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1954-03-13 第19回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十三日(土曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————   委員の異動 二月十二日委員鶴見祐輔君辞任につ き、その補欠として、苫米地義三君を 議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            小野 義夫君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            伊能 芳雄君            鹿島守之助君            佐藤清一郎君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            高野 一夫君            宮本 邦彦君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            岡田 宗司君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            曾祢  益君            松永 義雄君            苫米地義三君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君   大 蔵 大 臣 小笠原九郎君    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  愛知 揆一君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君   政府委員    内閣官房長官  福永 健司君    自治庁選挙部長 金丸 三郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。
  3. 小林武治

    小林武治君 私は政府に対して二、三質問を申上げたいのでありますが、本朝は私は副総理出席を要求しておいたのでありますが、副総理が無断で外出をされた、こういうことでありまして、誠に遺憾に存じます。今後さようなことのないように特に一つ御留意を願いたい。その点委員長から御注意を願いたいと存じます。私は質問につきましては極く地味な質問でございまするが、政府のほうにおきましても、どうぞ一つ予算委員会質問などというものは、五分か十分熱いお湯へ入つているつもりでおればそれで済む、こういうふうなお考えでなくて、まじめにお聞きの上に一つ考えを願いたい、こういうように冒頭に申上げておきます。  最初に私がお聞きいたしたいのは、国家財政地方財政との関係でございます。我が国終戦後憲法並びに地方自治法によりまして、地方完全自治を布いたということになつておるのでありますが、これが果して事実であるか、こういうことであります。即ち政治は裏返せばこれは予算、又財政の問題であるのでありまするが、かかる意味におきましては、地方には自主独立行政を行なつておるということは言えないのでございます。即ちこれを私は歳入の方面から見ますると、我が国の租税は国税地方税を合せれば約一兆一千億になるのでありまするが、このうち国税は実に七千五百億円でありまして、全体の七割を占めておるのであります。従いまして地方税は残りの僅かに三割、即ち三千四百七十億に過ぎないのであります。而も一面歳出方面を見ますれば、国の歳出は九千九百九十五億円、こういうことになつておるのでございまするが、これに対して地方歳出金額は実に九千六百五十億円と、こういうことになつておるのでありまして、いわば地方財政は非常な膨脹を遂げまして、殆んど国家財政と対等の立場にまで伸びておるのでございます。従いまして国といたしましては、財政を論ずる上におきましては、いやしくもこの中央地方を合体して一つのものとしてお考えになるのが当然であると思うのであります。而も歳出がかように殆んど同額である、こういう事態に対しまして、地方税収がどうなつておるかと申しますれば、全歳出に対する税金の割合というものは、府県と市町村を通じまして、平均して三六%に過ぎないのでございまして、而も府県に至りましては僅かに二四%に過ぎないのでございます。然るに国はどうであるかと申しますれば御承知のように全歳出の九割というものを国税並びに専売益金を以て賄なつておる、こういう状態であるのであります。即ち地方国庫依存する分というものは、地方交付税或いは国庫支出金及び地方譲与税等を加えまして、実に四十百四十億円、こういうふうな厖大なものでありまして、実に地方財政の全歳出の四三%が国庫依存しておる、こういう状態であるのであります。これを別の言葉で言いますれば、政府は、日本の税そのものが国に偏在をし過ぎておる、従つて地方自治というものは名だけではないか、こういうふうに私は考えるのであります。私は過般の本委員会におきまして、陳情政治の弊を説いて、これをやめるということについて政府のお考えを願つて来たのでありますが、これらの陳情が本当に多い真の原因というものは、実に税源国家偏在しておる、従いまして何事についても地方仕事をするについては一々中央に依頼する、又中央の一顰一笑にこれを委ねておる結果第あるのであります。別な言葉で申しますれば、中央はむやみに取込んでおる。そうして何でも地方に頭を下げさせる。こういうような状態国家財政地方財政関係ではないかと、かように考えておるのでございます。この意味におきまして、真に地方自治を徹底して、地方責任において政治を行わせる、こういうためにはどうしてもこれらの税制そのものに根本的な改革を与えなければ地方自治などということは、いわば百年河清を待つに等しいものと思うのでございます。このたび政府におきましても多少地方税につきまして、或いはこれを三百億に殖やした、こう言つておるのでありますが、全体から見ますれば、僅かに手直しをしたのに過ぎないのでありまして、この点に関しまして私は中央財政地方財政との調整、又税の偏在是正、こういうことにつきまして政府は真に私はこの際何とか考えなければなるまいと思うのでありまするが、これらの点につきまして大蔵大臣及び自治庁長官のお答えを願うものであります。
  4. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 小林さんの御意見誠に御尤もでございまして、この点について私どもともとと考えなければならんと存じます。実はこの点につきましては、最近地方財政は非常に膨脹しておるということについて私どもも心を苦しめておるのでございまして、同時に地方財政につきましてもできるだけ圧縮方を希望しておるのでありますが、同時に財源措置につきましても、今御指摘のように何らかの借地を必要といたします点から、かねて地方制度調査会などの答申案の次第もありまするし、又過日の税制調査会等意見もありまして、それらをできるだけ取入れたのでございます。従つて今度は又たばこ消費税と言いますか、これは新たに恒久財源と言いますか、固有財源としてたばこ消費税を廻すことなども一つ考え方でございますが、同時に交付税及び譲与税特別会計を作りまして、ああいつた制度を漸次拡大して参りたい。これは地方制度調査会等答申及び税制調査会などの答申にも、それぞれ遊興飲食税及び入場税という問題がございましたが、一応段階といたしましては、入場税の問題を本年取上げたような次第で、これは九割地方に戻す、そうしてこの配分方を人口割にするということで、比較的財源の分配として公平に行くように実は考えたのでございます。併しな地方同士の間、地方公共団体との間、そういうような中柄についてもいろいろこの事柄について、今度の一譲与税交付金制度で若干調整ができると思いますが、併しいずれにしましてもなお十分とは考えておりませんので、今後とも引続きこのやり方を拡大して参りたい、かように考えておる次第でございます。併しどうも地方財政が昨年私は確かに八十何億に膨張したと思いますが、これは非常に膨張して困つたものだと思つたのですが、御指摘のように本年は更に膨張いたしておるというような状況で、これは地方におきましても制度上にも少し改むべき点も多々あるのじやないかと思いますが、併しやはり中央地方との関係については、更にいろいろ今まで両方の調査会答申の次第もありますけれども、更に一層掘下げた研究が必要じやないか、かように考えておる次第であります。なお私の足らんところは或いは主計局長より御答弁いたさせますから、さよう御了承をお願いしたいと思います。
  5. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 御指摘のように地方財政が非常に自主財源が少いということは私ども全く同感なんであります。従つて今度の改正におきましては、自主財源を拡充するということを一つの大きな狂いにいたしておつたわけであります。或る程度その目的は達せられた。依存度からいたしましても今までの制度の大体五六乃至十七%の依存度であつたものが五〇%程度依存度に下つたということになつておるのでありますが、併しその下つた三十九年度の財政計画が、まだ御指摘通りであることも申すまでもないことなんであります。ただ御承知のように地方財政財源というのは、一つ税収であり、一つ譲与税及び交付税収入であります。もう一つ国債支出金収入であり、最後には地方起債というものがまあ収入になつておる、財源になつておるわけであります。まあ実は国庫支出金の形で出ておりますものは本当は全部交付税にまとめられるならば一番いいのじやないかと、こういうふうに考えておるわけであります。大体シヤウプ勧告のときの構想はそういう考え方であつたように思うのでありますが、その後やはりいろいろな事情がありまして又これがだんだんと交付金の中から抜けて行く傾向があるので非常にまあ弱つておるわけであります。その一番大きなものは義務教育費国庫負担という形のものでありますが、併し、これもそれ自体考えるならば成るほど抜くべき理由があつた考えられるので抜けているのであります。こういう工合に抜けて行くべき理由があつて抜けて行くものは止むを得ないといたしまして、残つたものは成るべく自主的にという考え方で、今度は平衡交付金考え方地方交付税という形にいたしまして、国からは一定の比率でもらい放しと、その代り成る程度不足程度はもうこれは国に厄介をかけない、従つて平衡交付金が足りないからと言つて知事連中が東京へ出て来てわんわん言うという形は今度はとらせない、非常に不足して参つた場合にはこれは制度の上で考えると、こういうことにいたしまして、国との相関性相当程度まあぶち切つたつもりであります。それからして、更に交付税を含めて本来の独自の財源ももつとうんと多くいたしましてやればいいのでありますが、併し、この地方税財源として考えられているいろいろのものを考えて見ましても、なかなか偏在度の激しいものばかり多いのでありまして、どの税源考えて見ても、富裕の自治団体偏在をする。偏在をするものですからして、どうしてもその一部分を交付税譲与税の形にまとめておいて調整するという形にしなければならん。そういう工合にいたしますと、成る程度中央への依存度の最終的な断ち切りまではできないものがある。こういう形になつて、なかなか十分に完全に地方財源というものが国と分離した独立のものにはなかなかなりがたい状態にあるわけであります。ただ私この地方債地方財源相当大きな比率を占めております近年の地方財政制度というものについては、私も非常な疑念を持つておりますのでありまして、勿論地方債財源により充てられるいろいろな支出というものは、これは適債事業で大体あるわけでありますけれども、こうして年々財源相当大きな部分が起債という形で賄われておるということは、或るところまで繰返してこの行き方をいたしますと、或る年次に達しますと、今度は利子と元金と元利償還が大体起債と一ぱいになつてしまう。従つて起債元利償還のために使わざるを得ないという形になるということが出て参りますので、地方財政の本当の現実のあり方という意味においては、相当これは今後考えなければならん。従つて起伏というものに余り頼らないで、本来の財源というものを地方財政のために考えなければならんのじやないか、こういうふうに考えておるわけであります。今後もなお御指摘の線に沿うて、一層努力して参りたい。
  6. 小林武治

