運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-05-31 第19回国会 参議院 法務委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月三十一日(月曜日)    午後一時二十五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 五月三十日委員棚橋小虎君辞任につ き、その補欠として松永義雄君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            上原 正吉君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            井上 知治君            楠見 義男君            中山 福藏君            三橋八次郎君            一松 定吉君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   参考人    日本弁護士連合   会代表弁護士  片山 繁男君    全国接収借地復    権期成同盟会代    表       山田新之助君    東京接収不動    産所有者連盟代    表       湯沢 光行君    弁  護  士 塩坂 雄策君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○接収不動産に関する借地借家臨時処  理法案衆議院提出)   ―――――――――――――
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から委員会を開きます。  本日は先ず接収不動産に関する借地借家臨時処理法案を議題に供します。  昨日の委員会における御決定によりまして、お手許に配付いたしました通りの四人の参考人方々の御意見を拝聴いたすことといたします。  参考人各位に一言御挨拶申上げます。  本日は非常にお忙しいところ、又参考人方々意見を聴取いたしますことの決定が極めて早急でありましたために、御予定等御不便をかけた段があると思います。只今委員会において審議いたしておりまする法律関係するところがかなり低く、いろいろな問題があると存じまするので、参考人各位から隔意のない御意見のお漏らしを願いまして、そうして本委員会が適正な審議をいたします上に十分な参考と相成りまするよう御意見の御開陳をお願いいたしたいと思います。  なお、御意見をお述べの時間はお一人大体三十分程度でお願いいたし、全部の方の御陳述が終りましてから委員各位からの御質疑をお願いいたします。  先ず日本弁護士連合会代表弁護士片山繁男君よりお願いいたします。
  3. 片山繁男

    参考人片山繁男君) この接収不動産に関する臨時処理法に関しましては、数年前やはり連合会衆議院法務委員会から意見を求められまして、そのときやはり委員の一人が委員会に出席いたしまして強く反対いたしたのでございます。その当時におきまする反対理由におきましても縷々申上げたのでありますが、その節のいわゆる趣旨は時期を失しているということが第一の理由であります。それから第二の理由憲法違反である、こういうことであつたのであります。昨年やはりこの議会開会中に本法案衆議院のほうから回付されまして意見を求められましたが、その節直ちに委員会を数度開きまして、いろいろ研究し意見を徴しました結果、やはり前年の意見と何ら変更すべき理由はない、殊に時期を失した点においてはすでに接収不動産が解除されつつあり、独立してから二年を経ている、それにもかかわらず更にこうういう法案を出して、いわゆる確定した権利まで変更するということは絶対に許されないことであると、こういう考え方の下に昨年も反対理由を提出しておいたのであります。ところが昨年の法案の十二条、十三条を削ることによつて建物についてのいわゆる借地権を、申出によつて借地権を設定するという条章を削除されたまま衆議院を通過したということを聞いて我々は甚だ意外に感じたのであります、法律専門家から考えます。と、本法案はいわゆる確定した権利を変更するのでなければ意味がないと考えられるのであります。又法案自体もそういうふうにできているように感ぜられます。そうだといたしますならば、憲法二十九条のいわゆる財産権侵害真向からやることになりまして、これは明らかに憲法違反であり、而も法は遡及しないという大原則を持たすものであります。連合会といたしましては一致した意見で一人の反対者もなく本法案は絶対に成立さるべきものではない、こういうふうな結論を先に申上げたいと思います。  なお、本法案が時期を失した点について御説明申上げますと、すでに本年で三年になりますが、いわゆる独立、日本が独立いたしまして、接収は解除されつつある。すでに解除されたもの、頂いた資料の統計によつてもかなり解除されていると見られるのであります。そうだといたしまするならば憲法十四条の法の平等ということにも解れると考えられるのであります。今日まで三年間、或いはそれ以上の問は確定した権利によつてすでに権利を復活さしている人達が、この法律適用されると同時にその人は不利益をこうむらなければならない。又この法律成立を考えなかつた人たちがすでに許されたものなり、許された権利なりと信じて他に処分し、或いは権利金を取つて契約しているものが、この法律施行されると同時にその権利を奪われるのであります。罹災都市借地借家臨時措置法という法律が、これも又問題の多い法律でありまして、しばしば憲法違反かどうかということさえ問題になつたのでありますが、この法律施行は、考え方によつては必要であつたのであります。なぜかなら、当時は未だ焼跡においては殆んど手を着ける人がありませんでした。建物も急いで建てようとする力さえ皆失つていたのであります。併しながら現在すでに復興いたしまして、殊に接収されたる不動産のごときは非常に価値の多いところが、多いのであります。そうだとしますならば、これらについて人々が非常な利害を感ずる。所有者或いは管理者、新たに管理者も出ております。そういう人たち権利を本法律施行によつて遡及してその権利棄すがごときこの法律は絶対に成立を許されないものであると考えられるのであります。  なお、本法案反対の大きな理由は、これらについて損害補償が与えられないのであります。権利を奪う反面において本法案が多大のいわゆる損害補償を与えるのでありましたならば、又考えられないこともございません。もともとこれが接収されるということはポツダム宣言受諾によつて止むを得ずいわゆる不可抗力と同等の力によつて奪われたのであります。そうだといたしまするならば、今日に到つて遡及してその権利を奪う場合には、現在いわゆる公定価格という問題でなしに、事実上取引せられている相当値段を以て補償を与えるということが与えられますならば、或いは考える余地があるかも知れませんけれども、本法案の中で三条、七条等に相当条件とか、或いは対価というような文字が使つてありますけれども、これはいわゆる補償には該当しないものであります。補償を与えているがごとく見られても、これは実際のいわゆる処分価格でもございませんし、事実上大きな損害をこうむることになるのであります。而してこの法案はいわゆる三条以下で定めてありますのを見ますと、途中接収中にいわゆる期限の到来して権利を失つたもの、及び対抗要件を失つたものについてこれを保護しようとしておるのであります。いわゆる旧土地工作物使用令これに基く権利失つた根本のいわゆるその根本権利がどうなるかということは何ら顧みようとはしていないのであります。ただ、接収中にいわゆる期限の到来したもの、そして権利行使のできなかつたもの、或いは接収中に対抗要件を失つたもの、この二つを保護しようとするのであります。根本のいわゆる問題は権利が眠つているのか或いは停止されたのか、どうしたかということは裁判所判決に任しているのであります。強いてこれを百歩譲つて解決しようとしまするならば、根本のこの権利関係について定むべきであつて、それもすでに時期は失しておりますけれども根本権利の確定は何ら顧みないで、接収中にいわゆる三つの原因によつて権利を喪失したものにだけ触れようとするものであります。これは我々が考えますと、いわゆる問題を大きく残すものだと思うのであります。そうしてお手許資料の第三でおわかりのように、すでに権利行使をした人たちは途中で訴えを起しております。そしてただ判決では出ておりまして、その判決によりますと権利は眠つていたものだ、こういう解釈をとつているのであります。裁判所は一致してその解釈をとつて判例としております。そうだとしますならば、権利が停止しているのでありまするから、本法案で一、二をあげつらつてこうして保護しようとしなくても、根本の大原則が、権利接収によつて停止したと解釈しますならば、大原則がそこに生まれているのでありまするから、何ら支障は来たさないはずなのであります。而して更に申さなければならんのは、罹災都市借地借家臨時処理法の十条がいわゆる昭和二十六年の六月三十日に至りまして、いわゆる登記がなくても対抗できた期限が満了したのであります。その後においては第三者権利を取得いたしまして登記をいたしますと、それは何人にも対抗できることとなつたのであります。それがために若しこの接収不動産のうちの罹災都市借地借家臨時処理法適用を受ける物件が含まれるといたしまするならば、そのものについては更に又不合理を生ずるのであります。これらの点からいたしまして各条章を研究するまでもなく、登記するまでもなく本法案は法の不遡及原則に反し、而も憲法の二十九条に真向うから違反するものであつて連合会といたしましては強く反対せざるを得ないのであります。  なお、これは余談のようでありますけれども、本法案の二、三を指摘して見ましても、これは罹災都市借地借家臨時処理法がもともと即製の甚だ不備な法律であつたために、各条承が実際の我利の適用に当りましては問題を生じまして、優先とは何か、或いは対抗要件とは何か、そういうことについて多々問題を生じたのであります。ところが本法案を見ますと、その罹災都市借地借家臨時処理法の不備な法律をそのまま踏襲しようとしているのであります。これは問題を更に大きく残すものだと考えるのであります。例えば第一条、第二条等を御覧になつても、これは第一条は目的を、第二条は定義を掲げているのでありますが、アメリカ合衆国日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約三条に基く行政協定を実施するため接収された場合というふうにし、第二条はすでに効力を失つている土地工作物使用令を引用しているのであります。このいわゆる肩書きの一口で言えないようないわゆる行政協定の案文を見ますと、非常に長い法律なんであります。これをそのまま何ら検討することなくそのまま引用した法律というものは、余り他に類例を見ないと私は考えるのであります。それからいわゆる第三条の中で賃貸借の成立時期とか、或いは対抗要件の問題とか、或いは転借人はどうするのか、それから権原による使用許可の問題、正当事由等は、一々我々は解釈に苦しむのであります。これは臨時処理法においても、常に問題になり、三つに分れた判例は多々あるのであります。殊に第四条ですか、第三条ですか、いわゆるこれらの法律でなく、実際に進駐軍同士が私契約を結んで借りてた。それが解除した場合も、本法を適用しようとするのであります。そういういわゆる事実行為を現在のそれによつて法律によつて律せられるでありましようか。私は甚だ疑問に思うのであります。  先ほど委員長から仰せがありましたが、急拠招集を頂きまして、この議案は昨年審議いたしまして、殆んど忘れてしまつたような関係で、不備の点はお許し願いまして、根本から連合会反対するということを申上げておきます。
  4. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 有難うございました。それでは片山参考人に対する御質疑をお願いいたします。
  5. 楠見義男

    ○楠見義男君 今お述べ頂きましたいろいろの事情の中で、最後にお述べになつたのは、進駐軍関係と私契約で以て賃貸契約等が行われたものにも及ぼされるのは不当だと、こういうお話があつたのですが、若しそうだと、おつしやる通りだと思いますけれども、この法律の犯つているのは、そういうことを犯つているのじやないと私どもは了解しておつたのですが、その点はどういうことですか。
  6. 片山繁男

    参考人片山繁男君) 第二条の第三号の「旧連合国軍土地又は建物をその所有者又は借地権者若しくは建物賃借権者から直接その占有に移した行為」こういうのがあるのですね。ずつと、この文章の解釈からだけ行けば、公の接収手続によらないものだと考えられるので、そう申上げたわけです。
  7. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点は、その行為については、第一条の目的がありまして、その目的からしぼつてやはり解釈するのが、法律の運用といいますか、当然の解釈だと私は実は理解しておつたのですが、そういう解釈は無理でしようか。
  8. 片山繁男

    参考人片山繁男君) 目的は勿論それでなければいけないでしようが、事火上いわゆる成規手続を経ないで直接占用に移して、やつた場合と、個人の家なんかもそういうものじやないかと考えて申上げたのですけれども、その前提が若しそうであれば、少くともこの書き方では目的さえそれであれば、私の契約でもいいと解釈できるので申上げたわけです。
  9. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからもう一点、御意見として御発表になつたものも書類としては頂いておりまするし、又今日重ねて御説明頂いたのですが、すでに確定した権利侵害するのだから、憲法違反になるという問題、それからこの点は一方罹災都市借地借家臨時処理法は、当時のまあ経済事情から見れば問題はあるけれども、止むを得なかつた点もあると、まあこういうことを附加えてのお話がありました。これは純経済的な観点と、純法律的な観点とをかけて行きますと、法律的に言えば、今の御所見のようなことであるならば、罹災都市借地借家臨時処理法もやはり憲法違反の問題は、本法案におけると同じようなことがあつたのじやないか、こう思うのですけれども……。
  10. 片山繁男

    参考人片山繁男君) 私はそう考えるのであります。やはり新らしく権利を設定するということは、法律によつては別の、反対の立場のものの権利侵害していることになつております。
  11. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからもう一つはこの権利侵害に対する補償の問題ですね、田とか公共団体がやる場合には勿論補償という言葉でやることになるのでしようが、ところが今度は民間同士の問題で、その場合に補償ということになりますと、要するに第三条の「相当借地条件」とか、或いは第四冬の「相当対価」とか、この「相当条件」とか或いは「借地条件」というものが通常社会通念相当補償と認められるようなそういう条件対価であるならば、それはその問題は解決するという考え方如何でしようか。
  12. 片山繁男

    参考人片山繁男君) それは私はいわゆるこの相当条件、例えば現在の取引価格まで引上げますと、他のいわゆる地代家賃統制令とか或いは他の法律真向から抵触して来るので、そのほうも又紊すことになりやしないか。だからポツダム宣言受諾ということに基くとすれば、国家がそれに対して補償を与えるならば別ですが、当事者間においてこの接収不動産にのみそういう法外な補償規定することは又弊害が起きて来るのじやないかという……。
  13. 楠見義男

    ○楠見義男君 まあ地代家賃等統制令のほうは、正確なことは私忘れましたが、二十五年の六月でしたか、以降のものについては例えばあの法律の九条とか或いは三十三条関係から行きますと、この場合には適用されるような部分が相当ございますですね、その関係から行くと地代家賃統制令との関係は成る程度無関係に考えていいという考え方もあるのですがその点如何でしようか。
  14. 片山繁男

    参考人片山繁男君) やはり裁判所なんかでも、統制は外れたつて事務所、学校或いは商店等の場合が十坪を越える場合には統制をはずしておりますが、そうかと言つて現在いわゆる統制価格の三倍以上は許されないものという解釈をとつているのです。
  15. 楠見義男

    ○楠見義男君 有難うございました。
  16. 一松定吉

    一松定吉君 ちよつと伺いますが、あなたのその憲法違反するのだとか、或いは法は不遡及であるのにその原則に反するとかいうことはよくわかりますが、ところが仮に、不遡及の問題は、それは別に遡及することができるとか、できんとかいうことの規定のないものは不遡及原則ということを言うのだが、法律遡及することができるという規定が設けられて、必ずしも原則に、反するからということはどうかと思うことが一つと、今一つ権利侵害する、成るほどすでに自分に還された土地を卸し者に貸してやる、第三者登記している、そういうような場合でもお互い話合の上で、相当条件相当対価を出すから貸してくれんか、よろしいといつてそこで意思が合致すれば、それは相当条件相当対価によつて権利を取得している者がよろしうございますということであれば、権利侵害するということにはまあならんわけです。本件のようなものは接収されたときに、いわゆるどうかというと強制的に接収された、だからして思うだけの損害賠償だとか補填とかいうものはなかつた。だからまあどうかというと泣く泣く接収されたわけです。それを今度は還してもらうについて、自分らもあのときに相当補償はもらえなかつたのだ、あのときに相当賠償を受けなかつたのだ、だから今度これによつて保護してやろう、これによつて今までの欠陥を救済してやろうといういわゆる同情的の規定だと見れば、必ずしもこれが不遡及原則に反するだとか、或いは既得権を害するとかいうことにはならんのじやないかと思うがその点はどうです。
  17. 片山繁男

