運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-03-09 第19回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月九日(火曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            小野 義夫君            高橋進太郎君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            伊能 芳雄君            鹿島守之助君            小林 英三君            白波瀬米吉君            高橋  衛君            瀧井治三郎君            高野 一夫君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            横山 フク君            吉田 萬次君            井野 碩哉君            岸  良一君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            中山 福藏君            村上 義一君            岡田 宗司君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            千葉  信君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            相馬 助治君            松永 義雄君            戸叶  武君            鶴見 祐輔君            武藤 常介君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原九郎君    文 部 大 臣 大達 茂雄君    厚 生 大 臣 草葉 隆圓君    農 林 大 臣 保利  茂君    通商産業大臣  愛知 揆一君    郵 政 大 臣 塚田十一郎君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 安藤 正純君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 加藤鐐五郎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安政務次官  前田 正男君    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁装備局長 久保 亀夫君    法務省刑事局長 井本 台吉君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    文部政務次官  福井  勇君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより会議を開きます。
  3. 三浦義男

    三浦義男君 私は、第十六国会のときに、総理施政方針の演説の中に、科学技術振興を説かれたので非常にうれしく存じたのであります。ところがこの十九国会予算の組んでおりますものを見ますと、総理がそうおつしやつたことはよもやお忘れではないと思いますけれども、その実が余り現われてないということを感ずるのであります。この第十九国会は、全く我が国の政治上の問題、或いは財政経済の上におきましても絶大な転換の期に立つているということは事実でございます。そうして予算案を初め、重要法案が山積し、又外では汚職とか疑獄とかというふうに非常にうるさい、にぎやかな国会でありますが、私がこれから御質問申上げたり又御意見を拝聴したりすることは非常に地味な話でございまして、余りおもしろくないかも知れませんが、こと日本産業の問題、或いは兵器の問題、或いは軍ではないと申しますが軍備の問題につきましても、この基礎を成すものでございますので、どうぞその意味におきまして総理の率直な御答弁をお願い申上げたいのであります。殊に私は持ち時間が非常に少いのでございますので、簡単に御質問申上げたいと思いますので、その辺お含みの上でどうぞ率直な御答弁をお願い申上げたいのであります。私がこの二十九年度の科学技術振興に関します予算を見てみますと、たしかに昨年よりはふえております。昨年は大体百二十億見当でありましたものが今年は百四十億になつている。たしかにふえております。ふえておりますがそのうちのふえたものはどういうものがふえているかということを仔細に見ますと、大体ふえておりますのが保安庁関係のものが十億近くふえております。その他のものを見ますと、もう職員のベースアツプによつてふえたような金、又強いてこれを求めてみまするならば原子核研究費用として大体一億三千万程度、又天文台の反射望遠鏡を作るためにふえております金が一千二百万、こういうようなものだけであと目ぼしいものについては何らここでふえている様子が見えない。たまたまこの間の三党の修正で二億六千五百万円という原子力原子炉研究に対する金がふえて来た。これは又あとで述べますがそういうよりな状態で、いかにも総理があれだけおつしやつたのに対して余り考え方が姑息だつたんではないかというような感じがいたすのであります。でございますので、総理がこの二十九年度の科学技術関係につきましての御予算に対して、一兆円というこのわくの中でどういうふうなお考えでこの予算編成されたのか、又そういうものに対してこういうポイントに大いに研究を進めなければならないというような御指示でも与えたことがございますかどうですか、そういうことを先ずお伺いしたいのでございます。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。御承知のごとく朝鮮事変等によつて日本受取勘定がふえて、ふえたに従つて消費のほうもふえた。いずれにしても消費といい生産といい生産活動でありますが、併しながら経済全体の現象を見ますといずれにしても輸出はいろいろな世界情勢もあつてなかなか発展しにくい。又そのしにくい主なる理由日本物価高である。物価はいかにかして下げて世界の水準まで持つて行かなければならないと言いますると、消費節約、同時に耐乏予算といいますか耐乏生活耐乏経済に入つて曾つてイギリス耐乏経済に入つて今日の経済情勢を馴致いたしたと同じように、少し苦しくはあつて消費節約しなければならない。国費は節約しなくちやならんと思う。それでいかにしてもこの一兆のわく内にとどめるということを方針として、そして各省から来て随分熱心な要求があつたにもかかわらずその目途のもとに予算編成にあたつたのであります。事実技術振興或いは科学技術研究ということも大切であり、又その振興について私は全力を挙げて参りたいと思いましたが、併しながら現在の状態、この予算においては各方面とも節約をする、経費の打切りをするという方針のもとにいたしましたから御満足は行きますまいが、とにかく現状においては各方面要求をことごとく入れるわけに行かないので、かたきを忍んで節約ということにしてそして一兆のわくで抑えて行く。一兆のわくが何も非常に何になりませんけれども、ともかく目標はそこにおいてそして耐乏予算節減予算ということの実現に邁進しようという考えでいたしたのであります。
  5. 三浦義男

    三浦義男君 今のお話でまあ一兆円に抑えられたということはよくわかりましたのでありますが、この一兆円におさめる、そして物価を下げて海外に対する輸出を盛んにする。それでその貿易尻をよくするというようなお話が強く言われておるのでありますが、そういうことをなす、それを行うことのもとをなすものがこの科学技術振興であり、科学技術関係する研究だと思うのであります。でありますのでどうぞその点はこれから私個々の問題について申上げたいと思いますが、概括的にそういうお考えであるならばあるほど、一つ科学技術に対する研究費用、その基礎をなしますところのものを是非これからはより更にお考えを願いたいと思うのであります。で、私これから今問題になつております原子核或いは原子炉の問題についてこれは総理は勿論御理解になつておると思いますが、通産関係するところもございましようし文部関係するところもございましようし、従つて大蔵関係するところもございましようが、どうぞ只今私の申上げますることをよくお聞き取りを下すつて、そして御答弁を願いたいのであります。私はこの原子力に関する研究の問題について先ず申上げたいのは、今度の予算に先ほど申上げましたように、原子核研究に関しまして政府学術会議諮問に答えて、三年計画で七億円の予算でやりたいというのに対して、初年度の二十九年度に一億三千万程度を計上されております。で、これで参りますと、学術会議は恐らくこの倍額程度要求したと思うのであります。こういうふうなことで半額が盛られたというようなことで参りますならば、私はこの原子核研究だけでもう相当な日にちがかかつている。そしてかんじんな原子力の問題に入りますのはいつのことやらという気持がいたすのであります。たまたまそういうふうな心配をしておりましたときに、三党修正科学技術振興費が三億にふえた。そのうちの二億六千五百万円が原子炉築造のための基礎研究調査であるというのであります。で私はどういうわけで突如としてこういうものが起つて来たかということを考えてみますと、政府学術会議あたりにこの原子炉或いは原子力の問題について御諮問をなすつたその結果であるか。或いは御諮問なさらなくとも若しこういうものが必要であるというようなことでこの原子核研究の問題が出て参りましたのかどうかわかりませんが、とにかくそういう新らしい問題が突如起つて来た。これは政府余りこの問題には触れない。それから又学術会議もこういう問題については触れなかつたというので、恐らく三党の方方がこんなことで世界各国様子を見たら日本はだまつていられないのだというようなことで、私はこういう予算を突如として出して来られたんではないかと思うのであります。まあその裏には昨日話が出ましたがどういう理由があるかわかりませんが、表面に見たところでは、確かにそういうような気持でこの二億六千五百万円の予算が突如として出て来たんだと思います。原子力の問題につきまして世界情勢を見ますと、もうすでに各国がこういう問題について頭を突込んでおります。勿論これは日本が二十年の夏にアメリカから原爆をぶつけられてびつくりした。それ以来原子力についてはこわいものだ、あれは軍事力だというこわい思いだけをしておつたのでありますが、各国様子を見てみますと、もうアメリカは勿論のことイギリス、ドイツは別でありますが、フランス、こういう各国は勿論やつておりますし、又イタリー、オランダ、ノルウエー、スエーデン、キヤナダこういう所は相当な進み方をしているのであります。又驚くべきと言つちや誠に失礼ですが、メキシコ、アルゼンチン、アラジル、ああいうような地方においてももうすでに原子力委員会とか、或いは原子力管理局というようなものを政府が作りまして、そうしてどんどんこの研究を進めている、或いは実行に移しているという状態でありますのに、日本はいまだ原子核研究がこれから始められる、で予算が初めて飛び出して来たんでびつくり仰天して、この頃の毎日の新聞を見ると、この原子力原子核の問題が毎日出ているという状態なんです。私はこういうようなふうに各国軍事のみならず産業動力源としてこの問題を取上げておりますのに、日本学者が頭を集めて調査研究をしているというような漫画までが出ているというのが今の状態なのでありまして、ここでこういうものがぱつと出されたところで、初めて政府学術会議もびつくりして鳩首凝議をしているというような状態ではないかと思うのであります。これにつきましては、昨日学術会議が急遽又会議を開いていろいろな案を持寄つているようであります。どうぞこの問題につきましては、私まだ政府の当局から原子力についてのどういう御研究をなさつているのか、又どういう方針でこれから行かれようとするのか、その事柄につきましてまだ承わつたことはございませんので、まあ自分考えでは政府の怠慢じやないのだろうか、又学術会議はこの問題に対して怠慢じやないのだろうかというような気持がいたすのでありますが、この問題につきまして政府がお考えになつている節がございますならば、是非お聞かせ願いたいのであります。
  6. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 只今お尋ね原子核の問題、原子力の平和的な利用工業化は従来からも政府部内におきましてもいろいろ研究はいたして参つてつたのであります。先ほど御指摘のように昭和二十九年度の予算編成に当りましても、当時政府部内におきましても相当慎重にこの問題を取上げまして、御承知のように一億三千万円を東大に附置される原子核研究所を作ることに対する補助として予算に計上いたしました。これは御承知のように従来サイクロトロン、シンクロトロンというようなものが極めて小規模ではございますけれども各大学等におきましても或る程度のものはできております。これを東大一つまとめてその施設を各大学或いはその他の研究機関も共同利用しようということで、只今政府の原案に組まれている予算ができたのであります。併しながら一方におきまして原子力の平和的な利用ということにつきましてもいろいろ世界各国研究が進んでいること、或いはそれらについて政府の人間が外国に行きましてその状況等も視察したり調査したりいたしましてそのレポート等も出ているのでございます。  さて今回の修正予算の問題でありますが、これは先般も当委員会におきましていろいろ質疑応答がございましたが、現在の政府の立場におきましては、衆議院におきましてこの三党修正案について提案者から説明がございました。これは必ずしも的確に表現されておらないようでございますが、提案者の御説明によりますと科学振興費につきましては三億円と一括して申上げましたが、そのうち三億八千万円は原子炉築造に関する費用を云々というような表現が使われておりまして、これを受けまして私どもといたしましては、三党の修正案了解事項というものがお手許にも配られていると思いますが、その二億六千五百万円が通商産業省所管工業技術院科学技術研究助成費増額として組まれております。これにつきましては助成対象の選定、助成方法につき十分検討の上成案を得てこれを支出することと、こういう了解事項になつておりますので、政府といたしましてはこれを受けまして慎重にこの助成対象なり支出方法なりを研究して成案を得た上で支出をいたしたい、こういうような現在段階になつているわけでございます。
  7. 三浦義男

    三浦義男君 今の通産大臣お話はこれからこの研究をしてこの予算の使途を考えるというようなお話でございますが、今日の新聞を見ますと、学術会議はこのうちの金の一部を原子核研究に充ててもらつたほうがいいんだと、或いはこの金でほかの研究費増額してもらいたいのだというような意向が出ているようであります。で、又特に原子炉をこれからやろうとなさるならば研究をすべき項目がたくさんございます。例えば石墨研究であるとか或いは重水研究であるとかいろいろな問題がひそんでいると思うのでありますが、いよいよ我が国がここ原子炉を作るのだというようなその建前で参りますと、今までは原子炉原子原子力というものについて余り突込んだ目で諸外国に行かれた学者も見て来られなかつたと思うのですが、こういうものに対する今後の施策、或いは先ほど申上げましたような重水とか石墨とか原子核研究にこれを廻すというようなことは、予算技術上できないものであるかできるものであるか。或いはそういうことをやるお考えがありますかどうですか、もう一度伺いたいと思うのであります。
  8. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 只今お尋ねにつきまして、予算技術上の問題は別といたしまして、先ほど私が申上げましたうちの原子炉関係する費用ということでございますから、私は只今のところこれは原子力の平和的な利用に関する基礎的或いは応用的技術研究ということに理解させて頂きたいものだと考えております。従いまして直接に必ずしも原子炉築造のみを目的とするものではない。こういうふうに私は理解させて頂きたいと思いまして、関係方面とも今いろいろと協議を進め、或いは意見を聞いているような次第でございます。
  9. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) ちよつと三浦さんにお答えしますが、実は所管が違いますので原子核へこの金を持つて参るということはできかねますから、これは御了承願いたいと思います。
  10. 福井勇

    政府委員福井勇君) 文部省関係のありまするお尋ねでありましたので、私から一部御回答申上げたいと思います。  原子力特に原子核関係を含んだ研究政府は怠慢であつたというようなことのうち、文部省所管のうちで私の考えを申上げますならば、ポツダム宣言受諾によりまして特にウラニウムを基礎とするところの原子力研究というものを禁止されておりましたことは三浦委員も御存じの通りだと存じます。又戦後日本だけがみまわれました原爆の悲惨な状態からいろいろ考え合せて、今後原子核或いは原子力という問題を検討するに当りまして、戦力と混同されやすいということが非常に多く政府部内でも心配の種となつてつて若干遅れておつたということは、私たちは認めざるを得ないのであります。併し今後どういうふうにするかというようなお尋ねがありました点につきましては、従来とりました文部省の経過を概略申上げますと、学者を相当アメリカ或いはヨーロツパ方面にも派遣してこれが検討を加えておりますし、現にバークレー大学には嵯峨根博士も行つております。それから又各学者原子核研究目標をおいて視察に出したものも相当ございます。なお昨年の十月二十九日から三十日にかけまして初めてアメリカから原子力平和産業利用について公開したいからという誘いの通知状が、新木特命全権大使から外務大臣あてに参りました。これはこちらで用意する時間がなかつたために丁度在米中の旭硝子の山本博士にその会議に列席してもらつたことも事実であります。そのリポートも現在到着しております。なお昨年の世界国際理論物理学会議におきまして各国学者が参りましたうち、特にヨーロツパ合同原子核研究所の殆んど重鎮であるところのメンバー、これらの人々とも連絡をとりまして現在その資料も送つてもらい、この研究所に参加するかとか、或いは研究者を送るかというようなことについても研究の過程にございます。そういうヨーロツパ並びにアメリカ原子核研究所との連絡については十分資料を提供する用意を持つておりますことを附け加えさして頂きます。
  11. 三浦義男

    三浦義男君 先ほど通産大臣が私の答弁に対してお答えになりました、基礎研究であるからというようなことで私はこう解釈したのであります。原子核研究にもこれは廻せるものじやないかと解釈したのでありますが、大蔵大臣はそれは廻せないとこうおつしやいましたが、何かちよつと私の頭が混乱しているのかどうかわかりませんが食い違いがあるようでありますが、この点をはつきりどうぞお願いしたいと思います。
  12. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 原子核研究所国立大学附置研究所でございまして、従いまして原子核研究所の創設に関する予算は、文部省所管組織国立学校のところの項になつておるわけであります。一方今般修正増額されました二億三千五百万円は、通産省所管工業技術院科学技術助成費という項目修正増額になつているわけでありまして、従いまして所管の問題、組織、項の問題が違つております関係上、彼此流用することを許されないわけであります。のみならず科学技術助成費と申しますとこれはいわば補助金なり助成金でございまして、国立学校のほうは自分研究する、自分支出になるわけでございまして、経費の性質が違いますので予算技術上は彼此流用することが許されていないわけでございます。
  13. 三浦義男

    三浦義男君 どうもそうなりますと私が頭が悪かつたのか、その問題をよく知らなかつたので一応安心したのでありますが、これは一つ学術会議ともよく御相談をなさいまして、いろいろ又向うの御注文もございましようから一つ研究を願いたいのであります。次は私もう時間がないような紙が参りましたのでありますが、航空研究の問題についてもう一つ伺いたいと思うのであります。二十九年度の予算を拝見いたしますと航空に関する研究所の問題がちつとも入つておりません。この二十九年度には航空自衛隊もできるというような状態、又昨年の六月には民間ジエツト・エンジン試作会社ができまして、通産省から科学技術助成費として四千万円の補助を出しております。もうこういうふうに或る一方はどんどん進んでおりますのに、その基をなすところの航空研究所の問題が一切取上げられていない。又聞くところによりますとこれは予算には盛られておりませんから、まあ風説であつたかも知れませんが、このMSAの協定ができたあと政府出資十億円、民間出資五億円で半官半民のジエツト・エンジン試作研究をやるのだというようなことも流布されておりましたのにもかかわらず、この二十九年度の予算を見ますと、何らこういう問題については触れておりません。でこれもうわさと申しますかそういうことを言つちやいかんのかも知れませんが、航空研究所の問題につきましては、通産省も作りたい、保安庁も作りたい、運輸省も作りたいというようなことで或る程度予算要求されて、それがお互いの縄張かどうか知りませんが、そういう結果と思いますがそれで何もできなかつたというようなことを私は聞いているのであります。でこんなようなことでございますと、いつになつたら航空で我々が独立し得るものかどうかということが非常に懸念されるのであります。で航空研究所の問題につきまして、まあどういうような政府が一体お考を持つておりますか。承わりたいと思うのであります。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お答えいたします。先ず予算関係でございますが、通産省関係といたしましては、現在工業技術院機械試験所電気試験所等におきまして、エンジン、機体、電気装置等に関する研究を実施中でございまして、二十九年度におきましてもこういつたような項目、それから例えば遊休風洞借受利用というようなことで、与えられた予算の範囲内において研究を進めております。なおこれは文部省所管関係におきましても、或る程度予算が出ておると思います。それから研究所の問題につきましては、まだ政府部内といたしまして成案を得るに至りませんでしたので、二十九年度予算には研究所としての独立した予算は計上してございません。  それからいま一つ最後にジエツト・エンジンの問題でございますが、これは申すまでもなく、技術上の研究には国立研究所でやりまするものと、民間会社でやりまするものに対して政府補助するのと二つの行き方があるかと思いますが、ジエツト・エンジン試作等につきましては、むしろ民間出資を原則とする会社で、その能力、見通しがありますれば、これに対して補助金を出すという行き方をとりたいと考えております。それからなお先ほど御指摘通りジエツト・エンジン会社に対する出資等の問題も考えたのでありますが、現在のところまだ成案を得るに至つておりません。
  15. 三浦義男

    三浦義男君 私はジエツト・エンジンの試作或いは性能の検査というようなことをやりまするだけでも、もう相当な金額が必要じやないかと思うのであります。まあ極く僅か見積つてみましても数十億円或いは百億に達するかとも思うのであります。そういうものが民間で実際できるだろうかどうだろうか。又今お話のようにばらばらでこう研究をさせておいてそれが本当にまとまつたものができるだろうかどうだろうかというような疑問が非常に持たれるのであります。更にその点につきまして一つどうぞお話を願いたいと思います。
  16. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ちよつと今申し落しましたが、ジエツト・エンジン会社は御承知のように現在民間関係会社出資で、たしか資本金八千万円であつたと思いますが、会社ができております。でこれを、例えば昨年度におきましてこれに対しまして工業化試作の補助金を四千万円でしたか出しているわけでございます。それから更に今後の問題でございますが、実は私ども内々十億乃至三十億円くらいの政府出資をした一つジエツト・エンジン会社というものを実は構想としては持つているのでありますが、先ほど申しましたように二十九年度の予算編成には成案を得るに間に合わなかつたわけでございまして、今後できるだけ早い機会にこの方面を推進して参りたいと考えております。
  17. 三浦義男

