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1954-05-18 第19回国会 参議院 法務委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十八日(火曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            上原 正吉君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            大谷 贇雄君            小野 義夫君            楠見 義男君            三橋八次郎君            小林 亦治君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   国務大臣    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第二部長 野木 新一君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁人事局長 加藤 陽三君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法務省刑事局公    安課長     桃沢 全司君   —————————————   本日の会議に付した事件日米相互防衛援助協定等に伴う秘密  保護法案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から本日の委員会を開きます。  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を前回に引続き質疑をお願いいたします。
  3. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この法案憲法違反疑いが甚だ濃いものでありますが、その関係において特に国民に対していわゆる防衛秘密保護の上から刑罰を以て臨むということを政府がされようとする場合には、防衛を主として担当しておられる側においてそうした防衛秘密外部に漏れて、そして国民に迷惑をかけるということが万一にもないようにされることが必要だと思います。それで本法案の基になつておりますアメリカなり、或いはその他民主主義諸国におけるこうした類似の立法例を見ましても、一般国民にこうした法の適用がある場合は極めて少い、殆んどないと言つてもよい。主としてその都内の人々秘密の厳守ということが主となつているようであります。それで只今アメリカマッカーシー上院議員と軍部との間に大きな問題が起り、その問題の及ぶ影響の甚大なことはアメリカ世論が非常な憂慮を以て眺めておるところで、こういう実際の現在り実情は政府においても十分注目されていることだと思います。で、我々が容易に手を入れることのできるニユーヨーク・タイムズなどにも毎度これは詳しく報道されていますから、いわゆる防衛上の秘密、或いは更にアメリカの場合には軍事上の秘密というようなことの適用を誤ると恐るべき害があるということは、十分にこれらのアメリカの現状についても、政府も十分に御研究しておいでになることと存じます。先日来お願いしておりますが、そういうように国民に向つて防衛秘密という関係人権を制限しようとなさるのであるならば、その防衛隊自身が如何なる程度においてそうした防衛秘密というものが外部に漏れて国民に迷惑を及ぼさないという決意がおありになるか、それについて我々がやはり十分に承知しなければならないと思いますので、先日来お願いしてありますように、今までの保安隊につきまして、第一には保安隊にとかく汚職事件が続発するという世論批判を受けておられる。それで木村さんがあとからおいで下さると思うのですが、先ず今までの警察予備隊保安隊、それから最近まで汚職事件というものについてどんな事件が起つておるのか、それについてはどんな処置をとつておるかということが第一、それから第二には、警察予備隊以来只今保安隊、それから自衛隊というものになつて行くその過程において、如何なる民主主義、どういうふうにどんな程度にこの民主主義的なそういう防衛力であるということを国民の前にお示しになることができ得るかどうか。これが第二点、で、それに関係して第三点に伺つておきたいのは、防衛機関というものが近代科学化という面においてどういう努力をなさるおつもりかということも伺つておきたいのですが、この第三の点は前からお願いしてないので、或いは準備をして頂いていないかとも思いますが、先ず第一に警察予備隊以来、日本のいわゆる防衛機関というものにおける汚職事件に対する世論批判に対してどういうふうにお答えになることができるか、それを伺いたいと思います。
  4. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 警察予備隊発足以来、保安隊におきまして各種の汚職事件が発生いたしましたことは、私どもといたしまして誠に申訳なく存じておる次第であります。昭和二十八年中に刑事事件として一応取上げまして調べました件数も相当多くなつておりまして、三百五十八件に上つております。この事件のうち但し正式に事件として扱いましたものは、送検いたしましたものは三十三件、行政懲戒をいたしましたものが百六十六件に上つております。この事件の取扱いにつきましては、大体半分程度一般警察の扱いになりましてその他は保安隊の中における警務官という制度がございまして、警務官司法警察官として取調べを行なつて送致をいたしております。事件内容は殆んど大部分が交通規則違反でございます。大体一カ月平均にとつてみますると、交通規則違反等のものが八割乃百至九割程度、その他は窃盗傷害或いは業務上の横領というものは一割程度、一月平均大体こういういわゆる破廉恥的な犯罪が三、四件ございます。事件内容といたしまして主なるものは新聞紙上にその都度載つておりまするが、例を少し申上げてみますと、第一幕僚幹部即ち保安隊厚生課長をやつております者が、菓子の納入に関しまして二十万円ばかり収賄したという事件、これは昨年の三月でございますが、現在起訴取調中でございます。それから同じく第一幕僚幹部補給課におきまして食糧班長をやつております者が非常用糧食の発注に関しまして、金額は僅かでございますが、三万円ばかり、これらはいずれも起訴中でございまするから、身分は休職になつております。なお、昨年新聞紙上で非常に大きく取扱われました練馬部隊におきまして米を炊事の係りが少しずつ持出しまして売捌いておつたという者がございまして合計米にいたしまして練馬部隊と豊島の分遣隊、両方合せまして約六石ばかりの米を盗んでおつたのであります。関係者は約十七、八人に上つておりますが、いずれも送検いたしまして、身分といたしましては懲戒免職になつております。なお更に、北海道におきましても旭川の部隊毛布横流しをいたしまして、これは幹部が入つておりますが、四人、これも懲戒免職にいたしまして送検をいたしております。南恵庭という部隊がございますが、この部隊におきましても糧食横流しをいたしまして、約三十万円はかりの不当利得を得たものが一士以下四人、これも懲戒免職にいたして送検いたしております。又福知山の部隊におきまして昨年の春から十一月までの間にこれは下士官に相当する二補でございますが、八十万円ばかりの金を横領いたしまして逃亡いたしております。これは現在逮捕されておりません。又これも新聞に出ておりましたが、立川の部隊におきまして電線の窃盗を働きまして、これは保育長以下三名、約金額といたしまして三万五千円ばかりでございますが、これも起訴、送検いたしております。なおその他に細かい事件はいろいろございますが、私どもといたしましてはこういう事件の発生を見ましたのを非常に遺憾といたしまして、昨年の十二月十六日長官命によりまして、全部隊に対して綱紀粛正、こういうり犯罪の防止について厳重に通達いたしますと同時に、具体的の方策を検討いたしましてそれぞれ措置をいたしております。保安隊におきましてはこの方策一つといたしまして本年一月から三月までの間を全保安隊服務規律刷新期間ということにいたしまして、服務実地指導及び精神的な面の教養にも当りますと同時に、全保安隊検閲を実施いたしまして綱紀粛正規律刷新について努力をいたしております。  海のほうの警備隊におきましては事件は少いのでございますが、これ又保安隊と同様に各部隊検閲を実施し、更に服務刷新についての措置をそれぞれ講じております。  監査の結果は、今申上げました事件以外には業務上の不正事件等が発覚いたしましたことはございません。併しながら会計検査院等からの御説明によりますれば、批難さるべき事項というものは多少は発見いたしております。こういうものにつきましては今後も規律刷新ということについてあらゆる方法を講じて努力いたして参りたいと思うのでございます。保安隊がどのぐらい民主化されているか……。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の点だけで結構です。警察予備隊以外に三百何件とおつしやいましたが……。
  6. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 昭和二十八年中におきまして一カ年に三百五十八件でございます。そのうち交通規則その他いわゆる破廉恥罪と言われないものが約八割から九割ぐらいになつております。一割強が窃盗傷害業務横領、そういうようなものでございます。
  7. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 最近の今御説明下さいました一月から三月までの間刷新期間として規律を厳重にしておられるという、その間にはこのような事件が起つておりませんでしようか、どうでしようか、まだおわかりになつておりませんか。
  8. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 監査の結果は概して良好でございまして、現在までに昨年中起りました事件のようなものは発覚いたしておりません。
  9. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 こういう今御報告下さいましたようなさまざまの事件、殊に新聞を通じて世論批判を受けられているような事件、こういう事件が今後根絶するという、根絶というのもなかなかむずかしいのですが、減少するという自信はおありでございますでしようか、如何です。
  10. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 私どもといたしましてはこういう事件は絶無にいたしたい、それにつきましては先ほど申上げましたように、新らしい監察制度その他と並行いたしまして、規律刷新ということに全力を挙げて参りたいと思つております。
  11. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これをまあ絶無に根絶されるという努力をなさるときに問題になつて来るのは、余り内部規律をいわゆる厳重にされるということになると、もとの軍隊余り違いはないようになつて来る。私物を検査するとかなんとか、その保安隊員基本的人権をも侵されるようなふうに厳重に検査をなさるということになり、私はこれ又許されないことだと思うのですが、それよりも私はその問題となるのは、やはり責任をかなり高いレベルでとられるということが必要ではないかと思うのですが、これは後に木村長官に向つて少し伺つておかなければならないと思うのですが、一月か二月ほど前だつたかと思いますが、西日本新聞にこれは木村長官おいでにならないところでこういうことを申上げるのは本当は避けるべきですが、総括質問過程において是非申上げておかなければならないと思いますが、西日本新聞の夕刊だと思います。私それを保存しておかなかつたので、今証拠を提出することはできないのですが、調べて下されば必ず出て来ます。保安隊続々汚職、これでは戦力のある軍隊にはならない、木村さんちよつといけますね、というふうに書いてある。これは私は実に重大なことだと思う。木村さん個人に対する名誉毀損であるかどうかという問題よりも、もつと大きな問題であつて、この保安隊汚職というものは続々起つて行くだろう、戦力のある軍隊にはならない。つまり役に立つものにはならない。而もこれが、これは木村さん個人に私は関係しておるという意味で申上げたのじやないのですが、併しその新聞批判するところは、つまり汚職の温床となるであろうという重大な意味世論が表明しておられる。私はこれはなかなかこの批判に答えられることはむずかしいだろうと思います。私はこの根本原因国民生活を安定していないところに軍隊のようなものを置かれると、必ずその軍隊のようなものは腐敗する。さつき実例としてお述べ下すつたものの中にも米であるとか、或いは毛布であるとかいうようなものに関する事件が多いのですが、民間に米が円滑に行き渡つており、民間衣服類が円滑に行き渡つておれば、持出したところでそういうことが大して利益になるわけでもないし、こういうことになるわけがない。且つ又アメリカのニクソン副大統領か何かが来られたときに、農村の次三男の対策について意見を求めたときに農村で次三男が食えなければ保安隊に入つたらよかろうと、そうすると保安隊に入つておる人は家は食えない、家は食えないから家へ何か送りたいというように考えて来る。更に国民経済の全般から考えて見ましても、国民経済が安定していないのに、そうした特に資材を潤沢に供給されておる特殊な政府機関というものができれば、これは誰がとめようと思つたつて、私はこの汚職というものはとまるものじやないと思う。ですからこの点においてはどうか政府が高い見地から国民生活の安定と、それからこういう防衛機構というふうなものとは並行して設けられなければその意味を持たないものだというように考えますが、この点は木村長官がおられないのでありますが、佐藤さんからお答えが願えれば有難いと思うのですがどうでしよう。
  12. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 羽仁委員のお言葉軍隊のようなものを置くということと国民一般社会生活というものとの関連の問題は、これは常に一般人々、又殊に政府としては考えて行かなければならんことである。これは当然のことであろうと思うのです。ただその場合において、どつちのほうからそれを眺めるかという眺め方によつて、或いは白という結論になり、或いは黒という結論になると思うので、それに対してはその人その人の見方というものがございますからして、又結論違つて参ろうかと思いますけれども、その根本考え方はこれはもう当然のことだろうと思います。
  13. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この点はどうか直接にはこの保安隊、今後自衛隊ということですか、その関係の方々もこの認識をどうか深めて頂きたい。その国民経済の安定なくして防衛勢力なんというものは確立上ない。必ず腐敗、厭うべきものが出て来るでしようから、余り自分のほうばかり力を高めようとなさつて、それで国民経済というもののほうを少しも考えないで自分のところの力ぱかり高めようということは、これは旧帝国憲法時代の軍閥などにはあつたのですが、現在はこれは許されないことだと思う。絶えず国民生活とのバランスにおいてでなければ考えられないという認識を高められたい。これはあとから政府を代表してお答え木村長官からはつきり頂いておかなければならないことだと思うのです。  それと関連して、こういうような汚職が続発するという状況であると、本法関係のような秘密は、内部規律の不十分のために外部に漏れるという場合がかなり多かろうと思うのです。この点について私は伺つておきたいのですが、内部規律が不十分であるために外部秘密が漏れた場合、私はこの外部の人が処罰されるということは、民主主義の理論上から言えば許されないことだろうと思う。その防衛機構自体責任を十分に果していないのですから、その点については佐藤長官はどうお考えになりますか。
  14. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ちよつとお言葉の要点をとらえかねましたけれども、要するにこの法律案に即して考えれば、最初のお言葉にありましたようにこの秘密漏洩関係については、要するに漏れることは恐ろしいのでありますから、そのためにはむしろ今のお話にあつたように、保安隊内部関係者むしろ緊張、用意というものによつてそれを防ぐ。そうして現実的にはこの法律によつて処罰される人が一人も出て来ないような形であるべきだということは当然の理想であると思います。従いましてこの内部規律というものを、今のお話にありましたように基本的人権を害しない限度において十分にこれを守つて行かなければならない。これはもう当然のことだろうと思います。
  15. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の質問意味はこの防衛秘密というものが外に漏れるという問題について第一に問題になるのは、政府機関自体が十分の責任を負わなければならない。で、政府機関が十分の責任を持つてその防衛秘密外部に漏れるということのないようにしておるときに、外からそれを或いは不法な手段によつて、或いは巧妙な手段によつて探知せられるということがあることが問題になつて来るわけですから、第一にこの一つ事件について具体的にですね、一つ事件秘密が漏洩したという事件についてその防衛会議なりその秘密を守ることをその職務の上で責任を持たなければならない側の責任が十分に保たれていなかつた場合ですね。その場合その民間のその秘密知つた人々を処罰するということが許されるだろうかどうだろうか、この点です。
  16. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この問題はやはり両面の問題であつて、一面においては今のお話のように自衛隊内部の者の心に緩みがあつたということによつて盗まれたということは、要するに他からつけ込まれる余地があつたからでありますからして、その意味でその人たちが大きな重い責任を負わなければならないことは当然であります。ところが他の一面、即ちこの法律保護しようとしている一面は、これは又その目的、或いは手段等において反社会性を持つた行動であるわけであります。その見地から見ますというと、それはそれとして一つの又刑罰を以て臨むに値いする責任を、刑事責任と申しますか、そういうものはある。これはそう申上げなければつじつまが合わないように考えております。
  17. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それはあなたのお考えが旧帝国憲法時代のお考えに近いからですよ。ですから私は最初からあなたに向つてつておるように、本法案というものが旧軍機保護法のようなものに近いのか、それとも各官庁におけるいわゆる行政秘密というんですか、それを守るような立法に近いのかというようにお尋ねしておりましたときに、あなたは前のほうに近いのではなくて、あとのほうに近いのだというようにお答えになつてつたでしよう。そうすれば問題の重点が先ずそつちのほうにあるのが本体です。つまり内部規律というほうに重点があるのが本体です。内部規律を超えて国民一般にいわゆる防衛秘密というものについて刑罰を以て脅かすということは、私は憲法違反だと思います。私はそれについては議論をしない。併しそれについては憲法違反疑いがある。併し憲法違反疑いがあることについてあなたが侵されない、侵すまいというお考えがあるならば、やはりこの法案重点内部規律というものにあるというお立場に立たなければならないだろう。いわゆる本来的な軍事的秘密というものが今日本にあるべきものではないということは、今あなたは質問に対してお認めになつたんですから、だからこれらのいろいろな民主主義の要請するところの条件というものをすべて連ねてこれを考えて来るならば、本法案適用する場合に、内部的に責任が守られていなかつた場合に、国民に罪を負わせるということは私は許されないことだと思う。それをなさるならば、これは憲法違反だという疑いがいよいよ濃くなつて来ると思うがどうですか。
  18. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この法案関係のと言つたほうが正確でありますが、法案関係の我々の考え方重点は、先ほども申しました通り内部規律によつてむしろこれによつて処罰される人が出て来ない、そういうチャンスが出て来ないように、内部規律緊張によつて、それをそういう事態に持つて行くということが望ましい姿であり、理想である。これは先ほど申した通りであり、又今お言葉にある通り、少しも間違つたことは考えておりません。ただ問題は、外部から悪意を持つてそれを取ろうとし、或いは取つた人という関係は、一応根本の理窟の問題としては、その受身になつている人のほうの側の事情の問題とは、切り離して考えるべき筋合のことだと思います。これは新旧憲法というようなことでなしに、むしろ古今東西亘つて一つの又原理として考えなければならんことでありますから、そういう意味で申上げているのであるわけです。
  19. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  20. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。
  21. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 佐藤さんが今おつしやられたところのお考えがおかしいのじやないか。東西古今にどこでもそうだろうというお答えがありましたが、東西古今軍隊のない国は日本しかないのですよ。だから東西古今の例で以つてやられるということはできない。軍隊のない日本において今これが立法されるのだという点から考えて来て、私は明らかに防衛機関内部責任が十分に守られていなかつたために外部秘密が漏れてそこに事件が起つた場合です。    〔委員長退席理事上原正吉君着席〕 あなたはそのときに言葉を加えて、外部から悪意を持つてその秘密窺つた場合というようにおつしやつて、それで五分々々だろうというふうにおつしやつているが、私の質問はそうでなくて、はつきりさせれば、内部責任が十分に守られていなかつた、それで秘密外部に漏れた。その秘密が漏れたために、国民のほうに責任を問うということはバランスがとれていない、そういうことは許されないことじやないかというように伺つているのです。それはやつぱり本法適用が民主的に行われるかどうかということに関する随分重大な点ですから、単に形式的でなく、やつぱり一方においては今まで警察予備隊保安隊西日本新聞言葉を借りれば、続々汚職というように、内部規律は甚だいかがわしいというふうに世論批判を受けておられる。これを併し人権を蹂躪して規律を厳格にするということはできない。さつき申しましたように国民生活は安定していないのだから、防衛機関内の規律というものは私はそんなに確立するということはむずかしいだろうと思うのです。従つてそういう心配が起つて来るのであります。この間の刑事特別法の例として政府側から御説明下さつた場合のように、料理屋などでアメリカの将校が酔つばらつてその秘密をしやべり、民間の会社の人が聞いていて、とにかく検事のところまで行く。そういう事件が頻々として起つて来れば、本法は現在の日本軍隊というものを持たないという憲法の下においては、これは憲法違反だという疑いが甚だ濃くなつて来るのです、だから率直に言つて私の質問は、本法が、適用される場合、一つ事件についていわゆる保安隊なり、防衛隊なりの内部責任というものが十分に保たれていなかつた場合に、その秘密が漏れたことについて国民の側の責任を問うということは、先ず許されないことだと私は考えるのですが、それについてお答えを願いたい。
  22. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど私の申しましたのは、古今東西と申しましたように、極めて基礎的なことを申上げておるので、軍隊があるからとか、ないからとかいう問題にかかわりない、もつと根本のことを述べたつもりであります。結局いわゆる刑事制裁の共通の問題として被害者側の落度というものとそれから加害者側の犯意と申しますか、故意と申しますか、そういうものとの関連として考えてみた場合に、そうしてこの法律案がどうであろうかといつた場合に、この法律案はそれで一応筋が立つておるということを申上げようと思つてつたわけです。ただ個々の事件についての事件の裁判ということになりますと、これは勿論その事件ごとに裁判官の判断というものが加わりますし、或いは情状による処置というものもあるわけです。それは運用の問題になるわけです。ただこの法律案自身としての意味には関係ないことだろうということでございます。
  23. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今お答えのように抽象的に考えることはいけないと思うのです。これは模範的な、憲法に合致した立法じやないのですからね。つまり立法それ自身に問題があるのですから、だからこれは模範的な立法ならば、今のようなお答えにもなるのでしようけれども、併し模範的な立法じやない、場合によつて憲法違反疑いを受ける、受けておるのです。ですから加害者とか被害者とかいうふうにそういうノルマルな範疇でこれを考えていいかどうかは疑問です。今こういう防衛隊なり自衛隊なりというふうなものを日本に置くということが百パーセントには恐らく許されない。これは誰が御覧になつつてそうだ、大人をごまかせても子供はごまかせない、国民軍隊というふうに思つておるのですから、ですから今のあなたの議論は、大人はごまかしても子供はごまかせないということになつて来るのじやないかと思う。併しこれはこれ以上は議論になるからやめまして、続いて先ほどから伺つておる、然らばこういう法律を以て国民に臨もうとする際に、日本防衛機関というものは如何なる民主主義的な内部の機構を示されることができるか。その点についても説明を続けて伺いたいと思います。
  24. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 民主主義化の問題は事務当局から申上げるのはどうかと思いますが、事務的な問題だけを申上げますと、制度上におきましても保安隊の運営について最高の指揮監督権は内閣にありますことは申上げるまでもありません。従いまして国会の完全なコントロール下にあるわけであります。なお私どものほうの部隊の運営につきましては、平生常に国民保安隊であるように指導いたしておりまして、専ら社会人としての徳義、教養を備え、そして国民の信頼に応えられるような保安隊を作りたい。従いましてこの保安隊と申しましても、昔の軍隊のような特殊の社会を作らないという方針を持つております。併しながら保安隊は職務の性質上、統率ということを重んじますので、事が起りまして行動する場合等におきまして隊員全部の意向を聞いて行動するというようなことにいかないことは申上げるまでもございません。但し自律の精神に基いて先ほど申上げましたような社会人としての向上を図つて行きたい。なお先ほどもちよつとお話がございましたが、監督の点につきまして行過ぎはしないかというお尋ねがございますが、昔の軍隊と違います点は、私生活に対する不当な干渉、圧迫というものは努めて排除をいたしまして、特に私的制裁の厳禁、これはかなりよく行われておると存じます。こういうようにいたしまして統率の面におきましては、隊員全部の意向を聞いて運営するというわけには参りませんけれども、併し昔の軍隊当時に生じました弊害は極力避けまして、そうして専ら自律的の心がまえを養成し、そうして国民保安隊になるように努力を続けておるつもりでございます。政治的のことは大臣が来られましてからお答え申上げようと存じます。
  25. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私は警察予備隊当時に、法務委員会から、議会から派遣されて中を拝見したことがあつたのですが、当時の状態と今日の状態とは非常に違つておる点もあるかと思います。そのとき私はこの警察予備隊というものは一体何でしようかというふうに伺つていたときも、多分その部隊責任者の答えだと思うのですが、私どもは普通の世間の言葉で言えば月給取りでございますというようにお答えになつておりましたが、その古葉の俗語としての意味は別として、本質的には今日もその点変つておられないのですか、それとも変つているのでしようか、如何でしようか。
  26. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 保安隊に入つて参ります隊員がどういう理由で入つて来たかということにつきましては、恐らく相当の多数が生活上の問題或いは職業として入つて来たという人が多いのではないかと思います。併しながら月給取りという俸給をもらつておりまするが、入りましてからの指導訓練或いは保安隊の職務に対する各隊員の自覚の向上というようなことと相待ちまして、逆に自分たちはともかくこういう任務を遂行する上においてこういうような俸給を国家から頂いておるのだというような、いわゆる月給取り根性と逆な感情も出て参つておると確信いたしております。単純に月給取りだから月給さえもらえれば、それでいいのだというような感じのものではないと存じております。    〔理事上原正吉君退席、委員長着席〕
  27. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私はその月給取りだというお答えを頂くときに、実はその認識が新たにされる点に非常に信頼を感じたのです。今のお答えじや月給取りというものは何かいやしむべきもののようなお答えを頂戴して、甚だどうもやつばりこれは大分変つて来たと、それじや昔の神がかり的な軍隊というものがこれは徐々にできつつあるのだ。私は月給取りだというふうに伺つたときに、ああこれなら大丈夫だというふうに思つたのです。今の御答弁はどうもそういうふうに伺えないで、だんだん月給取りでなくなつちやつて、こわいものになりつつあるのだというように伺つてよろしいのでしようか、どうでしようか。
  28. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) どうも私のほうの考え方間違つていて月給取りというのを非難されたように伺つたのは誤解でございますが、そういう意味でございませんで、まあ職務を遂行する上において、国家からこれだけの月給を頂いておるのだという感じを新入隊員が漸次自分の任務を自覚するにつれまして持つて来るということを申上げたいつもりでございます。
  29. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今、議会に提案されております自衛隊法案、この自衛隊法案の第五十九条によれば「隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を離れた後も、同様とする。」と書いてございます。これの他の官庁の職員と全く同じ取扱いだと思うのです。これは佐藤法制局長官に伺つておきたいのですが、ですからこの保安隊員只今の取扱いでは他の官庁の職員と全く同じ、それで貴賤、上下の別なく月給取りといういわゆる国家が常雇いに雇つて、俸給を払つておるところの公務員というものとしてこれは規定されていると思うのです。そうですね、佐藤さん……、それをですよ、今度はこの法案で他の公務員と違う取扱いを受けることになりますね、特に重い責任がかかつて来るわけです。ですからこの自衛隊法案によれば、自衛隊の方は秘密を漏らしても免職になるだけです。牢屋に放り込まれるということはないでしよう。そうでしようね、他の役所と同じです。だからそれだつた憲法に合う公務員なんです。ところが今度の法律案がでるというと、それが秘密を漏らした場合に他の役所の職員と同じように首になるだけじやなくて、十年以下の懲役を受ける。これは違憲の疑いがありませんか。どうですか。
  30. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今御想像の中に入つております点で、自衛隊の隊員が秘密を漏らした場合の制裁があることは、一般の公務員と同じであります。これは結局まあ特別職として一般の公務員から外しておりますから、それと歩調を合せるだけの意味で、併しこれは一年以下の刑罰ということになつております。これも一般公務員と同じになつておるわけであります。そこで今度のこの法案関係においてそれが差別扱いをされるのじやないかというところが重点だと思いますけれども、実はこの法律案そのものは、何らこの自衛隊の職員に対する差別はしてないのであります。ただ業務によりという形によつてその一般的の基準に引つかかつて来るケースが多いか少いかということはあると思います。恐らく前々からの御説明で御推察のように、実際上業務関係者として、はこの自衛隊人たちが一番密接な関係を持つわけであります。多いとは思いますけれども、併しそれにいたしましても、例に挙げました一般の委託を受けた工場の人たち業務関係を持つ場合があります。或いは大蔵省の主計局の役人といえども自衛隊の予算を審査する場合があり、業務上これにタッチすることもあり得るわけでありますから、これは基準として業務により云々という基準になつております以上は、憲法問題は全然ないと考えております。
  31. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  32. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて。
  33. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほどから伺つておりましたのですが、保安隊の、警察予備隊以外の保安隊などの汚職事件が、世間の批判を受けておることは木村長官もよく御承知の通りであります。先ほど引例をしたのですが、これはあなたのお名前が出て来るので甚だ恐れ入るんですけれども、私はやはり世間の批判として是非お耳に入れておかなければならないと思いますけれども、そういう意味で申上げるので、どうか善意にお聞きとり願いたいのですが、二カ月ほど前の西日本新聞の夕刊に「保安隊ぞくぞく汚職、成るほどこれでは戦力のある軍隊にはならない。木村さんちよつといけますね」。ということが書いてございます。で私はこれは木村長官個人関係する意味で申上げているんじやないのです。そうじやなくて、保安隊汚職というものは、これはなかなかやむまい。それでそれを世間が、国民が心配していることだと考える。そこで伺いたいのです。この保安隊汚職ということは私は内部規律を余り厳格にしますと、隊員の私生活に干渉するようになつて、旧軍隊と同じようになりましよう。併し私的制裁が復活するということも許されないことで、私としてはやはり国民がこの保安隊汚職というものがだんだんなくなつて行くことを期待するでしようが、私は根本原因はこの国民生活国民経済生活が安定してないときに、保安隊のようなものがありますと、これはやはり国民生活とのアンバランスにおいて保安隊汚職ということは避けがたいことになるのじやないか。国民全体のほうは或いは失業であつたり或いは生活困難であつたり、或いは職業なり衣料なりというものもたやすく手に入らない。こういう状況において保安隊なり今度自衛隊なりというものができて、その中の人は生活ができ、食料や衣料も潤沢にあるというアンバランスがあると、どうしても汚職が絶えないんじやないか。それで伺つておきたいのは、国民経済生活の安定というものの限度を超えてこの保安隊ができて、保安隊なり自衛隊なりというものが大きくなつて行くということは、これは政治的見地から厳に戒めらるべきことだと思うのですが、この点についてお答えを伺つておきたい。  それから第二には、それにもかかわらず、やはり国民経済生活と、自衛機構、防衛機構というものとの均衡がなかなかとれて行かない場合に、これは第二の質問でございますが、内部規律というものが十分に守られるという点においていささか問題がある。そこで本法案のようにして内部秘密を外に漏れるのを防がれるという場合でございますが、これは内部規律が非常によく保たれておれば、国民もその点不安がないのです。それから又悪意を持つて内部の隙を狙つて秘密を盗み出すというような場合もこれは除外してそういう場合は問題にいたさない。この内部規律が十分でない、内部責任が十分守られていなかつたために秘密外部に漏れたという場合には、その外部責任を問われるということは私は許されないことではないかと思うのでありますが、政府としてはどんなお考えでございましようか、内部責任が守られていなくつて漏れてそれが行つても、外の人の責任を問うのだということになりますと、国民の迷惑は一層大きくなりまして、そういうお考えでこの法案立法されるということになれば、これは憲法問題なども発生して来る、いろいろな関係から憲法問題も発生して来るのじやないかと思うので、私の考えでは内部責任が十分に守られていなかつた、そのために漏れたという場合に、外部責任というものを問うということはなさらない、なさるべきじやないと思うのですが、この点は如何でしよう。以上二点についてお答えを頂きたい。
  34. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 保安隊員汚職の問題、これはすでに新聞紙上にも明らかになつた事実であります。誠に私は遺憾と存じておりますが、かようなことがあつて国民に誠に相すまんことだと思います。併し現実の問題としてあつたことはこれは事実でございます。そこで我々といたしましては、国民の信頼を得る保安隊を作るについては、是非ともかようなことを将来なからしむるように最善の努力を払わなければならんという建前から、現在におきましては十分にその点について上下一致協力いたしまして撲滅に努力いたしております。幸いにいたしまして最近におきましては、その数もよほど減つたように思います。今後とも我々は一層努力いたしましてかようなことは絶滅を期して行きたい、これが国民をして保安隊を信頼させる唯一の途であろうと思つております。同時に今お述べになりました国民生活安定でありますが、もとより私は国民生活の安定は急務であろうと考えております。愛されるべき国家を作るということ、これには何よりも国民の生活を安定せしめるということであります。故人も政治の要諦は民をして飢えさしめざるにありといみじくも言つております。そういう方向に政治を向けて行くということは、これは何よりも必要であると思います。そこで政府といたしましては、無論その点について努力を払うことは当然であり、同時に保安隊員に対しましても、私は国民が困つている者があるにかかわらず、一部において不当なことがあるというようなことがありますると、これこそ全く国民の信を失うことになります。隊員に対しましてもこの点について十分努力をさせることにいたしたいと、こう考えておる次第でございます。  次に、内部責任問題であります。もとよりこの秘密保護法案におきましても、第一に注意をすべきは内部から漏れるということであります。これが先決問題であります。かるが故に高度の秘密性を保つためには、部内におきましても特にこの点注意を払つて、この秘密を知るものの限界というものをはつきりさせたいとこう考えております。保安隊、誰でもこれを知るというわけじやない、この高度の秘密を保つためには、極度にこの人員を私は制限する必要があると考えます。従いましてこれは外部に漏れるというようなことはあつてはいけないと同時に、この秘密を部内で知つておるものが特に注意をして外部に漏れないように最善の努力をする。たまたまそういうものが他人に漏らすということでありますれば、これは私は恐らく悪意で漏らすものであろうと考えております。過失で漏れるということは先ず私はないと考えております。あつても極めてまれである。さような場合において悪意で以て部内から漏れるということになりますると、部内の者の粛正を図るということは、これはもとより当然であります。たまたま外部に漏れて、外部の者がその高度の秘密であるということを知らなかつた場合には、これはもとより問題にならないで、本法の対象となりません。殊に部内の者がやすやすとそういうことを漏らすということになると、外部の者がこれは部内の者がそういうことを言うぐらいであるから、これは高度の秘密性を持つていないものであろうということを考えるのは当然であろうと思います。そこにおいてたとえ高度の秘密性があつたものと仮定いたしましても、外部に漏れて外部の人がそれはさほど秘密にすることは必要じやないんだろうと考えるのは、むしろ私は当然であろうと考えます。さような場合においてはもとより部内の者はこの法案の対象となつて叱責されることは当然でありますが、外部の者はそれがために私は善意の人は引かかるようなことはなかろうと考えております。もとより外部の人も内部の者と相通じて行うということになれば、この法案の対象となることは当然であります。さようなものでない限りにおきましては、私は外部の人に対しては迷惑を亳もかける余地がない。こう考えておる次第でありまして、この法案の施行にいたしましても、我々は外部の人に対して迷惑をかけないように十分の努力をいたしたいと、こう考えております。
  35. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の問題に関連いたしまして第三の問題です。その第一に問うた保安隊汚職の問題について、いろいろ内部の隊員の私生活に入るような意味で、厳しい取締りをするというんでなくて、国民生活の安定とのバランスにおいてそういうことを心して頂くということをお願いして、それはその通り考え下さるという御答弁を頂いて満足するわけです。それから第二に内部責任が十分保たれないでそれで外部の人がこれは特に明らかなる悪意だというふうなものがない場合に、それで迷惑を受けるということはない、あつてはならんというお答えを頂いてこれも満足するわけです。  この点について特に私は伺いますのは科学者の問題があるわけです。科学者は御承知のように日本学術会議において原子力その他の研究を、兵器としての研究はいたさない、それから又それらの原子力関係の研究において秘密というものを認めないということを声明しておられます。この科学者の気持ちというものは政府においても十分尊重せられることだと思う。でありますが、実際問題としてはこの保安隊自衛隊というものがだんだん近代的な機構として発展をして行かれます上には、内部においてやはり近代科学の研究ということの必要は必ず生じて来られましようし、又現在もおやりになつていることかと思うんです。そういう場合にはやはりこの一般の科学者の協力を求められる場合が生じて来るんじやないか。そうすれば一般科学者のほうとしては、原則的にはその日本学術会議の声明にありましたように、原子力に関し兵器としての研究には協力しない、又その秘密の研究には協力しないという態度をとられておるのでありますが、私は自衛隊或いは防衛隊というものは、恐らくは経済的に多額の費用を要しないで、それで有効な機能を発揮するという意味においては、やはり近代科学の研究の協力の必要ということは、これは一般的に起つて来るのじやないかと思う。ところが只今申上げますようにこういう場合に科学者が協力をし得るだろうか、し得ないだろうかという点につきまして、この本法案そのものが憲法違反の点があるので、又はその適用において憲法違反疑いを受けられるような適用がしておかれますと、一般に科学者の協力ということは非常にむずかしくなつて来るのじやないか。特に具体的には今申しましたように内部規律がよく保たれておる場合には、科学者も或る意味においては協力するということはできると思うのですが、内部責任というものが不十分であつて、そして協力した責任が科学者のほうに及んで来るというような様子が見えれば、これは科学者としてあぶなくて近寄れないということになつて来ると思うのです。で、特にこの高度の秘密というようなものは、近代的な意味におきましては、私はやはり科学的な意味が多分にあろうと思うのです。でありますからどうかこの科学者との関係においても十分にお考えを願つておきたい。これについては今私は中途の質問でありますから、長い時間を与えられないのでやめますが、最近の五月二日のニユーヨークタイムズ週刊海外板に、これは日本でも容易に手に入るニユーヨークタイムズに最近のアメリカにおける科学者とそれから軍の秘密との関係において容易ならない問題が起つておることを詳しく報道されております。フオトマンモスというレーダーのアメリカの基地に関しまして、そこで働いておる科学者の数というものはおよそ一万人に近い、その中でも厳密な意味の科学者がやはり数百人おられるようです。そこで働いておる科学者についてアメリカで今問題になつておりますのは、その科学者の妻、或いはその親戚、或いはその友人という人に共産党員があつた場合に、それらの科学者がいわゆる取調べを受けるという問題であります。これは今本法案及び日本の場合に直接には起つて来ないことなんでありますけれども、併し先日来の不法に……、本法において言う不当な方法で秘密を入手するというふうな判断の場合には、例えば先日中山委員或いは一松委員からの御質問にもあつたような、いわゆる人情の上で判断せらるべきだというような場合と、それからその人の妻、これは最近オツペンハイマー教授の事件の場合などもそういうことが起つておるのでありますが、日本の場合にはその方の妻がどういう方か、或いは家族がどういう人であるか、或いは友人にどういうことがあるかというふうなことから本法適用せられるなんということは、これは全くないというように私は了解しておりますが、アメリカの場合にはそういうふうなところへまで行つてしまつて、そのために科学者が今フオトマンモスで働いておられる科学者の大部分の方は、他にいい職があつたらば近い将来にそつちへ移りたい。つまりやめたいということを言つておるというのがこの記事の最後の結論でありますが、日本の場合にも本法適用を誤まられると、科学者の協力を受けられるということは全く不可能になつて来るだろう。そうなりますと徒らに旧式の設備を持つて、非常に金のかかるものを持つてつて行かれるということになりますので、本法適用の場合に先ず第一にその防衛機構そのものの内部において十分の努力をせられて、いやしくもその内部努力あとにして外部国民或いは新聞記者、国会議員、科学者、こういうような人のほうに迷惑をかけられるということを先にせられるということは絶対にないということを御答弁を得たいことをこの機会にお願いいたします。
  36. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 誠に御尤もであります。我々も考えるところは、将来日本の真の防衛体制を立てて行くのには、やはり科学の力がなければなりません。いわゆる能率的に且つ経済的に日本防衛を確立させるには、全科学者によつて協力してもらつて、科学の力に待たざるを得ないと私は思う。これは本筋であろうと考えます。而うして科学者をおびえさせては、私は科学者の協力も得られないとこう考えております。従いまして科学者を自由豁達に伸ばして行く。又伸びてもらうということについては、我々は総力を挙げて努力しなければならないと考えております。いやしくもこの法案のために科学者がおびえるというようなことがあつては相成らんのであります。併しこの法案の建前とするところは、決してその科学者なんかに対して迷惑をかけ、又科学者をおびえさせるというようなことは私はしないと確信いたしております。この狙うところは、故意にこの高度の秘密を知ろうとする、而もそれが或る目的を持つてやろうというものに主眼を置いておるのであります。それと同時にです、これはいろいろ民間その他と関係が生じて来ます。この間からたびたび政府委員から説明申上げておるように、高度の秘密性を持つているものを民間に委託するようなことがあつて、その方面から故意に、これも善意で流されることはいたし方ありません。故意にそういう秘密性を外部に漏らせるようなことがあつては相成らんということで、この法案で取締つて行こうということを先ず第一に狙つておるのであります。仰せのごとく第一は、部内において十分にこの秘密を守つて行こう、又守らさせなければならないのであります。その点に主眼を置いて、いやしくも一般人たちにかりそめにも迷惑を及ぼすようなことがあつては相成らんという考えを我々は持つて、しぼれるだけ我々はしぼつておるようなことでありまして、今仰せになりましたような科学者をして自由轄達に研究してもらうということについていささかも心配のないようにやつてもらいたいと思います。
  37. 亀田得治

