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1954-04-02 第19回国会 参議院 本会議 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二日(金曜日)    午前十一時三十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程第二十八号   昭和二十九年四月二日    午前十時開議  第一 厚生年金保険法案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、厚生年金保険法案趣旨説明)  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、内閣から、その趣旨説明を求めます。草葉厚生大臣。    〔国務大臣草葉隆圓登壇拍手
  4. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 今回提出いたしました厚生年金保険法案につきまして、提案理由並びにその内容の概略を御説明いたします。  現行厚生年金保険法は、終戦後の困難な国内経済事情に対応して、寡婦年金遺児年金等を新設いたしますると共に、未だ支給期に到達していなかつた養老年金年額千二百円程度まで圧縮し、それによつて保険料率を引下げる等の臨時応急的な措置を講じたままになつているのでありまして、当時から、或る程度経済の安定した暁には、その全面的な改正が予期されていたのであります。その後、我が国経済は、急速に立ち直りを示しておりますると共に、他面勤労者生活保障のための社会保障制度拡充整備は、ますますその必要の度を加えつつあるのであります。のみならず、本年から被保険者の一部に対し、養老年金支給が開始されることと相成りました関係もあり、厚生年金保険法改正は、この際、どうしてもいたさなければならない段階に立ち至つているものと考えるのであります。従いまして、この際、厚生年金保険制度全般亘つて検討を加えまして、保険給付内容を改善し、且つ、その将来に亘つての恒久的な財政計画を樹立いたしますことによつて長期社会保険としての基礎を確立いたしたいと考えるのであります。  以下、その改正の要点を申上げますならば、第一に、保険給付及び保険料の計算の基礎となる標準報酬につきましては、できるだけ被保険者の賃金の実態に合うようにすると共に、労資負担増を考慮して若干の引上げを行うことといたしました。  第二に、すべての年金給付老齢年金給付内容中心として、均衡を保つような体系を考慮いたしました。  第三に、年金給付の額につきましては一定額報酬比例額を加えたものとし、更に被保険者によつて扶養されていた者の数によつて加給年金支給し、生活実態に副い得るようなものといたしたのであります。  第四に、現行法におきましては、年額千二百円となつております老齢年金の額の最低を二万一千六百円とし、標準報酬の額に応じて更に増額するようにいたしました。  第五に、障害給付については、障害程度を合理的に区分すると共に、障害程度増進減退に応じまして、給付額を増減し得るように改めました。  第六に、現行遺族年金寡婦年金鰥夫年金及び遺児年金一つの総合的な体系統一して、新らしい遺族年金制度を設けることとしたのであります。  第七に、脱退手当金制度を合理化いたしました。  第八に、従来支給いたしておりました年金のうち、低額なものは一定額まで引上げるよう、特別の措置を講ずることといたしました。  第九に、坑内夫以外の被保険者についての国庫負担の割合を保険給付費の一割から一割五分に引上げることといたしました。  第十に、労資負担を勘案しつつ財政均衡を将来に亘つて保ち得るようにいたしまするため、保険料率を調整すると共に、少くとも五年ごとに再計算することといたしたこと等であります。  なお、本法案に関連しまして、政府といたしましては、船員保険法の一部を改正すると共に、厚生年金保険及び船員保険のそれぞれの被保険者期間を相互に通算して保険給付を行うこととするために、これらに関する法律案を本国会提案して御審議を煩わす予定でございます。  以上、今回提出いたしました法律案提案理由並びに内容の概要を御説明申上げた次第であります。何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願い申上げます。(拍手
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 只今趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。谷口弥三郎君。    〔谷口弥三郎登壇拍手
  6. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 私は自由党を代表いたしまして、只今議題になりました厚生年金保険法改正する法律案につきまして、二、三の質疑を行いたいと存じます。  先に社会保障制度審議会におきましては、年金制度準備改革に関する勧告といたしまして、年金制度改正を行う場合には、将来全国民対象とする国民年金制度を確立するための礎石として、先ず現在の被用者に関する各種年金制度整備して一元的な制度とすること、次いで現在漏れておりますところの五人未満の事業者被用者もこれに加え、又自営業者でも特に年金的保護を必要とするような人々をも加えられるような制度に発展せしむべき希望を持つて申出ておられるのでございますが、今回の厚生年金保険法改正案を見ますと、現状を一歩前進せしめようとする意図は認められますが、将来への発展に対し配慮が乏しいと非難しておるのでございます。併し私どもの見ます範囲におきましては、本改正案は全面的に保険給付内容を改善しておりますと共に、長期社会保険としての基礎を確立するものでありますから、その点からいたしましては、社会保険の一進歩であると歓迎しておるのでございます。以下数点につきまして、緒方副総理並びに関係大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。  先ずその第一は、今回の改正によりまして、老齢年金給付内容中心といたしまして、体系整備を図ると共に、標準報酬支給年金額引上げを行い、年金給付額は、定額制度報酬比例額を加えたものといたし、扶養者数によつて加給年金支給しております。なお、障害給付につきましては、障害程度合理的区分を行なつて遺族年金とか寡婦年金鰥夫年金及び遺児年金統一いたしまして、新らしい遺族年金制度を設けるなど、又脱退手当金制度を合理化することによつて、いろいろと統一が行われておることは、先に申しましたように社会保険制度統合という面から見て一歩前進であるとは思うのでございますが、要するに本改正案は、いずれにしましても、当面の措置として行われた中間的改正にほかならないものと思います。よつて政府におかれましては、公務員恩給でありますとか、共済組合制度を含めた全被用者対象として、総合的年金制度、なお進んでは社会保障の面から申しますと、公私の被用者を問わず、各種年金制度厚生年金保険法基礎とすべきであります。例えば現行保険法が現に行なつているように、すべての被保険者厚生年金保険法の被保険者といたして、その上で必要に応じては、代行などの途を開くなど、根本的な改正を行う御意図があるや如何ということについてお伺いしたいのでございます。  第二には、社会保険は、その制度が極めて多種多様でありまして、末端におきましては、これが取扱に多大の不便を感じておるのでございますから、厚生年金保険法改正を機として、健康保険でありますとか、船員保険とか、労災保険とか、共済組合保険であるとか、国民健康保険などを、できれば一元化するか。若し一元化が不可能であるとすれば、国民健康保険とその他のすべての社会保険との二本建に、早急に統一改正するお考えはないか。  第三には、社会保障制度は、国民全体を対象として各種事業に働く者のほか、その他すべての国民を被保険者に加え、社会保険としての医療は、予防給付療養給付全般に亘りまして、又医療機関には、国立、公立、私立の病院診療所、保健所などを加入せしめまして、老齢者遺族及び癈疾者失業者業務災害者などに対し、それぞれの給付が計画されまして、なお公衆衛生におきましては、特に結核と癌の撲滅を目的として、なお福祉措置といたしましては、身体障害者、児童、老齢者及び住宅方面にも、これが適用を拡大すべきものであると存じますので、かかる事業運営は、一元的に社会保障省とでも申しますような一省を設けて、本制度に対する全責任と権限を集中統合せしむる意思がおありでございましようか、お尋ね申したいと存じます。  第四に、厚生年金保険改正に当りまして、昭和二十九年度の年金受給者は十五万五千人でありまして、その金額は三十五億七千万円でございます。又脱退手当金受給者は二十四万人に及んでおつて、その金額は二十一億六千万円、総計約五十七億円というのでありますが、老齢年金額は、定額は一万八千円になつておりまして、それに期間が一年ごとにつきまして、実期間平均標準報酬月額の百分の六が加算されておるのでありまして、極く最低の者にいたしましても、まあ一人で二万一千六百円だけしかもらわんのでございます。配偶者又は子供のあるときは、一人につきまして年額四千八百円の加給があります。障害年金は、六月以上被保険者であつた者が、在職中の傷病によりまして癈疾なつたときは、この癈疾程度を一級、二級、三級に区別して、一級者年額一万二千円の加給があります。二級の者は基本年金額のみで、三級はその百分の七十に相当する金額支給されるというのでありますが、これらは共に、余りにも低額であつて生活保護法に比べますと、よほどの差額があるのでございます。即ち生活保護法によりまして、男の一人世帯を構えた六十歳以上の者が一級地甲地区生活しておりますと、二万九千三百四十円という金が支給されておるのであります。これだけの金をこの厚生年金保険の被保険者がもらおうといたしまするのには、十五年勤続平均標準報酬月額が一万二千円の者が漸くその生活保護法の者に相一致するようでございます。二十年勤続の者にあつては、報酬月額は一万円、三十年勤続の者で報酬月額が五千円の者が漸くその基本年金額が三万円で、生活保護法のものとほぼ同じような状況になるのでございまして、誠にこの金額ではよほど生活が困難ではなかろうかと存ずるのでございます。而も生活保護法適用者にありましては、傷病の場合には、そのほかに医療扶助が行われております。又本日のラジオ放送によりますと、昨日からは、ラジオ放送聴取料までが免除されておるというのでありますので、どうしても厚生年金保険受給者に対しては、少くとも最低生活、この生活保護法適用者の受けるぐらいの程度基本年金額引上げてもらうことができんものでありましようか。これに対して特に厚生大臣所信をお伺いしたいと存じます。  第五に、本制度積立金は、現在七百八十九億に達しておりまして、而も二十八年度におきましては百九十二億、二十九年度には三百三十三億の増加が見込まれまして、将来は二兆円に達するという見込の由であります。而も現在積立金だけに対する利率が五分五厘程度でありましても、二十八年度は四十一億、二十九年度は五十三億という巨額の利子が生まれておるのでございます。なおそのほかに一分程度の利鞘が、二十八年度においては約七億からの金額一般会計に繰入れられておるということは如何なものでありましようか。元来この種の積立金は、労使双方醵出金にほかならないのでありますから、従つてその運用についても、民主的に管理運用しますと共に、その効率的運営によつて、その収益は労使に還元し得るよう措置すべきではありますまいか。即ちかかる利息は全部被保険者福祉施設に使用すべきではあるまいか。尤も二十七年度におきましては十六億、二十八年度は二十五億、二十九年度は三十五億の積立金を以ちまして、住宅建設のために各保険組合に融資しておるのでございます。又一方東京及び大阪には、おのおの八億円以上の巨費を投じまして、我が国においては類例のないほどの最高級の病院建設して、なお最近湯河原玉造登別八幡などにもかかる病院建設する由でありますが、我が国国内情勢並びに経済事情から考慮いたしまして、かかる設備の華美な病院建設するよりか、病院の普及しておらん地方に、普通程度厚生病院を数多く建設しますと共に、特に医療内容が、現在被用者に対しましては不十分であつて一般には社会保険は安いから悪かろうと言われておる現状でありますから、社会保険医療給付は、今後進歩せる医学の学術を制限なしに施行し得るように改善すべきものであろうと存じております。  特に附言いたしたいことは、医療施設の普及しております場所に、かかる華美なる病院建設することは、徒らに医療機関を混乱せしむるのみであるから、それらの点は十分考慮して頂きたいと思います。  なお、これと同時に完備せる住宅建設を行なつて被用者生活に潤いを持たせ、住宅保健衛生に特別の注意を喚起する必要があると存じますが、以上に対しまして大蔵大臣並びに厚生大臣の御所見を承りたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  7. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  年金制度統合につきましては、なお研究いたしたいのでありまするが、公務員恩給制度に関しては、人事院の勧告もありまするので、このほど内閣に設置いたしました公務員制度調査会調査審議を待つて検討するつもりでおります。  それから現行社会保険は種々雑多であるが、取扱に不便を感じておるので、これを一本化する考えはないかという御質疑でございますが、社会保険統合につきましては、政府としてもできる限り社会保障制度審議会勧告趣旨に副うようにいたしたいと考えておるのでありまするが、各種社会保険制度には、それぞれの沿革があり、理由がありますので、直ちにこれらを統合することは制度運営に混乱を生じせしめる虞れがあり、又官庁機構の上でも考えなければならない問題もありまするので、十分研究の上、その方向に進みたいと考えております。  爾余の御質疑に対しましては、所管大臣より御答弁いたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  8. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 厚生年金積立金は、これは資金運用部資金法に従いまして、大蔵省の資金運用部に預託して運用しておることは御承知の通りでございまするが、厚生年金労使双方負担中心としておるから、社会保障的の見地からして、どうしてもこれが安全確実を旨としなければならんことは当然でございます。従いましてこれが管理運用については、当局としては最善を尽しておる次第であります。なお先ほど来、できるだけ還元的なというお話がございましたが、その趣旨は尊重いたしておりますけれども、これはもともと払戻しをしなければならんという年金の性質もございますので、何よりも安全確実ということを第一にしなければならんことは御了承頂けると存じます。(拍手)    〔厚生大臣草葉隆圓登壇拍手
  9. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 各種年金制度統合し、或いは一元化、場合によつては、医療関係その他と二本建にしてでも、成るべく統制すべきものじやないか。これは御尤もだと思います。殊に二十五年或いは二十八年の社会保障制度審議会勧告等の線も同様でありますし、現在これらの考え方で今回の厚生年金保険法全般的な改正十分検討を下して参つたのであります。そういう線を一つ出しまして、さて実際これらの現実に行われております短期保険並びに長期保険、これらを検討いたしますと、或いは恩給にいたしましても、或いは国家公務員共済組合制度にいたしましても、又その他、失業労災、それぞれの保険制度にいたしましても、それぞれの歴史と背景とを持つておりまして、ただ単に一つのやり方で、これを事務的に統制するということは、却つて事業を困難ならしめる場合も予想されますので、これらの統合一つ目標にしながら、そこに行くように、各機関がそれぞれ準備体制を整えて進んで行くというのが必要じやないか。従いまして船員保険法におきましても、今回その目標に副い得るように改正いたし、又厚生年金にいたしましても、お話のありましたように、将来は長期年金基本になる厚生年金としての改正考え方でいたしたのであります。この点は私ども、さような方向を以て今後は行くべきものだという考え方で進んでおります。  次に、これらの一元化、或いはこれらを統合した社会保険、或いは社会保障という一つの省を設けて具体的に進んで行くべきものではないか。これらの点につきましても、只今申上げましたように準備期間、或いはそれらに対する今までのいろいろな関係等十分検討いたして進んで参らねばならないと存じておりまするから、その方向で進んで参りたいと存じまして研究を進めておる次第であります。  なお次に、生活保護法との比較で相当低いじやないか。せめて生活保護法の額までは、老齢年金引上ぐべきものじやないか。これは生活保護法におきまする六十歳以上の男子をとつて考えますると、大体平均いたしまして二級地について考えますると、二級地が千五百八十円でございます。一級地が六十歳以上、甲乙に分れておりますが、甲が千七百八十五円であり、乙が千六百八十円でございます。今回改正いたしました点は、平均いたしまして基準額乙地方千五百円を中心考え、更にこれに最低月三百円加算されまするから、従つてお話のように年額にいたしますと二万一千六百円、従来の月一千二百円が、年二万一千六百円に相成りますから、この点から考えますと、甲地よりも、大体老齢年金を受ける者は六十歳以上の者が大多数であります。その年齢制限等から考えますると、決して生活保護法より低くなつておらないと考えます。  次に、病院等設備が、最近厚生年金病院等ができておりますが、それがむしろ華美であつて病院施設の多いところに集中しておる感があるのじやないか。こういう御意見と拝承いたしましたが、実は現在厚生年金病院建設いたしておりますのは、又いたしましたのは、東京大阪目下作りつつありますのが九州の八幡でございます。その他に北海道の登別、近くは湯河原玉造、この三カ所に整形外科中心といたしました施設を持つておるのでございますが、これらのいわゆる福祉施設は、一方におきましては、これらの勤労者に対しまするいわゆるサービス機関であり、福利施設でございます。従いまして中心整形外科その他内科等一般に置きまするが、被用者の、いわゆる利用者の最も多い所を中心にこれを作るということが、どうしても対象になつて来ると存じます。一般医療機関普及度から考えますると、或いは極く僻陬の地の病院等のないところへ医療機関としては考える点も必要かとも存じますが、厚生年金病院施設といたしますると、これらを簡単に、そして最も時間をかけずに利用し得る度の多い所に中心を置いて来るというのは、どうしても、その方向をとつて来なければならない。従つて今申上げました成るべく利用者の多い所を先ず急いで作るということにいたしましたので、東京大阪八幡ということにいたした次第でございます。なお先ほどお話になりました資金融資等について、今後十分住宅その他にいたすという点は、全く同感でございます。(拍手)     —————————————
  10. 河井彌八

