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1954-03-08 第19回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月八日(月曜日)    午前十時二十三分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            小野 義夫君            高橋進太郎君            小林 武治君            森 八三一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君            三浦 義男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            伊能 芳雄君            鹿島守之助君            小林 英三君            白波瀬米吉君            高橋  衛君            高野 一夫君            宮本 邦彦君            吉田 萬次君            井野 碩哉君            岸  良一君            新谷寅三郎君            高木 正夫君            中山 福藏君            岡田 宗司君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            千葉  信君            藤原 道子君            三橋八次郎君            湯山  勇君            相馬 助治君            曾祢  益君            松永 義雄君            戸叶  武君            鶴見 祐輔君            武藤 常介君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君    通商産業大臣  愛知 揆一君    労 働 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 安藤 正純君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安庁装備局長 久保 亀夫君    経済審議庁調整    部長      松尾 金藏君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    文部政務次官  福井  勇君    運輸省海運局長 岡田 修一君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○昭和二十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委会を開きます。
  3. 曾禰益

    曾祢益君 総理に対する質問を開始しまする前に一点たけ議事進行について質したい点がございます、それは去る五日の本委員会におきまして、委員会の要請によりまして政府を代表いたしまして保安庁長官から防衛庁法要綱及び自衛隊要綱説明されたのでございまするが、その後新聞の伝うるところによりますると、甚だ奇怪なことにはこの委員会に正式に提出されました要綱と実質的に極めて重大なる相違を来たすような話合いが自由党、改進党及び日本自由党、いわゆる三党間において行われておる、かように伝えておるのでございます、殊に自衛隊性格がいわゆる直接侵略等の真の意味国土防衛という点を主として、或いはそれに限るべきであつて、警察の補助隊的な任務はやめるべきだというのが改進党の強い主張であつて、その線に沿うての改正が試みられると伝えておるのであります。その他いろいろの点がございまするが細目に亘りまするからこれを省略いたしまするが、若しかような重大なる修正が行われ或いは行われんと意図されておるとするならば、当然に政府は進んで五日の委員会審議経過に照らしましても、この要綱に対する修正のありなしにつきまして、ありとすれは如何なる点が修正されるかについて明確なる態度を表明すべきのが本院のこの委員会における審議を尊重するゆえんであろうと存じます。従いましてこの一点につきまして私の総括質問の前に議事進行といたしまして政府を代表して保安庁長官からの明確なる答弁を要求いたします、
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。去る五日に提示いたしました要綱なるものは、まだ法案作成前の我々の考え方を述べたに過ぎないのであります。只今せつかく法案作成に取りかかつております。おそらく明日の開議決定を経て正式に両院に提出いたしたいと考えております。細目につきましては、法案提出後に十分に御説明申上げ、又これについての御批判を承りたい、こう考えております。
  5. 松澤兼人

    松澤兼人君 最初に私申上げましたように、総理国会審議を促進するということを非常に強調されているのであります。併し予算審議衆議院を通過して参議院に廻つて来たとこういう段階において、二十九年度予算の最も大きな支柱である自衛或いは防衛の問題に対する政府の確固たる所信が明らかにされておらない要綱を受取りましてからいろいろ検討してみましても、重大な点においてまだ三党間に話合もついておらないし、政府との関係においても調整ができておらない、こういう要綱によつて我々が審議するということであれば誠に我々としては審議のしようがないということになるのであります、あの要綱によつて質問いたしましてもその後法律案提出されたときに内要が等しく異なるという結果を見ることは当然であります。そこで総理大臣にお願いしたいのでありますが、総理大臣国会審議を非常に推進されておりますけれども、先ず政府みずから必要な法律案は速かに国会に提案して頂きたい。只今木村保安庁長官お話によりますと、明日閣議において決定して速かに提案されるということでありますが、これに対しまして重大な問題でございますので国会審議を促進する一方、早く予定されておりますところの諸法案国会に提案して頂きたいと思いますが、これについて法案提出を促進するという総理の御所信を承りたいと思います。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。必要な法案提出が遅れておりますのは誠に遺憾に存じます。十分督促いたして成るべく早く提出いたすことにいたします、
  7. 曾禰益

    曾祢益君 一点だけ申上げまして総理に対する質問に入りたいと思います。只今保安長官お話はちよつと承服できないのでありまして、成るほど我々としては正式には法案に即して審議するのでございますが、要綱というものは少くとも法案要綱でありまして、字句の細目について今審議しようとは思つておりませんが、その要綱の骨格をなす自衛隊のいわゆる軍隊的の性格に触れた基本問題について要綱と違つたようなものが作られるということは、これは政府として誠に重大なる政治的責任であろうと思います。従いましてこの点については十分なる政治的の責任の追求がなされなければなりません。併しこの点につきましては時間がありませんから別の機会に譲りまするが、最後に保安庁長官からもう一点明確に伺いたいのは、この法案はいつ制定して本院にこれを回付することになるか、或いは衆議院にいつ法案提出することになるかについて明確に伺いたいと存じます。
  8. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 明日の閣議決定を経た上において一日も速かに提出いたしたいと、こう考えております。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 それではこれより総理に対する総括質問に入りたいと思います。  私は日本社会党を代表いたしまして、このたび提案になりました昭和二十九年度の予算一つの基盤でありまする国際情勢の分析、或いは外交基本方針並びに防衛MSA協定、これらの問題に限定いたしまして若干重要点につきまして政府所信を質したいと存じます。その主なる点は総理みずからの御答弁を願いたいと存じます。  先ず第一に去る一月二十五日からベルリンにおきまして開かれました米英仏ソ四国外相会談は、久し振りで四大国の首脳者が集まりまして話合によりまして国際緊張緩和を図ろうという画期的な試みであつたと存ずるのであります。而してその結果たるやせつかく機会でありましたけれども、ドイツの統一或いはオーストリア講和条約等の重要問題についての決定が何らなされなかつた。かような点において失望を感じさせるものがあるのでありまするが、併し少くとも話合による緊張緩和への試みとしては一つ成功を示したと言つて過言ではないと存じます。更に又これを機会といたしまして、目下今まで懸案でありました朝鮮平和解決への途が或いは開かれるのではないかという傾向を示したと存ずるのであります。これらのベルリン会談によつて惹起されました、或いは招来されました国際情勢の動きに対しては、政府は如何にこれを考えているか。話合による緊張緩和への努力政府は如何に見ておるかについて先ず総理大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。ベルリン会談の結果について批評は差控えますが、お話のように会談によつて事態を冷静に見きわめましてその緊張を成るべく緩和するということは、これは争えない事実であろうと思います。これは結構なことだと思います。それで今後どうなるかということについて私の見通しはありませんが、成るべくかくのごとき会議の成果のあるようにということを日本政府希望いたします。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 ベルリン会談の結果、東西緊張の主なる原因と申しまするか現象と申しまするか、これの解決相互に関連してとり上げられんとする方向が、その事のよしあしにかかわらず相当はつきりして来たように思うのであります。明確に言うならばこれは主として共産側主張であつたかもわかりませんが、西ヨーロッパ緊張原因であるドイツの問題、オーストリア問題の解決に対しましても、或いはヨーロッパ欧州共同防衛問題に関しましても、やはり朝鮮平和解決及びインドシナ平和解決の問題とのでき工合如何によつて、又中共に対する処遇如何によつて又そのはね返り如何によつては、欧州解決が促進されるというような一つ方向になつて来たと思うのであります。従つてそう考えて参りますならば、日本の安全、日本の平和への希望或いはアジアの問題の解決に勿論重大な関心を持つのは当然でありますが、アジアの問題の解決を通じてやはり世界全般緊張緩和への途が開かれるのだという認識によつて一層我が国としてもアジア問題の解決に大いに希望もし、又できる限りの努力をすべきものじやないか。かように考えますが、この欧州アジア緊張緩和関連性について如何に政府考えておられるか、これ又総理から伺いたいと思います。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大変お話が学問的になるように思いますが、無論今日の状態において国際関係は大体緊密の度を加えて行くものでありますから、一方の会議が他の会議に影響を及ぼすことは当然であるし、又一つ会議成功従つて他会議成功をみるに至ることは又考えられるところであります。政府としては只今申した通りその目的とするところは列国間の緊張を減ずるようにということを目的といたしているのでありますから、かくのごとき国際会議のその目的を達するように何らかの妥協点に達することを希望いたす次第であります。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 そこで来たるべき四月二十六日から開かれる予定ジュネーヴ会議には、我が国として非常に大きな期待を以てこれを迎えて行くべきことは当然でありますと共に、この機会日本世界平和への希望を的確に且つ強力に表明すべきものと考えまするが、この会議に対処する政府の基本的な態度及び所信を伺いたいと存じます。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、会議のこの際に日本政府が新たに平和に対する希望を述べるということがいいか悪いかということは一つの問題であろうと思います。が同時に日本世界の平和を増進するという従来の態度については、これは列国とも承知いたしておる通りで、特にこの際何か行動を起さなければならんという必要は只今のところ認めておりません。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 それは甚だ失望させるお答えでございまして、然らばもう少し的確に御質問申上げますが、このジュネーヴ会議におきましては我が国の安全に最も至大な基本的な関係を持つている朝鮮の平和問題が先ず主として論ぜられることは御承知通りであります。従いましてこの朝鮮の平和に対する日本の基本的な考えをこの際はつきり強力に訴えて行くための積極的な努力がなされなければならないと考えまするが、従つてこのジュネーヴ会議日本出席方を要請するお考えがあるか否かを伺いたいと存じます。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のところは出席を要求する考えは持つておりません。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 朝鮮休戦協定に伴いまして開催を予定された朝鮮平和会議は、或る意味ではこれは軍事的な休戦に引続く軍事的な意味があつたから、余りこの会議には日本が参加するということは日本立場上いささか問題もあろうかと存じましたが、併し今度の会議というものはこういう軍事行動からどんどん来たるところの休戦協定からの平和会議というものでなくて、世界全般の平和にプラスすべき朝鮮の平和問題の会議であるので、この出席について日本の純粋な而して正しい立場から言うならはこの出席を要求するのが当然であつた、なぜそれを要求されないかということの理由がはつきりわからないのであります。とういう理由出席を躊躇されるのかはつきり伺いたいと思います。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほど申した通り、この際格段の処置をとる必要を政府としては認めません。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 そういう政府であつては困ると思うのであります。こういうときにこそアメリカがどういうことを考えているか、或いは却つて共炭陣営がどういうことを考えておるかということにかかわらず、日本の自主的な平和外交の点から言うならは出席を要求すべきであると私は確信するものでありまするが、この点については意見を異にするので議論になりまするから次に進みます。  そこで朝鮮の平和についてはどういう平和が望ましいとお考えであるか。もつと端的に申上げまするならば、三十八度線に南北両鮮がそれぞれの軍事的な世界強国のバツクを得まして相対峙しているような解決は望ましくないと考えまして、私たち南北両鮮を通ずる自由選挙によつて朝鮮が統一され、その独立朝鮮に対して全世界が而して特に主なる関係国がその独立を保障するような平和方式日本の安全のためにも、極東の緊張緩和のためにも又東西陣営緊張緩和のためにも望ましいと考えるが、この点に関する政府所信を伺いたいのであります。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 南北朝鮮が統一せられた形で平和が成立することは誠に好ましいことと思いますが、特にこの朝鮮の統一問題については相当微妙な国際関係があると考えますから、この間に立つて政府が隣国のことにくちばしを入れることは今日は差控えます。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 どうも総理のお考え国際関係が微妙であるから、かような観点から余りにも消極的に過ぎるのではないか。若し正しいものでありその考え方如何によつて国際緊張緩和プラスするような、両世界に対して堂々として主張し得るような、何人も納得させ得るような強い論理の上に立つた主張ならばこれを主張すべきではないか。国際関係が微妙であるから、問題が機微であるから今日は差控えるというなら、日本は一体いつになつたら自主的独立外交をやることになるか、こういうことに私はなろうと思うのでございます。甚だその点は遺憾でありまして、日本国民の平和に対する希望に対して吉田総理大臣お答えはこれに水をかけるような自主性のない外交であろうと思うのであります。  次にこの問題に関連いたしまして、何人もこのジユネーヴ会議の結果を今予測することはできませんが、何人承知しておりまするようにこの朝鮮問題にからんで一つの大きく現実に問題にならんとしているものは中共の地位の問題であろうと思うのであります。そこで政府といたされてはすでに我々が反対しました、いわゆる日華平和条約によつて台湾国民政府をあたかも全中国の政府であるかのごとき承認を与えて一つのコミツトメントをされているのでありますが、我々はそれに対してそれは反対である、中共の問題はどうしても取上げなければならない問題だと存じます。我々は中共に対しては、この朝鮮の真の平和的解決の線に即して中共もこれに協力するならば、これを承認するのにやぶさかであつてはならない。承認といいまするのは一層明確に言うならば、国連安保理事会の議席を中共に認めるということにろなうと思います。又日本から見るならば中共政府に対する日本承認というこの二つの意味がございますが、かような基本的な問題について如何にお考えになるか、この点を伺いたいと思います。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答え申上げます。あえて中共を敵視するものではありませんが、すでに中共政府日本を敵視しているという事実があるのに、この際日本側からしてお話のような態度をとるということは政府としてはいたしません。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 中共を敵視しろということは誰も言つておりません。恐らく政府といえどもそういうお考えではなかろうと思いますが、併し私が申上げるような中共に対する所遇が決して何も侵略国に対する緩和政策にはならない、むしろ今までの態度はそれでよろしいけれども、併し中共国際協力をして来る、現実朝鮮戦争をただ停戦しただけでなく、朝鮮に対する真の平和を考え、そうしてインドシナに対しても平和的な措置をとるというのならば、これを承認してそうして国連世界性を完備するような方向に打出して行くことのほうが自由世界全体としてもプラスであるのみならず、当然に日本もそれをきつかけとして中ソとの国交調整に努めるべきではないか。ただ単に向うが日本を敵視しているから我我も何もしないというのでは、これは日本の安全に対するプラスにならない。ただ消極的な態度であるのみならず、一部アメリカあたりにおけるただ単なるこちこちの反対主義から、中共を敵視して敵へ敵へと廻す方向になろうと思うのであります。従いまして、総理のお考えには私は甚だ遺憾でありますけれども断じて反対いたしたいと存ずるのであります。  次に台湾の問題については如何にお考えであるかを伺いたい。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 台湾の問題に対し何と考えるかということは、どういう意味ですか伺いたい。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 台湾の問題は中共の問題と関連いたしまして、いずれこれは問題になつて来ると思うのであります。台湾の将来をどうするか、私たち考えによれば、台湾は暫くの間は両陣営がいずれもこれを軍事的に相手力を脅威するように利用できないようにする、或いは国連の一時的な監督下に置いてそれの非武装化をするということもありましよう。そういうことによつてこの問題の台湾という一つの大きな戦略基地から来るところの緊張原因緩和して行く。いま一つは、然らば台湾の将来はどうするかということについては、これは言うまでもなく民族自決の基本的な原則に従つて台湾住民自由意思によつて台湾の将来の帰属をきめるべきのが本当ではないか、私たちはかように考えます。こういう意味においてお伺いしたわけであります。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 台湾日本としては現在友好国の一つといたしておるのであります。それ以上のことは政府としてはいたさないつもりであります。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 誠に不満足な答弁でありましたが、遺憾ながら時間の制約がありますから次の問題に移りたいと思います。  去る十七国会におきまして、而もこの委員会におきまして、非常に問題になりました池田ローバトソン会談の結果、政府の御説明によると、あの共同コミユニケの言つていることは池田ロバートソン会談において残された、或いは触れられた重要問題、中には日本防衛力の問題がその主軸と思うのでありまするが、これらの問題については爾後の会談東京に移す、而も東京会談が開かれていないから、その内容を説明するわけに行かない、こういう御答弁であつたのであります。すでに新聞の伝えるところによりますれば、これとうらはらの関係にあるMSA協定も本日調印されるやに伝えられているのであります。従いましてこの東京における池田ロバートソンコミニユケに基く防衛を中心とする会談経過並びに結果について、この際吉田総理大臣からその概略を御説明願いたいと存じます。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 所管事項でありますから代つて説明します。池田ロバートソンコミニユケの中には、東京会談を予想されている事項が二つ三つあるわけであります。その中で防衛力増強の問題につきましては、このいわゆるMSA交渉に関連しまして、明年度計画については予定されているものを先方説明をいたして、先方もこれを了承いたしましてこれに基いて必要なる援助をよこす。こういうことになりまして、今おつしやつたように恐らく本日夕刻相互援助条約等の調印がされる予定になつております。これに関連しまして投資保証協定も調印するつもりでおります。更にガリオア、イロア等の問題につきましても、共同コミニユケにあるのでありますがこの点はまだ決定いたしておりません。  お尋ねの防衛力漸増計画につきましては、明年度の問題が決定いたしましたので、予算等でも御覧になつているような計画でありまするが、これについては十分先方との間の話合といいますか、了解といいますか、了解がついてこれに基いての援助が検討されておる最中であります。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 只今外務大臣お話によりますると、明年度日本側防衛計画については先方との了解がとれた、然らば長期計画についてはどうなつておるのかを伺いたいと存じます。外務大臣で結構です。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 政府只今決定いたしておりますのは明年度に関するものでありまして、それ以外のものは今後仮にできる場合がありますれば又協議もいたしますかも知れませんが、只今のところは何もいたしておりません。
  31. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますると、政府の御答弁明年度防衛計画だけをアメリカと話して、そうしてそれに基いての、それによつて裏付されたといいますか、きまりました予算を出して国会提出されている。こういうことになると思うのですが、長期防衛計画作つてそれを相談して、そうしてその基幹的計画としての二十九年度の防衛計画国会提出するというのが、これは順序でなければならない。なぜそういうことにされなつたのか、その点をお伺いいたします。
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私からお答えいたします。なぜ長期防衛計画を立てないか、御承知通り、一国の長期防衛計画を立てるに当りましては、申すまでもなくその国の財政状態或いはこれに加わるべき人的の問題、或いは兵器の問題、或いは兵器生産の能力問題、輸送の問題、これらを全部総合して立てるべきであるのであります。併しながらかような長期防衛計画ということは、口では言えますがなかなか立ち得ないものであります、そこで政府といたしましては、とりあえずどれくらいのめどをおくべきかということも一応検討いたしているのでありまするが、これはなかなか容易に立ちかねます。殊に曾祢君も御承知通り、近頃はいわゆる兵器の進歩というものに著しいのであります。もうすでにアメリカにおいてもこの兵器の変革からいたしまして、防衛計画もやや変つて来そうに見受けられるのであります。イギリスにおきましてもそうであります。御承知通りイギリスにおきましては、いわゆる電波兵器、ガイデッド・ミシリースが今大いに研究されてすでに完成の域に達しておつて、その方向に進んでおるやに聞いておるのであります、従つてそれらの観点から見まして、長期防衛計画というものは私は容易に立ち得ないということは御想像願えると考えております。従いまして政府におきましても、かくのごとき長期防衛計画は現位階においては立ち得ないというのが実情であります。そこで我々といたしましては、今外務大臣からお答えのあつたごとく、差当り二十九年度においての、いわゆる漸増計画の一環として計画を立てて、それ予算にも組んで只今審議を願つておるのであります。然らばその後においてどうかということになるのでありますが、その後におきましても、確定的の計画というものは立ち得ない実情にあります。ただ三十年度において若干我々は研究いたしまして、どれくらいの程度、日本の財政力から見、或いは人員から見て増加し得べきかということしについ研究して、一応のめどだけは立つておるのであります。今申上げましたように長期防衛計画というものは立つおらんのであります。さよう御了承願いたいと思います。
  33. 曾禰益

