○亀田得治君 私は
日本社会党を代表して
秘密保護法案に関し重要な点について
質問をいたしたいと存じます。私の
質問は十一点に亘るのでありますか、そのおのおのについて
一つ項目別に明確な御
答弁をお願いしたい。限られた時間でありますから、できるだけ私のほうの
意見は避けまして進めたいと思いますので、さよう御了承願います。そこで第一の点でありますが、この法律は
日本の憲法に違反しておる。私はこの点について確かめたいのであります。現在吉田内閣が進めておるいわゆる自衛力増強の
方針、これは明らかに忍法を事実上破壊して行く。こういうことは今日社会の常識にな
つております。そういう憲法上許されないような組織、この保安隊、自衛隊、こういうものに持たすところの装備品、その
秘密を保護する、憲法上認められないものに持たす道具の
秘密を保護する、こういうことは当然憲法上許されない(
拍手)これをどう
考えられるか。私はこの点に関して
一つ、現行刑法との規定の関連において
政府の見解を更に具体的に聞いてみたい。それは
昭和二十二年の七月に刑法が改正されるまで、いわゆる古い刑法ですね、この古い刑法の第三章には、外患に関する非、これによりますと、第八十一条から第八十九条に至るまでに、軍事上の
機密に関する規定、その他詳細な条項か設けてあります。要するにこれらの規定は、
日本の外国に対する組織的抵抗力、即ち軍隊があり、それが外国と交戦することのあることを前提とし、その組織を保護するために設けられた規定であることは明白である。ところが平和憲法が制定され、
日本は戦争と軍隊を放棄すると、こういうことになりました結果、刑法の外患に関する罪の規定が再
検討の必要に迫られ、現在のように変えられて僅か刑法の八十一条、八十二条、この二カ条に整理されてしま
つた。で、この間の事情は、
昭和二十二年七月に
政府が刑法の一部改正を国会に提案をしたその提案
理由の
説明或いはその際交わされたところの質疑応答を議事録によ
つて調べてみましても明白であります。即ち保安隊は憲法を中心とする
日本の法律体系の中にあ
つては認めることのできないものにな
つておるのです、すでに。それは刑法という従来持
つていたこの法律の保護ですね、この保護の枠内から、すでに放り出されてしま
つておる。憲法第九条の抽象的な論議をしておると話が少しぼやけるのですが、すでに法律の保護から具体的に刑法の改正によ
つて、これは否定されておるわけなんです。この点を一体どう
考えておるか、こういうのです。憲法に合わない非合法的な組織だ、これは。こういうものに持たすところの兵器の
秘密、こういうものを保護する法律というものは、例えて言うならば、強盗の刃物を擁護する法律を作るようなものなんです。(
拍手)私はこういう意味で、この
秘密保護法というものは、二重に我が平和憲法というものを犯すものだと
考えておるのでございます。即ち私はこの点について
政府に聞きたいことは、憲法第九条の三百代言的な解釈ではない。憲法第九条の延長として、刑法などの保護を剥奪され、未だにその保護を回復しておらない組織ですね、そういう組織のための
秘密保護法というものが、憲法上一体許されるものかどうかということを、刑法の外患に関する規定の改正過程との関連において、自信ある
答弁をお願いしたい。これは
基本的な問題でありますから、
一つ緒方副
総理に御
答弁をお願いしたい。若し少し不明確な点があれば、ほかの
大臣によ
つて補足願
つても結構であります。
それから第二の点は、この法律は
アメリカによる
日本の主権の侵害にならないか、この点でございます。この法律は、MSA協定第三条第一項の「
秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、両
政府の間で合意する
秘密保持の
措置を執るものとする」、この規定から由来するものでありますが、これによりますと、
日本がどのような法律を作るかということは、結局
アメリカの同意を得なければならないと、法文上、協定の字句
通りに解釈してもそうなるのでございます。ところが更にMSA協定附属書Bによりますと、「合衆国において定められている
秘密保護の等級と同等のものを
確保する」と、こういうふうにな
つてありまするから、結局は
日本の選択の自由というものは、この附属書によりまして完全に奪われておるのでございます。即ちMSA協定の本文では、如何にも日米両者は合意で
