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1954-10-19 第19回国会 参議院 法務委員会 閉会後第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月十九日(火曜日)    午前十一時十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高橋進太郎君    理事            小野 義夫君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員           池田宇右衞門君            剱木 亨弘君            棚橋 小虎君            羽仁 五郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    公安調査庁次長 高橋 一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (各種団体の最近の動向に関する  件)   —————————————
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより法務委員会場を開会いたします。  本日は検察及び裁判運営等に関する調査各種団体の最近の動向に関する件を議題といたします。高橋公安調査庁次長より状況の御説明を願います。
  3. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) まず最初に、日本国内共産党動向というものに非常に重大な影響を持ちます国際共産主義勢力動向につきまして、ごく最近の事柄を申し上げたいと思います。  今月の十二日に御承知の中ソ共同声明が出まして、これに対する政府の考え方は、これは当時外務省から発表になつた通りでありますが、これに対して日本共産党がどのような反応を示すかという問題について先ず申し上げたいと思います。共産党は翌日直ちに新聞記者会見をいたしまして、第一点は、社会主義国家外交というものが資本主義国家外交というものに比べて非常に違うということを申したほかに、今度の提案日本にとつて利益であのるのみならず、実行可能なものであるということを申したと新聞は伝えておるのであります。続いて十月十六日のアカハタ主張で、中ソ両国との正常な国交回復のために中ソ両国共同宣言についてという主張を出しております。で、それを見ますというと、まずこの中ソ共同宣言に現われた対日提案というものを実現させることが、党にとつて当面の非常に重要な課題であるということをうたつておるのであります。すなわち「いま中ソ両国共同宣言に確認されている諸原則にもとづき、これらの具体的問題の解決のために、大宣伝、大運動をおこすことはとくに大切である。」とし、また「共産党労働者階級は、すべての党派、すべての組織が中ソとの国交調整の道にたちあがるために先頭にたつてたたかわればならない。」というようなふうに説いて、その点を明らかにしておるのであります。これが第一の特徴でありまして、共産党ソ連擁護という立場に立つてソ連ないし中共の利益に奉仕すると言つて差支えないと存ずるのでありますが、そういう立場に立つて次の政策を立てております。その一つの現われがここにあると思うのであります。それからこの「主張」における第二の特徴は、この中で平和的共存政府を作り上げなければならないということで、政権の問題を取り上げ始めたことであります。この「主張」の全体の論調は、必ずしもこの平和の政府ということを第一義的に取り上げた形ではないのでありまして、まだきわめて遠慮深く、いわば手探りのような印象をも受けるのであります。ただ平和的共存政府といいますと、異なる体制間、すなわち資本主義国家社会主義国家との間において平和的共存を認める政府という意味でありますから、すなわち共産党のいう民族解放民主革命というものをなし遂げて、その上でできる革命政府というものとは違う、革命を起すまでもなく、現在の体制のままでできる政府ということを意味するわけであります。このような平和の政府というものが具体的に何であるかということは、この「主張」自体は明らかにしておりません。ただこの「主張」の中で、「わが国でも左派社会党は、公然と、この中ソ両国共同宣言を支持し、その実現に努力するむね声明している。」というようなことを申しておるのは、きわめて示唆的であると考えるのであります。で、結局この平和の政府というのは一昨年十月のスターリン論文にあります「平和の政府」と同じものを指しておるものと考えるのであります。それで今回の中ソ共同声明に対しまして、日本共産党のとる手段というものはいろいろに考えられるわけでありますが、これを一応三通りに分けてみまするというと、一つ提案実現がきわめて困難ないし当面不可能であるということで、結局宣伝的効果だけをねらうという場合、すなわち日本のいわゆる対米依存関係を清算しなければ話はできないというような立場で高度のスローガンを掲げて、もつぱら革命的宣伝的効果をねらうという場合、それからそれと反対に、宣伝はもちろんいたしますけれども、その程度を引き下げましてなし崩しに実務関係、すなわち貿易の促進であるとか、文化の交流であるとかという実務関係強化という実際的利益を主とする場合、それからもう一つは、第二の場合よりもやや情勢が有利であるとして、そのような実務関係強化するのみならず、ここに政権の問題を提起して、現在の政府よりもより親ソ的な政府作つてそれによつて実務関係を飛躍的に強化させようとする場合というようなふうに分けて考えることができると思うのであります。私どももその中でどのような方向に出るだろうかということで注意いたしておつたのでありまするけれども、この「主張」によりまするというと、ただいま申し上げた中の第三の道を進もうとするかのごとく見えるのであります。ただ先にも申しました通り、まだきわめて自信のない書き方でありまして、これだけをもつて、はつきりとその点を、こういう道を進むであろうというふうに申し上げることは差控えるべきであろうというふうに考えておるのであります。  そこで次は、現在日本共産党のとつておる平和政策というものがどのような目的のものであるかという点につきまして申し上げます。七月二十四日付の中央ヒマラヤと申しまして、党中央労働運動指導機関ができておりますが、その出しております機関誌の週報の第八号に「平和擁護闘争国際連帯闘争について」という論文が掲載されております。これによりまするというと、「当面の平和擁護闘争の最高の目標は、当面の戦争を引延ばし、一時的に平和を維持することであり、その環は如何にして両体制共存を闘い取るかということであり、これを客観的に見れば、アメリカを孤立させ、社会主義人民民主主義国の力を決定的に強めることであり、従つて同時に各国国内階級闘争を有利にし、各国民族独立闘争に支持を与えることとなる」ということを申しております。この点は共産党社会民主主義政党とのはつきり分れるところでありまして、国際的には戦争を何とかしてやめよう、国内的には議会で何とかして工夫して社会をよくしようというような立場とは違いまして、共産党戦争を不可避とし、また議会主義を否定しておるのでありますが、そのために平和問題についても要するに当面やりたくない、戦争はこれを引き延ばしてその間に自分の陣営を固めて、また相手の矛盾を激化して相対的に力関係の優位を獲得するというところにねらいがあるわけであります。共産党国民大衆に対して呼びかける場合には、今私が申し上げたような真意は努めてこれを明らかにしておりません。ただただいま申し上げたような党内の非公然誌においてこのような真意がときに現われるのであります。  次は最近における日共動向のうち、まず基本戦術について申し上げますが、御承知のように、日共は新綱領によつて民族解放民主革命目標活動して来たのでありますが、これまで戦術上の情勢判断を保つたり、あるいは極左的ないし右翼出偏向を侵してその運動は必ずしも順調に発展して参つたとは言えません。