    曾祢益君 一向に了承できません。長期防衛計画という言葉のあやで、露骨に申上げれば問題の回答を回避されておる態度であります。我々の言つておる長期防衛計画、又常識から考え長期防衛計画というのはアメリカ側の要請があつてアメリカ軍隊が逐次日本から撤収して、これに対応して日本防衛力を増強する、それがアメリカ軍隊が一応撤収する、そのときの日本側の持ち分をいわゆる長期防衛計画と言つておることは、これは木村さんもよく御承知のことと思うのであります。従つて兵器の発達がどうだから長期防衛計画は立たないなどと言えば、そんなことによつて防衛計画が立たないなら、どこの国だつて防衛計画は立ちつこございません。そういう詭弁でお答えになつては困るのでありまして、まじめにお答え願いたい  これに関連して私特に重要に考えるのは、やはり十七国会におきまして、私が今申上げたような観点から、当然にアメリカは撤収する、それに代つて日本が自衛力を漸増する、従つてそれは数年かかる、それを長期防衛計画とこう考えて、その防衛計画ができて、それもアメリカに相談するのではなく、日本独自の見地からアメリカに代るべき防衛計画を立てる。そしてそれをアメリカと勿論相談もありましよう、その計画の一部が二十九年度の予算となつて出て来る。こういう順序になるであろう。従つて政府のいわゆるアメリカ軍隊撤収の際の防衛、陸海空の限度はこの程度であるということを勘案し、その計画の全貌を示すと共に、その第一の年度分としての二十九年度においては予算関係でどの程度にするという、こういう二十九年度防衛計画とこれの裏付けである予算をお出しになつて国民に対して政府所信を訴えるべきではないか、こう申上げたのに対して吉田総理はその通りである、こういうようにお答えになつているのです。予算委員会会議録の第五号十一月七日を御覧になれば吉田総理は「これは全体の計画が立つて、そうして各年度の計画をなすのが当然でありますから、全体の計画ができ、その計画の全貌を示して、そのうち実行し得るものは来年度に幾ら、再来年度に幾らという年次計画を立てることになることになると思います。」これに対して私から「別な言葉で言いますと、少くとも来年度の予算が出るときには、それよりか先の場合もあるのでしようけれども、予算が出るときには、いわゆる長期計画の全貌というものが少くとも同時に国会を通じて国民に示される、かように了解して間違いございませんか。」、これに対して吉田総理は「未だそこまで話合つてはおりませんが、」、話合うということは政府内部のことかどうか知りませんが、「お話のようなことが順序であるべきものだと、私は常識的に考えてそう思います。」、そうすると、吉田総理に伺いますが、只今総理お答え外務大臣及び木村保安庁長官のお答は非常識であるということになるのですが、そういう非常識な態度をとつておられる大臣をあなたは御信任されるのでありますか、はつきりとお答え願いたい
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 事私に関することでありますから、答弁いたします。あたが先に御質問になつているのは、長期防衛計画は立つておるかどうかという御質問でありまするから、それは容易に立ち得ざるものである。そこて只今総理の前国会における答弁をお読みになつたから、私はそれについて申上げます。いわゆる漸増方式と申しましようか、アメリカの駐留軍が撤退するに従つて漸次日本でそれをカバーして行く計画は立つておるかどうか、この問題はよほど私は区別して考えるべきものであると思う。そこで今仰せになつたのはいわゆるアメリカ駐留軍の撤退に基いて漸次日本がこれをカバーして行く計画はどうであるか、こういう御質問なら私は申上げたいのであります。そこで我々といたしましては、いつまでもアメリカの駐留軍が日本に駐留するわけでもない。できるだけ早く日本独自の防衛力を持つて日本の手によつてみずからの国を守る態勢を整えて行きたい。それについては各方面から研究を要するのである。まして差当り一番大きな問題は財政力の問題である。人員をどうするかという問題もからんで来る。そこで我我といたしましては、いわゆる年次計画というものは、これはいわゆる漸増方式として立てなくちやならんという考えを持つております。研究いたしております。事実研究いたしております。ところが、これについてもなかなか容易ならん問題にぶつかつて来るのでありまするから、研究はいたしておりますが確定的なものではできない、これなのであります。併しながらいつまでも、ういうことは許すことはできませんので、差当りの問題として二十九年度において先ずどれたけ増加すべきか、これが一つ。次の三十年度においてはどれたけ増加すべきか、それについても我々検討いたしまして大体のめどは今立てております。その次に、そうしたらどうなるか、第三次年度にはどうか、第四次年度はどうか、第五次年度においてはどうかということになつて来ますると、我々は研究はいたしておりまするけれどもそれは容易に立ち得べきものではない。折角只今各種の資料を集めまして、これを検討いたしておるのであります。一応のめどをどこにつけるか、五年度の先においてはどこにめどをつけるかということを折角検討中であります。これも私は先ほど申上げました通り兵器の進歩が非常に著しいのでありまするから、なかなか確定的なものは立ち得べきものではない。先ず差当りの問題はいわゆる陸上自衛隊においてとれだけ増加すべきか、海上自衛隊においてはとれだけ増加すべきかと、兵員ぐらいの点においてならばそれは計画は立ち得るのでありますが、その余の問題においては各方面からいろいろ検討いたさなければなりませんので確定的の案はまだ立つていないと、こういうことであります。
  35. 曾禰益

    曾祢益君 まあ長期計画ということの内容といいますか、考え方について大体接近して来たことは結構なのでありますが、併し保安庁長官の言われることは、長期計画というか漸増計画といいますか、それについてばまだ研究しておるけれども提案するに至つていないと、そうしてこま切れ的に取りあえず来年度だけはできたのだと、こういうことになると思うのです。このことは、只今私が読み上げた総理のいやしくも参議院における一種の公約にはつきり反している。総理大臣に伺いまするが、あなたは今申上げたような漸増計画という名前、長期計画という名前、どちらでも結構ですが、その計画ができてその一部としての二十九年度の計画予算化して出すのが当然の順序であろうと思います。それが常識だと思うとこういうふうに言つておられるのです。この前言をあなたは取消されるのであるかどうか、それとも如何なる理由でそういうこま切れ的な二十九年度の予算だけを、防衛計画だけをお出しになつたか、この点は総理からはつきりお答え願いたい。
  36. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 若し日本の国力が充実いたしておれば如何ようにも計画は立ちますが、現在のような窮屈な予算において、たとえ希望をいたしても完全なる長期計画といいますか、防衛計画は立たないのが常識であります。今日は日本の財政の規模においてこれに適応した限度において予算計画を立てるよりいたし方ないのであります。即ちアメリカが漸減するのに対して漸増計画を立ててしのいで行く、併しながら全体の防衛計画は日米安全保障条約によつて一応計画を立てて行つて、そうして米国が漸減するだけの兵力を日本の力によつて漸増して行く、これ以外に予算の立て方はないのであります。
  37. 曾禰益

    曾祢益君 それはお答がちよつと私の間に外れておると思います。あなたの今の最後のお答えの中にもあつたように、アメリカは漸減するのだ、それに即応して漸増するのだ、こういうことが前提になつているわけです。従つてただいま今年度の予算においてはこれしかできない、これはよくわかるのです、我々はこれたけの必要があるとは考えませんけれども、そういう考え方としては本年度はこれだけという、あなたが言つておられる通り漸減計画に対して漸増計画があるのです。それに対しては数年後にアメリカがいなくなつたときにはこれくらいだという、陸海空その他についても一つの天井というものが一応考えられる。今日それを考えてみて日本の財政経済でできるできない、これは第二の問題です。であるからこそそこにMSAというような問題が起つているし、政府としても軍事援助のほかに経済援助がほしいとかいうようないろいろの条件をアメリカ側と内交渉されたと思う。でありますから只今お答えは正確に事態を伝え、或いは政府の方針を正確に伝えることにならないと思う。国民としてはこういうこま切れ的にやられてその都度憲法のワクを逐次乗り越えてそうしてこれを空文化して行こう。こういうことに対する政治の不信というものはそこから起つて来る。日本防衛計画はたとえば一国防衛方式、私は一国防衛方式は古いと思う。併し共同防衛の方式にしてもアメリカ側の撤収に即応した日本側の持分という問題を取上げなければならないという、政府は少くともそういう感じに立つておられる。そうすればアメリカと取つ替るべきそのうちの日本の持分の一応の限界はこの程度であるということを政府は堂々と計画化して、少くともその構想を示して、今年度の予算においてはこの程度やるのだと、これを出すのが政治上の常訳じやありませんか。どうしてあなたは十一月に言われたことを今日変えておられるのか、これは政治家として容易ならない食言です。あえて食言と言つて間違いないと思う。はつきりした答弁をして下さい。
  38. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は食言をいたす考えはありません。食言いたしておるとも思いません。併し私は……。
  39. 曾禰益

    曾祢益君 これを読んで下さい。
  40. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 待ちたまえ。私の言うことが正しいであろうと思うのは、日本の国力が無限であるなら別であります。限られた国力において計画をたてれば現在の計画を立てる。漸減にして漸増するという方式以外には立てられないのであります。日本の国力が第二であるべきではない。第一であると考えるべきである。
  41. 曾禰益

    曾祢益君 どこの国でも国力の無限の国なんかございませんよ。漸増はあなたは認めておられるのでしよう。でありますから漸増計画のつまりシーリング、天井はどこかということをはつきり国民に示すべきじやないか。今年の予算政府としてはこの程度しかできない。我々はもつと削減すべきだとこう考えているけれども、今年の予算はこの程度だ、来年はこの程度だということが一応考えとしては立つんじやありませんか。あなたは食言じやないとおつしやるけれども、確かに食言の結果を来している。であるから何故にそういうように変えられたのか。これは対外的にも、そういう漸増計画を立てるということは却つて対外的に工合が悪いとか、或いは国民にそういう全貌を示したくない、こういう考えじやないかと思う。私はそれが政治的によくない、政府は国防の問題は重要なのであるから責任を持つて防衛問題に対する基本的な構想を示すべきである。それをあなたは十一月には私にはつきり長期計画を立てる、その全貌を示して、その一部である二十九年度の防衛計画はこうだということをおつしやつておるし、あなたのお答えの中にもそれは漸増すべきであるということを認めておられるじやありませんか。なせこの点について変えられたのかもう一回伺いたい。(「総理々々」「違うぞ」と呼ぶ者あり)
  42. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) よほど曾祢君と私は考え方が違つておると思います。曾祢君は恐らくアメリカの駐留軍が何年たつたら引揚げるのだということをはつきりした見通しを附けてのお話であろうと考えております。それであるならば日本もそれに従つて年次計画というものを立てて行けることはこれは考えられるのであります。併し只今のころではアメリカ駐留軍が何年たつたら引揚げるということを言つておりません。(「そのくらいのことは言わさんでどうなる」と呼ぶ者あり)これはアメリカもそういうことは言い得ないと思う。(「それじや永久駐留じやないか」と呼ぶ者あり)そこを我々としてできるだけ早くアメリカの手に頼らずに日本独自の防衛態勢を立てて行きたい、それで苦心をしておるのであります。(「そこに計画がいるのじやないか」と呼ぶ者あり)そこで漸増計画ということは我々は立つべきだと考えてやつているのである。併し漸増計画というものは今申上げた通りいろいろな観点から確定的なものは立ちにくい。これは立てたところでそんなできんものを立てても何にもならん。大体の日遂にどこにおくべきかということを我々は先ず考えてそれに向つてあらゆる資料を求めて立てるので、それはなかなか立ちにくいということを私は申上げたいのであります。  そこで差当りの問題として二十九年度においてどれだけのものを日本で増加し得るであろうか、又これだけのものは持つて行かなくちやならんという建前から二十九年度においてこの予算に持ち込んだのであります。三十年度においでは我々は先申上げましたように大体の目途はついている。併しその次の年度においてどうするかということはまだ研究中であるが確定的のものは立ち得ないのであります。そこであなたのおつしやるようにアメリカがたとえば五年の間に全部引揚げる、いわゆる陸も空も海も全部引揚げる、それに対して日本がカバーして行こう、これはなかなか容易なことではありません。而もアメリカは五年の間に全部引揚げるとは申しておりません。日本の財政の許す範囲において日本の漸増計画を立てて、それに丁度合せてアメリカも私は引揚げることであろうと考えておるのであります。さような次第であつていわゆる長期の漸増計画というものは我々は研究中であるが、確定的のものはまだできていない。それは実情であります。
  43. 曾禰益

    曾祢益君 幾らその点をあいまいにされようとしても、長期計画というものは日本立場から作る、そうしてその年次計画を二十九年度の予算に出すというこの政治的な発言は取消されておらない。私たちはこの点について政治的の責任を追求して行かなければなりませんが、幾ら御質問しても答えをはぐらかすだけで問題の中心をはぐらかしておられる。  今度は長官に申上げますが、あなたは、私がアメリカが全部引揚げてしまうだろうというと言つておられますが、私はその点をあなたに、政府に聞いておるのです。つまり完全な一国防衛方式でおやりになるのか、自衛国防論であるのか、それとも集団防衛の一環としての日本の持ち分、これを考えての或る程度のアメリカの少くとも日本における陸軍を殆んど完全に撤収して、そうして陸海空の戦略的な部面については日本を応援して行くというような態勢の下における日本の陸海空というものの一応の限度というものが、これは当然に計数的に出て来るわけです。そういう立場長期計画考えておられるのか、むしろ私は逆問しておるのです。そんな全部アメリカが引揚げて日本が一人で全世界を相手にしての国防計画を立てろ、或いは考えておるかなんというような素人議論をしておるのではない。でありますからあなたにもう一遍伺いますが、あなたは一国防御方式なのか、集団防衛方式なのか、はつきりイエス、ノーをお答え願いたい。
  44. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。残念ながら只今のところでは一国の防衛方式なんというものは立ち得ないのであります。我々は日米安全保障条約におきまする両国のいわゆる防衛方式をとつて行きたいと考えております。
  45. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますると、集団安全保障の上に立つた一つ防衛という観点に立つておられるということはほぼ明瞭になつたと思いますが、そこでいわゆる三軍均衡方式、或いは空軍優先方式というような点について如何にお考えになるか伺いたい。
  46. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 一国の防衛方式でありますると、三軍均衡のとれた防衛方式をとるのが当然であろうと考えております。我々はその方向に漸次向わなくちやならんと考えておりまするが、今日本のおかれた地位、財政能力その他から考えまして、これは私は容易にとり得るものではなかろうとこう考えております。
  47. 曾禰益

    曾祢益君 二月二十六日の東京UPが伝えたところによると、極東空軍の司令官であつて今度アメリカの戦略空軍の司令官になるウェイランド中将は、日本に対する脅威の中で最も重大で、直接的なものは共産空軍によるものである。日本の再軍備に際しては空軍再建を優先にすべきであると言いまして、均衡は必要であるけれどもそれは潜在的な敵の脅威の性格に応じたものであることが必要である。要するに均衡方式といつてもいろいろな考え方があつて日本の場合には空軍をやはり優先したような均衡が必要であるということを言つておるのでありまするが、第一外国の軍人が、而もそういう責任ある地位にある者が、舌をすべらしてこういうことを言うということについて、一体政府はそういう外国軍人は言動を慎むべきだというふうにお考えにならないかどうか、外務大臣に伺います。
  48. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はその記事を知りませんが、又実際にその通り言つたかどうか知りませんが、(「怠慢だ」と呼ぶ者あり)日米安全保障条約に基いて駐留する米軍の責任者としては、常に日本の安全に対して如何に守るべきかということは頭にあるはずでありまするから、成る程度そういう問題について意見を述べても別に不思議はない、こう考えております。
  49. 曾禰益

    曾祢益君 とんでもないことであつて、何らの防衛上の責任からの意見ではなくて、日本の再軍備に対する一つの意見でありまするから、こういうものを聞き流すというような外交であつてはならないと思いまするが、時間がありませんから次に進みます。  そこでこの点に関する問題を締くくる上に必要なのでありますが、この陸上の十箇師三十二万五千、これはアメリカ側のいわゆる向うの漸減方式に即応した日本の陸上兵力に対する一つの、何と言いますか、最小限度の要求、要求という言葉が悪いといたしますれば軍事的に見た希望である。これは明確になつておりますが、この点についてはそんな大きなものは要らないという点について、政府のはつきりした意見並びにこれに基くアメリカとの話合の結果はどうなつているか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  50. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。保安庁長官としての関係におきまして、アメリカからさようなことは私は言われておりません。ただ陸上において三十二万五千云々と言われまするが、現在の日本におきまするあらゆる角度からして、さような数字は答易には出て来ないのであります。いわゆる現在は志願制度であります。志願制度の下において三十二万五千という数字は出て来ません、従いまして我我といたしししては、この方式の下に日本は財政力その他をいろいろ勘案して、どれだけのものまで増加し得べきやということについて検討中であるのであります。
  51. 曾禰益

    曾祢益君 残念ですが、時間がございませんので次の問題に移りたいと思います。  MSA協定がいよいよ調印されるようでございますが、すでに日本新聞等に出ておりまする協定案というものは、大体実質的に正確なものだという前提の上に立つて若干の点を御質問申上げたいと思います。  先ず第一点は、このMSA協定というものは、元来は集団防御に関する基本的な条約がありまして、例えば北大西洋同盟条約というようなものがあつて、それを前提として新たなる軍事上の大きな義務を課するとか、防衛の方式を変えるというものでなくて、その前提の上に立つてアメリカが軍事的な援助をすることがMSA協定の例だと思います。ところが伝えられる日本の場合のMSA協定というものを見ますると、政府がしばしばこれは安保条約以上のものでないと言つておられたけれども、現実には本協定というのは、或いは安保条約以上の基本的な日米間の相互防衛に関する一つの集団保障プラス軍事援助という内容を持つたものであつて、極めて異例であろうと思うのであります。例えて言うならば、この協定の前文の劈頭におきまして、日本国際連合憲章の目的及び原則に従つて国際の平和と安全を保障するための能力を増進するための自発的手段をとることを希望する。今まで安保条約にしろ、講和条約にしろ、かような日本国際の平和安全のための能力を増進するというような役はいたしておりません。又第一条において、第三国に対して装備、資材、役務その他の援助を、その他の援助なんというと極めて危険な感じがするわけでありまするが、少くとも第三国に対する援助を日米両方ともやるということを約諾し合つている、これ又安保条約の二国間の双務条約とは本質的に違つておることを明らかに示しておる。第八条において、米国が当事国である多数国間若しくは二国間の協定又は条約で負つた軍事的義務を履行することを再認識する。この点についてしばしば言われておりますように、安保条約に基く消費的な軍事基地提供というような義務だというように言われておりまするが、これはあとで申上げるように、そうではない、新たに防衛力増加の明確な約束をすることになるわけであります。殊に多数国間の条約、これは日米両国に関する限りは、アメリカ側にあつて日本の加わつておるものではないからというようなものであるけれども、併しこれは太平洋防衛条約に通ずる途を開こうということに法理的にはなるのであると考える。そういう意味においてこれ又誠に容易ならない。安保条約からの逸脱と言いまするか、基本的なその性格を変えるものであると考えるのであります。更に同じく八条において、只今申上げましたように、自国の防衛力自由世界防衛力の発展と維持に十分な貢献を行うことを期する、自国の防衛力についても正確なる漸増の義務は負つておりません。更に又自由世界防衛力の発展ということは、これは完全に新たなる義務であつて、二国間の条約であり、多数国間の防衛同盟条約に発展することである。これは誠に安保条約と本協定は違つた趣旨のものになるということになる。更に自国の防衛力の発展に必要なあらゆる合理的な措置をとる、こういつたような安保条約と基本的に変つた、安保条約を越えた大きな防衛同盟条約になるということになるのではないかという店を一つ外務大臣からお答え願いたい。
  52. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 曾祢君は少し誤解をされているのじやないかと思いますが、この前に、昨年の六月二十四日、六月二十六日の書簡交換によつて、先ずはつきりいたしましたいわゆる安保条約における義務以上の義務を負うものではないというのはMSAの五百十一条の第三項に規定してあるいわゆる軍事的義務というのは何であるか、これに対しては安保条約以上の義務を受けるものではない、こういうことになつております。そのいわゆる軍事的義務というものの内容が、つまり日本には軍備がない、いろいろな点で誤解を招くといけないので、軍事的義務は何であるかということをはつきりさしたのがこの前の書簡であります。それ以外に新らしく安保条約以外の義務は何もこれはないのだ。MSA協定はそういう意味ではないのでありまして、軍事的義務はこういうものである、こういうことであります。例えばそのほかにも、要らない兵器は返還するという義務は負うのでありますし、いろいろな義務は負うのであります。その点は誤解ないように一つお願いしたいと思います。
  53. 曾禰益

    曾祢益君 そういう新たな条約ですから、細かい新たな義務を置くのは当然であります。基本的な防衛同盟の性格というものは完全に変つているのじやないかという質問に対するお答えはございません。時間がありませんから続けて更に申上げまするが、今申上げましたように、然らばこういう点を伺います。今までの、現在の安保条約と申しまするか、これは何といつても双務条約であつて、而もそれは相互主義ではなく、いわば片務的な、日本だけがアメリカに守つてもらうと申しまするか、こういう恰好になつておるのでありまするが、今度の条約は相互防衛をするという双務的な二国条約に変しつつあるのではないかということです、先ほど申上げたように、而も二国間の条約ではなくて、多数国間の防衛同盟条約に発展しているのではないか、この点に対しては如何なる考えか、御答弁願います。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いわゆるMSA協定防衛同盟条約では全然ないのでありまして、援助を受ける、受けないという問題だけであります。従いまして先ず第一に、アメリカ日本の間におきましては、これも完全な相互的なものとは言いがたいのであります。というのは、完成兵器等を受ける場合には日本は無償で受けることになつておる、これが主眼になります。アメリカ側にも必要な資材等を出すことがありまするが、これは有償で出すということになつております。それから他の自由諸国に対しての何かの寄与をなすという場合には、これは域外買付等によつてなすものでございまして、これは他の自由諸国を日本が約束して防衛するのだと、こういう意味ではなくて、やはり他の自由諸国間の自衛力を漸増するために必要にしてでき得る限りの寄与をなすと、こういう意味であります。
  55. 曾禰益

