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1954-05-29 第19回国会 参議院 法務委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十九日(土曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            上原 正吉君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            井上 知治君            楠見 義男君            三橋八次郎君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   衆議院議員            田嶋 好文君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       村  教三君   衆議院法制局側    参     事    (第二部長)  鮫島 真男君   説明員    調達庁不動産部    次長      大石 孝章君    法務省民事局参    事官      平賀 健太君    法務省民事局第    二課長     阿川 清道君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○接収不動産に関する借地借家臨時処  理法案衆議院提出)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から委員会を開きます。  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案、昨日に引続き質疑を行います。提案者に対する質疑応答をされますために衆議院から田嶋好文君が見えておられます。御質疑を願います。
  3. 楠見義男

    ○楠見義男君 衆議院法務委員会専門員室お作りになりました参考資料を拝見いたしたのでありますが、いろいろの今までの経過について私どもも知ることを得て、本案の審議の上に非常に参考になつたことを喜んでおりますが、その中で衆議院法務委員会における立案経過概要として昭和二十七年の二月二十五日以降今日に至るまで随分長い間御検討、御研究になつたことに対しては敬意を表するわけでありますが、この法案について昨日も法務省民事局長以下の政府側意見も種々伺い、又他面弁護士会からもいろいろ反対陳情が、意見の開陳がございますが、その主たる問題の中で一番基本的な問題はこの法律憲法違反の虞なきや、こういうことなんであります。憲法違反の、所有者に対する不当の権利制限といいますか、侵害ということについて衆議院側におきましてはどういうふうにお考えになつておりますか。この立法経過概要その他をつぶさに拝見しますと、例えば正当の事由がある場合には借地権賃借権の復旧についてこれを拒み得るというような規定があつたり、この法律にも二、三の規定がありますが、そういう場合には憲法違反の点についてはいささか救済的な規定にもなつているので、その点で憲法違反の問題が解決せられることになつているのか、先ずその点についてお伺いしたいと思います。
  4. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) この点大変重大な御質問だと私拝承いたしました。実は衆議院におきましては、憲法違友という点についての問題は多く議論をかもしませんで率直に申上げて今日まで来たのでございますが、今楠見委員からの所有者に対する憲法違友でないか、これは明確にしておくことがこの法の将来についても必要だと私も考えるのであります。そこで率直に私の意見を申上げますと、この法案を作りましたゆえんというものは、むしろ公共福祉というものを我々は重点考えまして、当然あるべき権利が敗戦という結果によつて曲げられた事実によつて失われ、而も思わざる利得者が生れ、今まで制限を受けた土地に無制限土地所有権がくつついて、而も時代経済的変動と睨み合わせて、思いがけない利潤を獲得する階級が生れて来る。こういうものと公共福祉と睨み合わせて、どちらを重点的に考うべきかということがこの法案作成重点でございまして、そこで我々としては、やはりこれはそうした要するに戦争という一つの事実が生れたことによつて不当な利益をする人を生まないことが、やはり戦争の結果による損失の平等負担ということにおいて、公共福祉をこの点に置いたほうがいいんじやないかという考えに一致いたしまして、この法案が作られたわけであります。従つて憲法における公共福祉という点で、私たちはこの憲法公共福祉に一致するものであり、不当にこの法案によつて憲法が曲げられて解釈処理されることはない、こういうふうな観点に今日立つているわけであります。
  5. 青木一男

    青木一男君 今の質問に関連してでございますが、私どもこの法律を作る以上、憲法違反というようなことは、これは根本的に考えなくちやいかん重要な点で、心配しているのでありますが、今の楠見委員の御質問に関連して、今の御所見に重ねて少しお伺いしたいんですが、憲法にも公共福祉のために財産権制限されることは、これは規定しておるわけです。ただ、私どもちよつと見たところで、この法案狙いとする私権調整は、利害関係者間の利益調整であるのじやないだろうか。どうも公共というよりも、むしろ限られた当事者間の利益調整という色彩が非常に強いんじやないか、この点が一点伺いたいと考えるのでございます。  それから今御説明にありました、若しこういう立法をしなければ、接収という事実によつて利益を不当に受ける人たちがある。こういうことが昨日の質問の中にも出て来たのでございます。その点は考えなくちやいけないのでありますが、それと同時に、そういうことでなしに第三者権利が移つた場合に、相当対価でその権利取得した人がこの法律を適用されると、今お話のように不当に利益を得たということにならずに、却つて逆自分支払つた対価すらも得ることができずにこの新らしい法律によつて自分権利を実質的に失うようになりはしないか、こういうような懸念があるわけですが、この二点について御説明願いたい。
  6. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 成るほど今の公共福祉というよりも当時者間の利害のある点、これもお説の見方は私は間違つていないと思う。私たちもこういう私権に関する法律を作るのに、どうしてもそこに利害対立ということが生れるわけであります。この法案に限らず私権を目的としたときの立法をするときには、利害対立も当然生れるのであります。併しこれは法体系の形の上でそうなるのでございまして、私はやはり公益の立場考えますと、公共福祉という点を重く見て、この法律処理してもらいたいという考えで臨んでおりますし、又そう見て頂いて誤りないのじやないか、こういうように考えてこの法案作成に当つたものでございます。  第二の、第三者が正当な権限で取得した場合、これを立法するに当りまして一番これを心配した点で、ございます。これは御質問通りのことでございまして、大いにこの点がこの法案において研究されなければならん点だと思います。そこで各条文に私たち但書を設定いたしまして、正当な権原取得した人がある。これは除外するという立場をとつて進みました。この法案の形で行きますと、今申されました第三者が正当な権原取得した場合、これは影響は非常に少いのじやないか、こういうように考えております。なお補足して専門員から……。
  7. 村教三

    衆議院専門員村教三君) この法案立法事務に当りました一員といたしましてこの法案憲法違反であるかどうかということにつきまして、補足的にちよつと申上げたいと思います。法務省におきましてはこの種の法案に反対されるわけでありますが、反対されましたところの一番大きな点は只今仰せられました憲法違反の問題でございまして、少し翻つて考えまするのに、法務省のほうの意見はやはり取引の動的安全、こうした所有者権利という方面重点を置きまして、主として見解を御発表になつたように思つております。併しながらこの取引の動的安全ということになりますと、やはり不測の思わざる損害を新らしい取得者が負うという問題が起つて参りまするが、翻つて前提としてこの接収地のことを考えますると、ここは接収地である、この家屋がアメリカ人によつて、或いは占領軍によつて接収されておつたという事実は、殆んど多くの人々によつて確認されている場合が多いのでございまして、思わざる損害というものは、これはもう少しその前提として調べればわかる場合が多かつたのでありまして不測損害というのは常に発生するという考え方は、少しこの例外的な場合ではなかつたかと、このように考えている次第であります。由来やはり接収地におきましては誰が使用しているか、この静的安全のほうがむしろ重点になるべきであろうと思うのであります。その誰が使つてつた、その次に誰が所有しているか、そうして接収解除後誰に戻るべきか、こうした点こそ、この接収地における法律問題の重点でなければならんと思うのでありまして、その意味におきましては、この法案は専ら使用者とそれから所有者との権利の調節、接収後の権利落着場所というような意味の静的安全というものを主として重点として考えて来た次第でございます。尤も所有者或いは又新らしい賃借権などが仮に接収期間内におきまして発生した場合におきましては、これらの人々損害を受ける事実は、これは確かにそういう事実は出て来るわけであります。併しながらこれは考えて見まするのに、戦争被害ということによつて接収という事実が参りまして、この戦争被害というものが新らしい憲法成立前に事実としてすでに発生しておつたのであります。そうした戦争被害をどのような工合にして比較的均衡を得て日本国民が負担するかというところに問題はあつたわけであります。戦争被害発生そのものは我々がこの法案で何ぼ議論しましても仕方がないことでありまして、一旦発生したこの戦争被害所有者賃借人とにどのように均霑させたらいいかというところに問題はあつたと思うのであります。接収それ自身憲法違反の事実として発生しているというようなお考えは、これは私止むを得ないものであります。これをどのような工合にして分ける、或いはどのような工合にして均霑するかというようなところに、所有者本人或いは賃借人本人意見がありまして、こういう点から多少今後も異論は免かれがたいと思つておりますが、根本的には私は接収というものが憲法成立前の超憲法的事実でありましたが故に、この法案憲法違反の虞れはないものとこのように考えた次第でございます。
  8. 青木一男

    青木一男君 今の説明に関連してですが、接収という事実、これは憲法以上の事実であつた時代も確かにあるんです。だけれどもこの憲法違反の問題の起るのは、そういう善後措置であるからというような概括的な理由ではなしに、憲法で保障した私有権財産権侵害になるから、こういう簡単な理由なんです。それで今の御説明によるとそういう事実が実際ないというようなお話でございますけれども、例えば土地所有権を更地として買つた人がそのままおけば確かにこれはもう適用あるんです。除外規定はないでしよう。そういう工合に私はなつていると思うんです。それで今のお話によります。と、これは接収地ということはわかつているんですから、予期されることじやないかというような御趣旨で、或る程度合理性があるというような今御説明があつたんですけれども、そこは弁護士会あたりで非常に反対している理由なんです。それなら当初からそれを法律で書いておかないか。予期されるということはこの立法を予期するということに帰着するわけです。これはちよつと私はそういう議論にはならないと思うんです。やはり法的生活の下においては、現行法基礎として正当なる権利かどうか。自分が保護される財産権かどうかということを判断するほかないのであつて、将来接収地調整のために何か立法があるだろうというようなことは、これは私は予断するのは無理なんで、そういう理由からは当然予期されたる問題であるから、不測損害じやないかという説明は私は成り立たないと思うのです。この点は非常に重要で、弁護士会あたり遡及的に法律を作るのはいかんということを強く言うのはその点なんで、その当時ありました、立法をされているなら、多少不合理でも不測損害を与えないでいいのですが、今日数年経つてから遡つて効力ある遡及的に法律を作るから、弁護士会法務省は反対されるので、今の予期されたという意味は、新らしい立法を予期されるということに、同じような意味になるから、私は非常に御説明ちよつと理解できない。その点如何ですか。
  9. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 村さんが申上げました説明で、専門的な立場からの説明は御了承願いたいと思いますが、私はむしろ平つた言葉で先ほどから申上げております通りに、今青木先生のおつしやつたこと、私たちも御尤もな意見と拝聴しているわけなんです。ですが実際上申しますと、接収不動産に対する関係は、遡及という言葉がございましたが、解除が、実際を調べて見ますと遅れておるのでございまして、遡及する分は余り少い。それからこの法案が小委員会を設けてかかりましたのは占領中なんです。が、事情を申上げますと、借家権までということがありまして、社会党左派、改進党までは収まりましたが、自由党の内部が借家権まで含めるのはいかんじやないか、こういうことで実のところこの法案が今日まで遅れて来たのでありまして、この法案自体作成に着手したのは占領解除するであろうということを見越してかかつたわけなのであります。それが終熄と同時に法案を作る、こういう狙いであつたのであります。そういう事情の下にこの法案を御了承願い、そして遡及の点に対しても私たちは当然考慮に入れましてこの法案作成に当つたという経過一つ了承願つて、先の説明と併せて一つ御了解が願えますれば、誠に有難い、こう思うわけであります。
  10. 楠見義男

    ○楠見義男君 憲法違反の問題はさつき申上げたように参考資料を拝見しますと、昭和二十八年二月二十七日に衆議院法務委員会接収不動産権利調整小委員会において接収解除に伴う不動産権利調整に関する要綱案というものをお作りになつて、各方面意見を徴せられておられるようなんですが、その中に法務省民事局意見として、これもさつき申上げた点なんですが、なお十分研究しなければならんけれども、暫定的な意見としていろいろこの要綱の各項について意見を述べられておる中で、憲法第二十九条関係に関連して、所有者は正当な事由ある場合には申出を拒否することができるものとするが相当である。こういう意見を述べられております。このことは、この法律の中にも明記されておるところなんですが、私は従つてこのことで憲法二十九条違反のそしりを免かれるようにお取計らいになつたのかと思つて実はお伺いしたのですが、今田嶋さん或いは村さんの御答弁から想像しますと、このことは余り問題じやなしに、むしろ接収ということによつて、非常に不測損害を受けた、それを救つて行くことが公共福祉に該当するのだ、こういうふうに受取れたのですが、この法務省意向というものは余り問題にならないのですか、この点どうでしよう。
  11. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) これは私の答弁内容が不足いたしまして申訳なかつたのですが、勿論所有権制限を成るだけしない、やはり憲法違反のそしりを逃れたい。こういうことで立案したわけでございまして、法務省意見も十分採用したつもりなんでございますが、それが今の権原という但書を入れて、成るだけ所有権制限をしないように、所有者意見を尊重して行く、こういうところに落ちついたわけであります。
  12. 楠見義男