すなわち党は昨年の秋、すなわち朝鮮停戦以来この問題について重要な自己批判をいたしましたが、それによりますると、「現在敵の力はなお強大であり、味方の力はなお劣勢である。従つて今日の段階では何よりも先ずこの敵味方力関係を逆転させることに全力を注ぐべきである。」とし、大きく戦術転換を行なつたのであります。この戦術は前述した国際共産勢力方向と結合したものであります。すなわち現在小さく固定化したかの感のある革命戦線を一段と大きく発展させるために、スローガン程度を引き下げまして、反米、反吉田、反再軍備統一国民戦線を結集し、いわゆる米日反動勢力を包囲し孤立化させようと企て、この国民戦線指導権を党が握り、これに新綱領を注入して、革命勢力たる民族解放民主統一戦線に育成しようとしておるのであります。このことは本年一月二日付アカハタ指導論文、「平和と民主主義生活を守る国民の大統一行動を目指して」において明確に示され、また昨年末から本年春にかけて、党中央全国組織部長会議組織防衛会議機関紙部長会議労働関係会議青年婦人対策会議選挙対策会議朝鮮人運動会議などを開催して、平和独立民主主義生活を守る統一行動を各戦線においていかにし、いかに発展させ、その中で党の独自活動をいかに進めるかなどの具体的戦術を指示したのであります。以上の統一戦線による党の独自的政治活動につきましては、党は、この六月の第十九国会における汚職問題、乱闘問題などに対する世論の高まりをとらえ、吉田内閣打倒国会解散、あるいは臨時国会召集統一行動組織するため、六月以降中央指導部及び全国拡大機関社会党労農党総評その他民主団体に対し共闘を申し入れ、七月十五日の党創立記念日とあわせて全国戦線百数十ヵ所に集会を催し、総計五万数千人を動員し、政治運動を展開し、さらに中央地方選挙対策会議を開いて農業委員選挙各種地方選挙統一選挙綱領を掲げて臨んだこと、その他首脳部会議とか、水爆反対など、国際的国内的諸問題をとらえて独自の活動をして来たのであります。  次に、平和闘争でありますが、以上申し述べましたような戦術に基いて、党が現在最も力を注いでいる闘争平和擁護闘争であります。党はかねてから、この闘争は今日全世界人民の最も重要な第一義的の任務であり従つてまた共産主義者の第一義的の任務であると強調して参つたのでありますが、最近いよいよ国際的な連携を緊密にし、戦線統一拡大に務めているのであります。そして党は平和民主的自由、生活を守るための反再軍備闘争は、今日の段階ではまだ民族解放民主革命意識していない人々も、また主観的にはこれを望んでいない人々も広く包含して闘うことができ、また包含して闘わねばならないとし、またこの運動日共革命意識で引き廻したりすることを避け、あらゆる階層の国民の自主的な運動として展開させようとしており、平和運動では国際的国内的に世界平和評議会等の諸決議基本方針とし、党の外郭団体である平和擁護日本委員会とか、アジア太平洋地域日本連絡会議などを主体とし、各種行事などでは総評その他民主団体中心にその実行委員会等組織し、統一行動をとつているのであります。最近の具体的な平和運動状況としては、世界平和集会日本準備会の呼びかけに基づいて原水爆禁止アジア安全保障軍事基地、再軍備反対憲法擁護経済文化交流問題など、国際緊張緩和のための当面の運動を展開することを主眼として、去る六月二十五日から八月十五日までの間平和月間が実施され、その運動は八月六日、八月九日の両原爆記念日乃至八月十五日の終戦記念日を頂点として全国的に盛り上り、八月二十九日の東京関西平和祭など盛大に行われました。この平和月間行事も、表面上は党ないし平和擁護日本委員会主催のものはきわめて少く、大部分各種平和団体民戦総評その他一般市民団体によつて主催されており、八月十五日記念日前後の集会数全国で三百以上を数え、その動員数も八万名をこえたといわれております。  このように平和運動は非常に大きな巾をもつて発展いたしましたが、しかしこれによつて党が予期した成果が挙つているかどうかという点では、相当問題があると思われます。たとえば労働組合平和闘争には、ストライキや賃金問題に限定するような経済主義的セクトがあり、また総評は、憲法擁護国民連合中立系平和連絡会議方針といつたようなセクトがあり、超党派的な平和委員会でさえプチブル的セクト主義があり、平和擁護闘争運動集会など、ともすれば上すべりな形式主義に流れて、いわゆる平和一般運動に固定し、平和運動は一種の行詰り状態に陥つたという自己批判も現われているのであります。そこで党は平和闘争平和戦線をより以上に強化発展させるため、前述の世界平和集会日本委員会の呼びかけの運動を進めるとともに、当面の運動中心的課題として民族独立国民主義回復目標にし、この方向国民意思統一して行かわばならないと主張しております。たとえば水爆禁止運動としては、わが国の平和と独立外交を樹立せよとか、原水爆禁止協定国際的話合いを進めよという政治的要求国内組織統一して行く方向にリードして行こうとしております。それゆえこの平和運動はより広範な国民政治運動として展開され、しかもその中で党の独自活動はますます活溌化することが予想されるのであります。  次に、最近の軍事方針については、先に申し述べましたように、本年一月党が平和と民主主義生活を守れという政策を、発表して以来、軍事面においては一貫して隊の基本的任務大衆闘争組織的な防衛であるとして、その活動形態フアツシヨ闘争行動中核となつてこれを内部から強化することであり、その目標は三反統一戦線強化し、長期かつ困難な道途を克服して民族解放民主統一戦線より革命を達成することにあるとして、現在においてはその重点を最も基礎的な組織的活動においているのであります。また従来その組織工作農村工作に主として指向されていたように見られ、その成果は必ずしも党の宣伝ほどではなかつたと思われますが、最近の党の中央軍事機関紙、「同民の星」は労働組合青年行動隊に対する工作を大きく取り上げ、これに対する実情の把握とその実情に即した工作の進め方を指示しているのであります。  次に労働運動については、先に述べました九月十日付の中央ヒマラヤのメモの第十五号において労働運動指導方針を要約してありますが、それによりますと、この指令の根幹をなしておりますものは、最近党が繰返し強調しております労働者階級間の両体制平和的共存を闘い取る以外に、生きる途がないということの説得活動を徹底的に強化し、これによつてMSA体制からの離脱と再軍備政策に対する反対の闘いを全国民的な闘争に盛り上げなければならないとしていることであります。さらに具体的問題として、第一に、産業別統一闘争根幹となつております金属、運輸、鉱山などの労働者統一行動意識的に強化すること、第二に、平和擁護闘争を徹底的に重視すること、第三に、党が徹底的に大衆の中で活動して、労働者の多数を獲得し、産業拠点の工場を握ること、このための障害になつている左右のセクト主義との闘争を苛責なく闘うこと、第四に、社会民主主義思想の誤謬の克服を意識的に行うこと、その方向は具体的な行動で徹底的に統一行動を呼びかけ、この中で社会民主主義の仮面を被つた売国奴統一行動破壊者として大衆的批判で放逐して行くことという四点を挙げておるのであります。それからさらに総評秋季闘争方針に対しまして徒らに、ゼネストを形の上だけで引き回そうとする総評幹部のあせりを説得し、ねばり強く長期統一を強める闘争組合民主化を団結の方向指導する必要があると力説しているのであります。  また、フランスイタリーの総同盟招待の問題については、これは今月初めに、御承知のように仏伊両国のそれぞれ共産系労働同盟から、総評に対して労働運動の経験を交流するという名目の下に、合計三十五名に上る組合幹部招待の申出がありまして、これらの代表は去る十九、二十日の両日それぞれ出発したのでありますが、このことに関しましてこのメモほ、この招待は実際には中国工会招待であつて、それは中国日本との国交がいまだ回復されていないために生ずる諸種の事情を考慮して、中国工会イタリーフランス同盟の協力を得て日本労働者階級アジア労組会議実質的会議懇談会目的として招待したのであるということを述べているのであります。