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1954-11-04 第19回国会 参議院 法務委員会 閉会後第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月四日(木曜日)    午前十時四十八分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     高橋進太郎君    理事            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            青木 一男君           池田宇右衞門君            剱木 亨弘君            岡田 宗司君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    警察庁長官   斎藤  昇君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (人権擁護に関する件)   ―――――――――――――
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより委員会開会いたします。  検察及び裁判運営等に関する調査中、人権擁護に関する件を本日は議題といたします。開会に当りまして、委員長から一言警察庁長官に申し上げたいと思うのですが、実は人権擁護に関する問題として、具体的には両二日にわたりまして、鳥取県の秘聴器設置に関する問題を中心にしてこの委員会相当論議があつたのであります。委員各位からこのような施設をみだりに設置するということは、相当人権侵害になるのではないかというのでその事実関係の究明に両二日間を費やしたのでありますが、これは単に鳥取県の問題ではなく、警察権運営等に関しすして相当問題になる点でもあり、そういろ全国的な一つの問題としてこの際警察庁長官からこれらの点に対する問題を中心にして十分お伺いしたい、こういう趣旨であります。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 それでは私警察庁長官にまず最初全般的な問題としてお話を聞き、さらにそれが終つたあと鳥取県の問題について、長官としての立場からの見解をお聞きしたい、こう考えるのです。まず全般的な問題として、盗聴器というものが、全国警察でどの程度使われておるのか。私ども今度の事件で、まあたまたまそういう実際に使用されておる現実を知つたわけですが、全国的な状況ですね。こういう点についてまず一つお話を聞きたいと思います。
  4. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 盗聴器は、何と申しますか、全く捜査上やむを得ざる場合以外は使用をいたさないことになつておりまするので、全国でどのくらい持つておりますか、詳しい数字は私も存じておりませんが、どの県にも持つているというよう状況ではないと思つております。まあ過半の県では持つているのじやないか、それにしましてもそれらについても一個あるいは二個程度であろうと考えております。従いまして、総数といたしましては、まあ三、四十くらいであろう、こう思つております。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 総数にして三、四十ぐらいじやないかと思うということでありますが、こういう捜査手段というものは、一方では人権侵害しないでこれを使うということは、これはまた非常にむずかしい問題だと思うのです。盗聴器をつけていて、人権侵害の部分に来たらそこをちよつとスイツチを切つてしまう、そううまく行くものでは私はなかろうと思うのです。だからそいう意味でこれはたとえ三、四十個でもあるといたしますと、長官としてはこの使用方法については相当やはり考えておられると思うのですが、何かそういう点について全国的に注意事項といいますか、使用に関する内規といいますか、何かそういつたようなものでも今までに御指示されておるでしようか。されておればどういうふうに一体指示されておられるか、一つ伺いたいと思うのです。
  6. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) これには使用規則とかそういつたものはございません。ただ捜査をするについて、必要やむを得ざる場合にのみ使用するということは、これはどの警察においても徹底しておると存じます。御承知ように、盗聴器使用と申しまするのは、私寡聞ではありまするけれども、どの民主的な国の警察においても必要やむを得ざる場合にはこれを使用しておると思うのであります。しかしながらその必要やむを得ざる場合というのは、どういう場合かと申しますると、非常に秘匿をされた、非公然の組織的な活動、それによつて犯されるであろう犯罪を探知をするというためにこれを使用せざるを得ないという場合にのみ使用しておるのでありまして、わが国におきましてもその例外ではないと考えているのであります。従いまして普通犯罪捜査には、いろいろ御承知ように聞き込みか、いろいろな手段方法使いまするが、まあ聞き込みというよりも、もつと直接にわからない方法で聞くと、知るというために必要やむを得ざる場合に使用する、かように皆理解しておるのでありまして、特に使用規則というものを設けませんでも、これを逸脱して使用するようなおそれはないと考えております。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 必要やむを得ない場合にお使いになるということですが、それを具体的に申されますと、秘匿された組織的活動犯罪、そういうふうに今言われたわけですが、たとえそういう特殊な犯罪であつてもですね、そういう犯罪でありさえすれば、どういう段階においても使用してもいいというものでは私なかろうと思うんですね。だからそういう犯罪の対象は一応それでわかりましたが、そういう犯罪捜査について、どういう一体段階に来たときに使うのかということですね。それは非常にこまかいことまではなかなかきめられぬでしようが、その点についてのやはりもう少し具体的な御指示がありませんと、やはり間違うんじやないかと私考える。今度の場合でも、それが一つと、それからもう一つは、たとえばそういうある具体的な段階に来て使わなければならないという場合に、誰がそれを判断するのか。鳥取の場合ですと、本部長自身がその場合に知らないんですね、聞いてみると……。課長だけの判断でやつている。で、果してそういうことでいいのかどうか、こういう、何といいますか、非常に危険のあるものについて、たから単に秘匿された組織的な犯罪ということだけじやなしに、もう少し捜査の一定の段階、そういう点も明確でなければならないし、また使用に当つても末端の捜査官、あるいは課長程度でその承認を与えるといつたようなことではすまんのじやないか、そういう点について私非常に、やはり何らの指示等もしていないようでありますが、これはせんだつてできた警察法の第五条の第二項に書いてある警察庁の任務から言いましても、やはりこれは一つ警察装備の一種ですから、そういう装備に関することについては十分全国的に指示する義務があるんじやないか、責任もあるんじやないか、こう考えておるんですが、今からでも私はそういう面についても検討してもらいたいと思うんですが、いかがでしようか。
  8. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 犯罪捜査のどういう段階に来た場合に、あるいはまたこれを使用する決定をするについては、もつと上級の者の判断を必要とすると考えないかという御質問でございますが、犯罪捜査段階と申しましても、これは規則でどういう段階にとは、なかなかお説の通り書くことがむずかしいわけでございます。個々具体的の場合になりませんと、抽象的に書きましても、結局は書かないと同じことになるわけです。結局そうしますと、第二段の御質問ように、これを用いることができるという判断をする者を指定するかどうかということでありますが、私は現在の実際の状況といたしまして、少くとも府県主務課長承知をしておると思つております。もちろん県の本部長も知ることが私は望ましいのじやないかと思つておりますが、主務課長がこういつた犯罪捜査最終手段ではありませんが、県内における責任課長でありますから、本部長に知らせる必要はないという意味ではありませんが、特に規定まで設けてそういうことをしなければならないとは考えておりません。主務課長責任を持つてつておれば大体よかろう。それについてもちろん本部長は報告を受けているということは望ましいと存じますが、一般警察官使用をいたしますような拳銃でありますとか、あるいは相当広範囲警察官が使うでありましようあるいは催涙ガスでありますとか、そういうものとは違いまするので、こういうものを規定化をするということは、私は望ましくないと考えております。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 その二つの点についてもう少し明確に考えを聞きたいのですが、本部長承認を与えると、そういつたようなことまで必要ないのじやないかとこういう結論のようですが、まあ聞いておることは望ましいが承認とまでは必要がないのじやないか、ただ私の心配するのは、この第一線捜査官とか、あるいは直接の捜査責任課長、こういうものはやはりどうしても捜査それ自身に非常にやはり頭が集中的に働くわけなんです。何とか目的としているやつを探し出してやろう。だからそういう場合にこの捜査手段そのもの人権との関係においてどうなるか、やはり判断において間違う場合も起りやすいと思うのですね。そういうところはやはりもつと大所高所から全般を見渡しておる地位の人、そういう人がこれをやはり考えて行く、これは制度上も私は非常に必要なことじやないかと思います。といいますのは、第一点のどういうふうに捜査が進んだときに盗聴器使つていいかということ、これはなかなか規則の上では書きにくいかもしれない。何%捜査が進んで、あと何%になつたら使つていい、こういうことこそはなかなか書きにくいかもしれない、書きにくいだけにやはり最後の判断をする人、これをもう少し上のほうに持つて行く。私ども考えとしてはむしろ府県警察の民主的な性格というものを何とか守つて行くそういう使命を持つておる公安委員会ですね、公安委員長、こういうところにやはりむしろ内々伺いを立てるこういうことのほうが適当じやないかと実は思つておるのですがね、どうでしようかね。
  10. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 本部長が知つているということは、これは私は望ましいと存じまするから、さようには指導いたしたい。その点は亀田さんの御意見には私は賛成であります。そういうふうに指導をいたしたいと思います。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 それからその捜査段階の問題ですね。長官は先ほど必要やむを得ない場合に使うのだ、とこういうことをまあ全般的な基準として言われたわけですが、私どもそういう必要やむを得ないという言葉から受げ感じは、やはりいろいろ捜査をずつとやつて来て、大体こう捜査の線が縮まつて来た。この辺に盗聴器をつければまあ七、八〇%程度までは確実にその端緒をつかめる、そういうやはり段階が必要じやないかと思うのですがね。その七、八〇という数字がまあ妥当かどうかは別として、ともかくずつとこう線が縮まつて来て、ここへつければその目的が達せられるのだ、そういうものでなければならないと思うのですね。私は鳥取の場合に、実際にそれを使つた岸本課長にその点を一昨日尋ねたのであります。あなたがここへつけるときに、ここへつければとにかくまあそれは確実というようなことは誰も言えませんから、大体これをつかまえられるという確信を持つてつたかと言いますと、その言葉使いは私今正確には覚えておりませんが、きわめてその点は自信がない。また実績から言つても、何ら端緒をつかんでおらんようですね。だからそういうことになりますと、結局まあこの辺やつて来るかもしれんからということで、あつちにもこつちにもつけて置くということにやはりなりがちなんです。だからこの必要やむを得ない場合ということを、やはり捜査段階においてはどういうことなのかという点を、その点もやはり今後の指導において相当明確に検討されたものを出ざれる必要があるのじやないか、こういう感じがするのですがね。それがないとどうしても乱用されるおそれがあるかと私は思うのです。いかがでしよう
  12. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 主務課長確信を十分持たないよう答弁であつたとおつしやいますが、必ず見込があつたかと言われると、そうも私は必ず見込がありましたとは、よう言い切れなかつたと思います。それは良心的に私もそう存じますが、それともう一つは、そうどつちにもこつちにもつけられてはというお話でございますが、そう簡単に第一秘匿された組織の、しかも会合場所というものはそうわかるはずもなし、またわかつた場合においても、そう簡単につけられるものじやありませんので、そういう意味からそんなに乱用が起り得るとは考えないのでございます。もう一つは、その捜査がどういう段階に来た、大体ここでならばわかるだろうとこう一種の確信と申しますか、そういう程度でなければならぬことはもちろんだと思います。それを規則でどう現わすか、あるいは文書にしてどう現わすかと申しますと、今亀田委員がおつしやいましたような言い方、あるいは私のお答えしている程度お答えしかできませんので、捜査の具体的な例証を挙げてということになりますと、いつきよう相当の確証が科られると認めた場合ということになつてしまうと、かよう考えます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 一般的な問題はその程度にしておきましよう。ただ、ちよつと誤解があつてはいけないと思うのですが、私としてはこういう捜査手段というものは、これは使うべきじやない。これは人権侵害しないで使うことのできない手段だ、こういうふうに実は考えておるのです。ただ、警察のほうがどうしても使うという立場もあるようですから、そういう立場に立つてしても、私が今申し上げたようなことは、少くとも長官としては全国に三、四十もあるのであれば、一つ検討してもらいたい、こういう意味で申し上げておるわけですから、その点一つ了承願つておきます。
  14. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 全般的な問題について、今の亀田委員からの御質問に関連て、ちよつと政府側の御意見をもう少し確かめておきたいと思いますが、現在政府ではもちろん警察関係犯罪絶滅ということに全力を挙げておられるのでありましようが、しかし、なかなかこれは、まあ絶えず問題になることですが、警察民主警察ということになつていないと、犯罪絶滅ということがやはり昔のような遂になつて行つてしまうのじやないか、昔のような遂になつてしまいますと、秘密警察とか、あるいは警察独善とかいろものになつて一言でいえば、警察国家が復活して来るという心配がある。で、犯罪が根絶できないということの心配と、それから警察国家の復活ということと、あなたはどもらをおそろしいというふうにお考えになつておりますか。
  15. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私は警察国家というものに日本を持つて行つては断じてならないと考えておるのです。その点は全く御同感であります。ただ、警察国家になるかならないかと申しますことは、警察官の個々の捜査のやり方という点にももちろん影響はありましようが、私はそれよりはやはり何を犯罪とするか。それに対して、どういう捜査方法法律が許しているかという、むしろそういつた国法制に関する事柄が大きいのじやないか。現在の法制のもとにおきましては、警察法のもとにおきましても、あるいはその犯罪捜査方法のもとにおきましても、思想自身取締法律ももちろんありませんし、従つて、さよう意味から思想取締るという見地から警察活動することもあり得ないのでありますから、いわゆる警察国家になるという心配はないと考えております。しかしただいま一つは、警察はどこまでも民主的な警察でなければならない。国民全体の信頼を得る警察でなければならない。これには私も全く同感であるのみならず、私もそういう信念を持つておりまして、警察が能率が上るというよりは、国民から信頼をされる敬愛をぜられる、本当に国民サーバントであるというよう警察、これに育て上げて行きたいという信念で私は仕事をいたしておるような次第であります。
