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1954-06-29 第19回国会 参議院 農林委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年六月二十九日(火曜日)    午前十一時開会   —————————————   委員の異動 六月二十八日委員鈴木一君辞任につ き、その補欠として、松浦定義君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     森 八三一君    理事            宮本 邦彦君            江田 三郎君            戸叶  武君    委員            川口爲之助君            佐藤清一郎君            重政 庸徳君            横川 信夫君            飯島連次郎君            岸  良一君            溝口 三郎君            河合 義一君            清澤 俊英君            鈴木 強平君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君   説明員    農林大臣官房長 渡部 伍良君    農林省農地局長 平川  守君    食糧庁業務第一    部長      伊東 正義君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○委員長報告農林政策に関する調査の件  (農林関係予算に関する件)  (農業移民に関する件)  (農地問題に関する件)  (昭和二十九年産麦類の検査に関す  る件)   —————————————
  2. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今から委員会を開きます。  議事に入りまする前に御報告を申上げます。  昨日の委員会決定されました凍霜害対策に関する申入につきましては、大蔵農林大臣に対しまして、決定を頂きました申入文書にいたしましてそれぞれ郵送、申入を行なつておきました。なお、昭和二十九年度麦価関係昭和二十九年度予算実施に関する二つの申入につきましては、前段につきましては、昨日米価審議会開会中でございましたので、都道府県会館保利農林大臣面接を求めて申入を行う手続をいたしたのでありまするが、たまたま議会に有る説明質疑の衝に当つておられましたので、時間的にその事を得ませんために、東畑次官面接をいたしまして、宮本委員江田委員と共に、委員会における空気を十分口頭説明をいたしつつ申入をいたしました。後段の予算実施に関する問題に関しましては、本日閣議の前に農林大臣にお目にかかつて申入を行うべく準備をいたしておつたのでありますが、時間の関係で、閣議が開催されまして農林大臣に席を外して頂く機会を得ることができなかつたために、江田委員と共に参つたのでありますが、面接する機会を得ませんために、秘書官を通じまして趣旨を伝えて文書を手交し申入をいたしました。大蔵大臣につきましても同様でありましたので、これ又秘書官を通じまして文書を手交し、趣旨を伝達して善処方を依頼しておきました。昨日決定いたしました三つの申入の取扱いにつきましては、以上の通りに進行いたしましたので、この際御報告を申上げておきます。  それでは昨日決定を頂きました昭和二十九年度予算実施に関する申入に関連いたしまして、その具体的な内容がどうなつておるかというようなことにつきましては、本日の委員会農林省説明を聞くことになつております。この際、官房長が出席されておりまするので、農林省で取扱つておられまする現況について先ず官房長説明を求めます。
  3. 渡部伍良

    説明員渡部伍良君) このたびの予算節約方針は、二十九年度予算に対する三党修正で、予備費が五十億減つて、或いは繊維品消費税法の不成立によるもの、それから入場税税率引下によるもの、或いは補助金等臨時特例に関する法律修正によりまして、例えば農業改良普及員補助率修正、或いは入場税税率引下に伴います交付税及び譲与税増加警察法修正に伴う増加、そういうもののために二百億見当の金が要ると、こういうところから出ているのであります。御承知のように、物件費施設費、即ち補助金委託費地会計へ繰入等の、これらに準ずるものを含んでおります。これらについて一律に一〇%、それから学校、病院、試験研究機関等物件費施設費については五%、災害復旧費補充費等については節約を除外する。こういうふうな案になつておりまして、それに基きまして大蔵省と種々折衝を重ねて行きまして、今のような抽象的な分類ではいろいろの疑義がありますので、試験研究費的なものをどの程度まで含めるか。それから災害復旧費公共事業費になつているもの以外のものでも、災害復旧的なものをどの範囲にやるか、いろいろ折衝を重ねました結果、公共事業費を除く一般費用につきましては、只今お手許に配付いたしておりますようなことになつたのであります。即ち、昭和二十九年度予算節約額調総括表)という表を先ず御覧願いまして、それの一番最後の欄を見て頂きますと、昭和二十九年度予算額、一番初めの欄でありますが、これに該当するもの、即ち公共事業費を除くものは五百三十一億になつているのであります。そのうちから節約対象額、これは逆になりますが、欄で五段目であります。そのうちで物件費その他節約対象になるものは七十五億になるのであります。従いまして、これを対象として折衝をしたのでありますが、只今申上げましたような種類の仕分けをいたしまして、これの一割、試験研究等は五%、こういうことであります。結局七億程度のものが出るべきところを五億九千万円でこれをやつたのであります。その内訳は、旅費庁費委託費施設費補助金交際費補償金、他会計へ繰入、その他、こういうふうなことになつているのであります。旅費節約を免かれていないのであります。一〇%。庁費は多少減つている。一〇%の対象と五%の対象をそれぞれ仕分けしてあります。かようにしてやつたのであります。これを各局別に仕分けして見ますと、もう一つの表であります。  次に、公共事業費関係でありますが、公共事業費関係につきましては、本日の閣議議論をされておるのじやないかと思います。今まで大蔵省との話は付いていないのであります。大蔵省のほうでは多少の含みは残すところまで行つたのでありますが、具体的に何%の戻しをやるかというところまではまだはつきりしておりません。即ち自由党政調会方百面では、一〇%の節約を五%までにとどめろとか、或いは六%にとどめろとか、いろいろな議論をされておるのであります。そこまで行くものか、或いは一〇%と五%の中間の一定限度でとどまるものか、本日の閣議でどういうふうな結論が出るか、まだはつきりしません。ただ農林省としましては、建設省関係で、道路費用道路法関係節約ができない、こういうふうなことを言つておりますが、実質的にこの費目によつて公共事業費の中の節約率の差があることは困る、もともとまだ予算成立して間がないときに、将来の物価値下りを大幅に予想しての理由等節約することは反対であるけれども、どうしても節約は或る程度止むを得んとしても、各省一律ということを強く右眼しておるのであります。何%の節約になることになるか、今日の閣議結論が出るかどうかまだはつきりしておりません。それからもう一つの点は、農林漁業金融公庫の出資或いは預金部からの借入金の問題であります。これは資金運用部から借入れる分を十億節約するという案になつております。即ち公庫の分は大体五%に相当する額になつております。  節約進行状況は以上の通りでございます。
  4. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今説明に対しまして、御質疑のある方は御発言を願います。
  5. 溝口三郎

