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1954-03-23 第19回国会 参議院 文部委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十三日(火曜日)    午前十時三十六分開会   ―――――――――――――   委員の異動 三月二十二日委員山縣勝見君辞任につ き、その補欠として雨森常夫君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     川村 松助君    理事            劔木 亨弘君            加賀山之雄君            荒木正三郎君            相馬 助治君    委員            雨森 常夫君            木村 守江君            田中 啓一君            中川 幸平君            吉田 萬次君            横川 信夫君            高橋 道男君            安部キミ子君            高田なほ子君            永井純一郎君            長谷部ひろ君            須藤 五郎君   政府委員    文部政務次官  福井  勇君    文部省大学学術    局長      稲田 清助君  事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君    常任委員会専門    員       工楽 英司君   ――――――――――――― 本日の会議に付した事件 ○国立学校設置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○教育、文化及び学術に関する調査の  件  (原子力問題に関する件)   ―――――――――――――
  2. 川村松助

    委員長川村松助君) 只今から文部委員会を開会いたします。  国立学校設置法の一部を改正する法律案について御質疑を願います。  ちよつと速記をとめて    午前十時三十七分速記中止    ―――――・―――――    午前十時五十一分速記開始
  3. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記を始めて。  国立学校設置法の一部を改正する法律案について御質疑のあるかたは御発言を願います。
  4. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 二、三の点についてお尋ねをしたいと思うのですが、その一つ国立学校職員定員を従来は法律できめておつたのを今度は政令できめる、こういうふうに改めることになつておりますが、先般来からいろいろその理由について説明を聞いておるのですが、法律で定めることがよくないという理由がよくわからない。この際一つ説明を願いたい。
  5. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 只今お尋ねの点でございますが、これは全く技術的な問題でございます。理由といたしまするところは、一つは最近政府部内におきまして法令整備或いは簡素化ということを考えております。その原因は御承知のように、占領軍がおりました場合に司令部の各部局ごとに非常に法律に関しまする考え方が異なつておりました。その指図を受けまして出しました法律体裁その他が大変区区であります。或る場合においては重複し、或る場合においては非常に錯雑いたしております。これを整理いたしますことが行政事務簡素化でもあり、又誤解を避ける点であるということで考えました点が一つ。その点から申しますると、御承知のように国立学校設置法昭和二十四年に制定せられまして、後に二十五年に至りまして、文部省設置法及び行政機関職員定員法が制定になりました。行政機関職員定員法は御承知のように各省庁その他国家機関定員をここに一まとめにいたしました法律でありまするので、行政機関職員定員法ができます際に、この国立学校設置法に掲げておりました定員規定を整理しようという考えが当時あつたのであります。併しな占領軍の意見といたしまして、その点の修正が許可になりませんので、そのまま今日に及んだような次第でございます。従つて政府部内の各機関定員をきめた行き方とこの部分が非常に違つておる、或る時期に当然整理いたしたい、こういう考え一つでございます。  それからもう一つは御承知のように、行政機関職員定員法只今国会で御審議を願つておりまするが、行政整理関係規定があるわけであります。即ち窮極行政整理をいたしました最終定員本則に掲げまして、それに至るまでの本年の定員、明年の定員というものを暫定定員の形式において附則に書いております。又国立学校設置法行政機関職員定員法ができましたときに改正をいたしまして、この法律定員規定行政機関職員定員法規定の範囲内において考慮する、或いは行政機関職員定員法に関して定める法律適用影響を及ぼすものでないというような特別の条項がありまするので、どうしてもこの法律定員行政機関職員定員法定員を中心といたしまして、それに合せて書かなければならないのであります。然るときは三年後の各学校別定員というものを今割振つて本則規定いたしまして、本年は暫定定員これこれ、明年は暫定定員これこれと学校別定員を三表書くわけであります。明年の定員につきましては大よそ減九百余、増五百余、差引三百余の減ということを各学校別に当りまして、学校機関状況欠員状況新規事業状況等と睨み合いまして、とにかく一つ学校別定員予算に集計せられたのでありますが、二年後、三年後の定員学校別にそのときの欠員状況とかその非常増減状況等を今から予測し得ないのに書きますことに非常に危険を感じましたので、そういうような技術的な点からいたしまして、行政機関職員定員法を御審議願うことでありますので、学校別のは政令にきめる、こういうことにいたしたのでありまして、全く技術的の問題であります。
  6. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 技術的な理由によるものであるというふうな説明でありますけれども法律で定めるということと、それから政令で定めるということとは私は技術的な問題ではないと思うのです。この国立学校職員定員をどのように確保するかということについては、やはり法律で定めたほうが遥かに安定性があると思うのです。従つてこれは決して技術的な問題として片付けることのできないゆえんがあるのじやないかというふうに考えるのです。それからもう一つ行政事務簡素化ということを考えておるということでありますが、これも私にはよくわからないのです。法律で定めておれば行政事務が非常に複雑になるという解釈になるわけです。そういうことはないと思います。法令で定めてあろうと、これを政令で定めようと、行政事務には何らの変化はないものと思うのですが、これはどういう意味簡素化になるのでしようか。
  7. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) お尋ねの第一点の安定性と申しまするか、変更ができにくいという点について、第一にお答え申上げたいと存じまするが、御承知のようにこの国立学校定員に関しまする予算はいわゆる積上げ予算でありまして、他の行政機関定員と同様に、国立学校三百三億の予算ができますときには、その内容といたしまして各学校別学部別学科別その他研究所別内部定員というものが積上げられて参つて、あの総額ができるのでありまして、申すまでもなく先般来この委員会で問題になつておりました建築費文部本省の費用に含まれております国立文教施設費のようにいわゆる全額がきまりまして、あとで配付いたしまする予算とは違うのでございます。これは国立学校特別会計でありました当時からそういうふうになつております。従いまして御審議願つておりまするこの予算閣議決定になり、国会に提出せられまするときに、各学校当事者も、或いは文部当局も、或いはその他一般世間のかたがたも、その予算によりまして個々大学定員が何人であるかということは今日公知の事実であります。これを法律案に移すわけでありまして、これを法律に移しましようと、或いは又政令に移しましようと、一般的に公知せられるという点におきましてはちつとも変りはないのであります。若し仮に文部省がその間に介在いたしまして、ここが或いは安定性という点でお話のことだと思いまするけれども予算に違いましたような定員配分を将来政令に書いたといたしましても、予算にない定員を附加いたしました学校は、それは空定員で使えませんし、予算にあります定員より少い定員法令で書きましても、余りましたその学校定員をほかの学校予算として使用することができない、全く無駄でございます。従つて予算通り規定を作りますということ以外には方法がない、従つてその意味におきましては、法律で書きましようと、政令で書きましようと、いわゆる安定性というか、不動性と申しましようか、その点は変りはないと思います。又国会の御審議権の問題もあろうかと思います。それは各省庁定員と同様に行政機関職員定員法のうち文部省部分がございまするし、又国立学校部分がございまして、年々の御改正の点には、ほかの行政機関の場合と同様に年々の予算に関連いたしまする増減定員の詳細な表を付けて御審議願つております一面、予算も御審議願うことであり、行政機関職員定員法も詳細御検討願うことであり、その点は十分御審議頂けるものだと考えております。又従来といえども学校の総定員法律規定いたしまするが、教授が何人、助教授が何人、雇員が何人というのは、これは予算をそのまま省令で移します。これはやはり予算通り規定するほかないのであります。これにつきまして従来学校において別段の争いも紛更もない。  次に行政簡素化と申しました点は、むしろ私法令簡素化と申しました点に一つ重点をおいて御了承頂きたいのでございますが、同じ原因で一人殖やしまする場合、二つ法律を同時に改正提案をしなければならんというようなことは避けたほうがよろしいと思いまするし、政府部内の各行政機関定員行政機関職員定員法で集大成をいたして、又各省別政令省令でその細分を書いておりまする。その法体系を立てますことが、やはり我々としてはこの場合考える必要があるのじやないか、そういう意味で申上げたわけでございます。
  8. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではちつと向きを変えてお尋ねをいたしますが、国立学校ごと職員定員法令で定めて来たわけでありますが、非常に不都合な点があつたのかどうか、非常に困つた点があつたのかどうか、そういう点を一つ
  9. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 先ほど申上げましたように、行政機関職員定員法が年々その翌年度定員を従来規定して参りましたから、従来その点において不都合はなかつたわけであります。又国会におきまして一方が別の御修正を受けたというようなこともないし、そのまま従来は不都合はなく参りました。ただこのたびは如何にも三年先の定員学校別に割る点につきまして、困難を感じた次第でございます。
  10. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この三年先の学校別定員というのは、そういうのをきめる必要があるのですか。
  11. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 国立学校設置法附則第九項でありますが「第九条の規定は、別に政府職員定員に関して定める法律適用影響を及ぼすものではない。」つまり行政機関職員定員法が優先するという意味趣旨行政機関職員定員法ができましたときに挿入しましたわけであります。従つて行政機関職員定員法行政整理窮極定員本則に置き、それに至るまでの年次定員暫定定員と書くといたしますれば、その間誤解を生じましたり、或いは適用の不能を生じたりするようなことがないためには、やはりこの国立学校設置法定員規定も三表作りまして、三年先を本則として明年度明後年度附則にいたす、これ以外に技術的の方法はないと考えております。