    ○亀田得治君 昨日に続きまして第三条の業務という点に関して質問を続けたいと思います。それから昨日の質問の最終の段階のときに、政府委員のほうでも答弁がありましたが、それによりますと、いわゆる報道機関の推測記事は本法に該当しない。この点は極めて明確な答弁を得ておるのですが、但しですね、但書がその答弁にはついておつたと思うのです。但しこのいろいろな合法的な材料を基にして推測をしたのだけれども、最後に確かめたいと思つて保安庁の誰かに聞き出した。まあこういう場合には引つかかる場合もあり得るというような趣旨のことを最後に言われておりますが、これは私そうなりますと非常に具体的な場合における判断がむずかしくなるものですから、昨日は時間も遅くなつていたので、もう打切つたのですが、そういうふうに私聞きましたが、その通り間違いないかどうか。もう一遍念を押してみたいと思います。
  38. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 私の出しました例が少し妥当でなかつたかも存じませんが、それは新聞活動の場合におきましては、恐らく私の出したような場合には不当な方法でもない、目的でもないということで、取締りの対象になることはないのでございますが、例えばスパイがそういう目的、第三条の第一項の第一号の目的で、そういうものを探知、収集している場合に、合法文書によつてつておるという場合には、それから推測したという場合には犯罪が成立しないのでありますけれども、昨日出した例のような場合があつた場合には、当り得る場合があるとかように解釈しております。
  39. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると場合によつて犯罪になる場合があるというのは、新聞記者ではなく、スパイ活動を専門にやつている人が主体になつていることのことと承わつていいですね。
  40. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) そのような場合には目的がはつきりいたしますから、第一号の探知、収集に該当する場合があるわけであります。こう申上げているのであります。
  41. 亀田得治

