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1954-06-03 第19回国会 参議院 農林委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年六月三日(木曜日)    午前九時三十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     片柳 眞吉君    理事            宮本 邦彦君            森田 豊壽君            江田 三郎君            戸叶  武君    委員            雨森 常夫君            川口爲之助君            佐藤清一郎君            重政 庸徳君            関根 久藏君            横川 信夫君            上林 忠次君            北 勝太郎君            河野 謙三君            清澤 俊英君            野溝  勝君            東   隆君            松浦 定義君            鈴木  一君            鈴木 強平君   衆議院議員            金子與重郎君            小枝 一雄君   国務大臣    農 林 大 臣 保利  茂君   政府委員    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    農林政務次官  平野 三郎君    農林省農林経済    局長      小倉 武一君    農林省農地局長 平川  守君    農林省農業改良    局長      塩見友之助君    農林省蚕糸局長 寺内 祥一君    食糧庁長官   前谷 重夫君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○蚕糸関係風害等対策に関する請願  (第二六五七号) ○桑園等の凍霜害対策に関する請願  (第二六五八号) ○国有林野払下げ等に関する請願(第   二六五九号) ○農林政策に関する調査の件  (報告書に関する件) ○食糧政策に関する調査の件  (報告書に関する件) ○継続調査要求の件 ○農業協同組合法の一部を改正する法  律案衆議院提出) ○農業委員会法の一部を改正する法律  案(衆議院提出) ○継続審査要求の件   —————————————
  2. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは只今から農林委員会開会いたします。  最初に請願陳情議題といたします。会期延長後付託になりました請願及び陳情はお手許にお配りしておきましたように、請願三件と陳情はございません。請願三件のうち、第二千六百五十七号及び第二千六百五十八号は、先般昭和二十九年四月における凍霜害被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法案採決の際の附帯決議同一趣旨考えられますので採択、第二千六百五十九号は、現行制度においては実行に問題があるようでありますが、趣旨は了解されますので採択することにいたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  4. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に、調査報告書の件につきましてお諮りをいたします。農林政策に関する調査及び食糧政策に関する調査につきましては、今国会調査を続けて参りましたが、未だ調査を完了するに至つておりませんので、調査未了報告書を提出いたすことになつておりますから、これを提出いたしたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なお、調査未了報告書内容等につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次に、委員長の提出する報告書には多数意見者署名を付することになつております。順次御署名を願います。   多数意見者署名     宮本 邦彦  関根 久藏     佐藤清一郎  雨森 常夫     横川 信夫  北 勝太郎     東   隆  上林 忠次     清澤 俊英  江田 三郎     野溝  勝   —————————————
  7. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に、継続調査要求の件を議題といたします。本院規則第五十三条によりまして農林政策に関する調査の閉会中の継続調査要求書を提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。   —————————————
  9. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に、農業協同組合法の一部を改正する法律案及び農業委員会法の一部を改正する法律案議題といたします。昨日の話合の次第もありますので、午前十一時頃までに大体討論採決をするということでお話合が付いておりますから、さような点を御了承願いたいと思います。なお、質問要求をされておるかたがお見えになつておりますので、開会時間が少し遅れましたので、十時半頃までに御質疑をいたして頂きたいと思います。
  10. 江田三郎

    江田三郎君 昨日の申合せというのは、これは私ども参加しないで皆さん申合せただけで、申合せされた皆さんのそういう御趣旨、お気持はよくわかりますが、皆さんのほうでそういうことをよくお考えになつてやられたらいいので、私どもとしてはお聞きしたいことはお聞きする、こういうことになるわけです。そこで私はこの二つ法案というものは、先日もちよつと申しましたように、これは日本農業政策根本に触れるものでありまして、戦後の日本農政基本というものが、一つ土地改革一つは自由な農民による農業協同組合、この二つが支柱になつて来たと、こう考えておりますが、それが今回の二つ改正法律案で行きますと、相当この日本農政根本に深い影響を来たし、或いは大きな変革が行われるというようにも解釈されますので、このことはお互いに農政関係するものとしまして、十分にこの検討をして行かなければならない。ただ時間がどうとか、或いは委員長もいよいよ任期があと一日というようなことだけでなしに、私ども日本の将来の農政のために一つ真剣に検討を加えて行かなければならん。こう考えるのでありますが、先ずその前提として、この二つ法律改正案に、議員立法であるものに対しまして農林大臣一体賛成なのかどうか、これは先般平野政務次官からは、この二つ法案というものは農林省考え方根本において大差ないというようなことも言うておられましたが、責任の大臣としてどういうような態度なのでありますか。
  11. 保利茂

    国務大臣保利茂君) この二つ法案に関しましては、御承知のように前二度に亙りまして政府提案として両院の御審議をお願いいたしたわけでございますが、いろいろの事情のため結論を得るに至りませんでしたことを非常に遺憾に存じておるわけでございます。今回議員側から立案せられました法案も、もとより局部々々におきまして相当又整備されておる点もございますけれども、大体の骨子におきましては、一応現状の下においてさしずめ整備を要すると政府としても考えておりました点につきましての立法でございますから、政府といたしましては、むしろ積極的に今日の段階におきましては両法案の成立を希望いたしておる次第でございます。お話農業団体あり方等につきましては、これはお話のように農業政策基本事項でございますから、昨日も申上げましたように、政府といたしましても更に十分な検討を加えまして成案を得たい、かように考えておるわけでございます。
  12. 江田三郎

    江田三郎君 私ども成るべくこの審議を早くやりたいと思いますので、廻りくどいことは抜きにして簡明直截にお答え願いたいと思います。もう一遍お尋ねしますが、この法案に対しては、従来の政府考えておることと大差ないから賛成だ、こういうことでよろしいか。
  13. 保利茂

    国務大臣保利茂君) その通り
  14. 江田三郎

    江田三郎君 そこでこの前回政府のほうが提案して審議未了になりましたものと、今回の議員提出のものと比べますというと相当な相違点があるわけであります。農業協同組合法のほうにつきましても、先ず第一に共済に関する規定はつきり出たわけでありまして、これは共済の問題につきましては、農業災害の小委員会もありましたし、又今後協議会もできる、こういうことになつて今後検討をして行かなければならんのでありますが、そういうことから検討するという段階になつておるときに、ここに前回政府案になかつたものがはつきり出て来るというと、これによつて一つの既成事実を作るということになつて、私どもはこういうことによつて、別途協議会作つて審議をするところの共済制度根本的な改正ということに対して、むしろブレーキになるのではないか、或いはその次に、この政府案と今回の議員立法と比べて見ますというと、農業協同組合役員選任制ということ、これは農業協同組合性格は申すまでもなく一人一票であります。これは基本的な性格であります。自由なる農民による農業協同組合、そうして出資如何によらず一人一票ということは、これは農業協同組合一つ原則でありますが、それが今回の改正で行きますというと、選任制がとられる、私はこれは大きな変革だと考えております。更に総代制に対しましても、この百人以上の組合というものが、今度五百人以上になつて来るというと、協同組合の一人一票という原則が相当変つて来るのではないかと思います。更に、その次の行政庁農業協同組合の設立の不許可をいたす場合でも、従来は定款又は事業計画内容が法令に反しない場合、こういうことになつておりました。今回の改正案によりますというと、ただそれだけでなしに、事業が健全に行われないで、公益に反する場合とか、或いは中央会の全部又は一部と同種の事業を行うことにより、中央会事業発展に支障ありと認めるときというような一つの問題が出て来ているわけでありまして、事業が健全であるかどうか、これはいろいろ判断があるわけであります。それがこの行政庁判断をして、行政庁許可、不許可をきめるということになりますというと、これは一体農業協同組合というものが、自由なる農民組織であるかどうか、ここに又私は農業協同組合の従来の性格と変つておるのではないかという疑問を持つわけであります。改正案そのものにつきましていろんな問題点がありますけれども、先ず政府案とこの議員立法とを比べるというと、農業協同組合あり方というものについて相当隔たりがあるように思うのでありますけれども、そういう点は一体どうお考えになつておるのか、又農業委員会法の問題にいたしましても、技術員の取扱い方というものが違つて来ておる、或いはこの政府案にありましたところの、食糧管理制度関係しての農業委員会仕事というものが、これが明記されていない、或いは又農地問題に対するところの農業委員会仕事というものが、町村段階では一つの従来の農業委員会という行き方をとるけれども県段階になるというと、これが農業会議の若干の委員によつて行われるということになると、これは従来のやり方と非常な変りがあるわけでありまして、その他いろいろ問題点がありますが、私はそういうような点を拾つて行きましても、政府案とこの議員立法との間には大きな開きがあると考えますが、政府のほうではそういう開きというものは大したことはないのだ、本質的なものはないんだ、こうお考えにならなければ、先ほどのような答弁はできないのでありますが、そういう御見解であるか伺いたい。これは大臣大臣としての答弁はあると思いますが、それぞれ本当に信念を持つて実務をやつているところの局長の人にも御答弁を願いたい。
  15. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 共済関係等において新たな事項が入り込んで来ておる、その通りでございます。併しながら、農業共済の問題につきましては、前々国会以来の政府及び国会と関連しての懸案になつておる、これは根本的に新たなる成案を得たいという希望を持つて検討を加えておるわけでございますが、今回の提案農協で行います共済事業に対する、共済事業を行なつておるわけでございますから、従つてそれに対する監督規定前回政府案として出しましたものに整備を加えてあるということで、およそ私ども著るしい相違考えておらんわけでございます。或いは役員選任につきましても、これはいろいろ御議論はありますけれども、実際問題といたしましては、多くのこういう事例も行われておるわけでございますし、協同組合運営からいたしましても、無論理窟を通せば江田委員の言われる通りだろうと思いますけれども、実際の事情から又見ますれば、私どもとしても異存を持たないのであります。農協農民の自由なる意思によつて農民の自主的にやらなければならん、そういう建前の下に、少し行政庁が入り過ぎやしないかというような御懸念は御尤もだと思いますけれども、同時に又農協運営農民自体利益公共的利益に非常に大きい影響がございますから、従つて所要監督を行なつて参るわけでございます。その健全性を保持して参るということは、これは農民自身のために私は極めて必要な事項であろう、これを要しまするに、原則的に政府考えておりまする方向と、この案は別に著るしい相違を感じておらないのであります。
  16. 江田三郎

    江田三郎君 局長答弁あとでよろしい、こいつはあとからもう一遍やりますから……。根本的に一つ考え方理念というものをはつきり承わつておきたいのでありますが、一体農業協同組合再建ということが問題になつておる。多くの農業協同組合は非常に苦しい立場になつておる、これは私が言うまでもないところであります。そこでそういう農業協同組合を本当に再建するのにはどういう考え方でやるのか、上から何か与えさえすれば、上から監督さえして行けば農業協同組合というものはよくなる、こうお考えになつているのか、どうも私はこの法案に流れているもの、或いは最近の政府のやつておられること、或いは最近の議員立法として出て来るもの、こういうものの一貫して流れているのは、農業協同組合というものはもう一人立ちはできないのだから、上から何か与えてやらなければならん、そして上から与える以上監督してやらなければならん、放つておけないのだ、上から上からという行き方をとつているように思われますけれども、そういうようなことが、本当の正しい農業協同組合育成強化することになるのかどうか。この指導態勢の確立にいたしましても、指導農業協同組合というものを農業中央会議に切替える。併し農業中央会議に切替えて何が変つて来ますか。金を与えるということが変るだけでしよう、そうして行政機関監督権というものが変るだけでしよう。実際にこの提案者は、一週間に一遍ずつ各単協帳簿くらい見るようなことをしなければならんと、こう言つておられますけれども、なかなかそんなことは簡単にできるもんじやない。併し帳簿を見るとか、金を与えるとか、監督をするとか、その前になぜ一体指導農業組合が今日この救いがたい状態に陥つたかということについて本当に反省があつたのかどうか、又これは政府だけでなしに、農業協同組合関係者諸君が本当にその反省をしているのかどうか。その根本的な反省を怠つて、ただ法律の庇護を求め、或いは補助金に援助を求めるならば救いがたいことになるのじやないかと思いますが、一体農林大臣は、農業協同組合再建ということはどういう理念でやろうとするのか、それをはつきりして頂きたいと思うのです。
  17. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私の考えには御批判があるかも知れません。無論御批判があるのは当然でございますが、私の考えは、今日の日本農家の実態から言いまして、結局その協同組織を強化して行かなければ発展向上を期待することができないという宿命的な条件の下に置かれておるわけでございますから、従つて相協同して発展を期して行くというその趣意から協同組合というものは運営されなければならんと存じますけれども理窟はいろいろあろうと思いますが、私は農業協同組合運営に預かる役職員に真に奉仕的な人を得るということがもう根本だと思います。理窟を幾ら付けてみましても、人を得なければ決して協同組合というものは健全な発展をして行くものじやない。同時に又協同組合にいわゆる政府のほうが或いは権力的に、或いは多少官庁的な指導と言いますか、上から何か与えて、そうしてこれを引張り廻すというような考えは私は持ちません。併しながら、今後の、今日もそうでありますが、今後の農業施策というものはどうしても協同施設と申しますか、それを通じていわゆる保護助長政策をとつて行かなければならないという上から行きましても、農業協同組合の健全な運営が行われて行くということでなければ、政府農林政策もその実効を挙げることができず、同時に農民利益を確保して参るということはできないであろうと、私はそういうふうに考えております。
  18. 江田三郎

    江田三郎君 私この提案者であるところの金子さんの信念金子さんのなさつていることに対しましては敬意を表しますけれども、ただ私どもがこの法案から受けるところの印象というもの、それから先だつて金子さんがこの委員会答弁しているところ、大臣答弁されているところ、そういうものから一貫して受ける印象は、余りにも農業協同組合現実の中のほうへ飛込んでしまつたのじやないか、そこで日本農政というものをもう一遍上から大きく眺めるということができなくなつてしまつたのじやないか、現実がこうだ、現実がこうだと中へ閉じこもつて立木は見えるけれども、山が見えなくなつたのじやないか、こういう印象を私は非常に強く受けるわけです。一つ一つ立木の欠陥はわかる、そればかりに目が行つて日本農政根本というものをどこへ持つてつたらいいのか、こういうことについて大きなミスを来たしているのじやないかと思うのでありまして、こういう点は私は委員長にも一つお願いしたいのでありますけれども委員長としては最後の日でございます。併し最後の日であるだけに、委員長としても日本農政をどうするかということについて、今まで御苦労をなさつた委員長として、輝ける片柳農林委員長として、輝ける片柳さんとしてよくお考えを願いたい。今、大臣農業協同組合というものは人の問題だと言われますけれども、若し本当にそういうことを考えておるのなら、一体この法案を受入れるところの農業協同組合人なり、或いは農業委員会諸君なり、その他の団体はどういう気持でこれを受入れようとするのか、少くともこの委員会におきましては、それらの諸君心構えを一遍でも聞かずに……、我々はこういう諸君心構えに多くの疑問を持つている。若し人の問題だと言うのなら、これらの団体関係者はどういう気持でこれを受入れ、どういう気持でこれに従つてやろうとするのか、この心構えだけは私は当然この委員会で聞かして頂きたいと考えておりますけれども、それも必要がないのだ、こうお考えになるのなら仕方がありませんが、大臣答弁からしても私は当然そういうことがなければならんと思うのであります。一体農業協同組合にとりまして、先ほど私も触れましたところの選挙が選任制になるとか、或いは加入脱退の自由が少くとも全国中央会については当然加入になるとか、或いは行政機関監督が非常に強化されるとか、そういうことは、農業協同組合について我々が従来持つて来たところの理念というものと根本的に食い違つておるわけです。現実は身動きができんのだから仕方がないのだということで、根本的に理念違つた考えられるものを若干の補助金なり、定期預金がどうとか、或いは共済事業がどうとかということで、それだけのために農業協同組合の中核になる諸君が引換えにこれを受入れるということならば、私は農業協同組合関係者のそういう理念で一体何ができるのかということを非常に疑問を持つわけです。今まで政府としても信念を持つて農業協同組合育成強化に当つておられると思いますけれども、これは一体農業協同組合指導理念というものを根本的に変えるとは思つていないのです。現実だから仕方がないのだ、立木は見えても山が見えないと、そういうことであなた方はもうそこへ落込んでしまつているのだ、協同組合関係者は与えられる何かと引換えに自由を渡すのか、農業協同組合指導理念というものをここで諸君は捨てるのか、委員長はそういうことについて十分な審議をしないで、何でもかんでもこの法案をまとめることが委員長として最終の日の有終の美を全うされるとお考えになつているのか、それぞれの御答弁をお願いしたい。
  19. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私も個人としましては、又今日の立場からいたしましては、当然のことでございますけれども、無論すべての施策を進めて参ります上に現在の事情がどうなつておるか、その事情というものがやはり尊い歴史の上に立つて来るものでございますから、これはもとより尊重してかからなければなりませんけれども、同時に絶えず大局から反省をして見直して行くという考え方は私も全然同感でございます。そういう考えでおります。人の関係について、私は結局人間のやることだから、それぞれ持場々々に適当な人を得るということが、私どもの小さい見聞にいたしましても、或る協同組合は非常によく行つている、或る協同組合は破綻に瀕しているというような事例を私の足許においても見まするわけで、そういうところはいろいろの理由はありますけれども、結局協同組合運営して行くのに適当な人を得ておるところは割合にうまく運営行つている、そういう上から私は人を得るということが非常に大事である。極端に申しまして、戦後の混乱時に必ずしもそういう意味から遺憾のない状態ではなかつたわけでございますけれども農民自体の自覚、協同組合に対する農民自体考え方というものがかなり徹底して参り、結局自己農業協同組合を通じて自己立場を守り、利益を守るということは、取りも直さず協同組合が健全に運営される、それにはよき人を得るということでなければならないという意識はかなり変化して参つて来ておる。そういう意味から私は無論掌を返したように、どこもここも完全な姿だとは無論申せるものではございませんけれども傾向といたしましては、そういう傾向に今日は立つているというように考える、又そういうふうに私どもも心得て行きたい、かように考えております。
  20. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 委員長としての私に御質問がありましたので、私から私の考え方について申上げてみたいと思いますが、江田さんの御意見の節については私は個人としては非常に同感する点を多々持つております。ただ委員長といたしましては、昨日もできるだけ審議を尽す意味でいろいろ努力をいたしまして、十二時までいろいろ斡旋をいたしたわけでありまするが、ああいうような情勢下におきまして、遺憾ながら昨日審議の時間ができませんでしたことは遺憾に存じております。その結果先ほどお話いたしましたように、ここに待機をされておられました委員各位の多数の意見もありましたので、本日けりを付けたいというふうにお話がきまつたわけであります。併し私も冒頭に申上げましたように、当初の話でありますと、十時頃から討論採決に入りたいということでありましたが、できるだけ時間を割愛いたしたい意味で、開会の時刻も遅れましたし、十時半というふうに私は時間をできるだけ割いたつもりであります。その辺の点を御了承を願いたいと思います。
  21. 江田三郎

    江田三郎君 大臣答弁も私の聞かんとしているところとまるで離れたことを言つているのです。委員長の御答弁委員長の御答弁として、私は時間がどうとかこうとかいうことでなしに、委員長としての心構えが聞きたかつた。本当に日本の農村を何とかしなければならんというなら、私は昨日どうであつたとか、或いは今日何十分であるとか、そういうことじや問題が違うと思うのです。併し私はそういうことをもうそれ以上聞きませんけれども、この改正案というものは、農業協同組合の従来の基本理念に照らして見ますと、相当、相当でなしに、一つ変革じやないかということを私は感ずるのだけれども、それはそうではないのか、そうはお考えになつていないのか、そのことを私は聞いているわけなんです。
  22. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 農業協同組合基本的なあり方について考えを変えて来ているという考えは毛頭ございません。
  23. 江田三郎

    江田三郎君 まあそういう答弁しかできないだろうと思いますけれども、若し本当にこの農業協同組合というものを考えたら、そんなものじやないと思います。ただ併しこれは二つ考え方があると思います。終戦後我々が持つた農業協同組合というものは日本にこれは適しないのだ、そういう考え方でこの基本理念は変えなければならないのだ、こういう立場一つあると思います。それと終戦後我々が持つた農業協同組合というものは育てにくいけれども、これを育てて行かなければ農業協同組合にはならんのだ。協同組合の本質というものはやはり終戦後我々が持つた協同組合の精神なんだ。これは非常に大事業であります、難事業であります。併しながら、これは本当に辛抱強く努力を重ねなければ農村を新らしくするということは、補助金でできることでもない、法律でできることでもありません。非常にむずかしい仕事金子さんもその体験をなさつたでしようし、我々の清澤君にしても、野溝さんにしても、長い間苦難の中を闘かつて来た。それを忘れたのじやないかと言いたいのです。局長どうだ。
  24. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 先ほどのお尋ねは、今回の議員提案の両法案趣旨と、この前の政府提案根本的に変るか、変らないかということに関連するお尋ねだと思うのです。大臣或いはこの前政務次官から根本的に変つていないというお答えでございますので、私もそういうように存じます。私が併しそういうお話を私なりに解釈いたしますると、こういうことだと思います。この前の政府提案根本的な考え方は、一つには協同組合の経営を刷新するということ、もう一つは、農民の、何と言いますか、利益代表機関と申しまするか、そういつたような機関を整備する、もう一つは、技術指導について制度をもつと徹底強化する、こういう三点だつたと思うのであります。従いまして、この前の政府構想よりも今回の議員提案が変つたかどうかという点は、その三点の構想が貫かれているかどうか、こういう点に政府としては考えるべきじやないかと思うのであります。その点から行きますると、一つ技術員の問題がいわゆる棚上げになつているという点から見て、私は正直に申しまして、その点は確かに大きく変つている、こう言わなければならんと思います。爾余の点については変つていない、根本的に変つていないというのは、恐らく他の二つの点において変つていない、こういうことを言われているのだろうと思います。それから江田委員お話は少しこれは観点が違いまして、協同組合法の制定以来の協同組合原則というものが今回の議員提案によつてつて行くことになりはしないかというお尋ねでございますが、これもその協同組合原則というものを法律制定当時の原則ということに厳格に理解するならば、私はやはり若干変つて来ておる、こう思うのであります。
  25. 江田三郎

