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1954-03-16 第19回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十六日(火曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————   委員の異動 本日委員新谷寅三郎君及び千葉信男君 辞任につき、その補欠として小林政夫 君及び亀田得治君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            小野 義夫君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            伊能 芳雄君            鹿島守之助君            小林 英三君            佐藤清一郎君            白波瀬米吉君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            横山 フク君            吉田 萬次君            岸  良一君            小林 政夫君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            村上 義一君            亀田 得治君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            相馬 助治君            曾祢  益君            松永 義雄君            戸叶  武君            武藤 常介君            千田  正君   国務大臣   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    厚 生 大 臣 草葉 隆圓君    通商産業大臣  愛知 揆一君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 安藤 正純君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    調達庁次長   堀井 啓治君    行政管理庁次長 大野木克彦君    保安政務次官  前田 正男君    保安庁経理局長 石原 周夫君    外務政務次官  小滝  彬君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    文部省管理局長 近藤 直人君    通商産業政務次    官       古池 信三君    中小企業庁長官 岡田 秀男君    労働政務次官  安井  謙君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより会議を開きます。
  3. 三浦義男

    三浦義男君 私は過般の総括質問の際に科学技術振興に関しましていろいろ間口を拡げて御質問申上げたのでありますが、私の持ち時間も余りございませんだつたので、その議論がつつこんでおりませんので、今日はその補足と新らしい問題二三につきまして御質問申上げたいのであります。  私が科学振興に関しまして間口を拡げましているくの問題を持出しましたのは、実は私は総理にこういう問題が多々学術振興に関してございますよということを申上げたかつたのであります。もう総理はお忘れになつているかも知れませんけれども、とにかくそういう意味で私は申上げたのであります。又原子力の問題について申上げるのは甚だ恐縮なんでありますが、この原子力予算にからみまして数次に亘つて委員からお話が出たのであります。併しこの予算実行の問題につきましては、今後のことになるのだというようなことで、窮極をつかめなかつたことは遺憾でありますが、併しこの予算実施に当つて政府が鋭意対策研究中であるというのでありまして、もうそれ以上ここでお話を申上げてもしようがない、今後はこの実行をいかになさるかということに監視するよりほかないと思うのであります。ところでまだ原子力の問題につきまして根本の問題が残つておるのじやないかと思うのであります。この点につきまして副総理一つお話を承わりたいと思うのであります。お考えのほどをお聞きしたいのであります。その問題は原子力委員会というような問題であります。世界の各国が原子力に関しましてこの根本策を立てることをもう数年前から或いはもつと前からやつているのでありまして、まあそのうちの顕著な例を申しますと、インドでさえ、さえということは非常にまずいかも知れませんが、インド原子力委員会を一九四八年に設立いたしまして、その資源の探索とか或いは開発の研究とか、或いは研究用原子炉建設というようなことをすでにやつているのであります。又アルゼンチンあたりも一九五〇年に原子力委員会作つているというような世界の情勢なのであります。米国とか或いはイギリスというものはもう別問題といたしましても、こういうような国々がすでにもう原子力委員会作つて、そうして実行の段階にまで入つているというような状態にあります。それで過般の私の質問に対しましても、通産大臣も又文部次官世界原子力に関する文献資料相当集まつているというようなお話がございました。それで私はここで日本が早急に原子力委員会を作られて、そうしてこの原子力工業的利用平和的利用に対して突つ込んで行くお考えがないかどうかということを先ずお伺いしたい。  第二点は過般の学術会議の決議でも言われておりますが、原子力に関する憲章と申しますか、原子力に関するもろもろの法規を早く作りまして、この原子力利用は決して軍事的なものでないのだ、もつばら平和的目的に使われるんだということを先ず謳い、それから取扱上の問題とか或いは研究従事員保健衛生に関するいろいろな問題があると思いますが、そういうものを作られまして、大方の学者の協力を得、この研究を進め、この利用方向に向つて推進して行くという方法考えて頂けないだろうか、どうか、この二点を副総理にお伺いしたいのであります。
  4. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたしますが、原子力の平和的或いは工業的利用につきましては御趣意を伺つておりましても、日本では少し研究が遅れすぎているような感じがいたすのであります。終戦直前あのような事件がありましたことも手伝つておるのではないかと存じまするが、すでに各省におきまして相当文献も集めておりますので、御指摘のような原子力委員会設置ということにつきましてもよく検討してなるべくその方向に急ぎたいと考えております。  それから法規の問題でありまするが、これも必要な場合には学界外の各界の協力を求めまして憲章というようなものにつきましても考慮して参りたい、さように考えております。
  5. 三浦義男

    三浦義男君 只今の副総理のお考えを是非早急に御進行願いたいと思います。  次は、我が国技術援助契約につきまして通産大臣にお伺いしたいのであります。技術援助契約に基きまして外国に支払う金が二十五年以降二十八年度までに大体二千四百万ドル、邦貨に換算いたしまして八十六億というような額を示しております。又件数にいたしますと三百五十件程度に上つておるというような状態でございます。又二十八年度だけを考えてみますと約一千万ドル、邦貨に換算いたしまして三十六億あまりでございますが、この技術援助は確かにいろいろな面で役立つていることは事実であります。生産設備近代化にいたしましても、文型品優秀化或いは急を要する工事にこれを使うというようなことで確かに貢献はいたしておりますが、併しその反町考えてみますと、優秀な外国会社との技術提携を狙いまして日本のメーカーの数社或いは数十の会社がこの一つ特許権をめぐつて競合しております。その結果はロイアルテイをつり上げ、かえつて生産費を割高にして、いるとも考えられる節があるのであります。又この製品海外輸出いたします場合に、そのロイアルテイ買つたために向うが輸入する場合に制限を加えておるという事実も考えられるのであります。たまたま私がこの問題をお伺いしようと思つておりましたときに、一昨日の朝日新聞はこれを取上げまして、経済審議庁でもこういうことを言つているということを言つております。それをちよつと読上げてみますと、このままでは、我が国産業外国会社の下請企業的なものに落されて独自の性格を失うだけでなく、外貨の面でも無用の損失を招き、企業の合理化を逆に停滞させることにもなりかねない。業界の自粛反省が必要ではないだろうか、というようなことまで朝日新聞は報じているのであります。でこういうふうに業者自粛反省だけでこのことが足りるものであるならば誠に結構でありますが、なんらここで政府の行政的の措置なり或いは政府のサジエツシヨンがなかつたためにこの技術援助に関しまして、こういう問題がだんだん大きくなつて行つたならば全体どうなるのだろうかということが非常に心配なのであります。皆さん御承知のように、保全経済会法規取締方法がなかつたために過般ああいうような大きな事件まで起して世の中を騒がせたというようなこともございますので、まあこれとあれとは別でありますが、何かそういうようなことに対して格段の処置をとるのでなければ私はこの新聞に言つているような事実が現われて来るのではないかと思うのであります。で政府は二十九年度はこの技術援助契約をどれくらいお考えになつておりますか。又重複して契約しようとするその数社の者が一つ特許に集つて来るという面につきまして、又輸出についての何らかの制限が加えられるというような考えにつきまして、政府はどういうような対策考えておられるか、通産大臣にお伺いしたいと思います。
  6. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 誠に御尤もな御懸念でございまして、先ほどお挙げになりましたように、いわゆる私ども技術外資の導入といつて外資の面からはこの問題をとり上げておりますが、昨年の九月までにこの技術外資の対価として支払いました額は昭和三十五年以来千八百六十万ドル程度になつております。それからこれを契約として認可いたしました件数は三百三十一件ということに相成つておるわけでございまして、その中では機械関係が五割四分ほどを占めておるわけでございます。で二十九年度にかくのごとき外資によつてどのくらいの枠を作るかということにつきましては、他の外貨予算の問題もまだ未決定でございますので、数字としてはまだ出ておりませんが、先ほど御指摘のございましたように、これはそのもの自体外資を支払わなければならないという問題のほかに、更に根本的に只今指摘のように輸出制限とか或いはその他の面におきまして、国内の日本産業の育成という点から見てもいろいろ考えなければならない問題もございますので、対策といたしましては先ず第一に現在の制度の下において外貨審議会での審査をより厳重にやるということが一つでございます。それからそれでやつてみましてやはりどうもうまく行かないというようなことでございますれば、実は最近の航空機の面その他におきまして認可制度というようなことも研究案として考えておりますが、それらと同じような考え方の下に或る法規的の規制ということも考えなければならんかと思つておりますが、差当りのところは今申上げましたように外貨審議会が十分慎重に検討をいたしましてできるだけ改善いたしたいというふうに考えております。
  7. 三浦義男

    三浦義男君 次は行政管理庁長官にお伺いいたしたいのでありますが、過般航空研究所の問題につきまして御質問を申上げたのでありますが、この航空技術研究所が、通産運輸保安庁のこの所属のことについて話がつかなかつたためにこの設置が遅れておるのだというようなことも耳にしましたので、これに対してそういうことがありましたかということを申上げたところ、やや肯定されるような御答弁があつたと了解しておるのであります。これは私先般も申上げましたようにこの設置の問題は全く緊急を要する問題でございます。これは一日も早く一つこの三省の間で御解決を願つて設置方向に向つて頂きたい、こう思うのであります。それと同時に航空技術審議会の問題でございます。これはいつでございましたか私判然といたしませんが、新聞紙上内閣機関として今すぐにでもできるような報道がなされたのであります。ところがまだそれがどうなつておりますか、私どもはその法律案も拝見いたしませんければどういう進行状態になつているか、その点も明らかじやないのであります。これは或いは新聞報道間違つてつたのか、それとも何かはかにいきさつがありましてこういうふうな遅れを来たしておるのでありますか、どうでありますか、その辺のところを一つお伺いしたいのが第一点。又若しこれをお作りになるとなさるならばどういうようなお考えでその内容を盛られようとしているのか、その点お伺いしたいと思う。以上二点についてお伺いしたいと思います。
  8. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 科学技術庁のほうは先般お答え申上げましたようになお若干まだ問題点がありまして延びておりますが、航空技術審議会のほうはこちらはもうずつと考え方がまとまつておりまして、ただまだ具体案が少し問題点が残つておりますので遅れておりますが、近く成案を得て御審議願えるところまで運べると思つております。大体航空技術審議会のあり方といたしましては、航空技術に関する重要事項をここで審議頂き、更にこれに関しての各省庁間の連絡調整をここでやつて頂く、この二つを使命として航空技術審議会というものを置きたい、こういう考えでございます。
  9. 三浦義男

    三浦義男君 その構成審議会のメンバーはどういうことをお考えになつておりますか。
  10. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) お尋ねの点は後ほど政府委員によりましてお答え申上げます。
  11. 三浦義男

    三浦義男君 それでは時間の節約上又通産大臣ちよつと伺いたい。第十六国会のときに、私は海外における科学技術に関する相談室と申しますか、或いはアタツシエと申しますか、そういうものをお設けになつたら如何でありますかということを申上げたのでありますが、その現われかどうか知りませんが、二十八年度には東南アジア及び南米に重機械技術相談室というものができ上りまして、そこに技術者派遣されて或る程度成績を挙げているということを私は聞いております。又実は私の友人も或る地点に行つておりまして、その連中からの通信なんかによりましても相当成績は挙げているということは私は認識しているのでありますが、この成果の大体についておわかりでございましたならば伺いたいということが第一点と、二十九年度はこれに対してもつと拡大強化をして行かれる御意思があるのか、又この設置箇所につきましても増加されるというお考えがございますか、その辺を伺いたいのであります。
  12. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 東南アジア中南米諸国における工業建設、それから重機械類輸出についての技術的相談、修理といつたようなことの便益の供与、それからこちら側の製品の紹介、宣伝、設計、見積、海外情報の提供というようなことを行いまして、プラント輸出を促進したいということで只今お話もございましたが、従来からいろいろ計画いたしておりまして、海外重機減額技術相談室を設けることにいたしたわけでございます。二十八年度におきまして予算は初め七千万円ございました。あと節約によりまして六千万円になつたのでありますが、日本機械輸出組合に対しまして重機械類技術相談室設置についての補助金ということでこの予算を交付いたしまして、インド、タイ、ビルマ、パキスタン、ブラジル、アルゼンチン、これらの諸国との折衝も進みまして、現在までのところ大体これらの地点におきまする相談室の事務所の借入というようなこともほぼ完了したようなわけでございます。  それから駐在派遣職員につきましては、二十八年度としての派遣予定人員は十五名でございましたが、そのうち十三名はすでに現地に到着して業務を開始しておるわけでございます。  それからこの施設宣伝事業の一部といたしまして宣伝映画の作成とか、ガイド・ブツクの買上げ頒布等の計画をいたしておりますが、いずれも予定通り進捗いたしております。二十九年度におきましては補助金約一億七百万円を計上いたしまして、この施設を更に一段と強化いたしまして維持運営する予定でございます。で、こういつたような相談室実施等に伴いましてどういう成果が挙つているかというお尋ねでございますが、この点は直接この相談室を置いたことによつてどれだけの成果挙つたということは、ちよつと数字的にこれを申上げることは非常に困難であるのでございますが、いろいろの意味におきまして相当の効果をこれから漸次発揚して参るものと考えております。
  13. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 先ほどお尋ねの点をお答え申上げます。大体航空審議会は十五人の委員で、そのうち四人程度関係省庁代表者あと学識経験者のかたがたによつて構成をしたい、こういう考えをいたしております。
  14. 三浦義男

    三浦義男君 私はまだ持時間があると思いますが、実は運輸大臣にお聞きしたいことがありますので、私は今日はこの程度に切上げて、あとで持時間を利用したいと思いますので私の質問はこれで終らして頂きます。
  15. 青木一男

    委員長青木一男君) よろしゆうございます。
  16. 中田吉雄

    中田吉雄君 資料、副総理に……。
  17. 青木一男

    委員長青木一男君) 関連質問ですか。
  18. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつと三浦委員質問されました件ですが、原子力に関しまする予算が修正されたのですが、政府も早急に原子力政策というものを立つて、やはりその一環として修正された予算を効率的に使われるということが必要だと思いますので、予算の採決までに一つお忙しいとは思いますが、原子力政策全般に対して一応御意見をまとめて一つ提出頂きたいと思うのですが如何でしようか。
  19. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えします。予算審議をお願いしております以上、政府意見をできるだけとりまとめまして申上げたいと存じます。
  20. 吉田萬次

    吉田萬次君 政府提出せられました二十九年度予算を見ますると、財政緊縮とか、或いはデフレーシヨン政策とかというものに非常な重点をおかれまして、いわゆる二十九年度の予算というものは画期的な予算であり、又実行が非常にむずかしいように考えるのでありまするが、それにつきましてこれは言うはやすくして行うに非常に困難な予算考えるのであります。従つて大蔵大臣は非常な決心勇猛精進を以てこの難局に処せられなければならんと思いますがその御真意を承わりたいと思うのであります。  明治以降の財政史緊縮財政であるとか、或いはデフレ政策であるとかいうようなことは三回ありました。いわゆる松方大蔵卿緊縮政策井上蔵相のやはりデフレーシヨン政策、もう一つドツジ政策でありまするが、このドツジ政策は朝鮮の戦乱によりまして、中途で絶えたような形になつておりまするが、この松方大蔵卿は、いわゆる目標が紙幣の整理であり、井上蔵相金解禁にあつたのであります。で財政の極めて窮乏しておりましたときに、松方蔵相が就任せられましたが、このときには太政官札以下六種の不換紙幣発行がありましたのと、西南戦争によつて紙幣が非常に濫発せられておつた明治十一年末には一億三千九百余万円の巨額紙幣発行というものがあつたのであります。従つて紙幣の価値というものが暴落し、物価高騰によりまして、明治十年の米価というものを見ますると、石五円十五銭、それが明治十四年においては、石十円四十八銭というような高騰を来し、ここでデフレーシヨン政策を起そうとした松方蔵相は、非常に窮局に立至りまして明治大帝の激励の辞によつて腰を上げたというように聞いておるのであります。一方紙幣流通額減少他方準備金中の正貨の充実を図るべく非常に努力したのでありまして、即ち明治十五年から十七年の三カ年の間歳出定額というものを据置にした、いわゆる補正予算を組まなかつた。又明治田年度には一千二百七十万円の国庫準備正貨というものが、十八年度の末にはそれがために四千二百二十六万円という増額を示して来ることができたのであります。従つて明治十九年には正貨との交換をしようとしましたときに、この兌喚準備が十分にできておつたために兌換する者がなかつたという程度にまで至つておるのであります。その半面においてその代り農産物の下落とか、或いは購売力の減退というようなことから倒産者が非常に続出して参りまして、監獄志望者がでまるというような状態でありましたが、併しこの強力なる推進によりまして産業の或いは経済の基盤が確立いたしまして、十九年度には景気の回復をみ製造工業の発達をみることができたのであります。従つてこの時代に初めて紡績業者というものが擡頭し、そうして海外輸出に向つて非常な進展をする気運を醸成したのであります。  又大正三年七月の世界大戦の余波を受けまして、政治経済の非常な変革を来しましたときに、米国金輸出の禁止をしましたので、我が国もやはりこれにならつて金輸出を禁止しました。これも解禁せようとしてもどうしても解禁する手腕と解禁する時期というものに恵まれなかつたのでありまするし、勿論これは難問題でありまするから、非常に市大視せられておつたのであります。大正八年には十年間に入超四十二億円の巨額上つて為替相場というものがこれがために非常に下落した。このときに立つたのがいわゆる蔵相井上準之助氏であります。で井上蔵相は、この金輸出解禁を以て経済政策中心課題としたのであります。この準備といたしまして、いわゆる消費の節約物価の引下、輸入の減少輸出の増進と非募債主義というようなことをとつたのでありまして、いわゆる新規事業というものを中止し、特別会許一般会計の方針に則つて行うというようなことでこれを徹底いたしました関係上、官吏の一割減俸をしたのであります。従つてこれにつきまして、いわゆる司法省とか或いは鉄道の方面におきまして非常な反対を受けましたけれども、併しながら強力にこれを遂行しました関係上、物価は下落するし、それから為替相場は漸騰して来ることができたのであります。又英米市場において一億円のクレジットを成立いたしまして、この関係上漸く昭和五年の一月十一日に金の解禁実施することができ、これを省令によつて発表しておるのであります。  要するにこの八代内閣と十人の蔵相と、十二年四カ月の間のこの難問題をこの井上蔵相は解決することができたのであります。  又これをイギリスに見ましてもクリツプス経済相としてその政策をとりましたのは、一九四五年のアトリーの労働党内閣のときでありまして、荒廃いたしました英国の経済復興に当面したのであります。いわゆる四十五年の九月に経済閣僚委員会を設立いたしまして、クリツプスがその経済相となり又経済部門の統制の指揮権を握つたのであります。このときのクリツプス決心というものは、輸出か然らずんば死かというようなことを言つているのであります。非常に悲愴な決意を以てその難局に当つたのでありまして、四十八年の二月には、賃金物価の基準というものを釘付けにしてしまつて、いわゆる労銀も釘付けにした、家賃も釘付けにした、物価のほうも全部釘付けにしたというようなことをしまして、国内的にはいわゆる鉄鋼国有の延期とか、或いは長期的国内開発のため米国の資本を利用するとか、食糧の入手又は輸出の増進、重点産業への投資というようなことに極めて細心な注意を払つたのであります。そして国民には耐乏生活の強化の必要を訴えたのでありまして、非常にこれがために身体が衰弱して病を得てスイスに静養しスイスで客死をしたというような悲惨な最後を遂げたのであります。かような点から考えましてかような政策に対する苦心というものは一通りのものではないと思うのであります。  それを大蔵大臣は、先回誰かここで質問せられましたときに、昭和三十一年にはこれを完遂することができる、立派な経済政策というものを確立することができるというように、極めて甘い考えをここで述べられましたが、国民そのものは今日この状態につきまして半信半疑の状態であり、本当にできるか、できないかというような日和見的の態度をとつているのであります。これは一朝失敗に帰したならば、非常にむずかしい問題でありまするが、蔵相の真の決意、如何なる信念を以てこの難局に処せられるかというその御決意のほどを承わりたいと思うのであります。
  21. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 吉田委員が幾多先輩の例、並びにイギリス等の事例をお引き下すつて、そして今縷縷お話の点につきましては誠に傾聴に値いするものがあります。私どもは実は今回のこの緊縮予算の第一として、その目標とするところは、国際収支の均衡を図ることにあり、それがためには先ず以て国際的に割高な日本物価の引下によつて、それで日本の商品に国際競争力をつける、こういうことを主眼にいたしているのでありまして、これがためには金融その他各般の総合的措置をとる所存でございます。従いまして国民各位の協力支持が大切であることは申上げるまでもございませんが、ただ仰せになつたうちに、私どももこの前のいろいろな人がやつたものに比べると準備が少し不足しているじやないかというお叱りについては誠に私どもそうだと卒直に認めざるを得ないと思います。それは日本が独立して独立の解放感と申しますか、そういうようなところから昨年など各種のベースアツプをやらざるを得ないような事情におかれた、これは法制上やむをえなかつたのでありますが、それにいたしましてもその後の諸般の準備が十分行つておりませんうちに、国際情勢、国内情勢からどうしてもこれは二十九年度予算を中心として変えて行かなければならない、俗に言われる百八十度の転換をよぎなくされたという点に準備の足らん点があることを卒直に認めざるをえないと思いますが、しかしこの準備の足らざるところは今後の諸施策において補つて参ることにいたしまして、私どもはいやしくも一旦立てた国際収支の均衡という目標を達成するまでは、どういうことがあつても諸般の政策は一歩でも緩和されたり或いは又後退する、むしろ退くというようなことがあつては相成らん。これについては不動の決意を以て臨む所存でございます。
  22. 吉田萬次

