○内村清次君
只今議題となりました
地方税法の一部を
改正する
法律案につきまして、地方行政
委員会における
審議の
経過並びに結果の概要を御
報告申上げます。
現行地方税制はシヤウプ勧告を基礎として、
昭和二十五年に制定されたものでありまして、一応理論的にはすぐれた税体系として高く評価せらるべき面もあるのでありますが、我が国の現状に即応しない点もあり、現に附加価値税のごとき、未だ実施に移されていないものもあるのであります。
従つて政府においては、その改革について種種検討を加えると共に、地方
制度調査会を設けて、地方の行財政
制度の全般に亘
つて具体的な改革
方法について答申を求め、更に税制調査会からも国税地方税を通ずる
改正の一環として、地方税制の改革についての答申を得て、今回これらの答申の趣旨に副
つて本
法案を立案、
国会に提出いたしたものでございます。
現行
地方税法の問題点といたしましては、第一に、自主財源に乏しく、財政の自立性がないこと、第二に、この乏しき税源が地域的に偏在していて、地方
団体間の貧富の差が甚だしいこと、第三に、地方税の税種相互間及び同一税種の内部において負担の不均衡があること、第四に、道府県において住民が広く負担を分任する税種がないこと、第五に、税務行政が国、道府県、市町村の三者の間で、それぞれの
独立性を尊重する余り、ばらばらに行われて繁雑であること等を挙げることができるのでありますが、
政府今回の立案の趣旨も、これらの点を是正することが主眼とな
つているのであります。
而してその
改正の第一点は、負担分任の精神を導入するために、市町村民税の一部を道府県に委譲して、道府県民税を創設することといたしていることであります。
改正の第二点は、事業税に関するものでありまして、附加価値税を廃止すると共に、現行の事業税及び特別所得税を統合して事業税とし、これに
所要の
改正を加えていることであります。即ち負担の軽減を図るために、個人事業税においては、基礎控除の額を所得税の場合の額とおおむね同一とし、税率を現行のおおむね三分の二とすると共に、
法人事業税についても所得五十万円までの部分について税率を軽減いたしております。そのほかいわゆる外形標準課税とな
つている事業のうちから、海運業や小運送業などを除くこと、原則として非課税の範囲を
整理すること、課税標準たる所得の算定
方法を所得税又は
法人税のそれに合わすこと等の
改正をいたしているのであります。
改正の第三点は、不動産取得税の創設であります。本税は、土地又は家屋の取得に対して、その所在する道府県において課するものでありまして、不動産の価格を課税標準とし、その標準税率は三%であります。ただ本税の創設により、現在極度に払底している住宅の建設を阻害することがないように、新築住宅については百万円、新築住宅用の土地については六十万円までの部分に対しては、非課税の
措置が講ぜられているのであります。
改正の第四点は、
自動車税に関するものでありまして、車種相互間の負担の
合理化を図ることと、揮発油税の増税とも睨み合せて、揮発油により運行するものと、他の燃料により運行するものとの間の負担の均衡を図ることを主たる
目的として、税率の変更を行うことにしているのであります。
改正の第五点は、狩猟者税の税率に関するものでありまして、狩猟を業とするものと、その他のものとを区別することが困難であるという
理由から、一律に現行
制度に
改正する前の税率に戻そうとするものであります。
改正の第六点は、たばこ消費税の創設であります。地方
団体に対しては、一面新たな
独立財源を附与する必要があり、他面地域的偏在度の少い財源を附与すべきであるとの要請があるのでありまして、本税はこの
二つの要求を充すために、取上げられたものであります。即ち本税は、
日本専売公社が、小売人に売渡す煙草に対し、小売定価を課税標準として、小売人の営業所所在地の道府県及び市町村において、公社に課するものでありまして、その税率は、道府県が百十五分の五、市町村が百十五分の十であります。
改正の第七点は、市町村民税について、道府県民税の創設に伴う
所要の
改正を加えたことでありまして、市町村民税を道府県に委譲する部分だけを減額する趣旨の下に、税率の引下げを行おうとするものであります。
改正の第八点は、固定資産税に関するものでありまして、
改正の第一は、税源配分の
合理化を期するため一定の価額を超える大