    ○亀田得治君 新聞記者の場合は、差支えないのですか。
  42. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) その場合には目的もないでありましようし、又方法もただ聞いたという方法ですから、これは一号の場合にはかからないと思います。
  43. 亀田得治

    ○亀田得治君 それではつきりしましたからその点結構ですが、そこで次に国会議員等の問題に移る前に、これも昨日この業務に当るものは何かということを具体的にお聞きした場合に、弁護人ということを言われたはずですが、これは私の聞き間違いではないと思いますが、ちよつと確かめておきます。
  44. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 弁護人ということを申上げましたが、これはその事件を担当する弁護人という意味でございまして、職務により、業務によりましてれその事件の記録を見るとかいうような関係から、知得された弁護人の方は該当すると存じております。
  45. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうなりますと、つまり業務ということの概念が拡がる虞れが又出て来るのです。弁護士もこの業務の中に入ると、該当の事件を取扱つた弁護士も入ると、こういうことになりますと、業務の解釈が緩んで来ますと、新聞記者なんかも入るような可能性が又出て来るわけなんです。これは昨日も申上げたように、飽くまでも官吏とか、或いは国の委託を受けて仕事をしていると、それは国との信頼関係があるわけですね。身分的な関係もある官吏の場合、そういう関係で特にその立場というものは重く考えるわけでしよう。何も秘密そのものに触れる機会が多いとか、少いとか、そういう問題じやないと思う、質的には……。新聞記者が問題にならないというのは、これは新聞記者が自分の能力でこれは集めて行くのですから、そういう意味で質が違うものだ。量の問題じやない。私この弁護士の場合にも同じだと思うのですよ。これは何も国から頼まれてやつているわけでもない。被告人の代理として活動しているわけですね。弁護権の発動をやつているわけです。国との間には何にも関係ないのですよ。それは大きな訴訟法上の関係はありますが、直接の関係というものはない。それじやそういう事件を担当した弁護士は何をしてもいいのかと言えば、それは勿論そういうことは私も考えない。例えばそれが第三条の第一項第一号、或いは第二号、こういうことに該当するような条件が揃つて来れば、その立場で処理されるということは、これは私もいたし方ないと思う。併しそれを官吏と同じように第三号の業務の中に入ると、私これは非常に間違いだと思うのですね。裁判官や、検察官がこの業務の中に入ると昨日言われましたが、それとは私質的に違うと思う。この点非常に解釈が政府自身がどうも動揺があるように私は思うのですが、新聞記者が除外される以上は、弁護人も当然これは除外される。国とは何の関係もないのですよ。記録を見るのは、これは刑事訴訟法の第四十条の閲覧権に基いてこれをやつておるわけです。そういう特別な国との関係じやない。これは非常に重要な問題、この一点がぼやからされて来ますと、この業務が結局質的に変化して行くことを私は恐れる。それでこの点をこれははつきりしなきやならんと思つて聞くわけなんですが、飽くまでもそういう考えでしようか。もう少し明確にその辺御答弁願いたい。
  46. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 私ども考えておりますのは、例えば弁護人が窃盗事件の弁護についてその過程において防衛秘密を知つた、これは勿論この法上にいわゆる業務によつて知得領有したものとは考えておりません。併しながら只今申されましたように弁護人は記録閲覧、これは「公」云々ということと関連して参りますが、それに該当しない場合のことを考えまして、記録閲覧の法的な権限を持つておられるわけです。この法的の権限に基いて防衛秘密というものは当然知られる。そういう関係にあるものをやはり業務によつて知得、領有した場合に該当する、その限りにおいては該当する、かように申上げなければならないと存ずるのであります。
  47. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう解釈を若し政府がとつておられると、国家機関と何らの関係のない業務にまでそれが入つて来るのです。すでに解釈上非常に危険性があると思う。それじやもう一つ関連して聞きますが、役人がこの業務に該当することはこれは勿論なんですが、すべての役人がこの三条で言う業務に入るわけじやないでしよう。
  48. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) その点は仰せの通りでございまして、やはりその秘密というものを扱う権限を持つているものということになると思います。
  49. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、そういう権限を持たない役人がたまたま役所の関係でその秘密を知る、こういう場合には、この業務にその関係においては入つて来るのですか。役所の連絡事項としてそれを知つた場合には……。
  50. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 連絡事項と申されるのは、ちよつと内容はつきりいたしませんが、例えばその職責がそういう防衛秘密というものを知るべき立場にない者、これがたまたま同僚のそれを扱つているものから聞いたといたしましても、これは業務によつて知得、領有したものには該当しないと考えます。
  51. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすれば、普通は職務権限はないのだけれども、特に依頼をされてその品物を扱うというような場合には、その関係においては三条の業務に該当する役人になるわけですか。
  52. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 例えば上司の特命の事項で、日頃はそういう仕事を担当しなくても特に命ぜられてやつた場合、こういう場合には、これは「業務により」に該当すると存じます。
  53. 亀田得治

    ○亀田得治君 その官吏の場合は、後ほど又国会議員に関連して聞きますが、弁護士の場合に、身分的に全然違つた立場にある。これが法律上記録閲覧権を持つておる。それだけのことを根拠にして普通の役人と同じような取扱い解釈をされることは、これは私間違いだと思う、こういうことは……。それでそれに更に関連するのですが、このMSA協定の附属書Bですね、このBによりますと、Bの終りのほうですが、「日本国が受領する秘密の物件、役務又は情報については、アメリカ合衆国政府の事前の同意を得ないで、日本政府の職員又は委託を受けた者以外の者にその秘密を漏らしてはならない。」この範囲の中には弁護士は入つておりますか、入らんでしようか。これは字句の解釈から言つたつて当然……。
  54. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) この附属書Bの解釈はちよつと私よく存じませんが、併しながら先ほど申上げました弁護権というものですが、これは憲法の規定するところでもございまして、その趣旨に従つて弁護人が秘密を知り得るという権限も持つておられると思います。そういう意味におきましては、この附属書Bの文句如何にかかわらず、これは弁護人として知り得る権利が保護されておるものとかように考えております。
  55. 亀田得治

    ○亀田得治君 この条約の附則書Bの解釈から言つても、第一にアメリカが目的にしておるのは、日本政府の職員又はそれから委託を受けた業者なんですね。で、これに限定されておることの意味は昨日から言つておる通り極めて明白なんです。これ以外のものはアメリカ政府としては事前に同意を得て初めて漏らしてくれとこうなつておるのですよ。だから、私はむしろ実際は弁護士に記録を閲覧させる、その際に、アメリカ政府からこの条約の附属書Bの規定によつて、それはちよつと待つてくれ、こういうことが出て来る性質のものじやないかと思つて、実はこの点を確めたいと思つてつた。その点は一体どうなんです。私はこの条約の成文から言うならば、弁護士はここに入つておらない。従つて当然それはちよつと待てということが出て来ると思う。刑事訴訟法の第四十条は絶対的な規定で、その上に例外は設けてない、閲覧権は……。設けてないのだが、それは日本政府法律だ、アメリカ日本との間の約束はこうじやないか、こういう一体申出が来た場合に、日本政府はどうされるのです。それから先ずお聞きします。
  56. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この附属書Bの解釈につきましては、日本政府の職員というものの範囲から外れまするものは、国会議員、及び先ほどのお話の弁護人或いは裁判所の裁判官も入らないと存じております。但し、ここに書いてございます「アメリカ合衆国政府の事前の同意を得ないで」と書いてはございますけれども、これは日本法律、殊に根本法の建前をこの規定で以て制限をするというようなことは全然考えておりませんし、アメリカ側においても当然考えてはおらないと存じます。従いまして、国会議員、或いは裁判官、或いは弁護人等につきましては、包括的の除外というものが外務省においてとられるというように承知いたしております。従つて日本法律に基きまして裁判官が秘密内容を知り、又国会が秘密内容を知る、或いは弁護人の方が記録を閲覧されるということにつきましては、個々にその事件ごとアメリカ政府の同意を得るというような手続はとらないつもりでおります。
  57. 亀田得治

    ○亀田得治君 その包括的な除外の同意をあらかじめ得ておくというのですか。それは一体この条約を締結されるときに明確にそういうことが内輪で申合せがすでにできておる問題でしようかどうか。
  58. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 外務省当局にも尋ねたのでございますが、その際において包括的な同意は得ておらないようでございます。併しながら、この条約によりまして、国会議員の職責を制限いたしましたり、或いは裁判官の職務の執行を制限するということは、アメリカ当局においても考えておらない、想像もいたしておらないところであると存じます。手続上どういうことをいたしまするか知りませんが、外務省当局におきましても、日本法律で当然、殊に根本法に基きまして当然職務の執行としてこの秘密を知り得る方たちに対する制限というものは行わないし、アメリカ合衆国においても想像しておらない。必要がありますれば勿論包括的に先方の了承を形式的にとることはございますと思いますけれども、そういうような趣旨でないということを外務省当局では申しております。
  59. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう趣旨でないと言つたつて、そういう趣旨には読めないでしよう。「日本政府の職員又は委託を受けた者」、これはもう限定されておる。これは弁護士なんか皆除外されておるとあなたははつきり言つておる。そうすれば、事件によつて、弁護人の閲覧権というものに対してアメリカ政府がこの条約を楯にとつて干渉して来た場合に拒絶する根拠はないでしよう。はつきりとしたそういうお互いの協定ができておるのでなければ、予定だとか、いやそういうつもりだとか、そんなことじやこれは必ずそうなるとは言えないでしよう。今のような段階で以て、アメリカ政府がこの記録は弁護人に閲覧させることはいかんとこう言つて来た場合には、今の状態ではそれは約束されるでしよう。その点どうでしようか。
  60. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この協定全体が、第九条にもございますように、各政府はそれぞれ自国の憲法上の規定に従つて実施する。従いまして、憲法に規定してありまする根拠法に基くところの裁判官の権限でありますとか、或いは国会の権限でありますとか、或いは弁護人の権限というものをこの附属書において制限するというようなことは予想しておらないというふうに外務省当局において申しておりまするので、私どももその趣旨で考えておる次第でございます。
  61. 亀田得治

    ○亀田得治君 各国の憲法の規定に従つてこの協定を実施する、こういうことは勿論成るほどあるのですが、而も憲法従つて実施するということになると、私どもの考としてはいろいろなところでこれはむしろ障害にぶつかることが多い。併し、それはまあ憲法の解釈の問題であります。結局これはその条項が入つておることは大した保障にはならない。憲法違反はやらん趣旨でこのMSA協定を作つたんだと、そういうことを対外的に政府が言うために、特にそれを入れておるだけです。これは左から見ても、右から見ても、憲法とは極めて矛盾しておる。だからそういうことを私は議論しておるのではないのであつて、普通の法律の立場から言つて、この附属書Bとそうして刑事訴訟法の第四十条、この二つが持出されて、そうしてアメリカはどうしてもこれは弁護人に見せてならないと、こう言つて来た場合には、日本法律というものはそれだけ制限されるではありませんか、その点だけを聞いておる。これはむしろ条約と法律との関係にもなりますし、法制局長官の意見を聞きたい。
  62. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今のお言葉によりますというと、MSAの協定そのものが超憲法的なもので、言い換えれば憲法違反であるというような前提にお立ちになつておるようにも窺われたのでございますけれども、これは協定の御審議の際に国会においてたびたび申上げております通りに、日本憲法の解釈論として憲法違反するような条約というようなものは許されない。そういう立場で説明をしておつて、そして先ほど官房長から述べましたような条項をこの相互防衛援助協定の中にこれは念のためである、当然のことではあるけれども言つてまあ入れておくというようなことであります。従いまして我々としてはこの協定自体は飽くまでも憲法の枠内のものであつて憲法に超越することを、或いはこれに抵触するようなことを、この実施の関係で惹き起すというようなことはあり得ないこと、あることは許されないことという前提で考えておるわけであります。従いまして先ほど来のお話の事柄は全部日本憲法の枠内の問題であつて、この憲法でなさるべきこととして予定していることがこの協定の結果できないことになる、こういうことはあり得ないことと信じております。
  63. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは憲法と条約との問題じやないのですよ。この弁護士の記録閲覧権は刑事訴訟法の第四十条によつて認められておる問題なんです。だから法律と条約との問題なんです。だからこの刑訴法の四十条に矛盾するような態度にアメリカが出た場合には、それが優先するではないか、一方のほうは二国間の条約なんですから、そういうふうに私は考える。その点を聞いておるのです。決して日本憲法と衝突する部面の問題を取り上げているつもりじやない。
  64. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君)併しお言葉を返すようでありますけれども、我が憲法においては被告人は弁護人を求めて、そしてその弁護人の援助によつて自分の利益になるような主張をすることができるということをまあ憲法自体は保障しておるわけであります。今の弁護人の例から申しましても、やはり憲法論にひつかかつて来るのではないか、こういうふうな気持であります。
  65. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはちよつと違いますよ。憲法で保障しているのは記録の閲覧権までは保障しておりません。弁護人をつけて防禦することは勿論絶対的な権利として認めておる。記録の閲覧権はその一ツに過ぎない。それが明確にされておるのが刑事訴訟法の第四十条なんです。私記録閲覧権そのものが直ちに憲法上の権利と言えるかどうか、これはやはり問題だと思う。今平たく考えてですよ、記録の閲覧というものは、そのときの法律の作り方によつて制限する場合もありますよ。併し閲覧だけはですね、謄写なんか制限する場合もありますが、閲覧だけは絶対的な権利として四十条ではもう保障しているのです。閲覧権はこれは法律上の問題で憲法上じやなしに刑事訴訟法上その閲覧というものを制限するかしないか、そういう問題なんですね。だからこれを憲法のところに持つて行かないで、この条約との比較を私お願いしたいと思う。この法律を条約と比較すれば、当然条約のほうが優先するという一般原則を佐藤さんとしては出さなければならんのですから、殊更にどうも議論を憲法のほうに持つて行かれておるような気がするのですが、これは憲法上の問題じやないのですよ。
  66. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは御質問に釣られて憲法と条約というお言葉がありましたから、それに乗つただけのことであります。今のお尋ねでだんだん具体的になつて参りましたが、記録の閲覧権の問題は憲法の直接問題ではない、これはその通りだと思います。従つて記録の閲覧権と言いましても、この法律の結果一般的には制約される、一応そういう前提は成立つと思います。ただ、先ほど来お話に出ておりますように「業務により」云々の問題がそこに挾まつて来てれ御承知の正当業務というものが何であるか、或いはそれによつてどういう除外が認められるかという関係になつて来て、今の弁護人の例で申しましても、どの弁護人でも行き当りばつたりに記録が閲覧できるというわけではないわけで、先ほどから例を挙げて申しておりますのは、この今の秘密保護法の例えば第三条の一項の違反事件を受持つて弁護人としてその違反事件の弁護を自分の職務として遂行して行かなければならん。その場合において当然その職務遂行上この秘密を知らなければ、弁護人としての本来の職務が果せない。そういう場合にはこの秘密を知らす場合があるということであつて、これは又そのほうの一般原理が働いて来てのことでありますから、憲法の枠内の問題としてお考えになつても、そういう筋道で事は解決される、こういうふうなことだと思つております。
  67. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう少し具体的にお聞きしたいと思うのですが、アメリカ側の附属書Bによつてこの記録は弁護人に求めてはいけない、こう言われた場合には、これは法律だけの面から言つたら了承しなければいかんでしよう、どうでしようか。
  68. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それが先ほどの又憲法の問題に引つかかつて来るわけであります。憲法では記録の閲覧とか何とかそういう細かいことは書いておりませんけれども、およそ被告人の利益のために弁護人を求めて、その弁護人の援助が得られるという憲法の保障している趣旨から言つて、これを仮に見せない、見せるなということでとめられた場合に、その憲法の予定している弁護人の職責が果せるかどうかが問題に引つかかつて来て、それは憲法の趣旨ではないということになれば認めざるを得ない、それだけのことじやないかと思つております。
  69. 亀田得治

    ○亀田得治君 そんなふうにはならんですよ。記録閲覧権の問題は、例えば被告人と弁護人との接見の問題ですね、こういう問題でも法律上制限しておるわけですね。これは結局刑事政策上の問題なんです。その段階では弁護人が被告人に付き得るからといつて、無制限に行動できるわけじやないですから、それを制限したからといつて、これは憲法上の問題じやないんです。私ども弁護人の制限が強過ぎますと、けしからんという主張をいたしますが、これは飽くまでも現在の刑事訴訟法等を基礎にして主張しておることなんです。全然初めから弁護人を付けちやならんとか、そういう基本的な問題になつて来れば、これは憲法上の問題です。そうじやない問題ですからね。そういう問題についてアメリカのほうが条約を楯にとつて申入れをして来るということは、私はあり得ると思うんですがね、先ほどの説明から言つても、本来ならば弁護士などは事前の了解を得なければならない部類に入つておると、こういうわけですから、当然そういう事態が予想されると私は思うのですが、そういう事態が予想された場合に、あなたの考えで行くと、これは憲法上の問題だから、附属書Bの規定如何にかかわらず、そういうものには従わんでもいいと、こういうことを言うと、これは条約違反にはなりませんか。アメリカはそれで了解しますか。
  70. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) どうも御趣旨がよくつかめませんが、要するに憲法と条約との関係は、先ほど申しましたようなことで解決されるということになれば、あとはこの国内法の問題として附属書の問題が出て来る、これは筋合として当然のことであろうと思います。その場合に、今述べましたような問題でそのこと自身憲法に全然関係のないことであるということになれば、それは例えを申しますれば、普通の何ら縁故のない人に秘密を話して、政府の機関が、秘密を講ずという場合に、同意をしないとかするとかいう問題が出て来ると、同じ面がそれはあると思います。あると思いますが、これは弁護人の場合についてはそういうものと同じかどうかということになれば、これは明かに違うと申上げざるを得ないので、そこのところに問題の解決点があると、こういうことだろうと思います。いわんや実際の運営についても、そういうものを一体同意にかけるとか、かけないとか、或いは同意しないとかいうことは、相手方としては夢にも考えておらんということは、先ほど上村君が話した通りであります。
  71. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) ちよつと補足して条約関係を申しますが、私ども事務当局におきましても、日本政府の職員というものの範囲について議論をいたしたのでございます。その際にもこの中には裁判所の裁判官、弁護人、或いは国会議員の方というのは入らないという解釈をとつたのでございますが、この条約の附属書によりまして、国会議員の方の職務に基く調査を制限したり、或いは裁判官の職務の執行を制限したり、更にこの弁護人の方が被告人から、その被告人が知得いたしました防衛秘密内容を、規則によるかよらないかにかわりませず、聞くことは弁護人の当然の権利であり、これを制限することは憲法上もできない。まあアメリカにおきましても同様でございまして、これは当然のことである。若し万一疑義があるような場合には、ここにアメリカ政府の事前の同意を得るというようなことをいたしませんで、包括的に話合う程度くらいでもいいのじやないか。了解を得るというような必要もないのじやないかというくらいに軽く考えておるのでございます。外務省におきまして、この条約を結びますときに、正式に米国とこういう問題について話合いをしたという事実は聞いておりませんけれども、事務的の段階におきましてはそういう解釈をとつております。
  72. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはもう明かにですね、附属書Bは刑事訴訟法の四十条と矛盾する協定なんです。で矛盾するからこそ、包括的に事前に同意を得ておくのだというようなそういうふうな考え方というものが出て来るわけなんです。これはまあ私の見解ですから、問題を残しておきましよう。そこでそれに関連するわけですが、最初に申上げたそういうふうに今回の秘密保護の出発点の考え方というものが、このMSA協定から出発して来ておるわけですね、何と言つても……。MSA協定の中では特に秘密を確保してもらいたいというグループというものをこの附属書Bによつてはつきりこう一種の枠を作つておるわけですね。先ずここが大事なんだという枠ができておるわけです。これは先ほど羽仁委員からもそういつたような点、別な角度からお話があつたわけですが、従つてそういう枠内にあるものと枠外にあるものとこれは全然取扱いが違うべきなんですね。特に重視するというのは、第三条の業務ということに当てはめて、特に重視せなきやならんというのは、その枠の中にある人でしよう。枠外の人はそういう一般よりももつと重い状態に置く必要は私は全然ないと思うのですがね、これは立法論の立場から言つたつて……。全然自由に放置するという意味じやないのですよ、これは誤解のないように。通常不当な方法によらなければ収集できないというような秘密を、弁護士がその事件を通じて知つた、こういう場合に、そういう認識を持ちながら、外部に漏らせば、これは三条の一項二号で行けるわけですから、全然放置するわけじやない。だからそういうことになるのですから、殊更に民間人である弁護士というものを、ただ刑事訴訟法四十条によつて記録の閲覧権が法律上与えられておるからとの理由によつて、普通の民間人よりもこれを区別して行く、そういう具体的な根拠は私ないと思う。こういつたような点は何ですか、立法されるときに弁護士の問題は具体的にこれは検討されたものでしようか。或いは法案ができた後にいろいろ疑義が出て来る場合がある。そういう結果弁護士というものをここへ入れるという解釈になつたんですか。それらの経過ももう少しざつくばらんに聞きたいと思います。
  73. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 先ほど来申上げておりますように、業務によるという観念には当然含む、かように最初から考えておつた次第でございます。
  74. 亀田得治