    小林武治君 只今起債の分は、私あとで述べるつもりでおつたのでありますが、よく中央財政のしわが地方財政に寄せられる。こういうことを言われているのでありますが、この起債などは最も好適な例でありまして、大蔵大臣中央はいわゆる健全財政と言うておられるのでありまするが、毎年千億前後の地方起債があるというようなことは、全くこれはしわ寄せの一つに違いないのでありまして、これらの点も只今お話のように私は今後の地方財政というものを思う場合には、中央さえ何とか締めくくりがつけばいいというふうな、ややともすればそういう傾向のあることについて、大蔵省に私は十分反省を願いたいと思うのでございます。どうも大蔵省のやり万は、ほかを抑えるというふうな非常に強い権力を持つておられるのであります。例えば地方自治庁のごときも、いわば地方団体大蔵省との間のサンドウイツチ中身のような恰好になつております。その自治長庁が現在どちらかと申せば、極めて頼りない、サンドウイツチ中身は極めて薄いということを言うても差支えないと思うのであります。それで私は只今自治庁長官のおつしやるように、これらの国津支出金が来年度もなお二千六百億もあるということは、これは私は地方自治でなくして中央集権政治だと、こう言わざるを得ないのでございます。これらの点につきましても地方自主性を認めるということについて、政府の各部におきましても十分の一つ反省をして瞬く必要があると思うのであります。而してとにかくこの地方財政膨脹というものが、国家財政膨脹より更に恐ろしいものがあるということを、我々は考えなければならんのでありまして、政府予算はいやしくもこれは大蔵大臣が所管されているので、一人の意思によつて或る程度の統制がつくのでありまするが、地方自治団体におきましては県だけでも四十幾つもあつて、めいめいこれをやつている。而も現在地方自治というものは極めて中途半端なものである。先ほどから申したように、地方自治であるものやら、中央集権であるものやらわからない極めていいかげんな状態にあるのでございます。自治法などという立派な法律はあるが、これらの法律は殆んど名のみであると私は言わざるを得ないのでございます。従いまして、地方自治体というものは、殆んどこの運営について誰が責任を負つておるかということが極めて不明確であるのであります。県知事は足りなくなれば政府に泣きつく、そういうふうなことである。而も泣きつかれた政府はろくな監督権も持たない。そうしてそのような結果としては中央財政を幾ら引締めても地方財政に尻が抜けている、こういうふうな現状にあるわけでございます。この点につきましては私は政府の御見解を伺いたいのでありまするが、現在のような中途半端な地方自治団体である限りはもう少し政府が何とか……、政府からかようなたくさんの支出をしているということにつきましても監督と申すか世話と申すが多少の……、今のような手放しのような状態地方であつては私はなるまい、こういうふうに私は思うのでありますが、この点についての私は政府見解を伺つておきたいと思うのであります。
  7. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 自治というものを考えます場合に、私は考え方といたしましては国がやかましく言わない。先ほど問題になりました財政の問題におきましても面倒を見られるだけのものは見る。併しそれも成るべく国との依存を切るという形にして置いてあとを任せる、こういうやり方が一番正しいと思うわけであります。現在の自治法はそういうふうな考え方に則つているわけでありますが、併し現実にやつて見た結果がどこに欠陥があるか。これはいろいろな問題があると思います。制度自体にもあると思いまするし、今の自治団体運営の当事者の側にもあるかも知れません。又自治団体の住民の側にもあるかも知れません。とにかく御指摘のようないろいろな欠陥の面が現れているということは私も肯定せざるを得ないわけで、そういうことを考えまするにつれても今の自治団体というもの、殊に府県の形の自治団体というものがああいう形のものでいいかどうかということに非常に懸念を持つているわけでありますが、併しああいう形の自治団体をなお肯定しておりまして続いて行くという限りにおきましては、国が面倒を見る範囲においては何とか国の考え方の線に沿うて運営をしてやつで頂くというような何らかの方法を講ずる必要があるのじやないかというような考え方から、今いろいろ検討をいたしているわけであります。併しこの行き方、この考え方も行過ぎますと自治というものの侵害になる。従つて育てて行かなければならない自治の方向というものを却つて逆戻りさせる、逆行させてしまうというようなことになつてはならないから、その辺両面を勘案しながら今具体的な方針について検討いたしております。
  8. 小林武治

    小林武治君 今の地方の問題につきましては、どうも政府地方制度調査会というようなもので研究されているのでありますが、中央財政の問題、或いは地方財政の問題というものはこれは一体として考えなければならん。従つて私は国全体としてこれらの問題を考えるような私は機構が……、今のような委員会等もこういうふうな考え方で作らなければ、小さな枠の中で制度をどうするこうする、或いは地方財政をどうするこうするというようなことでは私はなるまいと思うのでありまして、よろしく私は国全体の立場において地方制度も十分考えるべきであると思うのでありまして、これについて今後の一つのお考えを煩わしておきたいのであります。  なお私は続きまして、只今自治庁長官府県の性格、こういうことについてお話がありましたのでありまするが、財政の膨張は特に私は府県において激しいものがあると、こういうふうに思うのでありまして、現在九千六百億円予算の中でも、府県割合は五千億円を超えておるという状態であるのでありまして、どうしても私は府県の問題というものは更に私は根本的に考え直す必要がある、こういうふうに考えるのであります。それにつきましてこの一月、総理大臣は静岡で新聞記者に、知事官選にしたらいいと思うというようなことを発言されたと聞いておるのでありますし、又自治庁長官は過般の知事会議においてさような私見を述べられておる、こういうことであるのでございます。全く私は地方財政膨脹するこの一半の理由知事選挙にある、こういうことを私も遺憾ながら言わざるを得ないのであります。即ち知事公選ということは終戦後極めて立派な制度として来たのでありますが、その結果は必ずしもいい結果を収めておらん。即ちこの知事が次の選挙を常に念頭に置くということが極めて行政の執行に弊害を与えておるということは顕著なる事実であるのであります。私は徒らにこの反動逆コースの言葉として知事官選というような言葉を葬むるべきでないと思うのであります。これらにつきましては国会方面からは何らの発言がなされておらんのでありまするが、併し私は折角のこの公選というものはやはりそれぞれの長所がありまして、これも捨てがたいものがあるのでございます、即ち従来の官選時代におきましては知事というものの地位は極めて不安定である、一年二年おつて而も常に政府を目標として仕事をするために、県民利福を図らなかつた、こういう嫌いがあつたのではないかと思うのでありますが、これに対しましては公選そのもの県民知事である、従つてその地位も安定し、県民に両つて常に仕事をしておる、こういうような利点は捨てがたいものがあるのでございます。かような意味におきまして、官選の弊はこれを避ける必要があるし、又公選の長はこれを残す必要がある、こういうふうに私は思うのであります。なお知事公選弊害といたしましては選挙をすぐに気にする、又常に県民のことばかりを考え政府には尻を向けて仕事をする、即ち場合によると国家大局的仕事にもややもすれば協力において欠くることがある、こういうことも私は公選弊害である。こういうふうに考えておるのでありますが、これらを一ついろいろ考えますると、今の知事公選につきましては、実はかようなことをしたらどうかというようなことを私は考えておるのであります。即ちいろいろの議論はあろうと存ずるのでありまするが、現在の知事は次の選挙限つては立候補することはいけない、こういうふうな制限をすることが暫しできまするならば、知事というものは十分公選利点も伸ばせる、而して官選の弊も防げる、こういうふうに思うのでありまして、かようの方法は如何かというふうに私は考えるものであります。即ち、知事は次の選挙には出られないような制限をすることが如何か、これについて私は政府はどのようなお考えを打つておるかということを一つておきたいのであります。
  9. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) いろいろ御意見を伺いましたわけでありまするが、知事官選という話がありましたので、一応考え方を極く簡単に申上げておきたいと思うのでありますが、実は官選官選と平たく通俗に言われておりますけれども、私が考えておりますのは、今の公選制度に対して、非常に自分疑惑を持つておる、こういう考え方をいろいろの機会に個人の意見として表明をしておるわけであります。そういう考え方の出て参りましたのは、大体小林委員が御指摘になりましたと同じ気持でございますが、私がこのたびの行政機構改革に当りまして、いろいろな国の出先機関整理ということを考えて、これを府県にうまく統合できないかということを考えた場合に、どうも今の形では国の出先機関もなかなか整理ができない。従つて国中央厖大なる機関が複雑錯綜して、国民に利益を与えるよりも迷惑をかけておる面が多いのじやないかという機構の面から来る考え方一つと、それからしでいま一つは、御指摘のように財政の面から来る考え方一つあるのでありまして、今年の、二十九年度の財政計画を策定するに当りまして、過去の財政計画の上で不十分であつたと思うものを相当程度是正はいたしたわけであります。それからして新らしく殖えると思いますものは、それにプラスをいたしまして、今年の財政が昨年に比べて五百三億程度の増加になつておることは、御承知通りであります。併しこの二十九年度のこれだけ国緊縮財政でありながら、地方がとかく理由があるからということで、拡大した財政規模で果して今このやかましく言われておる地方財政の窮乏というものが解決できるであろうか、それからして又あつちこつちの府県相当数赤字の予想される府県があるわけでありますが、これらのものが赤字がなくなるか或いは減少することができるだろうかということを考えるときに、非常に自分としては疑惑の念を持たざるを得ない。やはりこれだけ措置をしながら、同じように赤字が出て来るのじやないか。それほどこの赤字がなくならないのじやないかという疑惑が非常にあるわけであります。そういう疑惑が若し現実に出て来るとするならば、私は制度の面に相当大きな欠陥が、原因が伏在しておるということにならざるを得ないのじやないかという考えを持つております。そういうようないろいろな面を併せ考えまして、今の公選制度というものに何か検討し直して見る必要があるのじやないかという考え方をいろいろの機会に申上げておるわけであります。その考え方、その矯正策の一つとして今の任期四年たつた知事は二度と、次の選挙だけは立候補しない、させないという考え方一つのこれは矯正するには妙手であるとは考えるのでありますけれども、これは併し選挙権というものをそのような理由で簡単に制限ができるかどうかというようなこと、これは選挙権、被選挙権の基本に関する問題でもあり、なお十分検討いたして見ませんと、ここで早急に個人としての考えも申上げるわけに参らないのでございますが、なおよく御趣旨を体して研究をいたして見たいと思います。
  10. 小林武治