    議長河井彌八君) 常岡一郎君。    〔常岡一郎登壇拍手
  11. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 只今上程されました厚生年金保険法は、陸の上で働く人々の大部分が含まれておりまして、その数、現在すでに七百六十万に達してお石保険でありますから、その家族まで合せて、その利害関係を受ける者は、国民の大半に及ぶものと考えます。非常に重大な内容を持つものでありますから、従つてこの法案が全面的に改正されまして、幾多の困難があつたにもかかわらず、その内容は別といたしまして、当局の労を多とするものであります。併し労を謝しながらも、なおこの法案をめぐつて疑いのあります点につきまして政府に質さんとするものであります。  その第一点、この法案の作られました考え方根底はどこにあるか。第二点、この制度によつてできて参ります積立金運用の面について。第三点、その内容に対する疑義について。以上三点についてお尋ねいたします。  第一点、この法案を作られました考え方根底はどこにあるか。只今谷口議員からの質問に対しまして、はつきりしない点がありますので重ねてお尋ねをいたします。なぜこんなことをお尋ねするかと申しますならば、政府社会保障熱意が誠に疑わしいものが多々あるからであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)政府は、国家防衛の急に備えるために、自衛力増強のために、物の面では国家財政の非常に苦しい中から巨億の金を投じ、心の面では、MSA協定と憲法との板挾みになつて国民に得心させるために随分苦しい説明をしておられるようでありますが、(拍手国防の万全は、外からの敵に備えることを第一とすべきものではない。むしろうちに悩みなき姿を固めることこそ第一ではないかと考えます。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手)これは人類興亡歴史が雄弁に物語つておるのであります。車が動き出す前にレールを動かないように地を固めなければならんのが先決条件である。刃物が動く前に爼をシツカリすえていなければならないように、自衛力増強が必要だということを痛切に感するときは、同時にその先決問題として、社会保障の完全なる成果が得られなければならんというときであることを忘れてはならんと思うのであります。立派な鎧を身につけても、内に傷があつたなら、傷の痛みに耐えかねて鎧は身を守るものにはならないで、却つて身を倒す重荷ともなる場合が多いのであります。(拍手)この点を考えて参りますときに、本当の国防は、内に悩みなき構えであることを思うとき、国民同士が、互いに物心一貫した結びを固めることが第一であり、更に安心して働ける社会建設こそ賢明なる政府首脳の気付かねばならん問題だと思うのであります。(拍手)気付いておればこそ、この法案を出したのだと言われるかも知れませんが、若しそうだといたしますならば、この政府社会保障熱意のほどが若しあるならば、これは社会保障制度全般亘つて、完全に統一ある組織機構を作らなければならんということが、先ず一番に考えられねばならんと思います。(拍手政府熱意によつてこうした法案ができたといたしましても、それはばらばらであります。今まで作られたもので考えましても、社会保障制度に関する法案の中には、厚生年金法国民健康保険法失業保険法健康保険法労災保険法船員保険法日雇失業保険法恩給法国家公務員共済組合法町村職員恩給組合法、そのほか遺族援護などを考えますときに、十指に余るものがありますのに、而もそれがばらばらで横の繋がりがないために、非常にその無駄に苦しんでおるのは国民であります。非常な冗費と無駄な人員を使つて、このまま放つておくならば、これは結局、政府熱意によつてこうした社会保障制度法案が生れて来たと言うよりも、むしろ人間の歴史の歩み行く方向から、時代の要求から生れて参りましたものであつたが、生れてみたら、日本という環境が誠に悪いために、精神分裂症のような社会保障の姿であると言わなければならんと思います。(拍手)こういう点を考えるときに、一日も早くこの外の国防に向つて神経を使い苦労するだけでなく、もつとこの社会保障機構に整然たる統一を与える組織を作ることが急務ではないかということにつきまして、もつと深い所信を承わりたいと存じます。  第二番目にお尋ね申上げたいことは、只今お尋ねになりましたが、この法案の施行によりまして、巨額積立金ができて参りますが、今年は七百九十億、来年は恐らく千億を超える。毎年増加の一途を迫ると思われます。この巨額積立金が、その使用されております面が、只今谷口議員発言の中にもありましたように、二十八年度には僅かに二十五億、本年は僅かに三十五億、殆んど三十分の一に過ぎないのであります。ほかは殆んど三十分の一に過ぎないのでありまして、ほかは殆んど直接国民厚生関係には関係のない方面に使われておるということは、この点につきましては、非常に考えさせられる面があるのでありまして、簡易保険の場合を考えましても、この自由契約によつて結ばれました簡易保険でさえも、全部、厚生省の資金運用部から郵政省のほうに所管が移管されておりますが、この点から考えまして、厚生年金保険積立金は、その主管であるべき厚生省に移管されて、その運営が厚生面に直接関係のある部面に使われますことを切に希望してやまないのでありますが、この点はできるものであるか、できないものであるか。この点をお尋ね申上げます。  第三に、法の内容についての疑義をお尋ねいたしますが、給付年齢の五十五歳をやめて六十歳から給付する、延長をいたしました理由はどこにあるか。若し六十歳にいたしますならば、非常にその給付を受ける期間の短かくなること、停年は殆んど五十五歳制をとつております時代に、こういう問題で長年積立てたものが殆んど老後を養うに足りないものであつたり、或いは亡くなつて遺族年金が半分しかありませんので、楽しみのないところに長き積立が楽しんで行けるかという問題を恐れるものであります。この点についてお尋ねいたします。  次は、五十年間の長期に亘つてその運営の歩調がようやく揃うような、こういう長期の保険でありますから、非常に経済の変動時代にはその調整に随分無理があると考えます。五年間を仕切つてその調整をすると言いますが、五年間調整しても、二十年の長きに亘つて掛けましたその過去におきまして、これの調整が、質と量の如何なる調整をとるつもりであるか。この点をお尋ね申上げまして、再質問の時間を頂いて、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  12. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  防衛力と社会保障とが並行しなければ、兵器を並べても、それだけでは国の本当の防衛にはならないという御意見は、政府といたしましても全く同感であります。そういう考えから、十分ではありませんが、今回二十九年度の予算におきましても社会保障に関する費用を相当増額いたしたのであります。この本案を提出いたしましたのは、根本の考えはどうかということでありまするが、勤労者生活保障のために社会保障制度拡充整備の必要を痛切に考えて参りまして、不十分ではありまするが、できるだけこれを完備して参りたい、できるだけやつて参りたいというのが、本案を提出いたしました根本の考え方でございます。爾余の御質疑に対しましては、大蔵大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓登壇拍手
  13. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 第一点につきましては先ほども申上げましたが、実は今回の厚生年金保険改正は、お話の点を中心にいたしまして改正をいたしたのであります。今後におきまする国民生活の安定並びに勤労者の安定という点から考えまして、現行法養老年金が千二百円程度では、到底これは困難な状態であるから、従つて財政的な方法の許す限り思い切つて二万一千六百円に引上げる、而もそれも従来の方向から変えまして、従来は一般に対して国庫負担を一割しか出しておりませんのを一割五分と負担の増をいたしまして、そうして大体この程度は今のところでは適当ではないかというので、いたした次第でございます。そういう意味から、社会保障制度の根幹をなしまする厚生年金を十分に活用し得るものを考えて、国家財政の許す最大の方法をとつた次第でございます。この点はよろしく御了承を願いたいと思います。  第二の問題について、運用の面においてうんと余つているのではないか、従つてむしろその余つているのを現在使つてへそうして少くとも現在の焦眉の急にはそれを以て間に合わしたらどうだ、その後のことは、今後考えるべき点ではないかという、或いは内容を含んだ御質問であつたかとも存じまするが、現在におきましては、お話通りに、昭和二十九年度の末に相成りますと、給付総額が五十七億四千万円、それに対しまして積立金は一千百六十九億六千万円という多額に相成ります。併しこの厚生年金保険法はいわゆる長期保険であります。これからの人が、少くとももらいますのには二十年後に、その給付が、老齢年金としては開始されるのであります。どうしても長期計画を中心考えませんと、これらの長期保険は、その根底から覆つて来る。従いまして、これが具体的な問題といたしましては、長期計画を十分に立て、而もそのときの経済情勢を織込んだ計画を立て、現在におきまして資金運用等につきましては、大体五分五厘ほどに当つておりますが、これらの将来性につきましても検討を加える意味におきまして、はつきり法律の上にも五年ごと基礎検討して行くという途を開いて、長期保険の本質に即応するようにいたした次第であります。従いまして、現在の積立の状態を一応見ますると、一般に積立が多くて保険給付が少いように見えますが、長期保険の本質からいたしまして、この点、御了承を頂けると思います。  内容の点につきましては、従来の五十五歳を六十歳に引上げた点であります。或いはその他の内容については、むしろ相当従来よりも不利益な点が生じておるのではないかと、これらの点につきまして、実は今回初めてこの養老年金、いわゆる老齢年金、これが開始されることになりましたので、本質的な問題の改正をいたしたのでございますが、これらの点を、諸外国の例を見、又我が国のいわゆる年齢標準、年齢状態等を検討いたしますると、従来の年齢層がだんだんと長年齢に相成つてつております。又世界各国も、これらの老齢年金に対します年齢開始は、多くは六十歳以上が大体であります。オーストラリアにいたしましても、或いはカナダ等は、七十歳開始でございます。これらの諸外国のすべての例を参照し、又日本の最近の年齢の延長と申しまするか、いわゆる長命等を考えますると、今回の五十五歳を六十歳にいたしたことは、決していわゆる改悪という意味ではなく、将来の年金制度の充実を図るという意味において取計らつたのであります。但しその間に、五十五歳のかたが直ちに、いわゆる既得権が、持つておりました権利が直ちに五年間延びるというやり方はとりませんで、これらの人に対しましては従来の権利は消滅しないように、法案で順次繰り延べて、二十年後に至つて初めて、六十歳になつてかげ開始するという方法をとつておるのであります。この点につきましては、細心の注意を払つていたしたつもりであります。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 厚生年金運用を厚生省の所管とする考えはないかという意味のお尋ねでございましたが、この積立金の性質並びにその運用国民経済に及ぼす影響の極めて大なるに鑑みまして、これが管理運用については、従来通り資金運用部で一元的に行うのが適当であると考えております。    〔常岡一郎発言の許可を求む〕
  15. 河井彌八

    議長河井彌八君) 常岡一郎君。    〔常岡一郎登壇
  16. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 内容の点につきまして、二十年間の長きに亘る、その間に経済的の変動が非常にあるはずであるが、それに対してその五年間五年間の調整だけで、果して完全であるかということをお伺いいたしておりました。  第二に、大蔵大臣お尋ねいたしますが、簡易保険の場合に、郵政省に廻されましたと同じような考えにおいて、その厚生方面にできるだけの強き熱意を以て運用してもらうようにするということはできないものでしようかということをお尋ねしたのであります。  只今住宅に非常に苦しんでおります人たちが如何に多いかということを考えますときに、前年度の運用部の資金にいたしましても、実に驚くべき立派な病院を建てておいて、一方には厚生住宅は実に僅かなものを作つて、ただ表面を糊塗したに過ぎないような状態でありますが、こういう点をお尋ねしたわけでありました。もつと、立派なアパートができても、入ることができない気の毒な人々が、如何に今日の苦難時代に多いかということをまく洞察せられまして、この運用の面におきまして、直接厚生の関係するものに、もつと深くこれを割く方法はないのかということを、そういうお考えはないかということをお尋ねしたのでありますから、もう一遍明快な御答弁をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓登壇
  17. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 御質問の御趣旨御尤もであります。私の先に申上げた点が不十分であつたかとも存じまするが、この経済情勢の変動に伴いまして、五年になつてこれを再検討するというのではなく、少くとも五年目にはする。従つてその間に変動がありますると、二年でも或いは三年にいたしましても、いたす予定でございます。その情勢に応じましていたす。併しそれは少くとも五年ごとには検討して、将来の態勢をとつて行かなければならない。こういう意味で法律は御提案いたしておる次第でございます。  なお更に、住宅方面に大いに融資関係考えて、それらの点に、殊に第二種住宅方面において力を注ぐべきだという御意見御尤もであります。将来、そのように努力をいたしたいと思います。    〔国務大臣小笠原九郎登壇
  18. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。  将来の運用の面でもつと注意すべきではないか。特に住宅社会保障方面に割く考えはないか。こういうお話でございます。実は病院ごときも、これは今、いろいろ贅沢だというお話が、ございましたが、これは、実にいろいろ、各方面の要望がありまして、それに基いてああいう病院ができたのでございまするが、この住宅その他につきましては、これは今日の住宅不足は、私どもよく承知しておりますので、今後ともでき得るだけこの方面運用して参りたい。かように考えておる次第でございます。    〔常岡一郎発言の許可を求む〕
  19. 河井彌八

