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1954-05-10 第19回国会 参議院 法務委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十日(月曜日)    午前十時四十三分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            上原 正吉君    委員            青木 一男君            小野 義夫君            楠見 義男君            中山 福藏君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   国務大臣    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局第二部長 野木 新一君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁人事局長 加藤 陽三君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    保安庁保安局調    査課長     綱井 輝夫君    法務省刑事局公    安課長     桃沢 全司君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件日米相互防衛援助協定等に伴う秘密  保護法案内閣送付)   ―――――――――――――
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から委員会を開会いたします。  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題に供します。本案につきましては前回の委員会にも御懇談的にお諮りをいたしましたが、本十日から十三日まで一般的な質疑の継続を行いまして、その後細目に入りました質疑をいたし、十八日、来週の火曜日に最後の総括的な質問をいたしまして十八日に質疑を終了いたし、本法案につきましては各党の態度決定相当御懇談を要する点があろうと思いますから、そのような順序で進みたいと考えておりますが、どうか御協力をお願いいたしたいと思います。本日は先ず羽仁委員から御質疑を願います。
  3. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 総括的な問題としてやはり第一の点は、本法案憲法違反ではないかという点なんですが、この点について改めて木村長官政府の所信を伺つておきたいと思います。その第一は、日米相互防衛援助協定そのもの、それからそれに伴う秘密保護法案、これについては勿論政府としてはこれは憲法違反ではないというお考えの上にお立ちになればこそ、立法を求められることはよくわかつておりますが、そこで伺つておきたいのは、これらの、つまり本法案につきまして有力な意見として、これが憲法違反であるという意見があることも御承知だろうと思う。これは日米相互防衛援助協定につきまして、先日来国会の内部におきましても公聴会或いはそのほかそれぞれ決してこういう問題について門外漢というふうにみなすことはできないそれぞれの信頼すべき見地に立たれる方が、これは憲法違反であるという意見を述べておられる。そこで伺いたいのですが、政府としては政府が今日認識されておる限りでは、憲法違反の虞れは全くないというお考えなのか、それとも憲法関係について問題があるというようにお考えになつているのか、どちらでございましようか。憲法違反の慮れなんということは毛頭考えていないとおつしやるのか、或いは憲法との関係においても問題となると考えられる点はあるが、それらの点についてはこういうふうに考えておるというお考えがあるでしようか、先ずこのいずれであろうかということを伺つておきたいと思います。
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 政府といたしましては憲法違反の点はないと考えております。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それはまさかこの法案についての憲法違反批判がある、その批判に全然身をかさないというお考えじやないと思う。どうもラジオなどを引用しますと、又失礼のことに亘ることもあるといけないと思うのですけれども、併しどうも月曜日についお目にかかるものですから、昨日日曜日に聴いておりますと、トニー・谷という人が理想的なおむこさんというのは耳のない人だということを挙げております。どうしてかというと、耳がなければ批判は一切聞かない、従つて立派な政治家になれる、こんな理想的なおむこさんはないじやないか、こういうふうに明瞭に現在の政府吉田首相をはじめ、各官僚は世間の批判というものを全然きかないという印象を与えていることは……これはお断わり申上げておきますが、木村長官以上に私が遺憾としているところなのであります。首相並びに閣僚に向つて耳があるのかというふうに国民が言つておる。而もトニー・谷というふうな人は決していわゆる限られたる少数のインテリーというものではない。大衆の支持を受けているところの大衆的な芸術家である。ですから、ああいう人の言葉というものは、国民の大多数の感情を体してこれを代弁しているものだと考えなければならない。そこで、先ほどの御答弁に対して、二度念を押しておきたいのです。それは、専門家批判を尊重しないという御意思ではないと思いますが、専門家批判として第一にこれは有力な批判の点であるのじやないかと、国民も又これを問題にし、我々もこれを何とか解決しなければならないと思いますのは、日米相互防衛援助協定並びに本法案の前提といたしますところの日本のいわゆる武装したところの力というものは、これは軍隊でないということは、どうしてもいわゆる耳がないという非難を免かれないのではないか。この点について政府の御答弁がときどき変つているようです。先日木村長官は衆議院で、これは私の読み誤まりかも知れませんが、私見によれば軍隊である、軍隊というのは即ち憲法の禁止しているところの軍隊であるということをお述べになつたようなんですが、この点についての政府の本当のお考えは一体どういうところにあるのか、その点を伺つておきたいと思います。
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は世評の批判に耳を傾けないわけではないのであります。傾けておるのであります。如何せん、我々の解釈を非常に誤つて解せられておる向きもあろうと考えております。その点は我々は遺憾に考えております。いずれ正しく解せられる時期が来るものと我々は了承しております。  先ず申上げたいのは、御承知通り憲法では戦力を否定しておるのであります。軍隊というものについては、これは憲法は真正面から否定しておりません。申すまでもなく一団、独立国たる以上は、自衛権を有することは言を待たないのであります。自衛権裏付けである自衛力を持つことも又これは否定はされておりません。ただ、九条において国際紛争解決手段としては、武力行使或いは武力による威赫或い国権発動に基く戦争を否定しておるのであります。併し自衛権行使する場合は、国際紛争解決手段以外にあるのであります。即ち不当な第三国から武力侵冠を受けた場合に、これを防ぐために自衛力行使することは、憲法は何ら否定しておりません。ただ戦力を持つことが否定されておる。要するに自衛権行使の名の下に往往にして侵略戦争の愚を繰返すようなことがあつてはいけないというので、九条第二項において戦力を持つことはいけない、戦力とは即ち第三国に対して攻撃的脅威を感ぜしめるような大きな実力であります。その範囲内においてはいわゆる自衛力裏付けでありまする実力軍隊を持つことは、何ら否定されておるわけではないのであります。今度御審議を願つております自衛隊法に基く自衛隊においても、これは戦力に至らざる範囲において国家として有する自衛力であるのであります。そういう意味におきまして、我々は牽も憲法違反するにあらず、いわんやこの軍隊という定義については、未だ確定したものがありません。外部からの不当侵略に対して対処し得る実力部隊軍隊と称するのであれば、私は軍隊と称してよかろう。余りにこだわることはない。要は内容如何による問題であります。従いまして、いずれの面から見ても、この自衛力裏付けを持つておりまする自衛隊を持つことは憲法違反にあらず、こう解釈しておるのであります。
  7. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この自衛力のための武力というものは違憲でない。憲法に禁じておるのは侵略するところの戦力というものである。これについてもやはりこれは私の意見じやなくて、新聞の論説の中に、それを裏返しますと、それではどこの国に侵略のための戦力を持つのだという憲法を書いておる国があるだろうか、侵略のための戦力というものは今日国際的にどこの国でも持つていないはずです。又そういうふうに常識からも考えられる。憲法において、我が国は外国を侵略するための戦力を保持することができる、こんなことを書くはずはない。ですからその裏を返せば、我が憲法で禁ぜられておるところの戦力というものは、侵略のための戦力は勿論のこと、自衛権のための武装されたる力というものもこれを禁じておるのでなければ、我が憲法は特に現在の各国の憲法と異なつた特色を持つておるというふうに説明されておることと矛盾しやしないか、その点はどうですか。
  8. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これも羽仁委員が私の申上げたことを誤解なすつておるのであります。侵略目的とかいうことは、これは問題外なんであります。いわゆる私の申上げるのは、大きな実力部隊であつて外部侵略的脅威を感ぜしめるような実力部隊、こういうのであります。そういうような大きな実力部隊憲法で禁止してあります。目的が何であるか、そんなことはかまわない、自衛のためであるだけという目的のためにでも、そういうような大きな実力を持つてはいかん。ややもするとそういう大きな実力を持つようになると、侵略の具に供せられるからいかんのだ、こういうことであります。目的如何にかかわらず、自衛のためであつても、外部侵略的育成を起さしめるような大きな実力部隊を持つてはいかん、こういうわけであります。決して目的如何を問わない、内容如何によるわけであります。
  9. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 外部からの侵略に対して自衛力自衛目的を達するために、その際に交戦権というものを行使することになるのでしようか、どういうことでしようか。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは御承知通り憲法第九条第二項において交戦権を持つことを禁止しておるのであります。従いまして交戦国として有するもろもろの権利はこれを持たない、行使しないということになつておるわけであります。
  11. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでこの憲法問題についての原則的な総括的な点について最後に伺つておきたいのは、今御説明になりましたようなこと、又ずつと国会において明らかにされておるような見解は、我々もできるだけ勉強し、又よく善意に了解する努力をしておるのですが、最後に残りますただ一つの問題は、これはそういうことは想像したくないことなんですけれども、当面の問題としては、この本法案違憲であるということが後に明らかになる場合がある。その責任はどういうことに、若しそういうことがあつた場合には、なるのでしようか。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は違憲にあらずと言つておるのであります。そういうことは考えておりません。
  13. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それはよく伺つたのですが、政府違憲にあらずという確信を持つてこういう立法をなさる。併し人間のことですから、或いは多少御研究が十分でなかつたというようなことがあるかも知れない現在政府としては確信を持つておられる。その確信というものは将来これが不幸にして違憲であるという場合には、責任をとるということも含んだ確信なんでしようか、どうでしようか。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 政府が仮に過まつて違憲法案を提出すると仮定いたします。これは国会において十分審議をなさる意味においてそういう法案が通れば、これは政府にも責任があり、国会にも責任があるのであります。我々はさようなことを考えておるわけじやありません。慎重審議して、違憲にあらざるものと確信した上において法案を提案するわけであります。そういうことについて我々は考えておりません。
  15. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の点があるので、その点をはつきりさして頂かないと困るのです。これは私は決してその将来本法案、そのほか今政府のなさつておることについて、憲法違反であるということになつて、その責任をおとりにならなければならないような事態が発生することを望むものじやないのです。望むものではありませんけれども、政府立法を求められる態度に、何か国民のほうで割切れない気持を抱いておる。その一つには今申上げるような、本法案文は類似の政府のなさることが、後日違憲である、憲法違反であるというときに、政府はやはり責任をとらない。これは国会責任だとか、国民責任だとかいうようにされるのじやないか。それよりも、これはもつと突きつめて言えば、今この本法案立法政府が求められる態度に、そういう点まで深刻にお考えになつて、それで立法を求められる、又説明をせられておられるのかどうか。その点を木村長官並びに佐藤長官からも伺つておきたいのであります。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先刻も申上げました通り政府が議会に提案する法案については、十分慎重に検討をいたしまして、違憲でないという確信の下に法案を提案するわけであります。さようなことは考えておりません。
  17. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 木村大臣の申上げた通りに私たちも考えております。
  18. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 佐藤さん、こういう場合はどうなるのですか。今確信を持つて違憲じやないというので立法を求められておる。後日、まあ私は決してそういうことを願うのじやないのです、勿論願うのじやありませんが、併し後日これは憲法違反である、例えばこれについて事件が起つた。そしてその事件最高裁判所審議せられた結果、本法案が仮に成立するとすれば、そのもの憲法違反であるという判決が出た場合の政府責任はどうなりますか。
  19. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 責任も何も、第一今大臣からお答えしましたように、我々が立案に携わりますときには、先ず国会の御審議のことを常に頭に置いておりますし、又これが裁判になつた場合のことも当然頭に置いて、憲法が少くとも変更にならない限りは、この憲法の下おいては大丈夫という確信を持つてつておるわけでありますから、御心配のようなことはないはずだと思つております。
  20. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私もないことを誠に願うのですか、私は率直に申上げて、最近国会議員である責任を負うに堪えない感じがしています。それはこういう法律が、勿論私は委員会においても、本会議においても反対態度を明らかにしますが、併し反対態度を明かにする程度で、国民に対して申訳ができるものじやないと思う。やはり委員会なり本会議なりで、なぜもつと本気で反対して防いでくれなかつたのだと言われたときに、自分としては全力を尽したつもりだと私は言い逃れはしない。  私が国会に籍を置いて、自分反対したにもかかわらず、この法律案が通つたことについて、後日責任が私はとれないと思う。ところが最近に至りまして、次第にこういう責任までもとるということが、自分の力の及ぶところだろうかというふうに思います。これはどうか木村大臣佐藤長官も同情して聞いて頂きたい。そんなら早くやめたらいいじやないかというふうなお考えを頂きたくない。私に向つて投票せられた方々は、恐らく日本の現在の最高の良識を代表せられておられる方々だろう。私は背後にそういう方々の信託というものを感じて、それで或いはお考えによれば、雲をつかむような問題じやないかというような点についても、ここまで疑問を質して行かなければならないと思うのです。そして、これは前例のないことじやない。その前例をここに申上げることは差し控えます。又閣僚の中には、その前例を否定するような言辞を弄られる方もあります。併し私は、誰々が責任を負うというものじやない。やはり今木村長官もおつしやつたように、政府国会責任を分かつもの、与党反対党責任を分かつものである。憲法違反の疑いがないという政府確信というもの、これは私は国民が非常に不安を感じている点じやないか。今朝の新聞を見ましても、これは与党立案をされているものでしよう、憲法改正についての案が出ております。これらを見れば、第一に、これは佐藤長官に質しておかなければならんと思うのですが、基本的人権は尊重する、併し公共福祉によつて制限される、この考えは、私は非常に危険な考えだと思うのです。で、この公共福祉というものによつて基本的人権そのものが制限されるのではないということは、私は定説だと思うのです。そして、いわゆるそれは人類が今まで努力をして来た、多年の努力の結果であると思うのです。基本的人権は尊重するが、公共福祉によつて制限されるというのは、旧憲法法律範囲内において人権を尊重するというのと少しも違はない。又現に政府のとつておられる態度は、少しも違わないのではないか。而もその背後には、ああいう改正案等にも現われておるように、明瞭に言論、集会、結社の自由というものをも憲法によつて制限して行こうという考えが現われて来ておる。そうすると、今朝新聞に現われておるようなことが、どの程度まで形をなしておるかわからない、そして又あれを理由にして、今の政府の心事を忖度することは迷惑だというよりにお考えになるでしようが、それはしばらくさておいて、この際佐藤長官に端的に伺つておきたいのですが、基本的人権は尊重するが、公共福祉によつて制限されると、あなたはいつも政府態度として表明される、そのお考え方と、旧憲法時代法律範囲内で人権を認めるというのと、どこが違うか。
  21. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これはかねて申上げておる通りでございますが、法律に委してしまつたという旧憲法の形であれば、やはり政策と申しますか、立法政策の問題を白紙委任をしたという結論になつてしようのではないかと思います。ところがこの今の憲法におきましては、そういうことは許されない、形の上においても許されない形にはつきりされておるのです。基本的人権そのものは、考え方によつては、基本的人権というものが一つつて、それが公共福祉によつて制限されると見るか、或いは基本的人権そのもの一つの枠を持つておるものであつて、その枠というのは、当然公共福祉というものによつて枠付けられたものであるというのか、これは見方は二つあると思います。言い現わしますときには、私ども今お言葉に出ましたような言い方をして御説明しておる。本当につきつめて考えると、基本的人権は動物的自由というものとは違うものであるはずだと思いますが、そういう意味基本的人権というものは、一定の限界があると言うほうが言い方としては正確じやないかと思います。
  22. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 勿論基本的人権を尊重することは当然であります。我が新憲法においても、アメリカ式人間の自由、基本的人権を尊重するという建前をとつておるのです。併し個人基本的人権は、やはり多数の個人的人権の下に、私は置かれるべきものであろうと考えております。一つ個人的人権を保護するために、多数の個人的人権を害するというようなことがあつてはいかん。個々に調和をとらなければいかん。そこでいわゆる公共福祉という問題が出て来るだろうと思うのです。多数の人権を無視して、個人人権を尊重するということがあつてはならん。裏を返せば、個人的人権を尊重するのあまり、多数の個人人権を無視しては相成らん。人間共同生活をしている以上においては、先ず以て多数の個人的人権を直視しなければならない。その多数の人権を保護するためには、個人人権も或る程度制約を受けることは、これは当然であろうと思います。ここにいわゆる憲法公共福祉という問題が出て来るのだろうと考えております。  なお、余計なことでありますが、ここで申上げたいのですが、先に羽仁委員責任云々ということをお述べになりましたが、誠に私はその志は尊重するに値すると考えております。併し私は民主主義というものはそんなものじやないと思うのです。民主主義国会において多数が論じ合つて、そうして多数決の下に服するということが私は民主主義であろうと思う。それに一々自分意見が通らなかつたからといつて議員責任をとるということになれば、これは私は民主主義に相反するものと考えております。どうか羽仁委員も十分に御思案願いたい。併しそれがために自分意見が通らなかつたからといつて責任をおとりになるということはおやめを願いたいのであります。これは私は民主主義の行き方だろうと思います。国会において大いに論議する、論議してそうして百分の意見が通らなかつたから、いろいろ責任をとるということになると、これは私も国会議員として将来考えなければならんと思います。私は民主政治というものはそんなものじやないと思うのです。大いに論じ合う、論じ合つて多数によつて自分意見が通らなかつたならば、それに服するよりほかに途はない、これが私は民主政治のあり方だろうと考えております。御責任をとるということは、私はどうかお考え直しを願いたいと考えております。
  23. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 実際私は最近の政府のなさるところというものが、国民の将来に対してどういうつらいことを再び惹き起させるのかと思えばこそ……。私は決して現首相とか或いは現閣僚とかの責任とは思わないのです。余談に亘つて恐れ入りますけれども、ミュンヘン会議前後の事情をチャーチル大戦回顧録の中に書いておる。そのときにチャーチルモロトフと会つた。モロトフの目の中に非常な苦しみの色が現われておる。若しミュンヘン会談のその後の外交政策を誤まれば、数億の民衆を戦火の下に曝すものだということを考えると、モロトフのあの当時の苦しみというものは自分にもわかつておつた。あんなに苦しむくらいなら、自分政治家をやめたほうがいいと……。  私は実際この総括的な問題については余りいろいろ申上げるのも恐縮ですから、もうこれで終りますけれども併し木村長官破防法審議の当時には、まだ我々の意見というものについていろいろ深く考えて下すつたような気持も実はしているのです。やはり木村長官のような場合でも、相当専門家でありましても、時の動きというものに動かされて、破防法時代にはまだこの線というようにお考えになつていたものを、最近のお立場というものから踏み越えて行かれるということがあるのではないかというふうに考えれば、非常に心細い感じがする。で佐藤長官に対しても、実際佐藤さん、御自身の識見というものからいつて、現在政府がしていることが非常に危険なことだということはお感じになつておると思うのです。あなただつて夜は寝られないということはあろうと思うのです。私は最近世界平和者会議で、元陸軍でしようか、海軍でしようか、航空隊相当の地位におられた方が剃髪して僧服を身にまとつて、そうして平和運動をされている、その方と数日一緒に過ごしました。その方の同僚が現在保安庁というのでしようか何というのでしようか、要するにカーキ色の服を着て鉄砲を持つた方々の中で、失礼な言葉を許して頂きたいが、恐らく得意になつているのじやないか。実際明治以来休む暇もなく日本国民戦争の下に駆り立てて、そうして国民のあらゆる涙というものを、ただ戦勝と凱旋の凱歌というもので圧倒して来た。そうして今日も国民生活の現状から見れば、先日も厚生省の発表せられた数字を新聞が挙げていたのを見ましても、国民の三割に近い人は栄養水準に達していない。国民の三割に近い人が栄養が保てない程度の食事しかしていない。それから賠償の問題にしたつてそうでしよう。日本が現在こういう秘密保護法案まで作つて、そうして拡大して行こうとするようなそういう武装力というものを先にすべきなのか、それとも明治以来我我百姓、町人の祖父さんも曾祖父さんも、親も母もお祖母さんも一緒に泣いて来た、その国民がこの川のああいう最後の悲劇に出あつたのだから、この二十年、三十年、五十年くらい鉄砲の姿などは見たくない、それで国民を楽にしてやる。たとえ三等国でも、四等国でも、五等国でもよい、そうい気持国民の中にはあるのです。南原さんにしたつて安倍能成さんにしたつて、皆そういう気持がある。私はどうか一つ特に、これはもとで言えばいわゆる意見長官というふうな任務も帯びておられる佐藤さんが、この法案説明文は質疑応答の際に、事実明らかに日本国民を再び悲しませるような、母親たちに涙を流させるような方向に行くということは、政府自体としても飽くまでこれは阻止して頂きたいと思うのです。これは理論上からもそういうことができる。そこの一つ基本的人権公共福祉関係というものがある。公共福祉というものは法理論上確定したる概念ではありません。そうして又その背後には歴史的根拠もありません。即ち抽象的な概念ですけれども、基本的人権というものは第一に法理論的に確定した概念です。第二に、その背後にあるのは世界人類の多年に亘る本当に血と涙と汗とによつて築いて来たものです。従つてこれは抽象的な観念ではない、具体的な概念です。従つてこれに対する態度政府も我々も基本的人権というものを制限するというほうにではなくて、基本的人権というものを拡張する努力をしなければならない。だからいやしくも何らかの理由で基本的人権を制限しなければならない場合にはなぜその制限をしなければならないか、実際涙を流して或る程度の制限というものを行うのだから、その或る程度の制限を行わなければならないという理由が極めてはつきりしたものでなければならない。又国民が聞いても大多数の人が成るほどそうかと納得するものでなければならない。それを大多数の人が納得もしない、そうして議論がまだ十分になされなければならない余地があるというものを押し切つて、それで特定の目的、眼前の目的、人類の永遠の幸福とか、民衆の幸福とかいうものでない、そうでない眼前のアメリカとソ連がどうなつておる、そういうような眼前の問題から、今のような議論の余地があるのに、その議論の余地がないようにされて行くということは私は本当に悲しいと思う。どうかこれはまあお願いですから、どの程度まで聞いて頂けるかわからないのですが、やはり木村長官にしても私の尊敬する先輩でありますし、戦争中も非常に御苦労になつたことでもありまして、今私が申上げることも、私から申上げるのは失礼なんです。明治、大正、昭和と実際絶えず泣き続けて来た日本の母親の苦しみというものも十分おわかりのことと思うのです。こういうふうなことを申上げる失礼は許して頂いて、どうぞ本法案に対しても私はもう一遍考えて頂きたい。そうしてこういう法律案を先日来の御説明を伺つておりますと、今差当りのところは米軍から借りる武器の秘密考えるが、やがては日本自衛力というものに必要の、現在の憲法の許すそういう武力そのものについての秘密というものに拡大しなければならないというような御説明を伺うたびに、私は実際心臓を締めつけられるような感じがいたします。やはりこれは第一に我々の常に念頭に置くべきことは、すべてのことを国民に知らせるということ、これが一番間違いのないことだと思う。これは本法案が提案されました当時読売新聞でしたか、千葉雄次郎君が書いておつた論説は木村さんもお読み下さつたことと思いますが、国民の知る権利が第一だ、だから国民に知らせるほうが当り前だ。それが国民に知らせることのできないことができて来るということはすでに危険なんだ。従つて私はこの法律案というものを端的に申上げれば、先日来伺つておりますように、この各行政官庁に存在しておるところの行政上の必要にして止むを得ないところの秘密というものと同じ程度です。従つてその各行政官庁において今日処理されておりますように、この保安隊というか防衛隊というものに、その関係にお勤めになる方、そうしてその関係の仕事に携わる民間の工場とかそうような方々、この秘密に直接触れる方方についての取扱いにとどめられるほうが、これが私は公平に見て国民の我我に対する信託に背かないゆえんではないか。これは本法案全体に対してはその点今私が申上げたような理由からいま一度慎重のお答えを伺つておきたいと思いますが如何でしようか。
  24. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 羽仁委員も憂国の士であります。我々も国を憂うる者でありますが、その点において変りません。殊に平和を念願することは私も人後に落ちません。一日も早く世界が、平和な、豊かな暮しをするような状態を念願してやまないものであります。併し羽仁君も御承知通り世界の情勢、現実というものはさように参らんのであります。我々といたしましては、何としても不当な外国からの侵略行為に対して日本を防いで行く、そうして日本の独立と安全、国民の自由と人権を守つて行きたいと念願をしているのであります。この法案の趣旨も誠にそこに根ざしていることを御了承願いたいと思います。口で平和を唱えても、平和は来ません。我々は平和を守るだけの手段を講じなければならんのであります。先ほどお話のように、南原君、或いは安倍君が、三等国でも、四等国でも、五等国でもいいのだ、日本の平和を保つて行けばいいのだということを、私は真偽は知りませんが、我々は一国の国民たる以上は、国民の自由と安全を守つて行かなければならん、奴隷になつてはいかん。我我は三等国や四等国で将来、人の奴隷になつてはいかんという考えを持つておるのであります。少くとも一国をなしている以上は、国民の自由と人権だけは守つて行きたい、国民の秩序を守つて行きたいと考えております。どんな生活をしても、平和でありさえすればいいということは我々は考えておりません。現在の情勢を見ますると、御承知通り容易ならんものがあることは御承知であろうと思います。日本の周辺の軍事的配置その他を勘案いたしますると、日本はどうしても安全を保つためには、或る程度の軍備を打たなければならんということは、私は当然であろうと考えておるのであります。御承知通り今月一日のメーデーに、ロシアの国防相ブルガーニンは何と言つているか。ソビエトの政策の主たる任務は、各国と協調を保つて行くことであるが、新らしい戦争を防止することにあるのである。これは当然であります。併しながら、祖国ソビエトは国防をますます強固にしなければならん、国防力を増加しなければならん。こう申しております。あの、原爆、水爆を持つていると噂されておりますソビエトにおいてすら国防力を更に充実して行こう、こう当面の責任者であるブルガーニンが言つているのであります。これは何を物語るか。一国の、独立国である以上は、やはり国防力を強化しなければならん。こう言つているのであります。原爆時代においても、独立国家であつて、軍備を廃止するという国は一つもありません。縮小するという国も私はないと記憶しております。日本も平和を維持するためには、それに相当するだけの私は努力をしなければならん。外部から不当侵略を受けるような場合があつて日本の自由と独立を害するような立場に置かれた場合においては、日本としてもこれに対して防衛をするということは、私は当然の任務であろうと考えております。これを私は十分に羽仁委員に御了解を願いたいと思います。我々は決して戦いを好むものでありません。一日も早く世界の平和を招来せんことを希うものであるということを申上げたいのであります。  次に、この法安の趣旨でありまするが、これはアメリカからMSA協定によつて供与を受けまする装備についての秘密を守つて行こう、これが日本の安全を期するためにおいて必要であろうと我々は考えておるのであります。これがひとたび、御承知通り国際的にスパイが横行しているときであります、これを洩らしますとどうなりますかということであります。これは日本の防衛上非常な影響を及ぼすことは当然であります。これを守つて行こうというのです。国民人権に私は牽も関係ないと考えております。普通の行動において国民を制限することは何もないのであります。我々の活動において不便を感ずるということは別に私は来さないと考えております。極く限られたものについて、而もそれについてはこれは秘密のものであるからということを国民にわかるように明示しておるのであります。そういうものを故意に知ろうとする者があるときには、何かの目的がある。これは危険至極くなことである。普通の我々の行動においてこの制約をこの法律において受けるということはないと私は考えております。報道陣の普通の報道についての活動については、この法案によつて私は制限を受けるところがないと、これも私は考えております。我々として知らすべきことは知らさなければならん。知つてもらいたいのです。併し極めて高度の秘密ということは、これは保つて行かなければならん。それだけに制限をしておるのであります。知らすべきものは十分に国民に知らす、又知つてもらいたい、この気持は我々は変りはありません。誤解のないように私はお願いしたいと思います。
  25. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今のお言葉に対して、特にどうということは申上げないのですが、ブルガーニンの言葉を引用されたようですが、日本の場合にはこういう法律案を作つたことによつて独立するのだろうか、それともますます隷属するのだろうか。先日本会議でも、松本治一郎議員の言われましたように、吉田首相自身が、日本は独立しているとおつしやつてみたり、併し甚だ不完全な独立だとおつしやつてみたりしている。率直に言つて日本の現在というものは独立しているものじやない。独立していないときに、この外国の武力借りるということがますます危険なんです。これは今お話になりましたような米ソ対立の中に日本を置こうとされることが国民に非常に不安を与えているのです。この点についても、木村長官もどうか先日本会議でおつしやつたように、世界観を異にするというようなふうにお考え下さらないで、別に私の世界観はどうでもよろしい。日本国民が米ソ対立の中に日本を引入れられて、独立も失い、そして又悲しい思いをするのじやないか。ですから、どうか本法案をこれから伺つて行きます場合にも、ただ一言お願いしたいのは、明治以来涙の乾く暇もなかつた日本国民や母親たちのことも絶えず頭に置いて、この法案というものを考えて行つて頂きたいと考え、お願いするだけなんです。  そこで第一に伺いたいのですが、先ほどのお言葉の中にもございましたが、憲法が明らかに禁止しておるような戦力に至らない程度のものはよろしいという政府のお考えなんです。ところが申上げるまでもなく、武力というものは一つの物理的な力なんです。従つて武力というものは一旦これを置けば、必ず増大するのが論理上の当然なんです。明治時代の我々の先輩といえども、決して軍閥がああいう横暴をやるのがよろしいと思つていたのじやない。それを何とかして阻止したいというように考えられた。そして最後には天皇御自身にしてがあの軍の力というものを抑えたいとお考えなつたんでしよう。然るに、天皇御自身のお力でも、当時の旧憲法時代のあの絶対的な天皇の力を以てしても、武力が増大して行くということを防ぐことはできなかつたという理由に基いて、天皇御自身は戦争責任というものを免れられた。ですからそのことが明らかに示しておるように、天皇御自身の力でも増大して行く武力というものを抑えることはできなかつた。そこで伺つておきたいのですが、本法案の前提となりますような武力日本に置けば、それはやはりそういうふうに増大して行きます。そうして今政府がお考えになつておる、憲法の許す程度だと思つておるものを、日に日に乗り越えて行きます。それを抑える確信がおありになりますか、政府に……。又若しあるとおつしやるならば、どういう方法で抑えるおつもりですか、それを伺つておきたい。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 政府が単独でもつて武力を増強するとかというようなことはできんことであります。十分なる国会審議を得た上で初めてこれを増強するなり、又減少するなりという措置が行われるものと我々は考えております。そこでこの将来はどうなるかということについては、国際情勢その他日本の財政状態各般の情勢を判断いたして、これは決すべきものであろうと我々はこう考えております。差当りの問題といたしましては、二十九年度に成る程度の増員計画を立てて、これを行う。予算もすでに通過いたしておりますが、防衛二法案を今審議を願つておるわけであります。今後のことについてはいろいろの点からこれを判断し、考究して更に必要ありとすれば国会において御審議を願いたい、こう考えておる次第であります。
  27. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の点について佐藤さんの御意見はどうなんですか。どういうふうにして抑えるかということができるんですか。
  28. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは政治の問題だろうと思いますが、私どもの頭からこれを見れば、先ほど来のお話よくわかりますが、とにかく武力そのものを持つか持たないか、或いはこれを増加するか減らすかというようなことは、今の憲法の下においては、申すまでもなく政府、その上にある国会、これがまあおきめになるわけでありまして、昔の憲法時代のように統帥府を中心とする少数の者が天皇を助けて、これを動かすというような仕組みとは、根本に違つておりますからして、今日の憲法の下においては、これは一に政府及び国会責任を以て、良識を以て措置せられることであるというふうに考えております。
