運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-04-22 第19回国会 参議院 予算委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十二日(木曜日)    午後三時十六分開会   —————————————   委員の異動 四月二十一日委員田中一君及び小林孝 平君辞任につき、その補欠として、山 下義信君及び江田三郎君を議長におい て指名した。  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            小野 義夫君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            鹿島守之助君            白波瀬米吉君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            岸  良一君            中山 福藏君            村上 義一君            江田 三郎君            岡田 宗司君            亀田 得治君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            加藤シヅエ君            相馬 助治君            曾祢  益君            山下 義信君            苫米地義三君            武藤 常介君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    通商産業大臣  愛知 揆一君    労 働 大 臣 小坂善太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    経済審議庁総務    部長      西原 直廉君    経済審議庁調整    部長      松尾 金藏君    外務政務次官  小滝  彬君    大蔵政務次官  植木庚子郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省為替局長 東條 猛猪君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十九年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)について質疑を行います。質疑は先般の委員長理事打合会申合せにより順次発言を許します。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行について……。この審議に入る前に、この予算案の前提として重要な資料を要求してありましたが、提出しておりません。特にこの審議の一番重点となる資金計画について要求してありますが、出ておりません。この資金計画、かわからなければこの予算案審議する意味がないので、その点どうされるのですか。
  4. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長より催促いたします。成るべく早く出すように催促いたします。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 早くつて、今日これからやるのでしよう。私のほうで質疑する時間の前までに一つこれを出すようにお手願配います。
  6. 中山福藏

    中山福藏君 あらかじめ申上げますが、首相神経痛でいられるから、座つたままお答えして頂いて結構です。どうかその机をこちらの首相の前に置かれるように……。
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今日はよさそうですから……。
  8. 中山福藏

    中山福藏君 私は時局多端折柄首相が日夜御心労になつておるということは十分お察しするのでございます。併しながら憲法等六十五条によりまして、内閣行政権を行使し、六十六条によりまして議会に対して連帯して御責任、かあるという立場を明記せられておるような次第でございますから、国民を代表する国会議員といたしましてこれより質疑を試みたいと存ずるのであります。  第一に、私が首相にお尋ねいたしたい事柄は、現在日本国民全体が昏迷の渕に沈んでおるというのか至言ではないかという社会情勢になつて参りました。従つて内閣の閣員の方々の一拳一動は人心に非常なる影響を及ぼすということを痛感せざるを得ないのであります。而してこの御点から申しまするならば、犬養氏のとられました検事総長に対するこのたびの態度並びに指揮権の行使というものかその運用の上に非常な疑惑を招いておるということは首相御存じ通りであります。従つてこの国民疑惑を解き、内閣の威信を保持する上におきましても、或いは内閣の包蔵しておりまする信念を披瀝する上から見ましても、その根拠というものを明示されるということが最も肝要でないかと思う次第でありますか、これに対して内閣総理大臣はとういうお考えをお持ちでございましようか。申すまでもなく、日本検察制度というものはフランス治罪法から出発しておると私は考えておるのであります。フランス革命ののちには、この検察制度司法制度というものは両分されておるのでありまするけれども、治罪法の二百七十九条を読んでみまするというと、当時検察制度というものは司法機関の一部をなしておつたものであるのでございます。而してこの検察制度というものは特殊の法務行政軍務ではありまするけれども、やはりこれは特殊のいわゆる司法機関の一部をかついでおるものであるから、できるだけこの検察制度そのもの国民の信頼の下に置くということが将来国家治安の上から申しましても、社会秩序の保持の点から言つても絶対に必要であると考えるのであります。でありまするから、この点について一つ政府の包み蔵しておられまする考えを、即ち犬養法相がかくのごとき態度をとりました理由というものを一応国民全体にお知らせになるほうが、内閣のためにも知は最もいいことだと信ずるが、首相のこれに対する御所見は如何でございましようか。
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。政府のこのたびの処置についてはいろいろ疑惑があるという、或いは又悪評もあるということはそうであろうと思いますが、併しこれは政府としては止むを得ずしてここに至つたのであります。という止むを得ざる理由は、今内外情勢から申して、国会に提出しておる重要法案是非ともこのあと残る会期において通過成立せしあたい、こう考えるものであります。これは絶対に必要と考えますから、その通過のためには止むを得ざることも刀んでいたしたい、せざるを得ないのであります。その事情の下に今回検察庁に対して指揮権発動ということに決定いた、したのであります。その行政上の責任については無論政府は辞するところではありませんが、政府がかく考えるゆえんに、逮捕せずとも捜査は継続ができる、又継續せしめるべきものと我々は考えておるのであります。又逮捕といつても、これが長い期間であるならとにかくでありますけれども、あと一、二週間あまりの会期終了のこのときに逮捕をして、そうしなければ捜査ができしないという理屈も私は実は承認できないのであります。逮捕逮捕捜査捜査、飽くまでも捜査をして、そうして、検察当局として納得の行く捜査をすることについてに政府は何ら異存はないのでありますが、併し国会終了間近い今日において、特に逮捕をしていいということについては政府としては異存を持ちたざる得ないので査あります。
  10. 中山福藏

    中山福藏君 犬養法務大臣は余り細かく頭を働かせ過ぎるのじやないかと私は考えております。大体政治というものは、いわゆる政治家手腕識見、力量の優劣というものは、物を見通す力がなくなつては優秀な政治家と言えないと思うのであります。ですから本汚職事件が起りました当初におきまして、犬養法相相当卓越した識見を持つておられますならば、事今日に及ぶということは大体洞察できなくちやならんと、こう考えております。その証拠に、総理大臣に御参考のために三月九日の予算委員会における私と犬養法相質疑応答を読まして頂きますと、私がこの検察庁法の第四条、第六条、第十四条というこの条項についきまいて、法務大臣検事総長に対する指揮権というものの範囲はどうかと質問を出した。これは私は誘い水をかけて尋ねたのです。これは私は必ずこの指揮権というものが行使されるときがあるということをそのときすでに予見していたのです。そこでこれに釘を一本打つておかなければならんというので質問したのであります。この質問の要旨はこういうふうになつております。「個々の問題については、検事総長指揮することができる。一般問題については、あなたは直接に一般検事指揮することができるようになつている、そこで検事総長を通じるということは、そのトンネルを通つて検事総長からあなたの意思というものが、十分下級の検察官に伝わつて行くのじやないか」と、こう言つておる。あなたは現在の経済、保安の問題、あるいは造船汚職の問題ということについて、将来国家のために汚辱問題等の腐敗をクリーニングする意味において検事総長捜査の手をやめろという指揮をなさることがあつてはいけないと思いますが、総理大臣の前で、国民にこれを行使しないということを誓うことができますかと言つて私は念を押しているのであります。ところが犬養さんはどう言つたかと言いますと、絶対にさようなことはないという意味のことを私に申しておられるのでございます。そういたしますと、これは犬養さんというかたはもう辞表を御提出なさつた以上は、三月の九日のこの委員会質疑応答から行きますと、止まることはできんことになつております。これはもはや大変な問題になつておりまして、憲法第六十六条で責任をにつきりと負わなければならん言辞をここに強く用いられているわけなのであります。だからこれは犬養さんが首相に今のような心配をさしてお気の毒だと考えておりますが、一体犬養さんは必ずおやめになるのですか。又今本会議で承わりますと、一応犬養右治から理由を聞かなければ、やめるかやめぬかわからんという総理大臣お答えのようでしたが、あつさり犬養さんだけはやめさせるような御措置をとられるほうが吉田内閣のためにもいいのじやないかとも考えまするが、如何なものでございましようか。
  11. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。実は犬養法務大臣辞職ということは昨日の夕方でありましたか、承知いたしました。又辞表も見ました。その辞表には都合によりと書いてあります。如何なる都合かということは一度確かめて、或いは政府としても進退を決せしめたいということを考えて、今朝も来てくれないかということを申してやつたのであります。実は昨日夕方私のところに来たいということでありました。多分辞表を提出して直ちにその都合なるものの説明に来られるつもりであつたのでありましようが、私はちようどそのとき約束をしておりまして時間がなかつたものですから、明日の朝来てもらいたい。即ち今朝来てもらいたいと思つてつておりましたが見えないものですから催促をいたしましたならば、次官の重要なる報告を聞くために午前中は来れないから明日会うということであります。従つてまだ私は会つておりませんが、併しながら放つておく……時間の都合もありますから、今日午後私が会わなくとも緒方副総理なり、何なりに会つて事情を聞くようにということを今丁度命じたところでありあます。そこで犬養君の都合なるものは私は承知しておりませんが、その都合を聞いた上で、或いは犬養君の意見を直き直き聞いた上で、国務大臣進退のことでありますから、そう軽々に処置はできませんから、私なりに或いはその他のものが聞いてその上で処置いたしたい、こういう政府考えでおります。
  12. 中山福藏

    中山福藏君 私は緑風会にいるのでございますから、できるだけ感情とか、世論というものに惑わされず、厳正公平にどうすれば国というものが栄えるか、そうして将来、すでに日本の低下した国威というものをもう一遍元の姿に返すかということから考えまして、できるだけ感情を抜いて御質問申上げたいと思います。大体あまり利口者国家のためにはならんです。私はそう思つている。やはり薩摩いも掘つて口にしやぶつたという大西郷のような朴訥な気持で突進する人でないと、この瀬戸際を乗り切れないということを普段から考えているのでありますが、どうも犬養さんおやられることは、私はあまり芝居が小さ過ぎると思う。本来から言えば、今日ここへ出て男らしく堂々と、なぜ自分辞表を出したかということをおつしやられるのが本筋だと思うのです。それでこそ吉田首相の御任命になつ法務大臣の資格があると私は考えております。それをやらないということは芝居が小さ過ぎる、ですから将来私はこういうことにつきましては、十分御関心を持つて頂きたいということを心からお願いするわけであります。なお昨日でありましたか、吉田首相は、自分政策遂行のために一路邁進する、内閣は総辞職しないということを御発表になつております。そういたしますれば、結果におきまして、内閣を改造するか、議会を解散するか、この二つの方法しかないと見ている。私は政治上のタイム・ギヤツプを生ずるということは現在の内外情勢下においてはいかんと考えているのでありますから、できるならば内閣を改造して、一意所信を断行され、そうして相当の時期に議会を解散せられるということがよかろうと考えております。若し内閣を改造して首相は外遊をされて、外から日本を見て、お帰りになつた後、当然議会を解散されるのがよかろうと思いますが、首相の御所見は如何ですか。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。これは将来のことに属するのでありまして、今日私からして、ここにあらかじめこういうふうに決意したとか、決意するとかいうことは断言しにくいことでありますが、只今のところはとにかく内外情勢から申して、政府としてはその所信を以て国政に当ることが国のためである、これは決して党利党略考えているわけではありませんが、なお今後政府政策としては一貫した政策以つて暫くやることが国のためと考えるものでありますから、それで辞職はしないが、その後どうなるか、今年の末とか、来年の初めどうなるかということについては、情勢の変化がありましようから、それは私はお答えはできませんが、只今のところ辞職はせずに、できるだけ政府としては重要政策実現に努力いたしたいと考えております。
  14. 中山福藏