  16. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの御見解大いに傾聴するのですが、やはり第一線に立つておられる警察官方々はその目の前に見ている犯罪というものに引ずられて行く傾向がありますし、高い立場あるいは最高の立場警察責任を負われる方々の場合には、どうか今お述べになりましたような点、民主警察という前提がなければ、警察というものはないのですから、犯罪の根絶というようなものはあり得ないのですから、その点を十分絶えずあらゆる機会に強調をしていただきたい。  その御趣旨から第二に伺つておきたいのですが、民主警察確立があつて、しかる後に重大な弊害がなく使用できる捜査方法というものがあると思うのです。不幸にしてまだ日本警察はまだ第一の民主警察の本質の確立過程において、まだ十分国民信頼というものを受けていない過程において、まあたとえば増幅器をひそかに使用するというようなことで、与える不安もかなり多い。で、あとから具体的に各委員から御質問があるでしようが、今回の事件などの場合にも相当の不安を与えている。現にそういうものを設置された人のところにはお客も来ない、治療者も来ない。その方も生活不安に陥るというようなこともある。ですから私はあなたが高い責任を負われて民主警察を建設されて行こうとするときに、その警察に対する国民の見方がやはり暗い感じ、何かこそこそやつている、あるいはまあ一言でいえば、卑劣な手段を用いて国民の間の秘密を探ろうとしているという感じを与えたのでは、全くつまりせつかくの今お述べになりましたような最も根本的なそして最もパラマウントな責任が果されるということにならないじやないか。ですから今亀田委員は御遠慮になつて希望だけお述べになつたんですが、このマイク使用ということについてもう一遍お考えになつて、これが現在のような形で使用されているということでいいかどうかということは、もら少し御研究下さるというわけにはいかないでしようか、どうでしようか。
  17. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) この問題で非常に国民に暗い感じを与えているというお話でございますが、確かにさような一面があつたんじやなかろうかと私は心配をいたしております。ただ幸いにあの問題が取り上げられ、そして徹底的にお調べになり、なるほどそういう場合ならばやむを得なかつたであろう、そうしてまた警察はそういう場合以外は使わないんだということがはつきりいたしますれば、それによつて国民理解も得られて非常に人の秘密を探るために無用にやつているんじやないということが明瞭になつて仕合せじやないか、さよう意味で一刻も早く御検討をいただくことを私は喜んでおるのであります。やはり国民が知らない間に、何か非常におそろしいようなことをやつているかのようなもし印象があつたとすれば、こういう機会にこれをはつきり解明いたしておきますることが、国民理解を得るゆえんであろうと、かよう考えるのであります。
  18. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先日今お見えになつております池田委員もこういうマイクを使わないでほかの方法で努力されることのほうがいいじやないかということをおつしやつておられましたが、必ずしもこれは少数の人だけの感じではなくて、かなり一般的にそういう感じを与えているんじやないかと思うので、またそのマイクを使うことによつてそれだけの効果が上るかということも双方利害得失を勘案されて、そしてマイク使用をこのまま続けて行くかどうかということについては御研究下さることというふうにただいまのお答えを伺つておきます。
  19. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちよつと関連して質問します。私しろうとでございますかよくわかりませんが、この盗聴器全国的に三、四十とさつきおつしやつたようでございますが、これは捜査にぜひ必要なものだという前提で置きますならば、これで足りるというお考えでございましようか、どうでございましようか。その三、四十とおつしやるはどういうわけで配られたのか、買い求めたというのでございましようか。そこがちよつとわかりませんので、おつしやつて下さい。
  20. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) まあ三、四十と申しましても、それすらもしよつちゆう使つているわけではありませんので、地下の秘匿された組織、いわゆる地下組織において犯されるであろうという犯罪、しかもそれについてそういつた秘聴器使用ができるという状態はそうありませんので、従つて、数多く持つておりましても、使用する場合はそうないと現在では考えております。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうすると、それは各警察でてんでんばらばらに求めておりますということなんでございますか。その地下活動する筋のところ持つて行くということなんでございますか、私しろうとで一向わからないのございますが……。
  22. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 地下活動をする筋と申しますか、そういうことでございますね。非合法の地下活動を非合法の組織のもとで行う、その場合に捜査上必要な場合にやむを得ずこれを使用する。そこでそういう場合におきましても、人の家に勝手に入つて行つてつけて来るわけには参りません。この前の鳥取に起きましたように、それに協力して、それではつけてもよろしい、こういう許可がその部屋なりその家の管理者から与えられなければ使えません。従つて、そういう条件のそろうということは、ごくわずかな場合でございますから、そういう意味で申し上げたのであります。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 たまたまこの鳥取県のことが問題になりましたので、当委員会でも取り上げられたと思つておりますが、今まで盗聴器ですか、使つて何か効果挙つたというような、どこそこと明らかにされないでもよろしゆうございますが、この秘聴器効果といいますか、そういう結果について伺いしたいのでございます。
  24. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) これで具体的にどういう犯罪を挙げたという効果の顕著であつたという例は、私ただいま記憶をいたしておりませんが、先ほども申しますように、これを使用いたしました場合は、ごく自然に限定をされますので、さようにこれで特殊の効果を挙げたということは私直接にはまだ聞いておりません。
  25. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 いま一つ伺いたいのでございますが、捜査をなさる方面から言つたら、これは非常に必要な機械とおつしやるかもしれませんが、また非常に不安に思つております。まあ私どももこれを悪用される場合は非常に不安だと思つておりまして、これは人権問題にも大いに関係することで、憲法違反の問題も起るのではないかというよう心配をしておりますのでございますけれども、そういうされるほうから言つたら、本当に盗み聴きをされたというよう意味にも取れないことはないと思いますが、こういうものが一体正式の場合、たとえば公判廷に参りました場合に、効果がございますのでしようか、どうでございましようか。その辺の法律上の解釈及び実際問題としてどういうふうにお考えでございましようか。
  26. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私は裁判上も効果がないとは思いません。裁判所がこれを直接の証拠として取り上げますか、あるいは傍証として取り上げますか存じませんが、これが場合によりましては私は有力な傍証として裁判所では役立つであろうと、こう考えております。
  27. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 ただいま羽仁委員からもちよつと御指摘がございましたから、この際一つ希望を入れて質問というわけではないが言つておきたいと思いますが、御承知通り長官初め各位はきわめて民衆警察であり、民衆に親しまれる警察であり、また民衆信頼される警察である制度のために努力しておるという、その御答弁には、非常な賛意を表するものであります。しかし、地方の都道府県警察制度改革によりまして赤字財政を続出しておる現在であります。かよう意味からもちまして、本件のよう事件がもし他に続出するような場合ありとしたら、実際は国民が先の特高警察あるいは刑事警察、いわゆる警察民衆から離れた旧制度に逆戻りするよう傾向を非常に心配しております。どうかさような際でありますから、この制度改革一歩こそ何事も大事なときであるので、これをよく下部に徹底して、どこまでも民衆とともに生き、民衆治安維持をもつて責任を背負い、またその使命達成に努力しておるという趣旨をさらに明らかにしていただくようなことを希望すると同時に、これに対する何か下部浸透の御計画があらぱ承わりたいと、かように思います。
  28. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) ただいま池田委員のおつしやいましたことにつきましては、先ほども羽仁委員に申しました通り、全く同感でございまして、制度が先般切りかえられました際におきましても、私といたしましては、全警察に対しまして、特にこの機会民主警察の実を一段と挙げるように、民衆と接着をしておる部面における窓口の仕事の改善はもちろんのこと、一般大衆が望んでおる警察のサービスというものに全力を挙げるように、またあの制度の改正によりまして自治体警察と国家地方警察一つなつたわけでありますが、今まで自治体警察におつた人たちが国家地方警察にいた者よりも能率が劣るというよう感じを持つたり、あるいは国家地方警察にいた者が自治体警察にいた者よりもさらに負けないというよう感じを出したりして、そのためにかえつて捜査が苛烈と申しますか、人権を侵すというようなことになつては相ならんのだから、そういう意味から言うならば、能率が当分下つてもよいから、そういう無理のないように、本当に民主警察警察官のあり方という教養を徹底させることを第一にしてもらいたいと、今警察が一本化されて、そうしてそのために能率が上らない、あるいは自治警の者が国警の者から、あれは能率の悪いやつだと言われたり、どうも一緒になつたけれども、俺たちのほうが能率がいいというようなことで競争意識を起したりするというようなことになると、とんでもないことになるから、そのためにはむしろある程度の、またある種の方面において能率が下つたつて、それはかまわないというくらいに申しておるのでありまして、なおわれわれの考え方がまだ十分徹底しない向きもありはしないかとおそれておりまするが、全国府県の公安委員方々にも先般もさようにお願いを申し上げたり、また御鞭撻をいただいたりいたしておりまするので、各公安委員方々とともどもに、ただいま仰せになりまするように努力をして参りたいとかよう考えております。
  29. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 盗聴器の問題について若干お伺いします。これはいつごろから使い始めたものでございますか。
  30. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 日本共産党の幹部の一斉追放が行われ、相次いで日本共産党がわれわれはどこまでも武装革命に入らなければならない、その準備と何を整えるというような指令の出ましたころからでございます。
  31. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうしますと具体的に言つていつごろでしようか。二十六年ごろからですか。
  32. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) さようでございます。
  33. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうしますと、この方法使用するに至りましたのは、たとえば当時のGHQのほうからこういう方法をとつたらというようなことがあつて、この盗聴器使用ということが始まつたのかどうか。
  34. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) これはGHQのほうからの指導でもあるいは何といいますか、指令でも何でもございません。さよう犯罪を犯すであろう、いわゆる日本の民主主義を暴力で覆えそうという地下の強い組織ができて参りまして、やむを得なくこういう方法をとらざるを得ないだろうということになつてつたのであります。
  35. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは戦前に特高警察はなやかな時代にも、こういう方法をとつておりましたか。
  36. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私は当時の状況はよく存じませんが、当時はさようなおそらく機械も進歩していなかつたとかよう考えます。
  37. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それと二十六年ごろ以降使用して、今日まああなたの言ですと、三十ないし四十台ある、こういうことでございますが、これは何ですか、当時の国家警察本部、今の警察庁ですね、これが一括購入して、必要とされる県の警察に配付をしたのですか。
  38. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 当時必要あれば使用のできるようにというので、若干は一括購入をしたこともございまするが、最近はさようなことなしに、必要とした府県が備えておる、かよう承知をいたしております。
  39. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、これは何ですか、まあ市販をしているというものではないと思うので、おそらく最初一括購入するときに、あなたのほうでこういう物を作れと言つて指定して作らしたものじやないかと思うのですが、現在一括購入でなくて各県でそれぞれ必要と思つて購入する場合にも、そういうようなもと警察の本部のほうで指定して作らした物を購入しておるのですか。
  40. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) これはどこで国警が指定をして作らしたというようなものではございません。ほうぼうで市販をしておるだろうと思います。
  41. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうもそうそこらに市販しておるものとは思えないのですがね。普通のラジオとかあるいはマイクロフオンだとかを売つているところでそういうものを私は市販しているものとは思わないのですが、どうでしよう
  42. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) これは一般の誰もが買うものではございませんが、こういうものがあるからどうだというようなことで、注文を聞きに来る商社が数軒私はあると思つております。
  43. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 大へんなことだ。
  44. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつと長官に伺いますが、調べられておる人と調べる人とが質問応答しておることが、外部において聴取せられつつあるということは、調べられておる人は知らないのですね。そういうような装置で作られた調書が刑事訴訟法上有効だとあなたは仰せになられるのですが、そうすると刑事訴訟法の三百二十二条の「任意にされたもの」であるというお考えですか。その調書に供述した人は……。
  45. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私はこれを調書の内容にするとは申しておりません。そういつた事柄を証拠の一つとして挙げることができるであろう。ももろん聞取調書は任意に述べられたものでなければなりません、こういうものは……。聞取書といいますか、というものについては……。
  46. 一松定吉

    ○一松定吉君 宮城さんの御質問に対して、それは法律上有効なものであると思うとあなたはお答えなつたね。宮城さんはそういうことによつて聴取された調書が法律上有効であるかどうかということをあなたに質問したと私は思う。それはあなたは法律上は有効であつて違法なものではないとお答えなつように思うが、どうでしよう
  47. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私は宮城委員からは、調書とは伺わなかつたのであります。裁判上の証拠になるか、こういう質問であつたと思いまして、証拠として提出した場合には、有力なものとなるであろうと……。
  48. 一松定吉

    ○一松定吉君 証拠にすることができるというのは、証拠として、合法的な証拠として採用されるかどうかということの質問であつて、証拠力のないものでも証拠として出せば証拠なんです。しかしながらそれは証拠として刑事訴訟法上採用されることでなければ、証拠として有効のものではない。あなたは有効であろうと無効であろうと、法廷へ証拠として出すことができるというお答えですか、もしくはそれによつて作られた証拠は証拠力があるというお答えですか、どつちですか。
  49. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私は証拠力があると思う。
  50. 一松定吉

    ○一松定吉君 よろしゆうございます。それでは刑事訴訟法の三百二十二条の、いわゆる任意にされたものであるとお認めですか。
  51. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 任意にされたというのは……。
  52. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつとあなたは条文を御覧になつてお答えになつて下さい。三百二十二条の「任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。」「任意にされたものであると認められるときに限り、これを証拠とすることができる。」
