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1954-09-22 第19回国会 参議院 農林委員会 閉会後第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月二十二日(水曜日)    午前十一時二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     森 八三一君    理事            重政 庸徳君            宮本 邦彦君            江田 三郎君    委員            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            関根 久藏君            横川 信夫君            岸  良一君            溝口 三郎君            河合 義一君            松浦 定義君            鈴木 強平君   国務大臣    農 林 大 臣 保利  茂君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君   説明員    厚 生 技 官    (公衆衛生局環    境衛生部乳肉衛    生課勤務)   恩田  博君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    農林大臣官房総    合開発課長   庵原 文二君    農林省農林経済   局統計調査部長  野田哲五郎君    農林省農地局建    設部長     桜井 志郎君    農林省畜産局経    済課長     昌谷  孝君    通商産業省公益    事業局業務課長 生駒  勇君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○農林政策に関する調査の件  (米穀自給増強の件)  (昭和二十八年産米追加払いの件)  (昭和二十九年産米価の件)  (米穀の検査の件)  (植物病虫害防除の作)  (肥料価格の件)  (農林関係台風被害状況及びその対  策の件)  (開発工事促進臨時措置に関する  件)  (飲用乳処理基準改訂の件)  (農業用電力料金の件) ○本委員会の運営に関する件 ○議員派遣要求の件   —————————————
  2. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今から委員会を開きます。  最初に米穀自給増強の件を議題にいたします。この件につきましては、前回の委員会におきまして、最近問題となつております黄変米問題に関連して事態を憂慮し、米穀自給確立に関する基本的対策につき政府の善処を促すため、政府に対しまして申入が行われ、右申入に対する政府方針及び措置を今回の委員会報告するよう求められておつたものであります。即ち、米穀国内自給増強に関する申入近時輿論を沸騰させている黄変米の問題はわが国及びわが国民の悲惨な不幸である。   そもそも、かかる不幸は国民が需要する米穀国内生産を以て賄うことができないため歳々巨額外米輸入しなければならないところに由来するのであつて黄変米の不幸を脱却するための抜本的打置米穀田内自給増強によらなければならない。   よろしく政府は、今回の黄変米問題を契機として心構えを新たにし、断固たる決意を以て米穀国内自給増強施策を確立し、これを強力且つ計画(継続)的に敢行し、食生活改善普及と相待つて外米輸入防かつに努め、以つて禍を転じて福とせられたい。   右に対する政府方針及び措置を次回の当委員会報告せられたい。   右当委員会の総意を以て中入れする。    昭和二十九年八月二十一日         参議院農林委員会   内閣総理大臣吉田茂殿     農林大臣保利茂殿  というのであります。右の中入に対しまして、農林大臣から先般お配りいたしましたように、政府方針及び措置について回答がありましたが、本日はこの回答について説明を求め、続いて本件の取扱いについて御協議を願いたいと存じます。つきましては、農林大臣から御説明を願うことにいたします。
  3. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 只今議題の件につきましては、先日文書を以て私ども考え方を申上げておりますが、人口米穀食糧生産のアンバランスから食糧輸入は必然的に累増して参りました。その中に近時世上を騒がしております病変米等輸入される傾向に鑑みまして、外米買付けにつきましては、全部これをなくするということは実際問題として不可能かと存じますので、かような国民の不安を来たさないように品質上できるだけ注意を払いまして、買付時期或いはその他の買付方法につきましても更に十分の注意をいたしまして、不良品の輸入を防止したいと、只今折角内部でその措置努力上いたしているところてございます。併しながら、何を申しましても、この大人口を擁しまして、この狭隘なる国土におきまして、而も食糧自給度を向上して行かなければならんということは、国家存立の上からいたしましても極めて緊切でございますので、政府といたしましては、もとより財政上の非常な制約を受けることも止むを得ないことでございますけれども、とにかく増産に更に力を入れて参るように努力をいたしたい。この点は当委員会の御意見と私どもは何ら変るところがないわけでございます。併しながら、米穀、米によつて食糧全体の自給を図つて参るということは不可能ではないかも知れませんけれども、言うべくしてなかなか実現し能わざるところであることは、これはもう何人も否定できないところであろうと思います。近時各方面の御意見或いは特に国会の御意見等によりまして、いわゆる麦製品と申しますか、麦及び粉食の食生活相当程度に普及して参つておりまして、更にこの傾向を推進いたしまして、一面食生活改善を更に強化して参るということで以て、両々相応じて食糧自給度を向上して参るという基本的な考え方に立つて施策を進めたいと考えておるのでございます。農地食糧増産上の問題といたしましては、何といつてもこの農地生産条件改良整備をして参る。その余地がまだ極めて多く残されておるという現状に鑑みまして、農林省計画いたしておりますることが百から百、一から十までなかなか実現いたしまするためには相当財政負担を伴いますので、十分行つておりませんけれども、とにかくこの国家存立にかかる基本的な問題でございますから、私どもといたしましては、この食糧増産のための灌漑排水でありますとか、或いは干拓でありますとか、開墾でありますとか、一連土地改良開墾のためには国費を惜しむべき筋合のものではない、かように考えておるわけでございますけれども、併しながら、何を申しましても、今日手を付けておりますだけでも、これを極めて短い間に完成して増産効果を上げますということは非常に困難な状態にあり、而もまだまだ相当の重要な地点において、これらの施策を講じなければならんということが目の前にまあいつぱい展開をしておる。今後の運び方にもよると存じますけれども、私どもといたしましては、今日手を付けておりますところは、もとよりこれは手を抜くべきものでなく、又全国各地改良の手を付けることを待つているところの地点に逐次手を拡げて行かなければならないことは申すまでもございませんけれども財政力を無視しての計画というものが相立つわけはございません。そこでこれはこの年度予算編成の当初から政府方針としては一貫をして来た考えでございますが、相当巨額を要する地点開発改良に対しては、外資等によつて或る程度促進を図る方途を見出したいということが一貫をして努力をして参つておるところであります。例えば愛知用水でありますとか、八郎潟干拓でありますとか、その他たくさん日本の現在の財政状態を以てしては手を付けられん。それを国民の直接負担をかけないで進める方途があれば、ここに一つ途を開きたいということで今日まで努力をいたして来ておるわけでございます。まだこのことにつきましても明確な御報告をなし得る段階にはございませんし、同時に外資導入と申しましても、それだけで或る井業が完成するというような外資というものは、まあ事実入り得ない。要するに或る事業の基本的な点について外資の援助を仰ぐというようなことによつて、まあ増産事業促進して参るというようなことが現実としてはとられなければならない措置であろうというふうに考えておるわけであります。如何に土地条件を整備いたしましても、又この上に加わる農民の力が効率的に発揮せられ、そうして生産効果的にもたらすという経営と申しますか、方策と申しますか、このことが普及しなければ、或る批評を暴けましたように、却つて土地改良をやつたために減産を未だしたというような、仮に皮肉な例外的なことでございましても、かような結果が来るというようなことは、これは私ども農林省として誠に大きな責任だと考えるわけでございまして、従つて無論まあ従来の長い間の湿田地帯が乾田化され、湿田地帯耕作も、乾田改良された耕作技術と同じことをやられたんじや、それは折角のものが宝の持ち腐れというような結果になる場合がなきにしもあらずと存ずるわけでございます。そういう点につきましては、私どもとしては責任を持つて十分この改良せられた農地生産力を十二分に発揮できるような耕作技術の指導ということが……、尤もこれは予算でどうというような問題でなしに、実際問題としては最も効果の見逃しがたいところであろうと、私はまあそういうふうに考えておるわけでございます。そういう一連耕種改善事業というものに対しましては、今後私は主力をむしろ注いで行くべきところじやないかと考えております。全体といたしましての総合食糧自給度を向上して参りまする上に、畜産の増殖或いは水産物の増産につきまして、これは甚だどうもきまり文句みたいなことにとられやすいわけでございますが、これがきまり文句で終ることのないように努力をいたしたい。そうして大体申入の御趣意にも副うて努力を払つて行きたい。かように考えておるわけでございます。
  4. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今大臣説明に対しまして御質疑がありますれば御発言を頂きます。
  5. 溝口三郎

    溝口三郎君 米穀国内自給増強に関する当委員会申入に対して、只今農林大臣から御説明を承わりました。御回答の趣旨は事実御尤もでございまして、政府方針として外米輸入は将来輸入を節減して行く、国内食糧増産は積極的に進めて行く、それと併せて食生活改善行つて行くと、この三つの方針に基いてやつて行かれることについては全く私ども同感でございます。その具体的の措置をどうするかということについて、この前に政府報告せられたいという申入をしていたんでございますが、具体的の措置についてはまだ御報告がありませんが、昨日三十年度予算要求概要説明を承わつたのでございます。食糧増産につきまして、耕地拡張改良等についても二十九年度予算が二百五十億、三十年度には六百六十伝の要求をしている、これは食糧増産の五カ年計画目標に基いて年度割計画要求をしておるという説明もあつたのでございますが、従来食糧増産計画はすでに二十八年度から行なつておりますが、当初の五カ年間で千五百万石の増産をする、予定の一年に三百三十万石程度増産目標を立てておつたのでありますが、今まではこの三分の一程度であつたのであります。而も又三十年度予算についても、従来立てた目標の一年分を要求をしているというふうに過ぎない。具体的の措置をどうしてやつて行くかということをこの前に私はお伺いしたのでございます。予算要求をなさつたのですから、三十年度予算についてはこれは要求通り確保のできるように格段の御努力をお願いしたいのでござい事が、なかなか予算については要求迫り行くかどうか、私どもは非常に疑問に思つておるのでございます。先ほど御説明の中に、具体的措置として一つ挙げられていたのは、外資導入によつて食糧増産計画編成林の方円に向つて行くような御説明があつたのでございます。今朝ほどの各新聞の報道等によりましても、世界銀行農業調査が二カ月に亘る調査を終えて昨日帰国する際に声明を発しているようでございますが、日本政府借款申入をした愛知用水北海道石狩地域開発、その他八郎潟上北半島等開発地区はいずれも有効な地区であつて、それに対して世界銀行は二千万ドル程度借款に応じてもいいような口吻を発表したのでございます。ただそれの一つの唯一の条件として、二千万ドルのほかにそれを五カ年閲で工肝をやるのならば、国内資金は五百億を要するのだが、その国内資金はこれは日本政府で調達ができることが融資の条件だというようになつたのでございますが、二千万ドル借款した場合に、五百億の国内資金を調達できる可能性があるのかどうなのか、そしてそれは先ほど申しましたような、三十年度耕地拡張改良要求の六百六十億の中にも、その辺が予定して含まれているのかどうか、この点も具体的な措置としてお伺いしておきたいのでございます。折角外資導入食糧増産を積極的にやつて行こうという場合に、二千万ドル程度外資導入ができるか、あと五百億の枠は一般の食糧増産予算の中へ食い込んで行くというようなことになれば、これは非常に重大な問題になつて来ると考えるのでございます。その点について政府のお考えをこの際はつきりつておきたいと思います。外米輸入をできるだけ節減して行きたいというのが、先ず申入の根本問題になつておるのでございますが、外米輸入をできるだけ節減する、具体的に年度計画を立てて、そして徐々に外米を絶対に輸入をしないようにするのだというような、具体的の措置も立てて頂きたいというように考えていたのでございますが、まだそこまでは行つてないと思うのでございます。差当り明年度においてはどういうふうになるのか、その点をお伺いいたしたい。先ず二十九年度産米の集荷については、二千六百万石の目標を立てられたようでございますが、それは消費県において来年度内地米を十日間配給する予定のようでございますが、今年度は七日から八日くらい、今度は少し作柄がいいから、できるだけの集荷をして、内地米は十日配給したい、今までの例から言うと、十五日間のうち五日分くらいは外米輸入することになつてつたのでありますが、できるだけ多く集荷して、集荷したものは皆食べてしまう、そうして備蓄のほうへ一つも残らない、十五日を目標にして、足りない分は外米輸入するのだというような従来のやり方で行くならば、いつまで経つて外米輸入を号令に脱却できるということは不可能であると考えております。私は今年若し仮に二千六百万石の集荷ができた場合でも、政府は今から十日間完全に配給をするのだというようなことになつて、そのうちの一日分でも二日分でも差当り備蓄のほうに廻して徐々に食生活と関連して外米を減らして行くようなことを考えられる必要があるのではないかと考えるのでございます。外米輸入の点を差当りどうなさるかということを一応承わつておきたいと思います。  もう一つお伺いしたいのは、私今まで考えておりましたのは、先はど御説明のありましたように、国内食糧増産をできるだけ、やつて行くのだということについては異論がないのですが、やつた結果、その増産なつたものを確実に需給ベースに計上して行くにはどうすればよいのか、土地改良開墾をやつて折角増産をやつたけれども需給ベースには直接関連がないというのが現在までの実情であつたのでございますが、私は食糧をどうやつたならば計画的に需給ベースに乗つて行くか、そういう方法を長い間今まで研究をしたけれども結論が出ていないのだ、これは農林省食糧庁、農地局等と一緒になつて今度新らしい制度でそういう措置考えてもらいたいということの極官から、こういう申入が出たのであります。そういう措置については何らか御協議があつたのかどうか、やはり今まで通り食糧増産をやつて行くのだ、集荷はその年の作柄によつて米価を決めて農民から出してもらうのだというようなやり方で行くのか、何か今までの補助金のような制度のほかにも食管会計のほうから奨励金でも出して、そうして開墾等によつて陸稲がとれるならば、その増産のうちの何%かは確実に供出のほうに廻してもらいたいのだというような新らしい制度を入れるかどうかということを是非考えて頂きたいというので、こういう申入が出たのであります。それらについてもう一応御説明を伺いたいのであります。
  6. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 農林省で来年度予算只今部内で取りまとめておりますけれどもお話農地改良拡張幾ら幾らというのは実はまだ私のところでは検討をいたしておりません。従つて今後私は検討いたしますけれども、そのうちのどのくらいをどういうふうに見込んでおるかということは、事務当局只今手にあるわけでございますから、私のところまでまだ参つておりません。ただ、お話のように、この私どもの希望いたしておりまする食糧増産計画は、現在の国民負担、即ち財政力によつて相当程度賄えるということであれば問題は何もないわけでございます。それが増産事業要請しているこの状態は非常に多い、それに持つて来てそれを賄い得る財政力が伴わない、そこで一つの途として外資導入等措置があるわけでございますから、これをできるだけ大規模の事業には、少くとも基本的なところにはこれを持つて来て、同町にまあ増産計画を強化して参るという考えを持つておりますことは、先ほども申上げました通りでありますが、溝口さんのお話のように、そのために相当計画を完了するには、単に外資を三千万ドル入れる、或いは千万ドル入れて、そうしてそこへ柱を立てる、そこに事業を進めて先成して行くには、無論それは一部分であつて、大部分円資金を以てこれを調達するほかはないわけであります。そこで何らの考慮を払うことなくやりますと、お話のように相当そのほかに犠牲がかかり、迷惑がかかる、でありますから、無論絶対にその事業を完成いたしますのに、ほかのほうに影響はないということは、これはもう手を付けます以上は申上げられないことでございますけれども、できるだけその度合を低くいたしまするためには、たまたまこの外資導入と善後しまして、余剰農産物アメリカにおける処理我が国における食糧不足、そのアメリカ余剰農産物処理我が国食糧不足とがたまたま一致をするわけですから、この処理をせられた代り資金を、私としては裏打円資金部分期待をいたし、このことについて総理大臣にもしばしば私の意見を申上げて御協力を要請をいたしておるわけでございます。どこまでこの目的が達し得られますか、今日は無論何も確たることを申上げる段階ではございませんけれども、私は相当のことは期待でざるのじやないか、又これをやらないでは、諸般の事情から、私としてはどうも承服いたしかねるというような気持でやつておるわけでございます。あとは何でございましたかね。
  7. 溝口三郎

    溝口三郎君 食糧増産をやることは、これは間違いないのですが、需給ベースにその通り乗らないんじやないか。
  8. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これはもう全くその点は一考を要すところであろうと思います。極めて重要な御意見だと私は拝聴いたしましたわけでございます。成るほどこういうふうに単に個々の農家経済に貢献するということのみならず、国家的な食糧確保という意味で食糧増産計画というものは進めておるわけでございますから、お話のように、資金は投じた、できたものはまあ普通のやり方で集持するということでは如何であるかという点につきましては相当考慮を要するところだと思いますが、併し実際問題として、例えばまあ土地改定をやつた改良地域は、少くも作幾らかはその分として供出義務がかけられるというようなやり方に……、篤と私研究さして頂きたいと思いますけれども、実際問題として作況というものは、成るほど平常の状態においての増産力を高めて行くわけですけれども、何と言つても豊凶を支配的に決定いたしますものは、天候その他の自然条件が一番大きな支配的な要素になるわけですから、一概に御意見を直ちにやるということも如何であろうかと、これは私は十分一つ研究をさして頂きたい。本年すぐこれを実施にどうこうというようなことは実際問題としては考えられないかと思います。
  9. 溝口三郎

    溝口三郎君 土地改良をやれば結局食糧増産になるんだ、それがその通り果して需給ベースに確実に乗るかどうかということは非常に大きな問題でございますし、又非常にむずかしい問題であるのでございますが、どうやつてやつたらばそういうことができるかということについて、是非とも真剣に考えて頂きたい問題だと思います。私個人的な考えでございますが、例えば二毛作増産をやりますのに電力の問題がある。電力料金が高くなり、新電力について奨励金に僅かでも出してもらつて電力料が安いということならば、まだ排水をやつて二毛作に行けるものも三十万町歩はあるんじやないか。畑地灌漑でも、丘陵地帯の揚水をやつて行けば、三十万町歩くらいの陸稲増産もできるんだということになれば、それだけの簡単なことでも千何百万石くらいの増産は私はできると思います。それについて電力料金僅か奨励金を出すから、だからその点は一つ条件付ででもやつてもらえないかというような要請もするような制度ができれば、私は或る程度そういうことの実行の方向に入るんじやないか。又農民のほうは食糧増産でも、今までの補助政策でやつて行くならば土地改良予算を出してもらいたい、自分たちもこの食糧増産ができれば、何とかしてできるだけの国へ御奉公もしたいというような運動が各府県にも私は出て来るような機運になつておると思います。そういうようなことを考え合せた上で、是非ともこの点は真剣に御考慮をお願いしたい点でございます。この申入の主眼もそこにあつたと考えておるのでございます。もう一点お伺いしておきたいのでございますが、外資導入世界銀行の三千万ドルの点でございますが、これは恐らく総理大臣アメリカヘでも行かれれば、最後的に二千万ドルは借款に応じようというようなことに私はなつて行くんだろうと思う。そこで今農林大臣から御説明もあつたように、円資金については余剰農産物積立円をできるだけ利用するように総理大臣にも要請をしておるというようなお話でございましたが、三年間に四億ドルのうち、どの程度灰地開発に廻ることになるか、先ほど申しましたように、二千万ドルの借款が成立した場合に、相当な金額を財政投資しなければ五年間に達しないようなことになつて来ると、これは今までの分に上廻つた食糧増産財政投資をやつて行くよりに、国として方針をきめて頂かんといろいろな支障が出て来ると思いますから、その点を十分御決心の上。成立するようにいたされたいこと。もう一つ私はこの際はつきりして頂きたいのは、外資導入をする場合に、恐らく公社を立てて公社が入つて来るのだ、そしてその全額を、公社は入つて来て工事をやるのだ、工事をやつたあと借款償還をして行く場合に、今までの国の負担は、例えば国営土地改良をやつた場合に国は入側負担して行くのだ、元金で六割を負担しているのだ、今度のやり方外国に対しては六割の元利合計償還をして行く建前になつているのだ。私はそれはそれで結構だが、外国に対して、国が土地改良をやつた場合に、六割に対して利息をつけて国が面倒をみて行くのだというような制度は、本当に今までの食糧増産制度としては画期的な仕事だと思うのです。これは外国に対してはそういうことをやるが、若しそれが成立することになると、川内の問題でそういう問題がたくさん出て来ると思う。それは将来、今度借款が成立すれば、それが前例で食糧増産をやつて行くということになれば、私は非常に結構なことだと思う。これはどうもはつきり考えになつていたのかどうか、非常に大きな問題だと私は思うのです。その点について農林大臣のお考えを何つておきたい。若しこういうものができれば、将来県営のものをやる場合でも、国営土地改良をやる場合でも、利息までつけて国がそういうものの償還に応じるのかどうか。そういう先例になるかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  10. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 少し問題が先のはうに、私の頭からいたしますと先のほうを御心配頂いておるようでございまして、それらの点につきましては、実際世銀の調査団が日本農業の現勢を調査をされて、日本農業に開発投資の気持を持つておおよその調査結論を持たれておるのじやないかということは私どもも推察はいたしておるわけでございますけれども、実際問題として、然らはどういう条件の下で投資を得ることになるだろうか。或いは個々の事業地に公社等の特殊法人的な組織を持つてそれに受入れて行くか、或いは一括して特別会計等を用いてそこで受入れて実施して行くか、これからの問題になるわけ百でございますから、これはまあ一つ内々十分お智隷も拝借いたしまして粗相のないようにいたしたいと考えております。なお、世銀の投資を受けるということになつて、そこで商業を始めれは、先ほどお話のように相当円資金を要する。それは私の考えとしては、それがほかの事業にしわ出せにならないように努力をしなければならん。そういう線で努力をいたしておるその一環として、余剰農産物の代り円資金をここに投じて頂くように要請をいたしておるわけでございますが、全体の予算なり資金なりの計画は、この外資関係の日本政府の窓口となつて心配をしております経済審議庁でも、その点につきましては私どもと百様の考えを狩つて只今研究いたしておるわけでございます。その結論によりまして只今お話の点は極めて重要な部分でございますから、よく注意をして善処いたしたいと思います。
  11. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは只今議題になつておりまする米穀国内自給増強に関する申入につきましては、極めて重要な基本的な問題でありますので、今後も引続き検討を願うことにいたしまして、本日はこの程度で打切りたいと思います。   —————————————
  12. 森八三一

