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1954-04-28 第19回国会 参議院 本会議 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十八日(水曜日)    午後零時十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四十号   昭和二十九年四月二十八日    午前十時開議  第一 日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)  第二 農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)  第三 経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)  第四 投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)  第五 昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)(委員長報告)  第六 港湾法の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第七 北海道開発のためにする港湾工事に関する法律の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第八 運輸省関係法令の整理に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 特別調達資金設置令等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一〇 財政法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一一 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一二 国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  諸君に報告いたすことがございます。只今インドネシア国会議長サルトノ博士夫妻が本院の傍聴のために、ここに来ておられます。なお随員としましては、総領事御夫妻、領事御夫妻が見えておるのでございます。  このことを御報告いたします。    〔拍手〕      ——————————
  4. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私はこの際、検察権中立性確保に関する緊急質問動議を提出いたします。
  5. 鈴木一

    鈴木一君 私は、只今廣瀬君の動議に賛成いたします。
  6. 河井彌八

    議長河井彌八君) 廣瀬君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。廣瀬久忠君。    〔廣瀬久忠登壇拍手
  8. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は検察権中立性確保に関し質問をいたすものでありますが、本日、病気のため総理が出席しないのを甚だ遺憾といたします。(拍手総理に対する私の質問に対しては、後日総理大臣みずから御返事を願いたい。  検察権は申すまでもなく一方は司法権裁判に直接をいたしておる。他方は警察権に関連をいたしておる。而うして憲法上の国民権利義務に最も深き関係を有する重大なる権力の一つであります。若し検察権が時の政府の我がままなる政治的配慮によつて歪められるという悪例を残すならば、この前例は、他の政府によつても必ずこの前例を又模範にして行うということになつて、その循環する結果は、誠に恐ろしい結果となりまして、人権は蹂躪せられ、裁判の公正は害せられ、思想の混乱、民心の不安、結局政治への信頼は失墜し、我が国家の将来に対して誠に寒心に堪えざるものを生ずる虞れがあります。(拍手)  検察権擁護を今如何に声を大にしてこれを主張しても、今の我が日本の状況に対しては、如何に声を大にして検察権擁護主張しても、なお足らざる実情であります。(拍手)然るに吉田内閣は、新検察庁法施行以来、初めて検察権中立性を侵犯するの重大なる過誤を犯したのであります。犬養法相とつ処置こそ、検察当局意思に反し法第十四条但書を発動して、法務大臣として弾圧的処置をとつたのがそれであります。私は断固としてこの処置を排撃し、検察権中立性擁護せんことを主張するものであります。(拍手)  先ず吉田総理質問をする、犬養法相辞職理由はどういうことでありますか。犬養法相吉田首相の下に検察権中立性侵犯重大過誤を犯した当面の責任大臣であります。而も重大過誤を犯した直後、突如として退陣をしてしまつた。私はその理由を理解するに苦しみます。世の中の人は無責任だと言います。或いは卑怯な退陣だと言います。然るに御本人は、身を犠牲にしたのだと言つております。いずれにせよ我が検察史上異例の暴挙を行い、検察当局一体意思を蹂躪して、その中立性を打破せる責任者が、その跡始末をもしないで退陣したということは、検察権中立性を侵犯するそれ自身悪例であるばかりでなく、なお悪例を重ねるものであります。即ち退陣を前提とすれば何をやつてもかまわないのだというような乱暴極まる大臣が続出したら、国家はどうなりますか。(「そうだ」「よく聞いている」と呼ぶ者あり、拍手)私は将来、検察中立擁護のために、責任者退陣理由総理の口より直接に聞きおくことが重大の意義があると信ずるのであります。どうか総理みずからこの理由を明快に御説明を願いたい。これが総理に対する第一の質問であります。  次は、総理大臣は、犬養法相の行いました十四条の処分は今日誤まりであつたということをお認めにならないか。今日首相はどう、この問題を考えておられるか。これを伺いたい。検察当局法務大臣が抑圧した、抑え付けたその理由として、政府は、事件法的性格があいまいだとか、或いは国会法案審議が遅れるとかいうことの例を挙げておるのであります。もとよりこれらは重大な問題でありまするが、併し玄人であるところの検察当局判断に任すべき法的性格の問題や、国会自身判断に任すべき国政審議の問題などを、おかど違いの大臣閣僚判断をして、それを強制的に押付けんとするがごときは、実に甚だしき行き過ぎであると存ずるのであります。(拍手)私は我が国長老政治家である吉田首相は、この無謀なる指揮権発動に同意するに当つて自分らだけに都合のよい勝手な理窟のみを考えることなく、本当に老首相、老政治家としての吉田さんは大所高所に立つてもらいたかつた。その意味は、一体吉田さんは我が国政治信頼をどうするというつもりであるか、我が国民思想をどうするつもりであるか、我が国民道徳をどうするか、こういうところに、どうして思い至らなかつたかと私は言いたいのであります。政治の信用は失われてもいいんだ、国民思想は乱れてもいいんだ、国民道徳はうすれてもいい、法案が通ればいい、法的性格のあいまいに隠れればいいということに至つては、実に情ないことではありませんか。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)顧みて首相は正直に、あの指揮権発動は誤まりであつたということを今日は認むべきであります。どうでありますか。今日の実情は、法案審議を急ぐと言いながら総理は出席しない。そういう而も弾圧的処置とつたが故に、審議は却つて遅れておるのが実情であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)以上総理大臣に対する質問。  次は、副総理質問いたします。私は副総理総理補佐は全く誤まつたと思うものであります。緒方総理に聞きたいことは、緒方総理首相並びに犬養法相と共に検察権中立性を侵犯した一人であります。良心的なりと言われるところの緒方総理は、この誤まりが如何に我が政治を毒したか、如何に我が国民思想を毒したか、如何に我が国民道徳を毒するかというところに思い至りませんか。世相は、世の中実情は、権力者たるあなた方大臣考えておるようにしかく甘いものではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)我が国の底流は実に恐ろしいものがあります。その点をお考え下さい。副総理は十四条指揮権発動の誤まりを今日は認むべきであります。私はなお副総理に対しては公憤を漏らさなければなりません。それは今回の国会の初めにおいて、疑獄事件に対して、参議院特別調査委員会を設けよという議論があつたときに、私は緑風会を代表して、政府信頼し、検察当局信頼して政府及び検察当局に一切を一任することとして、特別調査委員会設置に反対したのであります。而うして今日その不明を謝します。(拍手)遂にその設置を見なかつたのであります。私は緑風会先輩石黒議員と共に緑風会を代表して、院内大臣室に公式に首相代理としての緒方総理に面談をして、政府信頼して特別委員会を設けないのであるから、政府は決して検察当局に干渉すべからずということを特に念を押して言つたのであります。副総理はこれに対して快諾を与えた。然るに、この重大な時局の最後において、突如として豹変して、そうして弾圧を加えた。それはなぜですか、それは私を裏切つたばかりでなく、それは議員が大物であつたがためであるか、或いは議員地位が非常に重大であつたがためであるか、いずれにしても治外法権は、そういうところにはないはずであります。私は政府への信頼を裏切られた感じが深い、実に憤慨に堪えないのであります。副総理首相補佐を誤まつて、検察史上重大なる過誤を犯したという点についてこれを謝する考えはありませんか。  次に、私は加藤法相に伺います。加藤法相犬養法相処分に盲従して行くのか。加藤法相は就任直後において犬養法相処置、即ち検察庁法十四条の指揮権発動前任者のやつたことだから認めるということを言つた、そしてあなたは政党大臣であるというようなことを得意がましく言つておる。私はここであなたに注意する、法務大臣地位は歴史的に伝統的に、政党内閣であつてもできるだけ政党人を避けて来た。これはどういう意味であるか。特に政党よりも国家を、特に国家を、重んずべき重大なる権力を有する法務大臣であるから、特に政党人を避けたんだ、それをあなたは政党人だということを得意のごとく言つておるのは非常なる誤まりであります。同じ政党の前大臣のやつたことだから、おれもこれを認めるんだなどと簡単に法務のことを考えられたら非常な誤まりだ。今回の犬養法相処置に対しても、そんな考え方を持つたら非常な誤まりである。あなたの地位では、常に国家が第一である、政党は第二にすべきである。一体あなたは前任者処置を余りに早く是認し過ぎておる。法相検察当局の、検察当局は、あなたの部下です。その親愛なるべき部下が、数カ月の間、不眠不休の努力の跡というものをつぶさにあなたは研究されたか、恐らく研究していないと思う。犬養法相意見を異にした検察当局の二日間に亘る火の出るがごとき会議内容と、その結論をあなたは十分に研究したか、又犬養法相辞職、それは我々には実にわからん辞職だが、その真意をあなたは究明したか。こういう点についてあなたは本当に検討が足らない。そんなことで前法相の処理を鵜呑みにするなどとは以てのほかであります。いやしくも大臣である以上は自主性を持ちなさい。国家のために大いに考えなさい。改むべきものは改めたらどうか。(「本当だ」と呼ぶ者あり)私は法務大臣党議政党党議に盲従するの感があるときは、国家の前途は暗黒になると思うのであります。(拍手)  それから次に、私は加藤法相に特に言わなければならん。検察権中立性確保こそ、あなたが本当に心を打込むべき問題であります。あなたの進むべき途、あなたを護るべき途、それは先ず検察権中立確保であります。犬養法相自分のやつたところの処分間違つたことを認めて、前例となつては困るという良心の呵責に堪えずして、身を犠牲にしてやめて、そうして将来の戒めとしようというようなことを言つたと聞いておる。今回のあの指揮処分悪例であつたということは言うまでもない。何となれば、それは我がままなる政治的の配慮によつて検察権中立性を破つたからであります。犬養君が前例としたくないと考えておるその悪例にあなたは何故に盲従するのか。(拍手断固としてあの処分を取消すことこそ、自主性のある大臣であり、国家的の大臣であるのではないか。過日、本議場においてあなたは大所高所よりなどと言うたが、それは全く見当違いであつた法的性格の問題とか国政審議の問題などは、あなたが言うべき大所高所ではない。全国民法務大臣にゆるす大所高所とは、検察権中立性確保するということ自体であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)そうして国民のすべての疑惑を一掃し、国民の安堵の基礎を培う、そこで初めて政治信頼は回復するでありましよう。国民の道義は向上するでありましよう。国民思想は明朗化するでありましよう。検察権中立擁護こそ、法務大臣重大使命であると私は考える。法務大臣の所見は如何でありますか。  以上を以て私の質問といたします。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  9. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。廣瀬議員から特に総理直接の答弁を要求するという点につきましては、私から御答弁を申上げません。私を御指名になつて私の責任についての御質問の点にのみ、私からお答えをいたしたいと存じます。  私が総理補佐を誤まつたのではないかという御質問でありますが、今回の検察庁法第十四条を犬養法務大臣発動いたしましたのは、犬養法務大臣検察庁中立性を尊重いたしまして、独自の判断責任において発動いたしたものであります。従つて私は、報告は受けましたが、私が総理補佐すべき立場にはいなかつたのであります。従つて補佐をいたしておりません。補佐を誤まる、誤まらんという立場になかつたことを御了承お願いいたしたいのであります。  それから更に附加えまして、特別調査委員会参議院内に設ける意見がありました際に、廣瀬議員石黒議員館議員から検察庁の公正を維持する政府考えがあるならば、この調査委員会を設けることには自分らは賛成しないつもりであるがどうか、そういう申入がありましたことは確かに事実であります。私よく記憶いたしております。併しながら今回のことは、政府といたしまして重要法案通過成立を期する上において、真に止むを得ないと政府考えた結果でありまして、捜査の内容には干渉圧迫等は決して加えておりません。ただ政府としては一遂に重要法案通過成立を期するために一時逮捕の延期を申入れた次第でございます。この点につきましても御了承が願えれば仕合せであると考えます。(拍手)    〔国務大臣加藤鐐五郎登壇拍手
  10. 加藤鐐五郎

    国務大臣加藤鐐五郎君) 只今検察庁法第十四条指揮権発動のことにつきまして御質問がありましたが、先回の会議のときにお答え申上げました通りに、前法相熟慮熟慮を重ねた結果、今日の指揮権発動をいたしたのでありまして、私といたしましては、現下内外情勢に照しまして、この場合重要法案通過見通しのつくまで逮捕を延ばすことは止むを得ざる措置と信じ、これを踏襲いたしたのでありまして盲従ではございません。  次に、法務大臣地位が重要でありますることは、只今廣瀬君の仰せになつた通りでございます。従つて検察権中立性を維持すべきことはこれ又お説の通りでありますが、今回犬養法相指揮権発動措置を私が踏襲いたしましたことは、その中立性をゆがめるのではありませんので、国家的の立場に立つて大所高所より見て犬養法相措置を適当と認めた次第でございます。この点悪しからず御了承を願いたいと思います川(拍手
  11. 河井彌八

    議長河井彌八君) 内閣総理大臣答弁は他日に留保せられました。      ——————————
  12. 曾禰益

    曾祢益君 私はこの際、日比賠償問題並びに東南アジア外交に関する緊急質問動議を提出いたします。
  13. 大和与一

    大和与一君 私は只今曾祢君動議に賛成をいたします。
  14. 河井彌八

    議長河井彌八君) 曾祢君動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。曾祢益君。    〔曾祢益登壇拍手
  16. 曾禰益

