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1954-03-30 第19回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月三十日(火曜日)    午前十一時三十八分開会   ―――――――――――――   委員の異動 三月二十九日委員宮澤喜一君、中山壽 彦君、横山フク君、森崎隆君及び矢嶋 三義君辞任につき、その補欠として石 坂豊一君、泉山三六君、岩沢忠恭君、 藤原道子君及び亀田得治君を議長にお いて指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            小野 義夫君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            石川 榮一君            岩沢 忠恭君            鹿島守之助君            小林 英三君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            西岡 ハル君            吉田 萬次君            井野 碩哉君            加藤 正人君            岸  良一君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            岡田 宗司君            亀田 得治君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三輪 貞治君            三橋八次郎君            湯山  勇君            加藤シヅエ君            相馬 助治君            曾祢  益君            戸叶  武君            苫米地義三君            武藤 常介君            千田  正君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    厚 生 大 臣 草葉 隆圓君    通商産業大臣  愛知 揆一君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安政務次官  前田 正男君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁経理局長 石原 周夫君    経済審議庁総務    部長      西原 直廉君    経済審議庁調整    部長      松尾 金藏君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    外務省アジア局    長       中川  融君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    農林政務次官  平野 三郎君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    運輸省海運局長 岡田 修一君    郵政政務次官  飯塚 定輔君    建設政務次官  南  好雄君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件昭和二十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  本日は内閣総理大臣に対する総括質疑をなす予定であつたのであります。然るところ昨日内閣から本院議長提出された診断書によりますれば、吉田総理病気のため出席不可能とのことであります。つきましてはこの際委員長より政府を代表する緒方総理に対し確めておきたいことがあります。  即ち緒方国務大臣は、内閣法第九条に規定する内閣総理大臣事故あるときとして臨時総理大臣職務を行う国務大臣として本日委員会質疑に答えられるものであるかどうかを明らかにせられたいと存じます。
  3. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。内閣法第九条によりまして、臨時総理大臣職務を行う資格出席いたしておるのであります。
  4. 青木一男

    委員長青木一男君) これに対して発言の通告があります。中田君。
  5. 中田吉雄

    中田吉雄君 緒方国務大臣を以て代理に当てますことにつきまして、只今緒方国務大臣からの御弁明がありました。予算審議もいよいよ最後の重大段階に入りまして、而も予算案を初めMSAその他国の運命に関しまする重要法案がかかつておりまして、内閣総理大臣出席の必要は絶対的な要請と言わなくてはなりません。勿論我々も内閣総理大臣事故があります際には、あらかじめ指定いたしまする国務大臣臨時内閣総理大臣の職を行いますことについては、十分その内閣法の意義を認めるものであります。然るに吉田総理重要案件がかかつております際に、長期に亘つて国会を欠席し、而も全国民挙げて注視の汚職に対しまして、この問題をさして重要視いたさないとか、或いは福永官房長官をいたしまして、五月中旬には外国に出張するというようなことを放送されますようなことは、国会軽視も甚だしいと言わなくてはなりません。又昨今におきましては国会出席されず、その間に政界編成を云々されるというようなことは、我が参議院軽視も甚だしいと言わなくてはなりません。従いまして我々といたしましては、汚職の進展を見極め、或いは外遊の計画をし、政界編成の構想を練つておられますところの吉田総理は、内閣法の第九条に言うところの事項に該当しないではないかという重大な疑義を持つものであります。これは単に野党の我々だけの疑問符ではないわけであります。昨日緒方大臣吉田総理との会見の模様を自由党内に持ち帰つてお話なつた際におきましても、自由党内においてもこれが真相について多くの疑問が投げかけられているわけであります。そして麻生多賀吉氏は直ちに緒方新聞記者会談真相を確かめに参られ、更に本日は佐藤幹事長参つて、事の真相確めるという状態であります。医師診断に対しまする緒方大臣の誠意ある答弁にかかわりませず、我々が果して内閣法第九条に該当するかどうか、多くの疑問なきを得ないことは、吉田総理従来の行動と睨み合せまして誠に遺憾に存ずる次第であります。この際重ねて緒方大臣から多くの疑問を持つております全国民に対しまして、政治家の良心に誓つて吉田総理の近況について御報告されんことを質問するものであります。
  6. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。吉田総理大臣が本予算委員会の最初の総括質問終り頃から発病いたしまして、爾来約二週間と考えまするが、その開国会出席することができないのは、政府といたしましても非常に遺憾に存じております。今お話がありましたように、昨今予算案審議期間終りに近付いておりまするし、その他相当重要な法案があるときに、内閣総理大臣がみずから国会出席して質疑に応答する等、政府責任において発言する機会を持ち得ないことは誠に遺憾なことで、政府としても総理大臣病気回復の一日も早からんことを希望している次第でありまして、先週の土曜日に本委員会におきまして、総理出席予定を御質問になりましたときに、私は大体月曜日は出席可能ではないかということをお答えいたしたのでありますけれども、なお多少懸念に感じましたので、更に日曜日に大磯に参りまして、直接吉田総理大臣会見をいたしまして、その後の病状、又出席し得るか否かの見通しにつきまして確めたのでございますが、私が予想しておりましたよりも、総理神経痛は何と申しますか、ひどいようでありまして、神経痛という病気は御承知のように外からは何とも見ようがありませんけれども、その歩行の状態、或いは病状の経過から見まして、まだ相当かかるのではないか、尤もこの病気回復期に当りましては、なかなかいつどうなるということは予断できないということを常識的に聞いておりますが、私の見ましたところも、総理の直接私に申しまするところも、これは予算審議期間中に或いは登院が不可能なのではないだろうかということを感じましたので、今見てもらつている医師の予想、それから立会いました主治医の見方と合わせまして、差当り四日の出席不能の診断書を出しているのであります。四日経てば必ずなおるということも私は見通しが付かないのではないかと思つておりますが、そういう次第で、昨日私が総理大臣病状議長に御通告申上げた次第でございます。
  7. 中田吉雄

    中田吉雄君 いろいろ承わりまして、その事情につきましてはよくわかるわけでございます。併しその政治責任の問題でございます。私昨日直ちに国会図書館に入りまして、日本議会史におきまして本予算等を採決されるような重大な段階に際して、内閣総理大臣が欠席をした史上の例があるかどうかを調査したわけであります。全く吉田総理を以てただ一つの例外とするわけであります。この内閣法第九条の「内閣総理大臣事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣職務を行う。」というこの規定に該当するものが旧憲法下にあるかどうかを探して見ますると、それに当りますものは明治二十二年できました内閣官制の第八条「内閣総理大臣故障アルトキハ他大臣臨時命ヲ承ケ其事務代理スヘシ」というわけでありまして、ただあらかじめ指定するかどうかというだけが、現憲法下におけるものと旧憲法下におけるものとの差でありまして、政治責任については何ら変りがないわけであります。而も我が憲政史を繙きましても、この内閣官制が濫用された歴史は全然ないわけであります。臨時首相兼任を以て、首相臨時を以て、臨時首相を以てあてました例は、我が憲政史におきましては六回あります。第一回は原敬氏が兇弾に倒れました際に内田康哉氏がなられました。更にその次には加藤友三郎氏が第四十六議会に臨みまして、地租問題で国会と抗争いたしまして、そのときに精魂すつかり尽きた際に、やはり臨時代理を以て充てています。更に第二次の加藤高明内閣の際に若槻礼次郎氏を以て充てております。更に第四番目には浜口雄幸氏の際に、同じく幣原喜重郎氏が代理をされています。第五番目に犬養毅氏が五・一五事件の遭難の際に高橋是清氏がこれに当つています。更に岡田啓介氏が二・二六事件の際に後藤文夫氏、参議院に出ておられます後藤文夫氏が臨時首相代理をなされて、六回あるわけであります。これは臨時に命を受けて首相代理をやるわけでありまして、国会の承認を必要といたしていません。併しながら国会は、この六回すべてにおきまして臨時首相代理を以て充てた際には、重要な国会審議に支障を来たして代理を充てた際には、殆んどすべての総理大臣が辞職してその責任所在をはつきりいたしておるわけであります。(「そう」と呼ぶ者あり)我が国百年の運命に関しまする重要な法案審議に際して、我々は、この内閣法第九条を濫用をいたしまして、やがて国会が済みましたならば、のこのこ政界編成に出るというような、そのような政治に対する不まじめな態度に対しましては、断固許すことができないわけであります。緒方大臣とされてはいろいろ副総理とされて苦衷はあることと思いますが、ここで吉田総理を必要以上にかばわれることは、我が憲政史上に対して重大な汚点を残すものであると私は考えるものであります。政治家はすべて責任を負うべきであると思うわけであります。私はこの意味において真に緒方総理が先に申されたような酌量すべき事由がありとするならば、この重要な第十九国会の末期に出席できなかつた責任を負いまして、みずからその責任を負うだけの政治家態度を表明されるにおいては、今後の予算審議に対しても十分協力することをいとわないものであることを、そういう態度をはつきりいたしまして、緒方大臣の先般お会いになつた際の吉田総理の心境についてお伺いいたしたいと思うわけであります。
  8. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総理大臣は重要な会期に当つて国会特に参議院予算審議の際に出席できんことにつきまして非常に焦慮しておりまして、そのためにいろんな方面の医者を呼んでその治療を求めておるような次第で、その責任につきましては非常に痛感しておることは、私会議の際にも十分これを汲取ることができるのであります。ただ、今の御指摘になりました内閣法の九条によりまして、あらかじめ総理事故又は総理が欠けたときに臨時職務を代り行うものを設けておることは、それによつて自分に代つて国会質疑応答等にも不十分ではあつても間に合せ得るのではないかと、そこに多少の安心を持つておると考えられまするが、勿論その結果についての責任総理大臣においてとることは言うまでもないと考えます。
  9. 中田吉雄

    中田吉雄君 委員長もう時間がありませんからちよつとだけ……。もう御答弁はお願いしませんが、先に申しましたように憲政史では六回あるわけであります。ただ国会が、その臨時代理を認めているのは、すべて事情止むを得ないもので内閣がもう更迭する。そういうような事情前提に立つてのみ認めている。それをこの臨時代理というものを重要視した曾つての私は憲政のルールの高きを思いまして、私の質問を終る次第であります。
  10. 相馬助治

    相馬助治君 本予算今上ろうとしておる際に、昨日は本会議で、本日はこの委員会でこのようなことが論議されますることは、緒方総理を含めて、私は国会としては好ましくないことであり、且つ又遺憾なことだとかように思つておるのでございます。而も私は昨日の副総理答弁は、極めてまじめに真剣になされたことを十分に認めております。又只今中田委員質問に対しまして、このたびは吉田首相は確かに病気であろうと私も確信いたします。汚職風邪であるとか、このたびは神経痛が痛いのではなくて、政界編成の心痛であるというような噂は、噂であろうということを私はここであなたと共に感じます。そこで私はそういう前提の上に立つて、なお且つしつこいようですけれども、以下三点に亘つてお尋ねしなければならないのでございます。  只今も御承知のように青木委員長が異例の発言をなさつておられます。それは今日出て来ておる緒方さんは、内閣法九条によるところの内閣総理大臣代行をして責任を以て答弁をするものであるかどうかという資格審査が行われたわけであります。これは実に青木委員長の明敏な態度とお考えで、かような発言がなされて、あなたの答弁がなされておる。このこと自体に私が問題があるというのではなくて、このことはよく了解いたしましたし、委員長発言も時宜に適したものと信じます。問題は委員長をしてかかることを発言せしめたり、或いは又議長をしてかかること、即ち緒方さんの資格審査がなされるような意味合いのことがなされるということが今後に亘りまするならば、これは極めて不幸なることだと思うのでお尋ねしたいのでありまするが、内閣法九条の解釈によりまするこの緒方さんの資格でありますが、あなたは通常副総理と言われております。副総理という言葉が法規上に現われていないことは、先ほど触れましたが、明らかに事故あるときのみ、或いは欠けたるときにのみにあなたは総理大臣としての役目をなされるわけでありますが、その事故あるときとか、欠けたるときというのは、これは何人もわかりますが、事故あるときというのは、内閣自体の判断だけで差支えないものであるとようにお考えでございますか。
  11. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) そういう御質疑意味もありまして、委員長が特に私に確められたのではないかと思いますが、私が内閣法第九条によつて総理大臣事故のあるときに臨時にその職務を行うことは、これは前からきまつてつたのでありますが、今日ここに出席しておるのは、総理大臣に代つて答弁をするために来ているのかという意味で聞かれたものだと考えております。で総理事故があるときということは、これは総理の欠けたときというのと違つて、法文にもこの期間はございませんし、相当広く解釈できるのではないか。あらかじめという意味がありまするので、いろんな場合に総理事故を生ずるだろうが、その場合に臨時ではあるが、その職務代行するという意味内閣法規定がある。この点は旧憲法の下におきましては、内閣官制にも又その他の法律にもあらかじめ代理を指定しておくということはなかつたのであります。今回新憲法の下に内閣法ができまして、あらかじめ代理を指定して置くということは、如何なる場合にも代理し得るということであろうと私は解釈しております。
  12. 相馬助治

    相馬助治君 あらかじめ指定するというのは、事故があつたときには、あらかじめ指定した者がその職務代行するというので、そのあらかじめというのは指定されたというほうにかかるのが重いと思うのです。それで私が聞いておるのは、事故あるときということに関しましては、これは見解が分れると思うのです。即ち国会としては事故じやないのだ、その程度の病気は出て来たらいいじやないか、こういうことも言つているわけです。そこで事故あるときというのは内閣自体が認めればそれで差支えないのかと、私が聞いたのです。  で、次に聞くことを兼ねて聞くとおわかり頂けると思うのですが、その第一点お答え願うと同時に、仮に事故あるときということを、内閣自体が判断して、あなたが首相の役員を代行されたとしても、そのときは法的にはいざ知らず、政治的道義の問題として、国会に対し事故只今発生し、私が代行中であるということを議長発言を待たずして、政府自体が積極的にその意思を表示する責任を持つていると思うのですが、如何ですか。
  13. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) それは昨日本会議場で申上げましたように、私は総理事故があるときには、総理職務臨時代行する指定をあらかじめ受けておりまするので、昨日私は総理事故がある、総理病気事故があるということを議長まで通告いたしました。で私が総理に代つて答弁するときに、私の答弁国会がお聞きになるか、お聞きにならんかはこれは別問題であります。私は総理に代つて総理職務代行している以上、その私の答弁総理答弁として聞いて頂けるものと解釈して、質疑に対してお答えをしているのであります。
  14. 相馬助治

    相馬助治君 少しお答えに食い違いがあるのですが、代行している緒方総理答弁を聞くか、聞かんかということに私は問題の焦点を置いておりません。むしろ吉田首相に代つて緒方総理内閣総理大臣職務を以て発言されようとする場合、これを聞かないという場合には、これは緒方総理に対する不信任の問題で、問題は別個のなると思うのです。私が聞いておりますのは、その事故が発生したときに、もうちよつと具体的に申しますと、昨日の四日間出られませんという診断書の出しつぱなしではなくして、同時に文書を以て、かねて指名されている緒方国務大臣を以て内閣総理大臣職務を行わせるということを文書を以て正式に国会に通報すべきものではないか。法律的に言つているのじやないのです。執行部立法部との円満なる運用のために今後はそのくらいのことを考えたらどうか、こういうことを私は申しているのであります。
  15. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 確かにおつしやる通り法律上の問題ではございません。政治上の問題であると存じますが、これは結局事実の問題でございまして、その事故所在ということが何らかの形における御挨拶としてこちらに通じておけば、これはそれでいいのじやないかというふうに考えるわけでございます。
  16. 相馬助治

    相馬助治君 法制局長官官御苦労様でしたが、法的な問題ではなくて政治的の問題であるという前提をなさる場合には、今後わざわざお立ちになる御苦労をなさる必要はないと思うのです。政治上の問題はいざ知らず法律上はかくかくでございますということは、これはお互いに時間の不経済だと思うのです。私は副総理にお尋ねしております。それは私は法的にでなくて、今後この問題についてはどういうふうにするかということを含めてお聞きしておるのです。
  17. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私は内閣自体の決定でいいと考えておりまして、昨日もそういうふうにお答えいたしました。今もそういうふうに考えております。
  18. 相馬助治

    相馬助治君 ですから私は問題で、一つ一つのケースについて今度は問題が紛争して、一体事故があるとそちらでは言つているが、我々は事故と認めない。おなくなりになつたというような何人も疑うことのない事実は別です。(笑声)事故という場合に、その判定のために必ずなされることは与党野党において、今のように野党が紳士的な場合にはいいが、今後どういう野党が出て来るかわからない。そうするとこれに名を借りて二日でも三日でもこれをやる、私は不幸だと思う。いわゆる事故の認定の問題があると思うのですから、今むしろ私は積極的に事故ありとして意思を表示して、問題は今度緒方総理がその首相代行者として適任であるか、不適任であるかというところに問題が移つて行けば、むしろ問題は僕は簡単ではないかということから、而も文書によつてさようなることを通告すること自体は何ら内閣意思を拘束するものでもなければ、それがためによつて来たるところの不便はあり得ない。むしろ立法府である国会においては、委員長なり議長なりの取扱が便宜であるというところから、私はかようなる一つ希望的意見を裏に蔵しながら、あなたに協力しつつ発言をしておるわけなんです。
  19. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) そのやり方については、今お指示のようなことも理由があると思いますから研究してみます。(「関連々々」と呼ぶ者あり)
  20. 青木一男

    委員長青木一男君) 発言は各派一人にきめましたからこの際は……。    〔亀田得治君「法律上の問題でないという問題は非常に重要なんです」と述ぶ〕
  21. 青木一男

    委員長青木一男君) 相馬質問を済まして下さい。    〔亀田得治君「ああいう法制局長官答弁を許しておいたら大変なことになる、関連委員長、今度の委員会で初めてですよ、私は関連質問は一回くらい許して下さい」と述ぶ〕
  22. 青木一男

    委員長青木一男君) それじや極く簡単にやつて下さい。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 さつき法制局長官法律問題でない……、緒方総理答弁を私どもは求めたのは、単なる政治問題だがら副総理に出しなさい、こういう意味言つたのではない。そこを法制局長官が勘違いして、仰せの通り法律問題でないのだというふうなことで先ほど答弁を始められましたが、これは非常な間違いなんです。我々がこれは法律問題ではあるが、非常に大きな基本的な法律問題だから、単なる一法制局長官じやなしに、緒方総理が、このくらいのことははつきり肚に据えて置いてもらわなければならない。そういう立場からこれは副総理答弁を実は促した意味なんです。大変そこを勘違いされましたが、先ずこの点を一つ今後こういう勘違いをされんように一つ注意をしておきますが、そこで副総理にお尋ねします。これはあなたはさつきから相馬君の質問に対して内閣法の九条……、問題が二つある、あらかじめ人をきめておく、これは人をきめておくだけの問題なんですよ、あらかじめ……。この事故というものとは全然切離して下さい。(「そうだ、その通り」と呼ぶ者あり)これは昨日の本会議における相馬君や或いは岡田さんの質問なんかでもこれははつきりしておるのです、我々のほうは……。それはあなたもこれは法文読んで間違いのないことなんですから、もう事故の問題と切離して考えてもらいたい。それであらかじめそういう者をきめておくことは、これはもう法律できまつておるのだからいいでしよう。今問題になつておるのは事故という問題、事故、これは一方的にきまる意味事故ではないのです、あそこに書いてあるのは、私どもの見解は……。それはなぜかと言いますと、総理大臣国会において重要な仕事をしよう、こうしておる場合の事故なんでしよう。これは総理大臣の一方的な認定じやいけませんよ。総理大臣が何か魚を釣りに行く、そういう場合に病気だから今日は行かない、それは一方的でいいんだ、そういうものは……、そういう場合の事故の認定は……。ところがたくさんの人を相手にして重要な国政を論議する場合の事故、これがどうして主観的にきまります。この内閣法の立場から言つても……。
  24. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君簡単に。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 これはですね、例えば裁判所でもどこでも何か折衝をやる、交渉をやる、そういう場合には必ずお互いの資格というのははつきりしますよ。そういうものを裁判所でも否認する場合があるわけでしよう。相手方は否認した場合にはそれを立証しなければならない、もうこれは当り前のことなんです。外交関係にだつて同じことでしよう。
  26. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君簡単に。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 もうすぐ終ります。この国会の場合にも、あなたはこういうことが問題にならないときには、出たり入つたりしておるものだからそういう感じで考えておられるかも知れませんが、問題になつた以上はその事故というものは客観的にはこうこうこういうものであるということを物的な証拠を出さなければ、これは駄目なんだ。資格を裁判所で否認された場合には、必ず本人を呼んで来て私はこの人に委任をしたこと間違いありません、これを裁判所で一言言えば相手の弁護士はそれを否認することはできない。併しただ書面だけじやだめです。委任状だけではこんな委任状はどこで間違つているかも知れない。副総理は委任状と同じようなつもりでその例の診断書ですか、四日間もしたら効き目があるというような注射を裏付にした診断書、こんなものは証明にはなりませんよ。だから物的な証拠ということになれば、それじや一つこうこうこういう状態だから、予算委員会なり或いは本会議のほうから人を派遣して実物を見てもらいたい、(笑声)これが最も確実でしよう。私はこの事故というものはですよ、ここであなたが昨日から答弁されておるようなやり方でこれを考えたら、総理大臣の地位というものは非常にこれは軽く考えられる。大変なことですよ、いろいろな政治的な策動で思惑で怠ける、こういうことがあつてもこれを一体見逃がしたら、今後如何なる総理大臣が出て来ても前例になりますよ、前例に……。私はそういう意味でこの事故というものはそういう主観的な判断、そういうものじやないんだ。これはたくさんの人を相手にして……、
  28. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 ここで仕事をしておる場合には、その相手方も了承するような客観的な物的な、そういうものを示さなければその事故というものが成立しない。そういう意味で聞いておる。相馬君の質問もそれなんです。私もその点を一つ明確にしてもらいたい。私はそう意味ではこれは法律問題……。
  30. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 純然たる……、従つて先ほどの長官のあの答弁は取消してもらいたい。あの答弁が取消されない以上は飽くまでも別個に、……今委員長からもうやめろという催促ですから、やめますが、別個に私は飽くまでも追究いたします。大変な問題ですからね。
  32. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 診断書が何の証拠にもならんと言われますけれども、国会におきましては大体慣例を非常に重んじますので、従来信用のある医者の診断書というものはそれを一つ事故の証拠として認められておつた、そういう意味診断書を差出したのであります。ここへ病人を担いで来て見せるとか或いはこつちから行つて見るということは今までの慣例にはございませんから、決して今までの国会における慣例を無視したとは考えておりません。それから法的な解釈は法制局長官から申上げますが、今の内閣法においてあらかじめ国務大臣臨時必要な場合に総理代行するものとして認めた。政府としては、内閣としてはそれが今回の総理大臣事故の場合にも代行し得ると考えておりますが、国会は勿論独立しておられるのでありますからして、国会が別なお考え、別な批判をされることはこれは当然であります。そこで国会のお考えでそれを御決定下さることはこれは当り前なことだと考えます。今までそれを決をとるとかいうようなことはしませんでしたけれども、それによつて大体お認めができて来ておる、そういうふうに考えております。
  33. 相馬助治

    相馬助治君 私はあと二点聞くのですが、時間の都合上一遍に申上げます。昨日私は、首相が近く外遊されるが、その場合には内閣法九条によつて総理がもうきまつておるから、そのままいらつしやるのか、特殊な措置をとるつもりかと聞いたのですが、外遊そのものが未だ明確でないから別にお答えできないという御返事であつたのです。これは答えるほうがそういうふうに答えたことは聞き方の私が悪かつたと思うので、聞き直してみたいと思います。それは外遊するということが仮定であるとか未定であるとかいうことじやなくて、外遊することはあり得るわけです。立法府にあるものとしては、政府が好んで仮定のことに答えられないと言うが、我には、政治家の一人としては、仮定に起り得ることをも予想して、立法府にあるものは物事を考えて行かなくちやならない。そこで吉田さんが外遊するかしないかを私は問題にしておりませんので、一般論として、仮に吉田さんと限らずに内閣総理大臣が外場するというようなことが現在の吉田内閣の下に行われた場合においては、これは内閣法九条のうちの事故と解すべきだと思うのですが、その事故も程度の高い、名付ければ大事故だと思うのです。電話でちよいと通ずるところとは違うところだと思うのでありまして、この場合には何らか特別の措置をやるつもりか、こういうことを私はここでお聞きしておきたいと思うのでございます。即ちその場合にはいらつしやるところが外国という事実、それから期間がおのずからはつきりしておるという事実、そういう意味で、その場合には如何なる措置に出るかということが質問の第一点でございます。  それから亀田君が関連質問をしてくれましたが、これも聞き方がまずかつたのでしようが、私はこの内閣法九条を法的に解釈して問題がないと言つたのではなくて、私はそういう法的な問題はあろうかと思うが、政治的な問題としての質問をしたのでありまして、一言このことを弁解させておいて頂きますが、その次の質問は、こういうふうになることは、このような騒ぎになることはあなたの罪じやないのです。代理しておるものが気に食わないからこういう問題が起きたのではなくて、代理させようとするものが従前横着だから、イソツプの話じやないが、たびたび狼が出ると言つて嘘をついて、本当に狼が出たときには困つた話でありまして、今度は本当に狼が出ているのです。出ているけれどもなかなか了解がつかないのが今度の問題だ。こういう議事進行上の発言ですから、新聞は二、三行で片付けてしまいます。そこであなたは、この空気を吉田さんにお伝えになる御必要があろうと思う。お伝えになつても向う様は聞くか聞かないかは知らないけれども、将来はかようになることが幾分でも少くなろうという希望的観測を含めて、私どもは了解の仕方が違う。この空気をあなたは率直にお伝えになるかどうか。それからその際に、進んでこれは政界編成などということを、病床から号令をかけるべきでないということまで進んでお話しになるかどうか、平家物語を見てごらんなさい。清盛は褥の上から号令をかけ、やがて清盛の命が果つるとともに大平家が没落した。清盛のところに古田という名前を入れて、大平家というところに大自由党という名前を入れて、これはこじつけであるとは何人も言えないと思う。人様の政党のことは批判しようとは思つていません。従つてあなたは何と言おうと自由でありますけれども、こういう行動が非常に現在では問題を起しているという意味合いから、この際十分首相としては、病人らしくお振るまいになつたほうがいいのじやないかということも含めてお話になるかどうか、この点を私は念のために聞いておきたいと思うのです。後日のことを聞くようでありますけれども、この答弁というのは、野党側を納得させるためには非常に大きな意味合いを持つので、答弁の可能な限りで結構でございますから、あえて御答弁をお願いします。
  34. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたしますが、第一点に対しましては、昨日二度目の答弁ではつきり申上げたつもりであつたのでありますが、なお十分でなかつたかと思いまするので、繰返して申上げます。総理事故がある場合、それを代行する国務大臣をあらかじめきめてなかつた場合、即ち旧憲法の場合、或いは新憲法のもとにおきましても、その国務大臣の決定があらかじめ行われていなかつた場合には、臨時総理代理をつくつておつたようであります。でありまするが、仮に総理大臣の外遊があるといたしまして、その場合その総理大臣の外遊は事故であるかどうか、これは私はやはり事故の中に含まれるものであると考えます。従いまして臨時総理大臣職務代行する国務大臣をあらかじめきめられておる今日におきましては、その国務大臣総理職務代行する、そういうふうに解釈いたしております。
  35. 相馬助治

    相馬助治君 特別に措置は必要ないのですか。
  36. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 特別な措置は必要ない。それから第二点のこの審議の状況は総理に伝えます。それから病中にいろいろのことを考えてはいけない、これは思想の自由でありますので、(笑声)そういうお話が出たということは伝えます。
  37. 相馬助治

    相馬助治君 大体答弁は納得しますがたつた一点、副総理は四日間の診断書が出ているが、四日後になつてもなおつて出て来られるかどうかわからないという答弁はその通りだと思います。併しそれだからといつて、四日前になおつて診断書にはそうあるけれども、出て来る場合も予想されると思う。従つて明日にでもおいでになるように、そうしてこの騒ぎを静めるように、あなたからしかと申伝えて頂くということを最後に附言して私の質問終ります。
  38. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 承知いたしました。
  39. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君、簡単に、
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単と言つたつてきまつているじやないですか。(「議事妨害だ」「参議院審議を妨害されることはないよ」と呼ぶ者あり)副総理にお尋ねしますが、先ほど委員長から今回に限つて特に副総理内閣法九条によつて代理されるということを質問されました。それに対して副総理内閣法九条によつて代理すると言われましたが、今回に限つてこういう手続をとられたのですか、これまではどうしてそういう手続をとられなかつたのですか、その点をお伺いしたい。
  41. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えしますが、それは国会側の御了解の下にやつておつたと思う。総理大臣が何か出席できなかつた場合に、あらかじめ委員長或いは議運等でその了解の下でやつておつたように考えております。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今回特にこういうことが問題になりましたのは、ことの性質が重大であるからと私は思うのです。それはもうすでに中田委員も指摘され、大きく言えば国の運命に関するような、この一兆円予算最後のしめ括りの質問でありますから重大です。そこで私は内閣法九条によつて代理し得る思うのであります。法律的にそう思います。併し問題は政治的な問題であつて、これまで論議の中心は事故ある場合事故とは何であるかということが重要なんであつて、この事故について法律的には問題はないとしても、国民全体が成るほどこれは総理が今度の病気によつて予算のしめ括りの質問のとき出られないのは無理がない、こういうふうにはつきり国民が納得する事故の内容というものは必要であるのです。そこで私は事故の内容についてこれまで御説明ありましたが、ここで私は公式に御説明願いたいと思います。事故の内容について……。
  43. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今の総理国会出席し得ない事故病気であります。その信憑性を持たせるために医者の診断書を添えて慣例によつて提出いたしたのであります。先ほど委員長が私に対する御質疑は、私がいわゆる総理職務を代り行う国務大臣であることは承知しているが、この委員会出席するのは総理大臣に対する総括質問総理大臣に代つて答弁するために出席したのかという意味を問われて御答弁したわけであります。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その病気についてこについて六回の例を挙げましたが、これは国民誰もが、これでは成るほど代理せざるを得ないと納得するものです。ところが総理の今回の病気については納得できないものがあるから問題があるんです。それは相馬君が言いましたように、過去において総理はたびたび過ちを犯していると思うんです。今、狼の例を挙げましたが、そこで果して総理がこの重大な総括質問の席に出席できないほど今の病気が重いのであるのかどうか、それに堪えられないほど重いのであるのかどうか、こういうことが問題だと思う。それを我々が信用できないということは非常に遺憾です。それはこれまで総理が信用できないように我々をしていることに問題があると思うんです。私は非常に皮肉な質問をして恐縮ですが、ここに朝日新聞、これは緒方さんが前関係した朝日新聞に出ている三月二十八日です。横山泰三氏の漫画が出ているんです。責任能力を欠く病い、脳に大きな空洞があります、むかし狂犬病のワクチンの注射をしたことがあるんじやないですか、こういう漫画が出ているんです。我々は果して神経痛、これも多少あるでしよう。併しそれに責任能力を欠く病いがあるのではないか。この点について副総理に御答弁を願いたい。
  45. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをします。私は医者でないので人の病気を断定することはできませんが、私の承知しておる範囲におきましてはそういう脳に空洞のある病気はしておらんと思います。(笑声)(「辛い、辛い」と呼ぶ者あり)少しも辛いことはありません。病気が果して国会出席し得ないほどのものであるかどうかということは、これはそこが医者の診断によりまして、それならば四日のうちに必らず全快するかということは医者としてもあの病気の性質上わからんのではないかと思いますが、差当り四日間は不能であるというふうに医者が判断をいたしましてそれを提出いたした。その医者に対する信頼と、それから総理に対する信頼と両方で御判断を下さる以外に途はないと思います。(「どちらも信頼できない」と呼ぶ者あり)
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理代理として全部お答えすることができますか。総理のこれまで言明されたこと、その他について我々質問して緒方総理が全部お答えすることができますかどうか。
  47. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私は総理大臣は同一人格でありますから、第五次、或いは四次内閣だけではない、その前の発言も無論あろうと思いますが、どういう発言を過去においてされたかということは承知しておりません。従つて今ここでお前はつきり言えるかと言われるとはつきりお答えできませんが、私は総理に代つて総理職務を行うつもりで出て参つている以上、総理発言に対しては全部お答えするつもりで参つておりますが、その実際の場合に出食わさないというと、その前後の事情は知らないために十分なる答弁ができんこともあるかも知れません。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 例えば福永官房長官総理に会いに行つたときに総理汚職の問題、疑獄の問題は大した問題ではないということを語つたということが新聞に発表されております。そういうことについては果してそういうことを言われたのですか、又はこれは汚職の問題は大したことはないという御心境にあるかどうかということについて御答弁できますか。
  49. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総括いたしまして、私も新聞記者を長くやつておりましたから、新聞の批判をまじめにできると思いますが、新聞の記事の大部分は正確であります。併しどうかするというと聞き損いがあります。或いはそのニユアンスを伝えていない場合があります。或いは重点を取り損つている場合があります。従つて普通には新聞の言葉によつて責任のある答弁はいたしかねると申しておるごとく、自分がその問題を知つておる場合と知つていない場合とがありまするが、それは正確には今あらかじめお答えすることはできません。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この朝日新聞の三月三十一日の記者席の記事によりますと「〝あの調子からみると、吉田首相国会を欠席するのは、緒方氏がそうさせているのではないか〟というウワサまで出ている。」この点についてどうお考えになりますか。(笑声)
  51. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 新聞は私も経験がありますが、そういう囲いもののような批判の場合には、殊に短評のような場合には一番高度の皮肉を飛ばす癖があります。今のお読上げになりました記事につきましては全然そういう事実はございません。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私も新聞記者の経験がありますが、(笑声)こういう囲いものは非常に、これは第一ヒントなんです。いわゆる第一ヒントは全部は書きませんが非常にうがつたことを書くものです。そこに記者席の面白味があるのであります。又はつきりと全部書かないで真実を伝えるうま味があるのです。朝日新聞としては緒方さんがやはり出身でございますから、直接には書けないのでございましよう。こういう書き方は、朝日新聞でさえこういうことを書くということはこれはもうよほどの信憑性はあるものと我々は評価するのが常識であります。併し今の御答弁ではそういうことがないというから、で私は一応それは了承しますが、併しこういうことが朝日新聞、緒方さんの関係しておつた朝日新聞に出るから、この病気が本当かどうかということを又疑いたくなるのです。国民に対してはつきりよく納得の行つた形で代理の問題は処理しなければならんと思いますので質問するのであります。  それから更にお伺いしたいことは、これもやはり朝日新聞です。朝日新聞を引用しませんと信憑性がない。特に緒方さんの関係する朝日新聞さえこう書いているというのでお伺いしますが、保守合同対策は閣僚の与党幹部に対する検察庁の逮捕請求が必至であるという情報を最近ようやくキヤツチしたためと見ている。そこでこの造船汚職疑獄をもみ消すために保守合同を策している、そのために緒方さんが総理になるべく国会に出て来ないようにするために、神経痛になつたのをいいチヤンスとして、なるべくこれを国会に出さないようにして、保守合同を進めて造船汚職をもみ消す、そういうようなことから計画的に総理がここへ出て来られないのではないか、又丁度医者の診断によると四月一日まで出られない、この予算が通つてしまうときまで、丁度又計画的に一致しているのです。そういう意味で我々は事故ということに対して疑惑を持つわけです。この点についてはどうなんでありますか。保守合同の問題、それと関連する病気の問題は結局造船汚職をもみ消すためにそういうことがなされているのではないか、総理の欠席もそういうところから来ているのではないか、こういう疑惑を持つので、この点私はお伺いしておきたいと思います。
  53. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 良心を以てお答えいたしますが、そういう思惑は全然ございません。それから更に朝日新聞のためについでに弁じておきますが、朝日新聞が私のために筆を曲げているというようなことは全然ございません。私に対しても仮借ない批判をしていると思います。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はその朝日新聞でさえ、これだけ厳正の記事を報道しているという意味で言つているのです。私は朝日新聞の記事を非常に信用して述べているのです。  最後に伺いたいのは、昨日の理事会において私は副総理質問いたしたのですが、総理がこの重大な段階において出て来ない。而も四日間出て来られないと、この予算の問題は二日三日には効力を発してしまう、非常にぎりぎりなところへ来たが、政府総理出席できない、これに対してどういう立場でこれを対処されるかという質問に対して緒方総理はこう述べておられます。総理総括質問出席することは必要だが、予算委員会の最初のとき出席しているのだから、一応首相考えはわかつていると思う。(「けしからん」と呼ぶ者あり)総括質問答弁は私が代行して済ましたい、こう述べられておられるのです。これは一応総理が最初の総括質問に出ておられるから聞かなくてもいいじやないか、もうわかつているじやないか、従つて最後の総括質問は余計なことではないかというようにも我々は受取れるのであります。又副総理の御答弁も我々はずつと伺つているわけです。それならば首相代理答弁ももうわかつているということになるわけです。こういう我々に対する答弁は、これは総括質問をしなくてもいいじやないか、余計なことではないかと言わんばかりの御答弁になつているので、私は非常にこれに対しては不満なんです。ですから総理の言うことはもう大体わかつている、まだわからないのか、結局困らせるために質問するのではないか、こういうようにも解釈される。又最初総理に我々質問したときと現在とでは非常に事情が変つております。従つてこれまで一般質疑或いは分科会において我々が質疑した結果に基いて、ここで再び総理に質さなければならないわけでありまして、従いまして我々はどうしても総理出席が必要なのであつて、今後副総理が、大体予算委員会においては最初予算委員会出席して総理考えがわかつたならば、あとはその次の総括質問代理でいい、こういうようなお考えで今後も臨まれることになると、これは私は非常に不満であるわけであります。この点についての私は御答弁を頂きたいと思います。
  55. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) それは昨日予算委員の理事会で速記もなく懇談的な話合いのときに、そういうことを言うたかと思いまするが、まあ懇談であるから多少の罪を減ずるような意味で、総理は全然予算委員会に顔を出していないわけじやない、初めのうちに、相当今度は総理としては勉強して、質問答弁に当つた、で、そういうこともあるからということを言いましたけれども、かるが故に総理が出なくていいということは決して私は言うておりません。総理が出られんことは、政府としても総理としても非常に遺憾に思つておりますが、まあ病気が嵩じて、そしてあらかじめ代理があるから、その代理でどうだろうかという話をいたしたのであります。懇談会の席では少し割引きして聞いて頂きたいと思います。
  56. 青木一男

