべき状態に立ち至るのではないかということをひそかに恐れている次第なのであります。  そこで私は今度の新聞に現われた問題の中で一、二これは近江絹糸側のほうからとして言いたいことだろうと考えておりますことでお聞きしてみたいのでありまするが、一体第一組合というものは現在どのくらいの人数を擁しているのか、第一組合のあり方というものは不当な組合であるのかどうか、これを先ず第一にお質しをいたしてみたい。  次に大阪の組合本部において新聞の写真に見えたのでありまするが、食糧を内部に持込むということにつきまして非常に苦労をして、而も新聞では面白おかしく栄養価値のあるものは運んではならないということで何か食糧を籠に入れて釣上げてやつたということが新聞の写真に見えているのであります。私はむしろ観点を変えまして、こういうような点について果して警察がそのままそういうことは見過ごしておいていいのか。当然に運ばるべき食糧をこれを警備のために食糧を運び込めないということであつてよろしいのか。この間最終の工場視察の日におきまして労働省のお方も御一緒においでになつたそうでありますが、その日において暴行事件が起きた、こういうようなことについてはやはり私は現われた法を犯した者に対しては厳正なる法律を以て取締るべきでありまして、それをたまたま近江絹糸のやり方自体が世間の世論の歓迎を受けておらんということで法律を曲げられたのでは私は困る。こういうことをひそかに心配いたしますのでありますので、こういう点について私は労働大臣がしつかりとした信念の下にこの問題に処して行つて頂きたい。無論私はこれが契機になりまして、だんだん下から這い上つて行かれた近江絹糸というものがいわゆる工員の待遇がよくなり、又理想的な工場になられることを心から念願いたすものでありますが、こういうことをむやみに押え付けられるために、そういうことのために近江絹糸だけでない、近江絹糸が若し倒れるということになれば一万三千の従業員が職を失わなければならんのでありまして、食うや食わずに今日いるという世の中に対して、このこと自体でも非常に大きな問題である。いわんやそれに続いて労働基準局の取締等が厳重に監督をされるということは、今日の日本の立つている状態から考えて非常に寒心に堪えない感じがするのであります。こういう点につきまして無論大臣にはそういう点についての御所信もあることとは思いまするが、余りに世論の反抗が大きいために、正しいものを正しいと行われないようなことがあつては困る、そういうふうに考えますので、お考えを伺つておきます。
  99. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 近江絹糸の問題につきまして種々の角度から私ども政府としては考えて行かなければならんと存じております。仰せのように夏川社長の考え方がややエクセントリックなものがありまして、それが殊更に輿論の指弾を受けているところでありますが、この点につきましては、私どもも大会社となつております近江絹糸の経営者としての考え方というものは、こういうものであつたらよいのではないかというよう考え方も当然世間の一般の常識としてあるはずだと思うのでありますが、これをその役所の立場から言うということについては問題がある、こう考えまして、実は先般来この争議に対して政府としてもこれほど社会的な問題となつた以上、傍観するということはいかんけれども、さりとて何かを言うのは如何かと思いまして、特に事業経営者という立場から夏川社長に対して友人としての立場から忠告する、こういう考え方で斡旋をしてもらいたいというので三人の方にお願いしたわけでありまして、私の真意もその点にあるのでございます。  今御指摘のような第一組合というのと第二組合というのがどのくらいあるかということでございますが、これはなかなか双方の発表がございまして、これを役所としてどちらの発表が正しいということは、これは組合員自身、平静の立場に戻つたときに組合員自身が決定すべきものであろうと考えております。私は特に数において数をどうこうということはこの際は申上げないほうがよろしかろうと思いますが、大体においてどちらが圧倒的に多いということではないようでございます。そこで夏川という方にまあ三人の方を通して言つて頂きましたことは、組合活動というものは組合員自身において決定すべきもので、これを会社の社長がこの組合活動がいいとか悪いとか殊更に言うことは、今の法の建前上ないのであつて、これは組合員自身の自由な活動を認めて上げるということは当然のことだと、そういうことを前提としてお考え下さるように申しておりますのであります。まあ世論が夏川という方が非常に矯激な言葉を発せられますのについて非常に反撥をいたしておりますことは事実でございますが、そういう点につきましては御反省を頂きたいと考えております。  只今お話ような大阪の本社において警備が張られておつて、軍役も出入りができない、食事にも出入りができない、こういうような状態は明らかにピケの合法性の限界を超えておると思います。ピケ・ラインの合法性の限界というものは飽くまで平和的な説得の範囲内に限られるものでありまして労働争議を有効ならしめるために行われることでございます。これは従つて組合員以外の者に私は適用されるものではないと、こう考えます。従つて暴行に亙るピケ、或いは組合員以外の者に対するピケというものについては、これはそういう点については組合側において反省をせられるように今申上げておるのでございまするが、先ほどもお叱りがございます争議中であるというので非常に手を拱いて、殊更に組合員の肩を持たぬのはけしからんという仰せでございましたが、暴行事件について政治的に、暴行は悪いのでございますからやれという御意見もございますが、又そういうふうに場合によつてはやらなければならんかと思いますが、これも争議中でございましたので、激情のはてにほとばしり出た細かいことまでも一々取上げて司直が介入して行くということはこれ又干渉になりますので差控えようと思つてこの点も差控えているのでございます。併し余りこういうことが重なりますれば、そういう点については調整せなければならんと思つております。夏川という社長が各工場を見廻られまして、いよいよ大筋に乗るというその瞬間に岸和田の工場で以て出て来てから暴行を受けて傷害を受けられた、これは誠に遺憾でございまして、こうした暴行事件の真相につきましては鋭意調査をいたすように命じております。調査の結果によりまして又御報告する機会があると存じます。  私は先ほど申上げましたように、この問題につきましてはそのどちらの組合がいいとか悪いとかそういうようなことは、これは組合員自身の気持で決せられるべきものであつて政府はそれに介入すべきものではない。ただ政府としてはできる限り早期に争議を解決し、そして会社が円満に繁栄するようにこれは経営者のためにも組合員各位のためにもできるだけの努力をして、事態を円満に軌道に乗せて上げたいということを考えているのでございます。さような気持でおりまして、この問題について殊更に声の大きいほうに味方をするというよう考え方は毛頭ございません。そういう点が多小でも見えましたら又皆様の御叱正を頂くとして、中正なる立場においてこの争議の解決に努力いたしたいと思います。
  100. 田村文吉

    田村文吉君 そこで今お三人の仲裁の方がお入りになつて、そしてお話をなさるのを新聞では団交と言つておるのですね。団交ということになりますると、その組合はただ一つの組合であつて団交するならわかるのですが、第二組合の方とやるのか、或いは全繊の方との中に入つてお取持ちをなさるという意味のものと解釈してお進めになつているのか。それが私は新聞では団交という言葉がよく使われている。或いは三者のお入りになつた用語にも団交という文字が使われているかも知れませんが、一体団交するなら第二組合と団交するのか、第一組合と団交するのか、これが私たちにはわからない。問題は結局全繊と近江絹糸のいろいろの長い間の問題がこじれて来た。私はあれだと考えているが、これも間違つているか知れません。知れませんが、そこでそういうものの斡旋、仲裁をするという意味で三人がお入りになつているのか。いわゆる団体交渉を開くという意味でなさるのか、これはあなたがそこまでのことはわからんとおつしやればそれはそれでよろしいのですが、どういう御意図でおやりになつているのでございますか。
  101. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 三人の方には、団交ができまするよう一つ御斡旋願いたい、こういう趣旨でございますのであります。会社側が団交と申しておりますが、種々の都合でそれがなかなか軌道に乗りませんので、団交をいたしてもらいますよう一つ努力をしてもらいたい、こういう説得でございます。そしてこの問題の発端が第二組合員からの要求でございますので、差当り問題になつておる組合と団交してもらいたい、そして他にも組合がございますので、その組合ともその団交も無論されることと思いますので、私は差当りの問題はその第二組合に対して団交をしてもらいたい、こういうことでございます。
  102. 田畑金光