    参考人片山繁男君) 今の個別的に話合つて補償を与えればという御意見ですが、この法律によりますと第一者と話合う機会は与えられていない、いわゆるその譲渡の場合は別ですが、譲渡の場合でない、いわゆる三条のような、ただ本来の所有権者が持つている場合については、それは一応権利が生じてしまうように、当然そうなつておりますと、第三者権利を設定しておればそれについて譲渡の申出ができるので、今先生のおつしやる通りになるかも知れません。それから一応借地借家臨時処理法が二十六年の六月三十日で登記がなくても対抗できるというものが、法律によつて期間の満了によつてすでに開放された。そうなりますると一応の権利が確定してしまつているのであります、所有権者……。それを今度侵すことになるから遡及するということを申上げたのです。
  18. 一松定吉

    一松定吉君 けれども譲渡の場合はそうであるけれども譲渡していない場合でも相当借地条件で貸借することができる、而も強制してやるわけでなくて、相当条件意思が合致しなければ断つてもいいわけだね。
  19. 片山繁男

    参考人片山繁男君) 条件がきまらないで、これは非訟事件手続法で、前の借地借家でもそうですが、条件をきめるので、それはおのずからいわゆる統制とか統制の三倍とかいうものに裁判所でやるのですから拘束されるのじやないかと思います。そうして借地条件ですからどうですか、その点は……。
  20. 一松定吉

    一松定吉君 それは今度は所有者拒絶意思を表示することができる。
  21. 片山繁男

    参考人片山繁男君) それは別な理由がなければいけないのでございましよう。条件が整わなかつたたけで拒絶はできないのでございましよう。
  22. 一松定吉

    一松定吉君 それが今度は「自ら使用することを、必要とする場合その他正当な事由がある」ときには申出を拒否することができるとある、その第三条の第四項……。だからして必ずしも強制して俺が元借地権かあつたんだから、どうでもこうでもがむしやらにこれを取上るというのならば、それは憲法違反のいわゆる理由になるけれども相手方の方が承知しなければ、正当の理由その他で君の申出に応ずることはできんということで取上げるのじやないのだからね。
  23. 片山繁男

    参考人片山繁男君) 今おつしやつた丁度それが「土地所有者は、建物所有目的で自ら使用することを必要とする場合その他正当な事由があるのでなければ」、「拒絶することができない。」とはつきりなつております。
  24. 一松定吉

    一松定吉君 それは表で、裏から言えばそれと同時に「自ら使用することを必要とする場合」があるのだ。おれにはこういう正当な理由があるのだといつて、その正当の理由及び自ら使用することを必要とする理由が認定されればこの申出は拒絶することができる。
  25. 片山繁男

    参考人片山繁男君) それはそうです。ただ罹災都市の場合の法律解釈から申しますと、権利は当然設定されたのだ。三条によつてそれが正当な理由があれば、それを立証すれば、それを判断して裁判所はそれを停止させられるけれども、一応は権利の設定が当然できるのだ、こういうふうに解釈しているようですが、若しその解釈が同一だつたら不遡及原則を害することになると考えます。殊に明渡し借地法借家法と同じ理由で自己が使用する正当な場合とあります。二重の制限を附しておるので、これはなかなか困難なことだと思います。
  26. 一松定吉

    一松定吉君 この法律はそういうような、つまり強制的に取上げられたとかいようなものが、思うだけの損害賠償されていなくてそういう目に合つたのだから、それが平和回復の後において返された。それならば初め意思に反うて取上げられたものを今度は保護しよう。それについては今あなたのおつしやるように登託しておるので、すでに権利を得ておるものを侵害することはそれはよくない、或いは憲法違反になる、或いは不遡及原則に、反するから、それではよくないから、お互い意思の合致で相対ずくでこれを認めることはいいじやないか、こういう趣旨にこれはできているのだがね……。
  27. 片山繁男

    参考人片山繁男君) 私はそう解釈できないのでございます。
  28. 一松定吉

    一松定吉君 そこは意見の相違だから……。
  29. 片山繁男

    参考人片山繁男君) そうしてそれが必ず全部、先生のおつしやる通りだとしましても、これまで三年間放置して後に、これから接収されるものだけがこういう負担を受けるということは、一方から考えればそれはいわゆる法の平等に反するのではないか……。
  30. 一松定吉

    一松定吉君 それは放棄しておつて諦らめて、こういう法律がなければもう泣寝入りになるのだよ。こういう法律をこしらえなければ、あなたのおつしやるよ、うにもう所有権賃借権もなくなつているからいいが、そういうものがかわいそうだから、いわゆるそういうものに救いの手を伸ばそうというのがこの法律で、この救いの手を伸ばすには、憲法違反にならない、第三者既得権を害しないように承諾ずくで、賠償ずく相手方の承諾できるような条件で譲り受けよう、こういうようにこの条文はなつているのだがね。だからしてあなたの言つたような、原則としては憲法違反のことであり、不遡及原則に反することであり、裁判所をしていりいろ混乱させるということはよくないということであるけれども、今言うような苦境にある人に向つて国家救いの手を伸ばそうということであれば、こういう立法も必ずしも不法、不当とか、或いは憲法違反ということにはならないのではないですかと、こう伺うのです。
  31. 片山繁男

    参考人片山繁男君) これは三条の「他の者に優先して、相当借地条件で、その土地を賃借することができる。」そうして賃借権をここで一応設定してしまつておるのですから、これはお説のような解釈には行かんのじやないか、こう考えるのですが……。
  32. 一松定吉

    一松定吉君 私はこれで……。
  33. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 片山参考人は午後二時から用事があるようでございますから、それではどうも御苦労様でございました。  次に、全国接収借地復権期成同盟会代表山田新之助君にお願いいたします。
  34. 山田新之助