    三浦義男君 先ほど私は運輸省、通産省保安庁でお互いの縄張争いが原因しているのじやないか、航空研究ができないのはそのためじやないかということを申上げたのでございますが、それは如何でございますか。
  18. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ざつくばらんに申しまして、運輸省にも保安庁にも或いは文部省にもいろいろの意見がございます。まだ総合的に調整するに至つておりませんことは先ほど申上げました通りでございます。
  19. 三浦義男

    三浦義男君 まあもつと詳しいことは、それでは一般質問のときに又譲るといたしまして、もう一つ伺いたいのであります。それは電子工学に対する問題であります。近代技術の進歩を見ますと、電子工学の発達の分野というものはどうしても見のがすことができないのであります。私どもがしよつちう御厄介になつておりますところのラジオにいたしましても、或いはラジオ・ビーコンにいたしましてもレーダーにいたしましても、或いは軍で使いますところの無人操縦装置にいたしましても、みんなこの電子工学の応用による真空管の発達から出ているのであります。然るにこの真空管というものもすでにおそらくもう時代遅れというような点がございまして、又一方更に進んだトランジスターというようなものが現われて来ている。そういうふうにもう全く電子工学は日進月歩なのであります。ところがこれに対しましてもまとまつた研究の機関がない。先ほど通産大臣が各メーカーに対してこういう研究助成金を出すというようなことを言つておられますが、どうもそれでは私は心細いのではないか。やつぱりこれはもつと大きなスケールでそうして一つにまとまつたはつきりしたものをお作りになつて、この問題に取組むのでなければ私はいけないのじやないか、こう思うのであります。過日、山下教授が電子計算器の理論によりまして恩賜賞を受けた。ところがこの電子計算器と申しますのは非常な高価なものでありまして、アメリカでさえまあ四億ぐらいの金をかけて一台ができ上るというようなそういうものなのであります。これを山下教授はたつた二十七年、二十八年で二千八百万円くらいの金でどうやら理論的には達したというような、いかにも心細いような状態なのであります。でありますが、こういう問題については通産省なり或いは文部省なりはどういうお考えを持つておりますか。私は通産省は電気試験所で仕事のかたわらやつているということも聞いております。又NHKの研究所がこの問題に取組んで或る程度の成果を収めているということも聞いております。併しこんなようなちりぢりばらばらな姑息な方法では、遅れておりますところのこういう方面に対する研究なり策なり、或いはこの成果はどうしても挙がらんじやないか、こう思うのでありますが、通産大臣いかがお考えですか。
  20. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 誠に御尤もな御意見だと存じます。先ほども御指摘通り通産省といたしましては、工業技術院の電気試験所で電子工学の関係研究を行なつているのであります。それから予算関係は、二十九年度の予算案におきましては、工業技術院特別研究費というのが二億二千万円計上してございます。この中からこの方面研究にも若干のものを出したいと考えております。
  21. 福井勇

    政府委員福井勇君) 文部省お尋ねがございましたのでお答えいたします。電子工学の遅れを取戻すために文部省といたしましては、今回京都大学工学部に電子工学を開設いたしまして当初三講座を以て発足いたし、逐次拡充を図る計画でおります。又東北大学電気通信研究所に新たに電子物理学研究部門を設けます。又日本で初めてテレビを着手いたしました静岡大学の工学部に附属電子工学研究施設を充実しまして、従来我が国において不足とされておつたこの分野の基礎研究を推進するつもりでおります。
  22. 三浦義男

    三浦義男君 もう時間が切れたそうでありますが、最後にそれではお伺いしたいのは、私は今まで申上げましたように、私どものこの日本におきまするところの学術の研究が非常に遅れを来しているということは閣僚諸公も認めておられるようでありますが、さてその学術の研究と申しますか元締めをなしておりますところの日本学術会議が、移管の問題につきまして相当もめているということを聞くのであります。こういうふうな学術会議の第一線の科学者の御連中が、こんなような組織の問題とか或いは権限の問題とか或いは所属の問題とかいうことで頭を悩まして本来の使命をなおざりにするような傾向が起つて来ているのじやないか。私はあの行政整理に伴つて参りましてその所属の問題が云々されているというようなもやもやを早く解決して頂きたいということが一つ。又、衆議院で議員提出科学技術庁の問題が出ております。これは当参議院におきましても予備審査の域に入つているのでありますが、こういう問題をいずれか早くきめて頂きまして、早くきめろと申しますのは、私は科学技術庁は是非作つてもらいたいということでありますが、こういう問題を早く片附けて頂いて、そしてこの一流の学者がつまらない問題、つまらないと言つちや甚だ失礼でありますが、その専門外について頭を悩まして本来の使命をなおざりにしているというこを極力避けて行きたいと思うのであります。副総理は何かこの問題について相当お考えになつているという話を聞くのでありますが、お考えのほどをお聞かせ頂きたいのであります。
  23. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 日本学術会議につきましては、今御指摘になりましたようにいろんなことを聞いております。先般政府で行政機構改革を研究するについて行政機構改革本部というものを作つたのでありますが、そこで行政機構の改革と一緒にこの日本学術会議のあり方も今のままでいいかどうかということについて、実は検討を続けているのでありますが、今三浦さんから御指摘がありました中にも片鱗が窺えておりますが、これはあり方として今のままでいいという人と、そうでなくとんでもない何だという人といろいろありまするし、そこで政府としても判断を誤らないようにあらゆる方面連絡してなお研究中でありますが、今日このまま総理府の附属機関として会議を国家公務員としてこのままやつて行くのがいいか、或いは又民間に移したほうがいいか、又一部には文部省所管にしたほうがいいというような意見もありますが、この点についてもう少し研究したいと思つてまだ結論を出しておりませんが、大体民間にしたほうがよくないかといつたほうに傾いております。そういう状態であります。
  24. 三浦義男

  25. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) それは私はよく存じません。
  26. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 科学の統合した考え方をする何か行政機関がほしいということについては、私どもも賛成の考え方を持つているわけであります。ただ今国会に議員提案で出ております科学技術庁の構想というものについて非常に問題点があるのじやないか。ただ私どもとしては現在ある機関を何とか統合してもつと強力に、又総合的にものの判断のできるようなものにしたいという構想で、従つて今の出ております案も参考にしながら適切なものを得たいという考え方で進んでおりますので、成るべく早く結論を得たいと考えております。
  27. 三浦義男

    三浦義男君 これで終ります。
  28. 小野義夫

    ○小野義夫君 私は与党議員といたしまして総理大臣に処女質問というところであるのでありまするが、その内容とするところがおおむね老婆心のような質問でありまするから別段総理大臣からの御答弁には及ばないのでありまして、責任を以て所管大臣から御答弁を願いたいのであります。質問に入るに際しまして先ず以て昨日調印せられたるMSA、日米の協定に関しまして長い間総理大臣ほか関係閣僚諸君が御着心なさつたことにつきまして深甚の敬意と謝意を表するものであります。  先ず外務大臣にお伺いいたしまするが、朝鮮の休戦、続いて今回のベルリンの四国会談の結果といたしまして、国際情勢はやや緩和せられたと敵も味方も又第三者も(笑声)そういう考え方をしているのでありまするが、国際情勢はなおあたかも鳴動する火山のごとく朝鮮戦争がやんだかと思うと今度はインドシナで激しく火を噴いているというのが現状であり、又近東諸国におきましては絶えずくすぶつているのであります。かかる情勢下におきまして米ソ両陣営が平和のための会談をやる、そのたびごとに氷炭相容れざるところの対立の激化を暴露している以外の何ものでもないのであります。そこで双方がこれは油断はならんという警戒心をいやが上にも高めて、その結果といたしまして軍縮どころか西ドイツにおいては憲法改正、再軍備をやり欧州軍の強化、或いは北大西洋条約の強化等軍拡にその日もおかざるような状態であるように思われるのであります。恐らくは鉄のカーテン、竹のカーテンの中においても同様であろうと思うが、最近におけるこの平和と戦争、又平和と軍備という関係について外務大臣はいかなる御所見を持たれておりますか御発表になられたい。
  29. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今おつしやるように火山といいますか火山脈がなくならない限りはあつちこつち問題が出て来ることはやむを得んと思います。従いまして今とにかく会議を方々でやるようになつただけ国際関係が緊張の度を減らして来ていることは事実でありますが、冷たい戦争という事態はなかなかやまない。それは一番下の火山脈がなくなつていないのでありますからこれはやむを得んだろう。他方各国で軍備を行うというのも私のみるところでは戦争をしようと思つてつているのじやなくて、むしろ戦争を予防するために守りを固くしているのだ、こう考えております。従いまして相当程度ヨーロツパの防衛体制が整つて来ればそれだけむしろ戦争は遠のくのじやないか、こう考えております。
  30. 小野義夫

    ○小野義夫君 現在日本におきましてはその名称のいかんを問わず、いやしくも軍事的の装備をなすことに対しましては絶対反対或いは無用などという論者がありまして、婦人又は青年の一部にはこれに共鳴するものがありまするが、かの英国においてすら米国の原子力兵器のバツクなくしては忍耐と決断とを要する強靱なる外交は到底できないといつているのであります。従つて永久の平和も望めないと告白しておりますが、一体国防の背景なくして自国の権益を十分に守り得るような国又は外交方式があるのでありまするか。日韓会談のごときはその一例にはならないのであるかどうか外相の所見を伺いたい。
  31. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは大変むずかしい問題でありましてお答えもむずかしいのでありますが、憲法の前文に予想されているような国際情勢というものはまだ完全に実現されていないことは事実だろうと思います。従いましてときにはいろいろ困難な交渉もやむを得ないときがあります。又国際連合の理想とするような事態もまだ完全に整つているというわけにも参らないわけでありますので、従いましていろいろ外交交渉の上にはむずかしいことは起ろうかと思います。併しながら日本の建前といたしましては、武力を以て国策遂行の具としないという強い決心をもつておりますから、仮に防備の力をふやしましても国を守る手段としてのみでありまして、いろいろの外国との交渉の背景としてこれを使う意思は全然もつておりません。従いまして外交交渉はいろいろ困難だろうと思いますが、やはりこれは忍耐をもつて相手方の理性は訴えて解決をするように努力する以外に方法はない、こう考えております。
  32. 小野義夫

    ○小野義夫君 日本はでき得る限り早く国際連合に加盟して集団安全保障の形式によりましてその権利義務を果さなければならないというのが多数の意見のようでありまするが、これに対する政府の準備と又いつ頃加盟ができるかという見通しについての御答弁を願いたい。
  33. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 国際連合に加盟いたしますには安全保障理事会の五大国を含めた過半数の承認がいるわけであります。ところがその五大国はいずれも拒否権をもつておりまして、先般の日本の加盟に対しまして安全保障理事会の一国を除く他の全部が承認いたしたのでありますが、ソ連の拒否権の行使によりまして加入ができなかつたという実情であります。その後国際連合の総会にいろいろ事情を説明いたしまして、総会の過半数の決議として、日本は国際連合に加入し得る資格を有する国であるという決定はみたのでありまするが、併しながら依然として法律上は安全保障理事会の承認を得られないものでありますから加入ができずに来ております。従いまして今後これはソ連の態度如何にかかわるのでありまして、ソ連が依然として拒否権を行使するようなことでありますれば、国際連合憲章を改訂せざる限りは加入は困難であります。他方、国際連合に加入するかどうかという、そういう技術的の問題まで拒否権を用うることは、これは正しくないという議論も国際連合で起つておりまして、只今その憲章の改訂に関する委員会も別に設けられて研究を続けられております。従いまして、又将来どういうふうになりますか、その辺のことも憲章改訂案によつて左右されるわけであります。他方、ソ連側からは一括加盟案と申しまして、未だ入つておりません十四カ国を全部加盟させる、その中には共産国家もあれば、共産国家にあらざるものもあるのでありますが、これに対しましては、英米等の国々では共産国家の加盟に対して反対をいたしておるものでありますから、この一括加盟案もまだ具体的になつておりません。併しながら、だんだんに加盟をいたす希望を持つておる国が多くなつて参りまして、その圧力も強くなつて来ておりまするから、或いはそのうちに何らかの解決を見るかも知れないと考えております。なおこれがなかなか長引くようでありますれば、準加盟と申しますか、加盟したと同様な発言権を持つような資格を総会で認めたらどうかという意見もありまして、これにつきましても研究中であります。もう少し事態をはつきりさしてから、又ジユネーヴ会議その他の国際関係の推移もにらみ合せて最後的な考えをきめたい、こう考えております。
  34. 小野義夫

    ○小野義夫君 欧洲諸国におきましては、すでに国連に加盟していながら、なお他方におきまして或いは大西洋条約、或いは欧洲軍の編成等、二重、三重の防備を講じておるのでありまするが、日本は国連に加入するとか、或いは日本の防衛力が或る程度充実すればそれでよいのであつて、日米安全保障条約のごときは、かかる場合には廃棄する考えを持つておられるかどうか、御答弁を願います。
  35. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 日米安全保障条約を廃棄するかどうかは、これは将来の問題でありまするが、仮に日本が防備を或る程度なし得たといたしましても、今の世界情勢から見まして、一国で完全に自分の国を守り切るということは非常に困難であります。従いまして、自衛力が漸増いたしました暁におきましても、日米安全保障条約のような形によるか、或いは他の形によるかは別といたしまして、何らかの集団的な安全保障の形式は必要であります。従いまして、日米安全保障条約といえども、何もすぐ廃棄するというふうには考えられないのでありまして、若しこれに代るべき適当な集団安全保障の方策が生み出されれば別でありますが、それまではやはりこの日米間の集団安全、この二国間の集団安全保障、こういう形式は相当必要であろう、こう考えております。
  36. 小野義夫

    ○小野義夫君 次に大蔵大臣に対して御質問申し上げますが、二十九年度予算大蔵大臣は緊縮予算と言われておるが、その実質の計数については必ずしも緊縮予算でないという議論があつて、本委員会におきましては、大蔵大臣は、いやそれは投融資等全体を考えるというと数百億の減になるのである、こういう御答弁をなすつているのでありまするが、私は若し従来のごとく貿易の面或いは金融財政が豊かであるならば編成したであらう従来の方針の踏襲から生れて来るべき予算の数字は、一体一兆何千億ぐらいになるべかりしものであつたかどうかを御発表願いたいと思います。
  37. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今回の予算は、仮に例えば前年の通りやるとすれば、或いは数字によりますが、二百億くらい表面的に殖えるかも知れません。併しながら、実質は全然違つているということを、この均衡予算であるということを見て頂かなければならないのであります。即ちこいつも申上げましたごとくに、昨年の予算において過去の蓄積を使つている、或いは公債等を売却したり、或いは又減税国債等をやつておる。更に又自然増収等相当たくさん使つておるのでありますが、本年度の、二十九年度の予算におきましては、先ず過去の蓄積については一切これを使つておりません。例えば前々年度の剰余金の半額くらい使うのがありますが、そういうことも、すべての剰余金を使つておらない、こういう建前をとつております。第二に、一切の国債等を売つておりませんし、又発行もいたしません。新規の国債もやつておらない次第であります。或いは減税国債等も一切やつておらない。第三には、自然増収というものを一切見込んでいない。これはこの点で著しく違うのであります。即ち予算をよく見る人が、むしろこれは均衡予算ということよりも、超均衡に近いと、こういうことを言つておるのはこの点なのであります。数字そのものを元のままの方法で、例えば昨日来木村委員が言われるような、例えば租税払戻金というようなことを今年も又同じように見るというようなことにすれば、それはちよつと七、八十億違いましよう。或いは今の入場税、これは過去のやり方ではありませんが、これを特別会計を設定せずにいろいろ通せば違いましようが、そういうことは財政上やるべきではないと私は思う。むしろこういうふうにやることが進歩だと考えておるのでありまして、いわんや予算の内容そのものが、これははつきりと緊縮予算であることは衆目の見るところであります。こういうようなのを紛飾したような予算予算の粉飾とは考えない、予算の改善なりと考えております。
  38. 小野義夫

    ○小野義夫君 私はこの二十九年度予算は、政府が言明せられるごとく、又只今大蔵大臣の言われるごとく、事実において数字的にも緊縮予算であるのみならず、日本経済の破綻を防止し、進んで自立経済基礎を建設するための地下工事であると了解するものでありまして、恐らくは地下工事なるが故に基礎を打つまでにまだ相当の年数や時日を要するものであろうと存ずるのでありまするが、かかる数字的の意味よりも、その予算によつて編成されたところの精神的の分量、言換えれば中央地方の工事、これらを担当する人々の、いわゆる一般大衆、団体等の人々の心構えとして緊縮節約の精神を作興して行こうということにあると思うが、蔵相の所見はどうであるか。
  39. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは小野さんが仰せの通りであります。やはりこの緊縮予算を以て日本物価を五分乃至幾ら引下げる、そうして国際収支の均衝を図る、この第一着手としているのでありまして、そのほかにも或いは金融の引締めの強化とか、各種の手段をそれぞれ講ずるつもりでありますが、何と申しましても国民精神の緊張、戦時下多少乱れている、又戦後に至つて幾らか解放、特に独立後解放された気分で、実際私ども考えてみても目に余るような贅沢等が行われている、こういう際に最も必要なことは、この予算一つの狙いであるやはり国民精神の緊張ということでなければならんと考えております。
  40. 小野義夫

    ○小野義夫君 日本の人口は、御承知のごとく昭和十一年度におきまして七千万人であつたのが、現在では八千万人になつておりまするから、まさに三割五分の増加である。而して又毎年十一%ばかりの増加を示しつつあるのでありまして、今後五年もたちますれば、又そこに七分五厘、合計して三割二分五厘というような増大を来たして来るのであります。これは半面にどういうことを意味するかと申しますれば、仮に満洲、台湾、朝鮮、樺太の米であるとか、砂糖、塩、石炭、石油、鉄その他の資源が従前の通りにあるとしても、又輸出入貿易が均衡を得ているとしても、なお且つ国民大衆は二割乃至三割の耐乏生活を全面的にやらなければならんということを意味するのではないかと思うのであります。然るに従来親心と申しますか、国の財政の許す限りにおいて、国民生活の向上を図り、あらゆる生産機関の整備に没頭したのでありまするが、事ここに至つて全く親心の慈悲も情も施す余地のないまでに立ち至つているのが現状ではありませんか。蔵相のお考えを聞きます。
  41. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 非常にむずかしい問題でございまして、私どもも日本の現状から見て、この四つの島にこう多数の人間を、而も年々増加するのでは、やはり人口問題の解決が何よりの問題だと思います。これが一番今後課せられている、日本人の解決しなければならん重大問題であると実は考えておる次第でございます。尤も人間というものは努力と智慧とには限りがございませんから、我々がよく自分の現状を知つてお互いに最善の努力をし、最善の智慧を絞つてやるということになりますれば、これは私どもはまだ相当余地があるのではないかと考えますが、併し限られたる資源の中でやることでございまするから、何かと将来の問題については、各方面から十分検討をして見なければならんと私は考えております。
  42. 小野義夫

    ○小野義夫君 我々はこの終戦直後のどん底生活にも闘つて勝ち、又我々の祖先、先輩は幾多の困難と闘つて打ち勝つて来たのでありまするから、我々はここに国民全体が目覚めて、そうして大いに働き、そうして節約を行うならば、私は国際間における金貨に国境がないことく、この物資の方面も又国境がなく、必ずや日本製品が至る所に向い得るような前途に光明あるところの日本を見出すであろうと存ずるのでありまするが、蔵相の所見はどうでありますか。
  43. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 日本が真に平和の国民であり、世界各国と協調して自国経済の繁栄と、世界経済の繁栄とに貢献するということが各国民によく理解が参りますれば、小野さんのお説の通りであろうと考えます。
  44. 小野義夫

