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1954-03-15 第19回国会 参議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十五日(月曜日)    午前十時四十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十八号   昭和二十九年三月十五日    午前十時開議  第一 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案趣旨説明)  第二 交通事件即決裁判手続法案内閣提出)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    議長河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河井彌八

    議長河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案趣旨説明)、  国会法第五十六条の二の規定により、本案につき内閣からその趣旨説明を求めます。塚田国務大臣。    〔国務大臣塚田十一郎登壇拍手
  4. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 只今議題となりました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案提案理由について御説明申上げます。御承知のように、戦時から戦後に引続き複雑厖大となつて参りました行政簡素化し、我が国情にふさわしい行政体制を樹立いたしますことは、政府が常に意を用いて参つたところでありまして、すでに数回に亘り行政整理を断行して参つたのでありますが、なお現下の急務である自立経済を達成いたしますためには、できる限り行政費節約を行うと共に、行政機構合理化し、行政事務簡素化し、且つ事務能率向上を図ることが必要でありますので、昨年来内閣臨時行政改革本部を設け、鋭意これにつき検討を加えて参つたのでありますが、ここに各省各庁の定員につき、その事務実情に応じて、人員をできるだけ大幅に縮減することといたしました。  今回提案いたしました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案は、右の趣旨に則り、警察制度改正に伴う定員縮減をも併せて行政機関職員定員を約六万人削減いたしますと共に、昭和二十九年度における各省各庁の事業予定計画に即応して、必要最小限度増員を認め、以て行政機関全般定員適正化を図ろうとするものであります。併しながら我が国経済の現状を考えますと、一挙に大量の整理を行いますことは如何かと考えられますので、退職者に対しては一定期間臨時待命制度を設け、又各省各庁の事務実情に応じ、整理期間に或る程度余裕を与えることにより、この人員整理を円滑に行うことといたしておるのであります。  次に、法案内容について申上げますれば、第一に、今回の改正によりまして、第二条第一項の表におきまして、各行政機関職員定員の合計を現在の六十九万四千三百四十七人から六十三万三千四十九人に縮減し、差引六万千二百九十八人を減ずることといたしました。この内容の詳細につきましては、それぞれ主管省から御説明申上げますが、総括的に申しますならば、警察制度改正に伴う縮減のほかは、主として各種行政事務簡素合理化に伴う縮減が主なものでありまして、昭和二十九年度の事業予定計画のうち、外務省の在外公館新設に伴う増五十六人、大蔵省入場税国税移管及び奢侈税新設に伴う増千百五十人、文部省学年進行に伴う増三百九十九人、厚生省らい療養所及び精神、頭部療養所増床に伴う増百六十一人、農林省の保安林整備対策に伴う増百人、運輸省の海上保安大学校の学年進行に伴う増八十人、郵政省の郵便及び電気通信業務等の増大に伴う増三千九百九十二人、建設省の営繕関係職員の増百三十人等、必要最小限度増員を差引いたものであります。なお人事院につきましては、国家公務員法の一部を改正する法律によつて国家人事委員会となりますので、この改正案におきましても人事院国家人事委員会として改めた上、その新定員を定めております。  第二に、大蔵省職員のうち、保税倉庫等特殊の場所に派出せられる税関特派職員につきましては、その特殊性に鑑み、その定員は政令で定めることといたしました。  第三に、今回の改正は、警察法改正を予定いたしておりますが、警察法改正法律施行される日の前日までの間は、現在の国家地方警察が存続いたしますので、この改正法案施行さ、れてから警察法施行の日の前日までの間における国家地方警察に関する必要な経過措置並び警察庁における臨時待命特例等について附則規定いたしました。  第四に、調達庁文部省及び厚生省におきまして、事務縮小相当期間を必要とするものにつきましては、それぞれの事情考慮の上、必要な員数定員一定期間を限り、附則で経過的に新定員に附加して認めることといたしました。  第五に、定員縮小に伴いまして附則で十五カ月を限り、新定員を超える員数職員定員の外に置くことといたしましたが、これは昭和二十九年度中において人員整理を行うことを原則といたしますが、例外として事務特殊性により、来年度に跨がる場合を考慮いたし、実人員整理を円滑に実施するための措置であります。  第六に、先に申上げましたように、今回の人員整理におきましては、このたびの法律改正に伴い、定員又は配置定政を超えることとなる職員で、配置転換が困難な事情にあるものについて必要がある場合に臨時待命制度を設けたのでありますが、この臨時待命を承認し、又はこれを命ずることのできる期間、その身分と職務との関係臨時待命期間、その効力、臨時待合命職員の受けるべき給与及び恩給法上の取扱等につきまして、附則で必要な規定を設けると共に、臨時待命職員定員外とする旨を規定いたしました。  第七に、国立大学の学長、教員及び部局長にその意に反して臨時待命を行う場合には、教育公務員特例法第六条に規定する制限的規定適用はないものであることを明らかにしますと共に、郵政、国有林野、造幣、印刷、アルコール専売のいわゆる政府五現業の職員労働組合を結成し、又は加入できない職員臨時待命なつた場合には、主として給与関係から臨時待命期間中でも組合を結成し、又は加入できないことといたしました。  第八に、会計検査院及び法制局についても、会計検査院においては予算の減少に伴い、法制局においては法制局設置法規定する定員縮小に伴い、配置定数を超えることとなる職員配置転換が困難な事情にあるものについては、行政機関に準じて臨時待命制度を設けることといたしました。  第九に、このたびの人員整理におきましては、定員法に定める職員のほかに、地方自治法附則第八条に規定するいわゆる地方事務官及び技官についても整理を行うことといたし、又警察庁が発足いたしました場合に、国家公務員である警察職員都道府県警察に勤務するものについても整理を行うことといたしましたが、以上はいずれも国家公務員でありますので、これらの職員に対しても臨時待命を行い得ることといたし、会計検査院及び法制局と同様の規定を設けることといたしました。  以上が本改正法案の主要な内容でありますが、これらはいずれも現下我が国力に相応する適正な行政機関規模を定め、人員整理の円滑な実施を確保いたしますと共に、各省各庁の事業予定計画を確保するために必要な措置であります。  何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願い申上げます。(拍手
  5. 河井彌八