    ○楠見義男君 もう一つ弁護士連合会で、今青木さんからも若干触れてお述べになつたのですが、弁護士連合会のほうで、立法の大原則に反する、こういうことを言つている、この点について、例の農地法農地所有者に対して実は遡及した事例があるのです。農地改革法案法案というよりも要綱について閣議決定をした日を抑えて、法律はそれから半年以後に成立しておりますけれども、その時期を抑えて地主の土地を開放した事例があるのです。その場合とこの場合とは事例は非常に違うのですが、遡及の問題についてこの法案をお考えになるに当つて、そういうような工夫が、そういう農地関係事例等をどういうふうに今のと関連上お取上げになつてつたかどうか。経緯だけをお伺いいたします。
  13. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) その点確かにあつたはずでございますが、細かいことは村さんから……。
  14. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 弁護士連合会から法案遡及して適用することは適当じやなかろうという御意見は、前前から承わつた次第でございます。それでこの点は相当考慮いたしまして、又尊重しなければならんというので、法案の中には相当工夫したつもりでございます。その現われがいわば遡及的になるわけでございますが、新権原によつて既成の事実が発生し、所有権の新取得が行われている場合におきましては、これはそのまま法定に確認さるべきものである。このような規定もいたしましたし、それから又財産補償ということもこの条文の中にもございまして、どつちかが不利益を見た場合におきましては、その損害を所得のある方から出すという条文をわざわざ新設いたしまして、まあ当事者間の補償ではございまするが、せめて国家補償ができないから、そうした面で当事者間の補償という言葉条文を設けたような次第でございます。今楠見先生がおつしやいました農地法のことは、実は調べが余り足りませんのでございまして、もともとこの都会地におけるものを大体、前提として、そして占領軍接収しておいた事実も、主としてその方面のところが多かつたのでありまするが、大体におきまして都会地を中心とし、又特別調達庁の報告も大体そのように聞いておつたのでありまするが、実は農地法のほうは調べが足りなかつた次第でございます。
  15. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからもう一つ、頂いた資料の中で「接収不動産賃貸借関係訴訟判決集」というものを頂いておりますが、この判決によつて見ますると、要するに接収中に期限の切れたものについては、接収という事実によつて権利の行使などが停止されるという恰好になつておりまして、賃借権は消滅したものではないと言つておりますが、それからいろいろ小委員会のほうで案をお作りになつた中にも、一時そういうような思想もあつたかと思いますが、進行せずというような規定で以て解決するという行き方をおとりになつておられないようなんですが、その点はどうですか。それはもうこういう法律を作れば、それは当然問題はないからということですか。
  16. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 楠見委員から仰せられる通りでございまして、この種の接収不動産に対する国家的な見地からの解釈はどのようにあるべきかということにつきましては、いろいろ基本的な解決の方法考えられた次第でございまして、最初はやはり政府民事局等において主張されました国家補償という点が一番憲法に副うた常識的ないい方法であると思つた次第でございます。ところがこの方法は遺憾ながら大蔵省で金を出さない、予算がないということを何回も何回も言われましたので、この方法はむずかしいことになりました。その次に裁判所判例を追うた方法というものが、これが国民の支持を受けるのじやないか、このように考えまして、只今仰せ賃借権期間接収期間中は停止或いは休止しているのであるという考え方が割合にまあ無難ではないかというような工合考えられた次第でございます。ところがこの接収不動産処理に関する各地の判例が必ずしも一定しておりませんし、最高裁判所できまるがためにはなお相当の年間を要する、このようにも考えられましたので、いろいろ衆議院法制局と打合せて聞きましたところ、一応そうした解釈問題は別の問題として、ともかくも期間期間として一応進行する。そうして接収期間中に賃貸借期間が満了するものもある。それから期間が長ければ満了しない。そういうことは、それ自身解釈として裁判所に任しておいて、そうしてむしろこの法律によりましては、接収された当時に賃借権を持つてつた者は、期間が切れましても接収解除のときにこの法案によつて新らしく優先借受権取得する、かように考えたほうが立法上の処理としては結構である、こうした衆議院法制局のお考えがございまして、大体そうした一番あとの考えかに基いてこの法案の構想をした次第であります。
  17. 楠見義男

    ○楠見義男君 今お述べになりました中の国家補償の問題ですね。この点は昨日もこの委員会で随分問題にした点でございますが、結局国家補償がないということを前提にしてこの法案をお出しになつているし、それから我々もそれを前提にして審議しているわけなんですが、ただ昨日伺いましたのは、政府の統一した意見とは考えないので、頂いた資料の中にどこかにそういうはつきりとした意向が現われているかどうかと思つて見ましたところ、ただ一つだけ「連合国軍使用不動産に存した賃借権等の取扱いについて」という東京都の意見の中で、東京都長官から述べられている意見の中でただ一つだけ、「大蔵省見解」として、「講和条約発効前における賃借権等は之を接収時の状態に復帰させることを希望するが、若しそれが不可能としても補償はしない方針にしたいと云つている。」ということが掲げられております。併しこれはただ大蔵省主計官意向でありまして、そのほかの資料を拝見しますと、衆議院法務委員会のはうでもいろいろ会合或いは意見の聴取をおやりになつておりますが、その点は実はこれにははつきりしておりませんが、あなた方のほうで御審議経緯において、そういう面に政府としては国家補償はしないんだと、こういうことをはつきりした意思表明があつたかどうか、その点をお伺いしたい。
  18. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) それも私たちのほうにおいて不十分な個所でありまして、御尤もな御質問だと思います。それは明らかにしておくのがこの法案のためだと思いますが、実は政府最高責任者、要するに大蔵大臣ということになりましようが、委員会としてはこの方面意見は聴取いたしておりません。ただ小委員会におきまして実は大蔵省、それから法務省、それから特別調達庁、それから東京関係、こういう方に、少くともこの記録には載つておりませんが、五回以上の御出席を願いまして、それらの点に対する討論といいますか、フリーな立場において御意見発表を願つたわけであります。そのときの意見においては、大蔵省主計官考えとして、どうしても国家補償は今日の予算関係においてはできない、こういうことで小委員会においては、先ず最高責任者意見はなかつたのでございますが、現状においては国家補償は困難じやないかという結論が各担当役所の間にも生れたものと私たちは見てとつたのであります。そこで主計官言葉が、大蔵省の省議を開いてまでやられ、その結果出席を得て述べられたものであるかどうかということはわかりませんが、少くとも私は或る程度責任がある立場をとられて、そうして大蔵省も出て来たものじやないか、こういうように考えております。
  19. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の国家補償を仮にする場合に、厖大なる金額になるから到底困難だろうということは誰しも思つておることなんでありますが、これは村さんにお伺いしたほうがいいかもわかりませんが、一体見積りと申しますか、どの程度の予定になるんでしようか。
  20. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 実はこの法案を立案しようとする前提といたしまして、国家補償の線に進むという点が最初から難関にぶつかりまして、事務当局同士の折衝ではどうにも行かないものでありますから、その方面の所に行かないで、民間同士調整、或いは条文上の根拠というような方面にその補償の方向を向けたものでありますから、楠見先生のおつしやいましたような意味の調査をよく行うことができませんで、それで相当大きな数字になるだろう、むしろその前提といたしまして数字的基礎というものは一応は考えた次第でございます。それで特別調達庁に求めましたところ、特別調達庁では、所有者の数もわからなければ、借家人の数もわからず、借地人の数字もわからんで、人の名前さえわからんというような状態で出発していることがわかりまして、勿論PDという契約件数ははつきりしております。併しそのPDの中には、所有者もおれば賃借人も地上権者もおるということでありまして、元を質しますと、東京都の場合におきましては、ピストルをつきつけられたような接収から出発しておるのでありますから、どこを質しましても、今日の法制上正確な観念、或いは数字を以て出発することができませんで、結局国家補償数字を算定するということは遂に断念したような次第でございます。
  21. 楠見義男

    ○楠見義男君 調達庁の方は見えておりますか。
  22. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これは今は見えておりませんが、あとで、一応衆議院側を聞きましてからにして、留保しておいて頂きたいと思います。
  23. 楠見義男

    ○楠見義男君 それから先ほど申述べた小委員会案の要綱の第十二及び第十三において、優先賃借権の不成立の場合、例えば「当事者の意思表示により接収不動産につき、賃貸借契約が解除された場合。賃借人より賃借権の抛棄の意思表示があつた場合。」これを優先賃借権の不成立の例に挙げております。それからその次の優先賃借権の移転禁止の条項を挙げて、「優先賃借権の移転は土地交換、相続、競売等その他正当なる事由ある場合に限り、裁判所が鑑定委員会意見をきいて之を許可する場合の外は、之を禁止する。右禁止に反した移転は無効とする。」こういう二つの規定がございましたが、今度の法律にはこれはどこに入つているんでしようか。その点……。
  24. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 一応小委員会ではこの種の意見が出まして、それでこういう立案のまあ条文のほうの作成にもかかつたことはございますが、衆議院法制局と交渉しているうちに、この種の規定は民法にもすでに規定がございまして、あえて規定する必要がないという意見もございましたし、又この法案によりまして優先賃借権を与えられて、それが売買されるのはいけないというような私ども考えを持ちまして、そうした禁止規定委員会の御意向によりまして作ろうとしたのでありますが、民法でさえそういうものを禁止していないのに、この特例法で禁止するのはどうかと思うというような、主として衆議院法制局側意見に基きまして、この種の規定は余りこの法案の表面には現われなかつた次第でございます。
  25. 楠見義男

    ○楠見義男君 ちよつと私は聞き洩らしたんですが、それはこういう要綱でお考えになつておるような事例が仮にあつても、例えば当事者の意思表示で以てこういう事態が起つても、それは優先賃借権はやはり認めて行くという考え方なんですか、当然それは不成立という見方なんですか。ちよつと聞き洩らしたので……。
  26. 村教三

    衆議院専門員村教三君) すでに契約によりまして、接収されました当時、それから接収された以後におきまして、当事者間におきまして、自由契約にもう自分賃借権を抛棄した、もう帰える意思はない、このようなことをはつきり言い、それが第三者によりましてあえて必ずしもわからなくても、当事者間におきましてはつきり表示しておるような場合におきましては、それはその事件に関する限り裁判所におきましても有効となるものと、こういうように私ども考えております。
  27. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからあとで法文に入つてからお伺いをいたしますけれども、その前に、今の賃借権の消滅に関連して、専門員室最初案をお作りになつたときに、強制疎開に際して賃借人等が賃借権対価相当する補償金を受けたる場合は賃借権が消滅する、こういう規定がございますね。そういう要綱がこれは今度の法案ではどういうようにお取扱いになつておりますか。
  28. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 実は今楠見先生のおつしやいましたこのあたりがこの法案の一番むずかしいところでございまして、恐らく一番争いになるところだと思つております。この法案によりますると、接収当時賃借権を持つてつた者優先借受権がある、これがこの法案全部を貫く根本思想でございまして、接収当時賃借権のなかつた者はこの法案によつて何らの保護を受けない、こういう建前になつております。そこで個々の事件につきまして賃借権があるのかないのかということの問題が一番中心点でありまして、そういう事例といたしましては、例えば東京都において行われました第五次、第六次の強制疎開に際し、東京都からお金を出しておるわけであります。これはこの中には賃借権消滅のための金を含んでいるという考え方もあり、いや、それは賃借権消滅の金が入つていないんだという見解もあり、裁判の判例によりましても、必ずしもはつきりはしておりませんし、それから五次と六次とのことも、東京都としましては割り切つたような説明をしておりますが、お金をもらわないで、行政手続としましては賃借権消滅のためのお金を含んで渡すように仕向けておりまするが、賃借人のほうから申しますると、その金をもらわないで、もう戦時中戦後の激しいさ中でありますから、どこかへもう逃げて行つてしまつているという場合も、ございまして、到底はつきりさせることが法案でもできませんし、東京都におきましても私はつきりすることができないんじやないかと思つております。結局裁判所によつて接収当時賃借権があつたのかなかつたのかという、こういう判例を中心とした考え方によりまして、個々の事件を処理して行くべきものじやないかと思つております。
  29. 青木一男