    委員長(森八三一君) 次に、昭和二十八年産米追加払の問題、昭和二十九年産米価の問題、米穀の検査の問題、植物病虫害防除の問題等につきまして、一昨日及び昨日の両日に亘りまして、委員会におきましては農林事務当局から一応の説明を聞いたのでありますが、秘々重要な問題が残されております。本日は農林大臣の出席を得ておりますので、これらの問題につきまして順次御発言を頂きたいと存じます。
  13. 江田三郎

    ○江田三郎君 先ず農林大臣にお尋ねしますが、先だつて内定された本年の米価、閣議でもそれを決定なさつたようでありますが、これで行きますというと、戦後初めて前年度より下つた米価が出て来ておるわけです。一方デフレデフレと言われますけれども、実際に物価がどういう足どりを辿つておるかということを見ますと、大して下つておるようでもない。又中には電気料金のように明らかに値段が上るものもあるわけであります。給与ベースにいたしましたところで、今後どういうことになるか、すでに公共企業体等におきましても賃上げの調停の申請をしておるようでありますし、なかなか今の給与ベースより下るというようなことは私ないのじやないかと思うのです。大体電力料金にいたしましても、その他の問題にいたしましても、値段を国が関与してきめるという場合には生産費を基準にしておるわけですが、現在の米価の問題については勿論はつきりとした生産費の調査はございません。併しそれにいたしましても、例えば農業協同組合のほうでやつた調査によりますというと、千二百五十円というような場合が出ておる。或いは農林省のはうで、米審の答申に基く方式によつて限界生産費を出されたのもおよそ一万五千円程度になるように聞いておるわけでありますが、そういうようなときに、この戦後初めて前年よりも安い米価をおきめになつたという大臣のお気持を先ず承わりたいのです。
  14. 保利茂

    国務大臣保利茂君) そういう御意見相当あるということは承知をいたしております。一つこれは物の順序からしてお考えを頂いてみたい、と思いますのは、安くなつた高くなつたというのは、どの点か安くなつた高くなつた、どの点に限らず、とにかく安くなつたじやないかということに或いはなろうかと思いますが、私は大体国会を初め各方面の米価に対する要望の線はできるだけ単純な何に改めるように、各種援助金は織込めるだけ基本価格に織込んで、そして米価を単純化すべしという御点見が多かつたということを頭に置いて考えておるわけでございますが、そこで今年のいわゆる基本米価として八十九百二十円を算出いたしましたのは、これは恐らくもう事務当局から評しく申上げておることと思いますから、繰返すことはいたしませんけれども、前々国会で相当問題になりました完遂奨励金の八百円の性格の問題、一応私ども供出のための奨励金という考えで、併し扱いましたところは義務供出の全品に対して支払つて参る、そういう関係から、これはもはや一般的に基本価格の一部というように認められているところと存じまして、これを基本価格に織込んで、そしてパリテイ方式から来るところの欠陥是正と申しますか、こういう調整のための特別加算もその基礎的な計数に則つてこれを加算をいたし、それが八千九百二十円という基本価格になつておるわけであります。そこでこの八千九百二十円の井本価格に早場奨励金をどういう扱いをするか、超過供出奨励金をどういたすかと、やはりこの実際の集荷の実務に携わつている者の実際上の意見、或いは府県知事等の意見も、やはり義務供出、超過供出の二段構えでないと十分集荷の目的を達することが困難であろうという見解を重視いたしまして、義務供出幾ら、超過供出幾らという一応の予定を立てまして、そしてこの超過の分につきましては奨励金を附する、その奨励金の附し方が一昨年以来大体一万四百円を頭打としての奨励金を附して参つておるわけでございまして、従いまして、内部的には奨励金を附して一万円になるような超過奨励金でいいじやないかという意見相当政府内部にも強くございましたけれども、これはここ一両年米とつて来ておりました三月四百円を下るということは妥当でないという考えをとりまして、千四百八十円の超過奨励金を附することにいたしたわけでございます。そこでそれらに関しまする限り、一応私は筋合は通つている価格だと考えますけれども、同時に翻えつて昨年の二十八年産米の米価のあとを検討してみまするに、米価審議会の御審議を煩わし、米価を決定いたしました当時の問題は、もとよりこれは供出量等の関連において議論が行われるわけでございますけれども、又減つた、殖えたというのもそういう点に不可分の関係を持つておるわけでございます。そこで昨年米価を決定いたしましたときの供出の見込みは二千五百五十万石を目標といたし、うち二千百万石を義務供出、四百五十万石を超過供出と想定をいたして米価を決定をいたしたわけでございます。その関係からいたしますと、いわゆる農家の手取りと申しますか、政府買入の平均額と申しますか、それは九千三百九十三円になつておると思うわけであります。然るにこの米価決定後におきまする御承知のような異常の凶作が襲来、見舞われまして、この供出目標を大福に変更せざるを得ない余儀ない情勢に相成りまして、義務供出は当初二千百万石を予想したものが千四百万石となり、四百五十万石の超過供出量が六百数十万石というよりに大幅なこの変り方をなす、従つて供出の上におきましても、それに関連した価格の上におきましても非常な混乱を呈したということは、私は無論見通しの大きな齟齬ということに相成りますれば、私の大きな責任でございまするけれども、かようなわけでございまして、昨年当初米価を決定いたしまするときの政府の組立て方に比べまして、昨年の九千三百九十三円に見合う今年の価格は九千九百何がしになつておるという上からいたしますれば、これは作況等の関連において考えて見ますれば、決して江田さんの言われるような私どもには気持はないわけでございます。併しいずれにいたしましても数字の問題でございますから、これはもう十分御検討を頂いて御批判を仰ぐほかはないわけでございますけれども、私ども農林当局といたしましては、今日の段階におきましては止むを得ない、最善の努力を払いましたところがこれであると申上げるほかは実はございません。
  15. 江田三郎

    ○江田三郎君 大臣のこの考え方をお聞きしておりますというと、大体今の、従来とつて来られたパリテイ価格というものを基礎にして物をお考えになつておりますが、我々から言うと、この点について先ず第一に意見が違うわけです。パリテイ価格というもの、これは御承知のようにインフレ期の一つの特別な措置だつたと思うのです。そういうような価格体系でもとらなければ、どこまで値段がつり上るかわからない、こういうところから一つの価格の抑制措置として特別にとられたものであつて、それが今日もうパリテイ価格というものが適用の一安当性を失つておるということは、これは私はお認めになるのじやないか、何故ならば、パリテイ価格というものに特別加算を加えたり、更に供出完遂の堤励金を加えなければならないということは、もうパリテイ価格そのものが適用性を失つておるのだと、更にそれならば特別加算なり、供出完遂奨励金を付ければ、それで欠陥を補つておるじやないかとおつしやるかも知れませんけれども、併しそんなものではないのでありまして、それでは一体特別加算の根拠はどうか、ただそこに出て来るところの資本材の投下量の増であるとか、或いは都市と農村との消費の差額というようなものにいたしましたところで、これは検討いたして行きましたならばいろいろ問題があるのであります。そういうものが何も根拠のあるものでなしに、我々からいうと、ただ数字の全体の辻褄を合わすための一つの策定された数字なのじやないかという感じを持つのでありまして、それはともかくといたしまして、一般に価格というものが、経済が正常時に返つて表ると、生産費を基礎にするのだということは、これは私はつきり甘えると思うのであります。現に同じような農林関係の物資にいたしましたところで、例えば牛乳のようなものの値段、あの消費の不安定な牛乳のようなものの値段をきめるにいたしましても、酪農振興のときに農林省説明では、生産費を元にしてあの価格の斡旋をするのだということか言つておられます。又肥料にいたしましても、又立場が違いますけれども電力料金にいたしましたところで、その他のものにいたしましたところで、いずれも生産費というものを問題にしておるのであります。そういう生産費といううものが幾らになるかはつきりわからんけれども、併し今の試算として出ておるところの農林省がやつておる一万五千円という、こういうような値段では農民としてはとても納得ができないという点が第一点であります。それから更に去年と比べても下つておるじやないかということは、その次の議論になるのでありますが、今の農林大臣お話によりますと、下つていないじやないかと、こういうようなお話であります。併しそうは行かないと思います。成るほど基本価格は上つております。併し八百円は別といたしまして、併しこれは上つたのでも、下つたのでもない。パリテイ指数が上つて来たから、それによつて動かしたというようなもので、上下というような問題ではないのであります。その中で一番結果が違つて来ておるのは、早場米の奨励金の問題であります。もう一つは超過供出奨励金の問題です。超過供出奨励金の問題については、これは闇価というものを一万四百円というものに、一昨年以来見ておるのだ、だからして去年の三千七百円というものが今年の千四百八十円になるのだと言うのでありますけれども、そもそもそれならば、一昨年、去年も今年も闇値というものが一万四百円という理論的な根拠がどこにあるかということをお間ぎしなければならん。今の平均闇値が一万四百円というような根拠は一体どこにあるのか、これ又、ただあなた方が机の上でお考えなつた数字に過ぎないのであります。一万四百円は日本中の闇値、まあその主要産地は一万四百円というようなことを強引に言われますけれども、そんなものは何の根拠もないわけであります。そういう意味において去年と違つておるということだけを我々ははつきり聞いておるのであります。そうではなしに、我々は根本は生産費を償つていないじやないかということを言うのであります。更に農家の印象としては、生産費を償つていない上に、その上去年よりも実質的な手取りが落ちるということに対しては、これは大きな不満を持たざるを得ないのであります。今大臣お話では、各方面の意見をも勘案してということでありますが、仮に各方面というのはどういうような方面か知りません。この経団連、日経連あたりが安い米価を主張しておるということは私は知つております。併しながら、日経連の趣旨に副うことが米価を決定する唯一の根拠じやないのであります。日経連の意見よりも、やつぱり米を作る百姓のことを考えなければならんと思います。米を作る百姓ということを別にいたしましても、例えば二十四日から米価審議会が開かれる、その米価審議会に各方面のいろいろな意見が反映するとかいうような方法をとつておられると思うのであります。仮に米価審議会で、こういう価格が不当であるという、そういう答えが打出されたときに、それを尊重してお行きになりますかどうか、若し各方面の意見を尊重してということになりますと、そういう結論になるのじやないかと思います。
  16. 保利茂

    国務大臣保利茂君) この早場米でありますとか、超過奨励金でありますとかいうのには、全く江田さんも御承知のように、そのよつて基くところの理論的根拠も何もないことは、これはもう皆さん御承知の通りであるわけであります。要はこの基本価格、全面管理をいたしておる関係上、而も政府だけにしか売つてはならないという強制管理をいたしておる建前上、当然成る価格以外に、又自由価格等で取引きせられる。そういう実際の実情も考慮して、そうしてまあいわばプラス・アルフアーをいろいろな形で付けておるわけでございまして、ここにまあ、そこにすつきりしない姿があるわけです。それじやと申して私はパリテイ主義方式で計算せられた価格が合理的である、不合理であると、これはお話ではございまするけれども、江田さんの御意見は御意見でございまするけれども、問題は国が全面管理をいたしておるから、その御不満がそういうところに現われて来ると思いますが、いずれの国におきましても、私はまあ余り外国のことは知りませんけれども、この一年間アメリカ国会での、上下両院でのこの問題を廻ぐつての論争にいたしましても、如何にしてパリテイ方式を守るかということに最大の関心が払われて論議が尽されて来ておる。決してインフレ下での一つの抑える方便としてパリテイ方式が採用せられておるのではなくて、農家の再生産を確保して行くところの基本的な合理的な方式としてとられていると、私は了解いたしております。従つてこのパリテイ主義もそういう点においては必ずしも見捨てたものじやないと思いますけれども、それじやといつても、生産費が、合理的な生産主義の方式が組立てられる、いろいろ米価審議会の小委員会等でも研究は積まれております。併し積まれておりますが、先ほどお話のようなことがそれじや多数の御意見で来ているかというと、そうでもないというような、実際の個有の生産方式を採用するか、しないかという点につきましては、まだ私は施策として取上げるには研究が極めて不十分だと言わざるを得ない段階じやないかと思います。そういう意味でパリテイ方式に関連して来る欠陥を是正する措置をとりつつ行くということ、これはもうパリテイ方式だけでいかんことは、八百円の完遂奨励金を基本価格に繰入れているということで、これは理窟は抜きにしてパリテイだけでは全面管理をしている米の価格を作り出すということは不適当であるということは、政府みずからこれは出しておるわけでありますから、この点は私はちつとも強弁をするものではありませんけれども、できるだけ一つ生産費主義から出て来るところの要請と、パリテイ方式で打立てて来るところの欠陥とを調整、埋め合せて行くということで、行くほかは、今日の段階は行くほかはなかろうかと、こういうふうに考えておるわけであります。それから各方面の意見を尊重して云々と名前を挙げられたような団体につきまして、私は少くとも心理的に何らの影響をこれらに受けておるものでないということははつきり申上げます。なぜならば、食糧問題は一にかかつて今日の日本食糧事情の下におきましては、農民の協力を待たずして食糧問題を解決して行くということはできません。そういうことで一部の片寄つた意見が出されるということは私どもは甚だ迷惑であります。けれども、それは今日の段階でありますから、経団連その他において意見を出されることもどうも当然だろうと思いますけれども、それらの意見で私どもは左右せられていないということだけは一つはつきり申上げておきます。
  17. 江田三郎

    ○江田三郎君 パリテイ価格というものも見捨てたものじやないというので、アメリカの例をお引きになりますけれども、これは私は問題は全然別だと思うのです。アメリカのパリテイ価格というものが出ている、その出発になつているときの農家の実態というものはどうか、少くともその当時においても自動車を持つたり、或いは家庭を電化したり、或いはいろいろな形で、生産手段にしても大きなものを持つておる農家が、一体そういうふうに一つの近代経営になつたところを出発点にしてパリテイにして行く場合と、それから日本のように長い封建的な搾取下に、いわゆる零細農として人間はずれしたような生活を続けて来ておるそういう農家を基礎にしてはじき出すところのパリテイ価格というものは、これは全然問題が違うと思います。それをただアメリカ日本も同じように名前がパリテイ価格であるから、パリテイ価格というように一律にお考えになるのは少し妥当じやないと思う。その点はその点にいたしましても、とにかく今のこういう米価で大臣みずからお考えになりましても、とても農家が納得するはずはないと思う。現に今も農林省の玄関に日本農民組合の諸君が頑張つております。或いはあなた方は不愉快な存在としてお考えになつておるかも知れません。或いは又一部の若い者が調子つぱずれのことをやつておるというようにお考えになつておるかも知れませんけれども、併しこれは私は決してそうじやないと思う。恐らく全国の農民の胸の中を叩いて行くというと、皆同じような気持を持つていると思うのです。たまたま農民の場合には組織がない、或いは労働者のような近代的な組織も持たないし、又ストライキをするというような戦術も知らないし、いろいろな点で不平なり不満なりが大きく結集はいたしませんけれども、一人々々の胸の中には、こういう去年より下つたような米価というもので納得するはずがないと思う。それで一体今年の集荷というものができるとお考えになつているのかどうか。恐らく今個別折衝をやつておられるようでありますけれども、個別折衝の結果がどうなるか知りませんけれども、今の農林省考えておられる米価で以て今の集荷目標を達成することは不可能だと思うのです。更にそういうようなことだけでなしに、今後の米価の決定に当りましては、この価格の立て方が不満だということだけでなしに、その財源の出し方にいたしましても私どもは非常な不満を持つわけです。これによつて一切従来食管が持つておつたところの含み資産というものは吐き出してしまわなければならん、そうしてその中では財源の出し方には非常に無理をしておる。例えば九十三億の財源を出すのにいろいろなものを出しておられますけれども、あの中には、一つの例を申しますというと、麦の委託加工の加工賃の切下げをやつておられる。今農家で困つている問題はたくさんあります。ありますけれども、特に最近問題になつているのは「ふすま」の問題です。「ふすま」が高くて困る。あなた方は酪農振興を盛んに言われますけれども、「ふすま」が高くて酪農振興どころじやない。麦の値が下ればふすまも下る。そういうときに麦の委託加工賃の切下げをするということは一体どういうことか。必ずやこれは「ふすま」の値にはね返つて来ることに違いないと思う。これは一つの麦の委託加工の加工費が下る、崩れるということは、全体の「ふすま」の値段が変つて来るに違いない。七億の金を作るために、そういうような更に農業経営にとつて大きな迷惑を及ぼすようなものまでなすりつけてやつておられて、而も財源というものがなくなつてしまつて、一体来年の米価を決定するときにどうするかということを私はお尋ねしたいのです。若し今のやり方のように一切新らしい財源を出さないで、そうして消費者米価だけから逆算して行くということになるならば、来年はないのですから……、これは食管の含み資産というものはないのです。洗いざらい使うわけです。九十三億円の今年の出し方のようなものは若干出るにいたしましても、それだけではとても立つて行けません。更に恐らく大臣もお考えになつておると思いますけれども、今年の一体早場米奨励金なり、その他のものが、例えば早場米奨励金にいたしましても七十一億の枠の中で終るかどうかわかりません。今後の義務供出幾らにするか、超過供出幾らにするかという数字の出し方によつてその他のデーターも違つて来るわけです。そうすると、食管は赤字を出して行かなければならん、この食管のようなものが赤字を出して、含み資産を一つも持たない、繰越資産を一つも持たない。そうして来年の米価を決定するときに何にもなくなつて、マイナスだけ残つているということなら、仮に現存の消費者米価をそのままということになると、来年の米価は九千二百円以下にならなければならんということにたると思います。そういう点についても、なぜ一体これだけのものをみな吐き出してしまわなければならんのか、その中には例えば食管の会計の中で負担をしておられる例えばバツク・ぺーにいたしましても、バツク・ぺーというものをなぜ一体食管会計の余裕金の中から出さなければならんのか、なぜ一体輸入補給金に手がつけられないのか、あなたは輸入補給金というものを全然別建にして、あれは社会保障費的なものだということをおつしやるが、併し輸入補給金の今日までの果した役割というものを考えると、ただ単なる社会保障費的なものじやないと思う。やはり米に関係し、麦に関係しておるわけです。ああいう輸入補給金を使うということは、日本の内地産米をうんと人為的に押し下げて来たわけです。長い間押し下げて来たわけです。幸いか、不幸か知りませんが、今年は輸入補給金を使わなかつたからといつたところで、今日までにおける輸入補給金が果した役割というものは、内地産米の価格を実力以下に押し下げることに使われておることになつておる。そういう因縁を考えたならば、あの輸入補給金、これを単純に社会保障質的なものとして失業対策に廻すんだとかいうような性格のものじやないと思う。又若しデフレ予算ということをあなたがおつしやるなら、私はデフレというものは形式じやないと思う。実際にインフレ要因をなくするかどうかということで、一兆円という数字じやないと思う。その点から考えるというと、含み資産を使い果すということは、実質的には一兆円の枠内でやつたところで、やはり厳密に言えばインフレ要因と言うことができるのであつて、そういうものは何も一貫していない。要するにいろいろなしわを農民のほうへ押寄せて来られた、或いは財政のしわを食管の会計のはうに持つて来てしまつた、それだけのことになつておると思いますが、その点はどうお考えになりますか。
  18. 保利茂

    国務大臣保利茂君) そこで私は私の考えておる今日の政策全般の上において実現することができませんでしたから、今申上げても意味をなさんことになりますが、一体デフレ下におきましても、消費者米価というものはもつと上つてよいものだと考えておる。と申しますのは、いつかも申上げましたように、何と言いましても、米というものは日本の零細化されておる六百万農家でございますか、とにかくこの六百万に近い農家を支える基礎的な物資でありますから、従つてこの生産側としましても、米の価格というものはもう非常に大切なものであるわけです。消費の面からいたしましても、いろいろの理窟は言いますけれども、結局食べて一番安いものは米だということで、而も七百六十五円をそういう状態において釘付けをするよりも、私はむしろ先ほど溝口さんからも言われましたように、需給ベースにできるだけ乗るようにする価格を作つて、そうしてそれは消費者においても拝んで負担をして頂くということでなければ、実際問題として解決がつかんのじやないかということを考えますが、併しながら、そういうことをいたしますというと、かなりそれができますれば幸いですけれども、それは実際問題として今日でき得ない。そこで米価はとにかく筋を立てた米価を立てて行く、それにいたしましても、石当り今年予定いたしておりますのは三百五十七円かのやはり赤字が出て来ると思う。その赤字をどうして負担をして行くかという点が問題でありますが、これは会計上のやりくりの問題でございますから、会計上やりくりができれば、私はそれで合計が九十三億かに一応予定をいたしておりますが、九十三億が仮に九十五億になり、百億になつたからといつて、それでインフレだというような性質のものじやなかろう。特別会計が余計に又黒字を持つている必要も私はないと思います。従つてたまたま積上げました価格の鞘を、特別会計においてやり繰りができるという形において処理をいたすということは不都合なことじやなかろうかと思います。お話輸入補給金の問題は、これは先目も個人的に御意見を承わり、私も申上げたわけですけれども、これはやはりこの米を以て、米を通じての社会保障という性格のものであろうと思います。そのところに必要がない限りにおきましては、これは今日の実際の情勢からいたしましても、社公保障的な施策に用うべきものである、私はこう考えております。
  19. 江田三郎