    議長河井彌八君) 只今趣旨説明に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。大谷贇雄君。    〔大谷贇雄君登壇拍手
  6. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 私は自由党を代表いたしまして、只今上程せられました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、二、三政府の所見を質したいと思うものでございます。  我が国現下国情は、政府国民も共々に、真にあらゆる面におきまして勤倹力行経済自立を達成し、国家再建の実を挙げなければならん重大なときでございます、殊に財政の圧縮を緊要といたしまする今日、中央地方を通じて行政規模徹底的に革新し、その簡素合理化を図り、事務能率増進の実を挙げまして、以て国費の節減をなし、国民負担を軽からしめますことが国民全体の強い要望であり、又世論の動向であります。吉田内閣が累次に亘つて行政機構改革をなし、行政整理を行い来たりましたことは、この世論に応えんとしたためであり、心ある国民のこれを認むるところであります。  さて、今回政府から提案されました本法案は、いずれ担当委員会におきまして、周到詳細に亘つて審議のあることと存じまするので、私は先ず大局的な問題につきまして質疑を申上げたいのであります。  先ず第一にお伺いをいたしたい点は、只今も御説明にございましたように、戦時中及び戦後を通じまして、行政規模は非常な膨脹をしておると思うのであります。勿論新らしい憲法下におきまして、社会福祉というような面におきまして、或る程度の拡大は止むを得ないにいたしましても、占領行政の強い影響によりまして、国力以上の過大な行政規模膨脹をしておると思うが、政府は如何にお考えでありますか。又従つて国家公務員の数におきましても、戦前に比しまして、両度の整理にもかかわらず、非常な膨脹をしておると思うのでありますが、これに対して如何にお考えでありますか。今日中小商工業者などは、非常な苦心をいたし、その業態が誠に危殆に瀕しておるような状態にあるのにもかかわらず、今日役人の数は、国民十四人に一人というようなことを言われておりますが、今回の定員法改正によりまして人員整理が行われますが、これは全く徹底を欠いておる感じがあるのでありますが、政府はこれを以て足れりと思つておられるのであるかどうか。なお、この際伺つておきたいことは、一体今日の我が国の実力において、如何なる程度行政規模が適正であり、且つ能率的形態であるとお考えになつておいでになるか。従つて又どれくらいの定員が妥当であるか。この基本的な問題につきまして、お考えを承わつておきたいのであります。  質問の第二は、行政改革に対しまする政府信念とその態度であります。行政改革はいつの時代におきましても、どの内閣におきましても、生まやさしい事業ではございません。従つてそのことを断行せんとしまするためには、よほどの確固たる信念を持たなければ到底でき得ることではないのであります。政府は昨年八月以来、臨時行政改革本部を設けまして、鋭意調査研究を進め、その改正を企図しておられることは多とするのであるが、ともしますると終戦後再度に亘りまする改革においても、最初のかけ声に比べて中途半端な感を抱かしめ、龍頭蛇尾印象国民に与える結果となり勝ちであります。今回の整理におきましても、六万余名のうち半数の三万名は、警察制度改正による余剰人員を含めておりまして、これを加えておるのでありまするから、一般職国家公務員定員の四%余の整理率に過ぎないのであります。こういう非難を聞くのでありますが、こういう徹底を欠く憾みがありまするのは、政府当局信念が後退しておる。こういう感じを与えるのであります。行政整理の声が挙りますれば、その対象となる官衙、職員が猛然たる反撃をし、必死の抵抗をいたすことはこれ当然であります。特定利益一般利益より強いという言葉がございますが、行政整理は、一般国民の強い要望ではありまするけれども、特定利益立場にありまするものは、なお一層強い意気込みを示すのであります。従つて国民全体の福祉立場から一般利益を図らんといたしまする政府が、それ以上の確固不動信念を持たずしては、この難事業は成就するものとは思えんのであります。それと共に、行政各部門に対しまして率直に肚を割つて真の協力を求める誠意と努力を惜んでは、事の成就は期しがたいものと思うのであります。行政改革を断行しようとする政府首脳部、殊にその本部長としての緒方副総理の所信を伺いたいのであります。  第三に、今回の整理におきましては、定員縮減の基幹ともいうべき行政機構簡素化ということにつきましては、僅かに警察制度改正に伴う定員縮減を挙げているほかは、人事院を総理府の外局としての配置替をするという程度でありますが、その他の各省各庁の機構簡素化による人員縮減ということは考えておらんのでありますか。又若し政府が引続いて相当数人員整理を更に行うといたしまするならば、只今申しました定員縮減基本的措置ともいうべき機構簡素化による人員縮減を目途とするものか。或いは専ら行政事務整理によつて縮減を図ろうとするものか。或いは事務能率増進によつて人員縮減を図ろうとするものか。政府はいずれの縮減方策を重点として考えて行こうとするのかをお示し願いたいのであります。  第四に、今回の行政整理は見受けまするところ、我が国の現在極めて至難な経済状態を勘案をいたしまして、徒らに大量の整理を強行することを避けて、各省各庁の事務実情に応じ、又整理期間相当余裕を設け、又行政整理事務を円滑に行おうとする点につきましてはよく了承をいたすのでありますが、人員整理の場合最も大きな問題は、申すまでもなく整理をされる人たち救済対策であります。このことが妥当に行われんければ、却つて人員整理の意義を失い、徒らに人心の動揺を惹き起して、怨嗟不平の声を聞くことになる虞れがありますが、政府はこれに対しまして万全の策を講じておられるか。次の諸点を明らかにせられたいと思います。即ち先に退職者に対しましては、特別待命制度実施をせられましたが、その効果はどうであつたか。又今回の臨時待命制度は前の制度に比べまして、その条件が悪くなつておるのでありますが、このようなことで、果してその効果を期待できるかどうか。又被整理者に対しまする就職斡旋等十分なる失業対策を立てて、整理される者の不安をなからしめんければならんと思いますが、これらの点につきまして、政府は如何なる対策を持つておいでになりますか。  第五に、政府は本法案の成立によりまして、行政機関職員定員プラス・マイナスしました結果、結局約六万人を削減しようとしておるのでありますが、これによつて政府は、昭和二十九年度又は平年度におきまして、どれだけの国費節約額を予定しておるのでありますか。退職者に対する退職金並びに臨時待命制度適用などによりまして、差引き国庫負担軽減となる額はどれほど見込まれておるのでありますか。臨時待命制度等退職者に対する措置が一応是なりといたしましても、その結果国庫負担の面におきまして、さほどプラスがないといたしまするならば、このような措置によりまして、ややともすれば信頼すべき有能なる公務員競つて民間側に転出するというような現象を誘引する結果となりまするならば、一般公務員質的低下を招来することとなり、角を矯めて牛を殺すの愚を来たすようなことにはならないかどうか。この際定員縮減国費節約関係につきまして、明確なる御答弁を得たいと思うのであります。  最後に、政府昭和二十四年の第一次整理並びに昭和二十六年、二十七年度の第二次整理によりまして、相当公務員縮減を図り、以て国費節約努力をして参りました点は、国民もこれを認めておるところでありますが、その半面には、毎国会において行政整理の声を開くということは、多くの忠実にして勤勉なる公務員一般に対しまして、好ましからざる精神的な動揺を与え、これがために一般公務員公務処理に対する熱意を著しく冷却せしめ、かたがた綱紀の弛緩を招来するというような芳しからぬ結果を招きはしないか。再思三省すべきであると思うのであまりして、親切にして明朗、且つ能率的な行政事務運営こそ、国民全体のひとしく望むところであろうと思うものでございます。従つて若し政府が、今後引続いて行政機構徹底的簡素化を図る必要を認め、これを実行する考えであるといたしまするならば、国民龍頭蛇尾印象を与えたり、或いは官僚任せの実効の挙らない方法ではなく、政府はよろしくこの際、行政改革法を立法し、例えばアメリカにおけるフーバー委員会のような強力周到なる我が国行政機構根本的改革に対しまする審議機関を設け、且つこれに十分なる時日を与えて、真に我が国力に適合する全く新らしい行政機構を立案樹立いたしますると共に、国情相当する適正なる公務員定員を定め、以て国民の熱烈なる要望に応えるべきであろうと思うのであります。政府において果してその決意ありや否や、この際、政府所信を承わりたいと思うものでございます。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  7. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えいたします。  政府我が国行政規模はどの程度が適当であると考えておるかという御質問でありますが、行政規模国力と調和のとれたものでなければならないということは、只今大谷さんの御指摘の通りであります。ただ行政規模の大きさを数量的に表現いたしますることはむずかしいのでありまするが、我が国自主独立体制を確立いたしますると共に、進んで国力の回復を増進するためには、一層重点的且つ能率的な行政が行われることが必要であると考えております。その意味におきまして、機構人員及び運営の各方面におきまして、常に簡素、合理化に努める必要があると考えておるものでありまして、今回の行政整理も又この線に沿うて検討した結果のつもりであります。  それから次に、行政機構改革に関する政府所信はどうだという御質問でありますが、我が国にふさわしい簡素且つ能率的で、而も国情に応ずる民主的な行政制度を確立し、併せて国民負担軽減を図ることが行政改革に対する政府考え方であります。今回の行政機構改革は、まだ政府といたしましても十分なものとは考えておりません。これにつきましては、引続き行政機構改革本部を存置したまま更に検討を加えて参るつもりでございます。  それから、行政機構改革は、官僚だけを集めても何もできない。フーバー委員会のようなものを作る考えはないかという御質疑でありますが、行政改革につきましては、政府におきましても絶えずその推進に努めておりますことは御了承通りでありまして、米国のフーバー委員会のような構想も一応の参考として考慮に値いするとは考えておりまするが、アメリカ我が国とは国情も異なりまするので、直ちにフーバー委員会方式等我が国に採用することが適当であるかどうかということは、検討余地があるように考えております。従いまして政府としては、従来の行政機構に関する諸審議会方式運営につきまして、更に検討を加え、今後における運用の改善合理化に意を用いるようにいたしたい。かように考えております。  爾来の御質疑に対しましては、所管大臣からお答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎登壇拍手
  8. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 最初に、戦時中、戦後を通じてどれくらい行政規模厖大なつたかということを簡単に数字を以て申上げます。  先ず機構の面でございますが、昭和七年の機構と現在の機構とを比較いたして見ますると、省の数は昭和七年に十一省、但しこれは陸海軍は除いております、現在は一府十一省ということになつておるわけであります。外局が十九であつたものが二十九に増加いたしております。内局が六十四であつたものが七十五になつております。部と称するものが四十三ありましたのが八十九になつております。課は非常に殖えておりまして、三百六十七課が現在九百二十七裸ということになつておる状態であります。従つてこれで見ましても、この局部裸あたりに、かなり整理をすべきものがあるのではないかという考え方をしておるわけであります。  それから人員の数でありますが、この比較は非常に困難なのでありますけれども、大体現在の人員を頭に置き、それに対比する昭和七年の人員を見て参りますと、今の状態は二倍八分から約三倍程度まで厖大になつておるということが申上げられると思います。  なおこの機会に、ついでに国民に対して官公吏の数がどのくらいおるか。数字を簡単に申上げますと、中央地方を通じまして全公務員は、日本の場合には国民四十七人に対して一人の割合になつておりますが、これは例えばアメリカでは四十三人に対して一人、イギリスでは三十八人に対して一人、フランスは二十三人に対して一人というような数字になつてつて、この数字から見ます限りにおいては、必ずしも日本のこの公務員の数が非常に他の国と比例して多いということではないように感じられるわけであります。ただ国力と比較して、やはり私どもはもう少し整理する余地があると考えておるわけであります。  それから「今度の整理がどういうことを頭においてやつたか。機構事務整理か。それとも能率を上げるということか」ということでありますが、勿論全部が今度の整理の要素の中に入つておるわけであります。併し当初の構想では、機構を簡素にする。それから事務整理するということで整理人員を出して来よう。こういう構想で行きましたのでありますが、機構の面が非常な困難がありまして、まだ完全な結論に到達いたしておりません。従つて今度の整理には、機構部分は極く断片的に小部分のものが取り上げられておるだけでありまして、従つて機構改革に伴う監理は、今後機構改革伴つて、新らしくこれに追加されるべきものと考えておるわけであります。それからして事務整理でありますが、これも事務整理は、本来の考え方は、今日の国家としても国がやらないでいいものは、なるべくはずしてしまおうということを頭において、いろいろ検討いたしたのでありますが、なかなかこれも十分に行われておりません。併しその面は、一つ法令整理の面で相当程度、近く結論が得られるところまで進んでおります。それからして法令に根拠を持ちません事務でありましても、いわゆる内部管理事務と称するもの、例えば人事事務会計事務庶務事務、それから統計などの事務にも、非常にたくさんの部局が、別別の目的から同じ統計民間に要求をいたしましたり、又下の部局に要求したりする弊が非常にあると考えられますので、こういう面でかなり事務整理ができるのじやないかという面を検討いたしております。  それから事務処理方式合理化の点でありますが、この一つといたしまして、なるべく出先機関権限を委譲する。御承知のように、今日非常に中央に陳情に出て来る弊が多いのでありますが、これは出先機関十分権限を持つておりませんために、中央まで来ないと問題が片付かないということが非常に影響しておると考えられますので、権限をなるべく最大限に国の出先機関に委譲して、出先事務整理するということによつて中央人員縮減ができるのじやないか。それから中央事務運営の工合を見ておりますと、非常に一つの事柄に各省間又各部局間で、お互いに共管をしておりまして、一つの書類に非常にたくさんの判を捺さないと、最終決裁に行かないという弊があるということは、極めて通俗に指摘されておりますので、そういう面の責任の局部課をはつきして、なるべくこの関連のものを少くして能率を上げるということにしたらいいのじやないか。こういうように考えておる面もあります。それからそのほかに一般執務能率向上も勿論期待をいたしておるのでありまして、これは実はじつと外から見ておつたのでは、どこに無駄があるかはよくわからないのでありますが、併し全体として考えれば、やはり現在の公務員の数に相当の無駄があるということは、内部的にも又外から見ても、これは常識化しておるのでありますからしてこれはそれぞれの担当省の御協力を得てどこに無駄があるということを十分検討して頂いて更にそこから能率を上げて行つて頂く。なお、その面におきましては、人間をもう少し機動的に使つて頂くという工夫を併せて考慮して執務能率向上をして頂きたいということを考えておるわけであります。  それから「今度の整理でどれくらい予算縮減になるか」ということでありますが、昭和二十九年度の予算におきましては、待命でありますとか退職金の支出がありますために、予算の上には殆んど縮減はありません。二億か三億程度縮減があると考えておりますが、殆んど見るべきものはないのであります。併しこれが平年度化して参りますと、一般会計、特別会計の両会計を通じまして約六十八億円、これに警察制度改正による分八十三億円程度計上されますので、合計約百五十一億円が今度の整理が完全に終つて平年度化する場合には節減が考えられるわけであります。  それから「このたびの特別待命制度がどれくらいの実績が上つたか」ということでありますが、これは二月の十五日で締切りました結果、九千百六十人の特別待命者ができております。今度の臨時待命制度が特別待命制度よりも条件が悪くなつておるという点でありますが、これは今度の臨時待命、つまり待命によつて場合によつては強制もできる、強制しておやめ願うこともできるという考え方が、待命制度の本来の考え方でありまして、従いまして待命の条件をどうするかということは、今度の臨時待命を頭において考えましたのでありまして、従つてそれよりも前に自発的にやめて頂くという考え方でありましたために、特別待命のほうが、若干臨時待命制度よりも条件がよかつたという関係になつておるわけでありますが、併し今度の臨時待命の条件程度で、私どもは十分目的が到達できるのじやないか。こういう考え方をいたしております。(拍手)     —————————————
  9. 河井彌八