    田畑金光君 今の労働大臣の御説明の中で若干なお伺いたいと思う点を二、三お尋ねしておきたいと思うのですが、今御答弁なさいましたこの三者の方が調停に立たれたわけですが、これはもう一度念のためにお伺いいたしますけれども、飽くまでも団体交渉の糸口を見出すまでの、或いは団体交渉を両者が円満に行えるような素地を作るまでの斡旋にとどまるのかどうか、この点であります。  まあ通例の労働争議の場合から申しますならば、当然労働委員会等が争議解決の第一段階としては団体交渉等の持てるように斡旋をするわけでありまするが、深刻な勿論争議の場合の例であります。団体交渉を持てるように斡旋するのが労働委員会等の第一段階の役割なのでありますが、今回の場合は労働委員会というものが抜きになりまして、労働大臣の胆入りで依頼された財界の三者が立てられたわけでございます。これは飽くまでも交渉が持てるまでの調停であるのかどうか、これが第一点であります。  第二点は、労使が当然に団体交渉を持つということになつて参りますると、当然に労働争議の内容について具体的に折衝になると思うわけであります。初めて具体的な要求を掲げて両者の話合いが進行するわけでありまするが、これが円満にまとまれば非常に好都合でありますけれども、若しこれがまとまらない、或いは又交渉が決裂するという、こういう場合が予測されるわけであります。こういうような場合に対しまして労働大臣といたしましては、そのように具体的な紛争議が起きた場合に、交渉が決裂したような場合に斡旋する機関というものはどういうものを予測、予想しておられるのか、今こういうような事態に対してどう処せられようというお考えであるのか、この点も併せて伺つておきたいと思います。  それから第三に私のお尋ねしたいことは、労働大臣の先ほどの田村先生に対する御答弁の中に、第一組合或いは第二組合については飽くまでも中正公平な立場でやつて行きたい。又現在第一組合所属員数と第二組合の所属員数等についてもこの際発表するようなことも差控えたい、まあこういうような趣旨の御答弁があつたわけであります。第一組合と第二組合につきましてそういうような態度で臨まれるということは私若干疑義を持つわけであります。と申しますのは、労働法に言う労働組合というものはどういう組合でなければならないかということは組合法の第二条を見ますると明確に謳われておるわけであります。即ち労働法にいう労働組合というものは、「労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。」但し、次のようなものに該当するものはこの限りではない。こうして明らかにその会社における職務上の義務と責任というものが、労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接に抵触するような監督的地位にある労働者或いはその他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの、こういうようなものは正常な労働組合とは申せないわけであります。問題になりますのは、近江絹糸における従来の労働組合というものは明らかに今申上げましたような正常な労働組合とは相反する組合であつたということにそもそも問題を自主的に解決することができなかつた原因があるわけであります。そういたしまするならばどういう組合でなければならんかと、どういう組合であるべきであるというようなことは、当然労働省としても十分に関心を持つて指導されて然るべきことではなかろうかと、こう思うわけであります。先ほどの御答弁を承わつておりますならば、第一組合であつてもよろしいのだと、当然にこれは組合としてあるからには、労働組合法の定義がどう規定されようとも、そんなことは問題でもない。まあこういうような態度であることは非常に遺憾に思うわけでありまするが、労働大臣に特に私は伺いたいのは、この争議を契機といたしまして近江絹糸における労働組合についても、正常な組合法に謳われた労働組合に指導し、或いはこれを純化し、成長せしめるということが当然とらるべき措置だと考えるわけでありますが、この点につきまして労働大臣はどういう考え方をお持ちになつておられるか、これを第三点として承わつておきたいと思います。  更に私この際第四点として、これは中西労政局長お尋ねするわけでありますが、組合といたしましては要求項目を二十二掲げておるわけであります。その冒頭に載つておりまする要求項目の二三を拾つてみますると、例えば第一に、我々の近江絹糸紡績労働組合を即時認めよ。第二、会社の手先である御用組合を即時解散せよ。第三、会社が指名する労働者代表者の締結せる一切の規程を撤廃せよ。第四、拘束八時間労働の確立等々、これはまあ第四は基準法に亙りまするが、こういうふうに前三項目を先ず取上げてみますると、明らかに労働組合の設立或いは自主的な組合の運営、それに対する会社の支配、介入、こういうような問題に繋つておるわけであります。労政局といたしましても、この争議を契機といたしまして更に調査も進んでおると見るわけであります。今までは御用組合によつて調査に出掛けても本当のことを語らない、こうして調査も難関にぶつかつたということは先ほど来の御答弁で明らかにされておりまするが、今回のこの事件を契機といたしまして、今まで調査できなかつたことも更に徹底された調査も施し得たと見るわけでありまするが、調査の結果に基きましてこれらの事実をどう労政局としては把握しておられるか、この点をもう一つ併せてお尋ねしておきます。  それからもう一つ、私は第五番目にお伺いいたしまするが、人権擁護局長お尋ねいたしますが、先ほど来の局長の御答弁は私たちもよく了承できるわけでありますが、人員の少い点、或いは予算が非常に圧縮されておる点、こういうような点は擁護局に私たち同情申上げるわけであります。こういうような大事な人権擁護機関が行政機構改革や行政整理のたびごとに現政権の下においてはこれすらもなお弱体化し、或いは廃止して行こうということは併せて遺憾に考えるわけであります。その点はよく了承できるわけでありまするが、ただ先ほどのお話を承わつておりますると、調査方法について、どの話を聞いたほうが公正な判断の資料になるかというところに我々としては疑念を持つ場合がある、こういうような趣旨の話があつたわけであります。その一例としまして、信書の開封等について会社側のほうから聞けばそういうようなことはないと言うし、組合側のほうから聞くと事実そのような話がある、こういうような御趣旨でありまするが、私その場合の一体調査方法というものがそもそも問題になるんじやなかろうかと思うわけであります。会社にこういう問題を聞いたつても、これは到底公正な判断の資料を聴取することはできぬと思つております。更に又会社の権力に抑えられておる第一組合からこれを聞いても、これは物にならんと思つております。飽くまでも自由な立場において判断のできる、物の言える第二組合の組合員、或いは先ほどの答弁の中にもありましたようなやめて行つた諸君、或いは又長い間民主化運動を続けて来ましたところの全繊同盟の組織、こういうような諸君の意見を総合されて判断する以外にないと思うのでありまするが、先ほどの方法を聞いておりますと、私若干疑問を持つものであります。そういうような点につきまして今後改められる御意思があるかどうか。更に又時間の問題でありまするが、二年、三年という時間を勿論考えていない、精一杯努力をしておるということもよくわかりまするが、一体どの程度の時期を前提としてこの調査に努力を払つておられるのか。更に又先ほど来阿具根君からも指摘がありましたが、学問の自由とか宗教的な強制とか、こういうような問題は一つ一つ私は片付け得る問題だと、こう考えておるわけであります。ところが局長お話によりますると、すべての問題を調査した後に総合的判断をするようになつておりまするけれども、そういうようなことでは、これは確かに長い歳月を必要とする、時間を必要とすると見るわけであります。  本年の四月十七日朝日新聞、或いは毎日新聞、産業経済新聞、読売新聞等の滋賀県版を私持つておりまするが、当時の会社の持つておる近江高校に入学を希望しないで、地元にある彦根の県立高等学校の定時制の高等学校に二十六名の従業員が受験をしたところが会社があらゆる妨害をした。試験場の入口においてまで妨害をして試験場に入ることを阻止した。ところがこういうような暴力も排除して全部試験を受けて而も全部入学した。ところがいろいろその後転勤とか或いは又退職せざるを得ないような羽目に追込んだと、こういうよう事例が載つておるわけでありますが、こういうようなことは一つ一つ問題の解決がなされようと思うわけであります。学問の自由という観点から見まして、こういうようなことの人権の侵害というものがあつた場合には、一つ一つこれは調査の結果を発表されて、公正な世論に訴え、或いは法的な措置を以て処理される、こういうふうなことをなされて然るべきだと思うわけでありまするが、この点に関しましてもう一度局長の見解を承わつておきたいと思います。
  103. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) お答えいたします。三人の財界の方に斡旋を御依頼いたしましたことは新らしい例でございます。これはこの争議の性格にも鑑みまして、先ほど来縷々申上げましたよう事情でお願いをしておるわけでございまするが、とにかく団体交渉を何とか始めるように斡旋をしてもらいたいと、こういうことなんで、そこで団体交渉が始りまして、いろいろな点で若し難関がありまするとすれば、従来の経緯の中からもう少しこの点をこうしてもらいたい、この点はこうしてもらつたらどうかということで、誠に御迷惑でございますが、できれば依頼したいと、かように思う次第でございます。なおまとまらん場合はどうかということでございますが、私どもは今是非まとめたいと考えておりますので、まとまらん場合のことを予想してどうということは差控えたいと思います。  第一組合、第二組合につきましても御批判がございましたけれども、私は第一組合は御用組合であるということを断定する資料もなかなかこれは困難ではなかろうかと思うのであります。会社と組合が発展したい、こういう気持を持ちますことは、組合としても私はいいことであると思うのでありますが、そういう気持をとやかく推して会社の御用組合である、こういうことを断定してしまうにも少し資料が不足しておるように思うのでございます。政府としての立場からはさようなことは差控えたいと思います。
  104. 中西実