  12. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ここで大学等国立学校職員定員行政機関職員定員法で制定するということですが、私は他の行政官庁とそれから文部関係との間に相違があるのは、やはり教育関係行政機関職員という範疇で一律に縛つてしまうということは不都合がある、こういう点から従来分けられておつたんじやないかと思うのです。私は教育関係職員は必ずしも行政機関職員として性質は同じでないと思うのです。ですから、これをこの法律一本にまとめ上げるということは却つて不都合が起きるんじやないかというふうな感じを持つているのですが。
  13. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 行政機関職員定員法ができましたと同時に、或いはその後におきまして国立学校設置法ができて、各学校別定員が設けられたとすれば、お話のようなことが推察せられるのでありまするけれども、先ほど申上げましたように国立学校設置法のほうが先に出まして、その当時のことも私どもも記憶いたしておりまするが、行政機関職員定員法が集大成するときに、廃止しないか、合せないかという点で司令部との関係において随分トラブルがあつて今日に至つた、その順序が逆でございまするので、お話とは違つたども解釈をいたす次第でございます。又大学自体がほかの行政機関と違いまする点は、むしろこれは予算を如何に要求して如何に決定するかという行き方のほうに問題があるので、或いはほかの行政機関中央官庁において予算を提出いたしましてそれで決定する、支部局までそれで決定するということが仮にありましても、学校のほうは御承知のように学校から予算を提出せられまして、文部省大蔵省と折衝して折衝の経過を一々学校に知らせる、つまり大学の自治というような点をこの点においても実際問題として尊重しておる、その扱いの違う点で私どもといたしましては実際只今お話の目的は達成しているように考えております。
  14. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の言つているのは、文部省本省に勤務している職員と、それから大学等学校に勤務している職員定員を一本にまとめる必要はない、こう言つているのです。なぜ一本にまとめる必要がありますか。
  15. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) その点は行政機関職員定員法それ自体において区分いたしております。文部省六万幾ら、そのうち国立学校職員幾ら、その法自体で区別いたしております。
  16. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それから定員の問題について、いずれにしても安定性においては変りがない、こういう御説明であつた。その説明としては国立学校ごと定員決定して、その総計を行政機関職員定員法規定するのだ、だからそこに不都合はない、こういう説明であつたのですが、そういうふうにして定員決定されるのであれば、個々国立学校職員定員法律規定しておいても何ら差支えがないと思うのですが、なぜはずさなければならないのか。
  17. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 本年まではそれで規定して参りました。先ほど来申上げますように三年先の定員を各学校別規定いたしまするということは、三年先の予算がない以上私ども申上げておりまするようにこの定員予算をそのまま移す定員でございまするから、今空でその定員を書きますわけでございまして、それこそ、文部省の非常な恣意が入ることで私どもはむしろ遠慮しなければならない問題だと考えました次第でございます。
  18. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 どうも三年先というのが僕にはよくわからないのだが、もう少し三年先というのを。
  19. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 行政整理方針といたしまして、国立学校につきましては二千二百六十六人を総定員から落しております。これを三年間に、明年度は四割、次の年は三割、その次の年は三割、こういうふうに各年次別にわけております。従いまして明年度におきましては二千二百六十六人のうち九百何名でありますか落すだけであります。それと五百何名の増と差引き三百何名の減というものを、今御審議頂いている予算に計上しているような次第であつて、大よそ三年先のいわゆる三割、二千二百六十六人の三割のトータルは、これはわかります。ですから行政機関職員定員法には本則にその数字を書いております。併しそれを各学校別に分けます場合におきましては三年先の各学校欠員状況とか、そこに至りまするところの新規事業学年進行状況、その年における新規事業状況、或いはその他各般のことを見合いませんと、これは書くことは危険だと感じるわけであります。
  20. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 その、三年先のことまでを、今年は法律でそういうことを決定することになつておりますか。
  21. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 只今審議願つております行政機関職員定員法はそういう体裁になつております。
  22. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それを、もう少し説明して頂きたい、詳しく。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 よく説明して下さい、私もわからない。
  24. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 なぜかというと、少くとも来年、再来年のことは予算決定していないので、そういうことを法律規定するはずは僕はないと思います。少くとも本年度分定員についてはこれは予算審議と並行して決定されると思う、併し予算の裏付けのない来年、再来年度定員をがつちりと法律できめてしまうということは僕はないと思います。
  25. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 只今行政整理一定率を各機関職別に応じまして掛ける方針をとつてつております。従いましてそういう職員のうち、この七万でありましたか、御説明いたしておりますような総数が出ておるわけであります。で、普通の行政機関はそれを一年で整理するわけであります。或いは場合によりまして二十九年三十年という二年に亙つておりますけれども学校におきましてはまあ特別に配慮いたしまして、三年の期間に亙つて徐々に整理するという方針を立てられたわけであります。即ち現在に対しまする一定率を掛けました一千二百六十六人という数字のほうが先に出て参りまして、それを一ぺんに整理することが困難だからということで三年に延引したわけであります。従いましてどう延引したかと申しますると、二千二百六十六人のうち四割を二十九年度で整理して、三割を三十年、三割を二十一年、まあこういうふうに整理することにいたしたわけであります。従つて二千二百六十六人という整理到達目標と言いますか、最終減員定員というものをもとといたしまして、各年度別減員総数が計算せられましたので、それを法律に出したような次第であります。
  26. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではこれを政令に書くというただ一つ理由は今説明せられた点にある、こう解釈していいですか。
  27. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 二つ理由でございます。この一つ法令整備という問題、一つは現実何故にそれを今年急がなければならんかと言えば、まあ技術的の今の理由、この二つ理由でございます。
  28. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、今の問題は私はそれは行政整理の見込みであると思うのですよ。それで来年度になれば必らずしもそうなるかならないかはわからない問題です。特に来年度においては学部の新設とか、或いはいろいろこの提案の中にあるように短期大学設置とかいろいろな問題が、出てきて、新たに定員を増加しなければならん問題が出て来るかもしれない。行政整理としては一応のそういう目安は立つているけれども、来年度においては定員がそれに限定されていることは私はないと思います。だからそういうことのためにこの政令にしておかなければならんというのは、私は理由は薄弱であると思います。それから、もう一つ法令整備だと言いますが、文部省関係は六万人或いは七万人近くも定員があるわけなんですよ。他の省については非常に少ない定員しか擁しておらない。これは一本にしても大して差支えないと思われる面もあります。併し教育関係を包含した非常に厖大定員を持つている文部省は、別にこれを総枠で一本にまとめ上げる、こういう必要は私はないと思います。各国立学校ごとにあつて何ら法令整備されておらない、そういうことはないと私は思うんですよ。ですからその点どうも説明を聞いておるのですが、よくわからない。まあ実質的な改正の狙いはいわゆる三年先の計画まで法令で、この法律で立てることができない、こういうことのようでありますが、そういうことは私は必要ないものと思います。どうも説明がよくわからない。
  29. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 今の法体系から申しますると、同じことを繰返して恐縮でありますけれども行政機関職員定員法ができましたときに、行政機関職員定員法国立学校定員に優先するという趣旨でお互いの連絡をつけたわけです。従いまして行政機関職員定員法既定方針と申しまするか、体裁に合せません規定をここに規定いたしました場合には非常に誤解を生じ、或いは紛争を生ずる、これは合わせざるを得ないのであります。その場合に、只今荒木委員のお言葉の通りでありますが、二年先三年先には新規事業もございましようし又欠員等状況もございましよう。各学校別に割り振りまして今窮屈な枠をはめましても、又予算関係でそれは直さなければならん。各学校は今そこまで御心配になつていろいろ人事計画を立てられる必要はないと思います。差当り明年度定員を明らかにすれば各学校としてはよろしい。ただ国家全体の方針なり全体の行政整理という点から見まして一つ目標として国立学校職員につきましては二千二百六十六人という一定率を整理するという方針国会で今年御審議願う。これは別にそれ自身としては差支えないのじやないかと思います。ただそれに合わせまして細別を今日やるというような点につきましては差控えたほうが賢明ではないか、こう思つた次第でございます。
  30. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは国立大学職員定員をどうきめるかということは、これは各大学にとつて重要な問題であると思うのです。これは丁度各大学に振当てられる予算と同様に大学運営上重要な問題であると思うのですが、これらの定員決定ですね、決定はどのようにして従来なされて来ておるのですか。
  31. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 国立学校運営費に計上せられております経費、必ずしも定員ばかりではございませんけれども、これは既定予算の上に各国立大学新規事業を出して参ります。又ものによりましては学制制度の変革によつてなくなる部分もございます。その学校予算文部省を通じて大蔵省説明いたします。多くの場合学校自身大蔵省に行つて説明いたします。二次三次の査定の経過は各学校に一々通知いたしまして、各学校責任者と相談しながら復活要求をいたしまして、窮極予算に到達するわけであります。従いまして予算閣議決定せられます際におきましては、恐らく各学校はそれぞれ教員会なり教授会を開いて、明年度の新規定員幾ら決定したということは学内にも御披露になつておると思います。事務局長或いは学長当該責任者閣議決定の前、大蔵省最終決定の際に我々と同時に知るわけであります。さような経過を以て決定いたしております。
  32. 須藤五郎

