○
江田三郎君 私は
日本社会党を代表しまして、只今上程されました
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案並びに
農業委員会法の一部を
改正する
法律案の原案及び河野
委員から提出されました修正案に反対をいたすものであります。
この
二つの
法案は、
提案者のほうでは現在
農業協同組合なり、
農業委員会なりが直面している問題を、それだけをともかくも片を付けるんだ、こういう去り気ないような御説明がございますけれ
ども、私
どもはそうは受取らないのでありまして、これは、この
二つの
法案によりまして、
日本の
農業協同組合なり、
農業団体の
性格に大きな変化を与えるものである、
団体再編成ではないと言われますけれ
ども、これは明らかに
団体再編成である、こういう見解を持つものでありまして、極めて重大視しておるのであります。これは
提案者も或いは
政府当局も、
委員会における言葉ではいろいろなことを言われますけれ
ども、やはり腹の底では私
どもと同じ
考えを持
つておられると思うのであります。又先ほどからの
討論を聞いておりましても、やはりこの問題を
団体の再編成として扱
つておられる、こういう
日本の
農政の
根本に触れるような
団体の再編成というものは、これはよほど私
どもとしましては慎重に取組んで行かなければならんことでありまして、これは河野修正案によりまして、た
つた二年間のことだと言いましても、二年間に
一つの
現実を、実績を作りますというと、それは却
つて今後の
団体の真の再編成のために大きな障害となることが必至でありまして、
皆さんの
討論の中で、或いは
政府の
答弁の中で、或いは
提案者の説明の中で、いずれもこの
法案が十分なものと思われない、不満足であると、そういうことをお
考えにな
つておるのでありますならば、不満足な実績を先ず打立てて、そうして
あとあとの再編を却
つて困難ならしめるような方向はとるべきでないと思うのでありまして、これに対しまして、私
ども慎重にお亙い同士が
審議をするだけでなしに、
関係の各
団体、特にこの
法案と一緒に衆議院で
議員立法として提出されました
農民組合法のほうは、
審議未了にな
つておりますが、やはりそういうものとも一緒に、広く衆智を集めた結論を打出さなければならんと思うのでありますが、この
委員会の
審議というものは、そういうことに対しまして極めて短い時間で、何ら
審議を尽していないのであります。
根本理念に対してそうだけでなしに、小さな問題にいたしましても、例えば
農業協同組合に
団体加入という問題があります。法人でない
団体を
農業協同組合に
加入さしたときに、一体その結果はどうなるのか、万一間
違つたことが起きたときに誰が責任を負えばよいのか。法人ではないのであります。ただ
団体であります。そういうようなことは一体どうなるかということもございましようし、或いは細かな問題になりますというと、本当にまだ何ら触れていない。例えば
農業会議ができまして、全国
農業会議所に出て来る
団体、その
規定におきましても、いろいろ全国的な
農業協同組合その他の
農業団体の代表者並びに学識経験者とありますけれ
ども、全国的な
農業団体というものはおよそ二百ぐらいあると思います。恐らくこの二百を全部網羅することはできますまい。その中で
提案者は一体この
農業団体とは具体的にどういうものを指しておるのか、どれとどれをオミツトして、どれをはめ込もうとしておるのか、そういう点についても私
どもは何ら聞いていないのであります。疑問を挙げますと数々ございますが、そういうように皆が不満足と
考えており、而も
審議は一向に尽さないで、これを本日
討論に持
つて行かなければならんということは、私は今まで慎重な
審議を誇
つて来た当参議院の
農林委員会として汚点を残したのではないかと思うのであります。特に
片柳委員長がいろいろ御努力されましたが、私は
片柳さんのような長い間
農政に携わ
つた人が、なぜこの問題についてはもつと断固として慎重な
審議を要求されなか
つたか。恐らく
委員長がそういう決意を持
つて当られましたならば、
委員の各位としてもそれと同調したであろうと思うのでありまして、私はこの点を
個人的にも非常に残念に思うのであります。
そこで私
どもは、この
法案は
根本的な
農業団体の