    ○江田三郎君 あなたの個人的なお考えとしては、消費者価格というものはもつと上つてもいいんだ、こういうことですけれども、そこで私はそれに関連してお尋ねしておきたいのですけれども、昨日の閣議決定で行くと、今度のこの消費者価格の据置きというものは、暫定的に据置きという発表になつている。活字にそうなつているわけです。そうしますというと、次の食糧年度において消費者価格が動くことがあるということを予想されてのことですか、例えば早場米の奨励金或いはこの超過供出奨励金というようなものが、今のあなた方農林、大蔵両当局の間で話した額とトータルにおいて違つて来たというような場合において、消費者価格を動かしてこれをカバーするというような含みを持つてつておられるのですか。或いは消費者価格というものは、ここできめたものは一年間は動かさないという考え方、若しそうでありますならば、これは食管会計に赤字が出た場合には、やはりこの二重価格制に似たものをとつて行かなければ、額はどうあろうとも、形の上ではそういうことになつて来ると思うのですが、このあなた方の考え方というものは、今後消費者価格を動かして二重価格制を押えて行こうというのであるか、或いはそうでなくて、消費者価格はそのままにして、三重価格制によつてこれをカバーして行こうとするのか、その点はどうかということ、それからインフレとか、デフレとかいうことについては、私たちの考え方を申上げますというと、いわばこれは農林省が謀略にかかつているのじやないか、農林省が謀略にかかつたと言つては失礼であるというならば、農民が謀略にかかつているのじやないかということを考えるわけで、今の世界的に、麦の相場が下がる、米の相場が下がる、やがてこの今の国内価格を下廻るのだということを農民は知つているわけです。そうすると、今例えば米の手取りが少々殖えたところで、それを何ら浪費するというようなことは私は考えられないと思うのです。何とかして生産改善しなければならん、生産力増強に使わなければならんという気持を持つているわけです。仮に何十億、何百億という農家の手取りが殖えましたところで、それが本当にそういう生産的に使われる限りは、インフレ要因とは言えないと思うのです。インフレ要因というのは一兆円という数字じやなくて、その金がどう使われるかということが肝心な点じやないかと思うのです。そういう点について、やる張本人が大蔵省であるか、日経連であるか知りませんが、或いはアメリカか知りませんけれども、インフレとか、デフレとかいう怪物に支配されて、妖怪に支配されて、その謀略にかかつて手も足も出ないで、そうして食管の繰越資産まで使い果してしまつているのが農林省じやないかと思うのですが、その点はどうお考えになりますか、消費者価格の問題と併せて……。
  20. 保利茂

    国務大臣保利茂君) あとのほうの問題は、ちよつとなかなかややこしいような問題でございますが、前段の御符見は……。あとのほうの問題は、これは伺わして、頂く程度にして頂きたい。消費者価格を当分の間据置くという意味は、成るほど私が只今消費者価格はもつと上げてもいいはずだというようなことを個人的意見として申上げましたから、余計目ざわりになつたろうかと思いますが、方針といたしましては、この据置きは当分の間ではございません。大体来米穀年度はこれで押して行きたい、こう考えております。
  21. 江田三郎

    ○江田三郎君 まあ立場が違うということで、大体は議論をしても仕方がないというようなことになつてしまつたのだと思うので、私も余りしつこいことは申しませんが、併しこの三十四日から米価審議会をお開きになる。米価審議会というものは一つの構成によつてがつちりとできたものであつて、私ども相当あれに権威を持たして然るべきだと思うのでありますが、従来米価審議会がどういうふうな答申をしたところで、何を決定したところで、あなた方のほうは、それはそれ、これはこれというように全く無用な存在のようにしてしまつておられますけれども、併し今年の場合、これは一つこの人間保利としてよく考えて頂きたいのですよ。一体どういうふうな気持を農民が打つておるかということです。一方において電気の値段が上るというのに、米の値段は下るということを、どういう工合に農民が受取るかということです。而もその半面において、たくさんの疑獄事件が問題になつた。それがあいまいに済まされてしまつた。国会何かごたごたしているようだけれども、何のことかわからんことばかりやつている。そういうときに一体農民がどういう気持を持つておるかということです。これで一体米の集荷ができるとお考えになつているかどうかということなんです。私は繰返して申しますけれども農林省の玄関におる若い諸君の声というものは、決してあの諸君だけの、或いは一部のはね上り者の声じやないと思うのです。若し措置を誤まりますならば、恐らく全国の農民は、農民大会その他の方法によつて立上るでしよう。或いは部分的には供米ストというような問題も出て来るでしよう。出て来たときに、あなた方はこれを抑える、何か納得せしむるだけの言葉を持つてお出でですか、恐らく私はないと思うのです。今年も米価審議会は何かを決定する。併しながら、これ又政府のほうとしては何ら耳を傾けないのだ、そういうやり方で、実際に米が集まるのか、集まらないのか、十日といい、十五日というような基準を立てておられますが、それが実行できるかできないか。これは一つ農林大臣としていろいろ内閣の全体の枠の中で、やりにくい問題はあると思います。併しながら、一つ人間保利としてお考えになれば、もつと私別な手段を講じなければならないというようにお考えになりはしないかと思うのです。更に一つ附加えてお尋ねしたいのは、今年の収量というものを、あなたのほうはどういうように見込んでおられるかということです。勿論その収量の科学的な数字というものは誰にもわかりません。これがわかる人は恐らくありません。どうしたところで毎年の収量というものは、統計調査が何を出そうと、何がどうあろうと、これは一つの人為的な、まあ私をして言わしむれば政治的な数字だと思うのです。そこでまあ昨年の場合には減収加算というものがあつたわけであつて、減収加算というものが平年度の際でも恐らく五%以上、四・九%ですか、それだけ違つて来ると減収加算をつけなきやならんということになつておりますが、今年の収穫というもの、まあ台風が相次いで参りましたから、或いはその前に冷害がありましたが、今年の収量というものをあなた方はどういうようにお考えになつておるか。又若し仮に五%違わん場合でも、何らか減収加算というような措置を講じて行くというようなお考えはございませんか。その点はどうでしよう。
  22. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私は昨年の米価を決定いたしますときにひそかに心配をいたしておりましたのは、米価審議会のことは何もかも耳を閉ざして聞かん、昨年の減収加算の問題のごときは米価審議会の御意見を尊正して、これは取扱いをいたしておるわけであります。できるだけ制度上からいたしましても米価審議会の意見を尊重しなければならんことは当然のことでございますから、私どもとしてできる限りこの趣意を尊重して参るという方針においては変りはございません。それからいたしまして、昨年減収加算をいたしまする場合に私は当委員会でも申上げたと思いますが、減収加算というものはどういう結果をもたらすか、いわゆる災害を受け、凶作となつた地帯がこれによつてどういう一体影響を受けるのか、凶作地帯と言えば大体まあ供出は困難な地帯になつて来る。一面において供出可能な或いは相当余力のある地帯はために非常な潤いが来るという結果になり、而もこの減収加算というものは次年度において減収がない場合には当然外れる性質のものであるわけです。その外れた場合に、今お話の点が農民にどういう影響を与えるかという点は非常に私としては心配をしたわけですけれども、実際問題としてはまあこういう作況の十においては、これを考えるということはないわけであります。この点は私は広く農民各位の深い理解を項かなければ、去年これだけあつたのだから今年はもう当然だというようにお考えを頂くべき性質のものでは、これはもう絶対にないということは農民各位もよく御理解を頂きたいところだと思うわけであります。そこで私のほうとしましてはとにかく今日の情勢におきまして、農林当局としては最善とは申上げないまでも、とにかく作り得る最適の価格を作つたと私のほうは考えております。無論作つたと申しましても米価審議会の議を経なければなりませんから、まだ最終的には申上げませんけれども、諮問案としては、私のほうとしては先ず最適のものであるという確信を持つて諮問をいたしたいと考えておるわけでございます。なお今年の収量はどうであろうか、おおむね八月十五日の作況が六千三百八十万石という数字が出ておりますが、その後の天候、経過は全国的にみますると、かなり恵まれた状態で推移をいたしたと見ております。ただ十二号今風、十四号台風、常時、大分或いは愛媛その他の県、十四号台風における静岡県、三重県等の被害がどの程度に及んでおるかということは只今調査をいたしておりますが、従つて予言的なことは無論申上げることは遠慮いたしますけれども、全体といたしましては八月十五日の予想からそう大幅な私は変動はないのじやなかろうか、無論これは私どもがいくら工合が悪いから都合のいい数字を作つてくれといつてみたところ、そんなものができようはずはございませんし、又少くとも統計にさような作為を用うべきじやないという考えは私は一貫して持つておりますから、従つてこれは調査の集計が出て参りましてから問題にするよりほかなかろりか思いますが、感じといたしましては、昨年やりましたような減収加算というようは措置をとる必要はなかろう、こういうふうに考えております。
  23. 江田三郎

    ○江田三郎君 減収加算というあの建前がいいか悪いかということは、これはいろいろ問題があります。考えようによるというと、減収加算というものは作況のいい所が作況の悪い所の犠牲においてふくれ上るのだということもある。併しながら、これは一つのノーマルな経済状態において収量全体として落ちれば、それによつて値段が上るということもこれも必然起る現象なんであつて、これは減収加算という、名前は減収加算でありますけれども、これは誰かがそう名前をつけただけのものであつて、本質的には何でもない。完遂奨励金も或いは特別加算も同じようなものだ、減収加算というものは名前がそうなつておるだけであつて、要はなかなか今の段階におきまして、今現在のあなた方の政府の下では、多少とも農家の手取りを殖やすということについては大変な障害がある、そこで智慧のある者が智慧を働かしていろいろな名前をつけて行くのだ、こういう工合に思うわけですが、今年の場合は作況はやつてみなければわからん、こう言われますけれども、作況といつたとこつで、先ほど申しましたように何らこれが絶対間違いないというものじやないわけですが、仮に或る程度平年の段差を超過するような減収が現われた場合には、その際には減収加算というものはおつけになるかどうかということを私は伺いたい。
  24. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私は只今はそういう必要はないと考えております。生じないであろうと考えております。
  25. 江田三郎

    ○江田三郎君 近頃仮定の質問には答えんということがはやるから、そういう答えでいいかも知れませんが、先ほどのお話の中で、米価審議会を何も無視してはおらんというような、去年だつて或る程度は聞いたじやないかというような言い分をされましたが、一体今年の米価審議会についてはどういう態度をとられるのですか、あなたは一方において諮問案としては最適な数字を出したということを言つておられるわけです。而も米価審議会というものは無視はしておらないのだということを言つておられるわけです。諮問案は最適だと言つたところで米価審議会が別な答えをするかも知れませんが、別な答えをした場合にはこれは尊重されるのですか、されんのですか、どうですか。
  26. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これは私は尊在しなければならんことは当然でございますが、尊重いたしまして、私が努力をいたしまして、どこまで実現し得るかということは、これは努力の結果を見なければ何とも申上げられない。
  27. 江田三郎

    ○江田三郎君 更に私この米の問題について関連して検査のことについて御意見を承わりたいのですが、今の検査制度というものが、これが等級を複雑に分けておられるわけです。併し実際に生産者の検査というものは厳重にしておられますけれども、これが消費者に来るときには一体どうなるのか、聞いてみますというと、農林者は一等米というのはめつたないでしようけれども、いろいろな等級の米を中間の業者へ卸しをする場合には一本の価格で卸しておるということを開いておるわけです。この精米業者なり或いは卸、小売業者に一本の価格で払下をするなら、なぜ一体生産者の検査だけをああいうような細かな検査をして行かなければならんのかということが私どもには、よくわからない、更に又一本の価格と言つたところで、土地によつて値段が違うようでありますが、土地によつて値段が変るということは、要するに歩留りから行つておるのだろうと思うのです。例えば新潟で払下げる価格よりも岡山で払下げる価格のほうが高いということは、岡山の米が歩留りが高いからそうなつておるのだそうと思うのです。若し歩留りを本当に見て行くならば、これは銘柄まで行かなければ徹底しないと思う。一方においては検査を厳重にせられるが、併し片一方においては払下は一本でやつてしまう、そうして同じ等級の米は同じ相場で、払下のときに地域的な一つの歩留りの差を付けておるというのは、誠に首尾一貫せざるものと思うのですが、こういう点は一体是正する御意思がございましようか、どうか、一体今の場合にまあ外米輸入はできるだけ減らすのだということは、あなた方はおつしやつておられるとしても、減しも殖やしもしないと思うのです。ああいう黄変米ということになつて来ると、いやでもおうでも内地米を一石でも多く作らなければならん。そこで一石でもたくさん作るということは、農家が努力をして立派な稲をたくさん作るということでありますけれども、できた米と称するものは、どれだけを米の範囲に入れるかということによつても、この全体の流通市場に出て来る量というものも違つて来るわけです。今のようなできもしないような一等とか、二等かというものを作るのでなしに、もつと本当に食前に供し得るものは、全部検査に合格さすのだという建前をとるならば、私はもつと流通量というものは殖えると思うのです。そういう点について、今の検査制度というものの規格を変えられる御意思はございませんか。若し変えないというのならば、それは一体なぜ政府のほうは三等は全国同じように三等で買上げておきながら、その同じ米を払下げるときには地域的な差をつけているのはなぜか、そこらにも一貫しない点がちやんとあるわけです。どちらにしろ、一つの中途半端な、純粋の商品、生産の検査でもないし、中途半端なことをやられて、而もこの中途半端のやり方で得をするのは誰か、損をするのは誰かということははつきりしておるわけです。厳重な検査をされた米を作つて行つて、そうしてそれを消費者のほうへ持つて来る。業者のほうでは一本の価格で払下をしてもらつて適当に等級を混ぜ合せて、そこにマージンを生み出して行く、もう一つ儲けておるのは食糧庁です。同じ三等の米を全国一律で買上げながら、新潟の三等よりか、岡山の三等、加賀の三等は高く払下げておるというのは、食糧庁と業者の利益のために、生産農民をばかにしていると言つて差支えないと思うのです。そういう点を変えられる御意思はございませんか。
  28. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 検査の問題につきまして、特に農村側から強い要請がある、お話のような点がありますわけでございます。事務当局に、これは私では実は正直に申しまして判断の力を持ちません。これは全く技術的な問題にかかつておりますから、事務当局に検査制度が不合理であるならば、これは是正するように再検討を要請いたしましたが、結論は、検査当事者はもつと厳重にやりたいというような強い気持があるようでございます。これを現行のものを変えるということは、実際問題としてはどうも適当でないというような結論を持つておるようでございます。私はその結論も止むを得ないかと思つているわけでございますけれども、十分併し更に研究は続けさせたいと思います。
  29. 江田三郎

    ○江田三郎君 これは一昨日当委員会で検査課長がみえたわけであります。そこで検査課長に私の意見を言うと、あなたのおつしやる通りです。こういうのだから始末が悪い。検査課長はあなたのおつしやる通りです、こう言つて大臣のほうから聞くと、若しあなたの今言つたのが、本当であるならば、それは嘘だ、でたらめだということになつてしまうわけです。どちらが本当かということをお聞きしなければならない。とにかくこれは一つ検討してもらいたい。なお米価の問題につきましては、この問題は決して、あなたがお考えになつてもわかりますように、我々としては納得ができないわけ百です。これで打切るわけでない、ただ今後農林大臣としては、米価審議会は尊重しなければならんと考え、それによつて努力をするが、努力がどうなるかわからんということを言われましたから、今後米価審議会の成行き、それに基くところのあなたの努力というものを大きく期待して待ちたいと思うのです。とにかく今のような行き方で、この政治情勢、この社会情勢で、この米価で若し十日配給、十五日配給というような目標量を集めることは不可能だ、そうして一方に外米黄変米の問題がからんでいるということを考えるならば、もつと私は考え方をお変え願いたいということを希望しておきます。
  30. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 私は米価の問題につきましては非常な不満を持つている一人でありますが、政府がかような米価によつてどれだけの集荷目標としているのか先ず承わりたいと思います。殊に現在の作況は決して全国的に見て豊作だとは私は考えられません。なお稲作の前期は非常な曇天とそれから低温でありましたがために、この発行状況はかなり遅れているわけです。この遅れているにつきまして、これは試験場の報告を受けるまでもなく、私も農民でございますから十分に承知しているわけでありますが、かような非常に遅れている、少くとも全国的に十日くらい遅れているのではないかと私は予和するわけでありますが、それにつきまして、早場米奨励金というものが昨年は第一期が十月十五日である。それが今年は九月末に切上げてしまつた、そうして金額も昨年の第一期は千三百円外あるが、本年は千二百円である。又第二期は昨年は十月三十一日で今年は十月十五日で、昨年は九百円であつたものが六百円である。むしろ私は今年の作柄から申すならば、農民のために、又この端境期における食糧の危機を突被するという意味においての早場米奨励金であるならば、もつとかような昨年との金額の差をなくすることと、又実際に農家がこれに順応することのできないような期間を設けるということは甚だ不親切なやり方ではないかと思う。この九月末に早場米の第一期の奨励金を出してみたところで、これのうるおいになるものは極めて少いのではないか。昨年は十三月十日が最後の第四期の早場米奨励金でありましたものが、今年は十一月末であつて、而も昨年の奨励金の半額にしかならない、こういうことでは、私は農家に対する農林省の本当のいわゆる親切なやり方ではないのではないかと考えるのでありますが、この早場米奨励金を出す金額と、これから期をもつと繰下げるお考えがありますか、どうか承わりたいと思います。
  31. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 大体集荷目標は義務供出で二千百万石、超過供出で五百万石を御相談申上げたいと、かように考えております。早場米奨励金の問題につきましては、先ほどもちよつと申上げてありますが、春期、昨年はああいうふうな異状な凶作から特別の措置をとつて来ておるわけでございまして、そういうような異状の凶作のことをそのまま皆続けてやれと言われましても、実際問題としては、相当ども努力は払つておりますけれども、ただ今日お約束するということは、私どもとしては不可能であります。ただ政府部内で大きく意見を異にしておりますものは、七十一億で縛り付けてそれでもう早場は締めてしまう。従つて各期の数量もそれで抑えるというような考えも強くありましたけれども、とにかく早場と言いましても、供出促進するという狙いであることは間違いないわけです。従つて供出して頂くというのに奨励金を付けないというばかなことはできるはずはありませんから数量上の制限はいたしていない。従つて九月二十日、特期早場につきましてはかなり予定を上廻つているものが出ているのじやないかと考えております。それで一つ御協力をお願いするほかは今日のところはありません。
  32. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 予算が八十二億早場米の奨励金にあつたと思いますが、それを十一億減らして、そして七十一億で打切りだ、而もこの七十一億も私は実際にはこのような状態にしておいては到底使い切れないじやないか。殊に昨年は凶作であつたからかような措置をとつた、こう言われますけれども、本年は前半期において異常な天候であつた、而も稲作は全国的に見て非常に遅れておる、そういうことによりまして早場米奨励金というものが私は実質的にはこれは何ら価値はないものである。丁度絵に描いた餅のようなもので、何ら実際の効能を農家に及ぼすものでないというようように私は感じておるわけです。殊に何かはつきりわからなかつたのですが、大臣がそんなばかなことはどうとか言われておりましたが、どういう意味であつたかはつきりわからなかつたのですが、併せてその点もどういう意味でありましたか、お聞かせ願いたいと思います。
  33. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 七十一億で早場奨励金は打切るということにしますと、冬期の数量を抑えなければなならん、各期に第一期なら第一期、第二期なら第二期、供出をしようとされる人はもう予算がこれでおしまいですから、これで打切りでございますというようなばかなことはとれない。従つて数量の制限はできないということを申上げたのであります。
  34. 松浦定義

    ○松浦定義君 米価の問題は先ほど江田君が指摘したように、昨年より安いということについては、もう全農民相当の決意を以て現在農家が主張しておる一万二千五百円、これは飽くまで実現したい、こう意気込んでおることはすでに農林大臣も御承知のことだと思うのですが、本年は特に昨年の全国的な冷害凶作の中から政府に対しては相当大きな負債をしておるわけなんで、こういうものを少しでも何とか十期に支払いしたいというのが現在の農家の考え方なんです。ところが不幸にして本年もやはり東北或いは北海道の一部は、先ほど農林大臣のお考えでは大体全国的に相当まあいいというような御見解のようですが、私どもの見方ではそういう一部であつてもそういう地帯がある、そうしますと、そういうような府東においては相当現在の米価に対しては特段な関心を持つているわけ百ですが、そうでなくても、先ほど申上げましたように、今日までのいろいろ農家の安い米価のために受けておる負債の処理に対しては、何とかこの際一つ我々の期待するような米価というようなことをやつておるのですが、政府としては今度の決定に当つて生産者の希望する一万二千五百円に対しては何ぼかその意思を汲んで御決定になつておるのか、全然そういうことは考えないで、先ほどのようにあらゆる角度の意見を徴してというような程度でおきめになつて決定されておるものか、この農家の実際の要望しておる生産者価格をどの程度まで農林大臣としてはお考えになつておつたかどうか、この点を先ず聞きたいと思います。
  35. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私といたしましては、とにかく先ほども申上げますように、食糧増産自給度の向上ということは国家存立に繋がる自立経済達成の基本的な私は条件だと思つております。従つてこの食糧増産の目的を達すると申しましても、予算を使つたからどうとか、こうとかいうことは無論ありますけれども、結局農民各位が一反歩から一粒でも余計とつて頂くという、増産意欲が働かなければ目的を達し得るものではない。従つて農家の方々がともかくも喜んでとまで行かなくても、とにかくまあまあこれならばこの上働いてもという気持を持つてもらうような価格でなければならんという考えを私は持つているわけでございます。そういうことで、従つて一万二千五百円という要望もまあ私は数多く受けております。決してそれに目をつむつているわけじやございませんけれども、先ほど来申しまするように、筋を立てた米価を作つて農民各位の御理解を得たいということで、こういう案を作つているわけでございます。
  36. 松浦定義