決定するかの、ごとく装いながら、実際は附属書によりまして、人の目につかないように、
アメリカの法律がそのまま
日本の中に入
つて来る、こういうことにな
つておるのでございます。(
拍手)従
つて例えば
アメリカの
秘密保護法が改正される、そういうことになれば、当然
日本の法律も変えて行かなければならない。私はこれは
日本の主権を侵害するものだ、こう
考えておる。現在
アメリカから
援助を受けておる国はたくさんあります。それらの国々も同じような法律をも
つておる、こう言われるのでありますが、それらの国は、飽くまでもその国独自の
立場で立法しておる。ただ
アメリカから来た兵器が、その国の
秘密と一緒にな
つて保護されるということが、結果的にこれが出ておるに過ぎない。例えばこれは少し古い例でありますが、戦前の満州国ですね、これは
世界の人が
日本の傀儡政権、こうみなしてお
つた。そういう満州国の軍機保護法、これを見ましても、全文二十カ条から成
つておるのでありますが、その立法の方式は飽くまでも満州国自身の
立場で立案されておる。そうしてただ最後の第二十条目にですね、
日本から
援助されておる兵器の
秘密については、満州国自身の
秘密の中の一部として同様に保護する。こういうふうに継ぎ足しにこれを取扱
つておるのに過ぎない。私はいやしくも
日本が独立国である。こういうことならば、これらの国々と少くとも同じような方式を私はとるべきであろうと
考えておる。
日本が
援助を受けた
援助を受けたと言いますが、
援助を受けてしまえば、受けた装備というものは、飽くまで
日本独自の
立場で処理して行くべきだ。
日本のほうからその
秘密を保護する。そういう立法をとることもありましようけれ
ども、そして又その反射的な結果として、
アメリカから渡された
秘密が、
日本において保護される。こういうことはありましても、今日
政府がや
つておるような
アメリカの法律が直ちに
日本に入
つて来るようなのとは、およそ私は
立場が違うように
考えるのでございます。従いまして
只今明確にな
つておるようなこの立法の仕方、これは明らかに我々として、独立国の体面を顧みない、いわゆる従属国の法律、こういうふうに
考えるのでありますが、
政府はどうお
考えになりますか。(
拍手)今申上げましたように、満州国の軍機保護法、今申上げた
通りこの提案されておる
秘密保護法、この二つを公平な、冷静な法律家が批判した場合に、恐らくその法律家は、
日本という国はあの満州国以上に
アメリカの傀儡政権ではないか。こういうふうに法律の面からだけ
考えたら感ずるだろうと思います。緒方副
総理はこの点どういうふうにお
考えになりますか。率直なる御
意見を聞かして頂きたい。私は吉田内閣が、平生から
アメリカ一辺倒と言われると非常に憤慨されるのでありますが、こういう立法の具体的事例を通じて、私
どもはそういう批判を実はしておる。この点、どうお
考えになりますか。
はつきりとした御
答弁を副
総理より直接お願いしたいと思います。
それから第三に、本法には抽象的で極めて不明確な言葉がたくさんございます。これらの点につきましては、先ほど長谷山議員或いは中山議員から、いろいろ具体的に質疑がありました。私も質すべき点がたくさんあるのでございますが、それは
一つ委員会の審議に譲ることにいたしたいと思いましてただ一点お聞きいたしたいことは、今こういう法律を
政府が提案されておりまするが、一体、現在
日本が
アメリカから供与をされておるところの装備品、武器、兵器、この中でこの法律に該当すると思われるようなそういう
秘密、これがどれだけあるのか。現在はまだこの法律が実行されておらないわけですから、ここで当然あなたは答える義務がある。これを私は明確にしてもらいたい。私はそういうものが余りないと現在聞いておるのでありまするが、具体的にそのことが事実かどうか。法律というものは、飽くまでも、現在法律で取締らなければならないたくさんのものが出て来て、それに対する問題を処理して行くのが立法の正しいやり方なんです。少しその線からそれたような立法だと思いまするので、その点を
一つ具体的にお聞きしたいと思うのでございます。第四の点は、本法の第二条によりますと、
国民に対して、
秘密事項を認識できるようにするために、標記などの
措置をとることにな
つておりますが、その具体的な
方法は政令に譲られておるのであります。実際問題として、何が
秘密にな
つておるかということは、
国民は一般に知らないのでありますから、