このような指導方針に基きまして、実際の党活動において最近の特徴的な点を申し上げますと、第一に本春の労働関係全国会議以来、労働者階級間に平和と国際連帯運動を強力に盛り上げようとして特に活溌な動きを示しておるのであります。党はこの運動を推進することによつて労働者階級大衆的規模における平和勢力化をねらい、全グループを挙げて強力にこの工作と取り組むよう最近しばしば指令しているのでありますが、去る総評大会直後の七月十六、七日の両日に、第三回世界労組大会普及実行委員会表面上の提唱者として主要労組幹部有志を集めて、平和と国際連帯運動強化のための全国懇談会を開催し、ついで二十六日にはこの運動を推進するためのサービス・センター設立第一回準備会を開催し、十月にはその創立総会が持たれることになつておるのでありまして、党の工作はこのように進捗しておる状況であります。  第二に、統一委員会の問題でありますが、党はこれまで絶えず統一委員会活動の赤色労組主義的な偏向を戒めておつたのでありますが、去る二月の労働関係全国会議におきましては、最近労働者階級統一行動が急速に進展しておるにもかかわらず、統一委員会が依然としてこれまでの偏向を克服し切れず、これらの有利な条件をとらえて統一行動拡大し、党の強化を図るための十分なる機能を果し得ないことを自己批判いたしまして、むしろこのようなセクト的な統一委員会はこの際これを解消し、あらゆる分野にわたる統一運動内部党組織の建設ということを前提といたしまして、これを中核として統一の一点で一致するすべての意思結合体を、条件に応じて新しく再組織するという方向を決定しておるのでありますが、最近ようやくこの線に沿つた活動組合内党組織によつて活溌に行われつつあるようであります。また、これらの工作指導する機関として労働運動指導、先ほど申しました「ヒマラヤ」の機構も、新しい情勢に対応して最近相当整備された模様であります。  次に、党の組織の現状でありますが、党は昨年来全国的に総点検の拡充運動を実施して党風の刷新、理論的武装を図り、あらゆる風雪に耐え、勝ち抜く堅固な前衛党に鍛え上げようと努めております。合法戦線拡大を図る一方、依然として非合法態勢強化し、最近特に活溌になつ大衆団体内のグループ活動のほか、将来の暴力革命に備えて軍事活動合理的運営など、党活動は日夜間断なく展開されておるのであります。また最近の地方選挙の結果を見ますと、若干比較に不適当なのでありますが、昨年四月の総選挙に比べまして、党の得票はおおむね二倍くらいに増加し、また先の農業委員選挙においても全国で約七百名の党員が当選しております。また中央地方議会も、これは必ずしも党の影響ということに限定はできないのでありますが、原水爆禁正決議を行うなど、軍国主義復活、再軍備反対中心とする平和、独立運動はますます国際的連繋を密にし、大衆化し、拡大して来たことはいなめない事実であります。このような一般的情勢から見まして、党勢力は一応最近上昇傾向にあると見得ると考えるのであります。ただ一面では、先ほど来申し述べましたように、国際的、国内的に党に有利な条件があり、また国民統一活動も相当広範に組織されているにもかかわらず、その中核となるべき党の組織が、労組内はもとより、その他の大衆団体文化団体の中でまだまだかなり力が弱い点があるというふうに見得るのであります。……朝鮮人右翼のほうはどうしますか。
  4. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 亀田委員にお聞きしますが、右翼関係も一括してお聞きしますか。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 一括して報告していただきましよう。
  6. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 在日朝鮮人動向は、いろいろな関係わが国の治安上ゆるがせにできない、特にその大多数を占める北鮮系の中には、共産主義勢力が根強く滲透しており、反米、反日本政府意識がきわめて強いのであります。これら北鮮系朝鮮人は、在日朝鮮統一民主戦線民戦と略称される団体に結集しておるのであります。民戦は十数個の単一団体結合体でありまして、いわゆる戦線体でありますが、その構成員は十六万余となつております。また民戦活動中核となり、民戦革命的に推進する組織として、在日朝鮮祖国防衛委員会、これは祖防委と略称しておりますが、それとその指導下にあります祖国防衛隊という非公然団体組織されており、北鮮系の最も尖鋭な分子がその構成員となつておるのであります。彼らは祖国統一独立、すなわち北鮮人民共和国による全朝鮮の完全なる統一独立を第一のスローガンとし、北鮮政府のもとに固く団結し、金目成に忠誠を誓うことを明らかにしておりますが、日本に在住するという具体的条件の下において、日本共産党とともに日本民族解放民主革命を達成することが、ひいて祖国統一独立を闘い取る近道であるとして各種闘争を展開しておるのであります。一方日本共産党は彼等の強い独立意欲と粗暴な行動力日本革命に利用しようとし、在日朝鮮人日本革命の有力な同盟軍であると期待して、民戦祖防に対する指導強化し、これを革命的に育成することに努力を傾けております。党は昨年来特に氏戦祖防の中の多数の朝鮮人党員グループを通じてその統制を強め、今日ではほぼ完全に指導権を掌握しているという状況であります。従つて民戦祖防闘争は全く党の戦略、戦術従つて行われており、当面、党の三反統一戦線強化政治方針にのつとつた活動が推進されております。すなわち平和擁護運動を最も重要な課題として強く前面に押し出すとともに、政治的、経済的の各種民族権利擁護の旗印のもとに、朝鮮人大衆民戦に結年し、広範な反フアツシヨ抵抗闘争を展開して、これを漸次革命化し、党のいわゆる民族解放戦線の有力な一翼たらしめようとしているのであります。ところで一般朝鮮人大衆意識水準が低いため、党の指導について行けないこと、活動家を含めて朝鮮人の大多数が経済的に窮迫し、生活に追われているということ、党の統制強化に伴い民族的感情からこれを快しとしない分子の反撥があることなどの理由によりまして、党や民戦中央方針が下部に徹底せず、朝鮮人運動が全般に多少低調化傾向があり、特に民族的感情に基く党の指導方針を納得しない一部の分子が、民戦組織から脱退する現象がようやく目立つてつております。たとえば山梨県民戦の分裂、札幌における民主愛国青年同盟からの集団脱退などがその例でありますが、なお各地で民戦内部抗争があるように見受けられるのであります。ただ、これは部分的現象にとどまつており、民戦下級機関幹部の大多数を朝鮮人党員が占め、忠実に党の方針を実践しているので、民戦中心とする北鮮系朝鮮人運動革命的色彩が弱化するとは思われないのであります。  最後に、右翼運動に関しては、本年に入りましてから、右翼団体戦線統一目的として、連絡協議機関であつた救国運動全国協議会が、政党結成目的とする単一組織である救国国民連合に切りかえられ、その組織運動が行われている。一方大東塾、大日本生産党など有力単一団体、その団体が再建せられたほか、護国団のごとき新団体も結成せられ、それぞれ活溌な運動を展開していることが注意を引く点であります。  右翼団体動向を概観しますというと、旧右翼、新右翼を通じて、それぞれ主義政策を掲げ、広く大衆の中に基盤を置く合法的運動を展開しようとし、講演、機関誌紙ビラ活動などによつて主義主張宣伝と、その組織拡大に努力をしておる。主要団体組織は漸次発展しつつあるものと認められます。右翼団体の主流は前に述べたように、おおむね健全な方向に進みつつあるものと見られるのでありますが、本年初頭から続発した政界、官界、財界を通ずる汚職容疑事件、国内政局の不安定及びデフレ政策による中小商工業者の困窮などの諸情勢は、強く右翼関係者を刺戟しているようにも見受けられ、革新のためには暴力の行使もまたやむを得ずとする不穩言辞及び首相の暗殺を企図するなどの不穩行動が漸増の傾向にあります。    〔委員長退席、理事亀田得治委員長府に着く〕  そうして現在のところ、この種の不穩言動は、おおむね個人的なものにとどまつているのでありますが、右翼運動の中に往年頻発し宜した政治的テロの再現を是認する思想の底流があることは、再建大日本生産党及び救国総連会等の旧右莫団体が下部組織を少数尖鋭分子で固めようとして、治安機関の接近を排除しようとする傾向を示しているとともに、軽々に看過できないところであります。  なお、最近右翼団体の反共活動が次第に尖鋭化し、直接行動に出る事例が少くないのでありまして今後共産党及び労働組合活動の発展に伴い、この傾向が著しくなることも予想されるので、注意を要すると考えるのであります。  以上申し述べましたように、右翼関係につきましては、現在のところとして、具体的に破壊活動を行う危険性のあるものは認められないが、右翼運動が元来個人的色彩が強いこと、右翼の政治的テロが偶発的、個人的であることの多い特性にかんがみまして、その動向には終始注意を払つている次第であります。以上をもつて治安状況についての概略の御説明を終ります。