  53. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) ただいまお読みの条文は、被告人の供述調書のことであろうと思う。その証拠力であろうと思うので、私はこれをこの供述の内容と申し上げておるのではございません。
  54. 一松定吉

    ○一松定吉君 いやあのね、そういう盗聴器を用いて、そうして調べる人が調べた、それによつて答える、答えたことが供述調書ということになつて作られる。その作られた書面が三百二十二条のいわゆる任意になされたものであるということにお認めになりますかと聞くのです。任意になされたものでなかつたら証拠力はない、任意になされたものであるとすれば証拠力はある、この三百二十二条で……、そこを聞くのです。
  55. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 一松委員はこの盗聴器使い方を誤解していうつしやるのじやないかと存じますが、それは盗聴器を通じて調べて、それによつて返事を得るというのではございませんので、極秘の秘匿された組織のもとで極秘の犯罪を構成しているような相談をしている。それを警察が知る。それによつて警察は検挙なりあるいは予防の措置を講ずるということでございまして、たとえばどこどこへこの犯人をかくまおうという相談をしておる。あるいは誰が首魁になつてこれこれのこういつた非合法の計画によつて犯罪を行おうという相談をしておる。それを聞くための装置でございますから、それがもし録音によつてやられたことであれば、そこでそういう相談をした一つの私は証拠となるであろうということを申し上げておるのであります。
  56. 一松定吉

    ○一松定吉君 私の尋ねるのは、今あなたのように他人同士が話をしておることを盗聴器によつてそれを知つたということでなくて、調べておる人間と調べられる人間と差向いで調べておることを、これを線を引つぱつて隣りでそれを聞いて、盗み聞きをしておるという場合があるでしよう。そういう時分にはこれは使わないのですか。現に神戸の検察庁では使つておる。神戸の検察庁ではそういうよう使つて調べておる。その調べておるときに、供述者が供述したことを、検事なり警察官が供述書を作るのです。その作つた供述書は三百二十二条によつて証拠力があるか、こう聞くのです。あなたとは範囲がちよつと違う。あなたは他人同士が、自分でも知らない何でもない人間がいろいろ密談をしておるようなことを、盗聴器を隣へ引つぱつておいてお前がたはこういう謀議をしたじやないかという資料に供するとおつしやる。そのことはそれでいいのです。私の言うのは、その盗聴器使つて調べられる人間と調べる人間とが任意にやりとりしておるところを、盗聴対を引つぱつて隣で聞いておる人間がある。そういうような装置のもとに取調べをし答えをする。その供述書は刑事訴訟法上効力があるかと聞くのです。
  57. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 警察のほうはそういつた取調べの場合に盗聴器をつけてそして聞いておるというようなやり方はしておりませんから、そういうものをもつて証拠にしようというこういう考えは持つておりませんが、法律的な問題としてどうかという御質問であるといたしまするならば、ここで話合つていることを向うで聞いているぞ、それでよろしいかということを明らかに調べられる被疑者に話をして、その上でなければやはり任意性がなくなつて証拠にはならないと、かよう考えます。
  58. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういうお答えなら私と一致するのです。だから私はその調べられる人間と調べる人間との質問応答を、その傍らにおいて調べられる人間が今俺の言うことは盗聴器において録取されつつあるんだということを知つてつて、そうしてお互い質問応答しておつてできた調書はこれは有効です。これは今あなたのおつしやる通りです。なぜかというと、自分の今答えていることは、この録取器に録取されつつあるのだということを、調べられる人間が知つているのですから、だまされも何にもされておらんからいいのだ。ところがそうしては効果が少いから、そういうものをその調べられる人間の前に出さずして、これをかくして、調べられる人間の前にはお前と俺の二人だけであつて、お前の言うことを別に聴取している者は何もないぞというように相手方を錯誤に陥れしめてそうして質問をし、答えは供述書になれば、いわゆる任意性を欠いておるものだとして証拠力がないと私はこう言う。だがあなたと私はそこが一致したからけつこうだが、しからば今のようなことで調べられるときに、その盗聴器というものを使うようなことはならん、そういうことをしちやいかんぞというような訓令か何か警察官に出しておりますか。
  59. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 訓令は出しておりませんがただいまおつしやいましたような行為は明らかにいたしておりまするし、現実にわれわれといたしましては、誰か第三者にそれを聞かしておかなければならないという必要を感じておりません。さよう使用のし方はいたしておらんと思います。
  60. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつとそこがよくわからんけれども、そういうことを、訓令を出す必要を感じておらんとおつしやるのですか。
  61. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) やつておりません。
  62. 一松定吉

    ○一松定吉君 やつておらん……、それではそれは一つ急速におやりになつたほうがいいと私は思う。そういうことを将来やりましようよ。なぜかというと、この人間が私は警察官に対して、検事に対してそういうことを言うたことはございませんということを公法廷で供述を否認しますね、そう否認することが多いのです、実際は法廷において。そのときに今のものを抱えて出す、お前はこんなことを言うたじやないかといつて、内緒で聴録したやつを証拠に出して訴訟を混乱に陥らしめるということがなきにしもあらずと思うから、それは一つあなたのそういうりつぱな御精神であることに私も共感いたしますからして、そういうような調べられる人に内緒でそういう録音を取つたりするようなことをしちやいかんぞと、仮に取つてもそれは刑事訴訟法上、そういうことによつて作られた供述書は証拠力がないからよく注意しなければならんというくらいな指令とか、訓令とか、訓示とか出しておく必要が私はあろうと思う。そうしておかないと、これは乱用されますよ。私は犯罪捜査のためにそういう盗聴器を使うことは違法じやないと思う。私もあなたと同じだ。けれどもそういうことを基にして相手方を欺罔してお前と俺との間には二人だけであつて誰も聞いている人間はいないから、安心して答弁せいと相手を錯誤に陥れしめて供述させて、それを供述書に作るということはよくない。こういうことを言うのですから、それは一つそういうことのないようにあなたの御職責上御注意なさつておるということは、将来この問題について問題が起ることをあらかじめ防ぐことになると、こう私は思いまするから、私の考えていることを老婆心からあなたに御参考のために申し上げておきます。
  63. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 一松委員の御意見、私も全く同感でございます。十分趣旨は徹底させたいと存じております。私どもこれはよけいなことでありますが、こういう席でありますから、私の考えておることを申しますが、私どもはむしろ刑事が被疑者を調べておる、よくその場合に人権蹂躙をやつた、やらんというなにがあるわけであります。あとで本人に聞いてみると、決してやつていない、被疑者のほうはやられた。そこでわれわれとしましてはできるだけそういつた人権蹂躙はやめさせたい方途はもちろんのこと、あるいは調べ方においても、できるだけ紳士的な調べ方をさせるように、そこでむしろそういう調べ方をするのじやないかという心配があつたときに、上司がそういうことはないだろうかというようなやり方で聞くようなことは、一つのそういう人権蹂躙をなくする方法じやないだろうかということを私は考えてみたこともありますが、しかしやはり一面被疑者のほうにも妙な影響を与えるだろうと思つて、そのようなことはやらしておりません。
  64. 一松定吉

    ○一松定吉君 非常にいいことです。私も警察官が私を拷問にあわせましたとか、私を欺罔したとか、誘導しましたとか、脅迫しましたとか、詐言を用いたとかいうようなことを公判廷で言うのです。そういうときに今の盗聴器を蔭に置いてあつてもいいのですが、そういうことはないのじやないか。お前と質問応答はこの通りだと言われて、反証を挙げる具に供することはいいのでしよう。それを基にして供述を作つて、この供述書は任意になされたものであるというように用いられることはいかん。だから今あなたの言うように暴行、脅迫を用いておるものじやないという反証のためにその盗聴器を用いて、それを争いになつたときに、証明の具に供するならば、それはいいことです。それならば初めからこれからお前を調べるぞと言つて、初めからお終りまでずつと盗聴器に取つて、これを証拠に持つて来ればいいですよ。ところがこれは非常に自分の不利益なところを取りのけて、利益なところを取つてつて来るというようなことをしては、今あなたの本当にりつぱな精神は蹂躙されることになるのです。それだからその盗聴器使つて調べに暴行、脅迫はなかつたのだという反証のときに、まさかのときに挙げなければならんと思うのだが、被告と調べる人間が相対して、お前の名前は何というかというところから調べて、もう調べは済んだからお帰りなさいというところまで録音をしてそれを出すことは非常にいいことです。そういうことをおやりになることは私は賛成だけれども、自分の利益になるところだけを、暴行、脅迫したところはとりのけてしまつて、それを反証のために出すのだということは、かえつて弊害があるから、そういうことを一つ御注意になつておいたほうがよろしくはありませんかとこう申し上げた。私は用いることは反対じやありません。用いる方法、用いる手段、こういう点について本当に法律上有効適切にお使いになれば効果百%だとこう申し上げたのです。
  65. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの私に対する御答弁ですと、盗聴器は市販をしておるように言われた。そうして相当の商社がまあ売り込みなどをやつておるように言われておる。もしそうだとすると重大な問題です。こういうものが一般に販売されて、これをその警察以外で何か悪いことの目的で使うというようなことになつたら、これは大へんなことです。こういうようなことは私どもとしては許せんと思う。またその警察がその指定の商社に作らせて、警察が買上げてそれを配付しておるというふんならば、まだよろしいのですけれども、それを一般に売つてどこでも買えるのだということになつたら、大へんなことですがね。本当にそれは何ですか、市販をしておる、あるいは勝手に作つてまあ売り込みなどをやつておるものですか、念を押して開きます。
  66. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私の申し上げたことには間違いがありません。われわれこれを乱用されないように、あるいは何か禁止でもしたほうがいいのじやないだろうかという考えもないことはありませんが、私は警察は乱用するとほ思いませんが、むしろそうでない民間人がこれを乱用するということになると、私は容易ならないと思います。しかしながら先ほど申しますように、これは管理者の同意なしにはそういうものができないわけですから、従つて盗聴器があれば、誰でも人の家にそれをつけて来られるのかという……、これは少し私は心配のし過ぎではなかろうかとかように思います。現在たとえば倉庫業者あたりが倉庫の中にどろぼうが入つて来るというような場合に、自然にそれがわかるようにこの器械を据えつけておくという例は、すでに相当あると私は聞いております。自分の家の施設の中にそういうものを作つてその中へ人が入つて来る、それがこちらでわかる、そうすればそれで措置を講ずるということでありまして、何もこれは悪用されるばかりでは私はないと思います。問題は何といいますか、人の管理している施設の中にひそかに据えつける、これはいわゆる私は法律では防止をされておりますから、そういう場合があれば法律によつて処罰をされるわけですから、従つてそう無制限な乱用は一般人といえども起すまいとかよう考えております。
  67. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今警察のほらは乱用しない、そしてそれを備えつける場合には必ずそれを備えつける家の人の承諾を得てある、こういうことである。ところがこれを警察のほうで非常に有効なりと認定するようになつて来ますと、たくさん備えつけたいという希望が起るに違いない。そうなつて来ますと、その据えつけの場合に単に承諾を求めるだけでなく、相当警察の威力を用いて、そして無理強いに承諾をさせるという事態が私は起つて来るのじやないか。鳥取の例におきましてもまあなにげなくはつきりした目的を知らせないために承諾をして、あとで騒ぎになつた。あんなことをしなければよかつたというようなことを備えつけたほらの人は言つておるのです。これは騒ぎになつたから言つておるのかもしれません。しかしながら私はあなたが認定するように、これが有効な器具であるというふうになつて来ると、そういう機会が起つて来るのじやないかと思いますがね、どうでしよう
  68. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) そこはすべてのものを乱用いたしては、これは相なりませんので、もし乱用をすれば、もちろん当然世間の批判も受けることであります。世間の批判はありませんでも、われわれといたしましては、さようなこれを備えつけるために強制を加えるというような、そういうことは絶対にないように、あらゆる面から留意をして参りたいと思つておるのでございます。
  69. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は盗聴の問題は、盗聴器を据えつけるということ以外にもあると思うのです。たとえば私どもが最もおそれるのは、また最も一般的にできると思われるのは、電話の盗聴だろうと思うのです。おそらくこれをやればあるいは盗聴器をつけるよりもつと簡単でもつと有効じやないか、そう思うのです。それをやられたのではかなわない。盗聴という問題は私どもは非常に重大な問題と考える。それは盗聴器を備えつける問題から、さらに電話の盗聴器まで拡大された日には、これは一般の市民生活は非常に脅威を受けることになるのですが、おそらく盗聴器を据えつけるくらいのことをやつておられるならば、特定のところに対して電話の盗聴もやつておられるのじやないかと思うのですが、その点どうでしよう
  70. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私ども盗聴をどうしてもしなければならんと申しますのは、先ほど申しましたような場合でありまして、誰もが公然と使う電話、あるいは公然と出入りする場所における話、これをそんなことで盗み聴きをしようというようなことは毛頭考えておりませんし、さようなことは私は本当に法律にも反することだと思つております。われわれといたしましてはこの秘匿された組織で、会場もそこで会合をしておるということがわかれば、すぐその会合場所を変えてしまう、これは特殊のもの以外には絶対知らせないという会合の場所で、しかもここに集つておるのは、秘匿された人間が主である。表面は何の何某と言つているけれども、本名は違う。そういう場合にやむなく用いるのでありまして、普通の人が公然とやつておる事柄を、ころいうもので盗聴しようとはもちろん考えておりません。ましてや電話等の盗聴は一切いたしておりません。またそんなことをすべきものではないと固く確信をいたしております。
  71. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それであればけつこうでありますけれども、こういう盗聴器を備えつけたというようなことがすでに新潟県で一件、また鳥取県で一件現われて来ますと、そういうようなことがほうぼうで行われるのじやないか。単にあなたのほうの考えておるような共産党だけの問題じやないんじやないかというふうな不安が起つて来る。その上にさらにこれは警察じや電話まで聞くのじやないか。たとえば選挙なんかの場合に、その電話を盗み聞きするのじやないかというような不安まで起らざるを得ないのです。これはことに最近その警察制度が変つて国家警察一本になつて来たような格好になつて参りますと、まあ選挙問題なんかに対して、現におやりにならなくても、そういう疑いが濃くなつて来るおそれがある。だから私はその点は念を押しているわけなんですけれども、そういうことは絶対にないようにしていただきたいと思いますね。
  72. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私は誠にいい機会を与えられたと存じます。もし私がただいま申し上げておりまするような範囲を逸脱して、あるいは選挙犯罪に使つたり、あるいは他の一般犯罪に使つたり、そういうようなことが万一にでもありますならば、それをやつた者に対しまして、私の懲戒権の及ぶものであれば、断然これは懲戒をいたします。明らかにいたします。私の罷免権を持つていない府県警察吏員という場合におきましても、警察本部長に強くそのことを要請をいたしまして、万が一にも起らないことを、あらゆる方法をもつて防止するだけの私は党悟を持つております。その点を申し上げておきます。