    江田三郎君 大臣答弁とは違うとか、どうとかということは問題ではない。若干違うのじやないのです。僅かばかりの補助を、それも一体出るか出ないかもわかりやしない。八千万円の金というものは、これは政務次官が何と答えようと、大臣が何と答えようと、予備金からの支出はできません、これは……。予備金から支出をすれば財政法違反なんです。これは補正予算でやる以外にない。或いは農業委員会に対する金にしても、行政機関に対する金を法人に出すことができるかどうか、これも問題なんです。併しそういうような当てにもならん金と引換えに、或いは又共済事業や何かと引換えに、農業協同組合指導理念というものを諸君は今ここで売渡すことになる。これは農業委員会についても同じことが言えるわけです。一体農民利益代表機関というもの、国がその経費の大部分を負担するところの農民利益代表機関というものがあり得るとお考えになつているんですか。
  26. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 無論全国の農民農業協同組合発展のために、或いは農政活動のために、相当の資金を要することはこれはもうわかりきつたことです。それを今日の零細な農家が負担してやり得るかどうか。そうして又公共的な活動を促して行くために国が或る程度の必要な助成をしたからと言つて、それでいわゆる自由自主性というものが損われて行くというように……、それはそういうことがないほうがいいかも知れません。いいかも知れませんけれども、全部のものを農家が負担し得ないという現状の下においては、それを望むことも無理じやないが。私はそう窮屈に考えなくてもいいじやないかということです。
  27. 江田三郎

    江田三郎君 説明はどうにも付きますけれども、本当に農民利益代表の役割を果す機関なら百姓だつて金は出します。一俵の米の中から一合ずつの米を出し合つてもこういう運動はできるのです。これらの機関が本当に百姓のために役に立つてくれるなら何が一合の米が惜しいでしよう。そういうようなものを、下から育てようということをなぜやらさんかと言いたい。あなたはそういう答弁を平然とできますか。
  28. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 先ほどから江田さんは、何か政府が育てるとおつしやいますけれども農業協同組合は、これは組合員自身が育てて行くほかに育てようはありはしません。外から、組合がやろうとすることに対してですよ、或る程度政府が農村のために公共のために必要止むを得ざるところの助成をやつて行くことが相関連して農協の育成ということになるならば、それは望ましいことだと思う。私は本来は、やはり農業協同組合に対する農民の自覚と意識によつて育て上げられて行かなければならんという考えを強く持つておるものであります。
  29. 江田三郎

    江田三郎君 まあ大臣答弁は、私どもとは全く違つた立場で言つておる。併しそういう答弁をなさる中にも、恐らく私は大臣としても腹の中で何か考えられておるものがあると思う。一体こういう農業会議所ができて、例えば建議をしてみたところで、あなた方はそれを聞きますか。今まででも中央農業会議がある、農業復興会議以来、いろいろ農業団体としては一丸になつて運動しておる。それらの要請に対して農林省は一体何を応えられて来たのか、そうして今度は丸抱えか何か知りませんけれども、たくさん金を出してもらつて、そうして我々は農民利益代表機関だといつて諸君は一体今度は何を運動する気なのか、ここに出て来ておるところの方針というものは、結局農業協同組合なり、農民団体なりというものを大きく官僚支配の枠にはめ込んでしまう。法案の制定者の意図はそうではございますまい。法案の制定者は、農業協同組合の行詰つた状態を見るに見かねて、何かしなければならんということでおやりになるでしよう。或いは農業委員会にしても余りにも欠陥が多い。この上七月に選挙をさしてもう一遍任期を与えたらどうにもならん、何とかしなければならんということでおやりになるでしよう。併し法というものは、一度生れるというと、提案者の意図と離れて動くんです。これを使う人々は提案者気持通りには使わないでしよう。これは日本の全体の情勢がどう動いて行くかということによつて、それぞれの立場でそれぞれ使われるのです。日本の情勢が大きく反動化して行くときには、この二つ法律というものは、提案者の意図とは違つて、その反動の大きな流れの中に使われて行くんじやないか、そういうことを提案者は御心配なさつたことはございませんか。
  30. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 今度の協同組合法の改正の、例えば役員の選挙の原則はそのままあるが、別途選任規定を設ける場合にはそういうこともなし得るという点、或いは監督官庁の監督権の強化、こういう点を取上げましたときに、今の協同組合に対して一つの逆コースをとつて行く方向に入つておらないか。それからこれが提案者としては一つの常識的な気持現実に近く考えたとしても、時代そのものの流れが非常な逆コースに入つたときに、それに必要以上に弊害ができやしないか、こういうふうなお尋ねだと存じますが、その点私も相当官僚独善の支配になることに対しては、曾つて自分たちも苦い経験を持つてつておりますので、その点はこの問題を考えるについても常に考えておりましたことは事実であります。併しながら、いろいろの要素、いろいろの現実から考えまして、一応この程度で行くよりほかない、こういうふうな結論になつたわけであります。なおこの点につきましては、江田委員が非常な熱意を傾けて信念的にお考えになつている重大な問題でありますので、提案者の心境を話せと、こういうお話もありますので、少しく附加えて提案者のこの協同組合の自由の原則に対する問題について申上げたいと思いますが、実は曾つて、今の協同組合よりも少しは束縛があつたのでしようが、それにいたしましても、曾つての産業組合からあの戦争中農業会に移りましたとき、あの農業会が全く農民の自由と自主性を失いまして、一つの戦争遂行の上の制度と経済的な機関というような形に追い込まれましたときに、提案者は非常に長い間そういう仕事に携わつて来たにかかわらず、ここまで自由を奪われ、ここまで行くならば、あえて我々はこの仕事に携わる資格がないといつて、涙を呑んで一切退却せざるを得ないということで、あの強権が発動されたときはやめなければならんというほど、私個人も、農民運動が制度化し、圧制的に上から被して行つたときには自主性は全くなくなるということを体験しているのであります。それだけに今度の問題も非常に注意して考えているわけであります。ただ一つ、それならなぜそういうふうにやつたかと申しますと、日本農業協同組合組合員のための組合という自由の原則に立つていると同時に、日本の農村の農業経営が一つの商品、生産企業として引合わない宿命的な一つの地域的な集団の形に農村がなつている、集団地域を以てその地域協同体としての性格を実質的に持つているのじやないだろうか、そして而も協同組合はそういうふうな上に、現在協同組合に課せられている仕事組合員自体の経済或いは生活をよりよくするということと、それからややともすると、その地域の経済機関というような形の役割も好むと好まざるとにかかわらず課せられている。そうすると、そこに一つの若干の機関的な性格を持つている、又地域的な一つ性格を持つている。そういう場合に、単に加入の自由というだけで行きまして、今度は実例といたしまして、一つの村に三つの協同組合ができるとか、二つできるとか、これは加入団体の自由から来るのでありますから、これは何も差支えないと思いますけれども、実質的に結果から見たときに、そういう村が非常にいい結果が来ないという現実を見ましたときに、或る程度の一つの方向というものは持つべきじやないだろうか。これはそういうことが強過ぎると、只今江田委員の非常に御心配になつているところの危険が出て来るのでありますが、ところが私はこの日本協同組合運動が現実というものから離れて、大きく理想に入つたというときに、そこに又問題が起るだろう。といつてその現実だけに妥協して、そうして逆コースをとると、たまたま今お話のような役人たちの事大主義に押されて行く、そうして又元も子もなくなるというようなことになる。このところが一番私の心配なところであり、又その点に対しては、この提案をいたしまするに対しては、一応時代逆行じやないかというそしりを受けやしないかということを考えながらも、現実的には一応この程度のことをすべきだ。こういう結論に入りましたので、この程度の改正をいたしたいと、こう考えたわけであります。
  31. 江田三郎

    江田三郎君 まあ金子さんはいろいろと御体験なさつて、見るに見かねてこういう法案を作られたと思いまして、金子さんのお気持には私は心から敬意を表しますけれども、併しこれは大変に危いことです。誰も戦争時代の反動があそこまで行くとは思わなかつた、併し一つ堤が切れるともうどうにもならんようになつてしまう。而も私が憂えるのは、金子さんのようなお気持の人が今の農業団体に何人いるか、これを受入れるところの農業団体は、農業協同組合諸君は、そういう一つの自由を守る抵抗の精神がどこまであるのか。若しそういう精神が本当にあるのなら、こんなことをしなくても中央会のような仕事は自然と盛上つて来ているわけなんです。農民利益代表機関は国から金をもらわなくても、百姓の一握りの米で成立つているはずなんです。この現実を我々見なければならない。そうして日本の大きな方向がどこに行くかということを見なければならん。警察法案がどうなりましようとも、或いは防衛関係法案がどうなりましようと、これに対しても我々は大きな関心を持ちます。併し長い間農村に関係したものとしては、この農村でまで第一の堰を切られることに対しましては黙つておれないのです。何年かのちに私どもは再び、金子さんが農業会で苦しまれたその体験を持つのじやないか。むしろ私は曾つての産業組合の運動をやつた諸君、それらの諸君にはバツク・ボーンがあつたと思う。わらじばきで村の中を駆けめぐる精神があつたと思う。併し今はそういうバツク・ボーンが一体どこにある。私が今申しましたことは、私が感情的に誇張して言つているのでないということを裏付けるためには、法律の条文の個々について逐条審議を要求したいと思います。そこで私の総括質問はこれで終つておきます。
  32. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) ちよつと速記を止めて。    午前十時二十九分速記中止    —————・—————    午前十時五十一分速記開始
  33. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を始めて……、休憩いたします。    午前十時五十二分休憩    —————・—————    午前十一時八分開会
  34. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは委員会開会いたします。  総括、逐条両面に亙りまして更に質疑を続行いたしまするが、先のお話合の結果によりまして、時間を限定いたしまして進行して参りたいと思います。お話合の結果は、社会党第四控室が四十分、社会党第二控室が二十分、松浦さんのところが十分ということに質問時間が決定いたしましたので、この範囲内で御質疑をお願いいたします。
  35. 松浦定義

    ○松浦定義君 本二法案審議に当りまして、農林大臣、又提案者等について今日まで質しましたところ、まだこの法案が成立いたしましても、内容についての細かい点はお尋ねいたしましても、十分納得するような点はなかなか時間の関係上出て参らないと、かように考えまするので、私は機構の問題が如何に改善されましても、一番問題となるのはそれに伴う予算だと、かように考えますので、主たる中心を予算の点についてお尋ねいたしたいと思います。本法案審議される衆議院の農林委員会におきましても、いろいろ御意見があつたように思いますし、更に又参議院に参りましても、過般いろいろ審議をいたしましたが、本年度これが成立いたしました場合における予算、即ち農業協同組合法の一部改正に伴いまして、中央会に対し補助すべき予算が法の七十三条の八に規定しておりまする「一部を補助する」というこの「一部」の限界でありまするが、この「一部」というものは政府原案を出そうとしたときに考えておつた予算、即ち八千数百万というものを大体基準にして一部と考えられるのか、この情勢の変化によりまして、これは飽くまで相当殖やす予定があるのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  36. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) 協同組合中央会等に対する補助金の問題でございますが、これは政府提案のときに計上したといつたようないきさつもございまするし、又今回提案法律趣旨もございまするので、前例に準じて適当な機会に考える、こういうつもりであります。
  37. 松浦定義

    ○松浦定義君 まあ適当な機会に考えるということも一つの方便だとは思いまするが、私どもはやはりこうした問題は議員提出なるが故にどうしてもはつきりしておかなければならん、従つて先ほど江田委員も申されておりましたように、この出し方をどうするかということが問題になると思うのですが、恐らく私の考え方としては、理由の如何を問わず補正予算を組まなければならん、こう思うのですが、今までの答弁あり方から見ますと、補正予算を組むということは言わない。併し何らかほかに名案があるのじやないかというような非常にデリケートな御答弁だと思いまするが、私はいずれの場合に出すということは別といたしましても、少くともこの法案運営に対していささかの支障を来たさないというようなことで私はお伺いいたしたいのですが、ただ私の考えまするのは、この一部というものは、例えば先ほども申上げましたように、八千数百万というようなものを考えておられるのかどうか、この点をもう一回御答弁願いたいと思います。
  38. 小倉武一

    政府委員(小倉武一君) ここで金額についてどうこうということを申上げるわけには参りません。
  39. 松浦定義

    ○松浦定義君 それでは提案者にお尋ねいたしまするが、提案者はやはり今のような政府答弁で以てこの法案を我々に審議し、更に又関係団体をして納得せしめるというような御意思であるかどうか、更に又提案者としてはどうしても前回予定されたようなものは、この際どうしてもこれは必要であるというふうにお考えになるかどうか、この点を一つ提案者の御意見を承わりたい。
  40. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) この計画が今年度限りで終るものでもありませんので、若し補正予算なり何らかの機会がありまして、適当な時期に提案者としまして、およそ前回において政府提案した通りの程度の予算は恐らく組めるであろうということを期待しておるわけであります。
  41. 松浦定義

    ○松浦定義君 まあ大体提案者も相当御努力になつておられまするようですから、恐らくこの法は運営には一応支障はないと思いまするが、そこで私はお尋ねいたしまするが、現在我が国におきまして、この農業協同組合が自主的組織であるという意味合から、一町村におきましても二つも三つもの団体ができておる。従つて全国の単協数は現在約三万四、五千あるというように聞いております。更に又それらを中心としまする連合会は一千一百有余である、従つて今回中央会ができましたが、少くとも五、六十の中央会ができるということになるのですが、今の八千数百万を五、六十の中央会或いは又千百内外の連合会に配分いたしまして、この法案の示すところによる活動をしようといたします場合におきましては、先ほど江田委員も御指摘になりましたように、私の推計で行きますと、例えば北海道等におきましては二十二万の農家がある、従つてそのところへ或る程度の配分をいたしますると、大体千百五、六十万ぐらいの金がなければいかんのではなかろうか、そうしますると、一戸あたり大体七、八円から十円といたしますれば、二百二十万要るわけですから、そのような金を政府が出す、或いは政府が出してくれるから、我々は今度の中央会というものについて、本当に農業委員会法の一部改正と関連いたしまする都道府県の農業会議或いはそれが上へ行つて全国農業会議所と、こういうところへ、自主的組織である農業協同組合団体がそういうところへ入つて行つて、先ほど江田さんがいろいろ根本的な問題で指摘されたような形の指導ができるというふうに当事者がお考えになるということにつきまして、私はいろいろ考えたい点があるのですが、そうした根本的な問題は別といたしましても、単なる今申上げたような北海道の実例を申上げまするならば、一戸当り七円前後のものを政府が出してくれるから、我々の農業協同組合の代表もこの農業会議或いは農業会議所に参加して、日本農業のあり方について政府考えておるということを、この際根本的に一つ協力しようというような心構えになれるか、なれないかという点につきまして、政府は今私の申上げました点について自信を持つてこの法案を出し、更に又農業協同組合或いは農業委員会等のこの両法案が、私のお尋ねするところのどれを主とも従とも言えない、両方とも重要なものであるというようなお考え方から万全を期せられるとお考えになつておるかどうか、この点を一つ農林大臣から御答弁を願いたいと思います。
  42. 保利茂

    国務大臣保利茂君) この法案が若し成立することができますれば、所要の予算措置はこれはもう必然的に講じなければならないわけでございますが、今日はまだ政府内部におきまして、さような準備はいたしておりません。ただ先ほども江田委員にお答え申上げまするように、協同組合農民自体農民のための組合なんでございますから、従つてその所要の経費というものは当然農民が負担せらるべきことは当然なことであります。ただ全体の利益のために零細な農家が負担するにふさわしくない、そういう活動面についての助成措置を講じて参るということで取扱つて参りたいと、かように考えております。
  43. 松浦定義

    ○松浦定義君 農業協同組合というものは自主的に作りましたので、決して政府の御用機関にもなりたくなければ、或いは又みずからが作つた組合を他の団体から批判されるような形にありたくないというようなことは当然でありますが、この農業というものは御承知の通りに、現在の日本におきましては他の産業に最も私は優先する施策を行わなければ立つて行けないものであるという意味合から、先ほど江田委員政府からさような金をもらうこと自体が協同組合の本旨を失うものであるというふうにお考えなつたと同じように、私もその考え方については全然同感でありまするが、只今農林大臣は自分の組合は自分の負担によつてそれをやるというような努力が欲しい、これはもう当然でありますけれども、只今の農業というものは、農民のそうした精神的な力だけではどうしても回復ができないというような意味合から、やはりどうしても政府は或る程度の施策を尽して、それに万全を期さなきやならんという意味合から今度の法案の一部改正も私は出て参つたと思うのです。そういう意味合から只今の御答弁では全く私は満足ができませんが、そこでもう一点私は今度の農業委員会が活溌な運動をする場合には、どうしても過去におきまするいろいろな諮問的な機関であつてはならない、どの程度の力をこの農業委員会に与えられるかということにつきまして、私は現在の政府考え方、即ち農林大臣がいろいろ申されることよりも、私はここに第十九国会の総理の施政方針演説に対しまして、殊更今年の方針には北海道を中心とする開発計画に対して最大の努力を尽すために専任大臣をおいたというようなことから、そういうような方針の中に北海道の開発は必ずしも私は農業を離れた開発はない。従つて北海道の開発のためには北海道の人口を少くともここ暫らくの間に八百万にしたい。従つて内地の次男、三男を中心として北海道へ移住せしめたいというような気持が十分そこにあつたと、かような考え方からこの総理大臣の施政方針を、私はどういうように今度の農業委員会をしてさせしめるかということについて農林大臣の御所見を承わりたいと思うのでありますが、こういうふうに言つているのであります。「財政圧縮を前に当然に考えられるのは食糧問題であり、経済自立の基盤を培うためには、総合的な食糧自給度の向上を図ることは急務中の急務と存ずるのであります。政府が過般北海道開発に関する専任大臣を任命した一つの理由も、以上の観点から国の関心をより強く北海道開発に注がんとするものにほかなりません。一面、政府は、農地の改良、営農技術の普及改善等、従来の方針を更に強力に推進すると共に、近時国民的食嗜好の変遷の傾向に鑑み、この際、積極的に米食偏重の食生活を改善すべく鋭意検討を進めたい」、そこで私はこの営農の技術の普及改善、こうしたようなものを更に推進したいというために今度の農業委員会法の一部改正をなされたのかどうか、この点を一点承わりまして私の質問を打切りたいと思うのであります。
  44. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 北海道開発の国民経済における重要性ということは、これはもう施政方針で明らかにされておる通りでございます。政府はその考えでおるわけでございますから、全機能を挙げて困難な条件の中にその実現に努力して参りたい考えでございます。
  45. 松浦定義

    ○松浦定義君 時間はないですか。
  46. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 時間が切れましたから、次お願いします。
  47. 清澤俊英

    清澤俊英君 先ずまあ一番先聞きたいのは、この予算の問題です。今もちよつと出ましたか、簡単にお伺いしますが、大体幾らくらいもらつたらいいと思つてこれがきまりましたか、その額であります。
  48. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 協同組合につきましては、この法案が当初提出されたときに、大体八千万円程度の助成が組んであつたと存じております。私はこの助成というものがあるからやる、ないからやらないという、それほど助成だけに頼つたものの考え方はしておりません。勿論助成はすべきだという考え方の上に立つておりますが、大体八千万円程度のものであると思います。
  49. 清澤俊英

    清澤俊英君 それで地方組合、地方の県中央会、この分はどういうふうになるのですか。
  50. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) これは国のほうでは、中央会に対して主として国自体が行政的に行うべき性格を持つている組合指導経営というような、その事業をやることを条件にしてその程度の金を出し、そうしてそれをどういう分野に使われるかというと、これは当初の政府考え方は中央団体に千七百万円、地方へ六千三百万円というのが大体この前の当初の政府考え方でありますが、概略その程度において、昨日答弁いたしましたような末端までの組織機構ができる。勿論末端の組織まで充満せしめる、これだけで足りるかということでありますが、勿論これはこの法律にはありませんが、実施した暁には末端の町村の部会というような制度が、或いは支会というような制度ができて、それと相待つて完璧を期したいという考えであります。
  51. 清澤俊英

    清澤俊英君 足らんところはやはり……。(「清澤さん、我々に聞えるように言つて下さい」と呼ぶ者あり)足らん部分は賦課金か何かでやるのですか。
  52. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 賦課金をいたします。賦課金に対しては監督をいたしまして、余り苛酷な負担金をとることに対しては、相当厳重な考え方をそれに加えたいと考えております。
  53. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体どれくらい足らんと思うのですか、あらかじめ足らんところは……。
  54. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 大体におきまして、末端の例を申上げますと、この監査、経営経理の指導のために末端組合が必要であるところはより多く経費を出しても、その仕事の補助職員というものを多く雇う、少くていいと信ずるグループにおいては少くても認める。従つて全国的にこれを幾ら幾らということは制度としてはきめないつもりであります。それは細かく申上げますと、末端の組合で、仮に郡グループ程度のものに、その地方へ出しました六千三百万円に対する助成職員は、一人ずつそれに対する補助職員というものを付ける、その補助職員を仮に二十五の組合で五人付けるというと、五つの組合で一人の人件費、いわゆる五つが共同して経理監査、経理の職員を五人で一人の者を持つという程度の、一つの例としてはその程度の負担になる、こういうふうに考えております。
  55. 清澤俊英