    委員長青木一男君) お諮りいたします。緒方総理出席を以て総括質疑を継続することに賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  57. 青木一男

    委員長青木一男君) 多数と認めます。よつて総括質疑を継続することにいたしました。  暫時休憩いたしまして、午後一時より会議を開きます。    午後零時四十二分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十七分開会
  58. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。  前回の委員会におきまして、森、松澤両委員より御要求のありました入場税その他予算に関係のある法案の衆議院における審議の状況につきまして御報告いたします。  先ず入場税法案及び入場譲与税法案の二法案につきましては、共に質疑を継続中でありますが、この二法案は表裏の関係にある法案でありますので、大蔵、地方行政両委員会の間で意見の調整中であり、昨日までのところ結論の見通しが立たないとのことでございました。  次にしやし繊維品の課税に関する法律案につきましては、現在質疑中であり、なお審議見通しが立たないとのことでございました。  更に次の予算に関係のある地方税関係の地方財政法の一部を改正する法律案、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案等につきましては、地方税制全般の問題として入場税についての結論を得た後に処置することとなる模様でございます。
  59. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 一昨日森委員からこの予算の基本となるべき重要法案は二十九日までに結論を出して頂きたいという申入れに対して、委員長のほうから御発言がありまして、これを了承するにやぶさかではありません。併しながら今も委員長が仰せになりましたように、この入場税関係の二法案並びに繊維税関係の法案は共に二十九年度予算前提となる重大な問題であります。政府はこの入場税の国税の移管に伴いまする税収百九十二億円の一割を徴収費として一般会計に繰入れまして、その他の百七十二億円は地方団体の人頭割で各都道府県に還付することに相成つておるわけであります。ところが現在衆議院における大蔵委員会並びに地方行政委員会審議状態を、速記録その他で我々が調べてみまするのに、今日なお且つ森委員が御要求になつたような早急な結論の出る段階にない。のみならず、二十七日においては、与党である自由党から、大蔵委員会において入場税の修正をすることは暫く差控えるから、与党勢力の脆弱でありまする地方行政委員会においては、これを否決するがごとき態度に出ないように、今暫く参議院予算審議の状況を見守つて結論を出して欲しい、こういうような要求が自由党の各委員並びに野党委員に対してなされておるという事実があります。これは森委員が一昨日御要求になつた趣旨に全然相反するものであつて、むしろ衆議院においては、特に与党においては、参議院予算の通過を見て結論を出そう、こういうような非常にずるい態度に出ておられる、(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)かように我々は了解しておるのであります。今そういうことはないという御発言もありますから、なければ非常に結構であります、その点につい与党の責任者から、この際その間の事情を御説明を願いたい。(「証人喚問」と呼ぶ者あり)特に本日の新聞においても、今そつちのほうからそういうことはないと言われるけれども、今度の緒方構想による保守合同の動きについては、日本自由党の河野氏からは、そういうことを今日やるなら我々は今交渉をされておる入場税法案、或いは繊維税その他の重要法案についても、斡旋の労をとらないというようなことを言つておられるじやありませんか。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは明らかにそういうことが論議されておる、交渉されておる段階だということをば物語つておるのであります。我々はこの際与党の責任ある立場におられる幹部の方から、この間の事情を聴取しなければ納得ができないのであります。委員長において然るべくお計らいのほどをお願い申上げます。(「その必要なし」と呼ぶ者あり)
  60. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長は今三輪君の御発言がございますが、自由党にこの際答弁を求めるという手続をいたしておりませんので……。(「理事会で相談してくれ」と呼ぶ者あり)
  61. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 委員長は森委員の御要求に対して、どういう手続をなさつたのでありまするか、もう一回重ねてお伺いします。
  62. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その問題に関連して、ちよつと私委員長にお伺いいたしたいと思つておりましたことは、只今委員長から御報告のありましたことは、どういう公式の性格を持つ御報告であつたかということであります。結局森委員発言は、委員長から議長を通じ、向うの議長を通じて衆議院における問題の法律案の審議状況というものを、聞きたいということであつたと思うのであります。そういういわゆる公式のルートを経て御入手になりました報告であるのか、或いは個人的に委員長が衆議院のどなたかにお聞きになりまして、得られた報告でありますのか、その報告の性格というものを先ず第一にお伺いしなければならない、こういうふうに考えておつたのであります。第一、その点を一つお願いします。
  63. 青木一男

    委員長青木一男君) お答えいたします。森委員の要求は、議長より議長へ照会するというお話でございました。それで土曜日、直ちに議長に連絡をとろうと思いましたが、議長は御不在でおりませんでした。なお事務当局に聞きますというと、もう土曜日の夕方であつて、関係者もおらない上に、議長の正式照会及びこれに対する回答という手続をとりますというと、議運にかけたりいろいろして、到底月曜日の回答には時期的に間に合わないのじやないだろうかというお話でございましたので、森委員とも話しまして、要するに実情を確めるのが目的でありますから、事務当局の連絡、加うるに私が衆議院の地方行政委員会委員長と面会いたしまして、親しく確めたところを、先ほど結論として申上げた次第でございます。
  64. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は本来正式の立場から委員長が報告になる場合においては、やはり少し手続が煩雑であつても、或いは議長から議長へという場合においては、議運にかけて正式な回答を求めるという手続をとるのが公式な手続ではないか、こう思うのであります。たまたま青木委員長が衆議院の中井地方行政委員長から聞いた話というだけでありますならば、それでは繊維消費税のほうはどうなつておりますか、或いは補助金等の特例に関する法律案の審議状況はどうであるか、こういう点につきましても、委員長は個人的にお聞きにならなければならない。私たちはやはり廊下で、おい君のほうはどうなつているんだという程度のことは、我々でも聞かれるのであります。少くとも参議院予算委員長として公式に委員から発言があつて、報告を求めるという場合におきましては、公式の手続をとつて報告されるのが当然である、こう考えます。その程度のことでありますならば、私たちとして廊下で聞いてもその程度の報告というものは得られるわけであります。この点如何ですか。
  65. 青木一男

    委員長青木一男君) お答えいたします。私も森委員発言通り議長より議長に照会し、回答を求める手続をとろうと思つたのでございますが、議長は御不在であつたことは先ほど申した通りであります。殊に土曜日の夕方の決議であり、これを月曜日に回答を求めるという時間の関係上、参議院の議運にかけて、議長が照会文を出し、これに対して衆議院が又議運を開いて議長の回答を出すということは、恐らく事務的に不可能ではないかということを考えましたので、発議者の森委員の了解を得て、先ほど申しましたような略式の手続で、私もできるだけのことをしたつもりでございます。
  66. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それではこの際改めて御提案申上げたい。と言いますことは、大蔵委員会でありますとか、或いは地方行政委員会、そういう委員長に参考のためにこちらへ来て頂いて、審議状況を我々が聞きたい、この点について委員長の善処をお願いいたしたいと思います。(「反対」「賛成」と呼ぶ者あり)
  67. 千田正

    ○千田正君 特に申しておきたいことがあるのですが、それは午前中の当委員会緒方総理からの答弁の最中、下院であるところの衆議院議員から、緒方総理を何か帰してくれるようにという意味であろうと思いますが、委員長に私語しておつた。少くともこれからの会議参議院としましては重大な会議であるので、緒方総理は生理現象若しくは食事以外には委員長の許可なくして出て行かないような方法をとつてもらわんと、本日の議事の進行は円滑に運ばないと思うのです。吉田首相代理でありますから、或いは吉田首相のように事故があるがごときことをおつしやられても、その点は十分に前以て委員会に諮られて態度をとられるようにこの点を固く確約するよう、緒方総理に申入れて頂くことを特に議事進行上申上げておきます。
  68. 青木一男

    委員長青木一男君) 承知しました。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今松澤氏の言われた問題ですね、これは委員会としてどういうふうにお取扱いになるのですか。その入場税なり、繊維税なり、或いは又補助金等に関する法律案などが衆議院のほうで通過するかしないかあいまいのうちに我々総括質問をし、或いは討論採決に入つていいのかどうか、この点は委員長予算委員会としてどう考えておるか。森委員がこの問題について委員長に要求しましたけれども、これは森委員だけの問題ではなく、予算委員会全体の問題です。最後に我々がこの予算に対し賛否を決する場合に、この法律案があいまいである、そういう前提で我々採決できるかどうか、この点は非常に疑問になると思うのです。そこで委員長において、この衆議院のほうで未確定の法律案に対して、予算委員会としてどういうふうにこれに対処すべきかについて諮つて頂きたいと思うのです。この点を明らかにしてから一般質疑に入り、ついで討論採決に入るべきだと思うのですが、この点について委員長のお考えを伺いたいと思います。
  70. 青木一男

    委員長青木一男君) 先ほどの松澤委員、それから今木村委員の御発言ですが、この問題は重要でもありますし、殊に二院制度の建前からどういうふうな連絡をとるかということも考慮すべき問題でありますので、いずれ理事会を開いてこの扱い方は相談しようと思います。(「先にやつてもらいたい」と呼ぶ者あり)
  71. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 さつき私が申上げました、自由党において衆議院の大蔵委員会並びに地方行政委員会に対して今暫くこの法案を上げることは待つてもらいたい、参議院予算審議の経過を見て、通過後においてなされたいというような申入れをされたということを申上げましたが、この真否について委員長においてお取調べの上本委員会に御報告を願いたいことと、もう一つはこの際大蔵大臣にこの問題に関連をしてお伺いしておきまするが、若しこれが本院において予算案が通過した後におきまして、入場税の国税移管が全面的に否決された場合、これは実におかしな恰好になるのでありまして、成立した予算の裏付けであるべき法律がないという非常に不可思議な現象が起つて来るわけであります。併しながら一歩を譲りまして、実行予算で若しその不都合を埋めるにいたしましても、なお且つ地方自治団体に対する調整分として五十億円の国が負担しなければならない金頭の問題が残つて参りまして、これを一般会計において計上いたして参りますると、これは明らかに一兆億予算の枠をはみ出ることに相成るのであります。又もう一つ、入場税の税率を修正しようという動きがあるようでございまするがこれが若しなりまするというと、これは大蔵省の推算によつては四十億円くらいの減収が明らかであつて、この穴埋めは一体大蔵省ではどういうようにされようとするのか、この点を明らかにして頂きたいと存じます。(「議事進行じやないじやないか」「議事進行だ」「質疑だ」と呼ぶ者あり)
  72. 青木一男

    委員長青木一男君) 只今の三輪君の御質疑のことは適当のときに政府の所見を述べるように取計らいます。議事進行でございますから……。
  73. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 これは議事進行でないと言われますけれども、こういう重大な問題を与党においては参議院予算通過を待つて大蔵委員会、地方行政委員会の結論を出すようにということを与党の委員なり野党委員に対して申入れをしておる。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)参議院予算通過を待つておる状態である。そういうことがなければ、ないように、私はさつき委員長にその間の事情をよく調査して報告をされたいということを申上げておるのであります。私の発言はあくまでも議事進行であります。(「議事進行じやないじやないか」と呼ぶ者あり)大蔵大臣の御答弁を求めます。(「答弁の必要なし」と呼ぶ者あり)
  74. 青木一男

    委員長青木一男君) 三輪君の御発言の内容のことはいずれ委員長において適当の機会に明らかにすることにいたします。  松澤君のさつきの御発言の理事会にかけて扱い方を相談する、その時期は委員長にお任せ下さい。本日いたしますから……。
  75. 戸叶武

    戸叶武君 総括質問に入る前に、このことははつきりときりをつけておかなければいけないと思います。
  76. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長はさように考えません。適当の時期に考えて理事会にかけて相談いたしままからその時期はお任せ下さい。
  77. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 私の要求の前段の分はどうしたんですか。
  78. 青木一男

    委員長青木一男君) それは後日確めましよう。これも時期はお任せ下さい。この審議中は困ります。(「どうせ理事会を開くなら先にやりなさい」と呼ぶ者あり)  岡田君の質疑を継続いたします。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ず緒方総理にお伺いいたしたいことは、日曜日に緒方総理が大磯において吉田総理会見をされまして、その際において政界編成の問題を具体的に論議されたその結果といたしまして、新聞記者会見において保守合同を進めるということを御発言になつたのであります。でこの問題は勿論自由党或いは対象となる改進党、日本自由党等の問題だけではなくて、これは国の政治全体に関係のある問題でございます。この問題が取上げられまして、新聞の伝えるところによりますというと、早急に行われるであろうというのであります。即ち国会が終了いたしました後に、吉田首相が外遊をされる前に行われるように伝えられておるわけでございますが、緒方総理はこの保守合同についての構想、それが又如何なる理由と申しますか、或いは必要と申しますか、それから保守合同を進めることをお考えなつたかということを先ずお伺いしたいのであります。
  80. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私は今の日本の再建途上における政治のあり方を考えまして、政策主張の相似た政党、保守勢力の間にもそれがありますが、それは国会運営の上から行きましても、又政治のあり方といたしましても、できれば結集して参るほうが政界を健全ならしめるゆえんでもあるとかねて考えておつたのでありまして、これはただ私が考えておるだけではなく、先般鳩山自由党と俗に申しておりまする、(「日本自由党だ」と呼ぶ者あり)今は日本自由党ですが、前は分党自由党と申しておりました、この勢力が復帰いたしました。その復帰するに際しましてその自由党の名において声明を出したのでありますが、その声明書の末尾のほうに同憂の諸勢力が必ずや大同につくことを期待して、今後も謙虚なる努力を続けるであろうということを書いてあつたのでありますが、その同憂の諸勢力が大同につくということは、今私が申上げた趣旨と同じ意味でありまして、そういう点から鳩山自由党の復帰以後も、続けてその方向に向つて謙虚なる努力を続けて参つたのであります。その一つの方策といたしまして、保守勢力の間に合同の歩を進めたらどうだろうかという話を総理といたしたことは事実でありますが、あの新聞に現れました大きな記事は、私に対して新聞記者諸君がいろいろの角度から質問した。それに私が否定したものもあり、肯定したものもあり、或いは黙秘したものもあり、その中から新聞記者諸君が多分に主観を交えて書上げたのがあの記事でありまして、今の保守関係の同憂の諸勢力が一緒になることを期待しておることは、鳩自の復帰以来少しも変りありませんが、どういう構想というところまでまだ参つておりません。
  81. 岡田宗司

    岡田宗司君 今政局が必ずしも安定しておらん、それは自由党内閣が衆議院過半数を基礎としておらんということが第一でありますが、同時に汚職の問題がかなり拡がつております。そしてこれが大分内閣のほうにも及ぶであろうということが噂されておりましたが、だんだん事実になつて現れ来ておるようであります。すでに、元通産大臣も逮捕せられておりまして、やがて又自由党その他の党からでもありましようが、逮捕許諾を求める問題も起るようでございます。そういうような関係で極めて政局は不安定な状態にある。そこでこの汚職事件から参りましたこの不安定を乗切るための一つの方策として考えられているのではないか。特に吉田首相が外遊をする以前に、この問題において本来ならば責任を負つてやめなければならんことでございますが、それを乗切るための一つの方策としか考えられないのであります。この問題が果して吉田首相をそのままの位置に置いて、そうして第何次かの吉田内閣を作るための一つの構想として用いられるといたしますならば、この汚職問題等についての責任を回避する一つの方法にしか過ぎないので、これは政局を安定させる途でもなければ、日本政界をきちつとしたルールに乗せて行く途でもないと思うのでありまして、この問題について副総理はどういうふうにお考えになつておるか。即ち汚職の問題について、これが相当拡大をして参りました場合の責任、それから総辞職の問題、この問題についてどういうふうにお考えになりますか。
  82. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 伝えられます汚職の問題は、私どもも多少の情報は承知いたしておりますが、まだ全貌を確かめるまでに行つておりません。いろいろ名前もお挙げになりましたが、その人が果して単純なる容疑であるか、或いはどういう結着になるかという見通しも持つておりませんし、検察の取調の確たる見通し政府としてもまだ入手いたしていないのでございます。従いましてその全貌がわからない限り、政府がどういう進退をするか、これは今から仮定の下に何とも申上げることができないので、私自身としましては、汚職の問題は政府に及ばないと信じておりますけれども、実際の見通しはまだ確かめておりませんから、その程度のお答えしかできません。
  83. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今緒方総理の御答弁ですというと、まだこの問題については何とも申上げられない。こういうことでございますが、なお後ほど犬養法務大臣がお出でになりましてからこの問題について更にお伺いすることにしたいと思います。今副総理考えられております構想は、まだ明らかにされておらないのでありますが、保守合同は単に連携とは違うのであります。これは改進党と或いは日本自由党と合同をして新らしい政党を作る、こういうような意味に取られるのでありますが、これは各党の今後の動き如何にもよるのでありますが、現在のところにおきましては、なかなかいわゆる緒方構想のように行かないように思う。そういたしますと、或いは一部がこれに参加するという形になりまして、却つて政界の混乱を来す虞れなしとしない。そこで改進党なり、或いは日本自由党なりにおきましては、この突如として発表された保守合同の問題について、特にいわゆる引抜きについて非常な警戒が払われておるようでありますが、こういうようなことによりまして、政界の混乱を企図されるとは思いませんけれども、併し保守合同、新党の樹立というような形を、若し一部の参加ということによつてこれが事実上の引抜きとなり、そうして政界が混乱するということになつたならば、これは初期の目的と違うが、そういうことはおやりになるつもりはないか、それをお伺いしたい。
  84. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 先ほど申上げましたように、新聞に伝えられましたところは、新聞記者が私にいろいろ質問をして、その間から構想を自分で立てた客観的の描写であるのでありまして、またどういう方法によつて鳩自合流以来の宿願を遂げて行くかという構想は持つておりません。でありますが、今お述べになりました改進党、日本自由党等がこの自由党側の希望に応じて一緒にならん場合引抜きをするかどうか。引抜きということは私は政界を却つて混乱させることでありまして、そういうことは毛頭考えておりません。(「関連々々」と呼ぶ者あり)
  85. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いいたしますのは、三月一日にビキニ環礁で行われた水素爆弾の実験の被害の問題でございます。第五福竜丸がああいう被害を受け、乗組員二十三名が放射能にやられた。これは単に日本だけの問題ではなくて、世界を驚かし、そうして世界がこれに対して非常な関心を持つに至つたものであります。そうしてこの水爆も、実験の今後の問題につきましては、或いはこういうような原子爆弾、水素爆弾の禁止を要求する声が一般にも起つて参りまして、又各国の政党なり、或いは政府におきましても、それらの意思を表明しておるものもあるのであります。イギリスの議会におきましても、労働党はこの問題を引提げてその態度を明らかにしておりますし、又インドにおきましては、ネール首相がこの問題について日本の漁夫の被害が極めて不幸であり、そうしてかような水爆の実験は今後禁止すべきだ、こういうような意見の発表もあるのであります。日本はかような大きな被害をこうむつて、そうしてこの問題は我々としても重大に考えなければならない。国民も又非常な関心を持つておるのであります。然るに政府態度を見ておりますというと、今までとりました処置は、まあアメリカに対しまして、第五福竜丸がどういう航路をとつて、いつ幾日どこにおつたかということ、並びにその被害の状況に関する覚書を送つただけでありまして、日本政府として正式にこの問題について何ら意思表明をしておらんのであります。この問題は単に放射能の被害を受けた二十三人の医療の問題だけではない。又船の賠償、或は代船建造、或いはまぐろの賠償というだけの問題ではないのであります。アメリカに対しましてもその賠償を要求するだけでは済まされない問題であります。私どもは政府が一体この水素爆弾の実験が日本と比較的近い、而も日本の旧領土でありまして、経済的にも密接な関係のありますビキニ環礁を中心として行われ、今後更にそれが何回か行われるでありましようし、又その危険区域が拡大されたことにつきまして、何らかの意思表示をする段階にありはしないか。もうすでに遅過ぎるくらいではないかと思うのであります。衆議院におきまして、或いは参議院におきましてもこの問題について院議を以て意思表示をせんとする状況にございますが、政府としては一体この水爆の実験、これの惨害からいたしまして、水素爆弾の使用の禁止の問題について何らかの態度を表明する意思があるかどうか。更に又この問題について今後アメリカにビキニ環礁と日本の重要な関係のある地域においてこの実験を続けることをやめてもらうことを申入れる意思があるかどうか。こういうような点についてお伺いしたいのであります。
  86. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 現在水爆はアメリカと同時にソ連でもすでに水爆の製作に成功しているやに聞いておるのでありますが、ソ連で水爆の威力についてどういう試験が行われておるかということは私どもにわかつておりません。この水爆或いは原子爆弾等のいわゆる原子力の問題は、これは最近の成功でありまして、これがまだ発達の途上にある。これを一方的にアメリカの試験のみを日本が禁止を慫慂するということもどうかと考えますので、これは平和的にも将来利用できるものでありまするし、仮にアメリカのほうが今の試験する場所を変えましても、ソ連のほうの水爆の影響がどういう形において日本に及びつつあるかということは実はわからない。そういう点もありまして、今日本からアメリカに水爆の試験の禁止を申出ようという考えは持つておりません。ただビキニ或いはその他の地方におきまして、将来こういう原子爆弾が試験されますることによりまして、例えば日本の漁業等が被害を受けるという場合のことも考えまして、この水爆の威力の実験の結果、海水或いは魚族その他にどういう被害を及ぼしておるか。又その影響はどれほどのものであるか、今回の、先般三月一日の水爆の試験の結果は、アメリカ自身すらもその威力の予想以上に大きかつたことに驚いておるような有様で、恐らくまだ十分の研究ができていないと思いますが、その研究の結果を待ちますると同時に、将来試験をする場合にはできるだけ早く予告をするようにする。或いは場合によつてはその試験の場所を変えさせるというような方法もありましようが、全体の問題といたしまして、水爆、原爆等の管理をどういうふうにして行くか。勿論日本も独立国として一つ発言権はあるわけでありますが、その発言権が、発言をする以上は十分に水爆、原爆等の研究もいたし、そうしてその発言が最も効果的である内容及び時期を選ぶ必要もありますし、その点については日本は研究の点におきましても遅れておりますために、今いろいろな角度から研究を進めておる次第であります。
  87. 岡田宗司

    岡田宗司君 水爆による被害は日本がまあいわば初めてこうむつたわけであります。原子爆弾も又私ども最初の犠牲者である。そうして我々はこれはすでに現実に受けている。而も四月二十二日はより以上の規模のものがなされんとしているときに、ここに相当関係の深い日本が何で政府としてこの問題について意思表示ができないか。ただソ連のほうでも持つているのだ、アメリカでも持つているのだ。どうもアメリカだけに禁止を要求するわけにはいかん。こういうようなことでは、それはもうアメリカのほうではなめてかかるだけである。もう一向遠慮会釈なくあそこでどんどんと大きな水爆の実験をやり、更に危険区域を拡大さして行くのであります。又、日本に原子力の研究をしておらないから、発言権がないと言われますが、こんな馬鹿な話はないのでありまして、私どもは被害をこうむつたこの現実に即して訴えることが一番大きな力を持ち、そうしてこれがやはり世界の世論を動かして行くことになるのでありますが、かように政府がおずおずしているということは、まあアメリカに対しての非常な遠慮、或いはアメリカがやることならば何でもよろしい。こういうアメリカ一辺倒の態度から来ているものであつて、甚だ情けないものである。こう思うのでありますが、これはまあどうもそれ以上お答えにならんからそこでとどめますとして、過日第五福竜丸の問題について政府は買上げる、代船建造をするということを言つておられたのであります。勿論この直接の被害を受けました人々に対する補償の一つといたしまして、第五福竜丸の買上、或いは代船建造ということは必要であります。併しその後これをどうするかという問題について本会議お答えになつておらん。アメリカへ引渡すのではないかということもいろいろ言われたのであります。アメリカでは水爆の秘密の問題からいたしまして、先にはその被害者の治療の問題につきましてもいろいろと言つて来ております。例えば日本の医者は治療だけやつておればいいのだ、その原因を突きとめる必要はないのだというような放言もなされております。或いはやれ日本の漁船がスパイに行つたのだ、或いは被害が誇大に言われているのだ、いろいろ向う側で聞捨てにならない発言をいたしております。船も引渡せという要求が来ておつたやに聞いているのであります。果して政府は買上げ後この船をアメリカの基地に廻航するなり、或いはこれをアメリカ側に引渡すという意思で買上げるのかどうか、その点をお答え願います。
  88. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 第五福竜丸を政府において買上げて適当に処置をするといすことはすでに方針をきめております。ただその買上の価格について今研究中でありますが、その買上げたのちにそんならどうするか、今御指摘になりましたような、これをアメリカに引渡すというようなことは考えておりません。その消毒をした上に、それを使うか、或いは実地に調べないとわかりませんが、それを焼捨てるというようなことをするか、とにかく日本の手によつて処理をするつもりであります。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に原子力の政策一般についてお伺いしたいのであります。  今日学界におきましては原子核の研究がなされており、そのための理論物理学はかなり進んでいるようでございます。そうして政府は文部省の予算を通じてこれが助長を図ることになつておりますが、今次の二十九年度の予算に対する衆議院の三党修正におきまして原子炉の調査研究のための予算として二億三千五百万円が組まれました。そして自由党がこの修正案を了承しておる。政府も又それについて了承をいたしましてこれを執行する立場に立つたのであります。行政的にはこれは科学技術院の所管でありまして、そして補助金の形で出されるのでありますが、いずれにせよこういうものが、こういう予算が組まれ、これが施行されるということになりますについては、政府としてはこの原子力の問題につきまして確固たる方策がなければならんわけであります。そしてこの方策なしにただ予算の額が小さいからいいんだ、いや調査研究のためだからいいんだでは今日の段階では済まされないのであります。原子力の問題につきまして政府は如何なる根本策を持つておるか又原子力法の制定等について用意があるのかどうかその大要を示して頂きたい。
  90. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今予算に、三党修正の結果でありまするが、予算に、原子力の平和的工業的利用に関する経費を計上いたしまして折角審議を願つておりますが、将来原子力に対してどういう方法で研究して行くかということは、経済審議庁を中心にいたしまして今研究しておりまして、大体成案に近いものを得ておるのでありまするが、私ここにその何を持つておりませんので、後ほど通産大臣が参りましたときにお答えをいたします。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に首相の外遊の問題についてお伺いしたい。総理大臣はこの国会が済んだならば外国に廻るということを福永官房長官を通じまして公表をされたのであります。で勿論内閣が総辞職をして首相個人としてお出かけになるのではないのでありまして、これは首相の職にある間においでになることである。従つて首相が一国の首相が一カ月余も国を空けて行くからには、相当重要な使命がなければならんのであります。でこの外遊をするということを発表されます以上は、如何なる使命を持つて行くかということが国民に明らかにされなければなりません。この点は首相が外遊する以上は当然のことであろうと思うのでありますが、この首相の外遊についての目的は何であるか、単に保養や或いは物見遊山でないことは明瞭でありますが、その目的について果して副総理総理と打合せをして総理のお考えを十分に承知しておられるかどうか。若し承知しておるならばその点を明らかにして頂きたいと思うのであります。
  92. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総理大臣が昨年の夏頃から主として米英、その米英を含む各国を訪問したいという希望を持つておることは幾回かこの委員会でも申上げたと思いまするが、又いつ出発ということはきまつておりません。その目的は今日では各国の国際関係が非常に密接にになつている。言い換えれば地球が小さくなつたかのような感じすらあるのでありまして、昔で言えば、昔極東と言われておつたこのアジアに位する日本政治を進めて行きまする上にも、世界の情勢を視野の中におさめておらなければならんことは申すまでもないのでありまして、そういう意味から最近の諸情勢につきまして各国の政治家と親しく意見を交換してみたいというのが主たる目的でありまして、例えて申しますればアメリカとイギリスの間に中共に対する意見が必ずしも一致していない。或いは東南アジアの貿易の問題について日本とイギリスとの間に直接意見を交換したい問題もありまするし、又アメリカと日本の関係が特に近いだけに、その間に総理が行くことによつて更に意思の疎通をよくし得ることもあろうと考えますので、そういう点を総理の外遊によつていろいろ一層はつきりし得るのではないか、そういう期待を持つている次第であります。
  93. 岡田宗司

    岡田宗司君 特に英米が主であるということを言われたのでありますが、アメリカにつきましては、今後更にアメリカとの防衛計画との関係であつて、或いはアメリカが日本に要求或いは希望、期待をしておりますけれども、自衛力の漸増計画、例えば先に持ち出されました陸上兵力三十二万五千というような兵力の増強の要求に対しての折衝、或いは又これと関連するところのアメリカの対日援助の問題というような問題が同時に問題になる。それらが相当大きなウエイトを占めるのではないかと思われるが、その点はやはり今度の外遊の重要なる使命であるか、お伺いいたしたいと思います。
  94. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 大体におきましては、いわゆるグツトウイル・ミツシヨンという形であると考えます。でありますが、その間に日本の最高の責任者であり、先方の相手方も日本総理大臣の外遊はサンフランシスコ会議を除いては、曾てなかつたことであるだけに相当の注目のことであろうと思いますし、いろいろな問題の意見の交換もできると思います。今の特に日本の防備力の増強をお取上げになりましたが、日本の防衛力につきまして、今までにおいてアメリカからこれだけの防衛力を打てというような要求のあつたことはないのでありまして、今回総理が出遊いたします際にもそういう形において話はないと思いますが、日本が今日までに防衛力を持つて参りました経過、又日本の国情、今日の防衛力に対する政府考え方ということにつきましては、隔意のない意見を交換し、又こちらから日本事情を説明する機会は非常にたびたびあるのじやないか、かように考えております。
  95. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも今の点につきまして、日本でアメリカから要求されたことはない、こういうまあお話でございますが、成るほど公表してはつきりと幾ら幾ら増せというような通牒を突きつけて来たことはございますまい。併しながらまあ私どもも常識的に見まして、或いはまあ政治家として見るところからいたしますれば、もう申上げるまでもない、お聞きするまでもないことだと思います。この問題はやはり重大な問題であろうと思いますが、私はこういう問題について総理が依然としてアメリカの要求に応じて、そうして日本の再軍備を進めるということをされることについては強く反対するものであります。  次にお伺いしたいことは、アジア諸国との国交回復の問題であります。中国並びにソ連との問題につきましては、しばしば方針はお伺いしております。今のところこちらから積極的に国交回復をするという御意思はないようでございますが、これは私どもにとつては非常に遺憾なことであります。当然日本のアジアにおける地位からいたしますれば、このまだ正式に戦争状態を脱していない国との国交の回復が必要でございます。特に中国、ソ連との国交回復は、重大な問題として政府が真剣に取組まなければならない問題だと思うのでありますが、それは政府としてする意思がないということをしばしば御表明しておりますので、重ねてここでお伺いしませんが、他のアジア諸国、インドネシア、或いはビルマ、フイリピン、ヴエトナム等々との国交回復の問題でございますが、昨年岡崎外相が晦アジア諸国を歴訪されまして、国交回復とそれから賠償の問題についていろいろ話合つて来られた。然るにこの問題はその後一向進展しておらんような状態でございますが、一体どういう状況になつておるか、又その見通し如何。その点は、本年度の予算にも賠償につきましての費用等も計上されております関係から、この見通しが明らかにされなければならないので、その点についてお伺いしたいのであります。
  96. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ずフイリピンでありますが、やはりなかなかれ困難な状況ではあるのであります。併し、新しい政府が成立いたしまして、先方でもできるだけ早く条約の批准を行いたいという気持は打つておられるようでありまして、たまたま外務大臣はジユネーブの会議出席のため四月二十日前後じやないかと思いますが出発されるので、できればその前に全部の解決とは行かずとも、できるだけの了解を遂げたいという考えで我々も努力はいたしております。併し、これが果してうまく円満に遂行するかどうかはまだわかりません。但し、中間賠償のほうの沈船引揚げは着々進めております。  インドネシヤにつきましては、やはりなかなかまだ根本的なところまでは行かないと思いますが、沈船の問題については話合いがつきまして、それ以外の中間的な賠償についても今協議をいたしております。  ビルマにつきましては、我々のほうとしては、先方から視察団のようなものが来られれば非常に歓迎したいと思つております。或いはそういうことに近くなるかも知れんという期待を持つております。中間賠償につきましても、ビルマには沈船というべきものは余り多くありませんし、地元で引揚げ得るようなものが多いようでありますので、沈船以外の中間賠償についていろいろこちらでも考えを示し、先方の意向の固まるのを待つておりますが、また先方からは確たる意向の表示がありません。  インドシナ三国につきましては、大体においての見当はついておりますが、これは額も比校的少額でありまするが、現在国内の戦闘行為が行われつつあるものでありますから、まだ最終的なまとまりはついておりません。  結論的に申しますと、今申したようで、また見通しというほどには行つておりません。併し、だんだんに固まりつつあるような感じはいたしております。
  97. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の外務大臣の御答弁ですと、昨年これらの諸地方においでになつたときの意気込みと比較いたしまして、余りにも効果がなかつたように思われるのであります。沈船賠償のごとき賠償の内金払いのようなことは、恐らくそれなくしても行われることだろうと思う。真の国交回復ということにはまだ見通しがつかん、賠償問題の最終的解決の見通しがつかんというのでは、誠に情ない状況でありますが、これに対してまだ見通しのつかんと言つておることは、これは日本の外交として極めて不手際であるとまあ言わざるを得ないのでありますが、この問題と、これらの国々との通商の関係がなおいろいろ障害があると思うのでありますが、この障害を、賠償問題の解決ができない、或いは正式の国交回復ができないというときに、この通商をどういうふうにして促進して行つて、国際収支の改善に役立たしめるかという点についてお伺いしたい。
  98. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 通商関係につきましては、フイリッピンとの間の通商は漸次改善して来ておると考えております。又実際の取引高も殖えることと期待しております。インドネシアにつきましては、御承知のように、こちらからの買付ける物資が比較的少いものでありますから、輸出超過が非常に多くなつて来ております。只今は、むしろこれは通産大臣のほうで御説明があるのが適当でありましようが、輸入ができる商社についてはリンク的に輸出を特に認めるという考えを持つておりまするし、砂糖等についても特にインドネシヤからの輸入を促進いたすつもりでおります。  ビルマにつきましては、米の買付が非常に多い関係上、こちらからの輸入がかなり殖えております。これに見返りましては、綿糸布等も比較的出ておりまして、日英支仏協定の締結の結果、今後はかなり明るい見通しがあるようなふうに考えておりますが、併し一番大切なことは、何と申しましても、日本の商社の支店ができるとか、駐在員が短期でなくおられるということでありまして、これは残念ながら通商航海条約なり或いは根本的な平和条約ができないと、根本的にはどうしても解決できません。が具体的に個々のケースについては、最近は比較的まあ期待に近いところに行きつつあるような気がいたしております。
  99. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 賠償の問題について関連して御質問をいたしたいと思います。  賠償は一般的に考えますと、これを支払わなければならんということは、非常に不幸なことであり、好ましくないことである。併しながら、これを支払わなければならんということは、日本一つの義務でもありまするし、宿命でもあります。でありまするから、日本人としては、この際この不幸を、努めて禍を転じて福となすという態度でこの賠償を支払いたい、こういうことをば国民各層が考えておることも又事実でございます。  具体的に申上げまするならば、今東南アジアの日本が賠償を支払わなければならない国々と日本との通商関係を考えてみますると、これは一方的に英米に対して紐が付けられておりまして、なかなか日本の通商関係の割込みが困難な状態にある。そこにこの賠償交渉と絡み合せて参りますると、その困難な問題がやや打開をされるという望みもなきにしもあらずでありまして、そういう点で我々はこの不幸な事態を何とかして有利に解決をしなければならないということをば考えておるわけであります。その場合に、この賠償交渉を一外務省だけに任しおいてよいかということなのであります。受けるほうの側のフィリピンなりインドネシアなりビルマ等におきましては、受けるほうの態勢といたしましてそれぞれ委員会等が持たれておるようであります。ビルマ等においては、各関係の大臣から成るところの五人委員会等ができて、その事務局等も不完全ながらあるという状態であります。ところが、支払う立場にある日本人、而もその禍を転じて福としなければならない日本においてはそういう整備された機構というものがない。これは非常に遺憾なことであるわけでありまして、私はこの問題は通産省も大いなる関心を持つておるであろうし、又農林省その他の関係省においても非常に深い関心を持つておることだろうと思うのであります。そこでこの際この賠償交渉を一元的に有利に進めるために、政府の中に各界を網羅した賠償交渉の機関を設けることは非常に急を要し、又便宜に適した方法ではないかと考えるのでありまするが、この対賠償問題解決のための機関を特別にお設けになる用意はございませんか、どうですか。この点は緒方総理にお伺いしたいと存じます。
  100. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 賠償の問題が東南アジアとの通商関係その他友好関係を進めて行きます上に、非常に重大な意味があることは今お話通りであります。今のお示しになつた構想がいいかどうかにつきましてはまだ研究の余地があると思います。外務省におきましては、それぞれ出先との連絡を緊密にして折角やつておりますので、どういう構想を将来とるかということは更に研究してみたいと考えております。(「その間に済んじやいますよ」と呼ぶ者あり)
  101. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、いわゆる自衛力の増強の計画についてお伺いしたいと安全保障条約、日米相互防衛協定の定めるところによりますと、アメリカは日本に自制力の漸増を期待しておる。そして日本はこれらの条約、協定を承認することにおいてその期待に副う努力をすることを約束したことになつておると思うのであります。政府はこの問題は日本が自主的にきめるのだと、こう言つておりますけれども、これはやはり両国間の期待とそれを満す約束との上に立つておるものであつて、明らかにアメリカとの相関関係においてきめられることを前提としておるものと言わなければならんのであります。そこで不在はいろいろな折衝の結果等からいたしまして、又MSAの援助を受ける等からいたしまして、保安隊を自衛隊に切替えて二万殖やし、或いは航空隊、或いは海上警備隊を海上自衛隊にする等、これも増強をするようであります。勿論漸増計画、この漸増ということをアメリカが期待し、そして日本がそれに応ずることを約束いたしました以上は一遍きりじやない。やはり漸増であるからだんだん殖やして行く。今年は二万、そうすると来年、再来年、又その次と、こういうような問題が起つて来ると思うのであります。アメリカはそれを期待しておることは向う側か出しておりますいろいろな情報から明らかであります。これに対応する日本の年次計画というものがなければならん。保安庁におきましては、それがすでにできておるのじやないかと思いますが、その点について大要をお伺いしたい。
  102. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。アメリカは日本の自衛力の漸増を期待している「これは期待に過ぎないのであります。(「過ぎなくない」と呼ぶ者あり)日本としては独自の見解を以て、日本でどれくらいの自衛力を漸増すべきかということをきめるべきものだろうと考えております。そこで我々といたしましては如何なる方式、如何なる程度において漸増すべきかと、これを検討いたしております。要するに日本の財政力、それから国際関係、それから兵器の進歩、あらゆる観点から日本が独自でこれを検討すべきであり、又実際において現在検討しておるのであります。併しながら御承知通り日本の財政におきましてもいろいろの制約があります。今年度は御承知通り二十九年度の予算に盛込んで我々は一応の計画は立てたのであります。三十年度についても一応のめどは立てております。併しこれとてもご承知通りいろいろな事情がありまするので、確定的にはまだきまつておりません。いわんや長期のものというものは、我々は研究はしておりまするが、なかなか容易に立ち得ないというので、確定的にはまだ成案は得ていない次第であります。
  103. 岡田宗司