    須藤五郎君 今荒木委員から、各大学定員予算の問題を出されましたが、私たちの資料の中には各大学大学別の本年度予算要求というものが出ていないのです。ですから昨年度の各大学予算表とそれから今年度のと合せて私は出して頂きたいと思う。そうして審議をいたしたいと思います。
  33. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 各学校別定員は差上げてあるはずでございます。
  34. 須藤五郎

    須藤五郎君 定員ではありません、予算です。
  35. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 国立学校設置法に関しまする予算を抜き出した分はやはりお手許に相当詳細に差上げてあるはずでございます。全体の予算につきましては、まあ予算参照書のほうで一つ御利用願えませんでしようか。
  36. 須藤五郎

    須藤五郎君 私が要求したのは各大学別の昨年度予算と、本年度予算とを対照した表が実は欲しいのですが、その表を頂いておりますか。
  37. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 各大学別予算対照表というものは差上げてございませんけれども、これは非常に厖大なものになります。若しトータル対照ぐらいなら調整できますけれども、これは予算参照書のうち十数頁を費やしておる全部が学校でございますから、それで一つ御覧頂くよりほかにないのじやないかと思います。
  38. 須藤五郎

    須藤五郎君 そんな詳しいものではなくて、北海道大学が昨年の予算幾ら、それから東京大学幾ら、それで今年度幾ら……。要するに昨年度と今年度との予算増減対照してみたい。それと定員増減対照して審議したいと思うんです。
  39. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 学校別予算対照表を調整いたします。
  40. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは定員の問題について、三カ年間に二千六百人ですか。
  41. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 二千六百六十六人でございます。
  42. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは何ですか、何%に当つているのですか総人員の。
  43. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 三・六七二%でございます。
  44. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この整理はどういう基準で行われているのですか。
  45. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) この国立学校の整理につきましては、一応その整理はいたしません職種といたしまして、教授、或いは事務局長、課長その他部局長、一人一職的なもの、これは整理の対象外におきまして、それ以外の教官つまり助教授以下の教官につきましては、二%整理することにいたしました。それから現業職員につきましては四%の整理、それからその他の職員は八%といたしました。これをそれぞれの職種につきましてこの率を掛けたわけであります。そういたしますると、総定員六万一千七百三人に対しまして、総計二千二百六十六人の整理ということが出て参りました。それに対しまして四〇%、三〇%というものを三年間に割るという計算をいたしますると、最初の年が九百三人の整理、次の年が六百八十二人の整理、その次の年が六百八十一人の整理、まあこういう数を得たわけでございます。
  46. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、この前私が申上げた学術会議の要請の中には、大学のスタッフ充実を図るために、特に助手の増員を図ることという要望があるのですね。そういう要望があるのになお助教授以下二%の整理を図るということは一体どういうことなんですか。
  47. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 増は増といたしまして計算いたしております。大学院におきましては四カ年の学制施行に伴いまして昨年百人増員いたしました。本年は七十八人増員いたしております。従いまして国立学校において増員が五百六十九人でございます。一般の率を掛けての行政整理が明年九百三人、別に増員が五百六十九人、従いまして差引三百三十四人の減が明年度の減でございます。
  48. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで私は根本的な考え方として、この学校職員行政整理するという場合に、こういうふうに一定の率を以て整理する、こういう考え方は間違つておると思うのです。今挙げられたように、二%とか四%とか八%というふうな率を以て、それによつて整理を強行して行く、こういうことはこれは教育の実際から見て私は他の官庁職員とは同様に考えられないと思う。なぜこういうような整理が行われておるのですか。それは私は今度のこの法改正とも非常に関連があると思つて大学ごとに定員法律できめてあつても、なお且つ教授の場合は省いておりますがね、なお且つ助教授以下については、こういう一定の率を以て整理しているわけなんです。若し政令になればこういうことが易々とできるのじやないかという気持を持つているから特にお尋ねするのですが、少くとも教育機関については、こういう一定の率を以て整理すべきじやないと思うのですがね。
  49. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) その御質問の第二段のほうから先に申上げたいと思いますが、政令になると易々こういうことができるのじやないかという点につきましては、先ほど来申上げておりますように、これがそのまま予算決定しております。予算決定しておりまする以上に政令で減らしましても、その部分予算はほかにも使えませんし、これは無駄でそういうことはいたしません。又学校と睨み合わせまして予算決定しております以上の定員を、若し法律或いは政令で割振りましても、それは空定員で使えませんし、そういうことは、私どもといたしましていたしたいと考えましてもできない点であります。それから第一段の点は、学校行政機構の点について非常に同情あるお話であつて、私どもといたしましても十分その同じような気持でこれに対処して参つて来ておるのでございます。決して学校教育職員定員が十分ではない状況におきまして整理するということは非常に苦痛でございますけれども、まあ全般の政府の行財政整理の方針というものの適用を受けましたわけで、まあせめて御覧の通り、或るものは適用除外し、或るものは非常に軽減いたしました。パーセンテージで整理をするという点で御了承頂きたいというような次第でございます。ただかたがた一面教官につきましては大よそ千九百人程度の欠員等もございまして、直ちにこの整理減員によりまして教授研究に支障を生ずるというようなこともなかろうかと考えております。
  50. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私ばかり質問の時間をとるということもどうかと思いますので、あと二つほど一緒に尋ねて説明だけを求めます。その一つ欠員の話も出ましたが、私は大学に相当欠員があるということは当然のことだと思うのです。これは大学の教員というものはそう簡単に得られるものじやないと思うのです。当然欠員というものはあるのが然るべきだ、これは文部省もしばしば説明しておる通りです。そこで欠員の分の予算ですね、これは如何ように使用されていますか。
  51. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 俸給費は他に流用できません。今度の補正予算におきましては俸給費の残中一億を計上しておるというようなことでありまして、欠員欠員として年々そのまま使用残として予算に組みます。
  52. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これはどうしてもほかのほうに使うということはできない性質のものですか。
  53. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 補正予算を組みます以外にはほかには使えないのであります。
  54. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、これらの予算はみすみす流してしまつておるわけですか。
  55. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 申さばその通りでございます。
  56. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それと私は関連して、教官の研究費ですね、講座研究費等の問題についてお尋ねしておきたいのですが、この講座研究費と教官研究費との間に非常な差違があもというのはどういう理由なのか。
  57. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 講座研究費を支出しておりまするのは、すべてこれはいわゆる大学院、大学大学院を置きまする各部の講座でございまして、ここでは研究生もございまするし、特別のその研究、教授の費用が多うございます。そういう次第で差等を設けているのが適当だと考えるわけであります。
  58. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでですね、大体私がちよつと見たところでは二対一ぐらいの比率になつておると思うのですね。で、従来は一対一・五ぐらいの比率でなかつたかと思うのですがね、それが一対二の比率にその差が拡大された理由ですね、そういう点。
  59. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 一昨年でありまするか、この講座研究費を倍額にいたしたのでございます。で、その場合に多少この一般の大学の教官研究費も上げましたけれども、まだその差がその通りになつております。私どもといたしましては講座研究費それ自身も或いは教官研究費それ自身も十分とは思つておりません。ただまだ倍にいたしましてから年所も経過していないので、講座研究費の予算を増額するということに非常に困難を感じまして、まだ実現しておりませんけれども、成るべく争い機会に教官研究費のほうも又増額したいと考えております。
  60. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは私は一定の予算の中で割振りが適当でないとかあるとか言つているのではありません。ただまあ講座研究費は大体旧制大学が多いと思うのです。それから教官研究費は新制大学の面になると思うのですが、まあ今日新制大学の充実ということはやはり相当重要な問題ではないかと思うのです。そういう意味において、この問題はこれは枠内で操作するということでは解決できないと思います。そういうことをすればこれは講座研究費を削つて教官研究費に廻すということが行われなければならない。それでは私は工合が悪いと思う。どうしてもここにこの講座研究費とか教官研究費を増額しなければならんと思うんですよ。これについても学術会議から具体的に要望が出ております。で、その要望は御承知通り非実験において五十万円、準実験において七十五万円、実験において百四十五万円、特別実験において百七十三万円、この程度に増額してもらいたい、こういう要望が出ているわけですね。この要望と文部省のこの予算とは余りにも僕は離れておると思うのですが、外国における事例なども引いて、この点なぜこういわゆる科学的研究とか又科学研究だけでありませんが、こういう研究の重要性が強調されている段階において、こういう要望がまあ殆んどこの予算には現われておらないのですね。
  61. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 講座研究費と学生経費或いは旅費、光熱、水道費或いは本省費に組んでおりまする科学研究費、これはやはり一つの研究という点について相関連して使用せられるのであります。で、学術会議あたりは講座研究費というものに中心を置いてのお話でございまするけれども、この趣旨を達成いたしまする場合におきましては、やはりこれは込みにして経理せられておりまする講座研究費以外の周辺の中化経費或いは旅費等も上げなければならない。先ほど申上げましたように一昨年は講座研究費を倍にいたしました。次の年は学位経費とか教官旅費とか或いはその他光熱水道とかそういう点を増額することによりまして、講座研究費が成るべく研究それ自身にのみ集中して使用せられるように、その周辺の費用を増したわけであります。明年度の予寡要求におきましては実験、非実験或いは臨床というような区分以外に医学、歯学、化学というように特別に金のかかりますものにつきましては特別実験或いは非実験と実験の間に準実験を設けるとか講座研究費の配分の区分を改善することによつて一段の改善をしようと思つて要求いたしました。ただまあ国立学校総額は三十億程度殖えましたけれども、その分が増額しないことを大変遺憾に感じております。
  62. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは諸外国の大学の研究費などと比較してどういう水準にあるのですか。
  63. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 只今申しましたように経費の区分が非常に異なりますので、その中で標準的なものを取り出すことは非常に困難でございますけれども、勿論今日の状況といたしまして欧州或いはアメリカあたりの或いは二分の一、或いは三分の二ぐらいな、これはものにもよりますけれども、そういうふうに私どもは聞いております。ただここで申上げることは、的確な対比の材料を持ち合せていないことを申訳なく考えております。
  64. 安部キミ子

    安部キミ子君 ちよつと関連質問でありますが、昨日ですね、衆議院の厚生委員会で今日問題になつているビキニ被災者につきましての都築博士の研究費の問題が話題になりましたときに、都築博士は年間に百八十万円しか研究費がないと、これでは今日のような重大な責任は全うすることはできないという発言があつたということを聞いておりますが、事実はそうでございますか。
  65. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 何分にも年度末で起りましたことでありまして、各学校のそれ自身の費用も使い切つております。又科学研究費のほうもすでに配分済みでございます。併し科学研究費は只今審議願つております予算が通過いたしますれば、成るべく早い機会に配分委員会にかけたいと思います。従つて明年度の科学研究費で相当この目的は達成し得るのじやないか、又各学校の経費も使えることになるだろうと考えております。
  66. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは明年度は何ぼくらいの予算考えていらつしやいましようか。
  67. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) これは申請によるわけでありまして、昨日も関係教授と伺つておりますけれども、御要求を見まして考慮いたしたいと思います。
  68. 安部キミ子

    安部キミ子君 先日それとちよつと何ですが、研究費の単価の問題でございますが、先日教授のかたで年七万円、それから理科系統のかたで二十万円というお話でございましたね。
  69. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) はあ。
  70. 安部キミ子

    安部キミ子君 そのことにつきまして、事実名古屋大学の先生のお話を伺いましたところが、そのように、あなたのおつしやるほど費用が来ていないということを聞いておりますが、それに聞違いないでございましようか。
  71. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 名古屋大学のほうは講座組織でございますから、この講座研究費、これが講座へ参りますから、その講座を組織する個々教授幾ら行くかということは大学でお分けになるわけであります。ただ常に講座研究費はこれだけが教室に行くかどうかという問題につきましては、研究に附随いたします光熱、水道費、これは非常に大きいのでございます。或いは電話料金とか或いは共通の用人の費用であるとか管理的な費用から支出せられます。まあそういうようなわけで、本部でまとめて光熱、水道、或いは電話料その他の費用を払います分が多いものでございますから、従いましてその教授がたにこれだけ御自由にお使い下さいという費用はこれより少くなるのが普通だと思います。
  72. 安部キミ子

    安部キミ子君 今日のこの原子病研究につきましては、臨時の措置がとられておるでしようか。
  73. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 只今のお答えのように、予算といたしましては、今御審議頂いております明年度予算がきまりますれば、成るべく早く科学研究費の配分を考慮いたしたいと思つております。
  74. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 僕のほうは質問がまだ少し残つているのですが。
  75. 須藤五郎

    須藤五郎君 今のに関運して。
  76. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 では結構です。
  77. 須藤五郎

    須藤五郎君 今の講座の費用が講座のほうにうまく廻つていないというような話ですが、昨年度予算で見ますと相当ほかに流用されているように思うのです。而もその流用が事務諸費のほうに流用されているように思えるのですが、そういうことは正しいことですかどうですか。
  78. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 国立学校運営費のほうは講座研究費、学生経費等で成り立つておりまして、これは予算算定の基準でございますから、別に流用ではなく、彼此総合いたしまして使うわけでございます。ただ私どもといたしましては成るべくこの算定基準通りに運用いたしたい、でないと将来増額したり或いは大学の財政計画考えます場合に非常に困難でありますので、成るべくそういたしたいという意味におきまして、講座研究費以外の、例えば学生経費を多くするとか、或いは教官旅費を多くするということで講座研究費は成るべく講座の末端に入れたい、できれば光熱、水道費というものも大きく取分けて、これが純粋の研究に振向けられるように年々少しずつ苦心をいたしております。ただもつと根本的にはこの前相馬委員にもお答えいたしましたように、大学財政の実態調査をいたしておりまするから、その実態に即して今度は組んで参りたい。そうした場合には或いはこうした講座研究費という名目がいけなければ別に考えまして、研究所の実際に応じた予算の組み方に成るべく早くいたしたいと思つております。
  79. 須藤五郎

