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1954-11-06 第19回国会 参議院 法務委員会 閉会後第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月六日(土曜日)    午前十時五十一分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     高橋進太郎君    理事            小野 義夫君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            剱木 亨弘君            岡田 宗司君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   国務大臣    法 務 大 臣 小原  直君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法務省民事局長 村上 朝一君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件検察及び裁判運営等に関する件  (人権擁護に関する件)  (民法改正に関する件) ○小委員補欠選任の件   ―――――――――――――
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) ただいまより委員会を開きます。  まず人権擁護に関する件について、その申入書についてお諮りいたします。先般来当委員会におきましては、人権擁護に関する件につきまして、鳥取秘聴器事件等各種の一連の事件について調査を行なつて参りましたが、これらの調査も一応終りましたので、本日委員長及び理事打合今会におきまして、その後の処理の問題につき協議いたしましたところ、この際お手許に配付いたしました案のような申入書委員会において決定いたし、所管大臣である法務大臣あて申入れを行うことが望ましいと存じますが、本申入書を一応専門員より朗読をさせます。
  3. 西村高兄

    専門員西村高兄君) 朗読いたします。    小原法務大臣宛申入書         参議院法務委員会   基本的人権尊重は、国政運用に当つて最も肝要なことであつて参議院法務委員会としては常に之が注視を怠らない所であるが、最近犯罪捜査に当つて人権侵害の声が少くないので当委員会は、特に最近起つた具体的事例について関係人より実情を聴取する等調査の結果次の意見に達した。   即ち犯罪捜査に当つてはいやしくもその権限を濫用して日本国憲法の保障する個人権利及び自由を侵すことなきよう厳に戒むべきであるから、捜査権発動限界点及び犯罪捜査手段特に秘聴器使用については、その使用することの適否及びその使用についての責務並びに方法に関して特段留意と慎重なる工夫をこらし以て人権尊重に万全を尽されたい。   右要望する。  以上であります。
  4. 小野義夫

    小野義夫君 この最初の「犯罪捜査に当つては」の「は」は、要らないと思います。
  5. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) そのようにしてよろしうございましようか。……それではただいま朗読いたしました申入書法務大臣出席せられました際に一応申入れをし、その所見を伺いたいと思います。当委員会としてはこれで決定してよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは異議ないと認めてこの申入暫は決定いたします。  ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  7. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 速記を始めて下さい。  委員長から小原法務大臣に申し上げたいと思います。実は数日来当法務委員会といたしましては、人権擁護立場から諸問題の調査に当つたのですが、その調査の結果、ただいま申し上げるような一応われわれの結論に達しましたので、一言申し上げたいと思います。なお、本文は書面をもつて手許に差上げますが、一応私から朗読いたします。   基本的人権尊重は、国政運用に当つて最も肝要なことであつて参議院法務委員会としては常に之が注視を怠らない所であるが、最近犯罪捜査に当つて人権侵害の声が少くないので当委員会は、特にに最近起つた具体的事例について関係人より実情を聴取する等調査の結果次の意見に達した。   即ち犯罪捜査に当つてはいやしくもその権限を濫用して日本国憲法の保障する個人権利及び自由を侵すことなきよう厳に戒むべきであるから、捜査権発動限界点及び犯罪按査手段特に秘聴器使用についてはその使用することの適否及びその使用についての責務並びに方法に関して特段留意と慎重なる工夫をこらし以て人権尊重に万全を尽されたい。   右要望する。  本件に関する法務大臣の一応の御所見を伺つておきたいと思います。
  8. 小原直

    国務大臣小原直君) ただいま委員長より、共本的人権尊重に関して、捜査人権侵害のないように注意せよ。なお特に秘聴器使用については、その責務並びに方法に関して特段留意と慎重なる工夫をこらして、人権尊重に万全を尽されたい、という御要望があつたのであります。法務大臣といたしましては、犯罪捜査について人権侵害等のないように、常に注意をいたしておるところであります。ただいまお話になりました警察秘聴器使用することについては、先般来社会会においても若干の問題を惹起し、ことに国会においては衆参両院において、秘聴器使用について大へん御論議のあつたことを承わつております。この秘聴器使用につきましては、斎藤警察庁長官から詳細に、事実及び意見を述べられておつたはずであります。今回それらを御考慮の結果、ただいま委員長の申されたような要望が当参議院法務委員会からいたされたものと思うのであります。法務大臣としては、警察において秘聴器使用して捜査を便宜にしようということの計画及び実施については、常に警察側において注意をしておることと思うのであります。この上とも法務大臣としても、司法警察立場から、御要望のあつたことを諒といたしまして、将来十分注意して人権侵害等のないように行いたいという考えを持つております。  なおまた、国家公安委員長としての意見として申し上げるのも同じことなのでありますが、御承知のように、国家公安委員会委員会団体警察を管理しておるのでありまして、委員長といたしましては委員会を掌理するということになつておりまするが、私個人警察に対して特段の命令、指示をする権限を持つておらんのでありますから、このただいまの御要望に関しては、委員会に諮りまして、多分私が法務大臣として申し上げたような趣旨で、将来人権侵害等のないように警察注意を与えるということになろうと思つております。これはいずれ相談をせんければわからんことでありますが、大体そういう方向に行きたいと思います。ここにあらかじめそのことを申し上げておきます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと関連して一点だけ、法務大臣にお聞きしておきたいのですが、先だつて警察庁長官質疑をしたときには、特殊な犯罪に対してこれを用いたのだ、そのほかのたとえば選挙違反、そういつたようなものに対しては用いませんと、そういうことを言明する機会をたまたま質疑機会に与えられたことを、非常に自分としては幸いであると思うというような答弁を、はつきりしておりました。で、特殊な犯罪に対してだけ特殊な方法を用いるということは、また一つの問題でありますが、その点は今差しおきまして、少くともそのほかの犯罪に対してはこういうことは使わないとはつきり言われたのですが、この点法務大臣あるいは国家公安委員長としての考え方ですね、一応承わつておきたいと思うのです。
  10. 小原直