    議長河井彌八君) 常岡一郎君。    〔常岡一郎登壇拍手
  20. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 僅かな言葉でございましたが、私は、簡易保険の積立金は郵政省に廻したと同じような意味において、厚生省にこれを廻すべきではないかということを強くお尋ねしたのであります。若しこれができなければ、例えば社会福祉振興会等に僅か三千万円を与えて、そうしてこの運用の面を、その方面に全然向けなかつたということについては、どういうような考え方であるか。その点を一つ加えてお尋ね申上げます。    〔国務大臣小笠原九郎登壇
  21. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 只今お話でございまするが、実は、簡易保険とは沿革等を異にしており、片方は事務費等も全額国庫で出しておる性質上、多少差もございますので、こういうことになつておるのでございまして、只今のところ、ああいつた長期に亘る、而もこれを何十年かあとに返さなければならんものは、申すまでもなく、これを確実なものに廻さなければならんことは当然のことでございまして、私どもは、只今のやり方がよいと考えておる次第でございます。  なお、住宅についてのお話でございましたが、直接住宅に出しましたのは、二十七年度十億円、二十八年度十億円でありますが、そのほかに地方の起債等で出しておるのが、二十八年度に六十四億、又二十九年度に七十三億と相成つており、更に病院につきましては、二十七年度に六億、二十八年度に五億ということに相成つております。なお、二十九年度は、住宅等の配分は約三十五億に相成つております。二十九年度は、こういう地方債で、主として住宅及び病院に七十三億向けられておる次第でございますから、さよう御了承を願います。     —————————————
  22. 河井彌八

    議長河井彌八君) 藤原道子君。    〔藤原道子君登壇
  23. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は日本社会党を代表いたしまして、只今上程されました厚生年金保険法案に対しまして、数点に対しての御質問を申上げたいと存じます。  先ほど来自由党の谷口議員、緑風会の常岡議員の御質問に対しましても、私は心から賛同の意を表し、拍手を以て御声援申上げたわけでございますが、(拍手只今上程になりました本法案は、当初勤労力の増強の国家的要請に基きまして、当時審議会ができまして、而もその委員といたしましては吉田内閣総理大臣、緒方副総理らが委員として参画され、種々審議されまして、昭和十七年六月一日に発足したはずだと私は記憶いたしております。ところがこの当時には、一般労働者の資格期間が二十年、坑内夫、女子労働者は十五年、而も国庫負担は五分の一ということで発足したのでございますが、いよいよとなりますると、これが一割に切下げられて来ておる。ここに問題があると同時に、坑内夫につきましては特に特例期間がありましたために、すでに十一年七カ月で効力が発生し、昭和二十八年十一月から坑内夫約三千二百名が受給者となつておるのでございます。ところが標準報酬八千円の場合におきまして毎月百二十円納入しておりながら、年額千二百円、月額にいたしましては僅か百円というような余りにも馬鹿げた状態に放置されて参つておるのでございます。労働者の強い希望と社会の輿論に応えまして、私たちは厚生委員会におきましてしばしば本法の改正を迫つたのでございます。その都度政府は、他の制度と総合的な検討をして、抜本的な改正をすると。かく言明して置きながら、何ら積極的な検討も加えられないで、応急措置でごまかして、今日までその改正がなされなかつたということは、政府の怠慢であり、又重大なる責任だと存じまするので、先ずその点を追及いたすものでございます。(拍手)  幾多の矛盾を内包いたしますところの本法はいよいよ改正せざるを得ない段階に相成りまして、これが社会保険制度審議会に諮問されたのでございますが、その期間が余りにも短期間であり、なお且つ資料不足のために十分なる検討ができないで非常に遺憾であるが、その結果労使、意見は対立のまま答申されたのでございます。一方又社会保障制度審議会におきましても、政府原案の修正を強く要望する旨の答申がなされたのでございます。然るに政府は若干申訳的な修正を加えられましたのみで只今上程を見たのでありますが、その政府原案は、前言に背く誠に不満足極まるものでございます。私は飢えたる人が清水を求めておるのに対しまして泥水を投げ与えるがごときものであると言わざるを得ないのでございます。(拍手)従いましてかかる措置に出ました、長い間研究する、検討して根本的な改正をすると言いながら、このような不満足なものが上程されるに至りましたことについての、その責任を先ず総理初め各関係大臣に対して御質問を申上げたいと存じます。  そこで先ず第一に、社会保障制度に対して政府の根本的な理念を伺いたいと存じます。バターか大砲かということを質問いたしましたときに、政府は口を揃えて、バターも大砲も必要である、決して大砲のためにバターを食うようなことはしないとしばしば言明されて来たのでございます。或いは又国家財政が云々というようなことで、再次に亘りまする社会保障制度審議会勧告案に対しましても、今日なおこれが国会に上程さえ見ざる状態に置かれておりまするが、この社会保障制度は今こそ直ちに総合的なものが確立されねばならないと、かように考えまするか、政府はこの法案の提出をいつ頃と予定されておるか。そうして又社会保障制度のその内容を如何なるものに総合されんとしておるかを私はお伺いをいたしたいのでございます。と同時に、先ほど来谷口議員からもしばしば御質問がございましたように、各種社会保険との調整、又国民年金制度の確立等々に対して政府の御所信を伺いたいと存じます。  重ねて申上げるまでもなく、現在十に近い制度がばらばらになつておるのでございますが、これらからなお漏れておりますところの五人未満の事業場に働く人、或いは一定の自営業者をも加え総合的年金制度を作り上げ、必ず生活ができるという方向に、私は一日も早く確立すべきものだと存じまするが、こうすることによりまして経理をよくし、能率的な運営によりまして、事務費も節約ができる。以て国民の福祉増進を図らなければならないのでありまするが、これらに対しての御努力が何らこの法案には見出すことができない。これらについて、政府のその御所見を私はお伺いいたしたいのでございます。  次に厚生年金保険は、申上げるまでもなく、労働者がその労働力によつて得た賃金の一部を長年に亘つて醵出いたした金でございます。憲法の第二十五条の精神から申しましても、各年金給付額は、社会保障制度審議会勧告及びILOの社会保障最低基準に関する条約を尊重いたしまして、如何なる場合におきましても、生活保護法の扶助額を下廻つてはいけないのでございます。これに対する政府の御見解が伺いたい。今厚生大臣は、生活保護法を下廻つてはいないという御見解でございましたが、そのようなことは断じてごまかしであつて法案内容を見るときに、明らかに生活保護法を下廻つておる点が多々あるのでございます。これらに対する政府の御見解が伺いたい。  今や労働者は、政府のアメリカ一辺倒の政治の犠牲となりまして、急速なる再軍備予算に苦しめられ、又その生活はあたかも餓えたる者が水を求めるような状態に追い込まれております。なおその苦しい生活の中から、苦しい汗のにじんだお金を醵金しておるんだということを絶対に頭におしまいになつて、御答弁が願いたいのでございます。  更に、本法の改正原案の内容につきまして、具体的にお伺いをいたしたい。先ず第一に標準報酬についてでございますが、健康保険最低三千円から最高三万六千円、船員保険は四千円から三万六千円となつておるのでございますが、一厚生年金保険に限りまして、なぜに三千円から一万八千円という低額にしたのであるか、その根拠を伺いたいと存じます。第二点は、老齢年金でございますが、一般男子が五十五歳、これを六十歳に引上げた。坑内夫を、五十歳のものを五千五歳に引上げた。これは改正ではなくて改悪ではないでしようか。なぜにかかる年齢の引上げをなしたのか。只今厚生大臣は、寿命が延びたからというようなことを申されましたが、坑内夫や熱処理の特殊労働に従事しておる者は、労働寿命が非常に短いのでございます。時に坑内夫につきましてはけい肺という特殊な疾病があります。目下労働委員会におきましても独立立法を議員提案でなされておる状態でございますが、これが公聴会における公述人の説明を聞きましても、入社後十数年にして死去する者もあるようでございます。仮に二十歳で入社した者があるといたしますならば、三十五、六歳にして死去することになるのでございますが、これを五十五歳にしたその根拠は、何と言いましても私には納得が行かないのでございます。これらの法の改正に当りまして、その責任担当大臣であります労働大臣に御相談なさつたのかどうか。又労働大臣はかようなことで労働行政が、労働者の福祉が守れるとお考えになつておるのでございましようか、この点につきましても私はお伺いをいたさなければなりません。現在坑内夫は非常に疲れ、その肉体が消耗されまするが故に、一般労務者に転換しておる実情もあるのでございます。従いまして給与の面にいたしましても低下し、一般的に不利であり、六十歳では事実上極めて短期間しか給付が受けられない。筋肉労働者は頭脳労働者と異なりまして、六十歳まで働くことは絶対にできないのでございます。各種の統計を見ても明らかなごとく、平均寿命と労働寿命とは絶対に一致しない。更に又先ほど谷口さんも触れられましたように、日本の停年制は或いは五十歳、五十五歳等でございますが、この年金支給が六十歳と引上げられましたならば、五十歳で停年になりました者は十年間、五十五歳の人はその五年間の生活は何によつて得たならよろしいでございましようか。これらに対する思いやりが余りにもないということを私は指摘せざるを得ないのでございます。その労働生産性、労働能力、これらの急速な低下に従いまして、労働賃金はますます安くなる。これらについても、かような年齢の引上げは、私絶対に了承できないのでございます。又老齢年金定額一万八千円は生活保護法と併せ考えてみましても、今の大臣の説明では納得ができない。社会保険審議会並びに社会保障制度審議会におきましても、被保険者側の強い要望も、せめて生活保護法の基準を下廻らないようにという切実な要望が繰返しなされておるのでございます。又報酬比例の加算は認めないが、定額二万四千円を若干引上げることは、事業主の代表委員ですらも認めておるところでございます。今後社会保険統合の場合を考えてみましても、恩給法及び国家公務員退職金、地方公務員船員保険法との振り合いを考え改正しておかないと、保険財政である以上は、直ちに引上げる場合負担の面で非常に突き当ると思われまするが、政府はこの際どのようにいたそうとされておるのか、如何なる方法で調整がなされるのか、これを私は労相と厚相に併せお答えが願いたいのでございます。  第三は扶養加算についてでございまするが、子供の年齢が十六歳未満となつているのでありますが、児童福祉法を初め、その他法律におきまして十八歳は一般通念であり、恩給法においても、十八歳未満となつておるのでございます。政府は何が故に本法に限つて十六歳未満と規定されたのか、これも又お伺いをいたさなければなりません。  第四といたしましては、障害年金についてでございますが、政府は今回の改正によりまして障害年金の等級を三段階にいたしまして、癈疾の範囲を拡大したと称しておりまするが、別表によりますると癈疾の等級が切下げられておる、実質的には改悪になつておるのでございます。現行一級の者が二級に、或いは二級の者が三級に切下げられ、労働力不能の癈疾者までが三級に落されておる。而もこの癈疾の基準の中に別表として出されておりますが、社会保険審議会にも諮つたことも聞いていないし、広く専門家の意見をも聴取したとも私は聞いていないのでございます。如何なる理由政府はかかる態度をとり、審議会をも無視して行われたのか、その理由を私はお伺いを申上げます。  又障害年金の額は、老齢年金の相当額の百分の百四十となつておるのでございますが、これは八万円までもらえる現行法よりも大幅な切下でございます。この点も大きな改悪ではございませんか。厚生当局は既得権、期待権は尊重すると言明しでおきながら、なぜこのようなことをしたのでございましようか。恩給法による傷害、疾病との関連はどう考えるか。具体的にお伺いをいたしたいと思います。障害年金は、一般老齢者よりも身体機能に障害を受けております理由で受給される年金故に、老齢年金受給者よりも増額給付されなければならないが、二級が老齢年金と同額となつておりますが、二級受給者と老齢年金受給者の振り合いはどのように考えておいでになるか。この点詳しくお伺いを申上げます。  次に、内容の細部に亘つて二、三お伺いいたしたいのでございますが、遺族年金の額を老齢年金の二分の一にいたしましたが、老齢年金の額そのものが余りにも低額過ぎますることから問題であると思うのでございます。少くとも生活保護法との関連において遺族年金の五分の三程度最低考えられまするが、政府は如何ようにお考えでございましようか。その二は、保険料率現行通りとなつておりまするが、任意加盟の場合、現行千分の二十六と承知しておりますが、その通りでよろしうございましようか。その三といたしまして、船員保険制度との調整についてでございますが、被保険者期間の通算は誠に結構でございますが、必要な調整ということで船員保険をレベル・ダウンしてはならないのでございます。船員保険法改正に当つては、この点十分に審議はいたしまするが、政府はどのような考えに基いて出したかを私はお伺いを申上げます。  第三は、脱退金に対してでございますが、著しく改悪されているのでございます。特に女子労働者の場合におきましては、結婚、分娩で退社のとき最低十五日以上五百十日間の掛金を年数によつて配当金として支給されていたのでございますが、本法におきましては、これが削除と相成りまして、掛金に三分の利子という結果になつておるのでございます。而も新法は、昭和二十九年四月一日以降の資格者よりこれが適用になる。従いまして、従来の有資格者は、旧法において僅か一日の差で、このような既得権が削除される。労働者におきましては本質的には何ら変らないのに、このようなことをとられましたこと、ここでも又期待権、既得権が踏みにじられておるということを指摘せざるを得ないのでございます。而も今日女子の職場は次第に狭められております。優先的に整理の対象とされておるのでございます。それのみか、或るところでは二十五歳を女子の停年とし、或るところでは三十歳の停年制度をとつておるのでございます。かようなことを考えまするとき、なおこの労働者の福祉法であり、保険法である本法からさえ、この既得権がむしりとられるといたしましたならば、婦人労働者は、将来如何ように相成るでございましようか。これらに対しまして、私は御答弁を要求するものでございます。  最後に、現在すでに八百億になんなんとする積立金のことでございます。先ほど来、常岡委員から再三御質問がございましたが、この点絶対に納得のできないところでございます。大蔵大臣に申上げます。是非これは国民全体が知らんとしておるものでございますから、ただ木で鼻をくくつたような素気ない御答弁でなく、具体的になぜそうしなければならないかということを私は伺わなければならないのでございます。(拍手)大臣からお伺いするまでもなく、長期計画による年金法であることは私も承知いたしております。ところが長期準備が必要であるからと言つて、ピーク時になりますると二兆になるという計画の下に出発されておるこの積立金を、僅かな国家補助をするからという名の下に、全部大蔵省に握られておるということは納得が参りません。而もその中から僅かに労働者に対しましては、住宅建設資金或いは病院建設資金として雀の涙にも及ばない金額が出されておるだけで、その絶対多数が、いわゆる資本家側、これに流用されておる。而もその利子さえ国家の一般会計に繰入れられておる。こんなばかげたことは私たちはどうしても納得ができないのでございます。若しこういうことを強行されるならば、この厚生年金不要論さえ起つて来るのではないでございましようか。一生懸命積立てた金が、それが資本家側に利用され、国家が勝手にこれを処理して、そうして自分たちの受ける権利は生活保護法を下廻る、こういうことでは結局このような声が起つて来ることは当然ではなかろうかと思うのでございます。従いまして、この際私はこの積立金は、厚生省の所管にして、併せてこれの運営制度を十分に確立いたしまして、その中には受益者代表を入れることによりまして、誤まりなき運営を期すべきだと思うのでございます。そうしてこの積立金は飽くまでも労働者の福利厚生のために使うべき性質のものであるということを重ねて附書申上げます。最近労働者の中におきましては、積立金奪還闘争を展開するというような声も起りつつあるやに聞くのでございます。これ又今のような政府の態度でございますならば、こうしたことも止むを得ないと言わざるを得ないのではないでございましようか。従いまして、この際政府は、速かに国民の納得の行く根本的な本法の改正をいたしますると共に、一日も早く国民年金制度統合を図り、生活の不安困憊から全国民を守り抜くことを強く強く要望いたすものでございます。  私は残余の時間を再質問といたしまして留保いたします。政府の責任ある御答弁を要求するものでございます。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  24. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  自由経済主義には、大きな長所がありまするが、同時にその発展に伴いまして社会保障を必要とする面がいろいろ現われて参ります。それは先ほど御指摘の通りであります。そこで政府といたしましては、社会保険審議会或いは社会保障制度審議会というようなものを設けまして、この社会保障に関する施設をできるだけ完全にして参りたいという考えから、逐次施設を進めて参つておるのでありまするが、勿論まだ十分というところまでは参つておりません。併しそういう観点から、二十九年度の予算におきましても、いわゆる均衡予算の極めて乏しい財源の中から、できるだけの財源を或いは厚生年金制度その他社会保障施設に注いだつもりでございます。今後現行制度の沿革又は国民経済の状況等に鑑みまして、できるだけ早く、逐次総合拡充して参りたい。そういう考えでおります。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓登壇拍手
  25. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 第一点は、社会保険或いは社会保障制度審議会で、いろいろ検討されましたその内容統合というものを、大体これを尊重しながら、いつ頃やるというような見当でやるかといろ意味であつたと存じます。これは先ほど来も申上げましたように、社会保障制度審議会におきましては、昭和二十五年並びに昨年の勧告等によりまして、社会保険定額制の問題、統合の問題その他の問題につきまして勧告があつておりますから、従つてこの勧告の線に沿いながら今後は努めてこれを実施いたしたい。但し現在の情勢を睨み合わせながら、その最も適切なものから、或いは保険経済等を勘案しながらやつて行くことが妥当でありまするから、そういう点から、今回の改正となり、又船員保険法におきましても、さような観点からなされたのであります。船員保険法とこの厚生年金保険法との関連におきましても、これは社会保障制度審議会自体もそうでございまするし、社会保険審議会自体もそうでございまするが、むしろ別々になることを止むを得ない措置として認めて頂いております。私どもはこれも一緒にやつて行きたいと存じておりましたが、現在の段階では止むを得ないだろうという前提の下に勧告にもなり、又答申にも相成つておる次第であります。  その他の点につきましては、先ほど来申上げた通りでございます。五人未満までこれを伸ばして行くべきものではないか。更に進んでは国民全体に伸ばして行くべきものではないか。私どもも一つ方向といたしましては、さように考えながら、厚生年金保険というものを進めて参りたいと存じております。ただこの五人未満の事業をいろいろ検討いたしますると、大体百三十万カ所くらいあるのじやないか、そうしてこれらに働いておられる勤労者は三百三十万人程度になつておるのではないか、現在この社会保障厚生年金制度におきまする事業所は二十二万、そうしてその人員は御承知のように七百五十万人であります。事業所がうんと殖えて、約六倍以上殖えて参りまして、而も人員が半分くらいに相成る。従つて実際問題といたしましては、その実態の把握が誠に困難であり、給与の体系がまちまちである。従つて保険料負担等についても、その負担によつて中小企業にどのような影響を与えるかということを慎重に扱つて行かないと、その影響が大きいと存じます。この点は十分それらの点を検討しながら把握のできるということが一つ中心になつて来、同時に又事務的にもこれらを検討して進むべきものと考えておりまするから、今回の改正には、こういう意味において入つておらない次第であります。  次にILOの関係についての御意見でございます。ILOの条約とは、今回の改正は御意見のように下廻ると思います。あそこの線までは行つておらないと存じます。併しILOの条約そのものの内容が、なお不十分な点がありますので、関係者と連絡しながらこれは検討いたしている。全体といたしましては、今度の改正は、あの程度までは行つていないということは事実であります。次に生活保護法の関連は、先ほど申上げた通りであります。決してごまかして申上げておるのではありません。殊に坑内夫の問題について縷々お話がありまして御尤もであります。坑内夫は五十五歳の十五カ年といたしております。一般のほうは六十歳の二十カ年といたしておりまするが、坑内夫の場合におきましては、御意見にありましたような事情を勘案いたしまして、五十五歳の十五カ年といたしております。  それから扶養加算の問題、殊にこの十六歳といつても、これは恩給法におきましては二十歳、援護法におきましては十八歳、いろいろその年齢がまちまちでありまする点は御指摘の通りでございますが、本法におきましては従来十六歳といたしております労働基準法の労働年齢という点から、この厚生年金の建前が、そういう点にいたしておりまするので、従来から十六歳ということにいたして扶養加給の年限を十六歳までといたしております。  障害年金の点につきまして今回はこれを更に検討し、十分、障害を受けたかたに広く今まで行かない点も、これを利益を受けるようにといつて三級に分けたのであります。その二級が労災年金と同じ線であります。一級は、その労災年金に準じて出して参ります。こういう行き方でいたしております。そこで遺族年金は二分の一というのは、現在ではむしろ少くて五分の三にすべきものではないか。これは遺族年金の問題、ほかの恩給法なり或いは援護法なり、その他のすべての問題、国家公務員なりいろいろな問題との点を考えて、将来の一つの、これらの年金制度中心になりますと考え厚生年金の立場から考えまして、年金が大体普通の場合の考え方では、その報酬のとり方を標準報酬にするか、最終報酬にするかによつて、その年金制度が違つておりますので、その報酬の三分の一を一つ年金制度にし、その三分の一の二分の一が遺族年金になる。こういう大体の建前だろうと存じます。これは大体が、一つのそういう流れに来ておると思います。従来とも、この厚生年金自体もそうでございましたが、今回もその線におきましては二分の一ということにいたして参つたのであります。  任意加入の場合におきまする料率が今までは千分の二十六であつたのを千分の三十に引上げたのではないか、これは負担が増したのではないかという点でございますが、これはその通りでございます。実は任意加入というものは、特別に設けておる制度であります。従つてこれは任意に加入いたしまするのは、強制加入と違つて、そうして入らんでもよい人が入る場合におきましては、その保険料率一般の強制加入よりも低いというのは、これは全体としては逆であると考えます。少くともそれと同等或いはそれ以上の場合と思考される点であろうという意味におきまして、千分の三十にこれを改正いたしたのであります。  船員保険法との通算は、船員保険法の加入者と厚生年金の加入者とを今後通算し得る途を開きました。できますならば、ほかの方面においても、今後こういう体系を努めてとつて参りたいと存じております。  最後に、脱退金について、女子の場合は従来より不利益ではないかという御意見がございましたが、実はこの脱退手当金そのものは、相当検討の余地がある制度だと存じております。これを最初諮問をいたしました場合には、むしろ厚生年金の本来の筋から言うならば、脱退手当金というのは、一種のサービスであつて本筋ではないという考え方から検討を要するものではないか、こう考えておつたのであります。併し日本の労働の特殊事情に鑑みまして、殊に女子におきましては、短期間の労働というのが相当多数でありまするので、女子に対しまする脱退手当金は、男子の場合は五年でございまするが、女子の場合は二年といたしたのでございます。さような意味において、今回掛金に対する率の程度にはいたしましたが、これを更に残して女子の期間を男子の約半分以内にいたした次第でございます。  なお最後に、この癈疾病等については、専門家の意見等も十分聞いてやつたかという御意見でありましたが、これは十分専門家の意見を聞きまして分類等をいたした次第でございます。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  26. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) けい肺に関連いたしまして資格年齢の引上げが改悪ではないかという御質疑かと思いまするが、他の面におきまして相当の改善がなされておりまするのでありますし、諸外国との先例もいろいろ検討いたしまして、保険経済の上からこの程度のことは妥当であろうかと考えております。  又御指摘のごと養老年金の受給資格年齢を六十歳に引上げることにつきましては、本法の附則第九条に経過措置の規定がございますので、御指摘のような懸念はないと存じます。  なお労働省といたしましては、労働衛生に関する施策の重点をけい肺対策に置きまして、昭和二十三年以来巡廻検診を実施して患者の早期発見に努めると共に、防塵マスクその他予防器具の施設の改善につきまして指導監督の強化をいたしておりまするが、更に患者の治療に関しましては、秋田、栃木のけい肺病院整備拡充に努めまする一方、昭和二十九年度におきまして新たに労災医学研究所を新設いたしまして、この科学的な究明に努めて参ります考えであります。なお現在労働省におきまして、けい肺対策審議会を設置いたしまして、けい肺対策の確立について諮問をいたしておりまするので、この結論を待つて善処したいと考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  27. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) なぜ資金運用部でこれを一元的にやつておるかというようなお話でございまするが、実は御承知のごとくこういう資金の性質上何よりもこれは安全確実でなければなりませんのであります。この資金がどう使われておるかということは、御承知のごとくに、主として郵便貯金に入つておることは御承知の通りであります。而も実はこの郵便貯金は、率直に申上げておきますが、相当赤字になつて一般会計から補給をしなければならんようになつておるような事情でありまするけれども、而もこれを特に五分五厘という比較的高い利率で預つて運用しておるような次第でございまするし、まあ私どもは、率直に言つてこれは一番いいやり方であると考えておる次第でございます。而もこういつたものについて更に病院とか住宅というような方面にも出すべきではないかというような御意見に対しましては、先ほども申上げましたように、病院住宅等にも出しております。特に地方の起債による公営住宅或いは公営病院等にこれは及んでおりまして、この二十九年度でも、丁度住宅のほうに七十三億、病院に十五億向けておるというような次第で今日のところ、この程度で行く以外にないと実は考えておる次第でございます。(拍手)    〔藤原道子君発言の許可を求む〕
  28. 河井彌八