    ○松浦定義君 先ほどそういう御意見はまあ聞いたわけですが、政府のお考え方は非常に結構なんですけれども、そういうお考えだけで、而も迷惑をするのは農家で、そういうお気持は一つも価格の間に現われて来ない、従つて私は根本的にまあ政府の農業政策というものが私は全く有名無実だと言つても、これは過言でないと思うのであります。現存の大臣はそういうふうに誠意を持つて昨年も随分努力されていることはわかるのですが、併し昨年も折角努力してもそういう結果になつたから、本年も十分努力するが、併しその結果は今のお説のようなことにはなかなか日本の農家がなつて来ないと思います。そういう点を私は今考えながら申上げておきたいのですが、いろいろまあ日本の現在の食糧事情から見まして、当然このような事態の形で進められますならば、ここ三年や五年経ちましても、決して食糧自給度の向上どころか、私はむしろ今よりも減退するのじやなかろうか、農民の気持がそこに離反して行つて減退するのじやなかろうかと思いますので、私はこういう意味から見ますと、今の政府考え方が若しそうであるとするならば、恐らくこれからどういう政党が政権を取ろうとも、今の考え方よりも私はマイナスになるような考え方は私は絶対ないと思います。併し今までの政府のあり方を見ておりますと、そういうふうに努力すると言いながらも、やはり結果的にはそういう結果が出て来ない。従つて私は幸いにしてこうして長期に亘つて農業政策をやつておられる現吉田内閣はやはりいつまで続けられるかわかりませんけれども、少なくとも終戦後のああいう困難な状態を切抜けて参られたから、いろいろ農村事情をよくわかつている、そういう意味で一つ私は国家の基本となるべきこの農業政策に対しまして、やはり農業基本法的なそういうものを制定されるような御意思があるかないか、無論私はなければならんと思いますが、今までの体験から言つて、この点だけはどのような政党が政権を取ろうとも、断じて日本の現状から育つてはこれは変ることはできない、教育の根本に教育基本法がありますように、教育と農業というものに対して私は非常に日本の国を左右する基礎になると思いますので、私どもとしては、極力その点に副つて農業基本法の制定というものについて検討をしなければならんと思いますが、幸いにまあ農林大臣はそういうふうに今年の米価の決定に当つて農民の意思を十分汲んで、而も農民が喜んで農業経営をやれるようにするためというためにきめられた米価がこのようでありますから、これではとても私は見解が相違をいたしておりますから、せめてそういうような意味に基いても、法律を作られるならばそれを基本にして今後ますます私は向上発展の遂に向うようにしなければならない、こう思うので、参考のためにそういう点についてお考えがありましたら、一つお聞かせ願いたいわけです。
  37. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私は現下のこの全体の日本の産業が当面いたしておりまする事態、特に中小商工業の実際の事情等からみましても、決して全体の上からこれを眺めましても農民に不当のしわ寄せをしておる、納得をできない価格を作ろうとしておるということは、私は単なる感じからいたしましても、そういう考えを持たないわけでございまして、無論一方において一万二千五百円という掛け声を以て、無論これにはそれを称えられるかたには相当の根拠を持つて計算もされておると思います。そういう声が一方に上つておりますから、従つてそれと相当離れておる価格であれば、何を申しましても五俵、十俵の供出によつて家計を維持して行かなければならん農民の零細なる生活からいたしまして、相当のこれが影響があるということは決して否定するものじやございませんけれども日本経済の実態の中において、この米価が農民に更に不当なしわ寄せをするというようなものではないと私は確信をいたすわけでございます。なおこの農業基本法的な、松浦さんの構想がどういう構想でございますか、いろいろこの農業の進歩改良を図つて参りまするための特殊の立法がありますれば、これらを統合しての立法を必要とするかどうか、これは一つ十分研究をさして頂きたいと思います。
  38. 松浦定義

    ○松浦定義君 今の大臣お話ですと、決して米価は安くないという観点に立つておられるようですが、先ほど大臣は米が一番安いんだというお話があつた、それから更に又消費者米価を上げてもいいんだというような御見解、そういうことからみますと、私は決して米は高い、生産者米価は高いんだという結論にはならないと思うのだ、いろいろ諸般の事情等もあるし、或いは予算の関係等もありますが、概して今の食糧事情から行きますならば、もう少し農民の希望する米価の設定があるならば、供出もスムースに行きますし、或いは又消費者にしましても一部というか、相当数が私はまあ闇買いをしなければならん、そういうふうな事態は当然なくなる、闇で売るような米も全然なくなつて、全部がルートに上る、こういうふうに考えておりますので、こういう点はまあ余り、議論になりますからやめたいと思うのですが、先ほど江田委員の御質問の中で出ました本年は減収加算の必要はないんだという御見解、私は減収加算、去年の制定につきましても、これは決して全国一律ということは、これは公平なものでないというふうに言つてつたのですが、そういうようないろいろな事情からそれは止むを得んといたしましても、今年はそういうような必要はないというのは、大体において今の情勢では各府県とも或る程度昨年よりは上廻るというような見込みのように見ておられるから、そういうことになると思うのですが、特に私は東北の青森、岩手の三陸地帯或いは北海道のまあ全体、特に北海道の山岳地帯におきましては、もう昨年から見ましたら雲泥の差がある。今年は凶作であつた、それは農林統計の上からも十分おわかりになつておると思いますが、こういうような地帯に対して、やはり減収加算というものは昨年全国的な意味から言つて或る程度そういう不公平があつてもそれは実施できたにかかわらず、本年は歴然としてそういう事態があるにもかかわらず、それをしないで、今お話のような農民の希望しないような米価一本でそれを押して行つてしまうのだ、それは超過供出或いは早期供出というものがありましてもそれは出せない。米は何ぼ出してもらつても、農家としてはこれはどうにもならないのでありますから、そういう事態が今後完全に私どもあると思いますし、若しあつても併し減収加算というような制度は本年は絶対やらない、その他それに代るような方法があるかどうか、又それについてお考えになつておる点があつたらそれを一つお伺いしたい。
  39. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 米価は全国一本の価格になつておるわけでありますが、全国単位の状況において考えなければならん。北海道は北海道、青森は青森、新潟は新潟の米というように区画が例えば県単位できめられておるというようなことであれば、松浦さんのような御意見が出て来ると思いますが、とにかく全国単位として幾ら従つて価格は幾ら、こうなるわけでございますから、無論東北、北海道の場合、十勝でありますとか、北見でありますとか、昨年以上の或いは凶作を、減収を来たす地域も月地的にはあるわけでございます。併しながら、全体といたしてみまする場合に、減収加算を要するような収量、収穫になるかどうかということは、これは全国的に見なければわからんことでありますから、例えば局地的に北海道の十勝なら十勝地区が減収、従つて十勝地区の米は減収加算を付けるというような制度はとつていないわけでございますから、その点はそういうふうに御理解を願いたいと思います。従つて先ほど江田さんに申上げましたように、全国単位として見ますれば、本年は減収加算の必要は生じないであろうと想定をいたしておるわけでございます。
  40. 松浦定義

    ○松浦定義君 今大臣お話になつていることは私もわかつておることなんで、でありますから、そうした大臣がすでに或る一部にはそういうようなことがあるのだとお考えになるならば、今申上げましたようなほかに何かそういうことについては考えなければならんと思いますが、それに代るようなお考えとしては現在は何らお考えになつていないのですか。
  41. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これは私はあの局地々々において相当考えなければならん、措置を講じなければならないと考えておりますが、その点は事務当局においても手ぬかりなく準備をいたしております。
  42. 松浦定義

    ○松浦定義君 まあ一番手取り早くその問題をきめるのは共済金の問題だと思うのですが、この問題につきましても、すでに実態が明らかになつておるということになれば、昨年も全国的な問題で相当問題になりまして、年内支払いということで随分まあ当局も苦労されたと思うのですが、特に本年などはその問題についてもやはり昨年同様に年内、むしろ年内と言いましても、最も早期というような意味でお支払いになられるようなお考え方であるかどうか、この点を一つお伺いいたします。
  43. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私としてはできるだけそういう措置を講じて参りたいと思つております。
  44. 森八三一

    委員長(森八三一君) 農林大臣に対する質問はまだたくさんおありになると思いますが、一時半から衆議院の農林委員会に出席の予定もあるのでありますので、問題は尽きないと思いますが、一応この程度にさして頂きます。
  45. 森八三一

    委員長(森八三一君) 次に、昨日問題として残されておりました肥料価格の件を議題にいたしたいと思います。  この件につきましては昨日の委員会で農林、通産両省の事務当局から一店の克明を聞いたのでありますが、その際肥料審議会の運営等に関しまして江田委員の質問に対して問題が残されておりますので、本日は大臣御出席でおりますので、大臣の御所見を伺うことにいたしたいと思います。なお経済審議庁からは松尾調整部長、通産省からは柿手肥料部長が出席されておりまするので、御報告をいたしておきます。江田委員、昨日の要旨を御発言願いたいと思います。
  46. 江田三郎

    ○江田三郎君 これは昨日農林省の経済局長だけお見えになつているときにお尋ねをしたわけですが、御承知のように、審議会が学識経験者五名を欠いたままで発足をしておる。五名欠いたままで発足をするという行き方がいいかどうかということにつきましては、或いはそういうような審議会で採択された結果が有効であるかどうかということについてはいろいろの見解がありますが、その点は別にいたしまして、先立つてこの、五名の欠員に対処してオブザーバーを五名入れられたわけです。オブザーバーというものが一体どういう資格で入つているのかということが先ず我々にはわからないわけであります。成るほどオブザーバーというのは決定権を持つているわけでありませんが、決定に参加するしないは別にいたしまして、その審議会の審議の過程におきます発言というものは、その結論がどちらへ行くかということに大きく影響するわけでありまして、従つてそういうオブ、ザーバーというようなものをなぜお入れになつたのか、どういう根拠でお入れになつたかということが一つの疑問であります。それから更にそういうオブザーバーを入れるといたしましても、その間におきましていろいろのいきさつはあつたようでございますが、結果的には衆議院の自由党、改進党、両社会党という各政党の代表という形で入つておられるようであります。併し若しそういうような各会派を入れるということになるならば、参議院の緑風会というものは一体どういうようにお考えになつておるのか。今まで衆議院或いは参議院から単独でこの国会を代表して出る委員の場合は別にいたしまして、ただ衆議院とか、参議院とかいう枠なしに、国会からというような場合には、従来いつでも衆議院だけでなしに、参議院のほうもそれに参画しているということは恒例になつているわけでありまして、これは正式の審議会の委員ではございませんけれども、先ほど申しましたように、重要な働らきをする役判でございますから、それをなぜ、この参議院の各派代表といたしましても、緑風会という存在があるのを、それを無視されるよりな決定をされたか、その点につきましても我々としては非常に不満足に、了解に苦しむのであります。若し仮にこれがオブザーバーでなしに、上正式の審議会委員という形で五名を参議院から一人も出ないという形で国会の議決を求められた場合に、参議院はどういう態度をとるかということは農林大臣も想像されることができると思うのであります。これは農林省だけの問題でなしに、経済審議庁或いは通産省、それぞれ関係しておられるようでありますから、そこに至るところのあなた方のお気持がどういう点なのか、今私が申しました疑問点にお答え願いたいと思います。
  47. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 肥料審議会を発足するに当りまして学識経験者の委員五名を留保いたしましたのは、この需給安定法が成立いたしまする審議過程におきまして、原案が修正になつて、五名の増員修正が行われ、明文では講つてございませんけれども、修正の趣意は国会議員の中からあとの五名を出すという含みがあつたように承知をいたしておるわけでございます。併しながら、肥料審議会は法律実施に伴いまして極めて重要な車引の御審議を願わなければなりませんし、従いまして、この国会から、国会議員の中から委員を出すことができないという物理的の理由によつて審議会それ自体を成立せしめないということは、機能を持たないということは極めて不穏当であるわけでありますから、一応予定いたしておりまする国会議員正名の委嘱につきましては、次期国会の早々にお願いをいたす考えでおるわけでございます。併しながら、年間の需給計画を策定する、或いは肥料価格を、硫安価格を設定するという極めて重要な審議事項に際会をいたしておりますので、かたがた国会内におきまする御意見もありまして、私どもとしては実は五名という、五という数字が今日の各党勢力に按分をいたしまする場合に極めて取扱いのできにくい数字になつているわけなんであります。これは併し国会が開かれましたならば、各党各派におかれて一つ十分御相談を頂いて結論を出して頂きたい、今日もさように希つているわけですけれども、併し只今申上げましたような重要事項の諮問決定をせられるという段階において、国会の、而も委員の中には当然将来国会議員が入られるというそういう性格の中において、全然国会側の御意見を聞く機会を持たないということも実際問題としては妥当ではない。私はこれも実現しませんでしたけれども、一応素直に妥当なところと考えましたのは、両院の最もこの審議会及び審議事項に関係の深い農林、通産の両委員会を代表せられる意味において、四委員長が若し意見を発表して頂くというような、審議会の審議に御協力を頂くというようなことが、一番素直に考えて然るべきではないかという考えも実は持つたわけでございますけれども、各党間におかれて、それでは異論があるということで、結局五名の国会議員の、私どもとしては衆参というような区別は全然持つてはおりません。各党の間でお話合を願つて、併しどうしても五人ということになりますというと、すべての何が、あれはどの委員会、審議会を見ましても、そういうふうには行かないのでございます。結局各党の話合でああいうふうになつておると承知をいたしておりますが、直接には私は携わつていないわけで、ただ審議会に対しましては経審長官、これは審議会の主管でございますから、経審長官を通じまして国会内の意見をできるだけこの審議の過程に十分間いて頂くようにという強い要請をいたしたことは事実でございます。従つてそれから先は肥料審議会と各党間の話合でああいうふうになつておると思いますが、お話のように緑風会から出ておられないということは、実際問題として私は不便であると思つております。併し数の制約があり、而もオブザーバーだから六人でも七人でもいいじやないかと私は考えているわけですけれども、なかなか行かれるかたはそういうわけに行かんらしいので、五人でなければいかんというようなこともあつたようでございまして、この取扱いは国会の開会早々において一つ調整、結論を得たい、こういうふうに考えております。
  48. 江田三郎

    ○江田三郎君 何か今の大臣お話を聞いておりますと、川会議員に重要な問題だからして審議に加わつてもらうというお気持はわかります。併しそこから先の人の選び方については、これは各党代表者の責任のよに受取れる発言だつたわけですが、これはやはり審議会を主管しておられるところの政府のほうの責任でオブザーバーをお入れになつているわけです、だから誰を入れるかということについては、最終責任は経審長官であるか、農林大臣か、通産大臣か知りまんけれども政府責任があるわけです。或いは政府でないならば、この肥料審議会の会長の工藤さんに、責任があるということになるわけです。各党の話合できめたのだからといつたところで、これは各党が責任を持つというわけには行かんと思う。而もその間には、決定に至るまでには政府の、経済審議庁の政務次官も我々に意思表示をされたことがあるわけです。政務次官の考え方で行くと、衆議院の農林委員五名、通産委員五名だけを入れるのだ、こういうことを公式か非公式かわかりませんけれども、我々の会合へ来てそういう意思表示もあつたわけです。とにかく決定は政府がやつているわけです。或いは審議会長の工藤さんがやつているわけです。ところでそういうような決定をされるときに緑風会が入つていない。少くとも各会派という場合に、参議院の有力な会派である緑風会が入つていないというのは、ただ不便であるというような問題ではなくして、別な角度から言えば参議院軽視ということにもなると思うのです。あなたのほうでは、これは選んだのはおれたちのほうじやなしに各党派が選んだと、むしろこれは不便に感じたというような受取り方をされているわけです。
  49. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これは江田さん、参議院を軽視するというような私自身に気持がないことは、一番最初に御相談を申しかけたのは、両院の委員長をそれぞれ一つ御審議に御協力を願うようにしたらどうかというこを申していることからも一つご了承を願いたいと思います。それから無論審議会の審議を効果あらしめるようにオブザーバーと言いますか、何と言いますか、そういう形で出て頂いて実際御審議に御協力を頂いておるようでございますが、あなたとあなたとあなたと出て下さいというようなことでやつているんじやないのでございます。各党で御相談をされて、従つて例えばあなたのほうならば、あなたがお出になるかどなたが出られるか、それはあなたのほうの党でおきめ頂かなければ、ああいうふうになつて参りますと、話の過程にいろいろ通産委員の中から五人とか、農林委員の中から五人とか、いろいろ過程では私が言いましたように両院の委員長さんに出て頂くとか、いろいろ話はありましたけれども、そういうことは結局まとまらんということで、結局各党間で御相談になつて、私が聞いておりますところでは、それぞれ党の執行部からの、うちのほうからこう、うちのほうからこうというようなことで出られておるということを承わつているわけでございますから、私のほうからどなたとどなたと言つておいでを願つているわじやないわけです。それと緑風会の関係は、先ほど申しましたように、数が五人、オブザーバーで、いわゆる正式委員じやないのだから、六人でも七人でもいいじやないか、私はそう思つてそう申しているわけですけれども、それはなかなか出られる各党派のかたが御承知にならないということで、そういうふうになつているわけです。来国会の早々にこれは調整、結論を得たいと思います。
  50. 江田三郎

    ○江田三郎君 ちよつとあなたは感違いしていられるのです。例えば社会党から誰が出るということはどうでもいいのです。そんなことを私は言つているのじやない。併し自分のほうから指名したんじやなしに党派のほうできめて来たんだという場合に、少くとも国会を代表するというその建前で行くと、従来のいろんな委員会委員の選ばれ方から行くと、国会を代表するという五人なり七人なり、何ぼか知りませんけれども、そのときに緑風会というものが入らないやり方というものはないわけです。若しあれを妥当なものとして肥料審議会の委員は、仮に今の五名の人を決定してくれといつて次期国会に議決を求められたときに、参議院はそれに対してどういう態度をとるでしよう。恐らくそのときに、参議院無視という空気が各会派を通じて起つて来るに私は違いないと思う。仮にその中には社会党から私が出ておりましようとも、或いは自由党から宮本さんが出ておいでになつたところで、やはり緑風会というようなものを抜きにしたやり方というものは、今までの例から言うと誠に異例の措置なんです。それは各会派がきめたんだと言われますけれども、各会派はそこへこれを出してくれということを希望するのであつて、それをよろしい、オブザーバーとして入れましようというのは、農林大臣であるか、審議庁の長官であるか、通産大臣であるか、或いは工藤会長であるか、誰かがやられるわけです。そういうときにあなた方政府のほうでは緑風会を入れない、そういうふうな、而も結果において衆議院だけというような行き方を、そういうメンバーというものを妥当としてお認めになつたかどうかということなんです。オブザーバーの任命はあなたのほうでされるのでしよう、政府のほうで………。
  51. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 任命も何もオブザーバーですから……。
  52. 江田三郎

    ○江田三郎君 任命も何もしないなら、一体誰が行つて勝手に発言してもいいということですか。そんなばかなことはない。
  53. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 任命も何も、任命ができればそんな妙な形でなしに堂々と任命ができるわけでございますから、任命できないから……。併しながら、重要事項を審議するわけですから、当然将来国会議員も入られるわけですから、あらかじめ国会議員の御意見も……、あなたの言われることは、私は全然異議ありません。その通りなんです。その通りなんですけれども、今出ていられる五人のかたが、五人以上は我々は出ない、こう各党代表のかたが言われているという実情からそうなつているわけで、これはどうしても正式に任命いたしまする場合に各党間の御意見を調整して頂かなければ、私のほうとしては簡単に任命はできないわけです。
  54. 江田三郎

    ○江田三郎君 私のほうは、あなたのほうで今のようなきめ方は妥当を欠いておると、こうお認めになつていればそれでよろしい、ただ便利が悪いというようなことなり、それじやちよつと変じやないかというのです。
  55. 保利茂

    国務大臣保利茂君) とにかく学識経体者の中に国会議員を含むということは、まあいろいろ理窟をこねてみましても、結局各党派の代表に出てもらうということになるわけですから、実際問題といたしましては……。そうすれば、できるだけ広く各党派から出て頂くということが当然のことだと思つております。ただそうでありますけれども、それならば現在のあの法案が修正議決せられましたときの会派勢力というものも、今日と余り変つていないわけですから、それがどうもはまりきれないというような修正に実はなつているわけなんです。そこで或いは法律の修正或いは改正等が伴うかと存じますけれども、いずれにしても私どもとしては緑風会が御参加を願い、緑風会の所属の中のかたから御参加を願うということには私どもとしては全然異存がない。又そうあつて欲しいと思つておるところでございます。
  56. 森八三一

    委員長(森八三一君) ただ、今の問題につきまして私も一つお伺いをしておきたいのですが、五名という一応の数の制約があるので非常に御苦労を願い、御苦心を願つておるお気持は、只今の質疑応答で極めて明確になりましたし、私もそのことはよく了承ができます。できますが、ただその五名というものをおきめになる理論的な根拠を、衆参両院の各会派別員数を合計して、その合計の数に五を按分したという結果が、只今オブザーバーとして参加されておる会派のそれぞれの割当数なにつているというように聞いてもおりまするし、政府はそういう方針で各会派別の数を決定し、それぞれの会派に御通達になりまして、各会派から推薦をさすという話であるのでありますが、両院という二院制度の建前を考える場合に、この種の審議会、委員会等の委員なり、或いは参考意見を聞く者なりをお選びになる場合に、両院の議員数を合計してその数に按分するという考え方が、これは両院の二院制度の本旨から考えて非常に奇異なものになるという感じを持つのでありますが、そういうような基本的な態度というものはどうお考えになるのか、今後もこの種のものについて、そういう考え政府は持つて行かれるのかということをはつきりさしておいて頂きたい。
  57. 保利茂