    国務大臣小原直君) ただいまお尋ねのことにつきましては、斎藤警察庁長官から詳細に申し上げておつたはずであります。私自身としては警察秘聴器を用いておつたという事実は今まで知らなかつたのでありまして、ただ鳥取事件について初めてさようなことがあつたことを気付いたわけであります。でかような特別のものを用いて犯罪捜査をやるということは、これはやはりよほど特別の場合でなければならんと思うのであります。たとえば国家の存立を危くするような破壊活動をやる団体あるいは個人等容疑事実について調べるときには格別でありますが、一般犯罪専にかようなことを用いる必要は今日までの経験から見ても全然ないと思いますし、また今後もさようなことはやらないで済むものと思つております。まあ言葉をかえて言えば、他の特別の犯罪以外のものについて用いることはないということを申し上げてよかろうと思います。   ―――――――――――――
  11. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより検察及び裁判運営等に関する調査民法改正に関する件を議題といたします。法務大臣より本件に関する一応の御説明を願います。
  12. 小原直

    国務大臣小原直君) 民法改正は戦争後、新憲法の発布に伴うて必要な点について憲法に合せるべく、若干の改正が行われおつたのでありますが、本年の七月六日に私が法務大臣として法制審議会に対して民法改正を加える必要があるかないか、あると十ればその要綱を示されたいということで、民法改正に関する諮問をしたのであります。これはただいま申し上げた昭和二十二年における民法改正が新憲法の要請に従つて、差し当りこれに適合しない部分規定を改めるという点に主眼を置いて改正をしたのであります。憲法規定面接関係のない事項につきましては、旧法の規定をそのまま踏襲され、ことに民法親族相続の両篇を除くその他の部分につきましては、ほとんど手を触れてなかつたのであります。従いましてこのたびの法制審議会に対する民法改正についての諮問趣旨は、民法法典全般にわたつて根本的に再検討を加え、改正を必要とする点がありますれば、その改正要綱答申されたいというのでございまして、政府といたしましては、民法改正に関して一定の方針を立て、この方針に沿う答申を期待しておるわけではないのであります。従いまして政府が旧民法家族制度復活を意図しているというような事実は毛頭ないのであります。むしろ私といたしましては、家庭生活の現実から離れておる旧民法の家、戸主権家督相続などの制度を今さら復活するというようなことは、民法改正方法としては好ましいことではないと考えております。    〔委員長退席理事小野義夫着席〕  すなわち以上がこのたび民法改正を計画しております大体の方針であります。
  13. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほどの議題に庭つて発言することを許されたいと思います。恐縮でありますが……。  先ほど秘聴器に関する亀田委員からの質問に対して法相からお答えがあつたのでありますが、その点について亀田委員から特殊な犯罪について秘聴器を使うということについての議論には今入らないで、選挙などに関して使用されることがないという警察庁長官見解に対して法相あるいは国家公安委員長の御見解を示されたいという御質問であつたので、私も実はそういうふうに拝聴しておきたいと思つたのであります。先般来いろいろな機会政府が言明されます御意見とも関連しますので、この際一言見解を示されたいというふうに思うのでありますが、これは破壊活動防止法案国会に提出されまして、本院あるいは本委員会において審議せられました当作にも、いろいろな議論を尽したのでありまして、また政府もそれに対してやはり慎重な答弁をせられたのでありますが、特殊な犯罪の特殊な場合であれば、どういう方法使つてもよいというようなお考え政府にあるとは信じたくないのであります。これは一言にして申せば、古来法尊厳を保つための格言として、最悪の場合に法を守らなければ、法というものは守れるものではないという言葉がございます。従つてこれは最悪の場合であるから、幾分法尊厳あるいは人権尊重という見地からはいかがかとも思うが、しかし最悪の場合であるから許されたいというようの御議論は、私は納得いたしかねるのであります。不幸にして政府あるいは政府関係の方々の本委員会における御説明には、そういうふうな御説明ちよちよいございます。一々それを私としてはとがめるつもりはないのでありますが、幸い今日は人権尊重の点において最高責任を有せられる法相が御出席でございますから、その点について高いレベルの識見を示されたいと思うのであります。特殊な犯罪の特殊な場合について、たとえば秘聴器使用せられるというふうなことを、高いレベルでお認めになつているかの印象を与えられますと、やはり二つの問題がそこに生じて来ると思うのであります。その一つは、特殊な犯罪の特殊な場合に、いわゆる合法でない、公然でない活動が起る場合には、政府あるいは警察というものがやはり公然でない秘密活動をするのか。そうすればそこにどうしても秘密警察というものが起つて来る。いわんや警察法改正によつて国家警察的な性格が強くなつて来られた今日としては、いよいよ国家秘密警察、いわゆるゲシュタポというようなものの復活国民が不宏に感じます理由も全くゆえなしとしない。第二の弊害は、これがそれと関連いたしまして、一般国民にその特殊な犯罪のまた特殊な場合の非公然のあるいは非合法活動というものは、一般国民にどの程度までそれが及んでおるかということがわかりませんから、従つてあるいは家を貸す場合、あるいは部屋を貸す場合という場合にも、ことによるとそういう関係があるのではないか、あるいは電話をかける場合も、あるいは選挙の場合も、どこにどういうふうにしてそれが入つているかわからないということから、特殊の関係だけでなく一般に不安を与えることになると思います。第二のやはり重大な問題となりますものは、この特殊な犯罪の特殊な場合というふうなものが、やはり社会生活あるいは合法的な団体、あるいは合法的な言論活動と関連している場合が多いのです。これは破壊活動防止法の場合にも、破壊的な団体合法的な労働組合なりあるいは政党なり、その内部でいわゆるフラクというのでしようか、そういうような活動をしておる場合のその破壊的な団体活動捜査し、あるいはそれを追及して行くという手がつい伸びまして、その合法的な労働組合の組織に触れ、あるいは合法的な政党あるいは合法的な言論活動に触れるということがございますと、これは団結の自由、あるいは言論の自由、あるいは団体活動の活発な効果というものを破壊することになつてしまう、これは絶対に許されないことであるということは、私の質疑にまた各委員質疑に対して、当時政府はつきり言明されたころでありまして、非合法なものを追及して行つて、そうして合法的な活動に触れるというようなことは絶対に避けなければならん。その場合に生じて来る団結の自由の侵害、あるいは言論の自由の侵害については、最高レベルにおいて破壊活動防止法の適用の場合には公安調査庁長官がその責任をとられなければならんほどの重大責任があるというお答えがあつたのであります。その二点についてでございます。  すなわち特殊な犯罪、特殊な場合であれば、手段を選ばず捜査を行うというようなお考えは全くないと、政府においておありにならないと確信をいたしますが、その点についていかがでございましようか。それから第二に、その特殊な犯罪の特殊な場合であつても、それが合法的なものと密接な関係をしておることを十分考慮されなければならないのであつて、いやしくもその団結の自由、あるいは言論の自由その他憲法で保障されておる自由に、そういう場合であるから、つい触れたというようなことがあれば、これはやはり高い責任の問題が生ずることと存ずるのでございますが、政府としての御意見はいかがでございましようか、お示しを願いたいと思うのであります。
  14. 小原直