    中山福藏君 れで大体首相のお考えはわかりましたが、今本会議で聞いておりますと、この問題について非常な非難攻撃を受けておられますけれども、政府答弁といたしましても、例えば国民思想に影響する今後の犬養法相のとられた行為、内閣のとつております行動というものは国民心裡に一種の暗影を投じていると思うのです。これに対して思想対策がありますか。先ず以てどういう処置をとられるか。吉田内閣の面目上からも是非速急に処理すべきでありましよう。面して国民の気分を更新されることが何より必要である、この点に関する御所見をお伺いいたします。
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。民心の一新なり、施政の一新ということは誠に結構なことでありますが、併しながら、これも緩急よろしきを得ませんと、却つて禍いを残すということもあります。政府は十分慎重な態度をとつて時局の安定なり、或いは又政策実現なりに努めたいと考えるのであります。これは甚だ抽象的でありますけれども、そういうお答えをいたすよりほかにお答えのいたし方がないと考えますから、一応抽象的な考えお答えいたします。
  16. 中山福藏

    中山福藏君 私の考えますところによりますと、現在非常に重要な法案がかかつておる、先ず第一に教育法案がかかつておる、先ず第一に教育法案というものは、今日も公聴会を開きまして大変な意見の相違を各公述人から述べておられますが、とにもかくにもこの様相から判断いたしましても、相当社会指導者以つて任ぜられる人人、いわゆる指導層のかたがたすらも、いろいろ違つた考えを持つておられると思うのであります。そこで私といたしましては、今後の教育法案というものは、国家の将来の運命を決する岐点になると、実は慎重な態度以つて毎日その議論を拝聴しているのでございます。そのさ中にこの事件が実は起こつているのであります。これを私は非常に心配して、左右両極思想を持つている人々が擡頭するのに絶好のチャンスを与えたのではないかと、実は心配いたしておるのでございます。それにつきましては、このために法案審議が遅れ、或いはこのために思わぬ突発事件でも惹起しなければいいがということで、朝な夕な実は心労している次第でございますが、私は首相がこういう事柄でございますが、私は首相がこういう事柄につきましてもいろいろお考えになつておる点がございましようが、思想善導の上から、こういうふうな政治上の事態が起こつているけれども、国民はこういうふうに向かつて行かなければならんという指針を、いわゆる白書をこの場合お出しになる必要があるのじやないかと思うのです。ただこのまま渦巻きの中に日本丸という船を乗り入れてぐるぐる廻つているだけじやいかんと思うのです。私は先だつて良心宣言というものを出したスミスという女代議士が米国におるということを新聞ちよつと読んだのです。良心宣言というのは誠に奇妙な宣言でありますけれども、やはりそれが国民一つの心の糧になるのじやないかと存ずるのでありますが、やはりこういう場合には、政府の向こうところを、毅然たる態度を以て出される必要があるのじやないかと思う。首相はこういう御処置をとられるお考えはございませんでしようか。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見は御尤もでありますが、いわゆる毅然たる態度はどういう方面に向かつてするか、政府としてはこれまで随分反対党反対もありましたし、いろいろな現に出しておる法案等については随分苛烈な反対もありますが、にもかかわらず、政府政策として考えたことは断然提出いたして協賛を求めておるわけで、私は政府としては今日まで躊躇あいまいな態度を以て政策を二、三にしたことはないつもりであります。汚職の問題にしても、これは単に新聞が書き、或いは誰がこう言つたというだけのことで、全貌については今我々は十分把握しておらないのであります。故に検察当局において捜査を続ける、これに対して何ら干渉はいたしておらないのであります。十分捜査をして、そうして全貌を明らかにしてもらいたい、こう申しておるので、政府としてこの際とるべき処置は何であるか、いわゆる断然たる処置はこういう方面にとれとおつしやるのならば伺いますけれども、政府としてはできるだけのことはいたしておるつもりであります。
  18. 中山福藏

    中山福藏君 そこで一遍逆戻りをいたしまして、逮捕の問題について最後にお尋ねしておきたいのですが、現在指揮権法務大臣が行使して、検事総長に一応逮捕を見合わせろということになつておりますが、若し相当の時期に、このたび是非ともこの逮捕が必要だという事態が惹起した場合、例えば犯人の逃亡証拠の湮滅という事態が起るというようなことに遭遇した場合におかれましては、犬養さんがおやりになるか誰がおやりになるか知りませんが、逮捕の許諾を与える指揮をなさる御所存でございましようか、そういう点は如何なものでございましようか。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答え申します。これは当然なことでありまして、是非とも逮捕いたさなければ捜査ができないとか、或いは又逃亡するという虞れがある、現に問題になつておる例えば佐藤幹事長の場合にあきまして、逃亡の憂いありということも言えず、又証拠を湮滅するというようなことは、あの地位においてそういうようなことを小細工を奔するということは、しもいたしますまいし、又できないことであろうと思います。それは逮捕ということについての理由については、政府としては了承できないのであります。殊に国会が一、二週間の間に終るという今日において、是非とも逮捕ということは政府としては考えられないのみならず、そのために国会の議案の審議が遅れるということは最も好ましくないことでありますから、それで一応拒否いたしましたが、将来においてどうという逮捕を必要とする事態が起れば、これは理由なくして政府は決して封否はいたさんつもりでおります。
  20. 中山福藏

    中山福藏君 更に一点だけ、外交官の経歴を持つておられますから首相にお尋ねいたします。このたびMSA協定の結果として、若し自由主義国家群太平洋防衛同盟というものができした場合を仮定して、先般衆議院においても相当論議されておりましたが、木村保安庁長官は、或る一部の勅負をやつて共同歩調をとらせるかもわからん、但し第一線には派兵を正しない、ただ内部協力をすることはあるかも知れんという発言をしていらつしやいます。そういたしますと、只今は自動車でもジープでも、これは一つの武器だとアメリカでは言つているのです。内部協力をするということになれば、これはやはり軍隊の一部即武力と見て差支えはないんじやないかという気もするのですが、そういう点は政府としてどう解釈をとつておられるのでしようか。この際首相におられるして、木村長官の言われることと同一のお考えを持つておられるかどうかということを伺つておきたいと思います。
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと御質問の趣旨がわかりにくいのですが、それは将来において、例えば防衛条約というようなものに入ることがあるかというお話でありますか、或いには海外派兵ということを考えておるかということですか。
  22. 中山福藏

    中山福藏君 木村さんはあるかも知れんというんです。そうして日本から派兵をするかしたいかという議員質問に答えまして、それは一部の人を派遣するかも知れん。併しながら、それは第一線にやつて戦わせるんじやない、併しながら内部にあつて或る一部の協力、こういうことをやらせるかも知れない、こういうことを言つておるんです。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは木村君の気持と言いますか、その当時の考え方は私は承知いたしませんが、併しこれは抽象的に申せると思います。海外派兵は約束いたしておりません。又太平洋同盟とかいうようなものに参加いたすつもりもなければ、又その考えは現在のところございません。
  24. 中山福藏

    中山福藏君 それでは時間が来ましたから……。
  25. 中田吉雄

    中田吉雄君 政局は最近異常に緊迫いたしています。国会がこれをどう裁くか、特に吉田総理がこれに対してどういうふうに対処されるかということは、そういうことに対して全国民関心はこの点に集中しておると思うわけであります。ここ旬日の動向というものは、日本議会政治民主主義にとりまして重大な試練であろうと思うわけであります。吉田総理とされては、自由党の総裁として、且つ政局担当最高責任者として事態を深く憂慮されておると思うわけであります。又総理の胸中においては、ただ日本の将来あるのみでありましよう。併しながら吉田内閣が最近にとられました動向というものは、それにもかかわらず、断じて国民か納得しないところであります。私は下数点につきまして、吉田総理に対して質問いたしたいと思いますが、率直なる答弁を期待するものであります。  先ず第一に、この政局の不安の一体根本原因はどこにあると見ておられますか、局面を打開しますためには、その原因について誤まりのない判断を必要といたすと思うから、先ずその点についてお尋ねいたしたいと思います。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。不幸にして現在の状態お話通り誠に憂慮いたすべき状態にあります。これは単に一つ原因ではなくして、いわば内外事情といつてもいいであろうと思います。経済のみではなく、財政方面においても、今世界的に不況が来しないか、或いは国内的にも、不況か来やしないかという憂えがあります。これをどうして打開するかということは、政府も予算編成等において十分考慮いたしたところでありますが、経済上及び財政上の内外の不安ということも一つの何であります。又最近においては汚職という問題もあり、これは誠に困つたことで、不愉快なことであのますが、この汚職の生じた原因については、私が説明するまでもなく御存じでありましよう。一つはこれは何と言いますか、法制上の不備もあると思います。言葉を換えて申せば、占領政策の行過ぎというようなことも一つの不安の原因になつておりはしないかと思います。無論占領政策当時においては必要な法制或いは法律であつたものが、今日においてはその必要がなくなつて、ただ弊害だけが残るというような事態がなきにしも非ずと思いますが、いずれにしても一番の原因は終戦後と言いますか、独立後において政局の不安と言いますか、絶対多数を以て国の占領中に生じたいろいろな不公平と言いますか、いろいろな弊害を打破するというだけの処置がとれたかつたということが私は主たる原因であると思うのであります。戦争に引続いて、そうして、占領中にいろいろな破壊と言いますか、建設もありましたが、その建設が破壊に類するようた建設があつたり何かして国民政府も困つておりますが、こういう妥当ならざる政策を、廃止するという力が、政治的力かなかつたこと、が、又今日の不安の主なる原因ではなかつたかと私は思うのであまります。
  27. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういう点も確かにあると思いますが、私は何と言つても、大変恐縮ですが、それは吉田内閣がとられました政策の行き詰りにあると思うわけであります。そうしての矛盾が端的に現われている数個の事情を先ず挙げてみたいと思います。先ず第一に、貿易の逆調であります。昨年度の輸入は輸出の倍にも及びまして入超は実に億六十万ドルの多きに達している点。第二番目には、そのため一時は十億ドル以上もありました外貨が八億二百万ドルになつて焦げ付いています。債権を考慮いたしますなら実際の保有外貨は五億六千万ドルに過ぎません。この九月には五億ドルを割るかも知れないという外貨の危機。第三番目に、従つて何よりも輸出振興が急務であるにもかかわりませず、この一カ年間におきます輸入の物価指数というものは一割一分も下つていますのに、輸出は逆に三・二%も上つて国際物価との開きがますます大きくなつている点。第四に、会社の交際費は一千億以上にも達し、又遊興費は二千億とも称せられております。政府はアメリカに頼り、財界は政府に頼るというふうに全く自助の精神が腐敗し欠如いたしまして、腐敗と汚辱が充満している点。第五番目に、世界情勢が明らかに冷戦から平和へと動いているにもかかわりませず、アメリカの要請と強圧に屈しましてMSAを受諾させられ、それによつて国論を大きく真二つに割つてしまつた等の、内治外交等における五年六カ月における吉田総理のこの政策の行詰りこそ私は最大の原因であると思うわけであります。こういう点については単に改進党や日本自由党に働きかけて多数派工作をされたりしても、私は政局の安定はしないし、日本の難局は打開できないと思うわけでありますこれは何と言つてもこれまでとられた政策の大転換が必要だと思うわけですが、ところが今度犬養さんの治安閣僚の職を解き、これを小坂労働大臣の経済閣僚と兼務させるというような点を以て見ましても、私は難局打開は到底できないと思うわけであります。例えば疑獄の起きました造船について見ても、造船のコストの七割二分は材料費であります。たつた一割三分が労働賃金でありますが、これを労働大臣が方にサーベルの圧力によつてコスト高或いは貿易の逆調を一切賃金にしわ寄せさせるという、吉田内閣の目指される方向を端的に持つていると思つて非常に憂慮しているわけですが、こういう点は如何でありましようか、伝え聞くところによると、芦田内閣のときに、その筋から加藤労働大臣に対して警察担任を要請されたそうですが、加藤大臣はサービスの労働省においてそういうものを兼務するべきではないという卓見を以て拒絶されたということですが、そういうことを総理から言われればへいへい言つて識見もなしにこういう受諾された年少な小坂労働大臣のためにも私は悲しみますが、これは私は勤労者階級にとつて一つの挑戦であると思いますし、なかなかこういうことでは事態が打開できないと思うのですが、そういう憂慮に対してどういうふうにお考えでございましようか。
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。小坂労働大臣を警察主管大臣にいたしたことを以て直ちにに労働者圧迫というふうにおとりになりますが、労働者を圧迫するために小坂君に警務大臣とと言いますか、警察を担当せしめたのではありません。これは小坂君が年少にしてよく勉強せられ、そうして浩瀚法律等についても十分研究せられ、又調査もせられるところに私は目を付けて担当を希望いたしたのであります。労働者を圧迫するために兼務をせしめたとおつしやるなら、これは甚だ、小坂君のために弁ずるわけではありませんが、少くとも我々の趣意ではないのであります。又MSAの問題についても、これは決してアメリカの圧迫によつてこのMSAを承結したのではなくて、アメリカの要請もあり希望もあるが、同時に日本としても要請もあり希望もあり、話合の結果できたのであつて、米国政府指揮命令によつてできたものでないことは、外務大臣においてもこれまで十分説明をしたろと考えております。
  29. 中田吉雄

