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1954-11-05 第19回国会 参議院 法務委員会 閉会後第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月五日(金曜日)    午前十時五十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高橋進太郎君    理事            小野 義夫君            亀田 得治君    委員            青木 一男君            岡田 宗司君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法務省訟務局長 浜本 一夫君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君    法務省入国管理    局長      内田 藤雄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (最近における外国人出入国管理  状況に関する件)  (訟務局争訟事務処理に関する  件)   —————————————
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより法務委員会を開会いたします。  本日は検察及び裁判運営等に関する調査中、最近における外国人出入国管理状況に関する件を議題といたします。
  3. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 最近、日本に現在生活しておられる朝鮮方々についてさまざまの問題が起つて、それが人権擁護というような点からわれわれに向つて訴えられているのですが、こういうような点について、一々行政上のこまかいことまで伺いたいという意味ではないので、大局的な見地から、大体四、五点伺いたいと思います。で、これは主として私が伺うのは、人権の尊重という点と、それから国際外交関係というような点からでありますから、どうかそのつもりでお聞き取りお答えを願いたいと思います。  御承知のように現在日本生活しておられる朝鮮方々については、外国人登録法などの立法の際にも、私は政府に向つてその点を質しておいたのですが、第一には、現在日本朝鮮方々生活しておられるというふうな事実は、国際的に例のないことであつて、申すまでもなく過去における日本朝鮮との歴史的関係というものを深く反省せずに、法律を作り、あるいはそれを適用するということでは、所期の目的を達することはできない。強制的に日本国民になつてもらい、そうして強制的に日本に来て、労働に従事させられる、そうして突然これが外国の人となるということでありますから、よほどその間には常に歴史的な事情というものを念頭に置かなければならないというように考え、当時外国人登録法などの、外務省から法務省に移る場合には、それらの点は政府においても十分留意しておられるという御答弁であつたのですがこの点についてただいまの政府のお考えは依然お変りにはなつていないことと思うのですが、これが第一点。  それから第二点は、とはいえ、やはり今日では外国人としての扱いをして行かれるわけなんですが、しかしこれについても、これも詳しく申し上げるまでもなく、朝鮮日本との外交関係が円満に打開される日も遠くないことである。で、それが円満に解決されるまでの間は、やはりできるだけ原則的にはこれまでの取扱いと同じ取扱いをして行かれるということが妥当であろうということを、当時政府に向つて質し、外務大臣その他の方々の御意見もその通りであるということであつたのですが、それも今日もお変りになつていないことだと思うのですが、いかがですか。この第二の点につきましては、その後政府の御意見を伺いましたときに、当時はそういうつもりであつたけれども、それは近い間に外交関係解決されるという見通しのもとに、そういう方針であつたのだが、その後に、かなり長い時間がかかるようになつてしまつたので、いつまで従前通り取扱いというわけにもいかないからということを言つておられました。しかしこれは最初に申し上げましたように、そのためにこの人権に対して残酷な取扱いが起り、また国際外交上に好ましからざる影響が起るというようなことまでおかして、しかもずいぶん長い年月を要したとはいえ、もう朝鮮日本との外交関係妥結ということは、最後の段階に入つて、間もなく外交上円満な解決でがきる目が近づきつつある今日であるという点を考えまして、それらの点がやはり人情をふみにじつたり何かすることがないようにして行かれることが妥当だと思いますが、これらの点についてまず政府の現在のお考えというものを伺つておきたいと、こう思うのです。申し上げるまでもなく最も高いレベル方針を伺つているので、いろいろ行政上のこまかい点を伺つているのじやありませんから、どうかそのおつもりで、第一に、現在日本生活しておられる朝鮮方々取扱いについて、いろいろな歴史的な事情というものを絶えず念頭に置いて当つていられることと思いますし、第二に、朝鮮日本との外交関係が円満に解決するまでは、大体において従前取扱いというものを十分に顧慮して行つてつて行かれることだという、外国人登録法などの立法当時の政府の言明というものは、今日も変つていないことと考えますが、いかがですか。
  4. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) ただ今の御質問のごとき、非常にいわゆる高いレベルの御質問に対しまして、私ごときものが十分にお答えいたします資格がありますかどうか、疑問に存じますが、しかしただいまおつしやいましたようなことは、皆われわれ十分に顧慮しておるつもりでございます。ただ、具体的に個々のケースが従来の方針と違つておるのじやないかというような問題がもしございましたら、それを伺いホして、どうしてそうなつたかという裡由なども御説明いたしたいと思いますが、私個人といたしまして、少くとも従来の方針を変えてやつて行くという考えは毛頭持つておりませんし、大体そのつもりでやつておるのであります。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまのお答えはたはだありがたく頂戴するのですが、実はわれわれ法務委員会といたしましても、たとえば大村収容所の現状な戸について、とてもこれを放置しておくことはできないというので、先般本院から派遣せられてそれを視察したのでありますが、大村収容所長も非常な苦心をしておられる。収容所長が私に語られた談話の中にも、これは収容されておる人ではありませんが、やはりあそこに大ぜいの朝鮮方々が収容されておるために、それを心配していろいろ世話なすつている外におられる朝鮮の方の談話に、日本敗戦朝鮮に対して新しい関係を樹立され、そうして日本朝鮮との円満な新しい行き方を開く三つの機会を、日本はそのまま見送つてまつた。すなわち過去において日本朝鮮植民地とし、いろいろなことがあり、朝鮮人々もそれによつて苦しんだことがあつたが、しかし今日朝鮮が独立され、そうして幸福な新しい方向を確立せられるということについての反省の誠意を示す機会が三度あつた。それは第一には敗戦の当時、ポツダム宣言受諾の当時であり、第二にはサンフランシスコにおいて平和条約ができた当時であり、第三には日本から占領軍が撤退するというふうな時期、その当時朝鮮の民衆は皆耳目を集めて日本政府がその点について一言でも言われるかというように期待しておつたのだが、三回とも日本政府一言も言わないで、一言もあいさつもなかつた。これがどれくらい朝鮮日本との外交関係解決に困難を来しているか、あるいは早晩朝鮮へ帰りたいという方々朝鮮のほうで受取られないということについても、個々の問題を幾ら両方でつつ突き合つたつて解決しないんで、日本朝鮮を支配していた時代の気持というものと今日とは全く違うのだ、対等に朝鮮の独立を尊重し、その幸福を最高念願としているんだということを、一回でも日本政府から公式に表明することは今日までなかつた。このことのために大問題においても、また個々の問題についても、どれくらい解決困難であるかわからないという談話をせられたということを聞きましたが、私もそれを聞いて誠にもつともだと思いましたので、どうか今最高方針においてその過去の歴史的事情というものを、常にあなたが反省して法律適用に当られるということ、それから外交上の解決を見るまではできるだけ従前取扱をせられるという今のお答えを、どうか責任をもつて実行していただきたいと思うのです。  そこで具体的の問題について、二、三伺つておきたいんですが、第一は、最近あるいは浅草上野、深川その他において、日本におられる朝鮮方々警察官によつて非常に手荒い取扱を受けたということがございます。で、これについては一々事実を申し上げませんが、その多くのものは、問題はいわゆる外人登録票を常に持つているかどうかということに関係してでありますが、その中の最も激しいのは、浅草本願尊のあたりでお婆さんが八百屋に野菜を買いに行つた。そこを警官が通りかかつて登録票を持つているか」と言つたらぱ「家に置いてある」「じや、持つてないんじやないか、警察まで来い」お婆さんは驚いて「家に置いてある、家はすぐそこなんですから、家へ来てくれればそれを示しますから」と言うのを、家に行つてそれを持つて来ることを許さないで、あくまで警察に引き立てて行こうとする。そこでお婆さんはいよいよ驚いて、そこで押合いになつて、そのお婆さんを押し倒す、あるいは外から見れば、今申し上げたような過去の歴史上のいろいろなことから見れば、そのお婆さんに対して警察官が非常に残酷な態度をとられたというように感ぜられるということも、誠にもつともだと思うのです。これらの問題は、もちろん警察その他いろいろの関係していることでありますけれども、しかし入国管理局、ことに登録関係しておられる方々の、さつき御説明下さいましたような御方針というものが徹底していれば、そういう無用な残酷ということも防ぎ得ることだと思うのでありますが、こういうような事実をあなたは御承知でございましようか。そうして御承知であるとすれば、それらについてそれぞれ関係方面に対してあなたのほうの御方針というものを徹底して無用な悲惨が起らないように御努力下さつておることでございましようか、いかがでございましよう。
  6. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) これはもう三週間ばかり前でございますが、朝鮮人のある団体の幹部の方々が同じような問題につきまして私のところへ参られまして、まあ抗議と申しますか、陳情と申しますか、そういうお請を伺つたという事実はございます。しかし果してそれが事実であつたかどうかということにつきましては、私ども確認いたしておりません。それで、そのときもお答えいたしたことでございますが、私どもといたしましては外国人登録法に基きますいわゆる本年度の切りかえが円満、かつ完全に遂行せられること、それが唯一の念願でございまして、それ以外に何ら意図するものはないということは、そのときにも御説明しておきました。それから念のためにある会議のときでございましたが、警察関係の相当上の方にこういうことがあつたということを伝えました。そうしましたら、そのときの回答では、もし事実であるならば遺憾であるが、警察首脳部としてもそういうことは毛頭考えておらん、こういう御説明を伺つております。