    曾祢益君 御答弁満足でありませんが、次に憲法との関係について伺いたいのでありますが、国民が心配しておりまする海外派遣等については、これは政府考えでもそういうことはない、又憲法上できるはずはないというのでありまするが、この協定そのものから言えば、第三国に対する援助、更に又事と次第によつては日米の共同防衛という観念も出ておる関係上、海外派遣禁止ということはこの協定からはつきり出ておらない。かように考えるが、その点如何にお考えになりますか。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この点は私はしばしば申しました通り日本防衛隊なり、自衛隊なり、或いは保安隊というものを海外に出すか出さないかは日本政府がきめる問題でありまして、外国がきめる問題ではないからして、それを協定の中に謳うということは、それこそ自主性のないような協定になる慮れがありまするから、それは必要がない、こう考えております。ただしばしば国会においてもそういう質問がありまするし、従いまして国民の中にもそういう心配を持つておる人もあるかと考えますので、協定文等にそれを盛込むことは甚だおかしいのでいたしませんけれども、私の調印の際の言葉の中には、その点にも念のために触れておこうかと考えております。
  57. 曾禰益

    曾祢益君 日本の自主的な立場できめるべきものであることはお説の通りでありまするが、この協定のでき方からいうと、協定そのものが危険があるのであるから、協定の中でこれを食いとめもべきだと私は考えます。次に、さような関係もございまして、実はこの協定の第九条でありまするか、憲法上の規定に従つて実施するというふうなうまい文句が書いてあるのですが、これはこういう規定がありましても、この協定それ自身が憲法の枠を外れているものではないかという私は疑問を持つている。そういう場合に、一体憲法第九十八条第二項を如何に解釈するか。御承知のように「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」、この解釈はいろいろあるかに考えまするが、少くしも日本の憲法というものは、国際条約を非常に優先的に考えておりまして、国際条約できめたことは、これは憲法をも曲げ得るというのが当時の吉田第一次内閣政府の正式な解釈になつております。若しそうでないと言うのだつたら私は証拠を以て幾らでもお話申上げます。かような観点に立ちまして、政府が今度の協定が憲法以上であるという場合には憲法を曲げるものと解釈するかどうか。憲法に反するものがあつた場合には、憲法を越えた条約の効果を認めるかどうかをお伺いしたいと思います。
  58. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 法律上の解釈はここに法制局長官もおりますから別といたしまして、政府といたしましては、憲法に違うような条約を結ぼうという考えは勿論ありません。又あらゆる知慧をしぼつて憲法に反しないように条約を作り上げる努力をいたすのは当然でありまして、又そういたしておると考えております。なお今お話のように、それでも念のためということもありまするから、憲法の条項に従つてという、こういう字を特に、協定文に必要がないと思いましたけれども、入れた次第でありまして、いやしくも憲法に反するような結果を来たすような協定なり、条約なりは結ばないことはもう明らかであります。
  59. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 只今御指摘の九十八条の隣りには九十九条がございまして、そこでは、天皇、国会議員、国務大臣その他の公務員はこの憲法を誠実に連呼する義務を負うという条文も明らかにあるわけであります。私どものほうはそれのほうを先ず第一に考えまして、条約は憲法に優先することはないというふうにずつと考えて参つております。
  60. 曾禰益

    曾祢益君 それは政治論であつて法律論になりません。貴族院の憲法改正特別委員会の速記録第二十二号によりますると、金森さんと高柳賢三氏の応酬の中に、憲法に対して制約を加える条約もあり得るということを金森国務大臣ははつきり言つておられます。同じく憲法改正特別委員会速記録の第二十二号の記録を御覧になりますと、金森さんが大河内議員に対して条約は公布され或いに締結されれば国民を拘束し、その効力は場合によつては憲法を動かすこともできる。であるから九十九条の公務員として憲法を遵守すべき義務があることは当然であるけれども……。ところが憲法の解釈ということになると政府は勝手な解釈を現にしておる、而もそれは政府の勝手な解釈なら国内法の問題だけでありまするが、国際条約がこの政府のルーズな解釈と相マツチして、そういう憲法を現実に侵すような条約を作つて、而もその効力については、若しそういうことがあつたとすれば法律上はどうなるか、この法律論を伺つているわけです。
  61. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 只今御指摘の速記録を私今手許に持つておりませんのは私のほうの弱味でありますけれども、(笑声)私は当時から金森さんのお供をしておりまして、結局それに対するお答えははつきりしたお答えにはなつていなかつたと私は記憶しております。まあそれはともかくといたしまして、只今の結論の問題でございますけれども、我々といたしましては、先ほど述べましたように、九十九条の立場において極力、極力ではありません、絶対に憲法に違反するような条約はないようにということで努めることでありますし、又そういうことはあり得てはならないと思うわけでありまするからして、これは矛盾するような条約ができた場合にどうなるかということについては、これは純然たる仮定の問題として、或いは学問上の問題としてならお答えはできますけれども、この場合においてはそこまでお答えする必要はないというふうに考えております。
  62. 曾禰益

    曾祢益君 それはどうぞこれを御覧になつてあとでお答え願いたいのですが、純然たる問間の議論なんか私たちしているのではありません。極めて重大な段階に立つたから、政府が明確にこの問題について国際条約が憲法に優先するという当時の政府の解釈を守るのかどうかということをあとで正式に文書でお答え願いたい。時間が大分なくなりましたので、次に防衛庁の問題について伺いたいのでありまするが、大体今度の防衛庁の要綱或いは自衛隊要綱等を見ますると、今までの保安庁以来の政府のとつて来られた一つの重大なポイントであつた文民優位という原則をみずから破つておるように考えます。殊に長官にまで任用資格制限を撤廃したという理由は一体どこにあるか、この点を伺いたい。
  63. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は建前といたしましては、どこまでも政治が軍事に優先するものでなくちやならんと考えております。文民優位ということはしばしば口にされまするが、原則としてはどこまでも政治が軍事に優先するのである。この建前であります。そこで保安庁法改正によりましても、どこまでも内閣の首班たる総理大臣が絶対の最高指揮監督権を持ち、その下に長官があつて、その指揮監督の下に各部隊を監督して行くという建前を外していないのであります。要は内閣の首班たる総理大臣が指揮監督して、総理大臣はつまり国会においてやはり責任を持つのであります。この建前は堅持しております。そこで長官以下、これは今申されましたように、曾つての制服を着た者からでもこれになれるということに今度考えられておるのであります。そこで申上げたいのは、内局に勤務しておりまする長官以下は全部いわゆる文民であります。ただ制服を一日着ておつた者でも、その制服を脱いで、適当な者があればこれは内局に勤めることもできるようにしたいと、こう考えておるのであります。と申すのは、私はどこまでも適材適所に立派な人物を配置する要があると考えております。曾つて制服を一度でも着た者を、制服着た者は入るべからずという禁札を立ててこれをシャット・アウトするというようなことは、これは思想上も又事実の建前からとつても私はなすべきことではないと考えております。いい者があれば、曾つての制服を着ておつた者でも、これを入れて何の差支えがあるであろうか。又内局の建前といたしましては、すでに明らかでありまするように、いわゆる部隊と全然関係は異にしておりますので、曾つて制服を着ておつた君は内局へ入りましても部隊との面接の関連性は何も持つていない。これに支配されるという懸念は毛頭も起つて参りません。又実際の運営上も恐らくかような禁札を外しても、私は内局へ曾つて制服を着た者が入る余裕がなかろうかと考えております、運用の面からも……。かたがた今申上げましたように、そういう禁札を立てて置くことが却つて一般的の思想上の問題からも事実上の問題からもよくない。それで根本のいわゆる政治が軍事に優先するという建前を飽くまで堅持すれば、さようなことは禁札を外しても差支えない、こういう考えを持つておる次第であります。
  64. 曾禰益

    曾祢益君 一般的の政治が軍事に優先ずべきだということと、曾つての制服を余り排撃しないという方針が仮に正しいといしたましても、まあ第一の原則は正しいにきまつている。第二の原則は一つの問題があろうと思いますが、私が伺つているのは、長官は国務大臣国務大臣がつまり昔の制服であつてもいいというふうにお考えになつておるのかどうか、その点を伺つているのです。
  65. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は曾つての制服を着ていない者がなるべきだと考えております。これはいわゆる国務大臣は憲法において文民でなくちやならんという、あの文民ということは私はよくわかりません、わかりませんが、(笑声)恐らくはつまりそういう経験のない者、こういう建前をとつているんじやなかろうかと考えております。それから見ても長官は曾つての制服を着た経験のない者がなるのが至当であろうと、こう考えております。
  66. 曾禰益

    曾祢益君 私は政治論としても今の長官の言われたのは正しいと思うのですが、然らば何故に長官までこの制約を外しておられるのか、こうなつて来ると法律論なんです。だから法律論としては政府の解釈は、今言つた文民の意味は、曾つての制服も文民と認めない、これは当時の吉田第一次内閣における法的解釈はそうなんです。その点を確認されるかどうか、はつきりお答え願いたい。
  67. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この憲法のいわゆる文民でなくちやならん、その文民ということは、一応いわゆる旧軍人はいわゆる文民のうちに入らないのじやないかということは誰か言われておるようです。私は言つたわけじやない。これは併し確定的の解釈は私は何もないように記憶しておる。この文民ということはどういうことをいうのか。曾つてのいわゆる軍服を着た者はこのうちに取外すんだ、その意味でできておるんだと解する人もあることは事実であります。そこで私の申上げたいのは、いわゆる曾つての旧軍人じやない、この規定はいわゆる制服と言えば現在保安隊に勤めておる者で制服を着ておる者は幾らもある。これはいわゆる昔の文官から、内務省系統から来ておる或いはほかの系統から来ておる人でいわゆる軍人の経験のない人が相当数入つておるのであります。そういう人までも皆シヤツト・アウトするということは如何にも不器用なことである、それだからそういう途は開いておくことが私は妥当じやないかと考えております。特に禁札を掲げて、一度でも制服を着た者は絶対に内局にはいれないのだというようなことは私はよくないと、こう考えておる。
  68. 曾禰益

    曾祢益君 わからないのですがね、どうもますますわからなくなつて来る。(笑声)あなたのお考えだと、第一は曾つての軍人は解釈上この文民の中に入つてもいい、許してやる、こういう解釈かどうかはつきりしないと言つておられるのですが、この点はこれ又法制局長官、あとで調べてお答え願いますが、私の調べたところによれば、貴族院の委員会の第二十四号にありまするが、山田三良議員に対する金森国務大臣の答え、若しこの規定、第六十六条二項ですが、若しこの規定がなければ「場合二依リマシテ、過去二於テ職業軍人デアツタ人ヲ排除致シマスル場合二、憲法上ノ論講ノ余地が発生スル虞アリト考ヘテ居リマス」とある。従つてこれは議員の中にはそれは気の毒だという意見もあつた。政府の解釈は職業軍人を排撃する、こういうことだ。それは占領中だから、追放されておつたからというような議論でなくて、法律論としてはそうなつた、私はそう考えておる。だからこの点は明確に、そんなあいまいなことをしておいたら大変ですよ。旧制服が長官になつて、即ち大臣になれるかなれないかということは、これは日本の憲法、日本の国の性格の基本問題です。そういうものをあいまいにしておくというのは絶対いけませんから、正確な政府の意見を統一して御返答願いたいのです。  第二は、あなたのおつしやることはますますわからない。旧軍人でなくて新軍人と言いますがね。保安官になつた人、こういう制服ならいいというのですか、何だかわけがわからないですよ。その制服もいけないし、旧制服もいけないというのが若しあなたの解釈であるならば、長官を資格制限撤廃のほうから除いておいて、長官は別にしておいて、次長以下とするならこれは一つの論理だと思う。どつちなんです。
  69. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の申上げたのは、長官はいわゆる憲法で文民でなくちやならんという規定があるから、文民の解釈如何によつては長官は絶対にいわゆる昔の旧軍人或いは一度制服を着た者もこれはなれないだろう、こういうことであります。併しその以外の者は旧軍人であろうと、或いは現在のいわゆる部隊に勤続しておる制服を着ておる者であろうと、これは立派な人物であればいいじやないか。(「長官を外しておけばいいじやないか」と呼ぶ者あり)長官だけはこの建前として文民の何はある、ほかの者はそこまでも私は禁札を立てる必要はないのじやないか、有為な人材であればこれは内局へ持つてつてもいいのじやないか、こういうことです。(「制度の問題です」と呼ぶ者あり)
  70. 松澤兼人

    松澤兼人君 関連。先ほど保安庁長官が文民ということの意味がわからんとおつしやつておいでになつた。今の段階においては長官がそう言われることは或いはいいかも知れない、有利かも知れない。併してこの憲法はあなたも司法大臣として副署して公布されている。その副署された司法大臣木村篤太郎というかたが、文民の意味がわからないということじやこれは通らない。(「そうだ」「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)これははつきりして頂かなきやならん。何にも知らないで副署されるなんというばかなことはない。その点所見を伺いたいと思う。
  71. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは当時いろいろ議論があつたのであります。これは私ははつきり申上げます。(「はつきりしないじやないか」と呼ぶ者あり)そこで将来日本で再び軍隊を持つというような場合、そういう場合において、いわゆる軍隊に帰属した者はそのいわゆる文民から外すのではないかという一つの議論、併し日本の憲法の建前上そういうことはあり得ないであろうから、一つの議論として、旧軍人がこれから外されておるのではないかと、その二つの議論があつたのであります。併しそのいずれの議論が正しいかということは私はここで申上げることができんという趣旨であります。
  72. 曾禰益

    曾祢益君 その点はあとで統一して見解は是非伺わなけりやならないと思いますので、お願いいたします。  次に、この今度の要綱によりますると、やはり防衛出動中における任用期間の延長、或いは一定の場合の自由退職を認めない、又予備自衛官制度を新設して、その場合にやはり防衛出動の際における任用期間を延長するというのがございますが、これは政府としては本人から約束させるんだからいいではないか、或いはこの法律を作つてしまえばそれでいいじやないかというような解釈で、行かれるかと存じまするが、これはやはりどうしても憲法の十八条、二十三条等における「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。」、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」、この大原則から見るとこれは憲法に反する。この法律の規定やそういう個々の契約そのものが憲法に反するのではないか。言うまでもなく、これは徴兵ができないから、かような無理な法律でやつて行こうと、こういうことであるけれども、結果論的にはやはり私は憲法の十八条、二十二条に反するのではないかと思うが、この点は如何にお考えでありましようか。
  73. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。私は絶対に憲法の規定に牴触するものではないということを申上げたい。申すまでもなく、現在の保安隊、警備隊、又今後創設されんとする自衛隊にいたしましても皆志願制度であります。そして予備自衛官を作るにいたしましても、予備自衛官に誰がなるか……、強制は少しもいたしません。全部志願によつてその人を求めるのであります。それで志願するときにこういう条件があるということをはつきりさせて、そうして本人の同意の下にさような建前をとるのであります。断じて憲法に牴触する虞れはないと私は考えております。
  74. 曾禰益

    曾祢益君 その議論で行くと、例えば或る種の共産主義国等におきまする強制労働も、個人がこれを志願したことによつてつているんだということになつて、それじやあ民主主議というものは成り立たない。であるから志願の形式をとるからというような議論でなくて、もつと本質的に、やはり民主主義の基盤を守るという見地から言うとこれは私は憲法に反するのであろうと、そういう疑惑を深く持たざるを得ないのでございます、次に、防衛出動の場合に、外部からの武力攻撃の場合に防衛するということは、これは自衛権として、憲法の交戦権の問題等もありまするが、一応理解されるやに考えられまするが、いわゆる武力攻撃の虞れある場合を含むということになりますると、これは国際連合憲章の五十一条等に認められたいわゆる武力攻撃が発生したときには自衛権が発動できるという厳格な自衛権の発動の制限の新らしい国連式の行き方を逸脱する、勿論日本の憲法の精神を逸脱するものではないか。成るほど出動を命じただけでは或いは武力にならないと言われるかも知れないが、出動を命ぜられた自衛隊我が国防衛するため必要な武力行使をすることができる。そうなつて参りますと、武力行使の虞れがある出勤を命じた、そうして出先で武力の発動をしてしまう。この自衛権の拡張解釈になる危険が非常に多いと我々は考えるのでありまするが、憲法並びに国際連合憲章の見地から、この点を如何に考えられるか伺いたい。
  75. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。武力攻撃の虞れある場合、これは現在では武力攻撃が発生しなくても、もうすでに不当に外国部隊が動いておる、その場合に予想されることは、何どき日本の土地に対して不当に侵略をして来るかわからん、これに対してあらかじめこれに対処するだけの態勢をとる必要があるのであります。態勢を取らずに一拳にやられて来たときには、これは御承知通り防衛態勢は全部崩れてしまう。そういう危険が間近に迫つておつたときに、それに対処するだけの待機命令はこれはしておかなければならん。待機命令をしておいて、現実に武力攻撃があつた場合に初めて発動するのであります。これは二つに区別しなければならんのでありまするが、待機せずにそれを発動することはできませんから、敵の武力攻撃が間近に迫るような危険が切迫したときに出動命令を出して待機させる、これが是非とも必要であろうと、我々はこう考えておるのであります。武力攻撃そのものが発生していなくても、もう間近に迫つておれば、それに対して出動命令を出して待機させるということが何よりも緊要であろうと、こう考える次第であります。
  76. 曾禰益

    曾祢益君 いわゆるそういう危険な場合に出動を命ずるということは一応わからないではありません。併しこの要綱によりますると、これは非常に基本的な国家の性格の問題であるのです。重要な自衛権の解釈の問題になるのですが、然らば武力攻撃が加えられない限り、こちらの武力の発動はしないのだということが政府の方針であるならば、これを何らかの意味で法律化するお考えがあるかないか、この点を伺いたい。はつきりしておりません。必要なる武力行使ができるでは危険であります。
  77. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします、敵が武力攻撃を加えて来ないにもかかわらず、こちらから武力攻撃を加えるということは、これはあり得ないことであります。現実に迫つて来ないものに対して、こちらからそれに対して対抗できないのです。武力攻撃が来るまでに待機命令をさせておいて、そうしていよいよ武力を向うが行使したときに、こちらがこれに対して対抗の武力を行使する、こういうことであります、そういう懸念は毛頭もないと思います。
  78. 曾禰益