    国務大臣小原直君) 警察犯罪捜査いたしまする場合においては、その手段はすべて合法でなければならんことはもちろんだと思います。従いまして非合法活動に対して、警察犯罪容疑捜査をいたしまする場合においても、警察手段としては、どこまでも合法的で人権侵害を与えるということがあつてはならんということは、私は確信いたしております。ただいまお尋ねになりました非合法の面に対する捜査をやる場合には、自然それが合法のたとえば団結の自由であるとか、国民生活の自由であるとかいうことに触れる場合のあることはもちろんでありますが、そういう場合におきましても、不法の手段をもつてそれらの自由を害するようなことがあつてはならん、これまたもちろんであると思います。それに私はここで断言いたしますることは、警察捜査に当つては、いやしくも合法手段をもつてすべてやらなければならんのであつて、いやしくも人権侵害をやるような手段を用い、不法な手段を使うというようなことはやつてはならんと、こういうことの確信をいたしております。
  15. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでは議題になつております民法改正の問題について、まず最初に全体的な見地において政府所見を伺いたいと思います。ただいま御説明下さいましたように、この民法改正の問題として政府がお考えになつておるのは、決して一言で言えば世間で伝えるがごとく、また不安を生じておるがごとく、いわゆる逆コース的な意図を持たれるものではないということを御説明下すつたのでございます。それにもかかわりませず、世間において、政府が現在お考えになつておられます民法改正について、そういう度重ねての政府の言明にもかかわらず、これがやはり逆コースである、なかんずく家族制度復活である、あるいは男女同権破壊である、あるいは個人尊厳尊重ということを破壊しようとせられるものであるという不安がなかなか強いことは法相も御承知通りであります。しかも婦人団体を中心にして団体的にその不安が表明せられ、そうしてそれぞれの言論あるいは行動をもつてこれは発表せられております。これは単なる誤解に基くものでございましようか、あるいは現在の政府の他の施策、施政方針というようなものと関係もあるいはあることでございましようか。いずれにせよ、政府がせつかくただいま御説明下さいましたような純真なお気持で民法の    〔理事小野義夫退席委員長着席民主主義的な合理化を図らんとせられておりますにかかわらず、世論の少からざる部分において、そうした疑惑と不安と不信というものがあつてこれを遂行せられることははなはだ困難ではないかというように心配をいたすのでございますが、この点についてまず法相の御見解を示されたいと願うのでございます。
  16. 小原直