    議長河井彌八君) 千葉信君。    〔千葉信君登壇拍手
  10. 千葉信

    ○千葉信君 私は日本社会党を代表いたしまして、只今議題となりました政府機関職員定員法の一部を改正する法律案に対し、首相並びに関係閣僚に対して若干の質問をするものであります。  自由党内閣は、昭和二十四年以来今日まで大小とりまぜて実に九回に及ぶ定員法の制定、改正を行なつて来ておるのでありまするが、その目的とするいわゆる行政整理は、曾つてただの一度も成功したためしがないことは、あえて世評に待つまでもないところであります。  由来、行政整理の目的とするところは、それによつて人員適正化を図り、国民負担軽減を約束し、併せて行政機能の能率化を期待し得るものでなければなりません。この建前から言えば、毎年々々、馬鹿の一つ覚えのように行政整理を口にしながら、一体今日までの実績はどうでありましようか。例えば昭和二十四年六月定員法制定当時の定員数は八十九万七百四十九人でありましたが、今日七十一万四千五百四十六人となつているのでありまして、而もこのうち電々公社設立によるところの公共企業体移行の分十五万三千二百五十四人を計算いたしますると、その差は二万二千九百四十九人に過ぎないのであります。この二万二千九百四十九人が、確実にそれでは縮減されたかと言えば、これ以上の人員が実は賃金要員としてその穴埋めが一方において行われているのであります。かくのごとき度重なる失敗の根拠は、機構の根本的検討事務簡素化を一切省略して、ただ単なる首切りに終始したからにほかならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るに政府は、今回も又その愚を繰返えそうとしているのであります。即ち何故に政府は、今折角臨時行政改革本部を設けて審議中だというのにその結論を待とうとしなかつたのか、又今その協議内容はどの程度に進んでいるか。副総理からその内容についてお答えを願いたいのであります。  次にお尋ねしたい点は、政府はこの定員法によつて、所期の目的を達し得ると考えているかどうかという点であります。行政機構改革について厳密な検討もなく、事務再配分についての方針もないままに提出された本法案は、当然の結論として又しても天引整理となりまして、その結果として起ることは賃金要員の増大か、さもなくば超過勤務手当の増額か、そのいずれかに逃避することは明らかであります。去年七月行われました定員法改正では差引四千七百六十六人を増員し、これに対する提案理由説明によりますれば、即ち、定員の増加と申しましても、現に在職する賃金要員の定員法上の措置によるもので、職員の純増は、実際には殆んどないものということができるのであります、ということでありました。今回のやり方はこれとは逆に、定員縮減とは申しましても、定員法上の措置に過ぎないのでありまして、その必要欠くべからざる事務に対しては、賃金要員を以てこれに当てる所存であります、というのが本音ではないか承わりたいのであります。更に又いま一つの問題は、在来とり来つた政府の方針によれば、無計画な首切りをやる。それでも不足を生じたところは賃金要員を当てる。それでも足りない分については超過勤務を以て賄つて来ているのであります。而もこの超過勤務手当については、年々増大し、今日においては給与総額に対して一三%以上を別に計上しなければならないという実情であります。この超過勤務手当については、むしろこれを定員化すべしという意見さえあるのでありまするが、定員化するとすれば、少くとも現在員に対して一割以上の定員増加を行わなければならないのであります。この状態は何を意味するかと言えば、機構の改廃、事務簡素化を行わない限り行政機関内における仕事の総量は、定員プラス賃金要員プラス超過勤務手当となるのであります。而も賃金要員は、示された今回の政府の資料によりましても、現在四十四万七千四百九十二人を数えております。仮にこのうち例えば最も多数を占める作物調査員、作物報告員、顧問、或いは単純労務者、季節的なもの等を除いても、なお八万八千人程度定員職員と区別することの困難な職種であり勤務条件のものであります。これでは政府の言う行政整理は、行政整理そのものに目的があるのではなくて、他に意図するところがあつてのことであると言つても過言ではありません。一体、政府は、この法律案制定によつて賃金要員の増大、或いは超過勤務手当増額の不可避な状態にどう対処するのか、はつきりとその御方針を承わつておきたいのであります。  次に労働大臣にお尋ねをいたします。首切りをやる以上、その対策をどう立てているかという点であります。耐乏予算を強行する以上、それによる極端な犠牲に対しては、これを救済する対策をとることが政府の責任であると同時に、首切りを敢行する以上は、これを受入れる方策が立てられていなければなりません。特に耐乏予算、金融の引締めによつて起る著しい特徴は雇用の縮小、失業の増大であります。財政投融資五百四十億の減少が造船、建設に及ぼす影響を見ても、金融の引締めによる賃金不払、中小企業の倒産も、すでに現実の問題として現われ始めております。かてて公共事業費で吸収できました分から、公共事業費の減額によつて大よそ十四万人の労働人口が都市に影響の及ぼすことも明らかであります。そこへこの定員法によつて職を追われる人々、公共企業体や地方を含めて約十五万人に及ぶ失業者が放り出されるとしたら、今でさえ政府の発表によつても、完全失業者四十四万人、不完全失業者六百万人を超えているとき、労相は本年度失業者数をどの程度考え政府は如何なる具体策を持つているのか承わりたいのであります。  次に厚生大臣にお尋ねをいたします。今回の三党協定による予算によつて、国立病院に対して一千台の結核病床分が計上されたのであります。これは全く増床分でありまして、この増床に伴う経営費はどうなるのか。食糧費、用品費、医療費及び人件費その他で、第四半期分だけといたしましても四千七百万円を必要とするし、人員におきましても医師四十名、看護婦その他で四百名はこの修正によつて増員を必要とするはずであるが、厚生大臣は、この点について如何なる方針で対処されるおつもりであるか。この修正に応ぜられた厚生大臣として、所信を承わりたいのであります。  次は大蔵大臣にお尋ねをいたします。今日、造船疑獄、第七次造船に見る不当支出の問題、或いは災害復旧補助費の不当なる支出については、会計検査院による摘発は飽くまでも事後措置であつて予算執行の不正防止に当る機関としては、会計法第四十六条に基いて財務部主計課及び財務局あるのみであります。然るに、大蔵大臣はこれらの機構を整備して一層その強化を要すべき今日、これらの要員に対しては、他に比べて約二倍に当る八・八%の整理率を以て五百七十五名の整理を行わんとしていることは了解に苦しまざるを得ません。大蔵大臣は予算執行の不正防止に対して、今日以上に強化の必要がないと考えているのか承わりたいのであります。  次は建設大臣にお伺いいたします。非常勤者が一番問題になるのは建設省であります。建設省には、準職員が五千八百八十四名、補助員が八千三百七十二名、いずれもいわゆる袴人夫と呼ばれる常勤的非常勤者であります。これらの人々の大多数が単に定員法のわく外にあるだけで、その勤務態様も、実際勤続の状況も、他の職員と区別がありません。而も工事費支弁となつておりまするが、実際には工事工程には関係がない。工事費が純然たる工事施行の費用であるという建前から言えば、本来行政部費で賄うべきものであります。然るにこの問題を解決しようとせず、今回更に一万七百八十名に対して、七百七十九名の大量整理を行わんとしているのは、更に工事費支弁を企らむものではないか。建設大臣の所信を伺いたいのであります。  次に、農林大臣にお尋ねをいたします。昨年七月、会計検査院より検第七十二号を以て改善意見が通達されておりまするが、これによつても明らかなように、災害復旧工事及び工事費の査定の杜撰或いは現場検査が行届かないため、粗漏工事が見逃がされている事実を挙げております。このことは農地局の定員を見ても肯定できるのであります。例えば直轄事業費は二十八年度は九十九億八千四百万円、二十五年度は十六億八千百万円で、約五・九倍になつておりまするが、定員は逆に三分の二に減ぜられております。実際に現地査定に当る者は全国で僅かに四十数名に過ぎません。而も災害箇所は二十八年度七万カ所とありましては、不正工事が跡を絶たないのは当然でございます。農林大臣は、復旧工事の不正を防止するために如何なる具体策を持つておられるか、承わりたいのであります。  なおこの際、副総理にお伺いしておきたいことは、恩給法の問題であります。昨年十一月、人事院から出されました勧告は、過去六年に亘つて国家公務員法に基いて勧告され、而も慎重に検討された成果でありまするが、公務員諸君は、一日千秋の思いを以てその制定を待ち望んでいるのであります。この制定こそは、薄給に痛められた公務員にとつて、一方が在職中の生活を保障するものなら、これは退職後の生活のそれであり、行政能率を高揚する二本の柱とも言うべきものであります。姑息な待命制度等によつて、目前の首切りを策するよりも、公務員をして安んじて職務に邁進、挺身して国民に奉仕せしめるためにも、この勧告を一日も早く制定することこそ政府に課せられた任務であると思うが、一体いつ提案するのか、なぜ遅れているのか明らかにせられたいのであります。  以上の質問によつても明らかなように、政府行政整理に関する限り、未だ成功したためしもなく、而も成功の確信もなくして再び提案をして参りました。そこには空前の大疑獄事件に当面しながら、而も将来に向つてこれを防止する機構は、却つて不用意に減員し、政権維持のための三党修正にあつては、病床だけ一千台殖やして、これに対する経常費を忘れ、災害復旧工事に対する不正の防止又然りであります。かくのごとき行政整理本来の目的を達するにほど遠い提案を以て、国民大衆の眼を欺かなければならない政府の苦衷は察するに余りあります。即ち政府は、国民にこれ以上の耐乏を強要する予算案並びに一連の反動立法と共に、この法律案も又アメリカ防衛のための再軍備と、アメリカ一辺倒の外交、アメリカ本位の貿易政策から不可避に追い詰められた所産であるからであります。  本年一月七日、アイゼンハワー大統領は議会に提出した五五年度予算案の中で、陸軍費四十億ドル、海軍費八億ドルを減額し、空軍費と原子爆弾に関する予算を八億二千万ドル増額して、次のように説明しております。即ちアメリカは、今後地上兵力は縮小して海外同盟国の増強に期待し、米国自身は空軍と原水爆の発達による遠距離からの報復的攻撃力の増強に主力を注ぐというのであります。そして一月十四日付ワシントン・ポスト紙は、この間の事情について、アメリカは過去において欧州の盟友国に対してデフレ政策を採用し、もつと再軍備を進めることを要求したが、欧州諸国は耳をかさず、手を焼いているので、吉田内閣の新政策には非常に満足し、アメリカ外交の主要なる勝利だと報じているのであります。又同じくクリスチヤン・サイエンス・モニター紙は、日本政府が突如として耐乏予算を編成することを決意したが、これは米国がアジアにおいて主要な外交上の勝利をしたことを意味し、同時に西太平洋におけるアメリカ国防上の利益に対する一つの脅威が除去されたことを意味するものであると報じているのであります。いわゆるニユールックと称せられるこの転換した戦術上の要請に基くものが、同盟国たる日本の地上兵力の増強であり、防衛庁法であり、自衛隊法であります。然るに吉田内閣は、そのための緊縮予算であるにかかわらず、国民の目を蔽いながら、国際収支の悪化に籍口して耐乏生活を強要しているのであります。首相はその施策方針の演説におきまして、耐乏生活とは読んで字のごときものだと突つぱねて国民の憤激を買い、戦勝国イギリスでさえ耐乏生活を国民が行なつたと、さながら当然のごとく無思慮な放言をあえてしております。日収二万一千円の者が総体のたつた一・七%しかない英国民、食料の価格等も日本の六割以下、而も税金は月収三万五千円までは無税という場合に、生活の切り詰めを行うことは英国民ならずとも行い得るのであります。而もチヤーチル首相は、国民に耐乏生活を要請するに当つて、社会保障制度費のごときものは、国家財政の窮乏にもかかわらず、総額の三五%も計上して国民の士気を鼓舞し、みずからも率先垂範の態度に出ているのであります。人としての生活どころか、やつとぎりぎりの食うだけの生活をしておる国民に、みずからの誤まれる政策の尻ぬぐいを押付けながら、最低限度の社会保障に対する考慮もなく、天引首切りによる失業者の増大に対して何らの具体策を持たず、一方では首相側近者が時価三億円もする首飾りをして、国民の前にひけらかしたり、(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)或いは又、みずからは国民の血税の中から、国民の血の出るような中から交際費を五百万円も二十九年度予算に増額して、恬として耐乏生活を説くがごときは良識ある為政者のとるべき態度かどうか。無駄はむしろそこにあります。真の国費節約は、勤勉な公務員を首切ることではなく、その無駄を省くことであります。今や民心を離れた首相の外遊も無駄の一つであります。  以上、首相の反省を促して私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  11. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えいたします。  今回の行政整理は天引の首切りではないかという御質疑でありまするが、今回の定員整理に当りましては、事務手続の簡素化能率向上機構改革等による余剰人員を見通しまして、その整理を眼目とするものでありまして、いわゆる天引整理ではないのであります。そうして人員整理の方針につきましては、行政審議会の答申を参酌いたし、且つ行政改革本部で慎重に審議を行なつて決定したものでありまするが、それは各省庁の実情に応じ、事務手続の簡素化能率向上等の措置考慮しながら、各職種の事務量に即応して決定したものであります。行政機構改革本部では、党の行政整理委員会と緊密なる連絡をとりまして、一応中間的な結論を出したのでありまするが、勿論これを以て十分な結果とは思つておりません。今回法案として御審議を願いまするのは警察法改正、又は人事院の改組でありまするが、今後もこの機構改革につきましては十分の検討を続けて参る所存でございます。  なお、最後に恩給法改正について御質問がありましたが、恩給法の全面的改正につきましては、影響するところ極めて重大でありますので、近く発足いたしまする公務員制度調査会におきまして慎重な検討をいたしまして結論を出したいつもりでおります。  以上、お答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  12. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) お答えいたします。  今般の行政整理の結果、更に再就職を希望いたす者につきましては、内閣に被整理者配置転換対策協議会を設置いたしまして、その後の円滑なる転職等につきまして図りたいと考えております。(「名前だけじや駄目だよ」と呼ぶ者あり)なお、再就職の斡旋を担当いたしまする第一線機関でありまする公共職業安定所におきましては、被整理関係官庁或いは産業団体等よりなりまする協議会を設置いたしまして、就職の促進を図る考えであります。なお被整理者のうち、技能がないために非常に困難をしておるという者につきましては、職業補導所の活用を考えておる次第でございます。  なお、失業者全般につきましていろいろお話がございまして、現在四十余万人の完全失業者があり、六百万人の不完全失業者があるというお話がございましたが、不完全失業者の定義というものは非常にむずかしいと思いますけれども、私どもは不完全失業者が六百万人あるというようなことを公表した覚えはありません。衆議院で、たしか三百数十万人あるということを申上げたと記憶いたしております。最近の雇用の状況はむしろ意外なほどでございまするが、決して減退を示しておらないのであります。例えば職安に参りまする求人数を見ましても、前年に比べて一割方増加を示しまして、求職者が逆に五%程度の減少を示しておるという状況でございます。中学を卒業いたしまする者は、御承知かと思いまするが、本年は二十二万四千人卒業者が就職を希望いたしております。これに対して求人の申込が二十七万人で、逆に求人のほうが五万人多いような状況になつております。こういう状況でございますので、来年度におきまする緊縮予算関係もあり、投融資関係が減つて参りまするから、若干雇用量の縮小ということも予想されるのでございまするけれども、第三次産業部門におきましては、むしろこれがプールのような形になりまして、従来の例から見ましても、日本の産業構造の特殊性から見まして、こうした緊縮予算即失業という関係になつて現われて来る事態は、比較的少いのが過去の実例であります。併し政府といたしましては、決して雇用情勢を楽観いたさず、又悲観もいたしておりませんが、来年度におきましては、失業保険において一割、失業対策事業において五分程度の実質的な支給額の増加を図りまして、機に応じて対策に遺憾なきを期したいと考えております。  以上を以てお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓君登壇拍手
  13. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 結核対策の一環といたしまして、結核病棟の増床は、つとに私ども政府要望し、又従来計画いたして参つた点でございます。二十九年度におきましては、財政等の関係から、これらの増床を九千床といたしまして、国立療養所等、二十九年度は政府予算におきましては見込んでおらなかつたのでありまするが、三党協定の修正におきまして、これらが一千床増床と相成つたのであります。  そこで今千葉君のお話のように一千床増床をいたしますると、或いは医療法等の関係から、医師四十三名、看護婦二百二十一名、その他百三十六名、合計四百名の当然の基準による増員を必要とするのではないか、こういう御質問。併せて、本年度は建設費だけでないかという点でございます。従つてこの建設費だけの予算の修正でございまするので、大体の目標は、年度内に建設をいたして、明年度からこれを実施するという見解と存じまするが、併し一日も早く増設をして、これを有効に使うということは大変必要だと心得ております。幸い今回の行政整理におきましては、医師、看護婦等の特殊性に鑑みまして、これらの医師、看護婦を行政整理の対象から特別取扱といたしまして、その圏外に置いておりまするので、従つてこれらの点も、建設が完了いたし次第、従来の機構等を十分利用して進めて参りたいと存じております。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 千葉議員にお答え申上げます。  予算執行の監査が極めて重要でありますることは仰せの通りでございます。今回の整理に当りましても、その点を考慮いたしまして、職員の資質の向上能率の改善を図り、定員減によりまして事務に支障を来たさないよう措置することは勿論、厳に予算執行の適正を期する考えでございます。(拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  15. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 今回の定員法改正で、農地局関係中央地方を合わせまして二百四十八名の減員を予定いたしておりますが、災害復旧関係定員減は予定の中に入れておらないのでございます。又入れないつもりでおります。  なお、災害復旧事業会計検査院の数多くの批難を受けておりますことは御指摘の通りでございましてこれは無論、もう御承知のように、例えば昨年の災害のあとに見ましても、農地事務局で直接扱いました農地関係の分だけで八万八千カ所以上になつておるわけでございます。これを一々現地に査定をし、そうして工事の仕上りを監督して行くということは、仮にどのくらい定員を殖やしましても、これは無理だと思います。併しながらこういうところに国費のロスが非常に多くなつておるということも、これは殆んど一致しておることでございますから、何らかの根本的な改善を必要とすると考えております。只今政府部内におきましても、一つの改善案を持つて折衝をいたしております。私はできる限り一つこの国会で、国会の御協力を得て根本的な改善を図りたい。こういうふうに考えておるわけでございます。(拍手)    〔政府委員南好雄君登壇拍手
  16. 南好雄