    清澤俊英君 経理経営監査と言われますが、経営はどういう面までのことを言われるのですか、経営の意味合は……。
  56. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 経理上から来る経営の問題でございます。
  57. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうしますと、大体組合内部の会計を中心にした取締り、これだけの意味ですか。
  58. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 取締りというと語弊がありますが、やはり指導であります。
  59. 清澤俊英

    清澤俊英君 その指導をこう帳面につけえ、ああ帳面につけえというやり方は、どうも穴が出るからというような事務上のものが中心でしかないと思うのですが、それで間違いないですか。
  60. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) その通り
  61. 清澤俊英

    清澤俊英君 それも必要でありましようが、少くとも先般の提案せられたときのお話では、農村における指導までやると、こういうようなお話になつておるが、それは実際できないと思うのです。そんな僅かな範囲ならこれは問題でないと思うのですが、それはそれでようございます。理窟は抜きましよう。その次にお伺いしたいことは、こういうものを付けられることによつて、末端組合では或る程度迷惑だと思つておる面が非常に多いと思うのです。経費がかかつて面倒臭くてと言うて来るだけだ。その点に対してどうお考えになりますか。
  62. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 迷惑なところにそういう経費をおかないで、そういう補助職員をおかなければ、上からの助成された職員だけでやる範囲で間に合う自信があつたらそれでやる。併しそれをおくことによつて組合指導とは言うけれども、むしろお手伝いの形におけるところの指導でありますので、私の知る範囲の面においては大体において迷惑だという考え方を持たないようにやつて行きたいと思いますし、私はそういうふうにして指導でき得る自信を持つております。
  63. 清澤俊英

    清澤俊英君 今のね、指導連がどういうわけで崩壊していつたか。
  64. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 今の指導連が崩壊というと極論でありましようが、弱体化して、殊に負担金の徴収が困難になつた一番の理由は、指導連の仕事が直接経済に影響のない問題を主として取上げておる、そういうものにつきましては、この場合だけでなく、いつもほかの場合におきましても直接経済関係に出て参らない、例えば来年とか、将来のよりよくなるという方面の指導につきましては、技術指導もその一つでありますが、そういう面におきましては、一般農業団体の系統機関のいずれも負担金の徴収が困難になるというのは、指導連のほかにも例がありますので、それが先ず第一の原因、第二の原因といたしましては、指導連の間口が非常に広い、従つてその徹底が末端まで届かないきらいがある、そういう点が主な原因であると思います。
  65. 清澤俊英

    清澤俊英君 先ずですね、こういうものについてやられなければどうしてもならないという基本的な、帳面が不備であるとか、経理が誠にへたであるというような不良組合と言われるものがどれくらいあるのですか。
  66. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 不良組合ということを、抽象的にどの線で不良にするか、どの線で満足であるかということを私どもは言及することは非常に困難であります。併しながら、一つの例といたしまして、恐らく今日厳重に申しますると、経済団体でありながら、資産表のトータルと補助簿の帳尻が完全に合致しておることが建前でありますが、それが合致しておる單位組合というのは恐らく半分ぐらいもないと思います。
  67. 清澤俊英

    清澤俊英君 そこでですね、この間から私はあなたにお伺いしておるが、これだけで農業指導というものがよろしいのかどうか。
  68. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 私は農業の指導全般に対してこの問題でお答えしておりませんので、協同組合の経営というと、それに関連した教育啓蒙ということを、例えばこの中央会の法文にあります事業の項目、この範囲のことを考えておりますし、その中でも主として第一から第三の問題に対して主力を注ぎたいということは数回御答弁申上げた通りであります。
  69. 清澤俊英

    清澤俊英君 提案者は大体組合整備強化並びに非常にたくさんできておる組合を、又そういう線の統合整理というようなことまで考えておる、こういうお話があつた。この予算で果してできるかどうか。
  70. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) この予算は、組合の整理統合を直接この予算とこの人とでやるのでなしに、問題は経営の合理化、それから監査或いはこれらの仕事をやることによつてこれらのものを能率的にやつて行くこと、それからもう一つは、啓蒙教育ということによつてよりよく行つておる事例や、或いはまずい事例というものを啓蒙なり、教育することによつて、おのずから統合もされて来るだろうということを狙つておるわけであります。
  71. 清澤俊英

    清澤俊英君 だろうでは問題にならん。そういう教育をして参りまするにも、一つの目標を持たなければならん。その目標をどういうところにおいてやられるのですか、できまいと思うけれども……。
  72. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) もう少し具体的に恐れ入りますが。
  73. 清澤俊英

    清澤俊英君 教育ししなに、経営という面をやるばかりでなく、その教育を通じて統合までやろう、そこまで教え込もう、こういうようなお考えを持つておられる。そうして統合というような問題になりますると、非常な大きな問題がそこに含まれて来ると思う。いろいろ産業の計画とか、或いは生産の計画とか、いろいろなものがそこに含まれておるが、そういうところまで手を届けるには人間が足らな過ぎるじやないか、こういうことです。
  74. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 従つて当初から申上げておるように、これだけの中央会事業と、これだけの予算というようなもので全部問題が解決付くということは考えておりません。先ず以て一番重要な、一番差当つてつておる問題の経営面というものが、経済団体である限りは先ず以てその問題が明朗化しない限りは、ほかの条件はどう揃つてつても経営団体としての資格を失う、こういう点から一番重点の問題に対して手を付けよう、こういう考え方であります。
  75. 清澤俊英

    清澤俊英君 それでそういうことをやるのであるから、成るべく組合の自主性のだんだん薄いものにして……、そうしてこの構成メンバーはどうですか。組合構成の問題、非常に反動化した、わしらに言わせれば反動化した構成に持つて行こう、こういうふうに考えておられる、そういう必要性を考えておられるか。
  76. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) これを殊更に反動化すという印象を与えるということでありますが、併しながら、提案者の意図としては、反動というような考え方でなしに、むしろ自由だという形に行つた結果、それが本質的な村の一つの経済機関というような形を一面に持つております。なぜならば、協同組合自体が純然たる組合員のためのというだけで行くならば、員外利用の問題も矛盾して参りますし、或いはこの改正の中にありますところの、その区域内にある営利を目的としない機関の貯金を扱うというようなことは、一つの或る程度までその地域団体の経済機関的な性格を持つておるという点に、この日本の農村の協同組合の形態というものを考えなければならん、又曾つてもそうやつて来た、そういう点から行きますならば、決して反動化するという意味ではないけれども、或る程度まで公的な金融機関としての取締りなり、或いは監督というものが必要だと、こういう見解を持つております。
  77. 清澤俊英

    清澤俊英君 それならですな。それだけの経理面の教育だという点で提案せられたらいいがでなかつたかと思うのですがね。
  78. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 併しながら、協同組合の、私どもの知る範囲では、この仕事を進めて行く基本的な問題として大きく取上げなければならないものは、この農村の経済に対する自覚或いは協同組合の場合に、それに対する意義、こういうものの教育、啓蒙、もう一つは、それに携わるところの職員たちの経理上の教育であるとか、そういうような、曽つての産業組合の学校を建てたり講習会を開いたり、そういうことも当然これは中央会がやることが最もふさわしい仕事だと、そういうのでこの事業の中に入れておるのであります。
  79. 清澤俊英

    清澤俊英君 まあ表の看板はそうなるが、ここでさつき江田君が言うたように、監督行政的な措置を強化して、組合の解散を命ずることができるというようなところまで参りますことが、又一つ改正の中にこれは裏付してでき上つておるとしまするならば、これは非常な大きな危険性を持つと思うが、どうお考えになつておるか。
  80. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) この問題は従つて解散というふうな重大な問題は、その中間に立つところの中央会意見を聞くというような形にもなつておるわけでございます。
  81. 清澤俊英

    清澤俊英君 ということはですね、一つの村で二つ組合意見が合わないで、これは根本的な意見ですよ、合わないででき上つても、その場合にどうしてもこれは小区域で行くというには経営上困難であるから、そこでさつきの、いわゆる整理統合が入用だというようなことは結論的に考えられるでしよう。そういう場合に一方的なものを無理に統合させようという建前から、これが統合を決行させるような危険性を感じられませんか。
  82. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) そういうものを強制する考え方はありません。
  83. 清澤俊英

    清澤俊英君 あなたは考え方はないと言つても、そういうことが実際出て来るだろうと私は思う。これはまあ議論ですからやめますが、それにつきまして、あなたとはもうやめましたが、蚕糸局長……。
  84. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 蚕糸局長は御要求ですか、今呼んでおりませんが……。
  85. 清澤俊英

    清澤俊英君 それじやこれはあと廻し……。次には農地の問題で少しお尋ねしたいと思う。大体これは農林大臣を中心にしてお伺いしたいが、この間農林大臣はここで酪農振興法の法案審査の際に、農業協同組合一つ北君の意見で経営をやらせるような方法を考えたらどうであろうか、こういう北君の意見でありましたけれども、これは懇談の際に、絶対に協同組合にはそういう資格はない。協同組合がやつている事業はいずれも問題になつておらんから、そういうものにさしては駄目だ、こう言われておられる。どういうところが駄目なのか、ただ表だけを見て駄目だと言われているのかどうか。
  86. 保利茂

    国務大臣保利茂君) ちよつと今、清澤委員の御質問の、私がどう言つたということを言われますと、私は併しそういうことを言つたような記憶がございませんが、どういうことなんでしようか。(「政務次官が言つたのだ」と呼ぶ者あり)
  87. 清澤俊英

    清澤俊英君 大臣が明らかに、生産協同組合ではそういう牛乳を加工したり、或いはそういうことをする工場などを建てることは無理だ、それは今までいろいろなことをやつているが、これはいずれも駄目だ、こういうお話があつた
  88. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 絶対にそういう仕事をしてはいかん、やらせないというような考えは毛頭ございません。生産物を農業協同組合が加工して、そして農家経済を潤して行くということは、これはもう経済条件が整います限り原則だろうと思います。併しながら、それをそのまま、例えば酪農振興法、いわゆる乳業施設を持つことについて府県知事の承認を得るという手続はあつたほうがいい。と申しますのは、やはり一面農業協同組合健全性というものを保つて行くために必要じやないかと、こう申上げたのです。
  89. 清澤俊英

    清澤俊英君 それは違います。北君が現に協同組合にそれを任せると書いたらいいじやないかと、こういう考え方でその点を質問したのです。そうしたら、現在農業協同組合のやつているいずれの事業よりもこれは不成績で、協同組合はそういう仕事はできないのだと、こうおつしやつたのです。
  90. 保利茂

    国務大臣保利茂君) それは違う、違います。
  91. 清澤俊英

    清澤俊英君 そこで私は言わずに、語るに落ちたと、こう言つたのです。結局これは明治か、森永のような資本を入れて、そうして地方民に金を出さして、今生糸会社などがやつているようなことをして、全部の統一を彼らの手に委ねるようなことを考えているものだ、こう言つて懇談会で話したことがある。
  92. 保利茂

    国務大臣保利茂君) それはすべての承認手続を置かんでも、自動的にそういうものはやらすべきじやないかというのが北委員の御意見であつた。私はそれは原則でありますけれども、本来のあり方としては原則的なあり方でございますけれども農業協同組合健全性を保つ上から見まして、必ずしもそのどれに手を出してもうまく行くという場合ばかりではありませんし、往々にしてやり損いが多いから、そういう経済条件等をよく検討してやる場合にはやるようにしなければならんのじやないか、こういうところにそういう手続は必要でしよう、こう申上げた。
  93. 清澤俊英

    清澤俊英君 うまくやれないからという、そのうまくやれない点は一体どういうところにあるのですか。
  94. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これはもう原則論でございますから、どこがどうというようなことは今私お答えはできません。
  95. 清澤俊英

    清澤俊英君 それは大変重大な問題だと思うのですが、私は経理のことも必要だが、従つてこういう中央指導機関というものを設けるならば、そういうことが、どこが中心でうまく行かないかというようなことを探し出す機関もやはり必要じやないかと思います。ただ帳面調べだけをするだけに七千万円、八千万円の金が果して要るかどうかということはおかしい話です。折角やるに、而も整理統合をやつて農協基本的な線を固めて行くのだとしまするならば、そういう点に非常な重点がありはしないか、ウエートがかかつているのじやないか、そういう点がどこが悪いかもわからないで、今悪いから悪いのだ。それじやただ帳面だけを無理して面倒してやつているだけで、何ら経営の進展もなければ生産の進展も考えられない。全くこれは帳面検査だけよりほかない、こういうふうに落着くわけじやないかと思います。
  96. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 酪農振興法にしましても、法律原則を定めるものでございますから、その原則に則つて個々の事例を調整して参るのが行政だと思うのであります。そういう意味で個々については無論いろいろの場合が出て来るだろうと思います。
  97. 清澤俊英

    清澤俊英君 金子さん、どうですか、その点は……。こういうものは放置しておくのですか。
  98. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 今の酪農事業の経営の問題でありますが……。
  99. 清澤俊英

    清澤俊英君 酪農ばかりでない、或いは加工事業等の……。
  100. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 加工事業等につきましては、そういうものを諦めるということは毛頭考えておりません。
  101. 清澤俊英

    清澤俊英君 経営を合理化してよくするということになれば、その点まで考えて、そうしてこれを経営する上にはこういう欠陥があるから、これをこう直して行かなければならんということがはつきりしなければ経営合理化が、経理だけじやない、経営というものがうまく行かないだろうと思います。その後の指導はどうしてなさる、こういうのであります。それをやらんで、ただ面倒な帳面調べだけを面倒にしていたつて、これは組合を萎縮するだけであつて、決して伸張性を持たんじやないか、こういうことになる、私のお伺いするのは……。
  102. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) これで四回お答えしたわけでありますが、経営の経理というものを官僚が一方的にやるときに萎縮する心配があるから、こういうふうな機関でやることが妥当だ、こういうふうに考えておるのであります。第二には、各種の事業を総合的にやるか、或いはどの事業を取入れるかというふうなことの経営の合理化の点につきましては、勿論この組織がいろいろの單位組合からの、加入組合からの実績その他を聴取し、模範事例考えて、或いは失敗した事例考えて、そして万全を期するような指導をするような方向で努力するということであります。
  103. 清澤俊英

    清澤俊英君 その問題はあとへ残します。その次に今一点お聞きして、ちよつと疲れましたから、あとで誰か代つてもらおうと思います。大体今度の農業委員会性格的に変つて来るのじやないかと思います。農業委員会というものは、今までは旧法で見ましても、農業委員会を設け、その所管事務の範囲、そうして組織を定めることを目的とする、こうなつて、おのおの行政的な或いは供米とか、或いは農地法を中心にした土地改良の問題等を中心にして、おのおのの委員が、それが一方的になつては非常に頭下しになつては、非民主的に無理なものができるであろうから、そこで一つ委員会をつけて、それの運用を待つて、民主的にそれをうまく農民が納得するような方法でやろうということでおつたのが、今までの第一の経路です。それが大体土地の開放も済んだのたから、もうそこにこれを置いておくこともいらんじやないか。我々非常に反対しましたが、まあ一つものにしてその運用を一人のものにやらせようという、これは最初から私は無理だと思つてつた。無理だと思つておりましたが、それもやらせて来た。これもまあそういう目的の下にやらせて来た。ところが今度はその性格が全く変つて来て、今度の変つたのは、農民の地位の向上に寄与するため農業委員会、都道府県農業会及び全国農業会議所についてその組織及び運営を定めることを目的とする、そうして何か政治的な建前を中心にした農民利益代表だというような機関に変つて来ている。本質的に変つて来ているのじやないかと思うのです。そうしますと、今でさえ土地の問題等につきましていろいろ紛争も起きている。そういう際にそれを弱化して、そうして別なものにする、場合によつたら昔の農業復興会議のようにしてしまうということは、どういう考えでこういうふうの変更を必要とせられたか、農林大臣並びに提案者のお答えを願いたい。
  104. 小枝一雄

    衆議院議員(小枝一雄君) 清澤委員にお答えを申上げますが、今度の農業委員会法の一部改正によつて多少この委員会性格が変つて来たのではないかという御質疑でありますが、これは全く清澤委員のお説の通りでございます。多少農業委員会性格が変つて来ているのでございます。御承知のように、最近農村の実情につきましても、或いは供米の関係等におきましても多少の情勢の変化はあるのでございますが、特に農村として将来考えなければならん問題は、近き将来において、この日本の農業というものはどうしてもこの農村恐慌が予想いたされるのであります。世界的なこの農業生産の過剰、それによつて日本の農業のこうむるところの打撃その他いろいろな情勢から考えまして、どうしても農民利益を増進し、農業を発展せしめるという見地からは、どうしても農民がいろいろな場合における意見政府及び官庁に対しても十分にこれを一つ組織的に具申をすることができ、或いは又これに対して調査研究もできる、こういう組織を持たすことが真に将来の農村の発展のために必要だろうかと考えまして、そういう意味において下部におけるこの供出の問題は町村段階においては従来通りでございます。県のほうは、農地のほうは主として県がやりますので、この農業委員会仕事としてはその諮問に応ずる、併せてこの指導、啓蒙、宣伝その他問題の具申等につきましてやれるような、農業会議で以てやれるような方向に改正いたしたのでございます。
  105. 野溝勝

    野溝勝君 二、三お伺いいたします。時間の関係上要点だけ申上げますからお答えを願いたいと思います。大体本法案農業委員会法一部改正ということになつていますが、これは一部改正じやないと思います。実際内容を大きく変えるものなんでございまして、言うまでもなく中央機関を作りまして、そうして大きな補助金の下に統制をして行こうというのであります。その中には建議をするとか、或いは生産指導とか、或いは経営の指導とか、或いは農政活動とかいうようなことが言われておりますが、実際政府の大部分の補助金を得てやろうとする、又提案者の言われる、成るべくなら補助は補助としても、自分たちの力において自主的にやつて行きたい、こうは申しますが、実際農業協同組合法なり、再建整備法乃至は農業協同組合再建整備促進法等々の例に見ても容易なことではないと思うのでございます。更に只今示されましたこの資料を見ましても、不正事件の内容等におきましても百五件か、内容は一々申しませんけれども、全く今日の三万四、五千という農業協同組合のうち、殆んど半分以上は半身不随の赤字状態でございます。かような中にあつて自主再建ということはなかなか困難であるということはよくわかるのでございます。だからと言いまして、私はほかのもつと農民が真に信頼するところの農協組織を如何にするか、農政活動を如何にするかという農民の真の自主的団体であるこの農業協同組合を作る当時の功労者、農業委員会を作る当時の功労者である、その親であるところの組織体である自主的農民団体農民組合の意向を忖度して、かような方針を打出したということは私はここに大きな誤まりがあると思うのでございます。この問題に対しましては、先日乃至は今日の江田君等々によるところの原則論によりまして、これは言い尽されたと思うので、この点は省略いたしまして、ただ私はかような中にありまして、この今回の法案を打出した根拠がわからんのです。それで一体七月に農業委員会の改選が行われる、一年々々延期して来た立場上、これを一年延期するということだけの暫定措置ではどうすることもできないというようなところから、これは急いでかような両法案になつて出たと思うのでございますが、この点に対する見解を一つ、それから更にこの法案が私は何と言いましても農民の自主性を侵すのでございます。私自身今日他の、産業団体と違う農業の団体が、日本の全予算の中から圧迫を受けていることも事実でございます。そういう点につきましては、いわゆる農村の補助政策に私は徹したい。農村予算を見ましても、千七十七億という予算がありまして、あれは三百何十億の農村の減税をしたという、これを実際問題で検討いたしますと、追加予算五百十億を繰越して計上して、そうして一般の予算の中に食込んで見たり、或いは三百何十億減税したといえども、今回の所得税の累進課税と言いますか、課税の標準を見ても、それが間接税を見ましても、すべてこれは一方において減税いたしましても、直ちに左の手においてこれを奪還しているのであります。こういう点は農林大臣がこの二十九年度の予算編成に当つて、あなた方が努力したことも私はよくわかつています。かような貧困な中にあつて、かような農林財政が貧困の中に、私はこういうようなことで果してかような目的が達し得るかということに対しても疑問を持つております。更にこの一部改正によりまして農業協同組合再建する、或いは農業委員会再建すると言いますけれども、実際において若しこれが実践されるという場合になりますると、戦時農業会のような状態になりやせんかと思うのであります。例えば供出問題についても、配給の問題についても、或いは生産統制の問題或いは労働力の統制、いわゆる戦時再編成の諸制度と並行して、農村再支配を如何にするかという一つの橋頭堡がこれによつて築かれると私は確信しております。こういう場合、果して提案者は、戦時農業会当時のこともよく知つていますから、あの強権発動の恐しいことも知つておりますから、さようなことはしない、こう言つておりますが、全額に近いところの補助を受けて、果して自主性が保たれる自信があるかどうか、こういう点についてお伺いして、次に二、三の点をお伺いいたしたいと思います。
  106. 小枝一雄