    参考人山田新之助君) 私どもは今日借地人のほうを代表して出よという御命令によりましてまかり出ましたわけでございます。  実は私どもがこの会を組織いたしまして、そうして運動に着手いたしましたのは、丁度三年ほど前でございまするが、各地におきまして、地区々々におきまして東京の一部でも皆いずれの地区地区において接収せられた当時の東京都、或いは道府県等におきまして皆いずれも地区別にこれが復権の運動をいたしておつたわけでございまするが、それにつきまして当初は、一番初めは、国会に請願いたしません以前は、この東京都及び特別調達庁のほうに対しまして陳情をいたしたのでございまするが、特別調達庁のほうでも非常に御同情になりまして、又東京都といたしましては安井都長官も非常に御同情に相成りまして何とかしてこれを救つてやりたい。これは焼けた当時の悲惨なる状況又強制疎開の、第一に重要なる施設等を守り或いは戦災を最も少くしたいというため犠牲になりまして、勝つために疎開をしたのでありまして、何とかして救つてやりたい。又特別調達庁の根道長官もこれ又御同感でございました。でありまして、丁度ときが講和発効の前でございましたので、私どもだんだんとこの地区的の運動がまとまりまして、そうしていずれも地方毎に上京して参りまして、特別調達庁にお願いしたのでありまするが、何とかしたいというので丁度講和発効と同時に当時は不動産提供法というような仮の名前をつけておりましたが、現在は日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する法律案、こういう法律になつておりますが、その中に我々を救うべく大いに努力いたしたのでありまするが、遺憾ながら法務省の、反対にあいまして、そうして今日までこういう、ふうに私どもは血みどろの陳情を続けまして、そうして十三国会より今まで連日連夜商売をすつぽつて何とかして数万の人を救いたい、かように考えまして今日まで私どもは運動を継続しておつたのでありまするが、ときに私どもは特別調達庁だけではなく本日御臨席の阿川第二課長さんのところに、法務省に参りまして再三陳情いたしたのでありまするが、如何とも……、公文を以て長官のほうで、これ以上はどうしてもできない、あなた方がやるならば議員立法でやつたらどうかというようなお話でございました。そこで東京選出その他各県の所属の代議士のところに参りましていろいろお話を申し上げたのでございます。ところがこれは誠にお前たちは気の毒だ。戦争の犠牲者でありましてそうしてこれが解除の場合、だんだんと解除に相成つて来るわけでありまするが、解除の場合になりまするというと、ここに私どもは強制疎開……。即ち焼けた場合におきましては、ここに相当に保険金もつけられるのでありまするけれども、これ又特殊預金と相成りまして五万円以上は政府に没収に相成りました。又強制疎開におきましてはこれは初めの頃は非常に緩漫でございまして、一週間ぐらいの時間であつたのであります。私どもが強制疎開をいたしましたときには二十四時間でございました。突然に参りまして、麻布の軍隊から大変な軍隊が出動して参りまして、柱に全部縄を付けまして、柱を切断いたしまして、そうして二個中隊ぐらいがロープを以ちまして全部引倒す。我々は営業は勿論のこと、もう常業権どころの騒ぎではないのでありまして、風呂敷包を持つて表に飛出す。そうして区役所からそのほうの係の人が参りまして、お前たちはともかく勝つためには止むを得ないじやないか。ここを疎開しなければ若しやのことがあつた場合には大変大きな災害が起るから、お前たちは犠牲になるのだ、併し戦さに負けたんじやしようがないからというので、私どもは言い含められまして、泣く泣く……、前のほうを見ますと盛んに商売をしておる。我々は商売がないのですから前のほうは繁昌いたします。強制疎開を免がれている所は盛んに商売をしているけれども、私どもは本当に草分けからおりました人間で、ございましたが仕方がありませんから泣く泣く荷物を持つて強制疎開のために立退くといつたようなことになつたのでありまして、その間誠に実に情けない話でありました。  大体これは接収地区といいまするのは比較的場所がよろしい所でございまして、あまり悪い所は進駐軍が接収いたしませんので、いい所でございまして、いずれも中小企業のところが大部分でございますが、私どもは今日その土地におりまして信用もありまするし、海岸の附近でありまするから、海に関係した商売ができますのですが、七十万坪に亘るところの厖大な地区接収いたしまして、海岸三百メートルは船を寄せつけないというために商売ができない。そういつたような状態でありまするが、今日これが接収が解除に相成りまする場合には……。私ども誠に悲惨のどん底に、地獄といいますか、焼実弾、爆弾が落ちまして命からがら、そうして又強制疎開等によつて営業はなくなる、いる所はなくなつて、路傍に迷う。そういうようなたくさんの人の犠牲においてこれが接収解除の場合になりますると、私ども地区的に申上げてどうですか……。御参考にちよつと申上げますが、芝浦におるのでありまするが、これは約全部で一万坪であります。土地の所有主は大阪の小畑忠良さん、その管理地であります。その他大蔵省財務局管理課の持分であります。これは相続税で手放した人が相当ございます。そこが接収されておりまして、借地権があるところを無理にどかされ、そうして僅かばかりのお金を頂戴いたしましたが、これ又三千円だけでございまして、あとは特殊預金、これもその当時において一万円で、これは私どもはもらつた形式に相成つておりますのでありまするが、事実はさようなことであります。そうして地主さんにあげた場合には坪当り三万円ぐらいの地面が浮上がる、そこは借地権がないことになりますので、これで新聞を見て芝浦接収解除、こうなりますると一人で二億円、三億円の金が舞い込むのであります。戦争の被害のどん底に追い込まれて、そうして私どものようなものが職を離れて或る者は学校の小使いをし、或いは日雇労務者になり、或いは奥さんは、立派な商人でありましたが奥さんはおでん屋の女中をしている、こういつたような状態に追込ましているその犠牲において、一夜にして数億円の金を受けるということは、戦争のこの悲惨な状態を犠牲にして莫大もないところの利益を得るということは、社会の思想に及ぼしまするところの関係もどうかと、又一面社会通念の上から申しましても如何かと、かように考えまする次第なのでございます。私どもはかようなわけで僅かばかりの金を握つただけでありまして無理やりにどかされて、父祖伝来の営業を放つてしまつて、一銭の常業の補償をもらつたこともございませんし、そうしてこの借地権利の補償金のごときはもらつたものもある、もらわないものもある。そうしてお金を、頂いたものは整理がつきまして確か昭和二十四年と思いましたが、その頃は坪二十円や三十円の借地権利を頂いても、その東京都から頂いたのは戦争が過激なために事務が遅れましたので、お調べになればわかりますけれども、戦争が終つて暫く経つてから頂きました。そのときはすでに物価は三百倍に暴騰してしまつて、大部分の人は二十坪や三十坪の中小企業の方々で、権利をやるから取りに来いと申しましても、七百円や六百円をもらうのに茨城県、千葉県から汽車に乗かつて往復の汽車賃を払つて弁当を食べてそうして来たんでは引合わない。恐らく取りに来たい人が大部分でありますので、ところが或る期間に取りに来ないものはもう新聞に公告をして、そうしてこれをやつたものと見なして処理すると、こういうので、法的には全部もらつたことに相成つておりますけれども、もらいに行つたものはいない、もらいに行つたところで引合わない。こういつたような状態に追込まれているのであります。でありますので、私どもはこれは何とかして一つまあ救えないものかと思いまして、実は私どもの仲間には弁護士もおります。多数おりまするから、又法律家も学者もおりまするし、いろいろございます。私は商人ではございますけれども、実は特別調達庁の不動産の審議会の委員もいたしております。又建設省の住宅対策審議会の委員もいたしておりまして、現在物価庁がないわけでありまするから、地代家賃統制その他賃借関係土地建物については一切建設省でやつておりますので、私はその点につきましては或る程度までは勉強しなければならんというような立場にありますので、研究はいたしておりまするが、余りにもこれは不合理である。これは当然我々のほうに返るべきであるというのでありまして、私ども衆議院におきましては四百六十六人の方に、まあでき得る限り多数の方にお目にかかりまして、幸いにまあ全会一致を以ちましてこれが通過をいたしましたような次第でございます。私ども法律家もおりますので、いろいろ研究をいたしてみまして、私どもの伜も法学士でありましてよく研究いたしておりましたが、これは憲法違々々ということをしばしばこの法務省、弁護士会のほうでおつしやるようでございます。けれども、これは甚だ私はどうかと思うのでございますが、この点につきましても私はいろいろ自分の職務の関係で調べておるのでありまするが、現在もすでにその罹災都市借地借家臨時処理法というのは現在も現存いたしておりまして、今日にもちよつとした火事があれ、ばその適用を受ける、又風水害等におきましてもこの適用を受けることに相成つておるのであります。そして私が岩波書店の大法全書をひもといて見まするというと、この憲法改正になりまして、昭和二十二年に第二十五条ができました、この臨時処理法であります。そうすると戦災でなくとも火災、震災或いは風水害等におきましてもこの臨時処理法を現在適用を受けつつあるのであります。そして臨時処理法も政府が出した案でございます。この追加も政府が出した追加でございます。そうしてこれは焼けましても、普通の火事で焼けましても、保険金も取れる火事でありましても、やはり借家人が借地権利を得るということになつております。丁度罹災都市借地借家臨時処理法で戦災と同じような適用を五年間受けることになつておるのであります。そうすると私ども現在この法案を拝見いたしますというと、借家の人は借地は得られない、それだけでも善意の第三者侵害は少いわけであります。これはすでに今日まで、昨年の締切りであります。全書を見ますというと、昭和二十二年の二月の二十日には能代市の火事に適用されております、二十五年の四月三日には熱海に適用されております。同月十三日の火事にも熱海が適用されておるわけなのでございます。それから同じく二十五年五月十三日には長野県の上松町にこの適用を受けておるのであります。越えて二十六年六月一日には秋田県の鷹巣町に適用を受けております。又二十六年十二月十六日には三重県の松阪市にこの適用を受けておるわけであります。それから又二十六年四月十七日には鳥取県鳥取市においてこの適用を受けておるのでございます。そうして我々のほうが善意の第三者侵害のために、これは憲法第二十九条においてこれは違反するというようなことを言つておる方が自分の出したものは憲法違反じやない、堂々と今日この法の適用を行なつておる、たまたま我々のほうでそれよりもずつと引つ込めてそうして借家をどいて出たものが大なる憲法違反であるという論拠は甚だ私は当らないと思う。どういうお考えでそういうことをおつしやるのか。私が六法全書を見たのは二十六年四月になつておりますが、その後においても恐らく二十七年二十八年というものは、昨年の風水害においてもこの適用があつたのだろうと私は思うのであります。そこで実際問題は、理論はいずれでもございますが、果して現在の接収地区におきまして、大体接収地上区の問題の現在問題になつております地域は都会でございます。そうして都会の土地を買うという場合におきまして、実際において接収地区においての善意の第三者があるかどうか、歩つてもこれは九牛の一毛であろうと思うのであります。この罹災都市借地借家法の適用は初めは昭和二十一年九月十五日からでありますが、戦争のために失い、或いは強制疎開のために失いました土地は莫大もない土地でございます。それが昭和十八年から戦争の被害を受けております。そうして昭和十九年からは盛んな強制疎開が実行されております。その終戦後におきましての土地の売買、借地権利の売賞というものがたくさんにありました。これは五万とあつた。従つてあとから天から降つて来たのは即ちこの臨時処理法でありまして、私ども土地を買います場合には耕地は黙つては買いません。そこに新地があつた場合においては、これは前に借地人があつたかどうかということを一応調査するというが常識であります。又この土地は区両整理の地区に入つておるのじやないかどうか、又道路改正或いはその他についての予定の敷地ではないか、こういうことも考えて買うのが、これは自分が命から二番目の金を出して一生そこに住まおうというような計画を立てます場合に、思惑は別であります、これは相場であります、ばくちでありますから……。それを実際に使用せんとするものは十分に調査するのがこれは常識でございます。特にこの進駐軍の接収と申しますものは、全くあけましてもなかなか発表いたしません。これは私特別調達庁におりますのでわかつておりますが、これはあいてそうして完全に綺麗に新地にしなければ発表いたさないものであります。前からあけるということを言つたものはございません。又現在この接収地区の新地と申します都会にありますものは、いずれもビルディングの中に、事務所を設置、進駐軍がおるとか或いは又いろいろな関係でモーター・プールに使うとか、或物間場であるとか、或いは荷揚場であるとかいうような所に使うのでありまして、これにはいずれも、バリケードを張りまして、そうして実弾をこめた兵隊が番をいたしております。これを買うのに新地と同値で買うというものはあろうはずはございません。嘘です、絶対に……。私は調べたのでありますが、東京、大阪、名古屋、それから横浜等調べましても、恐らく善意の第三者というものはございません。民法上によりまして、名義が変つておれびよいというので、故意に自分の親戚とか社員に代えた実例はありますけれども、真に市場の場合においても売買された実例というものは誠に少い。皆無といつていいのでありますが、理論の上から言いますと、それはいささか議論があるようでありますが、いま一方において罹災都市借地借家臨時処理法において、こうして今日にも水害があり、風害があり、そして地震、火事であつても救われるというのに、これが何で憲法違反なのかと私は考えるのであります。これは自分が作つたものは差支えないが、他人が作つたものはけなすこういうようなことに相成るのではないかと私は考えるのであります。甚だこの役所というものは現在実にどうも問題の焦点に相成つておりますので、私は大いにこの点につきまして疑惑を持つものであります。  それから又土地収用法から参りましても百五条と百六条におきましても、これが公園或いは又鉄道の敷地にこれを取りましても、これが要らなくなつて返す場合においては、この権利は元に返るという法律になつております。でありますから私はどの論点から参りましても、実際論から行きましても、又理論の上から参りましても、これは当然私は主張できるものの筋合いであると考えまして、そうして相当他から、注意があつたのであります。これは或る関係の私の実は友人でございまして、法務省に長くおつた方がありまして、こういうふうに特調に省議をつけて出したものはなかなか面子の上から譲れないのだ、だからこれはなかなかむずかしい問題だからということであつたのであります。併しこれは出すのならこういうようなあわれなる人、こんな誠に情けない、実にどうも涙がこぼれて全く気の毒な人であります。こういう人たちが全国に数万おるのであつて、この人たちの犠牲において、そうして一夜において数億円の金を儲けるということは果してどうであるかというので、夫は私は商売をおつぽりまして、実は自分の家内は胃潰瘍で入院しております。でありまするが、家へは帰りません。何とかして救つて上げたいという考えで、私は実はもう一生懸命になつて飛んで歩いております。  で、ここにおいてちよつと一言申上げたいのでありまするが、私は又一面におきまして全国貸家組合連合会の会長をいたしておるのであります。この会はこれは借地人もおりまするし、地主もいるのであります。従つて現在の会員、役員中には無論利害半ばいたしておるのであります。で役員会にかけたところが、これは譲歩すべきである当時の実情を考えて、あの戦争の悲惨なる状態、あの強制疎開のみじめな状態、あの状態を考えたならばですね、これは自分の欲得を言うべきでない、こういうふうなわけでありまして、全国的にこの法案に対して賛成をいたしまして、会長一生懸命やれ、こういつたようなわけで、これは殆んど資産階級でございますが、こういうようなわけでございまして、私はどの点から参りましてもこれは決してやましくない、こういう立場から私はやつておるのでございます。誠にどうも参議院の法務委員先生がたには私どもが実はお目にかかつて詳しく申上げたいと存ずるのでありまするが、何分にも会期が切迫いたしておるような状態でございまするのと、いま一つは非常な重要法案がございますようでございますので、お忙しいので現しくお目にかかつて申上げる機会会がございませんので、廊下において誠に御迷惑と存じましたが、立話で以て陳情或いは実情を御説明申上げる程度でございまするので、以上はそういうようなわけでございまして、決して憲法違反でないことは明らかでございます。  いま一つ申上げたいのでありまするが、何分にもこれはまあ資産のほうの階級に属しておる人間でございますけれども、併しこの土地建物の賃借関係になりまするというと、いずれもこの善意の第三者というものは昭和二十一年九月十五日の発令の臨時処理法、このくらい大きな恐らく第三者の利益の侵害はないのでありまするが、併しもつと遡りまするというと明治四十二年の建物保護伝、この法律施行に当りましては、それまでは地震売買と申しまして地主の権利というものは莫大もないものでありましたが、これが封じられまして、その時の地主の権益というものは恐らく九〇%は削減されました。続いて大正十年の借地借家法、それから続いて二回の改正におきまして地主、家主というものは、これは権利というものは殆んどなくなつたわけであります。従つてその間におけるところのたくさんの土地を買い、家を買つた人はそこに権利侵害というものが起つたわけでございますので、これはどうしても社会を構成し、或いは産業経済或いは政治という問題の立場から参りますると、この大正十年の借地借家法は別としまして、この建物保護法を作らなかつたならば、今頃恐らく政治経済ともに大混乱に陥りまして、そうして恐らくこれがどうなつたかということは想像にかたくないのであります。即ち地震売買というのでございますが、これを封じたのであります。でありますから農地法は勿論でありますが、どうしても私の考えではこの家主、地主というものはだんだん世が進むに従いまして、或る程度のこれは損をすることは覚悟せなければならんということは、私がお世話いたしておりまする全国の貸家組合法によるところの貸家組合におきましてもよく了承いたしまして、この法律ができまする場合、如何なる法律ができましても決してこれにあえて反対するものじやございません。まあ恐らく最近においても又或いは借地借家法の改訂があるのではあるまいかと存ずるのでありまするが、相当権利金も高まつて参りましたので、その必要が叫ばれておるのでありますが、決して私ども反対するものではございません。  まあ以上申上げましたような次第でございまして、どうか一つできますなれば私に御質問を頂きまして、私のほうが悪いというならば私は決して皆さんの袖にすがつて、そうして私はもうお願いをいたしません。こういう会をお開き下さいまして誠に有難い次第でございまして、私に対しましてどうか一つお話がございますれば、私は是非ともお答えをいたしまして御了解を願いたいと存じます。  ここでもう一つ、これは御参考までに申上げたいのでございまするが、これはあの強制疎開におけるところの実例でございまするが、これは芝浦の土地が実は大阪の元企画院副総裁の小畑忠良さんという方が二万坪を一千万円で貸したのでございます。もう数年前……そうしてこの土地の地主は有名な越後の中野貫一と申しまして石油王であつたのでありますが、これが大変手違いで没落いたしまして借金をいたしまして、この一千万円の金を借りてとうとう返せない。代物返済をいたしまして……、ここに謄本を持つて来ておりますが、代物一返済によりまして小畑氏に入つてしまつた。その二万坪のうちの七千坪が現在接収地区でありまして、これは現在この接収地区は……、今日特別調達庁の方はいらつしやいませんが、特別調達庁の方にお聞きになればわかりますが、六十二円五十銭の地代を特調から払つております、小畑さんに……。そうして接収にならざる所、その反対側の、道路から一方こちらは焼けなかつたのでございまして、焼事弾が落ちなかつたのでございますが、でありまするから地代家賃統制令でこれは七円九十銭、そうして特調が払つておりまする金は六十二円五十銭、これは事実でございます。私がきめたのでありますから……。これは大いに同情があるのであります。この接収という問題はまあ一方地代家賃統制令りと申しまするものは、これは家主、地主に対しては、不利益でございまするが、併しこれは戦争前の土地建物で、而も住宅に限るのでございまするから、これは先ず自分に家があつて貸しておくのでありますから、相当なる理由があるならば、家がなければその貸家に入れるのでありますから、家があつてこの家を貸しておくのでありまして、而も買つた代金或いは建築資金というものは非常に安かつた、恐らく土地においては二十円、三十円ぐらいの土地じやなかつたかと思う。建物は大概五、六十円ぐらいでありますから、安くてもこれは我慢していなければならん、一方これを上げますというと地代家賃統制令を改訂いたしましてこれを現在の市場相場にいたしまするなれば、これは非常に賃金ベースに関係ある、俸給生活者に大きな影響を及ぼすから我慢をしてもらいたいというので、建設省の住宅対策審議会に対しまして各方面から地代家賃統制令の改訂の陳情がございますけれども、私どもはこれはよくないというのでありまして、従つて若しやこの接収がございません場合でございましたならば、やはりこれはやれなかつたのでありまするから七円九十銭、そのために小畑さんは坪当り五百円くらいで買つた土地が毎月六十二円五十銭の収入がある。そしてこれが接収解除になりまするというと、これは三カ月間は整地をいたしまして大体において涙金として、お別れ金といたしまして特調から出ておるような次第でございます。この場合におきましては土地に余り傷がない場合には、三カ月も一カ月もございますが、大体三カ月くらいの見当でお支払いをしておるようであります。従つて地主はこの戦争のために現在までも地代家賃統制令の数倍の地代を徴収して、そうして非常にこれは恵まれておつて、且つ又この接収解除の場合においては一晩において数億円の金を取る。五百円で買つた土地が三万円である。こういうことは、これは人が儲けることを決して私は羨むものじやございません。これは経済活動において当然のことでございまするが、我々もこの戦争の悲惨なる状態、このなげかわしいところの戦争に追い込まれた大なる犠牲者によつてこの一部の地主が莫大もないところの利益を得るということは、現在の思想の問題においてどういうものかということを考える次第でございます。  誠に私はどうも申訳ないことをいろいろ申しましたが、私はもうどうかして一つこの法案を作つて頂きたいという念願以外にございませんので、この実情を一つ御調査下さいまして、私どもの請願陳情をいたします次第において、お前のほうが悪いからやめろとこういうような理由通ります場合だつたらいつでも喜んで引下る次第でございます。どうか一つこの点をよろしくお聞きとりを願いたいと存ずるのであります。誠に有難うございました。
  35. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 有難うございました。  次に、東京接収不動産所有者連盟代表湯沢光行君にお願いいたします。
