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1954-04-30 第19回国会 参議院 法務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月三十日(金曜日)    午前十時四十七分開会   ―――――――――――――   委員の異動 四月二十八日委員加藤武徳君及び小野 義夫君辞任につき、その補欠として西 川弥平治君及び常本邦彦君を議長にお いて指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            上原 正吉君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            西川彌平治君            宮本 邦彦君            楠見 義男君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   国務大臣    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法務局第一部長 高辻 正己君    法制局第二部長 野木 新一君    保安政務次官  前田 正男君    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    法務政務次官  三浦寅之助君    法務省民事局長 村上 朝一君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法務省刑事局公    安課長     桃沢 全司君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○日米相互防衛援助協定に伴う秘密保  護法案内閣送付) ○国際連合の軍隊に関する民事特別法  の適用に関する法律案内閣送付)   ―――――――――――――
  2. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 只今から委員会を開会いたします。  先ず日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題に供します。前回亀田委員の御質疑が途中になつておりましたので、亀田委員から御質疑を願いたいと思います。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 前回に引続きまして基本的な点についての御質問を続けて行きたいと思います。前回、丁度木村長官の御都合で休憩になつたわけですが、あのとき問題になりました点についてもう一度お答えを願いたいと思うのです。それは念のため繰返して申上げますが、MSA協定の第三条の第一項、「両政府の同で合意する秘密保護措置を執る」こういうふうに条約がなつておるが、こういう日本国内立法、或いは行政措置、これを外国がそに対して同意を与える、こういうことは極めて例外的なことです。従いまして普通は政府としてはそういうことをする権利はないと思います。ところが普通はそういうことはできないのだが、この条約で初めてそういう例外的な現象がここに起きて来るわけです。従つてこの条約国会を通過した後に初めてそういう両政府間の合意ということに基く行政行為があつていいのじやないか、従つてもつと具体的に言うならば、MSA協定がこの国会を通過してそうして然る後に国会もこの条文を承認したが、それからそれに基く秘密保護措置アメリカと折衝をして、どういうふうにするか、こういうふうになるのが私順序だろうと思う。先だつて答弁によりますと、MSA協定調印をして、調印直後にこの措置に関する一極の合意をしたと、こういうふうにとれるわけなんですが、この点について先ずもう少し明確にお答えを願いたいと思います。
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先般の御質問の際に、法制局長行から十分その占について説明したようでありまするが、再応私から申上げたいと思います。そこでMSA協定第三条に、「両政府の間で合意する秘密保持措置を執る」と、このどういう措置をとつていいかということは、勿論双方政府でみずからきめる問題であります。ただ、両国間でどういう措置をとるかということについて、意思の合致をさせることが妥当であろうというので、こういう条文を入れたものと考えられるのでります。MSA協定批准と前後いたしましてその措置をとることが極めて手続上妥当であろうと考えております。今亀田委員仰せになりました通りMSA協定批准なつた上に、どういう措置をとるかということをきめるのが妥当じやないかということであります。それも一つの方法でありましようが、併しMSA協定審議に当つても、すでに双方でこれでよかろうという措置について、日本政府がきめたその法律の御審議を願うといたしましても、手続上何ら差支えないと考えております。むしろそのほうが事を迅速に進める上において妥当であろうかと考える次第でございます。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 その点に関して、先日、丁度今お見えになりました佐藤長官が、それに類したことは例えば政府国会に提出する予算法律、こういうような関係でもままあることだからと、こういうふうに言われたんですが、これは私予算法律の場合とは非常に本質的に問題が違うのじやないかと考えるのです。それは例えば予算並びに法律提出権といいますか、提案権、これは本来政府が持つておる権利なんですね。両者相関連する予算法律を同時に国会に出して来る。これは私本来の権利の行使でありますという点から見ても、大して問題にすることはない。先ず法律通つてから予算と、そういう面倒くさいことをこれはする必要もないでしよう。ところがこの合意内容については、後ほど又触れることにしますが、ともかく日本国内における立法、或いは行政措置措置について外国意思が加わつて来る。いろんな速記録を調べますと、いや決してそういう外国に制肘されているのじやない、俺のほうは俺のほうで独自にやつているのだ。それに対してちよつと参考に聞く程度だと、非常に軽い意味で今までこの御答弁がなさておるようですが、併しまあそれは言葉のあやであつて条約の成文でははつきりと合意する措置と、こう言つているのです。そうすればその程度の差は、これは後ほど又論ずる問題として、日本国内で独自にやれるいろいろな行動について外国意思が参加、附加されて来ておる。これだけは明確なんです、少くとも……。併しこういうことは私憲法上許されないことだと思う。これは独立した国なんです、はつきりとした日本の主権の範囲内の問題です。だからそれを一歩超えるわけなんですから、私は普通の予算法律を同時に政府国会に出す、そうい4こととこれは大分事柄が違うと思うのです。先ほど長官は、こういうMSA協定を結ぶときに、それじやこの秘密保持措置、この協定成立後どういうふうになるのか、こういうことを相互話合つておくことがむしろ国会審議なんかにもよかろうというような意味のことをおつしやいましたが、それは例えば法律を作る際に政令案を幾らか審議してみるとか、そういう程度のことは私別に差支えないと思う。ただ要綱ですれ、それは……。ところが確定的にここに合意されたものとして本法案というものがやはり出て来ておるわけなんです。こうなりますと非常に、私はやはりそれは行き過ぎだと思うのです。単に参考に、MSA協定成立後におけるいろいろの事態を参考に両政府間が話合う、そういうものよりも一歩超えておると思うのです。これは恐らく政府が何も悪意を以ておやりになつたことじやない、善意を以て或いはおやりになつたかも知れないのですが、併しこれは冷静に考えて見ますると、非常に私大きな越権行為だと考えるのです。決して予算法律を同時に国会に提出するような問題と同じように論ずることはできない。こういうふうに考えるわけなんですが、佐藤長官が先だつてそういうことをおつしやつたわけですから、あなたからもこれに対する一つ見解をもう一度はつきり承わりたい。
  6. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 予算法律との関係をたまたま引用したわけでありますが、余り根本においては変つておらないと思います。と申しますのは、今のお話の中には、これを分析すると二つの問題が含まれているんじやないかと思うのですけれども、主におつしやつておるところは、この間御質問がありました趣旨から言いますと、この条約ができてまだ国会審議中であるのに、それが成立もしないのにこの法律案を出して来ておるということがむしろ越権じやないかというようなふうに聞えたのであります。そういう趣旨だとすると、それは予算と同じことでございましよう。この条約が実施されればそれに伴つてこういう法律が必要になりますということを合せて御審議を願うことが、むしろ審議権のほうから言うと尊重したことになるだろう。それを予算の場合に翻訳してみると、衆議院で盛んにお叱りを受けたのでありますが、予算を即ち自衛隊設置前提とする予算を出しておきながら、それの関係自衛隊設置に関する法律というものをなぜ早く出さないんだと言つてお叱りを受けておつたわけです。これは御審議には間に合せますということで間に合せまして漸く並行御審議を得たわけであります。そういう角度からのお叱りがあつたわけです。併し私はそのお叱りに対して、実は亀田委員のおつしやるような趣旨答弁で弁護したことがあります。これは理論的にはおつしやる筋が通るわけですから、従つて私の、その予算の際に申したことを言いますと、それじや大体予算通りもしないのに予算が通ることを前提として自衛隊設置法案なんか出して、国会をむしろ軽視するというか、僣越じやないかというようなお叱りも理論上はあり得ますけれども、併し審議権の尊重ということから言えば、まあ両方お出し願つたほうが国会としての御審議上便宜でございましよう。従つて急いで出しますということであります。でありますから、おつしやることはまさに理論的には私同感ですけれども、併し国会審議権立場から言えばやはり一緒に見ながら、この条約を通せば、それに伴つてこういう法律が出て来るんだということを一緒御覧顧つておいたほうがいいんじやないか。私は国会議員立場であれば、そういうふうな立場で主張するだろうと思います。そういう関係のことであろうと思います。  それから第二点はまあ余り重きを置いていらつしやらなかつたようですが、この合意に基いて法律を作るんだというような点についての、余り気持のよくないお感じというようなものが現われておつたようでありますけれども、事は結局よそから物を借りるということでありますからして、借りるんじやない、もらうんですから、もらう以上は向うのくれるほうの条件ということも考えなきやならん、これは常識上当然だろうと思います。向うの国では厳重に秘密保護しているものでありますから、それを日本でもらつて日本ですつかり漏れてしまうということでは、向うでは困るだろう。この問題の根本はその兵器をもらうということがいいか悪いかということに尽きるのであろうと思います。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 私の申上げるのは、条約成立した後に合意ということに入るべきじやないか、こう申上げる。そこが問題なんです。もう少しじや噛みくだいて分析してみますると、条約成立して初めてMSAによる武器援助が来るわけでしよう。武器援助が来て初めてそれに対する秘密をどうするか、これでちつとも時間的に遅くはないわけでしよう。理論的に言つたつて条約成立前にいろいろな内々交渉はそれはおやりになつているでしよう。併し条約成立しなければ物自身が来ないのでしよう。そうでしよう。だからそこから考えたつて、これは何ですよ、行過ぎですよ。そんな必要ないじやないですか、第一……。条約成立前に何か一部でもすでに来る可能性があるんですか。それから先ず聞きましようか。その点はどうなんです。
  8. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ず形式論理を申上げますというと、この条約の第三条の合意ということの働くのはいつかというと、この条約国会の承認を得てそうして明日か今日か知りませんが、日本側から向う批准通告をしてその日から効力を発生するわけでありますから、五月一日に仮にこの条約効力を発生するとすれば、今のお話の第三条が働くのは五月一日からでありまして、何もその前に仮に合意らしいものがあつたとしても、これは第三条の合意ではないと思います。形式論から申しますと……。併しこの間もちよつと触れましたように、条約調印する以上は、伺うがどんな気持を持つておるのか、第三条の合意の内合としても、どんな気持を持つておるのかくらいのことは打合わせておきませんと政府としての責任がとれませんから、それは内々事前一つの打合せというものは、非公式にあつたでありましよう。併し三条の合意というものは、この実施がなければ、形式的には出て来ないわけです。そのことはおつしやる通りであります。そこで順序を辿つて考えてみますというと、先ずこの条約批准されて効力を発生しますと、それから向うから武器が送られて来るということになると思います。そのときにはこの秘密保持措置がとられておりませんと、先ほど触れましたように向うじや困るわけですから、自分の国で一生懸命大事に秘密保持措置をとつても、日本に送つたとたんに皆それがばれちまつてはたまりませんから、それの措置保護がなけりや向うはよこさんだろうと思います。実際上……。ですからこつちへ送つて来るのはいつまで待つても来ない、届かない。まあ極めて素朴に事を辿つて行けばそれだけのことで、だから条約の実効を上げることができないという結論になるわけであります。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 これは本件に関する問題はさけど実害がないかも知れませんが、やはりこういうことは決して形式的な問題じやないわけでして、やはり厳格にやつて行きませんと、非常に困る問題ができると思うのです。例えば本件以外でも、政府が付か事前外国約束をした、基本的な条約が確定しないうちに約束をした。ところがどうもその後案外某木的な条約が難航してしまつて、そのために大体通るだろうと思つて予想した事柄が駄目になつて、そのため外国に対して約束したことが実行できない。そういうようなこともやつぱり予想されるわけです、別個な場合としては……。これは非常に日本の対外的な信用を却つて落とすのですね。だから、たまたまこうい条約法律案についてこういう問題が起きた。これはやはり政府としても十分今後注意してもらわなきやならん問題だと思うのです。佐藤長官法律的には私の考え方は是認されておるようですが、ただ秘密兵器をもらうという政治的な立場から、先ほどはこれでもいいじやないか、こういうふうにおつしやつたようですが、そういうふうにお聞きしておいてよろしいでしようか。
  10. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 要するにこの条約自身向うから兵器をもらうということをきめており、それについては秘密保護措置日本がとらなきやならんということをきめておるわけであります。従いましてこの条約国会で承認され、日本向う批准通告をした以上は、この実体はとにかく速かに取り運ばれなければならないということも当然なことになるわけであります。それについての今の秘密保持措置という、ことも速かに取り運ばれなければならないということは、これは形式論から言つても、実質論から言つても当然出て来ることでありまして、この秘密保持措置だけが遅くてもいいということは、これはもう条約そのものがきまつた以上は、そういうことは言えないことで、条約がきまれば、秘密保護措置も当然急いで作らるべきであるという筋合いになるように考えます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 まあこの問題はもう少しいろいろな実体関係を論じた後に更にもう一度取り上げてみることにいたします。  次の問題に移りたいと思いますが、ここで言う合意範囲の問題ですね。木村長官が一昨日の私の質問に対する答弁では、合意というのは手段だけの合意なんだ、法律によるか或いは単なる行政的な措置でやつて行く、どちらにするかというような手段だけについて合意すりやいいんで、合意された結果、その手段をそれじやどういうふうに具体化して行くか、そういう内容についてまでは合意する必要はないんだ、こういう趣旨の御答弁を私念を押したのですが、二回ほどされたのですが、それで間違いないでしようか。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点につきましては、過日の御質疑に対して答弁した通りであります。要するに法律でやるべきか、或いはその他の措置で済ませるか、これは双方合意の上できまるわけであります。きまつた以上は、法律でやるとすれば、その法律を如何に制定するかということについては、日本政府責任を持つて独自の見解でやるべきものと了承しておるのであります。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 この前木村長官がまだおられるときでしたが、上村さんでしたかにその点に関して実際の今までの事情をお話になつて合意したのは法律によるかどうかということが一つと、それからもう一つはこの法律の中に含ませる秘密範囲ですね、具体的にはこの法案の第一条の第三項に書いてあるこの秘密範囲、そういうものについて合意をいたしました、こういう事実をおつしやつたようでありましたが、その点は間違いないでしようか。
  14. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 先日の委員会で私から申上げたことでございますが、法律によります場合に、どういう法律を作るかということにつきまして考えますれば、この防衛秘密という、守るべき秘密というものが、アメリカから武器をもらいますについて、どういう内容秘密保護したらいいかということにつきましては、やはり先方意向打診する必要がございますので、外務省におきましてこの秘密内容については正式の合意という点までは参りませんが、意向打診はいたしております。この法律のどういう犯罪構成要件内容に盛るかとか或いは罰則をどうするかとか、法律形式の全文をどうするかというようなことについては、全然先方意見も聞いておりません。従いまして合意を終えているということも、ございません。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 先だつてあなたじやなかつたですか、その点の答弁をされたのは……。
  16. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 私です。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 この第一条の三項秘密範囲について先方合意のための交渉のようなことをあつたようにおつしやつたのですが、これは速記録を調べればわかりますが、只今お答えと大分違いますがね。