    ○亀田得治君 それじや次に国会議員の問題で少しお聞きをしたいと思います。国会議員が国会で例えば秘密会等で防衛秘密説明を受ける。その関係においては国会議員も業務によつてつたという三条に当る、こういう解釈ですか。
  75. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 仰せの通り考えております。
  76. 亀田得治

    ○亀田得治君 この議院に於ける証人の宣誓及び証言等に関する法律、これに関連して少しお聞きしますが、これは将来当然保安庁のほうとしてはぶつかる問題だと思いますが、現在の今申上げた法律の建前から言いますと、証人が宣誓を拒むというのは、民事訴訟法に書いてある極めて個人的な理由の場合ですね。公の立場から断るというのは極めて限られたことをこの法律では予想しておるわけです。そこで先ずお聞きしたいのは、この法律で職務上の秘密に関するもの、これは場合によつては証言を拒むことができるとこうなつているんですが、この職務上の密に関するものというのと本法にいう秘密と、それと自衛隊法で言つておる職務上の秘密、この三つの関係はどういうふうにお考えになつておるか先ずお聞きしたい。
  77. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この証人の宣誓及び証言等に関する法律にありまする秘密は、一応当該公務所又は監督庁が理由を疏明して証言をしないということがございまするが、最後におきましては結局国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求する。その声明があつたときに限つて証言をしない。又は書類を提出しないことができるという意味法律でございまするから、極めて重要な秘密であると存じます。従いまして一般の職務上の秘密と比較いたしますると、程度の差は非常に大きいものであると存じておるのでございます。
  78. 亀田得治

    ○亀田得治君 本法で取扱つておる防衛秘密、これは只今説明なつ法律で言う秘密、その範囲は一体どうお考えになりますか。
  79. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 本法に規定してありまする防衛秘密は、この証言に関する法律に書いてありまする秘密のほうが程度が高いものであると存じております。殊にこの「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」というよすな秘密でございまするから、一般防衛秘密全部がこれに該当するというようなことは勿論ございませんし、極めて限られた高度のものであると存じております。
  80. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますと、防衛秘密のほうが範囲が広いわけですから、国会で証言を防衛秘密について求められた場合には、原則としては証言をするということに解釈していいですね。
  81. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 先ほど申上げましたことでちよつと訂正さして頂きたいのでありますが、この証言に関する法律の第一段階におきましては、この証人なり何なりが一応証言を拒むという程度のものでございまするから、比較的軽い場合もあるかと存じます。併し最後の段階において国家に重大な悪影響を及ぼすというようなものにつきましては、この防御秘密より遥かに高いものであると存じます。従いましてこの防衛秘密内容につきまして国会の秘密会等で御要求がありました場合等には、大体と申しますより、殆んど全部であると存じまするが、内容を御説明できると存じているのでございます。
  82. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますと、今回の防衛秘密保護法が通過いたしましても、従来の議院に於ける証人の宣誓及び証言等に関する法律、これに対する制限にはならない、こう解釈していいですね。
  83. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 只今からならないということをはつきり申上げることは、事務当局といたしましては不可能であろうと存じまするが、防衛秘密として参りますもの、現在予想しておりまする程度のものでありますれば、国会で御説明ができるのではないかと存じておるのでございます。
  84. 亀田得治

    ○亀田得治君 その際に閣この法律の第五条の第三項に言ういわゆる「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」旨の内閣の声明、これが非常に拡大解釈されますと、現在は今答弁されたような態度でいても、この基本法の解釈自身がこう拡大して来るものですから、いつの間にかこの本法で言う秘密等も説明できないんだ、こういうふうになる虞れが十分あると思うので、そこでこれは佐藤長官にお尋ねして確めておいたほうがいいと思うのですが、この国家の重大なる利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明、これはまあ前例はどうでしたか私よく知りませんが、前例もないことかも知れませんが、こういう秘密保護法に関連して、これの考え方は非常に重大だと思います。そこでどういう大体考え方をこれについて持つておられるか。それがはつきり非常にこう狭い枠のもので考えられておれば、秘密保護法の成立によつて、国会議員の地位を脅かすということが一応心配がなくなることも考えられる。そこでその点を一つできるだけ具体的に考え方を明示してもらいたいと思います。
  85. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは御承知の刑事訴訟法の第百四十五条にも同じような条文がございますが、要するにこの実際の運用の場合ということを考えてみますというと、先ほど上村官房長の申した通りなことになると思います。ただ理論上、観念上のの問題として申上げれば、仮に国会の秘密会をお開き願つても、なお、且つ重大な悪影響があるというようなものが仮にあるとすれば、それは或いはこれに該当するかも知れませんけれども、その実際については先ほど官房長のお答えしたところによつてそういうことは殆んど考えられんということでございますから、とにかくその程度に我々として厳格に狭く考えて、おるということだけは御了解願つておきたいと思います。
  86. 亀田得治

    ○亀田得治君 私まあ新米でよく知らんのですが、これは前例はどうなんでしようか。この条文を活用したようなことはないんですか。
  87. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは未だ曾つてないと私は考えております。
  88. 亀田得治

    ○亀田得治君 この「国実の重大な利益に悪影響を及ぼす」、これは私はもう少し具体的にこれは政府側の答弁を欲しいと思つておるんですが、それは国の建前によつて非常に違う問題だと思うんです。軍事国家は軍事国家の立場で重大な利益と考えるでしよう。それから、そういう軍事組織を持つておらない日本のような国、こういう場合には、一体この最大の重大事とは何か、これは法的に違つて、来ると思います。そういつたような点も考えて、もう少し具体的に説明されると……、どんな事態を一体考えて、おるかという点をもう少し御説明願いたいと思います。何も考えていないならいないでいいんですがね。
  89. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) まあこれは率直に申しますけれども、抽象的にはそういうものがあるだろうと考えますけれども、具体的にどういう場合がどうというところまで実は思いつきもございません。これは却つて思いつきがないほうがいいので、そういうものがペラペラとここでお答えができるんではむしろこれは不幸なことじやないかという気がいたします。
  90. 亀田得治

    ○亀田得治君 不不幸なことかどうか知りませんが、アメリカの防諜法によりますと、本法の如何なる規定も、適法な要求に基づき、アメリカ合衆国の上院若しくは下院の常任委員会又はそれらの連合委員会に情報を提供することを禁止するものではない、こういうことが防諜法の中に特に挿入されておりますが、これはどうでしようか、アメリカにおいてこの秘密保護と国会の審議権といつたようなものが紛糾して、そうして出て来た条文でしようか、どうでしようか。こういう点若しわかつておりましたら御説明願いたいと思います。
  91. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 細かい現実的な沿革は、率直に申上げて存じませんけれども、占領中における我々の経験から言いますというと、アメリカ人たちの頭というものは、法律を作るに当つて、こういう当然のことを、念のための規定を非常に入れたがる傾向があるわけであります。この法律はこういうふうに解明されてはならないとかいうような言葉を随分入れさせられた経験がございます。これは一つの癖だと、こう考えてよくはないかと、かように思つております。
  92. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはそう簡単に一つの癖だというようなことで済まされないことじやないかと思うんです。やはり先ほど申上げたように、現在ではこの秘密保護法を作ることによつて、証人の証言等を制限するような虞れはないと言われておりますけれども、決定的には例の法律の第五条の「国家の重大な利益、」これのそのときの総理大臣の解釈如何によるのですからね。ともかく世論のあれだけの反対を押切つてでも、検察庁法第十四条を活用するような総理大臣がおるわけなんですから。従つてアメリカの防諜法の中で特にこういう規定が設けられておる。これは単なる思いつきやそんなものじや私はなかろうと思うんです。    〔委員長退席理事上原正吉君着席〕 これは立法過程においてもう少し検討されて然るべきだと思いますし、これは日本の過去の巽の経験から言つても、そういう点でもう少し関心を持つべきだと思うんです。国会議員がこれはひとしくやはり心配しておる点なんですから、そういう意味からこの点を聞いたんですが、これは資料として保安庁のほうから出されたのですが、資料を検討される場合に、今法制局長官が言われたような、そんな程度の軽い気持でこの規定を御覧になつたわけですか。これは長官から一つもう少し大きな立場で御答弁願いたいと思います。
  93. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 国会においてその審議権を行使するためにそういうものの内容を知る必要がある場合には、これは提供するのは当然であります。これは説明を待たんと思います。アメリカにおいても日本においても、民主国家においては私は変りはないと考えます。で、アメリカにおいて何が故にさような規定を設けたかという沿革については、私も率直に言つて知りません。知りませんが、今法制局長官の述べたように、占領治下においていろいろアメリカとも交渉をし、又アメリカの法文その他の建前を見ますると、当然なことを規定することがままあり得るのでありまして、私もこのアメリカ秘密保護法に該当する日本のこの法案においてかような文句を挿入したのは、全くアメリカ式の慣例に基いて来たものと考えております。これは法文の如何にかかわらず、当然の事理であろうと考えておる次第であります。
  94. 亀田得治

    ○亀田得治君 国会議員が秘密会等で聞いたのではなく、国会議員独自の立場で、丁度新聞記者の人がいろいろな材料を集めて、一定の目標を立てると同じように、そういうやり方で防御秘密等もキヤツチして行く。こういう場合の材料を国会議員が外部で扱つた場合、その場合には業務ということにはならないと思うんですが、ちよつと確めておきたいと思うんです。
  95. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 只今の場合には、この法上にあるいわゆる「業務により」に該当いたさないと存じます。記、」ないと存じます。
  96. 亀田得治

    ○亀田得治君 国会議員がそういう自分の力でいろいろ集める、その際に更に政府側秘密会等における資料も幾らか参考にして行く、こういう場合はどうなります。国会議員の認識といつても、そう分離できるわけじやないですからね。いろいろなものが重なつて発表される場合は一つになつて行くわけです。そういうふうな混合しておるような場合どう考えますか。
  97. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) どういう場合を想定しておられますか、ちよつと私見当がつきかねるのでございますが、前に問題になりました新聞記者の例と大体同じような場合と考えますときには、それは勿論不当な方法でもございませんし、目的でもないので、この法案の対象にはならないということになると思います。
  98. 上原正吉

    理事上原正吉君) 二時まで休憩いたします。    午後一時六分休憩    —————・—————
  99. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 再開いたします。午前に引続き質疑を続行いたします。
  100. 楠見義男

    ○楠見義男君 亀田委員がお見えになるまで短時間極めて簡単にお伺いいたしたいと思います。それは社団法人日本新聞協会から、この委員会委員宛に要望書が参つております。この要望の事事項について賛成とか反対とかいうようなことの意味でお尋ねするのではありませんし、又御答弁に対して議論をするつもりもないのでありますが、一応こういう要望書が参つておることに対して、その要望の各点について政府側のほうではこれをどういうふうにお考えになつておるかということだけをお伺いしたいと思うのであります。その御答弁に対する判断は私ども別途やることにいたしますが、即ちこの要望の主眼点は、この法律の拡大解釈によつて言論の自由を不当に制約されるというようなことのないように、又正常なる報道活動が阻害されることのないように十分の検討を加えられたいという根本考え方からしてこの法案についての修正要望をしておられるのでありますが、その要望点は三つございます。これは或いは政府のほうでもすでに御承知かとも思いますが、第一は、第三条第一項第一号のうち「又は不当な方法で」という字句を削除する。その理由としては「如何なる範囲が「不当な方法」に属するか具体的な内容は必ずしも明瞭でない。」この点についてはこの委員会でも再々質疑応答があつたわけでありますが内容は必ずしも明瞭でない。「また第二条により防衛秘密を取扱う関係者を充分に規正すれば「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて防衛秘密を探知し、又は収集した者」を罰すれば目的を達し得るものと考える。」これを理由にしております。  それから第二は、「第三条第一項第二号を「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて防衛秘密を他人に漏らした者」に改める。」その理由は「「防衛秘密で通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなもの」」というような規定は、先ほどの第一の点とも関連するのでありますが、明瞭を欠き拡大解釈の虞れが多い。又第二条で防衛秘密関係者の規正を図れば上記目的を達し得る。こういう理由にしております。第三点は、第三条第二項第三号の「業務」及び第四条第一項の「業務」の上に「防衛関係」のという字を入れる。その理由は、提案者はここにいう「業務」は報道関係者を含めない趣旨と説明しているが、本法制定後はこの条文が上述の趣旨の通り解釈運用される保障はない、よつてこの条文の中に報道関係者業務を含ませる趣旨でないことを明瞭にする必要がある。  以上の理由を附して三点についての修正と申しますか、その要望をしておるのでありますが、先ほども申上げましたように御答弁に対して議論をするつもりはありませんが、一応これらの点について政府は、どういうふうにお考えになつておられるか。又この要望事項を述べておる理由に対して、どういうふうにこれをおとりになつておるか、或いは反駁せられるか、そのことだけを政府側から、どなたでも結構でありますから、御説明をやつて頂きたいと思います。
  101. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 主として罰則関係でございますので、最初に私からお答え申上げたいと思います。この第三条の第一項第三号を除きましては、そういう第一号と第二号の関係は、いわゆる刑事特別法の規定を相当参酌して、ほぼ同様の規定を設けてあるのでございます。その一つの理由は、保護せられるべき秘密というものが大体アメリカ合衆国軍隊の持つておる秘密と実質的には同じものである。その保護には大体同じような規定で保護に当るのが、これはまあ私ども常識と考えるものでありますから、刑事特別法の規定を十分参酌いたしまして第一項第一号及び第二号の規定を立案した次第でございます。仮に刑特法と別の規定を設ける、構成要件を別にするということになりますと、自然アメリカ合衆国軍隊の持つている秘密日本に供与される秘密との間に何か差が論理上出て来るということになりますので、果してそういうことでいいのかどうか、この点は保安庁のほうからお答えをお願いしたいと思いますが、私ども立案に当りましてはそのことが非常に念頭にあつたということを一つ御了承賜わりたいのでございます。  次に、それは刑事特別法のときには一体どういう考えでおつたのかと申しますと、構成要件を明確にする、及び秘密の漏洩をできるだけ防ぐという観点に立ちますならば、これは前もたびたび申しておりますように軍機保護法方式の規定を作る、これが一番適切なのでございます。併しながら国民基本的人権との調和の関係におきまして、刑特法のときには相当苦心をいたしまして、第一号には目的及び方法をしぼりの規定として立案されておるのでございます。第二号のほうも同様でございまして、通常不当な方法によらなければ探知し、収集できないものというこれはしぼりの規定ができておるのでございます。従いまして刑事特別法の当時には軍機保護法との対照においてその趣旨を諒とせられ、恐らくその点についての論議も少くこの法律が審議せられたように私は感ずるのでございます今日に至りますと、更にこのしぼりの規定が不明確ではないかというお叱りを受けるようになつたのでございます。併しながらこの第一号について申上げますと、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」こういう目的を持つたもの、これはまあ御了承頂いたと存ずるのでありますが、方法の点の即ち「又は不当な方法で、」これがまあ具体的な内容は明瞭でないという新聞協会のほうの御見解でございます。併しながらまあ一番のこわいのはスパイの活動でございますが、現在黙秘権も認められているときに当りまして、この目的の立証ということが非常に困難である。或いはこのスパイの手先になつて使われているものは、その目的を知らずにやつている場合もございます。こういうものを取締りの対象にしなければこの秘密保護の目的は達せられないのでございまして、そういうものをどういう形でつかむかということが大きな問題になつて来ると存ずるのであります。その点におきましてはこの方法の不当というところで、一般善良なものが対象にならないようにしぼると、この刑特の規定は私は相当であり、又この法律においても当然御了解を頂ける規定であると確信いたしている次第でございます。  次にこの第二号の修正意見でございますが、この第二号で「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて防衛秘密を他人に漏らした者」とこうあります。ちよつとこれ私個人的に少しおかしいと思いますのは、他人に漏らすことが、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」、これはちよつとよく繋らないのではないかというように考えます。若しもこの新聞協会の御趣旨を、私が忖度いたしますならば、我が国の安全を害すべき、害する目的を以てと、こういうご趣旨ではないかと思います。これは探知、収集でありますから、害すべき用途に供する……、それを探知、収集ということになるのでありますが、第二号の他人に漏らした場合に、それが我が国の安全を害すべき用途に供する目的を以て他人に漏らすということが一体どういうことであるか、ちよつと私には理解しかねるのでございます。このことは目的の立証が先ほど申上げましたように事実上非常に困難である。この目的だけに限定いたしますと、勿論自然その範囲を自白によつて求めるというような弊も、これは今日の我々はまあ全然考えておりませんけれども、そういう弊も起り得るのではなかろうか。と同時に先ほども申上げました刑特規定も只今の第二号と同じ規定をいたしておるのでございますから、その意味で我々の考えておりましたこの第二号の線でよいのではないか。これも軍機保護法によりましては「偶然ノ原因ニ因リ」ということで構成要件は極めて明白になつてつたのでございますが、併しそれだけでは困るというしぼりの規定でございます。このしぼりの精神は十分私ども考えているのでありまして、その意味から決して御心配のような点はないのではなかろうかかように考える次第でございます。  第三の業務関係でございまするが、「業務により」は前々から申上げておりますように、私ども法律概念としては十分明確になつていると考えておるのであります。報道関係者がこの業務に入らないことは、国防保安法の審議の際にも国会において十分明確にされておりますし、又その後の私どもの扱いも同様でございます。学説などを見ましても、この新聞報道者が入らないという解釈になつているのでありまして、その点これは拡張解釈されて報道者が入るというようなことは私たち夢想もいたしておらんわけでございます。なお「防衛関係の」が入りますことによりまして法律上その防衛秘密というものを知る権利がある者が、たまたま防衛関係ではない、そういう場合は第三条第一項第三号に該当いたさなくなるのでございます。民間生産者、修繕業者これらも問題がございますし、なお検察官或いは警察官、まあ非常に例は少いと思いますが、裁判官、こういうものも防衛関係でないことは明確になつておりますので、私どもはこの「防衛関係の」が入ることによつて、本来の目的が遂げられなくなることを非常に心配いたすわけでございます。のみならず「業務により」という観念は、概念として以前から確定されておるところでございますから、この新聞協会の御趣旨は決して御心配ない、この原案で十分達せられている、かように考える次第でございます。
  102. 楠見義男