  73. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ただいまの一松委員、岡田委員に対するお答えは深く傾聴いたしました。それに関連して、この刑事訴訟法上任意の供述ということは非常に慎重に規定されている。それからまた電話の盗聴というようなことは、国民生活を破壊するということと関連しまして、特にある種の犯罪のある段階において盗聴器を用いるということがそれらと関連して来なければ、問題はよほどないかと思うのですが、これはたとえば破防法などの場合にも、この議会で問題になつたことですが、破壊的な団体の捜査ということが、合法的な団結の自由というものを破壊するということは許されないことです。そういう場合にもなかなか末端というか第一線というか、さつきお話盗聴器使用されることが警備課長判断でなされるという場合に、今のような重大な問題が眼前の犯罪の追及ということで、重大な問題のほうがないがしろにされる場合がどうも私はやはり多いのじやないか。で電話の盗聴なりあるいは供述の場合であれば、はつきりして来るのですけれども、しかし先ほどのお答えの中にありましたそういう特殊なきわめて限定された場合に、盗聴器を用いて得られた資料が証拠力があるということがあまり強調されますと、それがきわめて限定された場合だけでなく、他に及んで来て国民生活が不安に堪えない、そこで警察に対して暗い感じを抱き、いわゆる秘密警察あるいは警察国家というようなことになつてしまつたのじや、それはとてもそれを取り返そうとしても、もはや及ばないということがありますので、これは戦争中ないし敗戦前、古い時代と今日とでは、法律なり制度なりの上では全く違つているというお話がありましたのですが、私もそう望むのですが、たとえば戦争中のことですが、よく私は例に引くのですが、牧野仲顕というようなりつぱな方でも、電話が盗聴されているということで非常に不安、そうして不愉快等を感じておられた事実を私は知つておりますし、そこまでなかなか行きはしないと思つているうちにそつちへ道を開いてしまうと、大へんなことになりますので、そこで繰り返すようでおそれ入るのですが、その特定の場合に盗聴器を用いて得た資料が証拠力があるというようにおつしやることにつきましては、ただいまのような点も十分御考慮下すつて、また御研究下すつて、それらの弊害が、取り返しのつかない弊害が起らんようにお願いしたいと思いますが、いかがでしよう
  74. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) ただいま法廷上の証拠としてどうだという御質問がありましたから私は法律的に答えましたが、実際問題といたしまして、こういうものを法廷に出す考えはもちろん持つておりません。また今そういう御質問がありましたからお答えいたしましただけで、これが証拠力になるから、これで証拠保存にするようにといろ奨励はいたしません。われわれといたしましては、もし特定の団体がこの非合法の組織、非合法の方法で現存の秩序を破壊するというようなことが実際ないということであれば、こういうものの使用は不必要だと考えております。従いましてまあ以上で御了承いただげると思います。
  75. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) お諮りいたしますが、ちようどお昼も過ぎましたから、一時休憩しまして、一時から再開いたしたいと思いますが……。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは暫時休憩いたします。午後一時より再開をいたします。    午後零時八分休憩    ―――――・―――――    午後一時二十三分開会
  77. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 委員会を再開いたします。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 午前に一般的な問題について質疑がありましたので、あと私若干鳥取県の盗聴器事件そのものについて長官見解を少し質したいと思います。長官のほうでも大体御報告は受けておられると思いますので、そのうちでまず第一、この事件が起きてから、警察側の諸君は犯罪捜査のためにやつたんだと、こういうことを言われておるわけですが、その罪名が明らかにされておらないわけなんです。なぜそういう罪名を明らかにしないのかと言いましても、捜査中だからと、こういうふうな趣旨お話なんです。これは私も直接本部長なり公安委員長に申し上げたことなんですが、何も罪名を言つたからといつて、それが捜査に支障を来たすとかそういうものじやないのですから、その追及されておる人はそんな程度のことはとつくに知つておるわけなんですよ。一般の人はだだ犯罪捜査と言つたつて、具体的にそれじやどういう犯罪なのかということはやはり聞かしてもらわないと、これは納得しないと思うのです。そうでなければ何かあるんだ、とにかく犯罪捜査のためにやつておるんだ、だから君らしばらくしんぼうしておつてくれと、こういう説明では、逆に考えれば実際は何もないのだけれども、そういうことを口実にして、いろいろな団体の調査をやつておるのじやないかとこういうふうにもとれるわけですね。だからそういう誤解を避けるためにも、問題になつた以上は、少くとも罪名程度のものは明らかにしたところで、これは何も捜査上には差支えないのじやないかと私は思います。これは国警のほうから手配を受けた事件だと一昨日もそういうお話がありましたので、私は差支えないと思いますので、長官のほうからその点明らかにできれば、明確にしてもらいたいと思います。
  79. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 誠にごもつともな御意見だと存じます。われわれといたしましても、はつきり申し上げたほらがそういつた誤解を解く上からも、なおいいのじやないかというふうに思うのであります。実は鳥取県本部で罪名を発表しようかという相談があつたわけであります。けれどもわれわれといたしましては、やつぱり捜査に支障を来たすということが非常に困りますので、罪名を挙げたところで大した支障は来たさないとおつしやいますけれども、罪名を挙げることによつて、というのは特に秘匿された組織でかくまわれておる、あそこでかくまわれておるであろうということは、これはもう前提としてある。その犯罪言つておりますから、そこでその罪名を挙げると、そうするとあれだということがすぐわかるおそれが多分にある。現在そういう種類のものといたしましては、あるいは一般の幹部追放になつて令状が出ているものがございます。それからリンチ事件で傷害を与えたものもあります。あるいはまた殺人容疑のものもございます。そのどれだということを言うと、大体どれで何の何がしじやないかということが相手側にわかり得る状態にある。これが私のほうは非常に困りますので、そういう意味から普通人の誰でも犯す、そうしてまた普通人の犯罪ならばこれはそう数も多いことでありますが、先ほど申しておりまするよう前提から推測をいたしますと、誰だということがほとんど特定される形になりますので、それで罪名を挙げることも御勘弁を願いたいと、こら言うておる次第であります。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 それじや私のほうから、まあこれは推測でありますが、お聞きいたしますが、この新潟の事件の場合には例の団規令の第十条による呼出しに応じない、こういういわゆる八幹部ですね、こういう罪名であるということが、まあ裁判の経過等においても明確にされておるわけなんですが、その関係のものじやないかと私どもは、あるとすれば推測するわけですが、それはどうなんでしようか、言つておりますか。
  81. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) これはそうなりますと、ちようど二十の扉みたいになりまして、(笑声)結局わかつてしまうわけなんです。どうぞそれは御勘弁願いたいと思います。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 私がこれを特にお聞きするのは、非常に重大な犯罪ということでありませんと、やはり犯罪のこの重大性に応じて手段相当強いものを用いる、こういうことが、これは常識的に、総合的に出て来るもので、従つて今はこう疑問になつておるのは、その対象は何か、これはみんな想像するのです。想像するのですが、一向それが明らかになつて来ない。だからこういうことで非常にまあ疑惑が起きておるわけで、私も実は聞くわけなんです。それが明らかになれば、そういうものならなるほど警察がこれだけの手段を使うということも場合によつてはどうかと、こういうことが成り立つのですが、これが全然判断ができないわけです。そういう、その程度のことは少しおつしやつてもらつたほうがいいじやないかと思うのです。それからもう一つ私は本当に盗聴器というものが必要だということであれば、何もそういう団規令違反とかそういう場合だけじやなかろうと思う。社会的に見た場合に、団規令違反よりももつと重要……社会的に悪いものがたくさんあろうと思うのです。ところが団規令のようなものだけに対してそういうものを使われるということになると、非常な差別扱いして行くということになるわけです。そういう点も非常に法律的な問題であろうと私は思うのです。ただそういうことはすべて対象が明らかにされませんと、私たち皆想像でものを言うことになるのですね。だからこういうことを想像で言うことは、非常にやつぱり慎まなければなりませんので、だから一つもら少し明確にしてもらつたらどうかと思うのです。
  83. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 犯人がどこかで逮捕されまして、あとで言うてもいいというときが参りましたら、あのときの被疑事件はこれだつたということをはつきり申し上げますが、それまでは御勘弁願いたいと思います。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことになりますと、私ども本当に鳥取警察のやつたことに対する価値判断ができないのです。たとえば多分当つておるだろうと思うのですが、団規令違反で、ともかくかくれているやつを追及しているのだ、こういうことだといたしますと、そのこと自身について私どもまたいろいろ実際はお尋ねしなければならない問題がたくさんあるのです。せんだつて五月十九日でしたか団規令違反で出て来なかつた松本三益君、あれの裁判が無罪になつていますね。もちろんこれに対しては控訴が出ておりますが、私そういう裁判所行つて無罪になるかもしれん、たとえ一審であつてもそんなようなものが対象になつておるときに、こういう手段が用いられたといたしますと、それだけから言つても、ちよつと問題があろうと思うのです。だからそういう意味ででも団規令の関係しやないのだという言い方でもできるのであれば、少し私どもまたある意味考え方が違つて来るのですが、先ほど長官はいやリンチの傷害とか、あるいは殺人とか、追放関係、まあ追放関係というのは、結局この団規令の関係になるのだろうと思いますのですが、二、三挙げられたのですが、リンチとか、殺人とか、そういう関係じやないということは言えますか。
  85. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) それはちよつと申せません。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 これは何回尋ねても同じようなことになるかと思うのですが、捜査上の秘密ということを、どうもあの例の汚職事件の証言拒否からほとんどいろんな場合に拡大される傾向があるのですね、私ども国政調査をやる場合に……。であなたが申せないとこうおつしやるわけですが、ちよつと申せない理由が納得行かない。どんな罪名かというようなことを言つたつて少しも差支えないと思う。ここうは議論になりますから、一つもし法務委員会等でこれはどうしても明らかにしなければならないということになれば、あらためてまた証人としてその点をお聞きするということになるかもしれんと思うのですが、まあ問題点だけを一つ投げかけて次の問願に移ります。  そこで次は鳥取事件で、やむを得ずやつたんだと、一応こういうふうに抽象的に言われているのですが、まあ午前中に触れた点は重複するから触れないことにして、こういう点が一つあるわけですね。この鳥取事件の場合に盗聴器をかけられたのは上山という、こういう女の共産党員、これは一年前に入党したばかりなんですね。まだ年も若い、これは常識的に考えてやむを得ないと、もうこれしか仕方がないんだというやり方とはちよつと考えられんわけですね。まあ、もつとも具体的に言えば、鳥取県の共産党の組織委員長なり、あるいはそれに代わるよう相当な幹部、そういう者の自宅なり、そういう諸君の会合場所、そういうところに実はつけとつたということなら、少しこのやむを得ずということに接近すると思うのですが、私はそうじやないと思う。これは常識的に現われて来た現象だけを考えると……。だから、あるいは、真相は上山にもつけたけれども、実はもつと大物にもつけておつたのだということであれば、まあそれも筋が通るかも知らんが、ただ上山だけつけておつたということなら、その点だけから言つても、本当にこうやむを得ずやつたといつたよう感じは受けなかつたのですがね。これはどのようにその点お考えになつておられますか。
  87. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 上山氏が借りているという形のアジトであつたわけであります。そこでどういう人たちが出入りをしていたか、これは申し上げればはつきりすると存じますが、これはちよつと秘密会合ででもあれば申し上げられると思いますけれども、公開のお席で、ちよつと申し上げるのをはばかりたいと思いますが、相当重要なと思える活動をしていた人たちが出入りをしておつたということでございます。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 私どもが参考人からその点を明確にしたところによると、上山がその場所で会つた相手は、某官庁に勤めている男性一人なんです。だから決してそんなにも大物とは考えない。だからそういう点も実は直接に現場の盗聴をやつた山根なんかに私ども聞きたいと思つていたのですが、山根が出て来なかつたので、被害者側の証言だけしか私どもが根拠にできないわけですが、その記録上表明されているのはそういうふうなことなんですよ。決してそんな大物が出入りしておつたとか、そんな状態ではなかつたのです。この点はそれはあなたのほうの情報はだいぶん間違つてるんじやないかと思うのですがね。
  89. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) ただいま私が申し上げている通りでありまして、これは決して間違つておりません。もしさような必要があれば、秘密会議でなら申し上げるかもわからんと存じております。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 その点一つ秘密会にしてでもいいですから、秘密会なら申し上げることができるということなら、明らかにしてもらいたいと思います。私ども判断一つ基準を求めるために、これは委員長のほうでしかるべく取り計らつてもらいたいと思うのですが、いかがでしよう
  91. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それではほかに一般的なもし質問があればあれですが、一応秘密会にして国警長官から話を開きますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは暫時委員会を休憩にいたします。    午後一時四十二分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十一分開会
  93. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより委員会を再開いたします。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 それから場所の借入れの問題ですね、これは長官も場所の借入れはちやんと理由を告げて借りたものだからよろしいのだ、こういうふうにまあ午前中言われておるのですが、少くともこの中村君義ですね、これの部屋を借りる際には、盗聴器をつけるのだということは明らかにしておらないのです。これはもう私、現場で調べたときもそうだし、この参議院で参考人として聞いたときもその点は少くとも明確なんです。だからそういう点は私は非常にまずいと思うのですがね、これはどういうふうにお考えですか。