    国務大臣保利茂君) どうもこれは私にはよくわからん点があるのでございますが、いろいろのこの嘉言会に、三人とか、五人とか、七人とかいう、これは何も初めての例ではございませんし、従来にも各種委員会に、そういう出方で国会議員から出られておる事例が数多くあると思つております。で、政府のほうとしましては、これはもうとにかく国会議員で学識経験の相当あられるかたをできるだけ広く網羅するということは当然考えなければならんことでありますが、実際の扱いとしては、各党派の話合で、それじやこういうふうにやつてくれということで話は大体来ておると今日まで私は了解しておるわけでございます。いずれも次期国会でどうしても各党派に改めて御相談をいたさなければならんと思いますから、各党派におかれても、一つその問題は政府だけに……もう党派抜きで考えろということであれば又別でございますけれども、党派と関連して、(江田三郎君「党派というときに一つ忘れているから困る」と述ぶ)忘れてはいないのですけれども、はまらないのだから、それをはまるようにして頂くか、どうか。そこのところはとにかく国会で御協力頂かなければ、各党派で御協力を頂かなければ、私のほうだけでどうこうということはちよつと申上げられんと思うものでございますから、十分研究さして頂きたいと思います。
  58. 森八三一

    委員長(森八三一君) 従来の例によりますると、そういう非常に不便な数であるにしても、衆議院から何名、参議院から何名という数がきまつて、そのきまつた数を、衆議院内部では衆議院内部の各党派でどうこうするのだ、参議院内部は参議院内部の各党派で相談をする、そうして更に調整を両院で付けて行くという順序だつたのを、今度は頭から各党派別に両院を合計したものでお考えになつているというところに、過去の慣例を破つている。而も両院の議員数を合計して、それに按分するというような建前をおとりになるということは、二院制度の建前上如何かというふうにも考えられますので、これはお話のように正式に委員ではございません。正式任命の際は、そういう点を十分不合理のないように調整をするというお話でありますので、まあこれ以上この問題は私は論議をいたしませんが、今度おとりになりました態度が、過去の慣例を破つて進行せられたが、それから両院の会派別員数を合計してなんというのは実に不可思議千万な話なんです。これは建前上両院を合計するなんということは、これはおかしな話だと思うのです。このことは政府がそういう決定をしたということを正式に承わつておりますので申上げたのでありますが、十分一つ将来に向つて善処を願いたいと思います。
  59. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 只今委員長の御注意は私も非常に御尤もだと思いますから、十分考慮さして頂きたいと思います。ただこの衆参両院を通じた各勢力の数字を按分して云々ということにつきましては、私はさようなことに参画いたしておりませんから承知いたしておりません。従つてそういうことがあろうとは私は考えておりません。その点は御了解を頂きたいと思います。
  60. 松浦定義

    ○松浦定義君 まあ今の問題は大体話合がついたようですが、やはり今度の国会に承認を得られる場合には、恐らく過去の例から行きますと、現在出ている人はそう私は簡単に変えられるということは各会派ではないと思います。従つて既成事実として、これはやはり今の五人が当然もう話題に上つて来ると思うのですが、その場合には参議院というものはどうしても今の話で置きざりを食うということになる。それは非常にまあ今後の問題もあるし、過去の問題もあるので、これはよくないことなので御善処を願えると思いますので、先ずその前提として、そういうふうな既成事実を作らせんがために、少くとも緑風会の問題は、あの五人できめたのだから悪いのだ。大体そこを考えて六人でどうというふうにしておけば、これは緑風会を入れるために出すというふうに、各会派は……、緑風会の勢力から言えば当然の話だというか、御尤もなことで、それは私申しませんが、今聞きますと、あの自由党が二名、改進両社が一名ずつ、それで五名になつておるのですが、自由党の三省のうちで、一名だけを参議院の自由党から出してもらいたい。これはほかの党のことを申上げるのはおかしいと思うのですが、これは参議院として重要な問題、例えばこの肥料の価格の決定でも、これはやはり参議院だつて随分慎重にこれは審議したのだから、この自由党の諸君もたくさんおられて、これは農林も或いは通産もどちらでもいいですから、相当たくさんの権威者が、衆議院よりも私は相当エキスパートもおられると思うので、これは党内の話だからよくおわかりになると思うのです。そういう点を一つ自由党の政府ですから、一つ通産大臣は参議院ですし、その点一つ農林大臣も衆議院のほうからお話を願つて、何とか参議院のほうへ一人譲ろうじやないかということをしてもらうと、若しこういうことが既成事実となつて現われても、割合に話がスムースに行くのじやないかと思うし、そういうことでなくて、もつと幅広く考えてもらわなきやならんと思うのですが、先ず第一段階として、それだけ私は一つ農林大臣として御善処願つたほうが、私も審議会のこれから開会までの間に、次期国会の開かれるまでの間に進められる段階としても非常にいいのではないか。私が聞くところによりますと、まだはつきりきまつていないような面もある。ここ一日、二日くらいの間にきまるといつたような面もあるといつたように聞いておるのですが、若しそうしたことが事実だつたら、若し変えられるようだつたら、参議院から出してもらいたい、こういうことは私個人的な意見ですが、一応希望として述べておきます。
  61. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは只今議題になつておりまする肥料価格の件につきましては、この程度にさせて頂きまして、暫らく休憩をいたしたいと思います。  なお午後の会議は二時半から開催をいたします。なお二時二十分から委員長理事の打合せをいたしますが、理事のかたは二時三十分に御参集を頂きたいと思います。  暫時休憩いたします。    午後一時三十九分休憩    —————・—————    午後三時二十三分開会
  62. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは休憩前に続きまして会議を開きます。  最初に農林関係台風被害状況及びその対策の件を議題にいたします。  過般来数次に及び台風によりまして相当な被害がありました。誠に遺憾に堪えない次第でありまして、被災者に対しましては衷心お気の毒に存ずる次第であります。本日は農林当局からその被害状況及びその対策等につきまして説明を聴取し、御審議頂きますると共に政府の善処を求めることにいたしたいと存じます。先ず、最初に農林当局の情勢報告を願いたいと存じます。
  63. 桜井志郎

    説明員(桜井志郎君) お手許に資料を差上げておりますが、御承知のごとく最近台風十二、十三、十四号、三つの台風が来襲いたしました。十二号と十三号とは名前が本土に接近いたしましたときには逆になりまして、十三号のほうが先に到達し、十二号のほうが遅れて参るという現象を呈しました。只今どもの手許に判明いたしております数字は、資料で差上げました通りでございますが、十三号台風では総計といたしまして、農地関係で、入植施設を含めまして三十五億強の被害になつております。林野関係の崩壊地、治山治水、林道、合せまして約十五億、水産関係で十億強で、合計いたしまして六十億七千七百万、これだけの被害報告只今到達いたしております。なお十三号につきましては、十二号より早く到達いたしましたのと、それから十三号自体の被害が極く比較的軽微でありまして、実際に現地の被害を十二号と区分することが困難でありましたが故に、この被害報告の中に十三号を包含いたしておりますことを御承知頂きたいと思います。  それから十四号台風は十二号に劣らず中心示度も当初は九百五十ミリバール、非常に大きな台風で近畿から関東にかけて上陸はもう必至であるということで非常に緊張した形で迎えたのでありますが、幸いにも潮岬から房総をかすめて三陸沖へ去つたというむしろ僥倖的な奇蹟的な現象で、受けました被害は予想より相当軽微に済み、施設関係の被害は、これもお手許に差上げております通り農地の関係で直轄関係を含めまして十八億六千万強、林野の関係で十億強、合計二十九億程度の被害が只今到達いたしております。こうした形で出ておりますが、今後精査の結果、なお多少被害報告としては増加する見込みでございます。判明次第逐次報告いたさせておりますが、こうした形が出ましたのは、一つは昨年の非常に大きな災害に鑑みまして、今回の十二号、十四号、いずれの場合も事前に、農林省といたしましては放送局等の力も借りて事前に警告を発する等、できるだけの手を講じて頂きましたことも相当被害を軽からしめる結果を招来いたしたかと思つております。こうしたものを現地におきましては逐次現地査定を進めまして、私どもの今の計画では、今後災害が若し出ますれば、この計画は狂うかと思いますが、只今計画では十月一杯にこれの現地査定を終了いたしまして、大蔵当局と予算交渉を開始するということにいたしております。  以上極く簡単でございますが、経過を御報告申上げました。
  64. 森八三一

    委員長(森八三一君) なお続きまして官房長から農産物に対する被害等につきまして判明しておる部分の御報告を願うと共に、対策について考慮されておりまする情勢の御報告を願うことにいたします。
  65. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 只今施設の災害状況について建設部長からお話がありましたが、農作物のほうは実のところまだはつきりわかつておりません。ただ状況といたしましては、いずれの場合も風と雨とが必ずしも一緒でなく、且つ風の強い時期が夜中になりましていわゆるフエン現象を各地で起しておるのであります。フエン現象というのは夜中に、何と言いますか、温度が下つて、それに対して稲が冷温に対処しておるところに熱風が来ることによつて、品種の状態になるんだそうであります。それと今度の場合は海岸地方についてはやはり潮風の害が相当出ておるのであります。只今統計調査部において調査をいたしておりますので、来月早々或る程度の数字をつかむことにしております。十二号の場合、三十日までに一応とるということにしましたが、二十日まででは余りにも稲の白糖の状況がつかめなくて、それでは却つて何と言いますか、対策にならないというので念を入れて調べておるのであります。十三号のほうは多少早く出ると思いますけれども、今月末くらいに出ると思います。十四号がすぐ追つかけて来ましたので来月にならないとできないと思います。いずれにし、ましても、大体の見当を申上げますと、今度の台風が強く通つた地帯の米の生産高が平年作で二千万石以上になつておると思いますので、それを元にして一割の被害であるか、二割の被害であるかということによつて、今言われておりますのは百万石乃至五百万石の範囲であろうという答えにしかならんのであります。例えば宮崎、大分或いは四国、中国、東海方面では、先ほど申上げました白穂の被害の状況が非常にひどいのであります。その拡がりがどのくらいになるかということを調査いたしておりますので、もう暫らくお待ち願いたいと思います。対策といたしましては、先ず保険金の概算払については従来の例に倣いまして、これはどうしてもやらなければならないので、今その準備を進めております。それから営農資金でありますが、これはこの前の議会で継続審議になつております。この春の凍霜害等の法律の改正の中に、今度の台風の被害に対する対策も込めることにいたしたいと考えております。そうしまして、利子補給損失補償の金を出したいと、こういうふうに考えております。県にはそのつもりで準備するようにということで、県から被害の報告が来た都度申しております。そのほか丁度今度は例えば代作とか、そういう問題は間に合わないので麦植付ということにすぐ入つて行くのじやないかと思つておりますが、ほかの作物については例えば果樹等についてはまだ被害状況はわかりませんので、今のところどういう対策を講ずべきかということもまだ研究中でありまして、結論を出しておりません。大体以上であります。
  66. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今の官房長、建設部長の状況報告に対しまして御質疑がありますれば、順次御発言を頂きたいと思います。
  67. 岸良一

    ○岸良一君 建設部長さんにお伺いしますが、今度の台風でやられたところで昨年も台風でやられておるところがありますか。
  68. 桜井志郎

    説明員(桜井志郎君) 現在のところまだ正直に申上げまして私のところではつまびらかではございません。併し海岸地帯が或る程度やられておるという関係からいたしまして、例えば近畿、東海で昨年の十三号台風でやられたところで、まだ工事中のものが今度の十四号台風で或る程度やられたということは想像にかたくないのであります。或る程度ダブつておるということがあつたのではなかろうかと思います。
  69. 松浦定義

    ○松浦定義君 台風と直接関係はないのですが、今年の作況のことですが、統計調査部のほうで、やつておられるようですが、最近のあれを聞きますと、全国的にはやや平年作に近いといつた見方をしておられるようですが、特に東北大県の一部と北海道が相当冷吉型であるようですが、極く最近の数字ではそうした非常な冷害が予想されるのですが、この作況をどういうふうに見ておりますか、伺います。
  70. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 概数を申上げますと、この間の発表では全国的に見て九八%ということになつております。その中で北海道、青森等はずつと低く、西のほうは一〇〇乃至一一〇〇を超えておる県もあつたと思います。それは台風の前の状況でありまして、台風後の状況は先ほど申上げましたようにまだつかんでおらないのであります。なお県別については……。
  71. 野田哲五郎

    説明員野田哲五郎君) 前の時の資料につきましては当委員会にも差上げましたのでありますが、大体水稲におきまして、北海道八一、東北九三、関東以南は一〇〇前後というような状態になつております。東北につきまして指数が下つておりますのは、主として太平洋岸の関係でありまして、西のほうの日本海岸の秋田、山形というところは、かなり平年作に近い状態を示しておつたわけでございます。それで私のほうは規定によりまして九月十五日現在の作況を調査中でございまして、本来ならば九月三十日又は十月一日に発表いたす予定でございましたけれども、丁度その前後に台風が二度も参りましたので、それらの調査の関係がありまして、発表を十月五日前後にいたすことにしております。只今資料を取りまとめ中でございますので、ここで御説明を申上げるまとまつた数字を持たないわけでございますが、一般的に申上げますと、台風の被害地域を除きますと、前の作況よりもだんだんよくなつて来ておるということが言えますが、北海道におきましてはだんだん悪くなつて来ておるというような傾向であるようでございます。なお十月五日には九月十五日現在の作況で御説明ができるかと思います。
  72. 松浦定義

    ○松浦定義君 まあ大体作況の程度はそれでわかつたのですが、ただ政府施策の点ですね。先ほど官房長のお話では台風による被害については早急に保険金等の概算払を実施したい。その他営農資金については五、六月の凍霜害法に準じてやりたい。御承知の通り凍霜害法に準ずるのは北海道の雹害とか、或いは参議院のほうではまだそれが決定いたしませんので、今の情勢ですと、臨時国会も十一月の末、恐らく十二月になるのではないか。法律的にはどうにもならないので、その間にそういう指示に基いておやりになるというようなことは非常に結構だと思うのですが、ただ保険金の支払等はやはり被害が昨年から見たら或る程度少いと思うのですが、台風の影響と、更に今の説明のように東北、北海道のそうした冷害に対する保険金の概算払といつたようなものも合せてこの台風の被害と同じような形でお進めになるのか。全然この問題を、例えば今の部長のお話のように十月五日の結果に基いて、それから順次その線に行くのだというお話か、すでに今そういうような構想でおやりになつておりますか、その点どうなつておりますか。
  73. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 保険金の概算払の点は、何と申しましても作がきまらないといけませんので……、もう東北、北海道ではきまつたと思いますので今準備していると思います。それから営農資金のほうは、今継続審議中の法律が全体に適用されるものとして、今資料を整えて順次検討打合せをしておるようなわけでありまして、ただ北海道の問題は、稲、麦以外に畑地の分が非常にひどいので、それについて十分な対策が見つからないので、更に私のほうと北海道庁ともいろいろ打合せもしておるようなわけであります。営農資金だけで十分な手が打てないときにどういう手を打つかということについては、なかなかいい手が見つからないのが偽わらざる状況なのであります。
  74. 森八三一

    委員長(森八三一君) 先刻官房長から、今回の台風を中心としての対策として営農資金の融資の問題と、農業共済金の概算払の問題はお話がありまして、よく了承したのでありますが、今回の災害のために食糧が一部保有ということに転落する農家が相当に発生すると思うのでありますが、昨年の災害の堆合には、そういうふうな転落農家に対しましては、再生産に必要な食糧を確保してやるという意味で特別の払下措置かあつたと記憶いたしておりますが、本年もこの台風対策としてそういうことをお考えになつておるのかどうか、こういう点が一つ。それから第二の点は、昨年も災害をこうむり、本年も又重ねて災害をこうむつたというような地点がないわけではないと思いまするし、桜井部長の御報告によりましても、そういうことが当然予想せられるだろうというような見解のお話もあつたのでありますが、そういうような極めて不幸な状態におる農民諸君としましては、昨年融資を受けました営農資金等の償還相当問題を孕んで来るのではないかというように思われるのでありますが、そういうような行別に考慮を要するような農家に対する償還の延期、或いは期限の延長というような問題を御考慮になつておるかどうかという点が第二点。それから今年の異常天候に関連いたしまして、病虫害防除に関する農薬代一部の助成について適切な措置が講ぜられたのでありますが、恐らくあの措置は、今回のような台風ということを予測しての対策ではなかつたと思うのであります。台風通過後における病虫害の異常発生ということも想像せられるのでありますが、そういうような台風に伴う病虫害の発生に対して、過日決定せられました病虫害防除対策が準用せられるというように御考慮になつているのがどうかという、以上の三点につきまして見解を承わりたいと思います。
  75. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 第一点の飯米の問題でありまするが、これは当然去年と同じようにやらなければいけないのでありまして、只今供出につきまして府県と個別に事情聴取で、経済部長と農林部長が来ておりますので、次々その問題は片付けて行きたい、こういうふうに考えます。それから第二の営農資金の問題は、この券の法律にも、去年災害を受けたところで、今年も営農資金が必要なところでは、前年借りた償還金の期限の延長をやると、附則で入れていると思います。当然それを適用せねはならない、こういうふうに考えます。それから病虫害の点は、台風のあとで病虫害の異常発生が出て来るとなれば、これも当然そこに及ぼさなければならないと思うのであります。この点はまだよく研究していないのですが、当然そこをやらなければいかん、そうやりたいと、こういうふうに考えます。
  76. 松浦定義

    ○松浦定義君 今、委員長から質問になつた点については大体明らかになつたのですが、農手の支払いが、早いところでは十月の末項始めるわけですが、特に先ほど官房長のお話なつたように、北海道では水稲は無論のことですが、畑作は水稲以上に悪い地帯が相当あるわけなので、それらの農手の返還というものは、なかなか容易なものじやないというので、営農資金が出ればそれで借替えしなければならない。こういうような結果になつているわけですが、そういうことになるために農手の支払いを暫定的に、多少は時期をずらしてもらわなければならない。こういう結果になると思うのですが、こういう点については、やはり営農資金の貸出しの方針が決定するまで、農手の返済等については暫定的であつても延期されることができるかできないか。そういう点今年はどういうような方針でお進みになるおつもりですか。
  77. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) これは昨年も問題になりましたので、何と言いますか、系統金融期間の内部の問題で、今県からそういう要果がありますので、要するに信連がそのつもりになればできることなんだからやつたらいいじやないか、こういうことで、若しそれで中金からの金繰りで信連のほうで困るということになれば、中金のほうには私のほうから処置するから、こう回答いたしております。それで皆さん得心されているようでありますが、それで大体一月からニ月まで手形の、終期が来ますから、若し必要ならばそこで書換えてやつて行く、幸いにとにかく来年の春まではむしろ中金に金が余つているのですから……。去年もそういう問題がありまして殆んど問題なく解決したように承知しております。これは結句問題は単位組合なり、信連なりの何と言いますか、体制の問題でして、よく調べてみると農手の延長とかいう問題でなくて、或いは信用カがないから貸さないのだというふうな問題のほうが、実際問題としてはむずかしい問題のように、去年の経験だと承知しております。それにはやはり町村なり県なりが営農資金のほかについても、もつと系統金融機関の尻を叩くと同時に、償還の方策、保証の方策について指導をすべきじやないか、こういうふうにやつておりますので、なおその点について今年も同じことをやるということを系統機関のほうに注意を促したいと、こういうふうに思います。
  78. 松浦定義

    ○松浦定義君 大変政府のほうでは親心で御配慮願つておるのはわかるのですが、今指摘されるように、末端ではやはり金融系統機関がむしろ市中銀行よりも強いような線を出しておるというような面がありまして非常に個々の農民としては困つておるわけなんです。というのは、やはり政府に対して或る程度責任を感ずるために、そういうふうな結果になると思うのですが、やはり実際とれない場合にはどのような請求をされても出せないというのがまあ実情なんですから……。併しまあ単協或いは府県の金融機関等では返すものは返して、借りるものは借りるのだと、こういうはつきりした線で、理窟から言えばそうなんですが、やはり今年あたりは昨年から今年にかけての二カ年、三カ年の続く凶作で、どうにもならないという農民があるので、そういうもののためには、やはりできるだけ早くその営農資金のほうの枠をきめてもらわないというと、中金のほうで幾ら命が余つてつても、それがなかなか末端まで行くようなことにはならないと思うので、そういう点を一つ今のような御方針で大いに督励をして頂いて、末端の農民がやはり自分の金融機関であつても、なかなか思うように発言ができないというようなものも相当あるわけですから、こういう点はできるだけこの農手の返済がうまく切り替り得るように一つ今後大いに努力してもらいたいと、こう思つております。
  79. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) できるだけ御趣意に副うようにいたします。
  80. 森八三一

    委員長(森八三一君) そういたしますると、只今議題になつておる台風の問題につきましては、まだ十分な調査結果もまとまつておらん模様でありまするし、後刻本件の実地調査につきましても、当委員会として協議を申上げたいとも考えております。更に当面の応急対策につきましては、官房長からお話がありましたように、共済金の問題であるとか、営農資金の問題であるとか、或いは飯米の問題等、それぞれ或いは法律を必要とするものもありまするが、その法律が成立するというような心構えの下に対策が進められておるようでありますので、いずれ資料なり綱引なりができ上りましてから更、協議を願うことにいたしまして、本日はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 森八三一