    岡田宗司君 木村さんのお話ですと、あの安保条約なり日米相互防衛協定にあるものは単なる期待に過ぎない、こうおつしやつたんです。単なる期待が条約上の文面に出ておるなんということはこれは馬鹿げた話でありまして、そんなものでないことはあなたのよく御存じのはずなんです。とにかくあれは期待に過ぎないんだ、併しながらその関係がないとして、日本側で漸増計画をお持ちになつておるが、結局はそうすると期待に応えることになつておるということは御承認にならなければならんことだと思う。その点はどうなんですか。向うの期待に、向うはとにかく期待しておる。日本はいやそれは知らん、俺のほうは勝手に殖やしておる。併し向うは、ははあ、これは俺のほうの期待に一〇〇%か五〇%か知らんが副うておるなと思うようになると思うのですが、それはどういうふうな御関係ですか。
  104. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。無論我々はアメリカとの関係は断ち切ることはできないのであります。アメリカとお互いに手を握つて日本の外部からの侵略を防止することに努めることは当然のことであります。そこでアメリカがどれだけまで期待するかということについて、我々の立場といたしましては一応検討いたしましても、御承知通り我々としては国力の許す範囲において、この制約があるのであります。又国際情勢の変化もあり、いろいろな観点から日本はこれを独自において計画を立てべきものであろう、我々はそう考えて今折角各方面からの資料をとつて検討中であります。
  105. 岡田宗司

    岡田宗司君 今国力との関係においてと言われるが、その国力というのはどういうことです。
  106. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いわゆる日本の財政一般、殊に又日本の国民がどれぐらいのこれについて考えを持つておるか、私は自衛力というのはいつも申上げております通り、狭義におけばいわゆる軍事力でありますが、広義におけば一つの精神力もここに加わる、こう考えております。従いまして我々といたしましては、国民がどれくらいまで我々に関心を寄せておるか、これも大きな一つのデータと考えておるのであります。併し要は日本の財政力、つまり国民所得、それらの観点からこれを考慮を払うべきものであろう、こう考えております。
  107. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは大蔵大臣に御質問することなんですが、実際に当つておられるのは保安庁長官のほうですが、先ほどの、年次計画について研究をしておる、こういうことでございますが、すでに第何次かの年次計画案なるものができておるように聞いております。この点についてすでに第何次かの計画案というものについてまだこれをお示しにならない。いつ頃この計画案がお示しできるお考えかお伺いしたい。
  108. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通り三十年度についてもまだようやくめどがついたような程度でありまして、これを確定的にどれくらいのものを殖やして行くかということについての成案は得ておりません。
  109. 岡田宗司

    岡田宗司君 三十年度についてめどがついた、そのめどだけでもお示し願いたい(「第七次案をお示しなさい」と呼ぶ者あり)
  110. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。これも私らの本当のめどでありまするが、大体陸上部隊として二万人くらい増加したい、
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 更に。
  112. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ええ、更に増加したいという計画を立てておるのであります。これもいろいろの観点からまだ検討の余地あろうと考えております。
  113. 岡田宗司

    岡田宗司君 陸上は大体三十年度において更に二万人、そうすると航空隊並びに自衛海上隊と言いますか、そのほうはどれくらいにお殖やしになるつもりですか。
  114. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大体我々の今考えておるところは海上のほうでは八千六百、航空のほうでは六千くらい、こういうようなめどを立てて今研究中であります。
  115. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、本年に更に加えて三十年度において陸上部隊が二万、海上部隊が八千六百、航空隊が六千殖えることになりますが、海上部隊が八千六百殖えることについては、それに伴う艦艇のアメリカからの貸与なり成いは建造なりの問題も起るのでありましよう。六千の航空隊が殖えますについては、これは地上で遊ばしておくわけには行かんので飛行機の問題も起るでありましようが、この数から逆に大体の見当は付くのでありますが、もうすでにこれだけの数があなたのめどでありますれば、その艦艇なり飛行機のほうのめどもついておると思うので、その概要をお示し願いたい。
  116. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。それについてはまだ検討中であります。と申しまするのは、海上部隊にいたしましても、それだけのものを新らしく造つた船に乗せるわけでありません。いろいろ補充の関係もあります。航空にいたしましても、これは補充の関係もあるし、又機種の関係がどうなるか、或いは海上におきましても船の幾多の種類があるのであります。それらは綿密に計算しなければわからんのでありますから、ただ概略にこれくらいの兵力を増したいということで、今それについての艦艇或いは飛行機の種類その他について折角検討中でありまするが、まだ結論は得ておりません。
  117. 岡田宗司

    岡田宗司君 そこで元へ戻りまして国力との関係でございますが、本年陸上兵力は二万、つまり二十九年度予算において陸上兵力は二万その他増加いたします。そのために保安庁経費が百七十五億殖えておるのであります。而もこれは年度の当初から殖えておるのではなくて年度の途中から殖やすことによりましてこれだけの経費が殖えて行つておることになるわけなんでございますが、本年度の増加の分を平年度にみますというと、一体予算はどれくらいになるのか、それを先ずお伺いしたいのであります。
  118. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 数字の問題でございますので私からお答えを申上げます。  十三万人の制服、陸上自衛隊であります、十三万人の自衛官、制服職員、それの維持費及び今度増加をいたしました平服職員、従来のと合せまして一万五百八十人になります。その両者の維持費を合せまして四百三十七億円程度。大体制服の自衛官の単価三十二万、非制服職員は二十万という計算をいたしております。それから海上と自衛隊のほうは大体の船のトン数にいたしまして、九万二千七百四十トンほどになります。これは本年度の貸与、それから二十八、九両年度に亘りまする船艇の完成後の数字であります。それの維持費といたしまして九十五億円というものを大体計算いたしております。
  119. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうふうにお出しになりましても、これは一般国民にもよくわからないのであります。本年は百七十五億殖えまして七百八十八億円計上してあります。今のような計算で行きますというと、本年度殖えましたものを基礎にして積算して参りますというと、保安庁経費は総額で平年度幾らになるかということをお伺いしたい。
  120. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 只今申上げました数字が二十九年度に増勢を予定いたしておりまするものが、一年間フルに動いたといたしました場合におきまする維持費であります。従いまして、二十九年度に増加いたしました人員、それがフルに動くということでありますれば、今申上げましたのは陸と海を申上げたのでありまするが、陸と海につきましては合計五百三十億円程度を以ちましてこの増加をいたしました自衛隊、陸及び海が動く、それから空のほうにつきましては、この前の機会にも申上げたのでございまするが、これは練習隊をどういうような構成にいたすとか、或いは機数をどういうようにいたすというような、いろいろな按配がございまするので、ちよつとこの二十九年度の増勢のところの断面でこれを平年化いたしたらどうなるかという数字はちよつと求めにくいものでありまするから、この間分科会の機会に申上げておきましたのは、維持費といたしまして、人件費、食糧費を合せまして十億四千万ほどの金に相成つております。これは八ヶ月分でありまするので、これを平年に延ばして参りますれば、その系統では十五億くらいに相成るだろう、それ以外は全体のプランがきまりませんと、平年額というものは弾きにくいのだということを申上げたのであります。
  121. 岡田宗司

    岡田宗司君 本年の七百八十八億より殖えることは明らかですが、概算本年増強したものを維持して行つてどのくらい殖えるかということをお伺いしている。その点を明らかにして頂きたい。
  122. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 本年度の七百八十八億円の中には申すまでもなく増勢の分がございまするので、私が今申上げておりまするのは、二十九年度までの増勢を平年化いたしました数字であります。ただ航空の関係につきましては全体の数字で申上げておりませんのでありまするが、極く大胆なことを申上げますれば、航空で本年度に一応考えておりまするものをそのまま、余り意味をなしませんが、フラットに延ばしてみましても、二十九年度に増加いたしましたものをそのまま平年に延ばしたのでは、本年度の七百八十八億円という金額よりは少いだろうということだけは申上げられると思います。
  123. 岡田宗司

    岡田宗司君 今年大分殖やして行つて七百八十八億より少いだろうなんということは、これは子供だましみたいな話です。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)そういう馬鹿な答えを聞いているのじやない。その点についてもつとはつきりお答え願いたい。私の聞くことを答えてくれればいいのです。(「そんな答弁じや進行しない」と呼ぶ者あり)そんな答弁じや困ります。私は二十九年度において二万陸上兵力を殖やす、海上兵力、航空隊も殖やす、それを平年度化した場合に、今のほかの経費を全部ひつくるめて幾らになるか、年度の途中から殖やすから七百八十八億なんだが、三十年度に殖やす分を除いて大体幾らかかるかということくらいあなたがわからんはずない。それを聞くんですよ。それがわからないでどうして来年度の二万殖やすの幾ら殖やすのと言えますか。ふざけた答弁じや困る。(「四半期だけ計上しおる」「ごまかしたような説明したつて駄目だ」と呼ぶ者あり)
  124. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) お答えを申上げます。本年度の七百八十八億円の中には、初度費といたしまして今年度の増員をいたしまする系統の分が二百三十二億円でございます。従いましてこれを分科会のときに資料を差上げてございまするが、それを差引きました二十九年度までの即ち十一万編制、従来の体制を維持いたしまする分は五百五十六億でございます。併しながらこのうちには船舶建造費、施設整備費というようなものが相当ございますので、十一万の現編成を維持いたしまするところの金は四百三、四十億であります。私が申上げましたのは四百三、四十億というような金額が陸と海におきまして五百三十億という数字に相成ると申上げましたので、それに対しまして新らしく三十年度におきまして増員をいたしますることになりますれば、その増員分につきましての初度費、或いは何月から増員をいたしますか、その月割によりますところの金額が私が今申上げておりますところの維持費にプラスとして付くわけであります。そのプラスが幾らになるかという点につきましては、これはもう少し具体的なデータがきまりませんと申上げかねる、こういうことであります。
  125. 岡田宗司

    岡田宗司君 何だかわけのわからない説明を一生懸命して、私は頭が悪いのであの説明じやさつぱり納得できないのです。それじやお伺いしますが、七百八十八億は殖やすのですか、それとも減るのですか、それをお答え願いたい。
  126. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 総額が殖えるかどうかということは、これは全体の財政政策の問題だと思いますので、私が事務当局として御説明申上げておりますのは、七百八十八億という金額には二十九年度の増勢分が入つておる、それに対しまして二十九年度までの増加したところを、それを維持するという金額は、陸と海におきましては五百三十億程度だろうということを申上げました。従いましてそれに対してどういうような増員を具体化するかどうかということにつきまして、数字がきまるわけでありますから、今日殖えるか減るかということは、今まで申上げておる数字で以てお答えいたしますことはむずかしいと思います。
  127. 岡田宗司

    岡田宗司君 馬鹿々々しい話なんですけれども、更に重ねてお伺いしたいのは、それじや今保安庁長官が御発表になつた三十五年度の増勢分をやはり今年と同じような月から始めるとすると、やつぱり今年百七十五億増加したように、この初年度経費等も入れれば七百八十八億に又百七十五億なり、或いはそれ以上かかると思うのですが、その前にこの七百八十八億は殖えるのじやないですか、三十年度はそういう保安庁長官の言われた増勢分を更に含めるというと、千億を超すようになるのじやないかどうか、これはもうあなたに聞かない。保安庁長官にお伺いしますが、そうなると千億を超すのじやないですか。
  128. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。私は殖えるだろうと思います。併しどれくらい殖えるかということは今検討中であるのであります。そこで申上げたいのは、これはいわゆる一国の財政と睨み合せて行かなくちやならんので、我々といたしましてはさような一応のめどは立てるが、併し一般的に行政、殊に日本の財政力と睨み合せて実際にどれだけ三十年度に殖やすかということはきまつていない、これは私の言うところであります。
  129. 岡田宗司

    岡田宗司君 じや主計局長が来ておるからお伺いしますが、本年度増強した分を含めまして、三十年度は殖やさないとすると、三十年度においてどれくらいかかりますか。
  130. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 先ほど石原局長から御説明いたしましたのでございますが、本年度の七百八十八億円を本年度限りの増勢に必要なる経費、イニシアル・コストと維持費的なものに分けますと、本年度限りの増勢に伴う経費二百三十二億円でございまして、残りの五百五十六億円が維持費の系統になるわけであります。その五百五十六億円の中に二十八年度の債務負担行為に基く歳出予算百二十四億円が入つております。これは艦艇建造等のすでに過去において決定した増勢関係の経費でございますので、これも本年度限りの経費になるわけでございます。そうしますと、本年度の増員前の維持費は五百五十六億から百二十四億を引きました四百三十二億円が現在の定員の維持費になるわけでございます。これが本年度約四万人殖えた場合に来年度幾らになるか、そういう計算になるわけでありますが、この計算は先ほど石原経理局長から申上げました通りに陸上関係は四百三十七億円、海上関係は九十五億円、まあ航空関係が先ほど石原局長からも話がありましたように、まだ何分にも慣れないものですから、的確な予測がつきませんが、仮に月割程度の計算で伸ばしますと、まあ三十八億円、それに内部部局の関係の経費を本年度と同程度十五億くらいと考えますと、維持費といたしましては六百億を若干下廻る。それにいたしましても本年度の四百三十二億に比べますと、百七十億くらいの増加になるわけであります。そのほかに来年度の新しい増員をどうするか、その計画がどうきまるかによつて来年度の保安庁経費がきまるわけでございまして、その点は私どもといたしましては、まだ何らの計画を伺つておりませんし、積算もいたしておりませんので、何ともお答え申上げようがないわけであります。本年度の増員が平年度化した場合の維持費は先ほど経理局長からお答えがありました通りでございます。
  131. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、もうすでにそれだけで六百億かかるわけで、三十年度に先ほどの木村保安庁長官の言つたことを実現しようといたしますと、それこそ更に本年の最初の費用或いは年度中からの増強の費用を加えますというと、これは到底本年度の費用では済まない。ところがいわゆる財政力、精神力は別といたしまして、財政力の上から見ますというと、どうも国際収支も本年において更に一億ドル枠を割る。更に今のデフレ予算の結果国民所得の増加も余り見込れないということになりますと、来年度は木村さんのおつしやつたように国力に応じてということが、だんだん国力が殖えて行くから殖やすのだということではないようになつてしまうのですが、それがはやりそういうふうな場合においても今あなたの言われた計画を実施する、こういうおつもりでありますかどうか、お伺いしたい。
  132. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。私の三十年度の計画というものは、いわゆる希望であります。一応のめどであります。それで果してその通りになつて見て、これを増強できるかどうかということは十分に私は検討を要すべき問題であろうと存じます。
  133. 岡田宗司

    岡田宗司君 今度出ます防衛庁法の四十二条に国防会議のことが書いてあつて、そこに国防の基本方針、防衛計画の大綱、前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱をかけることになつております。恐らく防衛庁法が成立するとすれば、直ちに国防会議なるものが任命されることになると思うのですが、それが成立いたしましたならば、速かにこれらの計画をかけることになるのかどうか、そういたしますれば相当その計画が進んでおらなければならんわけでありますが、こういう計画をいつ頃国防会議という……、若しこの法律がこの国会で成立いたしたとすれば、いつ頃国防会議が設けられる予定か、そうしていつ頃これらの計画がかけられるか、又かけるおつもりか、それをお伺いしたい。
  134. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 法案が通過いたしまして、更にこの国防会議については別の法律を作ることになつております。それがきまりますと、恐らくその国防会議において今仰せになりましたようないわゆる我が国の国防の基本になるべき計画を立てることだろう、こう考えております。その時期については私はまだ予測しかねる状態であります。
  135. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に自衛隊の海外派遣の問題についてお伺いします。この海外派遣につきましては、今国会においても最初から或いは本会議質問において、或いは外務委員会において、その他盛んにまあ論議されておつたわけでありますが、政府答弁はまあだんだん変つて来ておるのであります。でこの点について昨日衆議院の外務委員会におきまして、我が党の穗積七郎君からの質問に対しまして緒方総理が御答弁をなさつたところにありますというと、自衛のためというならば出かけて行くことも違憲ではないというような御答弁だつたと思うのでありますが、この点についてなお緒方総理の詳しい御見解を説明して頂きたいと思うのであります。
  136. 緒方竹虎

    ○務大臣(緒方竹虎君) それは急迫した場合、直接侵略に会いましてそれを追躡する、本国を水際において守つて、直接侵略に対して対抗して敵を追躡する程度の国外に出ることはそれは差支えないと、そういう答弁であります。
  137. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもそれだけではなかつたようであります。例えば日本に対しまして、向うが航空機を以て攻めて来た、或いは長上距離砲が届くかどうかわかりませんが、そういう場合にその基を叩くという意味で例えばこちらがそこを爆撃するというのもその自衛の範囲に入つて、それも差支えないように御答弁になつておつたように考えておるのでありますが、そういうまあ政府のいわゆる自衛のために航空機なり或いは潜水艦が活動をする基地を叩かなければならない必要が起つたときに、それを叩くこともやはり自衛のためにして違憲でないかどうか。
  138. 佐藤達夫

  139. 岡田宗司

    岡田宗司君 いや、あなたじやない。
  140. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 一応私からお答えさして頂きます。この自衛のための海外派遣という言葉で今まで言われておるのでありますが、要するに我我が申しておりますのは、憲法上自衛権のあることはこれは殆んど全部の学者も肯定しておるところであつて、これは問題ないであろうけれども、自衛権があるということはどういうことかと申しますかというと、これは素朴なことでありますが、敵の弾丸が飛んで来るという場合には、これを防ぐための措置をとるということは自衛権の行動ということになるのであります。そこでその防ぎ方の問題として、例えば敵の飛行機が飛んで来るという場合には、或いは日本の領海或いは領土の上で邀撃することもできましようし、その他の手段もあると思いますが、大砲の弾丸が飛んで来たらどうするか、これは大砲の弾丸の邀撃作戦ということはできないじやないかということがだんだん発展して参りまして、とにかくそれを防がなければ日本はそのまま弾丸の下に屈伏してしまうということになるのだからというところから、場合によつてはこちらからその大砲の弾丸の飛んで来る根元を根絶しなければならない場合も理論上あるだろうということから来ておるのでありまして、その場合といえども勿論自衛権というものには厳重な限界があるわけでありまして、
  141. 岡田宗司

    岡田宗司君 その限界は。
  142. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その急迫不正な限界は三つあると思います。その第一点は急迫不正なる侵害であり、それに対応する方法として他に方法がない、手段がないという場合に止むを得ず必要最小限度の措置をとるというその限界は飽くまでも守らるべきものであるということで一貫しておるわけであります。
  143. 岡田宗司

    岡田宗司君 いや今の法制局長官答弁は私お伺いしておるところに対するお答えじやないのでありまして、私は緒方総理に、昨日の御答弁によりますというと、その基を叩くということを認められたというふうに言われておるので、それを確認されるかどうか、もう一遍その点はつきりさしてもらいたい、こういうことを申上げたのであります。
  144. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 昨日の穗積君に対する答弁は、今法制局長官から答弁いたしましたことを、三個の質問一つとしてそれを確認する、認めるかどうかということで、それは認めると私は申したのであります。
  145. 岡田宗司

    岡田宗司君 それで急迫した場合に、伺うを追つ払つて追躡する、追躡して向うの領土へ入るということまでお考えになつているのではないらしいのですが、この場合は追躡はやはり向うの領土まで入るということをお考えになつているのですか。
  146. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 領土まで入ることは考えておじません。
  147. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから邀撃して、例えば向うを邀撃する場合に、日本の領土の外でやるということは、まあ艦隊等の、或いは航空機ということではあり得るのじやないか、問題はいわゆる海外派兵ということはそれだけではないと、例えばもつと自衛権の問題から来る問題よりももつと具体的な問題がありはしないかと思う。それは先ほど保安庁長官の言われましたアメリカ軍との協力の問題ですね、この問題から来るもつと具体的の問題が私は問題になるとこう考えておるのでありまして、いわゆる自衛権から来るまあ理論的な問題よりも、そのほうについて今度緒方総理の御見解を質したい。それはですね、行政協定の二十四条を思い出して頂きたい。行政協定の二十四条には、「日本区域において敵対行為、または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本政府および合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置をとり、かつ安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」こういうことになつている。そこで問題になりますのは、この防衛のために必要な共同措置ということについてでありますが、この共同措置というものは具体的に言つてどういうものを指すのか、お伺いしたい。
  148. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 行政協定は私が交渉して締結いたしましたから、便宜私からお答えいたします。  共同措置と申しますと、そのときにいろいろ議論があつたのであります。結局どういう措置をとるかということはあらかじめ決定できないということで、共同措置ということにまあ漠然でありますが、書きまして、そうして両国政府で協議をするということを更に付け加えたのであります。つまりこちら側でどういうものを使うか、例えばその当時であれば、警察予備隊を使うか、或いは消防隊まで使うか、或いは鉄道が要るのか、港湾が要るのか、いろいろなものが要るでありましようが、これはすべて防衛のためでありまして、それ以外には用いないのでありますが、そのときにどの程度のものをこちら側が使うかということがまだわかりません。それは直接侵略の規模にもよりますからわかりませんので、そういう文字を使つておりますが、要するに防衛のために使う、それでそれには協議をして、その脅威の大小によつて決定する、こういうことしか只今のところ予定はできないのであります。
  149. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあはつきりしておらんわけであります。そうしてこれは拡げることも縮めることもできるわけですが、とにかく防衛のためということになりますれば、自防隊も又防衛のために置かれることになつております。従つてこの将来必要がありまして、共同措置について協議をする場合には、この防衛のためでありますから、日本の自衛隊もこの共同措置の対象になり得ると思うのですが、そう解釈してよろしゆうございますか。
  150. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) その当時でも警察予備隊等はその急迫せる場合には使うであろうということを予想されておりましたから、勿論自衛隊はそれに入ります。
  151. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、今度その日本区域ということは、日本の場合であるならば、日本においてというのなら日本区域というのはたしかあのときの御説明ですというと、日本の安全に影響を及ぼす地域全体が入るようなお話でしたが、そういたしますと、これは非常に広範なものになり、日本の周辺の国々がみんなそこへ入つて来るわけでありますが、この日本地域というのはそういうふうに今でも解釈されますか。
  152. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) その場合でもそうおつしやるような広汎な意味で使つておりません。三つの考えで使つております。一つ日本の主権のある所でもまだ日本の本来の領土と取扱われてない所があります。それは将来日本の主催に戻つて来る、完全な日本の領土になるという予想の下に例えば奄美大島などはその一例でありますが、これなどをやはり日本区域と考えて、それからもう一つ日本の領土とか日本の領空という字を使いますと、そこまで来なければ危険が急迫しないと、ところが飛行機が飛んで来るときに日本領空の百哩向うに飛んで来て、それが砲弾を持つて飛んで来たということになると、今の速力ではすぐに日本へ来てしまいます。従いまして完全に日本の領土、日本の領空に入つて来る、それを待つていては間に合わないという考えがありますので、日本区域という字を使いますが、一般的に何でも日本が危なそうになるのはどこまでも拡げられるというのではなくして、止むを得ない限度には、日本の領土に弾丸が来るまで、兵隊が上るまで待つておるという意味ではないのであります。
  153. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、先ほど基を叩く場合もあり得るというのと関連をさして考えますと、共同措置のために出て行くという問題も起り得ることになる、こういうふうに考えてよろしうございますか。つまりアメリカとの共同措置によつて日本を叩く基を打つ場合も起り得るということが、先ほどの法制局長官答弁と今の岡崎外相の答弁から総合してみますというと、そういうふうになるが、そう解釈してよろしうございますか。
  154. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) なかなかそうはなりません。というのは、法制局長官も言われましたように、これは急迫不正の行為が行われるということと、これを防ぐのに他の方法を以てしてはできないという場合が前提されております。従いまして、例えば飛行機で以て日本を攻撃する、これを防ぐためには戦闘機もありましようし、高射砲もありましよう。それを更に防ぐために基まで行かなければならんということは、自衛権の範囲内には私は入つて来ないと思う。従いまして、自衛権というものは非常に厳格に解釈しなければ、いわゆる自衛戦争でどこまでも戦争を拡げられて行く理窟にもなりますので、この点は憲法の趣旨から行きましても、最も厳重に考えまして、他の方法を以てしてはどうしても防げない、黙つていれば日本の国民は全滅してしまう、こういうときにほかに方法がないときの止むを得ない場合もありましようが、これは殆んど理窟でありまして、我々としては日本本土に入つて来る前に防ぐということが自衛権の本旨であろうと考えております。
  155. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題については、又いずれ他の委員が外務委員会或いは内閣委員会でやりますので、私はこの程度にとどめておきます。  次に大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますが、大蔵大臣がしばしば補正予算は組まない、二十九年度においては補正予算を組まない、こう言つておられます。ところが先ほども委員長からの御報告がありましたように、奢侈繊維品の課税の法律案につきましては、衆議院における過般の修正の際に、三党の何といいますか、或いは委員間の暗黙の了解といいますか、そういうものがありまして、これは川崎秀二君がはつきり言つておるのでありますが、審議未了にする、こういうことを言つております。そういたしますというと、そうなつた場合には八十五億の穴が空きます。それから入場税の国税移管の問題でございますが、これもどうも雲行が怪しいようであります。これも今政府のほうでもこれはどうしても通してもらわなければならんと言つておりますが、これだつて必ずしも通るとは限らない、そうすると百九十二億の歳入欠陥がある、これは実際はそうではなくて十九億でありますが、建前から行くというと、この税目がなくなつてしまうわけであります。これも問題でございましよう。  更に補助金等の臨時特例法案も、これもどうも今の審議状況から見ておりまして、又与党の諸君のいろいろ言つておるところから見ますというと、握りつぶしになるか、或いは相当な重大な修正を食うという虞れが多分にあるのであります。これは若しそういう修正を食いましたならば、歳出増が必ず起ると思うのでありますが、そういうような場合が起つても絶対に補正予算を組まん、こういうふうに言われるのかどうか、お伺いしたい。
  156. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 入場税の問題につきましては、先に義務教育費半額国庫負担特例等をやめて、二回に亘つて通らなかつたが、それをやめて、そうして中央と地方との税制を調整する、殊に地方財源を調整するということにいろいろ打合せをした結果出ておるのでありまして、而も私はこの前丁度ここでいわきる三党の予算の修正のときの協定のうちにも、今後この予算の裏付となる税諸法案は極力通す、これに協力するものである、こういうことをはつきり三党党で約束されておるのであるから、公党でまさか嘘を言うまいと考えております。従いまして、私はこれは通るものであると考えまするし、又このことは一つの重要ないわゆる地方財政の調整という大きな今度の予算案一つの眼目でもありまするので、これは私は通るものと考えておるのであります。繊維消費税につきましても、これは贅沢品についてならばという、今日皆いわゆる緊縮予算の下に国民が合理化生活をしなければならんときに、ああいつた高い奢侈品を使うということについては、物品税その他の関係もありまして、私はまだすべてが徹底していないので遅れておるのだろうと思うが、これも私は一応通るものと考えておるのであります。尤も通る日附が多少遅れるようなことがありますれば、これは私ども施行日についての問題はそのときに或いはきめられるような、変るような問題がございましよう。  更に今お話の補助金等の臨時特例に関するいわゆる停止の問題でありまするが、これは当分の間とあるのを何年かに切るというふうに時限立法にしてくれという話は聞いておりますが、又一部に通らないといつたような動きがあることも聞いておりますが、これは必ず通るというふうに私どもの判断をいたしておるのでありまして、従つて只今のところ補正予算というような問題は考えておらん次第でございます。
  157. 岡田宗司

    岡田宗司君 政治はプロバビリテイの問題を含んでおるのであります。従いまして、今あなたの言われたようなそういうようなことでみんな通るだろう、従つて補正予算は組まんで済むだろうというのも一つのプロバビリテイ、併しながら今の審議状況から見て或いは通らん、或いは非常な修正を食うということになるかも知れない、そのあとのほうのプロバビリテイについても考えておかなければならんわけであります。その点について、そういう場合には補正予算は組まざるを得ないかどうかということをお伺いしておるのであります。
  158. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私は今のところ組む考えを持つておりませんが、併し現実に歳入が不足を来したようなときに、そのときにはこれは補正予算を組まざるを得ないであろうと思います。
  159. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、最近国際収支が非常に悪いので、政村のほうでも随分狼狽されまして、いろいろな政策を立てております。今政府のこれからの予算対策を見ますというと、金融の引締めを初め、いろいろな方策を講じておりますが、総合的でないのです。各個ばらばらなんです。併しながらこういうふうな国際収支の均衡が非常に悪くなつて、それから回復するということになりますと、これは経済全体に関連のある問題なんです。従つてこの経済不況、並びに国際収支の均衡の回復という問題に対処しましては総合的な施策がなければならん、予算を施行すると同時にそれが行われなければならんはずでありますが、それが未だ発表されておらん、その総合的な経済計画というものについて、大体経済審議庁なり大蔵省なりで打合せて、もう大綱はできておるのじやないかと思うのですが、それについて御発表を願いたい。
  160. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 財政政策、それから金融政策というようなものが只御指摘のように相当具体的に進行いたしておりますが、更にそれに引続くものといたしまして、極めて近い機会にいわゆる外貨予算を二十九年度上半期につきまして決定をいたしたいと考えております。それからそれとは又別の問題でございますが、先般も当委員会で御質疑があり、お答えもいたしました通り、例えば合成繊維の問題というような国内資源の開発についての積極的な問題、その他鉄鋼、石炭等々、いろいろございますが、それぞれ三年なり五年なりの先を見通しての計画を持つております。これに対する例えば財政資金等の具体的な配分というようなものにつきましても、極めて近い将来において確定いたしたいと考えております。大体総合的に一つの構図を持ちながら全部を推進して参りたい、こういうふうな気持でおるわけでございます。
  161. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは当然のことで、自由党としては政策の転換である。これはまあ論じません。そこでいつ頃それが発表されますか。この国会の会期中に発表されますかどうか。それでないとこれは論議できないわけでありますが、いつ頃かどうか。
  162. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 只今申しましたように、私どものやり方というのは画一的でございませんで、全体を総合的に見ては参りますが、ものによりましての緩急順序等いろいろございますので、必ずしも全部が顔を揃えてこの国会中にこういうふうにやりますということを必ずしも全部をお見せすることはできないと思います。
  163. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも心許ない話でありますが、全部見せられないというのならしようがないので、それはそれで打切ります。  次に大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。現在でも大分金融の引締によりまして、まあ経済的に意識的にデフレーシヨンが推進されておりようであります。今度の一兆円緊縮予算を行うということになりますというと、更にそういうふうな傾向が確定されて来るわけでありまするが、これはどうも私から見ますというと、意識的にその整理恐慌を起しておるのじやないかというふうに思つております。一方においてこれから受ける被害が相当甚大であります。中小企業にいたしましても或いは相当な企業にいたしましても、これの影響を受ける。或いは労働者もこの影響を受ける。そういうものに対する対策を計算に入れないでもつて、まあ泡くつてこういうふうに急に意識的な整理恐慌を起すということでは、これは混乱するだけだと思います。従つて今日では相当財界方面からもこの金融引締についてのいろいろ意見も出ておるようです。意見の対立が起つておるようでありますが、今後これについてどういう方法をとつて行かれるのか、お伺いしたい。
  164. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 金融引締の強化は今後とも引続きこれを続けて参る所存であります。大体から申しまして、今のいわゆる朝鮮事件後におきまする財界、これが少しいわば何と言いまするか、各国に比べて非常な物価高になつて、それがために業者自体の近代化も怠り、或いは経営の合理化も怠つておる等、安易なことに少しなり過ぎておるのでありまして、言換えますると、ああいつた事件の影響がだんだん乏しくなるにつれてまあいわば整頓の時代へ入つておるとむしろ言うべきであつて、これは恐慌とか何とかいう普通の好況のあとに起つておるものでなくて、これは日本の国の経済が整頓されつつある時代であるのあります。この整頓期を経ないというと、到底日本経済は立派な根拠あるものになつて世界に太刀打ちすることができなくなるのでありまするので、この点は或る程度やむを得ないと、やむを得ないのみならず、事業によつてはそうすることが必要であると考えておるのであります。更にそれが中小企業や或いは労働者等へしわ寄せにならんかという問題が御懸念の点かと思いまするが、これはまあ私ども僅かな乏しい予算の措置でも若干いたしておること等で御覧下すつておるように、私どもはその方面にしわ寄せする考えは持つておりませんから、今度の税制措置等でもそういうことについては配慮をいたしておる次第でございます。
  165. 岡田宗司

    岡田宗司君 整頓でも何でもいいですが、とにかく整頓される側のほうは、今あなたの言われたように乏しい予算の中で申訳だけの対策を講ぜられたのではこれは浮ばれないのであります。誠にむごいことだと思うのでありますが、この対策についてもやはり先ほど申上げました総合的な経済計画が進められなければできない。金融引締だけやるからこういうものが出て来る。又泡食つてこつちからやる、これじや駄目なんで、やはりこういう面からも全体としての総合経済計画が立てられなきやならんと思いますが、まあこれはまだ示す段階になつていないというのですから、いずれお伺いすることにいたします。  次に、日本経済にとりましてやはり基礎的な条件になつております一ドル三百六十円の為替レートの問題であります。今日の国際収支の状況並びに日本の今の財界全体の動きからみまして、三百六十円レートというものは維持するのに非常に困難だ。今朝の新聞によりますというと、ロンドンのエコノミストの記事といたしまして、日本の為替相場の円のレートが六百円くらいだと、こういうふうに書かれております。現在闇ドル売買の場合におきましても円貨はだんだんに下落して来ておるのであります。こういうようなことは単に進駐軍の兵隊が持つて来たドルの売買だけの問題じやないのでありまして、随分大仕掛に行われておるように聞いておるのです。或いは外商が介在をしておる、或いは行政協定が抜け穴になつてそれが行われておる、或いは日本の貿易商がこれをやつておるというようなことでありますが、これが、ドルの闇売買が抑えられないというと、だんだんこんな調子では円貨が下落して参りまして、そうしてその結果あなたがたの考えておる三百六十円の維持ということは一層困難になると思うのでありますが、現在どういうような規模でどういう方法で行われておると思われるか、そうしてこれに対して取締方法はどういうふうにされるかということをお伺いしたい。
  166. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 為替レート堅持のために、いわゆる闇ドルがどういうように行われておる、これはまあいろいろのことを耳にしまするが、発覚した分はすべ検挙してありまするので、あとの分は実はわからないのでありまするから、どういうふうに行われておるかはこれははつきりいたすことはできませんが、私どもといたしましては、外国為替管理法の厳重なる施行をいたしておりまして、そういう点で取締を励行いたしておるのでありますが、どうもこういう何と申しまするか、外貨が減る傾向にありまするときには、とかく先物を見る傾きがありまして、その実勢以上に下りやすいものでございますが、併しそれは闇というような危険な途を潜るから一層そういうふうに言われるのであります。今朝の日本の何は一ドル六百円近いというような記事を見ましたが、併し私のロンドンの何か新聞が十八日に来たやつを見たらば、日本の品物がロンドンに殺到するということでランカシアの何は悲鳴を挙げておるということが書いてあるのです。そういうことを見ましても、なかなかそう今のようにもとれないような点もあるのでありまして、私どもはやはり一つの政策はこれは岡田さんのおつしやつたように続けて行かなければならん。従いまして、日本の物価を交際水準に近付けるまでにいろいろな批判もありましようけれども、やはり日本のこれが根本を強化するゆえんであるから、その方針に基いて飽くまでその目的を達するまでは左顧右眄しては相成らん。一歩でも後退しては相成らん。かように考えておる次第でございます。
  167. 岡田宗司

