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1954-05-13 第19回国会 参議院 農林委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十三日(木曜日)    午後二時十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     片柳 眞吉君    理事            宮本 邦彦君            戸叶  武君    委員            川口爲之助君            佐藤清一郎君            関根 久藏君            横川 信夫君            上林 忠次君            北 勝太郎君            河野 謙三君            江田 三郎君            河合 義一君            小林 孝平君            松浦 定義君            鈴木  一君            鈴木 強平君   国務大臣    農 林 大 臣 保利  茂君   政府委員    農林省畜産局長 大坪 藤市君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    食糧庁業務第一    部長      伊東 正義君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○議員派遣要求の件 ○食糧政策に関する調査の件  (食糧管理に関する件) ○酪農振興法案内閣送付)   —————————————
  2. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) それでは只今から農林委員会を開会いたします。  最初に、今回の凍霜害及び北海道を中心とする暴風雨による被害調査の件でありますが、先ほどの御懇談の結果、取りあえず凍霜害につきましては、群馬、埼玉、栃木の三県に現地調査のため議員を派遣いたしたいというふうにお話合がきまりましたが、その日時或いはお出でになるかた等については委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないものと認めまして、さよう決定いたします。  なお、北海道のほうは他の委員会等からも御要求があるようでありまするから、その旨を議院運営委員会のほうにその意思を表したいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 御異議ないものと認めまして、さように取計らいをいたします。   —————————————
  5. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 本日は臨時硫安需給安定法の審査の予定でありましたが、かねてから要求しておりまする日本開発銀行からの資料は、再三の督促をいたしておりまするが、まだ提出がございませんので、過般の委員会お話合によりまして、本日は審議を見合せることになりました。   —————————————
  6. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に食糧政策に関する調査という意味におきまして、食糧管理に関する件につきまして、かねて小林委員から農林大臣に対して緊急質問要求があつたので、この際小林委員から質問を願うことにいたします。
  7. 河野謙三

    河野謙三君 硫安コスト資料が未だに出ない、従つて本日は審議に入るわけに行かん、これは挙げて政府側責任であります。この際この審議に入る条件として、コスト提出がない限りは審議に入れないということを確認すると同時に、その場合によつて起るところの審議の遅延は政府側にその責任があるということを、この際委員長からはつきりと確認の上、政府に申入をしておいて頂きたい、かように思います。
  8. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 了承いたしました。なお、先ほども申上げましたように、農林通産両省からも開発銀行資料を早く出すように、両者を通じまして今督促をいたしております。  それでは小林委員の御質問を願います。
  9. 小林孝平

    小林孝平君 去る七日に農林省では米の生産県主管部長を招集されまして、二十日乃至十八日の米の配給のうち、十五日は従来通りその生産した内地米配給するけれどもあとの三日乃至五日は外米を廻して配給するということを指示されたようでありますが、私はこの問題について農林大臣に二、三お伺いいたしたい。  最初にその問題に入る前に、農林大臣にお伺いいたしたいのは、農林大臣現行米食率を維持するということをしばしば言明されておるのでありまするけれども、それは現在もそのお考えには変りはございませんか。今年は場合によつてはその現行米食率を変更される意思が多少でもおありになるかどうかをちよつとお尋ねいたします。
  10. 保利茂

    国務大臣保利茂君) しばしば申上げて参つておりまするように、昨年の作況が思わしくないというさなかに立ちまして、配給をどうするかということは、まあ朝野の非常な問題であつたわけでありますが、いずれにいたしましても、配給日数を落すということは非常に台所に対して急激な変革を与えることになるから、そのことにおいてはいろいろ問題もあろうと思いますけれども、ともかくも現行配給日数は維持して参りたい。併し食糧管理の現況からいたしまして、将来ともこれが不動のものであるということはなかなか言い切れるものじやございませんけれども、私としましては、当米穀年度に関しまする限りは配給日数を維持して参るということを申し上げて参つたわけでございますが、今日もその考えは少しも変つておらんのであります。
  11. 小林孝平

    小林孝平君 当米穀年度は維持するとおつしやいましたけれども、来米穀年度についてはどういうふうにお考えになつておるかということを簡単に御答弁願いたい。
  12. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 来米穀年度のことはまだ申上げません。
  13. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣はすでにお忘れになつたかも知れませんけれども、麦の統制撤廃の際に、あの附帯決議として衆議院において米食率均一化を図れということの附帯決議があつたのです。それはどういうことであるかと言えば、麦の統制撤廃をしますと、あとは麦と米と一緒に合せて三十日ということであつたから不均衡になる。残つた或る所は二十日、或る所は十五日、こういうことになつて、将来これは不公平であるのじやないかという議論が出るということを我々は恐れて、委員会において農林当局にしばしばこの問題を話した際に、農林当局ではそういうことは、絶対将来この従来の米食率を維持して、これを一律に十五日にするというようなことがない、こういうことを言明されたのです。併しこの不均衡という意見が出るから、それは成るべくこれを均衡にして、成るべく二十日に全部したほうがいいという意味で、この均衡を将来図るようにせいという附帯決議をしたのです。ところが先般この月曜日に、この問題を今これから本格的にお尋ねいたしますが、外米配給の問題に関連して、食糧庁長官はこの先般の麦の統制撤廃の際に、衆議院においては米食率均衡化を図れという附帯決議が付いておりますから、その趣旨則つて多少この米食率を切下げることも止むを得ないだろう、そういうふうに国会において決議をされたのですから、そういう趣旨によつてやることも止むを得ないだろう、こういうことを言われたのです。これは非常に大きい問題なんですが、まさか農林大臣はそういうことをお考えになると思わないけれども、念のためお尋ねしておきます。
  14. 保利茂

    国務大臣保利茂君) ちよつと私御質問の点がどこにあるかつかみにくいような感じがしますが、そういう決議があつたとすれば、決議趣意は尊重して参らなければならんことは当然のことでございますけれども、併し当局者としてはできるだけ、何と申しましても米食の強い執着の上に立つている食生活を営んでおるわけでございますから、米の配給はできるだけ多く私どもといたしてはいたしたいわけでございます。そのためには最善の努力を払つて参るつもりです。そういう決議があつたからいつでも切下げていいんだというよう考えは持つべきじやないだろうと私は思います。
  15. 小林孝平

    小林孝平君 そういう決議があつたからと言われますけれども、その決議というのは多いほうに均一にするという決議案なんです。それを農林省では勝手に低いほうに均一にするように解釈されているという点を、食糧庁長官はそういう解釈をされたけれども農林大臣はされておるのかどうかということをお尋ねしておるのです。されておるか、していないかということだけお答え願いたいと思います。
  16. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私はそういう考えは持ちません。できるだけ一つ米配給は改善して参りたいという気持を持つております。
  17. 小林孝平

    小林孝平君 そこでこの七日の会議では、農林省では従来、例えば新潟県の例をとつて言えば二十日の配給なんです。そのうちその二十日は勿論新潟県で生産した米を配給するのですけれども、今年からこの二十日の米の配給を十五日だけ内地米配給して、あとの五日は外米配給するという決定をされたのです。これは生産県について全部こういう措置をされたのですけれども、これは全く食糧管理の立場から言えば無意味だと思うのです。無意味であるばかりでなく、食糧管理を非常に混乱させる虞れがあると思うのです。先ず第一に、消費地における外米配給日数が比較的今度は多くなつたから、それでは困るから、この生産地外米を廻してそれを多くしようと、こういうことなんです。具体的に言えば生産府県において五日外米配給すれば、東京では一日と幾らかの内地米配給が多くなる、こういうことを理由にされておるのです。そこで我々そんなことをやるために五日分も外米新潟県やその他東北、その他岡山とか、そういう県に外米を廻すなどということも、これは輸送上からも非常に無駄だ、それが先ず第一点、第二点は、そういう生産地では食い慣れない、都会地の従来食い慣れておつたところでも困るというのに、僅か一日分の米を消費地配給するようにしようとして、そのために五日も今度外米配給されたら、生産地人々はこれは配給辞退をすることは必須であります。周囲には相当の米が一応あるのです。この配給辞退をした米が無駄になつて東京に戻つて来るということになる。農林省外米を五日間生産地に廻すということを言われるけれども、これは文字通り廻すのであつて東京から東北などに行つて、それが配給辞退になつて東京に戻つて来るという事態になります。これは実に愚の骨頂です。そのあとどういうことになるかというと、今度配給辞退をしたのだから、恐らく米は要らないだろうということで、農林大臣米食率は今確保すると言われたけれども、結論においては米食率を、三日乃至四日間配給辞退があつたから、今度は月十六日にするというようなことをやられるこれは前提ですよ。若しそういう前提でなければこんな無駄なことをやる必要がない。どういうわけでこういうことをやるのか、これは食糧管理上どういう理由があるのかということをもう少しはつきりして頂きたいと思う。
  18. 保利茂

    国務大臣保利茂君) このことにつきましては、食糧庁長官から御説明申上げておると思うわけでございます。無論生産地におかれても相当の御不満があるということは承知いたしておるわけでございます。併しこの食糧関係は、一体国食糧管理を非常な犠牲を払つていたしておるゆえんも、結局この生産地消費地との関係を調整して、生産者消費者も乏しき食糧不平がないということは、これはもう根本的に足りないのでございますから、どこかに不平が生じましようけれども、その不平をできるだけ全体で忍び合つて行くというところに国の管理の意義があると思うのであります。そこで端的に申しますれば、一方には十八日の内地米配給がある、或いは二十日の配給があるという中でも、せめて消費地に十日ぐらいの配給が維持されておれば、消費地のかたもまあまずくともあと外米でということで忍んで今日まで来て頂いておるわけでございますけれども、昨年の作況からいたしまして、国で買上げておりまする米が二千万石余というよう状態で、止むを得ず七日前後の内地米しか消費地には配給できない。で、三日、五日こんなまずい外米を持つて来たつて生産地は足りやしないというお話でございますけれども、これは私はそういうことではとても内地食糧問題を改善して参るということはできないと思うのです。どうしてもこれは一つ生産地におかれても、やはり内地米外地米の品質から来る嗜好というものは、これはきまつておるものでございますし、やはり米の生産地の中におつて外米も或る程度食べよう、そうして六日とか、一週間というところに幾らかでも廻してやろうという気持が起きなければ、私はとても先ほどのお話のいわゆる配給均一というような点にも近付くことはできないと思いますし、問題の今回の措置は決して配給日数を落す前提としての措置では断じてございません。配給日数は維持して参るけれども生産地のかたも一つ東京あたり消費地が約十日のまずい外米配給を受けておるわけですから、せめて三日、五日の配給日数の中で御辛抱願つて協力を頂きたいという趣意に全然ほかならんわけでございますから、これは一つ今日の事情から曲げて御了承願いたいと存じておるわけでございます。
  19. 小林孝平

    小林孝平君 生産地の人に協力せい、協力をすべきが当然である、こういうお話でありますけれども、私はこの生産地の人が米を食うべきであるとか、ないとかいう議論をやつておるのじやない、現実的に今の政府のこの政治力を以てしては、協力せいなどということを言つてみたつて何も効果はないということを言つておるのです。現にこういうことをおやりになるなら、五日配給して一体どういう配給事態現実に起るか、そういう起る可能性があればどういう手を打つべきかということを研究されてやるならまだ考えようもあるのです。この間の会議はそういうことの意見を聞くのかと思つたら、これは指示をしたのです。これは変えませんと言う、こういう話です。そこで今のよう内閣では、あなた大臣でおられるので甚だ恐縮でありますけれども、ふらふらしていつ潰れるかわからない、こういう状態で、それで以て内地米を五日外地米に切替えるべきであるということを幾ら東京でお言いになつても駄目だというのです。向うが結局配給辞退をしてしまうと思うのです。そうすれば現実米食率の切下げにもなるし、それから輸送事情相当逼迫しておるのに、東北まで米を持つて行つて東京に持つて来るなんということは、文字通り米を廻すということになるということを申上げておるのです。そこでそういう配給辞退を生じたために手を打たれるのか、協力を求められるのか、その点をお尋ねいたしたいと思うのです。現に産地の新聞では正直者ばかをみる、外米配給政策などということで非常に騒いでおるのです。その点どういうふうにお考えになつていますか。聖人君子ばかりじやない、一般平々凡々市民ですから、高遠なる理想を説かれても駄目なんです。
  20. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 決して高遠なる理想とか、何とかいうことではございませんで、要するに片方では六日、七日しか内地米が食べられない、そこでせめて半日でも一日分でも十八日乃至二十日の配給を受けられておるかたが同じ気持でやつて頂けるならば、又私はやつて頂けると思いますが、消費地において今日非常に苦しんでおる食生活をお考え頂けば、何とか一つ協力願えるのではなかろうか、併し又急激に変えますということは、これは非常に慎重を要するわけでございますけれども、同時に私どもといたしましては、これも又今度こういうことを申上げると消費地からお小言を頂くと思いますが、生産地に廻しまする外米につきましても、できるだけアメリカ南部米であるとか、そういう比較的取付きやすいところから取付いて頂けるよう措置も十分講じて参りたいと考えておるわけでございます。決して理想がどうとか、こうとかということでなしに、とにかく幾らかでも辛抱し合つて行こうじやないかという気持がなければ無論私は駄目だと思います。その気持は今日生産県の戦後の供出実績からいたしましても、御協力頂けるのではないかというように期待いたしておるわけでございます。私どもも又なすべきことは十分なして行かなければならんと思いますから、こういう点につきましては又御意見を十分承わりたいと思います。
  21. 小林孝平