国民がうつかり本法の違反に問われることを防止するためには、これは適当な
措置であると私も思います。併し
秘密の性質上、その
秘密が暴露されるような
方法を採用することもできないのでありますから、この標記などの
措置を適切に行うということはなかなかむずかしい問題を伴うのであります。併し如何にこれがむずかしい問題であるといたしましても、その
措置が不適切でありますると、国家も
国民も非常な迷惑をするのでありまして、従いまして私はこの法律をここに出される以上、如何なる一体標記等の
措置を政令案として
考えておられるのか、その大綱をお示し願いたいと思うのであります。
第五点は、本法第一条の防衛
秘密と、第二条の、今申上げた標記等の
措置との
関係であります。即ち第一条の防衛
秘密でありますが、それに対して
政府が標記などの
措置をしなか
つた、或いは又その
措置が不適切であ
つた、そういうことのために
秘密であることを知らなか
つた。そういう者についても違反の
責任が問われるものであるかどうかということをお聞きしたい。
第六にお尋ねしたいことは、本法第五条の第二項の教唆、これは独立犯罪として規定されておるのでありますが、なぜこのような必要があるか。これを明確にしてもらいたい。
我が国の刑罰の通則から言いまするならば、教唆された者が犯罪を実行することによ
つて初めて教唆犯というものが成立するのです。被教唆者が実行もしておらないのに教唆者を罰して行くと、これはよし悪しは別といたしまして、社会の犯罪常識から見て苛酷過ぎると、こういうことで
日本の刑法というものはできておるのです。これは戦前の軍機保護法或いは悪法の代名詞と言われた治安維持法、そういうところを見ても、教唆犯に関しては、教唆の従属性というものが守られて来ていたのです。ただ戦争が非常に激烈にな
つた昭和十六年、そのときに立法されました国防保安法、ここで初めて独立教唆犯というものが認められたのでありますが、これは当時の特殊な切迫した事情に基く例外的な現象と私
どもは
考えております。今日の情勢は、誰が見ても常識的にそんなに切迫しておる情勢ではございません。然るに
政府は先に破防法の制定のときに、独立教唆犯というものを例外的にここへ押し込んで来た。これを一旦やりますと、その後
政府は社会的に批判の的になるような法律に限
つて、この独立教唆犯というものを挿入する努力をしておるのでありまするが、これは私
どもの従来の犯罪に対する
考え方から言うならば、非常に間違
つておると思うのでございます。私は社会的にその立法が正しいかどうか。そういうことが問題になるような対象、そういう対象が、なぜ一般の破廉恥犯とか、そういう
人たちよりも不利益な取扱を受けなければならないのか。これは納得ができない。その理論的な根拠と必要性ということを具体的に明確にしてもらいたい。
第七は、本法の濫用の問題でございます。私は、
政府がこの法律は濫用しないようにすると、先ほどから各
質問者に対して答えておりますが、そういう抽象的な言い方ではなく、濫用しないものは、しないだけの具体的な
措置というものが出て来なければならない。それをお聞きしたい。どういうことを一体
考えておるのか。戦前私
どもは言論が圧迫された。そういう経験をたくさん持
つておる。そういう経験を調べてこういう法律を作る場合には、こうすべきだと、こういうことを具体的に何か準備をされておるかどうか。この点をお聞きしたいのであります。
私はその点に関して更に
一つ質したいことは、
政府が最近提出されるいろいろな法律を見ましても、法律の
最初にその法律の目的、これを書いておられる場合が非常に多い。或いは又非常に論議のある法律につきましては、間違
つた法律の扱いがなされないようにする、そういう意味の条項を挿入されておる場合が極めて多い。ところがこの
秘密保護法を見ますると、そういうことが全然ない。これは一体どこを狙
つておるのか。どこに一体この法律の重点があるのか。そういうことが
一つもここでは現われておらない。私はこういう白紙の状態に出されておる法律というものは、法律の体裁そのものからい
つても、極めてこれは濫用の虞れがあるものであると
考えておる。(
拍手)なぜそういう目的なり濫用防止に対する
注意的な規定、これを入れなか
つたか。入れても少しも法律が不体裁になることはないでしよう。その点と、それから本当に濫用しないというならば、それに対する如何なる具体的な
措置を