    衆議院議員(小枝一雄君) 只今野溝委員から御質疑がございました点は御尤もな御質疑でありまして、我々もその点は深く戒心をしなければならないと存じておるのでございますが、御承知のように、この農業委員会法の一部改正をいたしまするときの今回の提案の動機について、来たる七月に農業委員会の選挙を旧法のままによつてやらねばならんから、それをこの機会に一つ改正しようではないかというのが一部の理由には相違ないのでございます。ただ併し御承知のごとく、近代の農村の事情農業団体の現状からいたしますれば、到底現在に満足することはできない状況にあるのでありまして、更に又只今清澤委員の御質疑にもお答えいたしましたるごとく、今後の日本の農業というものは、先生御承知のように容易ならざるものがありまして、外国との経済交流の関係、その他将来の農村恐慌の状態考えますならば、農村の将来のために、このままで現在の農業委員会を放置しておくということは、我々としては忍びないと考えたのでありまして、従いまして、農業団体再編成という大きな立場から考えましても、この旧法のままで選挙をしておくことはどうかと考えまして、どうしてもこの機会に一つ農業委員会の一部を改正して、少しでもよりよきものに委員会法を改めて行きたい、こういう考えであつたのであります。又補助を追加するということは、自主性を失うことになりはしないか、従つて米の供出問題にいたしましても、農地の問題にいたしましても、その他の問題についても、将来一つの反動性を持つようになつて来はしないかという御質疑でございますが、これは先生御承知の通りに、この問題は大いに戒心を要する問題ではございますが、併しながら、日本の零細農業は、どうしても補助政策をとらねばやつて行けない農業だと考えるのであります。従いまして、農業団体若しくは農村に対し、農民に対しまして、国ができ得る限りのこれに対して援助を与えるということは、我々は決して吝かであつてはならない。同時に、これを受けまするところの団体といい、或いは農民といい、そのために卑屈になつてはいけない、当然の問題として主張し、当然の問題として要求し、そうして堂々と政府に対しても意見を具申し、或いはこれを主張すべきである、かように考えておるのでございます。
  107. 野溝勝

    野溝勝君 日本農業が保護政策で行かなければならんことは私はその通りと思うのでありまして、それを言うておるのではないのであります。ただ紐付きのような行き方に対しては警戒しなければならんと、こういうのです。その点に対する論議はその程度にいたします。次に、農林大臣にお伺いするのでございますが、この法案は瞥見すると、私は三つの特徴があると思います。一つは、何としても建議が出て来る。一つは大きな補助を受けるということ、一つ監督規定を強く打出した点、更に選挙制度の問題というような点が、専任制度というような点が特徴だと思います。そこで特に私の聞く点は監督制度の問題でございますが、一体監督制度、勿論必要だと思いますが、政府の意図する監督制度とはどこを一体重点的に指すのですか。勿論全部補助する以上は、政府は責任を以て監督指導をするのでありましよう。併しその監督指導をするに当りまして、私は疑問が起つておるのであります。と申すのは、例えばこの法案のうち特に農協一部改正法律案のうち、共済施設という点があります。事業のうちの共済施設、この共済施設は、勿論範囲は広いと思うのでございますが、特に今回のこの法案によるというと、ただ共済施設を強化するということになりまするというと、農業災害補償、私の農林委員長当時に制定いたしました昭和二十二年制定に基く農業災害法、これによりますると、完全に農作物並びに建物、物件等々によりましては、農業共済の補償法による特殊の法律を以てやつて来たのでございます。ところが一方におきましては、ただ農協のほうは共済施設というものだけであります。それに対して内規が別に規定してありません。片方の損害補償法のほうにおきましては、非常監督規定も明確になり、更に再保険の問題につきましては、政府補償することになつておるのであります。こういう問題が具体的になつておるにかかわらず、先ほど大臣保利さんの言われるには、共済制度を強化して内容を充実さして行く、こういう御答弁があつたのでございますが、その内容とは何を指すか、又法的根拠につきまして、あなたの見解と、特に保険制度に関する問題でありますから、この際大蔵当局の見解を聞いておきたいと思います。
  108. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 協同組合の今度のこの案の一つの点は、先ほど江田委員から御指摘になりましたような監督の強化という点が一つの特色になつておる、そういうことを申しておつたのでありまして、個々の問題につきましては、提案者なり、政府委員からお答えをいたしたいと思います。
  109. 江田三郎

    江田三郎君 政府委員のほうがいい。
  110. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 共済制度に関する大蔵省の意見というお尋ねでございますけれども、非常にむずかしい問題でありますので、十分研究の上結論を得たいと思つておりますが、御存じの通り、昨年は災害が多かつたということでございますけれども、現在の制度に非常に問題が多い。これを何とか合理的な制度に直さなければいかんということで、これは農林当局も御研究のようですし、私どもも例えば災害の被害程度の査定、それが中央に集まりまして、この査定されて参る経緯というようなものを、先般の災害の際には私どもの下部の機関も、いわばそういういろいろな際に出して勉強する等、何しております。率直に申して災害の査定、保険金の支払いに至りますいろいろな事実の判断、乃至制度自体において共済の単位等、非常に大きな問題があると思つて、いわば相当な態勢が必要ではなかろうかというふうに私は考えております。
  111. 野溝勝

    野溝勝君 保利君、私の言うのは、特にあなたの監督制度というのは、私は具体的に今例を挙げたのでして、特に農業共済事業に対しましては、一方におきましては全国共済農協連合会、これは農協でやつておる。それから一方は、ここにおられる佐藤君たちが関係しております全国農業共済組合協会が中心になつておる、この二つが実際は共済制度について競合しておることはあなた御承知でしよう、この点は如何でございますか。そこで更にあなたのほうで心配されて、特に農業共済制度に対して審議会を近いうちに設けて行こうという相談と言いますか、話合さえもあるわけです。こういうときに、審議制度の確立しない前にかような一体法案を出して、却つて紛議を起すようなことを作り上げていいのですか、悪いのですか、この点慎重にやつてもらいたい。
  112. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 共済関係の戦後の任意団体が競合的に並立しておるということは私承知いたしております。この農業共済の問題につきましては、御承知のごとく衆参両院の農林委員会におかれましても、極めて御熱心に再検討を願つて、近く私ども政府内部に、この根本的な検討、そしてこれを刷新して参る成案を得たいというような趣意から、広く御意見を承わるような形において検討を始めたいと考えておるのでございます。先ほど申しました趣意は、現に行われておりまするその共済関係について、最小限の監督規定がこの法案で強化せられているというようなことを申上げたわけでございまして、新たになお措置をとるという趣意のものではございませんでございますから、その点は一つ農業共済の問題は今後の検討に待つことに御了承を願いたいと思います。
  113. 野溝勝

    野溝勝君 非常に明らかになつて参りました。そこで大蔵省の先ほどの答弁の見解は、非常にこれには問題がある、十分改正をしなければならんということを只今答弁されました。そこで農林大臣はこれに対しましては、非常に慎重を期する態度を今答弁されました。かような中にあつて、むしろこの問題一つすらが未決でおりながら、これを提案されるというところに、私はこの一点だけでもこの法案審議が重大だと言うんです。この点に対して提案者はどういうふうに考えておるか、感情ではありません。私はその点を素直にお聞きするんです。
  114. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 只今農林大臣が説明申上げたように、現在において協同組合法が出発以来、協同組合法による共済事業というものは相当の事業分量がすでに実現しておる。而もこれは組合員との間における相当長期の契約的なものでありますので、単にこれをそういうことができるというだけのことで行くことは、間違いを起してはあとでこれを解決するのに非常に困難になるからして、先ず現実にやつておるのを積極的にこれをどう持つて行こうというのでなしに、その共済組合をやるについては最小限度の規定を設けべきだということを信じておりますので、こういうことを入れたわけであります。
  115. 野溝勝

    野溝勝君 私は時間がありませんから、静かに農林当局並びに提案者においても検討願いたいと思うのです。何でもかんでも私はこれを強いて反対するのではないのです。ただその運営並びに内容等整備されなければ立法府として全く面目ないのでございます。そういう点でございます。特に農業災害補償法、昭和二十二年十二月十五日の法律の中にも、特に再保険等につきまして、或いは組織の点、或いは管理の点、こういう点が実に具体的に出て来ておりまして、すでに着々やり、特に二百五十万戸の保険農家ができておる。更に倉庫物件等についても二万五千棟、然るに一方の農協のほうにおきましては、こういう制度もできておりません。特に全国共済農協連合会におきましてはできておりません。それで再保険をするということになれば、共栄火災保険が再保険をするということになるんでしようが、そういうことになるとそこに非常な無理があると思うのです。こういう点が解決されておらないのです、かような点すらも……。今の大蔵当局並びにこの両共済制度の機関に対する調整を図るために、審議制度を近いうちに設けたいと農林当局が考えておる、この提案者と農林当局と大蔵当局の三つの食違いをどういうふうに調節して行くのか、こういう点が未決でおつて、この本委員会にかような調節を講じて行くんであるという提案が示されたならば、私どもは例えばそれが反対の根拠がありましても、この点だけにおける了解は私はできると思うのでございます。こういう点に対し、特に私はこの農林当局が、これでもまだ大丈夫だ、いや差支えないんだ、又うまく行くんだという御所見がありますならば、この際農林大臣保利さんからお伺いしておきたいと思います。
  116. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 御指摘の点は非常に御尤もであると思います。つまり農業共済制度の根本的な検討審議の結果、農業共済に関する一つ成案を提示し、併せてこれを出しますれば非常に完備したものになると存じますけれども農業共済につきましては、幾多検討を要する問題があることは御承知の通りであるわけであります。先ほど申しましたような趣意によりまして、両院の御協力も頂いておるわけでございますから、共済制度につきましては根本的に検討をいたしまして成案を得たいと考えておるわけであります。ただ提案者も言われますように、今日現実にとにかく共済運営されておるわけでございますから、それは農民に対しても非常に大きい影響を持つものでございますから、現状は現状において、それが農民に不利益を来たさないように必要の監督規定だけはここへ入れたい、こういうのが趣意でございますから、一応の眼前の措置と根本の措置とを切離して一つ考えを頂くようにお願いいたしたいと思います。
  117. 野溝勝

    野溝勝君 これ以上は保利さんと私との見解の相違になりますから、私はこれ以上言いません。ただお互い静かに私は考えたいと思うのでございます。実際に内容の不整備のままで、この法案だけは一つ暫定措置としてやつてもらいたい、日本の農業制度というものを大きく機構変革する、大きく再編するというこの法案でございます。一部改正法案と言いますが、中を流れるのは先ほど申したように大きく変革するのでございます。こういう私は重要なる法案であるだけに、皆様に非常に御迷惑でありますけれども、二日間の審議で、会期が迫つておるからこのまま上げろということは無理があるのであります。併しさようなことを言つておる時間はありませんから、私はそれ以上申しませんが、とにかくかような建前に立つておる軽挙な法案であるだけに、私は断じてこの法案の承認はできないという点を考えておる。これは併しまあ討論の問題でございますから省略いたします。そこで今私が申上げたことに対しては御尤もだということをすでに農林大臣も言われておるのであります。その御尤もだということのある以上は、どうか一つ法案に対しましては、政府当局はこの際一つ提案者と相談をされまして、かような意見があり、かような問題がまだ未決である以上は、一つこの際何とか考えてはどうだという大きな大局的立場に立つて提案者と相談をされて善処されんことを要望しておくものである。  次に提案者にお伺いいたしますが、大体提案者のほうでは、提案の理由が違つておると言いますが、大して私は違つておる理由はないと思う。農民の生産指導組合の経営指導それから農政活動ということがあなたのほうの提案と言いますか一つの理由、大きな主張の根拠になつております。そこで特にこの生産指導には技術をも取入れようとしておるのであります、法案を見ると……。そうするというと、結局農業委員会のほうの経済会議ですか、経済会、このほうも多分にそういう傾向が見えます。そうすると、経済の面におきましては、勿論あなたのほうが主管するということはわかりますが、ほかの面においては相当技術指導の面におきましては両方混淆しております。それから農政活動の面におきましては、成るほど農業委員会のほうのこの改正法案のほうは政府が出しておりますが、併しそれなどになるというと、今度は又これが全く滑稽なんです。特に民主的団体である農民の地位を守つてつておる農民組合というものがその方面を担当している、これを一体どうするか、こういうのでお二方にお伺いするのでございますが、その間一体一緒になつておる点、或いは混淆しておる点等々が相当ありますので、この間の調節を一体どういうふうにして行くのか、今日までも二つの流れはあるのでございます。これをどういうふうにして調節して行くのか、この点に対する見解をお二人にお伺いしたいと思います。
  118. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 中央会の設立の目的はその法文に掲げてありますように、組合組織事業及び経営の指導組合の監査、組合に関する教育及び情報の提供、組合の連絡及び組合に関する紛争の調停、組合に関する調査及び研究、これを主体にしておりまして、結論的に申しますと、現段階における組合の経営を中心にして、又組合の経営に必要な教育なり、情報の提供、連絡、そういうことをしております。従つてこの中央会農業委員会のほうの目標と相当はつきりした差別を持つておると考えております。
  119. 野溝勝

    野溝勝君 差別というのはどういう意味の差別ですか。
  120. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 例えばこれは私は農業委員会のほうの話を申上げることはむしろ小枝議員が答弁すべきでありましようが、そこにありますように、中央会組合そのものを、組合を対象にしての指導なり或いは監査とか、いわゆる教育情報、こういうふうな観点に立つております。委員会のほうは組合というものを対象にすることを主体にしておらない、農村なり農家なりというものを対象にしているという考え方が違つておるのでございます。
  121. 小枝一雄

    衆議院議員(小枝一雄君) 只今野溝委員からお尋ねのありました点で、私から特にお答え申上げる点は、今の技術の問題だろうと存じます。お話のごとく、且つ御指摘の通りに、今日の日本の農業指導の体系というものはこれは二、三に分れておるのでございます。政府の持ちますところの農業改良普及員、又農協にも技術員があり、或いは特別な農協、即ち畜産農協なり、養蚕農協等におきましても、それぞれ技術員を持つておりますが、これを何らかの形において一本化して強い指導力を持つということは、これは将来の農業発展の上に極めて重要な問題であると考えるのでございまして、そういう点から考えまして、今回の農業委員会法改正に当りましては、直接農民指導いたし、或いは農業の技術を指導するということは一応除外いたしまして、この問題はかなかなかむずかしい問題であり、先般も衆議院の委員会におきましても、参考人を呼んでいろいろ聞いてみたりいたしたのでございますが、なかなか容易ならざる問題でありまして、これは皆さんに十分研究をお願いいたしまして、将来どこが、これを協同組合が持つのが本当か、農業委員会で持つのがいいか、町村か、或いは国かということを根本的に一つきめまして、重ねて失敗をいたさないように、来たるべき根本的の農業団体再編成のときにこれは決定すべきだという、この見解の下に今回は農業委員会に、前回政府原案には指導の面もあつたのでございますが、今回はこれを特にそういう理由の下に除外いたしまして、ただこの農業委員会の中に指導という文字がございますが、この企画立案をいたします上におきまして、どうしてもこの技術のわかるものが必要であると考えるのでございまして、そのほか直接この農業の指導に当る技術員という意味ではないのであります。その他は金子議員からお答えいたしました。
  122. 野溝勝

    野溝勝君 まあお二方に、農民問題を真剣に考えておられる方々でございますから、別に私は悪意があるわけではないのでありますが、更に皆さん農民問題を真剣に考えておるなら、何も自由党と改進党と、日本自由党ですか、それらの保守勢力のみが農民の問題を扱うわけではない、特に農協等の問題といい、農業委員の問題といい、不肖大正十一年以来、ここにいる三人の諸君農民組合と鎬をけずつてつている、それは農村民主化のために、特に農業経済の民主化のためには、農協或いは食糧の調整乃至は農地の問題、或いはその他等々の改良の問題につきましては、農業委員会、これはみんな一体誰が中心になつて闘いましたか、日本農民組合です。そういう点を考えますならば、立案者の諸君も非常な卓識のある方々ではございますが、併しそういうような歴史的、日本農民発達史の歴史というものを十分あなたたちは検討して、成るほどその当初においては私は十分相談を仕合つてもらわなければならなかつた、そこに割切れないものがいろいろ出て来ております。併しそういうことを今言つてつても、別に具体的な問題でないので始まりませんが、とにかく一体この法案検討する場合に、すでに第一条、第二条の問題からもいろいろなる疑義が起つておる。大体「農民とは、みずから農業を営み、又は農業に従事する個人をいう。」と、そういう点に対する農民の地位、農業に対する見解、こういうところからもいろいろ意見が出るのでございますが、こういう点は時間の関係でできないことを私は非常に遺憾とするのでございます。そこで一点お伺いしておいて、あと清澤君が御質問をしたいということでございますから、これに譲りますが、この農業、中央農業委員農協の中央機関ができる場合に、一体その中央機関の指導的地位に、或いは専管と申しますか、それはどれをやらせようとして考えておるのでございますか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  123. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 中央会の専管というお言葉が私ははつきり納得できませんが、中央会が主として何の仕事をするかということであるとすれば、先ほど申上げた第七十三条の九の一から六までの仕事をやるということに尽きると思うのでございます。
  124. 野溝勝

    野溝勝君 金子君、そういう私の聞き方ではない、あなたの言い方が……。僕の聞き方が悪いので言いますが、大体今後こうした中央機関ができる場合に、その中央機関のうち特にその指導の面に当るのはどういう、今あるのを言うならば、例えば購連がある、或いは販連がある、或いは指導連がある、その場合にどういうのが主に当ろうとするのか、こういうのであります。
  125. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 中央会組織員は各県の連合会なり、或いは町村単位の協同組合なり、それらの連合会並びに單位組合組織員として、そうして中央会を設立するのでありまして、従つてどの団体が主体を持つということなしに、どの団体からも役員も出ましようし、又新規に出まして、この協同組合の全体のあり方を、只今申上げたような事業目的に対して働く、こういうことになるわけであります。
  126. 野溝勝

    野溝勝君 全指連が評判が悪いからといつて、そういう煙幕を張つたような答弁をしなくてもよろしい。大体全指連の指導ということになれば、経済団体である全購連、全販連はそれに全力を挙げるし、今日においては全指連というのはその指導的任務と申しましようか、そういう指導的任務の中央組合の全指連に働くということは想像できるのです。だからそれを大いに今後誤まりなきようにして行くというようなつもりで考えておりますというのならわかるのでありまするが、そういう素人を誤まらせるようなことを言わなくてもよいのです。大体この全体の中央機関のできた場合の推進を、どこを一体主に扱わせようとする考えなんです。その場合あなたは大体全指連というものを考えておるのではないですか。
  127. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) この中央会ができることによつて、これは今から予測でありまするけれども、大体全指連というものは全指連の形から中央会の形へ当然移行される形になると思います。
  128. 清澤俊英

    清澤俊英君 蚕糸局長、お伺いしますが、今度の糸価安定法というやつが出ましてね、大体繭価協定をやつた場合には統制的な繭価協定をやらせている。やらなくてもそれに従わねばならんようなものが規定してあると思いますが、それは間違いないでしような。
  129. 寺内祥一

    政府委員(寺内祥一君) 繭価協定についてのお尋ねでございますが、只今のところは蚕糸業法によるところの、昨年の国会で独禁法改正によつて改正いたしましたところによりまして、農業協同組合からの申込があれば価格の点についてだけ強制ができるというのが現行法でございますから、今回今国会に提出いたしました繭糸価格安定法の改正案によりましては、糸の価格が最高価格を超える虞れがあると認定いたしまして、農林大臣が指定いたしました期間内におきましては、今度は価格だけでなく、数量及び相手方の協定もできとるいうような改正を只今提出いたしたわけであります。
  130. 清澤俊英

    清澤俊英君 問題はそういうことではなく、今ではその協定を一応やつて農民に強制するわけになる。今はそういう形になつてですね、今度は改正してそういう場合に協定するという形はできておるのでありますか。
  131. 寺内祥一

    政府委員(寺内祥一君) 只今のところは農業協同組合からの申出がありました場合に、繭需要者のほうで価格についての協定をするだけでございまして、それに強制力は全然ございません。今回提出した改正法によりますと、そういう協定をいたしました繭需要者が、繭生産額の八割以上を占めるというような場合には、その内容農林大臣が省令の形で出しまして強制し得る規定ができております。
  132. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは非常に危険性を持ちます。どうしても強制があるとするならば、協定団体としての自分の組合を作りたいという農民の意識ができて来ると思う。若し今のこの法案を通じての組合ができて参ります場合には、どうしても単一組合というようなものに何かの理由を付けて押えられてしまつたならば、農民の要求する考え方などは一つも通らんという実情が出て来やせんか、これは方々で問題になつてはせんか、私はそれだけ聞けばよろしいのです。そういう危険性を持つ。その次にお伺いしますのは、農地局長にですね、一番最初の農地委員会当時でもいろいろ非難がある。従つてそれが改正せられたら農業委員会の制度ができまして、非常な問題をほうぼうに起しておる。而も最近におきましては農民の土地を離す者がたくさん出て来ておる。その土地を離す際において、いろいろな無理な問題ができており、同時に地主団体等ができて、昔の地主の制度を復活しようというような空気が現に起きている。まあ詳しいことは別にしましても、これは大体保守的な新聞が書いております。新聞で見ましても、半年で二十六万件、「冷水害が生活難に拍車して零細農民が土地を売離す。」或いは「失地回復へ全国的に団結する旧地主」、「全く受身の自、小作」、というような問題ができており、具体的には福島県で地主の返還連盟、こういうものが、福島県等にはできておる。これは福島県だけではなく、もつと強力な全国的な組織ができておる、この際にこういう性格を変えた、現段階を越えた、段階を越えていましたものが非常に性格を変えて、そうして所定の任務を、まあ我々から言わせまするならば逸脱したような労使運動に重点を置いて行くというようなものができて、果してこの傾向を阻止できるか否か自信がありますか。
  133. 平川守

