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説明員(
桃沢全司君) 主として罰則
関係でございますので、
最初に私から
お答え申上げたいと思います。この第三条の第一項第三号を除きましては、そういう第一号と第二号の
関係は、いわゆる
刑事特別法の規定を相当参酌して、ほぼ同様の規定を設けてあるのでございます。その
一つの理由は、
保護せられるべき
秘密というものが大体
アメリカ合衆国
軍隊の持
つておる
秘密と実質的には同じものである。その
保護には大体同じような規定で
保護に当るのが、これはまあ私
ども常識と
考えるものでありますから、
刑事特別法の規定を十分参酌いたしまして第一項第一号及び第二号の規定を立案した次第でございます。仮に刑特法と別の規定を設ける、構成要件を別にするということになりますと、自然
アメリカ合衆国
軍隊の持
つている
秘密と
日本に供与される
秘密との間に何か差が論理上出て来るということになりますので、果してそういうことでいいのかどうか、この点は保安庁のほうから
お答えをお願いしたいと思いますが、私
ども立案に当りましてはそのことが非常に念頭にあ
つたということを
一つ御了承賜わりたいのでございます。
次に、それは
刑事特別法のときには一体どういう
考えでお
つたのかと申しますと、構成要件を明確にする、及び
秘密の漏洩をできるだけ防ぐという観点に立ちますならば、これは前もたびたび申しておりますように
軍機保護法方式の規定を作る、これが一番適切なのでございます。併しながら
国民の
基本的人権との調和の
関係におきまして、刑特法のときには相当苦心をいたしまして、第一号には目的及び方法をしぼりの規定として立案されておるのでございます。第二号のほうも同様でございまして、通常不当な方法によらなければ探知し、収集できないものというこれはしぼりの規定ができておるのでございます。従いまして
刑事特別法の当時には
軍機保護法との対照においてその趣旨を諒とせられ、恐らくその点についての論議も少くこの
法律が審議せられたように私は感ずるのでございます今日に至りますと、更にこのしぼりの規定が不明確ではないかというお叱りを受けるように
なつたのでございます。併しながらこの第一号について申上げますと、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」こういう目的を持
つたもの、これはまあ御了承頂いたと存ずるのでありますが、方法の点の即ち「又は不当な方法で、」これがまあ具体的な
内容は明瞭でないという
新聞協会のほうの御見解でございます。併しながらまあ一番のこわいのはスパイの活動でございますが、現在黙秘権も認められているときに当りまして、この目的の立証ということが非常に困難である。或いはこのスパイの手先にな
つて使われているものは、その目的を知らずにや
つている場合もございます。こういうものを取締りの対象にしなければこの
秘密保護の目的は達せられないのでございまして、そういうものをどういう形でつかむかということが大きな問題にな
つて来ると存ずるのであります。その点におきましてはこの方法の不当というところで、
一般善良なものが対象にならないようにしぼると、この刑特の規定は私は相当であり、又この
法律においても当然御了解を頂ける規定であると確信いたしている次第でございます。
次にこの第二号の修正意見でございますが、この第二号で「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をも
つて防衛秘密を他人に漏らした者」とこうあります。
ちよつとこれ私
個人的に少しおかしいと思いますのは、他人に漏らすことが、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」、これは
ちよつとよく繋らないのではないかというように
考えます。若しもこの
新聞協会の御趣旨を、私が忖度いたしますならば、我が国の安全を害すべき、害する目的を以てと、こういうご趣旨ではないかと思います。これは探知、収集でありますから、害すべき用途に供する……、それを探知、収集ということになるのでありますが、第二号の他人に漏らした場合に、それが我が国の安全を害すべき用途に供する目的を以て他人に漏らすということが一体どういうことであるか、
ちよつと私には理解しかねるのでございます。このことは目的の立証が先ほど申上げましたように事実上非常に困難である。この目的だけに限定いたしますと、勿論自然その範囲を自白によ
つて求めるというような弊も、これは今日の我々はまあ全然
考えておりませんけれ
ども、そういう弊も起り得るのではなかろうか。と同時に先ほ
ども申上げました刑特規定も
只今の第二号と同じ規定をいたしておるのでございますから、その
意味で我々の
考えておりましたこの第二号の線でよいのではないか。これも
軍機保護法によりましては「偶然ノ原因ニ因リ」ということで構成要件は極めて明白にな
つてお
つたのでございますが、併しそれだけでは困るというしぼりの規定でございます。このしぼりの精神は十分私
ども考えているのでありまして、その
意味から決して御心配のような点はないのではなかろうかかように
考える次第でございます。
第三の
業務の
関係でございまするが、「
業務により」は前々から申上げておりますように、私
ども法律概念としては十分明確にな
つていると
考えておるのであります。報道
関係者がこの
業務に入らないことは、国防保安法の審議の際にも国会において十分明確にされておりますし、又その後の私
どもの扱いも同様でございます。学説などを見ましても、この
新聞報道者が入らないという解釈にな
つているのでありまして、その点これは拡張解釈されて報道者が入るというようなことは私たち夢想もいたしておらんわけでございます。なお「
防衛関係の」が入りますことによりまして
法律上その
防衛秘密というものを知る権利がある者が、たまたま
防衛関係ではない、そういう場合は第三条第一項第三号に該当いたさなくなるのでございます。
民間生産者、修繕業者これらも問題がございますし、なお検察官或いは警察官、まあ非常に例は少いと思いますが、裁判官、こういうものも
防衛関係でないことは明確にな
つておりますので、私
どもはこの「
防衛関係の」が入ることによ
つて、本来の目的が遂げられなくなることを非常に心配いたすわけでございます。のみならず「
業務により」という観念は、概念として以前から確定されておるところでございますから、この
新聞協会の御趣旨は決して御心配ない、この原案で十分達せられている、かように
考える次第でございます。