  18. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 只今申上げました通り、この秘密保護するについてはどういう秘密保護するかということについて、これは法律によるか否かは別といたしましても、必要なことは申上げるまでもないと思いますので、この防衛秘密というものが、一体どういう秘密であるかということについての意向打診はいたしております。併しながらこの法律内容の主たるものをなしまする犯罪構成要件はどうするかとか、どういう犯罪を処罰するかとか或いは罰則をどうするかということについては、向う意向打診しておりません。防衛秘密が何であるかということについて意向打診いたしませなければ、法律によるか否かを問わずわからないわけでございまするから、その点については先方意向打診いたしております。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 打診という言葉を使われておるわけですが、恐らくアメリカのほうでは、結局MSA第三条第一項のそれは合意の中の一つ行動なんだ、こういうふうに先方はとつておるのと違いますか。私もMSAの第三条というものがある以上は、これに賛成反対ほ別として、それはやはりそこまでのものをこの合意というものは要求しておるように思うのですが、全然日本のほうが先方のほうの意向打診もしておらん、そういう連絡関係は全然ないのだとこうおつしやるのならば、これは了解しますけれども、実際は連絡しておるのでしよう、罰則なんか別にして、秘密内容について……。だからこれは私どうもその点が少し何か言葉だけで、俺たちは決してこう法律内容についてアメリカから容喙はされておらんということを特に強調したいがために、そういうことを言つているような感じがするのでずが、どうですか。
  20. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 外務省におきまして話をしておりまするので、私ども直接は参画いたしておりませんが、併し正式の両政府間の合意と申しますれば先般先ほど仰せになりました通りに恐らく書面でいたしまするか、或いは正式の会談で合意いたしまするか、手続は私ども存じませんけれども、併し秘密保持措置をとります上につきましてその秘密保持防衛秘密というものは一体何なんだということにつきましては、やはり向うにも聞きまして、そうしてどういうふうな秘密ということを聞きませなければ合意段階にも至らんと思われます。合意かどうかということは言葉の問題でございますが、合意着手ということ、着手にはなるかも知れませんけれども、正式の合意というものは恐らく条約成立いたしましてから、或いはこういう法律日本国会で通つたんだが、これでいいかということは外務省当局で打合せることと存じます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 今ちよつと速記録を調べておつたんですが、外務大臣が四月六日の参議院の法務並びに外務連合委員会で我が党の佐多委員質問に対してこういうふうに言つておるのですよ。どうも少し考え方が違うように思うのです。「これは附属書に出ておりますように、附属書のB、こういうことが先ず第一に合意に到達したことであります。」この合意説明ですね、第一の附属書B、「それからこれに基いて我々のほうで適当と思われる法律を作ることが必要だと考えてこの法案を出したわけですが、その法案を出すときにおいては、例えばこの中の一条の第三項」さつきから言つている秘密範囲のやつですね、「一条第三項と言いますか、これこれのものについて適当な措置が必要であるという内容等についてはアメリカ側話合つて何も非常に広汎である必要もないので、これだけのもので十分だという点もやはりアメリカ側合意に到達した結果であります。」こういうふうに、この外務大臣答弁から見ると合意というものを二つに分けている。一つ附属書Bで伴いてあること、これがつまり第三条第一項の合意の中の先ず一つなんです。それからもう一つは第一条第三項、こういつたようなことがアメリ側との合意に到達した問題たんだとこう言つておるわけですよ。だからこれは決して参考アメリカ側意見を聞いたと、そういうふうに外務大臣考え方というものはとても取れないのですよ。
  22. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この件につきましては、外務省先方と話をいたしておりますので、外務大臣がそういうふうに合意に到達したというふうに仰せになつておるならば、その通りだろうと存じます。私どもといたしましては併しこの秘密保持措置をとる上において如何なる手段をとるか、行政措置もありましようし、立法措置もございましようが、その肝心の秘密については一体どういう内容なのか、武器をもらうにつきましてその秘密を保持するについての前提要件でございますから、これの内容につきましては、私ども外務省に折衝いたしまして、先方意向を開き、そして私どものほうで法案を立案いたした次第でございまして、合意段階がどの程度かということにつきましては外務大臣の言われた通りかと存じます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると外務大臣立場をお認めのようでありますから、そうすればこの日本立法内容MSA協定に辛いてアメリカが干渉といいますか、言葉はどうでもいいのですが、ともかく参画して来ていると、成規手続で、参考にお互いの意見を交換るとかそういうものじやなしに、外務大臣立場を認めればそういうふうに当然結論ずけられるわけですが、こういうふうに解釈してよろしいでしようか。
  24. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) このMSA協定第三条による両政府間の合意というものは、先刻申上げました通り、どういう秘密保持措置をとるかということであります。それは正しく双方合意によるということになつております。その如何なる保護さるべき秘密対象、それについてはこれは尤も我々といたしましては自分だけできめることはできない、アメリカからどんな秘密のものが出て来るか、又それをどういう工合に我々は対象ずけるかということについては、やはり双方で或る程度協議しなければわからん。その協議によつて初めて保持さるべき秘密対象というものは現われて来るのであります。それによつて我々独自の内容を盛つた法律案を作つて国会審議を求める、こういう段階になるだろうと思う。この外務大臣の言われたのは要するに、秘密対象となるべきもの、つまりどういうものを秘密として取扱うかということについての合意、こういうふうに我々は了承してよかろう、こう考えております。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 外務大臣木村長官のこの合意に関する考え方、どうも食い違いがあるように思うんですが、外務大臣のほうは、この連合委員会速記録を詳細に見ますると、二回くらい繰返しておるようです。この合意というのは結局二つだ。一つ先ほども申上げたように附属書Bのことなんだ、Bを具体的に外務大臣が更に説明して、例えば秘密に非常に高度なもの、中間くらいなもの更に軽微なものがある、非常に高度のやつは局長級までそれを知らして行く、そうでないものは部長級、更に下つて係長級、こういうふうな意味なんです。こういうふうに具体的に言つておる、このことが一つ。それからもう一つはこれは条文を挙げて言われておるわけですから、第一条の第三項と、あとの罰則のことなんかは関係ありません。これは言つております。つまり合意というものを、そういうこと言つておるのですがね。外務大臣のほうはむしろ法律によるか、行政措置によるかというようなことはむしろ日本独自でやつてもらつていいのだ、そういうふうに私もちよつと速記録の指摘はできませんが、そういう立場でものを、言つています。これは恐らくはほかの力も速記録を御覧になつた方はそういうふうに解釈しておると思う。ところがあなたのほうのお話を聞いておると、内容は全然こつちに委されておるんで、手段についての合意言つているんだ、こうおつしやるんですが、これは重大な食い違いになりますがね。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは重大な食い違いでも何でもないと思います。つまりどういう措置をとるか、どういう法律秘密の保持を守つて行くかということは、日本政府は独自でやるわけです。併しどういう措置をとるか、法律によるか、政令によるかということは、これはアメリカ側との打合せで合意に待たなければならん。秘密対象をどうするかということは無論アメリカと打合せをしなければならん、日本独自でやるわけではないのであります。アメリカからもらう兵器についてどういうものを保護すべきが必要か、アメリカは又保護してもらいたい、これは双方で打合せしなければならない。そこに合意と言えば合意と言えると思います。いずれにいたしましても、日本政府アメリカが干渉するというような立場は全然とつていないということは明白なんです。繰返して申しますが、行政措置をとるにしても、法律を制定するにしても、その内容をどうするかということについてはアメリカはいささかも干渉しているわけではない。ただ、対象物をどうするかということについては、これはアメリカ側と十分打合せをする、こういうことになると思つております。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 木村長官外務大臣のこの答弁を総合いたしますと、結局私両方を含んでいるのではないかと思います。実際は如何なる手段で行くかということも、それから内容的な問題も、これがどうも真相のように思うのですが、それは私もう少し速記録を、こことこことこうなるということを一つ整理して、それからこれは外務大臣の御出席を願つて、この点更に明らかにしたいと思います。そこでそういうふうになつて来ますると、今後この法案に基いていろいろな措置国内的にとられます。例えば第二条に規定してあるような標記とか通知とかいろいろなことがここに出て来るわけです。で先ほどもまあ手段だけか或いは内容かという問題は別として、事実上そういうことが行われておるということは、これは長官只今の最後の答弁からしても推測できる。それで非常に気にかかるわけなんですが、今後やはり秘密保護法の運用に当つてアメリカに一々むずかしい問題について伺いを立てるような、お伺いを立てると言つてはこれは悪いかも知れませんが、いわゆる打診といいますか、又好意的な折衝でも何でも言葉はよろしい。全然関係なしでおやりになるかどうか。何らかのやは連絡を以ていろいろなことを進められるかどうか。これについて一つお伺いしたい。
  28. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) アメリカから武器をもらいますについて、先方秘密としておる事項を双方秘密保持措置をとるという約束はしておるのでありまするからしてアメリカ側と常時連絡をいたしまして秘密内容、どういう点を秘密にするかというようなことについては当然協議して参ることと存じております。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 そういう協議は、このMSA第三条の第一項のこの合意、この中に含まれておるという解釈でなさるわけでしようか。
  30. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 秘密保持措置につきましては合意をするという言葉がございますが、私ども今事実上連絡をいたして行くということを、申上げましたのは、時々この武器をもらつて参るわけでありますから、従いましてその中のどういう分が秘密であうてどうだというようなことについての連絡はいたして行くつもりでございます。併しながら個々の秘密保持についての取締方法とか、或いは罰則についてどうであるとか、或いは秘密の保持についてどういうような方法を、しなくも、やいかんというような干渉がましいことは先方では言うて来ないと了解いたしております。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 その連絡をされるという点についてお聞きしておるのですが、それは条約上の合意という問題じやなしに、実際上の立場から見てそういう連絡をして行くのが妥当と思うからやるのだ、そういう意味ですか。
  32. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 仰せ通りで、ございまして、どういうものが秘密であるかというようなことについて、当方も十分連絡いたしませんでは秘密保持ができませんので、そういうような連絡は事実上いたして行くつもりでございます。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 これも今までの議事録で必ずしも明確ではないのですが、そういう連絡といつたようなものは、どういう機構でおやりになる予定でしよう。
  34. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 別に特別の委員会を作るようなことも現在のところ考えでおりませんが、只今のところでは、恐らくこのMSA条約によつてできまする顧問団との事実上の連絡によつてつて行くのではないかと現在のところ考えております。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると顧問団の一つの仕事になつて行くわけですね。それから次にそういうふうになりますと、やはりだんだんこの日本の政治との関係が深くなつて来る。  もう一つ具体的にそれじや伺つて見たいのですが、この本法違反の何か刑事事件が国内で起きた、そういう場合ですね。丁度以前の軍機保護法時代に軍機保護法を犯した際そういう事件が裁判所に出ますると、裁判所としてはその問題の対象が本当に紙に書いてある秘密事項に該当するのかどうか、こういうことを素人ですからねわからない。そういう関係からよくこういう事件が起きているのだが、これは軍のほうでは秘密と考えておるのかどうか、こういうまあ問合せなんかをよくやつております。そうすると軍のほうからはそれに対する見解を述べて来る。それが決定的な裁判に対する影響を持つわけですね。その軍しかそれを知らないのでから、さあどうかなあと思つたつて、あとはみんな想像ですからね。果して法律条文に該当するかどうか、そのケースがそういうきわどいところになりますと、あとは殆んど想像で、結局はその秘密を握つておる人しかわからない。でこの法律日本援助を受けた武器について起きる事件ですから、日本政府も勿論秘密を知つておるわけです。秘密を知つておるのですが、日本政府に対する照会だけでは足らない場合が必ず私出て来るのじやないかと思う、具体的なケースになれば……。これはまあ公とか何とかそういう言葉意味のときに更に又もう少し詳細にお伺いしたい点もあるわけですが、そういう関連事項が出て来た場合に裁判を公正にやるためには、少しでも疑いが出て来た場合にはそれを調べたければたらない。調べるのが裁判の公正という点から見ては大切なことなんです。併しそういうことを外国に照会をするその回答というものは、当然裁判に大きな影響を持つて来る。そういうふうな事態というものを、立案された皆さんのほうでは予想はしておりませんか。
  36. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 只今亀田委員のおつしやられましたところを、私ども立案に参画いたしました一人といたしまして、非常に心配いたしたわけでございます。  秘密範囲を特定いたしまするためには、例えばアメリカ秘密を言うという規定の仕方もあると思いますが、若しさような形をとりますならば、日本の裁判所が裁判をいたす上におきまして、一々アメリカに対してこれを問合せをしなければならんということに相成ります。このことは現在のいわゆる刑特法のとつておるところでございます。併しながら本法案におきましては、さような立場を全然とつていないのでありまして、第一条の第三項の規定しておりまするところは自然秘でございます。即ち相当高度な秘密を規定しているので、ございまして、その点裁判所がアメリカ側に問合せるというようなことは必要ない方式をとつているのであります。事情を大体想定いたしますと、アメリカ側のほうでこの武器のこの部分をこういう理由で秘密として守つてもらいたいという通告が我が国に対してあると思うのであります。その秘密内容はその責任官庁である保安庁において十分、了知、これを記録にとどめておかれるのでございますから、若しも検察庁におきましてこの法案、法違反の事件を取扱う場合におきましては、保安庁に対してその資料の提出を求める或いは説明を求めるということによつて起訴を決定いたします。起訴されましてこれが防衛秘密に該当するかどうかという点の証拠関係は、検松察官が責任を持つて裁判所に提出する、かような関係になると思うのでございます。さような次第でありますから、裁判所がアメリカに対して問合せを出すという事態は私ども想定しておりませんし、又そういう事態を防ぐためにこの法案条文も十分練つたつもりでございます。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 いろいろ御苦心はされておるようですが、例えばこういうことが予想されるわけです。アメリカ日本に対して秘密保持を要求するのはこのMSA協定、これに基いて要求して来るわけです。ところが日本の裁判はこの秘密保護法で行くわけですね。秘密保護法の場合には、今までの説明を聞きますと、法律を犯してそれが或る程度公知の状態になる。それが裁判に進んだりいろいろして公知の状態になる。そういう場合に日本法律では犯罪にならないでしよう。そういうふうに今までの説明はなつておる。ところがアメリカのほうはその際一体どういう態度をとりますか。おれのほうはこれ、これ、これの秘密というものは保持してもらう義務が日本政府にあるのだからということで、この日本政府にやはり要求して来るのじやないですか。そういう場合に非常に私こういう行き方をしておりますと因ると思うのですが、どうなんですか。
  38. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 只今の御心配の点は、現在のいわゆる刑特法においても同様でございまして、アメリカの軍隊の秘密というものが刑特法第六条によつて守られておるわけでございます。併しながらこれが一旦公になつた場合には、これは刑特法におきましても防衛秘密とはいたしませんので、当然そういうものが探知、収集され或いは漏せつされましても、六条違反としての処覇は受けないわけでございます。そういう立て方をいたしますることについてアメリカ側においても了承いたしておるのでございます。この法案も刑特法の第六条と同じ形をとつておりますので、そういう点で問題は生するということはなかろうと存ずる次第でございます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 そういうところまで了承しておるということであれば、その点は解決つきますが、併しその半面から考えますと相当突つ込んだことまでアメリカ交渉されているわけです。それは又先の問題に戻りますから触れませんが、併しこういう場合が予想されますよ。例えばフリゲートの何か通信機の部分なら部分、これが秘密だ。こういうふうにされた場合、この一部分、この一部分といいますか、秘密秘密でないかわからんような場所、そういうものが漏れたというような場合、これはやはりアメリカ側意見というものが出て来るのじやないですか。これは公知になつたとかならんとかいう問題でなしに、このものについての解釈の問題ですよ。そういう場合にはあなたはアメリカ意見は聞かないというけれども、それは今までの立法の経過から見ればアメリカに一応問い合せる。これは裁判の構成という面から見ても必要なんじやないですか。その結果というものは被告人には有利になる場合も不利になる場合もありますよ。どつちにしろ事態を明確にするということが起る。稀な場合かも知れませんが、あり得ると思うのですよ、そういうことも……。そういう場合にはやはり照会するということになるのじやないですか。又アメリカとしてもそれに対して積極的に見解を出して来ることもあるのじやないですか。