    ○小野義夫君 次に通産大臣にお伺いしますが、現在の輸出は戦前の三割程度でございまして、これを四割まで、まあ四割と申しますと十四、五億かと思うのですが、そこまでのところに持つて行くことは頗る困難であるということを経済審議庁で発表しておるのであります。これと反対に輸入のほうはどうなつておるかというと、現在七割以上を突破して、やや戦前に接近せんとする状態であり、将来もなおその増大の傾向を迫るように思うのでありまするが、このようなアンバランスは、通産大臣がいろいろ御苦心の結果、諸般の施策が施されておりまするが、単なる物価の引下げとか、或いは金融の引締というばかりの方策では容易にこれはできないので、例えば貿易はすでに管理貿易になつておるのでありまするから、輸入品の主なるものについては、物にも又管理の方式をおとりになつてはどうであるか。又輸出方面におきましても、生糸のごとき、これは困難とあれば、内需を制して、そうして輸出を盛んにすべきであろうと思うのです。その他これに類似する輸出ならば、外国が買わないものを売るというわけには行きませんけれども、値段によつては買うというものが日本にできるならば、この商品に対しても何らかの規制を行なつてはどうかと思うのですが、通産大臣の御所見を伺います。
  45. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 只今も御指摘通り、当面の日本の国際収支の見通しは楽観を許さない、なかなかむずかしい状態に立至つております。私どもといたしましては、例えば昭和二十九年度において、輸入外貨の割当などをどの程度にやれるかということを先ず基本の対策といたしまして、それと国内い産業について、このいわゆる一兆円予算が施行せられたあと日本の国民経済の姿を、こう持つて行きたいというところと、これをマッチさせたいということでいろいろと検討を続けておるわけでございますが、大体日本の国内の生産規模を或る程度に維持し、且つ輸出を計画通り只今も御指摘がございましたが、十三億ドル内外はせめて国外の輸出ということに振向けたいと思つておりますが、その規模を維持するだけの原材料の必要なものだけは何としても輸入を確保しなければならないと考えております。恐らくその額は二十億ドルを超えるものと思うのであります。そこでそういうふうな国際収支の計画を作ります場合において、輸出、輸入の両面に亘つて物の統制も必要ではないかというような御意見でございますが、私は只今のところ、直接ものそれ自体に対する統制ということは考えておらないのでありますが、併し申すまでもなく、外貨の割当という制度、これ自体が、言い方によればこれ自体が一つの統制なのであります。それと即応して、国内の先ほどから申しておりますように、生産の規模が維持されて、或いは又その他の贅沢品といつたようなものもできるだけ輸入の面においては削減しなければなりませんが、そういう場合において、或いは将来の段階におきましては、そのときに即応したような適宜な処置はとらなければならんかと考えております。只今のところは、もの直接の統制までは考えておりません。
  46. 小野義夫

    ○小野義夫君 もう一つ通産大臣に伺いますが、どうもこの輸入品の中で比較的在庫とか、その他需給の関係を極めて明瞭に測定のできるゴムであるとか、或いは砂糖であるとか、これに類似するところのこの商品取引所の制度でございまするが、これは利益もあるが、今日においては思惑なり買占めの原因をなして非常に相場の激動を誘致するのではないか。従いまして、かかる輸入品に対する商品取引所は当分の間閉鎖するのお考えはないかどうか承わりたい。
  47. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 今後外貨の割当が減るのではなかろうか、又減るに違いないというようなことから、一部の御指摘のような商品について、私は需給関係から来ているもの以上に、非常な思惑によりまして価格が左右されているということがあるということは私も是認せざるを得ないのであります。併しさらばと申しまして、これは先ほど申しましたように、日本の外貨の今後における割当の方針、これに関連いたしまして、重要な物資や生活必需物資についての需給の関係が、こういう姿になるんであるということが具体的にだんだんと国民の間に滲透いたしまして、見通しが付くようになれば、そういう面からも私は思惑というものは自然一時的の現象として払拭されるであろうと思いまするし、又折角の商品取引所関係等におきまして、特定の二、三の物資についてこれを上場しない、当分こういう措置はとらないというようなことをいたしまするというと、それによつて又どういう弊害が起つて参りまするか、これも相当考慮しなければならないと思うのでありまして、只今のところは御意見のようなことを直ちに措置するつもりは考えておらないのでありますが、御意見のほどは十分今後の施策を答えまする上に参考にさせて頂きたいと考えます。
  48. 小野義夫

    ○小野義夫君 次に厚生大臣に伺いますが、この日本経済問題、社会問題を研究して参りますると、例えば小売業、中小企業或いは農漁村の問題等、又社会問題として毎日三面に出る心中その他殺人等の事件を推し進めて行くと、要するに人口問題ということにその原因が帰着するのでありまして、例えば卑近な例として、うどんやそばの原価は七、八円でできるものが東京では二十四、五円、田舎に行くと三十円以上もする。それは不思議である。或る農林委員が盛んに暴利だと言われているのでありますが、私はそうは思わない。つまりうどん屋はうどんで一家を支えなければならない。従いましてお客が少ければ少いほど、どうしてもやはりそこに生活費というものが小売に織込まれて行きますから、当然の結論として、原価が何ぼであろうと小売屋はやはり生活保障を小売で求めるのである。かような意味でありまして、人口問題が日本全体の大きな問題たることは今日御質問申すまでもないのでありまするが、然らばこれを調整する例えば移民問題のごときもありまするけれども、これは九牛の一毛、本当のことを申せば、どうしてもこの人口調整というところに国を挙げてこれは何らかの方法を打たんければならんと思うのでありまするが、厚生大臣はその点についてどういう見解を持つておられるか伺いたい。
  49. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) お話通りに、人口問題の最近の傾向を考えて参りますと、殊にこの独立後の状態から、国土は御承知のように大体五割五、六分になりまして、年々人口は百万を増して、昭和二十八年中におきまする人口の増加は一応の推定は出生が百八十六万、死亡が七十七万と推計されますので、約百九万の自然増加があるものと概算をいたします。こういう状態でありまするから、結局はいろいろな総合的な政策の上からこの問題の解決という面に向つて参らねばならないのでありまするが、その一つといたしまして、只今指摘の人口の調整、この点は大変大きい又重要な問題であると存じまして、政府におきましても、受胎調節に主力を注ぎながら人口の調整に当つて指導をいたしている次第であります。実際の問題といたしましては、併しこの面もなかなかむずかしい点がありまして、むずかしい点はありまするけれども、只今のような状態でありまするから、受胎調整に相当力を注ぎ、又一方総合的な人口問題の対策といたしまして、昨年から人口問題審議会を設置いたしまして、根本的な国策としての人口問題の解決の成案を急いでいるような次第であります。
  50. 小野義夫

    ○小野義夫君 これで私の質問を打切ります。
  51. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたします。午後一時より開会いたします。    午後零時十七分休憩    —————・—————     午後一時三十一分開会
  52. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。
  53. 中山福藏

    ○中山福藏君 保安庁長官どうしました、おいでになりましたら……。
  54. 青木一男

    委員長青木一男君) 前の御要求の分に抜けておつたとかで今大騒ぎで要求しておりますから。
  55. 中山福藏

    ○中山福藏君 では先ず第一に、御出席になつておられます大臣のかたがたに御質問申上げておきます。質問に入るに先立ちまして一言お伺いいたしておきたい事柄は、憲法第九条に武力と戦力という二つの文字が使つてあるのであります。更に今回御提出になりました自衛隊の設置に関する法律案要綱の中にも武力という字が使つてあるのです。而して憲法第九条の前段の規定によりますと、武力を以つて国際紛争を解決してはならないと、こう書いてある。然るに今回の自衛隊設置の趣旨からその目的を検討してみますると、直接若しくは間接の侵略に対する武力の発動ということになつておるようであります。直接の侵略というものが他国から日本の国土を侵すということになりました場合に、ここに国際紛争が生じるのじやないかという気がするのです。そうすると、結局、結果においては武力の行使ということになる、そこでこの憲法に使われておる武力という文字の意味と、自衛隊の設置法案に現われて参つておりまする武力の意味とをどういうふうに政府ではお考えになつているのでありましようか、一応その点を外務大臣からでも結構でございますから、お伺いしたいと思います。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 憲法の九条の戦力というのは、たびたび御説明申した通りのこととお考え願いたいのでありますが、武力はその一部の場合もあるし、全部の場合もあろうかと思いますが、必ずしも戦力に達しない武力があり得るわけです。国際紛争を解決するときに、例えば仮に、これはまあ議論になりますが、仮に一隻の駆逐艦を持つていることが戦力じやないと仮定いたしましても、何らかの国際紛争解決のために、その一隻の駆逐艦を出して、その力によつて自分の主張を通そうとすれば、国際紛争解決のために武力を行使するということになろうかと考えます。他方、仮に日本が侵略されるような場合がありましたならば、これも広義に見れば国際紛争の一種とも言えるかも知れませんけれども、日本の領土というものが定まつておる、この領土を侵して来る場合に、この領土に対する主張が国際紛争の問題となると普通は考えておりません。或る日本の主張なり、或いは他国の主張なりが政策の上で以つて相容れない場合に、いずれかの政策を通そうとして武力を用うる場合を憲法に言う武力解決ということと考えております。従いまして、日本の領土を侵略される場合に、これを防ぐということが国際紛争解決の一つの手段であるとは考えておりません。
  57. 中山福藏

    ○中山福藏君 これは緑風会の森委員からも御質問なさつた点でございますが、非常にあいまいでありましたから、私は更にこれを明確にするために実はお尋ねしておるわけであります。これは結局水掛論に終るんじやないかと思うんです。私どもは国際紛争という文字は、やはり第三国から我が日本に侵略的の行為というものが敢行された場合においても、国際的紛争は起り得るその解釈をとるのが当然じやないか、こう思うのです。又直接侵略というものが国際紛争の起因でありますから、結果としての国際紛争が現われて、これに武力を用いるということが憲法第九条の規定に牴触するかしないかということは、これは私は主観的な立場から各自の解釈というものはおのおの異つて来るんじやないかと思う。こういう点を先ず以て十分お考えになりまして、十二日から発足しようとしておる自由党の憲法改正の調査会などでも御検討になつて、而うしてこれが政治に反映するように、私は一日もその措置の速かならんことを期待してやまないものであります。この点につきまして総理大臣はどういうお考えを持つていらつしやるでしようか、そういう御処置をとられる御意思か否かを御明確にして頂きたいと存じます。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。いずれにしても戦力に達しない程度において日本の防備はとらるべきであると考えております。
  59. 中山福藏

    ○中山福藏君 とにもかくにも武力という字が憲法第九条に使つてあるのでございまするから、それと今の自衛隊設置法案とをよく御対照になりまして善処せられんことを私は心からお願いしてやまないのでございます。  それから第二点でございますが、今回この自衛隊設置法案並びに防衛庁設置法案でございますか、この法律案につきましては、首相は陸海空の自衛隊長として統帥権を持たれるということになつておるのであります。この統帥権を持たれるということは、これは木村さんが出ておられないとちよつと困るんですがね、首相にお尋ねするのはちよつと無理だと思うんです。(笑声)法律問題になつて来ますからお気の毒でありますから、長官の出席を至急要求をして頂きたい。  それでは木村長官がおいでになりますまで、ほかの点について首相にお質し申上げます。首相を初めとして蔵相は、国民に対して耐乏生活というものを非常に強要せられておりますが、私ども国民といたしまして昨年十二月初めに明白になりました国際収支の急悪化、即ち本年度の実質的な赤字約三億ドルを考えると、いやしくも常識ある限り政府の狙つておりまする緊縮予算というものの編成は当然であると考えるのであります。併し同時に国民に対する耐乏生活というものを政府施政方針演説の中に織込んで、そうしていろいろと国民に要望されたのでございますが、私は昨日もいろいろ質疑応答を聞いておりますると、私的生活に関しては答弁の限りでないというのでございましたが、この際私はお願いがあるのです。それは各省の大臣には、首相もそうでありますが、公邸というもの、官邸というものが附いておるのであります。公邸維持費、最高裁判所の長官の公舎、これらをいろいろと研究してみますると、その維持費が合計三千四百十五万九千七百四十円ということになつておるのです。これは維持費ですが、公邸の賃借料といたしまして衆議院議長の分が年額百五十三万円、参議院議長の分が三百万円、外務大臣の分が二百六十万円、官房長官の分が百七十万円、合計九百八十三万一千円、こうなるのです。公邸備品費として外務大臣公邸に年額百二十五万三千円、厚生大臣公邸の分が十万六千円、合計百三十五万九千円ということになつております。このほかにこれらの公邸に使つておりまするいわゆる使用人の人件費としてどれくらいかかつておるかと申しますると、各公邸の事務に従事しておりまする人を十級職一人、五級職十五人といたしまして、一公邸の人件費というものは八十三万三千円ということになるのです。全公邸の所要額というものは一千六百六十六万円ということになる、公邸維持費と公邸賃借料と公邸備品費の総額というものは四千八百四十一万八千七百四十円ということになるのであります。この計算には会計検査院長とか、両議院の副議長とか、検事総長とか、両院事務総長とか、宮内庁長官とか、最高裁判所の判事とか、公安委員長などの経費は入つておりません。私は別に事を好んでこういう計数を総理大臣のお耳に入れてかれこれ非難をしようという気分はございませんが、耐乏生活ということは、私はこういう公邸費というものを時節柄御節約なつたらどうか。勿論私ども諸外国を廻りまして、公邸が各大臣に附いておるということはこれは当り前のことであるとも考えておりますが、事いやしくも総理及び小笠原大蔵大臣の口から耐乏生活を要望せられます以上、これらの約二億円、いろいろ計算してみますると約二億円になんなんとするのであります。昨日も問題になりました原子炉の二億三千五百万円についてすらも、これは議会で議論が起つているのです。こういうものと比較対照して、先ず向う五カ年くらい公邸というようなものは一応廃止するということにして、赤坂離宮のようなところを共同に、賓客を迎える場合に御使用になつては如何なものかと考えております。私の只今まで申上げた中には総理大臣官邸は入つていないのです。ああいう立派な庁舎もあるのでありまするから、ああいうところで一つの共同の事務をとるということになつたら大変に国民も満足することでしよう。殊に血税を払つてその使途に多大の関心を持つているのでありますから、御考慮を煩わしたい。さすれば非常に国民の喜びも大きいだろうと思うのみならず、内閣を信頼する気分も、いやが上に増して来ると思うのでありますが、総理大臣如何でございますか、こういう点をお考え下すつては。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お考えは御尤もでありますが、庁舎も又必要とする場合もあるので、あたかも各官庁が官庁の建物を持つておりますと同じように、各大臣におきましても各大臣の官舎を必ずしも私用に供しているのではなくて、そこで以て会議を開きましたり、いろいろなことをいたして、相当に公用の、個人大臣の私用ではなくて公用にも供しておるのであつて、これは必要やむを得ざる経費と我々は考えておるのであります。併しながら費用は成るべく節約することに努めます。
  61. 青木一男

    委員長青木一男君) 中山さんに申上げます。木村長官が見えましたから。
  62. 中山福藏

    ○中山福藏君 その点につきましては十分お考えを給わりまして、国民の納得するような態度をおとり下さるようお願いいたします。殊に吉田首相は個人としては誠にあつさりした、人間と神様の中間を今歩いておられると私は思う。高橋是清氏も非常にあつさりして、国民の信頼を受けましたが、それは垢抜けのした政治家が国会に必要なんだからです。垢抜けまでもう一歩でお入りになると思うのですが、こういうところをあつさりした釈然たる気持で御答弁を願つて、これはわかつた、これから一つそうしようというようなところに落して頂きたいと私は考えておるのでございます。  そこで木村長官がおいでになりましたからお尋ねいたしますが、首相はこの陸海空軍の自衛隊長として、統帥権を把握される。そこで統帥権というのは一体憲法のどこに準拠してこの統帥権、いわゆる最高の指揮監督権というものを持たれるのですか、大体旧憲法の十一条、十二条。十一条には統帥権がはつきり書いてある。十二条には編制権或いは常備兵額というものがちやんと書いてある。然るに今回の自衛隊を設置するということが単に憲法の第九条に該当しないというだけでこれが出発している。私は少くとも国民の基本的な人権に関する事柄につきましては、憲法のどこかにその準拠を持つていなければならんという確信を持つております。保安長官はそういう点についてお考えになつておらなかつたのでしようか。是非御意見を承わつておきたい。
  63. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。この自衛隊に関しましては内閣を代表する総理大臣が指揮監督権を持つております。要は行政権に属するものであります。いわゆる行政府の長でありまする内閣総理大臣国会に責任を有する内閣総理大臣、これが指揮監督権を持つておるわけであります。その指揮監督権の下に長官が指揮を受けて部隊を更に統率するということになつておりまするので、いわゆる旧憲法にいう統帥権とは全くその性質を異にするものであります。
  64. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は国家の木鐸として指導の任に当つておるものは、そういう簡単なことではいかんと思う。これは成るほど志願兵制度であります。併し憲法は人間の自由、身体生命を保障しておる。憲法第十一条にはこれを明記しておる。その一番人間最高の犠牲を払うというこれは個人の尊厳に対する制約なんです。いわゆる基本的人権というものは生命と共にその体から去つて行くという規定であります。それを憲法の条章というものをどの章、或いはどの条項に基いて出発しているんだという説明内閣において、できないようなことでは、これは大変な問題だと私は思つておるんです。あいまい模糊のうちにこういう法律案が通つて、そうして国民は殊に七百年間奴隷生活に馴れておる正直な日本国民は、上権力のあるところに引きずられる虞れがある東条内閣はそれをやつたのです。だから私は法律家でありまする木村長官に御尋ねするのですが、大事な問題だから総理大臣にお尋ねしても無理なんです。だからあなたの御出席を求めて、明確に憲法上の準拠を聞かして、国民に、我々はこういう規定、憲法のこの条項に基いてやるのだという御指示を必要とするのですが、もう一遍御所信を承わりたい。
  65. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。私はこの昔の統帥権のようなものであれば、今お話のように大きな一つの力が出て、それに基いてこの軍事に関するすべてのものが統轄されることになると思います。併し新憲法下においてはすべて国会の力に待つ。その国会において選ばれた内閣総理大臣が、一方においては行政の長官としてこの自衛隊の指揮命令権を持つということは当然の事理であろうかと考えております。然らざれば別に統帥権というものを設けると、いわゆる昔の旧軍閥の復活ということを夢みる者も出て来、又これを実現する虞れもあるのであります。現下の憲法上においてはまさに行政府の長でありまする総理大臣が総指揮権を持つて、そうして内閣に対して責任をとる、これがいわゆる新らしい憲法下における行き方であろうと、こう考えております。
  66. 中山福藏