  29. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 もう余り念を押すのは失礼ですから、念を押しませんけれども、先ほど甚だお恥しいことでありますけれども、涙を以て申上げた前提に立つてどうかお答えを頂きたいのです。  それで続いてそれでは伺つておきますが、武力というものは物理的に増大する。これは過去の旧憲法時代の絶対の権力を持つておられた天皇御自身ですら抑えることができなかつた問題なのであります。それを今日吉田首相或いは木村保安庁長官或いは増原次長そういう方々に抑える確信が本当にあるのかないのか。私はこれが国民が非常に心配しておる、そうして本法案についてのこの秘密というものが増大するということが抑えられるだろうか、これは新聞社が心配しておられる点です。今までのところでは、いわゆる官庁機密という程度のものであつたからよかつたけれども、本法案に現われて来るような秘密というものになつて来れば、これは増大して抑えることはできない。誰が今日本でこれを抑えることができるか。これは今佐藤長官の御答弁のような点であなたの御責任が果せるとは私は思わない。言うまでもなくあなたは政治家ではないから、あなた御自身の関係しておる範囲内においてお答えを願つておきたいと思うのです。それでこれは私は、根本的には言うまでもなくこの軍隊という、武力というものを仮に置く場合の定石として、定理としては、第一に国民生活が安定しているという前提がなければ、軍隊を置くことは非常に危険です。国民生活が安定しているということは国が健全だということなんです。健全な国であるならば、そこに軍隊を置いても危険が少い。それでも絶無とは言えないが、健全な国民努力をすれば、何とか軍隊を抑えることができる。それが即ち憲法に言う主権在民という点だと思う。主権在民というのは、抽象的に国民に三権があるというのじやなくて、その主権在民たる国民の生活が第一に安定していなければならない。生活が不安定であれば、どうしても国民は失業者が多いということから、保安隊に入つて来るというような人がある。私は、農村の次三男というものは食えないから、だから保安隊に入つて来る。ここに恐るべき原因がありますよ。現保安隊なり防衛隊なりとおつしやるものが将来何になるか、蛇になるか鬼になるか、又国民を泣かせるものになるかという原因がそこにあるのです。失業者や農村の次三男で食えない人を集めて保安隊を作る。それが民主的な軍隊というものになるはずがない。これはあとから増原さんになりなんなり具体的な点から伺つておきたいと思うのですが、保安隊内部の汚職、そして又いわゆる保安官とおつしやるような、兵隊さんというように普通我我も言つている新らしい兵隊さん、それが前の軍隊と、兵隊さんとどこが違いますか。先ほどソビエトの例をお引きになりましたので申上げますが、私はソビエトで非常に感心したのは、電電にお婆さんが乗ろうとすると、兵隊さんがその荷物を持つて車掌に渡してやります。至るところにこういう光景を見ますよ。私は、どうかその保安隊とおつしやるのが、木村さんなり増原さんなりが監督していらつしやるあの人々が電車に乗るときに、お婆さんが乗るのに、その荷物を持つて車掌に渡してやるというその姿を一遍でもいいから見せて下さい。電車の中でどういうふうな態度をしておられるかということは、前の大橋さんの頃からたびたび申上げました。これは小さい問題じやありません。又今の中国でも、これは国際的に認められておることですが、前には警官が道路で民衆を足蹴りにしていた。然るに最近の中国では、警官が人力車夫を助けている。私は日本に今は法の下に置くことを許される武力というものはかくのごとき武力です。お婆さんを押し除けて電車に乗つて女を立たして坐つているというようなそういう人々によつて組織されるものを憲法は許しておりません。ところがなぜそれがおできにならないか。大橋さんがおできにならなかつたばかりじやなく現在でもおできにならない。然らば近い将来におできになるか。恐らく木村さんは十分御努力下さるでしようけれども、むずかしかろうと思う。これは主権在民の原則並びにその原則が要求しておるところの欠けることのできない条件、即ち国民生活安定ということなくして置く軍隊は、必ず横暴にして腐敗するものになる。軍隊が大きくなつて憲法を乗り越えて行く、今のところはまだ憲法の枠の中で置いていらつしやるでしようが、その武力そのものはそれ自身の意思によつて憲法を乗り越えて行く。それを現在の政府責任を尽して抑えようとされるが、それは抑えることができない。抑える唯一のものは主権在民の国民の主権だけがそれを抑えることができる。ところがその国民が或いは失業し或いは空腹である、栄養が足りない、大きな声も出せやしません。今だからこそ私はここでこんな大きな声を出しておりますが、三、三年後にこれだけ大きな声が出せるかどうかということが疑問です。佐藤賢了という方が議会で黙れとおつしやつた。先日木村長官言葉を慎しめとおつしやつたけれども、本当に私は悲しく思つた。言葉を慎しめと言われるのは黙れということじやないかと思いますよ、国民は…。これはそういうふうになつたら、我が輩は男だ、黙れとは何事だと言えますか。私もそういう努力をするつもりです。黙れと言う権力に対しても申上げるつもりではおります。併し願くばそういう境地に我々をお互いに置きたくないと思う。それはやはり国民がその軍隊に向つて軍隊は横暴だよというふうに一言国民が言え、又その声を代表して我々が議会で言えるかどうか。その第一には国民経済が安定する、それによつて主権在民の主権が立派な強い発言をすることができるということです。第二は、そこは秘密がないということ、秘密があれば国民が知らない間に軍隊が大きくなつてつてしまうのです。先日衆議院で、政府は本法案に言うところの秘密というものの中には、国会に対しても説明することのできないものがあるかも知れない。観念上とか、いろいろのお言葉をお使いになつていたようですが、併し要するに問題はそこの問題です。前の国民経済の安定をしないのに武力を置くことが如何に危険か、そしてそれは必ず汚職を発生させるという点については、あとから現在の保安庁の汚職の問題について、どうか一つ納得の行くように説明をして頂きたい。それから第二の、国民主権が確立していないと、どうしても武力は増大して行くという問題、この問題についてはどうして抑えるのかということについて法律上の御説明を是非伺つておきたいのです。今ここで伺つておきたいのは、秘密の問題に入つて来まして国会説明することのできない秘密を、本法案は予想し、又は含んでおられるのでしようか、どうでしようか。その点を伺つておきたいと思います。
  30. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は先ず、その保安隊の隊員のことについてのお話を伺いましたが、私から一言申上げておきます。今羽仁委員が中国の兵隊のことについて、如何にも中国がよくつて日本が悪いように言われましたが、少しは羽仁委員も保安隊の実態というものを御調査を願つてから批判して頂きたいと思います。去年の九州の水害において保安隊が如何にあの地方の人のために身命を賭してやつたか、この事例を羽仁委員承知でありましようか、どうか。ただ電車に乗つてお婆さんの荷物を車掌に渡してやつたというような事例とは違います。身命を賭して救済しておるのであります。佐賀県においても、熊本県においても、福岡県においても、長崎県においても、県会一致の決議を以て保安隊に対して感謝をしております。又最近におきましても新町部隊において火災の時に身を挺してこれを防いだ。北海道の山火事においても消防隊でなすことのできない場合において、率先して山火事を鎮火さしたという事例が幾つもあります。保安隊員の個々の行動について批判されることは御自由でありますけれども、この実態というものを私はよく見て頂きたいと思う。中国の事例を以て比較されるということは、私は保安隊員全部のためにこれは弁解しておきたいと思うものであります。現在の保安隊員の実情というものを十分に私は知つて頂きたい、こう心えております。  次に、秘密に関する問題でありまするが、申すまでもなくこの法案において保護せんとするのは極めて限られた高度の秘密であります。普通の我々の生活と全くかけ離れたものを対象にしておるのであります。繰返えして申すようでありまするが、MSA協定によつてアメリカから供与を受ける極めて高度の装備についてのみこれを対象としておるのであります。我々の普通の生活に関係のないものであります。而もこの秘密を防衛するということが即日本外部からの侵略に対しての防衛に密接に結びついておるのであります。これが外部に知られていろいろの手を用いられますと、日本の防衛態勢において非常な悪影響を及ぼす。この趣旨から高度の秘密だけを保持せんとすることがこの法案の趣旨であります。而も国会議員に対してこれは秘密会あたりで我々はできるだけこれは知つて頂きたいと考えております。無論そうなくてはならんと考えております。どういうものが秘密になつておるかということは知つて頂きたい。これは将来の、向うから供与を受けた後の話であります。我々はその心組みでおるわけであります。
  31. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 国会関係については、お話に出ましたように衆議院でお答えいたしました。これは私がお答えした言葉は、要するに純粋に法律的に見ると、これは観念上の問題としては、国会に示されないような秘密もあり得るでありましよう。と申しますのは、これはこの法律関係ばかりでなく、ほかの一般の場合についても同様の共通の原理として申上げるのであつて、例えば国会でありますれば、議院における証人の宣誓等に関する法律或いは刑事訴訟法等においても政府の役人なり或いは国会議員のお方々自身でさえも、場合によつては国に重大な影響のあることであるということを理由に拒み得る形の立法が一般的にできております。そういうものと同じような場面というものは、理論上はこの法案についてもあり得ましようということを、観念の問題として申上げたわけであります。併し実際上の問題としては今木村大臣がお答えになりましたように、第一これは素朴に考えて見ても、予算や或いは自衛隊の問題だけに限つて見ても、それに関係する法律というようなものを御審議になる場合に、その審議に必要な御質問に対してお答えができないということになれば、結局予算なり法案なりの成立もできないというよう事実上の関係になりますからして、そこは実行の問題としては、国会の御審議上差支えのあるような場面は出て来ないだろうということで申上げておつたのであります。
  32. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 保安隊の民主化の原則について、先ほどの木村長官の御説明は私も十分そういう点について、私ばかりじやない、国民考えていることと思うのです。けれどもそれは水害が起つたり、火災が起つたりしなければ、そういう民主的の保安隊の性質が現われない。これは昔から福沢諭吉先生なんか始終言つておられますが、日本は非常の場合の注意ということばかり言つていたけれども、大切なのはつまり平常の注意ということだ。注意というのは昔の言葉ですが、やはり保安隊の民主的な性質というものは、非常の際にのみ現われるものであつてはならないと思うのです。水害や火災はないほうがいいです。その際に保安隊が生命を賭して働いて下さることは感謝すべきことですが、併しそれよりももつといいのは、水害もなければ、火災もない、そのほうがいいです。それよりも国民にとつて問題なのはつまり平時です。日常の毎日の生活においてなぜそうであるかと言うと、それがそこに本質があるから、一旦事があれば、俺は命を投げ出してやるのだ、従つてふだんは黙つているというようなことは民主的でない。一旦非常のときには保安隊だけではありません。国民自身が生命を賭しておる。火災のときにも国民自身が……、政府の施設が不完全のために、頻繁として火災が起る、第一に命を投げ出しているのは国民なんです。それにつれて保安隊が命を投げ出すことは当然なんです。そうじやなくて保安隊のつまり防衛隊なりの民主的の本質というものについて問題になるのは、日常において民主的のものである。ですから電車の中でお婆さんの荷物を持つてやらないということは、木村長官は余り大したことだとお考えになつていないようですが、私としては甚だ重大な問題だというふうに思つています。これはなおお考えを頂ければ有難いと思うのですが、今伺つています当面の問題、秘密の問題ですが、木村長官はできるだけ秘密がないようにするというふうにお答え下さり、佐藤長官は他の性質の全然違う場合の秘密を並べておつしやつているのであつて、これは法律的にも性質の違うもの、今ここに問題になつて来るのは、人民主権なり、或いは国民の知る権利というものに関係して来る秘密ですから、ですからそれはどうかそういうようないわゆる形式論というものを用いられないで、今本法案においても問題になつているところの秘密というものの性質から、これは先日も佐藤長官に伺いましたが、この法案で言うところの秘密というものは一体どういうものか、ここで木村長官からも佐藤長官からも伺つておきたいのですが、日本に本来的な軍事的秘密というものはないということは、これは政府は前にもお答えございましたし、動かない御答弁だろうと思つてつておりますが、それで差支えありませんね。そうすればここで言う秘密というものは、いわゆるそれぞれの官庁において、或いは警察などにおいて、その行政上の必要止むを得ないところのそういう秘密であるという先日の佐藤長官の御説明も、これも動かないことであると伺つておいてよろしいのでしようか、この二点、日本には現在我が憲法の下に本来的な軍事的秘密というものはない。従つて法案において保護しようとされるところの秘密というものは、いわゆる行政上の秘密というもので、警察その他において存在するものと種類の同じものであるというように了解しておつてよろしいと思いますが、どうでしようか。
  33. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 非常に精密なお尋ねでありますから、一応精密に頭を整理してお答えをしますと、こういうことじやないかと思います。ともかく役所関係秘密ということは一つであつて、それで今お話に出ました又この間私が申しましたように、例えば警察関係、検察関係においてもこの次誰を引張るのだということを知らしちやいけないという意味秘密があるわけです。その秘密というものは今の役所関係いわゆる行政部内と申しますか、お役所関係秘密ということであるわけであります。その意味においては、今の軍事的秘密であろうと、警察的秘密であろうと、検察的秘密であろうと、私は本質的には同じものだと思います。ただ、本来的な軍事的秘密というお言葉を分析して考えますと、むしろこの間私が答えました趣旨は、本来的な軍事というものがないのだということであつて、本来的な軍事的秘密というところまで言葉をつないでしまいますと、例えば本来的秘密とこうつないで、真ん中の軍事的というのを省いて考えますと、これは警察、検察の秘察とは本質的には同じものだ。だからはつきり申上げれば本来的な軍事がないのだから、本来的な軍事的な秘密というものはない、こういう趣旨で申上げたのであります。
  34. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それは木村長官も……。
  35. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今の通りです。
  36. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは先日公述人でしたか、参考人としておいで下さつた大竹さんの御意見の中には、軍機保護法と本法案とは違うということは、軍機保護法時代には本来的な軍事的秘密というものがある。軍隊がある、従つてそういう軍事的秘密というものがあつた。ところが今日はそういう本来的な軍事的秘密というものはないということを強調しておられましたし、恐らくそういう意味を我々は確定したものとして考えて行く必要があると思うのであります。これが確定されておりませんと、先ほど申上げたように、いわゆる本法案で規定しようとしている秘密が増大して行く、或いは武力が増大して行くということになりますから、だからこれはどうか一つ政府のほうで守つて頂きたい。本来的な軍事的秘密というものはないのだということを……。  そこで国会審議権に入つて来るのですが、木村長官はできるだけ国会に向つてすべて知らせるということにするというふうにおつしやつたのですが、これは私はやはりできるだけということを勿論すなおに頂戴すべきなんですけれども、併し旧憲法時代に、軍閥時代にも、やはり軍としてはできるだけ国民には知らせるというお考えだつたのじやないかと思います。これと今の政府のお考えとが同じであつては大変ですから、そこでその点はどういうふうに違うのか。これは抽象的にできるだけ知らせるということじやなくて、やはり具体的に、今のそれぞれの役所にありますようなそういう秘密というものは、これは如何に知らせようと思つたつて、明日警察が誰かを逮捕するというのを今日本人に知らせるということはできない。尤もできないと言つても、実際はやつておられるという世間の批判もありますけれども、ないわけなんで、そういうようなことは、ですからできるだけ国会に知らせるというような御答弁よりも、これこれこういうものは国会に知らせない、それからこれこれこういうものは国会に知らせなければならないという二つのものがあると思うのです。その点について御答弁を頂ければ有難いと思います。佐藤さんのほうは、国会審議しなければならないもの、それで本法案秘密関係があるものがあると思う。それがつまり国会審議ができなくなることが問題だと思うのですが、その点についての御答弁を伺いたいと思います。
  37. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は国権の最高機関である国会においての審議がスムーズに行くように審議を十分慎重に……、でき得る限りにおいて我我は十分な考慮をしてこのいわゆる秘密保護法の対象となつておるものについても知らせたいと、こう考えております。
  38. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 根本的に一つむしろお教えを受けたいのですが、第一国会もそうでありますけれども、この秘密というものは、主権者たる国民そのものにも知つて頂けないものだということに私は重点があると思うのでありますが、その意味においては検察上、警察上の秘密といえども、主権者たる国民そのものにとつても知つて頂いちや困るというものもあるわけであります。その点においては今度秘密保護法で扱つておる対象も同じ対象のものであつて、むしろそういう秘密というものがあること、主権者たる国民にも知らせないような秘密があること、それがいいことか悪いことかという角度から、根本をむしろ御論議願うべき筋じやないかと思うのであります。そこで現実の問題となつては、国会審議の問題、これは今のお言葉にもありましたように、もとより法律とか予算とか、国会がプロパーな本来のその職務を果すことについてお差支えになるような、そういうようなこれを秘密と称してお答えを全然しないというようなことがあつては、先ほど私はそれについて触れたのでございますけれども、第一予算が通して頂けない、法律も通して頂けない、自衛隊の増強或いは減少も勿論あるわけですが、今日の日本の私法においては一概になされ得ないことですから、実際の動きとしてそういう方向の何と申しますか、牽制されると申しますか、おのずからなる調整作用というものがありますからして、非常識的な結果にはなり得ないと思つております。
  39. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 問題はこれは過去の例に鑑みてもわかりますように、主として予算に関係して来ることだろうと思う。それから従つて法律関係して来ることです。この点についての秘密が入つて来てしまうと、民主主義は根本から覆つてしまう、その虞れがあるというようにお考えになりますか、それともそういう虞れは今日毛頭ないというふうにお考えであるか。私は本法案が第一にやはりその点が明記せられてあるかないかということによつて、今新聞社或いは国民の間に生じているような不安というものが解決されることがあるのではないか。そういうようなことが……佐藤さんは首をかしげられますが、書いてなくともそういうことか守られるのだ、今の憲法で……。守られるはずのものだし、木村長官もたびたび言葉を重ねて国権の最高機関である国会というものの御認識をされているのですけれども、併しやはりこの問題が特に秘密ということ、軍事的な秘密、本来的な軍事的秘密じやありませんけれども、併しこういう武力というものに関係戦争関係のあるようなものについても秘密であり、そうして言論の自由とか或いは国会審議というものと関係があるものだということを特に考えられれば、私は法律にそういう条項があるべきではなかつたのか。即ち憲法との関係又は国会審議及び言論の自由というものとの関係というものを明記せらるべきではなかつたか。今更これを明記するということもおできにならんでしようが、何らかの方法でそういうことが明らかに確立されるような方法のお考えはないでしようか、どうでしようか。
  40. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 初めに首をかしげておりましたのは、そうとう条項というのがわからなかつたので、首をかしげておつたのですけれども、あとのお言葉でよくわかりました。従いましてお答えできることになつたわけですが、そういう条項は私は法律的には余り頼りにしてはおりません。そういうものを頼りにして初めて安心ができるようでは、これは立法技術としてはむしろ余り上手じやないというように考えておりますが、従つて厳然として憲法が控えております以上は、そういう条項をお入れになつても……、たしか破防法のときにそういうお話が出ましたけれども、お入れになつても勿論悪いことではありませんが、入れなければならないものとは毛頭考えておりません。従つて今申しましたように憲法の下においてこれが成り立ち得る法案でおるということを我々として御説明できればそれでいいというふうに考えておるわけであります。
  41. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私はやはり今の佐藤さんの御説明法律の形式の上から誠にその通りだ。けれどもこの法律にそういうことが書いてあるということに頼るのじやなくて、第一条にそういうことが書いてあるから、第二条以下はもうそれで安心して行くというのであれば、私は誠にまずい立法であると思いますけれども、そうじやなくて、この法律を実際に適用して行くときに座右銘というか、常に第一条にその点が書いてあるということは、よほどこの法律の適用の面において違いがあるのじやないか。従つて現実の問題としては、今更第一条にそういうことを書くということをなされて頂ければ有難いのですが、そういうことが仮になされなかつた場合には、今のような心配があると思うのですが、何か誠に頼りにならないことを頼りにしておるあわれな国民だというように御同情下すつて、解決の方法はないでしようか。
  42. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやることは本当に身にしみてよくわかります。が私どもの立場から言うと、座右銘というようなのは、本当に憲法そのものを始終座右銘にして頂きたい。あわれな国民というお言葉がございましたけれども、本当は国民の各位一人一人が憲法を座右銘にして頂ければいいと思つておりますものですから、ついああいうお答えをしたわけですけれども、その抜萃のような意味でここに又念のために書くということは、私は先ほど申上げましたように必ずしも必要であるとは思いませんけれども、それが悪いことであるとは少しも考えておりません。
  43. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の申上げるのは、何というのですか、この法律に伴う施行令というのでしようか、そういうものができるのだろう。そういうものに国会は別に差出がましく口を入れるべきものではないと思う。併し私が申上げておるような点は十分心配な点だと思うのです。殊に高い責任をお持ちになつている方はこういうものが憲法を崩さないようにという認識を十分お持ちになつているでしようけれども、併し多くの力がこの法律の適用に当られる場合にも、比較的そういう点について高い認識を持つていらつしやらない方方でも、その適用を誤らないようにというような意味において、そういうふうな配慮をこれは是非国民のためにして頂きたいと思います。  そこで次の問題になるのですが、国会が特に今の秘密の問題については厳格でなければならない歴史上の理由があります。つまり過去の日本においていわゆる軍事上の秘密というものが国会では常にまかり通る、ほほかぶりして通る。これはなかなか一種の習慣でもあり、伝統でもありますから、危険だと思うのです。この秘密保護法案というものの審議の場合には、最大限、つまり実際上の支障がない限りにおいて秘密というものがなく、国会において説明して行く。いわんや予算なり法律なりに関係して国会審議というものを尽すという態度をとられるでしようが、併し私は不幸にして今度そういう態度がおとりになられるという確信を持たない。甚だこれは不幸な予想です。私もこういう予想をするのは、決して軽々しい意味で予想しておるのではない。けれども恐らく防衛隊法案又この秘密保護法案というものが通過したあとにわいて、この国会においてとられて行く態度というものは日々に変つて行くのではないか。それを国民は無限の悲哀を持つて眺めるのじやないか。そこで特に問題になつて来るのはその場合の責任です。つまり国会審議に応じなければならない。憲法によつて国会の審会の審議を尽さなければならないものについて、その審議を尽さなかつたことの責任は一体誰が負うべきものなんでしようか。これは佐藤さんに伺いたいと思います。
  44. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) とにかく現在の憲法下における政治の基本機構というものは、国会中心ですべてが集中しておると申上げてもいいくらいかと思いますので、今のような御懸念は国会が健在である限りは起り得ないことであるし、又当然健在であるべきことであろうということになるわけであります。従いましてこの国会の中心ということが結局それは裏においては国民を代表しており、国民に繋がつておるということでありますからして、先ほど来、最初からのお話にそれが繋がつて来るのであつて、要するに政治の運営の一般の問題の責任の問題と私は同じことになるのだろうと考えております。
  45. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 形式的には御説明下すつた通りだと思うのですが、過去の日本において他の官庁の秘密というものについて特に問題が起つたことは余りないだろうと思う。並んで似たような意味で、軍の機密というものと似たような意味で、特高警察とか警察関係というものについては問題が起つたでしよう。それからいわゆる内務省の機密というものについては非常に問題が起つた。消防とか、消防はあれですけれども、厚生省とか何とかそういうものについてはそういうものは起らない。他の場合と大体同様だというのではなく、形式的にはその通りですが、特に今この法律案で保護しようと思つておる秘密の性質上からこれはもう少し立ち入つてつておかなければならないと思うのですが、その手当をこの法律の上でやはりすべきではないのか。破防法のときには、破防法の主体であるところのその団体に対する規制とか、或いは再論に対する規制というものをやつた場合には、団結の自由或いは言論の自由、そういう重大なものに対して規制をして、あとでそれが裁判で無罪になつた場合のその責任というものは、保安庁長官がとられるというお答えを頂いております。それでこれはやはり破防法運営の上に大きな意味があつたことだと思うのですが、本法案秘密保護というものの運営を誤つて、それで言論の自由というものが侵害された場合は、特に私は問題が重大だと思う。従つてそういうことが起らないような措置、そうして又それが起つた場合にそれが救われる措置、それからそれが遂に救われない、救えるような形でない形で以て行われて行つたという場合というものについて、この法律は今の憲法との関係において私は妥当でないように思うのです。その第一、つまり特にこれが官庁機密、一般にいう役所の秘密というものと同じ性質のものでありながら、併し一般の役所の秘密の場合と違つて、特に言論の自由を制限するようになる慮れがある。具体的にどういうところにそういう原因があるかというのは、第一には前から問題になつたのですが、公にされていないというものとの関係でしよう。これが公にされていないもの、それから第二には不当な方法によるというようなことです。公にされていないもの、それから不当な方法でという、これがやはり政府があらゆる努力をされて説明をなさるにもかかわらず、依然として国会或いは国民の間に多大の心配がございますのは、私はそこに理由があると思うのです。ですから公にされていないもの、それから「不当な方法」ということについての政府の明らかな、明確な御答弁を一遍是非聞かして頂きたい。これはお答えになつておりますのを速記録や何かで拝見しておりますと、どうもやはりフアウストではないけれども、二つの魂というものが常に現われて来るような感じを受けるのです。これは例えばできるだけ、即ち国会が国権の最高機関であるから、その審議を尽さなければならないということから考えて行くと、そういうふうな御答弁になつて来る。ところがさていざアメリカから相当の高度の秘密のある武器を借りようと思うときには、それは余り国会で明らかにしてしまうわけに行かない、そつちのほうになつて来ると、国会にも御答弁が知らせないことがあるというふうになつて国会に知らせることが原則であるという御答弁、併し場合によつては知らせないことがあるというふうに、御答弁が二つに分れて来る、それから公にされていないというものについても、或る場合には裁判において公にされていないものを不当な方法で探知して裁判にかかつた場合には、それで裁判で明らかになつたものならば公になつたものである、或いは世界のいずれの国でも、ソビエト同盟であろうと何であろうと、そういうところで以て公にされたものは、すでに公にされたものであるというふうに、公にされていないものという解釈を極めてしぼられて、いやしくもどういう形であれ、公にされたものは含まないという御答弁があつたかと思いますると、又そうでない御答弁が生じて来る。
  46. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) そうでもありませんよ。
  47. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 いや、生じて来ております、拝見しておりますと……。どういう場合に生じて来ているかと言いますと、新聞社の方々が御心配になつているのですが、公にされておるところの知識の幾つかを繋ぎ合せると公にされていないものがそこに出て来ることがあります。そういう場合などについては、どういうふうに政府はお考えになつているか明らかでないのです。それから「不当な方法」というのもやはりそうでありまして、「不当な方法」というのは、社会通念としてそんなことはしないほうがいい、すべきではないというものをするのだ、それ以外は決して不当ではないと言うのですが、問題になるのは、やはり新聞社の場合には、この間も東京新聞の論説委員の方でしたか、おつしやつていたことには、新聞はいわゆる普通の通常の方法でニュースをやつていては新聞というものはできない、それならもう役所にでもお願いしたほうがいいということで、従つて通常ならざる方法によつてニュースを取得るという責任がある、国民に対して……。でそういうふうなものは一体政府はどういうふうにお考えになつているのであるか。私はこの新聞の場合、国会議員の場合、この二つの場合を特に重大に考えて頂きたいと思うのです。国会議員の務めは、国民にあらゆることを知らせる、又国民の聞きたがつていることを何でも聞くということにありますし、新聞も同様である、新聞はおよそ世の中に隠れていることがないように、勿論隠れているというのは正当にその自由が守られるために、人権が守られるためのいわゆる秘密というものではないのですよ、そうではなくて、人権や自由を侵されるような意味における秘密というものはすべてあばく、随分あばかれることのないようなものでもあばく、この間の公述人でしたか、参考人でしたかの言葉の中に、秘密が次第に秘密でなくなつて行くところに文明の進歩がある。従つて法律というもので或る秘密を保護するということになると、文明が逆行することになる、言論の自由もそれで空に帰する、新聞の使命はなくなつてしまう、そういうふうに言われておりますが、そのどつちにつまり向われるのかという点が一番根本の問題として大事だと思う。又憲法との関係においても、これは極めて重要なものであろうと思うのですが、以上の点についてはどうか一つ只今でありましても、後ほどでありましても結構でありますから、本朝来申上げておりますような苦衷、苦しい気持をお汲み取り下すつて、確定したお答えを頂いておきたい。
  48. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先ず大体論から私から申上げたいと思います。この「公になつていないものをいう」というのは、これはむしろ秘密を保護すべき対象物を非常に制約しておる意味であります。いやしくも一たび何らかの原因によつて公になつたものは、この秘密の保護の対象にならんということであります。と申しますると、日本では秘密考えておつても、或いは諸外国においてもうすでに公けになつておる、こういうものはもうこの法案の対象にはならんという意味でありますから、むしろ「公になつていないものをいう」ということが私は非常に法案施行の上において国民を保護すべき一つ手段になつておる、こう考えておるのであります。その原因如何を問わず、一たび公になつたものであれば、これは対象にならんぞという意味であります。  それから「不当な方法」、これは申すまでもなく社会通念上穏かでない方法で以てやることである。例えば立入禁止区域を明らかに明示しておるにかかわらず、その禁止区域に出入してそうして秘密を探るというようなことをやる、或いは又金銭その他を以て誘惑して秘密を知つたような場合を指すのでありまして、これはどこから考えて見ても、私はさような行為は取締らなくちやいかんと考えております。普通の新聞の取材方法がさような不当な方法をやろうとは我々は考えておりません。勿論ニュース材料を取得するについては、或る特殊の方法を以てやる場合もありましようが、不当な方法でやるということは私は考えておりません。如何新聞紙といえども日本法律で以て保護しようというものを、不当の方法でこれを知ろうというようなことは私は常識上あり得ないことである、それは私は通常の取材活動以上のものであろうと我々は考えております。国家において保護しておこうという秘密を、特に新聞社がそれを取材材料にしようというようなことは、我々常識で考えられないのであります。我我は新聞社に対して成るべく物の実態を知つてもらいたいのです。我々は知らせる方法を講ずるのであります。それにもかかわらず不当な方法でやろうというふうなことは、私は新聞社においてもあり得ざることと考えております。常識上ないと私は考えております。さような意味においてこの法案はでき上つておるわけであります。裏を返せば、私は常に言うのでありますが、不当な方法で以て秘密を収集しようというようなものは、何かの意図を持つてやる、意図なくして不当な方法でやるというようなことは私は先ずあり得ない、それは何人といえどもこれは慎しむべきことであろう、こう考えておるわけであります。
  49. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 一応前段の御答弁はその通り頂戴しておきたいと思います。「公になつていないもの」というのは、しぼることに目的があつたのである。従つて如何なる事情たるを問わず、一旦公になつたものは絶対に含めない。これはずい分そういう意味では木村長官のおつしやるように世間の誤解がある。例えばアメリカの軍事上の秘密で以てソビエトなどでそれを探知してそうして発表しておる。そういうものを日本で発表すると、そうするとそれは本法に触れるのじやないか、今の御説明でそういうものは入らないということがよくわかりました。  それから「不当な方法」ということについても実際悪意ある方法でやつているということで、善意に基いてやつておるものを含まない。従つて新聞社があらゆる手段をとつて報道の任務を果されようとするものは含まない。まあこういうこともよくわかり、従つてこれも最初の「公になつていないもの」ということについての御答弁と同じようにしぼる、飽くまでしぼり、少しでも拡大させないというような意味において、この「不当な方法」或いは「通常不当な方法」というのは、苟くも拡大されない、むしろ厳格に解釈されるという御答弁、有難く頂戴します。そこで問題になりますことが一つあるのです。それはさつきから申上げておりますことと関連して参ります。大体二つの場合について考えられると思いますが、一つはこういうふうにして設けられるところの秘密、或いはその基になるところのいわゆる武力というものがその性質上拡大する性質を持つている。これを抑えるのは一体何かというと、先ほどから申上げて来たように根本的には人民の主権ということである。その抑えるものの最も重要なものに国会新聞というものがあると思う。この秘密が拡大しないことは今御説明のような「公になつていないもの」という規定、それから「通常不当な方法によらなければ」という規定で抑えておいでになるのですが、それでは抑えられないときですね、その拡大が……。拡大が抑えられないような秘密が増大して行くときに、それを何で抑えるかというと、国会が抑える、新聞が抑える。ここに非常にデリケートな問題ができて来るのです。恐らくこの保安隊なり何なりのこの係りのほうの主任というのですかね、兵隊さんのほうでは、やつぱりそのときにはこれを秘密として行こうという動きがどうしても動いて来ます。それから国会及び新聞社のほうでは、そういうものを秘密にしていてはけしからん、そうすれば憲法も覆るということになつて、これを明らかにしよう、公にしようという動きが起つて来る。これが私は第一の問題だと思う。具体的な問題としてはこの場合を、つまりどういうふうにして政府としてはお考えになるのかということが問題です。それから第二の場合には、いわゆる今木村長官がお話になりまして秘密を探ろうとする、秘密があれば、それを探ろうとする動きのあることは、これはもう実際論理上も必然で、神様といえどもこれを防ぐことはできないのです。そこで飽くまで秘密を守ろうと思うのに、その秘密を破ろうとするものに対してそこで二つのつまりとるべき態度があると思う。一つは簡単に申上げればフェア・プレーの精神で敗けた。これほどこの法律で守り、そういうふうにしてやつているのだが、併しそれは「通常不当な方法」であるというふうに考えられるのか、それともどうであるかという点から言えば、極めて限界のような方法であつて、それによつてその秘密が知られたということに対して、フエア・プレーとして敗れた、きつと撃剣のほうにもそういうことがあると思うのですが一本取られたという態度をとるか、それともそれはけしからんというようにやつて、それを死刑というような方向に持つて行くか。この第三の問題については、私は自分の親しかつた友人である尾崎秀実君が死刑になつたということは一生忘れることはできません。そうして尾崎君の問題についても、私はないようからはいろいろな議論もあり得ることだろうと思う。けれども、そこに行けば一つの国の将来というものについてのそれぞれ、先ほど木村長官もおつしやいましたように憂国の志においては同じだ。例えば端的に申上げれば、アメリカと結んで日本の国を守るんだという考え方と、それからソビエトと結んで日本の国を守るんだという考え方と二つあるという場合に、私はそのどれをとるかというのじやないのです、いろいろな考え方がある。この考え方に余地なしというお考えになれば、それは独断主義ですし、専制主義です。やつぱり政府としてはアメリカと結んでやつて行くんだという考え方がおありになつても、併し国民の中には或いはそうでないほうがいい、むしろソビエト、中国と仲良くして行つたほうがいい、或いはソビエトとも、中国とも特に関係を結ばないで、両方とも何も縁を持たないでやつて行くのがいいんだといういろいろな考え方があるでしよう。或いは中にはもつとアメリカに密接に連絡したほうがいい、日本はアメリカの第四十何州かにしてもらつたほうがいいというような考え方もあるだろう。そういうようないろいろな考え方があり、政府としては政府責任においてはそのうちのつの立場をとり、従つてそれとは違う立場に対して反対態度をとるものであり、且つ政府がその政策を遂行するために、その今与えられておるところの法律或いはその基礎をなすところの憲法というものの許す限りにおいてその秘密を守り、それを破る者について取締りをなさるという態度はおとりになるけれども、併しその最後のところに、そうしたフエア・プレーというようなお考え方をおとりになるか、おとりにならないかということが、私は最後に極めてデリケートな問題だと思うのです。本法で刑罰を極刑とかそういうふうなものを作られていないということは、政府の御説明では、先日来伺つているところでは、外務省のほうの御説明とそれから保安庁のほうの御説明と必ずしも一致していないのですが、それらについてもやはり一致した見解をとつて頂くことが必要だと思います。差当りその今の三つの問題については政府はどういうふうにお考えになつておられましようか。
  50. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いずれにいたしましても外部からの不当侵略に対して国を守らなくちやならんということはこれは筋が通つていると思うのです。何人も異存がないと思うのです。然らばこの外部からの不当な侵略に対してどういう工合に国を守つて行くかということについての手段、方法については幾つもありましよう。併し差当りの問題としてアメリカからMSA協定によつて援助を受ける装備のうちで、高度の秘密件のあるものをこれを保護して行こうじやないか、これが日本の自立態勢を整える上に最も必要であるという観点からして、この法案ができておるということに御了解願いたいのであります。そこの間においてかような国を防衛して行くということに必要な高度の秘密の装備を、これは探られたからもうし方ないわ、フエア・プレーの態度で行くということは私はどうかと思います。これはどこまでも守つて行かなければならない我々としては責任があるのであります。国民としても責任があるのです。我々は国の安全と独立を守つて行く上において、外部からの不当侵略に対しては防衛をしなければならない。防衛するについては高度の秘密を守つて行かなければならない。それがゆえにこれを保護する法案を作成したんだということにおいて筋が通つていると考えます。それを故意に悪意でもつて秘密を収集し漏洩しようということは、私は国の防衛上訴すべからざる行為であろう。これについて刑を以て臨むのはこれは当然の筋であろうと、私はこう考えております。
  51. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 午後二時まで休憩をいたします。    午後零時四十分休憩    ―――――・―――――    午後二時十九分開会
  52. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 午前に引続き委員会を再開いたします。
  53. 楠見義男