    曾祢益君 本日は、丁度サンフランシスコ平和条約が発効いたしましてから二週年になるのでございます。私はこの際、政府東南アジア政策、即ち日本平和条約の未調印、国交調整のできておらない国との外交等に関しまして、この記念すべき日に緊急質問をいたすことは甚だ遺憾に存ずるのでございます。  先ず第一に日本フイリピンとの間の賠償問題についてでありますが、長らくの間このフイリピン賠償問題につきましては、その総額賠償形式内容及び期限等につきまして話合い成立せず、フイリピン側におきましては、サンフランシスコ平和条約を調印しておきながらも、なお且同条約第十四条の規定に基く賠償の枠、即ち賠償は、日本の存立可能な経済を維持する範囲内で行うこと、並びに、現金賠償は認めないで、役務賠償を主軸にするという原則を不満として、総額八十億ドル、現金支払等の、実現不可能な主張を続け、且つ一方におきましては、平和条約批准を拒否する態度をとつて来たのでございます。この間、政府におかれましても、昨年秋、岡崎外相東南アジア現地に派遣し、フイリピンに対しましては総額二億五千万ドルというような構想を示して、妥結の途を探究された模様でありまするが、最近に至りまして、大野公使ガルシア外務大臣との間に、総額四億ドル、期限最高二十年といたしまして、日本側よりの投資フイリピン国資源開発を目途といたしまして、その実益が十億ドルに達するような方式によつて解決するという予備交渉成立し、予備協定に両者が署名を了しましたので、いよいよ、予備協定基礎といたしまして正式交渉を開始するために、村田大使以下の全権団が正式に任命され、赴任をされたと承知いたすものであります。我々は、これらの経緯につきましては、あらかじめ政府より何らの御相談を受けたわけではないのであります。従いまして、政府の提案についての賛否の態度を明らかにする立場にはないのでありますが、併し、平和条約の精神に合致し、日本支払能力を上廻らないような賠償であつて東南アジア諸国との経済的互恵関係推進と、延いては政治的親善に資するようなものであるならば、我々は積極的に考慮し、これを好意的に審議するの雅量を持つべきであると考えまして、この見地から、先ず日比両国間の交渉が速かに妥結に達することを期待して参つたものであります。然るに、その後、現地における交渉は、フイリピン側態度の逆転から行詰りとなり、同国の全権団及びその背後にある上院側におきましては、大野ガルシア予備協定拘束力を持たないこと、並びに期限十年、日本支払総額十億ドルということを主張して譲らなかつたために、遂に四月二十七日に至りまして、両国全権間に二カ月間の冷却期間を設けるという形式において、事実上交渉は決裂したと伝えられるに至つたのであります。これは誠に遺憾千万であるのであります。我々は、ここにフイリピン国側に対しまして、真に両国友好関係確立のために、冷静に大局的見地から、日本総合的賠償能力を検討されんことを強く期待し、且つ日本政府が如何なる妥結をいたしましたといたしましても、国会におきましては、日本支払能力を上廻るような如何なる賠償協定をも承認する意向がないことを篤と考慮に入れられんことを要請せんと欲するものであります。(拍手)さりながら、事ここに至つたについては、政府責任極めて重大だと存ずるのであります。  そこで、先ず次の諸点につきまして、総理並びに外務大臣からそれぞれ明確に御答弁を要求するものであります。  先ず第一に、政府におきましては、大野ガルシア予備協定を確定的なものと見て、正式交渉を決意し、厖大な全権団を送つたことにつきましては、一体如何なる情勢判断をされておつたのか。その情勢判断に、非常に甘い、即ち重大なる誤まりがあつたのではないか。この点をはつきりと御説明願いたいのであります。  第二に、予備交渉停頓ならばいざ知らず、いやしくも全権団が派遣され、正式交渉が開始され、而もその結果が決裂に終つたということは、問題の円満なる妥結を一層困難ならしめ、却つて日比両国間の友好関係に累を及ぼし、延いては日本東南アジア諸国との関係の打開に重大なる暗影を投ずることになるのでありまして、政府責任は極めて重大だと存じますが、如何なるお考えであるかをお示し願いたいのであります。  第三に、フイリピン側の一部におきましては、大野ガルシア予備協定成立の前に、日本側からフイリピン政界方面に対しまして黄白がばら撒かれ、買収工作を行なつたという主張がなされた由でありますが、我々はまさか日本責任当局がかようなことをやろうとは信じたくないのございますが、而もかかる風評を喚び起した根源がどこにあるかということを考えてみますときに、実は吉田内閣自体が、汚職と疑獄の重大なる疑惑に包まれているにもかかわらず、政権噛付き工作にその日を暮しているところに、私は根本の原因があると存じますが、この点に関する政府の明確なる所信を伺いたいのであります。(拍手)  第四に、今後の東南アジア諸国との賠償並びに国交調整について、如何なを見通しと対策をお持ちであるか。この際、明確にして頂いたいのであります。政府は本国会の劈頭におきまして、東南アジア政策推進を大きな立看板にされているのであります。即ち首相施政方針演説の中に「アジア自由諸国との友好関係の増進に努め、特に東南アジア諸国に対しては、賠償問題の早急なる解決を期し、正常なる国交の樹立を急ぐと共に、経済協力を通じて相手国の繁栄に寄与し、善隣相扶けて世界の平和に貢献したいと考えている」と、大変立派な看板を立てておられるのでございますが、その現実の成果につきましては、今回の日比賠償の問題の行き詰り、従つて日比国交調整のデツド・ロツクを来たしたに過ぎないではありませんか。更にインドネシア、ビルマにつきましても、賠償国交調整共に何らの進展を示さず、インドネシアにおきましては、スダルソノ局長の罷免、賠償問題の停頓等を来たしているのが実情ではございませんか。これらに関しまする政府所信を明確にして頂きたいのであります。  第五に、それのみならず、政府アジア政策につきましては、実は吉田政府と、誠に対米関係において共通点の多い韓国との間においてすら、漁業問題、竹島問題、請求権問題、及び国交調整問題等の完全な行詰りをみているのは、一体如何なる理由によるか。誠に奇々怪々と言わざるを得ないと存ずるのであります。然らば、この韓国問題に対する如何なる御所信があるのかを併せて伺つておきたいのであります。  第六に、ジユネーヴ会議がいよいよ二十六日から開催されるに至つたのでありまして、この会議におきましては朝鮮の平和問題、インドシナの平和、停戦問題等日本の平和と安全に至大な関係のある問題が討議されているのでありまするが、これらの重要問題に対し、政府は何ら自主的な外交方途を持ち合わせない。又これを示すことなく、徒らに大国間の話合いの推移を見送つているに過ぎないのであります。而も、インドシナ情勢急迫化に伴い、アメリカは対中共警告の発出、又はPATO、SEATO等構想推進、その他の強力外交を推し進め、ソ連、中共、又その外国共産軍に対する軍事的支援を改める気配が見えないのであります。これらの危局に対しまして、政府はひたすら自主性喪失一辺倒外交を以てして、果して日本の平和安全の確保と、これがために欠くことのできない東南アジアとの提携を実現し得るとお考えであるかどうか。この際明瞭にして頂きたいと存ずるのであります。  最後に、東南アジア諸国におきましては、吉田政府憲法無視国民生活圧迫による再軍備、更に昨日本院外務委員会において、我々の反対にかかわらず通過いたしましたMSA協定、これらのアメリカ一辺倒自主性喪失外交に対しましては、多くの反撥と批判が起つているのであります。(拍手)これらの政府外交基本方針の変換なくして、果して東南アジア諸国との融和と提携親善に如何なる方途があるかにつきましては、重大なる反省を促がしたいと存ずるのであります。(拍手)  以上の諸点につきまして、政府所信を伺い、時間がありまするから、場合によりましては再質問をお許し願いたいと存じます。  日本社会党を代表いたしまして、以上の諸点についての政府所信をお聞きいたします。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  17. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  フイリピン国日本との間の賠償交渉が突如として決裂に至りましたことは、誠に残念でありまするが、御指摘のように、これには先方の国内事情が多分にあつたように考えられます。先方の国内事情でありまするだけに、この問題が完全に処理されるまでには、なお忍耐心を要すると考えられまするが、併しながら今度の交渉経過等は、問題の終局の解決のために決して無駄ではなかつたと、さように考えております。又その間に何か日本側から買収工作があつたというような御意見がありましたが、そういうことは絶対にないと信じております。  又、東南アジアに対しまする賠償問題の解決、これは総理大臣が施政方針の演説にも申しておるところでありまして、政府としては非常な熱意を持つておりまするけれども、何分にもこの問題は、相手国のあることでありますので、日本のみが独善的にこれを強行いたしますることは両国の、東南アジアとの関係を、親善を深くするゆえんではない。さように考えておる次第でございます。(拍手)  爾余の御質問に対しましては、外務大臣からお答えをいたします。    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  18. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えをいたします。  フイリピン賠償に対するいろいろの意見は、従来からずつと承知しておりまして、日本側考え方といろいろ食い違つておることはよく承知しております。然るにもかかわらず、先般フイリピン外務大臣日本の公使との間に話合い成立いたしたのでありまするから、勿論我々は従来のいろいろの困難があるにもかかわらず、フイリピン政府としては、この覚書を基礎として正式交渉を行うことに成算を得たと信ずる十分なる理由を持つてつたのであります。そこで、先ほど副総理から申されたように内部的な困難から、これが停頓をいたしましたことは甚だ残念でありますけれども、併し比島側におきましては、例えばこれは冷却期間を置くものであるとか、或いは日本支払能力に対して調査団を派遣いたしたいというような意見もありまして、決してこれが決裂ではないし、又今までの交渉が決して無駄になつたとは思わないのでありまして、今後とも我々は誠意を尽してこの解決に努力いたしたいと思つております。  なお、フイリピン側に対して、何か賄賂というような、今副総理からもお話がありましたが、これは、我々が普通に読む新聞ではなくして非常に小さな新聞に、つまり責任な新聞に出された記事が元になつておりまして、勿論かようなことがあるはずはないのでありまして、この点は大野公使も、又全権も、十分に明らかにいたしております。これは全くの根拠なき報道であります。  なお、東南アジア諸国についてのお話でありまするが、このインドシナは別といたしまして、ビルマやインドネシア等とはまだいろいろ意見調整を必要としますので、直ちに賠償問題の解決というところまでは行くのは困難かと思つております。併しながら、政府といたしましては平和条約に基きまして、その義務の履行ということに強い関心を持ちまして、今後とも誠意を以て交渉をいたすつもりであり、又その間におきましては、いわゆる中間賠償等も考慮いたしまして、先方に我々の誠意のある、ところを十分に認められるようにいたしたいと思つております。  韓国の問題につきましては、しばしば申上げた通りでありまして、日韓会談未だ再開せられないために漁業の問題と言い、その他の問題と言い、未だ解決に至らないのは誠に残念でありまするけれども、我々としては誠意に基く解決を必ず近く行いたいと、こう思つて絶えず努力をいたしております。  それからジユネーヴ会議の問題についてお話でありますが、これは遺憾ながら只今のところは(「遺憾々々ばかりじやないか」と呼ぶ者あり)朝鮮におけの武力を用いた国の代表者を以て交渉の参加国といたしておりますために、日本のごときも非常に関係のある国ではあることは当然でありまするが、この会議に参加いたさないわけであります。併しながら、日本といたしましては非常に重大な関連を持つておりますために、韓国側に対しましても十分の連絡をいたしまして、必要の場合、日本意見を反映せしむるべく努力するつもりでおりまするし、又すでに現地には萩原公使を派遣いたしまして、事実上の連絡を密にいたしております。  又、この東南アジア諸国との関係において、この再軍備問題とか、MSA協定締結とか、米国一辺倒外交とか、いうようなことを引かれまして、こういうことでは、親善関係は困難ではないかというお話でありまするが、私どもは勿論再軍備をいたしているつもりはありませんし(「あら」と呼ぶ者あり、笑声)又相互防衛援助協定とかその他の問題は、ほかの国でもアメリカとの関係において同様のことをいたしている国が多数あるのであります。又我々の外交方針は現に東南アジアを最も重きを置いて各種の関係の改善に努力いたしているのでありまして、東南アジア諸国として、日本実情は十分に了承をして、関係は漸次好転して来ると信じて疑わないのであります。(拍手)      ——————————
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第一、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件  日程第二、農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件  日程第三、経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件  日程第四、投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上、四件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長佐藤尚武君。    〔佐藤尚武君登壇拍手
  21. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 只今議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准及び農産物の購入に関する協定経済的措置に関する協定並びに投資の保証に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告申上げます。  政府の説明によりますと、相互防衛援助協定につきましては、政府は昨年六月、米国議会において成立した相互安全保障法の改正法により、同国がすでに西欧その他の諸国に対して供与している防衛援助が、我が国にも供与され得ることになつたことを承知いたしましたので、我が国の自衛力漸増の既定方針に従い、この援助を同法に基き受けることを希望いたしたのでありまするが、その方針を決定するに先立ち、政府は戦力の保持を禁ずる我が憲法との関係及び我が国経済力との関係において、十分に米国政府の意向を確めておくことを適当と考えまして、これらの点に関する我が方の見解を具して、米国政府の意向を質したのであります。その結果六月二十四日及び二十六日の日米往復書簡において、彼我の見解が大筋において一致することが明らかとなりましたので、この基礎に立つて昨年七月十五日より東京におきまして援助協定締結に関する具体的交渉を行なつて参りましたところ、本年三月に入り、両国政府の間で最後的に意見の一致を見るに至りました。かくて三月八日、東京においてこの相互防衛援助協定の署名を了した次第であります。  本協定は、十一カ条と附属書七項目から成つておりまして、その内容は大部分米国と地の諸国との間の同種の協定とその揆を一にするものでありまするが、その中には他国の先例に見られない、我が国の特殊事情に基く特異な規定が設けられておるのであります。即ち、  第一に、相互安全保障法第五百十一条(a)項に揚げられた六条件中、第三の軍事的義務履行の点につきましては、協定第八条において我が国の場合は、日米安全保障条約に基く義務以外に出ないことを明らかにし、又第九条において、本協定憲法上の規定に従つて実施せられること、及び安全保障条約を何ら改変するものでないことを明らかにしたのであります。  第二に、我が国経済との関連につきまして、前文と第一条において、我が国の防衛力の増強に当つては、経済の安定が不可欠の要素であることを明らかにし、又附属書A項として、他面我が防衛産業助長のため、日本及び第三国用の装備、資材の我が国における調達、防衛産業に対する情報の提供、技術者の訓練に関する規定をも設けたのであります。平和を脅威する国との貿易の統制につきましては、米国と他の国との協定の先例に鑑み、且つ我が国の国連協力の方針に照らし、これを約束して差支えないと認めましたが、先の本院の決議の次第も十分に尊重いたしまして、附属書D項において、我が国は米国その他の平和愛好国とこの目的のため協力する趣旨を掲げるに留めたる次第であります。  又、軍事援助顧問団の性格につきましては、第七条においてこれを大使の指揮の下に行動するものと規定し、その員数及び行政事務費につきましては、附属書G項において我が国財政状況にも鑑み、これを最小限度にとどめることを定めた次第であります。  以上の諸点につきましては、今次協定交渉の過程において取扱に慎重を期し、従つて交渉も意外に長引いたのでありまするが、我が国の特殊事情に対する考慮は十分に織込み得たと信ずるのであります。  次に、その内容を条項別に要約いたしますると、前文には、この協定が国連憲章、対日平和条約及び日米安全保障条約の趣旨に副うものであり、経済の安定が日本国の防衛能力発展のために不可欠の要素であることを述べております。  本文におきましては、一、装備、資材、役務等の援助の供与、その効果的使用、不要となつたものの返還及び譲渡の制限について規定し、二、日本国政府が米国において不足する原材料又は半加工品で、日本国内で入手し得るものを譲渡する旨を規定し、三、秘密の物件、役務又は情報についての秘密保持の措置及び弘報処置について定め、四、工業所有権及び技術上の知識の交換に関する取極を作ること、五、援助資金の差押防止に関して協議することを定め、六、日本国が許与する関税及び内国税の免除と、附属書E項に掲げる日本の租税の免除について規定し、七、日本国政府がこの協定に基く援助の進捗状況を観察することを主たる任務とする米国政府の職員を接受すること、及び行政事務費として米国政府に円資金を提供することを規定し、八、米国の相互安全保障法第五百十一条(a)項の六条件に関連し、日本国政府が再確認し、又は受諾する義務について規定し、九、本協定と日米安全保障条約との関係及び本協定両国憲法上の規定に従つて実施さるべきことを明らかにし、十、本協定の実施に関する両国政府の協議並びに本協定の再検討と改正について定め、参十一、本協定は、米国政府日本国政府から、この協定批准した旨の書面による通告を受領したその目に効力を生ずること、及び本協定は、協定終了に関する通告を受領した日の後、一年を経過するまで効力を有する旨、又、附属書は、この協定の不可分の一部であること、本協定は国際連合事務局に登録することを規定しております。  次に、附属書におきましては、世界平和を脅かす諸国との貿易統制の措置について協力する旨を定めたほか、おおむね本文条項の細目につき規定しております。  次に、相互安全保障法第五百五十条に基く農産物の円貨による購入及びその円貨の使用に関しまして、同じく三月八日に、一、農産物の購入に関する協定、二、経済的措置に関する協定の署名を了しました。前者は、米国の余剰農産物につき同国の現会計年度において、総額五千万ドルの取引を行うことを目的とし、日本国政府は、この購入代金を米国政府の特別勘定に円貨で積立てる旨を定めており、後者は、農産物の購入代金たる五千万ドルに相当する円貨のうち一千万ドル相当分は、贈与として我が国に供与され、残与の四千万ドル相当分は、米国が日本における域外買付に使用することを規定しておりますので、これは防衛産業の強化と我が国経済の発展に役立つものと考えます。購入すべき農産物としましては、小麦五十万トン、大麦十万トンを予定しておりますが、これは外貨を使用せず、円で購入し得る点及びその価格が国際小麦協定の価格と同様の廉価なる点を考慮すれば、相当有利な条件で、我が国食糧事情の緩和に寄与するものと考えております。  又、今回同時に署名をみました投資保証協定は、我が国の外貨事情等により、米国の民間投資の元本及び収益のドル交換が不可能となつた場合、並びに当該投資財産が日本国内で収用された場合に、米国政府投資家にドルによる補償を与えると同時に、その債権を継承することを内容とするものでありまして、これは米国の民間投資者が米国政府の保証により安心して我が国に資本投下をなし得る途を開かんとしたものであります。  これを要しまするに、今回署名せられました相互安全保障関係協定は、我が国の防衛力の増強と併せて我が国産業の助長発展に資することを目標とするものでありまして、政府としましては、これら諸協定我が国の自立自衛の達成に貢献し、又、これにより日米両国の協力は更に強固の度を加え、延いて自由諸国の安全保障と世界平和の維持に寄与せんとする我が国の意図の実現に一歩を進めたものと考える次第であります。以上が政府の説明でありました。  これら四件は、先ず本会議に上程され、政府の説明と質疑が行われた後、三月十九日外務委員会に付託されたのでありまするが、委員会は四月八日より審議を開始し、爾来農林及び内閣、大蔵委員会との連合審査会を合せて十四回に亘つて慎重審議を行いました。この間、吉田内閣総理大臣、岡崎外務大臣、木村国務大臣及び政府委員との間に詳細且つ活撥なる質疑応答が行われ、又、これに先立ち委員会は二日間に互つて公聴会を開催し、憲法、国際法、軍事、技術、経済の各分野における学識経験者の意見を聴取いたしました。  次に、質疑の要点を取りまとめ御報告いたします。先ず、「MSA協定憲法に違反するとの考え方があるが、条約と憲法とはいずれが優先するのか。憲法違反の条約は無効か。政府憲法を独善的に解釈して、事実上再軍備を行なつているが、これは非民主的ではないか。」との質問に対し、「憲法と条約といずれが優先するかの問題は、学者間では見解が分れており、我が国憲法の条章を見てもはつきりしていないが、一つの手がかりとなる点は、憲法と条約が、その改正又は締結の手続において難易の別を設けていることである、これによつて判断すると、条約が憲法に優先するとは考えられない。違憲の条約は、国内法的には無効になると思う。これが国際的に無効かどうかは憲法の問題ではない。併し、条約は憲法の範囲内で締結するのであつて憲法に違反した条約は結べない。又、これまでに確立した国際法規には、我が憲法に違反するごときものは存していないと信ずる。政府はみずからの所信と解釈に従い、その責任において政策を遂行している。そして予算の審議等を通じて、常に国会に諮つているのであるから、国会の知らぬ間に再軍備の既成事実ができ上るということはあり得ない。」との答弁があり、次に、「MSA協定第八桑中に、一自国の防衛力と自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し」とあるのは、新たな義務であり、且つ、軍事的義務を負うことになりはしないか。防衛力増強は具体的に言つてどこまで行けば戦力になるのか。米国が日本に対し、今日以上に大きな軍備を要求して来たらどうするのか。MSA援助と我が国防衛計画とは表裏一体の関係にあり、米駐留軍の引揚げと防衛力増強とが相関関係にある以上、防衛力増強について長期計画があるべきではないか。米駐留軍の現存兵力はどのくらいか。日本の自衛力がどの程度になれば米駐留軍は撤退するのか。」等の質問に対しましては、「防衛力増強に寄与することは義務だと考える。これを軍事的義務と解するかどうかは各自の見方によるであろう。戦力についてはどれだけの装備があれば戦力になるか、その具体的数字を挙げることはできない。一般的社会通念に基いてきめるよりほかはない。米国が駐留軍を漸減すると言えば、我がほうとしてはこれに応ぜざるを得ない。防衛力増強は初めから日本が自主的にきめることになつておる。米国が日本に対し、厖大な防衛力を要求して来るようなことは全然ないと考えておるが、仮にかかる要請があつたとしても、国力に相応しない軍隊は持つべきでないと考える。MSA援助と防衛計画とは理論上関係はない。我が方に防衛力増強の計画があるときにMSAの援助の問題が起つたので、結果的に関係ができたのである。防衛力増強の長期計画を持つことは常識的であり、これができれば結構である。併し我が国経済力との関係もあり、又原子力研究の進歩と共に、米国ではニユー・ルックと称し、国防計画を変更せんとしておる情勢でもあるので、日本として長期計画を立てることは時期尚早であり、又それはできないと思う。米駐留軍の現存兵力は、先方が秘密にしていて全くわからないから、ただ推測するに過ぎない。我が自衛力をどの程度に増強する必要があるかについては、まだ的確な結論は出ていない。現実には我が自衛力増強の程度に応じて駐留軍が引揚げることになるのであつて、駐留軍の撤退はここ数年間は望めないと思う。撤退は一般に希望するところであるが、その実現は容易でなく、先ず我が財政力の強化を図るほかはない。現存の米駐留軍は、陸海空の力を総合すると戦力に該当するものと解せられる。従つて駐留軍に代る程度の自衛力増強は、憲法上できない。現在の志願制度の下で行い得る自衛力増強にはおのずから限度があり、二十二、三万以上の増強は徴兵制度によらなければ実行不可能であり、徴兵制度は憲法上許されない。自衛力増強計画は、昭和二十九年度分だけきまつたので、昭和三十年度分については、こうしたいとの予想的な目標だけは立てているが、実際の計画は立てていない」との答弁がありました。  又、「日本の基本的防衛方針は、一国防衛主義によるのか。それとも集団防衛主義によるのか。集団防衛とすれば、二国間と多数国間集団防衛とのいずれの方式をとるのか。大西洋条約機構アンザスのごときものには不賛成か。昨今PATO、即ち太平洋条約機構とか、SEATO、即ち東南アジア条約機構等の構想について論議されているが、かかる地域的集団安全保障体制に対する政府の見解如何」との質問に対しては、「我が国の防衛方針については、当面は日米安全保障条約によつて立てられた二ヵ国間集団防衛形式を維持して行くわけである。政府は集団防衛について常に考えており、国際連合の集団防衛には強い希望を持つている。地域的集団安全保障体制については、原則的に言えば、兵力提供の義務がなければ、国連憲章の下での地域的機構は結構だと思うが、太平洋条約機構のごときに対しては非常な考慮を要する。現に濠州、ニユージーランド、東南アジア諸国日本に対する誤解はまだ解消していないし、ややもすると日本経済侵略などと言われたりする状況であるから、地域的集団安全保障体制に参加することは、外国の側から見れば、日本が彼らの信用を回復することが必要であり、又内から見れば、これによつて日本がいろいろな義務を負わねばならないから熟慮を要する問題である。日本がかかる機構に参加することには、外国中に反対の空気が多いだろうし、又日本はこれに招請を受けていない。従つて仮にこのままで加入するとしても、各国の誤解は深まることがあつても、解消することはないであろう。今日日本として肝要なことは、先ず国内の態勢を整えることである」との答弁があり、次いで、「現在日本の有する自衛権は、国際法上認められる一般的のものではなく、対日平和条約、国連憲章第五十一条等にいう限定された意味の自衛権であつて攻撃を受けて始めて発動するものではないか。自衛権によれば武力行使が認められ、従つて戦争が認られるのか。日本が領土の外から武力攻撃を受けた場合、自衛権の発動により、他国の領土に入つてつてまで武力行使はできるのか。この協定により、日本は自由世界防衛の義務を負うに至つた考えるが、この点につき、海外派兵をしないことをはつきりさせるため、協定に留保を付する考えはないか。国民が納得しない海外派兵などしないことを法的に裏付けるため、協定中にこれを明記することが必要ではないか。協定第一条中に、日米両国政府が合意すれば、第三国に対し、装備、資材、役務等を供与する旨を規定しているが、インドシナヘも供与するのか。装備へ役務とは何か。若し日本インドシナに関する自由諸国の統一行動に参加を求められたらどうするか」等の質問に対しましては、「自衛権の狭義の解釈には同感である。ただ日本が攻撃を受けた場合、国連が措置をとるまでの間、日本は一般国際法の認める自衛権をも当然有するものと考える。自衛権は国の生存権であつて、独立国として当然にする固有の権利である。憲法第九条第一項で国権の発動と武力行使を禁止しているのは、国際紛争解決の手段としてであつて、それ以外の場合ならいいわけであるが、同条第二項で、戦力と交戦権を否認しているから、如何なる場合にも戦力を以てする戦争はできないことになる。併し自衛権のためなら、それが国際法上認められる自衛権の限界内においてであれば、武力行使は許される。武力行使は必ずしも戦争になるとは限らない。自衛権の及ぶ範囲については、理論と実際とは違い、四辺海に囲まれる日本は、陸続きの欧州諸国とは事情が違つており、むつかしい問題であるが、他国の領土の中にまで追いかけることは、自衛権の範囲内ではなかろうと思う。協定第一条中の規定は、日本が米国から受けた援助のうち、不要になつたものを他国の使用に供するというのであつて、即ち米国とMSA協定を結んでいる国にはこれを供与することができるわけであるが、この規定が適用されるのはずつと後のことである。この協定は、憲法上の規定に従つて実施するのであるから、役務のうちに軍事的役務を含むがごとき心配はない。次に、この協定は装備、資材等の援助を受けて、日本の防衛力を強めるためのものであつて、海外派兵のごときを問題にする協定ではない。海外派兵は夢想だもしないことであり、どこからも誘いをかけられたこともない。この問題は日本政府がみずからきめることであつて、派兵をしないことを他国によつて保証してもらうべき筋合いのものではない。かように本協定はこの問題と何ら関係のないものであるが、国民の間に不安を抱く向きもあるので、念のためその趣旨を協定調印の際の挨拶のうちで述べたのである。それで十分だと思う。従つてこの協定に留保を付したり、このことを明記したりする必要があるとは考えない。海外派兵は国民が希望すれば別だが、国民の多くはこれを欲しないであろうし、仮に憲法上可能であつても、これはすべきことではない。さようなことは政府は全然考えていない。日本に対して若しインドシナについての統一行動への参加要求があつたら断わるほかはない。又日本の国力がこれを許さない」との答弁がありました。  又、「日本にとつては中ソとの国交調整されないままに、MSA協定によつて、米国との連繋が進む点に一つの不安がある。中ソとの国交調整は積極的に進むべきではないか、政府構想はどうか」との質問に対し、「趣旨は同感であるが、中ソとの問題は、日本だけの問題ではなく、世界の問題である。この問題が解決すれば、現在の国際緊張は殆んど解決されるであろう。日本はこれによつて直接利益を受けるのであるが、問題の解決には時が必要である。解決方法としては、日本だけの力でなく、集団的結合による国際的解決とか、中ソに対する第三国からの助言なども考えられるが、問題は国際的空気が緩和することと、どういう方法で接触し、交渉するかという点にあつて、今のところ具体的方策は持つていない」との答弁がありました。  又、「農産物買付総額は幾らになるのか。買付価格と国内での売渡価格の開きから生ずる利得金はどう処置するのか。来年度もMSA法による農産物の買付をするつもりか。贈与分の千万ドルに相当する円貨はどう使うのか」との質問に対しては、「現在麦の市場価格は平均トン当り七十六、七ドルであるから、買付け総額は予定の五千万ドル一ぱいにはならない。大体小麦六万トンに相当する金額が残ることになると思うが、この残額は小麦などの買付に用いることになるであろう。買付と売渡価格との差額は、すでにこれを予定して、食糧の輸入補給金の予算中に織込んである。来年度の小麦輸入量の見通しは、作柄にもよることであるが、人口の自然増と粉食の増加等のため、国内の小麦の需要増加が予想されるので、平年度の平均輸入量百五十万トンを上廻り、大体昨年程度の輸入が必要となると思う。従つて来年度もMSA法による買付は望ましく、これについては新たに先方と交渉するわけである。贈与分三十六億円は、開発銀行を通じての融資に用いる方針であつて、今回は防衛産業のために使用することにきまつているが、今後農産物の買付の際、贈与分が与えられる場合は、一般産業にも用い得るよう努力するつもりである」との答弁でありました。その他の詳細は会議録によつて御承知を願いたいと存じます。  委員会は四月二十七日質疑を了し、引続き討論に入りましたところ、先ず中田委員は、「社会党を代表して本件に反対の討論をするものである。第一にMSA協定に浮彫りされた政府外交政策は、曾つて日独伊同盟が我が国を破局の運命に導いたと同じ轍を踏む虞れが多分にある。政府平和条約、日米安保条約によつて米国に追随し、遂に西欧陣営に踏み切つた、対米一辺倒の危険な吉田外交に強く反対する。第二に、MSA機構に入り込むのは、米国の世界政策に我が国の運命を従属せしめることである。この協定の根拠法たる相互安全保障法は、米国の利益を目的とするものである。即ちMS協定は、米国が日本をして中ソ両国を牽制せしめんとするものであつて、これは戦争への道である。米国が極東において目指すのは、共産勢力を抑えるだけでなく、蒋政権を再び中国本土に返さんとするものである。我々は現在の米国の政策に反対し、真の意味の親米政策を樹立せんことを希望するものである。第三に、この協定は、平和と安全保障に対し個別的及び集団的安全保障を無条件に信奉し、新たな要素である原爆、水爆等の兵器の発展に何らの考慮を払つていない。米国の要請のみによつてなされた自衛力の増強は、何ら我が国の安全保障にはならない。第四に、この協定憲法に違反し、且つ新たなる軍事義務を負つている。それは協定第八条によつても明らかである。又政府MSA協定に照応して防衛関係法案を提出した。それによれば、直接間接侵略に対する防衛任務を規定しているが、これは交戦権を想定しており、現行憲法に違反することは明白である。又協定第九条第二項の規定も何ら違憲性を阻却するものではない。第五に、援助とは名のみであつて、負担のみ多く、又、援助の受諾は我が国経済の自立を危くし、国民生活を根底より破壊する。これを要するに、米国の原爆、水爆の独占が破れた今日、MSAを受けて、対立する米ソ両陣営の一方につくことは、何ら我が国の安全を保障するものではない。隣りに敵国を作らない自主中立こそ最良の安全である。今、我が国のなすべきことは、未調印国との国交調整し、経済の自立体制を確立し、国民生活の安定を計ることである」と述べられ、  次に、鹿島委員は、自由党を代表し、MSAの軍事援助を受ける要なしとか、米国に日本が従属するとか、本協定国民生活を圧迫し、経済を困難に陥れるとかの反対論を反駁せられ、「MSA協定が万一成立しなかつた場合には、我が国政治経済上甚大な損害を受ける」旨を指摘して本件に賛成の意を表せられました。  次いで曾祢委員は、日本社会党は、国連による国際平和と安全の確保に期待し、地域的集団保障制度の必要を認める。そして我が国の自衛力は、その基盤である経済、社会秩序の確立が根本であると確信する。併し不平等な日米安保条約は根本的に改訂すべきであり、自衛力については、警察予備隊程度のものにとどめるべきことを主張し、「憲法を空文化し、国民生活を圧迫する再軍備には断固反対するものである。以上の観点よりMSA関係協定には反対である。一、一国防衛の基本方針は、自主独立の立場において国民の理解と納得の下に策定すべきものであるにかかわらず、政府は何ら自主的な計画を持たずして、米国の要請に応じ、憲法空文化の方法によつて防衛力の飛躍的増強と本格的再軍備を実行せんとしておる。我々は再軍備に反対する当然の帰結として、これと裏腹の関係にあるMSA協定に反対するものである。二、政府は長期防衛計画を明らかにするとの先の公約を無視し、且つ財政の長期見通しを的確に把握することなくして、この協定により再軍備に乗出さんとしているのは賛成できない。三、安保条約は、二国間の片務的な安全保障協定であるが、今度の協定は、二国間の共同防衛協定であり、安保条約による軍事的義務以外は含まないという政府の説明は納得ができない。かかる安保条約かち本協定への推移は極めて重大な国策の変化を示しておる。又この協定から、太平洋同盟条約、東南アジア条約機構等に発展するのではないかとの疑点に対し、政府が明確な説明を与えていないことも遺憾である。四、アメリカとの共同防衛、自由世界の防衛能力に対する寄与並び心日本の防衛力増強等の義務を規定する本協定は、憲法第九条に違反する疑が濃厚であるが、この点に関する政府答弁は甚だあいまいである。五、次に本協定自体は双務的安全保障条約であるから、理論上海外派兵への道が開かれていることは否定できない。然るに政府がこれを明確に禁止する措置を講じていないことは容認し得ない。六、顧問団の任務は日本の自主独立を侵害する虞れがあると認められるが、政府答弁は納得することができない。七、経済援助については、仮に政府の言うごとく若干の経済援助となつていても、他面再軍備に要する厖大な経費を考えると、財政経済上の負担は差引き極めて重いものとなる。八、最後に、対共産圏貿易の制限を、あらためて条約上の義務として認めたことは、我が国経済自立のための外交の本義にもとるものと思う。  以上の理由によつて反対の意向を表明する」と述べられました。  梶原委員は、緑風会多数の意見を代表し、「我が国は、自衛権に基き、その本然の姿に立ち帰らんとして、この援助を受けるものであり、防衛力増強は自主的に行われるものであり、又本協定の諸般の義務は憲法違反にはならないものであるから、本件に賛成である。ただ、MSA協定による防衛力漸増は現憲法で許される限界点であると思う」等の意見を述べられました。  次に、高良委員は、緑風会数名の意見と婦人層並びに青少年の願望を代表して、「アジアの危機と、アメリカ経済的破局を避けるため、人道的立場に立つて、本協定に反対する義務を有するものと信ずる。国連憲章第二条において全世界が希求するごとく、平和と安全と正義は平和手段によるべきであつて、武力行使は厳に慎しむべきものである。然るに、この協定は、自衛の名の下に日本再武装を義務付けるものである。戦力を放棄した日本国民が、軍隊であり戦力である陸海空軍を持つことは憲法違反である。真に祖国自衛のためだけの防衛力は、国力に応じた警察予備隊を以て足れりとする。この協定は多数国間の域外買付の名によつて戦略兵器の国際的基地化を図るものである。原、水爆戦の脅威を目前にして、人類を破滅から救うためには、国連憲章と日本憲法の真精神に立帰らねばならない。そして日本は、MSA援助を受けないで、平和に貢献する強い決意を持つ国となることが、アメリカに対して真の友情であり、又アジア諸国並びに共産陣営へ貢献し得るゆえんであると信ずる。日本の自衛隊が米国にとつて集団安全保障の大きな力となるであろうとの過大な期待を持たせることは、日米の真実な友情を損なう危険が強いので、本件に反対する」と述べられました。  最後に、鶴見委員は、改進党を代表し、「この協定には多くの不安と不満があるが、戦後、自由を回復した日本が、本協定によつて自由諸国と協力し、世界国家への考を持つて国際連合の方向へ進まんとし、又建設的な道を歩まんとしているものであるから、これに賛成である。ただ、この際政府に対し、本協定の実施に当つては、日本の自主独立性を貫くよう遺憾なきを期するよう警告し、注意を促したい」との旨を述べられました。  これを以て討論を終結し、四件を一括して採決を行いましたところ、これら四件は承認すべきものと多数を以て決定いたしました。  右、御報告いたします。(拍手
  22. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて、暫時休憩いたします。    午後一時四十六分休憩      ——————————    午後四時十四分開議
  23. 河井彌八