  36. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) 只今委員長から御紹介がありましたように果して私が代表という名を以ちましてこの席に臨みましていいかどうか甚だ疑問でございますけれども、私昨日会社の要件で出張しておりまして、今朝私の自宅のほうにお電話がございまして、急遽私どもの集つておりまするところに非常電話をいたしまして御相談申上げたところ、先ず折角そういう機会でもあるし、会期ももう僅かのことであるから出てお話を申上げたらどうかと、こういうふうなわけでございまして、特別に草稿を作つて参りましたわけでもございませんし、用意しているものもございませんので、申上げることに齟齬いたす点があるかと存じますが、私どもの申上げますことは、一応反対陳情といたしましてガリ版で刷りましたものをお手許に配つております中に殆んど要約されているわけでございます。  先ず先ほど何か弁護士先生からお話がございましたように、終戦後九年になつて、つまりこうしたことがいわゆる政府立法ではなしに議員立法として提出されて云々という、而も衆議院におきまして何国会かこういう問題がありましたときに、私どものほうには一度も公聴会と申しましようか参考人と申しましようか、そういうふうなお呼び出しを受ける機会を得ずに今日に及んでいたわけで、その点参議院が御多忙の中に我々を呼び出して頂いたということについては、私どもとして非常に有難くまあ感謝いたす次第でございます。  結論から先に申さして頂きますならば、私どものほうといたしますと第十二条を削除して欲しい。或いは又第十二条に対しまして次の要旨の但書を加えて頂けないものかどうか。それは国であるとか、或いは公共団体が強制疎開に当りまして、その借地権を含めて補償したものについてはこれを除く。こういつた意味の但書が附されないものであるかどうか。更にもう一歩を進めまするならば、すでに現在芝浦のごとき接収中のものにつきましてはこれは別でありますが、接収解除になりまして一般の人間の手にそれが移つておるというふうなものに対してはこれを除く、解除後のものについてはこれを別な角度で本法案を取外すというようなことを是非参議院の皆さんの御解釈によりまして御配慮頂きたいとこう思うのであります。私どもとすれば世の中に随分いろいろな意味の不合理があると思うわけでありますけれども、理窟で解決できることと、それから或いは人情で解決できることと二つの面があると思うのでありますが、先ず法治国民として常識的に判断いたしまするのは、その国家が定めました法律を遵守いたしまして、これに則つて行動をとる以外にはないのじやないか、こういうふうにまあ考えるわけであります。  それから私の具体的問題につきまして申述べまするならば、私は新宿に親譲りの土地を多少持つておるものでございますが、昭和二十年の四月に第六次の強制疎開が行われまして、そうしてその建物が除去された。その後終戦を迎えまして駐留軍が入つてつて、そこがモーター・プールに使用されたとこういうふうなわけで、ございまして、新宿と申しまするのは、まあ今日東京でも盛り場の一つとして十分認識されているところでありまして、その後のいろいろな関係で非常に復興も早く、バラツクなども頻りに建ちまして、その後の関係においてはどんどん復興して参つたわけであります。併しながら私どもは至上命令によるところの駅留車が接収しておるのでありますから如何ともしがたい。併しどうなつて行くのであろうというようなことで、私どもはその後弁護士先生方といろいろ御相談してしておつたわけであります。借地人の方もおつたわけでございますし、私のおりましたところは住居は元のところと変つておりませんので、或いはそういうふうな方たちからいろいろの意味のご希望や申入れがあるのではないかとこう思つておりましたところが、文書で申入れの方もなく、又その処理法の二十一年七月一日から五カ年間の間にたつた一度のつまり御挨拶と申しましようか、まあ御挨拶を頂戴した人もなかつたわけであります。そうして私とするとその旧処理法の中に、ございました公共団体が、これを所有し又は賃借している場合はこの限りでないという但書の項目がございますので、最初東京都、後に特別調達庁というところから地代を頂戴しておりましたので、私どもはこの処理法第九条の伺書が樋門されているものであるとこう解釈いたしたわけであります。そればかりかそれを除きましても、その次におきまして五カ年という相当長い月日の間にまあ文書によりまするところのことはおろか、口頭におきましても一回のお申出もないというので、そうしたものに対しては借地の意思がもうないと、こういうふうに断定せざるを得なかつたわけであります。なお更に加えまするならば、私どもだけの関係について申上げる以外にございませんが、当地は強制疎開地でございまして、強制疎開地に対しましては東京都が当時の防衛局長その他の命会によりましていわゆる借地権というものを買上げておる。これは第五次まで非常に明かでございまして、第六次が非常に不安定でありましたので、いろいろ東京都その他へ問い合せまして調査いたしました結果、第六次は戦局が非常に苛烈であつたために、いわゆる建物除却費というものと借地権というものを一緒くたにしてしまつて一つのものの枠にいたしましてそれを支給しておつた。併しその中に明らかに借地権が含まれているのだ、こういうふうなことが東京都の証明によつて明らかとなつたわけであります。一方私どもの地主という立場は、私どもから申しますならば、或いはこれも世の中の趨勢で止むを得ないことかも知りません。けれども或る意味で言うと、税金を納めるための一つの道具である、借地人側との間に立ちまして地代をそのまま税金にかけるというような立場の媒介機関のようなものが実際の実情でございます。併しながら一方にそれだけのものを持つておりますと、やはり財産税であるとか何とかいうふうな意味の税金は、これは当然かかつて参りまして、終戦後そうしたものを切り抜けて行かなければならないというような実情にあつて甚だ迷惑したわけであります。それでその結果は或る人はその土地を他へ売り、或る人は又そこに抵当権というものを設定して、金を借りたりその他いろいろな方法によりましてこの借地権がないということが明らかに、つまり今申しましたような常識的判断に基きましていたしたものの中に含まれておりまするので、それに則りましてそれぞれの対策によつてそれを切り抜ける方法をとつて参つたわけであります。而ももう一つの例から申しますれば、そのときにおきましても勿論常識を以て判断するならば、ピストルを持つて駐留軍のガードがおりますところの土地と、何でもない更地の土地の値段というものは違うと考えられるのであります。けれどもやはり借地権がないのだ、この通りの証明によつてないのだというようなはつきりした都その他公共団体の文書その他いろいろなところの説明がありまするならば、勿論普通の更地の場合よりは安いであろうとしまして第三者がそれを買うわけでございます。そうした行為が二、三AからB、BからCというようなもので行われたことも往々私どもの中にもあるように聞いておりますが、そうしたものが今日例えばそうでなくなつてしまうというふうなことになれば、これはどういうことにつまりなるのか。国民が法律というものに準拠して動こうとして、その法律を見て我々は弁護士さんや何かと相談しながらやつて来たものが、これがどうも少し云々であつたというようなことでしたならば、安い抵当権を設定したやつがもう金を払わないといえば、その抵当物が流れても流れたときには借地権がくつついておる、こういうようないろいろな現象が起きて来ると甚だ、詐欺ではないのだけれども、変なことにつまり相成るのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。法の不備みたいなことがあるのかどうかわかりませんが、若しそうしたものがあるとするならば、それは国家補償すべきものである。戦争によつて随分の不公平があり、私なども肉身の者をやはり戦地に送つてなくなしているようなものもあるし、或いはなくさずに隆々としてそのものが一家をなすものもあるのでありますが、併しそうしたことはいろいろ事情が私はあると思いますが、ただそうした若し人間のやることでございますから間違いがあるならば、間違いをやつたところは、よろしく国家補償なり、何なりによつてやるべきであつて、今日そうしたものがもう終戦八年になりまして、いずれもが善良なる取引を行い、いろいろしているものに対しましてその責を負つてその負担を転嫁するというようなことは、甚だ私はおかしい話ではないかと思う。これは大蔵省に予算がない、法務省に予算がないというようなことの見解のために、善良なる民法によるところの取引をした連中に対しまして迷惑をかけるというふうなことは甚だ私は法治国としておかしいのではないかと思うのであります。それはこの法案の中には相当対価であるとか、或いは先ほど一松先生でしたかのお話で、何か自分が使用するのだから断ればいいじやないかというお話でございましたけれども、今そこで例えば建物一つ造るにしても盛り場におきましては、これは甲種防火地域で、ございまして、鉄筋並びに鉄骨でなければ建物は建たんのであります。この不景気のときに土地家屋などでそう簡単に金は融通できるものじやございません。そうした事情におけば、なかなかそれが接収解際になりましても手のつかないのが実情でございます。勿論先々に対しまして、それを遊ばしておくのでなしに十分活用したいということは、土地を持つている人間の本来の考えとしてあるのでありますけれども、それができないで、そうするとそ、れはもう、もう少し今金ができたらばそれを作るのだということは果して本当に理由になるかならんか、こういう問題などについてみても、私どもとしてみてもわかりにくい問題があるわけでございます。従つて若しそういうことになるならば、何か相当条件なんというあいまいなものではなしに、現在の時価におけるところの、つまり権利金ですね、そういつたものを立派なそこで以て補償をして、そうしてそれに対して云々するというようなものがないと、ただもう何となく法の解釈の仕方でございますけれども、いろいろ議論が出るだけのものでありまして、どうにもならんのではないかと思うのであります。  なお、私が考えますることによりますると、それは全国の中に相当なつまりこういうふうな問題につきまして資産といいましようか、いろいろな立場の方がおありと思うのでありますけれども、そうした問題が地主対土地を借りていた人間であるとか、家主対借家人というような徒らに労働争儀みたいに喧嘩するのでなしに、話合いで以て行つているところが大部分ではないかと私はこう思うのであります。どこの土地にこういうふうな形のものが実際に頻発しているかということになれば、これに伴いまするところのいわゆる盛り場であるとか、べらぼうに権利の上昇しているところというふうなところだけがそういうふうな問題が出て参つておるわけでありまして、そういつたところで大勢のお考えでこうした立法を御研究になつて提案するような形になつて来たのだろうと思うのであります。けれども必ずしも地主階級非常に有利なものとばかりは申せないのであつて、強制疎開において成るほど僅かなものを頂戴したというお話もありますが、新宿の一例をとつてみますれば、やはり焼けておつたわけであります。新宿も強制疎開のあとに、同じ場所は焼けておつたというのが実情でありまして、無論当時とすれば金をもらつて、なかなかみんな疎開々々と騒いでおつても疎開するには金がかかる。金がないために疎開できないという連中もたくさんおり、又実際我々も、これは私自身も身を以て体験したのでありますが、戦局が苛烈になりました最後の頃は箪笥、家財道具などを表に出して、ただでもいいから済まないけれど持つてつてくれないかというようなことを言つて投売りしていた時代もあつたのです。そのときに数千円の金というものをもらつて疎開できたということは、必ずしもこれが悪かつたということばかりも言い得ないのじやないか。然らばそういうふうな二重取り的になりまする今日の人たちというものはどうなつているか、又その旧処理法が出たのは、成るほど家もなく地主のいどころもわからない、何もわからない、こういう実情のときでございましたから、それはそこへバラツクを建てて家を造つたりいろいろすることは尤ものことで止むを得なかつたかも知れませんけれども、今日になればただそういうふうな問題でない。もといた所だからそこで商売したいというのでなしに、新らしい土地でそれぞれ商売していらつしやる方は立派なる基礎を作つている。こういうことと離れまして、一つのそこに利権闘争と申しましようか、権利闘争と申しましようか、そういうふうなものの状態に移行されているときであると私などは考える次第でございます。  今借家人の方たちがこの法案から外れているというふうなことでございますが、借家人の方たちがむしろ私はこの法案に対しましては非常に御熱心なのではなかろうかと今までの経過から考えましてそう思うわけでありまして、それは一つの例としまして、私どもの或る地主のところへ或る借地人の方から弁護士さんの名前で土地の借入の申出がざいまして、こちらの地主がそれに対しましてお断りをいたしました。ところがその借地人の方が手紙を寄越して、そんな事実はちつとも自分は聞いていなかつた。全然そんなことは自分はしていなかつたのだから、そういうことに対して御心配する必要はない、こういうふうな葉書も来ているわけでございまして、今日成るほど借家人という方の立場というものはなくなつておりますけれども借地人の方たちがこの権利を取得されるならば、当然そこにいろいろな角度においてそうした人たちも出て来るのではないか、そうした実情の下にあるんではないかと思うのであります。非常に不公平があつたり、いろいろな意味であれしているようなことにつきましては、只今山田さんのお話で十分私も了承いたしております。併しそういう問題につきましては、むしろお互い話合いで以ていろいろ決定すべき問題であつて、そうしたものがこの立法によつて権利付けられて、更に法廷闘争というものを繰返すというふうなことになる必要があるのかどうかという点につきましては、甚だ私も疑問を持つ次第であります。地主も全く財産税、税金、売買した場合の売買登記料、取得税、その他いろいろなものを払いまして、そういうふうに来ているわけであつて、成るほどもう地主というものは価値がないのだ、借地人、使用人というものの天下であつて、全然地主階級、家主階級なんというものは云々だというような、例えばソビエト・ロシアのごとき或る種の理論が出て参りますれば、これは別でありますが、まだ現在の日本においては私は資本主義の世界であろうと思います。所有権というものが常に使用権の下積みになつて、祖先伝来の自分土地でありながら、これを使うこともできないというふうな実情にありますことは、甚だ歎かわしいことじやないかと思うのであります。一身上の問題になりまして甚だ申訳ございませんが、私もいろいろやつて行かれませんので、さる人から相当の金を、借地権がないということを私が保証いたしまして、今言つたいろいろな根拠に立ちましてその入に納得して頂きまして金をもらつた、そうして金をもらいまして、私はそれによつて終戦後焼けました家その他のものを復興いたしまして、そこに金を投資していたわけであります。ところがその復興したいろいろな問題につまり相成つて参りまして、そちらからも大変責められて、私は詐欺漢か何かのような立場に追い込まれてしまいまして、そちらのほうはそちらのほうで大勢の人から金を集めまして、そこに映画館か何か作る、こういう計画の下に株式会社を設立しておる。こういうふうなことになつて来ると、私どもは全く相手に対しまして、こんな法律がなければ常識的に判断ができますけれども、とにかく法律というものがあるために、それに従つて我々が行動して来たものが、どうとも動きのとれないことになつてしまう。おやじは実はこの三月の二十六日に遂に死にましたけれども、死ぬ近くまでも、やはりこの新宿の問題につきましては非常に心配いたしまして、どういう立場になるのかというようなことを心配して逝つたわけでありまして、安心させることができずにおやじを眠らせたことは私の不孝不明のいたすところと、非常に私は慚愧に堪えない次第でありますが、或るほど不公平が若しあるとするならば、そういう不公平に対しましてはよろしく国家その他が負うべきであつて法律のそういうその文字の云々について、その後行われたいろいろ第三者にこれを転嫁してさせるというような考え方のものは、甚だ私はおかしいんじやないか。而も解除されない土地ならわかりますが、私は解除された土地についてまでも、普通の土地と同じように解除になつているわけです。そこに民法によるところの善良なるやはり取引が行われたものまでも、そこにただ家が建つていないじやないか、ビルデイングが建つていないじやないかというような意味だけでいろいろされたんでは、その後におきまして取引したのも随分ございます。こういうものはどういうふうなことになるのか、ここいうにつきまして一つ参議院のほうで良識を以て御判断頂きまして御審議頂ければ仕合せと思います。  簡単でありますが、以上であります。
  37. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 有難うございました。  次に参考人に予定しておりました弁護士岸星一君が差支えが起りましたので、代りに弁護士塩坂雄策君が出席しておられます。次に弁護士塩坂雄策君にお願いいたします。御発言は大体三十分程度にお願いいたします。
  38. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 只今委員長から御紹介を頂きました塩坂雄策であります。私は衆議院本会議を通過いたしました法律案に賛成する一人であります。前以てお断わりいたしておきたいと思いますことは、日本弁護士連合会で本法案には反対意見を申述べてあるということを承わつております。私は従つて連合会を代表するとか何とかという資格でなしに、ただ一個人の弁護士として自分の私見を申上げたいと思います。  連合会において決定いたしましたことは不法とか違法とか申しませんが、この法案について全国の弁護士に諮問した結果を集約して申達したものではありません。何とか委員という者が十数名おりまして、その委員が調査の結果を報告するのでありますから、全国弁護士連合会意思表示としてはあり得るでありましようけれども弁護士各個人を何ら拘束するものではありません。従つて弁護士としてこれは反対意見を述べることはもとより自由勝手であります。なおもう一言申上げておきたいことは、この法案に対して法務当局が憲法違反だとの疑いがあるとおつしやつたということをほのかに聞いているのでありますけれども、これはどういう点からそういう理論が出てるか、本日法務当局が御出席になつていらつしやるかどうか存じませんが、あとで伺いたいと思いますが、私は本法は何ら憲法違反ではない。その根拠は、すでに昭和二十一年九月十五日に公布されて、昭和二十三年九月十四日まで戦災地に関する臨時処即決というものが通過されまして、昭和二十六年の六月三十日までは第十条のみが効力を存しておつたのでありますが、昭和二十二年にその処理法が改正になりまして、戦災地以外に今後起るべき大火災、風水害、震災等にもこの臨時処理法適用するということでありまして、幾つかの都市に実際において適用されております。適用された結果といたしましては、単なる借家人が、その土地所有者に対し、又大家に対して、借地権を俺に譲れという申出ができる、而も臨時処理法第十条の規定が効力がありますから、その建物につき登記がなくても、賃借権登記がなくても、五年間第三者に対抗することができるという規定までも立派に準用されております。而も本案の第三条、第四条を拝見すると、「相当借地条件」、「相当対価」という文字があるのでありまして、これを決して共産主義的に横取りするわけじやないのです。立派に対価を払うということが書いてある。而も国が法律によつてそういう処理をきめるのに何が故に憲法違反になるか、憲法違反というものは五十何条でしたか、財産を云々という規定がありますけれども、それを非合法的に侵害しては相ならんというだけの規定でありまして、法律規定によつて財産権を制限することは、議会において通過すれば自由勝手であります。御承知の通り借地借家法というものは順次改正されておりますけれども、皆ことごとく借地人、借家人を保護する建前の下に改正されて来ております。従つて現在は土地所有権者が二ならば、借地権者が八というような、地主が知らず知らずの間に自分権利がだんだん切下げになつたというようなことは、これは借地法借家法という法律の性格の精神そのものから借地権が強力なものになつた結果、自然に土地所有権の価値が下つたということに相成るのでありまして、以上申上げたことによつて私は憲法違反であるとか、その疑いがあるというようなことは毫末もこの根拠はないということを前以て申上げておきます。  本案は御承知の通り進駐軍に接収された土地の期間満了の場合、疎開の場合、進駐軍に接収された建物内に借家権のあつた者を救済する、この三つのようでありまして、旧臨時処理法には借家人が借地権を得る規定があつたのでありますが、これは余りに強く斜傾的であるというのでこれには削られておるようであります。従つて臨時処理法の精神としては、なお第三者権利を害するとか、或いは強圧力というものが半減しておるということがわかると存じます。御承知の通り臨時処理法はただ二つしか規定してありません。戦災当時の借家人は、その土地所有者若しくは大家である者に、俺に借地権を譲れと、いう申出と、それから強制疎開によつて建物を除去せられた者の借地権の保護と、この二つでありますが、本案はその点と少し異なるところは、期限の満了の場合、それから建物を借りておつた借家権の保護、こういう二つに、やや範囲が雇うところはありますけれども根本の精神は、強制力によつて接収された土地建物に関する救済規定であることは言うまでもないのであります。先ず第一に臨時処理法によりますれば、優先賃借の申出ができる、強制疎開の場合に優先貸借の申出ができるとなつておりますが、公共の用に供する場合はできないという規定があります。従つて法律施行されておりました昭和二十三年九月十四日までに優先賃借の申出をしなければならんのでありますが、公共の用に供する云々という規定があるためにその申出ができなかつた。ところがその公共の用に供するという進駐軍の接収行為、即ち、日本政府の命令によつて接収された土地建物というものは、公共の用に供するものではあつても、期限付のものであります。永久無限に国家が使用するのでなくして、講和条約が締結されるか、若しくは進駐軍が撤退し、或いは進駐軍が進駐しておりましても、その必要がなくなれば返還さるべき期限付の接収物件であつたのであります。故にその期限が来るまではできなかつたけれども期限が来たから初めてこれを救う、即ち、優先賃借の申出ができるというのがこの法の精神でありますが、御承知の通り接収、強制疎開というものは国家総動員法の規定によりまして国家が一方的に勝手に地或をきめ、価格をきめて強制力を以てぶち壊した、全くこれはもう戦時中であつたればこそ、我々は屈服したのでありますが、今日のような状態においては、到底想像もできないような強圧力を以て執行したのでありますが、成るほどその際補償というものは若干頂いたのもあります。けれどもその補償たるや、誰がきめたかといえば、当局が勝手に一方的にきめて押し付けて、何ら異議を言うことも言わせない。例えば十万円するものをたとえ一万円に査定しても文句は言えない、唯々諾々として承知しなければならない。而してその金はどうなつたかといいますと、御承知の通り金融措置令でありましたか何か知りませんけれども、その金は封鎖されてしまい、殆んどその後になつて封鎖が解除になれば、なつたときにはすでに貨幣価値は百分の一、二百分の一というときになつて、結果においては一銭も補償をもらわなかつたと同一の結果に帰しております。元来この接収、強制疎開になつ借地権を返還するのが、一体地主に、返すということはこれは間違いなんです。今の状態であれば、恐らく政府の識者は、多少の補償をもらつた借地人にその借地権を返還したであろうと存じますが、何さま戦争直後のごたごたのときでありますから、これを地主に返した、これがそもそも争いを起す元であつたと存じます。私は曾つて東京都知事の安井さんに対して、一体あなた方のほうは借地人に返さんでどうして地主に返すんだ、あなたのほうは例えば借地人に十万円払つた、お前十万円持つて来れば返してやると言えばきつととびついて来る。そうすれば政府へ一旦渡した金は自分の懐へ返つて来る、借地人も元々になるし、半面に一銭の犠牲も払わんで地主のほうへ丸丸で返つて来るという不法な結果もない。例えば御承知の通り土地の上に借地権があれば非常に大きな重荷です。十分の八が借地権で十分の二が所有権とすれば、八という荷物を背負つておつたものが、強制疎開によつて解除になつ土地がそのまま地主に返るということは、地主は何らの犠牲を払わずに丸々十のものを取る、借地人は雀の涙のようなものをもらつて取上けられてしまつたという結果になるので、私はその旨をなぜあなたは借地人に返さないんだ、借地人に返せば政府も得するし、ごたごたも起らないと思う。安井さんが笑つて、それは君、俺がやつているんじやないよ、政府の仕事だ、ああそうでしたね、あなたに言うのが的が外れていると言つて私は安井さんに自分の不明を謝した事実があるんです。ですからそういうようにすべきものを、誤まつて何らの犠牲を払わない、大きな荷物を背負つた、即ち、借地権というものを背負つた土地を更地にして地主に返したというのがこういうごたごたを起した元で、時の政府が非常に遺憾な処置をとつたと存じます。すでにもう所有者に返してしまつた後のことでありますから、今更死屍に鞭つてもしようがありませんが、いずれにしても強制疎開によつて土地建物接収されたという者の立場というものはどういうものか、お考えになれば私は多くを言う必要はないんじやないか。土地収用法第百五条、百六条にも、港湾、鉄道その他の用地のために政府若しくは公共団体、或いは事業家が収用委員会決定によつて土地建物を収用した。それが不用になれ、ば元の土地所有者建物所有者に返してやるという明文がはつきり書いてあります。今も疎開によつて空地になつた所を政府の命令で進駐軍が接収した、然らば政府がみずから使わないで、用がないからこれを地主に返す、これがすでにそもそも誤まりで、やはり借地権を、犠牲を払つて、多少の報酬をもらつて借地権を取られた者に返すということが土地収用法の精神から行きましても、これはもう当然であり、常識であります。  そこで問題は当時者間において然りでありますが、これは第三者に対する影響如何、こういう問題になります。善意の第三者に、どうするか、こういうことが恐らく皆様の最も関心を打たれているところであろうと存じますが、その第三者を害しないような、この法案を見ますというと、全部ではありませんけれども、或る程度財産の権利を保護する意味の制約が加えられたものがあります。即ち、優先賃借を申入れする者の側から、こういう場合にはできないぞ、こういう場合においてはしてはいかんぞという規定の下に制約いたしております。又第三者権利を害すると申しましても、実際においては土地を買う場合には調べて買いますから、そう実際に善意の第三者を害する虞れというのは極く少い場合、全くよく調べもせずに飛びついて買つたというような場合も考えられますけれども、これは随分少数の稀の場合でありまして、大体土地を買おうというときには、所有者は誰、賃貸者があるかないかというようなことを克明に調べて莫大な投資をするというのが実情でありますから、恐らく私はそういうこともありとするならば、極めて少い場合ではないかと、こう考える。それから又第三者権利は仮に侵害された場合でありましても、先ほど申しましたように相当借地条件相当対価というものによつて保護される。併し又そういう点を考慮するならば、昭和二十二年に改正せられました臨時処理法第二十五条の二で、戦災地以外の火災、風水害、震災その他の災害によつて受けた場合においてもやはり臨時処理法第十条の、即ちこの規定が準用されております。「罹災建物が滅失し、」これは疎開はありませんから、滅失した「当時から、引き続き、その建物の敷地又はその換地に借地権を有する者は、その借地権登記及びその土地にある建物登記がなくても、これを以て、昭和二十一年……」これは災害の年ということに読み替えることになりますが、何年何月より「五箇年以内に、その土地について権利を取得した第三者に、対抗することができる。」と、こうなつております。これは御承知の通り善意で買つた場合でも五年間は対抗できるというこの規定が今後起り得べきあらゆる災害に適用されて行くんです。そういう場合はいつ如何なる場合でも善意の第三者を害するという議論が出て来れば、この法律を一般の災害に施行するということは、これはできないはずです。又そうすることが第三者権利を害することになる。その第三者権利を害することを調和するには、相当対価相当借地条件というものによつて緩和するということ以外にはないでありましようけれども法律の精神はどこまでも借地人、借家人というものを保護しようという建前で行きますから、その借地権の優先賃借を申出をした土地について第三者が知らずして善意にその所有権を取得したという場合は極く稀でありますが、あつた場合にはお気の毒でありますが、但しただ取られるわけじやありません。相当借地条件相当対価ということが法案の第三条に書いてあるのでありますから、ただむしり取つて一銭の対価も与えないというものでないことはこの法案の中にはつきり明示されておるのでありますから、これによつて多少の第三者に不利益を与えるといたしましても、法律の精神が借地人、借家人を保護する、而も無理やりに接収され強制疎開にあつた土地については、誠に当時の状況から判断しまして気の毒であるからこれを救おうということは、これは当然国家のなすべきことであります。前の参考人の話によりますと、そういう場合は国家補償したらよかろうと、こういうことでありますけれども、御承知の通り日本の目下の財政状態では到底これはできない。又戦時補償打切の精神から行きましても、ただ強制疎開若しくは接収された土地に対してのみ補償するということは、これはできないことであります。でありますから国家補償するということでなしに、これを一私人の手によつて処理するという場合、これは放つておけば到底できないんでありますから、法律にその根拠を置いて、そうしてこの間の調節を図るということが一番望ましいんではないかと思います。更に過去に遡りますと、罹災都市借地借家臨時処理法の精神は三つあります。第一は借地人の生活、営業の安定、第二は借地人、借家人関係の調節、それから第三は都市の復興と、こういう三つ目的臨時処理法の立法せられた目的でありますが、すでに都市の復興というものは曲りなりにもまあできたと見るほかいたし方ありません。併しながら更に二つの目的は依然として残つているわけであります。即ち借地人、借家人の営業、生活の安定、それから借地、借家関係の調節という二つの目的はどこまでも依然として残つており、これが先ほど申しました今後における災害地に適用し、そうして又衆議院において通過いたしました接収不動産に関する処理という法律によつて救済しよう。これは私当然のことで、何ら疑義はないほど私は当然過ぎるものと考えております。この点について皆さんのいろいろの御質疑はあると存じますが、私の申上げることは大体要を尽しておると考えますし、何さま今日突然指名されたのでありまして準備も十分ついておりません。併しながら若し御質問がありますれば知り得る範囲だけはお答え申上げたいと存じます。一応これを以て終ります。
  39. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 以上を以ちまして参考人各位の御発言は終りました。これより委員各位から御質疑のおありの方は御質疑を願います。
  40. 青木一男