  95. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) その中村さんの家へ部屋を貸して下さいということで借りて、おそらく何に使うのか聞かれなかつたのだろうと思いますが、使用目的はあかしていなかつたということです。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 部屋を借りたい相手は、部屋を借りるなら、そこで休んでからだを休めると、こういうふうに普通考えるわけですね、国の役人の人が別個な目的を持つている場合には、それを明らかにしませんと、これは非常な迷惑があとからかかるわけでしよう。で、そういう点ははつきり告げてそれじや一つ協力しましようという場合には、これはいたし方ないと思うのですよ。そこまで明らかにしないで、ただ貸してくれ、普通に使うのだろうと思つて、ああよろしいと言つたのだから、こちらは合法的に借りているんだと、そういうことには私ならんと思うのですね。借入れの重大な用件をかくしておる場合には、これは裁判所等で争いになつた場合には、当然これは契約は取消しできるでしよう。そんな性質の行動を私警察というものはやるべきものじやないと思うのです。そうでないと、今後警察がうつかりいろいろなことを言うて来ても、ちよつといろいろな条件、これは検討しなければいかんぞとこういう印象を私は与えると思う。そういう意味から言つても非常にまずいと思うのですがね。
  97. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私はその部屋を借りる場合、今の中村さんの家を借りる場合、何にどういうことをされるのですかと聞かれれば、それは大体目的を話してもいいかもしれないけれども、そうでなければ進んでしなければならないとは私は思いません、普通の常識におきまして……。何かあやしいと思えば、その家主さんがあなたそこで何をしておるのか、そんな目的のためなら使わないで下さいと言われればいいわけで、初めから目的を明かさないでやつたのは、警察が非常な行過ぎであつたとか不妥当であつたとかいうように私は考えません。ただ今のあんまさんの家につきましては、これはそういう装置をそこにするわけですから、これはやはり家主にこういうわけでこれをつけるからつけさしてくれ、これはその事情を話はしておると思います。今のやり方は、警察としてはそう手落ちと私は考えません。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 それはまああなたと私の考え方の違いです。これはやはり借りる場合に、自分が一つ目的をかくしておるから、相手がそれを錯覚に陥つておるわけですね。まあ普通の私人間の商売なんかでやる場合は、それはまある程度のことはそういうことはああつていいでしよう。いやしくも国の代表者が国民に対してやる行為としては、私はもう芳しくないとこう思うのですよ、これは見解の相違ですが……。  そこで最後に自後の措置ですが、この点を警察のほうのあなたは責任者として一つ見解を聞きたいのですが、これが十月十五日にいろいろないきさつから発覚したわけですね。ところが警察のほうは一般の人から質問を受けて、ああいうものは警察の品物じやない、いろいろなことを言つていますが、とにかく警察の品物と違う、こういうことをはつきり言つている。そういう問題が起きているなら一つよく調べてみよら、そういう言い方なら、これはまだ含みがあつていいのだが、ところが全然あれは警察のものじやない、そういうことを十五日に言い切つて、さらに十六日にまたそのことを言い切つて、それからずつと来て結局二十日になつて、実はあれは警察のものだつた、こういう言い方をしている。このことは私はもう警察というものに対するその経過を見ている人は、非常なやはり不信の念を抱くと思うのですね。何でそんなにはつきり否定しておりながら、五日後にはそれをはつきり認めたのか、いきさつはどうあつたにしろ、こういうことはあなたは責任者としてどういうふうにお感じなつでおりますか。
  99. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) その点私は誠にごもつともだと存じます。私も同感でございます。私ももし警察でやつているものならばしようがないじやないかという話をしたわけであります。当時としましては、ただ警察は協力者にこの事実を警察が認め、迷惑がかかつちやいかんということを非常に心配したので、これが協力者に迷惑をかからないために、そういうことが事実でないというように言えれば、そのほうがいいとこう考えようでありました。その心構は私は察せられないことはありませんが、やはりそれよりは一般の国民の方に対しては、初めからその通り話したほうが私はよかろうと思います。その点は私は同感でございます。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 それからもら一つ、この事件が起きまして、それから十月二十日の日に警察が事実を認め、それから二、三日してから当の責任者である岸本警備課長を札幌のほうに、まあこれは常識的には栄転と見るんですが、栄転をさせておるんですが、こういう措置はどうも非常に不明朗な印象を与えておるんですが、以前から何か転任の話があつたのかもしれませんが、たとえあつたとしても、むしろいろいろな問題を明らかにして、その後にまた転任させるということでもいいんじやないかと思うんですが、これは一体どういうふうにこの点をお考えになつておられますか。
  101. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) この点は御指摘のように、前から転任問題が起つておりまして、北海道のほうに欲しいという話がありました。ただ七月の制度切替のときにこの問題があつたわけですが、切替の際にはいろいろな善後措置の問題があるから、一応切替が済んでからということになつておりまして、あれはまあ今回転任になつた、別段この事件に関連を持つたものでもございませんし、またこの事件が非常にはつきりしておる事件で、本人の不始末とかいう問題でもありませんし、事件は片づいたといいますか、片づいたというのか、片づかないというのか、一応済んでしまつたことでもありますし、不穏当な転任とは思つておりません。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 事件が片づくということの考え方、見方ですね、これはいろいろだと思うんです。何か物を作り上げるという問題じやないんですから。しかしまあこのことによつて起きたいろいろな鳥取の政界における混乱とか、そういつたようなことは決して終つておらないわけですね。だからそういう際にやはり転任なんということは何も急ぐ必要ないんですからね、二、三カ月くらいなことは。そういうわんわん騒いでいるときにほかへもつて行つてしまう、これは少くとも転任に対してはやつぱりいろいろな疑惑を起させる私一つの根拠になると思う。だから決して長官が言われるように妥当な転任というふうには私ども考えないですがね。もうしばらく問題が落ちつくまでそこにいてもらう、こういうことはどうしてもできなかつたことでしよろか。
  103. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) あるいは結果的に見ればそのほうがよかつたのかもしれませんが、やはり転任には時期があるものですから、北海道のほうを長くあけておくわけには参らないということで話合ができたのでございますが、あとに残されているまあ政治的な問題というような事柄も、これは警察本部長なりがそれぞれ処理のできる問題でもありますし、本人が非行を犯したというようなことであれば格別でありますが、さようなわけでもありませんので、大したことはなからう、こう思つてつてしまつたんだろうとこう存じますが。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 大へんな問題を実は起しているんですからね、そう簡単にやはり言い切れない問題だと思つているんです。そこで結論的な一つ問題を提供して、あなたから意見を聞きたいんですが、それは現在の刑事訴訟法の建前では犯罪捜査する場合に、たとえば人、もの、こういうものに対して強制的な処置をとつて調べて行くという場合には、一定のちやんと法律上の手続が要るわけですね。その精神と、こういう盗聴器を使うということとは相当矛盾しておるのじやないかという点ですが、一般的な人権蹂躙との関係の問題は午前中にお話がありましたが、もう少し問題を下のほうに下げて、現在の刑事訴訟法の建前、制度からいつても大きな矛盾をするのじやないかと私考えておるのです。強制的に人を連れて来て調べる、あるいはものを強制的に捜査官がつかんでそれを一つ犯罪捜査の材料にする、これはやはり厳重な条件が要るわけですね。これは消極的な面から見れば、自分が知らないうちに一つの材料を取られる、こういうことを否定しておるわけですね、その考えは。強制というのは何も積極的に人に束縛を加える、ものに束縛を加える、そういうことも強制ですけれども、自今の意思に反して知らないうちに自分のしやべつたことが犯罪捜査といろ立場から抜き取られて行く、これはやはり一種の私、強制的な処分だと思うのですね。拷問の禁止とか黙秘権とか、これは皆な自分のきらいなことは検察官の前で言わない、これは自分に不利益なことは言う必要がない、こういう立場からできておる規定でしよう。だからそれとは私こういう犯罪捜査盗聴器をつけることは非常に矛盾した制度だと思つておるのです。たとえば十六国会で、ものの場所を看守、こういう制度を設けてもらいたい、これは法務省のほうから提案があつたわけですね。ある場所にものを押収に行つたところが、その場所にはなかつた。ないがどうもその近所にそのものが移されたという疑いがある、そういう場合にはしばらくその近所を看守できる、こういうよう規定を設けてくれ、こういう提案があつたはずですね。ところがそういう提案に対してすら国会のほうでは、それは拡張解釈されると大へんなことにたるからということで、その点は削除され、訂正されたはずですね。だからそういうふうにいやしくも、物とか人に対する意に反した捜査というものは、非常に厳重にこれはやはり組み立てられておるのですよ。だからそういう立場から言いますと、捜査手段としてはこういう盗聴器、電話の盗聴、信書の開封、こういうことはやはり放棄しなければならんのじやないか、根本的に……。そのために不便なこともあるでしようが、やはりそういう不便はもつとほかの科学的な捜査方法考えるとか、そういうことで補う以外に方法がないのじやないかと根本的に考えるのですが、その点どういうふうに長官としてお考えでしよう
  105. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) まあ捜査というものは被疑者から見れば全部意に反したことであろうと私は存じますが、しかしその場合に、何といいますか、自分の保障されておる家の中に入つて来て、物を探すとかいうようなことは強制捜査として令状がなければできない。そういう制限はございますが、そういつた強制手段を用いないで、そしてどの法律をも破らないということであれば、私は任意捜査として差支えがないじやないかと、こう考えておるわけです。犯罪の現場を意に反して見られた、暗い所で誰もわからんだろうと思つてつたところが、それが見られておるとか、あるいは特殊の写真を撮られて、その犯罪現場が見られた。普通の常識では十分秘匿できたと思つてつたのに秘匿できていなかつた、あるいは密談を聞かれておつたと、これはいわゆる強制捜査でないならば、令状なしにやつて差支えがないと、こう思つております。ただ盗聴というようなことは、ともすると乱用になるおそれがありますから、従つて私は先ほどから申しますように、特に秘匿をされた犯罪地下組織のもとで極秘のもとにおいて行われるというような場合だけに限つて使うべきで、そうでない普通犯罪にこういうものを使うことは、非常にやはり乱用になる。普通の家庭生活とか人にはいろいろ秘密がございますから、そういうものを侵すように相なつては私は相ならんと思うのであります。しかし一面地下の厳重な秘密組織犯罪を犯そうというような場合には、私は法律で禁止されていない範囲においては、任意捜査もできるだけ普通の犯罪とは違つたやり方の任意捜査も、常識上といいますか、あるいは社会通念上まあそれはやむを得なかろうというので許さるべきものと、かよに考えておるのでございます。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 私はこれも議論にわたのですが普通、人なり物に対して令状を取つて強制的な手段をとつて捜査すると、そういう場合のほうが調べられるほうから言いますと、対象が限定されておりますから、まだ私は安心しておれると思うのですね。ところが知らんうちに盗聴器などでやられるということになりますと、これの恐怖といいますかね、これの強制力というものはこれは際限がないですからね。普通の物や人に対して強制捜査をやる以上に、私実質的には強制的なものじやないかと思うのです。だからどうしても犯罪捜査上そういう盗聴器というようなものが必要であれば、普通の強制捜査と同じようにこれこれこれの理由で必要なんだからということでやはり裁判所に対して令状を求める、これをやるべき問題じやないかと思うのですれ。もちろんそうするためには現在の刑事訴訟法上幾らか疑義がありますから、そのほうがいいということになれば刑事訴訟法の規定を少し直してその点をはつきりすればいいわけなんです。そういうふうに私申上げておるので、まあ、たとえ使うとしても、そいうふうに普通の強制捜査と同じような手続をとつたらどうか、あなたは選挙犯罪とかそういうことには使わないとおつしやるけれども、あなたの見解で行きますと、ともかく野党の諸君のやつはまあこの際少し聞いておけと、地方の警察でそういうことをやつたつて、もうやむを得ずこれをやつたんだと、原則的にはこれは差支えないんだからと、必ずそういうふうに逃げられてしまうわけですね。だから私まあこの際、あなたはほかの犯罪には適用されないと申しますが、それはいつ適用されるか、そんなことはあなた自身でも保障できないわけですよ。あなたが全国事件を実際に捜査するわけじやないのですからね。だからそういうふうな考え方で一つ検討をすべきじやないかと思うのです。どうしても使うとおつしやるなら、刑事訴訟法上の明確な規定にこれを直すとか、私はまあそういうものを使うのは反対でありますが、使うとするならば、少くともそれだけのことは必要だ、どうでしようかね。
  107. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 先ほども申しておりますように、秘聴器を使うという場合にはどうしてもその建物なり部屋の管理責任者の同意が得られないと、その機械が据えつけられないわけでありますから、従つてどこにでも使えるようなものじやないわけであります。秘聴器を使わなくても、それじや私が皆聞いて教えてあげましようということであれば、それでも用を足すわけでありますから、従つて判事の令状をもらつて、話をするのにお前たち秘聴器を据えるぞと、令状があるからと言つてつたのでは、用をなしません。ただ、いわゆる協力者から情報を聞かしてもらうのと私は何ら変りがないとこう考えるわけであります。ただそれならどんな犯罪にでも拡げてもいいじやないかというまたそういう反問になるかもわかりませんけれども、しかし協力者を得てやるというような場合におきましても、私はこういつた特殊の犯罪に限らないと、いろいろな何と言いますか、また悪影響も来しますから、従つてこういうものは特に秘匿された犯罪組織において行われる犯罪のみに限る、それを逸脱すれば、これはやはり行過ぎだと、世間から非難があろうとなかろうと、警察としては自粛をする意味で、そういう場合には厳重に処分をして参る、かように申し上げているのでありまして、これは私でなくても誰であつても同様であろうと、かように存ずるのであります。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 こういう秘聴器とか電話とか信書というものの犯罪捜査立場からの盗聴或いは盗み読みと申しますか、そういう問題について運用面で長官は間違いのないようにして行くとおつしやるのですが、しかし法律上いろいろな点を検討して間違いが起らんようにしておけば、これが一番いいことなんでありますから、そういうふうにしてもこれは差支えないことだと思うのです。これはまあ国会自身考えたらいいことかもわかりませんが、私どもそう思うのですがね。そういうふうな点を間違いが起らんようにやはり適当な形で立法をして行く、これは長官も反対はされないと思うのですが、その点いかがでしよう
  109. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 電話や信書は、これは法律でその秘密は侵してはならないということで保障されておるわけです。従つて、電話、信書に対しましては、強制令状がなければこれを知るわけに参らない。電話について捜査上必要があつた場合に、令状でその電話の盗聴ができるかどうか、これは私はおそらく今の刑事訴訟法ではできないのじやないかという感じがいたしております。アメリカにはそういう立法があるそうです。従つて、電話につきましては、われわれ捜査上必要だと思つても、何ら施すすべがないと、現在はこれは保障されておりますから……。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 その電話についても、施すすべがないのだけれども、場合によつてはそれをやりたいわけなんでしよう、実際は、幾らか……。だから、そこに問題があるわけですね。だから、それならば、いよいよの場合にやる場合には、こういう厳重な手続でやるのはしようがないというふうな立法があつたほうがいいんだが、逆に……何もないもんだから勝手に聞いておる。あれは非常に簡単な装置でやれるらしいのだね。だから、僕らは実際非常にやつぱり社会党の左派なんというのは、目をつけられやすいから心配するわけですよ。そんなことはやらんというだけじや、とてもそう簡単におさまるもんじやない。だから、アメリカにも何かそういう立法があるらしいし、この際、やはりこれはもう一連のそういう関係についてよくお考えなつたほうがいいんじやないですか。国会で考えてくれということなら、私ども一つ考えてもいいですが、積極的にあなたのほう自身がもつとお考えなつたほうが……、どうですか。