    議長河井彌八君) 藤原道子君。    〔藤原道子君登壇拍手
  29. 藤原道子

    ○藤原道子君 只今それぞれ御答弁がございましたが、なお、私に納得の行かない点についてお伺いいたしたいと思います。  只今大蔵大臣は、こういう方法が一番安全だということを申されたのでございますが、政府は安全であると、かようにお考えかもわかりませんが、我我としましては、どうも安心ができない。(拍手)それが妥当とは思えない。従いましてこの際、押問答いたしてもいたし方ございませんので、この厖大たる資金がどの方面に、それが幾ら何に、幾ら何に、という点、それから利率の点、この点を、この際明確にいたして欲しいと存じます。なお、先ほどこの運用に当つては、受益者代表を、その運営委員会の中へ入れるような制度を作るお考えはないか、これが妥当であると思うかどうだとお尋ねしましたので、その点についての御答弁を伺いたい。いま一つは、お間違えではないでございましようか。郵便貯金が赤字であるというように言われたと思いますが、この点いま一度お伺いいたしたいと思います。  それから厚生大臣にお伺いいたします。私も大臣に言われるまでもなく、坑内夫が十五年、十五年にされたということは、私も知つておるのです。けれども、従来は十一年六カ月であつたはずなんです。だからこれも改悪ではなかろうか。十五年間働いたら、すでに労働者の寿命は尽きるのであります。これらについて改悪されたその理由、これを私はお伺いしておる。  それからどの大臣も、いずれ研究いたしまして努めて早くと、こういう御答弁ばかりしておる。ところが本法がすでに施行されて以来、研究いたします、研究いたしますで、今日まで来たんです。(笑声)私が参議院の厚生委員になつて以来、毎年この問題が問題になつている。だからいつまで研究したら、抜本的な改正ができるのかを私は伺いたい。(拍手)それから外国の例を申されるのでございますが、外国の国民生活と日本の国民生活は違うのです。だから労働年限、成るほど寿命は延びて来たか知らないけれども、低劣なる生活環境における、而も過激な労働をしておる日本の労働者は、労働寿命が短かいのであります。だからこれに対して、ここは外国の法律を作つているのでなくして、日本の法律を作つているのだということをお考え願いたい。  いま一つ。都合のよいときには、他の法律と併せ考えておると言い、都合が悪くなれば別に考えておると、これ、誠に器用な御答弁だと存じておりますが、(笑声)私はその点は不満足であります。成るほど子供の年齢の問題でございますが、本法は十六歳であつた。これは前の話なんです。その後児童福祉法ができまして以来、ほかのほうにおきましては、全部十八歳となつて、ひがむのではないけれども、労働者の子供は十六でいいんだ。こういうふうに考えておられるのは資本家的な考え方だと私には考えられるのでございますが、これらについてお考えを願いたい。  それから他の法律と調整すると言つて、他の法律の低いほうへ持つて来られては困るのでございますから、この点の大臣の御言明を私はお伺いしたい。それから女は云々とございましたが、婦人労働者は、ただ結婚や何かで退職するなんというだけではないのでございます。今日優先的に整理の対象になつておる。いつも女が隅に追いやられて、首切るときだけが優先的なんです。(拍手)従いましてこれらの場合に職の保障をも併せ考えなければ、本当に親切なやり方ではない。それから女子の脱退手当金というものはサービスであつたと。サービスがあつて、結構じやありませんか。国家は八百億からの金を勝手に使つておる。このくらいのサービスは当り前だと思う。そうして法律におきましては既得権並びに期待権は尊重するとある。従いましてこの既得権が侵される点についての御質問をいたしておるのでございます。  以上、御答弁をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  30. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。  最初に、受益者代表の問題でありますが、これは資金運用部審議会に、厚生省関係の代表者とか或いは民間の学識経験者等が入つておられますが、今藤原さんの言われる、直接の受益者代表という意味でございますれば、これは更に考えることにいたしたいと思います。  それから郵便貯金の赤字の問題でございまするが、これは支払利子は成るほど三分七厘五毛でありまするけれども、事務費等を要するので、相当大きな赤字になつておるのであります。そこで止むを得ず暫定措置として、或いは特別利率とか剰余金の繰入等を行なつておることは、予算書で御覧の通りであります。更にこまかな中身を言えということでございますが、これはあとから、又適当な機会に資料をお配りしまするが、例えば国債に向けておるのが、長期国債三百二十二億であるとか、或いは短期国債三百七十三億、或いは政府関係機関貸付金、これは千四百三十一億、或いは地方公共団体貸付金二千九百二十六億、こういうような工合に相成つておるのでありまして、あとこまかいことはいずれ、こまかい数字をここで読み上げておつても何ですから、あとから資料として差上げることにいたします。(「受益者代表を入れることに考慮して下さい」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣草葉隆圓登壇拍手
  31. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 坑内夫の問題は、従来は十五カ年間継続しておる間に、十二年間勤めておつた場合には、十二年でいわゆる年金養老年金をつける。で、十一カ年六カ月というのは戦時特例で、戦争中特別にいたしましたのであります。その点を御指摘になつたと思います。これらを実は今度はそういう特例をやめまして、そうして、併し一般より五カ年低くし、特別にあれこれの点を考慮して、坑内夫については、国庫負担は、一般は一割五分だけれども、坑内夫は二割、年限は、一般は二十年だけれども、坑内夫は十五年、こういうふうにいたしました点は、特別に坑内夫の特殊性に鑑みましていたした次第でございます。(それは従来からあつたんです、従来より悪くなつたんですよ」と呼ぶ者あり)それから先に申上げましたように従来の十五カ年を今度は二十年にいたし、すべての点をそういうふうに改正いたしましたので、その改正の全体と睨み合わせましていたしたのであります。それから研究々々と言うておるが、研究で終るんじやないかと仰せになつたのは、多分先に申上げました五人以内の事業所についての問題が多くだつたと思います。あとは今回は思い切つて改正をいたしております。改正と申しましても、全文改正に相成つております。従いまして今度の厚生年金保険法案は、全体の保険経済保険給付内容等を全般的に検討いたしまし光改正でありまするので、この点は御了承頂けると存じます。  重ねて十六歳に対する御質問でありましたが、これは先ほど申上げましたように、厚生年金保険の性格に鑑みまして、労働基準法等の関係を考慮して、この点は従来の年齢をとつてつております。女子に対しましては、今回は従来の年限を更に検討をして、二年ということにいたしたものであります。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  32. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 私を指名しての再質問はなかつたかと存じまするが、議長お話でございますから……。恐らく、けい肺問題につきまして、けい肺対策審議会の研究といつたことに関連してかと存じまするが、これは労使公益三者構成になつておりまして、非常に熱心に審議をしておるのであります。ただ、このけい肺問題につきましては、各国において、これはこういうことが原因で、こうすれば治療ができるという完璧な研究もないようでありますので、非常に問題はむずかしいわけでございますが、先ほども申上げましたように、新たに労災医学研究所を作りまして、我が国の権威にかけても根本的な研究をいたしたい。かように考えておる次第でございます。(拍手
  33. 藤原道子