性格の転換であると申しましたが、先ず第一に、
農業協同組合につきまして、先ほど
質問のときに私がちよつと触れましたように、
全国中央会は、これは
加入、脱退の自由がないのでございます。当然
加入でございます。当然
加入というような
組織方針が、自由なる
農民の
組織である
農業協同組合に果して許されてよいことなのかどうか。或いは又
役員の問題にいたしましても、
選任制が新たに加えられた。
農業協同組合は自由なる
農民の
組織であると同時に、たとえ何口の出資を持
つておりましようとも、或いは一口の出資でありましようとも、皆が一人一票であります。そこに
協同組合の
根本理念があると思うのであります。これなくしては
協同組合ではございません。若しそういう出資の数によ
つて権限が違うのでございますならば、これは株式会社でありましよう。然るにこの
農業協同組合のロツチデール以来の
一つの
基本理念でありますところのこの
役員の選挙に当
つての一人一票という制度を崩して、
選任制度にしてしまう、この
一つを
考えましても、これは
農業協同組合が
農業協同組合の看板を失うことになるのであります。
提案者小枝さんなり、或いは
金子さん、特に小枝さんの
お話を聞いておりますというと、選挙で出た者はどうも適当な者が出ないのだと、成るほど
現実はそうかも知れません。併しながら、選挙で出て来る者が適当な者が出ないということになるなら、そういう
批判は私は
農業協同組合だけではなしに、或いはお互い
国会議員に対しても世間はそういう
批判をいたすでありましよう。そういうことは、
現実がどうであろうとも、その
現実を歯を食いしば
つて一つ一つよくして行かなければならんのでありまして、
現実がここだからもう一歩下
つたところでこれを受止めるというようなことでありますならば、これは一歩後退し、二歩後退し、次々にこの
団体の本質というものを失
つてしまうのではないかと思います。更にこの
農業協同組合につきましては、今後
監督権が強化されまして、これはひとり
共済事業或いは
定期預金を扱う、こういうことに伴うところの
行政機関の
監督強化だけではございません。例えば第六十条によりまして、従来
農業協同組合の設立の
許可、不
許可、これは行政官庁が握
つておりますけれ
ども、これは
農業協同組合は
農民の自由な
組織でありますから、定款又は
事業の計画或いは
内容が法令に反するときだけ行政官庁は不
許可にしてお
つたのでありますが、今回はそうではございません。その
事業が健全に行われない、又公益に反するようなものであるならば、これは不
許可ということになるのでありますが、一体その
事業が健全であるかどうか、それは誰が
判断するのでありますか。それは
農民自身が
判断したらいいのであります。自分たちが集ま
つて金を出し合
つてやるのでありますから、
農民たちは健全であると思
つてやるので、誰も不健全と思
つてやるのではありません。その結果損をすることもあります。併しながら、そういう損をし、儲け、失敗をし、或いは成功し、その経験の上に
農業協同組合というものが立派に成育するのでありまして、これを行政官庁が
事業の計画が健全であるか、不健全であるかを
判断し、行政官庁の
判断によ
つて許可、不
許可が与えられるということになるというと、もはやこれは
農民の自由なる
組織ではないのであります。我々はそういう点からいたしまして、このほかにも指摘できる面がございますけれ
ども、この
農業協同組合の一部
改正というものは、
農業協同組合という看板を削ることである、若しなお
農業協同組合という看板を残すといたしますならば、それは
農業協同組合が農業会の看板の塗替えだという悪口を言われましたが、今度は何の看板の塗替えか知りませんけれ
ども、私は
農業協同組合という看板は偽わりの看板になるのではないかと思います。
更に、勿論現在の
農協に数々の欠陥がございまして、これには
組合の経理の
指導等の問題がございます。併しながら、私はそういうことこそ本当に
農民自身がやればいいことでありまして、
全国中央会というものは一応
農民自身のものでございますけれ
ども、
農民自身が作
つた形式にはなりますけれ
ども、併しそれは国から
補助金をもらう
団体であるし、そうして
全国中央会或いは地方
中央会という、この
中央会というものを
二つ作らせないというのは一体何事かということをお聞きしたいのであります。この六十条によりますというと、「