    中田吉雄君 次に今回の問題についてですが、吉田総理は三月六日のこの予算委員会におきまして、私の質問に対しまして、造船疑獄に対して、現在問題は司直の手に移つて、当局は折角事態の真相を究明いたしております。事態全貌がわかつた場合においては政府としては厳然たる措置をとる考えであります。こういうふうに述べられているわけであります。ところが検察当局事態全貌を明らかにしようと思いまして、自由党の佐藤幹事長に対して逮捕請求の請訓をした際に、検察庁法の第十四条の指揮権の発動をされたことは、先に中山議員に対していろいろ言われました事情はありましようが、併し全貌を明らかにするということを、大きくそれに障害を立ちはだからせたものでありまして、我々の国会会に対する重大な私は食言だと思うわけであります。特に私はこの際吉田総理是非思い起して頂きたいのは、昭和二十三年十月三十日に芦町内閣が倒れたあとに、内閣の記者会見におきまして、こういうことを言つておられる点であります。最近の疑獄は日本国民の名誉を毀損すること絶大なので、その真相を十分究明し、その実情を日本のみならず全世界に向つて明らかにしたのち、日本の名誉を救うことに全力を仏わねばならん。その閣員の選定に当つては清節の人物を選んだのですが、今後疑獄事件を起こしたときは遠慮会釈なく究明するよう検察庁に対して断固として話しておきました。又これに対しては報道機関の諸君の協力を求めるという、こういうことを言つておられんのである。ところがそのの吉田総理が、検察庁総理が二十三年に言われましたことをやろうとしたときに、それに対して大きな障害を与えられた。又中曽根君の発言によつて、名村造船から石井、大野両大臣がそれぞれ百万円当てもらわれたというので、自由党は懲罰動議を出されたが、それを吉田総理の了解の下に撤回されて、そうして遂に戦わすして軍門に降つて、それぞれ百万円受諾したことを事実上承認されて、そしてそれに対して昭和二十三年に言われたような、そういうことに関係した者に対しては断固と処置をとるということをお忘れになつているわけである。元来検察庁法の第十四条は、検察行政か不正不当に行使された場合においてのみ発動されるべきものであつて、今回のように断じて内閣の延命策や党利党のために私は行使すべきものでないと思うわけであります。併しそれにかかわりませず、吉田総理が強硬に主張されるのは、本会議でもありましたが、やはりアリソン大使等からの強い要請があつたのではないか、又犬養さんの発言の中にもそういう片鱗が現われておるし、又巷間伝えられておるところによると、ロツクフエラー三世が大磯の吉田総理のところを訪ねているいろいろなことを懇請たやに伝えられて誤解もありますし、この際こういうことについて昭和二十三年を回顧されまして、吉田総理の御所信を承わりたい。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。二十三年、いつですか、記憶は十分あのませんが、併し所信においてはその通のであります。若し閣僚その他において、汚職があり、或いは又被疑すべき問題があつた場合には十分責任を糺す考えにおいては今日においても毛頭変つておりません。但しお答えをいたしますが、明らかにいたしますが、アリソン大使からMSAについて何ら干渉を受けたことはございません。これは私よりも外務大臣に十分お聞き願いたいと思います。それから又ロツクフエラー氏はこれは従来も懇意にいたしておるので、たまたま日本に来たからして夫妻を私の家に招んで食事を出したというだけであつて、そのときに何ら希望も要求も受けたこともなければ、註文を受けたこともなければ、私のほうから註文をいたしたこともありません。単に社交的に招んだだけのことでありますから、この点についてはロツクフエラー氏に直接にお質しになつても差支えありませんが、御質問のようなことはありません。
  31. 中田吉雄

    中田吉雄君 この際全国民が非常に注目しておるのですから、はつきりしたほうがいいと思うのですが、佐藤栄作氏の逮捕請求を認められなかつたこは、やはり重要法案に名を籍られておるのではないかという懸念が拭うことができないわけなんです。特に私は自由党の、名を言いませんが、こういうことを言つておるのです。実は中田君弱つた佐藤栄作君と池田勇人君が開き直つて、よし我々を見殺しにして、逮捕許諾の要求に応ずるならよろしい、逮捕に応じて一切党本会計をぶちまけようというふうに捨身の戦術をとりましたので、そこで遂に検察庁法の第十四条が発動されなくてはならなかつたのだ、こういうことを巷間に伝えられ、私も又実は吉田総理の党員で代議士である人から聞いて、信ずべき筋と称してもいいわけですが、我々としてもです、或いは古田総理相当無理を押切つて強行突破をやられざるを得なかつたについては、そういうところに原因があるのではないかと思うのですが、大変僭越ですが、その点はつきりして頂きたい。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう事実は私はないと確信いたします。又少くとも私の関するところにおいては、そういう話を聞いたことはありません。併しながら政府がなぜこういう処置をとらしたかというと、先ほどお答えした通りであります。
  33. 中田吉雄

    中田吉雄君 それからもう一つ佐藤、池田逮捕に関する重要なる問題は、この事件の核心を握りますところの日本郵船の常務取締役の雨宮謙次を海外に汚職隠蔽のために四月八日に逃亡さしておる点であります。これを幇助いたしましたのが外務省並びに大蔵省でありまして、その責任は極めて重大だと言わなくてはなりません。私はこの際大蔵省並びに外務省に対してです。雨宮氏の渡航員的、旅行の申請月日、外貨割当等について承わりたい。又海外渡航審査会の審査についてもはつきり承わりたい。又これは南米航路の運賃同盟に関する問題でこの運賃同盟にに日本郵船が加盟するかどうかは、実はその事務所は東京、大阪にあるのです。日本にあるのです。日本にあるのにわざわざ運賃同盟に加入するためにそういうことをやつておることは明らかである。更に私はこれが、佐藤、池田両氏が造船疑獄の本命であることは明らかである。この両氏に贈られました二百万円宛の問題、更にこの二百万円宛、更に佐藤氏に贈られた一千万円については、この雨宮氏が病気がちの浅尾社長に代つて全部彼がやつておるのです。この人なしにこの問題は究明はできない。そこで法務省としては直ちに彼が速かに帰国すべき勧告手続をとられるべきだと思いますが、この点如何ですか。
  34. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 外務省に関係するものをお答えいたします。これは四月八日に申請が出まして、そうして渡航審議会で成規の手続をとつて、為替管理法に関する大蔵省に関する分はクリアーされましたので、外務省は旅券法の規定によつて一般旅券を交付したものであります。中田君御承知の通り、第十三条をお読みになれば、こういう場合に旅券の下付を差止める条項は一つもないのでありまして、今申しましたような外貨の面につきましては、渡航審議会審議を経、そうして外務省の旅券の下付は旅券法第十三条によつて成規の手続でいたしたのであります。
  35. 植木庚子郎

    政府委員植木庚子郎君) お答え申上げます。日本郵船の常務取締役雨宮謙次氏の外遊に関しまして、これに幾らくらいの外貨を割当てたかという御質問と存じますが、割当てました総額は千六百八十四ドルでございます。そのおおむねの内容は、滞在費として一日二十四ドル、七十一日分、他に雑費若干というもので以て割当に相成つております。渡航の目的がどういうふうであつたかということにつきましては、御指摘のような問題があつたかとうかについては、大蔵当局は全然存じません。少くとも大蔵当局といたしましては、本件が海外渡航の審査会の御承認に基いて、この外資を割当てたのでございます。その渡航目的は、米国及び英国における、海外事務所の支店昇格及び海外代理店との折衝のために渡航するというように承わつておる次第でございます。
  36. 中田吉雄