    ○青木一男君 山田さんのお話よく伺つたんですが、お話の中に罹災都市借地借家臨時処理法を制定した当時と現在と比べて、当時はすでにいろいろな取引等が頻繁で、いわゆる第三者に与える影響は非常に多かつたのに対して、現在はこれに反して殆んどないように等しいと思うというお話があつたように伺いましたが、そうでしようか。
  41. 山田新之助

    参考人山田新之助君) そうでございます。
  42. 青木一男

    ○青木一男君 その点が若しかすると法務当局の言つているのと逆になつて来るんですな。法務省当局の説明によると、当時は、この罹災都市借地借家臨時処理法のできた当時は、戦災直後であるから、まだ土地なんぞを売つたり買つたりするということは殆んどなかつた。それで急いで早く元の人に帰つてもらわなければ都市の復興はできないんだという、こういう時代であつたから、ああいう立法が行われた。併し今日では講和になつてからもすでに長く経つて、今日では相当すでに復興もでき、又接収も解除されて相当長く経つておるから、取引も相当行われたものと考えられるという逆な説明が法務省当局からあつたのですが、私どもはやつ。はり経済界の変動から見ると法務省当局の説明のほうが事実に合つてるんじやないかと思うのですが、その点はどうなんでしようね。
  43. 山田新之助