    政府委員(平川守君) 御指摘のような農地の不当或いは旧地主の間におけるいろいろな運動というようなものが、あるということは事実と存じます。併しながら、これに対しましては農地法の建前といたしまして、すべてこれを知事の許可というふうに書かれておるわけでございまして、その知事の許可に対して農業委員会の今回の改正によつて、これが弱体化されやしないかという御心配だと思いますが、この改正によりましても、主として農地問題につき直接地元において担当いたしておりますところの市町村農業委員会につきましては、その根本の変更はないと考えます。都道府県農業委員会につきましては、性質がかなり変りまするけれども、現在都道府県農業委員会のほうに負わせております農地委員会の任務は極めて僅かでございまして、知事の諮問を受けるような程度になつておるわけであります。これらの動きに対しても、農地問題としての強力な統制は主として知事において行なつておるのであります。政府としても従来の農地法の考え方というものは飽くまでも堅持して行くという考え方でありますから、さような点についての心配はないかと思います。
  134. 清澤俊英

    清澤俊英君 局長はそう言われますけれども、現在これは最近の読売新聞に出ております。前の農地委員会の時代にあつた事件ですが、数十年持つていた小作人の土地を知らぬ間に買つたという事件です。それで買つたものは誰かというと、そこらの不在地主と役場の書記である。それは今以て買つて何もしておらない。耕作もやつておらない。そういう土地を返してくれというので調停に出してみた。調停に出した結果取上げられてしまつた。裁定ができた。甚だ困りますという新聞が出ておる。聞き合したところが、詳細に当人から手紙が来ておるが、全く当人は同意しておらんのだというものが調停に現に現われている。反則を犯すものが、調停に出ているようなものが出ているのだ。現段階における農地委員会というものが私は麻痺している結果だと思う。而もこのような事件が私のところには山ほど資料としてありますが、極く最近の四月三十日、新潟日報という半農新聞、私がここに持つて来ておる新聞だ、それが出しておる。新潟日報が言われている二十六万件、これだけのものが動いている。地主が復活して自小作農は受身になつて、果してこの法人化したこれをあなた方が抑えて、今の民選知事の大部分が地主階級から出て行くとしましたら、抑えてやつて行けるだろうか、強化してこそ本当であるにかかわらず、だんだん弱化さして行くじやないか、あなたは自信を持ていますか、あなた方の二十六年の農地年報には何と書いてあるか、本当に自信がありますか、もう一回聞きます。
  135. 保利茂

    国務大臣保利茂君) この農地改革を後退せしめる、後退する憂えが非常に多いのじやないかという根本の問題でございますから、私ども政府といたしましても、この農地改革を後退せしめるという考えは絶対にございません。それと日本の経済の相当の急激な膨脹と、人口の膨脹、それによる住宅地の不足、そういうものからしまして、都市周辺にかなり農地が改廃して参るという傾向は、これはもう避けられないのでございますけれども、無論いろいろの個々の事例につきましては、清澤委員御指摘のようなトラブルがあるだろうと存じますが、決して政府は農地改革を後退せしめるという考えは持つていないということだけは一つ御了解を願つておきたい。
  136. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 清澤委員、時間が切れましたから……。
  137. 清澤俊英

    清澤俊英君 時間が何ですから、これを見て返事して下さい。
  138. 平川守

    政府委員(平川守君) 承知しました。
  139. 戸叶武

    戸叶武君 今清澤君から心配された点は、やはり今までの農業委員会制度が、いつの間にかやはり農村の地主的な、或いはボス的政治家に抑えられて、結局反動の波に乗つて土地制度の改革を行過ぎであるというふうな、引戻しの荒波のほうに大きな役割を果すようになるのじやないかという懸念は私たちも御尤もだと思います。今度の農業団体再編成に立つまでの暫定的措置としての一種の時限立法性格を持つていると思うのですが、今度の法案で私たちが一番心配する点は、日本農業が保護政策で行かなければならんという点であり、この農業委員会における関係で誰でも反対の人はないと思います。日本農業の持つておる弱体、それから日本農業が農民の自主的な形によつて、その生存を保障せられているのでなくて、政府政策によつて供出制度なり、或いは低米価政策なりによつて相当の国家に対して犠牲を払つているのです。だから従つて政府側からこの犠牲に報いるだけの処置をしなければならない。そういう考え方一つ補助金制度の肯定にもなると思うのですが、問題は補助金的なものの操りによつて農業団体を統合して行くのはいいが、表面は民主的な統制機関の下に、地方機関のように見えても実際は補助金や何かの操作によつて、官僚の下部機構みたいになつて行くのじやないかという点を非常に虞れるのです。で、問題は今我々が日本の農業の中において一番弱体、その中核をなさなければならない農協のことを考えるときに、今まで非常に多くの人から非難が浴せられておつたし、又その非難を黙つて聞かなければならない農協指導者の立場というものも随分辛いと思うのです。農協の幹部の中において幾多の間違いを犯している人があるけれども、併し現在の農協を誰にやらしてみたつて実際にやつて行けないようなところへ追い詰められて来ているのは、今までの歴代の政府農業政策というものがでたらめであつたから、そのしわ寄せが今日の農協にかぶさつておるという点が非常に多いのです。そこで我々が今基本的な問題といたしまして、この農業経済を指導するところの農協あり方、或いは農業技術を指導するところのあり方、これはもろもろに遅れておりますが、農業委員会を初めとし、或いはその他各種の農業指導の問題、それから農政指導の面における農民組合の問題、こういうものの全部と関連性があるのですから、やつてもらいたかつた。併しそうは行かないから、取りあえずこの農協農業委員会の問題に触れて行つたということになつておりますので、このままこういうふうに中央会ができ、一部改正でなくてかなり大きな改正がなされて、或いは陳情の様式において、進言の様式において農政部門というものがここで非常に強まつて来ると思うのです。そうすればこういう機構ができて来ると、農政農民組合という基本概念というものが崩されて行くのではないか、今の農民組合あり方というものに批判しなければならない点もあるし、或る意味においてマンネリズムに達しているのも事実であり、農民組合の古い歴史というものは、日本農民運動の中において記録すべき歴史である。併し土地制度の改革後における問題というものは、今の反動攻勢を受けるための土地制度の問題で再び闘つておりますが、農民組合というもののあり方というものも必ずしも理想的形態に来ていないと思う。これはまじめに下部で農民組合指導しておる人たちが私たちに率直にその悩みを告げているのです。そういう意味において農協の人も、農業組合の人も、その他の方面に属する人たちから非難を浴せられておる。それぞれの立場において苦労しておると思う。それでこの法案を通すに当つて、このままの形で農民組合の問題が置き去りにされて行くと非常な私は将来に癌が生まれて来ると思うのですが、この法案立法者はその点に対してどういうお考えを持つておられますか、金子君からお聞きいたします。
  140. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 只今いろいろに御指摘になりましたように、日本の農業そのものが一つの企業形態の上に立つてなすだけの要素を持つておらない。而もその上に米価その他農民に大きな犠牲を強いておる。それならば日本農業に対する国家の保護政策というものは、むしろ保護という言葉を使われることが間違いであつて、当然国家はその責務を報いるべきだ、全くその点は同感であります。そこで現段の農業団体あり方を見ますときに、非常に乱立の形があり、而も現段階農業団体が率直に申しますと、各農業関係の官庁に非難がある、そうしますと、それがそのセクシヨンの下に、又その農業団体の下にセクシヨンを持ちまして、そうして同じ農村問題でありながら、他の団体の重要問題のときに、ほかの団体は殆んどそしらぬ顔をしている。こういうようなことで一体農村の建設はあり得ない、こういうことを考えたときに、当然これは農業団体というものに対する大きな全体の問題から、農業技術の面、組合の面或いは政策の面から考え直すべきだということにつきましては、提案者も全く同感であります。併しながら、この問題は余りに大きな問題であることと、たまたま前々国会におきまして農業委員会法の一部改正組合法に対する一部改正が出たのでありますが、当時私提案者考えといたしましては、この農業団体の再編成として打つて出べき性格でない、二つ法律を恰かも農業団体の再編成であるかの形において説明され、提案されたことに対して不満を持ちました。そういうことであり得ないということで二回流れたのでありますが、その後の施策を見まするのに、農業協同組合においては、その後お説のようにいろいろ御批判を受けるような状態が、むしろ非常に多く出つつあるという、こういう観点からいたしましても、或いは農業委員会に対するいろいろの御指摘がある。それらの面を見ましても、将来において、将来の農業団体再編成を私どもが目指したときに非常に癌になるというようなことのない範囲において、差当り必要な面を、協同組合の問題も現実の問題でありますので、将来の理想の下に現実を無視することはできません故に、当面必要な最小限度の改正をいたします。農業委員会におきましても、私どもとして意見を申上げるならば、農業委員会が技術団体になるとか、或いは農業委員会というものが一本の県なり、国を通しての農業委員会議というような農業委員会だけを中心とした一つの農業系統組織を持つということは、いわゆる次の再編成の邪魔になるということから、こういうことから系統機関をやめる。併し現実にある組織網をどうして行くかということになりますと、これを法的な資格を持つ法人、県段階なり、或いは県なり、或いは国の場合は、国の段階における法人のほかに団体、例えば農業組合といたしましても、その一つだと思いますが、それらの団体というように法文を直しまして、そうしてでき得るだけ地域的な或いは部門的な団体、こういうものの意見を総合して、一つの次の考え方をし、又農政あり方考えて頂くことが、現在曾つて政府の提出した案よりもよりベターじやないかと、こういう心境を以ちまして提案したわけであります。
  141. 戸叶武

    戸叶武君 この法案が通過した場合、これの団体に属するところの指導者の指導というものは非常に強くなつて来ると思うのです。今まで我々がこの農協なり、或いは農業委員会なり、いろいろな諸団体において非常に憂える点は、その業務に専念するというよりも、結局政府に働きかけるとか、或いは知事と非常に結び付いているとか、政治力を持つた政治ボスというものが、その上に乗つかつて、そうしてそれを利用して行くという形が、日本農業協同組合を各国の農業協同組合と違つて非常にゆがんだものにしてしまつたのです。その結果というものは、結局小は県会議員の選挙運動から、衆議院或いは参議院の選挙運動、そういうものの片棒を担いで、事実上において職員はそのために働らく、その金は濫費せられる、或いは料理屋なり、待合はそのために立つているというような状態日本全国の農業団体をスポイルして来たのは、少くとも協同組合に対して、これと生死を共にするという中核をなすべき人という柱が打ち立てられなかつた。で、これはこの補助金制度或いは統制なりという場合、いつも生れて来るところのスポイル・システムの一つの欠陥だと思うのです。そういう面を私たちが一番憂えるのであつて、そういう点を今後においてどういうように是正できるか、その点をこの議員立法をなされたかたの金子さんに伺います。
  142. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 御指摘の点は、提案者も曾つて若干それを通して、それだけの仕事をやつて参りましたので、非常に痛手を食つた経験もありますので、官僚のこのいわゆるその地元の農民と一生を通して生き死ぬという立地にない方々は、どうもとかくその監督なり、指導というものが地につかない。而もそのとき補助金をくれるということは、理窟としてはこれは補助金はその人たちがくれるんじやありませんけれども現実の官庁としてはそういうものが非常に高く出て来る。そうすると、結局組合の経営を上手にやるよりか、係りに取り入つて、その補助金をたくさんもらつて来る組合長が腕のいい組合長である、そういう間違つた方向に行く、そうしますと、結局いわゆる政治力というものが先に立つて、地道な経理なり経営の手腕というものがあとに行くと、こういうことが最近私は全部とは申上げませんけれども、只今の戸叶委員お話と同じくそれを感じているわけであります。従つて今度の中央会というもののあり方につきましては、これは先ほども申上げましたが、この六項目の事業目標というものを組合というものを対象にしてやつておりますけれども、飽くまでこの中央会あり方というものは、この政治活動であるとか、或いは政策の問題というものに対しては、必要の最小限度にとどめて行く、そうして地道な経営の内容検討なり、或いは組合員自体なり、或いは組合の職員というものを再教育して、そうして本当の組合人というと、少しこれは片輪なような感じも受け、又少し御批判の点もあると思うのでありますけれども、併しむしろ私は極端に言えば、組合人的な一つの血の出るような、どこまで切つて行つてもそれを割切つたような職員、そういう人たちを養成し、そういうことによつて、それから出て来るそういう啓蒙された組合員なり、職員を持つ組合から、又農村と本当に、又組合と本当に生死を共にするような地道な役員というものが選出される方向へ行くのじやないか、こういうことを期待しているわけであります。
  143. 戸叶武

    戸叶武君 この間これは河野委員からの質問で、半分私は納得したのですが、問題は日本農民のこの自主的な体制というものが非常に遅れている。インデイヴイジユアリズムが成長していない。そういうところに自発的に立上つて来るような、自主的に立上つて来られるような啓蒙教育とかいうものが非常に大切だというので、これは農業団体に属している人がすべて納得していると思うのですが、結局こういうふうな機構ができると、上からの天降り的な自分たちに都合のいいような教育を押付けられるだけであつて、下から盛上つて来るような自主的な盛上りというものはどうしても少なくなつて、機械的になり、この日本農政全体をマンネリズムに陥れているのは、この各団体のセクシヨナリズムと、そういうその場限りの形式的な教育活動だと思うのです。それを見てもわかります通り、問題は日本のこの農業再編成を推し進めるための一番下部的な基盤組織というものがしつかり行かなければならないのですが、今後において農業団体再編成を推し進めるところの、本当のこの基盤組織というものを単位農協に置くか、単位農協よりももつと下の部落、部落における農業生産の実行組合的なものに置くか、そういうところはどういうふうに考えてこの立案をなされたか。
  144. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 只今の御指摘になりました点は、非常に私は今後の農村政策の上に重要なポイントであると思うのでありますが、この点につきまして、私提案者の私見といたしまして、どれが要らないとか、どれが軽いとかいうことでなしに、やはりそういうことを、端的に申上げられませんけれども、一番力を重点的に考えて、而も総合的に考えて行く面につきましては、曾つての部落を中心にしたいわゆる生活共同体のような地域団体、これをやはり基礎にして、その上に一切の協同組合というものが、それを下部組織にするというか、それを基礎組織にして打立てるべきだ、そういうことを考えておつたのでありますが、それはそのものを考えますときには、一つの過去の例といたしまして、農村の農事実行組合法或いは養蚕実行組合法というようなものが曾つてつたのでありますが、あの線をもう一遍頭に浮かべて、そうしてあの当時の欠陥というものを指摘して、そうしてこれを法制化しよう、こういうことを意図したこともあるのであります。併しながら、この部落の組織の問題を決定することは、将来農業団体のあらゆる面がそれを対象にして働いて行くのでありまするからして、相当重要なことでありますので、遂に結論をはつきりと出すことが時間的にも提案者としては出ませんので、そこで一応今度の改正案の中にそれに準じたような部落の一つの経済行為なり、或いは生活協同体のようなものをやりますところの団体という名において、それらは任意加入として法人加入の形が出て来るという点を今度挿入したわけであります。
  145. 戸叶武

    戸叶武君 この農業技術指導の面でありますが、日本農業の多角性に順応して、この技術指導の面も非常に多角的になつております。で、その農業技術指導の任に当るところの人々というものが、待遇が非常に恵まれない。而もこの農村におけるところのボスの政治的な野心の走狗としても時には動かされなければならない。そういう憂えを皆我々に訴えて来ております。で、この農業改良普及員の問題にしても、或いはその他の農業技術指導者の問題にしても、この農業技術指導の問題には、抜本的な問題には触れないでいるようでありますが、今後この法案を通すにしても、今後この農業技術指導に対して、指導員その他に対して、どういうふうな構想を以て対処しようとするお考えですか。
  146. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 只今の御質問は、この法案に直接字句として出ておりませんが、将来の問題としてどういう考えかという点になりますと、いささか私見になるきらいがあるのでございますが、折角のお尋ねでありますので申上げますが、現段階立場においては、農業の技術員というものを、今の改良普及員制度のようなその給与というものに対して、現段階においてより低いきらいがあるにせよ、とにかく身分安定という線から申しますと、やはり現段階でとつておりますところの公務員としてサービスさせる、こういうあり方が一応特徴があると思いますし、さればといつて、今のような普及員制度が、それならば万全かと申しますと、そうでなくて、もう少しその地方々々によつて非常に農業の経営なり、或いは技術、或いはすべての経営状態が違うのでありますので、その土地にもう少し地についた指導なり、或いはサービスをしようとしましたときには、それをその村なり、その地域の専属の一つの技術者、サービスする技術者としておくべきだと、こういう点も考えます。併しながら、後段の場合になりまするというと、その逆な欠点が出て参りまして、協同組合のような経済の貧困な、仮に協同組合なり、町村なりというふうな経済的に貧困な立場の中に、その基調の技術職員を置くということになりますると、当然いろいろの予算的な制約を鋭敏に受けまするからして、只今のお話のように、給与や身分安定ができないというようなことから非常に不安になつて来る。この二つの特徴と矛盾をどう調整するかということが今後の問題であると考えるのであります。併しながら、その結論として考えるならば、一応その主体性は、折角今の改良普及制度というのを設けたのでありまするから、これを中心にしてどう肉付けし、どう修正して行くかという考え方で今後検討すべきではないかと考えております。
  147. 戸叶武

    戸叶武君 この法案においても示されているように、農業生産力の発展、農業経営の合理化ということが狙いのようですが、これはこの法案だけでなく、日本の今のあらゆる立法にこういうスローガン的な言葉が取入れられていますが、日本の今合理化を要請されている、生産発展を要請されている面が停滞して一つも進まないのは、これはあらゆる団体におけるところの運営の方式に欠陥があるので、それは本当にその団体に所属して、全身全霊を捧げて働いている人たちが大きな権限を持たないで、理事者などという形において上に乗つかつて来る政治ボスが、理想もなく、そうしてこの上に乗つかつてつている。こういうところが特に日本と西ドイツなんかの大きな差ができたのは、そういうところで西ドイツにおける生産増強と合理化の遂行というものが、この理事者とその職員、労働者、皆一緒になつてこの経営協議会のようなものを持つて、ガラス張りで以て、誰にでもわかるような形のこの協議、検討をやつて、そうして推進させているのですが、私たちは今のこの農協の堕落、停滞、いろいろな原因がありますけれども、大体理事者に人を得ず、而もこの農協にいるところの職員というものは下積みで潰されて、結局は自分たちの理想を生かすことができず、このボスと妥協して、その日暮しをしていることが一番いいので、これよりやる手がないというような絶望感がその停滞を生んでいるのですが、そういう現実の上に立つて、この法案においてどの面からそれを是正することができるか。そういう具体的な例をこの法案の中から上げて行つてもらいたいと思います。(「詳細にお答え願います」「簡単々々」と呼ぶ者あり)
  148. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 只今の御指摘の点につきまして、協同組合の現段階から如何にしてよりよく理想の方向へ持つて行くかということにつきましては、非常にいろいろの要素が加わつて今日の段階になつているだけに、これを端的にこうすることによつて、起死回生というような端的な途はないと思いまするけれども、ただ考えられることは、終戦後の協同組合役員あり方を見まするというと、非常にこれが名誉職的な性格に変つて来ておる。曾つてのことを言うことはどうかと思いますが、例えば産業組合時代におきまして、私どもがこの組合は立派な組合だというものを指してみますと、私どもの県内におきましても、恐らく十年以上そのことに専心した組合長が大体多いのであります。それが今日は村会議員に落ちたから、今度は理事に出るとか、或いは村長にはずれたから理事というように、全く仕事と命がけでなくて、その立場というものを獲得するというふうな方向へ来つつあるということは私は否めないと思うのであります。そこでそれを是正する方法というものを、それを端的に法律やその他の圧力で直すということはできませんので、従つて今度の協同組合中央会のような指導機関が、飽くまで組合経営そのものを推進して行く、そのものを啓蒙して行くということから、当然組合自体がそういうふうな不適格な人でも欠陥が現われないように、そうして仕事をできるだけ地道な仕事本意に、組合自身の運営というものは地味に行けるということが本質的に進む先ず一歩ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  149. 戸叶武

    戸叶武君 最終的に質問をします。農林大臣質問します。今の金子さんのずつと話を聞いておつても、その意図するところはよくわかるのですが、まあ過渡的な段階としては、この方法しかないだろうという長い経験者からの私は体験を通じての意見だと思いますし、傾聴に値するとは思いますが、我々の考えているのは、何としてでもやはり下から盛り上げて行かなければ問題の本質的解決というのはできないので、日本のこの貧農をまで引つくるめた今の農協というものは、自作農或いはこの富農を中心とした農業経営体に、経済経営の指導機関に偏し過ぎておるのです。それはそういう意味からいつても、どうしても農民組合法を制定して行かなければならない、今の農民組合というもののあり方に対しては、いろいろ批判の余地があると思う、併し農業生産を増強させるところの推進の主体、又農業の政治的な意欲というものを正しく表現さして行くところの推進の主体は、どこまでも私は農民組合でなければならない。それに対して政府はこれに対する立法的措置を行おうという考えをお持ちかどうか、非常にあいまいになつておりまするが、これは議員立法というような形になつている、こういう法案だけがずつと保守勢力まで通して行つて、これが通つたあと農民組合法なんかを置去りにして行くという駈引が多くの場合においてなされ勝ちなんです。これは不可分なものなのでありまして、この法案提案者政府もしつかり考えなければならないのは、やはり日本農民の姿をそのままに反映することができるところの組織体を我々が認めなければならないので、その立法化というものは極めて重要でありますが、これに対して農林大臣並びに金子さんから責任ある答弁を私はお願いしたい。
  150. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 先ほど野溝さんからも御意見が出ておりましたが、いわゆるこの農民組合法の問題につきましても、いろいろこれは御意見があると思います。私は農村の団体といたしまして、経済的な進歩向上を団体の力によつて促して行くという面においては、農業協同組合に大きく期待をいたしておるわけでございます。同時に一般農政活動の面におきましては、相当検討を今後に残されてはおりますけれども農業委員会のこの系統を通じての団体で一応農村の要請に応え得るんではないか。もとよりいろいろの過去のいきさつから、又尊い歴史から発展もして来ております農民組合、その他いろいろの団体もございましよう。それは決して私ども否定するものではございません。いろいろの団体活動が行われるということは、これはもう当然憲法の保障するところでございます。併しながら、今日政府といたしましては、この協同組合農業委員会を基盤としまするところの農政団体の健全な発展を企図している以外には考えていないわけであります。
  151. 戸叶武