    曾祢益君 保安庁長官は正午に出発の用があるというお話でありまするので、私は保安庁長官に対する質問はいわゆる一般質問のほうに譲りまして、これで質問を終りたいと思いますが、実は重要な点について更に政府全体に御質問申上げたいと思つてつたのですが、この防衛庁及び自衛隊の法律要綱を見ましても、政府の今度のやり方を見ますると今まで軍隊でもない、戦力でもない、こういう解釈をとつて来られた。最近に至つては軍隊であつてもいいけれども、戦力にならなければいいのだ、かような無理な解釈をとつておられるようであります。それで戦力の問題については、これ又第一次吉田内閣のときの議会におきます憲法の審議の経緯に照らしまして、戦力というものは陸海空軍その他の戦力ということになつておるのです。これは陸海空軍は戦力の基礎となるのです。それに至らない、とるに足らないものでも戦争の潜在的能力はこれを禁止するというのが憲法九条二項の趣旨であることは、これは明々白々たる事実であります。でありますから、当時におきましては、例えば金森さんの答弁をみても、硫安を作つておるという工場施設は、或るほど火薬にも使えるけれども、本質が経済施設なのであるから、これはまさか戦力にはならない。竹槍を持つたから戦力ということは言えないでしよう、こういう論争をしておつた。ところが軍隊であつてもいいけれども、近代的な戦争を遂行し得るに足る有効な軍事施設が戦力だ、こういうようなことは当時の経緯に照して、同じ吉田内閣の下においてかかる無茶苦茶な戦力解釈ということは、これは政治道徳が断じて許さない。国民何人もこれを納得させることはできない、かように考える。更に又木村長官は、交戦権がないから軍隊ではと言つてもいいけれども、本格的な軍隊ではない。ところが今度の保安庁法によると、武力行使はこれは認めている、はつきりと認めている。憲法制定当時の記録に徴すれば、武力行使は事実上できないのだ。而もその交戦権がないのは、その実力部隊にないのではない、国に、日本国に交戦権がない、国の交戦権、部隊の交戦権なんということはナンセンスであります。国に交戦権がないのだから、であるから武力を仮に持つても、潜在戦力程度を持つても事実上武力によつて守ることができないのだ、こういう解釈をとつておる。そういうのにかかわらず、逐次今まで憲法を空文化して、今度ははつきりとした陸海空軍を設け、而もその任務は、先ほども申上げましたように、政府としては警察的なものとの転換を何とかごまかそうとしておるけれども、これは三党協定関係から、はつきりと直接及び間接侵略に対抗する武力である、防衛であるということの方向を打出そうとしておる。この機会に依然としてこの憲法を空文化するような態度で、憲法は変えませんという、そういう態度で行くことは民主主義そのものを冒涜するものと考えるが、この点に対する総理所信を最後に伺いまして、私の質問を終りたいと思います。
  79. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば申すようでありますが、戦力に至らない戦力とは何ぞやという問題になりますけれども、とにかく常識で考えて戦力になるようなことは、なるような軍隊と雷いますか、力は持たないという固い決心を持つておりますから、この点については終始一貫、私は或いは政府としても始終説明をしておるのであります。即ち戦力に至るがごときものは持たない。従つて憲法には抵触しない、この意見を始終述べておることは御承知通りであると思います。
  80. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたしまして、午後一時より開会いたします。    午後零時四分休憩    ―――――・―――――    午後一時十七分開会
  81. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。
  82. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私はこれからこの重大な日本の転換期をも画するかも知れないような時局に臨みまして、総理大臣に国政の根本に関し、三、四の質疑をいたしたいと思うのであります。ただ私は質疑をいたします前に私の立場を申上げておきたいと思うのでありますが、今日の二院制度の建前から申しまして、私は衆議院は主として力による闘いと決定の場であり、参議院は主として理念に基く批判と解明の場であると考えるのであります。従つて衆議院においてしばしば議論をいたされました場合にも、内閣におかれてはある緊迫したる情勢下において頗る言葉を慎んで、国民の聞かんとする問題に対して意を尽さざる憾みがあつた点もあつたと思のであります。併しながら参議院におきましては、只今申上げたような私の観点から申して、総理におかれても成るべく細かに御答弁を頂きまして、国民の持つておる各般の問題に対する疑惑を一掃し、国政の行くべき道を明らかに示して頂きたいと思うのであります。  そこで私が第一に伺いたいのは汚職の問題でありますが、衆議院予算委員会において総理は川崎委員質問に答えて、司法の審査決定を待つて政府は善処します、かようにお答えになつております。大体この速記録を拝見いたしますと大同小異のお答えであつたと思うのであります。そこで私の伺いたいと思いますのは、この審査決定という意味はどういう意味であるかということであります。事件は、法律上は厳格に申せば最高裁判所の最終の決定があつてからでなければきまらないわけであります。併しながらそれが総理の言われる審査の決定であるかどうか疑わしいと思いますのは、松村委員の問いに答えられては、総理大臣は、その全貌がわかつた場合においてとも申しておられるのであります。そこで国民の今聞かんとするところは、不幸にしてこの事件が閣僚にまで疑いがかかつた場合にこれをお含みになるかどうかという点であります。
  83. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。私のお答えなした答弁の趣意は、決して形式的の意味ではないのであります。つまり事件の真相がわかつた場合、全貌がわかつた場合を申すのであります。噂でおるとか或いは人の話であるとか、いわゆるオーセンテイツクでない言葉の言葉尻を捕えて直ちに人に疑惑をかけるということはよろしくないと思うであります。故に政府として処置をとる場合においては、全体の全貌がわかり、真相がわかつてはつきりしたところで以て政府のとるべき処置を決定すべきである、こう考えるのであります。
  84. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 只今の御答弁で私の第一に伺いたいと思う点は大体明らかになつたと私は思います。そこで私はこの問題を最初に取上げて御質問をいたします趣旨は、私はこれは今お話のように事件が最高の地位まで発展せざることを衷心より望むのであります。かような事件が起つて政局が混乱するということは、私は日本のために好ましからざることと思うのであります。けれどもこの事件がすでに日本国内に喧伝せられ、外国にも波及をいたしておるのでありますから、この取扱については政府において十分な慎重な用意を希望するということであります。それはこういう事件が理由なくしては起らないということであります。  私が今総理お答えによつてその次に伺いたいと思いますことは、私が今この事件をお伺いしておるのは、この事件を究明しようということではございません。又個人々々を攻撃しようという目的でもございません。ただこの問題が個人の問題を立ち超える社会全体の機構にその病根があるということを痛切に感じますので、これを明らかにすることが今日の日本の政界の転換期に非常に大切であるからと思つてつておるのであります。その点におきましては私は単に人を責むるに急であつて、みずから顧みないということではこの深刻なる問題の解決にはならないと思うのであります。厳格に考えてみますれば、法律に触れるか触れないかということは紙一重の問題であり、又場合によつては本人の不運である場合もあるのであります。故に私は法律上合法的であるか、非行であるかということを立ち超えた非常な深刻な問題があると思いますのは、今、日本が敗戦後思想的にも混乱し、経済的にも貧困になつておる際でありますから、国民がこの問題に対する憤りを持つておるということは、我々政治に関係する者は謙遜に考え直して見なければならん。我々が眼をつぶつて神の前に自分は全然無罪であると言い切れる者は私はないと思います。それだけの謙虚な反省と、深刻な自己批判が我々政治家に全部強要されておると私は思うのであります。その立場からこれを取上げて議論をするのでなければ、今日、日本にある国民の疑い、或いは憤りを一掃することはできない。そこで私が今総理にこの問題について伺いたいというのは、総理大臣がこの機会を捉えられて国民的の反省の機会となし、これを以て日本民族の総理のしばしば言われる道義高揚の一つの機縁を捕えられるならば、これは禍いを転して幸いとすることもできる、こういう一つ機会をお待ちになつておると私は思うのであります。そうして今日の誠に弛緩した民心を新たにすることもできるのであります。これは総理が長く御在任になつた英国の民主主義がなぜあのように健全に発達しておるかということを考えますときに、私は偶然旅行をいたしてロンドンにおりましたときに、丁度あの有名なアスクヰス内閣のマルコニー事件が起つておりました。一九十三年の七月の末でありました。事件は何でもないことである、大蔵大臣のロイド・ジヨージと、検事総長アイザツクスがマルコニー会社の株を持つてつて儲けたということがその前の年の春から問題になりまして、一年三カ月かかつて、遂にこれが全貌が出て見ますと、ロイド・ジヨージもアイザツクスも何も関係がなかつた。即ち、同じマルコニー会社でもアメリカのマルコニー会社の株を持つておつた。イギリスのマルコニー会社は成るほど政府と契約して儲けたでありましようけれども、アメリカのマルコニー会社は株が下つて損をしておるのでありますから、何も通徳上にも政治上にも責任はなかつた、にもかかわらず、英国の議会において弾劾の、或いは懲罰の動議が提出されたときに、私の非常に感銘を受けましたのは、当時の総理大臣のアスクキスのとつた態度であります。即ち、彼が討論最後の議場において申しました。政治家、殊に内閣の閣員というものは法律以外に、道徳上、政治上の責任があると言つて、その五つの原則を掲げた後に、道義上及び政治上の責任がなくても、第二に謹慎の原則というものがある。即ち、多少なりとも不謹慎と思われるような場合は政治家として自ら戒むべきことである。ロイド・ジヨージは何も道徳上にも政治上にも、法律上にも責任がなかつたけれども、同じ名前のマルコ二一会社の株を持つていたということだけで、天下に一年半に亘る問題を起したということは政治家として少くとも不謹慎であつた。早くこれを発表すべきであつたと言つた。ロイド・ジヨージは遺憾の意を表しておりますが、そのように法律上にも政治上にも道徳上にも責任のなかつたことでも、これほど厳格なアスクヰスが態度をとつたというところに私は英国の民主主義を支える高い倫理観念を観取するのでありまして、私は民主主義というものはこの高い倫理観念に支えられていなければ続かないと思うのであります。故に私が今お尋ねいたしておることは個個の問題でない。こういう取扱は首相としては非常に重大であると存じますので、今かような余計な例も引いたのでありますが、私はこれは総理大臣の持つておられる民心作興の非常によい機会であると思いますが、これについてなお御意見を伺つておきたいのであります。
  85. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見は謹んで承わります。又先ほど申す通り、事件の真相、全貌がわかつた場合に御希望に副うように善処いたしたいと考えます。私はお話通り、民主政治を守る上から言いましても大切なことで、御意見は服膺いたします。
  86. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 そこで私はもう一つ別の観点からこの汚職の問題をお伺いしておきたいのであります。それは今新聞の論調、或いは巷の声を聞きますと、この問題に対する批判は社会主義政党でない、いわゆる資本主義政党に対して非常に強いのであります。その由つて来たるところを考えてみますと、日本においてはいわゆるインテリ、或いはインテリと言われる階級でなくても、大体においてマルキシズムの公式理論の影響を非常に受けておつて、戦争前においてはロシア以外においてマルキシズムの本が沢山売れた国は日本以外にないと言われるくらいでありますから、そこでこういう問題が起りますときに、起つて来る非常に危険な姿は今日の日本の社会制度全体に対する批判であります。言い換えれば、この事件が起るというのは、社会全体が病気にかかつているのだ、病める社会というのは資本主義社会の持つておる一つの姿であつて、今これは一つ二つの事件ではない、大きな試練に即ち日本の社会的崩壊の前に立つておるというような感じを持つて批判をしていると思うのであります。この点について私は英国の優れた経済学者であるグインズが共産主義を批判した言葉を思い出すのでありますが、クインズは晩年の論文の中で、共産主義というものは経済政策としては百年前の時代遅れのものである、これを実行しているロシア人というものは非常に愚かなものであるとはつきり言つて、けれども我我が非常に気を付けて眺めなければならんのは、レーニンがロシアに与えたのは経済政策じやない、宗教だ、即ちロシア国民の中に宗教的情操を掻き立てたというところに共産主義の強味があるのだから、資本主義社会は曾つてあつたような宗教情操や高い倫理観念をもう一遍とり戻さなければ、経済政策が共産主義のほうが間違つておるからというだけでは非常に危険であるということを、あの優れた経済学者が申しているのでありますが、私は現実を眺めておりまして、非常に危険だと思いますのは、今我々の眼の前にある中国共産党の政府の姿であります。首相も私も若かつた項の学生時代というものは、日本は実におおらかな時代で、我我は何の疑いもなく簡単な人生観を持つて世の中に出て参りました。ところが今我々の眼の前にあります動かすべからざる事実は、経済政策は別としまして、今までは腐敗、堕落した、非常に混濁したと思われた中国の社会に、中国の方法に私は賛成いたしませんけれども、とにかく非常に清潔な内閣、清潔な政府を作ろうといたしておるのであります。これに反して丁度日本が明治維新のときにあつたような高い道徳と理念が却つて日本では衰えている。我々は曾つては、いささか失礼でありますが、眼下に見ておつた満洲朝延のときと違つた政権が中国にできておる。この二つの事実を照らし合せますときに、私は今日の国内における汚職の様相というものは個人の問題を離れていると思うのであります。でありますから、この取扱いについて総理大臣はしばしば道義の高揚ということを言つておられます。衷心そう思つておられるということを私は疑いません。併しながら国民は百聞一見にしかず、百回耳でその言葉を聞くよりも、一回眼でその実践を見たいと思つておる。その実践ということがどういう形であるかということは総理大臣のおきめになる問題でありますが、私はこういう危険な社会思想の行亘つておる今日において、取扱について総理の殊に慎重な御決意を要望するのでありますが、なおこの点について、もう一回御意見を伺つておきたいと思います。
  87. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。事件の全貌がわかりました場合に、よくその全貌に現われました現象の由つて来たるところも研究いたしますが、同時にこれに対する措置については国民が納得の行くような措置をいたすべきであり、納得の行かざる措置をいたすということが禍いを百年に残すゆえんでありまするから、全貌がわかりました場合には、政府は慎重に国民の納得し得るような措置をとりたいと考えております。
  88. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私はこういう問題は抽象的に議論してもいたしかたございませんから、首相の誠意に信頼いたしまして、この問題はこれで打切ります。  第二に私がお伺いしたいのは、日本世界との関係、これは外交の根本でありますが、今日の日本が敗戦の結果、このような状態になりしまして、経済的にも弱く、軍事的にも弱いのでありますから、主体性を失つてしまつた従つて我々が世界の形勢から受ける影響というものは非常に深刻で戦前と全然立場を異にしていると思うのであります。そこで一番日本に影響を持ちますのは、全世界にこの次戦争が起るかどうかという危険な姿であります。総理大臣はしばしば本会議の施政方針演説でも、或いは衆議院の討論の際でも、世界の形勢は緊張緩和した、併しながら冷戦はまだ止まつていない、今日の朝の曾祢さんの質問に対しても、殆んど同様な御答弁であつたようでありますが、繰返すようでありますが、これが非常に大切な問題でありますから、私は総理世界の形勢を御覧になつて、この緊張緩和しているという見通しについての総理の根拠を少し詳しく伺つて見たいと思うのであります。
  89. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、これは畢竟見通しということになり、又自分の偏見と言いますか、好む理論を自然固執することになつて、果してあなたが納得が行かれるかどうか、中正を得たものであるかどうか、私も確信がありませんが、併し私の信ずるところでは、ヨーロツパにおいて、或いは世界において、二度大戦争が行われて、大戦争が行われた後において平和秩序が回復する場合には、それまでには相当の年月を要すると思います。殊に最近の近代戦のごとき大規模な、世界を挙げて、殆んど世界の国として巻き込まれない国はないほどの大戦争が行われた後において、これが秩序を回復するためには相当の時間がかかるということは当然なことであると思います。併しながら人類としてはいずれの人といえども平和を愛好するのであつて、戦争を好む人はありますが、併しながら大体において平和な安寧な生活を求めるということは人類の自然であろうと思いますから、時がかかれば自然に平和の状態に、或いは平和に傾くという、平和的傾向を生ずるということが、又自然であろうと思います。現に終戦後いろいろな事態が起りましたが、漸次ヨーロツパにおきましても、或いは東洋においても、戦争的気分はなくなつて、そうしていわゆる冷戦と言いますか、とにかく平和に一歩近付きつつあるのが現状ではないかと思います。例えばこの間のベルリン会議にしても、その結果は失敗とか、失敗でないとか言いますけれども、とにかく陣営立場が互いに了解をし、又共産主義国といえども戦争がいいとは申しておらないのであります。平和を回復する、或いは平和の事態を持ち来すようにしたいという希望を述べているのでありますから、戦争の主戦論は、いずれの代表者も、外務大臣も申しておらないので、又その結果、ベルリン会議の結果、更に又ジユネーヴ会議が起るとか、会議々々で以て若し時局を収拾することができれば結構であります。直ちに時局収拾とか、平和という理想時代に入るか入らんかは別として、一歩々々近付きつつあるのが人類の天性と申しますか、性質に鑑みて当然な話であり、私はこの人類の一般的傾向から考えて見て、大戦争のあとにおいで漸次平和時代に入るように機運が動きつつある、こう私は確信いたすのであります。
  90. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 先日総理は本会議の質疑の際に、それに対する意見をお述べになつたときに、ソ連の外国に対する政策はその言葉だけでは信用できない、日ソ不可侵条約も無断で破つておるという事実もあると言われておつたのでありますが、今お話ではソ連の外務大臣その他の言動が非常に穏やかになつて来たということも緊張緩和一つの見通しの理由になさつておるようでありますが、そこで私は総理の前のお話と今のが違うということを言うのではないのであります。誰でもこれは見通しが非常にむずかしいが、私は根本的に一つの深刻な問題があると思うのであります。端的に申せば、このだんだん小さくなつておる地球上で、共産主義という制度と資本主義と称せられる或いは非共産主義、共産主義でない国々の制度とが両立できる運命にあるかどうかということに対する見通しが各国の個人及び政治家によつて非常に違うと思うのであります。そこで私は総理にお伺いしたいのでありますが、総理大臣は共産主義という制度と、共産主義にあらざる資本主義及び社会主義制度とは両立し得るというお考えでありますか。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えします。非常に理論的でありますが、併しこれは面立し得る得ないにかかわらず。せしめなければいけないと思います世界の平和のために。又思想が異なるからと言つて喧嘩しなきやならんという理由もないのでありますから、私は資本主義国と共産主義国とは、世界或いは人類のために協調する途を見出すことが両国の政治家のとるべきところであると思い、又私はそう信じます。それで、たとえ主義が違つてつても、やがてその面に一道の共通点を見出して喧嘩せずに済み得るような事態を持ち来すことが政治家の義務であり、又いたすべきものであると確信いたします。
  92. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 実はこのような抽象的なところから御質問を始めましたのは少しわけがあるのであります。それはアメリカとソ連というものの対立が結局世界緊張原因になつておる。従つてソ連側の意見は少数の人がきめますからわかりませんが、アメリカ側の意見は大衆討論の国であるから大体わかる。ところが只今から七年前にアメリカの有力なソ連通が匿名で雑誌「外交」に出しました論文では、ソ連と、即ち共産主義国家と資本主義国家は両立できるという結論でありました。ところがその当時のルーマン内閣の対ソ政策というものがだんだん変つて来たということを私は最近にいろいろな事実から感じるのであります。そこでその変つて来た根本の原因は、結局共産主義国家と資本主義国家と両立できないという悲観的な物の見通しから起つているように思うのであります。そこで総理が今共産主義国家と資本主義国家は両立できないんじやない、平和を愛好する人間の本性によつて話合いができるという明るい見通しをお持ちになつておることは非常に私は喜ぶのでありますが、そこで私はかような抽象的なことを申上げますわけは、第一にソ連とアメリカとの対立、言い換えれば今日厳格な意味において国家と言い得る国は二つしかないと思いますので、このソ連及びアメリカという国の主義に対する理論上の闘争が日本の国内にも入つて来て、それが日本現実の問題に非常に深刻な影響を持つておる。これは今まで日本が主体性を持つておつた世界の五大強国であつたときにはなかつたことであります。従つてこれからあとに伺いたいと思いまする耐乏予算の問題にいたしましても、凡百の問題がこの点から深刻な影響を受けております。今日、日本の国内における大勢の人々の感じにもこれが深く入つておる。実に遺憾なことでありますけれども、それが現実の事実であります。そこで私はこの問題について見遁すことのできないことは、ソ連陣営アメリカ陣宮との間の対立というものが日本で出て参る場合に、一つは親米という名で言われる、一つは親ソ或いは反米という名で言われております。私はこの新米とか反米という文字は、抽象的な文字でなくして、非常に現実的な意味を持つてつて日本の政治経済の具体的な問題に皆結び付いておると思うのであります。そこで今総理の明るい見通しを戦争について伺つたのでありますが、例えば私はアメリカ人が最近日本を観察するときに、例えば最近の新聞に出ておりまする総理大臣とAP記者のモリンとの会見、これは二月二十七日の会見でありますが、その中に、これは総理大臣の意見ではありません、モリンという人がこういうことを申しておるのであります。吉田政府は強く親米的であるが、後継者が同じ線の政策をとるとの保証はない。言い換えれば、日本の政変もすぐアメリカ人は新米とか反米という文字に結び付けておる、これは私は主体性を持つことを希望とする日本としては非常に遺憾なことだと思うのであります。と言うのは、一体親米というのはどういうことか、反米ということはどういうことかということを私はここで国民の前ではつきりさしておきたいと思うのであります。その点で総理大臣に伺いたい。例えば昨日、中田委員質問の中に、総理は向米一辺倒だとかいう言葉かあつた すると総理大臣は半ば冗談のように、そう言われるあなたは向ソ一辺倒だとお答えなつた。私から言えば、これは非常に冗談のようなものでありますが、お二人の言葉のやりとりを遺憾とするのは、こういうことは戦前の日本にはなかつた。我々は一辺倒というような日本の主体性を失つた議論はいたさなかつた。冗談でもこういう字が出るということは日本としては非常に遺憾でありますが、それは一口に言えば、親米という文字に私は非常に混乱があるからだと思います。一体何が親米であるか、何が反米であるかということを私はここではつきりしておかないといろいろな具体的の問題に支障を来たすと思うのでありますが、大変私の質問が長くなつて恐縮でありますが、趣旨を明らかにするために申上げたいのは、アメリカ自身が対ソ政策が非常に変つて来ておるのではないかという点であります、言い換えれば。ルーズベルトが就任しまして以来、死にます十二年一カ月ばかりの間に、彼は一貫して親ソ政策をとつております。ロシア承認に始りヤルタ協定に終つたあの一貫した親ソ政策というものが、只今から七年前項から変つて参りまして、只今は非常に強い反ソ政策になつておる。そうするとこの世界の非常に大きな勢力であるアメリカ日本が親むのが新米だと言いましても、親ソ政策に親しむのか、反共政策と親むかということがすぐ問題になつて参ります。これはこれから一つ一つ具体的に伺いたいと思いますが、これが日本の問題にすぐ結びついて来る。そこでアメリカという国は非常に輿論の激変する国であります。ウィルソンの国際連盟を例にとるまでもなく、非常に激変する国である。そこで日本の新米政策というものが、アメリカのやることなら何でもついて行くという意味であるのか。アメリカの政策の我々の腑に落ちるものはこれに協力するという主体性を持つた、一定の限界を持つた政策であるのかどうかということが、私は日本国民の、いわゆるロシアだけを中心として考え得えない大多数の日本人が知りたいと思う点でありまして、この点で私は総理にお伺いしておきたいのであります。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。中田君を目の前に置いて答えはなかなかむずかしいのでありますが、(笑声)併し戦争以前においても、御承知通りドイツに親しむ親独論者もあり、鶴見君のように親英米論者もありまして、戦前においても外交政策について政治家おのおの見るところを異にいたしておるので、今日親米論があり、反米論があつても怪しむに足りないと思います。それはその国の政治家の主観から考えて或いは親米となり、親英となり、或いは親ソになるわけでありますから、然らば私にとおつしやれば私は親米でもなければ、親ソでもなければ、親日論者であります。日本と利害を同じうする国とは手をとつて行くべきであるが、日本の利益に反してもよその国と一緒に行くという考えは毛頭ございません。これは当然の話であつて、今更縷々申上げる必要はありませんが、少くとも私はそう考えて参りたいと思つております。
  94. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 今総理は、自分は親米でも親ソでもない、親日だとおつしやつて、私は親英米だという烙印を押されては誠に迷惑でありますが、(笑声)私がお尋ねしたいというのは、その点であります。戦前における日本立場は、世界の五大強国の一つで主体性を持つておつたから、その場合にドイツと提携すべしとか、英米と提携すべしということは、対等な資格を持つている。今は残念ながら日本は回復期にある立場でありまして、主体性が非常に弱いのでありますから、戦前における場合とは違うというのが私の論点の一つであります。それから今度アメリカ人が日本人を見る場合に言つておる親米というのは、何でもかんでもアメリカの言うことに追従するようなのを親米と言つてつてアメリカのやつておることで腑に落ちない点を批判する、或る場合には反対する、即ちアメリカの文化と伝統には十分に尊敬と好意を持つけれども、そのときどきのアメリカの政策にはことごとく同調できないという立場をとる人、気の小さいところの外国人は反米と言つておるのであります。その場合に、今総理大臣のおつしやつた親日であるということは、日本の主体性を守つて行こうという御議論と思うのでありますが、併し外国の通信記者は、贔屓の引倒しかも知れないけれども、吉田首相が一番親米的な政治家であると極印を押しておる。つまり親米という言葉の意味があいまいであるからだと思うのであります。そこで私がこういうことを申すのは、一夜漬の親米論者が出て来て、本当にアメリカの文化と或いはアメリカの建国の伝統に理解もなしにそのときどきの経済上の利益であるからといつてアメリカと一緒になり、或いはアメリカと一緒になつたほうが政権に近付くのに便利であるからというような立場から行われることは、私は主体性を尊重する日本人として実に遺憾なことであると思うのでありまして、たとえそれがためにアメリカのほうから、この人間はアメリカ反対の意見を持つておると思われても、乗切るだけの意気込みが日本の中になくては、私は非常に危険だと思う。そこで今総理大臣のおつしやつた親日ということは、そういう意味だと思うのでありますが、そこで私はどういう点まで一体日本アメリカと同調できるかということをこれから具体的に伺いたいのであります。  例えば、御承知のように、私よりも十分御承知のように、イギリス立場が非常に明白であります。ヤルタ協定のときにチャーチルは非常に嫌つた。そしてイーデンはどうしてもこれを調印なさるなと最後までチャーチルに言つたけれども、チャーチルは到頭調印したというような事実が今発表されております。即らそこに私は英国の主体性があると思う。あれだけ切つても切れない関係にある英国でも、ルーズヴェルト大統領の親ソ政策は行過ぎだということを考える場合には、敢然としてこれに反対するというだけの気持を持つておるところに、私は英国の政治の主体性があると思うのであります。そこで私がここで具体的にお尋ねをしたいと思うことは、例えば最近にニクソン副大統領が参りまして、日本の憲法をああいうふうにきめたのは、当時の国際情勢を見て我々が考えたことであつて、今日は非常に違うということを声明しておるのであります。即ちアメリカ人自身も当時の日本に対する政策と、今日では全然違つておるということを副大統領自身が言つておる。それはどこにあるか副大統領は言つておられない。私は総理大臣のような責任の位置にないからはつきり申していいと思う。即ち当時のアメリカの意見は、私は一昨年フーヴアー前大統領にお目にかかつたときも、フーヴア一前大統領ははつきり言つておられるが、フーヴアー氏は、自分は日米戦争に反対であつた、何となれば日本を弱くすることは、東洋をソ連に引渡すことになるから反対をし、戦争中も反対をしルーズヴェルトが死んでトルーマンになつたときに、私にトルーマンが来てくれと言つたから行つた、そして早く日本と講和をなさい、そうしなければ日本を弱くすることになる、東洋をソ連に引渡すことになるから危険だと、こういう意見を話したと言つておりましたけれども、それは当時の日本の占領政策は、我々は裏を引つくり返して見ればわかるのであります。あの当時のアメリカ考え方と今日の考え方とは違つておる。あの当時はあの憲法はどうしてもこれは日本に引受けろと言われたに違いないと思う。それは総理大臣としては答弁は要りませんが。それであの結果、当時の日本の国民感情としては非常に意外な憲法を我我は引受けた。最近において、今度アメリカの副大統領が出て来て、あの当時の考えは違うから、今日はそう思つていないと思われるから、それを聞くと、今度は日本のもう一度憲法を改正しましようというようなことは、私は日本の主体性を余り軽く見ているものだと思うのであります。  そこでいろいろな細かい法律論を必要としない。今日の日本国際情勢から見ましても、或る程度の日本の国内の軍備は必要でありますけれども、或いは真実であるかどうか存じませんが、一切軍備を持つてはいけないと前に言つて置きながら、今度は三十二万余の軍隊を持てということを言つたかどうか知りませんが、頻りに伝えられている。これは非常な変化である。その場合にアメリカが言いさえすれば、一人の兵隊も持たぬ、アメリカが持てというから三十二万持つというようなことになるのか。私はそれが果して親米なのか。そこには日本として限界があるのではないか。一つ一つの問題でかように思うのであります。MSA協定は今日午後調印ということでありますが、それについても、日本国民がこれについて一つの心配をしているのは、どこまでずるずると引摺られるかということであつて只今総理大臣は自分は親米ではありません、親日だとおつしやつたので、私は非常に気を強うするのですが、その立場からいつて只今私が申上げておりますようにアメリカの対ソ政策が変つて来た。その結果、対日政策が変つて来ている。どこまでもついて行くかどうかという問題をお尋ねしているのです。
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。憲法の規定、例えば軍備の問題について、第九条か置かれたと、これはその由来は、淵源はとにかくといたしまして、当時の日本としては、これは日本として決して不利な条項でなかつたと私は思います。日本において、日本にとつて適当なりと考えたので我我は賛成いたしたのでありますが、当時御承知通り日本という国は平和に害のある国だ、ピースにハームする国である、交戦を好む国であるという日本に対する考え方は、東洋は勿論のことでありますが、殆んど行渡つてつたのであります。そのときに憲法九条のごとき条章を設けるということを私は適当であると、今なお考えております。然らば今後は如何。これは今後の努力によりますが、現在といえども国力が独立した戦力を持つた軍隊などを持つようなまだ時に立至つておらないのであります。故に、仮にアメリカが三十二万ですか、兵隊を持てと言つたところで我々はこれに対して応ずることはできないと、又すべき問題でないと考えております。故にアメリカ側がどう言つたから、アメリカがこうしろと言つたからと言つて、親日論では私としては、直ちにこれに盲従することはできない、そういう考えで、進んで参りたいと思つております。
  96. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 責任ある総理大臣としてこれ以上この問題をはつきり言つて頂きたいと言つても無理でありましよう。けれども、私としてはただ一つ附加えて置きたい。それは何であるかというと、例えば昨年の選挙の際に、アメリカから将来も朝鮮の特需はやめたいのだというような声明が出ております。その出たのを日本から頼んだとかどうだとかいうことを私は言うのではない。声明が出たということは事実であります。それは実に機微に亘る総選挙の前に出て来ておるということは、これは私は非常に重大な問題であると思うのであります。なぜかと言えば、総理大臣もよく御存じのように、大正十三年に日本の埴原大使は、重大な結果という文字を使つただけで、表はそうなつておりませんが、実際は日本に帰らなければならなかつた。即ちアメリカの当時の言い分は、内政干渉だ、こう言つたのであります。毛頭その意思はなかつたことは明白であります。ところが昨年のアメリカの声明といい、或いノーランド議員がこの前羽田に、降りたときの声明といい、直接日本の国内政治に関係あることをあけすけと言つておるのであります。地を変えて日本人が若しアメリカに参りましてこういう言動をいたしたら絶対に承服しないアメリカである。然るに日本においてはこういうことをぬけぬけと言われても、今日これに対して本当の批判が起つて来ない。起つてはいます。起つてはいますけれども、それは一口に言えば、今までアメリカ嫌いの人が言つているんだといつたような感がありますが、私は総理大臣の親英米というレツテルはお返しいたしますが、とにかくアメリカに対して反感を持つていない人間である。けれども、私はああいうアメリカ立場に対しては賛成をいたしかねる。それだけの自主性日本が持たない限りは、この大事な時に日本の本当の独立ということは困難だと思います。これは総理大臣から否定も肯定もむずかしいでしようが、抽象的に、一口御意見を伺つておきたい。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 特需云々ということは、これは政府関係しないことでございます。お願いいたしたわけでもなければ、その当時の事情、いきさつをよく覚えておりませんが、私の記憶として、当時こういう声明を出して頂きたいといつたこともなければ、その声明に対して抗議を申したことはございません。これはアメリカが自主的に言つたことであり、我々は自主的に聞いただけのことであると御承知を願いたいと思います。ノーランドが何と言つたか、これはちよつと私は記憶がございませんが、いずれにしても日本独立した以上は、自主的精神を守り、又自主的政策を持つことは当然であります。自主的に日本政府の政策を遂行いたす決心でおります。
  98. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 ちよつと総理大臣は私の言つたことをお聞き違いのようですが、私は向うからの特需云々の言葉はこつちからどう仕掛をしたということを言つておるのではないとお断りしたのです。そういうことを言われた場合に、地を変えてアメリカならば黙つておりません。日本だからあれを黙つていたということは、日本の主体性の、独立の気魂に私は遺憾の点があるということを申上げたのであります。これは余り長くなりますからよろしいのであります。これで問題は次に移りたいと思います。  第三に私がお伺いしたいと思うのは、国内問題であります。それは今回の予算であります。この世間で言う耐乏予算というものを政府が議会に提出されるに当つては、首相は非常な決心を持つて提出されましたことは、一月二十七日、本院の本会議における施政方針の中でこういうことを言つておられるので明らかであります。「インフレーシヨンによる悪循環が堰を切つて奔流するに至れば、それは直ちに日本経済の崩壊であるのであります。」、これは非常に重大な声明であります。言い換えれば、これは背水の陣である。この線が一たび破れれは日本経済は崩壊する、そういう表現であります。言い換えれば、経済が崩壊すれば社会機構が動揺をして、或いは非常な不祥な状態になるかも知れんということを政府は、首相が言つておられるのであります。それではこれだけ背水の陣を布いてこの予算をお出しになつた、これが果して実行できるのかどうかということについて国民は非常な疑いを持つております。例えば大蔵大臣は、今おられませんが、大蔵大臣は、物価は下る、五分か一割下る、こう言つておられます。これについて現に生活必需品の小売相場がだんだん上つておる。従つてこれは果して実行できるかどうか、国論は一定しておらない。むしろ悲観論が非常に多いと私は思う。或いは日本の対外貿易を有利にするために我々は生活を切り詰めて行かなければならん、その通りでありますけれども、対外貿易の基礎としての日本の円と外国のドルとの関係は、折角十三億ドルまでも打つてつたのが、だんだんにこれがなくなつて来ている。今八億ドルということでありますが、どんどん減る傾向であり、而も三百六十円というこの価値が維持できるかどうかも非常に疑わしい。現に本当の日本の円はもう三百六十円をとうに割つているのではないかと思われる。ブラジルでもアメリカに引渡すときに四百円で引渡しており、街の中の闇相場では五百円に近付いておるというのでありますから、これに対する国民の不安というものは非常であり、又外国人も、日本の円に対する信用は非常に不安である。言い換えれば、総理大臣がそれたけの決心を持つて、この一線で日本の崩壊を食いとめるのだと言つておやりになつたこの耐乏予算が、果して実行できるかどうかについては非常な疑いがあると思うのであります。そこで私がここに伺いたいのは、これたけの耐乏予算をお出しになつて、最後の線として行こうというおつもりであるならば、もつと悲壮な決意を持つてこれを闡明されなければならない。ただ言葉だけではできません。私は個人の生活を一つ一つ拾い上げて言うということを申しておるのではありませんけれども、物価政策に一番深い関係のある労働政策にしてみましても、だんだんと労働者、組織労働者或いは経営者との間の話がつかないということになれば、賃金が上るか、ストライキが起る、物価政策は根本から崩れて行く。どうやつて総理大臣は、それでは労働組合と今日のあなたの内閣とはこの耐乏予算を実行するために協力して行けるという御確信がおありになりますか。又具体的な策がおありになりますか。即ち一つ一つつて行きましても、この耐之予算というものを実行することは非常に困難である。私が心配するのは、今大蔵大臣がおられませんけれども、これはきつとどうしてもこの夏か秋には補正予算が出る危険がある。そうすれば総理大臣のおつしやるように、日本の経済機構が崩壊する危険があるのでありますから、そこで私の申上げておることは、国民の精神をこの予算に総動員なさるというお気持でなければ、これはなかなか実行できない。そのためには私はサー・スタツフォード・クリップスのように、あのイギリスの大蔵大臣が耐乏生活をやつたために到頭死んでおります。それだけ悲壮な決心があれはあれだけの成果も上るのでございます。これは私は総理大臣がこれを実行して日本の最後の線を守るというならば、その悲壮なあなたのお考え方が国民に徹しなければならん、かように思うのであります。総理大臣はいろいろ耐乏生活は私生活の問題だと言うと非常にお怒りになつて、私生活に批評は自由だとおつしやるが、そういうことではない。あなたがサンフランシスの平和条約を結びにおいでになつたときに、お好きなシガーをおやめになつた、それで何もサンフランシスコの条約に関係はないようですけれども、その気持はすぐ国民に移るのであります。でありますから、決して私は総理大臣個人のことをかれこれ申上げるのではないので、この一線が破れたらあとどうなるかということを考えてみる場合に、どうしても私は国民の精神を総動員なさる必要がある。それは方法がありましようか。そこで私が今大蔵大臣がおられませんが、細かいことを総理大臣にお尋ねしなくもよろしいのであります。この危険な様相を争んでおる今日、あなたはこの耐乏予算を必ずやり遂げるという強い決心をお持ちになつていると思いますが、それをもつと具体的に伺いたい。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 具体的に私がお話をいたしてもあなたの納得は得られないと思いますから、ただ抽象論、心がまえを申します、只今物価が上つたと、或いは上りつつある、そのために輸入が激増しておる。或いは円の価値がだんだん下つておる。これは一時の現象として止むを得ないことと考えるのは、この予算を実行いたせば、自然輸入はますます制限いたさざるを得ないと思います。又生産方面においても同じようなことであつて、資本を自由に融通するということも、自然金融の引締めということも生じましようから、業者としては、或いは又輸入業者として、この際一時の激増といいますか、輸入増ということの現象の生ずることも、将来において輸入減ということがあることを見越して、当然の結果であると私は思うのであります。でありますから、この一時の現象を以てこの予算実行は不可能なりと断言せられることは少し酷ではないかと思いますが、そこでどうせ第二次補正予算を組まなければならないじやないかとおつしやいますが、これは断じて組まないつもりでおります。又組まないために用意いたさせております。  それから又国民の精神を総動員してと申しますが、これは抽象論であつて、私としては政府予算実行の上から、若し国民の協力を得るならば、理解を得るならば、自然そこで国民の総意が総動員せられるはずと私は思うのであります。これは安易な考え方というお考えがあるかも知れませんが、政策面において緊縮をいたしておけば、自然その緊張は国民の日常の生活にも及び、又国民の理解を得ることになると私は希望もし、考えてもおります。
  100. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私が国民の精神を総動員したらどうかと申上げたことは、決して抽象的に申しておるのではないのでありまして、これから私の考えを申上げます。それは我々の記憶にもまだ新らしいことでありますが、戦争中我々は随分苦しい生活をいたしました。けれども国民はついて来た。それはなぜかというと、あるときは間違つた宣伝ではあつたけれども、日本国民はこの一戦で勝とう、負けてはならんという一つの国民目標をはつきり時の指導者が示していた。それであれだけの無理な困難に而えて生活をいたしました。そこで今度の、これだけの決心を持つて予算をお出しになるについて、国民精神を総動員しろということは、私は演説をして廻れということを申上げておるのではないのです。非常に今の日本は暗いのです。汚職の問題にいたしましても、生活の苦しい問題にいたしましても、アメリカとの関係にしましても、朝鮮でも、皆暗い。でありますから、この暗い先の知れないようなところに、もう一遍こんな苦しい、生活を切詰めろと言うだけでは国民はついて来られない。何かここに明るい国民に目標を与えなければならん。その目標は何かというと、私は物価を切下げて、外国貿易でドルをたくさん稼いでおるのだという、金の問題だけでは国民はついて来ないと思う。ここに私が申上げたいことは、さつきの対外政策と牽連があるのでありまして、これをやらなければ日本の本当の自由と独立は獲得できないのだ。だからもう一遍我々が講和条約発効後僅かに二年ですが、これから名実共に独立の国になるために、戦争中にやつたような苦労をして独立の国になりましよう。我々は親米というような、何でもついて行くというような考えは持つていない。だから八千七百万の国民を持つた依然として世界の大国である日本が立直るために、辛抱しましようという一つの国民目標をお出しになつたらいい。そうすれは国民は戦争中あれだけ苦労してもついて来たのでありますから、私は国民は新らしい明るい希望をお与えになればついて来る。私は物価高とか、対外貿易というだけでは、なかなかついて来られない、こういうことを申しておるのでありますが、そこで私はさつきの対米問題を申上げたわけなんであります。総理大臣からここではつきりと、一方においては、自分はアメリカに追従しているわけじやないと言われる。それを実際にお示しになつて頂きたい。一方においては、我々はこれによつて、国内においては本当の民族の独立と自由をかち取るのだ。個人の自由をかち取る運動たけが民主主義の根本であり、自由主義ではない。我々は本当に民族の独立をもう一遍から取らなければいけない。それ以上私は例は申しません。我々の近所にある国のようなものにはするのじやないのだという気魄を我々は持つて、明白な国民目標をお示しになるということでなければ、この苦しい予算は私はなかなか実行できない。そしてクリツブスのように、一人、二人、内閣の人が非常な苦労をして自分の身体を捧げるというようなことがわかつて来れは、これは日本人はついて参ります。それを私は伺つておるのであります。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、これは私の只今申したことと、あなたの申したことは、表現の仕方は違いますが、裏表をなすものである、同じことを申しておるものと考えます。即ち日本の現在においては、この耐乏予算を組んで行かなければ、日本独立再建の基礎が立たないということを示すために、或いは又その極意で以て耐乏予算を組んでおり、その趣意は常に申しておる通りであります。又申さなくても、国民は私は理解しておる今日日本の現状であろう。国際収支から言つてみましても、或いは産業の状態から申しても、志ある者、考えのある人は当然わかることであり、我々が言わなくても国民がこの際において耐乏生活をなし、或いは国の再建のために、忍ぶべきものは忍ばなければならんという心がまえが、私は国民においては、申さなくてもわかつていることではないかと考えます。
  102. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 水掛論のような話でありますが、私が汚職の問題をお伺いした趣旨も、対米外交をお尋ねした趣旨も、耐乏予算についてお尋ねしておることも同じなんでありまして、汚職の取扱について、国民が成るほど高い倫理観念に従つて行動をしたということになれは、耐乏予算に対する反対考えはなくなります。現に、今日のような腐敗した役人に使われる金を出すのはいやだと言つて、金は出すけれども、租税はいやだと言つて、供託運動すら起ろうというのでありますから、そういう国民心理の間隙をなくなすためには、この汚職の問題の取扱を、先ほど申上げたように高い倫理観念からやつて頂きたいということが一連した私の言い方でありまして、総理大臣が今お話なつたことは、同じことだとおつしやるけれども、私はどうも国民がはつきりと理解するような形で出ていないと心配をいたします。これは申上げても水掛論ですから、ただ私がそういう考えを持つておる。総理も大体趣旨は同感だと言われるなら、更に一歩を進めて、この問題のために挺身して頂きたいと思うのであります。  そこで私は時間も大分ございませんから、第四番目に伺いたいのであります。それは政局の安定ということであります。総理大臣は今日の政局は安定しておるのであるとお考えになりますか、如何でありますか。又どちらのお答えにしても、その理由を同時に御説明頂きたい。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、必ずしも安定しておるとは考えません。故に安定するように持つて行きたいと考えております。(笑声)
  104. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それでは、どうやつたら安定するかということのお話がなかつたのですから、私から具体的に伺います。総理大臣は、政局の安定というものは、議会内の頭数を揃えるだけでできるとお考えになつておるか、如何でございますか。
  105. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはお答えをするのに余りに単純な問題であつて、誰も国会において頭数が揃つたからといつて政界安定なりという人はないだろうと思います。問題は国会内の問題でありますが、同時に国民一般の問題であります。国民の同調を得ない限りは、国民の理解を得ない限りは、政界は安定しないと申すことは当然であるであろうと思います。
  106. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それで結構なんであります。(笑声)私はこの日本におる政局安定論というものが、往々にして議会内の頭数さえ揃えは安定するというような議論があるのであります。総理大臣は先日の衆議院における予算の採決が三百三対百四十三でありましたか、それで非常に御機嫌がよかつたように写真も新聞で拝見しましたが、それは数による安定でありますが、今のお話によると、それでは本当の安定はしないのだ、つまり議会の頭数と国民全体の気持がぴつたり一致しておるときでなければ安定しないのだというお考え承知いたします。それでは私伺いたい。原敬氏は総理大臣の時に、長く内閣が続くからといつてやめろと言つたときに、政府は隠謀では倒れないということをしばしば言つた。言い換えれば、それを逆に引つくり返えせば、内閣が危くなつたときに、陰謀で維持しようとはしないということであります。それは何であるかと言えば、民主主義の原則に従つて国民の投票を得て出た政治家は、国民の命令の通りに動くという原則を守らなければ、その政権は安定しないということだと私は思うのであります。そこで私は具体的に伺いたい。私はこの議会政治というものは、健全なる反体党があつて初めて運用できると考えるのでありまして、恐らくは総理大臣はこれに御同感であると思うのであります。何となれは、一国が一つの有カなる政党だけでやつて行くということは、全体主義的なフアツシヨの思想に連なるものであつて、議会政治のような、こんな面倒臭い手間のかかる政治をいたすのは、一方には健全なる政府党があつて政策を実行し、他方においては健全にして強力なる在野党があつてこれを批判して、いつでも代れるという状態にあるときに一番政局は安定しておると思うのでありますが、如何でありますか。
  107. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御同感であります。
  108. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それで結構です。そこで総理大臣が第二次吉田内閣をお作りになる時に、こういうことをおつしやつております。自分は社会党を育成するのだと、育成という字は不思議な字ですが、私は表現を咎めるのではない。それは只今の御答弁の裏書をするので、恐くらはそういうおつもりであつたと思う。健全なる在野党を必要とするという御意見であつたと思うのですが、そこで伺いたいのは、今日もそう思つておられるかということです。(笑声)
  109. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。曾つて私がうつかり育成という字を使つたために反対党から大分攻撃を受けましたから、とうの昔に育成という字は取消したつもりでおります。併しながら健全なる反対党のあることは、議院政治を行う上において必要と今なお考えております。
  110. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それでは総理大臣が、私は育成という字を言つておるのではないのであります。総理大臣が健全なる在野党のあることが本当の政局を安定させるのだというお考えでありますならば、一体それは総理大臣のお考えは、社会党が健全なる在野党として存在することを希望されるのですか。改進党が健全なる在野党として存在することを希望するのですか。(笑声)
  111. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私が反対党を指名いたすことは危険でありますから、差控えさして頂きます。(笑声)
  112. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それで私は総理大臣のお気持がわかりました。つまり総理大臣ははつきりと在野党というものについてのお考えをきめておいでにならないと思うのであります。或いはきめておられても今言わないのかも知れないが、少くとも今表現の形においてはおきめになつておらない。そこに私は政界の今日昏迷があると思うのであります。一体今日こういう情勢になりまして、大体ならば立憲政治の本義に従えば、今まであれだけの自由放任の経済政策をおとりになつて、今年から手の裏を返すように耐乏予算というものをお出しになる、言い換えれば、今までのやり方ではいけなかつたのだということを自分でお認めになるのですから、政策の行詰りとして、内閣をほかにお渡しになるということは、少くともよその国では常識であるけれども、総理大臣はいろいろ御説明があります。一応これについては私は押問答しないけれども、ここで今日の日本の政界の昏迷は、ややもすると投票によつて選出されたる議院が当選後に、その時の便宜に従つて動くということから来ていると思う。私が在野党云々ということを申上げたのは、抽象論として申上げているのじやない。この日本の政治史を新たに書き直すような重大な時期に当つて、五年も永く政局を担当された総理大臣としては、立派に民主主義を軌道に乗せて行きたいというお考えをお持ちになつているに違いないと思うのです。それには私は本当の健全な在野党と政府党が火花の出るような正正堂々たる討論を国民の面前で戦わすということが政治の真髄であつて、僅かばかりの人が当選後に党籍を変えて、それを国民が黙視するというような状態が習慣になれば、本当の民主主義は行われませんから、今総理大臣に、どれが健全なる在野党かということを私がお伺いしたのは、笑い話として伺つたのではないので、どうしてもあなたの大きな御責任は、汚職の問題についても、対外政策についても、又耐乏予算の実行についても、結局するところ、この問題について意見の違うものは、議会の中で、国民の前で、はつきりとその意見を戦わして、政局の転換をしなければならない。頭数の揃つた多数見だけで、決してどこの国でも議会は安定しないことはわかり切つておりますから、私はここで総理大臣が、健全なる在野党がたとえ少数であつても、それが国民の輿望を担つているという場合には、それに政権が移るような民主主義の軌道にここにお乗せ頂きたいと思うのですが、これは余り抽象的ではないのでありますから、お答えを頂きたいと思います。
  113. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話は抽象的でないとおつしやるけれども、私には抽象的のように聞えます。何となれは、健全な反対党は私の考えとかによつてできるものではなくして、自然に政界の間から生まるべきものであり、或る一党に対する反対意見、反対政策を持つていることによつて反対党ができるので、私が反対党を製造するということはできないことであり、自然の成り行きに任すよりいたし方ないと思います。併しながら御趣旨は私も賛成でありますが、私に作れとおつしやつても、これはできないことをはつきり申上げます。
  114. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 どうも総理大臣は私の申していることを故意か或いはまじめに誤解されておりますが、私か育成という字を言つたために、総理大臣はそういう誤解をなさつたと思いますが、総理大臣反対党を作るように世話をしてくれと私は話しているのじやないのであります。票決されたる国民の審判外の方法で議員が議席を変えるということが日本の民主主義の原則を暗くするのであつて、そういうことはしないということが一つ。そうして、たとえ自分とは非常に政策が違つても、それが国民の選出したる健全な在野党である場合に、自分の政策の行詰りのときに、それに渡して行くという原則を御自分で実践されるということを私は申しているので、反対党をあなたに作つて頂きたいということを申しているのではないのであります。もう一遍お答え願いたい。
  115. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、どこの国でも総選挙後において議院が党籍を変更することはあり得るわけで、日本だけこれを禁ずるということは如何なものかと思います。  又、私に反対党を製造せよとおつしやるのでなければ、私において非常に仕合せであります。おつしやつても、できないことはできないと申上けるよりほか仕方がないと思います。
  116. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私の伺つている要点をちつともお答え頂かないのであります。私か申していることは、どこの国でも非常に僅かの人が党籍を変えるということはあります。けれども、日本のように常習的にそういうことをするということは、非常によき民主主議の国ではないということと、及び反対党を作るとか作らぬとかいうことを私は申しているのじやない。本当の立憲政治の常道が今日の日本で実行されるのだ、それ以外の方法で政局は転換しないのだ、こういうことが明らかになることが今日の日本国民の心持を非常に明るくする。それだけを私はただ申上げて、その原則をお立てなさい。そのために努力して頂きたい。それをただ申上げておるので、反対党を作つて頂きたいと言つておるのじやありません。
  117. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見のような政界の分布が自然にできることについては私も決して反対いたすものではございません。
  118. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 幾らお尋ねしても総理大臣はどうも非常に議会の答弁がお慣れになりまして、簡単不明瞭な表現の極意に入つておられますから、これ以上お尋ねしても御答弁は得られないと思いますが、とにかく私は強くそういうことを考えておる国民の声をこの議会を通して申しげたということで、残念ながら時間が参りましたから私の質問はこれで終りますが、なお静かにお考えおきを頂きたいと思います。これで私の質問は終りました。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 御承知のように今日の午後MSA協定が調印せられるということであります。MSA再軍備の犠牲として、耐乏生活が国民に要請されているわけでありますが、而も又只今鶴見氏も指摘されましたように、日本の経済は重大な危機に直面している。インフレーシヨンが阻止できなければ、日本の経済は崩壊するかも知れない。こういう重大な局面に直面しているわけです。こういうときに汚職が起つている。疑獄が起つている。私は国民に総理が耐乏等活を要請されるだけに、汚職の問題は徹底的に究明されなければならないと思います。あいまいにすることはできない。特にその責任を明らかにし、汚職の起る根本の原因を究めて、これの対して徹底的な対策を講ずる必要があると思うのです。私は個人としては他人の欠点や失敗を指摘してあばくことは好まない性質でありますし、その柄でもないのでありますが、それにもかかわらず、この前第十六国会において、私はあえて外航船舶建造利子補給についてスキャンダルがある、汚職がある。こういうことを指摘いたしましたのは、私は今後においてそういう汚職をなくさなければいけないという意味で言つたのでありまして、過去は問わない、今後汚職をなくさなければいかんという意味で私は一つは警告を発した意味で言つたのであります。ところがその後において汚職が起つているわけです。疑獄が起つている。第九次船について起つている。又これから私はあとで保安庁関係において重大な疑獄が起ろうとしておると思うのであります。それも、私がこの前に指摘した後において起つておる。中川という料亭でどんちやん騒ぎをやつたり何かしていることは、昨年の第十六国会で指摘した以後において起つておるのです。従いまして今国民は国民の血税を、私腹を肥やすために官吏や政党人や財界人が国民の血税を材料にして、それを私腹を肥やすために使つておることを概激しておることは、鶴見氏も指摘した通り。私は違つた意味でこの前あれだけ明らかに具体的に警告を発したにもかかわらず、その後においてまだ汚職がやまない。疑獄がやまない。従つて私は重ねて総理にこの際この汚職、疑獄の責任についてどう感じておられるか、そうしてこの責任をどういうふうにして明らかにされるか、私は総理ばかりでなく、これは各閣僚のかたがたに皆関係のあることでありますので、ほかの閣僚のかたにも伺いたいのですが、先ず総理に私はこの汚職の責任をどう感じているか、又これを如何に明らかにされるかということを他の議員も質問されましたが、私はそれに対して総理の御答弁には不満足でありますので、重ねて又お伺いいたしたいのであります。
  120. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 同じ質問に対しては同じ答弁をいたさなければならないのであります。事態の全貌が明らかになつた場合に政府は適当と考える処置をいたして、国民の納得の行くような処置をいたします。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 副総理に伺いたい。副総理はどういうふうにお考えになりますか
  122. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 総理と同様の考えを持つております。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はこれはあとで又大蔵大臣に具体的にお伺いすることがありますので、お伺いしておきます。
  124. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 内閣総理大臣答弁通りでございます。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 犬養法務大臣にお伺いいたします。
  126. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 汚職問題の捜査摘発は、私の直接の役所の仕事でございますから、いやしくも国民の疑惑の起らないようにまじめにこの任を果したいと存じております。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 愛知通産大臣は。
  128. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。総理大臣から御答弁いたしました通りでございます。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣に伺います。
  130. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 特に違つた意見はございません。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はわざわざ非常に失礼のような伺い方をしたのでありますが、これから私は具体的にこの汚職についての責任は殆んど全閣僚にあると思われますので、私は一々聞いたのであります。またここに出席しておられない閣僚諸君もおられますが、実はもう一人々々これは伺わなければならないのであります。私は各閣僚諸氏に対して無礼に亘るような質問の仕方をするかも知れませんが、それは総理の言われたことを確認する意味で、一々子供らしいことをするようでありますが、実はこれからの質問を聞いて頂ければ、その意図するところはわかつて頂けると思われますので、その点まあ御了承願いたいと思うのであります。  そこで総理にお伺いしたいことは、この疑獄、汚職の根本の原因はどこにあるか、責任を明らかにするためには、その根本の原因が一体どこにあるかということが究明され、そうしてその原因に対して対策を講ずることが責任を明らかにする途であると思うのであります。従いまして総理はこの汚職、疑獄の原因の、よつて来たる原因はどういうところにあるとお考えでありますか。又それを汚職、疑獄が起つた後において検討されましたかどうか。この点についてお伺いしたい。
  132. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 事態の真相がわからない限りは、この点についてはお答えはできにません。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 事態の真相がわかるのが一年、二年の仮に後であつたものとする、その根本の原因は厳然として今存しておるとします。そうしたら汚職は徹底的にこれは一掃することはできないわけです。只今の御答弁ではこんなに国民が憤激しておる重大な問題について、その根本原因に対して検討されてない。そういうことになると思うのです。  私はこの根本の原因は大体五つあると思う。その第一は吉田内閣の秘密的な或いは又嘘の政治、ごまかしの政治、ここに私はあると思う。実はこれは国民一般のモラルの低下、道義心の低下ということになつていると思うのです。これを具体的に申上げればこれまでの国会答弁で明らかであります。憲法に違反してそうして軍隊であるのを軍隊でないと言つたり、又MSA再軍備につきましても、アメリカから要請されておることは明らかなのに、あたかも日本みずからが作つているがごとく見せかけて、或いは予算についてもこれはやはり自主的に作つたように言われておりますが、私はそうでないと思う。又一兆円予算と言いながら実は一兆円予算ではない。又財政法に違反した予算の組み方をやつておる。アメリカからの要請を隠すために、アメリカの要請その通りを国民に伝えれば日本独立していない、アメリカの植民地化しておるという印象を与えると困るから、総理アメリカに代つてそれを弁護しておるという形、これは言葉は違いますが、私はむき出しに言いますが、先ほど鶴見さんがやわらかい言葉で言われたのです。そういうごまかしにある、嘘の政治と秘密の政治とごまかしが……。ここにモラルの低下が起つておる。私はここに一つの大きなモラル低下、これが一つの汚職の大きな原因になつておると思う。  それから第二は財政の紊乱、これは財政法に違反した予算の組み方をしており、又予算で組まれたその予算を使わないで放つてある。財政の紊乱は極まつています。あとで具体的に大蔵大臣に伺いますが、財政の紊乱にある。  第三は計画造船、計画造船そのものにある。これは政党人や官僚や財界人の、国民の血税は私腹を肥やす道具になつておる。そういうことになつて計画造船そのものを検討しなきややならん。  第四は開発銀行の機構であります。開発銀行の機構は汚職を起すような機構になつておる。第二の復金になるような機構になつておるのです。これを根本的に検討しなきやならん。こういうところに原因があると思う。  第五は申すまでもなく人にあるわけです。汚職を犯すような人が保守党のかたにたくさんある。これは国民にも責任があるのです。そういう人を選挙するからこういうことになるのでありますが、特に遺憾なことは保守党の諸君にある。いわゆる利潤追求、これを念願としておるそういうところの諸君にあるのです。人間にある。私はこの五つの点にあると思う。  そこでこの五つの点についてこれから具体的に御質問したいのであります。  時間がございませんから重要な点について伺いますが、総理は先ほど耐乏については個人の生活について干渉することはよくないといおういことを言つておりましたが、私は国民に耐乏を要求するときに、総理に率先して耐乏の範を示さなければなりませんが、これは先ほど鶴見氏も指摘されましたが、公の立場において総理は耐乏を裏切るようなことをしておられますが、ての点について総理は反省される必要はないかと、この点お伺いしたい。
  134. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の私生活についてはお答えいたしません。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私生活ではありません。公を言つておるのであります。(「答弁答弁」「委員長答弁やらせい」「委員長答弁させなさい」と呼ぶ者あり)公の点について。
  136. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君、御答弁ありませんが。(「公の立場で返事せい。私生活ではない」と呼ぶ者あり)御答弁ないですから……。(「国会に黙秘権はないぞ」と呼ぶ者あり。笑声)
  137. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の公の問題について耐乏の余地はありません。
  138. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は今度の予算を御覧になつておわかりだと思うのです。総理のお使いになる官房の予算はどうでございますか。これは殖えておるじやありませんか。内閣官房の予算は交際費が五百万円も殖えております。庁費が二百九万円も殖えておりますね。又各所修繕費が百六十三万円も殖えております。全体として七百六十九万円も殖えておるのです。私は細かいことは言いたくないのでありますが、実は一兆円の耐乏予算を組むときに、先ほど鶴見氏が指摘されたように、これは重大な覚悟が必要である。やはり総理が率先して範を示さなければならん、こういう議論が出たときに、これは名前を申上げるとその人馘になるかも知れませんから言いませんが、大蔵省の見地から見て、内閣官房において現在のような予算のルーズな使い力をやつていて、その人がどうして国民に耐乏を説く資格があるか、こういう議論が出たやに聞いておるのであります。  で私はこの予算書を見れば官房の予算、交際費が五百万円も殖えておる。これは私的の生活じやございません。公のことであつて、国民に耐乏を要求するときに五百万円も交際費が殖えるということは重大な問題です。これは、(「そうだ」と呼ぶ者あり)会社に対しても交際費を、これを課税の対象にしようとして自粛を求めようとしておつたのじやないですか。この点について総理は反省される必要はないのでありますか。
  139. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 御承知のように渉外関係が非常に頻繁になつて参りましたので、内閣の官房の交際費五百万円殖やしたのはその通りでございます。
  140. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その交際費ばかりじやありません。もつと詳しく内容を……。ほかのものも植えているのです、庁費なりその他……。ほかのほうは減つているのに官房の予算がこんなに植えておるということはどういうことですか。これじや耐乏予算と言えますか。
  141. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) お答え申上げます。庁費、各所修繕その他につきましては、いずれも緊切なる事情がございましてそれを大蔵省におきまして査定いたしました結果が二百数十万円の増加になつておるわけでございます。なお詳細は分科会において十分御説明申上げたいと思います。(「今ここでやればいいじやないか」と呼ぶ者あり)
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がございませんから、(「聞けよ」と呼ぶ者あり)それでは具体的な内容を伺いたいと思うのです。あとで資料として出して頂きます。それから二十八年度の使い方についても、そんなことはないと思いますが、私の屋敷を、自分の私邸を庁費なんかで直すようなことはないと思いますから、そういうことはないと思いますので、詳しくですよ、詳しくこれは出して頂きたい。それでなければ耐乏を国民に要求する際に公の立場に立つてそういうことをなされたのでは国民に協力を求められません。又汚職も起つておる際でありますから、この点詳しく資料として頂きたいと思います。  それから更にお伺いいたしたいのでありますが、二十八年度の予算で、たしか保安庁において警備の船を造ることになつてつたのですが、それは一体もうできましたのですか、又予算はどのくらい組みましたか、二十九年度において予算のほうはどのくらい組みましたか。
  143. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十八年度予算並びに予算外契約を以ちまして約十六隻分船艇を製造する計画がございます。これにつきましては設計その他の面でまだ計画がはつきりいたしませんので、まだ契約をする段階には至つていないはずでございます。(「嘘を言つたつて駄目だよ」と呼ぶ者あり)詳細は保安庁のほうから御答弁申上げます。(「飯野海運ではすでに部分品を作つているじやないか」と呼ぶ者あり)
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは二十九年度の保安庁の予算の中に二十八年度着工の新造船十六隻について九千百二十トン、千六百八十九人の維持費を計上してあるのはこれはどういうわけですか。
  145. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 只今の十六隻が二十九年度中に竣工いたします分とMSAの協定に伴いまして米国から貸与を受けることを予定いたしております分がたしか十七隻であつたかと存じますが、そういうものの引渡しを受けることを前提といたしまして、それの乗員関係の人件費の増加を見込んでおります。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いつ竣工するのです。その見通しはどうなのですか。
  147. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十九年度中には竣工する予定で人員の予定をいたしております。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いつ竣工するかわからないのに予算にどうしてこういう維持費が計上できますか。何々基準にしてこういう維持費を計上されたか。更に伺いたいのは、設計その他と言いますけれども、予算を組むときに設計は大体できていなければならんはずじやないですか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)それから聞くところによりますと、大体昨年の暮に木村長官、増原次長の間で大体設計が、大体概算の設計書が終つてそうして発注するはずであつた、こう聞いておるのです。ところが発注するはずであつたところが、昨年度中にはなかなか発注されないのです。これはどういうわけなのです。これは保安庁のほうに聞きたい。なぜ発注をしなかつたか。設計はできないはずはない。それじやなければ予算は組めません。保安庁のほうに聞きたい。なぜ発注しなかつたのです。
  149. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君に申上げます。保安庁の政府委員は三時という打合せになつておるそうでございますから、すぐ見えるはずでございますから、もうすぐ見えるはずであります。それで他の質問を……、それは留保されたらどうですか。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは困るので、すがね。
  151. 青木一男