    吉田萬次君 労働大臣がお出でになりませんから通産大臣及び大蔵大臣に関連して御質問申上げたいと思います。
  23. 青木一男

    委員長青木一男君) 吉田君に申上げますが、労働省の政務次官は見えております。
  24. 吉田萬次

    吉田萬次君 あとでよろしいです。中小企業の対策についてお伺いしたいと思いますが、その第一は中小企業の金融の実情についてであります。中小企業の金融機関別の調査を見ますると、百分比において銀行が六五・八%、相互銀行が一八・一%、信用金庫が九・九%、商工中金が二・九%、国民金融公庫が一・七%という実情であります。中小企業というものが市中銀行に依存している依存度というものは極めて高いにかかわらず、全国銀行融資中に占めるところの中小企業貸出の割当というものは、全国十一大銀行の貸付高が僅か三六%に過ぎないのであります。中小企業の我が国産業に占めるところのウエイトは全企業の九九%でありまして、製品出荷高は全国の四四%を占めているのであります。かようにして我が国産業界の基盤をなすところのものであると考えますが、これが育成のために中小企業に対する金融を積極化すべきであるのでありまして、殊に金融界の再編成或いは金融機関の貸出厳選の傾向は中小企業の資金ぐりを極度に圧迫しているように考えますが、これに対する対策をお伺いしたいと思うのであります。
  25. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 只今御説明になりましたように、いわゆる大銀行の中小企業に対する融資の状況は昨年の一月におきましては全体の三六・一%でございましたが、その後漸次割合はむしろふえているのでありますがそれはともかくといたしまして、只今お挙げになりました銀行を初めとして相互銀行、信用金庫、商工組合中央金庫、国民金融公庫、信用協同組合並びに中小企業金融公庫に対しましては、或いはいわゆる財政資金が乏しい中にもできるだけの配分をする、或いは又預託金の引上げを適時適正に行なつて急激な引上げを行わないというような方法をとる等、できるだけのこれに対する対策は引続き強化して参りたいと考えているわけでございまして、単にこの大銀行等の貸出の比率としては三割六分或いは七分という程度でございますが、これは件数にすれば非常に多いことは勿論でございますし、大体経常の大きさ等から申しますれば、私は現状において中小企業に対しまして大きな金融機関が特に継子扱いにしているというようなことはないと思いますが、なおそれらの点の補強につきましては十分点を用いて参りたいと考えております。
  26. 吉田萬次

    吉田萬次君 只今通産大臣は大銀行が中小企業に継子扱いをしておらんとおつしやいました。この問題につきましては後刻又御質問申上げたいと思うのであります。  続いて第二でありまするが中小企業の金融機関の統合整理についてであります。中小企業に対する金融機関としては信用金庫、商工中金、旧民金融公庫、信用協同組合、開発銀行などがありますが、これらを整理統合して一本化し中小企業者が金を借りやすいように窓口を一つにしてもらつたらどうかと考えるのであります。国民金融公庫一・八%、商工中金二・八%、開発銀行が〇・四%というような微々たる額でありまするし、殊に商工中金であるとか国民金融公庫というようなものは、今日整理の時代におけるところの私は一つのトンネル機関であると思うのであります。かような機関というものはいわゆる大蔵省の官僚のうばすて山のようなものであつて、今回の金融政策或いはその他の方面において財政緊縮を行おうというようなこの際においては、当然整理の対象とならなければならんという私は部門であると思うのであります。又かような金融機関のうちにさヘボスが介在して三%ぐらいのコミツシヨンをとるとか言われておつたなら、中小企業者というものは極めて気の毒な状態にあると思うのでありますが、かようなことにつきまして一本化したら非常に私は国家のために利益だと思いますが、一本化するような御意思はありますかどうか、この問題について通産大臣或いは大蔵大臣の御意見が承りたいと思います。
  27. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 大蔵大臣からもお答えがあると思いますが、中小企業の金融機関は成るほど非常に数が多いと申しまするかいろいろの種類がございます。従つてこれを一本にすることはどうかという御意見が出て参りますことも一理あるとは思いますけれども、併し例えば商工組合中央金庫或いは国民金融公庫、或いは中小企業金融公庫、こういつたようなものもそれぞれその特質と沿革があるわけでありまして、例えば協同組合を中心とするところの金融機関という意味で商工中金があるわけでございましようし、国民金融公庫はその発足のときからの沿革にも明らかでありまするように、どちらかといいますと本当の庶民金融と申しまするか小口の金融というようなことを主体にしております。そうして全部が政府持ちと申しまするか丸抱えといつたほうが正しいと思います。又それに対して中小企業金融公庫は中小企業の長期運転資金或いは設備資金といつたような、どちらかと言えば国民金融公庫の対象のものよりは、或る程度高い対象のところを狙つている組織でございます。又その資金源は財政資金であるにしてもその運用等においては直接貸をやらないで、いろいろの金融機関の手を借りて代貸の形をとつているというところに特色があるわけであります。それから更に純粋の民間の金融機関にいたしましても、相互銀行と信用金庫とはおのずからその対象とするところ、或いは利用する人たちの階層がやはり沿革的にも相当つておりますし、それぞれのなじみの層があるわけでございまして、その上に更に地方銀行、大銀行というようなかつこうになつております。これをただ単に非常に分散しておるからと申しまして単純にこれを統合するというようなことは却つて策の上なるものではないではなかろうか。ただその多少相互重複しているようなところもなきにしもあらずでございますので、中小金融の系列や体系や更にこう一つ整理してみたらどうかということは一案として考え得るところだと思うのであります。
  28. 吉田萬次

    吉田萬次君 勿論すべての組織ができ上りまするのについては相当の理由があつて設立せられたものと思いまするけれども、結果から見ましたらあながちそうばかりではないと思う点が多々あります。このことは又後日に譲りまして、続いて第三番目に開銀、興銀の大産業に対する政府出資の大幅削減のしわ寄せというものが中小企業に必然的に来ると思いまするが、どうお考えになるかということでありまして、開発銀行に対する政府出資が前年度の六百億から三百五十億に削られ、融資のわくが絞られて来た、この事柄が重要産業部門に対する影響というものは極めて重大であると考えるのであります。又資金運用部資金からの金融債の引受が前年度の三百億から二百億に削られていると、これは金融債の発行によつて資金を賄うている興銀の貸出のわくが相当絞られるということを意味するように考えるのであります。その結果は独占集中強化という形になつてそのしわ寄せは結局中小企業に押しつけられるように思うのであります。従つて中小企業は資金繰りとそのしわ寄せによつて非常に苦境に追いやられるというように考えますが、これに対するお考えを承りたいと思います。
  29. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 開発銀行は中小企業もやつておりましたが、この分は全部中小企業金融公庫へ引継ぐことになつておりまして、今後は開発銀行は中小金融については直接やらない建前になつております。現在持つている分は全部中小企業金融公庫へ譲るのであります。そこで開発銀行が勿論今度の資金において相当減しておりますので、活躍を制限されることは当然ございまするが、まあ私どもが見ると大体は国家資金によるああいう財政投融資というものは全部減して行くということが本体ではあるまいか。ただ日本のような現状では一気にそこまで行かないけれども、国家資金で賄う分についてはやはり漸次減して行くことが根本ではあるまいかと方針としてはさように考えているのでありますが、併し今の資本蓄積の足らんときでございまするからこれを補うために岡の財政投融資を行うのは当然のことであります。ただ幾らかまあ二重投資と言われたり、例えば船舶の投資でもそれだけの必要がないものもあり、電源開発等も重点的にこれを行えばさまで仕事の上に差支えが参りませんのでそれでまあああいうふうにした次第であります。興業銀行とか長期信用銀行のいわゆる金融債とか、或いはそのほかの商工中金の分も若干含めておりますが、大体この三つでありますが、これに対して今度は百八十五億実は減ずるので、前年の三百億に比べると相当減るのでございまするが、これもまあたとえて言いますと、長期信用銀行とか興業銀行でも造船資金等を賄つている分もあり、電源開発その他も賄つている分もあつて、その他でいわゆるそういう長期資金が一貫した建て方になつておりまするので、そういう点からこれをほかに割愛する意味でやむをえず減らした次第でありまするが、これがほかの中小企業のほうにしわ寄せして参るということはない、こういうふうに考えております。なお通商産業大臣からも話がありまして、私どもも丁度仰せになる点はよくわかるのでありますが、併し例えば商工中金というものは組合金融を主としてやつておりますし、それから国民金融公庫は極く零細な人のいわば生業資金、生業資金以外に今度は恩給証書を担保とするものも出し得ることに今度国会で御協賛願つておる法律でそういうふうにいたしており、多少特殊な性質を持つている。中小企業金融公庫のほうは長い資金で大体は民間企業の合理化に使い得る、こういうような工合に考えておりますので、言い換えますと、こういう中小企業金融公庫、商工中金、国民金融公庫の三つがかなえの三本の足になつて働く、これは吉田さんが最初に仰せになつたようにこの政府機関で動いている部分は金融の面では少い、一番大きいのは何といつても地方銀行であります。都会のいわゆる十大銀行、十一大銀行、これもありますが、一番大きい部分を占めるのは地方銀行でありまして、従つてこれにはやはり保証協会とか保険の働きを持つて参ることが一番効果を挙げるゆえんだと思いますので、この前の国会で御協賛を願つたのもそういう点からであります。私どもも窓口は成るべく少いほうがいいとこう考えておりますが、従つて中小企業金融公庫は直接自分に窓口を持たずに、今いろいろな金融機関を使つて窓口にいたしております。これは尤も或る点からいうとその窓口で歩積みをさせられる、それで困るのだという苦情を案は聞いておつたので、この間そういう窓口で取扱つたらこれは手数料をもらうわけです。保証もいたしますから、そこで歩積みなどを取つちや大変なことだというので、これは厳に戒めておりますが、そんなような考え方で中小企業には臨んでいる次第でございます。
  30. 吉田萬次

    吉田萬次君 もう一つ繊維消費税の問題につきまして大蔵大臣、通産大臣の御心境を承りたいと思うのであります。これは極めて不自然な課税でありまして、現在この織物業者がどんな窮境にあるか、誰のところへこれを持つて行つたら適当であるかということは、これは極めて重大な又関心事であり、そうしてこの問題についての公平ということについて一様に刮目して見ている点であります。大体私は愛知県でありますが、毛織物の現状というものから見ましても生産額の二〇%は利益であります。この中で五五%の税金を引かれる。そうすると純益というものは九分の一になる。更にその上五分の歩積みをさせられているという点から考えまして、残るところいくばくもないのであります。いわゆこの歩積みというものが利益になるべき性質のものを釘付にされてしまう。そういうよう状態であります。資本金を仮りに一千万円持つて業を始めようといたしますると、その中の五百万円のわくは組んでくれるけれども、五百万円を預金にしておかなければならない。その五百万円というものは定期或いはミリオン定期というようなものにせずして普通の預金にさしている。更にこの五百万円のわくの中で手形などを割引するときには五分の歩積みを取るというようなことで、この五分の歩積みも定期さにせない。これを借りようとしたときには非常に高利でなければ貸せないというような状態でありまして、中小企業者というものが盆暮正月の贈答品であるとか、或いは御馳走であるとかいうものを計算いたしますると、日歩六銭の金を使わなければならない、かような状態で本当に業態というものがまじめに又努力してやれるかどうかというようなことを疑わなければならんというような現状であります。そこで現在におきましては業者は三分の一は当然倒れる。更に残りの三分の二の四分の一よりこの難関を突破する人間はなかろうかとまで言われておるのであります。そこへもつて来て日本のすべての銀行というものが先ほど申しましたように無慈悲である上に、更に過酷な状態にあるのであります。これは銀行が中小企業に対しては先ほど申しましたように手きびしい政策をとり、大企業いわゆる大きなものに対しては実に緩漫この上もない融資をしている。例えて申しますると、私のほうの或る会社は五十億の焦げ付きをしている。更に融資で三十億を借りているというようなものがありまして、かようなものに対する銀行の態度というものは極めて緩いのである。庶民階級から集めたところのこの血の出るような金がかような方面に対して使われるということは、私は極めて不自然どころでない、極めて遺憾な状態であると思うのでありまして、銀行が中小企業者に対する態度というものは、要するにさいの河原の子供の積上げる石を鬼が金棒でこわすような状態とみなければならんのであります。これをアメリカの銀行などに比べたらどうであるか。アメリカ銀行であるとか或いはナシヨナル・シテイ・バンクであるとかいうような大銀行が極めて零細な資本家にまで融資している。アメリカの繁栄というものは中企業の発達によつて繁栄を来しているという、これに対する銀行の態度というものと日本の銀行の態度というものを比べますと全く雲泥の差であつて如何日本の銀行が横暴であるかということを私は考えなければならないと思うのであります。今度のこの繊維税につきましても、かような銀行の横暴と同じように紡績業者が極めて横暴である。私はこのしわ寄せがどこへ行くかと思つて見ておりまして、結局原糸課税となつて現われるのが当然ではないかと思つたのであります。ところが極めて強力な反対とそれから政府を圧迫するような態度に出まして、八十番手から税金がかかるということを言われますると、それでは七十九番手を作ればいいというようなことを豪語しているというような状態でありまして、綿糸のほうにおきましても製品は一こり七万円のを九万円で売り、毛糸紡績におきましては僅か一ポンドの製作費が九百円である。製品が九百円でできるのを今業者に向つて千五百円乃至千六百円で売つている。この実例といたしまして私どものほうにある尾西毛糸紡績というのがありますが、これを創立するときには、業者がこの紡績業者の専横ということを内々非常に不快な感をもつておりましたが故に、零細な零細な株による金によつてこの工場を設立したのでありまして、すでに昨年一カ年で三億五千万円利益を占めていると言われているのであります。而もこの業者の出した零細な金というものは、いわゆる高率な配当を受けるにとどまるのであつて、現業重役というものに日本毛糸の重役が来て、それを乗つ取つてしまつたというような悲惨な状態であります。かような状態をみまするときに中小企業の浮ばれないということは全く同情に値するどころでなく悲惨な状態であります。ところで今度の税というものがいわゆる最もとりやすいところにしわ寄せしてそうしてとられるように私は解釈するのであります。要するにこれは例えて申しますると、空車をひいて行くものにのせようとしてもその車がのせてくれない、或いはたくさんの子供に背負わせてやろうとすれば竹やりをもつて臨んでいるというところから、やむを得ずしてここに栄養不具の男に十里の道と言わないから。二里でいいからお前背負えと言つて背負わせたと同じような、私はこれに対する感じをもつているのでありますが、かような税というものは私は極めて遺憾な税であり、これはピースをもう五円値上げするとか、ビール一本に対して十円値上げしたら優にそういう金は出ると思いますが、これに対して大蔵大臣はどうしてかようなところへしわをお寄せになつたかということを承りたいのと、中小企業がかように困つている状態通産大臣はどう見ておいでになるかということを承りたいと思います。
  31. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今実例についていろいろお話があつてどもも傾聴したのでありますが、繊維消費税を一般的に課すると誠に御同様なふうに私も感ずるのでありますが、今回の消費税は御承知のごとく本当に奢侈的なもので、数量から申しますと大体七%ぐらいにしか相当いたしておりません。現に例えば私のところへ訴えて来た人がありましたが、これは吉田さんも御承知だから何ですが、例えば三河でこんなのは一体どれくらいのものがあるだろうか。一軒か二軒でしよう。或る市などは全然ありません。五市ほど例を挙げましたがそのうち一軒くらいありますか、あとは皆こういう高級なものは扱いません。こういうような工合で、この一例で如何にその何が少いかということがわかると思うのであります。ただ考え方ちよつと申しておきますと、私どもが当初考えましたのは、丁度アメリカへ生糸が出て行く状況が、国内で二十七万というようなことでなければもう少し出て行くのでありまして、現在の五割増くらいはすぐに出て行くということが言われておつて、その点からいうと、輸出奨励の見地から行けば原糸のところへ課税するというのが一番いいのじやないかと思つていろいろ原糸課税を考えたのでありますが、ところがこんどは一方国内で財政緊縮その他から一連の政策で国民各位に合理的な生活をしてもらおう、こういう点からいいますと奢侈的なものをできるだけ抑制したい、奢侈的なものを抑制するという見地からみるとどこが一番いいかというと、小売商のところがこれは最後の消費者へ行くところであるから一番いい。製造するところではいろいろな段階を経て行きますから、製造で又いろいろコストのかかる違いがありますから、小売のところへ持つて行くと一番いいというので、小売のところへ打つて行くということを実は考えたのはそういう点からであります。併しその後いろいろ考えまして徴税上の点等からもいろいろ考えてみなければなりませず、それで今の奢侈という限界をはつきりいたしまして、而も奢侈は御承知の通り着尺であれば御値で七千五百円でありますから普通の人には一万円以上のものになる、洋服でいえば二万六千円以上のものになる、或いは毛布なら一万円以上のものになるという点を考えてみて、この程度一つ今日の国民生活の上から奢侈的なものとして課税を忍んで頂くべきである、かように考えたわけであります。そうしてその段階がどこがいいかと申しますと、これは実は小売業者は約十六万人くらいになるのであります。十六万人の人を課税対象にするというのは、今申上げた通りそう高級品は扱いませんが、現実の問題に入りますと一応対象として考えてみなければならん、そういう問題がある。それから又製造業者ですと四万七千人ばかりのものを一つ対象として考えてみなければならん。それから卸売業者ですと約二万人ということになる。三万人のうちそういうものを扱つている人はどのくらいあるかというと約一万人、こういうことになつたのであります。まあ課税対象としてもそれが丁度いいのではないかという面、いろいろ考えました結果、結局卸売業者の段階で課税をする。奢侈品の抑制という意味でいえば一番小売業者に近いところ、こういうような点からやつた次第であります。  なお銀行等についてバンク・オブ・アメリカなどの例をお引きになつてお話がございましたが、これは誠に私ども御尤もに存じております。これは私どももバンク・オブ・アメリカは実は見て来たのでありますが、非常に零細な業者にも積極的に貸してやろうというような態度で臨んでいるのでありまして、その結果は今日世界第一の預金額を持つております。大体七十億くらいの預金を持つに至つた、非常に銀行も繁栄しておりまするが、銀行の努力もなみなみならんものがあるのでありまして、この点から言うと日本の銀行業者はまだ非常に努力の足らん点があると存じまするので、この点は私どもも今後とも監督の省といたしましてつとめてそういう点に努力してもらうように骨折りたいと、かように考えておる次第でございます。
  32. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ず第一に高級織物に対する消費税の問題につきましては、只今大蔵大臣から詳細にお答えいたしました通りの経過でございまして、特に通産省といたしましては中小企業の立場を擁護しなければならないということから、これを簡単に申しますと、できるだけ免税点を引上げてもらいたい、できるだけ納税義務者になる数を少くしてもらいたい、即ち小売課税というものが一番困るという態度でいろいろ収拾に当つたつもりでございます。根本はこういう税金をなぜ考えたかということに亘つての議論でございますが、この点は只今大蔵大臣から申上げましたように全生産額の七%程度のものであつて、且つこれがいわゆる常識的に高級な奢侈品であるということであるならば、今回の一兆円予算の基本的な考え方とする耐乏生活というようなことともこれは通じて考えるところであろう、こういうところからこの税が創設され、且つ今私が申しましたようにそういう恰好でとるのならば、それと理窟が合うような恰好で、且つ中小企業が不当に深刻な影響を与えられることがないようにということで現在の案になつたような経過でございます。  それから次に中小企業全体に対する御質疑でございますが、これはひとり金融の問題だけでは私はないと考えておるのでありまして、金融の方面におきましても十分の改善と努力を続けて行かなければなりませんが、同時に中小企業者全体としての共同連帯で、こういうふうな政策の転換のときにできるだけ与えられる影響を最小限度にとどめるということも勿論必要なことと思うのでありまして、協同組合の拡充強化というようなことも進めて行かなければなりませんし、又政府といたしましてもこういう政策の転換の際に、例えば企業診断というようなことが政府としてお手伝いし得るところの一つの有効な手段ではなかろうかと存じておるのであります。すでに工業界、商業界等について数万件の企業診断を実施いたしまして、特に診断員の素質の向上というようなことにも留意いたしまして、地方公共団体の協力も得てそうして企業診断なり相談に応じて参りますと同町に、これが必要な金融の面の途もつくように政府があつせんをするというようなことにも一段と努力をいたして参らなければならないと思つております。  それから税制の面におきましても、個人の営業所得等についての国税の基礎控除を高くすることも勿論でありますが、地方の事業税についても若干の減税案を作つたような次第でありまして、これらの点が総合的に効果を挙げるようにして参りたいと存じます。  それから大企業と中小企業の関係におきましては昨年末以来の政府側の対策といたしましては、どうも大企業から中小企業への支払が非常に遅れている。こういう現状でありますので、公正取引委員会のほうにも依頼をいたしまして、独禁法のたしか第十九条であつたと思いますがこれを援用いたしまして、公取委員会として活動してもらい、さような事態を起さないようにあらゆる改善の措置等について適切な措置をとるようにいたしておりまして、或る程度この面なども効果を現わしておるように思うのであります。大体以上申上げましたようなあらゆる考え方を総合して、中小企業に対しましてはできるだけの援護措置を講じて参りたいと考えております。
  33. 青木一男