    議長河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  日程第一より第四までの四件に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。佐多忠隆君。    〔佐多忠隆君登壇拍手
  24. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 只今上程されました日米相互防衛援助協定批准、農産物購入に関する協定経済的措置に関する協定投資の保証に関する協定締結について私は日本社会党を代表して徹底的に反対する意思を表明いたします。(拍手)  反対の理由を申述べます前に、先ず国際的、国内的重要性を持つ協定法案審議を促進するためと称して、検察官をすら不当に弾圧をした吉田首相自身が、この極めて重要な日本の運命を決すべき協定審議する当議場に出席しないことに対して誠に遺憾の意を表するものであります。(拍手)  この日米相互防衛援助協定に反対する理由の第一は、これらの協定吉田内閣の誤つた国際情勢見通し外交方針の下に結ばれ、我が日本国の平和と独立と安全を保障するどころか、むしろ日本国アメリカヘの隷属を強め、戦争の危機へ追いやるからであります。世界は申すまでもなく米ソをめぐる二大陣営の対立の渦巻の中にあります。これに処して吉田内閣自由諸国と協力し集団的に安全を保障するという名の下に、この援助協定を通じてアメリカ合衆国政治的な反共軍事同盟を結んだのであります。これは現在の対立世界では、力による平和、より強力な軍事力によつて他方を圧伏する以外には平和なしとする、アメリカの軍事外交政策に追随するものにほかなりません。これが日本アメリカに隷属せしめ戦争の危機に追いやることは必然であります。この日米相互防衛援助協定は、その前文を初め随所に国際連合憲章の原則を誰つております。ところが国連憲章の原則とは、本来は政治的、社会的体制を異にしながらも、それらの各国が一つの世界を造り、殊に大国の協力の上に世界の平和を築くということであります。その後二大陣営の対立が激化をし、朝鮮動乱に及んで、両陣営のおのおのは軍事力によつて他方を圧伏して平和を招来しようと戦争に訴えました。併し数年に亘つて死闘を続けたにかかわらず、勝敗の決は得られず、いたずらに多数の尊い人命を失い、国土を荒廃に帰せしめるに過ぎませんでした。ここにおいて世界の平和は、相対立する陣営においてすら話合いによる以外にないことが自覚され、世界は大きくその方向へ転換をいたしました。(拍手)平和を愛好する諸国民が、殊に世界の勤労大衆が、この平和の方向へ大きな圧力をかけたことは言うまでもありません。去る二十六日からジュネーヴで開かれているアジア平和会議も、朝鮮の統一と独立を民主的な方法によつて平和的に解決し、インドシナに和平をもたらし、インドシナ民族の独立と自由とを確保することを目的として、米・英・仏・ソ連・中共の諸大国を初め関係諸国が話合う会議であります。殊にアメリカによる原子兵器の独占が失われ、米ソ両国とも原子爆弾と水素爆弾を保有する昨今では、軍事力に訴えることは世界の人類とその文化とを殱滅し、これらを地球上から抹殺する以外の何ものでもないことが実証をされました。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)ここに及んで世界の輿論は原子兵器の禁止、軍備の大幅縮小を要求をし、これに押されて国連の軍縮委員会も再び活発に活動せざるを得なくなりつつあります。本日からセイロン島のコロンボで開かれる東南アジアのインド・パキスタン・セイロン・ビルマ・インドネシア五カ国首相会議では、冷戦の渦の外に南アジアの平和地域を存続をし強化する方策が決定されるはずであります。このような国際情勢に処しては米ソ両陣営のいずれかにくみして国際緊張を激化することではなくして、そのいずれにもくみせず、自主中立の立場を緊持しつつ国際緊張の緩和を図ることこそ現下の急務であります。(拍手)この立場から我々は、日米相互防衛援助協定に強く反対をせざるを得ません。  反対の第二の理由は、この日米相互防衛援助協定が明らかに我が国の平和憲法に違反するからであります。(拍手我が国はこの協定によつてアメリカ合衆国から軍事援助を受ける代償として、日本の防衛力を増強し、防衛能力の増強に必要なあらゆる措置をとり、再軍備と軍需動員の義務を負うこととなります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)日米安保条約で日本アメリカから期待をされていたものが、今やこの協定によつて新たに国際的義務となつたのであります。日本はこの協定によつて、再軍備しなければなりません。さればこそ吉田内閣は、国内的には防衛庁法、自衛隊法によつて外部からの侵略に対する防衛をその任務とする自衛隊を設け、陸上、海上、航空の各自衛隊に分け、それを急速に増強しようとしております。これが陸海空軍であり、戦力であることは余りにも明白であります。(拍手)我々日本国民は憲法において、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄し、そのために陸海空軍その他の戦力はこれを保持せず、国の交戦権は認めないことをおごそかに誓つております。とすれば、自衛隊を設け、それを増強し、再軍備を本格化することが憲法に違反することは何人にも明々白々たる事実であります。(拍手)この協定の結果として増強される自衛隊を戦力なき軍隊などと称して憲法違反でないと強弁するがごときは、白馬は馬にあらずとする詭弁に過ざません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手吉田内閣のこの態度は、我々日本国民を愚弄し、日本国憲法の尊厳を冒涜するものであります。(拍手)この増強される自衛隊の内容、殊にその長期計画については、政府は口を緘して語りません。保安庁法第八次案(「岡崎さんよく聞きなさい」と呼ぶ者あり)保守三党案として伝えられるところによりますと、陸上自衛隊は現在六個師団十一万人を三カ年後には十個師団、十八万人に、海上は現在艦艇五万五千トン、人員一万一千人を五カ年後には十五万五千トン、三万五千人に、航空は零から五カ年後には航空機一万二千、人員五万人に増強をする計画であります。而もこの陸上自衛隊は、機関砲、無反動砲、ロケット・ランチヤー、迫撃砲、榴弾砲、加農砲、高射砲、戦車、装甲車、トラクター等によつて重装備をされております。普通科師団でも旧陸軍の四・八倍の火力を持ち、その射程や発射速度を勘案すれば六倍から八倍にもなります。機甲師団のごときは旧師団の実に十三倍から十六倍の火力を持ち、これに戦車の威力を加えると十五倍から二十倍に達すると言われております。海上自衛隊は七千トンの軍艦、二千トンを超える駆逐艦、千六百トンの潜水艦を備え、航空自衛隊はジェツ卜機すら持つております。これらの陸上、海上、航空の自衛隊が陸海空軍でなく戦力でないと言い得る者は厚顔無恥な吉田内閣以外にはありません。(拍手)  反対の第三の理由は、この援助協定によつて作られる自衛隊が専らアメリカに依存をし、アメリカ軍の補充部隊に過ぎず、アメリカ日本人部隊にほかならないからであります。更にこれに関連して自衛隊が海外に派遣される危険を含むからであります。すでに述べたように、我が国は、この援助協定によつて防衛力の増強、即ち再軍備の義務を負うこととなりました。従つて日本が再軍備するかどうかは、日本自身が独自にきめるのでなくて、この援助協定による条約上の義務できめられ、即ちアメリカによつてきめられることとなります。而もアメリカの援助は、日本の防衛力の増強と相関関係に置かれますので、防衛力増強の必要量の判定の鍵がアメリカに握られることとなります。つまりアメリカの意図によつて日本の再軍備の形態と内容が決定されるのであります。而もその装備は殆んど全部アメリカから供給をされるので、自衛隊はアメリカのお仕着せによる軍隊に過ぎません。装備をアメリカが供給し、いわゆる人的資源を日本が提供する軍隊が自衛隊であります。而もこの援助協定によつて六百五十人という多数のアメリカ軍事顧問団が設けられ、日本に供与される武器を管理し、援助の進捗状況を観察し、これを通じて自衛隊を監督指導し、訓練することとなるのであります。アメリカ日本人部隊というゆえんはここにあります。政府我が国が独立した以上、その国土を守るための自衛力が必要なことを強調をいたします。併しアメリカの装備による、アメリカに監督、指導、訓練される軍隊が何で独立国家の軍隊と言えましよう。(拍手)一般には、自衛隊を増強することはアメリカ駐留軍の撤退を促すためだと言われます。併し援助協定の第九条第一項では、この協定は日米安保条約を改変するものではないと規定しております。とすれば、自衛隊の増強は、アメリカ駐留軍の撤退を約するものではありません。アメリカ軍は依然として日本にとどまることになるのであります。よし陸上自衛隊がアメリカの地上部隊に代るとしても、海軍や空軍の基本的部分については、何ら撤退の意向は見られません。この点から見る限り、日本の自衛隊は、アメリカ軍の補充部隊に過ぎないと言えるでありましよう。この協定の調印に際して、岡崎外務大臣もアリソン大使も、海外派兵の義務も事実もないことを強調をいたしました。然るにこの協定国会審議が進むにつれまして、政府は、自衛権の行使としては海外出動もあり得ることを認め始めたのであります。今や政府は臆面もなく、自衛権の名の下に、武力行使は勿論、戦争も、海外派兵もこれを認めるようになつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは戦争の危険どころか、海外への戦争行動を許すことであり、我々の断固反対せざるを得ないところであります。(拍手)のみならずこの協定締結に当つて政府は改めて国連憲章第五十一条にいう、集団的自衛権を強調いたしております。この集団的自衛権とは、名は自衛権でありますが、実質的には相互援助の権利、即ち、たとえ自国が攻撃されなくとも、連帯関係にある他の国が攻撃された場合は、自国が攻撃されたとみなして、他国を援助する権利であります。この協定日本の自衛のためだけでなく、他国への援助のために海外に出動する可能性すら含んでおります。すでに対日講和条約が調印されましたサンフランシスコ会議における演説で、トルーマン大統領はこのことを明言いたしました。即ち、太平洋における平和を維持するための適当な安全保障取極にできるだけ早く日本を包含することは絶対に必要である。これは日本自身を保護するためにも、又他の諸国を保護するためにも必要である。太平洋における防衛のため、地域的取極を発展させることは、創設されることのある日本の防衛軍が太平洋における他の諸国の防衛軍と連合するに至ることを意味すると述べております。インドシナにおける統一行動、対中共共同警告、太平洋防衛同盟等が頻りに提唱されております昨今、我が国がこれに組入れられ、海外派兵の可能性が現実化する危険なしとは申されなくなつたのであります。この点こそは我々が生命を賭しても反対をせざるを得ない点であります。(拍手)  反対の第四の理由は、この援助協定によつて中共やソ連との貿易が著しく制限され、両国との国交調整の途が全く鎖されるからであります。この協定の附属書Dによつて日本アメリカ合衆国等に追随して、中国やソ連との貿易を統制すべき義務を負わされたのであります。アジアに位し、隣国として中国を控えておる我が国が、中国との貿易なしには経済自立のできないことは余りにも明白であります。今やヨーロツパでも東西貿易の拡大が極めて重要な問題となつて参りました。イギリスの首相チヤーチルすらイギリスの議会において、東西貿易の拡大こそは、東西間の平和促進の基礎であると喝破いたしたのであります。ヨーロッパでは、イギリスは勿論、フランスも、西ドイツも、イタリーも、デンマークも、オーストリアも、殆んどすべての国が東西貿易の拡大に全力を注ぎつつあります。最近ではアメリカですら、この希望が高まつて来ました。先に開かれた国連の欧州経済委員会の総会でも、東西貿易の拡大に関する決議がなされ、引続いて四月二十日からはジユネーヴで東西貿易会議が開かれているはずであります。  現在我が国ではアメリカ経済援助は望めず、アメリカの景気後退のために、ドル地域への輸出はますます減少をし、東南アジアヘの輸出も多くを期待できません。国内市場もデフレ予算、金融引締め、投資削減、消費節約のためにいよいよよく狭ばまりつつあります。外国市場も国内市場も日に日に狭くなりつつある昨今、中国市場の打開が望まれるのは理の当然でありましよう。これまで我が国は、実際は背後からアメリカに強いられつつも、一応形式的には日本の自由意思中共貿易の制限をやつて参りました。この援助協定を結んだあとは中共貿易の制限は条約上の義務となります。而も、中共貿易の制限に最も厳重なアメリカに追随をしなければなりません。この協定によつて、軍事上だけでなく、貿易上にもアメリカに従属することとなります。而も、MSA協定の中に、このような貿易上の制限が加えられているのは、韓国とスペインと南米の一、二ヵ国に過ぎません。ヨーロッパ諸国では見られぬ制限がこの協定の中に書き込まれておることは、我々の何としても許しがたい点であります。  反対の第五の理由は、この協定に上る援助が専ら軍事援助に、而も完成武器の援助に限られて、経済援助が全くないからであります。更にこの援助協定の結果、むしろ経済の不安定が激化し、国民生活が危殆に瀕するからであります。政府は昨年の五、六月頃この援助協定を問題にし始めたときは、援助は軍事援助に限られず、経済援助も望み得ると宣伝をいたしました。事実この協定交渉に際しても、たびたび経済援助を要請したのであります。然るにアメリカの本年度予算では勿論、来年度予算でもそれを得る見込は全くありません。尤も、アメリカの余剰農産物五千万ドル分を日円で買入れ、その二〇%即ち一千万ドル分が贈与され、何がしかの経済的プラスはあるでありましよう。併し、日本での域外買付に充てる百四十四億円は勿論、日本に贈与される三十六億円すら、これをMSAに言う経済援助と観念すべきでないことをアメリカ側に厳しく申渡されております。これらの協定に関連して日本側が使いたがつた経済援助なる文句は、すべてアメリカ側から削除されたのであります。のみならず、この援助協定のために軍備が拡張され、財政負担は逐年急激に増加し、社会保障費や教育文化費が削られ、軍需産業は平和産業を圧迫するに至ります。軍事費を削除して国民生活を守り、平和産業によつて我が国の自立経済を建設せんとする我々が、この援助協定に反対するゆえんがここにあります。  反対の第六の、そうして最後理由は、この協定疑獄の汚れにまみれた吉田内閣の手によつて取結ばれたものであるからであります。吉田内閣は、これまでこの相互防衛援助協定を結び、防衛庁法、自衛隊法を制定して、日本の再軍備を本格化し、教育二法案、警察法によつて再軍備の精神的、権力的補案するために、たびたび理不尽な総選挙を行い、多数派工作をやつてつたのでございます。それがために吉田内閣は多額の資金がこのため必要となり、ために神聖なるべき議会の審議権を独占資本家に売り、国民から絞り取つた膏血を独占資本家に与え、その一部をかすめ取つたのであります。(拍手)それが今度の汚職にほかなりません。而もその責任の追及が与党の中枢部に及ぶや、内閣の権力を以て検察権を圧迫し、汚職の責めを強引に押し潰そうとしております。汚職の政治責任を弁えぬ吉田内閣は、骨の髄まで腐り切つております。(拍手)この点は極めて穏健な緑風会をすら憤激をさせ、温厚な廣瀬議員まで口を極めて問責をした通りであります。国民はこの吉田内閣に一片の信頼をすら寄せず、挙げてその退陣を迫つております。かかる汚れに満ちた吉田内閣国民に全く見放された吉田内閣、この吉田内閣の手によつて結ばれた協定に対しては、我々は何としても反対をせざるを得ないのであります。(拍手)  要するに、この日米相互防衛援助協定は、光輝ある日本の平和憲法に違反して、非武装日本を再軍備し、それを通じてアメリカヘの隷属を強め、日本に安全と平和を保障するどころか、逆に日本を戦争の危機に追い込むものであります。かるが故に、我々はこれらの協定断固反対をするものであります。(拍手)     —————————————
  25. 河井彌八