    説明員(中西実君) 今度第二組合ができました関係相当会社のいろいろと内部の関係はつきり表に表現されるようになると思うのでありまして、基準法違反、更に不当労働行為の事実等割合はつきりとわかるようになるのじやないかと思います。今までは県の労政事務所あたりから行きましても、時に入れなかつたりいたしましたりしたのでありますが、ただ併し不当労働行為の関係は労組法七条三号、支配介入の問題が一番今の問題になろうかと思いますが、支配介入というような不等労働行為がありましても、その是正の確保が非常にむずかしい。従つてそういう支配介入の事実が若しあるといたしましても、しちやいけないと、こう言いますと、会社はわかりました、ところが相変らず……、そういつた若し御用組合としましても、御用組合が存続しましても如何ともしがたい。要は結局まあ労働者個々の人の自覚になつて来るわけであります。従つて今後そういう不当労働行為の問題が起りましても、問題はやはり労働者、従業員の自覚がどうかということが問題になろうかと思います。ただ今争議中でございますが、併しこの際不当労働行為の事案が相当問題になりまして、組合からたしか十件ばかり地労委に出ている。これの事実を今のうちに十分調査しておけということを命令してございます。いずれそれが出て参りますれば、それぞれまあ勿論これは問題は地労委でやることになりますが、実情もお話できることになるかと思います。
  105. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 只今調査方法につきましていろいろと御注意を承わつて有難いと思つております。ただ調査方法でございますが、私どもといたしましては勿論、会社側が従来第一組合側を指定しておりますので、これを心証上どちらの事実を認めるかということに結局相成るかと思うのでありますが、ただ被害者でありまする第二組合員だけを調べて、加害者側であるほうを十分に調査せずして、結論を出すということは、結論を出してこれを処理するということは、役所としては非常に困難である。やはり被害者、加害者、両方とも十分に調べられて、やはり適切な措置をしなければならん、かよう考えておりまするので、やはり加害者側、加害者という言葉は何ですが、調査というものは両方の面を十分に調べてしなければならんものである。先ほど委員の先生方からもお話がございましたが、やはり人権擁護という問題は非常にむずかしい問題で、若し我々が粗雑な調査によつて調査した場合に、それが又反対に人権擁護局が人権を侵害するというような結果に相成つてはこれこそ大変なので、人権擁護という問題は御承知のように民主憲法における最も基本、憲法の一番大事な問題であり、非常に高いところにおかれておりまするものでありますので、やはり人権に対する事件というものは慎重に調査し、慎重に考えた上でないと容易にこれに対する意見というものは出ないのじやないか、かよう考えておるのでありまして、私たちといたしましては人権侵害、人権に対しては極めて槙重なる態度を以て実は臨んでおるのであります。ただこれが過ぎますと先ほど御指摘のように一体いつまで、どうなるのかと、こういうお叱りを受けるようになりますので、慎重に調査し、両方の異つた立場の人たちも十分に調べられて、そして私たちの考えとしていずれが一体心証をおくべきであるかというところに持つて行かなければ、本当の処置ができないと、かよう考えておりますので、慎重に調査しまして適切なる処置のできるようにいたしたいと、かよう考えております。  それから今の時期の問題でありますが、これも只今申上げましたように成るべく早い機会に早く具体的なものを、真相をつかんで、そして一つ適切なる処理をいたしたいと、かよう考えておるのであります。
  106. 赤松常子