  40. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) その点になりますと、いわゆる刑特法とこの法律の立て方が全然違うのでございます。刑特法の場合にはアメリカ秘密が何であるか、日本側の機関では全然判明いたしておりませんので、その点の問合せをすることがこれは実際上必須の条件になるかと存ずるのであります。併しながらへ今回の防衛秘密保護法案によしますと、それらの点は全部日本側の独自な判断でこれが処理できるようになつておりますので、私はアメリカのほうに問合せをしなければならないというような事態は起らないのじやないかと考えておる次第ございます。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 私の申上げるのは、秘密の指定があつたとしても、これは言葉で現わすわけですれ。これか秘密だ、これだけをきちつと何かで書いて、ここを離れないようにするのならいいのですよ。言葉の上でこれを表現するわけでしよう。だからこれの一体どこなのか、これは当然これが独立して存在しているものじやない。これとこれがみんな結び合つているわけでしよう、いろいろな装備というものが……だからそういうことで必ずこれは秘密範囲というものが極めてややこしくなりますよ。そうするとあなたのほうはこれはアメリカ秘密としているものを保護するわけでしよう。日本秘密だ、こう言つていますけれども、実際は……。これは被告人のほうからその点を明確にしてもらいたいということが出れば、これは当然裁判の構成から言つても、アメリカのほうに照会して見る必要があるのじやないですか。そういう場合に被告人の要求があつてもそれを蹴るのですか。
  42. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 例えば或る武器の構造、性能、これが問題になつたと仮定いたしますと、この性能というものはどういう点が秘密として守らなければならないかということは、これは保安庁のほうに当然機関を通じて通告があるわけなんです。どういう性能が秘密であるかということは、若し必要があれば当然法廷に提出されなければならないと存じますが、これは日本の保安庁ならば保安庁の関係者で十分立証ができる。その間の事情も明確になる、かように考えておる次第でございます。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 明確にならん場合もできますよ。……その次にしましよう。  それから次にMSAの三条の例の措置の問題ですね。これにもう一度戻りたいのですが、この条約から言いますと、措置というものには法律であつてもいいし、普通の行政措置でもいいのだ、こういうことは繰返して言われておるわけなんです。それで私のほうからこの点についてもう少し聞きたいと思うのですが、そうであれば、先ずこの国民に迷惑をかけないような行政機関の内部の措置ですね、これは考えなかつたか、こういう点なんです。ともかく機密を持つておるのは政府のほうなんですから、その人たちが十分注意をしておやりになれば、少しも問題が発展しないのです。そこで切れてしまうのです。それを放置しておいて、いきなりこういう立法をする、いわゆる秘密保護ということが当然とされておる国、例えばいろいろな軍隊、そういうものを持つておるような国、そういうところならこれは別なんですが、日本はそうじやないのですから……。木村長官も軍隊じやないと言つている。従つてこういう国においては先ず行政内部のこと、これに重点を置いて考え、それでもなお且つ足らないという場合に初めて一般の国民に対する影事のあるような諸問題にまで移つても、これはいたし方ないかも知れんが、その点についてどうお考えでしようか。
  44. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 仰せ通りで、ございまして、この措置の中には立法措置のみを意味しておるわけではございません。日本政府といたしまして秘密の漏泄について先ず第一に行政機構内部の秘密漏泄を防止する厳重な措置をとりますことは当然でございます。併しこれは法律を要しない措置が大部分でございまして、ただ、この法律の中に一部業務上知得したものについて現在の保安庁法或いは公務員の罰則よりも強化いたしました点はございますけれども、この法律を出しましたからと言つて一般行政官庁の独自な内部の措置を全然やらないのだということではございません。これが第一義であることは仰せ通りであると存じております。
  45. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点私から補足して申上げたいのですが、無論今亀田委員仰せになりますように、この秘密になる対象物を取扱う者に対して特別の注意を払えばそれでいいじやないか、一応ご尤ものようであります。併しこの兵器については、武器についてはこれは外部に出すことがある、或いは修繕をする場合もあるし、又それに基いて新たに造らせるような場合もあるのであります。第三者が出て来る、これが一つ、もう一つはいろいろな観点から……、将来自衛隊となるのでありますから、自衛隊アメリカから供与を受ける武器等について悪意を以てこれを探知しようという者がなきにしもあらず、これは十分警戒しなければならん。それらに対しては内部的に行政措置だけじやいけないのでありまして、かたがた第三者関係が生ずるという点から見て、この法律を制定し最小限度の処置をとる、これは私は当然であろう、こう考えております。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 これは少し事実関係を聞きたいのですが、昭和二十七年の日米間の船舶貸借協定、この七条によりましても、アメリカ日本に貸与するフリゲートの一部には秘密があるとすでに長官もおつしやつておるのですが、その秘密についても秘密保持措置をとらなければならんということが船舶貸借協定第七条にきまつておるわけですね。その問題は現在までどのように処置されて来たのですか。又それでそのために秘密保護法というのが勿論今まで作られておりませんが、少しも私それで差支えなかつたものと、こういうふうにこれは推察するわけですが、その間の事情を少し御説明頂きたい。
  47. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 一昨年に締結されました船舶貸借協定秘密は比較的レーダーの一部等に限定されておりまして、フリゲートの中におきましてもその部屋だけは一般の人を入れておりません。又従いまして我々関係職員のみに対する措置で足りる点から、特別の立法をお願いいたしておらなかつたのでございます。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 フリゲートの場合には、これは本会議でも委員会でも幾らかお話が出ておりますが、秘密の数ですね、数は一体どれだけが本当なんですか。何か余りないとか、例えばとか、そういうような表現しか用いられておらないのですが、数ですね、何カ所あるのですか。
  49. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 現在のところ約五つございまして、レーダー及び射撃盤、無線機器、それからCICルームというのがございますが、それの案内の装備品及び敵味方識別機、こういうものが現在秘密とされております。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 そういう五つの秘密に関連のある保安隊の職員ですね、これは何名くらいおありになるのですか、これははつきり計算はつかんでしようが、概略のところを……。
  51. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 先ほど申上げましたものは全部CTCルームという一つの部屋の中にございまして、CICルームに関係しておりますのは、PFの乗員中せいぜい十人以内くらいかと存じております。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 フリゲートは何隻でしたかね、現在……。
  53. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 十八隻でございます。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、今後陸海空と、こういう構想を長官が持ち、又それに対する武器援助を期待しておるわけですが、その関係秘密関係がどれくらい殖えるのです。これも御質問に対してはどうもはつきりとした答えが今まで出ておらないので……。併し私ども法律を作る以上は、事実関係が明確でなくして適切な立法はできないのですから、そういう立場でできるだけ一つ詳細にお答え願いたいと思います。
  55. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 陸の関係につきましては、現存、保安隊で借りております武器については全然ございません。従いまして今後も陸の関係について今までと同様の武器をもらえるのでございましたらば、秘密のものは生じないと思います。併し新らしい武器をくれるかも知れませんが、これは現在のところわかりません。海し空につきましては、PFにつきましてありますように、こういうレーダー関係、無線機関係等は来る見込みは相当あると思うのでございます。なおPFよりも更に高度のものが、駆逐艦或いは航空機等に附いておるということは想像できます。併し現在どういうものが来るかということにつきましては、先方もまだ申しませんし、当方も従いまして承知いたしておりません。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 これは的確なことは援助を受けた後でなければ言えないことでしようが、大体の見当は付けられると思います。付けられるというのは、  つまりこちらのほうが一定の計画を立てて要求書を出しておるわけですから、その要求書に対して果してどの程度のものが来るか、これは来てみなければわからない。だから要求通りに来たとした場合には、一体そのような秘密を持つた船、それから船の場合百船が何隻くらい殖えるか、これを先ずはつきりしてもらいたい。要求書の通りつた場合……。それからもう一つは、空のほうが今度は新らしい問題になるわけですから、余りはつきりしたことは言えないかもわからんが、空のほうもこちらの要求の立場から見て、数量はこの程度になり、そのうち秘密関係はこういう方面が予想される、そういうふうな点分けて御説明願いたい。
  57. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 船につきましては、現在予算委員会で申上げております通り駆逐艦級以下十七隻二万七千二百五十トンの船の貸与を受けたいということを言うております。このうちどのくらい秘密を要するものがあるかということのお尋ねでございますが、船全部が秘密であるというものは恐らくないと存じます。ただPFにございますような無線機器、レーダー等につきましてPFよりも更に高度なものが乗つておることは想像ができると思いますので、その部分については防衛秘密の指定をすることになるかと存じます。飛行機につきましては、合計百四十三機となると思います。このうち普通の練習機につきましては、恐らく秘密になる点はないのじやないかと考えられますが、ただやはり船の場合と同様にレーダー装置、或いは敵味方識別機と申しますか、そういうようなものについては、防衛秘密の指定が行われるのではないかと考えております。従いまして総体のうち何機のうち何機という飛行機全体を秘密に指定するということは恐らくないと存じております。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 飛行機のほうはこれは要求されているのは練習機が主なようですが、そうでしようか。
  59. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 練習機が大部分でございますが、なおそのほかに輸送機及びヘリコプター若干、なお海上の実用機、これは河上の偵察用でございますが、実用機が数機ということになろうかと存じます。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 この飛行機の乗員というのは何名くらいですか。
  61. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 大体操縦者が二人乗りますれば、要員といたしましてはその倍を予定することになると存じます。ただ航空関係全般といたしましては、整備或いは準備員、或いは地上勤務員、或いは幕僚幹部要員等を含めますれば、普通私どもの計算いたしておりますのでは一機について四十人程度の人員を要すると考えております。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 大体の見当がそれによつてつくわけですが、そういたしますと、フリゲートでは秘密関係ある者が一つの船について十人以内、これが十八隻、それから駆逐艦がこつちの要求通りもらえるとして十七隻、そのうちの秘密関係ある者が、これはもらつてみなければわからんということなんですが、フリゲートの倍というふうに少しゆとりをとつてみても一隻について二十人、それが十七隻、これも十隻くらいになるかも知れんのでしようが、まあそういうことです。それから空のほうは練習機が主体のようでありますから、秘密の部分が少い。百四十三機全部来るか来ないかもこれはわかりませんが、たとえそれが全部来たとして、この三つを全部総合して結局秘密要員といいますか、それに非常に関係のある役人というのは大した数じやないのですね。であなたの見解ではこれを最大限のところで合計しますとどれくらいになりますか。
  63. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お尋ねの点は直接この秘密兵器を取扱う人員というお尋ねだと思いますが、それはそう大した人員にならんと思うことはお尋ねの通りだと存じまするが、併し例えて申しますれば、飛行機で言いますれば、これの整備要員或いは修理の要員等内部におきましても相当な数になると思います。そのほかに幕僚幹部の要員もございまするし、或いは学校の教官もおりまするし、警備要員等もおります。更にPFにつきましては、一つの部屋だけが秘密でございまして、そこに入ることは修理等の場合にも入れませんが、併し飛行機等につきまして、或いは今後来る無線機器等につきましては、民間にオーバーホールさせましたり、或いは修理を民間にさせるというようなこともございますので、直接秘密に接触する人員というものは数は正確にちよつと申上げかねますが、相当な人員になるのではないかと存じております。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 その点はどの程度範囲の人を秘密にタッチする職員と見るか、これは問題があろうと思うのですが、併し八千五百万の国民に比較すると全く九牛の一毛といつてこれは差支えない。そこで私どもが考えてもらわなければならんのは、その人たちが本当に秘密を守る、そういうふうに厳正に行動して行けばこれは要らないのです。いや工場に修理に出すとおつしやるかも知れんが、修理の出し方も十分決意されたらいい、そういうことがいろいろなされて、なお且つこうなんだということが明確になりませんと、こういう立法というものは非常にやはり納得しないままで進められて行くような感じがするわけなんです。秘密々々と言つたつて、国民には初めから関係ないのですから、問題は役人だけなんです。自分の持つているものが自分のへまで外へ漏れるだけでしよう。いやスパイがおるとか……、スパイがおることは世界中どこだつておる。スパイに取られんように注意したらいいでしよう。それを何かそういうものを処罰するようにしておけば、あいつらは立ち寄らんだろう、こういうようなことで自分のほうの責任というものは何か回避される、こういうことじや私はいかないと思う。  そこでMSAにもう一度戻りますが、外務大臣はこの措置という問題について、必ずしも一般人に対する罰則を設けるというようなことは条約上の義務でない、このことも再三言明しております。これは保安庁のほうでもそのように解釈されておるはずなんです。そうすればこれは後ほど私更に、憲法との関係においていろいろお尋ねしなければならんことがたくさんあるのですが、そうであれば私今日の段階では、先ず行政上の措置を皆さんが完璧に準備される、これが必要な段階じやないかと思うのです。今日の質疑の最初にも申上げたように、MSAが、条約それ自身がまだできてないわけですから、そういう意味から言つても先走つている。だからこれは次の国会で、どうもいろいろやつたがこうだというふうなことからでも遅くないわけなんです。そういう点から言つても……。で、今聞いてみれば、ほんの僅かな人数の人たちに注意してもらえばいい。而もそれも、国会における答弁をみると、どれだけの分量が来るのか、又そのうちにどれだけの秘密が実際にあるのか、これがはつきりしておらない、はつきりしておらんということを重ねて言つている。そんな対象がぼやけたところにどうしてこんな立法措置をされるのか了解に苦しむ。現在官吏が秘密を漏らしたというような場合には、罰則があるでしよう。あれは保安庁の職員はその点どうなつているのです、普通の官吏じやなしに……。
  65. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 保安庁法に罰則がございます。職務上の秘密を漏らした場合におきましては、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金で科懲いたします。  なお、前のほうのお尋ねでございますが、先ほど長官から申上げましたように、一般行政上の措置は十分勿論とりますが、一般の民間業者に対して修理等についてやはり注文いたしまするし、又諜報組織の進んでおりまする現在におきまして、官庁の職員のみが秘密保護の万全の措置をとりましても、恐らく不可能であろうと存ずるのでございましてこれは世界各国がこういうような秘密保護の特別の立法をしてない国は恐らく皆無であろうと思うのでありますが、若し行政上の措置だけでできますとすれば、こういう法律はなくていいはずじやないかというふうにも考えております。又従いまして行政上の措置は勿論十分やりまするし、職員については厳重な秘密保護の指示はいたしまするが、それを以てしてだけでは、到底秘密保護措置としては十分とは言えないと存じてこの立法をした次第であります。
  66. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) なおその点について補足して申上げたいのであります。今亀田委員仰せになりましたMSA協定批准になる、暫く様子を見たらいいじやないかというお話でありますが、我々といたしましては、日本防衛体制を整える上において極めて効果的な、又二面において財政面から考えて安上りのものを作つて行かなければならんと考えておるのであります。それにつきましては是非ともアメリカから秘密の装備をもらいたい。こういう観点から見ますると、先ず以てこれの秘密保護すべき処置をしなければ、アメリカからそういうものはよこさないのであります。暫く様子を見てということでは、アメリカはそういうものをよこしません。それで我々といたしましては、このMSA協定批准になりますると、成るべく速かにアメリカから秘密武器をもらいたいという考えを持つておるのであります。従つて早急に秘密保護措置をとることが必要だ、こう考えてこの法案の御審議を願つているわけであります。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 そうなりますと、結局こういうことが又聞きたくなるわけです。この立法は結局アメリカに対する義務立法、こういうことになるわけですね。いやそれは義務じやないのだ、おれのほうの政治的な考慮でやるのだ、こう言われますが、実際上はそうじやない。そういう説明を聞いた感じというものは、結局あれを作らなければよこさんのだろう、こういうふうに第三者は受取る。だからそれであれば、最初の合意というのは、これは非常に突き進んだ合意なんですね。いろいろなことについてアメリカ意思日本が聞かされておる、こういうことになるんじやないですか。具体的に聞きますが、秘密保護法はおれのほうとしてはいろいろ問題がある点もあるし、時期的にもう少し先でもいいし、ともかく秘密保護法なしでも行政的た措置は十分やるから、それでMSA援助をくれるかどうか、そういう発言はアメリカに対してされたことがあろのですか。