農業協同組合中央会の
事業の全部又は一部と同種の
事業を行うことにより
農業協同組合中央会の
事業の
発展に支障ありと認められるとき。」には
許可しないことにな
つております。もはやこれによりまして
中央会は
一つしかできない。なぜお上が認める監査機関だけを認めるのか。なぜ
農民自身が作るところの自分で自分たちの
農業協同組合の経営を監査するという
組織を認めないのか。ここでももはや
農業協同組合の
基本精神というものは失われてしま
つておるのであります。一体その
補助金にいたしましても、先ほど来問題にな
つております八千万円の
補助金、或いはこれに大きな期待を持
つておられましよう。併しながら、松浦君の言うように、八千万円の
補助金というものは、末端へ行くというと一
農家当り七円の計算になるのだ。一
農家当り七円というものが本当に
農民が出せないでしようか。私はそうではないと思います。全指連は行詰
つた、
指導連は行詰
つたと言いますけれ
ども、併しながら、
指導連の経営というものは、本当に
農民が、今の計算で行きますというと、一握りずつの米を出し合
つても結構や
つて行けるのでありまして、
指導連は上から八千万円の金を出して強化されるのではなくして、
指導連というものが本当に
農民のための
仕事をや
つておれば、なぜ
農民が一握りの米を出し惜みましようか。一握りではなしに、一升でも出すでしよう。そういうものを盛り立てて行くのが、これが本当の
農業協同組合の強化でありまして、行詰れば国から金を出してもらう、或いは県に泣きつく、或いは又こういうような
農業協同組合の
基本方針、ロツチデール以来のこの
組合精神を失うようなことをしてまで中央からの
補助金に頼らなければならないというような形では、そういうことを現在の
農業協同組合の
諸君が待ち焦れておるといたしますならば、私はそういう
農業協同組合には多くを期待できないと思います。或いは戦争中の農業会のように、
金子さんが先ほど申されました、戦争中の農業会が官僚機構によ
つてひどい目に会
つて、もう一遍そういうことを甘んじて受けようとなさるのかということを私はお聞きしたいのであります。そういう点から行きまして、私
どもはどういたしましても、これに
賛成をいたすことができないのでございます。
更に、その細かな
内容につきまして、一体
中央会というものは、
団体の再編成という点から見てもおかしいと思うのでありまして、先ほど来の
金子さんの御
意見では、この
中央会というものは主として
組合の経営
指導を行うのだ、こうおつしやいました。そうして
農政活動は片方の
農業会議なり、
農業会議所で行うのだということを言われましたけれ
ども、併しながら、そういうように截然と区別の付くものではございません。
組合に関する
事業とい
つたところで、例えば販連が米の問題を取扱うというときに米価の問題に当然触れるでありましよう。或いは購連が肥料の問題については当然触れるでありましよう。更にそういうことが大きくな
つて、
協同組合はやはり政治活動をするわけであります。そういたしますと、今日まで
農業協同組合を中軸とする
一つの
農政活動、同時に他の
団体を中核とするところの
農政活動、この
二つの大きな流れ、或いは
農民組合を中心とするものの
農政活動、こういうものがある。これはこの新らしい方向によりまして、むしろ激化されるだけでありまして、決してこれがうまく収まるとは思えないのであります。更に佐藤さんの御
意見のように、この
農業共済につきましても、いろいろ下部末端においては相剋摩擦が起きるのではないかという点も懸念されております。申上げれば数限りなく問題がございますけれ
ども、こういうような
農業協同組合法の
改正というものに対しましては、私
どもは絶対にこれは
賛成をいたすことができないのであります。
更に、片方の
農業委員会法にいたしましても、
提案者の小枝さん或いは
平野政務次官は、現在の
農業委員会というものは
町村段階はいい、併しながら
県段階は非常に腐敗しており、金がかか
つて供出の助けにならない、こういうことを言
つておられましたけれ
ども、私はそもそも
農業委員会というものは、供出について
政府に協力をしなければならん
団体とは
考えておりません。そういうような
性格を以て出発したのではないと思