    中田吉雄君 それは表面のことで、私よく調査して知つている。これは運賃同盟に加盟するために行つているのです。而も運賃同盟に入つているのは大阪商船とスペインのとブラジルのと三社なんです。そして輪番制でこの事務所が日本に置いてある。そして彼が出た一週間もしないうちに、日本郵船は運賃同盟に加盟させないという決定ができている。浅尾社長が、非常にそういうことをしては疑われるから出るべきではないというのを、いろいろな方面において打合せして出しているわけなんです。そういうことを、機械的にやると言つておりますが、革新陣営の海外渡航に対しては、何をやつているんですか。  次に、吉田総理にお伺いいたしたいと思うのですが、吉田内閣は、私調べて見ましたら五年六カ月の日本で一番長期な内閣でございます。併し又汚職日本政治史を見ても又最大の、これはもう最大の何であります。特に自由党の政調会長の池田氏等は、吉田さんのあとはおれだというので、もう造船から、砂糖から、外貨割当から、殆んどいろいろなものから、あぶく銭を掻き集めていることは、これは何と言つても弁護の余地がないわけなんです。佐藤幹事長もそうです。更に益谷総務会長も俣野からキフト・チエツクの二百万円をもらつておられることも、これにははつきりいたしているわけであります。更にもうリストに載つた人が数十名出ておるという、これは刑法に触れんかも知れんが、やはりその政治責任は私は免れんと思うわけなんです。従つて私ここに持つておりますマツクスウエーバーの職業としての政治を見ますると、政治家には三つの資格が必要である。その一つは、情熱である。その一つは、見通しである。その三は、責任である。成るほど吉田総理は、ここまで来ても政権にありつこうとする情熱においては、マツクスウエーべーの指摘する第一の点を持つておられると思うわけであります。併し第二の点におきましては、それは何と言われましても、私も岡崎外務大臣や重光さん等の話を聞いて見ても、それよりも遥かに吉田総理は優れているとは思いますが、併しながら事ここに至つて、米ソ対立する両陣営のうちに狭まれた日本が、アメリカに一辺倒して、内外共に多難になつて行き詰つたという見通しを誤まられた点、そうして汚職が充満しておる点については、やはり私は速やかに責任をおとりになるということが大切だと思うわけであります。特に私は吉田総理に一言紹介しておきたいと思う点は、伊藤博文氏、自由党内閣の前身である伊藤さんのときですが、取引法というものを作る際に、後藤象二郎氏が商人の請託を受けて京橋の木挽町の瓢屋というところで、暮夜ひそかに商人と会談して一ぱいやつて、たつた金側の時計を一個もらうことによつて、官紀粛正のために、彼は遂に弾劾の上奏文が天皇に達して、責任を負つているわけであります。こういう厳然たる態度をとつたからこそ、長い自由党の伝統が私は育くまれたと思うわけであります。そういう点においては、吉田内閣の下におかれても、やはり今やこの伝統に帰られることが私は何より必要だと思うわけであります。たつた金側の時計を一個もらうことによつて、官職を退くほどの峻厳な態度を持つた当時を私は思いますと、法に触れさえしなければ何をやつてもいい。あいつは運が悪かつたのだということでは、日本の前途はなかなか容易ならんものがあるのではないかと思うのですが、この点についてはつきり承わつておきたいと思うわけであります。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 同じことをお答えするようでありますが、若し事件全貌か明らかになつた場合においては、政府としては仮借なく処置いたしますことを重ねて申します。
  38. 中田吉雄

    中田吉雄君 それでは時間がありませんので、最後に……。自由党とされても、今二百三十名の過半数に達しない現状においては、何らかの局面の打開をされなくてはならんと思うわけです。私はやはりこれは先の中山議員とは反対に、何と言つてもこのあとの総選挙のときに打出した各党の政策は違うのだから、その際には総選挙をやつて、やはり信を国民に問うて、政界の再編成をすべきである、吉田総理にやめてもらいさえすれば保守三派が一緒になれるんだというようなことは、選挙をやらずに保守三派が政権にありつこうとするところの、現政局を混乱させるところの私は非常に重大なものだと思うわけであります。そういう点からして、もう吉田総理とされても、これほど行詰つたら、一遍吉田総理は二百二十名を提げて野党に下つて、一遍野党の冷飯を食つて、刻苦精励して出られることが……、私は自由党の悲劇というものは野党の悲しみを知らないことたと思う。もうこれほど混乱しても、又何とかして政権を盥廻しして、一遍も野党にならずに万年与党のようなことをやろうというところに非常に自由党議員の磨かれない点もありますし、私はこの点は吉田総理が、どう党の運命、日本の民主政治に対して対処されるか、私は今政界刷新というような美名の下にやられているのは、総選挙をやらすに、どうして保守三派が政権にありつくかという非常にさもしい根性だと思うわけであります。又自由党の唱えられているこの新党樹立というようなことも、やはり解散をやらずに、指導権を持ちながら政局を安定させようとする政権の盥廻しだと私は思うわけであります。そこでもう一遍私は昭和二十三年の十月九日、民自党大会において第二次吉田内閣を作られて、吉田総理が意気揚々と党員に訓辞された言葉をここに思い起して頂きたいと思うわけであります。それは、一昨年五月、反対党政局に立ちてより今日に至るの間、諸政とにかく我々の期待に反するもの多く、遂に昭電事件の暴露により政変を見るに至り、政府の面目、威信を内外に失するの醜状を呈したるは遺憾の極である。かかる結果を生じたるは芦田内閣の当初より無理を重ね、政権の盥廻しというがごとき、国民の納得し得ざる言動をあえてしたためである。民主政治においては、国民輿論の納得すべき行動をとるべきである。誠に自由党の諸君並びに吉田総理がこれを実践して頂くならば、政局の昏迷はもう直ちに展開できると思つて、我々としても拳々服膺すべきものだと思うわけですが、ところが吉田総理は、私はもつと筋を通した、政権に恬淡とされたかただと思つているのですが、少しこれも恐縮ですが、どうも長期政権から伴うところの出所進退を遂に誤まられて、どうも少しやつておられる行動が、焼きが廻つた言つては恐縮ですが、非常に吉田総理は六年近くも政局を担当された、私はフイリピンに行かれた東畑さんの子弟としてよく知つているのです。もう少し進退をはつきりされたほうが晩節を汚されない私はことだと思うのですが、この昭和二十三年十月九日の民自党大会の言葉を思い起しますと、今や自由党は政権の盥廻しを策しておられるものと思うのですが、これは吉田総理の言を以てすれば、民主政治においては国民輿論が納得しないところであると思いますので、恐らく私は吉田総理とここで対決するのはこれが最後ではないかと思うと、なかなかか感慨無量なわけですが、ここでやはり政局に対して四つに組んだ、私ははつきりした、もうそう駈引とか、腹芸というようなこともできんと思いまするし、そういう点をはつきりして頂くことは、やはり全国民か待望している点だと思いますので、この点お願いいたしまして、私の質問を終る次第であります。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。ここではつきり申してもお信じになりますまいが、私は政権の盥廻しなどというようなことは考えておりません。又国政は水の流るるがごとく、淡々として行くのが政界としてたすべきことである。その趣意で考えております。御批評は御自由であります。
  40. 山下義信

    ○山下義信君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、総理にこの際政局に対処する御信念を伺いたいと思うのであります。  清廉を尊び、潔癖を好む我が国民は、政局に対する内閣の出所進退に関しまして、ことごとく義憤を感じ、憤り正に心頭に発するものがあるのでございます。全国民は昨日来から騒然といたしまして総理を非難いたしております。政治への不信を痛烈に表明いたしておるのでございます。恐らくこの声は日を逐うに従いまして、燎原の火のごとく燃え拡がることでありましよう。その火はやがて吉田内閣を包み、総理を包み、世論の制裁となつて現われるであろうと信じております。このことは今日国民がどのくらい明朗政治を望み、どのくらい責任政治の確立を望んでおるかということを明らかに、示すものでございます。この国民の声、この世論の姿に目を蔽いましては、政治はないと思うのでございますが、総理は果してこの世論をどう見ておいでになりますか、又この世論に対してどうお考えになつておりますか、先ずこの点を伺いたいと存じます。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは議論になりますが、世論をどう見るか、これは一時の現象によらずして、相当時間の間に国民の帰趨がわかると思いますが、併しながら今日明日の新聞にこうあつた、あああつたということを以て、内閣進退を決することはできないと思います。併しながら内閣としては、お話のように、只今申したように、政権の盥廻しとか、或いは政権を、国民の声を無視して行動をするというようなことは考えておりません。これは民主政治の原則に反するので、輿論の帰趨に従つて出所進退をいたすのか、これが民主政治でありますから、その点については政府としては間違いのない覚悟をいたしております。
  42. 山下義信

    ○山下義信君 国民政府の今回取りました措置につきまして、その政情につき非常に鋭い批判を投げておるのでありますが、本日の本会議総理お答えになりましたことで、非常に不明朗な、不明瞭な点がございましたので、改めてこの席で伺いたいと思いまするのは、今回の検察庁逮捕許諾の要求につきまして、何か検察当局の措置か不当であるかのごときお言葉があつたと思うのであります。即ち検察庁のこの逮捕許諾を容るるというがごときことをすれば、警察国家の再現を見るがごとき体があるので、断固としてこの請求を許さなかつたのであるというお言葉であつたように思うのでありまするが、この点どういう御趣旨でありますか。検察当局のその措置に何か非があると政府はお考えになつたのでありまするか、明瞭に御説明を得たいと思うのでございます。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。ちよつと聞きそこないましたが、政府の、何か検察当局にやつたことに何か疑義があるということですか。
  44. 山下義信

    ○山下義信君 本日総理はですね、本会議答弁におきまして、この検察庁逮捕許諾の請求を、これを軽々に……、まあ総理のお言葉で言えば、軽々に容るるというがごときことをすれば、いわゆる警察国家の再現を見るようなことになるので、これはどうしても許すことができないので、法務大臣指揮せしめたのである、こういう御趣旨の御答弁があつたように思うのでございます。然らば検察当局の、今回の内閣に対する要求或いはその他の措置に何か足らざるところありと認められたか、或いは検察当局に非があるとお考えになつたのか、この点を承わりたいと思うのであります。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の説明について多少聞き違いがあつたのではないかと思いますが、私の言つた趣意は、逮捕をしなければ捜査ができないという考え方、これは昔の警察国家流の考えではないかというのであります。考査と逮捕ということは、これは逮捕ということは、人権の上から言つてみて重大なことであつて検察当局といえども成るべく逮捕せずして、身体を拘束せずして捜査を続ける、有効な捜査をなすということが検察当局としてなすべきことであろうというのが私の本旨なのであります。私の考え方なのであります。逮捕しなければ捜査できない、例えば佐藤幹事長の場合において、逃げる、逃亡することもないのでありましようし、又証拠を隠滅するというようなことも、(「やつているよ」と呼ぶ者あり)その地位においてできないことで座ろうと思います。私は、逮捕しなければならんという理由政府としてはわからないのであります。逮捕せずして捜査を続けるということ、(「そんな馬鹿なことがあるか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)聞きたまえ、逮捕せずして捜査を続けるということが、新刑事政策からいつて、新刑事訴訟法ですか、何ですかの(「刑事訴訟法を知つてるか」と呼ぶ者あり)精神であると私は考えるのであります。故に逮捕許諾はできない。逮捕ぜずして捜査を続けろという政府考え方であります。(「そういう法律解釈があるか」と呼ぶ者あり)検察庁のやり方について非があるということを私は申したつもりではありませんが、併しながら、逮捕せずして捜査を続けるという余地はあり得ると政府考えたが故であります。
  46. 山下義信