    溝口三郎君 二十九年度実行予算について今説明を伺いましたが、六月一日の閣議で本年度実行予算一律に一割節減するような方針をきめているのでございますが、そのうち一カ月延びておりますが、今、官房長の御説明では、今まで事務的に大蔵省とも折衝しているが、殆んどまとまつたことはないんだ、今日閣議決定になるだろうという御説明でございますが、農林省におきましては、事務的に折衝をされる場合口に、絶対に事業量等については、食糧増産については譲歩するここができないんだというような強い主張をされていたのかどうか、新聞紙上等承知するところでは、浦山治水関係については、これは強硬に絶対に事業量は縮小することはできないんだというような主張を、今までやつていて、決定も持越しになつているようでありますが、今日農林大臣は、絶対に事業是等については縮小することは食糧増産政策としてやることはできないんだというような決意で出席されているか、どうか、その辺について農林省としてはどういうようなお打合せがあつたのでございますか。今朝閣議前に、先ほど委員長から御報告がありましたように、農林大臣まで参議院農林委員会の意思は申入れてあるのでありますが、今までのいきさつ等についてもう一応御説明をお願いいたしたいと思います。
  6. 渡部伍良

    説明員渡部伍良君) 先ほど申上げましたように、二百億の歳入欠陥を補うための節約でありますので、それを元にすると一〇%乃至五%の節約になるというのであります。これには法律の不成立による歳入減等が相当大きいフアクタ—をなしておるのでありますから、そのままで、やると、すれば、今申上げましたような一〇%乃至五%の節約を必要とすることになります。併し先ほど申上げましたように、とにかく二十九年度予算成立して間もないことでありまして、突如としてそういう節約を、言われても困るということで、六月の中旬頃までは、まあ農林省だけではありません。各省とも大蔵省に取合わなかつたのであります。併しその後何回か出て来いという話でありまして、まあ渋々出て行つてつたのでありますが、結局公共事業費については、先ほど申上げましたように、事務的に結論が出ないのであります。一時自由党政調会等にも持込んでおりましたが、それでも結論が出ないのであります。私のほうとしましては、まあ以てのほか、つまりもともと節約いやだ、事業量を減さずに節約ができるかどうかということは、もう少し進行して後に、例えば低物価が浸透して後でなければはつきりしたことは言えないんじやないか、まあ反対だと、こういう態度で来ておるのであります。仮に自由党政調会等議論が出ましたような五%の節約としましても、資材費その他が公共事業の中で占める割合、それから又現在の資材費その他の物価と、年末の物価との値下り状況、そういうものを考えて見ましても、五%節約しても事業量を減らさずに済むということは言えないんじやないかと思います。従いまして、そういう議論よりも、まあいやだ、殊に治山治水協議会等では、治山治水さえよければいいというような議論も相当強く出ておりましたようでありますが、農林省としましては、治山治水勿論でありますが、食糧増産というのは農林省の一枚看板でありますので、先ほど申上げましたように、とにかく、区別を付けることがおかしいんじやないか、やるとしても一律にやらなければいかんと、こういうふうな結論で交渉しておつたのであります。
  7. 溝口三郎

    溝口三郎君 今年の実行予算政府方針は、六月一日にきまつ、ときには一律に一割ということのようでありました。今、官房長の話も一律に自由党できめて五%とかということになるのでありますか。又治山治水のほうでは絶対に困ると言つている。節約が総額で若し半額になつたような場合に、それをかぶせられるようなことを私どもは非常に不安に考えているんですが、それは昨年の実行予算の場合には、治山治水のほうは二%くらい、食糧増産のほうは七%になつておる。どうしてそういう同じ公共事業費の中でも差等を付けるか、非常に食糧増産はどうでもいいのだというような印象を与えるのじやないかと考えているのでございます。麦価の問題でも、本年度は大麦、裸麦は現行価格よりも一俵で二十円から二十五円下げた政府原案が本日米価審議会に出ている、参議院農林委員会では、少くとも現行価格よりは下げるようなことは絶対にしてはいけないのだという申入を、昨日農林大臣大蔵大臣米価審議会にも申入れてあるようなことなんでございます。仮に政府原案現行価格よりか二十五円も下げた、又今年の実行予算においても食糧増産については既定計画よりか一割乃至五%下げるのだ、而も治山治水のほうは昨年と同じような率であれば下げる率は少ないのだということになると、麦価も下げるのだし、それから公共事業費既定計画より下廻るようなことになるのだというようなことで、食糧増産政策というものは今度のデフレ政策について、だんだん下廻つて来たのじやないかというようなことを、若し仮に農民が考えるようなことになると、私は非常に重大な問題であると考えるのでございます。若しこの実行予算が五%なり一〇%なり下がるということになりましたときに、現在公共事業はすでに各事業地区事業費は皆割当てあるので、それを若し節減をしなきやいかんということになると、非常にたくさんの事業地区があるのだが、そういうふうに今度は一率に五%天引をやるというようなことになるのか。それで排水事業というものは麦価は下げたのだけれども、二毛作や何かやる地区については、これほ絶対に事業費は減らさないのだということまで考えた上に、今度の実行予算の、閣議あたりに出ていられるときに、どこまでも強硬に、食糧増産については農林省はどこまでも既定方針を変えないのだということをはつきり声明してやつて頂かないと、麦価の問題と関連して、私は非常に食糧政策について疑惑を持たれるようなことがあるのじやないかと思うのですが、その点について、農林省のお考えを明確にこの際もう一遍お伺いいたしておきたいと思います。
  8. 渡部伍良

    説明員渡部伍良君) お話通りでありまして、まあ不幸にしてと申しますか、麦の価格は最初に政府がタッチして物価政策の尖兵になつておるのであります。それが政府与党と操んだ挙句、ああいうような結果になつたのでありまして、御心配になつている点は我々も心配しておるのであります。併しこれは非常な疑問が一方では持たれます。即ち輸出は伸びない、農村の購買力を更に圧迫した場合に日本の経済が非常に又萎縮して行くのではないか、そうすれば更にもう少し根本的な総合的な計画というものが打ち出されてのちでなければいかないじやないか、  こういう議論を随分やつたのであります。麦の価格は今のように進行しておるのであります。従いまして、お話にありました生産意欲を維持向上する農林省の施策がもつと打ち出されなければならないことになりまするので、お話の点につきましては、私ども全く同感でありまして、むしろ食糧増産費のほうを全面的に出したいのでありますが、治山治水その他もやはりそれぞれの理由があると思いますので、一律という線でやつて行こうというわけでございます。
  9. 江田三郎