    議長河井彌八君) 鹿島守之助君。    〔鹿島守之助君登壇拍手
  26. 鹿島守之助

    ○鹿島守之助君 私は自由党を代表いたしまして、只今上程せられました日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定について承認を求めるの件外三件に対し賛成の意を表するものであります。  この相互防衛援助協定、いわゆるMSA協定については、昨年六月末日、日米間の交換文書が発表されて以来今日まで、盛んな論争が交されて来たのであります。併しながら、こうした論議の間にMSA援助の輪廓は次第に明確となり、無用の不安も漸次薄らぎ、国民の大部分もすでにMSA協定締結理由とその必要性をほぼ納得するに至つたというのが、今日の実情であると思考するものであります。(拍手)  このMSA協定は、先になされた政府当局の説明によれば、米国側との交渉を開くに当り、政府は予備的な問合せを行なつて我が国の国情に合致するかどうかを十分に研究し、この援助が我が国の防衛力増強に役立ち、我が国経済にも好ましい影響をもたらすものと判断し、而も我が国憲法その他の法規の範囲内でこれを受け得るものと認めた後、初めて交渉を開始したのであります。昨年七月交渉開始より本年三月調印に至るまで八カ月間に亘り、互譲の精神を以て行われた交渉は、日米両国をして相互の立場を完全に理解せしむるに十分であつたのでありまして、その結果でき上りました協定は、米国が他の諸国と締結しております同種の協定と比較するとき、我が国の事情を参酌した特殊規定を盛り込んでおるのであります。即ちこの協定に伴う我が国の義務は、日米安全保障条約に基く義務以上に何ら新しいものはないということを明らかにした点、又協定の実施が日米両国それぞれの憲法の条章に従つて行われる旨を明確にして、解釈上疑義の余地なからしめている点など、政府の苦心の跡が窺われるのであります。私は交渉に当つて政府とつた慎重な態度と、でき上つた協定に見られる周到な用意に対し、先ず以て深甚なる敬意を表するものであります。(拍手)ここに上程せられましたMSA協定及びこれに関連する三つの案件に対しては、私は全面的に賛意を表するものであります。  そこで、今これらの案件について個々にその内容を論ずる代りに、私は総括的に反対論の主要なるものを取上げ、これを反駁し、又本協定成立しなかつた場合如何なる事態が生ずるかを説明することによつて、原案賛成の意思を明確ならしめたいと存じます。  反対論の第一は、国際情勢について我々とは異なつた見解に立ち、今我が国が防衛力を増強する必要は認められない、従つてMSA協定を結んで軍事的援助を受ける必要もないとする議論であります。最近、特にヨーロツパにおいては北大西洋条約機構、いわゆるNATOの強化、マーシヤル・プラン、これに引き続くMSA援助等によつて差当りソ連の侵略の危険が遠のいたように思われます。併しながら、全世界が共産主義対自由主義の二大陣営の鋭い対立となり、その軍備がますます強化せられつつある折柄、大戦勃発の危険は決して解消されておらず、ソ連は専ら侵略の時を稼いでおるものと認められております。殊に東亜の情勢は楽観を許しません。曾つて帝政ロシアはドイツの勃興、ドイツ、オーストリア、イタリアの三国同盟によつて、欧州への野心を一時放棄することを余儀なからしめられ、その結果シベリア鉄道を急いで建設し、満州及び朝鮮への侵略を試み、明治三十七年日露戦争が起つたことは皆様もともとと御承知のことと存じます。今やソ連はNATOの強化によつて欧州の侵略が困難となれば、アジアにその鉾先を転換することは必至の情勢であります。朝鮮に対する攻撃は日本を狙つたものであり、インドシナ戦争は東南アジアの支配を企図しておるものであることは疑いありません。  去る二十六日から開催せられたジユネーヴ会議は主として朝鮮並びに仏印の問題が議題に供せられておりますが、今分のところ、その満足な成果は期待されておりません。私はこれらの諸情勢及び諸事実からして、国際情勢が緩和したとか、危機は遠のいたとか、或いは近い将来戦争の勃発を予想させるような兆候はないとかの時局判断は現実の事態に目を蔽うものであり、単に認識不足であるばかりでなく、甚だ危険であると断ぜざるを得ないのであります。私は東亜に関する限り、危機ますます切迫しつつありと警告したいのであります。  アメリカの下院外交委員会のジヤツド特別調査団の報告書にも、東南アジア並びに太平洋各国は現に攻撃を受けておるか、或いは切迫した攻撃の危険にさらされておる、各国いずれも共産党の破壊的活動の犠牲となつておる、従つて各国いずれも窮屈な資力を割いて軍備を整えるほかない実情だ、これら各国が生き延びようとするならば、他に方策はあり得ない、と報告し、その切迫した実情を指摘しておるのであります。私は遺憾ながらこれが真実であることを認めざるを得ないのであります。そうしてこのことは、ジユネーヴ会議にもかかわらず、仏印における戦争、これをめぐつての列国の態度が実証して余りありと存じます。平和を欲するならば戦いに備えよ、平和を欲するならば戦いに備えよとはローマの政治家の有名な格言であります。防備はいわゆる必要悪、ネセサリイ・イーヴルの一つで、なくて済むものならばそれに越したことはありませんが、スイス、スエーデンのような平和の国も多数の常備兵を整え、世界大戦に際し辛うじて中立を維持し得たことは余りにも有名な事実であります。軍備は実に平和のためなのであります。  我らの真の希望は、再軍備でなく軍縮であります。我らの最も念願するところは我が国を取巻くアジア共産諸国の軍縮であります。これが少しも実現せられず、むしろ反対に日々強化せられつつある実情においては、その侵入を防ぐためには自衛力の強化こそ真に余儀ない措置であります。MSA協定こそは我が国の安全の見地より真に止むを得ないものであります。本協定援助こそは必要最小限度のものであつて、これなくしては日本の国際間における生存は許され得ないものと確信するのであります。  反対論の第二は、MSA協定を結んで援助を受けることは、アメリカヘの日本の従属化であるという主張であります。その理由の一つは、この協定締結日本の自由意思によるものでなく、アメリカの強制によるものだというのであります。だが、これは全くいわれないことであります。なぜならば、この協定は日米両国政府の代表者が慎重審議の上、両者の完全な自由意思により調印されたというだけでなしに、この協定が効力を発生するにはこの国会承認を必須の条件としておるからであります。この国会においては何らの強制もなく、自由意思が尊重せらるべきことは申すまでもないことであります。MSA協定を結ぶことによつて日本が従属化するという主張のもう一つの理由は、援助を受ける条件としてアメリカの相互安全保障法第五百十一条a項所定の六つの義務が課せられており、この義務によつて日本アメリカに拘束せられ、その支配下に立つことになるというのであります。併し、MSA協定を結んでおるのはひとり我が国だけではありません。同種の協定はイギリス、フランス、イタリア初め六十余国がアメリカとの間にすでに結んでおるのであります。併し、そのためにイギリスがアメリカの属国になつたという話も聞かなければ、又フランスやイタリアがアメリカの隷属下に陥つたという事実もないのであります。これら諸国は自国の安全のためにアメリカ軍の駐屯を認め、又顧問団の在駐をも認め、いわゆる集団安全保障の目的を達成しようと努めているのであります。特に我が国の場合には、すでに安保条約がありますので、今回のMSA協定による軍事的義務の履行も、安保条約に規定するもの以上に出ることがないという明確な規定を置いておやのであります。この点は、アメリカが他の諸国と結んだ同種の協定に見られない特異の点でありまして、前にも述べました通り、この協定日本国憲法の規定に基いて実施せられるという規定と共に、我がほうの自主的な立場をはつきりと打出しております。このようにMSA援助を受けることは、日本アメリカに従属することであるという議論は、全く根拠がないばかりでなく、ためにせんとする悪意の宣伝であり、又近代における集団防衛の何たるかを理解しない者の言と言わざるを得ないのであります。(拍手)  反対論の第三は、MSA協定は、日本国民生活を圧迫し、日本経済を困難に陥れるという議論であります。即ちMSA援助を受けると、自衛力増強の義務化を伴い、国民生活の向上に必要な経費は削減されて国民生活は圧迫される。平和産業は抑えられ、防衛産業だけが強化されて、経済の健全な発展が阻害されるというのであります。我が党は、これまであらゆる機会に表明して来た通り国民生活を犠牲にしてまで防衛力を増強する意思は持つておりません。(「持つちやいかんのだ」と呼ぶ者あり)国力の充実に応じて自衛力の漸増を図るのが我が党の一貫した政策であります。併しながら敗戦後の日本経済力を以てしては、独力で自衛力の充実を図ることは殆んど不可能であると言つても過言ではないと思います。この不足を補うのがMSAの援助であります。イギリス、フランスのような富める国でもMSA援助を受けているのであります。即ちMSA援助は、自衛力の増強が国民生活を圧迫しないようにとの配慮を基礎としているのであります。協定の前文にも、経済の安定が我が国の防衛能力の発展のため欠くことのできない要素であることが明記されております。  更に余剰農産物の円貨による購入に関する協定経済的措置に関する協定並びに投資保証協定は、我が国経済に好ましい影響を与えることを確信するものであります。我々は、この種の経済援助が今後引続き供与せられるよう、又その金額も更に増加せられるよう、政府において一層努力せられんことを要望するものであります。  なおMSAに対する反対論に、憲法違反の問題、海外派兵の問題等がしばしば論ぜられるのでありますが、自衛力の増強が戦力とならない限り、政府しばしばの説明の通り憲法違反とはならないものと確信します。但し将来自衛力増強が戦力となる程度に至らば憲法改正を必要とすることは、我が党も又これを認めるところであります。  更に又、海外派兵の問題については、このMSA協定のどの条文にも、これを義務付けるようなものは何もありません。(「言葉だけでは駄目なんだ」と呼ぶ者あり)しかのみならず、調印の当日の岡崎外務大臣及びアリソン大使の挨拶の中で、この懸念を一掃する言明の行われていることは周知の事実であります。この種言明が信頼すべきものであることは申すまでもありません。これらの反対論を今更改めて反駁する必要もないことと存じます。  最後に、MSA協定成立しなかつたならば如何なる事態が生ずるのでありましようか。先ず第一に考えられることは、日本がMSA援助によつて自衛力を強化しないならば、アメリカは永久に撤兵することができず、かくては日本は永久に独立国の実を挙げ得ないのであります。現在アメリカは、その軍隊の引揚げを希望しております。これを可能ならしめるような措置を講ずることが、安保条約の義務の履行でもあり、又日本独立の真の実を挙げる途でもあります。若し日本がMSA援助を受けず、日本に準備ができないで、今直ちにアメリカが撤兵したら、如何なる事態が生ずるでありましようか。(「日本人が守るよ」と呼ぶ者あり)曾つて西ドイツのアデナウアー総理は、若しアメリカが撤兵すれば、ドイツは直ちにソ連の衛星国となるであろうと言つたが、日本も同様の運命に陥ることは疑いの余地はないと存じます。(拍手)  第二には、MSA協定承認しなかつたならば、当然日米関係の悪化を予想せねばなりません。現在我が国の重大問題である沖縄、小笠原等の復帰問題、戦犯釈放問題、ビキニ被爆問題、域外買付問題、外資導入問題等はすべて解決不可能となり、更に又この日米間の不和を利用、又は悪用する無責任な第三国も生ずることは疑いありません。これを要するに、MSA協定成立の場合は、日本政治経済上の損失は量り知るべからざるものがあります。  以上のような次第でありますから、私はMSA協定外三件が速かに本院においで承認せられ、日米両国親善関係が一層深められ、ひいては世界平和に寄与せんことを衷心より希望して、私の賛成の討論を終ります。(拍手)     —————————————
  27. 河井彌八

    議長河井彌八君) 加藤シヅエ君    〔加藤シヅエ君登壇拍手
  28. 加藤シヅエ

    ○加藤シヅエ君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今議題となりました日米相互防衛援助協定外三件の条約に承認を与える件に対しまして反対の意を表明いたさんとするものでございます。(拍手)  私の所属する政党が如何なる論拠からこれらの条約に賛成いたしかねるかにつきましては、すでに昨日外務委員会の討論におきまして、同僚曾祢委員より法理論的に、条約の不備、矛盾につきましては、委曲を尽して論じられておりますので、私はここに簡単ながら一般論としての反対の立場を述べたいと存じます。  考えてみますと、科学の進歩が国際関係を複雑且つ緊密化した今日、一国の政治において外交政策が占めるところの地位の重要性は昔日のそれに比ぶべくもありません。外交は実に国の羅針盤ともいうべきものでありまして、国家間の外交関係がその調整よろしきを得ますれば、世界人類は繁栄を楽しむことができましようし、又一国の外交が適切に指導されますならば、その国民は平和のうちに生業にいそしむことができるのでございます。六年有半の占領下から解放された敗戦国日本か、今、自国の政治経済自主性を確立し得るのも、或いは名のみの独立で経済政治的隷属に甘んずるのも、一にかかつて国の外交政策にその大きな方向付けが委ねられているということを思いますときに、国民只今議題となつておりますところの日米相互防衛援助協定交渉過程におきまして、孜々の積極的な期待をこれにかけ、或いは数々の否定的条件を頭に画きまして、日米両国政府交渉の推移を見守つてつたのでございます。期待をかけたと申しますのは、MSA協定が多分に経済的援助をもたらすものであるかのごとき政府の思わせぶりに対してであり、否定的条件と申しましたのは、よもや政府日本国憲法に定めたる国の性格をゆがめるごとき条約を結ぶということのあり得ないことを信じておつたからでございます。(拍手)然るに八カ月の長日月を経過して去る三月八日調印せられました本協定を見まするとき、国民の期待の面は全く裏切られ、又、我々が越えてならぬと信じている一線はもろくも踏みにじられてしまいました。即ち、日本MSA協定締結することによつて政府憲法が否定しているところの軍備を持つかのごとく義務づけ、而も戦力は持たぬかのごとく説明される、世にも不思議な内容を持つところの条約の出現とは相成つたのでございます。この条約の内容全体につきまして一貫して表明されておりますことは、日本の自主独立性の欠如でございます。私ども日本社会党といたしましては、徒らに狭隘なる民族意識の過剰を以て自主独立を叫ばんとするものでもなく、むしろ進んで、自由世界、民主陣営の諸国家間に交わつて、これとの協力提携をいたさんとするものでございますが、同時に、日本の太平洋に占める地理的環境、歴史的役割等に鑑みまして、我が国が自主独立の外交によつて全世界との友好関係を保つごとが日本外交の本義であるということを信じているものでございます。(拍手)然るに、このMSA協定締結は、独立国家としての日本国の防衛の基本方針を定めることを促し、而もその防衛方式がたまたま転換期に直面したアメリカ防衛計画に意のままに追随することを余儀なくされたのでございます。(拍手)  我が日本社会党は、無責任なる無防備、無抵抗論を支持いたそうとするのではございません。主権国家日本の安全保障につきましては、国際連合の憲章が掲げるところの国際平和と安全の確保とを理想とするものでございます。併し国連の理想未だ実現されざる現段階におきましては、国連の安全保障の補助としての地域集団保障制度の必要を認めるものでございます。主権国家が自衛権を有することの当然なるは論を待つまでもございませんが、この自衛権の裏付けとなるべき自衛力とは、秩序ある社会制度、公正なる経済活動、健康にして文化的個人の生活等を基盤として培養されるところの国民の自衛意欲の発露、これこそが百の軍備に優る国の守りであるということを私どもは信じております。(拍手従つて、現行憲法の下において、又、困難なる経済事情の重圧から未だ脱却しきれない国民経済実情をも勘案いたしまして、差当り我が党は、国内治安維持のためには警察予備隊程度のものを認めんとしているものでございます。然るに平和回復後、政府は、形式内容共に未だ甚だ不備と思われます日米安全保障条約によつて我が国の内外の治安を米国駐留軍の手に委ねて参りました。それが最近の国際情勢の変化と米国における新政権の出現に伴う米国の国防外交方針の変化は、在日駐留米軍の漸減を必要といたし、これに見合う日本の防衛力増強を強要するに至つたのでございます。日本の防衛力増強を強要するアメリカ、それは昭和二十二年五月施行された日本国憲法に大胆にも戦争放棄を謳わしめ、「世界に類なき平和憲法」とこれを謳歌した、あのマッカーサー元帥その人を極東総司令官として東京に駐在せしめたその国でございます。めまぐるしき米国の対日政策の推移、極端から極端への豹変、併し私は今ここで他国の政情をとやかくと非難いたすのではございません。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意」していると申します現行憲法が示すところの日本国家の性格が問題なのでございます。国際間の紛争を武力に訴えることが最善唯一の解決の方法と思惟したところの彼の軍閥政権の、その誤まりの故に、日本は輝ける三千年の歴史に無条件降伏の汚点を刻印いたしたのでございます。この汚辱、この痛恨を喫した国民感情は、たとえそれが占領軍の勧告、助言の結果でありましようとも、おおらかに平和思想を讃美し、戦争放棄を以て新時代に処する日本国の性格を打ち出したのでございます。このように平和国家を自認する我が国民の心理、感情、又、我らの乏しき資源と経済力は、何と説明いたしましようと、およそ軍備らしきものを持つ資格と条件を持ち合わしておらないのでございます。(拍手)然るに政府は、朝鮮における停戦協定成立による特需減退に今更のごとく周章狼狽いたし、特需に代るMSAの経済援助をと、国民の目を眩惑させ、対米関係を中心とする情勢の変化に対処する政府所信国民に訴えることもなく、日本の防衛力を増強せよとのアメリカの要請に対しては、唯々諾々、終始受身の態度を以て、MSA交渉に当つたのでございます。その結果は、保安庁法の改正案に伴う本格的再軍備に着手いたし、防衛力の飛躍的増強を実現せんとし、二十九年度の政府の言う緊縮予算におきまして、一般財政、経済、社会、文教政策等、軒並み減額の中に、ひとり防衛費、対外費予算のみが飛躍的な増額を見ているのでございます。防衛費が国費全体の上に占める割合は一三%余となつております。これを米英その他欧州諸国の軍事予算のそれと比較をいたして、まだまだ重きに失するとは言い難いと再軍備論者は申されますが、年間千三百七十億円、このどこの役所よりも一番多額に金を使う保安庁費は、全額不生産的な目的に消費される金であり、制服制帽の軍人を作り、その軍隊を維持する金であり、そうして乏しき国民の財布よりこの軍備に注ぎ込む金によつて必然的に軍人の勢力は成長し、肥満し、国民は痩せ衰えて行くでございましよう。(拍手)又国民の血税に賄われて軍国主義反動思想は前進し、平和的民主主義は後退するでございましよう。敗戦の教訓の上に購つた我らの成長期にある民主主義を、末だ若木の根も浅いこのときに、何の理由で再び軍靴で踏みつけようとするのでございましようか。無思慮、無謀、ただアメリカの要請の前には足腰立たぬ神経痛患者たる政府のMSA受諾は、(拍手日本国家、国民の要請というよりは、吉田内閣日本国を防衛する基本方針の欠如と、その自主性の喪失の故と断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)  政府MSA協定調印は、ただに全き本末顛倒であるばかりではありません。この協定が何らの長期防衛の計画を持つておらない、こま切れ的計画であることの弱点を遺憾なく暴露していることも反対の大きな理由として指摘いたさなければなりません。かねてより計画なきことを以て特徴とする吉田内閣ではございますが、いやしくも、一国の防衛計画が、自国の資源、財政の長期見通しを的確に把握し、これと脚み合う計画も立てずに、外国の力に屈服して再軍備に乗出す契機を作るこのMSA協定は、まさに暗中摸索の防衛計画であり、往年の軍閥内閣が猪突匹夫の勇はあれど、憐れ頭脳粗雑にと、精密なる科学的知識を必要とする近代戦の装備を計画することに全く無能力であつたため、乏しき資源、資材の徒らなる浪費はあれど、効率高き資源、資材の活用能力に欠けて、敗戦を喫した苦き経験を思い出すのでございます。(拍手)  このMSA協定に対する我が党の、否国民多数の不満は、かくして数え上げれば際限ないのでございますが、そり中でも私どもに納得できぬ最大の問題点といたしまして、この条約第八条か挙げられるのでございます。即ち安全保障条約の下では、日本の防衛責任日漸増的に負うことを米国側が期待するにすぎなかつたのが、本協定第八条は、防衛能力増強に必要なすべての合理的措置をとると約束し、更に自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与すると、明らかに軍事的義務負担を約束してしまつたのでございます。日米安全保障条約に見られる片務的な防衛協定を、日米相互防衛援助協定によつて双務的なものに発展させたばかりでなく、このことは同時に、従来の二国間条約から多数国集団保障制度への転移という重大な外交と安全保障の基本的変化を含むものでございます。かかる協定締結からPATO—太平洋同盟条約、又はSEATO—東南アジア同盟条約に発展するのではないか。少くとも米国の防衛外交政策を中心とする集団安全保障圏内に誘い込まれる途を開いたのではないかとの疑問を抱かせるものでございます。  かくして日米共同防衛から出発する軍事的義務が、更に自由世界の第三国にまで拡大される危険を蔵するこの協定は、又理論上海外派兵の途さえ開かれているということが、政府の言うに落ちず語るに落ちる答弁によつて明らかになつたのでございます。即ちMSA協定が定めるところの、日本が保持、行使する自衛権の範囲及びその発動状件は、政府の説明によりますと、国連憲章第五十一条の制限下の自衛権であることが明らかになりましたが、海外派兵の直接義務は生じないといたしましても、協定自体が双務的安全保障条約であることは、理論上海外派兵要求のあつた場合、拒否し得ることが明文化されておらないのでございます。ましてや原子爆弾が降つて来たら、その根源を抑えようという外務大臣がおられ、相手が大陸から長距離砲を撃つて来たら、我が国土は自衛のために、その発砲の根源地を抑えなければならぬと勇み立つ保安庁長官の居並ぶ現内閣の下に、たとえ協定第九条におきまして、「自国の憲法上の規定に従つて実施」云々とございますけれども、協定そのものがすでに憲法を無視し、これを空文化しているこの現実の前に、今更憲法を引合いに出すという政府の意図は、まるで呪文を唱える迷信宗教に類似するものを私は見るのでございます。国民の不安焦躁はどうすることもできません。  政府は、このMSA協定が軍事援助を中軸として、経済援助の引出しに失敗したことを糊塗せんとして、五千万ドルの農産物の購入に関する協定経済的措置に関する協定を結んで、購入農産物見返円貨の日本における域外買付及び購入総額の二〇%を贈与とすることをきめました。これらの経済的措置が、乏しき日本に多少なりとも潤いになることができますれば、歓迎すべきでございましようが、その資金は挙げて防衛産業の肥料となるにとどまり、MSA体制による日本経済の不均衡を促すことになる危険性を孕み、防衛力増強と相待つて政治的、経済的に外国への依存度を高めんといたしていることは、返す返すも遺憾至極と考えます。  吉田、岡崎外交の最大の特徴は、協力の精神と依存の媚態の混合でございます。今日科学の進歩が人類史上最高峰に達し、原子力兵器、水素爆弾を二つの陣営が互いにこれを持つております時、人間社会は、相互の友愛、信義に基く協力精神によつてのみ、この危険な破壊力を持つた科学武器を、人間生活の幸福増大の目的に使用することが可能になると思います。人類社会の幸福は、自由にして毅然たる能度を堅持するところの独立国家国家との協力融和の上に築かれることを思いますとき、自国の憲法の死文化をあえてする吉田内閣の代表的所産たるこのMSA協定ほか三件に、以上の理由を以て承認を与えることに不賛成の意を表明するものでございます。(拍手)     —————————————
  29. 河井彌八