    国務大臣小原直君) 羽仁委員の御質問お答えいたしますが、先ほど来民法改正方針について申し上げた通り政府といたしましては今度の民法改正は、今まで改正しなかつた部分について改正の必要があるかどうかということを法制審議会諮問をいたしております。この諮問についての答申が出ました上で、主務得たる法務省としては民法改正に関する意見をきめるという段取りになるのであります。で、今の段階におきましては、法務省としては家族制度復活であるとか、ただいまお話にありましたあるいは家であるとか、戸主権であるとか、あるいは親権であるとかいうようなものについて特別な考えを持つて、これを復活しようなどということは毛頭思つておらない。答申を見た上で、白紙の状態において、改正の点をどういうところに置くかということを定めるのでありまして、世の中新聞等に、あるいは家族制度復活であるとか、あるいは親子の関係について特別の規定を設けるのであるとかいうような議論もありますけれども、法務省は何らそれに関して今まで意見を発表したことはないのであります。ただ世の中の一部にはそういう考えがあつて、それが新聞に出るものと私どもは了解いたしております。
  17. 青木一男

    青木一男君 ちよつと一、二点伺つておきたいのですが、民法改正方針について法務省としても白紙答申を待つということでございますが、それはまあけつこうでございますが、ただいまのお話の中で改正範囲でございますが、全般にわたるような問題であるか、あるいはまた場合によつては、この間改正しない部分についての改正であるかのごとくにもちよつと聞いておつたのでありますが、おそらく全般であろうと私は想像しておるのでありますが、それで先般の昭和二十二年ですか、民法改正の経過についてですが、今法務大臣お話のごとく憲法改正伴つてそれに歩調を合わせる意味においての改正をされたと、こういうことであります。そこで当時の憲法改正マッカーサー司令部指示に基いてそのきめられた枠の範囲改正をしたものであるということは、今日では公知の事実で疑う者はないのでございます。占領軍政策というものは、日本利益を図るよりも、占領国利益を図ることを主眼としてやつておることはこれは当然であります。米国政府マッカーサーに対する指令の中にも、そのことがはつきり書いてあるのでありますが、憲法改正占領当時の重要なる項目であることは事実であり、もちろんその線に沿つておることは明らかであります。それで一口に申しますれば、占領政策根本は、国家としての日本弱体化にあつたということも、これも今日ではほとんど定説でございます。占領国占領軍としては私はむしろ当然の方針であろうと思うのでございますが、ドイツにおきましても、西独の占領当局は、日本に対すると同じような永久憲法制定自分たち方針のもとに制定することを命じたのでございます。ところがドイツ十一連邦総理大臣が集合して、憲法というものは、今のように自分たちドイツ国民主権を持つておらない、占領軍当局主権を持つておるので、主権を持つていないドイツ国民が、また意思発表の自由もない現状のもとにおいて永久憲法を作るなどということは想像もできない。こういう理由永久憲法制定に反対したのでありますけれども、当時ドイツ政党も学者も輿論も、この十一連邦総理大臣意見を支持して頑強に抵抗したために、ついにドイツでは永久憲法制定せずに、今日ボンの憲法として伝えられておるものは、これは占領下基本法に過ぎないのでございまして、この憲法には、この基本法ドイツ国民が自由を回復して独立を復し、自分の手で憲法制定した日において、その効力を失うということが明らかにされております。私は憲法の本質上当然のことであると思うのであります。またいやしくも民主主義の建前からいつても、民主主義というものはその民族国民の手によつて国民意思に基いて国民のためにするのが民主主義でございますから、憲法制定というような将来の重大なる問題が、民主主義の原則によつて行われるべきことは当然でございます。しかるに日本では、事態が全くドイツ変つてあのような憲法ができ、国会において審議された場合にも、その重要な永久憲法制定に反対された説を多く間かなかつたことは、われわれ非常に遺憾とするところでございます。しかもこの改正手続たるや、ほとんど改正を不可能にするような規定までも置いているのでございまして、私はここに独立の自由を回復した今日、あらためて国家統治根本について考えてみたいと思つておるのでございます。これは民族として当然の要求であると思うのでございます。  これは、憲法考え方についてでございますが、今お話民法改正についても、憲法に合せるための限度の改正をされたということでありますが、それが主として親族法相続法でございます。まあ民法私法基本法としてどこの国でもこれの改正については非常に慎重な手続をとつておりますが、ことに親族法相続法のごときは、これは万国不変の法律というのはむしろ少くて、各国の伝統慣習というようなものに非常に支配される部分が多いわけでございますからして、占領軍がそれに手をつけて改正させるとすれば、最も不適当と思われるようなものも手をつけて改正させたことになるのであります。従つて私は今度の民法改正に当りましては、これは憲法改正にも関係ございますけれども、全般にわたつて本当に日本人の意思によつて、適当なるこの私法基本法である民法制定されることを希望として法務当局にそのことをお願いいたしておきます。  それで一点特に伺つておきたいのでございますが、相続法家督相続をやめて均分相続となりましたために、農地の細分ということについて非常に世間では心配しているのでございます。今日の現状におきましても日本は農耕地が少くて、しかも農民の数あるいは農家の数が多いのでございますからして、一戸当りの耕作反別というものは非常に少いのでございます。それがこれ以上細分されては、農家経済の経営をほとんど不可能にするということは、これもほとんど異説のないところでございます。それでこれ以上の農地の組分を防止するためには、やはり相続法に何か特例を設ける必要があるのじやないかということが多く伝えられているのでございます。私もその点今研究している一人でございますが、この改正に反対する人たちはほとんどこういうことを言うのでございます。それはこれ以上の農地の細分は実情に適しないし、いけないと思うが、今日均分相続であつても、相続権の放棄によつて事実上細分を防いでいるのだからいいではないかということを言つているのでございます。ところが、私は弁護士の職務においてすでに数件この農地の相続の問題についての紛糾を頼まれて関係いたしているのでございまして、法務当局では近、ころ簡易裁判所その他の調停等におきまして、どの程度こういう農地の相続についての研究をなさつておられるのか。その点の様子を伺いたいのでして、それから法律上は均分相続であるけれども、権利の放棄によつて事実上細分を防いでおるからいいというこのことは、一体どこまで期待性を持てるか。国家制度としては均分でありながら、事実は権利を放棄することを期待してその細分を防げる一体見通しが日本国民性から見て、また法の運用の今までの経験から見て、一体期待できるのかどうかということについて、法務大臣の見通しを伺つておきたいと思います。
  18. 小原直