    ○楠見義男君 さつき申上げたように、御答弁に従つて論議を進めるつもりはないのですが、ただ一点だけ重ねてお伺いしたいのですが、それは今の御説明の中で、目的だけに限定すれば、立証が非常に困難であるというお話があつたのですが、目的の立証が困難であると同様に、不当な方法ということの観念も又ときによつては非常に不明瞭じやないかという気もするのですが、それはそれとして、今のお言葉の中で例えばスパイの手先は、目的を知らないのだから云々というお話があつたのですが、この点は午前中の木村長官の御答弁の中で、例えば部内の人々に対する規律の厳格ということを勿論第一義にやらなければいかん。併し万一その人間が他に漏らした場合に、漏らされたほうの人間は部内の人が公然と話をするのだから、恐らくこれは秘密でないだろうということで、処罰の対象にならないといつたような御答弁がありました。同様にスパイ自身は知つているのですが、その手先として使われた人間は、実は今の御説明にありましたように何の目的か知らずにやつている、こういう者はその方法がこの法律に規定されているようなふうに、目的には全然関係なしに、而もそれが不当なる方法かどうかということがここに予想しているような、どういう内容になりますか、これが問題なんですけれども、併し一応不当なる方法であれば、これに引つかかりますか、それでなければ単に教唆の罪にスパイがなるだけになつて行くのですか、その点はどういうことになりましようか。その点が一つ。  それから刑特法と同様にしないと、保護すべき法益が別々のような感じがする、この点については保安庁のほうから御説明があるというようなお話でしたが、これはこの委員会でいろいろ審議した結果、保護すべき法益自体がやはり違うのではないかという気がしているのですが、これは一つ官房長のほうからでも御説明をお願いしたい、この二点です。
  103. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 最初の問題でございますが、これは大臣が申されたことと私の申していることと問題が違うために、或いは行き違いがあつたかも知れませんが、例えばこの現在のスパイというものは、首脳者は蔭に隠れて手足を動かすという場合が多かろうと思います。それがどういう方法で行われるか、これは個々の場合によつて違うと思いますが、例えばこの間から問題になつておりました金銭で買収するとか、或いは色仕かけで以て探知、収集をしようとするとか、そういうふうな現われ方が多かろうと思います。ところが色仕かけで取ろうとした者、或いは金銭で買収してとろうとした者、これは目的が「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」があるかどうか、これはちよつとわかりにくいのでございます。命をもらつてそういうことをする者もございましよう。金をもらつている者が直ちに一号の目的があつたとはちよつと認定しかねるのでございますが、そういう人々が善意の第三者と区別されて処罰の対象になるゆえんは、不当な方法でやつたかどうかというところに、その区別の一線を設けたわけでございます。その点で仮に目的が立証されず、又目的のない場合でも、このスパイの活動というものが相当制約せられるであろう、それがここの狙いでございます。  それから第二の法益の問題でございますが、これは確かにお説のように法律的な法益というものは、刑特の場合と、本法案の場合とは違うと思います。併しながら実際に保護される秘密は、例えばアメリカの軍で使つております高射砲なら高射砲の或る部分の秘密というものは、若しそれが供与されている場合には、日本でもやはりそれが秘密として扱われるということになりますので、その秘密そのものの内容というものは、刑特の対象にしておるものと、日本のこの秘密保護法の対象としておるものと範囲の差こそあれ、内容は同一であろう、こういう実質面から申上げた次第であります。
  104. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は次に警務官制度に関して質問したいと思います。質問の要点は憲法第七十六条では、法の前にはすべて平等だ、こういう立場から旧憲法時代のような特別裁判所、従つて例えば軍法会議等の設置はこれを禁止しておる。これは明確なことなんですが、ただ憲法のそういう精神は、単にこの裁判所だけを対象にしておる、そういうふうには私ども考えない。で憲法上の制度としては勿論特別裁判所の設置を禁止しておるのですが、考え方としてはその裁判以前の捜査の段階につきましても、同じようなやはり精神が私活かさるべきものだ、こういうふうに実は考えておる。従つて何か特殊の人たちに対して普通の捜査機関じやないものが捜査を始める、こういうことは極力制限されるといいますか、真に止むを得ない事態でなければいけないと考えておるのです。こういう考え方を持つておりますが、これはたびたび他の委員の方からも論議された点であろうかと思いますが、長官の一つ基本的なこの問題に対する考え方を承わつておきたいと思います。
  105. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 各人は法の前に平等であります。原則としてはその取扱いを一にしなければなりません。併しこれは原則であつて、必ずしも一般にどこまでもこれを固執するというわけには参らんのであります。或る特殊の団体、或いは特殊の官庁においていろいろ内面的にその取扱いを異にしなければならんのは当然であると思います。今度自衛隊法によつて特別にさような警務官を設けたというのは、先ず以て内部規律を維持して行こうということに主眼を置いておるわけであります。これは自衛隊としてその本質上当然なことであろうと考えております。これが外部の人に対して及ぼすということについては、これは十分に注意をしなければならん。自衛隊における警務官外部の人までも取締るということは、これは行過ぎであろうと考えております。この警務官というのは、申すまでもなく内部規律を守ることが主になつておるのであります。たまたまその内部のものと特に関係のある事犯について捜査することについては、一般捜査員と協力をするということで取扱いを各方面からやつておるわけであります。刑法のいわゆる平等の原則には決して牴触しないと考えておる次第であります。
  106. 亀田得治

    ○亀田得治君 現在政府考えておる警務官制度程度では、直ちに憲法の精神に違反するということは言えないかも知れないのですが、この警務官を構成する人たち内容、或いはその警務官が取扱う事件の広さ、或いはその取扱い方、こういうものの如何によつては、やはりそこに相当特殊な捜査の領域というものが生れて来る虞れがある、これが一方更に発展いたしますと憲法改正ともからんで特殊な裁判所の設立というふうな空気が出て来ないとも限らない。そういう意味で私は今までなかつたようなこういう特殊な捜査機関がここで自衛隊法が新たに作られることによつて更に一層発展して行く、これはそういう意味で非常に重要な問題だろうと思うのです。そこで事実的な関係についてだけ少しお尋ねをしたほうがいいと思うのですが、この自衛隊法の第九十六条でそういう警務官の権限等が書かれておりますが、この九十六条によりますと、「自衛官のうち、部内の秩序維持の職務に専従する者」、こういう表現になつておるわけです。具体的にはこれがどういう範囲の人たちになるのか、先ずもう少しこの内容的に御説明をお伺いしたいと思います。その人数なり或いは地位なりといつたような点です。
  107. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 今具体的に手許に人員等を持つておりませんが概略警務官に属する人員は十一万のうち約二百五、六十名でございます。その身分幹部即ち三等保安士又は警備士以上の者と士補若干とを含んでおります。この九十六条の規定はそこにも書いてありますように部内秩序の維持ということを本来の目的といたしておりますので、その運用につきましても一般部隊外の人に対する捜査その他は、現在におきましても警察等の間に協定を結びまして、この九十六条第二号、第三号に該当する犯罪につきましても、一般人は一般の警察に委任をいたしております。なおついででございますから、申上げたいと存じますが、九十六条の「政令で定めるところにより、」ということが書いてございますのは、一般国民犯罪、殊に自衛隊の施設又は物に対する犯罪につきましては、政令を以ちまして警務官の任務から外すつもりでございます。従いまして防衛秘密の捜査につきましても一般人に対する捜査はこの政令によりまして警務官の職責から除外することにいたすつもりでございます。
  108. 亀田得治

    ○亀田得治君 その職責の範囲は第二段にもう少し確かめたいと思うのです。結局これが秘密保護違反のような事件が殆んどこの九十六条の中に含まれて来るように私考えますので、その点は第二段として後ほどお聞きしますが、先ずその警務官ですね、これが約二百五、六十名とおつしやつたわけですが、二百五、六十名では甚だ数が少いように思うのですが、それに対する補助的な立場で動かれる方は相当あるのじやないのですか。
  109. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 午前中にも羽仁委員からお尋ねがございまして、申上げたのでありますが、現在十一万の編成の下におきまして一カ月平均大体三十件前後の刑事事件と申しますか、がございます。そのうち約二十七、八件までは交通事故、交通取締規則違反等のものでございまして、あと平均三件ばかりのものが窃盗傷害業務横領というような事件になつております。従いまして大体一個大隊程度部隊の駐屯地域では、この警務官が二名、多いところで三名程度おりますと、事件の処理は間に合つております。この一カ年に三百数十件の一般事件のうちで大体約半数以上は一般警察が取扱つております。従いまして特に交通取締規則違反等につきましては一般警察署が検事の指揮を受けて扱つておる、たとえそれが隊員でありましてもそういうような関係になつております。従いまして二百数十名の警務官を以て現在人員は足りると思つております。
  110. 亀田得治

    ○亀田得治君 その警務官法律的にはどの程度の専門的な知識なり、或いは経験等をお持ちの方ですか。
  111. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 現在におきましては、部隊が発足以来極めて短時日でございますので、大体におきまして、旧警察の経歴を持つておるものが大部分でございます。なお今後増員いたしますにつきましては、一定の比率を以ちまして、新らしいものの教育訓練には、現在数十名の要員を集めまして司法警察事務についての教育を実施いたしております。
  112. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから警務官が捜査に着手をして、例えば被疑者を逮捕した場合には、自衛隊の中の庁舎にこれを入れることがない、今までやつておるのは……。これは将来ともこの方針はお変えにならない。現在はもよりの警察の留置所等に入れておるようですが、その点はどうですか、方針として将来……。
  113. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お尋ねの通りでございまして、今後とも隊内に留置所等を設けるようなことはないつもりでおります。
  114. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほど第九十六条の「自衛官のうち、部内の秩序維持の職務に専従する者は、政令で定めるところにより、」云々とこう書いてあるのですが、この政令の内容というのはどういう規定を含んだ政令でしようか。先ほどの説明ですと、何かこの政令によつて、第九十六条の第一項第三号の犯罪につきましては、実際上普通の警察にこれを委任して行くと、何かそういうふうな御説明もあつたわけですが、そういうことのほかに、これは何かもつと手続的なことなんかをおきめになる予定の政令であるかどうかお聞きしたいと思う。
  115. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 現在保安庁法の施行令で定めておりまする事項は、警務官身分及び警務官のうちに警務官及び警務官補を置くというようなことでございますとか、或いは捜査上必要な取調べをする場合には、長官の承認を得なければならないというような規定でございまするとか、その他各種の手続に関するような規定までも入れております。それから除きますのは、申上げるのを間違いましたが、九十六条の「左の各号に掲げる犯罪については、政令で定めるものを除き、」というところで、一般人に対する捜査を、司法警察官としての職務の外に置くということを規定いたすつもりでおります。
  116. 亀田得治

    ○亀田得治君 除きますのはあとのほうの政令ですね。
  117. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) はい。
  118. 亀田得治

    ○亀田得治君 その点はわかりましたが、そうすると先のほうの「政令で定めるところにより、」というのは、この警務官が、捜査の仕事を刑事訴訟法によつて遂行するわけですが、それの足らない部分についての手続的な規定をいろいろ規定すると、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  119. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お尋ねの通りでございます。
  120. 亀田得治

    ○亀田得治君 その際に、只今官房長が、一例としてれ捜査に着手する場合に、何か長官の承認を得て着手するというのですが、そんなようなことは、一体これは刑事訴訟法上許されることなのかどうか。刑事訴訟法上は犯罪があつたと思量する場合には捜査する義務がある。こういうことに長官が一体容喙して来るという、どういうふうな規定の仕方をされるのかわかりませんが、そういうことが知らず知らずのうちに、根本の刑事訴訟法というものが変つて行く。そういう虞れが出て来るわけです。例えば、だから「政令の定めるところにより、」ということのやはり内容をですね。これは内容如何によつては、やはり随分重要な事柄になつて行くんじやないか。昔の憲兵のような、勝手に一方に刑訴があるのに、一方でこういうふうに政令があるのだから、おれはこれでやつているんだ、法律と政令の関係なんか一つ裁判所できめてもらう、その間おれはこれでやるのだと、そういうことでは甚だまずい。だから政令の要綱を項目的にでもよろしいから、もう少し詳しくここで御説明願いたいと思う。
  121. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) ちよつと条文の前のほうを読み落しましたが申訳ありません。現在保安庁法の施行令におきまして三カ条規定しております。七十一条では、警務官は、保安士補以上のものを警務官、その他のものを警務官補と称する、警務官及び警務官補は、長官又はその指定する者が命ずるという規定と、その次の条文におきましては、警備官である警務官、今後は警務官一本になりますが、警備官である警務官の権限と、保安官である警務官の権限との規定について書いてございます。それから第七十三条は、ちよつと私が先ほど前のほうを抜かしましたので申しわけないのですが、警務官が、いわゆる保安隊員以外のもの、つまり保安隊員以外の職員、即ち保安庁長官の直属の、いわゆる内局と称しまするか、そこの職員について職務を行うとする場合において、捜査上必要な取調べをしようとする場合には、あらかじめ長官の承認を得るという、こういう規定でございまして、一般の隊員の捜査について長官の承認ということではなかつたのでありますが、前のほうを読み落しましたので申訳ございませんが、そういうわけでございます。
  122. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう規定が、実は重大だと思うのです。自衛隊というものは、現在の法律の領域の下においては、一般の人と少しも変らないのですから、建前が軍隊じやないのですから、で、一般の人は犯罪ありと思量する場合には、捜査権を持つている者は当然これは調べる。ところが自衛隊の場合には、今あなたがおつしやつた政令の内容によりますと、長官の承認、こういうことが出て来る。これは一般の同じ悪いことをしながら、一方では調べを受ける場合もあるし、ところが自衛隊の場合には受けない場合がある。長官はそれを承認せん、こう出たらどうするのです、承認せんと出た場合の規定は何かそこにあるのですか、引続いて……。
  123. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) ここに現在の法律で書いてございまするのは、自衛官以外の内局の職員について、いわゆる背広を着ている私どもでございますが、これについて捜査上必要な取調べをしようとするとき、私ども背広を着ている連中の長官である保安庁長官の承認を得なければならないということが書いてございます。勿論これは制服の警務官が内局の長官直属の私服を着ております連中の取調べをいたします場合には、その直属上官の長官の承認を得る、こういうことでございまして、犯罪捜査につきましては自衛隊の職員といえども一般警察の捜査の範囲外にはなつておりませんので、両方競合して捜査が行われるわけでございまするから、あらかじめ承認を得ろという規定がございましても、犯罪の明瞭なものがあるならば長官が承認されないはずはないし、承認をされないということになればこれは一般警察でも手を付ける問題でございます。この規定を置きましたのは一応文官と武官との間の関係におきまして、武官と申しますと語弊がありますが、制服を着ております部隊に属する警務官が、制服を着ておらない内局の職員に捜査の手を伸ばすについては、一応長官の承認を得るようにという規定にほかならないと存じます。
  124. 亀田得治

    ○亀田得治君 この自衛隊法の基本法によりますと、警務官にはそういう捜査権というものが与えられるわけですね、法律上……。その与えられた捜査権というものを、政令によつて、今御説明なつたようなことをすることは、これは捜査権に対する一種の制限ですよ。そういう制限上どうしても自衛隊というものの性格上必要だというのであれば、この自衛隊法の中にそのことをやはり規定すべきですよ。これは何でしよう、ほかの一般の、例えば大臣の起訴とか、国会議員の逮捕とか、どんなことだつで、これは全部そういうことは法律上明記されているのです。だからそれが必要があるなしという問題よりも、どうしてもそういうことをしなければならんというのなら、そういうことは政令に委任すべきじやない、九十六条の中にそのことを明確にしておくべきなんです。そうすると国会としては、果してそういう一体犯罪があつた場合に、捜査に着手するという場合に、例外的にそういう承認権というものを誰かに持たすようなことをしていいかどうか、こういうことが必ず論議の対象になるのですよ。ところがこの法律の成文にはそういうことが少しも書いてない。従つてこれは質問しなければわからなかつたことなんですが、私は甚だその点そういうことを、政令できめるということは行過ぎだと思います。そういうふうに私は考えますが、どうお考えですか。
  125. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) これは他を排除いたしまして司法警察の権限を持たすという規定ではないと存じます。即ち目的が部内の秩序維持にあるのでございまして、それを部内秩序維持の目的に副うように政令を以ちまして制限いたしましても私は目的に反しないと思うのでございますが、殊に一般の司法警察の枠外になつて治外法権という意味になるわけではないのでございましてただ部内の秩序維持に専従するという、部内秩序維持ということを目的として置くのでございますから、こういうような政令を以て除外いたしますことは差支えないと存ずるのであります。
  126. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは大変な間違いですよ、そういう考えは……。これは飽くまでも今の制度の下においてはこれは例外的な措置なんですから、こういうことは……。併し自衛隊の組織上どうしても長官の承認ということをとるようにしたいということなら、それは法律の上で、そのことを明確にしておくべきだというので、法律上与えられた権限を政令によつてしぼる、結果はそういうことになりますよ。勿論今の警察官も何か今の説明によりますと捜査権があるんだ、二重にあるんだ、そういう意味ではダブつているんだから、若しこつちのほうが承認をしないでどうも放たらかしとなるという場合には、一般の警察のほうが調べていいんだ、どうもこういうふうな御説明のようですが、それは実際問題としてはそういうことは不適当でしよう。警務官がその被疑者の近くにいてよく事情がわかつているから、そういう人に調べさせたほうがいいのじやないかということで、これは法律が認めているわけですからね。初めからこちらが自衛隊内部でそういう捜査をやらないという場合は、一般の警察が来てもいいんだというふうなことを認めるような気持であれは、これは初めから一切を一般の警察に実は任したほうがいいんですよ。それでは不適当だからというので、こういう特別の捜査機関を出して来ているわけでしよう。だからその際に一般の警察も権限は全然消滅しているんじやないのだから、こちらは少し特殊な扱いをしても差支えないじやないか、こういう議論は私は成り立たんと思います。それは自己否定ですよ。一般の警察がそういうふうに入つて来るということを認めるということは……、私はこういう制度ができる以上は、この警務官制度というものが間違いなくやはり職務を遂行してもらうということでなければならんと思います。そんな面から言つても政令によるこの捜査権の制限、これは私違法だと思うんですがね。法制局長官どうお考えですか。
  127. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今のお話の一部御尤もと拝承したのですが、要するにこの警務官というものを置きますのは、第一義的には今のお言葉にあつた部内の身近かなところのことをよく知つているからというわけで、制服職員の関係内部秩序維持ということを第一義的の任務として置いた。そこでそういうものがそこに置いてあるのでありますからして、そのほかの仕事もやらしてもいいだろうということで、一応普通の司法警察職員としての仕事がもう少しそれにかぶつている。併しそのいずれについても普通の司法警察職員の権限を決して排除するものではないので、それは当然重複してかぶつている、これは官房長の言う通りであります。そこで今の政令できめようというのは、その普通の警察職員も他にあることだから、普通の警察職員にやらしてもいいようなことまでもそれを押しのけて、それと競り合つてこつちも出しやばつて行くということをコントロールしようということはこれはあつていいことだと思います。そういうことは政令にきめられる、その趣旨にすべて連なつていることと了解願つていいことと思います。
  128. 亀田得治