考えておるのか、これをお聞きする次第であります。
それから次に第八に、
政府は将来この法律を
拡大する意図、私はこれは確かにあると思
つておる。この法律の作成の過程を私
どもは見ておりましても、木村長官は、広く防衛
秘密一般を保護したい。こういう
立場から最低、防衛出動時における作戦計画、部隊行動、通信内容、暗号などの防衛
秘密をも織込んだものにしよう、そういうことを主張された。ところがそういうことでは世論の反撃が激しくなるだろうということで、一時的にあなたはこれを引つこめておるに過ぎない。先ほどの質疑応答を聞いておりましても、当分は、当分といいますか、現在はこれで行きまするが、将来については
考えなければならない。折角
研究中だと言われておりますが、私は、あなたはここには出されておりませんが、すでに法案を持
つておると思う。
通りやすいようなやり方で、一旦この法律を通しておいて、その改正という形であなたは必ず私は出して来ると思う。そういうことを一体あなたはされるかどうか。されないのであれば、されないということをここで明確に、この
最初の審議に当
つて明らかにしてもらいたい。(
拍手)
第九の問題は、検閲制度復活の問題であります。これもほかのかたから質疑がありましたから、私は省略をしてもいいのでございまするが、併しながら、先ほどの
答弁では
政府側は、そういう意図はないと、こういうことを言
つておりまするが、併し私
どもが無視することのできない
一つの事実は、去る三月二十四日の衆議院の外務
委員会で、
政府側山田保安局長、福永官房長官、こういう人の
答弁によりますと、事前の検閲は行わないが事後の
調査などと、極めて慎重に
調査などと、などはあり得る旨を称しておるのであります。私はこれは非常に重大なやはり
発言たと思います。事後
調査と、こういうことが始まれば、出版業者は、あとから調べられるくらいなら、
一つ始めから間違いないように、ということに今度は事前の打合せになることはきま
つておる。事前の打合せになれば、これは検閲制度の一歩手前である。事実上検閲制度に入
つておる。こういうことは断定できるじやないですか。この二十四日の衆議院の外務
委員会で、福永官房長官、山田保安局長、山田局長は木村長官の部下ですね、案外部下なんかが、そういう
委員会なんかで本当のことを言うことがある、この部下の山田局長が言
つたことを、あなたはどうお
考えになるか、ここで明確に
責任者として
答弁してもらいたい。本当にそういう事後
調査ということを
考えておるのか。
考えておるとしたら、その事後
調査をあなたはどういう
方法でやるつもりなのか。そうして又たとえ事後
調査まではや
つても、絶対に検閲制度とい
つたようなことまで発展させないから御安心願いたい。そういう
考えなのか。これを
一つはつきりとお答えを願いたい。
最後に、
秘密裁判の問題であります。私、これはいろいろお尋ねしたいものを持
つておるのでありますが、これも先ほどからいろいろ質疑があ
つたから省略をいたします。ただこれは犬養法務
大臣に聞きたいのでありますが、先ほ
ども政府側の
答弁によりますると、違反犯罪行為であ
つても公開されたものは
秘密でないと、こう言われておる。そうすれば、憲法八十二条によ
つて本件に関する裁判というものが非公開になることはあり得ない。あなたは先ほどの
答弁によりまして、それは裁判所が
決定すべきもの、こういうことを繰返して言われておる。裁判所が
決定すべきものではないでしよう。法律を作る人が、犯罪行為であ
つても一旦公けにな
つたものは、もう
秘密性はないのだと、こういうふうに
考えておれば、裁判所もそれに従わなければなら、ないでしよう。裁判所が判断するのはそういうことではないでしよう。その法律の解釈がきま
つてきま
つた法律の適用だけの問題ですよ。だから私は、本当にあなたが
秘密裁判というようなことを
考えておらないというのであれば、この場所でですね、裁判所が
決定すべきものとい
つたような、何かあとに問題を残すような言い方でなく、
はつきりと、この裁判は一切公開裁判であるということを言明できると思う、この点を重ねて
一つ確めたいと思います。もう
一つ問題があるのでございますが、これは大分重複している問題であるから、省略いたします。
以上、相当たくさんなことについて項目的にお尋ねいたしましたが、御
答弁によりまして、時間の範囲内で再
質問をいたしたいと存じます。(
拍手)
[
国務大臣緒方竹虎君
登壇、
拍手]