    ○中山福藏君 政府の御答弁は新らしい時代にふさわしい行き方ではないと私は考えておるのであります。御覧なさい、自由諸国の憲法には勿論であるが、共産主義者並びに容共派の人々が、平和を讃えておりまする国のソ連の憲法の規定には明らかにこの軍国主義というものの定義を謳つております。ソ連の憲法の第百三十二条には何と書いてあるかというと、国民の全部が軍務に服することが法則である。ソ連の軍隊において軍務に服することはソ連市民の名誉ある義務であるというようなことを書いており、更に中共憲法の第八条には、母国を防衛し、法律を守り、労働の規律を維持し、公共の財産を保護し、軍事上の役務を履行することは国民各個の義務である。なお又大韓民国の憲法第三十条にも同様な規定がございます。これは軍国制ですから、こういう規定があると言えばそれまでです。併し少くとも軍をおいても、現に内容的に、例えば今度の援助というものは内容においては軍事援助である。だから軍事援助というものはこれは対外的には軍事援助になつているから、本当は軍事だと見て差支えない。然らばやはりこういう点からも憲法は改正する必要があるのではないかと私は考える。こういうことをあいまいにしておいて、この態度を推進して行くということは、国民のためにならないのみならず、日本の将来を基本的に運命づけることになる。私は日本がこの画期的な時期に遭遇しておる今日、もう少し当該官吏で公務員であられるところの木村さんがたは、深く御検討を給わらなければならんと思うのですよ。それについての憲法改正、こういう点から憲法を改正するという覚悟はないのですか。あなたのはつきりした気持ですね。堂々たる御答弁を頂きたい。いつもいい加減なことで、答弁さえすれば我々は大臣らしい顔ができるのだから、というような簡単なことではいかんのですから、しつかりやつて下さい。
  67. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。私はしつかりした気持で言つておるので、決してごまかしなんかは言うつもりではありませんから御了承下さい。まあ憲法改正の御議論が出ましたが、憲法を改正して徴兵制度を布くならば、あなたのような御議論も出て来るでありましようが、現下の憲法上においては、私は今の行き途が一番正しく、又妥当であろうと信じて疑いません。  そこで憲法を改正するかどうか、これは大きな問題であります。軽々に私は申上げることはできません。要するにこの憲法改正の時期の問題であります。これが国民が果して憲法改正するの要ありや否や。国民の大多数がこの憲法を改正すべきであるという十分な情勢ができ上らなければ、濫りに私はこの憲法の改正問題は論ずべきものじやない、こう考えております。要は国民の意思如何による、こう私は考えております。
  68. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一つお尋ねしますが、これは外務大臣或いは総理大臣から御答弁願いたい。今度のMSA援助というものは、内容は軍事援助でなければ援助しないということになつている。殊に西ヨーロツパの三十六ヵ国に対する軍事援助は明らかに軍事援助に限定されておる。ところが平和条約というものがありまして、対内的に日本国民についての立場と対外的な立場は非常に内容的に変つて来ております。従つて昨日のMSA協定は私はでき得ると、こう思うておりますが、仮に軍事援助でないと言われても、これは実質的に軍事援助になつて来る。なぜならば航空機の製作或いは爆弾の製作等いろいろなものがこれから入つ来ておる。私は別に強引な議論をしておるのではなくて、事実をありのままに、皆さんの前に展開して、それに対して如何なるレツテルを貼るかという議論をしておる。で、私は国民の立場においてはおのおの考えるところによつて、現在の日本の自衛隊というものの組織からして、これは軍というレツテルを貼つたほうがよいか、或いは自衛隊という軍類似のものであるというレツテルを貼つたほうがよいかということは、国民おのずから観方が違う。併しヨーロツパのあの軍事援助から類推して、この事実はどうかということは大体は見当がつくのですよ。だからこういう概念的に窮屈なMSAの協定を結ばれるにしても、これはこの点からも憲法というものを赤裸々に改正して、そうして私は国民の納得を仰ぐということが政府のとるべき態度ではないかと思つております。  だから以上申上げました三つの点ですね。只今木村長官がお答えなつたこの援助の真髄及び実体というものから考えましても、それから一番最初にお尋ねした事柄から考えましても、これはやはり国民投票法というような憲法第九十六条ですか、この準備法を作つていずれの日にか日本というものは憲法を改正して、いわゆる独立した国家にふさわしい制度を確立するのだという期待と希望を国民に抱かせることは、これはやはり総理大臣必要だと思うのですがね。憲法を改正しないということは、私の耳にたこができておる、総理のおつしやることは。併し今からそろそろ準備工作をしておくことは必要じやないでしようか。これは大きなことですから、総理大臣から御答弁を承わりたいと思つておりますが。
  69. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは閣僚からもすでに申述べた通り、憲法改正ということは容易ならざるものであつて、軽々にいたすべきものでないと思うのであります。改正するとしても、種々研究を尽し、又国民の十分なる理解を待つていたすべきものであつて、私は憲法改正は軽々にいたしたくないと考えておる。仮にいたすといたしたところが相当の時日をかけて、又国民に十分な理解ができたところで改正いたすべきものであつて、今日はまだその時期でないと私は思うのであります。
  70. 中山福藏

    ○中山福藏君 それでは総理大臣の御意見は、時期が来たらこれは或いはやつても差支えないということになるのだと、こういうような思召でありましようか。そう承わつて差支えございませんでしようか。
  71. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それはその時期が来れば当然改正いたすべきものであり、憲法というものは万世不易と考えるのが間違いでありまして、そのときの内外の実情に応じた基本法を作るのが当然でありますから、いずれのときにか改正する時期は参るであろうと思います。この現在の憲法を以て不変なものと考えては却つてよろしくない、こう私は思います。
  72. 中山福藏

    ○中山福藏君 それでは時間がございませんから、この点はそれぐらいにしておきまして、私は更に総理お尋ねいたしたいと思います。大体今までの外交というものはその都度政策、刹那政策をやつておつたと私は見ておる。それで、時間の経過に従いまして、航空路のごときものが開かれたために世界各国の距離というものはだんだん狭ばめられておる。而うして世界万民が平和と真理の世界に生活することを希求するようになり、そのステツプとしての時間的形態が即ち国際連盟であり、国際連合の姿である。成るほど米ソ対立という状態を呈しておりまするけれども、だんだん押し詰めて行きますと、世界というものは一つの兄弟国にならなきやならん。いわゆる平和実現というものに全世界というものが共同の歩調を合せなきやならんというところに私は来たと見ておる。それで、只今の米ソ対立をですね、対立だから永久に竝行線、ユークリッド式の幾何学の蛇行線のように、永久に竝行して行くものでないと見ておる。従つて、国家最高の外交政策としての恒久対策というものをその間に打ち立てて行かなきやならんと思う。この恒久対策実現のための階段的な対策、臨時的対策、今岡崎外務大臣のやつておられます朝な夕なの外交、これは臨時対策、いわゆる恒久対策に階段的に上つて行く、これが世界各国の外交の姿だと私は見ている。だから、日本の外交政策というのは恒久対策と臨時対策というようにその手を打つて行く必要があるんじやないかと思う。だから日本国民の最高の外交の理想はここだということを世界に宣明するということが一つであります。そうしてその都度政策で、その手を打つて行くということは、臨時対策として我々は当分の間こういうふうに西ヨーロツパに対して、或いは東南アジアの各国に対して、或いは中南米に対して、その理想境を打ち立てるまでは、刹那外交をやるのもやむを得ないのだということを宜明すべきだと思う。この点について、これは大きな問題だと思いますが、曾つて三、四十年前に、首相の御承知通りヨーロツパにおきましては、クーデンホーフエ・カレルギー伯爵が西ヨーロツパ連邦論を唱えたことがあるのでありますが、私の最後に申上げることを要約いたしますると、これはやはり世界連邦というものが最後にできると見ている。若し戦争がなければ百年も二百年もかかるでしよう。戦争があれば十年ぐらいの間にできると見ておる。こういう点について、恒久、臨時の外交政策を打ち立てて行かれる気持は首相にはございませんでしようか。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。現在外務大臣がいたしております外交政策が朝な夕なに変るようなお話でありますが、併しながら、その間におのずから恒久性の政策が含んでいるものと御承知を願いたいと思います。然らば何が恒久的外交政策であるか。日本としては飽くまで世界の平和に貢献する、或いは世界の繁栄に貢献する、その間に日本として日本の占むべき地位を守つて行くということが外交の基調であるべきものと考えます。その他はお話のように朝な夕なの刹那の外交であるかも知れませんが、その刹那の外交は、要するに日本の国益を伸張するというところに基本がなければならんものと思いますが、そこで現在日本としてはどうするか。それは何とかクーデンホーフエとかいうお話が出ましたが、ジユネーブの国際会議に対してはどうするかという、これは刹那の外交でありまするが、併しながら、外交の基調として飽くまでも日本の利益を伸長する、その利益は世界的の共同利益に合するものでなければならん。或いは世界の繁栄若しくは世界の平和に反するような政策をとるならば、これがやがて日本の国のために不利益になることでありましよう。それは、政策としては、或いは日本の外交といたしては、世界の強い流れに協調して、その間に日本の自主性を保つて、而も世界の共同の流れに合流するという線で行くべきではないかと、これは甚だ抽象的な議論でありますが、そういうふうな理想の下に現内閣は進んで参りたいと考えております。
  74. 中山福藏

    ○中山福藏君 時間的に制約されておりますから次にお尋ねいたします。首相も御承知通りに、英国においては予算委員会と同様な重要さを以て決算委員会を見ておる。ところが、日本の決算というものは決算しつぱなしです。例えば昭和二十六年度は決算しつぱなしの、どうなつたかわからんというような事件が千百五十八件ある。その金額は三十億五千八百余万円というものが現われておる。二十七年度にはどういうふうな結果になつておるかと申しますと、千八百十三件、行方不明の金が百二億二千九百万円と、こうなつておる。これは大変な問題なんです。背任か、横領か、行方不明、煙となつて、幽霊となつて消えてしまつた。国民の血税がどこへ行つたかさつぱりわからんようになつておる。会計検査院法の第三十三条にはどう書いてあるかというと、疑のあるものは検察庁に通告すると、こう書いてある。通告してこれはどうなつておるか、一向国民に示されていない。検察当局はこれをどう取扱つたか。だから私はこの会計検査院というものは、その法律その組織を改めまして、必ず告発するという立場をこれはとらなければ嘘だと思うのですが、この通告の文字を告発という文字に改めるほうがよいのではないかと思うのですが、簡単でございますから首相の御高見を承わつて置きたいと思います。
  75. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、実は私は今初めて承わることでありまして、その決算の結果が聞きつぱなし、或いは放りつぱなしであるではないだろうと思いますが、これは政府委員からお答えいたします。
  76. 中山福藏

    ○中山福藏君 犬養さん一つその点を御説明を願いたい。
  77. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 法務省に関しましては、やはり下級職員の使い込みということが残念ながらときたまございます。先ずこの体験から申上げます。けしからん事情の重い分は刑事訴追いたしております。それから軽い分は内部の処分をいたしております。ほかの省の関係は今ここに刑事局長がおりますので、私はつまびらかにいたしませんから、今事情を聞いておるところでございます。後刻必ず御報告いたしたいと思います。
  78. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は会計検査院から通告のあつた件数がどれくらいあつたかということですね。それからそれを起訴された件数がどれだけあつたか、その判決がどういうふうになつておるか、こういうことを今直ぐにということは御無理かも知れませんが、若し今答弁ができなければあとで調査して報告して頂きたいと、こう思う。
  79. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。ほかの省からの通告の数がわかつておりませんから至急調べた上、答弁申上げます。
  80. 中山福藏

    ○中山福藏君 大蔵大臣はどういうふうに処置されておりますか。この決算、会計検査院の検査された実情をどういうふうにあなたは処理しておられるのですか。こういうお金は。
  81. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは実情に即してやつておりますが、特に重いものについてはそれぞれ刑事的な責任をとるように処置をいたしております。
  82. 中山福藏

    ○中山福藏君 どうも私は会計検査院に一昨日から請求しておる。会計検査官は今日お見えになつておらんのですね。これは認証官ですよ、会計検査院の検査官というものは。それがこういうふうなところに明確な資料を出さんということは誠に不都合だと私は考えておる。これは私どもの汗と膏と血のかたまりの金です。これは国民が承知せないと私は思う。十分その点は御検討を煩わしたい。  それから総理大臣に最後に、もう一点お聞きいたしたい。時間がございませんから……。  今度自衛隊の最高指揮権、法務大臣の犬養さんを通じての検事総長以下の検察庁に対する指揮権、それから今度提出されておりまする警察法の改正によりまするところの、これが通過いたしますならば、首相に大体の指揮権があると私は考える。三権を一緒に自己の掌中に収めるという結果が現われて来るのであります。今日法律の知識が十分普及されて、筋道の通つた行動をとるという倫理的な、道徳的な背景を国民が背負うまでは、なかなかこの法律が画然と行われるということはむずかしい。そこでこの間に生じたのが、先ほど言つたように、やはり大東亜戦争のときの無茶苦茶なあの行政なんですね。それで吉田首相がおられます間はまあ心配はないとしても、これから先にどういう内閣総理大臣が飛び出すかわからんのでありますが、そういう点については今からこういう法律が通ればこうなるという結果を見通しなすつて日本人の性格と照らし合せて、私はやはりその手を打つておかれる必要があるのではないかと考えるのであります。ときたま突拍子もない人間が現われますというと、権力を握りまして、大臣になりたいからぺこぺこ頭を下げて、政党も解消して、大政羽賛会にみんなこぞつて入り、入つた連中が平和が回服するというと大きな顔をしてのさばるという日本人の国民性は、私ども理性の上に立たんとする人間にとつては、承知ができない。私はこういうような権力というものを握られた人が又ぞろ東条さんのようなことをやつたら大変なことだと思う。憲兵と警察のために、全く国民は平ぐものような苦しい生活をしなくてはならんと思う。どうか首相はこういう点について、如何なる安全弁的な措置を講ずるかということを、この場合国民に明示される必要があると思う。首相の御所信を承わつておきたいと思います。
  83. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、若し私が今お話のような権力を握つた場合に吉田はどうなるか、東条と同じようになるか、ならないか、ならんとも限りませんから、これは御要心になつて然るべきものと思いますが、本人から申しますと、例え警察が、こういう場合に総理大臣に権力が集中されても、保安隊の権力が集中されても、これは飽くまでも民主主義の線において、それぞれ各機関を通して、命令系統なりその他によつて執行する考えでおります。私はそういうふうな機構ができておると思いますから、御心配のような、権力を仮に私に集中しても、私が自由自在にこれを濫用する、或いは暴用するというようなことはないことに御承知を願いたいと思います。なお併し御心配があれば、保安庁法その他の法律が出た場合に、十分御検討を願いたいと思います。
  84. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一点、これは簡単でありますからお願いしたいと思います。  先ず以て首相に御答弁を願う前に、犬養法相に御答弁を願つておきたいと思う。犬養法相は、現在の法務大臣の検察官に対する指揮権の範囲はどれぐらいの限度だと自分自身で思つていらつしやいますか。法務大臣としてどれくらいの限度に指揮する力が自分にあると、又法律上の権限があると思つていらつしやいますか。その点をあらかじめ承わつておきたいと思います。
  85. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 御質問の御趣旨がちよつと了解いたしかねますが、私が検察庁法第十四条に規定してある、検事総長に対する法務大臣としての指揮権でございましようか。
  86. 中山福藏

    ○中山福藏君 一般指揮権と……。
  87. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 私は検察庁法第十四条に規定してありますように、検事総長を通じてのみ事件に対する指揮ができる、こう考えております。
  88. 中山福藏

    ○中山福藏君 検察庁法の第四条、第六条、第十四条というのが、検事の捜査の公訴権に対する規定なんです。そうして第四条及び第六条に、大体如何なることについても捜査をなし、又は公訴の提起ができるようになつている。第十四条にはあなたに関する規定が設けられておる。個々の問題については、検事総長を指揮することができる。一般問題については、あなたは直接に一般検事をこれは指揮することができるようになつている、そこで検事総長を通じということは、そのトンネルを通つて、検事総長からあなたの意思というものが、十分下級の検察官に伝わつていくのじやないかということを考えますが、如何でしようか。
  89. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申します。個々の事案については、お話のように検事総長を通じて一般の検事に指揮ができますけれども、その点多分御質問の趣旨は、政治的圧迫とかという問題に触れて来る問題だと思いますが、これは私が検事総長と話合つて、指揮権を行使する場合、互いに良識を以て、そこで話合いをする。圧迫するという形は曾つて取つたことがございません。至極円満にやつておる次第でございます。
  90. 中山福藏

    ○中山福藏君 そういたしまするというと、結局検事総長というトンネルを通れば、万事他の検察官に対して指揮ができるという意味にこれは落ちて来る。或いはそういう危険が、これには含まれておる。この規定はそれで殊に検事一体の原理というものが確立されておる。以心伝心なんです。達磨大師じやありませんけれども、以心伝心で、顔色を見て大体の仕事ができるわけなんです。今度の汚職事件、日殖事件、保全事件が起つたのは、これは決して悲観する必要はない。国家再興の源動力を作るものだと思う。これをあなたの力で剔けつして、この日本というものをクリーニングすることがあなたに課せられた現在の最大の課題だと思う。だからあなたとしては、十分その覚悟をおきめになつて、如何なることもは羅剔けつして、天下に吉田内閣に対して国民の信頼に値する御処置を、取つて頂きたい。この検察権の行使というものをにやる公正にやるということをこの席において御言明を頂きたい。あなたの覚悟をお伺いしておきたい。これは絶対にそのことをやるということを議会を通じて国民に鮮明して頂きたいと思う。
  91. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 私は現在国民が検察庁にどういうことを期待し、要求しているかを十分承知しているつもりでございます。検察庁法第十四条によりまして、検事総長に指揮を与えますときも、このことを私が深く自覚いたしまして、話をいたしております。指揮と申しますと、顎で使うような感じを与えるわけでございますが、検事総長を通じて、問題について指揮をいたしますときには、十分に国民が何を期待し、何を待望しているか、輿論といものはどこにあるか、又検察庁の神聖な任務がどこにあるかを考えた上、懇談の形を取つている次第であります。
  92. 中山福藏

    ○中山福藏君 緒方副総理はお休みになつているようですが、ちよつと失礼ですけれども、(笑声)総理がおられませんから、あなた代つて答弁を願いたい。  今犬養法務大臣にお尋ねをした、いわゆる検察庁がややもすれば政治的な圧力を法務大臣の力によつて加えられるのじやないかという国民は杞憂を抱いている。そこで検事総長の地位というものを、会計検査院長みたように独立の一つの特別職にする必要があると私は思うのですが如何ですか。将来日本のために必要じやないかと思つているのですが、如何ですか。
  93. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 私は今の検察庁法の第十四条に、法務大臣と検事総長の関係ができておりまするが、私はああいうふうな一つの有機的な関係があることが却つていいのではないか。あの指揮権というものは実に重大なもので、これは容易に発動すべきものでは勿論ないわけです。法務大臣にその人を得ればその間に十分な公正査な検察の働きをさせて行くことができる。やはり私は今の制度でいいのではないかとも私個人としては考えております。
  94. 中山福藏

    ○中山福藏君 どうもそれは実は承服できないのですが、十分御検討願いたいのです。  時間がないのでそれじや農林大臣にお尋ねしましよう。農林大臣は、御承知通り、戦争後に、農林省から各町村に渡されました補助金の願というものは約二千億円か三千五百億万円くらいある。ところが毎年の実る米の量を見ましても、大体六千万石内外なんですね。これは一体この二千億万円という金を農林省はどういうふうにお使いになつて、十年前と殆んど変わらない米の生産高しか得られないのでしようか、その原因をどうお考えになつておりましようか。大体二千億万円注ぎ込んでいるんですよ、米の生産を助長するために。どういうふうにその金が使われているのか、ちよつとお尋ねしておきたいと思うのです。
  95. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。一部にそういう御疑念を抱かれることは御尤もだと存じますが、農業の進歩、改定ということは、本質的にどんなにむずかしいかということのそれは証明だと思います。併し今日の、まあそれは作、不作はございますけれども、戦前の反収平均がニ石九斗台であつたかと思いますが、今日では一石一斗台と増して来ておりますから、丁度この愚の目を数えるような、非常にのろい足どりでございますけれども、年々農業の改臭は行われて来ていることは、これは証明されているわけです。従いまして、今日まで農業のために、各種の補助金助成金が出ておりますけれども、あの手この手を以て、とにかく農業の進歩、改良を図つて参りまする呼び水の作用として大きく役目を果して来ているものと私は確信をいたしております。
  96. 中山福藏