    委員長青木一男君) それはその点留保されて他の質問を続行願います。
  152. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ここでこれが私の今日の質問の重点でございまして、(「休憩と呼ぶ者あり)これには、これからあとで御質問申上げますが、汚職を起さない、起さないと言いながらこういう問題が次々と起つて来るのでどうしても私はこれは厳粛な立場で徹底的に究明しなければならないのです。特に私は昨年国会であれだけ強調したのにまだこういうことが起つているのです。どうしても私はこれを究明しなければならない。これは前の造船の割当とか利子補給が、これが第二の復金疑獄とすれば、今度の問題は私は第二のシーメンス事件になる危険があると思う。そういう意味でこれはどうしても徹底的に究明しなければなりませんので、なぜ発注しなかつたかということについて私はどうしても先ず究明してから質問を続けなければならないのです。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  153. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 保安庁関係でわからない点のございますが、只今の人員の関係をいつから見ているかという点だけ私のほうからお答え申上げたいと思います。先ほど申上げましたような、本年度の予算による分の竣工並びにアメリカから貸与を受けます分の乗員として必要な増員四千名くらいを見ているわけでありますが、これにつきましては平均約半年分くらいの人員の増加を見ているわけでございまして、ならして考えますと、まあ二十九年度になりまして約半年くらいたつたときからの分を見ている。これは勿論ならして考えた場合でございますから、現実には少しずつ船が引渡されるとか、或いは一部ずつ竣工するというようなことでそれに伴つて必要な人員が増強される、そういうことになるわけであります。予算積算の根拠としましては約半年分を見込んでいるということだけを申上げておきます。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは今の分は来られてから質問することにしてあと先へ進みます。  只今アメリカから貸与する船舶その他と言いますが、その契約はできたのですか。
  155. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 一応こちらの希望先方に伝えましで、交渉中であることは承知いたしておりますが、それが確定したかどうかということはまだつまびらかにいたしておりません。予算は一応そういうものを予定として、前提として積算をいたしているということを申上げておきます。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 予算の組み方がこういうことになつているのです。期待はする、併しなかなかアメリカのほうではこれはやりたくない、こうい船もあるやに聞いているのです。そうしますと防衛計画がまるつきり狂つてしまう。七千トンのものはやれないが、二千五百トンのものを二隻、三隻ということには行かないと思う。防衛計画というものはそういうものじやないと思う。皆狂つて来る。そういうことをただ期待だけでこういう予算を組むのですから、実に日本予算というものは漠然たるものであつて、こういうところにいろいろな汚職が起る根因があるのです。こういうところがはつきりしないのです。
  157. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) その間の詳しい事情は私も承知いたしてないのでございますが、併し全然根も葉もない、こちらだけの考え方で期待をいたしているのだとも承知いたしておりません。やはり或る程度は可能性のあるようなものにつきまして向うに話をしているということであると考えるのでございまして、全然根のないような架空な計画予算を組んでいるというのではございません。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣、それは協定できるのですか。
  159. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この相互援助条約に基きまする艦艇の援助については、まだ協定は、協定といいますか、具体的な結着までは至つておりませんが、MSA関係については必ず我がほうの希望に副うことと確信をいたしております。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点は、あと又一般質問のときに具体的にお伺いしたいと思うのです。非常に問題点があると思います。そこでこの保安庁の警備船の問題については保留しまして、次に第二の汚職の根因となるところの財政の紊乱について伺いたい。今度の予算は、非常に多くの財政法に違反した編成の仕方になつておりますが、この点大蔵大臣はどうお考えですか。財政法に違反していないとお考えですか。
  161. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 財政法に連反していないと確信いたしております。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この前、昨年の第十六国会で、私は甚だ失礼でありましたが大蔵大臣に財政法の講義をしたわけです。大蔵大臣は勉強をまだされていないと思うのです。今度の予算は、実は一兆円予算でないのでありますが、それはまああとで御質問するとしまして、最近大蔵当局は当面の政策的要求を、面子を飾るとか、或いは今度なんか一兆円というものに捉われて、そうして財政の憲法であるべき財政法を改変したり、或いは不当な解釈をする傾向があるので非常に憂慮に堪えない。で、私は今回提案されました二十九年度の予算においては、いわゆる一兆円予算の形式を整える余り、目に余るような細工をしておるのです。これは明らかに財政法に違反していると思いますので、私は五点について伺いたい。  第一は入場税についてであります。入場税については、どうしてこれを一般会計の歳入としないで、特別会計に繰入れたか。  第二は租税払戻金を一般会計歳出に計上しないで、租税収入金より支払うこととしたか。  第三は国有林野事業特別会計において、一般会計に納付すべき利益金三十二億円を、これを保管しまして、国有林以外の地域についてそうして造林治山事業を施行させようとしていること。  第四には郵便貯金特別会計に対する利子補給を一般会計より行わないで、資金運用部特別会計より行うものとしたこと。  第五には二十七年度の連合国財産補賞費の繰越金七十億円及び安全保障諸費、これも二十七年度ですが、九十億円を、これを剰余金にしないで、二十九年度に使用することにした。  私はこの五点は明らかに財政法に違反するものだと思う。最近大蔵当局は財政法をだんだん歪曲して、昔のような、旧憲法当時のような財政の組み方にして行こうとしています。こういうようにルーズにして行きますと、又臨軍費の組み方のようなことが起つて来ると思うのです。で、今挙げました五点について、これが財政法に違反していないという根拠を大蔵大臣のほうから示して頂きたい。私は明らかに財政法に違反していると思う。
  163. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) いずれも、私は、財政法に違反していないと確信しておりますが、細かく政府委員より答弁いたさせます。
  164. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 財政法に違反するかしないかは重大な問題ですから、大蔵大臣からその総括的にどういうわけで財政法に違反していないかということを、先ず大蔵大臣から答弁されて、それから細かい一々の点について政府委員からお聞きしたい。
  165. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) それでは概括私からお答えいたします。  入場税は、地方税である入場税を国税に移管したのであつて、而もその九割を地方に戻すのであるから、従つてその税の本質から見て、これを一般会計へ繰入れずに、いわゆる交付税及び譲与税として特別会計とするのが当然であると考えます。  それから又租税払戻金のほうは、租税の払戻金であるから、租税の払戻金というものはもともと租税収入金から出すことが当然であつて、そう改める間に、地方交付税特別会計というのがございまして、地租、家屋税等は、これは従来国税でございましたが、それを地方に移管いたしました。移管いたしました際に営業税、地租、家屋税の三税につきましては、これを一般会計に受入れず、特別会計に受入れましてこの地方財政の調整に使用した、そういう前例があるわけでございます。財政法違反では何らないと確信いたしております。  次の租税払戻金でございますが、これは従来予算に計上いたしておりましたことはご指摘の通りでございます。併し最近青色申告が大分普及して参りまして、租税の払戻金が毎年増加いたしておりますが、十分それに対しまして予算がないために非常に納税者に御迷惑をかけておる。補正で毎年増加いたして参りましたが、その増加いたしますまでの間の払戻すべき金が予算がないために払戻せない。そうすると例えば指定預金などを活用いたしまして、納税者の不便を除去するというような糊塗策も講ぜざるを得ないわけでございますが、そのような実情に鑑みまして本来租税収入は、返すべきものを返したきれいな姿なものを租税収入にすべきではないか、そういう観点から今回国会に法律を提出いたしまして、国税収納金整理資金という制度を設けます。一旦入りました国税の収入はをこを全部通す、そこにある間にこれをスクリーンいたしまして、返すべきものは返す、その返すべきものを返したあとの濾過された純粋な租税収入金が国庫に入る、そういう仕組にいたしておるわけでございまして、これで納税者の利便を図ると同時に、濾過されない、まだ払戻金等に充てなくてはならない要素の入つておる、いわば不純な租税収入を、そのまま租税収入として国庫の歳入に充てないという趣旨から考えましても、これは健全なる措置であると考えておる次第でございます。  次に林野庁の問題でございますが、国有林の存在が治山治水上に相当効果があるということは、これは御承知通りだろうと思います。ところがこの国有林の分布は必ずしも普遍的ではなくて非常に偏しております。そこで或る川の上流には国有林が全然ないために過伐等が起つてその川が荒れるというようなことが少くないわけでございますが、そこで今度の予算におきましては、林野庁の国有林野事業特別会計の性格を少し変えて考えまして、治山治水にも直接寄与できるように考えたほうがいいんじやないか、つまり或る河川の上流にあつて、治山治水上特に重要な地域につきましては、これを国有林に買上げる、或いは買上げた上でその国有林について荒廃地域復旧であるとか、水源地の造成等の事業を実施してその川の治山治水に寄与する。そういう国有林野事業を、単なる材木を振り買いする常利的な会計だけでとどめなくて、国の治山治水にも直接寄与し得るような会計に考えることが、この治山治水が非呼に重要な問題になつておるこの際の時宜に適したものではないか。そういう観点から従来一般会計に収納いたしておりました利益金を国有林野事業特別会計で、只今申上げましたように治山治水事業に使える。これは国有林として使うわけでございますが、そういう途を開いたわけでございまして、これにつきましても法律を提出いたす予定でございます。従いましてこの点も何ら財政法違反ではないと存ずるのでございます。  郵便貯金のお話がございましたが、これは従来郵便貯金の赤字を補填するのに、資金運用部の利益を国庫に取り上げてその国庫から郵便貯金に補填するという措置をとつておりました。併しこれは会計の簡素化という観点から考えましてすつきりしないわけでございまして、問題は資金運用部に対する郵便貯金の預け金の利子か低いとか高いとか、それから起つている問題でございますから、これはむしろ一般会計を通さずに両会計間の問題として簡素なる制度を以てこの赤字補填を行なつたほうがいい、さような観点から又法律案提出いたしまして、その法律案を前提として予算を編成いたしているわけでございまして、これ又何ら財政法違反ではないと確信いたしております。  最後に御指摘のございました連合国財産補償費並びに安全保障費の繰越の問題でございますが、これは現在の財政法から参りますと、二十九年度に繰越して使用することはできないわけでございます。併し只今大臣からお話がございましたように、実質的にはいわゆる事故繰越を認むべき場合に相当するものと考えられますので、ここに財政法第四十二条の特例に関する法律案を今国会提出いたしまして、すでに衆議院では委員会審議を了しているわけでございますが、そういう特例を提出することを考えておるわけなんでございまして、これ又財政法についての例外法を出して、その例外法を前提とした予算を組むということは、従来からの慣例でも認められておることでございまして、何ら財政法違反であるとは考えていないのであります。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今いろいろ理窟を言われましたが、要するに法律を作つて特別措置を設けて行けば、どんどんと特別措置ができるようなことであつては、予算の大原則である総計予算主義、そういうものに反するわけです。だんだん純計を計上するようになる、純計ですとわからんのです一般会計では……。地方財政でもこれを特別会計にしちやつたんなら、我々が見たんではわかりません。だんだん一般の人が一般会計を見て批判できなくなる、理解できなくなる。これは一兆円予算にとらわれたからこういうことになつたと思うのですが、そればかりでなくこんなことをして行くと、だんだん臨時臨時の支出になつて、こういうところに一般の批判の対象に公然とならないようにして行くところに、いろいろな汚職の原因が伏在していると思う。こういう予算のやり方ではいけない。何のために財政法を作つたか。だんだん特例措置をしましてだんだん前の旧会計法に持つて行こうとしているんです。これは大蔵事務当局の人はよほどこれを考えてくれなければ困る。財政法の財政を扱う精神をここで守らなければいけない。崩れようとしている、MSA、再軍備を契機としまして……。でいちいち私は細かい反論を持つています。併し時間がありません。あなたの答弁は制限はないんですけれども、我々は制限があるんです。ですから一般質問のときに具体的に私は只今の御答弁は間違いである、間違いであるということを私は具体的に指摘いたしまして、それでその反省を求めたいと思うのです。  次に、疑獄、汚職のこれは直接的な原因になつて来ると思うのですが、計画造船について伺いたいのですが、その前にちよつと伺いたいのですが、この第七次りタンカーの利子補給と外国から買つた四十隻の買船の市中銀行から借りた金の利子補給、これは行いましたかどうか。
  167. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。七次のタンカーは利子補給の対象になつております。買船のほうはなつていないのであります。
  168. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは行いましたか、利子補給を……。
  169. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) 行なつていないのです。
  170. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 七次はやつたんですか。
  171. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) 七次のタンカーはやつております。買船のほうはやつていないのです。
  172. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 七次のほうはどういう根拠に基いて出したんですか。
  173. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) それは三党協定で六次の貨物船と同様な困難な状態にある、経営上困難な状態にあるということで、三党協定において追加されたものでございます。
  174. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その予算はないはずです、七次の予算はないのに、どうしてどこからこれをお出しになつたのか。
  175. 岡田修一