    委員長青木一男君) 労働大臣が出席しました。
  34. 吉田萬次

    吉田萬次君 只今の御説明を承わりましたが、この繊維税に対するしわ寄せというものは、不自然なところに持つて行かれたということを私はどうしても考えなければならんと思うのでありまして、これにつきましては私は与党議員でありながらこの税だけは承服ができ得ないのであります。これはまだ議論をしようとすれば、私は相当議論する余地があり私は聞いて頂きたいことがたくさんありますけれども、時間の関係上後日に譲りまして労働大臣にお尋ねしたいと思います。  労働対策についてであります。その第一は労働基準法に対する私は疑問を持つておる点であります。外国におきますところの労働先進国といいますか、かような国々の就業時間については労使が協定してきめておるのでありまして、日本の労働基準法のように拘束八時間、それより少い分は結構であるというような法律を出しておるところは世界中いずれの国にもないと思うのであります。拘束八時間といいまするが、現状では事務系統は休憩時間まで入れまして七、〇八時間であり、工場労働者系統はやはり休憩時間まで入れて七、四一時間という現在数字が出ているのであります。ドイツは今日祖国再建のために一時間ぐらい余計働いているというように聞いております。今日我が国輸出におきましても、資金の面から考えましても、資源の方面から考究いたしましても、又技術がよしんば同等であると考えましても、外国と比肩して競争することは私はむずかしいと思うのであります。この労働時間を以てしてはどうしても日本輸出というものは私は将来決して明るいということを考えることはできないと思うのでありますが、これに対して労働大臣はどうお考えになつているか。又小企業におけるところの時間外労働に関する賃金があるが、これらに対する対策、監督は十分にできているかどうかということを承わりたいと思います。
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申上げます。労働基準法のいわゆる拘束八時間に対しての御質疑でございますが、労働時間を一日八時間にするということは、相当長期に亘りまして国際的な慣例となつておりますので、これにつきまして頭からどうするという考え方はむずかしいのではないかと思つておりまするが、ただ現状におきまして見まするに、八時間労働とはいいながら実質において八時間働いていないという点が各所に見受けられるかし思うのであります。こういう点については労使協力いたしまして十分その生産に関する管理方式を改善され、その八時間というものを有効に使つて頂くように私どもとしては願いたい、又そういう指導もいたしたい、こう考えているのでございます。ただ現在の労働基準法におきましても鉄道とか運輸業等におきまして例外といたしまして十時間乃至九時間の規定もございまするわけでございます。労働基準法全体について通観いたしてみますると、基準法もさることながら附則の政令にゆだねております分に非常にたくさんのぶあつい基準法施行規則、或いは安全衛生規則、或いは寄宿舎規程、女子年少者労働基準規則というようなものがございまして、これが如何にも難解であり非常に又厖大である。こういう難解な法令を役所が持つてつて、これを中小企業一々について難解であるために起るところのいろいろな手続的な欠陥を一々役所が摘発するというようなことになつて参りますと、これは官僚独善の弊を生むことになると思いますので、これは一つ日本の現状から見て、当時作られましたのは占領下の特殊な時代に作られたのでありますから、現状にふさわしいように変えるように考えているのでございます。ただこれは基準法の規則がございまするので、中央労働基準審議会の議を経ることになつております。只今その案を以ちましてお諮りをいたしている次第でございます。これを通過させて頂きますれば、現在種々問題になつておりまする中小企業においての非常な困難というものはよほど緩和されるのじやないかと、こう考えております。  なお只今お話のように、基準法の特殊な点は、まさにこの製造工業も商店も全部おしなべて、労働基準法というものに一括している点にあろうかと思うのであります。イギリスにおいても御承知のように工場法、商店法は分けております。アメリカにおいても公正労働基準法ということでただ州法に細かい点は委ねられております。これは金く日本独特の基準法の形だと思うのでございまして、これらにつきましては将来において十分御意見も承わりつつやつて参りたいとかように考えております。
  36. 吉田萬次

    吉田萬次君 第三には労働賃金の問題であります。緊縮財政を徹底するためにはどうしても毎年年中行事のように行われているところのベースアツプに対する対策を講ぜなければならないと思うのでありますが、労働省で只今大臣がおつしやつたように検討中といわれる標準資金の調査というものはどうなつてどの程度になつておるか、このたび重なるところの賃金ベースアツプというものが物価の国際的の割高を誘致する原因となり、輸出不振に対して拍車をかけておるということは前以て申上げた通りであります。どうしてもこれに対する方針を根本的に変えて行かなければならないように考えまするが、労働大臣はどうお考えになつておりますか。    〔委員長退席、理事小野義夫君着席〕
  37. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げます。べースアツプという名前の下に行われまするこの年中行事的な賃金分配攻勢というものが終戦以来あとを絶ちません。殊に終戦後のこの組合側の要求というものは、とにかく憲法にある文化的にして健全な生活を営む賃金をよこせという主張、或いはこの経営者側の言うそれは払えない、支払能力がないという主張、その主張がお互いに交されつつ組合側は自分の要求と似ても似つかぬ少い金額で妥結する。使用者側も払えないと言つておきながら相当多くのものを出すことにして妥結するという非常に目の子的な、いわゆる力関係による分配ということが慣行のようになつて毎年行われているのは、どうも非常に考えるべき点ではないかと思つているのであります。日本経済全体について見ますと吉田さんもよく御承知のように、まあ国民所得からみる賃金の比重というものは相当高額に達している。約半数に達しておる。これ以上の賃金の増額というものは生産の拡大或いは国民経済規模の拡大ということなしには行われないのじやないか。こう思うのでございまして、そこで労働関係においても分配論だけを言つてもいけない。やはり生産増進というか生産を上げるという方向に労働運動を持つて行かなければならないと考えているのでありますが、そうした考え方は労使ともに少しづつめばえが見られるように思つております。その一つの目安といいますか何かのよりどころにしまするために、現在私どもといたしまして基準賃金ということを考えておりますが、これは大体共通職種で二十職種、特殊職種で三百五十三種のものが考えられる。適用工場が十七万工場、労働者数にしまして二百九十万人というものを考えております。従来毎勤といつておりますが、毎月勤労統計というものがございまして、職種別、規模別、性別というもので労働賃金の実態を出しているのでございますが、これにもう少し質的な変化というものの実態を究明する必要がありやせんかというので、地方別に或いは学歴別、経験年数別、そういうもので賃金の実態を出してみたらどうか。この職種についてこれくらいの経験を持つた人は大体幾らぐらいかと、こういうことを全部労働省といたしまして統計的にはじいてみて、これを天下に公表したいと考えております。そういうような集積が今申しましたように国民所得の半分になつているといたしますると、支払能力が健全な経営べースの上であるという会社ならばいいのですが、ベースを上げるために金を借りて来て上げるのだということになりますと非常に不健全になりますので、労使双方の良識でそうした標準賃金というものを中心にまとまつてつて、何かもう少し合理的な賃金の解決の指標が出て来るのじやないかというように期待いたしているのであります。これを以ちまして賃金統制ということには参らんと思うのですが、そうした合理的な賃金闘争の解決をしますにも、現状をあからさまにできるだけ具体的に国民の皆さんに申上げるということが一つ方法かと考えている次第でございます。
  38. 吉田萬次

    吉田萬次君 もう一つ承わつて私の質問は終ります。  第三はテープ・レーバーの問題についてであります。大企業に比べまして中小企業の資金水準というものは大企業の約五〇%に過ぎないように見受けます。標準賃金の調査は、中小企業のテープ・レーバーに対しまして、何らかの解決のめどを持たせているかどうかという点をお伺いしたいと思います。
  39. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 吉田さんよく御承知のことであるかとも存じますが、或いは蛇足になるかとも思うのでありますが、私どものほうで調べました数字を簡単に申上げておきたいと思います。これは現在いわゆるこの労働に従事する労働力調査による資料でございますが、二十八年度におきまして全産業の労働者というものは三千九百五十八万人というふうに考えております。このうち農林業は千七百四十二万人、非農林業は二千二百十五万人、このうち自家営業者或いは家族従業者というものがございますので、非農林業の二千二百万人のうち自家営業者が四百六十万、家族従業者が三百三十万、雇用者というものが千四百十四万、こういうことになつております。その千四百十四万人の雇用者のうちの内訳が今お話のような構成になつているのでございまして、大企業いわゆる三千人以上の事業所というものが四一%、他はそれ以下の小規模な事業に従事しているわけでございます。そこでこの事業規模によりましてどうしても支払能力が違うという点に問題があるかと思います。で、私はその標準賃金というものが出ることによりまして、やはり大企業というものは、支払能力が本当にあるかどうかというと、これは相当国家資金が大企業を援助しているのでございます。鉄道、造船或いは電気にしましてもやはり開発銀行或いは輸出入銀行というようなそういう筋を通じて、国家の財政投資がそこへ行くのです。財政投資が行くのであるが弱い払えない中小企業は何ら保証がないから支払能力がない。そうしますと、私はそこに多くの考えるべき問題点が出て来るのではないかと考えているのであります。そういう点を私どもとして統計的に明らかにしてこれを広く世論の力によつて御検討願いたい、かように考えております。中小企業それ自身に支払能力を持たせるという点につきましては、先ほど来通産大臣或いは大蔵大臣が言われましたように、いわゆる縦横の系列でこの独占的な形じやなくその間に有機的に大企業の支払を促進するとか、或いはその支払についての価額を維持するとか、或いは資材購入の場合の前貸金を、中小企業は得るとか、そうしたような全体のコンビネーシヨンをうまくやつて行くというふうな面を十分通産政策の面においておとり願うことにいたし、私どもはその間の支払能力の増加と待つてできるだけこの格差を少なくするように持つて行きたい、かように思つております。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと関連して労働大臣に伺いたいのですが、しばしば労働大臣は、国民所得において労働賃金の占める額が半分ぐらいになつて来ている、そういう論拠を以てこれまでの分配闘争について余りに労働者の要求が過大になりつつあると、五〇%以上ということは大体多過ぎるんだと、従つて賃金ストップではないがベース・アツプを抑えるような措置の理論的根拠にされようとして作目もそういうところは説明され、今日も又説明されておる。併しただ私はそういう説明だけでは非常に誤解を受けると思うんです。で私はお伺いしたいのは二点です。一つは、過処分所得としてはどうなつておるか。いわゆる税金を引かれる点、単なる分配所得だけでは正確な比較ではないと思うんです。過処分所得についてはどういう比率になつているか。もう一つは、これは今日などでは細かい統計がけると思うんですが、税金を納めたのちに返つて来る分、イギリスあたりでは社会保障費が非常に高いのです。社会保障として返つて来る。或いは前に食糧、補助なんというものがありました。そういう返つて来る分ですね、税金として納めたのが返つて来る分、こういうものとの総合において考えなければ、単なる分配国民所得の比率にだけおいてそれを労働者の賃金要求を押える理論的根拠にかるには私は薄弱ではないかと思うんです。もう少しそういう正確なる数字をお示し願いたいのと、それから日本ではまだそういう返つて来る分ですね、社会保障費として返つて来る分の統計調査がないんじやないかと思うんです。若しなかつたらどういうものを今後そういう分配国民所得、或いは過処分所得、或いは納めた税がどういうふうに返つて来るかという御調査も今後おやりになる意思があるかどうか、或いは若しなかつたら是非そういうふうに願いたいと思います。
  41. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げますが、税金問題につきまして税引の所得で考えるべきだという点につきましては御注意のようになお今後研究してみたいと思いますが、ただいえますことは、これはやはり外国との相対的な関係でありまするが、イギリスなどでは大体九一%乃至二形がいわゆる勤労所得者なんですね、日本では三六%、アメリカでも八一%秘匿が勤労所得者、日本とは大分開いております。その割合からみましてもやはり日本の勤労者、いわゆる雇用者というものの占める国民総体の中の比重というものは小さい割には非常に多い。これがやはり膨脹して行くといわゆる消費インフレになる。又国民経済の規模というものが国によつて歴史的の一つの傾向を持つておるわけです。日本の場合戦前三九であつたものが四九になる、こういうことになりますと他のどうしてもいわゆる法人所得であるとか。個人業所得であるとかあるいは賃貸業所得というものにしわが寄るのです。それが全体の国民経済というものの歴史的の構成をこわすことになる。やはりこういう点はおつしやる意味はわかりますけれども、大きな問題ではないかと私は考えておるのであります。  なおこの社会保障費によつて還元される分はどのくらいであるか、これも実は私どものほうとしてはその社会保障自身を進める考えでおりますので、現在までのところはどうだという正確な統計を持つておりませんから、それにつきましてはなお今後調査してみるようにいたしたいと思います。社会保障全体についていろいろいわれますけれども、私は日本の社会保障というものは、いわゆる老齢者に対する社会保障はあまりよくないかと思いますが、他の部分については相当つておるというように解釈しておるのであります。例えば労災等は全部使用者が負担して勤労者、労働者の災害保障をやつておるわけです。ところがこれは日本独特の制度で、他の社会保障の先進国といわれるイギリス等にもこういう制度はないのでありまして、まあ一長一短でありますがそう日本の社会保障が国力に比して劣つてはおらないと思います。国力相応といいますかそれに近い線ではないかと思つております。併し御意見のように社会保障というものはできるだけ私は進めるべきだと思いますし、この比率についてももう少し研究したいと思います。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ベース・アツプを抑える理論的根拠としてそういうものを出される場合に一般の知らない人から誤解を受けますから、もう少し権威のある理論的なしつかりしたものを出して頂きたい。これは理論的にも相当問題がある点であります。分配国民所得を一定として、その中で労働者のとる分け前が多くなれば他の分は犠牲になるじやないか、こういう小坂さんなんかおつしやつた理論は、又我々の先生であつた小泉信三氏なども一生懸命そういう理論をやつているのであります。併しこれはいろいろ議論のある点であります。やはりこういう点については国会でもそういう理論的な問答をしてほしいのですが、もう少し我々の検討に値いするような資料一つお出し頂きたい。これは希望ですが。
  43. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私昨日労働大臣にお聞きしようと思つたのですが時間がなかつたので……。今おつしやつた標準賃金式のものを作つて労使双方の争いの場を狭めるということは確かに私は一つの行き方だと思うのです。非常に非合理的な非常に開きの多い、国民経済から遊離したやり方で労使双方が対立した意見を闘わせて、そうして最終的に合理性を失つた関係で行くという傾向の強いときに確かにそれは一つ方法だと思うのですが、ところが率直に申せばその前にもう一つ問題がある。幾らあなたがこういうふうだとおつしやつても、今だつて或る程度の合理性のある統計はあるのです。要するに労働組合が労働条件を目的にしてやる傾向ができなければいけない。ところが今労働組合自身が政治的な意図の下にこの団体交渉、労働条件についてもやる。場合によれば労働条件の名の下に政治闘争をされている。率直に言えばそこに一番問題がある。労働組合は労使双方の経済条件についてお互いの向上を図つて行くというところにあるのですが、その問題になつて参ると、もう一つは自由党内閣の性格そのものが労働者の信頼を得ているかどうかという問題になつて来る。幸いに、余り私はほめたくありませんが、自由党のうちでは何といつても小坂さんは私は割合に進歩的な、まあ今まででも木村君がああいう質問をしましたが、ともかくああいうことが言える労働大臣は今までなかつたと思うのです。(笑声)そういう小坂さんがもつと労働者の中に入つて労使双方の中のそういうふうな政治的な問題を除去する、もつと正常な状態に労使双方を乗せて行く。私はまあいろいろな労働問題を研究してみると、労働者が単純に吉田内閣は反動だ、私は或る程度反勅だとは思いますが、反動だということだけで労働者が闘つても労働者の幸福は決して得られない。これは労働史が証明している。労働者みずからがみずからの将来の立場を悪くするということはもう歴史が証明しているにもかかわらず、労働者の味方だと称してそうでない、あおる傾向があつて、それらに対してはあなたはもつと身を挺してはつきりなさらなければこの自立経済は成り立たないというふうに考えるのですが、それに対してどういう御決心をこの経済危機に臨んでお持ちになつているか、それが一番大切だと私は思います。その点について御所見がありましたらお伺いしたい。
  44. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申上げますが、労働組合というものが労働者の地位の向上或いはその経済条件の引上げということを唯一の最大の任務と考えて努力してくれる。これは非常に望ましいのでありますが、最近の傾向はともすればこの組合法にありまする主として経済条件というのだから政治的なこともいいんじやないかというようなことで、むしろ政治的なことに没頭しているような傾向のある組合もあることは遺憾だと思うのでありまして、昨年の九月でございますが、ILOの会議が東京でございました。アジアの諸国から参りました組合の幹部もちよつと懇談している際に、実に驚いた、組合であるか、政治団体であるかわからんような傾向をもつているじやないか。あなたはもう少ししつかりした正規な道に建直してもらいたいという要望もあつたわけでございます。その点私も全く堀木さんと意見を同じうするものでございます。今の組合というものの比重というものがここまで来ているときに、組合の傾向を健全化しなければ、日本経済というものは、到底成立たないという気持を持つておるのでございます。自由党の政策云々のお話がございましたがそういうことは社会党内剛のときでも、実は社会党の労働大臣は非常にひどくやられて、なんだお前は内閣をとつたら前に言つてつたことと話が違うじやないかということで、思い、半ばに過ぎるというふうに思います。やはり反省はお互にしなければならんと思つております。やはり政治的に偏向をいたしますれば、例えば日産等でみられるように、必ず第二組合ができて分裂する。これは組合自身のためにも堀木さんの御意見の通り政治的なものは避けるべきであると思います。又列国もそうのようであります。又労働問題協議会というものを作りまして、労使双方以外に第三者たる公正な良識あるかたがたの御参加を絶えず願いまして研究しているのでございますが、最近少し結論らしきものに歩み寄つて参りましたのは、結局物価引下ということであるならば、これは経営者側においても労働者側においても望むところではないか、共通の場というものは全然ないのじやなくて、それじやどうしたら一体お互いに協力して物価を引下げて行けるだろうか、そういう話合をしようじやないかという点に進んで来たかと思うのであります。私自身至らん点は反省いたしておりまするが、どうかこの上とも御鞭撻願いたい。そういう点については努力いたす覚悟でおります。
  45. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 余り関連が長くなると申しわけありませんが、今お話なつたうちに、成るほど私実は中央労働委員をしているときに、社会党内閣で例の千八百円ベースで社会党の内閣自身和田君なんかも相当あのときにいためられたということは私は調停委員として知つている。あの時分にはエンゲル係数が非常に悪かつた。つまりもう生活給だけでどうするかという問題の時代です。国民所得における分配はともかくとして、今エンゲル係数がとにかく五〇%を割つたんです。そういうときに私は社会党内閣つて政府を持つと、政府に労働者が刃向つて来るものだというふうな既成観念をお持ちにならないで、もつとそういう点について御努力願いたい。政治目的がなくなると団体交渉が正常に伸びます。ストライキをやることを初めから予定してやるような団体交渉というものは労働組合法上出て来るはずがない。ところが今はそがれ行われている。初めからストライキするのだと、そういうふうなやりかた、慣行を正常にお乗せになるほうがいい。この際それをお乗せになる努力が一番大切であると思います。そういうふうに思いますので、万々御承知と思いますが社会党内閣を引用されましたからもう一言いたしておきます。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど要求しました資料につきましては、外国あたりでもやつているようですから、そういうものをもう少し統計として出して頂きたいと思います。それから統計に関する予算ももう少しふやして頂きたいと思います。
  47. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 統計資料の件につきましては、できるだけ大蔵大臣に頼みまして予算をふやしてもらうように交渉いたします。機構も大分充実して来ると思いますので……。只今の点は早速調べて措置いたします。  なお堀木さんの御激励といいますか御質問の点につきましては、私も決して現在の労働組合に悲観するもでのは全然ない。そういうような終戦後の非常に無責任な一般の風潮が組合にもございまして、何か自分だけにいいことを非常に進めるというような気持、それからスト権というもので半年も前に本部に集結して必ずストライキをやるというようなことについての反省はだんだん出て来ているように思いますが、私どもの至らざる点は特に注意してやつて参りたいと思います。
  48. 小野義夫