    岡田宗司君 もうあと二点ほどお伺いしたいと思いますが、法務大臣がお見えになりましたのでお伺いいたします。  去る二十三日に佐藤検事総長が法務大臣と会われたように聞いておりますが、恐らく政界等にも関係があり、最近の重大事件である造船汚職の問題について概要の報告がなされたものと思うのでありますが、あなたのほうにその概要がおわかりでございましたならば、勿論個人々々の細かい問題ではないのであります。概要について、もう大分最初から見ますと時期もたつておりまして、法務大臣として重大な関心も持つておられることでございましようから、この全貌について概要の御報告を願いたいと思います。
  168. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。  去る二十三日に検事総長が私の部屋に参りまして報告いたしましたことは事実でございますが、御承知かも知れませんが、当委員会にも御迷惑をかけましたのですが、十日ほど休みまして、十日ほど溜つた報告をいたしたわけでございます。それ以前におきましても二、三日おき、大体そういうような間隔で間を置いて報告しておりました。今申上げましたように病気中のことをかためて申した次第でございます。その内容は陸運関係、或いは保全経済会関係、又今御指摘の造船関係のその後の新らしく検挙しました会社名、代表の人の名前なども申した次第でございます。どういたしましようか。初めから読み上げましようか。
  169. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうでございますね。それは一つお聞かせ願いたい。
  170. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 最初はもう御承知かと思いますが、造船関係に関しましては、昨年の八月東京地検に対して例の森脇将光氏より江戸橋商事株式会社の代表取締役志賀米平及び日本特殊産業株式会社取締役の猪股功の両名に対しまして、詐、商法違反等の告訴がありまして、その捜査をしているうちに日本特殊産業株式会社が日本海運株式会社、それと山下汽船株式会社等から多額の不正融資を受けていることが判明いたしまして、捜査を開始いたしましたのがいわゆる発端と申しますかでございます。その後現在までの処理状況は次の通りになるのでございます。  第一に、今申上げました日本海運株式会社関係につきましては、社長の塩次鉄雄ほか一名を逮捕いたしました。塩次を商法違反、即ち特別背任でございます、として公判を請求いたしました。第二には今申上げた山下汽船関係につきましては、社長の横田愛三郎ほか三名を逮捕いたしまして、この五名を商法違反、贈賄等で公利請求をいたしました。第三には日本通運関係につきましては、元東京支店長、現在は交通協力会長の近藤順二ほか三名を逮捕いたしまして、この三名を商法違反として公判請求いたしました。なお別に名村造船所関係につきましては、同社の取締役社長の名村源ほか四名を逮捕いたしました。同人ほか一名は贈賄罪として公判請求をいたしました。なお飯野海運関係につきましては、社長の俣野健輔ほか五名を逮捕いたしました。うち一名を贈賄として公判請求いたしました。  次にこれに関連いたしまして運輸省関係につきましては、官房長の壺井玄剛、海運局海運調整部長の国安誠一ほか二名を逮捕いたして、収賄等で公判請求いたしました。又経済審議審議官の今井田研二郎を、商法違反、教唆で公判請求いたしました。更にこれらの関係につきまして、衆議院議員有田二郎君につきまして、贈収賄として公判請求いたしました。  その他については現在捜査中でございますが、更に塩山ドック株式会社、東西汽船、日立造船、日本油槽船、大洋海運、新日本汽船、浦賀ドック、中野汽船ほか数社の関係につきましては、関係者二十五名をいずれも商法違反等の容疑で調べました。  更に日平産業株式会社社長宮島鎮治ほか五名を業務上横領等の容疑で現在取調中でございます。これらのことについて、私の病中報告のなかつた部分について報告があつた次第でございます。
  171. 岡田宗司

    岡田宗司君 もう時間がないので、これについては詳しいことはお伺いいたしませんが、法務大臣としてはこれが相当政界に拡がつて、今後衆参両院議員で逮捕を請求される者が出て来る見込かどうか。或いは又各新聞が伝えているところによりますと、すでに閣僚にして、これは名前が出たのでありますから申上げますが、岡崎勝男氏、或いは石井光次郎氏、犬養健氏、池田勇人氏、そのほかのかたがたが極秘裡に取調を受けたということが盛んに伝えられておりますが、そういう事実があつたかどうかということ、この二点についてお伺いいたします。
  172. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答を申上げます。  検事総長の報告によりますと、今申上げました諸会社についての捜査はなお引続き捜査中でございまして、打切つたものではないということから考えまして、今まで申上げました氏名以外には一人も出ないという結論を申上げては不当であると存じますが、一方この事案の性質上軽々に新聞にいろいろな名前が出たのであるが、それが全部可能性があるというように申上げることも甚だしく不当ではないかと存じます。併しいずれにいたしましても、私は厳正公平に、而も非常に周到な配慮を以てこの問題について捜査を続け、国民が注目しているその心持、世論と言いますか、そういうことに背かないような措置をして行かなければならないということは心に銘じている次第でございます。  なお御承知かとも思いまますが、これは両院と申しますか、参考人、俗にいう参考人としておいで願つたかたが大分ありますけれども、これは勿論自由党もありますし、又あらゆる種類の、野党のかたもおられるのでありますが、中にはほんの参考人でありまして、一々氏名を申上げるということは非常に御迷惑になることと思いますので、これは勿論御承知と思いまして、申上げるのも却つて失礼かと思いますが、そういう点については勿論党派の差別の観念は全無置かずにやつておりますから、この点を御了承願えると甚だ幸甚がございます。で、衆議院でございましたか、参考人の名前を言つたらいいじやないかという御質疑がありましたけれども、これは日本の今の法律に対する観念から言いますと、参考人というものはすぐ怪しいということに取られやすいのでありまして、これはどうも私は或る時期まで、一々昨日はこういうかたにおいで願つて事情を伺つたということを申上げるのは控えたほうがいい。すべての党派に通ずる処置でございますが、さように考えておる次第でございます。
  173. 岡田宗司

    岡田宗司君 そこでそういう名前は言えないというようなことでございますれば、止むを得ませんが、緒方総理にお伺いをしたいのであります。元の通産大臣の横尾竜氏がすでに逮捕されたのであります。前閣僚で造船関係の問題で逮捕された第一号でございます。今後或いは前閣僚或いは前政務次官、その他有力な人々、或いは又現閣僚という順序になつて来るかも知れません。そういうことも予想されるのでありますが、そういうような場合には内閣は私の考えでは総辞職しなければならん、それが政治責任であるとこういうふうに考えられるのですが、若しこれはまあ政治は先ほど申上げたようにプロバビリテイの問題も含んで考えなければなりません。若し一人でも閣僚にそういうような関係者が出たといたしますれば、総辞識するものかどうか、この点お伺いしたいと思います。
  174. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 先ほど申しましたように、私は汚職内閣に及ばんと信じておるのでありまするが、今一人でも出た場合、何か内閣にそういう者があつて、それを伏せておるようなかの感を与える仮定のことに対して、私はここで極力御答弁しないほうがいいと考えております。
  175. 青木一男

    委員長青木一男君) 時間ですからどうぞ。
  176. 岡田宗司

    岡田宗司君 わかりました。先ほど私副総理に原子力政策についてお伺いをいたしましたところが、これは経済審議庁のほうで以て立てておる、愛知通産大臣が出席をしたならばそのほうから話すとこういうことでございましたので、通産大臣からそれを伺いたい。  次に石井運輸大臣に対しましては、第十次造船の問題でありますが、汚職事件の発展のその他でぐちやぐちやになつております。まだ方針も立たんようでございますが、この点については前前からの運輸大臣のお話ですというと、どうしても海運計画は進めて行かなければならん。年次を延しても進めて行かなければならんということでございますが、そうすると、今次のような場合にやはり改めて建直して行かなければならん。そこで予算のほうではもうすでにそのことも織込まれておるようでございますが、この点について汚職を防ぎつつ而もどういうふうな具体的方法でお進めになるつもりか。その点についての見解を承わりたいのと、それからあなたの関係する省或いはあなたの管轄の下にある公社からいろいろな事件が起り、又同時にたくさんのあなたと関係のある人々が逮捕されたりしております。当然監督の責任その他があなたにあるわけでありますが、あなたはこれに対してどういう責任をおとりになるか、前には何か壺井官房長が引張られたときには訓示をされたようでありますが、訓示くらいで済むものでにありません。この点についてのあなたの責任というものについてどういうお考えか、この二点をお伺いしたい。
  177. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど副総理に対してお尋ねがございました原子力の問題についてお答えいたしますが、これは前提としてお断りいたしておきたいのでありますが、政府としてまだ的確にこういうことであるというところまでは行つておらないのでございまして、現在の私の問題の取上げ方の、私見というふうな程度で考えておるものでございます。  大体問題は三つに分けて取上げたいと思つておるのでありますが、第一は、いわゆる原子力政策の基本についての考え方の問題でございます。我が国の原子力政策の基調といたしましては、原子力開発を人類の福祉と文化の向上に役立たせるように、専らその平和的な利用を期すべきものであろうと考えるわけであります。殊に我が国といたしましては動力源や熱源が貧弱でございまするので、そういう点から熱源としての原子力の活用というようなことが究局の目標ではなかろうかと思いまするし、併せて副産物としての放射性同位原素の利用度を企図すべきであろうかと考えておるわけでございます。そのためには大体必要とする法律の整備というようなことも考えなければならないのではないかと思うのでありまして、例えば軍事的な目的のためにこういうふうな研究をしないというようなことの宣言なり、禁止なり、或いは又原子力の平和的な開発利用についての情報は国民全部に公表しなければならないというようなことを規定するとか、或いは危険防止や防護に関する取締りをどうするかというようなこと、こういつたようなことについての法的の整備も必要なことではないかと考えられるわけでございます。  それから第二には、こういつたような原子力政策の企画立案、或いは実施する機構というようなことについても考えておかなければなるまいと思うのであります。原子力の基本的な政策の確立とそれから法的体制の整備というようなことも勿論これらの機構の中において先ず取上げられ、研究さるべき対象であると思いますが、同時に、原子力の開発利用に関する調査研究なり、これを平和的な事業化することの計画の立案といつたようなことを掌ることもこの機構として必要ではなかろうか。同時に又原子力に関する科学知識の普及、関係技術者の養成といつたようなこともこういつた機構で取上げなければならん問題であると思うのでありますが、どういうふうな機構を作つて総合的に研究を進めて行くか、所管の役所をどこにするか、或いは委員会審議会等の設置を必要とするとすれば、その性格をどういうことにするか。これらの点については、諸外国の実例等を十分に参考にしなければならないというようなことが問題としてあると思うのでございます。  それから第三には、先般来当委員会におきましても論議が熱心に行われましたところの、二十九年度の予算案に計上されたいわゆる原子炉築造関係の予算、この取扱の問題、この問題につきましては、その当時も私も率直にお答えいたしました通り、拙速にこれふきめるべきではない。今申しましたような基本的な研究の取上げ方を考えると同時に、この使い方につきましても慎重に検討をし、十分学界その他の意見も聞いて成案を得た上でなければ使うことはいけないのではなかろうか。こういうふうに考えまして、本予算案の御審議が当委員会において進行中の間におきましても、通産省は勿論、その他の役所にも御連絡をいたしまして、いろいろと具体案を研究いたしておりますが、まだ詳細的確にこういうことに使つたらばよろしかろうという成案を得るに至つておりませんので、この点は御了承をお願いいたしたいと思います。そうして先ほ第一、第二に申上げましたようなことは、できるだけ早い機会に政府部内としても意見をとりまとめまして、必要な措置につきまして誤まりなく実現できるように考えて参りたい。かように存じております。
  178. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の点について関連があるのですが、今の通産大臣に対して……。
  179. 青木一男

    委員長青木一男君) 極く簡単に質問して下さい。
  180. 湯山勇

    ○湯山勇君 只今の通産大臣の御答弁に更にお尋ねいたしたいと思います。只今のご説明によつて、法の整備、或いは機構の検討なり、そういう基本的なものがまとまつて、成案を得たあとに今回計上されたこの予算は執行したいという態度であるということは、非常に結構なことだと思いますが、なおそれ以外に非常に重要な問題として残されておるのは、この研究と申しますか、これを民間にやらせるのか、国でやるのか、こういう点については、以前から問題になつてつたのですけれども、まだ明確にはされておりません。予算の性格上、助成金というのであるから、国が直接やるということは一応考えられないようではありますけれども、併し世界中どの国におきましても、そういう仕事を民間にやらせておるという所はないはずでございます。アメリカのような、あれほど資本のある所であつても、なお原子力によつて発電等を行うようになるためには二十年乃至三十年かかるだろうということを申しております。アメリカで二十年、三十年先でなければ民間でやれないということは、結局民間では不可能であるということの一つの証左になると思うのですが、なおイギリス等におきましても、どこかハイエルでございましたかに研究所を設けて、これのパイロット・プラントを作つて、それによつて実際の設備を改良して行く、こういうことも行われておるやに聞いております。こうなつて参りますと、組まれた予算が今の工業技術院から助成するという助成の対象というものは極めて重要な問題であるし、又この研究を公開するとかいうようなお話ちよつとありますしたけれども、果して全面的に公開するのか、或いは他の国々のように一部は秘密にしておくのか、こういう問題との関連もありまして、非常にここに重要な問題が残つておると思うのです。この点に関して通産省ではどのような検討がなされたか、又今申しましたような点について、どのような御所見なのか、重ねて承わりたいと思います。
  181. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ず第一の点でありますが、ちよつと食い違いがあつたように思われるのでありますが、私はさつき三つに分けて御説明いたしたのでありますが、第一、第二のような根本的な問題のとり方、並びにその機構をどうするかというようなことが最終的にきまつて、且つ実施されて、その結果が出なければ第三の当面の予算のほうは手をつけないというのではございませんで、第三の予算の問題は予算の問題といたしまして、並行的に慎重に検討して、成案ができたならばこれは予算を配賦する、そういうふうに申上げたつもりでございます。  それから国でやるか民間でやるかという問題がございますが、具体的にこの今回の予算の問題に限つて申上げますると、御承知のように、工業技術院の所管の補助金というようなことになつておりまするから、従来の慣行からいたしますれば、民間団体に対する補助が原則でございます。併しながら、それではちよつと狭過ぎると私思いまするので、これも前に当委員会お答えいたしましました通り、例えば、国立の研究所であるとか、或いは国立の大学の研究室というようなものもこの補助金の対象になつて差支えないのではなかろうか。これは私は法規上の問題はないと思いまするので、さような点も考慮に入れまして十分な成案を作つてみたいと、かように考えております。
  182. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えします。第十次造船の問題でございますが、これは先ほどもこの席その他で申上げましたように、是非これは予算に計上された範囲のものをやつて行かなくちやならないし、又来年度組みました二十九年度の予算は二十八年度の財政資金よりも少くなつておるが、根本の日本の船を増すという問題から考えますると、年限を延ばしても造船を続けて行かなくちやならないということを申上げたのでございます。私どもこの十次の造船問題にとつ組んで先頃からいろいろな角度から話を聞き、相談をいたしておるのでありまするが、昨年の暮頃の様子と非常に変つて参りましたのは、造船疑獄というような問題が起りましたために、あちらこちらすくんでしまつた情勢だというのが現状でございます。銀行方面への金融問題、これは来年度運用し得る金が少いというのもありまするが、市中銀行等もひつ込み思案でございます。海運業者そのものも余り積極的でございません。ただ造船所と造船所に勤めておられまする人たちから早く多く造つてくれという希望が出ておる状態ありまして、今までの様子と違つた形で現われておるのであります。この間を調整いたしまして、何とかして私どもは早く船が造れるような情勢に持つて行きたいと思うのでございまするが、それにはどういうふうにして行くかという問題について、非常に幅広くいろいろ考えなくちやならん問題に到達しておるわけでございます。苦し市中銀行が金をどうしても出せないようなことがはつきりいたしましたならば、これは先頃木村さんから一つの案としてお話がありました、政府が造船をして国有で運営を民間にやらすというような問題もそこで一つの問題として考えざるを得ん、いやでも応でも考えざるを得んところに行くかもわからないのでございますが、これらの問題もいろいろ併せまして目下研究いたしておりますから、暫くお待ちを頂きたいと思います。  それから私どもの省内、又私の監督の下にありまする公社等で、いろいろ問題を起しまして、誠に申訳ないのでございますが、これらの問題につきまして、私の省内で起訴されましたものは、省全体から見まして、又省からほかへ出ておる人たちも含めまして、いろいろな点から見まして、公正な、立派な人をそのあとに据えるという方針で、官房長の後任、海運局の監督課長の後任はきめたいものと思つております。これらの人の入れ替えをやり、そうしてみんなを督励いたしまして、そうして明るい運輸行政が再建されまするように、一生懸命努力をいたすことが私の責任だと思うております。外の公社の問題につきましては、まだどこまで行く状態かわかりませんが、問題がおよそ起訴されるとかいう問題等にもなりますれば、これは監督者の立場上からいたしまして、広く日本の国内全体から見まして、立派な人を選んで、その仕事が公正に行われるようにして行くことにあらゆる努力をいたしたい、こういうふうに思つております。
  183. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の石井運輸大臣の御答弁を聞いておりますというと、まあ運輸省なり、その監督せられる公社等でこういうような事件が起つた、その責任大臣が責任を負つてやめられて、あと後任に新らしくなられた大臣が内を整理して、きれいにこれからやりますというようなお話なんでありまして、あなたが運輸大臣として在職中に起つたことについての責任についてはお触れになつておらんように思うのですが、この点についてあなた自身も中曽根君にもああいうことを言われておりますし、又新聞でも参考人として呼ばれたというようなことを言われておる。そのようなことも含めまして、あなた自身の責任というようなことについてのお考えがあろうかと思います。それを明らかにして頂きたいと思います。  それから最後に一つ、先ほどから問題になつております内閣法の第九条でございますが、この「事故のあるとき」という問題でございますが、こういうことはまあ先ほども大分問題になつたのでありますが、こういうような規定というものは、余りしよつちゆう事故があつて、そして年中俺が総理大臣の代りだというのでは、これは内閣総理大臣責任というものは明らかでない。極めて例外的なものを規定したものだと思う。それで従来の例をみましても、総理大臣事故が起つて、そして総理代理を置くような場合には、これは重大な場合であつたと思うのです。更にその次の「内閣総理大臣が欠けたときは、」という問題がございますが、これは総理大臣が在職中に死なれることを意味するわけでありますが、そういう場合のことも考えまして、こういう規定を設けられたのでありましようが、これがやたらに使われるということは非常に困るのです。これはもう責任政治という民主主義政治の根本をみだることになつて来ると思うのでありますが、この問題は国会としても十分に研究してみなければならん問題だと思う。特に欠けた場合ということで、あらかじめ指定されておると思いますが、国務大臣臨時内閣総理大臣職務を行うというので、いつまでもその職務を行なつておるようなことになりますと、それこそ憲法も何も蹂躙されてしまうから、これはよほど厳重な政治上の慣例等によりまして縛つておかんと、非常に問題が今後残ると思うのでありますが、今度のような四日か五日の問題で、すぐこの条項で以て、俺が代理だというようなことでやられたんじや、全く国会としても迷惑な話でありますが、この点についてこれの適用と言いますか、何かの問題について副総理のお考えを承わりたいと思うのであります。特に欠けたという場合についてという項については、あなたはどういうふうにお考えになつておるか。とにかくあらかじめ、指定された国務大臣ですから、その場合のことも考えておられることと思うのですが、それらを一つ具体的に御答弁を願いたいと思います。
  184. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私の監督の責任、それを果すのは、今申すことが私の監督者とし、又運輸大臣としての責任だと思つております。今中曽根発言云々の問題がありましたが、その問題については、その当時私が衆議院の予算委員会で、述べた通りであります。私は絶対関係も何もないのであります。そういうことで私がやめるということであればそれこそ滑稽たと思います。そういうことは一つ考えておりません。私はひたすらに運輸大臣の職を立派にやつて行こうと思つております。
  185. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今内閣法第九条の御質問の初めのほうは、先ほど来お答えいたしたつもりでありますが、総理大臣欠けた場合というのは、総理大臣が死んだ場合、その次の内閣総理大臣のいわゆる首班指名が行われるまでのことを指していると思うわけであります。
  186. 湯山勇

    ○湯山勇君 議事進行について……先般、一般質問段階におきまして、アメリカから危険水域の拡大の通知がありました。これについて副総理委員がお尋ねしたときに、副総理はその通知を受けておられませんでしたので、農林大臣から来ておるのだということをお聞きになつて、この問題は非常に重大な問題でもあるし、自分たちとしてもまだ検討していないから……。
  187. 青木一男

    委員長青木一男君) 湯山君に申上げますが、それは議事進行でございますか。
  188. 湯山勇

    ○湯山勇君 その答弁を今頂きたいということを申上げておるのです。そういうお話で、閣議はすでに二十六日にあつたはずでございますから、この問題について閣議で検討した上で答弁するとおつしやつた答弁を、この際しておいて頂いたほうが、あとのこの議事進行に便利であると思いますのと、同時にその際の世界の各国に対して日本が報告しよう、原爆管理に関することも、これが閣議で検討して後刻答弁するということになつておりましたので、只今岡田委員質問もありますし、又今後同じような質問が繰返される懸念があると思いますので、この際、前に保留せられておいた答弁をしておいて頂きたいと思います。
  189. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 原子爆弾の試験区域、試験地のいわゆる危険区域、立入禁止区域につきましては、先ほど岡田委員お答えした趣旨のことを閣議できめたのでありますが、それが日本の出漁者の危険に、何と言いますか、漁業をできるだけ妨げないように万全の注意を払わせることを日本のほうから通告いたして要求をいたします。
  190. 湯山勇

    ○湯山勇君 第二の点は……。国際管理の問題……。
  191. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 横須賀の……。
  192. 湯山勇

    ○湯山勇君 横須賀のがもう一つありましたが、細かいですから……。そのときに申上げましたのは、外務大臣に対して、アメリカに対して原爆の使用或いは演習をやめてもらうように要請するかどうかということの質問をしたときに、外務大臣はアメリカだけにはできない、こういうお話つたので、それはそうじやなくて、アメリカもソ連もそういうどこにも要請をするかどうか。そのお尋ねをしておつた。そういうこともお答え願いたいということと、横須賀に放射能を除去する装置がある。これは今度の日本船の引取りの問題とも関連しているわけですが、その放射能除去の装置というのは一体どういうもので、何のためであるかということも併せて御検討願いたいということを要望いたしたわけでございます
  193. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えいたします。原子力管理のほうの問題は、日本がそういう問題について無論発言権がありまするが、最もそれが有効に効力を上げ得る時と方法ということについて更に研究をしたいというので、まだ研究の結論に達しておりません。横須賀のほうは外務省で調べたところでは、特別の装置はないので、今回のビキニの被害をこうむりました船の消毒をする設備はあるそうであります。設備と言うと違うかも知れませんが、消毒は横須賀で専門家がいるから十分できる。それはアメリカの技術者、医者等のことであると考えております。特別の原子爆弾に関する設備はないということであります。
  194. 中田吉雄

    中田吉雄君 関連して……。原子力政策について只今愛知大臣から大体の要綱をお示し頂きましてわかつたのですが、私はこの原子力予算に関して東大を初め各学界の人たちとたくさんお会いしてみました際に、この予算をきつかけに原子力予算が雪だるまのように大きくなつて、他の一般の学術研究費を圧迫するのではないかという重大な懸念をお持ちのようであります。アメリカにおきましても今日まで三兆六千億、イギリスにおいても二千億の金を使つているわけでありまして、そういうことが非常に懸念されていますが、学問は広範な関連において釣合のとれた発展をしなくてはいけませんので、こういう予算がきつかけになつて、たださえ少い一般学術研究を圧迫しないように、この際私は特に学界の杞憂を払つて頂くために緒方総理から御所見をお伺いしたい。  それから第二点は、愛知通産大臣にお伺いしますが、この予算が旧科研と、それから重水の製造のややできるかも知れないという旭化成との関係が全然なかつたとは言えませんが、予算審議の過程で、この問題が只今愛知通産大臣の言われたような方向に行つたことは大変結構ですが、旧科研は長い伝統を持つ研究所ですので、政府で対策を何とか十分できるようなことをお立てになつて、これが研究所の救済というようなことでこの使途があいまいになり、そのことが影響してあちこちで予算の分捕りになるようなことにならないように、科研に対してはその伝統を尊重して何らかの措置をとるというようなことにされるような御考慮をお払いになることはないものでしようか、その点をお伺いいしたい。
  195. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 原子力関係の予算が他の学術研究を圧迫するような虞れがないように、そういうことは今の財政状態から想像されないのでありまするが、御意見もありましたので、十分にその点には注意いたします。
  196. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して……。中田君の質問お答えするときに併せて御答弁願いたいのですが、簡単ですから……。この原子力の平和的工業的利用の問題です。エネルギー政策は最も考えなければならんと思います。このエネルギー政策の一環として原子力利用の問題をどう考えておるか、今後エネルギー政答を考える場合に、原子力の平和的工業的利用はどういう位置を占めて行くのか、原子力を平和的工業的に利用するとしても、そのほかの石炭の利用とか、石油その他エネルギー資源との関係がございますので、総合的にそれもどう考えているかということも併せて御答弁願いたいと思います。
  197. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほどの中田さんのお尋ねでございますが、これは前にも申上げたと思いますが、いわゆる科研の救済の問題というのは前から実は別個にある問題でございますが、これと今回の予算とは結びつけては考えておりません。これは全然別個の問題だと思います。ただ科研の中の、例えば或る研究者なり或いは研究室なりがこの目的に妥当であるという場合には、そこにはつきり限定して所要の補助金を出しますから、御懸念のようなことは絶対にないようにいたしたいと考えます。他の一般の民間企業会社についても同様でございます。  それから木村さんのお尋ねでございますが、実は先ほど申しましたように、私どもも熱源の問題として、その一環とし、或いは総合的にこれを検討しなければならないというところまでは私もわかるのでありますけれども、どういう系列でこれを取上げるべきかという点は、誠に申訳ございませんが、私参もまだ研究はそこまで積んでおりませんので、総合的に取上げて見たい。そのために衆知を集め、或いは学界の専門家のかたがたの御意見を聞きたいと、こう考えております。
  198. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 最初議事進行です。先ほど委員会の回状に、理事会を開催するのはこの質疑の終了後開くというような回状が回つて参りましたが、私はそれに対してもつと早く開くべきであるという意味を含めまして反対であるということを書いてお渡しいたしました。この点につきましては委員長はやはり最初の考え通り考えていらつしやるのか、或いはもう少し早くお開きになるお考えでありますか、第一にこれを承つておきたいと思います。
  199. 青木一男

    委員長青木一男君) 質疑の進行の模様によつて適宜考えます。先ほどの御意見は伺いました。
  200. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もう一つ、私はやはりこの締めくくりの質問が終了する前に、各種の法案審議の状況等を確めておく必要がある、こういう考え方には変りはございません。で、総括質問が終了する以前に一応理事会を開いて頂いて、この問題について御協議願いたい、こういう希望を強く申上げておきます。
  201. 青木一男

    委員長青木一男君) 承知しました。
  202. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 副総理にお伺いいたしますが、元ほど岡田君からの質問によりまして、政界の再編成ということ、まあお伺いして見ますというと、具体的に何ら固まつたものがないような、御謙遜と申しますか、或いは内輪の御答弁があつたのであります。併し従来考えておいでになることを単に発表しただけでは新聞はあれほど大きな取扱いをするはずはないと思います。何かそこに総理との話合いというものがあつて、それをあなたの言葉で表現すれば、主観も大分加つてああいう記事になつたものである、こう考えるのでおりまして、従来からのことであれば決して珍しいことではないのでありますが、何か総理との会談によつて新らしい方向へ踏切るというような話合いがあつたのかどうか、この点を第一にお伺いいたしたいと思います。
  203. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私が総理を訪問したことが衝撃を与えたことじやないかと思いますが、ほかに新らしい事実はございません。
  204. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 新らしい意味がないというお話でありますが、併し総理との話合いで多少ともそういうことに触れられておるのではないかということを新聞を読みました私どもは受取つたのであります。話の内容にそういうことが全然なかつたのかどうか、この点を明らかにして頂きたいと思います。
  205. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私から何も発表したものはないんです。連携であるか合同であるかというような質問はありました。それに答えて、政府は連立というようなことは考えていないということを言うただけであります。あとはそれに関連して抽象論の交換をやつた、それを記事にしただけであります。
  206. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は新聞社に発表したこと以外に、総理との話合いについて、それに関連したようなお話があつたのかどうかということを聞いているのです。
  207. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 総理とは、総理病状のお見舞を言うと同時に、その後の政情につきまして申しましたが、それはこの席で申すべきことではないと思います。
  208. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、やはり話の内容には、そういう政情のことについてお話があつたものであるというふうに受取つてよろしうございますか。
  209. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 政情についてということについでどういう御解釈か知りませんが、私考えておる政情について話をしたことは間違いございません。
  210. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それではその話合いのことから離れまして、緒方総理考えておられるいわゆる政界の再編成、或いは保守合同ということの個人的の御意見でも結構です。或いは私見でも結構でございます。どういう方式によつて保守合同なり、或いは又政界の再編成なりやることが一番正しくて適当であるというふうにお考えでございますか。
  211. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 個人の意見を申上げましても余りお答えにならんかと思いまするが、政局の安定を進めます上に同じ傾向、同じ似た意見を持つたいわゆる私は同友の諾政党について言つておりますが、それができるだけ歩み寄つて一つになつて行くことが望ましい、さように考えております。
  212. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど岡田君との質疑応答の際におきましては引抜き等はやらないということをおつしやつたのであります。勿論そういうことをやるべきではない。古い言葉で言えばいわゆるごぼう抜きというやつでありますが、こういう方式でやるべきではなく、これは保守合同のまあいい悪いということは別問題として、やるならばやはり政策の話合いをすべきであるし、又してからでなければそういう保守合同というものは正しいいわゆる合同ではない、こう考えるのであります。そういう意味において他党との政策の協定なり或いは話合いなりをなさる御意思であるかどうか、この点を……。
  213. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今のところ私が主導となつてやる場合になつておりません。
  214. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私はそういう保守合同なり或いは政界の再編成なりというような場合においては、先ず第一に政策の話合いをすべきであるし、又その政策の話合いができたならば総選挙によつて国民の意思を尋ねることが、最も妥当な方法であり、且つ民主的な方法であると考えるのでありますが、仮に保守合同であるとか、或いは又は政界編成であるかといつたような構想がまとまつた場合においては、総選挙というようなことで国民の総意を尋ねるお考えがありますか、どうですか。
  215. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) そのまとまりかたにもよるので、今のところまだ何と申しますか、全然架空の想像でありまするので、そういうことは申上げんほうがいいと思います。
  216. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 副総理はやはり口が固くて何もおつしやらないのでありますが、これは予算審議の最初において問題となつたことでありますが、従来自由党政府予算の政策の立て方として、重要な盾として、柱として綱紀粛正という看板を今回はお外しになつた。ところが幸か不幸かいろいろの疑獄事件というものが起つてつたのであります。従つてこういう綱紀粛正ということの全くうらはらな状態になつているのが現状であります。そこで国民としてはいわゆる耐乏生活ということを要求されても、先ず顔を洗つて出て来い、出直して来いという気持が非常に強いのではないかと考えるのであります。今後この疑獄の政府部内への波及、或いは又は自由党への波及ということについて改めて綱紀粛正という看板をお上げになるか、或いはこういうものをこのままにしておいてただ司直の手によつて裁かれるその日を待つている、ただのんべんとして待つているお考えでありますか。国民の耐乏生活を要求される、そういう関係と一体政府はどういうことを考えてみずから清くして国民にも耐乏を要求されるお考えであるか、この点をお伺いしたい。
  217. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 綱紀粛正という言葉はたまたま先般の総理大臣の施政演説の中に入つておりませんが、これは政府としては当然のこととして考えておりまして、綱紀粛正の看板を降したつもりは少しもないのでございます。従いまして今の汚職の問題がどういうふうな実態であるか、実相であるか、その結果がどういうことになるかということは、一に司直の取調べの結果を待つほかないのでありまするが、それが政府に私は及ばんと信じておりまするけれども、その汚職の取調べの結果如何によりまして、その程度によつて政府はそれに善処し、又責任をとるべきものがあれば責任をとつて参ろうかと考えております。
  218. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 勿論これは仮定の問題でありまするが、我々に言わせますならば、例えば横尾竜氏が曾つて大臣をやつていた、この人が逮捕されたということは、やはりその当時の内閣総理大臣として、或いは内閣として当然責任をお感じにならなければならんと思います。今後の問題として誰が逮捕されるのか、これは明言できませんし、或いは逮捕されないかも知れない。併し仮にも曾つて内閣総理大臣国務大臣として選任をいたしました人に対して、そのいわゆる逮捕されたということに対しては責任を持たなければならないと思いますが、この点につきましても曾つて国務大臣でも今は閣僚でないから何ら責任をお持ちにならない、こういうお考えでございますか。
  219. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今御指摘になりました事犯がどういう内容を持つているのか、私まだわかつておりません。それが吉田内閣の際に大臣としてやつた仕事であるかどうかということを明らかにした上で考えをきめたいと考えます。
  220. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 横尾さんが大臣になられましたときには、随分たくさん政党と申しますか、或いは政府に献金されたという話は聞いておつたのですが、ところが大臣になられると、途端に随分たくさんの船舶の建造の注文を受けた、世人はこれで元がとれたというようなことを言つていたのでありますが、私はこの辺非常に臭いと考えておりましたが、その通りになつたのでありまして、私は曾つて国務大臣がそういう問題で逮捕せられたいうときに、果して内閣として国民にこの一兆円予算なり或いは日本経済の再建なりを目的として耐乏生活をお説きになつても国民は聞かないのじやないか。こう考えますが、自分からその身をきれいにして国民に耐乏生活を要請されるというお気持はどういうものでございますか。
  221. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私が申しましたのは、御指摘の名前の人が政府を去りました後に一商事会社の社長としてやつたことでないかどうかということを言つているのでありまして、無論旧民に耐乏を要求する以上、政府がみずから清くして、みずからきれいにして参らなければならんことは申すまでもないのであります。
  222. 戸叶武

    戸叶武君 関連して。吉田内閣汚職事件で大体倒壊するだろうという公算は世間一般これは見ているところであります。而もこの重大な予算案が通つたら、すぐあべこべにごぼう抜きで、政府の閣僚であつた人、或いは閣僚中からも、国会議員中からも、検察庁の御厄介にならなければならないものがでるだろというこの瀬戸際に来ているのです。このときに当つて司直の手によつて、検察庁の手によらずんば内閣責任をとらんというような関係においてこの議会政治が運営されるということは、これは極めて私は日本憲政史上に汚点を残すものだと思うのであります。そういう意味において内閣がこの道義的責任を持つこと、或いはこの政策の失敗の責任追及に向つて正しく自分たちの態度を表明するということが大切なときに、吉田総理大臣が当然ここに臨まなければならないのに、緒方総理を以てこの代理をつとめさせているのでありますが、今まで緒方さんの個人的な立場なり、或いは国務大臣としての立場なり、或いは副総理としての立場なりが極めてあいまい模糊でありまして、今までの答弁を見ましても副総理の地位並びに権限というのが明確化されていないと思うのであります。それでこの内閣法の第九条に「内閣総理大臣事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣職務を行う。」となつておりますが、憲法第六条に「天皇は、国務の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。」こういうふうに規定付けられておるのであります。この内閣法の如何を問わず内閣総理大臣の地位というものは……。
  223. 青木一男

    委員長青木一男君) 戸叶君、関連質問ですから……。
  224. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問です。重大なんです。
  225. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単に。
  226. 戸叶武

    戸叶武君 いや、簡単に……、明快な答弁をしないから追究するのです。で、具体的な問題として総理大臣の外遊の場合に、副総理がそのままその総理大臣代理をつとめるというような場合にどういう手続をとるか、国会に了解を求めるか……。
  227. 青木一男