    国務大臣小原直君) お答えいたします。今日の民法は、先ほど申しましたように、占領中における憲法改正によりまして、民法改正しなければならん点があつたがために、その憲法に相合する趣旨改正をしただけなんでありまして、今日民法改正を計画いたしましたのは、その後における情勢に従つてなお民法改正して行く点ありやいなや、ありとすればどういうふうの要綱改正すべきかということを法制審議会諮問をいたしておるのであります。もし、今後憲法がさらに改正せらるる機会がありといたしまするならば、そのときにおいてあるいは憲法規定に基いてさらにまた改正せんければならん点が出るかどうかということは、今日からあらかじめ想定するわけには参りません。それはそのときに譲るほかないと思います。ただし、今回法制審議会諮問いたしました民法改正につきましても、事が私法根本法でありまするがために、なかなか審議は手間取るであろうと思います。いつ、その答申が出るかということも、これまた今日においては予定ができないわけであります。憲法改正がいつあるかもわからず、それを待つて民法改正を新憲法に合わすべく計画するということも待ちかねるのでありますから、取りあえずこの諮問をして、改正する点ありとすれば改正をしようという計画を立てたのであります。  次にお尋ねになりました相続に関して、今日均分、子供に対する被相続人の相続権を均分にすることになつたんでありますが、農地についてこれを同様に扱うということになるというと、農地が細分化せられて、従つて国民生活の資料である食糧の増産問題に影響を及ぼし、あるいはその他いろいろ悪影響を及ぼす点があり得るのであります。この点をどういうふうに改めるかということも、いずれ法制審議会から答申もあるでありましようが、このこまかいことについては事務当局から御答弁をいたすといたしまして、ただ、この細分を防ぐがために次男以下のものに相続権を放棄させることによつて緩和されるのではないかという議論があるというお話であります。現に今日そういうことも行われておるようでありますが、しかし、これがなかなかその通りには参らんのでありまして、至るところこの農地に関しての相続についても争いがあるのであります。これをどういうふうにすべきかということがやはり問題になるのでありまして、これらの点を今申し上げたような、法制審議会でも論議されると思うのでありますが、それらに関するこまかい点は、事務当局から御答弁いたします。
  19. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) 改正民法における均分相続制度によりまして、農地の細分が行われるのではないかということで、それを防止するための農業資産相続特例法案と申しますものが第一国会と第五国会の二度政府から提案になつたことは御承知通りでございますが、いずれも審議未了となつたのでございます。第一国会に提案されました特例法案の大体の構想は、農地つきまして相続人の中の農業を継続してやつて行くと期待される相続人についての相続分を他の相続分より多くする。二分の一の特別相続分を認めるということが中心であつたのであります。これが憲法の平等の精神に反するという憲法違反の非難もございまして、これは衆参両院とも解離未了になつたのであります。次の第五国会に提案されました特例法案も相続分は民法の原則通りであります。その相続分に従つて相続財産を分割いたします際に、農地については被相続人の推定た農業資産相続人が農地を取得し、他の相続人には農業資産相続人から長期にわたつてその相続分に当るものを償還して行くというような構想であつたのであります。これは衆議院のほうを通過いたしまして、参議院で審議未了になつたのでありますが、これにつきましても、ただいま青木委員の仰せになりましたような実際放棄によつて相続財産の細分が、農地の細分が防止されているから必要がないという学者の反対論のほかに、学者の間では、かような制度ができて、一子相続を法律が認めるような感じ今の農村に与えることは、ただでさえ封建性の強く残つている農村におきまして、新しい憲法及び民法の精神としております民主化を妨げるおそれがあるということが学者の反対の理由一つであつたのであります。さようなことでこれも審議未了になつれそのままになつて来ているのでありますが、昭和二十六年に私法学会におきまして農家相続の実態を調査したことがございます。それによりますと、農家で法律上の放棄の手続をいたしましたものが約一七%、それから一部はほかの子供たちにも農地を分けてやつたという例が約二〇%、それから共同で相続したことに法律上はなつているけれども、事実上長男なりその他一人の子供がそれを承継して耕作を続けているという例が、これが大部分でありまして約六一%という数字になつております。農地の細分は心配されたほど激しくはないというふうに言われておるのでありますけれども、私どももこの相続の放棄と、やむを得ず相続を放棄することによつて農地の細分が防がれているという状態がこれでいいとは考えないのであります。法制審議会などにおいて相続法規定を審議されます際にこの点を十分検討願いたいものと考えておる次第であります。裁判所等に現われております農地相続を中心とする紛争の実情につきましては、ただいま資料を持合わせておりませんので、調査いたしました上でお答え申上げます。
  20. 青木一男