    ○理事(小野義夫君) これにて午後一時半まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩    —————・—————    午後一時五十八分開会
  49. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。
  50. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は先ず大蔵大臣にお尋ねしたいと思いますが、それは財政法の改正の問題であります。財政法の第十一条は会計年度を規定しておりますが、御承知の通り日本の国土というものは帯形となつておるのであります。従つて寒暖の差が非常に甚だしいのでありまして、この一カ年の温度の違いから来る事業遂行即ち気候の変動によつて非常な影響があるのでございます。例えば東北六県或いは北海道のごとき道路の整備修理、或いは土木事業を施行、或いは橋梁の架設というようなものを実際に見て参りますと、どうしてもこの日本の会計年度を規定してある財政法の第十一条を改正する必要があると私は思う。なぜならば、毎年この会計年度は四月の一日に始まり翌年三月末日に至つておるのでありますが、大体予算の確定というものが三月の末日になつておりまするから、補助金その他の関係において、寒冷地帯の道県というようなものは、その施設が毎年約ニカ月宛遅れておる。御承知の通り予算が通つてから寒冷地の道県は一応すべての設計目論見を立てるのであるからその施行は毎年約二カ月から三カ月遅れておるのであります。従つて、それだけ毎年々々国家は損失をこうむつておるわけであります。それで明治以来今日に至るまでこういう大事な問題がなぜ当局から放擲せられておつたかということが、全く怪説に堪えないのでありますが、政府はこの場合にただお座なりに、従来財政法がこういうふうにできており、並びに寒冷地というものはこういうふうに取扱つて来たのだからというような簡単なことでお茶を濁さず何とか御考えを願わなくては非常に不都合だと存ずるのであります。従つて、時勢の進展に伴い、又我が国の現状に鑑みて、この問題はどうしても解決して頂きたいのであります。即ち財政法第十一条の改正というものは絶対に必要じやないかと考えるのでありますが、この点について大蔵大臣はどうお考えになつておりますか。
  51. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 実は財政法の今の会計年度の問題でありますが、この点につきましては、過去においても一、二度変つた例がありますが、今の四月というのは一番長く、ずつと明治十九年以来ですかこれを行なつてつておるのであります。併し、お話のような点もありますけれども、一方から言いますと、私どもいろいろ考えて、予算の編成とか国会の審議期間とのいろいろ調和の問題がありまするし、又今お話によると、北海道その他東北などの効果的な予算の執行について困難な点があるではないかというお話でありますが、全体を見ますと四月にやつたほうが効果的な予算の執行の点もいいと、それから年度の開始時期は、税収等の関係から見まして、国庫のいわば手許の富裕時に当つておる、こういうような事柄とか、或いは又年末年始における国庫支出と一般金融との調和とか、その他国民生活及び社会生活との調和とか、そういうようないろいろな点から考えて議論をして、現在の四月—三月というのがいいのじやないか。或いはアメリカのように七月—六月ということも考えられるが、又暦年で行つたらどうかということも考えられるのでありますが、どうも今まで研究したところによると、どつちも一長一短がありまして、特に今の四月を変えなければならんと、長い間の仕来りを変えてそこまでしなければならんというところまでまだ実は結論に行つておりませんが、これは私は実は昨年も中山さんから伺つて、言われるうちにも御尤もな点もたくさんあるので、この点は研究を進めて見たのですが、まだ今のところ結論に行つておりません。ただ予算の執行について、多少東北地方については時期的な問題を考慮していろいろやつてはおります。その点で現実の問題はそんなに困られることはないと思いますが、まあもう少しこれはいろいろな角度から考えさして頂きたいと思います。なお主計局長もおるので、予算編成上どういう立場におるかということも主計局長はよくわかると思いますから、或いは主計局長としての心持を申上げることが中山さんによく徹底すると思いますが、如何でしようか。
  52. 中山福藏

    ○中山福藏君 主計局長にお伺いする前に、その点について大蔵大臣の御意見を伺つておきたいのですが、財政法第十一条を速急に改正するということは、甚だ至難な問題だと実は思つておるのですが、何といたしましても本問題は我が国の実際面から十分検討する必要があるのではないか。故に政府はこの解決策として審議会か何かを、例えば財政法の調査委員会というようなものをこしらえて今から御準備になつておくほうがいいのではないかと思いますが、そういう点についてどういうふうにお考えになりますか。
  53. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) それは仰せの点大分御尤もな点がありまして、私ども答案として書くときには、こういう点を考えるとかいろいろ書いておりますが、併し現実の問題として多少寒冷地等に不便な点のあることは覆いがたい事実であります。従いまして、ただ六十数年間行なつて来たものをここで改むべきかどうかということについては、よほどの検討をしなければならんと思いますが、そういう研究をいたす会でも作つてやるかどうかということは、只今ちよつと考えておりませんが、もう少し大蔵省のほうでも地方財務局などの意向もよく参酌いたしまして考えたいと思つております。
  54. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 会計年度の一般的な問題につきましては、只今大臣からお答えがございました通りでございまして、目下の制度を軽々に変更すべきでないと存ずるのでございますが、御指摘のございましたような寒冷地における公共事業等の面から、現行の制度につきまして多少考慮すべき問題がないではないと存じます。従いまして、例えば寒冷地につきましては、繰越明許の制度を活用いたしまして、繰越明許のあるものにつきましては翌年度に亘る契約をすることができるようにするとか、或いは予算外に翌年度に亙る契約をすることができるようにするとか、そういつたような方途を研究して見たいというようなことで、目下検討いたしておるところでございます。そういうような制度によりまして寒冷地における事業執行の困難を或る程度緩和することができるのではないかと存じまして、目下鋭意研究いたしておる次第でございます。
  55. 中山福藏

    ○中山福藏君 六十年間慣行しておつたからというようなことで片付けられては、非常に困るわけであります。どうかそういう点についても大蔵大臣は十分お考えを願いたいと思つております心  そこで第二点でありますが、今度この二十九年度の一般予算をいろいろと検討して見ますと、財政法第四十二条の特例に関する法律というのが今度大蔵大臣から出されているわけなんですね。これは要するに、連合国の財産補償費の残額の七十億円というものと、それから安全保障諸費の残額の九十億円というものを二十九年度に使用し得るような特例を設けるということになつておるわけであります。そうして、二十七年度のものを二十八年度に繰越し、又二十八年度からこれを二十九年度に繰越すということになりますと、予算そのものの性格と会計年度独立の原則に対する一つの例外的な処置をとる先例をここに作り上げたということになる。かかる措置は予算編成上の憲法と言われる財政法を無視する結果に陥つて来るのではないかと思うのでありますが、こういう悪例は、これは将来絶対とまでは私は断言しかねるわけでありますけれども、できるだけ、絶対という程度までこの悪例は残すべきでないと思うのですが、こういうことをお続けになる御所存かどうか。このたびの大蔵省の態度は財政法上の原則に反する変則を打ち立てたことになるのと思うのですが、どんなものでしようか。
  56. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お挙げになりました連合国財産補償費等の二つの項目は、皆いわば外国との関係にありまして、これがいろいろ……、最初のは繰越明許になつておりますから、二十七年度のものを二十八年度に使うことは、これは当然よいのでありまするけれども、やはり話のまだ途上にあつて、而も使われなければならんようなものがありまするので、この二つだけ事柄が事柄であるから一つ特例としてお願いしようというので、特に御審議をお願いして、この二つだけを使わして頂こうと、こういうことに実はしておる次第でございます。明細が、どういうものがまだ払つてないか、どういうものが交渉中かという数字的なものがございまするので、或いはちよつとその辺主計局長から御説明申上げとうございます。
  57. 中山福藏

    ○中山福藏君 これは大体次年度繰越ということは普通行われているようでありますが、その次の次の年まで繰越すということは私はむちやくちやだと考えておるのです。こういうことになりますと財政法はあつてもなくてもいいというようなことになつて、将来財政史上に大蔵大臣小笠原三九郎先生の汚点を残すものだと考えるのです。こういうことは。今度限りで将来決してやらないということを明確に議会で言明して頂くほうがいいんじやないかと思料いたすのですが、どんなものでございましようか。
  58. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これは今回限りのものにしたい、このことは明言いたして結構でございます。実はああいつたもので、もう大体今年あたりで済むかと思いますけれども、特殊な関係のものでございますのでああいうふうにいたしましたが、これは今後の例にいたさないということははつきりとお約束申上げます。
  59. 中山福藏

    ○中山福藏君 第三にお尋ね申上げたい事柄は、先般会計検査院の報告についてちよつと一言しておいたんでありますが、これはいろいろと調べて見ますと約三千件になんなんとするこの二十六年度、二十七年度の不当支出、或いは行方不明の金、こういうものについて一件しか会計検査院から検察庁に通告していない。たつた一件です。そうしてそれが起訴猶予になつている。それから前述の二年間の約百三十二億の行方不明の金の問題換言すれば両年で殆んど三千件も不当支出をやつておる。曰く行方不明、曰く横領、背任というような内容のものが相当数伏在すると予想せられるこれらのもののうち、たつた一件しか通告がなくて、それが不起訴になつている。これは私としてはどう考えても受取れない。大蔵大臣が間接には予算執行を監督される責任がある。直接の監督関係は各省大臣、或いは長官にあるでございましようけれども、結局予算の執行に対して国民が大蔵省を信頼することができたいようになるのじやないか。而も会計検査院の報告の中に架空経理というのがある。この架空経理というのが昭和三十六年度に何件あるかと申しますと、六十二件あるのです。それから二十七年度に十八件あるのです。然らば架空経理とは何ぞやと訳して見ると文書偽造だとか、背任だとかいろんな問題を含んでおるのだというのです、但し横領の場合に限つて検察庁に通告すると、こう言うのです、会計検査院は。そういたしますと、背任とか、公文書偽造は棚上げをしておるわけです。それがその架空な経理というわけになつて来るのであります。結局そういう文誤偽造による予算を大蔵省は支出しておるが、偽造、或いは背任等は罰せないということになつておると、こう言うのである。これが昭和三十六年度と二十七年度と百三十二億以上の金が消えてどこに行つたかわからない姿です。こういうことになりますと、政府に対する国民の信頼は地を払うだろうと私は考えるのであります。申すまでもなく、この公文書偽造なぞの犯罪が民間においては大変重く罰せられておるのです。官吏にそういう背任があろうと、公文書偽造があろうと、そんなことはおかまいなしということでは、国民の承服を得ることはできないと思うのですが、こういうことについて予算執行の監督者であられる大蔵大臣のこれに対する対策ですね、或いはこれをどういうふうに処理されるか、将来又予算を編成されるについて如何なる注意を払われるか、予算編成に疑惑を狭まないように十分の注意を要すると思う。架空経理なんということを私は初めて会計検査院から聞かされて驚いておるわけですが、こういう点について御所信を承わつておきたいと思うのです。
  60. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 法律的のことはよくわかりませんが、まあ私ども考えて見て罰せられておるものも……、つまり会計検査院に移るのは翌年でありますがその途中で罰せられておるものはこれは相当ございます。ございますが、恐らく今仰せになつた分は大体その私利を図つていない、自分の利益を図つていないという点から或いは起訴されていないのじやないかと思いますが、併しいずれにしてもかようなことは全くこれは面白くないことで、同時に私どもの監督の足らざるところであると私は存じます。実はこの間も、これはちよつと中山さん実情を申しますと、昭和二十八年の災害を一つ調べて見たんです。十二月の一日から大蔵省と行政管理庁と会計検査院と調べて見ました。そうしますると、災害の対象を大蔵省で調べましたのが、九千四百六十件、それで金額で百二十三億のものを調べましたところが、実にその結果は件数で九千四百六十件のうち、三千三百八十四件、三割五分八厘というものはいわゆる不正不当なもので、そのうちには架空のものも、或いは重複したもの等もあつたのであります。行政管理庁で調べましたものの監察対象が三千九百三十五件調べました、これに対しましてやはり件数は三千百三十七件というものが不正不当にされておる。これは比率で申しますと王制四分二陣というものが二十八年度災害について出されておるのであります。会計検査院の調べましたのが、九千三百九十九件調べましたところが二十八年災害だけでありますが、それに対して二割一分四厘、件数ではやはり架空なり、重複な不正不当のものがあるのであります。細かいこれらについての調べはございまするけれども、実は私もこれで驚いたのですが、これを見て、それで先般も災害対策の話が出ましたときも、実はこういうふうであるから災害対策費は圧縮した、こういう点から私ども実際に調査したものがこういうふうであるから、これに基いて圧縮をした。こうした状態は、これはどうも近頃誠に私は面白くないことで、国の金をもらうのは、むしろ上手に取ることを手柄にでも思つているからこんなことが起つて来るのではないかと実は考えるのでありまして、行政監察の方面で行政管理をするのは勿論、大蔵省としてもこれは十三月の一日から各地方財務局を動員してやらしたのでございましたが、今後とも十分こういうことに注意いたしまして責任を果したいと思います。予算の厳正な執行がなければ、これは国としては血税が無駄に使われるということになりまするので、この点御指摘の通りだと存じます。十分注意することにいたします。
  61. 中山福藏