  7. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) 御質疑のおありの方は御質疑をお願いします。……私からちよつと一、二点お尋ねしますが、まず第一の点ですが、ただいま各団体動向等について御説明がありましたが、調査庁自身としては、そういう動向に対してどういう対策をとつておられますか、この点をまずお聴きしたいと思います。
  8. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 公安調査庁としましては、破壊的団体調査をし、要すれば団体規制の処分を請求するということでありまして、現在はもつぱら調査をいたしております。
  9. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) ただいまのこの調査と言われたのですがね、その調査というのは、これは法的にはどういう条文でおやりになるのですか、破防法の二十何条にある調査ですか。
  10. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 破防法の二十七条に基づいて調査いたします。
  11. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) この破防法二十七条の調査は、破防法「第三条に規定する基準の範囲内において、必要な調査をすることができる」この法律による規制に関し、その規制上必要だから、こういう調査になるわけですね。
  12. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 破防法三条の規定する基準の範囲内においてやるということであります。
  13. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) 第二十七条のこの規制に関して必要な調査というのは、これは私ちよつと今疑問を持つたのですが、ある団体に破壊活動があつたと、そうしてなおかつ続いて破壊活動をやるかもしれない。そういうことが予見される場合に、たとえばその団体に対して解散命令を下すとか、あるいは集会の制限をするとか、そういう規制の仕方だつたと思うのですが、全然破壊活動がないのに、一回もないのにこの規制はできなかつたはずですが、この点どうでしようか。
  14. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 私もお話のように了解しています。
  15. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) そういたしますと、特定の団体について、破壊活動という現象が一度もないのに、その団体動向について規制上必要だからということで、いろいろお調べになると、これはまあ右といわず左といわずお調べになる、これは破防法からは出て来ない行為じやないかと思うのですが、どういうふうにお考えでしよう。
  16. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 破防法による直接調査として、そういうことは問題外であると考えます。ただ、対象団体組織の解明、或いは動向調査というようなことに関連しまして、それの客観情勢ということで、当然関連して来る限りにおいては、通常の方法、たとえば新聞とか、一般の刊行物とかいうようなものとか、通常認識し得る方法においてこれを注意しておるということは、私はできると思つております。
  17. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) そうすると重ねでまあ念を押しておきますが、一般的なこの資料として調査をしておる、特に破防法の条文に基くものではないと、そういうふうに理解していいでしようか。
  18. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 破防法二十七条の範囲に入らないで、ただいまおつしやつたように一般の資料としてこれを整理しておくというようなものはございます。
  19. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) そういたしますと、そういう資料的な立場で各団体動向を調べておるという場合に、これは特定な法規の根拠に基くわけじやありませんから、例の憲法の二十一条の結社の自由ですね、こういうものとの関連性が出て来るおそれがあると思うのですが、もし行過ぎた、団体内部調査にまで入つて行きますと、そういつたような点どういうふうにお考えになつてつておられるでしようか。
  20. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) お話のように当然憲法の枠内において調査を行うべきであつて、そのやり方を誤れば、お話のような弊害を生ずると思います。
  21. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) その憲法の枠内でおやりになつておるということの標準ですね、もう少し具体的にこれはどういうふうな標準でやられているのでしよう。法律が全然ないわけですから……。そういう関係になると、破防法の条文ではないわけですから、その点まあいろいろ内部の取扱い方があるだろうと思うのですが……。
  22. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) ただいまのような点は、結局は具体的に定めらるべき問題だと思います。しかし一応の考え方としまして、私どもが考えておりますことは、たとえば公共の安全の確保に必要な最小限度にとどめるということ、あるいは憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限しないこと、あるいは労働組合、その他の団体の正当な活動を制限し、またはこれに介入するようなことをしないことということ、以上はいずれも法律の規定にございます。もう一つ、いやしくも団体内の一部の者の行為を、その理由のみによつて当該団体活動と即断して、その団体活動を阻害するようなことのないこと、これは破防法自体にはございません。私どものほうで自発的に規則を設けましてこのような制限を設けております。最初に申し上げましたように、結局具体的に、良識をもつて定められるべき問題だと思うのでありますけれども、一応の考え方としてはさように考えております。