    須藤五郎君 余りに流用が大き過ぎて折角の講座のほうに金が廻つていないということが現実だと思います。これは文部省として看過すべきことじやないと私は思うのですが、それが平気な状態で文部省は擬装しているわけですね、この問題に対して。
  80. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 決して妙なところへは廻つていないのであります。研究に必要な電気料、ガス代、或いは石炭代或い水道料、この辺に本部止置費用として出るのが非常に多いのでございます。いろいろ私どもの実態調査が或る程度進んでおりますので見ております。いずれもやりそれは研究に必要な面である。ただ一面そういう感じを持たれます。将来光熱、水道なら光熱、水道でこれから取分けてしまう、或いはそのほか学生経費その他も純粋に分けてしまうというようなことがいいのじやないかと思います。
  81. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちは詳しく内容がわからない、流用の内容が、どこへその金が使われておるかということがわからないので、若しもすぐ出せるならば昨年度の流用がどういうふうな点に流用されたかという点を私は資料として出してもらいたい。
  82. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) これこそ学校に任せておりする費用の運営の問題でございますので、私どもが実態調査というような特殊の意味におきまして或る学校を調べる場合にはわかります、けれども、こういう点は文部省におきまして中央集権的に報告を受けておる点でないので、今御質問にありますような資料を持合せてないのでございます。
  83. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちの聞くところによりますと、あなたの言つたような、そういう方面だけではなしに、事務所の事務員が出張したり何かする、そういう方面にまでそういう費用が流用されておるというようなことを聞きますので、そういうことがあつては非常に問題だと思います。ですからそういうことに関して私たちはもつと詳しく知る資料を提出してもらいたい。そういうふうに考えるわけです。
  84. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) ちよつと今の本年度明年度予算で頂いております大学財政の実態調査、これは進行に従いましてそういう点につきましては十分御検討頂きたいと思つております。ただ只今直ちにという程度にまだ進行しておりませんので、その点は御了承頂きたいと思います。
  85. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一つ関連して定員の問題ですが、今年の定員と去年の定員を比較して見ますと今年は大分減つておわけですが、而も非常にたくさん減つたところとたくさん殖えたところとあるわけなんです。殖えたところを言うと北海道大学、北海道学芸大学が二十三人、それから岐阜大学が二十八人、神戸商船大学が二十五人、広島大学が三十四人、愛知大学が四十八人。減つたところを見ますと東北大学が五十一人、金沢大学が二十三名、京都大学が三十二名、大阪大学が三十八名、九州大学が三十名、こういうふうな減り方をしております。この増減に対しまして私たちは何によつてこういう増減がなされたかという資料がないわけです。それを説明して頂きたい。
  86. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 只今お話の北海道学芸大学は、毎年教員の養成という意味におきまして二年課程の定員増をいたしております。従つてそれに関連いたしまする教官の毎年増と二年課程でございますから学年進行の増が多いのであります。  次に岐阜大学、広島大学につきましてはこれは県立大学学部として合併いたしました年次進行でございます。  そのほか御指摘になりました増の多いのは学年進行によりまする年次進行の関係でございます。  各大学の減は先ほど申上げましたような率を以ちまして二%、四%、八%一律に減員いたしております。
  87. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 研究費の問題に関連して今須藤君からも研究費が旅費に流用されているのじやないかというお話があつたのですが、これも私はそういうことを聞いておるわけなんです。これを私はここで咎めるという意味で質問するのじやないのです。それは余りにも研究出張費が少な過ぎる、この資料で見ても教授で年一万三千円余り、それから科目別の大学では九千円しかないのです。助手になると三千四百円と七千八百円、これでは研究出張はできないと思うのです。余りに研究出張費が少いためにどうしても大切な研究費がそのために食われるというふうなことが起つておるのじやないかと思うのですが、そういう点どうですか。
  88. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 昨年の当初予算におきましては研究出張旅費を多少増額いたしました。夏の国会におきまして修正減のほうが多い関係でそれから減つてしまつておるのであります。明年度予算におきましてもまだ増には至らないのを大変遺憾に考えております。
  89. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は文部省に頂いた資料で数字を挙げておるのですが、これでは問題にならない。今日小学校の教官は大体私はまちまちだからよくわかりませんが、五、六千円はもらつておるということです。大学教授とか助教授とか、こういう人たちの出張といえば、かなり遠距離になると思います。そういうのは非常に少い。これが研究費を食うと言いますか流用するということになると思います。この点はもう少し考え直す必要があるのではないかということ。
  90. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 只今申しましたように国会において修正減になりました費目につきまして、ちよつと増額要求すをことが困難な状況であるわけでございます。
  91. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それからもう一つは、大学の事務官が教授の給与を食つておるのではないか、そういうことはありませんか。
  92. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 教官の俸給につきまして教授の俸給が余る場合に助教授のほうにその俸給を充当する、縦の関係でございます。事務官とは区分が別でございますから事務官が食うということはございません。
  93. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで今、主として講座研究費或いは単なる研究費、出張費の問題についてお尋ねしたのですが、この間から私二、三あつたところでは、研究費が少いために内職というか、そういうことによつて研究費を補つておる。こういう事例があるということを聞いておるのですが、そういう事例は私はあると思うのです。やはりこの際こういう研究費、講座研究費等の予算の増額、これは是非実現してもらいたい、こういうことを要望して一応私質問打切ります。
  94. 木村守江

    ○木村守江君 ちよつと稲田局長国立学校設置法の一部を改正する法律案に関連いたしましてお伺いいたしたいと思うのですが、一体今日の全国の大学がこのままで大学教育に支障がないと考えておるのですか、現在の状態で。
  95. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) まあすべて満足ということはなかなかむずかしいのでございますけれども学術であるとか教育というような点につきましては実際これはもう日進月歩の状況でございまするし、又現在の教育研究機関が戦災を受け、或いは戦時中の異常な間隙がございましたあとでございますので、決して私ども今日の状況を以て十分とは考えておりません。ただ設置以来まあ皆様方の御支援によりまして相当長足に充実進歩して参つた点はこれは事実だろうと考えております。
  96. 木村守江

    ○木村守江君 只今お話よくわかるんですがね。ただ非常に設置後内容、講座その他すべての点において充実したというんですが、一体各大学の設備、研究費等はどういうふうな按排になつておりますか。これは今ちよつと直ぐには……。
  97. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 先般御要求によりまして国立大学予算定の基礎という資料をお手許に差上げてあります。各講座研究費、実験費その他臨床或いは教官の研究旅費その他一つ御覧頂けると有難いと思います。
  98. 木村守江

    ○木村守江君 あのいろいろな資料を見まして、諸予算の概要を見まして、今日のような文部省予算を以てしては大学のいわゆる学校差がだんだん増大して行くような傾向を認めると思うのですが、その調和をどうやつて行こうと……。
  99. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 丁度大学院の設置が昨年でございまして、大学院の学年進中途次でございますので、自然大学院を置きまする大学に諸種の力点、設備費にいたしましても建築にいたしましても或いは定員増につきましてもまあ顕著でございます。私どもといたしましては勿論これ以外の大学のほうもいたしたいと思つておりまするけれども、まあ一定の財政の限度におきましては一方のほうは学年進行中はとにかくこれをやり通さなければならないような関係がございまするので、まあその点は一つ御了承頂きたいと思います。
  100. 木村守江

    ○木村守江君 観点の相違だと思うのですが、勿論大学院を設置する学校大学院の施設充実を図らなければできないと思うのですが、やつぱり大学大学としての形態を備えて行くようにすることが国立大学としての一番大事な仕事じやないかと思うのです。
  101. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 例えば図書費でありまするとか或いは設備費でありまするとか、こういう点につきましては他の新らしい大学に非常に今欠けるところがありまするので、そういう点につきましては主としてそういう点に充当いたしております。
  102. 木村守江

    ○木村守江君 局長のほうでは大体今の大学が決して満足とは言わないが大学としての体裁を保つて行けるというような状態ですが、我々静かに考えてみまするに、今の大学は旧制の高等学校にちよつと毛の生えたというような状態の大学が相当あるのじやないか、それでいてなおそういうやつはないと考えますか、それともそれでも大学教育に差支えないと考えられますか。
  103. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 先ほど当初申上げましたように、決して十分とは考えないのでございます。殊に学術研究というような面につきましては、もう望みも非常に高い問題でございまするので、決して現状を以て満足だとか十分だとかいう点からは距離は非常にあることだと思つております。
  104. 木村守江

    ○木村守江君 そうすると実際においては現在のこの文部省予算を以てしては大学として大学にふさわしいような教育ができ得ない、大体において旧制高等学校に毛の生えたような状態のものがあるということをお認めになりますか。
  105. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 国立学校運営費も三年前百四十億が三百三億、まあここで三年間くらいに倍額くらいになつておるようなわけでございます。年々二、三十億ずつ増加して頂いておりますが、まあ暫く年所を経過いたしますれば、内容も設備も又教官組織もこの四、五年で随分転換して参りましたから、私ども将来充実の希望は決して捨てないのでございまして、ただお言葉通り現状は満足すべき状況かと言われれば、満足からは相当遠いと、まあこういう状況でございます。
  106. 木村守江

    ○木村守江君 どうもこの問題はこれ以上論議してもなかなか結論に達しませんので、お互い考えの違いがあるので……。  次に学校教育法の一部を改正する法律案についてですがちよつとお伺いしたい。この法律は……。
  107. 川村松助

    委員長川村松助君) 木村君、今国立学校のことを質疑しているのですがな。
  108. 木村守江

    ○木村守江君 三つでないの。
  109. 川村松助

    委員長川村松助君) そうじやない。
  110. 木村守江

    ○木村守江君 あ、そうか。それではあとにします。
  111. 川村松助

    委員長川村松助君) 福井政務次官が見えましたが、国立学校関係質疑はこの程度にして、政務次官の質疑をなさいますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   ―――――――――――――
  112. 須藤五郎

    須藤五郎君 高田さんが今お留守中で、この前の私の要求いたしました説明ですね、去年のニユーヨークの原子講習会の内容を報告して頂いたら便利と思いますが。
  113. 川村松助

    委員長川村松助君) その前に荒木君から質問の通告がありますから。
  114. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は新聞紙を通じて二、三のことをお尋ねしたいと思いますが、今度のビキニ環礁における水爆の実験の際邦人漁夫が被害を受けたそのことについて、日本の学者によつて被害の状況及びこれが治療についていろいろ研究がなされておるわけなんですが、この問題をめぐつて日本側では十分日本側だけで調査ができると、こういう見解を発表しておられるようであります。これに対して外務省あたりから日米合同でやつてもらいたいとか、いろいろ支障があるように聞いておるのですが、そういう経緯について、まず御説明を願いたいと思います。
  115. 福井勇