    戸叶武君 今のに関連して……。金子さんにやつてもらう前に、今の農林大臣答弁は非常に私たちに不満を増大させました。併しこれは農林大臣よりは金子さんのほうがこの法案の当事者ですから、政府はそういう意図の下にあなたたちと組んでこれをやつたのだということになると、これは考え直さなければなりません。一つ責任ある答弁をお願いしたい。(「それはいいところだ」「大事なところだよ」と呼ぶ者あり)
  152. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) これは提案者であると言いましても、当然これは党派なりその他に相談したことではありませんので、私見に亙る点があるかと思いますが、お許しを願いたいと思います。只今の農民組合法の将来に対してどういう考え方を持つかということでありますが、私は現段階でも、法律には基きませんし、又農民組合という名前は付いておりませんが、いわゆるそれと同じような比較的近い農民組織というものを、現に私もその立場におるわけであります。従つてそれに対しては決して私が関心を持たんということではありませんが、併し今の農民立場という、農民組合というものが一方においては働いて行く、而もいつも搾取を受ける立場になつている弱い存在だという点から行きますると、その点だけは労働組合と同じような立場にありまするけれども、又一面経営の上に立つという点から行きますと、いろいろの点がある。それらの点をいろいろ総合いたしましたときに、農民組合というものに対して重大な関心を持つておりますが、現に衆議院にもその組合法は出されておるわけでございます。で、それを検討いたすために、今私引続きこつちへ来ておりますので、又毎晩遅いので党と連絡をとつておりませんが、恐らく継続審査になつているのじやないかと思うのでありますが、その点につきましては、まだ私は遺憾ながら鋭意研究をいたして、決して関心を持たないではないが、実現するためにはもう少し検討を要する、こういう段階が私の今の心境であります。
  153. 戸叶武

    戸叶武君 私は今の最終的な答弁において非常にこれは不満を持つものです。少くともこの法案を立案して、而も農林大臣農政活動をここにやらして行くのだということをはつきり言つておりますが、これで政府の補助機関的な性格をも持ち、そして農政活動をやつて行くということは、農民の自主的なとにかく盛上りというものは、本当に抑制されて行く危険性があると思うのです。そういう農林大臣答弁をしておる場合に、この農林大臣に対して異つた見解を吐くということは金子さんもしづらいでしようが、又金子さん自身の考えておる農民組合というものは、少くとも今までの土地制度を中心とする、アンシヤンレジームに対する闘争を実施して来たところの、どちらかといえば農民組合組織それだけを見ておるようですが、この土地改革のなされた後における日本農民あり方というものは、又おのずから農民組合に所属しておる、所属していないは問わず、農業生産に従事する人々、その人たちが本当の組織体を持つて自分たちの生活を防衛し、自分たちの生活をよりよいものにして行こうという意欲の基盤としてのこの生産農民組合というものが当然考えられなければならないのです。都市における労働組合に対して、国家が正しき認識を持つておる場合において、日本農民組合というものが反動的な政府の下において弾圧を受けて健全なる発達を阻止されておる。このゆがめられた今の姿だけを見ておつて、これを伸ばすまいとする意図があなたたちに含まれているとするならば、こういう基礎の上に立つたところの農業政策に対するものの考え方というものは一つも価値がなくなるのです。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私はそういう意味において、金子さんは非常に苦しい立場にあると思いますが、もつと私は確信を持つた見解を披瀝しなければ、この法案に対する我々の考え方というものも、おのずからやはり考え方を変えて行かなければならなくなると思います。
  154. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) 私は先ほど申上げたように、農民組合法を制定するという、現実の問題として一つ提案がなされておるわけでありますが、これを制定することにつきまして、今後の農業、農民の位置をよりよくするための、耕作農民を中心にした一つ組織をどう持つて行くことが妥当であるかというその方法問題について、私は農民組合を否定をしておりません。だからその問題に対しては非常にむずかしい問題が私としては幾つかある。そういう点から、これを継続審議にすべきだということで言つたのでありまして、否定する意味で言つたのではないのでありますから、その点だけを……。
  155. 江田三郎

    江田三郎君 関連質問……。農民組合の我々当事者にとつて大事な問題だから……。農協をよくしなければならん。ところがその農協がよくないで逆の方向に行つている。そこにいろいろな問題がありますけれども、私どもは一体この農協をよくするのには、上からの監督を強化したり、それから補助金を出す、こういう行き方ではよくなるものではないので、下からよくして行かなければならん。一つ下からよくするにはやはり農民の中に農協をよくしなければならんという声が盛上つて来なければならんというのです。従つて農村の中に、農民の中に、農協に対して批判をし、農協に注文を付ける、農協を監視する、こういう組織ができて初めて農協というものが正しく発展するものだ、こういうように考えるわけです。特に最近の農協というものについて我々が非常に注意しなければならんことは、だんだんと農協の内部において零細農というものがこの外へはみ出されつあるのではないか。農協が若しこのバランス・シートを合わすということだけ考えましたならば、零細農を農協に含むということはこれはマイナスになる。ところがどうしても今の政府考え方、この法案で出て来る考え方からすると、先ず農協というもののバランスを合わさなければならない。成るほどそれは大切なんです。バランスを合わすということは大切ですけれども、併しながら、そのバランスを合わすために、農協の中から零細農が追い出されて行つたんでは、そういうものに対して一体国なり、県なりが莫大な援助をし 補助をする必要があるかどうか。農協というものが一部の農民組織で、そういうような補助なり援助なり、特に零細農を置き忘れた農協になつたのでは、そういうものを受ける資格はなくなるんじやないか。そこでそういうようなことで本当に農協を牽制し、農協を監視し、農協を正しい方向へ持つて行くためには、零細農に基盤を置いたところの農民組合というものがなければ、これは期待できないのじやないか。そのことを農林大臣は否定され、金子さんは一応考えておると言われますけれども、そういう行き方をとらないで、何でも上から補助金をやり、その代り監督を厳重にし、ロツチデール以来の協同組合精神も失わせる、これでは本末を頴倒しているじやないかということなんです。そういう点について一体どう考えられるかということです。
  156. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 江田委員の御意見よくわかりました。非常に傾聴すべき御意見であろうかと存じます。併し協同組合をよくして行くために、その組合員が別の組織を持つて、そうして監視その他農協健全性を保持するようにやつて行かなければいかんじやないかということにつきましては、私は結論的な考えを持ち得ません。私は少くも農業協同組合が農業者によつて構成をせられ、而もその農業協同組合協同組合のために事業を行うのでなしに、加盟の農業者のために事業を行うべきものだと思うのでありまするが、農業協同組合を結成せられる農民が、農協に対する認識と責任の自覚によりまして、或る程度お話のようなことは達して行くんじやないかという意味で、私はちよつと結論的な意見を申上げられませんけれども江田委員の御意見は十分拝聴いたしました。
  157. 戸叶武

    戸叶武君 余り時間をとつてはいけませんから、私たちも自分の態度決定に非常に苦しまなければならん立場に追込まれて来たので、質問を続けているのですが、こういう法律によつて農業団体に新らしい体制が布かれた場合においても、とにかく金子さんの答弁によりますとわかるように、農業委員会というものを或る程度まで次の再編成に邪魔にならないように抑えて、そうしてこういう形態を作つたのだというところに、当然最終的な段階としてこれが固まつてしまうものではなくして、暫定的な処置としてこれから健全な普遍的な農民組合というものの育成を相当図つて、そうして自主的な農政及び農民組合活動によつて生まれる団体に移行しなければならんものであるという認識の上に立つて私はなされたのだと思います。今も大臣から弁解がありましたし、大臣自身もだんだん農政には熱心になるかたと思いまするから、今までは何とかやつておりましたが、これから考え方は日に日に変つて行つてくれると思いますけれども、とにかくそういう意味におきまして、やはり農民の自主的な組織体というものが盛上つて来るような、私は科学的な形態としてならば或る程度容認できるのですが、そういう謙虚さを持つて作り上げられなければ……、今の農協が行詰つた、今の農業委員会が行詰つた、これも政府一つの責任である。政府というよりも大きな国家的要請から受けたところの責任である、何とか救わなければならんという気持はわかるが、ただ救うのでは問題にならん。よりよいものを作り、明日の日本の民主的な基盤組織をここから組立てて行かなければならないというときに、今のような俗悪な政治の附属機関みたいな、補助機関みたいなものになり下つて行くところの行き方というものには我々は堪えられない。だからもつと健全な形において農業団体組織体というものが作り上げられなければならん。そういう方向に向つていろいろと苦労して、忍びがたきを忍んで前進して行かなければならんと私たちも思つておりますが、その点を金子さん真情を吐露してもらいたい。
  158. 金子與重郎

    衆議院議員金子與重郎君) これはこの提案を御説明申上げる当初に申上げたのでありまして、どうしても今の日本の農業の状態考え、而も今後農村に対しては悪い条件が目の前に多々出ておりますけれども、よりよい条件というものは恐らく見当らないという、こういう段階におきまして、国家が農政に対する考え方、同時に農民自体考え組織に対しても相当私は掘り下げて考えなければならない段階に来ておる。併しながら、この問題はおのおの歴史があり、又おのおのそこに人間の問題があり、非常に短兵急に解決することは困難でありますので、最前申上げ、又只今戸叶委員のおつしやるように、差当り必要な改善をして、而もこの前の政府原案にありますように、一つのものを厳然として作る、それが将来の真の団体の再編成をするときに非常な支障になりはしないかというような点はこれを除きまして、そうしてできるだけ早い機会に農村の指導に当つておる実際の方々或いは政治の面に立つ人など、いろいろの角度からこれを検討して、一つの動かないというか、一つの定石をここに持つて進むべきじやないか、こういう考え方は只今御指摘の通り相当謙虚に考えておるつもりでございます。
  159. 東隆

    ○東隆君 時間がありませんし、しんがりでありますから、簡単に結論を申上げます。  占領政策下における農業関係団体政策、これは行き過ぎもありますし、又極めていいところもあるはずであります。で、私はこの両法案がその基本が土地問題を中心にして考えられておるということは、これは非常に大切な事柄であります。あらゆる農村の問題が土地問題に集中しておる、こういうことは私は真理だと、こう考えておりますが、その意味で農地改革後における農家が転落をしないように、自由なる農民の意思を以て農業協同組合を作る、これは占領軍の命令でこれができたのですから、これは非常によいと思う。ところがその後において農業協同組合は大分違うほうに発展をして行つて、それから農業委員会はこれもやはり土地問題を中心にしたものが、これが私は中心的なものだろうと思う。ところが今度は改正によつてどういうふうに動いて行つておるかと申しますと、行政機構としての農地の問題をやるところの機構が、今度は法人化して上部のほうで一つの人格が生まれて来るわけです。これは生まれて参りますと……。これは生まれない前にバース・コントロールをやつて殺しておけば問題はありませんけれども、五カ月、六カ月と妊娠して大きくなつて、そうして生まれて来て殺すということになると大変困難な問題がある。そういうような意味農業委員会のほうにおいても考え方が非常にたくさん出て来ると思う。それから只今いろいろお話になりました農民組合の問題にいたしましても、これも私は土地に非常に関係があると思う。曾つて農民組合はこれは地主に対する小作民の運動であります。今の農家は土地を持つておりますが、これは完全な所有権を持つておるとは思いません。耕作権、完全な耕作権を持つているのであつて、所有権じやないのです。最終の所有者は私は国家が土地を持つておると、こう考えたほうがいいと思う。そうすると、農民運動の性格というものもおのずから変つて来て、私は農民組合性格というものは国家に団体交渉をする、こういうような面を多分に持つたところの、即ち農民に最もいい政策をやらせるところの強い団体にならなければならない。そういうようなものが生まれなければならんので、これは占領後の初めての帝国議会に野溝君が農民組合法を議会に提案をしております。その後占領軍は農民組合に対するやはり指示をして、農民組合を作れと、こういうふうに言つているはずであります。そういうようなことを考えて来ると、私は政策の面をやるのにはどうしても農民組合を中心にして強力にやつて行かなければ本筋のものにならないし、それから技術の面はこれはどういうことになるかというと、今の農業委員会の面から技術の面を大きく生かしても、これは今の改良普及技術員その他と大きな混乱を起すだけである。協同組合のほうは私は申しませんが、そういうふうに考えて来ると、まだ農地の問題について大きな問題がありますから、その問題を徹底的に強力に解決をするために、私はこの農業委員会というものは農地の面にこれは集中して行くべきものなので、それを非常に拡大をして、そうして昔の農会のようなものを作ろうとしておる。私はその面において、これは非常に日本のこれからの根本的な農業団体を再編成するというような意味において、大きな間違いを起しているような気がしてなりません。そういう関係で私はただ一点伺いますが、この二つ法案を中心にして、農林大臣が二月初めにこの委員会農業団体関係した法案改正法案は出さないと、こういうことを言われました。その後議員提案で以て出て来たのであります。そうしてこれはベストでない、ベターだと、こういうふうにお考えになつてこれを指示されておる。従つて何か私は農林大臣に大きな農業団体再編成に関するところの構想があると、その構想を中心にしてこれがベターだと、そういう意味賛成をされておると思うのですが、その中心的な構想ですね、その構想を技術者は一体どういうふうにするか、それから農業災害補償法によるところの共済組合はどういうふうにするか、それから農民組合のようなああいう団体をどういうふうに考えておるか、それからこの農業委員会をどういうふうに考えるか、こういう点を私は簡単に一つ農林大臣考えをお聞きして私の質問を終りたい。
  160. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 勿体を付けた大きな構想を私は持ちません。それらは今後の研究に待たなければならんと存じます。私どもとしましては、国会のありますごとに一応政府改正案を出しておりました。それが国会の積極的な御承認を得るところまで行つておりませんでしたから……。併し問題は未だ検討を要すべき問題を根本的に孕んでおる、それらを併せて検討して、政府としては成案を得たいという考えでおつたわけでございます。今回金子さんや或いは小枝さんと熱心に今日の農村団体の実情を憂いて、次善策としてもこの程度の改正は必要であるということで御提案なつた。それは同時に私ども前々から御提案をいたしておりましたところと、いろいろまあ見解は異にせられる向きもございますけれども、私どもとしては、その根幹とするところにおきましては何ら異存を差挾むところはございませんから、これを是非皆様の御賛成を仰ぐように努力をいたしておる次第でございます。いろいろ共済の問題或いは農民組合の問題等につきましては、今後、先ほどから申上げますように、農業共済等につきましては十分政府として責任を持つて検討して参るつもりでおります。
  161. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 所定の時間も過ぎましたので、質疑は終つたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」「賛成」「反対」と呼ぶ者あり〕
  162. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  163. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を始めて。重ねてお諮りをいたしますが、先ほどきめました所定の質疑時間が完全に終りましたので、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
  165. 江田三郎

    江田三郎君 議事進行について……。質疑の問題は異議はあるのです。異議はあるけれども、決して終つておるのじやないのです。これは終りはしませんよ。(戸叶武君「終らせられた」と述ぶ)だから質疑は終らせられたと認めて異議はないということに今なつたと思いますが、それはそれとして、これから討論ということになるのです。それで私どもこれは本当に大事な問題だと思つておる。そこでこの委員会討論というものは、これはもうそうだらだら一日やれるわけではないが、併しとにかくこれは将来やはり文献として残るものだと思う。それでやはりきちつとしたものにして置きたい。それで何しろもう一時三十何分で、これだけ傍聴者が多いと頭がぼおつとしておるわけですから、長いことは言いませんから、ちよつと休憩してもらいたい思うのです。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)これは生理的な必要、昨日非常に遅くなつて、今朝九時だというので、九時に間に合うように早くやつて来た。北さんのような元気な人なら……。
  166. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 如何ですか、江田君からそういう議事進行の動議がありましたが、如何でありましようか。    〔「続行」「反対」「懇談して下さい」と呼ぶ者あり〕
  167. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 速記を止めて。    午後一時三十九分速記中止    —————・—————    午後二時四分速記開始
  168. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは速記を始めて下さい。  それではこれより農業委員会法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見がございましたならば、修正案文及びその修正理由を討論中にお述べを願います。
  169. 河野謙三

    ○河野謙三君 本法につきましては一部修正を附して賛成せんとするものであります。  もともと本法につきましては、提案者は率直に臨時措置である、根本問題は残つておるこういうことははつきりおつしやつております。政府におきましても、すでに現在の形の農業団体ではいけないということで、前農林大臣の広川さんの頃に団体再編成と銘打つて本議会に改正案を出されたのであります。これは議会の承認するところとならずして流れましたが、私はこの機会に特に保利農林大臣に対して意見を申上げたいのでありますが、本法につきまして私が非常に遺憾と思うのは、本法のごとき農村団体につきましての抜本的の改正につきましては、勿論議員立法というものは形式上これは何も違反じやありませんが、少くともかような性質のものは、特に吉田内閣におきまして、前農林大臣のときに農業団体再編成の法案提案された経緯から行きましても、現保利農林大臣の責任において私は出すことが妥当な途ではないかと考えておるのであります。併しそれらも含めまして提案者もどこまでも臨時立法であると言つておるのでありますから、この問題は一応承認いたしましても、速かにでき得る限り早い機会に保利農林大臣の責任において根本的な農業団体再編成の策を立てられて、できれば来たるべき通常国会に私は成案を得て臨んで頂きたいと、かように思うのであります。これが提案者趣旨でもあり、又大きくは全国農民の希望でもあり、そういう意味合において私は以下協同組合法の一部改正並びに農業委員会法の一部改正につきまして修正をしたい、かように思うのであります。修正案文を朗読いたします。    農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する修正案   農業協同組合法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第七十三条の次に一章を加える規定のうち、第七十三条の十八第四項中「三年以内」を「二年以内」に改め、第七十三条の二十二第六項中「三年以内」を「二年以内」に改める。   附則第六項中「第五条第五号ノ六」を「第五条第五号ノ五」に、「五ノ七」を「五ノ六」に改め、同項を附則第九項とし、以下順次三項ずつ繰り下げる。   附則第五項を附則第八項とし、附則第四項中「中央会」を「農業協同組合中央会」に改め、同項の次に次の三項を加える。  5 政府は、昭和三十一年五月三十一日までに、農業協同組合農業協同組合連合会及び農業協同組合中央会に関し、農業委員会、都道府県農業会議及び全国農業会議所との関係その他の事情を勘案して検討を加え、必要に応じて、農業協同組合法その他の法律改正のための措置をとらなければならない。  6 前項の場合には、農林大臣は、農業団体審議会の意見を聞かなければならない。  7 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。    第三十四条第一項の表中     農業共済再保険審査会      農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)により政府の行う再保険に関する事項を審査し、並びに農業災害の発生予防及び防止その他農業災害補償に関する事項調査審議すること。     農業共済再保険審査会      農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)により政府の行う再保険に関する事項を審査し、並びに農業災害の発生予防並びに防止その他農業災害補償に関する事項調査審議すること   を     農業団体審議会      農業協同組合法昭和二十二年法律第百三十二号)又は農業委員会法昭和二十六年法律第八十八号)による法人及び農業委員会の制度に関する重要事項調査審議すること   に改める。   附則に次の一項を加える。  13 日本中央競馬会法(昭和二十九法律第  号)の一部を次のように改正する。    附則第二十項のうち第七十三条の七の改正規定中「十二」を「十三」に改める。  次に     農業委員会法の一部を改正する法律案に対する修正案    農業委員会法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。    第十五条の改正規定中『第十五条第一項中「二年」を「三年」に改め、同条』を「第十五条」に改める。    改正後の第三十五条の次に三章を加える規定のうち、第四十六条第七項中「三年以内」を「二年以内」に改め、第六十七条第二項中「第六十条第一号の会員の」の下に「代表者の」を、「第四号までの会員」の下に「(同条第二号及び第三号の会員にあつては、その代表者)」を加え、第六十九条第一項中「当該会員」の下に「(同条第一号から第三号までの会員にあつては、その代表者)」を加え、同条第三項中「三年以内」を「二年以内」に改める。    附則第四十項を附則第四十二項とし、附則第三十九項中「第五条第五号ノ五」を「第五条第五号ノ六」に、「五ノ六」を「五ノ七」に改め、同項を附則第四十一項とし、附則第二十三項を附則第二十五項とし、以下附則第三十八項までを順次二項ずつ繰り下げ、附則第二十二項の次に次の二項を加える。  23 政府は、昭和三十一年五月三十一日までに、農業委員会、都道府県農業会議及び全国農業会議所に関し、農業協同組合法昭和二十二年法律第百三十二号)による法人との関係その他の事情を勘案して検討を加え、必要に応じて、新法その他の法律改正のための措置をとらなければならない。次の二項を加える。  24 前項の場合には、農林大臣は、農業団体審議会の意見を聞かなければならない。附則に次の一項を加える。  43 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。    第三十四条第一項の表農業団体農業委員会等に関する法律」に改める。  以上であります。
  170. 松浦定義