    ○中山福藏君 私どもは、道行きじやなくて到着駅を聞いているのです。到着駅は、東京に行こうと思つてつたのが仙台に行つてしまつたというような結果にこれは陥つているんです。だから二千億万円という国民の血税から出されたこの金は、これは恐るべき大きな金であります。これは要するに一万二千を数える町村の補助金の分取りのために農林省が使われているのじやないか。これは事実町村に補助金としてどういうふうに使われているんですか、肥料の購入とかいろんなそういう方面、これに使われているんですか、或いは橋を架けたり、河を修理したり、そういうことに使われているんですか、その用途はどういうふうになつているんでしようか。あなたは答弁ができなければ局長からでいいんです。
  97. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) これは来年度の予算を御覧頂きましても、随分たくさんな種目になつております。農業経営の向上を図つて参ります上に、又日本の農業の進歩を図つて参ります上に、当面一番大事な、例えば畜産の振興にいたしましても、外国から、いい種の種畜を輸入して、それを貸付ける、或いは安く分けるとかいうような、これは雑多な、畜産から蚕糸、水産すべてに亙つておりますから、これはいずれ又他の分科会等の機会には十分詳しく申上げたいと存じます。
  98. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一つお尋ねして置きますが、農林省は近くイランから一万三千トンの米を購入する計画があるとのことですが、この米の指定商選定の方法を承わりたい。これはビルマとシャムとを私が廻つて来て驚いたのです。日本の内地に米が入る前に米の値段がなぜ上るかということを研究して見るというと、向うで日本への商人同士が米の買いあさりをやつておる。それでこつちに入る前に向うのほうでちやんと日本に入る米の殖段が上つておる。それで米穀賄人への指定閥を、誰をこれに持つて行くかということ、この方法は大変私は横討を要する問題じやないかと思うのです。今度このイランの米を購入されるについてどういうふうなこれに対して手を打たれるつもりでおりますか、お尋ねして置きます。
  99. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お話のイランの米一万三千トン余りを買うようになりましたのですが、これはイランとの間の貿易関係からいたしまして、イランの強い要請に基いて主食用としては約九千トン、加工用として四千トンぐらいの米になるわけでございます。それで全体のこの輸入量に対する扱い方は、前々回の当委員会でも中山委員から強く御指摘を頂いておるので非常に注意をいたして私やつておりますけれども、大体ビルマにいたしましても、タイにいたしましても、政府間の取引の量が圧倒的に多うございます。それで整理いたすべきものはかなり整理をいたしておりますが、なおこの扱い方につきましては、今後とも十分注意をいたして参るつもりでございます。イランの米の今度の一万三千トンの扱いにつきましては、イランとの貿易に携つている貿易商社に多く扱つてもらうようになろうかと思います。具体的に私はまだ報告を受けておりません。
  100. 中山福藏

    ○中山福藏君 最後に農林大臣にもう一つお尋ねして置きます。  昭和二十八年度の食糧の輸入の状況を見てみますと、米が九十六万トン、大麦が八十二万トン、小麦が百三十五万トン、合計三百三十五万トンということであつて、私どものほうから支払いました金が四億二千七百万ドルという金になつておるのであります。こういうふうな大きな金を毎年々々払つてちや日本はやり切れないと私は考えておるのです。勿論、私ども台湾、朝鮮を持つておりましたときには、約二百万トン、千三百万石ぐらいの米が毎年入つて来ていたが、今はそれも出来ない、そこで日本はどうしても自給対策を考えなきやならん。殊に日本は四面環海で、封鎖をされたときには、じわじわと封鎖をされて外国から米が入らんときにはお互いに餓死しなきやならんということになつておるのでありますが、然らばこの打開策はないかというと、私はあると思う。それは北海道の開墾というものと干拓事業をやればこの難関を突破出来ると思う。それで私の計算によりますると、大体北海道に七十九万町歩ぐらいの未開墾地がある。先だつて私は衆議院予算委員会を傍聴しておりましたところが、緒方副総理は、五百万人ぐらいここに入れる余地があるだろうと言つておられたが、私は千五百万人は入れると思う。それで反当り先ず五俵、一石としても千六百万石ぐらいの収穫を得られるのじやないかと思う。この間、私、昨年の十月に北海道を大体半分廻つて来ました。至るところまだ未開墾地が多いのでありますから、これに対して政府が大きな手を入れる、過般、年に二百億円ぐらい入れてもどうにも手のつけようがないという大野国務相の本会議における答弁でございましたが、これは三百億でも、十カ年計画ぐらいでやつたら大変な効果があると思う。だからこれは年次計画を立てるということが必要だと思うのですが、これに対して農相はどう考えておられるか。もう一つは干拓事業に関してです。御承知通り岡山県の児島湾における藤田農場は非常に成功しておる。今日干拓事業に適しておるところは、東京湾或いは八郎潟或いは浜名湖というふうになつておりますが、私の見るところでは九州の有明湾の干拓こそ一番必要ではないかと思う。現に有明湾は一千町歩の干拓を、やつております。これは再来年ぐらいに竣工するはずであります。あの壮観を見ながら私はあの堤防を全部歩いてみました。潮の干満の差が八尺から十二尺ある。あなたは佐賀県ですからよく御存じの通り。だが、この水をはかせるには人件費の節約というものが有明湾に関する限り大変にできる。だからこれを干拓すれば五万町歩の田ができるということがはつきりとなつて来る。而も土壌というものは、海底は泥土で、米を作るのに一番適しておる。殊に大豆には適しておる。私は干拓並びに北海道の開拓に対して、この場合農相の御所見を伺つておきたいと思う。
  101. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 経済自立達成の障害になつております輸入食糧を如何にして防遏して参るか、これはもう食糧増産のほかにはないわけでございます。お話の北海道に増産余地が非常に残されておる。これはもう全くその通りであります。従つて年度全体としては食糧増産の費目はかなり窮屈になつておりますけれども、北海道の分につきましては、僅かでございますけれども昨年よりも、今年度よりも増額をいたして、四十八億以上を計上いたしておるわけでございます。北海道に力を入れるということは、政府方針として全体の開発に向つて力を入れる。その一環として食糧増産にも特にそういうふうな配慮をいたしておるわけであります。私は併しこの農地の改良造成ということが同時に又非常に基本的に大事なことは申すまでもないわけでございます。財政の余力がある限り、これはもうこれに投入するということは最も大事なことだと思うわけでございます。同時に、先ほど申しました農業が非常にこの改良向上というのはむずかしいとは申しますものの、例えば朝日新聞と農林省で共同してやつております米作日本一のあれにいたしましても、相当昨年のような大災害のときでも二度も水をかぶつたというようなところで六石近くの収穫を挙げて来ておる。全体として三百万町歩の既耕地の単位収穫をどう引上げて行くか、ここに私は食糧増産の鍵が一つは残されておる。こういう点については今回の予算でも十分一つ考えて行かなければならんということで配慮いたしておるわけであります。  もう一つ干拓につきましては、これはもうお話通りでございます。干拓地が特にこの土壌の性質からいたしまして生産力が非常に高い。併しこれはもう何さま非常な金がかかる。乏しい財政力ではなかなかそのお話のような地点々々がとりつきにくい。そこで何かほかに工夫はないものかどうかということで、例えば外資に頼る筋はないかということで、只今苦心いたしておりますけれども、干拓の必要なことについては全く同感に存じております。
  102. 中山福藏

    ○中山福藏君 私が一番狙つておりまする文相に対する質問が、とうとうあと十分間に追い詰められまして、これは質疑する余裕がなくなつて誠に残念に思うのです。併し十分間でも私はお尋ねしておきたい。第一、今回政府から提出されようとしている教育二法案は、教育基本法のうちに明示されてありまする「真理と平和を希求する人間の育成」、この点に関する深い理解がなければ、この法律案の解決はできない。故に先ずこれは一般質問で詳しいことは尋ねますから、文相に前以て御所見を承わつておきたいのは、この教育基本法の前書きに謳つてあります真理というのは、一体どういうことを指しておるか。その点についての御所見を承わつておきたい。
  103. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 何が真理であるかということは、これはなかなかむずかしいことでありまして、それぞれその人の人生参観によつてそれぞれの人が真理と考えるのであります。誰か一人がこれが真理である、こういうことをきめて一般の人にもこれを真理として押し付ける、こういうことはできないと思います。
  104. 中山福藏

    ○中山福藏君 そこで、この教育基本法に書いてありまする真理というのは、これは、或る人にとりまして真理だとなれば、人間は自分の身命をこれに賭する場合がある。いわゆる法律から言えば確信犯という犯罪がそれだ。この確信犯的に、狂的にその真理に憧れておる人間が教育の任に当りまするときには、こういう法律があつても、これは役に立つかどうかということは非常に疑問なんです。そこで日本の法律に現れております真理というものは、アメリカ式の真理ではないかと実は考えておる。ソ連では共産主義が真理だと思つておる。アメリカ十三州の独立宣言書をお読みになると、ここに真理という文字が使つてある。この流れを汲んでおるのが日本の憲法の精神であり、この教育基本法の規定になつて現れておると思う。ところがその十三州の独立宣言書に現れた真理というものがどういうふうに書いておるかというと、これは面白いのですよ。こういうことが書いてある。そのアメリカ十三州の独立宣言書の中の前文の中に「自然の法と自然の神の法とが彼らに賦与するところの独立平等な地位を占めることが必要となつた場合において、いやしくも人類一般の意見を適当と尊重する以上、彼らをして独立を余儀なくさせるに至つた諸理由を公けに宣明するのが当然である。」その次に、「我らは次のような諸真理を自明の理と考える。」ここに真理という文字を使つてある。これが内容を見てみまするというと、「人間はすべて生れながらにして平等なものである。彼らは造物主から或る種の譲渡することのできない権利を賦与されている。」これが第二項になつておる。それから第三には、「これらの権利中には生命、自由及び幸福追求の権利が含まれる。」これが日本の憲法には第十三条にちやんと書いてある。「これらの権利を確保するために人類の間に政府組織されなければならず、政府はその正当なる権力の根拠を被治者の同点に有するものでなければならない。」、「如何なる形態の政府といえども、これらの目的を破壊するようになつた場合においては、人民はいつでもこれを或いは変更し、或いは廃止して、彼らの安全と幸福とを最もよく達成するものと考えられるような原理を基調とし、且つこのような原理に適合するようにこの権力を組織するところの新らしい政府を樹立する権利を有する。」、こう書いてある。これが真理だとアメリカは言つている。この思想が流れて、この教育というものの真理という言葉が現れて来ておると私は見ておる。そうすると、これが誠に真理の解釈のしようでは妙なものになる。だから共産国では共産主義がこれが真理だと思つておるのでしよう。日本は曾つて八紘一宇が真理だと思つておつた。ところが平凡な学者は真理というものはどんなものかということを、自分が真理を口にしながら知らん人が多い。今の多くの世界学者はそうだろうと私は思う。真理というものは私は二つあると見ておる。人智が啓発するに伴つて、その確信の基礎となるものが世間では普通に真理と言つておる。ところが自然から見ますと、絶対不動の真理がある。この人智の啓発の結果、階段的にこの絶対不動の真理と人間の頭による真理とが合流するのが文化の花だと私は見ておる。この区別がわからんのですよ。あなたはおわかりになりますかこの区別が……。例えば、これは実例を挙げなくちやわからん。アリストテレスの物体落下の真理は、千五百年間真理だと世界の人によつて思われていたところが、ガリレオのピサの高塔から落した物体の速度からその誤りであつたことがたつた五分間で打破られております。だから人間の知識がだんだん進んで来ると、前の真理は嘘になる。これは相対的の真理なんです。絶対的の真理と、相対的の真理というものの合流するのが即ち文化の進展なんです。この区別がわかつていなければ、この基本法の説明はできないと私は見ておる。だから今のアメリカ十三州の独立の宣言書をお読みになつても、ここに謳われておる真理をこの日本の教育二法案の中に当てはめて行きますと、これは変な解釈というものが現われて来るのです。こういう点について日本の教育基本法に謳われておる真理というものをどういうふうに全国の教員の方々に御説明になるつもりで今研究しておられますか。その研究の結果をお知らせ願いたいと思います。
  105. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 教育基本法に言うところの真理というものが、アメリカ風に考えてどういうことを真理と言つておるかということは、私も今中山さんのお話を伺つて初めて承知したのでありますが、併し私どもはこの教育基本法を日本の法律としてこれを取扱う場合に、アメリカ人がその真理ということをどういうふうに考えておろうが、これは直接関係はないと思つております。基本法に真理を追求するといいますか、愛するという人間を作ることが教育の目的であるということを書いてありますのは、私どもとしましては、真理とはどういうものかということをあらかじめ予定して、そしてそれを信奉する人間を作るんだというふうには考えていないので、真理を追求して、探究してやまざる、そういうまじめな人間を育成するんだと、こういうふうに私は考えております。
  106. 中山福藏