    小林武治君 私は今の点は政府即ち緒方副総理の御意見を伺いたいと、かように思つてつたのでありまするが、どうぞ一つかような問題をまじめにお取上げになつて政府としての見解もお聞かせ頂ければ、我々が今後いろいろのことをして行く上において非常に結構なことであると思うのでお願いしておきます。  次に私は、占領政策の遺産と申しまするか残したいろいろのことについて伺いたいのでありまするが、占領政治というものは実はもうすでに独立して三年になろうとしておるのに、まだ大してこれが是正されておらない。こういうことであるのでありまして、このたびの警察とかいろいろな問題も徐々にその方向に進んでおることと思うのでありますが、そのやり方は極めて私は微温的である、又ゆつくりし過ぎておる、こういうふうに思いまして、これはまだ私どもは占領政治の行過ぎの中に、ぬるま湯につかつておるような気持でおるように思うのでございます。これらの点につきまして二、三申上げたいのでありまするが、殊に私どもはアメリカの占領政策というものが日本の政治経済にとどまらず、日本の社会制度にまで根本的な変改を加えたということを極めて遺憾としておるものであります。殊に御承知のように、我々の伝統であり、我々の社会の根本をなしておる家族制度等にまで手を加えられたということは極めて私は行過ぎのものであると思うのであります。即ち御承知のように、これら我が国のいわゆる家族制度というものにつきましては、いろいろの弊害があるということは事実であるのでありまして、私どもはこれを近代に適応するように直すということの必要は認めるのでありまするが、現在のようないわゆる民法というものは極めて私は日本には不適当である、かかることは延いて日本の再建を妨げるものであると私は信じておるのであります。即ち現在の家督相続をなくした、又財産相続等も均分にしてしまつた、こういうようなことが果して私は適当であるか、こういうことを疑わざるを得ないのでありまして、殊に日本の農村等におきましてはいわゆる零細農地の関係におきまして各般の問題も起きておるのでありまして、これらにつきまして私は日本の自主並びに再建のために民法を改正して或る程度の家族制度の伝統のいいところを取戻す必要がありはせんか、かように思うのでありますが、これにつきまして一つ法務大臣の御意見を伺つておきたいのであります。
  11. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答えを申上げます。お話のように日本の家族制度は新憲法に基きまして民法上非常な変化を来たしました。只今お話がありましたように、戸主を中心とする相続の制度、又財産の均分化をして相続する制度というものについてまあ適渡期において大分摩擦のあることは確かに仰せの通りでございますが、一方新憲法におきましては個人の尊厳と男女の平等ということを基本としておりまして、これと睨み合してどういうふうにするかということは、よほどこれは慎重を要することと存じますが、近く実は民法全般に亘つて改正すべき点について法制審議会の民法部会に諮問をいたすことになつておりますから、そのときに十分に議を練りたいと存じております。殊に御指摘のように農業資産、これが均分化されまして零細農家を促進するというような傾向は確かに認められますので、この点については特に議論が集中されることと存じますが、これを要するに、確かに過渡期において摩擦はございますけれども、家督制度の根本の問題でございますからよほど膜壁にいたしたい、是正は結構なんでありますが、よほど時と冷静な判断をしませんと、丁度真中へ戻したつもりで右へ行つてしまう場合がよくありますので、この点法制審議会にかけるときにも特に注意をいたしたいと思うわけであります。
  12. 小林武治

    小林武治君 これは根本的な問題でありますから十分慎重に御討議をなさるということは必要でありますが、ただだらだらこれを放つて置くということの一つないように願いたいのであります。なおこれらの法律関係しまして、例えば商法等におきましてもアメリカの飜訳条文というものが非常に多い。何かわけのわからん累積投票或いは少数株主の保護とか、非常に翻訳的の条文が多いのでありまするが、これらも私は日本の実情に合うように、即ち翻訳法律でないように成るべく早く手立てをして頂きたい、かように考えておるものでありまするし、そのほかにおきましても法規で整備を要するものは数限りもないのであります。例えば最高裁判所の裁判官の国民投票だとか、或いはろくに行われもしない自治法の各種の規定とか、いろいろなものがあるのでありまするが、法規全般に亘りまして今の法規は難解で殆んど読めない、こう言うても過言ではないのでありまするが、これらも我々にわかるように、日本人の法律として一つ是正して頂きたいと思うのでありまして、全般のことについても一つ意見を伺つておきたいのであります。
  13. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。只今商法のお話がございましたが、これは商法のみならず刑事訴訟法でも同じ問題が起つておりまして、大陸法的な伝統の上に急に英米法的なものが加つて来た。それを再検討するというので御承知のように刑事訴訟法も法制審議会の刑事訴訟法部会に諮問いたしまして、これは一部昨年改正をいたして御審議を願つたようなわけでございます。商法は殊に米法的な色彩が強くなつております。今御指摘の累積投票なども非常に実際上は複雑で二ざいましてむずかしい。又米法は殊に少数株主というもの左非常に重んじろ伝統に立つておりまして、これが戎が国の今の少数株主の知性の程度から言うと、アメリカにおけるよりもごたごたが起る。アメリカでもときどき起つているようでありますが、日本でも起る。こういう問題について只今申上げましたように民法と同じように法制審議会の商法部会に近く諮問をいたしたいと考ております。ただ少数株主の弊害が多いから少数株主えの尊重の念を全然急角度に減らすということも、又一方考えられる点があるのでございまして、この点は諮問を慎重にして見たいと思います。例えばこの頃いろいろ起りまする会社についての背任の問題でも、もつとやつぱり日本では株主に対する会社の責任というものが頭に滲み込んでいいのじやないかという点から考えますと、少数株主のいろいろ発言権の強い点に弊害がありますけれども、どの程度中庸を得るということが法務省だけで一概にきめていいかどうか。これは各界の知識人に十分に聞きたいと思つておりますが、これに関する諮問は最近のうちに行うつもりであります。さよう御了承願います。
  14. 小林武治

    小林武治君 私は次に行政整理の問題についてお伺いしたいのでありますが、昨年来政府行政整理ということをあれほど大声叱呼しながら、現在においては殆んど竜頭蛇尾ではないか、或いはしつぽでもあるかどうかということを疑わざるを得ないような状態であるのでありますが、人員の整理におきましては多少の手段を講じられたのでありますが、これは役所というものは人員を整理しましても仕事を減らすとか、或いは機構整理する、こういうことをしなければ必ず又人の殖えることはきまつておりますが、機構等につきまして何らかの今の結論を持つておられるか、又この国会において何らかの法律を出されるか、こういうことについて伺つておきたいと思います。
  15. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 行政改革一つの柱をなします機構の整備の部分が御指摘のようにまだ十分成果を挙げておらんのでありまして、誠に恐縮に堪えないわけでありますが、ただ警察制度、人事院、そういうようなものが幾らか考えられる程度であります。ただ私も機構改革というものに当つて見まして感じましたことは、今度の機構改革では出先機関の簡素化ということが一番効果が挙る方法であると考えたのでありますけれども、なかなか今申上げましように制度の根本にまで遡つて、メスを入れるのでないと、容易に姑息な策では実効が挙らないし、又実現ができない。国の中央機構も同じことでありまして、ただ個々の機構の簡素化、例えば或る省の或る局を統合して一つにするというようなことを考えましても、それ自体だけ切離して考えますと、非常に理論立ての困難のものになつてしまいまして、機構の簡素化はどこまでも統合的に、総合的に見て全体として、これを縮めて簡素にして行くという考え方に則つて行きませんと、国会の御承認がなかなか得にくいというような事情で、一応手をつけて見ましたのでありますけれども、これは本質的に根本にもつと立入つた検討をしなければならない。短期間では容易にできないということで、なおいろいろな方面意見を聞きながら検討をいたしておる段階になつておりますので、是非今会期中に間に合せたいという強い意欲を持つてつたわけでありますけれども、今日の状態では会期の関係などで今会期には或いはむずかしいのではないかというような感じも持たざるを得ない状態に今なつておるわけであります。併し考え方といたしましては、今申上げましたようにむしろ根本に遡つた徹底的な機構の簡素化というものを是非実現したい強い希望を持つておるわけであります。
  16. 小林武治

    小林武治君 この点についての政府やり方は我々としては極めて遺憾としておるものであります。ただ徒らに新聞等で人騒がせをしただけであるというふうな感を抱くのでありまして、どうしても緊縮財政には緊縮の官庁機構にするということが当然でありまして、殊に私がもう一つ伺いたいのは、一体政府出先機関をどういうように整理なさるつもりかということについてはつきり伺つておきたいのであります。
  17. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 出先機関整理いたします基本の考え方一つは、国の事務でなくつて自治団体に任される事務は自治団体に任してしまいたいというのであります。それからしてこれが幾つもの出先機関を置いておつて、まちまちにやつておるものは一本にまとめてしまいたい。それからして国の出先機関が例えば管区の局、それから地方の局或いは例えば大蔵省所管の財務関係にいたしますと、財務局があり、それから下に各府県の財務部がある、こういう非常な段階のあるものは、どこかの段階が外せるのではないかというようなことをいろいろ検討いたしまして、とにかく出先機関を数においても、機構の形においても簡素にした、縮小されたものにしたい、そういう考え方を持つておるわけであります。
  18. 小林武治