    ○山下義信君 時間がありませんので、この点を重ねて質疑をするということは避けたいと思いますが、併し、総理のお考えのように、証拠湮滅の虞れがないということは、どういう点でそれをおつしやるのでございましようか。世人の常識、又検察当局の申しておりますることは、贈賄者側がすでに取調べを受けて留置をせられておるのでありまするが、その釈放の期間も迫つておるので、いわゆる収賄者側の被疑者として見られておりまする佐藤幹事長をこの際逮捕いたしまして、身体を拘禁しなければ、贈賄者側と口裏を合せて証拠湮滅を図る虞れがあると見ておるのでございますが、その点どうして証拠湮滅の虞れがないということを総理はおつしやるのでございましようか、この点をお答えを願いたいと存じます。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この事件は、今日に始まつたわけではないのであつて検察当局としてもずつと調べを続けて来たのであります。又佐藤幹事長のごとき地位におる人が証拠湮滅を図れば、これはすぐわかることであつて、隠密の間に証拠湮滅を図るということは、あの地位において私はむずかしいと思うのみならず、仮にそういうことを企てたとしても、そのことによつてみずから有罪なることを自白するというような結果になることなどを考えてみれば、佐藤幹事長の地位において証拠湮滅などというものは、常識において、図ることがないと考えるのが常識であろうと私は思うのであります。
  48. 山下義信

    ○山下義信君 私は総理と見解を異にいたします。そういう証拠湮滅を図る虞れのないような立派な高潔な人物でありまするならば、検察当局から溶疑を受くるような気遣いはないと思うのでございます。  更に、その次に伺いたいと思いますことは、率直に申上げまして、国民は、一日も早く吉田内閣政治道徳の責任を負いまして、速かに下野して、国民の意を安んずる挙に出ることを期待いたしておるのであります。若しかくのごとき出処進退をおとりになるということであるならば、国民は、吉田総理の意を了とし、国家のために如何ばかりこれを多とするであろうかと思うのであります。吉田総理の辞任を国民が追及いたしますることは、総理御自身には何らの問題がないといたしましても、その側近、その閣僚その他多くの与党がかくのごとき醜怪なる事実をいたしておることを総理は全然御承知ないとは考えられないのでありまして、それらの醜怪な事実の上に築かれた勢力の上に安座せられて、素知らん顔をして、これらを巧みに使つて政権の座にあられるということに対して、国民はその政治道徳の責任を追及する考を懐くのでございます。然るに、国民の常識と期待に反しまして、法を以て理を押え、権を以て法を押えて、無理に政権を維持せんとしておられるのであります。総理国家本位と称しておられまするが、その権力を濫用せられまして、飽くまで政権を維持しようとされる、かくのごとき無理押しを世間は清盛にこれをたとえておりまするが、かくのごとき無理をされることは、尋常一様では私はないと思うのであります。本日の議場で、平林君が、総理は狂気された、正気の沙汰であるかと申しましたが、変質異常者なれげともかく、私どもの考えでは、総理の御所信のほどが理解できないのであります。恐らくこれは常人の考え及ぶことのできない何か深い御所存のほどがなくてはならんと考えるのであります。そこで、一応国民がこうでもあろうかと考えまする点を私は率直に伺つてみたいと思う。総理は、重要法案審議のために佐藤幹事長逮捕請求は許さなかつたとおつしやいますが、重要法案が通過いたしました暁には、何らかきれいな態度に出るというお考えがあるのでございましようか。或いは、国民の一部にはそう考えておる者があるかもわかりません。申すまでもなく、名人の至芸は引込みであります。花道の引込みが千両役者の千両役者たるゆえんであります。総理は吉右衛門を大そう御ひいきだそうでございますが、吉右衛門は天下の名優でございます。昨今佐倉宗吾をやつておりますが、花道の引き込みはよたよたいたしまして、さすがは年は争われません。果たして吉田総理が千両役者であるならば、花道の引込みが私は大切であると思う。国民もそう考えておる者かあるかもわからん。重要法案審議が終了しました暁には、何らかの進退をお考えになつておるかどうかという点を伺いたいと思います。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。重要法案の通過に専念いたしておるのであありまして、通過した後にどうするかということはお答えができません。
  50. 山下義信

    ○山下義信君 更に、総理が飽くまでも無理押しをせられて、政権を維持しようと考えらるるは、ただ単に政権亡者の姿であるとは私どもはできるだけ考えたくないのであります。恐らくそれでは、この汚職事件内閣が倒れる、日本政府の信用、即ち日本の対外的信用か失墜することを恐れる。できるだけ外国の信用を維持したいという考え方から、こういう無理押しをされるのではないかと、かようにも一応は考えられるのであります。殊に総理は外遊の計画がある。承わるところによりますと、大変な、抱負を持つて出て行こうという御計画であるということでありますが、彼此勘案いたしまするならば、この外遊の計画実現まではどうしても対外信用を失墜してはならんという考え方から、この際少々無理をしてまでも政権を維持して行こう、こういうお考えであるかどうかということを国民の又一部には考えておる者があるのでありまして、そういう点につきましてどうお考えになつておりますか、承わりたいと思います。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私ははつきりお答えをいたしますが、無理してまで政権を維持する考は毛頭ありません。(「現にしているじやないか」と呼ぶ者あり)
  52. 山下義信

    ○山下義信君 対外信用の失墜について、何らか考慮を払われておられますかどうか、その点を承わりたいと思います。
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 対外信用の維持については、無論極力その維持に努力いたしております。けれども、今日日本の対外信用が地を払つて落ちたというようなことは事実でありません。(「その通だ」「お前だけだ、わからんのは」と呼ぶ者あり)
  54. 山下義信

    ○山下義信君 これは大変な総理のお考え違いではないかと思います。今日承るところによりますと世界各国、殊に米国本国におきましての吉田内閣の信用はゼロになつております。これは内外の認あるところでありまして、総理の御見解は大変間違つているのではないかと思います。  いま一つ伺いたいと思いますのは、これは私に善意を以て伺うのでありますが、汚職問題では絶対に辞職しないという考え方、これは幹事長、閣僚というようなものに波及する云々は別といたしまして、汚職問題ではできるだけ政変を避けようという考え方には、内閣の更迭には何らかつのはつきりしたルールを確立し、いわゆる吉田総理が多年お述べこなります筋を通すということについて何かお考えがあるのではないか。例えば内閣の更迭は、国会における不信任案の可決案或いは信任投票の否決というようなことよつて内閣の更迭をみるべきである、汚職問題等について更迭すべきではないというようなごとき一つ政局に対する、内閣の更迭に対するところの確たる御信念があつてこういうような出処進退に出られているのではないかというようなことも考えられるのでありますが、その点何かお考えがあるのでありますかどうか、承わりたいと思うのであります。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。内閣汚職問題のために絶対辞職しないというような考えは持つておりません。これはいわゆる、汚職問題が果して政府責任になるか、政治道徳上政府としては責任をとらなければならんということであれば、政府はいさぎよく責任をとり、適当な処置をいたすことは始終申している通りであります。又不信任案が可決された、国民内閣に対する信用といいますか、考え方如何によつて政府としては無論進退を決すべきが民主国の常態でありますから、これも政府としては、若し真に国民の信用が地を払つて落ちた、そしてこの吉田内閣の継続することがもう国家のためにならんという場合には無論いさぎよくやめます。
  56. 山下義信

    ○山下義信君 只今衆議院におきましてはまさに政府に対する不信任案を提出いたしております。これに関しまして聞くところによりますと、政府筋におきましては、頻りに解散風を吹かして恫喝威嚇をいたしていると聞くのであります。これはただに野党側に対して威嚇するのみならず、自分の与党側のいわゆる反吉田列に対してもこの種の恫嚇を以て不信任案に対処するということで対策を立てているということでありますが、こういうことは単なる威嚇でやつているのであるか、或いは場合によつては解散の挙に出るという本当の腹構えがあつてこういうことを言つているのであるか、私はこの点明確に伺つておきたいと思います。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。政府として解散を以て議会に対して、或いは衆議院に対して臨んで威嚇しているというような事実は毛頭ありません。又、考えてもおりません。
  58. 山下義信

    ○山下義信君 いま一つ考え願いたいと思いますことは、最近のビキニ環礁におきまする水爆の実験の問題でございます。これは総理がお休み中に国会におきましてもやかましく論議せられ、今日世界の問題になつておりますことは言うまでもございませんが、日本国民か身近にこの死の灰をこうむりました以後におきましては、非常に国民は、何といいますか、大きな衝撃を受けまして、すべてのものの考え方がまさに一変をしようとしております。殊に政府の施策、再軍備の問題等々に関しましては言うに及ばないのでありますが、殊に私どもが顕著に看取いたしますことは、アメリカに対する日本国民感情の悪化でございます。これにつきましては多くを申述べることは省略をいたしますが、政府とアメリカとのこの水爆実験に関しまする各種の交渉にも、全く手落ちもございまするし、その後におきまするところの善後措置につきましても、非常に不明朗な、点がありまして、これらに関しまして日本国民のアメリカ側に対するところの感情が非常に悪化している。同時に将来国民自身の生死の問題として、危険を痛感をいたしておるのでございます。私は広島を選挙区に持つているのでございますが、現に原爆に打たれました広島市民で今日四千有名の傷害者も残存いたしておりまして、アメリカに対しまするところの怨嗟の声は非常に根強いものがあるのでございます。又国といたしまして、これらの傷害者に対します何らの措置が、今日現に広島の原爆の傷者にもないのでございます。政府はこのアメリカの水爆実験に対しまして、これはただ単に実験ではなくいたしましてすでに実戦である、実演であろと考えてもよろしいのではないかと思うのであります。南太平洋におきましてはアメリカの水爆実験に、ソ連領におきましてはソ連の水爆の実験によりまして、双方から死の灰をこうむらんといたしまする日本国民は、実に非常な恐怖と衝撃に打たれておるのでございます。総理はこのアメリカの水爆実験に対しまして、或いは今後このような情勢に対しまして、如何なる考えをお持ちになつておられますか、この点をこの機会に伺つておきたいと思うのでございます。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 水爆の実験或いはその結果については、只今アメリカ政府においても、日本政府においても調査中であります。又将来どうするかということについては日本政府としては、例えば米国政府に対してこういう要求をするとか、ああいう要求をするというようなことについても研究中であります。研究の結果を、以て米国政府に交渉をいたすはずであります。
  60. 青木一男