    青木一男君 これは直接民法改正には関係ないのでございますが、むしろ刑法に関係することでありますが、先ほど申した通り日本占領政策の基本は、日本の弱化にあつたのでございますが、その大きな方法としては、個人主義、いわゆる極端なる個人主義を強調して、その半面国家の権力を極度に弱める、こういうことがあらゆる制度の改革の指導方針になつておるようでございます。それで個人主義によつて日本の社会改革を実行したのでございますが、そこに私どもは非常な行過ぎがあるのじやないかということをおそれておるものでございます。もちろん占領軍の実行した改革の中にもいいこともございます。従来の日本の行過ぎた、たとえば家族制度の封建性を面すという点については、われわれも共鳴を感ずる点ももちろんあるのでございます。しかし、行過ぎがあるのじやないかということを同時に私どもは心配しておるのでございます。憲法には夫婦の協力関係について協力の義務を規定しておるのでございますが、しかるに親子の関係というようなものについてはこれを規定いたしておりません。そうして学校の教育等を見ましても、ややもすれば子供の自由ということを非常に強調するあまり、親に対する敬愛の念というようなことを少しも教えておりません。かえつてそういうことを言うのが非常な旧思想、逆行であるがごとくとつている人も多いのでございます。それからその思想の流れかどうか知りませんが、刑法においても、尊族親に対する殺人行為等の特別規定について反対の意見が法曹界あるいは裁判所等にもあるやに聞いておるのでありますが、これのごときはむしろ私は人倫の根本問題であつて、そこまで個人主義が行くということが、健全なる社会権成の上に一体是認さるべきかどうか。これは道徳と申しますか、大きな社会の秩序安全を保持するための基本となるのでございまして、こういうことがぐらつくのでは本当の安定した国家は成立しないのじやないか。しかしどの程度元の思想がいいのか、新らしく改められた思想がいいのかということは、まあ程度の問題として議論はありましようけれども、今の極端な個人主義、親の立場というものを全然無規したような、そういうような思想というものは、どこの国にもないのでございます。アメリカはまあこの自由、あるいは個人尊重人権尊重というようなことではもう一番先へ進んだ国で、北米合衆国の独立はそういうところから来ておるのであります。しかし、米大陸というものは新しい国だけに、そういう従来の伝統というようなものを無視して、徹底的に自由ということが主張され、実行されておる国であります。しかるに、数年前に北米、中米、南米の各国、二十何カ国が葉まつて、米大陸の人権宣言が発表されております。これはまあ米大陸の一種の基本的な憲法、精神でございまして、この米大陸の人権宣言を読んでみましても、親と子の関係について、親が子供を扶養し教育する義務があるし、子供は親を尊敬し扶養する義務があると、こういうことを明らかに一カ条謳つておるのでございます。あの自由主義の米大陸においても、すでに親子の関係というものはそのくらいいわゆる人権尊重立場から重視されておるのでございます。しかるに、むしろ東洋道徳の流れを汲む日本において、そういう親の立場を全然無視したような一体考え方国家の秩序維持の上に認められるかどうか、学校の教育等においてもそういうことが一体放任されるべきかどうかということについて、私は深き疑問を持つのでありまして、この点について法務大臣の御所見を伺いたい。
  21. 小原直

    国務大臣小原直君) 青木委員お尋ねでございますが、新しい民法になりましてから、親族規定がだいぶん改まつたのでありまして、ただいま御指摘になりましたように、親子、夫婦間等の関係一般的にいわゆる自由になり、個人主義になつて来たということは、争われない事実であります。占領中において占領軍日本に対する方針が、御指摘のように、日本の当時の力をなるべく弱めて占領に都合のよいようにしようという思惑から、さような方法が講ぜられておつたことは、顕普な事実であります。今日はすでに占領を脱して独立したのでありまするから、それらの点については、改むべきものは改めて、日本の自主独立関係を持つて行かなけれ場ばならんことはもちろんであります。従いまして、外国で個人主義、自由主義が非常に盛んであるが、ごとく、日本も大体そうなつてつておりますが、これは別段悪いことではないのでありまするけれども、それに伴うてあるいは親子の関係、夫婦の関係がややもすると、あまりによけいに行き過ぎて、その間で面白くない日本の古来の醇風美俗にも反するようなことも行われておるのでありまするから、これらはやはりだんだんもう少し変えて行かなければならん点もあろうと思います。ただし、それを法規に特に規定してということはどういうものでありましようか。やはりかようなことは一般の社会の観念、国民思想の善導によつてだんだんそれを改めて行くということがよいのではなかろうかと考えております。法規の点につては、なおこまかいことは事務当局から御答弁させますが、たとえば親子の関係においても、未成年の子供は親の親権に服さなければなんということもありますし、また血族間においては、いに相助け合わなければならんという規定も設けておりますから、これらを善導して行けば、ただいま御指摘になりましたような悪い風潮をなくしてだんだんとよくして行けるのではないか。子供が親を尊重し、夫婦間においても互いに相助けて夫婦間の生活を安定し愉快にして行くというようなことはできなければならんし、またそうすべきものであろうと思います。こまかい規定については、なお事務当局から御説明申し上げます。
  22. 村上朝一