    ○楠見義男君 法制局長官に一点だけお伺いしたいのですが、それは憲法の第九条三項の問題なんです。この問題については、今までの国会でも、或いはこの国会においても、衆議院或いは参議院それぞれの委員会でたびたび論議もせられたことで、或いはこの委員会でもすでに論議のあつたことと思いまするし、従つて重複して御質問申上げることを誠に恐縮に存じておりますが、お考えの一端をお伺いいたしたい。それはこの秘密保護法と直接の関係はないのですが、併し間接的には非常に重要な関係のあることで、と申しますのは例の日米安全保障条約とMSA協定と憲法関係なんです。実は私ども、これは或いは私だけの考えかもわかりませんが、我々国民として、或いは又立法府の人間として、国の行政の基本法である憲法の解釈が必ずしも明確でないということほど、不幸な国民はないというふうに考えている。これは併し佐藤さんのほうではそれを考えるのはむしろ間違いで、自分のほうははつきりしておるというふうにお考えになつておるかも知れませんが、と申しますのは多少意見に亘り或いは冗漫に過ぎて恐縮ですが、例えばこれから出て来る防衛二法案、これなんかも自由党、改進党、日本自由党の合作といいますか、妥協によつてできたと伝えられておりますが、その改進党は自衛のためには戦力を持つてもいい。併し自由党のほうはというか、政府自衛のためでも戦力は持たないのだ、現憲法の下では持てないのだと、こういうことで全く違つた解釈をとつておられる政党間に合作されたのが防衛関係法案だと伝えられております。これなんかも冒頭に申上げましたように、一国の憲法でそうふうに非常に明瞭を欠いておるということでは、私ども国民としては非常に不幸だと思います。明治憲法においては、伊藤博文公の憲法義解等相当権威のあるものがありましたが、今度の新憲法においてはそれがない。ただ我々としては一番よりどころにするのは、憲法制定当時における政府の提案理由、或いは修正理由、或いはその当時における国会審議質疑応答、こういうものが一番我々としてはよりどころだと思います。その解釈がだんだんと変つて来ている。学者によつては、憲法の解釈といえども少くとも自由討論的に、そのときの情勢によつてつてもいいのじやないかというふうな議論をせられる方もありますけれども、私は少くとも一国の基本法はしかく軽々しく考えるべきものじやない。こういうふうに思つておりますと同時に、よりどころとしてはこれは、遂にその制定当時の国会審議の状況、或いは政府の理由というものを尊重している立場をとつておるわけなんであります。これが実は前提なんです。  そこで日米安全保障条約によつて日本自衛力の漸増というものを期待されておる。その条約を我々参議院で、私も当時その条約の特別委員会委員としていろいろお伺いしたこともありますが、これは飽くまでアメリカ側の期待であつて日本は義務を負つていないのだということでありましたが、今度のMSAにおいては、明らかにこれは向うの相互安全保障法に基いて日本は義務付けられている。そこで日米安全保障条約においては日本は当時警察予備隊でしたか、或いは保安隊でしたか、日本としては間接侵略に対する責任といいますか、それを負つており、それに必要なたしか人員等の増加も当時やつたと思いますが、そうして直接侵略についてはこれはアメリカが日米安全保障条約によつて分担をするのだ。こういうことで安全保障条約ができ、我々もそういう説明を伺い、又そういうものとして賛成了解した点であります。そこでその当時の日米安全保障条約に基いて日本における外国からの直接侵略を防衛する担当を背負うところのアメリカ駐留軍の装備については、これは戦力でないということを考えた人は私は一人もいない。むしろそれは戦力だと思う。その戦力日本の保安隊、或いは警察予備隊がいざというときには相当共同的に行動をとる場合がある。そうなればそれも戦力ではないか。日本の警察予備隊の装備も戦力ではないかという議論もその当時あつたことは御記憶のことと思います。それはいずれにしても日本のほうは別として、直接侵略を担当するアメリカの装備を戦力でないと理解した人は一人もないし、又政府もそれは戦力だと認められておるわけです。  そこでこれからお伺いする点になるんですが、MSAの期待するところ、又それと関連を持つておる防衛軍ですか、新設せられる防衛隊、この関係を見ますと、アメリカはその直接侵略に必要な戦力を持つておつた。そのアメリカが漸次日本に地位を譲るといいますか、向うは申すまでもないのですが、日本からできるだけ手を引きたい、又政府独立国として我々もその期待をして自衛力を増して行くのだということでありますから、その直接侵略に応じ得る戦力と、これは何年かかるかわかりませんが、その地位にとつて代るためのスタートを今切つたと私は理解しておるのです。それはそうでないということを言われる方もあるかもわかりませんが、これは常識的に考えても、又MSAの企図するところを考え、又防衛隊が、従来の保安隊が防衛軍になるという点を考えても、少くとも直接侵略に今度は法律では対応するように組織替をするのだし、その戦力を持つておるアメリカにとつて代ろうとするのだから、戦力を持とうとしてスタートを切つたという点だけは間違いないと思います。  そこで憲法の問題になつて来るのですが、これはまあ私は誤解といいますか、言葉の綾だろうと思うのですが、よく衆議院あたりで、総理が戦力を持つに至らば憲法を改正する、こういうことの答弁を言われておるのです。新聞等で、或いは速記録でも拝見したこともあるのですが、これは本末転倒で聞違いだろうというふうには誰しも思つておるので、戦力を持つていけないというのだから、戦力を持つに至らば憲法を改正するというのは、これは間違いだろうと思います。そこで考え方が又いろいろあつて戦力を持つ意思があつても、戦力に至らなければこれは憲法違反でないという解釈と、それから戦力を持とうという意思でスタートを切れば、これは憲法の九条に違反する。少くとも憲法を改正してからでないと、その意思を持つてそのスタートを切るということは憲法の第九条二項侵犯ではないか、こういう見方とあると思うのです。私は実はそのあとのほうの戦力を持つ意思があつて、意思があるというその意味は、さつき申上げたようなことを根抵にしての論拠なんですが、戦力を持つ意思があつてそのスタートを切ると言いますか、MSAを受入れて防衛隊を設置するというスタートを切るにおいては、これは私は憲法違反じやないか、こういうふうにまあ実は考える。附加えて言いますと、よくまあ政府のほうで御答弁になり、たびたび佐藤さんからも伺つたことでもあるのですが、戦力とは何ぞや、それは近代戦遂行をなし得るに必要な総合国力といいますか、総合力だ、こういうような定義をよく聞くのですが、これは実はまあ抽象的にはそういう議論が質疑の過程においてはとり換わされても、実際問題としてそいつを突き進めて行きますと、然らば総合国力或いは総合力とは何ぞやということになれば極めて不明確で、その総合力未だ整わずというふうに政府考えれば、いつまで経つても総合力にはならない。極端なことを言えば、仮にアメリカ或いはソ連と同等以上の装備を持つても、国民の愛国心未だ結集されず、或いは戦意未だ持てずということであるならば、それは総合力とは言えないと言えば言えないこともない。こういうことから実は言葉のあやとして非常に不明瞭だと私は考えるのですが、これはまあ併し見方ですからとやかく申すのではないが、要するに問題は戦力を持つ意思があつてそうしてスタートを切るということは、これは憲法違反じやないか。少くとも憲法を改正しなければそういうことはできないのじやないか、こういうふうに思うのですが、その点についてはさつき申上げたように、あちらこちらでたびたび議論があつて耳にたこができることだと思いますけれども、念のために一つお伺いしておきたいと思います。
  54. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御尤もなお尋ねだと思つて拝聴いたしましたが、今の吉田総理の言葉は、これはまあ吉田総理は舌が余りよくお廻りにならない性質で、我々は答弁資料を書く書き方で苦労しておるようなことでありますから、舌の廻りが悪くてああいう表現になつているのだと思います。併しいずれにいたしましても、将来戦力を持つ意思でございますということは、政府としてはまだ一度も言つていないはずだと思います。とにかく現状としてこれこれのものが必要でございますということで、言つておるわけでありますから、必ずしも将来憲法を改正してそうして戦力を持つようにするのだ、その第一歩を踏み出すのだというところまでは、今まではちつとも言つておらないわけであります。但し仮定の問題としてお尋ねの趣旨はよくわかりますので、仮に戦力を持つと、将来は持つというそのとにかく第一歩にしようという心組みを持つておつた場合に、それがどうだということは、確かに一つの問題になり得ると思います。お答えとしては形式的に申上げれば、いつぞや予備隊のときでありましたか、楠見委員にもお答えしたことがあつたと思いますが、卑近な例えで言えば、憲法に言う戦力というのは、富士山の八合目に布かれた鉄条網で、それより上には上れないということを言つておるので、その八合目の鉄条網に至るまでは、これは立法政策の問題として憲法は命じておる。或いは五合目で打ちどめにするとか、四合目で或いは打ちどめにするとか、或いは八合目ぎりぎりのところまで行くかということは、すべて立法政策の問題でありますから、その政策の問題としては八合目まではとにかく行くことが憲法上許されておるというところに尽きるわけだと思います。ただその場合に一つ私ども考えられますのは、一体憲法の他の条文の中にそれに触れるようなことがないだろうかという点から見ますと、憲法の十三条に国民のいろいろ自由、生命と書いてありますが、幸福追求の権利については立法その他国政上最大の尊重をしなければならないという要請があるわけです。それでまあ非常に素朴に考えまして、第九条が先ずないと考えます。第九条がない場合を考えた場合においては、この第十三条を読んだ場合には、幸福追求の権利という以上は、勿論治安の維持も図らなければならん、内乱の場合に善処すべき措置もとらなければならん、或いは外敵が攻め込んで来た場合には、その外敵の泥靴によつて国民が蹂躙されることは、幸福追求の権利が害されるわけですから、それを予防する措置も国政上最大の尊重をせなければならんということになつて、九条なかりせば、実は防衛、治安維持等の国の重大な責任として憲法がむしろ命じておるのじやないかという考え方ができると思うのであります。でありますからそういう点から言うと、治安力、防衛力というものは、むしろ十三条に忠ならんと欲すれば、成るべく強くしなければならんという要請が憲法の中に潜んでおるということが言えるのであります。ところが今の九条が出て参りまして、一応の限度以上のものが又別の大きな危険を国家に及ぼすことになるから、これは別の枠を九条で加えられたというようなことを睨み合わせて考えてみますと、或いは他の幸福追求の中には、先ほど来羽仁委員が申しておられるように、国民の生活の安定ということも幸福追求の一つの要請でございますからして、そういう面の要請と外からの侵略を守るという要請とを勘案しつつ、やはりそれはだんだん上のほうに押し上げられる、そういう傾向を持つておるのじやないか、こういう意味考えれば、八合目の鉄条網の所まで上つて行くことは、或る意味から言うと憲法の要請じやないかという見方もできると思います。とにかく八合目を目指して行くことは憲法が許しておる。それは今のお話のように他の国民生活の安定の要請と睨合せて、国政の問題として、政治の問題として結論をきめて頂かなければならんことだろうというふうな考え方でおるわけであります。
  55. 楠見義男

