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1954-09-17 第19回国会 参議院 法務委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月十七日(金曜日)    午前十時十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員羽仁五郎辞任につき、その 補欠として須藤五郎君を議長において 指名した。   ————————————— 出席者は左の通り。    委員長     高橋進太郎君    理事      小野 義夫君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員           池田宇右衞門君            長島 銀藏君            梶原 茂嘉君            岡田 宗司君            小林 亦治君            棚橋 小虎君            須藤 五郎君   国務大臣    法 務 大 臣 小原  直君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  眞道君   説明員    法務省刑事局長 井本 豪吉君   参考人    衆議院委員   犬養  健君   ————————————— 本日の会議に付した事件檢察及び裁判運営等に関する調査  の件  (被疑事件処理に関する件)   —————————————
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) ただいまより委員会を開きます。  昨日に引続き、被疑事件処理に関する件を議題に供します。犬養参考人がお見えになつておりまするので、犬養参考人に対する質問をお願いすることにいたします。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 犬養参考人に対する質問に入ります前に、一言申し上げたい思いますが、それに実はこの委員会吉田首相の御出席を願うようになつてつたと思います。そうして委員長もこの出席のことにつきまして官房長官等とお諮りになつて、まあ政府委員としての御出席ということについて、まあそう難色のないようなお話であつたのであります。ところがいまだ出席の御通知もないわけでございますが、これに私どもとしてはなはだ遺憾なことでございます。で、もちろん御出席にならないのは、いろいろ理由もあろうかと思いますが、やはりこの理由につきましては、委員長もあるいは御承知になつておるかもしれませんけれども、しかし私どもとしては、その吉田首相の御出席にならん理由官房長官なり何なりからお伺いしたいと思つておりますので、一つ官房長官でお呼び願いたいと思います。
  4. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 委員長からお答えいたしますが、ただいまの岡田委員発議につきましては、昼の時間にても理事会にかけまして、その取扱等につきましては懇談しておきめしたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは犬養さんお見えになつておりますので、若干の点についてお伺いをしたいと思います。  問題はすでに御承知と思いますが、検察庁法十四条の発動の問題についてでございます。すでに、あの検察庁法十四条の発動の後に法務大臣をおやめになつておられますので、今月政府閣員の位置にございません。しかしながら検察庁法十四条の発動についてはその責任があり、また検察庁十四条についての発動の後に起りました、諸般の問題については、今日内閣がやはり責任を負わなければならんのでありますが、とにかくこの十四条の発動法務大臣でありました犬養さんが責任をもつておやりになつたことでありまするので、十四条の発動の問題についてまずお伺いいたしたいと思います。  で、第一にお伺いしたい点は、検察庁法十四条の発動はもちろん法律に明記してあることでありまして、昨日も小原法相から、これは適法であるというお話がありました。誠に法律条文だけから見ますならばこれについて異議を差しはさむ余地はないようなことになつております。ところが小原法相はそれと同時に発動は妥当であつたという判断をされておるのであります。もちろん御自身がやつたわけではないのでありますが、どうもこれはやはり犬養法務大臣それから加藤法務大臣小原法務大臣一つ内閣法務大臣責任を引き継がれておるという点からそう考えられておるのじやないかと思いまするが、この検察庁法十四条の発動があの造船疑獄の問題の処理について果して妥当なものであつたかどうか、これが妥当であるという判断のもとにあれを下されたのであるかということをお伺いしたいと思います。
  6. 犬養健

    参考人犬養健君) お答え申し上げます。検察庁法第十四条に基きまして指揮権発動いたしましたが、これは昨日、ただいまお話がありました、御引用のありましたような法律根拠の上に立つているものと存じます。妥当であるかどうかということは、私はただいま虚心坦懐、輿論に待ち、また国会の御議論に待つておるのでありますが、当時の情勢としては、あれが最も適当であると考えて私がやつた次第であります。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 当時の事情にかんがみて最も適当であつたということでございますが、その最も適当というのには、やはりそれだけの根拠がなければならん、というような理由でこれが最も適当であると判断されたか、それを明らかにしていただきたいと存じます。
  8. 犬養健

    参考人犬養健君) お答え申上げます。御承知のようにあのときの指揮権発動は、一切これを取りやめろと申したわけではございません、何分沙汰があるまで逮捕請求を延ばすように取り計らわれたい、右指示する、こうしかるべく……、で、その根拠といたしましては、この指揮権発動のときに申し渡しました内容、第一の内容としては本件性格にかんがみ、法律的性格にかんがみ、第二にはいろいろの重要法案国会における審議……よく覚えておりませんが、正確には覚えておりませんが経過にかんがみて、この推移いかんでは、国策の基本に影響するところ大きいから、何分沙汰があるまで逮捕請求をしばらく延ばしてくれ、こういうふうに申したわけであります。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 この二つの理由をお挙げになつたのでありますが、第一の理由でございますこの事件性質と申しますか、にかんがみてということでございますか、なぜあの事件性質にかんがみて逮捕を延ばさなければならなかつたか、これをもう少し具体的に説明していただきたい。またそれがどうして妥当であつたかということを御説明願いたいと存じます。
  10. 犬養健

    参考人犬養健君) この詳しい内容につきましては、私当時公務員でございましたので、公務員の執務中知りました職務上の秘密につきましては監督官の許可を得ることになつておりますから、そういうむずかしいことは抜きにいたしまして、できるだけ他の委員会もしくは当委員会におきまして法務当局検察当局がすでに述べておられる範囲は、素直に申上げたいと思います。述べておられない範囲につきましては、誠にかくのごとく申すのは私の本意でもございません。職務上の秘密に亘ることとして、本日述べることは遠慮させていただく部分があるかもしれません。その点は御了承願いたいと思います。  で、法律的性格にかんがみてと申しますのは、私は新聞で読みましたので正確かどうか知りませんが、昨日小原法務大臣が述べておられるそうでありますが、まさにあの理由でございまして、第三者収賄というものと、政党幹事長であり、金を集める役目でありますところの佐藤榮作君の地位というようなものについて、もう少し再検討をいま一応してもらいたい、こういうな意味でございます。しかしそれもいつまでもやめておくというのではなく、何分沙汰のあるまでしばらく逮捕請求を延ばしながら、さらに検討してもらいたい、こういう意味でございます。たしかお尋ねの第一の理由と、こういうことでございますが、まあそれでお答えといたします。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 第三者収賄の問題について昨日小原法相は、第三者収賄というものは法律性格があいまいなものだと、こういうふうに言われておつて、ところがあと刑事局長から紙を出されて、まあ言い改められた。その第三者収賄問題につきましても、すでに刑法の上にもはつきりと規定されておる。従つて当時の法務大臣がこれについてもう少し内容検討して、もう少しはつきりさせよということは、これは法務大臣として個々事件捜査、それから起訴理由にまで立至ることになつて従つて果してそれが法務大臣の十四条発動根拠として行き過ぎではないか、こういうふうに私ども考えられる。で、あの十四条の発動の問題についてもし法務大臣個々条文適用の問題までについて立至つてそういうふうなことを言われるということになりますと、今後のいろいろな刑事問題について一々個々の法の適用法務大臣が干渉する、しかもそれに基いて検察庁がやる、起訴をしようとしておるものを一々とめるという実例が開かれて参つて来るわけであります。そこらのところをお考えになつてああいうことをおやりになつたのですか。常識的におやりになつたのか、それとも法律を非常に検討して、それがどういう前例を開くかということまで深くお考えになつて十四条の発動をおやりになつたのか、その点はいかがでしよう。
  12. 犬養健

    参考人犬養健君) お答えを申上げます。第一の御質問でございますが、私は第三者収賄というものの適用刑法に載つておることを知つております。従つて昨日小原法務大臣がどういう御返答をなさいましたか、あとでどういう御修正をなすつたかつまびらかにしておりませんが、第三者収賄というものは法律にいものだと当時毛頭考えられておりません。しかし私のもう一応当局において念を入れて調べてもらいたいと思いましたのは、佐藤榮作という人が公党幹事長であり、本人の好むと好まざるとにかかわらず金を扱う職務であり、かつ金の集め方が果して収賄事件に大体の場合ありがちな秘密性を帯びておるか、あるいは相当公然性を帯びておるか、言いかえれば政党の総裁が財界に呼びかけたことを職務上事務的に歩いたものかどうか、あるいはもつといわゆる収賄容疑の行為、行動をしたものかどうか、この点についていま一応更に検討を要すると考えた次第であります。もちろん個々事件について法務大臣指揮をする、検事総長を通じてでありますが指揮をすることは、法律上認められておりましても、慎重を要することはもちろんでございまして、この点はお説の通りだと思いますが、あの事件の場合今申し上げましたような理由をもつて、さらに一応検討してもらうが法務大臣務めとして妥当ではないかと考えた次第であります。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 とにかく第三者収賄の問題は刑法に規定されておる、そしてこれに基いて逮捕請求が出ておる、その適用が妥当かどうかということは、あなたが逮捕を押しとめてそして検討をするということではなくて、その取調がさらに進み、しかも一方におきましてはまあ贈賄者側もすでに当時逮捕されておる。そしてその贈収賄のことが明らかになり、そしてそれが今度は公判に付せられてこの法律適用が明らかであるかないかということが判断されるのがよろしいのであつて、まだ捜査の過程においてもう一遍考えられるということは、これは捜査を妨害するということになる、捜査を中途半端にさせることになるわけであります。すなわち法務大臣は結局捜査を妨害したことになる。その結果はやはりあなたがこれを押しとめられました結果、ついに捜査がまあ事実上だめになりまして、そして検察庁考えておりましたこの第三者収賄被疑事実による逮捕ということはできなくなつた、ついにそれを棄てましてまあ政治資金規正法によるということになつたのであります。でありますからこれはもう明らかに、このことによつてあなたのこれによつてこの法律適用が曲げられたことになる、そしてまた検察庁活動が完全に阻害されたことになる、こう申上げざるを得ないのであります。それまで予見されてやつたかどうか。つまりあなたがそれをおやりになつたことによつて、その後の検察庁活動が阻害されて、そしてそれによつてこの贈収賄のごとき、被疑者を両方一時に抑えておいてそして調べなければならないという特別な捜査のやり方をしなければならないものを、押しとめることによつて、これをぶち壊すという結果を予見されてやつたのか、それともそれを予見されないでおやりになつたのか。
  14. 犬養健

    参考人犬養健君) たくさんの御質問で、落ちたところがあれば御注意を願いたいと思いますが、個々事件についてはそれまでも検事総長を通じて申して参りました件について私一個の意見を申し、法務大臣としての考えを申して、さらに捜査の結果による決定を延ばしてもらつたことはたびたびございます。これが初めてではないということをご了承願いたいと思います。それからもう一つお話のございましたこの種の収賄事件につきましては、外界と遮断して調べるということは、これは検察当局第一線としては無理からんことでございまして、原則としてはできるだけその方針を強調して私も協力してやつて来たと思います。しかしこの問題によりましては、今申上げましたように第三者収賄というものと公けの党の金を扱う幹事長としての地位行動それが果してどういう関連を持つかということについていま一応再検討をしてもらいたいと、私が考えることはこれまでも類似の事件はあつたわけでございます。ただ、この事件が世間の注目を非常に引いておりましただけに、非常に目立つたということになるわけでございます、もちろんこの間速記録を読んだだけでございますが、決算委員会におきまして馬場検事正検察庁法第十四条はあつたほうがいいか、ないほうかいいかというお尋ねがあれば、検察官としてはそれはないほうがずつとやりいいけれども、ほかのいろいろな見地からして検察庁法第十四条というものがあるのだとこういうふうに答えられましたが、私も同じ意見を持つております。みだりにこれをひけらかして法務大臣が使うということは慎しまなければなりませんが、私が今申上げた第三者収賄というものと政党幹事長地位務めというものの関連性におきまして、いま一応検討してもらいたいと言つた私の当時の気持としては妥当であつたと思つております。これはいずれ公判になりまして一切が明らかになることと思いますが、そのときも私のとりました措置について御反対の方もございましよう、あるいはそうであつたという方もあろうかと思いますが、一切私は責めを自分で受けまして御批判を待つておる次第でございます。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま第三者収賄政党幹事長地位についてもう一度検討したほうがよかつたと、こういう意味だとおつしやられます。検察庁のほうでは、あの稟請の中に理由は書いておられるわけでありますが、それに対していま一度考え直したらよかろうというふうに言われたとすれば、どういう意味でいま一度考え直したほうがよかろうと言われたのか、この法律適用が誤つているという意味なのか、あるいはただそうではなくて政党幹事長というものの地位資金の集め方との関連からして、これは政治問題だというふうにお考えになつて、微妙な政治問題だから、適用についてもう一遍考えてくれというふうに言われたのか。検察庁の出した刑法の百九十七条に基く検察庁側意見間違つておる。だから考え直せ、こういうふうに おつしやつたのですか、そのところを……。
  16. 犬養健

    参考人犬養健君) これは大へん私もお答えしたい点にお触れになりましたので、お答申し上げますが、検察庁逮捕請求稟請したことについて、著しく不備があつた、粗漏があつたとは思つておりません。むしろ私としましては東京地方検察庁が実に誠実に念を入れて一つ事件を扱つておるということについては、ただいまも深く敬意を表しておる次第であります。ただ、今申し上げましたように、そういうこととは別にその前にも、内容は申し上げられませんが検察庁から私のほうに書類が回つて来た件につきまして応調べ直してもらいたいということを申した例もあるのでございまして、これは政治的に全般から見て、政党幹事長というものは金を集めるのだから、どんな場合でもそういう問題は逮捕請求しちやいけないという、こういう政治的に扱つたことはないのでございます。調書の内応に触れるわけに参りませんことを遺憾に存じますが、調書を深く検討いたしまして、検察庁逮捕稟請についてもよくその意味立場は認めるけれども、読んだあげくの私の感じ方が、いま一応検討してもらいたい、こういうふうに感じたわけであります。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 検察庁逮捕稟請理由については間違つてはない、よくやつたと思うと、しかし調書を読んだ結果、いま一応考え直せ、これじや私どもはつきりあなたの十四条発動理由が明らかにされてないと思う。とにかく検事のほうから出しました逮捕稟請法律的に整つておる、そうして粗漏がないという立場だけをおとりになるのであれば、もう一遍考え直してくれというのはおかしい。法務大臣がとにかく個々の問題についてこういうような指揮をされるということは、私考えてみますのに、一つ検察庁法律的に間違つたことをやつておる、その出て来た稟請根拠がない。あるいは法の適用を誤つておる。だからもう一遍これを考え直せといつてつつ返えす、それでなければ政治上の理由だと、ところで今あなたの言われておることを聞いておりますと、検察庁のほうもどうも間違つておらない。そしてまた政治上の理由ではない、こういうふうに言われる。そうすると結局ですね、あなたつつ返した理由というものはないことになつてしまう。一体どちらの理由なんですか。検察庁間違つてつたから、もう一遍考え直せと言つたのか、それとも検察庁間違つてない。しかしながら政治上の理由からもう一遍考え直してくれという理由からお考えになつてつたのか、その辺もう一度はつきりしていただきたい。
  18. 犬養健

    参考人犬養健君) ただいまの御質問は最初の私のさらに岡田さんにお答えいたしました通り、第一の理由についてお答えをしておるのであります。その点御了解をいただきたいと思うのであります。今申上げましたように、検察庁逮捕請求稟請をしたその気持というものは、一応了解ができるけれども法務大臣としてそれの関係書類を読んだあげくの私の感じが、いま少しくこれは検討を要するんじやないか、こう思つた次第でございまして、これはなぜ一そう思つたかということは、調書の表現を私が受け取つて読みました上でのことでありますから、ここでそれを申し上げるわけに参りません。しかしいずれ他日公判になりましたときに、その点について私の措置が依然として、反対の方もできましようし、多少御了解願える方もできるかと思います。さよう御了承願いたい。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、あなたが調停を読んで受けた感じということであつて、その検察庁法律的には誤つておらないのだ。しかしあなたが調書を読んだ感じでもつて、これを検察庁法十四条の発動一つ理由にした。こういうことになるのですか。そうすると、これはもう法務大臣感じたというごとだけでもつて、こういう重大なことができるのかどうか。
  20. 犬養健

    参考人犬養健君) 感じという言葉が不穏当であれば改めてもけつこうでございます。感じというと何か感覚的なことのようにもし御解釈になれば、私のお答えが不十分なためでございます。法務大臣調書を読んであげくの認識と申してもよろしいのでございます。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 じや認識ということでお伺いするんですが、それは法律不備であるという認識に立たれたのかどうか、その認識をもう少し検討しなければならないのですが、法律不備という認識を持たれたのか、そうでなくただ政治上まずいなあという認識であつたのか、どちらでしようか。
  22. 犬養健

    参考人犬養健君) 調書を読みましたあげくの私の考え方が、いま一応これはさらに鄭重に煮つめて検討してもらいたいという気持であるということを申し上げたのであります。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 煮つめてもう一度やつてもらいたい、こういうようなことですと、これはどうもあなた、法律的なですね、点でもつて不備があつたということではないということになるのですね。そう解釈してよろしうございますか。
  24. 犬養健

    参考人犬養健君) それは私違うと思います。なぜそうであるかということは、結局調書をここに持ち出さなければ議論が水かけ論になると思いますが、私は検察庁逮捕請求稟請をしたことが根本的に間違いだとは思つておりません。また収賄事件の種類から見まして、外界から遮断をしたいと申し出たことも一応意味がわかります。しかし調書内容を読みまして、第三者収賄という性質公党幹事長の金を外界から集めているそういう地位、あるいはそれが佐藤栄作個人発議であるか、あるいは党または佐藤栄作の属する党の主宰者がふだんのように、例年のように呼びかけた結果であるか、いろいろの点についてもう一度検討なする必要がある。こう考えておる次第であります。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、つまりあなたの考えられることと検察庁考えられることと違つておる。だからもう一遍考え直すのだとこういうことになるのですか。つまり検察庁がこの政党つまり献金の問題について第三者収賄の条項を適用することが疑義がある。こうお考えになつてもう一遍考えろ。こういうふうな意味考え直せというふうにお命じになつたのですか。
  26. 犬養健

    参考人犬養健君) 先ほども申し上げましたように同じ、これほど規模の大きい案件ではありませんが、やはり私にもる種の申出がありましたときに、大体の筋道は了解できるけれども、しかしこの件については、もう一度調べ直してくれと言つて調べ直しをしてもらつた例がございます。従つて私のほうが正しいとか、言い出した検察庁が正しくないとかいう問題ではなくして、申出の意味はわかるけれども、一応わかるけれども、これこれの点についてさらに検討してもらつたほうがいいじやないか。こういうふうに私は認定いたしました。その認定がありましたから、逮捕請求に関する事件の冒頭に本件性格にかんがみてと言いた次第であります。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもその点私は納得できない。次に第二の理由として挙げられました自由党幹事長なるがゆえに、この国会運営なり国策遂行の上に重大なる支障を、国会中に逮捕することは重大な支障を生ずるということが理由になつておるようでありますけれども幹事長逮捕されるという場合に、自由党佐藤幹事長だけでなくて、有能な人がある。おそらく直ちに幹事長を代えられてもできるわけであります。また幹事長逮捕されましても、しかしながらおそらく内閣が行政を行なつて行く上に差し支えることはない。その点でどういう点で国会運営に差し支えるか、あるいは国策遂行佐藤幹事長がどういう点でなければならんか、いなければならんか。この点について何らはつきりしたことが当時示されなかつた。ただ漫然とそういうことが言われただけでありますが、そんなような漠然たる認識に基いたのでは、ああいうような重大なことは私はできなかつたと思います。やはりそれについてはそれだけの具体的なりつぱな理由があつたのではないかと思いますが、それは明らかにされていなかつたのですが、その理由ですね、それを具体的に一つお示し願いたい。
  28. 犬養健

    参考人犬養健君) そうすると、当時私が辞任をいたしましたあとも、政府当局からその点について本院の御質疑に答えたように記憶しておりますが、政党内閣政党に基礎を置く内閣としてそのすべての日常の務めをやつております幹事長逮捕された場合には、国会運営に重要な支障をきたし、しかも指揮権発動のときの文書にうたつてありますように国際関係その他で重要な法案がかかつておりますので、この法案推移いかんでは国策に非常に影響がある。従つて全部打切れというのではなしが、重要法案経過が順調に進むまでしばらく一応逮捕を中止して、その間に先ほど申上げましたようなことを研究してもらいたい。こういう意味であつたわけであります。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 佐藤君が逮捕されて外界から遮断されるということがそういうような重大な意義を持つということは、そうは言われるのですけれども、どうもそういう点が具体的にわれわれに明瞭にならない。また、明瞭にされないのです。たとえば佐藤君がぽつかり死んだ、そうすればおそらく誰かをすぐに代えて何ら支障なく行われるだろうと思うのです。逮捕していなくなるということは生理的に亡くなられたということと、まあ違うのだということから、そう仰せられるのだろうと思うのですが、どういう点が本当に支障になつたのか。これに私ども外からわかりませんが、閣内におりまして、もし佐藤君がつかまりました場合にはどういような具体的な支障が行政の運営の上に出て来るか、国策遂行の上に出て来るか。このことをもうちよつと詳しくお伺いしたい。
  30. 犬養健

    参考人犬養健君) これはどうも水かけ論になるかとも思いますが、できるだけお答え申し上げたいと思います。ただいま申し上げましたように政党内閣の基礎になつております、政党のすべての日常のことをやつております幹事長逮捕せられるということは、国策遂行上重大な影響を来たす。こういうふうに私の認定でございますが、当時の政府全体の空気を私の認定で察知いたしましてそういうふうにしたわけでございます。それも一点の私に疑惑がないということなら別でありますが、先ほど申上げましたように一応もう一応検討してもらいたいという気持が私にありました。この両者を勘案いたしましてこの措置に出たわけでございます。もちろん第一の理由、即ち法律的性格、言いかえれば第三者というものと、公党幹事長の役にある行動との関連性において、もう一応調べた結果、やはり検察庁はかく信ずるという申出がありましたら、それをさらに検討したいとは思つておりました。一応さらに検討してもらいたい。こういう私の考えを持つた次第であります。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもその重大な支障というのが具体的でないので私にははつきりのみ込めないのですが、この重大な支障というものは当時の政治状況からかんがみて、佐藤君が逮捕されたならば内閣が倒れるので、そして吉田内閣の行政の運営が、国策遂行がその際大きな支障にぶつかり、内閣を総辞職せざるを得ない状況に追い込まれる。そういうふうに御認定になつたのですか。
  32. 犬養健