    議長河井彌八君) 梶原茂嘉君。    〔梶原茂嘉君登壇拍手
  30. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は緑風会を代表いたしまして、只今議題となつておりまする日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定その他三件の承認につき賛意を表するものであります。  今、簡明にその理由を申述べたいと思います。独立の国家がその防衛上固有の自衛権を有しておりますることは、極めて明白なるところであります。我が国はその独立と主権をサン・フランシスコにおける平和条約によつて確認せられ、同時に又我が国が国連憲章の新たなる理念に基く個別的又は集団的の自衛の固有の権利を有することも確認せられたのであります。冷い戦争の渦中において、特に朝鮮の戦乱による緊迫した世界情勢の下において、何らの武力なくして、独立した我が国として、直接間接の侵略に対してこの国土を防衛するため、国連憲章の体制内において日米安全保障条約を締結し、アメリカの戦力によつてその独立と平和の維持を図ることとなつたのでありまするが、このことは、単に国内の問題ではなく、好むと好まないとにかかわらず、厳然たる国際上の事実であつて、今これに眼を覆い、この現実を無視して他を語ることはでき得ないのであります。而して日米安全保障条約に基きまするアメリカの防衛措置百の根拠の一つは、我が国の固有の自衛権の行使という点に存在するのでありまして、このことは看過してはならないところと思うのであります。  日米安全保障条約は、我が憲法における戦争放棄の建前を前提として、これを尊重し、これを保障する意味合いでは決してないのであります。このことは疑の存しないところであります。従つて我が自衛力の漸増の期待に基礎を置きまする暫定的措置であることも言うを待たないところであります。憲法の条章のみを以てして一国の防衛を期待することは残念ながらでき得ないのであります。それが可能なるためには、世界の客観情勢の裏付があるか、或いは又国際条約の裏付を必要とするのであります。然るに遺憾ながら平和条約におきましても、又国連憲章におきましても、これを肯定してはいないのであります。我々は自衛力の漸増を容認するものであり、憲法の許容いたしまする範囲においての防衛力増強の施策はこれを是認いたすものであります。もとより自衛力の増強は、我が国の自力によつて作り上げることが肝要なことであり、又好ましいことであることは、これは言うまでもないところでありますけれども、日米相互防衛援助協定は、アメリカ駐留軍の撤収と関連して我が自衛力の増強と、自衛権を可能なる範囲において我が国自身の手で行使せんとする意図に対し、これに援助を供与せんとするものであります。従つて自衛権及びその行使についてのアメリカヘの依存度を軽減せんとするものであります。私はこれを拒否するに正当なる理由を見出し得ないのであります。  日米相互防衛援助協定によつて我が国は新たに各種の義務を負うに至りまずることは当然であります。その重要なる義務の一つは、日米安全保障条約によりまする軍事的義務の再確認のほかに、我が国の防衛力の維持発展及び我が国の防衛能力の増強に関する義務であります。これらはまさしく協定上の義務となるのではありまするが、自衛力、防衛能力の増強は、本来我が国自身においてその方針に基いて行われるものであり、右の条約上の義務はこれに即応するにとどまる性質のものであつて、これによつて我が自主性を阻害するものではあり得ないのであります。いま一つ重要なる義務は、他の自由諸国の防衛力及び防衛能力の維持発展に寄与することであります。今日一国単独にて、その国の防衛の全きを期し得ないことは当然であり、従つて何らかの形において集団的防衛体制の必要を認めざるを得ないのであります。我が国が自由世界の一員として、国家の防衛について他国の援助を受けるものでありまする以上、他に対して可能にしで合理的なる協力を行うべきことは、これはむしろ当然の責務と言わねばならんと思うのであります。而して我が国の防衛力の増強そのものが、右の寄与の最大のものであることは、これ又言うを待たないところであり、而もこれらの義務の具体化につきましては、もとより我が国立場において自主的になし得るものであることも条約上言うを待たないところであります。従つて私は本協定による各種の義務について、協定上別段の不安はあり得ないと思うものであります。  国の行動の規範は、国内的には憲法であり、国際的には条約であります。条約と憲法との優元関係は疑義の存するところではありますが、本協定上の諸般の義務の実施は、本協定第九条第二項によりまする「憲法上の規定に従つて実施する」というこの条項を待つまでもなく、我が憲法の各条章によつてこれを行うことが可能であるのであります。協定自体憲法と相反することは私はあり得ないと認めるものであります。若し本協定に関し何らかの懸念がありといたしますれば、それは今後の我が国の防衛体制のあり方、これをどうするか、又外交上の具体的の政策、特にアメリカに対しまする我が国の基本的態度如何というところに存するの也ありまして、本協定自体に存するものではないと思うのであります。  以上、私は自衛力の増強を認めること、本協定が、それを援助するものでありて、而も我が自衛上のアメリカヘの現在の依存度を軽減するものであること、及び本協定の義務自体に別段の懸念なきこと等の観点より、これが承認に賛成を表するものであります。  併しながら、私は本協定承認に賛意を表するに当りまして、以下数点について私の見解を明確にいたして置くことを必要とすると考えるものであります。  第一は憲法関係であります。憲法第九条の解釈につきましては、種々の論議、論難があるのでありまするが、憲法に対しまする政府の見解を妥当とする観点に立ちましても、国際的部面におきましては、国連体制の線に沿うところの安保条約と、本協定によりまする防衛体制が、現在我が憲法の解釈上許容し得る限度であろうと信ずるのであります。従いまして、今後、一歩これを踏み出すということは、恐らくは憲法と背反することなしには困難であろうと信ずるものであります。  第二に、本協定は単純にこれを見ますれば、我が防衛力増強への援助に過ぎないのでありまするが、自由諸国との連帯性を強化し、進んで地域的集団防衛体制に通ずる方向を示唆いたしておりますることは、これは否認し得ないところであります。併し、我が国は、経済の自立も未だ前途遠く、又防衛力も戦力なりや否やはこれは問題の存するところではありまするが、少くとも極めて微弱なる武力に過ぎないことは、これは問題はないと思うのであります。而も、我が国は第二次世界大戦に対して罪を購うべき責任を負う立場にあるのでありますから、憲法の条章下においては勿論のこと、憲法の条章の如何を問わず、太平洋地域におきまする軍事的性格を有する地域的集団防衛体制に参加するということは、これはでき得ないことであり、当然避けるべきものであると確信をいたすのであります。  第三に、日米相互防衛援助協定が、我が国として自由諸国、特にアメリカとの連帯性を強化するものであり、我々はこれを是認するものではありまするけれども、このこと自体が同時に我が国と共産圏諸国、特に隣邦中国との関係を引離すことを意味するものであつてはならんということであります。我が憲法の建前からいたしましても、我が国の平和を確保する観点よりいたしましても、世界の緊張の緩和に最善の努力をいたすということは、我が国の当然の責任だと思うのであります。又この役割を果すべき立場にあるのは、まさしく我が国であり、この点に関し他の自由諸国或いはアメリカとおのずから異なるものがあつて然るべきであり、我が国立場を明白ならしめることが私は肝要と信ずるのであります。併し、我が国の独立は、中共、ソ連どの関係においては末だ国交調整せられず、従つて独立というも未だ極めて不完全であります。現に、現在ジユネーヴにおいてアジアにおきまする最大の問題であり、我が国の運命に重大なる関係のありまする朝鮮、インドシナの問題が議せられているのでありまするが、我が国はこれに参加することもできず、これに対して発言することもできないのでありますことは極めて遺憾の至りであります。我が国は世界の緊張緩和に対し、格段の努力を払うべきものと私は信ずるのであります。  最後に、農産物の購入に関する協定につき一言触れたいのであります。  本案におきましては、五千万ドル小麦及び大麦の購入が協定せられているのでありますが、今後その額の増大が予想せられているのであります。このことは、何らかの程度において日本の農業に影響を与えることがあり得るものと思わなければならないのであります。そして今回の協定の四千万ドル分は勿論のこと、贈与の一千万ドル分につきましても、その使途は防衛産業に振向けることが予定せられているのであります。食糧増産等は、私は国の防衛能力の根幹であると思うのであります。これをなおざりにして国の本当の防衛はあり得ないのであります。少くとも贈与分につきましては、食糧増産と農業生産の増強に寄与すべく配慮せられることが当然と考えるものであります。この種経済的援助に属しますものは、往々にいたしまして過大に評価せちれる傾向にありますことを私は遺憾とするものであります。我々はこの種援助については、常に冷静に正しくこれを評価しなければならないと思うのであります。  以上四点につきまして、私は、私の見解を明らかにし、前段所論のごとく、本協定承認に賛意を表するものであります。(拍手)     —————————————
  31. 河井彌八

    議長河井彌八君) 羽仁五郎君。    〔羽仁五郎君登壇拍手
  32. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は無所属クラブを代表しで、我が国会が日米相互防衛援助協定などに承認を与えることに反対するものであります。  その反対の理由の第一は、日本国政府が現在の国際情勢について何らの見通しがなく、我が国民の信頼を裏切り、この協定に一つて我が国家と国民を取返しのつかない関係に引入れようとしているがらであります。我が国の敗戦降伏以来、いわゆるサンフランシスコ平和条約が片面的に、日本アメリカなどとの間に平和を回復するかのごとく装つて、実はこの条約に結付けられた日米安全保障条約なるものによつて日本アメリカ軍の駐留を許し、これがために日本が最も善隣の関係を回復すべき中華人民共和国及びインド、そのほかのアジア諸国又ソヴイエト同盟などの世界の各国と全面的に平和関係を回復することが妨げられ、従つて我が国が未だ完全に独立の主権を回復していないことは、我が国民の深く遺憾としているところであります。当時、我が政府は、いわゆる多数講和は、やがて全面講和への第一歩であると言つて我が国民及び国会判断を誤らしめたのみならず、その後その全面講和への努力を惜しみ、却つて日本アメリカとの一方的関係のみに深入りし、今や、本協定によつて我が国をしてアメリカに対し重大なる軍事的義務を負わしめ、我が平和憲法を踏みにじり、我が国経済に破滅的負担を増大し、中国及びインドそのほかのアジア諸国、又ゾヴイエト同盟などとの全面的の平和の回復をいよいよ困難にし、現に中日貿易促進の我が国会の意思を、軽視し、我が国経済の健全なる再建の条件の改善の方途を捨てて顧みないのであります。  本協定の前文及び本文にいう「日本国の主権」、或いは「国際連合」、或いは「国際平和」、或いは「日本国経済の安定」、或いは「国際緊張の原因の除去」などの文字は、果して偽りなく現実の事実と一致し、本協定への誠意を現わしているものでありましようか。本協定の附属書Dにより、日本が世界の平和を脅かす国との貿易を統制する措置につきアメリカ合衆国と協力するということは、事実上において現在国民の要望している中華人民共和国及びインドなどのアジア諸国及びソヴイエト同盟などと我が国との国交及び貿易の正常関係を回復する途でありましようか。  日本国政府が現在の国際情勢について、何らの見通しを持たないがために、我が国民は我が国家が如何なる方向に導かれるかの不安に陥れられつつあります。諸君、忘れもしない三年前、一九五一年四月、当時の日本占領連合軍最高司令官マツカーサーがその地位を失つた際、アメリカ政府の声明を妄信して、我が政府は本議場において何と言つたか、マツカーサーはやめた、けれどもアメリカの対日政策、又アジア政策は変らない。これは今日は暴風雨となつたか、依然として晴天であるというにひとしく、我が国民を愚拜したものではなかつたでしようか。当時朝鮮に戦争が勃発してまさに一年に及ぼうとし、マツカーサーはこの戦争の拡大の必要を主張計画し、イギリスなどの強い反対にあつて退けられたのである。その直後、東京都知事選挙の際、私は公衆に向つて、マツカーサーの罷免はアメリカの極東政策の破綻を示すものであり、従つて早ければ一カ月、遅くとも三カ月の間に朝鮮戦争は平和の回復の方向に導かれるであろうという国際情勢を告げたのであります。果してその二カ月の後に、国際連合におけるソ同盟マリク代表の朝鮮停戦提案が、国際的の世論の支持を受けて実現に移されたのであります。  諸君、現在の国際情勢は、どう動こうとしているのでありましようか。二、三カ月先の見通しもなく、政府政治家我が国家と国民との運命について責任を負うことは許さるべきではありません。与党幹事長が法律の蔭に隠れて逮捕を逃れているような明日をも知れない政府、全身汚職に悩んでいるような政府が、或いは選挙の責任を預けた者が一年も行方をくらましていたような外務大臣、否朝鮮又フイリピンと次々と恥ずべき失敗を重ねているような外相によつて、国際情勢について明確なる見通しを持つて、国内のいわゆる重要政策及び外交上の判断に重大なる過ちを犯していないと誰が信ずることができましようか。  本協定に反対せねばならない第二の理由は、本協定が、取りも直さず我が国民を完全にアメリカの水爆戦略の犠牲にしようとして、いるからであります。今日の段階におけるMSAは、昨日のそれではありません。ビキニ水爆実験の後に結ばれようとしている本協定の真に恐るべき意義に気が付かないのは、我が政府の悲劇にとどまりません。一昨昨日、読売新聞の経済欄「今週の展望」は、MSA援助は、原子病に対してアメリカから送られて来たシヤボテンの葉つばのようなものだと言つているが、(拍手)問題は更に深刻であります。MSAによる経済援助ということは、我が政府のはかなき昨日の夢であつた。張る三月三十一日衆議院本会議において改進党を代表して並木議員が軍事協定としての本協定に賛成されましたが、今日、本協定が軍事協定として有する意義は、もはや昨日のそれではないのではありませんか。我が国の自衛のための軍事協定という観念が、まだ我が政府国会の一部に残つているようだが、現実には、これはすでに最近のアメリカのいわゆるニユールツク軍事政策の恐るべき急転換に結び付けられた軍事協定なのであります。アメリカは何故に日本及び世界の湧き上る恐怖の叫びを意とせず、ビキニ環礁、マーシヤル群島に水爆実験を続けているのでありましようか。アメリカ政府は何故に俄かにオツペンハイマー教授をその責任ある地位から退けたのでありましようか、アメリカは何故にフランスの意思に反し、ヴエトナムにおける戦争の継続拠大を図り、ジユネーヴにおける極東平和会議を前にして、ヴエトナム戦争にアメリカ自身が介入することにイギリスの同意を強制し、チヤーチル首相をして異例の日曜閣議をも開かしむるにさえ至つたのでありましようか。  専門家の判断するごとく、原爆戦略によるアメリカのソ同盟に対する優位は、本年を境として失われようとしているのであります。それなればこそ、アメリカは現在原爆戦略を焦つているのであります。アメリカが原爆水爆を、もはや防衛的又は報復的に最後の手段としてではなく、機先を制する攻撃の手段として使用しようとしている最近の動きこそが、世界においてアメリカがソ同盟又中華人民共和国などを包囲しようとしている軍事基地を国内に有する国々、即ち我が日本やイギリスなどに新たなる無限の恐怖を与えているのであります。  この三月三十日、イギリス議会において、チャーチル首相は労働党議員の質疑に答えて何と言つているか。「水爆に関しイギリスがアメリカと協議することを提案することは無駄である。何となればアメリカ大統領はマクマホン法によつて、これらにつき何事もイギリス首相に告げることも禁ぜられているからだ」とチャーチル首相が告白しているのであります。チャーチル首相が自信がないのに、日本吉田首相岡崎外相は自信があるとすれば、それは責任の自覚があるかないかの違いでありましよう。(拍手)先日のイギリス議会においてチヤーチルが水爆の危険に触れたとき、彼の声はかすれ、眼に涙さえ浮べていたといいます。アメリカがヨーロッパにおいて万一非常の事態を断定して、水爆攻撃を開始すべきアメリカの主要軍事基地がイギリスのノルフオルクにあることを知つているイギリス議会は戦慄しているのであります。口日本政府は、日本にそのような基地がどこに置かれているかさえ知らされていないのではあませんか。而もヴエトナ人戦争が継続拡大され、アメリカがこれに介入すれば、アメリカ日本を基地として中華人民共和国に対し原爆水爆攻撃を行う危険が増大し、従つて日本が中華人民共和国からの容赦なき原爆、水爆攻撃に曝される危険が増大するのであります。先にビキニ水爆実験に協力を言明した我が国の外相は、そのとき良心の痛みを感ずることなく、日本をしてアメリカの水爆攻撃に協力せしめようとするのでありましようか。  諸君、現在の段階において日本がMSAを受諾するということは、これまで諸君が想像せしめられて来たところとは全く異なる、かかる全く新らしい恐るべき問題を含んでいるのであります。現に原爆水爆禁止を全会一致決議した我が国会は、今その貫徹をこそ全力を挙げて先にすべきであつて日本アメリカの水爆基地とすることを含む本協定承認を与えることを断じて先にすべきではありません。  本協定に反対せねばならない第三の理由は、我が国が今MSAを受諾しないことが、現在最後の段階に入る虞れある世界破滅の国際緊張の緩和に貢献し、従つて我が国家と国民とに真実の安全と幸福とを保障するからであります。この方向のために、今ジユネーヴ極東平和会議においてヴエトナム戦争の平和的解決を望んで、フランス、イギリス、又インドが努力しているのではありませんか。数日前、インドのネール首相日本に対して切望されたことが、まさにこの日本が本協定など先にするよりも、原爆水爆禁止の要求の貫徹を先にすべきことではなかつたか。  アメリカが原爆戦略において最後の手段を強行するか、それとも、そうした原爆戦略による世界の破滅を防ごうとしておるソ同盟、イギリスなどの最後の努力が成功するか、世界の良識は現在この点を凝視しているのであります。そして、すでに現在ジユネーヴ極東平和会議において我が笹本特派員などが電報を以て報道しているように、諸君の眼前にアメリカの原爆戦略政策は日一日と孤立しつつあるのであります。イギリスの世論が、三年前、当時の一般的国際的条件と共にマツカーサーの朝鮮戦争拡大の計画をしりぞけることができたように、現在、更に進んだ一般的国際的条件の下において、ダレス、否、アメリカ政府のヴエトナム戦争拡大の暴挙をしりぞけることができるであろうことを、世界が期待しているのであります。そしてアメリカ自身の内部においても、この三月二十八日のニユーヨークタイムズ紙上に、先の国務長官デイーン・アチエソンが、アメリカの水爆戦略の成功し得ない理由を述べているのであります。然らば即ち、早ければこの一カ月のうちに、遅くも三カ月の間に、ヴエトナムに平和的解決の端緒が開かれ、続いて遂に国際連合における中華人民共和国の承認の端緒が開かれるのでありましよう。こうした事態の必然を知れば知るほど、飽くまでこれを阻止しようとしているアメリカの現在の支配者の動きに、現在、日本が結び付けられようとしているのでありましようが、これが果して再び歴史の動きに逆行し、再び我が国民を言いがたき悲しみに陥れようとするものでないでありましようか。現下の国際情勢を正しく見通すことのできる者は、現在、日本がMSAを断じて受諾すべきでないことを、おのずから明らかにするでありましよう。  諸君、諸君が我が国土をアメリカの水爆基地として、これを文字通り永久の焦土と化し、我が全国民に滅亡の恐るべき災禍を蒙むらしめようとするのでないならば、我が国会は本協定承認を与うべきではありません。(拍手)     —————————————
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 鶴見祐輔君。    〔鶴見裕輔君登壇拍手
  34. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 私は改進党を代表いたしまして、只今議題となつておりまする四つの協定に賛成の意見を述べるものであります。  私はこの四個の協定審議に携わつて、質疑応答の間に、政府がこの協定の間においてなさんと欲したるところの目的と、これを自立的に達成せんとしたる努力のあとを眺めて、幾多の不安を感じ、又多大の不満を抱くものであります。併しながら私はあえてこの四個の協定に賛成の意を表します。理由は四つの条項に基くのであります。  その第一は、私は、我々が九年前に済んだ大戦争の起りました原因を考えてみると、明治の初年以来、我々が、個人の自由を尊重し、民主主義の発展によつて人間の幸福を達成せんとしておつた国々との協力によつて、我々の先輩は輝やける明治大正の時代を作つた。不幸にして昭和の半ばに至りまして、我々は、この個人を幸福にするところの考えから離れて、全体主義を中心とするドイツ、イタリアと同盟をいたして、日本の社会的及び個人的の哲学が根本的に変つて、遂に我々も、当時議会におりながら、微力にしてこれを遮ることができなくして民族がかくのごとき惨憺たる苦境に陥つたことを振り返りますときに、私自身の微力を顧みて慚愧の情に堪えない。故に、再びかようなことをいたさないためには、私は、終戦以後において、日本がもう一度全体主義国家群と手を切つて、個人の尊厳を基調とするところの民主主義の道に歩まんとする、その方向を正しいと考えておる一人であります。故に、本協定自身には幾多の不満を感じ、不安を抱いておりまするけれども、これによつて日本民族が進み行かんとする方向は正しい方向であると感じまするが故に、私はこの協定の根本精神に賛成するという意味において、本協定に賛成をいたすものであります。  第二に、私は、戦後においてアメリカ日本に対してとりましたるところの政策が、当時のアメリカの指導者の考え方が、日本を極度に弱くする政策であつたために、この極東において、今までの強敵日本がその富を失い、一切の武装を失い、国内の混乱と共に、今までの東洋におけるところの勢力の均衡が破れたために、非常なる危険の状態が発生したと私どもは眺めておつたのでありますが、最近に至つてアメリカが百八十度の転回をいたして、どうしてももう一遍日本が極東において正しき秩序と生活を回復しなければ、日本のみならず、日本周辺、延いては世界の平和のためにならないということに気がついて、新らしき方向に踏み出したということに対して、私は一つの満足を感ずるものでありまして、その意味において、アメリカが今日、日本の自立に対するところの協力をいたしておるということの一つの現われとして、本協定に賛成をいたすものであります。  第三に、私は本協定自身においては幾多の不満足と欠点を感ずるものでありますが、この協定を通して私は将来において一道の光を眺めておるのであります。即ちそれは、この日本の将来の国際政策の基調を国連との協力に置こうという精神であります。即ち私は、今日、今、原子爆弾と水素爆弾のでき上りましたる時代において、国際戦争は何ものをも解決をしない時代錯誤であると考えるのでありまするけれども、併しながら、国々が今日のごとく、十八世紀以来の民族国家主義の考えに固執して、主権の至上にして不可分なる考えを依然として持つておる間は、到底、民族と国家との間の戦争を防ぐことはできない。故に、この国家の主権を次第に社会的世界的な機構に委譲することによつて最後には人間の望みであるところの世界国家への道に歩み行くこと以外には、戦争を根本的に防止する方法はないと思うのでありますが、今日の国際連盟は、或いは国際連合は、不満足なものでありましよう。併しながらそこに具体的な人類の歩みがあると考えまするので、私はこの一連の日本の最近の国策が、国際連合への道と将来の世界民族の協同体制への道に歩み行くものとして、本協定に賛成するものでありまするけれども、併しながら日本が、今日は平和条約発効後満ニヵ年を経過したるにかかわらず、依然として国連加入の方途においてなお遅々として進まざる跡あることは、誠に遺憾とするものでありまして、私は日本が国連より更に進んだ世界協力の道へ勇敢に進み出さんことを切望いたすものであります。  第四に、私は今日の四つの協定について幾多の不満と欠点を認めまするけれども、これが只今日本といたしましては、我々が受取らなければならん次善の策であつて、建設的な具体的の策として、不満足ながらこれを認めなければならんと思うのであります。併しながら同時に私は幸いにして、この協定は一年の期限を以て成立するものでありまするから、将来これを更新し、これを改正して、新らしきよりよき条約を結ぶ条件を持つておることを喜ぶものであつて、その意味において私は政府に向つて次の四つの警告を実施に際して発したいと思うのであります。  それは第一に、私は日本が今まで二千年の間相当に苦しい険しい道を歩んで来た。併しながらただ一度も日本は、外国の物質的な援助によるこの道を歩まなかつた。今日の日本は貧しい。今日の日本は疲れております。併しながらこの僅かばかりのMSA、その他の物質的の援助によつて日本民族が自分の国の独立の確保を外国の援助によるというような習慣を付けますると、これは自主独立精神へ暗い影を投げますものでありまするから、私は成るべく早く日本が精神的な独立への道を選んで、自力による経済の回復、自力による日本の安全体制を作る道に進むべきであつて、その一つの過程として今日これを受取るものであるから、政府はその実施に当つて日本の自主独立の精神をこわさないように、我々が永久に他人の援助によつて国を興すというような精神に習慣付けられないように十分な注意をして頂きたいと思うのであります。  第二に、私が政府に向つて警告をいたしたいと思うことは、成るほど本協定は、名前におきましては相互防衛援助協定であります。併しながら戦前の日本でありますれば、実に強大なる国であつたから、他国との条約においても協定においても、平等な対等な資格で結ぶことはできましたけれども、今日の貧しくして弱き日本が、世界第一の強国と結ぶところのこの協定において、我々は決して、文字において平等であつても、事実においては平等であり得ない故に、この条文が拡張解釈をいたされて、今日政府が声明しておるような意味においてこれが実施せられないで、将来或いは日本がこれがために意外なる危険な道に陥らないということは保証しがたきものがあると思うのであります。現に本協定、日米間の相互防衛援助協定の第八条において、アメリカ側の正文とする英語の協定文と、日本側の正文とする日本文の協定文において、非常に大きな違いがある。アメリカ側の英文の正文によりますと、日本経済その他の条件の許す範囲において、日本は人力、資源、その他を寄与すると書いてありますけれども、英文においてはその寄与するという前に、全力を挙げて或いは全面的に寄与するというフルという字が一つ入つておる。従してアメリカの期待するところは、将来日本が他の自由国家群のために寄与する場合において全力を傾けて寄与することを期待するでありましよう。日本国民に向つては……。我々はただ寄与するということを教えられておるのでありますから、ここに私どもはこの協定文だけを眺めて見ましても、この力の違いのために、二国間の協定というものの間には拡張解釈をせられて、意外な危険をもたらす虞れがあると思いますので、この点においては私は、政府協定実施に関しては十分なる警戒を以て実施せられんことを希望するのであります。  第三に、しばしば問題になつておりました点は、本協定憲法の条章との関係であります。即ち憲法九条の規定を厳格に解釈する場合には、本協定は毫末もこれと矛盾する危険がないかという点は、殆んど昨年以来議会においてしばしば論争の的となつたことであります。これに対する政府からの答弁を聞いてみますと、その意見がまちまちであつて政府側において思想の統一がないということを我々は心配をいたすのであります。その一つの例は、海外派兵の問題であります。私は日本が自衛という問題を提げて、今日の日本の国内の態勢を整えようといたす場合に、自衛という文字に対しては、憲法の条章に従つて最も厳格な解釈を与えなければならないと思うのでありまして、それは抽象的な文字でこれを規定することは危険であるから、幸いにして日本は島国でありますから、日本の領土以外に、海の外には日本の自衛の力を及ぼさないという明白な規定を設けて置かなければならんと思うのでありまして、この海外派兵の問題は、しばしば政府よりも言明をされ、本協定成立の際には岡崎外務大臣とアリソン大使との間に口頭を以て意見の交換をいたしておりますけれども、併し国会における政府委員の答弁を聞いておりますると、我々は一抹の不安を感ぜざるを得ないのであります。又更に、太平洋同盟の問題についても、政府は今日総理大臣外務大臣もこれを否定しておられますけれども、集団的安全保障という問題がすでに協定文の中に入つておるのでありますから、この場合において日本が何らかの意味において太平洋同盟の変形したるようなものを持たないとも限らないという心配をしておるのでありまして、本協定成立に際し、今後一年間この協定を実施する責任のある政府においては、今回国会において言明したるところを忠実に守つて日本の海外派兵、太平洋同盟等の問題については、その言葉を変えないことか我々は警告いたして置きたいと思うのであります。  私はここに最後政府に向つて申して置きたいと思いますことは、今日の日本におけるアメリカの政策の変化でありまするが、アメリカが戦争直後にとつた対日政策と今日の対日政策が非常に変つておると思うのでありますけれども、併し又将来いつこれが変化しないとも限らない。これはたとい今日の日本が微力なる状態でありましても、日本自主性を守るためには、我々の正しき道を歩かなければならないのであつて、真に日本アメリカとの協調、協力を恒久的な基礎の上に置こうといたすならば、日本国民の正しいと信ずることは、たといアメリカ側において多少の誤解がありましても、率直にこれを言うことが、むしろ本当の意味における日米の協調をいたすゆえんであつてアメリカ意見が正しくない場合には、我々は勇敢に率直にこれを述べることが、本当の日米の恒久的な協調をもたらすゆえんであると思うのでありまするが故に、今日のアメリカの国内における議論が甚だしく以前に変つて極端になつておる際において、我々は一種の危険を感ずるのもこのところにあるのであります。故に私は、政府がこの点に関し日本国内においてアメリカの政策に反対する人々というのが、アメリカがきらいであるから反対するのでなくしで、本当の正しきアメリカが東洋において正しき姿で現われることを希望するが故に、アメリカに対してすべての点において協力することができない、むしろその反省を求めるのであるということをこの機会において明白にして私は本協定に対する賛成の討論を終るのであります。(拍手
  35. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより四件の採決をいたします。四件全部を問題に供します。四件の表決は記名投票を以て行います。委員長報告通り四件を承認することに賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖]    〔参事投票を計算〕
  37. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数 百九十二票  白色票 百二十四票  青色票 六十八票  よつて四件は、承認することに決しました。(拍手)      ——————————    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名 百二十四名   佐藤 尚武君    小林 武治君   岸  良一君    北 勝太郎君   加藤 正人君    片柳 眞吉君   梶原 茂嘉君    上林 忠次君   柏木 庫治君    井野 碩哉君   石黒 忠篤君    飯島連次郎君   加賀山之雄君    赤木 正雄君   森 八三一君    森田 義衞君   村上 義一君    三木與吉郎君   前田  穰君    廣瀬 久忠君   後藤 文夫君    早川 愼一君   野田 俊作君    中山 福藏君   田村 文吉君    館  哲二君   竹下 豐次君    高橋 道男君   杉山 昌作君    高瀬荘太郎君   島村 軍次君    白井  勇君   横川 信夫君    深水 六郎君   木村 守江君    安井  謙君   伊能 芳雄君    青柳 秀夫君   高野 一夫君    西川彌平治君   石井  桂君    井上 清一君   関根 久藏君    川口爲之助君   吉田 萬次君    佐藤清一郎君   剱木 亨弘君    森田 豊壽君   宮本 邦彦君    長島 銀藏君   長谷山行毅君    宮田 重文君   瀧井治三郎君    田中 啓一君   石川 榮一君    岡崎 真一君   石原幹市郎君    植竹 春彦君   岡田 信次君    松岡 平市君   大谷 瑩潤君    團  伊能君   一松 政二君    西郷吉之助君   中川 幸平君    左藤 義詮君   寺尾  豊君    吉野 信次君   重宗 雄三君    津島 貴一君   大達 茂雄君    青木 一男君   大野木秀次郎君   小滝  彬君   伊能繁次郎君    杉原 荒太君   榊原  亨君    大谷 贇雄君   宮澤 喜一君    高橋  衛君   横山 フク君    西岡 ハル君   重政 庸徳君    小沢久太郎君   鹿島守之助君    木内 四朗君   藤野 繁雄君    雨森 常夫君   石村 幸作君    青山 正一君   秋山俊一郎君    入交 太藏君   高橋進太郎君    仁田 竹一君   松平 勇雄君    上原 正吉君   郡  祐一君    山本 米治君   小野 義夫君    平井 太郎君   川村 松助君    堀  末治君   島津 忠彦君    小林 英三君   泉山 三六君    黒川 武雄君   石坂 豊一君    井上 知治君   岩沢 忠恭君    木島 虎藏君   野本 品吉君    三浦 義男君   最上 英子君    三好 英之君   鈴木 強平君    深川タマヱ君   武藤 常介君    寺本 広作君   有馬 英二君    堀木 鎌三君   笹森 順造君    菊田 七平君   鶴見 祐輔君    一松 定吉君     —————————————  反対者(青色票)氏名 六十八名   高良 とみ君    楠見 義男君   宮城タマヨ君    永岡 光治君   三輪 貞治君    湯山  勇君   大和 与一君    木下 源吾君    内村 清次君  秋山 長造君    阿具根 登君  海野 三朗君    大倉 精一君  河合 義一君    岡  三郎君  亀田 得治君    小松 正雄君  永井純一郎君    近藤 信一君  竹中 勝男君    清澤 俊英君  成瀬 幡治君    小林 亦治君  小酒井義男君    佐多 忠隆君  重盛 壽治君    江田 三郎君  小林 孝平君    堂森 芳夫君  高田なほ子君    安部キミ子君  矢嶋 三義君    藤田  進君  岡田 宗司君    田中  一君  戸叶  武君    栗山 良夫君  吉田 法晴君    藤原 道子君 小笠原二三男君    菊川 孝夫君  若木 勝藏君    天田 勝正君  松本治一郎君    中田 吉雄君  三橋八次郎君    千葉  信君  羽生 三七君    荒木正三郎君  三木 治朗君    曾祢  益君  山下 義信君    東   隆君  松永 義雄君    松浦 清一君  須藤 五郎君    加藤シヅエ君  鈴木  一君    加瀬  完君  千田  正君    松澤 兼人君  上條 愛一君    長谷部ひろ君  木村禧八郎君    相馬 助治君  村尾 重雄君    棚橋 小虎君  羽仁 五郎君      ——————————
  38. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第五、昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。  先ず委員長の報告を求めます。予算委員長青木一男君。   [青木一男君登壇拍手
  39. 青木一男