規模の償却資産については、その所在地の市町村の課税権を制限し、この一定の価額を超える部分については、新たに道府県に課税権を与えようとすることであります。第二は時価を課税標準とする固定資産税は、税率を据えおく限り、評価増により増加し過ぎる半面、償却資産に対する本税の負担を軽減することは、我が国産業の発展にとり望ましいことでもありますので、不動産取得税の創設とも関連して、税率の引下げを行おうとするものであります。第三は、発送変電
施設、地方鉄軌道、重要物産の
製造並びに企業
合理化用の
機械設備、外航船舶、国際路線用航空機、航空運送事業用航空機等、我が国の経済再建上、重要な固定資産につきましては、課税標準の特例を設けて、税負担の緩和を図ろうとするものであります。第四は、償却資産に付する固定資産税の免税点を五万円に引上げることであります。
改正の第九点は、自転車税、荷車税について両税を統合してこれを一本化し、徴税
事務の
簡素化を図ろうとすることであります。
改正の第十点は、電気ガス税についてであります。既定の非課税分との均衡を図るため、地方鉄軌道、金属鉱物の採掘等を非課税範囲に追加することであります。
改正の第十一点は、入場税を国税に移管し、その九割相当額を譲与税として、道府県に配分する
制度を設ける
関係上、地方税としてはこれを廃止しようとすることであります。
以上が、
改正の趣旨並びに内容の概要でありますが、これに対しまして
衆議院においては相当程度の
修正が行われ、四月八日、本院に
送付せられたのであります。その
修正の第一点は、事業税につきまして、個人事業税の基礎控除額を
政府原案より更に引上げると共に、非課税範囲の追加及び輸出所得の損金算入の取止めを行うことであります。その第二点は、不動産取得税について、非課税範囲の追加及び公営住宅の払下げを受ける場合の負担の緩和であります。その第三点は、遊興飲食税について、大衆飲食店等に対する免税点の引上げ及び大衆旅館に対する免税点の新設であります。その第四点は、
自動車税について、
政府原案の税率を若干引下げると共に、トラツクについて自家用、
営業用の区別を設け、税率に差等をつけることであります。その第五点は、狩猟者税につきまして、現行
通り二本建とすることであります。第六点は、道府県民税及び市町村民税について、寡婦などの非課税の範囲を十二万円に引上げること等であります。その第七点は、固定資産税についてでありまして、その制限税率を百分の二・五に引下げること、地方鉄軌道、重要物産の
製造並びに企業
合理化用の
機械設備及び航空機運送事業用航空機に対する負担緩和の特例
措置の遡及適用を取りやめること等であります。
本
法案はその
重要性に鑑みまして、去る三月十七日の本院本
会議において
政府の
提案理由の
説明があり、これに対し各会派の代表から
質疑が行われました後、本
委員会に付託せられたのでありまするが、何分にも、シヤウプ勧告に基く地方税制の改革以来の大
改正でありまして、
改正条文数も約三百八十条に達する厖大且つ複雑なものであるのみならず、地方自治の根本にも影響する
重要法案でありますので、本
委員会といたしましては慎重に
審議いたしたのであります。併しながら、地方財政平衡交付金法の一部を
改正する
法律案、入場譲与税
法案、
昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する
法律案、地方財政法の一部を
改正する
法律案等の本
法律案に直接関連する諸
法案の
政府提案が遅れましたこと、本来税制
改正に先行すべき地方
制度の改革に関する地方自治法の
改正法案の提出が未だにないこと、
衆議院の
通過が遅れたこと、而も本
法案は本来、年度内に成立すべき性質のものであ
つて、その成立が急を要すること等の
理由によりまして、本
委員会といたしましては
審議上遺憾に存ずるような点もあ
つたのであります。而して本
委員会におきましては、三月二十二日に塚田
国務大臣より
提案理由の
説明を聞き、爾来
委員会の回を重ねること前後十二回、その間三日二十七日には公聴会、四月十五日には入場税について国税移管の
関係上、大蔵
委員会と本
委員会との連合
委員会、四月二十三日には本
委員会と通産
委員会との連合
委員会を開き、
衆議院修正案については、床次
衆議院議員から
修正理由の
説明を聴取し、又同君に対して詳細な
質疑を行いました。そのほか運輸、通産、建設の各委員数氏の委員外
発言があり、農林
委員会、
建設委員会及び通産
委員会からは、それぞれ書面を以て
修正意見の申入れがありました。而して本