    青木一男君 大体強制疎開のときは借地権者が補償を受けておるという全般の建前に法律上なつておると思いますが、なつていないのもあるんですか。公共団体等から出したもので今のわかならいというのはどうなんですか、強制疎開というものに対しては、法律で支払うという建前になつておるから、はつきりしておるわけなんですが……。
  30. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 疎開の場合は、借地権補償をするという建前、これは法律規定通りで私たちは認めるのでありますが、ただ調べてみますと、実際上は法律に書いてあることと一致していない場合が多いんです。これは実際に人に当つてみますと、実際上を加味したこと、それから何と申しますか、疎開しても疎開命令によらないで疎開したような人もあります。契約の条項のみを以て処理しにくいという事えがあるわけなんです。だからその事実を元にして考えたらいいんじやないか、ただ裁判所へあつたかなかつたか委せばいいじやないか、こういうことなんです。裁判所は事実に基いて判断して来る。
  31. 青木一男

    青木一男君 それではこの第十二条というものは、そういう法の建前にもかかわらず、事実上代償を得なかつたというようなのだけに適用するわけですか。そうでもないんですか。
  32. 楠見義男

    ○楠見義男君 それに附加へて、昨日民事局でしたか、法務省でしたか、御説明があつたのは、こういう御説明があつたんです。大体強制疎開の場合には、今田嶋さんのおつしやるように、事実問題は或いはそういう事例があつたかもわかりませんが、一応補償をしておる。そうして戦争が済んだからその強制疎開地に戻る場合には、できるだけ前の賃借権者等を優先して入れるという考え方において、これは恩恵という言葉法務省使つておりましたが、優先してそれらの人々に前の所へ戻つて来てもらう。このことが都市の復興の上からいつても極めて望ましいことだと思うので、そういう措置を講じておりますと、こう言つておりました。従つて十二条の規定は要らないのじやないかということをお述べになつてつて、このいろいろ資料調べてみますと、民事局の第二課で接収の不動産に関する処理法、非公式ですけれども、案をお作りになつておる。この案を見ましても、その条項が落ちておる。その趣旨は昨日私が申上げ、今申上げた趣旨だろうと思う。そこで青木さんのお尋ねになつておるのも、そういう意味だろうと思うのですが、そういうことを附加えて申上げて御答弁頂きたいと思います。
  33. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 十二条の疎開建物の敷地の借地権が、これが接収中であつたということですね、……わかりました。これはさつき村専門員、私が答えたこと、これが衆議院における議論のやりとりされた言葉でございますが、実はこの法案の趣旨というものが、罹災都市借地借家臨時処理法、これを骨子にして考えたわけなんであります。だからこの罹災都市借地借家臨時処理法というものが、やはり疎開した敷地に対しては相当保護的な考えを持つております。でありますから、この趣旨を汲んで考えますと、こうした立法が必要だろう、入れたほうがいいだろうと、こういうことが率直な我々の考えであつたのであります。これは適当に一つ……。
  34. 青木一男

    青木一男君 形式的に言えば今お話のような議論になるのです。つまり前の立法のときそうだつたのですが、論理的には……。ただ今お話の罹災都市借地借家臨時処理法というものは、これは誰が見ても非常立法なんです。従来の法の体系から見ればあれはあり得べからざることなんです。これは終戦後の応急措置として、従来の原則を破つてでも、とにかくああいう非常立法をしなければならない事態になつたものだと思うのです。そこでこの適用について二年とか五年という期限をきめて一町的な措置としてあの法律は是認されたものと思うのです。ところがこの十二条があると、そういう非常立法をそれこそ事前でなしに、遡つてこの非常立法を又延ばすことになるのです。これは何年になりますかな、そこに非常な非常立法の、いわゆる限時的の性格がなくなつてしまうのじやないか。而も当時であれば、これは終戦直後の法律ですから、まだ割合に事実関係はそう変化してないときで、影響も少いのであるが、今日までこういう法律があれは、誰でも二年とか五年経てば、こういう非常立法の非常というものの効力がなくなるということを信ずるのは国民としては当り前です。その二年とか五年間というのは非常立法の効力がある、あとは普通になるということは、万人の常識ですから、これは更に生きるとは考えませんから、今日になつてつて処理法で以て予期した期限をあとから延長したということになるので、非常に法的秩序から言つて変なことだと思うのですが、その点はどうなんですか。
  35. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 私先ほど率直にお答えし、罹災都市借地借家臨時処理法の精神を汲んで作つた法律だから当然これが生まれたのだと、こういう説明をいたし、これが本意でございまして、そこは一つお説のような見解も生まれますので、参議院で適当に御調整つても別に異議はございません。
  36. 楠見義男

    ○楠見義男君 その次に、これは村専門員にお伺いしたほうがいいと思うのですが、昭和二十八年一月三十日付の法務専門員室案のこの法案の中に、第九条として善意取得者に対する損害補償の条項があるのです。これは昨日来、又本日もいろいろ問題になると思いますが、善意の取得者損害を与えることは如何にも気の毒だと、又平穏且つ公然と行われた取引の安全を阻害するという観点からも、善意取得者に対する損害補償の条項がるあのですね。これは私は極めて常識的なことだとも思うのですが、このことが今度の法律案にはないのですが、それはどういうふうにお考えになつておられますか。
  37. 村教三

    衆議院専門員村教三君) この損害所有者に発生する場合がある、或いは又賃借人と新らしい賃借人に発生する場合があるということは、これは当然予想されると思うのでございまして、これをどのような工合にしてその損害を少くして行くか、或いはなくして行くかということにつきまして、条文上の解釈方法といたしましては、この条文全般を通じまして相当対価でとか或いは相当なる賃借条件でというところにそうした意味を含ませまして、そこに一方に損害を受け、一方に利得があれば、その間の調節をする、これが当事者間で解決ができなければ裁判者の監定委員会でやつてもらう、それから又建物とか既存の事実がすでに発生しております場合におきましては、権原によつてすでに発生した事実につきましては、それはそれを理由として優先借受権の申出を拒否することもできるという考え方、それから直接に金銭補償問題は条文を設けておりますので、条文におきまして当事者間それぞれ損害補償のために協議をしてもらいたいという意味で条件を設けてある次第でございます。それはこの法案におきましては十六条にございまして賃借権の設定による損失の補償というところがございまして、ここでは第三条、これは借地の優先借受でございまするが、この規定によつて賃借権の設定を受け又は第四条の規定によつて借地権の譲り渡しを受けた者は権原によつてその土地を使用していた者及びその他の者に対し、工作物の移転料その他当該賃借権の設定又は当該借地権の譲渡によつてその者が通常受けるべき損失を補償しなければならない。まあこれだけの一応の配慮はしたつもりでございます。
  38. 楠見義男

    ○楠見義男君 私の聞き方がちよつとまずかつたのですが、私の聞きました趣旨は、一方で被害を受けた、戦争という事態に伴つて被害を受けた人を救済することが必要だということでこの立法ができておるわけですね。それから一方では旧土地所有者の方は偶然の事実によつてその土地の上に存しておつた権利が消滅して、言わば更地になつて、不当な利得を得たことになるので、その点が社会通念上衡平の観念から見ておかしいじやないかということを一昨日来やつておるわけなんですが、そこでさつき申上げた要綱で行きますと、その点は善意の所有権取得者は旧譲渡者より補償金を受けるとか、或いは賃借権取得者は賃貸人、即ち旧取得者より補償金を受けるとか、こういうことで今申上げた衡平の観念に合致するような要綱で、これは私は極めて常識的だと思うのです。今お述べになつた十六条の規定は、それはそうじやなしに、そのほうはもう不問に付して、それからあとのことについて借地権の第三条文は第四条の規定によつて借地権の譲渡を受けたものは補償する、こういうことになつているのですね。だから考え方が今申上げた考え方とは違つた考え方のように受取れるのです。なぜ衡平の観念から見て、不当にその利得を受けたと思われる、これは思われないという見方をする人もあるかもわかりませんが、常識上そういうふうに思われる方面に対するこの折角できておつた条項がこの法案で落ちておる経緯をお伺いしたい。
  39. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 実は楠見委員のおつしやる通り、一方におきましては、場合によつてはピストルで脅かされて取られて、現地に帰りたい帰りたいと熱願しておる、他方においては家がなくなつて、その後その家によつて土地の値段が非常に騰貴してしまつた。片方においては或る意味合いでの非常な利得がある、この両者の調節をどうするかということはむずかしい点があろうと思いますが、併しこうした方面に、この法案だけで全般的な解決をすることはむずかしいのではないか。せめてこの間常識的な、民間の間における当事者同志の話合いの、何なりとそうした方面の話合いの手が仮になるように条文を考慮すべきではないか、このように考えます。それが僅かでございますが、「相当対価」とか或いは又相当な賃借条件とか或いは又全般を通じまして、但書とか第二項とかを設けまして、両者の、いわば示談のための手が仮になるような条項を設けるというような、僅かの工夫で終つた次第であります。
  40. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点は議論になると思いますが、例えば第三条で、「相当な借地条件」という中には、権利金を含まないというのが定説のようですが、もともと権利金を出すようでは救済になりませんから、そこでそういうふうにまでしておつて、今度十六条で、賃借権の優先申出者が補償を受けるということは、やはり負担が重過ぎやせんか、これを認める以上は……、そこで法務省おられますか。
  41. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 今は衆議院側だけがおります。衆議院側が終りましてから又呼びたいと思つております。
  42. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじやその点はあとで法務省に伺います。
  43. 青木一男

    青木一男君 今の楠見委員質問は、端的に言えば、第四条の「相当対価」というところには、賃借料ということになつて、いわゆる権利金は入らんという昨日説明があつたので、それから出発していると思うのですが、まあその権利金に当るものを払うか、誰が払うか、或いは払わないかという問題は別として、今日の土地の価格というものは、実質的に分類すると、いわゆる権利金に当るもののほうが、殊に高い地においては非常に率が高いのです。これは税務署の統計によりましても、地価が非常に高くなるほど、賃借権相当する部分の占める割合は非常に高くなつて来ておるのです。その問題の処置ということが、こういう問題の解決には根本的に考えなければならんと思う。それで一つ伺いたいのは、三条と四条との権衡なんです。四条を見ますと、新たに借地権を得た人から、借地権を強制的に譲渡を受けることを法律が認めておるのだが、その場合「相当対価」というのは、借地権対価であるから、これは権利金ですね、内容は……。この借地権対価というのは、いわゆる権利金に当るのだと私は思うのです。借地権というのはほかにちよつとないのですから、いわゆるこれが権利金に当るものです。権利金を全額やはり払わないと、借地権の譲渡は受けられないという趣旨で、第三条の場合は、所有者が若し持つてつた場合は、所有者から権利金に当るものは全然補償せずに、ただ普通の賃借料、これは地代家賃等の統制令との関係で、いわゆる権利金でないものを含んだ場合が多いのです、普通の場合は……。そうすると非常にその間観念の開きが三条と四条の間に出て来るのではないかと私は思うのですが、その点はどういうものでしようか。
  44. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 私たちは別に権利金というふうな形でこれを考えたわけではないのでありますが、借地権譲渡の対価というものが権利金ということになりますと、これは別問題ですが、私たちはまあ実際上の優先権者に対して、相当な不均衡を生まないところの価格で権利取得する、こういう普通の何もそれを入れないで、普通の観念でこの立法には着手したわけですし、又今日もそういうことを考えてまだいるわけですが……。どうぞ村専門員あなたの考え一つ敷衍して下さい。
  45. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 実は立案当事者田嶋委員がおつしやる通りでありまして、三条によりまして土地に入れるということを考え、第四条において他人に移つている土地であるから、他人に交渉して入れるように工夫するというように簡単に考えた次第であります。併し実際問題として、今お話のあつたように、結局普通の地代を出すことは殆んど問題はなく、権利金をどうするかということが、恐らくは実際交渉の場合に一番大きな問題だろうと思つております。でこの点につきましては私の個人的な考えでございますけれども、商店街と住宅区域によつて区別さるべきものではなかろうか。住宅区域におきましては、これはまあ普通の地代を前提としたものが、この相当な条件という中に入る、商店街におきましては、その多少は、権利金に関するものが考慮さるべきものではないかと思つております。尤もそう言えばそういうあいまいなものではどうするのだということになりますが、その点はともかくも裁判所に鑑定委員会というものがございまして、これが全国借地借家の罹災都市法による問題につきまして、多年の先例がございますから、そうした先例を公表して、鑑定委員公等で一つの標準を示してくれますならば、この一つの型ができるものと、このように考えております。必ずしも政府の、民事局の見解だけできまるものではないのじやないか、このように個人として考えておる次第であります。
  46. 青木一男

