○国務大臣(大達茂雄君) これは今地方
課長から申上げました
通り、日本の公立
学校の義務
教育学校に入学をしたいという希望の朝鮮人子弟に対しては、その希望の
通りに計らう、こういうのが現在
文部省の
考えている
考え方であります。これは併しむろん現在の
教育制度、或いは法律制度からしてそういう結論にな
つているわけじやない。制度としてはむろん義務
教育学校でありますから、日本人の子弟を収容するということが建前であります。ただ朝鮮人の子弟がさような希望を持つ場合には、そういうふうに計らうが妥当であろう。こういう
一つの方針といいますか、実際上の
考え方であります。そうして、これは勿論
文部省がそれをきめて、各地方にその
通りにせよという命令をするわけには参りません。いわゆる助言、勧告と申しますか、こういうふうにしたほうがよろしかろう、こういう意味で昭和二十四年でありましたか通達を出して、現在大体さようなふうに全国ともそれを行な
つている。こういうのが実情であります。
そこで東京都の問題でありますが、これは私は詳しいことは存じませんが、朝鮮人だけのために公立
学校というものを作
つて、そうしてや
つているという例は、非常に少い
事例だろうと思います。ただ東京都におきましてはそういうことが行われておる。これがはしなくも東京都会或いは東京都の
教育委員会のほうで最近問題になりまして、そうしてこれはいろいろいきさつがあ
つたようでありますが、これは関係都議会、東京都
教育委員会のほうでは非常に苦労をして、今日一定の結論を出して、そうしてこの問題を解決しようとしておられると思うのであります。
文部省としましてはこれは先ほど
荒木さんも言われましたように、実際なかなか重要な問題である。と同時になかなか困難で微妙な問題であります。私
どもとしては、これはそれぞれの地方々々のこの種の問題は、実情というものが非常に違うのでありますから、一律一体にそういう場合、こうせよ、ああせよということを指図するということは、実はなかなか実情から見て困難な場合がありましよう。一般的な
考え方というものは奨められるでありましようけれ
ども、殊に東京都のような場合に現実の問題として東京都の
委員会がこの問題の解決に取組んでおるのでありますから、
文部省としてそれはこういうふうにしたほうがいい、ああいうふうにしたほうがいいというふうなことを具体的に助言をするということは、場合によ
つては一層これを混乱に導くという虞れもあり、その点において都の
教育委員会が努力して解決しようとされておる、その或いは場合によると邪魔になるということも
考えられると思いますから、
文部省としてはこの具体的問題の処理についてこうしろ、ああしろということは実は余り
言つておらんのであります。ただ東京都からの
報告を受け、連絡は東京都のほうからありますから、それをまあ受けておるわけで、私
どもとしてはできるだけ早い、そうしてできるだけ円滑にこの問題は解決をするようにということをまあ
考えておるわけであります。ただ制度として
考える場合に、公立
学校、殊に特にこの義務
教育学校において日本の
学校教育法というものに従うということは、これはもう当然な前提でありまして、
学校教育法を離れた
学校を政府においてそれを公立
学校として認めて、或いはそれに対して補助金の制度を認めるということは、これは従来の朝鮮人と日本との関係からいえば、これは尤もな点があると思いますけれ
ども、これなかなか困難な問題であろうと思います。だから現に朝鮮人の大
部分の子弟は現在の各地方の公立
学校に、いわゆるその地区々々に
従つて分散をしてそれぞれ収容し勉強しておられるのが、これが大
部分の情勢であります。特に朝鮮人だけの
学校を作
つて、そうして
学校教育法というものの規範を受けずに
教育をするということに対して、これを補助するとか、或いは公立
学校としてその経費をみるとかいうことは、少くとも現在の制度の上ではこれはできないということであります。これを実際の政策の上において、或いはそういう法律を作
つてということにな
つても、これがなかなか考慮を要することであ
つて、それを今そうしなければならんというふうには、これは実際むずかしい問題であるが、なかなかそう行かないだろうと私は思います。ただ朝鮮の地理を教える、或いは朝鮮語を教えるということについて、朝鮮人子弟にそれを教えたいという念願、希望があるということ、これはよくわかります。併しそれは課外として行うことによ
つてできましようし、そうして地理とか何とかいうようなことは、これは必ずしも日本の
学校教育法というものと矛盾抵触することなしにこれは行い得ることであると私は思
つております。でありますからして、その限りにおいてはやはり朝鮮人に向くような
教育をされても、必ずしも、私はこれは詳しいことはわかりませんが、教科内については
学校教育法の規範を受けずにでなければそれはできない。これは例外として認めてもらわなければ困るという問題は私は起らんと思うのです。現在東京都において、現存する
朝鮮人学校が
学校教育法というものに拘束を受けないこと、言わば放恣な状態において
学校が運営されておる。これは東京都の
教育委員会として責任者の判断にまつしかないのであります。若しそういうことであれば、これはどうも私は今それを日本の
学校教育法というものを離れた
学校を桁えて、それに対して公立
学校として経営をする、乃至は補助金を出して、そういうものに特殊な制度を
考えるということは、これは
相当研究を要する問題で、そう簡単にそうすべしという結論は出せない、こういうふうに思うのです。現在のところでは、あの問題が一日も早く、できるだけ円滑に解決をする、まあ、こういうことを希望、念願しておる状態であります。