    政府委員(福井勇君) お尋ねの問題につきましては、文部省の所管の面といたしましては大学の研究といたしまして当然これをつつ込んで行かなきやならん問題といたしまして、現在のところ東大の中泉教授それから都築教授それから木村健二郎教授等を現地に派遣し或いは又資料を東大の研究室に持ち込んでこれが検討を続けておる今最中でございます。御存じの通り厚生省においてもこれが所管が大きい分野がございまするので、厚生省とも協力してやつておるのでございます。只今のところこの現地においてかぶりました灰は船体に附いたもの、それから漁師の体に附いたもの、それから漁師が呼吸したもの、この三つの点から検討しなければならんというので、その分析をずつと続けておりましたのでございますが、その内容、元素というものもほぼ見通しがつきかけて来ておるようであります。ところがその治療の対策でございます。    〔委員長退席、理事劔木享弘君委員長席に着く〕 原爆の治療法といたしましては非常にまだ心配がございまして、アメリカ等にもそういう十分な効力があるというような薬がなさそうでございます。そして現在の過程といたしましては、先ずこれを普通の病症の実験に行われると同様に、動物試験でこの放射能がどういうふうに現われて来るかということで、動物にこれを注入してその組織体のうちに食い込んで行く方法を今すでに着手しておるのであります。従つて従来のわかり切つた病気に対してすぐ処置をする、薬を盛るというようなことに対して、時間的には非常にまあ遅れるということが残念な点でございます。只今までに私が入手いたしました点では以上の通りでございますが、極力この面につきましては科学研究費という方面からも、研究費の面から文部省のほうから出せるものは費用としても出し、十分な処置をしたい、試験研究をしたいと督励しておる最中でございます。
  116. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 特に新聞に報道されている面でお伺いしたいのは、東大の総合調査団の代表が外務省を訪問して、中川アジア局長を通じて、日本側としては飽くまで自主的に研究を進めて行きたい、外務省からアメリカ側にも伝えて欲しい、こういうことを言つておられるのですね。ということは、この自主的な研究が阻まれるような問題が起つているんじやないかということをお尋ねしたいのです。
  117. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 只今私のところに入つた資料だけでは、まだ阻まれておるというようなことを耳にしておりませんが、このようなお尋ねがございましたし、直ちに一つ外務省のほうへ連絡をとつて、その真相がわかればお知らせしたいとこう思つております。
  118. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この申入れには文部省の岡野学術課長も同席しておられるというふうに聞いておるのですがね。
  119. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 別に正式の命令があつたわけではありませんし、正式に申入れたわけでもないのであります。ただ中泉教授と岡野学術課長が研究の現在の状況及び研究を続けまするに必要な諸種の条件というような点につきましていろいろ関係者に説明しておる、そういう事実だけでございます。
  120. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それに関連して第五福龍丸ですか、ああいうものは確実に日本の手において確保できるようになつておるのですかどうですか。
  121. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 確保と仰せられるのは現地において試験するとかこちらの手で試験する、管理するとかいう、そういうような……
  122. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ええ、そういうわけなんです。
  123. 高田なほ子

    高田なほ子君 補足質問しますが、ちよつと把握が足りないと思う。今の質問は福井さんの言う第五福龍丸を管理するとかしないとかいう問題ではなくて、仄聞するところによるとアメリカから第五福龍丸はアメリカ側に一つ研究資料としてよこせというような強硬な申入れの形が何らかの形である、こういうことに対する荒木さんの質問なんです。そういう簡単なものじやないの、です。そうなんですよ。
  124. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 大変不注意であるという私はお詫びをしたいと思うのでございますが、昨日外務委員会で外務当局がその点について答弁したということを今局長から伺いましたので、この点もすぐ調査いたしまして御返事させて頂きたいと思います。
  125. 須藤五郎

    須藤五郎君 今のことに関連ですからちよつと一言。やはりこの問題については外務省関係の意見を聞かないとはつきりして来ないと思うのです。アメリカは資料調査を全部アメリカの手に渡せ、あの船を横須賀に引張つてつてアメリカの施設の中で調査するのがいいと言つて、とにかく強引に来ているようですから、それに対する外務省の意見などを聞く必要がありますから、外務省関係の人も一つこの委員会に呼んで外務省の意見を質そうじやないですか。提案いたします。
  126. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで私の言つてつたのは、これを日米共同で調査研究をする、こういう名前の下に貴重な資料が日本の手から離れるのじやないか、こういう心配が現に起つておると私は思うのですが、そういうことに対して文部省はどういうふうな考え方をしているのか聞いてみたいと思います。
  127. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 現在のところアメリカ側が研究に協力する、向うが研究を主体となつてやるのじやなくて、アメリカ側がとにかくこの実験をやつた、向う側の実験によつてこのことが起つたのでありますから、この治療並びに研究に協力したいと言つて参りましたのは、私たちはこれは受入れてもいい、こういうふうに文部省では思つておるのであります。
  128. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ところが協力という形が日本の自主的な研究を阻む結果が起る例があるという事態になつておると思うのです。だからこそこういう申入れが行われて来たのじやないかと思うのですが、そういう点ですよ。ただ単なる協力を求められたので、協力してもらつてもいいというふうな私は問題じやないと思うのです。
  129. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 先の御質問にありました通り、これは外務省と外交関係によほど重大な関係があることでもあり、文部省の一政務次官としては間違いがあつた答弁をしては大変でございますから、外務省の出席いたします、こちらへ呼びました委員会において十分一つ相談の上お答えしたいと、こう思つております。
  130. 高田なほ子

    高田なほ子君 その点について関連いたしますが、成るほど外交関係に非常に重大問題があるから文部当局としてはここでもつてはつきりお答えができない、この態度はいいと思うのですが、ここは文部委員会でありますから、それとは別個に、原子爆弾災害研究所というのは、これは文部省に所属している究研所だというふうに新聞に出ておる。そこで今の荒木さんの質問に関連して尋ねたいことは、原子爆弾災害研究所という名前であるからには、これは今までにもアメリカ側と協力したいろいろなことがやられて来たんではないかと思いますが、不敏にして我々が原子研究所があつたということを新聞で知つて驚いておるような状態でありますが、この内容やなんかをこの機会に一応お知らせ頂くことと、それからアメリカ側とどういう協力を今までこの研究所がして来ているのか、そんなような点を明らかにしてもらいたいと思います。
  131. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 御指摘の原子爆弾災害研究所というのは文部省の所管には全然ございません。従つてお尋ねの資料も只今手許にはございません。
  132. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはそうすると新聞で発表になつていることは、これは間違いでしようか。どこの所管にこれはなつておりますか。
  133. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 間違いであろうと想像いたします。
  134. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、根も葉もないことを新聞に書くわけはないので、文部省の管轄下で原子爆弾の災害に関する研究をしているところがどこかにあるわけですか。
  135. 福井勇

    政府委員(福井勇君) これはすぐ私も調べたいと思いますが、科学研究という文部省の総合的な研究がございますね、その総合研究の中の一部としてその項目があるというようなことは私は予想されますが、併し災害研究所というものが、今文部省の所管になつていないということだけは事実でございます。そういうような点で何か途中で活字になるまでにミステイクがあつたんではないかと予想しますが、これは私はすぐ調査いたします。
  136. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは文部省としてはABCCの研究と文部省学術或いは科学の研究というものとは一切合財全然無関係なのだ、こういうふうにとられるわけですけれども、それでよろしいでしようか。
  137. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 只今政務次官から答えられましたように、研究所は多く国内にあります研究所でありますから、往復いたしましたりいろいろ資料を交換いたしておるかも知れませんが、文部省の営みとか、文部省の仕事にはないわけでございます。
  138. 高田なほ子

    高田なほ子君 それではあれですか、昨年山本博士がアメリカに行かれて原子力或いは原子科学、そういうものについて行かれたということを私伺つたわけですが、そうすると、旭硝子の山本博士が派遣されたのは文部省から派遣されたんではないのですか。どういうところから派遣されているのですか。
  139. 福井勇

    政府委員(福井勇君) これは文部省から派遣したのではございません。これは当時この席でもちよつと私申上げた記憶がございまするが、昨年の十月の二十九、三十日の会議でありまして、とてもこちらから人を選んで派遣するという時間的な関係で間に合わなくて、アメリカの新木大使から外務大臣に宛ててこういう会合に出ないかという招請がアメリカ側から来たという、その宛名は新木大使から外務大臣宛に来ているのであります。そうして外務大臣宛は文部省の人に来いとか、通産省の人に来いとか、そういうようなことは、全然謳つてはございません。従つて出過ぎた話ですが、その文書が福井宛に来たわけではございませんが、たまたまこの原子核研究のことについて文部省が丁度着想しておつた矢先でありますから、私の局のほうから私の手許までその書類が届いたのでありますが、その届いたときには無論間に合わなかつたわけであります。それで山本博士は恐らく、恐らくじやございません。そのときの通知状、新木大使から外務大臣宛の手紙の中には取りあえず二客席はとつておいた、併し在米の山本博士がニユーヨークにおるから、この人を一人まあ適任者、日本の学者として適任者と思うから出てもらうことにしてある、こういうような附言が確かあつたように記憶いたします。併し私今その通知状は外務省にありまして手許にございませんので、そういう記憶があります。で外務省で取りあえず山本博士を、在米の人を席へ出させたというような経過だと私は思つておるのであります。
  140. 高田なほ子

    高田なほ子君 若干本論から離れますが、この問題が出ましたから一応概略だけ伺つておきますが、そういたしますと、海外技術というものを日本が取入れる場合に、やはりアメリカの技術というのを入れる場合のことも問題になつて来ると思いますが、それについての基本的な方針といつたようなものに外務省に対してあなた任せという態度ではなく、文部省自体として、こういつたようなものに対する基本的な方針というものはあるわけでございますね。なかんづく最近原子の問題が出て来ておりますから、はつきりお伺いしておきたいと思います。    〔理事劔木亨弘君退席、委員長着席〕
  141. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 文部省といたしましては、文学者を予算的措置として海外へ送るというのは、国会でその年、毎年審議して頂いて、この学術研究などには派遣しておるわけであります。今海外との科学研究の交渉その地取扱いについては、内閣に所属しております科学技術行政協議会、千秋氏が局長をしておるあそこで、この問題は総括的に取扱つております。
  142. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは若干本論に戻りまして伺いたいと思います。今度のビキニの被災者をめぐつて、昨日の厚生委員会では非常に重要な発言がされ、被災者の一〇%が死亡するのではないか、殊にこれは人道上由々しい問題がはつきり出て来ておるわけであります。これに対しましてこの日米の合同資料或いは日米の合同調査というようなことが今大きく浮び上つておる矢先、本日の朝日新聞の記事に「二十二日外務省から日本側学者のまとめ役を厚生省に依頼した。厚生省楠本正康環境衛生部長は同日文部省稲田大学局長を訪れ、文部省から日本側学者の意向をきいてほしいと依頼、稲田局長は「米側の協力はいいが、治療、調査には日本の学者が自主的に当るべきだ」と答えた。」こういう記事が載つております。それで何のためにこのまとめ役を厚生省に依頼したのか、そのまとめ役の厚生省が稲田局長を訪ねたときに、「米側の協力はいいが、」という大変含みのある答え方をしておるのであります。この間のいきさつと、文部省側としてアメリカ側のこのビキニ被災者をめぐる協力限界というものはどういうところに置かれているのか、詳細にお答えをして頂きたいと思うわけです。
  143. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 先ほどお答えいたしましたように、別に厚生省から正式に申入れがあるわけではないのであります。ただ我々といたしましても、又私のお会いいたしました中泉教授その他とされましても、とにかく治療或いは治療に関連いたします研究というものにはこれは世界の学者が協力することはそれ自身として非常に結構なことで、ただやり方について、これは相談してみなければわからないのでございますけれども、とにかく自分たちも今或る程度のことをやりかかつておるから、そうした研究の機能を阻害しないような方法において、而も外国から更にいろいろ強い協力を得てやりたいと、こういうような学者の意向でございましたので、私どもといたしましても、そういうようなことに進みたいものだと考えておるような次第でございます。
  144. 高田なほ子