    赤松常子君 ちよつと関連いたしまして、人権擁護局長に対してお尋ねし、それからちよつと要望いたしたいと思うのであります。  今のいろいろ調査なさつておりまして、確証が握られないとおつしやつております。例えば信書の開封というような場合でございますがいろいろな方法で開封されておるという実情を私どもは聞いておるわけでございます。例えば封が切られてそうして又張つて、封が剥がれて張つて、まだ糊が乾かないときに渡されたというようなのは、すぐこれは見られたということがわかるのですけれども、併しながら糊は間もなく乾きます。ですからそういう問題が、そういうものがなければ確証がないとおつしやるのかどうか、はつきりといろいろな材料がこうなければ確証でないとおつしやるのでしようか、いろいろ今一つの例を申上げた点でも、その手紙を出せとおつしやつてつて来ても、それは乾いておりますからはつきりと証拠にはならないとおつしやられればそれつきりなのでございまして、そういう事実はたくさん聞いておるのでございますが、今あなたのおつしやるように被害者の言うことと、それから加害者の言うこととがちぐはぐであるという場合には非常に困るとおつしやつておるのでございますが、それならそれで又その関係者を同時に一室にお呼び下さいましてそうして対決と言いましようか、言葉がひどうございますれば、その関係者をお呼び下さいましてあなたはこう言うけどこうじやないかということをなさつてはつきりわかると思うのでございます。いろいろ調査方法はあると思うのであつて、ただその確証とおつしやいますけれども、今言つたよう一つの実例でもはつきりその実物がございませんから、一月も前に開けられた人、何年も前に開けられた人も、手紙をちやんとそのままそこに持つているわけじやないのですから、確証とおつしやつてもできがたいと思うのでございますから、その辺は常識で御判断願いたいと思います。  それからこの間私二、三度人権擁護委員の方が現場に来て御調査なさるところに立会いました。ところが非常に遺憾に思いましたことは、何か役所風なちよつとこわい環境なんですね。その調べる対象が二十歳前の少年、少女でございますので、聞かれるということに対して一つの圧迫感を感じている。それに机を真中に置いて、そうして取調べるというような環境でございますので、非常に真実の声が素直に出ないというようなところに私出会つたものですから、それで私は今日来られた方々はこういう方なんで、あなた方はちつとも恐れることはないのよというふうに非常によくその場合をやわらげてお話いたしませんと、調べる人、調べられる人、非常にぎごちない空気になつておつたということを私二度拝見いたしました。ですから調べる方法に対しましても、どうぞ素直に発言できるような空気をお作り頂くという御配慮を願いたいと思います。  それからお調べになる方が、寮の自治会の運営であるとか、或いはその目的であるとか、そういうことを御存じないのです。その調べる以前にお調べになる方が相当予備知識をお持ちになつていないと、的確な要所々々がつかめないのです。たまたまお会いしたそのお調べになる方が、寮の自治会のそういうことを余り御存じない方だつたものですから、非常にはたから見まして、私どももつと大事な点があるのだがと思いながら、まあ私お口添えはしましたけれども、そういう、少し労働関係になることの知識をお持ちにならない方がおいでになつて、何か要点をおつかみになれなかつたという実情も見たのでございまして、そういう点もどうぞ御配慮願いたいと思つております。
  107. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 大変人権擁護の取調べの態度について只今御注意がありました。若しそういうことがありますとなかなか本当の声を聞くこともできなくなりますので、この点を十分に注意させるようにいたしたい。今後いろいろの取締につきましても、人権擁護局という役所は極めて民主的なところで、言葉がいわゆる官僚的な考え方で、又そういう態度ではいかんということは、私重々毎々考え、又さようにいろいろ指示しているのでございます。若しそういう点がございましたら、そういうことのないよう一つ注意いたしておきます。  それから手紙の開封の問題が出たのですが、先生の言われるように、手紙がすでにあつたといたしましても、又なかつた場合、これが何年か前にやられた、開封されたというような場合に、実は役所の立場としては、これを根拠付けるのに非常に困難なのでございまして勿論手紙がありましても、何年か前の、これは会社から開けられて来た手紙だと言われただけでは、これをその通り間違いないと認定するには、ただそれだけではちよつと私は認定できないのではないか。それにはやはりすべての人がそうされたとか、又会社側も、人事課の者がみんな実際にこうしたのだ、それも一人、二人ではなく、みんなそうしているというようなことになると非常にはつきりして来るのですが、まだ十分できませんから、私の今これから申上げることも或いは適当でないかも知れませんけれども、どうも手紙についても何月何日どこで誰がどうしたというようなことについて、どうも何となくつかみにくい。それで役所の私たちの立場としては、やはり或る程度の裏付と言いますか、確証というものを具体的につかまないと、ただ一般的にはこうだという傾向は、実は私ども多少得ておるのでありますが、どうも傾向だけではちよつと先ほど申上げたように、この通りじやないかということが実はまだ言い切れないので、そこで只今調査方法についてもいろいろ御注意を受けたのですけれども、何とか具体的なものを一つつかんで、そうして確かにこの通りではないかと言えるようにいたしませんと、私は、犯罪捜査ではございませんが、やはり調査におきましても裏付になるものを何とかしてつかみたいということを実は考えまして、これもいろいろの面から実は調査いたしております。今調査中でございますので、まだはつきりしたことを申上げられないと先ほど来実は申上げておるのですが、手紙の問題につきましても、いろいろな面から一つ十分に調査して、そうして実際にこの憲法で保障されておる信書の秘密等が侵されておるかいないかというようなことを、真実のものをつかみませんと、私のほうとしてもそれに基いて処理をするというわけには実は参りませんので、大変私たちの調査にいろいろ委員の先生方からも御不満が多分にあると存じますが、私のほうの役所の立場といたしましては、これら憲法上に掲げられております国民にとつて一番大事な人権の、信教の自由であるとか或いは通信の秘密の自由であるとか、それから学問の自由であるとか、いろいろその他の自由等につきましても、これは慎重に一つ調査した上でないと、憲法上に掲げられた人権ということに対してどうも信用のある、権威のある意見というものは出ないのではないか、かような面からのみ私は実は慎重を期して調査いたしておる次第でございまして成るべく早い機会にこれらの事案が事実であるかないかということを具体的につかむように、今後とも努力して行きたいというふうに考えております。
  108. 田村文吉

    田村文吉君 ちよつと今お話が出ましたので、私お伺いしたいのですが、今の問題の中に、仏壇を拝むということがありました。それでいわゆる戦争の始まります前、日本中の紡績会社は私大抵廻つたのですが、その時分にはみんな寮がありまして、寮に仏壇、その仏壇のところに女工さんの両親や何かの亡くなつた人の位牌を書きまして、そうして飾つておいて、命日々々になりますとそれを出して拝む、それからお経を上げる、大抵浄土真宗、真宗の人が多かつた。そういうことをやつております場合に、それは私は寮の中の一人、二人は、私はクリスチャンだから仏教は嫌だと言うてどうしても参加されないと言えばそれまでですが、空気がそういうふうになつています。みんながお詣りいたしましようという場合に、これは強いられざる強制ですか、で、やはり参拝する。こういうようなことは一体人権のあれになるのですか、ならないのですか。私はこういうことは一面においては非常にその人たちの宗教心を深めて、そうして宗教的な安心を得るということは仕合せな人たちだということが一方には言える。言えるのだが、そうでなくて強制という、否応なしにどうしても出なかつたら給料を引くとか、或いはお前は解雇すると言われますと、これはどうもはつきりそうでありますが、大抵の空気ですと、自分一人参加しなければ工合が悪い、面白くないけれどもお詣りする、こういうことは事実上あつたと思うのです。そういう例を私はもう大抵の工場では殆んどやつておられる。昨今の紡績工場というものは拝見しませんから、どういうふうになつておるかわかりませんけれども、それをしも宗教の一体自由を束縛したとして人権擁護局ではお考えになるかどうか、その点についてどういう御解釈をお持ちですか。
  109. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 只今お尋ねの、いやいやながら、併しまあお経を上げたり、礼拝をするということは人権侵害になるかどうかというお尋ねでございますが、今の如何なる宗教を信じましようと、信徒でありましようと、それは自由であります。自由になされる場合は、これは人権の問題になりませんし、又憲法上問題にならないと思います。憲法では、いわゆる信仰の自由というものが認められておりまして、如何なる宗教を信じようが自由であることと、それから如何なる宗教も強いられないという二つの自由を含んでおります。同時に、憲法第二十条第二項では、「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。」ということになつておりまして、今のこの仏教を強制されるということになりますと、この憲法の信仰の自由を侵害するということになるんじやないかというよう考えております。  ただ本件近江絹糸の場合、これは多少、各所の工場によつて多少の差異はございますが、大きな広間の中央に非常に立派な仏壇を祀つてありまして、この中にいろいろ先代の位牌があるとか、社長の先代の位牌があると言う人もありますし、又そうでなく、仏像の右左に先代の胸像と、現社長の胸像と両方あつた。或いはどうも見たことがないとか、いろいろ又各工場によつて違いますので、一概に言えませんが、大体一週間に一回、主として女の人が木曜、男が水曜、これも各工場によつて違いますので、ちよつと御説明がしにくいのですが、一定のきめられた木曜なり水曜に、これが百何十畳かの畳の広場に呼ばれて、ここで礼拝をいたす、これも委員さんすでにお持ちかと思いますが、ここに鑑といいます、これを三十円で各工員は買わなければならないことになつております。この中を読みますと、これが社憲、社歌、正信偶、仏の教え、殆んどこれは仏教に関することが主でありまして、これを、読ませられます。そこで今の任意でやるならば、これは問題ございません。これは憲法上何ら差支えない。それを強制されるということになりますと、私は問題があると、かよう考えております。そこで今まで調べました中にも、自分はクリスチャンであるから仏教は読まない。見るだけで、腹の中じやクリストのあれをやつておるので、決して仏教の本、こんなものは読んではおらないという人もありますし、日曜には教会に行かせてもらつておるという者も出て来ております。そこで私はいろいろな面があるので、先ほど来調査上いろいろ困難を生じておると申上げたのですが、大体おしなべて、今までの中間調べでありますが、どうも仏教に関する限りにおいては、各地の工場ともどうも強制ではなかろうかという感じが、私実は率直に申上げると、結論ではございませんが非常に強いのであります。それと、又各所の工場のやり方がいろいろ違いますし、中には三尺の六角の棒を持つて、出て行かない者を追出しに来るというようなことも実は聞いております。これを確証をつかみませんと申上げられないのですが、先ほど来から遠慮申上げておるのでありますが、押入れの中に逃げ込んでおる者をその棒で押し出す。中には、行かん者には一週間や一ヶ月の外出を禁止する。又その部屋の者は全部連帯責任として、一週間外出を禁止されるというようなことも言われておるのです。  果してこれが私たちの調べただけの範囲でなく、皆そうであるかどうかという点を実は私のほうで今後なお、非常に対象者が大勢でありますので、実はその十分な調査をしませんと、どうも役所の立場でどうこうということは申されないので、実は先ほど来まあ調査中であるということで申上げておつたのですが、そういうわけで、仮に今言つたことが間違いない、そうだといたしますと、どうもそこへ出なければ外出禁止にされる、或いは棒を持つて来て、十七、八の女の子のところへ棒を持つて来まして、早く行け行けと言えば、やはり一種の強制になるのじやないか。又出ない者は始末書を取られるということが、仮にこれが事実だとしますと……。又いろいろこれは元は勤行と言つたのです。勤め行う、勤行という言葉がどうも適当でないというので、何かアメリカの司令部あたりからお叱りを受けたというので、その後変えまして、これも各工場によつて多少違つております。連絡日と言つているところもありますし、生活研究日と言つているところもあります。この一日のいろいろの仕事の連絡を、この連絡日にいろいろ連絡するということになりますと、これはその日に出ないと、これはどうも連絡事項がわからないということで出なくちやならんというような点から行きますと、どうも強制に亙るのじやなかろうかという深い疑いを、実は私は個人としては今のところ持つておりますが、ただ最終的な結論としては私申上げることは実は値しまなければならんと、こう思つているのですが、そういうようなわけで、若しこういうようなことが事実だといたしますと、これは私はやはり憲法上の信仰の自由を侵すことになるのじやないかと、かよう考えております。ただそれが飽くまでも任意であるのだ、何ら強制でなく任意で、まあ嫌だけれどもつているのだという程度ならば、これはどうも憲法上の信仰の自由を侵したことにならない、かよう考えております。
  110. 田村文吉