    小林孝平君 協力するとかしないとかというのは、今農林大臣は戦後の供米の実績から考えてと言われるが、これは農林省対象とされたのは農家を対象にされたからそうだつたのですが、今度は一般消費者です。そこでこの周囲にはともかく米があるのです。大体生産地の人は人がいいので、大体あなたの言うことは聞きますよ、聞きますけれども、現に傍らに米がふんだんにあるのです。理窟をあなたはおつしやるのです。私はすぐあなたの説に感心してしまうほうなんだけれども現地にいるものはそうはいかんですよ。農林大臣が一々個別にやられるわけじやないのです。せいぜい文書か何かで行くんです。そんなものを見ても隣りにはたくさん米があるのです。その米を買つて食つて配給辞退ということになるんです。それはならんという具体的なその証拠なり、確信がなければ、これは全く無駄な政策だ、こういうことになる。私はなるだろうと思うじやこれは駄目だと思う。私は外米とか、内地米をうまいとか、まずいとかいうことを言つてるんじやない。これをやれば必ず配給辞退が起きて、そうしてこれは周囲の米を買つて食う、そうすれば闇米の値段が高くなつて東京に来る米も又少くなる。そうすると、今までは一日余りも闇米を買つていた人も今度はその闇米が来ないということになる。だから政府はこういう措置をやつて、一日〇・二か、〇・三か知りませんけれども、それだけ内地米を多く配給したために一・三の闇米が買えないことになる。結局においては同じことなんです。これは農林省だけで自己満足されているのです。そういう点はどういう見通しを立ててやられているのか、確信をするとか、協力するだろうとか、そういうことでは納まらんと思うのです。その点を……。
  22. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 多数の配給をいたす、多数のかたが配給をいたしておるわけでございますから、一人々々の御事情もあろうと思います。いろいろの場合が起きるだろうと思います。それは成るほど内地米つたら二十日分まるまるとる、外米ならもう要らんというかたも出て来るかも知れません。併し私どもとしましては、今日の食糧事情からいたしまして、決してその生産県に御無理を願つておるけれども、まあ無理は無理でございますけれども、今までから言いますと、全体の事情から言えばお力添えと申しますか、御協力願える程度の御無理じやないかと思うわけでございます。外米質等につきまして、配給いたします外米質等につきましては、もうできるだけ配慮いたして参りたいということで、ただ併し実際五日廻した分がどれだけ確実に一体どうなのかということは、これは実際やつてみないことにはわからんのじやないか、いろいろ見通しはあろうかと思いますが、事情止むを得ず、そういうわけでございますから御了承願いたいと思います。
  23. 小林孝平

    小林孝平君 非常にこれは大臣事務当局の案をそのままお呑みになつてこういうことをやる、もう少し政治的の考慮をお払いになれば、これは実にばかげたことであるかということがおわかりになる。先ず第一に、政府はこの総理大臣施政方針演説の中に、米にこだわることをやめて、粉食とか、或いは人造米とか、そういうものに重点を大いに入れてやると、これだつて本当はおかしいのだけれども、そういうことを非常に堂々と宣言をされたんです。そういうことを宣言をされたなら、この都会地においてこの内地米が少し減つた、だから外地米は困るというようなときにこそ、そういう今の施政方針演説の中に盛られた、そういうことを徹底的に宣言されたらいいのです。特に生産地に廻すようタイ米生産地人々内地米と大差ないというて喜んで食うというようタイ米があつたら、そんなものは都会地に大いに配給されたらいいと思う。無駄なことを非常にやられていると思う。そうして而もこの配給辞退があつたとき、配給辞退すればまだいいのです。まあ米が配給になつたのを、これを配給を辞退するとちよつと体裁が悪いからもらつておけなどということで、そこらの鳥の餌にしたり、或いは臭くして食べられなくしたりするから、二重にこれが無駄になる。それは東京に戻つて来れば又配給すればいいけれども、戻つて来ないから二重に無駄になる。だからその上一方では配給辞退をして周囲にある米を食うということになるから、先ほど申上げたよう東京に来る闇米が少くなる、現実闇米があるのだから仕方がありませんです。そういうことで結局日本の食糧事情全体から言えば窮屈になつて来る。そこでまあやることにきめられた、私たちは幾ら言つても恐らくこれはなかなか変えられないだろうと思うのです。そこで仮にこれを六月一日からおやりになつて配給辞退相当出たということになつたら、これはおやめになるかどうか、当然おやめにならなければ困ることです。おやめになりますか。やめないでやはり相当米を無駄にしても何かそのまま続けてやられるか、そこの点をやめるか、やめないかだけ一つお尋ねをいたします。
  24. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これはまあ今申上げましたようなことで来月から是非やりたい、やらして頂きたいということで、その線でやつて行くつもりでございます。
  25. 小林孝平

    小林孝平君 おやりになつあと、これは配給辞退は必至なんです、今の情勢では……。大臣はそうおつしやるけれども、私らはもう生産地にいるからよくわかるのです。而も最近はもうこんなさんざん農林大臣におだてられて米を供出した。ところが今度はこんなことで又ばかをみた、今度はもう今年の米の供出協力できないという空気は相当出ている、生産者においてもそうだ、消費者においてもこれはもうしよつ中その東北とか、新潟とか、こういう人のいい所はばかばかりみておる、こういうことを言つておる。とても協力なんかしませんよ。そこで配給辞退は必至なんです。そこで三日配給辞退なつたら大臣はこの制度をおやめになるかどうか、それでも配給辞退でも続けておやりになるのか、その点をお尋ねしたい。
  26. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 配給辞退、五日分、三日分皆配給辞退というようなことは想像もいたしておりません。お話でございますけれども、先ほど小林さん御自身がおつしやいましたように、今度の措置生産者に対する措置じや無論ございませんし、消費者に対する措置でございません。又米がどうもまるであり余つて溢れているようお話でございますが、それだつたらもう少し供出を願わなければならんというようなことはむしろ考えておるのでございます。私はこの問題は決して事務当局の言うことにそのまま無批判にこの措置をとるというようなことではなかつたのでございます。個人のことを申上げて甚だ恐縮でございますけれども、私も郷里は生産県でございます。隣りは極端な消費県でございます。長崎県、同じ長崎県の人で米が少いから長崎市民は六日、七日しかありません。佐賀では米がとれるから、佐賀や唐津の市民は十八日分の内地米を食べる。これは到底私自身としても割切れません。何とかそこに多少の均一調整のお互いの協力関係が結ばれて行くというところに一つ食糧政策の前進があるのじやないかということを絶えず考えておつたわけであります。今日の状態からいたしまして、甚だ不本意でございますけれども、大消費地の実際の食生活の現状からいたしまして、たとえ半日でも一日分でも生産県の御協力を頂いて改善することが、改善にはなりませんけれども幾らかでもその欠点を補うことができればということでやらして頂きたい、こういう考えでございます。
  27. 小林孝平

    小林孝平君 この闇米がそんなにあれば供出したらいいというお話は、これは実際現に周囲に米ができるんです。これを皆東京へ持つて来るわけです。だから手近なところにあるからこんなに無理して、この生産地意見を全然聞かないで、こういうことをやるから政府協力しなくなつて、こういう闇米を買うということになる。こういう意味なんです。だから現実聖人君子じやないのだから、みな平々凡々一般市民ですから、やるのです。配給辞退が起きるのです。だから私はそういう事態が絶対起きないと思つているとおつしやつても駄目なんです。起きたらどうするか、二日乃至三日の配給辞退が起きたらどうされるかということを聞いているのです。そのくらいの準備はやはり必要だと思うのです。確信だけでやつてもらつたら因るのです。これは生産地を代表して言つているのではない。日本の食糧事情が非常に逼迫しているから、そういう無駄が少しでも起ると困ると思つて申上げているのです。
  28. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 食糧当局でも細心の注意を払つてつておりますから、考えなければならない、又考え直さなければならない事態が生ずれば、これは無論考え直しもしなければならんと思いますけれども、ともかくもこれでやつて見てからのことにいたしたいと思います。
  29. 小林孝平

    小林孝平君 一応やつて見てと言つたつて、六月からやつて一月の間にこの事態がはつきりするのです。やつて見てからでは遅いのです。今から準備をする必要があるのです。配給辞退なつたらやめる。一日くらい配給辞退なら続けてやるが、二日ならやめるのである、或いは三日ならやめる。そのくらいの準備はやはり必要だと思うのです。現に又農林大臣は今やつて見て多少考慮しなければならん事態が来たら考慮するとおつしやいましたが、その考慮するというのは、二日乃至三日配給辞退が出たような場合は取止めることを考慮するというふうに考えてよろしうございますか。
  30. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 配給辞退があるという、辞退されればそれはそれじや配給辞退がありますから、内地米をすぐ復活するという措置はなかなかとりにくいだろうと思います。
  31. 小林孝平

    小林孝平君 だから初めから私は申上げているように、この措置は結局米食率の切下げの前提であるということを申上げたのです。政府はいろいろ考え米食率を切下げようと思つているけれども、なかなか切下げるわけには行かない。そこで今度非常にいい考えを出して、こういうことをやつて配給して結局配給辞退になる。そこでまあ配給辞退したなら要らないだろうということで、配給しなければ米食率の実質上の切下げになるじやありませんか、これは非常に大きい問題だと思う。
  32. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私はもう率直な感情を申しますけれども、若し生産県の御意見であるとすれば、少し私は今日の食糧事情から言つて虫がよ過ぎるという感じがするのです。無論今日東京の実際の、小林さんが日々食生活をやられている現状からいたしまして、どうも少しそれは全体から、これは業者がやるとか、何とかいうことなら問題は別でありますけれども、国が全体の国民に対する奉仕者として行う措置といたしましては、この程度の御協力を願うということは私はぎりぎり止むを得ないのじやないかと感じますけれども、併し御趣意の点は十分注意をいたして参らなければならんと思います。
  33. 小林孝平

    小林孝平君 私は生産県意見を代表して申上げているのじやないのです。日本の食糧事情全体から言つてこれは非常にマイナスになる。こういうことをやつたら混乱を来たして、だんだんそれはやがて今度は供出にまで響いて来て非常に混乱すると思うから申上げているのです。私は内地米外米などにそうこだわらないというむしろ意見なんです。むしろ大臣より更にこだわらない意見なんです。大臣は非常にこだわつていらつしやるから、こんなことをおやりになる。私はそんなにこだわらなくてもいいじやないか、そこにあるものを食べて、なければ我慢しなければならんじやないか、私はこだわらない。むしろ自由党政府総理大臣施政方針演説に共鳴しておる。ところが大臣はそれを自分でその原稿を書かれて、今はそれを無視して非常にこだわつておられる、非常にこれは自由党の食糧政策は矛盾しておることの一つの現われだと思つておる。そうしてこのくらいは止むを得ないだろうなどと、こうおつしやいますけれども、今国で統制しておるのは米だけなんです。よほどの事情があるからこういう統制をやつておるのです。だからそういうようないろいろの不合理が起きるのは当然なんです。それを一部には統制をやつて生産者に非常に強力な圧力をかけておきながら、一部では公平にやろうというようなことは悪平等であつて、政治の本質から言つてとらざるところだろうと思う。こんなことはいいけれども、結論としては配給辞退相当つたら考慮する、その考慮するというのは、この制度の緩和或いはやめる、これは誤まりであつたからといつてやめになると、今の御答弁から解釈してよろしうございますか。
  34. 保利茂

    国務大臣保利茂君) この配給関係から行きますというと、現在の消費地十五日、生産県十八日乃至二十日ということがかなり意見もあり、不満を生じておる点もあることは御承知の通りであります。併しそれもお話ように、供出関係で極めて面倒な問題もあるから、あえてその不均衡を、不合理を十分認めつつその不均衡をやつておるわけでございます。併しそれを今だからと申して、消費県生産県も同じ日数でということを一挙にということは、私は弱いかも知れませんけれども、できない、ただまあ併し都会地は六日、七日の消費を、生産県は十五日の内地米配給されて、あと十五日以上の分について外米で御辛抱を願うというくらいの措置は、これはまあこれもどつちみち割切つた措置ではございませんけれども、それによつて月一日分の内地米消費地のほうに廻すことができるということであれば、これは一つ生産県でも御協力を願いたい、ただそれがうまく行くか、行かんか、これは是非うまく行くように御協力を願わなければならんわけでございます。それから先のことを断定的にお答えするということは今日は私は時期でないように思います。
  35. 河野謙三

    河野謙三君 今の小林さんと大臣の質疑応答を聞いておりまして大臣に伺いたいのは、今度のこの生産県配給の質的内容の改善措置をとられた、このよつて来る原因と申しますか、理由はどこにあるのでしよう。二千一百万石の内地米の集荷目標、これが非常に努力されたけれども遂に見込みがない、従つて内地米の現在までのよう配給日数で行つたのでは米穀年度の切替まで持たないということで、その結果こういう措置をとられたのだと私は了承しておるのですが、そうじやないのですか。
  36. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 内地米の集荷につきましては、今日も御協力を願つて推進をいたしておりますから、従つてその結果が最終的にどうなりますか、私どもは二千百万石を目標として努力を願つておるわけでございます。ただ新年度まで持たんから、こういう措置をとるのじやないかというのは、そうじやございませんので、元々が今日の配給日数を維持して参りますためには、相当大幅の外地食糧に依存しなければならん。それが相当消費地外米の消費が片寄つてしまつておる、生産県のほうは少しも動きはなしに十八日は十八日、二十日は二十日ということでびしんびしんと内地米配給がある、それが消費地のほうはだんだん外米のほうにそのウエイトがかかつておるという状態幾らかでも、消費地のかたにも一つ随分御無理を願つておるわけでありますし、かたがた生産県消費者のかたにも或る程度の御辛抱を願つて幾らかでも大消費地の肩を軽くして頂けるというふうにお願いをしたいというのが今回の措置であります。
  37. 河野謙三