    ○中山福藏君 そこで私は文相に、これは時間がありませんから申上げられませんが、最後に一つ私のきめ手を御提供申上げます。それは南原繁という日本最高の学府の総長さんがアメリカからお帰りになつたとき、どういうことを天下に声明したかと申しますると、当時丁度破防法が通過した後であります。学生は真理のためには破防法を蹴とばして闘えということを彼は新聞を通じて国民に呼びかけておる。だからこの日本は教育基本法に与えられた真理に定義を与えないと、真理だと自分が主観的に考えたものは何をやつてもよいということになるのです。そうすると教唆、扇動という文字の基本というものが崩れて来るのです。だから文部省としてはその点の明確な線を、国民の割切り得る線をお現わしにならない、この法律案というものはなかなかむずかしくなつて来ると私は思う。これは哲学的に言えば幾らでもむつかしく言えるわけです。現実を尊ぶ政治でありますから、私はそういうことは申上げません。だからそういう点を一応御検討になつておかないと都合が悪いのじやないかと心配しておる。私はくだらない低級な思想の持主が日本国中を荒し廻るということについては、断固として闘う必要があると思う。従つて教育三法案が、私はできるだけ正確な結果というものを現わして、国民の納得を得て通過する必要があるのじやないかと思いますから、こういう点も十分御研究になつて頂きたい。私は文部委員会、或いは一般質問の場合に又繰返しますから、これはここでやめておきます。時間がございませんから……。
  107. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) 南原君がどういう演説をされたか私は存じませんが、果して中山さんの言われるように真理のためには破防法を蹴とばせというような演説をしたとすれば、これは甚だ怪しからん演説である。法律を蹂躙することを学生に向つて話をするということは、これは常識上甚だ怪しからんことと思います。私は只今申上げますように何が真理であるかということは、その人のおのおのの考えによることで、おのおのの人生観に基いてその人が信奉することであります。従つて南原君がどういうことを真理と考えられるか、これは南原氏の勝手であります。併しながら自分が真理と考えることを教育の場に、殊に義務教育のような子供の場に持ち込んで、そうして自分が真理と考えることを子供にこの線で教えろ、ほかのことは真理でないのだ、この自分の言うことが真理だ。だからこういうことを子供に教えろと言う者が若しあるとするならば、これは到底許すべからざることであると私は思う。今日の教育二法案というものは、こういうことが世間往々にして今日教育の場において行われておるという認識に立ちまして、さようなことのないように法律案を提出した次第であります。
  108. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ず総理大臣にお尋ねしたいと思います。  これまでの総理大臣の衆参両院における各質疑応答によつて大体漠然とはつきりなつてつたのでありますが、改めて再確認をするという意味において、はつきり御説明を願いたいと思うのです。総理大臣はこの間終りましたベルリンの四カ国外相会議の成果はどういうものであるというふうに判断をしておられるか。更に引続いて四月二十六日から開かれるはずになつているジユネーブのアジア平和会議、これがどういう問題をどういうふうに解決をして行くというふうにお見通しになつているかという点、更にそれに引続いて恐らく軍縮会議が国際会議の重点となつて展開をされて来ると私は思うのでありますが、それらの点に対して総理はどういうふうにお考えになつているか、先ずお尋ねしたいと思います。
  109. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答をします。ベルリン会議において私は一応各国の立場が各国においてわかつた。例えばソヴイエトはどう考えているか、フランスはどう考えているかということがわかつたということが一つの収獲ではないかと思います。ジユネーブの会議においては、今後開かれることで、私も予想はできませんが、又軍縮会議においてもその通りであります。併しながら大体の傾向としては、軍縮会議においても、それからジユネーブの会議においても、列国がおのおのその立場を了解する結果を持ち来すであろう、こう私は思います。
  110. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 相互の立場を一つの場所において話合つて、お互いに主張だけは了解をし合うということになるだろうというお話でございますが、私はもう少し一歩進めて、積極的に平和の傾向というようなものが非常に決定的になりつつあるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。特にアジアの平和会議の問題に関連してでありますが、ソ連は中共を国際会議に引つ張り出して、ソ連の言う五大国会議に発展させようとしておるし、それを通じて国際緊張の緩和を図ろうと狙つているのだろうと思う。それでアメリカはこれに対してどういう態度、どういう方向に持つて行こうとしているかは、まだはつきり私には掴めませんけれども、少くとも休戦協定によつて、朝鮮の政治会議をこれによつてすり替えて、一応これで解決の途をとろうとしている。で、その場所において、一面においては中共であるとか、ソ連を被告としてその位置を引張り出しておいて、その意図を世界に暴露しようという人があると思うのです。併し同時に他面においては、非常に現実的でありますから、やがて必要とされる対中共の貿易制限の緩和であるとか、乃至は本格的な通商の開始、そういうものに引つかかりを何か作ろうとしておるのじやないかということも考えられると思うのです。で、イギリスはもつと現実的に進めて、アジアの平和が確立をされて、その通商圏が拡大をされるということをひたすら望んでいると思うのです。フランスは更にもつと積極的で、インド支那の休戦と、欧洲軍の無期限延期というようなことを願つておるというふうに私たちは考えるのでありますが、そういう意味において平和への方向は非常に大きく決定的になるであろうというふうに考えるのでありますが、総理はこれらの点をどういうふうにお考えになりますか。
  111. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はお話の点について、かれこれ申す材料は持つておりませんが、大体の方向としては、あなたのお考えになるように、世界の国際関係の緊張を漸次緩めて行くほうに進むであろうというふうに考えもし、又希望もいたします。
  112. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、総理施政方針演説でお述べになつた、国際緊張の緩和によつて冷戦が継続をするというお考え方でありますが、私たちはそれをもう少し一歩進めて、むしろ冷たい平和の状態、そういう段階にまで進みつつあると言つたほうが適切じやないかというふうにこう考えるのであります。と申上げますのは、東西二大陣営が対立をして、戦争の危機をはらみつつ、国際的な緊張が切迫しているというような状態が冷戦の状態だというふうに今まで言つて来たと思うのであります。然るにこの現在の段階は、戦争の危機は、総理もしばしば言つておられるように、戦争の危機は遙かに遠のいてしまつた。そして国際的な緊張が非常に緩和をして、少くとも国際紛争は武力によるのでなくて、話合いによつて、外交交渉によつて解決をしようという状態なつた。従つて方向としては平和の方向が決定的になつて来た。併し、ただ未だ緊張そのものが完全に緩和されたわけではなく、いわんや両陣営の体制としての、組織としての対立は、絶対に解消をしていない。そういう意味で平和が完全に回復されたというふうには言えないし、そういう意味で冷たい平和の状態であり、そういう段階にまですでに進みつつあるのだというふうに認識をすることがより正確ではないかと思うのでありますが、総理はこの点についてどういうふうにお考えになりますか。
  113. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大体の方向としては、お話通りであろうと思います。又ありたいと考えます。
  114. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこでもう一つ、もつと具体的にお尋ねをしたいのでありますが、これは昨日鶴見委員からもお尋ねがあつたのでありますが、アメリカを中心にする西欧の体制とソ連、中共を中心にする共産主義の体制、この世界の両体制の共存の可能性があるかどうかという問題、これについては、総理は昨日共存の可能性があるかどうかはわからんけれども、併し少くとも平和的に共存し得るように我々は努力をしなければならないし、そういう努力をすることこそが政治家の任務であるというふうに声明をされたのでありますが、私はこれは非常に見識の高い政治家としての、非常に大胆率直な御声明であると思うのですが、それを今私が説明したような形において再確認をいたしていいかどうか、改めてお尋ねをいたします。
  115. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は政治上の主義主張にかかわらず、或いは人種が違うからといつて、或いは国が違うからといつて世界が共存共栄の立場に立ち得ないとは考えないのであります。又、主義主張を違えても、又国柄を異にしても、世界の平和、人類のために共存共栄の道に持つて行くことが、我々の理想であるべきものだと考えております。
  116. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう考え方に基いて、総理は昨日、自分は親米でもなければ、勿論親ソでもないし、併し反ソでもない、そういう意味においては中立であるという態度を表明されたのですが、そういう考え方によれば、その考え方、態度は、少くとも主体性を確立して、自主性を確保するという問題であり、と同時に両陣営の対立があるにかかわらず、共存をするように努力をするというのであれば、私たちの考え方からすれば、申上げるまでもなく、中立政策が最もそういう任務を達成するための効果的な態度であると思うのでありますが、総理は最近の国際情勢の進展から、そういう立場に逐次近ずいて来られつつあるのかどうか。その点を御説明を願いたい。
  117. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、中立という意味合いでありますが、私の言う意味合いは、世界の平和なり、世界の人類の繁栄なりに最も貢献するほうに日本は味方するのが日本の立場であり、これが中立でないと言えば私は中立に反するのであります。
  118. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は議論の分れるところでありましようから、一応もう少しあとに問題を残しておきます。  次の問題に移ります。今私たちが、そうして総理も、この世界情勢の判断には殆んど一致した御見解を持つておられると思うのでありますが、こういう世界情勢の判断を我々がしているにかかわらず、アメリカ世界情勢についてどういう判断をしているか。特にその世界情勢の判断に関連をして、アメリカはどういう戦略を、世界戦略を立てようとしているか。いわゆるアメリカの新戦略であるとか、或いは戦略におけるニユールツク、そういう問題を総理はどういうふうにお考えになつているか。
  119. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御質問の要領がわかりませんが、アメリカの……。
  120. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 新戦略です。
  121. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はアメリカの新戦略なるものは知りませんが、併しながらアメリカといえども、戦争を吹つかける考えはないであろうと思います。大体において我々と同じ考えで、世界の平和を増進することに対しては協力する、或いは主力を注ぐという考えでいるであろうと思います。併しながら共産主義国の考え方がわからんというのが真相ではないか、私はそう考えます。
  122. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 外交政策その他についてはそうでありましようが、私はもう少し限定をして、戦略におけるニユールツク、いわゆるアメリカの戦略におけるニユールツク、新戦略、そういうものがどういうものとお考えになつているかという質問をいたしておるのでありますが、これは一つ外務大臣或いは保安庁長官に御答弁を願いたい。
  123. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。最近アメリカでは、今申される通り新らしき方式の軍事計画というものを立てておるやに承知しておるのでありますが、私もその一端は承知しております。これはアメリカが如何にして経済的に国防を充実しようか、この出発点に立つておると考えるのであります。要するに新らしき兵器によつて旧兵器に代らせて、そうして国防の全きを期したい、これにほかならんと考えております。
  124. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点もう少しはつきりと外務大臣にお答え願います。
  125. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は今保安庁長官が言われたように、アメリカ側でいろいろ研究はいたしておるようでありますが、まだ決定したといいますか結論には達していないと考えております。
  126. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 誠に驚き入つた御答弁でありまして、日本の国防を、而もアメリカの戦略との関連において考えようという保安庁長官が、単に予算節約の必要上新兵器に代えるのだというような、簡単な子供でもわかりそうな御返事をされるし、或いは外務大臣に至つてはそういう新戦略はきまつていないのじやないかというようなことを言われるに至つては、誠に何と申上げていいか唖然たらざるを得ない。(「大統領の一般教書を見なさい」と呼ぶ者あり)そういう考え方で日本の国防問題をお考えになつているかと思うと、私は言うべき言葉がないような気持がいたします。私が今お尋ねをしておる新戦略、それははつきりきまつているではありませんか。あなた方が戦略問題なり何なりの問題を、国民に少しも知らせないで自分たちだけで、而もアメリカとの話合いによつて自分たちだけで問題を片付けて行つて、既成事実を我々に、国民に突きつけてそれを強制しようとされている態度が、おのずから安易にしてしまつて、そういう返事しかできないということになつているのじやないか。併しそれでもまだいいです。あなた方はアメリカといろいろ相談をしながら、日本の国防方針その他をぱ決定をしておられる。それならそれとしてもつと明瞭にアメリカの新戦略なるものを少くも国民にも御提示になつたらどうですか。これは私が今卒然としてお尋ねをしておるのじやなくて、すでに早くからこういう問題をお尋ねをするということをちやんと通告をいたしておる。外務大臣はそういうものはまだきまつていないと思うという御返事でありますが、外務大臣はすでに御覧になつたと思う。アイゼンハワー大統領が一月七日に発表した一般教書、これにはその点をはつきり謳つております。即ち我々は原子力の平和目的への使用を固く決意をする一方、増大する原子兵器の数量を十分考慮に入れ、且つ我々の自由を維持するために、必要な場合は侵略者に対してこれらの原子兵器を最も有効に使う手段について考えておる。こういうふうにすでに新戦略ははつきり転移したことを宣言をいたしております。昨年の十月、十一月頃アメリカの国防関係の高官連が極東、ヨーロツパに飛び廻つたときならば、あなたの御説明でいいと思いますけれども、すでにそれらが一応の結論を与えられて、アイゼンハワー大統領の一般教書にはちやんとはつきり説明しておる。而もそれに引続いてダレス国務長官、これはあなたと同じように外務大臣でしようが、このダレス国務長官はこの点をもつと具体的に説明をしておる。個々の地域の局地的な防衛力に頼るよりも、むしろ敵をして事前に思いとどまらせるような武力に頼ることがその解決策となる。侵略を事前に思いとどまらせる方法とは、自由諸国がみずからの選択する場所において、又みずからの選択する手段によつて強力に対処する意思と能力を持つことであるということをはつきり言つております。これを具体的に言いますならば、アメリカの新戦略とは、ソ連の侵略を未然に阻止する基本的な手段として、事実上原子力兵器に頼るということである。新戦略は現地にある防衛力に頼るのでなくて、若し共産主義者が朝鮮で戦争を始めたり、インドシナに多数の兵力を送り込んだりするならば、彼らは中国大陸なり、インドシナなり、アメリカ自身の選ぶ地点において原爆による攻撃を加えられることを覚悟しなければならない。これがアメリカの新らしい戦略として今回はつきりきまり、これに応じて予算教書が出ておることはすでに御承知であると思いますが、この点をどういうふうにお考えになるか。
  127. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。アイゼンハワーがそういうことを言つておることは事実であります。そこでそういう方策をとるのは何に基いたかというと、結局はアメリカが従来のような行き方では、非常に人員の点から言い、その他の点から言つて経費がかかる。最も経費のかからないようよき方策はどこにあるかというその見地から、いわゆる今あなたのお述べになつたような政策をとつたものと私は了承しております。又実行することを言つておるのであります。これによつてアメリカの国費を削減しようこれなんであります。そうして国費を削減しても、十分効果的にアメリカの防衛体制をとつて行く方式を考え出したものと我々は考えております。
  128. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その戦力をどう判定するかというような問題は、私はあとで質疑したいと思いますが、それに関連をいたしまして若しアメリカがそういう戦略に変つたとするならば、日本がこの原子兵器による爆撃の基地にならないとは限らないと思うのでありますが、曾てマツカーサー元帥が朝鮮動乱を解決するために、中国大陸に或いは満洲の本拠に爆撃をしよう、而も原子爆弾を使おうという決意をしたときに、ヨーロツパ諸国においてこれに対する反対が猛然と起つて来て、御承知通り当時のイギリスの労働党の党首アトリー直ちにアメリカに飛んで参つて、アイゼンハワーとこの問題で原子爆弾を使つてはならないということを強く交渉をしそのためにあのようにマツカーサー元帥が解任をされたことは、我々の記憶に新たなるところであるのであります。その後更にイギリスにおいては、原子爆撃の基地になることに対しては非常に強い反対を示しておると思いますが、吉田総理大臣は、アメリカがこういう新戦略に転換したのに照応して、少くとも日本にはそういう意味での爆撃の基地は絶対に設けてはならないという折衝をされたかどうか或いは今後される御用意があるかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  129. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府は未だそういう交渉を受けておらないのみならず、将来についても何ら交渉を受けておりません。それは現実の問題になつたときにお答えをいたしますが、今日仮定の問題に対してお答えはできません。(「これほどはつきりした現実はない」と呼ぶ者あり)
  130. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 アメリカの新戦略によれば、先ほど申上げたように明瞭にそれを宣言をいたしておるのでありますから、そのためには基地がなければならないことは当然であります。その場合の基地の一つとして日本国土が考えられるであろうことも、これ又常識の示すところであつて、そうなればそういう問題が当然に起つて来ることを予想をしなければならないのです。そういうときにどういうお心がまえであるのか、その点を国民にはつきり知らして頂きたいということをお願いをしているのです。どうぞもう一遍はつきりと御答弁を願います。
  131. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 仮定の問題についてはお答えいたしません。
  132. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 仮定の問題について答えをしないというような簡単な問題じやない。非常に重大な、日本国家として、或いは従つて日本総理大臣としてそういう問題にどういう心がまえでおるかということだけは、仮定の問題としてでなしにはつきりと態度をきめて然るべき問題であると思いますが、お答えにならないのならばそれは止むを得ません。併しそういう問題にすら総理は国民に対してお答えにならないという事実だけはここにはつきりしておきたいと思う。  次の問題をお尋ねいたします。アメリカのほうはそういう情勢でありますが、これに対してソ連或いは中共の圏内おにいてはどういうふうな戦略を考えておるのか。殊に極東においてはどういうふうな戦略配置をしておるとあなたがたは判定をしておられるのか。その点を、これは外務大臣なり木村保安庁長官なりに御答弁を願います。
  133. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。鉄のカーテンを固く閉ざしておるので、その内部はどういうことをやつているかということは確定的なことは、わかりません。併し少くとも沿海州その他サガレン方面において相当数の兵備をやつておるということはわかつております。なおウラジオにおいてこれ又相当数の潜水艦その他を遊戈させるという事実はわつております。それ以上のことは申上げることができません。
  134. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 大体保安庁長官と同じでありますが、中共におきましての兵力の算定方法はいろいろあるようであります。いわゆる正規兵とか或いはそのほかの民兵のようなものとか、いろいろ見方はありましようが、大体三百五十万乃至四百五十万と算定されております。そのぐらいの兵力を持つておる。併しながらシベリア方面のことは今保安庁長官の言われましたように秘密外交ですから、わかりません。(「この聞アメリカから御教授を頂いたじやないか」と呼ぶ者あり)併しながらいろいろの報道は聞いておりますが、確認されたものはないのであります。
  135. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 全く頼りない話で、そういう情勢判断で日本の国防の問題をお考えになつておるかと思うと、これ又唖然たらざるを得ません。それとも好意的に、併し非常に皮肉に考えれば、あなた方は十分知悉しておりながら、この問題を国民に何ら知らさないで済ませると思つておられるのか、そのいずれかとしか考えられない。この問題については池田・ロバートソン会談のときにすでにはつきり極東における軍事情勢配置の問題が議論になり、少くともナツシユ国防次官補から詳しく御説明をお聞きになつたはずだしその報告はちやんと受けておられるはずだと思う。のみならず、極東における共産陣営の戦略配置については外務省では次官、局長諸君が極東軍司令部に行つて詳しくしレクチユアを受けておるはずである。それらのものをちやんと御存じのはずだと思うのだが、それらを国民にお示しにならないのはどういう理由なんですか。私たちは再軍備に反対ではありますが、仮にあなた方みたように今後のMSA援助を受ける、それを機会にあなた方のいわゆる自衛力増強をやるというような建前からしても、又それを必要であると考えになる立場からしても、今のような問題ははつきり国民に知らしておかれることのほうがより効果的だと私は思うのですが、それであるにもかかわらずそうい問題を少しも国民に提示されないというのはどういう理由なのかその点を一つ説明を願いたい。
  136. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 我々は自分でこれを確認する方法がないのであります。従いまして今申したようにいろいろ報道はあるけれども、確認をいたすことができない、こう申したのです。例えば若し仮に中共に五十万の軍隊しかないということを私が言いましたら、それは違うとどなたでも言うだろうと思います。それに対して日本においても只今十一万の保安隊があるのみでありまして、これを漸増して行くということは、如何なる意味におきましても、たとえシベリアの兵力が確認されなくても、これは日本の海岸線から見、日本の人口から見てその程度のことは、当然自衛力漸増で行わなければならないわけでありまして、その大きな兵力と対抗するものを今考えておるわけじやないのでありますから、あなたのおつしやることとは少し問題が違うと考えております。
  137. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 向うの軍事的な戦略配置に対して日本がどう対処したらいいかという問題はあとでいろいろ質問をしたいと存じております。その問題に今入るのじやない。それよりもそういう議論をする前提の問題として、実情はどういうことになつておるのだ、でそれは自分たちは確認する方法はないと、おつしやいますけれども、併し今申上げたように、アメリカではそういうことを詳しく教示を受けられたはずです。又現地においても極東軍司令部になかなか数人の外務省の次官、局長が出かけて行つてその話を聞いているはずです。それに対して日本はどう判定するかと問題はいろいろあるでありましよう。私は今日本がどういうふうに判定するかということをお聞きしようとは思つておりません。ただ、どういう状況にあるとお聞きになつているか、その点を一つ説明を願いたい。若し外務大臣に御説明ができないならば、丁度愛知経審長官はその席でロバートソン会談のときに、ナツシユ自身からお聞きになつたと思いますから、その点を御説明を願いたい。
  138. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お名指しを受けましたので、私から御答弁を申上げますが、いわゆる池田・ロバートソン会談につきましては前国会におきましても申しました通りその内容は当時発表せられました両方の共同の新聞発表に尽きておるわけでございます。従つてあの共同新聞発表で御承知通り、例えばソ連或いは中共等の戦略的な情勢判断というようなものがその議題でなかつたことは、これによりましても当然でございます。従つて私から只今お尋ねのようなことでお答えをすべきものはございません。
  139. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ああいうコミユニケに発表される結論を得られるまでに、その前提の条件として今申上げたような問題がいろいろ議論をされてあなた方がお聞きになつたはずなんですが、それも御説明にならないというならば、日本の国民に対してそういう問題は何ら知らさないで、戦略なり戦術をきめて行くのだというお考えで、国民は全くつんぼ棧敷に置かれておるんだというふうに了解する以外にありません。私が聞き及んだのによると、これは非常に簡単ですから、私は政府当局にお聞きをしているのですが、私が聞き及んだのによると、共産主義の軍事的な配置はどういうふうに、全面的にどういうふうに配置されているかということはよくわからない。併し日本との関連において少くとも日本への侵略の問題としては陸上五十万の兵力を日本本土へ上陸兵力として割く体制はあると、海上は右の陸兵を一週間で上陸させるだけの艦艇が極東にあると判定をしている。航空機は極東の共産空軍はジエツト機五千乃至は六千機を配置をしていると見ていいということを聞き及んでおるのですが、木村保安庁長官が戦略をお立てになるときに、こういう問題はどういうふうに情勢判断をしておられるか。
  140. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今お示しになつた数字の根拠はわかりませんが、少くとも相当数の飛行機が或いは陸上部隊、海上部隊が日本周辺に配置されておることは事実であろうと考えております。そこでこれに対して日本の防衛体制をどう立てて行くかという御質問でありまするが、御承知通り日本では独自で以てそのような大きな勢力に対抗する実力部隊を持つことは各方面から考慮いたしましてできないのであります。止むを得ず日米安全保障条約によつて外敵の侵略に対してはアメリカ軍がこれに当り、そうして日本がこれを補助的役割をするということになつておるのであります。併し少くとも我々といたしましては或る程度の漸増計画を立てて日本の防備の全きを期さなければならんというこの見地から、いわゆる漸増方式による防衛計画を立てておることは御承知通りであります。二十九年度の予算に盛られたのも又これにほかならんと御了承をお願いいたします。
  141. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 日本がこれにどう対応するかという問題はもつとあとから申上げますから、要らんことに御答弁を願う必要はないので、(笑声)その前提条件になる共産勢力の軍事的配置、今申上げたような而も特に侵略可能なりとする配置、それらについてどういうふうに御判定になるかということを言つておるのですが、それには相当数のものがあるやに考えられるという程度で、そんなことでは問題にならん。それじやもう少し角度を変えて伺いますが、軍事的な侵略、武力侵略が戦略的に見て、戦術的に見てあり得るというふうにお考えになつておるのか、あり得るとすればどういう意味であり得るとお考えになつておるか、どういうコースでそういうものがあり得るというふうにお考えになつておるのか、そこを一つ説明願いたい。
  142. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。今直ちに外敵が侵略するとは考えておりません。さようなことは私は考えておるわけではありません。ただ、国際情勢の変化によつて何どきそのような事態が起るかもわからんということは私は言えるだろうと思います。先ほどお示しのように、世界は平和の一途を辿つており、私も平和的傾向があることは承知いたしておるのでありますが、併し一時の平和は必ずしも永久の平和ではありません。これはあなたも十分御承知通り、思わざるところから事は発展するのであります。而も日本の周辺に今あなたのお示しになつたような、さようなふうの配置があるとしますれば、何どき事の起りで以て外敵の侵入があるかもわからん。我々はふだんからこの用意をしておかなければ、万一さようなことが起つた場合に取返しのつかんことが起る。そこで我々としては事なきにおいて相当な計画を立てることは、日本の平和と独立を守る当然の筋と、こう考えております。
  143. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ほどの政治情勢の判定からすれば、平和への方向が決定的になりつつある昨今であるから、そういう武力侵略というようなものは考えられない。而も現在のソ連や中共が国内建設その他の問題に専心をしておる。そういう問題を考えれば、政治的に侵略なんというものがあり得ないということは、先ほどの総理の御説明、御判断からも結論ができると思うのですが、更に戦略的に、戦術的にこれが可能かどうかという問題をお尋ねをしておるのですが、何らこれにお答えがない。そこで一体、併しいつかはあるかもわからないし、あり得ることを予想して問題を立てなければならないとおつしやいますが、吉田総理大臣或いは現内閣の皆様方は、仮定のことに対しては具体的な策は立たないのだということ、従つて具体的なことの答弁はできないのだということをたびたび言つておるわけであります。而も今おつしやつたようなことは、政治的判断から見れば殆んど考えられない問題であります。戦術的に言つても、私たちはそういうことは考えられないということを確信をいたすのでありますが、それにもかかわらず、そのときだけは、何らわかりもしない、あるかないかもわからんような、いつあるか何か特にわからないような、そういう問題について、あたかも確実に数年の後にはあるかのごとき錯覚に陥つて、或いは国民を錯覚させながら現在の国防方針なり自衛隊の組織をやつておられるとしか思えないのであります。誠に矛循撞着も甚だしいと思うのですが、どうも水かけ論になりますから、もう少しその問題を具体的にお尋ねをしますが、ソ連或いは中共が日本に侵略をするという場合には、どういうコースで、どういう形態において侵略をするというふうに予想しておられるか。特に輸送力との関連を考えてどういうふうに判定をしておられるか、その点を先ず伺いたい。
  144. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。今仮定の問題と申されましたが、私は仮定ではないと思う。成るほど世界情勢において、今中共もソ連もいわゆる国内の建設に努力いたしております。或る見方においては、只今かような国内の建設に努力しておりますために、一時平和的の態度をとつておるのだという論者もあるのであります。私は故に考える。世界各国いずれも軍備を撤廃すればこれで何おか言わんや。さような時期の一時も到来することを私は希うのであります。現実はさように参りません。一方において国内の建設に努力しておると思つておると、やはり軍事力において少しの減少も来たしておりません。やはり軍事能力をピツチ・アツプさしておるような……、(「そんなことはない、ソ連は減らしておる、一九五四年の予算を見なさい」と呼ぶ者あり)私はソ連の予算は決して信用しておりません。沿海州及び樺太に今あなたが申された通り兵力が配置され、或いはウラジオにおいて相当数の潜艦が待機しておるということは、何を物語るかということであるのであります。これは沿海州及び樺太の方面からソヴイエトがそつくり引揚げれば、これは我々は何をか言わんやであります。この待機しておることは何を物語るか。これに対して我々国民としては、何らかのこれに対する対応の策を講じなければ、日本の平和と安全は到底維持できんと考えております。これであります。我々は事なきを欲するのでありますが、万一不時の事があつた場合において、日本の平和と独立を守るべくあらかじめ準備をすることは、国家として当然の趣旨であろうと考えておる次第であります。
  145. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 少しも私の質問の答えになつていない。そんな一般論を今聞いておるのじやないのです。そんな一般論なら本会議でやればいいのだ、もつと細かに……。而もその一般論なら私は総理大臣に聞くのだ。そうでなく、特にあなたに聞いておるゆえんのものは、もつと具体的に細かに問題を聞きたい。予算委員会だからそういうことを細かに聞きたいから申上げておるのです。潜水艦がどうこうとかいうようなお話もございましたが、潜水艦の配置その他が戦術的にどういう意味を持つておるかということは、あなたは長官でありますからよく御存じだと思う。それでそれらの配置に関連をして、日本への侵略のコースは戦術的にどういうものとして考えられるかということを聞いておるのです。もつと具体的に言いますが、輸送力の問題として、現在の重装備を持つた一個師団を輸送をするのに、どういう形でなされるとお考えになつておるのか。若し保安庁長官がこれは技術的な問題だからむずかしいとおつしやるならば、事務当局でも結構です。(「アメリカに聞かなければわからんよ」と呼ぶ者あり)
  146. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 現在の重装備の一個師団の兵員を輸送するには、大体平均三十五万トンの船腹を要すると我々は考えております。
  147. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 二十五万トンが必要であるとすれば、四個師団を輸送するのに百万トンの船が要るということになると思いますが、ソ連が現在外航に適する船をどれくらい持つておるとお考えになつておるか、今後それがどういうふうに増加して行くとお考えになるか、それとの関連において地上軍による侵略ということが戦術的にあり得るかどうか、時期的に言つていつ頃なら可能になるという判定をしておられるのか、その点お伺いしたい。
  148. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。佐多君はなかなかソヴイエトのことは通じておられるのでありますが、(「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり)我々としても通じたいと考えておるのでありますが、(「我が党は世界のことを皆知つているよ」と呼ぶ者あり)そういうはつきりした数字は我我知りません。併し相当数の、少くとも三個師団の兵力を輸送するだけの船腹を擁しておることは私は事実だろうと思います。然らばどの方面から進出して来れば進出して来るだろうかということの御質問でありますが、さようなことはここで私は申すことを、たとえ計画がありといたしましても、言うことは差し控えたいと考えております。(「船舶は幾らあるのだ、外航船は」と呼ぶ者あり)
  149. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 外航船舶が幾らあるかというようなことも、あなたが日本への侵略が戦術的にも可能だというようなことを言つておられるし、その時期等々が問題になつて、これからお尋ねをしようとする一体日本の自衛隊をどう考えるべきかという問題に関連をするから、私に具体的にお尋ねをしておる。而も、私がソ連のことを何か非常によく知つておるということを揶揄されますけれども、あなたがたが今考えておられる直接の侵略は、申上げるまでもなく共産勢力の侵略であり、従つてソ連、中共の侵略であると思う。それならば、それを敵と見る考え方からはつきりとその実情を知らなければならない。そこから問題はおのずから侵略の問題にどう対処するかという議論が出て来ると思うのですが、それらの問題に対して単に揶揄をしただけで、具体的なまじめなおお話をなさらない。而も、そういう問題はここでは申上げられないと、あたかも軍の機密であるかのごとく言われますが、そんなことは軍の機密でも何でもないのです。普通の常識論議なんです。政治家が国防を判定する場合の常識論議なんです。而もあなたは、これからお尋ねします。が、政治と軍事との関係をどうするかという場合に、政治が軍事に優先をしなければならないし、従つてそういう国防方針の判定は我々政治家がやるのだということを言つておられる。そういうものに対してまでそういうことの説明を拒否されるのか。そういう秘密を保持し続けようとされるのか。
  150. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は何も秘密にしようという気持は少しもありません。併しまああなたが、内心如何にもソヴイエト、中共を仮想敵国なるがごとくに議論されておるのでありますが、我々はさようなものを明らかに仮想敵国扱いをしてやることはどうかと考えております。(「しばしばあなたが言つておるじやないですか」と呼ぶ者あり)併し我々といたしましては、どこの国たるを問わず、外国の侵入があつた場合に、これに対処し得るような措置をとるということを考えておるのであります。
  151. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私もあなたがおつしやるように、仮想敵国その他を作りたくないし、又そういう態度であつてはならないと思う。殊に政治的にはそういう態度であつてはならないと思いますけれども、併しあなたがたは侵略があるのだと、その侵略に対応して幾ら幾らの自衛隊をいつ作らなければならないのだと、それには予算をこれだけ頂きたいのだということを出しておられますから、それを審議する上には、少くとも今申上げた程度のことは議論をしなければならないと思うのですけれども、そういう問題も更にお答えにならないのなら、時間もないし、私あとの問題をたくさん持つておりますので、この点についてはもう少し一般質問或いは分科会でやりますが、私たちの見るところでは、ソ連の外航に適する船舶は百二十万総トン、百トン以上を入れても百七十七万トン、而もこれは殆んど全部と言つてよいくらいに欧洲のほうにあるという判定であります。而も、もう一つ侵略のコースとしては空挺隊の問題が考えられると思うのですが、現在の空挺隊でどの程度のものが運べるか、どういう戦術的な意義を持つておるかというようなことは、私から御説明をするまでもなく、あなた自身がよく御存じのことですから、これらの問題は他の機会に譲ります。  そこで問題を変えまして、今保安庁長官も言われましたように、我々は仮想敵国を作るべきではないし、従つて又政治的な判定としても、近隣の諸国を敵視することは絶対にあつてはならない、こういうふうに思う。然るに、少くとも現在のアメリカの支配的な意見、表面に現われた支配的な意見は、これは統合参謀本部の議長のラドフオードの意見を中心にして、戦略なり、更には外交の問題が決定をされておると言われておりまするが、このラドフオードの意見に基いた、而も現在のアメリカの表面に支配的であると言われる意見は、中共を外交的にも経済的にも完全に封じ込めて、孤立化さして、中共を封鎖し、戦略物資その他を輸出禁止して国連から閉め出しておく、いわゆる中共を戦略的には勿論のこと、政治的にも敵視してこれに対処するという考え方であると思う。これがアメリカにおける表面的な意見であると思うのです。ところが吉田総理お尋ねをしたいのですが、板門店の予備会談に米国代表を務めた国務省の顧問であるデイーン代表、これはあそこでいろいろ折衝をした体験その他から、最近の判断としては、中共が現在中国大陸を支配しておる現実を認める。少くとも中共を敵視してこれを抑えつけるようなことはやめなければならない。更に台湾の国府政府の国府軍を利用して中国大陸の再鮮放を期するような積極政策に対しては絶対に反対である。こういう意味においてこれまでのアメリカの対中共政策は再検討の余地があり、変更をされなければならんという意見を出した。これに関連をしてアジア平和会議に代表として出るか出ないかというようなことがいろいろ議論になつております。恐らくやめて出ないことにはなるかも知れませんが、いろいろ議論になつている。併しこの考え方は先ほど申しましたように、アメリカの表面的な支配的な意見はそうでないにもかかわらず、少くともデイーン代表の考え方はダレスによつて支持され、更にニクソン副大統領もこれを支持している。アイゼンハワー大統領もこれを支持する方向に傾きつつあるというようなことが伝えられております。こういう問題に関連をして総理お尋ねをしたいのですが、中共或いはソ連も加えていいかと思いますが、そういう近隣諸国に対する日本の外交政策なり、日本のこれに対処する根本的な方策、そういうものを総理はどういうふうにお考えになるか、その点の御説明を願いたい。
  152. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば申す通りでありますが、イデオロギーは違つて日本と通商条約を結ぶという希望があれば我々は考慮する、こういう考えでおります。
  153. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 少くとも敵視しないで、いろいろなチャンスを捉えて通商貿易その他の拡大を図るというようなことは賛成だというようなお話だと思いますが、その点についてはもつと後ほどその問題として具体的に質問をいたしますが、それに関連をして岡崎外務大臣にお尋ねをしたいのでありますが、岡崎外務大臣は去年の初め頃まで、或いはもう少しあとくらいまでは、中共をあたかも不倶戴天の敵であるかのごとく、そうしてそれとの交渉その他一切はやらないのだということを強調されて、我々の中立主義なり中立外交を揶揄しながら非常に強い態度でそういう態度を表明されておられましたが、この一年或いは半年ぐらいの世界情勢の推移と、特にアメリカ或いはこれはのちほど聞きますが、イギリスその他の最近の中共に対する態度等々に関連をして、若干或いは相当変つて方策を立てようとしておられるかどうか。特に昨日ほどから総理が御答弁になつている問題と関連をして、その点の御説明を願いたい。
  154. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 外交方針情勢の変化に基いて適当に変るのはこれは自然であります。朝鮮の休戦会談がとにかくできまして、まだ政治会談と言うかジユネーブのほうのはわかりませんが、或る程度列国と足並を揃えた範囲内においては貿易をやることは結構であると考えております。併しながら例の中立政策なるものについては私の意見は変つておりません。
  155. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その問題はもう少し別な機会に議論をしたいと思いますが、とにかく中共その他に対しても、これを少くとも敵視するという方向であつてはならないということに対しては同意をされたものと私は解釈をいたして次に進みます。  世界情勢、特に極東の情勢を勘案をいたしますと、平和の方向が非常に強くなり、而も侵略の可能性というような問題は政治的にも、更には戦略的、戦術的にも殆んど具体的には考えられない。ただ木村保安庁長官が、あるかも知れないからというような程度の漠然たるものに過ぎないというふうな結論になると思いますが、そこで今度は面を変えて、国内の経済状態について若干お尋ねをしておきたいと思うのであります。それは国力と自衛力との関係の問題に関連をいたします非常に大きな問題として総理お尋ねをいたしたいのでありますが、総理はしばしば力をこめて、今年の予算は緊縮予算である、従つて国力はうんと収縮をしなければならないということを非常に強調された。私たちもその根本の大本の精神においては全く同感であります。それならば国力は今年、来年或いは再来年、少くとも二、三年の間どういうふうに推移するとお考えになるか、私たちは国力は今の程度でストツプしてそのまま移行する、或いは場合によつてはもつと縮小させなければならないような非常に重大な段階に来ておる。こういうふうに思つておりますが、総理はこれをどういうふうにお考えになつておりますか。
  156. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は占者でありませんから、国力がどうなるかということはお答えはできませんが、国力はますます隆盛ならんことを希望いたします。
  157. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 国力が隆盛ならんことを希望いたすのは、言われるまでもなく皆一致して希望いたしておるところであります。併しそういう漠然たる、小学校の二年生ぐらいの答弁をわざわざ総理大臣にお尋ねしているのじやない。問題はもつと具体的に、殊に国防方針との関連において問題をお尋ねしおる。総理はしばしば本会議その他で言つておられると思うのですが、もう一遍その点を、そういう漠然たる答弁ではなしに、もつとまじめに、(「そうだ」と呼ぶ者あり)具体的にはつきりとお答えを願いたい。
  158. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の前言の通りお答えをいたします。(「そんなことあるか」と呼ぶ者あり)
  159. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは、希望としてはますます繁栄あらんことを希いながら、現実としては特にこの一両年、二、三年の間はどういうふうになるとお考えになるか。
  160. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の説明は前言の通りであります。
  161. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 何ら説明になつていない。私の質問は次に移つている。その次の質問にお答えを願いたい。
  162. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の説明説明とおとりにならないのはあなたの御勝手でありますが、私の説明はこれ以上はできません。
  163. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そう怒らなくてもいいじやないですか。孫みたいな若い子供をつかまえて、そう向きになつて怒られなくてもいいでしよう。我々は真剣にこの問題を討議し、質疑し、事態を明瞭にして国の行く方向を誤りなくお互いにきめ合おうと言つているのです。予算が示すところによりますと、国力は国民所得で総合的に一本で判定をすれば、二十八年度五兆九千五百億、二十九年度は五兆九千八百億、三十年度も大体この程度に引締めて行くことなしには日本経済は立て直らないだろう、そういう意味で国力は増大をしないんだ、できればもつと引下げるような形にも持つて行きたいんだということであると思うのですが、従つてこれに関連をして一般会計の支出も昨年は一兆二百二十二億であつたものを今年は九千九百九十五億に縮減をされた。こういうふうに国力は少くとも国民所得で表示する限りにおいては漸増をしない、むしろ縮小をするか、少くともストツプ状態で推移するという状態であると思うのですが、この点は大蔵大臣どういうふうに。
  164. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私は国力という問題は、実質的の国力と形式的の国力とあると思います。私どもが今回至嘱しておるところは、大体におきまして国際収支の均衡を図るために日本の国内の物価を国際水準に近付けて行こう、こういう考え方から出ておるのでありまして、従つてこれは過日も経審長官として答弁がありました通り、本年度の鉱工業生産は大体横這いの傾向、つまり戦前の九—十一年の一〇〇に比べて大体一五二くらいのところが続いて行くだろうと思います。国民所得のほうもこれはだんだん給料が上つたり、或いは物価の変動がありますからはつきりいたしませんが、大体まあ五兆九千八百億という数字は大した動きはないかと思います。けれども実質において五分乃至一割違つて来て、而も国際貸借の状況が改善されますから、従つて例えば賃金においても実質賃金は増加することになりまするし、国民の実質的な生活は豊かになる、こういうふうにも見れるのでありまして、従つて私どもは形の上におきましてのだんだん拡張して行かない行き方というものは、延いてこれを我々の経済生活をよく持つて参るために忍んで頂いておる次第でございまして、併し同じような状況はやはりまだ来年も続けなければなりますまい。併し来年で私はまだ完全にできるとは、私自身は少しまだ足らんと思います。やはり三十一年まで持つて行けばこれは完全にこういうことを克服してやれると思いまするが、飽くまで実質的の所得を殖やして実質的な国力の増加を図つて行く、こういう点に重点をおいてやつて参りたいという考えであります。形式的には或いは若干数字は小さくなる場合もあろうと考えております。
  165. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大蔵大臣お話ではつきりするように、国力は少くとも国民所得で算定をする限りはここ一、二年、二、三年は増加しないんだ、或いは場合によつてはこれをむしろ少くすることのほうが必要なんだ、そういうようなお考えだと思うのです。従つて又一般会計支出もそれに照応しなければならないと思うのでありますが、そこで国防の本義の問題になります。一体国防の本義、国防の基本的な方針というようなものを、今のような国際情勢、更には国内の経済力、その他の情勢から考えて差当りの国防の基本方針、そういうものはどういうふうにお考えになつておるか、これを総理大臣にお尋ねをしたい。
  166. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私から申上げます。(「総理大臣」「駄目だ」と呼ぶ者あり)日本の国防方針は申すまでもなくアメリカとの間におきまする日米安全保障条約に基きまして、アメリカと共同して日本の国の平和と安全を守り、延いて諸国の平和に寄与して行こうとすることにあるのであります。その方式といたしましては、いわゆる漸増方式であります。もとより我我といたしましては、独立国家となつた以上一国がみずからの手によつてみずからを守る態勢を立てて行くべきでありまするが、財政面その他各般から考究いたしまして、到底さようなことは参りません。いわゆる漸増方式によりまして国防の全きを期したいと、こう考えておる次第であります。
  167. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 国防の大本、特に本義はむしろ総理大臣自身がおきめにならなければならない問題だし、総理大臣自身がよくお考えになつておると思うのであります。後ほどこれも質疑いたしますが、政治が軍事に優位するという考え方も、総理大臣がこういう問題を真剣に考え決定されるという意味においてこれを確保しようとしておられるのでありますから、今の国防の大本について、あと具体的な防衛計画その他については勿論保安庁長官に更に具体的にお尋ねするつもりでありますが、国防の大本については一つ総理大臣自身の御答弁を願います。
  168. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今保安庁長官の説明が即ち私の説明と御承知を願います。
  169. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは総理はあなたの演説で、国力に応じて自衛力を漸増する方針に何ら変りはありませんがアメリカの事情によつて来年度は国家財政を勘案して保安隊を増強する考えでありますという説明をされておりますが、これはこういうものとして今もその通りにお考えになつているというふうに了承してよろしゆうございますか。
  170. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) アメリカが漸減するということは条約によつてきまつておるのであります。漸減をするという以上は日本としては漸減せざるを得ない。(「漸増」と呼ぶ者あり)漸増か。(笑声)
  171. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 我々が安保条約その他で漸増の方針説明を受けたときには、国力がだんだん殖えて行くんだからそれに照応する漸増をするんだという御説明であつたし、そのためにいわゆる岡野試案というような構想を経済表をお示しになつて、逐次殖えて行くことを予定をして、そうして国民所得、国力が殖えて行き、それに応じて財政支出特に軍事費も殖やすんだと、そういうふうな御説明であつたと思うのでありますが、今お伺いするところによると、国力は決して殖えていない、そうして又この一、二年間は殖えないんだ。この非常に重大な時期に当つてなぜ増強の方針を、而も後にこれも質疑をいたしますように、漸増どころか、飛躍的な急調子の増加を考えられなければならないのか、その点の御説明を願います。
  172. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の国力に相応せざるような漸増はいたしません。(「それじや殖やすわけに行かないでしよう」と呼ぶ者あり)
  173. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、国力が殖えるからそれに応じて自衛力を漸増するんだというお話でありましたが、国力が殖えないにかかわらず今予定をされているような増強をされるということは、最初の考え方を根本的に変えられたのであるか。
  174. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 違つておりません。日本の国力相応のだけの漸増をいたします。
  175. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならその点は防衛増強計画、或いはそれに関連するMSA援助の具体的な内容を質疑するときに更にもう一遍立ち返つて質問をしたいと思いますから、そのときに譲つて次の問題に移ります。  MSAの援助協定が本日調印されたものが発表されたのでありますが、先ずこれについてお尋ねをしたいのでありますが、MSA援助がいろいろ問題になつて、去年の七月でしたか問題になつた当初からいろいろ質疑をいたしておりますときに、政府がこの援助を受ける腹をきめて、そうして交渉に入つたと言われましたときには、MSA援助は軍事援助があるのみならず、経済援助、或いは防衛支持援助、或いは技術援助等々があるので、そういうものを受ける見込みがあるから、そういうものとして我々は折衝に入るのだというお話でありましたが、その当時私たちはこの援助はそんな甘いものではなくて、成るほど法文の中には軍事援助以外の援助があるけれども、現在の五十四年度、或いは五十三年度以降の援助計画予算そのものから考えれば、そういう甘いことは絶対に考えられないで、純粋な軍事援助に限定されるのだということを力説いたしたのでありますが、それはもう予算上から当然にそういうことが言えるので、私たちはその当時からはつきりそれを主張していたにかかわらず、外務大臣はいやそうじやないのだと、そう固く解釈する必要はないのだと言つて国民に非常な期待というか、希望を持たせるかのごとくして交渉を進めていらしたと思うのですが、最後に今日発表されたものによると、純粋な軍事援助だということであります。この点についてなぜこういうことになつたのか、その経緯を詳しく御説明を願いたいと思います。
  176. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 佐多君はそのMSA援助の中に防衛支持援助とか経済援助という字があるので、あたかも私がそれを受け得るようなことを言つておいて、今駄目じやないかと言つておられるようであります。(「言つたじやないか」と呼ぶ者あり)当時私が述べたことをもう一度読み返して頂けばはつきりすると思います。私は文字まで今覚えておりますが、これが、これがというのはMSAでありますが、これが我が国の防衛に役に立ち、且つ経済面に寄与するにおいてはMSA援助を受けることが適当であろうと思う。こういうふうに述べて、これは委員会において正式に発表いたしております。今度の援助によりまして、経済的に寄与を受ける部分が多分にあると固く信じております。
  177. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点はそれでは改めて速記録を見て、もう少し正確に他の機会に争いたいと思いますが、併し、少くともあなたがたが交渉をされた当時は、例えば二十八年の七月三十一日、これはアメリカ側は確かに軍事援助に限定するのだということを七月三十一日にはつきり言明をいたしております。それにもかかわらず、八月十九日の交渉においては日本側は経済的要請をされておる。そうしてアメリカ側はこういうものすべてを削除するように提案をしたということが言われております。八月二十一日第八次の交渉では、日本側は経済的な要請を重ねて要望をした、併しそれが容れられなかつた、そこで、今あなたがおつしやつたような結果になつて、それを九月の四日の衆議院の外務委員会経済援助は望めないということを御発表になつておると思いますが、その辺の経緯を詳しく御説明を願いたい。
  178. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私が只今述べましたことは昨年の六月二十六日、アリソン大使の返簡が入手いたしましたその日に、衆議院予算委員会において発表した文句を引用したのでありまして、あなたがおつしやるような日付よりもずつと前の話でありますが、併しながら、その後におきましても、日本経済に幾らかでも役立つようなことが行われれば、それだけ日本としても利益があるのでありますからして、機会を求めて各種の交渉をいたしておつたことは事実であります。
  179. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 経済的な利益を受けるために、経済援助或いは防衛支持援助、そういうものいろいろ交渉されたにかかわらず、それが殆んど顧みられないで現在のような状態なつた。それで経済的な利益としてはただ一つ、余剰小麦の援助の問題が一つ問題として出て参りますが、これが経済的にプラスになるかマイナスになるか、その点はもう少しあとで詳しく質疑をしたいと思いますが、とにかく少くとも政府はこういう形の余剰農産物による援助というような形ではなくて、もつと本格的な経済的な援助を要請されたことは事実であると思うのですが、それにもかかわらず、それは容れられないで純粋な軍事援助に限られた。とするならば、当初お考えになつてみたこととかなり違つたものが出て来たと思うのです。従つてそういうものであるならば、これを調印すべきでないような性質のものになつてしまつたというふうに解釈をしていいと思うのでありますが、この点について外務大臣はどういうふうに考えているか。
  180. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ほど申しました通り、当初はこれによりまして、いずれは防衛力を増強しなければなりませんけれども、そのときに国費を使うよりはアメリカの援助を受けたほうがそれだけ日本経済にとつては利益であります。又MSA援助を受けることによりまして、域外買付の発注等の増加することも十分期待されるのであります。従つて当初からこの範囲において日本経済に寄与するところ相当のものありと考えて、MSA援助を受諾したいと思つて、おつたのであります。併しながら交渉に当りましては、更にそれ以上に経済的に援助が受け得ればそれだけ日本の利益でありまするから、できるだけ交渉もいたし、又今年困難なら来年度において受け得るような途も開きたいと思つて話合いいたしております。又その間に五百五十条の小麦の、農産物の問題が出て来まして、これ又日本経済に寄与すること大なりと考えましたので、ますますMSA援助を受けることの適切なるを感じたのであります。
  181. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも外務大臣は今年は、五三、四年度は駄目だつたけれども、その次の年度には必ずしも絶望でないのだから、そういうことも含みとしてこれには賛成したほうが経済的に利益なんだという御説明だつたと思うのですが、それだからいつも欺瞞をしておられる、それだから国民を愚弄すると私たちは言わざるを得ないのであります。それならば一体現在五三、四年度に軍事援助として援助をされる予定になつているものが幾らあるのかということが一つと、来年度、五四、五年度の一体軍事援助をどう考えているか。而もそれに限定をされていないという確証をお持ちになつているのかどうか、その点をお聞きいたしたい。
  182. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 佐多君は私の言うことを間違つてつて議論されておるようでありますが、私は経済的の援助がなくても、完成兵器を受けるだけでも日本の防衛力の増強に国費を使わなくて済むことと、域外買付が増加することによつてこれはMSA援助を受けるのが適当であると考えたと申し上げたのであります。それ以上に若しでき得るならば経済的援助も受けたい、又幸いに五百五十条の問題も出て来たからますますそういう考えを持つておる。こういうのでありまして、経済的援助を受ける見込がなければMSAの援助は受ける値打ちがないとは決して申しておらないのであります。この点は誤解ないように願いたい。  なお御質問の点で、MSAの直接援助における額はこれは算定の方法がいろいろありまして、御承知のように七〇%で算定する場合もあり、全額で算定する場合もあり、又ものによりましてはずつと低い評価で算定する場合もあるのでありまするから、まだ額としてどれだけということは申上げられませんけれども、大体において保安庁の必上要とする武器及び装備でありますが、これは受け得られるものと考えております。なお域外買付につきましては、総計いたしまして一億ドルを下らざる額になろうと考えております。
  183. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今年度の援助がどういうものであるか、具体的な内容についてはこれから更に保安庁長官にお尋ねをしたいと思つているのですが、その前にどうも金額的にはよくわからないとおつしやいますが、予算を作る上においては大体今年度或いは来年度等々に亘つて援助が具体的に武器その他として個別にはわからないにしても、大ざつばにあら見当として大体どの程度の援助が期待される、従つてそれとの見合いにおいて日本の防衛計画がこういうふうに増強されるのだという計画ができておると思うのですが、そういう意味においてこれは大蔵大臣は今年度の援助額を金額的にどういうふうにお考えになつておるかということをお尋ねをしたい。  それからもう一つ、外務大臣は非常に私が問題を誤解し曲解をしているとおつしやいますが、私がお聞きしたいのは、来年度一九五四年、五年度には経済援助があるのかどうかということで、それに対して必ずしもなきにしもあらずというようなことで国民に気を持たされるから、それが欺瞞だと言う。というのはこの間スタツセンが日本に参つたときに、一九五四、五年度も軍事援助に限定をするのだ、それ以外のいわゆる経済援助というようなものはないのだということをはつきり言明したと思うのです。而もこれは具体的にその関係者が言明をするのみならず、一般の方針としても例えばランドール委員会の報告によつても、或いは一九五三年上半期ですか、上半期の援助計画の実況が二、三日前に発表されておると思いますが、その中には日本に関して相当詳しく報告がなされて、これにもはつきり来年度も軍事援助に限定をされてるのだということが明記してある。そういう権威のある報告書が明記をし、責任の当局者がちやんと言明をしておるにかかわらず、そうでないことがあるかのごとく気を持たして国民をそつちに引きずつて行くということが、国民を愚弄するものだと私が言うゆえんなんですが、その辺の事情はどうなつておりますか。
  184. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私の申すのは、只今はつきり言いましたように、完成兵器を受けるのと域外買付の増加があればMSAの援助を受ける値打は十分にあると考えておると申したのであります。従つてそれ以外のものはつけ足りであります。そこでランドール委員会のことも今おつしやつたような事情も承知はいたしておりまするが、併し来年のことは今はつきりきまつたとは言いがたいのであつて情勢の変化によつて経済的の援助が来ないとも限らないのであります。そこで私はまだ希望は持つておる。併し自分からそんなことを言つたことはないのでありまして、あなたから御質問があつたからお答えをしただけであります。
  185. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは次の問題に移りますが、MSAの援助を受けられたために軍事的な義務を負うということになつておりますが、この軍事的な義務は安保条約に負つた義務以上の何ものでもないのだというふうな説明がついておると思うのですが、この点について、それならばこの協定は新しい義務を附加したということにはならないのかどうか。それからそれならば一体安保条約に負つたところの軍事的な義務なるものはどういうものであつたのか。それを一つ説明願いたい。
  186. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) MSAの協定及びそれに関連する協定におきましては、いろいろの義務を負つております。そこでその問題といわゆる軍事的義務とは違うのでありまして、軍事的義務というのはMSAの第五百十一条の第三項目にある軍事的義務と書いてある、その文字をとつてこれは何であるかということをはつきり確めたのであります。それ以外に義務はいろいろ負つております。例えばアメリカに対しても必要な場合には稀少物資等を有償ではありますが、供給する約束もいたしておれば、不必要になつた兵器等を返還する約束もいたしております。いろいろ約束いたしております。ただ五百十一条の第三項目にある軍事的義務というのは、安全保障条約に基いて日本が負つておる義務以上のものには出ないのであるこれはたしかであります。なお安全保障条約によつてつておる義務の現実的な問題は、一つアメリカの軍隊を国内に駐留させるという問題と、それから第三国の軍隊等に国内に基地を提供しない、こういう点であります。
  187. 青木一男