    小林武治君 私はこの際特に労働大臣に伺つておきたいのでありますが、この地方出先機関整理の一環としまして、労働基準局或いは監督署というようなものを地方機関委任をするというふうな話があつたのでありまするが、その後これが沙汰やみとなつておるという噂も聞いて我々としては大いに失望しておるものであります。私は実際のことを申上げます。この委員会の中にもいろいろ御意見があろうと存じますが、およそ地方の中小企業におきまして一番苦手は、この労働基準監督署であるのでございます。これは善悪はとにかくとして、私は事実を申上げておるのであります。係官がややもすれば非常識な、又杓子定規的に規定の適用をやりまして、このために中小企業が非常に困つておるのでありまして、これは労働大臣もよく御承知と思うのであります。労働条件も無論大事なことでありまするが、一方又日本としましては、企業の生死ということもこれは無論重大な問題であるのでありまして、労働基準法そのものは私は誠に立派な結構な法律だと思うのでありまするが、併し日本の今の中小企業或いは商業等において、果してこれに堪え得るような妥当な法律であるかどうかということにつきましても若干の疑問を持たざるを得ないのでございます。中小企業につきましては、いろいろの条件も、又地方的の特色もあるのでございまして、無論法律はできるだけ全国公平に一律に適用する必要はあると思うのでありまするが、その間にもおのずから又やりようがあると、こういうふうに思うのであります。この際私は基準局の機関委任というものはおやめになつたのか、又これらの運用につきましては例えば中小企業等につきましても何らかの面でこれらが生きて行かれるように多少の手心と申しますか、そういうものがあり得るものかということを一つつておきたいのであります。
  19. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 只今指摘の都道府県労働基準局並びに監督署の機構の点でございますが、これを只今指摘のように都道府県に委譲すべきものであるという御意見も伺つておりますが、御承知のように、労働条件というものは全国画一に定めらるべきものでございますし、はた又企業の競争条件を均一にすることも必要でございますので、私どもはやはり基準行政というものは国の機関たるべきものであると考えております。又現在国際労働条約におきまして、この労働基準に関する監督事務というのは国の直接の機関の管理監督下に置かるべきものであるということを語つてございますので、これをいじるとすれば機関委任であり、国の出先機関の職権を持つ、権限を持つところのその部分に対するこれは機関委任ということが考えられるというふうに考えておるのでございますが、種々勘案いたしまして、やはり機関委任と申しましても何か無条件に地方に委譲するというような感覚を持たれる点もありますので、なおこの点については慎重に事態を検討したいと考えておるのでございます。  なお只今後段に御指摘の、この基準法の適用によつて中小企業が非常に疲弊させられるというような御意見、或いは非常に困難を感じられるような御意見につきましては、私どもとしては基準法施行そのものについていろいろ検討いたしておるのでございますが、御承知のように、基準法施行規則或いは安全衛生規則、女子年少者労働基準規則、或いは技能者養成規程というような非常に厖大な諸規定がございまして、それが先ほどからもお話のように、全く占領下の特殊な所産であつて我が国の実情に適せざる点があり難解を極めており、はた又法令に根拠なしと思われる、非常に薄弱と思われるような根拠に基いての諸規定もあるのでございまして、こういうものを  一つ思い切つて整理をしよう、煩雑に過ぎるものは極力認可、許可、届出については簡素化する、或いは根拠薄弱と認められる規定はこれを廃止するという考え方の下に、只今中央労働基準審議会に諮問いたしておるのでございます。その中には物品販売を取扱うような業者におきましては、従来十人未満の場合は除外例を認めておりますのを三十人未満にするというふうな改正案も含まれておりまして、こうした諸規定が非常に厖大でありますために、その届出等について、只今指摘のような監督官署において非常に官僚独善の弊を身につまされるほど感じさせられるというような、そういう事情がなくなつて行くのではないか、この規則が改正されることによりまして、只今指摘のような点はよほど緩和されるようになるのじやないかというふうに期待しておる次第であります。
  20. 小林武治

    小林武治君 私は緒方副総理に伺いたいのでありますが、代りに一つ自治庁長官が御用だそうでありますから一つつておきたいのでありますが、昨今いわゆる疑獄、こういうようなものは非常に遺憾なことでありますが、こういうような、政治家に若しかようなことがあるとすれば、この大きな原因の一つ選挙に非常に金がかかり過ぎる、こういうことに大きな原因があると私は思うのでありますが、それにつきまして、私はこれらの疑獄をなくするということのためには、もつと政府も根本的に考えを持たなければいけない。こういうふうに思うのでありまして、これにつきまして、私は選挙方法につきまして、従来から言われておる小選挙区というようなものが若しできますれば、私は相当選挙費用の節約ができる、従いましてこれらは政界の粛正或いは浄化というようなことにも役立つのではないか、かように思うのでありますが、この際私は本当に疑獄事件等の抜本的な対策といたしましては、選挙制度を或る程度変えるという必要を感ずるのでありますが、政府はこの際小選挙区制をとる、或いは連座規定を強化するというようなことにつきまして、どういうお考えを持つておるか伺つておきたいのであります。
  21. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 選挙法の改正は、大体衆議院におきましても国会側がいつも主になつておやりになつておりますので、先般自治庁に対し、自治庁としての意見はどうかということのお尋ねがございましたので、私どもといたしましては一応意見提出いたしたわけであります。又選挙区制を小選挙区にするかどうかということにつきましては、なかなか早急に結論が得られませんので、この点につきましては改正意見は出しませんでしたのでありますが、連座制の点につきましては、これは一応もう少し今の規定を強化したほうがいいのじやないかという意味の、自治庁としての意見提出したわけであります。と申しますのは、どういう点かと申しますと、今の公職選挙法の第百九十九条にございます、法定費用を超過した場合の出納責任者の監督が十分であれば差支えないという規定の但書を取つてしまつて、出納責任者が超過をした場合も候補者が責任を負う、当選が無効になるというようにしたらいいじやないか。それから二百五十一条の一項及び二項に総括主宰者及び出納責任者がそれぞれ買収をした場合に、同じような規定があるわけでありますが、これも但書を削除するという形にいたしまして、それらのものの買収もやはり候補者に及ぶというようにしたらどうかという自治庁としての意見を出したような次第であります。
  22. 小林武治

    小林武治君 私は次に農林大臣にお伺いしたいのでありますが、先般の予算委員会におきまして、私は政府の現在の生産米価からしますれば、四月以降は消費者米価を上げざるを得ないようになるのではないかということをお尋ねしたことがあるのでありまするが、この点につきまして私は、国民が最も注目しておるのはこの消費者米価の問題であるのでありまして、先般の生産者価格から言つても、これをそのまま直せば八百数円にしなければ会計が持てない、こういうお話があつたのでありますが、これを如何なさるか、即ち米価の据置きを果して政府はやるつもりであるかどうかということを、特に伺つておきたいのであります。
  23. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 前回の委員会でも御意見がございましたように、二十八年産米の政府買入価格は、大よそ、いろいろの諸経費をこめますれば、石当り一万四百円に達すると思います。一万四百円の生産者経費を、そのまま消費者に持つてもらうということになりますれば、十キロ当り約九百円に相成ります。そこでまあ二十八年産米の消費者米価の決定に非常に困難を感じたわけでありますが、決して不健全なやり方ではなかつたと存しますけれども、消費者家計に及ぼす影響を重視いたしまして、たまたま食管会計に三百億前後の余裕を持つておりましたので、こういうふうな不時の際でありますし、この会計の余裕を持つて、消費者家計に及ぼす影響を少なからしめる措置をとることが妥当であろうということで、大体二十八年産米の集荷目標を二千百万石といたしました。その二千百万石の集荷による経費、これは一応二十八会計年度において処理するという建前をとりまして、十キロ当り七百六十五円の価格を決定いたしたわけでございます。そういうわけでございますから、従つて今後は非常に困難を感じて参ると存じますが、二十八、九米穀年度に関しまする限りは今日の消費者価格は維持できる、又食管会計におきましても、いわゆる赤字を生み出すことなく処理できる。大体食管会計が非常に窮屈になつてつておりますことは御承知通りでございます。そこでこの米穀年度に関しまする限りは米価改訂の必要はない、かように確信をいたしております。
  24. 小林武治

    小林武治君 私は只今の農林大臣の言明は信頼をいたしておきます。それで実は二十九年度の、又産米の生産価格という問題が起きて来るのでありますが、これにつきましては、政府予算では八千何百円というふうなものが計上してあるように思うのでありまするが、そういうことでやれるものかどうかというお見通しを一つ承わつておきたいのであります。
  25. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 小林委員の御懸念の通りでありまして、二十九年度産米の取扱方をどうするか、一面外貨の事情もかなり切迫をいたして来ておる。そういう事情からいたしまして、どうしても二十九年産米からの取扱方には、そういう全体の関係を考慮した食糧管理制度の改善を図つて行かなければならんのじやないか。そういうことで昨年暮から食糧対策協議会も設けて頂きまして、この出来秋に遅れることのない時期に、根本的な一つ方針を決定いたしたいと考えておるわけでございます。いろいろ各方面の御意見を十分伺つて決定をいたして参りたいと思います。非常に困難を感じておることは率直に申上げていいと思います。
  26. 小林武治

    小林武治君 私は最後に大蔵大臣に伺いたいのでありますが、実は予算そのものは緊縮予算と、一応緊縮予算と言われておるのでありますが、昨日この委員会の席上でも、これは相当なからくりと申しまするか、一兆を超しておる部分がある、これらも私は事実であると思うのであります。それでこれにつきましては、私は今後補正予算というふうなものは出すべきではないということを確信いたすものであり、又大蔵大臣も補正予算を出さない、こういうことをおつしやつておるのでありますが、併しいろいろ検討しますると、補正予算を出さざるを得ないようないろいろの要素があると私は見てとつておるのでありますが、私どもは果して大蔵大臣のこの言明に信頼しておつてよいかどうかということを、一つ御確言をここに願いたいと思うのであります。
  27. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 補正予算は、これを出さないと考えております。若し非常な事態が起つて、補正予算を出す場合が仮に起つたと、これは仮定のことですから答えなくてもいいと思いますが、それで答えますれば、かような場合には既定経費の節減を図つて、これをやることにいたします。
  28. 小林武治