    河野謙三君 私は非常に誤解しておつたのですが、実は内地米は非常に集荷も思うように行かない。併し幸いに外米は予定通りつて来る、内地、外地の米を合算すれば、政府が従来までの配給日数は維持できる。併し内地米が非常に窮屈であるということから、止むを得ずかよう措置をとらざるを得なくなつたと、私はこういうふうに了承しておつたのですが、今、大臣お話ですと、そういうことは全然理由になつていないわけですね。あなたの食糧、特に米の配給に対する一つの思想と申しますか、根本的の考え方から言つて、例えば東京の例をとるならば、同じ国民でありながら東京の都民は純内地米は僅かに六日である、あとの九、十日は外米を食つておるのだ、ところが生産県といえども同じ日本人でありながら、生産県では二十日は米を食つて、而もそれが全部内地米だ、それが大臣としてのあなたの根本的な考え方が、これに同意できないということで、これを修正して行くのだ、こういうことなんですね。そういうふうに了解していいですか。
  38. 保利茂

    国務大臣保利茂君) どこが違うか私にはわかりませんが、修正をする、しないということでなしに、先ず大消費地のほうに外米が片寄り過ぎておるから、生産県のほうでも一つ協力を願いたいということであります。
  39. 河野謙三

    河野謙三君 そうしますと、今後の生産県におけるところの米の配給の二十日なり、十八日なり、十七日というものは、一方の消費県において十五日、而も内容は先ほど申上げるよう生産県の内容とは違うものを持つている、こういうものを比較されました場合に、これについての大臣配給日数については根本的に将来とも変える意思はない、こういうことですか。
  40. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 先ほど小林さんにお答えいたしましたように、将来のことを断言するだけの見通しは私は持ちませんけれども、当年度に関しまする限りは現行配給日数を維持して参りたい、これが私の考えであります。
  41. 河野謙三

    河野謙三君 そうしますと、仮に本年は米が二千五百万石今度集まる、又は二千八百万石集まる、三千万召集まるということになつた場合は、やはり依然として生産県においては米は二千八百万石集まろうが、三千万石集まろうが、生産県内地米は十五日である、それで余計集まつた分は現在の消費地の純内地米は六日が七日になつたり、八日になつたり、十日になつたり、こういうことになるわけですね。そういうことになりますか、結果は……。若し本年が平年作、若しくは平年作以上であつた場合に、そうして非常に米が余計集まつたりするという場合にはどうなりますか。余計に政府の手許に集まつた内地米はどこに行くのですか。
  42. 保利茂

    国務大臣保利茂君) いろいろの想像はできましようけれども、それは何ですか、河野さんの言われるのは、次の年度あたりで若し作がよくて集荷が余計できた場合には、それをどこへ廻すか、それは外米の節約に当てる、こういうことになると思います。
  43. 河野謙三

    河野謙三君 あなたのお考え生産県といえども消費県といえども配給の日数の上からいつてもできるだけ同じにしたい、併しそれは、さればといつて今すぐに新潟を十七日や十八日にすることは考えていない、併し質的内一容においては、少くとも生産県である新潟といえども内地米は十五日で我慢してもらわなければいかん、あとの五日間は外米でやります。こういうことでしよう。ところが今度内地米が余計集まつた場合、今年のように二千五十万石とか、二千百万石というのではなくて、内地米が二千五百万石、二千八百万石、若しくは三千万石集まつた場合のこの内地米の各府県の配給基準はどういうふうに変化して来ますかということです。
  44. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これはもうたとえ半日の処置にいたしましても、軽々にどうします、こうしますということをここで即座的には私は申上げられません。慎重に検討を要することだと思います。
  45. 河野謙三

    河野謙三君 私は最初、今年の集荷が思うように行かないので、とにかく持つものを持たないのだから、止むを得ず生産県にも我慢してもらつて内地米を五日間減らして外米と入れ替えることにしてもらつた、こういうふうに了解しておつた。ところが大臣はそうではなくて、生産県消費県との食生活、特に米の配給の内容においてアンバランスがあるから、これを一遍にやろうとは思わんけれども、徐々にこれを平均化して行きたい、こういう思想の上に、そういう言葉は使われませんけれども、解釈をすれば、そういう思想の上に立つておられる、私はこの思想は非常に賛成です。小林さんはおこるかも知れないけれども、私たちのように、私は神奈川県ですけれども、これは東京もそうですが、神奈川県だつて農家は米を作つておる。消費者になれば新潟県も神奈川県も東京消費者は同じであります。でありますから、この質的内容を公平にしよう、もつと積極的には配給日数においても私は公平にすべく努力をされることがいいのじやないかと思う。大臣はそういうお考えを持つておられる。そう思つておられるなら、内地米が今度毎年々々凶作で二千万石や二千五十万石ということはあり得ない。今度は二千五百万石、二千七百万石、三千万石集まつた場合、新潟は五日間減らした分を復活するというようなお考えは、大臣の今の御説明から行けばそういう答えは出て来ない、そうすれば新潟は二十日のものを十五日に減らしつ放しで集つても殖やさない。そうすれば片つ方を減すのでありますから、余計できた分は消費県のほうに七日になり、八日になり、九日になり、プラスされて行くということになるのですが、そういう御方針ではないのですか、それは御方針として、私は幾日配給するかというような無理なことを聞いておるのではありません。それはわかるものではない、誰に聞いてもわかるわけはない。だけれども農林大臣の米の配給に対する基本方針はどういうことかということを聞いておる。特に内地米配給の基本方針はどこにあるかということを聞いておるのです。
  46. 保利茂

    国務大臣保利茂君) とにかく今日の十五日或いは十八日、二十日という国が配給管理をいたしておるもので、ただ米のできる地帯、米のできない地帯でこういう差等を付けた配給をいたしておる不合理は一体どこからよつて来ておるか、これはまあ主として集荷、供出の面にあると思いますから、従つてそういう点をも十分考えつつ措置して行かなければならない問題であろうと思います。考え方としては、とにかく国が管理をするのだから、これは全国どこでも差等があつてはならん。これは私は建前だと思います。併しそれをやろうとすると、全体が大きな不利益をこうむるという虞れもあるということで、今日の不合理が現われて行われておるわけでございますから、改善して行かなければならないということは、もう絶えず考えておりますけれども、それじやこの場合どうなるか、あの場合どうなるか、それは場合場合で一つ慎重に検討して措置して参るということを申上げるよりほかは、どうも……。
  47. 河野謙三

    河野謙三君 私は小林さんのおつしやる通り新潟や秋田に外米を運んでも、実際問題として配給はとらないと思う。上越の国境を越えて外米を横浜その他から運んで新潟に米を入れるという必要がありましようか。大体横浜から運ぶのです。そうして新潟まで行つて外米配給辞退になつて東京に持つて来て埼玉県の草加あたりに入つて煎餅の材料になるのだということは、何と申しましても国全体として不経済です。そういう結論になるのは当り前です。でありますから、そこでこれは小林さんの御心配になるのは無理はないと思うが、私はそれよりも、大臣率直に言つたほうがいいと思う。十五日に内地米を減らしてもらう、減らすばかりでは叱言が来るから、外米で御不満でありましようけれども外米でよかつたら五日分やりましよう。併し要らないものは初めから無駄なことをしないで新潟のほうと相談をしてもらう。これはいろいろ反撃はあるでしようけれども、私はそれをはつきり言われたほうがいいと思う。それで新潟はとにかく、将来内地米で全部で十五日必ず保証します。その他の分については御希望によつて外米を追加いたします。一方消費県のほうには今六日と言つておりますが、それで我慢して頂いて、将来米がどんどんとれたら、そのときはいつまでも六日ということは言わない、来年八日になるか、九日になるかも知れない、こういう期待は持つてもらつて間違いない、こういうことが私は大臣の御意見であろうと思う。又その御意見は私は堂々たる御意見だと思う。それをここに小林さんが来られてから、どうも少し話をぼかしておられる。これは小林さんは納得するでありましようが、私のほうの消費県では実際こんなことはおかしくて聞いていられませんよ。私はそれよりも、何も新潟の米をこつちに寄越せとは言いませんが、新潟は十五日で我慢してもらつたら、それだけこつちは半日分か、一日分殖えるときがあるだろう、そういうことなら私はいいと思うのです。大臣そういうことなんでしよう。私はそれならば全面的に大臣の勇気に敬意を表するのです。そうではありませんか。
  48. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 先ほど来小林さんにお答えいたしましたところで尽きるわけですが、どちらにしましても只今の食糧状況からいたしまして、生産県消費者のかたにも、この程度の一つ協力をお願いいたしたいという趣旨に変りはないわけでございます。このやり方が手ぬるいとか、甘いとか、或いは相当苛酷だとか、いろいろな批評があろうかと思いますけれども食糧当局者として現状の上に立つて責任を尽くして行く措置としましては、この今のところがまあまあというところではなかろうかという考えでやつておるわけでございます。
  49. 江田三郎

    ○江田三郎君 今の問題を聞いておつて少しはつきりしないのですが、それはそれとして、もう一つ大臣が来られたからこの機会にお尋ねしておきたいのは、この前から私本年の麦価のことをいろいろ聞いたわけなのですが、パリテイに基く価格は、これは法律でやる。併し特別加算というものはまだどうするかわからん、こういう答えでしたが、もうそろそろ麦刈りも近付いて来たので、はつきりしてもらわなければならんと思うのですが、一体パリテイでやるとすれば、そのパリテイは何月のパリテイなのか、そうして大体推定でどうなつておるのか、それから特別加算はどうするのか、それから更にパリテイが変つて来ているわけですが、米についてのバツク・ペイはどうするか、それからそういうことをきめるための米価審議会の委員の任命についてはどうするか、一つこれは具体的なことばかりですから、はつきりお答え願いたいと思います。
  50. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 逆からのお答えをいたしますが、米価審議会の委員はできるだけ早くお願いをしなければならん今日、国会の各会派にも御推薦を願いますが、国会議員であられるかたをお願いするについては、承認手続が要るわけでございます。従来通り関係で各会派にお願いをいたしておる。その国会側の委員がおきまりになれば、併せてその他も任命いたしたいというふうに考えております。それから麦価の問題は、一つの大きな問題でございます。只今事務当局で検討を願つておりますが、まだ私のところにまで相談する段階に至つておりません。米のバツク・ペイは、パリテイを基準として決定をいたしておる。而もそのバツク・ペイの規定も法律で定めているわけでございますが、これはもう事務的に取運んで参るという考えであります。
  51. 江田三郎

    ○江田三郎君 米のバツク・ペイは変ることがない、これははつきりしましたが、麦については事務当局で検討中ということですが、一つ事務当局のほうでわかつているところを答えて頂きたい。
  52. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 大臣から今御答弁がありましたように、我々今いろいろ資料を集めて検討をしている段階でありまして、パリテイが変更になつて価格がどうか、特別加算をどうするという数字としてははつきり検討する段階に至つておりませんで、大体いつぐらいに米価審議会を開いて、いつ頃生産費をどうするかという段取りだけはとれておりますが、まだそれ以上詳しく説明するような段階に至つておらんのであります。
  53. 江田三郎

    ○江田三郎君 ではその数字の細かいことは別にしましても、基本的な方針というものだけは、これははつきりしていると思う。パリテイに基く価格ということは動かない、これはよろしい。特別加算という制度ですね、そういう特別加算という制度で具体的に幾らになるかは別にして、続けて行くのか、行かないのか。或いは特別加算というものをやめなければならん何か特殊の事情があるのか、その点はどうですか。
  54. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 特別加算の点も、そういうこれはパリテイから来まして、価格がどうなつて行くという大体のいろいろな要素を勘案しての特別加算でありまして、それをどうするということまではつきり結論を出しておりません。
  55. 江田三郎

    ○江田三郎君 仮にパリテイが果して具体的に幾らになるか知れませんが、一二〇程度とすると、特別加算が仮にないということで計算すると、裸、大麦の場合には昨年度より値段が下るというような問題が出て来ますが、要するに特別加算の問題について方針をきめかねているというのは、昨年よりも上つてはいかんということから、そういう特別加算というものをきめかねておるのか、これは原則ですからね、それがなぜきまらないのか。それを説明してもらわんとわからないが、どうですか。
  56. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 今御質問がありました一二〇は御指摘の通りで、大、裸ではそういうことになると思います。我々としましては、まあ今年の小麦は、こういうデフレ時代と言いますか、こういつた時代に一体買入値を上げるとか、或いはどうするというようなことは、非常に各方面の物価に関係した問題であり、麦の価格は米の価格にも繋ながる問題でありますので、その辺のところを各方面の要素を集めて検討しているということでございます。
  57. 江田三郎