    ○中山福藏君 大蔵大臣に最後にもう一点お尋ねしておきたいと思うのです。それは本年度の一般予算は九千九百九十五億八千八百万円となつております。そこでいろいろ検討して見ますと一般歳出から落された金が約四百九十五億くらいあるのじやないか。これは木村禧八郎君がこの間指摘した五点と私が最初に申上げた百六十億の金などと共にこれは時間の関係上申上げませんが、五点挙げて木村君が質疑をいたしておる。この点に関していろいろ検討して見ると一般の歳出面からこれらのものを結局落してあるように思う。外面如何にも一兆円の予算を組んだように見えるが、ところがこれだけのものを加えますと、内密は一十八年度の予算よりも大きくなるのじやないか。実体的にそうなつて来るのではないかと思います。そこで金融の引締とか或いは財政緊縮とかいう、こういう掛声が政府から一般施政方針によつて国民の前に宣明いたされましたので、一種の神経戦を政府が行なつているわけになる。その結果一般経済界、殊に中小企業者に対してはあたかも討伐戦が始まつたようなことになつている。なぜならば、現に不換紙幣式の手形ばかりが三カ月先払というような形でぐるぐる廻つておるわけです。これが一日に二千件以上も不渡になるということは、これは本当に面白くない経済上の現象だと見ているのです。これは緊縮の薬がきき過ぎて経済界を混乱せしめているのですからいま少し実情を披瀝して緊張を緩和する必要があるんじやないかと思います。国民金融公庫だとか、中小企業金融公庫というような、いろいろなものを設けられて、相当政府も努力しておられまするけれども、こういう無鉄砲と申しますか、結果において無鉄砲に近いような声明が行われることになりますれば、徒らに経済界の波瀾というものを巻き起すことになるんじやないか。こういう点について一段と深い考慮を払つて頂いて、このただでさえも困窮のどん底にたたき込まれている日本経済界、取りわけ中小商工業者に対するもう少し御親切な態度を望んでやまないのでございますが、大蔵大臣如何でございましようか、こういう点については。
  62. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 別に私ども神経戦とか何とかそういうことを考えて毛頭やつておりません。これは昨日も木村議員の査問に対してお答えしました通り、私ども別に一兆円という枠に必ずしもこだわつておるわけじやありません。但し一兆円の線のうちに収めることが一番わかりがよくて、而も本当の緊縮予算の形を表わし得るというところからそうしておるのでありまするが、今いろいろな例をお挙げになりましたけれども、又木村君も挙げられたから私はその一、二の例をとつてつたのですが、例えば国の歳入と見たものが、これは戻す税金であれば租税収入とは見れないのであつて、これを差引きして出すというのは当然なことであつて、仮に極端な場合を言えば、租税収入が七千五百億あつたとし、五百億を戻すと租税収入は七千億となり、これは七千億と見るほうが正しいのである。従つてそういうやり方にしただけであつて、例えば今の入場税のごときも、これは九割戻してしまつて、今あるのが地方税なんですから、これを一般会計に入れるよりも、その本質たる地方税的精神を以て国に残る一割を交付税及び譲与税の特別会計に入れるほうが適当であり、一割のために全部を入れて、国に如何にもこれだけの税収入があつたと見ることはむしろ実情に反しておるのではないか。だからそれをそういうふうに特別会計に持つて行つたほうが本当じやあるまいかというような考え方等で私どもはやつたわけでありまして、別に無理に是非とも一兆円の枠に入れてこれが辻褄を合せなければならんことはない。これは中山さんも御存じだろうけれども、私は一切そういう小手細工というものは嫌いなんです。そういうことは自分の性分に合わないのです。けれどもそういうことをはつきりしてやつたほうがいいからというのでやつたのでありまして、従つてこの予算が狙つておるところは、私は一番よくはつきりする言葉で申せば、いわゆる過去の蓄積も使つてはおらん、或いは減税国債その他そういつたものを一切出していない、いわば借入金によつてもいない。それから相当従来巨額に見積られており、又実際にもあつたいわゆる自然増収というものを一切見ていない。これは自然増収が出て来て、例えば中央地方を通ずるところの税制調査会におきまして千億円もあるような自然増収の案が出ておりました当時とは事情が違いますし、こういう緊縮予算を出しますると歳入を成るべく手固く見積つて行かなければなりませんので、私どもは一切これを見積らなかつたわけであります。従つてその点でいわゆるむしろ超均衡予算じやないか、均衡どころじやない、そういう自然増収が若しありとすればそれだけ均衡以上のことをやつているじやないかと言われるのはその点からなのでありまして、私どもがやるのはとにかくこの緊縮財政を第一養子として金融の引締の強化とかその他各般の措置と相待ちまして日本物価を下げて国際競争力を持たしてそうして一日も早く国際収支の均衡をそこへ持つて参りたい、こういうところからすべてを按配しておるのでありまして、余り私は体裁とかいうようなことを考えて出した案でないことをはつきりと御了承頂きたいと存ずるのであります。
  63. 中山福藏

    ○中山福藏君 外務大臣は来られておりませんね。それじやあなた方は大臣の稽古だと思召されて答弁して下さい。  外務省にお尋ねいたします。先般新聞の報ずるところによりますと、昭和二十四年度に竹島において燐鉱採取の出願をして本年の二月二十六日にこれが広島鉱山監督局から許可されておるのであります。そうして採鉱権利者は辻富蔵ほか一名ということになつておりますが、こういう連中が燐鉱採取に現地に乗込みました際に、韓国側から集団暴行とか或いは単独暴行とかいうような、いろいろなことが行われた場合に我が方としては国際法上の復仇行為というものをやれるのじやないかと私は考えておる。戦争報復或いは復仇行為というような国際法上の言葉がありますが、復仇行為というものは対等の行為ができることに原則的になつておると思うのです。従つて相手方が拿捕とか、船員の拉致とかいうことをやりました場合には、これと対等の復仇行為というものができる。これが国際法上の原則だと私は見ておる。従つて只今李承晩大統領が威猛高になつて李承晩ラインとか何とか言つておりますけれども、これは後日の法律上の問題でありまするから、何人かの判定によつて、或いは国際司法裁判所、或いは国連においてこれを決定する時期が来るだろうと思いますけれども、とにもかくにも目前の、何と申しますか、これに対処すべき行動を日本がとらなければ、日本国民全体が切歯扼腕しておる現在の状況では国民の精神上に非常な影響を与え、国民精神を萎縮せしむるのじやないかと私は危惧を持つておりますからお尋ねするのですが、そういう点について外務省は今までの事なかれ主義、或いはできるだけ力を用いずに平穏裡に解決するという従来の方針をお変えにならずに推進して行かれる方針でしようか、どうでしようか、その点をお伺いしておきます。
  64. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 中山さん御指摘の通り、復仇、或いは報復は国際法上認められておるわけであります。その限度内において対抗する措置はとり得るわけでありますが、併し国際法上で認められておるからそういう措置をとつたほうが政治的にいいか悪いかということは、これは別個の問題であることは申上げるまでもございません。復仇は更に復仇を生んで、結局平和を更に脅かすというような虞れもございまするので、外務省といたしましてはできるだけ穏便に直接交渉によつてやろうと努力いたしておるのであります。併しそれがどうもうまく行かない。一方極東の平和に重大なる関心を持ちますアメリカのほうも、何とか斡旋して、こうした問題が反復されないように努力いたしましたけれども、現在のところ残念ながら成果を収めておりませんが併し向うの武力的な行動に対しまして、正当防衛の場合というようなものは別といたしまして、それに対して実力的な行動をするということは結局国際的な紛争に対して又武力を用いるというような関係にもなる虞れがありまするし、殊に先ほど申しました政治的な関係からいたしまして、そうした復仇措置をとるということは目下考えておらない次第でございます。
  65. 中山福藏

    ○中山福藏君 外務政務次官の御答弁でありますが、それはよほどお考えにならんというと外交上の措置としては誠に愚的な結果を招くのじやないかと思つております。なぜならば大体外交というものは国民性というものを十分研究していなければ、本当の外交はできない。敵を知り己を知るということは戦術上の言葉でありまするけれども、今日の外交というものは、これは外交官の試験に民族史とかいろいろなものを試験するかどうか知りませんが、私はその国民には国民共通の性格というものを備えておると見ておる。殊に私弁護士として三十七、八年朝鮮人の事件を取扱つておりますが、朝鮮の人には共通した一つの特徴を備えておるのです。この共通の性格というものは、普通の人にはわからないでしようが、先ほど申した通り我々みたように三十八年くらい朝鮮人から依頼された事件を取扱つておりますとやはりどういう性格でどういう闘争をやるかということはよくわかる。朝鮮の人々は闘争のためには自分の家、屋敷を売払つてでも裁判をする民族なんです。この性格というものを知らなければ、韓国を相手にしての外交交渉はなかなかむずかしいのです。家、屋敷を売払つて、最後は破産してまでも闘争を続ける民族なんです。このことから考えますと、こちらが卑屈な態度に出れば出るほどこれは日本の不利になる。だから私は現在の国際情勢と照らし合せて打開策を講ぜねば駄目だというのです。例えば日本がそれだけの行動に出た場名において、国際社会、自由世界或いはソ連圏の衛星国の連中はどういうふうな態度を日本にとつて来るかということを、大所高所から総合的に烏敵的にこれを判断して結論を出して、然るのちに韓国に対する外交上の手を打たなければこれは駄目なんです。ただ単に日本対韓国だけの外交問題の処理というような簡単なものじや私はないと思うのです。だからそれだけの日本が強硬な態度をとつても、今日の国際情勢においては断じて国際紛争というものは起るものじやないという見通しを私は付けておる。ともすれば世間では一代議士などより外務大臣がやはりえらいのだというお考えを持たれるのですが、実は有田八郎氏が外務大臣で私が衆議院に居たとき近衛さんをアメリカにやつてルーズベルトと直接平和交渉をやれと言つたところ、外務大臣有田八郎さんは私に反対して近衛さんをアメリカにやることを拒絶した。ところが一昨年元駐日大使であつたグルー氏がアメリカで日本の滞在記を刊行して、あのとき近衛さんがアメリカに来たら戦争はなかつただろうということを発表しておる。殊に近衛文磨公伝の下巻の五頁三行目を読むと、私の質問が私の名前を出して誓いてあつて、有田八郎氏がこれを拒絶したと書いてある。だから一代議士も見識においては決して外務大臣に劣るものではないという確信を持つて私は直間しておる。ですから一代議士といえども、いやしくも国民を代表してこういうお尋ねをしておる以上は、もう少し従来の行き方と違つた斬新な手を打つなら打つと、この場合若き政治家として、若き外務政務次官として御答弁をお願いしておきたいのです。
  66. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 中山さんの外交上の非常に卓越した見識をお伺いいたしまして幸いに存じます。ただおつしやいます点がどういうことですか、大いに元気を出して武力的の実力的だ行動をするということがこの問題を好転せしむるゆえんである、相手方の国民性から考えてそうしなければつけ上つて来るという考えであるといたしまするならば、私どもは直ちにこれに賛成できないのであります。対抗措置は勿論向うが実力を行使いたしますのに対しまして、経済的の措置も、政治的の措置もあるわけでございます。政治的には国際輿論に訴え、いろいろ関係国に通報して、そうした事態を十分認識させる努力をいたしております。が併し経済的の措置というものも勿論考えられないことはございません。が併し経済的の措置はお互いに傷ついて、向うが船をつかまえたからこちらも船をつかまえる、損得は一体どういうことになるかということを十二分に考慮して、今後措置に乗り出さなければならない関係もございますので、現在のところは実は非常に御不満であるでしようが、そうした手段に訴えないで解決するという方向で進まざるを得ないということが、事実中山さん大阪にいらつしやいまして日韓間の貿易関係なり、そうした面は私以上に御存じでございましようが、そうした面のことも是非御了承願いたいと存じます。
  67. 中山福藏

    ○中山福藏君 外務省の意見は、そうしたことと実は予期しつつ私は質問しておるのです。実は私はまあそういう外交処理の方針については非常に利害得失というものを天秤にかけていつも考えて、一分でも利のあるほうに駒をころばさなければいかんというのが、私の考え方でございまして、これはそれ以上の御答弁がなければ仕方ありませんが、十分そういう点に御検討をわずらわしたいと思います。できるだけ穏便に事を処すると言われましたが、日韓会談はいつお開きになりますか、期日はいつ頃御予定なさつていらつしやいますか。
  68. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 遺憾ながら今はいつ日韓会談が再開できるかということを発表することはできません。が併しこれも御指摘の通り国際情勢やいろいろの関係によつて支配されるものでありますからして、今後の朝鮮に関する会議もございますし、私どもといたしましては決して望みを捨てることなく今後も十二分に努力いたしたいと考えております。
  69. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一つ外務省にお尋ねいたします。それは憲法の第二十二条には国籍の離脱ということが明記されておるのです。南米、北米、中米その他の国に対して、先方の政府が許可さえすれば日本の移民ということはできる、或いは先方に帰化することができるようになつておりますが、ソ連圏内に対しては帰化或いは移住ができないというように大体今の国家の方針もなつておるように思う。私はソ連を調歌し、或いは共産主義に共鳴する人は、多分にソ連などに対して帰化を欲つし或いは移民を願つておる人が多いと思う。だから国籍の離脱は憲法の関係からいつてスウエーデンとか或いはノルウエーなどの中立国を介して、日本のそういうソ連に帰化したい移住したいと言われる人を移住の手続をおとりになつたらどうかと考えておるのですが、共産主義を謳歌される人は却つてそれが好きなのですから、希望者もあながちないとは考えませんから、憲法の第二十二条にちやんと国籍の離脱は自由だということが書いてあるのですが、こういう点、外務省はどうですか。
  70. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 外務省では帰化につきましてこれを抑制しようという措置をとつておるのではないので、実は移住というものは帰化の前提でございましよう。その国に何年か住まなければ帰化できないのはどこの国の法律でもあるわけでございますから、その前提になる移住、その前提になる旅行につきましては旅券法第十三条第一項の五によりまして、今の日本の国策上から考えて共産圏内に対する渡航を制限いたしておる次第でございますが併し今おつしやるような事態があつて出て行く人、而も中立国に出て行く者は制限はいたしておりません。その人の意思がどこにあろうと、そういう渡航については制限はいたしておりませんから、そういう事態が実際に生れて参りまして国籍を離脱する人があれば、これを抑える理由は何もないと思います。
  71. 中山福藏

    ○中山福藏君 外務省にお尋ねすることはたくさんありますけれども、大臣がおいでになつてから、いずれ日を改めましてお尋ねしてみたいと思います。  最後に、通産省来ておられますか、どなたか……ああ、次官来ておられますか。MSA協定受入後の防衛産業に対する基本的な方針は御決定になつたでしようか。それを先づ承わつてみたいと思います。
  72. 古池信三

    政府委員(古池信三君) お答えを申上げます。大体我が国の防衛力漸増に即応して、その整備をどうするかという根本問題でありますが、これはすでに御承知のように、原則といたしましては例の相互防衛援助協定に基きまする現物供与によつてこれを充足して行くというのでありまするが、米軍によりまする域外の調達、これが今後相当考えられるのであります。従つてこれを先ず一応の目標としまして、我が国の防衛産業は今後国民経済の段階、又我が国産業構造を如何にすべきかというような点とも勘案をいたしまして、そこに合理的な助成、育成を図つて参りたいと、かように考えております。  なお、MSAの協定調印以後の、特別に何らかの基本的な方針を立てたかということにつきましては、これは非常に重大なる問題とも考え、具体的な方針としましては関係各省とも協議をいたして、慎重に白下検討いたしておるのであります。従つて今日ここで御説明を申上げるまでの段階には至つておらんことを御了承願いたいと存じます。
  73. 中山福藏

    ○中山福藏君 これは大体新聞に発表になつておるのですよ。一週間ほど前に。ただ計数的な問題を具体化されて、一般に御発表になつていないだけなんです。その基礎方針というものは大体確定しておるように私は承わつておるのですがね、如何でございますかそれは……。
  74. 古池信三

    政府委員(古池信三君) お答えします。新聞に発表になつたものを私今記憶しておりませんけれども只今申上げましたように、まだ政府として発表するまでの段階にはなつておらんことを重ねて申上げます。
  75. 中山福藏

    ○中山福藏君 あと、十分ですが、MSA援助条約というふうなああいう世界の耳目を聳動させるような問題が起きましたときには、半年ぐらい前から大体ここに結果が来るということは私どもちやんとわかるのです。MSAというものを調印しなければ、日本というものの将来はどうなるかということについての関心を持つておる限りにおきましては、これは調印されるだろうという見通しを私どもつてつた従つて半年前から政府というものは、このMSA援助が来たらこういうふうな方針を持つて処理して行くのだという大体の輪郭は、これはお立てにならんと私は政府の怠慢だと考えるのですがね。三、四日前調印したから、これからぼつぼつ研究して、そうして世界の、時々刻々変化して参ります情勢に対応しようなんということは、これは政治家としては愚なることと考えるのですが、緒方総理が丁度おいでになりましたので、副総理からその点について……。
  76. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今来たばかりでちよつと……。
  77. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 私から返事しましよう。大体今度のMSAのうち、一千万ドルに相当する小麦の分、三十六億円につきましては、丁度特別会計を作りまして、これをまあ大体文句は工業の助成、これはMSAの協定にありまするから、工業の助成、その他我が国経済力の増強に資する、こういうことに使うということになつておるのでありますが、併しこれはMSA援助の性質から見て、やはり工業と言いましても、一応防衛産業というものに重きが置かれることは、これは私は当然だと考えられるのでありますが、然らばMSA援助で防衛産業を、どういう防衛産業をやるのかということになりますと、新聞にはいろいろ出ておりますが、実は防衛産業と言いましても、二面基本的な産業も防衛産業として重きをなすのでありまして、従いまして広い意味から長期的にものを考えますと、直接的な防衛産業のみでなく、それに関連の深い基礎的な産業も又考えなければなりませんので、そういつた点から今各省で集まりまして、実は相談をいたしておるのであります。大体わかつておるならもつと早く相談したらというお叱りがあるかわかりませんが、私どもとしましては、そういう特別会計を作るに当つて、これは法案を今日お出しいたしておりますが、どういうふうにするかということについて、大体関連産業の範囲について通産省、保安庁、その他の関係のあるところと打合せをいたしておりますので、余り遠からんうちに内容は決定することと存じております。ただ中山さん御承知のように、これで域外買付をする助けにしろということを向うで言つておりますので、域外買付も差当り一億くら、見込まれておりますので、将来はもつと多く見込まれるのでありますから、従つてその域外買付の何に、どういうものをどう買付けするかということは、つまりアメリカ側の意向もこれは調査しなければなりません。そんなことをしたしました上で、いわゆるグラントにかかる一千万ドル、三十六億円のものについての特別会計の経理の仕方についてはそういうふうに考えております。
  78. 中山福藏