    青木一男君 そうするとさつきの説明と内容が違つて来ますから、「相当対価」という意味が……。まあ私どもはそういう両説あることを含んでまあ判断いたします。
  47. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは多少意見になりますけれども、さつき善意の取得者の救済に関連しまして、旧所有者に対する問題なんですが、これは旧所有者が現に存しておつた利益の限度において、善意の第三者損害賠償といいますか、求償権を、即ち通常生ずべき損害を請求するというようなことにしたほうが衡平の観念に合うようにも思うのですが、この点は問題にはならなかつたのですか。
  48. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 十六条ですか。
  49. 楠見義男

    ○楠見義男君 十六条は新らしく賃借権を設定した人のことで、旧所有者の問題ではないのです。
  50. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 政策的なお考えといたしましては楠見先生のおつしやつた通りでございまして、社会政策という方面の拡充という点から言えば、まさにそういう考慮がなさるべきものだと思つております。その種の条文を工夫したこともあるのでございますが、なかなか所有者側の御意見委員会によく反映して参らんのでありまして、そういう条文を設けますと、いよいよこの法案が駄目になりそうな気がいたしましてやめた次第であります。
  51. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  52. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩    —————・—————    午後零時二十二分開会
  53. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 休憩前に引続き質疑を続行いたします。
  54. 楠見義男

    ○楠見義男君 法案の内容に入ります前に一応基礎的なことで伺うことは、先ほどお伺いしたのですが、引続いて法案の内容に入つて若干お伺いいたしたいのですが、先ず第二条なんですが、第二条の第一項第二号です。これは三号も同じような問題があると思いますけれども、国がその借地権者或いは建物の賃借権者から賃借をしてそして連合軍或いは駐留軍に貸してそしてその接収解除になつて還されるという場合がその規定から行くと想像されるのです。その解除された場合の国の処置というものはこれは一体どうしておるのだろうかという問題なんです。借地権を借りてそうして解除になつて今度は借地権者に還せばいいことなんですから、そういう場合にはこれは借地権者に還しておると、こういうことになれば、而もその期間中に期限の到来をしたようなものは、先ほど来の判決の趣旨から言つてもまあ進行しないと、こういうようなことになつて来れば、この場合の関係は一体どうなるのだろうかということを疑問に思うのですが、その点はどうでしようか。
  55. 村教三

    衆議院専門員村教三君) 私ども特別調達庁、今の調達庁でありますが、こうした方面説明によつて聞いておりますところでは、接収解除される、そうするとP・Dの契約者にその接収解除されたという事実を伝えて、そしてその者がうんと言うとその土地又は建物の引渡しをする、こういうように聞いております。ところでP・Dの契約者に名前を連ねておる者は、大多数はその土地又は建物の所有者でございますので、併し借地権者もある、それでその所有者及び借地人いずれであるかということはわかつているかと言うと、いやそれは東京都から事務を受継いだだけで、戦争直後そんなものははつきりつかめるはずないというようなことで、結局接収ということの法的構造を一応定義しないといけないというわけで衆議院法制局にお願いをいたしまして、結局第一号、第二号、第三号の事柄が接収というものの内容をきめて行く法的な構造であると、このように考え規定した次第でございます。
  56. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからどなたでも結構ですから……。
  57. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それから衆議院法制局から鮫島部長が参つております。
  58. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の点は法律のまあ技術としては当然所有者の場合もあり借地権者の場合もあるから、ここに掲げておることはこれは法律的には完全だと思うのですが、そこで法律的にそれがあとへずつとどういうふうに尾を引いて行くかという場合の問題なんですね。その場合に先ほど申上げたように借地権者が借地権接収された、そして解除された場合にはこれは元へ戻ると、こういうことになつて来ると、その場合の法律関係はこの法律ではあとどういうふうにそれを処理されているのだというこういう問題なんです。それがさつきも申上げたように期間が切れておつてもその期間が進行を停止しているのだという規定があれば、そのままずつと行きますけれも、それは何もないということになれば、この法律の適用の上から言つてどういう条文でどういうふうに動いて行くのかという点がちよつとわかりかねるのですがね。
  59. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) その点は結局借地権者が接収された家は借地権者に還すと、こういうことになるわけでございまして、その場合の法律関係というものは、やはりこの法の狙いは、所有者借地権者の紛争を避けるという意味でこの法律が適用されるわけでありまして、当然この法律によつて所有者借地権者の間に折衝が起ると、こういうことになるわけであります。主としてこの法律は附加えて申しますが、所有者借地権者の関係を律しようとしたものであります。
  60. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからその次に第三条の、これはあとにもありますけれども、「その土地又はその換地」という場合ですね、この換地はこれはまあ詳細は或いは特別調達庁の方にお伺いしたほうが適当かと思うのですが、ただどういうふうにお考えになつているかということだけお伺いしたいのですが、換地はいつ提供されておるのでしようか。そのときに土地所有者と同時に従来の借地権者に対しても通知をして、何らかみずから救済する機会を与えているのじやないかと思うのです。だから、そういうことであるならば、換地という問題は特に考えなくてもいいのじやないかと、こういうふうに思いますが、特にここに換地というのが、あとにも出て参りますけれども、入れておるのは、どういう事実関係になるのでしようか。
  61. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) これは私たち狙いとしては、大都市は空襲を受けておりまして、大都市では都市計画が盛んに行われて殆んど換地で今処理されておる。大阪でも、名古屋でも横浜でも、神戸でもですね。これが実際の実情でございますので、この点を頭に入れてこの立法をしたわけでございますが、立法の技術的面に対しては鮫島部長から……。
  62. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) ここで換地と申上げましたのは、これは或いははつきりしなかつたかも知れませんですが、実は都市計画法で前の耕地整理組合法の規定を準用しておるのでございますが、この前の耕地整理組合法、それを準用しまして区画整理をやりましたときに換地処分を行います。その換地処分によつて与えられる土地をここで換地と申上げたのでございます。事実上の何かある土地に対して別な代りの土地をやるというわけではございませんで、この都市計画法の施行された地域におきまして区画整理の結果、法律上換地処分によつて換地が与えられますその場合に、は元の所有権は換地に移りますし、又その他のいろいろの権利関係は換地に移るわけございますが、その換地処方による換地をここで換地と申したわけであります。
  63. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからその次に「相当な借地条件」については先ほどお話がありましたが、原案でここでお考えになつておる「相当な借地条件」というのは具体的にどういうことを予想せられておるのか、この点を明らかにしておきたいと思います。
  64. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) これは先ほど私の説明ちよつと不十分な点がございますので、私の説明に附加えて法制局ちよつと説明さすことにいたします。
  65. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) 個個の借地条件はこれは借地契約におきまして、法律上当然定めなければならないことでその借地契約の期間或いは賃料とか並通の場合の条件をここで考えておるわけでございます。ただこの立案の過程におきまして、今朝ほども何かそういうお話があつたそうでございますが、いわゆる権利金がこれに入るかという点を、やはりこの立案の過程においては研究いたしたのでございます。ただ地代家賃統制令が今あるのでございますが、地代家賃統制令の第十二条の二に権利金受領の禁止の規定があるわけでございます。「貸主は如何なる名義があつても、借主から借地権利金又は借家権利金を受領することはできない。」ところがこの二十三条にその例外規定がございまして、「昭和二十五年七月十一日以後に新築に着手した建物及びその敷地」というふうに昭和二十五年七月十一日以後に新築に着手した建物とその敷地については権利金を取つてもよろしいというまあ規定があるわけでございます。この地代家賃統制令の解釈が必ずしもはつきりしない点がまだあるわけでございますが、まあそういう新築家屋については権利金を取れるれるようでございますけれども、この敷地の部面につきましてはやはり権利金の取れないものがあり得るように解釈したのでございます。従つてそういう権利金が取れる場合と取れない場合とがありまするので、そういう権利金の取れる場合におきましては、場合によつては借地条件というものに権利金は入り得る場合があろうかと思いますが、ただここ人権利金が必ず入るといたしますと、地代家賃統制令との関係がございましたので、そこは解釈によつて解決ができるのではないかということで、強いて権利金という言葉は地代家賃統制令との関係で入れなかつたのでございます。
  66. 青木一男

    青木一男君 今の点ですが、地代家賃統制令との関係でその解釈に任せて、法律上許されたる範囲においては、そういうことはいわゆる権利金も入り得るという御解釈ですが、この法律立法狙いから見て、善意の第三者所有者であつた場合は恐らくその第三者は実質上権利金に当るものを払つて取得しておるのでありましようから、そういうものの善意の第三者に実質的の損害を与えることを回避するために、立法措置として或る程度権利金を含めて借りさせる、こういう点で利害調整を図るというお考えは含めてないわけですか、その点は如何ですか。
  67. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) 原案を作ります際の考え方としましては、今御質問通りでございまして若しそういう実際の具体的なケースにおきまして、まあ一般の慣習で行われているような権利金が取られております場合には、それを今度の借地条件の場合において権利金が許される場合には権利金幾らということでも考えてよいかと思うのでございますが、若し権利金が取れないケースの場合でございましたら、権利金というわけには行きませんので、その場合には賃料のほうをきめる場合に斟酌し得るのではないかというふうに考えます。
  68. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからその次に第三条の四項の「正当な事由」というこの意味なんですが「自ら使用することを必要とする場合その他正当な事由」、ここで言つておる「正当な事由」というのは、どういうことを具体的に予想されておりますか。
  69. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) この「正当な事由」がどういうものであるかということにつきましては、これは御承知の通り借地法、借家法でやはり同じ文言が使つてございまして、そうしてこれの解釈につきましては裁判所において大体方向がきまつておるように思つております。それでこの案におきましても借地法、借家法におきます「正当ノ事由」というのをここでも考えたのでございます。まあ裁判所でどういう場合に正当な事由と見られているかということは、いろいろなケースがあるわけでございますが、まあここでは「自ら使用することを必要とする場合その他」この場合にはぴつたりするかどうか知れませんけれども、借地法、借家法で問題になつておりまするのは、例えば自分の身内の者が外地から引揚げて来まして、自分の兄弟とか何かそういう身内の者が帰りまして、どうしてもそれに入れてやらなきやならんというようなまあそういう場合は正当な事由と解した判例があるようでありますが、具体的にどういう場合かということは考えなかつたのでありますが、借地法、借家法で大体判例がきまつておるようでございます。
  70. 楠見義男

    ○楠見義男君 次には先ほどの「相当な借地条件」と同じような関係なんですが四条の「相当対価」ですね、これはどういうことか伺いたい。
  71. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) これは先ほどの「相当な借地条件」とは違いまして、地代家賃統制令とは直接は関係ないわけでございます。従いましてこの場合には権利金というものが実際の取引界において行われておるその実情を斟酌して考えていいのじやないかというふうに考えております。
  72. 楠見義男