    委員長青木一男君) 佐多君、ちよつと総理が中座しますが、若し総理以外の閣僚でありますれば、多少時間は私は延ばしてもいいと思いますが、如何でございますか。(「そんなことは駄目ですよ」と呼ぶ者あり)時間が来ておるのですよ。
  188. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでこの安保条約で負つた軍事的な義務というのは、今外務大臣が御説明なつたような義務だと思うのですが、義務はこれは安保条約ではなかつたのをこの協定によつて新たに義務として負つてというふうにお考えになるのですか。
  189. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ほど申しましたように、安保条約によつて負つた義務というのは五百十一条の第三項のいわゆる軍事的義務の内容であります。それから自衛力の漸増を約しておりますのは、これは別の問題でありまして、政府としては安保条約の前文にもこれは義務としては書いてありませんけれども、期待するいう文字を使つてありまして、それを前文に置いたことは、つまり政府としてもこれを実行する覚悟があつたから前文に入れることを承認したわけであります。又独立国として自衛力を漸増して行くのは当然のことと考えますので、こういう約束をいたすことは何ら差支えない。尤もこれには政治的或いは経済的の条件に従うことは勿論でありますが、その範囲においては差支えないと考えまして、こういうふうに入れたわけであります。
  190. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それで私が聞きたいのは、安保条約ではそれは一つの責任になつておるわけですが、今度のMSA協定では自衛力の増強というものが条約上の義務になつているのかどうか。そうならば、だから安保条約で考えられた義務以外に新らしい義務としてそれが発生したと考えるのかどうか。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) たびたび繰返すようでありますが、安保条約における義務云々というのは五百十一条の第三項に書いてあるいわゆる軍事的義務の内容であつて、自衛力を漸増するというような問題は、五百十一条の第三項でないほうに書いてあるのであります。これも受諾したのでありまして、これは安保条約と関係ありません。
  192. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、とにかく自衛力増強の義務を負つていることになるのですが、その自衛力増強の義務を負つたとすれば、その自衛のためには武力行使も許されるのだというふうにお考えになつておるのかどうか。従つて又その自衛のためには陸海空軍も持てるというふうに考えておられるのか。この点を一つ伺いたい。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 自衛のために武力を行使できるか、或いは陸海空軍を持てるかということは、協定の面からは何ら現われて参りません。それは日本の憲法なり国内の問題であります。
  194. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、その点は保安庁長官はどうなんですか。
  195. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。まさにその通りであります。日本の自衛隊がどういうあり方をするかということは日本が独自できめるべきものだと思います。
  196. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それで、独自できめなければならんとおつしやるから、自衛のために武力をば持つてこれを行使することができると、従つて陸海空軍も自衛のためならば持てるというふうにお考えになつているのかどうか。
  197. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法の許す範囲内において我々がこれを決定すべきものと考えております。(「答弁じやない」と呼ぶ者あり)
  198. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その憲法の許す範囲というのが、自衛のためならば武力を持ち、或いは行使することができるというふうにお考えになつているのかどうか。
  199. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いわゆる憲法第九条第二項の戦力に至らざる程度において自衛力は十分持てるものと私は確信しております。
  200. 青木一男