    委員長青木一男君) 山下君時間ですから……。
  61. 山下義信

    ○山下義信君 承知いたしました。  いま一つ念のために伺つておきたいのは、この危険な状態に直面いたしております日本国民の将来の危険防止、生命の安全に対しまして、政府は何らかの対策をお考えになりますか、どうでございましようか。その点を伺つておきたいと思います。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。この水爆の問題は単に日本だけの問題ではありません、影響するところは日本ばかりではないのでありまして、この水爆の影響及びその処置等については、これはイギリス側においても研究いたしておるところであります。アメリカ側においても無論研究いたしております。只今調査した結果を以て如何なる処置を講ずるか、将来について、どうするかというようなことは、日本政府としては研究中であります。研究の結果を以て交渉に当るなり、或いは国民に警告を発するなり、適当な処置をとりたいと思います。
  63. 山下義信

    ○山下義信君 私の質問はこれで終りたいと思うのでありますが、最近フイリピンに対しまする賠償交渉の最中でございます。或いは行き悩んでおるといい、或いは妥結好転とも伝えられているのでございますが、私どもが不思議に考えられますのは、岡崎外務大臣が現地へ行つて比島政府と交渉いたして、大体二億五十万ドルの程度でほぼ了解がついたと伝えられておりますにかかわらず、最近におきましてはそれが四億ドルに増額をせられ、而もその増額の陰に働いた者は、いわゆる政商として札つきの人物がその間に介在いたして奔走いたして、旬日の間に一億五千万ドル増額をせられたということは、私どもといたしましては実に奇怪の感じを持つのでございます。
  64. 青木一男

    委員長青木一男君) 時間が経過いたしますから……。
  65. 山下義信

    ○山下義信君 承知いたしました。而もその関係者と申しますか、今回全権団一員に加わつておりますはつきり名前を申上げるならば、永野護君、その永野護君がすでに多くの財閥関係者と連絡をいたしまして、ミンダナオ島を中心として二十万町歩に亘るところの干拓の計画をいたし、その他種々なる利権を獲得いたしまして、これは或いは政府の御用をいいつかつてつておるのかどうか不明でありまするけれども、相当大規模の企業計画をいたしておりますることは事実であります。これらを勘案いたしまするならば、二億五千万ドルとほぼ外務大臣が行つて努力をして、そのあとに四億ドルに増額をいたし、比島政府を喜ばせた半面に、その間に大なる利権を獲得いたすというがごときことかありましては、本員は国家のために憂慮に堪えないと存ずるのでございますが、四億ドルに増額せられ、この種の人物が介在いたしました真相につきまして、この際明確に御答弁を願いたいと存ずるのでございます。
  66. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 管轄事項でありますから、私からお答えいたします。永野護君は前からフイリツピンのことについてはいろいろと興味もあり、又日比関係の改善ということについては特段の熱意を持つて努力をいたしております。そのためにいろいろの現地における計画等についても考慮をいたしておりまするが、今回の賠償の交渉に当りましては、この事業は実際に請負の会社はできることがあります。例えば沈船引揚をやりますれば、サルベージ会社に競争入札をさして、そうして運輸省の監督官が行つてこれを監督して沈船の引揚をやるということもありまするが、原則といたしましては政府の監督なり、或いはできるならば直接の事業としてこれを行いたいという考えでありまして、どの会社等に特別の利権を与えるということは全然ございません。又おつしやるような水田のことにつきましては、これはすでに農林省とも十分な話合いをいたしております。若しこの話がまとまりますれば、農林省の技師を派遣して行うと同時に、東大の教授と、米の増産について特殊の知識を持つている人を派遣いたしまして、政府の事業として行いまするから、個人関係は、この水田事業については全然入つて参りません。又その他の問題につきましても、でき得る限り政府の事業として行いますが、政府がそういう施設なり特殊の技術を持つていない沈船引揚のような場合には、これは競争入札をいたすよりいたし方ない、その場合には政府の監督官を派遣する、こういう仕組にいたしておりまして、決して成る特定の会社なり、個人は勿論でありますが、会社等に利権を与えるということは全然いたさないつもりでおります。
  67. 山下義信

    ○山下義信君 四億ドル増額の点は……。
  68. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 四億ドルの問題につきましては、まだ実はこれから正式交渉が行われるのでありまして、我々といたしましては、国民の負担能力もありまするから、でき得る限りこれを少額にいたしたいと、は考えておりますが、同時にフイリピン等の経済的な困難と、若し日本がこの賠償によりまして相手方の富を増すようなことができますれば、従つて今度は日本の品物を買い得るような情勢になりますので、これは日比両国のために望まいしことでありまするから、日本としてもでき得る限りのことはいたしたい。従いまして初めに考えましたよりも増額いたしましても、同時に今度は初めに考えましたよりも更にかなり長期に亘つてこれを行うということになりますれば、年々の負担においては、或る場合には当初の考えよりも少い場合もあり得るのであります。これらは勿論まだこれから交渉いたすおけでありまして、今まで伝えられておりますのは、下交渉の範囲でありまするけれども、こういう意味日本としてもでき得る限りのことはする、そうしてその代り金額が多くなれば期限が長くなるという関係で、只今交渉の方針を定めてこれから交渉を行おうと、こういう段階であります。
  69. 山下義信

    ○山下義信君 増額について永野君に関係せしめた理由を伺いたい。
  70. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この金額の点、期限の点等につきましては、現地の大野公使が責任を持つてとり行なつております。従いましてこの金が殖えたり期限が長くなつたりすることによりまする事業関係につきましては、水田の開発、或いは鉱山の開発とか、こういう実際の事業関係につきましては、永野護氏も専門的な知識を以てこれにアドヴアイスはいたしまするけれども、大野公使が全責任を持つて交渉に当つております。従いましてその報告に当りましても、大野公使がみずから東京に帰つて参りまして、自分責任において報告をいたしております。永野護氏はこれに対して実際の事業面における、これはこういうふうにやればどれだけの金かかかるとか、どれだけの時日を要し、どれだけの人が要るというような、事業面における実際のやり方についてのアドヴアイスを守る、そういうことでそれで今までの交渉をやつております。それで今度正式に交渉に入りますに当りましては、そういう知識も必要でありまするから、例えば金融の問題については日銀の副総裁、或いは経済の問題、貿易の問題につきましては商工会議所の会頭というような人々と一緒に、専門的知識を持つておる人として全権として任命いたしたわけであります。
  71. 山下義信

    ○山下義信君 政府答弁に不満の意を表しまして、私の質疑を打切ります。
  72. 苫米地義三

    苫米地義三君 私の質問は二点あります。一つは、この提案されております予算に関する件、もう一つは、政治道義に対することについて御質問を申上げたいと思います。  先ず最初の予算に対する関係でありますが、昨年総理大臣の特使で派遣されました池田氏が、経済援助ということを非常に強く期待して行かれたようでありますが、その現実は一千万ドルのお土産になつたと思うのであります。極めて少額でございますけれども、アメリカの好意ある贈与であります。この贈与を最も有効適切に使用しなければならないと思うのでありますが、従来工業助成とか、或いは経済力の増強とかいうような漠然たる目的でありますというと、とかく分散助成になりまして、その効果があとに残らないということがいつもあることなんですが、その点に対して私は持に総理大臣に伺いたい。(「大蔵大臣では駄目だぞ」と呼ぶ者あり)これをそのままこういうふうに雑然となりますというと、何に使つたか、どういう効果があつたかということがわからない。そこで私はかような好意ある贈与でありますから、何かそこに残る用途を考えなければならんと思う。即ち、我が国にある未開発資源の開発、それを用いるところの立派な事業、そうしてその事業が米国との関係において密接な関係を持つ事業、こういうようなことを考えて集中的にそれに使つたらどうか、こう思うのです。例えば最近世界の市場に現われました新金属でチタニウムというものがありますが、これは日本非常に豊富に存在しております。ただ比較的に新らしいので、まだ十分に開発されておりませんが、この新金属は非常に立派な性質を持つておりまして、将来飛行機の材料であるとか、優秀な機械の性能を増すとかいうような金属工業に関係いたします。又現在アメリカではこのチタニウムの要求が非常に多いので幾らでもアメリカが欲しいという状態であります。かようなものに利用しますというと、三十六億くらいの金でありますから丁度手頃だ、そういうものに標準をおいて、総理大臣がこれを御指定になれば、私はこの経済援助の目的がはつきりと出るのじやないか、こういうふうに思いますので、この使用に対する何か現在目標を持つておりましようか。或いはそういう構想の下に進められようとしておられますか。その点を最初に伺いたいと思います。
  73. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 一応私から御答弁申上げます。この一千万ドルの贈与、三十六億円の贈与につきまして、工業力を初めとして、一般の経済力の増強のために使われることに相成つておるのであります。併しながらこれが金額は三十六億円の問題でございまするので、そういうふうな協定に基いて会計は作りましたけれども、主としてこれに向けられるものは、何と申しましても、この性質上、いわゆる直接の防衛産業及びその関連産業並びに防衛産業関連産業を基礎付ける、工業力の質的改善と申しまするか、その改善に要するというようなものに充てられるということになるのでございまするが、これに協約にございまする通り、双方で意見が合致したものについてやろのでございまして、尤も合致すると申しましても、枠をきめるだけでございます。例えばそのうち何に何億円向けろかということだけなんでございまするが、実際問題として考えますると、三十六億円は余り大きな金額でございませんので、そういろいろなものに分散するということがむずかしいのではないかと思つておりまするが、只今のところ、まだ日本側におきましても話がまとまつておりません。更にこちらでまとまりましたら、一応こちらの意向を持つて向うと相談いたしまして、双方の合意ができ事業にこれを出すということに相成つておりまするので、この点まだはつきりいたさないということを申上げておきます。
  74. 苫米地義三