    江田三郎君 今の答えでちよつとはつきりわからなかつたのですが、仮に公共事業費を何%か削られたときには、この配分しているところの予算をやはり一律に判るというのか、それとも特定事業所を選んでそれを打切つて、全体として何%ということにするのか、その点はどうです。
  10. 渡部伍良

    説明員渡部伍良君) 今のところではこの節約率を、我々はもつと一〇%と言つているのを圧縮しようということで、今日閣議でどういう決定になりますか、その決定のしようによつては、まあ不穏当な言葉でございますけれども、相当大蔵省になぐり込みをかけようというつもりでおります。その額によつて多少変えなければいかんと思いますが、現実はやはり事業費によつて一律にやる以外にないのじやないかと思います。節約程度、つまり歩溜りがどのくらいになるかによつて多少の調節は加えなければいかんと思いますけれども、今のところは一律にやる以外に方法がない、こういうふうに考えております。
  11. 宮本邦彦

    宮本邦彦君 関連して……。今の官房長お話は私ちよつと腑に落ちないのですが、というのは、今年の事務当局のやつている査定なるものを見ますと、堤防だけをこれだけやつて八百万円とか、それからポンプだけが千五百万円とか、事業ごと完成するというような非常に効率的ないわゆる査定をやつているんですね。ところが一律に一〇%とか、五%とか言われると、ポンプは未完成堤防は未完成というものが出て来るので、今のお話ではちよつと困るのじ、やないかと私は思いますがね。これは農林予算が今年みたいなように効率的に厳格に査定されている以上、これは物価値下りということならよくわかるのですが、それ以上にそういうことになると、今の白昼場長の御答弁はちよつと現実として困ることが起きるのじやないかと思いますがれ。
  12. 平川守

    説明員平川守君) お話通り、かなり具体的に大きな県営或いは国営等につきましては具体的にいろいろ計画を、成るべくまあ効率的に動くようにやつておりますから、一律とまあ官房長申しましたけれども、厳密に一律に切るというわけには行かないから、こういうわけでございまして、ただ大体の考え方といたしましては、仮に削減があれば或る事業所を徹底的に切つて、或る事業所は切らないということではなかなかむずかしいので、やはり少しずつ効率を害せざるような範囲においてバランスをとりながらやつて行く、こういう意味にお考え下さつて結構だと思います。
  13. 江田三郎

    江田三郎君 そこでそういう場合に、この特定事業についてはそれを零にするという場合もあり得るわけですか。それは絶対にないということなんですか。
  14. 平川守

    説明員平川守君) 実際問題として特定のものを零にするということは、もう先ず考えられない、殊に節約率が非常に低い場合におきましては、そういうことは殆んど考えられないというふうに思います。
  15. 江田三郎

    江田三郎君 それからこの六月一日の閣議決定で行くと、まあ財政規模の一億円の枠を堅持する、そうして増額を伴う補正は一切行わない、こういうことになつておりますが、予算措置のできていない法律が仮にあるとした場合には、それは法律が仮にあつたところで増額を伴う補正を一切行わんということになれば、実際には何もできんということになりますが、これはもうその通り厳重に行くわけですか。
  16. 渡部伍良

    説明員渡部伍良君) お話の点は、例えば団体関係法律の改正に伴うもの、或いは凍霜害対策等農林省でもあるのであります。これらは予備金でやつてもらおう。それから又今の団体の分はもう少し先になつて補正予算でもいいということになれば補正を出すことになると思いますが、いずれにしましても、農林省関係ではそう大きい補正というか、増額要求は今のところありません。まあ先のことを悪いことを考えては面白くないのでありますが、去年のような大水害とか、或いは今の気候状態が続いて冷害が出るというような場合には、これは又根本的に国会等議論をして頂いて、現任予算節約に伴つてきめております線と別なことを考えて頂かなければいかんと思いますが、只今まで農林省関係でこの予算以外で必要とするものについては、そう大きい金額を予想しておりませんので、こういうきめがありましても、予備費その他で賄なつて行きたいと具体的に大蔵省と相談を進めております。
  17. 江田三郎

    江田三郎君 団体のやつは我々はあれは成立していないと考えておるのだからちよつと質問しにくいので、(笑声)成立しているということになると、もつとはつきり質問するのだけれども、どうもそれは痛し痒しになるから余り質問しませんけれどもちよつとややこしいと思います。(「仮定の問題でやればいい」と呼ぶ者あり)仮出定の問題でも余り触れるとおかしくなるから、これはやめておきますけれども災害に伴う救済助成というものですね、これは何か昨日の凍霜害の分で行くと、今の農林省予算の中から振向けて行くのだ、こういうことでしたが、今年どういうような災害が起き、それに対してどういうような救済助成という措置が必、要になるかわかりませんが、いずれにしても、そういうものが今後どういう幌糠で起ろうと、一切現在の農林省予算範囲内でやり繰りをする、こういう原則なんですか。
  18. 平川守

    説明員平川守君) これは一般予算全体として、補正になつたのちでも八十億の予備費があります。仮にこの節約によつて予備費をどれだけ返すか知りませんが、相当返すとすれば、その範囲内で賄える間は補正を必要、としないのでありまして、それで足りないということになれば、当然この原則農林省としても変えてくれという要求を出さなければならん、こういうふうに考えております。
  19. 江田三郎

    江田三郎君 その災害に伴う今申しました救済なり、助成なりを予備費の中から出せるのだということになるのなら、今度の凍霜害についてもやつぱりそれで行けばいいのですよ。ところが今度の凍霜害について、昨日の会計課長の話では、予備費の中からではなしに、農林省の現在の一般の経費の中からやり繰りをして出すのだという話でしたが、それは一つ原則的にそうなのかどうかということです。
  20. 渡部伍良