    参考人犬養健君) 今申上げましたように、政党のすべての事務をやつております幹事長逮捕せられるという、ことになりまするならば、国際的にも関係のありますいろいろ重要法案に重大な支障を来たし、しかも一方においては検察当局が私に稟請して参りました逮捕内容についてもう一応検討してもらうことが、あの場合私として妥当だと考えましたので、この両者を考えまして、いま一応研究してもらうと同時に、重要法案の推移を考え何分の指示をするまで逮捕請求は延ばしてくれ、こう言つたわけであります。誤解のないように申し上げる次第でございますが、これで打切れと申したわけではございませ。もつともあの種の案件について第一線当局がああいう種類のものはことに俣野飯野海運社長ですか。勾留満期とにらみ合わせて成るべく早く措置してくれということでございましたので、書面をもつて回答いたしたのでございますが、もつと時日の余裕があれば、これは小原法務大臣も研究されたようでございますが、もつとどぎつかない角立たないことで従来やつてきたことでございます。検察当局の根本の方針について常に容認しながら、そのときどきの考えについて違うこともありました。私の意見をもう一度これを再検討してくれと言つたこともありますし、再検討してもらつた結果、私の意見をもう一度主張したこともありますし、また検察当局意見のほうが再考の結果いいと思つたこともありますが、全部それはああいう角立たない形式で十分何といいますか、話合いと言うと、この前亀田さんに叱られましたが、そういう不明朗な意味でなくて、協議をしながら解決した問題でございます。今度の指揮権発動の仕方は、ふだんも小さい問題では毎日のように二、三件ずつ私は指揮しております。しかしそうでなくいかにも両方で肩をはつたような形に、あなた方にも印象を映し、世間に映したことは、私の政治のやり方が不十分である、その意味で私はふだんのやり方と違う、本意でないやり方をとつた。しかも世間でそういう印象を与えたことについて政治責任感じて、辞任をいたした次第であります。これはついでに申し上げる次第であります。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、あの事件の推移の過程において、法務大臣は無関心でおつたわけじやない。法務大臣考えられたような十分な打合せなり協議なりが行われないために、ああいうどぎついことになつたということになりますと、これは犬養法務大臣がその間において、この問題についての処理の方法は政治的にあやまつたというふうに受け取れるわけです。それはそれとしてもあなたは常に検察庁のほうからあの疑獄事件に手を着けましても、数度報告も受けておつた従つてどういう結果になるかということの予見もあつたろうと思う。それで当時の佐藤検事総長の新聞なんかに言つた言、あるいは議会での表現等によりますと、あの日まで検察庁法十四条の発動があるなんと予想もしておらなかつた。また犬養法務大臣はそういうことをにおわしも、気振りも出していなかつた。こういうふうに言つておりますが、本当にそれはまぎわまでそういうことを考えになつていなかつたか。そして、一々報告受けておつたろうと思うのですが、その際にもこの問題の処理について何かあなた意見をお述べになつたことがあるか、その二点をお伺いいたします。
  34. 犬養健

    参考人犬養健君) 検事総長がそう言われたということを新聞で拝見いたしました。もちろん指揮権発動をするか、発動をするぞというようなどぎつい角立つたことはございません。従つて事実そうでありましたが、ふだん平生におい佐藤検事総長と私との協議というものは、しごく穏和といいますか、穏やかにやつて参りました。し、私はその主義をとつてつたことは、かつて亀田さんに本会議で申し上げた通りでございます。それではいきなりそういう話になつたかと御質問でありますが、ごく穏やかな形でしじゆう話合いをいたしましたが、佐藤幹事長政党幹事長というものが、何といいますか平たい言葉で言えば、外界から寄付を仰ぐということと、収賄、ことに第三者収賄ということについての疑義は、二度ばかり少くも出した記憶がございます。しかし私はふだんのやり方としてそれは質問とかいう形をとりませんで、念入りに聞くという形をとり、総長も何らかの意見を述べたように記憶しております。突然の印象を与えますのは、結局私が不敏ということになるかとも思いますけれども、総長のこの話を聞いていまして、よく筋道がああいう緻密な人ですからわかりますが、何といいますか、ニユアンスというか、空気とかいうようなもので、絶えず私が何となく今度の問題はいつもの問題と違つて、ああそううですかという……見当が違うという感じを持つてつたことは事実であります。なぜ唐突な感じをあなた方に与えたかといえば、結局これは事件の関係、書類の相当詳細なることを承知しましてから、私が平素これは第一線当局逮捕請求申請をすることは、もう一応考えていいのではないか、こういう認識を持つた結局でございます。この点については、私は今でもそのようにまだ実は思つておるわけでございます、というのは、さらに当局の説明を聞きます前に辞任をいたしました、さらに重大のことを聞く機会を失つたというためかもしれませんが、私の疑義は私として当時持つたことは、不自然ではないこう考えております。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 その検察庁法十四条の発動については、あなたは全く一人でお考えになつてつたのか、それとも省のたとえば事務次官その他刑事局長、その他本省の幹部諸君と協議の上でおやりになつたのか。
  36. 犬養健

    参考人犬養健君) 事務次官も刑事局長もああいう形における指揮発動反対でございました。この点は御本人のためにはつきり申し上げておきます。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると大臣がひとまずおやりになつた、私はこの唐突におやりになつたということと、それから法務省内部で反対があつたということは、あとでいろいろ声明その他からも、あるいはまた当時のいろいろ空気からも察知できる、そういたしますとあなたがあれをおやりになつたのは、単に調書をお読みになつて、そしてその当時の政治上の理由等から考慮されておやりにたつたとだけ思えないので、やはり内閣が危機に立つた、そしてやはりこの問題を発動するについて法務省とは相談されないけれども、あなたもやはり閣員の一人であるから閣内において御相談になり、あるいはまた政党の一員でありますから、所党の幹部諸君と御相談になつて、そういうことがあつたんじやないかと思いますが、その点はいかがですか。
  38. 犬養健

    参考人犬養健君) お答え申し上げます、当時の事情としましては、私も閣議には出席しておりましたが、いろいろ世間注目の事件でもありますので、努めて私はほかにおりまして、法務省政府委員室に主としておりました。そういう態度をとつております上からしても、御推察願えるかと思います内閣からの進言というものとこの問題とは関係ございません。また党のほうも一度何でしたか、ほかの用で自由党の幹部室に参りまして、あなた方に非常に御詰問を受けたことがございます。全くそのことで有田君の逮捕のときでありましたか、全くそのことで行つたんではないのでありますが、自後これはやはり行くということで、問題が起るからと思いまして、事件が済むまで、私の辞任が行れる前は行つたことがないように記憶いたしております。そのようなわけでございますから、政党との関係はありません。これは総長も何かの委員会会で衆議院の法務委員会ですか、犬養政党関係の注文を取り次いだことは一度もないという話をされたそうでありますが、まさにその通りに御了承願いたい。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはまあ政党の最高の問題でもあつたろうし、また内閣にとつても最高問題であつたので、あるいはそういうようなことが隠微のうちに行われたとしても、あなたはそれを言えないだろうし、またなかなかそういうことは表立つて進行するものでない、これ以上聞くのはやぼでありますから、私は伺いません。  そこであの十四条は発動されまして非常に大きな問題になりました、一般法律上の問題であると同時に、政治上の問題である、また刑事政策上の大きな問題でもあるわけです、道徳上の問題でもあるわけです。そこであなたはあの発動の後に辞表を提出されて、おやめになつた。もしあなたがあれが先ほど言われたような適法であり、そして妥当であつて十分理解もあるというのならば、おやめになる必要もなかつた。また当時国会が開かれておつて問題になつた場合に、あなたは国会出席されて、法務大臣として検察庁法十四条の発動について堂々と所信を披瀝されればよかつた。それをなさらないでやめたということは、やはり何かあの十四条の発動についてあなたがこれはいけないことだと、こうお考えになつておやめになつたのではないかと私どもは当時思つておりましたが、その点はいかがですか。
  40. 犬養健

    参考人犬養健君) お答え申し上げます。法務省あるいは検察庁がこれがよいと思つた従来の案件で、私の考えでそれはそう思えないと申して、再考を求め、ある場合には再考の結果、検察庁意見が正しいと思つて私が容れた場合もあります。ある場合には私の意見を容れてくれた場合もあります。しかしすべて今申し上げましたように、それは何といいますか、ああいう両方で肩を張つて渡り合うような形でなく済ましたのであります。今度は文書で稟請し、文書で逮捕の時期を延ばせという形をとりまして、いろいろ世論に反映を与えたことは私も認めます。そこで私の考えますには、私が有能な法務大臣ならば、もつと早く詳細なことに至るまでこちらから求めて、材料を積極的に集めて認定して、あの時間もなどいたんばにああいうことにならないような方法があつたのじやないか、かつ平生から亀田議員にかつて申し上げましたように、円満な話合いで省務をやつて来た私の主義と全く違うことをやつた。実にこれは私の不敏のいたすところでありまして、かつ問題を世間に投げかけ、非常に信頼しておつた私の何といいますか、庁内共々に仕事をしたという関係からも、もつと深い意味の人間的なつながりからも、非常に円満に信頼してやつてつた庁内にも迷惑をかけた。こういう意味で全政責任を私が背負いたいと、こういうことを内閣に申出た次第でございます。要するにふだんの私と違うやり方をした、しかも亀田議員その他の方に国会において私のやり方はこういうやり方でありますと言明したことと違うことをいたしました以上、責を負うのが当然である、こう考えた次第であります。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、検察庁法十四条の発動に対する責任からおやめになつたのではない、こういうことですか。
  42. 犬養健

    参考人犬養健君) 検察庁法十四条というものがあります以上、これを使うことは不法ではないと思います。しかしその使い方、あれを使う前にもつとやり方があつた、あれを使うようなことでなく、もつと何といいますか、円熟した円満なやり方があつたろう、こう反省した次第であります。十四条そのものが悪いから世間に恥じてやめたと、こういう意味ではございません。これはその後の馬場検事正委員会における発言から考えましても、十四条そのものが不法とは思つておりません。ただ、もつと円満なやり方があつた、そのやり方が行えなかつたのは私の不敏のいたすところである。こう考えております。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 最後にお伺いしますが、あの十四条を発動いたしまして逮捕を延ばす、そのことがあの贈収賄被疑事件捜査を妨害し、そうしてそれが輿論にまた大きな反響を与えて、かような事態にまで立至らしたということは、全然予見されなかつたのかどうかという点をお伺いしておきたいと思います。
  44. 犬養健

    参考人犬養健君) 当時の情勢、あるいは国会の中の空気からいいまして、十四条の指揮権をあの形で発動すれば相当国会内に波乱が起き、ひいては輿論に反映することは承知しております。しかしそれと勘案しまして、そういうことが大へんなことになるから、今申し上げましたように、私がこの事件内容を知りまして、それじや大へんなことになるから、この辺で許可しようといつて果していいか悪いか、これは私はもう一応研究を依頼する、要求するということが正しいと思いました。この点は静かに私は謙虚な気持公判を待ち、そのときに一切が明らかになつたときの輿論の動向というものを知りたいと思つております。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまのお話を伺つておりますと、そういうような政治的な反響が大きいということは若干予想はされておつたでしようけれども、そのために佐藤幹事長逮捕というものが事実上不可能というか、だめになつてしまつた。そうして第三者収賄被疑によるところの逮捕がだめになつて、造船汚職問題の全体がくずれてしまつた。そうして贈賄したといわれる者だけが起訴されて、相手方が全然その問題では問題にならなくなつたということを予想されておつたのでしようか。
  46. 犬養健

    参考人犬養健君) 今の御質問でございますが、この問題はほかの点と違いまして、佐藤榮作公党幹事長地位にある、従つて兵党の幹事長地位にある者と第三者収賄というものの関連性考えまして、ほかのいろいろ噂に上りました事件、すなわち幹事長にあらざる者が金を取得したかどうかという事件とは全然私は別個に考えておつたような次第でございます。もちろんしばしば申上げますように、この種の収賄に関係した事件が、つまり何といいますか、いかなる気持で受け取つたかという問題が相当重点になりますから、検察当局の第一線としては外界から遮断して調べたいという原則は私もつとも千万だと思つております。しかし今申し上げましたように、調書の内合に照らしまして、やめちまえというのではないが、もう少しこれは再検討を要すべきであるということについては、他日私は輿論の批判を待ちたいと思つております。ただ念のために申し上げますが、これで私は決して検察当局が何というか、非常にはやりにはやつて捜査を進めた、そういうふうな世の中の誤解は全然当らんものだと思います。検察当局としては十分に一歩々々根拠をもつて調べたものと今でも思つております。しかし最後の結論としまして、この件についてはもう一度調べ直してもらいたい、従来もそういうことがありました。また調べ直してもらつて、さらに事件捜査、証拠固めがより一層固まつた例もございます。またさらに研究してもらつた結果、法務大臣考え方のほうが間違つていたと私が思つた件もあります。これはいろいろでございますが、さらに一層検討して、検討の上の報告をもらいたい。それには岡田さんの指摘されるように、本人を逮捕しないための捜査の不便ということもあります。十分私は内部に一年半奉職いたしましたから、そういう不便は知つておりますが、その不便と、私が調書で認定したところのもう一応研究してもらいたいという気持と、はかりに計りました結果、私は前者をとつたわけでございます。この点は検察庁法十四条の指揮権発動は不法とは思つておりせんが、当不当は今後公判に至るまでの世論、公判に至つたあとの世論に待ちたいと思います。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 私の質問に対してお答えにならなかつた。あのときに、あれを発動することによつて捜査が妨害される。そうして佐藤幹事長逮捕が延期された結果、事件全体がうやむやになるというようなことを予想されておつたかどうか。あなたの主観的な考え方は今お述べになつ通りにしても、それを発動した結果生ずる検察庁活動の阻害があるということを予想されておつたかどうかという点は、その当時どうお考えになつてつたか。
  48. 犬養健

    参考人犬養健君) 原則的に申上げれば、もちろんそのままどんどんあらゆる方法を活用して捜査するほうが検察庁としてはるかに便利というのは、失礼な言い方でありますが、便宜であつたろうと思います。しかしそれを私は知つておりましたが、全部を勘案していま一応研究してもらいたい、こういう結論に達した次第でございます。このために全部の事件がうやむやになるとは考えておりませんでした。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、今からお考えになつてああいうふうな、十四条を発動してこういうふうになつた、この結果はあなたの今日の目から見て満足なことであつたか、自分が考えておつたことが大体その通り実現されたと、だからこれは妥当である、こういうふうにお考えですか。
  50. 犬養健

    参考人犬養健君) これはまあイエスとかノーとか申し上げると簡単になりますので、一応説明をお許し願いたいと思いますが、結局どういう点がまずかつたかと言えば、もつと早く、私がこういう問題、検察事務に通暁しておりまして、早くから事件の特質とか、こういうことになるとこうなるという見通しを持ちまして、もつと前に一応考えてみればよかつた。それをやつていれば、それまでにたびたびやつていることでありまして、時間の余裕もあつたと思いますが、あの問題を率直に申し上げますれば、又あの飯野海運社長の勾留満期という一つの関所がありまして、それをこえたら意味がないので、その前に早く一つきめようというので、私としては時間もない、それから、ゆつくり相談してくれと言えば、その関所をこえてしまうということになりますので、その点が私の行政上の処置としてまずかつたと思います。しかしほかの点でもう一度これはよく研究して、平たく言えば私に納得するような説明をさらにしてもらいたいという気持なつたということを今でも不当と思つておりません。ただ、やり方がいかにもせつぱつまつた、大晦日の前の日のようなときに、私がいろいろなことを考えたということが、いかにも私の行政上の手落ちだつた、こう思つております。
  51. 亀田得治

    ○亀田得治君 時間がちよつと予定より過ぎておりますので一点だけ、と言いますのは、岡田委員に御質問をお願いしたわけですから、やめておこうと思つていたのですが、ただ当の犬養さん自身があの処置は適法であり、そうして妥当であつた、こういうことを繰り返してここで言われる。そういうことになりますと私としてもここの席にいる以上は、一言これは言つておかなければならない。もちろんくどくどしたことは言いませんが、あなたが指揮権発動したのは二つの理由が先からの説明の中にある。ところがほとんどの日本の法律学者はあの二つの理由というものを成り立たん、専門的に検討してそういう結論を出しておる。これはあなたも御存じでしよう。第一点の法律的な性格という問題は、それは第三者収賄でこうこうこういう事情がある、逮捕をするのはちよつと気の毒だ、こういう場合、そういう問題があるにしても、それは逮捕状が裁判所に廻つて来たときに判事がやる権限なんです。それを中間のあなたがここへ入つて来ておる。それからもう一つ理由の、重要法案の審議の状況、これは国全体の政治の問題、これは国会が最高機関である。国会に対して逮捕を求めるわけです。国会の段階でこれは審議さるべき問題なんです。一つは裁判所であり、一つ国会なんです。あなたの場合はこれは繋留なんです。あるいは繋留といいましても、単なる事務的な繋留とは私は思つておりません。ある程度の意見は参加してよろしい。しかし法律的に明確に、一つは裁判所の権限であり、一つ国会の権限であるものに対して、適法であつたから、まあいろんな事情はあろうが御容赦願いたいというのならいいのですが、妥当であつた、こういうことを言われるに至つては、ちよつとおかしいと思う。そんなことあなたは本当に思つているのですか。ああいう学者の批判をどうあなたは読んでおるのです。あの学者はみんな不逞のやからとも言わんでしようが、みんな問違つておるのですか。どういう意見なんですか。それを一点。
  52. 犬養健

    参考人犬養健君) 学者の意見も読みました。それから第三者収賄についてもこれはいろいろ御議論があるようであります。必ずしも亀田さんの言われる通りとは思つておりませんが、これは議論になりますので御意見をよく承わつておきます。それから十四条は法律根拠がある。言いかえれば少しどぎつくなりますが、違法ではない、妥当という言葉をどういう場合に使いましたか、全然妥当ならやめなくてもいい、行政上の扱い方は、私としてはもつと早くいろんな疑念についてあるいは調書内容について自分が督促した上からでも調べるべきであつた。しかし当時はいろいろ第二次的事情を申し上げますれば、新聞人もほとんど総長と私の部屋につめかけていて、大体人間の第六感ではどういう議論をしたか、翌る日は見抜かれるというので、ふだんよりは総長と私は、何といいますか十分心ゆくまで話をするという環境にだんだんなくなつておりました。そういうことがありましたが、それは弁解になりません。結局は私の早くから疑念とするところ、あるいは私がしろうとのゆえでもあります。しろうとのゆえでもありますがしろうとの私が納得行くような説明を早くから求めるべきであつたのに、ああいうどたんばの書類が回つて来ましてから私が疑念に思うようなことは、ひとえに私の責任だと、こう思つてつた次第でありまして、あの場合第三者収賄についての疑念を一応持つということは、私としてやむを得なかつた、こういう意味でございます。亀田さんのお言葉に従いますと、不法ではなく妥当であつた……、力んだようになるわけですが、そうではないのでありまして、十四条は法律根拠に基いてやつたが、もつとやり方がたくさんあつた。ふだんは十四条の発動ということでなくてやつて来た。現に類似の事件で、もう一度考え直してくれ、研究し直してくれといつて、研究し直した結果、さらに書類の充実を得たという例もあるのでありまして、研究し直してくれといつこと自体が私は悪いと思つておりません。しかし非常に肩を張り合つたような形になつたということは、私の不敏のいたすところである、そういう意味で、妥当を欠いていた、妥当性を欠いていたという意味ではありませんが、行政上のやり方として不手際であつた、こう思つて辞任いたした次第であります。従つて違法ではない。妥当である。こう二つの言葉で言い切つたというのとは、十分聞いておられて御承知と思いますが、そうでない点を御了解願いたいと思います。
  53. 小林亦治

    ○小林亦治君 当時の法務大臣犬養さんの御答弁を途中から実は拝聴しているので、あるいは御答弁済みの事項かもしれませんが、承わつておりますと、非常に御答弁が繊細な技巧によつてうまく申されておるやにうかがえるので、なおだめを押して伺いたいことは、今亀田委員からも御質疑があつたように、十四条のただし書を法務大臣の職種によつて使つたことは、現行法の権限を使用したのであるからその限りにおいて適法であり、ここまでは私どももよく納得が行くのです。悪法もまた法なりでありますから、いやしくその現行法が生きている以上、お使いになることはごうもこれは差支えない。その違法を糾弾するのではないのでありまして、そこをお含み願いたい。それから、やはり私の関心も妥当であるかのごとき御釈明をなさるのですが、そこなんです。だんだんこのおしまいまで伺つて参りまするというと、ただいまおつしやるように、妥当とは言いかねるが、どうも遺憾である。時間的に言つても、あの場合、差し当てて考えても遺憾であつたかのような御発言なんですが、そう伺つてよろしゆうございますか。妥当と言つたのは言い過ぎだと、まあともかく適法であつたが遺憾の点はあつたと、かように結論づけられるように今伺つておりますが、そうじやないでしようか。まあ仮にだね、仮にじやない事案なんですが、いろいろあなたおつしやいますが、いずれにしましても、事実としては十四条ただし書を使つたとたんに、赫々たる閣僚のあなたが、閣僚の雛壇から姿をお消しになつた、こういう事実があるのでありますから、一つ現にあなたはその職におられないのでありますし、いわば本委員会を通して国民にお答えになつておるのでありますから、もう少し率直な、あなたのお人柄通りの御答弁をここでいただきたいと思うのです。どうもよく勉強せられたあなたを、私ども昨日も実は話したのですけれども、感心しておつた。よくああいうように法律畑でない犬養さんが、よく研究せられて、刑事訴訟法の改正やら、刑法議論やら、よくあの程度応酬できたものだとわれわれ尊敬しておつた。昨日まではですよ。ところが、だんだんその御研究が重なつて、どうも三百式な御答弁をなさるようにまで御勉強になるに至つては、これは大へん迷惑なんです。どうももう少しうち割つた率直な御答弁をいただけまいかと思うのであります。その点先ず一点伺いたい。
  54. 犬養健

    参考人犬養健君) 小林さんの御注意恐縮に思いますが、どういう点を一番疑念に思つておられますか、御指摘下されば、できるだけ御答弁をしたいと思います。いかにもこう質問によつて答弁いたしますと角立つのですが、検察庁法十四条は、不当にしてやつたかと、こういう御質問でありますれば、あれは検察庁法にある、それを適用したのであると言えば合法だ、こういう御答弁になるわけであります。今申しましたように合法であるが、いつもの私のやり方というものは、そういうつばぜり合にならずに、いろいろ話し合つて、私の意見の通つたこともあります。また考え面して私の補佐の人たちの意見のほうがいいと思つて考え直したこともあります。しかしそれは十分な余裕を持ち、何といいますか外界の大問題にならずに済んだわけでございます。今度のは、私の刑事事件に対する経験のなさ、見通しの鋭どさを欠くる等の点が、早くからこういう点をよく聞いておきたいというようなことにもなりかねた点を恥じておる次第でございます。また、ほか件ならば容疑がかけられた人の関係から聞くということもありますが、これは私当時の情勢上非常に慎しんだ点でございます。これは幾らお調べになつてもけつこうなんでありますが、一度の連絡もしたことがありません。与党だから蔭で連絡をしたのだろうというお疑いも一応不当だとは思いませんが、事実ないのがありまして、そういう点で万事固くなり過ぎて事件の把握が遅れたとも言い得ると思つておるのでありますが、これはいずれにしても事件の特性の把握が遅れ、その点についていろいろ協議するの時間的な余裕もないというようなことになりましたことは、今から考えても私非常に残念に思いまして、何とかもつと私があんな角立たない方法で、同じ目的に沿いながら解決に努力する方法があつたのではないか、こう思つておる次第であります。もちろん研究の結果、捜査当局がやはりこの通り確信すると返事する場合もありましよう。またそうでない、一応こうやつたからこうなつたという場合もあるいはあるかもしれない。あの場合はそういう余裕もなく、誠に角立つた形になつたということは残念に思つている、こういう意味でございます。
  55. 小林亦治

    ○小林亦治君 そうしますと、しつこいようですが、適法であつたが残念な点が多かつた、こういうふうに伺つてよろしゆうございますか。
  56. 犬養健

    参考人犬養健君) 合法か不合法かといえば、法律根拠に立つている、いかにもやり方がせつぱつまつて誠に遺憾であつた、そういう意味で残念だつた、もつと鋭敏な法務大臣なら、前から特性を察知して、当局に督促して、事件内容をもつと全般に浮彫り的に把握できたのじやないか、こういうふうな意味から残念に思つております。その点で省にも庁にも迷惑をかけた、こう思つております。
  57. 小林亦治

    ○小林亦治君 あの十四条の発動後に、吉田総理は国会の席上で、逮捕をやらなくとも捜査は一向に差支ないのだ、自由にやればいいのだ、ごうも支障にはならんということを再三言明されておつたのです。ところが結果はさにあらずで、七月の三十日に検事総長の談話による発表によれば、結局十四条の発動というものが、この捜査の打切りの命取りになつたのだということをはつきり申されているのですが、その点からお考えになつてですね、当時の法務大臣であり、現に吉田自由党の幹部であられるあなたが、どういうふうにただいま御認識になつておられるか、それを伺つておきたいと思います。
  58. 犬養健