つております。若しそういう精神で以てこの
改正案を立案されたのでありますならば、依然としてこの
農業会議なり、
農業会議所は
政府に協力を求められるでありましよう。
農業委員会が供出に対して協力しなか
つたということを言われる
政府でありましたならば、必ずやこの
農業会議なり、
農業会議所におきましても、
政府への協力を第一義的にものを
考えられるのではないかと思うのでありまして、これは私が思うだけでなしに、現にこういうものに幾らの金を出すのか知りませんけれ
ども、殆んど大部分の経費を国なり県なりが負担をして行くという仕組にな
つております。而も
提案者の説明によりますというと、これは
農協、
農民の代表機関として自主的に活動すると書いてございますけれ
ども、一体
農協並びに
農民の自主的な機関、
農民の
利益を代表する機関が国から殆んど丸抱えに近いような金をもら
つて何が期待できますか。若しそれに多くの期待をしますならば、
農民の
利益のための活動を期待いたしますならば、これは木に縁
つて魚を求むるの類だと思います。一体現在の
農業委員会というものが出発いたしましたときに、三つの
委員会が
一つに
なつたわけでありますが、当時私
どもは反対いたしました。こういうような
農業委員会ができて、これでは農地改革という
仕事はすたれてしまうのじやないか、農地の改革の
仕事は終
つてはおりません。一応終
つたような形にはな
つておりますけれ
ども、先ほ
ども清澤君が指摘いたしましたように、最近頻々として不法の土地取上が続いておるのであります。而もそういう不法な土地取上に対処するだけでなしに、一体私はこれからの
日本の農業計画をどうするかということを皆様にお尋ねしなければならん、
政府にお尋ねしなければならん。
日本の農業計画を立てるのには
日本の人口、
日本の立地条件、そんなものから
考えまするならば、どうしても既存の農地だけでなしに、農地というものは山へ上るかどこへ上るか、新らしいところへますます拡げて行かなければならんし、そういうことは又技術的にも可能でございますけれ
ども、そういうような農地の問題というものはたくさんあるわけです。現に起きて来る紛争を処理するだけでなしに、たくさんの農地の問題がございますけれ
ども、そういう農地の
仕事はこの
農業委員会に
なつたら駄目になるのだということを私
どもは指摘いたしました。又この
農業委員会にな
つて来るというと、この改良普及の技術の
仕事は駄目になるのだということを指摘いたしました。併しながら、
政府は私たちの反対にもかかわらず
農業委員会制度を作りましたけれ
ども、
現実は私
どもの指摘した
通りでございます。土地問題は忘れられたようにな
つてしま
つて、そうしてたまたまあればボス的な妙な形で取上げられております。新らしい耕地を作
つて積極的に農業計画を作
つて行こうというような意図は現在の
農業委員会にはございません。それは出発が誤ま
つておるからであります。或いは技術の問題についても同じことであります。技術の問題を極めて中途半端に
農業委員会の中へ入れましたら、あれでは駄目だということを我々は言いましたが、誠にその
通りにな
つてしまいました。そういうような欠陥が、この
農業会議なり、
農業会議所或いは
農業委員会法の一部
改正によ
つて何が是正できておるのか。
一つも是正ができないだけでなしに、又しても逆行をするのであります。農地の問題について申しますと、町村では
農業委員会ができます。併しながら、中央におきましては、もはや
農業委員会ではなくして、
農業会議であります。これは
行政機関ではなしに法人であります。而も極めて不可解な形でこの
農業会議の構成メンバーは農業
委員からの互選のもの、そうして
農協からの互選のもの、これが合体されてそういう法人ができる、併しながら、農地の問題だけについては、この農業
委員から互選したものだけが扱う、誠にすつきりしない仕組であります。若し農地の問題を本気に
考えているなら、これは町村から府県或いは全国という一貫した体系がなければならんのを、それが途中で、出発点は
行政機関であるけれ
ども、途中は法人になるというような、こんな仕組ではいよいよ以て農地の問題というものは置き忘れられてしまうでございましよう。もつともつとひどい結果が出るでございましよう。もつともつとボス的な事件がたくさん出て来るのではないかということを我々は虞れるのであります。或いは私