  7. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これはなかなかその第一線のすべての警察官について間違いなきを期するということは容易なことではないことは、よくわれわれもわかつておりますが、どうか原則的な一つ高い方針として、その外国人登録法朝鮮方々適用する場合に、それが無用な残酷さ、あるいは官僚主義というものがないように今後も御注意願いたいと思います。  それから第二の問題は、いわゆる国籍の問題でございますが、この朝鮮方々の現在の朝鮮事情ということで、大韓民国あるいは朝鮮人民共和国というような事情から、このいずれの国籍を選択されるかということについては、もちろん自由であります。日本政府としてもその自由というものはあくまで尊重しておられる建前であることは伺うまでもないことでありますが、不幸にして現在日本大韓民国側代表だけがおられて、朝鮮人民共和国代表がないということのために、末端取扱いにおいては、朝鮮方々がどうも国籍選択の自由を日本国政府が干渉するのじやないかというような疑いを持たれる事例があるようでございます。これもそれぞれの事例について今伺いたいと申すのじやないのでございます。これは半分にはやはり最初に申し上げた過去の歴史的な事情というものから、それほど御心配にならんでもと思われることが、朝鮮方々には非常に過敏に御心配になるということもあるかと思うのでありますが、しかし現在朝鮮の国内の問題の解決、また日本との外交の問題の解決というものがないために、取扱われる方々取扱い方によつては、あたかも国籍選択の自由に対して、日本国政府またはその官吏、公務員が干渉するかの、ごとくの感じを与えることがあるかと思うのであります。これらの点について先ほど政府のほうからは、国籍欄記載事項に関して通達などを発せられたようでありますが、これらの適用につきましても、やはり今申し上げましたような無用な不安を与えるということがございませんように十分御留意下すつていることと思うのでありますが、いかがでございましようか。
  8. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 御質問のごとく、われわれとしては十分注意いたしているつもりでございます。原則はもうもちろん国籍選択の自由があるという建前行つておりますが、ただ、ただいま御質問の中にもすでに出ておりましたように、外交上の理由からでございます。国籍変更をいたしますためには、それを確認すべき資料を要することになつておりますために、結果といたしまして大韓民国国籍の人が朝鮮人民共和国への変更が事実上困難になつているということは、遺憾ながら事実として認めざるを得ないと思つておりますが、しかし、われわれは建前はあくまで自由であるというつもりでおりまして、すぐこれを何かわれわれが大韓民国への国籍記入を強制しているがごとき風説が出ておりますが、これはもう全然われわれの考えていることではございません。
  9. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまのお答えで満足いたすのでありますが、どうか第一線仕事をなすつている方がそういつたような感じを与えられる場合があることも想像せられまして、絶えずそれらの第一線で働いている方は、今の御方針のように国籍選択の自由というものを常に施工して行つているという印象を与えられるように希望するのであります。  第三に、これも根本方針についてだけ伺うのでありますが、いわゆる財歴権所有権などに関係する問題であります。先ほども申し上げましたように、本来は、本来というか、最初関係法律が制定された当時には、できるだけ従前の例に従うということでおやり下すつたのでありますが、その後かなり長い年月を経て来たので、いつまでもそうしているわけにもいかないということで、ここに外国人扱いということに移つて行こう。鉱山権であるとか、あるいは船舶の所有権であるとか、あるいは倉庫の所有権であるとかいうものについての切りかえの措置をとられたようでありますが、それについてはすでにそれぞれ適法措置をとられていることでありますから、今ここで伺うと言つているのではないのです。それらの適法措置をとられるというようにおきめになりました後の場合に、最初に申し上げましたような過去の歴史的な事情……、日本にずいぶん長く日本国民として生活をし、そしてまたいろいろな営業をしておられたということと、それから近く外交関係妥結をするということもあるのですから、ただいまのような財産権についての新しい外国人としての措置適用、これはいやしくも機械的に流れ、あるいは官僚的に流れ、あるいは無理をして行くということがないということは、政府方針だというかうに伺うのですが、いかがでしようか。これは一応一定期限を切られて、それまでにはそういうものの処理をせられるように、政府のほうから要望せられておる。それまでに十分の処理ができればけつこうですが、しかし期限切つてその財産を売るということになれば、非常に不利に売らなければならんということもありましようし、そうして起つて来るいろいろな場合が想像されるのですが、処理ができなかつたために所有権は持つているけれども、それを使うことができない。そこで船の所有権はそのままになつているが、動かすことはできん。そうすればその船が立ち腐れになつてしまう、あるいは急いで名義人日本の方に変える。それで名義人である日本の方と本当の所有者である朝鮮の方との間にさまざまな不幸なことが起る。そういうことがどうしてもやむを得ず起る摩擦であるならば、仕方がないことでありますけれども、不必要にそういう残酷なことが発生している場合があるのではないかというように心配をするのでございますか、これらの点については政府のほうではどんなふうになすつていらつしやるのか、伺いたいと思います。
  10. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 実は私、申し遅れましたが、まだ任官いたしまして聞がないものでございますから、その御質問の内容につきましては、私はあまり……、それに第一われわれのほうの所管事項でもないのでございまして、私はよく伺つておりませんが、しかし少くともわれわれが間接にいろいろそういうことに関連いたしまして関与いたします限り、それぞれの所管官庁において、今の御質問のごとき事態の起らないように善処しておるものであると信じております。
  11. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 御説明下すつたように通産省関係仕事なんでありますが、しかしわれわれがこの外国人登録法などの際に、通産省のお役人なりに来ていただいてそういうことを詳しく質疑応答すればよかつたのですけれども、当時は外務大臣相手にしてそういうことを質疑したのでありますが、同じ日本国政府でありますから、外務省から関係通産省その他へも連絡があることと確信をしておつたのでありますが、今御説明下すつたように、直接あなたのほうの仕事でないのでありますけれども、しかしやはり外国人登録法なり、入団管理なり、そういうことと関連していることでありますので、通産省の方に来ていただいてということも、お互いにあれでありますから、どうか今のことを、あなたにお願いしては恐縮な、筋狂いということもあるかもしれませんが、筋が関係している点もありますので、お願いしたいと思うのであります。政府できめた方針としてはそういうものについての所有権処理ということを、一定の期間までにされるということは、すでに決定したことですけれども、しかしそれができる方はけつこうですが、できない方について無用な残酷な取扱いをされないようにということを、どうぞ一つ第一線まで徹底するようにお願いをしておきたい。  それからこの第四ですか、五ですかの問題は、主として日本生活しておられる朝鮮方々生活権というか、この問題ですが、問題は二つです。一つは今のようないろいろな財産上の権利とも関連して来ておりますことで、生活保護の問題であります。これも最初従前通り取り扱われて行つたのでしようけれども、だんだん長くなるので、日本国民生活保護が十分行われていないのに、朝鮮の方の生活保護に手が及ばないというようなお考えじやないかと思うのですが、そういうお考えがおありになるかどうか。私はむしろ反対であつて、さつき申上げたように過去の歴史的な事情、そうしてまた外交上の影響というようなことをも考慮されるならば、朝鮮方々についての生活保護を、日本人々あとに廻される、朝鮮方々を優先するということも、なかなかむずかしいと思うのですが、日本国民方々のほうが不十分なんだから、朝鮮人々に手が及ばないというようなやり方をされることは、妥当とは考えない。これも直接には厚生省の問題で、法務省のほうの問題ではないと思うのですけれども、しかし人権擁護なりあるいは既得権、そういうこととも関係をしておりますし、その点についてもいろいろな訴えがなされ、その訴えを伺つておりますと、ずいぶんお気の毒のようにも感ずる。それから、それと関係します点は、就職の問題であります。これもやはり厚生省なりあるいは職業安定所なり、あるいは自治庁政府の問題でございますけれども、やはりどうかあなたのほうを通じて、この根本はあなたのところにあるわけでから、その点についても御意見を伺い、また措置をお願いしたいと思うのですが、従来日本国民として就職しておられた方々が、やはり外国人登録の切かえに伴つて、それで日本人のでなかつたということが明らかになつて、失業される方が多いようです。これもいろいろ事情を伺つて見ますと、その雇主の方も、人格、識見、その他りつぱな人たちがいるけれども、今、日本の人も失業していることだし、相手朝鮮の人であるということが明らかになつたのでやめていただく。いわゆる謄本を取り寄せるとか、そういうものに関係しているようです。それから第二は、それに続きまして職業紹介につきましては、決して世話をしないというのではないけれども、やはり日本の人もなかなか当らないということだから、従つて朝鮮方々に当らない場合が多い。しかしこれがやはり歴史的な事情その他に関係して、今あと廻しにし、また特に朝鮮方々職業紹介は全くしないかの、ごとき印象を与えて、大学なり、あるいは高等の教育を受けて、技術上の技能を持つておられるりつぱな朝鮮方々就職が困難になつて、結局朝鮮方々が、自分の御希望になるような職業に就かれて活動されることがてきないのであります。そのためにやむを得ずあるいは酒の密造であるとか、そのほかにあまり御自分の好まれないような方向に入つて行く。入つて行くと今度それをとらえて、朝鮮方々がこういう好ましくないことをするのだというような印象を……新聞にもこれはよほど考えていただきたい点であるのでありますけれども、しかし事実上において、そういうことが末端に起つているその結果、残酷なことが起る。これはいろいろ昨日も警察庁長官にもその点を伺つたところが、警察庁長官もこの点を深く憂慮されて朝鮮方々を悪へ追い込むようなことをし、そこでまた近年するようなことがあつてはならんというようなことは、警察関係方々会議においても十分強調せられ、また政府に対しても、朝鮮方々に対して十分就職の点で、特に親切に世話をすることを要望しておられるという警察庁長官お答えもあつたのです。これらの問題につきまして法務省入国管理月関係方々のお考えはどういうふうにやつておいでになるつもりでありますか、伺いたい。
  12. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) まず生活保護の問題でございますが、これはいろいろ予算などの問題もございまして、果して前の通りであるかどうかということにつきましてはよく存じません。あるいは多少減つておるというような事実があるかもしれんと思いますが、少くとも現在のところ私の知つております限りでは、これを打ち切れというような説が現実の問題にはなつておるとは考えておりません。またわれわれのほうの気持としましてはぜひそういうことにはならせたくないとむしろ思つております。そのほか就職、いろいろな失業、あるいは職業紹介技能者の問題、これらの点につきましては、むしろ御質問の趣旨に同感の意を表したいのでございまして、われわれ一方におきまして、朝鮮方々にはいやなことをやらなきやならない立場におります関係で、いろいろ陳情なり抗議なりをお聞きしますごとに、やはりわれわれのほうといたしましても、お説のようにそういつた犯罪などに追い込まれないような方向に政治として持つて行つてもらいたいものだという気持は持つております。しかしこれも逃げるようでございますが、これらの問題は直接われわれのほうの主管事項でもございませんので、一応そういう気持では話してはおりますが、やはりその結果として犯罪を犯した方はやはり婦つていただかなければならんという事態は起つておりますけれども、しかし気持としてはわれわれはそう思つております。