    参考人犬養健君) 総理大臣のお話は退官後じかに聞いておりませんが、小林さんのお話を通じて、私、解釈さしていただきます。おそらく総理大臣は憲法の精神、新刑事訴訟法の原則を言つておられる。御承知のように当委員会でも、議運の委員会でも、非常にやかましかつたのでありますが、逮捕しなければ目的が達せられないのかといつて、私が責任者として大へんなお叱りを受けたのでありますが、この種の収賄事件が、ある場合外界を遮断して、口裏というものに重点を置かなければならんという特性は、第一線の要求としては無理からぬ点があると思います。しかし私の措置としては、それを重々承知しておりながら、他の角度から見まして、その不便をしばらく忍んでもらいたい、こういう処置に出たわけでございまして、それから起つた影響については、公判を待ち、謙虚な気持、国民の批判を、私は待つている次第であります。
  59. 小林亦治

    ○小林亦治君 公判を待つということを先ほどからおつしやるのですが、私ども考えは、公判を待たないでもこれはもういいのであります。むしろ公判を待つなどということは不見識なことなんです。われわれとしてはまた現段階においても、現状に至るまでの諸般については、いろいろな面から価値判断ができなければならないはずなんです。その限度で伺つているので、そういうふうにお逃げにならないで、もつと率直な御答弁が得られるかと私は思うのであります。その点いかがですか。
  60. 犬養健

    参考人犬養健君) 私の御答弁がそれた点についてのお叱りは十分伺います。もちろん馬場検事正も、他の委員会で述べられましたように、指揮権というものの発動がないほうが、いや指揮権という条項が法律にないほうが、検察当局としてはもちろんやりいい、こう言つておられる通りでありまして、その点についてはああいうことをしないほうが、捜査はさらにやりよかつたと思います。しかしたびたび申し上げますように、他の角度から、そのことを承知しながらも、私が指揮権発動したわけでありまして、この点について検察当局が多大の御不便を感じたと答弁している点は、検察当局としてはもつともだと思つております。
  61. 小林亦治

    ○小林亦治君 私はもう結構です。以上です。
  62. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 検察庁法第十四条の発動に関しまして犬養前法相はこれは適法であることはこれはもちろんのことで、あの段階において妥当性があるんだという信念をもつておやりになつたんであろうと私は信じておつたのであります。そうだとすればできる限りこの妥当性というものをはつきりしてかかるということが、これはやはり検察行政全体のために大事じやなかろうか。こういうふうに思つているわけであります。それから昨日私小原大臣に聞いたのでありますけれども、ただいまも犬養前大臣は言われたのでありますが、検察庁法十四条がなければ検察陣営は非常に便利である。これはその通りである。しかし検察行政はやはり国の大きな行政事務であつて、それに対する、それに関する責任の所在ということははつきりしなくちやいかない。便宜、不便宜で論ずべきものでない。法務大臣としてこれは当然検察行政全体の責任を負つて検察庁法十四条を発動すべき立場におられるわけなんだ。私はこう思うのであります。それから先ほど来のいろいろの質疑応答はできる限り避けてお尋ねしたいのでありますが、犬養さんのあのときにあれを発動されたについての、大臣としてのまあやり方と申しますか、手落ちと申しますか、そういうことについての点はこれは私別問題に考えていいんじやないかと思います。あくまであの発動自体、その内容自体が問題であろうとこう思うのでありまして、そうしますると、結局理由として、先ほど来質疑応答がありましたように、一つ法律的性格の問題、一つはまあ政治的と申しますか、重要法案審議のあの現状にかんがみて、二つの理由になつているわけであります。私は後段の重要法案審議の状況、なるほどMSAでありますとか、警察法案とか、重要問題があると思います。そういうことを法務大臣としてあの指揮権発動される場合に十分考慮に入れられるということは、これは大臣として当然であろうと思います。しかしそれが十四条発動の主たる理由であるとすれば、これは十四条を発動することが私は、妥当性を欠くと思うのです。検察行政の責任者として他の理由政治理由、これは考慮には入れるけれども、それは主なる理由としては適法であつても、著しく妥当性を欠くんじやないか。こう思うのであります。主とした理由が、これは議論が分れましようけれども、検察行政の運営といいますか、刑事政策、その事件法律関連と申しますか、そういう点に重点があつて、妥当性が出て来るんじやないかと思う。おそらく犬養前大臣は両者、まあ第一と第二の理由を勘案してと、先ほども言われたと思うのですけれども、その重点の関係ですね。重点の関係がどちらにあるか。もし法律的性格、第三者贈収賄罪に関連するあの疑義がなければ発動されなかつたのか。まあこれは仮定でありまするから問題にならんと思いますけれども、その重点の関係をどう考えておつたかということが一つと、それから重要法案審議の現況にかんがみて云々ということですけれども、あの際に検事総長逮捕請求のことが国会に来た場合には、これは果してあのときの状況で国会の、まあ国会会自体のきめることですから、別の立場でとやかく言う筋は毛頭ありませんけれども、大臣としては果して国会への承諾を得られるかどうか。その点について疑義があつたのではなかろうか、本来検察庁法十四条を発動するかしないか、発動したとかどうとかいうふうなことは、これは普通の場合においては世間にとやかくその際及びその事前に論議されるべきものではなかろうと、これは常識的に思うのであります。そういうものがあの段階において国会に来ると、果して承諾を得られなかつたとすればこれまたその後の捜査進行上相当の障害があつたと思うのです。その点があの重要法案審議の現状にかんがみでしたか、字句は忘れましたがそういうのに関連して大臣の考えにあつたかどうか、それを一つ
  63. 犬養健

    参考人犬養健君) だんだんの御質疑でございまして、答弁が落ちましたら御注意を願いたいと思いますが、法律的性格にかんがみということを重要法案推移いかん国策の基本に重大な影響があると、二つ並べてあるが、どつちが重点であるか。仮に法律的性格において一点の疑いがなかつたらお前はどうか。そういう仮定の問題で誠に答弁に少し苦しむわけでございますが、政治立場とか、見解の異る方々とはそこが心見が違うと思いますが、私は国際関係法律その他を非常に重視はいたしました。これも政治的に見て重大な私の考慮の要素になつておることは間違いございません。しかし一方から考えまして、今申上げましたような第三者収賄という昨日も小原法務大臣が言われたそうでありますが、あまりたくさんの例のないケース、これについてさらに慎重に検討してもらいたいという要素がありますたにめ、両方勘案してああいう決意をいたしたということが偽らざる御答弁になると思います。それで今までたびたび申し上げますようにストツプしろというのではないので、その前にも、内容は申し上げられませんが検事総長を通じてある稟請がありましたのを、もう一応考慮してくれと、その考慮を円満に受入れ、その考慮の結果、さらに捜査が充実した例もあります。それも頭にあつたわけでございます。従つて先ほど御質問かありましたように、さらに検討しろと言えばお前が悪いのか、第一線の検察庁が悪いのか、そういう問題でなくて、筋はよくわかるがこの点とこの点もう一度検討してもらいたいという場合があり得るのです。それがなければまた法務大臣というものはすわつている必要がほとんどないのではないかと思います。ただ、それの当不当はこれは国会の批判におまかせし、輿論にまかせる、こう考えておりました。それからもう一点、これも他の委員会議論が出たと思いますが、お前は事務的に素通りさして国会議論にまかせればよかつたじやないか。こういう御議論が他にもあつたように思います。これも一つの方法だと思いますが、あの議運のあれまでの、梶原さんよく御承知の非常な紛糾の空気、それから一方には素への私のためかもしれませんが、とにかく法務大臣の任を奉職している者がもう一度この点は一つ研究してもらつて、その研究の結果の返事をさらに聞こうと思つている問題が心にわだかまりながらいい子になつて、議運に議論の嵐をまかせて、自分は、まあ台風圏からのこうということは、法務大臣としてたくみではあるが、またいいやり方かどうか、これは私も疑問があると思います。その二点お答え申上げます。
  64. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 もう一度考え直すと申しますか、再検討をすると言われる点、これはよくわかるのであります。ただ、そこで先ほど質問がありましたように検事総長のほうでは時期を失するということは、意味がないということが非常に強調されている。それがあの場を見ますと、むしろ広い意味法律的性格のように理解でき得るのであります。言いかえればもう一度検討する時間というものは、時期を失するということと一緒になつているように思われたのであります、今になつてみますると……。その点はある疑念が、割切れない疑念が残るような気がするのです。これはその後の経過ですからやむを得ないと思うのです。いま一点、これは先ほど小林さんも御質問になつていますが、十四条の発動関連して本会議でこれは緑風会の広瀬議員の質問でしたかに、法律的な観点で十四条発動をどう説明するのかという質問に対して、総理大臣が逮捕というものはできるだけ避けたい。ことに佐藤幹事長の場合においては逃げるわけでもなし、かくれるわけでも、証拠隠滅のおそれもあるとも思われない。従つて逮捕要請には応ずるわけにはいかないということを言われ、それが十四条発動法律と申しますか、理由であるという答弁をされているのであります。総理の言われることは、言われている限りにおいては、その限りにおいては必ずしもこれは間違つているとは言えない。逮捕を避ける、これは当然のことだと思うのです、総理大臣が繰返し十四条発動関連して本会議においても答弁されておるのでありますが、法務大臣としてやはり総理の言われているあの理由が、犬養法務大臣発動される場合に念頭にあつたと申しますか、理由一つにあつた考えていいかどうか、この点を一つ……。
  65. 犬養健

    参考人犬養健君) 私退任後で、総理大臣の答弁を伺つておりますと、そのいろいろ空気とか英語でいうニユアンスはわかりますが、伺つておりませんので筋違いの答弁になるかもしれません。私の気持を率直に申せば、もし俣野飯野海運社長の勾留期間が延ばせるものなら延ばして、いつものようにそう角立たない信念の披瀝をしてそうして解決のつく途があつたと思いますが、俣野社長をそれ以上勾留するということは、また別の人権問題が起つて、それがまあ東京地検としても望まないことであるし、東京地検にも迷惑のかかる問題でありまして、俣野社長の勾留期間延長ということはこれは私として主張できない、こういう堰が一つできているわけです。その間に問題を解決しなければならん。そういう時間の追つたということは、誰の責任でもなく、私のやはり行政能力の不足だと、こう率直に思つているのでございます、それを今でも非常に残念に思つております、従つて時間は時間切れになる、何とかしなければならない。それを越えればほとんど無意味になる、こういうような問題になつて来たわけでございます。これは非常に平たい説明になるのであります。そういう意味で総理がどういうふうに言われましたかしりませんが、私としてはできるだけいつものように話合いで解決点を見出したいが時間が足りない。従つて書類稟請する、書類で延期を支持する。いかにも角が立つたどぎつい、適法ではあるかなるべく避けたかつた、私の主義とは違う、こういう結果になつた次第であります。
  66. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 大臣おやめになつて総理の言われたこと、直接その雰囲気をお聞きになつておらないのでありまして、ごもつともでありますけれども、しかし十四条発動関連して総理がしばしばその趣旨の理由を言つておられるのでおります。今の第三者贈収賄罪といいますか、それに関連してどうこうというようなことは、これはその道の専門の方々にはあるいは問題でありましようけれども、一般に理由として言われているところは、総理の説明と申しますか、これは相当私広く行き渡つているだろうと思います。内容はよく知りませんけれども自由党の支部長会議、その際においても同様の趣旨のことをおつしやつておられる、こう思うのであります。従いまして私、その総理の考え方が間違つているとかどうこうというのではありません。一つのあれはあれなりに考え方だろうと思います。普通の場合であれば当然そういうふうになる。その考え方があの場合当たるかどうか、ここに問題があると思うのであります、総理があの十四条発動関連しての、法務大臣のとつた法務大臣立場地位としての理由は  あすこにあつたろうということを総理自体は信じておられるだろうと私は思うのであります。おそらく法務大臣としても、あのときこういうお考えがあつたろうと実はおもつてつたのであります。全然そういうお考えなしに第三者贈収賄罪だけの関連、こういうふうに考えてもいいのかどうか、最後にそれだけ一つお伺いして私の質問を終ります。
  67. 犬養健

    参考人犬養健君) お答えいたします。この前の御質問少し意味を私取り違つておりまして失礼いたしました。総理としましては憲法の根本原則、新刑事訴訟法の精神というような原則を強調されたものと思いまして、個々事件の特殊性というようなものについては報告を怠つておる私の責任でございますが、あまり把握なさらなかつたのではないかと思います。原則を非常に強く言われたものと思います。それから梶原さんの御質問の重点だと解釈申上げたのでありますが、法律的性格ということについて一向言わんという点は、私が詳細に報告をすることを怠つている結果でございます。なぜ総理も緒方副総理も重要法案のことに力を入れられたかといいますと、これはここで申上げることでありますが、去る者がやはり水をきれいにして行くという意味で、私の行政上のぶざまから、不行届からああいう肩を怒らしてぶつかり合うような指揮権の形……、指揮権は日常使つておりますが、もつと円満な形で使つておる、その点で遺憾である。みずから責任感じてどつかが法律上の性格について疑義ありなんということは、あれだけ働いた検察当局の努力に対して、あと足で砂を蹴るような批判を起すということは私の道徳観としていやであつた。もしも小原法務大臣が昨日第三者収賄についてあれほど言明をなさなければ、私は第三者収賄についての私のしろうとなりの疑義というようなことは申さずにこの委員会に出たいくらいに思つてつた次第でございます。しかしながら第三者収賄についてのことが問題になつております以上、率直に私の認識した点の範囲のことを申し上げることが委員会を尊重するゆえんである、義務であると思いましたので申し上げたのでありますが、総理や副総理もその点についてあまり言及なさらないのが、間違つているかもしれませんが、私の一種のモラルから出ているわけであります。これは私情といえば私情でありましようが、私は満腔の感謝を検察庁に対して持つておりますので、そういう誤解を招きやすい法の説明はしたくない、こういう一種の潔癖な気持を持つてつた次第でございます。
  68. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちよつと五分ほど……。犬養元法相にちよつとお伺いいたしますが、私はけさ少し遅刻して参りましたし、また法律案については、ずぶのしろうとでございますので、失礼の点があるかもしれませんが、先ほど私の聞きましたことが間違いでございませんでしたら、この検察庁法第十四条を発動することは、次官なり刑事局長反対であつたというように仰せになつたと思いますが、その点をもう一度はつきりしていただきたいことと、それからどういう理由をもつて事務当局反対をいたしましたかということについて伺いたいと思います。
  69. 犬養健

    参考人犬養健君) これはおいでになる前に御説明したかとも思いますが、指揮権発動というと、固苦しうございますが、指揮をするという場合はたびたび日常あるのでございます。小原法務大臣の御説明があつたと思いますが、外国人関係の犯罪というようなものは、しじゆう私が最後の判断をいたし、指揮をしているのでございますが、しかしそれは何ゆえ問題にならんかというと、たびたび申し上げますが、きわめて円満に行つておる。書類をもつて逮捕稟請をし、書類を持つて延期を指示するというような固苦しいことでなくて済んでおりますから、世間では知らない。知らないから今度が初めてだ、こういうことになつておりますのは、私の行政上の手腕、能力の足らないところから来ておると思います。この点は幸いに老練な小原法務大臣指揮権発動というものはたびたび日常あるものだ、自分は日に四五度やつている日もあるのだというように速記録。……新聞の記事が間違えなければ言つておる、その通りでございます。今度の場合、次官も刑事局長もそういうどぎつい方法でなくして、解決をしたいということが一つと、それからいろいろこれは逮捕請求までには検察官は率直な人たちですから、信ずるところを合同会議でどんどん言つた。しかし結論としてやはり逮捕請求をすべきものだとまとまつた以上、これは検察庁の公けの意見でありまして、よほど理由のない限り法務大臣としては尊重しなければならないという気持が、次官も刑事局長もあつたろうと思います。この二つの理由ではないかと思います。
  70. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 なれていらつしやる事務当局がそうでないほうがいいというのに、そうなさつたということにつきましては、別に犬養大臣の御意見以外には上からの指図なんぞがございませんでしたと考えてよろしゆうでございますか。
  71. 犬養健

    参考人犬養健君) 先ほどもそういう御質問がありますが、今申し上げましたように、法律上の性格重要法案の審議の推移いかんが非常に日本の立場というものに響くという認定を私がしたのでありまして、この是非、善悪は全部私の責任でございます。
  72. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 検事総長佐藤逮捕稟請を大臣のところに持つて参りましたときに、大臣がもう一遍と念をお押しになつたということは、これは公判に行つて事件が破れるかもしれないという意味で反省……まあもう一度念を入れよというようにお考えなつたと理解してよろしゆうございましようか。
  73. 犬養健

    参考人犬養健君) お答えいたします。公訴の維持ということは厳格に理屈の上からいえば、裁判にまかせるべきものであります。ただ何といいますか、法務大臣の考慮に全然入れないでいいかと申すと、私は両院の議運の空気から行きましても、これを公判で無罪になつた場合に、係り検事をどう処置する、今まで処置したことがあるかというような非常に御追及がありました。法務大臣としましては公訴の維持の可能、不可能ということも一応考慮に入れる必要がある。もちろんこの公訴の維持については最後の問題は裁判所にまかすべきものであります。さりとて考慮に入れないほうが正しいのだという御議論がありますならば、私は法務大臣としては全然考慮に入れずに、検事総長を通じて質問をする、あるいは検事総長質問をするということでは不十分である、それを考慮に入れていろいろの角度から疑義を質す、法務大臣は疑義を質すということが万全なる処置と思つております。
  74. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 よろしゆうございます。
  75. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちよつと先ほど一つお聞きしたいと思つた点がございます。これは非常に世間を騒がせ、また日本の政治の上でも初めて起きた事件です、今日の指揮権発動は……、こういう重大な行動法務大臣がとられて、そうしてとられた後の説明は本日お聞きしましたが、ああいうふうな心境でこの指揮権発動されたということが事実であるとすれば、やはり辞職をしないで法務大臣としてとどまるべきじやないか。そんなちよつと内部のとりまとめが不手ぎわであつた、そんなことでやめなければならんような問題じやないので、ああいう事件が起きたために国会のほうは大いに議論が沸騰しておる、当の法務大臣はおらないということはもう非常に私遺憾な状態だと思います。私の気持はこれはもう犬養さんは大体四月十九日くらいまでは逮捕もやむを得ないというふうに考えていたと僕らは今でも思つております。結局それはおそらく政府の圧迫で屈したということでしよう。それに対する世間の批判もある。これはやはり良心にたえかねてあなたもおやめになつた、本当は……。そうでなければ内部のとりまとめか少し不てぎわであつた、そんな程度であれば、世間でいろいろな意思があるから、あなたは法務大臣としてとどまつて説明をしなければならんでしよう、これは実際あの指揮権発動直後に吉田総理にも本会議でも一応質した。しかしこれはもう短時間で、本当に質すのは法務委員会であなたにゆつくり質さなければならない問題ですといいますのは、今後こういう事態が再びいつかの時代に起きた場合に、前の犬養法務大臣の時代にはどうだつたかと、これは必らず調べられます。そのとき政治家は一体どういう態度を国会でとつたか、私どもそのために直ちにそのことを考えたのですが、あなたがやめてしまつたあと、出て来たのは法律をちつとも知らない加藤さんです。おそらくこのときは全然法律を知らない人を出したほうが無難だと考えて出したのだろうと思う。ああいうことは私実に筋道として通らないのですよ。もう良心の苛責にたえかねて自分はやめたのだ、本当にこの一言をここでおつしやれば私何も質問しません、それはいい悪いは別として、とにかくすなおに受け取れる。そうじやない、先ほどの答弁は……。それでなければ……なぜあなたはとどまつて国会議員の質問があの当時たくさんあつた、それに対してお答えする、こういう態度がとられなかつたか。これはちよつと政治家として私責任を尽しておらんと思いますがね。どうでしよう。
  76. 犬養健

    参考人犬養健君) お答えいたします。確かに一つの御見識です。そういう議論もあると思います。ただ亀田さんとしては、お前おれにも話合いで円満にやると言つたじやないか、ただ事務の不始未じやない、それどころじやないのだ、少くとも亀田はそんなことは言わせないぞ、話合いでもつてああいうどぎついことをしないとりつぱに言つて、それが根本方針だと言つておる者が、ああいうことを言うのはけしからんじやないかというふうのお叱りを受けたかつた、あなたから……。そういうところから言うと、事実俣野社長の勾留なんかとからむとはいえ、時間の少いところに重大問題を山積させたということは、これは行政上の私の不始末なんです。誰が何と言つても……。そういうこの不始末だけじやない。ふだん話合いで一年ばかり円満にやつた。ずいぶん議論の対立があつたときも、話合いで全部円満にやつた従つてあなたの耳目にも触れずに済んだ。その点は円満に解決をし、妥当な解決をしたのに、今度はこういうことになつて、ふだんの私の主義と違う。あなたにも猪俣さんにもりつぱに私はきれいな口をきいているわけです。そういう根本の法務大臣の方針と全然違うことをやつて、その地位にとどまるというわけにいかない、こう思つたのでありまして、その点残つて説明したほうがいいという御議論も不当だと思いません。まあそういうことも あるから、一昨日ですか、当院からお呼び立てがありましたときには、私は進んで出るべき義務があると思いまして、自分で電話で、喜んで参上いたすと申し上げたのは、説明の機会を求める義務かあると、こう思つてつた次第でございます。しかしとどまつて説明をするほうがよかつたじやないかという御議論も、確かに私は見識のある御議論だと思つております。
  77. 亀田得治

    ○亀田得治君 法務大臣が御説明になるようなことでおやめになつたのであれば、これはとどまつて説明をすべきであつた、私はそう言うのです。ところが何ですね、それは一つの見識だと言われますけれども、これは誰でも常識だと思うのですがれ。ただ、とどまつて説明すべき場合であつても、非常に無理をしたために良心的におれない、こういう場合はありますよ。私はどういうことをやつたつて、その事件が始末がつくまではやはり政治家はとどまつて処理すべきだと思うのです。ちつとも処理がついていないのですからね。善後の始末が……。だからそれ以上に私はやはり良心的な重大な問題があると思うのです、この問題には……。だからそれを考えるから、これはおやめになるのもあるいはごもつともだな、こう思つたのです。しかしあなたの説明は納得できませんね。私は良心的な一つの問題というものを前提にしておやめになつたことをまあ一応是認するわけなんです。かえつて逆にね……。  そこでもう一つ同じようなことになりますが、別な角度から聞きますが、もしあなたがやめるのであれば、指揮権発動前に私はやめてもらいたいのですね。これは今後いろいろな大臣のやはり考えておくべきことだと思うのです。重大な問題を、ちようどいたちの何とかというような、ぶつとやつて、そうしてこうあとを皆んな混乱さして本人はおらん、これは大へんなことだと思うのですよ。自分が決意したのであれば、まあ決意のよし悪しはさつき、言いましたから言いませんが、どうしてもやめるというならやめて、そうして新らしい法務大臣がこの問題を処理すべきでしよう。そうすればその法務大臣に対してわれわれはま見解も聞けますからね。だからこういう意味で非常に犬養さんのあのときの進退は私間違つていたと思うのです。非常に冷静なあなたが間違うほどに実は無理があつた、こういうふうに考えております。その点はあまり率直に言われんものですから、どうも奥歯にものがはさまつたというような感じしか受けない。それははつきり言うたらどうですかね。今日は証人じやありませんが、しかしその点を皆んなが真相はどうなんだとこう知りたがつておるのですから、どうしてもそういう点がざつくばらんに申してもらえないということになれば、或いは衆議院と同じように、検察行政として重要な問題ですから、これは決算委員会よりも法務委員会が、むしろ検察行政の一つのあり方として、あらためて証人としてその点をお聞きしなければならん、こういうことになるのじやないか、もう少しそこを一つはつきり言つてもらいたいと思うのですがね。
  78. 犬養健