  111. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私は電話はそういうことをやれば現在では処罰されるわけですから、従つて警察はそういうことほ絶対にやらせないようにいたしております。ただ、人の話を聞いてはいけない。聞いたら処罰をされるということであるならば、この場合には聞いてもよろしいという法律を、これは作つていただかたければならない。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 この程度にしておきます。
  113. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私一点だけ伺いたいと思います。せんだつて二日間にわたりまして参考人からいろいろのことを伺いましたときに、先ほど秘密懇談会のときもちよつと申したんでございますけれども、私はどうしてもこの言葉の上で今度の捜査陣が、捜査陣の立場からいうと、非常に重大な特殊の問題だからということを言われておりますけれども、私の受け取る感じは、どうしてもそういうふうに受け取れない。ことに、人権問題に関係しておりますよう盗聴器を使うというようなことに対しても、その必要性に対する私は自信がないというように受け取れたのであります。今でも、この秘密懇談会で伺いましたので、少しは納得ができたようでございますけれども、しかし、警察本部長さえも知らなかつたということから見ますというと、盗聴器を使わなければならないという事件が、いかにも末梢的な部分的なものであるよう感じがしたのでございます。それにしましても、捜査が終りました結果、本当にみんな国民が納得するよらた重大な、特別なものであつたという結果になれば、これは許されると思つております。しかし、それが反対に、それこそ泰山鳴動して鼠一匹出なかつたような結果でございました場合に、私はその責任を誰がとるかという問題について伺いたいと思うのでございます。大体、ごく最近にそういう感じがいたしますけれども国民警察検察に対する非常な不安と不信を持つておるということは、いつも事件に対する責任のとり方について私どもは非常に不満な点を持つておるので、これはもうただ責任をとつてもらうということについてのみ私どもは安心してまかせられるというよう考えておるのでございますが、そこで盗聴器を使うなぞというようなことは非常に慎重に考えて、まあ私から考えますと、ほかに万策尽きて方法がないから、やむを得ず使うというような場合にのみ私は使われる、それは許されるものだとまあ私譲歩したいと思つております。そういうことにつきまして課長級の人だけがこれを指揮しまして、知つてつて、その上の人は知らないというようなことでこれを使われたら、私は重大問題が起りはしないか。そこでそういう、つまり捜査の結果はあまり芳しくないというようなときの責任者をどの辺に筋をお引きになるつもりか伺いたいのでございます。
  114. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 捜査の結果が芳しくないと、これは捜査をやつて見たのちの話になりますので、これがそういつたような場合においても、たとえば人権蹂躙を侵しているというならば、これは責任をとらなければならないと存じまするが、先ほども申しましたような、ああいう状況のもとにおいて、その会合の内容を知るということは、これはもしあの通りを天下に発表をすれば、そしてまた私は最後まで罪名は申しませんでしたが、その罪名まで申せば、ああいう場所において、そういう状況のもとであつたならば、やむを得なかつたろう。しかし使つて見たが、そこからはいい材料が出なかつたという結果になりましても、私はこれは責任は問う必要がない、こう思つております。それまでの前提が非常に間違つてつたのならば、これはそういつた間違つた前提を与えたものがしかるべきそれは責任をとる必要がある、かように存じます。そこで警察本部長が知つていなかつたということは、私はこれは実際としては知つてつたほうがよかつたと思いまするし、今後としては知るよう指導をいたしますと先ほども申し述べておきましたが、こういつた事件捜査の主務である課長であるならば、私はその課長判断においてやればまずまず間違いはない。こういつた事柄について、とにかく専門にやつている責任課長でありますから、事実上は私は差支えなかろうと思います。しかしまあいろいろな観点から本部長も十分知つて、そして本部長も承諾をした上のほうがよかろう、かように私も存じまするので、今後そういうよう指導はいたしたい、こう存じております。
  115. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 事件捜査につきまして、もちろんこの事件につきましても、今の段階で何というか、右か左かわからないことはもちろんでございまして、そのことについて責任云々と申しているのではございませんで、それは事件に対する見通しが違うということも十分あるだろうと思うのでございます。しかしながらこの重大なといわれているこの事件に対する今の段階でも、課長級のところで事件の指揮をして、そして警察本部長なんかなどちつとも関係しないような、それくらいなものに対して私はこういう秘聴器を使つたりするということが一体適切かどうかという問題でございます。これはもつと、もう練りに練つて、困りに困り抜いて、おそらくこれは全国的な大きい組織でもつてつているというような問題でございますならば、もちろん警察本部長もまたその国警長官自体も御存じになるよう事件に対してのみでなければ、私はこういう人権問題に関するような器でございますから、使つてはならないのではないかというように私は考えております。そこで結果から言つて、もしやつぱり何もなかつたというようなときには、私は明らかに責任をとつていただきたいと願うのでございますが、そうお考えではございませんでしようか。
  116. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) この事件は非常に大きな事件で、私も十分承知をしております。この事件と申しますか、この被疑者の事件は、鳥取で行われた事件じやありません。今捜査範囲は、犯罪中はもちろん、その他ほとんど全国でもうやつておるわけでございますから、被疑者がどの方面にも行くようなおそれが多分にあるというようなことも、私は報告を受けて知つておる事件でございます。ただその場合に、具体的にあすこの家で秘聴器をつけていたかどうかということは、これは私も知つておりませんでした。本部長は、そこが相当重要な被疑者の手がかりを得る場所だということは、私は承知をしておつたろうと思います。現実に捜査のやり方において秘聴器を用いたということについて本部長が事前に承知しておつたかおらなかつたか、多分おらなかつたように申しておりますからそらであろうと思いますが、今後は本部長も十分秘聴器を使う場合には、今ここにこういうわけで使うということまで本部長承知をした上のほうがよろしいと、かように思いますので、今後はそういうよう指導をいたしまして御意見に副うようにいたしたいと思います。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと速記をとめて下さい。
  118. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  119. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは速記を始めて。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと質問する前に、人権擁護局長にお願いだけしておきます。本来ならば、擁護局長のほうでも地元の法務局を通じてすでにお調べになつているようですから、御見解を実は聞きたいのですが、どうも時間等もつまつておりますので、いずれ総合的な結果が地元から参りましたら、一つ局長としての立場からの御見解を聞きたいと、こういうふうにまあ要求だけしておきます。  それから私、ストライキに関する警察権の発動の問題で二つ長官に聞きたいのです。一つは山梨の中央銀行の労働組合のストライキですが、御質問したいことを全部時間を節約する意味で先に申上げたいと思うのですが、第一の点は、十月の二十六日の午後ストライキの現場で労働組合員が警察官から暴行を受けておる事件です。問題点になりますのは、その当時、ストライキをやつておる第一組合が銀行の外側におる、それから第二組合の人たちは銀行の中で仕事をしておる、こういう状態です。銀行の中におる人のために第二組合の諸君が外部から食糧を中へ搬入しようとしたわけです。その搬入について第一組合と第二組合が協議をしていたのです。その協議中に、いつまでもぐずぐず待つておれんから中へ突込めということで、紛争がそこで起きておるのです。その紛争の際に、業務妨害とか、公務執行妨害とか、そういつたよう立場で第一組合員の人が検挙をされておるわけです。そういうことが業務妨害とか公務執行妨害になるかならんかと、この問題は私は今論ずるわけじやない。たとえそれが警察側の言うがごとく犯罪に該当するとしましても、第一組合員として承知できない問題は、検束された後に検束された労働者が警察官から暴行を受けておるのです。これは私は明らかに行過ぎた警察官の行動だと思う。だから警察官としては、犯罪があると考えれば、現行犯であればすぐそこで逮捕する、そういう法律上の権限はあるでしよう。ありますが、逮捕した後にさらに引続いて暴行を加える、そんなことは絶対あつちやならないことなんです。警察官の行動は逮捕までなんです。あとはいやしくも独立の人格者としての扱いをして行かなければならないのです。そういう問題はときどき起るのですが、この山梨の場合には、写真の上にそれがはつきりとこう載つておるのです。労働者が検束されて路上に倒れておるのですね。そういう状態では抵抗も何もできないのす。それに対して警棒で突いておるわけです。これははなはだしく行過ぎなんです。こういうのをそういう事態において検束するしないという基本的な問題を私は今言うのじやない。たとえ警察官が検束するにしても、した後にさらにこういうことをするということは、これはもつてのほかなんです。これは山梨の署長も、この新聞で見れば警察官の名前もわかつておるから十分調べると、こう甲府の署長も言つておりますが、これに対するおそらく報告も来ておると思いますから、長官としての見解を一度ここで聞いておきたい。参考までにこの新聞も、御覧になつておるかと思いますが……。  それから第二は、そういう紛争があつた後に、警察のニユース・カーがこういうことを町の中で言いふらして歩いておる。組合は争議のための争議をやつておる、こういうことを言いふらしておるのですね。これもはなはだしく不見識なことで、警察というものは、争議に関連して犯罪行為があればその立場活動して、あとはそんな動くべき問題ではない。もろちん、警察のニユース・カーでそういう放送がされたので、組合の人が署長に抗議を申し込んでそのことはすぐやめさしたようでありますが、そういうことがたとえ短時間でも行われるということ自身に、警察の性格といいますか、非常にやはり問題になるものがあろうと思う。それが第二点。  それから第三は、ちようど私はこのストライキに関連して二十七日の晩に甲府へ参りました。そうしてストライキの場へ行きますと、銀行の前に第一組合員の人たちが集つておる。その道路を隔てて反対側に会社側の暴力団ですね、こういう諸君がたくさん集つておるわけです。私があいさつをしておりますと、私に対する投石があつたわけなんですね。これはまあ当りませんでしたが、私は国会議員が街頭であいさつをしておるときに石を投げると、こういう行為自身、これは非常に質的に重大なものを持つておると思つて、直ちに署長に取調べ方を実は要求しておきました。署長はもちろんそういうことは悪いと言つておるのですが……。今私三つの問題をここで具体的に申し上げたのですが、そういうことが行われる背景には、山梨の警察、あるいは甲府の警察というものが何か非常に偏頗なことをやつておる、たとえば暴力団に対しては割合寛大に扱つておるとか、そういうことがあるからこういう事件が起きて来るのではないかと思うのですね。こういうことをどういうふうにお考えになるか。私はまあ根本的なストライキの問題等に入ると、これは非常に見解が分れて来ますから、そのことを今申し上げておるのではなしに、具体的に現われて来た事象を申し上げて、そういう立場から一つ長官見解を聞いておこうとこう思つて申し上げたわけです。  それからもう一つは、東京証券のストライキですね。あの際にストライキに関連して逮捕をされましたのが、二十六日の三時頃七名あつたわけです。この場合には、約二十五、六名の労働組合側の人が負傷をしております。これは決して山梨のように逮捕後にどつかれたとか、そういうのと少し違うのですな。その逮捕することに関連してその時間の間にどうも起きたようです。しかし私それにしても、この二十五、六名に負傷を負わすようなやり方でもつて人を逮捕する、これははなはだ問題の性質から言つて、事柄が行き過ぎておるのではないかと考えるのですね。これは被害者のほうからは、日本橋の署長なり適当な人を告訴する手はずを整えておると思いますが、報告もすでにあつたと思うので、この際長官の一応この点の見解を聞いておきたい。
  121. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 山梨のほうから先に申し上げたいと存じますが、山梨のほうの争議の際にとりました警察の行動につきましては、私も相当詳細に聞いてみたのでございますが、まあ全体として申し上げますると、私は山梨の警察は争議に対してはきわめて適切な方法を講じていたと、かように申し上げてよろしいと思うのであります。あとのほうの問題になりまするが、投石の問題のごときも、たまたま亀田委員がお見えになったときにも投石があつたそうでありますが、その前にも、ちょうどあすこは人通りの多いところでありますから、従つて、争議に対して応援をする人もあれば、またそういう争議はあまりにもひどいじやないかいう第三者もあつたようで、そういつた第三者が投石その他の暴行に及ぶようなことがあつてはならないというので、警察としても相当慎重に警告なりあるいはそういうことのないように事前の措置を講じておつたようでございます。  まず第一点の、検挙をしてから後に暴行を加えた、もしそういうようなことが事実であるといたしまするならば、私はこれは警察官としては職権乱用であると、かように存じます。ただ、先ほどの写真でございまするが、これは警察官が職権行使をいたしました際に、警棒を奪取されたので、その警棒を取り返して検挙をするために、逮捕術によってこれを倒して、そして警棒をもぎ取った、そのときの状況である、かように報告をいたしております。なるほど見ますると、一人の警察官は警棒を取られております。倒れておる被疑者は警棒を持つておるようであります。そのはたに警棒を持つた警察官がおりますが、これは私は逮捕をするときの状況であつて、逮捕してから後に暴行を加えておる状況ではないと、かように存じます。あるいは告訴でもあれば、裁判所でその係りの警察官も大体わかつておるようでありますし、その実際の模様をして裁判官にでも、あるいは検事にでもお目にかければ、なるほど逮捕の際にやむを得ざるに出た警察の行為であるということは御了解願えるであろう、私はさように存じます。  それから宣伝カーで争議のための争議はやめて下さいという宣伝をしたということでありますが、山梨の警察でその放送をしておりました警部について調べましたところが、さような放送をしたことがない、かよう言つておるようでありまするし、ことはその通りでありましたかありませんか存じませんが、大体当時放送内容の原稿も持たしていたようでありますし、趣旨は争議は争議として合法的にやつてもらいたい、違法にわたるようなことがあつてはならないということが主であつたろらと私は思うのであります。争議のための争議と、どういう状況のもとで申しましたか、事実はさよう言葉使いはしておらんと、こう言つておりまするし、相当乱闘のよう状況なつた後に申したよう言つておりまするので、乱暴な法律を破るようなことがあつてはならん、法律を守つてもらいたいという趣旨のことを申したというように報告を受けております。  それから東京証券の場合に、二十数名の負傷者が出たということでありまするが、当時現場で指揮しておりました指揮官もさような負傷者の出たことを全然認めていないと、こう申しておりまするし、また負傷者が出たという報告もまだ受けていないと警察ではさように申しておりまするので、もし現実に負傷者がありましたならば、お知らせをいただければ、さような事実があつたかないかを十分調査をさせてみたいと存じます。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 一応御答弁があつたのですが、この東京証券の負傷者の問題は、これも組合のほうからいろいろな証拠書類等を付けて告訴をすることになつておるはずです。ただ東京証券の問題については、ピケの限界性といつたようなことが法律的に問題になつておるので、その点の検討が、書類として出すには、幾らか手間どつているのじやないか、そういうことでありますので、これはいずれ書類が出ると思いますが、厳重にこういう点は一つ調査をしてもらいたいと思います。  それから山梨のほうのニュース・カーの問題ですね、これはもう新聞社の人もみんなたくさん聞いて知つておるわけなんです。でそんなことを否認されるのであれば、証人になりましようというような人もたくさんおるわけです。これは負傷事件としてはすでに検察庁のほうに告訴がされ、その告訴状にそういうことも事情として書かれておるはずでありますので、これはまあだんだん明確になろうかと思つておりますが、ただいまの長官の説明からいつても、警察のニユース・カーが何か町の中を歩いたということだけはこれははつきりしておるようです。これはそういうニユース・カーが出る場合には、やはり非常に注意しなければならないと思うのです。警察というものはあくまでも労使の問題については中立的な立場でやつているのだ、そういうことが誤解されないような少くとも用心といいますか、そういうことがありませんと、非常なやはり疑惑を受けると私ども思いますので、今後そういろニユース・カー等についてはやはり十分注意をしてほしいと思います。で、第一の暴行の問題ですが、なるほどこの写真には倒れておる人が警棒を持つております。持つておりますが、もちろんこの警棒を持つておるのも、警棒で乱暴されたからこつちはその警棒を持つておる、それだけに過ぎないので、それじやその警棒を取つたことは悪いとしても、倒れておるものを何も警察官が感情的になつて突く必要はないわけですね、私はそれを言うわけなんです。で、あくまでも罪と個人の人格というものはこれはもう別個に考えて行きませんと、ああいう争議の現場になると、労使あるいは警察、みんなが非常に興奮し勝ちでありますが、そういう感情にかられて一つやつつけてやれというようなことは、もう微塵もあつてはいかないと思う。もしあつた場合には、これはやはり今後のみせしめとして適当な措置を講じて行く、自分の部下が善意でやつておるのだからといつたようなかばい方をすると、結局警察というものはやはり資本家側の味方をしているのだ、こんなふうにとられてしまうわけです。それは本質的な問題をそこに含んでおりますが、少くともそういう感じを与えるようなことだけは厳重にやはりやめてもらいたいと思います。そのためにこの人の関係の処分、これは組合側とか、ここに倒れておる人の言い分も十分やはり長官として直接これは聞いてもらいたいのです。警察側だけの報告じやなしに、そつちの人は一体どう言つているのか、そういう立場一つ公正に裁くようにしてもらいたいと要求しておきます。時間がないのでこの程度で終ります。