  13. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 最後の問題は教育上の問題です。これも直接法務省なり入国管理局なりの主管ではないことはよく承知しておるのですが、しかし教育関係のほうの方々は、外国人の入国、あるいは外国人登録法の施行、あるいは日本におられる朝鮮方々取扱いについて法務省なり入国管理局なりで御苦心になつていることを十分御承知がないのじやないかと思うので伺うのでありますが、最近東京都で問題になつております朝鮮人方々の学校の廃止というような問題につきましても、当時たとえば読売新聞なども書いておりましたように、それによつて幾らの経費の節約とか何とかいうふうなことができるわけでもない、大した金がかかることでもない。それからまたいろいろ困る問題があるとはいつたところが、全国的な問題で、日本の国がそれで引つくり返えるほどの大問題ではない。それを少し問題があるからといつて、また少し金がかかるからといつて、やめることによつて日本朝鮮との外交上に及ぼす悪影響のほうが、はるかに大きいのじやないか。だから東京都などの場合にも、朝鮮人学校というものをやめるあるいはそれに向つてあまり圧迫を加えるというようなことをすべきじやないだろうということを読売新聞なども導いておられましたが、私もそれを読んで、もつともな意見であるというように考える。これはそれぞれ自治体なり他の行政責任者のなさることではありますけれども、しかし法務省あるいは入国管理局などあなた方のほうからこういう問題についてやはりあなた方のほうの御趣旨としては朝鮮方々に対する取扱いの原則またその方針が奈辺にあるかということの御説明も十分していただいていることと思うのですが、いかがでございましようか。
  14. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) この問題も、まあわれわれの気持といたしましてはお説のように朝鮮方々のいろいろ特殊な事情もあることなんでございますから、なるべく多少の費用くらいのことでは、むしろお説のように何とかやらしてやるという方向で行くのが至当じやないかと考えておりますが、ただ、こういつた問題は、やはりどつちが先ということも言えないのでございますが、先ほどもお話に出ましたような、いろいろな、あるいは原因は先にこつちが与えているのかもしれませんが、とにかく非常にかたよつた教育がなされて結局こつちが折角金を出しておるという効果があまりにも蹂躪されておるというような印象を受けられたためじやないかと思うのですが、ああいつたことになつておりますが、これはもちろん私どもとしては望ましい事態だとは決して考えておりませんで、できる限り攻育の費用なども援助されるような、また向うの方々日本側の意のあるところを了として教育をして下さるような事態ができることを切望しております。
  15. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 新聞なりに伝えられる文部省なり東京都なりのお考えには、全く朝鮮方々に対する法務省なり日本政府なりの取扱いの趣旨を了解しておられないのじやないかと思われる節がございます。たとえば、外国にはこういう外国方々のためにこつちの政府が金を出して学校を持つているというふうな例がないということを言われる。しかし外国にこういう例は本来ないのです。つまり日本のように、朝鮮の百万にも近い方々を強制的に日本に連れて来て、そして日本国民に強制的になつていただいて、そうして強制的に働いていただいたというようなことは、歴史上に例がないことなんです。アメリカ人がブラジルの人に向つてそういうことをしたこともないし、過去の史上の事実をけろりと忘れて、これは痛い目にあわした人はじき忘れるかもしれませんが、痛い目にあわされた方々は、なかなかお忘れになることができない、これは人情の当然です。そういうことをけろりと忘れて、あるいは日韓会談でも失敗せられ、あるいはフイリピンの場合でも、最高責任者が送還をせられるというようなことがひんぴんと起つていることは見るにたえない。かつまた、それが直接法務省入国管理局などにおいては、特にそれらの点についても憂慮しておられることと思いますので、直接の関係でないのでありますけれども、どうかこれらが及ぼすところの影響の大きい点もお考え下さつて関係のそれぞれの機関と御連絡を願いたい。そういうふうにしていただくようなお答えであつたように伺いますが、以上伺いましたことは、第一には国籍のいかんを問わず人権が尊重せられなければならない。いやしくもこれが不当に侵害されるということは許されない。第二には、日本朝鮮との過去の歴史的な問題の解決には、かなり長い年月を要するのであつて、それを簡単に忘却してしまうことによつてかえつて全く解決が困難になつてくる、無用の紛争が起る、無用の残酷が起る。第三には、それがひいては、外交上にも非常な悪影響を及ぼす、これらの点から直接御関係の範囲内において、また間接の面においても十分の努力をしていただきたいというように思います。
  16. 亀田得治

    ○亀田得治君 私からも一、二点付け加えてお尋ねいたしますが、朝鮮人問題は、起きて来る問題が非常に多種多様なんですね。先ほどのお答えにもあつたように、問題によつて所管がみんなばらばらになつているわけですね。しかし受取るほうの朝鮮人としては、これは切つても切り離せない関係のある問題なんですね。こういう状態の場合には、かもう少し問題の処理の仕方を変えるべきじやないか。生活の問題があれば厚生省に行け、取引の問題は通産省、学校の問題が起きたら教育のほうだ、だから非常に統一がとれないのですね。窓口が変れば当然人間の常として取扱いの態度も幾らか違う、こういう点は普通の外国人の場合と少し違うわけですから……。そうして人数もずいぶんだくさんおられるわけだし、簡単に短時日の間にこの問題が解決つく、そういうことは考えられないと思いますので、この機構といいますか取扱い方針が、このままでは私どうも無理なように思うのですが、こういう点もこれも少しあなたにお聞きするのは的外れかもしれませんが、しかしどなたにお聞きしても、その人としては一部分しか扱つていないのですから、結局あなたにお聞きするほうが比較的妥当なんじやないかと思うので、そういう点はどういうふうにお考でしよう。
  17. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 私もその点は御同感でございます。やはりこれだけ一般韓国人と申しましても非常に数が多うございますし、特殊の事情に基いておるのでございますから、何かまとまつた全般的にやる機構を考えるべきではないか、私自身は考えております。また、そういう方向の話が、私の知つております限りではよりよりに出ておりますので、将来そういう方向に動いて行くのではないかと期待いたしてお ります。
  18. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう方向考えていただくと非常によろしいと思うのですが、もう少し具体的にこういうやり方がよかろうという考えがありましたら御参考までに御披露願いたいと思います。
  19. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) まだ私そこまでの準備はいたしておりませんのですが、ごく私見でございますが、取りあえずはこの委員会のような組織でもつてスタートして行くということではないかと思つておりますが、ただ、十分に効果を発揮いたしますためには、予算的な措置などがございませんと、私のはなはだ狭い経験でございますが、こういう問題が軌道にのつて行かないおそれもございますので、将来はやはり委員会に事務局のようなものができまして相当予算的な裏づけを持つた形で、やはり行くことが将来としては望ましいんではないか。しかしこれはまだ十分に研究いたした意見でもございませんので、私限りの気持でございますが、そういうふうに考えております。
  20. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう点を十分一つ御検討願いたいと思う。  それから人権擁護局長にお尋ねしますが、たとえば外国人登録に関する警察官の暴行事件とか、こういつたような問題、これは当然局長としても関心を持つておられると思うのですが、あなたの立場から御感想等を少し聞きたいと思いますが、どうでしよう。
  21. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 登録証に関係しまして……いろいろ暴行があつたことを実は申告をまだみておりませんので、実際には調査いたしておりません。ただ人権擁護局といたしましては、今日の憲法十四条にも、人種、性別、その他社会的地位とあつて、法的に差別されないという規定がございます。これは御承知のように、「国民は、」ということになつておりますが、日本国民に対して法のもとに平等であるという規定であります。しかしその精神を世界人権宣言の趣旨等からいたしましても、やはり韓国人に対しても人権を尊重していかなければならんということは当然でありまして、もし今後こういう問題が具体的にございます場合は、韓国人に対しましても十分なる注意を払つて善処して行きたいと考えております。
  22. 亀田得治

    ○亀田得治君 憲法は日本国民はとなつておりますが、せんだつてまで日本国民だつたわけなんですね。そういう考え方で、この朝鮮人問題については国としては考えておるのだというやはり基本的な考えからいつても、今局長がお述べになつたような考え方でやはりそういう具体的な問題については日本人と同じように人権侵害がないようにいろいろ注意をしてもらいたい。
  23. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 この問題は日本の国内問題としても、朝鮮人の問題というものは相当重大な問題である上に、ただいまの日韓の国交がああいうふうに行きづまつておるという点から考えても、朝鮮人問題というものに対する日本政府取扱い方というものは、よほど慎重にしなければならんと思いますが、ところが現在の在留の朝鮮人というものに対して非常に私ども不合理であると思うし、また気の毒であると思う点も多々あるのでありますが、一つの例を言うと、私の知つておるある朝鮮人などは、日本に二十数年来在留しておつて相当な生活をしておる。それが男の子があつて私が懇意であるので高等学校に入るときに保証人になつてやつた。これが野球の選手で、東京のある私立大学の野球選手になつた、それで成績もよかつたので来年の四月に卒業するというので、就職の問題で、就職口が二つ三つあつたわけです。ところがいよいよ採用というときたなつて戸籍謄本を調べてみたら、朝鮮人であるというので会社のはうでもちよつと採用を躊躇していて今困つておる。そういう一つの実例もあるわけなんです。日本人になつてつたのが一ぺんにそれを取消されてしまつて、そのために子供の就職もできない。これは一つの例でありますけれども、そういうふうに朝鮮人に対する日本政府取扱いというものに対してはいろいろ不合理な点や気の毒な点があるので、これらの朝鮮の人からいいましても不満や不足がたくさんあるわけです。それがひいては国交にも重大な影響を及ぼしておる。あるいは国内の朝鮮人としても勢い生活の脅威を受けて犯罪のようなこともしなくちやならないということになつて来るので、これは一つこの委員会で、いろいろそういうようなたくさんのケースがあると思いますので、朝鮮人の人たちをこの委員会に呼んで、そうしてそのいろいろな困つておるというようなこと等を一つ問い質してみて、そうしてその上でもつて何かただいまの日本政府のやり方をもう少し改めて行くとか、あるいはそういうものを総合した朝鮮人に対する取扱いの機関という総合的なものを作つて、そうしてそれに朝鮮人に対する更生の問題とか、出入国の問題とかあるいは教育の問題とかいろいろ問題もありましようが、そういうものを一括してやらせるということも考えられるわけでありますから、一つこの委員会に朝鮮の人たちを呼んでその事情を問い質してみる必要があると思いますから、そういう動議を提出いたします。