  68. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 秘密保護ずべき措置をとることはこれは日本の義務であります。これはMSA協定第三条によつてそういう措置をとることになつております。どういう措置をとるかということは結局日本国独自の見解でやる。それについてはやはりアメリカの同意を要する、これは当然なことであります。そこで我々といたしましては、この措置をとつてアメリカから成るべく早く秘密武器の供与を受けたい、これなんです。勿論この法律内容については日本独自でやるということは当然であります。而して今いるいろ仰せになりましたが、内部の行政措置によつて賄えるじやないかということでありまするが、官房長から今申上げたように、このものについては将来修復もしなくちやならんし、又複製もしなくちやならん、これらの点ら第三者にこの秘密がわかるわけにたります。それから漏れることを我々としては防がなければならん、これが一つ。もう一つはいろいろ国際情勢上から、こういう秘密のものを探りたいという動きがあることは亀田委員も十分御承知のことであろうと思います。かたがた日本防衛体制を整える上においては、是非ともさような秘密の漏泄を防ぐ手段をとることが必要であろうと考える次第であります。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 国家公務員法並びに保安庁法の秘密保持に関する官吏や職員の義務、この点に関する条項の改正等について、当局ではお考えになつたことがありますか。
  70. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 公務員法は私のほうではございませんが、保安庁法につきましては現在改正法案が出ておりますが、これは同様になつております。ただ、本法案におきまして、業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者或いは過失によつて漏らした者については、第三条及び第四条によつて科懲をいたしておる次第でございます。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 私の申上げるのは保安庁法における秘密保持に関する条項そのものを取り上げる必要があるのではないか、こういうことなんです。つまり今あなたがおつしやつたのは、この秘密保護法案成立すれば当然十年以下の懲役、こういうことになつておるから、保安庁法の罰則が改正されたことになる、こういう御説明ですが、そういう間接的なやり方じやなしに、本当に秘密を守るには、先ず保安庁内部がはつきりしたければいかんだろう、こういう建前から来るならば、私は先ずやるべき措置というものは、保安庁法における秘密保持に関する条項、れを単に罰則が一年以下、三万円以下、こんなことじやなしにもつと上げる、これは当然でしようが、単に罰則だけじやなしに、それに関連していろいろな行政上の措置も伴わなければいけないでしよう、漏れた後に罰する、そういうことじやなしに、漏れないようにするためには、こうくこういうふうに内部の処置をして行こう、これが先ず出て来るのが本当じやないですか。その点を尋ねているのです。
  72. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 保安庁内部におきまする秘密保護措置といたしましては、現在は職務上の秘密ということで一般に広く網をかぶせておりますが、広く網をかぶせる上においては現在の程度で、罰則の点は十分であろうと思つております。ただ防衛秘密につきましては、先ほど申上げました通り、これによりまして科懲をいたしております。なお普通の法律によらない行政上の措置といたしましては、これは立法措置より以上に当然なすべきことは仰せ通りでございまして、この条約成立いたし、百更にこの秘密保護法が逝渦いたしますれば、私どもといたしましての行政折置は十分にとつて行きたいと考えております。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 それは十分にとおつしやいますが、どういうふうにお、やりになるのですか、もう少し具体的に御説明願います。
  74. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) この防衛秘密の内合によりまして非常に違うと思うのでございますが、例えば技術等につきましても、或いは構造、性能等につきましても、関係者以外には勿論漏らすことはさせないようにいたさなければなりませんし、或いは書類の保管或いは秘密部分に対する立入り制限、禁止というような、各種のものによりましていろいろの措置があろうかと存じまするが、あらゆる手段を講じて秘密保持措置はとつて行きたいと考えております。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 やはり国民が聞きたいのはそこなんです。国民に対しては、こういうふうに憲法上の疑義を含めながらも罰則を盛つたものが出て来ておるわけです、それに対して……。従つて先ず保安庁の内部がどうなつておるか、これはもう有力な意見です、こういう考えは……。それに対して聞いて見ますと、どうもあらゆる措置を講ずる、あらゆる措置言つて、国民に対しては具体的にこうするぞ、こういうふうに出て来ておるので、そんなあらゆる措置では甚だ私は納得できないと思う。それは具体的に秘密が渡されてみないと、それに応じて措置をとるのだから今は言えないのだ、こうおつしやるだろうと思いますがそういうことですか。
  76. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 仰せ通りでございまして、現存の秘密、例えば先ほど申上げましたPF、CICルームには関係者以外は立入りさしておりません。従いまして関係者以外には立入りいたさないような措置を講じております。従いましてそういうようなものによりまして、これが技術に関する情報でありますれば、書類として厳重に保管をして責任者をきめて他に取られないように、又他のものが見ることができないように、こういう措置を講じまするし、構造等につきましても同様に、関係者以外には接近をさせないような措置をとる以外には、措置はないと考えております。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 御説明の中で納得できるのは、そのフリゲートの秘密の部屋だけなんです。そのほかは聞いていて少しも具体性がない。それはつまりものがないうちに立法をするからそういう抽象的なことしか言えない。私はその点でこれはもう立法の原則を誤つておる。泥棒が八千万人の中で一人か二人おるようだから、窃盗罪を一つ作ろうと言つても、これは納得ができないのと一緒です。だからつまり如何なる具体的なことをと私が聞いても答弁ができないのは当り前であると思う、抽象的にしか答えられない。そうして国民にだけはこういうものが出て来る。これはとても納得できませんが、そこでさつきの保安庁法の改正、これは職務上の秘密として、一般にこの防衛秘密だけではなしに、いろいろな秘密も含めておるから一年以下三万円以下、こういうことでこの点は手をつけないでおくどうもそういうような意向のようですが、私はそれは間違いだと思うのです。本当の秘密保持の重点は保安庁の職員にある。こういうことがこういう国会の論議になり、いろいろな意見を聞いて、こういうお気持に若しなられたなら、これはすなおに保安庁法自身を手をつける。一般の職員については現行法のままでいいかも知れませんが、更に別な条項を設けて、そうして規定する必要が私はあろうと思います。そうしませんと、一般的な秘密保護法だけで保安庁職員をも規律して行こう、こういたしますると、非常な無理が来る。これは無理が来るというのは、これ又第三条の第一項第三号なんかの問題について論及したいと思うのですが、質的に私は違つたものが一つのところに放り込まれている。私はこれだけは抜いて、そうして保安庁法の中に明確にはつきりして行く。これがあなたの内部の秩序を確立する上から言つても非常に必要なのじやないか。日本の場合にはほかの外国の例なんかとやはり憲法の建前も違いますから、そういうことから考えてもそういう立法の方法が正しいと思うのです。隊員に対する戒めにも私はなろうと思う。そういう考え方はお持ちになれませんか。
  78. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 先ほどから申上げておりまするが、防衛庁法の中に、業務によると書いてございますのは、保安庁職員が主たる対象になると存じております。ただ附随いたしまして、民間工場に委託をいたしました場合の従業員というものは、併せて入つて来るという関係であると存じます。従いましてそのうもから保安庁職員たけを抜いて又保安庁のほうに規定すべきだというお説でございますが、私どもといたしましては、防衛秘密というものに中心を置きましたので、防衛秘密を漏らすということについては、ここに保安庁職員の分も併せて規定をいたしましたほうが自然であろうと存じます。保安庁職員たけを抜いて保安庁法に書きますれば、第一条から全部保安庁法の中に盛り込む必要があるのではないか、こういうふうに考えます。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 第一条から更に保安庁法の中で書いてもいいのでしよう。而も書き方が非常に違つて来ると思うのです。これは提案理由の説明の中にも、保安庁職員なんかの業務上知つたのを漏らすのは非常に重大視している、こういうことが言われるのですね。そういうものと、ほかの国民の一般の秘密の漏洩なんかが一緒になつておることに、今の段階では私は非常な問題があろうと思う。そういう立場でこれは申上げておるのですが、木村長官がほかの委員会でも言明されておるところによると、武器以外の、例えば国防計画という問題ですね、こういうものについては法律は要らない。客観情勢の変化なき限りというようなことをおつしやつておりますが、これは行政措置で十分だというようなお考えを発表しておりますが、間違いありませんか。
  80. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は行政措置で十分であるということは申上げない。私は常に申しまする通り、独立国家たる以上は、国家の重要な機密があることは申すまでもないことであります。それらの国家機密をどういう工合にして保護して行くか。例えて申しますると、今度自衛隊法が通過いたしますると、いわゆる第三国からの不当の武力行為を受けた場合に対処して、これに対してどういう指示をするか、その防衛出動の場合において、出動部隊の人員その他装備等については秘密を守らなければならない。これを国家としては何かの方法で守らなければならん。我々といたしましては、そういう場合においてはやはり防衛秘密保護法で守つて行くのが適当だと考えておりまするが、現段階においては、そこまで行くのはどうかと考えておるのであります。これは将来の問題といたしまして差当りMSA協定によつてアメリカからもらい受ける秘密武器について先ずこれを保護して行く手段として法案を制定するのが妥当なりとの考えの下にこれは提案したわけであります。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 あなたの主観的な考えから言いますと、そういう防衛出動等についての秘密なんかも、本来は保持したいのだと、こう言つている。併し現在ではそれは遠慮しておくと、こういうことです。そういう日本国内の問題についてはそういう考えが持たれるのに、どうしてこの武器の問題になると、どうしても今出されておるような形の機密保護法でなければならんと、これが私はおかしいと思う。一貫しておりませんよ。そういうふうに国防計画や防衛出動の問題であなたが譲歩できる立場がとれるなら、この問題についても譲歩できないことはないでしよう。形式的に言つたつて、何も私ども全然それを放置しなさいと言つているのじやない。秘密を守る人たちの内部の固めをかちつとしなさい。それに対する罰則の強化が必要ならば、それもいいじやないですか、放置しなさいと言つているわけではないのですから、その程度の譲歩は差支えないでしよう。
  82. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の申上げたのはそうじやないのであります。我々といたしましては、このMSA協定ができた以上は、一日も速やかにアメリカから相当の高度の秘密を要する武器をもらいたい。これができなければアメリカからさようなものはもらい受けられない。従いまして早急にもらい受けるためには何かの手当をしなくちやならん。そこでこの法案の制定を急いたわけであります。而して行政措置はいかんということは繰返して申します通り、いわゆるこの秘密に関す装備その他は一般の修理、或いは複製ということについて大きな関係を有し、一面においていろいろ国際情勢から見て我々のもらい受ける将来の装備についてこれを秘密を探ろうとする者はなきにしもあらずです。それについては国家として大いに警戒を要する。従いまして、それらの点についての手当が要るから本法案を制定したわけでります。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 どうも納得が行かな、のですが、アメリカ側のほうがそんなことを日本に対して言うたんですか、この法律がなければ援助をやらんと、或いはこちらからこれがなければもらえませんかと、こう聞いたことがあるのですか、具体的に……。
  84. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういうようなことを申さなくても、これは立場を変えても当然であります。一国の秘密兵器をほかにくれるのに、それを筒抜けにされては困るのは当然であります。立場を変えてもそうです。日本アメリカに対して秘密兵器をやるという立場を考えても、それを簡抜けにされるやつを日本秘密兵器アメリカにやるわけはありません。アメリカといたしましても、自分の国において厳重に機密を保持しているやつを、日本で筒抜けにするのでは困るのであります。それに対して日本でも同様の措置をとることをアメリカが期待していることは当然であります。これがMSA協定の第三条の精神であろうと私は考えております。日本といたしましては、これらについて十分の保護措置をとるのは当然であると考えております。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 アメリカのほうはそんなに、今の御答弁から想像すると、どうも具体的にこの法律がなければ援助が来ないといつたようなことを言われたこともないし、こちらからも聞いたこともないようです。だから結局あとは想像なんです。想像という問題になれば、これは我々にも想像の権利があるのですが、そんなにアメリカに遠慮しなくても、アメリカのほうは出したがつておるんだから、少し思い過ぎがあるんじやないかと思うのです。これは国際情勢の判断が君らと違うんだとおつしやるかも知れませんが、私どもはそういうふうに見ておる。アメリカはやはり木村さんのほうで兵隊さえ揃えてくれたら俺のほうはこれを出すからと、出したがつておる。それを出す目的は、これはどういう立場でやつておるか、これは今論ずる場所じやないから私その問題には入りませんが、そんなことは、何もそんなに遠慮しなくてもアメリカは出しますよ。現に外務大臣が、この合意というのは決してそんな一般的な法律まで作ることを意味するんじやない、終局は高度な秘密は保安庁の上層部の人、そうでないのはどつか部長とか課長なりで、それからもう少し下の者は係長だとか或いは取扱う人、その辺までに知らしてもいい、こういうようなことを要求されておるだけなんだ、あと一般国民に対してやるのは、これは日本のほうでそういうふうに独自に考えておるというのですが、これもどうも今日の質疑を通ずると怪しいのですけれども、ところがアメリカ自身がそういうようなことを要求しておるわけじやないのです。アメリカも、外務大臣を通じてのアメリカ側意向から言うならば、保安庁内部における職員に対する厳重な態勢ですね、これをこういうふうに固めた、こう説明すれば私十分了解願えると思うのですが、これは今からでもそういうふうにおやりになつつて私は了解してもらえると思うのです。どうなんですか、これは……。
  86. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 重ねて申上げます。アメリカMSA協定を作るに際して特に考慮を払つておるのは、将来日本に供与すべき武器秘密保護なんです。この保護を守つてもらいたい。これが第三条の精神なんです。日本といたしましても、MSA協定によつてアメリカから将来武器の供与を受けるについては、これを守つてやらなければならない。又これを守ることが日本防衛態勢を確立する上において第一の私は要件である。日本自体の利益のためにも守らなければならない、そこが私は十分に考慮を払わなければならん点だと思います。そうして今仰せになりましたように、部内を厳重にして行けば、こういう法案を作る必要はないんじやないかということのようでありまするが、私は繰返して申上げます通りアメリカといたしましても一番考慮を払つておるのは、いわゆる故意にこれらの兵器秘密部分を知ろうとする者があることなんであります。それらの者に対して如何にして保護すべきかということを先ず以て考えなければならない。内部的の問題ばかりでないと我々考えております。従いましてそれらの点を十分に考慮した上で、保護法案が、絞れるだけ絞つて国民に迷惑をかけない限度において我々は提出した次第であります。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 アメリカで希望しておるのは、決して秘密が漏洩した後に処置をすることじやない、これはあなたがよくおつしやる通りなんです。秘密を守つてもらうことなんです。スパイ網とかいろいろなことを言いますが、秘密が取られる、それに対する処罰を何もアメリカは要求しておらない。そんなことは第二の問題なんです。その漏れないことを考えているんです。だから一番これは突込んでアメリカにもう一遍確めてごらんなさい。漏れた後に処罰なんかしてくれたつて、君のほうは条約上の義務を果したとは決して言いません。私がアメリカ立場に立つたらそう言いますよ。そこが一番大事なんです、これで……。決して条約上そういうことをはつきりと求めているのじやない。それからこれは常識的に考えても、アメリカとしては日本一つ秘密兵器出すわけでしよう。アメリカ国内から見たらこれは或る意味では秘密外国に渡したことになるんですよ。そうでしよう。私はそういう段階においてそんなに高度な秘密というものが日本に来るわけがないと思う。アメリカ秘密日本に渡るというのは、アメリカ立場から言つたら、まあ限定された意味で公知の状態に置くことなんですよ。だからそんなことはもう、アメリカの取つて置きの秘密なんというものはあり得ない。若しそういうものが出されるのであれば、この条約の書き方というものはもつと明確であると思う。そんな部内におけるこの秘密保護の等級、これを確保してくれと、こんなような生まやさしい書き方なんかとてもするものじや私ないと思う。そういう実際の状況から見ても、本当に少し日本のほうでは余り思い過ごしがあると思う。これはあなたのほうは軍隊を作れば秘密保護法があるのは当り前だ、ないのがおかしいのだ、そういうふうなこうずつと戦前からの考え方ね、これは私はやつぱり抜けないのだと思うのです。だからこういうものをこう何げなく、と言いましちや少し言い過ぎかも知れませんが、割合軽い気持で出しておられるかも知れませんが、実体をもう少しやはり考えてもらつてそういう点が了解が行けばもう少しこれは考え直して欲しい。私どもはまあ反対の立場から、特にMSAとの関連において考え直してもらいたいというのですが、これは別個な立場から言つても、どうも中途半端なおかしい法律だと、こういう批判が出てまあ修正案なんかも盛んにいろいろなことを世間でも言われているような、そういうまあ何と言いますかね、内外兵に本当にこう整つておらない法律だという感じがするのです。だからそういうことか質疑応答の中で幾らかでも明確になれば、その点はやはりあなたも反省してもらわないと、幾ら私どもお互いに法案審議してみたつて無駄なんです。私どもの懸念しておる、或いは申上げておることが全然的外れだ、そんなことはおかしいということなら別ですがね。どうなんでしようか。