    田村文吉君 強制せざる強制なので、そういう場合どうなるとお考えになつているかということを私は実は伺つたのです。今申されたうに、出なければ棒で叩くということならば、これはもう強制だ。出なければ休日をやらん、外出を禁止するということは、これはもう強制だ。ところが皆の空気で、出なければもう駄目ですよと皆でやつて、その空気で出させられているという、こういう場合もこれも強制と見るかどうかという問題ですね。これは私どもはあらゆる紡績会社、今はどうか知らんが、大抵やつているのじやないかと思うので、これは念のために伺つて置く。赤松さんのお父さんなんか大分そのあれされたのですけれども……。(笑声)
  111. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間も大分過ぎましたし、まだ私質疑をいたしたいことがありますが、そろそろ締め括つて結論を出してもらいたいと思うのです。そういう点で、先ほど田畑君から質問のございました結論的な答弁を頂きますのに大事な一、二の点を伺いたいのですが、それは第一組合が、或いは第一組合の変形でありまする第三組合もそうでありますが、御用組合であるかどうかというこういう点について、労働大臣は第一組合を御用組合と断定するには材料がまだ不足だと、こういう答弁だ。中西労政局長は素直に疑いがあると、こういう趣旨の御答弁でございましたが、その第一組合なり或いはその変形である第三組合等について、第一組合、第三組合が御用組合の疑いがあると考えられておられるのかどうか。  それから先ほど取りあえず団体交渉を始めるについて、労使で話合いを進めるについては、全繊に加盟を志している、加盟している第二組合との団交を図るのである、こういう点に、これは間接ではありますが、解決の方向を示唆されておつたと思うのでありますが、これらの点について一応お触れを頂きたいと思います。なおそれを含めて、どういう工合に今までの調査による所見を解決の方向に持つて行かれようとするのか、問題は二つ、労働省に関しては二つだと思うのですよ。基準法違反の事実或いは今の労働大臣の言葉でするならば基準法違反の疑いある事実が相当多く伝えられておる。或いは訴えられておる、或いは報ぜられて来た。これをなくするにどうするかという問題が一つ。それから今の組合関係、或いは不当労働行為として挙げられております数多くの事実、これをどういう工合にして軌道に乗せ、解決するか、こういう問題がございます。  それからその中に、上條厚生委員長から食堂問題、その他福利厚生関係について御指摘ございましたが、ほかに工場閉鎖云々という点もございます。これもちよつと先ほど労働大臣触れられましたけれども、工場閉鎖という問題が、私は不当労働行為の疑いある行為として、工場閉鎖という問題が言われ出しているので、若しこれを本当に工場を、売る或いは閉鎖するというならとにかくでありますが、一応工場閉鎖を言い渡した、工場の組合員を全員解属して、そうして新らしい人を雇つて工場を続けて行こうということであるならば、これは労働行為であり、或いはそれが不当労働行為であるかどうかという問題が起つて参ると思うのであります。いろいろございますけれども、不当労働行為をなくしてそうして軌道に乗せる、そうして団体交渉によつて近代的な工場、或いは労使関係に直すと、こういうことだろうと思うのですが、これらのものを含めてどういう工合に解決をして行こうとなさるのか。その点を一つ労働大臣から集約して御答弁をお願いしたいと思います。
  112. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 先ずこの第一組合が御用組合であるかどうかということでございますが、これは先ほども申上げましたように、自主的に会社と共に繁栄したいという気持があるということで、それだけでありますれば、これは一つの組合の行き方としてそれは結構である。それを会社と協力的であるから御用組合だということをにわかに断定しがたいと思います。それはいろいろ調査もあることと思いますが、この点につきましては今私は何とも断定いたしかねると思います。併しそうしたことよりも組合全体の労務管理の問題を軌道に乗せる、これが解決の要点であろうと思うのでございます。今にわかに政府として、全繊に加盟せんとする第二組合が非常に正当なものであつて、第一組合は甚だ当を得ざるものであるというようなことを言うべき段階ではないし、事実もそうであるかどうかわからんのでありますから、ただ私どもとしては第二組合から提起された問題については会社側として誠意を持つて団交に応じ、そうして一日も早くその希望するところは話合つて、入れるべきものは入れて上げるほうがいいんじやないか、こういうことを勧めておるわけであります。この点につきましては暴力行為等もありまして、非常に感情的になつておりますようでありますが、私どもとしては何とかこれを宥めて、そうして所期の目的を達成せしめるようにしたいと、こう思うのであります。  問題の発端は、やはり非常に小さな工場から急に大きな工場になりまして、その間に観念の切替えもなく、いわゆる労務管理という面に対する関心の薄さから来ておる問題だと思いますので、こういう点につきましては十分忠告もいたし、或いは、或る意味においては親身にもなり、或いは或る意味において当事者の立場に立ち、種々まあ甚だ出過ぎたところもあるかも知れないのでありますが、何とかこれを軌道に乗せるという善意からそういうことをいたして参りたいと思うのであります。法律問題につきましては法律問題として扱いたい、かよう考えております。
  113. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると今の答弁の中で、或いは第一組合等について御用組合であるという疑いもあるという点は、これはお持ちになつておるのですか。調査をして自主的な意向であるならば云々というお話でありましたが、その点と、それからもう一つ、労務管理を軌道に乗せる、小さい工場が急に大きくなつたので近代的な労務管理がなされておらん、従つてこれを軌道に乗せるということですが、それをそれでは労働基準法違反の摘発もありましよう、或いは処罰もありましよう、そこで労働基準法の違反のないようにするということもありましよう。それから不当労働行為その他についてはそういう古い考えでなくて、労働者と対等に話合つて問題を解決するという近代的な労使関係に、軌道に乗せるために努力をしている、こういうことなんでありますが、その方法労働省が直接やらないで三人委員会に頼んでおるが、その三人委員会を通じてのみおやりになろうというのか、それとも交渉が軌道に乗りますならば、先ほど田畑委員から質問がありましたが、若し、今後の問題については今の労働法上の制度、団交によつて解決をする、或いは若しそれがうまく行かないならば労働委員会等の斡旋或いは調停その他によつて解決して行く、こういうように一応団交なり、労働法関係の軌道に乗せた後は今の労働法関係の軌道の上でこの問題を解決して行こう、こういうことなのか、その点をなお補足的に一つ答弁願いたいと思います。
  114. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 最初にその第一組合が御用組合であるという疑いがあるからそう言つているのかということですが、第二組合のほうの側におきまして、第一組合は御用組合であると、こう言つておるわけであります。併しそれが事実であるかどうかということについてはこれは調べてみんとわからん、こういうことなんであります。  それから労務管理の問題をどうするかというのは、これは会社全体として労務管理について適当な人を得ることも必要でありましようし、又社長自身の考え方の問題もありましようし、そうした問題を含めて全般的に十分考えてもらうようにこれは役所といたしましても考えを述べますこともあるかも知れませんし、又三人の友人としての忠告に待つ場合もありましようし、その場合は常識的にやりたいと思うのであります。団体交渉が軌道に乗りましたあとのことでございまするが、それはそれぞれの中央労働委員会なり或いは地労委なりという機関がありまするから、そういう機関において問題の処理というものをそれぞれ問題の性質によつて考えるべき問題である、これが私は法律問題は法律問題として扱うとこう言つた趣旨でございます。  ただ私として望みたいことは、まあ非常に経緯はございましたが、やや軌道に乗りつつある際でございますので、双方においてこれは非常に感情的になつておりますので、感情を排して、又殊に暴力を排して一日も早く解決してもらいたいと思つて及ばずながら努力しておる次第でございます。
  115. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 先ほどの田畑先生の御質問の中に一点落しておりましたので補足して申上げます。  先ほど通学の問題が出ましたが、実は津の工場における、内緒で通学をしておつたというので馘にされたということがございまして、その津の法務局でこの問題を取上げまして、勧告しまして、通学をさしたというようなことが多分五、六人かと思いますが、前に、二十七年でございましたかございました。  それから今度の事件につきましては、こういうふうにまあ問題が一つですと個々にやれるのですが、今度の問題はお互いに関連し合つて入り組んでいるものでございまして、一つ一つを取上げて処理して行くということが非常に困難でございまして、結局一つ一つやるか、全体やるか、これは便宜の問題だと思いますのですが、今度のような事件につきましては厳格に一つ一つ抜き出してやるということは調査の上に困難があるかと思いますので、やはりこれは全体的に見て徐々に解決さして行くというようなことでないと調査ができないかと思いますので、さような方針で行きたい、かよう考えております。
  116. 赤松常子