  24. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの動議に賛成いたします。実は日本で一般に忘れられており、十分考えられていないことでありますが、もし賠償の問題が中国なり朝鮮なりと起つて来る場合のことを考えると、これはずいぶん大問題です。中国に対して日本が賠償するということになれば、恐らく三十年かかろうと、五十年かかつて日本国民の生産の結果をそれにすべて注ぎ込んでも、容易に満足するような結果には到達しないという結果にもなることだと思います。それから大韓民国あるいは朝鮮人民共和国側から、現在日本で、元日本国民として、引張つて行かれた朝鮮の人たちはひどい取扱いを受けておるということを、あちらの政府が、あちらの方々が聞かれて、その事実を確かめるということもなかなか困難でありますから、それに対してどういう感情を抱かれるかということは想像にあまりがありますから、これは直接には、ただいまの法務省当局が御自身の責任において、また関係政府機関との連絡において十分やつていただくということを先ほどからお願いしておるのでありますが、もう少し問題の直相を明らかにする、そして、その妥当な解決を得られるために、ただいま棚橋委員のお出し下さいましたような動議が成立することを希望いたします。
  25. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでお諮りしたいと思いますが、今棚橋さんが、動議というあれじやないのでしようけれども、ただお話の趣旨を承わつてみますと、果してこれが法務委員会として取り上げる問題か、あるいは外務委員会として取り上げる問題か、それらの問題の取り上げ方によつて違うと思うのです。従つて、これは理事会において、この問題の取上げ方を十分検討して、そして妥当な線を出して、なるべく御要望に沿うように考えてみたいと思いますが、いかがでしようか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  26. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 最近の密入国の状態についてお伺いしたいと思うのです。これは各国別、あるいは各国人別、それから去年と比べての増減、それから密入国者の検挙状況、それの送還の問題というような点について、一括して御説明を願いたいと思います。
  27. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) はなはだ申しわけないのでありますが、本日そういう問題がここに出るということを考えておりませんでしたものですから、ちよつと今手許に資料の持ち合せがないのでございますが、必要があれば後刻さつそくお送りするとか、なんなりしたいと思います。
  28. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それではこまかい資料に基かないでもいいのですが、最近の傾向ですね、それを概略説明願いたい。
  29. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 密入国といたしまいしては、最近大体においては減少しつつあるのじやないかと思つております。ことに、私実はごく最近参りましたものですが、聞きますところによりますと、従前には香港方面からもかなり中国人の密入国があつたようでございますが、最近そういう方面の密入国というものはほとんどなくなつているのじやないかと考えております。それからあと朝鮮のほうでございますが、これもやはり朝鮮動乱の終結とか、またこれは想像でございますが、向うのほうの食糧事情等もだいぶんよくなつたとか、いろいろな事情もあるようでございますし、従来また、密入国の非常に多くのケースが、たとえば両親がこつちにいるのが子供が来るとか、あるいは御主人だけがいるのが奥さんが来るとかいうようないろいろな理由であつたように思うのでありますが、これも正確なことは申し上げかねます。大体そういう来たい人は一通り来たとは言い切れませんが、ともかく相当来たんではなかろうか。いろいろな理由で、最近は密入国、集団のことに密入国というようなものは減つておるように考えております。しかし何分にも密入国の問題でございますので、われわれがつまりわからないで入つて来るわけでありますので、挙つた数が少なくなつておるということが、即密入国全体が減つておるということには今言い切れないわけでございまして、非常に密入国の仕方が巧みになつた、こういう見方もあり得ないわけではございません。しかしわれわれの印象といたしましては大体減つて来ているのではないかと考えております。
  30. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 朝鮮の方で帰られる方は相当多いのでございますか。全体としてのつまり在留朝鮮人の数は増加の方向に向つているのか、減る方向に向つているのか、いずれでしようか。
  31. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) われわれの知る限りでは、帰る方というのは非常に少いようでございます。そこでただいま申し上げましたように、密入国があるだけはやはりふえているというふうに見なければいかんと思いますが、正式な査証を持つて入る方の数もむろんございますが、これは大した数ではございません。しかし全般的に申しまして特にふえているというふうに言うほどの数でもないのではないかと考えます。もつともちよつと言い忘れましたが出生の率が相当高いのでございます。これはもちろんそれだけは当然ふえております。
  32. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうしますというと、今のところ密入国も、それから正式の入国も少い、でまあこちらにおける出生の数だけふえている、こういうことですね。
  33. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) もちろん私が申し上げましたのは密入国にせよ、正式な入国にせよ、多少あるわけでございますから、もちろんその限度においてはふえておるわけでございます。
  34. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ふえる主な原因は出生、こういうことでございますね。
  35. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) はあ……。
  36. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それで特にこちらで生れた人の取扱いでございますが、これはアメリカなんかですと生れるとそのまま市民権も持てるわけでございますけれども、まあ日本じやそういうあれはない。そこで外国人として登録されて来るわけですが、これらの人々に対して何か特別な措置を、つまり日本で出生される人に対して何か特別な措置はあるのですか。
  37. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 現在のところ全く各外国人と同じように取り扱つております。
  38. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから国内でいろいろな犯罪で検挙される者が相当ある、日本でもつて刑を受けて服役しておる者も相当ある、また送還されるような向きもあるわけでございますが、現在のところその送還者は年にどのくらいになつておりますか。
  39. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) ただいま御承知のように日韓問の問題が非常に行詰り状態にございまして本年の四月ごろまでは不法入国の人々は韓国側政府も受け取つておりましたので円満に回転しておりましたのですが、それが今年の七月以来それがとまつておりますものでございますから、それ以後は送還というものはなくなつているわけでございます。現実不可能になつております。そこで今大村が主でございますが、しかもそのうちの八割くらいまでは朝鮮の方だと思いますが、大体千二百人くらいが今大村に入つておりますが、そのうちの八割でございますから、約千人近い数が朝鮮の方だと思います。そしてそのうちで密入国とそうでない、いわゆる犯罪をたびたび犯したとか、非常に長期の凶志な犯罪という理由で送還されんとしておる方との割合は、大体六対四くらいではないかと思いますが、不法入国の方のほうが、ですから六百近く、四百近くの方がそれ以外の理由で還されるということで収容されているのじやないかと思つておりますが、それで今の御質問お答えになつておりますでしようか……。
  40. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 大体わかります。私も去年大村収容所を見て来ましたが、あすこは収容能力はどのくらいあるのですか。新しいのと古いのと合せて……。
  41. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 大体千五百ということになつておりますのですが、しかしそれだけ一ぱいにやるということは諸般の理由でなかなか困難だと私どもは考えております。人手の面、ただ人がそこにおれるというだけならば、千五百ぐらいはあるわけですけれども、それに伴いますいろいろな施設など考えますと、なかなかもうだんだん最大限に近づいて来ているのじやないかと考えております。
  42. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると政府のほうですね、当然まあ密入国その他で検挙した者あるいは先ほど言われた犯罪者等で還すべき者、これがたまつて来るわけです。ところが収容能力が一方においてもう限度まで来ている。そうすると今後出る、発生する部分はどう処理されて行くのですか。
  43. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 第一には、われわれといたしましては、日韓間の少くともそういつた送還などに関連しました部分でも軌道に乗つて、それが回転して行くことの一日も早いことを希望し、切望しておるわけでございますが、しかしそれは相手のあることでございますので、できない場合のこともむろん考慮いたしておりまして、近々もう一つ別のそういつた施設を開かなければならないのじやないかと考えております。