    ○(渡部伍良君) 当面の問題は、たまたま節約にからみまして、向うがこちらの弱味につけ込んだ、こういうのであります。今後の農林省から出すものは全部農林省節約によつて賄え、こういう原則が確立しているとは私どもは了解しておりません。向うもそういうつもりはないと思います。今度はこれでやるのだという話に私どものやりとりはなつておりますので、たまたま丁度節約にからんだものですから、それにぱつと食いつかれた、こういうことだと御了解願つて差支えないと思います。
  21. 江田三郎

    江田三郎君 昨日の会計課長お話では、私どもはそれが一般的な原則のように受取つたのですが、官房長のほうでそうでないのだということなら、又それでなければならんと思うのですが、それは本当に今後どういうような問題が起きても、たまたま今回の凍霜害のものはああいう措置をしたけれども、今後の分については既定予算の中からのやり繰りでなしに、これははつきり予備費等によつてやるのだ、こういう確約ができますか。
  22. 渡部伍良

    説明員渡部伍良君) それは額とか、金を出す対象によつて、全部、そのうち一銭もそういう流用ではやらないということは言えませんけれども原則として今後の分は予備費としてやる、これは私ははつきり申上げていいと思います。多少こまごましたもの、二百万、三百万のものは流用したらいいじやないか、こういうここは当然財政当局からいつでも言われるのですが、仮に相当まとまつた金が必要になつた場合に、それもお前のほうでやり繰りせよといつても私どもは応ずることができないから、当然予備流用をやりたい、こう考えております。
  23. 江田三郎

    江田三郎君 百億というふうな単位のものならそういうことはあり得ると思うのですけれども単位が違つて来ると、これはこういう形で節約をした、更に、一番こんな問題が起きるのは農林省関係だと思うのでして、こういう災害のために他の事業がもつと大幅な節約を強制されるという結果になるわけですからして、今言われたことは、これは一つ官房長厳重に責任を負つてもらわんとえらいことになると思うのです。
  24. 宮本邦彦

    宮本邦彦君 さつき官房長お話によれば、予算配付は一応済んだというお話ですが、予算配付が済みますというと、一割節約をやられると、これは府県あたりでは大体予算に組んでしまつているし、それを又通牒か何かですぐお出しになる、こういう形になるのじやないかと思うのですが、実際地元を私この間休会早々歩いて見たのですが、ところが大体本省から御指示があつたのかどうか、まあこのくらいの事業はやれるのだということで団体あたりもかなり地元では準備しているようなんです。そういたしますというと、さつき農地局長お話で以て、県営あたりの大きな事業所事業がきまつているから節約額ぐらいはこれは当然いいでしようけれども、それ以上の一つの工事を九割までやつて一割放つておくというようなことはできない。従つてそういうものは一応完成を認めざるを得ない。そのしわはどこかへ行くということなんですね。ところが行つて見るというと、今日御承知のように大きな予算を予定しておつた府県或いは町村あたりは、大体予算配付があつて令達があると、皆総会あたりを開いて一応準備体制を整えてしまう、ここへ又ぽかつと、お前のところはこれを半分にしろとか、お前のところは今年は遠慮しろとかいうようなことをやられると、私は農民に対して非常な不信観念というか、そういうものを与えて、これは一つの農業政策的な考え方からするということんでもない悪い結果が出て来るのじやないか。そこで国の一兆円というこの予算、この歳入欠陥ができたのだから、その辻棲を合わせるのだ、こういうことから行けば、これは田の財政の問題なので、必ずしも地元事業の問題じやないのじやないか、事業量の問題じやないじやないかということははつきりするわけなんですが、そういつた場合に農林省は少くとも、一応これは国の責任になるのでしようけれども予算配付してしまつた、それだけの準備をさせたということに対しては、何らかの削減と事業の執行という面の妥協案を考えられて然るべきじやないか、例えば団体営あたりの事業は従来の執行の状況を見ますというと、まあ町村あたりの農業協同組合の資金を一時流用するとか何とかいうことで実際はやつておるんです。公庫の金はいつも工事には間に合わなくて、工事が大半進行した頃公庫の金が行く、まあこれでも少し順調にうまく行つたほうなんです。ひどいのになりますと、工事が終つてから公庫の金が行くというようなのが従来多かつたのです。最近公庫の金が非常に早く行くようになりましたけれども……。いずれにしろ、そういつたような農民自身の金融と言いますか、そういうものでかなり工事は進行されておるんですが、仮に今度削減がどうきまるかわからんという官房長お話で、私ども農林省の努力は非常に感謝すると一緒に認めておりますが、仮に事業が何と言いますか、低物価政策の影響で以て事業量に差支えない程度の単価の下落というものが、物価の下落というものが起れば、これはまあ非常に幸いなことなんです。そう行かない場合に、そこに矛盾ができる。そういつた程度のものは恐らく三%か、二%じやないかと思うのですが、そういつた程度事業量は例えば仕越し工事というか、先にやつてしまつたというようなものを農林省は認めて、翌年度の工事に考慮する、優先して考慮するというような、そういう措置は行政的にとれないものですか、どうですか。
  25. 平川守

    説明員平川守君) これは会計検査院との関係もありまして、前からこういう節約がありませんでも問題になつてつたのでありますが、御承知のように、規則上正式に仕越し工事を認めるというわけには参らないわけであります。実際問題としては、成るべく緊急止むを得ないものは黙認するといつたような形で運営をしておるわけであります。まあ一面少くとも農林省からの事業の割当としましては、大きな県営以上のものについては、成るべくまとめとして完成しなければならないものでない、例えば水路の一部を切るとかいつたようなやり方で昨年の節約もやつて行つたのでありますが、そういうような形で全体の効率を非常に阻害しないような形で或る程度切つて行くよりか仕方がないと思います。それからなおお話のような点につきましては、これは表向き会計検査院の了解を得てということはなかなか困難でありますので、事情によりましてほ、従来のような形で黙認をしてやつて行くということも考えて参つたらいい、かように考えております。
  26. 溝口三郎