    ○楠見義男君 この点で午前中にも問題になつたのですが、借地権者を保護、するという建前から行くと、前の「相当な借地条件」という場合には権利金を入れないほうがその保護の趣旨に合致するわけですね。ところが今度の場合は「相当対価」という場合には、権利金を払わなければ譲受けを受けられないということになりますと、これは救済の度合いにおいては前者と彼此均衡を失しはせんかということが問題になつたのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  73. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) 或いは私の申上げることと提案者の御説明と或いは食い違いが生ずるかもわかりませんが、どういう説明がございましたかちよつとまだ聞いておりませんが、或いは食い違いが生ずるかも知れませんが、そのときはあとで又申上げます。立案のときの私ども考えといたしましては、これは勿論借地人、借家人を保護する立法でございますけれども、その保護と申しますのは結局借地権取得させる、借家権取得させるということがその保護の最も中心になるところではないか、結局普通の契約では直ちに借地権なり借家権取得されない場合に、この法の適用によつて借地権なり借家権取得させるというところにこの保護の中心があるのでございまして、その上でその条件をどうするかということは、これは一般の取引以上に出させる必要はないのじやないかというようなつもりで立案をいたしたのでございます。
  74. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからその次に第九条について、法務省のほうの意見としてこれは御承知だと思いますが、本条のような一方的な借地権の存続期間の延長及び更新の措置は他の正当な権利者の利益を不当に害するのみならず、接収解除後本法施行前に存続期間の満了した借地権については何らの救済措置も講ぜられてないのに比較して均衡を失する、従つてかように本条のような存続期間延長の措置を講ずるとして、接収中に建物が滅失した借地権だけに限るべきである、こういう意見が出ておるのですが、この点で先ず二つの問題があるのですが、一つの問題、即ち本法施行前に存続期間の満了した借地権については何らの救済措置が講ぜられていない、これとの彼此均衡の問題はこれはどういうふうにお考えになつておるのですか。  それとそれからあとの建物が滅失した借地権だけに限らるべきであるという、こういうのに対してどういうふうにお考えになつておられますか、この点をお伺いいたします。
  75. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) 最初のほうの法務省意見というものがちよつとはつきりいたしませんですが、本法施行前に消滅をいたしましたものにつきましての保護は、三条以下でやつたつもりでございまして、この九条におきましては接収当時からずつと借地権が続いておる。ただ続いているが、院接収されて返つて来たときにはあと二年しか、もう僅かしか期間が残つていなかつた。それでは結局何も、この有効価値が非常に少なうございまするので、そういう意味で新たに建物ができるくらいの期間として二年とするというふうに規定したのでございまして、本法施行前に消滅いたしたものについては、この三条以下によつてむしろ保護しているのでございまして、ちよつと法務省の、質問の趣旨が、疑問の点がちよつとわからないのでございますが……。
  76. 楠見義男

    ○楠見義男君 法務省のほうは、本法施行前にすでに接収解除があつて、そうしてその接収解除の当時に、例えば残存期間が六カ月なり一年という場合に、それは二年とは延長しておらない。ところがこの場合には、これは二年未満のときは二年とすると、こうしておるから、それで彼此均衡を失しておるのじやないかと、こういうことじやないかと思うのです。これは法務省に聞いてみなければわかりませんが、私はそういうふうに了解してあなたのほうの御意見を伺つておるわけです。つまりこういうことだと思うのですね、接収中に賃借権の期限が到来した、消滅した、こういうものに対する救済は三条以下にあるわけですね。ところが今の法務省の言つておるのは接収中には期限が到来しておらない、解除後に期限が到来するのだけれども、その期限があと六カ月しか残つていないという場合、或いは一年しか残つていないという場合に、その賃借権に対しては何らの救済の規定を設けておらない。この場合には二年にしていると、それで彼此均衡を失するんじやないかと、こういう意味じやないかと思うのですよ。
  77. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) その点は、余り立案過程において、ちよつとそういう場合のことは気が付かなかつたかも知れせんが、ただ、そういうすでに接収がこの法律施行前に解除されました場合につきましては、そこにはもうすでにいろいろな法律関係が発生して、或る一定の秩序ができ上つている場合が非常に多いのではないか。そういう法律秩序ができ上つているような場合に処しまして規定を設けますと、いろいろな法律関係がむずかしくなるんじやないかというふうに考えます。ただ、今の九条の場合におきましては、まだこの法律施行までには接収解除しておらない場合でございますので、そういう接収中についての不動産関係権利については余り生じていないじやないか。結局接収中の土地については、接収中と余り大した法律関係はないのじやないか、ただそれが法律施行前に接収解除されておりますと、そこにいろいろな法律関係が発生しまして、別な法律秩序が形成されている場合が多かろうと思いますので、その場合を規定いたしますと、なかなか規定が困難になるんじやないかと考えます。ただこの立案の過程におきましては、余りそういうことを議論しなかつたような気がいたします。
  78. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) これは立案者が答弁することだと思います。率直に言つて、これは余り議論になりませんでした。ただこの法制定について問題になりますのは、今御質問がありますように、権利関係の錯綜ということが非常に心配されておるわけでありまして、錯綜した権利関係に余りこつちがタツチして行つて裁判するような形の法律立法というものはどうだろうか、そういう関係はやはり当事者に任しておいて、大筋のところでやつたほうがよかろう、こういう狙いが我々のほうにあつたわけであります。相当これはそこまで行きますと非常にここのところが錯綜して来る、錯綜関係は成るべく避けたいという考えがあつたことは間違いないのであります。    〔委員長退席、理事宮城タマヨ君着席〕
  79. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の錯綜関係の問題はその当事者に任してやるということになるというと、すでにいろいろの法律関係に入り込んだものを錯綜させるというようなことになるから、この点はおつしやる通りだと思うのですが、ただこれとこれとの彼此権衡の上から見ると前のものはこれは半年の場合には半年というふうにしてそのままやらしておるのを、今度のこの場合だけは二年とこうするのは如何にも彼此均衡を失するじやないかと、これはこれから出て来る法律関係で、過去のものは不問にしてしまうのですが、その点はどうなんでしようか。
  80. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 今私率直に申上げましたように、我々立案者はそこまで研究が足りなかつたということをお詫びしなくちやならんのですが、成るほどお聞きすれば権衡問題はあると思います。そこで適当にこの法律の中にそれらのものが取り入れられるとするならば、私としても勿論反対することはないと思います。
  81. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからその次の第十条の但書の問題なんですが、第十条第一項の借地権者が転々としておる場合に、この転々とした借地権者にも保護をするというような建前になつておるが、これはどういう理由でこういうふうに保護して行かなければならないんでしようか。そういう但書存置の理由をお伺いしたい。
  82. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) これは立法の趣旨は当初御質問を体して答えた通りでございますが、この法律を文章に現わした場合の形、これはもう少し説明する必要があると思いますので……。
  83. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) この十条のような場合は、実はこの十条の規定は罹災部市借地借家臨時処理法の規定を踏襲いたしまして規定いたしたのでございますが、この罹災都市の場合には御承知の通りああいう戦後の混乱期で都会地が焼け出されて、そうしてその前の借地人がほうぼうに散らばつてそして自由にほつたらかしてあつたようなことがございまして、非常に活用され得た規定でございますが、今度の場合にはあの当時のような活用は実は余り考えられないのでございますけれども、理論的にやはりそういう場合がございますので、土地所有者としては非常に困りまするので、まあこういう規定を入れたのでございます。それからその但書の場合でございますが、これは借地権この転貸借が生じておりまする場合には何といいますか、その最初借地権者とそれから最後の転借権者との間にはいろいろな煉瓦の積み重ねがあるわけでございまして、その後途中のものをここで一つ消滅さしたというのでは非常に妙な権利関係になりまするので、消滅させるならば全部消滅させる、それからということが必要なんでございまして、途中の借地権だけを消滅させますと、そこが借地権の場合には順々にこう借地契約が行われて行く恰好になつて、そこが非常に複雑な関係になりますのでどうしてもこういうことにならざるを得ない。
  84. 楠見義男

    ○楠見義男君 法律的にはおつしやる通りだと思うのですが、問題は、政策的に見て、そういの転々として移つた借地権者まで保護する、本法が保護する必要があるかどうかという立法論の問題になつて来るのですが、その点をお伺いして……。
  85. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 実は午前中答えた通りでございますが、私たちは最後の転借人の借地権者とこう見ているわけであります。というのは、転借人といえども、地主の同意のない転借人は認められない、地主さんが同意して転借してよろしいということで転借人が設定されております。最後の転借人を以て賃借権者とするこういうふうに認定するので社会通念上合うのじやないかという考え方で進むものですから、こういう立法になつている。
  86. 楠見義男

    ○楠見義男君 その場合は接収当時のその最後の人が本法のいわゆる転借人じやないのですか、その点はどうですか。
  87. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 私たちはそういう観念で進んでいるわけで、それを立法技術の点で今鮫島君に説明つているのです。
  88. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじやその程度にして、第十二条ですね、第十二条については午前中にもいろいろ議論がありましたから省略いたしますが、ここに書いてある昭和二十三年九月十四日現在というのは、甚だおかしなことを伺うのですが、どういう時期なんですか。
  89. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) これは罹災都市借地借家臨時処理法によりまして、申出ができる期間が二年と定められておりまして、その二年目が丁度この九月十四日になつております。
  90. 楠見義男

    ○楠見義男君 それから十三条の第三項に一年以内、これは建物の場合です。十四条にも同様に一年以内となつておりますが、土地の場合は二年で、建物の場合は一年とこうしておりますが、この区別はどういう理由なんでしようか。
  91. 鮫島真男

    衆議院法制局参事(鮫島真男君) 前の九条の場合の二年といいますのは、これは、この家を建てる期間です。家を建てるまあ余裕の期間といたしまして、まあ大体二年ということがこの場合の借地人と地主との間の権衡上相応でないか。それから今の十三条の場合におきましては、これは今度その家に、そつちの家に入る場合でございまして、一年も、まあ一年その家に入るか入らんかのことでございまして、まあ一年くらいの期間のまあ効力期間と申しますか、そう長くなくていいのじやないか、前の二年のほうは家を建てるための規定でございますので、こういうふうにしてあるのであります。
  92. 楠見義男