  44. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 関連して……。どうも今の御説明を伺つていると、はなはだ心配にたえないのですが、今のような非常な困つたお立場になられないためにも、どうか一つ日本朝鮮との外交関係が、円満な解決に到達することの……、理由にはいろいろな理由がありますけれども、しかしそのうちの一つとして、一つには現在日本生活しておられる朝鮮方々に対する日本政府取扱いが妥当を欠いていると、あるいは残酷に及んでいるというようなことも、これはやはり重要な原因の一つとなつておりますから、そういう意味でも、その収容所をまた建てなければならんようなことにお考えになる前に、一つそれは外交関係法務省所管ではないというだけでなく、外務省もそういう点については認識が、はなはだわれわれの見ているところでは不十分でありますから、直接そういう御苦心をなさつているほうからも十分御説明をいただきたいと思うのです。で今御説明になりましたように、あそこの収容所は、私も行つたときに、所長に、これは一体ホテルか、それとも監獄か、刑務所かいずれかと言つた。ところがホテルでもなければ監獄でもない、船待ちをしていただいている所でございますという御名答があつたのです。全く船を待つている間いていただくという程度の趣旨でしよう。ところがそれが二年にも三年にもなつて来るということになると、これは趣旨と全く違つた形においてあそこにいていただくということになる。そこで岡田委員も今おつしやつていましたが、われわれもあそこへ行つて拝見しますと、全くどう見てもこういうところへ入つていていただくという方ではない方が大部分ですね。しかもお帰りになりたいという方で受け取られないという、今お話のように四月までは受け取られたけれども、七月からは受け取られないということの理由は、どういう理由であろうかということは、こちら側で相手方のあることだからというのは、岡崎さんの、また吉田さんもよくそういうことをおつしやいますけれども、相手はどうでもいい、こつちで十分反省すべき点は反省し、また改むべき点は改めているかということが私は大問題だと思う。それで先ほど李浩然さんがあちらへお帰りになるという当時も、政府でもいろいろ苦心されてわれわれも非常にそれについて微力ながら努力をしたのでありますが、どうも解決の結果が、はなはだ人情に背いたようなことになつてまつた。李浩然さんが二千人ですか、多くの方の手紙を、それぞれ愛する夫なり、妻なり、家族なりそういう方々に向つての手紙を持つてそれで行かれて、場合によつてはそれによつて日本朝鮮との外交上の関係にも、よい影響が十分に期待せられるような機会が、むしろ逆になつてまつた。それによつて日本では、朝鮮の人に対して残酷な取扱いをしているという印象を与えてしまつたということも実に残念に思うのでございます。今の現に日本で出生される人に対して、外国人と全く、少しも違わない取扱いをしているんだというお答えでは、さつきの最高方針が現実の面において一向どうも生かされていないと思うのですが、一般に日本におられる朝鮮の方に対する人情を踏みにじつたような残酷の取扱いをしないように全力を挙げて努力され、関係機関等、連絡されるという御意思がおありになるかどうか、それをもう一遍伺つておきたいと思うんです。  それから渡航の自由というふうな点につきましても、いろいろ問題がありましようけれども、しかしさつきからいろいろ申し上げておるような、歴史上の理由があり、また外交上の影響ということもあり、この渡航の自由について外交関係で正式に開かれていない、いないんだからだめだというふうなお考えでなく、そこに何か便宜の方法を発見せられて、渡航の自由というものを尊重せられるように努力をなさるおつもりがないか、この二点、いま一応伺つておきたい思うのです。
  45. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) われわれといたしましてはもちろんのことでございますが、これはわれわれのほうの各関係下部機関には絶えず申しておることでございますが、いわゆる密入国の方々の場合でももちろんでございますし、そのほかいろいろ犯罪をしばしば犯された方のような場合でも、一応刑は終つた方なんでございますし、われわれとしてはもう当然あらゆる可能な限りにおいて人道的た措置をもつて臨むように、絶えず訓令と申しますか、指令しておりますので、まあ今の御趣旨のように、できるだけ努力いたすつもりでございます。ただ私、相手があると申しました意味は、ただいまの韓国政府の態度を批評いたしたくはございませんが、受け取られないということをもつて、因らせるというような考えもあるのではないかというようなあれも見えますので、それでどうも困つた結果、不法入国の人たちは皆釈放して自由にしてしまうというところまでは、とても度胸がまだないのでございまして、でき得る限りは不法入国の人は還すという方向へ行きたいと、努力しておるわけでございます。しかしそのただいまお話のように、非常に長期になりますことから参りますいろいろな問題がございますので、先ほど申し上げましたような趣旨と矛盾しないようにということで、いろいろ苦慮しておるわけでございます。いわゆる非人道的なことにならないように、今後とも努力いたしたいと思つております。  それから第二の点は渡航の自由の問題でございますが、これはわれわれといたしまして、ただいまお帰りになる方がある場合については、その航路が、具体的な方法が発見されますれば考慮いたしたいという考えでございます。しかしその御趣旨がどういうことか存じませんが、新たな入国を生ずるような場合でございますと、これはやはり正式な法律の手続に従つた方法でないとお受けできないと思つております。
  46. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その今のお答えの一部分ですが、韓国政府日本国政府を困らしてやろうという意図があるんじやなかろうかというのは、お取消をどうかお願いしたいと思うんです。で、私は一言で申せば中国に対して、あるいは朝鮮に対して、私としては百年頭を垂れて罪を謝するということより以外に考えていません。従つてこちら側にどういう言うべき理由があるにしても、そんなことは先の問題であつて、まずわれわれとしては百年頭を垂れて、われわれの犯したあるいはわれわれの微力のために犯されるに至つたような、そういう韓国に対して罪を謝するという以外に途がない。その点についての認識が不十分であるために無用な紛争が起つておることが多いということは、先ほど冒頭にも申し上げ、また大村収容所長が聞かれた意見にもそれを証明していると思うのでありますから、どうかその点はお考え直しを願いたいと思います。  それから渡航の自由につきましてもその法的な、法に基く手続が完備すればもちろん問題はないことなんですが、しかしこれも繰り返して申し上げておりますように、外交関係が正式に再開されていないということによつて法的な手続きが完備するということは不可能です。それをその通りおつしやつて実際上やつておいでになれば、渡航の自由は尊重されないことになつてしまいます。で実際のそういう過去の歴史上の事情また今日外交関係が間もなく開かれるであろうという状況を十分考慮せられまして、大へん御苦労のことでありますが、個々の場合についてお調べになれば、これがどういう場合であるか、たとえば向うからこつちへ来られる場合でも、長く夫婦として生活をしておられた妻の方が何かの事情で今向うにおるけれども、それが夫のところに一刻も早く来たい、それについての手続きが遺憾ながら完備しないというような場合には、何らかの便法を発見せられたい。また、李徳全さんが向うにお帰りになりますという場合でも、それに十分の同情をせらるべき理由があるということが判断せられたならば、それは手続の上の多少の不備というものがあつても、その渡航の自由が尊重せられるというような御努力を願いたい。これはそんなに多くの場合があるわけじやありませんから、個々の場合について少しお考え下されば、人情にもとらんような何らかの便宜の方法がおとりになれるんじやないかと思うのですが、どうでしようか。それであまり詳しい問題に実は入る意思はなかつたのですが、根本方針が実際上においてどういうふうに実行されるかという点で心配になつて……。なお、日本犯罪を犯して、そうして刑務所などに入られました方が出て来られた場合に、一律に機械的にこれを収容所に収容されておるような事実もあるようです。そういうような印象を与えておる。これは収容所に入つていただいた意味は、つまりきわめて悪質であつて日本に居住していただことが好ましくないという十分な理由がある場合に限るわけなんでしよが、刑を終つて出て来られた方が、その後やはり悪いことを重ねておやりになつて日本に住んでいただくことが好ましくないというふうに簡単に断定するということは、さつきから、前段から繰り返して申し上げておるような理由と関係して、決して人情にかなつ措置とは言えないと思うのですが、それらの点について一括してお答えをもう一遍頂きたいと思います。
  47. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 日本の過去において行いましたことをどう考えるべきであるかについては、これはいろいろ御意見もあり得ると思うのでございますが、しかし結論といたしましてただいまの日韓間の問題につきまして向うの言うことをそのまま呑むという考えは、われわれとしては反対でございます。それでそれを呑まない以上は和解ができない……。これは主としてむろん外交上の問題で、また外務省にお願いいたすほかないのでございますが、たとえば大村に現在入つておる者を全部釈放しろ、そうすれば初めて問題を考え直そうというような、これもはつきり存じませんが、ひよつとしたら、そういうようなこともあるように思うのでございますが、われわれといたしましてはそういう譲歩はいたしたくないと考えております。それからこの渡航の自由の問題でございますが、これは渡航の自由ということはむろん尊重されるべきであると思いますが、しかし国際慣例上のルールというものは、おのずからあるわけでございまして、それに従つてわれわれとしては行動をして行くつもりでございますし、それ以外の恥殊な考慮を、まあこれけ具体問題になりませんとわかりませんが、その目的とかあるいはそのときの事情等によつてあるいは考えなけれげなりませんが、大体原則といたしましてはわれわれはそのルールに従つて行動したいと考えておるわけでございます。それから刑を受けて出て来られた方、それもわれわれといたしましてはこの法律に一応かかるという方は非常に多いのでございますけれども、その中の現在やはり退去と申しますか、帰つていただこうというようなかたは、その中の率から申しますと、非常に少数のパーセントでございます。まあ今のやむを得ない事情もございますが、ほかの外国などの例から比べれば非常に寛大にやつておるつもりでございます。
  48. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それから送還の問題なんですが、四月以降とまつておるので、直後現在は問題はないと思うのですが、朝鮮人々の間には南鮮系と北鮮系があるわけです。で送還者は全部南鮮系であるとは言えない、北鮮系の人の措置についてですね、これを南鮮つまり李承晩政府のはうに引き渡すというような問題は、これは本人も希望しないし、またいろいろなむずかしい問題が起るものと思いますが、こういう問題はどういうふうに処置されるおつもりですか。つまり北鮮系の人の送還の問題等についてはどうお考えになつておりますか。
  49. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) その問題はわれわれも今後起り得る問題だと思つておりますが、現在までのところでは、その問題はまだ起つていないように承知しております。しかしこれは今現在収容中の方に、北鮮でなければいやだという方があるという事実は聞いております。