    参考人犬養健君) あなたの御質問は決して意地悪だと思つておりません。私は退任後速記録であなたの御質疑を拝読いたしまして、非常に私に対して何といいますか、心の行届いたお言葉がありまして、感激しておるくらいであります。どうも今の御質問は推理に属して来ることでありまして、どうもそう言わないと証人として呼ばれるぞというようなことを言われましても誠に困る問題でありまして、今申し上げたように、私はこの二つの理由で全部打ち切れとは言いませんが、何分沙汰あるまで逮捕請求するな、延ばしてくれと、こう言つたわけで、検察当局の事務的事情から言えば、俣野社長の勾留満期の日以内にしたい、これはもつとも千万でありますが、全般の考えからああした。しかしたびたび申し上げますように、もつと上手なやり方が……もつと時間的に早く私がやつておれば、検察当局も第二次的な研究の結果の方針もありましようし、円満に行つたろう、私が行政上の不行届であるのみならず、検察庁も何か信用を低下したような感じを抱いて、そうして一方には国会に対してあなたにも、あなた以外の委員にも、ふだんの話合いで解決する主義をとつておると、非常に強い言葉であなたに申し上げたことと記憶しております。そういう根本の法務大臣としての行政の方針に反することをしたのでありますから、そうすべきである、こう考えておるのであります。どうかその点は御了承願いたいと思います。
  79. 亀田得治

    ○亀田得治君 了承できませんが、私はこの程度でやめておきます。
  80. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは午前の犬養参考人に対する質疑はこれをもつて打ち切ることといたしまして、午後二時から法務大臣に対する昨日の質問を継続いたしたいと思います。  暫時休憩いたします。    午後零時三十七分休憩    —————・—————    午後二時十二分開会
  81. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより委員会を開会いたします。亀田委員
  82. 亀田得治

    ○亀田得治君 昨日例の七月三十日の佐藤検事総長の発表に関しまして法務大臣にお開きしたのでありますが、その質疑をしまして締めくくりをつけたいと思います。昨日の質疑の最後の段階におきまして、いわゆる公職選挙法違反の二十数名の氏名の名称なら、あるいは金額等のことを今の段階では発表できないこういうふうに法務大臣が言われた。その理由として公訴維持という必要性、あるいは公判の公平、あるいは名誉の問題といつたような理由を挙げられたわけでありますが、私はこの問題は実は衆議院の決算委員会でも、あるいは直接証人ではありませんが、衆議院の法務委員会等においても同じような問題に直面しておると思うんです。でこれはおそらく法務大臣として本当にこの問題の処理について確信がまだつかないのではないか、この私は想像する。これは初めて私どもが当面する問題でありますので、ともかくこれは一つ間違いのない考え方をここで出して行くようにしてほしい、こう希望するわけなんです。私どももこれが一たん間違つた出され方をすると、単に汚職事件に関するわれわれ国会議員の審議権が侵害されるという問題にとどまらないのでありまして、同じような程度であれば、あらゆる行政上の諸問題について国会議員が耳をふさがれる、こういう問題に実は発展して行くわけです。そういう角度から私は実は非常に一般的な問題としても、これは重大視しておるわけなんです。それで私が要求いたしましたこの二十数名の氏名の発表、これが拒否されたわけでありますが、それに対して理由を挙げられたわけですが、私はその理由のないという点について自分の見解も申し上げ、法務大臣考え方も承わりたいと思う。そうしてこれはやはり初めてぶつかるお互いのケースですから、筋の通つたことを一つつてもらいたい、こういう希望が実は以下お尋ねするわけです。  そこで第一の公訴維持の問題ですね。本件の二十数名の問題については公訴維持という根拠は私は何もないと実は考えている。その理由は、この二十数名の問題についてはこれは不起訴事件であるわけですね、おそらく法務大臣の言われるのは、不起訴事件であつて起訴した事件とも関係がある。そういう意味だろうと思うのですが、そういう意味の間接的な関係はこれはあると私も考えます。しかしそれは直接ではないわけですね。そういう点が一つ。もう一つ公判において公訴を維持して行くという方法は、何も今問題になつている二十数名の人たちの氏名なり、金額なり、それをもらつた年月日なり、そういうものを明らかにするかしないかに一にかかつていると、そういう問題で私はなかろうと思うのです。公訴が維持できるかどうかということは、もつと大きな大元の問題があるわけですね。そういうわけでこれはきわめて部分的な関係しかない。それからもう一つの第三の点は、よくこの公訴維持ということがあらゆる場合にいわれるのですが、新しい刑事訴訟法のもとにおいては、検察官側だけに有利な証拠を突然に法廷で使うということは原則としてはもうフエアではないわけなんですね。これは法律上の問題はあります。ただ、検察官に有利な調書を事前に被告にあるいは弁護人のほうに見せないでそうして自分たちのほうで隠しておいて行くと、これはなるほど起訴された人間を何とか処罰にもつて行く、それには適当でしようけれども、そういう方法は法律上もこれは実は問題がある。実際的な問題としても新しい刑事訴訴法の建前から言つて、そういうやり方はよろしくない。少くとも公平ではないということはどこの裁判所でも認められている事柄なんです。私どもよく有罪になるか無罪になるかというような事件で、検察官か自分たちに有利な書類を出さないで隠しておく、こういう問題にときどき実はぶつかつている。そのために検察官側とも交渉し、裁判所とも交渉すると、大抵はやはり事前に見せてもらえるのです、時期は別としてもね。そのことは法律の規定は別として、そのほうが公平でいいと、いわゆる闇打ち的な証拠の使用はよろしくない。こういうことは井本刑事局長も、私は今速記録を持つて来ているのですが、長くなるからそんなことは読みませんが、検察官の調書の問題について私が法務委員会質問したときにも、それはなるべく見せるようにするのが妥当であろうというような意味のことをやはり言われている。これは私ども実際に裁判をやつていてその通りなんですね。だからそう考えて行きますと、公訴維持という立場から本件のような不起訴事件書類、あるいはそこに書いてあること、それもり全部と今言つているわけじやないのですね。私がこの七月三十日の発表が刑事政策上適当であつたかどうか、それを批判するに必要な程度は知らしてもらいたいと言つている。その程度のことをも隠さなければならないという理由にこれはなつてこないと思うのです、公訴維持という立場から考えても……。公訴が維持できるかどうかは、実際に犯罪に該当するような事実関係ですね、それが一体はつきりしているのかどうか、その点にかかつているわけですよ。そんな書類なんかを一部隠した、隠さんそんなことは訴訟全体の進行からいつて必ずしも重要なことじやない。しかもこれは間接的な問題なんです。だから少くとも、二十数名については公訴維持の立場から隠さなければならない、秘密にしなければならない、そういう理由は成り立たんと思うのですが、これはいかがでしよう。
  83. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 今お尋ねになりましたことは、いろいろ多岐にわたつておりまするが、要するにこの疑獄事件において不起訴なつた二十数名の人たちの被疑事実及びその氏名をなぜ公にしないかというお尋ねであります。この点につきましては、私は昨日も当委員会におきまして答えましたように、これは捜査上の秘密として、論議し、また公けにすることができないのであります。その理由は、これらの起訴猶予になりました人たちの氏名とそれの被疑事実は、やがて公判において審理せらるべきその人たちに金を渡した人の背任横領という公訴提起になつておるその公判開廷の際に妨げになる。つまり公判開廷以前に、これらに関する書類及びその内容を公けにいたしますることは、検察官としては検察権の行使に妨げあり、一面その影響として、裁判をなす判事に対して、事前に証拠の内容を公けにすることによつて、その裁判官の裁判の公平を誤らしむるおそれがあるから、それゆえにこれは事前においては公表することができません、こういうことを申し上げたのであります。今日もその点はやはり私は同様に考えております。お話の中に、起訴した事件の証拠にするために、検事がやがて証拠に提出すべき書類秘密にしておるが、それは不都合である、現に訴訟においては、弁護士が検事に交渉をして、事前にそれら必要なる書類を公表して見せてもらつたり、あるいは謄写することがあるではないか、そういうようなことができるくらいならば、国会の国政調査においてもこれを事前に公けにしても差支えないのではないかという御趣旨のように承わるのでありまするが、現に訴訟におきまして、検察官は、公訴維持に必要であり、都合のよろしい証拠書類はなるべく弁護士、被告人その他の関係者に示さないようにしておるのが今日の通例であります。しかし裁判所あるいは検察庁によりましては、これはやはり弁護士等から交渉いたしまして、事前にその記録を見せてもらい、あるいは謄写をして、やがて公判が開廷になりましたときの訴訟準備にしておることは事実であります。で、私も若干年間弁護士をやつておりまして、やはりこれらの事例を承知いたしております。しかし、この事前に検察が秘密にしておるところの書類をとにかく見せてもらい、あるいは謄写さしてもらうということがありましても、その弁護士はやはり公判開廷前にはこれは公にすることができんのであります。弁護士法その他に弁護士が職務秘密を守らなければならんという法律の規定がありまして、弁護士はこの秘密を守らなければならん、職務上の義務に違反することができないのでありまするから、さようなことがありましても、これらの書類は公けにはならずに済むのです。でありまするから、それと、今日の国会における国政調査の場合こういうものを公けにして差支えない、ではないかという御議論とは、ちよつと間があつてつておると思うのであります、それからなおこの問題等につきましては、やがて衆議院の決算委員会から求められておりまする佐藤検事総長及び馬場検事正の証言を拒否した、その証言に対する承認を求められておりまするので、この問題に関連して、これらの問題がその場合において最も必要として研究せられておるのでありまして、今日はこの程度ほかここでは申し上げられないということをはなはだ遺憾に存ずるのであります。
  84. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ、公訴維持の問題だけであまり論議しても時間をとり過ぎると思いまするので、私ども考え方だけを一応明白にして次に移りますが、公判の公平ということがちよいちよいあなたからいろいろな委員会で言われるのですが、これもいわゆる裁判官が予断を抱いてはならないというのは、法廷における正規の手続を言つておるわけなんですね。法廷外においてどういう批判がなされ、どういう事件に関する文書が出ようと、そんなことは少しも差支えない。しかしどういうものが世間に出ていても、裁判官としてはそういうものに一切とらわれないで、裁判所は先ず検察官から出す起訴状から逐次始めて行く。それ以外のものは一切白紙の立場で進まなければならない。これがつまり裁判の公平を維持するための、いわゆる予断を抱かしめるようなことがあつてはならない、こういうことなんで、これは裁判の正規の手続の内部の問題なんですね。それは社会にいろいろな問題になつ事件であれば、いろいろな人がいろいろなことを言いますし、それからまた投書もあるだろうし、裁判官が見たくないと言つたつて裁判官のところにどんどん投書も行くだろうし、だからそのことと、裁判外でどういう論議がされ、どうゆう発表がなされということとこれは別なんですよ。私どもはこういうふうに考えておるのですがね。もし法務大臣のようなことだと、極端に言いますと、公判にかかる以前のものはとにかく裁判官にいろいろな心理的な影響を与えるから、一切ストツプだ、こうゆうことになりかねない。それはちよつとおかしいじやないですか、考え方が……。予断の問題は、裁判の公平というのは、あれは正規の法廷の内部の問題として考えられるのはいいですが、少し法務大臣は幅を拡げ過ぎて考えておるように私感ずるのですが、どうです。
  85. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) お説ではありまするが、刑事訴訟法の第四十七条には、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」こうあるのであります。この条文を見ますと、何もこれは公判においてのみこれを言うのではなくして、公判の開廷前にはこれを公けにすることは、裁判上においても、もちろん裁判外においても、やはり公けにしてはならんと解釈すべきであると私は思うのであります。理由としては、要するにこれは裁判上において公けにすることは、もちろんまあそうゆう場合はちよつとないと思うのであります。裁判上公けにする場合は、要するに訴訟が展開されて、証拠書類に出された場合でなければないと思いますが、そのほかにおいては、つまり裁判外にこれを公けにすることを禁じておる法文であると思います。要は、これを公けにすることによつて、裁判官が裁判外において事件に関するいろいろのことを耳にし、目にして、それによつて判断を誤まつてはならないから、この条文ができておる。こうゆうことを考えますと、ただいまお尋ねになりましたように、これは訴訟上だけに関するもので訴訟外においては適用がないというお説は私は違つておるのではないかと思うのであります。    〔委員長退席、理事小野義夫君着席〕
  86. 亀田得治

    ○亀田得治君 刑事訴訟法の第四十七条を今法務大臣は引用されたわけですが、この四十七条は、本件の場合ですと、むしろただし書ですね、但し、公益上の必要その他の事由があると認める場合には公表してもいい、むしろここにこそ意味があるじやないか。現在の問題としては、これは国政調査官の立場からわれわれが要求しおるわけですから、四十七条の本文じやなしに、ただし書のほうですね、このほうには明らかにそういう理由があれば、公表してもよろしいとこうなつておるのですが、この点をむしろどう考えますか、ただし書きのほうを。
  87. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) もつとものお説であります、これも私は自分の考えとして申し上げますると、この公判開廷前は訴訟に関する書類は公けにすることができない、ただし必要かつ相当と認むるときはこの限りでない、こういう条文になつておるのです。本件のごとき事件につきまして捜査内容を公けにすることは、他面起訴になつておりまする事件公判において検察官が公訴の維持上その証拠として提出するものである、公判開廷前の今日これを分けにすることは、裁判官の公平なる判断を誤るおそれがある、こういうことをさつきから申しておるのであります。すなわち裁判の公平確保に支障を来たすおそれがあるから、これを公けにしてはならんということであり、私はこれはこの条文を設けた必要があつたものと思うのであります。そこで国会の国政調査上問題になつておりまするような証言を公けにするとか、あるいはただいま仰せられましたように、事件捜査上祕密にしておるところの事項を公けにするというようなことは、あるいは国政調査上は必要であるかもしれんのであります。で、この必要であるということと裁判の公平を確保して司法権の公正に行われることの必要性とどちらが重いかということを考えるべき問題じやないか、こういうように私は今のところ考えておるのであります、で、そういうような考え方からして今日の段階においてはこれを公けにすることは、裁判の公平を害するおそれがあるからして、国政調査上必要でありましようが、しばらく借すに時をもつてしていただきたい。やがて間もなく公判が開始せられまするならばこれらのものは公判にそれぞれ展開せられまして国政調査のお役に立つことになるのでありますから、そのときまで待つていただけば、国政調査の目的を達するに至ることでありまするから、それまで待つていただけばいいのであります。ここではやはり必要でもありましようが、しばらくやはり借すにときをもつていたしたらいい、そして裁判の公平を確保するというほうに重きを置いて、これを公けにしないほうがよろしい、こういう考え方であります。
  88. 亀田得治

    ○亀田得治君 刑事訴訟法四十七条は公判開廷前には公けにしてならない、こういうふうに書いてある。従つてこれは別な面から言いますと、公判開廷の必要のない、いわゆる不起訴事件ですね、不起訴事件については、こういう制限はないわけなんです。また必要もないわけですね。四十七条の条文から当然そういう解釈が出て来るはずなんです。これは当然公開しなければならない、国政調査の必要があれば。その点はどうお考えですかね、不起訴事件ですよ。
  89. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 本件において先ほど来お尋ねになつておりまする起訴猶予事件、あるいは不起訴事件は、繰り返して申し上げまするように、すでに起訴せられておる事件公判開廷の後においてはこれらの内容が、それぞれの書類が、それぞれ、証拠になるべき運命にあるのでありまするから、それで今日はその不起訴事件の記録のうちのある部分を公けにするというようなことはいたしかねる、こういうことを申し上げておるのであります。
  90. 亀田得治

    ○亀田得治君 その意味はわかるのですが、それは非常に間接的な意味になつて来るのですね、だから国政調査というものが非常に重要なものだということをお考えになれば、そういう間接的なものしまでこの四十七条の本文を広げていいかどうか、これは私はなはだ疑問があると思うのです。国政調査というものは非常に弱いものであれば、場合によつちや四十七条本文を拡大解釈して、そしてある程度広範な書類というものを秘密にする、こういうことも考えられるのですが、一般国政調査というのは非常に重要なのですから、そういうものについては、不起訴事件従つて関連はあるのでしようが、そういうものにまで広げるのは四十七条の精神を少し逸脱するのでははないか、どうですか。
  91. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 先ほど来申し上げている通りでありまして、私は今日の段階においては、これらの書類を、書類及び書類内容のある事実を公けにすることは、裁判の公平を害し、一面においては検察権の行使、公訴権の遂行、これらに支障を来たすから、今日の段階においてはできません、こういうことを申し上げるのでありまして、この点について亀田委員意見が相違するわけであります。私はやはり今日は私の言うほうが自分としては正しいと考えております。
  92. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから昨日この第三の問題として個人の名誉のこともあると、ちよつと言葉が弱かつたようですが、そうゆう点も言われましたが、これは私の考えではほとんど根拠にならないと思つております。これはおそらく法務大臣も、少し理由としては弱いというふうにお考えになつているのだろうと思うのですが、この新刑法、敗戦後変つた刑法の二百三十条の二の条文ですね、私がもう特に御説明するまでもなく、この条文から言つても私が今問題にしておるようなことを、普通世間で個人の人が発表しても名誉毀損にはならない。世間で普通言いふらしても名誉毀損にならんことを国会の国政調査の立場から要求しておる場合に、その名誉を守つてやらなきやならんというような考えがみじんでもありましたら、私はこれは非常な間違いだと思うのです。そういう考え方が幾らかあるのじやないですか、あつたらそれは間違いだと思うのです、
  93. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 先日の当委員会で私はこれを発表する、つまり不起訴なつたものあるいは起訴猶予になつたものの氏名や、それの被疑事実を発表することは、個人の名誉にも関係いたしますからということは申し上げました。しかしそのときも御指摘になりましたようにこれは弱い問題であるということを申し上げたので、これを私は主張してこれがあるゆえに、今日お尋ねになりますような事項を公にすることはできんというふうに申し上げる考え方はなかつたのであります。
  94. 亀田得治

    ○亀田得治君 むしろ名誉という問題を出されるのであれば、むしろ質問者の私どもの名誉を考えてほしいと思つておるのです。といいますのは検事総長が七月三十日、ああいう国会議員の候補者二十数名、ここへリベートの金が一部行つておるこういう発表の仕方は、もらつた本人にとつてはそのほうが都合がいいかもしれんと思うのです。ところで二十数名といえば、ほかのたくさんの国会議員候補者はこれもあいつはどうなのかと、こういうふうな疑いを事情のよく知らん人は待たれるかもしれんでしよう。だからむしろ名誉という問題を言うならば、実際にそういうことに少しも関係のない人たちの名誉をこれは毀損する発表の仕方ですよ、逆に……。私はそういう立場から言つてもこれはぜひ発表してもらわなければならん問題だと思つておる。おそらくこれは社会党の諸君なんかはそういう疑いはかけられんでしようが、今のいろいろな世間の一般の常識から言えば、例えば自由党の同じ党派の人という二十数名というような書き方をされたら、非常に迷惑されておる方もあるのじやないかと思います。だからこういうことこそいやしくも名誉というようなことを言うなら、はつきりと何の誰かという私はすべきだと思うのですが、そうゆう意味でこの発表の仕方はきわめてまずい、これはどうお考えでしようか。
  95. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) あの発表に氏名を挙げておりません。なるほど数十名の人が選挙違反の事実はあるけれども、それは形式的のものであつて、きわめて軽いから起訴猶予にしたという理由が書いてあるのであります。ただいま仰せになりましたように、ああいうふうに名前を言わないというと、その人たちはいいかもしれないが、ほかのもらわない人がもらつたかのごとく世の中から疑われて逆説的に名誉の毀損を受けるのじやないかという御説であります。しかし御自分がもらわないならば、自分の名誉が害されたなどと思うということがどういうものですか、そういうことを考えるということは変なことじやないかと私は思います。またそれがために、金をもらつておらん人が名誉を害されたとお思いにはなるまいと私は思つております。
  96. 亀田得治

    ○亀田得治君 そんなことありませんよ。国会議員が一般にこういうことをしておる、どういう地下の動きがある、こういう書き方をされた場合に、国会議員の誰かということがはつきりしなければ、あの諸君は幾らかそういうことをやつておるのじやないかとこれは考えるのが普通じやないですか、私どもはこれを見て非常に憤慨しているのですよ、こういう書き方には。  それからもう一つ法務大臣考えてほしいのは、これは公職選挙法違反でしよう。公職選挙法違反、つまりその金の流れの関係を公表することになつておるわけですね、公職選挙法でそしてあれは選挙民が皆縦覧期間があつてその結果が見られるようになつているわけです。だからこれは本来法律が公表を命じておる問題なんですね。だから法律に違反しないでちやんとやつておれば、これは何もここでごちやごちや言わんだつて、本来はここにちやんと載つておくべき問題なんです、私はそういう意味もあるから、これは特に事後でももいいから公表すべきものじやないか、かたがたはかの人には名誉にも関係するからそう考えるのですよ。その点を法務大臣はどう考えますか。本来これは公表すべき事柄なんだ……。
  97. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 繰り返して申し上げますが、金をもらわなかつた人が、人からもらつたであろうと疑われて名誉を毀損するというようなことは私は全く考えておりません。そういうような方々は、人がおそらくはあの人はもらつておるであろうなどと疑うこともないのじやないかと思います。それから一面今もう一つ申された金の流の関係は、政党責任者、選挙運動者たる政党責任者に届いて、そしてやがてこれを選管委員長あてに届出でなければならん、それはよく私も承知いたしております。そうなればやがて選管委員長に届ければ、これらが公けになることがあることもこれは考えられます。それゆえにこの事件の今ある問題をことごとく明らかにせよ、こう仰せられますか、これは繰り返し申し上げまするように、今の段階においてはこれを公けにすることができんのであります。やがてこの事実もまたその関係においては起訴せられておりまする他の被告の公判が開廷になれば、自然とこのことは証拠に出て明らかになることでありまするから、そのときまで待つていただきたい。これはさつきから申すような理由で、今日の段階では公けにできない、やがて公判が開廷になるのであるから、そのときまで待つていただけば、これは明らかになるものである、こういうことを申し上げたのです。
  98. 亀田得治