    小林武治君 今の節減のお話でありますが、昨日のこの委員会におきましても、予備費の五十億については節約等の方法によつて埋める、こういうふうに申されたのでありますが、これは単に、ただ節約をしておくということでは、政府がただ勝手に、やつたかやらんかわからん、こういうふうなことになるのでありますが、真にこれを政府が実行する意図があるとするならば、私は実行予算等を組むのが然るべきであると思うのでありますが、それについての御意見を承わりたいと思います。
  29. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 特に実行予算というものを組みませんが、実行上さように即して参りたいと考えております。なおこれは小林さん、念のために申上げておきますが、二十八年度予算につきましても、丁度二月五日頃でございましたが、特に閣議を経まして……、二十八年の、どうかすると年度末に近付くと、いろいろ費用が使われる、特に昨年等は或る省で、省でと言うより庁でと言うほうがよくわかるかも知れませんが、たくさんのものを年度末に買入れておる、調度品でありますが、等の事実もございますので、そういうことについてはつきりとそれを、それぞれ指示いたしました。そういうふうなこともございまして、実行上の問題については、十分これを厳格にやるつもりでおります。又この方針は飽くまで貫くつもりでおりますから、大体御了承を願います。
  30. 小林武治

    小林武治君 只今指摘をなすつたように、各省におきましては、年度末に出張をされておる、或いは金が余つたから海外に行くということを、こういうことを頻々と聞いておるのでありますが、もつと一つ大蔵大臣は目を光らして、かようなことのないようにして頂きたい。同時に私お願いしておきたいのでありますが、真に二十九年度予算において、政府が節約をするというのを、国会において節約の金額を我我にお示しを願う、こういうことができるかどうか、伺つておきたいと思います。
  31. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これはお示しができると存じますから、お示しを申上げます。
  32. 小林武治

    小林武治君 以上で私の質問を終ります。
  33. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 副総理がお見えになつておらんので官房長官にお伺いしたいと思います。  昨日新聞を見ますというと、吉田首相が五月の半ば頃から外遊をするということが官房長官から発表されたようでございます。先ず私がお伺いしたいのは、それははつきりと首相からそういうことがきめられてあなたのほうに伝えられておるのか、そしてすでにこれについては何らかの具体的な計画が立てられたものであるかどうか、その上であれだけのことを御発表になつたのであるかどうか、お伺いしたい。
  34. 福永健司

    政府委員(福永健司君) 吉田総理が外遊いたしますということにつきましては、前々からいろいろ取沙汰等もされておるわけでございますが、本人といたしますと、適当な時期に一度参りたいという希望は持つておるわけでございます。昨日私が申しましたことは、その前に吉田総理に会いまして、皆さんも御承知のごとく、一部に早期外遊説、具体的に申しますと四月十五日頃に出発する云々というような報道等がなされましたので、こういうことに鑑みまして、或る程度総理の本当に考えていることを明らかにすることがいいのではないかということを、私も申しましたし、そういうような意味総理が語りましたことを私は伝えましたわけでございますが、昨日申しましたことの大体の意味は、要するに、例え四月十五日というような国会開会中に外遊するようなことは考えていないと、こういうことでございます。一般の情勢上外遊することができる、又しようということにするとするならば。少くとも五月の半ば以降であると、こういうことでございます。ただ、すでに五月中旬以降に参るということを確定いたしまして、あちこちに通知するとか、その他只今お話のありました計画というお話がございましたが、詳細な計画等をすでに樹立いたしておりますというわけではないのでございます。少くとも国会開会中等には参ることはないと、若し参るとするならば五月半ば以後になるであろうと、こういう意味でございます。
  35. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 首相が外国に行かれるということは、私は必ずしも悪いとは思はないのでございますが、今日の政局を見ておりますというと、非常に複雑になつておるのであります。特に造船疑獄の問題がだんだんに拡大して参りまして、すでにたくさんの船会社、或いは造船会社の社長重役たちが逮捕されておる。又これに連なりまして、自由党の副幹事長の有田二郎君も一度逮捕された。更に又元通産大臣をやつておりました、これは吉田内閣の閣僚であつた横尾龍氏がやはりこの問題で家宅捜索をされた。又自由党の参議院の国会対策委員長であつた西郷吉之助君も、この問題に関連いたしまして取調べを受けておる。最近飯野海運の社長の俣野健輔氏が逮捕されてから、世間におきましては、これは非常に拡がるだろうと、こういうふうに予想されておるのであります。すでに又中曽根君から、大野国務相或いは石井運輸相の名前も指摘されておるようなわけでございまして、今日これらの問題が内閣の閣僚に波及しないとも限らないような情勢である。吉田首相はすでにこの予算委員会におきましても、全貌がわかつたらば善処するというようなことを、育つておられるのであります。私どもはこの問題が今日うやむやになることはないであろうと思うし、又今までのことから総合して考えて見ましても、この国会の後期から、或いは国会直後にかけまして、内閣等にも及ぶかも知れないような情勢にあると考えるのであります。そのときに首相がそういうことについては何らお考えなく外へ行かれるということは、どうも私どもとしても、又国民としても、受取りにくいことであろうと思うのです。政局が安定しておる、とにかくその場合に首相が国際的な用件を帯びて行くということは、これはその事柄の如何にかかわりませず国民も納得することであります。併し、内閣自体特に自由党自体に対しましても、いろいろな問題がかように発展いたしておる折柄、こういうように首相が外へ行かれるということについては、どうかと思われるのでありますが、まあこれは福永さんにお聞きしてもはつきりお答えにならんかも知れんが、この造船疑獄の問題が内閣に波及する見込は全然ないと、こういうお見通しの上に立つて首相からこの計画が示されたものであるかどうか、その点念のためにお伺いしたい。
  36. 福永健司

    政府委員(福永健司君) 先刻申上げましたように、参るとするならば五月中旬以降であろうと、国会開会中等に出掛けるというようなことはないということを明らかにいたしましたわけでございますが、すでに幾たびか吉田総理自身から申上げておりまする通り、今御指摘のようないろいろの事件は、これが一日も早く明らかにされることは、政府自体も最も希望するところでございまして、従つて、先ほど御指摘のような外遊等につきましては、安定した政局の上に立つてそういうことが行われることが望ましいということは、吉田総理自身においても強く考えておるものと私も思うわけであります。昨日の場合におきまして、そういつたことと関連して云々ということで話が出たわけではございませんが、岡田さんは今政局に大きく影響を及ぼすのではないかというような観測の下にいろいろのお話をなすつておられるのでございますが、政府におきましてはさような政局に大きく影響するような事態ではないと考えておりまするが、その辺は幾らか違うと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、そういうことと関連してそれではいつとかどうこうという意味総理は言つておるわけではないのであります。先ほど申しましたような、少くとも国会開会中乃至その直後と申しますか、八日まで会期でございますと、十日前後というような頃にはまだ行くということにはならないと、こういう意味で申上げておるわけでございます。
  37. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、首相がその全貌が明らかになつた場合に善処するという問題とこの計画とは関係がないと、関係がなく、ただ国会の会期との関係において一応そういう計画を立てられた、こういうふうに了承してよろしうございますか。
  38. 福永健司

    政府委員(福永健司君) 外遊云々につきましては先ほども申上げましたように行くという意思は前々から持つておるわけでございます。さような意味におきまして、岡田さんの言われるように只今いろいろお挙げになりましよような事情とはこれは関連をして云々ということではないわけでございますが、但し先ほども申上げましたように、外遊ができなくなる、或いは政局に大きな影響を及ぼすような事態に立至るものと考えているとは私は思つておりません。
  39. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 あの新聞記者舎兄のときに、内閣改造の問題についての質問が出たように思つておりますが、それに対してあなたのほうから何かお答えになつたように思うのですが、その点について内閣改造を行われるという意思を持つておられるかどうか、これは首相のお考えにあろうと思うが、あなたの御存じのことをお伺いしておきたい。
  40. 福永健司

    政府委員(福永健司君) その点はたしか質問が、外遊するとすれば、その前に内閣改造というようなことはないか、帰つてからになるのかどうかというような意味質問があつたと記憶いたします。そこでそういうようなことはよくはわかりませんけれども、ないとは言えないでございましようというようなことを私は答えたと記憶いたしております。殊に自由党の三役の一人であります幹事長の任期はすでに前に参つておりますから、そういう人事のこと等もあるので、何らかそういうことが、人事上の変化というようなことがないとは言い切れないでしよう、こういう程度のことを答えたと記憶いたしております。内閣改造が外遊前に行われるであろうということを確認いたした次第ではございません。
  41. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にそれでは首相がお廻りになるのはどことどこになりますか。
  42. 福永健司