  88. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は昔の軍隊の考え方で以てことを進めておるわけじや決してありません。私は公正な立場に立つてものを判断をしておるのであります。この秘密保護法というのはアメリカから供与を受ける高度の秘密兵器、延いてはこれが日本のものになる、これを保護することが日本の国家の利益と私考えておる。これが筒抜けに外部に漏れるようなことがあつたら、日本防衛体制の一角は崩れると考えております。真剣な気持でおります。で、アメリカで今仰せになつたよう秘密でないもの、保護するような必要のないものをよこすようなことがあるかも知れんということ、断じてさようなことはないと思います。一度公になつたものはこの保護法の対象にならないものである。我々はどこまで竹も本当の秘密対象となるべきをこの法案に盛つてつているわけでありまして、雨うしてこの秘密というものを保護することがアメリかのためでもあり、私は日本のためだと思つておる。もらつてそれを秘密を筒抜けにすると、どうなるか、こういうことなんです。従つてこの法案の目指すところは、我々といたしましてはアメリカから高度の秘密兵器をもらい受けてその秘密日本が守つて行こう、これが日本のためだ、こういう真剣な気持で我々はやつております。決して生まやさしい考えでやつておるわけではありません。で、これは一たび法案が通過しないというようなことになりますると、アメリカから恐らく高度の秘密兵器日本には供与しないだろう。そして日本はそれだけ防衛体制が遅れるわけでありますから、我々といたしましては是非とも日本のためにこのアメリカから供与を受ける兵器秘密を保持する必要ありと、こう考えておるのであります。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 大分議論がこう並行線を辿つておりますので、一応MSAとの関係はこの程度で中止します。
  90. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  91. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記をとつて下さい。
  92. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 長官に私から伺いたいこともあるので、是非総括的の段階でもう一遍御出席を願つておきたいと思います。
  93. 郡祐一

    委員長郡祐一君) はいその機会は作ります。  それじやどうぞ資料の御要求をお願いいたします。
  94. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今亀田委員の御発言など、伺つてつても、次のような資料が必要だと考えられますので、委員長において御要求願いたいと思いますが、第一は現在まで例の日米安全保障条約に伴う行政協定に伴う刑事特別法について行政上、行政措置としてどういうふうな秘密漏洩関係措置がとられたか、どういう案件があつたのか、それが第一です。つまり刑事特別法で今までどんな事件が秘密漏洩に関してあつたのか、それについて知りたいという理由からであります。  それから第二は、この法案が主としてアメリカ秘密に関して日本の国民の人権が制限される場合がありますので、アメリカ関係で第一に資料として出して頂きたいと思いますのは、マクマホン法というものが見たいと思うのですがそれについて資料を出して頂きたい。それから第二は、アメリカ秘密に関して外国の人がその自由を制限された幾つかの場合がありますか。これはイギリスの場合には例えばフックス博士の事件、それからアメリカ自身の内部ではこの間のローゼンバーグ事件、そういうアメリカ国内秘密保護に関して外国人の関係で起つた事件と、それからアメリカの内部に起た事件、これらに関する資料を我々が今後この法律案によつて日本国民の自由が制限される場合の参考として考えなければならないと思いますので、大体以上種類としては三つですが、刑事特別法などに関して秘密漏洩の事件があつた場合の資料。それから第二はマクマホン関係の資料。それから第三がアメリカ秘密についてアメリカから見て外国人及びアメリカ人に関して起つた事件の資料、これをお願いしたいと思います。
  95. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 政府側にお尋ねしますが、只今羽仁委員が指摘されましたような資料早急に御調製になれますか。
  96. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) 法務省側としての所等事項はいわゆる刑特法違犯事件、この分は早急に御報告申上げられると思います。刑特の行政上の措置はこれはアメリカ軍のほうでやつておりますので、日本側のほうは関係ないと思います。刑事事件だけ御報告申上げることができると思います。これは資料ということでなくて、私の今存じておるところに上りますと二件事件がございまして、いずれも不起訴になつておりまして、起訴した案件は一件もございませんので、それらについて次の機会に御報告申上げたいと思います。
  97. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 他の資料につき」ましても可及的方法を尽されて羽仁委員の御要求に応ぜられるよう政府に要  いたしておきます。  それでは午後二時まで休憩をいたします。    午後零時五十二分休憩    ―――――・―――――    午後三時一分開会
  98. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 午前に引続き委員会を再開いたします。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 本法案と憲法との関係について、少しく質疑をしたいと思います。  その先ず第一点は、これは私本会議の質問のときにも、骨子だけはお尋ねをした問題でございますが、要するに日本国新憲法によつて、その第九条で旧来の軍隊という組織が解消されることが明確になり、従つて旧来の憲法も基礎にしてできていた古い刑法ですね、その刑法の中で日本に軍隊があることを前提にして設けられていた刑法の規定、即ち刑法第三章の外患に関する罪ですね、この部分が大幅に改正をされて現行刑法になつておる、わけです。それによりますと、結局外患に関する罪というのは八十一条と八十二条の二つに圧縮をされておる。旧刑法の場合には外国の軍隊と交戦をする場合のことを前提にして、日本の軍隊の秘密を守るとかいろいろな規定というものがこの刑法第三章の中にたくさん存在したわけです。結局現行刑法では、そういう立場の規定というものが一切これはなくなつている。そうして八十一条、八十二条は外国の軍隊が日本に入つて来る、こういうことだけが万一の場合として予想されておる規定なんです。従つて外国からの侵入があつて、それに対して自然発生的に抵抗する、こういうことは勿論問題でない。これはいつも木村長官外国から侵入があつた場合には誰だつて抵抗するのは当り前だ、こういうことをおつしやるのですが、そういう自然発生的な抵抗は何もこれは法の範疇に入つて来ない。そうじやなしに私どもが今考えておることは、そういう外国の侵入に対する組織的な平生から準備を持つた抵抗、こういうことはやはり憲法九条によつてはつきりとこれは否定をされて、その上に立つて私はこの刑法の改正というものがなされたものだと思うのです。憲法第九条の解釈については、これは随分いろいろな場所で国会で論議されておりますから、私は政府との見解の違いを改めてここで論ずるつもりはないのですが、ただ、この刑法の外患に関する規定が改正された経過、これはその当時の議事録にも極めて、明確なんです。憲法第九条の立場から言うならば、不要な規定が多いからこの二カ条に整理する、こういう経過というものが朗確に語られておるわけです。で憲法第九条だけをつかまえて論議をしていると、どうも言葉の上だけの論議になつてどつちが現実に即しているのか明確でない点がある。併しこういうふうに憲法から更に一歩下つてその憲法に基く刑法、これを見れば明らかにそういう組織的な抵抗力というものを日本が持つことは許されておらんのだ。こういうことがいささか私明確になろうと思います。私はそしういう意味でいわゆる今お考えになつておる保安隊或いは自衛隊こういうものは、よしあしは別として今の日本法律体系の中ではこれは許されておらない。あれだけ国民の税金を使い、たくさんの国民を一カ所にまとめておる、而もこれが公けの目的を持つて……。そういうものが特別な法律保護を受けない。こういうことは世界中どこにもなかろうと思いますね。ところが日本ではそういう法律の特別な保護を受けておらない。これは非常な不自然なんです。いや、それは追つて刑法を改正して又昔のようにするつもりだと、こういうふうに言われるかも知れないが、少くとも現在においてはそういうふうになつておらない。そうするとそれは将来の問題であつて、現在の法律体系の下においては、この保安隊、自衛隊というものは一種の畸型児というか、今はそういう言葉ははやりませんが、一種の私生児みたいなものです。公認されていない。法律保護しないのですからね。だからそういう状態にある軍隊に対して、軍隊といいますか、そういう組織に対してそれに持たす道具、武器、その秘密保護する手段としてたくさんの国民に迷惑を与えるようなことまで一体とれるかどうか、これは私非常に問題だと思う。刑法ですら保護してもらえないようなものがどうして俺の秘密を守れ、こういうことが要求てきるのか。本会議では佐藤長官が一応答弁されましたが、ああいう形式的な答弁では納得できない。憲法の下に刑法も何もあるんだ、先ず憲法の解釈が優先だというふうなそういう形式論理だけではこれは納得できない。こういう大きな組織が刑法の保護を剥奪されておる、それがそのままです。その実質的な点をあなたの見解を更にここで質してみたいと思います。
  100. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 仰せのようにこの間の本会議の答弁は、どうも四角張り過ぎて又簡単過ぎたということで不十分だつたと思います。その点はお詫びしておきたいと思います。  今のお尋ねの点は、結局元の刑法が新憲法実施後削除の条文を生じたということは、これは事実として辿つてみれば、当時として軍隊というものがとにかく解体されてしまつたわけでありますから、確かにこれは不要の条文であることは事実であつたわけであります。而して今日までこの外敵に対抗することを任務とする組織ということは今でもないわけであります。ところで今度自衛隊法というものを御審議をお願いしてそれが成立することによつて今度は外敵に対応するような任務を持つ実力の組織というものができて来たわけであります。それで一応の問題としてはそういう組織が憲法の解釈上許されるかどうかと、只今言葉に出たような問題が第一の根本問題であろうと思います。これはかねがね申上げておりますように、私ども見解としては憲法上否定されておらない。即ち自衛のために戦力に達せざる規模の実力を平素から打つことは否認されておらないという考え方でございますからして、その枠内においてそういう任務を持つ組織された部隊をこの際設けようということになつてつてそういう点からそれの持つておる武器としてどういう武器が出て来るかという話が出て来るのであろうと思います。そこで今の第二段の問題としてそれにふさわしいような武器が今度MSA協定によつて日本がもらうことになつた。それに関係してその武器秘密の問題が出て来てこれを保護することは、結局日本防衛ということに直接に関係のある必要なことになつて参るわけでありますから、この際法律としてかような秘密保護法というものを御提案申上げておるというのが事実の流れであろうと思います。  それでそういうふうに考えて来ますというと、やはり根本は憲法と法律との関係ということになつてしまいまして、その憲法自身がそういうことを許していないという結論になれば、全部これは御破算してあとの問題は出て来る余地はないわけであります。そこは私どもとしては憲法上はその限界内においては許されるというふうに考えておりますから、今申しましたような事実の流れとしてこれが成り立ち得ることと考えておるわけであります。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 佐藤さんに一つ更にお伺いしますが、世界のここかの国で例えば旧刑法の外患に関する規定のように軍隊といいますか、その組織的な抵抗をする、そういう集団、まあ保安隊とかそういうものに関する特別な保護規定がなく、そうしてその隊の持つ武器だけの秘密保護するような、そういう制度を持つておるところはどつかにありますか。
  102. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 保護規定とおつしやるのは、恐らくそのものの持つておる秘密等を保護するという意味だろうと思います。その意味では今回の秘密保護法もそうでありますと同時に、先ほど木村長官にお尋ねのありましたところの、これ以外の一般の防衛計画であるとかいうような広い面の秘密保護を必要とするかどうかということを含めてのお尋ねでないかと思うわけでございます。そういたしますと、我々としてこの秘密保護に当つては、恐らくあとから又お尋ねが続いて出て来ると思いますが、いろいろこれによつて、又国民に対する影響といいますものが出て来るわけであります。成るべくそういう影響を最小限度にとどめたものとして立法して行きたいという気持が一方に働いて来る。これは御承認願えると思います。こういう調和点を探して、今日の結論としてこの保護法案の規定するところによつてつて行こうという形になつておるわけであります。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 私のお尋ねしたのは、この秘密保護法案は装備品の秘密を考えておる。ところが保安隊の組織そのものは何ら従来のままである。特別の保護というものはないでしよう。一般の官庁の秘密を守るとか、こんな程度のものでしよう。ところがほかの国でも軍隊を持つている以上は、日本の旧刑法の第三章に規定してあつたようないろいろな基本的な保護、特別な、普通の会社とか、いろいろ国内の団体とは違つた特別な保護、そういうものが与えられておるはずだと考える。ところが日本ではそうならない状態になつて来ておる。こういう例が外国にありますか。身体自身は保証されておらないのに、それに着る着物だけ保護しておく。こういうふうなやり方のところがどこにあるか、具体的に御存じでしたらお知らせ願いたい。
  104. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) どうも伺つておりますというと、これは立法政策としてそこまで及ぼす必要があるのではないかというような問題に尽きると思います。そういう法制上の保護と申しますか、法制上の整備が欠けておるということのためどうであるとかいうことは、結局それで自衛隊なり何なりが完全に国を護つて行けるかどうかということに私は尽きることだと思う。それバ足りないということでありますならば、これは立法政策の問題として国会で更にそれを附加えて頂くということは、当然国会の御判断によつてきめられると思いますが、それが本質の問題、或いは憲法問題というような問題とは直接関係のないことであろう、かように考えております。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 単なる立法政策の問題ではなしに、これは本質の問題なんですよ。その本質の問題をただ憲法第九条の解釈なんかでやり取りしていても、これは結局並行線を迫るわけですから、それで聞くわけです。私は決して保安隊という組織体に対して特別の以前のような保護規定を置くべきだ、そういう勿論立場ではないのです。それが欠けておるから附加えなければならん、こういうふうに何か佐藤さんが私の立場を推測されて言われておるが、それは全く立場はむしろ逆なのです。だからそういう立場はそういうことは別にして、一体身体は保護しないのに、着物だけを先に保護しております。そういうふうな妙な恰好になつておるような国がどこかに今までありますか、事実だけを聞いておるのです。知らなければ知らないとお答えになつていいのです。あなたは知つてつても、都合の悪いことはなかなか言わないのだろうと思う。これははつきり言つてもらいたい。
  106. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御承知のように大多数の国は昔の日本の旧刑法時代の軍隊が持つてつたのと同じような立派なものを皆持つておるのが普通の例でございますからして、今御指摘の旧刑法にありますような条文をそれらの国が持つておるのが普通の例であると考えております。併し国にもいろいろあります。アイスランドのように全然兵隊を持つておらない国もあります。又西ドイツの例もございますから、例外は又別といたしまして大体はお察しの通りの形になつておると考えております。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 今あなたがおつしやつた通りだろうと私も考えるのです。そうすると日本のこういう法制のあり方というものは、これは誰が考えても不自然だというのは、結局憲法第九条に関連して旧刑法を改正するときの考え方というものは、もうこういう組織体というものは日本の法制からは抹殺するのだ、こういう私は考えだつたと思う。若しそれが暫くして又活きて来るかも知れない、そういう考え方であれば、それも刑法の第三章外患に関する罪というものをああいうふうに整理する必要はない、残して置かれたと思うのですね。その当時の立法者は時代が大分違つておりますから、うつかり削り過ぎたんだろう、こういうふうに善意で解釈されんこともないのですが、私、そんなものじやなかろうと思うのですね。成るほどそういう細かい点についてはいろいろ考えはなかつたかも知れませんが、削つたということは、ともかくもうそういうものは必要がない。これは刑法のような規定ですからなかなか普通の細かい時局に即した法律を改正するような場合と違うのです。念には念を入れて二十年、三十年先のことを考えてこれはいつもやるわけですね。こういう基本的な法律の改正というものは――。だからそれとの間に非常に矛盾が来ておるわけです。私は憲法第九条の政府のような解釈が無理だという一つの論拠としてこの問題を実は申上げておるわけです。でその点の説明がとても私どもには納得ができるような説明が頂けない。まあこれはこの程度にしておきますが、私はそういう意味本件のこの立法は憲法に違反するものだ、こういうまあ考え方を持つておるのですが、憲法との問題についてもう一つ別な角度から更にお尋ねをして入たいと思います。で、それはこういう法律ができますと、これは明らかに憲法第三章でいろいろ書いております言論とか出版、学問、そういつたような憲法の基本的人権の条項に対する制限という面をたくさん持つて来るわけです。これはまああなたのほうでいろいろな説明をされておりますが、この問題について少し突込んでここで討議してみたいと思いますので、それとの関係をどういうふうにお説明になつておるか一つ承わりたいと思います。先ず……。