    説明員(村上朝一君) ただいま大臣から御説明がありましたように、ただいまの改正民法におきましては、末成年の子に対しては父母が親権を行うことになつております。従いまして、監護、教育をするわけであります。一方扶養の面につきましても、直系血族は互いに扶養の義務ガあるということで、扶養の規定も旧法通りその点は残つております。また、これは学者の間ではいろいろ議論があるのでありますが、直系血族及び同居の親族は互いに助け合わなければならないというむしろ道義的な規定さえも入つておるような状況なのであります。決して改正民法は、親子間の倫理観念たり、あるいは道義を崩壊させる方向に改正されたわけではないのであります。ただ、敗戦後の混乱の際でありますので、いろいろ行過ぎがあつたことは御指摘の通りであろうと思いますけれども、ただいま大臣も言われましたように、道徳教育その他の面で取り上げる問題であろうと考えておるのであります。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 二、三点お伺いしますが、法制審議会に大臣から諮問されておる範囲ですね。先ほどお答えになつておるのですが、ちよつと不明確な点もありますので重ねて確めておきたいと思うのですが、親族法相続法関係は新憲法に合せて改正をしたのだ、従つてそれ以外の部分について諮問をしているのだと、こういうふうにも私は聞いたのですが、青木委員のほうはそういうふうには少し受け取られなかつたようにもおつしやつたのですが、その点もう少し私明確にしてほしいと思います。
  24. 小原直

    国務大臣小原直君) 先ほど申し上げましたように、法制審議会に対しての諮問は、諮問第十号といたしまして、民法改正を加える必要があるとすればその要綱を示されたい、こういうことで諮問をいたしております。その説明の中には、ただいま申し上げたように、憲法改正に伴うて差当り改正しなければならない部分改正したのであるが、その他の民法規定中で現在改正の必要があるかないか、あるとすればどういう条項をどういうふうに改むべきかという諮問をしたわけなのであります。これは説明に書いてあります。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 ただいまの御説明で了解いたします。  この席でお尋ねするのが適当かどうかわかりませんが、法務大臣はいわゆる憲法改正、こういう問題についていろいろな議論が起きておりますが、どういうふうにお考えになつておられるでしようか、もし御意見を発表できましたら伺いたいと思います。と言いますのは、親族法相続法改正、ひいては家族制度の問題、これは当然憲法の問題に関連して出て来ておる問題でありますので、この点に関するやはり法務大臣考え方が非常に重大だと私どもは考えますので、お答えできましたらお願いしたいと思います。
  26. 小原直

    国務大臣小原直君) 憲法改正についての私の意見はどうかというお尋ねであります。現行の憲法占領後において作られ、しかもその作られたいきさつが、必ずしも今日国民が満足した状態において作られたとは思えないのでありまするから、いずれは改正の議が起つて来ると思います。ただ政府といたしまして今日憲法改正すべきかいなかということについては、考えがまとまつておらんのであります。法務大臣の私としても政府の一員としてこの政府のきまらないことをここで申し上げるわけには参りませんから、改正すべきであるか、あるいは改正すべからざるものであるとかいう意見は申し上げかねます。ただし、今申し上げましたように現行憲法が作られて来た当時の状態から見ると、やがてはこれは改正される機運があるのではないかということは私個人としては考えております。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 やがては改正されることがあるのではないかということを個人的に言われたわけですが、その根拠をもう少し、個人的でけつこうですが……。
  28. 小原直

    国務大臣小原直君) それは私個人として考えるのでありますが、作られたときの状態から見るということ、日本国民としてこの憲法に将来も満足して行けるということは私考えておりません。いずれ国民全体が改正すべきものという気分になれば、必ず改正の時期が来る。こういうふうに考えておりますが、その時期がいつであるかということは今申し上げかねます。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 こういう問題を中途半端でちよつと打切ることもできないので、もうしばらく大臣に伺いたいのですが、国民全体が改正するような気持になればという条件をつけられたのですが、そういう時期は私絶対にないと思います。法務大臣が言われたのは多数のものがという意味であろうと思うのですが、しかし現在の状態を見てもこれはどつちが多数かわからない、政党の議席の関係は、もちろん政正すべしという方のほうが多数なようですが、政党を離れてそれでは憲法そのものを取り上げて行く、再軍備の条項なり、あるいは家族制度等の問題に触れることになると、そういうことになると、これは本当のところわからないのが現状です。だから私はこういう現状では、前提となつたような条件が打かなか実現して来ないだろう、私はこう考えておるのですが、ただ根本的に、先ほど青木委員からもアメリカがこの憲法を作る際に日本弱体化を図つた、こういうことが非常に強調されておる。おそらく法務大臣個人的にはそのような考え方も幾らかお持ちになつておるのではないかと思うのですが、それはどうでしようか。
  30. 小原直