    ○江田三郎君 これは大臣にお尋ねしますが、どうももうきまつてもよさそうなときにまだきまらんというのだから、まあそこから議論をしたつて水掛論になるから、又別な機会に廻しますけれども、ともかくも小麦、裸麦、大麦、三麦について昨年の価格を下廻るというようなことはあり得ない、これだけは言えますか、どうですか。
  58. 保利茂

    国務大臣保利茂君) いろいろの事務上の技術的な資料の上に立たなければならないわけでございましようから、或いはそういうことは断言してもいいかも知れませんけれども、併しそれを無視してやみくもにそうだということはちよつと申上げられないように思います。
  59. 江田三郎

    ○江田三郎君 ちよつとこれはおかしいと思う。下らないということだけは言えるんじやないかね。下げるようなことはあり得ないということだけは、これは言えるんじやないですか。少しえらい今日は慎重ですな。
  60. 保利茂

    国務大臣保利茂君) どうせこれは私は取組まなければならん問題だと思つておりますが、まだ取組む段階に来ておりませんから、取組んで勉強した上でないとあなた方に十分お答えできないと思います。御了承願いたいと思います。
  61. 河野謙三

    河野謙三君 関連して……。大いに取組んでもらわなければいけないので、それで取組む心構えというものは、これは先ず法的根拠だと思いますが、私一番心配しておるのは、この頃政府は法律に書いてないことをいろいろやり出すのですよ。例えばデフレ政策であるとか、国際情勢がどうとか、そんなことは麦の価格や米の価格をきめる上に書いてないのです。パリテイで弾き出してそれに経済事情並びに豊凶係数というようなことは書いてあるけれども、それ以外に何も書いてない。ところが経済事情というやつの拡大解釈をして、国際経済事情というようなところに拡大される虞れが非常にある。まさかお考えになつておらんでしようけれども、麦の価格を決定する場合に、麦の国際価格というものは一切これは法律の建前から言つて考慮の外だと思いますが、去年あたりの麦の価格の決定の経過を見ますと、多分に小麦の国際価格というものに考慮を払つてきめておられるようですが、本年はまさかああいうことは繰返さんと私は思いますが、大臣、取組む前の心構えは、この国際価格と、これからきめるところの国内の小麦価格の決定というものとの関係大臣はつきりと割切つて御答弁願いたいと思います。これは法律そのもので行けば何も私こういう愚問を発する必要もないのですが、過去の経過において大臣から一つ御答弁頂きたいと、こう思います。
  62. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私の考えは、やがて、或いは当面すでに参つておるかも知れませんけれども、国際的に農産物の過剰時代が到来するであろう、これは必至である、その場合に内地農産物の価格をどういうふうに持つて行くかということは、無論考えとしましては、内地価格は国際価格に左右せられないという措置をとつて行かなければ我が国の農家が保たれないという考えの上に立つております。併しながら、同時に又大きい大局からみました場合に、そういうものはもう一切合切無視してかかつていいかということにも俄かに賛成できないわけであります。(「そこらが危い」と呼ぶ者あり)と申しますることは、内地農業を維持発展せしめて参る上において、国際関係を全然抜きにして考えて行くといつても、これはまあ事実できるものじやなかろうと思います。できるだけ国際競争にも耐え得るような方向に持つて行くという配慮は必要であろうかと存じますけれども、併し当面の価格決定に当つてはさようなことを考えるべきものではない、こう考えております。
  63. 河野謙三

    河野謙三君 勿論国際価格と何らの日本経済が関係を持たずに行くということは、これは不可能のことであります。併し今までの米なり麦の価格については、外米なり外麦よりも内地米が安かつたときに、農民の犠牲において国際価格と遮断して米なり麦を安く政府はとつてつたですね。今度は二、三年前から逆に国際価格が内地の価格よりも安くなるという見通しを以ちまして、政府は過去におきまして、すでに農産物価格安定法も出しておられるし、又現内閣がとられた現在の麦の間接統制の機構も、これは飽くまで出発点は国際価格と遮断するという前提に立つておるわけですね。で、私はこの法律を直さない限りは、どこまでもこの法律の建前によつて厳然たる態度で大臣が麦の価格の決定に取組んでもらわなければ困る。勿論今あなたのおつしやるような、大きな日本の経済全体から見て日本の農産物価格をどうするかという問題はあるでしよう。それにつきましては、別途改正すべき法律は改正する、別途とるべき農村政策はとるということをやつての上ならいいけれども、そういうものをやらずに、この間の検察庁法じやないけれども、ああいう無理を今度は麦の価格なり米の価格にやられたらたまつたものでないと思うのです、実際の話が……。でありますから、まさか保利農林大臣がああいうめちやをして麦の価格を国際価格にさや寄せしておいて、そうしておれは今度農林大臣やめちやうんだというようなことはないと思いますけれども、ここはちよつと私実は心配なところでありますから、どこまでも現在決定しております法律の建前によつて、これについてはどこまでも断固としてこの実現を図るという私は御決意を、無駄のようでありますが、伺いたいので、再び同じようなことを伺つたわけですが、これを一つはつきりと言つてもらいたいと思う。
  64. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 法律違反をしようというような気はもう全然ございません。先ほど申上げましたようなことで、慎重に決定をいたして参りたいと考えておるわけでございます。まだ少し不謹槙であろうかと思いますが、取組む前でございますから、多少お許し頂いて、私率直に考えておりましたのは、いつか当院の予算委員会でも申上げておりますけれども、私若しその考え方の方向が非常に危険な考え方であるということであれば、これは是非直して頂きたいと思いますけれども食糧事情から言いまして、いずれも私はなかなか困難だとは思いますけれども、やはり食糧事情を改善して参る何から行きまして、麦のほうはやつぱり麦を余計食べてもらわなきやならん。麦の増産余力は大きい。無論その価格が不当に低ければ農家が作らないから、幾ら増産余力があつてもこれは駄目でございましようけれども、農家が引合う程度のぎりぎりの安いところで麦を供給し得るようになることが必要じやないか。但し米は生活上のいわば貴重物資であるし、これはやはり消費者も、今日実動価格からいたしまして相当このためには貴重な闇価格を払つても消費をしているかたも相当あるわけでございます。米は生活上の、まあそういう表現は甚だ穏当でないと思いますが、貴重物資で、而も日本の農業の主力というものがやはり米にある、そこで農家を支えて行く商品の主力というものは米である、而もその米が生活上の貴重物資であるということから、そういう宿命的な米の事情からいたしますというと、米の値段というものは単なる物価論だけでなしに、相当高いところにあるのが私は本当じやないかというよう考えるわけでございまして、いずれの場合もそう端的には割出せないだろうと思いますが、方向としては、そういう方向で行くことが本当じやないだろうかというようにまあ私は考えております。今具体的な問題につきましては、先ほど申しました通り、慎重に検討して行きたいと思います。
  65. 河野謙三

    河野謙三君 大臣ちよつと、非常に御親切に御答弁頂いたのですが、米の問題に触れられましたが、大臣は米は高いところにあるべきだと、こうおつしやいましたが、これはこういう考え方に繋がつているんじやないですか。だんだん米の消費者価格を上げて行つて闇価格にさや寄せして行つて、そうして米は自由販売にすべきだ、まあそういうことでないかも知れないが、そこに私は繋がると思うのですが、大臣考え方は……。米は高いところにあるべきだという内容には、私はそういうことも一面加味して大臣のお考えを今御発表になつたんじやないかと思うのですが、そうじやありませんか。今の価格をだんだん闇価格にさや寄せして行つて、まあ簡単に一年や半年じや行かんでしようけれども、二年、三年の間にだんだん闇価格にさや寄せして行つて、そうして米は多少高くなつても自由販売にすべきである、こういうお考えも併せてお持ちになつておるんじやないかと私思うのですが、どうでしよう
  66. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私個人としましては、そこまで割切つた踏込んだ上で先ほどのことを申上げているわけじやございません。なかなかそれは言うべくして行えないんじやないか。自由販売ということは、私として、まだ個人としてはその点はそこまで持つて行くために、先ほどのようなことを言つたというようなことでは毛頭ないので、現状において考えまするにということを申上げたのであります。
  67. 河野謙三

    河野謙三君 くどいようですが、そうすると、結果においては米の高いことはこれは一応高かるべきだと、こういう御議論で、高いことを認めて行けば、これはいずれ大臣はそういうお考えでなくとも、結果的には闇価格と政府のきめる消費者価格とは一致するか、若しくは一致に近いことになる。そうすれば統制意味はなくなるわけですね。そうすればそこに自然自由販売ということに私はなると思うのですが、意図されている、されていないは別問題にしても、米の高いことの一応の前提に立つて食糧政策をお考えになる、米価政策をお考えになるという以上は、そういう結果も出ることも併せて是認しておられるんじやないでしようか。
  68. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 決してそういうところまで突き進んだ考えで申上げておるわけじやございませんので、そうかといつて何でございましようね、それじや仮にまあ自由販売にしたということで、成るほど高い高いといつても、それは限界があるかも知れません。併し相当その限界たるや高いところにあるということは、需給関係が極めてアンバランスである。自由販売にして需給関係のバランスが改善されて行くという見通しがあれば、これは別でございますけれども、その改善の見通しなしに行けば、自由販売となれば、その限界が一体どこに行くかということはちよつとむずかしいんじやないかと思います。そうでなしに、私の申上げますのは、農家経済を支える主力は米である、従つてこの米というものは日本の農家が全部これに支えられるわけでありますから、従つて農家経済を保つて行くための米の価格というものは相当高いものであるということは、これはどうも消費者においてもお考えを頂かなきやならん点じやないかということを考えておるわけでございます。
  69. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 私は折角大臣がおられますから、この際凍霜害で陳情が再再あつたわけでありますが、この間は北海道の被害に対して大臣の答弁を聞いておるわけでありますが、凍霜害については昨年も異常な凍霜害にかかり、全国的な災害でありましたが、幸いにしてこれが善処されて、おおむね農民も安堵したわけでありますが、今年は全国的に見てそれほどの災害ではありませんが、地域的に或いは個人的に見ると、やはり昨年と同じように、おれのところじや去年よりひどいというような人も多分にあるわけです。従つて農林委員会からも、凍霜害の地域に対して議員が実情調査のために派遣されることになるわけでありますが、折角議員が派遣されましても、昨年と同じような待遇を受けられるのかどうか、又どういうふうな凍霜害に対して農林省では対策を持つておるのかというようなことを、一応目度を持つて現地を見なければ、調査の価値が十分に上るというわけには行くまいと考えます。そういう意味におきまして、折角大臣がおられるのでありますから、この凍霜害について、昨年と同じような方式によつて対策をとるかというようなことにつきまして、率直に一つ御答弁願いたいと思います。
  70. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 当委員会からも現地の視察等も行われる由でありますから、その上で又御意見等も御発表になるのであろうと存じますが、只今まで集めておりまする資料によりますれば、本年の霜害は二十一日と二十八日の両日の被害によるようでありますが地域的にかなりひどいという所は長野県が一番じやないかというように上つております。次いで群馬県、南九州のラミーの被害も相当に及んでおるということでございますが、一番被害の大きいのはやはり桑でございまして、昨年は四月の十三に始まつて五月の三日に至る間数回、多きは十回以上に亙るというようなそれに比べますれば、只今統計調査部で収集しております中間報告によりますと、まあ大まかでならして昨年の三分の一程度の被害ではなかろうかと推察されるわけであります。来週早々までには農林省統計調査部及び県の報告を基にした最終的な被害集計をまとめ得ると考えておるわけであります。その上で講ずべき施策は講じなきやならんと存じますが、まあ一番手つとり早い、やれるものからとにかくやらなきやいかんということからいたしますれば、例えば共済の仮払等をできるだけ早く行う、或いは非常に被害の著しい所に対しては何か特別な手を打たなきやいかんというようなことから、よりより話合つておりますけれども、未だこうするということはきまつておりません。ただ昨年の凍霜害対策でかなり批判を受けておる面もある。正直に、ありていに申上げまして……。これは決してそれで怖じ気ずくわけじやございませんけれども相当対策を講じて参るのに努力を要するというふうに覚悟をしております。いずれにしましても、最終的な集計をまとめまして善処いたしたいと思つております。
  71. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 昨年の凍霜害対策において若干批判を受けるような点があつたことは私も十分承知はしておりますが、併し地域的に見まして、全国的から見れば昨年の三分の一だというふうなことにもなりましようが、地域的に考えるというと違つたところもかなりあり、且つ個人的に見ればおのおの違つた個人にもなるわけであります。昨年かような対策を講ぜられて、非常にまあ潤われたということを聞いておる農民たちが、本年は違つたやり方をされて、逆に今度は昨年行き過ぎだつたから、今度は締めてやれというようなことで行くというと、非常な相違がそこに、各個人にはしわ寄せが、いわゆる対策の上において差等が出て来るわけでありますから、さようなことのないよう一つ十分顧慮せられてやられるようにお願いをしておきます。私はあえて御答弁は求めませんが、よろしく一つ考えて頂たいと思います。
  72. 江田三郎

    ○江田三郎君 ちよつと大臣が帰られる前に一つだけ……。これは別な問題ですが、例の酪農振興法がまあ出ていますが、それについて、どうせまあ革の問題をいろいろやつて行かなければならないのですが、その際採草地等の原野ですね。原野の草の改良というものは、これは林野庁がやるのか、畜産局がやるのか、その点だけ御方針をおつしやつて下さい。
  73. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 採草地の原野はこれは畜産局でやるのであります。畜産局長がおりますから……。
  74. 江田三郎