    ○中山福藏君 今大臣は、今協議中だとおつしやいましたが、いつ頃までに完成する御予定でございますか、その計画は……。
  79. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 只今申上げました通り、丁度向うのほうでどういうものを域外買付に向けるかということが一つの問題でもございまするので、できるだけ早くやりますが、いつまでにできるかとおつしやいますと、ちよつとまだはつきりした御返事はいたしかねます。
  80. 中山福藏

    ○中山福藏君 ちよつとお尋ねしておきますが、古い陸海軍の工廠ですね、あれは何ですか、これか政府が御利用になるつもりでありますか、又払下げせられるつもりでありますか、或いは賃貸借の形に持つて行かれるつもりでありますか、その点お伺いしておきたいと思います。
  81. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 大体の考え方は、ああいうようなまとまつた土地を、今日の農地調整法その他がありますときには、容易に得られません。従いまして国が持つていることが必要であろうと考えまして、従来払下げ方針をとつておりましたが、今では大体、むしろ貸下げをする、そして国の必要のある場合にはすぐ原形に復して返還する、こういうやり方で貸下げをしたいと思つておりますが、但し全然その土地がかけ離れておつて、これが払下げてもよいというような特殊のものがございますれば、これについては別個に相談をしまして払下げをする。但し大きいものは閣議了解ということでいたしておりまして、余り誤解のないようにいたしております。
  82. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう時間がありませんから大蔵大臣に対する質問はこれでやめまして、最後に緒方総理にお聞きしたいのですが、何でございますかね、自衛隊が設置されますと、陸海空軍自衛隊の総合基地というものをお設けになる御予定でございますか、分散基地をお設けになるつもりでございますか、陸海空の総合的な基地というものをどこかに置かれるつもりでございましようか。その点をお伺いしておきたいと思います。
  83. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。総合的な配置ということも当然に考えなければならないのでありますが、今のところその場所、配置ということにつきまして結論まで参つておりません。
  84. 中山福藏

    ○中山福藏君 最後にもう一つお尋ねしておきます。だんだん日米行政協定とかいろんな問題が進んで参りまして、或いは今度のMSA協定の結果、四囲の状況が変転して参りました場合に、日本に水爆とか原爆の基地を許容される御意思がございましようか、どうでしようか。そういうこともちよつと承わつておきたいと思います。
  85. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今のところそういう考えを持つておりません。
  86. 藤原道子

    ○藤原道子君 質問に入る前に、ちよつと緊急質問を許して頂きたいと思います。  私緒方総理にお伺いいたしたいのでございますが、今期の読売新聞によりますと、アメリカの原爆だか何だかの原子力の試験をいたしました結果、ビキニ環礁におけるアメリカの試験の結果、八十マイルも隔たつたところに操業していた日本の漁船に対して、非常な被害を与えた。雨のようなものが降つて来たと思つていたら、それが灰であつた。そうしてだんだん体に変調が来るので、驚いて東大において診察してもらつた結果は、非常に恐るべき原子病におかされておるというような記事が載つておるのでございますが、こうした場合に危険なものを試験するわけでございますから、当然それだけの措置がなされておるものと私は考えるのでございます。こういう場合に二十三名からなる日本の漁民がこの被害を受けておる。こういう場合に政府としては、これはアメリカに対して何らかの措置を要求されるべきではないかと私は考えるのでございますが、この問題について調査をされておられると思いますが、その調査された結果と、それから今後のこれに対する政府のお考えについて一つお伺いしたいと思います。これは実に大きな問題で、今後各所で試験されるたびにこういうことがあつたら実に大変だと思いますのでお伺いいたします。
  87. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) まだ調査が私のところまで参つておりませんが、その状況につきましては十分に調査いたしまして、こつちのとるべき態度、方法につきましては決定いたしたいと思います。その報告は外務省に入つておりますので、外務省の政務次官からお答えいたします。
  88. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 外務省のほうにもまだ詳細なる報告は参つておりません。併し新聞にも出ましたし、早速アメリカの在京大使館に対してもその点を照会いたしましたが、ここの大使館では何らの情報を得ていないようであります。まだ占領下でございましたけれども昭和二十七年の九月十八日にエニウエトクという島がビキニの近くにございますが、このエニウエトク附近には、危険区域に指定してあるから、日本の漁船が入らないようにという通告がございまして、この区域は東西が二百マイル、南北が百五十マイル、これは危険区域であるから日本の漁船が入らないように警告することを日本側に申出て参りましたので、当時外務省から水産庁に連絡をいたしましてこれを周知方取計らつたのであります。今度事件が起りました所は新聞報によりますと、或いはその指定せられた水域の外ではないかというようにも私ども感じまするが、現在調査が十分完了いたしておりませんので、その上でアメリカに対する措置も考えたいと存じます。取りあえずこの事実につきまして、ワシントンにある日本の大使館へ照会してこれを確かめるように、そうしていろいろ双方の報告が出た上適当な措置をとりたいと考えておる次第でございます。
  89. 藤原道子

    ○藤原道子君 いつもこういう場合にとかく弱いように考えられてなりませんので、厳重に一つ調査をし、又主張すべきところは主張して頂きたい。こういう場合にはその怪我をしました漁民の人たちの生活の補償とか治療の問題、こういう問題はこの問題が片附かない前には、一体どうなんですか、日本政府で何とかこれは措置してやるべきものと思いますが、それに対してはどういうふうになつておりますか。
  90. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 前例もない事件でございますので、現在そういう場合にどういうふうに救済措置を講ずるということは確定はいたしておりません。国が実行いたしております制度といたししましては、生活保護の問題、又それに該当いたして参りますればそれによりまして勿論等活保護、医療救護なり何なり、万全の措置を講ずる途は開いておりますが、今度のような場合につきましては、的確にそれに当てはまるような制度はないのでございます。
  91. 藤原道子

    ○藤原道子君 私その点につき申しては、是非こういう国際的な不慮の災難ということでございますので、生活保護などと言わないで、何らかの措置を講ぜられんことを要望いたしておきます。  次にお伺いいたしたいのでございますが、昨年の私の質問でもどうも明らかにされなかつたのでございますが、軍事基地周辺において起りましたいろいろな問題、或いは軍事基地に起りました傷害問題、或いは漁業なら漁業においての生活権の保障、こういうものが十分になされていない嫌いがあるのでございますが、その点全国で今までにどのくらいの傷害その他の問題が起つて、それの補償がどの程度になされているかという点について先ずお伺いいたしたいと思います。
  92. 堀井啓治

    政府委員(堀井啓治君) 御質問の御趣旨に若しそれておりましたら御注意頂きます。只今提供いたしておりまする民有、公有を含めまして、土地につきましては約五千六百四十万坪、建物につきましては二万八千坪でございます。国有につきましては土地が九千七百六十四万坪、難物につきましては五万九千五百坪、いずれも約でございます。
  93. 藤原道子

    ○藤原道子君 今私が伺いましたのは、全国でいろいろ傷害問題といいますか、弾がそれて怪我をしたとか或いは死んだとかというような事件がどのくらいあるか、それに対してどの程度の補償がなされておるか。
  94. 堀井啓治

    政府委員(堀井啓治君) 正確な数字はちよつと只今記憶いたしませんが、概数でございますが、大体回数として私は四千件くらいというふうに記憶いたしております。
  95. 藤原道子

    ○藤原道子君 事件がですか。
  96. 堀井啓治

    政府委員(堀井啓治君) 補償の内容につきましては、事件後大体一家の生計の支柱になるような方につきましては、本人の収入の千日分に相当する補償をいたしております。但し最高限度を百万円といたしまして、そういう限度の補償をいたしております。なお占領中の傷害に対する被害につきましては、多少物価指数等の関係もございまして、段階をつけまして補償いたしております。終戦直後の被害等につきましては、最近追給等の措置を以ちまして見舞金の増加をいたしております。
  97. 藤原道子

    ○藤原道子君 只今の御答弁だと非常に補償がなされているように窺えるのでございますが、最近調査したところによりますと、千葉県の九十九里浜あたりに起りました事件に対しましては、未だに何らの補償がなされていない、こういうのでございます。これは千葉県におきまして、約八トンばかりの漁船でございますが、荷物を積載して帰航中に海面におきまして米軍の実弾が飛来いたしまして、それが船長の咽喉から脇へ抜けるような重傷を負つたのでございます。この人は入院治療を二十三日ばかり、退院いたしましても一カ月の治療を受けまして、今なお身体障害者となつておるのでございます。これをいろいろと努力し申請したけれども、何ら補償がなされない。これに対しましては今まで漁業組合等においてこの治療費等を調達したというようなことになつておるのでありますが、こういう場合にはその補償の対象にならないのですか。こういう実例があるのでございますが……。
  98. 堀井啓治

    政府委員(堀井啓治君) お答え申上げます。只今のような実情でございますれば、私は公務上の傷害と考えられるようでございますが、さような場合でありますれば、これは米軍当局との打合せがございまして、その点につきまして相当の日数を要しますことは甚だ遺憾に存ずるのでございますが、若しお話の通りでございますのならば、早速調査したいと私は考えます。一般に補償の限度等につきましては、先ほど申上げましたような限度において補償いたしております。なおお示しのような実例につきましては、こちらのほうも十分に調査をして万全を期したいと思います。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど藤原君が質問をされている点について政府は誠意を以て答弁されておらないのです。先ほど藤原さんが質問されている点は、米軍の駐留によつて生ずるいろいろな被害の統計を求められておるわけです。これは御承知のように防衛支出金中から出るわけでありまして、あの中に予算が計上されておる。従つてそういうものは詳細に報告しなければならない。又二十九年度の予算においてもこの防衛支出金の中に含まれておる。であるから二十九年度においてはどの程度の被害というものを予想しておるのか、これもはつきり報告すべきなんです。ところが只今調達庁次長の御説明は非常に中途半端で、そういうような答弁では、藤原さんも質問を続けるのに非常に支障を生ずるものと思います。もつと正確に我々にも参考になりますから、正確に答えるように、そういうときは委員長からも注意されるようにお願いいたします。いい加減な答弁をされたのでは困ります。
  100. 藤原道子

    ○藤原道子君 この問題につきましては、昨年も私は資料提出を求めておいてそのままに相成つておりますので、正確な資料の御提出をお願いいたしたいと思います。今のお話が事実ならばというお言葉でございましたが、事実でないものを取上げるわけはないのでございます。昨年の昭和二十八年の二月の十二日の午後四時半に起つた事件でございますから、この点に対して改めて御答弁をお願いしたい。それから日米合同委員会でというようなことで、いつも補償が非常に遅れる。その間の国民の困難というものはあなた方の想像以上に深いものがあるのです。従つてもつと誠意ある御答弁を要求すると同時に、こういう問題に対しては誠意を以て、一日も早く処置をすべきだと思うのです。
  101. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 予算関係だけを大蔵省のほうから一通り申上げておきたいと思います。御指摘のような事例はいわゆる事故補償という場合に該当するわけでございますが、二十八年度の予算の内訳でございますが、一億五千四百万円ぐらい計上しております。そのうち三十八年度中に使われる見込のものが一億一千二百万ぐらいでございまして、四千二百万ぐらいが三十九年度に繰越される。二十九年度計上いたしましたもののうち、いわゆる事故補償に予定いたしております金額は一億一千五百万でございまして、合計一億五千七百万ぐらいのものが御指摘のような事故補償に充てられる予算と積算いたしております。御指摘の具体的な事例につきまして如何なる措置が講ぜられたか、これは大蔵省のほうではちよつとわかりかねますが、予算の金額といたしましては以上申上げましたような実情になつております。
  102. 堀井啓治

    政府委員(堀井啓治君) 具体的な調査の経路でございますが、これは公務上であるか、公務外であるかということにつきまして、日米の意見が一致いたしませんと、米軍自体におきましてもその経費を分担する関係でございますので、従つてその意見の一致を見るまでに相当の時間を要する点は、甚だ私どもも遺憾に存じておる次第でございます。公務外であります場合につきましては、これは全く米軍側の負担でございまして、これは日本政府を代表して調達庁より請求の手続をいたしておりますが、これ又全部米軍側の負担でございますので、それに非常に時間を要しまする点につきまして甚だ遺憾に存ずるのでありますが、私どもも専門の担当官を置きまして折衝に当つておる次第でございます。
  103. 藤原道子

    ○藤原道子君 この問題につきましては、今日煙間の要旨をすでに通告してあるのでございますから、もつと正確に御答弁を願わなければ困ると思うのです。以後お願いいたしします。  次に漁業補償の問題でございまするが、これなどにいたしましても非常に時日が遅れる。それから申請した金額の何分の一というか、極く些細なものより補償されていないのでございますが、こういう場合には申請に対しては殆んど考慮しないで、一方的に決定をされるのでございましようか。例えて言そば一年間の漁業補償に対して三億八千万円ぐらいが千葉原のほうで申請されておるのでございますが、これに対しては僅かに一億円の補償よりなされていない。これをずつと割つて参りますると、結局一年間の漁業補償が最高七千円、最低が三千円というような極く雀の涙にも及ばないような補償しかなされていない。従つて最近の九十九里浜方面における漁民の生活は困窮その極に達しておる。こういう場合にどういう算定で補償がなされておるか。これでいいとお考えになつておるか、地元の漁民の生活の程度等について御調査がなされているかどうかという点についてお伺いいたします。
  104. 堀井啓治

    政府委員(堀井啓治君) お答え申上げます。漁業の補償につきましては、補償の先ず計算の方針について申上げますと、大体平年の漁獲を基礎にいたしまして、その年の演習日数等、その年における漁獲に関する諸般の事情を勘案いたしまして、その実績を平均漁獲から引いたものに対して補償する、こういう建前をとつております。ただ漁獲高と申しまするものは、水産庁等につきましても私どもは十分に意見を徴して決定をいたしておりまするが、その数字のつかみ方につきまして非常に困難性がございまして、従つて単に統計等の資料だけでは満足に参りませんので、一々現地にも参りまして調査し、只今申上げるような差額を補償するという建前をとつております。なお在来は、占領期間中につきましては、大体これは水産庁で扱われたのでございますが、年間に対しての補償をいたしておりましたが、今日は大体上下の二期に分けまして、できるだけ早い時期に補償をするという建前をとつておりまするのと、先ほど申しまするような数字のとり方に困難がありますることと、実損を補償するという建前から、上期のものは下期において払われる、下期のものはその次の年度において払われるという事態で、これ又種々の処理の困難性から比較的遅延をいたしております点につきましては、甚だ遺憾に存じ、私どもも今日年度内に二十八年度分を処理いたしまするように努力いたしておる次第でございます。先ほどお話の九十九里につきましては、占領期間中は、水産庁が扱つたのでありますが、見舞金として、約一億七千万を補償いたしております。又、講和発効後、同年十二月までに対しましては、これ又一億数千万円を払つておると記憶しております。それから昭和二十八年の一月から三月までとそれから二十八年度の上期は、本年度中に支払うように只今努力いたしております。
  105. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうもこの補償問題にいたしましても、査定が厳し過ぎる。結局造船疑獄とか、いろいろな問題に対しては非常にルーズに金が扱われておりながら、こういう国民の生活問題に対しては非常に厳しいというところに国民の不信を助長する点があるんだろうと思うのであります。今後十分に生活ができるだけの補償をすべきだと思います。九十九里浜の漁民が実収高から差引いてというけれども、一カ月に五百円や六百円の損害ではないということはもう明らかにわかつておる。もう少し誠意ある査定方針を私は強く要望いたします。時間がないので一つの問題を追及して行かれないので非常に残念でございますが、この点強く要望いたしておきます。
  106. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつと今のに関連して。非常に答弁になつておりませんので、是非一つ詳しい具体的の資料を整えて、その資料を配付した上でもう一遍具体的な答弁を一両日中にお願いをしたい。それから先の九十九里の農民、漁民の扱い方にしても、特殊な具体的な例を提示しておるのでありますから、その示された例はどういう扱いになつておるかということを、具体的に一つ御答弁を願いたい。これも一両日中に資料を御提出の上改めて御答弁を願います。
  107. 藤原道子

    ○藤原道子君 木村さんは見えてないのですか。
  108. 青木一男

    委員長青木一男君) 政務次官が見えております。
  109. 藤原道子

    ○藤原道子君 保安庁長官が来られない理由はどういうわけですか……。この質問あと廻しにいたします。
  110. 青木一男

    委員長青木一男君) 衆議院の委員会の関係らしいですが。(「どこに行つておるか」と呼ぶ者あり)外務委員会。
  111. 藤原道子

    ○藤原道子君 外務大臣も見えてないですね。
  112. 青木一男

    委員長青木一男君) 外務大臣も衆議院の外務委員会です。政務次官が来ておりますから、お差支えなかつた質問を継続して下さい。
  113. 藤原道子

    ○藤原道子君 木村長官の御出席を成るべく要望したいと思います。その前に私は外務大臣から御答弁を是非願いたいのでございますが、御出席がないようでございますから、次官に責任ある御答弁を伺いまして、なお納得の行かないときには、大臣の御答弁を後日お願いしたいと思います。  最近代々木のワシントン・ハイツの隣に広大なる工事が行われておりますが、これは如何なる目的のために使用すべき家が予定されておるのかという点について、先ずお伺いしたいと思います。
  114. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) この問題は、昨年の十二月以来調達庁で取計らうことになつておりまして、調達特別委員会の委員長は福島君がいたしておりまするが、便宜御指名がございましたから、私から御答弁申上げます。  ワシントン・ハイツの横の地域は国有財産でありまして、すでに昭和二十七年以来米軍側に提供されておるのであります。都内には駐留軍の結婚してない下士官及び婦人が各所に散在いたしておりまして、明治ビルとか或いは第一ホテルとか、約十五カ所に分散いたしておるのでございます。これは非常にいろいろの取計らいにも不便でありまするし、できるだけ駐留軍を都市の中央から離れた所に出そうという考えの下に、一つの所に結集させようという考えを以ちまして、元の第三連隊とそうしてワシントン・ハイツの横の、今御指摘のあつた所へ集めるようにいたしております。大体全部で千八百名だけをあそこへ収容する予定になつております。土地はすでに提供せられておりますし、その場所へ持つて行くのが一番適当であると認めまして、あそこへ集団的に将校宿舎を十一棟、千二百七十五名を収容し、又婦人宿舎として一棟、四百七十五名、全部で大体千八百名ばかりになりまするが、これをそこへ収容しようとしております。これが夫婦者でないので、非常に風紀上に問題があるというような点を御指摘になろうとしていらつしやると思いますが、これは下士官、普通の兵隊でなしに、下士官のもの、それから婦人もおりまして、又軍属も含んでおります。そういうわけで、そういう心配がないように、又そういう問題が起るのを防ぐために連絡委員会と申しますか、風紀に関する現場のいろいろ協議をする機関も設けまして、弊害がないようにいたしたいという方針で、目下建設省が請負いまして、あそこへそうした宿舎を建てるというふうになつております。
  115. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は風紀の問題だけでお伺いしようとは思つていないのであります。結局それならば都内の、具体的にどことどこのビルが明渡されるのか、明渡されたらそれは日本が使用できるのでしようから、どことどこが明渡されるかという点を一つお伺いしたい。それからいま一つ、すでに土地を提供してあるのだから問題はないというようなことでございましたが、あの附近は住宅専用地になつておるのです。風紀の問題がないように、起らないように処置すると言うけれども、いつも政府が言われる詭弁なんです。必ずそこに風紀問題が起らないとは限らない。殊にあそこは神宮に隣した土地でございます。下士官だから風紀問題が起らない、こういう考え方は私はおかしいと思います。そういう点で都内のどこのビルが移転するのか、いつそれが完成し、いつそのビルは明渡されるのか一そういう点についてお伺いいたします。
  116. 堀井啓治