    ○楠見義男君 意見になりますから、一応お伺いするだけでとどめます。
  93. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) どなたか……、ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕    〔理事宮城タマヨ君退席、委員長着席〕
  94. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時七分休憩    —————・—————    午後二時二十一分開会
  95. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 休憩前に引続き委員会を再開いたします。只今平賀民事局参事官、阿川民事局第二課長、大石調進庁不動産部次長が来ておりますから、御質疑のおありの方から御発言を願います。ちよつと速記をやめて。    〔速記中止〕
  96. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。
  97. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 昨日民事局長からこの法律案につきまして全般的のことを申上げたのでございますが、それにちよつと補足させて頂きたいのでございます。  昨日はこういう旧借地権者、借家権者は戦争被害者である、戦争被害者であるとすれば国が補償すべきであるか、或いはこの法律案におきますように、借地権借家権の実質的な復活を認めてやる、いずれの方法が妥当であるかということが問題になつたようでございます。まさしくこの法律案で問題になつております旧借地権者、借家権者は戦争被害者であるということができると思うのでございますが、戦争被害者ということになりますと、これはひとりこの借地権者、借家権者ばかりでなく、あらゆる種類の戦争被害者ということが考えられるわけでございまして、この法律案におきますように、そういう一部の戦争被害者の救済ということを図ることになりますと、例えば広島の原爆で亡くなつた、或いは負傷をした、或いは外地から裸一貫で強制的に送還されたという人たち、各種のもつと気の毒な戦争被害者というものがあり得るわけでございまして、この補償を仮にするといたしましても、こういう借地権者、借家権者だけについて特別に法律を設けるなり、或いは行政措置で補償いたしますと、その他の戦争被害者は一体どうなるのだということがやはり当然問題になつて来るのでございまして、その関係大蔵省事務当局といたしましては、この補償をするということについて難色があつたのではないかと私ども考える次第でございます。  それからなおそれ以外に、こういう財政上の理由のほかに、補償ということになりますと、どうしてもやはり接収されました当時の借地権なり借家権の価値というものを基準にして補償をしなければならんということになるのでございます。現在非常に値上りしておりますところの、価値が上つておりますところの借地権借家権を基準にすべきではございませんで、やはり当時を基準とするということに相成りますと、この補償額というものもそう高額に上るというわけには参りませんので、そういう補償をしたのでは結局借地権者、借家権者に決して満足を与えない、そういう補償では不満であるという、何も救済にならないということになつて来ざるを得ないと思うのでございます。そういう関係で以ちまして、補償するということにいたしましても、やはり種々難点が出て来るのでございます。  そこでこの法律案におけるように、実質的に旧借地権借家権の復活を図ることによつて、救済するという考え方が出て来ると思うのでございます。ところが昨日もお話が出ましたように、成るほど接収のためにそれに起因いたしまして、借地権なり或いは借家権なりが消滅するというようなことになつて土地が更地になり、家は空家になる、そういうわけでありますから、接収当時からの地主、接収当時からの家主がそのままずつと今日までおるのでございましたならば、接収という偶然の事故のために更地の所有者となり、或いは空家の所有者となり、法律上は不当利得ではないにいたしましても、この接収ということのために非常に利得をするということになる。そういう人たちには多少迷惑をかけてもいいではないかという考えも至極く御尤もだと思うのでございますが、ただ法律案ではひとり地主や家主が変らなかつた場合だけじやなくて、その延長としてやはり所有権が移るというような場合も当然かなりの数含んでおるわけでございます。現在の所有者必ずしもそういう社会的な不当な利得者とは言えないものが多々あろうかと思うのでございます。そういう次第を以ちまして現在の所有者をすべて不当な利得をしたものということは言えないのでございます。要しまするに、問題は結局こういう戦争被害者でありますところの借地権者、借家権者、そういう人たち戦争による損失というものを他の一部の者の損失の犠牲において救済をするということに相成りましたのでは、折角戦争被害者を救済するということが新らしい又一つ戦争被害者を作るというような結果になる虞れがあると思うのでございます。それでは決して戦争被害者の救済にならぬわけでございまして、やはり当事者間の衡平ということが図られませんと、結局新たな被害者を作るというようなことになる虞れが多分にあると思うのでございます。  併しながら他方又補償ということも、国家全体の立場といたしましては、やはり各種の戦争被害者のうちどれを優先的にやるかということになりますと、非常に問題がございますし、それから仮に借地権者、借家権者に補償をいたすといたしましても、極めて旧権利者の満足の行くような補償法律上できない筋合いなんであります。でありますからやはりこういう法律案のような構想で以て救済をするといたしますならば、これによつて生じますところの第三者の犠牲というものを最小限度に少くするという措置を講ずる必要があるのじやないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  98. 郡祐一

    委員長郡祐一君) どうぞ自由に御質疑を願います。
  99. 青木一男

    青木一男君 昨日法務当局の御説明を伺つたとき第三条の「相当な借地条件で」という言葉意味は、借地料とか時限とかそういうようなことを言うのであつて、いわゆる権利金の観念は入らない、こういうような御説明に伺つたのですが、ところが今日衆議院法制局の人の御説明では、必ずしもそうではないようで、この原案の立案者の趣意というものが、若し借地借家法その他地の法律の建前から権利金を認めるような場合ならば、これも権利金としてこの条件の中へ入れていいという意味だ、こういうような御説明で又若し他の法律の建前から権利金というものが表向き出せない場合には、実質的にそういうことを加味した条件が考えられるのだ、こういう御説明が今日あつたの、でございますが、私ども同じ文字で両方に解されるということは、これは問題が重点であるだけに非常に私は迷つたのです。これは裁判所の問題かも知れません。併し立法者としては大事な点において、殊に非常な本案の骨子の点でありますから明らかにしておきたいと思うのでありますが、もう一度その点の御見解判決例その他若しあつたならば、もう一遍伺つておきたいと思います。そういう御意見があつたことを御承知ならばもう一遍……。
  100. 楠見義男

    ○楠見義男君 ちよつと今の青木さんの御質問にお答えになる前に、青木さんの御質問に補足して私お伺いいたします。昨日の法務省のほうの御見解によりますと、これはその権利金を含まないのが定説だ、こういうふうに伺つたんです。ところが今、青木さんがおつしやるように原案者の考え方は住宅街は権利金は考慮しなくつてもいいが、商店街は権利金の一部を或いは考慮しなければならん場合もあるから、これらはすべて鑑定委員会の決定に任してやつて行きたい。そういうことでここははつきりと含むとか含まないとかいうことをせずにやつて行く。而も権利金を含むとか含まないということは定説とは考えられない、いろいろな裁判の事例に徴しても必ずしも定説とは考えられないということを立案者側がおつしやる。それからそれに加えて衆議院法制局の部長は地代家賃統制令の関係で地代家賃統制令ではその二十三条の例外を除いては権利金とかというものは取つちやいかん、こういうことになつておるので、それとの関連からも考えてここではまあざつくばらんに言えば、あいまい模糊ではあるがこういう言葉にしているんだ、こういう説明があつたわけなんで、今、青木さんのおつしやるようにこれは重要な問題ですから、あなた方の御意見をもう一度伺つておきたい。
  101. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 現在地代家賃統制令というのがあるのでございまして、この地代家賃統制令の適用を受けます土地、建物については権利金は取つていけないことになつておるのでございます。取りますと刑罰も、制裁もあるのでございますが、実は地代家賃統制令の第二十三条におきまして、この事務所だとか店舗だとか、こういう建物及び敷地、これにつきましては全然統制令の適用がないのであります。なお昭和二十五年の七月十一日以後新築されましたところの建物とその敷地につきましては、やはり地代家賃統制令の適用がないのでございます。この三条の関係を見ますと、これは条文からは必ずしもその点明文上はつきり出ておりませんけれども接収期間中に借地権が存続期間の満了によつて終了する、消滅するという場合を考えますと、これは建物がありますと消滅するということは考えられないのでございます。その借地権者所有の建物があるわけであります。これは建物がありますと接収中でありましても、借地権の更新の請求ができますし、接収中だから更新請求をしても無駄だというので黙つておりますと期間が参るわけでございますが、その際におきましても借地権者所有の建物は依然としてあるわけでやはり借地権者としては土地の使用を継続しておるわけで、地主のほうからも何も異議を言わないでいる、そうなつて参りますと法定更新で申しますと、当然借地権が更新されるのでございますから、建物がございます限りは借地権期間の満了によつて消滅するということはないのであります。皆これは更地になつておる状態でございます。そうなつておりますのでこれは新たに建物を所有する目的で賃借するということになつておりますので、本法施行はそうなりますと昭和二十五年七月十一日以後やはり建物を建てることになるのでございますから、この土地につきましては地代家賃統制令の適用は全然ない、権利金も自由に取れるということに相成るのでございます。で地代、家賃統制令違反という問題は、全然起る余地はありません。  それから借地条件の解釈でございますが、今裁判所判例は私ちよつと詳しく記憶していないのでございますが、罹災都市借地借家臨時処理法の二条におきましても、やはり地上権という言葉があるのでございまして、この解釈も従来はそういう権利金は含まないという解釈になつているのでございます。それからなおこの借地法以前からございますのは、借地法の四条なんか見ますというと、借地権の更新の請求の規定があるのでございますが、「借地権消滅ノ場合ニ於テ借地権者カ契約ノ更新ヲ請求シタルトキハ建物アル場合ニ限リ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス」で建物でありますと期間満了が近付きますと、契約の更新を請求する、請求しますと、前契約と同一の条件を以てということになつているのでございます。仮に前契約において権利金を払つておりましても、更に更新しました権利金を払うということは出て来ないのであります。結局、やはり地代は幾ら、地代の返済期はいつ、或いは期間はいつ、そういう本来の賃貸借契約、或いは地上権の設定契約の内容それ自体を言うのであります。やはり裁判所の問題になりましても、いわゆる借地条件の中に権利金も含ませるということはちよつと無理であろう、将来の問題としても無理であると考えるのであります。それからなおこの借地条件の中に権利金が含まないとしても、この借地条件の中に地代をきめる場合に、権利金も織込んできめたら、きめるということも一応考えられるわけであります。殊に借家の場合なんかは現在でも慣行といたしまして、権利金がない代りに家賃が高いという例もございすし、借家の場合はその点は比較的何とかなると思うのでございますが、土地になりますと、借地の問題になりますと、殊に今のこの法律通りますと問題になりますのは、やはり東京の例えば伊勢丹の横の空地であるとか、或いは芝浦の海岸とか非常に地価の高い所がやはり問題になりますので、地代の中に権利金を織込むには余りにも高い権利金なんでございまして、いずれ当事者間で話がつきませんと裁判所の問題になるわけでありますが、裁判所で高い一般の相物に準じた高い権利金を地代の中に含めたそういう借地条件を鑑定委員会がきめられるということは、ちよつと考えられないのじやないかと思う次第でございます。
  102. 上原正吉

    ○上原正吉君 第三条についてこの相当な借地条件というのがしまいのほうにあります。第三条の一項のしまいに、相当な借地条件とありますが、今もお話になりましたようですが、この相当な借地条件というのは、まあ昨日来権利金は含まない、こういうことでございましたが、権利金が含まなければ地代が高い、権利金が高ければ地代が安くなる、例えば家の場合は、敷金が大きければ家賃が安くなる、家賃が高ければ敷金は要らん、そういうのが実例でございますから、今御説明の中に権利金を換算した高い率のものを裁判所が認定するかどうかはむずかしいという話ですけれども、そういうことは没却できないであろうと私は考えております。世間で通用することが認められるかも知れませんにしても、これは権利金がある場合とない場合と地代には相当な開きがあるということを認定されるものとお考えなんでしようか。
  103. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) やはり相当な借地条件と申しますと、現在の罹災都市借地借家臨時措置法がやはり同じ文句になつておりまして、権利金は含めないという建前で裁判所では運用して来ておりますので、同じような趣旨の法律により同じような言葉使つてありますと、権利金までも含むという解釈はとても裁判所としてはとる可能性はありませんし、それから只今申上げましたように、都会地なんかでは借地の権利金というものは非常に高いものでございまして、これを借地条件の中に織込むのには、よほど無理をしないと織込めないのではないかと考えられるわけでございます。鑑定委員会できめまする場合には、その附近の借地条件が基礎になりまするので、それを余り桁の外れた借地条件をきめるということは、ちよつと裁判所としては無理じやないかと考える次第でございます。
  104. 上原正吉

    ○上原正吉君 それから先のほうに「権原により建物所有の目的で」とありますが、この権原というのは例を挙ければどんなものがあるのでしようか。
  105. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) それは所有権に基きます場合もございましよう。それから地主が自分の家を建ててそこに住んでおるとか、或いは他にその土地の借主がおりまして賃借した場合、親戚か何かでただで貸してもらつてつて、そこに自分の家を建てて住んでおる、そういうような場合でございます。
  106. 上原正吉

    ○上原正吉君 そこでこの「建物所有の目的で」という文句は、そこに建物を建てようという意志があつてというだけでも有効でありましようか。
  107. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 建物所有の目的で現実に使用していなければならないわけでございます。例えば、そこに建物を建てるつもりで買つたというだけでは駄目なわけであります。
  108. 上原正吉

    ○上原正吉君 そうしますと、とにかく建物を建て始めるという形態までにはなつておらなければいかんというわけですな。
  109. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) さようでございます。
  110. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の上原さんの最後の問題ですね、何か整地をするとか、或いは敷石、土台石を置くとかいう程度はもう使用の中に入るとこういうふうに何か衆議院のほうであつたように思うのですが、その限度はどのくらいですか。
  111. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 大体今お説のような見解でございます。整地をする、或いは敷石を置いておる程度になればよろしいという解釈であります。
  112. 楠見義男

    ○楠見義男君 この法案に入る前に一つお伺いしておきたいのですが、いろいろ民事局でも御意見があるようですが、それは衆議院法務委員会における過去二年間余の審議経過において、その都度いろいろ民事局として御意見をお述べになつておりますが、その御意見をお述べになつておるうちの一つに、憲法違反の疑いがある点について、いわゆる憲法第二十九条の問題に関連して、それを排除するといいますか、憲法違反の虞れなからしむるためにはこれを規定しなければならないのではないかという意見でお述べになつておることが、あるのですがそれは所有者は正当な事由ある場合には申出を拒否することができるものとするのが相当であると、こういう意見をお述べになつておるのですが、こういうことであるならば、憲法第二十九条違反の虞れなしと、こういうふうに今もお考えになつておるかどうか、この点を伺つておきたい。
  113. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) これだけではやはり足りないのではないかと思つております。この法律案でも正当な事由があれば申出を拒絶できるということになつておりますが、それだけではやはり不十分ではないかと考えられます。
  114. 楠見義男