    赤松常子君 さつきの吉田委員質問に関連いたしましてちよつと労働大臣にお聞きしておきたいのでございますが、その前にちよつと私真意を申上げたいのでありますが、さつき私の申しました中に、自由党の調査団がおいでになつたということについて、私決して自由党だ社会党だという政治的な色彩を持つてこれを言おうとしたのではなくて、自由党の調査団がよく来て頂いたくらいに思つているのであつて、正確に公平に見てもらえばよろしいのであつて決してこれを政党的に見ようとしたのではないのでございますから、そんな点どうぞはつきりお知り願いたいと思います。  今この問題の今後の見通しについてでございますが、団交に持つて行く、これもなかなか困難だ思いますが、お互いにこれは我々も一日も早く団交を開いて頂き、労使の自主的な解決を待ちたいと思つている次第でございますけれども、不幸にいたしまして、これがうまくまとまりません場合は、或いは地労委、又中労委にお願いするという段階を経ると思うわけでございます。ところがこの近江絹糸という会社は、昨年も地方労働委員会及び中央労働委員会決定をも蹴つておる事実がございまして、御承知かと存じますけれども、津の工場で昨年解雇者がございまして、それを不当といたしまして三重県の地方労働委員会に提訴いたしました。そういたしますと、地労委の判定は、これは会社側の不当労働行為であるから復職させなくちやならんという結論になつたのでございます。ところが会社はこれを不服といたしまして、中央労働委員会に又持ち込んだのでございます。そうして約半年の時日を費やしまして、中央労働委員会も慎重に調査した結果、やはり地方労働委員会決定が正しい、この解雇は不当である、復職させなければならないという決定を中央労働委員会もしたのでございますけれども、会社といたしましてはその中央労働委員会決定を一日聞いたわけです。判定のあつた翌日一日だけ復職さして、次の日には今度はよく御用組合と連絡いたしまして、そうして労働協約にございます労働組合が除名するということをやらして、そうして組合の除名した者は会社から追い出す、これを適用いたしまして、追い出したわけであります。今又それを労働委員会に提訴いたしておるわけでございますが、こういうふうにもう誠に規則も法律もふみにじつて顧みないという会社なんでございますから、よほど見通しについてそういうところに持ち込むにしても、私ども非常に関心を持つて行かなくてはならない、警戒しなくてはならないと思つているのでございますから、労働省当局もそういう点腹に入れておいて頂きたいと思うことと、そうしてこの前の国会の参衆の労働委員会で、こういう労働委員会の制度に対して盲点があるのではないかということで、中央労働委員会の人も呼びまして、少しそういう面の研究調査もしようじやありませんかということにしておいたのでございますが、まだその結論は出ていないのでございます。いろいろ問題があちらこちらにあつて非常に近江絹糸は智能犯でございますから、法の盲点を縫うという点は非常に長けているのでございまして、その辺のこともよく御承知おき頂きたいと、こう考えます。
  117. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) 不当労働行為等につきましては、これは中労委、地労委というものにおいて判定をいたすのでありますが、争議自身を何とか解決して頂かんことには、会社も参るでしようし組合もどうもならんのであります。私はその点が一番現下においては重大問題だと思うのです。今お話ように斡旋がうまく行かなかつたら中労委に持ち込めばいいじやないかというお話もありますが、最初から中労委に持ち込めばああいうものは頼まない、民間の方の斡旋というようなことは頼む必要はないのであります。頼まれた方も何ら積極的に出るという意図を初めから持つておられたのではなくてとにかくこの問題を憂えて、出てもらいたいと頼んで解決を斡旋してもらつておるのでありますから、地労委乃至中労委に持ち込んで、最初から解決できる状態でありますれば、これはもつと早く持ち込んでおります。併しこれは当事者双方が中労委に持つて行つえ解決したいという気持ちにならなければ、これは現行制度の下においてはそういうことはできない、解決に何ら役に立たんのでありまして、そこに私どもとしての苦心があるわけであります。そこで何とか軌道に乗りつつあるような恰好があるのでございますから、或いは非常に気に障るかも知れませんが、私として衷心からお願いしたいことは、この際は双方を抑えるという気持でないと、これほどこじれた問題は解決できないのでありますから、問題として不当なことはできるだけ私ども役所の立場から公正に裁きたいと思いますから、どうか余り感情を激するようなことは双方において抑えるように私も努めるつもりでありますが、どうぞ一つ諸先生方にもよろしくお願いしたいと、かように思う次第でございます。
  118. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 私から最後に一点だけ労働大臣にお伺いしたいと思います。  それは近江絹糸労使の問題のほかに或いは地方の市民或いは地方の行政機関、役所、経営者団体等至る所から、私の現地で見ました限りにおいては、近江絹糸の経営者陣というものが余り評判がよくない。恐らく殆んど全体的によくない。こういうよう工合に見て参りましたので、近江絹糸の社長たるもの社会人としての私は反省を要すると思う。経営者というだけでなくて、問題は労働争議になつておるわけですから、争議そのものを解決しなければならん。そのときに今御用組合論が出たのですが、これは労働大臣が先ほどの答弁の中で非常に巧みな表現で答えられたと私は感心しておつた。それは近江絹糸の社長は巧みに従業員を掌握しておるという言葉をおつしやつたのですが、従業員の掌握というのは労働組合も引つ括めての掌握だと、私はこういう工合に理解しておるわけです。従つてどうしてそういう工合になつておるかと申しますと、私が近江絹糸で見て参りました結果によつて判断をいたしますと、丁度戦争中に軍があれだけ強庄を加えて国民を指導したときに、中には殆んど人権が侵害されておるということを知らないで軍について行つたという人もあります。又実際に人権を侵害されておるというので非常に憤慨をしながら、当時の軍の威圧に反抗することができなくて、泣く泣く従つた人もあろうと思う。そういう雰囲気の中で大東亜戦争が終り、連合軍が来て、当時の指導者というものは人権を甚だしく侵害した、こういう断定を下したのですが、これと同じよう状況近江絹糸の中に私はあるのじやないか。社長は気に入らなければすぐ馘にする、転勤を命じてしまう。或いはいろいろな労働的な抑圧を加えるというので、大多数の若い男工、女工の皆さんは、人権侵害をされたということを知らない人があるかも知れませんが、或いは貧困な九州とか或いは島根県とか長野県の山奥から出て来た子女が多いわけでありますから、或いは近江絹糸の生活のほうがよいと思つておつた人がおるかも知れない。或いはそういうことは知らないでそう思つておる人がおつたかも知れないが、これは社長さんの威圧によつてどうしようもなかつたというのが事実です。それが争議が勃発して初め目覚めて来たというのが事実だろうと思います。  それでそういうような零囲気の中で会社側が今後の争議解決の点で非常に強い主張をし、争議解決のネックになつておるものは何かということを想像して見ますと、今日の争議を指導した責任者を処分するという問題が私は最後まで残ると思う。恐らくこの点は私は近江の彦根の工場長に会つても繰返し申しておりました。これは労働争議ではない、暴動である。暴動を鎮圧しなければこの問題の交渉には応ぜられない。そこでこの鎮圧とは何かということを追及してみますと、それは責任者を処分することである、こういうことをはつきり言つておりました。これはなかなか変らないことで、そういうことをすればますます紛糾をしますから、この際は不当労働行為に亙るようなこの労働争議を起したというような理由で責任者を追及し、首の座に据えるというようなことが許されては絶対にならないので、この点について労働省はつきりした信念を持つてこの問題を見守つて行くということが一番必要だと思うのですが、これについて労働大臣としてどういう工合にお考えになるか、これを伺いたい。
  119. 小坂善太郎