    苫米地義三君 今の御説明でありますというと、これが有効適切に使われないと思う。それでありますから私は総合的に総理大臣の意思をこれに決定付けて、その目標に使うようにさせなければならない、こう思うのでありまして、兵器産業にやりますというと、ばらばらになつて、それは兵器産業は利益になるかも知れませんが、有効にならないと私は思う。ですから根本的基礎産業にも貢献し、又米国の好意にも報いるというような点を着目され御使用にならんことを私はこの際、総理大臣は余りおわかりにならんでしようから、或いは御答弁は得られないかも知れません。さような希望を申して私のこの点に対する質問は打切ります。  その次に、政治道義についての関係なんですが、現在のこの経済危機と言われております今の情勢は、ますます深刻になる形勢であることは、日本国民全部がこれを認めておるのであります。そうしてこの経済危機はどこから起つたかと申しますれば、この間この席で大蔵大臣に私伺つたのですが、最後のところは、過去の政策の誤りである、こういうことを大蔵大臣の口から言われております。即ち従来のやり方では到底乗り切れない。今までの非はこれを認める、こういうことをおつしやいました。そうしますというと、この経済の危機、不況の深刻さというものは、これは日本特有でありまして、世界の各国は貿易市場を通して相当活躍をしているのに、日本が今非常な不況に呻吟をしている。それは日本だけの情勢でありまして、そのことは吉田内閣の従来の政策が誤つてつたのだ、こういうことに帰着するわけであります。このことを考えてみますというと、本年度の予算を通して、又吉田総理以下経済政策の演説に徴しましても、今までの政策は行詰つた、そこで百八十度の転回をするのだ、こういうことがはつきりされておるのであります。それに関する限り、日本は過去数年の間にどれだけ一体損をしたかわからない。あの思いがけない、まあこれは隣りの国の不幸なんですが、それに対しても経済的にはいわゆる朝鮮特需のあの一つのブームが、これさえ恵まれた環境にありながら、今日一体あの儲けはどこへ行つたか、そして外貨が、先ほど他の委員から言われたように、だんだん減つて来てしまう。そして国内は不況に呻吟し、生活は苦しくなる。この一体政策責任は誰が負わなければならないか。対外の貿易は、西ドイツ或いはイギリスその他の復興国との競争は到底太刀打ちはできない。こういうことのこの過ちというものは率直に大蔵大臣は認められると思うのですが、吉田総理もこれをお認めにならたければならないと思います。それは現実にこれを証明しているからでございます。而も吉田内閣が四年の間絶対多数の与党に支えられまして、思う存分にこれが政策をした、その政策か行詰つたということになれば、これはどうしても政治的な責任はそこで考えなければならんと私は思うのであります。先ずその点に対して吉田総理はどういう御感想を持つておられますか、その点を先ず第にお伺いしたいと思います。
  75. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 一応私から申上げます。私どもは日本の過去の経済政策というものは、これは当時皆さんの御替同を得ているものであつて、皆その当時の時勢の要求であつたと思います。特に朝鮮事変後におきまする昨年の予算等を見ましても、これは皆さまが御承知のごとくに、例えば国会においても増額の修正が絶えず出て来たり、又各種の立法も、予算措置の増額を伴うような立法が出て来る等、而もそれが大多数で通つて行くというような工合でございまして、これは私どもが長い間占領治下で非常に不自由の思いをして来た、その占領治下における不自由の思いをしつつも、例えば昭和九、十年に比べて、事業として見れば、工業生産指数のごときは一五二にも及んでいる。それだけの増加をしている。この間の経済上のことは、日本国民生活も消費生活も皆上つているのでありまして、この点に対する努力は相当私は貰われていいと思うのであります。併しながらこの世界的の情勢下におきましては、今までの政策を続けて行くわけには参りませんから、ここで二十九年度より私どもはこの内外情勢に対応するような施策に変えて来た、こういうのでありまして、私はそういう点から見まして、今日一兆円予算、いわゆる緊縮予算、これは第一に経済学者が言われている或いは金融引締めの強化、その他一連の対策をいろいろ講じいるのでございますが、やはりこれも時勢の要求でございまして、私の言葉が少し先輩に対して悪いかも知れませんが、責任問題にやはりお互いが十分これを話合いして、日本の国際関係の対策の一日も早く改善することが、責任を果すゆえんたりと考えて来た次第でございます。
  76. 苫米地義三

    苫米地義三君 私はそういうことを言つているんじやないのです。敗戦後日本国民に耐乏生活を求め、耐乏生活を訴えるということは当然なんでありますが、今日に至つてそういうことは逆なんです。だからこの前あなたもお認めになつたように、従来の政策は誤つてつたんです。これは過去のことは仕方がないのですが、そのことは誤つてつたら誤つてつたということをはつきり認めて、私はそれに対する政治道義というものは当然起る。その気持を持つで、政治しなければならないということを私は強調するわけなんです。時間がありませんけれども、吉田総理は、たびたび申上げるのですが、民主政治によい例を作つた、私はその功績には非常に共感を持つている、又敬意を払うわけなんです。今汚職問題とか疑獄問題とかいろいろ問題がありまして、そのものを私は余り責めることに今重点を置いておりません。むしろ政治政策です。政策の行詰りに際して政治道義をとる、こういうことが筋の通つたやり方じやないかと思うのです。先はど吉田総理に輿論の流れに従つて淡々として進退をすると、こう言われた。昨今の新聞を御覧なさい。どの新聞でも吉田内閣は退陣すべしということを言つておる。今全国の新樹をお調べになれば、吉田内閣はこのまま居座つていいという新聞は私はないと思う。そこにその輿論に対する政治家のとるべき態度がおのずから出ると思うのですが、余り無理をなさらないで、そうしておつしやる通り輿論の流れに従つて政治責任を明確になさることか必要じやないかとこう思うので、これに時間も来ましたから、特に私から警告を申上げて私の質問を終りといたします。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ず第一に吉田総理に伺いたいことは、本日の本会議において、検察庁法第十四条を発動するに至つた理由として、二つの点を総理は挙げておられました。その第一は、重要法案審議通過せしめる必要があるからということが第一、第二は、逮捕しなくても捜査できるではないか、逮捕の必要はないではないか、この二点であつたと思うのです。そこでこれらの点については、すでに同僚議員がいろいろな角度から質問をいたしましたから、私はただ一点これに関連してお伺いしたいことは、この重要法案というものと、それから十四条を発動することによつて逮捕許諾を拒否するその影響というものとどつちか重要であるかという点について伺いたいと思うのです。この重要法案については、これは各党それぞれの立場によて、この重要法案を通せしめることが日本国民にとつてためにならない、却つて不幸もたらすものであるという立場に立つ者もある。我々もそう考えておるのです。併しながら又この重要法案を通過せしめたほうが日本の国のためになる、そういうふうに総理考えられて重要法案通過せしめようとして努力していると思うのです。併しこれは各立場によつてその考えが違うと思うのです。併しながら十四条を発動することによつて国民に対して検察の威信を失つていわゆる遵法精神というものが失われる、或いは又これが道義上に非常に悪い影響を与える、又治安にもこれは事大な影響を与えるということを考えた場合に、どつちが重要あるかということは、これは軽々に即断できないのです。総理重要法案を通過せしめるために十四条発軌したと言いますけれども、私は道義が乱れ、治安が乱れ又法に対する威信が失われて重要法案も何もあつたものじやないと思うのです。従つて私に重要性に対する認識は総理はさかさまであると思うのです。逆である。むしろこの汚職、疑獄に対する疑惑を、はつきりと国民に解くということこそが一番重要な法案のはずであります。この点について先ず総理の御所を伺いたい。
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府はいろいろな観点を勘案いたして検察庁に対して指揮権を発動いたしたのでありまして、意見の相違があるかも知れませんが、政府所信はそうであります。(「もつと丁寧に答えろ」と呼ぶ者あり)
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 意見は、総理は法律案についてそうでしよう。併し十四条を発動せしめることについてはこれはですよ、政党政派を問わず、これについては全国民疑惑を持つておるんです。このためにですね、道義、或いは又治安、或いは法に対する威信、遵法精神というものに対して悪影響を与えると思うのです。私はこの重要性に対する認識が政権にかじりついて政権を維持するためにそういうことは誤つておるそういう点で私は非常に誤つて思います。併し時間かございませんから、この問題についてはこれで打切ります。  次に伺いたいことは、予算案に関連するのでありますが、日本経済の自立に関して、特需にいつまでも依存しておつて日本経済の真の自立はできない。で、成るべく特需依存から脱却するというこが、これまでの政府の自立経済の構想だと思うのです。その点について総理は、その考え方は、依然として特需にのみ依存しておつたのでは日本経済の真の自立はできないという考え方については依然として同じであるか。この点総理の、これは日本経済政策の根本の方針ですから、その点について先ず総理に伺いたい。総理、大臣に伺いたいのです。愛知君の意見はもうわかつておりますから要りません。
  80. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私が総理大臣に代つてお答えいたします。(木村村禧八郎君「御答弁要りません、要りません」と呼ぶ)いつまでも特需に頼つてつてもいられないということで、経済自立の達成を図つておりますことは御承知の通りであります。
  81. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 議事進行。いつも木村町君が質問すると総理は馬鹿に御機嫌が悪くなつてしまいますけれども、併しこういうところで、審議を尽すことがやはり国会の使命だと思うのです。委員長から御注意して頂いて十分に質疑応答ができるようにして頂きたいと思います。(「総理答弁」呼ぶ者あり)
  82. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えしたことを以て私の答弁とお認め願います。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますとやはり特需依存を脱却しなければならん、そうすることが日本経済の自立の根本の方針である。そういうことになると、今度出されているこの経済援助資金特別合評の予算はそれと矛盾すると思うのです。で、これによつてどういう産業にこれを出すか。先ほどの大蔵大臣の答弁ですと、日本経済の発展に寄与するように使つてもいいようになつておるけれども、結局は兵器産業のほうにこれを融資することになるだろう。従つてどういう方面に融資されるかという、これがまだ政府ではまとまつていないと言いましたね。考えがまとまつていないものを……。私は資金計画を要求したのでありますか、どの産業に融資するかわかつていない。この予算を審議しようといつても無理です。わからない。併し政府のほうでもまだまだまつていない。政府のほうでまとまつてもアメリカと交渉しなければこれはきまらないんです。こんなふうな無責任な予算の出し方というものは私は見たことがないんです。どつちのほうに融資するのかわからない。この点を明確にして頂きたい。若し兵器産業のほうに融資するとすれば、これは経団連でもはつきり言つておりますが、日本でこれから兵器産業を育成して行く場合、日本の自衛隊のみの需要では、工業単位が大き過ぎて、とてもそういう兵器産業を興すことは困難である。結局経済単位が大きくなれば採算が合いませんから、結局しまいには台湾とか朝鮮その他東アジア方面に対する兵器の輸出というものを前提とする。そうしていわゆる太平洋同盟議講ですか、いわゆるPATOのほうへ人つて行くということになつて行くと思う。そういう作業を経団連で、はやつて行かなくちやならん。従つてこの予算を認めて兵器産業のほうにこれを融資して、そうして、どんどん兵器産業を進めて行けば、結局日本は如何に、先ほど総理太平洋同盟機構なるものに入らんと言つていますけれども、経済的に見ると兵器産業のほうから入らざるを得なくなつて来るのです。この予算を認めるとそういう方向に行くのです。従つてそういう方向に行くか行かないか。それは資金計画を見なければわからないのです。又これが融資なのか投資なのかわからない。融資か投資かもわからない。又試作に対してこれを援助するのかどうかもわからない。聞くところによるるジエツトエンジンに対して試作に融資するということを言つていますが、ジエツトエンジンなんか日本で試作するかどうか。いうことも重大な問題になつています。アメリカのほうでは日本でジエツト・エンジンを作つても無駄であると言つています。必要なとにはおれのほうで貸してやると言つています。政府部内でまだこの融資について何ら意見がまとまつていないのです。従つて先ず政府部内のほうがアメリカと折衝する場合に、どういうことを……。
  84. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君簡単に。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どういう資金計画を今立てておられるのか。それがまとまらないというのはおかしいです。大蔵省と通産省その他意見が違うと言われておるのです。従つて先ほど苫米地さんも言いましたが、これを兵器産業がなかつた段階に融資しては、これはもう無駄金です。従つてこれに経済援助と書いてありますが、それならなぜ経済援助のほうに融資できないか。この点について私たつた五分しか質問時間がないのですから、もう繰返して質問することができませんから、詳細に御答弁願いたい。
  86. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) この三十六億円の金については、私どもは開発銀行を通してコンマーシアル・ベースで金を貸出すということを審議いたしております。考えております。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵省でしよう。
  88. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) そういうように政府としてこの点は一致しておるのです。考えておる。それから融資の対象としては、いわゆる防衛産業、関連産業並びにそれらの産業の基礎産業となる工業力の改善等に使いたい。使つてもらいたいという考え方をしております。それから又設備がほかの融資を伴わなければ、財政融資を伴わなければいけないような設備にはこれを出したくたい、かように考えておるのであります。更に又こういうような融資をすることによつてできるものが、将来日本でそういう需要がなくて、過剰生産に陥るといつたような虞れのあるものについてはこれを大体やらない。こういう基礎的な考え方の下に、今それでは、どの額をどうすべきかということについてやつているのでありまして、これは近く私どもが到達線に達するだろうと思いますが、併し今申上げたり、こちらで一応そういうような枠をきめまして、この枠について向うに申出ますると、向のほうでよく相談いたしまして、これは協約、規定でそうなつておりますから、双方の合意によつてとあるから、双方の合意によつてまあこれにきま。そうしますと、これは枠においてきめるだけでありまするから、個々の具体的の貸出につきましては開発銀行に融資する、個々の具体的なものについては、これは開発銀行が自主にコンマーシアル・ベースに基いてやる、こういうことになるのであります。この内容は御承知が願えると私は思うのでありまして、成るほどどの会社へどうするかということはきまつておりません。どの会社にどうするかも今相談中でありまするが、これはこの会計が意図しておるところはよくおわかりが願えるのじやないか思います。又向うと協定結んだ真意もこれで御了解願えるのではないかと思います。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一般質問のときに詳細のことは質問いたします。
  90. 千田正