    溝口三郎君 只今平川さんの御説明ですが、これは誤解があると困りますから、私もう一遍確めておきたいと思います。それは一昨年の問題でございますが、一昨年の二月頃農林省食糧増産をする場合に、事前に融資をやつて、そうして二月から年度内にできるだけの開墾事業をやつて、その分を翌年度の経費で出すというようなことを計画されて、それで沙汰やみになつたことがある。それはその当時に会計検査院の意向も非常にあつた、絶対に年度の違うものに対して金を出すということはできないという強い線があつたと思う。その当時建設省の決算についても僅かに百万円とか、五十万円の分を年度内にやり繰りをしてやつて、そうしてその次の年度に支払つたんだというような批難事項が非常にたくさん出ておつて農林省関係にもあつた。会計検査院はその当時の方針では、府県の補助事業なんかに対しては食糧増産上できるだけこれは便宜な方法を取ろう、併し国費については絶対にそういうことはやつて困るんだというので、批難事項が非常にたくさん出ているようなことがあつたようなことから、その当時の融資の問題も沙汰やみになつたんじやないか、従来そういうようなことは私は農林省にはなかつたと思います。あれば批難事項になるようなことなんですから、やり繰りをして行くというようなことは、私は表向きも、それからやり繰りもできないんだと、そこでやつぱり問題は戻つて、こういうもう地区に割当てた、そうしてもう。ポンプも割当てられたので請負をやつたんだ、それが一割も減額になつていると、ポンプの契約も又変えなければいけない、水も来年度は揚らんというような問題が出て来るので、この際農林省の割当の済んだような事業に支障のないように、会計事業年度についても、将来において会計検査院等の問題が起らんように、そういうような点からも是非とも、先ほど来聞いておると、何だかもう節減になつた跡始末のようなことになつて甚だ私はいかんと存じますが、まあ今まで大分官房長の御説明でも、農林大臣も決意を持つてつておられるので多分そんなことにはならんと思います。将来若しきまつたあとについての事業地区の割当等については十分御検討になつた上でやつて頂きたいと思います。
  27. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 今、公共事業事業量の問題ですが、溝口君から話されたように、何か無理な節約をしたあとの跡始末のような議論になつてしまつて、非常にじつと聞いておつても遺憾に思うのですが、私が知つておる範囲においては、当委員会事業量は絶対に減らしてはいかん、それから自由党の政調会も事業量は絶対に減らしてはいかんということは固まつておるのであります。併しこの物価の下落による節約は、これは止むを得ん。然らば原則として事業量を減ずると何%が適当であるかという問題になつて、或いは三%と言う人がある、五%と言う人がある、なかなか決定いたさなかつたのであります。大蔵省では一割は可能だ、物価の下落による五%と、それから請負契約の取締りによる五%、それで一割は可能であるというような主張をいたしておつたのであります。本日伺うと閣議にそのままの形で本日行つておるのであります。ここでどうきまるか、或いは一割にきまれば、これはもう事業量を減らして節約するという線になるので、或いはここで五%とか、何%とかいう閣議の線が出ると、これは恐らく事業量原則として減らさないという前提の下にそういう線が出て来ると私は確信いたしておるのであります。そういうことになると、農林省はそれを受入れる場合においては一割というものを受入れれば、勿論前にも申上げましたように、これは事業量を滅す、然らざる場合においては事業量は絶対的に減してはいかんという前提の下に立つて農林省は受入れることになるのでありますが、この点は一つ心して頂かねば、あとで我々との間に非常な問題が生ずることになるし、私はもう今何%が適当であるかということもわかりませんが、併しまあ三%なり、四%なりという線が出て来ると、これは農林省も各方面で努めて、ただ物価の下落がそうならん、或いはセメントがまだちよつとも下らん、或いは年賦金がちよつとも下らん、これが公共事業の大部分をなしておるものであるというようなことは十分承知いたしておるのでありますが、併し確定して受入れる以上は、一つ事業量は減さんということを前提にして、すべての方面を勘案して進んで頂かねばならんということをここで申上げておきます。そうせねば、今公共事業に関する質疑応答を承わつて参つたのでありますが、何か結論はわからんようにちよつと思いますので、私かようなことを申上げたのであります。農林省としては今私が申上げました意見に対してどういう御意見をお持ちですか、一つ簡単にお答えを願います。
  28. 渡部伍良

    説明員渡部伍良君) お話のように何%できまるかが問題でありますが、農林省としても勿論あらゆる方途を講じまして、その事業量を減さないことに努力せなければいかんことは申すまでもないことでありますが、今の線で行くとどうしても事業量を減さなければいかんということで、何と言いますか、もつと下げろということにぶつかつておるのであります。お話趣旨は十分気を付けてやりたいと思います。
  29. 森八三一

    委員長(森八三一君) 本件につきましては、私からも一言希望を申上げておきたいと思いますが、昨日のこの委員会で全会一致を以ちまして本日農林大臣申入をいたしました食糧増産の重要性に鑑みまして、絶対に本年度予算に基く事業量を減してはならんということを強く主張いたしておるのでありまして若し間違つて事業量を縮減せざるを得ないというようなことになりますれば重大なことになると考えますので、今までの質疑を通じまして農林事務当局の御意思のほどは十分わかつたのでありますが、更に当委員会趣旨が完全に実現されまするように特に努力されたいと希望申上げます。  それでは只今議題になつております二十九年度農林省予算関係の質議はこの程度にいたしまして次に入りたいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なしと呼ぶ者あり〕
  30. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  31. 森八三一

    委員長(森八三一君) 次に、農業移民の件を議題にいたします。農業移民行政機構の問題につきましては、前国会中、四月八日及び四月十三日の両日に亙りまして質疑せられたのでありますが、本日はこの問題に関しまして、その後の経過について農林当局の説明を聴取し、御協議を願いたいと思います。先ず、農地局長にその後の経過を御説明願います。
  32. 平川守