    ○楠見義男君 今私申上げたのは、この不動産の権利調整に関する臨時処理法案要綱衆議院法務委員会で昨年の二月頃にできまして、それに対して民事局の意向考えられて、その原案には、今の所有者は、正当な事由ある場合には申出を拒否することができるという規定が全然ないのです。そこで、こういうような規定を設ければよいのではないかと、こういう意味法務省は、所有者は正当な事由ある場合には申出を拒否することができるものとするのが相当である、従つてこういう条文をお入れになる必要があると、こういう御意見を述べておられるのです。だから、原案にはこれがなかつたのを入れろという御要求があり、その要求に応じてこの法案ができておるような経緯ではないかと私は想像して、本日その点を伺いましたら、勿論こういうこともあるが、公共福祉という点で考えておるのだという御意見もあつたのですが、そのことも、民事局はこういう御意見をお出しになつてつてそれが取入れられてはおりますけれども、このときのお気持と今のお気持とが変つておれば伺いたいと、こういうわけです。
  115. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) その当時と現在一向変つておりませんので、今御覧になつております資料の一番最後のところに実は総括的な意見が述べてあるわけであります。
  116. 楠見義男

    ○楠見義男君 そこでもう一つ、昨年の三月十六日に民事局第二課で以て、これは非公式でありますけれども接収不動産に関する借地借家臨時処理法案という一つの案をお作りになつておるのです。この法案とは必ずしも一致はしておりませんけれども、二三の点を除いては大同小異の案だと私は承知しておるですが、この法案お作りになつた経緯ですね。この法案についてはどういうふうにお考えになつておるか、この点を伺いたい。
  117. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) これを作りましたのは、今はつきり記憶いたしませんが、衆議院法制局でありましたか、或いは専門員の方からでありましたか、技術的な点について協力を求められまして、たしか法文らしくしてくれというので向うの案を渡されまして、こういうふうにでもしたらよいのじやないかというので、民事局の第二課におきまして作りまして向うに差上げたのでございまして、民事局といたしまして、これなら完全ではないか、これならよろしいという趣旨で立案したのではないように記憶いたしております。
  118. 楠見義男

    ○楠見義男君 経緯の点はわかりましたが、それでは民事局としてお作りになつたこの法業について、どういう点がどういうふうに憲法上疑義があるとか、或いは悪いとかいうような御意見がありますれば、承わりたいのです。というのは、いろいろこれまでにお述べになつておるような事項を取入れて法務委員会お作りになつた要綱相当つた案をお作りになり、あなた方の観点からすれば法律らしい法律ができておるようなふうにも思うし、若し我々この法案を修正する場合には、取入れてもよいような条文もあるように私は思うのですが、その点を一つお伺いしたい。
  119. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) この第二課の案というのも、骨子は大体現在ここに出ております法律案と同じでございまして、骨子は殆んど変つておりません。従いまして、相当な借地条件の中に権利金その他の借地についての対価を入れるという趣旨は入つておりませんし、それからこの法律案ではいささか行過ぎではないかと思われますところの第十二条に相当する規定も……、失礼いたしました、十二条に相当する規定は、余りにひどいというので、この私どもの案では、これは不当ではないかというので落しております。それからなお今回の法律案と若干違います点は、この法律案の第十六条では、当時の衆議院法務委員会お作りになりました案には、損失を受けた者に対する補償規定がありませんでしたのを、この民事局の第二課で作りました案では、第十二条になつておりますが、第十二条の第二項に、こういう補償、損失を最小限度にとどめるという趣旨で第二項のような規定を置いておりますが、こういう点が若干違つておりますが、大体の骨子は同じでございます。今回の法律案の中で、私どもとしましては不動産取引の安全を害するので如何かと思つておりまするので、この案では第八条になつておりますが、この第八条のような規定は、当時からも非常にこれは不当な規定ではないかということで私ども考えておつたのでございますけれども、これもそのままこれには載つておるわけであります。
  120. 楠見義男

    ○楠見義男君 この案を拝見しますと、昨日民事局から頂いた、例えば第九条の御意見のようなものは、すでにもうあなた方の案には入つておるものだから、相当この法案政府原案としておやりになる場合にはこれに近いものができるのではないか、こういう想像をしたわけなのでありますが、経緯はよくわかりました。  そこで今審議しておる法案についてお伺いしたいのですが、前提をこの法律案ができるという前提でお伺いしますから、そのつもりでお聞き頂きたいと思います。第三条で先ほども問題になりました「相当な借地条件、」この「相当な借地条件」の中には昨日及び本日もお述べになつたように権利金というものは入つておらないと、こういうような考え方、そういう考え方に近い考え方をするとすれば、善意の第三者善意の第三取得者といいますか、接収地であつたことを知らなかつた第三所有者、この救済の問題が昨日来問題になつておるのですが、それらの人々は結局最初所有者から更地で買つたと、そうしてここでは権利義務のようなものはわからないと、そうすると善意の第三者が非常に気の毒な立場になるわけですね。これは併し、そういう場合は罹災都市借地借家の場合も同様でそれに対する救済規定はないようではありますけれども、一方原取得の恰好になつて、昨日も申上げたのですが、社会価念上不当なと思われる元の所有者は涼しい顔をしておる。そこでその善意の第三所有者というものから原所有者に対して、原所有者が得た利益の現に存する限度において、損害賠償といいますが、返還請求といいますか、何かそういう態度をとる必要があるとも思うのですが、その点は如何でしようか。
  121. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) その点御尤もに感ずるのでございますが、法律的には非常に困難な問題でありまして、仮に立法技術上可能であるといたしましても、それを実際に運用いたします場合に、一体如何なる利得をしたかと、ただ一回所有権の移転があつたのであればいいと思うのであります。以前からの所有者が極く最近新所有者に更地として非常に多額で以てその土地を売つた、そういう場合には、成るほど比較的不当に利得したと考えられます額はわかると思うのでありますが、更地になりました後に非常に転々として売られたと、その都度少しずつ高くなつているので、一体だれから幾ら取つていいのか、これは非常にむずかしい問題になりまして、その間に衡平を失しないようにしようと思いますと、実際問題といたしましては殆んど不可能に近いのではないだろうかというふうに考えられます。
  122. 楠見義男

    ○楠見義男君 それから、これはあなたに聞いてよいのか、どなたに聞いてよいのかわかりませんが、或いは適当でなかつたらお答え下さらなくても結構なのでありますが、三条その他に「土地又はその換地」という字がありまして、私は接収に当つてその接収された土地の換地だと、こういうふうに読んでおつた。ところが、提案者から説明を聞きますと、この換地というのは、そうではなしに、都会地あたりでは、都市計画法、区画整理法が何かで区画整理をしたという場合に、旧耕地整理法を準用しておつて、その区画整理をした場合における換地だと、こういう意味で、その換地の場合には当然賃借権も付いて廻るのだと、こういう御説明になつて意味はよくわかつたのですが、そういうふうにこの言葉自体から当然読めないと思うのだけれども、何か適当な表現の方法はないものでしようか、これ以外にはないのでしようか、どうでしようか。
  123. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) これは罹災土地借地借家臨時処理法のものと全く同じ文句でございまして、当時からそういう用語が使われておりまして、解釈も今仰せのようになつておるのであります。
  124. 楠見義男

    ○楠見義男君 特調関係にお伺いしたいのですが、今朝も実はお伺いして、よくわからなかつたのですが、実は昨日来問題となつておる国家補償の問題でいろいろ問題があり、国家補償ができないという理由は、一般戦災者との権衡の問題ということも一つの問題となつておりますが、同時に莫大な金額が必要であろうと、こういうことも一つ理由になつているのですね。その莫大なということが、言葉だけはあちらこちらで言われるのだけれども、一体どの程度のことを予想されておるのか、その点はどなたに聞いても実はわからないのです。国家が補償するという場合に、百億なのか、千億なのか、或いは十億なのか、とにかくわからずに莫大な莫大なという言葉で終始しておるのです。朝も聞きましたけれども、それはよくわからない。わかるとすれば、この事務をとつて来られた特別調達庁以外はないと思うのですが、それで特別調達庁のほうも法律案を立案されて、そして次官会議に提案する運びにまでなつた。その立案せられるに当つてもそういうことが当然予想されて国家補償をするとすれば、これだけの金額が要る、その金額を払わない……、それでは余り旧借地借家人が気の毒だ、こういうことで法律案を作ろうというので私は法律案の準備をされたのだと思う。そういうことでなしに法律案を立案するということは官庁としてはちよつと想像のつかないことなんですが、一体どのくらいの金額を補償するとすれば必要だと見ればいいのですか、その点を伺いたい。
  125. 大石孝章

    説明員(大石孝章君) お答えいたします。これは経緯を御説明申上げないと御納得行かないと思いますので、楠見委員の御質問御尤ものことと思いますが、調達庁におきましては現実はどうかと申上げますと、正確に賃借権者等の損失というものを補償した場合にはどれだけの金額になるかという、そういう金額をまとめたことは私聞いておらないのであります。という理由は、確かに昨日来いろいろ御議論がありましたように、こういう接収不動産に伴うところの賃借権者等を何らかの形で保護するといいますか、調整するという形のことは必要であるというわけで出発したわけでありますが、調達庁の実務的に申上げますと、昨日も御説明申上げましたように占領期間中は土地所有権者と直接契約いたしまして連合国軍からの調達命令書も当該物件の数量、それからそれに対価を支払います場合は領収書でございますが、プロキユアメント・レシイトというものにはつきりと金額を謳いまして、それが一つの根拠になつているわけでございます。従いまして調達庁の事務から申上げますと、土地の上に存した権利者というものが確実にどれだけあるのか、それから当該不動産にはどういう種類の権利があるのかということを調査確認はいたしておらなかつたのでございます。従いまして実際上計算するといたしましてもそれはできなかつたような実情であつたのでございます。然らばなぜ調達庁において昭和二十七年にこういつたような権利者の保護の法律案、案とまで行かなくてもそういつたようなイニシアチブをとりまして、各省協議の段階まで持込んだのかと言いますと、こういつたようなものを一体補償すべきかすべからざるかといつたような問題につきまして各省とも財政当局ともいろいろ当つたのでございますが、そのはつきりした理由はわかりませんが、一口に申上げまして財政的な理由からとにかく補償にはならん、然らば権利を復帰せしむるというような趣旨の保護規定ではどうかといつたようなことから、お手許にもあると存じますが、表題も連合国軍使用不動産に存した賃借権等保護法案という形で以て調達庁の案を各省の協議会に出したわけでございますが、種々の理由からこれが陽の目を見ないでしまつたような次第でございます。従いまして御質問の具体的にどれだけの金額になるかといつたようなことについては実際のところ計算をまとめてなかつたような次第でございます。
  126. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 只今補償額の点が問題になつておりますが、私どものほうも然らば坪幾らくらいになるかと言われますと、ちよつと計算できないのでございますが、仮に補償をいたすといたしますと、やはりその当時における、接収当時におきますところの借地権の価格というものを基準にして補償額をきめるべきものであろうと思うのでございます。現在そこに借地権があるとしたらその借地権は一体どのくらいの価格かということが基準になるのではございませんで、その当時どのくらいかということになるわけでございまして、仮にあの終戦直後の接収が盛んに行われておりました当時、これだけの坪数の土地がある、その位置はどこであるかというような要素を全部総合いたしまして仮にその当時そういう借地権があつたとして、その当時他に譲渡したら一体どのくらいの対価でその借地権が譲渡できたであろうかということを専門家に鑑定させまして、それが補償の基準になるのではないかとこう考えるのでございます。終戦直後の非常に混乱した時代で、当時といたしましては一般的に申しまして日本の経済が将来どうなるかという見通しも全然立たないときでございます。さほど高価な価格で取引されたとはちよつと考えられないのでございまして、現在補償いたすとしますとその当時の金で一体どのくらいの価格があつたものか、どのくらいの価格で以て譲渡されたのであろうか、その当時の貨幣価値を現在の価値に換算いたしまして、現在ならば幾らというふうな計算になると思うのでございます。いずれにしても旧借地権者或いは借家権者の満足の行くほどの一人当りにして見ますと価格のものにはちよつとならないのじやないかというふうに考えられる次第でございます。
  127. 楠見義男