    政府委員(南好雄君) 大臣が病気で休んでおりますので、私代つてお答え申上げます。  建設省におきましては、御承知通り地方建設局におきまして直接工事を施行しておりまする関係から、相当数の労務者を使つておることも事実でございます。その中で、いわゆる技術労務に関係しない事務補助のような形で一部の人たち事務方面に使つていることも御指摘の通りでございます。こういう問題につきましては、そういうことのないよう、厳に地方建設局を監督いたしますと同時に、どうしても事務的に使わなければならないような必要最小限の方々につきましては、準職員といたしまして定員法適用を受けて行きまするよう、目下折角交渉中でございます。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎登壇拍手
  17. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 過去幾たびかやりました行政整理が殆んど効果を挙げていないのではないかという御意見でありますが、これは少しく事実を十分御了解願えていないのではないかと思うのであります。整理実情を申上げますと、二十四年の整理には十二万九千人、それから二十六年の整理には六万人、今回が六万人、比率で申上げますと、二十四年は一三・四%、二十六年が六・八%、今度が七・三%ということになつております。併しそれにもかかわらず、いつでも整理したあとの、整理前の人員からこの整理人員を引いたものがそのまま次の整理人員になつておらんことは事実であります。つまりその間に必ず増員があることもこれは御指摘の通りであります。併し私も、そういう非常に不思議な状態を、今度の整理をいたします場合に、何に原因があるかを検討してみまして、これはそれぞれ皆十分な事由があつて増員になつておるものでありまして、従つて事由があつて増員が起るだけに、整理できる部分は一層整理をしなければならない部分があると言えるのであります。そこで無理をして整理をするから殖えるとおつしやるのでありますけれども、そうではないのでありまして、実情は、どこで殖えているかと申しますと、御承知のように企業体になつているもの、今の公社、それから五現業、こういうものは事業量の増加で人間が殖えるのは当り前であり、御反対には恐らくなるまいと思うのであります。その最も適例は、今度の整理で、私が所管いたしておりまする郵政省は六千五百六十八名の整理を予定しながら、三千九百九十二名の増員をやらなければならない。三千九百九十二名の増員をなぜしなければならないかと申しますと、一つは、公労法の適用関係から来る断続勤務のために約千五百名程度、それからして業務畳の増加というようなことで殖えて参るのでありまして、こういうものが定員の中に入つておるから殖えて来るのであります。もう一つは、企業体ではありませんけれども、例えば病院でありますとか、こういうものは企業体に準ずるものであつて、年々患者数が殖え、仕事数が殖えれば、これは殖えること自体が、国民に対するサービスの増加になつておるのでありまするから、これは差支えないのじやないか。それからもう一つは、国民の数も、これは年々殖えておるのでありますから、それに応じた増加というものも或る程度はこれは必要じやないか。私どもが今熱心に整理をしなければならないと考えるのは、戦時から戦後を通じて、当時の必要によつて大きくなつ機構というものを、今日の国力国情にふさわしいものにしなければならないと、繰返して努力をしておるのでありまして、(拍手)決して他に意図があつて整理というものを考えておるようなことは毛頭ございません。  それから人間の数をどうきめるかということでありますが、私どもは定員考えます場合には、成る標準というもの、そうしてこの程度は常時人間がおらなければならないというところをつかまえて定員の数をきめるわけです。従つて時期的に仕事に繁閑がある。非常に忙しい時には、その忙しい時期を標準に人間をきめるというわけには参りませんから、そのときには、勢い超過勤務ということもお願いせざるを得ないのじやないかと、こういうことになるわけであります。  それから定員にしておくか、賃金要員にしておくかでありますが、これもやはり仕事の性質から来るのでありまして、おのずから賃金要員に適当であるというものは、定員を外して賃金要員にしておくということもあり得ると思います。併し賃金要員の数は、御指摘になりましたように、そんな大きなものではありませんで、私どもが承知をいたしておりまするのは三万か、精精四万程度のものであります。そうしてこれは毎年々々の予算において規制をいたしておるのでありまして、その年の業務量が多い場合には、賃金要員は殖えることがある。こういうように御了解を願います。(拍手)     —————————————
  18. 河井彌八