    ○楠見義男君 今の戦力を持つ意思の問題ですが、これは政府としては戦士を持つ意思ありと、或いは将来においてその方内に進まんとする意思ありと、こういうことはおつしやらないと思うのです。まあどういうふうに考えてもおつしやるわけはないと思うのです、現在の状態においては……。併しそれはさつき申上げたように、その戦力を持つておるアメリカ軍が直接侵略に対応するものとしておつて、それに代るものとしてMSAを受入れて、そうしてその地位にだんだんと装備を改善し充実して行つて漸増して行つて、その地位に代ろうとするのですから、意思はないとおつしやつても、客観的には意思ありと諭ぜざるを得ないのじやないかという点が私の一番の質問の根本なんですが、その点はどうでしようか。
  56. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは意思といつても、憲法違反の陰謀というような形にまあ繋がつて行けば、憲法違反の陰謀としての一つの悪い性格を持つておるということになりましようけれども、これは憲法を今のままにしておいてそういうふうにしようという意思であれば、今の陰謀になるのです。ところが仮にそういう意思が誰かの心の中にありましても、そこまで考えてみる必要はないだろう、いずれ正当な手続を踏んで憲法が改正された場合においては、それが戦力になりそれにこれがおのずから繋がるだろうというようなことで行きまするからして、今の悪い意味考え方ということにはならないのじやないかと思います。
  57. 楠見義男