  108. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この只今御指摘の関係は現行法であります刑事特別法の場合と全然根本は同じであろうと思います。それに共通するものであると思いますが、要するにこの憲法で保障している基本的人権の保障の仕方と申しますか、或いは見方によつては基本的人権そのもののあり方ということに触れての問題になろうと思いますのですが、非常な素朴な言い方をしますれば、自分のものではない他人のもの、自分のものとして大事な秘密に思つておるものを、我々がそれを勝手に覗いて見るというような自由が大体本来あるのかどうかというところまでも来るわけでありますけれども、要するにこの言論の自由その他にこの問題は関係はして参りますけれども、それらについてはやはり憲法上の基本的人権の限界というものがあり得る。その限界はいつも申上げますように公共の福祉というようなことで枠付けられておる。従つて而してこの法案の狙つておりますところは、その限界においての法律の制約であるというふうに考えておるわけであります。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 この公共の福祉という立場とこの基本的人権との関係ですが、これは御承知のように旧憲法の際には、いろいろな憲法上の基本的な権利について、法律の定めるところにより云々というふうなことが非常にたくさん付いていた。だからそういう意味で旧憲法の際には、法律で成る程度制限ができる、こういうことが初めから予定されておるような考え方、併しながらこれも明らかなところですが、新憲法の際には、そういう書き方を殊更にこれはもう避けておるわけですれ。で従つてこの原則としては、やはり何と言つてもこの法律を以てしても制限できない基本的な人権なんだという、こういうやはり考え方これが私正しい解釈だと思う。それから憲法に特に法律の定めるところに上り云々と書いてあつたのを変えたわけなんですから、この言論、出版、学問そういつたようなものに関する憲法上の規定というものはこれはもう絶対的なものだ、そういう意味では……。でその二つの、旧憲法と新憲法の違いはこれは勿論殆んど通説ですから、これは差支えないのですね、政府としても……。
  110. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやる通り、旧憲法においてはさようなことはありませんから、その点は明白に違つておると考えるのであります。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、政府のほうでは、この憲法第十三条の公共の福祉というものを持ち出しまして、基本的人権の制限に本法が幾らかなつても、それは差支えないんだ、こういうふうに言われておるのですが、その二つ立場の衝突ですね。これは旧憲法の場合と相当厳密な立場をとらなければいかんと思うのですね。よくこの憲法第十三条がこう引合に政府のほうがお出しになる。ともかくいろいろな権利を制限しようという法律が出て来ると、すべて十三条を持ち出すのですが、この十三条の場合もこの個人の生命、自由及び幸福の追求の権利、こういつたようなものが国政の上で最大の尊重を受けるのだ、むしろこの積極的な面から規定してあるのですね。公共の福祉に反しない限り最大の尊重を受けるのだ、尊重を受けるほうの立場から書いてある。そこにちよつと公共の福祉というのをいささか附加えている程度に過ぎないのですね。だからこの点はこの規定自体から言つても濫りに持ち出すべき問題ではない。併しこれにどうしても該当するという事態が起きた場合には、これは勿論私どもそれはいたし方ない。こう考えますが、そこでこの政府のほうで、言われる第十三条に本法案の場合には一体該当するかどうか、これは重要な問題だと思う。これは決して政府は該当すると言う、いやこれに反対のものは該当しないと言う、そんな抽象的な論議だけではきまらんと思うのですね。そこで該当するかしないかの一体限界ですね。何を一体標準にしてあなたはこの十三条にこの場合は該当するのだとこう言われているのですか。私どもは該当しないという考え方を持つているのですが、これはまあもう少しあとから申上げることにしてあなたが一体これに該当するとおつしやる根拠、具体的な内容、理由それをもう少し御説明願いたい、ただするのだという結論だけではこれは納得できないわけですね。今の憲法の立場から言うと……。
  112. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 憲法十三条で普通に言われておりますが、なお一般にはこの十二条の中段からあとに、「又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」という言葉が十二条にあるわけであります。それと十三条とは恐らく照応して考えられたければならんであろうと思うのでありますが、およそ権利、自由といつても、それには当然の限界があるということは、今のお言葉にありましたように衝突関係というものがあるということは、これは当然の事理と考えなければならないわけであります。先ほどちよつと触れましたように、或る一人の人の自由ということからいえば、よその人が大事に秘密にして持つているものでも、それを勝手に覗いて見る自由があるはずでありますけれどもそういうことを一人の人に許せば今度は被害を受けたその人の側から見れば、自分の大事に持つている秘密のものを人に覗かれるということは、その人の自由なり権利が侵害される結果になるわけであります。従いまして我々が動物であれば別でありますけれども、社会生活を営んでいる以上は、他人の基本的人権、他人の権利、自由というものとの調和がなければ、世の中というものは成り立つて行かない。そういう権利はこれは当然のことであつて申すまでもありません。フランスの人権宣言の第四条でありますか、自由とは他の者を害せざるすべてをなし得ることをいう。それ故に各人の自然的権利の行使は社会の他の各員をして同一の権利の享受か保障する制限のほかは制限されないということを言つておりますが、誠にこれはいみじくもその本質を突いたものと考えております。今申しました日本国憲法の十二条或いは十三条の関係も、そういう根本考え方の上に立つて公供の福祉という観念を持つて来ておるのであろうと思います。でありますからこの秘密保護法の場合で言えば、とにかく日本の国を守るということがいいか悪いかといいますというと、これはやはり憲法上は一応いいことと言わなければならないのです。先ほど御指摘の第十三条において名個人の幸福追求の権利、これについては立法その他の国政の上で最大の尊重をせよと憲法が命じておりますからして、不当な敵国の泥靴に日本の国民が蹂躪されるということは幸福追求の権利を害する大きなことでありましようから、やはりそれに対しては最大の考慮をせよということを十三条に命じておるということから申しますというと、やはり日本の国を守るということに手落ちが出て来る。大事な秘密を盗まれるということになれば、それによつて多くの国民が悲惨な日にあうということは一応筋道として考えられることではないか。こういう点から申しますと、やはりこの秘密を守つて行かなければならん。そのためには勝手に覗いて見ては困るよということを罰則を以て臨んでも、これは憲法の保障する基本的人権を侵害したということにはならんのじやないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 今のいろいろ御説明の中で、一つの問題は、基本的人権といえども濫用してはならないのだと更に十二条も引かれておつしやつたわけです。それはその通りなんですが、それじや濫用という事実があるのかないのか。これは私は本法を認めるか認めないか、それが公共の福祉上必要かどうか、この判断に具体的にこれは必要な問題であると思います。そこでお聞きしますが、従来のフリゲートに関する秘密ですね、これは盗まれたことはありますか。
  114. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 私どもの知つている範囲では盗まれたことはないと思います。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたら、濫用というのは一体何のことをおつしやるのかぴんと来ないでしよう。濫用ということは結局は基本的人権というようなことを言つて、何でもかでもどんどん探し出して行く、そういうことが一つ二つ少くともなければいかん、が、何もないのです。現に例えばああいう教育二法案、今文部委員会で問題になつている、あの場合でも、やはり公共の福祉ということが問題になつている。併しこの秘密保護法の場合では、現実の事態というものはよほど速いますよ。私どもは勿論現実にはいろんな問題があるとしても、ああいう二法案にはいろんな意味でこれは反対ですが、併しあの法案を出されたほうの立場から言うと、例えば二十四の偏向教育の事例、こういうことが文部大臣から説明をされておる。その根拠については相当怪しい点もあるわけですが、それは別として、一応そういう何か具体的な形の上における一種の濫用といいますか、そういうことがなければ軽々しく公共の福祉というようなところに私は今の立場から言つてつて行けないと思う。現在の新憲法の基本的人権の観念から言うならばそうだと思うのです。そういう具体的な現実の事例というものを一つ対象にしないで、そうしてああだろうこうだろうという臆測だけでやられるのでしたら、この憲法の基本的な人権の保障というものはいつだつてこれは政府が蹂躪できますよ。或いはスト規制法の場合だつてそうでしよう。あの立法の適正かどうかは、これも勿論別ですが、ともかく政府があれを提案する場合には、その当時における電産と炭労のスト、こういう二つの具体的な事例というものを労働大臣が持出しておる。その持出し方についても問題はあるでしようが、ともかくそういう現実的な根拠というものがあるのです。労働大臣はあのストを通じて基本的人権の濫用があつた、こういう意味のことを盛んに言われたわけです。この場合には例えばその一点だけをつかまえてみても、何を根拠にして濫用とかそういうことを言われるのか。それは具体的な根拠がなければめつたにそういう言葉を使つて公共の福祉の名において制限法を設ける、こういうことはできません。そう思いませんか。
  116. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今フリゲートの例を引かれましたけれども、とにかくこういう法律を作るということは、人を縛るということを目的とするのでないことは申すまでもないのでありまして、とにかく大事な秘密というものは漏れないようにということを唯一の目標としてできておるわけであります。従いまして今朝来たびたび当局から申上げておりますように、できるだけのことは当局部内の努力によつてそういうことのないように努める、これも又当り前のことであるわけです。併し万一の場合に、それが及ばずして、あつたらどうするか、万一の場合にあるということになれば、これはまさにあつた場合には、現実にやはりその危険があるわけですから、その場合を想定して、万遺憾なきを期しようというために、こういう法律が必要になつて来るわけであつて、併し法律を作つても、今申しますように、或いは又刑事特別法の関係の実績も大体示しておりますように、人を縛ることが目的ではないのでありますから、縛られる人の出ないようにということは、これは当然当局者として努力をして行かなければならん、そういうものだろうと考えております。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 この点の説明は随分苦しい説明ですよ。それは破防法の場合でもいろいろな具体的な問題というものを言われたわけです。ともかくその当時におけるいろんな社会的な現実の動きというものが出されて、そうして濫用ということに結び付いた説明というものがなされたわけです。私は少くともそれだけのことは必要だと思う。その出されて来る具体的な事例の適否は、これは又別個に判断すべきことですが、それすらも出ないというようなところに、どうしてこの公共の福祉というようなことに持つて行けるか、私これは断じてできないと思います。これは憲法の条文に何も書いてある問題じやありませんけれども、併しこれは非常に重要なことだと思う。刑事特別法の場合でも、これは羽仁委員から資料として提出の要求になつておるわけですが、これは勿論事案が少し違います。日本におけるアメリカ軍の持つておる武器秘密ということですから、事案は少し違います。けれども、それにしても起訴されたものが一件もないという御報告です。だがら恐らく何かちよつと間違つてそういう疑いを受けたという程度のものが二件ばかりあつただろうと思う、現実には……。そうすると極めて今の日本の国民はにかの問題は別として、こういう問題に関する限りは、決して基本的人権の濫用という立場には立つておらない、そう断定すべきたと思います。更に御参考桃沢さんでしたか、午前にそのことをおつしやつたのは、これは資料が恐らく手元にはないので、いずれ山田されると思いますが、その二つちよつと取調べるという話もあつたですが、これに関連して詳細なことはいずれ羽仁委員お答え願いたいとして……。
  118. 桃沢全司

    説明員桃沢全司君) あのまま本省に帰りませんでしたのでまだ見ておりませんが、件数は二件あつたということだけ存じておりますので、早い機会に実例を御報告申上げたいと思います。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 むしろその答弁の態度によつて、如何に軽微なものかということがわかるくらいです、稀にしかたい問題ですから……。それを担当の法務省の人が、ともかく二つほどあつたようだというふうなことしか言えないくらいに小さいことなんです。およそこんなところにどうして濫用とかそういうことが出て来るか、絶対にそういうことは言えない、これが一つの問題……。それからもう一つは、この基本的人権を制限するための公共の福祉ということの概念を持出すことが適当かどうかということの判断の一つの問題として更に確めたいことは、これは保安庁長官にこの基本的な立場だけ先ずお答え願いたいのですが、長官は衆議院等におきましてともかくこの秘密保護法は軍機保護法なんかとは基本的に違うのだ、こういう意味合いのことをおつしやつております。これをもう少し、どういう立場でそういうことをおつしやつておるのか、掘下げて御説明願いたいと思います。
  120. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先ず申上げたいのは、只今審議を願つておりまする秘密保護法であります。これは極めてその対象物を、言い換えますると、保護されるべき秘密のものを限定してあります。第一条第一項の第三号アメリカ合衆国から供与される装備品について左に掲げる事項、構造、又は性能、製作、保管又は修理に関する技術、使用の方法、品目及び数量、これだけに限定してある。ただこの二において供与される情報も極めてこのうちに限定されておるものでありまして、旧軍機保護法のごとく軍事上の秘密を要する事項、殊に作戦用兵、功員実施その他に関するものまでもこれは広く規定してあります。対象物が只今審議を願つておりまする秘密保護法と著しく相違をしておる、これを申上げたいのであります。要は国民の権利義務に重大な関係がありまするので、この秘密保護されるべき対象物をできるだけ絞つて、それで旧軍機保護法のごとく広汎なる対象を持つていない。これが根本的に相違しておる点であります。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 それは現われた法文の形についての大きな違いを長官が今説明をされたわけですが、私の一審お聞きしたいと思つておることは、昔の軍機保護法の時代には、国民も全部軍隊、これに対して一つの肯定的な考え方を持つております。生れるとすぐ二十になつたら兵隊に行くのだとか、そういうことは自然に全部気持の中に入つております。そういう自然の国民感情を背景にして組織もでき、又それに関する広汎な軍隊の保護規定も成り立つてつた、私はそう考える。で、この本法と一番違う点は私はその点じやないかと思う。現在の段階では旧軍隊のような国民感情というものは、今の保安隊なり自衛隊に対しては、とてもこれは成熟しておらない、これが一番大きな違いです。この点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  122. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今の国民感情にいたしましてもそうなる。外敵の武力攻撃に対しては日本を守つて行かなければならんというこの国民感情は十分あると思います。そうでないと日本の独立が維持できない。その日本の外部からの不当な武力攻撃に対して日本を守るという感情の下に、我々といたしましてはこれを守るだけの手当はしておかなければならん。それにはアメリカから供与を受ける秘密武器保護も又必要であろう。こういうことは当然のことであろうと我々は考えております。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 旧時代と余りその点についての国民感情が違わないようにおつしやいますが、これは非常に違いがあると思う。それは旧時代には軍隊をともかく否定する、こういう考え方は極めて数から言つて少いのですよ。現在は例えば堂々と大きな政党から見たとき、そういう点ははつきり否定している政党もあるわけですね。それが投票においてやはり出て来るわけです、これは大きな違いですよ。国を守る、これは勿論以前も今も同じです、つまりその守り方についてはやはり大きな違いが出ておると思うのです。いや、守らないと言いますか、軍隊を否定するというほうは、相当議員の数から言つたつて少いじやないか、こうあなたはおつしやるかも知れんですけれどもね。併しこの国民感情というような立場から考えますと、以前とは雲泥の差がある。このことだけは認めなきやならん。現に今保安隊に拡張されるんでいろいろ募集もされておる。この間からああいう水爆問題とかそういうことがあつてですね、なかなか募集がうまく進まない。こういうふうなことも聞いておりますが、そういう一つの事例から言つても、これは違うことだけは私ははつきり肯定できると思う、その点の大きな違いがあるということは……。その違つておるのを今後それじやとうして行くか、これは問題だろうと思うのです。これは木村長官が大いに苦心されておる問題だろうと思いますがね。そこに大きな国民感情の上の違い、これは私認めざるを得ないと思うのです。これは重ねてお伺いしますが、どうですか。それから今私ちよつとしやべりながら思い付いた保安隊の募集の状況ですね、これは甚だあなたの意に満たないような状況であるということを私承わつておるんですが、その具体的な状況はどうなんでしようか。