    ○藤原道子君 なお、納得できない点がございますが、委員会に譲りまして、私の質問はこれで終ります。     —————————————
  34. 河井彌八

    議長河井彌八君) 堂森芳夫君。    〔堂森芳夫君登壇拍手
  35. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 私は、厚生年金制の実施、即ち、すべての国民の老後の生活は最終的には国の財政的責任において守るべきであるという立論の立場に立ちまして、只今提案されました厚生年金保険法に対しまして、すでに同僚議員が触れられました点を避けて、最も緊要な点につき、二、三点、政府に質問をいたさんとするものであります。  吉田首相は、国民に対しまして耐乏の生活を説いておるのでありますが、耐乏の生活国民に強要しながら、今日国民の血税を、あたかも甘きに集う蟻のごとく、未曾有の疑獄事件、汚職によつて、厚顔にも食い荒らして来た事実は、今や国民の視聴の頂点となり、盛り上る不信と憤りとなつているのであります。このことは暫らくおくといたしましても、少くとも国民に対しまして耐乏生活を説かんとする政府は、その政策の隅々にまで、国民をして犠牲の負担均衡ならしめるような政策を用意することは当然であります。而してこの犠牲負担均衡政府の責任において実施せんとする政策こそ、すべての社会保障制度の根本原則と申さなければならんと思うのであります。然るに政府只今提案いたしました本法案を見ますると、政府は依然としてこの犠牲負担均衡などという大原則を放棄し、ただ、極めて技術的、局所的な改正によりまして、当面の事態を糊塗し、その重要な機会を把握するに至らなかつたことは、政府と、特に厚生省の官僚の封建的な事大思想、御殿女中的な不決断とによるものでありまして、非常な重大な政治的責任として私は追及いたしたいのであります。我が国社会保障制度体系について見まするならば、最も不統一にして封建的、官僚的セクシヨナリズムを露骨に示すものが現行年金制度であることは、国の輿論のみならず、曾つて国際的なる調査団によつて端的に指摘され、批判せられたところでございます。  そこで、先ず私は、副首相にお尋ねいたしまするが、すでに同僚議員がいろいろ質問されましたけれども、私は理解することができませんでしたので、重ねて質問いたすものでございます。社会保障制度審議会は、二十五年の第一次勧告において、日本の社会保障制度体系が極めて複雑多岐であつて、ばらばらであることを指摘し、特に年金制が非常にばらばらで不統一であることを指摘して、早くこれを整備すべきであるという勧告をいたしました。然るに政府は、今日まで何ら熱意を示していないのであります。又、昨年の十二月におきまして、再び社会保障制度審議会は、特に年金制度統一整備について詳しく勧告をいたしておるのでございます。然るに政府は、やはり今度の厚生年金保険制度改正をなすに当りまして、このような勧告を無視しておるのでありまするが、一体、政府は、社会保障制度審議会が与えました厚生年金に対する勧告を如何ように考えておられるのでありまするか。その点を伺つておきたいのでございます。今までのような、通り一遍の文章をお読みになるのではなくして、緒方副総理が、一つ、とつくりと御答弁願いたいと思います。  又、私は考えまするのに、今日こそ日本の複雑な年金制度を根本的に改正する絶好のチヤンスと思うのであります。と申しまするのは、日本の国の恩給制度は、古い明治時代の事大思想的な産物として今日まで育つております。然るに人事院は、昨年の十一月、国家公務員の退職年金に関する勧告国会及び政府に発しております。そしてこの古くさいところの、古くなつ恩給制度、而も公務員と雇用員との間には大きな待遇の差もあり、差別待遇をやつている、この恩給制度を根本的に改正すべきであるという勧告をいたしております。    〔議長退席、副議長着席〕  又、厚生年金保険法は、昭和十六年に制定されたものでございまするが、すでにその後、日本の国は、戦争、敗戦、インフレーシヨン、こういうような重大な日本の情勢の変化によりまして、すでに死文となつておるのであります。而も本年の一月から老齢年金支給すべき資格者が数千名出ているのでありまして、いわば日本の年金制度の、この複雑多岐な、而も世界的にも珍らしいようなこの古くさい年金制度を、根本的に改革すべき絶好のチヤンスでございます。若しこの機会に、今日政府が出しましたような局所的な部分的な改正に終るような法案を提出いたしまして、根本的な改正を行わないならば、恐らく日本の国の年金制度統一ということは、永遠の彼方に不可能になるような事態に陥る危険があると私は思うのでございます。従つて政府に向つて、特に厚生大臣に向いまして、何が故に、こうした絶好のチヤンスであるにかかわらず、このような局所的な、部分的な、技術的な改正に終つたかということをお尋ねしたいのであります。  草葉厚生大臣は、大臣に新任されましたときに、決して言葉尻を捉えるのではございませんが、新聞記者会見において、「私が厚生大臣になりましたので、日本的社会保障を実施する」と、こう高言しておられるのであります。その意気たるや壮たるものがございまするが、併し今度の改正案を見ますると、このような全く日本の年金制度統一して行こうというような熱意を示さないような改正案をお出しになつたところを見ると、あなたの理念も全く事大的なものでないかと私は考えるのであります。而も先刻これは藤原議員の質問に答えて、あなたは女子の脱退手当金について、サービスというお言葉をお使いになりました。言語道断であります。女子の労働者が脱退手当金を受取ることは当然の権利であります。これをサービスなどという言葉を不用意にお使いになること自体があなたの事大思想を暴露するものであります。(拍手)よろしくお取消し願いたいと思うのであります。  次に、私は日本の恩給制度厚生年金とを比較いたしまして、いろいろ質問を試みてみたいと思うのであります。現行恩給制度厚生年金保険法とを比較いたしてみますると、国庫負担分は、恩給においては殆んど全部を国庫が負担しております。然るに厚生年金においては、改正案を似ていたしましても一割五分から二割でございます。国民の血税がこのように官に厚く民に薄いこと自体が民主主義の名に恥じるものと言うべきであります。而も恩給支給額は、物価の値上りに伴いましてすでに引上げられて、昭和二十七年の普通恩給平均額は五万余円となつております。然るに厚生年金法は、今回引上げられたといたしましても、その半分くらいであろうと思うのであります。而も恩給では、物価の上昇に対するスライド分はすべてこれを国庫から支弁しております。然るに厚生年金では殆んどが労働者の醵出金ということで賄つておるのでございまして、これも即ち、インフレの犠牲を、官には厚く民には薄く、こういうふうに官尊民卑の実に事大思想が露骨に現われておると私は断ずるのであります。その支給資格にいたしましても、恩給は十七年、厚生年金は二十年、その支給開始年齢にしましても、恩給は四十歳、厚生年金は五十五歳、改正法では五カ年延長せんとしておるのであります。又年金支給額にいたしましても、恩給はその最終の給与の額を基準としている。ところが厚生年金標準報酬の平均月額を基準としておるのであります。このように我が国年金制度は、明治時代の露骨なる官尊民卑の封建性をそのまま残しておる現行法の存在に顧みましても、将来において全国民の老後の生活保障を約束せんとする立場から抜本的改革を是非とも必要としておるのであります。  先刻同僚議員からも触れられましたからくどくどは申上げませんが、何が故に五人未満の事業所に働いておる労働者を強制加入にしなかつたかということのその根拠を私は説明して頂きたいのであります。勿論一応の御説明はございました。併しこの説明を聞いておりますると、全く事務的の点が特に強調されておるのでございますが、併し全国の事業所の五人未満というものは全事業所の八割を占めておるのであります。而も労働者の数を計算しますると、全労働者の三割を占めておるのでありまして、これらの人たちは、一生涯安い賃金で働きましても、老齢年金も傷害年金も受ける資格はないのであります。成るほどこれらの工場は、それ自体極めて不安定であります。又職場移動の頻度も極めて高いのであります。併しながらこのような不安定な職場において低賃金に悩む労働者とその家族の扶養に任ずることこそが年金制度の眼目であり、これをただ技術的にむずかしい、こういうふうな理由を以て除外せんとするのは、全くこれは厚生省当局或いは政府の私は怠慢と言わざるを得ないのであります。よろしくすべての労働者を本制度に包含して、彼らの老後の生活を守るべきと思うが、これらの五人未満の人々を強制加入にしなかつた根拠というものを明確にお示し願いたいのであります。  次に本改正案によりますると、年金については一部を定額制といたしております。そうしてその額を年間一万八千円、即ち月額千五百円に抑えているのであります。この点もすでに同僚議員が触れられましたので、詳しいことは申しませんが、ただこの支給年金の額に定額制を採用したということは、これは一つの進歩でございます。併しながらこの一万八千円というものは、先刻も藤原議員が触れましたように、生活保護法の扶助額全国平均千五百円、二千円とほぼ同額と断定できるのでありまして、又昨年三月において成年男子一カ月の全国平均生計費を人事院は五千四百円と算定しているのでありますが、このような僅かな月額千五百円というところの定額をきめた根拠をお示し願いたいのであります。  更に私は、年金積立金につきまして、重複を避けまして、大蔵大臣にお伺いいたします。資金運用部は五分五厘の利息でこの積立金をあずかつておりますが、資金運用部においての利廻りは五分七厘となつているのであります。而も労働者が積立てた金を、労働者のための住宅などを建てるための、労働者福祉のために使う金は六分五厘となつているのであります。そうすると政府は、労働者が醵出したお金についていわば利鞘を稼ぎ取るのでございますが、この金を政府は労働者のために還元しなければ私はならんと思うのであります。(拍手従つて又この積立金の、労働者の福祉のために使つているお金でありますが、年々貸しているのは三十億、二十億というふうな、積立金八百億、一千億の利息にも当らんところの微々たる額を労働者に還元し、而も利鞘を稼いで、その他の大部分は一体どこへ使つているのであるか。この点もお伺いしたいのであります。而も重ねて前議員、前々議員の質問とダブリますけれども、この積立金は、是非とも特殊法人とでも申しますか、労働者或いはその他各方面の人たちを加えまして、特殊法人とする意思がないかどうかということを大蔵大臣及び厚生大臣にお伺いしたいと思うのでございます。  次に現行年金制度統合に関しまして、政府所信を質したいのであります。我が国における年金制度は極めて複雑多岐であることは、御承知の通りであります。そしてそれらが依然として既得の特権を主張し、官庁の割拠主義と官尊民卑の封建性をそのままに暴露しておることはすでに述べた通りであります。昨年十一月、人事院勧告を以ちまして、国家公務員の退職年金法の制定を求め、公務員たる限り、雇用者をも含めて一般の退職年金制度を立法化すべきことを明らかにいたしまして、そうして地方公務員、公共企業体、公共団体の職員をも、団体として加入することを勧告しておるのであります。然るに極く最近になりまして、これは地方自治庁長官にお尋ねするのでありまするが、市町村職員共済組合法なるところの法律を社会保障制度審議会に諮問を発しておるのであります。ただでさえ我が国年金法は極めて複雑多岐である。世界的輿論においても、これを統一すべきであるということを国際的調査団も指摘しておるのであります。然るにあなたは、今日この複雑な年金法を更に複雑化するためにわざわざ市町村職員というところの一つ地方公務員に対して特別な共済組合法を作ろうとしておる。これは私は勿論現在全国的に各市町村の雇用員が何らの健康保険制度、或いは年金制度を持たないことは大きな欠陥である、これは認めまするけれども、それらの人を何が故に複雑化するような、年金制度自体を複雑化するような法案をわざわざあなたがお出しになろうとしておるのであるか。この点私ははつきりと御答弁を願いたいのであります。この際政府は、このばらばらな現行制度に対しまして、政府の諸君がこの年金制度統一のために、是非とも努力をして頂きたいということを希望するものであります。  最後に、労働大臣、厚生大臣お尋ねいたしまするが、ILOの社会保障制度最低基準に対する条約を、あなたがたは国会に批准を求める意思があるかないかどうかということを承わりたいのであります。若し批准を求めるといたしまするならば、いつ頃これを批准を求めるつもりであるかということを承わりたいのであります。更にこのたびの厚生年金保険法改正によつて、国際的な社会保障最低基準に達していると思われるのであるかどうかという点も併せて答弁願いたいのであります。  更にもう一つ労働大臣に伺いまするが、一体未熟練労働者の標準賃金というものは、日本で一体どれくらいと考えておられるのであるかどうか。これは厚生年金に関する国際的な基準と関連しまして極めて重大な問題でありまするので、この本会議の席上で、あなたの御答弁を願いたいと思うのであります。  以上を以ちまして、私は質問を終ります。詳細については、委員会において質疑を行いたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  36. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 現行社会保険統合整備は、我が国社会保障制度の発展のために最も重大な問題であると考えております。政府におきましては、社会保障制度審議会勧告に基き、この問題について目下鋭意検討を重ねているところは御了承の通りであります。併しながら、我が国現状におきましては、直ちに勧告にあるような全面的な社会保障制度を行うことは、非常に困難な状態でありますし、又年金制度自体も厚生年金保険以外に船員保険公務員恩給制度、共済制度等が実施されておりまするが、これらをすべて統合するにつきましても、それぞれの歴史理由、利害等を異にしておりますので現在直ちにこれを実施することは極めて困難であります。そこで今日の改正におきましては、勧告趣旨に副うような方向に向つて第一段階として、厚生年金保険改正を企て、又船員保険との通算等も考慮したような次第であります。  それから恩給制度にお触れになりましたが、恩給制度につきましては、人事院の勧告もあり、又これが改正は影響するところが非常に大きいので、政府といたしましては、今回内閣に設けますところの公務員制度調査会で十二分に検討した上で措置をいたしたいと考えております。それから最後に、国民全般についての年金制度を考慮すべきではないかという御質問のように伺つたのでありまするが、各種年金制度がそれぞれの必要性と沿革に基いて実施されておりますので、これを一挙に統合することは困難と考えられまするが、将来漸次その統合を図ると共に、まだ保障制度対象となつていないものに対しましても、年金制度を逐次及ぼして行くようにいたしたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  37. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 郵便貯金の五分五厘で預託を受けつつ、六分五厘で運用して利ざやを稼いでいるのじやないかというような意味のお話がございましたが、実は郵便貯金は先ほども申しましたごとく、支払利子は三分七厘五毛でありますが、事務費が四分一厘一毛かかつているのでありまして、利子は七分八厘六毛余りかかつているのであります。従いまして、六分五厘にいたしましても、実は郵便貯金のほうの赤字補填に使われている。こういうのであります。片方の厚生年金の特別会計の場合は、これは御存じの通り全額事務費は国庫負担になつているので、郵便貯金の場合は普通の特別会計とはちよつと事情が違うことを御了承願いたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓登壇拍手
  38. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) 脱退手当金についての御意見でありますが、私がさつき申上げたのは、脱退手当金というものは、いわゆる厚生年金保険法の本筋から考えると、サービス的な意味を持つていると申上げたのであります。厚生年金保険法の全体から考えますと、十分その職域において働いて、その働いたあとにおける、或いは働いている間における障害その他の問題を、年金制度その他の制度によつて保険をやつて行こう。で、脱退というのは、むしろ厚生年金の本筋から申上げると喜ばしい現象ではないはずであります。そういう意味において申上げたのでございます。  恩給法との比較において大変違うじやないかと。御尤もであります。お話通りでありまするが、恩給法厚生年金保険法との建前が根本的に違つておりまするから、そういう結果に相成つておりまするが、併し先ほどお話恩給では四十歳開始というお話もございましたが、現在では若年停止でありますから、五十五歳になりまして初めて開始ということに相成るのであります。五人未満の事業所を強制加入にもう少し努力すべきではないか。これは先ほど申上げましたように、現在任意加入で約十万でありまするから、この中にも相当数あるとは存じまするが、併し強制加入とはおのずから違つてつております。先ほど数字等も申上げたような五人未満の事業所の状態であり、且つ又実態並びに給与の体系内容、すべてが大変複雑であり、把握しがたい状態でありまするから、これはいろいろな方法で、もう少し組織等におきましても検討して、或る程度任意加入等におきましても、その準備期間等において、強制加入まで行くまでの間においての準備期間等においてなし得る途もあろうと存じております。そういうような点も検討しながら進みたいと存じております。  定額制度を設けた根本的な理由についての御質問は、実に一千五百円を定額制といたしましたのは、大変御慫慂を頂きまして私どもも思い切つてこの機会にいたしたのでありまするが、それは国庫等における相当な負担をいたしておりまするから、この比例報酬だけにいたしますると、高給者には多額の国民の利益が集中し、少額所得者には少くなる。こういう点等を公平に分つという意味と、社会保障最低保障という線を確保したいという意味から、定額制をとつたのであります。  最後に、ILOの関係につきましては、先に申上げました通りに、ILOの条約に示しておりまする点まではなお及んでいないと存じております。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  39. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) お答え申上げます。  社会保障最低基準に関しまするILO条約は、御承知の通り医療、疾病、失業、老齢、業務災害、家族、母性、癈疾遺族給付の九部門に亘つておりまして、現在諸外国に行われておりまするこれらの制度を網羅的に取入れました複雑厖大な条約でありまして、ILO事務当局も、これらの基準をすべて満たすような国は余りないことを予想しまして、本条約の批准に当つては、すべての部の基準を充足する必要はない、三部門を充足すれば足りるという極めて異例な規定を置いておるのでありまして、現在条約を批准している国はスウエーデン一カ国であります。我が国社会保障制度現状と本条約に規定せられました内容と比較いたして見ますると、おおむねこのような批准のための必要条件を具備していると考えられまするが、なお本条約の規定自体には、必ずしも明確でないところがあり、技術的になお検討を要する点が少くありませんので、目下政府といたしましては、ILO事務当局と連絡をとりつつ、本条約の全般に亘りまして詳細検討をいたしておりまする際でございまするが、できる限り早く検討を終りたいと考えております。  なお、未熟練労働者の標準賃金ということにつきましてのお話でございましたが、この未熟練労働者という語義それ自体が、非常に不明確でありまするので、この点につきましても、実は今ILOの事務当局に問合せをいたしておりまする際でございます。御承知のように、この二十九年度予算が成立さして頂きますれば、その中にこの標準賃金に関する調査費目も入つておりまするので、業種別、規模別、年齢別、性別、或いは地方別、学歴別、経験別といつた、この各種の賃金の実態に関する調査をいたす考えでございまするので、その上で未熟練労働者の定義も、ILOの事務当局で明快になりましたら、これについて、はつきりしたお答えを申上げることにいたしたいと、かように考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎君登壇拍手
  40. 塚田十一郎

