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田畑金光君 私は
日本社会党を代表し、
只今議題となりました
会期延長に関する件に対し
反対の
意思を表明するものであります。
重要法案が両院に山積し、これが通過を図るため
会期を
延長することでありまするが、御承知の
通り、本
国会は
通常国会であり、
国会法に基き
会期百五十日間の
長期に亘る
国会であります。その
長期国会も本日を以てまさに終ろうといたしておるのであります。然るに、今日なお我が参
議院におきましては、百二十数件に上る案件が上程されておるのであります。
議案審議の渋滞は何に由来し、何が故にかくのごとき
法案の山積を見るに至
つておりましようか。言うまでもなく、これは
政府の不手際の結果であり、
汚職に明け、
疑獄に暮れた
政府とその与党が
法案審議を忘れ、ひたすら
疑獄と
汚職に対する検察庁の追及から如何に彼らの安全を守るかにすべての精力を傾け、(「その
通り」と呼ぶ者あり)みずから
法案の
審議促進を蹂躙した結果にほかなりません。(
拍手)殊に
内閣の首長である
吉田総理は、
長期国会における登院数僅か二十数日に出でず、
神経痛の仮病にかこつけ、野党と世論の追究から逃避して大磯に引きこもり、院の再々の要請にもかかわらず、
重要法案の
答弁に立たず、議会を
サボつた彼の怠慢、不遜、傲岸極まる
国会軽視が今日の事態を招いたのであり、(
拍手)みずから蒔いた種子はみずから刈りとらねばならんと私は感ずるのであります。
第二の
反対の
理由は、現政権はすでに四月二十三日、本院における
警告決議案の可決の日を以て実質的にはその存続の基盤を失い、行
政府としての機能と役割は、つとに終りを告げておるのであります。
従つて国民に見離され汚れき
つた政府の下に
法案を
審議することは、国権の
最高機関たる
国会の権威を失墜し、
国民の
意思を再演する結果にほかなりません。(
拍手)思うに
長期に亘る第十九
通常国会を特色づけておるものは何でありましようか。即ちそれは一面におきましては
MSA予算を根幹とする
国家財政経済の再
軍備体制への急速な
衣換えと反動諸
立法を中心とする
軍事国家、
警察国家への移行という逆コースがいよいよ露骨化したということであります。他面におきましては造船
疑獄を中心とする政界、官界、財界の腐敗が検察庁のメスによ
つて全容を白日の下にさらされ、資本主義政党の本性、自由党という名の保守党の持つ恐るべき悪逆無道さが
国民の目の前に明らかにされるに至
つたということであります。(
拍手)民主政治は輿論政治であり、輿論に基き出処進退を明らかにすべきでありますが、吉田
内閣は、民主政治のイロハも理解せざるの故か、声なき大衆の厳粛な声に耳を傾けようとしておりません。民主主義政治は民衆のための政治であり、
国民の幸福を図ることがすべてでありまするが、吉田
内閣は少数独占資本に奉仕することに汲々としておるのであります。最近世上に見まする凶悪犯罪の頻発、テロリズムの横行は、一体何に原因すると見るべきでありましよう。戦慄すべき幼き学童に対する暴行殺人事件、頻々と
国民に加えられる殺傷、強盗、或いはすでに
吉田総理に加えられようといたしておりまするテロリズムの恐怖すべき動向は、単にヒロポン中毒患者の精神異常の発作として片付けていいものでありましようか。断じてさようではありません。これら一連の社会道義の頽廃、
国民道徳の低下こそ、まさに吉田
内閣六年に亘る積弊の所産であり、免れて恥なき腐敗政治の落し子と断ぜざるを得ない。(
拍手)
法律に触れさえしなければ如何なる悪事をも憚らぬ社会的反逆者と同一の異常心理こそ現政権の頭脳と申さなければなりません。今日必要なことはただ単に二、三の法 案を通すことではありません。まさに失われんとしている政治への信頼、議会政治の権威を
回復することこそ、
政府、
国会挙げての課題であります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)吉田一家の利益を、即ち国家の利益と混同し、与党の利益と
国民の利益を混同する現
政府の退陣こそ、国家と民族の将来の幸福のためになさねばならん重要な問題であります。
第三の
反対の
理由は、
会期延長は党利党略の所産であるのであります。即ち
会期中に是が非でも保守新党を作
つて世論の反撃から身をかわし、保守政権の土台をゆさぶる危機を乗り切ろうとしております謀略的意図に出ておるのであります。政党は政策を以て立ち、政党政治は主義主張、政策の対決によ
つて相互切瑳琢磨するものでなければなりません。然るに何らの政策持合せなく、選挙の公約を弊履のごとく脱ぎ捨てながら寄木細工によ
つてしばしの嵐を避け、雨をよけようとする今回の新党結成の動機こそ、今回の
会期延長の大きな原因であるということを考えましたとき、その憐れむべき心情に対しまして、断固我々は糺明せざるを得ないのであります。(
拍手)
第四の
反対の
理由は、重要
法案審議のためというが、彼らの申す重要法安とは、
日本の将来のため、なくもがたの
法案であり、民主主義擁護のために断じて葬らねばならん悪法なのであります。今日
政府のと
つておりまする一連の反動
立法は、平和憲法のいわゆる平和主義と民主主義を根底から覆すものであり、基本的人権を文字
通り空文化するもののようであります。教育の中立性確保の名の下に、目下
採決を迫られておりまする教育二
法案は、一体何を物語るのでありましよう。教育を政治権力の下に屈伏せしめ、自主的、批判的、創造的精神を培い、信義と正義に奉仕すべき新しき教育を根本から破壊し去り、よ
つて以て無知と無批判の上に自由党政権の延命を図る意図以外の何ものでもないのであります。(
拍手)教育の中立を云々する前に、民主政治の基盤である三権分立の民主的制度の尊厳を自覚し、司法権の独立、検察権の中立性確保を期することこそ、何よりも増して今日喫緊の課題と申さねばなりません。
最後に、私の
反対する
理由は、今回の
会期延長の衆
議院における
措置は、
国会法、両院規則の精神を蹂躪し、
議決されておるということであります。
国会法両院規則によれば、
国会の
会期決定、又は
会期の
延長は、両
議院一致の
議決によるべきであり、両
議院一致の
議決によらないとき、初めて衆
議院の
議決によるべきであるにかかわらず、今回も又従来と同様、衆
議院の一方的
意思により
決定されたのであります。
国会を構成し、国権の
最高機関としての参
議院の権威を無視するも甚だしいと申さねばなりません。この暴挙こそ、発しては現
内閣の
国会軽視となり、発しては参
議院の
警告決議案を蹂躪する
政府の態度にほかなりません。
私はこれらの諸点に基き、
会期延長はいわれなきもの、根拠なきものであり、速かに
国会を終了せしめていわゆる
重要法案を阻止することこそ、
国民の輿論に応える途であり、同時に又、本日を以て
国会を終了せしむることにより、一日も早く佐藤幹事長、池田政調会長を逮捕せしめ、泥を吐かせることこそ、議会政治の権威を確立する途なりと、私は確信いたしまして
会期延長に断固
反対の
意思を明らかにするものであります。(
拍手)