  123. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) その警棒云々の被害者なり証人等、お話があれば私も十分聞きたいと存じますが、私はその写真を見、また説明を聞きまして、一応のところでは、警棒を取り返すための行為であつて、それはちようど逮捕術でやりまするほとんど型の通りだと私は聞いておりますし、またさように見ておるのでありまして、でその瞬間の写真でありまして、私はさように今も信じておりますが、しかし証人なりあるいは御本人等に、もしお話を聞かしていただけるならば、私も十分伺いたいと思つております。そうして方針におきましては、亀田さんのおつしやる点と私は全く同感でございます。もしさような事実があれば、厳重にそういうことのないようにいたすべき処分をいたしたいとかように存じます。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 警棒を取り返す一つの術かもこれはしれませんが、ともかく倒れておる人が自分ではこうやつておるわけですね。倒れておる人はこういう格好で倒れておる、そういう人の頭の上に一人の人が膝をついているわけですね、こんな警棒なんというものは逮捕してしまえばいつでも取れるのです。この人が立つていたならば、ごんこんなぐつて来る、そういう場合もそれはよくあるわけですね。もう倒れてしまつている、そんな人に対して道路の上で、頭の上に膝を警察官がつけて、もう一人の警察官が腹のところを突くなんて、これはなるほど一対一でやつているような場合の使うべき術かも知らんけれども、もう黙つている場合にまでそんなことをやる必要はないと思うのです。警察官のほうはそういう説明をあなたのほうにはされておるでしようが、やはり被害者のほうも十分聞いてもらつて、いつもこういう問題が起きるのだが、なかなかこういういい所を写真に撮れないのですよ、実際はあとになつていつも水かけ論になる。たまたまいい写真があつたから私は十分検討してもらいたいと思つているのですから、この点一つ公平な立場でやつてもらいたいのです。
  125. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 十分検討いたします。亀田さん、それはこう倒したときの瞬間の写真なんですよ、あとでこうしたように見えますけれども……。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 まあ被害者に聞いて下さいよ、あまり弁護されると、よけい妙だ……。
  127. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 時間もありませんから簡単に、大体三つの点を伺つておきたいのですが、第一はこの鳥取県の盗聴器の問題などとも関連して警察庁長官の御説明の中に出て参りましたことで、また、最近いろいろな事実とも関連して来ることで私が心配になることがあるので、この際一つ高い見地でお答えをいただいておきたいと思うのですが、犯罪の概念ということなのです。人を殺すとか物を盗むとかいう、誰が見ても犯罪というものと、それからややまあ政治的な意図があつたというような印象をも持つて、必ずしも政治的な意図をもつてそういう法律をお作りになつたかどうかを私は議論するわけではないのですが、そういうよう関係もあつて、新しく法律でもつて罪が作られる場合がございますね。破壊活動防止法なんか、今までそういう罪はなかつたのに、新しく法律でそういうことが罪ということになつて来る。これは長い議論はいたしませんが、誰が見ても罪というものの場合と、それからそういう新しく法律ができてそれが罪になつた場合ということで、それが及んで来る結局の問題は人権擁護の問題になつて来るのですが、この誰が見ても罪の場合には、その罪を犯している方にも罪の意識がありますし、従つてあくまで秘しかくすとか、手段を選ばずするとかいうことはないわけです。ところが政治上の主義主張とか、あるいは誰が見ても罪というわけではない、そつちの立場になればこつちこそ、お前のほうこそおかしいのだというようなことがあると、罪の意識というのか、罪の自覚とかいうものがない、確信犯とかそういつた関係も起つて来る。そういう場合にはずいぶん……、つまりまあ合法の手段を尽して、それでもだめだというときに、それであきらめられないでなお合法でない、或いは公然でないいろいろな方法をも用いられる場合が起つて来ると思うのです。これは明治時代でもなんでもそうでしよう。現在の自由党の方々の先輩でも、やはり政治上の主義主張ということのために、場合によつてはそういうふうな非合法の行動をされるということか起つて来る。そこで問題なのですが、伺いたいのは、そういう政治的な関係もあるよう犯罪についての非公然とか、あるいは非合法とかそういう活動をされて行くときに、警察がそれにつれて非公然、非合法あるいは秘密とかいう活動をなさるおつもりは私はないというふうに承知しておるのです。それから破防法のときにもそういう気持はない、それをやりますとまあたとえば例を引くと失礼かもしまませんが、ある政党なら政党が非合法活動をして行くということになつて警察もそれにつれられて非合法的なことをやつて行く。そうすれば警察がいつの間にか秘密警察になつてしまうのです。これは過去の特高警察というようなものもそういうふうなものである。それが一般国民に与える迷惑が非常に大きいということなんです。盗聴器の場合にもそうでしようし、尾行とか、張り込みとか、あるいはいわゆる協力者を得ようとなさるとか、スパイを使うとかいうことも、それで大した効果もなく、一般に与える暗い影響が非常に強い。私は昭和八年にいわゆる治安維持法の嫌疑で逮捕されたことがありましたが、そのすぐあとでしたか、昭和十年ごろであつたと思いますが、藤沼さんが警視総監をしておられた。何かそういう問題が起つたときに藤沼さんが公けに発表された意見に、スパイ警察は絶対にいかん、自分はそういう警察がスパイを使うということはせんということを言明されて、私はそれを聞いて非常に明るい気持になつたことがある。事実それは果しでそういうふうになつたかというとそうではなく、ますますスパイ警察になつてしまつたのですけれども、高い地位にある、警察の高い責任を持たれる方の態度がよほどよくても、末端ではその弊害が多いわけなんです。そこで今の問題について一つお答えをいただいておきたいのですが、相手が非合法のあるいは秘密の行動に移るからといつて警察がそれにつれて非合法、秘密の行動に移るというようなことは原則上お考えになつていらつしやらないと固く信ずるのですが、いかがでしよう
  128. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私率直に申し上げますが、相手が非合法のやり方を強くして行く、それにつれて警察も非合法のことになつてはいけない。これには私は全く同感でございまして、警察はどこまでも合法のやり方でなければ私はならないと思います。しかし合法のやり方ということと、それから警察活動がある段階においては一般に知られては困る、秘密捜査を進めなければならんということとは別でありまして、秘密でやつておることでも、これは一たん公開された場合に、何ら非合法でない、世間の承認を受るよう方法でなければならん、かように私は思つております。
  129. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それが今の問題が一番端的にはつきりわかつて来ますのは、拷問なんかということにもなつてしまうと思いますし、どうか今の原則で一つあらゆる機会に高い立場から第一線まで徹底するように十分この点で、最近ひんぴんとして起つて来る事件にはその点の行き違いも多分にあるのじやないかと思う。  そこで第二の点なんですが、今のいろいろな起つて来る事件で特殊な犯罪、それのまた非公然の組織的なというふうに先ほどからしばしば言葉を重ねて御説明になつておりますが、それを伺つておる間に起つて来る必配なんですが、今のそういう特殊な非公然の組織的な犯罪であれば、こつちもいわゆる非合法な方法をとる、そういうことは絶対にない、ただし、法の許されたる範囲内でもつて秘密の行動をするということが許される場合もあるのじやないかという御意見ですが、そこで起つて来る問題は、その秘密でなされる、合法なんだけれども秘密でなされることは国民に不安を与えることになるわけですね、それはおわかりになりますね。そこで不安を与えることに対しても、もちろん国民に不安を与えるから、もうこれは一切いけないという議論も成り立ちましようが、しかし警察立場としてその場合の基準として特殊な犯罪、そうして非公然、組織的ななかなか大問題だというところはしじゆうおつしやるのですが、しかしもう一つの要件が私は必要じやないかと思うのです。それはそこにその場所、その人についてそれを疑うに足る十分の証拠がある場合に限らるべきじやないかと思うのです。そうでありませんと、大犯罪だから一般に網を張るというようになつて見込捜査、あるいは見込みで張込みをする、あるいは見込みで盗聴するとかいうことになつて来ると、不安のほうが大きくなつてしまつて警察活動に対する国民理解ということが無理なつて来やせんか。その点で今度鳥取の場合などもその場所でその人について、そしてそこで犯罪が行われているのじやないのですね、事実……。で、その犯罪関係の人がそこへ出入りするかもしれないということなんです。その辺のところの、これは私は勿論しろうとですから立入つていろいろ伺いたいと思うのじやないのですが、最高の方針として実際そこにおそるべき犯罪が行われ、または行われた、あるいはその直接の関係の人がいるというような疑うに足る十分な証拠というか、これは絶えず御指導の上に強調されていることと思うのです。いやしくも見込みでどうもそうらしいというような警備課長なり、あるいは警察官なりの主観的な疑念というものでなすつているのじやないと思いますが、その点はいかがですか。
  130. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) まあ大体お説の通りでありますが、直接そこに現実の被疑者がいる、あるいはまあ被疑者といつてもいろいろありますが、それに関連した被疑者がいる、あるいは直接そこから被疑者の捜査の重要な資料が得られる、こういう確信がなければいけないことは同感でございます。
  131. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 つまり主観的な判断というものでなく、客観的な証拠がそろつて……、これをどうか常に徹底さしていただきたい。どうもその点の不徹底から起つて来る不安を私どもが伺つて、感ぜざるを得ない立場に立つのではなはだ困るので、どうかお願いしたい。  それから一般的な問題としては最後の点なんですが、まあイギリスとかなんかそういうふうな国々では、家宅捜索ということがずいぶん国民の常識としてというのですか、コンモン・ローというのですか、一般的な法の観念としても各人の住居というものはその人の城であるというくらいに考えられ、それをお互いによく守られていることがあるのですが、日本ではまあ住居の形からいいましても、すぐがらがらと開ければ入れて、たちまち玄関から次へ応接間へ入れるようになつているということもあるのですが、この点から起つて来るところの行過ぎ、警察権なりなんなりのほうの行過ぎ、国民の受ける不安というものが多分にあるのじやないか。で先ほど一松委員などからの御質問ように、供述なりなんなりの刑事訴訟法上なりなんかでそれが保障されている以前に、そういう一般国民の常識として個人の、私に立入るということについて、遺憾ながら私の見るところでは第一線で働いていらつしやいます警察官方々のお考えに、十分個人の住居とか、あるいは個人の寝所あるいは個人の行動、個人の思想ということについての認識、それらを尊重せられる認識がどうも残念ながら十分と思えない。これはおそらく御同感ではないかと思う。その点についてどうぞ新しい制度の最初の、最高の責任をとられるあなたが特段に何か御努力下さるようなお考えがございませんでしようか。
  132. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) ただいま伺いまして、私もなるほどそうだという感じをいたします。警察みずからの、行動をします、みずからの必要によつて行動します場合はもちろんのこと、また個人のまあ住居の神聖といいますか、それを第三者から侵かされないよう警察は保護をするという意味から申しましても、今伺いまして私なるほどおつしやる通りだという感じをいたしました。大体お説のようにもう慣習上でしようが、人の屋敷へ黙つてつて来る、いそうしてあるいは立聞きするのがあまりとがめられないというよう状況にあることは、これは民主主義国のいい慣例と申しますか、慣行と申しますかではないと思います。一般国民方々の御協力を得ながらさようように持つて参りたいとかよう考えます。
  133. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 最後に具体的な問題について今のようなことと関連することなんですが、最近大学関係で残念ながらひんぴんとして事件が起つていることは斎藤長官も御承知通りだと思います。その中の一つとして、この愛知大学に最近起りました事件、これは愛知大学の法学、法経学部の学生、女の方ですが、その方に対して、これは豊橋警察署の署員の方が協力を求められた。でところがこれに対しては学生自治会あるいは教授会のみならず、最後には愛知大学校経学部、文学部、教養学部各教授会の決議に基いて愛知大学学長が豊橋警察署長に向つて申入れをしておいでになります。その要点は、この学生を警察のスパイにしようとした疑いを持たしめるのでありますが、純真な学生にスパイ的行為をなさしめることは、当該学生を精神的にそこなうだけでなく、また、ひいては学生間相互に不信の気風をも助長し、教育上由々しき大事と言わなければなりません。次にまたこの事実は警察署員を使つて旧特高的思想調査をなしつつあつたことを認定せしめるに足るものと考えられますが、もししかりとすれば、憲法の保障する学問研究の自由、思想の自由を著しく脅かすものであります。こういうように述べておられる。これは法経学部、文学部、教養学部、各教授会の決議によつて愛知大学の学長が警察署長に対して申入れをされておることでございますが、この事件については、あなたはどんなふうに現在お考えになつておられますか。
  134. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私はその事件に対しましては、かよう考えておりますが、まず警察側から申しますると、まあ協力を頼んだということにとられてもやむを得ないのかもしれませんが、その女子学生の兄さんと警察官は非常に親しかつた。そこの家で知合いになつた女の学生でありまして、その家で兄さんなんかと話しているときに、学校の中の話が出た。その話、そこからそういうようなことについては、また知らして下さい。承知をしましたというようなことで進んで行つた事件でございまして、私のほうから申せば、その女子学生が自分たちのこれは言うべきことではないということなら、それは言えないと言つてもよろしいし、またそんなことは警察官に知らせる必要はないと思うことは知らせなくて何ら差支えのなかつた段階であつて、その女子学生とされては、もう少し私は初めから自主性を持つた態度でおられたならばそんな問題に発展しなかつたのじやないか、かよう考えております。警察官がその女子学生をスパイに仕立てるべく非常な権謀術数を用いたとか、あるいは脅迫的なことをやつたとか、そういうようなことではなくて、きわめて友好の話の間からそういうことになつておる。私はかよう警察官も、そういう女の学生に近づいたことは不用意であつたといえば、なるほど不用意であつた点もありますが、ことさらにそういうように持つて行かないで済まし得たということはおかしいことではありますが、事柄ではなかつたかと、きわめて不幸な事柄であつたとこう考えております。