    ○楠見義男君 実は憲法違反の陰謀とか何とかそういう大それたことでなしに、客観的に見て、今MSAを受入れるということは、戦力を持たんとする意思ありと認定されても仕方ないじやないか、こういう考え方に対してはどうでしようか。その考え方はあなたも仕方ないじやないかと言うほうが、むしろ間違いだというふうに言われるでしようか。
  58. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これはどつちも間違いだということは言えないのじやないかと思います。率直に言いますと、とにかく今の八合目では、おかしい例でありますけれども、その鉄条網を上るか下るかということによつて実はそのものの本質そのものは変らないと思うのです。ただ、私どもの考え方から申しますれば、戦力というものは先ほどの言葉にも触れましたように、まあ愛国心とか何とか、そんなことは我々考えておりません。物理的の力だけを見て、これが総合されたものというところをつかまえてその力が大きくなるか、小さくなるかということによつて戦力の規模が大きくなるか小さくなるか、場合によつては大きくなつて鉄条網に触れることになろうという考え方であつて、その本質から申しますというと、一つの戦闘力であるということ、もう一つは、内乱に対応する場合たると外敵の直接侵入に対する場合たるを問わず、その考え方には変りはないということから来ておりますから、そうすると、鉄条網をくぐつたとたんにがらつと本質が変るものであれば、今おつしやつた面白くない、悪い性格というものが非常に濃厚に出て来ますけれども、私どものようにずつと考えて来ますと、それほど悪い性格のものではないのじやないか。例えば大砲が一門殖え、二門殖え……宮沢俊義さんなんか、大砲が一門殖え、軍艦が一隻殖えたからと言つてそれが戦力かどうか、そういうけじめはつかない。本質はそういうものが何等殖えれば戦力になるかというようなことでありますからして、これはただ規模の大きさの点からだけであつて、ただその力の、本質そのものの問題になりませんから、仮にそういう意図を持つてつても、先ほど申しました陰謀が非常に悪い、まあ極端に申すのでありますけれども、そういうような意味の、悪い性格はないのじやないかと思います。思いますけれども、余りそういうことを私が弁護しておりますと、政府如何にもそれを考えて、そういう志を抱いておるように、まああとの人が速記録を読みますと誤解いたしますから、政府は決してそういうことを考えておるわけではありませんけれども、仮定問題としてお尋ねがありましたから、そういうふうにお答えするのであります。
  59. 楠見義男

    ○楠見義男君 今富士山の八合目のお話が出ましたから、二、三年前の論議を思い出すのですが、当時緑風会の岡本愛祐さんはテニスの軟球、硬球の例になぞらえて、現在の保安隊或いは警察予備隊ですか、それは軟球の状態で、日本憲法は硬球を持つてはいけないのだと、こういうことをしているのだから、現在の軟球程度のものであるならば憲法違反ではないと、こういう議論をやられたのですが、私はその当時日本憲法武力を持つちやいかん、戦力を持つちやいかんというのは、丁度今の富士登山の例で言いますと、富士登山をしてはいけないと、こういうことを言つておるので、従つて、一合目から二合目、三合目と登つて行くその方向に行くことが憲法違反になるのだと、そこで今のMSAの問題も、そういう観点から冨士登山をしてはいかんというのに対して、冨士登山をまあ足を踏み上げておるのだから憲法違反じやないか、こういうふうに考えるのですが、その点はどうでしようか
  60. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは私自身非常に反省するのでありますが、富士登山という例が余りよくないと思うのです。というのは、富士登山はいけないけれども、御嶽山に登るのはいいかという話がすぐ連想が出て来ますからよくない。これは正確にむしろ申しますならば、この地図で言つて何千メートルのところに筋があると、抽象的に言わないと私はいけないと思います。と申しますのは、富士山は、これは直接侵略を防ぐ目的のためのものは冨士登山であり、国内治安或いは内乱に対応するためのものは御嶽山の登山だ。だから御嶽山の登山は何千メートル登つてもかまわないのだというふうにどうも誤解を生ずる虞れがあると今のお話によつて非常に反省したわけであります。ですから、富士登山はやめまして、(笑声)要するに高度何千メートル、高度何千メートルから先はいけないということに訂正さして頂いて、そうして、なぜそういうことを申しますかというと、私どもの考えております戦力というものは、目的だとか、任務だとか、そういうものには全然とらわれておらない。憲法はそういうものにとらわれておらないで、その裸にした、総合された実力というものがこわい実力であるかどうかということの一点にかかつておる。何となれば、任務が内乱を防ぐためだから、こういう任務だから、それで許されるということであれば、実力そのものから考えますと、内乱に対応するための実力でありましようとも、或いは直接侵略に対応するための実力でありましようとも、戦闘力であるところの本質には変りない。だからたまたま内乱用の看板がかかつておりましても、憲法違反ということになつて、内乱用の看板が外れれば恐ろしい力を発揮される。憲法はそういう看板にとらわれていない。だから富士登山に向くであろうと、御嶽の登山に向くであろうと、およそ何千メートルを越えたらいけないというふうに考えないといけないと思います。だから今岡本さんのお言葉を引用されましたが、富士登山だからいけない、御嶽ならいいということではないのでありまして、およそ上向いた実力で一定の何千メートルのところを越すのはいけないというように申上げたほうが正確であつたと思います。
  61. 楠見義男

    ○楠見義男君 そこで高度何千メートルというメートルが明示されていないから実は問題なんです。非常に不明確なので論蔵の対象になつているわけです。そこで近代戦の遂行に必要な総合力というものは一体これは誰が認定するのだ、誰がそうだとこう言うのだ、こういうことなんです。例えばさつきの例で申上げたように、総合力というものは実は言葉のあやで、未だ総合力に充実せずと、こういうことで、これは仮に政府なら政府がその認定をする場合、その認定をする場合に如何ような状態になつても未だ総合力は充実しておらない。こういうことになると、一方で政府では、というか、自由党は既成の事実を作つて、現在憲法改正をしようとすれば国民投票で破れるであろう。従つて既成の事実を作つてつて行くのだという、一方ではそういう声が、相当有力な声があるわけなんです。従つてそういうのに対しての考え方から見ると、この言葉のあやの高度何事メートル、これが一千メートルか或いは九千メートルなりやということがわからんということが問題の所在を、所在は明らかだけれども、解決を非常に不明確にすると同時に、又論議を捲起している、こういうふうにも思えるわけであります。従つて誰が認定をするのか。これは国会がその認定をするのだ、こういうことになるのか。国会が認定をするとすれば、例えば今のような状態であるならば、如何ようになつてもこれは憲法改正するに既成事実ができるのじやないかという又国民の心配もありますが、その点はどうですか。
  62. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは誠に御尤もなお言葉だと思います。憲法のできますときの審議の際におきましても、先ほどもちよつとお言葉にありましたけれども、日本憲法においては、自衛権は否定されていないということとか、或いは自衛のための実力抗争は決して否定されておらない。この憲法は無抵抗主義じやございませんということははつきり言つている。これは今政府の申していることと同じであります。又戦力なるものも目的如何にかかわらず保持を禁止されているのは、これもその通りでありますが、これが戦力とは何ぞやということになりますと、当時から実ははつきりしていないというのが率直だろうと思います。金森さんは多数の人の生命、身体に何か大きな影響を及ぼすようなこととか言つておりますが、かたわら又幣原国務大臣は機関銃ぐらいはいいのだという御答弁をされております。そこで結論は戦力の限界というものについては、金森さんの答弁を見ますと、これは具体的にその現実に直面しないとわからないので、抽象的にはどつからどこまでが戦力ということは申上げられませんという表現をしているわけでございます。そこで学者の本を見ましても、何が戦力で、どつから戦力になるということは誰も書いている人はおらない。それは先ほどもちよつと触れましたように「世界」という雑誌でございましたか、宮沢俊義氏が座談会で言つておりますが、大砲が一門殖えた、軍艦が一隻殖えたからといつて戦力に達した、戦力なつたということは言えない。これは丁度重病人と軽い病人の境目みたいなもので、これは本質的にはわからないということを率直に言つております。我々としてもそんなことをごまかしてわかりません、わかりませんということでは通らないのであります。そこでこういうふうな近代戦はこれは相当高度のものであるということはたびたび申上げているところでありまして、これがやはり意法に根拠を求めて行けば、さつきちよつと触れましたように十三条と九条とのかみ合いというようなことから考えますと、やはり一番最後の恐ろしいところで九条の抑えでいいであろうという意味でこれは相当高度なものであるということを、これを翻訳すれば日本が自前で戦争ができる力ということは甘えるわけです。これは今日の現状に即応して言わなければなりませんから、近代戦遂行能力ということを言つておるわけであります。そこで先ほどたびたびお答えしておりましたように、先ほど楠見委員の御質疑にもありましたように、日本を守つてくれているアメリカ軍は戦力でしようねと、これははつきりはわからないのですけれどもさようでしようと答えているわけです。それにすつかりすり換えて行つてしまえばこれは戦力といつていいわけですね、これはそうでしようというところまではお答えしておるわけです。そういうめどは常識的にはあり得るわけであります。今のお答えに入つて行くわけでありますが、これは勿論行政の担任をしております、予算の編成をするような立場におりますところの政府としては、やはり戦力の限界に達したか達しないかということは第一次的に責任を持つて判断すべき立場であろうと思います。そうしてそれが国会の御批判の下にあらされて、結局は法律なり或いは予算なりという形で国会でおきめを頂くわけでありますが、その意味では国会の良識による御判断がそこに加わつて最終的にきまる。そうして而もそれについては国民全体が監視をして、批判をする立場におるわけであります。そういう総合された形の下にきまつて行く。併し又これが法律的問題になつて訴訟になれば、最高裁の判定というふうにきまつて行く、順序はそういうようなことになりますが、第一次的には政府責任を持つて判定しなければならんというようなことを考えております。
  63. 楠見義男

    ○楠見義男君 今お話の中に出た最高裁の問題ですね。これもこの委員会でやつたのですが、結局現在の最高裁の状況では、直接には憲法違反か何かということは論議できないのですね。従つてこれは具体的に憲法違反審議する上においてはこれは請求訴訟か何かで下からずつと上つて来れば別ですけれども、直接に行きません。そういう制度をとつていないから、結局結論としては最高裁のほうも国会でおきめになるのが適当じやないかというような御答弁もあつたくらいなんです。  これは又頭を冷やしてお伺いしたいと思うのですが、そこで憲法の問題でもう一点お伺いしておきたいのは、いろいろ憲法を読んでおるうちに、一体どういうことなんだろうかというので疑問を生じたことがあるのですが、それは憲法第九条二項の「前項の目的を達するため、」というその字句なんです。これが二項で国際紛争の解決手段としては戦争に訴えてはいかん、そうして前項の目的を達するために戦力を持つてはいかん、こういうふうになつているのです。その意味国際紛争解決手段として、そういうことをする目的を達するために戦力を持つてはいかん、こう言うのか。うつかり戦力というものを持つと国際紛争解決手段としてそういうものに訴える虞れが出て来る、だから憲法制定議会において、吉田総理が、従来は自衛の名によつて侵略戦争が行われたのだから従つて自衛戦争もいけないのだと、こういうことを言われた趣旨から見ても、その戦力を持つと前項の手段に訴える虞れがあるから、そういうことを考えても未然に戦力を持つてはいかん、こう解釈するのが至当じやないかと、こういうふうに私は思つておるのですが、こういう質問を今頃するのはどうかと思うのですが、その点一つお伺いしておきたいのです。
  64. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやる通りにずつと考えておるわけであります。あの制定の経過から申しましても、今のお言葉のようなことで、およそ戦争能力というものはここで二項で放棄しようと、物理的にも戦力ということを否認をし、それから法律上の権利としても交戦権ということを否定することによつて、それから観念上は九条第一項では自衛戦争というものは決して禁止しておりませんけれども、金森さんのお言葉を借りて言えば、戦争の形をなさんような形に二項の結果なつてしまう。自衛戦争という形が戦争の形をなさんと言つておりますが、その意味で、前項の目的云々は、要するに世界の正義と秩序云々というようなああいう大きな目的のためのものであつて侵略をしない目的というような卑近な小乗的な目的ではない、ずつと一貫して考えておりまして、当時の経緯から申しますと、衆議院でこの修正が加つて、貴族院に廻つてからの政府説明政府の原案と趣旨は変つておらないということも出ております。従つてその頭で今日までずつとおるわけであります。そうでないと又二項の趣旨というものは意味がないのじやないかと思つております。
  65. 楠見義男

    ○楠見義男君 それではこの法案の中へ入つて二、三、お伺いしたいのですが、防衛秘密の問題なんですが、これは私暫くこの委員会に欠席いたしておりましたから、或いはたびたび意見が出たかもわかりません。本日も午前中ちよつと羽仁さんが御質問になつておられた点なんでありますが、公聴会で公述人の大竹さんに意見を聴いたときに、今日羽仁さんが御質問になつておられたようなことを述べておられた。それは重複しますけれども、昔の日本はと言いますか、国防軍を持つておる国々は大体共通的に軍機というものが、本来何か知らんが、軍機という観念があつて、その軍の秘密というものには触れてはいけないのだ、こういう一般的な社会的な通念というものがそこに存在しておつて、その通念の上に具体的に、例えば軍機保護法とか国防機密保護法だとか、いろいろの法律で以てその一般社会通念の基礎の上に具体的にこれこれのものを秘密にすると、こういうふうに考えられておつたというふうに私は聞いておつたんです。ところが本日の午前中にもお話があつたように、本来現在の日本には軍事秘密というものはないんだと、そこで今申上げたように、社会通念上軍事秘密というものは現在ない。ただ、この法律でこういうものは防衛秘密になるんだと、こういうことを明らかにして初めて国民がこれに縛られるという関係になると思うのですね。従つてそういう意味から申しますとこの第一条の三項の「公になつていないもの」というこの条章が非常に重要な意味を持つて来ると思いまするが、同時に何が公になつていないかということがこれ又非常に大きな問題だと思う。更に第二条との関係からいつて標記を附したものが初めてこれが法律の保護すべき法益といいますか、擁護すべき法益になるかというと、むしろ擁護すべき法益というものは、一条の三項これ自体が擁護すべき法益と、こう理解されるんじやないかと思う。それだけに公になつておるかおらないかということは非常に重要性が私はあると思うのですが、そこでこの「公になつていないもの」というものは一体どういう意味だと、これは政府の公表したもの以外は公になつていないものと、こう見るのか、或いはよく言われますが、外国でもすでに新聞等にも出ておる、或いは雑誌にも出ている、或いはアメリカの国会なら国会で、公聴会あたりで述べられておるとか、証人喚問で述べられておるとかというようなものもこれは公になつておると見るのか、そこら辺が非常に問題の存するところだと思うのですが、その点についてこれは一体どういう意味か、その点をお伺いしたいと思います。
  66. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お答え申上げます。「公になつていないもの」とございますのは、公にされた理由の如何を問いませんが、更に公にした者が誰であるかということも問わないわけでございます。従いまして政府機関が公表しました場合は勿論でございますが、新聞雑誌等に掲載されたものは除かれる、なおその新聞雑誌等が外国で刊行されておる、或いは先ほどお尋ねがございました外国の国会公聴会で出ておるとか、或いは外国から放送されておるというようなものもすべて公になつたものといたしましてこの防衛秘密から除外する趣旨でございます。
  67. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうしますと、この法案が参議院の本会議で提出理由の説明があつて質疑が行われたときの緒方国務大臣の御答弁は今の点で、外国で公になつているものについてはどうかというのに対して、最近は昔と違つて官民の連絡、或いは認識の統一が図られておるから……、何だかその答弁を聞くと、外国と日本とが常に緊密な連携をとつておるから、従つて公になつておるという意味日本の国内で公になつておる意味だというふうに聞こえるような御答弁があつたのですが、それは今の御答弁のふうに解釈していいわけでありますか、念のためにもう一遍お伺いしておきます。
  68. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 本会議で緒方副総理がどういうような言い廻しをされたかちよつと私存じておりませんが、政府側といたしましては、先ほど申上げましたように日本国内で、公になつておりませんで、外国でそういうものに掲載されておるとか、或いは一般に何らかの形で出ているというものは、ここに言う防衛秘密には入らないという解釈をとつております。
  69. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからもう一つ、一条の三項の問題なんですが、特に二の「品目及び数量」ですね、この点で本日も午前中に国会審議権の問題と関連していろいろ質疑応答があつたようなんですが、この品目とか或いは数量というものは大体……殆どと言つてもいいと思いますが、国会審議の対象になるものだろうと思うのですが、その点はどうでしようか。
  70. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 大体私どものほうで法律上の問題は別といたしまして、事実上防衛秘密となつて来ると思われますものは装備品或いは武器そのものが全体秘密であるというようなものはなかなかアメリカは寄越さないと思います。従いまして大体におきまして想像できまするのは、レーダーでございますとか、それからその他艦艇或いは飛行機の一部分だろうと思います。従いまして殆んど大部分は国会の御審議に支障になるような秘密というようなものはないと思います。又たとえありましても、国会の御審議に必要な品目及び数量というものは、場合によりまして秘密会をお願いすることがあるかも知れませんけれども、国会には御説明ができるものとは存じております。
  71. 楠見義男

    ○楠見義男君 大体わかりましたが、さつき申上げましたように二の「品目及び数量」は、ということになつて来ると、これを秘密にする理由がどういう点にあるのだろうかということで非常に疑問を持つのですが、例えばレーダーならレーダーというものの構造とか、性能とか、修理に関する技術とか、使用の方法というものがこれは秘密であつても、レーダーが幾つだとかいうようなことは、これは秘密に私はならないのじやないか、こう思うのですが、而もそれは大体国会質疑の中で当然出て来ることでもあるし、秘密とか何かという性格のものじやないと思いますが、その点はどうでしようか。
  72. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 実はこの品目及び数量がこの法律で言う防衛秘密に該当するという場合は極めて少かろう、そういうふうに考えるのであります。極く極めて稀にあり得るかも知れませんが、そういう意味で載せておいた規定であります。
  73. 楠見義男

    ○楠見義男君 その極稀な場合と想像せられるのは、例えばどういう場合だろうかということを説明して頂いたら、一番素人にはわかりやすいのですがね。
  74. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) それは例えば或いはそういうものに秘密でないかも知れないと思いますが、ジェット航空機の中に搭載されておる部品の数、そういうものがはつきりしますと、それから直ちに性能や構造が推測される、そういう場合があり得るのじやないかというふうに考ております。
  75. 楠見義男