  23. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) じや、その点はその程度にいたしまして、一、二点実質的な問題についてお尋ねしておきたいのですが、いわゆるこの平和運動の問題ですね、共産党が先ほど御説明なつたような戦略的な立場平和闘争を展開しておる、これはまあ一応了解できるのですが、ただたとえ戦略的な立場に立つてのそういう平和運動であつても、それを長く続けておれば、やはりその間は少くとも平和が続くわけですね。しかし最後には共産党のほうではこの運動はこういうふうに持つて行くのだという考えはあるかもしれない。しかしそういう考えはあつても、必ずしも共産党の考えるように結論が進むかどうかはわからないわけです。むしろその結論がどういうふうに向いて行くかということは、共産党以外の諸君のいろいろな動きなり、考え方によつてこれはやはりきまつて来ることなんですね。従つてこういう共産党平和運動について、それらの点をどのように評価されておるのか。一応主観的に共産党が戦略的な立場でやつておるのだから、あれはたとえ平和運動であつてもいけないと考えておるのか、どういうお考えでしようか。
  24. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 私どもは平和擁護運動がいけないというふうに評価しておるのではありません。一応共産党を対象団体として調査いたしております。従いましてわれわれの義務といたしまして、その団体組織を解明するというようなことを任務としております。その過程において、このような動向が当然わかつて参るわけであります。それはそれだけの事実でありまして、そのやつておることが破壊活動というものに該当しますれば、それはそれで一つ調査対象であると考えるのでありますが、現状自体がそうでない場合には、それに対して何ら評価はいたしておりません。
  25. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちよつと今のお答えに対して……。公安調査庁に伺いたいのですが、今のお答えの中にあつた共産党その他に対して調査をしているというのはいかなる法的基礎に基いて調査をしておられるのですか。
  26. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 先ほども申し上げたように、破壊活動防止法の二十九条によりまして破壊的団体の疑いある団体として調査しております。
  27. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その疑いとはどういう……。
  28. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 破壊活動防止法を制定いたしますときに、羽仁委員も非常に研究されておりまして、その際にいろいろな参考資料として秘密の文書が国会にも提出されたと承知しております。そのような文書と団体との結びつきにつきまして、われわれのほうでいろいろ調査をしたのであります。それで単に文書に限らず、実際のいろいろな暴動事件というような問題はさておきまして、今申し上げましたような文書におきましてすでに破壊活動が行われておる。そして、またその組織の規約にあります原則から申しまして、また再び状況によりましてはそういう破壊活動を起すことがあり得るというふうに考えて、破壊的団体の疑いある団体として調査しておるのであります。
  29. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 破壊活動防止法というのは、御承知のようにいろいろな問題を持つていますね。そのうちの最も御注意を願いたいと思うのは、憲法に保障する基本的人権というものに対する不当な圧迫というものがこの法律によつてつては相成らん。これは国会の御決議なり、あるいは要望なりも当時国会においてこの立法がなされたときに、特段の注意を政府に向つてしたことは御承知通りですね。これは公宏調査庁においても、立法当時国会において本法が国民の基本的人権を侵害してはならんということについて重大な関心を持つていたということは、常に第一に念頭においておられますかどうですか、その辺をお伺いしたい。
  30. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) お話の通りと考えております。
  31. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうしますと、従つてこの公安調査庁が活動せられたその活動ですね、もちろん破壊活動防止法に基いて、その法に基いて活動せられます活動というものは、常に必要にして最小限にとどめられなければならないということも、当時国会意思であつたことは常に念頭にあられると思いますが、いかがですか。
  32. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) その通りと考えます。
  33. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうしますと、この疑いということですね。この疑いについて、これは公安調査庁において十分御了承のことと思いますが、この刑罰、あるいは基本的人権の制限を伴うようなそういう法の適用に関係するところの疑いというものは、事実に基く疑いでなければならぬ、また実害に基く、実害に関係するところの疑いでなければならない。決していやしくもその法を適用することの権限を国会から認められた政府またはその当局の主観的判断に基いて、疑いをそこに設定して活動を開始するというふうなことは許されないことだということも、常に念頭にあられることと思いますが、どうですか。
  34. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) お話の通りと考えます。
  35. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうして来ると、ただいまの御説明のようなことは、果してその公安調査庁において必要にして最小限度の厳格にしぼつて、いやしくも敗戦前の思想弾圧、あるいは基本的人権の弾圧というふうな疑いを招いてはならぬ。これは本法が国会で討議せられたときに、繰返し繰返し討議せられたことであり、また政府もそうした思想弾圧、基本的人権の蹂躪、なかんずく問題になるのは思想の自由、それから団結の自由、集会、結社の自由、これらをおびやかすような法の復活になつちやならんというような点ですが、その疑いを解釈する場合に、厳格にしぼられていないと、過去の思想弾圧の復活のおそれが生じて来ますし、それから基本的人権の侵害という悲しむべきことが起つて参りますから、この点については常に厳格にしぼらなければならない。で、厳格にしぼる基準が明らかに法において示されておりますように、一つは破壊活動とは何であるかということに関する規定と、それからいま一つはいわゆる政府当局が直ちにその行政上の権力というものを発動するということでなく、そこに委員会の制度が設けられておるということもその点だろうと思うのです。で、先日来公安調査庁が政府あるいは国会において発表せられておりますものについて、共産党あるいはそのほかの団体が破壊活動をしておる疑いがあるというその疑いは、これはどうもその立法当時の政府説明、すなわち必要にして最小限度ということに十分にしぼりをかけて、それでこの破壊活動というその事実に基いてこの疑いというものを考える、決して思想あるいはそういう考え方というようなものでいかないという言明と、どうも少しだんだんに拡張解釈せられておるのじやないかと心配せられる点がございます。これが第一、それから第二は、どうも行政権が直接に発動すると、そのために法の拡張解釈あるいは乱用というものが起るのを防ぐという意味において、折角委員会の制度を設けておるのに、その委員会というもので、これはどうも困つた問題だということになつて、それからこの調査が行われるというようなふうに、きわめてこれは最大限に慎重な態度をとつておられるかどうかというこの二つの点について非常に心配をするのです。これはわれわれがその立法に関係した議員として、単に私は反対した議員としてだけでなく、反対いたしましても国会の多数において法律を制定した以上は、その法律が乱用あるいは拡張解釈その他によつて国民の憲法に保障せられた権利を侵害するということがあつちやならない。これはお互いに、あなたのほうでもその点については重大な関心をお持ちになつておることだし、われわれもそうでなければならない。これはわれわれの責任おいてもそれが乱用せられたり拡張解釈せられたりすることの責任を回避することはできませんし、公安調査庁御自身においてもその責任は将来回避せられることはできない。いやしくも基本的人権を侵害したようなことがあれば、その責任は将来必ず果されなければならん。そういう不幸な事態を招かないために、今の二つの点についていま少し慎重にお考えになるというような必要をお感じになりませんか。