    ○青木一男君 只今議題となりました昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)の予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申上げます。  本補正予算は、いわゆるMSA協定締結に伴いまして米国政府から我が国に贈与される円資金を一般会計と区分して経理をするため、経済援助資金特別会計を創設することとし、その初年度の予算に該当するのであります。即ち米国余剰農産物の購入に伴い、日本政府によつて日銀内の米国特別会計勘定に積立てられる円資金に関し、米国政府がその二〇%を日本の工業の助成その他日本経済力の増強に資するため、日本政府に贈与することを定めた経済的措置に関する日米間の協定に基きまして米国政府から贈与される当該円資金を以て経済援助資金を設けると共に、その経理を一般会計と区分して行うため、経済援助資金特別会計を設置することといたしておる次第であります。  而して本特別会計は、只今申上げました資金の受入及びその運用又は使用のための支出金等をその歳入歳出として経理するものでありますが、二十九年度におきましては、五千万ドルの農産物購入が予定されておりますので、その二〇%に当る一千万ドルに等しい円価格、即ち三十六億円の贈与を予定いたしております。従つて歳入は米国政府からの贈与による受入金三十六億円及び資金の運用による収益金約三千三百万円、合計三十六億三千三百万円となつており、同額を我が国工業力の強化に資するよう投融資することが歳出の内容となつております。  以上が本補正予算の概要でありますが、本案は四月十五日衆議院から送付されましたので、本委員会は四月二十日、小笠原大蔵大臣かち提案理由の説明を聞き、二十二日から三日間に亘つて吉田内閣総理大臣並びに関係閣僚に対して質疑を行いました。以下これらの質疑のうち、本補正予算に直接関連するもの若干について申上げたいと存じます。  先ず第一に、援助資金の性格及び使途についてでありますが、「我が国のMSA援助は、いわゆる経済援助を含まないにもかかわらず、政府はこの資金を経済援助資金と称しているのは如何なる理由によるのか、資金の使途並びに運用方法如何、具体的な資金計画を示せ」、こういう質問に対しまして、政府側から、「この資金は経済的措置に関する協定には工業の助成その他経済力の増強に資するためという一般的な文言となつているが、実際にはMSA援助の性質上、当然に防衛産業及び関連産業並びにそれらの基礎産業を対象として投融資するもので、広い意味での経済援助資金である。その具体的な対象産業の種類や資金計画の枠等については日米両国間に話合を行い、双方の合意によつて決定される。かくして決定された資金計画に基いて日本開発銀行を通じ、商業べースで融資することを原則とし、資金計画の枠内での個々の融資は開発銀行をして自主的にこれを行わしめる。而して資金計画そのものについては目下関係各省間で協議検討中であるが、大体の考え方としては、二十九年度において確実に予想される域外買付並びに保安庁調達の発注量と、現有設備とを勘案して設備資金の最も必要と思われる航空機産業及び弾薬以外の兵器産業に重点を置き、このうち市中融資で賄い得るものを差引いた分が大体三十六億円に見合うような計画を練つている」という旨の答弁がありました。この点に関連して「歳出の使途が具体的に決定しておらないようなものは、予算書とは認められないではないか、何故に計画未決定のままをこのように補正予算を急ぐ必要があるのか、又政府はこの資金を商業ベースで融資すると言つているが、ジエツト・エンジンの試作等、商業採算に乗らないものにも使用する計画があるのではないか」等の質疑がありましたが、これに対し政府側から、「多少通常の予算書とは異なる点もあるが、見返資金の前例もあり、又経済的措置に関する協定第二条による国内措置として協定批准までに手続を終え、受入態勢を整える必要がある。又この資金の投融資については成るべく商業採算を原則としたい。ジエツト・エンジンの試作に使用するかどうかについては、政府としてはまだ一致いた結論には到達していない」との答弁がありました。  なお、この資金を開発銀行を通じて融資することにつきましては、「米国側が融資先として個々の企業を指定することはないか、この融資について特に監査機関を設ける必要はないか」等の質疑がありました。これに対しましては、「米国側が個々の会社を指定するのは行過ぎであるから、万一にもさようなことのないようにしたい。又開銀の融資について特別に監査機関を設けることは今のところ考えておらず、大蔵省の開銀に対する監督だけで十分と思う」との答弁がありました。  次に、援助資金の我が国経済に及ぼす影響についてでありますが、「この援助資金は特需依存から脱却して経済自立を達成しようとする我が国の基本的な政策と矛盾するのではないか、又アメリカの余剰農産物の輸入によつて我が国の農業は圧迫を受けるようになるのではないか、昨年の凶作のあとを受けた今年度はともかく、来年度若し平年作で而も今年度以上の輸入があれば手持過剰となるのは必至であると思うが、三十年度においてどのくらいの輸入を予定しているか」等の質疑に対しまして「防衛産業の拡充は、確実に発注が予想される限度内の小規模且つ着実な程度にとどめ、それ以上の設備拡張はしない、この限られた範囲内で域外買付が増加することは国際収支の面で経済自立に貢献するわけである。又今回の五十万トンの小麦は今年度の食糧需給計画中、小麦輸入量百九十六万トンの枠内で、而も外貨を使わないで輸入するのであるから、数量的に日本の農業を圧迫しないばかりでなく、国民経済上も有利である。更に又輸入価格はCIFで七十七、八ドルという国際小麦協定価格と同じ安い価格であるが、輸入価格と国内価格とは遮断されているので、価格の面からも農業に悪影響を及ぼすことはない。ただ三十年度以降の輸入量については、食生活改善、麦食普及に伴う消費量の伸び方如何について慎重な検討を必要とするので、今からその数量を予想することはできない」との答弁がありました。  最後に、経済援助資金の将来の見通しについてでありますが、これにつきましては、「この種援助資金は今後とも継続されるか、継続されるとすれば、その使途を防衛産業のみに限定せず、広く一般産業にも拡大することができるかどうか」等の質疑があり、これに対しまして、「数年後のことは確言できないとしても、少くも三十年度は続けられると思う、而うして米国余剰農産物の処理については、本年一月の大統領の予算教書等に明らかにせられておるように、十億ドル三カ年計画というようなものもあるようだし、諸般の情勢よりして条件の緩和等についても必ずしも期待できないことはないと考えられる、我が国としてはできるだけ広く一般経済力の増強に資するよう、基礎産業にもつと使い得るよう努力したい」との答弁がございました。その他政治経済各般の諸問題についていろいろの質疑応答が行われましたが、詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。  かくて二十四日を以て質疑を終了し、越えて二十六日討論に入りましたところ、先ず日本社会党第四控室を代表して江田委員より反対、自由党を代表して高橋進太郎委員より賛成、日本社会党第二控室を代表して相馬委員より反対、緑風会を代表して森委員より賛成、無所属クラブを代表して木村委員より反対、改進党を代表して堀木委員より賛成の旨それぞれ述べられました。  かくて討論を終局し、採決の結果、予算委員会に付託されました昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)は多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申上げます。(拍手
  40. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。江田三郎君。    〔江田三郎君登壇拍手
  41. 江田三郎