    ○江田三郎君 いや、結局林野庁と畜産局とどつちがやるのかという問題になるのですが、それならいいです。それならあとで……。
  75. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 大臣は帰られるようですが、酪農振興法で私は一つ、二つだけ大臣意見を聞きたいから、ちよつとおつてもらわなければならん。
  76. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 衆議院の本会議が始まるそうですから、緊急質問が二つばかりあるから、農林大臣はそちらに行かなければならんので帰られるようですから……、それでは農林大臣に対する質問はこのくらいにいたします。   —————————————
  77. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 次に、酪農振興法案審議の議題といたしたいと思います。前回補足約説明を聞きまして若干質疑をいたしましたが、当日は畜産局長もおいでになりませんでしたが、本日は畜産局長と食糧庁業務第一部長も見えておりますから、御質疑を願います。
  78. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 酪農振興につきましては、今日では国民の誰もがこれを是認せん人はない状況だと思つておるのでありますが、ただこの法律を見て私が感じますことは、どうも政府はこの法律さえ作れば酪農は振興するがごとき考えが中に流れておるように思われるのであります。そこで私の考えるのは、むしろ酪農振興の大きな力は政府考え方である。こういうふうに考えておるのでありまして、実は農林大臣がおられたら農林大臣意見を聞きたいと思つたのであります。併し局長さんからお答えを願つてもいいと思いますが、この法律だけに頼つて酪農を若し振興しようと思つても、それは決してそういう大きな期待を持つべきじやないと思うのであります。政府が是非確固不動の酪農に対する確信がなければいかんと思うのでありますが、先ほども食糧問題について、大臣がここで御答弁になつように、農産物の国際価格は無視はできないようお話であつた。そういうことでありまして、実はこれは酪農振興上一番大きな不安だと思うのであります。そこで政府はそういう問題に対して、酪農振興に対して確固不動の精神があるのかどうか。それを一つこの際農民に知らすことが必要だ、こう思うのでありまして、政府の決心如何、この点を一つ聞きたいと思うのであります。
  79. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今御指摘のありました通り、私どもといたしましても、この法律だけで酪農振興ができるものとは考えていないのであります。併しながら、只今御意見のありました通り、畜産の振興、特に畜産の中でも酪農を中心として畜産の振興を図つて参りますことは、農家経済の安定という上から見ましても、或いは総合的な食生活の改善という点から見ましても極めて必要なことであるのでありまして、これは国としての方針として酪農振興を強力にやつて参るということにつきましては、これは私が申上げるまでもないことだと思うのであります。本法におきましては、その一部の事項を規定いたしているのでありまして、勿論そのほかに家畜衛生施設でありますとか、或いは各般の家畜取引その他各般の施設が伴うて初めて酪農振興の目的を達成し得ると思うのであります。なお海外の酪農振興との関係におきましても、これは我が国の酪農を衰微せしめないよう措置というものは、これは絶対に必要じやないかと、かよう考えるのでありまして、この法律と関連いたしまして、総合的な施策というものが調和的に行われて、初めて日本の酪農が振興できると、かよう考えているのであります。
  80. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 政府の方針が若しぐらぐらしては、これは普通の農業と違いまして、非常に日本の酪農業というものと外国の酪農業というものとには開きがある。そこでそれがぐらぐらするようなことでありますと、農家は折角牛を飼つても、とんでもない借金を残すということになりますから、その点は一つしつかり考えてもらいたい、こう思うのであります。酪農の振興は、私は第一は、ほかの人と考えが違うかも知れませんが、乳価が生産費と償うかどうか、ここにかかるのだと思うのであります。今日は過去の時代と違いまして非常に変つて来たのでありますが、自分のことを申上げては何ですが、私は実は酪農の一番適地と言われる北海道におりますが、そこで副業としての牛飼いに殆んど一生の大部分を費したのでありますが、私は自分だけの副業でなしに、農家全体に対してこの副業としての酪農の振興ということに、まあ非常な、微力でありますけれども北海道に対して努力をして来たのであります。それで私はそれがために自分の村内に一日百石以上の牛乳を処理する工場まで誘致して来ました。そうして盛んに、狂と言われるほど実は酪農振興に熱狂して来たのでありましたが、併し工場を呼んで来た暫らくの間、即ち乳価が高かつた間は成るほど牛も殖えましたけれども、一たび乳価が生産費を割るようになりますと農家は決して飼わない。これはもうサイロを建て、牛舎を建てた人たちもやめてしまつた、一たび今まで飼つた人が牛をやめたならば、これはもうどうしても、どんな方法を持つて来ても今度は飼わない、こういう時代のことを知つておるのであります。そこでどうしてもこれは乳価を生産費を割らない乳価にさせるということが、刻下の第一の方針でなければこの仕事を始めてはいかん、こうさえ思うのでありますが、そこで最近牛乳の需要が急に殖えましたために、各工場が非常に争奪戦をしていることは事実です。漸くにして生産費を償う乳価になつて来たのでありますが、併し会社側は競争意識に非常にとらわれてと言いますか、大分無理をして乳価を出しておるような事実があります。北海道の隅でももう八十円か、七十九円というような乳価を出しているというようなことを聞いておるのでありますが、これはやがてその会社は資本主義の法則に徹して、いずれ今出した赤字はこれは農家から取返すに違いない、こういう工合に思うのでありまして、余り有頂天になつてはおられんぞという感じがするのであります。加うるに最近MSAのバターが来るとか、或いはもう来つつあるとかいう、MSAの分じやないだろうが、外国輸入のいろいろのバターが来ておるというようなことも非常に心配されるのであります。そこで乳価維持に対して政府はどんな方針をとるか、こいつを一つしつかりきめてもらわんと酪農というものは振興せんのだ、何が第一といつても、これほど大きな問題はない、こう思うのでありますが、その方針を承わりたいと思います。
  81. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 酪農を振興せしめまする基礎的な要件といたしまして、勿論経営の指導でありますとか、或いは市場の問題でありますとか、或いは仔畜の価格の問題でありますとか、いろいろあると思いますが、その根本をなすものは、只今御指摘の通り乳価の問題だと思うのであります。これらにつきましては、国内の消費がどう伴つて来るかという問題もあるかと思うのでありまするが、我が国の外国との関係におきましては、全く外国産の乳製品の輸入をどういうようなやり方にするか、こういう問題にかかつて来るのではなかろうかと思うのであります。一方国といたしましては、食生活の改善という立場から酪農製品をできるだけ安価に、且つ豊富に輸入するという片方の要件は持つておりますけれども、その根本をなしますのは、我が国の酪農を振興するということが先決要件でありまするので、この輸入の問題につきましては、いやしくも我が国の酪農の振興を阻害するようなことは断じて行わないというふうにいたしたいと、かよう考えておるのであります。これは勿論MSAの問題につきましても、過剰農産物の問題につきましても、これは同じ理論を以て私どもといたしましては対処いたしたい、かように存じておるのであります。
  82. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 私は乳価が大事だと言いますが、乳価維持につきましては、農家としても実は乳価を下げるように合理化することが必要だと、これも私は痛感しております。併し土地が極めて狭小で、濃厚飼料に大部分を頼らなければならん日本のこの畜産の状況では、実は生産面には余り多くの合理化の余地はないのですな。むしろ私は製造販売等の流通の面に余地が多いのではなかろうか、こう考えます。殊に最近の牛乳の需要の急増したために市乳の面に最も私はそれが多い、こういう工合に思うのであります。それは会社の決算の考課表等を見ても、数億の利益を出している会社があるということでもはつきりするわけであります。そこで東京の市乳を制する者は日本の酪農を制するというような言葉さえあるそうでありまして、最近におきましては随分やかましい世間の議論に刺戟されてか、東京の乳価も幾らか下げたということも新聞で見たのでありますが、実はこれも本当の申訳的なしるしばかりでお茶を濁しておるというに過ぎないのであります。政府はこの市乳に対する流通面における暴利に対して、これを合理化させるためにどういうお考えを持つておりますか。もう自由主義の時代だからしようがない、とれるならとり放題でいいということは、今日食糧問題として行こうという場合においては、そういう工合に放任すべきでないと、こう思うのでありますが、これに対する政府のお考え一つお聞きしたい。
  83. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今御意見通り、農家における牛乳の価格につきましては、必ず再生産価格と申しまするか、乳牛を飼育いたしましたがために却つて経済的にマイナスになるということが絶対にないような価格を維持し、且つは又只今御意見通り、できるだけ豊富に而も安い価格で市民に供給するということが酪農振興の基本的な命題であると、かように御意見通り考えるのであります。いろいろと供給段階と申しまするか、製造段階と申しまするか、そういう工程の間に相当中間的な経費が多額にかかつておるということは御指摘の通りであろうと思うのであります。これにつきましては、先ず第一に、我が国の牛乳の生産量と消費量が極めて少い、従つて非常に広地域から少量ずつ集荷されて、而も配給の面におきましては、少量ずつ国民全般に配給されておる。従つて製造段階におきましても、配給段階におきましても、単位当りの経費が高きに付くというよう状態に相成つておるのでありまして、私どもといたしましては、できるだけ牛乳の生産を集中的と申しまするか、大量に生産いたしまして、且つ消費の面も豊富に消費してもらうと、かようなことによりまして、できるだけ単位当りの工費というものを下げて参りたい、かよう考えているのであります。
  84. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 市乳面において会社側が数億の利益を上げておるというようなことについては御承知だと思うのであります。これはこのままでいいのですか、この点についてお伺いしてみたいと思います。
  85. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 会社の経営の内容等につきましては、実は詳らかにいたしていないのでございまして、或いは只今の御意見通りかと思うのでありまするが、その経営の内容については実は現在のところ詳らかにいたしていないのであります。
  86. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 これは新聞にいつも決算報告が出ておるのでありまして、あの考課表を見れば、どこの会社が何ぼ儲けておるということがわかる、実際はあの通りかどうかわかりませんが、あれにはまだ隠れておるところがあるかも知れませんが、恐らくあれ以上のものがあるのであります。これを放任していいかどうか、食糧問題としてこんな重大なときに、私は牛飼いだから成るべく高くなつていい、そして生産の乳も高くなるほうがいいと思うが、これはそうもいかん。私は食糧問題としてどういう工合に考えるか、お伺いしたい。
  87. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今御意見通り、新聞等にはそういう数字が出ておるようでございますが、それが如何なる事由により、どういうふうによつて生れて来ておるか、或いは投下事業費と申しますか、それに対する収益の割合が如何なる状態になつているかという点につきましては、私どもといたしまして十分にその点を検討いたしておりませんことを御了承頂きたいと思います。
  88. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 それではしようがないのですが、次に製造乳のほうでありますが、これは外国のように製造が完全に機械化しておらないためにコストが引下げられないという面のあることも承知しておるのですが、今の日本の経済状態では急速に望もうとしてもできないと、こう思います。そこでせめて現在の工場に対して合理化によつてコストの引下げをやる、生産コストを引下げるということをやらなければなるまいと思うのでありますが、今度の酪農振興法に刺戟されてかどうか知りませんが、酪農振興法が出たら工場を建てることができなくなつて、許可を受けなければならないことになるためかと思うのでありますが、そこで業者が既設の他の会社の地盤に行きまして、そこに各所に割込んで工場を建てておる、猛烈な争奪戦を演じておることは先に申した通りであります。私ども生産者としては大変いいことでありますが、併し牛乳の少いところに両工場は成り立たない。そこで御承知のように牛と牛乳は俄かに殖えるものじやない。そこでいつまでも両工場は能力の半分、設備の半分の仕事さえできない、こういうことになつておるのでありまして、製造コストを非常に高めておると思うのであります。そこで現在の工場は大幅な工場設備になつておる、こういうことなんです。世を挙げて合理化によるコスト引下げの時代であるのに全くこれは逆行しておるのでありまして、農林省は一体何をしておるか、こう私は言いたいのであります。政府はこの問題に対してどういう工合になさるつもりであるか、私は一昨日北海道から信連の会長が来まして、そうしてその話によりますと、十勝、浦幌では、これは帯広工場のすぐ近くでありますが、そこに大きな工場を建てて、その工場は牛乳の七割を寄せております。一方の工場は全く仕事ができないというふうになつておる。又近くは北見工場のすぐ横にある或る会社が大きな工場を計画して建てようとしておる、そんな工合になつてはつまらんことで、コストを高めておるばかりじやないか、こういうことであります。早く酪農振興法を通してくれ、こう言つて来たのでありますが、こういう点に対して政府はどういう処置をとられるか、承わりたい。
  89. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 酪農を振興せしめますために、先ず農家が安心して牛乳を販売し得るような工場があるということを前提といたしますので、工場の設置そのものにつきましては、私どもといたしましては、できるだけ能率のよい工場を設置したい、かように存ずるのでありますが、只今御意見にありましたように、北海道等におきましては、現在のところすでにあるところの工場、而も相当酪農が振興されている、つまりそういうところに新たに現にあるところに工場を造つて、更にその上に造るというようないわゆる無駄な競争と言いますか、そういうような点が一、二見受けられるというお話を承わつておるのであります。その点も私どもは酪農を本当に振興いたしまして、且つそれが国民大衆のいわゆる豊富低廉な製品を供給するためにはできるだけ合理化はする。従つて一工場当りの生産数量というものもできるだけ理想的な数量に近い数量に持つて行きたい、かよう考えておりますので、実は本法を提案した理由一つはそこにあるのでありますから、それらの点につきましては、できるだけいろいろそれを調整すべく、現在の法律上の措置はありませんのですが、本法ができますれば、或る程度指定地域につきましてはそういうふうな措置もできるようになりますし、その他の以外の地域につきましても、行政的な指導によりまして、できるだけそういうことのないよう措置したい、かように存ずるのであります。
  90. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 すでに建つてしまつたものに対しては、これは今のお話通りどうしても手を付けることはできないと思いますが、そこで設備があつて乳牛が足りない所、ここに牛を充実させることが先決問題である、こう思うのでありますが、政府考え一つ承わりたい。
  91. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 工場の経営なり、或いは従つてそれの結果といたしましての牛乳並びに乳製品の価格の引下げという点につきましては、工場の設備に対し、或いは人員その他に見合うよう生産数量が是非必要かと思いますので、できるだけこういう地帯におきましては、乳牛の導入等の措置をとりまして合理的な経営が一貫してできるよう措置いたしたい、かように存ずるのであります。
  92. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 今度の集約酪農地帯の指定は果してこのような方針に合致しているのかどうか、これを聞きたい。
  93. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 現に私どものほうへ各地から集約酪農地域指定をしてもらいたいという申込と申しますか、申入がありますのは約百カ所を超えておるのであります。勿論この個々の地域につきまして、具体的にその地域が真に酪農地区として適格であるかどうかという点につきましては審査をいたしておるのでありますが、その中には場合によりましては工場の濫立と申しますか、すでに現在の能力以上の工場があるようなところまで見受けられるのであります。従つてそういう地域についての今後の問題でありますが、すでにありまする工場につきましては、それを直ちに廃止するとか、何とかという措置は、これはできないことと思うのでありますが、少くとも指定いたしました地域につきましては、当該地域の酪農生産者が、こぞつて酪農振興によつて当該地方の農業経営の安定と農民生活の向上を図つて行きたいという地帯でありまするので、これらの工場との結び付き方の点につきまして、いろいろ地方庁或いは関係者とも相談いたしまして、重複や過剰設備になるようなことのないような行政的の措置をできるだけとつて参りたい。併しながら、これはすでにあるものにつきまして強制的な措置をとるということはできないと思うのでありますが、そういうような精神を以て臨みたいと思つておるわけであります。
  94. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 今までの集約酪農地帯の指定は、必ずしもそういう方針と合致しておらんように思います。果して合致しておるのでありますか、詳しいことはわかりませんか。
  95. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今まで指定いたしました地域は、御承知の通りに岩手県の岩手山麓と、山梨県と長野県との間に亙ります八ケ岳山麓の二カ所であるのでありますが、岩手の関係におきましては、その地元に工場がありますので、別に新たに工場設置というような必要もありません。又すでにその間に重複した工場もなく一つの工場でありますので、これの行政的指導によりまして間に合い得ると考えております。八ケ岳のほうにおきましては、工場がなかつたので、これは地元酪農関係者の出資を得まして、新らしく農民資本九〇%以上を含めました会社経営で工場を設置するということにいたしたのであります。今回新らしく青森と北海道、静岡、岡山を指定いたしたのでありますが、北海道につきましては、いろいろ特殊事情がありますので、すべてこれは北海道庁に位置の選定をお任せいたしたのであります。その結果北海道は日高地区を指定したのであります。日高地区には数カ所の工場があるようでありまして、これの今後の牛乳の集荷という点をどういうふうにするかという点につきましては、よく道庁その他の関係者と協議をいたしまして誤まりなきを期したい、かよう考えておるわけであります。静岡並びに岡山につきましては、すでにその地方一円に対しまして酪農協同組合が存在いたしておるのであります。或いは今後どうなるかわかりませんが、恐らく地元の方面におきましても協同組合でありますので、これを中心として運営することに御異議はなかろうかと思うのであります。静岡県におきましても、すでにその地域に工場がありますので、地元といたしましても、この工場によつて運行して行くということに御異議はなかろうかと思うのであります。青森県につきましては協同組合系統の工場があるのでありまして、これを中心として動かして参りたい、かよう考えておるのでありまするが、機構の点につきましては、地元の側からいろいろと御意見があるようでありまして、この調整をどういうふうに図つて行こうかということを目下研究中であるのであります。
  96. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 新らしい地帯にジヤージーを入れて、一日の乳量が百五十石になるには順当に行つて何年くらいかかるのですか。実は自分の素人計算なんですが、極く順当に行きましても年に八分の一ずつしか殖えない、そうして生まれてから四年目でなければ乳牛にならない、こういう考えから行きまして、順当に行つて八分の一ずつしか殖えておらない。こういう計算によりますと、新らしい地帯には三十何年かかるはずでありますが、政府考えはどんな計算をしておるか、承わつておきたい。
  97. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) ジヤージー種で以てやります集約酪農地帯につきましては、初年度三百頭、来年度三百頭、合せまして六百頭を外国から輸入いたしまして、それを当該地区に導入いたすのでありまするが、その結果大体五カ年目の終りにおきましては五千頭近いものになり得るのじやないか、さように一応考えておるのであります。勿論その前提といたしましては、当該地方に輸入いたしましたジヤージーも、それから生まれました子供も当該地方から全然出さない、他の地域に売るということはないという前提の下に、そういうような一応家畜増加頭数の経緯から五千頭近いものになり得るのじやなかろうか、かよう考えておるわけであります。
  98. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 素人臭いお話を聞いて私はびつくりするのですが、そんな勘定が出ましようか、非常な間違いで、そんなことはない。牛は「ねずみ」みたいに殖えるかというと、そんな勘定じやこれは出ない。五千頭になるのは十年後になるとか、八年後になるとかいうお考えなんでしようか。
  99. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 二千頭であります。勿論その前提にはほかの地区には出さないという前提があります。
  100. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 そこで実は牛が殖えるというのは、先ほども申しましたように非常に遅いものなんです。外国から来た今度のジヤージーでもホルスタインでも入れて来れば、これは別ですけれども、そんな今言う一年に何千頭くらいの範囲であるならば、これは極めて少い。そこで何十年、十年、二十年の間は牛の殖える率が非常に遅い。従つて集乳費が相当高く付くはずなんです、その期間においては……。この期間が一番大事なんです。酪農を始めるのに一番資本の要る大事なときであります。その期間において政府は何か集乳費或いは製造工場等に対して、製造事業等に対して何か助成するところのことをやつて、そうして農家の生産費を償うようにさせるというようなお考えがあるのかどうか、それを伺つてみたい。
  101. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今御指摘の点は、私どもといたしましては、現実の問題にぶつかりまして相当苦心をいたしておる問題であるのであります。御承知のように、直ぐ明日から乳牛が殖えるわけじやないのでありまして、只今申上げましたように、二千頭になりますためには、全然当該地域から出さないにいたしましても五カ年間かかるという問題でありますので、その間当該工場の経営につきましてはどうするかという問題があろうと思うのであります。これらの点につきましては、実は全然乳牛のいない所に導入するというようなことじやなしに、或る程度は既存の乳牛もおるような地帯と組合わせる。同時に工場の設備等につきましては、そのテンポに合わせる。工場の規模は当初はできるだけ小規模にする。併しながら、将来の拡張計画を考えてやる、こういうようなことで措置をして参りたい、かよう考えておるのであります。もうすでにその問題につきましては、現実の問題としてぶつつかつておるというように了承願いたいと思うのであります。
  102. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 その牛は生れてすぐ乳が出るのじやない、四年目にならなければ出ない。五年目に……、今二カ年間に五百頭入つたとしても、五年目に二千頭になるはずがない、そこに大きな誤算があると思うのです。従つて農家は非常に迷惑する、従つてこの集乳費等に対する何か政府は助成を考えなければ、これは農家は大変迷惑する、こう思うのであります。
  103. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) すでに導入いたしましたジヤージーからも相当もう乳が出ておるのであります。これは孕んでおりまする乳牛を導入いたしましたのが総数の約半分でありますので、少量ではありまするがすでに出ている、こういうよう事情にあるのであります。従いまして、一応ジヤージーを導入いたしました地域につきましては、先ず当初からぶつかりまする問題は工場の問題であるのであります。勿論全部が全部出るわけじやありませんし、当初は非常に少数の頭数でありますが、一応乳が出まするので、その処理のことは真先きに考えておかなければならない、こういう意味で申上げたのであります。
  104. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 この間安く買われちや農家は大変だから……、とてもそろばんが合わん問題になるから、その点について伺つておる、その間どうするか。
  105. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) その点につきましては、例えば現実の問題といたしまして、岩手の酪農地区につきましては、導入いたしましたジヤージーによる生乳につきましては、脂肪分によりまして一方ホルスタインよりも或る程度高い価格で工場のほうに納入いたしておるのであります。八カ岳山麓のほうも大体同様の措置をとつておる、かように御了承願いたいと思います。
  106. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 私は実は自分の牛乳を北海道で雪印に出しておる、そんなふうな関係で雪印の会社の内容をよく知つておるのでありますが、これを御参考に申上げてみたいと思います。雪印は御承知のように全道に工場を持つておる、これはクローバー・バターと同じであります。そこでいつも生産者の集会でやかましい問題になるのは、あれは全道の酪農を或いはもつと範囲を広く、農業を合理化させるために是非一つ協同組合のような力で、協同組合式の会社だとか、その力で進めて行かなければならん。これがためにはこの集乳費は全部の農家のプール価格としておる。それは御承知かと思いますが、一升に九円かかつております。そこで工場に近い所の人たちは非常に不平を言うのですよ、そんなことをやられては大変だ、こういうのですけれども、とにかく協同組合式の行き方ですから、集まつて来る代表者はそのほうの乳の少いところ、一日一石とか、二石とかいう少いところの人が多いのです。従つていつもプールでなければ問題は通らない、こういう工合になつておるのでありますが、私のところは工場に近いところだけれども、我々の立場からいつて全道の酪農が振興するためにこれは止むを得ない、こういう工合に考えておるのでありますが、そこで一つ隻乳費のことが問題になるわけであります。どうしても一つ何とか方法を講じて、牛の密度の少いうちに集乳ができるようにさして、全道の或いは全国の酪農が盛んになるためには牛屋さんの迷惑でなしに、そうして政府等の助成等によつてそれはやるべきものじやないのか、こう思われるのでありまして、この点特に力をこめて私はお伺いするわけなんです。よく近頃工場がほかの工場のところへ割込んで来て、そうして高い値を払つて牛乳を集める、これは全道的の牛乳を集める、酪農を振興しようということは第二で、向うは牛乳のほうで儲ければいいのだから、そこで近いところ、便利なところだけ皆取つてしまうということになるのでありまして、これは何らかの策を用いなければ、私は大変なことだ、こう思つておるのであります。今後の集約酪農地帯においてもそういうことができると考えられるのであります。そういうような引合わない間の農家に対する農業の奨励上、どういう方法で酪農を奨励するのかという根本方策を立ててもらわなければいかん、こう思うのであります。
  107. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今御指摘の通り、日本の酪農の現状におきましては、集乳費が相当単位当り多額に付いておるのでありまして、この点が実質的には農家の負担というような恰好になつておる場合も多かろうと思うのであります。で、それを先ず経済的に少額にいたしますためには、できるだけ乳牛の飼養密度を高めるということに相成るのではないかと思うのでありまするが、予算的な措置といたしましても、私どもといたしましては、日本の酪農を振興させるためには、そういうことも必要かとは思うのでありまするが、やり方によりましては相当多額な経費を要するということに相成ると思うのでありまして、この点は十分に研究さして頂きたいと、かよう考えております。
  108. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 集約酪農地帯を今度設けられますが、これは種畜農業本位のつもりでおやりになるのでありますか、或いは日本全体の農業の合理化ということに力を入れておやりになるのか、この点を伺つてみたいのであります。集約酪農地帯は盛んになつたけれども一般の酪農地帯は逆にこれに押されて、そうして補助も割合に少い、それから牛の密度も足らん、いろいろなことで、このほうが却つて衰微を免れん、こうなつてはこれは農業の振興、農業の合理化という面から見ると非常に私は遺憾に思うのであります。いわゆる有畜農業奨励の分と、今度の集約酪農地帯指定の問題とにどんな奨励上の差異があり、そういう遅れたところに対しては、重荷のかかつて行くところに対しては、どういう工合にこれを救つて行くのか、全国的の酪農を盛んにしようというお考えなのか、その点を承わつておきたい。
  109. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 酪農の振興は日本農業の命題でありますので、私どもといたしましては全国的規模において推進をして参りたいという方針には全然変りないのであります。ただ余りにも日本の酪農は全般的に見まする場合に分散いたしておりまするので、日本の酪農を振興する段階といたしまして、酪農に最も適している地域を先ず指定いたしまして、そこからスタートを切つて参りたい、かよう考えているのであります。従つて現在の政府予算或いは各般のいろいろの資金等の点につきましては、これは緩急の程度というものが非常にむずかしいかと思うのでありまするが、少くとも全国的な基盤に立つて参りたい、こういう根本的な思想には変りないのでありまするから、それらの使い方等の点につきましても、その辺の按排というものを実情に即するようにやつて参りたい、かよう考えておるのであります。本年度の予算につきましては、すでに額が決定をいたしておりまするので、これを大幅に異動いたすということは、現在のところそれを強力にやるというふうに考えておりません。本年度からは集約酪農地域につきましては特別に予算を是非要求いたして、一般の地域における酪農の振興と当該地方における振興というものを区別して、別途に予算を要求いたして参りたい、かよう考えておるのであります。
  110. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 集約酪農地帯の決定に対する政府の御方針は、殆んど営利会社が乳を集める方針と何ら変りがないと思うのです。そこでそういうことでは日本の農業全体の合理化の上に大変都合が悪いのじやなかろうか。そこで集約酪農地帯以外といえども、やはり公平に酪農が進んで行くような方向に指導すべきである。むしろ集約酪農地帯になつたところに牛が充実した場合には、少くともその他の部分に対しては補助金を多くするよう政府の方針でなければいかんのじやないか。これは全体の農業を振興する上にそういうふうに思われるのであります。これに対する御方針は如何でありますか。
  111. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今の御意見につきましては、或いは方法論の違いかと思うのでありますが、牧野の改良にいたしましても、その他自給飼料の増産にいたしましても、そういう適地というものに集中的に施策をして参りませんと、散発的にやつて参りましたのでは、どうもそれらの施策が徹底をしない、又効果が薄いというような点も現在まであつたのであります。で、私どもといたしましては、牧野の改良にいたしましても、或いは裏作、間混作等の指導にいたしましても、徹底した指導を集中的に行いたい。それによつて農業と真に結び付いた酪農を振興して参りたい、かよう考えておるのであります。ただそれを全国的に一律にやつて参りまする場合には、どうもそこの焦点がぼけまして、どこに力が入つて来るかというような点が効果が余り期待し得ないのが従来の結果でありますので、私どもといたしましては、是非相当数の特別地域というものを設けまして、先ずそこを強力に酪農の振興をせしめまして、それを全国的に拡げて参りたい、かよう考えておるわけであります。
  112. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 もう一つお尋ねいたします。草地改良の問題に関連しまして、牧草の品種改良或いは品種の育成、こういうものに対しては米麦等と違つて非常に冷淡なように私は思う。各試験場等におきましても非常に冷淡だと思われるのでありますが、今後の酪農の振興のために、どうしても府県におきましては牧草の集約的栽培、これは牧草の非常にいいのは、幾ら肥料をやつてもやり過ぎがないのです。稲や麦だとやり過ぎがあつて倒したりなんかしますけれども、余つた肥料は全部そこへ持つて行つてもいいのでありまして、そのような行き方によりますと、現在の牧草の数倍に達する収量を上げることができる。これが日本の酪農を進める私は唯一の方法だと考えておるのでありますが、如何せんそういうその地方に適する牧草の選定或いは育種、改良等について力が入つておらんように思うのでありますが、今後政府はそういう面についてどうされるお考えか、これを承わつておきたい。
  113. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今御指摘の通り、牧草或いは自給飼料、これの増産は極めて重要な命題であるのであります。或いは本法の狙いもそこにあるのでありまして、酪農振興の基礎的な条件と見て差支えないと思うのでありまするが、これらの元をなします試験研究、こういう点につきましては、私どもは言い逃れをするわけではありませんが、一応改良局の所管ということに相成つておるのであります。これらの点につきまして、できるだけ内容を充実して頂くように改良局とも十分に連絡をとつてつたのでありますが、昨年より関東農事試験場等におきまして、牧草を主として取扱う試験場を作るということになりまして、これらの研究に大いに力を入れて参る、こういうことにいたしたのであります。なお、これは試験研究とは直接に繋がりはありませんけれども、私どもの牧場等におきましても、これらの地域栽培という点につきましては、できるだけそういうようなことを重点的に扱うように指導して参りたい、こういうふうに御了承を願いたいと思います。
  114. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 牧草の改良については承わつたのでありますが、これは牧草地が地域的に皆品種も違い、或いは扱う方法も変りまして、関東で一カ所やつたから、それでいいというようなものでは私はないと思う。そこで気候の違う地帯ごとにそういうよう調査研究をやらなければいかん。それからその牧草の取扱いに対する農家の指導と言いますか、こういう面については殆んど何らの施設も見るべきものがない。ところが牧草を刈取つて、或いは乾燥の仕方或いは堆肥の仕方等について、もつともつと指導を盛んにしなければ、酪農振興と同時にその面にうんと力を入れなければならん、こう思うのでありまして、こういう面についても十分の御尽力を願いたいと思います。続いて乳価委員会、牛乳取引の問題なのでありますが、これはどうしても春秋の二回は乳価というのはいつも変るのでありまして、その都度生産者と受入側との間には非常に問題が起るのでありますが、ところが国策として牛乳問題をお扱いになるという場合に、この両方の委員の費用は両方で持て、こういうことは、これは果して国策としてやるべきことであろうか、ほかのほうで皆そうしておるだろうか。例えば米を割当をするとか何とかという費用は、これは生産者に半分持たし、それから消費者に半分持たしておるだろうか、これは政府が皆持つているはずなんです。こういうものは政府が全部持つて奨励機関で特別やる必要がある、年々要る経常的費用ですからね。こういう点についてどうお考えであるか、これを承わつて私の質問をこれで終りたいと思います。
  115. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今御指摘の点は、乳価の紛争があつた場合におきまする斡旋の申入に対する斡旋手数料と、それから生産者或いは当事者代表の経費の負担の問題かと存ずるのでありますが、これにつきましては、まさに御指摘の通りと思うのでありまするが、一応理論的には斡旋による効果は両当事者が受ける、そういうために一応行政的な行為によりまして利益を受けるから、行政的な行為を受けた当事者がその経費を負担すべきであるという形式論と申しまするか、そういう理論的な理由によるのが一点であります。もう一点は、これは蛇足かと思うのでありまするが、手数料の経費もなしに、そういう制度が生れました場合には紛争或いはそれに基く斡旋というものが数多くむやみに出て来はしないか、これは勿論蛇足かも知れませんが、理由といたしましては、その二点が原因をなしておるわけでありますので、御了承願いたいと思います。
  116. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 どうもその辺に酪農奨励ということが、政府は何だか他人ごとみたいに考えておる。自分の食糧問題の解決、国民の食糧問題の解決のためにやるのに、あたかも生産者と需要者の間できめてしまえというよう考え方を持つておることは、もう酪農振興法ができたけれども、第一の出発点から、非常に主要食糧等に対比して軽く扱つておる。これは甚だ遺憾と思うのであります。このことだけ申上げて終ります。
  117. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 斡旋手数料或いは当事者の費用負担につきましては御指摘の通りだと思うのでありまするが、政府原案として提出いたしまする場合には、こういうふうな恰好にならざるを得ない、こういうふうに御了承を願いたいと思います。
  118. 河野謙三