  50. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 御承知のように、まあたとえば密入国の問題にいたしましても南鮮から来られる方ばかりではない、北鮮の人もある、それから刑を受けた人で還さなければならない人も、南鮮ばかりではない、北鮮系の人もある。いわゆる特に日本においてまあ北鮮側を支持しておる人のパーセンテージのほうがずつと多いわけです。ただ将来において北鮮系の諸君を還すという問題が起つた場合の措置ということも十分に考えておかないと、これは十把一からげに南鮮のほうばかり渡したために、向うで政治上の問題でたとえば北鮮系の者であるから受け取らないという問題も起るかもしれない、あるはいは北鮮系の人を受け取つておいて向うでもつて、今度まあ李承晩政府のことですから何をやられるかわからないというような問題も起るかもしれない。これは重大な問題になるかと思うのですが、その北鮮系の諸君の送還の措置というようなことはどういう方針でやるようにお考えになつておりますか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  51. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 私も本人の意思に反しまして、その意に反した場所へ送還するということは適当でないと考えております。ただ今後の交通路の問題等いろいろ具体的な問題がございますので、十分将来研究して行かなけばならない問題だと考えております。
  52. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ国交が回復していないことは、南鮮北鮮も同じであります。中国でも同じでありますけれども、たとえば中国につきましてはその問題でこれは帰郷、帰国者の問題ですが、話合いがついてまあ船を出したとのいうようなこともありますが、こういうような問題について国交が回復しなくても、何か話合いのできる途があるのではないか。特に南鮮の李承晩政府のようなこれをまあ外交のかけ引の一つの手段に使うという問題を別にすれば、何らかの方法があるんじやないかと思うのですが、それらについてまだ具体的にはどうするかということについて何にもお考えないんですか。
  53. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 中国につきましては幸いもう現実の便もございますし、間接に向う側で受け取ることが確実であるような人につきましては、実際上還れる途を開く考えでおります。現にもう非常に近い将来に、実行に移されると考えております。ただ問題は、この北鮮のほうになりますと、現在まだ交通というものがないわけなんでございますから、やはりどこかを経由するということになりますので、その経由地の受入という問題がまだ解決いたしておりません。しかし将来それが解決いたしまして、大体円満に動いて行くという見通しがつきましたときには考慮いたしたいと考えております。
  54. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 さつきのお答えの中に、日本朝鮮との関係歴史的にどう考えるかということについていろいろな意見があり得るということだつたんですが、それはサンフランシスコで結ばれた平和条約の中にもそれを、あるいは日本国政府がどう考えるかということは現われていることです。そうしてまた国際的な輿論というものもある。で、ただお答えの趣旨はそういう最高の原則についてでなくて、実際上の個々の問題についてという御意見だろうと思うのです。従つてたとえば収容所におられた方々をすべて即時釈放しなければ交渉に応じないという例を挙げられたと思うのですが、私の申し上げたのは、その実際上の個々方針について先方のおつしやることをそのままウ呑みにするべきだということを申し上げているのではないのです。そうじやなくて、もつと根本において他国を日本植民地として支配していたということについての歴史上の事情というものの反省が常に第一に念頭にあるということを申し上げて、それについては最初お答えがあつたので、そのお答えとただいまのお答えとは矛盾するものではないというように伺つておきますが、あなたは外務省のほうからおいで下さり、そして次長は法務省のほうからお出になつておられ、現にこの入国管理局のそういう人事の構成の上から見ましても、問題がなかなか複雑しているということはその点にも現われているのですが、要は、要するに歴史上の事情に基き、かつまた現在外交関係が円満に開かれていないという場合にとらるべく政府の態度として、いやしくも人情をふみにじる、残酷にわたるというようなことを行なつて、それによつて外交上の円満な解決に害がある、悪影響を及ぼされるようなことは全くないということを希望するのですが、先ほど棚橋委員からも御発言、また委員長のお考え、またこの委員会、理事会などのお考えによつて今後おそりらくやはり直接には入国管理、外人登録というふうな問題を中心にして扱われるので、本委員会などが主になつてしなければならないのじやないかと思うのですが、実際の実情の調査、それらに基いて国会でも十分にお考え下さることだと思うのですが、政府のほうでも、どうか今申し上げたように、根本方針一つ明朗な透徹したものの上で努力を願いたいと思うのです。
  55. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは管理局長に私から一、二点お伺いしたいのですが……。
  56. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちよつと僕その前に、もう一つ……。先ほどまあ犯罪者の送還の問題ですけれども、希望者の送還ですね。これは先ほどまあ将来何らかの方法があればというようなお話ですが、北鮮とは御承知のように国交を回復していないし、何らの直接の接触もないわけです。何か赤十字の接触によつて道を開く、そうして日本の国内において北鮮へ帰りたい人を、何かそれを通じて、この前中国へ帰りたい人を送還したような方法で希望者を還すというような途をおやりになる考えはないのか。これはまあ南鮮のほうへ帰りたい希望者の問題は、これは向うのミツシヨンがこつちにとにかく来ておるわけですから、このほうの問題はそつちの外交関係の打開でできるのですが、北鮮のほうについてそういう方法をこちらから講じて、そうしてこちらの希望者を向うに還すという方法はないのでしようか、これはどうでしようか。
  57. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) そうなんであります。われわれもそういうことは、途ができればそれに協力したいと思つておるのでございますが、ただ問題は、現状では私の聞いておりますところでは、中国のほうでもまだ北鮮の人をそう受入れることについて十分な了解があるかどうかわからないのでございますが、それから第二の問題は、これは実はまたまさに韓国との外交関係の問題になりまして、これは外務省のほうが詳しく知つておるのでございましようが、私どもの仄聞いたすところによりますと、北鮮のほうへ人を還すというには非常に敏感であるように聞いております。ですからその間の調整という問題が残されるのではないかと考えております。
  58. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 赤十字の問題は別ですが、これは中国のほうに受入れてもらう問題ではなくて、たとえば赤十字同士で、つまり中国の赤十字を仲介にして日本の赤十字とそれから北鮮の赤十字と何か接触を持つて途を講ずる。そうして最後にどこを中継するかということは、これはたとえば大連港を使うとかなんとかという方法は、さらにその後に講ぜらるべき問題じやないかと思うのですが、とにかく北鮮のほうと赤十字を通じて何か接触を保つ途を開く、この問題について……。接触を保つ、接触を開く途を講じないかどうかということをお聞きしたわけです。
  59. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) いや、そういうことも一つの方法であろうと存じますが、今のお尋ねの趣旨はあれでございますか、政府としてそういうことをやれという意味でございますか、帰る途を開くために……。
  60. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これはただ放つといたつて帰れませんから、政府がそういうつもりがあれば、赤十字と話合つてつまり日本の赤十字と話合つて向うの赤十字と話合うようにやるつもりはないかどうかということです。
  61. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) われわれは、つまり具体的に帰国の希望というものを申出を待つて動くべきだと考えておりますので、うかつにこういう途をことさら開くというようなことを先きにやりますことは、おそらくわれわれはむりやりにでも送還する、還してしまうのだという意図で動いているような誤解を受けるおそれがあるのではないかと考えますが、われわれも現在までのところ、北鮮への帰る希望者があるというような話は聞いておりますが、具体的に北鮮にどうしても帰りたい、こういう申出はあまり聞いておらないのでございます。
  62. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは現在全然途がないのでそうなんであつて今の日本における状況からいつて、おそらく帰りたい人があることは察知できるわけです。もし政府のほうでそういう途を講ずるということになれば、私は希望者は出て来ると思うのですが、そこはまあ相関関係の問題ですが、何かそういう方法を講じて行く必要があるのじやないでしようか。
  63. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 私は今繰り返して申し上げるようでございますが、第二に、先ほど第二の問題として申し上げました韓国政府との外交上の問題、これは外務省のほうの問題でございますが、これが相当一つの問題じやないかと考えますので、まあ政府で閣議でもそうするということがきまれば、もちろんわれわれはその方針でいたしますが、うかつにわれわれの法務省入国管理局限りでそういうことを赤十字と交渉して、一応進んで途を開いて行くということが、現段階において妥当かどうか、私としてちよつとお答えいたしかねます。
  64. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは私からちよつと管理局長にお聞きしたいのですが、先ほど来から、いわゆる不法入国の韓国人の問題ですが、現在のところで還せない、日韓関係の交渉の関係から還せない。こういう状態でそのまま大村収容所に置くと、こういうのですが、不法入国せられた中には、こちらに親があるとか、あるいは子供がおるとか、何かそこにやむにやまれない事情があり、また人道的に見ても、何かそこいらの事情から、むしろ手段、方法は悪かつたけれども、まあそういう事情、入国せざるを得なかつた事情等から勘案して、その手段、方法については、それはまた別個の問題として、一応入国させるということはあり得ないのですか。その点いかがですか。
  65. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 不法入国の場合は、これはわれわれ出入国管理令という法律でまあ動いているわけでございまして、その原則に、有効な旅券を持つて来ない者は入国させないということに規定されております関係上、原則といたしましては、不法入国の人はやはり帰つてもらうという建前でおります。しかしながら現実にいかなる場合においても、不法入国者は全部還しておるかということになりますと、ただいま委員長の御質問がございましたように、非常に人道的な考慮から、やはりこちらの在留を認めてやらなければならないと考える場合もございますので、そういう場合には在留を認めております。