    ○亀田得治君 私はその二十数名の氏名等を公表するべきであるいうのは、いろいろな根拠から言つているのです。ただこの法律か本来これは公表すべき事柄であるということは、これを法律を扱う人としてはおそらく非常に重要な問題なんですよ。何も正当にやつていれば、これは国民としても要求できるわけですね。皆支出関係を見る権利があるわけなんですから、そういう建前から言つても、公表すべしというほかの理由等もかみ合すと、一層これは明らかにするのが、私は本当の性質のものだと思う。しかしそれはなかなか法務大臣意見が違うというから、こういう強い意見があることを十分これは検討してもらいたい。  それからもう一つ最後に、これはおそらく法務大臣も否定されないと思うのですが、秘密保護法との関係ですね、これについて私お聞きしたい。それはどうゆうことかと言いますと、この十九国会秘密保護法が審議されたときに、私はこういう法律ができますと、おそらく国会議員の審議権がいろんな意味で侵害を受けるのではないか、こういうふうなことを心配しましたのでお尋ねしたわけです。ところがそのとき、ちようど参議院の法務委員会の五月十八日です。秘密保護法が通過をしても、これは秘密だから国会議員には説明できませんと、そういつたようなことは起り得ない、こういうことを再三言つておるのです。必要があれば秘密会を開いてもらう、秘密会を開いてもなおかつ説明ができないというような重大な秘密は、この秘密保護法の今の段階においては考えられておりませんと、こういうことが明確に言われておる。私はこれは国会議員の立場としてそんなついで、聞いた問題じやない、半日かかつたわけです。この問題については今後重大な問題になると思つたから……。で、それは今これを引用するのもなんですが、保安庁の官房長の上村健太郎、これもはつきり言つておる。それからこれは保安庁の官房長だけでは、法律のしろうとがそういうことを言つたのだから責任を持たん、こういうことを言われたのじや困ると思いまして、よくうまく法律的に逃げる法制局長官の佐藤さん、この人にも実は確めたわけです。官房長がこういう答弁をしているが、あなたも同じ考えであるか、同じ場所でこれを聞いておるわけです。その通りだと、そんな言い方じやなしにはつきりとそのことで認めておる。で、私はさらにそれじや何らかの意味秘密保護法の秘密国会議員に説明できない万一何かあるかも知れんが、そういう場合はどうかと聞いたんだが、ちよつと予想できないというわけですね。だからいわゆる国会における証言法国家の重大な利益、この問題もそのとき入つたわけです、そうしたら証言法でいう国家の重大な利益というのは、今例を挙げて見いと言つても、ちよつと佐藤法制局長官でも頭に浮ばないほどこれはきわめてまれなことだ、こういうことは今まで一度も発動したこともないし将来といえどもわからん、秘密保護法の秘密対象なんかはほとんどそうゆうものにはかからないと考えますと、これはもうきわめてはつきり言つておる。法制局長官がそうゆうふうにはつきりしたから、そこで今度は担当の木村国務大臣に私はさらに聞いたわけです、同じことを……、そうすると、ここだけはちよつと読んでおいてもいいのですか、国会においてその審議権を行使するためにそうゆうものの内容を知る必要がある場合には、これは提供するのは当然であります。これは説明を待たんと思います。待たんと思います。というときには、木村長官ちよつと例の調子でそり返つて力を入れて言つたくらいなんでよ。だから安心してくれ、こういう意味なんです。しかし私もあまりしつこいようですが、しかしこれは国会議員の責任としてより、層明確にしておくにこしたことはないと思いまして、秘密保護法の最後の審議のときに吉田総理が出て来られた、五月の二十五日です、このときに私は委員会における事務当局の説明を要約いたしまして、そうして吉田総理にこの点を質問したわけです。国会議員がこの秘密保護法について心配しておる理由を申し上げて、これに対して政府委員はこう言つているが、同じようにあなたも考えるのか、これを即座でこちらが場当り的で言つたのじやこれはいけませんので、実はこの部分は私が質問の原稿をとくに書いて郡委員長に渡して、吉田総理にもそれを受取つてもらつて、そして答弁してもらつたのです。吉田さんも紙に書いてきて答弁してくれた。それは事務当局のその見解というものを認めておる吉田さんの場合にはそうゆう国家の重大な利益がどうこうと、そういつたような言葉を使つておりません。これは法律というものとはおよそ大分こう縁が強いわけですからね。しかし大きな立場ではその事務当局考え方をちやんとはつきり認めておるわけなんです。そうゆうふうになりますとおかしいでしよう。秘密保護法を犯せば、十年以下の罰則ですね。今問題になつておる公職選挙法の罰則、これは三年以下の禁固でしよう。どつちが一体被害法益からいつて重いものか軽いものか、こんなことはもう明白ですね。秘密保護法のものですら国会議員の審議権、それを理由にして説明しないというようなことはないと、こう言つた政府、その政府の法務大臣ですよ、その人がそれ以下の問題です、これは今問題になつているのは……。そうゆうことのために何かそれが最後には内閣の声明にも、声明というにはつまり発表する声明ですね、つまり内閣の命もちよつとあぶないかもしれんと、内閣の声明に関係するといつたような重大なものを言われるようなものではこれは私はなかろうと思う。本当にいろいろな人が聞いておつて困るというなら、秘密会を開いて説明なさつたらいいわけなんですね。国会議員を信用してならないといつたような危険かどこにあるのですか。この秘密保護法におけるその政府の答弁ですね、これは刑事局長は出ておられなかつたと思いますが、あるいはこの委員会の記録は見ておられるかも知れない。これとはどうしてもつじつまが合いませんよ。この点どうお考えになりますか。
  99. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) ただいまお尋ねになりました秘密保護法の立方当時のいきさつは私は全く承知いたしておりません。まだ調べてもおりませんので、私にはわかりません。刑事局長があるいは知つておれば、刑事局長から申し上げます。
  100. 井本豪吉

    説明員(井本豪吉君) 実は私当時の秘密保護法の関係では、他の委員会のほうに出ておりまして、その席には出席していなかつたのでございます。従つて、直接質問応答を聞いておりません。しかし私が考えますのでは、この秘密保護法の防衛祕密の関係では、お話のように国会議員にこれを秘匿するというようなことはなかろうということを政府の委員か答弁したのではなかろうかと私は考えのでございます。本件の問題になつておまする裁判中の事件の裁判に影響ある問題の秘密ということとは、少し事件の問題の性質が違うのではないかと私は考えているのでございます。
  101. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは問題の性質が違うほどに秘密保護法のほうが性質は重大ですよ。まあ僕らは党派の立場であんなものは反対ですが、できた以上はどつちが被告法益か大きいかといえば、それはあんた秘密保護法のほうが大きいことはきまつてるじやないですか、だから私はこれは非常に詳細な委員会の記録があるのですから、法務大臣も五月十八日のこの参議院法務委員会の記録を十分検討してもらいたい。同じ内閣がそれと全く筋の通らんようなことをおやりになる、そんなことは私はもう期待しませんからね。その点を一つこれは要求しておきます。それとも一つは、これも御参考までに申し上げるのですか、これは二、三日前にでたようですが、私には今朝手に入つたのすが、日本評論新社の別冊法律時報ですね。教育二立法、秘密保護法、これの解説と批判、これはいろいろ現役の今の学者が今度の教育二法と秘密保護法の問題点を批判したものです。私、けさこれが手に入りまして、なにげなく見ておつたのです。ところが、この百ページですね。これも私はやはりこういう問題ざつくばらんに研究してもらいたいと思うから言うのですが、百ページですが、ここで、この点を執筆しているのが京都大学の宮内教授、それから佐伯千仭、平場安治、こういつたような人たちですが、ここではからずも参議院の法務委員会で問題になつた国家の重大な利益と秘密保護法の秘密との関係、これが論議されておるわけです。その日最後に行つて、参議院の法務委員会秘密保護法の秘密すら国家の重大な利益には入らんだろう、こういつたのだから……。これを執筆しているときにこういう汚職問題が出て来たものですから、二、三行だけちよつと今汚職問題に関する批判がこれに書いてある。それによりますと「したがつて、今次の汚職問題に関する検察官の証言を、制限せんとする態度が見られるようだが、このような態度は論外であるといわざるをえない。」もう論議の余地のないことだ。こういう問題を政府が今ごろ出すのは、学者から見ると、もう全くお笑いごとだ、こういうことが二、三行ここに入ついるのですか、何もこういう現役の学者たちが政府を特に傷つけようとして言つている言葉じや私はなかろうと思う。この問題で今注意しているものですからたまたまここが目についたわけですが、私はこれほど法律学者から見るならばはつきりしている問題ですから、これに対して法務大臣が、巷間言われるごとし、もしいろいろな問題の発表をとめる、あるいは証言に対して蓋をするといつたようなことをやられますと、私はこれは第二指揮権発動と同じような重要な意味を持つて来る、こう思うのです。私の希望は従つてすみやかにああいう許可等は与えてもらいたい。また私の要求している氏名等もこれは発表してもらいたいということなんですが、これは一つ十分法務大臣のほうで検討して、間違わんような措置をお願いしたのですね、これはもう世間のたくさんの学者なり実際家が皆注目していることですから……。
  102. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) ただいま御指摘になりました学説及び雑誌の記事等は十分に検討いたします。なお証言の承認に関する回答をすみやかにするようという御希望も承知いたしました。なるべくこれは早く回答いたすつもりであります。ただ、回答については、十分今研究中でありますから、いかなる回答か出るかは、これは……。
  103. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから、そうするとこの問題はいろいろまだありますが、一応この程度で私としては区切りをつけておりますが、もう一つの問題は、法務大臣検事総長との実は関係ですね。これについて検察当局でも慎重なやはり検討をしてもらいたいと思うのです。それはどうゆう点かといいますと、現在法務大臣検事総長に対して上級官庁だ、こうゆう立場から証言についても許可を求められておるわけなんですね。法務大臣もその気になつて検討されておる。しかし私はこれが現行法から行きますと、そうゆうことにならんのじやないかと思うのです。でなるほど形式的には上級官庁のような形にもなりますが実質的な職務の関係からいうならば、法務大臣検事総長に対しきわめて限定された立場にあるわけなんですね、地位が……    〔理事小野義夫君退席、委員長着席〕 以前の司法大臣のように包括的に検事総長に対して上級者としての立場に座しておるわけじやないわけなんです。きわめてこれはもう限定された立場にある。そういう立場でありますからいやしくもこの公判に関係のある問題について、そのうちのどれだけを発表するかしないか、こういうことはですね、検事総長がみずから決定していいことじやないか。当然そうすべきだ。法務大臣がそこまで入つて来るのは行き過ぎじやないか、こう考えておるのですがね。いや、それは決算委員会からそういうふうに書類が出て来たから、俺は検討しておるだけだとおつしやるかもしれませんが、私はまあ決算委員会法務大臣にそういう書類を出される前に、実は法律的にそういう点をもう少しこれは検討すべき問題があるのじやないかと思つておるのですが、これは法務大臣としては疑いなく自分が上級官庁として扱うべき問題だと考えておられますかどうか。私は非常なこの点疑問を持つているのですがどうでしよう。
  104. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) お尋ね法務大臣検事総長との関係につきましては、検察庁法ができますときに、検察庁法の第十四条で法務大臣検察庁を監督する。そうして捜査については検事総長を通じてのみ指揮することができると、こういう条文ができておるのであります、法務大臣検察庁指揮するのでありまするから、従つて検事総長以下の検事についても監督権を持つてつて指揮すると申しますか、監督することになつておりまするから、検事総長に対してやはり監督権がある、こういうふうに私は理解をいたしております。ただ、個々捜査については検事総長を通じてのみ指揮することができるとありまするので、ここに一つの制限はありますが、ただ一段の監督権の作用から申しますると、法務大臣はやはり検事総長指揮するということになると思います。
  105. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は今問題になつておる事柄の発表を許すかどうか、これは個々事件の問題だと思うのです。そういう個々事件に関しては、それは発表するかせんか、こういつたようなことまで法務大臣の権限の範囲にはないと思うのですがね。検察庁法十四条のただし書では「個々事件の取調又は処分については、」こうなつておるでしよう、取調、処分じやないでしよう、単なる求められて、おる発表をするかせんかの問題、個々事件についての……だからそういうことは権限外のように私は考える、従つてこれは検察側が現在の空気からいうと、やはり国政調査権の立場も重んじて、できるだけ発表しようじやないかという意向が相当強いように聞いておるのですが、それにまかしておいたらいいじやないかと思うのです。どうなんです。条文に即して言つてもらいたい。
  106. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 私の理解するところによりますると、やはり検事総長法務大臣の監督に属して、検察庁の与えられたる職務を履行するものであるというふうに考えております。
  107. 亀田得治

    ○亀田得治君 検察庁法十四条の本文には、一般的に抽象的に監督ということがありますが、個々のことについてはただし書しか発動ができないことになるのです。その個々のことについては「取調又は処分」とこうなつておる。文書の発表のことまで書いてないですよ、個々のことについてはね。個々のことについては取調並びに処分しか検事総長に対して指揮権はないわけでしよう。それ以外のことは、これは権限外です。具体的な問題になると……。
  108. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) ちよつと御趣旨を私は理解しかねるのでありますが、法務大臣は一般の検察官の事務に関しては検察官を指揮監督することができる、「但し、個々事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる」と、こうありますので、一般的には法務大臣検事総長までの検察官を指揮監督するのでありますから、その範囲において法務大臣検事総長のなすことについては、やはり監督権限を及ぼすことができることだと思つておるのであります。
  109. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると法務大臣のお考えは、証言しついて許可を与えるかどうかということは十四条の本文で行くのだ、こういうお考えですか。
  110. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) さように思つております。
  111. 亀田得治

    ○亀田得治君 本文では私はならんと思うのですね。これは個々の具体的な事件の取扱いですよ。たとえば本文であれば不起訴事件についてこういう方針で発表して行けとか、起訴事件はこういう程度でこうして行けと、そういうことならいいですが、今の衆議院が求め、私が求めていることは、個々の具体的なことを言つておるんですよ。そういうことの判断は、これは検事総長の領域だと思うんですがね、それは抽象的な問題じやないでしよう、そんなことまで法務大臣が関与するというのだつたら、この本文で何でもやれることになりますよ。本文だけあつたらいいということになる。
  112. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 私繰り返して申上げると、やはり同じことを言わなければならんのであります。個々事件について検事総長を通じてのみ取調又は処分について指揮ができると、こうありますので、今の処分をしたことについて承認を求めたその証言については、監督官庁たる法務大臣が全般の監督権を持つておるのでありまするから、その場合にはやなり法務大臣検事総長の証言についてこれを承認するかしかないかということを回答すべき責任があるものと考えます。
  113. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあしかしこれは私は非常な疑いを持つておるのですが、法務大臣のような考え行くと、結局昔の司法大臣と同じことになつて行くこの事件を契機にして、そういうことになると思う。十分これは検討してほしいですな。それからもう一つ衆議院の決算委員会に、これも法律的な問題ですが、衆議院の決算委員会に吉田総理がなかなか出ない、結局まあ出ない場合には公務とか何とかいろいろな理由がついておつても、それは単なる言い逃れであつて、結局は出頭を拒否した、これは常識的に見て誰でも決算委員会の結論はそこに進むと思うんですね。ところが一昨日の新聞の記事で、法務省側の見解というものは、これは新聞関係の方が、自分の責任において書いた記事だと思うのです。法務省が発表した記事じやありませんが、法務省側の見解として出ておりましたのは、決算委員会かそういう見解に立つて、告発をしても、結局検察庁起訴をするようなことにはならんと、こういうことが書かれておる。これはおそらく法務省側のいろいろな情報を取られてそういう記事ができているのじやないかと思つて、私はまあ非常に注意をして見たんですか、これは下手すれば検察官の効きに対して、法務省があらかじめこの輪をかける。そんなものを起訴稟請をしても、俺のほうの見解はこうなんだから、何か第二の指揮権発動をほのめかしているような印象を与えるわけですね。こういうことは一体どういうふうにお考えになつておるのか、あの記事をあのまま放つておけば、法務省は、大体ああいう考えをもつているのじやないかと、こういうふうな考え方があるかもしれません。法務大臣の率直な見解を一つ伺いたい。
  114. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 昨朝の新聞のうち、ある一新聞に御指摘のような記事があつたことは、私も見ました。しかしながらあれは今まで調べたところによりましても、法務省の誰かがあのことを話をして、あの新聞記事ができたという材料は挙がらないのであります。お話になりましたように、吉田総理大臣がもし衆議院の決算委員会に証人に呼ばれながら出なかつたならば、告発があるかも知れない。そのときにどうするのかというようなことを、この今の記事で示唆されるようなことは、不都合ではないかというお話であります。もしああいうものを法務省の役人が新聞社の方に話をして、そしてあれが記事になつたというようなことでありましたならば、これは公務員法に照してそれ相当の処分をせんければならんと思つております。ただし、仮定のお話に、総理が出なかつたならば、告発があるであろう、その後はどうなるであろうというようなことは、私は今ここでなんとも申し上げられません。
  115. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうした現在のところではそうゆう問題については白紙というわけですね、そうゆうふうに聞いていいわけでいいわけですね。
  116. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 問題が出ないうちは何とも考えようはないのであります。
  117. 亀田得治