    政府委員(福永健司君) 先ほども申上げましたようなわけで、正式に未だこれを決定いたしておるわけではございません。従つてどの国とどの国ということもまだきめておるわけではございません。ただ首相外遊説が伝わりましたので、東京にありまする在外公館の責任者等から、是非自分の国にも寄れというようなことで、お話に見えておりまする向が、幾つかの国があるように聞いておるわけでございまして、まだいずれの国にも行くということは正式には言つていないと思います。ただアメリカ、イギリス等はこれは勿論行くとするならば参りたいという気持でいるように私も聞いておるわけでございます。その他の国についても、大体フランスとかインドとかというようなところ、その他若干の国に行くのじやないかという観測を私どもいたしておりますが、正式にどちらとどちらへお伺いいたしますということ等を相手国等に対しましても、まだ何らの通告等をいたしておりません。又こちらといたしましても、先ほど申上げましたような次第でございますので、どことどこへ行くというようなことを決定する時期には到達していないわけでございます。この間サン・ローラン氏と話しておりましたときにも、カナダヘも是非立寄るようにというような話があつたときにも、総理は、お伺いいたすかどうかはわかりません、併しまあ考えては見たいというようなことは言つたやうに聞いておるわけでございます。まだそういう意味におきましては、確定的にどの国とどの国ということは申上げるところまでは行つていないわけであります。
  43. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 首相が出掛けられるのは、これは物見遊山に行かれるのでもないし、必ず首相としての任務がある、とにかくこういうふうに今首相が言われるのは相当大きな目的をお持ちだろう、単なる親善旅行というだけではないと思いますが、特にアメリカへ行かれることがこの旅行の主眼であろうかと……、MSA援助協定等の調印もすでに行われ、国会における承認も近い、或いは又日本における自衛隊の設置並びにそれの増強計画というものもある。又アメリカとの間にまだ日本とアメリカとの間の経済的な問題、特に経済援助の要請の問題等もあろう思う。イギリスにつきましては貿易の問題等もあるのではないかと思うのでありますが、特にアメリカに行かれるについては、大体如何なる目的を持つて行かれるものであるか、言い出した以上は大まかなことはすでにおわかりになつておると思うので、官房長官からお伺いしたい。
  44. 福永健司