    ○江田三郎君 私は日本社会党を代表いたしまして只今上程されました予算補正(特第1号)に反対をいたします。(拍手)  この予算補正は一言にして尽せば、いわゆる羊頭狗肉であります。表看板経済援助資金特別会計となつておりますが、MSAに経済援助がないということは明らかでございまして、日本政府がたびたび懇願をいたしましたけれども、この経済援助は、アメリカ政府に拒否をされた、そういう言葉を使つてはならないとまで言われておることは外交交渉で明らかでございます。従つて今回の協定も、経済措置に関する協定となつておるのでありまして、経済援助の協定ではございません。この事実に頬被りをして、ひそかに経済援助の看板を用いておる政府態度は、いわゆる羊頭を掲げて狗肉を売るところの、国民をあざむくものと断じ得るのであります。(拍手)又予算明細書には、この三十六億円を工業力強化投融資とすることになつております。日本の工業力を本当に強化するのでありますれば、誰が考えても弱い基礎産業の強化が先決問題でございます。ところがここに出て来るところの工業力強化の内容を質してみますと、防衛産業の強化だというのでありまして、ここでも看板に偽わりが行われておるのであります。(拍手)  申すまでもなく、防衛産業というものは分野が広いのでございまして、そのうちの如何なる部門が強化されるかということによつて、将来の日本の方向が大きく左右されるのであります。然るに、甚だ奇怪なことには、この三十六億円は防衛産業のどんな部門に向けられるかということは何ら示されておらんのでありまして、幾ら尋ねても明確にされないのであります。細目が決まらないというのではなくうその大綱がきまらないのであります。即ち投資なのか、融資なのかさえきまつておりません。大蔵大臣は、採算のとれる事業に開発銀行を通じて融資すると言われる。ところが一方通産大臣は、ジエツト・エンジンの試作というような採算のとれない事業に、融資ではなく、投資することがあるかも知れないと言われるのであります。このように二人の大臣意見が全く対立をしておるのでありまして、政府部内で意見の一致を見ないままにこの予算補正に承認を求められますことは、乱暴というよりも、もう一歩進んで財政法上の違反であると申しても過言ではないと思います。(拍手)  而もこの予算補正の金を使うに当りましては、日本政府アメリカ政府の合意に基くことになつております。およそ金を出すほうと金をもらうほうとが話合をすることになれば、金を出すアメリカ側の発言が強いのにきまつております。従つてこの内容のわからん予算補正を承認いたしますことは、日本国の予算行使についての白紙委任状をアメリカ政府に渡すことになると糾弾されても返す言葉はないと思うのであります。(拍手日本が本当に独立国でありますならば、政府はあらかじめアメリカ側と話合をして、その結果きまつた内容に基いて国会承認を求むるべきであり、今回の措置は、如何に吉田首相の乱心が云々される折柄とは言え、余りにも常軌を逸しており、独立国日本国会である限り、何人も承認し能わざるところと固く信ずるものであります。(拍手)  国会がかような白紙委任状を渡す結果は一体どうなるでございましよう。吉田汚職内閣に白紙委任状を渡すことは、    〔議長退席、副議長着席〕  造船疑獄の二の舞とならんとも保証はできません。(拍手)それよりももつと恐ろしいことは、この金で強化される防衛産業が、逆に日本の方向を支配するということであります。若しこの金が特需を目的とする部門に使われますならば、日本経済はいつまで経つても特需との腐れ縁を切ることができないで、自立経済は望めないことになりましよう。若しこれが愛知さんの言われるようなジェット・エンジンのごとき部門に向けられますならば、このような産業を維持し、発展させるという要求に引きずられて、本格的再軍備に知らず知らずに落し込まれることになるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)  この予算補正は、僅かに三十六億円に過ぎません。併しこの三十六億円が他の自己資金なり或いは市中銀行の金を引出す呼び水になるのであります。更にこの三十六億円には来年度も続くものがございます。本年一月アイゼンハワー大統領の教書によりますと、アメリカは今後三カ年間に十億ドルの農産物処理を行う、来年度は三億ドル、うち一億ドルを日本に向けるというのであります。外務大臣の説明によりますというと、この一億ドルが実現されるとすれば、今回の五千万ドルと同様な協定になるであろうということであります。このように本年だけでなしに、来年もその次も、或いは更にその次も、あとに続くものがあるだけに、一層慎重を要するのであつて、白紙委任状のごとき軽率は断じて許されないと思うものであります。  もう一つ、根本に遡つて考えなければなりませんことは、三十六億円のもとになる五千万ドル、更に来年度一億ドルというような農産物輸入の国内への影響でございます。本年の小麦五十万トン、大麦十万トンの輸入は、昨年の凶作分をカバーするのでありますが、来年度以降の平年度に、本年同様或いはそれ以上の輸入をするということになれば、どうしても自本の食糧需給は過剰手持になることが必至でございます。農林大臣は来年度も本年の百九十六万トンと同じ程度の小麦の輸入を行なつても、粉食その他食生活の転換によつて過剰にはならないと答えられましたが、僅か一年や二年で米から麦への転換が五十万トン或いはそれを超える数量に亘つて行われるというようなことは、事の本質を茶化しておるのであり、国民を愚弄するものでございます。すでに凶作のあとの本年でさえ、政府は食糧増産費を削りました。これが過剰手持となれば、いよいよ以て国内食糧生産を軽視するでございましよう。昨年の麦価格の決定に当りましては、パリティ計算に特別加算が付けられておりますが、本年の新らしい麦価格の決定については、政府はこの特別加算を削るのではないかと伝えられております。かようなことが影響いたしまして、すでに本年の小麦作付反別は三・五%減つておりますが、恐らく来年度はもつと深刻な影響が現われて来るでございましよう。アメリカ処分に困る農産物を、日本自身が過剰手持になるほど多量に押付けられて、国内食糧を減産に陥らせるのが、今回の協定でございまして、援助ではなく、アメリカにとつては結構立派な商売でございます。(拍手)買付額の二割の三十六億円が、このような形において打撃を受ける農業部門にでも振り向けられるというのならば、まだ幾分話の筋は通りますが、そうではなくして、アメリカの指図によつてアメリカの世界政策上必要な、アジアにおけるアメリカの防衛力強化のために使われる、この経済措置に対しましては、私どもは根本から反対をいたすものでございます。(拍手)  すでに政府国民の燃え上る怒りに目もくれないで強引な居据りを図り、本院の警告決議をも無視し、蹂躪いたしておりますが、その理由として、政府の申すことは重要法案成立でございます。この重要法案の中で一番重点をおかれておるのがMSA協定でございましようが、MSAに伴う経済措置内容を検討いたしますと、以上述べましたごとく、経済援助という羊の頭の看板が掲げてはございますが、その中身は狗の肉どころか、うつかり食えば国民が腹痛を起す危険を多分に持つたつた肉に過ぎないのでございます。而もその料理方法はアメリカ政府に白紙委任状を付けて任かすのでございます。このような内容の予算補正に対しましては、我々は絶対に賛成をいたすことはできず、断固反対を申す次第でございます。(拍手)     —————————————
  42. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 相馬助治君。    〔相馬助治君登壇拍手
  43. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は社会党第二控室を代表して、只今議題になつておりまする昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)に対し反対の意思を表明するものであります。  先に提出されました昭和二十九年度予算案は憲法第六十条の規定により、一方的に衆議院の意思のみを以て成立したのであります。その審議の過程において、入場税或いはしやし繊維税等の問題が当初政府の意図した通りには進行せず、本院における審議の前提条件を欠くに至りました結果、本院における予算委員会の進行は停滞し、遂に参議院意思は無視せられ、結果的に見て参議院審議権は剥奪されたことは諸君の知るところであります。  今日吉田内閣国民生活を無視し、党あつて国あることを忘れたるがごとく、党利党略に流れ、相次ぐ失政は国民怨嗟の的となつておるのであります。これら失政の累積の結果は、遂に汚職を生み、疑獄を生み、閣僚にして疑惑の焦点に立つ者あるに至りました。日頃綱紀粛正を説き、道義の高揚を力説し、或いは国民に耐乏生活を夢求し続けて参つたこの内閣の法務大臣は、党三役の一人たる幹事長に検察庁より収賄の疑いありとして逮捕の要求を受けるに至るや、法によつて許されておるとなし、検察庁法第十四条の規定により指揮権発動をなしたのであります。而も当面の責任者たる法務大臣はかかる重大な指置をなすや否や、突如として、その職を辞したのでありまして、かかることは民主憲法の下における責任政治の名に反逆するものであり、断じて我々の許し得ないとするものであります。(拍手)かくて吉田内閣が保有しておりました良心の最後の一かけらすら、今日これを喪失いたしましたことは、天下の知るところでありまして、異例ではあるが違法ではないと強弁し、本院の院議に、或いは新聞の論説を含む我が国有識者の輿論に反抗することは勿論、吉田内閣は愚かにも普く国民に挑戦するに至つたと見るべきではないでありましようか。疑獄と汚職とに包まれ、民心全く離反した現内閣の下において、この重大なるMSA協定に基く予算補正案を審議することを余儀なくされておりますることは、私は国民諸君と共に、参議院の同僚諸君と共に限りなき悲しみとするものであります。  この経済援助資金は言うまでもなく、MSA協定に基くところのアメリカ側より援助提供の一つとして与えられたものでありまするが、我々は平和憲法擁護立場から、この援助の前提となるMSA協定そのものに反対して今日に至りました。従いまして基本的な立場からして、我々は本補正予算に断固反対するものでありまするが、以下具体的内容に触れつつ、何故に反対しなければならないかを五点に亘つて申上げたいと思うのであります。  議題となつておりまする補正予算の内容は、三十六億余万円の経済援助でありまするが、その使途が一切明らかになつておりません。政府当局の説明によれば、その使途の具体的計画は逐次決定すると申しておるのでありまするが、これでは審議の前提を欠くものであり、我々としては良識を以て良心を以て賛成或いは反対の最終的意思を生み出すことは到底できないのでありまして、この補正予算に反対いたしまするところの、これが私どもの先ず第一の点であるのであります。  而も、この補正予算の内容は、質疑の過程において明らかになりましたことからいたしまして、日本経済に与える重大なる悪影響を見逃すことができないのであります。従いまして、これが私の反対の第二の理由であります。  政府はすでに昭和二十九年度予算において、食糧増産費を大幅に削減して参りました。加えて今般のMSA小麦の輸入は、結果的に我が国の農業生産力の停滞に大きな拍車をかけ、悪影響を与えることは容易に予想されるところであります。従いまして当然としてこの三十六億の何割かはMSAの小麦協定における直接被害者たる農民にこそ支出される筋のものであろうと思うのであります。然るにもかかわらず、吉田内閣外交政策の失政によつて、この援助資金の使い方を全部軍事力強化の方面に紐付と相成つておるのでありまして、これが私の反対理由の第三であります。  次に、今般の援助計画は、MSA小麦の輸入代金の二割、三十六億を以て我が国の工業を軍事化し、米国軍需産業と同一規格に日本の工業の形を従属させるという意味を持つておるものであります。即ち、援助範囲は、兵器の特需、保安庁需要のごときものに限つておるのでありまして、先に政府の提出いたしましたいわゆる緊縮財政の必要を認めながらも、一方に保安庁費を大幅に増加したと同様に、今日政府当局が如何に陳弁しようとも、本予算の持つ本質的性格は、結果から見ますると、我が国をしていよいよ再軍備の彼方に押しやるものであり、再軍備促進の補正予算でありますることは余りにも明白なる事実であります。これが私の反対する第四の理由であります。  次に、今般のこの余剰農産物輸入とその補助金に関連して、我々が銘記しなければなりませんことは、日本の貿易構造に大きな変化を来たすという点であります。即ちアメリカより余剰農産物を輸入することによつて、三十六億の援助そのものは参るといたしましても、アメリカ以外の諸国との貿易は幾多の支障に逢着するでありましようことは予想されるところであります。これが反対の第五の理由であります。  以上の各点を考慮いたしまするときに、MSA協定成立、その一部としての今般の補正予算の成立は、明らかに日本の運命をアメリカの世界政策に従属させるものであると断ぜざるを得ません。(拍手経済自主性の基本線でありまするところの農業生産力と工業生産力とを、米国の権威と米国の支配の下に委ねること以外の何ものでもないということを、私はここに政府に向つて厳粛に警告しなければならないのであります。  以上の理由によつて私は只今議題となつておりまげ本補正予算案に対し断固反対の意思を表明するものであります。(拍手)     —————————————
  44. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  45. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は無所属クラブを代表いたしまして、只今上程されております昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)に反対するものであります。この補正予算の金額は三十六億で少額でありますけれども、その内容を見ますると、日本憲法上或いは又財政法上或いは又外交上、政治上或いは又国民生活の上にとつて、重大な意味を持つていると思うのであります。そういう観点に立ちまして、私は大体三点に亘つて反対理由を明らかにいたしたいと思うのであります。  その第一は、この予算案が憲法に達反しているという点であります。即ち先ほど問題になりましたMSA協定の一環としてこの予算案は出されておるのでありまして、MSA協定は、軍事義務と再軍備の義務と防衛能力、即ち日本経済を軍事化し、兵器産業を育成強化する義務を負つておるわけでありましてこの三つの義務のうち、いわゆる防衛能力、兵器産業の育成強化のために、この予算は充当されるわけであります。そういう意味で、この予算が憲法に違反することは明らかであります。即ち日本憲法の禁ずる再軍備を促進する予算案となるわけであります。反対理由の第二は、この予算案が財政法上の精神或いは原則を無視し、これに違反しているという点であります。政府が我々に出しましたこの予算案を眺めますると、全く国会を無視したような出し力をしておるわけてあります。この予算の出し方は、歳入と歳出という金額を書いて、而もその詳細については、この添附する書類によつて、参照書によつて承知されたいということになつておりますが、その中に書いてある資金運用及び使用計画表というのがございますが、それにはたつた一行でありまして、工業力強化投融資としまして三十六億三千三百万円計上してありまして、その内容は一つも書いてないのであります。いわゆる資金計画のことは全然ないわけでありすす。而も審議の過程におきまして、この資金計画について政府質問いたしましたところ、政府の部内でも意見が一致していないのであります。政府部内で一致していない。そうして投融資とありますが、これを投資するのか、融資するのか、明らかでない。大蔵大臣は、一応これはコンマーシヤル・ベースによつて、採算ベースに乗るような産業に開発銀行を通じてこれを融資すると言つておりますが、併しながら、例えばジエツト・エンジンの試作にこの金を廻すと言つておりますが、ジェットエンジンの試作は、これはいわゆる商業採算に乗らないことは明らかなわけであります。併し、そういう商業採算に乗らないものにこれか投資することは、或いは又融資することは、これは大蔵大臣のこの言明に反するという質問をいたしますと、併しこれはまだ決定していないのだと、ジエツト・エンジンの試作のほうに廻すか廻さないかをこれから検討するのである、そういうような非常なあいまいな答弁なのであります。而も、仮に政府意見が一致しましたところで、又これはアメリカの同意を得なければ、この使用は決定しないわけです。こんな内容が明らかでなく、特に政府の使い方、資金計画もきまつていない、政府のきまつていることは、アメリカの同意を得なければ、これはわからない。これでは全く三十六億について、白紙委任状を政府に渡せというのと全く同じでありまして、こんな予算の出し方というものはないと思うのです。これは財政法の、予算は明瞭でなければならないというこの基本的な原則に反することであります。これはどういうふうに使われるかわからないのを、これを審議して賛否の態度を決しろと言つたつて、決しようがないじやないか。投資であるのか、融資であるのか、それもわからない。こういうような大福帳以下的予算書を我々に出して、これを審議しろなどということは、全く国会議員を侮辱したものだと思う。これは全くこの予算編成について自主性のない証拠である。特に又これは国内措置でありますから、MSA協定を結んだ後において、急いでこの予算を出す必要はないと思います。なぜ急いで出すのか。こういう資金計画がきまつてアメリカと折衝して、はつきりと、どういうところに、どういうふうにこれを投資し、或いは融資するということがきまつてから、国会に出しても遅くはないのです。    〔副議長退席、議長着席〕  決して遅くはない。今これを出さなくたつて何ら支障がない。にもかかわらずなぜこんなに急いで出すか。これについてはどうしても我々に疑惑を持たざるを得ない。この三十六億が又利権的に運用されるのではないかという疑惑が持たれるのです。その一つとして、いわゆる日本ジエツト・エンジン会社というのができておりまして、ジエツト・エンジンの試作について、この金の中から融資をしてもらいたいという要望があるわけです。三十六億のうち十億を融資してもらいたいという要望がある。これは政府質問したところ、政府もその通りであると言つている。而もこの日本ジエツト・エンジン会社を設立するについては、前の通産次官の玉置氏がその副社長に就任するやに伝えられていたの品であります。従つてそういうこの三十六億のうち十億、ジエツト・エンジンの試作について融資の受入れをしたいというその受入態勢ができておりまして、これに対して融資するのかしないのか、はつきりそれを政府答弁してもらいたいということに対して、明確に答えられないのです。何ら明確に答えてないのです。こういうような予算の出し方をしているわけです。これでは、我々はこの前の造船汚職みたいなことがございますから、こういう杜撰な予算の出し方に我々は賛成することはできないわけです。  第三に、この予算は、政府の財政金融政策と全く矛盾していると思うのです。二十九年度の一般会計予算は、二十八年度と同じ編成の仕方で編成すれば一兆五百十六億であることは周知の通りであります。而も一般会計と特別会計とを合せますと二兆五百三十億、これに地方財政五千四百二十億、重複勘定を引いた五千四百二十億円を加えますと、二兆五千九百五十億円が二十九年度のこの一般会計及び特別会計、地方財政を加えた予算規模であります。これは二十八年度の二兆五千六億に対して九百五十億も殖えているのであります。それらに又三十六億これで殖えるわけでありまして、結局純計において九百八十六億殖えるわけであります。その結果として、二十八年度の財政規模は国民所得に対して四一%ですが、今度三十六億を又これに追加しますと、国民所得に対して四三%になる。政府は緊縮財政、緊縮財政と言いながら、このように予算を膨脹しているわけでありまして、明らかにこれは政府の財政方針と矛盾しております。而もこれは軍需産業のほうに融資するわけでありまして、従つてこれは軍事費と同じような不生産的予算に使われるのであつて、これがインフレ要因になることは明らかである。而もこれが呼び水になつて、更に市中金融のほうから又軍需産業のほうに融資されるということになる。従つて金融面においても政府は不急不要方面に融資しないと言いながら、この三十六億が不急不要方面にこれは融資されるわけであります。政府の金融政策と全く矛盾していると思うのです。特にジエツト・エンジン試作については、これは全く私は今の現状では無駄金であると思う。ただ利権的に、これはそういう利権会社を潤すに過ぎないと思うのです。現在ジエツト・エンジンの試作というものは御承知でありましようが、千キログラムの地上推力のものを日本で作るとしても、この技術能力が今の段階では一年で漸く試作が完了する程度、而も世界的な常識によれば、実用のジエツト・エンジンは地上推力二、三千キログラム、これを試作するに一年半かかる。而も更に今ではラムジェットというような非常な進んだジェットができておりまして、従つて日本の技術では、まるで夢のようなものだ。で、こういうようなこの三十六億を使つてジエツト・エンジンを試作するといつても、それが生産的にこれが引合うような段階になるかどうか疑問であると思います。而も日本の再軍備の問題、或いは又防衛産業の問題を考える場合に、三月一日の水爆の実験が行われた以後においては、全くここで我々は考えを新たにしてこれを再検討しなければならん段階に私は来ていると思う。又ジエツト・エンジンの試作に金を費やして一体日本の防衛が、又防衛能力が、実際問題としてこの水爆時代にどれだけ役に立つか、そういうことを考えますれば、結局この金は利権的に使われる以外には私はないのではないかと思うのです。従つて本来ならば、こういう金は、政府のこの今の財政金融政策を貫こうとすれば、せめて公債償還にでも廻すか、或いは又西ドイツが五十万戸の住宅建設するために、そういうアメリカの援助を与えられた。そういうように日本でも私は使うべきだと思うのです。ところがその不生産的な使途にこれが向けられるのであつて、こういう意味で、私はこの予算案に賛成することはできないわけです。なおこのMSA協定の一環としての小麦援助、小麦援助の中の贈与分の三十六億は、何か日本経済にプラスになるような説明をしておりますが、このMSA小麦協定アメリカ過剰小麦という特定の使用価値を持つたものを持つて来て日本アメリカの好むところの軍需品を買うのであります。又アメリカの余つた余剰小麦を以て日本の産業を軍需化させよう、日本の産業或いは又兵器産業を育成しよう、そういうふうに使われるのであつて、決してこれは経済的にプラスではありません。これは経済的にむしろマイナスになると思うのです。  これまで政府アメリカから対日援助として二十億ドルの援助を受けましたが、独立国としてこのようなものをもらうべきではない、政府は返すべきであると言つて、債務と心得えると言つている。ところがこの援助については、無償で政府がもらうというのです。実体はもらうのではなくて、アメリカからもらわされて、これによつて日本経済を軍需化し、そうして日本の再軍備を促進させられるのです。こういう意味を持つておる。  以上の点から、私はこの補正予算案に反対をするものであります。(拍手
  46. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて、討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案の表決は記名投票を以て行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  47. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票漏れはございませんか。    〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
  48. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票漏れないと認めます。  これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  49. 河井彌八

    議長河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数 百七十三票  白色票 百十票  青色票 六十三票  よつて本案は、可決せられました。(拍手)      ——————————    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名  百十名   佐藤 尚武君   小林 武治君   岸  良一君   北 勝太郎君   梶原 茂嘉君   上林 忠次君   柏木 庫治君   井野 碩哉君   加賀山之雄君   森 八三一君   森田 義衞君   前田  穰君   廣瀬 久忠君   後藤 文夫君   早川 愼一君   野田 俊作君   中山 福藏君   田村 文吉君   館  哲二君   竹下 豐次君   高橋 道男君   杉山 昌作君   高木 正夫君   島村 軍次君   白井  勇君   横川 信夫君   深水 六郎君   木村 守江君   安井  謙君   伊能 芳雄君   青柳 秀夫君   高野 一夫君   西川彌平治君   石井  桂君   井上 清一君   関根 久藏君   川口爲之助君   吉田 萬次君   佐藤清一郎君   剱木 亨弘君   森田 豊壽君   宮本 邦彦君   長島 銀藏君   長谷山行毅君   宮田 重文君   瀧井治三郎君   田中 啓一君   岡崎 真一君   石原幹市郎君   植竹 春彦君   岡田 信次君   松岡 平市君   大谷 瑩潤君   團  伊能君   一松 政二君   西郷吉之助君   中川 幸平君   左藤 義詮君   寺尾  豊君   吉野 信次君   重宗 雄三君   津島 壽一君   青木 一男君   大野木秀次郎君   小滝  彬君   古池信三君   伊能繁次郎君   杉原 荒太君   榊原  亨君   大谷 贇雄君   宮澤 喜一君   高橋  衛君   横山 フク君   西岡 ハル君   重政 庸徳君   小沢久太郎君   鹿島守之助君   藤野 繁雄君   雨森 常夫君   石村 幸作君   青山 正一君   秋山俊一郎君   入交 太藏君   松平 勇雄君   上原 正吉君   郡  祐一君   山本 米治君   小野 義夫君   平井 太郎君   川村 松助君   堀  末治君   島津 忠彦君   小林 英三君   泉山 三六君   黒川 武雄君   石坂 豊一君   井上 知治君   岩沢 忠恭君   木島 虎藏君   三浦 義男君   最上 英子君   三好 英之君   深川タマヱ君   武藤 常介君   寺本 広作君   堀木 鎌三君   笹森 順造君   鶴見 祐輔君   一松定吉君    苫米地義三君     —————————————  反対者(青色票)氏名 六十三名   楠見 義男君   永岡 光治君   湯山  勇君   大和 与一君   木下 源吾君   内村 清次君   秋山 長造君   阿具根 登君   海野 三朗君   大倉 精一君   河合 義一君   岡  三郎君   亀田 得治君   小松 正雄君   永井純一郎君   近藤 信一君   竹中 勝男君   清澤 俊英君   成瀬 幡治君   小林 亦治君   小酒井義男君   江田 三郎君   重盛 壽治君   高田なほ子君   堂森 芳夫君   矢嶋 三義君   安部キミ子君   岡田 宗司君   藤田  進君   戸叶  武君   田中  一君   吉田 法晴君   栗山 良夫君   菊川 孝夫君   藤原 道子君   天田 勝正君   若木 勝藏君   中田 吉雄君   松本治一郎君   千葉  信君   三橋八次郎君   荒木正三郎君   羽生 三七君   曾祢  益君   三木 治朗君   東   隆君   山下 義信君   松浦 清一君   松永 義雄君   加藤シヅエ君   須藤 五郎君   加瀬  完君   鈴木  一君   松澤 兼人君   千田  正君   木村禧八郎君   上條 愛一君   村尾 重雄君   相馬 助治君   羽仁 五郎君   棚橋 小虎君   佐多 忠隆君   堀  眞琴君      ——————————
  50. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第六、港湾法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七、北海道開発のためにする港湾工事に関する法律の一部を改正する法律案衆議院提出)  日程第八、運輸省関係法令の整理に関する法律案内閣提出衆議院送付)  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。運輸委員長前田穰君。    〔前田穰君登壇拍手
  52. 前田穰