  36. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 羽仁委員が現在破壊活動防止法で調査すべき対象があるはずがないし、調査しないのがよろしい、こういうふうにおつしやるのでございましたらば、これは私どもと非常に見解が異なるのであります。しかし調査すべきものはあるかもしれないが、その場合によくよく考えてやれよというお話でありますならば、それに対して私どもも相当の考えを持つておりますから、それを今申し上げたいと思うのであります。一つは人権を侵害しないで、しかも調査目的を達するという場合の担保といたしましては、先ほど委員長からもお尋ねになつたような手続と申しますか、方法上の担保であろうと思います。その上にわれわれとしましては、もう一つの考え方の上での一つの担保を持つておるというふうに考えておるのであります。それはつまり私どもは共産主義者社会民主主義者というものは、破壊活動防止法の建前からして厳格に区別して考える考え方をとつております。もちろん一般の平和主義者というものをこれと同一視するなどということは絶対にございません。このような考え方に基いていろいろ手続上でも慎重な考え方でやつておりますので、それでそのような考え方から先ほども申し上げたように、法律にはありませんけれども、具体的に申せば、ある組合内のグループ活動でもつてその組合全体を性格づけてしまうようなことをするなということを、わざわざ私どものほうの規則の六条で規定してあるぐらいであります。それから今の考え方は羽仁委員はまだおいでにならなかつたかと思います。けれども、今日の私の御説明の中にもそのことはうかがわれるであろうと考えているのであります。そのように私どもは私どもとして十分国会の御審議の経過も承知いたしまして、決してあやまるまいというつもりで運用いたしておるのであります。その点一つ御理解願いたいというふうに考えます。  それからこれはまあ大したことではありませんけれども、この破防法運用の慎重を期するために、まず公安審査委員会が取り上げて、これはどうも問題としなければならないということで、それを公安調査庁が調査する、こういうふうな運用をやつておるかというお尋ねでありますけれども、この点はどうも私の研究が不十分でありますかしりませんけれども、公安調査委員会と公安調査庁との関係はそういう関係にはなつておらない。またそのような運用をしますというと、むしろ公安審査委員会の中立性と申しますか、そういう点がかえつてそこなわれて、また思わざる弊害を生ずるというふうな感じもいたしております。
  37. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 十分に御研究になつていることを固く信ずるので、そしてまた今申し上げたようなこの基本的人権に関係する重大な問題のある法の適用ですから、必要にして最小限度、そしてきわめて厳格、きわめて慎重ということは常に念頭に置かれるということを、この際特にまあ要望するのでございます。また公安調査庁としても、その公安調査庁はまあ法の本質的な意味から言いますと、調査官というものは公安調査庁長官以外にはないのですね。公安調査庁長官のみが調査官としての……。
  38. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) ちよつとそれは……。
  39. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、それはその法の字句の末節にとらわれて私は言うのじやないのでして、国会における私の質問に対して、公安調査庁の調査官がそれを拡張解釈、濫用することによつて、基本的人権を侵害したおそれがあるときに、誰が責任をとるか。政府の当時の御答弁では、公安調査庁長官が責任をとる、そういう意味において私が申し上げているので、いわゆる職名とか官名とかそういう意味ではない。と言いますのは、こういう基本的人権の侵害という重大な問題においては、責任が最高のレベルにおいてとられなければならない。アメリカのFBIにおいて、FBIの長官がザ・インベスデイゲーターとしての権限と責任を持つておられるので、そういう意味において基本的人権に関係するような法の適用の問題に当つては、常に最高の責任者が全責任を負うということを忘れられてはならない。まあ、ほかの場合でもそうですけれども、しかし特にそうしなければならないということを討議の過程において政府はわれわれの質問に対してお認めになつたところです。それから今の点ですね。今申し上げた必要最小限度、厳格、そうして慎重ということを公安調査庁長官の責任において、どうか公安調査庁の皆様があらためて十分にその点の認識を深められるように要望をする点、これが第一点、いかがですか。
  40. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 承知しました。
  41. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第二は、その直接の法の手続の上で、最後には、その公安調査庁に並んで、その委員会というものの活動が法の上で期待されているのですが、何ゆえにそういうものが設けられているかということについて、先ほど私はお尋ねを申し上げたのです。そういうものが設けられているということは、主観的な判断によつて疑いをそこに設定して、そうしてそこに取締を行うというようなことが生じてはならない。その主観的な判断というものをできるだけ避けるために、その委員会というものが慎重を期するために設けられている。これは単に個々の事件についての最後の、そうして法の規定する手続のみならず、この法の全般の適用の上に、かつ常にそういつた責任がとられることが望ましいのではないか。一言で申せば、公安調査庁の主観によつて疑いをそこに設定して、そうして調査をせられるというような疑いをまぬがれなくならないように御努力を願つていることと思いますけれども、しかしこの際また今後一層そういう点についての御注意を願えないであろうかということですが、それはどうですか。
  42. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) よろしゆうございます。