    ○亀田得治君 法制局長官はなかなか善意にこう解釈されるわけですが、そういうふうにまあ運用される場合もあるし、非常に悪用される場合も考えられるわけですね。いろいろそこで長官が承認を与えるということらしいですから、長官の一つ率直な気持をこの際聞いたほうがもう少しこの質疑が進むと思いますが、例えばですね、長官の非常にこう信頼しているといいますか、非常にかわいがつておる部下、相当上級の、これが何か悪いことをやつた、そういう場合にこれはあり得ることなんですから……。警務官がどうもあいつは我々の保安隊の面汚しだ、こいつは調べなければいかんということで捜査に着手しようとする。そういう場合にあなたの承認をこれはまあ求めて来るわけだ。長官のその際における態度というものはこれはもう実に大事だと思うのです。これは一歩誤れば午前中からも問題になつておりましたああいう綱紀の粛正というようなことをどれだけ言つても駄目だ。これはたびたび引合いに出して恐縮ですが、検察庁法十四条の濫用、こういうことを我々見せつけられた直後ですからね。質的にはもつとそれよりも小さな問題でしよう。そうずると木村保安庁長官の時代にはまあ或いはそういうことはないかも知れませんが、やはり長官が変つたような場合に、どうもあいつを調べられたりなんかしちや、第一俺の立場が悪くなつて来るというふうなことで、抑えられるような場合がどうも予想される、そういうことについて長官はどういうふうにお考えになつておるのです。取扱いを一歩誤れば大変なことになる。
  129. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) この自衛隊法九十六条の規定は、決して一般の司法権活動を制約した意味ではありません。全面的に司法権の活動を許容されておるものであります。即ち自衛隊及び内局において犯罪ありとするならば、これは一般司法権が自由に活動できるのであります。何らの制約は受けません。独自の司法権の活動を許されておるのであります。ただ、この警務官制度を設けたのは、主として自衛隊内部における規律の保持であります。十一万、現在十一万の保安隊、将来十三万になるのでありまするが、これらの部内規律を守るためにこの制度を設けたわけであります。而して主としてこれを秩序維持の任に当るものは制服を着ておるのであります。その制服を着ておる人間が制服を着ていない内部部局に対して、これは捜査の手を伸ばすためには、一応長官の承認を得る。部隊内においては自由轄達にできるわけであります。何らの制約は受けません。併したまたま内部部局、制服を着ていない向きに対しては、その直轄長官である長官の承認を一応受けるということになつておるわけであります。それは要するに実施部隊でありまする部隊と政策面の運用を司つておりまするいわゆる平服、背広を着ている間の摩擦を防ぐためには私は必要であろうと考えます。そういうことはあり得ないことでありまするが、制服のほうから平服のほうに対して、いろいろ捜査の面について勝手なことをされるということであつては相ならん、そういう捜査をするという場合には一応長官の承認を受けるという建前をとつておるわけであります。長官といたしましても内部部局においていやしくもさような犯罪者があつて、実施部隊のほうのいわゆる警備隊員が捜査したいという場合にこれは許すことは原則であります。併しその間に何らかの因縁、情実、或いは悪意を持つてやるというようなことはないと私は信じておりまするが、たまたまあるような場合には、長官はよくその間の事情を見て、その許否を判断するということが私は望ましいと考えます。而してその間においても普通の司法権の活動は亳も制約を受けるわけではありません。自由轄達に捜査はできるわけであります。長官の意思如何にかかわらず、できるわけであります。その間の調節ということは十分に私はとり得るものであると確信しております。
  130. 亀田得治

    ○亀田得治君 原則としてまあ長官としては承認を与えて行くというふうな考え方のようですが、それは正しいと思うのです。併しこの幾らか例外的に原則通り行かないものが出て来る。こういう場合はそういう形をとらなくとも、例えば検察庁に対して保安庁長官としての希望なり気持を参考に申述べておくとか、こういうことはできるわけですから、これはやはり犯罪があつたという以上は、これを捜査に着手するか、或いはそれを更に起訴するかどうか、そういつたようなことは、やはり検察官に任すべきじやないかと思うのです。で只今も御答弁の中で一般の捜査は俺のほうが若し承認しない場合でもやつてもらつていいんだ、こう言いますが、それは実際上はできないのです。できないからこれは問題になるのであつて、これは幸い法律じやないのですから、政令できめる事柄なんですから、そういう長官の承認にその点をかからしめるというような政令の制定については、これはもう少し慎重に考慮してもらいたい。同じくそういう何か、幾らかそれに類したものを政令できめるにしても、法律案関係考え、又、書き方もいろいろあろうと思うのです。さつきの官房長からお読みになつたようなああいう書き方では、明らかにこれは私政令としては出過ぎた捜査権の制限をやつたものだ、こう解釈いたしますので、この政令の制定についてその辺にもう少し考慮する余地があるかどうかお聞きをしたいと思います。官房長からでも結構ですが……。
  131. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) これは先ほどから繰り返し申上げたのですが、部内の秩序維持と書いてございますが、この意味部隊の秩序維持という意味でございまして、この防衛庁の職員というものは平服を着ておりまして、部隊の指揮統率の一員として入つておらないのであります。従いまして部隊の秩序維持に専従する者に、捜査の権限を全面的に与えるかどうかという点については、当初から疑問があつたようでございまして、むしろこの警察職員としての職務から全然外してしまおうじやないかという議論があつたのであります。併しながらやはり同じ防衛庁内における警務官でございますので、一応長官の承認ということの下に一般警察を排除しないのでございまするから、関連して出て参りまする犯罪については捜査をさしてもよいだろう、但し長官の承認ということを条件にしようではないか、こういうようなことでこの政令ができたのでございます。即ち一般人につきましては警察に任せる。それから部隊自体の隊員については全面的に司法警察の職務を行う。それから部隊に属しない平服を着ておりまする各省と同じような仕事をしておりまする職員については、ここに並べて書いてあります中に該当しないのでございますから、一応長官の承認を経て捜査に着手させるというような規定をいたしたのでございまして、部隊と私ども平服との間の関係から申しましても、現在の規定が適当ではないかと存じておるのでございます。
  132. 亀田得治

    ○亀田得治君 規定の内容自身も問題がありますが、そういう捜査権に対する制限の仕方をする場合には法律の中にそれを書いてもらいたい。これを私第一に実は要求しているんです。でこれは要求しておきますが、この政令の内容が若しすでに整備されておるものでありましたら御参考に頂きたいと思うのです。現在までの保安庁の施行令そのままで行くわけですか。或いはこの自衛隊法ができるときに関連して幾らか更にお変えになるわけですか、どうですか、その点……。
  133. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) その三カ条ありまするうち、七十二条は保安官、警備官というような規定でございますので、これは当然変えて行くと存じます。それから七十一条と只今問題になりましたこの長官の承認を経なければならないという規定は、大体現在のままで行くつもりでおります。
  134. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは現行法のままでは少しやはり不備があると思うのです。これはまあ一つ再考を願うように要求しておきます。  それから警務官が取扱う事件内容ですね、広さといいますか、この点について更に少しくお聞きしたいのですが、この第三号の「自衛隊の所有し、又は使用する施設又は物に対する犯罪」こういうことが第三番目に載つておるわけですね。これから行きますと、この自衛隊が持つておる武器に関する秘密保護を犯す犯罪ですね、これはこの三号によりまして警務官の捜査権の範囲のものに入つて来るように考えるのですが、当局の一つ考え方を先ず聞きたい。
  135. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この条文の目的が部内の秩序維持ということから規定されておりますので、先ほど申上げました通り防衛庁の施設外で行われたもの及び防衛秘密に関する法律違反、これは一般人につきましてはこの政令によりまして除外いたすつもりでございます。
  136. 亀田得治

    ○亀田得治君 たとえ防衛秘密に関する犯罪でありましても、政府によつて一般人のものは除外すると、こういうことのようですが、若し第九十六条の「政令で定めるものを除き、」と、こういう言葉がなくて、従つてそういう政令による除外が行われない場合には、第三号によりまして一般人の秘密保護法に関する犯罪というものは「自衛隊の所有し、又は使用する物に対する犯罪」として捜査の範囲に入つて来るわけですね。
  137. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 政令で除外いたさなければ、入つて来ると思います。
  138. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますと、結局一般人以外の人の秘密保護に関する犯罪、これだけがまあ本法との関連においてはここで捜査の対象になつて来る、こういうことなんですが、若しそうでありまするならば、私が希望するのは一般人の秘密保護事件警務官が取扱わない、そういうことを政令できめるのじやなしに、この法律でどうしてきめてもらえないかということなんだ。今この法律を作ろうとしているのでしよう、作ろうとしておるときに、一般人のそういう秘密保護に関する事件、例えば新聞記者がいろいろ取材活動をやつてそれが誤解を受けて起訴され、捜査される。そういつたようなものはもう除くのだということが、方針がはつきりしておるのであれば、政令に任ず必要はないのですよ。今ここで捜査権の範囲というものを自衛隊法第九十六条できめようとしておるわけなんですから、きめるときにあなたのほうの気持がきまつておるなら、この法律で除外してくれたほうがこの秘密保護法に関していろいろ関心を持つている人たちは安心をするわけです。そういうふうにしていいのじやないですか。
  139. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 御説御尤ものようでございますが、私はこの通りでいいと存じます。
  140. 亀田得治

    ○亀田得治君 御説御尤もならこれはその通りすべきなんです。こんな重大なことを、あとから政令で外すんだから、そつちは安心してくれというようなことにはちよつといきませんよ。そうしたら「政令で定めるものを除き、」というのは、そういう意味内容的に少しはつきりして参りましたが、次に第九十六条の第一項ですね。第一項の第一号の終りのほうですが、これが甚だ不明確なんですね。「その他隊員の職務に関し隊員以外の者の犯した犯罪」これは一体どういう犯罪の種類をお考えになつておるんです。甚だ言葉遣いが不明瞭なんですが。
  141. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) その条文に書いてあります通りのことでございまして隊員が職務に従事中、例えば歩哨といいますか、衛兵に立つてつたような場合に、これに対して傷害、暴行等の行為があるというような犯罪意味するものと思つております。
  142. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは職務に従事中の隊員に対する犯罪、こういうことではつきりしておるわけなんです。「その他隊員の職務に関し隊員以外の者の犯した犯罪」こう言うのですから、非常にぼやつとしてしまつて何から何まで何か言いがかりをつけられて憲兵みたいな調子で調べに来られる、こういうことが考えられますよ。あとのほうはこれは要らんことじやないですかね。今あなたの御説明によるようなことしか考えておられないならば、職務中の隊員に対する犯罪、これではつきりしている。歩哨に立つておるときに、真夜中に来てぼかつと横からなぐつてつた、これではつきりしている。それ以外に何かあるんですか。何か意味があつてお書きになつたんですか。
  143. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) あとのほうのその他隊員の職務に関し隊員以外のものの犯した犯罪の例といたしましては、涜職などもつてくると存じます。
  144. 亀田得治

    ○亀田得治君 収賄をした場合に、贈賄者側の業者とか、そういうものを考えておるわけですか。
  145. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) その通りでございます。
  146. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはそういうことまで予想して書かなければならないという実態というものは、私甚だ心外だと思うのですが、そういう御説明があれば一応そういうこともあり得るということもわかりますが、併しそういうことは自衛隊の直接の隊内の規律、こういう問題じやないのですから、むしろ規律に反する問題、派生的な問題、そんなことは一般の警察官に任しておいたらいいんじやないでしようか。例外的にこういう捜査領域というものを設けられた趣旨から言つても、そんな何も収賄に関する秩序維持なんということはあり得ない。刑事政策の上から言つても、自分ちの内部の者がそういう不正なことをやつた。それを内部の入が調べるというのはおかしいじやないですか。そういうものこそむしろ第三者に贈収賄のようなものは調べてもらつたほうが公明正大でいいんじやないのでしようかな。今贈収賄の設例を出されたから、私疑問を持つのですが、どうお考えですか。
  147. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 涜職、贈賄等は私ども最も部内秩序維持に重要な犯罪であると見ております。
  148. 亀田得治

    ○亀田得治君 併しこれは一般一つの特殊な団体の内部規律の問題じやなかろうと思うのです。これは普通ほかの官庁の場合でも、内部規律と言えばそんな涜職まで私は入つて来んと思います。勿論いいことじやないですよ。いいことじやないですけれども内部規律上特殊な取扱いを必要とする、これはいいことの目的のために考えられておることでしよう。涜職なんというのは逆じやないですか。成るほど職務に関した犯罪には違いないけれども、こういうことを特別の捜査をする内部の人に調べさすというのは私反対ですな。これは恐らく保安庁長官はそんなことまで気を付かれないでこういう条文が入つているのじやないかと思うのですけれども、今明らかになつたところによると、ああいう状態ですが、こういうものはお除きになつたほうが、たまたま保安庁の涜職なんかも起きていることだし、私は外部に対して却つていいんじやないでしようか。長官としてどうお考えですか。
  149. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私は実は保安庁において一番大きく考えておるのは、こういう涜職問題であります。申すまでもなく保安庁では相当の予算を持つて国民の血税からなるものを使うわけであります。いやしくもさような間にあつて不正があつてはならん、こういう考え根本に抱いております。従いましていやしくも外部の間にさような不正の事柄を絶滅する上においては、勿論先ほど申上げましたように、司法活動は当然のことでありますが、部内においてもこれと相呼応して十分の捜査を行うことが当然であると私は考えております。
  150. 亀田得治

    ○亀田得治君 保安庁長官が収賄の問題を何か非常に重点を置いてお考えになつておるというふうに言われたのですが、私はそれは少しおかしいんじやないかと思うのです。保安庁長官としては何と言つても隊の規律でしよう。そういう積極的な面が一番大事なことなんです。或いはその裏付けになるいろんな慰安設備とか、そういうことが私は重点だと思うのです。それが軌道に乗つて行くことによつてこういう派生的なことは整理されて行くわけでしよう。飽くまでも秩序維持ということなら、直接秩序維持に貢献するようなそういう範囲にこれは限定すべきです。間違つた方面の過ちを侵してそれを自分たちが捜査してこんなことは何も秩序維持上警務官が調べなければならないことじやないでしよう。いろいろ実際の勤務中に、自衛隊の若い者同士で何か殴り合いがあつたとか、こういつたような場合はこれは警務官が調べるのが私は適当だと思います。訓練とか、演習なんかのときの特殊な気持、状況なんかというものがあるわけです。そういう気持、状況というものは警務官の人がよくわかるわけだ。だからそういう人が調べて行く。そういう問題については一つの特殊性を主張できる根拠があるのです。でこの贈収賄というものは何のそういう特殊性があるのですか。こんなものはあなたは一般の捜査機関に当然任すべきです。又これは自衛隊法の審議をしておる内閣委員のほうに私ども要求することにいたしますが、これは一つ考えてもらいたい、こういうのは甚だ以て腑に落ちない。  それからもう一つ確かめておきますが、隊員の職務に関する犯罪の場合に収賄側は警務官が調べる、贈賄側は民間側ですね。これはどうなんですか。やはり「政令で定めるものを除く。」と、これによつて除いてもらえるのですか、どうか。丁度三号を政令によつて除く、先ほどおつしやつたような、それと同じように民間側の贈賄者のほうは警務官の捜査から除いてもらえるかどうか。
  151. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) この点につきましては研究いたしております。ただ贈収賄というのは一つ関連した犯罪でありますので、収賄側を警務官だけでやつて、贈賄側は一般警察に任すということは、実際の捜査の上において非常に困難な点がありはしないかというような点から研究いたしております。精神といたしましては御説明があつたかと思いますけれども、我々は部内の規律維持ということを中心に警務官の行動を考えておりますので、一般人に対する強制的な処分というようなことは、たとえこの法律によつて権限を認められておりましても、一般警察との協定によつて一般警察のほうにお願いするということにいたしたいと思つております。
  152. 亀田得治

    ○亀田得治君 こういう重大な問題について今なお研究中というのは甚だ私心外ですが、恐らく察するところ、研究の結果は大分出ておるが、質問者の希望するような結論がどうも出しにくいということは、はつきり言えば収賄側を調べるのだから贈賄側はたとえ民間人であつても俺のほうで調べる、こういう大体結論をお出しになつておるのじやないかと思う。そんなことを言うと、民間側の人は成るべく一般警察でやつてもらうつもりだと先ほどからおつしやつておる。それと少し矛盾する傾向があるものですから、どうもそこをぼやかしておるのじやないかと思うのですが、どうですか。未だに研究中なんですか、そういうことを……。
  153. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 方針としましては一般人の犯罪の捜査につきましては、一般警察にやつてもらう方針でおるのでありますが、この政令から除くかどうかというところまではもう少し研究をしたいと思つておるのであります。政令から除くということは、権限を外すということになりますから、権限を外すというところまで行くほうがいいのか、或いは一般警察との協定によりましてそういう措置をするほうがいいのかという点について今研究中であります。
  154. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは私は第九十六条というものはとんでもない条文だと思つているのです。御質疑をして見れば見るほど……。ともかく人権に重大な関係のある捜査権限の問題ですね。これが政令によつて膨れたり縮んだり、そうして又この法律を一回も実行せぬうちから、第三号のごときはもう外して行くのだ、一般民間人については外して行くのだ。法律を実行せぬうちからそんなことを考えているのですから、私は大変な扱い方だと思う。もう少し、これは人権に重大な関係のある問題なんですから、確信のある厳密な態度を以て臨んでもらわないといけないと思う。  それから次に第一号の中に、やはりここでお尋ねしてみたいのは、学生或いは訓練招集を受けて一時的にやつて来た予備自衛官、こういうものが捜査の対象になつている。これはまあ旧軍隊の場合にはどういうふうになつていたのか、私よく軍隊のことを知りませんが、これはほんの一時的にちよつと自衛隊の社会に入つて来るだけなんですね。じきにこれは一般人になるのです。むしろ一般人の延長なんですね。僅か一月や二月ほかへ行つたつて一般人の性格というものは少しも変らないわけでしよう。こういう者までどうして含める必要があるのか。例えば訓練招集に応じている予備自衛官というのは、これは具体的には何カ月くらいその隊生活というものをやるのですか。こういう点少し御説明つたほうが、私の認識も少し深まるかと思います。
  155. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) これは自衛隊法の七十一条を御覧頂きたいのでありますが、七十一条によりますと、予備自衛官は年に二回以内、一年を通じて二十日を超えない期間内において訓練をする。この訓練をいたします際におきまして、七十一条の第五項でありますが、「第一項の訓練招集命令により招集された予備自衛官は、その招集されている期間中、総理府令で定めるところに従い、長官が指定する場所に居住して、訓練に従事するものとする。」こういうふうに規定しておるのでございます。大体考えられますのは、一般の隊員が入つておりますキヤンプに、駐屯地に収容いたしまして、そこで訓練をするということになりまするので、隊の規律等の関係等から考えまして、この訓練招集に応じて長官の定める施設に居住しております間は、隊員と同様に警務官の権限のうちに入れたい、こういう趣旨でございます。
  156. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ隊の生活をするわけですから、隊員としての一般的な規律、訓練に従う、これは勿論当然私どもも了解できる。ただこの犯罪の捜査というやつは、これは日本法律上でもやはり特殊な領域を持つておるのですね。それに対する例外というわけですから、私どもここで厳密でなければならないと、そういう気持で聞くのです。それで今御説明によりますと、この予備自衛官の訓練というのは、年に二回、而も二回を合計して一年間に二十日というのですから、まあ一回一週間程度ですね、こういう僅かなものに対して私捜査権まで特別認める必要はなかろうと思うのですね。こんな必要がありますか。そんな一週間程度で悪いことをしたら、すぐそのことを警察にちやんと連絡をとつて、すぐ処理したらいいじやないですか。社会人なんですから……。もう隊員というよりもこれは社会人ですよ、一週間程度ちよつと隊の生活をするというのは……。それで何か不都合がありますか。
  157. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) これは一年を通じて二週間でありまするが、隊の施設に入れまして教育訓練をするのでありまして、その隊につきましては警務官という者が隊員についての犯罪捜査の権限を持つておるわけであります。生活の態様が一般の隊員と同様なのでありまして、社会人であるかどうかということは、別にいたしましても、私はやはり自衛隊のほうの立場から見ますると、そのほうが必要であろう、こう思うのでございます。
  158. 青木一男