    参考人山田新之助君) この前の昭和二十一年九月十五日に施行されました処理法でございますね。これは昭和十八年からそのときまで、それはまあ東京においてのこの売買というものは相当ございまして、そのためにその後においての訴訟等は私も実はそういつたようなわけでございまして、実は私貸家組合法によるところの全国の会長をしております関係上、当時は無料でこの法律自分の知つておる限りの借地借家だけの点についてのお世話を申上げる看板をかけていたのでありますが、これは東京中の各役員が交代で私のところへ参りまして、本部へ参りまして、借地借家その他双方共に自分たちの知つておる……専門家じやございませんけれども御説明を申上げました。そのときの問題はいずれも天から降つたような、借家人が借地権を得られるというので、誰も彼もが考えておらなかつた、そうしてその土地を借りまする場合には、今弁護士先生お話通り相当に研究いたしまして買うのが常識でございまするが、開闢以来借家人が借地を得られる、地主家主を乗り越えてそうして借家人がそこを優先できるという法律は、これは何人も気が付かなかつた。それが突然に現れて参りまして、一例を申上げますと、私は実は、こういう例がございます。銀座に私が自分の家がありまして疎開に相成つてしまつた。こちらのほうに事務所を移しまして、そうしてそこへも又進駐軍が参りまして、強制疎開地は勿論の話、そこは海岸通二丁目と申しまして、この川に沿うたところ一側だけが人家がございましてあとは全部強制疎開で、約二万坪強制疎開で接取された。従つて向うのいろいろな監督の関係で而もその全部を接収するというようなことを聞いたものですからあわてて、どうせ店を持つなら銀座のほうがいいと思いまして、実は銀面のほうに参りました。ところが自分の友人で銀座に土地を世話するというので、私は四十五坪の土地を実は昭和二十一年に相当の価格を以て買つたのであります。ところがその法律が出まして、そうして私が一部建築中のところを、当時は下が十五坪上が十五坪建てますとそれ以上建てられなかつた。そうするとあと空いてますから、それに仮処分をして私はそうして歯医者をして家を借りておつた。ですから優先順位者であるから優先順位者の申出をした。以来三年間裁判をいたしましたが、私の負けでありまして、そうして結局家を建つたのでありますが、莫大もないところの金を取られた。そういう例がこれは各所にございまして、それは調停裁判といわず、地方裁判所といわず、この事件が民事の恐らく八〇%じやなかつたか、こういうようなふうに考えるのでありますが、本席には弁護士先生がたくさん御臨席でありますので、実際この問題は天から降つたようなことでございましたので、最近の問題といたしましては、それではその善意の第三者があるかどうかということは、先ほど申上げました通り、進駐軍と申しますものは、空けるということは前以て予告いたしません。大概の普通の賃借で参りますると、大体来月空けるとか、再来月空けるということを予告するというのがこれは常識でございます。又年限においても大概は借地借家等においてもあらかじめきめるのでありますが、進駐軍のほうは、現在これは芝浦の例でありますが、実は芝浦全部の地図を特調から出しまして、それは大体進駐軍が近く空ける模様である。或る所に移すべく、建設物ができればそこへ移すというのでございまして、それを色を赤で書きまして、それから比較的長いのを青で書きまして、それから又或る程度荷物が減つたら出るというのを黄色で書きましたが、こちらがその準備を考えておりますと、突然これを翻してこれは永久使用である、こうなつて参ります。ですから進駐軍くらい勝手なものはない。普通の賃借で参りますると、これは正当なる理由がありまする場合にはどかすことはできます。けれどもこの進駐軍に接収せられました提借不動産というものは、これはもう如何ようにもこちらで以て申出ができないのでございまして、事実法律ではできるようになつております。先ほど申上げました例の特別処理法ではできておりますけれども、さて実際になりますると、これは事実上はできないというのが事実でございまするので、こういう土地を純然たる更地として買つた例というものは私は全国に聞いた例はございません。
  44. 青木一男

    ○青木一男君 ちよつと接収中のものを買う例は、少くとも終戦後今日まで解除した件数というのは相当あるわけですね。その取引がないということはどういうわけですか。
  45. 山田新之助

    参考人山田新之助君) 私がちよつと申し忘れましたが、先ほどちよつと原稿を持つてつたのでありますが、解除になりまして、原案の法案が辿りますと、これを拝見いたしますると、もうすでにその家が建つてあるところはもうこれは駄目なんでございまして、更地の個所だけでございます。これはもう新宿のほうに少しあるだけでございまして、私もこの情報は各所に支部がございまするから、とつてありまするが、全く少いのでございまして、本日も横浜のほうから見えておりまするが、こういう例は殆んどございません。
  46. 青木一男

    ○青木一男君 それからさつきの臨時処理法によつて借家人が借地権を得るようになつた、それで問題が多くなつた、こういうお話があつたのですが、そういう事件はたくさんあつたと思いますが、それは臨時処理法施行された後の現象でしようね。
  47. 山田新之助

    参考人山田新之助君) そうでございます。
  48. 青木一男

    ○青木一男君 それは前にいろいろな事件が多かつたということは予想されないわけですね。
  49. 山田新之助

    参考人山田新之助君) 臨時処理法がなかつた時にはつまり借家人は借地権は得られなかつたわけでございますね。
  50. 青木一男

    ○青木一男君 それではそれはよろしうございます。塩坂さんにちよつと伺いたい一点は、この第三者保護の関係から言えば、罹災都市借地借家臨時処理法が新らしい災害に皆適用されているから、すべて同じじやないか、こういうようなお話つたのですが、その母法である罹災都市借地借家臨時処理法というやつも五カ年で終えておるわけです、適用が……。それから新らしくほかの火災地等で適用する場合も五カ年でおしまいになつておるわけですね。それでそういう法律が出れば、たとえその立法が不合理であろうと合理的であろうと、やはり法律でありますから、それはそういう第三者対抗要件の例外ができるから、取引する場合は特に注意せよというまあ国家の命令であると考えていいわけですね。それをそういう法律があるにもかかわらず、それを無視したか、或いは不注意のためにひつかかつたという場合は、これはまあ法の不知から来ることであり、それは注意しなければならんという議論も成立つのですね。ところが今度の立法によると、当時の法制の下においてはもう五カ年済んだのだからそういう例外的の救済規定はなくなつているのだということを信じて、明らかに信じて五年後に取引した者がこの新らしい法律遡及効によつてそれにひつかかつたという場合とはちよつと同一に考えられないように思えますが、その点は如何でしよう。
  51. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) そこが先ほど申上げましたように、進駐軍が接収していなければ昭和二十三年九月十四日までに十分に優先賃借の申出ができ得べかりしものを、臨時処理法第九条ですか、公共の用に供しておるものはできないとこういう制約があつたために、ついこれはできずにおつたわけなんですね。それがいよいよ進駐軍の必要がなくなつて返還するとこういうことになつたわけでありますから、この必要が消滅するということによつて、優先賃借の申出権を与えることが合理的である。それからもう一つは先ほど申上げました土地収用法の百五条、六条の精神から言つてもそうすべきものである。故に今仰せの通り、これから起る災害に対してはこれからだぞという法律が出る。なおそれから、注意はするけれどもすでにもう昭和二十六年の六月三十日でもう一切戦災地の関係はなくなつたのだ。それを今ここで立法して遡らせることは不測の損害を与えるのじやないか……。
  52. 青木一男

    ○青木一男君 そこの区別です。
  53. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) それは結局臨時処理法といえども全部過去へ遡つたので、昭和二十一年九十五日から施行されましたものもやはり過去に遡つて遡及効があつたわけです。だから、結局この法律を作る目的即ち救済のための法律案だとすれば、必然的にそこに遡及効というものが伴うものであり、遡及効が伴えばそこに多少の被害者も昂る。起るが、先ほど申上げましたように、救済の途はあるし、それから接収解除を受けた借地人といえども野放図にできるものでもないし、この法案にもあります通り、或る程度の制約があつてその制約の範囲内で申出ができるのだということになつておりますから、そうむちやくちやに何でもかんでも善意の第三者を害するものとこういうふうに考えるということは私は出て来ないのじやないかと思います。
  54. 楠見義男

    ○楠見義男君 参考人のかたお三人にお伺いしたいのですが、先ず塩坂さんに今の青木さんからの御質問に関連してお伺いするのですが、要するに善意の第三者を保護するか、或いは旧権利者を保護するかという比較考量の問題がこの種の立法のまあ眼目になつておるんですが、ところがその問題は十二条の問題なんです。
  55. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 本案ですか。
  56. 楠見義男

    ○楠見義男君 この法案で……、原案の強制疎開の問題、疎開地問題なんですが、罹災都市借地借家臨時処理法の場合も、それから本案の第三条、第四条の場合も、それから将来この罹災都市借地借家臨時処理法適用されるであろう災害地域の場合であろうと、すべて問題は借地権というものがあるのだと、或いは接収という事実によつてその借地権接収中に期限が切れても、それは判例等にあるようにその期間の進行が眠つておつたとか、停止しれておつたとか、いずれにしましても借地権というものがあつて、その借地権をどう生かして行こうかということが問題になつておるわけですね。ところが十二条の場合は実は問題になつておるのは、その土地には強制疎開の際において借地権は消滅しておるのだというまあ法理論から問題がいろいろ起つておるわけなんです。そこで先ほど来お話があつたように、又参考人の他の方からお話があつたように、それは非常にやり方としてはあの時代でまあひどいやり方であつたと、或いは今から考えれば随分無理なやり方であつたというその当否の問題は別にしまして、法律論的に言えばそのときに借地権というものは消滅しておつたのではないか、こういうことからして例えば法務省の御意見は、それは他の法と同様に取扱うべきではないか、こういうことが問題になつておるんです。そこでお述べになりました御議論の中にも実はけしからん措置があつたというようなお話があり、私どももそれはさように思いますが、同時に戦争中は同じようなことが例えば金属回収の問題にしても、そのほかの問題にしても随分同じような問題があつた。そしてこの場合には借地権というものは補償という事実によつて消滅しているのだということは、法律的には認めなければいけないのではないかとも思うのですが、その点は如何でしようか。
  57. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 純法律論で行きますれば借地権には第五次まではまあ補償しておるのですね。六次にしたかしないかということにまあ法曹界で議論があつたし、裁判所判例も二つに分れております。補償がなかつたのだという見方と補償があつたのだという見方と三つありますが、少くとも五次疎開までは何がしかの補償はあつたわけ一です。従つてお説のように純法理論から言えば、その補償によつて借地権は一旦なくなつたのではないか、こういうことは言えるわけですね。そこでいよいよ今度強制疎開が解除になつて土地を返す場合に、私が先ほど申上げましたように借地人、お前は先ほど二万円払つたからそれを返してくれればおお前に返すと、一応借地人に質して、いや私は要り求せんと言つた場合に、初めて地主に返すという手段をとればは政府も懐が肥えたしトラブルも起らずに済んだものを、変な一銭も犠牲を払わない者に、裸にして地主に渡したということが不合理である、その不合理が一つ。それから僅かな金であること、その金も一方的にあてがい扶持、一方的にあてがい扶持したものを、而も取上げてしまつて、その封鎖が解除になつた場合は貨幣価値が下つて殆んど雀の涙程度になつてしまつたのですから、実際には補償をしていなかつたのだという同一の見方ですね。ですからこれは法律論と言うよりも実際論と言つたほうがいいかも知れません。
  58. 楠見義男

    ○楠見義男君 わかりました。  それからその場合のそれではこれは純法律論というよりも、政策的なそういうことだろうとまあ提案者も言つておられるのでありますが、それはそうだとしても、土地収用法の場合とか、その他の場合で原所有者というか、原使用者に返すという建前になつておる。これはそうなつておるので、仮に善意であつて第三者というものは、他の所有、取得者は仮に善悪であつても、そういう法律がありますから、これはその保護される上においてはまあ薄くなつておるわけですれ、ところがこれは塩坂参考人のお隣りの湯沢さんのお述べになつたように、この場合にはそういう法律はなかつたのだこういうことで、その後既定の法律事実に基いて取引があつた。第三者というものは、土地収用法とか、或いはその他の場合と違つた取扱いを受けなければならないのじやないか。そこで併しそういう場合でもお述べになつた中には、それ相当対価というものがあるのだから、従つて憲法違反という問題は勿論ないし、その第三者というものも或る程度はカバー、損害はカバーできるのではないか、こういう御趣旨であつたのです。そこで問題になりましたのは、第三条の「相当借地条件」というのと、第四条の「相当対価」という問題です。この「相当借地条件」とは一体、どういうことを言うのだろうかということで問題になつて来て、四条のほうは、「相当対価」という問題はおつしやるようにこれはこの点は解決がついたと思うが、第三条の「相当借地条件」というのは一体どういうふうにお考えになつての御議論でしようか。その点を参考人のかたから……。
  59. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) これは御承知の通り臨時処理法にも地主直接の場合は「相当借地条件」の場合と、借地人の、大家である借地人ですね、それに対する場合は「相当対価」とこう書き分けてあるし、従つてこの法案もその趣旨に従つて再分けたものだと思います。裁判所の実際の扱いは地主直接の場合には権利金は、要らないという判例と、いやその借地、相当借地条件というものには相当対価と同じだというので権利金は払えといつたような例もありまして、まあ御承知の通り僅かの期間しか施行されない法律ですから、裁判所の研究も足りないし、我々弁護士の研究も足りないかも知れませんが、統一した解釈を遂に見ることなくしていわゆる第一審、最高裁判所に行くことなしにこの問題は済んだのであるので、これはいろいろ解釈できるのですが、文章そのものを書き分けた趣旨から行くと、一方は地代とか敷金だけであつて権利金は入らないと解し、一方は対価と好いてあるから借地権の代償を払うの、だという議論も成り立ちますし、それから又相当借地条件ということになつて、やはり権利金も入るのじやないかという議論もできますし、いろいろ解釈ができるのですが、裁判所の判断も二つに分れて統一しないのですが、立法者の意思がどういう考えであつたかわからないが、いずれにしてもただでないということはこの法案趣旨から言つても出て来ると思うのですが。
  60. 楠見義男

    ○楠見義男君 私のお伺いした趣旨は善意の第三者が救われるのではないか、特にこういう場合があるのだからということをお述べになりました塩坂さんのお気持は、どういうお気持でこの文言を御解釈になつておるかということをお伺いしたのです。
  61. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 私は両方同じように解釈したらいいのじやないかと思つておりますが、個人としては……
  62. 楠見義男

    ○楠見義男君 その次に湯沢さんにお伺いしたいのですが、先ほどのお述べになつた中に、いろいろまあ具体的な例を挙げてのお話を承わつて、了解せられるところも少くはないのですが、これは一つ事実関係としてお伺いしたいのですが、あなたのところでいろいろと例を挙げてお述べになりましたが、強制疎開は第何次ですか。
  63. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) 第六次でございます。
  64. 楠見義男

    ○楠見義男君 第六次ですか。そうすると、そのとき現実に、その強制疎開があつたとき、補償金ですね、保証金がどこから出されて、それがどういうように流されて来たかというその実情をちよつと参考までにお伺いしたい。
  65. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) それは私のほうが頂戴せずに、あれでございましたけれども、細かいデータも、その幸い新宿の場合は、新宿区役所もまあ焼けたんですけれども、地下室にその書類が残つておりまして、その地下室で以てその書類が出て来まして、いろいろ我々が調査した結果、それで細かい、誰が幾らもらつたというようなことまで出ておるわけなんです。それから又……。
  66. 楠見義男

    ○楠見義男君 私が伺いするのは、他の人の話ではなしに、今あなた自身の場合のことを例を挙げてお話がありましたから、従つて、あなた自身の場合の問題についてはあとからもお伺いしたいと思うのですが、そこで、あなたの場合、その補償金がどういう経路で、どこを流れて、どういうように配分されたかという実事関係をお伺いできれ、ばいいんです。ほかの方々じやなしに、あなたの場合……。
  67. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) それは、私自身は直接にはタッチしておりません。
  68. 楠見義男

    ○楠見義男君 それはあなたの土地であつてですか。
  69. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) 土地であつても、その土地はつまり関係がありませんから……。土地にありました家屋に対しまして、家屋に住んでいました方は恐らく区役所に呼び出されたと私は思うのですけれども、それで区役所との間にそういう取引があつたのではないか。土地は私のほうは所有者であるだけでございますから、別に売つたというわけではございません。関係はなかつたのでございます。
  70. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、あなたのほうは全然補償の対象になかつたわけですね。
  71. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) ありませんでした。
  72. 楠見義男