  43. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 先ほどの御答弁の中にも、これは決してあげ足を取つたりなんかする意味じやなくて心からお願いするのですが、共産主義社会民主主義と平和主義というものについて、それぞれ厳格な一線を引いているというふうなことを、私どもは公安調査庁にあの法律によつて期待してはいないと思うのです。法が明らかに規定していますように、政治上の主義主張というものと関係して、そうして団体の結成というものと関係して、そうしてそこに政府を暴力によつて顛覆するとか、あるいは汽車をひつくり返すとか、あるいは公務員の職務の執行を妨げるとかいう、そこに三つのものが要件として出ているわけですね。いわゆる破壊活動というものの、その破壊活動というもののそういう定義の仕方にいろいろな問題があるであろうということは、当時討議の過程で申し上げましたから、その速記録もあることですから、今さらここで繰り返しません。政治上の主義主張というものを争うには政治上の主義主張で争うのが一番いい方法であり、団体活動に対しては団体活動新聞活動に対しては新聞活動でやるのが一番いい。正常の主義主張団体活動、あるいは言論の活動というものを、汽車の顛覆とか、あるいは人を殺すとか何とかいう犯罪と結びつけてこれを取締るということは非常な卑劣なことで、そういうことは政府としても本法によつて、やろうという意思はないということは、しばしば言明せられたことなんです。そういうふうないろいろの問題がありますけれども、しかし現在の法律で破壊活動というものについては要件が列挙せられておりますから、そういう列挙せられたる要件がことごとく相並んで存在して、そうしてそこに破壊活動というものの疑いが発生して来るという場合は、きわめて厳格な場合なんです。それについての調査、あるいはそれについてのいろいろの措置がなされることは、この法が許しているのですから、そのこと自体について私の意見は差し控えますが、最近の御発表などの場合ですと、どうもその点において拡張解釈、あるいは現在が拡張解釈しておられるというふうに批判をいたすのは、仮に遠慮いたすにいたしましても、拡張解釈の方向に向つて動かれるのじやないかという心配なきにしもあらずだと思う。私はそういうふうなものは、いわゆる法でいうところの調査というものとお考えになるか、それともふだんまあそういう研究をなさつているということであるのか、私はどうも研究するということであるならば、拡張解釈あるいは拡張解釈に向つて動いているのじやないかという疑いを受けられるおそれも少いかと思うのですが、そういう点についてはどうですか。それを調査をなさるということと、研究なさるということについては、どんなふうにお考えですか。
  44. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) その点は先ほど委員長のお尋ねに対してもお答えしました通り、関連するいろいろな問題あるいは現象といつたようなものを資料として、調査ではなくて資料として整理しておることはこれはございます。
  45. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点が国民に与えるやはり一つの不安になると思うのです。公安調査庁という役所が、そこにある限られている調査ということについて、やはりもう少し国民の感情ということに対しても慎重な考慮を払われて、そうして研究の段階というものと、それから調査段階というものについて十分厳格に御自分自身を保たれることを要望したいと思うのですが、どうですか。
  46. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 私どもの考え方は、先ほど申し上げた通りで、十分御趣旨を了解しまして、いやしくもしないというふうに考えておるのです。
  47. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後に一点伺つておきたいのですが、日本では共産主義というものが、どうも政府のほうからは、絶えず非合法的なふうな目で見ようというふうにする傾向がありますね。これは過去においてあつたことですから、そうしてまた現在においてもそういうふうな傾向があるんじやないか、これは率直に伺うのですが、どうも共産主義というものを危険視する。これは今日の国際情勢その他の点からも、そうしてまた歴史の動きというような点からも、十分そういうふうなおそれがないようにお願いしたいというのが第一と、最後ですから続けて申し上げますが、第二には、共産主義というような思想ではなくて、共産党という政治上の活動ですが、これについてもそちらの側から考えましても、それが平和的に、合法的に活動して行かれるという方向と、それからそういう平和的に合法的に活動して行かれるという方向が非常に困難になつてしまいますれば、堂々たる政党が、合法的な活動の方法が尽きたからといつて、沈黙せられる、あるいはみずから解散するということは、これはあり得ないことですから、さまざまな手段をお考えになる。いわゆる言葉尽き、情尽き、理尽きて沈黙ということもできないと思う。そこで共産党活動が合法的に行われるということは、われわれとしては、民主主義というものが円満に行われるように期待することですし、非合法な方法をとられないということは期待される点ですが、それについてはやはり合法的な活動というものは尊重せられませんと、やはりそこらの面からも非合法の問題が起つて来やしないか。この点について公安調査庁では現在ただいまの二つの問題、政府の側から共産党というものを危険視している。そういう先入主を持つておられるということは、そういう片鱗だにないということを期待するのですが、いかがですか。
  48. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 折角のお言葉でありますけれども、その点は少し私考えが違うのであります。危険視するなということでありますけれども、共産党の実態は、やはり危険な点があるのではないか。危険でないものを危険なように考えることは、これはよくないと思います。しかし実態のあるがままにこれを見るということは、これは許されてよろしいのではないかというふうに考えるのであります。それから共産党でも、合法活動は、これは尊重すべきではないかという点につきましては、もちろんその通りでありまして、合法活動そのものについて何らわれわれが云々すべき問題ではございません。その点は先ほど委員長のお尋ねにもお答えしたところであります。ただ共産党がこちらが合法的であれば、相手もまたそうであるというふうな行き方をするかどうかということにつきましては、少くとも日本共産党国内的に見ました場合には、日本共産党の戦略戦術を決定する要因は、むしろ国外からというふうに私どもは見ております。
  49. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 時間の関係もありますから、要約して申し上げますが、破壊活動助止法というものは、決して共産党の非合法化を目的としたものではないということは、立法当時において政府もしばしば言明せられた通りであります。これは今日も変つておられないと思いますが、どうですか。
  50. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 当時の政府の見解が、今日変つておるとは私考えておりません。ただし当時果して日本共産党が出した文書であるかどうかということについて、政府が明確に言うだけのデータを持つていなかつた。そのような秘密文書につきましても、私どもの調査の結果、それがそうであるというふうに言えるものができて来たということは、これは状況の変化でございます。
  51. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうことを伺つているのではないのですが、これはどうかあなたが今日は長官の代理で御出席になつているのですから、長官の御意見として、公安調査庁あるいは政府の御意見として伺つているのですから、第一に法律が特定の、正常の目的をもつて制定せられる、具体的に言えば、ある政党を非合法化するという目的をもつて立法せられるということはあり得ない。またその法の運用においても、そういうふうな目的をもつて運用せられるということがあつては相成らん。これは制定当時の速記録をよく御研究下さればおのずから明らかなことであろうと思うので御答弁はいただきませんが、第二に思想の弾圧になつてはいけない。それから共産主義というものが問題になつたことはない。あくまで破壊活動の事実というものがあれば、それは何の政党であろうと、何の団体であろうと、それは破壊活動のほうが主になつて来る。どうもお話を伺つていると、それがだんだんと、破壊活動の事実ということよりも、共産党、もう少し伺つて誤解すると、共産主義というものになる。どうかすると破壊活動防止法というものが何か共産党を非合法化するとか、あるいはそれを取締るとかいうことになつては大へんだという点なんです。この点は時間もありませんから、一つ次の機会に長官からも十分に伺つておかなきやならないことだと思いますが、その点は公安調査庁でお仕事をして下さつておるすべての方が、はつきりと常に念頭に置いておられることと思いますが、その政治上の主義というものをとやかく言うのじやない。いわんや思想というものをとやかく言うのじやないのだ、破壊活動という事実ですね。そこにのみ関連することだというような認識には、絶対に誤りはないと思いますが、いかがでしよう。