    委員長(森八三一君) それではさようにいたします。ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  82. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記を始めて下さい。それでは引続いて開発工事促進臨時措置法案の件を議題にいたします。電源開発等の促進を意図し、且つ当事者の要望に促されて、通産省及び公益事業局において開発工事促進臨時措置法案を起案して、関係当局と折衝を始めているとのことでありまして、大分センセーシヨンを起しているようでありますので、本日は差当り農林当局からこれらの状況について説明を聞き、続いてその取扱いについて御協議を願いたいと存じます。先ず農林当局から説明を願うことにいたします。
  83. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) 只今議題になりました公益事業等の施行に伴う農地その他の補償の関係の問題でありますが、これは電源開発、或いは駐留軍、或いは保安隊等の用地の接収に伴うその補償の問題でありまして、どちらかと申しますと、農業関係は原則として被害者のほうになるのであります。農林省の関係で申上げますと、ダムの建設或いは大規模の灌漑排水等については一部接収の主体になる場合もあるのでありますが、大多数の場合には被害者になるのであります。これがやり方がどうしても何と言いますか、現在のように農地が壊滅が甚しく、農地が細分しておるという状況では、はつきりした基準で公益事業を行うのでありますから、止むを得ず立ち退き或いは接収されるとしても、得心の上でやるようにしなければ今後の農政を進める上においていろいろな支障あると思います。ので、従来から関係方面で種々協議をしておるのであります。たまたま通産省なり建設省なりのほうにおきましては、事業促進を図る意味からいろいろな考え方が出て来ておるのであります。これも併し長後的な案というわけではありませんが、その案を見ますと、事業主体本位になつておるようなうらみがありますので、この際農林省といたしましても、はつきりした態度を、或いは方策を立てる必要があるというので、一案を作りまして関係方面と話を進めておるのであります。なかなか面倒な問題でありまして、土地収用法を主として従来はやられておるのでありますが、土地収用法はどうしても何と言いますか、権力を背後にしたようなやり方で、必ずしも土地を収用せられるほうの十分な得心を得ておらないというような面もあります。或いは又電源開発等で見るように、事業を急ぐ余りに、事業の採算から見てこんなに出していいだろうか、こういうような面も見えておりますので、そういつた点をうまく処理いたして行きたいと、こういうのであります。農林省考え方の骨子といたしますのは、少なくとも農家に関しましては、現物補償を建前にして、現物補償については国も相当の便宜を図ると同時に、どうしても現物補償ができない場合或いは現物補償でなくてもいいというような場合に、金銭賠償というようなことに行くのがいいんじへないか。それから調停についても、もう少し親切な調停ができるような仕組にしたらというふうな点が狙いなのであります。これはやはり事業主体と、先ほど申上げるように、被害者のほうでも相当利害が対立するのでありまして、今後面倒な折衝によらなければ結論は出ないと思いますけれども、私ども考えと、ほかのかたとの考えとの対照表をお配ぱりいたしましたが、これに基きまして今までの経過を御説明申上げまして、いろいろな御注意を受けたいと思うのであります。開発課長から一応この表について御説明申上げたいと思います。
  84. 庵原文二

    説明員(庵原文二君) この表につきまして概略御説明申上げます。  第一の目的としますところは、大体官房長から御説明しましたように、通産及び建設の試案が大体において事業促進に狙いがあるのでありまして、いわば手つ取り早く土地を収容或いは使用するということに主たる狙いがあるように思います。これに対しまして農林省といたしましては、もつと農民の立場に立ちまして親切な補償をやりたい、こういうような考えでございまして、そのためには農地等の資源の保全ということも併せて考えまして、更に水没地等における農民が集団的に他に移住するといつたような場合におきまして、再建整備について、企業者なり或いは政府として相当考慮を払うべきである。こういう観点に立つておるわけでございます。その結果として、開発事業等が円滑に促進されるということを狙いといたしております。  第二の範囲でございますが、これは通産案によりますと、電源開発事業を中心といたしまして、河川法の適用になる重要河川の治水利水工事、それから道路法による一級或いは二級国道を対象といたしております。その他鉄道工事であるとか、或いはガスの工事であるとかいうようなものは、必要があれば政令で以て適用の対象としたい、こういうような要領であります。建設省の案といたしましては、これは土地収用法の改正をやつて参るという方針でございまして、別段新らしい法律を作るという趣旨ではございませんが、この改正によりまして、手続を簡易にするということが狙いでございます。対象事業といたしましては、現在土地収用法の第三条で対象になつております事業を全部包含する、こういう趣旨でございます。農林省でも対象といたしますのは、大体土地収用法第三条によりますいろいろな公益事業等、全部包含するつもりでございますが、ただほかの省と異なりますのは、こういつたような補償につきましては、単に公共事業等のみならず、駐留軍或いは自衛隊の用地の取得或いは使用についても適用さるべきであるという考えに立つております。  第三の補償の方法でございますが、これは三省ともまだ当事者間の協議は自由である、こういうところから出発したのでございますが、通産及び建設が大体において金銭補償を原則といたしておりますのに対して、農林省といたしましては、やはり当事者の交渉を尊重いたしますけれども、でき得る限り現物の補償によつて生活の安定なり、或いは農業生産力の保持を図つて行きたい、こういう関点に立つております。更にこの現物補償が行われます場合、これが契約の通り正確に行われるかどうかということについて、知事等に竣工検査というような制度を設けまして、それが的確に集団移住者等の利益になるということを確認するという制度も併せて開きたいというふうに考えております。この点は農林省といたしましてま、例えて申しますと、百町歩農地が潰れるならば、他の土地に同等以上の農地を造成いたしまして国全体としての食糧増産なり、その他農林、水産業の振興に減退を来たさないということを主たる狙いとしているわけでございます。  それから第四番目の補償額等の適正化でございますが、これは通産案によりますと、当事者が補償契約を結びました場合に届出制をとりまして、それが不当に高いとかいつたような場合には、それを下げさせるといつたような余地を残しておるわけでございます。つまり変更命令権というものを法律を以て規定したい、こういうのでございますが、建設省では現在電源開発の補償につきまして、閣議了解事項として基準が付けられております。大体ああいつたようなものを法律を以て定めたい、こういう狙いでございます。農林省といたしましては、できるだけ当事者主義を尊重する、私有財産を嫌がるのを無理やりに取上げるわけでございますから、そう強権を発動してこれを追つぱらうということは濫りにはすべきでないという観点から、調停制度を十分に活用いたしまして、そうしてその間における折衝によつて適正なる補償額をきめて参りたい、こういう趣旨でございます。  それからその次の頁の第五の補償交渉手続でございますが、これは通産、建設ともに別段の規定はございませんが、農林省といたましては、今まで補償交渉というものが当事者間で野放しにされておりまして、非常にその間補償金額が高きに失する、或いは又権力を以て圧迫して不当に安い価格で召上げられること等、いろいろなケースも考えられますので、団体交渉の途を開きまして、両者の交渉が正しいルートにおいて行われるような方途を講じたい、こういうことでございます。  それから第六の補償の斡旋調停機関でございますが、これは大体通産省と農林省とに補償委員会といつたようなものを新たに設けまして、この委員をして調停、斡旋に当らしめる、こういうのでございます。建設省は現在の土地収用法を改正いたしまして調停制度というのはやめてしまう。斡旋委員というものを設けて斡旋を行い得る建前になつておりますので、これの斡旋によつて若し協議が不調の場合は直ちに収用手続に入る、それによつて促進を図りたい、こういう趣旨でございます。  それから七番目の補償並びに土地等収用の裁定機関でありますが、これは通産省におきましては一般的には土地収用法によるわけでありますが、緊急且つ重要なものについては新たに総理府に裁定機関を設けまして、そこで裁決をする。それから建設省におきましては、現在土地収用法による収用委員会は各府県にのみございまして、中央にはないわけでございますが、中央に中央土地収用委員会のようなものを置いて二審制をとつて行く、こういうことでございます。農林省といたしましては、裁定のような強権に待つということは、先ほど申上げましたように成るべく避けたいという趣旨でございますが、併しどうしても事情止むを得ない場合のために、現在あります土地調整委員会の機能を拡充強化いたしまして、これに裁決権を持たせるというふうに考えております。その場合は当事者交渉或いは調停等の段階を踏みまして、どうしても話がつかないというもののみに限定するという考えでございます。  それから第八の被補償者の再建整備でありますが、これは農林省以外の関係省においては別に考えていないのでございますが、農林省といたしましては、でき得べくんば再建整備委員会のようなものを必要な道府県に置きまして、相当数の農民が集団的に他に土地を求めて新らしい村作りをするといつたような場合には、市町村長及び知事が再建計画というものを立てて、これに対して行政庁はもとより、企業者もその線に沿つて生活の再建なり村の振興に努める、こういうような考えでございます。なお、その際に補償以外の必要な資金につきましては別途に融資の途を講ずる必要があるのではないかということを考えております。  以上申上げました各項に亘りまして、これを法律化して参りたい。通産、農林は新らしい法律を作る必要がある。それから建設省は現在の土地収用法の改正で行く、こういうことでございますが、総合開発審議会におきます水制度部会等の結論といたしましても、補償問題については新らしい法律を作る必要があるということになつております。それから電力研究会でございますか、電力会社方面からも、すでに国会に強力な権限を持つところの法律を制定してもらいたいという請願が出ております。そういうような情勢の下に、只今この三省の間におきまして、それぞれ試案を作成いたし、又協議をも始めておるわけでございますが、先ほど官房長の説明のように、未だ具体的に法案という形で成案を得ておりません。只今までの経過を申述べまして御参考に供する次第であります。
  85. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今説明に対しまして御質疑がありますれば御発言を願います。
  86. 溝口三郎

    溝口三郎君 補償及び土地等収用使用関係試案の説明を承わつたのでございますが、この三省の試案は極く最近にまとめられておるようでございますが、どういうところへこれを発表して、どういう審議の過程になつておるのですか、それを一応お伺いしたいのであります。それは只今庵原さんから御説明がありましたように、国土総合開発審議会の水制度部会で、この問題は約一年前から取上げられていたようでございます。その中間報告が来週の月曜日に審議会で出されることになつておるそうであります。内容についてはまだ発表になつておりませんから私ども承知しておりません。私の知つておるところでは、今、庵原さんのお話では通産省や農林省の案としては、何か調停の委員会のようなものを別途にこしらえたらいいじやないか。併し建設省はどこまでも土地収用法を適用して行けばいいのだという二つの論議が一致ができないのじやないか、一致していると私は聞いていないのであります。これは水制度の根本問題で、水利権の使用管理について河川法一本でやつて行くべきか、又水利の問題については各省大臣がそれぞれ権限を持つかということは非常にむずかしい問題で、今度の水制度部会でも、一本の答申はできないように私は附いておるのです。その中間報告が来週の月曜日にあることになつておるので、まだ総合開発審議会でもそう簡単にきまるわけではないのですが、今日この説明を伺つてどういうふうに取扱うことになるのですか、審議会との関係を一応承わつておきたいと思います。
  87. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) これはお話通りでありまして、まあ結論を申上げますと、各省が各省の立場で言つておかなければならないことを法案の形にして言つておるというふうに御了解願いたいと思うのでございます。お話のように、結局河川の管理、河川法だけについて申上げますれば、これは各方面に関係することである。それから今の駐留軍等の接収についても各方面に関係することでありまして、通産省と建設省、農林省でそれぞれ別な法律を出して、別の制度でやるべきものではないのであつて、一本にまとまつたものになつて、各方面に亘る利害を調整する案にならなければならないのであります。それを通産省なり建設省なりで、それぞれ案を自分の立場から都合のよいようなものを作つておりますので、農林省もそれに対抗して、そういうことは困るから、農林省考え方はこうだというのを出しておるのであります。これが只今お配りしておるのでありまして、この点を今の総合開発審議会でどういうふうに取上げるか。これは御承知のように非常に込み入つてと言いますか、こんがらがつておる問題でありまして、私どもも水制度部会長の意見なんかも聞いておりますが、非常に取扱いに困つておるというのが塊状でございまして、先ほど申上げましたように、とにかく何と言いますか、具体的な恰好にして、まあ各省がそれぞれの意見を出している、従つてこれのあとは今の総発審議会等、或いはそれが失敗すれば又更に経済審議庁で各省の意見を調整した案として成立たなければならない、こういうふうに考えております。それまでに各省が意見を出しておくと、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  88. 溝口三郎

    溝口三郎君 私は二十七日の国土総合開発審議会には出席いたすつもりでいるのでございます。丁度その案内が只今参つたものでございますから、それとこの関係がどうなるのか。審議会でも水制度部会の一年間のいろいろまとめた案を出して、それについて審議をするのだと、各省ともそれについていろいろ意見も出るのであつて、そんなに簡単には結論はつかないと思うのです。そこでこの取扱方なんですが、今日説明を伺つて、そうしてやはりこの委員会では何か意見をまとめるような順序に行くのかどうか、ただいろいろな情勢を伺うのかどうか。私は直接の責任を以て審議会に出席することになつておりますが、この取扱方を伺つた上で審議すべきであると思いますから……。
  89. 庵原文二

    説明員(庵原文二君) この取扱いの問題でございますが、これはいろいろこの問題が議論の対象になつておりますケースとして、水制度部会等のこともお話申上げたのでありますが、この案自体は水制度部会と只今のところ直接の関連を持つておりません。それでこの通産試案とありますのは、農林省におきまして通産省から説明を受けました第二次案というものの骨子でございまして、これも未だ通産代案として最終的に固まつたものではないように聞いております。それから建設試案のほうは、これは建設省におきまして建設委員会において説明をされましたものの骨子でございます。それから農林試案も先ほど申上げましたように、未だ部内におきまして検討中のものでございまして、正式な最終のものというわけではございません。ただいろいろ最近電源開発等の問題に関連しまして補償問題の法律化ということが非常に表面に出て参りました現在、各省がこういう考え方をしているという点を御説明申上げた次第でございます。  それから先ほど水制度部会に関する私の説明の中で、たしか結論というような言葉を使つたように覚えておりますが、これは私の間違いでございまして、溝口さんのおつしやる通りでございます。未だ審議の過程にあるのでございまして、やはり補償機構等につきましても、これは両案出ているように私も承知いたしております。その点訂正さして頂きます。
  90. 溝口三郎

    溝口三郎君 水制度部会で審議している項目は、河川の管理権をめぐつて本数カ条あるのでございますが、そのうちの一つに補償の問題が出ている、河川の根本問題については非常にむずかしい問題があるのでございますが、そのうちから特に補償の問題だけ出して、それで解決がつく問題かどうか。根本に河川の管理権をどうする、川の流域におけるダムの設置なり、工作物の使用許可等を誰がするのかということが制度として少しもまだ同まつていないんです。それについて調停委員会を別の方面からこしらえなければいかんということをすぐ取上げてやつて実現性かあるかどうかは、もう少し根本問題から入つて行く必要が私はあるのじやないかと思いますので、その点をお伺いしたいと思います。
  91. 渡部伍良

    説明員(渡部伍良君) これは先ほど御説明申上げましたように、電源開発なら電源開発は早くこの事業を進めたいから勝手な補償基準、或いは自分に都合のいいような案を作つているのでございます。河川法は今お話のように、河川の管理の根本問題に関連して補償のやり方をどうするかというふうなのが出ているのであります。そこで結局農地或いは農業に関する補償については、農林省としてはこういうふうな点をこうしてもらわなければどういうふうな案が各省で作られようとも困るのだという意思表示を早く挙げておかなければ、向うでいろいろ考えるのにも、向うは先に進んでしまつてあとで何と言うか、引下げるのも面倒だから……、こういうのが私どもが案を作つた狙いでありまして、それは今の一本でこういつた補償の法案になるのか、或いは河川法なり、或いは電源開発法なり、或いは駐留軍の関係と別々の法律になるのか、今後の問題になつて来るのであります。ただいずれにしましても、各省別にそういう法律ができるのではなしに、総合的に例えば経済審議庁なら審議庁で各省の意見を入れた案が作らるべきである。その際に農林省とすれば、こういうことを最初取上げてもらわなくちやいかん。こういうことで出しているのであります。何と言いますか、法律案の試案とかいうのはまだおこがましいので、農林省の希望というか、農林省の態度を表明している、その程度に御了解願いたいと思います。
  92. 溝口三郎

    溝口三郎君 官房長の御説明よくわかりました。この問題を国土総合開発審議会で審議いたします場合に、只今、の御説明の趣旨によりまして、その内容を十分拝見いたした上に適当な発言をして、できるだけ有効な措置のとれるように努めたいと考えております。一点だけお伺いいたしておきたいのですが、通産省のはうの考え方、これは主として電源開発事業促進のためということになりますと、この事件補償の件数でございますが、非常に制限されて僅かなものだろうと思うのです。それらについてはどういう組織ができますか、補償委員会というようなものでやつて行くということになるのか。それから建設省で考えているのはよくわかりませんが、本法河川であるとか準用河川であるとか、或いは又その流域の渓谷の分まで全部土地収用法でやるというつもりでいるのか、これらもよく聞いて見ないとわかりませんが、農林省考えておられる公益事業の補償の問題ですが、これは規模の大きなものから小さなものまで非常にたくさんあると思います。河川法関係地域のやつでも山間部の場合もある。そういうものについて中央ではどの程度にこれを取扱われるのか。それから府県に相当調停委員会のようなものができるようですが、地方によつても違うと思いますが、発生する件数がこういう委員会をこしらえて、実際に、例えば土地調整委員会、これは一年に十もやつたら手一杯だろうと思います。そういうものをどの程度まで手を拡げて土地調整委員会が関与して行けるかということになるか、その組織はどういうふうに考えておられるか、その点だけ伺つておきたいと思います。
  93. 庵原文二

    説明員(庵原文二君) 機構の問題につきましては、農林省といたしましては一応事業の対象としては土地収用法三条の対象になるあらゆる事業を対象に考えております。ただこれを扱います場合に、お説のように非常な件数に上ることも予想されますし、又一件一件が非常にむずかしい問題と思いますので、各府県内の問題は各府県に設置の補償委員会処理してもらう。それから二府県以上に跨がる問題、或いは非常に事柄が重大で地方で処理解決が付かない、又そのほうが適当であるというもののみを中央の補償委員会で扱う、こういうふうに考えております。
  94. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記を止めて下さい    〔速記中止〕
  95. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記を始めて下さい。只今議題になつております開発工事促進臨時措置法案に関しまする件につきましては、更に次回委員会等におきまして十分御研究を願うことにいたしたらと存じまするが、本件に関連いたしまして、補償を受ける立場に立つ農林業者の生産力に悪影響を来たすとか、或いはそれらの人々の生活経済に非常な重圧が加わつて来るようなことは絶対に避くべきことであることは申すまでもございません。つきましては、今日までもそれらの補償が極めて不完全でありまして、問題の解決が渋滞をしておるということが各所に散見されまするし、今後もそういう問題をめぐつていろいろの好ましからざる情勢を捲き起す危険が予測をせられますので、事の進行につきましては、関係者の生計、生産力に悪影響を決して持ち来たされませんように、完全な補償を行うという趣旨でお取扱いを頂きたいと存じます。
  96. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 僕はこの次の機会にというお話がありましたですが、このお話によれば、通産省案、それから建設省案というものが裏では動いておる。その動いておる理由は、このお話の内容にあつたように、電源開発工事の補償の問題とか、そういう問題で遅れているからという意味でこの法案が用意されつつあるということなんだから、この次の委員会に通産省或いは建設省からそういつた事情を聞く、その遅れておる或いは支障になつておるというような事情を聞くという意味でお呼び頂いて、そしてそのときにそれに関連してこの法案の準備の構想はどうかということを当委員会で以て一応聞いた上で、それによつて中入をするということのほうが委員会としての申入の態勢は本格的になるんじやないかという気がいたしますので、希望として申上げます。
  97. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今宮本委員の御発言につきましては、次回の委員会にそういうような取運びのできまするように善処をいたしたいと思います。   —————————————
  98. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは次に飲用乳処理基準改訂の件を議題にいたします。  国民保健上は勿論、酪農振興の重要な手段として牛乳飲用の普及を図りますることは極めて肝要なことであります。然るに厚生省令による現行飲用乳の処理基準は余りに厳に過ぎ、徒らに不必要な抑制を設けて牛乳飲用の普及を阻害し、酪農振興上重大な支障であるとして、その緩和が強く要望せられ、厚生省当局においてもすでにその必要を認められ、緩和改訂方について言明せられているとのことでありますが、未だ実現を見るに至つておりません。本日はこれらの事情を究明して、これが速かな実現を期することにいたしたいと存じまするのであります。つきましては、先ず厚生省当局から事情の御説明を頂きたいと存じます。
  99. 恩田博