    ○楠見義男君 それから二つあるんですが、一つは善意の第三者のことをいろいろの場合の例を挙げてお述べになつた。そういう場合があろうかと思いますが、それはどうしろ、こうしろという法律の問題でなしに、事実を世間話のようなつもりでお伺いするのですが、前の所有者は、前からあつた所有者の場合と、それから移つた場合の、移つて善意の第三者であつた場合の取扱いを、別にするという考え方一つ考え方としてはあると思うのです。そういう場合の考え方如何でしようか。
  73. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) それは私のところは先ほど申上げましたような形からそれは多少疑義を持ちます。私どもとして見れば、駐留軍が入つているのですから、どうなつておるかと、その疑義につきましては、先ほど申上げましたようないろいろな点から検討しました。第六次の疎開等について非常にはつきりしなかつたところもあつたので、それを究明すべきところは究明いたしまして、決して私ども二枚舌を使つたりいろいろしたくはないと思いましたので、そういうことがはつきりしましたので、そういうことによつて、こちらも金がないわけですから、いろいろ救済してもらつているし、そういういろいろな金を借りたり、いろいろなことをした。それによつて自分の家を作つたというようなことが、つまり行われたわけなんで、成るほど先ほど縷々お話があるように、そのことが不公平であると、こういうようなことは或いは私もそうであるかも知れない、実際問題として……。併し当時として、それは私のいたところにしてみても、お尋ね下さればお尋ねをして頂けるところの、場所が変つているわけでも何んでもないわけで、それでも五年間放つておいて、今になつてこういうような立法で以て云々ということをされてしまつては、やつたことをどういう結末で収拾していいか甚だ弱つた立場にあるわけです。
  74. 楠見義男

    ○楠見義男君 私がお伺いししますのは、世間話で申上げる、世間話のような恰好でお伺いするのですが、借地権者がおりましてですね、それから所有者がおつて、それから第三者がこうおつて、今いろいろお話を先ほど来伺つて、又この委員会でも問題になつていることは、善意の第三者をどう保護するかという問題を、随分問題にしている。そこであなたのお話の場合も、善意の第三者を非常に強調してお話になつている。そこでですね、地主が変らん場合は、これは認めてもそれはいいのじやないか。併し善意の第三者に移つた場合に、これはその善意という問題についてもいろいろ問題はあると思いますけれども、善意の第三者に移つた場合に、これはもうそちらのほうよりもこちらのほうを保護したほうがいいのじやないかという議論が出て来るのですが、そういう点についてどうお考えになりますか。
  75. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) 私どものほうとしては、片つ方には借地権というものがなくなつていると、いろいろな考え方から言つて、強制疎開その他で以て調べました結果、ないということになつたために、片つ方の人の援助を受けたわけですから、それはあとからできた借地権者というものにしなかつたならば、甚だ私どものほうとしては相済まない、売つた場合についても同様に、そういう借地権のないものとして売つてるんですから、そのことに対して今借地権が復活したということになると、非常に悖徳行為になつてしまつて、筋がないものになつてしまうものだと、こういうわけです。
  76. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に今の誰善意の第三者の、先ほどお話なつたように、映画館の準備をしているとか何とかいうお話ですが、そういう場合は正当の事由であるということになるのじやないかと思うのですが、塩坂さん、これはどうですか。
  77. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 「自ら使用することを」云々ということがありますね。これで救済できるんじやないでしようか。
  78. 楠見義男

    ○楠見義男君 それは第四条で準用しておりますからね、借地権者の場合、第三者借地権者の場合は……。
  79. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) 併しこの法案をあれしますと、何かそこにできてなければいけないような話になつているのじやないですかね、それは……。
  80. 上原正吉

    ○上原正吉君 今のお話なんですけれども、みずから使用することにはならないと思うのですが、私は株式会社を作つて映画館を作るというのですが、これでは御本人がみずから使つてることにならないらしい。着手をしていなければ、法務当局の説明によりますと対抗権がない、これに危惧を感じている。
  81. 楠見義男

    ○楠見義男君 私が問題にしているのは第四条で、第三条三項、四項を準用しておりますから、今お述べになつた点は、他の人に貸して、その借りた人が映画館を、借りた人というのは法人の場合或いは個人の場合もありますが、そういう計画をしているその借地権者に対して、元の借地権者借地権譲渡の要求ができると、併し第三条の三項、四項を準用しているから、これは正当の事由がなければ申込めない、こういうことになつているのですね。或いは相当対価を以て申込めばできると、こうなつているから、その場合の点はですね、正当なる事由という中に入りやせんだろうかということを申上げているのです。
  82. 上原正吉

    ○上原正吉君 私はそれを心配して法務当局に質したら、それはそうはならないという答えだつたので、心配しているわけです。
  83. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじやそれは又あとで……。  それから山田さんにお伺いするのですが、いろいろ仰せられることもよくわかるのですが、一体この狙いはどういうことを狙つておられるのだろうか、その具体的に言いますとね、その元の土地へ行つてですね、商売をしたいと、こういうことでですね、従つてその強制疎開をしたときの借地権者のですね、借地権者だけを保護すればいいのか、それを狙いにしているのか。或いはこの借地権者はそこへ行く気はないと、ただそこで地価が上つて人が儲かつているのは、どうも業腹だ、分け前を、儲けの分け前を俺のほうへよこせ、こういうように主張していると、その点はどちらなんですか。
  84. 山田新之助

    参考人山田新之助君) 私たちの申上げますのは、何とかして元へ帰して頂きたいと、そうしてそれはそのちよつと私、先ほど申上げましたと思いましたが、私どもは大体中小企業でございましてね、それでこの役所とか会社とかへ勤めるのでございますれば、どこでもいいわけですね、場所さえあれば……。ところが我々中小企業と申しますものは、その土地に長くおつたという信用がございましてね、のれんというものがございまして、又その土地におりますれば、その土地にどうしてもいなければならないというような商売がございますので、どうしてもそこへ掃えして頂きたいということが第一と、その次に又、この大きな問題と同時に、経済問題から参りましても、例を挙げて申しますと、私どもの地上区は海運町でございまして、そうして非常に人夫が多いのでございます。従つてこの土地の割合に人が多かつたのでございます。一つの部屋に百人、二百人というのがざらでございまして、これが遠距離から通つて参りますと、非常に時間の関係がございます。非常に朝が早いのでございまして、それで而も非常に汚ない着物を清まして、セメントなどを担ぎますと、人間だか怪物だかわからないような恰好でございましてね。うつかり表を歩けない。石炭で真つ黒でございましてね。そういうことから人が行きますと嫌がります。風呂屋もそうなんです。従つて飲屋に行きましても、酒屋に行きましても、そういうお客さんは歓迎いたしません。そういう関係で、海運町と申しますと、俗にマドロスと申しますが、そういうのが非常におとくいかというと、それから船が着きまして、それを繋留いたしまして、本船に通うとか、そういつたような艀とか沖仲仕とか、沿岸荷役とか、そういつたそれに関係する八百屋、酒屋、魚屋とかと、いうような、或いはカフエーであるとか、そういつたものが非常に多かつたのでございます。そこでそこにおれば何とか御飲になる。それから又我々階級でございますと、一般一流眼行と取引できませんので、街の信用組合とか、何とかというものがありまして、長くおつて正直であるというので、金融もききますし、それから又芝浦などは周りの人が非常に同情があるのでございましてね。一面ではあすこは埋立地だつたものでございますからね。そうして私たちは草分けから、道路だか何だかわからないところから今日まで、漸くここまで来たわけでありまして、従つて兄弟分が、あすこは焼けなかつたものですから皆隆々とやつているものですから、自分の仲間たちがもう学校の小使をしたり、にこよんに行つて車を引張つたり、もう見てはいられないと……、私は芝浦に約十一万何千坪という借地を持つていたのです。これは分れましたけれども借地審議会があまして、その会長をしておりましたものですから、全部の会員を……、何とかして我々が応援するから一つ元へ戻すようにしてくれというので、私は責任上動いているだけでありまして、そうしますと街の同情も集まりますし、暫くして元に帰るのではないか、こういうような考えでございますので、決して金などは一銭も欲しいのではございません。で我我も遠慮をして借家人が帰りませんから、お互いが、三十五坪のところ十五坪でもいいのです、借家人を入れるように準備しようというので、妥協がつきましたが、この法律通りますと、大体において借家人も借地人も、商売ができるという道程に入つて来ますから、決して金が欲しいのじやございません。このことだけを申上げておきます。
  85. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、あなたの具体的な場合はわかつたのですが、全国復帰期成同盟としての考え方と、こういうふうに了解していいでしようか。我々この法案をやる場合に、元の借地権者で、その人が元の土地に行つて商売をするというときは、そこに入つていいので……。
  86. 山田新之助

    参考人山田新之助君) はあ、そうでございます。
  87. 楠見義男

    ○楠見義男君 ほかの人が儲けているから、こつちも分け前をというような……。
  88. 山田新之助

    参考人山田新之助君) じやございません。
  89. 楠見義男

    ○楠見義男君 そういうような人は、これは他の戦時災害との均衡もありますから、そういう人は別に保護の対象にしないように案を考えてもいい、こういうわけでございますね。
  90. 山田新之助

    参考人山田新之助君) さようでございます。
  91. 楠見義男

    ○楠見義男君 ええ、わかりました。
  92. 上原正吉

    ○上原正吉君 山田さんにお尋ねしたいのですが、地価が暴騰して、地主がべらぼうに儲かるだけでは不都合ではないかという御論旨があつたと思うのですが、ほかの物が暴騰していないで、地価だけが暴騰すれば地主は儲かるのですが、あらゆる物が暴騰をしたのじや、土地が暴騰したつてちつとも儲からないのですね。私はそう考えるのです。一番わかりやすいのは、お百姓が一町の田圃を持つている。昔は一反、三百円から五百円、一町三千円ちよつとにしかならない。今はとにかく合法的に売買されるとしても、一反七八万円から十万円、そうすると一町持つていると約七、八十万から百万円の財産になる。併しちつとも儲かつておらんのですね。穫れる米は六俵か、七俵、それを売つた金で子供を学校にやるのにも足りないということになるので、決して儲かつていない。土地だけが上れば儲かりますが、皆上つたのではちつとも儲かつていないのだと私は考えるのですが、あなたはどうお考えですか。
  93. 山田新之助

    参考人山田新之助君) それは前に申上げましたが、私どもは決してもうどなたが何億円儲けようと、何十億円儲けようと、これは決して恨むものではございませんので、皆さんが儲けて頂くことは誠に幸いで、金は天下の廻り持ちでございますから、いつかは廻つて参りますから……。併し先ほども申上げました通り、非常なるところの我々が犠牲になつて、そうして地主が、戦争において何ら肉係ない我々の犠牲のみにおいてそうして金を儲けることは、思想上どうかということが一つと、それから又只今先生がおつしやいました通り、この一般の物価が上つたというのは、地主は仮に四億円儲けましても、大変な金ではないかと存じます。併し又そこを追われて、今日そこにおれば商売ができたものが、今日たくさんの金があつてもあんまり価値がないというのが……、全然ないものはどのくらい悲惨かということで、決して金持を羨むものではございませんが、なお更そこに入つているのは、地面はどうでも、建築費などが要りますし、お互いの富の公平という点から、一つこの何とかして元に帰つて、そうして商売をしたいという一念でございます。
  94. 上原正吉

    ○上原正吉君 それからそれと同じような御発言と考えたのですが、例えば家を借りておりますね。あなたのお話の中に、家賃が高くなれば生計費が上つて、給与、ベースに関係するから、だから家賃を上げないように地代家賃統制令が、あるのは当然だと、こうあなたお話になつたのですが、それでは給料生活者は全部昔の地代家賃統制令の恩恵に浴する家に住んでいることができるかというと、地代家賃統制令の恩恵に浴している勤め人などというものは、給料生活者というものは、本当に九牛の一毛に過ぎない。大部分の九〇%の勤労者は皆非常に高い家賃を払つて働いている。それはそれで差支えないのですか。そうして而も前から家を借りている人が、昔の金で十五円か、二十円の家を借りて、今少し上つて二百円か、三百円になつておりましようけれども、その借りている家の部屋を幾つか貸すだけで、自分が払つている家賃の何十倍かの金になる。こういうのはつまり不都合じやないの、ですか。
  95. 山田新之助

    参考人山田新之助君) これはお説の通りでございます。これは誠にそういう陳情やら何かたくさんございまして、建設省の委員会でも非常に問題になりますのでございますが、これはでき得る限り調節したいというふうに考えておりますが、どうもこの点はむしろ私よりも政府のほうがいけないのでございます。いつでも出しますと、或る程度の調節をしたいと出しますと、すぐ共産党であるとか、そういう方面から……、家主、地主のほうはやつて来ないと言うのですからね。ちよつとでも上げますと……、このことはとても大勢やつて来る……。
  96. 上原正吉

    ○上原正吉君 いや、私のお尋しているのは、それは不都合だとお考えになりますか。正当だとお考えになりますか。そこだけ伺えばいいのです。
  97. 山田新之助

    参考人山田新之助君) どうもそこのところがなかなかむずかしいところでございまして、私個人としてはどうも説明ができないのでございますがね。
  98. 上原正吉

    ○上原正吉君 それからこれは塩坂さんもおつしやいましたが、山田さんもおつしやいましたがね。土地を買う人はその土地について、どんな前歴があるかということを調べて買う。如何にも御尤もなんでございますね。併し従来日本法律で、それからちやんともう地上権は存在しないということを確かめて、安心して土地を買つた後に、あとから地上権が発生したということになると、調べて買つても何もならんということになりますが、これは調べて買うはずだという御議論は当つていないと思うのですが、お二方どうなんです。かこれは簡単に私結論だけ伺えばいいのですが……。
  99. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) いや、それは不測の損害を与えることになりますね。
  100. 上原正吉

    ○上原正吉君 なりますね。調べて買つても役に立ちませんね。それだけ伺えばいいのです。
  101. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) そうそう、それはそういうことになりますね。
  102. 上原正吉

    ○上原正吉君 それだけ伺えばいいのです。  それからこれは湯沢さんにお伺いしたいのですがね。強制疎開の土地権利補償してあるはずだから、これは除外してくれ、除外するのが当然だというお話ですが、ほかにもそういう陳情があるのですか。その権利金を払つたのは地主でなくして、都庁か、政府が払つているのです。そうするとそれを主張なさる権利は地主にはないはずだと私は思うのですね。これは如何お考えですか。
  103. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) 一応理論的には、そうなればそういうわけですけれども、私が今申上げていることは、客観的に私の見解をどうと申上げているわけではないので……。
  104. 上原正吉