    河野謙三君 酪農振興について、あなたが畜産局長として非常に大きな理想を持つておられることは当然であります。その理想の実現に向つてあなたが努力しておられるその一つがこれだと思う。ところが私はおよそ前進する場合には先ず足許を固めなければいかんと思う。これがなくして酪農振興ができないわけじやない。与えられたあなたの権限の範囲において酪農振興に役立つことはたくさんあるわけです。例えば私は具体的に申上げるのは餌の問題です。一体酪農振興、酪農振興といつて、さつき北さんもおつしやつたけれども、有畜農家が経済的に成立たなきや酪農振興になりません。戦争中なら死んでもいいから国策の線だから附いて来いと言えば言えることは言えます。附いて行かなきや縛られるから附いて来ます。併しこれからの振興というものは、すべて食糧増産というものは経済的の裏付を農家に与えて初めて振興というものは成立つのですよ。一体今の餌は何です。私はそこで先ず伺いたいのだが、あなたのお耳に入つておるかどうか、過日全国の養鶏組合の大会において、今の餌高ではとても養鶏が引合わんから、三割鶏を減らそうという決議をしたということを聞いておりますが、それは本当でございますか。
  119. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 全国養鶏大会におきまする決議でありまするが、三割淘汰をするという点につきましては、私その点は了承いたしません。ただ相当現在駄鶏が、産卵能力の悪い養鶏が行われておる場合が多いので、できるだけこの際は駄鶏の淘汰をやりたい、こういう決議をいたしたのは了承いたしておるのであります。
  120. 河野謙三

