○
政府委員(
鈴木一君)
提案の
理由は
前回政務次官からお述べ頂きました
通りでございますが、これの一番の問題は、なぜ今回更に延ばしたか。然らばもう一回来年に
なつたら又延ばすのじやないかという点でございます。要するに今回延ばしました
理由は、一兆
緊縮予算ということで
新規事業はやらないということのために、この
外国人登録法によりまして新らしく指紋をとるという
制度を開始するこの費用が
法務省といたしましては約二億円
程度要求いたしたのでございますが、閣議におきまして
新規事業はやらないという
方針の下に今回引き下らざるを行なか
つたというのが
理由でございます。従いましてそれでは又三十年度においても同じようなことが起きて、指紋
制度は又見送りになるというような危険性があるや否やということの問題があるわけでございますが、その点に関しましては少しく御
説明申上げたいと存じますが、結論的にはこの指紋
制度を開始いたしますることは、是非三十年度からはやりたい。二十九年度は
予算の
関係でできない。これが我々の結論でございますが、その
理由といたしますところは、丁度二十九年度、つまり今年の十月二十八日に外国人登録の一齊切替えという時期に当
つておるわけでございます。登録法によりまして現在渡してあります外国人登録証明書というものが二年間有効でございますので、二年目、二年目に一齊切替えが出て来るわけであります。一齊切替えの年に指紋
制度をやるということが一番事務的には能率が上りまして
効果があるのでございますが、そのためには費用が余計かかる。つまり一齊に指紋を取るという
関係で、又指紋
制度というものを我が国で初めてやるという
関係で、
最初設備の費用が要る。或いはこれを実施いたします各市町村の窓口吏員たちによく呑み込ませ、
教育をしというような点で、初年度におきましては相当な経費が要るわけであります。従いまして二十九年度において指紋
制度を実施するということになりますれば、約二億の
予算を要するということになるのでございますが、三十年度において開始をいたします際には、一齊切替えにぶつからないのでございます。従いまして新らしく日本に入
つて参りまして外国人登録を行う者、或いは一旦日本に入
つてすでに登録をいたした者が、外国人登録証明書を紛失しまして、再び交付を申請する。いわゆる再交付というような際に、そのときに併せて指紋
制度をや
つて参りますから、その人数はそう大した数ではないのであります。従いまして三十年度に指紋
制度を開始するということにいたしますれば、
予算に関しましては二億というような金は要らないのでありまして、その何分の一かでよろしいのでございまして、かたがた我々のほうから申しましても、各窓口の吏員の指紋
制度の
教育というようなことが徐々にできて参りますので、むしろ事務的には三十年度から実施するということのほうが結果的には望ましいのでございます。従いましてこの延期は、登録
制度を実施いたしますための延期は今回限りということで御了承を願いたいと存じします。
それからもう
一つの問題は、指紋
制度というものが我が国に新らしい
制度でございますが、一体外国人を扱いますのに、
世界各国でこういう
制度を実施しておるところがどこどこあるかということでございます。これはアメリカ、カナダという国におきましては立派な指紋
制度をや
つておりまして、日本はむしろこのアメリカの
制度を真似て指紋
制度をやる。これが一番外国人を扱いますのに、各自が携帯しております外国人登録証明書と本人というものとがはつきり同一であるという証明をさせる手段でございますので、これ以外の適当な
方法はないという結論になりまして、我が国におきましても
外国人登録法を制定いたします際にわざわざこの
規定を入れたのでございます。ただ、日本で初めての
制度であり、又この適用を受けます九〇%は朝鮮出身者であるというようなことから、元来こういう方面において指紋ということは、すぐに
犯罪人扱いにするというような疑いを持たれる虞れもございますので、そういう啓蒙というような点も併せまして実は一年延期をしたのでありますが、更にこれが一年延期になり、そうして今回三度目の延期になるわけでございます。
前回の延期の際の
理由は、日韓会談がまさに開催されんとしておりまして、その矢先に指紋
制度を取るということが、まだ啓蒙宣伝が足りない際にやるのは、日韓会談に必ずしも好影響を与えないという憂えから延ばしたのでございますが、ただ、今申上げたいと
思つておりますことは、この指紋の取り方でございます。指紋を取りますのに、普通
犯罪者等につきまして現にや
つております
制度は、十本の指につきまして指紋を取るのでございますが、この外国人登録証明書、或いは外国人登録に関しまする限りは十本の指紋を取る必要はないのでございまして、ただ登録証明書を本人が持
つておるその同一性を証明するという
意味におきましては、各自の携帯しております証明言に、一本の指の指紋を押してもらえばよろしいのでありまして、そういう点を啓蒙いたしますれば
犯罪人扱いにされるというような心配は彼らに与えないで済むのでございますし、外国人登録の面から申しますれば、それで十分であるという結論になるのでございます。この二十九年度、
法務省として
予算を要求いたしましたその一億の
予算は、実は一指指紋、一本の指の指紋を考えてお
つたのでございます。
従つて三十年度においてもこの一指指紋をやるという趣旨で今考えておるわけでございます。ヨーロッパ方面におきましては外国人登録におきまして指紋
制度はと
つておらないようでございますので、東洋のみならずヨーロッパ諮国においても、多少十本の指紋を取りますということになると問題が煙り得ると思いますが、一指指紋につきましては、外国人全般について納得を求めますことは容易なことであると存じております。