どもが絶えず念願する技術の問題になるというと、もはやこれでは抜けてしまいます。
政府の最初の原案には
技術員の制度はございましたけれ
ども、この
議員立法の
改正案によると、技術のことはもはや一字も書いてないのであります。一体技術のことに技術の専門者がいないような、そういう
農業委員会或いは
農業会議所、或いは
農業会議というものが何ができるでありましよう。私は
日本の
農政の一番の欠陥は技術の問題をおろそかにしていることだと思います。本当は農業計画から出発しなければならない、村の農業計画を立てなければならん、そういうときにもはや技術を抹殺してしま
つて、この
農業委員会なり
農業会議所なりがやることは、本当に足が地につかないところの浮上
つた政治活動だけになるのではないかと思います。而もその政治活動というものは、これに期待は何ら持てないのでございまして、この
法案によりますというと、この
農業会議なり或いは
農業会議所は知事や
大臣の検査を受け、
監督上必要な命令を受けることにな
つております。知事や
大臣の検査を受け、
監督上必要な命令を受けるようなものが、そうして金は国からもら
つておるものが、これが
農民の
利益を代表する機関だというのなら、これは私は滑稽な議論だと思うのであります。それに対して一体
提案者がどう
考えておるのか、私
どもは時間がございません、そういうことすらも聞く機会がございませんでしたが、この
政府原案と、それからこれと比べますというと相当違
つておるのであります。或いはこの
政府原案には、食糧管理について
農業委員会が関与することにな
つておりましたが、もはや今度の
農業委員会は食糧管理について関与するとは書いてございません。それは
農林大臣なり或いは与党のほうでは、今の
農業委員会が食糧の供出について協力しなか
つたから、そうしたのかも知れません。併しながら、最初から申しますように、これは若し表面的に解釈するならば、
農民の
利益を代表する機関でありますから、何も
政府に協力しなければならんということはないのであります。
農民の
利益を代表する機関のような看板を掲げておいて、そうしてこの金を出して、そうして検査をし、
監督上必要な命令を出して、結局は
農民の
利益を代表するのでなしに
政府の
利益のために、吉田内閣の
利益のために
農業団体を使おうとされると指摘いたしましても、私は一向にこれは過言ではないと思うのであります。或いは私
どもはこの供出の問題につきましては、これに関連して聞かなければならない、食糧管理の問題について、これから
規定を落したが、これはもう
政府が現在の供出制度をやめるということを意図しているのか、その点は一体どうな
つているのか、それを聞きたいと思
つたが、それも時間がございません。
団体に関してだけでなしに、
日本の農業全体をどうするかということについて数々の疑問がこの中から湧いて来るのでありますけれ
ども、それすらも私たちは
質問する機会がなか
つたのでございます。私
どもはこういうようなこの
農業会議或いは
農業会議所というものが決して
農民の
利益を代表し得るものではないと思います。
農民の
利益を代表するものはやつぱり下から盛上
つて来るものでなければなりません。私
どもはそういう
考え方で
農民組合というものを
考えておるわけであります。今の
農民組合が決して
皆さん或いは
農民の要望するような実力を持
つているとは決してうぬぼれておりません。私たちはそれも悩みの種であります。併しながら、私たちはどんな弾圧があろうと、何であろうと、やつぱり農村をよくする途は下から盛上るそういう線を育てなければいかんのである、何遍監獄に入
つても、どんな裏切りをされても、どんなぺてんに遭おうと、歯を食いしば
つて下から盛上げることをや
つて行かなければならないのだ、そういう
意味で私たちは
農民組合ということを
考えておりますけれ
ども、この
二つの
法律の
改正案に出て来るところの
提案者の説明なり或いは
政府の
質問に関連しての
答弁から行きますというと、私
どもそういう期待は全く裏切られてしま
つておるのでありまして、こういうような
農業団体の、
農業委員会法の一部
改正というものは、若し本当にお互いが冷静に
考えるならば、決して
賛成し得るものではないと思います。或いは政党には政党の
立場がございましよう。併しながら、私は