    ○松浦定義君 私は只今議題となつておりまする二法案に対しまして賛成をいたすものであります。特に賛成はいたしまするが、その審議の過程にありました二、三の点につきまして、なお要望をこの際申上げたいと思うのであります。  敗戦後の日本農民の民主的な団体として発足いたしました農業協同組合の今日の不振の原因は、必ずしも農民の責任ばかりではないと思うのであります。従つてその役職員の責任でもあると共に、これが最終の責任は政府にあると考えるのであります。結果は政府農業政策の貧困とさえ言われているのでありまして、せめて今回の一部改正によつて補えるといたしますならば結構だとは考えるのでありまするが、今回の中央会は、単協を対象としての指導を行うそのものが農業会議又は会議所等一部に役員を送ることによつて農協の自主性が失われるのではないかと思うのであります。農民の個々を指導する農業委員会と、単協指導する中央会との性格が末端農村の組合農業委員会との関係におきまして、その連絡協調が保たれない場合には本法案はその目的を果すことができ得ないのであります。この点を十分考えましたときに、私は今後農政に関する政治的活動まで行うであろうと考えられまする会議及び会議所のあり方が、農民の政治教育上重要な点となるのであります。特に基盤となる農村青年に及ぼす影響考えられましたときに、専任せられる指導者中、重要なる役職員の動向が日本農政の方向を左右すると思われまするので、この点に関しまして、政府当局は十分な責任を持つものであるということを申上げまして、この両法案、更に又只今河野委員提出の修正案に賛成をするものであります。
  171. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 他に御発言はございませんか。
  172. 戸叶武

    戸叶武君 私たちは原案に対して非常な不満の意を持つておりまして、この修正案にも全面的に賛成をしがたいものを持つておりまするけれども、原案よりは一歩前進したものである。我々が日本農業団体あり方に対してはきびしき批判を加えると同時に、理想的なものに作り上げるための過渡的な段階をどうやつて我々は過さなければならないかという建設的な配慮も行わなければならないと思うのであります。そういう問題に直面しながらも、やはり我々は農業経済指導農協に、農政指導農民組合に、又技術指導は、この面はもつと統一的な考え方を持たなければならない。そういうことをどうしても崩すわけに行かないのであります。そういう意味におきまして、今後この法案が通過された場合におきましても、もつと抜本的に農業団体の再編成をどういうふうに考えるか、特に審議会の運営というものは重大だと思うのでありますが、それを十分検討した上でこの二年間の限界、この時限立法的な性格、これをはつきり認識して、より深く根本的な改正の作り上げをしてもらいたいのであります。この法案審議の過程に当りましても、いろいろな意見というものがいろいろな団体を代表したこの利害の錯綜の中に立つて、又いろいろな団体立場々々に立つ人はやはりそこに偏する傾きもなしとしないのであります。日本農業を我々が根本的に建直すという場合においては、やはり世界経済の中における日本農業のあり方というものを直視して、過剰農産物で以てゆすぶられて行く、而も自主性のない日本外交の中から、私たちは日本農業の建直しを国内の自立体制と同時にそういう面からも考えなければならないので、そういういろいろな総合的な立場から農業団体の再編成が一歩前進するものとしてこれを認めるのでありまするから、私たちは先ほど質問の際に展開したように、農民組合に対する概念について保守勢力の人たちは全くその認識を欠いている。既存の農民組合に対する概念でなくて、既存の農民組合にいろいろな欠陥があつたとしても、その歴史的な役割は大なるものがあつたのであります。我々は日本再建のためにどうやつてこの我々の農民の基礎構造を作り上げて行くか、そのことをしつかり考えて、今農協に或いは指導連に火がついてはやつて行けないというような形で以てどさくさ仕事をするのでなく、今の現実を我我は何とか救わなければならないけれども、それだけで以て満足するのではなくて、根本的な建直しをやつて行くために一歩前進したということを、皆さん方も我々だけの意見でなく認めて下さることによつて日本農政の上にただ漫然としてその日暮しをやつて行けばいいというような低調な空気を払拭する意味において、この私たちも忍びがたきを忍んでこれは賛成しますが、どうぞこの保守勢力の人たちも農政に関しては随分反省している面もあるのですから、謙虚な形で今後根本的の考えの建直しをやられんことを希望するものであります。
  173. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 私は只今上程されております農業協同組合法の一部を改正する法律案に対しまして、河野委員から提出されました修正案を含めまして、又農業委員会法の一部を改正する法律案に対しまして、河野委員から提出されました一部を修正する修正案に賛成するものであります。只今までにいろいろ質疑応答があつたのでありますが、この今回提出されました両法案内容から見ましても、提案者及び農林省におきまして、まだ十分なる案ではない。逐次訂正をして行きたいという気持が我々にはわかつたのであります。私はこの経済的にも社会的の地位におきましても、いつも下層にあります農民の地位の向上、発展のために、是非とも全国農民の大同団結を願つて、そうしてこの農政の面に大きく響かせなければ日本の食糧問題等も解決しないと常に念願しておるものでありまするが、従いまして、農業団体がお互いに相剋、摩擦をするようなことでは相成らん。是非ともお互いに調整をして、それぞれの分野において十分なる能力を発揮すべきであるという考え方から今日まで進んで来ておるわけでありまするが、この内容を見ますると、ややもすればここに中央においては妥協工作が行われたような形になつておりまするが、下部におきましては相当の紛争がかもさるる素因が含まれていることは否むことはできないのであります。こういう意味におきまして、私はこの両法案に対しまして、この附帯決議を附けまして、強く政府及び提案者にも要望いたしまして賛成をしたいと思うのであります。  決議案を読んでみます。    農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議  一、農業団体の問題は農政の根幹をなす極めて重大な問題であつて、これが取扱いは特に慎重を期さなければならない。今回両法案による措置は一応の考え方であると思われる。併し、なお、幾多重要な問題が残されていることは本両法案審査の過程においても明らかにせられたところである。よろしく政府は、従来の経過に鑑み、且つは本法実施後の成績に徴し、衆智に諮り、できるだけ速かなる機会において、農業団体の問題の解決に抜本的な措置を講ずべきである。  一、政府は、速かに、農業協同組合が行う共済事業農業共済組合が行う任意共済事業の両者事業について、これら両者事業の分野を調整し、農業共済組合が行う任意共済事業についても、これが健全性を確立するため適切な措置を講ずること。  一、右につき、今回農業協同組合法改正によつて農業協同組合が行う共済事業が、農業共済組合が行う任意共済事業より重視せられているような印象を与え、かかる結果を招来しないよう、政府において遺憾なく措置すること。末尾のほうの「なお」は誤解を招く点もございますので、皆さんにお配りしてありまする案文を削りたいと思いますから御了承を願いたいと思います。よろしく御賛成を願いたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  174. 江田三郎

    江田三郎君 私は日本社会党を代表しまして、只今上程されました農業協同組合法の一部を改正する法律案並びに農業委員会法の一部を改正する法律案の原案及び河野委員から提出されました修正案に反対をいたすものであります。  この二つ法案は、提案者のほうでは現在農業協同組合なり、農業委員会なりが直面している問題を、それだけをともかくも片を付けるんだ、こういう去り気ないような御説明がございますけれども、私どもはそうは受取らないのでありまして、これは、この二つ法案によりまして、日本農業協同組合なり、農業団体性格に大きな変化を与えるものである、団体再編成ではないと言われますけれども、これは明らかに団体再編成である、こういう見解を持つものでありまして、極めて重大視しておるのであります。これは提案者も或いは政府当局も、委員会における言葉ではいろいろなことを言われますけれども、やはり腹の底では私どもと同じ考えを持つておられると思うのであります。又先ほどからの討論を聞いておりましても、やはりこの問題を団体の再編成として扱つておられる、こういう日本農政根本に触れるような団体の再編成というものは、これはよほど私どもとしましては慎重に取組んで行かなければならんことでありまして、これは河野修正案によりまして、たつた二年間のことだと言いましても、二年間に一つ現実を、実績を作りますというと、それは却つて今後の団体の真の再編成のために大きな障害となることが必至でありまして、皆さん討論の中で、或いは政府答弁の中で、或いは提案者の説明の中で、いずれもこの法案が十分なものと思われない、不満足であると、そういうことをお考えになつておるのでありますならば、不満足な実績を先ず打立てて、そうしてあとあとの再編を却つて困難ならしめるような方向はとるべきでないと思うのでありまして、これに対しまして、私ども慎重にお亙い同士が審議をするだけでなしに、関係の各団体、特にこの法案と一緒に衆議院で議員立法として提出されました農民組合法のほうは、審議未了になつておりますが、やはりそういうものとも一緒に、広く衆智を集めた結論を打出さなければならんと思うのでありますが、この委員会審議というものは、そういうことに対しまして極めて短い時間で、何ら審議を尽していないのであります。根本理念に対してそうだけでなしに、小さな問題にいたしましても、例えば農業協同組合団体加入という問題があります。法人でない団体農業協同組合加入さしたときに、一体その結果はどうなるのか、万一間違つたことが起きたときに誰が責任を負えばよいのか。法人ではないのであります。ただ団体であります。そういうようなことは一体どうなるかということもございましようし、或いは細かな問題になりますというと、本当にまだ何ら触れていない。例えば農業会議ができまして、全国農業会議所に出て来る団体、その規定におきましても、いろいろ全国的な農業協同組合その他の農業団体の代表者並びに学識経験者とありますけれども、全国的な農業団体というものはおよそ二百ぐらいあると思います。恐らくこの二百を全部網羅することはできますまい。その中で提案者は一体この農業団体とは具体的にどういうものを指しておるのか、どれとどれをオミツトして、どれをはめ込もうとしておるのか、そういう点についても私どもは何ら聞いていないのであります。疑問を挙げますと数々ございますが、そういうように皆が不満足と考えており、而も審議は一向に尽さないで、これを本日討論に持つて行かなければならんということは、私は今まで慎重な審議を誇つて来た当参議院の農林委員会として汚点を残したのではないかと思うのであります。特に片柳委員長がいろいろ御努力されましたが、私は片柳さんのような長い間農政に携わつた人が、なぜこの問題についてはもつと断固として慎重な審議を要求されなかつたか。恐らく委員長がそういう決意を持つて当られましたならば、委員の各位としてもそれと同調したであろうと思うのでありまして、私はこの点を個人的にも非常に残念に思うのであります。  そこで私どもは、この法案根本的な農業団体性格の転換であると申しましたが、先ず第一に、農業協同組合につきまして、先ほど質問のときに私がちよつと触れましたように、全国中央会は、これは加入、脱退の自由がないのでございます。当然加入でございます。当然加入というような組織方針が、自由なる農民組織である農業協同組合に果して許されてよいことなのかどうか。或いは又役員の問題にいたしましても、選任制が新たに加えられた。農業協同組合は自由なる農民組織であると同時に、たとえ何口の出資を持つておりましようとも、或いは一口の出資でありましようとも、皆が一人一票であります。そこに協同組合根本理念があると思うのであります。これなくしては協同組合ではございません。若しそういう出資の数によつて権限が違うのでございますならば、これは株式会社でありましよう。然るにこの農業協同組合のロツチデール以来の一つ基本理念でありますところのこの役員の選挙に当つての一人一票という制度を崩して、選任制度にしてしまう、この一つ考えましても、これは農業協同組合農業協同組合の看板を失うことになるのであります。提案者小枝さんなり、或いは金子さん、特に小枝さんのお話を聞いておりますというと、選挙で出た者はどうも適当な者が出ないのだと、成るほど現実はそうかも知れません。併しながら、選挙で出て来る者が適当な者が出ないということになるなら、そういう批判は私は農業協同組合だけではなしに、或いはお互い国会議員に対しても世間はそういう批判をいたすでありましよう。そういうことは、現実がどうであろうとも、その現実を歯を食いしばつて一つ一つよくして行かなければならんのでありまして、現実がここだからもう一歩下つたところでこれを受止めるというようなことでありますならば、これは一歩後退し、二歩後退し、次々にこの団体の本質というものを失つてしまうのではないかと思います。更にこの農業協同組合につきましては、今後監督権が強化されまして、これはひとり共済事業或いは定期預金を扱う、こういうことに伴うところの行政機関監督強化だけではございません。例えば第六十条によりまして、従来農業協同組合の設立の許可、不許可、これは行政官庁が握つておりますけれども、これは農業協同組合農民の自由な組織でありますから、定款又は事業の計画或いは内容が法令に反するときだけ行政官庁は不許可にしておつたのでありますが、今回はそうではございません。その事業が健全に行われない、又公益に反するようなものであるならば、これは不許可ということになるのでありますが、一体その事業が健全であるかどうか、それは誰が判断するのでありますか。それは農民自身判断したらいいのであります。自分たちが集まつて金を出し合つてやるのでありますから、農民たちは健全であると思つてやるので、誰も不健全と思つてやるのではありません。その結果損をすることもあります。併しながら、そういう損をし、儲け、失敗をし、或いは成功し、その経験の上に農業協同組合というものが立派に成育するのでありまして、これを行政官庁が事業の計画が健全であるか、不健全であるかを判断し、行政官庁の判断によつて許可、不許可が与えられるということになるというと、もはやこれは農民の自由なる組織ではないのであります。我々はそういう点からいたしまして、このほかにも指摘できる面がございますけれども、この農業協同組合の一部改正というものは、農業協同組合という看板を削ることである、若しなお農業協同組合という看板を残すといたしますならば、それは農業協同組合が農業会の看板の塗替えだという悪口を言われましたが、今度は何の看板の塗替えか知りませんけれども、私は農業協同組合という看板は偽わりの看板になるのではないかと思います。  更に、勿論現在の農協に数々の欠陥がございまして、これには組合の経理の指導等の問題がございます。併しながら、私はそういうことこそ本当に農民自身がやればいいことでありまして、全国中央会というものは一応農民自身のものでございますけれども農民自身が作つた形式にはなりますけれども、併しそれは国から補助金をもらう団体であるし、そうして全国中央会或いは地方中央会という、この中央会というものを二つ作らせないというのは一体何事かということをお聞きしたいのであります。この六十条によりますというと、「農業協同組合中央会事業の全部又は一部と同種の事業を行うことにより農業協同組合中央会事業発展に支障ありと認められるとき。」には許可しないことになつております。もはやこれによりまして中央会一つしかできない。なぜお上が認める監査機関だけを認めるのか。なぜ農民自身が作るところの自分で自分たちの農業協同組合の経営を監査するという組織を認めないのか。ここでももはや農業協同組合基本精神というものは失われてしまつておるのであります。一体その補助金にいたしましても、先ほど来問題になつております八千万円の補助金、或いはこれに大きな期待を持つておられましよう。併しながら、松浦君の言うように、八千万円の補助金というものは、末端へ行くというと一農家当り七円の計算になるのだ。一農家当り七円というものが本当に農民が出せないでしようか。私はそうではないと思います。全指連は行詰つた指導連は行詰つたと言いますけれども、併しながら、指導連の経営というものは、本当に農民が、今の計算で行きますというと、一握りずつの米を出し合つても結構やつて行けるのでありまして、指導連は上から八千万円の金を出して強化されるのではなくして、指導連というものが本当に農民のための仕事をやつておれば、なぜ農民が一握りの米を出し惜みましようか。一握りではなしに、一升でも出すでしよう。そういうものを盛り立てて行くのが、これが本当の農業協同組合の強化でありまして、行詰れば国から金を出してもらう、或いは県に泣きつく、或いは又こういうような農業協同組合基本方針、ロツチデール以来のこの組合精神を失うようなことをしてまで中央からの補助金に頼らなければならないというような形では、そういうことを現在の農業協同組合諸君が待ち焦れておるといたしますならば、私はそういう農業協同組合には多くを期待できないと思います。或いは戦争中の農業会のように、金子さんが先ほど申されました、戦争中の農業会が官僚機構によつてひどい目に会つて、もう一遍そういうことを甘んじて受けようとなさるのかということを私はお聞きしたいのであります。そういう点から行きまして、私どもはどういたしましても、これに賛成をいたすことができないのでございます。  更に、その細かな内容につきまして、一体中央会というものは、団体の再編成という点から見てもおかしいと思うのでありまして、先ほど来の金子さんの御意見では、この中央会というものは主として組合の経営指導を行うのだ、こうおつしやいました。そうして農政活動は片方の農業会議なり、農業会議所で行うのだということを言われましたけれども、併しながら、そういうように截然と区別の付くものではございません。組合に関する事業といつたところで、例えば販連が米の問題を取扱うというときに米価の問題に当然触れるでありましよう。或いは購連が肥料の問題については当然触れるでありましよう。更にそういうことが大きくなつて協同組合はやはり政治活動をするわけであります。そういたしますと、今日まで農業協同組合を中軸とする一つ農政活動、同時に他の団体を中核とするところの農政活動、この二つの大きな流れ、或いは農民組合を中心とするものの農政活動、こういうものがある。これはこの新らしい方向によりまして、むしろ激化されるだけでありまして、決してこれがうまく収まるとは思えないのであります。更に佐藤さんの御意見のように、この農業共済につきましても、いろいろ下部末端においては相剋摩擦が起きるのではないかという点も懸念されております。申上げれば数限りなく問題がございますけれども、こういうような農業協同組合法改正というものに対しましては、私どもは絶対にこれは賛成をいたすことができないのであります。  更に、片方の農業委員会法にいたしましても、提案者の小枝さん或いは平野政務次官は、現在の農業委員会というものは町村段階はいい、併しながら県段階は非常に腐敗しており、金がかかつて供出の助けにならない、こういうことを言つておられましたけれども、私はそもそも農業委員会というものは、供出について政府に協力をしなければならん団体とは考えておりません。そういうような性格を以て出発したのではないと思つております。若しそういう精神で以てこの改正案を立案されたのでありますならば、依然としてこの農業会議なり、農業会議所は政府に協力を求められるでありましよう。農業委員会が供出に対して協力しなかつたということを言われる政府でありましたならば、必ずやこの農業会議なり、農業会議所におきましても、政府への協力を第一義的にものを考えられるのではないかと思うのでありまして、これは私が思うだけでなしに、現にこういうものに幾らの金を出すのか知りませんけれども、殆んど大部分の経費を国なり県なりが負担をして行くという仕組になつております。而も提案者の説明によりますというと、これは農協農民の代表機関として自主的に活動すると書いてございますけれども、一体農協並びに農民の自主的な機関、農民利益を代表する機関が国から殆んど丸抱えに近いような金をもらつて何が期待できますか。若しそれに多くの期待をしますならば、農民利益のための活動を期待いたしますならば、これは木に縁つて魚を求むるの類だと思います。一体現在の農業委員会というものが出発いたしましたときに、三つの委員会一つなつたわけでありますが、当時私どもは反対いたしました。こういうような農業委員会ができて、これでは農地改革という仕事はすたれてしまうのじやないか、農地の改革の仕事は終つてはおりません。一応終つたような形にはなつておりますけれども、先ほども清澤君が指摘いたしましたように、最近頻々として不法の土地取上が続いておるのであります。而もそういう不法な土地取上に対処するだけでなしに、一体私はこれからの日本の農業計画をどうするかということを皆様にお尋ねしなければならん、政府にお尋ねしなければならん。日本の農業計画を立てるのには日本の人口、日本の立地条件、そんなものから考えまするならば、どうしても既存の農地だけでなしに、農地というものは山へ上るかどこへ上るか、新らしいところへますます拡げて行かなければならんし、そういうことは又技術的にも可能でございますけれども、そういうような農地の問題というものはたくさんあるわけです。現に起きて来る紛争を処理するだけでなしに、たくさんの農地の問題がございますけれども、そういう農地の仕事はこの農業委員会なつたら駄目になるのだということを私どもは指摘いたしました。又この農業委員会になつて来るというと、この改良普及の技術の仕事は駄目になるのだということを指摘いたしました。併しながら、政府は私たちの反対にもかかわらず農業委員会制度を作りましたけれども現実は私どもの指摘した通りでございます。土地問題は忘れられたようになつてしまつて、そうしてたまたまあればボス的な妙な形で取上げられております。新らしい耕地を作つて積極的に農業計画を作つて行こうというような意図は現在の農業委員会にはございません。それは出発が誤まつておるからであります。或いは技術の問題についても同じことであります。技術の問題を極めて中途半端に農業委員会の中へ入れましたら、あれでは駄目だということを我々は言いましたが、誠にその通りになつてしまいました。そういうような欠陥が、この農業会議なり、農業会議所或いは農業委員会法の一部改正によつて何が是正できておるのか。一つも是正ができないだけでなしに、又しても逆行をするのであります。農地の問題について申しますと、町村では農業委員会ができます。併しながら、中央におきましては、もはや農業委員会ではなくして、農業会議であります。これは行政機関ではなしに法人であります。而も極めて不可解な形でこの農業会議の構成メンバーは農業委員からの互選のもの、そうして農協からの互選のもの、これが合体されてそういう法人ができる、併しながら、農地の問題だけについては、この農業委員から互選したものだけが扱う、誠にすつきりしない仕組であります。若し農地の問題を本気に考えているなら、これは町村から府県或いは全国という一貫した体系がなければならんのを、それが途中で、出発点は行政機関であるけれども、途中は法人になるというような、こんな仕組ではいよいよ以て農地の問題というものは置き忘れられてしまうでございましよう。もつともつとひどい結果が出るでございましよう。もつともつとボス的な事件がたくさん出て来るのではないかということを我々は虞れるのであります。或いは私どもが絶えず念願する技術の問題になるというと、もはやこれでは抜けてしまいます。政府の最初の原案には技術員の制度はございましたけれども、この議員立法改正案によると、技術のことはもはや一字も書いてないのであります。一体技術のことに技術の専門者がいないような、そういう農業委員会或いは農業会議所、或いは農業会議というものが何ができるでありましよう。私は日本農政の一番の欠陥は技術の問題をおろそかにしていることだと思います。本当は農業計画から出発しなければならない、村の農業計画を立てなければならん、そういうときにもはや技術を抹殺してしまつて、この農業委員会なり農業会議所なりがやることは、本当に足が地につかないところの浮上つた政治活動だけになるのではないかと思います。而もその政治活動というものは、これに期待は何ら持てないのでございまして、この法案によりますというと、この農業会議なり或いは農業会議所は知事や大臣の検査を受け、監督上必要な命令を受けることになつております。知事や大臣の検査を受け、監督上必要な命令を受けるようなものが、そうして金は国からもらつておるものが、これが農民利益を代表する機関だというのなら、これは私は滑稽な議論だと思うのであります。それに対して一体提案者がどう考えておるのか、私どもは時間がございません、そういうことすらも聞く機会がございませんでしたが、この政府原案と、それからこれと比べますというと相当違つておるのであります。或いはこの政府原案には、食糧管理について農業委員会が関与することになつておりましたが、もはや今度の農業委員会は食糧管理について関与するとは書いてございません。それは農林大臣なり或いは与党のほうでは、今の農業委員会が食糧の供出について協力しなかつたから、そうしたのかも知れません。併しながら、最初から申しますように、これは若し表面的に解釈するならば、農民利益を代表する機関でありますから、何も政府に協力しなければならんということはないのであります。農民利益を代表する機関のような看板を掲げておいて、そうしてこの金を出して、そうして検査をし、監督上必要な命令を出して、結局は農民利益を代表するのでなしに政府利益のために、吉田内閣の利益のために農業団体を使おうとされると指摘いたしましても、私は一向にこれは過言ではないと思うのであります。或いは私どもはこの供出の問題につきましては、これに関連して聞かなければならない、食糧管理の問題について、これから規定を落したが、これはもう政府が現在の供出制度をやめるということを意図しているのか、その点は一体どうなつているのか、それを聞きたいと思つたが、それも時間がございません。団体に関してだけでなしに、日本の農業全体をどうするかということについて数々の疑問がこの中から湧いて来るのでありますけれども、それすらも私たちは質問する機会がなかつたのでございます。私どもはこういうようなこの農業会議或いは農業会議所というものが決して農民利益を代表し得るものではないと思います。農民利益を代表するものはやつぱり下から盛上つて来るものでなければなりません。私どもはそういう考え方農民組合というものを考えておるわけであります。今の農民組合が決して皆さん或いは農民の要望するような実力を持つているとは決してうぬぼれておりません。私たちはそれも悩みの種であります。併しながら、私たちはどんな弾圧があろうと、何であろうと、やつぱり農村をよくする途は下から盛上るそういう線を育てなければいかんのである、何遍監獄に入つても、どんな裏切りをされても、どんなぺてんに遭おうと、歯を食いしばつて下から盛上げることをやつて行かなければならないのだ、そういう意味で私たちは農民組合ということを考えておりますけれども、この二つ法律改正案に出て来るところの提案者の説明なり或いは政府質問に関連しての答弁から行きますというと、私どもそういう期待は全く裏切られてしまつておるのでありまして、こういうような農業団体の、農業委員会法の一部改正というものは、若し本当にお互いが冷静に考えるならば、決して賛成し得るものではないと思います。或いは政党には政党の立場がございましよう。併しながら、私は農林委員会というものはそういう立場を離れて、お互いに本当に農民のために少しでもなろうというような気持で今日まで努力したと思いますけれども、この二つ法案を軽卒に通すということになりますならば、私たちはそういう農林委員会の伝統は崩れるのではないかと思います。更に私ども政府に対しましても、この法案に関連いたしまして誠に腑に落ちん点がございますが、政府のほうは、これは議員立法であるけれども、併しながら、政府の意図と根本的には何ら違いがないのだということを言われますけれども、午前中に私が指摘いたしましたように、多くの違いがあるのであります。若し政府信念があるならば、私はこの議員立法というものに対しましては政府は敢然としてこれを阻止すべきではないか、勿論議員立法の中心は改進党もありますけれども、自由党であります。自由党の保利農林大臣は一方では政府提案をされた、その政府提案と今度出された議員立法とは非常に違うわけです。この議員立法提案者に自由党が入つているから、これにも責任があり関係がある、それ以前の政府立法にも関係がある、その二つの間には大きな開きがある、併しながら、あなたは大きな開きはないと言つておるけれども、そうではございません。私どもは午前中にちよつと申しましたように、先ず第一に共済に関する扱い方が違う、農業協同組合団体加入という問題が違う、農業協同組合の本質に触れるところの役員の選挙について選任制とつたということが違う、或いは総代制を今まで千人以上のものに認めておつたのを今度は五百人以上に認める、単に選任制をとるだけでなしに、五百人以上について総代制を認めるということになると、全く協同組合の一人一票という原則は崩れてしまうのでありまして、そういう点は本質的な違いなんであります。或いは先ほど私が指摘しましたところの行政官庁の不許可の問題、干渉の問題、監督強化の問題も違うのであります。農業委員会についても片方は技術員をおくとあつた、片方は技術員はないのであります。片方は国が経費を負担するとなつてつた、片方は経費の一部を補助するとなる、負担ということと補助ということは違うのであります。片方は供出とはつきり関係が書いてあつた、片方は食糧管理との関係はなくなつたのであります。片方では、政府の原案では農地の問題についてもまだおずおずと農業委員というあの字を残しておつた農業会議でなく農業委員会議としておつた農業会議所でなしに農業委員会議所としておつた。そこに私は政府の事務官僚の諸君が、やはり農地委員会以来の土地の問題に対するところの農業委員会の乱れた伝統ではございますけれども、それを守つて行こうという意図があつたのではないかと思いますが、もはや今度になつて来るというと、農業委員会という字は消えてなくなつてしまいまして、農業会議なり、農業会議所に県段階以上はなるのでございます。或いは先ほど私が申上げましたように、知事なり農林大臣が必要な検査をしたり、監督上必要な命令を出すということは、これは根本的な問題なんであります。農業団体に県知事なり或いは大臣が検査をしたり、監督上必要な命令を出す、そういうような農民団体はあり得ない、そういうような農民団体農民利益を守り得るはずがないのであります。そういうように根本的に違つておるものを大臣は平然とこの二つの間には根本的な違いはないと言つておられますけれども、これは吉田内閣の白を黒と言いくるめるところの伝統に従つたものかと思いますけれども、併し私どもは少くとも農林委員会だけではもつとざつくばらんに話してもらいたかつたと思うのであります。又政府はこの農業委員会制度に欠陥があるとか、いろいろなことを言うならば、当然それだけの措置を今国会でなすべきであつた農業委員会制度には欠陥があると言いながらも、七月には選挙することになつてつた農業委員会制度に本当に欠陥があるならば、なぜこの七月の選挙の前にあなた方は立法措置をとらなかつたか、そういうことを全然怠つたところの政府の怠慢も責められなければならんと思うのであります。  なお多くの問題がございますけれども、以上一貫して言えますことは、これは決して単なる提案者の説明なり、政府が言うようなほんのささやかな当面の改正ではないということ、農業団体は今や大きく性格を変換させられるのだということであります。私はこういうような農業団体性格根本的な変換に当りまして、各種の農業団体の中央におられる諸君が、この法案通過を我々に頼まれる意図がわからないのであります。諸君は一体八千万円の金が欲しいのか、諸君は一体国からの経費の負担が欲しいのか、勿論それは欲しいでしよう。併しながら、そういうことのために自分の最後のものを売つてもいいのかと言いたいのであります。もはや農業協同組合農業協同組合でなくなり、農民利益を代表する機関だと言いながら、農業会議所なり或いは農業会議というものは決してそういうものではございません。そういうもののために、なぜ一体僅かばかりの金のためにこの法案の通過に努力しなければならないのか、若し共済事業の問題を急速に処理しなければならんというなら、それはそれで単独に処理できるものであります。役員の責任をはつきりしなければならんというなら、それはそれで単独で処理できるのであります。或いは定期預金の問題であろうと、そういうような景品が付いておるために、諸君はこの農業団体根本的に性格を変更するものに賛成しなければならんとするならば、私はそれを悲しむのであります。私ども農民組合運動をやつて来ておりますけれども、私ども農民組合運動が最善のものとは思つておりません。これとは別途出ております、付託されておるところの農民組合法の審議に当つて意見を申述べたいと思いますけれども、最善のものとは思つておりません。併しながら、道はその道しかないのだということ、農村をよくする道は、農民組合という名に我々は固執するものではございませんが、やはり何遍騙されても、何遍つまづいても、何遍弾圧を食つても、下からの努力を我々は積み上げる以外に農村というものは決してよくならないのではないか。而も一体与えられるおみやげというものについては極めてこれは不安定であります。この中央会につきましては、国から八千万円の補助が出ると言いますけれども、これは予備金からは出る途はないのであります。政務次官は簡単に事もなげにこういう金が出るようなことを引受けておりますけれども、決してそんなものではございません。予備金からの支出というものは、災害その他の臨時的な支出に限られるものでありまして、こういうふうな恆常的な経費を予備金から支出をすることは違法でございまして、従つてこの八千万円仮に出すといたしましても、これは補正予算を組む以外に途はないのでございます。一方の農業委員会のほうの経費にいたしましたところで、行政機関としての支出をきめておるものを、それを法人に出すということにつきましては財政法上問題があるのでございます。今慌ててこんなものを作つたところで金は今来ないのであります。それならば、私たちはもつと時間をかけて慎重に審議をいたしまして、そうしてすつきりした形でやるべきではないか。折角河野委員が修正案を出されましたけれども、一応そんな妙なものを認めて、そうして既存の実績を作つてしまつたならば、二年先になつて今私たちが農業団体の再編成に苦労する以上の、もつと深刻な苦労に直面しなければならない。その間にもつともつと膿がたくさんたまるのじやないかということ、若しそのときに我々が再編成しようといたしますならば、これはもはや農業団体のたまつた膿が農業団体の命をとるまでたまつているだろうということを私は恐れるのであります。そこまで行かんうちに、今の間にお互いがもつと真剣に張合つて根本的に農業団体の再編成をしなければならんという考え方からいたしまして、遺憾ながら河野委員の修正案に対しても賛成をいたすことができないのでございます。我々はこういうふうな重要なものを至つて短かい間に審議を制約されまして、問題点をたくさん残したことを遺憾に思います。清澤君のお話ではありませんけれども、農村へ行つてこの問題について説明を求められても私たちは説明ができない。ただ反対、賛成というだけでなしに、説明できない部分がたくさんあるのでございます。私たちはそういう点からいたしまして、この法案審議の経過を遺憾とし、同時にこの二つ法律案なり修正案に対しまして根本的に反対いたすものでございます。
  175. 清澤俊英