  124. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今保安隊の募集の状況如何、どういう情報を根拠にされて申されたかわかりません。或いは今朝の朝日新聞の三面ですか、あの記事を或いは根拠にされておるのかもわかりません。全然さようなことはありません。募集の進捗状況は極めて良好であります。只今もその報告を受けて来たわけであります。  それから旧軍隊のあるときとよほど国民感情は相違しておるではないかということでありますが、軍隊、いわゆる再軍備に関する関係については、よほど議論がありましよう。併し少くとも日本国民の大多数は不当な外部からの侵略に対しては、これは守つて行かなくちやならないということにおいては、私は大多数の者は共鳴するだろうと思います。その方法についてはいろいろありましよう。併し少くとも現政府においては、只今の保安隊を自衛隊として、外部からの侵略に灯してはこれをどこまでも阻止する方法を請じなくちやならん。それについてはこれにアメリカからの供与を受けるべき秘密兵器を十分保証して行かなければならん。これが国を守る第一要件であろう、こう考えておるのであります。国民も又その点については私は共鳴されることと信じております。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 これは保安庁長官の甚だ一方的なその点は私結論だと思います。そういうまあ見方をしたいという気持もわかるし、又成る程度そういうことも言える点もあるでしようが、私は比較をしておる問題なんですね、旧軍隊の時代と……。これはもう非常な大きな偉いがある。そこで結論として申上げたいことは、以前で、あればこういう秘密保護法を作る、秘密保護法の内容自身について国会でもいろいろ軍化保証法制定のときでも御議論のあつたことも、これは私どもも記録で承知しておる。併しこれを絶対的に否定するそういう立場の議論は、或いはその当時もあつたかも知れませんが、私が調べた範囲では知らない。今日の状態は違うでしよう。だからつまりその当時はそういう軍機保護法、これは自然的な国民の感情の中で是認されておる問題なんですれ。併し今日ではそうじやない。これは政府のほうが無理やりにこう法律を作るから、法律によつて作られて初めてこれが悪いこととこういうことになるわけなんですね、今日の感情から言つたら……。この点に大きな私その当時と偉いがあると思う。こういうことはどうなんですかね。これは佐藤さんなんか法律を作る場合の背景というものは絶えずお考えになつておると思うのですが、この法案を作成される場合でも、そういう一つの国民の感情といつたようなことはお考えにならなかつたのですか、どうなんです。大事なことなんですがれ、公共の福祉ということに関連して考えれば……。
  126. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今お言葉に出て来ましたようないろいろな社会的の背景というものは、これは私どもとしては実はこの法案そのものを審議する際の態度としては、むしろ率直に言つて、主従の関係から言えば、従であると印してよろしいかと思います。ただ今お言葉米にありましたように、この法律自身によつて憲法上保障されている基本的人権がどうなるかということは、もう先ほどお話申上げておりますような趣旨で十分考え、考慮してこの法案を提案しているわけであります。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 それから更にこの公共の福祉に関連する問題として考えて頂きたい点は、荷くも公共の福祉の名において基本的人権を制限する、そういう法案を出す以上は、法律内容がまあ個々の内容じやなしに、法律の目的ですね、これがはつきりしておらなきやへならない。これば政府のほうじや、いやおれのほうははつきりしている、こういうふうに言われるかも知れませんが、甚だあいまいなんですれ。現に法律の体裁から言つても、最近はこういう社会的に問題になるような立法は、誤解を避けるために必ず第一条に法律の目的というものがやつぱり掲げられるのです。それがここには出ておらない。これば政府のほうが何かはつきりとした狙いどころというものを持つておらないものですから、それが書けないんだと思うのですね。当然これは書くべきなんだ、最近の立法の事例から言つて……。それだけでも一体これは右のほうに行くのか、左のほうに行くのかわけがわからんのですね、真剣にこの内容というものをつつ込んで考えますと……。なに、この法律はここに書いただけのこれではつきりしておるじやないか、そういうふうにおつしやれば、それは問題ないかも知れん。併し私どもが基本的人権を制限するに足る公共の福祉、そういう公共の福祉というものがこの法案の中からにじみ出て来なきや私ども承知できない。これが一体どこにあるのです。極めてあいまい、そうでしよう。目的も書いてないし、例えば言葉づかいから言つたつてね、日米相互防衛援助協定に伴うこういうものが一体必要かどうか、これは大変な問題があるでしよう。そうかと思うと、第三条の第一項の第一号に「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」「わが国の安全」という言葉が出て来る。甚だ不明確なんですね、どこに狙いがあるのか。こういう、これはまあ一つ手段の問題について申上げているわけですが、あいまいなものであつてはならない。公供の福祉を理由にする場合にこの点をどうお考えになつておりますか。
  128. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやる通り、目的を第一条に書くこともあり、或いは更に今の警察法のように前文という形で堂々とその精神を謳つておるというような立法例もいろいろございます。それはその通りであります。ただ、これはそのこと自身が法律の実質に関係のあることかどうか、必然的にそういうことが必要であるということになるかどうか。これは今までの法律にそういうことが余りなかつた。それもお言葉通りであります。例えば先ほど御指摘のような条文を含んでおる元の刑法においても、何ら刑法の目的の条文もなしにとにかく行つておるわけでありますから、そのこと自体は必ずなければならんというものではないと思います。併しあつて決して悪いことはないのでありましてその点は一向私どもとしてはこだわつた気持は持つておりません。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 じやその点もう少し糾明してみたいと思いますが、これはほかの質疑の際にもたくさん出たようでありますが、アメリカから日本秘密が供与される。供与された秘密というものは、秘密を含む武器というものは、これは日本武器なんですね、供与されてしまえば……。私は決して日本独自の秘密保護法をもつと強い立場で作れ、そういう意味でこれは申上げるわけじやないんですが、考え方というものは、供与されたものについてまでアメリカから供与された云々というようなことをどうして法文の中で書く必要があるのか、こういうものは取つてもいいんじやないですか。書いてあるのは題目の形容詞と、第一条の第一項、第三項の第一号ですね、それから第一条の第二項。ここに「アメリカ合衆国政府」云々というようなことが合計四カ所書いてあります。こんなことは要らんことじやないですか。これがないからといつて秘密保護法の内容というものが変るわけじやないんでしよう。政府のほうで保護しなければならない秘密というものはこれこれだけだ。これは午前中の、フリゲート艦、或いは新たに援助を受けると予想される艦艇、或いは飛行機、そんなもので具体的にわかつているわけですからね。それをただ具体的に国民に明白にしたらいいことなんです。私はこういうところにこの法案の非常に思想上の混乱があると思います。提案者自身に……。これは是非とも必要な形容詞なんでしようか。私、取つて差支えないと思いますがどうなんでしよう。
  130. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 第一の点の供与された武器は、日本武器となることは、尋ねの通りでございます。なお供与されたという点を取りますと非常に広くなりまして、まあ広くなりましても「防衛秘密」として指定する必要のあるものはそのうちの特定のものでございますから、適用は広くはならんと思いますが、併し現在のところこの「防衛秘密」というものは第一義的には日本秘密ではあります。併しながらアメリカから装備をもらいますについて、アメリカにおいて秘密とされておうものを同時に日本において秘密とする必要がありますから、こういうふうな規定の仕方になつておりますので、これを取りますれば日本独自の武器アメリカからもらいません武器についても「防衛秘密」として指定するものがあり得るという結果になりまして、現在のところでは米国から供与される装備品等についてのみ規定しようという趣旨とは少し違つて来るのではないかと考えております。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 この形容詞を取つたからといつて秘密にする対象というものは政府の方針はきまつておるのですから、そのことを具体的に法文の中に現わせばいいわけでしよう。或いはそれは法文に現わすには少し長過ぎたりして技術上不体裁だということなら、これは例えば第二条でいろいろな措置、があるわけでしよう。その措置の際にそのものに対してだけ折置をすればいいわけでしよう。それは私たとえこういう法案を作るにしても、こういう外国の国の名前がたつた五カ条か六カ条の条文の中に四つも出て来る、これは甚だ不体裁だし目障りですよ、こういうものは単なる形式的な目障り、不休裁じやなしに、つまりここに立法者の何といいますか、混迷があるのです。お尋ねしますが、それではMSAをもらつた日本以外の国ですね、これは自国の秘密保護法に関する法律の中で、アメリカというような言葉は使つておらないでしよう。これは従来からすでにある法律を利用しておるはずだからないのが当り前だと思うのですが、これは一応確めておきましよう。うろたえてMSAを、もらうからといつて、従来の秘密保護法の中に何かそういう言葉を入れた国がありますか。
  132. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) アメリカが他の諸外国との間にMSA協定と同様、協定を持つておりまして、且つその協定の中に、やはり秘密保持の規定を入れております。併しながら日本以外の国は独自のもつと強い秘密保護法を持つておりまして、従つて改めて秘密保持立法をする必要がないから、特別にしておりませんが、日本におきましては一般的なこういう取締法令がございませんので、条約上の義務を履行するためにも、この種の法律か必要であると存ずるのであります。ただ、日本独自の秘密までも今回立法措置を必要とするかということについては、まだそこまでは行つておりませんので、アメリカから供与されまする武器秘密についてのみここに書きまして、「防衛秘密」として日本日本独自の立場で指定して行こういう関係立法しておるわけであります。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 そういう政府側の説明は何回も記録でも見るわけですが、外国は基本法があるからそれで日本と違うのだと言われるのですが、基本法がありましようとも、或いは新たに法律を作る国でありましようとも、独立国であればそれが正しいのじやないのですか。おれのほうは改めてやるのだから……。どうしてアメリカという言葉を再三この法律の中に入れる必要があるのです。
  134. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 御質問の御趣旨がどうももつと広いものを作れというお活のように承わるのですけれども、現在のところといたしましては、アメリカ合衆国から供与される装備品についてのみ規定する程度で足るのではないかというふうに考えておる次第であります。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そんなことを言つておるのじやないのですよ。秘密保護範囲は、これは午前の具体的な説明で私どもわかつたのです。あれだけしかないわけです。本当から言つたらもうあのことをこの法文の中に書いてもらえば、アメリカから持つて来てどうこうとかややこしいことなんか書かないでいい、はつきりしていい。だから何もアメリカという言葉を抜いたからといつて法律の適用範囲が拡がるわけじやないのですよ。ちつとも拡がらんのですよ。拡がるようにするかどうかは、例えば第三条の措置やいろいろなことによつて政府自身がきめることなんです。拡がらんようにしようと思えば幾らでもできます。だから私は結局この法律の狙いというものが非常に昏迷しておるこういうことを実はここで申上げておくわけなんです。これも私本会議でちよつと触れたやつですが、例えば満洲国の軍機保護法ですね、これは資料の中にありませんが、ああいう日本のもうまるで傀儡政権ですね。そうして日本からいろいろな武器援助を受けて満洲国軍隊というものが成り立つてつた。そういう国でも全文二十カ条の軍機保護法というものを持つていた。その際に日本のことなんかそんなものを一つも書いておりませんよ。ただ最後の第二十条に、本法の罪については攻守同盟国の軍事上の秘密はこれを帝国のものと見なし、攻守同盟国以外の外国人の団体はこれを外国と見なす。こういうふうな書き方、つまり攻守同盟国というものですから、日本とかドイツ、そういうところの軍事上の機密は、これを満洲国の機密と同じように見なしてそして取扱つて行く、こういうふうに附け足しにこれを使つておるだけなんです。これは当然なんですね、独立国と形式的にでも言う以上は……。私はこういう意味で、こんな秘密保護法というのは世界にもこれはもう実際稀なるものじやないかと、こう思うのです。是非こういうものはもつと明確にしてもらわなければいかん。たとえ公共の福祉ということを持出すにしても、こういうことが明確にならない場合には、公共の福祉というようなことを使つちやならない。勿論満洲国の程度くらいは戻さなけれげ駄目ですよ、形式自身を……。  まあこの問題はこれは一つこの程度にしておきますが、それからもう一点ですわ、政府のこの考え方で行きますと、MSA並びに船舶貸借協定以外の武器援助協定日本アメリカの間で行われる。こういうことになれば更にこの法律を改正する、こういうことになりますね。
  136. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) お尋ねの通りでございまして、その際には第一条にその協定が追加されて、改正案として御議決を願わなければならんと存じております。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 こうなりますと、なお更この法律の独立国たる日本の主権ということの問題と関連して批判されておる問題が又一つ出て来る。そんなに外国との協定のたびごとに法律を変えて行く……、おかしいことですね。而も現在すでに駆逐艦なんかの問題については、保安庁のほうで交渉しているでしよう。それが遠からず、まあ希望通り行くか行かんかは別として、幾らかのものはまとまるわけなんでしよう、そういう立場から考えても、こんな立法形式は実に私はおかしいと思つておる。これはその駆逐艦なんかはどうなんですか。木村長官のほうで相当折衝を進められておるようですが、法律というものは飽くまでもやはり事実を基礎にしてやるべきものですから、そういう事実が遠からずあるということなら、その点だけからいつてもこれはおかしい、それができたら又改正するでしよう。その駆逐艦の交渉はこれはまとまる見込がないのでしようか。
  138. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) MSA協定以外にこの供与を受くべき船については、現在今交渉中であります。これは私はまとまることと思います。そこでまとまつたときに又これは今官房長に対して、こういう一つ措置を施すべき義務が起つたんですから、それについての法律案を制定して、国会審議を仰いでおる。又は原則的に見ればこれを改正することについて国会の御審議を願うということは私は民主主義のあり方だと、こう思つております。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 これは民主主義のあり方というよりも、むしろ従属国のあり方ですよ。そういうものは外国から見ておつたら不思議に思うだろうと思うのですよ。お前のほうが秘密が必要なら独自に秘密保護法を作つたらいいじやないか、なぜ出すほうからの状態によつて、そのときそのとき変えて……、おかしいですよ。
  140. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今亀田委員お話を承わつておりますると、日本で独自の国家機密の防衛保護法でも作つたらいいじやないかという御説に聞こえるのであります。我々も理想的に言えば、さようであつて然るべきだろうと思います。併しこれについてはこれは国民の権利義務について重大な影響を及ぼすわけでありますから、慎重になお我々は検討を要する、こう考えております。従いまして先ず目下の急務でありますMSA協定に基く秘密保護に関しての法案を御審議願うことが私は最も妥当な考えだと考えております。又このMSA協定以外に船舶貸与協定ですか、こういうものができますれば、これ又国会に御審議を願つて、それに基いてこの法案の改正をするということが民主政治のあり方として極めて私は妥当と、こう考えております。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 秘密事項を少くしておけば、何か国民が安心してそうして簡単に通してくれるだろう、こういうふうなお考えがその背景にあるんじやないかと思うのですれ。
  142. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうではありません。我々といたしましては成るだけ国民の権利義務に関係あることは慎重に取扱わなければならん、又この対象物も極めて明白にしておきたい、漠としたことではいかん。そうすると国民に迷惑をかけるような結果になるかもわからん。従つてアメリカから供与を受けるべきこういう装備品、これに極めて限定してあれば、私は国民に対しても大巾に迷惑をかけずに済むだろう、こう考えておるのであります。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 それでは最後にお尋ねしますがね。然らばこの法律の第一条目的と、こういうことを書いてもいいということですから、仮に書くとするのですね。書くとしたら一体どういうふうにお書きになるのです、言葉はどうでもよろしいが、その概略……、目的の書きようがないでしよう。
  144. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 目的を書かなくてもこのままで極めて明瞭であろうと思います。アメリカから供与を受くべき装備品について秘密保護する、これで極めて明瞭であります。それは要するに日本の自衛態勢を整える上について極めて必要なことである。要は日本の安全を護るためだと、これに尽きるのであります。結局は日本の安全を護るためにやるわけなんです。
  145. 亀田得治

    亀田得治君 そうするとどうなんです、わからんですよ。あなたはその文章の中で二つのことを言われておるのです。アメリカからもらつたものの秘密、それを守る、結局は日本の安全をも護る、どこなんです、これの要点は……。
  146. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 結局は日本の安全を護るわけなんであります。アメリカから供与を受けるというのと、日本の安全を護るためなんです。そこに尽きるのです。
  147. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたらアメリカから云々というようなことは、もつとこれは落してしまつて、端的に目的というのを明確に書いたらいいわけですよ。