    議長河井彌八君) 戸叶武君。    〔戸叶武君登壇拍手
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案提案理由説明の中におきまして、国務大臣は、現下の急務である自立経済を達成するのには、でき得る限り行政費節約を行うと共に行政機関合理化し、行政事務簡素化し、且つ事務能率向上を図ることが必要であると、そういう趣旨を強調いたしましたが、この法案説明趣旨を聞いてみますると、一つもそれがこの法案の中には現われて来てないと思うのであります。定員法は、合理的な行政機構改革と結び付いてのみ意義があるのであります。然るに今度の定員法改正は、その基礎となるべき機構改革には触れておりません。行政機関合理化の本旨からするならば、国民に対する行政上の便宜を最大限に保証するのが建前であり、行政機構簡素化は、行政機構改革から着手すべきであります。然るに塚田国務大臣は、当初この趣旨に則つて行政機構改革をやろうとしたが、それがやれなかつたという説明でありまするが、何が故にこの根本的な問題に触れることができなかつたか。それに対する理由が明らかにされておりません。行政機構改革を放置して定員法改正を上程せんとするのは、まさにこの行政整理趣旨から行きましても本末顛倒と言わなければならないのであります。自由党の政策の中において、公約の中において特に吉田首相は、第一次吉田内閣以来、たびたびこの行政整理ということを国民の前で訴え、吉田首相の政策の中における重要な部分を占めておりまするが、今日現われたところの内容においては、少しもその内容が公約に基くものを果していないのであります。全くごまかしと言わなければなりません。又この合理的な能率的な行政体系というものを我々が求める場合におきましては、官僚独善的な組織を排除して行かなければならないのであります。然るに塚田国務大臣が説くところによると、その行政機構改革ができなかつたというのは、今日与党であるところの自由党の中に巣くうところの官僚の古手が城塞を作つてつて、古き彼らの既得権を守るために官僚独善主義というものを排除することに対して猛烈に抵抗をやつたのでありまして、この行政事務の縄張り根性、セクシヨナリズムを精算しない限りにおいては、公務員機構上の責任を明確化し、高能率、高賃金の原則によるこの信賞必罰を行わなければ、決して官僚体制というものは改まつて行かないと思うのであります。今日、日本の官僚組織は造船疑獄、国鉄疑獄によつても現われているように、日本国家組織を食い潰さんとするような不健康な状態にあり、それは一つには自由党を城塞とするところの官僚ボスと結んで、そういう体制を作つておるのでありまするが、この官僚組織のスポイル・システムを我々はどうしても直して行かなければならないのでありますけれども、それに対して根本的な理念又対策というものが立つていないのでは、何にもならないと思うのであります。  次に、今度の行政整理自立経済を目標としておると言つておりまするが、我々が今後自立経済を打立てて行くのには、今までの自由党の行なつておるような、今日の行き詰りを生んで来たような資本主義体制によつては駄目なのでありまして、金融、財政、産業面で、計画経済を進められることが必至の態勢になつておるのであります。従つて今までのような官僚体制というものを編成替して、即ち戦前戦後に、行政機構が複雑化し厖大化したところのあの水ぶくれ的な機構にメスを入れて、新らしい事態に対処するような機構の作り上げ方というものがなされない限りにおいては、重点的な能率的な一つ行政事務能率というものは挙がらないのであります。この合理的な行政機構改革を行い、それに応じての配置転換を行うべきときに当つて、それを断行せずして行政機構簡素化の実を挙げることは断じてできないと私は思うのであります。(拍手政府は今後のこの統制的経済政策の進行の方向に向つてどういうふうにお考えになつておるか。又行政機構改革と睨み合せてのこの配置転換に対してどういう具体的な対策を持つておるか。それを承わりたいのであります。  又、公務員の生活保障のために臨時待命制度が設けられておりますが、この制度は、人員整理の摩擦を避け、欺瞞のうちに人員整理を強行せんとするものではないか。臨時待命期間に一年乃至三年が一カ月、三年乃至五年が二カ月、最高二十年以上が十カ月となつておるのでありまするが、非常に期間が短かく、これでは実質的には、普通の人員整理と何ら変るところがないのであります。こういうようなことで、即ち特別待命においては九千百六十人申出があつたが、これから見ると待遇は、どうしても劣るのは止むを得ないと説明しておりまするが、こういうような待遇によつてやる整理では、何らこの整理される者に対して希望を与えるものがないのではないか。又今の整理案なるものが当初は十一万整理を呼号しておりましたが、今日に至つては六万千二百九十八人の人員整理となつて現われたのです。私はこの数を問題にするわけではありませんが、当初無理な整理案を作り上げ、而もその無定見さというものが、遂に今日の六万千二百九十八人となつたのであつて、この整理に対する原則も、整理に対するところの結論にも、何ら一貫性があるものではないのであります。而もこの半数は警察法改正の名の下において、警察職員三万人を整理しようとしておるのであります。この無理な人員整理によつて、今度は職場の人たちが働きにくくなり、結果は再び職員を増大しなければならないようなことになるのではないか。先ほど塚田国務大臣説明を開いておると、整理するのか、或いはそれよりも増員が飛び越えて行くのか、さつぱりわけのわからない、ちんぷんかんの説明がなされておりますが、無理を行えば道理が引込むのでありまして、定見のないところの行政整理をやつても、直ちにあとから増員しなければならんというような結果が現れまして、今までの吉田内閣の下における三回に亘る行政整理が何らの成果を挙げないのは、行政整理に対して確固たる方針を持たず、その場限りのごまかしをやつて来た結果なのであります。行政管理庁及び臨時行政改革本部できめられた行革要網が削られた理由は何か。そういうことも十分に説明してもらいたいと思います。  又政府は、公務員に対する権利を不当に抑制しておきながら、従来から人事院の勧告を常に無視し、その給与決定に際し、種々の悶着を起して来たのであります。これが吉田内閣の反動的な政策遂行の上におけるいつも悩みの種であつたのであります。この目の上の瘤ともいうべきところの人事院を、今度の改正では国家人事委員会とし、国会に対する勧告をやめ、内閣のみにこれを行うこととした。こういうことは政府は、人事院をかくして最終的に廃止せんとするところの意図からこれを行なつておるのかどうか。それを明確にして頂きたいのであります。  この今回の行政整理全体を通じて流れるところの吉田内閣の政策の方向というものは、事務能率を上げるというう名の下に、働き盛りの、働きたくてしようがない人を無理に整理して、そうしてこれを行政整理と言つておるのでありますが、アメリカにおいてルーズヴエルトがニユー・デイールの政策を遂行した場合におきましても、社会主義的な理念として全員雇用の理念というものを取入れて、働かんとする者に、すべてに職場を与えて全生産の体制を作り上げたところに特徴があつたのでありまするし、今日西ドイツの勃興を見ましても、形式的な技術的な形におけるこのような行政整理でなく、働かんとする者に、役所におつた者が或いは工場にとか、いずれにしてもその人の長所を発揮できるような場に配置転換して、遊ぶ者がないように、すべての者が働けるように、希望が持てるような方向に政策を推し進めておるのであります。イギリスにおいても、第一次欧州大戦後において、いわゆる失業保険の名の下において失業者を多く抱え込んだ。それがために国民の精神というものが萎靡沈滞して活力を失つて行つた。今吉田内閣の下に行政整理によつて、高等遊民と言われるような人々が中途半端な形において国内に屯する状態ができて来たとするならば、自然にこの民族の中に萎靡沈滞と希望のない世界が推し拡げられて行くと思うのであります。  私は、今日一方におきまして吉田内閣が再軍備に狂奔し、軍事費の拡張を行い、保安隊の増員を行いながら、我我に必要なところの産業の復興に対して、或いは社会保障関係の仕事に対して、極めて窮屈なところに追い込み、そうして軍事費を捻出せんがための、行政整理の名によるところの緊縮財政を強行せんとしておるのでありまするが、我々は日本社会党の立場から、働かんとする者に職を与えよ、機会を与えよ、民族に希望を与えよ、この声を吉田内閣に伝達しなければならないのであります。(拍手)  吉田内閣は、今まで日本国民を代表するところの多数党であると呼号しておるが、吉田内閣の実態を御覧なさい。全く利権あさりのボスか、その中枢は汚職官吏と結ぶところの旧官僚によつて占められておるのであつて、もうすでに勤労階級の、或いは国民の利害を代表し、国民の憂い、国民の悲しみをくみ取るだけの情愛というものを持たなくなつて来ておるのであります。  今回の行政整理案の強行に際しまして、この根本的な問題に関して、緒方副総理並びに塚田国務大臣に対して、社会党の立場から質問をいたす次第であります。これを以て私の結論といたします。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  20. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  今回の人員整理は、行政機構改革考えない天引の首切りではないかという御質問でありましたが、同様の御質問は、先ほど千葉君からありましたので、従つて同じようなお答えを繰返すようになりますが、今回の定員縮減に当りましては、単なる人員面のみの整理を行なつたものではなく、又行政各部の現在定員に対して実情を無視した一律の定率を掛けたというようないわゆる天引的な整理をやつた次第でもないのでございます。政府といたしましては、飽くまでも行政事務整理合理化考え、そのため必要な組織の変換と、これによつて生ずる見込の過剰人員とを整理することを眼目として立案したものであります。御質疑の中に、働く意欲のある、働かんと欲する者を整理するというようなお話がありましたが、政府としましても、できれば全員雇用ということに持つて参りたいが、国情が御指摘のようなアメリカのようなわけには参らない、そういう次第から、社会的にできるだけ無理を来たさないようにしたいという考えも伴いまして、今回のような結果になつておるのでありまするが、そのやり方は、今申上げましたように、決して一律的な天引きというようなことを考えた結果ではないのでございます。  それから今回の行政改革の結果、人事院の目的が失われるのではないか、国家公務員法の精神が失われるのではないかという御質問でありまするが、今回の改組は、中央人事行政機関行政組織上の位置を明確にし、且つそれを簡素化したにとどまるのでありまして、その実質上の権限は、改組の前後によつて異なるものではありませんから、国家人事委員会は、十分公務員法第一条に規定する目的を果し得ると信じております。従いまして決して人事院国家人事委員会になりましても、従来の精神、或いは実体が弱められるものにはならん。この点は御心配を頂かなくても結構であると考えております。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎登壇拍手
  21. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 私に対するお尋ね、及び副総理へのお尋ねに補足説明を申上げたいと思います。  今度の、機構改革を伴わないで定員法だけを出したのは本末顛倒ではないかというお話でありますが、先ほども申上げましたように、人員整理は、機構改革の面から来るものと、それから事務処理の合理化から来る面とあるわけでありまして、先ほども申上げましたように、機構改革部分は一部分しかできなかつたので、その部分だけが織り込んであつて他の部分改革ができた時に更に追加されるという考え方でありますので、本末顛倒ということはないと考えます。  それからして機構改革が十分行かないのはどういうわけか。その原因に、この官僚独善があるのではないかという御意見でありますが、機構改革が十分行きませんのは、実はいろいろやつてみまして、機構は或る程度、今までやりました部分考えますと、今後これをいたします場合には、相当本質的に根本の検討をしなければ、とてもこれはできないということが明らかになつたからであります。勿論現在の機構を、私どもこれで立派なものである。これで理想的なものとは考えておりませんので、何とかもつと簡素なものにしなければならないという強い考え方を持つておるのでありますが、併しその場合には、これは各省庁を通じて相当根本的に問題を取上げて行かないと、或る省の或る部局というようなものだけで問題を取上げると、なかなか国会の御承認も得られない、実現も期し得ないということで、これは非常な本質問題として真剣に取組もうという考え方で、あとの問題に延びておるのであります。  それからして自立経済を達成するとすれば、計画経済の方向に持つて行く必要があるから、それに応じた機構というものにしなければならんのではないかというお考え方でありますが、私どもは、計画経済というものが過去の実績に照しまして、如何に能率の悪い、そうして混乱の多いものであるかということを十分承知いたしておりますからして、勿論必要に応じて経済に或る程度の計画性は今後取込むことはあるかも知れませんが、その場合には、その程度に応じまして又機構考えればいいのであり、現在は現在の我々の考え方を基準において機構改革ということを考えておるわけであります。  それからして待命制度について、これでは普通の退職と変らないのではないかという御意見でありますが、御承知のようにこの待命のほかに、退職金は従来の整理の場合と同じだけのものを支給することになつておりますので、今度の整理は、これだけおやめになる方にはプラスになつておるわけであります。  それからして当初非常に大きな計画で発足したのが、結局六万人程度なつたという御意見でありますが、これは正にその通りなんでありまして、(笑声)併しこれは整理というものに現実にお当り下さればわかると思うのでありますが、一応の意見を立てて、そうして各省の意見を聞いて、無理のないところで整理人員を出すという問題を考える過程の話でありまして、最終の結論としては、この程度が妥当であると考えたわけであります。  なおこの中に三万人が警察職員であつて、非常に無理がないかという御意見でありますが、これは警察担当の方々と十分相談をした結果、ここには機構改革もあり、この程度はできる。なお残り三万人は、非常に整理率が低いという感じが一応出て参るわけでありますけれども、この点も、実は先ほど申上げましたように、現在普通に考えておる国家公務員七十三万人というものの中には、先ほど申上げましたような企業職員、準企業職員、それからして検察官でありますとか学校の教職員でありますとか、殆んど整理の困難な人たちが非常にあるのでありまして、そういう部分を除きますと、大体三十七、八万人が幾らか整理できると考えられる人々であります。その中から三万人の人たち整理することにいたしましたので、私どもは整理率が決して低いとは考えておらんのでありまして、現に最も整理のできそうであると考えられる管理部門におきましては、二割以上の整理が予定されてこの三万人という数字になるわけであります。(拍手)     —————————————
  22. 河井彌八