  52. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) その点はもうその通りでございます。
  53. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) 委員長から最後に二、三お尋ねしておきます。時間が非常に遅くなりましたので、具体的な問題一つ、二つお聞きしますが、例のあの破防法第一号事件として取り上げられた釧路の事件ですね、今年の九月十五日に無罪の判決があつた。私もまあ判決の全文を読み、なお問題になりました総選挙に際し日本国民に告ぐというビラですね、これも拝見したのですが、私はまあざつくばらんに言つて、なぜああいうものが破防法第一号として取り上げられたのか、これは全く選挙運動のための一つのいろいろな用語の使い方を工夫しておるだけなんですね。そういう感じだけしか私どもいろいろな運動をやつた者としては感じない。やはりこれは共産党の諸君がやつたからというような何かとらわれた考えが、これを起訴した人たちの間にはあつたのじやないか、おそらくはかの政党の人が少々激烈なことをいろいろな宣伝文書なり、選挙活動なんかのときに使うことを書いておつても、まさか問題にならなかつたのだろうと思うのですが、これは起訴に当つてはもちろん調査庁も関与されたことだろうと思うのですが、どういうふうにこの点お考えになつておりますか。
  54. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 釧路の事件は、これはいわゆる刑罰法規の違反ということで警察、検察の線で処理した問題でございましてわれわれのほうとは直接関係はございません。
  55. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) それではお伺いしますが、しかしあなたのほうは起訴については関係しなかつたかもしれませんが、おそらくあの重要な問題ですから検討されておると思います。検討された結果の感じはどういうところですか、ざつくばらんに……。
  56. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 今度の判決の検討は今そのほうの係でやつておるのでありまして、今私から具体的に申し上げる程度に至つておりません。
  57. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) それではこれはまたいずれときを改めまして、こういうやつぱり具体的な問題が出て来た、そういうことについてのお互いの見解を聞かしてもらうことが非常に参考になると思いますので、あらためてこれは一つお聞きすることにいたしたいと思います。  それからもう一点お尋ねしておきますが、今政府で反民主主義活動対策協議会、こういうものができて、その説明を先だつてから法務委員会として求めておるわけですが、まだいろいろな都合でその時間のやりくりが政府側でできないということで延び延びになつているのですが、調査庁側の見解ですね、果してああいうものの必要性があるかどうかということが一つ、それからもう一つは、それじや必要性があるとして協議会ができた。できて、この協議会というものは、今の破防法なり憲法というものがある以上、何らかの行動が一体とれるのか、調査庁が今おやりになつておること以上のことが何かできるのかということですね。そういうことは全然できないので、ただ閣員の中で意見の交換をする程度だということ以外に出れないというお考えかどうか。その二点ですね、どういうふうにお考えになつておるかちよつとお尋ねしておきたいと思います。
  58. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) これは私どものほうの問題じや実はございませんので、しかるべき方からお聞きとりを願つたほうがよろしいと思うのでありますが、私は緒方副総理が国会でお話になつておりますところを承わつて、閣僚懇談会のようなものであるというふうに承知しております。
  59. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) そうすると、しかし懇談をした結果ですね、何かそこに対策が出て来るわけでしよう。
  60. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) それは一つしかるべき筋から御答弁を……。
  61. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) なかなか緒方さんが出て来んものですからお聞きしたのですが、じやこの程度にしておきましよう。  本日は非常に高橋次長から各団体の左右のいろいろな動向について御報告があつたわけです、羽仁さんちよつとおくれましたが……。実はそれらについて私ももう少し具体的に右も左も聞きたい点があるわけなんですが、前提的ないろいろ問題で時間がもうすでに予定が過ぎてしまつたので、これはまた一つときを改めることにしたいと思うのです。  午前中はこの程度委員会を……。
  62. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちよつと公安調査庁に要望なんですが、われわれしじゆうこの法務委員会から、委員会の任務に基いて裁判所や検察庁の方々の御意見を伺つたり調査したりしているのですが、ごく最近にも検事の方から、こと前に思想検事をなすつていた方から、敗戦によつて非常なシヨツクを受けたというお言葉を伺つたことがあります。これを公安調査庁の最高の責任をとつておられます長官なりそれを補佐されますあなたなりが、公安調査庁で働いておられる方々が、後日そういうようなシヨツクを受けられるということは非常に悲しいことですし、私も望まないことなんです。で、こういう法律が非常な乱用あるいは拡張解釈によつて非常に悲しむべき事態を招いては大へんだということは、これは全く御同感であろうとお察しをするのですが、どうか一つ過去においてなしたような誤りを繰り返さないように。で、実際において法が適用せられるときに、いやしくも思想を圧迫する、基本的人権を弾圧するというようなことがあつてはならん、そのほうがおそろしいことである。区々たる眼前の事実というものにあまりそれを大げさに考え、その結果そういう基本的人権が侵害され、民主主義の基本が崩れて行くというようなことになつては大へんだと思うのですが、この点は長官初め公安調査庁において常に十分徹底をしておられること思いますが、われわれ外からながめてときどき心配せられるようなことがあるのですね。この際特にそういう点について御尽力願えますかどうでしようか。
  63. 高橋一郎

    説明員高橋一郎君) 十分了承いたしましたです。
  64. 亀田得治

    ○理事(亀田得治君) では、午前中はこれで終了いたしまして、午後は二時から開会いたします。    午後零時五十一分休憩    —————・—————    午後二時二十二分開会
  65. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより法務委員会を開きます。  政府のほうから委員会で要請した法務大臣及び副総理、官房長官出席しませんからこれをもつて散会したいと思います。  本日はこれをもつて散会いたします。    午後二時二十三分散会