    政府委員(堀井啓治君) お答え申上げます。大体都内のビルの名称を申上げますると、三菱仲十五号館、大蔵ビル、八重洲ホテル、有楽ホテル、味の素ビル、旧海上ビル、三菱本館、農林ビル、三菱二十一号館、郵船ビル、霞クラブ等、多少まだこれに含むかも知れませんが、土地につきまして約四万六千坪、建物につきまして約六万四千坪というものが大体解除になる見込でおります。
  117. 藤原道子

    ○藤原道子君 あの附近には学校が御承知のようにたくさんあるのでございます。それからいま一つは、地元が昨年度、あそこに建築があるというような噂を聞いて猛運動を起して、結局住宅専用地と指定されたはずなんです。それといま一つは、進駐軍が駐留軍と変りましたときに、郊外へ、市外ですね、郊外地域に移転するというようなことが条件であつたと私は記憶しているのです。ということになると、あそこを郊外とお考えでございましようか。あの土地が妥当だとお考えでしようか。一旦出したのだからどういう目的に使われようとも日本政府はこれに対して像を入れることができないというようなあり方になつているのですか、その点をお聞きしたいと思います。
  118. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) これは特調の問題でございますけれども……、都の中央から成るべく外へ持つて行くという原則も私ども打ち出した次第でございます。それと同時に、民有地を使わないで、国有地を使おう、この二つの原則を勘案いたしましていろいろ適当な場所を物色いたしましたけれども、ずつと中央から離れた所に恰好な場所がないために、そうして而もあそこは前にも連隊になつてつた所でありますので、あそこを建設地として、そうしてそうした弊害、今の御指摘のような弊害がないようにできるだけの措置を講ずる、こういう考えでここへ移すことにいたしたものであります。従いましてあそこが必ずしも最慶の場所というわけでもございませんが、そういう国有地であり、而も都の中心部から離れた所という意味で、その地域を使用することにいたした次第であります。
  119. 藤原道子

    ○藤原道子君 あそこは都の中心部から離れていると断言できるのですか。東京の真中ですよ。そういういい加減な答弁では国民は納得しないのでございます。教育上全然支障がないということが断定できますか。もう一遍御答弁願います。
  120. 小滝彬

    政府委員(小滝彬君) 私はあの土地を郊外と申したわけではございませんけれども、今申しました二つの原則を噛み合せて考慮いたしますと、残念ながらほかにより適した場所がないので、あそこを選ばざるを得なかつたわけでありまして、決してアメリカから強制されてあそこを使つたというわけではございません。双方でよく相談をいたしまして、あの場所を選ぶことになつたようないきさつでございます。
  121. 藤原道子

    ○藤原道子君 文部大臣は……、要求した大臣は一人も来ていないじやありませんか。
  122. 青木一男

    委員長青木一男君) 管理局長が見えております。
  123. 藤原道子

    ○藤原道子君 困ります。私は大臣をお願いしたのです。
  124. 青木一男

    委員長青木一男君) 文部大臣は衆議院の文部委員会で手があかないそうですが……。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 藤原委員の要求した大臣が一人も来ておらない、こういうのは少し不手際過ぎると思います。若しそういう状況であれば、藤原委員が発言をする前に、これは委員長から適当に御相談あつて然るべきだと思う。そうすれば藤原委員の発言を或いは次に譲るとか何とかする理事会で又相談の余地があろうと思います。全然抜き打ちに誰も来ておらん、そういうような行き方はどうもいかんと思います。大体次官のかたとかそういうものは、大臣の答弁の補助ですよ。我々が考えておるのは、大臣で細かいことがわからん場合に、ただ付いて来ているわけなんですね。我々は飽くまで大臣を中心にして質疑をしたい。これは藤原委員だけに関連する問題じやない。私どもとまだ後ほどこれは質問の時間があるわけですから、これは今後の全体の進行上甚だ参議院の予算委員会を無視したことになると思う。委員長みずから、その点についてもつと一つ政府側に対し毅然たる態度で私臨んでもらいたいと思います。これは要求しておきます。
  126. 青木一男

    委員長青木一男君) ちよつと申上げます。只今亀田君は国務大臣は一人も来ておらないとおつしやいましたが、副総理、大蔵、厚生、労働、要求大臣がこれだけ出ております。勿論大臣が出席されることを希望いたしますが、衆議院において法案が委員会にかかつておる場合、お互いこれは都合しなければ……、参議院の予算委員会だけで独占するわけには行かんと思います。その点はできるだけ大臣の出席の多くを希望しますが、努力はいたしますが、全部参議院の予算委員会へ集中するというわけには私は行かないと思うのでございます。この点も皆さんと御相談の上、できるだけ協調して皆さんの要望に応じます。できるだけ議事の進行をしたいと私は考えております。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 委員長只今の私の発言を誤解されておりますよ。私は大臣が誰も来ておらんなんということは言つておりません。藤原委員が要求しているかたを言つているのですよ。大臣が誰が来ているかということは、これは見ればわかります。
  128. 青木一男

    委員長青木一男君) 亀田君に申上げます……。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 発言中ですよ、委員長から発言中にそういうことを言われちや困ります。藤原委員のことを言つているのです。藤原委員の要求した大臣三人ともおらんじやないか。それからもう一つは、衆議院のほうでそれはいろいろな関係委員会があるでしよう。であつて予算というものは、あらゆる議案に優先的にこれは重要な議案でしよう。それに対して、(「そんなことはないぞ」と呼ぶ者あり)、そんなことはない、どうしてそういうことが言えるのか、冗談じやない。予算があらゆるものに対して優先的だということは、これは常識ですよ。だから私どもすべての場合に全部のかたが揃う、こういうことは考えておりませんけれども、参議院で三人要求されて三人とも出ておらない。こんなことは甚だ心外です。その点を言つているのです。
  130. 青木一男

    委員長青木一男君) わかりました。お答えします。私が先ほど申上げました四大臣は藤原委員要求の大臣であります。(「その通り」「さつき要求した大臣ではない」と呼ぶ者あり)できるだけ一つ御趣旨に副う努力いたします。(「委員長はそう言うべきですよ、誰のため委員長か」と呼ぶ者あり)
  131. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は文部大臣に是非ともお願いしたいのです。僅かな時間でございますから、是非お願いして御出席を促して欲しいと思います。  労働大臣にお伺いいたしますが、労働基準法の関係についてお伺いしたい。それから先ず第一に、労働基準法違反がどのくらい摘発されて、これが如何に処理されておるかという点を一つお伺いしたい。特に女子年少労働者に関係のあるもの、この点について御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  132. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申上げます。労働基準法の監督につきましては、特にこの中小企業におきまして、賃金の不払いを中心とする違反がまま見られるのでありまするが、まあ申告のございましたものにつきましては、基準監督署等で始終経営主等にも話しまして、大体九八%ぐらいのものを解決しているというふうに承知いたしております。
  133. 藤原道子

    ○藤原道子君 最近非常に深夜業等が強要されておる傾向がございますが、これらに対しては、大臣はどういうふうにお考えでございましようか。又一面におきまして、労働基準法を緩和しよう、女子の、或いは年少労働者に対する保護規定の緩和等が予定されておるというふうに聞いておりますが、それらに対して大臣の御所信をお伺いしたい。
  134. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど御質問になりました、どのくらいの件数があるかという点について補足さしで頂きたいと思います。昭和二十三年に、送検いたしたものだけ申上げますと、二百四十件、昭和二十四年に千九十四件、昭和二十五年に九百六十件、昭和二十六年六百二件、昭和二十七年三百九十一件、昭和二十八年これも十月までしか出ておりませんが、四百十二件、その程度の数の送検件数となつております。  なお只今質問の深夜業等の強化ということの問題でございますが、工場労働者につきまして、やはり基準法の適用者につきましてはその通りにいたしておるのでありまするが、ただこのまあ旅館等につきましては、基準法の除外例というものがありまするのが誤解せられまして、深夜業があるというふうに言つている向もございまするが、ただそういう面におきましての不平というものにつきましては、私どものほうとして基準法の説明に努めまして御納得を頂いておる次第でございます。
  135. 藤原道子

    ○藤原道子君 それが旅館とかその他だけでなくつて、現に工場においても深夜業がなされておる事例がございますが、こういう点を大臣は御承知ないのでしようか。御承知でありながらなおそういう答弁をしておいでになるのでございましようか。その点もう一遍お伺いいたします。
  136. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ今私の申しました総件数の中に悪質な例が入つておるわけでございます。そういう例がございますれば、悪質なものは送検いたしております。
  137. 藤原道子

    ○藤原道子君 今看護婦が非常に足りなくて困つておる際に、一部の者の運動といたしまして、看護婦を労働準基法の枠から外そう、そうしてもつと強制労働をというような考え方と思いますが、看護婦を基準法の枠から外そうという運動がなされておるのでありますが、これに対しては大臣はどのようにお考えでございましようか。又いま一つは、整理の際とかく婦人が優先的的に首切られておる、こういう点に対して大臣の御所見を伺いたいと思います。
  138. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 看護婦の職能といたしまして、多少一般の労働者と違う点もあるというような意見もございますが、私のところに正式にそうしたものについての除外例を設けろという陳情はまだ来ておりません。私といたしまして、只今のところ特にこれについて除外例を設けるという考え方を持つておりません。なお女子であるがために特に整理されるとかいうことでありますが、そういう点について差等は全然設けておりませんはずであります。いずれの工場にありましても、整理をいたします場合には、整理基準がございまして、これに該当する者が整理される、こういうことであるべきであると考えております。
  139. 藤原道子

    ○藤原道子君 法の建前はそうなつているが、実際にそれが行われている。官庁等においてもやはりそういう事例はたくさんあるのでございます。ですから、今後大臣はそのようなことのないように、労働基準法が無視されておる、こういうようなことに対しては、大臣が十分所管大臣としての親心を持つて処理せられんことを私は強く要望いたします。殊に文部大臣のときに質問いたしたい。
  140. 青木一男

    委員長青木一男君) 文部大臣は特に今要求しておりますから、ほかの大臣に……。
  141. 藤原道子

    ○藤原道子君 次に、これは緒方総理並びに厚生大臣にお伺いいたしたいのでありますが、一時結核の死亡者が少くなつた、七万台になつたというようなことで、結核対策足れりというようなことを盛んに宣伝されておつたのでございますが、最近厚生省が全国的に調査を進められました結果が、新聞等に発表されておるのでございますが、これを見ますと、入院を必要とする者だけでも現在百三十六万人いるというようなことが出ております。患者総数は三百九十三万、発病の危険ある者が二百六十一万、こういう数字が出ておるのでございますが、厚生省自身においてすら三十万のベッドを必要とする、こういうことを言つておられる。ところが現在ベッドは十七万二千ございます。これらに対しまして、毎年僅かなベッドを殖やしておりましたのでは病気に追つつかないと思います。従いましてこれらに対しまして、緒方総理は結核に対する根本的な対策としてどのようなことを政府は持つておいでになるかという点、それから厚生大臣には、今のベッドについて、果してこのままの状態でやつて行けるかどうかというような点について、先ずお伺いしたいと思います。
  142. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 今お述べになりましたように、我が国の結核患者数は、従来百六十万と推定されて来たのでございますが、厚生省の実態調査の結果、二百九十二万、只今この数字をお挙げになりましたが、二百九十二万という数が明らかになつたのであります。併しこの結果を以て直ちに結核患者が増加したということはできないのでありまして、即ち従来は諸外国と同様、結核死亡数の十倍乃至十二倍ということを以て患者の推定数としていたのでありますが、これが明らかになつた、実相が明らかになつたということであろうと思います。併し実態調査の結果、結核患者が青少年層から急激に増加し、壮年層、老年層にも相当多いことが判明いたしましたので。行なつて来た結核対策に加えるに、この情勢に即応して結核対策の充実を図り、これを速かに実施して参りたい所存であります。なお足りないところは厚生大臣からお答えをいたします。
  143. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 従来日本の結核は、大体只今お話になりましたように、推計を以て死亡の十二倍程度、こういうまあ計算を、これを一応世界全体考えております。そこで世界に曾つてないような実際の実態調査を一つつてみて、その結果を見ながら結核対策というものを更に検討しようじやないかというのが、昨年秋から現在まで行いました実態調査であります。これは世界のまだ調査にも曾つてなかつたのではないか。この結果従来の学説その他で言われておりました死亡者の十二倍程度というのは相当覆えされたことになる。死亡率はずつと減つて参る。最近の結核に対しまする死亡数はどつと減つて参る。恐らく近々曾つての半分以下になつて来る。六、七万台になつて来る。そういうふうな状態になつてつておりましたのに、今回この十三日にその結果を初めて集計いたしました結果によりますると、只今藤原さんのお述べになりましたような実際の実態調査が現われて参る。そこでこの状態考えますると、只今総理からもお答えになりましたが、ただ従来の結核対策の結果と私ども考えまするのは、青年圏の結核がずつと減つて来ておる。そうしてむしろ今まで余り国民の関心になかつた壮年層、而もこれらの方面においては自覚症状のないかたがたが相当結核にかかつておる。こういう実際の状態を知つたわけであります。従いまして病床の問題その他の問題、すべて新らしい観点から結核対策一つ検討し直してみなければならないのではないか。急いで結核対策の新らしい検討を、この結果に基きましていたして参りたいと存じております。
  144. 藤原道子

    ○藤原道子君 今までもつと少く考えていたのが、このような数字が出て世界に例がなかつたのだというようなことは、例のない調査をしたのだということは、私は受取れないのです。これだけの患者がいることがわからなかつたということは、政府の怠慢だと言つてもいいと思うのです。結局現在これだけな患者がありながら、ベッドは僅かに十七万二千、これに対して今後どのような増床計画をお立てになるかということが一つと、現在あるベッドが十分に回転されていないというようなことから、軽症患者を早くに退院させようというような計画が、いや実際にそれが行われておるのでございますが、これなどはますます結核を殖やす結果になつておる。結核菌を撒きちらすことになるのであつて、そういう姑息な手段をしないで、当然必要なベツドを建設すべきであるということが一点。それからこれは建設大臣を私お呼びするのをうつかり落したのでございますが、政府の立場として、現在結核が非常に殖えて参りまする原因は、戦争病とさえ言われるくらいで、戦争中から終戦後の栄養の低下、過労、こういうものが今日現われて来ておると見ても差支えないと思うのです。ところがこれに対して終戦後住宅が三百万戸も足りなくて、それの建設が遅々として進まない。ところが結核が発見されて入院を要する者が、病床がないために入院ができなくて、待機患者は半年から一年、ひどいのは二年も待つておる。その間にどんどん結核は進み、且つ家族も同居しておる。こういうところが非常に結核の患者が殖えて行く、家族感染等によつて殖えて行く原因にもなつておるのだ。こう考えるのでございますが、緒方総理はこれらのことをお考えになつて、急速に住宅対策等について手をお打ちになるお考えはないかどうかということを一つお伺いしたい。
  145. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 住宅対策につきましては、政府といたしとましては、従来特に力を用いておるのでありまして、二十九年度の予算にも、乏しい財源の中からできるだけのことはやつてつておるつもりでありまするが、今お挙げになりました結核の原因が、住生活の極めて不備な点に原因することも、これは御指摘までもないことでありますので、この点につきましては、将来とも政府としては今以上の努力を払つて参りたいと考えております。
  146. 藤原道子

    ○藤原道子君 今以上の努力を払うという点は是非お願いしたいのでございますが、従来十分な対策を立てていたとは思えないのでございます。殊に庶民住宅の点において非常に遅れておる。なおざりにされておるということをお考え頂きまして、今後先ず庶民住宅をどうするかという点について一段の御努力をお願いしたいことを要望いたします。  それからベッドの問題でございますが、今度の三派修正によりまして、ベツドは国立病院におきましても一千床殖えたのでございますが、これに対しましては何ら、過日も質問いたしましたように、経営費の予算的な措置がなされていないという点を考えますときに、どうも政府は結核対策に本当に真剣であるかどうかというようなことが疑われるのでございます。先ず第一に、果して現在あるベッドが十分に回転されておるかどうかという点でございます。医者の官舎が足りない、看護婦の宿舎が足りないということによつて、大切な半年か一年も待機している患者があるにもかかわらず、病床がこれら官舎に、或いは寄宿舎に転用されている。これらは私は非常に残念だと思うのです。つい二、三日前に千葉県に行つて参りましたが、千葉療養所にいたしましても、看護婦の寄宿舎が来年度建設される予定になつていたにもかかわらず、これが予算関係で流れてしまいまして、その当時の予算は千二百万円で、看護婦の寄宿舎が予定されていた。これが流れた。ところがこれができなかつたために、百五十人分のベッドが看護婦の器宿舎に転用されているのです。看護婦も病棟に生活することは寄宿舎のあり方から言つて決して満足してはいない。こういう例は全国的にたくさんあるのでございます。例を言つてはきりがないから千葉の例だけを取上げるのでございますが、若し仮に結核患者を本当に早く治療しようというような愛情がございましたならば、こんな馬鹿なことはないと思う。予算がないということで逃げられるかと思いますが、私は若し仮にこの百五十床の病床に患者を入れたといたしますならば、一日四万円の入院料が入る。そして一カ月には百二十一万五千円、一年にいたしますと千四百五十八万円というものが入院料として入るのでございます。というと、その中から諸雑費を引きましても、二年間たてば完全に看護婦の寄宿舎というものはできるはずだ。それと同時に大事な患者さんの治療というものが促進される。ところが一方において予算がないというために、大事なベッドがこれに使われているという点は誠に遺憾だと思うのでございますが、なぜこういうことがなされている一方において、ベッドがないベッドがないと言つておきながら、看護婦の寄宿舎に、或いはお医者さんの官舎にベツドが使われている。我々国民としては絶対に納得行かないのでございますが、なぜこういうことがなされているかということをお尋ねしたい。
  147. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 国立療養所関係におきまするベッドの回転率或いは入院患者の状態は、現在殆んど満員の状態であります。詳しく申しますると、一年を通じまして大体九〇劣ベッド数に応じまする患者が入つているわけで、只今お話になりましたまだ治療が不十分な、治りきつていないのを出すじやないかこれはむしろそうじやなしに、医学的に見て退院していい状態にあるけれども、いろいろな社会状態から考えて、退院し得ない状態にいる人が、この前私答弁いたしておきましたが、大体四百程度あると私どもでは調査をいたしました。それはこれを無理に出しますると、今お話になりましたようなことになりまするので、本人がよく了解いたしまして、又行く先の就職等も大体できました上でというので、むしろ逆に十分な方法を現在講じておるとい立場になつているわけで、千葉の療養所のお話でございましたが、お話の通りに千葉は現在看護婦が病床を利用している。従つてお話の通りに昨年来これを増設をいたしまして、看護婦にも十分寮を作つて十分な方法を講じながらというので参つておりましたが、近くその具体的な方法を講じて建設するごとにいたしております。全国的でも私の調査によりますと千葉だけであります。あと看護婦の寮が不十分な県は一、二ありまするけれども、病棟を使つておりますのは千葉だけであります。これは本年度におきまして至急いたす処置をとりたいと思つております、
  148. 藤原道子