    政府委員岡田修一君) お答えいたします。七次の後期のタンカーだけが利子補給の対象になつておりまして、その当時の考えでは、若し予算が足りなければ補正予算その他で修正する、こういうことでございましたが、清算の結果すでに成立した予算の範囲内で賄えるということで、別に予算修正なしに、成立した予算でやることになつております。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 事実は違います。この点については……。私は前にも十六国会において水田三喜男氏に質問したのです。水田氏は私が今のような質問をしたときに、実はこの七次船の問題と四十隻の外国から買つた船の融資に対する金利の補給は予算ができまつちやつてからとはつきり言つております。衆議院予算が通つてしまつたあとの委員会において、七次の後期のこのものだけについてそれを入れましたので、これは不足になつております。従つてこれは先に行つて必要ある場合補正しなければならん。四十隻の買船の問題については補正しなければならん。ですから先に通つた予算はこれらが前提になつていないんです。なつていないのですよ。あとで如何に法律を作ろうとも、予算がそういうふうにして組んでないのです。従つてこれは補正を組まなければ出せないわけです。そんな三党協定で申合したからやる、そんなのじやありません。(「闇取引だよ」「ちやんと書いてある、やることを。」と呼ぶ者あり)これは重大な問顯で。これは予算委員会会議録第二十七号、それにはつきりと書いてある。それを私は資料を頂きましたら、第七次船の利子補給があるので、これにおかしいと思つたのです。この予算はないはずなんです。補正しなければならんと言いましたが、ところがそういう措置を講じないで、ほかで出している、こういうところがその疑惑を生むところなんです。まだほかにたくさんありますが、先ずこの点について伺いたい。
  177. 岡田修一