農林委員会というものはそういう
立場を離れて、お互いに本当に
農民のために少しでもなろうというような
気持で今日まで努力したと思いますけれ
ども、この
二つの
法案を軽卒に通すということになりますならば、私たちはそういう
農林委員会の伝統は崩れるのではないかと思います。更に私
どもは
政府に対しましても、この
法案に関連いたしまして誠に腑に落ちん点がございますが、
政府のほうは、これは
議員立法であるけれ
ども、併しながら、
政府の意図と
根本的には何ら違いがないのだということを言われますけれ
ども、午前中に私が指摘いたしましたように、多くの違いがあるのであります。若し
政府に
信念があるならば、私はこの
議員立法というものに対しましては
政府は敢然としてこれを阻止すべきではないか、勿論
議員立法の中心は改進党もありますけれ
ども、自由党であります。自由党の
保利農林大臣は一方では
政府提案をされた、その
政府提案と今度出された
議員立法とは非常に違うわけです。この
議員立法の
提案者に自由党が入
つているから、これにも責任があり
関係がある、それ以前の
政府立法にも
関係がある、その
二つの間には大きな
開きがある、併しながら、あなたは大きな
開きはないと言
つておるけれ
ども、そうではございません。私
どもは午前中にちよつと申しましたように、先ず第一に
共済に関する扱い方が違う、
農業協同組合の
団体加入という問題が違う、
農業協同組合の本質に触れるところの
役員の選挙について
選任制を
とつたということが違う、或いは
総代制を今まで千人以上のものに認めてお
つたのを今度は五百人以上に認める、単に
選任制をとるだけでなしに、五百人以上について
総代制を認めるということになると、全く
協同組合の一人一票という
原則は崩れてしまうのでありまして、そういう点は本質的な違いなんであります。或いは先ほど私が指摘しましたところの行政官庁の不
許可の問題、干渉の問題、
監督強化の問題も違うのであります。
農業委員会についても片方は
技術員をおくとあ
つた、片方は
技術員はないのであります。片方は国が経費を負担するとな
つてお
つた、片方は経費の一部を補助するとなる、負担ということと補助ということは違うのであります。片方は供出と
はつきり
関係が書いてあ
つた、片方は食糧管理との
関係はなくな
つたのであります。片方では、
政府の原案では農地の問題についてもまだおずおずと農業
委員というあの字を残してお
つた。
農業会議でなく
農業委員会議としてお
つた。
農業会議所でなしに
農業委員会議所としてお
つた。そこに私は
政府の事務官僚の
諸君が、やはり農地
委員会以来の土地の問題に対するところの
農業委員会の乱れた伝統ではございますけれ
ども、それを守
つて行こうという意図があ
つたのではないかと思いますが、もはや今度にな
つて来るというと、
農業委員会という字は消えてなくな
つてしまいまして、
農業会議なり、
農業会議所に
県段階以上はなるのでございます。或いは先ほど私が申上げましたように、知事なり
農林大臣が必要な検査をしたり、
監督上必要な命令を出すということは、これは
根本的な問題なんであります。
農業団体に県知事なり或いは
大臣が検査をしたり、
監督上必要な命令を出す、そういうような
農民の
団体はあり得ない、そういうような
農民団体が
農民の
利益を守り得るはずがないのであります。そういうように
根本的に違
つておるものを
大臣は平然とこの
二つの間には
根本的な違いはないと言
つておられますけれ
ども、これは吉田内閣の白を黒と言いくるめるところの伝統に従
つたものかと思いますけれ
ども、併し私
どもは少くとも
農林委員会だけではもつとざつくばらんに話してもらいたか
つたと思うのであります。又
政府はこの
農業委員会制度に欠陥があるとか、いろいろなことを言うならば、当然それだけの措置を今
国会でなすべきであ
つた、
農業委員会制度には欠陥があると言いながらも、七月には選挙することにな
つてお
つた、
農業委員会制度に本当に欠陥があるならば、なぜこの七月の選挙の前にあなた方は
立法措置をとらなか
つたか、そういうことを全然怠
つたところの
政府の怠慢も責められなければならんと思うのであります。
なお多くの問題がございますけれ
ども、以上一貫して言えますことは、これは決して単なる
提案者の説明なり、