    ○藤原道子君 和歌山県等におきましても、これが医者等の官舎に使われている点があるし、その他あるのでございますが、私そんなことを争つていると時間があと十分だと言われましたので残念でございますが分科会で争いたいと思います。  それから後療施設の問題でございますが、ベッドが足りないから患者を早く退院させたいというようなことを予定されますならば、後療施設が必要だと思うのでございます。ところが今年度は昨年度と同じだけしかできていない。殊にその後療施設でございますが、そこに入つておりまする患者さんたち、まあ社会復帰前の療養生活ですね。こういうところに生活保護の適用が十分でない僅か七十円くらいのものでございますとなかなか栄養もとれないし、落着いた療養もできない。そういう点で今後の療施設が十分にその目的を達していない。僅かしかないものも十分に目的が達せられていない、こういふうに考えますが、十分回復しないうちに社会へ出そうとする場合には、この後療施設で十分な療養をとらしてから、社会生活に堪え得るようになつてから出すのでなければ、折角療養所で治療した者が、直ちに生活戦線に復帰いたしましたために又再発をする、こういうことで非常な無駄がなされている。その点について後療施設をもつともつと増大されるお考えはないかどうか、それは絶対に私は必要だと思うのでございますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  149. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) これは全く御同感でございます。アフター・ケアの施設をもつと十分にいたしまして、大体回復期にありまする患者の健康を平常勤務に服し得る状態になして社会に送る、こういう状態なのが、現在でももつと厳密に医学的にこの施設がありますると、病院の病床の回転率がよくなつて来ると思います。従つて一方からは或いはもつと検討いたしまして、生活保護の副利施設等においての利用等もこういう方面に考えられる余地があるのではないかと、目下検討をいたしておる次第でございます。アフター・ケアの施設は今後十分に力を注いで参りたいと思います。
  150. 藤原道子

    ○藤原道子君 十分治療の面に努力している、患者を治さないうちに出すようなことはいたしていないといういろいろなお話でございましたが、私はそれについて二、三の例を以てお伺いをしてみたいと思います。最近結核患者は、政府が発表しておりまする結核対策費は千三百何十億でしたね。ところがこれは療養所の入院料として還元される全額は約七百億くらいあるのじやないですか、大体の計算といたしまして七百億くらいが還元されていると思うのです。従つて私は政府が国の結核対策として打出しました費用は、即その収入をアフター・ケアに充てる、ベッド増床に充てるというふうにすべきだと考えますが、それについてのお考え方如何でございましようか。  それから、いま一つは、最近生活保護法が非常に適用が厳しくなりまして、特に辛く当つておりますのが結核長期患者に対してでございます。ベッドの回転率が悪いというようなことから、まだ医者が菌が出ておるから退院してはいけないというようなことが言われましても、ベッド回転率というような点からこの退院が強要されておる。その患者さんたちからの我々に対する訴えがたくさん来ておるのでございますが、こういうことは次官通牒で出された結果だというふうに伺つておりますが、どういうふうな次官通牒が出されたのか、お伺いをいまたした。
  151. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 結核対策に対しまして一千数百億の国費を費しておりますのは、この結核病の撲滅のために費しております。併しそれは見返りがあるじやないか、その見返りをアフター・ケアの施設に充てたらいいじやないか、これも一つのお考えの点必ずしも私どもも不同意じやございません。併し費用を更に捻出いたしまして、先にもお話になりました病床の増床等につきましては、一層必要であろうと考えております。又まだ菌が出る人を、生活保護法を締めるために退院を強要するような次官通牒を出したのではないか、さようなことは絶対にいたしておりません。どうぞ何か患者のほうからさようなことを強制されたというような場合がありまするならば、今後私どもに御連絡を頂きまして、十分治してから退院をいたすようにいたしたい、これが私どものとつておりまする方針でございますから、間違つてさようなことがありまするならば、どうぞ今後御連絡を頂きたいと思います。
  152. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 結核療養所関係の歳入歳出のお話がございましたので、一応実情をお話申上げたいと思いますが、国立結核療養所の収入は二十九年度予算で七十億でございます。それに対しまして国立結核療養所の経営費は九十九億でございます。その他施設費、補助費等を合せまして、結核対策費の総額は百三十二億でございまして、結核療養所の収入七十億を相当上廻つておることを御了承頂きたいと思います。
  153. 藤原道子

    ○藤原道子君 結核療養所の経費のほうが上廻つておるくらいは私も知つておるです。だけれども国家が結核対策として出しているんだから、それを今のように足りない足りないと言わないで、これを出したものとしてこういうふうに無駄に金が使われないように、やや治つて社会へ出る、働く、又結核になつてこれが社会に迷惑をかけ、本人も苦痛を受ける。だから絶対に足りないアフター・ケアの施設にこの際思い切つてこの結核療養所の入院収入を以て充てたらどうかということを私は申上げたのであります。それから大臣は次官通牒は、私も結核菌が出る者を出せという通牒を出したとは言うんじやないんですよ。併し生活保護法の適用を厳にしろというようなこういう次官通牒が出ているのです。そうすると、これは取りようによれば随分厳しくやつてもやれるようにとれるのでございます。ところが地方の者は結局出世主義から上官の命令に服したいということからそういうことがなされておるのです。例はないと言われますけれども、それではここに二、三の例を申上げたいと思いますが、これは長崎県の国立大村病院でございます。ここにおきましては、入院患者八名が医療券を打切られた。だがそのうち五名は未だ菌が出ている患者である、医師が強硬に反対したけれども、療養が長期間に亘つているという理由で生活保護法が打切られております。静岡県の湊病院でございますが、そこでも患者が大きな空洞があり、排菌しているけれども、療養が長期に亘るという理由で医療券を打切られております。又最近医療費負担の一部負担が非常に多くなつておる。これは生活保護法を厳格に施行せよというような点から起つておるのでございますが、静岡県の国立湊病院のごときは昨年の十一月に比べまして二割五分も一部負担が殖えて来ている。一部負担をするべき資格があつたからと言われましようけれども、こういうふうにどんだん切られて来れば、どこかの犠牲においてこういうことになる。或いは中にはこれが何ら患者に通告もなくて一部負担金を課せられましたために、これが払えないで九万数千円滞納をしたために、その入院料を苦にして行方不明になつた患者もあるのでございます。こういうことは一つ一つ大臣のところへは御報告がないかもわかりません。だけれども、現実にはこういう事例がたくさん起つておるということは、生活保護法は平等にと、最低の生活を保障し、最低の医療を保障するということになつているのにもかかわらず、生活保護法なるが故にこれが打切られる。そうすると医療を受けられないというので、止むを得ず気の小さい患者は自殺するという例も起きているじやございませんか。私は自殺患者のことなどは大臣が知られないはずはないと思う。だから私は今度の予算におきまして一番犠牲にされておるのは貧乏人であり、この結核患者だと言わざるを得ないのでございます。こういう事例に対して次官通牒を若し誤つて地方がやつておるのだと断定されますれば、こういうことのないように大臣から再び地方療養所へ御通達頂きたいと思いますが、この点に対して御答弁をお願いいたします。
  154. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 生活保護法は御承知のようにその執行機関が、町村は府県で責任を持つております。市のほうは市長がこれを責任を持つて執行いたしておる次第でございます。その執行の根本方針は生活保護法により、又その都度或いはそれぞれのいわゆる通牒等によりまして指示をいたしておるのであります。そこで最近少し厳しくしておるのではないかという御疑念で、その厳しい結果が、治らない君が無理に出るという状態じやないか、私どもは決して厳しくやれという考え方を持つておりません。ただ、実情に即応して、その過程に即応して濫給のないように、漏給のないように、一人といえども天寿を全うせぬことのないようにというのが根本考え方でいたしております。ただ実際の府県の執行は御承知のように福祉事務所の福祉主事が中心になつて家庭訪問をし、或いは町村長、民生委員等と協力をいたしまして、これを実施いたしておるのでありまするから、私どもは全国の民生委員並びに福祉事務所はこれらの法の精神を酌みながら、相当徹底した方法をとつて本人に十分に痒いところに手の届くようにいたしておると存じておりまするが、或いはお話のような点でそれが事実といたしますると、更に府県に連絡をいたしまして、十分な方法をとるようにいたしたいと存じます。ただ実際上の問題におきまして、この町村なりのいろいろな関係等におきまして、場合によりますると、切ることが妥当として、十分検討をしていたした場合もあるかとも存じまするが、不十分でありまする場合は、十分にいたすように今後手配をいたしたいと思います。
  155. 中田吉雄

    中田吉雄君 関連質問。厚生大臣に申上げたいのですが、只今藤原委員の御質問なつたような点は随所にあるわけなんです。私案は総理に御披露したいとも思い、余りその内容が深刻なんで躊躇しているのですが、是非考慮願いたいのは、療養所の名前はあとから御連絡して、公表はいたしません。やはり藤原委員の言われたようなことで、重症であるが近く療養所を出ねばならない、どうせ自分は死ぬのである、こういう政策をとつた吉田総理を殺して死にたい、こういうことをはつきり書いて、そして吉田内閣はいつつぶれるでしようというような、極めて深刻な手紙が私の所にも実は参つているし、最近各地にそういうことがあるわけです。これは非常にそういうことを教唆扇動でもするというようにとられましては大変でありますが、東京の近郊で、これはあとから私が頂いておる手紙をお渡しいたしますから、そういうような深刻な問題が随所に起きていますので、この点一つ是非適切な対策を私は希望いたしておく次第であります。
  156. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 実は二月上旬に全国の民生部長会議を開きまして、私みずから出まして、この生活保護法の取扱は十分に相手のかたがたに納得行くように丁寧にということを十分申しております。殊に病気の人たちに対しましては、天寿を全うするようにあらゆる方法を尽して欲しいことは申しております。従いまして、只今お話のようなことがありまするならば、御連絡を頂きますと、よく御連絡いたしまして取計らいたいと存じております。
  157. 藤原道子

    ○藤原道子君 一つ一つの事例を申上げなくとも、すでに大臣はおわかりだろうと思います。本当に大臣が誠心誠意以て今この困窮者のために、或いは結核患者のためにお考え頂かなければ、絶望した国民はどういう方向へ走るかわからないのでございます。こういう点から考えまして、是非とも生活保護法の適正なる運営という点には十分御努力を願わなければなりません。時間がございませんが、大臣は大丈夫だ大丈夫だと言つてつてもいろいろな問題が起きておるのであります。只今の問題にいたしましても、昨年私たちは九カ条の条件をつけて可決した。成るほど生活は全額国庫負担で見て頂くことになりましたけれども、秘密の保持はやるのだ、強制収容はしないと言つておりながら、これが各所で問題を起しておる。一つの例といたしましても、大阪の布施におきまして夫婦二人の家庭で、夫がらい病になつたからというのでみずから自発的に入院したのです。妻も揃つて附添つて入院して、帰つてみたらば係官が白衣を着て家庭に侵入しまして、それのみかメガホンで近所の人に「らいが出ましたから消毒します」と大きな声で触れ廻つておる。これは秘密保持を厳重に規定したらい予防法の精神に反しないでしようか。結局両隣りの両軒共大消毒をして帰つたということでございます。妻が愛生園から帰つてこうした実情に会いまして、非常にびつくりして悲観をして家にばかり籠つておる。らいというものの特異性から申しましても、かようなことは絶対にしないということはあなたは言明したけれども、こういうことが現に起きているのでございますから、十分法の適用においてもつと真剣にお考えを願わなければならない。このことを強く要望しておきます。いずれ分科会で又詳しく申上げたいと思います。  そこで大蔵大臣に私お願いがある。真剣にお願いがある。この委員会でこういう問題は殆んど審議されないので、だから大蔵大臣は御承知ないのじやないかと思う。結核の問題にいたしましても、或いは生活保護法を受けておる人にいたしましても、或いは精神薄弱児の問題にいたしましても、或いは保育所の問題にいたしましても、幼児院の問題にいたしましても、軒並み今度は減額でございます。精神薄弱児のごときも、児童数が三千五百六十七万いて、その中で今日八十万からの精薄児童がいるのでございます。現在直ちに入院させなければならん子供たちが四万人はいる。これを適正に特殊教育とか精博の養護施設等へ入れまするならば、相当な社会的な使命の果せる子供に成り得ることは大臣もおわかりだろうと思う。これが予算がないから、あれは馬鹿だ馬鹿だと言われながら、これがひがんで大きな社会悪を起しておる。こういうこともお考えになりまして、もつと生活面に予算を十分に渡して欲しい。先ほどお聞き及びのように、予算が足りないから看護婦の寄宿舎に大切なベツドが使われておる、こういう例がある。こういうことによつてどうも生活政治が私はなおざりにされているのじやないだろうか。住宅の問題もそうです。らいの問題もそうです。結局数え上げれば切りのない問題でありますので、生活面においてもつともつと真剣な政治がなされたい。従つて私はこの際こういう不幸な人たちに対してどうか生活保護法等の適用を十分にしてもらいたい。一部ボスの手によつて濫給があるのです。濫給はボスと繋がつているところにのみあるのでございますから、そういうボスの支配に置かれないような方法にやつて行くのは厚生大臣のお力だと思うのでございます。この点は私は強く要望いたしますと同時に、最後に私は猪方副総理にもお伺いをしたいと思います。  以上申上げましたような事由で、社会の下積みになつておる者は、ものを言うこともできないままに消えて行かなければならない状態に放置されております。どうぞ結核対策におきまして、あなたの大方針をこの際示してもらいたい。  それから時間がなくなりましたので、ただ根本的な問題だけをお伺いしたいのでございますが、児童福祉法におきましても、法律は死文に等しい状態になつておる。ところがこの児童福祉法ができながら少年法というものと二つになつて可愛いい子供たちに対するその対策は二分されております。これを私は少年法と児童福祉法、或いは保育所と幼稚園、これらは非常にダブつておるような組織でございますので、この際児童問題を一本化する決意がおありにならないか。保育所と幼稚園はやはりこれを一本化しまして、幼稚園は幼児教育が必要だから幼稚園が必要なんだ、こういう答弁をしばしば伺うのでございますが、私は幼児教育が必要ならばやはりこれは勤労者の子供にも幼児教育は必要だろうと思う。こういう詭弁でなくて本当に児童対策はどうするのか。結核対策に対してのあなたの政府としての大原則、これを一つこの際お示しを順いたい。政府はとかく今回の予算にいたしましても耐乏生活を強要いたしております。イギリスにおいてすら耐乏生活をしているのだから、だから日本も耐乏生活と、こういうことを言われておるのでございますが、私はイギリスのような耐乏生活ならば喜んでしたいと思う。イギリスにおきましては、揺り籠から墓場までの生活の保障がなされておる。そして上のほうが耐乏生活をし、下のほうはぐつと上げられた生活をいたしております。こういう点で日本のように料理屋に高級自動車が列をなしておるような、一晩に数十万の金が費消されているかと思えば、その料理屋の隣には病気だけれども入院ができないような困窮者がいる、こういう姿はイギリスにはないのでございます。従つて耐乏生活はあなたはどういうふうにお考えになつておるか。耐乏生活はむしろ上層部においてなすべき問題であつて、それが範を垂れてこそ国民も又考えるということになるのではないか、こう思うのでございますが、あなたのお考えを私は伺いたいと思うのでございます。
  158. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 結核対策に関する根本方針を話せということでありまするが、これにつきましては、先ほど政府の方針は概略申上げたつもりでありますが、更に根底的にどう考えるかとのお尋ねに対しましては、一人の結核患者もなからしめる、それが国の根本対策でなければならと思います。今日科学の進歩、医学の進歩を十分に推進して参ることによつて、将来結核という病気を地上からなくするというところに私は理想があると思います。  それから児童の問題でありますが、仰せのように児童問題につきましては、その福祉行政の面で厚生省、教育行政の面で文部省、労働行政の面で労働省、犯罪保護観察及び人権擁護、矯正の面で法務省と、各省所管行政に分れておりまして、これが法律的運用につきましては、従来政府において慎重に検討を加えて参つたのでありまして、昨年七月制定されました青少年問題協議会設置法に基きまして、総理府に中央青少年問題協議会、及び都道府県、市町村にも同様のものを設置いたしまして、青少年の指導育成、保護矯正に関し総合施策の樹立、関係行政機関相互の連絡、調整を図ることにいたしたことは、私から申上げるまでもなく御承知であろうと考えます。併しながら児童行政を強力且つ総合的に推進するために中央にそのための行政機関を設をけること、或いはいずれか一つに統合することは、児童行政が各省それぞれの行政の一環でありまする点から言つて混乱を招きやすく、児童行政全般の推進上どうかと考えられるのであります。現在各省に分散しております児童行政を真に有効適切ならしめるためには、関係行政機関の連絡協調を密にすると共に、政府全体において将来我が国を担う児童の保護育成に責任を持つべきものでありますから、その意味におきまして、青少年問題協議会を活用すべきものと考えており、各省も積極的に協力しているものと思われますが、なお重複行政の排除、行政の合理化の見地から今後も検討を加え、改善すべきものがあればどしどし改善を加えて参りたい所存であります。  なお耐乏生活について御質問でありましたが、私は私の活動を可能にする範囲において耐乏生活をしておるつもりであります。
  159. 藤原道子

    ○藤原道子君 あなたに言つたんではないですよ。
  160. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 乏しき予算の配分のうちでございますので、誠に十分に行かんことは不本意に存じおります。併しいろいろお話の中に私としては教えられるところが少くなかつた。今後予算の編成に当りまして、十分注意をいたしたいと存じます。
  161. 青木一男

    委員長青木一男君) 文部大臣は先ほど委員長から交渉いたしましたが、まだどうしても手があかないようでございますから、質問を留保して頂きたいと思います。
  162. 藤原道子

    ○藤原道子君 あの文部大臣と法務大臣に対しましては……木村さんと犬養さんも留保いたします。
  163. 青木一男

    委員長青木一男君) 明日は午前十時から再開しますが、本会議関係がありますので、十時正確に開会いたしたいと思います。要求の大臣も出席を励行して頂きたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会