    ○国務大臣小坂善太郎君) まあ私としてはさつきから申上げますように、早くこの争議を片付けたい、そういう中心題目を置いて物事を進めておりますので、早く解決するということについて、まあ余りむずかしい感情的な問題は棚上げして、解決を進めて行くということ以外に、これはまあよく三万損と申しますか、皆少しずつ損をしなければこじれた問題は解決しないと思う。そこで余り我を通さんように、会社側におきましても組合側におきましても、それぞれ事態を早く収拾して、さてと言つて、気持よく新しい態勢を、双方において考え方においても、態勢においても考えてやつて行くというふうなことを中心にして、まあこの争議の発生事情というものに余りこだわらんようにやつてもらいたいと、こういうように思つておりますので、会社側におきましても、社長の言つております話を人伝てに聞いてみますと、全繊というものに対して非常な悪感情を持つているということですが、そういうことじやいけませんと、率直に私は言つておるわけです。今の委員長お話は、私もそういうことではなかろうかと思います。
  120. 吉田法晴

    吉田法晴君 まだ政府労働省側に聞きたいことございますけれども、時間もございませんので、あと委員会としてこの近江絹糸の問題についてどういう結論を出すか、それからなお事態について十分明らかでない点もございますし、次の委員会でどうするかという点を御相談をいたしたいと思うのであります。なお今まで質疑の中で明らかにして参りましたけれども、労働基準法或いは寄宿舎規則、その他方違反が繰返されないように、或いは不当労働行為が繰返されないように、近代的な労務管理になるようにという点は労働大臣お話がございましたが、法違反が繰返されないようにという点を解決の方向として、これは当然労働省としてお持ちであろうと思う。その点は労働省に強く要望をいたしておきたいと思う。  そこで労働委員会の結論でありますが、これはまあ労働省側御列席になつてもいいんですが、この際委員諸氏に御相談委員長から願つて、私たちとしては、労働委員会としては、一応ここで結論を出すことにして、それから次に委員会として証人を呼んで審議をいたす方法について御相談を願いたいと思います。
  121. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) その委員会の結論というのはどういうのですか、委員会の結論……。
  122. 田村文吉

    田村文吉君 私は吉田理事のあれには反対する。結論を今どうする、出すとか……、結論を今出すべき筋合のものじやないと思います。
  123. 田畑金光

    田畑金光君 こういうことなんじやないのですか。私もちよつと呑込めないのですけれども委員会としての結論を出すということは、ちよつと誤解を受ける表現ですけれども、今朝ほど来近江絹糸の問題について労働省当局のとつて来られた措置或いは人権擁護局の今日まで努力して来られました経緯につきましては、我々といたしましても一応了承できるわけであります。併しこの事件の解決というものは一日を争う問題でありまするし、同時に又飽くまでも公正な立場において明瞭に処理されるということが根本でなけりやならんと思うわけであります。従いまして労働委員会といたしましても、こういうような事件の処理に対して今までの労働省当局の報告等を総合してみた場合に、まあ具体的に申上げますと、更に一層労働省は努力してもらいたいとか、或いは解決のためにはかくかくの公正の立場において更に一つ努力を払つてもらいたいとか、こういうようなことは当然労働委員会としても一つのまとまつた意思というものが集約できるのじやないかと思うわけであります。そういうような点を、やはりこの近江絹糸争議という世の注目を集めておる大きな争議でありますから、委員会としても飽くまでも公正の立場において労働省を激励するなり、叱咤鞭励するというような意味の考え方で処理をして行くことが望ましいことじやないかと思うのですが、こういうような趣旨に解釈して……、吉田君の只今の御発言はまあ今のような趣旨に私は解釈しておるのですが、どうでしようか。
  124. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) そういうふうに直していいですか。
  125. 吉田法晴

    吉田法晴君 そういうことです。結局労働省なり或いは人権擁護局から調査をせられました結果、或いはそれについての、それに伴う若干の所見というものを承わつて来た。ここでこれで終りますならば明日は又別の問題をやる、一応それを了承して、はあそうですがと、こういうことになるわけですね、委員会としては。それでは労働委員会としてはどうかと考えますので、或いは労働省の努力を、こういう意味において我々鞭撻する、或いは法の違反の繰返されないように、近代的労務管理に直さるべきだ、こういうことになるかと思いますので、そういう点について一応労働委員会の意向をここで取りまとめておくべきだ。それからもう一つ、それじや次にはどうするか、この点をこの委員会としては相談をしておかなければならない、こういうことです。
  126. 田村文吉