    委員長青木一男君) 戸叶君、それは関連質問と認めません。
  228. 戸叶武

    戸叶武君  重大であります。
  229. 青木一男

    委員長青木一男君) 重大かも知れませんが、関連質問と認めませんから、適当な機会に。
  230. 戸叶武

    戸叶武君 これは重大です。そのときにどういう手続をとるか、そういうことが国会の両院の承認を得ずして内閣法にきめられているからそれでよいというようなことで、国会を軽視するというようなことにおきましては、憲法第六条の私は精神というものが崩れて行くと思うのです。そういう問題に対して副総理からやはり明快な御答弁をお願いしたいと思うのであります。  又事故なき場合、事故のある場合は規定してありますが、事故なき場合において副総理というものが設けられているのでありますが、総理大臣が衆議院で答弁をし、副総理参議院答弁したような場合において、その副総理というものが総理大臣代理するものであつて同じ資格において……。
  231. 青木一男

    委員長青木一男君) 戸叶君、その問題はしばしばもう論議されておりますので……。
  232. 戸叶武

    戸叶武君 いや、これは明快に回答されておりません。それがそれでよいのかどうか。
  233. 青木一男

    委員長青木一男君) 松澤君はその問題を質問しておりませんから、それは関連質問とは認めません。  松澤君、質問して下さい。
  234. 戸叶武

    戸叶武君 御答弁して下さい。
  235. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問ではありません。(「関連質問」「委員長関連」と呼ぶ者あり)それは松澤君は質問をしておりませんよ。松澤君の質問を継続して下さい。(「関連々々」と呼ぶ者あり)松澤君、質問して下さい。あなたの質問を。
  236. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 僕に答弁している副総理資格ということに関連して質問しているのですよ。
  237. 青木一男

    委員長青木一男君) この問題はですね……。
  238. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そんなことを言つている間にこの答弁をさせれば済むじやないですか。
  239. 青木一男

    委員長青木一男君) その問題は、お答えいたしますが、今朝ほど委員長委員会を代表して質問した答弁によつて本日の緒方国務大臣答弁資格は明瞭になつていると思うのであります。
  240. 戸叶武

    戸叶武君 納得できないから質問しているのです。
  241. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ちよつと答弁して下さい。(「委員長関連」と呼ぶ者あり)
  242. 青木一男

    委員長青木一男君) その問題はその問題が出たとき……。  それでは緒方国務大臣
  243. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 只今戸叶委員からお尋ねになりましたことは、午前の本委員会において私から相馬君の御質疑に対して答弁をいたしまして相馬書も納得をされておりますので、(「納得していないよ」と呼ぶ者あり)明瞭になつていると思います。そしてその後私がここで答弁する資格があるかどうかということにつきましては、採決の結果私の答弁資格を認めるということになつていると思います。それに従つて答弁しているのであつて、衆議院と参議院総理大臣と私が両方に出る場合があるのはおかしいじやないか、これは私がその院の了解の下に答弁をいたしておるのでありまして、了解がなければ無論私は発言資格はありません。
  244. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 委員長関連
  245. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単に願います。
  246. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 只今の松澤さんの御質問は疑獄問題と保守合同、政界編成についての根本的な政府態度を質しておられるのでありますが、その場合私ここで聞いておりますると、こういう発言緒方副理はされております。政界編成なり、保守合同はどういう場合にどういう構想で行うかという御質問に対して政界の安定を期するために、同主義同主張のものが糾合する。これはその通りでありましよう。ところが、この考え方の基礎には二つの条件がなくちやならぬ、満たされなけたばならないと思う。それは政局が不安定であるということ、今政局が安定していないという御認識が一つ前提としてあるわけです。第二番目には同じ主義主張の政党なり団体がここに存在しているということ、この二つがなかつたならば今の御答弁は成立たないわけです。お考え方が起きないわけです。そういたしますると、今までの質疑応答の中から感じられることは、今政局が非常に不安定であるという先ず根本的な御認識がある、そこで議院内閣制におきましては少数の政党が内閣をとるということはこれは確かに不安定であつて今日に始まつたことではない。そういう意味で若し政界編成、保守合同をやられるならば、これはもう一年前に、組閣の前に、或いはその当時においてなされなければならなかつたわけです。それを一年後卒然として、今日、昨日ですか一昨日ですか、ああいう御発表をされて、ということはことに、重大な政局の不安定に対する新らしい事態がここにできたということをば内閣自体が認めておるということであります。その点について松澤さんがお尋ねをしている。即ち疑獄によつて汚職によつて国民の信頼というものがだんだん内閣から薄らいで、与党である自由党から薄らいでいる、ここに政局の大きな不安定があるわけです。このことに対して、臭い物に蓋をすることによつて同主義、同主張の団体を糾合することによつて、単なる内閣の延命策を講ずるのではこれはいけないというところに私は御質問の趣意があるように思います。ところが、そういう点に一向触れないで末節についての御答弁だけしかされていない、一体……。
  247. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問ですから要領を簡単に……。
  248. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 特に昨日の段階において、或いは一昨日の段階において特に政局不安定であると御認識になつて政界の再編成、保守合同の挙に出でられたその真意をここではつきりとお明かしを願いたいと思います。
  249. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 政界の不安定ということは政府の与党の数が十分でないということであります。(「それは前からだよ」と呼ぶ者あり)それで前から政界安定のため保守の合同ができれば望ましいという方面によつて種々努力して参つております。今始めたことではございません。昨日急に何かやつたということは新聞に大きく書いただけであります。
  250. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それではこの問題は経済に関する問題ではございまするけれども、総合的な問題として副総理にお尋ねいたしたいと思います。で、二十九年度予算におきましては予算の規模が小さくなる、それから外貨の予算におきましては約五%くらい切捨てだと、又貿易規模を拡大するというためにもいろいろ方策を講じておられる、又一方におきましては随分きつい金融の引締もやつておられる、国民に対しては耐乏生活を要請していられるのであります。で、こういう先ず先ず柱は立つたというものでありまするけれども、併し私はこの予算を見ましても、又政府のいわゆる政策を見ましても、そこに総合的なものが欠けているのではないか、こういうふうに考えるのであります。一つ一つの政策は、それぞれ或いはできているかも知れない、併し全体を把握して、全体の上に大きな政策というものが総合的に樹立されていないのですから、一本々々の柱は立派にできているけれども、併し風が非常に強ければ、或いはこの政府の政策というものが崩れてしまつて、或いは破壊されるかも知れない。こういう感じを強く持つのであります。で、副総理といたしましては、経済自立或いは物価の引下げのために、これらの個個の政府の政策に対片して総合的に、強力に国民の納得を得て、国民の協力を得るためには如何なる方針で以て二十九年度を迎えようとなさるのか、予算を実施される上における政府のお考えを承わりたいと思います。
  251. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 担当大臣からお答えするほうがよくわかると思いますから……。(松澤兼人君「それだから総理大臣と言つているじやないか」と述ぶ)  二十九年度の予算は御承知のごとく緊縮予算でありますが、この緊縮予算も、金融の引締も、或いは外貨予算編成、或いは物価引下げ、或いは産業の合理化、その他一連の政策をやることによつて期するところは、物価の引下げによつて国際収支の均衡を得、日本の円の価値を維持し、そうしてこれを高めて行く、そうしてこれによつて産業の繁栄を図る、国民生活の幸福を期する、こういうことになるのでございます。従いまして総合的の一本の施策というものは私どもは持つておりませんが、総合というものは、これは全部が総合されて一つの体系をなすのでありまして、何人も一本の柱で、これで行けるという政策をお持ちのかたは私はなかろと思う。どの国でもあらゆる政策を総合してやるのであります。従いまして私どもは、例えば税制、租税の政策をとろうとするときには、その根本から考えて、それでは大衆の負担にならないように、経済の繁栄になるように、そうして、延いては、例えば輸出貿易の伸張になるように、こういう配慮の下にやつておるのでありまして、すべての政策はそこから出ておる。こういうことを申上げたいと存じます。
  252. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 大変立派な建築設計でございますが、(笑声)どうもその通り問屋がおろしてくれれば非常に結構だと思うのですが、一つ例をとつて見ましても、外貨の問題は、経済審議庁の長官がいらつしやいます、果してお見込通りに行くかどうかという点、これは希望的に考えれば、その通り行くという計算が出ると思いますが、併しこれは恐らく政府考えていらつしやるように、極く僅かな赤字で食いとめられない、この点が先ず崩れるのじやないかということを考えます。それから金融引締をやつて行けば、もうすでにそうでありますけれども、つまりデフレ政策が余り過度になれば破産、倒産するものが続出している。これは下半期になればなお又大変でありましよう。従つてこれに対する救済とか、或いは援助とかいうことが当然考えられます。併し小笠原大蔵大臣は、恐らく倒れるものは救済しないと、こうおつしやるでしよう。果してそれで二十九年度末において、国の経済は成立つて行き、或いは国民の生活も安定して行くという政府のお考えのような結論を得られるかどうか、私はこれに対して非常に悲観的であります。更に貿易の規模を拡大するとおつしやいますけれども、併し御承知のように、先ほどもお話がありましたインドネシア方面におきましては、大して規模は大きくならない。又焦付きがたくさんある。こういう点を考えて見まするというと、やはり貿易の規模を政府考えておいでになるように拡大するということは、非常に困難であろう、こう思うのであります。予算は、これは勿論補正予算は組まない、こうおつしやつておいでになる。私は二十八年度の第三次補正も、これは二十九年度の補正と同じものであると考えても差支えないということを申しました。併しこれはどこまでも二十八年度の補正でありましよう。二十九年度の補正が絶対にない、しないという大蔵大臣のお話でありますけれども、私はこれもあやしいものだと考えます。こうやつて考えて見ますると、柱がだんだんあやしくなつて来る。で、果して政府がこれに対して自信を持つて乗切ることができるだろうかということを、非常に老婆心ながら心配もし、大蔵大臣にもお伺いいたしまして、どこもびくともしないものだという御証明があるならば、安心して私たちもその家の中に住むことができますけれども、がたがたして柱が抜けるかも知れないというような家の中には私たちは住みたくない。この点も一つ所信のほどを……。
  253. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 先ほども私は申しましたごとく、私はこの今の仰せになりました、まあ特にいろいろな方面の人が倒産、破産等免がれんだろうというお話がございましたが、これはそのときにいろいろ施策を施すことも必要でありまするが、そうそのひどい私は恐慌的状態が来るものではない、と申しまするのは、私どもが期しているところは、二十七年のところまで物価を持つて行こうというのでありまして、一挙に国際水準まで持つて行こうというのではございません。それから又この朝鮮事変後に起つて来たのは、どうもさつきお笑い下すつたのだけれども、実は私は財界の進理整頓を行わなければならんときで、この整理整頓を経ずんば、到底日本の財界は健全に立ち行かない、こう思つているのであります。併しそういう点についても、なお整理整頓という程度を越して、例えば恐慌状態というものは、私は断じて起るとは思つておりませんが、そういうときは又そういうときに、やはり相当の処置は要しましようが、併しそれがために整理整頓を遅らして、日本の折角の財界のまあ何といいまするか、所期している確信を侵すということは、これは忍びませんから、是非敢行したいと思つております。  なお国際収支の問題でありますが、これは私ども明日、明朝更に閣僚審議会を開きまして、最後の外貨予算編成する予想でございます。これは昨年よりも、まあ昨年と大体よく似ておりますが、若干、僅か減つております。減つておりますが、上期で大体今のところ十億五千万ドルぐらいの輸入を考えておりますので、上期の数字においては別に変りございません。これで見て参りますると、大体そのままで参りまして、九千九百万ドルほどの一カ年間に赤字が出る予想でありますが、併し私どもは実行予算において、従来の例で見ますると、大体三分乃至六分ぐらい切詰められてありまするから、余り大した赤字でなく行けるのじやないかと、こういうふうに見ている次第であります。従いまして貿易規模につきましては、私ども別に拡大するという、輸出貿易は勿論拡大したいと思いますが、全体の規模としますと、余りいわゆる拡大の方向には進んではおりません。  それからさつきお話のございましたインドネシアとは、実は一億万ドルこの頃ちよつと超したのですが、朝鮮とインドネシアとでは焦付きができておりまして、待つて輸入は非常に歓迎ですけれども、輸出のほうはこの頃のふところ状態から申しますと、余り率直に言つて輸出貿易の増進は叫ばれませんが、併し他方向うと契約がありまして、船舶その他に、相当大きな契約がやはり行われております。従いまして、今はこれに見合う輸入についてのいろいろ手配をいたしている次第であります。まあ全体を通じてどなたかは、非常に楽観的にこんなこと言つたら又インフレが続くじやないかというお叱りをどつかで受けた、又今はちよつと、これではとてもデフレが起つてそこらで倒産者が出るじやないかと仰せられますが、(「両方だ」と呼ぶ者あり)実際はその中間ぐらいで整理整頓が行われて日本の財界の基礎が固まつて行くと、私はかように信じて、従つて今進めておる政策には一歩だも退かない、こういう考えで進んでおります。
  254. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私たちがきついとか、或いは弱いとかいうことを申すのではなくて、大蔵大臣の気持の中にもやはりこれは二本桂が入つている。この点はどうもブレーキはそれほど強くないから大丈夫だ、二十七年度に物価を持つて行くだけだから、それほどまあブレーキはきつくかけるんじやないと申しますけれども、二十八年度のインフレというものは相当のものですから、それほど強いブレーキでないとしても、やはり乗つている人には大きな衝撃を受ける。ですからこの二十八年度のインフレ的な傾向を抑制するために相当強いブレーキをかけなければならない。ところが受けるほうは非常に弱体でありますから、弱いブレーキでも相当応えるということが当然考えられる。そのときになつたら何とか考えるということでありますが、そのときになつてどういうことをお考えになるか。政策を緩めるということをお考えになるのか、或いは破産、倒産に対しては救済資金を放出するということをお考えになるのか。この問題は誠に重要であります。おやりになるならばやはりやつてもらわなければならないし、途中でこれはブレーキがきき過ぎたからといつて後戻りなさるのでは、国民は去就に迷うということになりはしないかと思うのです。この点もう少しはつきりして頂きたい。
  255. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これはどうも私の申上げ方が非常に悪かつたので、私は飽くまで今の方針を貫いて、これで足りなければ三十年度も引続きやるということを申上げておるくらいでございますが、但しその間に例えば非常な破綻をして国民が困つて来た場合にどうするか。これは整理、整頓の域で行われておる間はいいのですが、若しそれ以上越したらどうかということでございましたので、そういうことについては或いは各種の事業を共同さすとか、或いは組合を強化さすとか、各種の方法があろうと思います。今日よく弱体化した商社について、商社の合同が強く言われております。これによつて例えば金融方面でも疎通の途を開こうとしておるのでありますが、従つてこの恐慌の状態は私は参らんということを申上げておるのでありますが、多少そういつた倒産等のようなかたが出て来ました場合に、生活保護によるような極く低い部分はこれは暫らく別でありますが、その上の分について申しますと、やはり事業の共同等を進めることによつて、そうして共同的な、或いは合理化をその間にやつてもらう、経営の合理化を特にやつてもらう、こういうようなことで、できるだけの正常なる金融をその方面に流して参りたい、かように考えておる次第でございます。  金融恐慌が起るとか何とかやかましいことを言われますが、これは実は松澤さん御承知のように、昨年の暮に比べますと、日本銀行のオーバー・ローンなどはもう非常に殖えて、今日は四千三百億を超しておりましようというくらいでございまして、一応金融は引締めてはおりまするけれども、金融引締の速力というものはまだ決してそう進んだ速力ではございます。これはやはりオーバー・ローンなどというものは自然にだんだんと収縮して行くべきものであろうと私どもは考えておるのでありまして、まだその段階には……むしろだんだん膨らんでおる状況から見ましても、やはり事業に対する直接接触しておる金融業者の手心というものは相当加えられておるものと考えております。いずれにいたしましても正常なる金融関係につきましては、これは飽くまで日本産業のためにこれを円滑にして参ることは必要でございまするので、そういう措置はとつて参りたい、こういうように考えております。
  256. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ついでに大蔵大臣にお伺いいたしますが、二十九年度予算が成立をいたしますと、恐らく政府としてはこの予算を一ぱい一ぱいにお使いになるということは考えず、予算の実行については或る程度まあ省内と申しますか、或いは政府予算を保留して、その一部分だけしか支出しないという方向をおとりになるのではないかということは想像されるわけでありますけれども、この実行予算編成の問題或いは予算実施の問題についてお考えがおありでありましたら伺いたい。
  257. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 先般三党協定によりまして物件費、施設費等については大体五十億減ずるということに相成つております。それとそれについて実行的に予算を組むことは勿論でありますが、そのほかにも私どもとしましては、まあ災害等、これはないことを希望しますし、又あつてはいけませんが、併し不慮のこともございますので、できますればいま少し進んだ節約を図つて行きたい。つまりこの予算をこれ以上に殖やしたくない、こういういわゆる歳出予算を如何なる事態が起つても膨脹させたくないという強い考えは持つておりますので、実行予算におきましてはいま少し余地を存しておきたい。但しそれは重要なる国の政策を行うものについて、例えば食糧増産、そういうものを減ずるという考え方は持つておりませんが、ただ施設費とかというようなものでなお減ずるものも出ましようし、それからいろいろと考えて見ますると、多少ともそういう余地のある分があるように見受けられますから、これについては数字的に申上げるのは非常に困難でありますが、少くとも今の五十億節約するというような三党協定の分に比べればその数倍は是非とも私どもは実行予算の面で節約をして参りたいと考えておる次第でございます。今各省とも打合中でございまして、どの程度節約ができますかは数学的にまだ固めるという段階に入つておりません。
  258. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 これ以上予算の規模を大きくしない、で臨時に不時に又必要であるものは予算の枠の中で調整する。成るほどそれは一兆円の予算を大きくしないということで必要な経費を切つて行けば、これは幾らでもできるわけでして、二十七億の予算も我々から見れば誠に必要欠くべからざる経費というものを、大蔵大臣は不必要、不用額として切捨てていらつしやる。そういうことで行けばいつまでたつてもそれは一兆円の枠は守ることができると思います。その問題は別としまして、公共事業費、食糧増産も含めて一割程度の予算を大蔵省に保留して、実際これを実施するというような方法がとられておるということを聞いておるのであります。で、公共事業費、或いは食糧増産などにおきましても大蔵省が大鉈を振つてつてつて切捨てて残つたものが今の予算であります。その上更に一割程度の予算の保留をやられますと、折角船が一億円でできるところを一割切りましたから、船はできなくなるという実際の事態もこれは起り得ることなんです。ただ天引一割予算を保留しておくというようなやり方には私たちは反対でありますが、如何ですか。
  259. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 実情に合わんような天引的なやり方は決してやつておらんつもりでありますが、(松澤兼人君「やつておる」と述ぶ)御承知のように公共事業費等につきましてもこれは単価が……予算編成の当時よりは予算単価が下つて来るものがたくさんございます。従いましてそういう分についてはこれを減らす、こういう考え方をいたしておるのでありまして、勿論その事業が所期しておる目的を達するように努めるのがこれは当然でございまして、仰せになつてお笑いになつたが、私も実は一兆に合せるために何でもかでも削つておるのじやなくて、これは実は忍びがたきを削つておるので、(松澤兼人君「必要なものも削つておる」と述ぶ)これは止むを得ずやつておるのでありまして、今のような単価が下つて行くものについてはやはり下る舞込も相当ついてもおりますので、そういう物価はここ数週間でも相当下つて来ておるというようなことも御承知通りでありますので、多少そういうことを織込んで施設費やそういう予算単価等について下つて来るものについてはこれを減じたい。こう考えておりますが、決して机上査定をやつて無理なことをいたす考えはございませんから、その点は御了承を願いたいと思います。
  260. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して……大蔵大臣は昨年末に来年度の予算規模はどうかという質問をしたのに対して、何回も来年は何とかして一兆五、六百億程度に抑えたいということを繰返しおつしやつたはずであります。それがそのときから僅か一カ月余りの間にこの予算編成されまして一兆になつている。これは相当どこかを圧縮しなければできないはずでございますが、その一兆五、六百億の構想と現在の構想とはどこがどう変つて来たのか、少し詳細に御説明頂きたいと思います。
  261. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これはこの委員会でも申しましたし、私はたびたび申したのでありますが、国民所得が大体六兆二千億と一応見受けられ、従いまして、そうすれば租税収入等から勘案して一兆六百億ぐらいのところまでの予算を組んでも、その財政規模でも不自然なことはないという意味で申しましたが、併しそのときも日本で現在必要なことは予算規模を圧縮することであつて、できるだけ一兆円にしたいということは繰返して申述べておるのであります。一月以後に変つたのではなく、又私がアメリカに行つて聞いたものでもありません。私は行く前に国会でも予算は一兆円にとどむべきであるということをはつきりと言つておるのであります。それで、昨年もそういうことを言つたじやないか、昨年二十八年度も言いました。一兆円でとどむべしということは言つていましたが、ああいつた異常の災害で、丁度災害予算だけが外へはみ出た、こういうことになるのでありまして、一兆円予算ということは急に変つたわけではございません。これは私の自分の頭に持つておる一つの信念なんでございます。但し、私は繰返して申上げますが、一兆円という数字に少しもとらわれておりません。一兆というのは大変わかりがよろしいからそう申しておるのであつて、一兆と、きちつと一の下にゼロが幾つつくか、そういうものでなければならんとは考えておりません。一兆円以内の予算ということは、これは私が繰返して申しておるのであります。ただそのときに、二十八年度にはべース・アップとかいろいろやりましたし、恩給その他が殖えて来るものを合せますると、今までのやり方で行くと一兆五、六百億円になると、こういう意味で申したつもりでございます。一貫して私は一兆円以内にとどめたいということを申しておる次第でございます。
  262. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 通産大臣にお尋ねいたします。昨日の新聞を見ますと、アメリカの上院の東南アジア調査団が発表いたしました報告によりますと、日本はどうも中共貿易の方向へ進みつつある。国民は何とかしていわゆる非戦略物資というものを中共へ出したいと考えている。こういうことであれば、幾ら対日援助をしても何にもならいということを発表しているのであります。中共貿易に対しましてアメリカの考えは、こうであるようであります。通産大臣としまして、中共貿易ということに対してはどういうお考えを持つておりますか。
  263. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 只今のお尋ねの件は、アメリカの下院議員のジヤツド氏のリポートのことかと思うのでありますが、ジヤツド氏とは私も会談をいたしたことがあるのでありますが、日本の実情について相当よく検討をした模様でございます。そこで、御指摘の点はそれといたしまして、私どもの考え方はどうかというお尋ねでございますが、これは前々から申上げておりまするように、何としても中共貿易というものはできるだけこれを促進いたしたいという気持は持ち続けておるわけでございます。ただ、現在の国際情勢の関係から申しまして、国連への協力というその枠が一つあるわけでございますが、説明のつく限りにおきましてできるだけ具体的に禁輸帰日を外すことや、或いは現在与えられている条件の下においてできるだけ中共貿易を促進いたしたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、数字的に申しましても、最近はやや拡がりつつあるように輸出、輸入とも見受ける次第でございます。
  264. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この報告の発表を見ますと、相当ジヤツト委員長の報告は日本にとつて厳しいものであるように見えるのであります。これ以上日本が中共貿易というものに熱心である限りにおいては、アメリカの対日援助も再検討しなければならない、こう言つているのであります。果してこれ以上に日本が中共貿易を拡大して行けば、対日援助の点について非常なる支障があるのかどうか、或いは中共貿易を推進して行けば、対日援助が打切られるというようなことになるのか、この辺のお見通しは如何ですか。
  265. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私はそのジヤツト氏のリポートの詳細なオリジナルなものはまだ読んでおりませんので、そのニユアンスが私にはよくわかりませんけれども、併し従来いろいろ話合つたところによりますれば、私は中共貿易をやるからと言つて、或いは促進の希望に基いていろいろの処置をやるからと言いまして、その関係から対日援助がアメリカの政府の方針として非常に窮屈になる、或いはこれをやめるというふうになるものとは考えておりません。むしろ、申すまでもございませんが、いわゆる西欧並みの線において中共貿易をやるということは、何らそのことによつてアメリカから経済的な圧迫と言いますか、そういうことを受けるような傾向にあるものではないと思います。ただ、これも前々から政府当局が申しておりまするように、現在のところ、戦争中、或いは戦争前と中国の状態は非常に変つております。ここで中共との取引ということについての制限がだんだん緩和されたからと申しまして、これによつて非常に大きく貿易量が殖えるというふうなことはなかなか実際問題としては期待できないと思うのであります。
  266. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先般私は分科会におきまして大蔵大臣に質問したのでありますが、丁度そのときに通産大臣が御出席にならなかつたので改めてお尋ねいたしますが、小麦買入の資金の中で日本の防衛産業の援助に使われる分三十六億、これはどういう方式でいわゆる兵器産業にお流しになるお考えでありますか。具体的な方策がお立ちでございましたらお聞きかせ願いたい。
  267. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 三十六億円の使途につきましてはまだ政府部内の話がまとまつておらないのであります。通産省といたしますれば、協定にもはつきりございまするように、工業関係にこの金が使える、或いは潜在経済力の拡充に使えるというふうになつておりますから、この文面上から申しますれば、何にでも使えるということも言えるでございましようが、併しこのできました経緯や沿革から申しましても、或いは又実際の必要性から申しましても、私といたしましては、やはり防御関係の産業に対する資金として出すようにしたいものだと考えております。もう少し具体的に申しますと、現に二十九年度の計画でも、保安庁自体が自分の予算で発注することを予定しておりまする装備の関係のものがございます。それからアメリカからのいわゆる特需、域外調達として確実に発注を見込まれるものであつて、設備資金的にはやや不足であるというものもございますので、これらの点を勘考いたしますると、原則的にこの三十六億円の金は保安庁の発注なり、或いは特需の発注なりの確実と見込まれるものの中でその生産に必要な設備資金的なものにこれを第一義的に用いることが適当ではなかろうかと私は考えておりますが、たたその金を純然たるコマーシヤル・ベースで以て開発銀行経由で流すがよろしいか、或いは施策その他のものにつきましては、出資の形にするがよかろうかというようないろいろの条件や具体的の問題につきましては、今暫らく政府として方針がきまるのに時間がかかるかと考えます。
  268. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 すでにこの三十六億をめぐりまして兵器生産の会社などにおきましては、いわゆる分取り競争が行われているという話であります。これはやはり将来の疑獄の問題と関連があり、或いは会社をめぐつて利権の問題が起つて来るかも知れない。これは慎重に一つ考慮して頂きたいと思います。そういう種類の会社の一つとして日平産業などが挙つております。過日の日平産業の建直しについて、経済界の方面からいろいろとやつておられるようであり、果してこの日平産業の実情というものがどういうものであるか、又JPAのほうで日平産業のてこ入れをしておられるというお話も聞くのであり、その経理の実情や或いは三十六億の金の出資と申しますか融資と申しますか、その配分先として日平産出のようなものが適当であるかどうか、この辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  269. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 日平産業の問題につきましては、我々といたしましても非常な関心を持つて注目をいたしておるわけでございます。その関係はアメリカ側といたしましても発注者の立場から申しまして、いわゆる特需契約の履行に関心を持つということは当然でございますので、その関係におきましても、政府として関心なきを得ないわけであります。それから又全然別の見方からいたしますると、日中産業の傘下には約二百の下請業者がございます。その支払につきましては、従来もとかく停滞がちでありましたので、中小企業庁や公共取引委員会でその実情を常に調査いたしまして、昨年末におきましても警告を発したというような事実もあるわけでございますが、そういう関係においても、これは政府といたしましても関心なきを得ないわけでございますが、只今承知のような状態になつておりますので、日中産業自体の問題といたしましては私どもとしては今暫らく事態の推移を静観したい。内容等については経理上の関係その他をできるだけよく把握することに努める程度にいたしておりますが、まだ何ら措置をするというところまでは行つておりません。それから三十六億円の問題に関連いたしまして、こういうところが対象になるかどうかというお話でございましたが、これは兵器の産業であるという意味においては対象に考え得るところではございますが、先ほど御注意もございましたように、この三十六億円という金は、そのできだかが国際的の性格のものでもございますし、特にこの使用先、融資先というようなことについては日本政府といたしましても徹底してきれいなやり方でやらなければならないと考えます。そういう点から言えば、開発銀行を通してコマーシヤル・ベースでやるというようなことが最も適当であると思うのでありますが、これが併し特殊のものであつて、必ずしもコマーシヤル・ベースにきれいに考えてものらない問題もあり得るのではなかろうかと思うのでありますので、その辺のところがまだ今後どうやつていいかという研究が不十分で、的確に只今お答え申上げるまでに行つておらないわけであります。
  270. 苫米地義三

    苫米地義三君 時間も大変遅くなりましたし、私の持時間が少いものですから、極く簡単にお尋ねをして見たいと思います。ただ遺憾に思いますことは、吉田総理が本日おいでにならんことであります。と申しますことは、私が伺いたいことは、吉田総理の信念について伺いたい。従つて吉田総理の心の琴線に触れて見たいと考えておつたからであります。不幸にして病気である。而もその御病気神経痛だ。私も実は神経痛の体験を持つております。痛むときには堪えられないほど痛みますが、命には別にかかわりはないと思います。今日吉田さんは国民に耐乏生活を訴えている、耐乏生活ということは、苦痛を我慢してくれということなんであります。それでありますから、この神経痛が命にかかわらないというような信念を以てここにおいでになれば、私はその苦痛を堪えているという状況を、この国会にお見せになつただけで、千万言の答弁にも優る効果があると思うので、どうぞこういうことは副総理から吉田総理にお伝えおきを願いたいと思うのであります。  そこで最初に大蔵大臣にお伺いしたいのですが、経済界の状況を先ほど松澤氏の問に対してお答えになりましたが、拝聴いたしますというと、私どもとその感じが違います。如何にもまだこの政策で以て、そう悲観するようなことはないという感じを持つておられるようであります。私どもはさような程度に考えておりません。今日の経済情勢というものは、何となしに無気味な恐慌を来たすのではないかとさえ感じているのであります。その原因は、今回予算にとられました、いわゆる緊縮予算と申しますか、デフレ政策と申しますか、そういう点を総合的な施策を講ずるのでなくて、ただ一時金融を引締める、こういう結果にあると思うのであります。勿論外貨も少くなりました。従つて日本の物価を下げるためには金融が一番手つ取り早い、こういう安易な考えでやつておられると思いますが、この金融引締が度を越しますというと、産業が萎靡不振に陥るのは当然でありますが、それ以上に窒息をするような状態にあるのは中小企業、現に今日不渡手形があれほど多くなつたり、倒産者が起つたり、失業者が増加するというような状況は、而も急スピードにこれが進んでおります。そういう点に対しましては全然私と大蔵大臣とは感覚が違うのであります。又労働問題につきましても、労働大臣は常に過去の数字を挙げて、失業者は減つているというのんきなことを言つている。政治は前途のことを考えなければならん、この施策がよつて起るところの影響を考えなければならん、その失業者増加の趨勢に対してどういう対策をとつて行くかという用意がなくてすることは、甚だ危険であると思うのであります。  そこで最初に伺いたいのは、現在の経済的情勢をどういうふうに判断しておられるか、そうしてその前途観に対するどんな用意を打つておられるか伺いたいと思います。
  271. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私が先ほども申しましたごとくに、これは今の経済界は朝鮮事変後の、いわば変態的なインフレに対する財界の整理整頓が行われているというふうに考えているのであります。従つて今のやり方で日本経済が恐慌に向つて進んでいる、こういうふうには私ども考えておりません。又整理整頓時期には、或る程度の相当な不況が一時的に出て来ることは、これは避けがたいことであつて、その段階を経なければ、決して日本経済というものは健全に立行くものでない、こういうふうに考えておるのであります。
  272. 苫米地義三

    苫米地義三君 そういう御観測であろうと思うのです。その点が私と少し考え方の程度が違う。感じ方の程度が違う。幸いに大蔵大臣の言われるような状況でこれが経過することができますれば国家のために仕合せだと思うのですが、この点についてただ御警告申上げておきたいと思います。そこで緊縮予算についてはもう重ねて追加補正予算はしないということをしばしばおつしやつておりますが、本当に政治責任を持つてあなたはそうおつしやるのですか。この予算の内容を拝見いたしましても、九千九百九十五億でありますが、これは健康体の人を一年中健康体と見ての話です。ところが日本は非常に弱体な点がある。災害費なんていうものはここに見ておりません。それからあなたが現に行なつておりますところの金融引締め、それによつて起るところの倒産者、或いは失業者、そういうものに対する対策もお考えになつておらようんに思うのです。そうして一方にはデフレ政策を強行しておりますから国民所得が減るでしよう。そうしますと税金の収入も、減る懸念もあるのです。そういう観点を総合いたしまして、なお且つ補正予算は行わないということを、政治責任を持つておつしやることができますかどうか伺いたい。
  273. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これは苫米地さんも御承知のように、財政というものは、租税収入というものは、大体普通でありますと相当な自然増収がございます。若し日本の財政規模で、普通で言いますれば相当の、五百億ぐらいの自然増収があるのが普通であります。但し本年はそういうことでなしに、これは不況に進んで行くものなりということをいろいろ織込みまして、一切の自然増収等を見込んでおりません。税収入としては最も手堅く見積つておりますので、歳入の不足から来る問題は先ずなかろうと考えております。それならば支出の増加から来る問題でありますが、一般的に支出の増加は厳にこれをいたさないように措置をいたしておりますが、問題は災害が起つたときにどうするかという、今お話の点なんであります。災害は私どもは昨年は六十年にない災害ということが言われて、六十一年目に、六十年にない災害が又起つて来るとは考えておりませんので、一応平常並みとして見込んでおりましたが、先ほど松澤さんのときにもお答え申上げたように、そういうことにも多少備える意味もございまして、例えば今の予算単価等も切詰め得るものもあると思います。そのほかにも切詰め得るものが物件費等にあると思いますので、さようなものをできるだけ切詰めまして、それを以て備えることにしてこれに持つて参りたい、かように考えておるので、従つて私どものほうは只今のところでは、これは二十八年度にあつたような異常な災害が起つて来ることは、これはどうも神ならぬ身で私はわかりませんが、普通の状態でございますれば、補正予算は一切組まない、歳入の面から見ましても、歳出の面から見ましても補正予算は組まない、かように考えておる次第であります。
  274. 苫米地義三

    苫米地義三君 私も災害が起ることを願つておるのではないので、さように参りますれば非常に幸いなんです。どうぞそうあるこをと念願する次第であります。  そこで私は大蔵大臣に伺いたいのですが、デフレ予算、緊縮予算、一兆円以内の予算を作るという、そういう考え方は、従来の政府態度から言えば非常な転換なんです。百八十度転換をしたのではないかと思います。従つてその政策の面から今申上げましたような耐乏生活を訴えるとか、或いは労使の協力を求めるとかいうような点を強調しておられるわけです。これは従来吉田内閣政治を担当して以来六年たちますが、そういう低物価政策、耐乏生活ということはなかつたわけです。どういうわけで今度のこの予算でさようなことを編成し、又その政策を転換したのでありましようか。これを率直にその切替つた事情一つお話願いたい。
  275. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 占領下におきまして、御承知のごとくドツジ氏のいわゆる緊縮予算を除いては大体において仰せのごとくに日本の政策が、耐乏的な政策が行われておりません。特に占領から解放されまして、その間物にしましても何かと不自由な生活を忍んで参つたものですから、独立になつたときにやりたいことが、一口に言えば山ほどあつたと私は思います。それが何となく、そう言つては悪いかも知れませんが、気のゆるみを生じて、そこに過去の蓄積も若干使えば、或いは手持の公債を売つたり、或いは減税国債を出すというようなことにもなつて、又自然増収を全部見込んだりするというようなことにしてまあ予算が立てられた。従つてその間には当時の実情上止むを得ないとは申しながらべース・アツプとか、いろいろの問題等が起り、仲裁裁定を呑込むというような問題が起つたりいたしまして、多少二十八年の予算は或いはやはりインフレ的傾向を織込んでおつた。このことを私が最初の演説でもそういうことを率直に認めざるを得ないと申したのはその点である。ところがそれで見ますというと、従来二十五、二十六、二十七年の三カ年間は大体において三億数十ドルの受取勘定でございました。ところが二十八年になつて参りますというと、もう普通に見まして、一億九千四百万ドルくらいの一応赤字を、予算に見込まなければならない、こういうことになつてつたのであります。それで日本の置かれている事情を静かに考えて見て、一億九千四百万ドルはどうしても一応二十八年に見なければならんような、赤字を見なければならんような国際収支の状態でございまして、そうして過去三カ年間いずれの年も三億ドル以上ずつの受取勘定であつたのと比べまして、国際経済界に置かれた日本経済様相が一変しているということをはつきり私はつかんだのであります。従いまして、これを早く直さなければならん、特に日本のような食糧或いは原料品等を現在多く外国から輸入しなければならん国では、外資が足りない、手持の外資がなくなるような事態が起つては容易ならんことが起るから、今にしてこれは日本の物価も一つ下げて行かなければならん。それでどうしても或る程度国際水準に近付けて、日本の国際収支を均衡に向つて進めなければならん。これをやるのに昨年の九月頃でありましたか、私が内閣に諮つて、あのとき余りそういうところに、中には気付かれなかつたかたもあつたかも知れませんが、いわゆる貨幣価値の維持について閣議決定を願つて日本の貨幣価値を維持するについての閣議決定をいたしまして、その一つ、大きいそれだけについて閥議決定をとにかくいたしたのであります。それに基いて予算その他の編成方針を立てて参つた。こういうのでありまして、いわば三十八年の国際経済界に置かれた日本の実情が今までのやり方を急転化せしめた因である。この状況がまだ三十九年でも終らんと思います。三十年もこれは引続いてこれはやらなければならんと自分では思つております、併しこの三カ年をやればこれは大体その間に日本の各種の産業の合理化等も行われて参りますし、先ず大体それで所期の品的を達し得るのではないかと、よくよく足らない場合でも、三十一年までちよつとかかつたらいいのではないか、一応そういう見通しの下にやつております。従いまして、よく物価について的確なる数字を出せ、何に基いてどうしてこうなつたかと言われるのでありますが、これは私は実は的確な数字で申上げるよりも、これは苫米地さんのごときかたは勘でおわかりだろうと思いますが、もうすでに相当下つて来ております。石炭も恐らくは私が石炭行政を預つたときにこの一年に一割は下りますと言うた。優に一割下りましたが、私はこの一年間にまだ一割下ると思つております。この石炭などは……。こういうふうにしてどうしてもこれは下つて参ることは、一つのものの中心においていろいろな施策を進めて参りますれば、必ずそこまで持つて参ります。ただそれへ持つて参るのに仰せになりましたように、できるだけ怪我人を出したくない、できるだけ中小企業方面の人にしわ寄せをさしたくない、それの配慮が我々政治担当者として一番重要な任務である、かように考えております。
  276. 苫米地義三