    高田なほ子君 協力することは私も結構なことだと思いますが、やはり限界があるのじやないかと思う。僅かばかりの灰と、それから二十三名の患者と、それから問題になるのは第五福龍丸、その第五福龍丸が今や国際的に、アメリカ側では被爆したものを全部消毒できる機能を持つているものもあるからという大変な協力を旧入れて来ているようでありますが、第五福地丸が失われるということは、研究の重要な要素が失われるというようなことにもなつて来るわけでありますから、協力といつても、この第五福龍丸をお渡しするかしないかということは一にかかつて私は文部省の態度にあると思う。外務省だけではないと思う。第五福龍丸だけについて文部省側の御意見を、どういう考え方をお持ちになつておるか、ここで一つはつきりと伺わして頂きたいと思う。
  145. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 船自身の処置、或いはそれについての賠償というようなことは、これは文部省の問題じやないのでございます。文部省といたしましては、まあ文部省関係の学者が治療に当り、治療に関係する研究を行なつておると、その研究に必要な条件というものが継続されることを念願とする。まだ実際国内の他官庁、或いは他官庁を通じまして外国から正式に何ら来ておりません。ただ私どもといたしましては、そういう希望を現在持つておると、それだけのことでございます。
  146. 高田なほ子

    高田なほ子君 私どもとしては、そういう希望を持つておるというのでありますが、私どもというのはどういう範囲でございますか、これは文部省の中で会議か何か持たれて当問題について結論をお出しになつておるのでしようか、その点伺いたい。
  147. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 別にそう正確な意味で私どもと言うわけではありません。昨日お会いした中泉さんと私という意味におとり下さつて結構だと思います。
  148. 高田なほ子

    高田なほ子君 将来文部省は、このビキニ被災者をめぐつて、日本の科学者を独立日本の科学者として完全に守つて日本独自の研究を進めて行かなければならない、こういうお考えをお持ちであるとしたら、当然文部省内においても当問題は重要な問題としてお取上げにならなければならないはずでありますが、ただ単に私と誰それさんが話合つたというようなことでは、私どもは納得が行かない。世界の視聴を集めているこの人道上の科学の謎を解くために、文部当局は率先して私はこの科学者陣営を守つて行くという立場をとらなければならないと思うのですが、これに対して早急に文部省内の意向をまとめ、又計画を立てられるというようなお態度をお持ちになつておられるのですかどうですか。その点むしろ福井さんにお尋ねしたほうがいいかと思いますが、責任のある御答弁を頂戴したいと思う。
  149. 福井勇

    政府委員(福井勇君) そのように取計らいたいと思つております。
  150. 永井純一郎

    永井純一郎君 政務次官に一言お尋ねしたいのですが、稲田局長からもお答え願いたいのですが、この原子病の研究について、今治療をいろいろし、且つ研究をしておられるわけですが、新聞で見ても、都築博士なんかが、非常に研究が足りないと、衆議院の委員会に出てもそういうことを言われておるようですが、先ほど局長は、来年度予算がもうすぐできるから、足りないところはそれが使えると思うというようなお話がありましたけれども、これは来年度は来年度でどうせ先ほど来の質疑応答でわかるように、研究費が非常に足りないのです、研究費そのものが……。原子病に対する研究の金というものは私はやはり特別に出してやらなければ、ほかの研究が今度できなくなるわけですから、文部省大蔵省に対して、予備費を早急に出してこれを徹底的に研究し得るような措置を全然していないと思うのですね。そういう状態に置くと、十分な能力を持つ立派な学者が研究ができない。余計なアメリカから来てなんだかんだと言うと、自然それにくつついて行かなければならないということになつて行くと思う。この原子病の研究について、特に私はアメリカがタツチすることを好まないいろいろな理由を知つておりますが、これは文部省はそういう立場とは別に、是非日本の立派な学者が早急にどんどん研究ができるように、先ず大蔵省と折衝して予備費を使うということを私はすべきだと思うのですが、それをしていないのですか。
  151. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 今着手しておりまする現在の研究並びに処置等については、厚生省で治療についてまとめてやつております。研究費は御指摘のように別にこれは文部省としてもすぐ考慮をいたしたいと、こう思つております。
  152. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで、先ほど稲田君の答弁では、それを今ないから、来年度予算がもうすぐできるからというようなことですが、そういうことをしておつたのではほかの研究の費目を結局食つてしまうわけでしよう、来年度の費用にないのですから……。それで今すぐ文部省がこの学者の人たちと相談をして予備費を取れば、私は取れるはずだと思うのです。それさえやつていないというのは、文部省が熱がないという証拠だと私は思う。文部省がしつかりしていないのだと思う。ですから、予備費を取るということを今日早速やつてもらつて、速急にその点きめるべきだと思うのですね。その点お伺いいたします。
  153. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) かくのごとき研究者が相互的に協力いたしまして研究いたします費用は、これは科学研究費がそのところだと思つております。明年度の科学研究費総額八億余あるわけでございまして、その配分を先ず考慮いたしたいと、がこれは申請によつていたすわけでありまするから、年間を通じまして将来科学研究費について不足するような状況がありますれば、それはそのとき考慮するというつもりでおります。
  154. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういうことをあなた固執している必要はないですよ。なぜ予備金の折衝をしないかということを言つておるのです。八億は八億で予算を組んでおるのですから、項目があるでしよう、こういうことをやる、こういうことをやるという……。その中に原子力の研究はないのでしよう。
  155. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 科学研究費は、あらかじめ内容がどういう目的とかどういう研究とかいうことはきまつてない性質でございます。従いまして、その配分は委員会において決定すべきものであつて、申請によつて配分いたします。科学研究費の配分の申請が今出ようといたしておりますから、ともかくその内容、金額等を検討いたしまして考えたいと思つております。科学研究費で若し足らない場合がありますれば、別に予備費を取りまして、科学研究費を増して使う以外に方法はないかと、要するに硬いまするのは科学研究費でございます。
  156. 永井純一郎

    永井純一郎君 予算を組む場合に、漠然とつかみ金で組むということは、どの項目についてもありませんよ。必ず一定の少くとも推定の事項があるはずなんです。それは一応別として、原子力の研究は時期を失してはならないものがあるはずですよ。今すでに患者がおるし、都築博士は、治療と同時に研究費を多分に盛つて研究を実行しなければ時期を失するという意味のことを言われておる。それは当然私は予備費を要求して取れる項目であるし、日本としては非常に重要な研究だと思う。どこの学者にも負けないだけの研究ができる状態に置かれておるわけです。それを今すぐ文部省で予備費を取るという折衝をすべきだということを言われておると思いますが、政務次官は一つそれをやられるべきだと思いますが……。
  157. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連して今永井委員の言つておることは極めて私適切で、本来ならば当然この委員会で問題にされる前に文部省が動いておるべき筋のものだと思います。御承知通り学術研究費というものは一つの講座なりテーマなりで大体予算を立てて、長期の研究をして行くための費用なのであつて、特別にこういう大きな問題が起きて緊急に金が要るということになれば、今永井委員の言われたように、予備金の支出をいたしてこれで賄う以外に手はないと思う。若しあるとすれば、今の永井委員の指摘のことは無用である。こういう方法文部省はやられるのだということを明確にすべきであるし、そういう返答ができないならば、一体どういうふうにしてこれをやつて行こうとするのであるか。又予備費の折衝については、どういうふうな考えを持つておるかということを、現実の上から一つ厳粛に御答弁をして頂きたい。
  158. 福井勇

    政府委員(福井勇君) この予備費の永井先生と相馬先生の関連の科学研究費に関する使い方についての詳細な説明がちよつと局長のほうで足らないようでございますから、その点を先ず説明させまして、私がお答えしたいと思います。
  159. 稲田清助

    政府委員稲田清助君) 先ほど永井委員の指摘いたされました科学研究費のほうの機関研究費幾ら、総合研究費幾ら、その他各個研究費幾らという総括りにおいて毎年予算を頂戴いたしまして、それを如何なる研究主体に出すか、如何なる研究題目に出すかということを学術会議のほうから出ました委員がその学者の申請を審査いたしまして、その後において決定いたすわけでありまして、あらかじめ継続的にどの研究機関幾らというふうにきまつていないのでございます。そういう次第でございますので、今回におきましても東大関係の研究者あたりともお話合いをしておりまして、どのくらい一体御要求になるのか、その御要求を伺いたいということを私どもから申しております。その御要求がまだ出て来ないのでありますが、それが出て参りますれば、やはりこの科学研究の委員会と相談をいたして、先ずこれは科学研究費から支出いたしたいと考えておりますので、その申出でられました金頭が非常に大きな金額等でございますれば、それは只今御注意にありましたように予備金支出その他時期に遅れないように努力いたすつもりでございます。ただこれは飽くまでも文部省がいたす研究ではなく、こつちは助成する立場に立つておりますから、研究者のほうから御要求を伺いたいというのが只今の段階でございます。
  160. 永井純一郎