    政府委員(福永健司君) 外遊の問題につきましては只今岡田さんも御指摘のごとく、折角参るのであるから最も有意義なということは総理自身も考えておるものと思うわけでございますが、国際関係の友好親善度を増やというようなことは言い得ると思うのでございますが、その他の事項につきましては、いよいよ参るということを確定いたしまするときに、然らば折角参るとするならばどういうようなことについてどうしようというようなことは、これから相談することになろうかと思います。或いは総理が心中に期しているところはあるかも知れませんが、行くとするとこういうことをというようなことを、私どもはまだ具体的にいろいろ聞いているわけではないのでございます。いずれこれは参るということが確定いたしますならば、更にこのことにつきましては恐らく相手国へ通告する必要等からいたしまして、参るという日取りよりも恐らく一月前くらいには確定いたしまして通知簿もしなければならんと思いますが、さようなわけでございますので、これを確定いたしまする域に達しまするならば、今お話のような点等につきましても、閣僚その他の意見等も徴せらるることでありましようし、いろいろ取りまとめて目的等を或る程度明らかにする時期があるのじやないかと思いますが、いずれにいたしましても、本日のところではまだ今まで申上げましたような事情でございますので、具体的にこうこういう目的でどうということが明らかに申上げられるところへは立至つてはおりません。ただ新聞等に、観測として、行くのならばこういうことをなにするのではないだろうかということは、あちこちに出ておりまするが、それは総理自身が語つてその結果においてそういうことが出ておるということではないわけでございます。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今日政局の動揺がだんだん激しくなるだろうと思われるので、或いは首相が折角お行きになりたいと思つても行かれないような事態が起るのではないかとこう私は考えておるわけでございますが、どうもこの首相の外遊が昨日発表せられたことにつきましては、何かこの政局と関連のある心理作戦のようなにおいがするのですが、これはこれといたしまして、次に大蔵大臣に二十九年度の国際収支の問題につきましてお伺いしたいのであります。  先ず第一にお伺いしたいことは、日本の国際収支の関係はやはり世界景気に左右されるところが多い。昨年のごときは相当見込違いになつたのはやはりその問題から来ていると思うのです。本年度における世界景気の見通しにつきましてお伺いしたいと思います。
  46. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 世界景気の見通しはいろいろな見通しがされておりますが、私どもは主たるアメリカについて見ますると、大体今年は中間選挙等もあり、いろいろな対策が講ぜられるであろうから、まあ何と申しまするか、幾らか下向きの傾向は現在でも見えておりまするが、それが余り顕著には出て来ないであろう、少くとも不況というような様相を全然呈することはないであろう、特に農作物に対するいろいろな対策もとられておりますので、大体現状、俗に言う横這いの状況が続くのではないか、かように見ておる次第でございます。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 アメリカの景気の観測につきましてはアメリカの国内におきましてもいろいろの意見がある。政府自体はいろいろ対策も講じており、その結果横這いになつて行くであろうというような観測を下しておるようでありますけれども、併し学者或いは経済評論家の間におきましては、下半期におきましては相当悪くなる、こういう見通しを持つておるようであります。又日本の場合につきましてはアメリカばかりではない、他国との関係、特にアジア諸国との関係につきましても輸出の伸びる伸びないという点と非常に関係があるわけですが、アメリカの景気が下降いたしました場合或いは今の維持されておるような場合におきましても、今日東南アジアの諸国等の景気はどうもよくないように見えるのでありますが、そういうような見通しを私は持つておるのでありますけれども、今度の国際収支の策定に当りましては大体アメリカにおいても、或いは他国におきましても景気の下降はない、横這い状態だ、こういう認識の上に立つておるのですか。
  48. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 大体におきましてさような見方をしておりまするが、併し主として実は貿易関係について見ております。輸出、輸入の関係について、なかんずく輸出の面でありますが、これはこの間の日英支払協定、貿易協定といいますか、あれを主に考えておりまして、これを幾らか内輪に見て大体一頃見たのは貿易関係を十三億五千万ドルくらいの輸出を見たのでございますが、昨今におきましてはもう少し内輪に見るという考え方で、国際収支の検討を今いたしております。これは見方はいろいろありますので、或いは十三億に見るのがいいか、或いは十二億七千万ドルに見るのがいいか、それとも十三億五千万ドルそのまま見るのがいいかということになりますと、これはいろいろ見解はございますが、まあ確実に見るがいいというので多少十三億五千万ドルを控え目に見て国際収支をやつております。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 経済審議庁から出されました資料によりますというと、二十九年度の輸出は今大蔵大臣が言われましたよりもやや多くて十三億七十五百万ドル、輸入のほうは二十一億四百万ドル、それから特需が七億六十万、支払のほうが二十五億六千五百万ドルで、バランスにおきましては九千万ドルの赤となる、こういうふうになつておるわけであります。只今大蔵大臣お話ですというと、輸出のほうは更に控え目に見なければならん、或いは十三億台を割るのではないかというようなお話でありますが、輸入その他につきましてどういうお見通し、或いは又特需についてどういう見通しで、更にバランスについて九千万ドルの赤というような見通しによられるのか、或いは更にこれを修正されてもつと赤が多くなる、或いはもつと赤が少くなるというふうにお考えになつておるのか。
  50. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 大体から申しまして輸出のほうは一応一番低く見るのが十二億七千万ドルくらいに見ております。最初は十三億五千万ドルに見たことはさつき申上げた通りでありますが、十二億七千万ドルに見ておりますが、貿易外の受取勘定が特需などもこれはもう少し見ていいという意見がありますが、少く見て七億一、三千万ドルくらい見れるであろう、こういうふうに見ております。それから貿易外がそのほかの各種のもので三億二千万ドルくらい見れるでございましよう。オープン・アカウントの決済の関係、いろいろなものがありましてそのくらいは見れる。そうしますとかれこれ受取勘定のほうが三十三億数千万ドルというようなところへ参るかと思います。どうも見方によりまするから、そういうふうに二十三億一、二千万ドルになるのじやないか、そこはどういうふうにも実は見れるのでありまして、これは岡田さんも御承知通り七億一千万ドルと見るか、七億二千万ドルと見るか、或る人は特需などは八億ドルと見ても間違いないよという人もございまして、併し成るべく内輪に見るという建前で実はやつておるとその辺と見ておるのであります。輸入につきましては一応二十億ドルということを頭に置いておるのでございますが、そのほか貿易外の関係で四億ドルの支払分も出て参りましよう。そういうものを考えますとちよつと二十四億ドルばかり支払のほうは出て参ります。従いまして九千万ドル乃至一億ドルと見るのが一番確かではあるまいか、大体の今年の国際収支の見通しは九千万ドル乃至一億ドルであるけれどもできるだけ少くしたいという考えでございますので、これを六千万ドル、五千万ドルにするようにして参りたいと考えております。一応の今の見通しは九千万ドルから一億ドルの見当であろう、かように見ておる次第であります。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 輸出の問題について大蔵大臣の見通しが経済審通庁の見通しより更に内輪であるということは、本年の初めのどうも輸出の状況から推して更に内輪になるのだろうと見られたものでありますが、果してこれが維持できるかどうかというようなことは非常に問題もあろうと思います。私はこのいわゆる特需の七億六十万ドルにつきましても相当問題があるのではないかと思うのであります。昨年度の場合なんかにつきましても大分見込違いがいろいろな面にありましたが、この七億六十万ドルの内訳をちよつとお聞かせ願いたいのであります。
  52. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 七億六千万ドルよりさつき少い数字を私は即したので、七億一十万ドルか二十万ドルというふうに申したのであります。それでは経審のほうから……。
  53. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) それでは私からお答えいたします。  実は只今大蔵大臣から御説明いたしましたように、特需の見込といたしましては、一応七億六千万ドルという百標は、現在でも政府として持つているわけでございまして、輸入の計画をいたします場合には、できるだけこれを手堅くやりたいということで、一応七億ドルから七億一千万ドルぐらいと見ているわけであります。従つて七億六千万ドルの内訳を一応申上げることにいたしたいと思います。  七億六千万ドルといたします場合の内訳は、先ず大分けに、米軍機関関係の消費とその他軍機関関係以外の関係の消費と二つに大きく分けまして、第一に軍機関関係の消費の中が大よそ三つに分けて想定いたしておりますが、第一万円の売却、これは個人消費の関係でございますが、これを大体一億八千万ドル程度と見ております。それから第二に、米軍の予算の繰込みでございますが、これを三億九十万ドル程度と見込んでおります。その他として千万ドル程度、従いまして軍機関関係の消費の合計は六億八十万ドル、それから先ほど申しました大きなその二の軍機関以外の機関関係の消費といたしましてGSA、これは御承知通り機関関係以外の機関でございますが、この関係で七十万ドル、それからアンクラ、国連の調整機構関係関係で千万ドル、これは申すまでもございませんが、アンクラとしての朝鮮関係の特需でございます。この軍機関以外の合計が八十万ドル、先ほどの六億八十万ドルを合せまして七億六十万ドル、こういうふうに見込みまして、これに対する予算計画を立てます場合に、実を申しますと相当大難把に、五十万ドルくらいは大事を取りまして、七億一千万ドルぐらい、こういうものを輸入計画のほうの基礎の数字と推定をいたしておるような次第であります。
  54. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 昨年のほうは、あれはどういうふうになつておりますが、昨年の見込の場合、それから実績の場合。
  55. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。  只今申上げましたものは大体二十八年度の実績の見込でございますが、それを簡単に申上げます。
  56. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 当初の見込は……。
  57. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ちよつと最初に実績の推計を申上げます。軍機関関係の消費で、個人消費のいわゆる円の売却三億二千五百万ドル、米軍予算繰込み四億四千八百万ドル、その他十万ドル、合計七億八千三百万ドル、軍機関以外の関係消費がGASで二千四百万ドル、アンクラが四百万ドル、この小計が二千八百万ドル、で合計八億一千百万ドルというのが、この推計は昨年までの実績の推計でございますから、実際の三月末の推計はこれよりかなり下廻るのではなかろうかと考えております。
  58. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 実は二十八年度当初の見込についてお伺いしたいのは、この前の予算を審議いたします場合には、どうもこれだけは確定的である、これは手堅い数年である、こういうお話つた。それが崩れて来ておるわけです。これは単に特需関係の問題だけではない。輸出にいたしましてもそうであります。輸入にいたしましては、むしろ殖えておる、こういうことで、昨年はバランスにおいて政府もびつくりするように悪い結集が出ている。一億九千万ドルの赤字が出ておる。本年はかような見通しの誤りがあれば、これは極めて結果において昨年よりもつと事態が悪いと言わなければならんと思うのです。  そこでこの特需の点だけを取つて見ましても、私今挙げられました数字のうちで、特に米軍の消費するもののうちの三値九千万ドルの、米軍が国内で買付けまする品物等に対して支払つた三億九千万ドルの分が、果して本年の一月からの見通しに、この一月からの実績を勘案しまして、ここに挙げておるように三億九千万ドルに達するかどうか疑問だと思うのですが、その点は如何ですか。
  59. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 実は二十八年の、歴年についての実績を申上げますと、政府の二十八年度の見込がさつき言われたのでありますが、八億一千六百万ドルありますが、歴年だけの実績は八億九千万ドルはあるのでありまして、私どもはそう減るとは実は思つておりません。  それで今の七億六千万ドルというのは、一応の見通しを経済審議庁長官が内訳を申されたのでありますが、その後御承知のごとくに、今見ておる分は七億一千万ドルか一千五百万ドルくらい見ておつたからでありまして、手堅くやつてありますので、私ども実際には、まあこれは岡田さんも知つていらつしやるでしようが、八億ドルという説がある、今年は八億ドルはあるだろうという意見相当あるのでありまして、物を買入れる外貨のこういう少いときですから、私どもは実は少し内輪にものを見て輸出入予算を立てるがよかろうというので、見たのでありますが、この程度は、今申上げた数字でおわかりのごとくに、細かいことをちよつと御参考に対照的に二十八年の歴年の分を申上げますと、七億八千三百万ドルの軍関係というのは七億九千万ドルというのが実績で、軍関係の分で内訳を見ますと三億二千三百万、これはちよつと減つておりますが、軍の予算繰込みのほうが四億五千六百万ドルということになつておりますので、その他の一千万ドルも千百万ドルになつております。或いはその他の関係、これはちよつと減つておるのであります。軍関係機関消費は二千八百万ドルが千九百万ドルになつておりますが、そんな工合であるのでありますので、この程度は私は確実に見込み得ると考えておるのであります。従つて今私どもが申上げておる九千万ドル乃至一億ドルという国際収支は、よほど実は辛目に見たのでございまして、この程度のことはやり得ると確信して、どんなことがあつてもやらなければならんものだと考えております。
  60. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、昨年も大分手堅く見たという御答弁だつたのですが、一向手堅くなかつたのでありますが、今年の手堅いほうは、これは去年と違つて大鼓判を捺せる、こういうわけですか。
  61. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) この点はちよつと説明が足りませんでした。昨年は岡田さん御承知のように非常な凶作がありまして、ああいう米麦等の大量な輸入が特に行われたものでございますから、その結果でありまして、これはむしろ凶作のいたすところで、まあああいうひどい凶作は年度の当初においては誰も実は予想をしていなかつたのでございまして、これはお調べ下さればわかるのでありますが、主なる輸入増、外貨の不足はどこから来ておるかと言えばそういう点でございます。
  62. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 輸入の点につきましてでございますが、まあ二十億程度の輸入がある、こういうことでございますが、昨今の輸入の状況を見ていますというと、よほどこれから引締めて行かなければ、政府の予想通りに納まらないのはないかと思うのでありますが、この点につきまして、一体輸入を引納めるというのに如何なる方針を持つておられるか。又輸入を引締められる場合にどういう方法をおとりになり、更にどういう重要品目についてのどの種皮の引締を行われるか、これをお伺いしたい。