    苫米地義三君 大蔵大臣は今にしてそういう考えを持つに至つた。(「そうだ」と呼ぶ者あり)こういうことです。ところがこの政策は、片山・芦田内閣がとつた政策なんです。耐乏政策、その線を破つたのはだれかと申しますというと、吉田内閣、あの厳重な九原則の網をもぐつて自由経済にして、そうして一種の奢侈遊蕩を奨励して、そうして見せかけの繁栄なるものを作つた、それは六カ年間続いた。そこで万止むを得ないからこういう政策をとつた。この政策が全く片山・芦田内閣がとつた政策なんです。而もその政策は西ドイツやイギリスがとつた政策と一緒です。その一緒の政策が六カ年たつて行詰りを生じた、間違つておつた。こういうことに帰着すると思うのですが、過去の政策の方向が間違つたということをお認めになりますか、どうですか。
  277. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) それは私が御答弁申しました通り、私は実は独立前におきましては、すべて予算でも、或いは各般のことが占領行政下に行われておつて、その占領行政にはかれこれ批判することさえ許されなかつたのでありますから、日本のその時の政府が独善的に間違つたものかどうかについては、丁度私は追放されてもおりましたし、よく存じませんが、その辺の事情よく存じませんが、今までのやり方では、今日からの日本は凌げないというのが私の信念でございまして、従つて私は率直に今までの非を認めて、こう行くべきであるということを最初の演説でも申上げたのはその点でございます。
  278. 苫米地義三

    苫米地義三君 その点は私は非常に重大なことで、いやしくも政治家政治責任を持たなければならない。過去の吉田内閣のとつた政策がさように間違つてつたのだ、こういうことでしよう。そうすればその間起つた国民の損害というものは何ほどであるか、あの厳重な経済九原則の網をもぐつて、そうして自由経済をどんどん進め、その結果なんです。さようなことから言つて、今になつて誤つたということは政治責任をとらなければそういうことは言えないと思う。これは政治家、いやしくも政策が行詰つたときに政治責任をとる、こういうことでなければならないので、特に私はそれを伺つたわけです。これ以上はあなたは続いて大臣をやつていなかつたからおわかりにならん。私どもはそのときから何をしておりましたから、若し総理大臣がおいでになればその点を伺いたかつた。もう併し御答弁は要りません。
  279. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 一言言わして頂きたいと思います。私はその当時局におりませんからでありますが、外から見ておりまして、この五カ年間、六カ年間の間に、日本の産業がどれだけ進歩したか、又お互いの国民生活がどれだけ進んだか、これは数字の示す通り非常に進んでおるのでありまして、これは一方多少の責任もありましようが、他方その功績というものは、相当大きなものがあると、私は思つております。このことが私はむしろ多数のかたの御意見でなかろうかと思うのでありますが……。
  280. 苫米地義三

    苫米地義三君 それはちよつと小笠原大蔵大臣の甘い御答弁だと思うのです。そんなものじやありません。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)日本の本当の実力は、そういうあなたのおつしやるように上つておりません。それならもつと貿易面において各国と競争ができるでしよう。今できないということは、それを如実に示しておる。だから率直に今間違つておつた、こういうことをおつしやるならばいいと思う。  そこで通産大臣に一点だけ伺いたい。予算を見ても、政策の上から見ましても、新らしい建設的な政策は入つておらんと思うのであります。昔からいわゆる商工行政というものは経済現象にフォローする。そういう昔から一貫した態度にこれをやつているに過ぎない。何か日本の本当の経済を立てるに、日本独特のものを持たなけばならないという一つの基本線がなければならん。  私は一つの例を申上げます。鉄鋼政策です。鉄鋼政策は、日本に鉄の資源がないから外国の模倣産業になる。そうしてあの厖大な産業が起つておるわけであります。けれども原料は全部外国から来るでしよう。石炭も外国から来るでしよう。重油も来るでしよう。そうして紡績ならば国内の労力を使いますが、労力さえ余り使えない。そういう形でどうしてこれはほかの国と対抗ができるわけですか。それならば日本に鉄鉱資源がないかというと、あるのです。数億トンの鉄鉱石がある。ただ形が、今までのような外国から来るような鉄鉱石がないのですよ。一つは硫黄にくつついている硫化鉱であるとか、或いは磁硫鉄鉱であるとか、厖大なものであります。これの化学工業とタイ・アツプしてやりますと、六〇%の鉄ができる。又東北から北海道にかけ砂鉄という資源が非常に多い。而もその砂鉄の中には新らしい金属のチタニウムはうんとある。十分ありますよ。そういうものを利用することに着眼して積極的にやるのでなしに、日本のこの原料を活用しないで、依然として外国依存でやつているその基礎産業というものは実に前途悲観すべきものだと私は思う。そういう建設的な経済政策をもつと勇敢にとつて頂きたい。そういう場合には大蔵大臣もお願いしますが、もう少し積極的に金を出す。私は例えば今鉄鋼のお話しましたが、十億円金をかければ五十億の外貨は得られますよ。私の計算から行けば……。これは材料がありますから差上げますが、そういう事実があるんです。まだ日本にはそれと同じような種類のものはございます。そういう点について通産大臣はどういうお考えを持ちますか、もつと熱意を持つて頂けるかどうか伺いたいと思う。
  281. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 只今の御指摘の問題はかねがね苫米地委員の非常に御熱心な御主張でございまして、私もこれに敬服しているわけでございます。私どもといたしましても只今仰せになりました通りでございまして、特に従来の研究が十分でなかつたと思うのでありますけれども、砂鉄なり磁硫鉄鉱なり鉄鋼の原料資源についてこれから十分な政府としても開発助成策を講ずる必要があると思うのであります。これは釈迦に説法で恐縮でございますが、私どもの調べによりましても現在三〇%程度に鉄鋼原料の自給度がなつているのでありますが、五年後にこれを五〇%に上昇せしめることができる。それから現在の輸入鉄鉱石に比べまして約二〇%程度割安な鉄源の使用を可能にすることもできる。それから只今も仰せられました通り、ありまして砂鉄を基礎原料にする金属チタンの自給度が向上するというようなことになりますと年間に千四百万ドル、丁度五十億円ほどになりますが、外貨の節約を達成することができる、こういうふうに私どもの役所でも最近の結論としてこういう研究をいたしたわけでございます。このような見地から予算の問題になりますと誠にどうもこの点は私も遺憾と思うのでありますが、特に地質調査所の機能を積極的に活用して計画的にこれが開発調査を推進することにいたしたいということで、乏しい中ではございますが、二十九年度に千百五十万円をこれらのための予算といたしまして地質調査所につけてもらつたわけでございますが、一つこれは只今御一例を頂きましたので、その線に沿いまして一つ予算などについても十分潤沢にして頂きまして、この効果を十分に挙げるようにいたしたい、こういうふうに私としては考えておる次第でございます。
  282. 苫米地義三

    苫米地義三君 非常に心強く感じるのですが、これは大蔵大臣、一つ注意して頂きたいことは、同じ鉄鋼業者で合理化に名を借りて二重投資、三重投資をするものが非常に多いのです。(「そうそう」と呼ぶ者あり)何十億かあるのです。その金をこつちのほうに廻せば優に辛抱できます。それだけを一つ御協力願いたい。  最後に私は総理大臣へ御伝言を願いたい。副総理に申上げたいのですが、この今の政策の大転換、そうすると過去についての政治責任、これが政治家としては一番大事な道徳なんですね。それを今日この段階で、総理がわざわざ国民に耐乏生活を訴えざるを得ないという態勢を馴致した過去の責任というものは、どうしても政治家としては考えなければならん。私はいろいろな汚職事件とか何とかで内閣がどうとかこうとかいいますが、そういうことはないと思う。内閣の生命は政策です。その政策に行詰つた。転換せざるを得ないというときには、潔く進退を考えるべき時期じやないかと私は思うのです。この点はもつと突つこんで十分に総理に伺いたいのですが、今おられませんから、どうぞ私がこういうことを主張したということを総理にお伝え下さつて、善処方を御考慮願いたいと思うのです。それはどうでしようか、お伝えできますかどうですか。(笑声、拍手)
  283. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) そういう御意見があつたことは確かに伝えます。その際私の意見を附加えることを許されますならば、私は今の民主国家におきまして、政府の進退というものは国民の批判を待たずに進退してはいけない、これは私非常に或る場合に政局の混乱を来たします。これは若し政府の政策が今御指摘のように誤つておるとするならば、そうして非難に値いするとするならば、次の総選挙に必ずその結果が現われる、又それが現われないようならば民主政治は成立たない、従つてそれをどうその機会を持ち来たすかということは、政府考え国会考えることではなかろうかと思うのであります。ただ、今お示しになりました御意見は確かに総理大臣に伝えます。
  284. 苫米地義三

    苫米地義三君 私のそう申すことは、吉田総理はしばしば民主政治によい前例を作りたいということをおつしやつている。これは私は吉田総理に非常に敬意を払うものなんです。その民主政治によい前例を作るということは、今のような場合、政策に行詰つてどうにもこうにもならなくなつたといえば政治責任をとる、これをきれいにとることによつて民主政治によい例ができると私は思う。(「然り」と呼ぶ者あり)それでありますから、その点を一つ念を入れてお伝えを願いたいと思うのです。なお時間がありませんから打切りますが、私は吉田総理が近いうちに海外へ出かけるということを伺いますが、本当でしようかどうでしようか。若し行かれるとするならばどういう目的で行かれるのか、御承知なら伺いたいと思う。
  285. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えします。その希望があることはよく承知し出ておりますが、いつ出られるかということはまだ決定していないと思います。その目的は一口に申しますればよく言うグツドウイル・ミツシヨンでありまして、これは今日交通の発達もありましようが、世界の各国の相関関係というものが以前に比べて非常に密になつておる。日本の内外の施策を行います上にもやはり国際的情勢を十分に検討しなければならない。それには総理大臣が、若し国内の事情が許すならば、出ることを許すならば、行つてみずから各国の責任者との間に意見を交換することも非常に必要であろうと存じ、幸いに昔と違いまして非常に早い時間で旅行することができまするので、その機会を利用して各国の政治家と意見を交換したいという、そういう希望があることを承知いたしております。
  286. 苫米地義三

    苫米地義三君 行かれるについては何か具体的にお話があるに相違ありませんが、それを今伺うわけには参らんと思いますが、私は政局をこれから担当するのだ、だからして諸外国との間に大いに意見を闘わす、こういうことはわかるのです。けれども、私が今言つたように民主政治のルールによつて責任をとるのだ、こういうような決心がきまればもう行く必要はない。下手なことをされるとプラスのお土産でなしにマイナスのお土産を持つて来られる。それで私は一番最後に是非申上げたかつたことは、これは時間がありませんから申上げませんが、個人として身軽になつて世界を行脚して、そうして世界平和を達成する、こういうことに吉田さんが発心されるならば、私は日本のこの原爆を受けた、十字架を背負つたこの日本の平和使節として、そうして世界各国にこれを広めるというようなことは非常に意味があると、実は思うのです。それを詳しく申上げて吉田総理に訴えたいと、こう思つてつたのですが、今申上げるような事情でありまするから、これは他の機会に譲りまして、どうぞおいでになるには民主政治のルールをしつかり立ててから、そうしてお考えなつたらいいじやないか、それには立派なそこに大きな使命がある、こういうことを申上げたい。私は終戦のときのあの紹勅は世界に向つての大きな平和宣言だと思うのです。その内容を申上げてもいいのです。そういう日本が世界に平和宣言を出している以上、そうして十字架に乗つた以上、これを世界に宣布して、そうしてこの戦争をなくするように、国際連合の機構を改善するとか、或いは道義観念を高揚するとかいう国際信義の確立をすることはできると思う。それこそ本当に意義のある御旅行でないかと思うので、もう少し詳しく申上げたいのですが、どうぞその点を、多少そういうことに触れたということを御伝言願いたいと思います。これで終ります。
  287. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は総理総括質問いたす予定でありましたが、総理が来られませんので、遺憾ながら総理代理としての緒方総理質問をいたすわけであります。  二十九年度の一兆円予算がインフレを防止する建前から編成されているということは、これは総理、大蔵大臣の演説からも明らかになつてつたのであります。そこで我々は約二十日間、これまで一般質疑、或いは分科会においてこの予算審議して来たのでありますが、その一般質疑或いは分科会の質疑を通じて明らかにならたことは、このインフレを防止するにはどうしても防衛費がインフレの一番中心的な要因になるのであるから、その防衛費の見通しが明らかでなければならない。それで一般質疑、分科会について、防衛費の見通しを明らかにすることに努力して見たのでありますが、この防衛費は二十九年度の予算を見ただけでは明らかでないわけなんです。二十九年度に出ているこの防衛費を平年度化すれば相当膨脹するわけです。更に三十年度にこの膨脹した、平年度化した予算に新らしく又いわゆる増強計画を加えれば、相当大きい防衛費になると思うのです。そこでどうしても三十年度の防衛費を頭に入れつつ二十九年度の防衛費、或いは一兆円予算を我々は判断しなければならないわけでして、実はもつと長期の計画を立てて、それによつて防衛費の見通しを立てるべきでありますが。長期計画はないと言うんです。差当り三十年度まではこの防衛費増強の計画の目途はつけたと言つております。そこで緒方総理に伺いたいことは、この三十年度の防衛費を大よそどのくらいに考えておるか。二十九年度の保安庁費は七百八十八億でありますが、三十年度の防衛費を大よそどのくらい、そうして又防衛費を含めた三十年度の財政規模を、細かいことは要らないんです、大よそどのくらいの心積りでおられるか。三十年度のこれがわかりませんと、この二十九年度の予算についての検討、その影響もよくわからんわけですから、それについて副総理のお考えを伺いたい。
  288. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) そのことについては先ほどどなたかの御質問に対して保安庁長官からお答えをいたしておつたと思いますが、三十年度の防衛費がどのくらいになるかということは、あらゆる要素を取揃えて慎重に検討しなければならないのでありまして、今後の情勢の変化もありましようし、それから今いわゆる緊縮予算、この実施の結果を見る必要がありますし、今のところ先ほど保安庁長官から申上げた以上に的確に申上げることはできません。
  289. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私はおかしいと思うのです。それは第一分科会において私が保安庁長官に質問いたしました結果、大体一千億円は超えるであろうという答弁でありました、或いは一千二百億くらいになるんじやないかと思うのですが、それはこの二十九年度の防衛計画を平年度化した場合の予算がどのくらいになるかということを質問して、これに対して保安庁のほうから御答弁があつたのです。細かいことは省略しますが、大体二十九年度の防衛計画を平年度化しますと約百五十億はどうしても殖えます、そうしますと七百八十八億に百五十億加えますと九百三十億くういには平年度化しますとなるんです。その九百三十億に対して三十年度の新たなる防衛計画、陸軍二万、海軍六千、空軍八千六百、これは人数でありますが、この計画を加えますとどうしても千億は超えるわけです。千二、三百億くらいになると思うのです。このことは分科会で今度は幸い速記をとつてありますから、保安庁長官が大よその心積りとしてお答えなつた、私は千億は超えるでしよう、それはやはり千億は超える、こういう御答弁であります。ですから大体千億以上に達するであろうということは分科会の質疑を通じて明らかになつたのですが、大体そのくらいの目途はつけておらなければならんはずだと思うのですが、その点は如何でしようか。
  290. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 保安庁に意見があると思いますが、まだ内閣全体の問題として、と申しまするのは、これは予算編成に関してほかのバランスを無視するわけに行きませんので、まだ内閣の問題になつておりませんので、数字の見積りとしては主計局長からお答えをいたします。
  291. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 細かいことはいろいろ私も資料もあり、自分も検討して見たわけです。それから保安庁の石原経理局長からも伺つたんです。問題は二十九年度の予算の一番重要な点は防衛費が殖えていることなんです。防衛費が殖えたにかかわらず、予算規模を一兆円に圧縮している、そのために国民に耐乏が要求されているわけです。そうしますと三十年度においてこれは先ほど大蔵大臣お答えになりましたが、やはり予算規模は大きくしたくないと言つている。三十年度において一兆円子算を組んだ場合に、防衛費が千億を超えたような場合に国民生活はどうなるかです。二十九年度の予算審議するときに、三十年度の防衛費がどのくらいになるかということを考慮に入れないで審議しても無意味です。なぜならば二十九年度の予算に出ている防衛費は、これは平年度化されたものではないわけなんです。これを平年度化すれば七百八十八億に少くとも百五十億円はプラスしなければならない。そのことを我々は予定してこの予算審議しなければならんわけです。その上に三十年度陸軍二万、海軍六千、空軍八千六百人殖えますと一千億円を優に超えるんです。このことを前提にした三十年度の防衛貿及び財政規模と、それと国民生活との、いわゆる民生費との関連を我々は頭に入れて審議しなければこれは意味をなさない。インフレを防止するといつても、百歩譲つて二十九年度は仮に防止し得ても、三十年度に一千億円以上を超える、而も国民所得が、財政投融資を圧縮する結果生産が伸びないとすれば、国民所得は余り殖えない、又防衛規模は余り多くならんとすれば、そこで一兆円予算を組んだ場合に、国民生活は二十九年度以上にうんと圧縮しなければやはりインフレは防止できない。従つて当然これは一兆円予算をお出しになるときに、三十年度の防衛費及び財政規模がどのくらいになるというこの心積りは、これは閣議できまらなくてもいいから、大体国民に対して納得の行くように、大体の心積りでいいんですから、そのお考えは当然これは内閣全体としても問題になつたに違いないんです。三十年度は一体どうなるだろう、これは長期防衛計画は無理であるということは了承しますが、少くとも三十年度までは頭に浮いたというんです。而も三十年度の防衛規模は、はつきり陸軍は二万、海軍六千、空軍八千六百と保安庁長官は言われておるんですから、大体それで三十年度の財政規模がおよそわかるはずです。この点について伺いたい。
  292. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今の一千億を上廻るという数字の基礎になつておりまする兵員の増強でありますが、これもいわゆる保安庁長官の目途でありまして、まだそこまで決定しておるわけではありません。三十年度の予算には、やはり何と申しましてもインフレ防止を第一に取上げて行かなければならんと考えております。その場合に財源としてどういうものがあるかということでありましようが、二十八年度の災害に伴う災害の結果の予算、これは常識的に考えても相当減るのじやないか、その予算の按配についてはまだ十分に検討しておりませんけれども、非常にそれによつて緊縮予算の方針が破られるようなことはしないつもりでございます。
  293. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はどういうお見通しに立つておりますか。
  294. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 大体まだ保安庁の案について私ども実は検討いたしておりません。どれくらい殖えるか、今の場合ですとちよつと殖えることは間違いないと思いますが、今の出し方をして来れば平年度化するわけですから……。併し三十年度に今言われた兵員の陸軍をどれだけ殖やす、それから海をどれだけ殖やす、空をどれだけ殖やすということについては何ら具体的にまだ相談をいたしておりません。ただ財政の切り盛りをするものとしては、やはり私はよく申しまする通り、二十九年度の編成方針を三十年度もこれは貫くことは必要であると考えておるのであります。従いまして今年は幸いにいろいろ情勢がよくなつて、例えばいろいろ自然増収とかあるようなことがありますと、私はそうまで見込んではおりませんが、そういう場合に幾らかのゆるやかさは出て来るでありましようが、さもなければそういうゆるやかさは出て来ません。併しその場合にこれをどの程度按配するかということにつきましては、私としては今の方針を貫きたいと思つておりますが、これは予算編成方針は閣議で決定することでもございまするし、最後のところに至らんと全体としての考え方は申上げるところまで行つておりません。
  295. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで二十日間に亘り一般質疑或いは分科会の質疑を通じて、我々はあらゆる努力をして、大体一千億を超えるだろうという目度だけは付けるに至つたわけです。そこで我々最後の総括質問において、これはどうしても、質さなければならんことは、大体保安庁の答弁ではそうであるけれども、これに対して政府は一兆円の予算を出すときにそういうことを考えておらなかつたならば、こんな非常識な、国民に対して無責任予算の出し方はないと思うのですよ。今後の一番重要な問題は防衛費なんです。国民生活との関連において防衛費がどの程度になるか、国民所得との関連或いは予算全体との関連でどういうウエートを持つかということが一番重要な、又この予算審議の焦点であるべきですよ。それに対して三十年度との関連においてこれは明らかでないということは、我々これから今度は討論をやる場合にその判断に苦しむのです。それで先ほど主計局長が御答弁なさるそうなので、それじや計数的にお伺いし、更に石原経理局長はこの間御説明下さいましたが、それで石原経理局長は、あのとき保安庁長官がおいでになつたときにあなたも一緒においでになつたわけです。そして保安庁長官が私の質問に対して、一千億を超えるだろうということについて肯定されていることはあなたも御承知なわけです。これは速記録にもありますし……。それで先ず主計局長からお伺いして、その次に経理局長からもこの間の結果について御説明願いたいと思います。
  296. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 先ず二十九年度予算の平年度化の計数でございますが、これは先ほどもお答え申上げましたように、二十九年度の予算総額七百八十八億のうち、増勢に伴う経費が二百三十二億円でございます。これはいわゆる初度費でありまして、平年度化の場合にはこの分は当然落ちるわけであります。そうすると、残り五百五十六億でございまして、そのうちに二十八年度の予算外契約の予算化の数字が百二十四億入つております。これを差引きますと、結局二十八年度のいわゆる維持費が四百三十二億円であります。これが来年度平年度化いたしますと、六百億足らず、五百八、九十億の金額になろうかと思うのでありまして、その意味で百五、六十億が増加いたしますことは只今お話通りであります。但し先ほども申上げましたように、増勢に伴う経費を一応見ない、平年度化の場合には当然見ないことになりますが、見ない、又予算外契約百二十四億を引つ込めまして、その代り二十九年度の八十億、これが三十年度には当然予算化されるわけですから、それを計算いたしますと、実は平年度化いたしました数字は、実は六百億を上廻ること七、八十億ということになるわけであります。これは本年度のと同じ規模の平年度化でございまして、来年度の保安庁経費がどうなるかということは、従つて昭和三十年度において如何なる増員増勢が行われかということにかかつておるわけであります。その点につきましては、先ほどから御答弁もありましたように、実は政府としては何ら決定いたしていないわけでございまして、私どもも確定的な計画は何らいたしておりません。従いまして、その経費が来年どのぐらいになるかということは、はつきりしたことは今申上げられないのでございますが、仮に本年度と同じだけの増勢に伴う経費二百三十二億が加わるということになりますと、まあ若干今年よりは殖える、これは当然平年度化のために百五、六十億殖えるわけでございますから、その分は当然殖える、併し来年度増勢に伴う経費はどのくらい見るかということは今後の問題ですから、今日のところでは予測することができないわけでございます。なお防衛費の問題を考えます場合に、いわゆる防衛支出金のほうも合せて考えなければならんと存じます。私は三十年度が仮に増加するというような場合には、やはり防衛支出金のほうを相当減らして頂きたい、これは相手方もあることでございますが、そういう努力を極力すべきものと考えている次第でございます。
  297. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 保安庁長官のおつしやいました大体の見当の数字でありますが、これは保安庁長官が保安庁で一応の大ざつぱな見当だということをおつしやつておられる増勢の数字というものを大きく頭の中におかれまして、先ほど来主計局長或いは保安庁のほうからも申上げておりますように、大体維持費の関係で百数十億の増加をいたします。そういう関係を頭におかれまして大ざつぱな見当としての数字を、極くそういうような大ざつぱな意味で申上げたかというふうに考えております。
  298. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで私はもう時間がありませんから、細かく申上げませんが大体千億を超えるということはもう明らかなんです。三十年度にどれだけの防衛計画をするかしないか、これは二十九年度の防衛のときには三十年度も考えたということを保安庁長官が言われている、はつきりこの委員会でもさつき申しましたように、陸軍二万とか、海軍六千、空軍八千六百と言われているんです。ですからこの二十九年度のこの防衛計画を立てれば、当然三十年度には防衛費が千億を超えるということは明らかなんです。こういうことを明らかにしないで、我々に一番重要な防衛費を含むこの予算審議しろと言つたつて無理ですよ。これが明らかにならないで、我々どうしてこれを審議できますか。これを平年度化して百五十億殖える、三十年度において更に新らしい防衛費が加われば千億を超えることは当り前です。そんなことは当然わかるはずです、これだけの基礎資料がはつきりして来れば……。そこで私はこういう千億を超えるということは大体これで否定できないと思うのです。緒方総理、それから大蔵大臣にもお疑いしたいのです。一体これでインフレを防止すると言われていますが、どうしてインフレを防止できるか、インフレの一番根源は防衛費ですよ、非生産支出ですよ。三十年度に一千億を超えるというときに、一体このインフレを起さないようにするためにどういうことをするか、二十九年度だけ防止できたつて追い付かない、三十年度もやはり防止しなければならないと言われても、どうやつて防止されますか。そのことは国民の民生費の上に非常に大きく二十九年度しわが寄つて来るのではないか、重大なことになるのではないかと思います。この対策についてお伺いしたい。
  299. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今の防衛費についての御心配は御尤もでありますが、それはまだ政府の問題として、内閣の問題として取上げておりません。従いまして今政府は乗り出しましたインフレ防止の根本方針、これを三十年度の予算編成に当りましても、やはり貨幣価値の維持、インフレの防止ということを根本にいたしまして、それらを中心に予算編成をいたして、今御心配の点を何とかして除きたいと考えております。
  300. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) まあその防衛費というものがインフレ的なものであることは、これはあなたのおつしやる通りと思いますが、防衛費即インフレだとは私ども考えてない。従いまして全体の面からインフレを抑えて行くという措置をとるのでありまして、どうも木村さんは防衛費はすぐそれがインフレになるとおつしやるが、それだと防衛予算を組んでいるのは日本のみでなく、特に各国皆インフレになりそうなものだが、それはそうなるわけではないので、私は防衛費即インフレとは考えておりません。その点あなたはどうも少し考えが違うのであります。
  301. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は防衛費即インフレと考えません。二十九年度予算には防衛費を殖やしてインフレ要因を作つておる。それを国民の耐乏によつて片一方のデフレ要因によつて相殺しようとしているのです。ですからそのインフレ要因は誰が負担するのかというのです。そこで副総理に伺いたいのですが、これは聖書にある言葉ですが、サムエル後書の第十二章にこういうことが書いてある。これはダビデという王様にナタンという予言者が参りまして話している言葉です。「さて王よ、一つの村に二人の者がございました。その一人は非常に富める者で御座いまして多くの牛羊を持つて居りました。他の一人は妻子の如く育て上げた一匹の牝羔の外何をも持合はせぬ程の貧困者でございました。彼がその一匹の牝羔に対した愛は、真に尋常一様な愛し方ではございませぬ、ところが遠国より前の富める者の家に一人の旅人がやつてつたのでございます。然るにどうでございませう、その富める者はその旅人を饗す為に自らの数多き羊の一つをも屠る事をせず、非道にも只一匹の牝羔のほかなき貧者の手より無惨にもその牝羔を奪ひ取つたのでございます。王よあなたはこの出来事を何と御賢察遊ばされましようか。」どちらが悪いか、これを御答弁願いたい、どちらが悪いでしようか。(笑声、「答弁々々」と呼ぶ者あり)重要な問題ですよ。真剣にこれは質問しているのですよ。
  302. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) そのどこに答弁するのですか。
  303. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どちらが悪いと思いますか。
  304. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 人の羊をとつて来た、終いのほうがよくわからないのですが……。自分の羊を殺さずに、そしてかわいがつている羊を殺した、それは無論よその羊をとつて殺したほうが悪いです。(笑声)
  305. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこでですね、こう言つています。その王様は、ダビデは「老師ナタンよ、その人を知るや。真に神は生きて在せばかかる不義が如何で許さるべきか。朕は即下にその富者を死刑にせよと命ずるものである。而もその償いは正に四倍をもつてすべきである。」、この一兆円予算を基礎とするこの防衛政策はまさしくこれです。富めるものに耐乏を要求していないのです。貧者に耐乏を要求しているのです。アメリカという旅人が来て、アメリカという旅人をもてなすのに貧者のほうに耐乏を要求して、富めるものに耐乏を要求しないでもてなそうとするのが、この防衛計画じやありませんか。MSAを前提とする再軍備です。で、私は、笑つておりますが、こういうふうにやさしく質問しなければおわかりにならんかたが多いと思うのです、失礼でありますが。(笑声、「そんなことはない」と呼ぶ者あり)ですからこれは非常に重要な問題です。三十年度の防衛費の膨張を含めて非常な重要なことですから、私は失礼のような聞き方ですけれども伺つたのです。  最後に、私はもう一点伺いたいのですが、この造船疑獄に対する責任の問題です。これはどうしてもこのまま放置しておけばいわゆる第十次造船は困難になつて、そうして造船労働者の失業が出る、或いは関連の産業が潰れる、又そうすればその方面から失業が出て来ます。そこで一体こういう汚職を伴つたところの造船の計画に対して、今後どういうような積極的な対策を施すかという問題です。これについては私は石井運輸大臣に、ストック・ボートを造つて、そうして国がこれを保有して、そうして造船労働者も失業せず、関連産業の労働者も失業せず、而も国が損をしないで、そうして外国との競争力を強めるような、その方策としてのストック・ボートを国が建造する、市中銀行が金を借さないから、これは開発銀行だけで又やらなければならんので、それにはどうしてもストツク・ボートの建造ということを考えなければならんということを私は石井運輸大臣に質問したのですが、これについてはどうしてもただ運輸省だけの問題でなく、内閣としてこれを推進するように強力な手を打たなければ非常に困難だと思うのです。そこで実際問題として市中銀行が金を貸さなければ、どうしてもそういうほうに追い込まれて行かざるを得ないと思う。造船の失業者を出さず、関連産業を潰さない、そのためにはどうしてもこのストツク・ボートを造るよりほかないと思いますが、これは内閣の問題として副総理はどういうふうな考えでありますか、この点を伺つておきたいと思います。
  306. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 海運の対外競争力を強化するために助成策を現にとつているのでありますが、ややもすると今の汚職問題と混同していろいろなことが批判されておりますけれども、従来とつております政策は政策、汚職汚職といたしまして、どこまでも責任当局の案を政府全体として支持して参るつもりであります。
  307. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今のストック・ボートの点について……。
  308. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えいたします。ストック・ボートの問題は今お話のありましたように、二十九年度は何とか仮にやつて行けるにしても、三十年度になりますと、非常に船会社の持つ担保力というものが弱くなつてしまつて、なかなか我々の計画しているような造船ができないということは前からも皆さんも言われて、我々もそういうふうに感じているのであります。それについての一つの案としてストック・ボートの問題が出て参りました。そこにまで行かなくちやならないかどうかということを、只今各方面に亘りましていろいろ折衝し、研究をいたしております。いずれにいたしましても計画造船の線を進めて行くだけは行かなくちやなりませんので、それについては従来通り市中の金融を仰げるか、それがどうしてもできないならば、今のお話のような線に行くことも当然考えなくちやならんような問題で、いずれにいたしましても市中の融資がなければ、そのまま造船を放つたらかしておくということは絶対にやるべきものではないと思つて今研究中でございます。
  309. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連質問。先ほど主計局長のお答えのうち、来年度の防衛費が増加するといたしましても、他方において防衛支出金の減少の問題が関連するというお答えがございました。本年度におきましても、それは三十五億減らしているので、まさにその関連は本年度予算において、この問題につきましては、本年陸上兵力約二万その他の増強、来年度も先ほど保安長官の言によりますと増強されるのであります。この防衛支出金の減少の問題は同時に駐留軍の減少と、それによるところの防衛支出金の減少の問題と関連しての問題でございます。これがなければ大幅な減少はできないのであります。本年の三十五億円の減少もこれは非常に難航を極めたのはその点でございます。従いまして本年二万その他を殖やす、更に来年度も殖やすという目度が立つております以上、本年においては駐留軍の減少の問題については政府は交渉を始められなかつたようでありますけれども、もうすでに来年度になりますと、陸上兵力を四万も殖やす、つまり十一万から見ますと四万も殖やすことになるんで、そうなつて参りまするならば、駐留軍の減少について政府はこれをアメリカ側に交渉を本年度のうちからする用意があるかどうか。この点について駐留軍を減少せしめる問題についての政府の所信を関連してお問い申上げたいと思います。
  310. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 三十年度における防衛力の増強につきましてまだ決定したわけでありませんが、若し決定する場合には、只今御指摘のようなことも考慮いたします。
  311. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたしまして七時半より開会いたします。    午後六時五十一分休憩    ―――――・―――――    午後七時四十五分開会
  312. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。
  313. 三浦義男

    ○三浦義男君 過般来この本国会におきましては、原子力の平和利用の問題につきまして非常に活溌な議論が取交されたのでありますが、原子力を動力源として使いますことは、我が国におきましては今後相当な年月と莫大な経費を要する問題だと思います。例を申しますと、米国では一九四六年に原子力法の制定ができまして、漸やく本年になりまして小型発電所ができるというような情勢であります。又英国におきましては、三年後にまあ小ちやな発電所ができるというような情勢でありますので、なかなか原子力を動力源として我が国が使うということは、まあ相当な年月を要するものじやないかと思うのであります。さて、我が国の動力源としてでは何があるかと申しますと、石炭、電力、天然ガスというものがまあこの動力源の大宗であるということははつきりした事実でございます。こういうような状態でありますのでありますが、二、三年前から石炭を重油に切換えたほうが熱管理の上でも、又コストの上でも非常に割安になるということで、重油への転換が奨励され、又実行されたことも事実であります。二十八年度におきまして、石炭換算量にして五百二十万トンだけが重油に置換えられたということも言われますし、又二十九年度におきましては、このままの趨勢で行くならば七百万トンくらいの石炭がこれで食われるだろうと、こういうふうに報ぜられておるのであります。ところが重油は御承知のように大部分が輸入品でございまして、手持の外貨がだんだん減つて来る、従つて重油の手当なりが非常に困つて来た。ここで又元に帰つて石炭を使う、或いは電力だというふうになつてつたのであります。今後我が国におきまして何にエネルギー源を求めたらいいかということは、外貨事情とも睨み合してみまして、もう総合燃料政策をここではつきり立てなければならない段階であると思うのであります。私は石油資源に乏しい我が国の国情からいたしまして、外貨を食う石油は第二次的のものに考えて、石炭、電力、天然ガスというものにエネルギーを求めなければならないと思うのでありますが、それは遠い将来はいざ知らず、少くともここ近い将来におきましては、この三者にエネルギーを求めなくちやならないと思うのでありますが、この問題につきまして私は御質問しようと思うのであります。で、総理は大体我が国のエネルギー源がどういうところに重きを置いたらいいかというお考えでございますか、ちよつと伺いたいのでございます。
  314. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 日本の地理的条件から、先年来、特に終戦来電源の開発に非常に力を入れておるのでありまするが、地下資源としては日本は余り石油資源に恵まれていませんので、もつぱら石炭に力を入れて参つたのでありますが、国際情勢によつて支配されやすい外国の石油に多く依存しておることも非常に面白くない事態を生ずる場合がありまするので、石油につきましても日本国内においてその資源の開発に努めようとその政策も併せとつておる次第でございます。
  315. 三浦義男