    国務大臣(塚田十一郎君) 年金制度統合するという考え方は、私もその通りでなければならないと考えるわけであります。ただ何にいたしましても、現在御承知のように国の一般公務員については恩給法、府県については恩給条例、市も恩給条例、町村は恩給組合法というようになつて、又国家公務員及び府県公務員たる雇用員、市町村の公務員であつても、学校及び警察の雇用員だけは、これは御承知のように国家公務員共済組合法というものになつておるわけで、町村公務員である雇用員だけが、今、年金法で救済されておりまする者は二万八千人ぐらいあるのでありまして、あと十二万七千人というものは全く救済を受けない形で放擲されておるわけであります。これが統一された年金制度ができるまで放つておけるかどうかということでありますが、これはやはりそうは行かないと考えまするし、殊に地方公務員法四十三条にも、成るべく早くこの共済制度を実施するようにということを規定いたしておりますので、取りあえずこれらのものが救済できる、御指摘のような町村公務員共済組合制度というものを作りまして、統合の機会には勿論他のものと一緒にその統合に行くということ自体には異存はないわけであります。(拍手)     —————————————
  41. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 有馬英二君。    〔有馬英二君登壇拍手
  42. 有馬英二

    ○有馬英二君 只今上程されておりまする厚生年金保険法案につきまして、私は改進党を代表いたしまして若干の質問をいたすものであります。  只今まで各党の代表者から、それぞれ本案について質問がございました。特に重要なる点につきまして質問があり、それぞれ関係諸大臣のこれに関する答弁がありました。私はさつきから全部これを聞いておつたのでありまするが、成るほど我が同僚によりましてすべて要所々々の穴を衝いておられ、そして各大臣は誠に苦しい答弁をしておられるようであります。私は大体それで、政府所信を伺うことができたのでありまして、私の質問も、大体において我が同僚諸君の質問に一致しておる点がありますので、私は時間もございませんし、重ねて同じ質問を避けたいと思うのでありますが、併しながらまだ政府の答弁において合点の行かない点もありますので、同じことになりまするけれども、なおもう一度合点の行くように、納得の行くような御答弁を願いたい。かように思いまして、一、二質問を申上げたいと思うのであります。  現政府が、社会保障制度の遂行に当りまして、誠に熱意が欠けておるということは、昭和二十五年の十月の社会保障制度審議会勧告を行いました、第一回の勧告を行なつた際、或いはそれからあとにおきましても、政府のこれに対する方針、或いはその勧告の取入れの態度というものが誠に明らかでない、或いは不熱心であるということを私どもは当時から指摘しておつたのであります。従いまして今回出された厚生年金保険法案につきましても、かくのごと改正は誠にごまかしと、先ほど同僚諸君も言われましたが、弥縫的なものであつて、根本的な案とは考えられない。漸く止むを得ないから少しずつやつておるというようなことにしか考えられないのであります。先ほどからたびたびありましたが、我が国社会保険制度が誠に不均衡なることが多い、複雑であるということにつきましては、これは異論がない。昭和二十五年の社会保障制度審議会勧告にも、又昨年の暮の勧告におきましても、やはりそれが指摘されておるのであります。又民間団体からも、或いは労働団体からも、やはり指摘されておつて、すべからくこれは早く改正をされるべきものであるということが指摘されておつて、そうして今日に及んでおる。先ほど堂森委員からも言われましたように、この法案は、昭和十六年にで、きておつて今日まで、もうすでに十数年経つておる。然るに、なお今日のような状態であつて、而も今回の改正には、誠にどうも物足らん点がたくさんあるというに至りましては、私どもは政府の意を疑うのであります。先ほどからたくさんのこれに関する年金保険制度、例えば船員保険であるとか、恩給、それから国家公務員共済組合、その他町村の恩給組合、地方公共団体の恩給制度というように、先ほども塚田大臣からも御指摘がありましたが、こういうような複雑で、そうしてばらばらのこの制度をどうして政府は少しも、これを総合して一丸とした総合年金制度の方法をとらないのであるかというようなことであります。これは先ほどからも皆さんが御指摘になつたところであります。社会保障制度審議会も指摘しておる通りでありまして、この方向政府が、何年もあるのに、少しもそつちへ向いて走つておらないという点に、今までのこの現政府のつまりやり方に甚だ不満足な点があるということ、先ほどから御答弁になつておるところを聞きまするというと、これは非常に研究の余地があるということであります。勿論研究の余地がある。併しこの十数年間に何か研究されたかと考えまするというと、何も研究されておらない。詳しいことはいずれ委員会でお尋ねをしたいと思うのでありますが、研究の跡が少しも見えておらない。ただ一部分弥縫的の改正を行なつて行くに過ぎないという点において、私ども、どうしてもこれは不満である。政府はよろしくこの点につきまして、もつと社会保障制度審議会勧告にありますように、着々と準備を進めるということ、即ち準備行動を開始するということを私どもは政府に望みたい。そうしてそれに対する厚生大臣所信を伺いたいのであります。ただむずかしいと、であるから、研究するのであるというのでは、私どもは承知をいたしかねる。どうかしてそれに進んで行くという熱意を示して、そして準備行動に取りかかるということをここで明言をして頂きたいのであります。  なお、先ほどもお話がありましたように、私もやはりこの零細な五人以下の使用人を使つておる事業所の従業員をどうして今回もこの改正の中に入れなかつたか、これを被保険者に加えなかつたということは、もうこれは私が先ほども御答弁がありましたけれども、どうもその答弁では、私ども承知いたしにくい。成るほど、事業所の数におきまして全事業所の八二%を占めており、又従業員の数におきましても全従業員の三〇%を占めておるということは、もうすでに統計の示しておるところであるから、いろいろの事業に従事しておりまする人たちの三割、事業所におきまして八割という、多数を占めておる零細な事業に従事しておる、而もその間大部分、少くとも半分が、農林の方面関係しておるものであります。こういうことから考えまするというと、如何にこの方面の零細事業に従事しておらるるところの人たちが社会保障の恩典に浴しておらないかということであつて、而もこの人たちは大企業の従事員から比べるというと、給料が約半分であるのであります。平素から非常に安い賃金で働いておつて、而も働いても、老後の保障がないということでありまするから、これは国民としてどうしても考えてやらなければならん点であります。政府はそういうことを若し知つていながら、いつまでもこれをかまつてやらない、或いはこれを被保険者に加えてやらんというような態度であつては、これは甚だ不親切であると言わなければなりません。  それから、先ほど老齢年金お話でありますが、而も坑内従事者が今度は五十歳から五十五歳に延びた。それから一般には、五十五歳から六十歳に延ばした。それの説明として、先ほど大臣から、日本人の寿命が延びたというお話がありました。成るほど統計の示すところによりまするというと、最近日本人の寿命が延びております。併しそれが労働者も含めてのことではありまするけれども、特にこういうような坑内作業に従事しておるというような重労働に従事しておる人たちの寿命が延びておるかということは少しも示されておらない。そういう点において、労働大臣はおられませんが、厚生大臣は確かな計数を持つておられるかどうか。少くともこの人たちの寿命が一般の日本人の寿命と同じように延びておるという証拠がない以上は、いち早く、まだ数年にしかならないところの我が国国民の寿命の統計によつて、直ちに五十五歳を六十歳まで延ばし、或いは坑内従業者を五十歳から五十五歳に延ばしたというようなことは、少しこれは早すぎるのではないか。即ち研究が足りないのではないかというようなことを考えるのであります。この点について厚生大臣は確かな数字がおありになるならば、その数字をお示しを願いたい。  なお、時間がもう切れてしまいまして、まだ二、三の質問を持つておるのでありまするけれども、もはや時間も参りましたのでありまするから、ほかのことは委員会で重ねて質問をしたいと思うのでありますが、ただ一言だけ積立金の使用でありますが、これから約六十年経つというと、というような説明があつたと思うのでありますが、積立金のピークは、六十年ほど経つと達する。それからだんだん下がるという傾向であるらしいのであります。そうしてそれが二兆円にも達するということである。これの使用については、先ほど大蔵大臣からいろいろ御説明がありました。なお同僚議員からも御質問がありまして、五分五厘が五分七厘に廻つておるはずであります。そうするとその二厘の行先きはどうなつておるかということについては、先ほどの大蔵大臣の御説明は甚だ不明瞭であると思う。ただ事務費がかかつておるというくらいでは納得ができない。その点については一今後はつきりとした用途が明示されなければならんと思うのであります。  それから先ほど同僚議員からも言われましたが、この金は労働者の積立てた金である。従つてそれでまあ五分五厘の二厘でありましても、少くともこの労働者に還元するような施設をされなければならない。今までは若干の労働者の家屋の建築に使われておる。これが二十五億だつたはずであります。それから病院一つ建てられた。今、病院の計画につきましても御説明がありましたが、これらの金を全部合せましても三十億にしか足りないので、積立金は七百八十九億にも達するというのに、福利施設の貧弱なることは到底問題にならないのであります。これはどうしても政府が今後この方面にこれらの金を還元して、そうして被保険者の福利増進を図られることを努めなければならない。その点におきまして、厚生大臣の今後の御計画を一つ伺いたいと思うのであります。  時間が参りましたから、これで私の質問を終ります。    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  43. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 有馬さんにお答えいたしますが、さつきも申した通り、成るほど資金運用部のコストは五分八厘四毛で運用利廻は六分四厘一毛になつておる表等をたしかお手許に差上げてあるので、そう思われるかと思いますが、御承知のように、この主たる郵便貯金のほうの関係のコストは、実は先ほども申した通り、事務費を含めますと七分八厘六毛にも付いておりまするので、従つて一般会計その他からもこれを補充しておるというような事情にある。何ら利鞘を稼いでおるものでないということは御承知を願えると思います。よくおわかりだと思うのであります。ただ今後、もつと有用に運用する方法はないか。こういう点につきましては、大体資金運用部資金の増大及び郵便にいたしましても、貯金額がだんだん増大して参りますれば、事務費その他の負担も減ると、こういうことになつて参りまするので、私どももでき得るだけ優良利廻りのほうに持つて参りたいと、こう努力いたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓登壇拍手
  44. 草葉隆圓