  66. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それで事例はどうなんですか、それは非常にまれなんですか、あるいはそういう実情から見て、相当寛大と申しますか、やむを得ない事情を一応斟酌した例は相当あるのですか。そこはどうですか。
  67. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) これは不法入国の形態というものは、実はかなり複雑でございますので、たとえて申しますならば、集団で密航して来まして、現場でそのままつまつたというような場合でございますと、これは大体そういう場合には、まあその本人たちがずつと異議を申し立てて来るのを放棄してしまう場合が多いのでございましてそういうのは現地限りできまつてしまいますので、われわれのほうの問題にならない。われわれと申しますのは、中央のほうの問題にならないでまあ解決されてしまうものがかなりございます。それから中にはこつちに入つて来て、すでに家族生活を相当長期にわたつて営んでおるというような現実がありますために、たとえば女の方ですと、こつちに来て長くいる間に子供が生まれてしまつたというような、いろいろな事情がございまして、これを今さら引き離すのは、非常に気の毒だというような考慮から認めるというような場合もございますのですが、ちよつと今数字的にお答えいたす資料を持つていないのでございますが、今申し上げましたように、現場できまつてしまうケースが相当ございますものですから、中央の問題になりますもので申しますと、案外高い。パーセンテージで認めているのじやないかと思います。それはやはりどうしてもいたいということで、中央に異議を申し立てて来るわけですから、そういう場合ですと、やはり認めるパーセンテージは多くなると思います。
  68. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これは羽仁委員からもお話があつた日本朝鮮との事実的な慣例から見まして、単に手段が不法であつたということだけでなく、相当事実的な日韓関係の特別な事情から見て、私はやはりそれらの事情について十分しんしゃくすべきだと思います。それから第二の点は、従つて仮に不法入国で還さなければならん、こういうようなあれでも、それらの事情で、国内にそれの親があり、あるいは十分それの身分なりあるいは生活なりを保証することができるような方法の場合には、ちようど一種の保釈制度といいますか、そういうような何か、還せるときにはいつでも還し得る、こういう状態のもとに出所させることができるような場合には、何かそこで便法を設けておく必要があるのじやないか。先ほど来からお話を聞きましても、大村というところはほんの船町であり、かつまたいろいろなああいう雑居生活というものは、相当の被害者があるのですが、そういう途はないのですか。あるいはそういう遂について何かお考えはないかどうか、その点を伺いたい。
  69. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 確かにあそこが本来船町的な場所であるにもかかわりませず、現状においてはああなつております関係上、そういうことを実際上考慮いたしております。それで具体的な例を申し上げますと、たとえば学校の関係などを考慮いたしまして認めておる場合もございます。そういう諸般の関係でそういうことを今後ももう少しふやして行こうかという考えを持つております。
  70. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それではいかがですか、大体外国人出入国管理状況に関する件はこの程度で……。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それではそういうことにいたします。   —————————————
  72. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは時間が少しまわりましたけれども、訟務局長もせつかくお見えになつておりますので、訟務局関係のことを議題にして、もう少し議事を進めたいと思いますが、御了承願えますか。……それでは次に訟務局の争訟事務、訟務に関する件を議題といたします。亀田君。
  73. 亀田得治

    ○亀田得治君 訟務局長が国会のほうに来られるのは何か初めてのように私ども聞いておりますが、ただ新らしい憲法になつてから国民と国との間の争訟、こういうものが非常にふえておると私ども思うのです。そういう角度から私ども本日聞きたいことは、まだ聞きたい問題の中心はほかにあるわけですが、一応そういう面から訟務局のお仕事の概略ですね、お話し願いたいと思います。
  74. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) 私のほうで扱います事件は、まず通常民事といたしましては、国家賠償法によりまして国が被告になる民事訴訟、それからそのほか、他の行政庁がいろいろな関係で持つておる債権、あるいは大蔵省が持つておる国有財産の管理について、国が原告になつて訴訟を起さなければならん場合、これが通常民事訴訟として現われて来る事件であります。そのほかに多くの行政訴訟、行政庁が直接被告となつております行政訴訟事件がほかにございます。それから先ほど申し上げました一般民事訴訟に関連しまして、場合によりましては保全処分をこちらから申請しなければならんような、専門家の間で保全訴訟といわれておる種類の訴訟がございます。また債権の取立てなどに関連いたしましては、任意に履行を求め得ない場合には、確定の債務名義に基きまして、強制執行の方法による取立てを講じなければならん場合がございます。さようなものをあわせますと、現在係属しております事件は種々雑多なものをあわせまして実は数千件に上つておるのでありますが、私どものほうの人的機構といたしましては、中央の訟務局に弁護士と同一の資格を持つておる、形式は、官名は検事でありますが、それが十八名、それから法務局に、これは高等裁判所所在地にございますのですが、法務局に局長を除きまして訟務を専門に扱つております訟務部長が八名、それからそのほか事件の数量の関係、ボリウムの関係から、大阪と福岡には訟務部長のほかに訟務を専門に扱つております同じ資格の検が訟務局付といたしまして他に一名、これだけの人員構成しかございませんので、大体において一般民事事件、あるいはそれに関連する保全訴訟、強制執行事件は私のほうで直接処理いたしておるのでありますが、私のほうと申しますのは、訟務局なり地方法務局なり加えてでありますが、一般行政訴訟につきましては、御承知のように税務関係の訴訟のごときは全国各地に非常に多攻発生しておりますので、これだけの人的構成をもつていたしましては、とうてい直接これを処理するという能力がございませんので、行政庁から報告を受けるたびに、一応の書面の上の処理はいたしておりますけれども、個々の事件について具体的に行政庁から相談に来られぬ限りは、進んでは私のほうから適切なる措置を講ずるということができないような状態になつておるので、きわめて大ざつぱにアウト・ラインを申し上げますと、さようなことになるのであります。
  75. 亀田得治

    ○亀田得治君 現在係属中の事件が数千件と言われたわけですが、年間新件がどれくらい出るわけでしようか。昨年の分でもけつこうですが……。
  76. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) 今申し上げました、私のほうで面接タッチしておると申しました通常民事事件は、大体ここ数年来平均いたしまして年間千六百件の新件を受理書しておる状態でございます。それからそのほかに、先ほど申しました若干の保全訴訟、それから強制併行、こちらのほうから強制執行をするものなぞがございますが、数千件と申し上げました大部分六百件をこえる部分は今のところでは大体農地訴訟と、それから税務訴訟なんであります。これは昨年の十二月現在になりますが、農地訴訟は十二月手持の事件が三千六百件、税務事件はこれが今年の七月の統計なんでありますが、総数が四百四十二件、この四百四十二件と申しますのは、これは裁判所の記録によつて件数を数えておるのでありますが、このうちには非常にたくさんの原告が共同で起しておる訴訟などがございまして、必ずしも実質的にはこれが一件とは数えられないと思うのでありますが、実質的負担としましては、計数的な扱いとしての四百四十二件以上に実は私のほうに負担がかかつておるわけであります。
  77. 亀田得治

    ○亀田得治君 農地、税務関係が非常に多いと、これはいろんな情勢から推測がつきますが、そのほかでは細かい数字は要りませんが、件数の多いものはどういうものでしようか。
  78. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) ちよつと一般民事のときに、先はど御説明申し上げるのを離脱したのでありますが、一般民事におきましてはその訴訟事件のほかに、これは後はどまた御質問が集中するかと思うのでありますが、債権の取立に関連しまして行政庁の依頼に基いて債権を取り立てるために少額もしくはほとんど争いのない事件について一々こちらから訴訟を起すという手数と費用、相手方の不便、相手方の費用、そういうものを省略するために、民事訴訟法によります御承知の即決係という方法を利用しているのがたくさんございますので、それが二千三百十八件、これも昨年の十二月の統計でございますが、そのくらいございます。絶えずですから今のところそれが係属になつているものと御承知つていいと思うのでありますが、それが一般行政事件といたしましては税務、農地のほかに大体二百件係属している専件がございます。
  79. 亀田得治

    ○亀田得治君 それからこの担当者の関係ですが、訟務局には十八名いる。それから地方の法務局で高裁所在地の法務局八名、各法務局に八名ずつおられるわけですが、この八名というのは……。
  80. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) それに各法務局に訟務部長が一名ずつございます。そのほかに、訟務部長のほかに訟務部長を補佐する意味で同じ資格の検事が訟務局付として大阪、福岡に一名ございます。今のところ仙台には人が得られませんので欠員になつている状態でございます。
  81. 亀田得治

    ○亀田得治君 それからこれだけの件数でありますと、今お話になつたような陣容では大へん人が足らないようなんですね。特殊な事件簿については相当民間の弁護士、こういうものを活用されるようなことは行われているんですか。
  82. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) 何分制度といたしましてああいう権限法がございますので、あたう限り国家の仕事を少くする意味で全力を尽して自分でやるという主義はとつておりますが、そのほか諸般の考慮から若干の事件につきましては一般の弁護士と報酬契約を結びまして相当してもらつている事件がございます。また行政庁によりましては旧来からの関係もあることと思いますが弁護士を依頼してもらいたいという要望があるような場合もございまして、そういつた場合には相当の考慮を払つて弁護士を依頼しておる事件もございます。私のほうで直接なるべくはタツチしたいという方針でやつておりますが、今おつしやいましたように人的構成の能力の関係もございますので、若干の事件は弁護士を依頼しておる実情であります。
  83. 亀田得治