    説明員平川守君) 過般の当委員会の以後におきまして、衆議院の農林委員会のほうでも、先に同様の御趣旨、御意見の決議がございまして、それを自由党の政調会のほうに農林部長の足立委員から提案をされまして、その決議の趣旨に基く決定自由党政調会としても行りように御相談がありましたわけであります。それに対しまして、外務省、農林省及び海外協会連合会等の関係者からそれぞれ意見がございまして、結局自由党政調会としては、大体において当委員会において議論をされましたような問題について、この委員会の御意見のような線に沿つた一つの案ができましたわけであります。その大綱を申上げますと、海外移住に関する主務官庁というものは外務省にする、併し農業移民の募集であるとか、選考、訓練及び現地における技術面の調査というようなことについては外務、農林両省の共管といたしまして、農林省がそれらの事務については担当をする、併し主務官庁は外務省でありまするから、もとよりこれとよく連絡をとるような手段を設ける。機構等も連絡会議のようなものを持ちまして、そこで十分連絡をとつて農林省がそれらの事務に当る、併しこの事務につきましては民間団体を活用するという趣旨におきまして、海外協会連合会及び地方の海外協会というものをしてこれに当らせる、なお海外協会連合会等がこれらの仕事を扱うについては、現在のような組織ではいけないので、将来これを何らかの形で法制化するようなことを考えるといつたような線でございます。農林省といたしましては、大体においてそういう線でありますれば、農林委員会のほうの御議論の模様から考えましても、私どもの考えからいたしましても、実際上不都合はほぼないのじやないかということで賛成をいたしております。外務省等においてはいろいろ意見あつたようでありまするけれども、外務大臣は大体この線でよかろうというふうに政調会のほうにも御回答になつたようでありまして、近くこれについて大体そういう趣旨閣議決定が行われるということになろうかと考えております。  大体の従来の経過は以上の通りであります。
  33. 戸叶武

    戸叶武君 自由党の政調会の意見が、大体外務省の反省を促して閣議決定によつてそういう今説明されたような線になられるだろうという話でありますが、農林省としては、この問題に関して非常に外務省の行き過ぎた立場から受身の態度で、この農林委員会にも持込んで来て、我々が、外務次官が出ましたが、外務省当局の者にも出席してもらつて、相当突込んだいろいろ議論をやつたと思うのです。その後殆んど梨のつぶてで、農林省からも外務省からも現実的に自由党の政調会を介して問題を展開するより仕方がないという形でそれはいたしたのであろうから、その点は多少了承しますが、十分な連絡というものがなかつたと思う。私はあのときも非常に憂えて、外務次官に対して、相当辛辣な質問を浴せたのは、こういう問題は今始まつたことではなくて、戦争中においても起きた問題なんです。これは特にアジア問題を忠として、いろいろな右翼団体や軍人の古手やいろいろなものがこんがらがつて、そうしていろいろ日本の国事というのが表看板でいろいろな団体ができて来た。これは外務省も農林省もいろいろ困り果てて、そうして統合問題が出てきたと思うのです。戦後においてはいろいろな満洲の問題や何かが切離されたし、中国関係というものも一応切断されたし、そしてこの問題は東南アジアより、南米諸国に対する移民の問題というのが浮び上つて来たのでありますが、これに関連して結局外務省を取巻く外郭団体的なもの、それから民間団体と称するもの、それがすべて補助金を狙つて、或いは財界の援助を狙つて、雨後の笥のごとくいろいろ出して来て、これを何とかしなければならんという考え方が一つは外務省の打つた海外協会となつていると思うのです。あの役員構成の実態を見てもわかるように、個人的な名前を挙げると当りさわりがで寺ますけれども、率直に言つて自由党の院外団的な性格、旧浪人の集団、そういうものが  一つの国家の補助金を食うという狙いが多分にあの中に盛られており、而も外務省がそれを地方の各都道府県と結び付けて、そして半官的性格的な民間団体と称する海外協会を作つて、それに莫大な補助金を与えて、これを援助する、その構想の中においては、若干取るべきものがあつても、その実態ややり口を見れば、これは全く……。日本のこういう移民対策なり何なりというものがゆがめられた形において出発するならば、将来これは癌となることは明らかなんです。もつと抜本的な構想を以て臨まなければならんというのが我々の要求つたのですが、そういう点は一つも、今の話だけ聞いていると、農林省と外務省との縄張争いの調節も若干できそうだという点で、根本的な対策というものがそこに見出されないように思えるのですが、その点に対して答弁を願います。
  34. 平川守

    説明員平川守君) 実は丁度当委員会から外務省に対していいろいろ資料等の御要求もありまして、当然その後引続き委員会において議論が交されると考えておつたのでありましたが、丁度会期末の非常に、ごたごたしておる間にその機会がなくて過ぎてしまつたようなことで、私どもも更にその機会にいろいろ経過等を御離するつもりでおつたわけでありますが、その機会を得ませんでしたわけで、丁度あの頃自由党のほうでは、政調会に先ほど申しましたように、衆議院農林委のほうから持込まれて只今申しましたような政調会としての決定がありました。この決定そのものに対しまして只今お話のような団体の問題については、いろいろと私ども自体の意見もございますけれども、これにつきましては、やはり大きく取上げて検討をせられることが必要なことであろうと考えます。そういう意味において、政調会においても、これの法制化ということを、今申しましたように考えておられるようであります。その機会には当然これが根本的にどういう形のもので、どういう運用をするのがいいかという議論が出ることと思いますが、私どもといたしましては、差当り、例えば本年度予算の執行というような問題がございまして、この根本問題につきましては後日に譲ることにして、取りあえず只今のような線で本年度事業を運用して参りたい、かように考えましたわけであります。
  35. 戸叶武