    国務大臣草葉隆圓君) お話のように、厚生年金保険法を実施いたしましたのが、昭和十七年の一月一日でございますから、相当な年数も経つてつております。従いまして実はいろいろなその当時の経済情勢に応じて改正をし、検討をして参り、昭和十九年以来、六回その内容等をずつと変えて参りましたことは御承知の通りであります。昨年も相当改正いたしまして御審議を頂いたのでありまするが、今回はむしろ弥縫的というよりも、根本的な改正というのが、今回の全面改正となつて現われたのでありまして、従いまして相当思い切つた改正と、将来の財政に即応した方針をとつて参つた次第でございます。  更に、五人未満の事業所等について、もう一層検討を加えるべきものではないか。先ほども申上げましたが、これらの五人未満の事業所の全体について検討をいたしまする場合に、そこに働らいておりまする雇用形態の問題、或いはその雇用者が老齢年金を受けるような長期的なものと、そうじやないものと、その形態が誠に複雑であると存じます。賃金の形態から考えましても、さような点が多く見られるのであります。殊にこの負担の問題につきまして、大体は雇用者と被用者と半々の負担にいたしておりまする関係等考えまして、中小企業の経済に及ぼす影響等も相当検討して参らねばならないと存じております。これらの点につきまして、全体に五人未満の事業所につきまして、これらの点を総合した検討をしながら、この実施というものを考えて行かなければならないと存じまして、今回はそこまでの段取りに参らなんだ次第でございます。併しながらこれらの点については、十分今後調査をいたして進めて参りたいと思つております。  老齢年金の年齢の引上げにつきまして、坑内夫の寿命の延長は、お話通りに資料は只今つております。ただこの全体を見ますると、イギリスのように相当徹底いたしましたところにおきましても、この給付開始の年齢が男子が六十五歳であり、女子が六十歳でございます。アメリカが両方とも六十五歳でございます。五十歳並びに五十五歳というのは、世界に私どもの承知いたしておりまするところではないようでございます。これはその国の年齢、寿命との関係も同様でございましようが、これらの点を考え併せまして、先ほど来申上げました点等を考えまして、今回五年間の延長をいたすという方法をとつた次第でございます。  以上を以て御了承を頂きたいと思います。(拍手
  45. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) これにて、質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  議事の都合により、暫時休憩いたします。    午後二時二十八分休憩      —————・—————    午後十一時十四分開議
  46. 河井彌八

    議長河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
  47. 内村清次

    ○内村清次君 私はこの際、予算と予算に関係する法律案に関する緊急質問の動議を提出いたします。
  48. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、只今の内村君の動議に賛成いたします。
  49. 河井彌八

    議長河井彌八君) 内村君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。内村清次君。    〔「大臣何している」「政府はどうした」と呼ぶ者あり〕    〔内村清次君登壇拍手
  51. 内村清次

    ○内村清次君 私は、昭和二十九年度予算に関連いたしまして政府の政治責任について緊急質問をいたしたいのでございます。(拍手)  参議院は、昭和二十九年度予算案に対しまして、三月三十一日以来自由党、改進党、この両党の不合理にして不法なる、強引なる審議打切りを排除いたしまして、緑風会及びその他野党各派と共に、議会運営の常道をふんで、その前提条件でありまする関係法律案の衆議院議決を政府及び衆議院に要求し、第二院たる参議院の正しき職責を果すべく強く反省を求めて来たのでございます。(拍手)それにもかかわらず今日まで何らの反省なく、正規の機関により合法的意思表示もなく、常套手段たる政治的陰謀に終始し、この重要なる予算案について、地方財政上重大なる影響を及ぼす入場税の問題その他を未解決のまま、憲法第六十条を悪用し、衆議院の予算審議決定権に籍口して、予算案の自然成立を企図いたしたのでございまするが、かくのごときことは厳正なる議会運営を無視し、みずから努力すべき義務と責任とを放棄し、その責任を参議院に転嫁せしめんとすることであり、誠に厳正なる議会政治に一大汚点を残すものでありまして、(拍手)断じて承服しがたき暴挙と言わざるを得ないのでございます。即ち憲法第六十条は、その条項の後段におきまして、「又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」と語つております。即ち議決をしない、予算に対するところの議決をしないときもあり得るからして、この後段の条項を定めておるのであります。然らばこの議決をしないときは一体どういうときであるか。即ちこの問題はいろいろの事情が発生するでございましよう。併し今回の、ごとき予算案の前提条件が整わないときは、最も明白な理由でありまして、我々はこの前提条件につきましては十分整備をし、そうして審議を尽しまして、政府に対しましても、その努力を要求して来だのでございまするが、これを怠つたのが政府であり、而も衆議院におきましての予算の修正に対しまして、保守三派であるところのこの自由党、改進党、日自党の諸君たちが、この参議院の厳正なる審議権に対しまして、(「政府出ていないじやないか、政府どうした」と呼ぶ者あり)耳を貸すことなくして、即ちこれを裏切り、そうしていわゆる審議権は参議院が今日まで守り通したのでございまして、断じて審議権を放棄したものではないということをここに明確にいたしておきたいのでございます。先に衆議院におきまして、二十九年度予算議決に際しまして、保守三党は予算協定によつて重大なる修正を行いました。ところがその裏面におきましては、ひそかに不明朗なる政治取引をやつております。即ちこの予算案に対しましての関係税制の法案に対しましては、協力してこれを成立すると言つております。又或る党の中におきましては、いわゆる繊維税を成立させないというようなことも、これ又その条件にしたと言つておる。或いはしないと言つておる。こういうような不明朗なる条件の下に、自由党及び政府は政権に恋々たる余り、悟然として何ら恥づるところなく、この修正案を鵜呑みにいたしておるのであります。(拍手)今になつて関係重要法案について三党の協定がまとまらないとは一体何事でございますか、(拍手)甚だ以て不可思議千万、言語道断と言わなくてはなりません。(拍手)然るに政府は三党協定に同意をいたしております。而もその政治的責任につきましては、予算委員会の席上の冒頭におきまして、いわゆる政治責任は政府がこれを痛感をし、責任を持つて説明に当ると、又実行についてもその責任を持つと言つております。かくのごとき、政府がこのような政府責任を持ちながら、今日のごときいわゆるこの重大なる参議院の審議に当つて、前提条件を整い得なかつたというような、このことは、まさしく政府の無能であり、怠慢であると断言せざるを得ないのでございます。(拍手)私はこの際政府がこの解決に如何なる努力をしたのであるか。どういうような即ち方策を以て衆議院関係或いは各保守三派に対しまして働きかけたのであるかという、その経緯を明確にしてもらいたいと存じます。(拍手)  次に私は、ここに現実に生じておりまするところの予算の空白に対する政府の政治的責任を問いたいのでございます。即ち、政府はこの空白期間は僅か二日間にしか過ぎない、実際上の行政事務その他の運営に支障はないとして、あえて頬かむりで過ごさんとしております。全く厚顔無恥も極まれりと申さなければなりません。(拍手)そもそも厳密に申しましたならば、財政法第十四条その他にも明記しておりまするがごとくに、一日も予算なくして、その間、国家の債務負担行為及び支出は一切たすことができないのであります。従つて政府は、短期間といえども暫定予算を編成して、会計上の責任を明確にすべき筋合いのものでございます。(拍手)聞くところによりますと、予算委員会におきましては、こういうようなことがあるということを考えまして、青木委員長に対しましては、十分政府にこれを申達するように言つてあつたと申します。然るに与党の青木委員長は、これを政府に申達をしておらない怠慢が一つある。と同時に、いま一つは、当然行政の責任者であるところの政府といたしましたならば、いわゆるみずからその責任を感じて暫定予算を組むべきが至当であると私は考えるのでございまするが、この点に対しまするところの、責任政治の今日において、いわゆる責任を持つておるところの政府は、この空白に対する国民への責任のために総辞職をすべきであると思うが、(拍手政府所見を伺いたいのでございます。  私は、以下この予算に関連しました重要なる法案につきまして、いわゆる衆参両議院のこの審議の状態というものが如何になつておるか。こういうことを具体的に申上げたいのでございまするが、ただ今回前提条件になつておりまする地方行政関係における法案につきまして申上げましても、御承知のごとくいわゆる衆議院で今日まで審議を続けておりまして、参議院は予備審査である、まだ法案が通過しておらないのであります。十一件のこの関係法案一つも参議院のほうの本審査にかかつて来ない。こういう状況のその又原因というものは、政府法案の提出がすべて遅れておることであります。いわゆる地方交付税法を考えてみましても、衆議院に提出したのが三月の十日であります。それから十五日或いは十七日というふうに、関係法案はすべて遅れておるのでございます。而も予算案は御承知のごとく休会明けの一月の二十五日に提出をされております。予算案と並行をして法案審議がなされてゆく、而も参議院に予算が廻つたときには、参議院においてはそういう関係法案は、すべて衆議院の手から参議院のほうに移つておるということが、これが当然なる政治の常道でございまするが、(拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)政府におきましての提出の怠慢、いわゆる事務管掌の怠慢が今日のごとき状態になつておることを考えまするときにおきまして、私はこの理由の大半は政府にあると存じまするが、政府は如何にお考えであるか。この点も伺いたいのでございます。とかく地方財政は現在の政府から冷酷にされております。憲法第八章に地方自治というものが設けられまして、そうして民主政治の基盤として、各地方の公共団体を通じて地方の住民の福祉の観点からして、この地方自治が発展暢達することが必要でございまするが、現政府はいわゆる中央集権的に、地方分権を阻害をいたしております。私たちはよろしくこの機会におきまして、地方のこの暢達のため民主主義の基盤であるところの地方公共団体に対するところの行財政の抜本的改革が必要であると考えておるのでございまするが、政府はその地方の財源に対しまして、今回問題となつておりまするような地方財源の三大支柱であるところのいわゆる事業税、入場税、遊興飲食税、こういうような支柱のほかに、国の財源をこれを地方に与えて、地方自治の発達と地方財源を充実して行かなくちやならん責務があるのでありまするが、政府のほうでは、事業税のほうはこれは何ら減税の問題も考えない。同時に又御承知のごとく、入場税はそのまま国のほうに持つて行く。遊興飲食税は地方に残す、こういうような片ちんばのことをやつておりまして、そうしていわゆる地方財源の偏在是正という美名でございまするが、こういう三脚の内の一脚をとり外すような処置が、どうしてこれが地方財源の是正と言わるるでございましようか。(拍手)私たちはこういうような問題に対しましては、どこまでも自主財源の確保を要望いたして、国の財源を委譲することを要望いたしておるのでありまするが、これに対するところの政府のお考えは一体どういうお考えであるか。衆議院におきますると、聞くところによりますれば、御承知のごとく、改進党のほうにおきましては、この入場税に対しては、三派の協定を破つてそのままおくというようなことを言つております。自由党の内部におきましては、その大半におきましても、本税はそのままおかなくてはならないというような議論が出ておるのであります。一体政府はどうするのであるか。この点を明確にして頂きたいのであります。  要するに政府は重大なる二十九年度予算提出に当りまして、猛烈なる関係業者の運動によつて、蚕糸課税の創設を引つ込め、繊維課税に改め、更には保守三党の政治取引の具に供して、未だ不明朗なるままに残されております。遊興飲食税然りであります。
  52. 河井彌八