    議長河井彌八君) 紅露みつ君。    〔紅露みつ君登壇拍手
  23. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 私は改進党を代表いたしまして、以下数点について質問を申上げたいと存じます。  先ず今回の行政整理に対する政府考え方をお尋ね申上げます。何のために行政整理をするか。私どもの考えるところでは、これを二点に分けることができると思うのでございます。その一点は、官庁の事務能率を上げて仕事のさばきをよくする。そうして国民に対するサービスを高めるということ。第二点は、役人の数が多過ぎて、国民負担が過重であるから、その負担軽減するために整理を行うということ。前者は主として機構を変えることであり、後者は人員を減らすことであります。政府はそのいずれを狙つておられるのでありましようか。先ずその点を伺いたいと存じます。  実は公務員の数を減らすということにつきましては、以上の二点を考慮に入れなくて、切り離して考えるということはあり得ないことだと思うのでございますが、機構につきましては、仄聞するところによりますると、人事院という独立な機関を廃して、これを総理府に吸収する。そうして政府部内の一機関たらしめるということでございますが、その是非は暫らくおくといたしまして、これと警察法改正というこの二つの機構改革であるならば、余りにもそれは貧弱な構想であり、一貫性を欠くものと言わざるを得ません。人を減らすだけでは国民へのサービスが低下するということが予想されるからであります。政府はこれに対し今国会にどういう代替案を御提出になる御用意がありますか。只今行管長官は、根本的なそれは計画を立てなければならないという御答弁であつたようでございますが、それにしてもその骨子だけくらいは、整理をいたしますについてはここで御答弁になるべきだと私は思うのでございます。  昨年、第二補正予算給与引上げの際、我が党は、公務員の生活を豊かにする途は賃金引上げだけではない。少しくらい給与を引上げても、税金にはね返る上に、物価もそれにつれて上る、それよりも給与はそのままに据ら置いて、二十九年度の予算とも考え合わせ、減税と、それから米価を初め物価の抑制ということによつて、実質的に家計の赤字をなくする途を講ずべきだということを繰返し主張したのでありますが、政府はそれに耳をかさずして、給与の引上げを行なつた。果せるかな、消費米価の引上げに伴つて諸物価は上り、更に交通費も電気料も、郵便料も、もろもろの値上り見ようとしております。かくて公務員の生活は一向楽にならないにかかわらず、一般会計で四百億、特別会計、政府関係機関、そういうものを合計いたしまして、一千億に近い人件費の増加を来たしておるのであります。今回の整理にいたしましても、只今行管長官は率直にお述べになりましたけれども、当初は鬼面人を驚かすようなことを言つておられながら、これに対する確たる失業対策がない。従つてこの頃に至りましては、殆んど何もしていないような感じを与えておるのであります。事実警察官の三万を引きますというと、あとは三万人の整理、如何にもその無定見をここに暴露したものと言わざるを得ないと思うのであります。一体今回の行政整理でどれだけの歳出減になつておるのでありましようか。又待命期間中にある人たちがどれほどあつて、就職率はどうなつておりますか、伺いたいと思います。  翻つて考えまするのに、戦時中統制経済に切り換えられました結果、軍需産業を除いては小さな会社も商店も整理されて、これらに従事した人々は統制事務を扱う役人に国の力で編入されてしまつた。且つ戦後は、植民地、その他海外に出向いておる人々が一斉に引揚げて来た。その中でも北支交通、中支交通関係、満鉄等のおびただしい人員が引揚げて、それぞれの機関に吸収され、さなきだに人員過剰のところへ応召された役人も元の役所に帰つて来るということで、役人の数は実に戦前の三倍になんなんとしております。従つて人が多過ぎるものですから、十分な待遇ができない。能率の点でも、船頭多くしてという例に漏れない。而も国民経済から見れば、誠に勿体ない無駄なことだ。そこで我が党は昨年自立経済五カ年計画の中で、二十九年度以降二カ年間で一般会計で三割、特別会計で二割の役人を生産の面に転換させるという案を立てて政府に勧告したはずであります。即ちこれによつて財政上の負担軽減すると同時に、余つた経費を生産の面に廻わす、そうして国土総合開発やら一般産業の面に働いてもらいまするならば、安い給与で低い能率で、その日その日をいつ整理されるかわからないというような不安な気持で憂欝な生活を送つておる役人も、一朝にして勇気付けられ、働き甲斐を感じて、孜々として生産に努力されるでありましよう。そこに自立経済の基礎も固まるというものでございます。でこの際、政府は英断を以てこうした政策に切替える御意思はございませんか。なお、一兆円の緊縮予算でデフレ政策をとるといたしまするならば、一般民間事業からも相当の失業者が出ることを予想しなければなりません。従つて政府はこの際、大規模失業対策を打立てる必要があると思うのでございますが、一向にその気配が見えません。どういうふうにこの点をお考えになりますか。  次に観点を変えまして、婦人の面から一つお尋ねを申上げたいと存じます。大体、政府の婦人対策というものは全般に見てお粗末です。政府はそういうことをお考えになられたことがございましようか。男女平等の原則が打立てられてからすでに九年になります。男女共学の実も着々と挙つて、多くの大学卒業生も送り出されており、婦人の有能者はあらゆる方面に進出しております。最近の顕著な例をとりましても、京都大学でも東京大学でも婦人が助教授に抜擢されております。一番立遅れているのが官界です。官界の封建性がここに窺われると思うのであります。政府はこの際、思いきつてどしどしと婦人を重要なポストに就かせるというお考えはありませんか。そうすれば官界の粛正等にも大いに効果が上ると思うし、(拍手国民生活の合理化も促進し得ると考えます。現在、婦人で役所の局長と名のつくのは、僅か六十六人を擁する婦人少年局ただ一つであります。而も行政整理のあるたびに、機構改革があるたびに俎上に乗せられております。今回の整理も早くから取沙汰されておりますが、現在どうなつていますか。政府の従来のやり方から見まして、必要であるとか必要でないとかいうことを考えずに、弱い面にしわを寄せて来るという常套手段から考えて、私どもは心配をする次第であります。まさか婦人唯一のこの局を更に減員縮小するようなことはないと存じますが、念のため伺つておきます。更に婦人少年局の出先機関である婦人少年室でありますが、これも減員するとか、それぞれの県に統合するとか言われておりますが、僅か一県に一人か二人の職員を持つておりますこの機関を減員するということになりましたならば、これは廃止することでございますし、県へ委託統合するということになれば、これはもう存在の意義はないと存じます。そんな逆行はなさるまいとは存じますが、これも念のため伺います。それから、この局に対する、又出先機関に対する将来のお考えをも併せて伺つておきたい。何かよからぬことが考えられておるのではないでしようか。(笑声)やはりこの点も心配になります。申上げるまでもなく、婦人少年局の事務は、啓蒙、宣伝、調査等、誠に地味な仕事で、とかく等閑視されがちでございますが、実はこの地味な仕事が日本民主化の基礎になる大事な仕事でございます。男女平等とは言いながら、未だに同一労働、同一賃金の実が挙つておらない今日におきまして、日本の労働問題を論ずるからには、婦人面の労働問題が大きく取上げられなければならないと思います。  そこでもう一つつておきたいことは、今回の行政整理で、女子職員には盛んに待命を強要……強要という言葉が強ければ慫慂でございますが、盛んに婦人にそれがなされておるということでございますが、事実とすれば誠にけしからないことでございます。どういうわけでございますか。これを一つ御答弁願いたい。それから、女子の待命者がどれだけあつて、就職率がどうなつておるかということも御答弁願いたい。  更に政府は、食生活の改善、即ち米の需給状態に鑑みまして、粉食奨励を打出しながら、その後何らの対策も示されていないのはどうしたことでございましようか。聞くところによりますると、農林省と厚生省が繩張り争いをしておるということでございまするが、事実でありましようか。その間の事情一つ率直に御答弁願いたいと思います。と申しますのは、農林省の中に生活改善課がありますが、僅かに十八人の細々とした課で、地方に普及員は持つておりますが、それも十カ町村に一人というような割当で、これでは到底満足な指導は行えない。併しこれは今回直接な対象になつておりませんが、とにかく縄張り争いなどは、早く話合つて、合理的に解決して、食生活を改善し、自立経済に寄与してほしいと思うのであります。(拍手)どうなつておりますか。このところを一つ伺いたいと思います。  なお食糧対策の一環として農林統計調査部というのがありますが、ここの仕事も婦人少年局の仕事と類似しておると思うのでございます。近頃は水産方面の調査もしておるようでございますが、食糧対策上当然のことでありますけれども注目されます。政府は目先のことだけに忙殺されておるようでありますが、私どもはこうした機関がなくては、公正な食糧計画は打立てられにくいと思うのであります。一時、性格の違う食糧庁との合併とか減員をするとか言われておりましたが、その後この面はどうなつておりますか。御答弁を願います。  最後に、先刻も申上げました通り政府の婦人対策は極めて見るべきものがないと思うのでありますが、人口の過半数を占める婦人の協力なくしては食糧問題の解決はもとより、思想問題の調節も自立経済の確立も望めないと思います。その動向によつて日本自体のあり方をも左右するものと考えますが、政府はどのようにお考えになられますか。殊に激しい変転期にある現在においては、積極的な婦人対策を求めて切なるものがございます。この意味において、婦人に適当な分野は官界においてもどしどしこれに切替えて行くべきだと私どもは思うのでございます。この点については特に総理大臣の御所見を伺いたいと存じましたが、細出席がありませんので、副総理の大方針を伺わせて頂きます。  これを以ちまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  24. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたしますが、最初行政整理考え方についての御質問でありました。行政改革につきましては、真に我が国の自力にふさわしい、簡素且つ能率的で、而も国情に即する民主的な行政制度を確立し、併せて国民負担軽減を図ることが、政府行政整理の根本の考え方でございます。今回の定員整理も、この方針にのつとり、行政事務の改廃と事務運営方式の改善等を行い、これによる余剰人員整理減縮を図ろうとしたものであります。  次に、行政整理による犠牲者という言葉はどうかと思いますが、この結果に対して配置転換等をどういうふうに考えておるかという御質問でありますが、政府といたしましては、今回の定員整理に関連しまして、各省間の配置転換を促進するために、内閣配置転換対策本部というものを設ける一方、被整理者の就業を促進するために、地方においては職業安定機関を中心に、関係官公庁及び産業団体を含めた協議会を設置して、再就職の円滑化を図ることにいたしたいと、折角努力をいたしておる次第でございます。  更に、婦人対策について根本の対策をどう考えておるかということでありました。婦人の行政各面における起用によつて特に粛正ができるとも考えませんが、政府といたしましては、今日までも婦人の地位の向上のためには各種活動を積極的に行なつてつておるのでありまして、決して婦人対策を軽視しておるものではございません。  以上お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣塚田十一郎登壇拍手
  25. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) 機構改革ができなかつたが、根本方針だけでもいいということでありますので、簡単に申上げます。  機構改革は、全体としてもう少し小じんまりとした簡素強力なものを作りたいというのが、全体の構想であります。そこでそういうものを実現するために、どこをどういう工合にするかということですが、これを抽象的一般的に申上げますと、横には共管の事務整理しよう。一つの仕事を、幾つかの省が縄張り争いで首を突つ込んでいるものはよくない。縦には重複のところを整理しようという考え方であります。国と地方自治団体、それから国の中央とそれから地方の出先機関、この間で同じことを何段階にも手を経てやつておる今の機構を、何とか直したいということを考えております。その場合に、成るべく国が地方に任せられるものは、最大限に地方に任してしまいたい。それからして国の機関のうちでは、地方の出先機関が非常に今多くなつておるから、地方の自治団体に事務を任すと同時に、国の地方の出先機関を成るべく整理したい。この場合には、原則として一つの省の出先機関は一本に統合できるのではないか。是非そういうふうにしたいという考え方をいたしておるわけでございます。そういうような基本の幾つかの構想に基いて、今機構の全面的な検討をいたしておるわけであります。  それからお尋ねになりました婦人少年局、これは確かに機構改革最初の際に、一応取上げられましたけれども、十分検討の結果、これは存置すべきものと決定をいたしておりますし、恐らく今後考えられる根本的な改革の際にも、これが廃止されるというようなことはないのではないかと考えております。それから婦人少年局の人員整理でありますが、婦人少年局には、現在六十六人ございますが、来年の六月までの間に六名だけを減らして頂くという計画になつております。  それから統計調査事務所と食糧事務所の統合、これも検討いたしたことがあります。そうしてこれを検討いたしましたのは、先ほど申上げます一つの省の出先機関は一本という構想並びに比較的似かよつた仕事、似かよつたと申しますか、同じものを扱うというような面の仕事をしている面があるので、これは統合できるのではないかということを考えたのでございますが、これはなお将来の問題として残つております。と申しますのは、これは食糧政策の基本に関連する問題であるので、そういう問題の考え方がきまりました際に、これを検討すべきであるという考え方であります。  それから特別待命になつておりますものは、現在、先ほども申上げましたように九千百六十名でありますが、この中には女子職員は二千三百三十五名でございます。二割五分ちよつとの比率でありますが、併し全体としての婦人職員が二割程度おると考えておりますので、そう婦人に大きく重点が掛つておるというようには考えておりません。殊に今度の特別待命は本人の申出によるものでありますので、意識的、強制的に婦人におやめ願うというような考え方にはなつておらない点を御了解願いたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  26. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) すでに御質問の点について副総理或いは塚田長官からお答え申上げた点がございますが、なお補足してお答えいたします。  最初失業対策について何か根本的な考え方を持たんかという趣旨のお尋ねがございましたが、これは御承知のように、インフレーシヨンの高進しております時期に対しての失業対策と、デフレ期にやります失業対策というものは、これは方向を異にしなければならんのではないかと思うのであります。何か財政投資を多額にして新らしく有効需要を起すような失業対策というものは、この時期には私はとるべきでない。従つて現在政府のいたしておりますような、地味ではございますが、着実な失業対策が望ましいのではないか。かように考えております。完全失業者の数は、昨年の三月に比べまして、だんだん減つて来ておりまして、三月は六十一万人でありましたのが、十二月になりましては三十一万人と、非常に減つて来ております。併し今後この数は、いろいろ変転する思いますが、先ほども申上げますような保険制度、或いは失業対策費による事業によりまして、その間の機動的な調整を試みて参りたい。かように考えております。  なお、婦人少年局並びに婦人少年室のことについての御言及がございましたが、婦人労働者の保護と婦人の地位の向上ということを目指して、この機能の果します役割は非常に大きいと考えております。従いまして塚田長官からもお答えがありましたように、今後この婦人少年室においても、婦人少年局においても、十分能率を上げて、この本務の達成をせられたいと考えております。将来につきましてでありますが、来年度の予算では、昨年の暮考案いたしました婦人少年室協助員というものを全国に八百八十名おきまして、予算の足りぬ本省の部分は、一つ協助員において特に御援助願つて、本問題の円満なる推進を御協力願いたい。こういう趣旨の下に予算も付けてもらいまして、いよいよ活動して頂くことになつておる次第でございます。何とぞ今後とも御協力願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  27. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。  生活改善課は、婦人職員のかたが中心になつて行政に当つて頂いておりますが、その主たる任務は、我が国の農村の消費生活を合理化する。それは例えば農村の食生活合理化によつて食糧の給源を豊富ならしめるという大きな目的が一つついておると思います。又極めて卑俗のようでございますけれども、竈の改善、燃焼施設の改善によつて、農村で極めて浪費せられておると見られます薪炭の節約、これはそれがすぐ治山治水の大きい国の関係に結びついている。そういうことで生活改善普及事業というものは戦後取上げられ、而も一千二十二名の婦人のかたが全国に御活動を願つて、これが最近、広くその意義の高いところをお認め頂いて、先般の衆議院の予算修正に当りましても、この普及事業を充実する必要があるということで、約六割の人員増を来たすような修正も行われておるわけでございます。この点は単に経済効果のみならず、農村婦人の地位を向上せしめて行くためにも、私は今後ますます充実する必要がある。こういう考えを持つております。なお、厚生省と農林省の間で、食生活の問題で繩張り争いをしておると、御承知のように、厚生省には保健栄養の専門家がおられるわけであります。私のほうは食糧の確保に努力をいたしておるところでございますが、保健栄養の面からのいろいろな御忠言に対しては、農林省としては虚心坦懐にこれを受入れる、相協力して食生活の合理化に向つて行かなければならん。決して繩張り争いをするというような根性ではやつておらんことを御理解願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣草葉隆圓君登壇拍手
  28. 草葉隆圓