    政府委員岡田修一君) 清算をいたしました結果、すでに成立した予算の範囲内で賄つたことはこれは間違いございません。  それから買船の件についてちよつと補足説明をいたしますと、買船の件につきましては、これは開銀、日本銀行で措置するということでございましたが、日本銀行のほうではまだその措置がされておりません。従いまして買船についての金利の補給は実行されておりません。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 清算して見たら、予算があつたから払つたというのは違います、そんな馬鹿なことはない、そういう了解で――そういう建前で予算は通つておるのじやありません。水田氏がはつきりと予算が通つてしまつてから、予算が通つてあとの委員会で第七次のものを入れることになつたと言つておる。従つて第七次を入れるということで予算が通つておるものではない。ですから予算はそういうふうに使つてはいけないのです。こういうふうな使い方をすれば、だからそこに汚職が出て来るのです。何の根拠を以て……。清算して余つたから、そんなことで使つていいものじやありません。その根拠をはつきり示して下さい、これは、重大な問題です。汚職が問題になつておるときだけに重大問題です。これは財政の紊乱というものなんです。(「闇取引はちやんと書いてある。」「そんなことはないと言つてえらそうに言つておつたがどうするのだ」「一体運輸大臣何を監督しているのだ」「待合のほうだよ」「共犯だ」と呼ぶ者あり)
  179. 岡田修一

    政府委員岡田修一君) 私申し落しましたが、その成立予算の範囲で賄えるようになつ一つ原因といいますか、因子は、当初成立予算では八月一日から利子補給をすると、これを八月十五日から利子補給すると、いわゆる利子期を少し遅らした。そういうところに相当の余裕が出て来た、こういうわけであります。(「余裕が出て来たのはわかつている。」「それを何で使うのだ。」と呼ぶ者あり)
  180. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 余裕はわかりました。これは衆議院でも答弁しておられましたから、承知しておるのです。それはこういうふうに使えないのです。余裕ができても第七次後期に使つてはいけないのです。はつきりと水田氏か補正予算を組んで処理しなければならないと言つておるのです。それは国会承認を得ていないのです。(「大臣答弁。」「大臣々々と呼ぶ者あり)
  181. 岡田修一

    政府委員岡田修一君) 法律でタンカーにつきましては昭和二十六年十二月一日以降のものにつきまして利子補給をすると、こういうことで規定されておりますのでこの予算の支出ができるのじやないかと、かように考えます。
  182. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは成るほど私は法律を見て知つております。法律案がそうだから言いつても、予算を通すときにはそうでないのですから、法律がそうなつたら、補正を組まなければならないのです。補正を組むか、余つたものについてそれを使うという、そういう措置をしなければならないのです。予算を通すときにそういう了解になつていないのです。そういう承認を得ていないのです。(「そうだよ」「大臣に答弁させろ」「何をやつているのだ、一体今まで……」「出してならないものを出しているのじやないか」「大臣答弁できないのか」と呼ぶ者あり)
  183. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 予算関係がございますので私のほうからお答え申上げます。造船利子補給の政府の当初案は御承知通り一億でありまして、それが十億に増額修正されたのであります。その場合には只今お話がございましたようにタンカーについては八次以降というような御説明があつたやに私どもも承知いたしております。私当時現職におりませんでしたが、そういう御説明もあつたように伺つておりますが、これは予算説明でございまして、予算そのものについて第七次、第八次以降ということが固く制約されておつたわけではないようでございます。(「何を言つておるのだ」と呼ぶ者あり)その後法律によりまして第八次でなくて第七次からということに法律が変りましたので、予算といたしましてはその法律の規定に従つてこれを補給することができる態勢になつておるわけでございます。(「嘘だ。「嘘の説明だ、」と呼ぶ者あり)
  184. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは三党協定をやられた水田氏自身がはつきりと、それは確かに木村のおつしやる通りです。この予算額に立ててあるものは、タンカーは八次船からということで、予算の額はきめてありりますが、又さつきと同じような問題で、というのはこの外航船舶の問題です。この予算が通つてしまつたあとの委員会において七次の後期の、このものだけについて特にそれを入れましたので、これは附則になつております。従つてこれは先に行つて必要である場合補正しなければならんだろうと考えられます。と三党協定をやつた、又自由党の政調会長だつた水田さんは、その人がはつきりそう言つておるのです。この予算にはこれは載せてないと言うのです。(「予算に載せてないものをどうして使えるんだ」「どうして使えるんだ、国会承認を得ないで」と呼ぶ者あり)
  185. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 当時修正されました項目はたしか外航船舶建造利子補給のための経費と、まあそういつた意味の経費であつたと存じますが、議決の対象になりましたのはそれだけでございまして、詳しい内訳等はいずれ法律が制定されるから、その法律の趣旨に委ねられておつたんだと私どもは承知いたしております。なお、この十億八千三百万円組んだわけでございますが、その後金融機関における利子の引下げ等によりまして、現実には三億円以上のものがここで不用として出ております。第一次補正の財源に三億円余りを捻出いたしまして、ほかのより緊切なる費用に充てておるわけでございまして、補正でこれを殖やすというような必要は全然なかつたわけでございます。
  186. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 法律はそうでしよう。併し予算措置というものはそうではないのですから、法律が通つたら、新らしい予算措置をやらなければならない。だから大蔵大臣に第三次補正に造船利子が出て来るのかと言つたら、そうではない、利子補給のものだけだと言つたから、私はおかしいと思つた。だからこれは明らかに不当支出です。これは会計検査院のほうで厳正に検査しなければならない。こんなことをして、それで第七次タンカーというものは今問題になつている飯野海運は入つておるんでしよう。(「そうなんだよ」海運会社の名を挙げればすぐわかるんだよ」「その海運会社の名前」「どこの海運会社だ」「船主を言え船主を」と呼ぶ者あり)
  187. 岡田修一