    ○青木一男君 亀田さんの御質疑、私別に妨害するわけじやないのですが、ほかの法案に入つてはきりがないと思うのです。やはり本法関係のある点だけについて御質疑願いたいという希望を持つております。
  159. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 私も同様に考えております。
  160. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは私何もほかの法案をやつているつもりじやないのです。秘密保護法が提案されたときに、これが延長となつてそうしてこの特別裁判所の問題、そういつたようなものが非常に世人のやはり誤解を招いておるわけです。私はそういう立場で聞いているのです。だから先ほどからいろいろ質疑をして見ると、必要以上に捜査権というものが私拡がつておると思うのです、具体的に……。私はこれは重大な問題だと思うのですよ。そういうことが一つの固定的な事実としてここに固まつて参りますと、これが次に特別裁判所の問題に発展する危険性が生じて来るでしよう。私はそういうことはしてもらいたくないから、必要のないものならこれは捜査権の範囲から除いてもらいたい。単に自衛隊秘密保護を侵す、そういうことだけでなくて、そういう気持で実は聞いておるのです。だから決してそういう無関係なことを私こんな力を入れて聞くつもりはないのです。
  161. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 関連して……秘密保護法の関係一般の人が自衛隊警務官という人に取調べを受けるというふうなことが起つて来ては、これは大変だと、我々はまあ戦慄するのです。元の憲兵と同じようなものなんです。それをどうして政令に譲られて、この法律に明記されなかつたのか。その点については非常な疑惑を今抱くので、御説明を伺つておきたい。なぜそういうことを法律に明記されないで、政令に譲られるのですか。
  162. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 一応私からお答えしますが、憲兵々々とおつしやいますけれども、その大前提が私は問題であると思います。この警務官というものが人権蹂躙を常に行うものである、そういう性格のものであるということを前提にするならば、そういう警務官を置くこと自身が私は問題であると思います。この自衛隊が、現在も保安庁法にありますが、そういうものでないことは勿論御承知の通りでありまして、これは性質においては丁度鉄道公安官とか、郵政監察官とか、そういうような特殊の司法警察職員がありますが、そういうものとどこから見ても法律的に見ても違つていない。権限から見ても……。そういう点からいたしますと、この政令云々の問題は、むしろその人たちに扱わせる仕事の幅の問題であつて、普通の警察の職員との間に限界線をどう引くかということにとどまるので、むしろこれは技術的の問題ではないか。例えば人手が少いからうんとこれを政令で除外をしてしぼつておこうというようなことが、まあ理論的には主たる要素になることと思いますからして、そういう関係では鉄道公安官と普通の警察職員との縄張りをどうきめるか、或いは普通の司法警察官と郵政監察官との縄張りをどうきめるかということと同じ性格のものであると私はさように考えております。
  163. 亀田得治

    ○亀田得治君 警務官が第九十六条によつて捜査をする、最後は勿論これは検察官のほうにそれを渡すわけですが、先ほどからの質疑を通じて私感ずることは、この九十六条で書かれておるこういう広汎な権限というものを持つ警務官は必要ないじやないかと思うのです。むしろ一般の警察官の捜査権というものをもう少し明確にして、明確にしてというのは、こういう自衛隊の中に対しても一般の捜査権がある、その点を明確にして、そしてそれに対して……、併しこういう特殊な施設でありますから、不便があるんですね。幾らか……。だからその不便を自衛隊のほうとしては積極的に御援助申上げよう、こういうふうな立場でお作りになれば、大した弊害もないし、実際上又それで済んで行くんじやないかと思うのです。そういうふうな考え方でこの警務官制度というものを考えられませんか。そうすれば、この捜査機関が二元的になつて来るような心配はないんです。
  164. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私は亀田君のおつしやることは、この法案の目指すところと同じであると思う。一般司法権の活動はこの法案によつて少しも制約しないのであります。大前提がそこにある。ただ部内での秩序維持のために警務官制度を設ける。そうしてその対象となる犯罪、目的がどこにあるかということを明確にしておるのです。これであなたのおつしやることはこの法案によつて私は明確になつていると思う。
  165. 亀田得治

    ○亀田得治君 実際問題としてはそれは逆になつて来ますよ、こういう特殊な捜査権を持つたものが出て来れば……。これはもう二重組織になるにきまつているのです。而も先ほどから申上げたように非常に不必要に広いですね。政令で除外することまでその権限に入れてある。じやその政令はお作りなるという予定のようですが、何かの都合でこの政令を作られなかつたらどうするのですか。内閣というものは何も永久のものじやないんです。内閣は潰れたつて法律は残つて行くんですからね。政令は内閣総理大臣がやるんです。事志と違つて、例えば民間人の秘密保護法の犯罪なんかは政令で除外する、こういう方針のようですが、それが実行できなかつたらどうするのです。そういう場合どういう責任をこの法案をお作りになつた方はとりますか。責任をとるといつたつてとりようがないでしよう。それほど明確に方針がきまつておるものなら、この法律の中でそのことを明かにしておいてもらえば、秘密保護法に関して心配している人たちの疑念が一つ晴れるわけなんです。その点は官房長は理論的には私の質問に対して御尤もだというふうなことを先ほどおつしやつてつたのですが、どうも割り切れないですね。私ども国会で質疑応答するには、やはりいろいろ心配して調べるべきものは調べて我々はやつているのですよ。だから質疑応答の途中で、誰がやつたつてそれは間違いはあるのですから、そういうことが明確になつて来れば、じやそこを改めて行くとか何とか明確にしてもらうことが、やはりこういう質疑応答の前提にある考え方だと思うのです。法案全部を否定するとか何とか、これは各党によつてつた大きな別個の立場ですが、具体的な個々のことについてはいろいろあるですよ。お互いの考え違いとか、そういう点は私は直すべきものはあつさりと直してもらいたい、そういう希望をどうしてもこの問題については持つ。私も法律家ですから、こういうことを簡単に見逃すわけには行かないです。御訂正になる御意思はないですか。
  166. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 御尤もと申上げて全面的に賛成を申上げておるようにおとりになりましたが、そういう意味じやございませんので、私どもといたしましては、この政令によつて除外することでいいと考えております。
  167. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 さつき法制局長官一般の他の郵便なり何なりの場合と同じように仰しやいましたが、違いますよ、それは……。ここで言う防衛秘密というものについて憲法上の疑義があるのです。ですから明瞭に防衛秘密に関して、今防衛秘密保護法案についても国民が心配しておる。それから又警務官というものについても、これが憲兵になるのじやないかというふうに心配しておる。而も日本には憲兵の恐るべき伝統があつて、それがまだ払拭されておるとは必ずしもあなただつて断言することはできないでしよう。そういう国民の不安というものに対しては、やはり法律の上でちやんとやつて行くのが当然です。今亀田君が仰しやつたように、何かの都合でこの政令が出なかつたら、この法律が動いて、防衛秘密というまだ確定していない憲法上疑義のある問題について一般の人が制服を着た人に取締られる、それであなたは差支えないとお考えになりますか。あなたはそうお考えになつておるのだつたら大変なことだと思う。さつき占領時代にアメリカ軍が言わなくてもいいようなことを入れることを命じたというようなことを言われたが、伴し私はそういう説明をされるところにも甚だ納得できないものがある。なぜならば、言わなくたつてわかり切つたようなことが日本では今までわかられていなかつたことが非常に多い。現に戦争中に日本のやつた裁判を再審査されて法律で認めなければならないような恥かしい思いを我々はしておるじやないですか。而もそれが何に関係しておるかと言えば、曾ての軍機保護法、或いは国防保安法に関連しておる。全部そうである。だからこの問題についても人権の尊重ということを特にしなければならない。国会がそういうことに関心を持つということは当然だと思う。だから私は言わなくたつていいことじやない。言うべきことだ。だから防衛秘密に関することは法律の上で明記すべきだ。だから私はさつきの御答弁ではどうも満足できない。
  168. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ九十六条の問題はこの程度で一応私中止しておきますが、私は先ほど自分としてはこれは非常に心配になる条文であるが、故にこれをお聞きしていたんですが、一部の委員の方から、何か要らん質問しておるような意味の発言があつて、甚だ心外だと思つておる。この秘密保護法が本会に上程された場合にも、あのときの会議録は私今持つておりませんが、殆んど各党の方がこれと軍法会議等との関係についてやはり心配をして質問をされておるわけなんです。私はそういう立場から自分としてもこれを聞いておるのです。それを聞く際に、民間人の秘密保護違反事件警務官が調べるつもりか、調べるつもりでないか、こんなことだけを聞いたのでは、そんな調べるつもりはありません。これだけの答えでしよう。そういうことで国会議員が一体満足できますか。制度そのものを、九十六条を分析して見て、初めて警務官制度内容というものはわかるのでしよう。そういう警務官制度の下においてならこの機密保護違反事件を取扱つて一体どうか、こういうことの判断が出て来るのでしよう。私としてはこの委員会で初めてこの警務官制度というものを質問している。何も二重、三重に質問しているのと違います。自分としてまとめて今日発言をしている。そういうことに対して、政府の方が言われるならなんですが、議員自身の方がそういうことを言われるのは、私はお互い議員同士として非常に心外です。
  169. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 一つ御進行を願います。
  170. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから次に、まあ私は問題点を少し問題ごとに集めて集約したものですから、質問が何か少ししつこいような印象を与えるかも知れない。併しこれは重複を避けるためにやつておる、一切問題を事項別に……。だからそれは委員長のほうでもそのつもりで一つお聞きとりを願いたい。その代り議事録を御覧になつてもわかると思うのですが、そんなに滅多に同じことを繰返しておらないつもりです。  それから次に問題は、やはり本法案関連して問題になりました政治犯罪並びに裁判の公開の問題です。私はこれは本会議でも随分究明したのですが、犬養法務大臣の答えが極めてあいまいであつた。私の結論を先に申上げますと、こういう秘密保護法に関する裁判というものは一切公開である、現在の憲法制度の下から言つても公開である、こういう実は結論を持つているのです。併し、そういう結論を初めから出したつて、単なる水掛け論ですから、そういう結論を、自分が持つておる過程を少し御了承を願えるような形で論議を進めたいと思う。先ず最初政府の見解をお聞きしますが、憲法の八十二条で裁判の公開の原則を明確にし、但し非公開にする場合、この場合には裁判官全員一致の決議で公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合と、こうなつておるのですが、この公の秩序並びに善良の風俗、この解釈をどのようにお考えになつておるかを聞きたいのです。開きたい要点は、公の秩序、善良の風俗といつたような一般的な概念を出しますと、非常にこの解釈の仕方によつては範囲が拡がるのですね。私は憲法がこの際に要求しておる、憲法考えておるこの言葉の使い方は、そういう抽象的な一般的な概念じやないというふうに考えておるのですが、これは法制局長官のほうが適当かと思いますが、御見解を聞きたいと思います。
  171. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御承知のこれに当る旧憲法の条文としては、安寧秩序又は風俗を害する虞がある、こういうような表現をしておるわけでありますが、その趣旨と、これは言葉は少し変つ言葉を使つておりますけれども、同じことであろうと思います。その具体的の事件々々について裁判官が判断をして、そうしてこれを公開でやることが秩序を害するという判断をして、全員一致できまれば非公開とするということであつて、まあ結局は具体的の個々の場合について判断されることであろうということでございます。
  172. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは具体的の個々の場合に判断するということは、これはもう裁判の性質上当然なことなんです。私どもが今こういう立法をしようとする場合に、それとの関連において我々の見解を明かにすることなんですから、それは裁判官が具体的に個々に明かにするでしようでは済まない。この点では旧憲法言葉の使い方のほうがもつと私はつきりしていたんじやないかと思うのです。新憲法では、公の秩序、善良の風俗、非常に漠然とした言い現わし方ですが、旧憲法では、安寧秩序、風俗を害する、同じようであるが、用語の使い方が相当直接的であり、具体的ですね。私のお尋ねしておることは、例えば公の秩序という場合に、或る一つ事件を公開でやつた場合に、それの事件の刺激を受けてそうして何か又公の秩序を紊すような内乱、騒擾なんかが起るとか、そういうことでなければならんと思うのですね。その具体的な繋りがなければいかん、心配される事柄との間に……。ただ一般的に、ああいう種類の犯罪はどうも公の秩序上面白くない、不適当だというふうなことでは済まないと思うのですね。それを公開でやれば、具体的にどういう公の秩序を紊す問題が起きて来るのか、こういう繋がりが必要だと思う。そうじやないとこの八十二条の概念というものに、これは非常に公開の原則をきめたことに反して来ると思う。そういう意味でお尋ねしておるのですが、その点どうでしよう。
  173. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) まあ根本はさようなことであろうと思います。
  174. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうしますと、秘密保護違反事件ですね、これは私裁判を公開にしてやつても、事柄の性質上今申上げたような公の秩序を直ちに紊して来る、こういう問題との繋がりは出て来ないと思う。これはどういうふうにお考えです。
  175. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これはこの法律案保護しておるような高度の秘密というものを暴露するということになりますと、これは公の秩序に関係があるというふうに考えております。
  176. 亀田得治

    ○亀田得治君 そこなんですよ、公の秩序に関係があるという程度でこの公開を停止できるというのであれば、非公開という裁判が非常に多くなつて来る虞れがある。関係という言葉を今あなたはお使いになつたが、関係程度ではないでしようが……。やはりこの秘密保護違反事件を公開でやれば、こういう具体的な秩序が紊れて来る、これがなければできない。関係がある……、関係と言えば直接的な関係、間接的な影響、非常に廻りくどいことになつて来ますが、そういう言い方だと非常に秘密裁判ということが多くなる危険性が考えられますが……。
  177. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 結局は裁判官の全員一致でありますから、裁判官を信頼するよりほかない。私がここで何とお答えしようと、裁判を左右することはできませんが、関係があると申しますのは、この法律案で明らかでありますように、害する虞がある、虞があるということが明らかになつております。そういうニユアンスをつけて、関係があるということを申上げたのであります。
  178. 亀田得治

    ○亀田得治君 憲法の条文にもありますように虞があるわけなんですね。虞があるということは関係があるということと非常に違うのですよ。虞があるということは、むしろ私この言葉は初めから持ち出したほうがよかつたかも知れない、具体的にこういう秩序紊乱の状況が予想される、だからこれはとめる、こうあるべきだと私確信しているのですが、もう一度その点……、そうでしよう。
  179. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) そう言われて見ますと、関係があるという言葉は余りいい言葉ではなかつたと反省いたします。従つて虞があるということに該当するというふうに訂正させて頂きたいと思います。
  180. 亀田得治

    ○亀田得治君 それで大体その裁判を非公開にする場合の条件ですね、これが具体的なものでなくちやいけないという点が明確になつていると思うのですが、そこで第二の点は同じく憲法八十二条第二項の但書以下ですね、これは絶対的に公開しなければならない場合をここで規定しているわけですね。こういう規定の置かれたことは、特に私から御説明申上げなくてもいいわけなんですが、この中で三つのことが書かれております。一つは政治犯罪です。もう一つは出版に関する犯罪、もう一つ憲法基本的人権に関する事柄が問題になつているような刑事事件、この三つです。この中で秘密保護法に一番関連のある問題は出版に関する犯罪、これが一つ大きな問題だと思つているのです。よく問題になつている新聞記者がこの法律で引つかかる。これは主として出版に関する犯罪、こういうことに憲法上は該当して来ると思うのですね。そうなると新聞によつて秘密を暴露したというふうな犯罪は絶対的な公開の範疇に入つてくると思うのです。そこで政府のほうの見解を聞きたいと思うのですが、ここに出版に関する犯罪言つている意味ですね、意味というのは例えば昔のようなああいう新聞紙法とか、出版法とか、直接出版に関する取締規定があつた。そういう場合にはその法規違反事件は当然これに入るでしようが、単にそういうものだけでなく普通の犯罪をも出版という手段によつて侵した、こういう場合にはやはり出版に関する犯罪になるというのが大体多数説のようであるし、私も憲法の規定はやはりそうだというふうに考えているのですが、これは非常に裁判の公開、非公開に関して分れ目になる点だと思いますので、政府考え方を明確にして欲しい。
  181. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやる通り学説が分れております。相対立する考え方があるのでありますが、私どもといたしましては団藤教授たちが言つているような説でありますが、たまたま出版の方法で犯罪が行われたというようなものが、すべてここに言う出版犯罪には入らないのじやないか、こういうように考えているわけであります。
  182. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう考え方は、併し少数ではないのですか。政府の今おつしやつたのは公的な解釈ですか、どうなんですか。
  183. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは私はとにかく法制局長官という職務でございますからして公的な解釈として実はお答えしたつもりでございます。これは多数少数ということになりますというと、よく調べたことはございません。併しまあ学説が多数少数で一体きまるものかどうか、これにも疑問がございますし、余りそういう点には深入りして調べたことはございませんけれども、私ども政府としては勿論裁判所を拘束するような力も何もありませんけれども、先ほどお答えしたようなつもりでおります。
  184. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうするとたまたま出版の方法によつて犯した犯罪は入らんのじやないか、こう言われるわけですね。そうするとこの憲法の出版に関する犯罪というのは非常に限定されて来ると思いますが、どういう範囲になりますか、もつと具体的に……。
  185. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほどのお言葉にありましたように、新聞紙法とか、出版法とかというものがすぐ連想されますが、伴し昔にあつた新聞紙法とか、出版法とかというようなものが、そのままの形で現在の憲法の下で容認できないことも、これもわかることであります。併しながら観念上の問題としては、憲法の容認される範囲内においてのそういう法制というものも考えられまずから、現に予約出版という形は残つているわけであります。さような意味でのものは、抽象的に想定されている、こういうふうに考えるわけであります。
  186. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう解釈から行きますと、出版に関する犯罪ということが適用される場合が非常に少くなるのですね。これは私憲法が制定された趣旨じやないのじやないか。やはり出版物そのもの、ほかの犯罪は例えば政治犯にしろ、基本的人権に関する問題を対象にしている事件にしろ、これは内容的な……、ところが出版の場合には、これは内容の如何にかかわらず、出版という手段自身がデモクラシイーを育てるためには非常に大事な問題なんであります。こういうところに私はこの出版に関する犯罪というやつを、特に内容の面からじやなしに、手段の面からこれを出して来た意味があるように思うのですが、そう解釈しますと、内容的にあなたがおつしやるような区別をつけることは、正しい解釈じやないように考える。若しそういうことであれば、国民基本的人権に関する問題は、そこで相当程度含まれるのじやないですか。基本的人権として表現の自由というものが認められているわけですから、そつちのほうででも含まれるわけです。だからたまたま出版の方法によつて犯したような犯罪までも、この出版に関する犯罪という中に入れなければ意味がないように思うのですよ、どうですか。
  187. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは本当に率直に申上げまして、再論立つと思います。而もその結論はここでいろいろと議論と申しては僣越でございますけれども、意見を述べあつても、結論のつくような性質の、水掛け論といいますか、むしろそれに近いような性質のものだと思います。かたがた八十二条の運用は先ほど来申しますように、これは裁判所が裁判所の責任においてすべての判定をするわけでございますからして、ここで政府の意見だと言つて、そう力んで私は強く申上げようというつもりはございません。
  188. 亀田得治