    ○亀田得治君 お仕事の概略はわかりましたが、そこで特にお聞きしたいのは、訟務局としましては、係争事件が国家と相手方との間で起きた、その事件が起きた後に問題の中に介入して行く。これは当然だろうと思うのですが、その点はどういうふうになつておるのでしようか。いわゆる正規の係争事件にならない段階においても、何か出かけて行つて少し仕事をするというようなことがあるのでしようか。
  84. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) 大体行政庁が私のほうに連絡をとりますのは、権限法に基く争訟が要請される場合であります。ただし、行政庁にありましてはまた行政庁も専門家ではありましても、訴訟という面からは、行政庁の職員は専門家とはいえませんので、私どものほうに持つて参りましてもこれはだめだろうというので、そういつた手段に出ることをチエツクする場合もございます。それから持つて行きましても、ちよつとデリケートなんでありますが、私どもとしましては訴訟を起してくれと言われまして、いきなり何らの予備交渉もせずに訴状をたたきつけるということは、これはどうも人情からいいましても、また事柄の合理的な解決という点からいいましても、必ずしも望ましくないと思いますので、さような場合にはこちらが方針をきめた上で、相手方に任意履行の意思があるかないかということを確めますと同時に、また場合によりましては任意履行されたほうが双方に行策ではないかといつた見地で、こちらの意見なりあるいは見通しなりを参考に申述べて、相手方の考慮を求める。善処を求めるというふうな態度に出ることも従来心がけております。
  85. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう場合非常に注意しませんと、間違がやはり起りやすいと思います。普通の民間の係争であれば、これはまあ対等な立場で民間のおのおのの代理人同士が一応話合つてみてそういうたことはよくある。それから一方には代理人がついて行つて、一方は本人という場合もありますが、そういう場合には私ども弁護士仲間において相手が代理人でない場合には、よほどこれは注意しなければならないというのが法律家の常識だと思いますね。ところが今の場合ですと、相手のほうが代理人がついておらないしろうと、こちらのほうは普通の代理人じやないのですね。とにかく法務省の肩書を持つたそういう方が訴訟の時分に当事者に会われて見解を述べる。そんな程度まではまだあるいはいいかもしれんですが、何か話までつけてしまう、そういつたようなことが普通今局長の話ですと、やつてもいいようにおつしやつておるのですが、私これは大へん危険なことだと思うのですが、どうお考えでしようかね。たとえば建設省なら建設省にも、みんな法律の専門家が相当おるはずです。その問題については相当知つておる人が、少くとも普通の民間人よりは知つておる。そういう話合いということは、そういう程度の人がやればいいことで、法務省の人までがそこへ出て行く。これは結果においては非常にやはり間違いが起るのではないかと思うのですね。相手が何か適当な法律家をちやんとつけて、そしてこの人とそれじや話をして下さい、そういう場合は別だと思うのですがね。そういう点に局長としては、どういうふうにお考えでしようか。
  86. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) 一般的には、私はそういう態度が好ましい、合理的であると申し上げたのでありますが、実際は御懸念のようなことも、十分考慮に入れなければならんことは当然でありますので、十分私は警戒はいたしております。警戒はいたしておりますが、何分行政庁も専門家であるといいましても、行政法には専門家でありますが、訴訟法には必ずしも専門家ではありません。なおまた、これをもしおつしやるように何らこちらが事務折衝をせずに、いきなり訴訟行為に出ると行つた場合には、おそらく御懸念のような点からの批判でなしに、より以上国はつめたい態度で、高圧的にいきなり訴訟手続に訴えるというような非難が、むしろ逆に来はせんかということは、従来これは考えておつたのでありまして、先ほど申し上げましたような方針でとつて参りました事務折衝について、ただいま一件あるじやないかとおつしやられれぱはなはだ困るのでありますが、御懸念のような非難を受けたことは実はなかつたのであります。もちろん御懸念のようなことは考慮はされますが、従来もその点は十分注意はいたしておりましたが、今後職員にそういう点に考慮を払わせる意味で、一段の努力はいたしたいと考えております。
  87. 亀田得治

    ○亀田得治君 訟務局のほうからいただきました準則ですね、私は今これをずつと拝見したのですが、これは今年の九月一日から施行する、こう書いてあるのですが、それまではどういうふうな準則といいますか、規定になつていたのでしよう。
  88. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) 新しい局としまして発足いたしましてから、実はこういつた一般的抽象的な準則というものはございませんでした。個々の場合について、通達なり訓令なり指示なりをいたしまして、それらが集積したものが各地方の法務局と、私のほうの中央の訟務局との連絡の指針になつていたのであります。私が参りましたのは一昨年の十二月でありますが、いかにもそれが個々に散在しておりますので不便である、これを一括したものにまとめた準則というものを作つてもらいたいという要望も地方からもございますし、私どもさように考えましたので、従来そういつた個々の指示なり通達なりによつておつたものを再検討いたしまして相当の日子を要してまとめ上げたものが、今御引用になりました準則なのであります。それで九月一日からこれによつて執務を円滑にするというつもりでこれを施行しておる次第であります。
  89. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ私どもは絶えず人権の立場からいろいろな問題を注意をして見る癖もついておるわけですが、この準則の中では、成規の事件になつた後の取扱いだけしか書いてないように私考えるのです。しかしこれは国家としても国民との接触ということは非常に大事なことですし、事件の処理査ということになれば、その前のほうもあとのほうも、一括したものが結局処理だと思うんですね。だから従つて先ほど私が申し上げたような点は、これはやはり適当に準則の中へお入れになるとかするのが本当じやないかと思うんですが、準則ではちよつと妙でしたら、何か別個のものでもいいと思うんですが、私広務局長に今日具体的な問題について御質問しても仕方がないと思つているから、お尋ねしないんですけど、私がたまたま行き当つた問題、なるほど行き当つて見るとそういうことは幾らでも予想できる、実際は……。それは今まで訟務局長としては、そんな不都合なことは開いたことはないというふうにおつしやつておりますが、あるいは実際起きていても、局長のほうまで伝わつて来ない場合もあるでしようし、私ども民間の普通の事件の処理からいうと、その衝に当る人が扱い方を間違うと、非常に間違いが起ると思つている。これは弁護士同士ではいつでも注意しておることです。弁護士同士でやる場合と、相手がしろうとで一方が弁護士である場合と、これは第一話が成立しない場合には、その相手方から全部証拠を取つてしまうわけですからね。ところが弁護士同士であれば、示談が成立しない場合のことを考えて、そうして本人の不利益にならんように、ある程度のことはちやんと一つの線を引いて適当にやつぱり話をしている。これが当然ですね。ところが専門家としろうとではそんなことはあり得ない。これは非常にそういう意味で民間の法律家の間では、これは倫理的に非常にやかましく言われておることです。私はそのことは一層国と一般の国民の間、この間では相当注意すべきじやないか。ことに日本じや何といつてもまだ法務局といつたような肩書で来れば、相当やつぱりおそれを感ずるわけですよ、相手は……。そういう状態ですから、こういうりつぱな準則を局長のほうでおまとめになつたんですから、もう一つこの点をどういうふうに、その点をじや表現するか、なかなかむずかしい点でしようが、やはりこれは検討してほしいと思うんです、どうでしよう。
  90. 浜本一夫

    説明員(浜本一夫君) まあ私も弁護士道徳というものが、長い間の伝統を経てああいういい道徳ができたものである。それではそれを弁護士法に適切に現わし得るかというと、私必ずしも現わし得ないんじやないかと思うんです。おつしやる点とちようど同じようになりますので、今のようなおつしやるような点、私が申し上げておりますようなことを、準則とか、あるいはまた準則とは別個に、そういつたよるべきルールとして文書にして示達するということは、実は非常に困難じやないかと思うのでありまして、これはやはり日ごろの職員の訓練と指導にまつ以外には、多くを期待し得ないと考えるものであります。それで準則には取りあえず内部の連絡の円滑を期するために、この程度のものを盛りまして、そして今問題とされておりますような点につきましては、ときどき担当者と会合します席で、私なり、もしくは訟務局におる十八人の検事で、常にそういつた点には考慮を用いて指導しておるつもりなんであります。もちろん新設の局でありまして、非常に予算が貧弱でありますので、そういつた適切な会合をしばしば持つということは、現実に不可能ではありますけれども、予算の許す限りにおきましては、ブロツクごとに……、と申しますのは、訟務局のブロツクごとに地方法務局の担当者を集めて、さような機会を持つということには努めておるのでありまして、またさような機会がありますごとに今懸念されるような点は十分訓練指導しておるつもりでありますので、今後もこれ以外には方法はないものと考えます。準則にそれを盛るとか、あるいはまた別の文書でそれを残すということでは、必ずしも御期待に沿い得るような結果は得られないのじやないかということを私は懸念しておりますので、将来どういうふうにするかは、なお慎重に考慮してみたいとは思いますが、差当つて今のところでは、さような方法でしか進め得ないというふうな意見を持つておるものであります。
  91. 亀田得治

    ○亀田得治君 私もなかなかいい道徳とか、慣習というものは、何か作文を一つ作つたつて、簡単にできるものじやない。こういうことはまああらゆる場合に言える。そういう意味じや、局長のお話に同感ですがね。ただまあたとえば弁護士の問題にしても、弁護士法では本当に基本的なことしか書いてないが、やはり弁護士会の内部に入れば、いろいろな点を検討して、まあことさら書かんでもいいようなことでも書いて、注意し合つて行くといつた努力も幾らかはしておるわけです。しかし私はそこに書いてあることによつて一つの慣習が生れた、もう最大のそれが根拠だ。そんなことを私はまあ言うつもりはないのですが、もう局長が具体的にいろいろな会合なり、そういうときによくこう個人的に触れ合つて、そうして指導して行く、こういうことをまあおつしやるわけですが、それは私一番確実な方法だと思います。思いますが、これは全国に対してなかなかそういうことはできにくいわけですね。だからそういうことももちろん努めておやり下さることは、これは最も好ましいことなんですが、まあそれにしても、おそらく今までこういうことはどこからもあまり提出されなかつたことじやないかと思いますので、適当な指示をできるようにすることがやはりいいのじやないかという結論を、やはりそういう点を考えてもらいたい。決して私はそんな通達とか、そんなものだけでよくなる、そんなことは考えていないのですが、個人々々に触れ合うとすれば、これはもう一年もかかることですからね。それじややはりおそいので、非常に大事な問題だと思いますので、よく御検討をお願いしたいと思います。まあ、こんな程度で……。
  92. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 本日はこれをもつて委員会を散会いたします。    午後一時零分散会