  135. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私はこの問題のこまかい点をあなたに伺おうとしているのではなくて、それでさつき念を押して申し上げているのですが、愛知大学の法経学部、文学部、教養学部の各教授会で決議をして、そうして愛知大学の学長が警察署長に申入れをせられているというよう事件ですね。今お話ように女子学生に対してあなたがもつと自主的な態度をとれ、国民を激励されている点は私も同感で、また感謝します。また国民警察官などといつてびくびくしないで、ぽんぽんはねつけるようにもつとして行くといいのですが、残念ながら日本ではある意味ではいじらしいことですが、警察官にできるだけ協力しようというような気持を持つている他面、警察官をおそれるような困つた現象もある。私が今伺つているのはさつき藤沼さんの例を挙げたのですが、あなたは高いレベルにおいて責任のある方ですから、今問題になつている愛知大学学長もきわめて高いレベルで問題を取り上げている。高いベレルにおいて学生をスパイとして、学生にスパイ的行為をなさしめるようなことは、全国警察において私はあるまじきことだと思う。あなたももちろんそういうことは許されないことだというようにお考えになつているのだろうと思うのですが、その点はいかがですか。
  136. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私はその点は同感でございます。学生を専門スパイのように使うことは、これはよろしくない、かよう考えております。それとこのごろの学校の状況はどうかとこう聞くのとはこれまた違うかと思うのですが、そこにはおのずから段階があるだろう、かように思うわけであります。私のところへ学生がたずねて来た、このごろの学校はどういうふうになつているのか、自治会はどうなつている、こうです、ああです、教官のところへ行つたら、学内の様子を探られた、これでは私はちよつと困ると思うのであります。
  137. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今のようなこまかい枝葉末節の点を伺つているのではないのです。最高の方針を伺つているのですから、どうかあなたもそういうようお答え願いたいと思います。最後に一々列挙しませんが、本年に入りましてから早稲田大学において、あるいは慶応大学において、あるいは東北大学において、あるいはただいまの愛知大学において、大学内における警察権の行使について問題が起り、それがあるいは学生の自治会の問題として、あるいはただいまのような教授会ないしは学長、その大学の最高のレベルにおいて問題になつているという際でもあります。かつ御注意を喚起するまでもなく、二、三年前に東大で起りましたいわゆるポポロ座の事件というものについての裁判所の御意見というものも明らかになつていることでありますので、かつまた制度が新しくなつたときに高い責任をお持ちになるあなたが、この問題についてどうか学問研究の自由または学生の活動の自由というようなことを警察はおびやかす、そういうよう意味において純真な学生にスパイ行動をなさしめるとか、あるいは学内において活動している、いわゆる思想団体というか、いろいろな文化団体、そういつたものに対する思想的な活動調査するということはあり得ないことだというようにお考えになつていると存じますがいかがでしようか。
  138. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) ただいまの御所見には私は全く同感であります。私は強いて弁明するつもりはありませんが、ただいま挙げられましたうちで、早稲田大学の問題、東北大学の問題、私は慶応のことは存じません、聞いておりませんが、この二つは聞いております。これらはむしろ警察がその学内を捜査ようとか、どうとかいうものではなくて、むしろ私はでつち上げられた問題であつて、非常に警察は迷惑をしておると思います。早稲田事件のごとき、東北大学のごとき、詳しくは申しませんが、警察官が、何と申しますか、野球を見ておつた、ただあのとき警察官が、俺は警察官だと言えばよかつたが、ここで学内に入つて野球を見ておつたならばとつちめられると思つて、うそを言つた、それはけしからんと私は言つておりますが、行つた動機はそんな動機で行つてつたのではありません。早稲田事件のごときは、初め新聞に伝えられたような問題ではありません。むしろ警察がそういうふうに利用されて、そしていかにも学内に調査に行つたような印象を与えられて、われわれが被害者ではないかと実際は思つております。御所見には全く同感でございます。
  139. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そういうように、簡単に申し上げますが、被害者だというふうにあなたが高いレベルでおつしやるのを伺うと、残念な気がするのです。あなたは高いレべルの、責任を持つておられるのですから、警察がそんなふうに見られておることの原因について、それを一掃せられる態度を示しでいただきたいというふうに思うのです。  それから最後に、これはこまかいこととを一々伺おうというのはでないけれども、たとえば朝日新聞の本年六月二十六日の都下版のもの申すというとろに、日比谷公園の裏を歩いていると、あるいは神宮外苑で服装検査を受けた、上野松坂屋で入口を出たら包んでいる品物を出せ、これはそれぞれ三つ違う人の投書ですが、さつきのあなたの話を借用すると、はなはだ不幸なことで、これを一々どうだということを伺うのではないのです。一括しまして、警察官国民に対する態度というものは、人権、民主主義日本警察官国民人権を十分に尊重しておるという印象をわれわれが持つて、そしてあなたにいつもお目にかかるというようにしていただきたいと思うのです。どうですか。
  140. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 全く賛成でございます。先般も読売新聞が、警察官がこうこうこうだという投書が三つ四つ重なつておりまして、私はおそらくその投書の事実ははつきり……大ぜいの警察官の中には必ずしも十分ではない者もおると思うので、私は新聞のほうも話をして、警察はこういうつもりでおるということをはつきり書いてもらつたらどうだと、活をさせておりますが、それはそういつたことがあれば、われわれの本旨ではないから、直接監督者なり何なりに、どこどこでこういうことがあつたということを知らしていただければ、そういうことを再び繰返さないように一般の協力をいただきたい。特にその場所がわかつておれば、警察官もわかるのですから、将来そういうことのないように改悛さして行きたいと警察もそう思つておるということを新聞にも書いていただいて、一般の協力をいただきたいと、こう考えておる次第であります。
  141. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 最後に一言、これは問題が違いまして、日本に現在まで住んでおられる朝鮮人の方々に関して、われわれいろいろ訴えを受けて、それを伺うと、同情にたえない場合が多いのです。これは問題は、必ずしも警察関係ばかりではないので、明日いろいろ伺うつもりでおりますけれども、あなたにお願いしておきたいと思うのは、朝鮮の方が日本に現在おられる歴史的事情があることはよく御承知通りです。それについてはいろいろわれわれ自身として反省しなければならん、日本の国家として考えなければならん点もあることも御説明申し上げるまでもないのです。やがて外交関係等も確立すれば、解決する問題が多いだろうと思うのです。かつまたそれらの方々が今日なすつておられます生業があまり好ましくない生業であるということも、それらの方々が生業に就かれる機会を非常に制限され、一般には失業の問題等もあり、従つて朝鮮の方々が就職せられるにもいろいろ困難なことがあつて、その結果好ましからざることをもなさるということも多々あろうかと思う。これらの点に朝鮮の方、ことに東京など多い場合ですが、その他にもありましようが、これらの点について何か特段にそういう方々に対してもちろん必要にしてやむを得ないというよう取締りについてまで、とやかく申すわけではないのですが、一般に同情をもつて取扱われるというような措置をとつておられるんでしょうか。あるいはまたはおとりになるというお考えがございましようか。これは今、日韓会談なりまたは朝鮮と日本との外交関係の再建というふうな点からも、しじゆうこういうふうな事件が起つて、そしてそのために外交上の問題の解決にまで好ましからざる影響を与えるというふうに考えられる点もございますので、その点を伺つて私の質問を終ります。
  142. 斎藤昇

    説明員斎藤昇君) 私ども朝鮮の方方に対しましてもただまあ犯罪は憎むけれども人は憎まないと、これは日本人に対すると同じよう考えております。特に私は朝鮮の方々がやむなく犯罪に追い込まれるという経済状態にあるわけだから、従つて何らか正当な職業に対して門戸をあけるよう警察としてもできるだけ尽力をしてみたらどうかということを、機会あるたびに言つておるのであります。地方の朝鮮人であつてもいい人も相当多いわけでありますから、責任の持てる人が保証するならば使うというような仕組みなり、あるいは一人でも二人でもいいからそういうようにやつて行ける配慮が望ましいということを、私は前の警察長会議にも二、三回言つておりますし、政府に向いましてもさような措置をとられることをときどき望んでおるのでございます。
  143. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それじや最後に私から人権擁護局長にお伺いしたいと思います。実は一昨日あるいはその前からいろいろ人権擁護に関します具体的な事案として、あるいは鳥取の問題、あるいは今日お聞きの通りの問題を各委員から熱心に捜査、あるいは質疑の形において究明せられたのですが、私も実は昨年の予算委員会人権擁護局長にたまたまそのときの新聞に出ておりましたある女の事務員が夜十時頃自分の会社の車ではないかと、もし自分の会社の車であつたならば、それに乗せてもらつてというので自動車の番号を見た。ところがたまたまそこを警ら中の何と申しますか、売春取締のトラツクに引つかかつてトラツクに乗せられた。そのときに責任者はどう言つてるかと言えば、どうもそういうことは大ぜいの中だからやむを得なかつたんだというような回答をし、あるいはまたその当局者はどうもそれぐらいのことはしようがなかつたんだろうというようなふうに新聞に載つておりましたから、当時の局長にもう少しその侵害された個人にとつてはそうしたことは、特に妙齢の婦人にとつては致命的な被害であつて、大ぜいの場合、あるいは一般的な場合にやむを得なかつたんだというよう警察署長なり、あるいは当事者の談話で済まされるべき問題でないので、十分取り調べていただきたいということを予算委員会で申し上げ、その後も何ら調書もいいただいていないのですが、私ら新聞を見ましても、相当この人権擁護に関するあるいは個人の人格の尊重ということについては、日本の長い歴史的な慣行からとかく麻痺し、あるいはまた等閑視されておると思うのです。それで昨年行政整理の委員会があつて人権擁護局が問題になりましたときも、私自身が当時副委員長をしておつたのですが、私はむしろ拡大すべきであつて決して縮小すべきものじやないとの意見を言い、拡大はされなかつたのですが現状の通りなつたのですが、要するに私は擁護局がもう少しこういう個々の事案について、事案が起つたら、すぐ実態を調査するなり、あるいはその事情をもう少し調べるなり、もう少し人権擁護というあるいは擁護局を置いたという本当の趣旨に徹し、もう少し活発な活動ができないものかどうか、いつでも率直な言葉で言えば、歯痒く感ずるので、当法務委員会も三日間にわたつてこうした問題、あるいは個々的な問題を取り上げていろいろ調査するというのも、一つにはやはり擁護局自体の活動が私は不十分であるのじやないかという気がするのですが、それらを総括して擁護局長の御意見一つ承わりたいと思うのです。
  144. 戸田正直

    説明員(戸田正直君) 多分昨年でございましたか、委員長から予算委員会において御質問を受けたことはただいま御質問通りです。そこで人権擁護局におきましてもさつそく調査いたしまして、良家の子女が売春取締法にかかつて吉原の病院に送られるという事件をさつそく調査いたしまして、四谷警察のとつた処置が妥当でなかつたというので私ははつきり、忘れておりますが、多分勧告をいたしたと覚えております。  それから日本におきまする人権軽視といいますか、人権に対する理解がまだ十分でないことは、ただいま委員長仰せられた通りであります。また人権擁護局がたくさんの、いろいろの人権問題についてまだ適切な処置がされておらないのじやないかというようなことにつきましても、大へん遺憾でございますが、十分な手当をいたしておるとは私からもまだ申し上げられないよらな状態でございます。そこで今年の人権擁護局で取り扱いました件数の大体でありますが、一月から九月までにすでに総件数二万八千四百五十九件、これは昨年の統計二万九千五百四十四件でございましたかに比較いたしますと、かなりの数がふえております。そこで内輪話と申しますか、人権擁護局の機構、予算等がいつも問題になるのでありますが、これも率直に申し述べますと、機構、予算が非常に貧弱でありまして、国民人権を適切に擁護するには十分なものではございません。内訳を申しますと、人権擁護局のただいまの職員の全部が私を入れまして十三名というわずかなものであります。各四十九カ所に設置されておりまする法務局の職員が多分百六十三名だつたと存じます。予算もきわめて貧弱でありまして、人権擁護局の調査費用が年間三十二万くらいかと記憶しております。それから四十九カ所の調査旅費が多分二百万そこそこかと存じます。つきますと、一局当り平均しますと大体四万円程度というようなことになつておりますし、また人権擁護局、また法務局の職員の権限等につきましても、これは多く申し上げている時間がございませんが、警察あるいは検察庁等と違いまして行政捜査権というものを実は持つておりません。任意に調査するということが、非常に調査上に行政捜査権を持つているものと比較して調査がしにくいし、また非常に手数を必要とするのであります。そして年々事件が漸増しておりますので、これに対処して行く上に、非常に法務局の職員等にも、言葉が少し適切じやありませんが、酷使しているくらいだと思うのであります。あるいは基準法違反のような状態でいろいろ無理をさせておるのであります。先般の近江絹糸の事件におきましても、ほとんど徹夜で実は職員を使つてつたのであります。現地のいろいろの苦労を考えますと、非常に無理も言えないというのが実は私の本当の気持であります。と申しましても、予算が少い、機構が少いから、また権限等におきまして強力なものを持つておらないから、十分なことができないといつて、この重大な人権の問題を放置するということはこれはもう許されませんので、できる限りの力を挙げて実は対処いたして参つております。従つて局外者から見ますと、熱意がないのじやないかとか、あるいは十分に動いていないのじやないかというようなそしりもあるいは受けるかとも存ずるのでございますけれども、これは今後一つ委員の皆さんの御協力もぜひお願いしたいと思うのですが、予算等におきましても、あるいは機構等におきましても、さらに一段の拡充強化ということが私はどうしても必要である、かように私は考えておるわけでありまして、至らない点は私たちも反省をし、またできる限りの努力をしなければならんものだと、かよう考えておるのであります。
  145. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 実はわれわれも先日法務省の次官から、あるいは経理の担当者から予算の概況をお聞きいたしたいのであります。私自身もそのとき申し上げたのですが、どうも法務省の予算というものは目玉がない、何か建物の費用と旅費、そういつたような費用だけで、何かもう少し政策的な目玉になるような、言いかえるならば、われわれ法務委員会も本当にこれならみんなで力をあわせて一つ押すというような、そういう一つの政策的な予算というものがないのじやないか、その一つとしてわれわれも人権擁護といつたようなものも、ある意味から言うと、政策的な目玉になる法務省の予算じやないかということを申し上げたのであります。そのときのおつしやつたのでも、人権擁護局の人が少いこと、経費がきわめて少いこと、なるほどこれじやなかなかやれんということもわれわれは痛感しておるのですが、一つ先日来の当委員会における人権擁護に関するこれらの事案の審議等にかんがみまして、またあなたが実際人権擁護上いろいろやつておられる実績等から見まして、一体日本における人権擁護というものが本当に責任をもつてやるためには、こういつたよう一つの理想図がほしいのだ、たとえば人の面でも、機構の面でも、あるいは権限の面でも、あるいは費用の面でもというような、なんでしたらわれわれにもそういう意味一つ人権擁護に関する一つの理想案、それをするあれを一つお示しを願いたいと思うのです。これは私の希望ですから、あえて御返答をされる必要はありません。  それでは本日はこれをもつて委員会を終ります。    午後三時四十五分散会