    ○亀田得治君 重要な問題で裁判所、裁判所ということを言われるのですが、そんなこと言えばこの秘密保護法全部だつてこれは裁判所が適用するわけなんです。ただ、これを適用する前に、立法者がこの法案それ自身をどう考えておるか、或いは又それに関連して起る秘密裁判等の関係なり、或いは自衛官との関係なんかをどう考えておるか、こういうことが関心の中心になつておるから実はこれをやつている。裁判所と言いますが、裁判所にしたつて重要な問題になれば、これは国会で立案されたときに、それに関連してどういう質疑が委員の間でなされたか。重要な問題になれば、必ず裁判所だつてお調べに私はなると思うのです。決して裁判所だつて独断的に決定されるわけではないのですから、立法者の意思、考え方というものは非常に尊重されるわけです。だから重大な最高の審議をやつているときに、裁判所の考えというようなことを出されたり、そういうことは私は余分だと思う、これに限りませんがね。……だからそういうことじやなしに、私どもがなかなか結論が出しにくい、困難な問題は困難な問題としてやはりここで論じておくべきなんです。それがどういうあとで効果が出て来るかも知れない。そういうつもりでやつてもらいたい。  それから先だつて一松さんからも御質問があつたようですが、第一の政治犯罪ですね。これに対する政府考え方は、例えばこの法律の第三条の第一号なんかに関連して政府が出しておる考え方を想像いたしますと、いわゆる政治犯の区別として客観説、主観説二つありますが、政府が大体考えておるのは主観説的な立場でお考えになつておるようにも感ぜられるのですが、これはどういうことなんです。或いはそう割切つておらない問題かも知れませんが、少し御説明頂きたいと思います。
  189. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ちよつと弁明申上げておきますが、この法案の全体だつて同じだとおつしやいますけれども、それはこういう提案をこちらで申上げて、これを、この法律案法律にして頂きたいということで国会の御制定をお願いしておる我々の立場としては、この案文はかような趣旨でございますということで、秘密保護法案説明をすることは、これは当然でございましてこの秘密保護法案自体についてこれは裁判所がきめることでございますからと言つた覚えはございません。その点だけはよく弁解させて頂きます。  ところで今お尋ねの問題でございますが、これは一松先生の御質疑がありましてお答えしました。これも非常にむずかしい問題であるということを前置きしてのことであつたのですが、これについてもやはりいろいろな考え方があると思いますが、私どもとしては先回お答え申上げたように内乱罪或いは昔の治安維持法の犯罪でございますか、そういうふうに構成要件そのものの中に、政治的色彩が現われておるというようなことが中心であろうというように考えておるわけであります。そこで今度の、今お言葉にありましたような三条の第一号はどうであるかということも申述べたのでありますが、第一号の前段のほうの目的がかぶつておる目的罪ということになると、これは政治犯罪と見られる可能性が相当濃厚である、こういうことをお答えしたのであります。
  190. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますと、例えば一つの政党の立場なり、政治的な目的を実現しようという気持から殺人をやつたというようなのは、これはここで言う政治犯には入らない、そういう御見解ですか。
  191. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の申上げるのはその趣旨であります。入らないという趣旨を申上げたのであります。
  192. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、そういう立場でお考えになつておるといたしますと、これはすでに一松さんの質問お答えになつておるのかも知れませんが、私は質疑の関係上もう一度お答え願いたいのですが、そういう見解であれば客観的に罪質によつてきまるわけですから、従つて現在の犯罪類型から言つて、どれとどれとどれをお考えになつておるのか。
  193. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 内乱罪のごときは先ず典型的なものと考えます。乏しい知識でありますから、それ以外のものを余り詳しくここで尽し得ませんが、先ほど触れましたように、この第三条第一号の前段のごときはよほどそれに近いというふうに考えております。
  194. 亀田得治

    ○亀田得治君 客観的に政治犯罪がきまつておるという場合に、内乱、外患或いは第三条の第一号なんかもそれに近いというふうに言われるわけですが、そういう罪質を選択される基本的な立場、考え方、これはどこに置いておられるわけですか。
  195. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは私の考えとしては、先ほど触れました「出版に関する犯罪」ともやはり共通な基準になるわけでありますが、これはたまたまその例にお出しになりましたように、政治目的で殺人罪を犯した、政治目的で何をやつたということで行きますと、けじめが実際つき得ないわけであります。出版においても、たまたま出版の形をとつた犯罪ということが全部含まれるということになりますると、非常に限界があいまいになつて来る。憲法の解釈としてはやはりはつきりしたものをここで想定して挙げておるに違いないということを、極めて単純な考え方でありますけれども、そういう基準を立てないとすつきりしたお答えができないのではないか、そういう立場でございます。
  196. 亀田得治

    ○亀田得治君 私の質問したのは、客観的にそういう目的を除外して犯罪の種類によつてこれはきめられるべきだと、こうおつしやるのですが、その犯罪の種類を如何なる基準によつて選ばれたのか、それを聞きたいわけなんです。
  197. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その基準だと申されるのですが、とにかく政治犯罪、出版に関する犯罪ということの枠をつけて参りますについては、その犯罪の構成要件といいますか何か知りませんが、そういうもの自体が客観的に政治的色彩というものがあるというもの、それを指すのだと、こういうふうに思います。
  198. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは佐藤さんが政治犯罪というものを判断する場合に、犯人の主観的な要素というものを取入れて来る場合には別個なんですが、そうでなしに、客観的にきまる、こうあなたがおつしやつておるから、私聞くわけなんです。それでは客観的にきまるというなら、内乱とか外患の罪、これは当然誰でも考えるでしよう。併しそのことは常識です。ところがその中間のような罪質というものがあるわけでしよう。例えば騒擾、これは内乱ではない、はつきりした目的というものは持つておりません。騒擾、騒擾の中にも法律で区別しておるようにいろいろな種類がある、これは窃盗とか詐欺なんかとは違うことはわかる。併し直ちに内乱、外患と同じように言えるかどうか私は非常に疑問だと思つております。そこであなたが客観的にこれはきまると言うが、その客観的にこれを選び出す根拠はどこにあるのか。例えば国の基本的な政治組織を侵害する、こういうふうな種類の犯罪だとか、私はそれでも極めてあいまいな点があると思うのですが、やはりそういう根拠を持つてあなたがいろいろな犯罪を選ぶわけでしよう。それをお聞きするわけです。
  199. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 政治に対する影響そのものをその犯罪行為の中に必然の要素として含んでおるというような言い方をしたらどうかと思うのでありますが、先ほどの騒擾の例等は結局言葉を換えて言えば、殺人の場合でも同じであるし、政治的目的を持つて人を殺した場合、政治的目的を持つて騒擾を行なつた場合というような、そういうものは本質的の要素にはとにかく刑法上は入つておりませんから、それは勿論除外するということにしておけば、その限界線ははつきり引けるのじやないかという、こういう気持でおるわけであります。
  200. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうするとあなたの見解で行くと、今の刑法から行くならば内乱、外患、国交そのほかにあるのですか。
  201. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今お挙げになつたようなところだろうと思います。
  202. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは憲法に基いていろいろ行動しなければならない政府としては、これはもつと明確にしておかるべき問題だろうと思うのです。併しその程度で一応承わつておきましよう。  それから「第三章で保障する国民の権利」が問題となつておる事件、これは具体的に申上げますと、例えば秘密保護違反事件で、その際に検察官のほうは保護違反として起訴するでしよう。被告人のほうはこれは憲法上の表現の自由に関する問題、そういうところから検察官の主張に対して争つておるような場合、そういう場合には私確実にこの条項に当てはまると思うのですが、これはどうでしようか。
  203. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それが一番私はむずかしい問題だろうと思います。第三竜において保障する国民の権利という言葉の先ず第一に読み方の問題ですが、一体憲法第三章で保障する云々というのは、第三章の条文の表に列挙されているものだけに限るのか、第三章のたまたま条文には出ていなくても、睡眠の自由とか、或いは結婚の自由とかいろいろな基本的人権に当るようなものはあると思うわけですが、そういうものまでもここで言つているのかということが先決問題だろうと思います。私は明治憲法とは違つてれこの第三章というものはたまたま第三章の条文の表に出て来たものだけが保障されているものとは考えておりません。従つてあらゆる基本的人権というもの、あらゆる自由というものが一応幅広く第三章によつて保障されるというように考えておりますからして、ますます問題になるわけです。そこでそれをつきつめて行きますと、訴訟事件になるようなことはすべて権利義務の関係のことでありますから、およそ国民の権利義務に関係のあることはここで公開されなければならない、絶対の公開でなければならない。そういうことになつております。そうすると八十三条の前段にある先ほどお言葉にありましたような秩序、善良の風俗というようなものに反する場合に公開しないことができるという条文も全然これはナンセンスである。そこでどういうふうに限界をつけるべきか、丁度ここに木村国務大臣がおられますから申上げますが、憲法のできますときに貴族院の速記録を見ますると、牧野英一先生が第三章で云々という、これは全部公開にしなければならんということになると、非常にナンセンスだと思うがどういうことかと質問をされまして、木村国務大臣は、さような広い意味でこの規定が適用になるという解釈はとつておらないということを言つておられるわけです。できたときからそういう趣旨でできておるわけでありますが、さてそれではどういう場合が一体公開になるかということになつて参りますと、これは甲論乙説それこそいろいろな考え方があると思いますけれども、一応私ども考えておりますところは、例えば或る法律そのものが違憲の疑いがある。即ち刑罰をきめておる法律自身が違憲の疑いがあるというような場合、それが即ち基本的人権を侵しておるような疑いがあるというような問題か起つて、その効力が問題になつたというような場合には、明瞭にこれは第八十二条によつて絶対に公開しなければならんのであるということは良い得るのであるますけれども、たまたま或る事件の事実の審理の結果、これが純粋の行為がそういう法律の或いは罰則なら罰則に当るかどうかというその認定をして、その認定の結果が国民の権利に重大な関係があるというような、そういう場合はここで含んではおらない、そういうことを含めて考えるというと、先ほど触れましたようにこの前段の規定が全然ナンセンスになつて来るわけであります。併しながらそういうことは申しますけれども、これは率直に申上げましてどういうところにはつきりした線を引き得るものかどうか、これはむしろ亀田委員にお教えを受けたほうが利口ではないか、かように考えておるわけであります。
  204. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはお教えというようなことではなしに、これは実際ややこしくてわからんですよ。木村長官憲法を作られる当時相当関係があつたと思うのですが、一体これはどういうふうな考え方なんですか。今佐藤長官の実際説明された通りで、非常にこれを広く解釈すればもう全部が公開、この一事だけで……、伴し狭く解釈するとしてもどのように一体狭く解釈するのか。
  205. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 実は憲法制定のときに非常にそれは問題になつたのであります。我々といたしましても率直に申して公権的の解釈はできん。問題が起ればこれはもういたし方ない。最高裁判所の判断に待つべきものだということであります。
  206. 亀田得治

    ○亀田得治君 法律をお作りになる方がそのようなことを言われたのでは、全く私どもあとから読むものがわからないのは当り前なんです。それで要するに八十二条の二項、これは二つの面から公開の問題を取扱つておると思うのであります。一つはこうこうこういう場合には公開をとめれる、但しこの三つの場合には公開しなければならない、こうなつておるわけです。それでその両方の面から秘密保護違反事件のことを考えて見ますると、公開を禁止するための公の秩序善良の風俗を害する虞、こういう問題は先ほど明らかになつたようにこれは抽象的なものであつてはいけない、具体的にそういう結果が予想されなければいけない、こういうことが制限の面の条件として言われる。それからもう一つは絶対的に公開しなければならないというこの三つの条件ですね。これを考えて見ますると秘密保護事件は或いは出版、或いは基本的人権、或いは政治犯といつたようなどれかを活用しますと大体どれかに入るのじやないか、こういうふうな感じがする。そういたしますとおよそ秘密保護法の違反事件というものは、もう大部分が十中八、九これは公開で行くべきものだ、こういう結論を大胆に出していいのではないか、こう考えるのであります。これは私本会議における答弁では不満足だと言いますのは、当時犬養法務大臣は、何回委員の方が質問をされましても、その点をはつきり言われない。非公開のこともある、それは裁判所がきめるのだ、そういうことで絶えず逃げられるのですが、私は一般事件に比較したならば、これは明らかに十中八、九公開にして行くべきものだ、こういうことが性格上言えると思うのです。事件並びにこの憲法の規定の性格上そのことだけは断定しておいていいと思うのです。一般事件以上にこれは公開性を持つたものだ、これだけは言える。絶対公開するとうことになると、それは又少し言いよどむ点も政府側として出るようですが今私が申上げた程度の断言は、この際していいのではないかと考えるのですが如何ですか。
  207. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど私が申述べましたように、例えば三条の一項の一号の前段の犯罪は政治犯罪になりましようというようなこと正しいとしますと、少くともそういう関係においては、公開の場合が普通の場合よりは、それより広いことは申上げ得ることだと思います。
  208. 亀田得治

    ○亀田得治君 私はもう少し基本的な角度より御質問したのですがどうも佐藤さんはそういう場合になると自分の言いやすいところだけすつとうまく言つて避けられるのですが、いろいろな事態を考えられて、お互いに明らかにするためには、法制局長官個人考えとしてでもいいから、私の考え間違いなら間違い、或いは大体そう個人的には思うとか何とかもう少しそこを明確に答えて頂きたいものだと思います。
  209. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは率直に申上げまして、別に御遠慮申上げておるのでも何でもありません、結局幅の問題だと思います。但し今の問題が、八十二条の問題はこれは非常に打てば響くような明快な答弁はできませんけれども、これは私から従来もたびたび申上げましたように、裁判所自身がおきめになりますことでありますから、私が余り確固たる信念を以て強く主張しなくとも責任はとられると、かように考えております。
  210. 一松定吉

    ○一松定吉君 今法制局長官は裁判所が判定するだろうと言われたが、それは問題が裁判にかかつたときはそうやるだろうが、原案を提出した政府はどう考えるか。政府はこう考えるのだ、その考え方がいいか悪いかは、事実問題のときに裁判所が判断するということはわかるが、あなたのほうで原案を出しておきながら、その原案に対して明快な回答ができないで、ただ裁判所できめるだろというようなことでは困るのです。
  211. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 大変さびしくなつて参りましたが、要するに私の申上げることは、この原案は秘密保護法と御提案申上げておるのです。この秘密保護法のこの条文の御説明が自信のないうやむやな態度では、幾らお叱りを受けても、これは私の責任でありますが、何か事件なつた暁においてすでにできておるこの憲法の八十二条の運用について、一体裁判所がどういう運用をされるのかという問題になりますと、私どもはそう強く政府はこう思つておりますと申上げても、裁判所がそれに引ずられるような立場にないわけでありますから、そういうような我我の気持ちをいろいろ取りまぜてお答えしたわけであります。
  212. 一松定吉

    ○一松定吉君 併しこのいわゆる防衛秘密ということが保持されなければならん。この法文によるとそれを保持されるのには、この事件なつたときに、裁判にかけられる。かけられたときに公開するかしないかということによつて、これはいわゆる憲法第三章で保障する事件であるときには対審にしなければならん、こういうのですから、その憲法第三章に規定する事件関係あるようなことのときには、これは公開される、公開されるというと防衛秘密というものが保たれなくなるのじやないか。だからそれを明らかにしておかなければならんのだということが亀田君の質問の要旨だと思うのだ。こういうようなときには、これはいわゆる憲法三章に規定してあることになるから公開される。公開されても秘密のほうが保たれんでも仕方がないのだという解釈なのか。それは前段の公の秩序や或いは善良の風俗を害するということで、いわゆる公開を停止するのだ、その停止するかしないかというときは、事実上の問題として裁判所が判断するのです。政府立法に対する考えだけは明らかにしておかなければならん。それが明らかにならんから亀田君の言うように、あなたは何でもかでも裁判所、裁判所といつて逃れるのですかという非難が起きる。そこを明らかにしておかなければならん。私どもはこういう考え立法する。併しそれが今度原告と被告において争いになつたときには、裁判所が判断するから、そのとき私どもの解釈が間違いか間違いでないかは裁判所が判断する、立法者としてこういう判断をするのだ。その立法者としてこの案を政府はお出しになつているのだ。それはいわゆる国権の最高機関である国会で、原案について提案者と我々の間において意見の交換をする、こういうふうに持つて行かんといかんのじやないかと思うのです。
  213. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 憲法八十二条そのものに対する私の答えは先ほど述べた通り通りお答えしているつもりでございます。従いまして場合によつては公開でその裁判が行われる場合もこれは理論上あり得るわけです。その場合は止むを得ない。併しながらこれは先に御制定頂きました刑事特別法における秘密保穫の関係から全くこれは同じ性質の問題でございますけれども、我々としてはこの裁判の事件の性質、仮に秘密保護関係事件でありましても、裁判の性質、或いは又裁判官の法廷の運用の方法如何ということを考えますと、この公開裁判が行われること、即ちそれがイクオール秘密の公開であるということには又必ずしもならない。こういうふうに考えますからしてそういう意味一つこの法律がナンセンスじやないかということを前の刑事特別法のときにも一応考えられたのでありますが、そういうナンセンスというようなことは実際にございません。併し終局的には裁判所の判断に待つところだ、こういうような考え方で参つておるわけであります。
  214. 一松定吉

    ○一松定吉君 私これ以上は議論ですから……。
  215. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の八十二条の「公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある」害する虞ということですが、これは先日総括的な問題について、眼前明白な危険という問題について政府の意見を質してみたのですが、あのときは途中になつてしまつたので、要点だけをちよつと伺つておきたいと思うのです。これはもういろいろとずつと歴史がある問題ですが、要するに結論としては、眼前明白な危険というのは、ここに私は極く最近の、一九五三年の五月号のコロムビア・ロー・レヴユーを持つて来たのですが、これに発表されている専門家の見解の中に、いずれにせよ害する虞れがあるというのは、時間の問題がここでかなり大きい意味を持つて来るということは、異論の余地がないだろうというふうに言つております。ザ・タイム・エレメント・イズ・イン・メニイ・ウエイズ・ザ・クラツクス・オブ・ザ・マター、時のエレメントというものは、しろしろな意味において中心となるというのは、その虞れがほかの方法で防げる場合には、それを眼前明白の危険というわけには行かない。それでホームズ判事が引用されたのは、平和な集会において火事だというように嘘を言つて、群衆が驚いて総立ちになり、ほかの人が火事でないという暇がないという場合です。そこで眼前明白な危険ということになるのだと、けれども、ほかの人がそれは火事じやないということが言える状況においては、時間の問題がそこに入つて来ますから、眼前明白の危険にならないというのが妥当な解釈でないかと思うのですが、第八十二条の場合の、「公の秩序又は善良の風俗を害する虞れがある」という場合にもこの害する虞れというのは、やはり眼前明白の危険というのであつて、そこに時間の余裕がある場合には、眼前明白の危険と考えることはできないから、公開されることが当然ではないかというように思いますが、その点について、政府はどうお考えになりますか。
  216. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今のコロムビア・ロー・レヴユーのお話、私まだ見ておりませんが、全く我が意を得た言葉を御紹介になつたわけで、この間の御質問のときにそのことを申上げようと思つてうつかり忘れて、あとでしまつたと思つたことを今おつしやつて頂いたんで、その点は嬉しいのですが、ただ前回申上げましたように、普通の、ホームズ判事あたりの言つておる眼前明白の危険というものは、言論関係のことを中心に考えておられる。従つて今申しました、例えば政治上の、まあ仮に恐るべき政治上の意見を、革命的な意見を或る人が言つたという場合には、必ず反対意見というものは出て来る。それによつておのずから調整がとられる、その時間というものの余裕が……。その時間の余裕というものとこの危険の出て来る又スピードというものがありますが、他の言論によつて調整される時間の余裕と危険の起つて来るスピードとの牽連関係において、そこで一線を画するというようなものであろうと思います。これはまさにその通りだと思います。ただこの場合はそれとは性格の違う場合で、裁判所が公開にするかしないか、或いは公開にすることによつてその危険がどういうふうに出て来るかという問題は、今の他の言論を以てというような問題が入つて来る場合も或いは関連上あるかも知れませんけれども、入つて来ない場合もあるんじやないかというようなことで、例えば風俗犯罪なんかについて言えばまさにそうだろうと思う。非常に猥褻な言葉をそこでしやべられるということについてもそこに問題が出て来る。これがだんだん伝えられるというようなこともある。これが今の問題になつております秘密保護関係のごときは、まさに性質的にはそのほうのものであつて、革命的な政治上の言論というようなものとは違つて、時間的な問題ということは入りにくい性格のものである。かように考えておるわけであります。
  217. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その前のほうはあれなんですが、秘密保護の場合にもやはり、今の民主主義で政治が軍事に優越するというようなことで、防衛秘密ということだけで判事が決定するんじやないということもありますから、そういう見地からは私はその秘密保護の場合には今の眼前明白の危険の原則というものが全面的に当てはまらないというお考えは、どうも余り局部的に過ぎやしないか。個々の秘密が漏れることを防ぐの余りに、民主主義根本を覆えしてしまうということは民主主義の下では許されないのである。これは余り問題が……    〔委員長退席理事上原正吉君着席〕 或る部分では局部的になり或る部分では全面的になるから、これ以上別にお答えを頂く場合でもありませんから、そういう点は今のお答えでは満足しないという程度にとどめておきます。
  218. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちよつと速記を……。
  219. 上原正吉

    理事上原正吉君) 速記をとめて下さい。    午後五時二十六分速記中止    —————・—————    午後五時五十一分速記開始    〔理事上原正吉君退席、委員長着席〕
  220. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは速記を始めて下さい。  次回は明十九日午前十時から開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十二分散会