    ○亀田得治君 この証言問題はこの程度にしておきますが、昨日の吉田総理に関する問題で、法務大臣お答えなつた中で八月二十八日の全国検事長会議における法務大臣のあいさつ、この中で吉田総理の言葉を引用されておるわけですが、この引用された言葉は小金国会対策委員長から法務大臣がお聞きになつたと、こういうことなんですね。
  118. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) あの総理大臣の言葉は池田自由党幹事長吉田総理大臣からこうゆうふうに法務大臣に伝えろということで、それを紙面に書いて小金国家対策委員長が法務省に来られて、私が不在でありましたために刑事局長に渡して帰つたものであります。
  119. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうでしたら、刑事局長が、国会対策委員長から聞いた。それは刑事局長は小金国会対策委員長から文書に書いたものを受け取つたわけでしようか。
  120. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 私は後に見ました紙面に、あの言葉通りのことが紙面に書いてありました。
  121. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 ただいまの亀田委員の御質問はだいぶん法律の解釈の込み入つた問題でありましたが、私はきわめて常識的な平易な問題でありますので気楽にお答え願いたいと思います。八月二十八日の検事長会議における小原法務大臣のごあいさつ、これを見ますというと、今ごろ再び現職に就任するなどは夢にも思つていなかつたのであるが、たまたま例の指揮権発動関連していろいろな問題が発生したため、吉田総理大臣よりこの際私に事態の調整に当たるようにとの依頼がありましたので、あえて老躯を提げて責任に当つた次第でありますと、こうゆうように言われております。大臣はほとんど半生を司法部内で送りまして、司法部の大先輩であります信頼の厚い方でありますから、吉田総理も大いに信用いたしまして、こういう重大な時局にぜひ出て来て調整に当つてもらいたいと、こうゆうふうに思われるのは当然でありまして、まあ三顧の礼をもつて迎えられた。そこで大臣もこれに感激して、やおら重いしりを上げて老躯を提げてこの重任に当る、こうゆう孔明の事柄のような感激の光景をちよつと僅か二、三行の間にうかがわれて、非常におもしろいと思つて拝見したのでありますが、こうゆうように大臣に経歴からいつて司法部内では裏も表ももよく知つておられる。あの検察庁法発動というものが司法部内に、また一般の社会にどういう反響を与え、また司法部内にどんな空気が醸成されておつたということは百の御承知のことであつたと思うのでありますが、そこで総理の懇望に応じて調整に当ろう、こういうことでお出になつたといたしますと、これはどうゆうふうな方法によつて調整をするか、どうゆうところに重点を置いて行かなければならんか、どういう点が多くの人の不満のあるところであるかということは百も御承知であると思うのでありますが、古い言葉でいえば、こういう抱負を持つて大臣に就任をされたかということを私はお尋ねしたいのでありますが、これは大臣に就任されたときにまづ先にお聞きしなければならなかつたのでありますけれども、今日まで機会がなくてお伺いすることができなかつたのありますが、この機会に調整に当るということはどういう方法、またどういう点に調整に当たるかというお考えであるかをお話を願いたいと思います。
  122. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 私が今回法務大臣に就任したときの抱負、やり方をどういうふうに考え出たのであるかというお尋ねありますが、これは他の機会において国会の他の委員会でも詳しく述べたことがあるのであります。せつかくお尋ねでありますから簡単に申し上げます。この八月二十八日全国の検事長会同の際にあいさつとして簡単に申し上げましたように、私が司法部を去つてからは、年数がよほど経ております。現在戦後におきましては、諸般の情勢がみな変わりまして、司法及び検察の制度も全く違つてつたののであります。そうして裁判所と検察庁は分かれ、法務大臣はわずかに検察庁と保護行政、すなわち刑務所関係、その他若干の法務関係を監督する機関に過ぎなかつたのであります。しかしながら現在においての検察行政の仕事というものはすこぶる重大であります。ことに今日論議されておりまする、かの造船疑獄等一連の検察史始まつて以来の大きな事件が突き出して、そうしてこれが途中においていわゆる指揮権発動という問題が出て、世論がすこぶるやかましくなつた。そうしてその結果というわけではないのでありましようけれども、とにかく問題になつてつた佐藤榮作氏の逮捕があのような事情においてできなかつた結果として、佐藤氏の容疑事実は、結局証拠が不十分で不起訴なつた。そうしてわずかに政治資金規正法という事件起訴せられたということになりましたがために、世の中はこの処置に対して非常にやかましく論じたのであります。そうしてあの指揮権発動によつて、あるいは法務官と検察庁間に何かあるのであるとかいうような世評か立ち、また検察官もあの処置に対しては必ずしも満足しておらんことは明らかであつたのであります。さような際に、あとに残つたたくさんの事件がまだ未解決のままなつておるという状態であつたのでありまして、この際に、私に出てこれらの関係を処理するようにという話でありましたから、労をいとわず要請に応じて、就任をいたしたわけであります。出まして後、就任してから後、直ちに各関係者について事件の起り、経過、現在の状況等を逐一聞きまして、それの処理をどうゆうふうに解決すべきかということの一つの復案を立て、それについてはまず第一に、問題によつて多少とも乱されておつたとするならば、その間の不調和の点を調和させることが必要だ。それには人の和が大事である。こうゆうことを考えまして、本省はもちろん、検察首脳部等についてよくその間の事情を聞き、そうしてその間の誤解を解き、なるべく虚心坦懐、あれはあれとして今後は検察行政に専務をし、検察庁の与えられたる使命を全うせんければならんということを、それぞれ関係者にお話をし、もちろん皆同意でありますから、その同意を得た人の和をもつて全体の事件の終結をつけよう、こういうことに考えまして、その後は着々、もはや新たな捜査すべき対象がなかつたのでありますから、未解決の事件について着々処理を進めて、ついに七月三十日検事総長談話をもつて発表したような事件の解決に到達したのであります。その際お話のように、検察行政に対するあの指揮権発動によつて、民間等においては、相当不信、不満があつたことは事実であります、これらについては、直ちにこれを誤解を解いて検察に対する信用を、一挙に回復するというようなことは、なかなか容易にできないのでおりますが、しかしその検察に対する不信と申しましても、検察官は当時与えられる全能力を発揮して誠心誠意事に当たつてあの解決をいたしたのでありますから、これに対して不審を抱くということは、一体誤解ではありますけれども そうゆうようなことがあつては困るのであります。その誤解をなるべく解くように務めなければならん、それには若干時を待たなければならん、こうゆうことも考えてそう急にはこれらの点の不信用を取り戻すというようなことはできるものではないと思うのでありますけれども、しかしこれらについても着々と機会があるごとに、そういうものではなくして、検事はできるだけ全力を尽してあの事件をやつたので、この間に何らの不公平あるいは不行為というようなものがあつたのではないということをよく説明をすることを務めたのであります。さようにしてまず大体今日に至りまして、今日の情勢においては私就任当時心配しておつたような事態は大体に片づいて、今日以後においてはなお検察の行政、法務の行政について誠心誠意事に当つてその機能の十分に発揮せられるように務めたい、こういうふうに念願をいたしております。
  123. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 法務大臣が御就任以来きわめて短時日の間に非常な御努力をなさつて通りいろいろな事態をそれぞれのところに収められたということは私も認めるのであります。その御苦労に対しては感謝いたすのでありますが、ただ、おさまらんのは国民全体のあの事件の結末に対する不満で、これは法務大臣が御就任の前からがくがととしてそのことを論じておつたのでありますが、今もつて少しもその余音は収まろうといたしておりません。これは私ども考えまするのに、検察庁自身の責任ではないでありましよう、しかしながら松察庁があれだけ国費を使い、また非常に膨大な陣容をもつて検事の諸君も連日連夜寝食を忘れてこの事件の追及をしておつたにもかかわらず、その最後のどたんばに至つて九仭の功を一簀に虧くと申しますか、何の効果も挙げ得なかつた。しかもそれに権力の、政府の干渉によつてこういうとになつてしまつたということについては、国民全部が非常な不満を感じておるわけであります。大体あの疑獄の問題につきましては、国会において委員会等でいろいろ探究をして参つたのでありますが、しかし国会においては数によつて決定されるのでありまして、多数を占めておる政府与党の力によつて本当に事の真相を明らかにすることができない。国民の正義の観念は満足されない。そこで国民の希望は一にかかつて検察当局活動にあつたわけであります。国民は検察当局活動によつて自分らの正義の観念は満足されるということを期待しておつたのであります。ところが最後のどたんばに行つてああいうことになつてしまいましたので、今もつて国民はそのやるせない不満を持つておるのでありまして、これが現在衆議院の決算委員会におきましても、この委員会におきましてもすべて問題の起つておるのはそこにあるのであります。法務大臣は総理の懇望によつて法務大臣に就任されるにつきましては、いろいろな問題を解決しようとしておいでになつたのでありましようが、私は眼目は検察の威信の失墜、国民が全然検察というものを信用しなくなつてしまつておる、綱紀をどこによつて維持することができるか。これでは日本の秩序、綱紀は保たれない。そういう国民の検察に対する信頼の観念が地を払つたその状態に対して、法務大臣は何とかそれに対して国民の検察に対する威信をつなぎとめる、そういう点に努力をする、そこを調整するということが、私は法務大臣の御就任になつた最大の目的であつた考えるのであります。ことに法務大臣は長年司法部内におりまして、本当に司法と共に一生を過ごされて来ておる方でありますから、この点についても誰にもまけない熱情を持つておいでになつたと思うのでありますが、この点については法務大臣はどういう処置をおとりになりましたか、お尋ねしたいわけであります。
  124. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) この指揮権発動によつて検察の威信が地に墜ちたと言われるのでありまするけれども、私はこれをそういうふうに解釈するのは少し無理ではないかというふうに思つておるのであります。なるほどあの指揮権発動は、確かにあの当時においてあれが出たがために、自後の捜査支障を生じたということは考えられるのでありますが、それは佐藤榮作氏についての問題が主あるのでありまして、あの後において捜査すべき対象が非常に多くて、それをも手が着けられなかつたというならば、それは別段でありまするけれども、私の知る限りにおきましては、あの当時においては佐藤榮作氏の事件がいわゆる頂上で、その背後には幸いに新たに調ぶべき対象は多くなかつたと聞いております。また就任後調査いたしたところによりましても、それは明らかであつたのであります。それあるがために検察が全然不信である、国民から信用されなくなつたというふうにお考えになることは、少しく行き過ぎではなかろうか。なるほどあのときもし検察当局ができるだけ力を尽してあの指揮権発動を支えて、そうして逮捕状が出るようになりましたならば、それは大へんよかつたのかもしれませんが、しかしながらあの当時においては検察当局検事総長を初めとして、できるだけときの法務大臣にはああいう逮捕稟請の延期をするようなことのないようにということを陳情をいたしたけれども、これはとうとう聞き入れられないであの発動が出たのであります。そうなつてしまつた以上は、検事というものはどうしても秩序を保つて行動せんければならんのでありますから、みずから秩序を破つてこれに反抗がましいことをすることこそ、かえつて検察の威信を損するのであります。あの際はむしろ隠忍自重、自分たちに与えられた権能のすべてを尽して捜査に努力をして、そうしてあの結果にとどまつたということは、これはやむを得ないことであるから、国民もまたこれに対してはむしろ検事に対して同情をすべきであつてこそ望ましいのであつて、それを検察の働きがふがいがないとか、頼みにならんとかいうことを考えられないのは、国民の間にそういうことを考えられたことは間違いであるのではないか、しかし間違いでも、そういう者が出た以上は、これは何とかして払拭せんければならんのでありますから、私は極力これが払拭に努力をするつもりであります。しかしながらなかなか一日あるいは若干の短い期間でこれがすべて取り去られるということは困難であろうと思います。今現に当法務委員会なりあるいは衆議院の法務委員会会、決算委員会等において、本事件関連においていろいろの問題が論議せられております。これに対する私どもの態度は今日においてはとにかく検察権というものを本来の姿に守るということは大切であると思うのでありまして、その点に十分努力をいたしております。あるいはそのやり方において御不満の点があるかもしれませんが、私たちは検察権の本領を発揮する上においては、やはりこれはどこまでも自分の信じたところを行わなければならん、これを通じて全国の検事諸君が検察首脳、法務行政の首脳者の態度を見て、なるほどこういうふうにやるということは、やはり検察行政の威信を高める上に必要であるということをさとつてくれるであろうと私は考えておるんでありまして、これを通じてやはり全国の検事諸君にわれわれの考えが伝わるように希望をいたしておるのであります。
  125. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 検察の威信が失墜したか失墜しないか、検察の威信が失墜したというのは少し行過ぎであろうという御意見のようであります。しかしながら私は今日日本の国民といたしまして、検察庁というものに対して、検察というものはそこらの空巣犯いや小どろぼうはよく挙げる。そこらの小さい犯罪はよく挙げるけれども、大きな権力者、政治家に対してはどうにもならんじやないか。一億円からのリベートがどこへ行つたか行方知らんようになつても、手も足も出んじやないか。検察頼むに足らず、こういうふうに国民が言つておるのが今日の国民の常識であります。法務大臣はどういうところをごらんになつて検察の威信が失墜しておらんということをおつしやるか知りませんけれども、このことだけでもつても今日の検察の威信が全然失墜しちやつているというふうに国民ことそれぞれが私は考えておると思います。そういうことを目の前にいたしまして、これに対してただ検事は黙つて長い間こつこつ仕事をまじめにやる、こうしているならば、検察というものは正しいものであるということを国民は考えておるであろう、それが検察の威信を回復する途である、こういうふうに昨日も岡田委員か梶原委員質問に対して法務大臣が御答弁になつてつたと思うのでありますが、それも大事なことでありましよう。しかしながら目の前に国民がそれだけに検察庁に対して不信の念を抱いて来ていることに対して、検察庁としては、検察を指揮統率されるところの法務大臣としても、検察庁としても、何ら手を打つておられないということを私は考えるのであります。この間の吉田総理の自由党の支部長会会議等におけるところのあの暴言に対しまして、法務大臣は何にもそれに対して反駁しておられないのは一体どういうわけであるか。あのときに安藤国務大臣などは、自分の心後関係のないことではあつたでありましようけれども、吉田総理に対してその暴言の全面的取消しを求めておられます。ところが検察の指揮監に当り、その統率に当つておられるところの法務大臣は、黙つてそれを、あの暴言を言わして、それに対して何ら一つも反駁しておらんしいうことは、これは一体どういうことでありましよう。法務大臣はそれでもつてこの検察の威信を回復するために、国民に対する検察の威信を回復するために努めておるとおつしやるのでありますか、お聞きしたいのであります。
  126. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) まず第一に、検察が指揮権発動の後に、手をこまねいて何もやらなかつたではないかのごときお尋ねがあつたのでありまするが、先ほどたびたび申し上げたように、当時の検察当局は、指揮権発動があつた後においては、その他の与えられたる手段によつてできるだけの方法を尽して捜査を進めてほとんどすべて問題になつておるものは取調べを終つておるのでありますし。その終つた結果が七月三十日の検事総長談で発表されておるのでありまして、何ら手をこまねいてなすところがないというようなことは毛頭ないことであります。  それから次にお尋ねになりました吉田総理大臣のあの演説に対して、法務大臣として何ら総理大臣に対して反省を促すとか、あるいは責めるような態度をとつておらんではないか、こういうお話であります。これは私は総理大臣に対して、ああいう演説をなさつたことに対しては、趣旨がわからないからその趣旨をよく弁明していただきたい。こういうことを申し上げて、先ほど来申上げたような池田幹事長を通じて私のほうにあいさつが参つたのであります。あのあいさつを私は承わつて、これを検察の首脳の諸君にも示し、ことに八月二十八日の検事長会同にあれを披露いたしまして、全検事長にあの趣旨を告げたのであります。そうして検事長諸君は吉田総理大臣がとにかくこれだけのあいさつをされた以上は、あの演説の中に検察に対して誹謗をしたように、又法規を無視したように見える点もあるけれども、言葉が不十分であつたがために、適当でなかつたがためにああいう誤解を生じて迷惑をかけた。こういうあいさつがあつたのであるから、これはこれで了承したらいいじやないかということで、私どももこれを了承することにきめたのでありまして、お話のように、何ら手を打たず、吉田総理の暴言をそのままに看過しておるのじやないかというお責めは当らないと思います。
  127. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 私はもう一つ法務大臣に希望、かつお尋ねをしておきたいことがあるのでありますが、これは衆議院の決算委員会においては、検事総長、またこの取調に当つたところの検事を喚問いたしておりますけれども、これまで職務上の秘密であるというので、本当の事件の核心をつかむことができない。従つて国民に対してもこの事件がどういうふうに一体調べられておるのやら、その真相を知らせることができない。ここに国民が現在の検察当局に対して非常な不満と疑惑を抱いておるのであります。ところがその検事総長その他の証言に対しまして、法務大臣はその証言の許可を求められておるのでありますが、それを今日に至るまで、昨十六日がその期限ということになつてつたようでありますが、それを間に合わないということでお断りをしておられるようであります。私はそれはなるほど十分に御研究になる必要もあるでありましようけれども、こういう事柄というものはできるだけ早く差支えない限り詳しいことを真相を明らかにして、国民の前に知らして、そうしていろいろの疑惑や、あるいは誤解を一掃するように努めることこそ、これは検察統率に対する威信を回復する途であり、また法務大臣、あるいは検事総長はそういうふうに早くこの空気を打開して、国民に対する信頼をむしろ回復するように努めなければならんと考えるのであります。ところがこれに対する回答を一日一日と延ばしておられるようでありますけれども、なるほどそれは重大な問題でありまするからして、そう軽率には参らんことであります。しかしながら昨日からお答えになつているところを見るというと、これは国家の重大問題であるからして軽率にはいかないというお話でありますけれども、国家にとつては重大な問題ではなく、国家にとつてはこういうふうに検察の威信が失墜して、国民が信頼しなくなつて来ておりますならば、一日も早くその信頼を回復することこそ、私はこれこそ国家にとつて大事な問題であり、急務であると思います。法務大臣が言われることは、国家のためにこれは軽率にすべきことではないのではなくて、吉田内閣のために軽率にすべきことではないということであるのではないか。だが、吉田内閣というものと国家というものとは同一でありません、全然違つたものであります。そういうことをお考えになりまして、一体法務大臣は国家の法務大臣であるのか、あるいはある特定の特別の党派のために、それだけのことをなさらなければならんのであるか、私は法務大臣のお考え一つ疑うのでありまして、こういう点ははつきりとこの重大な検察の統率をしておられるところの法務大臣としては、こういうときにこそ私ははつきりとやつていただきたいと思うのであります。その点に対するお考え一つお開きしたい。
  128. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 昨日来この点について御質問があり、私からは詳しく申し上げたと思うのであります。同じお尋ねでありますが、もう一度お答え申し上げます。この問題は、昨日から申し上げたように、なかなか重要な問題でありまして、事は簡単であるようにおつしやるけれども、決して私どもはさように思つておりません。そうして今折角事務当局において、この証言について承認をすべきかいなかの点を研究いたしております。昨日も申し上げましたように、この証言の承認要求がありました以後、私どもは衆議院の法務委員会、あるいは当参議院の法務委員会、あるいは決算委員会等にほとんど連日出て質疑に対して応答をせなければならなくなつております。さような観点から、折角問題を早く検討して回答をすみやかにしたいと思つておりまするけれども、事実上その運びが運び得ないのであります。しかしいつまでも私はことさらにこれをひつぱるなんという考えはないのでありまして、できるだけ早く問題を解決して回答を出したいと思つております。昨日決算委員会でいつまでに出すかとおつしやいましたから、少くも来週中には必ず回答を出します、しかも来週のなるべく早いうちには出したいとは思つております。こういう回答をしているんであります。決して故意にこれを延ばして、あるいは一党派、あるいは一政府のために利益を与えようということは毛頭考えておりません。
  129. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 私は今回のこの疑獄事件に対する検事各位が個人々としては非常な努力を、寝食を忘れて努力を払つておられることは、十分に認めるものでありまして、これに対しては非常に敬服いたしているものであります。がしかし、それほどの努力にもかかわらず、今日検察というものが国民の間からして全然信頼を失い、ましてはなはだしきに至つては、個々検事に対するいろいろな悪評呼ばわりなどをときに聞かれるような状態になつているということは、これは実に検事の諸君にお気の毒でありまして、これは先に立つところのあるいは法務大臣が統率の責をうけざるをえない、本当にそのやり方によつては、こういうことにならぬように検察というものに対する、検事に対する信頼あるいは検事立場をもつと明らかにさせてやることができるにもかかわらず、法務大臣あるいは検事総長というものの態度がはなはだ煮え切らん態度であつて、はなはだ国民を納得させるに足らん態度をとつているからして、こういうことになつたと思うのでありまして、検事諸君に対しては、私は非常にお気の毒に感ずるものであります。今日の私は急務は、日本の現状から申しますというと、あらゆる方面にいろいろな不満なことがあり、改革をしなければならんことがありますけれども、そのうちでも大事な、最も大事な国家の秩序を維持する任に当るところの国民の信頼というものが、今日の状態になつたということは、実に慨歎にたえないのでありまして、この点に対しまして私は法務大臣がもう一段と御自分の職責をよくお考えになつて、本当にその職責をはずかしめないように、総理の懇望によつてお出になつたそのときの御決心を鈍らせないように、一つ今後御努力されることを私は希望いたしまして、この質問を打ち切ります。
  130. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) ただいま、棚橋委員から私に対しての御忠告はつつしんで頂戴をいたしておきます。御趣旨に沿うように努力をいたす考えであります。
  131. 小野義夫

    ○小野義夫君 私は法律家ではないから、質問法律的ではないかもしれませんが、常識的な観点に立ちまして、ただ過去にできたことを、われわれがどう明確に処理するかということと共に、今後立法上についてのいろいろな欠点をこの事件によつて見出すことがあつたならば、これは立法権をもつて改正すべきであろうと、こういう見解で、この事件と少し問題が隔離するかもしれませんが、そういう諸点について法務大臣法律家としての立場、並びに大臣としての御所見を承りたいと思うんですが、まず同僚議員から昨日来お尋ね申し上げました点につきまして、これは適法な行為であるという点については、おそらく議員諸君においても、何人も御異存がないようであります。それは妥当性を帯びておるか、妥当であるかないかという点に、法務大臣は、前犬養法相は妥当であると思つたからやられたものと信ずるが、自分一個は、当時の資料等もまだ不完全であるから、今それを押し切つて妥当であるかとか、何とかということは言い得ないから保留する。こういうふうに私は了承しておるのであります。そこで、問題は適法であるということと、妥当性を欠くということはどういう関連性を持つておるかということであります。適法ということは、法律で与えられたる権限ないし権利の行使であります。私は固くそう信じておる。その権限ないし権利の行使が、もし公の秩序、善良の風俗に反するとか、あるいはそれ以上の憲法に違反するとかいうような諸点があれば、それは大いに糾弾をすべきが当り前であるが、ただ政治論として論ずるならば、あらゆるものが憲法上の違憲の議論も立ちますし、単なる政治論ということであれば、その立場によつて所見はおのずから異なるであろうと思う。そこで私が承わりたいのは、何か指揮権というものを発動するについては、慣例上そういう指揮権などというものは伝家の宝刀、まあ伝家の宝刀という、私は伝家の木刀ではない、刀であると思う。その伝家の宝刀はぬいてはいかんという慣例上、あるいは法理上、何か適当な制約もしくは条件でもあるのであるか。それとも無条件に、権限を持つた者が適当なりと信じたときは、どしどしこれを行なつて一向差支えないことであるかどうかを一つつておきたいと思います。
  132. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) かのいわゆる指揮権発動が適法であるかどうか、適法であつたとしても、妥当性があるかどうかというお尋ねであります。これはすでに昨日お答えした通り、適法であることは間違いありません。法律の正面に書いてある。その法律従つて犬養前法相があの指揮をなさつたのでありまするから、これは適法である思います。そこで私に対してそれが適法であつたとしても、妥当かどうか答弁しろとおつしやいましたが、私は当時の事情をよく知らんから、それが妥当であつたかどうかということを批評することは、ごめんをこうむります、こういうことを申し上げたのであります。さように申し上げた以上は、この席でそれが妥当であつたかどうかということをもう一度言え、あるいは抽象的に適法と妥当との関連を言えというお尋ねでありますが、これは私は適法と妥当の関連の違うことはもちろんあると思うのでありまするけれども、すでにこの問題に関して、これが適法であつたか、妥当性があつたかどうかということは、私は答弁することはごめんこうむりたいと申したのでありまするが、この点についてもごめんをこうむつておきたいのであります。
  133. 小野義夫

    ○小野義夫君 法務大臣は、私の前置きがなかつたから、あるいはそういうふうにお聞きになつたかもしれませんが、私ははこの十四条のいわゆる指揮権発動というものは、非常に今日輿論の中心になつておるが、これを発動する、いわゆる伝家の宝刀を抜くということについては、何か慣例上とか、法理上とか、あるいは諸外国の立法上とか、あるいは外国の判例上とか、あらゆる点においてこういうことはやらないのが原則であつて、そのやらないものをやつたから、ここに非常に問題が起つたというような何か制約があるんですかということを承わつておるのです。
  134. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 私、お尋ねの点についてのお答えを落したわけであります。お尋ねの御趣旨はわかりました。このいわゆる指揮権発動検察庁法十四条のただし書、これは大へん今やかましくなつておるのでありますけれども、検察権については、指揮上どうしてもああい規定がなければならんのであります。それはもとの、昔の刑事訴訟関係においては、司法省官制の大臣の権限のところに、大臣は一般的に検察官を監督し、かつ、これを指揮することができる、こういう規定がありましたがために、昔の刑事訴訟手続におきましては、司法大臣は検事総長を初め、検事長でも検事正でも、津々浦々の検事でも、個々指揮ができたのであります。ところがそれは大へん不都合なのでありまして、そういうことをすると、命令が二途三途に出て、統一を欠くおそれがあるのでありますから、今度できた検察庁法では、その点を考慮して、個々事件の取調及び処分については、検事総長を通じてこれを行う、こういうことに改めて、検事総長のみを指揮して、検事総長をして全国の各検事に対してその指揮権を伝えさせる、こういうことに改めたのでありますところがこの点については、ただ変つたのは、法務大臣検事総長を通じて個々事件の取調及び処分を指揮する、こういうことに書き変つただけでありまして、法務大臣指揮権は依然として昔も今も変らないのであります。それゆえに今日も検察庁法十四条のただし書による法務大臣指揮は日常行われておるのであります。私は毎日検事総長から来る稟請に対して、これは起訴しろ、これは不起訴にしろ、こういう指令を出しております。毎日判を数件づつ押しております。駐留軍の兵隊がいろいろの犯罪を犯すのが毎日二、三件ずつ指揮を仰いでおります。これは私はこれを起訴しろ、不起訴にしろという指揮をいたしております。こういうことは日常茶飯事に行われておる。穏やかに両方が話合つてやれば、何ら問題はないのでありますが、ただ、あの問題の指揮権発動がやかましくなりましたのは、両方の問題が対立して、つばぜり合いになつて、書面で命令を仰ぐ、一方は書面で命令を出す、こういうことになつたから、ここでぶつかつてあの問題がやかましくなつた、ああいうやり方をせんでおれば、指揮権発動は何も問題はないのであります。これがなければ動きません。今日しじゆうやつておるのであります。これはごうも疑いのないところであります。
  135. 小野義夫

    ○小野義夫君 その点は犬養法相は、先ほど同僚議員の質問に対して、あえて妥当性を欠いておるとは思わない。が、しかしその事務の取扱において、もう少しああいう書面でぶつつけるとかいつたような、平生自分の心にもない露骨なというか、ぶざまなやり方をしたのは、誠に自分の不徳のいたすところであつて、遺憾と思うというような意味の答弁であつた。そこで、私は問題として法務大臣にこの際明らかにしてほしいのは、そういう犬養法相は、まあ不自然と申しますか、あるいは露骨と申しますか、自分の事務の実務の、いわばやり方のまずかつたという点のために、国民の今多数は、この十四条の指揮権発動ということそれ自体がけしからんものであるというふうに曲解しておるのである。今あなたのおつしやつたごとく、十四条というものは日日常茶飯事であるということはこれは承知しておりません。これは伝家の宝刀で、よほどの非常事件のときにのみ抜くようなものであるとしか考えていない。おそらく代議士諸君の多数もさような観念を持つている。そこでここに誤解は誤解を生むのであります。朝飯前の仕事をやり力がまずかつた、我々考えてもいかにもまずいと思うのであります。そのようにやり方のまずかつたということと、十四条のいわゆる指揮権発動というものを混同して、なすべからざることをなしたのだというようなふう国民に植えつけ、もしくはそういう感情を打たせるということについては、法務当局はよろしくその十四条の必要性と、その実行が、方法はともかくとして、場合とときの方法がまずかつたということは言えるが、これはいわゆる常にやる仕事であるということを徹底するの必要があると思うが、法務大臣はどうか。
  136. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 誠にごもつともであります。あの当時当局が発表した中にも、異例の措置であるという言葉が出ております。そのとき私は就任しておりませんでしたが、あの異例の措置であるという言葉を使つておるのであるが、十四条のただし書はふだん行なつておることなので、何を間違つて異例の措置であるという文章を使つたのか不思議に思つたくらいなのであります。しかしともかく問題がああいうごとになつて、この指揮権発動というものは全く異例のことで、行わるべきでないことを、伝家の宝刀でもつてつたように誤解されているのであります。私は就任以後至るところでさようなものでないということを説き伏せもしております。新聞社の諸君もこのことはよく承知しております。全国の検事諸君はもちろんのこと、また先般私の就任前に加藤法務大臣が全国の検事長、検事正を召集されて、いろいろの事項について訓辞されております。そのときにもこの問題が出まして、ただああいう形でやつたことにつきましては、その当時集つた検事諸君からもいろいろ論議が出たそうであります。けれども問題は今申し上げたように日常これは行われなければならないのであります。日常行われておることをよく民間にも周知させまして、あれはあれの問題である。しかしあれはあれの問題であつたが、ほかにはやはりこの問題がしじゆう行われておるのであり、それがなければ検察庁法の刑事手続というものは動かないのだ、こういうことを示したいと思つております。折角の御注意ですから、なお注意いたしましよう。
  137. 小野義夫