    国務大臣(草葉隆圓君) 厚生省でいたしておりますることは、御承知のように保健、健康の増進或いは発育、そういうすべての点から、我が国民の食糧をどうして行くか、この栄養をどう改善するかというのを目標にいたしておるのでございまして、従つてそれらの調査研究の結果、これらに対しまする指導というようなことが現在のいたしておりまする中心であります。従つてややともいたしますると、お話のように他省との或いは絹張り争いのような感があるようなことがありはしないかというような点がお突きになつた点だと思いますが、只今農林大臣からお述べになつたように、農林省、厚生省におきましては十分緊密な連絡をとつて、さようなことのないように、農林省は主として、只今のお話のように量の問題、厚生省は質の問題が中心になつておりまするが、今後一層或いは文部省その他とも連絡をとつて日本人の食生活の改善に一層努力をして参りたいと存じております。(拍手)    〔政府委員植木庚子郎君登壇
  29. 植木庚子郎

    政府委員(植木庚子郎君) 今回の行政整理で、どのくらいの歳出予算が減少になるか、節約ができるかという御質問部分に対してお答え申上げます。  昭和二十九年度におきましては、退職手当等の支出が要りますので、節約額は殆んど見込めません。数字的に申上げますと約四十二億円の節約可能と見込んでいるのでありますが、一方待命期間中の待命俸給でございますとか、或いは退官、退職の手当等のために必要な金が約五十三億と見込まれております。差引十一億円の不足になりますが、この部分は、既定の退職金予算がございますので、こうしたものと合せてやり繰りができる。即ち初年度におきましては殆んど節約可能は、全然可能額はないということに相成つておおります。平年度におきましては、一般会計におきまして三十九億八千万円、特別会計におきまして二十八億円、合せまして六十八億円くらいの節約が可能でございます。なお、ほかに警察制度改正による節約可能額が八十三億円を見込まれまするので、合計いたしますというと百五十一億円の節約が平年度において可能である。こういう状態に相成つております。(拍手)    〔紅露みつ君発言の許可を求む〕
  30. 河井彌八

    議長河井彌八君) 紅露君。
  31. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 国土総合開発の点で、経審長官に何かお考えがあると思うのでございますが、伺いたいと思います。    〔国務大臣愛知揆一君登壇拍手
  32. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 一般会計で三割、特別会計で二割の人員整理をして、これを生産の方面に転換させるつもりはないか。特にこれを国土総合開発計画のほうに関連させて考えることはできないかというような御趣旨が私に対する御質疑と思いますが、かくのごとく積極的な明るい御提案に対しましては、非常に敬意を表するのでございますが、先ほど労働大臣からもお答えいたしましたように、現在の計画でやつて参りますると、この今回の整理される人員を、こういう方面だけに積極的に用いるという観点から計画をいたしました場合におきましても、相当規模な公共事業なり、或いは民間事業というような点について、相当多額の費用もかかるわけでございましようし、殊に厖大な資本投下が必要であると思うのであります。従つて現在の状態におきましては、そのままそのお考えを取り入れることは、不適当かと私どもは考えておるのでありますから、国土総合開発計画の現在考えておりまする計画を着実に実行して参りまして、できるだけその方面にも整理される人員を吸収いたしたいと、この程度に、現在私どもは考えておる次第でございます。(拍手)    〔紅露みつ君発言の許可を求む〕
  33. 河井彌八

    議長河井彌八君) 紅露君。
  34. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 緒方副総理に対して、婦人への官界の門戸を開放するという点についてのお心がまえを、もう少し伺つておきたいと思います。    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  35. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたしまするが、婦人であると、男子でありますとにかかわらず、適所に適材を得れば、門戸を常に開放して参りたいと考えておりまするし、今御質問の婦人につきましても、その点につきましては、何ら差別を設ける考え政府としてはございません。(拍手
  36. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  37. 河井彌八

    議長河井彌八君) 日程第二、交通事件即決裁判手続法案内閣提出)を議題といたします。  先ず委員長の報告を求めます。法務委員長郡祐一君。    〔郡祐一君登壇拍手
  38. 郡祐一