    ○前田穰君 只今議題となりました港湾法の一部を改正する法律案ほか二件につきまして運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。  先ず港湾法の一部を改正する法律案につきまして申上げます。  この改正法案は、港湾法施行後の経験に鑑みて、不備なる点を改正しようとするものでありまして、その内容は多岐に亘つておりますが、主なるものにつきまして簡単に申上げますと、  第一は、港務局の業務の円滑なる遂行を図るために港務局の権限を強化したことであります。即ち港務局は、その組織母体たる地方公共団体の委任により、港湾の利用管理に関する行政事務を行い得ることとし、又不正行為により料金等の徴収を免れた者に対し過怠金を徴収し得る権限、料金未納者に対し強制徴収をなし得る権限を与えると共に、行政代執行法等に基く権限をも行使し得ることとしたことであります。  なお御参考までに申上げますと、港湾法に定める港湾管理者には、地方公共団体、地方公共団体の組合及び関係地方公共団体によつて組織される公法人たる港務局の三形態がありまして、港務局は昨年新居浜港において設立され、更に二、三の港務局が北九州において近く設立される予定の趣きであります。  改正の第二は、港務局の解散に関する事項を定款の必要的記載事項とすると共に、解散につきましては運輸大臣又は知事の認可をその効力発生要件としたことであります。  第三は、現行法におきましては、港湾に隣接する地域内において港湾管理者の許可を要する行為の範囲は広きに失しておりますので、この点を是正すると共に、地域の指定が慎重に行われるようにしたことであります。  第四は、臨港地区内における構築物に関する現行の規制を強化いたしますと共に、違反構築物に対し、撤去、移転等の命令をなし得る権限を港湾管理者に与えたことであります。  第五は、国が助成する港湾工事費用の精算方法につきまして、その簡素、迅速化を図る意図の下に、現行の原価主義を支出主義に改めたことであります。  その他、港湾施設の範囲の拡張、港務局の業務、入港料、港湾施設の損傷者及び港湾工事による受益者の費用負担、港湾工事の結果、他人に工事の必要を生じさせた場合における費用の補償、港湾工事に伴う調査測量のため他人の土地への立入権等に関する規定を整備したことであります。  当委員会におきましては、港務局制度に関する基本問題、港務局の解散に関する認可制、その他、港湾における私設桟橋等のけい留施設を一定の条件の下に他の者にも利用せしめ、けい留施設の効率的利用の途を開く規定を設けることの可否等の諸問題に関しまして、極めて慎重なる審議が行われたのでありまして、私有けい留施設の効率利用の問題につきまして、政府委員は「一港湾において私有けい留施設しかないような場合は、基本的には公共事業による港湾工事を促進することによつて解決したい。又、私人がけい留施設を設置する場合は、その使用が公共の利益に適合するように条件を附して許可する等の方法によつて実情に即して解決して参りたい」との答弁がありました。  討論に入りましたところ、岡田委員より修正案が提出されたのであります。  修正案はお手許に配付いたしてありますから、朗読を省略いたします。  この修正の要旨を簡単に申上げますと、  第一は、港務局の解散認可制をやめまして、解散に伴う後始末の規定、即ち、解散する港務局の債務は、その組織母体が負担することとし、又当該港湾について後継ぎの管理者が決定するまで解散の効力は生じないこととする規定を設けたことであります。  第二は、改正案におきましては、港務局の業務として港湾に隣接する地域を良好な状態に保全することを意図しているのでありますが、この改正案の意図するところを明確にするように修正したことであります。  第三は、補欠委員の任期に関する規定、監事の委員兼任禁止の規定は、あえて改正する理由が乏しいので、改正を取りやめにしたことであります。  第四は、港湾工事費用の精算方法に関する改正は、経理を粗雑にする虞れもあり、むしろ現行方法に近代的経理方式を採用することによつて、精算の簡素迅速化を図るほうが妥当であるので、この改正を取りやめたことであります。  第五は、港湾工事に伴う工事費用の補償に関する改正案は、補償金の算定につきまして法律事項を政令に委ねる虞れがありますので、河川法の場合のように法律に明記したことであります。  次に森田委員より「港務局制度は占領行政の遺物であつて、現行法のままでは日本の国情にそぐわない嫌いがある。又適切な港湾の管理運営を行うためには港務局の権限は不十分であり、地方公共団体の身代りとも言うべき港湾管理者としては万全な制度とは言い得ない。よつて次の決議案を附すべき」旨の動議が提出されました。その決議案は、   現行港湾法は占領行政下第七国会において制定された経緯もあり、同法に定める港湾の管理運営方式については基本的に再検討を要すべき点が尠しとしない。   よつて政府港湾法を全面的に再検討し、港湾の開発、管理及び運営に関し実情に即した適切な方策を考究し、成案を得て国会に提出することを要望する。   右決議する。というのであります。  かくて討論を打切り、採決に入りましたところ、岡田委員提出の修正案、並びにこの修正案による修正部分を除く原案は、共に全会一致を以て可決されました。次に森田委員提出の附帯決議案につきまして採決いたしましたところ、これ又全会一致を以て可決されました。  次に北海道開発のためにする港湾工事に関する法律の一部を改正する法律案について申上げます。  この改正法案の要点の第一は、開発途上の北海道港湾の特殊事情に鑑みまして、公共用港湾施設用地の建設改良に要する工事費用について国が七割五分を負担することとし、従来の予算上の慣行を立法化したことであります。  第二は、国の直轄工事によつて生じた土地又は工作物は、公用のため国において必要なものを除き、港湾管理者にその負担の範囲内で無償譲渡するか、又は管理委託をしなければならないことといたしまして、有償貸付を認めないこととしたことであります。  第三は、港湾管理者設立の際におきまして国有港湾施設となつているものについても、第二の場合と同様、公用のため国において必要なものを除き港湾管理者にその負担の範囲内で無償譲渡するか又は管理委託をするかしなければならないことといたしまして、有償貸付を認めないこととしたことでありまして、以上の三点は、いずれも港湾法の特例をなすものであります。  本委員会の質疑におきましては、北海道における港湾整備の見通し、北海道における港湾整備の海上輸送に及ぼす効果等につきまして質疑が行われたのでありますが、詳細は速記録に譲ることといたします。  動議により討論を省略して、採決に入りましたところ、本法案は、原案通り可決すべきものと全会一致を以て決定いたしました。  次に運輸省関係法令の整理に関する法律案について御報告申上げます。  本法律案は太政官布告及び法律中すでに死文化したもの、存在の意義が消滅したものをこの際整理しようとするものでありまして、「海図刊行に付新に礁州を発見し、港湾を測量する者に海軍省水路寮に開申せしむる件」外二十二件を廃止しようとするものであります。  委員会におきましては、政府委員より詳細な説明を聞きましたところ、格別の問題もなく、質疑、討論省略の動議成立し、直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申上げます。(拍手
  53. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。  先ず港湾法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  54. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
  55. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次に、北海道開発のためにする港湾工事に関する法律の一部を改正する法律案運輸省関係法令の整理に関する法律案、以上両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  56. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて両案は、全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  57. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第九、特別調達資金設置令等の一部を改正する法律案  日程第十、財政法等の一部を改正する法律案  日程第十一、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案  日程第十二、国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事藤野繁雄君。    〔藤野繁雄君登壇拍手
  59. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 只今議題となりました四法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。  先ず特別調達資金設置令等の一部を改正する法律案について申上げます。  本案の内容について申上げますと、第一は、特別調達資金設置令についての改正でありますが、只今承認すべきものと決定しました、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定及び今回政府が国際連合の軍隊の派遣国の政府との間に締結承認を求めて参つております、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定に基いて、国際連合の軍隊又はアメリカ合衆国政府の特定の職員の需要に応じて行う物及び役務の調達について従来なされている駐留軍の場合と同様に、特別調達資金において取扱わせることにしようとするものであり、又、従来資金に属する現金の支払の原因となる契約等の事務の一部を都道府県の職員に取扱わしめているのでありますが、今回、アメリカ合衆国政府等からの受入金の同資金への受入れ等の事務についても、都道府県の職員に取扱わせることができることとする等の改正をしようとするものであります。  第二は、駐留軍労務者等に支払うべき給料その他の給与の支払事務の処理の特例に関する法律についての改正でありますが、国際連合の軍隊、又はアメリカ合衆国政府の特定の職員のために労務に服する者等の給与の支払事務につきましても、その事務の一部を銀行に委託して取扱わせることができることとしようとするものであります。  本案の審議に当りましては、特別調達資金の回転状況及び同資金の今後における使途等について、質疑応答が交わされたのでありますが、詳細は速記録によつて御承知願います。  質疑を終り、討論に入りましたところ、平林委員より、「吉田総理大臣は、国会軽視の嫌いがあり、かかる吉田総理大臣が本案の提出者である以上、本案に反対する」との意見が述べられ、採決の結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたした決第であります。  次に、財政法等の一部を改正する法律案について申上げます。  本案は、財政会計制度の合理化と、簡素化を図り、以て国の会計事務の円滑な運営に資するため、財政法及び会計法中、必要と認められる部分につきまして、所要の改正を加えようとするものであります。以下その主要点について申上げます。  第一に、各省各庁の長は、繰越明許費及び事故繰越の経費について、大蔵大臣承認を受ければ、承認を受けた金額の範囲内で翌年度に繰り越して使用することができることとすると共に、繰越の手続に関する事務を各省各庁所属の職員に委任することができることといたしております。  第二に、繰越明許費にかかる歳出予算に基いて、国が工事請負契約等の債務負担を行う場合に、その支払が翌年度にまたがるものについては、現行法では、その年度内に支出可能の部分については支出負担行為をなし、翌年度に支出すべき部分については、予算の繰越を待つて、改めて支出負担行為をなさなければならないことになつておりますが、これを改めまして、各省各庁の長が大蔵大臣承認を受ければ、承認を受けた金額の範囲内で、翌年度に支出すべき部分をも併せてその年度内において債務を負担することができることといたしております。  第三に、国が債務負担行為によつて支出すべき年限は、現行法では、その年度以降三箇年度以内になつておりますが、これを二箇年延長して、五箇年度以内とすることといたしております。  第四に、新たに分任支出負担行為担当官の制度を設け、支出負担行為担当官の設置されていない官庁において行う支出負担行為の円滑を期することといたしております。  そのほか、事務簡素化の一環として、支払計画を承認した場合の大蔵大臣の会計検査院に対する通知を廃止し、又、出納官吏が現金、又は物品を亡失、毀損した場合における大蔵大臣に対する通知を、一定期間分を取りまとめて通知することができることといたしております。  なお、本案につきましては、衆議院において今回の改正に伴い、予算執行職員等の責任に関する法律につきましても、所要の字句改正を行うよう修正が加えられております。  本案の審議に当りまして、各委員から熱心な質疑が行われましたが、その主なるものについて申上げますと、「繰越明許費は翌年度に繰越して使用することを国会で議決したものであるのに、各省各庁の長が繰越を必要とする場合は更に大蔵大臣承認を経なければならないとしておる理由はどこにあるか」との質疑に対し、「事業の執行の円滑を期すると共に経費の使用が濫に流れることのないようにするためにも、又国庫の歳入欠陥等、万一の場合に備えておくためにも現行の承認の制度は適当であり、且つ必要であると考える」との答弁があり、又「現行法では債務負担行為によつて国が支出すべき年限は三カ年産以内となつておるが、国会の議決を経ればその年限を延長し得ることになつておるから、必要があれば三カ年度を越えることもできる。この年限を継続費の年限が五カ年度以内となつている点を考慮して、五カ年度以内に改めるというが、何故そのような必要があるか」との質疑に対し、「現行法では、必要がある場合に延長が認められるのであつて、当初から三カ年度を越える債務負担行為はできないことになつておる。特殊な場合ではあるが三カ年度以内では不都合な場合もあるので、今回の改正を考えたわけである。改正の結果、債務負担行為の年限が五カ年度以内になつても、一般的にこれを適用する考えはなく、極く特殊なものに限定したい」との答弁があり、又「事務簡素化の一環として支払計画を承認した場合の大蔵大臣の会計検査院に対する通知を廃止することとなつているが、会計検査院の活動に支障を来たさないか」との質疑に対し、「会計検査院としては検査上特に支障はない」との答弁がありましたが、その詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、小林委員より「繰越明許費を設けることについては、今後特に慎重を期することを希望して賛成する」との意見が述べられ、次いで成瀬委員より「今回の改正によつて予算の執行に種々問題の発生することが気ずかわれるので反対する」との意見が述べられ、更に平林委員より「政府は去る四月二十三日の本院本会議の決議を尊重し、速かに善処すべきであり、従つて政府提出の本案に強く反対する」との意見が述べられ、最後に東委員より「本案には、この際これに便乗して改正せられた点がある。右については政府の猛省を促して賛成する」との意見が述べられ、採決の結果多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案について申上げます。  本案の内容について申上げますと、第一点は、森林基金を設置することにかかる改正であります。国有林野事業特別会計法の現行規定によりますると、森林資源維持のため予算の定めるところにより、国有林野事業特別会計の決算上生じた利益金につき、そのうちから、積立金を積立てることができ、これを控除した額に相当する金額を当該年度の一般会計に納付しなければならないこととなつており、又例外として当分の間は損失補填のために積立金をすることができることとなつているのでありますが、本案は、この森林資源維持のための積立金を森林基金とすることとし、毎会計年度の損益計算上利益を生じ、且つ歳入歳出の決算上剰余金があるときは、それに相当する金額の範囲内で予算の定めるところにより当該年度の翌年度において基金に組入れ、又は一般会計に繰入をすることができることとし、更に利益があるときは損失補填のための積立金を積立てることができることとしようとするものであります。又この会計の運転資金に充てるため必要ある場合は、一時借入金の借入、又は融通証券の発行に代えて基金に属する現金の繰替使用ができることとしようとするものであります。  第二点は、先に可決されました保安林整備臨時措置法案にかかる改正でありますが、国土保全上必要な森林等はこの会計において経営することが適当であるとの見地から、保安林整備計画に基き当分の間この会計の負担において森林等を買入れることができることとし、買入及び買入れた森林等についての治山事業に要する経費の財源に不足を来たすときに限り、予算の定めるところにより一般会計からこの会計に繰入金をすることができることとしようとするものであります。委員会における審議の詳細は速記録に譲ることを御了承願います。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、平林委員から「去る四月二十三日の本院本会議における決議に基き政府は善処すべきである。本案はその政府責任者である吉田総理大臣の提出したものであるとの理由から、本案に反対せざるを得ない」旨の意見が述べられ、採決の結果多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  最後に、国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律案について申上げます。  従前、恩給担保金融は恩給金庫によつて行われていましたが、昭和二十四年、国民金融公庫の設立に伴つて同金庫は解散し、恩給担保金融の途は閉ざされたのであります。然るに最近恩給等を担保とする金融への措置が強く要望され、昨年恩給法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正することによつて、すでに国民金融公庫を通じて再び恩給等を担保とする金融の途が開かれたのでありますが、今回右金融に関する貸付債権の確保を図ると共に、国民金融公庫の業務の範囲を拡張することにより、恩給担保金融を円滑にいたそうとするものであります。  次に、本案の内容を申上げますと、第一に、本法により公庫に担保に供することができる恩給等は、恩給法その他の法令による年金たる恩給、戦傷病者戦没者遺族等援護法による障害年金及び遺族年金並びに条例により支給される年金で右に準ずるものといたそうとすることであります。  第二に、担保に供された恩給等は、国民金融公庫だけがその支払いを求めることができるものとし、又債務者はその債務を完済するまでは恩給等を受ける権利を放棄することができないこととし、その他担保の効力について所要の規定を設けようとするものであります。  第三に、国民金融公庫は恩給等を担保とする貸付に限つて、事業資金以外の資金の小口貸付ができるよう特例を設けることといたそうとすることであります。  第四に、公庫における恩給担保貸付の適正円滑な運営に資するため、国民金融審議会の委員に国民大衆の利益を代表する者一人を追加することといたそうとするものでありまして、これには恩給等の受給者の代表を充てることが予定されております。  本案の審議における主なる質疑応答を申上げますと、「昭和二十九年度において八百八十五億円に上る恩給支払がなされることとなつているのに、何故に恩給金庫を復活しないのであるか」との質疑に対し、「従前の恩給金庫の制度を復活することは、財政上の理由等からして只今考えていない」旨の答弁があり、「国民金融公庫が行う恩給担保金融に如何ほどの貸付資金を計上しているか」との質疑に対し、「昭和二十九年度に回収金を見込んで二十三億円を計上している」との答弁がありました。なお、本案審議の過程において、中小企業金融問題の重要性について質疑がなされたのでありますが、その際大蔵大臣は、「中小企業金融の資金需要量に関する調査を経済審議庁と連絡の上、次の国会に提出するよう努力する」旨の発言がなされたのであります。その他詳細は速記録によつて御承知を願いたいと存じます。  質疑を終り、討論に入りましたところ、平林委員より、「去る四月二十三日の本院本会議における決議に対し、吉田内閣はその責任を明確にすべきである。私はこのような意味において、本案の趣旨には賛同するが、あえて反対する」旨の意見が述べられ、採決の結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました次第であります。  以上、御報告申上げます。(拍手
  60. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより四案の採決をいたします。  先ず、特別調達資金設置令等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立]    〔「反対」と呼ぶ者あり〕
  61. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は、可決せられました。      ——————————
  62. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次に、財政法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  63. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は、可決せられました。      ——————————
  64. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次に、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律案、以上、両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  65. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて両案は、可決せられました。      ——————————
  66. 河井彌八

    議長河井彌八君) 参事に報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  法務省設置法の一部を改正する法律案可決報告書      ——————————
  67. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、日程に追加して法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長小酒井義男君。    〔小酒井義男君登壇拍手
  69. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 只今議題となりました法務省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  先ず、この法律案内容を御説明いたしますと、改正点は次の二点に帰するのであります。  第一点は、同設置法別表十に掲げられております福岡入国管理事務所の管轄区域中、福岡県のうち門司市のみならず小倉市、戸畑市、八幡市、若松市、京都郡、築上郡及び遠賀郡、即ち福岡地方検察庁小倉支部の管轄区域を一括、下関入国管理事務所の管轄区域に移管することであり、これによつて関門港一帯の出入国管理業務を更に統一的に且つ能率的に処理せしめようとするものであります。  第二点は、同設置法別表十一に掲げられております入国管理事務所出張所の欄に、新たに東京入国管理事務所新潟港出張所、名古屋入国管理事務所伏木富山港出張所及び鹿児島入国管理事務所名瀬港出張所の三つの出張所を設けると共に、管轄区域の変更に伴いまして従前、福岡入国管理事務所の出張所でありました八幡港出張所及び若松港出張所を下関入国管理事務所の出張所に変更するものであります。  この改正は入国審査官の出張審査或いは出張駐在による審査の不便を除き、出入国管理業務の徹底を図らんとする趣旨によるものであります。  本委員会におきましては前後六回に亘り詳細審議を尽したのでありますが、審議の過程におきまして問題になりました主な点を御報告申上げますと、その第一は、「行政事務の簡素合理化、事務再配分の見地からいたしまして、出入国に間する管理事務はこれを府県に移譲し得ないか」という点であります。この問題に対し政府当局の説明によれば、「この事務の性質上これを府県に移譲するということは考慮したことは全くない、府県によつて取扱方が区々となり一貫性を欠く虞れがあるので、これは飽くまで現状のように国の機関で統轄して処理すべきものである」とのことであります。  次に、「この法律案によつて新潟、高岡、名瀬の三カ所に出入国管理事務所の出張所を新設する結果、これに伴う予算及び定員の増加如何」という問題であります。政府当局の説明によりますと、「予算面では何ら増額を要しない。事務所用建物のごときも従来ただ一室を借りて執務する程度を例とし、もよりの管理事務所から必要に一応じて随時係官が出張して滞在宿泊し執務していた場合と比較すれば、むしろ経費の節約となる、年間を通じ二十万円程度の節約となり、又定員につきましても、出張所新設のためには一人も増員を要しない」とのことであります。  次に、「出入国管理事務所の置かれている三十八港のうち、敦賀港については、現在のところ出入国取扱の案件は皆無であるにかかわらず、なおこれを存置する必要があるか」という問題であります。政府当局の説明によりますと、「敦賀港は指定港になつておる関係もあり、今後ソ連、中共等との間に正常な貿易関係が復活する暁には、当然敦賀港を経由する出入国者が続出するものと予想されるので、このままこれを存置するを適当と考えている」とのことであります。  次に、「東京、横浜、神戸の三つの出入国管理事務所について、その定員と取扱件数とを比較いたしますと、一見著しいアンバランスがあるかの観があり、事務量に適応する人員の配置について再検討を要するのではないか」という問題であります。この点に関し、「単に取扱総件数だけを比較すると、人員の配置の上に妥当性を欠いているかのごとき観はあるが、取扱事務の内容を分析して比較してみると、東京、横浜、神戸の三事務所の間の人員の配置はほぼ妥当なものになる」との政府当局の答弁であります。  本日の委員会におきまして、本法律案に関する質疑を終り、直ちに討論を省略して採決に入りましたところ、全会一致を以て本法律案は、原案通り可決するべきものと議決いたしました。  以上、御報告申上げます。
  70. 河井彌八

    議長河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  71. 河井彌八

    議長河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  72. 河井彌八

    議長河井彌八君) この際、お諮りいたします。宇垣一成君から、病気のため十日間請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、許可することに決しました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後八時十二分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、検察権中立性確保に関する緊急質問  一、フィリピン賠償問題、並びに東南アジヤ外交に関する緊急質問  一、日程第一 日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件  一、日程第二 農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件  一、日程第三 経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件  一、日程第四 投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件  一、日程第五 昭和二十九年度特別会計予算補正(特第1号)  一、日程第六 港湾法の一部を改正する法律案  一、日程第七 北海道開発のためにする港湾工事に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第八 運輸省関係法令の整理に関する法律案  一、日程第九 特別調達資金設置令等の一部を改正する法律案  一、日程第十 財政法等の一部を改正する法律案  一、日程第十一 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案  一、日程第十二 国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律案  一、法務省設置法の一部を改正する法律案  一、議員の請暇