    ○楠見義男君 それから同じく第一条の三項の二の情報ですね。これは英語のインフオメーシヨンというのだろうと思いますがインフオメーシヨンという言葉は大体想像がつくことも多いのですが、日本語の情報という言葉になつて来ると、非常に日本人としてはわかりにくい言葉なんですが、ここで言つておられます情報という意味はどういう意味なんですか、日本語で……。
  76. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) おつしやられますように日本で極く一般に情報といいますと、非常に不確定な意味を含んでおるように考える次第であります。ここで言つております情報というのは、ここに書いてありますように装備品等に関して或いは「構造又は性能」、「製作、保管又は修理に関する技術」、「使用の方法」、この三つに関する情報でありまして、普通に言われますような戦略情報という概念は含んでいないわけでありまして、主として装備品に関する技術的な知識とでも申しますか、そういう観念に当るわけであります。
  77. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、俗ぽく言つて説明書というふうに理解していいのですか。
  78. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 具体的に申しますと、これは本文に書いてある限りでは技術及び知識ということを指すことになるわけでありますが、物の形になりますと、或いは設計書だとか或いは書籍の形をとりますと、その物の構造、性能を解説した本、そういうものになると思います。
  79. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は実は今の、さつき午前中の羽仁さんの質問に関連していろいろ質問が出て来たと同時に、明らかにしておかなければならんという観点から、今のことを伺つているのですが、というのは、さつき申上げたように、二条の標記を附したものが秘密になるかというと、そうじやなしに、もつと基本的な、公けにされていないという点で、防衛秘密という観念をここで設けられておるから、そこでいろいろ明快にしておかなければならんということは、恐らくこれは衆議院でも随分御論議のあつていることだと思うのですが、特にアメリカにおいて定めておる秘密の等級に応じて、日本もその等級を附する、こういうことになつているのですね。そこでその等級の問題に関連をするのですが、恐らく等級を定めるというのは、その等級の、まあ軽重の度に応じて刑罰、罰則の適用というものがそれぞれ違つて来ると思うのですね、若しそうだとすれば、こういう刑罰法規ですから、等級それ自体によつて刑罰の量定も変るのだというような観点から、そういう問題は法律で決定すべき問題じやないかと、こういうふうに思うのですが、この点はまあ法務省になりましようが、どうでしようか、お伺いしたいのです。
  80. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) この第二条の標記を附する場合に等級がつけられることも、これは楠見委員の仰せられる通りでございますが、私ども聞いておりますところによりますと、例えばそれが高度の秘密に属するという場合には、行政上の取扱いが追つて来る。非常に少数の範囲にしか知れないような状態ということになつております。或いは保管の方法が違うということになる。その取扱いを厳重にするか、或いは少し緩めていいかという点が、第二条の等級の標記によつてつて来るのでありまして、直接的に刑罰法規のほうの刑罰の問題とは関連がないと理解いたしております。ただ情状の問題として、或いはその処罰の量刑の上に影響があるかも知れませんが、これは情状の問題として取扱い、法律上の問題としては取扱わない、こういう建前で立案いたしておるのであります。
  81. 楠見義男

    ○楠見義男君 私お伺いしたのは、そういう情状の問題であつても、少くともアメリカと同じ等級を考え、その等級において、等級の作られた、例えば厳秘だとか、秘だとか、極秘だとか、そういうものにそれぞれ応じて、量定が仮に初めから明らかでなくても、情状等でも考えられるということであるならば、むしろそれは法律的にそういうものを明らかにしておくほうが親切な法律じやないかと、まあこれを反対する立場から言えば、これは元も子も皆反対なんですけれども、これをできるだけ濫用でなしに、或いは国民もそれをあらかじめ知つておくというような観点から行けばいいのじやないかと、こういうつもりなんですがね。それはもう、そういう場合はいいのですか。
  82. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 恐らく非常に高度の秘密でありますと、そ保管方法も厳重にされていると思います。この厳重さを破るというところの悪性が情状に酌まれるという場合があると思うのです。と同時に、第三条の第一項第一号に「目的」と書いてありますし、或いは手段が規定してございます。その内容によりまして、仮に取られたものが非常に軽微なものであつても、その目的なり方法が非常に悪質であれば、同時に厳刑に処せられる、かような観点もございますので、このような規定の仕方でよいのではなかろうかと、かように考えております。
  83. 楠見義男

    ○楠見義男君 それから三条なんですが、これはさつき申上げたこととも又関連するのですが、本来我が国には軍事秘密というものはない。ただこの法律によつて防衛秘密というものが生じたという観点からものを考えた場合、この処罰規定は一体何を狙つているのだろうか。その防衛秘密に近寄つたということを処罰の対象にするのか、或いは要するに、それが公にされるということが一番心配なんだから、漏らされるということが心配なんだから、タッチしたというだけではなしに、それが汎用に知らされるという点を擁護すべき法益と見るのか、ここが非常に問題だと思うのです。この法律で行きますと、その点は、例えば三条の一号のごときは、そのタッチするという、触れるという点を悪性と認めておるかのごとくであり、又その他のところでは、漏らすという点にあるようにも見えるのですが、一体この前提を、本来我が国は軍事秘密というものはないんだ、この法律によつて初めて秘密ができたということを前提にして、そして保護すべき法益というものにタッチされることを擁護すべきなのか、それが漏らされるということを擁護されるべきか、どこに重点を置いて、この法案立法されておるのかというその御意思をお伺いしたい。
  84. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) この法案最後の狙いは、かような防衛秘密が、よそに漏れてしまうということを防ぐところにあることは申すまでもないと存ずるのでありますが、この漏泄を防ぐために、或いは第三条第一項第一号のような「目的」或いは手段で以て、探知収集しようとする、その段階においてこの漏泄を防ぐということも一つ考えられます。なお、第五条の「陰謀」或いは「教唆」「せん動」、こういう段階でも取締りをしたい、かように考えておるわけでございまして、これらすべて究極的には、他人に漏泄することを防止する方法として、かような規定を設けているのでございます。  なお、最初に仰せられました防衛秘密、これはこの法案によつて初めて守られる法益になつて来るのでございますが、成るほど軍事上の秘密というわけではありませんが、日本の防衛を全うする上においては、かような防衛秘密を守る必要があるという点について、その必要件は私ども疑つていないところでございます。
  85. 楠見義男

    ○楠見義男君 そこでまあ今の御説明で行くと、タッチするということ自体が、或いは漏らすという危険もあるから、先ずタッチというものを抑えなければならん、併し究極は漏らすということを防止するようなふうにもとれたのですが、ここで、これは参考人の意見をいろいろ聞きましたときに、伺つた疑問なんですが、私もその点は多少疑問に思いますが、例えば第三条第一号において「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」が、これを他人に漏らした場合は、二号で処罰の対象になつておる。ところが「安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」「探知し、又は収集した者」が他人に漏らしたときは、これは罪になつていないと、これはむしろ本さえ抑えればあとはいいんじやないか、こういうことであるのかも知れませんが、そうなると二号が重複しておるようになつて、ここは彼此均衡、条文上或いは立法技術上ですか、彼此均衡を失しているような気がするのです。それからもう一つは、四条で「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を過失により他人に漏らした者」これは処分されますが、その秘密を漏らされた者が更に他人に漏らした場合はこれは処罰の対象になつていない、これもおかしいじやないか。このときは、すでに一遍他人に漏らしたら、それが極く一部の、例えば一人の人であつても、そこで公になつたのだからそれはもう保護すべき法益の中に入らない、こういう御解釈か。実際はなかなかそうではなかろうと思うのですが、今の二つの点はどうなんですか、ちよつと御説明頂きたい。
  86. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 最初の問題でございますが、第三条の第一項第一号の目的で探知し収集したときはその既遂罪になるわけでございます。それでその探知、収集した者が漏らした場合どうなるかということになりますが、その場合はその漏らした防衛秘密の内容というものが通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものであるならば、やはり第三条第一号、第二号の罪を構成するわけでございます。多くの場合第一号の探知、収集者が漏らした場合には第二号の罪も同時に成立するというふうに考えております。それから次の第四条の関係でございますが、業務により知得し、又は領有した防衛秘密を過失により他人に漏らした際、これを聞いた第三者が又漏らしたという場合でございますが、この場合は、若しもその漏らされた内外が防衛秘密であることを認識しており、而もその防衛秘密が通常不当な方法によらなければ探知し又は収集することができないものであることの認識がその第三者にございます場合には、第三条の第一項第二号の罪を構成するものと考えられるわけでございます。ただ過失によつて漏泄したものを聞いたという場合に、それが防衛秘密であるという認識を欠く場合もあるかと思います。かような場合には第三条の第一項第二号によつて処罰されないというわけでございます。  次に、第四条の他人に漏泄した場合、直ちにこれが公になるかと申しますと、さようではございません。公と申しますと、もつと広い範囲に、これが公になつた場合に限られるのでございまして、たまたま例えば工場で、この防衛秘密を扱う工員から聞いたというだけではこれは公にはならない。或いは自衛隊員から安くたまたま聞いたというだけではこれは公にはならないことは勿論でございます。
  87. 楠見義男

    ○楠見義男君 それで不当な方法という今の御説明がありましたが、その点が非常に問題になつておるのですが、実はこれはもう情けないことなんですが、日本人の多数の中には自己否認的なものの考え方をして、又事大主義的なものの考え方をする人が多いのです。そこで戦争中でもよく、例えば、これはもう日本は危いぞということを不用意に言う。それを又右から左に、口から耳へとこうして行くのですね。その場合に今おつしやつたようなことで、例えば何ということなしにしやべる。その人がたまたまおしやべりの人で、日本人通有のそういう性格を持つていてしやべる。こういう場合に、ときによつてはこれは不当な方法というふうに認定されたりされなかつたりすると、非常に困るのですが、その点をもう少し明らかにして頂きたい。
  88. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) その不当な方法、或いは通常不当な方法ということの内容が不明確ではないかということでございますが、例えば旧軍機保護法などにおきますと、かようなしぼりはございません。偶然の事由により知得し、又は領有した秘密を他に漏らした者ということで、何人もどういう理由があろうと、偶然聞いたものを人にしやべつてはならない、こういう規定の仕方でございましたが、それでは余り広過ぎはしないかというので、前の刑事特別法の当時に相当検討した結果、かような方法、或いは通常不当な方法によらなければというしぼりを設けたのでございます。戦争中仰せのように戦況、或いは軍の状況等町をしやべるということについて、いろいろの問題が生じておるのでありますが、多くの場合は、あの当時ございました造言飛言罪、或いは人心惑乱罪、こういうものが問題になつたのでございまして、軍機保護法のほうで問題になつた例は案外少かつたように記憶いたしております。而も旧軍機保護法におきましては、相当秘密範囲が広汎に亘つており、或いは省令で規定してございまして、非常に広範囲でございましたが、その点はこの法案におきましては第一条の第三項で極めて限定した品目、数量は別といたしまして、そのほかのものは科学的な知識、非常に高度なものを要するものに限られているのでございまして、一般人が俄かにこれを知つて語られるというような生まやさしいものは含まれていないつもりであります。この点の御心配もあるかと存じますが、私どもはこの法案によつて国民の皆様に御迷惑をかけることはないと確信いたしておる次第でございます。
  89. 楠見義男

    ○楠見義男君 不当な方法について今まで私伺つた御答弁で、例えば社会通念に照し妥当ならざる方法を不当な方法というのだというふうな御答弁を聞いたことがあるのですが、そこで問題になるのは、参考人の中でも新聞社の人がそういうことをよく言つておられたのですが、これは半分笑い話みたいなものですが、スクープするとか、これはいわば不当でないと見られるのが普通だと言うのですね。スクープは、それはそういうふうな解釈をその人は心配して言つておられたのですが、あなた方のほうは新聞のスクープなんというのは不当な方法と御覧になるのですか。
  90. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) スクープする方法がちよつと私にはわかりませんが、午前中木村大臣からもお話がありましたように、この第一条の規定しておるものが新聞社によつてスクープされる、そういう場合においても第三条の不当な方法でそれが行われるということは、私ども常識上考えていないのでございます。
  91. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申上げますが、普通スクープですね、新聞社でやる何は私は方法の程度如何であると思うのです。新聞社でも特にこういう防衛秘密なんかをスクープする、これは私はちよつと考えられないのです。これは国家を防衛して行こうという、そこで私は普通のスクープの従来やつておるようなやり方ではわからないのじやないか。新聞社のほうでもそこまで手段を講じてこの防衛秘密を知ろうとはしまいと考えております。普通考えられることは朝も申上げたのですが、例えば立入禁止区域をずつと設けてそこには防衛秘密があるのだということを標示しております。それをそこに忍びこんでスクープしようというのはまさに引つかかるわけです。併し普通の方法でいろいろ探索してやるということは或いは引つかからないと思います。又今も極端な例でありますけれども、自衛隊でこの防衛秘密関係のあるものを女とか金でごまかしてそこから一つスクープしてやろうということでやれば、それは引つかかると思います。そういう態度でないのであれば、普通新聞社なんかで用いられるスクープの方法というのは、こういう点は引つかからないと私はこう考えております。
  92. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は四条の過失の漏洩に引つかかる場合に裏腹の場合がよくあるのじやないかと思うわけです。例えば新聞社なんか、その場合にそれは不当な方法になるのか、これがまあスクープの事例としてよく出て来るのじやないかと思うのです。そういう場合は不当な方法と見るのか見ないのか。これは恐らく今の木村さんの御答弁で行くと、不当な方法ではないようにも理解できるのですが、担当者に対していろいろ意見を聞く、その担当者は不用意に話をする。それはその担当者は四条で処分されると思います。併しその新聞社のほうはこれは不当な方法ではなくてやるのだからそれはいいと思うのですが、そうでしようね。
  93. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私もそうだろうと思います。
  94. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからもう二つだけ伺いたいのですが、一つは三条の一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて」、ということなんですが、この目的と言いますか、意思は本人の意思ありや否やというものを客観的に認定する場合もあるのか。飽くまで本人の意思というものをどこまでも……、本人について例えば自白とか何とか或いは何かありましようが、そういうことになるのか、その点はどうなんですか。
  95. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 仰せのように、本人の自白もその資料になると思いますが、その他状況証拠或いは関係人の供述或いは文書その他これに関連する一切の証拠を以て認定せらるべき問題と存じます。
  96. 楠見義男

    ○楠見義男君 そこでその場合に、例えば、言いならされた言葉ですが、二つの世界に分れている。その一方のほうのソ連、共産陣営ですか、共産陣営のほうにした場合には、これはそういう一定を或いはせられるのじやないかと思います。ところが民主主義陣営の人にした場合、これ又やはり「わが国の安全を害する用途に供する」と認定されましようか、どうでしようか。
  97. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 具体的な問題について検討せらるべき問題だと存じます。只今の民主主義陣営に属するというだけで「わが国の安全を害すベき用途に供する目的」ではない、そう即断はできないのじやないかと思います。
  98. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからもう一つ最後に、三条の三号の「業務」ですね、「業務」についてもいろいろ問題があつたようなんですが、これは本来防衛秘密を取扱うことを業務とするものをいうのだ、こういうふうに伺つておるのです。従つて、ところがまあそうだろうけれどもはつきりしないと、こういう議論をする方もあるのです。だからこの点は「業務」というのは防衛秘密を取扱うことを業務とするというふうに直つても、一向政府のほうでは趣旨には異ならないから困らないと、こういうふうに理解していいのですか。
  99. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 防衛秘密を取扱うことを業務とするというお言葉にちよつと問題があるのじやなかろうかと考えます。私ども自己の従事する業務に起因しまして知るべきして知つておること、こういう考え、即ち職務権限に基いてその秘密内容を知つておる、こういう考えなんでございます。で、只今楠見委員の仰せられましたような防衛秘密を扱うことが業務であるということになりますと、例えば工場におきまして修理に従事しておるものが、この防衛秘密に属する武器の修繕に当つておる、それで防衛秘密を知つた場合に、それに果して入るかどうか少し疑問が残るのではないか、かように存じます。  なお、御心配の「業務」の範囲が明確ではないじやないかという点でございますが、この点はたしか参議院における公聴会のときに大竹先生も申されております通り、報道関係者が入らないことは、前の軍機保護法その他当時の学説上殆んど争いがなかつたところでございまして、そういう意味の混乱というものは起きないのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  100. 楠見義男

    ○楠見義男君 今おつしやつた自己の業務によつて知るべくして知る場合のことを言うということになりますと、国会議員がその業務によつて知るべくして知る、こういうふうにもとれるのですが、国会議員もこれは包含されておりますか。
  101. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 若しも秘密会等におきまして国政審議の上からその防衛秘密というものの内容をお知りになつた場合、これを他に漏らされるとやはり「業務により」ということになるかと思います。
  102. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつと関連して……。何ですか、国会の仕事は業務ですか。職務ということは言えるかも知れないが、国会議員が業務かね。そういうことを特に明らかにせんといかんよ。国会議員の職務ということは言えるが、国会議員国会へ出て法案審議し、予算を審議することは業務であるというようなことは初めて僕は聞くのだが、それでいいかね。
  103. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 只今の一松先生のお話でございますが、この業務の中には職務も入ると、かように解釈しております。
  104. 一松定吉