    ○小野義夫君 次に、これは純然たる政治問題もしくは憲法上の問題になるかもしれないのですが、私は一つの疑義を持つている。この三権分立ということは、いわゆるこれはフランス革命後の法理上の一つの大きな分解点ではあるが、これは真の分立ということではないので、相寄り相助けてこの三権がうまく運営されることこそが、いわゆる国の統治権が行われることになるのであつて、そこで今一体中立性と申しますか、独立性を帯びて行かなければならん明らかなものは、司法権と立法権はこれは両方におりまして、司法権が立法権を侵すことなく、立法権が司法権を侵すことなく対立しておる。その中性動物というか、その中性におるのが行政権であろうかと、私の乏しき法理観念ではそう思つておる。ところで法務行政、この検察行政というものは、あたかもいわゆる立法権と司法権とは相対立する、独立の性格を持つておるものであるというような観念が、やや今日一般的に強くなつておるのではないかと思うので、そこで私としてこれは将来の問題として承わつておきたいのは、一体法務大臣はこと検察に関しては内閣の一ほかに超然として、政党から超然とするのはもちろん、内閣からも超然として、いかなる総理大臣、あるいは閣議が総員一致で決定しても、これは独立独行の自由なる建前から、そのことを遂行し得るという何か憲法上その他の重大な保障があるのですかどうですか、一つお示しを願いたい。
  138. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 大へん重大な問題だと思います。日本の現行憲法はやはり三権分立の趣旨に基いてできているものと考えております。いわゆる三権分立は、仰せになりましたように互いに相寄り相助けることももちろんでありますが、また一面においては、権のいわゆる立法、司法、行政おのおの与えられたる分を守つて、侵さざることが必要であろうと思うのであります。これをいろいろ申し上げますと、憲法論みたいなようになつて大へん長くなりますから、ごく簡潔に申し上げますが、今お話になりましたように、この三権のうちで司法権は、純司法権はこれは全く独立不羈であつて、立法からも行政からも干犯されてはならんものだと思います。行政権はいわゆる三権の一つではありますが、これはやはり立法府すなわち国会からは一種の監督を受けて、行政の公正に行わるることを監視せられている立場にあります。しかしそれであるからといつて、この行政権が全的に立法権によつて何でも命令をせられ、その命令のままに動くものであるとは考えておりません。やはりここに立法府すなわち国会といえども、行政権のある面においては制約を受けることがあるのではないか、それがどれほどであるかということは、なかなか重大な問題でここで、すぐに申し上げられませんけれども、にかくある程度においてはやはり制約を受けることがあるのではないか、こういうふうに私は考えております。ところでお話になりました検察権、この検察権はやはり今日では行政権であることは、これはもう学者の一致した議論で疑いのないところであります。しかし検察権は一般行政権とは異つております。これもまた行政法論者、憲法学者の一致した意見であります。それは何かというと、検察権は司法権を行うがためになくてはならんものであります。司法権に隣したといいますか、司法権と兄弟分の関係にある立場になければならんものでありますから、この検察権の行使につきましては、司法権から侵されないことはもちろん、司法権がまた侵すという場合はないと思いますけれども、立法府の国会から国政調査の領域において、この検察権のあるものが侵される、つまり国会の国政調査権のもとには、検察権もすべて調べられて、そのなすがままにまかせられるものであろうか、こう申しますと、私はそこにやはり相当大きな制約がある、こういうことを考えます、それどれだけの程度であるかということは、これはなかなかこれまた一朝にして申し上げられませんが、とにかく検察官が現実に事件捜査をいたしておりますときに、その捜査に対しては国会の国政調査権といえども、これに干渉することはできないのだ、もしこれに干渉してこの事件はこう調べろ、ああ調べろ、これは起訴にしろ、不起訴にしろというようなことを、国会の調査権として行い得るものとするならば、犯罪の捜査はできないのです。犯人は逃亡し、証拠は隠蔽されてしまうのであります。検察権の行使は到底できないから、この段階においては国会の調査権といえども、検察権には関与できない、こういう私は制約を受けるものと思つております。しからば、この条文がどこから出るかと申しますると、これはいわゆる検察の秘密捜査秘密というものは、旧刑事訴訟法には捜査秘密を守り云々という条文かありますか、ところが現行刑事訴訟法にはさような条文がないのであります。現行刑事訴訟法には秘密を守らなければならんという規定がないから、今日の刑事訴訟法においては秘密を守る必要がないのかと申しますると、これは決してそうではなく、これは今申し上げたように、もし捜査秘密になに人かが立入つて、これをどんどん洩して行つたならば、捜査は行い得ないのであります。犯罪の検挙ができない。従つて国家の治安が維持できないのでありますから、これはどうしてもこの段階においては検察権というものはどこまでも独立不覊でなければならん、こういうことを私は考えております。それならば捜査が終つた後はどうする、こういう問題であります。捜査が終つて起訴いたしますと、これはもう裁判所の独立した裁判所の裁判を受ける立場に入ることになります。そうなつて来ると、その捜査中に知り得た秘密は、先ほど来たびたび申し上げましたように、公判の開始前には訴訟に関する書類は公けにすることができない。従つてその内容もこれを公けにすることはできないということにしなければ、裁判が公平に行われるということを確保できませんから、この場合においてはやはり捜査権は、言いかえれは検察権はその段階においてはやはりこれに干渉することを許さない、こういうことになるものだと思います。ただ、全然ある事件起訴されないで不起訴になつてしまつた。そうしてそれに関連して何物も残つておるものはない、こういう立場にあつたときに、その捜査事件秘密はことごとくこれを公表してもいいのではないか、こういう意見が出て来るのです。これについてやはりいろいろ問題があります。ある部分はそのときにはもう秘密性がなくなつてしまつているということが言えるという議論があります。またその反面において若干それは残さなければ困る、こういう議論がありますが、これはあるいは全く捜査が終つてその事件が不起訴になつて、しかもそのほかに何ら関係がないというようなものになると、若干これは問題がありまするが、今日においては検察当局としてはかような場合においても、なおその捜査秘密を維持しなければ、それを維持することによつて、次にたくさん来る事件捜査が初めてできるのだ、多くの事件捜査をことごとく秘密を暴露して公表してしまうということになれば、捜査に当つて調べられた人、被疑者はもちろん関係人、そういう人たちは、折角秘密に調べられるからこそ、自分たちの真実を語る機会を得て話すのであります。それがことごとく、済んでしまうと、暴露されるのだということになりますと、次に来たる多く関係者被疑者等は前に調べられたものが皆暴露されるというので、われわれもまた皆暴露されるのでは、何の役に立たんからということで皆逃げるか、隠れるか、証拠を隠滅をするか、言わないかということになつて捜査ができなくなるのじやないか。それでありますから、不起訴にされた事件といえどもある程度秘密にしなければならん、こういうことを私は考えておるのであります。
  139. 小野義夫

    ○小野義夫君 私の質問を簡単に申しますと、今捜査権といわゆる国会の調査権のことはよくわかりましたが、私の承わりたいところは、法務大臣はいわゆる政党内閣であれば、まあ現在の法務大臣自由党員であるかどうか疑問でございまするが、とにかく政党内閣、もしくは準政党人のようにその政党内閣の一員として列せられた法務大臣は、私は法理上の立場は、これは専門的な考え方でいいのですが、政治的の責任ということになれば、それはいわゆる行政権の最終の責任者として検察権を法務大臣がとられることについては問題はないが、政治的の責任という問題になつて来れば、これは超然とすることができないのじやないか、つまり内閣の今回の場合は私は閣議で統一された、あるいは総理大臣が命令したということは存じませんが、将来のために承わつておきたいのでありまするが、もしそういう場合があつたときに、閣員全体が勝手に法務大臣はかくやるべしというようなことを閣議が決定したり、あるいはときの総理がこうやらなければ困るではないかといつたような場合があつたときに、何か法務大臣は敢然としてこれは憲法の何条によるとか、あるいは法律のどれによつて失礼ながら閣議の御要望にも応ずることはできない、総理大臣の言葉にも服することができないというような何か根拠がございますかということを承つておきます。
  140. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 先ほどお尋ねなつたことを申し落しておりましたが、お尋ねの点につきましては、内閣法にも国務大臣の規定がありまするが、これは総理大臣が各大臣を任免することができるということであります。法務大臣は一般的に申しましてやはり内閣の一人でありますから、その内閣の閣議の向うところに従わなければならんことはもちろんであろうと思います。従いましてもし転じて私の問題につきまして申すならば、もし内閣が閣議であることをきめて、これが法務行政のやり方としてなされなければならんものである、こういうことになりましたならば、これはやむを得ずそれに服するのが建前であろうと思います。法務大臣が独立して行政の検察権の首脳として何らの制肘を受けずにおられるかということは、今日の法制ではないと思います。従いまして今申しましたように内閣の閣議でその内閣の方針がきまつて法務大臣にあることを行えということになれば、その命令に従わなければならんと思います。ただ、私に対して仰せになりますならば、私は特別の関係においてこの内閣に入つたのじやない、党人でなくて、今度の問題をやるには、君がやつてくれることが一番適当だと思う。そうしてこれをやるには、何らの制肘を加えない。こういうことでありましたから、私はそれならば入つて私の与えられた職務務めましよう、こういうことで来たのであります。誠に口はばつたいことを申すようでありまするが、私に対してはそういうこと言われる義理はないと思つております。
  141. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 法務大臣にちよつとお尋ねいたしますが、司法権の独立とか、あるいは検察権の独立とか、行政権の一部であつて全然独立でないかもしらんが、独立ということと、内閣の方針とが一致しない場合にはどうしますか。
  142. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 御仮定の議論で、もしそいうことがあつたらどうするかとおつしやつても、今現実に問題が出て来ないと、私の所信を申すわけには参りません。
  143. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちよつと私疑問が出るのでありますが、お尋ねしたいのであります。検察行政も一般行政の範囲でありますから、当然一つ内閣の検察行政全体に対する政策に法務大臣が従われることは、当然のことであろうと思います。しかし先ほど法務大臣が言われましたように、検察権は一般の行政権に属するのではあるけれども司法権の兄弟分であり、多分に独立性があるというお話であります。私もその通りだと思います。従つて一般の検察行政に関する方針とかいうことについては、これは当然内閣の方針に従い、あるいは総理の方針に従うということでありましよう。しかし個々事件についてこれを起訴するかしないか、検察庁法上四条のただし書において想定しておるようなあのケースですね、そういうものについてなお閣議がこれを取り上げて閣議できめるというふうなことがあり得るのかどうか、おそらくそういうことは私にはあり得ないように思われるのであります。しかし今の御説明ですと、そういう個々の場合における起訴、不起訴の問題、個々の取調に関する事柄、そういうことについてもなお行政事務として閣議の決定があり得て、そこで決定されればそれに従うということになるのですか、どうですか。その点を一つお伺いしたいと思います。
  144. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) そういう問題がもし起きたとすると、これはなかなか困難な問題だと思います。結局その局に当る法務大臣の肚一つできまるのじやないかと思います。
  145. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そういうことが当然に現在のこの検察行政、検察権、司法権、あるいは行政権等に関連して、当然そういうことがあり得るというか、そういうことがあるのが当然だというふうに今の大臣の御答弁では受け取れるのであります。いやしくも検察権というものは不十分であつてもその中立性があり、独立しているものであるとすれば、まあこの三権分立における一つの慣行といいますか、あるいは政治における一つの慣行的の通念といいますか、そういう点から見て、そういう場合には閣議といえどもそれには触れ得ないのだというふうな一つの通念があるのじやないかと、かように思うのですけれども、これは間違いでありますか。
  146. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 私も十分研究は届いておりませんが、とにかく立憲政治というものは責任政治でありまするから、この責任政治である以上は、自分の監督下にある事柄について全的の責任を負わなければならんのでありまして、もし閣議で、その政府の閣議でこうやらなければならんときまつたならば、やつぱりその責任政治の観念からすれば、これに従わなければならんのじやないかと思つております。
  147. 小野義夫

    ○小野義夫君 それからこの十四条の指揮権発動の問題を政治的に掘り下げていろいろ研究するに当りましては、私は三つのことを一つ上げてみなければならんと思う。第一は、その国会が開会中は議員の逮捕国会の許可を要するという一つの規定と、それからこの前の誰の場合であつたか、その人の名を忘れたが、重要法案の採決にぜひともその本人がいないと、場合によつてはそれがいわゆる賛否の、あるいは否決あるいは決議ということに影響するから、保釈してもらいたいという国会のまあ要望でありますか、どこかからの、国会とは私は考えませんが、どこかからのそういう要望もあつたかのように聞いております。そこでこの国会中の議員の逮捕国会の許可さえあれば五十人でも百人でも、いわゆる国会がときの政府、政権と衝突する場合に、何人でも逮捕を許すというような事実が仮に発生したとした場合に、いわゆる許可さえ得ればそれでよろしいということで、この法文の、いわゆる国会の許可権というものの精神、立法の精神がそれで徹底するかどうかということと、また事件がかようのことに進展するおそれがないでもないという場合において、指揮権発動する、それから検察当局は、なるべく重要法案、たとえば不信任案というようなものは、一票の差で右左になるかもわからん。予算の成立もまたかくのごときものである。それでこれに類するところの立法権のいわゆる一票の神聖ということについては、一体検察当局はどういうふうに考えてこの検察その他の事務を行わんとしておるのであるか。私はこの立法権の議員の一票というものは、ただ慣習がそうなつておるから許可を与うべきである、慣例がそうであるから与うべきものである、といつたように、軽々に私は、立法府それ自体が、これは検察当局とは関係ないんだが、さように軽率に許可権を与うるのならば、許可を必要とする規定というものの精神は没却してしまうんじやないか、またかようの大きな多数の集合的の検挙を必要とするような事件が起つて来るならば、これは開会中にやらなければ絶対にだめなのか、国会は一年中開いておるのじやない、その前にも先にも、およそときがある。その時期ということについて十分なる考慮を払つて、立法権を尊重するという建前から検察をやつておるのか、それともただ犯罪を挙げれば所期の目的を達するというような考えでやつておるのか、いつも国会中に事件が起り、国会中にやるということに多大の私どもは立法府の一人として疑惑を持つ。何となれば国会中というものは非常に政争の激烈なまつ最中である。一波万波を生ずる。かかる場合にやらなければ、それは殺人とか逃亡とか、そういう事態が実際に起つて来るならばいいけれども、私は今回の事件のごとき、現実問題には触れたくはないが、証拠は傍証の固めによつて、その内容はほとんど明らかになつて来ておる場合において、これが遂行国会中にやらなければならなかつたという理由について私は納得行かんものがある。この点に対して、どうして待つことが、瞬間の待つことも許されないというようにさえも……、これはひとり佐藤榮作君だからいかんとか何とかいう問題じやありません。誰でもです。誰でも国会議員は開会中でなければやらん、やらなければならんというような、さような立法権に重大なる影響を及ぼすような場合に、これをぜひとも遂行しなければならんという、私は検察のその根拠を承わりたい。
  148. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 検察当局事件を取り調べますときは、いろいろの材料により端緒を得て、正確に見込みを立てた後に初めて手を下すのが普通であります。ただやたらに見込んで、何か出るであろうというような考え方で、軽率に手を下すことはありません。ただ、今回の事件は、これは昨日御説明申上げたかと思うのでありまするが、たまたま、昨年の暮に告訴を受けておりました日本特殊産業株式会社の社長に対する商法違反詐欺被疑事件がありまして、これを取調べておつた結果が、山下汽船とか日本海運株式会社とか、こういうものの手形振出行為に関連して不正の容疑が発見されて、そこで初めて本年一月七日にこの両会社の捜索等の手入れを行いました結果、取り調べたところが、初めて昭和二十八年の四月挙行の総選挙を中心として多数の議員候補のいろいろのことが発覚して手を着けた。こういうことを七月三十日の検事総長談に発表されております。その通り経過をたどつたが、でありまするけれどもこの点全く当初においてこういうような事態に発生することは考えられない。手を着けて見たところが、依然としてこういうものが出て、それが出た以上、もはやこれを休めておくわけに参りませんから、証拠隠滅を防ぎ逃亡を防ぐために、それぞれの手段をとつて、次々と事件が発展して、ついにあのような検察史上未曾有の大事件が生じた、こういうことになつたんであります。これは全く意外のことであつたのでありまして、今お尋ねになりましたように、検察としてはあの事件を調べる当初におきましては、大体の見込を立ててこれはどこらまで行くのであるか、たとえば例にお出しになりました国会議員が多数これに関係して検挙されるであろうかどうかというようなことももちろん考えます。そしてその時期を選び、時を選んで捜査に着手する、こういうことになるのが普通であります。例にお出になりましたように何十人の議員が逮捕されるというような誠に不吉なことは私あまりお答いたしたくないのでありますが、そんなことがあつては、我が憲政の滅亡になります。そんなこと想像もいたしません。しかしもし何らか若干の人が関係があり、それがために国会に対して逮捕の要求をしなければならん、これはそのときにはやむを得ず逮捕の請求をいたすこともある、幸いにして国会の許諾を得れば、逮捕を執行して捜査を進めて行く、こういうことになるであろう。それらもできるだけ考慮勘案いたしまして、なるべくそういうことの起らないような時期を選んで捜査に着手するということが、検察としての本来のやり方と思つております。
  149. 小野義夫

    ○小野義夫君 次に、これは一つ事件が起ると、またジヤーナリズムなり、その他のいろいろの観点からいろいろなことを言うので、それが正鵠であるかどうかわかりませんが、ともかく現在の政界は腐敗しておる。で、この政界の腐敗は到底立法府それの力自身によつて浄化し、あるいは粛正することはできんであろう、ゆえにこの際司直の手によつて非常な厳格にこれがいわゆる根源を殲滅すべきであるというような論議をなし、また一部のいわゆる検察官はあたかも救国の英雄であるかのごとき態度をもつてそれを推進するというようなことがあつたかないか。坊間さようなことも伝えられておるのであるが、一体この立法府の政界の浄化というようなことはですね、一体司法権が企図すべきものであるか、それとも立法府自体がそういうようないわゆる汚職とかその他の議院を排除し、あるいはまた選挙場裡において国民がかかる疑いのあるような代議士を選ばないことこそ、本当の政浄化というものが成り立つのではないか、この必要のために解散もあるのだ、いわゆる主権者というものは国民なんだ、その主権を行うのはどこであるかといえば、総選挙以外に主権を実行するものはない、それをその一つの部局がその大任をみずから当るというような考え方が、もし仮にもあつたとすれば、私はこれは非常に望外のいわゆる希望を持つたものと思うのでありますが、検察陣はあくまで冷静に、いわゆる眼前に現われ来つたところの問題に忠実であつて、政界の浄化とか何だというようなことを、いやしくも考えたものとは言わぬが、その点につきまして法務大臣はどうお考えになりますか。
  150. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) この事件捜査に当たりました検事は非常に多数の数でありまして、七カ月の長きに渡り、寝食を忘れて殆ど不眠不休、事件を調べて参つたのであります。その結果御承知のような多数の事件が発覚いたしまして、起訴せられた数だけでも非常にたんさんなつております。国会議員はわずかに六人でありまするが、財界の有名人は非常に多数の数が起訴せられております。その他また不起訴になりました者でも、やはり国会に席有した者、あるいは立候補して落選した者、知名の人もたくさんあるようにも聞いております。そういう人たちがそれぞれ検察の手によつて調べれました結果、あるいは世の中ではこういうふうに政界が腐敗しては、これはどこでこれを粛正するか、検察の手によらなければならん。司法の手によらなければならんではないか、こういうようの説をなすものもあつたと思います。しかしお話になりましたように、もともとかかる事態が生じたということは、やつぱりこれは時勢、環境の然らしむるところであります。一朝一夕、ただ検察の力によつてこれを処分することができるなどというなまやさしいことでは決してないと思つておる。お話になりましたごとく、かようなことは立法府に席を置いておられる方々がまずもつて申合せ自粛して、かようなことが将来起らないように努力することが、最も大切だと思います。先般全員協議会をお開きになつた際に、あの自粛の決議をなされて、そうしていわゆる自粛三法、選挙法、国会法、政治資金規制法を改正することによつて、選挙に金の要らないようにする、それがまず第一に自粛の道である。こういう御決議をなされまして、私ども全くさように存ずるのであります。やがて来たるべき国会においては、あの自粛三法が議に上せられて、相当の立法ができれば、これが政界浄化の道になることは確かであると考えておりまするが、ぜひともこれが行われることを熱望いたします。ままこの事件等に当りましたあるいは若い検事等がこの事態に憤慨をして、これはどうも自分たちの手で政界浄化をやらなければならんと言つた者もあるかもしれません。ないとは私断言できません。あつたかもしれませんが、それは一人や二人があつたからといつて、検察の力でこれが浄化できる。いわゆる検フアツシヨを考えるようなことは絶対にあり得ないことである。さような人があろうとは私は思いませんが、もしもさような考えを持つておるならば、これはやはりこれまた自粛をして、さようの考えを捨てて自分たちの与えられたる正しい道に進む。こういうことこそ検察の威信を高めるゆえんであると考えております。
  151. 小野義夫