    ○三浦義男君 そういたしますと、まあ石油資源についてもお考えがなつているが、大宗は石炭、電力、そういうものに重きを置かれる、こういうことでございますね。そこで通産大臣に伺いたいのですが、今副総理が言われますように、エネルギー源は大体現在近き将来においては石炭と電力だと、こう申されております。全くおつしやるように、石炭につきましては石炭の掘鑿の機械化とか、或いは竪坑を掘るとかということでその採炭能率も非常に上つて参りました。従つて炭価も下つて参りました。で、この炭価が下つたということは、先ほども申上げたように重油に食われたということもございましようが、とにかく石炭の炭価については或る程度成功を収めて来ている。それから電力については五カ年開発計画で着々進んでおりまして、これも或る程度の目安は付いて来ておる。併し私が先ほど申上げました天然ガスの利用の問題であります。これは通産省内に資源開発の審議会もあり、又天然ガスの開発等につきましても、或る程度の補助を出されて、そして開発に努められておるようでありますが、現在のところ全体でどれぐらいこの利用が日本全国で行われておりますか、又その利用の度は石炭換算にしてどれぐらいになつておりますか、その辺をお伺いしたいのであります。
  316. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 天然ガスの利用状況は、御承知のごとく現在は、主としまして都市燃料に利用されておりますが、最近石油糸の天然ガスのほかにメタン系と申しまするか、都市近辺におきまして成る程度賦存しておることが確認されまして、これを工業用に利用することも考えておりますが、何分、何と申しましてもガスの埋蔵量の推定も極めて確定することがむずかしい問題でありまするほかに、噴出いたします圧力或いは蒸気の質、それから量等がございまして、恒常的にこれに大きく依存することはなかなかむずかしいようでございます。かたがたこの採掘の方法等もいろいろ技術的にむずかしい問題もございますので、賦存の自然的条件に即しまして利用に近い地点でこれを都市燃料或いは工場の燃料に利用して参りたいと考えております。正確な数量はちよつと持合せておりませんが、そう大きな量でないことはこれは御承知通りであります。なお、これはできる限り土地の状況に応じまして、例えば千葉県地方或いは新潟県地方のごとき所におきましては、これは都市燃料中心にいたしております。一部は工業的にアセチレン系統の化学薬品の原料になつております。東京近辺その他におきますガスにつきましては、工業用の燃料として利用したいと考えております。
  317. 三浦義男

    ○三浦義男君 どうも今の官房長お話では、天然ガスに対する御知識が非常に浅いのじやないかと思います。御勉強をなすつていないのじやないかと思います。この天然ガスの利用は新潟とか、或いは千葉県あたりでは利用されておることがわかつておる。併しこれは開発の仕方によりましては相当利用率が多いと思うのであります。どうぞこれは一つ御勉強なすつて大いに研究して頂きたいと思います。  もう一つお伺いしたいのは、石炭を掘りまして、その石炭を蒸したいわゆる東京あたりで使つておりますところの石炭ガス、これじやございませんで、山そのもので石炭なり、亜炭なりを気化するという方法が今考えられておりまして、これはソ連でもすでに成功いたし、又英国でもこれはやつておるのであります。この研究は全体如何になつておりますか。私はこれは例えば亜炭などというものは、余り今は使われておらない資源がたくさん眠つておるのでありますから、これを一つ大いに研究され、利用されるということが必要なことじやないかと思うのでありますが、この辺の研究は今如何になつておりましようか、お伺いしたいと思います。
  318. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 石炭の直接ガス化の問題でございますが、これは終戦後いろいろ外国の事情等も判明いたしましたので、いろいろ研究等を進めておりまするが、私も詳しくは存じませんが、御指摘のような炭化度の低いものは、これは実は御承知のように日本の亜炭と申しますのは、これは石炭と言いますよりも、むしろもつと炭化の進んでおらないものでありまして、これはなかなかむずかしいようであります。ドイツあたりの褐炭と申しますのは、むしろ日本の瀝青炭のようなものでございますので、これにつきまして直接ガス化ということを一時試験的に研究したこともございまして、我々のほうの石炭技術研究所でも一部やつたことがございますが、どうもやはり直接それをどういうふうな用途に利用いたしますかというその問題と、それからもう一つはその比較的な問題になりますが、ガスとしてのコスト、利用度から日本ではこれを企業化して利用いたすまでにどうも至つておらないのであります。これはまあいろいろ考え方の問題がございまして、石炭資源の日本の埋蔵量はあとまあ百五、六十億トン程度と言われておりまするし、炭質も諸外国に比べて必らずしも良好と申されませんので、こういうふうに限られました資源を地下で直接ガス化いたして、その場で利用いたしたほうがよろしうございますか、或いは固型のままで需要地の近くに持つて参りましてガス化して利用したほうがよろしうございますか、これはいろいろ慎重に研究しなければいかんと思うのであります。
  319. 三浦義男

    ○三浦義男君 これは一つ大いに御研究を願いたいと思います。只今までに申上げしたように、大体石炭とそれから電力、こういうものがまあ大宗となることは明らかでありますが、併しこのほかにエネルギー源として石油数が又見逃がすことのできないものであります。液体燃料はどうしてもこれは或る程度のものは輸入されなければならない、これは明らかであります。御承知のように自動車が氾濫しております。又重油使用設備を、これを又石炭に切替えるということは二軍、三軍の投資にもなりますので、どうしてもこれは或る程度の液体燃料は必要なんだろうと思いますが、今年度の外貨予算を拝見いたしますというと、二十一億四千万ドル、このうちの一億三千七百万ドルが液体燃料を買入れる代だというふうに内定されたということを聞くのでありますが、この外貨の支払いをできるだけ少くする懸命の努力が必要だと思います。そこでこの考え通りに、通産省は石油等の試掘補助として二十九年度に二十八年の四倍にも値いする一億三千万円の金を出してこの試掘をやろう、こうやつておられます。併しこの内容を聞いてみますというと、六十億の総予算で十年後に百万キロリツトルの増産を目標としておるのだ、こういうのであります。如何にも気の長い話なんでありますので、私はここで石炭の液化の問題を一つ提唱したいのであります。第二次世界大戦中に満洲の撫順、錦州でオイルシエールから年産三十万キロリツトル程度の生産を計画いたしまして、この量は大体日本の原油の生産とほぼ同じ量なんでありますが、このプラントは現在は中共でこれを利用しておるというようなことを聞きますし、又日本内地では大牟田でフイツシヤー方式によりまして一万六千キロリツトル、これは非常に小さいのでありますが、これも生産しておる。又北海道の滝川化学でも或る程度の設備を持つておる、こういうような状態でありましたが、戦後米軍の指令で以てこれを中止をし、設備を解体されるの止むなきに至つたのでありますが、又通産省の資源技術試験所、これは元の燃料研究所でありますが、ここにも設備があつたという話であります。これもいずれにしてももう解体されております。現在我が国において石炭の液化は決してペイしないと思います。併し炭価も相当安くなつて参りまして、必ずしもペイしないからといつてこれを放置しておくべき問題ではないと思います。石炭資源の豊富でございますアメリカですらシェルから液化工業をやつている。又ドイツでもそれをやつているというような状態でありますので、この石炭液化の問題を一つ取上げられるお考えはございませんか、どうですか。ペイしないからといつて、この問題を放置しておくべき問題ではないと思うのでありまして、大臣は如何考えられますか、御意見を伺いたいと思います。
  320. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 総合燃料対策の問題としては、かねがね政府におきしてもいろいろ考究いたしておりましたが、極く近い将来に一つ考え方をはつきり打出したいと考えております。これも只今も御答弁申上げたかと思いますが、私ちよつと遅れまして誠に失礼いたしましたが、大体外貨の関係、それから国内の資源の関係、いろいろの面から見まして、先ず第一に、石炭の一つの適正出炭規模というようなものを設定をする、大体四千八百万トン程度というようなことを想定いたしておりますが、それによつて石炭の合理化を進め、コストの低下を図る、需要者にもできるだけ国内の石炭を使つて頂くということによつて、原油、重油、揮発油等の輸入を適正なる程度に抑えたいということをその骨子にするものでございます。そういう点から申しまして、只今御提唱のございました石炭の液化というような問題も、ペイしないからということだけのことでこれを全然除外するという考え方はないのでございまして、今後の研究問題といたしまして、特に石炭の賦存状況はまだ相当に期待できるような状態でございますから、一つ政府におきましても、改めて篤と研究させて頂きたいと考えます。
  321. 三浦義男

    ○三浦義男君 この点は十分一つ考えを願いたいと思います。  次に、建設大臣にお伺いしたいのでありますが、御病気でお休みだそうでありますので、政務次官に一つ伺いたい。この東京の車内を見て廻りますというと、毎日一つくらいの鉄骨高廈建築物ができておるというようなことが言われるのであります。これは戦後戦災とそれから進駐軍による接収のために事務所が非常に使われたというので、払底したその結果、こういう種類の建築物が非常に多くなつた、投資の対象となつたのでありますが、この莫大な投資は決して直接に生産に役立つものではございません。一方住宅のほうを見ますというと、戦後十年たつております今日におきましても、依然として払底の状態を続けておりまして、見方によりましては三百万戸足りない、或いは四百万戸足りないとも称されております。これは国が面倒を見て建設しております住宅の戸数を見ますというと、毎年十万戸程度、又民間資本で以てやります建物をこれと同数くらいと見、或いは多少これよりも多いとみなしても、この不足な戸数がいつになつたら満されるかということは非常に疑問なのであります。そういう状態でありますのに高廈建築物ができる。又一方進駐軍からの返還も相当にされておるというのに、依然として鉄骨の難物がどんどん建つておる。確か二十五年の候だと思いますが、当時、東南アジアとか、或いはフイリピンのほうからの賠償の問題が非常にやかましくなりましたときに、この種のビルが非常に目に立つて来た。それで名前ははつきり私今覚えておりませんが、三人委員会というものができて、これは建設省と大蔵省と日本銀行の三者から委員が出て、この高層建築物の調整、規制する役員をするのだというようなことを思い出すのであります。併しこの委員会の効果は殆んど私は上らなかつたと思う。これはただ外部に対するゼスチユアに過ぎなかつたのじやないかとすら私は考えるのでありますが、この高層建築物は確かに事務の能率の上でもいいでございましようし、又土地の利用の上から言つてもよろしいし、都市美を作る上から見て誠によろしいことには違いありませんが、いろいろ賠償問題についてやかましいことを言われて、そうして私の友人にフイリピンの土木学会のメンバーがありますが、その人あたりも直接東京の建築状態を見て、私に向つて、これは全体日本は敗戦国の姿であろうかどうかということを二十五年の春に非難したことがあります。そういうようなことを考え、又うちでは住むに耐えない人がたくさんいる。これがこれから耐乏生活を強いられるというときに、何とかこれを規制する方法はないだろうか。恐らく政府当局では二十九年度は緊縮予算なりで金融の引締めをやるのだから、こういうものに対する民間の投資はなくなるだろう。或いは曾つて行政管理庁の長官が申されましたが、不動産取得税の創設によつてこれを抑制することができることがあるかも知れんというようなことを漏らされております。併しこれは私は企業家は決してそんなようなことで、こんな安い不動産取得税のようなもので算盤を押えることはないと思いますが、何とかここにこれを規制するような方法を考えることはできないだろうか、どうだろうかということは、私はしよつちゆう頭にあるのでありますが、例えて申しますというと、この不動産取得のようなものに対しては、こういう種類の建築物に対しては高率の課税をするのだというようなことが一つ考えられるのでありますが、これらも技術上はどうかわかりません、何か規制する方法はないだろうかということをしよつちゆう思つておるのでありますが、建設省の当局としては全体どういうふうにお考えになつておりますか、伺いたいと思います。
  322. 南好雄

    政府委員(南好雄君) お答え申上げます。昭和二十六年から昭和二十七年度にかけまして、朝鮮事変が勃発いたしまして、朝鮮事変ブームとでも申しましようか、大分高層建築なり、いろいろな賛沢なビルデイングができましたことは事実でございます。併しその後におきましては、御承知通り大体ビル建築などは横這い、むしろ低下の状態にあることも三浦先生御承知通りだと思います。このビルにつきましては、一方耐震、耐火という意味合におきまして、住宅用或いは公共用にはむしろ積極的に政府の防火帯助成費というような予算なぞを設けまして奨励しておるのでございます。要は不急不用の贅沢なビルデイングをどうやつてとめるかという私御質問だと拝承したのでありますが、これを法律的に抑えると申しますことは、その抑制の効果とか、いろいろの点で非常にむずかしい問題でございます。今までのところでは大分鎮静して参つておりますし、政府の総合施策、例えば不動産の税金の創設或いは不急不用の建物に資金が流れる面を規制するというような点で相当これは規制されるものと考えております。慎重にこの建物の動向を判断いたしまして、而して御指摘のような弊害があるものであれば積極的に法律効果というものをよく考えまして、法的抑制の措置も講じなければならんと考えておりますが、只今のところではビルデイングにつきまして、形式的に法律で阻止するということはちよつと少し行き過ぎるような気がいたしまして、慎重考究中と申上げるのが事実でございます。
  323. 三浦義男

    ○三浦義男君 私の申上げましたのは、住宅なんかは大いにこれはやるべきだと思います。殊にあの住宅は鉄骨のビルではありません。精々四階建くらいのアパートでありますから、そういうものは是非やつて頂きたい。ただ私が申上げたいのは、いわゆる贅沢な事務所のビルデイングを建てておる。これは実際新らしくできておりますビルデイングに行つて見まして事務所を拝見いたしますと、我々の住居と比べますれば、むしろ宮殿のような住い方をしておるのであります。これで耐乏生活、耐乏生活ということは私はどうも筋が通らないように思います。全くその取締る法規はございません。現在のところでは又法的にも非常にむずかしい問題でありましようが、曾つてはとにかく三人委員会のようなものができまして、これを抑制しようというところまで行つたのでありますから、今後これも十分一つ気を付けられて、そうして動向の如何によつては法的措置も必要であると思いますので、今後気を付けて頂きたいと思います。  これでお終いです。
  324. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 私は先ず第一に本予算に対しまして賛否をきめます上において、この予算の財源に関しまする法律案が四月一日の施行期日を持つているにかかわらず、未だ衆議院の議を経ず、本院に送つて来られないということは、これは衆議院の責任でもあり、又政府責任でもあると私は考えるのであります。そこで総理並びに大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、先ほど岡田委員の御質問に対しまして、大蔵大臣は入場税の国税委譲の法律案も、又繊維奢侈税の法律案も、これは必ず通るものと思う。であるから、その通らん場合の財源的措置を考えんというお話でありましたが、併し今日この衆議院の状況を見ておりまして、四月一日の期日が規定してあるにかかわらず、今日まで送つて来ないというこの状態並びに新聞等によつて伝わるところの衆議院の空気を見ておりますと、必ずしも仮定的な前提ではないと思うのであります。そこで若しもこれが通らない、不成立の場合には、財政的措置をどうするかということを伺つておきませんと、この予算に対して我々は賛否をきめかねると思うのであります。でありますから、その意味におきまして、一体これらの法律案が不成立に終つた場合には財源的措置をどうするかという点につきまして、先ずお伺いしたいのであります。
  325. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 入場税及び奢侈繊維品税のほかの法律案は、もうずつと衆議院を通つておりまして、ただ一つ補助金等に関する分がございますが、これももう委員会通りましたから、明日衆議院の本会議を通つて来ることと存じております。ただ残つておりますのは、今御指摘になりました入場税の問題でございますが、私どもはこの予算修正の際に、三党のいわゆる予算修正の際に、この問題となつておる諸法案を通すということは、きちんとほんの数カ条の了解事項に謳われておるのであるから、これは通るものと考えておるのでございますが、一体これができなかつたという場合にどうなるかという今お尋ねがございましたが、数字的にちよつと申しますと、富裕府県に対するロスの増が五十八億三百万円出て参ります。その代りこれに対応するものとして、国の歳入減が十九億二千万円、それから貧弱だと、言うとちよつと語弊がありますが、富裕に対して普通にそう言つておりますから、決して府県の悪口を言う意味ではございませんが、まあその貧弱府県の財源不足が三十八億八十三百万円、こういうふうになるのでございまして、本法案というものは、これは是非とも通りませんと、今度の地方のいわゆる財源調整という問題に大きな影響を持つておりまするので、私どもも目下全力を尽してこれが通過を希望している次第でございます。なお繊維税につきましては、いろいろの意見が出ておりまするが、どうもはつきりいたしません。或いは一部修正してというような意見も出ておりますし、新聞等にまあ何か審議未了に終らせるというようなことも出ておりまするが、これは私どもとしては、あのいわゆる問屋に対する課税まで持つて行つたといういきさつ等から、それまでの内面交渉をいろいろいたしておりました等のいきさつから見て、或いは施行期日等の変更を要するかとも考えますが、これも通るものと考え、今これがために全力を尽しておる次第でございます。
  326. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 大蔵大臣は三派協定の修正によつた際に、税の法案は通すということがあるから必ず通るだろうというお見込みでありますが、併しその後の情勢はよほど変つて来ておるようであります。新聞等によつて報ぜられますところも、又我々が衆議院のかたがたに会つてつておるところによりましても、どうもそう大蔵大臣が楽観しておられるような状態ではないように思います。不成立にならなければ大修正が加えられそうな形勢であるのでありますが、そういう状態の下に、参議院といたしまして、この二十九年度予算を、その結果を見ずして審議をしたということになりますれば、審議の上において非常に不十分なそしりを国民から受けると思うのでありまして、でありますから我々としましては、若しもこれが通らないときには、政府として政治責任をお持ちになるかどうか、その点を明らかにしておきたいのであります。若しもそのくらいの御決意があるならば、我々はたとえ衆議院からの送付が遅れましても、この予算に賛成いたしたいと考えておりますが、そういう決意につきまして副総理なり、大蔵大臣のお考えを伺いたいのであります。
  327. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) この問題は今お話のありましたように、かなり複雑な事情で議事の審議が衆議院において遅れておりますが、先般来我々も党と連絡をとりまして、できるだけ努力を傾けておるのでありますが、今日も政府のほうから党に連絡をしながら、なお井野委員の御所属の会派からもいろいろ御勧告がありましたので、そのお考えに副うように努力をしております。明日にも(「そんなことを聞いているのじやない」と呼ぶ者あり)是非通したいと、政府としてはまだ決して望みを捨てておりません。御了承を願います。
  328. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 政府としてお望みを捨てておいでになつておらんことはこれは当然だと思います。そのお望み通りに行かなかつたときの責任がどうであるかということを私は伺つておるのであります。そのくらいの御決意があれば潔くこの予算に賛成をしたい、こういうふうに考えておるのであります。
  329. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) ちよつと私の方で伺いたいのですが、政治責任をとるという意味は、どういう意味にお述べになつておるのでありますか。
  330. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 政府が重大なる法律案として議会に御提出になり、而もこの予算と不可分である。財源の減少のために或いは自然増収なり、その他の方法によつてつて行くということであれば予算措置としてとれますが、入場税の国税移管の問題は、単に財源だけの問題でなくして、予算の本質に私は関すると思うのです。大蔵大臣もそれだから、重大だから通すことに努力すると先ほども言われました通り、これはもう予算と不可分の関係にある法律案だと思うのであります。でありますから政府が重大なる法律案としてお出しになりましたものが、仮に不成立になりましたらば、政府としてはどういう政治責任をおとりになりますかということを申しておるのであります。
  331. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 善処いたします。(「どういう善処か」と呼ぶ者あり)
  332. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 まあこれ以上申上げることは却つて政府を窮境に追い込むようなことになると思いますから、まあこの程度にいたしておきますが、この補助金等の整理の法律案が通りませんで、財源に仮に穴があきましたときには、これは自然増収等を以てお賄いになるつもりでありますか、如何でございますか。
  333. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 補助金等の件につきましては、只今申上げました通り、衆議院のほうはすでに委員会終りまして、通りまして、通過して、明日本会議にかけることに相成つております。従いまして、これも参議院のほうで御協力を願えると実は信じておる次第でございます。
  334. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 参議院のほうの委員会の空気を見ておりましても、そう大蔵大臣が楽観しておられるように、そのまま通るようにも見えないのであります。でありますから、まあその前提の下にお伺いしたのでありますが、併しそのときに若し仮に通らんときですね。自然増収というところでお賄いになるのでありますか、ただその財源的措置だけ伺つておけばいいのであります。
  335. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これは歳出予算でございまするので、御承知のごとく自然増収のみで賄うわけには参りません。従いまして、そういう場合が仮に万々一ございますれば、これもそのときに善処すると、こう申すよりほかないのであります。
  336. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して……。今大蔵大臣は入場税の問題について非常にあいまいな御答弁をなさつたわけであります。これは第三次補正の審議をするときに、富裕府県に対する打切りの法律を今後なぜ出さないかという御質問に対して、今後は入場税の国に残した分によつて地方財政を調整する。従つて富裕府県に対する今までのような処置はとらなくてもいいんだということをおつしやつたはずです。従つて今井野委員が御指摘になりましたように、この問題は単に歳入がどうなるとか、そういつただけの問題ではなくて、地方財政全般に関連を持ち、当然義務教育費の国庫負担、これと関連して来る、こういう重大な要素を持つておりますので、これがどうなるかということは明らかに政府の重大なる責任問題と思うのですが、副総理はその点について、非常にこれもあいまいな御答弁をなさいましたので、そういう重要性を御考慮になつて、もう一度その点についての御所見を伺いたいと思います。
  337. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) この問題につきましては、先ほども申上げました通り、それが不成立になりますると、富裕県に対するいわゆるロスということになります。それが引いて一般歳入のほうに対する関係と、それから貧弱と言うと言葉が悪いが、貧弱県に対する不足ということになりますので、重大な問題になるのであります。従いまして私どもは、これは今あなたがおつしやつた、この間二回に亘つて成立しなかつた問題、いわゆる義務教育費半額国庫負担の特例に関する法律を出さないときに、これは出さないでということは、それぞれそのとき了解を得たのでありますが、今井野君がおつしやるのは、いや、その後情勢が変つておるという等のことがございまして、情勢ですから、これはいつも刻々に変つておるかも知れません。私どもは従つて当初の判断から見まして、この予算の三党修正をして、修正した予算というものに対する裏付となる法律案は出すということを了解事項で約束したのだから、この約束を信じて私どもは考えておる。併し若しそれでも情勢が変つたらどうするかとおつしやれば、先ほど副総理が申された通り善処する、この言葉を申上げるよりほかございません。    〔「関連々々」と呼ぶ者あり〕
  338. 青木一男

    委員長青木一男君) 井野君に発言を許しました。
  339. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 その善処と言われた副総理のお言葉のうちに、若しも通らないときには、先般提出を見合わされました義務教育費国庫負担法の特例に関する法律案、あれを再びお出しになるおつもりでございましようか。その点をお伺いします。
  340. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 他に財源措置を要するような立法等を考えなければならんということも善処の一つであります。    〔「関連々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  341. 青木一男

    委員長青木一男君) 井野君が一通り質問されて、それで足りないとき許しますから……。    〔「関連々々」と呼ぶ者あり〕
  342. 青木一男

    委員長青木一男君) それでは相馬君簡単に……。
  343. 相馬助治

    相馬助治君 只今の問題は非常に大きいので、単なる善処というような言葉を以てこの予算の通過に本員は協力するわけには参らんと思うのです。御承知のように第三次補正予算を昨日本院で審議してこれを通したのも、例の半額国庫負担法の問題に連関して、政府が与党内の事情等も加味して重大なる政策の変更を来たしたので、財政当局があのような手段に訴えざるを得なかつたものと思うので、この場合入場税の問題が衆議院において若しも通らないということになれば、国全体の財政規模が変るだけでなくて、税制の一貫した秩序が、政府考える秩序が乱れますことと、衆議院を予算が通つたということから常識的に一応この予算が成立したという建前に立つて、地方においてはそれぞれ財政計画を進めておるのであつて、このことが若しも具体的に衆議院において入場税の問題が当初の政府考え通りに行かなかつたとするならば、影響するところは極めて大きいのでありまして、立法措置として新たなる法案を出して、そうして財源をやり繰るのか、或いは現在保有するところの予備金等の支出等によつてカバーすることが可能であるというのか、今のところは何と言われようと、しつこく問い質されようと、無為無策であるから、改めてこの問題については研究をして、然る後に答えるほか手がないというのか、この辺のことだけくらいは明確にされたいと私は希望します。
  344. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私どもは通るものと確信を持つておりますが、通らん場合はどうかということについては、通らん場合には善処、いろいろな方法がありまするから善処すると只今申上げた。立法措置による等も一つの方法であります。いろいろ方法がありまするから、これについて善処すると、こう申しておるのであります。(「了解」「関連」と呼ぶ者あり)
  345. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 次に大蔵大臣並びに副総理にお伺いしたいのでありますが、予算編成に際しまして、大蔵大臣は一兆円予算をお立てになつたことは、これは非常に大決断だと思います。その目標とするところは、デフレ政策によつて物価を引下げてやる。そうして日本の輸出を振興して行こうというお狙いのようでありますが、これが余り強く進み過ぎますと、角を矯めて牛を殺すようになると思うのでありますが、即ち私の申上げたいことは、一兆円に抑えることはこれは結構であります。併し政府が従来国民に公約をいたしており、又日本の実情から見て、ただ予算を抑えて、物価を下げて輸出を奨励しようという行き方でなしに、むしろその根本になることを是正して以て予算の不要なる支出を抑えるということが必要であろうと思うのであります。それは治山治水の問題でございますが、これは緒方総理が会長をしておられます治山治水審議会における答申が政府になされたわけでありますが、今回の予算は全くその答申を無視していると申してもいいくらいその内容が変つているのであります。殊に治山治水の中で最も大切である砂防施設について、河川の治水との均衡がまるでとれていないのでありますが、こういう点は今日災害が起り、昨年のごときはそのために千五百億円も国の支出が要るというような状態になる前に、これを是正することにおいて財政上の余裕を生ずることとなると思うのでありますが、この点について緒方総理はどういうお考えを持つているのでありますか、お伺いしたいのであります。
  346. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 治山治水の対策につきましては、昨年の風水害の欠陥にも鑑みまして、治山治水対策協議会政府部内に作りまして一応の成案を得たのであります。一応と申しまするが、これは各方面の学識経験者及び責任当局の、まあいわば理想的な案を一応立てたのでありますが、これは一兆七百億でありましたか、八百億でありましたか、相当大きなもので、これはその後の財政上の見通しから言いまして、今直ちに実施することができませんので、この際継続事業の促進と調査の充実とに重点を置くことにして、又直ちに実施し得る案を検討しておるところであります。(「関連々々」「進行々々」「委員長関連」と呼ぶ者あり)
  347. 青木一男

    委員長青木一男君) 何の問題ですか。
  348. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 実はですね。今日の一番初めに、前に井野委員から御質問になつておつたようなことを、実は私は今朝聞いたのであります。ところが委員長はそれに対しては質問段階において明らかになるからということでそれ以上の発言を許されなかつた。今そのことについて関連質問を求めまするけれども、今質問者が若し言い尽されないところがあつたならばということでありまするけれども、質問者は私たちの関連質問の内容はわかりませんから、だんだん次に移つて行かれる。もう実は前のことで今のお尋ねとは実は関連がないのでありますけれども、そういう意味で私は十分にこの際質すことができるという考え方で御質問申上げるのであります。簡単にやりますが、それは大蔵大臣は入場譲与税のことについてのみお答えになつております。それだけにおきましても、若しこの法律案が否決されれば、さつきも大臣みずから仰せになりましたように、五十八億円ですかのこの赤字と申しまするかが出るわけであります。それと十九億の差額三十八億円がすでにここに歳入不足となつて現われて参り、更に又この入場税の税率の修正、これを衆議院の現在の審議の過程で見まするというと、税率が、修正案として今いろいろと用意されているものをば検討してみまするというと、二十円以下は無税、四十円以下二割、七十円以下三割、百五十円以下四割、百五十円以上五割と、旧来の五十円以下一割、八十五円以下二割、百三十円以下三割、百八十円以下四割、百八十円以上五割、こういうふうになりまするというと、ここにも重大な収入の減が出て参るのであります。この両方を若し皆今仰せになりまするように何かの方法で善処されるというと、これは明らかに一兆円の枠をはみ出してしまうのであつて政府が金科玉条として本予算案提出に出つて貫こうとされておる線が根底から崩れて参るのであります。こういうことに対する政治的な責任というものは、これはただ副総理が言われるように、善処しますではこれは通らない。如何なる善処をされるかということをこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  349. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私は予算案を通して、その予算案を通した以上は、予算案の内容をなしておるものについての話であるならば、それはやはり予算を動かさないようにおやり下さることを確信しておるのでありまして、従つて今あなたがおつしやつた場合でも、通らん場合と、修正して通つたとか、いろいろなことが想像されるのですが、一々想像してこれはお答えはできません。従いまして私は必らず通るものと確信をしておる。
  350. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 只今総理は一億の計画であるから財政上すぐ入らん、これは尤もだと思います。そういうものもすぐ入れようというのじやないのでありますが、入る限度におきまして、砂防施設と普通の河川の治水の問題との均衡がとれていないように思うのであります。これは建設省でも非常にその問題については努力されましたが、結局建設省の努力が報われなかつたという結果になつているようでありますが、この点について大蔵大臣で結構でありますが、どういうお考えを持つておられますか。
  351. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 治山治水は御承知のごとく、乏しい配分の中でも前年より若干増加いたしておる。なかんずく砂防の分についてはこれも若干でありますが、増加いたしております。これは仰せのごとくに根本の問題でありまするので、予算の配分上は、まあ相当重きをおいて実は配分をしておる次第で、今後ともこの方針は続けて参りたいと考えております。
  352. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 一番初め申上げましたように、予算編成に際しまして、重要な国策をとかく軽視して予算が組まれておるという憾みを申上げたのでありますが、その他の一つとしては食糧増産の経費でございますが、現在二十九年度の予算面から推算しまするというと、土地の改良拡張等の農地関係で百十四万石殖えます。又耕地改善として三十五万石殖えますから、約百五十万石殖える計算になりますが、併し一面におきまして人口増加による所要増、農地の壊滅によりまする減量が合計約二百四十万石計算されるのであります。そういたしますと、二十九年度の予算通り実行して参りまするというと、約百万石近くの減収になつてしまうのでありますが、こういうつまり予算の組み方をして参りますと、折角物価は下り、輸出は奨励されましても、今度は輸入食糧の量が、これは二十九年度ではございません、三十年度において一層殖えることになると思うのであります。従つて外貨予算の上におきまして、更に一層輸入量が殖えるということは、その予算の健全性を阻害することになるのでありまするから、食糧増産というようなものについては、他のものを犠牲にしてでもこれに力を入れなければならんと思うのでございます。殊に大蔵大臣は、先般の三派修正で五十億の予備費をお使いになり、又更にいろいろの経費を節約すれば百五十億くらいの金は出るだろうというお話であります。そういうようなお見込みであつたならば、もつと初めからなぜこの食糧増産について、もう少し親切にお考えを頂けなかつたかということをお伺いしたいのであります。
  353. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 食糧増産の費用は、これ又よほど緊縮予算の折からでございましたけれども、耕地改良等中心にしまして、三十三億円増加いたしておるのであります。勿論これも決して十分とは申されません。今お話になりました人口の増加に伴うだけのやはり施策を必要とすると思いまするが、やはり金の面もそうでありますが、やはり皆さんで、この農村のかたがたの心がまえによつて十分にやつて頂くことも一方では予期して、そうしてまあいわば国際収支が赤字になりつつある情勢を早く転換したという根本の財政策から御我慢を願つたような次第なんであります。従いまして食糧増産に恥きをおかなければならんことは、これは私ども今後とも十分この方針は続けて参る。なお且つでき得ればこの予算を増加いたして参りたい。かように考えておる次第でございます。
  354. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 次に、投融資問題につきましてお伺いしたいのであります。デフレ政策の強行によりまして、そのしわは農民と中小企業者に寄つて参ることと思うのであります。今まで政府のとられましたこれらに対する対策は非常に不徹底であると考えるのであります。昭和二十八年度におきまする中小企業の融資の計画と、昭和二十九年度の計画との比較を見てみまするというと、国民金融公庫で約二百億近く、又商工中金で約百億、中小企業金融公庫で七十億の減少を見ております。又衆議院の予算修正に伴う農業関係におきましても約五十億の減少を見ておるような状態でございまして、デフレ政策が徹底すればするほど、そういつたしわが中小企業なり農民に寄つて参るわけでありますが、その事業の資金の投融資を減らすということは、常に一層これらの人々をして苦しめることになろうと思うのであります。ところが幸いと申しますか先般衆議院の法律の修正で、簡易保険の契約限度が十三万円から十五万円に上つたように伺つておるのであります。そのためにどのくらいの金が簡易保険の積立金特別会計に殖えるお見込みでございましようか。それを実はこういう方面にお廻し願えないかということを申上げたいので、先ずその金額をお伺いしたいのです。
  355. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 簡易保険の制限額が八万円から十五万円に上りましたのに応じて、約四十三億くらいの資金が出て参るのではないかと考えております。
  356. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 私は六十億くらいと伺つたのでありますが、まあ郵政大臣は四十五億とおつしやいましたが、四十五億でも結構でありますが、今までの簡易保険の運用には限度がございまして、主として公共団体等にしか貸出ができないようになつておりますが、これをこういつた中小企業なり農民のほうの投融資の金庫の資金にお廻し願えることはできないものでありましようが、その点をお伺いしたいのであります。
  357. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 実は簡保のほうではそういうふうに殖えますが、他方厚生年金等のほうで減る分等もございまして、それでこういうものを一括した金がそれぞれいわゆる財政投融資等に向けられておるというようなことでございまするので、増額する分は直ちにそれに持つて参るということは、只今のところまだちよつと考えておりません次第ですが、なおよく研究してみます。
  358. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 その次に原子力の平和的利用の問題についてお伺いしたいのでありますが、これは先ほど来各委員の御質問によりまして、経済審議庁長官である愛知大臣がお答えになりましたところによりますと、原子力の基本的な政府の方針としては、先ず法律の整備をする。又企画、立案の機構を作る。第三は原子炉の二十九年度の予算についてどうやつて行くかを研究して行くという三つの段階についての計画、方針をお示しになりましたが、これはもつと根本的な問題があるんではないかと思います。というのは、原子炉の実現に伴いまして放射能の予防という問題が日本ではまるで研究されておらないのであります。で、予防の研究をなしに原子炉の問題を研究し、又原子核の問題を研究して参りましても、それを研究する人自体の予防が十分でなけれが非常な危険がそこに発生するわけであります。アリメカでありますとか、その他の国々におきましては、その予防施設につきまして相当研究もなされておるのでありますが、こういつた研究機関、これは約十億かかるそうでありますが、こういつたような研究機関をお作りに先ずなるという意思がないものでありましようか。放射能のいろいろの予防施設を作りましても、アメリカのそのままのものを取入れましても、日本は地震が多い、又停電が多い、一旦停電になりますと、まるでそれが無駄になつてしまう。又地震がありますと、直ぐ又そのために非常な差異ができて、折角の防禦施設も無駄になるということを学者たちは言つておるようであります。でありますから、そういう研究をあらかじめしておいて、そうして更に只今経済審議庁長官が言われましたような方向と合せて行くのでなければ、一方ばかり進んで予防の研究が遅れましたのでは非常に危険でありますので、この点についての研究機関をお設けになる意思があるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。これは厚生大臣に……。
  359. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 実は目下原爆症状の点につきましては、調査研究協議会を置きまして研究をいたしております。従つてこれらの点につきまして、只今質問の点等を考えまして更にこれを拡大するかどうかという問題につきましてもよく検討したいと考えております。
  360. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 放射能の予防について先般起りましたビキニ岩礁の跡始末の問題でありますが、東大の先生方の話を聞きますと、厚生省もいろいろとお骨折りを願つておるようでありますが、どうも予算と申しますか、金の面においてすぐいろいろのお手配を願えないために非常に困つておると言つておるのであります。現在東大に重患者が四、五人入院しておりますが、白血球がだんだん下つて行く、それに対する輸血の実は金がなくて困つているということを東大の先生が言つております。又留守家族に対しましては、漁業組合がその救助費を立替えておるといつたような実情でありまして、こういつたような予算措置を速かにおとり願いたいのと、又厚生省のお考えでは治療費は船員健康保険のほうで賄えるから、それで賄えという事務当局のお考えでありますが、併し治療方法は今まで全然日本にわかつていないので、研究しつつ治療して行かなければならないので、むしろ研究費のほうが治療して行く上において十倍の金が要るというわけでありますから、そういう点につきましても厚生省としては十分御配慮を願いたいと思うのでありますが、厚生大臣のお考えは如何でございますか。
  361. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) お話のように今回のビキニ原爆被害患者につきまして、これが現在は東大に七名、その他は第一東京病院に入院いたしております。そこで研究と合せて治療ということが必要でありますので、原爆症調査研究協議会を中心にいたしまして研究をいたしております。研究に要しまする費用は原爆症調査研究協議会から出すことにいたしております。なお治療に要しまする費用は一応は船員保険法によつて支出をいたして参る予定でありますが、これが当然二十三名が全部船員保険法に加入いたしておりますので、当然これから支出して参らねばならないのであります。ただ今回は従来曾つてない症状でありますから、費用等も相当要ると存じております。これらの費用も十分出して参りたいと思つております。なお家族につきましては、船員保険法によりますと、四カ月は標準報酬の一〇〇%そのままであります。あと二年八カ月はその六〇%となつておりますが、実際上の問題といたしましては、やはり現地の焼津のいろいろの家庭の関係等もありまするので、静岡県知事とよく相談をいたしまして、静岡県知事のほうからの相談の結果、むしろ日々の問題等もあるから、当該漁業組合で一時立替えて、そうして応急の費用に充てるほうがいいのじやなかろうかということでありましたので、一応そういう方法をとつておりますが、そうすることが却つて家庭には十分行き渡るのではないかというふうに存じております。勿論それらの費用は負担をする予定をいたしております。
  362. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 その次に、政府の物価政策に関しまするいろいろの方針をお伺いしたいのでありますが、今般の税制問題にいたしましても、又予算の面におきましても、政府としては直接税から間接税に移すという一つの方針と、それから奢侈に対する課税をする。成るべく生活必需品にはかけないという方針をとつてお出でのようでありますが、ガソリン税とか、自動車税の引上に伴いまして、自動車運賃をどうしても引上げなければ業者は引合わんということを言つておりますが、そうなりますと、貨物自動車等において、今日運搬しておりまする貨物というものは鉄道を凌駕しておるような状態で、これは一般物価に非常な大きな影響が生ずると思うのでありますが、こういう点に対しまして運輸大臣としては、この貨物自動車賃その他自動車賃の運賃引上は認可しない、こういう御方針でございますか、その点をお伺いしておきたいと思うのであります。
  363. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えいたします。ガソリン税の引上が自動車運送事業に大きな影響を及ぼすような声が上つておりますが、実はそれほど大きく影響するとは私どもは考えないのでございます。例えばバスにつきますと約〇・三%、タクシー、ハイヤーが一・〇二%、トラックが約〇・八%の経費の増があるくらいでございます。それから又このほか自動車税の引上も勿論多少あるのでございますが、これは問題は経費の増加を事業経営の合理化で大体やつて行けるのじやないかというのが私どもの見方でございますが、なおいろいろな声もありますのでいろいろ研究をいたしております。
  364. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 そうしますと、まあそういう引上の認可はしないという御方針と了承してよろしうございますね。
  365. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 只今のところはまだそう考えております。
  366. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 最後に二十九年産米の米価問題についてお伺いしたいのでありますが、米の値段を上げることは、これは一般の経済上非常な大きな影響がありますので、米価の引上ということは軽々にすべきことではないと思うのであります。併し農村のほうから見まして、生産費を償わない政府の買上で米を買うということになりますれば、これは一面において増産意欲を阻害することになると思うのであります。そこで二十九年度の米価を予算上検討いたして見ますというと、二十八年度産米は異常災害の結果、凶作加算を加えまして農民の実手取が平均一万四百円になつておりますが、二十九年産米予算は、予算米価は早場米奨励金を加えましてもおおむね九千二百円程度だと我々は予算上計算されるのでありますが、そうしますると、二十八年度は奨励金として税が免ぜられておりましたが、超過供出奨励金、完遂奨励金、この二つの奨励金が、これは二十九年度は基本米価に加えられる結果課税されることになるのであります。これらのことをそれぞれ勘案いたしますと、結局二十八年に比しまして、二十九年米価は約一千円の手取減となるのでありまして、予算の上におきまして一千円の米価を昨年より安く見たということは、農村の人々をして、これからいよいよ田植にかかるのでありますが、その生産意欲を非常に減ずることとなると思うのであります。我々地方へ参りまして、この問題が一番地方の人々から多く聞かれるのでありまするが、こういう点についてどういう説明をしたらいいか、結局大蔵省としては物価が引下がるのであるから、米を作る生産費の要素である物価が引下がるのであるから、この程度で我慢してほしいというお考えでありますか、どういう意味でこういうふうに昨年よりは一千円も安くおきめになりましたか、又この租税の税収入の面におきましては、一石七千七百円とみておられるのであります。予算の食管の会計におきましては八千六百円となつておりますが、租税収入のほうでは七千七百円とみておりますが、要するに基本米価に加えましたこの八千六百円についての税収入を、大蔵大臣は大蔵委員会におきまして、本年の米価も昨年と同じような手取りにする考えだと、こういう御答弁をなすつておられますが、それはどういう意味でございましようか、その点をお伺いしたいのであります。
  367. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 予算の説明書の中にも書いてございまするように、実は本年大体米価を一本にしてもらいたい、こういう注文がありまして、御承知のごとくに早場米奨励金は別枠のほうで予算はとつてあります。従いまして、あとの分について、いわゆる豊凶係数のごとき、今年は凶作のいわゆる加算金、それは今年はないものとみておりまするから、それを除きましたいわゆる完遂奨励金、超過供出奨励金、これを基本価格に統合して一本に生かしたものが八千七百九十五円という次第でございます。従いまして価格においては、まあ仮に凶作のようなことが、これはあつちや大変ですが、若しそれを同じように見るならば、少しも変りはないのであります。なお全体としての問題について申しますると、これは御承知のように供出米が食糧会計からのいわゆる数字で申しまするならば、これはいわゆるどれだけが義務供出で集められるかという問題になつて来て、それは作柄によることで、その点から分れるのでございます。
  368. 井野碩哉