    清澤俊英君 只今江田君によりまして我々の党の主張を申述べまして反対の意見を表明しておられまするが、私の申上げることはもう或いは蛇足だかも知れませんが、どうしても一言喋べらずには腹が納まりませんので、御迷惑でしようが、暫らく申上げてみたいと思います。  私は真向から反対ときめておりません。が併し今日の経過を見ますると、どうも賛成できない個所がたくさんある。そのうちの主だつたものに対しましては、今、江田君によつて指摘せられましたが、例えて見れば、実際の問題としてこの審議の経過において佐藤君が指摘しました通り、非常に力の弱つておる農業団体が、協同組合等がこの上の負担をかけられては困るという実情にありまするとき、予算等を通じて聞いて見まするならば、これは負担金をとる、又自分の団体をよくするための機関ができるならば負担金を持つのは当然だ、こういうものが無条件でとられますか、これは甚だ農村としては困つた問題を法律によつて賦課せられるのではないかとも考えられる。そういう点を今少し詳しく聞きたいと思いましても発言は停止せられ、又農業協同組合自身の経営と経理だけを一つこれを強化して調べて誘導して行くのだ、こういうことを金子さん等によつて説明しておられますが、農民協同組合というものからだんだん気持ちが離れて参りますることは、一体どんな所からという点を簡単に一つ申上げます。昨年来の凍霜害の営農資金状況に対しまして当局から資料をもらいました。その資料を見てみましても、「融資の歩留りについて」と、こうなつておる。書いてありますことは、融資の配分に当つては損害そのものを重点的に考え、これに基いて比例的に按分された結果、必ずしも法の趣旨に副つた融資とは言えない部面がある。即ち配分に当つては被害そのものに加うるに、農家自己負担能力をも加味決定すべきであつたと思量せられる。この結果、監査対象となつた融資の状況を見ると、対象融資総額六千八百十五万八千円に対し、貸付以来営農資金として使用されず、そのまま普通貯金又は定期貯金等に歩留つていると認められる金額が最小限一千百四十六万となつており、一六・八%の不良歩留率を示しておる。これは監査対象、農業に限らず、全般的に見てもおおむねこのような傾向があるのじやなかろうかと考えられる。今仮に歩留り率を一六・八%とするならば、総融資額四億七千四百七十九万七千円のうち七千九百七十六万六千円が歩留りになつていることになる。監査時以後における若干の資金需要も考えられるが、とにかく組合における預金の引出し状況から見て、本年産春繭代金の収入時期までたつても最低五%程度、約七千万円は歩留るものと推定される。これについては繰上償還を行わせるべきであると考える。その次に各村の率がずうつとA、B、C、D、E、F、G、H、I、と、こう出ております。これもなかなか多額の歩留り率を残しておる。その次に出ておりますることは、極く少額の割当について、一つの被害率割当と関連して極く少額の割当が非常に多い。B村においては僅か百円の融資もあり、その他千円未満の融資はC村を除きおのおの相当件数に上つておる。これら極く少額の融資は常識的に考えてみて、法の趣旨に副つてつた経営資金であるとは到底考えられない。従つて融資されてもそのまま貯金として歩留つている結果となつているのが大部分であるのである。これについても繰上償還の方法をとるのが至当であると考える。土地改良資金等の転用について、融資された総額三十万円がそのまま土地改良資金に利用されている事例E村があつたが、これ又経営資金として認めがたい。このような他の資金に転用されたので、これについては繰上償還、利子補給停止等の処置を講ずべきである。借入後の資金再配分について、買入後借入農家相互において再配分されておるところE町があつたが、転貸を受けた農家が実際それだけの経営資金を必要とし、転貸した農家がそれを必要としない結果であるとするならば、一において述べた被害率本位の割当の不当を物語るものである。而して形式的においては一見正当の融資とみなされても個々の転貸を受けた農家について見れば、実質的な融資額は被害認定書における被害額の四〇%を超過しているものもあり、又これを転貸した農家について見れば明らかに不当支出であつて、法に言う経営資金ではなく、従つて脱法行為と言わざるを得ない。これが三〇%超過額及び転貸した金額等については、繰上償還、利子補給停止等の方法をとるべきであると考える。まあそういう上に実際問題として営農資金ですよ。営農資金ぐらいはですな、最も親切妥当に分けてやらなければならないわけなんだ。それを取扱つているものがこういうようなことをして、折角いろいろな金を使つて運動をして、災害の補償金をもらつてつてみても、営農資金を借りて帰つてみても、こういうことをやつている農協であつたならば、幾ら経理の検査をしても問題になりません。それは成るほど経理の結果そういうものが出て来るから何とかでき得るであろうというようなことを言われるでしようけれども、問題はそれでない。その奥に隠れておる協同組合にだけ頭を使つている今の状態がこういう問題を惹き起しているのだ。何かと申しますると、今の協同組合は、協同組合が保たんということが何よりの今問題なんだ。協同組合が保たんということでなく、農民のもつ協同組合がどうして行つたならば農民がこれを保たせるように行くかが問題でなければならん。これはこの点は江田君の言う通りなんです。それを強化するためというので中央から金を出してもらつて、地方に無理に負担をさして、一つの機関を作つて無理押しに押す形を一面とると同時に、こういうふうにして指導してよくするのだ。成るほど表はいいだろう、そのうしろに付いたものは、江田君が言う通りの行政措置の強化、その他の方法を以て農業協同組合がだんだんと胸を締められて行くような方法が考えられている。我々はさような点についていろいろまだ詳しく本当に納得の行くように質問したいと思つている。江田君の言う通りです。何ができた。何にもできておらんではないか。而もですよ、私は最も不可解に感じますのは、約二国会を放棄して、政府提案のものを放棄しておいて、この会期末において議員提案にしてぱつと出して来ておる。それほど重要なものならばもつと前になぜやらんか。このどさくさ紛れにぱつと出して来ておる。而も出て来たものを審議しようとすると、この間も全部がそうじやなかつたが、この問題を、重要な問題だからあとにでも残して、継続審議をやつてでも一つ徹低的に審議をしようじやないか、大体意見は私は一致したと思う。それが先ずどさくさが始まつて以来、猛烈果敢なる運動が展開せられて、そうして、それから急に形勢はまあまあいいじやないか、いいじやないか、何がいいじやないかというのだ。そんなことはどうでもいいじやないか。八千万円もらつたらいいじやないか。何でもない。そうして我々の手に廻つて参りまして大体何時間これを審議したのですか、私は一つ一つ申上げましたならば、これはこことここのこういうことを聞きたいというのだけでも数限りなくあります。それらの点も一つ審議しない。そうして無理押しに、只今聞きまするならば、会期は延長になつたそうだ。だからまあ君は討論で時間を稼いで、何か邪魔するのじやないかと言うておる。私はそんなけちな考えは持つておりません。平野農林次官の言うように我々はまじめになつて、少くともこの提案について政府当局は御談相を受けておりましよう。私はちつとも受けておりません。ちつとも知つておりません。これは議員提案でありまするから、あなた方がきめたものは尊重してやるつもりであります。我々も政党員だ。いやしくも農林次官としてこれが政調会の一応許可を受けなければならんことはわかり切つている。その他成るほど農林政務次官平野さんとしては御相談を受けなくても、自由党の農政の大家として、現に農政の党を代表して行政面に参画していられますあなたが知らんということは大体嘘です。人を愚弄するも甚だしい答弁を重ね、それを而も短時間で打切つて法案をめちやめちやに通してしまう。私はこの企図するところが那辺にあるかということは、これは私の推測であります。少くともこの法案のうしろに隠されているものは、日米軍事協定を中心にした警察法の改正、防衛法の設定、秘密保護法の設定、将来において憲法を改正して、又徴兵にでも持つて行こうとする危険を孕んでいる。これらの点に副わすべく戦前の農林を形作つて行こうという意図がこの裏に私はあるのじやないかと考える。その点をも、実際あるのか、ないのか、臭いが嗅げないものか聞き出そうと思つて我々は質問を継続したいと考えておつた。又農業協同組合自身の持ち方でも、私は先般今日の協同組合は、金子さんが否定せられるような農業会の継続より何もないじやないか。金子さんも言うておられる、おれもあんなことはやめんければならん。それがここに更に変つた立場に立つてつておられるのか。してみれば、将来どういう形で以てやつて行かれるかということは、この機会でなければやれないと思つているのだ。そういう点もまだ我々の腹の中に残して置いて、こういうものをここに持つて行つて、金を持つて行つて何になるんだ。金は天にあるのじやありません。国民の親子心中の血税の中からもらつている金なんだ。(拍手)我々は大切に使わなければならん。ただ持つて来た、それでいいわけじや私はないと思う、まあ同僚も盛んにとめますから、大体このくらいにして私はやめますが、実際本当にこの農業再編成の基礎を作りますには、先ず農業協同組合はどこに置くか、どう目標を立ててどう進むか、それさえはつきりすれば、江田君の言う通り二種や三種のものは出します。出すという自信を私は持つておる、同時にあなた方がこれを以て昔に返そうというような一々の方法を強力に推し進められるならば、今日の農民は断じて黙してはおりません。明日は必ず諸君の前に強大なる反撃の力として現われるであろう。私は今日この法案採決に当つて袋叩きにあつて引下るかも知らんが、清澤の目の黒いうちは断固として反撃の機をつかむであろうことをはつきり申上げまして、簡単でありまするが、私の御挨拶を申上げます。(拍手)
  176. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 他に御意見はございませんか……、他に御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。先ず農業委員会法の一部を改正する法律案について採決をいたします。  先ず討論中にありました河野委員の修正案を議題に供します。河野委員提出の修正案に賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  178. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 多数でございます。よつて河野委員提出の修正案は可決されました。  次に、只今採決されました河野君の修正にかかる部分を除いて、農業委員会法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  179. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て修正議決されました。  次に、農業協同組合法の一部を改正する法律案採決を行います。  先ず討論中にございました河野委員の修正案を議題に供します。河野委員提出の修正案に賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  180. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 多数でございます。よつて河野委員提出の修正案は可決されました。  次に、只今採決されました河野委員の修正にかかる部分を除いた農業協同組合法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  181. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て修正議決されました。  次に、只今討論中にございました佐藤委員提出の附帯決議案について採決をいたします。佐藤委員提出通り附帯決議を付することに賛成諸君の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  182. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 多数でございます。よつて佐藤君提出通り附帯決議を付することに決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容等、事後の手続は慣例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認めます。  次に、本案を可とされましたかたは例により順次御署名を願います。   多数意見者署名    〔農業委員会法の一部を改正する法律案〕     北 勝太郎  上林 忠次     河野 謙三  東   隆     鈴木 強平  松浦 定義     戸叶  武  雨森 常夫     佐藤清一郎  森田 豊壽     関根 久藏  宮本 邦彦     横川 信夫    〔農業協同組合法の一部を改正する法律案〕     川口爲之助  横川 信夫     重政 庸徳  雨森 常夫     佐藤清一郎  関根 久藏     宮本 邦彦  上林 忠次     北 勝太郎  鈴木 強平     東   隆  森田 豊壽     戸叶  武  河野 謙三   —————————————
  184. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に、継続審査の件についてお諮りをいたします。  自給肥料増産特別措置法案農民組合法案及び繭糸価格安定法の一部を改正する法律案継続審査要求書を提出することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。    午後三時二十五分休憩    〔休憩後開会に至らなかつた。〕