    永井純一郎君 大体幾らかわかつて来ましたが、予備費は、今すでに治療をしているのですから、その治療に当つておる学者が同時に研究を実行しなければならないということを言つておられる。その時期をここで十日も二十日も一月も費やしておつたのでは、科学研究費の審査はとてもそれはもう一月や二月では毎年きまつていない、長くやつておる、だからとても間に合いません。ですから予備費を取ることは、これは文部省が努力すればできる、又提案すべきである、又そういうことは当り前のことなんです。それをしないという理由一つもないのです。これは局長、政務次官は今すぐやらなければならないと思う。同時に早速やりますということを、これは政務次官から一つ答えて頂きたい。  もう一つは外務省をあとで呼んで、一緒に外務省が来ているところで政務次官はいろいろ質疑応答したいとおつしやいましたが、それは御尤もであつて、そのとき同時に私は学者の人たち、それから大学の研究で直接これに当つている人たちをも一緒に私は呼んでもらうということを委員長にここで申上げておきたい。今政務次官から予備費の折衝をするという点については、一つはつきりしたお答えを願つておきたいと思います。
  161. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 研究費の使途の部面について局長説明申上げましたことはその通りでありまするが、直ちに現在、私今朝の新聞を不幸にしてまだ見ておりませんが、御指摘のような、先生がたと連絡をとりまして、適当な予算的措置について協議をすることにいたします。
  162. 安部キミ子

    安部キミ子君 関連して……。今政務次官からお話がありましたので、一応安心はしましたが、併しベツドに寝ている病人は、今自分の生命がどういう危機に立つているかという恐ろしい現実の前に立たされているわけなのです。昨日も都築博士のお話によりますと、そのストロンチウム九十とかいう放射能は、白血球を大変食つてしまつて、何人かの人たちは二千しか白血球がないという恐ろしい限界にまで来ており、およそ二千しか白血球がなかつた場合は人は死ななければならないというところに来ておるというお話です。こういうふうな重大なお話も、科学者として、当の責任者としておつしやつたのだと思いますが、そういう立場のかたがはつきりそれは如何に時を必要とするか、時の問題であるかということを現実に物語つていると思います。今朝ラジオを聞きましても、大阪辺で食べられましたまぐろの刺身のために、白血球が四千しかなかつたという人が幾人かあるということを発表しておりました。その結果がどういうふうになるかというようなことを今日考えて行きますと、相当の人が日本の国でもこのまぐろを食べたり、その他の魚を食べて原子病の被害を受けているということが事実なのです。そこで、先ほど稲田局長お話を聞きますと、予備費が何だかんだという説明もございましたけれども、そういうふうな向うの要求があつてからというようなことでは事が済まされない。それと同時にこちらの原子病がどういう放射能によつて、どういうような結果をもたらすものであるかという実態をアメリカにこちらのほうから要求したことに対して、アメリカは誠意を示していないというこの事実、それらを考えてみますると、私は先ほど福井政務次官がおつしやいましたことに大きな期待をかけると同時に、早急にこれをしてもらいたいということ。  それからもう一つお尋ねいたしたいことは、今日の朝日新聞に書いてあります、「米国原子力委員会から派遣された同委員会衛生安全局長アイゼンバツド博士は二十二日夜十時東京羽田に着いたが、同氏の来日を機会に二十二日外務省側から『日米合同調査団』を組織する話が持ち出された。これに対し日本の科学陣は、これまで通り自主性を主張して合同調査団に反対の態度を示しており、」というような記事が載つておりますが、私は文部当局はこの日本の科学陣の機関をどの程度まで補助することができるかという、皆さんの態度なり確信なりをお伺いしたいのでございます。
  163. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 御指摘のアメリカ側からアイゼンバツド氏が参られたことを私も新聞で拝見いたしたので、これから会見したいという私の考えを持つておるのでありますが、先般数日前にこの件で来ておられたんでない上下合同原子力委員会委員のパストール氏と私は会見をいたしまして、その委員はすぐアメリカへ帰られるというような話でありましたので、十分このいろいろ善後処置について私の考えを述べておいたのでありますが、まだ二十二日お着きになつた同氏に対して日本の科学者陣がまあまとめてその或ることを反対するとか、或いはいろいろ申述べておるということについて、私の所までその集約的な何がございませんので、今何とも私としては責任ある答えができないのは誠に残念でございますが、この科学者たちとも又アメリカ側の同氏とも至急私は会見したいとこう思つてつた、今朝そう思つてつた矢先でございまして、そんな今状態でございます。今日まだ二十三日明けて早々でございますので、そういうような考えを丁度今持つてつたところでございますが、これから処置したいと思います。
  164. 安部キミ子

    安部キミ子君 政務次官の個人の意見でもよろしいのですが、そうした日本側の科学陣の意向を全うさせてやりたいという御意思がおありでございましようか。
  165. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 私も従来科学技術者としてのみ立つて来ました立場から申しまして、その科学者の意向は十分尊重して行きたいと、こういうつもりで日頃そのような問題についても対処しておるつもりでございますが、本件についても特にその考えを持つております。
  166. 安部キミ子

    安部キミ子君 只今の御意思のような考え方で、今後アメリカさんとの折衝のときには立ち向かわれますところの覚悟をお持ちでございましようか。
  167. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 御指摘の安部先生のお話はまあ文部省の政務次官としての動き得る範囲の、まあ私の決心は動きませんが、何分外務省その他関連の官庁もございますことでございますから、余り大きな口はばつたいことは申されませんので、私の動き解る範囲において、又私たち科学技術者としての立場から懸命に一つ努力してみたいと、こう思つております。
  168. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちよつと今のと関連しますが、今安部先生がかなり執拗に食い下がられたのはこういう点があるからだと思うのですね。厚生省あたりの意見を新聞なんかで見ますと、外務省としては成るたけ円満にやつてもらいたいというようなことで、わざわざ外務省から仲好く日米共同でやつてくれという申入れがあつて、厚生省としては動いたわけだというふうに新聞が報道してあるのですけれども、科学そのものはもう国境を越えていると思うのですよね。それはもつと峻厳なものでなけれやならないので、ただ外交上の問題から丸く納めて欲しいという考え方が外務省や厚生省の中にあるとすると、これは科学者の峻厳な研究態度というものを阻害するような力にならないとは限らない。まして日米協力の吉田内閣の線に沿つてこの問題をうまく行くように望んでいると、こういうような厚生省が考え方を持つて文部省側に仲介の労をとつているとすると私は問題じやないかと思う。これを問題じやないと、私は問題だと思うのですが、どうですか、福井さんは政務次官としてこういう丸く納めるという考え方に対してどういう感じをお持ちになつておりますか。
  169. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 私の耳に入つているところでは、活字にどういうふうに現われておるかちよつとまだ拝見さして頂いておりませんが、丸く納めるとかいうような字が出ておりましたとすると、何かいざこざが特にあるようなふうに聞えて私もとれるんですが、そんなにいざこざが今対立しているというようなふうにまだ耳に入つておりませんが、先ほども申しましたように、その点について、十分一つ直ちに外務省のほうとも連絡して、又この委員会でもその話をしてもらいたいと私も申上げたのは、その一翼と一つお含みを願いたいと、こう思います。
  170. 須藤五郎

    須藤五郎君 私先ほど外務省の関係官をここへ呼んだわけですが、委員部からの返事によりますと、何かアジア局長は出張で留守だ、第一課長か第五課長ができれば出席したいが、今日の間に合うかどうかわからないという返事でありますが、まあ今日でなかつたら次の機会に外務省関係を呼んで、そうして又文部次官に出て頂いて、この話を進めたいと思います。  今日ちよつと文部次官にお尋ねしておきたいことは、先日藤岡教授に来て頂いて、参考人としていろいろ話を伺つたその際にも、これは今論議されている問題とは違うかもわかりませんが、原子核の研究を日本の学者は日本の学者だけで、日本人だけの力で研究を進めたいという希望をはつきり持つていらしたと思うのです。而も原子核の研究にしても将来これは平和のために自分ら研究するので、これが発展して原子力の研究になり、それが戦力に発展することは日本の学者は希望していない、誰ひとり希望していないんだということをはつきり藤岡教授もおつしやつたわけでありますが、それではそれを如何に防止するかということに対しては確信を持つていないわけです。而も今MSAの問題が国会で論議されておる段階ですが、これが若し決定せられるような状態になると、言葉は違うかわかりませんが、とにかく学術上の援助というようなこともMSAの中にある。そうすると日本の乏しい研究資材で研究が進められないようなことが起つて来れば、自然としてMSA条項を楯にとつてアメリカから技術の援助、資材の援助、あらゆる問題が日本に押しつけられて来る心配が多分にある。こういうことに直面して日本の学者はもうなすところを知らずということになつてしまうだろうと思うのですね。それで藤岡さんなんかはそういうことを防止するために何か法律の制定を国会にお願いしたいというような意見をこの前開陳されていたように思うのでありますが、まあ政務次官にこういうことをお尋ねしても筋が違うか知りませんが、この日本の学者の平和を愛する気持ですね。そうしてアメリカの支配を受けたくないという気持、これを文部省としてはどういうふうな決意をもつてつて行こうとしますか、その点。
  171. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 須藤先生が最後におつしやいました通り、一政務次官としてはこの原子力の問題は非常に世界的に大きな問題でありまして、尋ねるのはどうかと思うがとおつしやつたそのお言葉通りに、私も私が大きくお答えすることがどうかと思うくらいでございます。須藤先生がおつしやいましたお言葉の中のことで私がちよつと聞き漏らしたのは、藤岡先生が心配されたというのは、原子力が戦力に使われるということについて何とか防止しなければならんということを心配されたというお話でしようか。
  172. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうです。
  173. 福井勇

    政府委員(福井勇君) それで、その御意見について一言、まあ日本人だけで研究したい云々ということについて、御指摘の点に関連しておりますのでお答えしておきたいと思いますが、まあ世界各国十六カ国くらいこの問題について取組み始めておりますが、私たちは学術、技術者としても戦力になるかならんかというような点は、まあ公平に解釈して、こういうものを使う国民の心持ちによるのでありまして、例えばこの前も予算委員会においても私申したのでありますが、この原子力をまあ戦力に使つてはならんということは当然のお話であります。世界の人数がそう思つておるのでありますが、この原子核研究についてどの点からは戦力であるかというような判定はなかなかむずかしい。又使えば戦力になるということについては、丁度私は工作機械のマシンツールあたりとちつとも変らない。これは七ミリ砲弾を削ることもできるし、又十三・七ミリも削つて、これが工作機械というものも戦力にまあ繋つておる。原子核研究所もそれに繋つておるというのと少しも違わんのでありまして、これを平和産業の利用方面に使えば極めて世界的に歓迎される。又工作機械のほうも、鍋も釜もこれによつて削るということになりますので、その点については使う者の、その国民の心持次第だと、こう思つておりますが、ただこの原子核研究について日本人だけでやりたいというようなことを言われたのはこれは当然でありますが、ただその学術の研究というものは世界中同じような普遍的なものでありますので、この点については私は丁度藤岡先生の話は途中でちよつと入つて四、五分聞いただけで、私もちよつとほかの委員会に出ましたので、聞き漏らした点がある、と言うと大変これは私の答弁がどうかと思いますが、例えば原子核の研究などについて日本人だけで、国内では当然日本人だけでやるということがこれがもう理想であり、そうでなくちやなりません。ところが、資料を得るというような点については、日本の藤岡さん、惑いはまあ湯川さんや茅さんたちが、或いは嵯峨根さんたちがずつと指導されておりましても、まだ世界の水準から見れば遺憾ながら戦争中から戦後にかけてずつと差がついておるということを私たちは国民全体認めておると思います。そこで、その研究ということについては世界と交流しなければならんというわけで、私は学者は、日本の国内の研究所は日本の学者でやるべきですが、広く海外へ出して、この遅れておる原子核研究、延いては原子力研究に及ぶものをあらゆる努力をして、国会どもあらゆる援助をされてこの研究に邁進してもらうように願いたいと、こういう私たちの考えを、私たちじやない、私の考えを持つているのであります。そういう面については私は原子核研究もすぐやろうとしてもなかなか日本人の学生だけではできないので、その資料、その研究をするためには、丁度私の一案としては、ヨーロツパに今後作られる合同原子核研究所、ヨーロッピアン・カンシル・オブ・ニユークレア・レザーチというあの中立国において作られるスイスの合同研究所へ学者をたくさん派遣するとか、或いは政治家が、或いは実業家が、産業利用にこれが役立つようなふうに向いておるとすれば、その調査に一つ積極的に行くとか、或いは又アメリカのほうにおける原子核研究も同時に連絡をとつて、もう十六カ国もやつておるのでありますので、それらに遅れないようにするためには学者の交流、交流と言つてもこちらから向うに教えに行くわけには行かないから、教えてもらうほうに出すほうでございましようが、そういうことについて積極的にやらないと、産業利用についても憾みを後世に残す、こういう心配があるのでありますが、私たちが明治、大正、昭和を通じて科学枝術者の嘆いておりますことは、日本の産業界にしても、政界などにおいても、こういう見解が少いのではないかという批判のあるのが非常に心配なところであります。
  174. 須藤五郎