    河野謙三君 それは、駄鶏の淘汰なんというものは決議の申合せでなく、これは当然に新陳代謝で起ることなんで、あなたが畜産局長としてお聞きになつてなきや、これは非常にあなたが、私は怠慢とは言わんけれども、これは非常に注意が足らん。養鶏家はとにかくこのまま行つたならば引合わない。従つてここで鶏を三割程度減らさなきやならんということを確かに申合せをしておりますよ。一方においては、鶏は牛とは違いますけれども、酪農振興といつて、一方においては鶏は餌が高いから引合わないから首をひねるんだ、こういうことをやつてつて、それで一体どうでしよう。今は鶏でありますけれども、現在の餌の値段についての根本的対策が持たれない限りは、この次は豚であります、この次は牛であります。一方で振興をやつて、一方で引合わないから牛を殺すんだ、豚を殺すんだ、こういうことじやいけないじやありませんか。そこであなたの手許に、あなたの権限内においてやられるところの、多少不備ではありますけれども、飼料需給安定法という法律がある、その第七条に……、曽つて私は個人的にあなたに御注意申上げた、第七条に、必要と認める場合には政府が払下げた麦から発生するところの「ふすま」は政府管理することができるということがある。必要と認むる場合というのは、一体あなたの御見解はどういうことです。私は先ほどまで食糧庁にも聞きたいと思つて食糧庁にも待つていてもらつたんですが、大分時間が遅れましたから、食糧庁にも改めて聞きますけれども、食料庁は現在麦を払下げる場合に、その麦からできる「ふすま」というものは五百五十円の単価においてこれを農村においてこれを農村において販売しろ、こういう約束ができておる。その五百五十円の「ふすま」は、現在製粉工場が支持とか、何とか言つておりますけれども、実際に売つておる値段は七百五十円から七百八十円、農家の手許へ行つて八百三十円、八百五十円です。麦「ぬか」が僅か一俵で食糧庁の計算で三百何円のものが、現在では七百円じやないですか。先ほど農林大臣に我々麦の値段についてお聞きのときにも、あなたそばにおられましたが、本年の麦は少くとも前年度の麦の価格が維持できるかどうかというところに問題があるのです。そのくらい麦の価格については将来悲観的なんです。然るに、「ふすま」なり麦「ぬか」というものは、丸粒の麦にも匹敵するような価格を現在維持しておる。こういうことについて一体第七条の必要と認むる場合という御解釈を私は伺いたいと思う。
  121. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 飼料需給安定法の第七条の問題でありますが、これらの問題につきましては、勿論只今御意見がありました通り河野委員からも御注意を頂いておりますし、従つてどもとしましては、あの規定そのものは政府手持の食糧全体に及びますので、農林省全体の問題であるのであります。同時にあの条項を発動いたします場合に、飼料需給安定審議会の議決を経なくちやならないということになつておりますので、これらの点につきまして、どういうふうにやつて行こうか、或いはそれをやるかやらないかという点につきまして、やるといたしますれば、どういうような結果になるかという点につきまして、いろいろ検討しておるのであります。未だ結論は得ておりませんが、目下そのことを検討中であるのであります。
  122. 河野謙三

    河野謙三君 食糧庁の関係もあるし、大きくは農林大臣考え方もあるでしようが、直接の局としての畜産局長は第七条の解釈をどういうふうに解釈されるか。私は食糧庁とあなたのほうと意見の食違いのあることを知つております。食糧庁には食糧庁、農林大臣には農林大臣に改めて聞きますけれども、あなたは現在のような農家が「ふすま」を八百三十円、五十円で買つてつても、それでもなお且つ第七条の必要と認むる場合だという、これに該当しないという御解釈であるかどうか、それを私はあなたのお考えを伺つておきたい。
  123. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 現在飼料のうちで特にその代表であります「ふすま」につきましては、只今御指摘の通り相当値上りをいたしておるのであります。これは養鶏農家或いは酪農農家に非常な御迷惑をかけておるという点につきましては重々了承いたしておるつもりであるのでありまするが、併しながら、只今あの法の解釈といたしまして、審議会を招集いたしまして価格なり条件というものをやるべきときであるかどうかという点につきましては目下検討をいたしておる、かように御了承願いたいと思うのであります。
  124. 河野謙三