    ○郡祐一君 只今上程されました交通事件即決裁判手続法案について、委員会における審議の経過とその結果について御報告いたします。  我が国におきまする交通事故は最近著しい増加の傾向を示し、昭和二十八年中に約八万件の交通事故が発生し、約六千人が死亡しておるのであります。交通事故を防止するためには、道路、車両等の整備も勿論大切ではありまするが、何と申しましても交通関係者のすべてが交通規則を守り、その秩序を保つことが重要なのであります。従来交通に関する刑事事件の処理は、被疑者が呼出しに応じないとか、又はその手続の殆んど全部が略式手続によつておりまするために、煩瑣な書類の作成を要すると共に、略式命令の送達に非常な手数を要するとか、更に被告人の所在が転々するため、裁判の執行の面においても困難を来たす等のため、その処理に多くの時間と費用とを要し、事務の停滞を招いておるのが現在の実情なのであります。  本法案はこれらの点及び交通に関する刑事事件は、他の一般刑事事件に比べて迅速に処理しなければ、取締の目的を達し得ないという特殊な性格に鑑み、刑事訴訟法の特別法たる性格を持つ新たな裁判手続を制定せんとするものでありまして、その主要な特徴は次の通りであります。  本法による即決裁判は、公判前の手続でありまして、その点では略式手続と同様であります。ただ異なりますところは、略式手続が専ら書面審理主義をとつておるのに対して、即決裁判は公開の法廷において裁判官が直接被告人に面接して、事実関係を十分確める方式によることでありまして、一方書類の作成は極度に簡易にする建前になつております。  而してこの手続におきましては、口頭主義、公開主義をとり、真実の発見に慎重を期すると共に、警察及び検察庁の取調を同一場所で同一の日時に行えるようにいたし、更に特別の事情がない限り、裁判をもこれと同一の日時、場所で行うこととし、これまで三回或いは四回の出頭を要した手続を、一回の出頭によつて完結できるようにし、以て関係者の煩わしさを除外せんとしております。その他の点はおおむね略式手続と同様でありまして、被告人に異議があればこの手続を進めることができないこと、即決裁判確定前は何時でも正式裁判の請求ができること、又裁判所は何時でもこれを通常の手続に引直すことができること等、いずれも同様であります。又裁判の執行について特別の工夫がなされておりまして、現行刑事訴訟法には罰金、科料又は追徴を言渡す場合において、仮納付を命ずる制度が設けてありますが、本法ではこれを準用し、その条件を緩和し、容易にその利用ができるようにいたし、執行の確保と迅速とを期しておるのであります。  委員会におきましては熱心且つ慎重に審議いたし、地方行政委員会とも連合して審議をなし、又運輸業者、運転手、第一線の警察官を参考人としてその意見を聴く等のことをいたしました。質疑法案の全般に亘りかなり細部にまで及びましたが、その主たる事項を挙げますと次の通りであります。  各委員の発言で共通的に問題となりました点は、裁判手続を迅速簡易にやることは、慎重という点が閑却され、ひいては人権の尊重に欠くるようになりはしないかということであり、これに関連して第一線の警察官の交通取締の実情、特にそれがいわゆる点取主義、検挙主義の弊に陥つているとも思われるところに、更に本法案施行によりそれに拍車がかけられる虞れがないかという点や、送検の基準が妥当であり且つ適正に実施されておるかという点や、本法の手続が被告人の同意を前提としてその納得の下に行われる建前になつているが、実際上は被告人を威圧したり或いはその法律知識の乏しいのに乗じて強制に陥る結果となり、本法の期するところに反するような結果が起りはしないか。即決裁判という名称が過去の違警罪即決例を連想させると共に、この語感よりして審理が粗略に流れる危険が生ずる慮れはないかというような点であります。  これらの点については政府側及び裁判所等より、それぞれ説明があり、警察では外勤警察官についていわゆるメリツト・システムを採用している所はあるが、これはいわゆる件数主義と本質的に異なるものであつて、検挙主義や点取主義に陥る心配はなく、又そのような弊に陥ることのないよう戒めていること、交通違反事件の検挙については各人の判所により具体的に妥当な処置がなされることが望ましいが、半面その弊害も考えられるので、一応抽象的な基準を定め、或る程度機械的に処理する方針をとつていること、人権の尊重の点については、被告人がこの手続によることを希望することを前提としておるばかりでなく、検察官が必ずこの点についての被告人の意思を確めるし、裁判官とても同様であり、裁判官は公開の法廷においで終始被告人と相対して審理をするのであり、その結果に対して不服があれば、勿論審理の途中においても被告人は正式裁判の請求をすることができるわけであり、いわんやこの手続は、裁判官が被告人と面接してやるところに大きな意義があるのであつて、裁判官としては略式手続に比し却つて負担が加わるのであるが、被告人の人権を侵害する慮れは毫もないという趣旨の答弁でありました。  次に問題となりましたのは、本法施行に伴う人的及び物的の設備に関する点であります。事実本法案の完全実施には、簡易裁判所判事の増員と法廷の新設が必要でありますが、当局としては、この手続は略式手続に代るものではなく、これと並行して実施するものだから、漸進的にこの手続に移行することが考えられるので、実際問題としては設備の状況に応じて運用できるとの答弁であります。  その他少年の交通違反事件の取扱や、保護処分を受けた者に対する受験資格及び免許征又は許可証の交付に関する制限の有無等が問題として取上げられ、更に各本条について質疑応答が行われましたが、なかんずく問題となりましたのは仮納付についてであります。仮納付は裁判の確定前執行することができるので、この手続のごとくすべてが被告人の納得を前提とするものにあつては、被告人の意思を尊重して仮納付を命ずべきであるから、これに対する明確な規定が必要であり、ただ「相当と認めるときは」と規定するだけでは足りないのではないかという点であります。これに対し、仮納付の規定趣旨はまさしく所論の通りであるが、裁判の宣告の前に被告人の都合を尋ねることを法文の上に表現することは、単に法文作成の技術的見地からばかりでなく、却つて不合理な解釈を生ずる慮れがあり、結局検察官があらかじめ被告人の意思を確めて、即決裁判請求書に仮納付についての意見を記載する方法、及び「相当と認める」という字句についての裁判官の適正な運用への期待によつて趣旨は達成される旨の答弁がありました。その他多くの有益な質疑応答の詳細については速記録に譲ることといたします。  かくて質疑を終結し討論に入りました。討論におきましては先ず三橋委員から、「本法の実施に当つては、十分人権を尊重すること、検挙主義を改めること、事故の防止に重点をおくこと及び即決裁判が適正に行われるような措置を講ずると共に、担当警察官の素質の向上と受入態勢の万全を期することを強く希望して賛成する」旨を述べられ、ついで羽仁委員は、「法律は先ず原因の正確な把握がなければならない。交通事件は道路等の諸施設の不備や都市計画の不完全なことが大部分の原因になつているので、交通違反者には罪の自覚がないのが多い。かような状態で取締の方面のみを整備することは無意義である。又法律はどうしても必要がある場合にのみ制定さるべきで、而も濫用の虞れのないものでなければならない。然るに本法案は憲法上多くの問題を含み、これらの要請に反するものと言わねばならない。社会的、政治的の事柄が原因となつていることを裁判で解決せんとするものであるから、その裁判が適正に行われるこどを期待することはできないという理由で反対する」旨を述べられ、楠見委員は、「この即決裁判手続は交通事件を迅速に処理し、而も略式手続に比して丁重であるから賛成する」旨を述べられ、更に違反を防止することに重点をおくべきだから、交通秩序の遵守の方向に指導監督を指向すべきであり、予算の確保についても十分の努力を望む旨の希望意見を述べられました。更に棚橋委員は、「細部については意見があるが、本法案によつて裁判が長引く弊風を打破することにもなるので賛成である。ただ手続を簡単にするがため人権を粗略にするがごときことは絶対に許されないのであるから、その点特別に留意を要すること及び法廷等の施設の速かに整備されることを希望する」旨を述べられたのであります。  かくて討論を終りましたので、採決いたしましたところ、本法案は、多数を以て可決すべきものと決定いたした次第であります。  右御報告をいたします。(拍手
  39. 河井彌八

    議長河井彌八君) 本案に対し討論の通告がございます。発言を許します。羽仁五郎君。    〔羽仁五郎君登壇拍手
  40. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 我が憲法が我が国民に保障している自由と権利とは、「国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」これは憲法第十二条が我々に命じておるところであります。私はこの趣旨従つて法案に反対をするものでございます。  法律を作れば問題が解決するという考え方は、法律に触れなければ何をしてもよいという考え方と表裏をなすところの政治的責任感の欠乏を示している考え方であります。只今委員長からも御報告がございましたように、最近の交通事件の頻発ということは実に非しむべきことであり、我々がこの減小を願うことは国民すべての念願であります。然るにその原因は何であるか。只今も委員長が申されたように、毎月五十人ものかたが交通事故のために死亡しておられる。この責任は一体どこにあるのかと言えば、言うまでもなく、現在東京都内或いは全国に且つて都市計画の全くの無責任、無能、そして又道路の劣悪厭うべき状態、而も只今紅露議員からの御質問に対しても、政府は、道路整備に対して特に積極的にこれを実行する意思のないことを言つている。外国の例を引くまでもなく、東京都のように、高速の自動車、それからトラツク、三輪の自動車、自転車、あらゆる種類のスピードを異にするもの、そこに又歩行者が加わつて、これらが至るところで平面に交叉をしている世界的な大都会というものはございません。殆んど軽わざに類するような交通事情の中で自動車の運転手その他交通に従事されるかたは交通を行なつているのである。このことが如何に今日交通事件が多く発生し、そしてそこに犠牲者を発生するかの原因です。これらを解決しないで、ただ一片の法律を出して、この問題が解決できるというようにどなたもお信じになることはできまいと思う。然るにこの法律を以てこれを解決しようとする結果はどういうことが起つて来るか。これは先ず第一に、この法律自身が傷ついて来るということであります。この法律の手続を簡略にするということは、民主的な慣行があつて初めて許されることであります。戦前にも、我々は国民として当時政府がいわゆる裁判及び法律手続の簡素ということを言われたときに事実戦慄する思いがしたのです。民主的な慣行があるならば、裁判或いは法律の手続を簡略にするということは喜ぶべきことである。然らば今日民主的な慣行を警察及び検察、裁判に皆さんはお認めになりますか。二十八年度における警察官そのほか公務員による人権の侵害は実に二千件の多きに達している。交通事件だけに限つてみましても、人口において東京都よりも大きいロンドンと東京とを比較して見るのに、この交通事件に関してロンドンにおいて検挙されております数は二十万人に対して、東京において検挙されておる数は一百万人です。人口ほぼ大差なくして検挙数は五倍になつている。ロンドンでは人口百人について二人検挙されているのですが、東京では人口百人について十五人乃至二十人が検挙されているのです。これは如何に日本の交通業者が不当な状態で労働を強制されているかということがよくわかります。而もこれに加うるに、自動車の運転手そのほか一般労働者の生活条件の待遇ということが、日本では劣悪を極めているということがこれに附随しているということは言うまでもありません。こういうふうにしてやる結果は不幸にして、政府或いは警察の方面から、検挙主義ということはやらない、これは防止する、ということを幾ら言明されましても、我々は軽々しくこれを信ずべきではないと考えるのであります。  政府から提出されました材料を拝見しましても、例えば明け方の五時頃に、隣りには免許状を持つた運転手が附いていて、それで練習をしておつた人が、免許状を持つていなかつたからといつてこれを送検し、検事が検討した結果起訴猶予にしている。こういうような事件は決して昔の事件じやない、今年の二月にこういう事件が多々あるということです。或いは日暮れ方に二つつけるべき燈りの一つが消えていて、実害はなかつたのだが、これを検挙し、送検して、検事が検討して初めて起訴猶予を言渡している。或いは駐車すべきでない場所でお客が降りたために、すぐ次のお客の申込があつたので、これを乗せた。実際の実害はなかつた。これをやはり検挙し、送検し、検事が検討をした結果起訴猶予をやつている。こういうことが本年二月にも頻々として行われているということは、如何に今日、日本の警察が検挙主義の上に立つているかということを証明して余りあります。なぜこういうような検挙主義が日本に依然として存在しているかと言えば、これは種々の理由がありましようが、併し我々はこれをこういう民主的な慣習がない状況において法律手続の簡素ということをやるべきではありません。裁判の場合におきましても、委員長の御報告にもありましたように、略式手続というものにおいて、従来正式な裁判を請求した人は何人あるかというと、千人に一人しかない。これは略式裁判に満足して千人に一人しか正式裁判を請求しないのではございません。業者が明らかに説明されたように、正式裁判を請求するということは、よほど骨のある運転手でなければできないということを参考人として申しておられます。裁判官の前に出て、これでどうだというように言われれば、今日生活状況極めて低い状態に置かれている、又従つて教養も高くない、又さまざまな法律を詳しく調べるということもできない運転手その他の交通労働者の諸君が、裁判官からこれでよかろうと言われたのに対して、いや、私はこれには不服であると言い立てることを、我々は立法者として期待することは許されないと思います。  こういうように、警察においても、検察においても、裁判においても、民主的な慣行は不幸にして確立していない。そこで裁判手続を簡略にする結果は、必ず人権の侵害がそこに起らざるを得ないと断言する理由がございます。法案の名前に即決裁判手続という名前をどうしてとつたか。違警罪即決例、身の毛もよだつようなその連想がまだ存在している今日に、どうしてこの法律案の名前に即決裁判手続という名前を付けたのかという質問に対して、政府は確信を以てお答えになることができませんでした。これは名前だけの問題ではございません。今申上げたような原因をそのままにしておいて法律だけを簡単にやろうとする結果は、その精神において必ずやいわゆる即決主義というものを導く危険がございます。そうしてそこに設けられる法廷というものは、只今委員長のお言葉にもありましたように、新らしい裁判所を作るのです。そうして本法に言うところの公開の法廷というものは、憲法第三十二条或いは第三十七条に言うところの裁判所とはいささか形の異なるものであります。そこには弁護人もいないことができる。証人もいないことができる。諸君は、証人もいない、弁護人もいない裁判所で裁判を受けるということを御自身で想像されるならば、必ずや戦慄されてこの法律案に反対されるでしよう。ところが今これが問題は交通事件である。そうして正式の裁判の前段の裁判であるという理由を以ちまして、こうした憲法の保障する裁判所とはいささか違う裁判所を作られようとするのであります。私はこういう例を作ることがやがて交通事件以外の問題について、そうして又正式裁判の前段という場合でないところに、こういう裁判所ができることを深く恐れるものであります。そういうものができかかつてから、これに反対する勇気というものを持ち得る人は稀です。基本的人権の尊重、民主主義裁判の擁護ということについて、或いは私は神経過敏であるという非難を受けるかも知れないが、私はそういう非難であるならば甘んじて受けたいと思うのです。基本的人権についての敏感、民主主義裁判についての敏感なくして民主主義を守ることはできないと思うからであります。  而も最後に申上げておくのは、この法律案については、政府は良心的な予算措置を行なつておりません。最高裁判所の刑事局長は、何とかやれると言われましたが、経理局長は、甚だ困難だというように言われておる。これは裁判所並びに国会並びに会計検査院、これらの予算について独立の権限を持つておるものに対して、現在の大蔵省或いは政府が尊重するという態度のないことの現われの一つでもあります。  以上反対の理由を申上げまして、皆さんの慎重な考慮を願いたいと考えるものでございます。
  41. 河井彌八

    議長河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  42. 河井彌八

    議長河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は、可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十二分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第二 交通事件即決裁判手続法案