    田村文吉君 私は労働省のとられた態度かよかつたとか悪かつたとか、又労働大臣が大いに苦労されたから感謝決議をするというわけにも行くまいと思うので、私ども調査のため今日集まつたわけでありますから、この近江絹糸の問題がどういうふうに推移して来て、而も又お立廻り頂いた先生方の御意見を聞き、そうしてこれは十分調査を尽したと思うので、私どもはこれについて必ず結論を出さなければならんということはない、こう考えますが故にあえて私どもはここに結論を出すという言葉は必要はないと思うのですが、なおその善後処置等につきまして、本委員会の散会後理事会で一応のお話合いをするという程度に一つ問題を集約されて行つたら如何かと思います。
  127. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) それじや今田村委員からお話のありましたように、成るほど僕も結論は出ないと思うのですね。ですから結論という意味でなくて、この近江絹糸の問題を我々が今考えていることは、とにかく早急に軌道に乗せて解決をされたいということだと私は思うのです、この委員会の皆さんの一致した見解というものは。ですからそういう意味で何か委員会として役立つよう方法があるかどうかということだろうと思いますから、あと理事会にそれじや移して相談をするということにしたら如何でしよう
  128. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは理事会で相談されてもかまいません。かまいませんが、今委員長から解決というお話がありました。軌道に乗せるということです。これは労働大臣も主としてその点を言われましたですが、従来労働基準法の違反なり或いは寄宿舎規則の違反なり、或いは婦人年少労働者規則の違反なり或いは労働法違反というのですか、不当労働行為があつたということは、これは従来言われて来たので、労働争議以前のやつぱり人権争議と言われる或いは法規違反が、先ほど上條委員からは国会が作つた法違反が至るところに行われておる。こういうお話を伺いましたが、その点が私はこの争議といいますか、近江絹糸の問題の特異性だと思う。それについて調査をして、労働委員会がそれはいい悪いと、或いはそういうものは繰返されてはならんと、こういつたような所見を、これはまあ結論と言おうが言うまいが、そういう点について明らかにしないで、ただ聞き放しというのでは、私は委員会を開催した意義も少し……、或いはこれは休会中でもあるかも知れませんけれども、今日かくも多数委員も御出席を願いましたが、関係者御出席を願つたり或いは傍聴までも願つたのは、この近江絹糸の問題についての特異性が然らしめていると思うのであります。その今日の状態の中で労働委員会を開いて労働委員会がただ解決、軌道に乗せるということだけを期待するということで終るということは、委員会の任務を全うするゆえんでは私はないと思う。従いまして具体的な方法はそれはかまいません。かまいませんけれども基準法なり或いはこれに関連いたします法規違反がなくなることを期待し、或いは不当労働行為その他の前法律的な状態をなくして、いわゆる軌道に乗せるための方向について労働委員会が、或いは何と申しますか、意向を明かにするということは、これは必要だと思うのであります。それらを含めて理事会で御相談を願うということならば、それは私は了承いたします。
  129. 田村文吉

    田村文吉君 そうおつしやられると私もちよつと言いたくなるのであります。私は労働大臣がこの問題を一日も早く軌道に乗せたいと、こういうことに努力しているという御報告は私は了承するのでありまするが、私ども自体がその争議の問題を委員会の名において何かしらインフルェンスを与えるようなことになることを極めて極端に避けたい、こういう気持は私ども未だに考えておる。そこでただ調査だけははつきりとして労働大臣がどういうお考えで行政をやつていらつしやるか、労政局長がどう考えているかというような点について又実際の問題について先生方の御体験を承わつた。こういう程度でいいのであつて今これを早期に解決させるとか或いは又これを軌道に乗せるとかということは、大臣考えておられるかも知れないが、私どもはそういうことに一歩進めることをこの委員会において決定をするとか決議をするとかという必要は何もないと、こう私は考えますので、爾後の問題について理事会でお話合いをすることは、これは私申出た通りでありますから賛成なんでありまするが、そういう前提の下に問題を持つて行くということにはどうも賛成いたしかねる、こういうふうに考えます。
  130. 吉田法晴

    吉田法晴君 私も争議にインフルエンスを与えようとは思いません。併し人権擁護局のお話ではございませんが、人権擁護局としてどちらの主張が正しいとか正しくないとか、こういうことはこれは人権擁護局としては考えておらんでしよう。恐らく今の田村先生のお話ようであればインフルェンスを与える立場にはないと思います。私どももそういう立場にないことは了承いたします。併し法違反があるかないか、或いは人権の蹂躙の事実があるかどうか、従つてその人権が守られ或いは人権が蹂躪されるような事態がないことを期待するということは、これは法律を制定するだけでなしに、法律が守られることを期待する国会として、当然な仕事だと思うのであります。一応調査もいたしましたが、調査の結論というものは、法律違反が或いは法律蹂躪がないように期待するということは、これは争議とは関係なしに、私どもが評議をしても何ら差支えないことだと思うのです。そういう意味でそれらのものを含んで理事会で御相談願うということならば、その点は了承いたしますということであります。
  131. 田畑金光

    田畑金光君 これは話を承わつておりますが、この委員会において統一された意思を明らかにすることが何かしらこの争議に対する委員会の介入とか或いは国会の不当な干渉のごとく発言もあるようでありますが、私は非常な誤解だと、こう見ておるわけであります。例えば水害があつて農地がつぶれた、或いは橋が流れた、そのような場合に農林委員会や建設委員会がそれぞれ委員会を以て政府当局に対し速かなる復旧についての措置を講じるように、或いは予算措置を施すべしという意思表示をなす場合と、労働委員会が当然労働政策の一環として出て来たような問題について政府措置に対してこれを更に促進するよう委員会としての意思を表明すること等は何ら私は変りはないことだと、こう思つておるわけであります。丁度私は水害のあつた場合と今回の場合は同じようなことであつて労働委員会がこれだけの国際的に或いは国内的においても重大な問題について何らの意思表示もしないというようなことは、国会の国政調査権、委員会の審議権、こういうような面からいつても、これは非常に遺憾なことだと考えるわけであります。飽くまでもこれは委員会としての当然の権限によつて我々はこの問題に対してどういう見方をするか、或いはこの問題の解決に対して現在労働省がいろいろやつておるが、これに対して我々はどうこれを見るか、これらの点については委員会の自主的な意思によつて当然統一意思を表明すべきだと考えておるわけであります。どうか一つ、ともすれば私は従前でも遺憾に思うわけでありまするが、労働委員会等で労働争議を労働政策の一環として取上げることが、いつも介入とか不当な干渉とか、こういうことで論議されておることは遺憾なことであつて、そういうような理解の程度は改めて頂きたい。これは当然のことだと思いますので、私は吉田君の先ほどの提議を速かに、まあ方法としては理事会においても止むを得んでしようけれども、一々理事会ということ自身が私は不満だけれども、あえてそれでやろうというのであれば反対はしませんけれども、当然措置されて然るべきだと、こう考えます。
  132. 赤松常子

    赤松常子君 私もちよつとお願いしたいのでございますけれども、たびたび言われておりますように、今後の問題は決して労働争議じやないのであつて、それ以前の人権問題なんでございます。それがたまたま職場に起きたということなんであつて労働委員会としてもこういう恥しいことを一日も早くなくするという無論意思を表明するのは当り前だと思うのでございまして、是非ともそういう観点において、方法理事会にお任せいたしますが、内容は是非そういう意味を持つた結論にお願いしたいと思うのでございます。早く解決を望むという結論にお願いしたいと思います。
  133. 田村文吉

    田村文吉君 前言申上げた通りで、理事会において善処されんことを望みます。
  134. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) では理事会で一応……。  それから実は明日のことでちよつと御相談を申上げたいのでありますが、明日は一番重要な失業対策の問題を議題にするわけであります。で只今委員長は最も密接な関係のあられる通商産業大臣大蔵大臣委員会出席要求いたしましたところが、はつきりした理由もまだわかりませんが、只今状況では非常にむずかしいような雰囲気にあるようであります、出席せれることが。
  135. 吉田法晴

    吉田法晴君 どつちが……。
  136. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 両大臣とも。私はこれは甚だ遺憾なことだと思いますので、私も努力いたしますが、一つ委員におかせられましてもそれぞれ……。速記をとめて下さい。    〔速記中止
  137. 栗山良夫

    委員長栗山良夫君) 速記をつけて。  これで散会いたします。    午後五時二十三分散会