  148. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカから供与を受けるべきものが只今この法案を作成するときには限定されていないのです。特に御注意をお願いしたいのは、今後アメリカからどういうものを来るか、一度に来るわけじやないのです。これは回を逐つて私は来ると思う。従いましてそれがはつきりもうもらい受けておれば、これはあなたの仰せのように限定せられていいでしよう。さつきのお話のようにフリゲートに装備しておるあれだけのものだと、はつきりわかればそれでよろしい、そうじやないのです。これは回を逐うて私は供与を受けるべきものと了承いたしております。従つて将来のことを考えてアメリカから受けるべきものとすることは法案の体裁上私は妥当であると思います。
  149. 亀田得治

    亀田得治君 午前中の質疑の際に、どうも私この法案は政治的な含みがあるような感じを受けておる。それはこの法案を作らなければ秘密保護兵器をもらうのに支障がある、こういうことをあなたは言われておる。まあそういうあるかないかは、現実にどうもアメリカ交渉された結果ではないようですが、そういうふうにお考えになつておる。何かそういう政治的な一つの思惑でこういうものが出されておる。この感じが極めて強いのです。それでそこに又公共の福祉にもどるのですが、そういう思惑なんかで、いやしくもこの基本的人権が簡単に制限されると、そういうところに持つて行くべき私はものじやないと思う。こういう確信をしておるものです。はつきりしなければならん。その意味で目的というものは明確じやなきやいかん。今お聞きしておつてもどうもはつきりしないのです。それから我が国の安全も、こういうこともこの条文の中では一回しか出ておらんのです。従つてどもはこの定全自身もそれじや一体安全を今までに害されたことがあるのか。先ほど実害という問題について聞いたら、それもああいう程度でしよう。だからその点から考えてもどうもこれはただ体裁悪く言えば俺のほうはこういうふうにしてるのだから、一つあなたは安心して出しなさい。そういうことにこの公共の福祉というものを使う場合に、私はこれは公共の福祉の、政府の公共の福祉権の濫用だと私は逆に思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり、笑声)本当ですよ。これは実際公共の福祉というのを本当に行使する場合には、これこれこれこれの条件がなければいかんということを憲法に書いてないものですから、盛んに佐藤法制局長官なんかもこれを持出されるのですが、非常に私は問題だと思う。教育二法案、スト規制法、破防法、そういつたような場合には最初に申上げたように具体的な社会的な事件というものがあつた。批判は別としてあつた。それがないでしよう。国民の自然的な感情、これが熟しておらないことはこれは事実なんです。熟しておるとあなたは盛んにしやつちよこ張りますけれども、これは決してそうじやないですよ。少くとも相当多数の人が国会議員としてでも反対する人がたくさんおるのですから、これから何ですよ。この間の公聴会なんかを聞きましても、選挙のときなんか左派社会党なんかに票がもらえない人で相当批判的な意見が出ておる。これは国民の自然的な感情が熟しておらんと思う。国民の自然的な感情を尊重することこそ公共の福祉に合致すると思う。  それからもう一つは、この狙いがはつきりせん。これは幾らお尋ねしても、今までのあなたたちの記録を私非常に善意に読んでおつて、どうもはつきりしません。それを確かめてもはつきりしません。私はこんな状態で、政府はこの際は公共の福祉は用いられないと、こう結論付けざるを得ないのですが、一つ最後の結論長官並びに法制局長官から一つ責任のあるところを、幾らかそういう気がするというなら、すべて紳士的にやつでもらいませんと、そういう気がするんだが併しまあいろいろな事情があるからというなら、それならこれはわかりますが、一方的に押切られては困る。お前は実害がないと言つておるが、これこれの実害があると具体的に反撥されるならば私は引込みますが、そうでなければその答弁というものは紳士的であつて欲しい。最後に一つ両者の答弁を聞きたい。
  150. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は、紳士的に申上げます。そこで実害がないからどうということは、これは非常な思い違いではなかろうかと考えます。実害があつたら因る、取り喜返しつかない、これはほかのことと違いますから、防衛秘密がほかに漏れるようなことがあつてはいけない。これはとくとお考え、願いたい。我々も何もすき好んでかような法律を出すわけではないのであります。真剣に考えておるのです。御承知の通りアメリカのようなああいう国においてすら、いろいろスパイ活動があつて秘密が漏洩されて困つておるのです。今後日本防衛態勢を整える上においては、どうしてもアメリカから相当高度の秘密を要する装備の供与を受けなければならん。そうするとどうしてもこの秘密を守る手立を、しておかなければならん。アメリカから安んじて日本に供与させるには、やはりMSA協定第三条の措置をとつてもらいたいということなのであります。これは日本として供与を、受けるからには当然であると思います。先刻申上げた通り我々として立場を異にしまして、日本から秘密を要する兵器アメリカにやるという場合、アメリカがその秘密を守らなければ日本は安んじてそれをやることができません。お互い様です。日本では悲しいかな今秘密にするようなそんな高度の兵器はありません。従つてこの保護すべき対象はないと言つてもいいわけです。今後やはりアメリカから日本防衛態勢を整える上において高度の秘密を要する兵器は何としても供与を受けなければならんと思う。それについては安んじてアメリカをして日本に供与させるだけの手段を是非とつておかたければならん。日本においても、これはアメリカから見ればこの秘密一つ何か盗んでやれというものが日本人におらんとも限らない。いわんやもろもろの日本に駐在の外国人にしてそういうスパイ活動がないとも限らない。これに対しては相当の措置日本でとらざるを得ない。これは日本防衛を全くし日本の安全を期する上において私は必要であろうと考えます。  最後の公共の福祉であります。先刻来法制局長官が述べられました通り、これは我々はどこまでも自由を欲するのであります。これは自由を守らなければならん。併し自由は無制限ではないのであります。公共の福祉のためには、或る程度の制限を受けるのが当然であろうと思います。我々はどこまでも歩く自由を持つております。持つておりますけれども、これは他人の自由と衝突してはいけないというので、交通取締もできておるわけなんです。いわんや日本防衛体制を整える上において、国民が或る程度の自由の制限を受けるということは、これは当然のことです。これがむしろ日本の国のあり方として、公共の福祉のために個人が制限を受けるのは、私は当然のことだと考えます。いわんやこの秘密保護法について考えておるところは、極めて厳粛に限定しております。殊に私が申上げたいのは、言論の自由なんかはどこが束縛されておるか、これは普通の取材は対象に殆んどなり得ない。普通に取材しておれば、この保護法の対象にはならんと考える。殊に一たび公になつたものは、この公になつた原因の如何、理由の如何を問わずこれは秘密対象にならない。これは外国の雑誌に出た、或いはラジオで放送されたというようなことであれば、一たび公になつたものでありますから、これは秘密対象にはならん。ことごとくさようにこれは厳格に個人の自由を束縛しないように我々は勘案して制定したわけなんです。いずれの点から見ても、私はこの法案というものはさほど国民の自由に抵触するわけじやない。いわんや仮に抵触されるとしても日本防衛体制を整え、日本の安全を期する上においては止むを得ざる措置であると、こう考えております。
  151. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 木村長官が模範の答弁をされましたので、もう私の申上げるところが殆んどなくなつでしまいました。ただ先ほど来どうも気になりますのは、何か事例が起らないと、それを制圧するための立法ができないということだけは、どうも私としては腑に落ちませんが、卑近な例で恐縮に存じますけれども、刑法においていろいろ変つた刑罰を規定しいおるわけでありますけれども、この刑法はそもそもできたときに、皆それぞれの今まで事案があつたかどうかということを考えてみるときに、決してそうではないと思います。例えば御璽、国璽の偽造罪というものがありますけれども、私は刑法が施行されてから御璽、国璽の偽造罪は、検事局の人が来ておるからなんですが、これはないような気がします。いわんや刑法ができるときにあらゆるものが全部過去においてあつたということは、艦船の顛覆とかいろいろ何かありますが、刑法のできたときにそういうものがあつたかどうかということは疑わしいのであります今の御璽、国璽の偽造罪を挙げましても、普通の公文書の偽造でも罰せられる、国会の召集だとか解散だとか大きなことに関係のある御璽、国璽一の偽造というものは勿論取締られなければならないことは当然のことであろうという観点から、これはできている法律でありますから、その点だけはどうぞ御勘弁願いたいと思います。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 これは佐藤長官ともあろう人が妙な事例を引張り出されたわけですが、これは成るほどその御璽、国璽の偽造は、こういうことはそんなにないかも知れない。併しこの印章の偽造、こういうものはたくさんあるわけです。その範疇の一つとしてこれが考えられておるだけでしよう。日本では特にそういう点を重んじて書いたわけでしよう。そういう印章の偽造ということはしよつちゆうありますよ。刑法の何と言いますか、個々のことを言うのじやないのです。一つ犯罪の類型ですね。これを考えてもらいたい。そう考えたら、刑法のどれ一つとして全部そういう自然的な現象というものを背景にしてこれはできておる。これはどんな場合でもそうですよ。それから御璽、国璽の問題ですが、そういう場合でもそれじや犯罪の類型と切離してそれだけとつて批判しても、これは基本的な人権なんかの問題と大分性質が違います。そういう問題はそれは価値判断の相違になりますから何ですが、御璽、国璽で反撥されるのは納得できません、もう少しいいのを出されませんと……、(笑声)これは一つそれだけ申上げておきます。
  153. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止]
  154. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 速記を始めて下さい。
  155. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この法案審議の必要上、この法案が人権に及ぼすところが重大であると思いますので、先日来新聞紙上などに伝えられております人権蹂躪の事件が最近頻発しておるようでありますから、それらについて政府のほうから、新聞ではいろいろ郵便を見せろとか或いは思想調査に類するようないろいろ問題が起つおる。それらについてそれはどういう事件になつてどういうふうに処置されたか、御説明を伺うことのできるような資料を出して頂きたいと思います。
  156. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは羽仁委員のお願いは恐らく秘密保護法に関連してのお願いだと思いますから、秘密保護法の質疑応答の際に御説明のできる用意をして頂きたいと思います。   ―――――――――――――
  157. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは秘密保護法案につきましては、次回に質疑を継続することといたし、国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に回する法律案(予備審査)を議題に供します。先ず三浦政務次官から提案の理由の説明を伺います。
  158. 三浦寅之助

    政府委員三浦寅之助君) 国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に関する法律案について提案の理由を説明いたします。  この法律案は、去る二月十九日日本国及び関係政府によつて署名されました、品本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」及び「日本国における合衆国軍隊及び国際連合の軍隊の共同の作為又は不作為から生ずる請求権に関する議定書」の発効に備え、その実施のため国内法の制定を必要とする事項のうち、民事に関するものについて所要の定めをしようとするものであります。  御承知の通り、日米行政協定を実施いたしますため、民事に関しましては去る第十三回国会において「日本国とアメリカ合衆国との問の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う民事特別法」が制定されたのでありますが、日米行政協定及び今回の国連軍の地位に関する協定の民事に関する部分、並びに先に申述べました議定書を比較いたしますと、国内法の規定を必要とする事項につきましては、その内容は全く同一であります。従つて民事に関する限り国連軍は合衆国駐留軍と同一の地位にあるものとして、両者を同一に取扱うことが最も事理に適したものと考えられるのであります。  よつてこの法律案におきましては、先ず第一に、民事特別法の適用の範囲を拡張し、国連軍に関しても同法を適用するとの趣旨のもとに、同法の適用に関する限り国連軍は合衆国駐留軍とみなし、又国連軍の構成員、軍属及びこれらの者の家族は、合衆国駐留軍の構成員、軍属及びこれらの者の家族とみなすこととし、  第二に、合衆国駐留軍又は国連軍の行動に起因する事故の被害者が国連軍のいずれかの派遣国又はアメリカ合衆国であるときは、日本国には損害賠償の責任がないことといたしました。  なお、今回の国連軍の地位に関する協定及び先に申述べました議定書には、これら協定及び議定書の規定の遡及適用に関する定めがなされておりますので、この法律案におきましてもこれに対応して附則で所要の経過規定を設けることといたしました。  以上がこの法律案の提案の趣旨及びその内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上、速かに可決されるよう希望いたします。
  159. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 右に関し逐条説明を村上民事局長より聴取いたします。
  160. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 逐条につきましては、別に逐条説明君をお手許にお配りしてございますのでその要点につきまして更に御説明申上げたいと思います。  只今提案理由の中で申述べました通りいわゆる国連軍協定のうち民事に関係のありますのは第十八条で、ございましてこの中に国連軍の構成員又は被用者が公務上の行為によつて第三者に損害を生ぜしめた鳩合、その他国連軍の責に帰すべき事項によつて第三者に損害を生ぜしめた場合には、日本国が被害者に対する損害賠償の責に任じ、日本国が賠償のために要しました費用は、一派遣国のみが責任を負う場合には、日本が二五%、当該派遣国が七五%の割合で分担し、又二以上の派遣国が共同責任を負う場合には、各派造国は互いに平等の割合で負担し、日本国は一派遣国の負担額の二分の一に相当する額を負担する。例えば二派遣国が共同責任を責う場合には、日本国の負担は二〇%、各派遣国の負担はおのおの四〇%ということになるわけでありますが、かように規定されております。  又公務に従事中他人に損害を加えました国連軍の要員は、その不法行為によろ損害賠償の請求につきましては、日本川の裁判所の裁判権には服しないわけでありますが、その他の請求につきましては、日本国の民事裁判権に服すること、又国連国が使用する施設内において私有の動産に対し強制執行をする場合には、日本国裁判所の要請により派遣国の当局が目的物を差押え、これを日本国の当局に引渡すこと、並びに派遣国の当局が第十八条の規定をじつ施するため必要な証人その他の証拠資料の提供について日本国当局に協力することを定めておるのであります。  この二点は国内法を要する事項でございますが、この二点に関しましては、国連軍協定及び議定書の規定と日米行政協定十八条とを比較いたしますと、国連軍協定におきましては二以上の派遣国の軍隊又は駐留米軍と国連軍とが共同責任を負う場合における費用の分担につきまして、特別の規定が設けられました以外は、その内容は全く同一でございます。従いまして国内法に関する限りは国連軍と駐留米軍とは全く同一の地位を持つものと言うことができるのであります。そこでこの法律案におきましては、先に十三国会で制定されました、日米行政協定に伴う民事特別法の適用の範囲を拡張しまして、国連軍についてもこれを駐留米軍と同じく同じ法律の適用があるとするのが最も合理的なわけであります。  それで第一条は、以上申上げましたような理由の下に、民事特別法の適用に関する限り国連軍はこれを駐留米軍と同一に取扱い、又国連軍の構成員、軍属及びこれらの者の家族は日米行政協定に基く駐留米軍の構成員、軍属及びこれらの者の家族と同一に取扱うということを定めたのであります。  又第二条は、日米行政協定に基く米軍又は国連軍に起因する事故の被害者が国連軍のいずれかの派遣国自体である場合、又は合衆国自体である場合、例えて申しますと、加害者が米軍の軍人であつて、被害者が豪州軍の財産であるというような、或いはその逆のような場合、これは日本国は賠償責任を負わないとする趣旨でありまして、これは日米行政協定に基く民事特別法におきましては、被害者が合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族である場合には適用しないということになつておりますが、今度国連軍を米軍と同一に見ることになりますと、この規定がございませんと、米軍の不法行為については豪州も又被害者であるということで、豪州の国に対して損害賠償の責を負うというようなことになりますと不合理でございますので、日米行政協定に基く民事特別法第三条におきましてかような場合に責任を負わないという規定を設けましたのと同様の趣旨の下に、この第二条を設けたわけであります。  次に、附則の第二項でございますが、これは国連軍協定並びに議定書におきましてその遡及適用に関する定めがされております。これに対応いたしまして遡及適用を受ける国に対する関係におきまして、この法律も又遡及して適用することを規定いたしますと同時に、損害賠償の請求期問が一年とされておりますので、その遡及適用の場合にも請求期間の起算日に関する規定を設けたわけでございます。  以上を以ちまして簡単でございますが、この法律案の逐条説明を終ります。
  161. 郡祐一

    委員長郡祐一君) ちよつと速記をやめて。    〔速記中止〕
  162. 郡祐一

    委員長郡祐一君) それでは速記を始めて。  明日の委員会におきましては、利息制限法案日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法案を討論採決いたしたいと思いまするから、あらかじめお含みを願います。なお、一応御決定を願いました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案審査日程では、五月四日の日に開会することにいたしておりまするが、これは都合によりまして五月四日は委員会を開会いたさないことに取計らいたいと思いますが、御異議ございませんか。    [「異議なし」呼ぶ者あり〕
  163. 郡祐一

    委員長郡祐一君) 御異議ないものと認めて、そのように決定いたします。  次回は明五月一日午前十時から開会いたします。  これを以て散会いたします。    午後四時五十三分散会