    河野謙三君 目下検討はいけませんよ。今現に鶏をひねつているんだから、さつき言つたように……。この次は牛を減らすんだ、豚を減らすんだ。今現在の問題なんだ。先の問題もいいけれども、足許の問題、目先の問題を片付けなきやいけませんよ。鶏を今ひねつているんですよ。一方で農林省は畜産の十カ年計画だ、五カ年計画だとか言つておる。遠くのことも結構ですよ。私の田舎に行くと今に今にといつて死んじやつた人があると、こう言う。(笑声)死なないうちにやらなければ駄目なんです。それについてあなたの判断に余るならば審議会をなぜ招集しないんです。天下のお歴々が審議会の中に網羅されておるじやないですか。飼の権威者、畜産の権威者、家畜衛生の権威者、これらの人を網羅して、それがために審議会ができているんじやないか。農林大臣なり、あなたが勘弁に余つたときは招集をしてこれらの意見を聞いたらいいじやないか。なぜ開かないのです。なぜ開かせないのです。私はこれを伺いたい。私はそんな今日思い付いて今聞くというのじやない。「ふすま」の値段が農家手渡しの八百幾らになつてから何カ月たちます。農家は小麦を売るときは二千円で売つて、僅か三十キロの「ふすま」を買うときは八百三十円で買うんだ。六十キロにすりや実に千六百六十円でしよう。丸粒の二千円で農家は売つて、「ふすま」を六十キロ今度買う場合には千六百六十円で買うんですよ。そういうあなた農家の気持にもなつてみて下さい。それはあなたここで考えておりますなんて、限度がありますよ。私はどうしてもこの際あなたの第七条に対するあなた個人の見解でいいから伺いたい。同時に審議会を開くか開かないか、私はきめてもらいたい。私はここでそんなに性急に言うつもりはなかつた。一カ月前から私はこれについてあなたに申しておつたはずだ。何であなた製粉会社に遠慮する必要があるか。あなたたち行政をやる人も我我政治をやる人もいろいろな人と附き合いはありますよ。附き合いと行政、附き合いと政治は別です。懇意と政治を一緒にしたら我々政治できません。懇意と行政を一緒にしたら行政できませんよ。あなたの御懇意のかたで製粉会社の社長もいるでしよう。そんなことは私は知つてる。それとこれは別ですよ。なぜそれをやならい。それを教えて下さい。
  125. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 製粉会社の関係によつて審議会を開かないとか、開くという問題では絶対にありませんから、その点は御了承を願いたいと思うのであります。私どもといたしましては、すでに夏草の時期でありまするし、一応相場は落付くものと大体考えておつたのでありまするが、それが依然として相場が強いのであります。従つてこのために先ず第一点といたしましては、何といたしましても「ふすま」の数量を増加する、こういう意味合におきまして外国との取引を締結するように努力をいたしておるのであります。その結果或いはまとまつた数量のものを近日中にまとめ得るのじやないかと思うのでありまするが、先ず第一点といたしましては、何といたしましても内地における「ふすま」の数量そのものを増加する、こういう努力をいたしておるのであります。第二点といたしましては、「ふすま」に代るべき大麦その他の手持食糧を畜産関係に流して参りたい、かようにいたしておるのであります。第三点といたしましては、マニトバ五号を「ふすま」としてじやなしに、代替的に粒餌として供給し得る数量のものを増加して参りたい、かよう考えまして、各般のそういうような外国からの飼料或いは内地におきまする大麦その他の代替飼料、こういうものをできるだけ放出いたしまして、それによつて価格の緩和を図つて参りたい、かよう考えておるのでありまして、それらの措置をとつた上でなお「ふすま」が高い価格にありまする場合に、只今の御意見ような点も考えなくちやならないのじやないか、かよう考えておるのであります。
  126. 河野謙三

    河野謙三君 私が言つておることとあなたの答えと違つておる。私は今日のことを話しておる。あなたは三月、四月先のことを話しておる。外国の「ふすま」をこれから入れようと思うとか、何を考えておるとか、外国の「ふすま」なんてものは隣りの饅頭を買つて来るのと違う。(笑声)あした来ない。三月、四月先です。あなたは三月四月先のこと。それは三月、四月先の話は先の話でいたしましよう。あなたの考え方一々同感です。そういうことに考慮を払つておられることについては私は敬意を表します。併しながら、私は今只今のことを言つておる。只今のことを……。只今のこの問題をどうする、あしたの問題をどうする、あさつての問題をどうするということを……。これをやるにはどうしても一遍に供給量を殖やすわけに行かない。法的措置によつて安定法の第七条の運用以外にないじやないですか、ありますか、あれば私はいい。今日あしたの問題についてどういうお考えだか教えてもらいたい。今あなたのお考えは来月、さらい月乃至五月、六月先のことなんです。今日あしたのことを言つておるのだから、今日帰つてどうする、あしたどうする、あさつてどうする、これを一つ御答弁願いたい。
  127. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 「ふすま」の問題につきましては、これは内部の問題でありまするが、食糧庁と共同いたしまして、できるだけ大製粉業者には自粛した価格で放出してもらうようにすでに話をしておるのであります。勿論これは法的措置に基くやり方でないのでございまして、完全に実行されておるという保証は申上げかねるのでございますが、そういうふうな措置をとりまして、できるだけ自粛的に放出してもらうというふうにいたしておるのであります。
  128. 河野謙三

    河野謙三君 これはそれじやこうしましよう。この次、明日か、明後日委員会をやるでしようから、その委員会までよく食糧庁とも相談して、具体的に明日、明後日の問題について御回答を頂くことにお願いいたしたいと思います。若しその間において食糧庁と意見の食違いがあつてまとまらなければ、まとまらないままで報告して下さい。我々はあなたの御報告によつて食糧庁とも談判いたします。農林大臣とも談判いたします。私はそういうふうにして頂きたいと、かように思います。それからもう一点だけ伺いますが、さつき北先生から、森永や明治なんかのいろいろな話が……そうとは言われませんでしたが、私はこういう人間ですからはつきり名前を言いますが、森永、明治の話だと思う。こういう大資本が農民を搾取の対象にしておいて酪農振興法なんか出しても駄目じやないかと思います。早い話が数寄屋橋へ行つて御覧なさい。あそこにぐるぐる廻つている東洋一の広告があるでしよう。あれはどこの広告ですか。今から五十年たつと、農村の子供が五十年先に大きくなつて、おれたちのじいさん、ばあさんはばかつたという天然記念物になると思います。(笑声)あの姿ですよ。如何に資本主義機構の下におきましても、これを何とかしなければ酪農振興になりませんよ。これに対してどういうお考えを持つておりますか。今の与えられたあなたの権限の範囲内において、吉田内閣の資本主義を前提とした機構の中において、一体今後どうするかということを先ず私は伺いたいのであります。取引機構をどうします、検査をどうします、森永や明治が勝手に会計検査で検査をしておつて、そして一体酪農振興になりますか。農家はまるで袋の中に入れられたようなものですよ。手も足も出ません。牛を買うにも政府のほうからなかなか金が出ない。中金からも出ない。それじやどうするか、森永や明治から牛を買う金を貸してもらう。搾つた牛乳は向うへ持つて行かなければなりません。その条件は向うが付けますよ。協同組合を作る、誰が作る、森永が作る、名前は森永協同組合とは言わない、何とか協同組合と言う。中央には全酪連というものがある。名前は立派だけれども、あの背景は何ですか、よくあなたは知つておると思う。そういう問題が片付かなければこの問題に入れませんよ。これについて北さんの御質問と重複しますけれども、私は少し露骨だから、あなたも露骨に答弁して下さい。
  129. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 牛乳の価格の問題と思うのでありまするが、これにつきましては、できるだけ農家の地位を擁護するという意味合から、牛乳の取引に対しましては本法で勿論十分とは申し得ませんが、文書契約等を協同組合中心に締結させまして、そしてその契約内容を明らかにしますと同時に、紛争等のありました場合には、斡旋制度をとりまして、できるだけ不当に農民に価格のしわ寄せが来ないよう措置をして参りたいと、かよう考えております。
  130. 河野謙三

    河野謙三君 私はこれで終りますけれども、まあいろいろ考え方はいいのでありますけれども、およそこんなものは何と言いますか、ぼやけていて、品川の御台場から横浜の火事を見ておるという話があるけれども、およそこんなものはピンぼけしておりますよ。こんなものは協同組合でやると言うけれども、一体協同組合とは何ですかと私は言つておるのです。大資本の作つた協同組合ですよ。あすこから金を借りて、牛を買つて、大資本がその組合を通して斡旋して、作つた牛乳はその会社へ納める、こういう協同組合は協同組合とは言えない。私はこの前この酪農振興法の審議に当つて、協同組合関係につきまして経済局長の御出席を求めておつたのだが、専門員室のかたが忘れておつたと思うのだが、私はこの審議に当つて協同組合の基本的な考え方について経済局長に伺いたい。畜産局長、あなたは協同組合のほうの所管じやないけれども、協同組合、協同組合といつても協同組合にはピンからきりまであるのです。そんな農民の意思が反映しておるような協同組合というのはむしろ数が少い。特に畜産関係の協同組合というのは牛の数とボスの数と同じだというように、畜産組合には必ずボスが付いておる、そういうふうな協同組合は、名前は協同組合であつてもボス組合である、そういうものであつて、ただ畜産組合だからいい、協同組合だからいいというようなことを言つて、頼むべからざるものを頼んでやられても、そんなものはおよそ期待外れになる、私はそういうふうないろいろな基本的な考え方からこの法案の審議に入りたくない、この間あなたはお見えにならなかつたが、課長さんが見えて、甚だ失礼だけれども、もう一遍おつけで顔を洗つて出直して来いということを言つた。そういう基本的なものを片付けなければ、遺憾ながらこの土俵の中に飛び込みたくないということを申上げて、私は只今申上げました数々の私の質問につきまして、次回に一つ御答弁頂きたいと、こう思います。而も具体的な御答弁を頂きたい。
  131. 川口爲之助

    川口爲之助君 大体今までの質問でわかつたのでありますが、酪農振興の基盤が飼料の面、それからして、有畜農業、それから肥料加工の合理化、これにあるように思うのであります。なかんずく重要な問題はやはり飼料の問題ではないかと思います。我が国のいわゆる畜産が濃厚飼料に依存し過ぎる。依存度が高い。何か雑誌などで見ますると、大体五〇%からして六〇%濃厚飼料に依存しておる。これでは安い牛乳はできない。乳価を維持することは必要でありますけれども、安い牛乳を作るということが前提ではなかろうかと思う。それについては飼料を先ず安くすることであろうと思います。そこで外国の例を見ると、スイスにしても山岳酪農、又ブラジルにしても特殊な牧草によつて殆んど濃厚飼料というものは与えていない。それにもかかわらず立派な酪農国として発達いたしておる。だから我が国においてもそういう方針において指導して行つてもらわなければならない。今房州の嶺岡牧場では例のラデノー・クローバー乃至はアルフアーというような牧草を入れまして、それを大町歩に亙つて試作をしております。そうして酪農家にこれを分配しておるということであります。果してそういうもので内地の酪農飼料に適合し得るかどうかわかりませんけれども、先ず飼料を牧草によつて成るべく賄おうという方針に指導して参らなければ酪農の振興はなし得ないと思う。すでに本振興法案の実施に先立ちまして乳価は下りつつあります。酪農の危機はもうすでに来ていると私は信じております。これを救うためには一面において飼料を安くする、それからしてこれを農業経営の要素のうちに酪農というものを溶け込ませる、そうしていわゆる乳価を安くするということによつて、双方農家経済を補つて行く、こういうことでなければ酪農振興はできないと思います。この点について、先ず牧草の研究ということが最も重要なことではないかと思います。それらの点につきまして何か具体的なお考えがありますれば承わりたいと思います。
  132. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今自給飼料の、特に草資源の増産につきまして御意見があつたのでありますが、私どものほうといたしましても、御承知のように我が国の飼料資源は極めて貧弱であるのであります。その基盤の上に立つておりまする酪農につきまして、今後是非ともやつて参らなくちやならない問題がその草資源の開発、自給飼料の問題ではないかと思うのであります。酪農が盛んになればなるほど、而もその飼料の依存度合が濃厚飼料と申しまするか、購入の飼料に依存しますればしますほど、その資源が極めて貧弱なる我が国の酪農にとりまして非常に破局的な事態を招来するということは、これはもう目に見えた問題であるのであります。この問題に対処いたしまするために、私どものほうといたしましては特に自給飼料、そのうちの草資源の開発ということに全力を挙げたいと思うのであります。今回提出いたしました酪農振興法によりまする集約酪農地域の最大の狙いは、実は農業、特に自給飼料と密接に結び付きました酪農を振興する。購入飼料、特に外国から輸入いたしました飼料を六〇%も、或いは場合によつては九〇%も消費するような酪農というものは、これは我が国の現状からいたしまして、又将来から考えましてとるべき措置ではないのじやないか。かよう考えまして、今回酪農振興法、これに基きまして集約酪農地域の制度を設けておる次第であります。なお補助金その他の施設につきましても、重点的に牧野その他の草資源の開発或いは自給飼料の点につきましては相当力を入れて行くつもりであります。
  133. 江田三郎

    ○江田三郎君 先に資料要求をしておきます。牧野の所有関係を、これを府県別及び所有者別、それからもう一つは、現在政府が奨励しておる牧草の地域及び土質によつて違いますが、そういうものの一覧、それから政府のほうで持つておられる牧草の研究機関の所在地と予算、これを資料としてお願いします。それからいろいろ質問がありますが、一つだけ聞いておきますが、草地の改良計画を立てた場合に土地所有者から異議の申立が出る。その際異議の申立を引つ込めない場合に、重大な支障がなければそのまま遂行するということになつておるが、重大な支障がある場合には、その際にはどうするのか、これだけちよつとお聞きしたい。
  134. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 只今の問題は、重大な支障がありまする場合には、結局におきましては計画変更する以外にないのであります。それを強行するというわけには参らないと、かよう考えております。
  135. 江田三郎

    ○江田三郎君 その問題についてこの次の委員会に農地局長を呼んで頂きたいと思います。
  136. 片柳眞吉

    委員長片柳眞吉君) 承知いたしました。  なお御質疑があろうと思いますが、次回以降に譲りまして、本日はこれで散会いたします。    午後五時六分散会