    ○井野碩哉君 勿論昨年は冷害がありまして、本年はその冷害が予想されないのですから、凶作加算は加えないで私は計算を申上げておるのであります。それでも昨年に比べて奨励金を一本にいたし、そうして早場米奨励金を加えた、仮に加えたものとしても一千円どうも私どもの計算では安くなるのでありますが、こういう状態ではなかなか増産が奨励できないと思つておりますが、こういう点について若しも将来農村の増産意欲を高揚するために、財政上余裕ができたならばお考えになるというお気持がありますか、どうか。
  369. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) ちよつと私の説明が足らんところがありましたが、つまり超過供出との割合が、作柄如何によつて非常に違います。本年のごとくに、つまり超過供出が非常に多い場合はどうしても高くなりますが、平年作或いは平年作以上であつて義務供出のほうが多い場合にはこれは違つて来ますので、この点から見て本年と比べると或いはそういうふうになるかもわかりませんが、最初の予想のごとくに義務供出が遂行されればそういう差はない、こういうことになるわけであります。なお、財政上の問題につきましては、これは勿論米の問題は井野さんよく知つておられる通り、米価審議会とか、いろいろな議を経て来まして、この問題でなかなか全般に関する問題でございまするので、いつでも閣議でも一番手間取り、最後にならなければきまらないというような問題になつておりますので、この点は私一存でも御返事いたしかねますから、よく相談いたしまして、御意向の点を考えつつこの問題を処理いたしたいと考えております。
  370. 森八三一

    ○森八三一君 関連質問……。今、井野委員の御質問になつておるのは、計算上の問題はたしかに大蔵大臣のおつしやる通りだと思います。思いますが、そういうことを抜きにして、現実に昭和二十八年産の米に対する農民の手取りと、昭和二十九年、今お話なつたような構想の下に計算されるとの間にはそういう差額が生ずるんです。これは理窟じやないんです。実際問題として昭和二十八年産の米によつて受けた農民の手取りと、昭和二十九年に与えられようとしておる計算上のものとの間にそういう差がある。そういうことがここで予算審議が結論になつた場合に明らかになる。それで一体昭和二十九年の米の増産を確保して行く確信が持てるのかどうか、これは理窟じやなしに、実際問題として一千円近い、これは税の関係も含めてでありまするが、そういうことで一体いいのか。計算の問題ではないのです。これはむしろ農林大臣はそれでやれるという御確信があるのかどうか、はつきりして頂きたいと思います。
  371. 平野三郎

    政府委員(平野三郎君) 二十八年度は御承知通りの異常な災害によりまして、豊凶係数を五百五十円加えましたこと、又義務供出量が非常に少なくなつたというようなことにおいて差があるわけでございまするが、この予算は一応緊縮財政の建前におきまして前年通り組んだわけでございまするが、最終的には米価審議会の意見を聞いて決定することになつておるわけでございまするので、今後善処いたしたいと思います。
  372. 森八三一

    ○森八三一君 米価審議会が決定を与えた場合に、手取りが減るということでは困るというときには補正をおやりになりますか。補正がなければそういう措置は講ぜられません。米価審議会の結論を採用するということをはつきり言明なさいますか。
  373. 平野三郎

    政府委員(平野三郎君) これは来年度の米作の状況又供出割当等の関係もいろいろございまするわけでありますから、その間の事情を十分検討いたしまして善処いたしたいと存じまするが、政府といたしましては、この態勢を以て十分増産の確保に期待し得ると確信を持つておる次第でございます。
  374. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私の持ち時間はどれだけ残つておりますか。
  375. 青木一男

    委員長青木一男君) 十分となつておりますが。
  376. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私はこの二十九年度の予算審議に当りまして、今度の予算はやはり私ども女性にとつても非常に関係の深い問題をたくさん含んでおりますので、各委員の御発言を伺つておりましたところが、直接女性の声というような御質問が非常に少いのでございます。それで私の順番は最後でございますから、もう皆様お疲れのところで無理に私は引延しをしようとは思いませんけれども、何としても十分間で女性のいろいろの問題を申上げるということは余り無理ではないかと思うので、少し延ばして頂きたいと思うのでございますけれども……。(「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)
  377. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員長において多少斟酌いたしますから、どうぞ……。
  378. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 最初に緒方総理に伺いたいのでございますが、吉田総理は再軍備をしない、憲法を改正しないということを毎回繰返して申しておられますのですけれども、事実上戦力なき軍隊が着々としてできつつある、こういう現状でございます。それで政府では今憲法改正をしないということをおつしやつていらつしやいますけれども、現に自由党の憲法調査会ににおきましては、やはりこの憲法改正の点についていろいろお考えになつていらつしやるというようなことを漏れ承わつておるのでございます。たくさんの問題点がございますけれども、一番私ども女性にとりまして関心の深い問題は、どうしても再軍備をしていわゆる強い兵隊さんを作らなければならないというようなお考え方の下におきましては、昔の古い封建的な家族制度によりまして、子供たちは幼いときから家長というものに絶対に服従をするというようなしつけをすることが、将来は強い兵隊さんを作る途である。従つて今の現行民法における家の観念を排するということは、強い兵隊を作るのに適当でないからこの家の制度の復活というようなことも考えの中に加えていらつしやるというようなことを承わつておるわけでございますが、緒方総理におかれましても、やはりこういうお考えをお持ちでございましようか。
  379. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 新憲法は相続、婚姻、それから財産権その他家族に関する事項につきましては、個人の尊厳と両性の本質的平等ということに立脚いたしまして、これを定めるように規定しております。この趣旨に従い、旧憲法時代の、今御指摘になりました戸主中心の家族制度を改めて現在の制度といたしたのであります。ところが近時これについていろんな意見があるようでありまするが、新憲法の趣旨もありまするので、現在の制度を仮に改める意見が強くありましても、よほど慎重を期する必要があるものと考えております。今のところこれを変える考えはないのであります。政府はこの問題については法制審議会にも諮りまして、十分な検討を重ねたいと考えております。
  380. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今のところはそのお考えがおありにならないということがわかりましたのですが、緒方総理の御所見といたしましては、日本の女性は現行民法の下において旧民法よりもより幸福な家庭生活をしているというふうにお受取りになりますか、如何でございましようか。
  381. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 私余りよく知りませんが、全体としてはそうかも知れませんですね。
  382. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それは確かにそうに違いないのでございます。日本の女性は古い家を中心にした家族制度に復帰するということを非常に嫌つておりますし、恐れておりますので、どうかこの点はよく心に銘じておいて頂きまして、将来自由党の憲法調査会におきましては、この家の制度を問題にしていらつしやるというようなことを伺つておりますから、どうかそういうときには緒方さんが中心になつて、今の日本の女性が現在の民法の制度の下において幸福であるということを強調して頂きたいと思いますから、念のために申上げておきたいと思います。  次に、法務大臣にお伺いいたしますが、新聞報道によりますと、緑風会の一委員のかたから「占領軍の行なつた財産の均等分配のための零細農家が殖えている。これを日本の実情に合うよう民法を改正する意思はないか」。と、こういう御質問があつたのでございます。これに対しまして犬養さんは、「家族制度の問題は社会の根本問題なので、よほど、慎重に考える必要がある。是正は結構だが、真中に戻したつもりで、右に行く虞れもある。民法改正については近く法制審議会の民法部会に諮問する。」と、こういう意味の御答弁があつたようでございます。そこで私は先ず犬養さんに伺いたいことは、この財産の均等分配のために零細農家が現に殖えていると、こうお思いになりますか、この点をお伺いいたします。
  383. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 農業資産関係では私そういう傾向があると存じます。それでその点につきまして御承知と思いますが、昭和二十四年の五月、第五国会でございましたか、農業資産相続特例法というものが提案されまして御審議を願つておる。そのときには、私は速記録を全部読んでございませんが、確かに農村資産が零細化するということは、日本の農業形態の特性に鑑みてよほど再検討しなければならんけれども、折角個人の尊厳を基調とする新憲法ができて幾ばくもしないのに、こういう点をすぐ変えるのはどうかといういろいろ御議論があるうちに国会が終つてしまつたそうでございます。確かにこの問題は農村資産に関する限り零細化を避ける、東洋的な特殊農村形態というものを合理化するという意味で一考に値すると思いますが、一般のいわゆる家族制度をもう一度家督相続制度に直すとか、長男の尊厳を重くするとかいうことは、その新聞記事も大体私の申上げた通りなんでありまして、よほどこれは慎重にしなければならない。法制審議会にかけますけれども、当時私がここで申上げたかと思いますが、とかく物事は真ん中に戻そうとすると、旧に戻し過ぎる傾向がありますので、私はこの問題は軽々に、慎重を十分しないうちに結論を出すのは危険だと、こう考えております。
  384. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 犬養法務大臣の女性に対する御理解というものは、まあ自由党の政府の大臣方の中では非常に進歩的でいらつしやると思います。(笑声)併し只今の御答弁によりまして、只今の零細農家の問題が、財産の均分相続の影響を受けているというような御理解は、これは甚だ当つていないのではないかと思います。もとより法務大臣は法務関係でいらつしやつて、農業関係でいらつしやいませんから、まだ十分に御検討なさつていらつしやらないのかも知れないと思いますけれども、今日私はこのことを質問いたしまして、十分御検討なさつて答弁をして頂きますように、特に答弁の資料を申上げておいたはずなんでございますけれども、今の御答弁を伺いますと、一向勉強なさらないで御答弁をなすつたということがわかりまして非常に遺憾に思うのでございます。今日は農林大臣に対して私質問いたしておりませんので、私も農業の問題については決して十分に知つているわけではございませんで、権威者として申上げるわけには参らないのでございますけれども、農林省の農政局が発行をいたしました農家相続の実態という資料がございまして、農家別にこれを調査したものがございます。これは二十七年の三月に出ているものでございますが、これは大学教授約二十人のかたが特にこの農業資産の特例法というものを出すことの当否というようなことをお考えの中に入れて、将来若しかすると、この農業資産に関する限りは農家資産が零細化するということは、これは誰が考えても困ることでございますから、これは極力避けなければいけない。その避けるのには農業資産相続特例法というような法律、あれは衆議院を通過いたしまして参議院審議未了になつております。こういうような法律只今いわゆる逆コース時代になりましたので、もう一度これをお持ち出しになるんじやないかということを私どもは非常に心配するのでございます。こういうことを、特に零細農家が殖えるということが困るという理由の下にこれをお出しになりますと、一たびこういうものが出されてここに特殊の特例というものが設けられますと、この全体の民法に対してひびが入る、こういうことになつて参りますと、折角の新らしい民法の家族の関係を規定したものが一つ破れますと、そこからだんだん破れて来る。これを私ども女性は非常に恐れますが故に、今日は特にこの点を御勉強なさつておいて頂きたいと考えていたのでございます。で、私からちよつとこのことについて法務大臣に申上げておかなければならないのでございますが、御承知のように今の農家の一戸当り耕地面積は約八・二反になつております。これは決して大きい農地とは申せませんですけれども、このように日本に零細農家が殖えて来たということは、決してこの均分相続の結果ではないというその証拠といたしましては、この均分相続を規定いたしました現行民法が施行されましたのは、昭和二十三年の一月一日からでございます。ところがその前の年の昭和二十二年の農家一戸当りの耕地面積は七反でございます。七・二反と、こういうことになつております。で、それから八年を経過いたしまして、この均分相続の民法の下において一戸当りの耕地面積は八・二反と、こういうふうに一反だけ殖えておるのであります。ですからこの均分相続になつてから、更に農地が細分化されたということにはならないということが、ここで証明が付くと思います。では、なぜ日本の農家がこういうふうに零細農家が多いかということは、申上げるまでもなく、農村の人口の重圧のためにこうなつているということを私は詳しく調べておりますけれども、今私がここで犬養法務大臣にレクチユアを申上げるつもりでございませんから、又いずれほかの機会によくこのことを申上げたいと思いますけれども、どうもこういうようなわけでございまして今日いろいろの学者の実態調査もございますし、参議院で、この農業資産特例法を審議いたしましたときの速記録を私は全部目を通しておりますけれども、たくさんの公述人が来られまして、全部のかたがこういうような法律を作ることは却つて非常に日本の農家の状態を束縛するものであつて、こういう法律を作らなくとも日本の家族が美しい譲り合う精神によつて、現実の問題としては長子が相続しているのが現状であるということが十分に八年の間に証明されておりますので、この点は特に留意して頂きたいと思います。  次に、法務大臣に伺いたいのは、例の売春問題でございますが、あれは先国会でたびたび各婦人議員から非常に熱心な発言がございまして、法務大臣におかれましては黙認の時代は過ぎた、今度は禁止の法律を出し、又保護政策も考えなくてはならないというはつきりした御発言があつたのでございますが、今国会になつても一向この法律が出て参りませんけれども、これはどういう御事情になつているのでございましようか。
  385. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。前の農業資産のことについて有益な御教示を頂きまして有難うございました。ただ加藤さんと多少意見が違いますのは、譲り合いの美しい精神を発揮した農家もありますが、現に私の省の秘書課長の家も、秘書課長が権利を抛棄して来ましたけれども、やはり人間というものはそういう美しい譲り合いばかりで行きませんので、或る意味で先ほど申上げたような農業資産の特例法が出るいわれはありますけれども、これから先はあなたと同じで、それを軽々に今改革を志すということは、もう少し慎重を要するのではないかという、結論は同じでございますが、どうも農家の全部のかたが美しい譲り合いをしているというふうにどうも思えない節がありまして、実は相当、一週間ほど私の省で議論をしてみたのでございます。結論としては、こういうことは急いでやると、先ほど申上げたように、真ん中には戻すつもりで却つて旧に戻すほうを急ぐ結果になるので気を付けよう、こういう結論になつた次第でございます。  それから売春の問題でございますが、御承知のように、一月二十二日の閣議了解の下に、二月六日に初めて売春問題対策協議会というものをいたしまして、女性のかたにも大分委員になつて頂いたのであります。二月に二回、三月に二回、明日又五回目がございます。最初の二回ほどできまりましたことは、昭和二十一年の次官会議、当時の敗戦直後の混乱時としては無理もない、人間はあとから否定することはたやすいので、当時の次官会議の批評は避けたいと思います。即ちまあ如何なる事情にせよ、今日のやや独立を取戻し、やや安定を取戻した日本の社会においては、どうも必要悪ということは言過ぎである。又国家として芳しくないことであるから、必要悪という次官会議の決議は、これは従わないことにしようということは殆んど、殆んどではありません。出席委員全員の賛成するところでありました。それからその次にきまりましたことと申しますのは、ただ懇談会になつてはいけませんので、毎回主題を限つて、非常に熱心に数時間議論することになつております。次にきまりましたことは、売春をしている人々は主として保安処分にしよう。つまり職業を探して上げるとか、病気を直して上げるとか、或いは売春行為がいやになつた人が借金のために抜けられないという問題には、直ぐ解決を、助力をしよう、主に保安処分にしようということにきまつたわけでございます。前回、明日、或いはその次までかかるかと思いますが、これは街娼はどうしてもこれは社会道徳から言つても否定しなければならない。それで済ますと集娼は認めるということになりますので、この次の会議ではいわゆる赤線区域というものをどう処理するか。これは相当いろいろ議論が出まして、一回で済まないんじやないかと、こう思うのであります。で、今までの経過を見ておりますと、大体二週間に一度ということになりますので、どうも少し会と会の間が長過ぎる、併し各委員の御都合もありましようが、縮めて頂きたいということを、私の希望として前回法務次官から発言してもらいましたが、どうもなかなか忙しいかたが多いのでございまして、一人のかたが都合のいいときは一人が悪いというわけで、やはり最大公約数は約二週間置きということになつております。そういうわけで外部から御覧になると、一体何をしているかということでございますが、なかなかこれはただ罰則だけで片の付く問題でございませんので、非常に熱心な議論にかかわらず直ぐ解決するというふうになつていない。それで皆さんの予期ほど進まないことは、ひとえに私の政治責任でございます。併し内情はそのように非常に熱心に議論しているということを申上げておきたいと思います。
  386. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今の農業資産の問題でございますけれども、秘書課長の例をおとりになつて、いろいろお考えになるということはちよつと私には解しかねるのでございますが、やはりこういうことは全体的に御覧になりまして、そうしてその結果が果して均分、零細化されているかどうかという、その資料に基いての御検討でなければならないと思います。それはやはり二、三のいろいろよくない例はあると思いますけれども、この刻明な調査によりますと、戸別訪問いたしまして、いろんな方法で聞いておりますところを見ますと、九割以上というものは結局細分化されませんで長子相続の形をしている。或るものは権利を放棄して、或るものは共同に相続の形をとりながら、而も実質においては一つのものにしている、こういうことが資料によつてはつきり出ております。どうか一、二の例によつていろいろお考えをお曲げにならないようにお願いをいたしたいと思います。  それから売春のほうの問題は、今御事情を承わりましたのでございますが、だんだん会期も迫つて参りますので、この十九国会に何か法案としてお出しになるお見通しの下におやりになつていらつしやるのでございましようか、その点を承わりたいと思います。
  387. 犬養健

    国務大臣犬養健君) しばしば申上げますように。この国会に何とか目鼻を付けて御審議を願いたいというのが私の宿願でございますが、今申上げたように、二週間に一度でなかなか議論が沸騰するというような、これはまあお世辞抜きと言いますか、率直に申上げまして、この国会に必ず出せるという自信はあまり、今のところは絶対にはありません。ただ私はこの問題は何と言いますか、ここまでレールに乗せて来れば、もうこの問題はうやむやにあとずさりして行くというわけにはかない事態に来ている。その前進の気勢で以て十分に審議を慎重にやつて行きたい、十分に意を尽してよい法律を出して行える法律にしたい、こういうふうに考えております。申し遅れましたが、委員の中には警察関係の人も、国警長官、警視総監もおりますが、自分たちとしては行える法律にしてくれ、法文の表面はこうだが実際は余り強くやらないでいい、丁度入場税なんかみたいな、ああいう法律でなくしてもらいたいというのでありまして、これも御尤もなんでありまして、かなりお叱りを受けると思いますけれども、確かにスピードはのろいのでありますが、又できるだけ今後も協議会と協議会の開催日を極く短縮したいと考えておりますが、この国会に必ず出せるということを申上げてはちよつと嘘になると思います。その点は、お前なつてないじやないかと言えば全く私の責任でございまするけれども、出席者の或るかたのお話ですと、こんなに熱心に議論する協議会は近来めずらしい、こう言つて下すつているのでありますが、協議会そのものは全力を挙げて、これは社会の根本問題ですから十分の御議論を願うようにいたしている次第でございます。
  388. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この売春の問題は婦人層、婦人団体が犬養法務大臣に御期待申上げているところは非常に大きいのでありまして、今いろいろ保守合同その他の政治的な動きというようなことが伝わつておりますると、やはりこの問題に最初からいろいろ御心配頂きました犬養さんの御在任中にこれを是非仕上げて頂きたいという要望が強いと思いますので、どうかその点をよく考えて、少しも早いところ政治責任を果して頂きたくお願い申上げておきます。  その次に、これ又犬養法務大臣に伺いたいのは、衆議院の厚生委員会で修正して、参議院の厚生委員会で可決いたしまして成立いたしました戦傷病者戦没者遺族等援護法、この中に衆議院の改正のために恩給法の一部改正案に準じて、父母、祖父母が氏を改めないで婚姻したときは遺族年金の失格及び失権の事をとならない、こういう氏を改めないということを条件とするということが定められまして、これは参議院の厚生委員会におきましては、この氏ということを問題にするということは、新らしい現行民法、或いは憲法に矛盾するのではないかということが議論されたのでございますが、そのときのいろいろの事情がございましたために、まあこの問題を不問に附したような形でこの法律只今施行されているように承わつております。それでこの氏を改めなければ失権しないということは、どうも考えてみますと、民法と矛盾をいたしておりますので、この問題につきましては、もう一度政府として何か本当にこの多くの遺族が恩恵を受けられるようにして、而も民法に牴触しないような改正案をお出しになるというようなお考えはないのでございましようか。
  389. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これはまあ主として厚生省の御関係でございますけれども、家族制度という問題で私のほうも関係がございます意味で私からもお答え申上げたいと思います。如何にもまともに改正条文を読みますと、もうないはずの氏とか、家とかいうものを是認するので、そこはおかしいと思います。ただこの法律の精神というのは、一人でも多く戦傷病者或いは戦没者を夫に持つたお気の毒な婦人の実生活を実際的に助けようという精神から出ておるんじやないか。そうしますと、今いろいろ混乱した敗戦国の現在において内縁予算関係、そうして遠い先まで考えている生活に余裕はないけれども、とにかく心の頼りと言いますか、或いは生活の相談相手をつかみたいわらでもつかむような気持でつかみたいという婦人が、そのとたんにその理由だけで遺族としての国家からの志が切られるというのは実際問題としてどうだろうか。まあ苗字までお変えになるということは、言わば内縁関係でなくて正式の御結婚であるから、これはまあ一先ず……、いろいろ中には曰くもありましようが、概念的に一括して申しますれば、姓まで変えるということになれば一応生活が安定され、生活の目度もつかれ、経済生活の一つのまあ新らしい光明を得られたものと以て、その辺まで行つたら遺族としての国家の志を打切つても不穏当ではないだろうが、一時の内縁関係だけで打切るということは、今の混乱した社会生活から言うとちよつとむごいのではないか、こういう議論が出まして、まあ氏とか、家とかいう字を認めるという条文というような、ちよつと変なものでございますが、実際をとつたというふうに私は解釈いたしておるのでございます。
  390. 藤原道子

    藤原道子君 関連して……。今の加藤さんの質問お答えなつ犬養さんの御答弁ちよつと間違つているのです。加藤さんがお聞きになりましたのは、両親及び祖父母の問題なんです。未亡人の場合には無論結婚するとこれはもう駄目になるのです。喪失することは認めておる。併し両親及び祖父母が氏を変えないで結婚した場合には恩恵の対象になるのです。氏を変身た場合には失格するのです。これはおかしいではないか。大体において結婚によつて氏を変えるのはやはり女のほうが多いのです。そうですね。そうすると男のほうはお嫁さんをもらつても対象になるのです。ところがお母さんが結婚した場合には氏を変えると、その対象にならない。これでは余りに不合理ではないか、殊に氏というものがそういうところにいきるということはおかしいというので、参議院の厚生委員会で問題になりまして、法制局長官まで呼んで闘つた。そうして結局附帯決議を付けまして、十分政府は研究して考慮するということになつて収まつておる。その点を加藤さんが今質問しておいでになる。それは第十六回国会のことでありまして、私どもも、未亡人が結婚をして氏を変えた場合には、それはもう法律がそうなつておりますのですから認めておるのです。未亡人の場合には夫によつて生きておる。他の男と結婚をすれば、これは失格しても当り前だという解釈をとつております。だが両親、殊に一人子を失つた母の場合、これが対象にならないということはむごいじやないか、これが加藤さんが今質問された要旨でございますので、もう一回お考えを伺いたい。  それから今加藤さんの売春問題についての御質問でございますが、その中に犬養さんは、今朝もお話がございましたが、次官通牒はいけないということに意見が一致したということでございますが、あれを撤回して頂かなければ意味ないのです。従いまして撤回されたかどうか、撤回される用意があるかどうか、あるとすれば、いつ頃撤回されるかということを伺いたい。
  391. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 前段のほうは戦傷病者戦没者遺族援護法の問題でございますから、関連して私から御答弁申上げます。加藤さんのさつきお話の氏というのは、実は実際上の問題といたしまして、終戦後夫が戦死いたしました未亡人が兄弟等と結婚する場合が多かつたのであります。場合が多いという言葉は不十分でありますけれども、そういう状態がたくさんあつたのであります。又いろいろな状態から親族等がこれを勧めたような状態がありましたので、従つて氏を改めずに、そのままその姓を名乗つて結婚したものはこれを認める、いわゆる弔慰金を支給する、こういう方法をとつたのであります。そこでこれの場合におきましても、少し弊害の起る場合もありましたが、大体の中心はそこにあつた。只今藤原さんのお話のは、恩給法におきまして、昨年の八月一日に実は旧民法の上から申しまする場合には、両親が結婚いたしました場合におきましても、その氏の場合でありましたならば恩給法の適用を受けておつたのであります。ところが新民法になりましてから、これが適用を該当しないようになつた。従つてこのような、昭和二十三年一月一日からはこれが適用がならないようになりましたから、これでは誠に気の毒であるというので、昨年の八月一日から改めたのが只今お話の点であると私は承知いたしております。
  392. 藤原道子

    藤原道子君 私ちよつと了解できないのですが、私が法律の解釈を間違つていたならば改めなければなりませんが、今未亡人の場合に、その兄弟と結婚した場合、これは氏を変えない場合には対象になるのですね。これは聞違いございませんか。
  393. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 援護法ではさようになつております。
  394. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。昭和二十一年の次官会議の通牒でございますが、これは私の考え方は勿論何と言いますか、そうでないことにきめたいと思います。撤回という言葉がいいか悪いか知りませんが、そこで委員会でなぜその第一回に撤回の決議をしないか、こういう問題でございます。藤原さんではなく、どなたかそれについて非常に危惧を持つて私にまでお問合せがございました。私は早速出席しておりました政務次官に、うやむやになつているかということを聞きましたら、そうではなく、次官会議での決議は今日の社会においては不適当であるけれども、総合的に法律を作るときに、例えば第一条に、売春は悪であるという宣言をするというようなことによつて次官会議の決議を違うものにするということにして、あれだけ単独にあれを撤回するという宣言は、売春問題対策協議会としてはちよつとおかしいのじやないか、こういう解釈であるという答弁でございました。何かあやふやだというようなお気持でお聞きになつていると思いますが、あれを何と言いますか、撤回する心持をどこかに現わさなければ意味がないと私は思つております。それははつきり申上げます。
  395. 藤原道子

    藤原道子君 もう一つ
  396. 青木一男

    委員長青木一男君) 藤原君、簡単に願います。
  397. 藤原道子

    藤原道子君 犬養さんは、売春処罰法が今次国会に出るならばそれでもよろしいけれども、今のあなたのお話では、必ずしも約束はできない。そうすると、今度の法律が出るまでは次官通牒というものが生きるわけなのです。そうでしよう。ですから、この際次官通牒を直ちに……、この売春問題協議会では権限はないわけですね、そこまで行つたところで……。従いまして大臣が直ちにその方法をおとりになることが必要だと思うのでございます。それを是非やつてほしい。  それからいま一つは、随分固い約束をされて、犬養さんは私は本当に信頼していたのです。ところが今のお話を聞きますと、どうも私頼りない人だという気がするのですが、(笑声)私はこれでは私たちがペテンにかかつたような気がする。だから考え方によれば、業者の反撃の前に煙幕を張るために協議会を持たれたような邪推も起るわけなのです。従いまして最初のお約束通りに、今の事態はもうすでに限度に達している。しばしばあなたがおつしやつたのでございますから、この協議会をもつと督促をして今期国会に必ず出して頂きたい。若し出さないと言うならば我々も用意して出さなきやならん。その点についての御答弁を重ねてお伺いしたい。(「簡単々々」と呼ぶ者あり)簡単じやないです。あなた方が困るからでしよう。
  398. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 頼りないというお言葉は御自由でございましようが、私が急にごまかし始めたというような御批評は誠に心外でありまして、あなたはそう思つておられないと思います。それでこれは要するに問題は、私はたびたびもつと間隔を縮めろということを申しておりますが、お忙しいかたに膝を折つて委員にお願いして、そのかたが公務の都合上何日は困るということになれば、これはもう最大公約数の日を選ぶよりしようがないのでありまして、決して業者の圧迫とかいうものではありません。第一私のところには業者の陳情というものは一度もありません。(「委員のところへ行つているんですよ」と呼ぶ者あり)委員のところへ行つてつても、私がこの委員会の監督をしておるものでございますから、それは御安心を願いたいと思います。  それからもう一つは、相当これは大きい問題でございますから、拙速を尊ぶということはやはり私は危険だと思います。長年社会に存在して来た売春問題は、とにかく急いで改革の精神をみせるほうだけ急にするということは、或る意味でやつぱり社会におもねることになると思います。委員会が遅いということは確かに褒めたことではございません。私の責任です。責任でありますが、業者に言われたから委員会の速度を延ばすとか、そういう恥ざらしのことはいたしておりません。従つてあなたが非常に御不満だという気持はよくわかりますし、それは御不満を持たれることにも合理性があると思いますけれども、不順な動機からわざと延ばしておるということはございませんから、その点は一つ御了承を願いたいと思います。
  399. 青木一男

    委員長青木一男君) 結論をどうぞ。
  400. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私はこれから次の問題に入るので、まだちよつと結論まで参りませんから、もうちよつと御猶予願います。  今度は厚生大臣に伺いますが、バチカン法皇国の中の新聞関係から、極東の某国では堕胎を公認しているが、これは人道上不都合であると、暗に日本の妊娠中絶の現状についての問題を取上げたという情報が厚生省に入つたということを伺つたのでございますが、大臣はこれを聞いていらつしやいますか、又お聞きになりましたら、これに対してどういう御返事をなさいましたか。
  401. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 只今の話は承知いたしております。承知いたしておりまするが、実際上の問題で優生保護法その他妊娠中絶或いは受胎調節等の問題から出て来ておる問題だと存じます。で、これらの法の執行は、いろいろな意味におきまして、新らしい点もありまするし、従つて或いは一部には相当に疑われる点もあるかも知れませんが、さようなことのないようにしておりまするが、従いまして、それは多分誤まつたのが多いのではないか、こういうふうに考えまして、そのように連絡をいたしたいと存じております。
  402. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 厚生大臣は参議院議員でいらつしやいまして、この優生保護法という法律は大体参議院の議員立法でございますから、この法律について政府当局としては多少御遺憾なさるというような感情をお持ちかも知れませんけれども、私ども女性といたしましては、現行の優性保護法という法律は、決して母体を守つておる法律ではございません。この法律によりまして、だんだんと妊娠中絶の範囲の間口が拡げられるようになりましてからは、大臣も御承知のように、年々堕胎をする婦人の数というものが急速度に増加いたしまして、現に昭和二十八年度におきましては、大体百万件以上の堕胎があつたということが言われているのでございます。これは今日の日本の全婦人の妊娠総数が大体二百万ぐらいといたしますと、三つの妊娠に対して一つの堕胎が行われていると、こういうような現状でございます。而もどういう婦人が堕胎をしているかと申しますと、よく世間でこういうような堕胎をするというのは、何か享楽の結果として子供を生むことは困るというようなことで、医師に頼んで処置してもらうというようなことを言われておりますけれども、公衆衛生院の権威あるお医者さんたちが千三百八十二世帯につきまして、学問的に丁寧な調査をいたしました結果として、大体年齢におきましては、三十才から四十才の分別盛りの婦人が堕胎をしておる。而もこれらの婦人が二人乃至三人くらいの子供を持つて、まだそうたくさん持つておるわけじやありませんけど、このくらいの数の子供を持ち、而もこれらの子供に対して将来どういう教育を授けたらよいか、その教育費はどのくらい要るか、自分の現在の収入はどれだけかというような考えの下に、これ以上子供を持つことは困る。而も事前にこれを防止する方法が少しも徹底していないために、こういうような誠に道義上下都合であり、又衛生上もよろしくない堕胎に訴えておるという現状でございます。而も中絶をいたしました婦人の中の七四%は一年以内に又妊娠をする、こういうような状態であり、而もこういうようなことを繰返している婦人たちが、いわゆる合併症というようなものを起しまして非常に母体を害しております。こんなひどい現状をそのまま今後何年も続けて行くというようなことは、これは国家的にも実に忍びざることでございまして、もうこの辺ではつきりと堕胎というものをやめて、これに代るもつと道義の高い、健康を害なわないような受胎調節をするという方法を、厚生大臣として徹底的にお取上げにならなければならないはずだと思いますが、今年度はそれに対してどれだけ積極的な施策を考えていらつしやいますか。
  403. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 受胎調節には今後大いに力を注ぎたいと存じております。ただ優生保護法の関係は、これはいろいろな面から参議院で熱心にあの立法をされまして、いろいろな点からこれは放置ができない状態考えております。内容の充実等につきましては、厚生委員会等で御検討を頂いておるようでございますから、私ども大いに協力をいたしたいと存じております。
  404. 青木一男

    委員長青木一男君) 大分時間が経ちましたから、どうぞ結論を……。
  405. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 議員立法でございますと、政府当局としては、これはよくないということがこんなにわかつていても、改正しようということを御遠慮なさるのでございますか。
  406. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 決してそういう意味ではございません。必らずしも全部が悪いということは私どもは考えておらないのであります。たまたま或いはお話のような点があるかも知れません、これは厚生委員会でも御検討になつておりますし、私どもも検討いたしておりますから、よく今後は連絡いたしまして、検討をいたしたいと思います。
  407. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 折角の委員長の御厚意に余り甘えましてはいけませんから、まだまだたくさん質問したいところでございますけれども、止むを得ず私はここで打切りたいと思います。
  408. 青木一男

    委員長青木一男君) 各派の持時間は終りましたので、これにて質疑通告者の質問は終了いたしました。今日はこれにて散会いたします。明日は午前十時から開会いたします。    午後九時五十四分散会