    須藤五郎君 日本の学者が心配している点は、別に今日本の原子力の研究でまあおせつかいをやこうという国はアメリカ以外にはないと思うのです。そうしてそれがMSA協定の裏付けによつて、日本から見れば全くおせつかいと思えるようなものが今後起るだろうと予測されるわけですね。そうしてそのおせつかいは何のためにおせつかいするかというと、日本の原子力研究を戦力に利用するためにそういうおせつかいをするということがはつきりと言えると思います。そこに日本の学者の悩みがあると私は理解しているわけであります。それを文部省はどういうふうに、若しも文部省自身も戦力に使われるということを希望しない、こういう意見ならば、如何にしてその危険を守るかという点を私は伺つているわけなんです。
  175. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 今お尋ねの、この原子力について戦力に使われないようにするにはどうしたらいいかというようなお尋ねの点について、先般当参議院の予算委員会において中田先生の御質問に、たしか副総理がそういうことについては原子力憲章というようなものを作つて、まあそういう心配は当然防がなくちやなるまいというような答弁をされたと私記憶しておりますが、私もそういう点では同感であります。  なお、原子力の研究について日本の学者に、或いは研究に対しておせつかいをするのはアメリカだろうという御想像については、私はこれはもう全く政府の立場の、まあ文部政務次官としてではありませんが、これは全く杞憂じやないかと私は想像いたしております。と申しますのは、私が実はパストール上下両院原子力委員会委員と会談いたしました。ところが、日本の政府側の人間として原子力の問題について会談したのは私が初めてじやないかと私は推測しております。間違つているかも知れませんが、その際にも向うからこの原子力の問題について、こうしろとか、ああせよとかということは爪の垢ほどもなく、何とか私は向うから引きずり出そうと思つて一時間にも亘つて話したのでありますが、そういうことはない。希望があるならばそちらから申出よ申出よというような話があつたくらいでありますので、それらのほうは須藤先生の御心配は、その一例として、押付けるというということは申しませんけれども、御心配はないと思います。と同時に、私はアメリカ以外のつまりヨーロツパの民主主義陣営の学者仲間から日本の原子核研究については、原子力研究については一生懸命でおやりになつたら……というふうに学者仲間、例えば私が直接その衝に当つたうちでもイタリアのアマルデー、それからぺランなども一生懸命で応援しましようと言つてくれておりますので、これはおせつかいじやなく、非常に激励されて、資料も送りましよう、学者もスイスに派遣する等、合同研究所に参加するならば、あらゆる便宜を提供いたしますと言つておりますので、その原子核研究或いは原子力研究については私は話があつたのは、むしろヨーロッパのほうが多いのじやないか。これは私は心からそう思つているのですが。
  176. 須藤五郎

    須藤五郎君 政務次官、僕たちも原子核の研究、原子力の研究をすることを今反対するわけじやないのです。併し現在の世界情勢を考えたときに、日本がその研究を始めることが妥当であるかどうかという点に私たち問題を感じておるわけです。今日本がこれの研究を進めることは、不吉な方面に利用されることが非常に可能性が大きいという点で、私たちはこの研究に疑念を持つておるわけなんです。併し将来世界に本当の平和の風が吹いたときに、もう再び原子力が戦力に使われないという見通しが立つたときには、勿論これは研究しなくちやならん。併し今日の情勢では適当でない。むしろ日本はアメリカ一辺倒的なと言うと、あなたは気持を悪くするか知れんが、実際にそういう立場にあるわけです。ですから今この原子力の研究をすれば必ずアメリカに利用されるということは、私は明らかだと思う。而も日本の自衛隊が将来戦力を持つということは、今戦力じやないと言つておりますけれども、私は戦力だと思うが、戦力じやないと言つておる。その事実として日本の自衛隊には原子力を持てないじやないか、原子力を持たない間は戦力じやない。併し将来戦力を持つということは木村保安庁長官も言つておるわけです。そうすると、将来日本が戦力を持つということは、将来原子戦をやる準備、原子戦をやるという仮定の下に立つて軍備を持つということなんですね。そうすると、今研究しておる学者は平和的に使いたいと言つておるけれども、実は将来日本のやはり戦力としてこの原子力が使われるということは、これは火を見るよりも明らかだ。そうなればこれは由々しい問題だ。これはやはり日本なら大きな水素爆弾などを五個も落せば、必ず日本全土がその被害を受け、日本民族全部滅亡せざるを得ない状態です。そういう危険なものを将来日本が持とうとして計画しておる。その計画に対して私たちは反対しておるわけです。ですからそういう考えを持つ人がいなくなるまで、この原子力などの研究は私はすべきじやない。而もこのアメリカ一辺倒的な日本の政治の下においてこういうことはやるべきではない。それが私たちの意見なんです。学者の中にもそういう意見を持つたかたもたくさんあつて、そのために原子力の問題が論議されておると思うのですが、それに対して私は文部省に見解を質しておるわけなんです。
  177. 福井勇

    政府委員(福井勇君) 私は須藤先生の御心配になる日本が原子爆弾を持つ、戦力として原子爆弾を持つその仮定としてというような話は、全く私はその方向が私としては違つておると思います。私としての考えは違つております。それは現在日本の科学者たちのレベルを非常に高く須藤先住はお買いになつておるのじやないか。これは私は日本の科学者を軽べつしたり軽視したりする意味じやなくて、資料が今まで得られなかつたためと、それからポツダム宣言受諾によりまして、ウラニウムを基礎とするところの原子力の研究、こういうものについては禁止されておりましたから、全然手がつけられなかつた。もう一昨年ぐらいから漸く講和条約調印後にその研究が続けられてもいい、或いはウラニウムを輸入してもいい、或いはアイソトープをいろいろなものに利用していいというようになつたのはほんの二年前であります。そこで私たちの知り得る範囲では、米国がとにかくあれだけ世界の学者と金力を動員して初年度に二十億ドルも使つて、而もイギリスのラザーフオードが原子核分裂を証明してから十数年もたつてから原子爆弾ができた。而してアメリカが原爆を完成した昭和二十年の七月から比べると、英国は原子力研究について資源や学者の動員に何の制約も受けておらないのに、なお且つ八年も遅れて原爆を完成しました。  従つて初めは理論としてはアメリカよりも恐らくイギリスのほうが先じやなかつたかとすら私は思つております。というのは核分裂を最初に発見したのはラザーフオードでありますから、恐らく私はドイツやイギリスのほうが原爆について着想したのもアメリカよりも相当早かつたと予想されます。併し金がなくて、そうして遅れておつて、イギリスが原爆を作るのに約八年も米国から遅れたのでございましよう。それは戦力としてもう使おう使おうとして検討を続けて、アメリカから十年近くも遅れて漸くできた。日本が戦力として使おうというようなことは、恐らくもうこんな遅れた日本の科学陣を動員して政府が原爆を持つて戦力に使おうなんということは、私は日本で研究してそうしてそれをものにしてやるというようなことは夢々私はないと思うので、そんな科学を無視した私は政界人があるとしたら、まるで珍無類じやないか。私たち技術者の仲間では思つておるのであります。
  178. 須藤五郎

    須藤五郎君 福井さんは技術者ですから、非常に純粋だと思うのです。私も芸術家ですから、私の考え方もやはり純粋かもわかりません。ところが政治家の中にはそれでない人がやはり多いと思うのです。木村保安庁長官は将来戦力を持つのだ、戦力を持つということは原子力を持つのだということをはつきり言明しておるから、日本が将来原子力を持つということは、三段論法でなくても明らかだと思う。そういう危険な考えを持つておる人々があるから、今日日本で原子力を研究することに一つの大きな危険が附随する。それに私は不安を持つのだ。而もその援助の手をアメリカが差伸べて、MSA条項を楯にとつて要らんおせつかいだと思うが、必ず援助の手を差伸べて来るにきまつておる。その意図は明らかじやないか。だから純粋な科学者はこれに対して大きな不安を持つておるということでありますが、あなたが原子力の研究を非常に重要と考えると同じく、私も重要だと思うのです。将来のこれが本当に平和の生活に使われるならば、私たちの思う共産社会を生むためにもこの原子力を生産的に使うということは、これはもう最も重要な問題になつて来ると思うのです。だからその点においては私もあなたの重要と感ずる点においては一緒ですが、不幸にして政治観が違つたり、社会観が違つたりするために判断が食い違つて参りますので、私はこの点は今日はやめます。  ただ一点、もう一つ資料を提出して頂きたい。昨年の春、原子核研究に関する勧告書が学術会議から出ておると思うのです。その学術会談から出た勧告書を一つ提出して頂きたい。
  179. 川村松助

    委員長川村松助君) 午後の関係もありますから、この程度で休憩したいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 川村松助

    委員長川村松助君) 休想いたします。    午後一時八分休憩    ―――――・―――――    午後二時三十五分開会
  181. 川村松助

    委員長川村松助君) 只今より委員会を再開いたします。速記をとめて下さい。    午後二時三十六分速記中止    ―――――・―――――    午後四時九分速記開始
  182. 川村松助

    委員長川村松助君) 速記を始めて。   本日はこれにて散会いたします。    午後四時十分散会