    ○上原正吉君 ですから地主としては、これは地上権はなくなつたというはずであるという御主張は、不都合とお考えになりますか。正当であるとお考えになりますか。それだけ伺えば結構です。
  105. 湯沢光行

    参考人(湯沢光行君) いや、それは私は正当だと思いますれ。第三者としての立場から見るならば……。
  106. 上原正吉

    ○上原正吉君 その理由は結構なんです、結論だけ伺えば……。  それからこれは塩坂さんだと思いましたがね。土地の持主が非常な不労所得を取つている。たくさん、取ることは如何にも不都合であるという印象を……、私はそういう御議論のように伺えたのですが、私もそれはそう思うのですが、地上権者であれば差支えない、これが私は問題だと思うのです。土地所有者権利が、利益というものがだんだん土地所有権というものの権利が小さくなつて来て、借地権者に移りつつあるのですね。例えば自分土地を持つていればさつぱり値打がない。人が土地を借りておれば非常な値打を持つているわけですね。切り売りができるのですからね。
  107. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 地上権ならばね。
  108. 上原正吉

    ○上原正吉君 そうすると土地の持主よりも、地上権者のほうが非常な暴利を貧ることになる。これは差支えないとお考えになるか。これは私の考えを申上げれば、私実際その土地を使つておる人間に利益が均霑するならば、これは一番結構だと思う。戦時立法だと言われております、その土地を借りておる人間にその土地を貸すという法律を作つた。これは尤もな政策だと思うのです。地上権を持つているという土地で言えば、私はそう思うのだ。地上の地上権よりも、賃借権のほうが何か大きな権利を持つて、その賃借権を切り売して、どんどん不当な利益を得られるということになるとその賃借権そのものが、地上権以上に下都合だとお考えになるのですか。それは如何ですか。
  109. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) それは借地権は、御承知の通り地上権と賃借権とあります。
  110. 上原正吉

    ○上原正吉君 地上権なら止むを得ない……。
  111. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 地上権は法律で、承諾がないと……。
  112. 上原正吉

    ○上原正吉君 借地権の場合でも……。
  113. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 賃借権の場合、地主の承諾がなければ、何らの効力はないのですから……。
  114. 上原正吉

    ○上原正吉君 いや、実際問題としては非常にそういう問題がある。
  115. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 実際問題としては金を取られますね。
  116. 上原正吉

    ○上原正吉君 いや、例えば家の場合でも家主の承諾なしに同居人なんか置けないものなんです。家族は何人ですか、お子さんは何人ありますかということまで聞いて貸しておる。たくさん家族があつて、子供があれば、家が荒されるといつた場合、住うのは夫婦二人と子供が一人だけです、こういうことで借りておる。借りた者がすぐ切り貸しして莫大な収入を得ておる。こういうことは賃借権所有権を非常に凌駕した横暴をやつているわけなんですが、私はそういうことは非常に不都合なものだと思つているのですが……。
  117. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) それですから、取高裁判所判例は、同居人を置いた場合は、賃貸借に対する義務違背として、解除の請求を是認しています。私どもはそれに反対ですが、私は随分それで以て法曹雑誌に書いたことがありますが、最高裁判所は、家主の同意なくして同居人を置いた場合は、契約解除の原因になるという判例が最近出ました。そうしますとこれは東京中の借家人は大部分入ることになるのです。
  118. 上原正吉

    ○上原正吉君 ところがその不合理、不都合な借家人をどうにもできないのが現在の実情なんですね。
  119. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) ええ、実情は実情なんです。
  120. 上原正吉

    ○上原正吉君 我々は現在の実情を基礎にしてものを考えなくちやならんとこう思つているので、お尋ねしたのですが……。
  121. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 只今、の賃借権の場合ですね。これは承諾なければ効力ないのですから、こういう場合には……。だから売買しても、更に買つた人間は必ずもう一遍犠牲を払うような実情になつております。
  122. 一松定吉

    一松定吉君  一つ簡単ですから、塩坂さんにお伺いします。結局法文を読んでみると、さつき何か、片山君なり、或いは法務省なりの方面の言われるように、憲法違反ではないとしても、憲法違反の匂いは確かにある。それからすでに既得しておる人の権利を害することもあるわけです。でそれが示談ずくで、これこれの条件で貸して下さい、これこれの金を払いましようということで、相手方を承諾せしめて、自分が元通りにその土地を、使う。但しその所有権者がすでに正当な権利を以て、その上に建物ができておる、或いは第三者が家を作つてつて、それを追払うことはできない。で自分が作つた場合に、正当な理由があるという場合を除くほかは貸さなければならんということだから、大分いわゆる既得権を啓するというふうなことはあるに相違ないが、この立法をしようと考えた人は、そういう強制疎開とか、取上げられたとかいうふうな人が、強制的にそういう或る一つ権利侵害せられて、損害を受けている人がかわいそうだから、これを救済してやろうじやないかという趣旨でこの法案は出されたのでしよう。
  123. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) 御尤もです。
  124. 一松定吉

    一松定吉君 だからしてそれについては、法律上から言えばこれは、どうも違法が多いじやないかとか、或いは不遡及原則に反するのじやないかとか、憲法違反の疑いがあるじやないかということは、いわゆる法理論から言えばその通りだが、実際上から言えばかわいそうだから助けてやろうじやないかと言えば、それも考えられるのだから、そこであなたに聞きたいのだが、あなたも東京弁護士会員の一人だ、東京弁護士会、東京弁護士連合会は、強力な反対意見の我々に陳情書が来ているのだ。あの一体陳情書を作るについては、東京弁護士連合会の役員だけでこしらえたのですか。若しくはあなたがた役員である人、ない人、全部の人の代表者が集つてああいう決議書をこしらえて陳情書を出したのですか。その辺はどうですか。
  125. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) それは御承知の通り弁護士連合会に、法制調査委員とか何とかいうのがいるのです。十数人の連中が、諮問されますと、まあいろいろ議論した結果をまとめて出すのでありまして、何らその個人々々に意見を求めてそれを集約し、論議し、結論を出したものではないわけです。ですから私は、先ほども申上げたように、連合会の決議を、不法とか違法とは申さない。申さないけれども、これを個々の弁護士に諮問したわけでも何でもないし、十数人の委員のうち五、六人が出て来て、ちよこちよこつとやられて、そして連合会意思表示として発表をするのですから、形式は合法ですけれども、我々会員に何ら縦束力を及ぼすものではない。或いは自由勝手に、公聴会においても、世間に対しても、そのほうが正当だということを言つても、俯仰大地に恥じないということを、これは私冒頭に申上げておいたのです。
  126. 一松定吉

    一松定吉君 その冒頭を聞かなかつたからね。
  127. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) ですから、形式は整つてつても、実際は極めて数人の者がちよこちよこつとやる。まあちよこちよこと言つては誤弊がありますが、まあよかろうというようなことでやるのが実際の実情です。
  128. 一松定吉

    一松定吉君 それじやなんですか、あの弁護士連合会の陳情書というものは、今あなたのおつしやつたように、或る特殊の人が寄つて相談して、弁護士連合会の会員の大多数の意見じやない……。
  129. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) ええ、全然もうそういうものは如何なる場合でも……。尤も全国に六千何百おつて、それに対して諮問するのは実は困るのですね。
  130. 一松定吉

    一松定吉君 いやそこで伺うのは、そうするとああいう陳情書が出たことによつて、あの決議に加わらなかつた連中から、あの決議に対する批判の態度とか何とか出ていますか。そうでもない……、泣寝入りですか。
  131. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) いや甲論乙駁です。
  132. 一松定吉

    一松定吉君 甲論乙駁が非常にありますか。
  133. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) あります。正当じやないかというのもある。不都合じやないかというのもありますが、個個に聞いたら、法案がいいと言うほうが多いと思います。
  134. 一松定吉

    一松定吉君 この法案がいいというほうが多い……。
  135. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) ええ、パーセンテージから行けば……。
  136. 一松定吉

    一松定吉君 そうするとあなたお帰りになつて一つ自分は今日こういうことで参考人として法務委員会に呼ばれてこういう意見を述べた、これは一つこの決議というのは全国弁護士意思を代表したものじやなくて、君らが勝手にこういうことをしたもので、なかなか反対論が多いので、これは一つ再審査するだけのことをやつたらどうだという御決議でもなさつたらどうなんですか。それはやりませんか。
  137. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) それはやつても、なかなか一旦やつたことは、権威の上から言つても変更しないのじやないか。数人の者がやつぱり頑張ると思います。ただ今日参議院のほうから、賛成者と反対者を二名出せというお話つたのですが、連合会としては反対意見を出しておりますから、賛成者を出せということはこれはできない相談で、結局私が選に入つたというか、私的に入つたというようなことになつたわけです。
  138. 一松定吉

    一松定吉君 私もやはり弁護士連合会の会員の一人ですから、そういう間違つたことは、すべて堂々と反省を求めて、決議を取消すか、或いはこのなにを撤回するか、或いは間違いであつたという意思を表明するか。弁護士の多数の者が、多数の意見がそういうことならば、或いはそういうことにしたほうか民主的なんだな。
  139. 塩坂雄策

    参考人塩坂雄策君) いいのですが、形式は整つているわけですが、法制調査なんとかいう委員があつて、十数人あるのですが、その委員がやつておられることですから、これは形式上不法だということは、これは今日言えないのじやないかと思います。
  140. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 他に御発言はございませんか。
  141. 上原正吉

    ○上原正吉君 今一つ落しましたから、山田さんに伺いたいのですが、お話の中にあつたことを、いま一遍しつかり念を押しておきたいと思う。あなた方の御希望なさる御主張は、接収されておつた土地が変還された場合、その土地に商売をしておつた人が、再びその商売がその場所でできるようにいうことが最大の狙いである、こう拝聴したのです。
  142. 山田新之助

    参考人山田新之助君) さようでございます。
  143. 上原正吉

    ○上原正吉君 従つてそのときに地主からその土地を借りて、そこに家を建てて、人に貸して家賃を取つておつた人を保護するのが目的でないと、こう解釈して間違いございませんね。
  144. 山田新之助

    参考人山田新之助君) ございませんが、実はこういうわけです。ちよつとこれは御了解願いたいのは、実は非常に全体におきまして、会員中に借家人が多かつたのであります。つまり家主が一軒の家を作れば、そこに店子が多いのは当然であります。ところがこの法案の修正におきまして店子の人が今度ははねられたわけであります。さあ困つたというのでありまして、そこで各所において借地人は助かる。家を持つておつた家主でそこに商売しておつた人はいいが、店子は入つて来られないという問題が起こつたのであります。それで実は、どうも借地人のほうは、おれは助かるが、お前たちはがまんしろ、そのままにしておけということが言えなかつたのであります。それで、暫くまあ私のほうで運動して、どんどん進めば、どうも借地人のほうはどんどん有利になつて来るが、借家人はおいていけと、こういうことになると、今までこうやつて七年間もう毎日毎日運動しまして、どうも自分は助かるが、お前はだめだから箱根の山奥に入つてしまえということもできませんので、ともども一つこの法案を投げちまう、こういう考えまでいたしました。我々は借地人であつて、救われるというような権利を持つておるけれども、これはまあどうも今まで七年間もう毎日々々運動して実は兄弟以上にみんな仲がいいのであります。だからこれがどうも自分だけが救われるといつて自分だけ行つてしまうということはよくないので、そうかといつて、どうもそれを連れて行けば、どうもこれは法案は通らないということになりましたので、実は衆議院の田嶋先生から、借地人が大勢押しかけたときに、この法案は通らないという引導を渡されてそれでびつくりいたしまして、それからどうしよう、こうしようという問題になりまして、それでは一つ仕方がないので、我々は前から先生方から聞いておつたが、どうも現在の事態で、借地借家臨時処理法から言えば、どんどんこれは明日にも救われるが、現在の実情から行くというと、なかなか衆議院においても議論が多い。そうすると結局共倒れになつちまうから、一つこれは結局我々が持つておつた家をせばめてもいいし、又そこに家を作つてあげて、そうしてそこに借家人を収容してもいいじやないかというような、実は大体私どもの間でその議がまとまりました。そうしますと大体におきまして、曲りなりにも地主さんが自分で家を作つておつた土地は、これはだめでございます。取つちやいますから……。我々が、借地人が家を持つておつた人は、自分のところをせばめて、そうして十五坪のものを十坪でもいいから、あとの五坪ははねられた人の家を作つてつて、又商売の希望のあるものは入れてやろう、こういう私どもの立場でございますけれども、そういうふうにいたしましたのでございまして、勿論我々には、借地人はそこに参りまして商売を無論いたします。それから店子であつて、どうしても地主が貸さないという場合には、我々が何とかして家を作つて、そこにおつたものを全部収容してあげたい。私は芝浦でございますが、新宿のほうでも大体借地人が多いのでございます。新宿はすでにもう三井不動産であるとか、そのほかの人が家を作つて少ししかないところでございますから、一部百坪ばかり残つておりますが、四百坪か五百坪しかないところでございますから、それは到底当てはまりません。芝浦の人たちは、自分の借地を削つて、そうして、バラツクでも作つて、そこに入れてあげたいというようなことで、これがまとまりまして、ともかくも曲りなりにも救われる。そうして又私どもの希望は、全部の借地人、地家人全部を救つて頂きたいのですが、衆議院のほうは、それでは行き過ぎるというので、修正案となつたわけでございまして、それよりも我々同士で一つ救いたい。又職のないものは、現在の時代で職のないものは職まで与えてやつてお互い一つ手を繋ぎあつて生きて行こうじやないかというような、誠に何と申しましようか、私どもが長い間本当に熱心にお互いにまあやつておつた連中だけで、実際に困つている実情を知つているのでありますから、我我だけで一つつてやろうという議がまとまりましたので、幸いにこれが通りますれば、十分じやございませんが、曲りなりにも、東京は全部これによつて救われるわけになる。又横浜のほうもさようにやつております。又神戸が非常に多いのでございますが、神戸のほうもそういつたような、先日南君が参りましてのお話では、大体そういうわけで通らないのではしようがない。帰つて来られないということでありますので、誠に悲惨な状況になるからというのでございまして、かようになりましたので……。金を儲けようというふうな意思は毛頭ございません。お願いいたします。
  145. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 他に御質疑ございませんか。……御質疑がなければ質疑はこの程度を以て終りといたします。  参考人方々に申上げます。長時間参考人として御意見の御陳述なり、又委員各位質疑に御応答頂きまして、厚くお礼申上げます。これを以て参考人意見の陳述は終ります。  引続き懇談会に入りますから、傍聴人各位の御退席をお願いいたします。    午後四時十七分懇談会に入る。    ―――――・―――――    午後四時二十三分懇談会を終    る。
  146. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これにて懇談会を閉じまして、本日はこの程度で散会いたします。次回は明六月一日午前十時から開会いたします。    午後四時二十四分散会