    説明員(恩田博君) 今日は上司のかたが休みでございますので、私が代りまして参りましたのでございますが、状況を御説明申上げたいと思います。  昭和二十五年の十月十六日に牛乳に関する省令ができまして、この場合はいわゆる低温殺菌だけを限つて飲用に供することというような趣旨の省令が出たことがあります。その後これを改正しまして、昭和二十六年の十二月三十七日に、場合によつてはいわゆる高温殺菌をやつて飲用牛乳を処理してもいいという省令が出たのであります。その場合に、その高温殺菌をやる地域というものにつきましては、昭和三十五年の省令当時から相当進捗しました関係もありまして、進捗の遅れております地域であります特定の地域、例えて申しますと、市乳の消費量が非常に少い、いわゆる新興の酪農地帯であるとか、或いはほかから市乳を持つて行くのに非常に困難するようなところでは、いわゆる高温殺菌の牛乳を処理してもいいと、こういう趣旨の下にこれが実施をやつてつたのであります。然るにその後食生活改善等の運動が起りますし、だんだん乳牛殖えて参りりますために、いろいろ御要求もありましたので、これを幾分緩和しまして、農山村では成るべく牛乳を飲んでもらつたはうがいいという趣旨の下に、農山村におきましても成るべく市乳地帯を作つてくれと、そしてむしろそれを育成したほうがいいと、そのためをそういうところではいわゆる高温殺菌の牛乳を飲用牛乳として処理工程で行なつてもいいという通牒を今年の二月八日に事務次官から出したのであります。これによりまして相当大幅の、何と申しますか、緩和と言いますかをなしたことでございまして、各府県としましても、いろいろ検討いたしており、且つこれが実現を若干でも見つつあるという現状にあるのであります。  次に、省令の改正という点がございますが、これはかねがね先ほど申上げました昭和二十六年の省令五十二号という牛乳の省令を公布しましてから大分状況も変りましたし、いろいろ生産者の方々、或いは製造業者、或いは処理業者等からいろいろ希望もございますし、まあ現状に即するようにいたさなければならないという観点からいたしまして、種々検討を加えておりましたのでありますが、たまたま食生活改善とか、或いは今日の牛乳の幾分余剰を見ておるというような状況等にかかり合いまして、更にその分も加えまして、御期待に若干でも副うようにというので只今準備を進めておるわけであります。成るべく早くこれを実現いたしたいという工合に今着々準備中でございます。
  100. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 今この 話のように準備を進めておるということを具体的に一つ説明して下さい。実はね、私どもの聞いたところ、調べたところによりますというと、牛乳はともかく殖えておる。それから東京の都内では牛乳は飲みたくても、ちつとも宣伝もしてなければ、ともかくちつとも殖えておらん。むしろ減つてつて、これは供給過剰でなくて過少であつて非常に牛乳は払底しているそうなんです。で、牛乳は全国的には非常に増産されて殖えておる。東京じや減つておる。こういうところにどこか矛盾があるんじやないか、そのネツクはどこにおありか、さつきお話になられたそういう問題を改善しようとして考えておるということは、具体的にどういうことなんですか、御説明頂きたいと思います。
  101. 恩田博

    説明員(恩田博君) 申上げます。これはまだ上司には草案と申しますか、草案の程度でございまして、課内で大体まとめておるということでございますので、実はまだどなたにも内容は申上げてなかつたのであります。大体気持といたしましては、牛乳は牛から搾つたそのままの形でいいんじやないかというような気持でございます。まあ例えて申しますと、いろんなものを入れて、むしろ或いは物によつては値段が上つておるというようなこともありまするので、消費者のはうが、これは牛からそのまま搾つた牛乳であるということがわかるようにしたほうがいいのじやないかということを考えておるわけであります。それからその次は、先ほど学校牛乳というものが出ておりますが、これは食品衛生法の第二十九条の第二項に食品衛生法の準用規定がございますので、これを引用しまして、学校で何とか生乳を買いまして処理して、学校の子供にそのまま飲ませる方法ができやせんかということで検討をいたしておるのであります。これは牛乳が非常に腐敗変敗をいたしやすいものである関係上、取扱いが不備になりますと却つて非常な事故が煙りはせんか、そのために責任相当強く持つてもらわなければいかん。その前に保健所の職員をして、その実施されます学校の教職員の方々に相当細かく教育し、且つ指導もいたさなければいかんということで、このほうはそういう方面から更に検討をいたしておるわけであります。それから組かい点になりますと、牛乳とか、或いは乳製品の種類というものにつきまして和かく分れておりますが、現状としましては、それ以外のものも相当あるようでございますし、消費者のほうでもその判断に、内容についてその判断に困つておるような向きもありますので、そういう点はもつとはつきりしたほうがいいのじやないかというような点を主にしまして今検討をいたしておるわけであります。
  102. 岸良一

    ○岸良一君 この問題はもうすでに厚生省のほうでも十分におわかりになつておるし、又今の牛乳生産の現状から見て緩和はしようという御意図を持つておられるということは非常に結構で、私は敬意を表すわけであります。従来の規則を見ても、十分にやり得るといつたようなことが考えられなかつたというような点についても、今回の規則でやはり考えて頂きたいと、こう思うのです。私ども畜産議員連盟でいろいろ研究したのでありますが、先ほどのお話のあつた学校、病院とか、そういうような集団消費するところによつては、処理場から余り乳を買つて、そうしてこれを分配するといつたような場合においては、これは一定の型の煮沸施設でなくても、或いは適当な鍋釜を使つてやるということによつて、瓶詰にせずとも、小分けしてやるということを認めるということをやつてもらいたいと、こう思うのです。というのは、先ほどお話のありましたように、学校等のような給食場でありますれば、或いは栄養士もいるとか、或いはそういう所を限つて今度は衛生法の関係で一々始終廻つて見てやる、監督するということをして、もつと簡易に飲めるようにすれば牛乳の消費を円滑にするのみならず、国民全体の栄養状態をよくするということになると思う。そういうことも私はやはり考慮して頂きたいと思う。それからこれは恐らくだんだんと生産者のほうも組織化して参りますと、これは農業協同組合と消費者の団体、これは或いは職場の団体もありましようし、或いは生活協同組合というようなものもありましようが、そういうものに販売する場合にですね、処理保存の従来あるいろいろなやかましい規制を、これを十分に緩和して頂くことが必要じやないか。先ほど申上げましたようなことについては、これは瓶に入れて密封小分けするというようなことを考えずに、今のような処置でやつてもらう、或いは高温殺菌をするというようなことをこれを大いに普及してもらう。同時に今の規則によりますと、保存が非常にやかましいことが書いてあるのですが、高温殺菌等において、それほどのことをやらなくてもいいのじやないか、温かいままでやれば処理ができるのだから、そういうような点を私は考えてもらいたいと思う。なお販売過程の、もうこれは私は恐らく厚生省令を見ては別段何ともないんですけれども、恐らくこれは地方によつて非常に違うのだと思いますが、去年広島へ行きました時分には、広島の西条町その他においては、店頭に菓子屋或いは八百屋、これらのところにおいて瓶詰をどんどん売つておる、そうしてその町の消費は非常に進んでおる。こういうような販売について今は規則はないけれども、地方の条例等においてやかましく言つておるならば、今回においてそういうような販売は保存に必要な或る程度の設備等かあつたならば、誰にでも販売をやらせるというふうにやつてもらうと、これは非常に消費が進むのじやないか。又東京等のような大都市における状況においても、従来の小売の網、この綱の範囲にかかわつているがために大事業でも何でも殆んど動きがつかない。これは別途の面において考えるより仕方がないが、そういうような仕方で、販売の自由の原則を成るべく動かしやすいように御指導頂きたい。これはむしろ規則を直すのですから規則に弘治いて、こういうことをやれば誰でもやつてもいいということになればこれはいいのじやないか。そういうような点で、同時に又我々全体の規則を見まして最近我々もいろいろ調べて来たのですか、牛乳の成分規格についてもこれは私は相当論があると思いますが、この際一つ研究して、緩和し得るものは緩和してもらいたい。酸度の問題等についても或いは乳牛の種類によつて大分逢うと思う。最近においてジヤージーが大分殖えて来た、これらは大部酸が多いといつたような問題もあります。それから脂肪、牛乳の細菌の問題についても殺菌のやり方によつて大分違うし、現在においてもななかそれを調べたら相当の数がおると思う。これはとり方であります。或る限度があると思う。そのやり方策についても或いは差支えない限度において楽にし得るようにする。それから今まで牛乳を飲んで死んだというやつもいないし、牛乳を飲んで中毒になつた者もない。又牛乳は少し悪くなれば、或る程度コアギユレイトして使うほうが却つて恐れをなす。肉類などとは違う。そういう点も考えて売りやすいような考え方をして頂く。又あの中に大腸菌か何かの分がありますね、これが零ということになつておりますが、お話を聞くとなかなか大腸菌零なんということはあり得ないので、まああるだろうという程度のことが限度ぐらいである。これはまあ私は当然じやないかと思う。又大腸菌が少しあつたからと言つて、今のような中毒したり、病気になつたりすることもないので、そういうような点を少し緩和する。そうして乳を出しやすいようにし、それが直接保存ができやすいようにするという方面を研究して頂きたい。要するに現在やつておりまするところの製造保存に関するところの標準を緩和し、それから販売面についてもでき得る限り大勢の人の口に入るようにして、頂くということをしてもらいたいと思うということが、この間の私ども研究の結論だつた。恐らくこれは衆議院からもたくさんおいでになつたかと思いますが、皆さんも同様な御意見だつた。これらについては、酪農振興法通過の際に附帯条件の中にも指摘しております。これは十分に御研究願いたい。それから又標準中にありますが、現在恐らくやつておる所と、やつておらん所もあると思いますが、自記温度計をつけた、これはアメリカさんから言われたからつけたというお話がありますが、そうであるならば、こんな面倒くさいことはこの際やめたらどうかといつたような気がします。そのほかそういつたようなことについて、日本の現状に即するようなやり方をこの際研究して噴いて、そうして至急に実行して頂くということになれば私は結構だと思います。これだけ御意見を一応伺つておきます。
  103. 恩田博

    説明員(恩田博君) 先ほど申しました通り草案の段階でございますので、今お話のございました点はよく承りまして、よく御相談いたしたいと思つております。なお、あの自記温度計は米国がつけさせたということはございませんので、これは昭和二年と思いますが、東京で大分牛乳で事故が起りましたときから、確実に牛乳を殺菌するという趣旨の下に、当時は警視庁でございましたのですが、全国に先がけまして牛乳の低温殺菌を採用したことがありましたときから、一応低温殺菌には自相温度計が安全の証拠としてつけさせられておつたのでございまして、そういうことはない思いますが、一応御了解願いたいと思います。よく御相談申上げまして、成るべく御期待に副うような案を作りたいと思つております。
  104. 岸良一

    ○岸良一君 そう申上げることは、実際私ども調べたのですが、自記温度計をつけている相当大きなところでもその標準によらずして殆んどやつておる、まして小さいところでは殆んど関心なくやつておるというのが大部分であります。ただ、まだ消毒等については、あの当時に比べてはるかに進んで参つておりますから、そういう点は確かによくなつたと思います。いずれにいたしましても、昔警視庁でやられていたときよりは今のほうが加工も進歩しておりますから、その進歩の段階に応じたものが円滑に流れ、そして今の現状に役立つようにして頂くというように一つ工夫して頂きたい。大体いつ頃、今ここでお考えになつておるようでありますが、部長も先般大いに賛成をされておつたのでありますが、成るべく至急私は立案して実行する方法をとつて頂きたい。いつ頃になつたらそういう案を示して噴けますか。
  105. 恩田博

    説明員(恩田博君) 日をはつきり申上げられないの非常に残念でございますが、できます範囲内において実は私ども取急いでおりますので、何とか早くいたしたい、こういうふうに突は私ども自体も心あせりをしておるような次第でございますので、御了承を願いたいと思います。
  106. 岸良一

    ○岸良一君 何分にも、すでに御承知のように今日も、乳価対策の委員会というものがあつたのでありますが、それはもう地方においても相当差迫つた問題であつて、その途を開いて、そうして売りやすくしてやる、飲みやすくしてやるということが肝心でありますので、そういう事情を勘案して頂いて速かにやつて頂きたい。できれば私どもこの次の委員会あたりには構想を示して、草案を示して頂くというふうにして頂きたいと思います。どれほどかかりますか、そう大したことはないでしよう。方針さえきまれば……。
  107. 恩田博

    説明員(恩田博君) まあ成るべく御期待に副うように、まあ何と言いますか、省内の統一と言いますか、そこまで行かなくとも、現段階より進みました段階は或いはお伝えできるんじやないかという気がいたしますが、まあせいぜい努力をいたしたいと思います。
  108. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 今お見えになつておる厚生省のかたは、厚生省のそういう問題についての責任ある位置のかたですか、今お答えになつておるかたは……。
  109. 森八三一

    委員長(森八三一君) 厚生省公衆衛生局環境衛生部乳肉衛生課の恩田博君であります。
  110. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 それでは私は上司にね言づけ願いたいことで発言したいと思いますが、有畜農家創設法、農家にみんな畜産をさせるという法律が出てもう二年たつております。今年は酪農振興法が出ております。そうして政府増産計画を立てながら、今年の牛乳については生産は五割殖えたけれども消費は二割だということで、而もその牛乳を近くに売ることができない。従つて腐るか投げるか、現在は市価が四割も下つておる、相当許せないことであると私は思うのですが、この際緊急措置として、法律によつて増産を明示した牛乳について完全に捌けるように食品衛生法を直さなければならないことは政府責任であると思う。だから只今委員からお話があつたように至急にこの御生法を改正して、そうしてそれが適正価格で早く流れるように、同時に食品衛生法についての一般に対する理解、これは、これも同時に併せてしなければならないと思います。低温管理にしても高温管理にしても、我々が野菜を食べても高温の管理をして高温で殺菌しておる。低温じやありません。自分で牛乳をとつても大概の家で高温殺菌をしている。低温殺菌では我我は腹を下します。特に農村地区が多いのでありますから、こういう点については公衆衛生法を大きく変えて、増産を明示しましてスムースにその近辺から流れて行くようにしなければ増産は期せられないと思います。さようにお取計らいを願つて、できれば岸委員の言われたように、この次の農林委員会におきましては責任のあるかたが改正に当ります草案について、もう一度詳細に亘つて説明を願いたいと思います。さよう委員長においてお取計らいを願いたいと思います。
  111. 岸良一

    ○岸良一君 なお農林省のかたが来ておりますから、お伺いしたいのですが、五十万乃至百万石余つて来る。これは無論バターの使用する量が減つたり、練粉乳が減つたりする。勢いこれを生乳で処分しなければならんという問題が起つて来る。従つて今私が申上げましたような集団消費の面をやりたい、こう考えるのでありますが、これはなかなかところによつては経費がかかる。例えてみれば学校なり職場なりにやる場合に、この基準のものを設備するならば、まあ、厚生省から話がついてやつてもいいという場合がある。これに対しての援助、財政的な援助といつたようなことを一つ考える必要があると思います。そういうことについての予算措置一つ考えてもいいと思いますか、この点どう思いますか。
  112. 昌谷孝

    説明員昌谷孝君) 只今のお店は、私どももその通りに思つております。実際にそういつた学校給食を主体にいたしました簡易な牛乳供給施設を農業脇町組合に持たせたいという趣旨で、過去二年に亘つて毎年予算のときに大蔵当局と折衝いたして参つたのであります。ただ結果は御承知の、そういつた施設につきましては農林漁業金融公庫からの低利長期資金で途が開かれておるということが直接の理由で、なかなか、何と申しますか、直接に助成という予算措置がとれずに、農林漁業資金の融資で行くということで押し込まれて、毎年遺憾ながら引下つておつた実情でございます。本年につきましては、すでに御承知のような需給状況でもございますし、先ほど鈴木委員からお話のような現象を呈してもおりますので、特に厚生省のほうの省令を改正し、そういつた何と申しますか、制度的と申しますか、建前上の問題を先ずほごすことと並行いたしまして、大蔵当局に対しましても、昨年、一昨年の場合と又違つて厚生省の処理規則のほうまで変えて、ここで飛躍的と申しますか、画期的にそういつた殖えた牛乳の消費と申しますか、農村自体による消費或いは都市での簡易集団消費を国として積極的にやるのだという、そういう衛生規則上の制度の変更と絡み合せましてなお一段と、今まで失敗しておりました予算の獲得を今年は何とかそれと絡めて、更に積極的に努力いたしたいと、さような趣旨で昨日もうちの局長からも衆議院の農林委員会でもそういう答弁をいたしました。私どももそのつもりで準備をいたしております。
  113. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 先ほど岸委員が要望された範囲内のことは、私どもはその政令の改正でできるように思つておるのです。恩田課長、御意見如何ですか、法律改正までやらなければできませんか、或いは政令だけでやり得る範囲内の問題か、それをちよつと承わつておきたいと思います。
  114. 恩田博

    説明員(恩田博君) 岸先生からお話がございましたことでございますが、これは先ほど申しました通り、省令五十八号、昭和二十五年の十月十六日でございますが、省令五十八号と申しておりますが、これができましたときに相当急速に低温の施設をやつておつた。まあ大体七〇%ぐらいが終つたときに昭和二十六年十二月二十七日の改正省令が出たわけであります。そういう関係からいたしまして、低温の施設に切替えましたのが非常に速度が早かつたためにやらない、そのまま残つておつたという人が非常に減つたわけでございます。そういう点からいたしまして、それがいわゆる高温殺菌をもつとやらしたらいいじやないかという点につきまして非常に困難性があるのじやないか、こういう工合に考えております。それから大体まあ食品衛生法にきめました線が一応最低線でございますので、これをぐつと押し下げる、或いはその中に差を付けるということに一つの技術的の非常な困難性がまあ若干認められるという点で非常に困難をしておるわけであります。それから牛乳を特定のところに、鈴木先生からお話がございましたのでございますが、勿論上司にお伝えいたしますけれども、牛乳は特定のところに売らなくてもよろしいのでございまして、これは省令五十八号、即ち昭和二十五年のときには全部処理業者に売るようにきまつておりましたのでございますが、昭和二十六年の改正省令では、別に処理業者だけしか売つていかんというような規定はないのでございまして、どこへお売りになつても結構であるわけであり求す。ただ飲用として利用される場合には処理場に売つてもらわなくてはいかん、こういうことでございまして、製菓工場でも結構でございますし、或いはアイスクリームの恒常に売られましても、或いはビスケツトの工場へお売りになることも差支えないような、アイスキヤンデー屋に売られますことも差支えないような、五十二号で緩和と申しますか、別にそれを強く規定をしていないわけでございます。ただなお農家のかた、或いは農業協同組合等で処理をされても結構でございますので、そこら辺は法律の改正が必要かどうかということについては、もう一遍研究さして頂きたいと、こういう工合に考えております。それから先ほど忘れて、忘れてと言いますか、話がちよつと、お答え申上げ残しがございましたのですが、東京の牛乳が不足をしておるということでございますのが、これは私まだ研究しておりませんが、伺うところによりますと、処理業者と申しますか、牛乳を処理しておる業者でございますが、これが示しました価格は販売業者の中には処理業者の希望価格であるというふうに承わつておるものがあるように承わつておりますが、我々は我々の希望する価格で売るというふうなことを聞きましたが、或いは牛乳が下つたのに、下つてなくて買わされておるというところがあるかと思いますが、これらにつきましては、私どもとしましては牛乳消費を非常に期待しておりますので、何らかの方法で協力をしてもらいたいというふうにお願いしたいと思つております。
  115. 森八三一

    委員長(森八三一君) 恩田君に申上げますが、今、宮本委員の御質問になつたのは、先刻岸委員から数項目を挙げて取扱いの要領をそれぞれ改正すべきであるということであり、それに対して必ずしも厚生省議で決定したものではないが、主管の課の諸君の意見としては同感である、努めてそういうような趣旨に副いたいという表現があつたのです。それに関連して宮本委員は、そういう心構えといたしますれば、事はことごとく厚生省令で足りるのではないか。法律の改正ということであれば国会の関係が伴いますが、省令の改正であれば厚生省限りにおいて処置ができる。やるという意思があるならば早速処置ができるのではないかという点をお聞きになつておるので、もう詳しい内容の説明はいいんです。厚生省今の改正は厚生省として取運びのできることであつて、勿論これは農林省等々と内部的なお打合せはあろうかと思いますが、国会関係なしに政府のみの処置で済むんだから、そういうことの取進めを急速にやるかやらんか、はつきりしてもらいたい、こういう趣旨の御質問だと思いますが、そういう点を端的に一つ、立場が立場ですから、お答えができかねるとすればいたしかたがありませんが、係官としての気持を表現されれば、宮本委員の御質問にもお答えになれる、こういうふうに思いますので、お答え頂きたいと思います。
  116. 恩田博

    説明員(恩田博君) 申上げますが、只今委員長からお話がありましたように実は承わりまして、よく上司と相談いたしまして、成るべく御期待に副うように努力をいたしたいということでございまして、この点につきましては私ども一存としましては、それをこのままお引受けするということにつきましては、まだ私から申上げ切れない点もございますので、なるべく今日の御趣旨をお伝えしまして、これも成るべく期待に副うようにいたしたいということを重ねて申上げたいと思います。
  117. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 まだ恩田さんの御理解足りないのじやないかと思うのです。私は厚生省がやるかやらないかということを聞いているのじやないのでございます。岸委員の御要望になつた点は、政令を改正すればできるのではないか、法律改正をやらなければできないのか、その限界はどうですか、その御判断を願いたいと、こういうことなんです。
  118. 恩田博

    説明員(恩田博君) どうも申訳ございませんが、この中には、まだ研究いたしておりませんのではつきりは申上げられませんけれども、中には幾らか法律にかかるようなものもあるような気もいたしますが、これははつきりとまたもう一遍検討さして頂きたいと思います。その場合は学校の場合と、それから農業協同組合と消費者とが直接販売するというような場合じやないかと、ちよつとそういう気がいたしますが、それからその他の場合は省令の改正だけでできるような気がいたします。まだ初めてでございますので検討さして頂きたいと思います。
  119. 岸良一