    戸叶武君 役所としては、そういう当面の直面した問題を処理するという小手先の仕事だけで済むのですけれども、私たちはこの日本の外交政策にも重大な影響があるようなこの移民政策の問題で、移民行政の名の下にそういうゆがんだ既成事実を作り上げられ、その上にこれから若干の、相当の期間を置いて根本的な構想を以て修正すると言つても殆どできなくなつて来る。いつでも、今、日本の政府なり何なりがやつておるやり方というものは、この基本原則というものを明確にしないで、ごまかして、そして既成事実を作つて、そのゆがんだ既成事実の上に若干の粉飾を施して物を運んでおるというようなやり方ですが、そのやり方というものはいつでも行詰ることは火を見るよりも明らかである、私は今までの少くとも移民政策を見るならば、戦前の移民政策を見るならば、戦後における移民政策というものは根本的に頭の切替えをしなければならない、移民を食い物にする移民、ごろや、船会社の用心棒、そういつたものを寄せ集めて移民ができると思つたら大間違いである、これはもうイタリアにおける移民の失敗を見て反省してイタリアにおける移民政策を検討して見れば、過去の経験というものは若干の参考になるけれども、過去おいて、むしろいろいろな変な形における移民や何かの斡旋や何かに参加した連中の汚れた手を叩き切つて、新らしい出発をしなければ一つの民主的な形における移民政策は樹立せられないような形に当面しておる。過去における満洲や何かにおける移民と違つて、又ブラジル移民においても戦後における混乱期における実績を見るならば明らかなように、無政策なる移民政策の中に、今後我々反省なければならないいろいろな欠陥を含んでいたと思う。そういう点において日本の移民の新らしい実績を作り上げなければならないときの出発こそ、慎重に頭の切替をやつて、そうして謙虚な形で出て行かなければならないときに、戦前の殆んど移民関係を食い物にしていたような連中が外務省の古い官僚と結託して、そして民間会社の援助或いは政府の資金的な援助というようなものを受けてこれで海外協会なるものに立籠つて移民政策、移民行政に協力するといつたら、これは必ずそれによつて大きな失敗を招くことは明らかである。そういうことをとにかく検討しないで、ただ単に今この外務省上農林省の縄張争いを調節して、当面の予算関係においても関係があるから、それだけは処理するという不見識な、無性格で以て移民関係をやろうとするならば、外務省が主務官庁として、外務省の構想通り農林省が引ずられて行くことはきまつておる、外務省に完全に牛耳られるときだけ農林省は若干悲鳴を挙げて我々に援助を頼む、而も当面の彌縫的な一つのこの調整ができれば、それによつて事足れりというような行き方では、とにかくこの農民、移民行政における募集なり、或いは訓練なり、現地の技術面における調査なりというようなものにしても我々農林省に安心して任せておけない。そういう点において、これはそういうことで以て当面は一応糊途したけれども、今後においてただ補正があればいいという、そういう官僚の物の考え方で、この問題を形式的に補正するという形だけで固められたら余計悪いものがはびこる、そういうものに対して農林省は外務省と、外務省だけでなく一般の良識に訴えて、今後どういうふうな形において移民行政を進めて行こう、そういうものについての若干の構想というものがあると思うのですが、それをお聞かせ願いたい。そういうことがなければ、ただ単に我々は官僚のとにかくお先棒を担ぐというような形で移民政策をあなたたちに任せることはできないと思います。
  36. 平川守

    説明員平川守君) 先ほども申上げましたように、私ども自体としてもいろいろこの団体なり或いはその運用なりについて意見はございますけれども、併し何分にも本年度事業実施しなければならんときに入つておりまするし、国会において引続きこの問題が討議せられる時期を失したような恰好にもなりましたので、或る程度この考え方は妥協的と申しますか、そういうものであると思います。従つて決してお話のように私どももこれで万全とは思つておりません。併しながら、実際問題といたしまして、そういう実情にありまするので、取りあえずこういうことでやつて行こうということになりましたので、一応それに従いまして今後のこの運用なり、或いは団体なりの内容につきましても、農林省もある程度タッチすることになるわけでありますから、お話のような、非常にまずいことになりませんように、そのタッチする面において方法を誤まらんように、我々といたしましてはできるだけの努力をいたしたいし、更にこの機構なり、或いはその運用法についての適正を期するという面において、もつと大きくこれを取上げられて、そうして誤まりのない改正なりを加えて参るということについては、今後の問題としてこれを大きく国会等においてもお取上げを願いたいし、又政府に対する注文も十分付け得るわけであります。従つてこの団体の問題等の根本問題については、要するに今後の検討に待つということにいたしまして、我々事務の範囲といたしましては、先ず一応出発するということが急務でありまするために、いわば一種の妥協をいたしたわけであります。こういうことでございまして、決してこれだけで今後満足をして積極的な改正もなしに参るんだという意味ではございませんので、その点御了承おきを願いたいと思います。
  37. 戸叶武

    戸叶武君 これは農林省にばかり言つても仕方がないのですが、とにかく移民行政の問題は、実質的には農林省がこれをやらなければならない比重というのが非常に重いのです。移民行政というものが外交政策に関連があるのでありますが、この莫大な予算の裏付を伴うようなこういう移民行政というものが、外務省あたりでは非常に軽率な形においてなされて、外交でも移民行政でも、何か役所で簡単に片付けられてよいというような錯覚が吉田さんなり岡崎さんなんかに思い上つた考え方がのさばつておるのですけれども、これは我々が国会として一つの移民政策のごときは重要に審議しなければならないので、今までそういう十分な審議期間もなくて、そうして移民行政の名の下において海外協会のでつち上げでも何でもいつの間にやら舞台裏で以て作り上げられているのです。こういうことがどんどん積み重ねられると、あとで収拾の付かないものになるので、農林委員長はまだ就任早々でありますが、又農林省としても外務省には少し今まで遠慮し過ぎて、又外務省になめられてしまつて、今までやつとそこまで押し返した程度の苦い経験を持つておるようですけれども農林省がそうであればあるほど、この農林委員会というものは、外務委員会と連繋してでも何でも、日本の外交政策の中においてかなり実質的な内容面を持つているところの移民政策、それから移民政策に伴う移民行政に関しては我々は無関心たり得ないものがあると思うのですから、その点を十分農林当局とも連繋を保ちまして一面外務委員会とも連繋を保つて十分今後検討の機会を与えられてもらいたい、こういうふうに委員長に注文します。
  38. 鈴木強平

    鈴木強平君 四月七日の本農林委員会ではさような農業移民について申入をしたのですが、今その結果の農地局長のお答えははつきりわからないのですが、海外協会をしてどのような仕事をさせるのですか。仕事の分野、海外協会のやる仕事はどう、それから農林省関係の農地局のやる仕事はどうということをはつきりもう一度お答え願いたい。
  39. 平川守

    説明員平川守君) 海外協会は民間の団体としてこの移民に関する実務を実際やる、それに対して外務省が主管官庁として全体的な監督をいたすわけであります。農林省は募集、選考、訓練及び現地の技術的の調査というような面についてこれを監督し、又自分でみずから行うこともあるわけでございます。募集の実務については、実際問題として農林省及びその末端機構でありますところの府県庁と海外協会とが一緒に実際面としての選考等は行うというふうに考えております。それから現地における調査等につきましては、これは海外協会も参るかと思いますが、実際の技術的の関係からいたしまして、農林省が直接に出て行くという従来の形はやはりとらざるを得なかつたというふうに考えております。大体そういうような仕事の分け方で、農林省としても海外協会の民間団体として実施し得るものについてはこれを監督し指導し、助成しながら仕事をやつて参るということに考えております。
  40. 鈴木強平