    ○一松定吉君 そう解釈すれば別に応対もしないがね。併しそれは法律用語としては間違いだね、そんなことは……。
  105. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は一応ざつと伺う点だけ伺いましたからあとで又疑問が出ましたら別の機会にお伺いします。
  106. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 一般的な問題についてですが、先日来の政府のお考えの中でどうもこの点はつきりしておかないと、後にとんでもないことになるのじやないかと思いますのは、一つは外国には軍機保護法のようなものがあるけれども日本にはない。そこでこういうものを出すのだというように伺えば伺えるような御説明がありますが、これはそういう御趣旨じやないと思うのでありますが、これは午前中に伺いました、日本には本来的の意味における軍事的秘密はない、ないのが喜ぶべきことなんであつて、従つて日本に軍機保護法のようなものがないことは喜ぶべきことなんだ。で本法案というものはそういう意味において諸外国におけるいわゆる軍機保護法というふうなものとは何らの関係のないものであるというふうに了解すべきものだと思います。そうして現在の憲法の命ずるところでは日本はそういう軍機保護法のようなものを作るべきものではない、こういうものを作らないことのほうが幸福なんであるという考え方の上に立つていると思うのですが、この点について念のため今一応政府の明確なお考えを伺つておきたいと思います。
  107. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 軍事的機密の問題については、午前中お答えした通りであります。それがあることが幸福であるか、ないことが幸福であるか、少くとも現在の憲法はないことのほうが幸福であるということを或いは規定しておるかも知れませんが、先ほどお答えした通りでございます。
  108. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは一般国会審議の場合でも、それから又輿論の了解を求められる場合でも、外国には軍機保護法というものがある、日本にはないのだ、それでこういうものを作るのだということは、私はなかなか危険なことになつて来ると思います。日本に現在外国にあるような軍機保護法がないことは、憲法の厳に命じているところで、それはないのであると思います。  それからその次に伺つておかなければならないのは、今の条文の上では「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」こういうところと関連があるのですが、それよりもつと広くこれは問題になつて来ると思うのです。不幸にして現在日本のみならず世界的に我々は節操に生きるか、それとも叛逆者となるか、そのいずれかを選ばなければならないような場合が現に実際上に幾つか起つている、叛逆者というものはこれは怪しからんというように考えるのは、実は極めて浅はかな考え方であつて、例えばシエイクスピアの芝居を見ても、そこに現われて来る主なるヒーローというものは叛逆者です。叛逆者というものは無頼漢である、悪いやつだ、悪者だということならばシエイクスピアの悲劇なんというものは成り立たないのですよ。いわゆるエリザベス王朝時代というものには、実際高邁な識見を持つている人ほど叛逆しなければならないのじやないか、この矛盾がシエイクスピアの悲劇全体を貫いていると言つても差支えない。極く最近でも例えばナチスがフランスを占領した、その場合にフランス人らしいフランス人は叛逆を考えざるを得ない。それで現にそこにフランスを支配しているところのナチスと協力しているヴイシー政府というものに叛逆の行動がフランス人としての高い意味におけるローヤルな行動である。それから最近アメリカとの関係についてしばしば起つている例えばフツクス博士の事件というような場合についても、イギリスの新聞では原子爆弾の秘密というものを明らかにする、それを秘密でなくするということが世界を脅かしているところの戦争の不安を除くという非常に高い一つの高邁な識見、それに賛成するかしないかは別としても、それに反対の立場をとる人々としても、そういう考え方というものがやはり憂国の、至情というか、そうして而も一身の危険を顧りみないで平和の確信というもののために立つているのだから、このフツクス博士の事件というものは刑法上の問題とさるべきものではないということを、当時のイギリスの新聞が指摘していた事実がございます。これらが現わしているのは何かと言えば、つまりその主な理由は二つあるでしよう。一つは現代が非常に動いているということです。それでデイエンビエンフーの陥落というような事件が眼前に起つている。そうしてその事件というものは、その歴史的な必然というものは防ぐことはできない。だから私は午前中にフエア・プレーの精神と言つたのですが、この古い時代が新らしい時代になつて行くということまでもだ、この立法によつて防ぐということはできない。それからこの法律によつて何か現在の世界の国際情勢、即ち米ソの間の国際情勢というものを前提にしてこういう法律作つて来るということになれば、それは法の権威のためにそういうことは許さるべきことでない。そういう点から「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」というものについては、私はこの文字が現わしているように簡単な問題ではない。今申上げたような点をも含んで、この「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」ということについては私は問題があると思うのですが、政府のお考えでは問題はないというふうにお考えになつておるようであります。で、さつきの不当な方法で、通常不当な方法によらなければ探知し得ないものを探知するという場合に、木村国務大臣新聞社がこういう国防、防衛上の秘密にされておるものを侵すようなことは作つてはおらないとみなされるかのようなお話があつたのですが、この場合に新聞一つの主義主張を持つており、むしろその新聞考え方のほうが我が国の安全を守るという考え方であるという確信に立つてやる場合が私はあるだろうと思う。現に戦争中のことを考えてみても、当時の東条内閣という人たちがやつていることが我が国の安全を害しているじやないかという考え方が若しあの当時何らかの形で許されたならば、日本はあれほどの悲劇に導かれないで救われることができたかも知れない。ところがこの点について我が国の安全を害すべき用途というものが極めて浅薄に断定されるために、本当の意味の安全が害されて行つてしまうことがある。そこでこの場合についてどういうふうなお考えであるのか伺つておかなければならないと思います。
  109. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) およそ世の中に何が正しいか、又どういう政治が正しいか、具体的に申すと、民主政治がいいのか、或いは共産主義政治、繰返して言えば全体主義政治がいいのか、これは最後は神様が判断するのであつて、今後数百年、数千年経つて初めてわかることである。現在においておのおのそういう主張を以てお互いに論議することはこれは自由であります。併し少くとも自分考えておる政治なり、主義なりを暴力を以てこれを主張しようということはこれは絶対にいけないのです。現段階においてもこれは排撃すべきものであろうと考えております、暴力を以て自己の主張を貫こうということは……。そこで申上げたいことは、我々としましては、現政治のよしあしは別として、少くとも我我が生存している上において、国家として国民の自由と安全を守らなければならない、国内の秩序を維持しなければならない、これが生命であるのであります。一たび外国からの不当な侵略を受けますと、国民の自由も安全も一朝にして破壊されるのであります。これは如何なる政治家といえども保護して行かなければならない目的と我々は考えております。従つて外部からの不当侵略に対して対処し得るためにこの法案ができておるのであります。繰返して申しますると、それに持ち得べき高度の秘密を保持しなければならん、これが目的であります。ここにおいて我々は国家の安全と国民の自由を保護するために必要なものであるから、この法案は少くともこれを維持する必要があると、こう考えておるのであります。不当な方法については先ほど申上げた通り新聞社といえども我が国の安全を害してまでスクープしようなどということは、私は考えておりません。外部からの不当侵略に対して対処するのは国民全般に関する問題であります。新聞社といえども、外国からの不当な侵略に対してこれを傍観しておるはずはないと思います。いわんやそれを裏切つて日本の安全を害し独立を破壊するような行動に出ることは万なかろうと我々は確信しておるものであります。
  110. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の申上げている点が徹底しないのかも知れませんのですが、今、木村長官のおつしやいますこの考え方の違いというところまではお認めになつたんですが、その違う考え方を暴力によつて遂行しよう、それで暴力というのは、今度は別の言葉では武力で遂行しようということにもなつて来るでありましよう。で併しこれも私は勿論それを飽くまで防がなければならないと思うのですが、双方の力の関係でできて来ることだろうと思うのです。で例えばまあ四十七士が主君の仇を報ずる、今日はあり得ないことですけれども、それによつて吉良上野介の首をあげる。それによつて四十七士が極刑を受けるけれども、それを社会は四十七士をいつまでも記憶しておる、そういうような封建時代においてもそういうことがある。この我が国の安全を、何が我が国の安全を害するのかということについては、これは木村国務相も相当にこれは高度の識見というものに頼らずんば決定することはできない言葉じやないかと、お考えになるのじやないかと思いますが、如何でしようか。「我が国の安全を害すべき用途」というのは、誰にでもこれはわかるのでしようか、それとも相当に高度な識見を前提にして初めて断定できることなんでしようか、如何でございましようか。
  111. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは識見の問題じやありません。常識の問題であります。つまり日本の秩序を破壊し、日本を混乱に陥れるということは、これは国家の安全を害するわけであります。要するに日本の防衛のために高度の秘密を守つて行かなければならない。これを破ろうとするのは、つまり日本の秩序を破壊して国民の生活を危殆に瀕せしめるということになるわけであります。
  112. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは佐藤さんのほうの御意見はどうですか。
  113. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 木村長官の答えた通り考えております。
  114. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうすると「我が国の安全を害すべき用途に」というようなことについては、何ら問題はない。お巡りさんなり或いは何なりで簡単に解決していいんだということなんでしようか、どういうんでしようか。
  115. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お巡りさんやら何やらでなしに、裁判官がその良識に基いて最終的には決定せられることだと思います。
  116. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その裁判官がこういう我が国の安全を害するかどうかという判断をすることを、我々は裁判官に期待することは許されるのでしようか、どうでしようか。
  117. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それが許されないということになると、何をよりどころにしたらいいかという次の疑問が起つて参りますが、私どもは当然裁判官がかような判断はすべきである、又できることであると考えます。
  118. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは従来の例からもあることですから、先日の公述人の意見にもあつたと思いますが、これはなかなかやはり裁判官ではわからない。結局昔は軍のほうへ行つて聞くということになつてまつた。ですから今日でも今のようなお考えであると、やはりこれは結局は自衛隊に行つてつて来なければならんということになる。で実際上はこれはつまり軍事的見地から決定されることなんで、政治的見地から決定されないのじやないかという点が非常に大きな問題になつて来ると思いますが、その点についてはどうなんでしよう。
  119. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは事実の問題であります。この法案に示すがごとく一々秘密対象を挙げておるのであります。この対象に該当するかどうかということは、最終的には裁判所が判断するのであります。決して保安庁若しくは自衛庁、防衛庁その他自衛官が関与すべき問題ではないと考えております。
  120. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そのいわゆる防衛に直接関係している人が関与すべき問題でないということをはつきり御説明つて非常に有難いと思うのですが、実際上の問題としては、過去においてもそうであつたし、それが今後においてそうでない、そうでなく行くためには、これは非常な努力をしなければならんだろうと思います。このままで以て私は行くとは思われない。でその中でも特にやはりこの問題になつて来るのは、大体がつまりさつきの楠見委員からの御質問にもあつたのですが、これらはすべてつまりアメリカからいろいろの武器を供与されて、そうしてそれによつて国を守つて行くということが我が国の安全を害しているのじやないかというような考え方も、その当否は別として決して成立たないことはないのじやないか。そうしてみるとこの我が国の安全を害すべき用途に供する目的を以てということに、これの解釈については、私はいやしくもこの問題になつている、いわゆる防衛関係者という者の独断というものが現われて来ないために、どういうような努力をなさるおつもりなのか、それを伺つておきたいと思います。
  121. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 羽仁君は或いはソビエトから守つてもらうことが日本の安全に却つてなるのじやないかとい御議論であるかも知れません。我々は将来においては日本独自の防衛態勢を立てたいと考えておるのであります。併し差当りの問題といたしましては、アメリカの駐留軍と手を合せて日本の防衛をして行こうということは、これは日米安全保障条約によつて当然のことだと考えております。そういう意味においてMSA協定を結ぶ、アメリカから供与を受ける高度の秘密兵器を我々は又守つて行こうという考えから、この法案作つているわけであります。従いましてほかには他意はありません。これが日本の国の安全と独立を守る方法の一半であろうと我々はこう考えております。
  122. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そのアメリカに頼るのがいいか、ソビエトに頼るのがいいか、それともどこにも頼らないで独立して行くのがいいかということは、それぞれの議論の余地のあることなんですけれども、今伺つているのは、そういう問題ではなくて、いわゆる実際上に、ここに武力を持つた自衛隊というものができて来ると、こういう立法自衛隊によつて運営される虞れがあるのじやないか、それは許さないというふうに、今木村国務相としてははつきりおつしやつた。ですからそれを許さないとすれば、そういう動きが起つた場合にどうしなければならんか、或いはそれをどういうふうにして防ぐかということを伺つておかなければならん、許さないという御態度は非常に有難く頂戴するのですが、それをどういうふうに防いで行くのか御説明を願いたい。これは佐藤さんから一つ説明して頂いて安心させて頂きたいと思います。
  123. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 午前中からのお話をいろいろ伺つておるので、それについて私の思い違いかとも存じますけれども、頭に上つたところを申上げて見たいと思いますが、午前中に破防法のお話がちよつと出ましたけれども、あのときにはお話にもありましたように、団体の規制措置というような一つの行政措置によつて、一種の自由なり、人権なりの拘束が行われるという行政処分があつたわけです。これは非常に一方からは恐ろしいということでいろいろ御批判があつたわけでありますが、その頭で今度の法律を眺めて見ますというと、それは実はないわけなんです。仮に建前をこれとは変えまして秘密の指定というものを保安庁自衛隊の人に指定をさせる。そしてその責任において指定をしろ、それらが指定したものはここで秘密になるので、それを盗んだら罰するというような形になれば、多少それに近い形に私はなると思いますけれども、昔の国防保安法なんかはその形で行つたわけです。ところが今度はそういう色彩を一切除けて、法律自身がすべてを賄う。そして最終的には裁判官の判断に任してもらつて、途中で保安庁なり、その他の役人が出て来るのは、第二条の標記の関係、これは先ほど申しましたような秘密の指定の意味ではなしに、むしろこれによつて万全を期する。場合によつては標記のないことのためについ知らずに犯したという人は、むしろ証拠の関係では勿論罪にならない。標記を知つて犯したものは、その証拠のほうではむしろ或いは処罰の方向に向うということにはなりましようが、要するにそういうことでございまして、先ほど来私が裁判官、裁判官と申上げたのはそういう趣旨で言つております。そういうことを先ず申上げてそして次のお尋ねを頂きたいと思います。
  124. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 自衛隊法などによつていわゆる文官優位を覆すというような世間の疑念を受けておられる点がありますが、この点についてはどういうふうに御説明を頂くことができるでしようか。
  125. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 文官優位というのは、これは語弊があると考えます。いわゆるシビリアン・コントロールだと私は考えております。政治が軍事に優先する、これでなくちやならんと考えております。我々といたしましては政治がすべてを支配する、その建前をとつておるのであります。ただ、今度の防衛庁法の原案においては、制服を一たび着たものでも有能の材であれば、制服を脱いで内局に勤めることにしたのであります。一たび制服を着たからこれは内局へ勤めることはできんということになると、私は適材適所主義から非常に困るのじやないかというふうに考えております。例えて申しますると、今制服を着ておる者でも、昔はシビリアンで立派な人があるのであります。そういう人が制服を一たび着たから内局に来られんということになると、甚だ不都合を生ずる、又制服を着た者と内局、いわゆる平服を着たものとの間の和合から言つても私はよくないと考えております。一たび制服を着た者でも内局に置き、内局の者でも適当な者があれば制服を着せる。この融通無碍の態勢をとつて行くということが却つてよかろう、私はこう考えております。併し今申上げましたように、政治が軍事に優先して、どこまでもシビリアン・コントロールで行きたい、こう考えております。
  126. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その軍事が優越するということは絶対に日本では繰返さない、許さない、政治が軍事に優越するという点を繰返して頂くことは非常に有難いと思います。それが、今度は佐藤さんに伺いますが、今どういう法律なり何なりによつて確かに保障されておるのでしようか。
  127. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 気味の悪いお尋ねでございますが、私どもの考えておるところ非常に貧しいお答えになると思いますけれども、当然のことと思いますのは、とにかく現在の憲法を楯にして考えて行けば、今問題になつておるような、例えば自衛隊その他の問題ということは、当然三権分立の分類に従えば行政権であることは明瞭であると思います。従つてその行政権であるという性格においては警察その他の一般の行政の仕事と同じ性質のものであつて、而してそれは内閣の責任事項になつておる。そうして議院内閣制の下においてその監督者は国会である。そうして国会に国権の最高機関であるという建前になつてつて、行政の我がままということはできない形に厳然としておるわけでありますからして、その意味では大きな意味ですべて昔のような統帥なり、軍部そのものの我がままということは防止されておるというふうに、これはどこから見ても申上げざるを得ないわけであります。それが一番の根本になつておると考えております。
  128. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 旧憲法で軍事が政治よりも優越してしまつたのはどういう理由によるのでしようか。
  129. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは羽仁先生のほうが率直に申しましてお詳しいと思います。併し実は旧憲法の下においても軍隊が政治よりも強い、勝つというような条文はないわけであります。天皇は陸海軍を統帥するという言葉一つでありまして、今の私の現在の憲法についての説明から言えば、やはり行政権と扱つておつたという見方ができると思うです。これはもう御承知通りに旧憲法発足当時からもはやこれは別のもので、統帥権の独立ということはすべて既定のもののごとくにされて、そうしてああいうことにだんだんとなつて行つたということ、これは事実であります。併しながらそこに今の憲法との大きな違いは先ほど申上げましたように、とにかくそれは天皇の大権事項というもの、今日の憲法におきましては行政大権だとかそういうようなものは全然ありません。国会の下にすべて隷属しておるという形において根本的に違つておりますから、今のような、明治憲法のような過ちをくり返す虞れはなくなつているというふうに信ずるわけであります。
  130. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そこで木村国務相に伺つておきたいのですが、最初にこの法律案をこの委員会で御説明下さいました当時などには、この法律案というものが現状の状態ではこれで十分なんだが、将来に行くと、或いは十分でないかも知れないというようなお考えの御説明があつたと思いますが、今佐藤長官からも御説明がありましたように、旧憲法といえども必ずしも軍閥の横暴というものを許すようなそういう建前ではなかつたと思うのです。そこでここでは二つ問題が出て来ると思うのですが、この立法というものはいわゆるこれもしばしば言論界で批判されておりますように頭を出す、橋頭堡的なものを作る。そうしてこれが法律で成立しさえすれば、あとはなだれを打つて軍機保護法というようなものに邁進されるのだというような誤解を受けておられますが、この際その誤解を一掃して頂くことができるのかどうか、当然できると思いますが……。  それから第二は、この法律案と並んで現在政府がいろいろに計画されておることがあるようであります。それはもとより具体的な問題としてはやはり法律案として提出されておるもののほうで考えて行かなければならないと思いますが、併しすでに或いは通常正当な方法によらないで新聞紙が発表をしたのかも知れないのだが、併し新聞でかなり正式に内容を発表されているようなものも、やはり判断の材料になると思うのですが、それらはつまり現在すでに提案されておる法律案や、それから政府が計画されておるようなそういう点について、今言つているような憲法が例えば改正されて、そして今天皇に関する規定であるとか、或いは言論の自由に関する規定であるとか、或いは国会審議権というふうなものに関する規定が、今報道されているような形で改められて来れば、これは今佐藤さんから御説明があつた通りに、旧憲法時代と大差ない状態となつてしまう。そうすれば軍閥の復活、それから旧軍機保護法や国防保安法の復活という憂えを国民が抱くのも、これは決して無理からんことになつて来る。ですからその第一には、この法律案というものが、これを一瞬拡大したものの先ず最初のものとして出されているのだという誤解に対しては、政府はどういうふうにその誤解を解かれるのか。それからこの繋と並んでいろいろ計画されているものとの関係において、やはりこれは旧軍機保護法の復活の方向に立つものじやないかという心配に対しては、どういうふうに御説明を頂くことができるのか。その一点について伺つておきたいと思います。
  131. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 政府では、只今審議つておりまする防衛庁関係法案、即ち防衛庁設置法業と自衛隊法、而して今審議の途中にありまする秘密保護法、これであります。その以外に今何も考えておりません。ただ、私の申したのは、将来自衛隊法が通過いたしますると、自衛隊外部からの不当侵略に対して行動を起す場合があります。即ち防衛出動する場合がある。この場合に出動部隊の行動とか任務とか、その他秘密にせらるべき事項があるはずであります。それらについては保護をして行く必要があるのじやないか。併しこれを法律として提案するかどうかということについては、十分慎重なる考慮を要する。これは将来の問題であると、こう私は考えておるのであります。これらの点につきましては、十分に将来若し万一立案した場合には、国会審議を願わなければならんと、こう考えております。今は考えておりません。
  132. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そこで問題になつて来るのは、現在こういう立法をすることによつてどういう、何を得て、そして何を失うかということなんです。この日本自衛隊ができ、そしてそれに伴う秘密保護法というものができて……、憂えはもう決してないことはない。御説明を頂いているように、又それが相当の部分においては現在の政府のお考えを持つものだとしても、それを我々が現在の政府考え方として了解するということは不可能なことじやないのですが、他面において国民が非常に慮れているものは、やはり日本の軍国主義の復活、それから秘密政治の復活ということであろうと思います。ですからその場合に、私はこれが今非常に急いで作られ、この法律ができなければ、アメリカから秘密の兵器を、機密を持つている兵器を借りることができないというような御説明審議を急いでおられるのですが、私はその点について非常なやはり国民が不安を抱いておるのじやないかと思う。そこでさつきの問題に戻つて来るのですが、その意味から私は、そして政府の企図されているところを実現されるということのためにだけれども、それによつて併し元の軍閥の専横が復活するとか、或いは軍機保護法というものが復活するとか、そういう秘密政治が復活するということは、これは政府は飽くまでも阻止されようとするお考えではないかと思つております。ですからそれを阻止するための方法としては、午前中に申上げて来たような、一つには新聞その他世論の批判というものであり、一つ国会審議というものだろうと思います。ですから新聞の活動及び国会の活動というものは本法の対象ではないという態度をとられることが、私はそういう政府のほうからおつしやれば無用な不安だということ、それから私ども第一に恐れますのは、もう幾ら言つても駄目だ、先ほど申上げたように耳がないんだというように考えれば、議会とかそういうものを通じないで、ほかの方法でこれを阻止するよりしようがない。或いはこういう方法でどんどんアメリカヘくつついて行くならば、こちらとしてもそれを阻止して行かなければなるまい。さつき木村国務大臣は、私がどんな考えを持つておるということを問題にされたようですが、そういうことは問題じやない。国民のほうで疑惑が一掃されなければ、そういうさまざまな恐るべき考えが生じて来ることを防ぐことができない。ですから私は新聞の活動というものについては、新聞のスクープなり或いは新聞が情報を得るために活動されるということは、如何なる意味においても本法の中に入らないというふうなお答えが頂けることがこの法律案にとつては当然ではないか。新聞の活動として適当か不適当かということを判断するのは、やはり防衛庁長官なり何なりではなくて、新聞社自身である。これはこの間公述人としておいで下さつた新聞社の方もこのことを言つていられる。新聞記者が不当な活動か正当な活動かということは、自分で判断できることである。まま中には新聞の活動だという口実を借りて、それで不当な方法をやろうとする人があるかも知れない。併しながらそれは極めて少い例である。それを防ごうとして新聞社の全体の活動の、取材の方法が不当であるか正当であるかということは、新聞自身が判断するのじやないような形で判断するということを、飽くまで避けなければならん。ですから今この法律案によつて保護しようとしておるところの秘密が極めて局限されたものである、そうして又それが濫用されないように極力しぼるという御努力と並んだ考え方としては、私は新聞の取材活動というものがこの中には入らない。又国会審議というものはこの中には如何なる意味においても入らないということの御答弁が頂けるのじやないかと思う。併しどういう秘密があるかわからないからというふうなこと、又他の場合をおつしやるのですが、これはあとから伺いますけれども、アメリカが日本に非常に高度な秘密を供与するということがあり得るのかあり得ないのか。あり得るとすれば如何なる法律上の基礎によつてそういうことができるのか、その点は伺つておかなきやなりませんが、併し常識から考えてそんなに高度の秘密日本に入るというはずはない。ですからこの法律としても概略を見ましても、その他の点から言つてもここで問題になつておる秘密というものは、極めて局限された程度秘密だと考えられる。ですから極めて局限された程度秘密に関連して新聞記者の活動を不安ならしめ、又国会議員の活動を不安ならしめるということは私は妥当じやないと思う。この際その点について、さつきは一応形式上から、国会でも秘密会でやつたものとか何とかいうことをおつしやいますが、これは破防法や何かの我々の経験から、保安庁なり何なりは秘密会を開いて頂いても、実際において殆んど秘密会を尊重せられていない。日本国会がイギリスの国会のごとくに国会の中にあらゆる問題が公開されるという伝統を持つているんじやありませんし、やはり官僚主義が相当強いから、現に余り出て来てはいないだろうと思うのです。いわんやこの法律が対象にしているような極めて局限された程度秘密というものが問題なんですから、国会審議の場合、又新聞記者が取材の場合というようなものは入らない。主としてこの法律案はそういう防衛秘密を直接取扱う人々の問題だと思う。これは本法第三条の第三項の「業務により知得し、」というものについて、先ほどは前からの前例があつて新聞記者が入らない、或いは国会議員は入らないというようなお答えもありましたけれども、併し実際としてはいろいろの事件がやはりあつたように思います。それはその理由の取材活動とか、国会審議とかいうことではない理由に結び付けるでしよう。そういうほかの理由に結び付けて新聞記者の取材活動や国会議員国会における審議というものがやはり制限される心配が多分にあると思う。これは今申上げたような点、つまり第一には弊害恐るべしという点、それから第二には本法が対象としておるところの秘密の性質というものから言つて、そんなに広くこれを防ぐという努力をするほどの必要のあるものではないというこの二つの点から、私はいま一応政府の見解として、本法は新聞記者の取材活動、国会審議というようなものを対象とするものではないというお答えが頂けるものと考えるのですが、如何でしよう。
  133. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先刻申上げました通り新聞社の普通の取材活動は、それにおいて何ら私は制限を受けるものじやないと考えます。殊に新聞人は常識人であります。常識のある人が我が国の安全を害する意図を持つ取材をするようなことはないと考えております。又不当な方法でやろうというようなことはないと考えております。要は、日本外部からの侵略に対し如何に防衛するかということにあるのであります。それらに対して協力をされるべきが私は当然だと考えておる。たまたま不当な新聞記者があつて、何人かに唆かされてさような不当活動をやろうということは、これは論外であります。普通の新聞記者といたしましては、極めて常識に富んだ人が多いのであります。さような懸念は毛頭ないと考えております。  次に、アメリカから供与を受ける装備についてはさような高度なものはないからということは、今後どういうものが来るかまだわかりません。来なければこの法案の対象にならないのであります。問題はありません。我々は果して秘密を防衛するに足るものであるかどうか十分検討した上で、アメリカにおいて秘密を要するものであり且つ真実であれば、我々はこれは保護すべきが当然であろうと考えております。来なければこの法案の対象にならないのでありますから、問題の起る余地は私はないと考えております。
  134. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この前、大分前からお願いしておきました今のアメリカが高度の秘密を外国に出す或いはいわゆるMSA関係の外国に出すことに対して、アメリカの立法があり、又いろいろな制限があると思うのです。殊にその中で問題になるのはマクマホン法によるものだと思うのであります。それらとの関係についてお願いをしておきましたので、説明して頂ければして頂きたいと思うのですがどうでしようか。
  135. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 前に御質問になりましたのは、マクマホン法のほうの関係であると思いますが、これは御承知通り一九四六年八月一日に成立いたしまして、一九四八年七月二日修正になつております。標題は原子力の開発及び管理に関する法律になつておりまして、非常に長文のものでありますが、どの程度に御説明申上げたらよろしいか、ちよつとわかりませんが……。
  136. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の問題に入る前に、さつきの新聞記者の活動とそれから国議員国会審議という点ですが、この点については今のこの法案を御説明になるときには非常にしぼる、そして非常に限られたものであるという御説明になるのですが、今の国会審議とか、新聞記者の取材活動ということになると、どうも政府説明が非常に広汎なものを眼中に置かれるように思うので、それで私はこの均衡上から言つて本来の、現在の日本憲法の命ずるところによれば、こういう一般人を対象として秘密を保護する立法措置というものは許されないと思います。それにもかかわらず政府がなさるということについては、まだ議論をしなければなりませんが、仮にそれをなさる場合に、やはり重点は飽くまで直接に行政官としての防衛庁、自衛隊と言われますが、そのところに重点が置かれるのは当然だ。これはまさかやはりそこが重点じやないとはおつしやるまい。従つて場合によつてはこれは自衛隊法というのですか、防衛庁法というのですか、そういう法律の中へこういう措置が入つて内部の規律として守られれば、十分の秘密であると考えるのがこれが理論上当然だと思うのです。けれども今政府はそれよりももう少し拡げて、それで例えば下請工場だとかそういうものも考えて、そこでこういう法律を作らなければならないというようにお考えになつておるのでしようか。そういう場合には、政府としてはこれはやはりいわば行政上の措置というか、内部規律というものでやるべきことなんだが、併し多少外へ関係する点があるからこういう法律案として単独の立法というものを国会に求められるのだという御説明が、その通りすなおに頂けるものであれば、私は新聞記者の活動、国会議員の活動、審議というものは対象にならないものだというようにお答えが願えると、前の御説が私どもにもすなおに頂くことができるようになるのじやないかと思うのであります。で、先ほどの長官のお答えでは、新聞界、言論界では安心しないと思うのです。半分は安心するかも知れませんが、併しやはり何か政府のほうで新聞の取材活動について、それが正当なものであるか、不当なものであるかは、その最後の判断の留保は政府がなさるようなふうにも窺える点があるので、これは私はそうでないと思う。これはもつと軍機保護法とか、或いはそういうような建前の違う法律であれば、やはりそういう点についても新聞の取材活動とか、国会審議とかいうものについても、国会秘密会の場合であるとか、或いは新聞の場合であるとかいうことについておつしやることも或いは頷けるかと思うのであります。この極めて制限された秘密保護であるところの本立法案というものの関連によつて、いや新聞の取材活動の場合でも不当なものはかかる、国会議員の場合でもやはりこれにかかる場合もあり得るというようにおつしやることは、首尾一貫しないと思うので、この点について佐藤さんからいま一応御説明を伺つておきたいと思います。
  137. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私どもは午前中もちよつと触れましたように、一般の秘密問題と相共通する本質を持つておりますから、一般の問題としてお答えして来ているわけであります。従つて国会の場合においても、先ほど触れましたような法律などもあるところから見て、これは一般の秘密についての規定でございますが、でありますからこの場合についても同じような原理というものは理論上あるでありましよう。これは良心的にそうお答えするのがむしろ法律的に当然のことになると思うわけでありますが、併し運用上の問題としては先ほど来大胆もお答えしておりますように、又私自身考えておりますように、第一或る程度のことをお答えしなければ法案が通らない、予算が通らない、できないんですから、事実上の調整作用によつておのずから動いて行くものとこれは信じております。併し良心的に法律的なお答えをすれば、理論上はお断りする場合もあるでしよう、これは申上げざるを得ないことであります。それから新聞の活動の問題でありますが、これも先ほど来木村長行がお答えしておる通り考えております。まあ業務そのものと申しましても、新聞の場合に新聞紙上に記事として出すということが業務になるわけでありましようから、その記事に出さないものの取材活動というものは、普通に考えられませんから、新聞に記事となつて出るというものの前提になる取材活動というものを考えますと、やはりこの世間に出ること自身を恐れておる、この法律という眼から見ますと、やはりそこに当然の制約があることは勿論のことであります。従つて根本の問題になると、こういう法律を全体作ることがいいのか悪いのかという問題になり、更に遡つてMSAの協定によつて秘密なものをもらつたり借りたりすることがいいか悪いかという問題に私は尽きると思います。
  138. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 前段のほうの御説明はいわゆる行政と司法、立法との分権ということに関連して来ると思うのです。ですからこの法律の場合にはそれにいわゆる防衛というもの、軍事じやないんですけれども、併し判断を誤まれば軍事というものになる虞れの多分にある関係が入つていますから、ですからさつき申上げたように、その弊害は恐るべきものであるから、そういう意味では他の一般行政の場合と立法の場合とは特に異なる。その一般行政の場合にはお断りになるということはあるかも知れないのですが、それもしばしば申上げておるように、お断りになるべきときお断りになれないことがある。ですからそういう点も考えて来れば、なかんずく本法案の場合には、一般の行政の場合と違つて弊害の恐るべき点もある。その過誤を再び繰返さないということは政府としても決意は同じだと思うんです。だからその誠意がありとするならば、私はこの法律案の適用というものに当つて国会審議というものが対象にならない、これも国会審議を妨げるようなことはない、先ほどスムースにというお言葉をお使いになつたのですが、私は特に国会審議を尊重するという態度政府でとられるか、とられないかということが、やはりこの法律案の受け取り方が非常に違つて来ることだと思うのです。新聞の場合についても同様です。初めに警察予備隊などが出たときには、新聞を通じてできるだけ国民に了解して頂くんだというような態度を暫くとられていたようですが、最近はそれも大分お忘れになつたようである。或いは別のような意味になつて来る。そういう点からも、私は今佐藤さんの一般的なお答えというもの、それを衆議院でもなさつておいでになるのですが、従つて一般的な形式論理から言えば、国会審議というものの場合にも本法案関係があるというようにおつしやることはいいんですが、それは私が今申上げるように、第一には、そういうふうなことが恐るべき弊害というものの点から考えて、それから又秘密の性質、制限された性質というものから考え、特に日本国会審議権を尊重して行きたい、又新聞活動、新聞の作用というものに待たなければ、民主主義というものを持つて行くことができないという点を、この三点を考えて頂いてその点いま一応大変どうもくどく失礼のようでありますが、本村国務大臣からお答を頂きますれば有難いと思います。
  139. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 繰返して申上げるようでありまするが、この法案の狙いがどこにあるかということを御了解願いたいと思います。それと同時に、この法案の対象が何であるかということを吟味して頂きたい。第一は、どうしても外部からの不当侵略に対して対処しなければ、日本の安全と独立が保てないんだ、日本の独立安全を保ち、日本国民の自由を維持するために、我々はこの法案立案をしているんだということにほかならないのであります。それ以外には何ものもありません。而もその対象とするところは極めて厳格に制限しておるのであります。MSA協定によつてアメリカから供与を受ける装備のうち、両度の秘密性を持つたものを保護して行こうというに過ぎないのであります。それ以外の何ものもありません。新聞の取材活動にいたしましても、普通の取材活動の対象には殆んど私はならないと思う。高度の秘密を維持しなければならんものを、これを新聞社が特にこれを狙撃ちにその取材をしようという考えは、私は起されないものと考えております。常識を以てすれば我々は庭も新聞の取材活動を制約するものじやない、若しも万一これが日本の安全を害する意図を持つてやるならば、これは何人も問わない、それこそ日本の自由と独立を害されるのですから、これは何人たるを問いません。少くとも常識人であります新聞記者が特に不当の手段でこの秘密を探ろうなんというようなことは、私はおよそ常識外であろうと考えております。従つて普通の取材活動において何ら制約をするものでないということは私は確信して疑わないものであります。
  140. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これはちよつと読んでおつて、目に触れたことだつたのですが、これはイギリスの場合ですけれども、イギリスの議会で、議員がイギリスの教育当局に向つて、イギリスの公立学校の教員におよそ二千人ほど共産党員がおる、それを黙つていていいのかという笠間です。それに対してイギリスの国務大臣は、教育に関係する国務大臣が答えておつしやるには、教員の思想調査、思想的立場、政治的立場というものについて調査したり、或いはそれを問題にしたりするということは、自分の職務ではないというように答えておられる。それからこの学校で用いておるところの図書、教科書或いはその他参考書などにそういういろいろな共産主義的な傾向が強くなるのじやないかと思われるような材料がある、それについてどう思うという質問に対して、これもやはりイギリスの民主主義としては、教科書教材というようなものに干渉するということのほうが恐るべきことだというように考えておるというように答えられておる。これは私は常に民主主義を守るということを単に品で言うだけでなく、その民主主義が守られるために必要であるところの思想の自由、言論の自由、それをやはり守つて行く。民主主義を守るために、国を守るために、言論の自由を制限しておるとかというようなことは、実際これはナンセンスであるばかりでなく、恐るべきことであると私は思う。私はこの点については木村長官も私どもの考えには同情して頂けると思うのですが、その過去のような弊害というものが起つてしまつては、民主主義を守るということも、国の安全を守るということもすつかりひつくり返つてしまうことになるのです。而も全国民が非常にしつかりしておりまして、なかなか人権を譲らない権利の自由を譲らない、新聞記者においても、国会議員においても、堂々たるものであるということならば結構なんですが、これは破防法のときにも木村さんからお叱りを頂きましたが国会議員がしつかりしていれば心配ないのだというふうにおつしやられるように、事実なかなかそういう伝統といいますか、というものが脱却できていないという点を考えて見れば、この私はこういう法律案というものが、守ろうとするものを自分で壊してしまう、そういう恐るべき結果をもたらすと思うのであります。併しこの点については、私はまあお言葉の間にある新聞の機能を害しない、国会の機能を害しない、これは動かないことだと思います。従つていやしくも新聞の機能を害し、国会の機能を害する虞れがあるような方向に本法が運営されるということは絶対に許さないというふうに伺つておきます。  それから次の問題について伺つて行きたいのですが、さつきのこれが日米相互防衛援助協定に伴つて日本に与えられるかも知れない兵器の秘密に関することなんですが、ここで伺つておかなければならないことが二つあります。これも先日から伺つておるのでくどく申上げませんが、第一は、こういうことに問題になるような兵器の秘密というものについて、アメリカ側でとつておる措置というものはどの程度の措置なのか、そうしてそれが日本側でとろうとしておる措置と均衡がとれているものかどうか、これについての先日来のお答えでは、こういう質問をすると、すぐ佐藤さんがアメリカでは軍機保護法というようなものがあるというお答えもありましたが、そういう問題じやない。私はここで問題に具体的になる供与されるところの兵器に関する秘密という措置は、アメリカでは大体部内措置でなされている程度であろうと思うのです。そうすると、アメリカ側では声内措置、いわゆるクラシフアイド・マテリアルをとられているものが、日本で部内措置でない、一般国民を対象としてとられているということが均衡を失していないか。これは外務省の最初の御説明の中にもあつて、従つて亀田委員も先日来しばしばこの点について御質問があるのですが、アメリカ側ではこれは課長くらいまで知らせる、或いは部長くらいまで知らせる、これは局長よりほかへ知らせないというような部内の秘密である。ですから日本でもやはりそれと同等の立場をとるということを文字通り解釈すれば、やはりそういう部内の立場をとるということが妥当ではないかというように思いますが、この点についてどうかはつきり教えて頂きたいと思います。
  141. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 米国におきましては、参考資料でお手許に差上げておりまする秘密保護法案参考書類の(二)というのに、アメリカ関係の法規を書いてございまするが、この法規は急に訳しましたために、非常におわかりにくい点があろうと存ずるのであります。アメリカのこの秘密保護の法規は、この第一編の間てう行為というところの中の第一条のaというところにおきまして、「何人と雖も許可を得ないで」と書いてございますが、これはアン・オーソライズの訳でございまして、正当な管理或いはこの委託の権限を持つておらない者が何人と雖もこの他人に、ここに書いてございますような秘密を漏らしてはならない。それは合衆国に損害を与え若しくは外国に利益を与えるために使用され得ると信ずるに足る情報を漏らしてはならないということでございまして、日本の今回の法律案に書いてございますような目的罪或いは不当な方法でというような制限もございません。従いまして不当な方法でなくともこういうように秘密を入手し、漏らした者は罰するという規定が、間諜行為のほかにもございます。  なおその第二編以下におきましては、秘密を要する対象を細かく規定いたしまして、こういうものについて撮影、模写、複製或いは許可を得ずして立入りを禁止するとか、細かい秘密保護上の措置を規定いたしております。更にこの秘密、極秘、秘、というような分類をいたしまして、一般人に対する処罰規定を設けておるのでございまして、この法律案によりましてはどういうような項について処罰するかということについて米国側と打合せたことはないのでございまするが、併し米国側の刑罰法規に比しまして日本法律案のほうがきついということもございませんし、又見ようによつては規定の仕方が違いまするので、日本のようにアメリカの規定が不当の方法というようなことでもしぼつておりませんし、又公にされていないものというような規定でもしぼつてございません。或る意味におきましては、広く処罰規定を設けておるとも見られるのでございまして、アメリカ側の法規と比較いたしましてどうだという点は一々比較はできませんけれども、大体同様な規定になつておると存じておるのでございます。
  142. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 折角お答え頂いたのですが、それは先ほどお断りしておいた点なんです。つまりこの本法案関係するようなMSAによつてアメリカが日本に供与するであろうような兵器に関する秘密ですね。それについてのアメリカ側の取扱いというものがどういうふうになつておるかということが問題になるので、今御説明下さいました間諜法その他は日本にない法律です。これは又日本にないことが然るべき理由があつてないものなんです。ですからこれと比較すると、本法案はよほどしぼつてあるような感じが与えられるのであります。そういう御説明を先日来頂戴しておるのですが、我々は本法案審議するのに必要な、政府のほうから頂かなければならない説明は、この法案で以て保護しようとする秘密ですね。それはアメリカ側では私はいわゆる行政上の各部内の秘密として保護されておる、そういう手当を受けておるのに過ぎないので、この間諜法とかそれから或いは今頂戴しました参考資料の(二)というものに挙げられてあるようなこういう法律ではないのです。ですからこれは実はこの法案についての参考資料として頂戴したのですけれども、実際上には参考にならない。日本で軍機保護法なり間諜法なりを作るときには、万一そういうことがあるとすれば、それは参考になるかも知れませんが、我々もそれを今作ろうとしておるのじやないし、又そういうことを作ろうとすることは許されない。ですから今私が問題にしておりますところの法案で問題になる程度のものについてはアメリカ側でどういう措置をとつておられるか。それを私の推測するところでは部内の問題として処理できる程度のものを日本にも渡すのじやないか。私はこれは外務省のほうからの御説明も次の機会に伺いたいと思つて、これは委員長にお願いをいたしますが、若しそうでないということはこの論理が非常に合わなくなつて来る。なぜかというと、アメリカでアメリカ国民に対して秘密或いは部外秘ですね。部外秘としておるものを、部外秘というのは間諜法で用いておるテクニカルの意味じやありません。アメリカの国民がそれに対して秘密としてされておるものを、たとえMSAによるものとは言え、外国にそれを知らせるということができるか。若しできるとすると、例えばアメリカ市民例えばウイリヤムスならウイリアムズ、ジェームスならジェームズ、何という人でもいいのですが、そのアメリカ市民より、日本の木村国務相なり或いは防衛庁長官なり或いは普通日本の防衛隊の隊員という者のほうがアメリカの法律から言つて、いわゆるセキュリティという点で信頼されているという形になつてしまう、こういうことは私はあり得ないことだろうと思う。ですから如何にMSAがあろうと、何があろうと、アメリカと日本との関係においては、日本独立国であり従つて外国であり、従つて日本が場合によつてアメリカと利害が対立するという場合も起り得ることなんです。何よりもかによりも、アメリカ市民が信頼されている以上に日本の保安隊、自衛隊関係の方が信頼されるということが起り得るはずがない。ですからアメリカではその国民的の問題じやなくて、その部内の規律としてなされている程度の措置というものに関係する程度秘密を、部外でいるものが供与されると考えることが論理上当然だろうと思う。その意味から申上げているのですが、やはり今までと同じようなお答えであるので、大変恐縮ですが、もう一応その点について、私が申上げておるのはそうでないというお考えであるならば、そうでないという理由を示して頂きたいと思います。私の申上げているのは、このMSA協定によつて日本に供与されるであろう武器その他に関する秘密というものは、アメリカでは行政部内的な措置で守られている程度のものである。従つてそれと相応ずる日本側の措置としては、やはりこれは本来部内で以て措置するという程度秘密であつて国民を対象として措置すべき秘密というものと秘密の性質が違う、こういうふうに考えます。従つて法律案はアメリカ側の取扱い、セキュリティ・メジヤース、この保安上の措置というものと日本側でとろうとしているところのセキュリティ・メジヤースというものと均衡を失しているというように考えるのですが、そうじやないという説明をして頂きたいと思います。
  143. 綱井輝夫