政府が言うようなほんのささやかな当面の
改正ではないということ、
農業団体は今や大きく
性格を変換させられるのだということであります。私はこういうような
農業団体の
性格の
根本的な変換に当りまして、各種の
農業団体の中央におられる
諸君が、この
法案通過を我々に頼まれる意図がわからないのであります。
諸君は一体八千万円の金が欲しいのか、
諸君は一体国からの経費の負担が欲しいのか、勿論それは欲しいでしよう。併しながら、そういうことのために自分の
最後のものを売
つてもいいのかと言いたいのであります。もはや
農業協同組合は
農業協同組合でなくなり、
農民の
利益を代表する機関だと言いながら、
農業会議所なり或いは
農業会議というものは決してそういうものではございません。そういうもののために、なぜ一体僅かばかりの金のためにこの
法案の通過に努力しなければならないのか、若し
共済事業の問題を急速に処理しなければならんというなら、それはそれで単独に処理できるものであります。
役員の責任を
はつきりしなければならんというなら、それはそれで単独で処理できるのであります。或いは
定期預金の問題であろうと、そういうような景品が付いておるために、
諸君はこの
農業団体の
根本的に
性格を変更するものに
賛成しなければならんとするならば、私はそれを悲しむのであります。私
どもは
農民組合運動をや
つて来ておりますけれ
ども、私
どもは
農民組合運動が最善のものとは思
つておりません。これとは別途出ております、付託されておるところの
農民組合法の
審議に当
つて意見を申述べたいと思いますけれ
ども、最善のものとは思
つておりません。併しながら、道はその道しかないのだということ、農村をよくする道は、
農民組合という名に我々は固執するものではございませんが、やはり何遍騙されても、何遍つまづいても、何遍弾圧を食
つても、下からの努力を我々は積み上げる以外に農村というものは決してよくならないのではないか。而も一体与えられるおみやげというものについては極めてこれは不安定であります。この
中央会につきましては、国から八千万円の補助が出ると言いますけれ
ども、これは予備金からは出る途はないのであります。政務次官は簡単に事もなげにこういう金が出るようなことを引受けておりますけれ
ども、決してそんなものではございません。予備金からの支出というものは、災害その他の臨時的な支出に限られるものでありまして、こういうふうな恆常的な経費を予備金から支出をすることは違法でございまして、
従つてこの八千万円仮に出すといたしましても、これは補正予算を組む以外に途はないのでございます。一方の
農業委員会のほうの経費にいたしましたところで、
行政機関としての支出をきめておるものを、それを法人に出すということにつきましては財政法上問題があるのでございます。今慌ててこんなものを作
つたところで金は今来ないのであります。それならば、私たちはもつと時間をかけて慎重に
審議をいたしまして、そうしてすつきりした形でやるべきではないか。折角河野
委員が修正案を出されましたけれ
ども、一応そんな妙なものを認めて、そうして既存の実績を作
つてしま
つたならば、二年先にな
つて今私たちが
農業団体の再編成に苦労する以上の、もつと深刻な苦労に直面しなければならない。その間にもつともつと膿がたくさんたまるのじやないかということ、若しそのときに我々が再編成しようといたしますならば、これはもはや
農業団体のたま
つた膿が
農業団体の命をとるまでたま
つているだろうということを私は恐れるのであります。そこまで行かんうちに、今の間にお互いがもつと真剣に張合
つて、
根本的に
農業団体の再編成をしなければならんという
考え方からいたしまして、遺憾ながら河野
委員の修正案に対しても
賛成をいたすことができないのでございます。我々はこういうふうな重要なものを至
つて短かい間に
審議を制約されまして、
問題点をたくさん残したことを遺憾に思います。
清澤君の
お話ではありませんけれ
ども、農村へ
行つてこの問題について説明を求められても私たちは説明ができない。ただ反対、
賛成というだけでなしに、説明できない部分がたくさんあるのでございます。私たちはそういう点からいたしまして、この
法案の
審議の経過を遺憾とし、同時にこの
二つの
法律案なり修正案に対しまして
根本的に反対いたすものでございます。