    議長河井彌八君) 内村君、時間が来ました。
  53. 内村清次

    ○内村清次君(続) まさに政府は政策の一貫性もなくして、国策を誤まり、主権国民の福祉は眼中になくして……。
  54. 河井彌八

    議長河井彌八君) 内村君、時間が来ました。
  55. 内村清次

    ○内村清次君(続) ただただ党利党略に終始する結果が、かくのごとき破綻を来したものであると、私たちは考えるものでございます。
  56. 河井彌八

    議長河井彌八君) 内村君、時間が来ました。
  57. 内村清次

    ○内村清次君(続) 私は国民と共にこの非道なる事態を、いわゆる厳正公明なる議会運営を擁護する立場から、断乎として政府及び与党の非道を糾弾することを目的といたして、ここに質問をする次第でございます。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手〕    〔「副総理はどうした」「聞いていないじやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  58. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。少し遅れましたので、只今要旨を伺つたので、その要旨に対してお答えを申上げます。  最初に、参議院は予算審議の前提として、予算関係法案に結論を得ることについて、政府に対して反省を求めておるが、政府は努力しなかつたではないか云々というお話がございましたが、政府があらゆる努力をいたしましたことは、これは皆さまがよく御承知のことと存じます。  更に、参議院は審議権を放棄したのでなく、予算審議の前提が欠けておることがその原因である。政府は予算の三派修正を鵜呑みにしながら、その前提条件たる関係法案を通過せしめなかつたのは政府の無能を暴露したものである。こういうお話でございましたが、政府は三党協定が、これは皆さんも御承知のごとく、(「知らんぞ」と呼ぶ者あり)はつきりと、これは予算総会で申してあります。はつきりと、この予算案を認める代りに、予算に伴う関係法案の通過に対して協力するとありまするので、それに基いて全力を尽して来た次第でありまして、政府はこれについてもあらゆる努力をいたしておることは申すまでもございません。  予算の空白に対する政府の責任を問うというようなことでありまして、三月三十一日にできなかつたについては、四月一日は、暫定予算等で困るではないかということでございます。これは私どもも、この二十九年度の予算が年度開始の四月一日に成立しないことは、国務の遂行に或る程度の支障を来たす次第でございまして、誠に遺憾に存じた次第であります。従いまして二十九年度予算のできませなかつた関係上、国費を新たに支出する債務負担行為並びに現金の支出が不能なのでございまするけれども、実際問題として、前年度繰越予算の使用、又は郵便官署における繰越払制度等の運用によりまして、国債利子、恩給等の支払のごとくに国の義務に属する経費の支出には何ら支障なき方法を講ずることといたしておる次第であります。  更に入場税等関係法案審議が遅れておるのは、政府の怠慢が今日の結果を来たしておるのではないか云々とございましたが、これに関しては政府においてもあらゆる手段を尽しておりますことは御了承下さつておることと存じて、これをお答えといたします。(拍手)     —————————————
  59. 相馬助治

    ○相馬助治君 私はこの際、一般予算と関係法律案との関連に対する政府の態度についての緊急質問の動議を提出いたします。
  60. 藤田進

    ○藤田進君 私は、只今の相馬助治君の動議に賛成いたします。
  61. 河井彌八

    議長河井彌八君) 相馬君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。相馬助治君。    〔相馬助治君登壇拍手
  63. 相馬助治

    ○相馬助治君 只今内村君は、政府閣僚の出席を待たずして、異例に属する質問を展開しましたことは、時間的考慮に基くところの寛大なるところの措置であることは勿論でありますが、これは一にかかつて政府の怠慢をおのずから暴露したものであることは論を待ちません。一体今晩は、如何なる晩であるか。当然閣僚は待機すべきである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)一人も出て来ることができなかつたことは、どういうわけであるかと我々はいぶからざるを得ない。ここに僅か二人の大臣が出ておるが、あとは一体病気でありますか。それとも全部検事局にでも出頭しているのでありますか。(拍手)憲法六十条の規定によりまして自然に予算が発効するという、前例を見ないこの事態、私があえて前例を見ないと申しまするのは、第七国会において前例ありと政府は強弁するのでありまするが、当時は占領軍下におけるところの異例の措置であつたことは忘れてはならない。今晩は、まさに自由党の統制のたがが緩み、緑風会は、その主張とする是々非々の立場に立つて正論を強行いたしましたが故に、結果的には遂に自然発効を見、政府の怠慢によつて参議院の審議権は奪われる結果を生んだことを我々は忘れてはならないのであります。(拍手)再開国会におきまして、緑風会の諸君に、現執行部である政府に大臣、次官を送るべきでないと主張する諸君があつた。その主張をそのままに通して、今日緑風会の健全なることは、参議院の審議権がかかる事態に立至つた際においても我々は喜ぶのでありまするけれども、結果的には誠に不幸なるこの事態というものは、一にかかつて与党自由党乃至吉田内閣の責任であることを銘記しなければなりません。(拍手)吉田内閣成立以来すでに六年、平和条約締結以来二年を経過したにかかわらず、外交においては民族の運命を担い、新日本の建設の気魄に欠け、秘密外交、屈辱外交、その都度外交に終始し、内政においては放漫政策に明け暮れて、今日、曾つて池田放言に現われた、貧乏人は麦を食えという思想を地で行つた予算を提案し、その予算も又三派修正なるものをいたし、而も今日においては入場税その他重要関係法案審議これに伴わずして、吉田内閣の失政は今日極まれりというべきであります。(拍手)而も不幸であつたことは参議院の青木委員長の態度であつた。併しながら、ここにおいて私はそれを責めることをいたしません。問題は、予算は法律の実体の上に見積られるものでありまするが故に、この前提をなす法律の実体が整わないとするならば、その予算はまさに空中楼閣と言わなければならない。政府は予算と共に、その実体であるところの諸法案を提出した以上、飽くまで予算の通過と同様に、その法案の通過のためには最善の努力を尽すべきであり、議院責任内閣においては、与党自由党の諸君も、これに必死の力をこめて協力しなければならないことは論を待つまでもないと思うのであります。(拍手)殊に今回の入場税関係法案が、単に歳入の問題だけでなぐ、地方財政計画或いは国家財政地方財政の調節という財政の根幹であつて、これが国会を通過しなければ財政の片手は折られたようなものであり、かかる事態において、当然責任政治の名におくならば、吉田内閣は、その進退を考慮すべき段階であると言わざるを得ないのであります。(拍手審議をしなかつたものは何ものであるかというがごとき、不特定な発言がなされておりますが、何が故に審議ができなかつたか、私はその原因を問題にしておることを何とぞ御銘記願いたい。(「お互いに良心を持て」と呼ぶ者あり)  第一、本院の予算委員会においても絶対多数の力を以て、その見通しなくては予算の採決はできないと決定したではないか。内閣はこれに対する努力は表面的になすがごとくして、実態は放棄して今日に至り、参議院はそのために、遂に審議権を奪われるに至つたことは挙げて諸君の責任であると言わなければならない。(拍手)議院内閣では、飽くまで責任政治を建前としなければならないと思うが、一体内閣総理大臣は、この段階に処して如何なる見解を持つか。これが私の質問の第一点でございます。(「総理大臣はいないぞ」と呼ぶ者あり)入場税移管が進捗しないというのは、一にかかつて自由党の党内事情であり、その統制が緩んだことを意味するのでありまするが、それに対して内閣総理大臣であると共に自由党の総裁である吉田総理の所見如何。又これに対する決意如何、これを私は承わらなければならないのであります。  又予算が二日間に亘つて空白となつたことは、挙げてこれは、野党の責任ではない。政府の政治力の弱さである。かような意味合いにおけるならば、当然暫定予算を以て、この二日間を処置するの用意がなければならなかつたはずであるが、これに対する吉田内閣の責任は一体如何であるか。この点を私は承わりたいと同時に、この予算空白の日の政府支払については、違法の疑いが相当にある。只今、内村君も指摘の通りでありまするけれども、この空白支払を法的な立場から一体蔵相は如何に考えておるか。この点を承わりたいのであります。  次に、補助金等の臨時特例に関する法律案でありまするが、本法律案は、本予算と重大なる関係を持つていたのであります。教科書の給与打切りの問題は、憲法二十六条二項に定める義務教育無償の原則に従つて政府がみずから提案したものであつたはずである、その教科書の給与を、当分の間停止するというがごとき規定を一つの大きな法律の枠の内において出し、而もこれが三月三十一日に衆議院を通過して本院に回付されておる。若しもこの補助金等の臨時特例に関する法律案が成立を本院においてしなかつた場合には、一体政治責任を吉田内閣は如何にとらんとするものであるか。蔵相においてはこの支払増に対して、予備金流用を以て弁ぜんとするものであるか。或いは他の立法措置によらんとするものであるか。その点私は明快なる答弁を要求するものであります。  而も次に、今回の入場税の国税移管は、今次予算の眼目をなすところの支柱の一つであつた。而も入場税による地方財政の調節は、義務教育国庫負担法が円滑に実施される前提をなしておりますることは、諸君御承知の通りであります。これが実現されなかつた場合において、国庫負担法の特例のごときものを出す用意ありや如何。この点を私は承わりたいと思うのであります。  その他、私は種々なる問題を持つものでありまするが、是非とも木村君をも登壇せしめ、その該博なる意見を聞きたいと存じまするので、私の質問は、以上を以て終るものであります。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  64. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 予算が憲法第六十条により自然発効を見るに至つたことは誠に遺憾であると仰せられるのはその通りでございまするけれども、併しこれは、どうも政府のほうといたしましては、全力を尽したが、御審議がなかつたので止むを得なかつたことと了承を願うほかないと存じております。  なお、予算と法案の通過に対して政府は力を尽さなかつたではないか。これは私ども、全力を尽しておることは申すまでもないことでございまするけれども、内閣は予算の作成や或いは提出権は持つておりまするけれども、国会のほうにこれを議決される御権限がございまするので、私どもとしては、ただただ全力を尽して皆様の御審議をお願いする以外になかつたのでございます。  なお、二十九年度予算が三月三十一日までに成立を見なかつたことは、先にも申上げました通り、誠に遺憾の次第に存じておるのでございまするが、政府としては、これがために四月一日又は二日に必要といたしまする暫定予算を編成して国会に提出御審議を願うことは、時間的にもその余裕がなくて、いたし方のない次第であつたということを御了承願うほかないのでございます。なお、それらの繰越金等による支出につきまして、適法であることは申すまでもございません。  なお、補助金等の臨時特例に関する法律案が通らなかつた場合云々というお話がありましたが、この法案の性質に鑑みまして、すでに衆議院でも通つておりまするし、参議院でも必ず通して頂けることと確信しておる次第でございます。  その他いろいろお尋ねがございましたが、前にお答えいたしたと同様でございます。(拍手)     —————————————
  65. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私はこの際、昭和二十九年度暫定予算に関する緊急質問の動議を提出いたします。
  66. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、只今の木村君の動議に賛成であります。
  67. 河井彌八

    議長河井彌八君) 木村君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 河井彌八

    議長河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて、これより発言を許します。木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  69. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は政府に対しまして、この二日間の予算の空白期間を生ぜしめた責任について質問いたしたいのであります。  只今大蔵大臣は、二つの理由を挙げて、この空白期間を生ぜしめたことに対して責任ないこと及びそれに対して措置をしたから影響はないということを言われました。併しながら大蔵大臣も御承知のように、この歳出は歳入予算と違いまして、歳入予算は、予算自体によつて税金を取るわけでありませんで、歳入については税法によつて取るのでありますが、歳出予算は、歳出の予算がなければ、一銭一厘といえどもこれは支出することができないのであります。ところが、四月一日から恩給及び公債利子その他病院の支払、刑務所の食費その他は、予算がなければ絶対に支出することができないのであります。先ほど大蔵大臣は、二十八年度の繰越金及び郵政官署の繰替払戻金、そういうものによつて国債の利払、恩給の支払等をやると言われましたが、これは明らかに財政法違反です。(「そうだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)そういうことによつて支障がないと言われましたが、成るほど払つて、支障はないかも知れませんが、明らかにこれは財政法違反です。大蔵大臣は何を根拠にしてこの利払及び恩給の支払を行なつたか。一応支障のなかつたことば結構ではあるが、併しながら財政法に違反しておることは明らかであります。何を根拠にして大蔵大臣は支払えるか。私はその論拠を明快にして頂きたい。重大なる財政法違反です。  更に又、これで政府が予算の空白期間を生ぜしめたことは二回であります。昭和二十五年度におきましても三日間予算の空白を生ぜしめましたが、このときには池田大蔵大臣が三日間の暫定予算を組んでGHQにOKをもらいに行きましたが、マーカツト少将にOKをもらうことができなかつた。そこで無理に三日間の空白を生ぜしめた後に、強引に国会に議決せしめた。従つてその当時は、占領下であり、一応暫定予算は組んだ。組んでOKをもらいに行つたが、このOKを得られなかつた事情にありますが、今度はそれとは全く事情が違うのです。而も暫定予算は前から組んではいけないということはないのです。これは財政法三十条によつて認められる。それはなぜ認められるかと言えば、憲法第六十条によつて参議院は予算を議決しないことも認められておるからこそ、財政法三十条によつて暫定予算の措置があるのです。(「わかつたか」と呼ぶ者あり)なぜこの措置政府は講じなかつたか。而も入場税法案及び入場譲与税法案は、最初から難航することはわかつていたのであり、而も途中からこんなに難航するに至つたのは、緒方副総理がいわゆる保守合同論を持ち出したから、日本自由党及び改進党がへそを曲げて、ますますこれが衆議院を通過することができなくなつたことは御承知の通りであります。(拍手従つてこの責任は副総理にもあるのであります。そのために衆議院通過が困難になつているのです。そういう事情からこれが困難になり出したのは、もう一週間ぐらい前のことなんです。十日ぐらい前のことなんです。当然三月三十一日にこれが上らないということは予想されておるのであります。なぜそのときに、暫定予算のことを考えないか。青木予算委員長に対して、暫定予算のことをなぜ考慮しないかということを私は質したのであります。そういうことになると思つたからあらかじめ質した。それに対して、何ら青木委員長も政府にこれを促すところがない。このようなことは、前古未曾有のことである。又このようなことに対して、参議院としては政府にこの責任を明らかにしなければならない。こんな醜態なことはないわけなんです。従つて私は政府に対して、何を根拠にして四月一日、二日間のこの支払を行なつたか。これは明らかに財政法違反、緒方副総理及び大蔵大臣の明確なる御答弁を要求いたします。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  70. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  私が保守合同論を申しましたことは、何ら入場税法の審議を妨げておりません。  以上、お答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  71. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 先ほども御答弁申上げたごとく、二十九年度に属する分は、これは新たに支出する債務負担行為でありますし、現金の支払が不能であるから、それは一切しておらん。それが不自由であつたということを先ほど申上げたのであります。ただ二十八年度分につきましては、四月一日、二日に来るものがあるが、それについては、繰越金でやるのは当然のことである。こう申上げた次第でありまして、何ら財政法に違反するものではございません。(拍手)    〔木村禧八郎君発言の許可を求む〕
  72. 河井彌八

    議長河井彌八君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  73. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 二十八年度の分について支払うのは当り前のことです。四月一日、二日の分を、若し支払われないとしたならば、支払わなかつた責任はどうするか。この点を再び伺います。    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  74. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。  恩給等のごとき郵便局の繰替で行くべきものは、これで処理いたしております。(「再質問々々々」「副総理答弁答弁」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  75. 河井彌八

    議長河井彌八君) 次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。(拍手)    午後十二時散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一厚生年金保険法案趣旨説明)  一、予算と予算に関係する法律案に関する緊急質問  一、一般予算と関係法律案との関連に関する政府の態度について緊急質問  一、昭和二十九年度暫定予算に関する緊急質問