    ○小野義夫君 最後に一つつておきたいのは、私の聞違いであれば、これはいいわけでありまするが、午前に犬養法務大臣のお言葉の中に、いわゆる検察庁法十四条の法規などは、むしろああいうものはないほうがいいというような意味のお言葉がどこかの委員会で発せられた、御自身が発せられたというのであるか、その委員会の一員が言われたのであるかしりませんが、そういう発言があつたということを言われて、犬養前法相もあるいはそういう気持が起つておこるのではないかと私は非常に、その際関連質問をすべきところを私は用事のためによそへ行つたのでわからんのですが、この十四条というものが不都合であるというならば、これを撤回するような第一、法案を出すか、あるいは修正意見といようなものは、いまだかつてここに起こつておらない。私はさように天下の物議を出すような悪法ならば、先ほど同僚議員が誠に悪法また法なりとおつしやつたが、もし真に悪法ならば、私は立法権によつてこれは修正もしくは削除その他の法的、立法的措置を講ずるが至当であると考えるのであるが、法務大臣はさようのお考えを持つておられるかどうか。
  152. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 犬養法務大臣検察庁法十四条について、どういうお考えをお述べになつたか私は聞いておりません。しかしただいまおつしやつたように、検察庁法十四条は悪いものであるから、やめたほうがいいじやないか。それならば改正をせられたらいいじやないかと、こういうお話でありますが、これはさようなことがあつては大へんであります。この検察庁法十四条があつてこそ、検察、行政が行政の一つのものとして、責任政治のもとにおいては、これは内閣のもとに監督して行くという建又でなければならない。閣僚の一名がその頭になつて、これを監督すというような制度を立つて行かなければならない。そのためにはどうしても検事総長に対して、個々事件について、取調あるいは処分を指揮し、検事総長を通じて、取調あるいは指揮をして行く、取調または処分を指図して行かなければならないのであります。これがなければ、いわゆる検察側が全く独立のものになる。検事総長が検察について全権を持つ形になる、それでは検事に何か間違いがありましても、これを正すに固まりますし、また責任政治のもとにおいて、内閣はこれに対して責任を持ち得ない、こういう形になりますので、どうしても検察庁法十四条はなくてはならない。これを改正しては大へんなことになると思います。
  153. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 関連してちよつと小原大臣にお教えをいただきたいと思つております。今の問題を私も伺つてみたいと思つていた点でございましたが、検察庁法の十四条の指揮権発動というものは、日常茶飯事に行われていると先ほど仰せになりましたのでございますが、そのことはよく了解いたしますが、これが日常茶飯事として行われておりますときに、小原法務大臣のような政党人でもなく、司法部の大恩人であつて、大先輩であつて、もう本当に、あの厳正公平な立場をお守りになると国民も信じて、信頼しておりますような法務大臣のときには、いくらこの指揮権発動がございましても、私どもは安心しておられるのであります。でございますけれども、今日午前中の犬養元法相に伺つておりますと、この佐藤逮捕のあのとき指揮権発動するということについては、次官も刑事局長も皆反対したと仰せになりましたが、その上反対を押し切つていたしましたということだつたのです。それで、私はそこは少しやつぱり上から圧力があつて政治的に命ぜられていらしたようなことはないか、というような感じを持ちましたのでございます。そこで重ねて伺いましたところが、そんなことはないと仰せになりました。でございますが、とにかくこの書類でもつて、正面衝突を検察庁と法務省とでしなければならないというような、非常にせつぱつまつた関係という実情になつておりましたために、あれが問題になつたのでございましようが、もしもこれが政党大臣でございませんでしたら、なおさら私、このことは問題にならないほどスムーズに行つたわけで、どうしてもそこに政治的な圧力があるんじやないか。そこで、この今の指揮権発動検察庁法十四条というものは、これは本当にこの政党屋の法務大臣にこれを持たせまするというと、ある場合、失礼なことを申しますけれども、気違いに刃物を持たせるというか、私国民が安心しておられないじやないかというように、今度本当に悪用、濫用されましたあのときに、実は決議案を私ども出したのでございますが、まあ本当に困つたことができたと、あのときは心底私ども残念に思つたのでございます。そこで私は、このあつてもなくとも、検察庁を監督するものは法務大臣であるということを、ほかのもので建前をお作り願つて、ああいう濫用や悪用されるおそれのあるような、あの立法をやめてもらつたらどんなものでしようかと、私は思つておりますが、それは本当に小原大臣のような方が正しくお考え下さつて、その検察陣営の運営を正しく行くという建前から、一つ十分にお考え願いましたら、この機会に非常にいいのじやないかというように考えておりますが、いかがでございましようか。
  154. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) ああいう事件が起きましたために、皆さん大へんその点を御心配になると思うのです。あれはさつきも申しましたように全く異例のことなんです。今日まで検察庁法十四条ができまして、もうすでに七、八年経ているのであります。今月まで何も問題がなかつた。しかしたまたまああいう問題が出たものであるから、ああいう規定に置いては、もし政党の人たち、あるいはその他悪い大臣が来て何をやるかわからんから、あんなものを置かんがいいというお考えもごもつともであります。どうもすべての制度というものは、いいところもあれば、どこかにまた悪い欠点も伴うのであります。さようにお考えになりますというと、検察庁法十四条はなければいいように思えますけれども、そういたしますと検事総長が検察行政の頭になり、今日の司法裁判所の制度のように、最高裁判所の長官が裁判書の全監督者になり、全く独立し何人の支配も受けない、こういう建前になるのであります。ああいう制度を検察について置かなくていいのかと申しますと、これはやはり考えますると、恐ろしいことが出て来ます。もし検察フアツシヨが出て、どんどんどんどん端から人を縛つてしまう、幾ら言つたつてきかない、検事総長はそれを抑えることができん、こういうことになつたら、これはどういたしますか。そういうことを考えると、検察庁というものを全く独立の体制に持つて行くということは、どうしてもいかん。やはり責任政治のもとにおいて、内閣の一国務大臣が責任をもつてこれを監督するということでなければならんと思う。要するにやはり人の問題であります。人が皆悪くなつてしまえば、これはどうにもしようがありません。なかなかそういうものじやない。やはり多数のうちには正義の士があつて、幾ら政府が何と言つたつて、おれは聞かんというものも出て来るだろうと思います。そこにやはり融通がきく場面があるのであろう、こう私は思いますから、折角検察庁法十四条をやめたらいいじやないかというお説でありますけれども、これはまたやめたら大へんであります。私はやめないほうがいいと思います。
  155. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 もう一つ、今回の事件は本当に異例だ、異例だという、私どもも異例と信じたいのでございますが、これからも、何か大きいどろぼうを逃がしますときは、これは異例だということが続きますというと、これもまた私大へんなことが起るのじやないか。そこで何か法務大臣というものは、政党大臣でないというようなきまりというようなものを作るというわけにもいかないものでございますか。
  156. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) それは政治の組織の中にそういうことを入れれば、できないとも言えませんけれども、これは今日行われないものじやないかと思います。
  157. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは委員長から法務大臣に一言お尋ねをいたしたいと思います。実は総理大臣の出席を要求しておつたのですが、総理は出て来られないようになりましたので、法務大臣から一つお答えを願いたいと思うのですが、それは本委員場合を開きまする冒頭にも申し上げました通り、われわれはこの委員会で連日審議を重ねました。委員の方には、やはり今回の事件、特にこの造船疑獄等の打切ということが、何かこう国民に納得できないものを残した、こういう点にあると思うのであります。そこでいろいろ連日にわたつて法律的に論議を重ねられたのでありますが、国民の素朴な気持からいたしまして、私はあえて素朴な質問法務大臣にお伺いしてみたいと思うのであります。と申しますのは、今回の事件がたびたび法務大臣もおつしやられる通り、未曾有の、検察行政始まつて以来の事件であるともいわれ、またこれと類似の昭和電工、その他においても内閣が瓦解したほど、この種の問題は政治的な要素を多分に含んだ問題であるわけであります。従つてこれだけの大きな問題を検察当局がまあ世の中に提起しておいて、何かそこにこれの結末については先般の検事総長の声明だけで打切つたということについては、どうしても納得のできないものがしあるのであると思うのであります。そこで第一点にお伺いいたしたいのは、なぜ一体特に佐藤榮作氏の問題にいたしましても、逮捕ができなかつたというたけで起訴できなかつたのかどうか。と申しますのは、たびたび内閣でも三役に及ぶならば、これは内閣の命取りであるというような話もあり、かつまたこれだけの事件でありますから、検事当局におきしましても、それの及ぼす影響というものは、相当これは傍証によつて固められたものであると思うのであります。従つておそらく逮捕というのは、一つ捜査上の、しろうと考えからいたしますれば一つのプロセスであつて、いわゆるプラスアルフアーに過ぎないものであつて、相当の傍証によつて逮捕要求が出たものであると、こう普通は考えられがちだと思うのであります。従つてもし逮捕によつて、その資料が整わなくてもこれは公判においてその点を明らかにして、そしてどうしてもこれが逮捕な要求せざるを得なかつたというようなことを、公判を通じてはつきり国民の前に知らせるということがどうしてできなかつたのであるかどうか、その点が第一点。それから等二点は、それほど逮捕要求ということが捜査上致命的な問題であるとするならば、検事総長がなぜ身を挺してもこの逮捕要求に対して相当努力しなかつたかどうか、その点がどうも納得が行かないのであります。第三点は、それならば逮捕ができなかつたために、全体がくずれるような程度のものであるならば、今回のこの疑獄事件というのは砂上の楼閣であつて、先ほど小野委員も指摘せられたように検察フアツシヨの一つの現われでなかつたかどうか、その点についての疑問が出て来るのであります。第四点に、もしただいままで申し上げたようなことではなく、誠心誠意、あらゆる事態をも総合的に考えて今回の疑獄事件というものを取り上げて、そうして一億何千万円に及ぶ金も捜査費用もかけて、一万からの人も呼んだと称せられておりますが、これは検察行政始まつて以来の大きな事件であつたとするならば、それがしかも相当の傍証その他によつて十分検察活動を確信ずけるものがあつたとしたならば、今回の打切というものが政治的にゆがめられたのではないかという一つの疑念を持つのであります。従つてそれはそうでないんだというのであるならば、今後一体法務大臣はどういう方法、手段によつてこれが政治的にゆがめられたのではなく、かつまた相当検察行政かかくも世論を喚起するだけの事件であるとして、これを検察庁が取上げざるを得なかつたと、しかもそれは政治的にゆがめられることなくして、今回の疑獄をこういう事情によつて打ち切つたんだという、国民が納得するような方法によつてこれ解明する責任があると思うのですが、その解明の方法手段をどうして法務大臣はとられるのか、そしてこれをとることによつて初めて数日来各委員がある意味から言えば、法務大臣の面をおかしてまでるる申し上げ、いわゆる検察権の権威と独立と、その誇りを守ろうとする各委員の熱意が達成せられると思うのでありますが、この点についての法務大臣の今後の所信を合せてお伺いしたいのであります。
  158. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) ただいまの高橋委員長からのお尋ねお答え申上げます。まず第一に、あの七月三十日の検事総長談で発表しただけでは、事件内容がわからないので、なぜああいう発表をしたのか納得できない。国民もあれについては納得をしておらんようである。それについて第一に、あの事件佐藤榮作氏の逮捕要求をしたのは根拠があつてつたのかどうか、こういうお話であります。あれは私の知る限りにおきましては、当時検察当局佐藤榮作氏の容疑事実ついて、集めた証拠によつてもしこれを逮捕して調べるならば、その容疑事実が明らかになるものであるという確信のもとに逮捕の要求をしたものである、こういうことは私了解しておるのであります。何らの根拠はない、あるいは根拠薄弱でもるにかかわらず、ただ逮捕を要求した。これはあの事件が明らかであつて、容疑事件がなくても起訴ができたであろうというような、漠然たる考え方で、当時の検察当局はあの逮捕要求をしたのではないとはこれは明らかであります。第二点にお尋ねになりました、逮捕が必要ならば、総長はなぜあの指揮権発動に対してこれを排除すべく努力しなかつたか、こういうお話であります。これは検事総長が衆議院の決算委員会に証人として出られて質問を受けた際に、詳しく述べておられるのであります。あの逮捕はどうしてもあの際において必要なあることを確信したから法務大臣に対して逮捕の要請をしたのである、しかるに法務大臣はあのいわゆる事件性格にかんがみて、かつ国会における重要法案審議の状況にかんがみて逮捕稟請を延期するように、こういう指令が出た。そこで面をおかして、しばしばどうしてもこの際には佐藤榮作氏に対して逮捕状を出して、勾留の上で取り調べなければ、証拠を固めて起訴することができない、逮捕はどうしても必要であるからということで、大いに諌言をして、諌めたけれども聞かれなかつた。聞かれないでついにああいう当分これを延期するようにという指令をされたので、誠に残念しごくであつたけれども、かかる指令が出た以上は、検事としては法務大臣の命令に従わなければならんから、涙をのんで隠忍自重、与えられたる他の方法によつてこれを捜査をしたけれども、結局予期通りの証拠が集まらないで、佐藤榮作に対してのあの収賄の容疑事実については、ついにこれを起訴することができなかつたのである、こういうことを述べられておるのでありまして、この検事総長の話はその通りであると私は信じております。第三に、あの佐藤榮作氏の事件について逮捕ができなかつたがために、事件が成立しなかつたということであつては、ほかの事件も一体怪しいのではないかというお尋ねであります。これは全くそうではないのでありまして、あの事件は集められたる当時の証拠によつて、さらに被疑者逮捕してこれを取り調べたならば、順々に証拠が固つて起訴ができると期待したものが、あの逮捕ができなかつたために目的を達しなかつたのでありますけれども、そのほかの事件については検事当局としては十分取調をし、証拠を、取り固めて、それぞれ起訴をいたしたのでありまするから、これらの事件がおそらくは無罪になるとか、不成立になるとかいうことはないものと私は確信をいたしております。第四点に、大きな金を使つてこの事件をやつた、そうしてこれがああいう不始末に終つたのでは、検察の威信においてはなはだ困るではないかというお話がありました。これは先ほど来お尋ねしてたびたび申し上げたよりに、国民があの指揮権発動によつて、検察の処置に対して疑いを抱く、あるいは七月三十日の検事総長談で発表された範囲では明瞭を欠くということで、疑問を付つていることはあるに違いないと思います。しかしこれは時をかしていただけば、やがて明らかになることでありまするから、その時まで待つていただけば、国民の不信も、また疑いも解けるであろうということを先に申し上げたのでありまして、ここでもそのことお答えといたします。第五点の政治的にゆがめられたのであつたならば、この政治的にゆがめられたることが将来できないようにどういう処置をとるかというお話であります。私は、あの事件政治的にゆがめられたものであると断言はできないと思うのであります。当時の情勢において、どうしてもああいう指揮権発動をしなければ、いわゆる事件性格にかんがみ、かつときの国会にかかつておる重要法案の審議が来るから、それで逮捕を延ばしてくれろということで、法務大臣独自の考えでやられたのでありまするから、これをもつて法務大臣政治的に動いて、この事件をゆがめて指揮権発動をいたしたのだ、従つて事件をつぶしてしまつたのであろうと観察することは無罪であろうかと思うのであります。総じて世の中でこれはやむを得ない疑いであると思うのでありまするが、あの指揮権発動を、事件の打切り、あと事件捜査ができないようにするがために、あの指揮権を、発動したのであるというふうに言われ、思われておるようで、ありまするが、あれはただ佐藤榮作氏の逮捕に対してのみ言つたのでありまして、その他の事件に対して、事件捜査に手をあげろ、手をやめろというような意味で打切り的の指図したものでは毛頭ないのであります。結果において佐藤榮作氏の事件被疑事実としては起訴はできなかつたということはありまするが、その当時においては、これもさつき申しましたように、当時においてなお取調べなければならんいろいろの大きな対象があつたことはないということは、これは確実のことでありまするから、あれによつて捜査が全然くじけてしまつたということはないのであります。ただ、この佐藤氏の事件関連して、もしあれが逮捕状が発せられておつたならば、事件の発展がなおどういうふうにか進んだかもしれないのであります。これはある一つのことを、同じ時において、こうやればどうなる、ああやつたらどうなるということを判断することは困難であります。これは逮捕状が出たならば必ずうまく行つたであろう、逮捕状が出なかつたからああなつたのであるか、これはどうであるか、こう言われると、なかなか判断はむずかしいのでありまするが、検察当局においては、この際に置いて逮捕状さえ出せば十分にこの事件捜査が完全に予期の成績が挙げられたという確信を持つてつたことには相違ないのであります。ただ、それができないがために、あと事件が皆つぶれてしまつたのだということを観察することは間違いであると思います。それからなお七月三十日に検事総長談をもつて、この事件の終結を発表したのでありますが、あのときも世の中では、あれを称して打切り打切りと言うのであります。これは言葉の争いみたようでありまするが、あれは決して事件を打切つたのではありません。あれまでになつたいろいろのたくさんの事件検察当局で十分に取調べて、もはや取調べを終つたから、自然の終了によつてあの事件の結末を発表したのであります。いわゆる打切りと称しまするものは、まだ先に調べるものがあるにかかわらず、故意にその事件捜査をやめさせる、これがいわゆる打切りでありますが、あれはいわゆる打切りではないのであります。これも世の中で誤解をされておりまするから、この際に一言して、その誤まりを正しておきたいと思います。
  159. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 第二点に……、法務大臣の答弁は、私の質問に対して十分とは考えておりませんが、一応次の問題に移つてみたいと思います。第二点にお伺いしたいのは、先ほど法務大臣お話の中に、この十四条の指導権は、日常茶飯事のしばしば、ある問題であるということをお話になり、これに対して各委員からの質疑等がございましたが、しかしこれは先般犬養法相が指揮権発動せられた場合と、これは非常に違うのじやないかと思うのであります。と申しますのは、むしろ法務大臣の言つていられる意味は、十四条の本文の場合であつて、しかもそういう場合は、むしろ法務大臣意見も聞くと、おそらく事務当局は聞くというような非常に軽い意味であると私は思うのであります。ところが先般のような場合というのは、検察庁か慎重に会談に会議を重ねまして、そうして一応の検察当局としての意見をとりまとめた場合に、一つのそれに対立する法務大臣としてのいわゆる十四条のただし書の規定の発動でありまして、これはきわめてやはり異例に属すべき問題であり、かつまたそういう非常な異例においてのみ十四条のただし書が発動刑するというところに、先ほど大臣もしばしはいわれる通り、検察行政は、一般行政であるにかかわらずこれは、その独立と権威とを保持するために、相当検察行政の確立を図るのだと言つていられる意味はつきりすると思うのであります。これは各省の場合でも、私にもある大臣が、役所というところは妙なところで、大臣のところへ判をもらいに来るのに、これは省議できまつたのですから、判を捺してくれとこう言つて事務局できまつた意見を、大臣に、省議できまつたのですからということを言つて、判を取られると、こういうことを言つて、おりますがこれはやはり一般行政でも相当事務当局の独立性というものはあると思うのであります、いわんや検察行政におきましては、やはり検事総長を中心にし相当の独立権限から、又それがために、内閣のいかんにかかわらず、国民か信頼を検事当局につないでいるゆえんであると思うのでありまして、私はどこまでもこれは異例の場合にのみ発動するものであつて、先ほど法務大臣のおつしやつた、日常茶飯事にやる、それはやつているのと同じなんだというのは、ちよつと私言葉が足りないのじやないかと思いますので、その点を重ねて法務大臣から御弁明を願いたいと思います。
  160. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 検察庁法十四条のただし書は、先ほど申し上げましたように、「個々事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる、この条文によつて個々事件の取調、または処分について指揮ができるのでありまして、他の検事以下の検事に対しては、法務大臣個々事件について取調または処分について指揮できないのであります。で、あの佐藤栄作氏の被疑事件逮捕状を出すという問題については、それはやはり事件の取調、または処分に関する事柄でありまするから、この十四条ただし書によつて検事総長法務大臣指揮を仰いで来、法務大臣はこれに基いて指揮を出した、こういうことに私は解釈しているのであります。当時からも検察庁法十四条ただし書によつてこの指揮権が出たのであるというとは一般に言われており、またあの当時の当局の発表と申しますか、話もまたかようになつているので刈ります。それゆえに今仰せられましたように、あの事件は特別のものつであつて、一般に行われている検事総長を通じての法務大臣個々事件についての、取調、または処分についての指揮は別のものではないかと仰せられましたが、私はやはり同じのものであると思つております。先ほど申上げましたように日常行われておると申しましても、たくさんの法務大臣に対する検事からの東諸事件指揮を仰ぐべき事件は、法務省でそれぞれの検察庁に対して示達がしてあります。それに基百いて事件、ことに取調及び処分について法務大臣あてに指揮を求めて参つております。これに対しては法務大臣は常に、先ほど申上げましたようなふうに、毎日、あるいは日をおいてもありますけれどもしばしば指揮をいたしておるのであります。これはやはり検察庁法第十四条のただし書に基くものであります。佐藤榮作氏の場合と何ら異なるところはないというように了解いたしております。
  161. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちよつと法務大臣に要請をしておきたいのですが、それは先般の衆議院の決算委員が要求しておる証言許可の申請ですね、これに対する結論は、来週、来週もできるだけ早く結論をつけるようにして出したい、こういうふうに言われましたが、私が本委員会で要求しておるこの二十数名に関する部分ですね、これも理論は同じですから、一つこれは法務大臣が証人としてここに出られておるわけではないんですが、これはまあむしろ政府委員として暴利は来てもらつたほうが穏当じやないか、そういつたようなこともありまして、これは来てもらつたわけで、内容的には事柄は同じだと思うのですね。発表するかしないかということは。だから従つて決算委員余の問題の結論をつけられる、その結論をつければ当然二十数名の問題の結論も出て来ると思うのです。出していいかどうか……。私はこれも一つ同時に早く結論を出してもらいたい。私の要求しておるのは、二十数名の人と、その二十数名に贈つた人たち、それからできればその全額、それから贈つた日ですね、次にはその使途、これだけのことがそろいませんと、つまり七月三十日の検事総長談話、これに対するその部分の法務委員会の、法務委員としての刑事政策上の立場からの適当な批判というものはできないわけなんです。それが公訴維持とか何とか、そういつたような関係で、あるいは私の見解から言えば、これは全部公表していいと思うのですが、あるいは法務大臣の見解で、以上のものが全部かいけなくとも、できる範囲のことは出していただきたい、こういうふうに考えておるわけです。もしそれが、私はまあ出て来ることを期待しておるのですが、どうしてもこれらの項目、その一部についてできない、こういうことであれば、その理由等も一つ明確にして実はもらいたいと思うのであります。まあ手続としては、できれば私は書面なりそういうものでいただきたいと思うので。昨日並びに本日私がこの部分に関して行なつた質疑で、私としてはまだ十分満足しておりませんので、それを一ついただいたあとで、さらに次の法務委員会等で質疑をしてみいたとこういうふうに思いますので、この点を一つできるだけの善処を要望いたしておきたいと思います。
  162. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) わかりましたが、いずれ帰つて取り調べまして、その上で御返事をいたします。このことはあるいは検事総長及び検事正の証言の中で今度証言を拒否して承認を求められている事項の中にあるのではないかという気もいたします。今ちよつとそれは明言いたしかねますので、いずれ取り調べた上で……、やつぱり証言されたうちに、この通り質問ではありませんが、これと形が、異なつ意味においての質問に対する証言、この証言を拒絶したので、やはり承認を求められた事項があるそうでありますので、いずれ研究しまして申します。
  163. 岡田宗司

    岡田宗司君 昨日並びに本日の委員会におきまして、小原法相並びに犬養前法相から指揮権発動の問題についていろいろお伺いいたしました。しかし私といたしましては、少しも指揮権発動についての疑惑は解けない、これは私個人だけではないと思います。おそらく国民の多くも、この両氏がこの委員会において御発言になつたことによつて疑惑は解けるもとのは思いません。ただいま委員長の総括的な最後の質問に対するお答えからも何ら明らかになつた点はない、委員長質問に対しまして、法務大臣があの造船疑獄の問題について佐藤氏の逮捕についての指揮権発動は、他の場合における指揮権発動と何ら異なるところはない、こういうふうに言われておつたのであります。何ら異なることがなければ、こんなに大きな政治問題になり、また大きな疑惑が生れるはずはないのであります。そのことから見ましても、これは相当質的に違うように私どもは思われるのであります。形式的には同じでありましようけれども、事の軽重、性質からいいまして、非常に違う。法務大臣立場でもつてあれが検察庁法第十四条の発動が日常行われておるのと少しも違わないのだというような立場を一面において、とられまして、さらにまた第三者収賄については、これはあまりはつきりしていない。いろいろこれはむつかしい問題もある。また犬養法務大臣第三者収賄の問題についてこれは検察当局考え直せと言つて、その十四条の発動をやつたんだということを先ほど言われたのでありますが、そういたしますというと、今後こういうふうな政党資金等についての金銭の授受が第三者収賄、またはそれに類した形で行われることもよくあると思うのですが、そうすると、今後は全然それについて手を触れない、あるいけ検察庁がそれについてやつた場合にも、日常茶飯事の検察庁法第十四条の発動と同じような解釈でもつてぽかぽかやられては、これはもう収賄というようなものが横行するということになると思うのであります。今後法務大臣としては、こういうような問題が将来も起ります場合に、こういう問題については検察庁法第十四条の普通の発動というようなことで、もうあれと同じようにどんどん抑えて行くんだ、検察庁のその逮捕なんというものに抑えて行くんだ、あるいは逮捕、させないでもう一遍考えろというようにするのだ、こういうふうなことになるかと思うのですが、あなたは今後ああいうふうな問題が起りました場合に、あなたの心がまえとしてはどういうふうにこの問題を御処理になるか、それ一言承わつておきたいのであります。
  164. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) 先ほど、検察庁第十四条のただし書は今日においても通例行われておるのであつて、あの佐藤栄作氏の場合と異なることがない、こういうことを申上げたのは、法律的に解釈してその通りであるということを申し上げておるのであります。ただ、今日たくさんの事件検事総長から法務大臣に対して指揮を仰いで来ておりまするのは、そうしてこれに対して法務大臣指揮をいたしておりまするのは、検察庁法務大臣との間には常に意見の一致があるのであります。こういうことをやりますが、いかがであるかということで、検察庁から来るものに対して、法務大臣も同意であるから、その指揮を常に出しておるのであつて、これはなめらかに行つておる。このやり方次第で問題が出るのでありまして、佐藤栄作氏の場合においては、全く検事総長及び検察側と法務大臣との意見が対立いたしましたから、あれが大へん問題になつたのでありますが、それがすなわち異例の措置であるということも言われるのであろうと思うのです。これに対して法務大臣検察庁法第十四条によつてあの指揮権発動して、しばらく延期をせよ、こういう指令を出したのがすなわちあの指揮権発動なつたわけであります。これを称して異例というのでありまして、なるほど両者の意見が対立して、その異つた意見に対して法務大臣が自分の立場で、この法律の規定によつて指揮をして、あれを延期せよとこう言われたのは、これは全く異例であるといえば異例であるわけです。もし検察庁法務大臣あるいは法務省の当局との間に、常に話合いを進め、あるいはある事件が発生したときに、それの始末について常に円満な話合いをしておれば、こういう問題は出ずに済むのであります。今後もしこういう事件が出たならばどうかと、私にどうやるかとおおせられますれば、私としてはさように検察庁法務大臣との間に意見の対立があるようなことをいたしたくないのであります。さようなことのないように進めて行つて円満に事態を解決して行きたいと思つております。
  165. 岡田宗司

    岡田宗司君 検察庁は今度の事件について第三者収賄ということをはつきり刑法に規定されておるところに聴いて逮捕理由になる、こう考え逮捕の請求をされたと思います。ところが小原法務大臣は昨日から第三者収賄の問題については疑義があるように言われておる。そういたしますと、もうすでにあなたが第三者収賄の問題について疑義があるということを言われておること自体に、検察庁とあなたの考えの違いがあるというを明瞭に物語つておる。そうすると、われわれは今後そういうような収賄事件が起りました際に、あなたがとられる態度というものについてやはり抑えるのじやないか、犬養法務大臣と同じような理由でもう一遍考え直せというようなことで、十四条を発動するのじやないかという疑惑を持たざるを得ないのでありますが、そういう点についてはどうお考えになりますか。
  166. 小原直

    ○国務大臣(小原直君) あの第三者収賄がまた出て来るのであろうなどということは、私は別に考えておりません。そのときにはその場合に応じてよく処置をいたします。
  167. 岡田宗司

    岡田宗司君 疑惑が解けないということだけ申上げておきます。
  168. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 如何でしよう、この程度で……。ちよつと速記をやめて。    〔速記中止〕
  169. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 速記始めて。それでは本日はこれをもつて散会いたします。    午後五時二十七分散会