    国務大臣小原直君) それがどこにとういう条項があるからさようであるという、一々こまかいことまでは申し上げかねるのでありますけれども、あの当時においてはとにかく日本の抵抗が激しかつたのを連合国が日本を破つた直後なんでありまするから、この直後において占領状態を満足に彼らの好むがごとくして行くためには、日本が強くなつては困ることは当り前でありまするから、日本を弱める方法を講じておつたということは申すまでもないことであろうと思う。従つて憲法制定はやはりそういう考え方が取り入れられて作られておつた、こういうことを私は考えておるのであります。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 だいぶんはつきりいたしましたが、それは弱体化ではなしに、やはり占領当時言われたように日本の侵略性をなくする、こういうこだと私は考えておるのです。侵略性がないということと国が強いか弱いかということとは別ですからね。明らかにこの憲法個人主義の立場に立つた憲法です。その点だけをとらえてこれもやはり弱体化の見本だ、こういう表現がされるのですが、そうじうなしにやはり本当に個人主義に徹底して、そうして自覚ある人格を皆が持つておる、そうしてその人たちが全部集まつてりつぱな社会を作つて行く、こういうことになれば、非常に強い社会ができるわけですがね。ちよつとしたような扇動なんかではなかなか動揺しない。やはりそれが本当の強い私、国だと思うのですね。りつばな国だと思う。だからそういう意味であつて私はそういう面では占領政策というものはやはり一面のいいものを日本民族にやつぱり与えたものだと私は確信するんですがね。現に日本国会でもこの憲法が出されたときには、五十三日もこれを審議しているわけでしよう。その当時の国会議員はほとんどこれに賛成したわけでしよう。今ごろになつて自分が賛成したものを、幾ら占領下であつたといえ、これが日本弱体化のためにやられたものだとか、いや占領当時であつたから手続がまずいとか、こういう根本的な問題についてそういう態度に出られることは、まあ外交の宣伝的な人が言われるのは別として、責任ある地位の人はそういうことは相当慎重にお考えになつてやられませんと、結局そういうことが日本の国全体の世界に対する信用ですね、そういうことにも響いて来るのじやないかと思う。そういう点は法務大臣どういうふうにお考えになつておられますか。
  32. 小原直

    国務大臣小原直君) 私は先ほど申した通りであります。これ以上論議するのは、ただいたずらに意見を戦わすだけになる。結局意見の相違と言うほかはないと思います。
  33. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 憲法最高の法規として国務大臣またわれわれ国会議員がこれを擁護する義務を負つていること件改めて申すまでもないのであります。特に御覧になりますように、この現在の憲法が成立いたしました当時には、現在政府を担当しておられます政党その責任を負われ、その全責任を負われたのは現在の首相、同じ方であります。そしてまたその憲法に対しては天皇もこの憲法に対する誓約を述べておられます。従つてもしこの憲法国民意思に反し妥当でないようなものししてできたものだということが定説ということになりますと、当時の総理大臣、あるいは天皇御自身、あるいは当時の与党は節操を失い、国民を欺むき、そうして妥当ならざる憲法を受諾したという責任を負わなければならないような疑いも生じて参るのです。私はそういうことは断じてなかつたものだと思います。憲法に書かれてある文字、文字でありますけれども、しかしそれが軽々しく翻えされるようであれば、国民は何事を書かれても、これを信じないようになつてしまう。これくらいおそろしいことは私はないと思う。合法的に、そうして平和に、民主主義的に国家の充実進歩を図つて行きたいということはどなたもお考えのことであると思いますが、そういつたいやしくも誤解を与えられますようなお考えは、政府において毛頭おありにならないことと存じます。先ほどからの御意見もさように伺いたいと存ずるのございますが、いかがでございますか。
  34. 小原直

    国務大臣小原直君) 憲法ができた当時の状態において、この憲法はできたのでありまして、その当時はももろんこれでりつばなものであるという確信のもとにできたものであることは間違いないと思います。ただ申し上げたように今日情勢がだいぶん変つて参りました。今後において国民がこれを改正すべきである、政府もまた改正すべきであるということを考えれば、そのときたは改正の議が出るだろう、こういうことを申し上げておるのでありまして、今日私は直ちに改正すべきであるというようなことを申し上げておるのではないのであります。
  35. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それではただいま議題となりました民法改正に関する件は、この程度で打切りたいと思います。   ―――――――――――――
  36. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) なお、裁判制度に関する小委員会の補欠選挙についてお諮りいたしたいと存じます。楠見君の小委員の資格が消滅いたしておりますので、この際この補欠として梶原茂嘉君を小委員に指名したいと存じますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 異議ないと認めまして、さよう決定いたします。  本日はこれをもつて委員会を散会いたします。    午後零時六分散会