    政府委員岡田修一君) 第七次後期のタンカーは三隻でございます。たしか飯野海運、(「そうでないかい」と呼ぶ者あり)日東商船、照国海運、この三社です。(「皆問題になる」と呼ぶ者あり)それからですね、予算総則には、今資料がございませんから、確かでございませんが、もう一つ予算総則にはたしか二十五年の十一月一日以降の建造船についてとこういうことになつておりましてですね、予算総則面ではそのタンカーも一応含めて解釈する。こういうことになつております。その当時私たしか運輸委員会でそういう質問が出て大蔵省のほうから御答弁になりましたのは、私が先ほど答弁申上げました通りですね、この予算の範囲で賄えない場合に修正をするということです。ところが先ほど御答弁申上げました通り予算の範囲内で十分賄えるようになつたから、従つて予算修正はしない。こういうことかと存じます。
  188. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの問題ばかりやつておりますと時間がなくなりますので、これは分科会なり或いは又一般質問のときにやりたいと思うのですが、ここで委員長にお願いしたいことは、まだこの造船汚職の問題については、こういうふうに具体的に調べて行きますと非常にたくさんあるのです。これはやはり私は小委員会でも設けて、そうしてこれをやはり徹底的に究明する必要があるのではないかと思うのです。小委員会の設置についてやはり委員長にこれをお取計らい願いたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)これはあとで理事会でも開いてそしてこれをお諮り願いたい。そうしませんとこの事態は明らかにならない。そのほかにまだ私はたくさんあるのですが、一応ですね、この今の補正についてはあとで又御質問することにしますから、十分お調べ、御用意願いたいと思うのです。  それから次に、この計画造船そのものが加何に汚職の温床になるかということについてですね。私は運輸大臣に伺いたいと思うのです。この計画造船というものは、そういう財界とか官僚とか或いは政党人が国民の血税を以て私腹を肥やすーつの道具になつている。これは本当に日本の海軍振興というものとマツチしておらない。これは石井運輸大臣あとからお見えになつたから御存じないかも知れませんが、四百万トンの計画造船計画ができましたそもそもの由来は御承知かと思いますが、ホーレー大使が来た、日本の造船設備を全部撤去するかも知れないというので非常に恐慌を来たして、如何にしてこれを食いとめるかということが重大問題だつた。そのとき御承知のように、今後察庁に行かれている今井田君がこの案を作りまして、四百万トン計画造船計画作つて、そうしてこれを示して、賠償に撤去されないようにこれを防衛したように聞いております。そしてマクマホン氏が来て、大型船を造るようになつた。その賠償施設として撤去されることを防衛するために、実はまあそう言つては失礼ですが、一夜漬けで作つた案なんです。で、その当時は確かにこれは私は今井田代は非常に健闘されたと思う。この評価は十分すベきだと思いますが、それがそのままその後の日本の経済にマツチしていないのに続けられている。そうして、あとで具体的に御質問しますが、この計画造船をやるために利子補給をしても、又船価の補助をしてもこれは海運振興にはならないのです。実際にならない。そのことは具体的の調査もあります。これは一般質問のときに、私は参考のために、ただ汚職をつくだけでなく、今後の海煙政策を如何にしたらいいかという点について詳細に私は資料がございますから、参考になりますから、一般質問のときに私は運輸大臣に伺いたいと思うのです。従つて、この計画造船というものは、それによつて日本海運振興にならない、今の形では、で、これが汚職の道具になつておる。実はなぜ儲からないのに船を造るかということになれば、私は船会社がこの計画造船の融資の割当を受けるときに、いわゆる見積書を出したのです。この要求は私しておるのですが、いずれ出て来ると思いますが、この見積書と実際とは非常にかけ離れております。開銀の質問のときに伺いたいと思うのですが、実際は虚偽の申請になつておる。実際にはそうでなければ金を貸すことはできない。従つて審査にいろいろな汚職が入つて来る。性格なる見積書は出せない。それはその通りである。海運が一航海すれば二千万円も損するという、みすみす損をするのに金を貸すはずはないのですから、見積書を出すときには、こういう儲かるという見積書を出さないと融資はできない。そこで実際には虚偽の見積書になつておる。この前も質問しました。従つてこの際、石井運輸大臣はこの計画造船について根本的に私は再検討をしなければいけないと思うのです。今後どういうふうに計画造船を再検討されるか、そうしてどういうようにこの建造をやつて行くか、この点について具体的な意見をお伺いしたい。又汚職をなくすような形においてはどうしたらいいか、その点お伺い
  189. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) 造船汚職という声の下に、本来の日本の海運の発展というものを破壊するようなことがあつてはならないということを、私切に考えて、いろいろやつておるわけでございます。計画造船が必要であるか必要でないかと、又計画造船をやらないでも日本の海運というものは発展して行くかどうかというのが第一の問題だろうと思いますが、これは木村さんは私から御説明するまでもなく、よく御承知のはずでございまするし、海運界の情勢は戦時補償打切後におきまして、そして又、船を全部壊されてしまつた日本の戦後の海運界の情勢から立直るにはどうしたらいいか、一次から九次までだんだん造船を続けて参りまして、だんだんと政府の財政資金を出す分量が殖えて参りました。初めは市中から多く出ており、それから今では逆になつているわけでございますが、これはどうしても今の船会社ではそれだけの力がなかつたのだということになるわけだと思うのでございます。併しその間に船会社のほうが、それじや自分たちだけで、やれるかと言いますると、私は今申しまするように、やれなかつたかと思うのでございますすが、それなら船を造らんでもいいかというと、これはどうしても私は造らなくちやいけなかつたのだと思います。その点木村さんはどうお思いになるか知れませんが、戦争前の状態まで回復するにはまだまだ遥かに及ばない。貿易外の収支関係を御覧になりましても、この造船、海運によつての貿易外収入というものが、戦前の貿易外収入よりも遥かに大きな比率を、ウエイトを持つて来ているということは申すまでもないところでございます。ほかに海外においての事業もなければ、海外にいる人たちの送金もないのでございます。この運賃収入というものが非常に、重要な点になつて来ている。現に二十八年度は恐らく外貨払い又は外貨によつての収入というようなものを合せますと、約二億ドルの収入が考たられるのでございます。これは私どもが戦前の世界の第三番目の海運国というようなことを頭に描きながら考えまする場合において、戦前においては六〇%近くの貿易品が日本の船によつて運はれている。現在は四〇何%というような状態考えますと、どうしてもこれは船をこしらえなければならん。船をこしらえるにはどうしたらいいか、自己資本でできない。自分の力で市中娘行から借りることもできないような今日の海運界の状況からしますれば、どうしても政府がどんな形かでやつてやらなければならないということは止むを得なかつたかと思うのでございます。さてそういうふうにいたしまして、船をどうしてもこしらえなければならんということが仮に認められるといたしまして、今度の第十次の造船に直面し、予算にも今度は、昨年二十八年度には政府資金二百二十億でありましたが、今度は一応百八十五億、この融資を組んであるのでありますが、これは多少の変動があるかと思いますが、まあずつとこれだけの金額に減りましたので、うまく行つて十七、八万トン、私どもは百八十五億の二十万トンと思つておりましたが、少し減りまして十七、八百トンになるのじやないかと、こう思うのでありますが、これをこしらえて行くのに今までの方法でいいかということかこの際もう一遍反省すべきことじやないかということが、お尋ねの趣意だと思うのでございます。私ども昨年の第九次前期の場合におきましては、開銀を中心といたしまして、私どものほうは航路計画であるとか、或いは造船所の事情とかをいろいろ調査いたしましたのを提出いたしまして、開銀が最後になつて、その中から大よそ選んだ形をとつたのでありますが、利子補給、損失補償というようなもの等が出て参りまして、この九次の後期におきましては、開銀と運輸省と両方で調べて、両方で話合つて決定するという方法をとつたのでございます。その前段として造船合理化審議会の一般の方針を議に付したことは勿論でありますが、実際は運輸省と開銀で話をつけて参つたのでございます。で、この方法が間違つておつたかどうかという問題になりますと、私はそれはその本体においては間違つてはいなかつたと思うのでございますけれども、それに乗じてほかの動きがいろいろあつたとすれば、これは別問題でございまして、本筋は私は間違いなかつたと思うのでありますが、もつとそれをよくするということは年中考えなければならない。一次からだんだんやつて来ておりますと、いろいろの方法が変つて考えられて、これでもか、これでもかとやつて来たわけでございますが、今度はもつとそこに注意を払わなければならないものがあるんじやないかというので、実は昨今あちらこちらの関係の人たちも集まつてもらつて、今日も今まで或る人たちに会つて意見を承わつてつたのでございますが、そういたしまして、今度の十次造船については特別になお注意を加えるべきものは加えたい、こういうふうに思つております。その場合において一番……、さつきちらつとお触れになりました船の値段が果して適正なりや否やという問題につきましては、私どもは今まで基準船価と申しまするか、標準船価というようなものを一応立てておるわけでございます。併しこれも実際につきまして、造船所に行つて一々細かくつて、或いはいろいろな報告を細かくつていないので、私どものほうでいろいろな材料によつてこしらえた基準でございます。それでありまするから、必ずしもそれが本当の最低のものであるかどうかということは問題でありまするが、九次の前期と九次の後期と比べますると、この標準船価の線に沿うてこしらえました船というものが大体一割六分から下つた。これはまあ鋼材補給金という特別に大きな条件がありまするから、全部それが合理化によつてやられたとは思いませんが、いずれにいたしましても、それだけの進歩はいたしておるのてございます。私ども今考えておりまするのは、今造船所に対しまして、いろいろの経理の面までも入つて調べる法的根拠がないのでございまするから、立法措置をとりまして、改めてこの造船所のほうにも手を入れてよく調べることができるようにし、そして標準船価というものをもつと下げるような方向に進んで行くというようなことが基本的な問題じやないかと思うのでございます。又どういうふうにして実際の決定をするかということは、なおこれからいろいろ相談いたしまして、あなたがたの御意見も聞かして頂きまして、そうしてこれが一番いいという方法によつて決定をいたしたいと、こういうふうに思うております。
  190. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんので、細かいことは一般質問或いは小委員会で伺います。  それでこのリベートに関連しまして、例えば二千万円くらいリベートをやると、如何に船について手抜きが行われるか、例えばローラーを中止したり、発電機の容量を減少したり、いろいろな調査が私はあります。一千万円仮にリベートを出した場合にどれだけの手抜きが行われるか、二千万円、三千万円のときにはどういう手抜きが行われたか、これは国家財産の損害です。これは中国では騙盗と言つております。あざむき盗む、国民の税金をあざむき盗むのであります。そうして悪い船を造つておるのであります。それだけ手抜きが行われるのであります。これは具体的な資料はございます。こういうふうなところにメスを加えなければいけないので、総理大臣は先ほど事件の全貌がわかつたら処理しますじや済まないのであります。そんなことをしておつたら国家財産の損失というものは防止できない。今私が質問いたしましたように、計画造船そのもののあり方、計画造船が悪いと言うのじやありません。そのやり方です。時間がありませんけれども、又開発銀行のあり方、第二復金と言われても……、小林総裁が独裁的に融資できるような機構なんであります。又船会社が開銀から借りるときには個人の保証が要らないのであります。自分が損したときには重役の保証が要らないのであります。ですからリベートをもらつて儲けさえすれば、会社はつぶれてもやめればいいのです。みんな私腹を肥やすためにやつておるのであります。みんな国策が私腹を肥やす道具になつておる。国民の血税が私腹を肥やす政治家、官僚、財界の道県になつておる。こういう点を具体的に検討して、そこにメスを加えなければいけないということを総理質問しておる。ですから事件の全貌がわかつたらこれを善処するじや、これは済まないと思う。それでそういう意味での原因はどこにあるかということについてわかつたら、それに如何に対処するかということを聞いておるのであります。そういう意味での責任を明らかにする、或いは対処することについての総理の御意見を承わりたいのです。
  191. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私のお答えは前言の通りであります。事態の真相がわかつた場合に善処いたします。
  192. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 保安庁のかたが来られたから……。先ほど保安庁のかたに質問したのですが、二十八年度の予算で保安庁の警備船ですね。これを造ることになつておつたわけです。予算に計上してあります。それの発注がなぜ行われないか、その理由を伺いたいのです。
  193. 久保亀夫

    政府委員(久保亀夫君) お答えいたします。発注の遅れております理由は、端的に申しますと、設計が遅れておつたということでありまして、(「嘘を言つても駄目だ」「西郷君はそこから金をもらつてるはずだ」と呼ぶ者あり)御承知通り何しろああいう種類の船舶の建造は、約十年間の空白がありまして、技術的にその間に空白があるわけであります。而も保安庁としましても、勿論保安庁が基本設計を作つて造船会社にこれを示すいわば佐藤書でありますが、示すわけでありますから、保安庁自体としての技術陣の充実ということもこの前提になるわけであります。正直に申しますと、技術陣の充実の緒につきましたのは昨年の夏頃からでありまして、夏末頃から本格的に例えば実用者即ち二幕僚監部側の性能要求に応じまして、技術研究所を中心にして基本設計の基本計画と申したらよいかと思いますが、それを作らしたわけであります。それは小型警備船を初めとして、五種類の船舶がありますけれども、これが一月の末頃の間に出て参りまして、これを更に実用者側ははね返しと申しますか、もう一度修正をいたしまして、その結論が漸く技研を中心にして大体できかけたところであります。この基本設計の基本計画というものによりまして、随意契約にして概算契約をやつとできるという段階に漸く到達した、こう申上げたらよいと思います。
  194. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは一応の表面の御説明だと思います。そういうふうに御説明するよりほかにないと思います。計設計がわかつていなくて、そうして予算が組めるはずがない。私が聞くところによりますと、設計が大体もうできて発注しようとしたところが、政党側から強い圧力が加わつて、その発注する会社に対して干渉があつた。或る会社に発注しようとしたらいかん、こちちのほうにしろと、恐らくそういうことだと思う。そこで発注が遅れてしまつておる。そこでいわゆる二幕の人は非常に憤慨しておる。制服の人は非常に憤慨しておると言われておる。そうして我々はいざというときに命を投げ出して国のために尽すのに、こういう汚職のような汚れたことがあつた船を作られたのでは、我々はいざというときにそういう汚れた船に乗つて国を守ることはできない。そういう空気まで盛り上つて来て、そうしてその結果として今度の保安庁の設置法の改正に対して、先ほど曾祢さんが質問しましたが、保安庁法の改正に対して強い意見が出て来た。即ち保安庁の内部局に対して長官、次長、官房長、局長及び課長の任用資格制限を撤廃せよ、いわゆる文民だけに任しておつたのでは汚職ばかりやつて、実際の整備計画ができない。やはり制服の人たちもそこに入つてつて推進しなければ駄目である、こういう意見になつて来て、改准党に働きかけた。そうして改進党を通じてこういう改正になつたように聞いておるのです。もう汚職がこういうところに影響が出て来ておるということになればですよ、これは重大な問題です。いわゆる軍民の制限を撤廃し、そうしてこれが又だんだん軍国主義に、軍人の支配に席を譲つて行く。なぜそうなるか。汚職があるからそれに対してこれを食いとめることができないのです、弱味があるから……。過去の日本軍人がだんだんと力を得て来たのはそういう政界の腐敗、財界の腐敗、そういう汚職に対して皆憤激してそうなつて来るのです。私が仮に制服の人とすればそういう心理になるのは止むを得ないと思う。防衛責任を以て防衛計画を遂行するとき、その発注が或る政党によつて抑えられてできないとなつたらば責任が持てない。それでは我々はやつぱり政治に関与し、そうして政策に関与して我々が推進しなければいけない。こういう心理になるのは決して私は無理からないと思う。私は政治に関与するのがいいという意味ではありません。ですけれども、そういう心理状態になつて来るのです。汚職がいろんな方面に対して力を与えるであろうという外国の評論家が論じているのは、具体的な例はここにあるのです。保安庁の今度のいわゆる五隻の大型の警備船の建造に関して政治的圧力かある、その間にいろいろ汚職があるやに聞いておるのです。(「すでに容疑者が出ている」と呼ぶ者あり)私は従つて犬養法務大臣に伺いたいのです。最後にそういう事実に対しては調査をされておるかどうか。重大な問題です。今のようにそれがこの保安庁法の改正、文民撤廃にまで影響して来ておるようになると、これが又軍国主義の復活になつて来るのです。いわゆる軍八の政治関与といいますか、今保安庁は軍人でないでありましようが、そういうことに道を開くことになつて来る。その捜査をやられたかどうか。  それからこれは非常に言いずらいのでありますけれども、この前犬養法務大臣に御質問申上げた昭和二十五年当時のあの揉み消しの問題、あれはその後御調査になつたかどうか。当時の捜査課長は島田警視庁第二捜査課長と聞いております。あのときに揉み消しに奔走されたという人もこの前申上げましたからここでは申上げません。今井田氏が警視庁に引張られましたから、その間の事情は非常によくわかるはずだと思います。十分わかる。従つてそういう点についてこれは調査されていなければ私は調査を要求いたします。前に御答弁になつておりますけれども、いろいろ聞いてみたけれども、そういう事実がないという御答弁です。併しその後果してこういう汚職があつたのです。併しながらこれは第九次造船以後において起つているのですけれども、その前に起つているのです。汚職が発見されたのは最近でありますけれども、ずつと起つているのです。更に又リベートについては銀行もリベートの分配にあずかつているはずであります。船会社だけじやありません。それはそういうどうしても銀行がリベートをもらわなければならない機構になつているのです。いわゆる確認書というものを銀行がもらわなければ、金を貸してもらえないのです。銀行についてもこれは十分捜査しなければならないと思うのです。そうして徹底的にこの原因を糾明して早くさつぱりして、膿を出して、そうして新らしいスタートをしなければならない。そういう意味で私はこれは閣僚諸公も議員の皆さんも同じ気持だと思うのです。皆我々国を憂えるから、我々は余りこういう汚職は好きでないのですけれども、私はこういう質問をしておるのです。それで犬養法務大臣に今後の今申上げた二つの問題についての捜査、三つですか、銀行も含めてですね。そういう点について今後それを徹底的におやりになるかどうか、伺いたいのです。
  195. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。先ず便宜上この前の国会で御質問になりましたいきさつについて御説明いたしたいと思います。御承知のようにあの御質問のとき私は法務委員会におりまして、大体の要領だけ伺つてここへかけつけたわけでございます。その後木村さんの御質疑の速記録を読みまして、相当重大であると存じまして、更に念を入れて問合せをしたわけでございます。それから最近もう一度こういう問題が起りましたので、木村さんの御質疑について何か類似のことがあつたかどうか、ここにおります刑事局長に私は更に質問をしておるのであります。私の質問に対して、そういう事実がないという警視庁側の回答なんでございますが、非常に念を入れての御質問でございますから、今後も又問合せをいたしたいと思います。  それから保安庁に関係する問題はまだ報告を受けておりませんが、重大な問題でございますから、これも早速調べたいと思います。  銀行に関する問題も同様でございます。木村さんのおつしやるように早くこういう問題の問答が済むようになつて、これならば立派な捜査もし、摘発も済んだということで再出発を心から私は望んでいる次第でございます。その前提として十分に厳正に調査いたしたいと思います。
  196. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題は保安庁長官にも関係があります。先ほど保安庁長官を要求したのですが、よそへ行かれたようでありますから、又一般質問のときに具体的に質問したいと思うのです。  時間が参りましたので、最後に私は委員長にお願いがあるのです。この問題は今までの質疑でおわかりのようにですね、非常にもつと具体的に検討して行かなければならんことがありまして、それでこの前ああいう質疑をしまして、うやむやになつてこういう事態になつておりますので、これは実は国会にも我々にもこの責任があると思うのです。これを糾明しなければならん責任というより義務があると思います。従つてこの問題については先ほども申上げましたが、どうしても小委員会を設けて頂く。そうして証人を呼んで頂きたいと思います。この問題はあいまいにしてはいけないのでありまして、どうしても私は証人として長澤浩二幕の副長のかたですね。いわゆる制服の人です、証人としてどうでもお呼び願いたい。それから開発銀行の糾明について小林中氏及び竹俣氏、これは審査部長ですか、竹俣氏をやはり証人として呼んで頂きたいと思います。そういうことをあとで理事会でも結構ですから諮つて、これをとりきめて頂きたいと思います。  私の質問は時間が参りましたから、これで終ります。
  197. 青木一男

    委員長青木一男君) 木村君の御希望のことは理事会で相談いたしたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。    午後三時五十八分散会