委員会におきましては本
法案と地方行政
制度、地方財政全般、警察
法案等との関連につきましての基本的問題については勿論、
政府の
改正の趣旨が、果して額面
通り実施せられているか、道府県民税、不動産取得税等の新税の創設は適当であるか、その性格並びに実際の
運用はどうな参るか、事業税、
自動車税、固定資産税等の
改正点は適当であるか等のほか、逐条的に
改正案全般に亘
つて塚田
国務大臣、小笠原大蔵
大臣及び
政府委員との間に詳細な
質疑を行な
つたのでありまするが、その内容は、多岐多端に亘りますので、
会議録により御
承知をお願いいたしたいと存じます。
かくて
質疑を終了し、
討論に入
つたのでありまするが、先ず緑風会の小林委員から、
賛成意見と共に
修正案並びに附帯決議案が提出せられました。
修正案の第一点は、事業税に関するものでありまして、
法人の行う林業を非課税とすると共に、バス事業等を所得課税に
改正することであります。
第二点は、不動産取得税に関するものでありまして、民有林野を国有林野と交換する場合の不動産の取得、住宅金融公庫の業務上の不動産の取得及び同公庫の貸付金の回収に関連する不動産の取得を非課税とすると共に、道府県の住宅協会等の
法人が同公庫から
資金の貸付を受けて不動産を取得した場合、及び同公庫から
資金の貸付を受けて防火建築地帯内に耐火
建築物を新築した場合の課税標準の算定について一定額を控除することであります。
第三点は、現行入場税中、国税に移管されていないことにな
つている第三種
施設について
所要の
改正を加え、娯楽
施設利用税として道府県法定普通税とすることであります。
第四点は、遊興飲食税に関するものでありまして、大衆旅館の飲食代を除いた部屋代の非課税の範囲を
衆議院修正では、一泊四百円から七百円の範囲内で地域区分によることとな
つているのを一律に七百円以下とすることであります。
第五点は、道府県民税及び市町村民税に関するものでありまして、
法案成立の遅延に伴い道府県民税の市町村への配賦期間を五月十五日とし、市町村民税の特別徴収額の通知期限を六月十日とすると共に、寡婦等の非課税の範囲が
衆議院修正では十二万円とな
つておるのを十三万円に引上げることなどであります。
改正の第六点は、固定資産税に関するものでありまして、非課税の範囲に
国家公務員共済組合等の所有する保健
施設及び水力発電所の魚道並びに流筏路を加えると共に、
昭和二十四年一月二日以降の建設にかかる発電
施設の課税標準について、
政府原案の六分の一を四分の一に改めることであります。
又附帯決議案は、
(一) 納税義務者にして、その帳簿書類その他の物件の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者、虚偽の記載をした帳簿書類を呈示した者、徴税吏員の
質問に対し
答弁をしない者又は虚偽の
答弁をした者に対する一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する旨の罰則の
規定は税目ごとに設けられているが、これを統合して
規定を
簡素化すると共に、その罰則は重きに過ぎるきらいあるを以て適当にこれを緩和すること、なお徴税吏員の
質問に対し
答弁をしない者に対する罰則は行過ぎと思われるので、将来にこれを改めるよう考慮すること。
(二) 個人事業税については多くの問題があり、
国会修正の基礎控除十万円は
昭和三十年度より実施することを強く要望すると同時に、この際、併せて事業税の府県における賦課徴収については、特に零細
業者の負担について
関係政府機関ともよく連絡の上、適当の配慮を加え、実情に合する取扱をするよう
政府においても連絡するよう希望する。
以上でありました。
これに対しまして秋山委員は、
日本社会党第四控室を代表して、
衆議院送付案及び小林委員の
修正案並びに附帯決議案に反対、堀委員は、自由党を代表して、各案とも
賛成、松澤委員は、
日本社会党第二控室を代表して、各案とも反対、笹森委員は改進党を代表して、各案とも
賛成、加瀬委員は各案とも反対の
討論がありました。
次いで
採決に入り、小林委員の
修正案は多数を以て可決せられ、右
修正案を除く
衆議院送付案は、これ又多数を以て可決せられました。よ
つて本
法案は、本
委員会において多数を以て、
修正可決すべきものと議決した次第であります。又附帯決議案も多数を以て可決せられました。
以上、御
報告申上げます。(
拍手)