    ○楠見義男君 補償の問題で特別調達庁でも将来の問題というよりも今までもお考えになつてつて、できればそういうことも実現したいということを根道長官時代、今は長官は代りましたが、根道長官時代にもそういうことを言つておられたことがあるのですが、それは若し引続いてそこで営業をやつてつたとしたならばかくかくの利益を得たであろうという、得べかりし利益もできれば補償の対象として考えたいというようなことを言つておられたことがありますが、そういう補償の算定はなかなかむずかしいと思いますが、併しそういうものを除いても、少くとも借地権の金額がはつきりしなければ、これは所有権土地代という大ざつぱに見てもいいと思うのですけれども、要するに昨日来羽仁さんからもいろいろお話がありましたが、それから又皆さん方も本来これは国家で補償すべきだが、補償はできないからこういう立案をするとか、その立案は反対だが、やはり補償すべきだというようなことをそれぞれ各官庁が言つておられて、而も補償の金額は大体この程度になるだろうということも知らずに、大変だろう、大変だろう、これでは金も出せないだろうということが、これは私も昔役人をやつてつたのですが、近頃の役所というものはそういうことで物事を進めておられるんでしようか。どうも青木さんもやつておられたのですが、国家補償の問題が起るときには、常に在外資産の問題にしてもこれだけの金額だ、これではとても大変だから円元パーで行こうとか或いは価値を幾らにしようとかいうことが常に問題になるのですが、これだけ関係官庁がお揃いになつてつて、これでどこもわからない。それで而も大変だ大変だということを言つておられる理由が私にはどうしてもわからないのですが、一体どこに聞けばわかるのでしようか、それともどこに聞いてもわからないのでしようか、どうなんでしようか。
  128. 大石孝章

    説明員(大石孝章君) 接収不動産ということでございますから、そこに存した諸種の権利や何かを明確にすべきであるという御要請は、或いはそういう意味合いからしては調達庁が主体となつて作業を進めるということかも存じませんが、申上げましたように占領期間中の実情は所有権者とだけ国がその当事者になりましたような実情で、そういつたようなことが考慮の外にあつたというようなことは事実でございます。後いまして正確なるこういつたような権利者を把握するという作業が先ず第一段階において困難な事態でございます。昨日もちよつと御説明申上げましたように、私どもの手許で昭和二十七年の五月から六月にかけましていろいろ新聞広告や何かをやりましてつかんだのも敷衍して御説明申上げましたように、非常に正確でない数字だというふうに私ども思つております。然らばその後一体どうなつたのかという問題につきましては、私ども何らかせんならんという気でございましたが、私ども二十七年の五月当時やはりこういつたような法律案を一応イニシアチブをとつたのでございますが、それも陽の目を見ないでおりますことがあつた関係で、現在もそうでございますが、如何いたしたものであろうといつたような形で進んでおるような事実であります。考えますのに、従いましてそういつたような実情でございますから、衆議院のほうでいろいろ御心配になつたのではないかというふうに考えます。
  129. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 仰せの通り政府部内も各省がそれぞれ銘々勝手なことを申しまして、責任のなすり合いのようなことになつておる面がございまして、誠にこれは申訳ないと思うのでございますが、やはり根本は何と申しましても今までの日本では曽つてせられなかつた戦争、その結果の敗戦ということにやはり起因するものだと思うのでございますが、根本から申しますと、法務省といたしましてはやはり問題は接収の際に土地所有者だけを相手にしたというところにやはり無理がある点はこれは何としても認めざるを得ないのであります。借地権者であるとか借家権者であるとか、そういう人が考慮の外に置かれてしまつたということは、これは何と言つても完全な措置でなかつたと言わざるを得ないと思うのでございます。でありますからやはり救済をするといたしますれば、一部の者の犠牲において救済するのではなくて、全国民の負担においてこういう犠牲を救済するというふうに飽くまで行くべきものではないか、ただそうなりますと、その他に種々様々な戦争犠牲者がある、これをどうするかという権衡の問題が起りますけれども、最近では戦没者の遺家族なんかの救済は法的にやられておりますし、これだけにつきまして他と余りに権衡を失しないような補償というようなことでございましたら全然不可能なことではないのではないか、一部の者のみの犠牲に肩代りするという、それによつて又新たな非常に間接的でありますけれども、間接的な戦争被害者をこの期に及んで更に作り出すということよりも、むしろやはり全国民の負担におきまして、我が国の財政の許す限りにおいて、多少なりともやはり救済の措置を講ずるということが、策の万全を得たものではないかと思つておる次第であります。
  130. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は別に攻撃する意思ではなしに、皆さんが財政上大変だ大変だということを言つておらられるから、どの見当だということを今もおつしやつたようにお考えになつておるなら一体どのくらいだ、その方法が、借地権者の何が、評価が困難であるとすれば、あら見当でも、土地代なら土地代ということで土地の代金でも一応計算するところの金額になりますとかいうようなことが、どこかにあると思いますので伺つたのですが、その点はわからないということがわかつたわけなんですが、それではこれは国家補償をやれやれと言つて見ても、大蔵省が手を染めないのも私は尤もだと思うのです。これ以上は議論になりますから申しませんが、と同時に今朝も衆議院の方が結局政府は何もやつてくれんから、我々がこうやつてやらざるを得ないのだということを言つておられるのもこれも又尤もなんですね。そんならそれでやはりあなた方もできるだけ協力して頂かないと、これは言葉は適当ではありませんが、けちだけつけるが勝手にやれというように、やらせることが困難のようになつたのでは、少し行き方としては余りいい行き方ではないということだけを申上げておきます。
  131. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  132. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をつけて。
  133. 上原正吉

    ○上原正吉君 第四条のしまいから二行目の「相当対価」というのは、借地権の値段のように考えられるのですが、新らしく借地権が生れたときに、その借地権を設定したものが受けたつまり新らしい値段、権利金、それに相当する価格というふうに「相当対価」というものは解釈されるのでしようか、それともそれとは関係なしにこの辺が相当だろうという裁判官の認定によるという結果になるのでしようか。
  134. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 四条の一項の終りにございます借地権の「相当対価」、これは現在それと同様の状況の下にあります借地権が譲渡され、取引されます場合、一般的にどのくらいが相当かという、それを基準にして裁判所で問題になりますと、鑑定委員会でやるわけでありますから、実際問題といたしましては、権利金の額が基準になつて来るのじやないかと思われる次第でございます。
  135. 上原正吉

    ○上原正吉君 そうしますと、この第四条に関する限りはさつぱり救済にならない、こういうことになりはしないかと思いますが……。
  136. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 第四条に関します限りにおきましては、その借地権を持つておる人が、任意に他にその借地権を譲渡します場合の取引の額がやはり基準になるわけでありますから、第四条の関係においては、第三条におけるような不合理はないかと、かように考えます。
  137. 楠見義男

    ○楠見義男君 もう一点だけ、第十二条の問題について、昨日来いろいろ議論もあり、本日も午前から問題があつたのですが、先ほども平賀参事官は、これはとてもひどいので従つて自分たちの民事局第二課の扱いにも特にそれを苦慮したという御説明があつたのですが、ところがその理由として昨日もお触れになりましたが、大体弁償金といいますか補償金を皆もらつているのだ。ただそのもらつた人に対してもその強制疎開地が戦争が済んで元に復した場合に、その土地の復興の上から言つても、前の借地権者等を入れてあげたほうが望ましいし、恩恵という言葉をお使いになりましたが、恩恵的な立場で取扱つたのだと、こういうお話があつたのですが、ところが十二条の規定は、例えば東京だとか、横浜だとか、神戸なんかのような所もあると思いますが、大体強制疎開地になつて、そうして建物もなくなつて、まあ空地になつておる。ここに空地があるというので、進駐軍がどつと入つて来て、そうして接収をしておる。こういう事例が今申上げたような地方では、全部とは言わなくても相当の部分はそういうことになつておるのじやないか。と同時に大体皆補償金をもらつておるのだというけれども、まあ戦下苛烈になつて来て、しまいになればなるほどそういう補償金というものはもらわずに逃げ廻つてつたような状態であるから、これはひどいのだというけれども、実はこれを又戻すと、一番救済をしてやらなければならんという方面が漏れてしまう。昨日来私がやかましく言つておる衡平の観念から言つて、旧所有者というものは、そういう地方であればあるだけに、べらぼうな不当利得を得るという結果になつて、全く堪えがたい。衡平観念の何と言いますか侵害侵害という言葉は悪いのだが、そういう気がするのですが、その点はどうでしようか。
  138. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) この十二条で問題になつておりまするのは、罹災都市借地借家臨時処理法の九条でございますか、疎開跡地の借地権者、これは九条に規定してありますのは、皆な防空法に基きまして補償を受けまして借地権が消滅したものばかりでございます。補償を受けない人の借地権はここでは全然問題にされていないのでございます。強制疎開中は然らば全部借地権者が補償を受けたかと申しますと、これは当初は全部受けておりましたが、終戦間際になりまして非常に戦争が苛烈になりまして、補償をしようとしましても、事実上疎開してしまつてつて行先きがわからない、借地権者がどこにいるかわからない、調べようにも調べようがないという、そういう事態になりますと補償されていない。本人たちがいない間に建物が取壊されて、防空空地になされた事例があるのでございます。そういうものは補償がされておりませんので、そういう借地権は消滅されていないのでございます。そういう借地権は消滅しておりません関係でもつて、罹災都市借地借家臨時処理法の第十条を以ちまして、この登記なくしても五年間は対抗力があるとか、或いは十一条でもつて更に借地権の残存期間が十年未満であれば十年に延ばしてやるということでもつて消滅していない、即ち補償を受けていない人の借地権は十条だとか十一条で保護されておるわけでございます。でありますから罹災都市借地借家臨時処理法におきまして、第九条で問題になつておりますところの疎開跡地の借地権者はこれは全部補償を受けまして、権利を放棄した人だかりでございます。でありますから、この第十二条におきましても、強制疎開の際に借地権補償を受けず放棄していない人のものはこれはそのまま借地権はやつぱりあるわけでございまして、この法律案におきましては、例えば第八条で保護を受けまして対抗力がなくても対抗できるとか、そういうようなことになつておるわけでございます。
  139. 楠見義男

    ○楠見義男君 その場合に補償を受けて借地権が消滅したということの何らかの確認行為というものはやつておるのでしようか。
  140. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  141. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をつけて。
  142. 楠見義男

    ○楠見義男君 続けて申しますと、確認行為が何らかの形であればこれは問題ないのです。ところが今朝も問題になつたのですけれども、これは補償をしたことになつて法律上は必ず補償したことになつて従つて消滅したことになつているのだけれども、もらつたのだかもらわないのかそれが実際わからない。これはまあこういうことをこの際例に申上げるのはあれかも知れないけれども、よく生命保険なんかで保険料を払つているのだけれども今度は受け取つていない、こういうことで保険契約が失効した事例が随分あるのですね。同じようなことが私はこれはあるのじやないかと思うのですが……。
  143. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 当時この強制疎開は例えば東京でございますと、東京は当時まだ市でございましたが、東京市がやつておりまして、補償しましたときの記録が、資料が残つておるものと思います。東京都のほうに照会いたしますと、例えば補償金の受取証とか、そういつた資料はあるのではないかと思つております。
  144. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうするとそういう資料に基いても補償金をもらつておらないというような場合は、これは先ほどおつしやつたように賃借権の存続、こうなるわけですね。……わかりました。
  145. 郡祐一

    委員長郡祐一君) これより懇談会に入りたいと思います。速記をとめて下さい。    午後三時三十二分速記中止    —————・—————    午後四時十二分速記開始
  146. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。  本日はこれをもつて散会いたします。    午後四時十三分散会