    ○千田正君 私に与えられた時間が極めて少くて、総理に簡単にお尋ねいたします。これは今日本国民の注視の的になつておるのは、何と申しましても、このたびのいわゆる検察庁法第十四条の指揮権発効にによるところの問題と、もう一つは先はど同僚議員からも指摘されておつたのでありますが、原子兵器の実験によるところの被害の問題と、この二つの問題が今日本におけるところの、国民が最も関心を有しておるところの問題だろうと思う。それでこの二つの点だけについてお尋ねをいたすのでありますが、先ず第一に、先ほどから同僚議員からいろいろお尋ねしておりまして、総理お答えも随分伺つております。ただ一点、これは総理がしばしばこの委員会若しくは本会議において声明されたよう、選挙のあるたびに公明選挙、国民はすべからく代表を選ぶためには公明でなければならない。公正にして且つ明るい選挙をしなければならないということを謳つて、而もその公明選挙の結果と言いますか、自由党は大多数を獲得した。併し今日になつてみれば、このような要因が生まれて来たということを考えるという、どうも折角吉田首相が叫んだ公明選挙も公世準じやなかつたじやないか、むしろ羊頭を掲げて狗肉を売るごとき感をしておる。今日に至つてはいわゆる、不正選挙ではないか、そういうような疑惑を包んだ選挙を行われておつたということを今日国民が感じまして、非常に憤激をいたしておる。そこで私は同じ同僚議員のうちで、与党の自由党の諸君のために私は悲しむものは、こういうような問題が起きて、我々国会議員は郷里にも帰れない。国民の前にも我々は正しい選挙をしたのだという気持の上で、どうかしてこれは明るいいわゆるすつきりしたことを国民に表明しなければならない、こういうことを痛感するのであります。時たまこの問題がいわゆる選挙その他にからむころのいわゆる汚職事件として容疑を更に染めた、今度の場合の佐藤幹事長に対する逮捕の許諾を、重要法案が山積しておるからという理由の下に拒否されたことは、私は誠に国民の人として、又選ばれて来た国会会議員の一人として悲しむのでありますが、この際総理の常に言うておられるところの明るく正しくと、これが国民の代表でなければならないという信念から思つたならば、むしろこの法は運用せずに、その額面通りむしろ佐藤幹事長を正しい立場に置いてこそ、自由党の諸君も又国会議員の諸君も国民に対して応えるゆえんであると思うのでありますが、この点についてはつきりとしたお答えを頂きたいと思うのであります。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えします。この点はしばしばこれまで論じ来たつたところであります。政府はこれを政府指揮権を濫用したとか、悪用したとかいう考えは毛頭持つておりません。法律によつて与えられた指揮権を適用しただけの考えであります。(「それが濫用なんかだ」と呼ぶ者あり)
  92. 千田正

    ○千田正君 これ以上総理と論争しても時間をとるだけでありますから、もう一つの問題は、これは後ほど外務大臣からもお答え願いたいと思い、ますが、このビキニ環礁におけるところの水爆の実験によつてこうむつた日本国民の損害、それからその不安、これは単なるアメリカ側からの補償であるとか、そういう点で日本国民は満足できない。同時に世界の人たちも日本の立場に同情して、日本はどう出るであろうかというふうなことを、いわゆる血の洗礼しておるのであります。そこで先般も衆参両院におきまして、原始兵器のいわゆる禁止という決議を挙げて政府に対してこれを強く世界に表明することを要望しておつたのであります。これに対して総理としましては、外務大臣その他は相手関係諸国に対して如何なる考えを持つて、今後この問題の解決に当られる御意思であるかということを一言お尋ねしておきたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この問題につきまいては、前にもちよつと申上げましたが、政府としては、この両院の決議はそのままこれを翻訳いたしまして、なお私の名において、署名を以ちまして国連の事務総長に宛て届けるように沢田大使に直ちにその訓令を実行すると共に、関係各国にもその実情を内報いたしております。そうして国連側の手続といたしましては、只今インドのネール首相からも同様の趣旨の提案がなされておりますので、これをどういうふうに取扱うかという点で関係国と相談いたしているようでありまして、一説にはインドの提案と日本の提案とを一緒に同じところで取扱つてはどうかという説も出ているようでありますか、まだこの点は決定いたしておらんようであります。  更に、この問題は非常に困難な問題であることは申すまでもないわけでありますが、政府といたしましては、これに特に関心も深いアメリカ、イギリスとか、カナダとか、或いはインドとか、フランスとか、各国に対して同様の趣旨を説明いたし、その協力を求めるような方針で進んでおります。
  94. 千田正

    ○千田正君 もう一つ、これはもう総理はお帰りになつても構いませんが、外務大臣に特にこの際お尋ねしておきたいのは、昨日の夕刊に、すでに東大の病院に入院しておりますところのいわゆるこのたびの漁夫六二十三名は放射能のあの滲透の、治療が十分に行かなくなつて来た。すでに骨髄が冒されて来ている。生命は保証しがたい。こういう状況に立至つて来ている。こういうことを新聞紙上に発表しております。その後におけるところの、一体アメリカ側との日本側の要求なり、或いはその他に対する補償事項に対する問題というものに対しては、どういう一体進捗状況であるのか。国民はこの点に対し非常な不安を持つておりますので、この際、一体どの程度進捗しているのかどうか、まだ研究中なのか、どうなのか。  もう一つは、昨日入つて来た漁船でさえも、すでに一万カウントを数えるような、いわゆる放射能の被爆があります。こういうふうで、南太平洋におに対して非常に業者も不安に駆られつつある。この日本の漁場の圧縮に対しまして、アメリカ側に対しまして、むしろこの際北洋におるところの日米カナダ条約の中から特にアメリカに関する分に対しての、いわゆる弾力性のある日本の立場を要求する考えを持つておられるかどうか。そういうような方向によつて外交転換をし、日本の漁業の利益を守るということを考えておられるかどうか、この点をお尋ねいたします。
  95. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 補償の点につきましては、毎月勘定するというものは毎月計算をいたしてアメリカ側に提出いたしております。併しこれは根本的には被害者か将来どういう状況になるか、つまりもう一遍働けるような状況になるか、それともそうでないというような点をはつきりしませんと、根本的な補償の勘定は出て参りません。併し例えばまぐろを廃棄したという場合にはそれのまぐろの費用は勿論でありますが、それに使つた経費等はこれは計算ができるのでありますから、こういうものはでき次第先方に提出いたしております。ただ治療費その他も先方としては、応急的に、例えば毎月でも暫定的に出しても差支えないという意向でありますが、政府といたしましては、毎月々々治療費をアメリカからもらつて治療させるというようなことでなく、一時政府のほうで立替えまして、一定期間たちましたらアメリカに請求する、こういう方法で行きたいと思いますので、まだ金銭的な受理は行なつておりません。併し更に昨日の新聞にも出ておりましたが、アメリカ側として医師をよこしましたのは、あれは十分に治療ができずに帰つたわけであります。これは患者の気持等もありまして止むを得ん次第もあつたで、ありましようが、併し帰るに当りましては、アメリカ大使館は又この患者が考えが変わつてアメリカの医者にも見せるというようなときには、いつでも呼び戻すからそのときは遠慮なく言つてくれ、こういうことで一時帰つたのでありまして、まあ今後の状況によりましては更に治療の万全を期するために、アメリカの医師等の手伝いも求める場合吉もあろうかと考えておりま  それからこの漁場の問題でありますが、日米加三国の漁業協定の、この北太平洋の方面におきましては、これは話合いの余地は十分あると思いますが、ただ従来の経験から言いますと、実は距離の関係その他漁獲物等で日本側の船は余りあつちのほうへ行くことが比較的収益が少いという点で躊躇しておるようでありまして、これは業界の意向にもよらないと、こちらだけでというわけにも参りますまいと思います。そこで只今考え方は漁場が広くなる、勿論この船その他に放射能を受けて今後も廃棄処分をしたり何かするものができますれば、これは当然補償の範囲に入りますが、その他漁場が広くなつたためのその廻り道をしなければならんというようなこと、それから間接の被害につきましては、これはなかなか測定が困難でありますが、直接以外にも、多少間接でも測定のできる、算定のできるものもありますので、こういう点については、今後更にアメリカ側と山交渉いたしたいと思いますが、要するに漁場を失つた、これによりまする損失については十分なる措置を考慮したいと思つております。
  96. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。    午後五時三十八分散会