    説明員(綱井輝夫君) 第一点の、この法案で保護しようとする秘密はアメリカでは外部の人は刑罰にかからない、日本で言いまする部外秘の程度のものではないかという御質問でありますが、この法案で保護しようとするこういう防衛秘密なるものは、すでにアメリカにおいても又防諜法だとか、或いは国防施設の撮影等の禁止に関する法律、大統領令というものがありますが、これも一般的な大統領令違反に対する処罰規定がついておりますから、すべて例えば参考資料の七頁にありますように機密、極秘、又は部外秘として秘密区分され、指定され、又は標記されているすべての陸海空軍の航空機、武器、弾薬、車輌、その他いろいろ書いてありますが、それと同様なものであります。そうでないというふうにおつしやられるわけでありますが、若しこれが非常に広汎な事項を規定いたしまして、例えば、これもどうかと思いますが、或る部隊に何人おるか、或いはそういういわゆる戦略的なもの、極く些細なものということになりますれば、或いは部外秘というこういうものも、純然たる部外秘というものもあるかも知れません。ここで書いておりますものは装備品等の構造、性能乃至製作、修理、保管等に関する技術、そういつたものでありまして、これらを部内だけで秘密にしておいて、外国へ行けば外国のスパイ等が取るのは全く御自由であるというふうに考えるのは、少くともこの種の秘密そのものに関する限り全く意味がないというように考えるのです。そういう意味合から申しましても、全くアメリカの法律で保護されておる秘密であると確信いたします。  第二点の、それならばこれらの秘密がアメリカの部内でどういうふうに保管されておるかという御質問でありますが、これはこの法案の第一条におきましてもその根拠に基いてそれぞれ取扱う行政機関の長が定むべき事柄になるのですが、取扱いの方法といたしましては、もとより個々の品物についてはそれぞれ特殊な取扱い方がありますから、それらについてはその秘密の物件乃至情報ごとに具体的な事項も記載されておるのですが、極く一般的にはやはり規則を以ちましてこの秘密事項の取扱い者は秘密の指定の内容及び以味をよく知らなければならない。乃至責任者を指定し保管方法を指定しなければならない。又指定したものは同時にその保全の責任がある。又配付なら配付としてのどうしても知る必要のある者にしか知らせない。すべてこの秘密の物件乃至は文書につきましては或いは配付用とか、注意書、そういうものがくつついておりまして、それらの準則に従つて行われておる、極く抽象的に申上げますればそういう取扱いになつております。
  144. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 どうもこれは私のほうが混乱しておるのか、政府が混乱しておるのか、よく私自身も考えてみるのですが、政府のほうでももう少し考えてみて頂きたい。今のような御説明ですと、逆にこういうことになる。つまりMSAの第三条に「両政府の間で合点する秘密保持の措置を執るものとする。」とあります。この問題に関連しましてはいろいろの問題があるわけですが、そうすると両政府の間で合意するという場合、アメリカ政府のほうで日本側にやはり軍機保護法みたいなものを作つてくれと言つて来る場合を仮に仮定します。そうするとMSAの別のところで、それぞれの憲法というものによらなければいけないというふうに書いてある。日本側では憲法がありますから、いわゆる本来の軍事上の秘密というものはないはずですから、そういう軍機保護法というものはできないというふうに申上げざるを得ないでしよう。ですからそこにこれは非常な違いがあるのです。ですからアメリカの傷心には、これはさつき法制局長官からも御説明がありましたようにMSAというものを結ぶというところに問題があるのじやないか、それは全くその通りなのです。我々はだから反対するわけです。けれども今政府としてそれを結ぶという方針がきまつておる以上は、併しその範囲内でやはり憲法というものを護つて行くという最大限の努力をなさなければならんので、この秘密保護法案というものが憲法に抵触するのではないかということを幾ら聞いてみたところで、そんなにしつこく聞くなら、これはMSAを結ぶということから来ておるのであるから、しようがないと突張られるということは、私は政府責任を全うするゆえんじやないと思います。やはりMSAというものを結んだけれども、併しそれは飽くまで日本として日本憲法を護るという条項がちやんとあるのですから、その趣旨に従つて両目政府の合意する秘密保護の措置という場合に、日本で軍機保護法や国防保安法というものを作るということはこれは含まない。絶対に含まない、含み得ない。ですからアメリカのほうでもそれをよく知つておるわけです。従つてアメリカのほうでもアメリカの軍機保護法なり国防保安法みたいなもの、間諜法というようなもので保護しておる秘密日本に貸すはずがない、それをくれるはずがない。日本に間諜法というものをこしらえてくれ、スパイを取締るという防諜法というものをこしらえてくれとは言わん。それを日本じや憲法関係があつてできないと言う。ですから私は今伺つておるこの問題を説明されるときに、アメリカのほうでは防諜法なり電機保護法みたいなもので保護しておる、それを日本じやよほどしばつておるという御説明はどうも矛盾しておると思う。どうも私のほうが混乱しておるのかというふうにさつきからいろいろ考えてみるのですが、どうもそうじやない、政府のほうに混乱があるのじやないか。而もそれを先ほどから堂々と自信を持つて説明を頂くものだから、私のほうまでもこつちがおかしいのじやないかと思うのです。間諜法をしぼつてあると言うところに問題があるのです。つまりMSAによつて憲法によつてやる。従つて日本じや間諜法というものや防諜法みたいなものはできない。従つてしぼつた防諜法を作るというのもおかしい話です。ですからそれぞれの国の憲法に従つてやるという秘密保護の措置というものは日本側としては原則的にこれは今政府がなさろうとしておることは、これは国会における多数の意思によるものですが、それじやなくて仮にこういう立法を作られようとしても、この立法は今お述べになつた防諜法をしぼつてあるというのじやなくて、アメリカの行政上の措置を少し拡大してあるという御説明を頂けば、私もこの質問を満足して打切りたいと思うのですが、どうしてもそういう御説明にならないので不思議に思つておるのですが、佐藤さんどうですか、私のほうが混乱しておるのでしようか、一つ考えて頂きたい。
  145. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私から一応お答えして、あとで佐藤法制局長から訂正してもらいましよう。申すまでもなくこの法案はMSA協定第三条に基くものであります。この第三条はいわゆる双方当事者国の合意によつた処置であります。この処置はどういう処置をとるかということは、両国の独自な見解によつてきめるわけであります。ただ、双方の合意を要するという点において一つの制約を受けるわけであります。この法案の作成に当つては、日本独自の見解に基いて、アメリカの何らの関与は受けません。而うしてこれの目的とする対象物はアメリカにおいても秘密を要する、従つてアメリカにおいても秘密の対象となり、それを保護しておるものに限つておるわけであります。それを日本においてどう保護すべきか、それの処置を日本でとるその手段としてこの法案立案されたわけであります。アメリカにおいて秘密でない、今仰せになりましたような、アメリカの一般大衆にもうすでに知れておるものであれば、この法案の対象にはならない。元来はアメリカにおいても秘密を要する事功で、秘密手段を講ぜられておるものがこの法案の対象になつておるものと我々は了解するのであります。
  146. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の御説明のところで途中まで大変御同感なんですが、あとのほうですね、アメリカで秘密になつていないものは日本秘密としない、これはお説の通りでしよう。アメリカで秘密考えておるもののこの取扱、で、防諜法とか軍機保護法的なもので、軍隊を持つておるアメリカとして保護するような保護の仕方は、日本に求めることができないし、又日本でもそれをすることができない。両方でよく知つておる上でやることですから、そこでアメリカでやる秘密になつておるものとなつていないものというふうに御説明伺つたのですが、私がお伺いしたいのは、アメリカで秘密になつているものだけれども、その措置として国民の持つ権利までも制限するような措置をとつておるものを、日本でやることはできないのじやないか。アメリカで行政部内で守るという措置でやつて、そうして外には出ないことになつておるが、それでも出る場合があるのです。出る場合については防諜法とか軍機保護法というようなものでアメリカではやつておる。日本ではそこまで行くことは憲法上許されていないのです。従つてその部内で守れるだけ守る。そこでその危険というものもあるが、併しその危険に目を奪われて、部内から外に漏れたものを厳重に取締る。そこでさつきのように新聞紙の活動とか、国会の活動というものに対してもやはり厳重な措置をとらなければならないということになつて来れば、弊害のほうが恐ろしい、害悪のほうが恐しい、又憲法違反の慮れが強くなつて来る。だからさつきも申上げたように憲法違反のそしり、批判というものに正々堂々と対処され、そうしてその秘密の一貫というものから見れば、これは日本側でも部内で以て飽くまでこの秘密を守る最大限の努力をやればいいというのが当然じやないか。それを今の法律案では多少外に及ぼすというのですが、主たるものは部内でやるべきじやないか。アメリカでは日本に貸す程度のものは部内で守つて行ける程度のものを貸すのじやないかというお尋ねなんであります。
  147. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは御尤もであります。先ず以てこういうものは部内で厳重に秘密を守らなければならんのであります。これが第一次的のことは勿論であります。これなくして徒らに外部を取締るということは、これは私はよくないと考えております。そこでこの法案第二条ですが、この点について御了解を願いたいと思います。先ず部内において何人がこの防衛秘密の処置に当るかということであります。それについて国民に迷惑を及ぼしてはいかんということで諸々の手段を講じ、或いは標記を附すとか立札をするとかしてはつきり区別させる。ここに私は大きな主眼点がこの法案にはあると考えております。お説の通り先ず第一に部内でこれは十分に取締つて外部に漏れることをなくして、外部に対しては迷惑をかけない、これは秘密のものであるということを十分に了解を求める手段をとつて行こうということを考えておる。これがこの法案の狙いとしておるところであります。それをしもあえて顧みずに或いは部内におつてこれを外に漏らすという者はこれは取締らなければならない。部内の者と相通じて故意に不当な方法でこれを知ろうとする者は、何かの日本の安全を害する意図を持つてやるわけですから、これは当然取締つて行かなければならん。こういつた外部関係についてもやはり取締りをする必要があると、我々はこう考えております。
  148. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 佐藤さんに伺いたいのですけれども、さつきから申上げておる点で問題になるのは大体御了解下さつたと思うのですが、要するにこの法案というものは部内でこういう秘密を守るということを主体とするのだ、ただ、必要止むを得ない限りにおいて一般国民というものも対象にするのだという政府の御説明は動かないというふうに伺います。そこで生じて来るのは、さつきの新聞なり、国会なりの審議関係であります。これはなかなかデリケートな厄介な問題ですが、原則としてはやはりはつきりさせておいて頂かなければならん。今の木村国務大臣のあとのほうの御説明が忽ち又飛躍せられて国の安全を守る、防衛を全うせられるというような非常に大上段のお話になつちやうのですが、ここで問題になるのは、要するに一つの国が外国から借りるという秘密なんで、従つてこれが国の安全を守り防衛をやるところの本体、本質的なものというものじやない、補助的なものなんです。ですから私はそういう点で部内で飽くまで秘密を守られる、併し必要止むを得ない限りにおいて一般国民というものが対象になつて来るという御答弁が動かないものとすれば、その部内の秘密に対して国会審議なり、或いは新聞記者の取材活動なりによつて、今度は質問は極めて限定しますが、不当であるか不当でないかわからないという疑念ですね、境いのグレンツ・ゲビイト、限界にあるような行動に対しては、私は取締りの態度を以て臨むべきものじやなくてフェア・プレーの態度を以て臨むのが当然じやないかと考えますが、あなたはどうお考えになりますか、佐藤さんに伺いたい。
  149. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) フェア・プレーとおつしやるのが先ほど来気にかかつてよくわかりませんのですが、それは処罰のような権力の行使で臨まない、こういうことですね。そうしますと結局この不当な方法云々のこの処罰の規定と新聞社の取材活動という問題に又戻つて考えなければならんと思うのですが、一般に刑法上の原則として正当業務、正当の業務行為は罰しないとかというような原則があるわけですが、この正当業務という範囲については、非常にむずかしい私は問題があつて、私自身明快な限界を引くことはできませんけれども、これは前の例の駐留軍関係の刑事特別法の御審議の際にも、当時の刑事局長からちよつとお答えしたと思いますが、やはり正当業務という観念があります以上は、その取材活動なら取材活動としてその正当業務に属するかどうかということで、属するということになれば、正当業務でない場合との間には罰則規定の当てはまり方に緩やかな、寛厳の違いがまあ出て来るわけです。そういう意味で普通なら我々が新聞社の方々と接触しております場合でも、普通の友だちがやつたとすれば大いに叱りとばしたいところであつても、新聞社の方々であれば、これは止むを得ないだろうと言つて我慢する場面があるわけです。そういう違いというものは私はあると思います。それでお答えをとめてしまえば極めて無難なんで、先ほど木村大臣も言われましたようなそういう趣旨から新聞社のほうでも良識を以て行動されるのだから実際の御心配は要りません、それでいいのでありますけれども、併し私育ちが悪いものでありますから、つい理論的なことを申副えて却つて御心配をかけてしまう、これは反省せざるを得ないかも知れませんけれども、これはやはり正当業務というものの限界があるわけですから、その限界は勿論あることにしておいてその枠内では今のような違いがあるということは申上げていいと思います。
  150. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 非常にはつきりして来たと思うのですが、私がさつきも申上げておる弊害恐るべし、つまり軍閥の横暴復活とか、或いは秘密政治の復活とか、そういう弊害恐るべしと申上げておるのは、今のそれぞれの正当な業務ができないくらいになつて来るということなんです。今あなたがおつしやる理論上正当な業務ができなくなつて来るということなんです。或いは形式上の場合には、この新聞記者の正当の業務活動、国会議員の正当の職務活動というものが真空状態にでも置かれて、それでなかなかよくやつている、ときどき行き過ぎるぐらいなら頼もしいわけです、日本の場合は……。だけれどもそれじやなくて反対にそういう正当な言論の作用又は国会の作用というものがややもすれば妨げられるというほうに問題があるから、そこでさつきから伺つているのであります。で私はこれは実際この本法が運用されて行く上にキイ・ポイントになることだろうと思うので、詳しく又繰返してお尋ねをして速記録に残しておかなければならんと思いますが、そのフェア・プレーというふうに申上げるのは、この秘密を部内で以て飽くまでその秘密を生ろうという努力をなさる、そこでそれを外部から明らかに不当な方法で以て侵して来るということになると、本法が適用される、それがいいか悪いかということの批判は保留しますけれども、この法律ではそうなつて来るわけです。併しこの法律日本憲法や、憲法なり何なりの下で合憲であり違憲でないというお考えの上に立つ以上は、その飽くまで部内で以て秘密を守ろうという努力をすることが、これは二つの場合があると思いますが、従つて飽くまで秘密を守る努力が今度は行き過ぎれば、新聞社に知らせない、国会にも知らせない、知らせなければ守れるのだ、よかろう、でこれは日本では昔からありますね、その場合に残念ながら日本の官吏が自分が間違いをしないことのほうを主に見ますから、部内で飽くまで守るのだ、部内で飽くまでも守るのだつたら、新聞記者なんか寄せつけないほうがいい、国会なんか成るべく頬被りして通つたほうがいい。何と言われても、ごまかして行くのだということになつてしまう。これは語弊があつてお気に障われば恐縮ですけれども、吉田首相などのあの新聞記者に対する態度というものは、世間の批判を浴びておる。そういう弊害のほうが日本は多いのです。ですからこの本法の運営に当つては不当、我が国の安全を害すべき用途に供すべき目的をもつてという場合、或いは不当な方法、或いは通常不当な方法によらなければ或いは公になり得んというものの解釈ですね、それから先ほど申上げたようにその世論の批判というものを十分に容れて、そうしてなかんずくその問題になるものは限界の場合ですね、これは不当であるか不当でないか、政府のほうから言えば不当だと思うことが、新聞社のほうから言えば不当でないという議論がある場合は、適用されないことが私は当然ではないかと思うのですが、その点については佐藤さんどうでしようか。それを私は、フェア・プレーというふうに言つているのです。
  151. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私どもの考えておりますフエア・プレーは少し違うと思います。と申しますのは、今の御心配のような事柄が仮に、仮に起きたと考えます場合には、新聞社が対象であります場合には、御承知通り新聞社というものは大きな発言力を持つている。これほど私は重大な発言力を持つているものはない、社会に対する発言力を持つているものはないと思うのです。その発言力が恐らく大きな批判の形において各紙両を一ぱいにしてしまうという形でこれが国民の判断に訴えられる手段を持つているわけでありますが、そういう意味での私はフェア・プレーということはあるとそういうふうに考えております。
  152. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の申上げるフェア・プレーというのは、秘密が漏れちや大変だ、従つて第一には部内で守るのだ、部内で飽くまで守るのだが、部内で守るためには部外に漏らさないほうがいいという考え方がフェア・プレーではない、言論の自由なり、国会の機能なりに支障を与えるものだ、だから自分のほうとしては飽くまで守るが、併し新聞なり国会なりか知りたいという、正当なその理由によつて求めて来るものに対して、その言論の自由なり国会審議なりというものを尊重して、そいつをそのいわゆる頼被りをして行くと、要するに、そこにそれかフェア・プレーでないという点だ。ですから私はその部内で守るのが本体だということなんですね、従つて部外には一切知らせないという態度には絶対なるべきものではないと思いますが、その点はどうでしようか。
  153. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) どうも私は羽仁委員が誤解なすつているのじやないかと思う。この法案の対象というものは、高度の秘密性を持つたものなのであります。一般国民にも、これは事のよしあしは別問題として、十分に事情は理解させる必要は、これは当然でありますが、高度の秘密を保持するというのは、一般に漏れちや悪いということであります。新聞の取材事項として取扱つてもらつちや悪いものなんだ。取材事項に取扱つてもらつていいものは、どんどん公表するのでおります。ここに保護せんとするものは、取材事項に取扱つてもらつては困るということなのであります。新聞社としても全部のものをぶちまけてやるというわけには私は参らんと思う。個人にしても個人秘密があるのです。それを新聞社が、言論の自由だからと言つて個人秘密までぶちまける、そんな非常識なことはなかろうと思います。ここに私は言論の限界がある、出版の限界があると思う。自由といつてもおよそ無軌道な自由ということはあり得ないのです。何らかの制限を受けるのです。我々の自由まで、個人の私生活までぶちまけることはできません。あなたも御同様だろうと思う。そんなことをぶちまけちや困るのです。自由には限界がある。国会もその自由の限界があるのであります。ここに保護せんとするものは、漏れちやいかん最高度のものを対象としているのであります。これは幾ら言論の自由の世の中であつても、私は守つてもらわなくちやならんと、こう考えておるのであります。
  154. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 いや、問題は大変それちやつて、恐れ入るよりほかないのですけれども、その個人秘密とか、そういうふうな問題じやなくて、憲法が、国会最高の機関であるというふうに規定し、そして又言論の自由は尊重されなければならないというふうに言われている範囲内で、今本法案が問題になるのは、これは軍事上の秘密ではない、本来の軍事上の秘密ではないけれども誤ればそれが軍事上の秘密のようなものになつてしまう、そういうふうになつてまつたのでは、憲法違反の慮れがあるという点なんです。ですからさつきから問題の核心をしぼつて申上げたのですが、「不当な方法で、」というようなこと、又公にされていないものというようなこと、それから「わが国の安全を害すべき」ようなもの、これがこの法律では、その部内で秘密を守ることに全力を挙げる、けれども、この憲法の命ずるところに従つて国会審議を妨げない、の自由の活動を妨げないという努力は飽くまでやらなければならん。そこで起つて来るのは、今の公にされていない、或いは不当な目的とかいうことにおいて、問題がある場合ですね、その場合に、さつきの木村国務大臣の御説明のようであると、いやしくも「不当な方法で、」以てその秘密を侵して来るというものに対しては、取締をやらなければならないということになつて来ると、これはそういう力のほうが強くなつて来る。やはり一種の暴力、そのほうが強くなつて来てしまいまして、それで新聞なり国会議員なりのほうは言うだけなものですから、やはり自衛隊なり、保安隊のように、鉄砲をお持ちになつたり、戦車をお持ちになつたりしていますけれども、我々は一片の武器というものを持たないということで、国民もそうなんです。従つてそういう武力、或いは暴力、そういうものを持つておるほうの立場が勝つて来てしまう。これは、その弊害、恐るべきものがある。従つて私はこの公にされていないもの、或いは「不当な方法」、「安全を害すべき」ものというようなもので、それらの限界の場合には、政府のほうでは不当だと思うかも知れないが、政府のほうで不当と思つていないという場合に対しては、政府の立場を押し通すということは許されないというように考えますが、そうじやありませんか。佐藤さんから同つておきたいと思います。
  155. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやることは今一生懸命に考えておつたのですが、さつきのフエア・プレーの問題に戻つてよろしうございますか。
  156. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 どうぞ。
  157. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 罰則を以て臨むのがフエア・プレーじやないというようなことを今考えつつあつたのでありますが、今木村大臣が答えられたのですが、こういうことじやないのでしようか。信書の秘密というものが先ずあるわけですが、この、人に見られたくないという手紙を私が持つているとすれば、今の徹底的にフェア・プレーの原則を貫くとするならば、誰にも見せないように、見られないように、一生懸命にふところの奥深くそれをしまつておけばいいのじやないか。それでついうつかりして盗られて中身を見られたというのなら、それは負けたのだから諦めなければならない。それに罰則を以て臨むのは何事だ、それがフェア・プレーの原則に反するのじやないかと、極端な場合を考えると結論が行きそうに考えるので、それをやはり刑法で処罰を以て臨んでおるということは、そのこと自身に反社会性があるから、やはり罰則でそれを保全というか、守つてやろうということから来ているだろうとまあ今思つておるわけです。そうすると、今度のこの法案秘密の場合についても、やはりこの秘密は漏れるということに先ほど来お話に出ておるように、国の安全を大いに害する、これは国の安全に害しないのだ、漏れるとこが安全に害がないということになれば、これは話が全然違いますが、一応我々の立場としては、これほど恐いことはないと思つておるわけですから、それが盗まれることによつて、国の安全が害されるが、勿論先ほどの手紙のように、我々としては、部内の最大の努力によつて、それを盗られないように、やはり努力も勿論しなければならん。併し万一それが盗られた場合には、そこに反社会性というか、そういうものがあるものですから、それは極力徹底的に守つて行くために罰則を設けた、これは今の先ほどの手紙の場合と同じ論理になるように思います。それでさつきのお話に出た反社会性の限界の問題というか、そういう点について個々の具体的事件について見ると、新聞社の場合がどうだ、国会議員の場合がどうだというお話が出て来て、そこの限界線の見付け方、発見の仕方という問題があると思います。そこの問題になつて来ると、これは一線を画して、はつきりと申上げることはできませんから、やはり具体的の場合々々に応じて判断して行かなければならん。その場合に、我々政府とつ態度はいいか悪いかということは、国会であれば、国会批判にさらされるし、新聞の場合であれば、新聞の第一面或いは第二面において大きくそこで批判される。そういう関係でそこにフエア・プレーの問題が出て来る。そこで調節作用は第二次的に行われるというようなことを私は言いたかつたのですが、ちよつと言葉が足りなかつたので、今一生懸命考えておつたのです。そこで今のお尋ねの根本の問題は、一応お答えしておきまして、なお次のお尋ねを待ちたいと思います。
  158. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この問題はこういう点にあると思うのです。信書の秘密の場合には、国民政府というふうに考えますと、国民政府の信書の秘密を破る場合があるのか、それとも警察等が国民の信書の秘密を破る場合があるのかという、この現実の関係からこの問題もやはり解決されなければならんと思うのです。ですからさつきから申上げておるように、真空状態の中に信書の秘密というものはあるのではないのです。信書の秘密を守らなければならないという法理が成立して来たのは、やはり弱い国民の信書というものを国が警察というふうなものを使つて侵すということが許されないという点から来ているので、秘密というものが抽象的に存在して、それを侵す侵さんという問題ではない。秘密の問題については、常にこの二つの問題が具体的に問題になつて来ると思うのです。ですから秘密というものはあるのではないかということになつてしまうと、この法案審議の上に参考に、有益ではないと思いますので、この法案の場合に問題になつて来ますのは、さつきも木村大臣からもお答え頂いておるように、政治が軍人に優先するという罰則は飽くまで譲らない、それを守る、守らなければならん、それから又日本の、現在の日本憲法の命ずるところによると、言論或いは思想、そういうものの自由によつて民主主義というものを立てて行くんだ。憲法は決して軍事的な、防衛的な秘密によつて民主主義を守つて行くということは書いてないですよ、日本国の憲法の命じているのは、言論の自由、国権の最高機関である国会の徹底的な活動というものによつて民主主義を守る。それと相並んで防衛的なもので以て民主主義を守るんだというようなことはどこにも書いてない。ですから、それはなぜそういうふりになつておるかと言えば、日本では過去においても、そうして又現在においても、いわゆる防衛秘密というようなものの力が言論の自由というものを圧倒してしまい、国会審議というものを圧倒してしまう。その虞れが多分にあるということを前提にして我々としては法案審議に当らなければならない、それが我々の義務だろうと思う。ところが政府のお答えは、いつもそこになつて来ると極めて抽象的に、基本的人権公共福祉関係であるとか、或いは今の抽象的秘密論であるとかいうように言われるのは、これは甚だ私は納得できない。殊に佐藤さんのような相当に専門的な方が、私が今申上げたようなことを御了解がないはずはないと思うので、甚だお答えを遺憾といたします。併しこれは只今これ以上この問題に続けて入りませんが、併しあとでこの問題と関連して伺わなければならん問題が出て来ます。  そこで次の問題に移るのですが、要するにこの法律案の持つておるところの二重の恐るべき危険というものは、大した秘密でないのに国民人権というものを著るしく脅やかすという危険、それが今まで伺つて来た危険です。その第二に恐るべき危険というものは、さつきのマクマホン法その他によつて日本で実際日本国民のそれこそ我が国の安全を害するかも知れないというような最大の関心事として知らなければならないことが、このMSA協定及び本法案というものによつて国民の誰にも知らされないで、つまり日本の総理大臣にも、或いは国務大臣にも知らされないで日本で行われる虞れがあると考えるが、この点については政府は一体どういうふうにお考えになるか。その点に関してマクマホン法などが問題になつて来ると思うのであります。端的に申上げれば、イギリスなどの場合には、先日本会議でも申上げましたが、ノーホークという軍事基地が原子爆弾の基地として、これは英国民は知つておるのです。併し日本では、小笠原なり沖縄なりが原爆基地として構築されておるのではないということはしばしば新聞で報道されておりますが、併しこれはそうでないということを確めることができるかどうか。木村長官は先日の本会議で、原子爆弾というものは日本では絶対に使わせないということをお答えになつて、私もそれを伺つて、御決意のほどに対しては非常に嬉しく敬意を表したのですが、けれどもマクマホン法との関係によつて、そのマクマホン法に今問題になつておりますこの秘密立法というものが結び付いて来ますと、アメリカの側では、そういう原子爆撃に関する問題については、日本のMSA協定によつて提供された軍事基地というものの上でそういう原子爆撃の用意をするということができるのです。而もそれを日本側には絶対に知らせないということができる。而も最後に最も恐るべきものは、それは我が国民の幸福、我が国の安全を害するものじやないかというように憂える人があつて、それを明らかにしておきたい。果して沖縄に、木村大臣は原爆は許さないと言つたのだけれども、アメリカは沖縄に原爆の基地を作つているのじやないか、これは若し作つているのだとすれば、今佐藤長官がお答えになつたように、新聞の輿論によつてこの問題を解決しなければならないというようなことで、日本新聞記者が沖縄に入つてそれを知ろうとする場合に、これは本法律案によつてひつかかつて来るのです。この点についてはどういうふうにお考えになつているのか。私どもが心配している点が相愛であれば誠に幸いだと思うのでありますが、そうであるのか、そうでないのか、一つ詳しくお答えを願いたいと思います。
  159. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は日本の安全を如何に守つて行こうかということに考えを集中しておるのであります。それでアメリカとの安全保障条約を締結した趣旨も、誠にそこに起因しておるのであります。これは立場を異にすれば、何もアメリカと提携する必要はないじやないか、いわゆる無防備中立論も出て来ております。或いは甚しきは、アメリカと手を切つてソビエトと手を結んだらいいじやないかということを論ずる者もあります。これは立場を異にしておるので、議論は御勝手であります。併し現在の政府の立場といたしましては、どこまでもアメリカとの間に手を結んで行く、即ち日米安全保障条約の下に日本の防衛体制を立てて行こうということが主眼点になつておるのであります。従つて、この防衛体制を維持する上において何が必要であるかということになつて来ますると、我々としては一日も早くアメリカから相当の装備をもらつて日本自衛体制を整えて行くと、これであります。而して、アメリカから供与を受けるこの装備の点について、アメリカにおいて外に知られては悪い、秘密を守つて行きたいというものであつて日本も又秘密を守ることについて必要なり或いは足るものなりと考えたものはこの法案によつてつて行こう、こういうことであります。要は日本の安全と独立を守つて行こうと、これは我我は憲法において保障されているのであります。憲法の保障するところは、個人人権、自由、これは申すまでもなく基本的概念であります。これを守つて行くのには、秩序を維持しなければならない。秩序を紊ると、個人人権も自由もこれは画餅に帰してしまうのであります。何よりも先ず国内の秩序を維持して行くと、国内の秩序を維持して行くについては、日本の防衛体制を整えなければならない。防衛体制を整えるについて必要なる高度の秘密は、これを維持して行かなければならん、これであります。これは新聞活動についても、私はできる限りにおいて、日本の現段階において保安隊はどうなつておるか、或いは警備隊はどうなつておるか、これは知つてもらいたい。又我々は知らせ得るのであります。併し、事高度の秘密に関するものがほかに漏れるというようなことでありますると、これは防衛の一環が崩れて参るということは論を待たないところであります。これは何としても日本の独立と安全を守る上において、我々は秘密を保護しなければならない。これは本法案の狙いでありまして、全く他意はないと我々は心得ておるのであります。
  160. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の伺つたことを直接お答え頂かなかつたので、いま一応伺わなければならないのですが、先ほどの関係はそれでは佐藤さんのほうではどういうふうになるか伺つておきたいと思うのですが、第一に日米安全保障条約、MSA、そういうふうなものによつてアメリカは日本に軍事基地を使用することができる。而もそれはマクマホン法によつて日本に知らせることはできない。従つて第三に、国民が、日本の総理大臣も知らないで日本に原爆基地が設けられるということは、国の拠金を害するというように考える。それでこれは問題だと、さつき佐藤長官もおつしやつたように、新聞などで十分問題にしてもらいたい、アメリカが日本に原爆基地を作るということがいいか悪いかということを問題にしてもらいたい、日本国民がそれがいいということになるか、それはやめてもらいたいということになるか……、従つてそこで先ず、アメリカがそういう計画をやつておるような場合には、その計画を国民に知らせなければならん。すでに計画を進行して、沖縄なり小笠原なりにそういう基地を作りつつあるというなら、それを国民に知らせなければならないという場合に、それは本法によつてそういうような活動をしようとする人は取締られるということになると私は考えます。そうでないというならば、そうでないという説明をして頂きたいと思います。
  161. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 恐らく今のお尋ねの点は安保条約或いは行政協定に基くもう一つの例の刑事特別法の関係になるんじやないかと思うのです。従いましてこの法律自身は、日本のものになつた、或いは日本の完全な支配下に入つたものの秘密事項に関係するものでございますからして、この法律との関係はありません。文案弊現実の問題として、そういうことはあり得るかどうか、これは私どもはないと思つておりますが、そういう点に関してはむしろ外務大臣からはつきりしたお答えをすべき筋のものだろうと思つております。
  162. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 本法と関連して来る場合があるのです。なぜかと言いますと、原爆なり水爆なり、あれはアメリカが日本に供与しませんよ、絶対に……。けれども、原爆なり水爆の基地を作るために、日本側の協力を求める関係から、日本側に供与されると考えられ得るような、そういう細々のいわゆる防衛施設というものはあり得るのです。ですから原爆についてアメリカが秘密にしているものをあばこうとすれば、それはさつきの日米安全保障条約なり刑事特別法というものに触れて来るわけです。それに関連して日本側の協力を求める、これは防空法なり何なり、そういうものに関係して来るでしようし、そういうものについてアメリカ側から供与するというようなものに関しては本法の対象となつて来ると思うが、それはどうでしようか。
  163. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これはまあ自衛隊が持つ兵器のこと、武器のことを規定しておるわけでありますが、そもそも自衛隊が、そういう施設の関係で、アメリカの駐留軍と普通の平時の場合から協力関係に立つというようなこと自身が、実は私ども外におる者としてはよくわからないのであります。むしろ保安庁のほうからお答えしたほうがいいかと思うのでありますが、こういう法律だけで考えますと、そういう関係は出て来そうな気がしません。
  164. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 じや例えばこういう場合はどうですか、沖縄なり小笠原なりが原爆基地……、それをまあ使う場合に、日本の保安隊というものが全滅をしちやうわけですね。従つて日本側も保安隊ばかりに限らず、日本国民が全滅しちやうわけです、その報復爆撃を受けることによつて……。或いは報復爆撃だけじやない。アメリカが日本を基地として、原爆、水爆戦をやる、その影響、それは日本国土全般に及ぶだろうと思う。そしてその場合に、私は日本にあるアメリカ軍自身はそれに対する措置は勿論やるわけでしよう。それとの関連において、日本自衛隊というものがそういう場合も全減しないというような措置というものは当然これは起つて来るものだろうと思う。勿論私もそういう軍事については全く知らないものでありますが、具体的のそういう場合は全くないという政府の明らかな御答弁であるならばそれで満足しなければなりませんが、或いは外務省のほうからお答えを頂いて、又直接保安隊のほうからもお答えを頂かなければならないと思いますが、保安隊のほうからその点について御説明頂けるでしようか。
  165. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今の御質疑は、要するに原子爆弾が双方で使用された場合に限る、こう考えております。原子爆弾、水素爆弾、むしろ大きな第三次戦争というものはこれによつて防止される傾きがあるじやないか。これが使われるということになると、私は全世界の破滅だと考えております。アメリカも原子爆弾、水素爆弾を使い、ソビエトも原子爆弾、水素爆弾を使う、こうなると、恐らく全世界は修羅の心になつて破滅をもたらす、かようなことがあつては相成らん。むしろこれによつて大きな戦争は防止されるものと私は確信しております。従いまして、さようなものを使われた結果どうなるかというようなことは私は考えておりません。率直のところ考えておりません。又考えるべきじやないと思います。我々はただ単に原子爆弾や水素爆弾を使われる前においての諸諸のいわゆる軍事的の活動が所々に行われることを予想して、むしろ我々は日本の防衛隊を考えて行くべきじやないか、こう考えております。どこまでも水素爆弾、原子爆弾戦はあつてはならんし、又私はないものと考えておりまするから、さような仮定論については私は考えておりません。
  166. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 木村大臣の先日来の御決意、即ち日本の原爆、水爆の使用というものは許さない、そういうものを日本に絶対に置かせないということを本会議でお答えになりましたが、これは今日もそういう御決意でおいでになるということは今の御答弁からもわかつたのでありますが、大変有難いことだと思うのであります。そこでやつぱり問題は、もつと根本論に入りまして、私が伺いたいと思いますのは、それにもかかわらず、アメリカは日本に原爆基地を作る権利を持つておるのじやないか。持つていないとすれば、どういう理由で如何なる根拠に基いていないということが言えるのか。その点佐藤さんから説明して頂きたいと思います。
  167. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 安保条約は第一日本を守るためにというわけで、そういう趣旨でできておるのでありまするから、日本を守るために、原爆を使うということはどうも普通常識的には考えられません。
  168. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは重大な問題ですから、一つ十分に教えて頂かなければならんと思うのですが、日本を守るために、仮にですね。仮定というのですけれども、併しこれは重大な問題ですから伺わなければならないのですが、日本を守るために、日本に向つて侵略して来ようとするものがある。それを防ぐのに、そういう力、いわゆる最近のアメリカで声明されておるニュールックの戦略というものによれば、日本を基地として或いは日本の周囲を基地として、そこから原爆なり水爆なりを積んだ飛行機を出発させ、そうして日本侵略の基地としつつある、その根拠を破壊してしまうということはあり得る、あり得るのであります。又いわゆるニュールックというふうな名前で言われておるものはそれを指しておるじやないか。ノーフォークにおけるアメリカの軍事基地というものはやはりイギリスの安全を守るために置かれておる。ところがイギリスの議会を初め国民がこれに対して非常に不安の念を感じておる。というのは、やはりノーフォークを基地として、アメリカがソ連に向つて原爆水爆戦を開始するということがあり得るじやないか、あり得る。これはチャーチル首相は決して仮定の問題だと言つてこれに答えられないというように仰しやられないで、そういうことはあり得るかも知れないが、それをアメリカ側から自分に事前に知らせてもらうということはマクマホン法によつてできないと答えておられる。イギリスの議会の模様が日本新聞に伝えられておるように、チャーチル首相は目に涙をたたえてこの答弁に当つておるという言葉からも推察できると思うのであります。私は若し本当にこの点を深くお考えになるならば、日本を守るために日本に原爆、水爆の基地を置くということはあり得ないということだけでなく、そういうものを防ぐという立法が必要じやないか。又日本に原爆、水爆の基地を置くことが許されないという確たる保障を持つことが必要じやないか。それがない限りはアメリカ側の考えで置くということが起るのじやないかと思いますが、その点についてもう少し深く説明して頂きたいと思いますがどうでしようか。
  169. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今アメリカのニュールック戦略の話が出ましたが、イギリスにも最近ニュールックの戦略というものができているようであります。即ち中型の爆撃機、これは原子爆弾を搭載できるのでありますが、これによつてイギリスを守つて行こう、守ることは、いわゆる先制攻撃がいいのではないかという議論が出ているのであります。主として中型爆撃機によつてイギリスを守ろうという方向に向つているようであります。これも私は一つの見方であつて、何もイギリスがニュールック戦略によつてソビエトを先制攻撃しようというようなことは考えていないのじやないか。むしろこれによつて戦争を防止する手段に使つていると私は見ている。アメリカも原子爆弾、或いは水素爆弾ができた。これを現実に使うというような考えはむしろ私はないのじやないか。これによつてソビエトに対して万一戦端が不幸にして開かれるようになれば、我々のほうでもかようかくかくの用意があるぞという、戦争を再び繰返すまいじやないかということに大きな含みがあるものと私は了解しております。さような次第で、アメリカが現実にニュールック作戦によつてソビエトに対して攻撃をしようというような考えは、むしろないものと了解して私はよかろうかと考えます。ソビエトも又何を好んでか日本に対して原子爆弾攻撃をしようか、私はソビエトもさような愚を繰返すことはしないと、私はこう考えております。従いまして現段階においては、むしろ原子爆弾、水素爆弾の発見によつて、大きな戦争が防止される方向に向つてつているのじやないかとさへ私は考えているのであります。
  170. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  171. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて……。
  172. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これはどうか一つ政府のほうから、もう少し明確に御説明頂きたいと思うのです。要点は三点です。第一点は、現在アメリカとしては、日本に原爆乃至水爆の基地を設けることができるのではないか、第二に、その場合にアメリカは日本に何らの相談をしないのではないか、又相談をすることが許されないのではないか、又日本の総理大臣もそれを知らないのじやないか、従つて第三に日本国会或いは新関そのほか、日本国民が、これは重大な問題である、それについて十分の知識を得たいというように考えることは当然でありますが、その点が直接には本法に触れて来る場合があるのじやないか、又は本法以外でも、本法との関連において、そういう国民が非常な心配をしている、それについて知ろう、その端つこのほうについての知識を得ようとする活動というものも抑圧をされてしまうのじやないか。そうすると問題は実に恐るべき状態になると思いますので、以上三点について、どうか一つ明確にお答えを頂いておきたいと思うのであります。
  173. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 次回は明十一日午前十時から開会することにいたし、本日はこれを以て散会いたします。     午後五時五十七分散会