    ○岸良一君 私は先ほど申上げましたように、省令を見れば暫くの中に入つておる事項だろうと思う。私はさつきも販売の問題も省令の中には規定していない、むしろ私はやれということを省令に書いてもらいたいということを要求しているので、そういうような点は私は厚生省の考えだけで私はできるものと思うのですが、そういう意味で私は積極的に御研究願いたい、こういうことです。
  120. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 なお今日はこれ以上恐らく進まないのじやないかと思いますので、厚生省の恩田課長補佐は、今日の私どもの質問の要旨は十分おわかりだろうと思う。従つて先ほどのお言葉を信じて、帰つて上司に復命して善処するということを期待いたしたいと思います。それからなお私は委員長に希望申上げます。ただ期待するだけでは、僕らの期待だけではどうにもならん。この問題は即刻酪農民が騒いでおる問題の解決に役立たせたいということが主眼点なのでございますから、即刻恩田課長補佐は帰つて上司とお打合せになり、厚生省としての最善の努力を払つてどもの要望に応えられると思うのですか、駄目を押す意味において、委員長から厚生省の責任ある局長に次回の農林委員会までに政令の改正を要するものはどういうふうに改正したらいいか、はつきりその案を持つて、できれば農林委員会が開かれるまでに政令改正をやつて頂ければなおいいのですが、間に合わなかつたらそのときまでにそういう態度をはつきりさせ、若し政令の改正ができず、私どものこの委員会の要望が厚生省で受入られないならば、受入れられないなりに、当委員会にその理由を我々が納得できるように御説明するような機会を委員長のはうでおとり頂きたいということを希望として申上げておきます。
  121. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  122. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記を始めて下さい。只今の宮本委員の御発言に基きまして、さような措置をすることも適当であると思います。本件につきましては、委員各位の総意として要望せられておるように拝承いたしましたので、この際飲用乳の処理基準改訂に関する申入を決定頂きまして、厚生大臣申入の手続を収進めるようにいたしたいと存じます。つきましては、その申入案を朗読いたしまして御審議を頂きたいと思います。    飲用乳の処理基準改訂に関する申入   牛乳飲用普及促進のため、高温殺菌の一般適用、容器の制限の緩和その他食品衛生法に基く飲用乳の製造及び保存方法の基準を速急緩和改訂せられたい。   右当委員会の総意を以て申入れする。    昭和二十九年九月二十二日         参議院農林委員会   厚生大臣草葉隆圓殿    飲用乳の処理基準改訂に関する申入   この件について別紙写のとおり厚生大臣申入れたから、右速かに実現するよう貴省においても尽力せられたい。   右当委員会の総急を以て申入れする。    昭和二十九年九月二十二日          参議院農林委員会   農林大臣保利茂殿  本案を当委員会申入として決定いたすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないようでありますので、決定をいたしました。  なお、この際恩田君に申添えますが、決定せられました飲用乳の処理基準改訂に関する申入は、後刻支出を以て大臣宛に申入れをいたしますが、緩和改訂の結果は次回の当委員会にその結論を報告せられたいという趣旨のものでありますので、その趣旨を十分取入れて御進行下さいますることを申添えておきます。いずれ次回の委員会の日取りにつきましては決定次第連絡を申上げます。   —————————————
  124. 森八三一

    委員長(森八三一君) 次に、玉糸価格安定の件を議題にいたします。この件につきましては、当委員会におきましてすでに数回に亘つて問題となり、政府の善処を求め、農林当局におきましても極力努力せられておるのでありまして、前回の委員会における懇談の結果によつて農林当局においては更に作業が進められておるようでありますので、本日は引続き懇談されて、その後の状況を聴取いたしたい、更にその結果に基きまして御協議を願うことにいたしたいと存じておつたのでありますが、時間の関係もありますので、更に当委員会の趣旨が十分達せられまするように、農林当局のこの上ともの善処を要することにいたしまして、その結果は次回の委員会で更に経過の聴取と共に御審議を願うことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないようでありますので、さよう取計らいをいたします。   —————————————
  126. 森八三一

    委員長(森八三一君) 次に、昭和三十年度農林関係予算の件を議題にいたします。本件につきましては、昨日の委員会において一応説明を聞いたのでありますが、今日更にその説明を基礎といたしまして御質疑を順序に相成つておりますが、御説明にもありましたように、数字もコンクリートになつておらないような点もありますので、本件の質疑につきましても次回の委員会に譲りたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないようでございますので、本件につきましても、さよう取運びをいたします。   —————————————
  128. 森八三一

    委員長(森八三一君) 更に、農業災害補償制度改正の問題を議題にいたします。本件につきましては、去る五月十四日付当委員会から農林大にに申入の次第もありまして、農林省当局から何らか説明かあればこの際お聞取りを願いたいと存じましたが、未だ説明するまでの段階に至つていないということでありますので、本件はこのままにいたしまして、次回委員会におきまして聴収をすることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないようでありますので、さよう決定いたします。   —————————————
  130. 森八三一

    委員長(森八三一君) 次に、農業用電力料金の件を議題といたします。この件につきましては、昨日溝口委員の御要求によつて資料が提出せられましたから、先ずこの資料について政府当局の説明を聞き、更に本件の審議を行い、続いて本件の取扱いについて協議をお願いいたします。
  131. 生駒勇

    説明員(生駒勇君) お手許にお配りいたしました灌漑排水電力料金調というものにつきまして御説明申上げます。昨日御要求がございました五キロワツト、百キロワツト、五百キロワツト、一千キロワツトの各場合におきまして、左側にございますのがその使用時間でございますが、それを比較いたしました一欄表を提出するようにという御指示がございましたので、昨日私どものほうで調製いたしましたものでございます。  1のところで五キロワツトの場合と書いてございまして、左側に時間数が出ておりますが、御承知のように例えば五キロワツト五百時間使うというのは稀にみる需用家でございまして、これは一年間を平均いたしまして一カ月をとりましたので、五百時間ずつと使つて参ります需用家は比較的少いのじやないかと私ども考えておるわけでございます。これは農電統計資料等も拝見いたしておりましても、そのように考えられるわけでありますが、平均使用はどのくらいかというところに二重丸を附しております。昨日提出いたしました資料と同様のこれは平均分を明らかにしておるわけであります。例えば北海道は三百時間のところが平均として非常に多いわけであります。東北は百、東京は八十だつたと思いますが、五十と百との間にというふうになつております。関西は八十から七十というところが多いわけでございます。それからその次百キロワツトの場合でございますが、百キロワットの場合におきましても、この図表に提示しておりますように、こういう需用が一番多いところを二重丸で示しておるわけでございます。以下同様の表でございます。  それからそのほかに註に書いてございますが、契約使用期間の不使用方の割引を今度改正いたしまして割引率を多くしておりますので、需用家の値上率はここには出ておりませんけれども、その面の値上率の低下ということがこの表には出ておらないということでございます。それから註の2に書いてございますが、改訂料金では契約是正を見込んだのだ、こういうことを書いてございます。一般的に申しますと、大体農業灌漑排水電力の契約は、その使用料に比較いたしまして相当大きいものが多いわけでございまして、これをその使用料に合うようし契約を直そうという考え方がここに出ておるわけでございます。或る水害予防組合の例をとつて見ますると、例えば契約は九百六十キロワツトでございますが、実際使つております使用電力は最大需用は六百九十五くらいのところがずつと使つておるという例がございます。こういうものは九百六十の契約をいたしておりますと、固定費が高くかかりますので、それを六百五十キロワツトに直しまして契約をしようという考え方がここに入つておるわけでございます。簡単でございますが、私の説明を終ります。
  132. 溝口三郎

    溝口三郎君 潅漑排水用の電力料金について、九月十三日付に通産省から御発表になりましたのは、最大値上り率が五%、それから九五%に下がるのもある、全国平均三%の値上りだという資料を御提出になつたのでございますが、それは使用時間の状況が現実に合わない部分が非常に多いのじやないかというので、改めて資料の提出を要求いたしたのでございます。只今説明がありましたが、その内容を拝見いたしますと、最大の値上り率は一五%になつている分も相当にあるのでございます。電気料金改訂要綱の基本方針の内容におきましても、農事用電力については改訂の影響を軽微ならしむるため特別の措置を講ずるという項目が入つているのでございますが、ところがこの一五%程度になるというようなものは、この基本方計にも反するようなことでございますし、特別の措置を講じてはあるものの平均の値上り率よりはずつと大きく上廻つておるのでございます。こういうのは基本方針にも反することでございますから、この基本方針に基いて平均の価上り率以下に下がるようになお再改訂を要望いたしたいのでございます。なお昨日来審議の過程におきまして痛感しておりますのは、通産省におきましても、農林省におきましても、かような重要な灌漑排水用の電力について全国的に実態調査が完全にできていないのじやないかと私は考えるのでございます。従来毎年電気料金の値上りに伴つて灌漑排水電力料金の問題が論議されていたのでございますが、昨日私が申しましたように、一般の電力料はこの五カ年に約三十倍になつていたんです。その都度潅漑排水用電力については割引等の措置が講ぜられたにもかかわらず、五十倍にも上つておるようなことは、これは各地区の実態もわからずに、抽象的にきめたようなことから出て来たのではないかと思うのです。将来におきまして電気料金の仕上の問題は、必ず電源開発促進と共に起つて来ると思いますが、その都度今までのような灌漑排水用の電力について問題を起すことは、これは基本的な資料が私はなくて、そして関西電力等においては、数千カ所が一カ月の使用時間が七十だというモデル・ケースで、こういう表を作つていたことに問題があると思うのです。私はこの基本要綱に基いて、通産当局においては、灌漑排水電力料金の改訂をすでに電力会社には認可していると思うのですが、契約の場合に少くとも平均の値上率以上になるということについては、何らかの措置をとつて軽微ならしめるような方法を講じて頂くように要望をいたすと同時に、基本的な問題になります実態調査については、これは農林省、通産省と十分に御協議の上に、予算が必要ならば予算も大蔵省に要求して、僅かな予算で私は済むと思います。完全な資料をこしらえて、そしてその上で将来の電気料金の問題については論議のできるような態勢を、この際これを機会にして一つつて頂きたいことを要望いたす次第でございます。
  133. 岸良一

    ○岸良一君 これは何ですか、潅漑排水川電力料金というのは幾らくらいですか、収入というのは……。
  134. 生駒勇

    説明員(生駒勇君) ちよつと手許に資料はございませんが、あとでお届けいたします。
  135. 岸良一

    ○岸良一君 私は非常に小さなものじやないかと思うのです。そして今度は受けるほうの零細農民というものは非常に影響するのですから、従来政策的な料金考えられる、これは前の公益事業委員会等でも陳情を受けられまして、松永さんなんかも、これは何とか考えなければいかんと言われたのですが、私は考えてみることも必要だと思うのです。今の溝口委員の言われたような材料の点等に若し問題があるというならそういうことになつたとしたならば、お調べになつて、更に検討をして頂いて、そして何とが少くなるような工夫をして頂くということが必要ではないか、希望を申上げておきます。それからこれは昨日聞けばよかつたのですが、この機会に、この前に電力会社から出て来たのは一四%値上げでしたね、それが一一%上げにまでなつてしまつた、もつと下るのではないか、私どもは前から元通りにしておいてくれという、その余地はあるのじやないかということで、大分やつたのですが、それはそのくらい上げたというのは、一体何が下つたのですか、どの費目が……。
  136. 生駒勇

    説明員(生駒勇君) お尋ねの点は、申請案に対して費目でどのくらい下つたかということだと思うのですが、実は申請案と今度の改訂案との比較は正確にはいたしかねるわけです。その理由は、一つは申請案は二十九年度需給計画ベースにいたしまして原価を算定いたしまして、これをペイするように要求を定めてくれ、こういうような要求でございます。総額は二千百億であつたのです。それが今度の改訂案におきましては、二十九年度ではございませんので、三十九年の十月から三十年の九月までの間をとりました原価計算をいたしたわけでございまして、その原価計算はおおむね三千十七億となつておるのであります。それとこれとを見て頂きますと、八十三億くらいの差しかないという御疑念があると思いますが、それは実は年度がずれましたために原価が高騰しておるわけであります。逆に申しますと、高い発電所ができて来たものが、来年の上になりまして、相当たくさん運転に入つて来るということがございますために、それを二十九年度に引直して比較してみますと、二千百億の申請に対しまして二千十七億の原価は、千九百十億程度の原価に査定したということになるわけであります。従いまして、二千百億に対応いたしますものは千九百十億でございまして、それをただ半年ずれたために高い稼働設備が入つて来た、そのことによりまして原価の計算上二千十七億になつた、こういうことになつておるわけであります。そのうちの主なものは、燃料費、石炭の費用でございます。これとそれから人件費、これはベース・アツプを認めなかつたための減でございます。それからもう一つは税金と金利の減免でございます。税金で約三十九億、金利で以て十三億の減免がございました。これが主な査定の内容でございます。従いまして、それによりまして、先ほどのような値上率の差が出て来た、こういうことになつて来ております。
  137. 溝口三郎

    溝口三郎君 先ほど私言おうとしておつたのでありますが、今度資料を出して頂いたのは、五十時間、百、二百、三百、四百、五百というような区分で出す、それには大体私は濯漉排水用のポンプは二百から三百時間くらいが普通にあるケースではないか、七十時間というようなのは、これは殆んどなのじやないかというようなことから、一応この時間を出して、そうして三百時間、四百時間というのはどの程度の値上りになるのか、それが大多数がそういうふうになるのじやないかというようなことから、こういう資料を要求したのであります。そうして私の考えでは、大体百時間未満のものは二万数千個所のうちの二割程度に逃してはいないのじやないか。百時間から三百時間ぐらいのものが大よそ八割程度あるのだ、その上五百時間ぐらいまでのものが二割程度ぐらいに分布されるのだ。それは私の想像に過ぎないが……。併しそういうものについてすらも何らの私は資料が整えてないのじやないか、それが基本的のことになるのです。今の御説明ではまだ七十時間がたくさんあるようにも御免明なさるのだが、そういう何らの根拠なしに、そうして五%しかないのだということで値上の算定をするというようなことは、将来はこれは是非ともやめて頂いて、本当の資料に基いてやつて頂きたいということを特にお願いしておきたいと思います。私先ほど申上げましたように、非常に大きな、基本要綱にも反するような、一割五分の値上りになるようなものが八割も出て来るようなことがあるならば、これは重要な問題である。それに対して何らかの措置を講ずる必要があると思いますが、もうすでに認可してしまつているということになるので、どういう取扱いにしていいか、これは委員長にお願いしたいのですが、ちよつと速記を止めて頂いて……。
  138. 森八三一

    委員長(森八三一君) ちよつと速記を止めて下さい。    午後六時九分速記中止    —————・—————    午後六時五十四分速記開始
  139. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは速記を始めて下さい。只今議題になつておりまする電力料金に関しまする件につきましては、通産、農林当局と各委員の間に相当詳細に亘つての質疑が交されたのでありますが、資料の整備されておりません等によりまして、極めて公正妥当な結論を出すということは早急には困難なようには思われまするが、農事用電力の値上改訂という問題は、事食糧増産にも極めて密接な関係を持つことでありますので、この際当委員会の総意をまとめて政府に善処方を申入をいたしたいと存じます。つきましては、その申入に関する案を作成いたしましたので、朗読してお諮りをいたしたいと考えます。    電力料金に関する申入   電力料金の値上げは我が国経済の基盤を破壊する暴挙というべきであつて真に遺憾とするところである。   而して、経済力の最も脆弱な我が国農業及び農家を擁護し農業生産力の増強に資するため、農事用電力料金及び肥料製造用電力料金については、現行据置くよう改めて特別の措置を講ずることとせられたい。   なお、右の特別措置についてできるだけ速かに、遅くも次回委員会までに当委員会報告せられたい。   右当委員会の総意を以て申入れする。    昭和二十九年九月二十二日         参議院農林委員会     国務大臣緒方竹虎殿     農林大臣保利 茂殿   通商産業大臣愛知揆一殿  以上でございます。  以上の案に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないようでございますので、電力料金に関する申入は、只今お諮りをいたしました案に決定をいたしました。  なお、本件の申入に関しまして、将来かくのごときことを繰返えしませんように、基礎的な資料の整備、統計の拡充等につきまして十分な予算措置を講ぜられますように別途附帯として申入することにいたしたいと存じます。
  141. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 私は今の申入に賛成するものであります。けれどもこの申入の字句の中に「現行を据置くよう」という字句がありますが、この字句は、昨日の局長の御説明にあつた不合理なものについては是正するという御趣旨によりまして、そういつたものについては現行を据置くばかりでなく、適正な価格に当然引下げられるという場合には、現行を据置くというよりももつと低くなるということがあり得るということをここで御承認願いまして、私はこの案に賛成いたしたいと思います。
  142. 森八三一

    委員長(森八三一君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  143. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記始めて下さい。   只今宮本委員から御発言になりました電力料金に関する申入の決定中、「現行を据置くよう」という意味は、現行の料金について不合理なものについては現行よりも低下する場合もある、そうすべきであるという意味を含んでおるものというのでありまして、その表現はさような趣旨であることを確認をしておきたいと思います。
  144. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 それからもう一つ。昨日局長は電力カーブは困るというよな御意見があつたのでございます。これは全国の電力カーブを出せと言われても困るのだ、こういうお話でございましたが、私は昭和三十九年度の前半期でも結構ですし、二十八年度電力カーブでも結構なんですが、東京電気の区域だけでも結構なのです。一カ所、ともかく頂きたいと思うのです。これは電気会社にあるはずなんです。ただ、これを写してやる手数がえらいということはこれはあると思うのです。で、これは若しもそれが非常に困難だ、枚数が多くて困難だということならば、東京電気の配給区域の標準型のものを数カ所頂ければ結構でございます。これはどうもないというと、私ども校討する場合に肝心なものがないということになつて目度がつけにくい。これはあるはずなんですから……。ただ東京電気でそれは困難だとおつしやるのは、通産小口の局長が困難だとおつしやつたことは、枚数が多くなるとか、或いは非常に大部なものに大るというようなことで困難という言葉をお使いになつたんじやないかと思うので、これはありますから、標準的なものでもよろしうございますし、二、三カ所頂きたいと思うのであります。
  145. 森八三一

    委員長(森八三一君) ただ希望だけでいいですか。
  146. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 いや、それはお出し頂けると思うのですが、駄目ですか。
  147. 生駒勇

    説明員(生駒勇君) 私どもの常に用意いたしておりまするのは供給力のほうのカーブでございます。需用者のほうのカーブというのは、需用者がそれぞれ自分のほうのカーブを書くということになつておりまするが、宮本先生のおつしやつておられますのはどららのカーブでございますか。
  148. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 私の申上げておるのは供給力のほうの供給のカーブでございます。
  149. 生駒勇

    説明員(生駒勇君) 供給側のカーブでございますと月別にしたのがございますから、それをそれでは調製いたしましてお届けするようにいたしたいと思います。
  150. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 月別でなく、発電所から取れば、その発電所の毎日のカーブが出ておるはずなんです。これは発電所には必ずあるのです。私は技術屋だからよくわかつているのです。
  151. 生駒勇

    説明員(生駒勇君) そのリレーシヨン・カーブということになりますと、これは非常に発電所全部でございますから、それから面も水力と火力の噛み合せがございますから、そういう資料の要求でございますと、それこそ大部なものになりますが。
  152. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 これは私は一カ所でも二カ所でもよろしいのです。
  153. 生駒勇

    説明員(生駒勇君) 一つの発電所でもよろしうございますか。
  154. 宮本邦彦

    ○宮本邦彦君 東京管内のモデル的な水力のを一カ所でも二カ所でもよろしい、こう申上げておるのです。
  155. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは只今宮本委員要求資料は、全体のものがありますれば非常に結構ですが、発電所の一、二につきましてでも結構でありますので、整備して提出されんことを希望いたしておきます。   —————————————
  156. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは次に、本日質疑をいたしました昭和二十九年産米価格に関しまして、何らかの申入をすべきではないかというような御意見もあるのでありますが、この取扱いにつきまして如何ようにいたしまするかをお諮りをいたします。  速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  157. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記を始めて下さい。  只今お諮りをいたしました昭和二十九年産米価格に関する中入につきましては、その案を作成いたしましたので、朗読してお諮りをいたしまして審議を頂きたいと存じます。    昭和二十九年産米価格に関する申入   昭和二十九年産米価格は生産費を基準として再生産を可能ならしめるものとせられたい。   右当委員会の総意を以て申入れする。    昭和三十九年九月二十二日         参議院農林委員会   国務大臣緒方竹虎殿   農林大臣保利 茂殿  以上であります。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないものと認めますので、本申入は、只今お諮りいたしました案に決定をいたします。   —————————————
  159. 森八三一

    委員長(森八三一君) 次に、次回の委員会の開催の日取りについてお打合せをいたしたいと存じます。次回の委員会の日取りは、後刻協議をいたしまする台風の調査等との関連もございまするので、来月の十九日、二十日を予定いたしたいと思います。なお、この間に緊急突発のことがありますれば、その、取扱いにつきましては、委員長にお任せを頂きたいと存じますが、一応の現段階における目標をそういうことで取運びをいたしたいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないようでございますので、次回委員会は、特別の事態の発生のない限り、来月の十九日、二十日ということで進行をいたしますることに御了解を頂きます。   —————————————
  161. 森八三一

    委員長(森八三一君) 最後に議員派遣の件につきましてお諮りいたします。先刻理事会で御了承を得ましたのでありますが、台風の被害状況の調査のため、第一班、大分県、宮崎県及び鹿児島県に、第二班は静岡県に、又冷害地の現地調査のため、第三班として北海道へそれぞれ議員派遣いたしたく、その日時、人選及びその要求書の手続等は上委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは本日はこれを以て立会いたします。    午後七時十一分散会