    委員長青木一男君) 佐多君、成るべく簡単に願います。
  201. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 昨日の外務大臣の御答弁では、自衛のためならば武力をば持ち得るのだ、これを行使することができるのだという御答弁であつたと思うのですが、今日もどなたか中山さんの質問でしたか、に対して同じような答弁をされたと思いますが、外務大臣はその点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  202. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 武力という言葉は、非常にあいまいな定義のむずかしい言葉であろうと思いますが、憲法に使つております武力というのは、戦力とは別の考えであろうと思つております。憲法で禁じておりますのは戦力でありまして、なお憲法の第九条の一項で言つておりますのは、仮に戦力に至らなくても、国際紛争を武力で解決してはいかん、こういうことだろうと思います。
  203. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、そうすると外務大臣の考え方では、自衛のためには武力を持てるし、武力行使ができる。併し国際紛争を解決するためにはそれはできないというふうにお考えになつておるのかどうか。
  204. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。
  205. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、この国際紛争、例えば侵略が仮にあつたとします。その侵略はその侵略する国が自分の国の方策なり何なりを強行しようと、武力によつて強行しようというようなことで侵略があつた。そういう場合には従つて侵略に対抗する解決の手段として武力行使をする、出動をし、武力行使をするということになれば、それは取りもなおさず国際紛争解決の手段としてそれをやつておるということになると思うのですが、その点はどうなんですか。
  206. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) その議論は私は非常に不思議な議論だと思います。世界において領土というものは非常にはつきりはきまつていないという議論もありましようけれども、常識的に見て領土というものは大体において間違いなくきまつております。例えば講和条約において日本は本州、四国、九州、北海道と、その他は特に講和条約において日本が権利、権原を放棄したと言わない所は日本の領土であると認められておるのであります。この世界的に認められておる領土に対してよその国が侵略して来るのを国際紛争とは申しがたいと思つております。国際紛争と申しますのは、要するに或る二つの国が政策の異なる場合に、その政策が衝突しておる、これが国際紛争であつて、領土について世界のいずれの国も認めている領土に乗り込んで来て、これはおれの領土だというような議論をするのは、国際紛争には入らないのは当然だろうと思います。
  207. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは領土を取るとか取らんというような問題でなくて、国際紛争を解決する手段として侵略をして来るという問題だと思うのですが、それじやその点をもつと具体的に言いますが、陸上の自衛隊は海外出動をするということは考えられるのかどうか。それは絶対にお考えになつていないのかどうか。先ずその点を伺いたい。
  208. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本の自衛隊を海外に派遣するなどということは考えておりません。
  209. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 考えていないのみならず、それは憲法でできないというふうにお考えになつておるのか。憲法とは関係なしに考えておられない、今のところ考えておられないというのであるかどうか。その点。
  210. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は来たるべき、創設さるべき自衛隊は国土防衛のために作らるべきものでありますから、その面から見ても法律上海外派遣は考える余地はないと思います。
  211. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじや領海からは出ないのかどうか。その点。更に航空隊はそういう場合にどういう出動をするのか。
  212. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は海外派兵というのは、つまり兵力をその外国の土地に進出さすべきことであります。従つて日本の国土の防衛に立つて飛行機が日本の本土から離れて海上に向け進出することもこれはあり得るかと私は考えております。これは海外派兵とは申すことはできんと思つております。
  213. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、それは日本の領空海にあり得るというふうなお考えですか。
  214. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 想像でありまするが、場合によつてはさようなことはあり得ると私は考えております。飛行機が領海を、国土を越えて海へ進出すべきことはあり得ると考えております。それは防衛上必要のある場合において。
  215. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 軍艦は。
  216. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 軍艦も多少はそういうこともあり得ると私は考えております。
  217. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、その議論をもつとあれします前に、岡崎外務大臣にお尋ねしますが、今のような海外出動、これは陸上だけでなくて、海空に至るまでそういう海外出動の問題はMSAとの関係においてはどうなつておるか。これはあの御説明によると、条約にはそういう義務を負つてないというふうに御説明になつておりますから、条約ではそれは義務として負つていないと思いますが、併しそれは条約上の義務ではなくても、日本が独自に自主的に判定をするというふうにお考えになつておりますか。
  218. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは条約には何ら関係はありません。従いまして、日本としてきめる問題であります。これは憲法その他のところからも判定されることであります。ただ、海外派遣という言葉も非常にあいまいでありますが、我々外交とか国際的に物を考えますれば、国際法において認められている地点、つまり海で言えば他国の領海でない公海、公の海、或いは他国の領空でない場所には、これは行く行かないは別といたしまして、当然行き得る権利は日本も持つておるわけであります。
  219. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、そこで問題になるのですが、そういう問題は日本が自主的に解決をする問題であろと、従つてこれは憲法には必ずしも制約をされていないのであるというふうにお考えになつておると見ていいですか。
  220. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 憲法に従つて行動することは当然であります。
  221. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしたら、憲法に従うならばそういうことはできないというふうにお考えになつておるのか。憲法はそれは規定をしていないというとうにお考えになつておるのか。
  222. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 憲法は、私の解釈するところでは、戦力の保持を禁止いたしております。それから国際紛争を武力で解決することを禁じております。それ以外のことは憲法は触れていないと考えております。
  223. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、今言つたような場合は日本が出動することができるのだと、憲法改正をしなくても出動することができるのだ、それは自主的にきめればいいのだというふうにお考えになるのですか。
  224. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今言つていることというのがはつきりわかりませんが、若しよその国へ攻め込むということでありますれば、これは当然できないことと思つております。
  225. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は、木村保安庁長官も同様にお考えになりますか。
  226. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 同様に考えております。
  227. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 岡崎外務大臣は、二月十七日の衆議院予算委員会で、我が党の成田君の質問にお答えになつたのは、そういう外に出動するという問題は、日本が自主的にきめればいいので、憲法に制約されておる問題ではないというふうなお答えをしておられると思います。それに今は違つたようなお答えがあるようでありますが、それに対して木村長官は、そのときには憲法を改正しなければ出動はできないというふうに言つておられる。ところが今は今度逆になつて、木村長官は、領海だとか、領空だとか、そういうものから外に出ることもあり得るのだし、そういう問題は何ら憲法に制約されていないのだと、それは防衛の本質上そういうこともあり得るのだというようにお述べになつたと思うのですが、非常にその点は問題があいまいになつて来ておりますが、どういうふうにお考えになりますか。
  228. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。要は自衛権の限界の問題でありまするが、我々は主動的に海外に派遣することは、これはでき得ないと考えております。ただ自衛権の行使の場合において、或いは飛行機が日本の国土を離れて出動することもあり得ると、我々はこう考えております。
  229. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それは当時の成田君との問答の速記録を御覧になつてのことだと思いますが、もう一遍よくお読み願いたい。成田君の質問は、私の記憶するところでは、アメリカとのMSAの協定において、日本の海外何と言いますか、出動と言いますか、派兵と言いますか、そういうことがないことをはつきり書いたらどうかと言われますから、それはアメリカにそういうことを保障してもらうべき問題でなくして、日本が自主的にきめる問題であると、こう申したのでありますが、自主的にきめる中には、憲法の規定、法律の規定その他をよく勘案して適当にきめるというのは当然であつて、懸法の規定を無視してよろしいなんと言つた覚えは一度もありません。
  230. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は非常に重要な問題であります。殊に保安庁長官は、防衛の本質上先制攻撃をしなければならない場合もあり得るのだという計画上の原則から問題を考えておられると思うのですが、そこに非常に重要な問題があるし、特に私がしつこくお聞きをしたアメリカの戦略におけるニユールツク、新戦略との関連において非常に大きな問題があり、ここに今度のMSAの協定なり或いは保安庁改正法が憲法に違反する問題が明瞭に出て参ると思うのでありますが、時間もすでに終りましたし、殊に保安庁長官は何か所用がおありだということでありますから、私の質問は一応これで打切つておきます。ただ、まだ大蔵大臣へのお尋ね、或いは保安庁長官、外務大臣に対する細かな質問は残つておりますので、他日に留保いたしておきます。
  231. 青木一男

    委員長青木一男君) ちよつとお諮りいたします。明日一日で総理に対する総括質問を終了する予定でおりましたが、明日午後総理が国際関係の用事において出席できないそうでありますから、総括質問を一日延ばしたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  232. 青木一男

    委員長青木一男君) この点は御了承願います。  本日は散会いたします。明日午前十時に開会いたします。    午後四時三十六分散会