  63. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 只今までの考え方整理して申上げますと、実は一昨日でございましたか、外貨関係の閣僚審議会を開きまして、先ほど大蔵大臣からお答えいたしましたような基本的な考え方について意見が一致いたしたわけでございます。従つて二十九年度におきましては、二十億ドルを下らざる程度において外貨の計画を立てようということが一つと、それから二十九年度の国際収支の尻は九千万ドル乃至一億ドルの線を守ろうと、こういう点について意見が一致したのでありますので、それを受けまして、只今関係各省の間におきましてその考え方の、枠の中でどういうふうな物資を具体的にどういうふうな輸入計画にするかということを只今鋭意作業中でございます。従つて名物資別についてまだ申上げる段階に研究が積まれておらないのでありますが、大きな考え方といたしましては、今回の一兆円予算に伴つて大体国民経済の姿がこうなるという一つの我々として構図を持つておるわけでございますが、例えば鉱工業生産について言えば、大体一五二程度のところが全体としての規模である、こういう想定をいたしておりまするから、この生産の規模を維持するため、又輸出につきましては、先ほど話がございましたような輸出計画をいたしておりますから、その輸出に必要な原材料を確保しなければならない。それから又直接国民生活に必要な最小限度の綿というものはやはり絶対に維持しなければならない。半面におきまして、申すまでもございませんが、不要不急品、或いは特に昭和二十八年と現在を比べてみまして、昨年の十月から十二月頃までの間をとつてみますると、異常に消費の需要が大きかつたために、相当不要不急或いは必要以上と思われまする輸入がございましたので、こういうものはかなり思い切つて削減をしなければならない。大体こういつたような考え方と、いま一つは不要不急品でございましても、外国との通商上の協定その他によつて或る程度見なければならないものもございます。これは金額なり数量は非常に少いものでございますが、これが一つの例外に勘定ができるかと思います。大体そういつたような心組で只今作業を進めておるわけでございます。
  64. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まだ物資別についての作業ができてないというのでは、どうもこれ以上聞いてもしようがないのでありますが、実はこの輸入を消滅するという問題が直ちに国内の物価に響いて来る。政府は低物価政策を呼号しておられる。そして七分乃至一割の物価を下げたい、こういう意向である。ところが輸入原料を削減いたしますと、殊に思惑等がありまして、そのために却つて国内における物価の騰貴を来たす面が起る。恐らく全面的に輸入を削減するということになりますというと、そういうような事態が相当大規模に起るのじやないかと思つております。特に砂糖の例について見れば、これは極めて顕著であります。こういうような揚言には或いは又統制をしなければならんというような問題も起つて来るんじやないか。一方において輸入の削減をやる。国内においての物価は自然に放置しておけば投機のために上る。それを上げないようにすれば、又物価統制をやらなければならんという問題が起て来る。これは自由党の政府の政策としては、まあ一皮統制を撤廃された、全体的に統制経済は御免である、自由経済がいいんだということでやつて来られで、その結果こういうことになつて来て、又統制をとられるということになれば、自由党としての政策の根本的な変革と申しますか、自分の立てておる政策の根本を否定することになるんじやないかと思うのでありますが、こういうような点についてのお考え或いは見通しというものを承わりたい。
  65. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 只今砂糖の例お挙げになりまして、御心配の点を御指摘になりましたが、こういう点につきましては、私どもも非常に深刻に今検討をいたしておるのであります。ただ、私も砂糖に例をとりましてお答え申しますと、例えば昭和二十七年度におきましては大体七十万トン余りの砂糖が輸入されて、そして二十七年度当時を振り返つて見ましても、砂糖についてさしたる国内では問題がなかつた。大体現在の日本の国民生活の現状から言えば、あの程度で十分とは言えないまでも、まあこれで十分凌げて来た。ところが昨年の、先ほど申しました十月から十二月頃の需要を延ばして見ますると、恐らく百十万トンとか百二十万トンというように、一年間にすればなるのではないか。これは現在の外貨事情から申しましても、当然或る程度削減すべきが然るべきだと考えるのであります。  そこでもう一つの物価との関係でございますが、現に御指摘のように、又先般も小峰議員からも御指摘がございましたように、砂糖の国内市場価格は暴騰しておりますことは事実でございますが、これは他の物資と総合的に見まして、砂糖についての需給の状態或いは在庫の状態等がこういう関係にあつて、今後において外貨の割当がこのくらいは行くんだということが、まじめに数字的に説明ができますれば、自然この需給状態に対する見通しが国民的にも出て参りまして、私はこういう点が自然の状態として解決されるものと思うのであります。併しながらそう申しておりましても、そういう考え方が甘いというような結果が出るか、或いはそれが予想されまするような場合におきましては、外貨予算の編成過程と並行いたしまして、必要な国内の措置も打つて行かなければならんかと考えております。そうした場合に、これが従来の自由党の政策の逆を行くものではないかというお尋ねでございますが、これはまあ仮定の問題で、現在すぐに私どもは統制というようなことも考えておるわけではないのでありますが、仮に何らかのそういうふうな措置に移行せざるを得ないという場合がございましても、申すまでもなく、外貨の割当制度というようなこと自体がいわば一つの経済のコントロールでございますから、その措置の一環として私は十分説明がつくし、国民的にも御理解が願えるのではないか、こういうふうに考えております。
  66. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ砂糖の例だけではなくて、これから綿花についても評七についても、石油についても同じようなことが起るのではないかということを私どもは心配しておるわけでありますが、特に砂糖の場合を見ましても、何も輸入が減つたからといつて、個人個人の消費者が買溜をやつておるというようなことから騰貴しておるのじやないのであります。これは取引所或いは製糖業者、大きな菓子屋等が買溜をやる、或いは又これを思惑に使つておるという面が多いのです。従いまして、こういうような輸入数量が減らされて、そうしてそのために国内において思惑が起る。これが国民大衆の生活に影響を及ぼすということは甚だけしからんと思うのでありますが、この思惑の抑制について何らかの措置考えておられるかどうか。これを手離しにしておいて、今愛知さんの言われるように、何かの措置を講ずれば自然に下るんだというふうな甘い考え方で行けるとは思わないのでありますが、この思惑投機に対する措置をどういうふうにお考えになつておるか、承わりたい。
  67. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは、実は過日来たびたび申すごとくに、資金面のほうから金融機関を通しての資金の融通につきまして、思惑的なもの及び滞貨金融、こういうようなことは一切やらないようにということを通知してあるのでありますし、御承知のごとく、昨今いわゆるオーバー・ローンなども四千億を超すというような状況で、日銀の資金貸出監督に対する眼も相当つてつておりますから、この点から余り私どもは大きな思惑は続けることはできないと思います。一時的にはいろいろなことはございましよう。特に輸入などにつきましても、昨今、先月九日でしたか、十日から実行しておると思いますが、各種の輸入金融に対する思惑とかいうようなことについて相当やかましくいたし、或いはスタンプ手形の廃止とか、或いはユーザンスの期限短縮とか、各種のことをずつとやりました。そういうようなことで、結果として、或いは保証金を頼むとか、いろいろなことをやつておりますけれども、これも相当効果が出て来て、まだ二月では著しくは減りませんが、それでも契約の申込は一億ドル減つております。九十何百万ドルか減つております。さような工合でございまして、この方針を貫いて行ければ、この点はとにかく金の融通を受けずしては大きな思惑はできませんから、或いは、手持の金でやつたとしても、これは小さいものでございますから、まあこういう点で相当措置し得ると私は考えておるのであります。
  68. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 金融による間接的な抑制というのが、今政府のとつておられる措置でありますが、恐らく輸入原料の削減ということが相当大幅になされるようになつて参りますと、そういう間接的な方法だけでは足りないんじやないか。どうしても直接的な何らかの方法考えなければならんのではないかと思うのでありますが、現在は間接的な手段をおとりになるが、更にそういうような問題で、国民の生活に影響のある場合には、直接的な統制的措置をおとりになるか、それを伺いたい。
  69. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これはあなたもおつしやつたように、自由党としては余り統制的なことを考えておりませんのでありますが、併し間接的なことをずつとやりましても、やはり効果がない場合には、これは国民生活の見地から、或る程度のことをやらなければならん時期が来ると思います。まあ私どもが最初に一番すぐ頭に浮んで来るのはガソリンであります。これは大体輸入しておりまして、而も最折恐らく一番ガゾリンが贅沢に消費されておるのではないかというような感じを持ちますので、こういつた問題はもうぼつぼつ今から検討を始めなければいかんと、実は考えて検討を始めておるような次第でございます。併しまあ全般についてまだ統制的なものの考え方は一切いたしておりません。
  70. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 例えば砂糖等について、直接の価格統制はやるおつもりはございませんか。
  71. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) まだ価格統制をいたすような考えで相談したことはございませんが、併し今後の推移によつては、こういうことを相談しなければならんことも来るかと考え申す。
  72. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 時間がありませんので、最後に一つお伺いいたします。政府は現存手持外貨として約八億ドルあるというふうに申されたと思うのでありますが、この八億ドルのうち、例えばインドネシアとの関係についての六千万ドルの焦げつきとか、或いは朝鮮関係のものとかいうような焦げついた部分があつて、実際に運用できる部分はもつと少いと思うのですが、まあいわゆる焦げつきになつている部分がどのくらいあるか、どういう性質のものであるかということをお聞かせ願いたいと思います。
  73. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 主として焦げつきになつておる分はインドネシアに対する分と朝鮮に対する分であります。これは契約高から言いますれば、もうちよつとあとで殖えて行くかと思いますが、現在のところでまあ八十万ドルとか九千万ドル近く両方であるんじやないかと考えております。併し契約高が全部実行され、而もその間に向うのインドネシア方面からの輸入が全部ないといたしまするならば、これはもう少し殖えるかと考えております。従いましてこのインドネシア等の同じ輸入でも、ああいう方面からの輸入については特別な実は計らい方をして、ああいう地域からの輸入促進をしておるのでございまするが、まだどうもはかばかしく実は行つておりません。
  74. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 朝鮮のほうの焦げつき分についてはどういうふうな御処置をとられるお考えございますか。
  75. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 実は昨今のような状況で、又朝鮮から持つて参るその輸入が非常に少い、余り海産物とか何とかを入れられても、こつちのほうでは正直な話有難くないものもありまするので、これらについては、日本で入用としておるもの、鉄屑とか、ああいうものが入つて来れば一番望ましい、そのほかにも望ましいものがありますので、やつておりますが、まだ日韓交渉もこういう工合で会談も決裂しておるような状況でございますから、又昨今特にそれが進んで増加もいたしておりませんが、最終案でこういうふうに回収するという案にはまだなつておりません。
  76. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、私はまあ両方で、八、九千万ドルという、実際はもつと多いんじやないか、一億ドル以上あるんじやないかと思つておりますが、いずれにいたしましても、そういたしますと、実際に運用できるものは七億ドル内外、そうして本年の末において九千万ドル乃至一億ドルの赤が出るということになりますというと、政府の契約通り行きましても、本年の末において政府の処分し得る手持の外貨というものは、結局六億ドル内外に減ると思うのでありますが、若し来年度におきましてもバランスを回復できないというようなことになつて参りますならば、これは国際収支の上におきまして相当危機が来るように思うのでありますが、この点について政府は果して本年から来年にかけて、バランスが回復されるという確信をお持ちかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  77. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 実はまだほかに御承知のようにスワツプでやつておるものでありますし、又綿花借款の分もありまして、これを返す等のことを考えますると、相当窮屈になるのであります。従つて私どもが例えば今年の二十九年度の外貨予算の編成をするに当つて、まああなたもお話になつたように、輸入を楽にしておけば、これは物価のほうは非常に楽になるのでございますけれども、それをも忍んでここまでやつて行かなければならんということを決意したのは、そういつたような関係からであります。併しながらまあ通常の貿易関係としますると、四億ドルなり五億ドルということは、これは必要最小限度のものと私は考えております。従いまして一部には、この外貨予算の閣僚審議会でも、もう九千万ドル乃至一億ドルの赤字を見込まずに、最初から国際収支を合わす案でやつたらどうかといつたような意見が出たのでありますが、併し急激にものをそういたしますることは、結局日本の経済の回復力といいまするか、国際競争力を却つて弱めるようなことになるようにも考えられますので、まあ今年一年は大体九千万ドル乃至一億ドルは、これもできるだけ少くすることに努める、できるだけ輸出増進その他に努める。併しまあ三十年度においては、これは国際収支を完全に均衡させて、若干でもプラス断に持つて行こう、こういうような考え方で、実は全きを期して、本年度の分は九千万ドル乃至一億ドルの赤字を見込んでおる次第であります。
  78. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 最後にお伺いしたいのは、戦争中日本の在外資産でアメリカで抑えられたものがあるはずでありますが、ドイツの分はたしか解除されておるのでありますが、アメリカは日本の分に対して如何なる措置をとろうとしているか。又これに対して返してくれという交渉をしておるのか、どれくらいの額があるか。
  79. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) ちよつとまだ、実は額は調べておりますが、はつきりいたしません。なおこの問題につきましては、実は条約の上では、こういうことを請求せん建前になつておることは、岡田さんの御承知通りでありまして、これは条約の問題でなくして、まあ何と言いますか、相互の友好関係の上に生まれて来る問題であろうと思うのであります。従いまして何か機会あるごとに話をする。又一口に申しますと権利を以て話し得るものでございませんので、まあ何かと、実はあそこにも返してくれたし、どこの国も返してくれた、だからあなたのところでも一つつてくれないかということは、これは機会あるごとに話はいたしておりますけれども、併し外交の何と言いますか、筋にのつた話として、記録に残るようなものは、外務省ではございませんからわかりませんが、余りないのじやないかと実は思つております。何月何日誰と会つて、どういうふうに話が進んだ、こういうことは私は実はまだ聞いておりません。併し行くものが行くごとに話をしているのは事実でございます。
  80. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 大変アメリカは日本に好意を持つてくれているような話でありますし、又いろいろの過剰小麦約一千万ドル分只でくれる、こういうような話でありますが、そういう問題については、どうも余り考慮を払つておられないように思うのでありますが、この点につきましては、例えば正金銀行の財産が大分抑えられているというような話を聞いておりますが、そういうものの内訳、それから今言つたような交渉の経過、並びに政府として今後より強くそれを戻してもらうつもりでいるのかどうか。こういう点を次の機会に改めて具体的にお伺いしたいと思います。時間が終りましたから……。
  81. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十三分散会