    鈴木強平君 入植者の養成も、あなたのお話通り農林省がやり、選定も送出もやつて、海外協会に残る実務とは何ですか。
  41. 平川守

    説明員平川守君) 実際問題といたしましては、海外協会が例、えばいろいろな通知を出しますとか、或いは申込を受けますとか、そういうような実務をやる。農林省はこれを監督指導する立場にありまするので、その選考の実質についてもタッチをいたしまして、そこの海外協会の行なつておりますそれらの実務が実際に適正な人物を選抜し、適正な訓練をやつておるかどうかということについての指導監督の立場にあるわけです。ただ実際問題としましては、その指導監督というものが、相当中に立入つた指導監督でないと、少くとも現状においては安心がならないだろうというふうに考えまするので、実際問題としては、先ほど申しましたように、或いは選考或いは訓練等についても、両者が共同で行うような形になるというように考えております。
  42. 鈴木強平

    鈴木強平君 先日来本委員会で論議した空気といたしましては、外務省としては、如何にも国が送出するのはおかしいから民間によつて移民をさせる、そういう趣旨で海外協会を利用して行きたい。我々の考え方は、国が責任を持つて移民をしても差支えない、国が責任を持つても何ら差支えないというように、そういう観点においても相当論議を闘わされたと思うのです。今お伺いしますと、農林省がみずからの組織令で実行しておる入植者の選定とか、送出を投げうつて、ただ単にあなたは指導監督するということは非常におかしいと思うのです。指導監督する立場に一歩あなたが引き下るということは……、そういうことであれば、これは又考えなければならないと思うのです。又海外協会に法制的措置を講ずる。又海外協会といたしましては、いわゆる最近機械の輸出と同時に技術者の移民があると思うのです。併しながら、それが関係の各経済団体が共同して送出するような立場になる。併し特に海外において相当過去において、又現在においても要望されております農業移民については、飽くまでも関係農林当局の農地局が責任を持つて出せるような態勢になつて来なければ、うまく行かないと思うのです。特に去年の秋、内閣委員会では、三億八千万の予算は扱い過ぎる、移民課では……。だから移民局を設置したいと、かような法案の出たことも聞いております。審議未了になつたように聞いております。かように外務省が海外協会を設置して、自己の関係の協会とすることになり、多額の予算を持つている、そういたしますと、再び移民局の問題が取上げられるだろうと思うのですが、外務省において移民局を再び立法化するために提案するかどうか、こういう点についてもあなたお話合になりましたか。
  43. 平川守

    説明員平川守君) 外務省が本委員会で答えておりましたが、この役所がやるよりも団体にやらしたほうがいいという言葉の真意がよく私につかめませんが、前から私ども申しておりますことは、いずれにしましても、この海外移住の問題については、政府が全面的に責任を負わなければならんことである、それをこの団体を使うということによつて政府が責任を逃れるような意味であるならば私ども絶対に反対であるし、又そういうことは許されない。ただよくありますように、いろいろな実務については、必ずしも官庁が直接にやらないでも、団体がその自由なる活動をするということが便宜な場合もあるわけであります。そういう意味において、政府団体を一部の仕事について使つて行く、併しその行動については厳重なる監督又は指導をいたし、又時として助成もいたして、吉任は政府が対外的にも或いは対内的にも負わなければならないのであるけれども、その政府の責任の下にある事務の一部を団体に行わしめる、便宜行わしめるということはあつていいんじやないか、そういうように私ども考えておりましたわけでありまして、そこにおいて或いは外務省と考え方について多少違いがあるのじやないかということを、先般の質疑応答の際に感じたわけでありますけれども、私どもとしては飽くまでもそういう考え方であるわけであります。それで移民局の問題につきましては、私ども海外移住の問題が非常に重要であり、それに対する機構を充実するということについては大いに賛成でありますけれども、ただ外務省に対して申しておりますことは、今回の動きのように、外務省に移民の一つの部門ができることによつて、国がその外務省本来の任務であるところの対外交渉から方向を転換して国内の事務に重点を置くようなことになるならば機構を充実する必要は私どもはちつとも認めない。そういうことは農林省か或いは国内省がやればいいのであつて外務省としては飽くまでもこの対外折衝と申しますか、移住の道を開いて行く、或いは海外に出た移民諸君の安定を図るというようなことに主力を置くべきである。そういうことのために局が必要であるというならば、これは又別問題でありますけれども、今までのような動き方では非常に遺憾である。そのために機構を拡充するというようなことであるならば、私はその必要を認めないということを、これは個人的にでありますけれども話して置きました。これは今後の問題であると思います。只今のところ外務省としては移民局を設置したいという希望は持つているようであります。先般この委員会でもそういう希望を外務政府委員が述べておられましたけれども、実際問題としてはなかなかむずかしいのじやないかというふうに考えております。
  44. 鈴木強平

    鈴木強平君 移民には、御承知通り県内において郡から郡に対する移民があり、県に対する移民があり、北海道に対する移民があり、同時に又海外に対する移民がある。移民ということも単に……、移民がどこに適当するかということは相当問題があると思うのです。そうした実際の実務を簡単に海外協会に、今、戸叶さんが言つておられたように、かような海外協会の役員及び各府県の役員の名前を連ねたような団体では、魂のある骨筋の通つた移民は私はできないと、こう思うのです。そのために委員会では強く発言したと思うのです。委員会では四月七日にそのために決議しております。満場一致で決議をしております。ですから農林省はその決議に則つて、もう少し強く外務省と交渉してほしいと思うのです。今の交渉の経過を明きまして、このようなことでは私どもとしては満足できないと思います。委員長において善処せられんことを希望いたします。
  45. 江田三郎

    江田三郎君 さつきの局長の説明の中で、募集、選考、訓練、現地の技術調査等は外務、農林両省の共管とする、こういうことがありましたが、そうすると、それに伴なつて設置法の改正をやるわけですか。
  46. 平川守

    説明員平川守君) これは設置法の改正は必要があればやつてもいいと思うのですけれども、現在私どもの解釈では、現在の設置法は非常に広く、農家の経済の向上安定を図るために必要なことは何でもできることになつておりまして、そうしてそれに基いて、政令のほうで海外移住に対するこの募集、選考、訓練等を行い得るようになつている。でありますから、法律的には、ここで農林省が所管すると申しましても、現在の設置法に一つも抵触しておらない。設置法に基いてこういうことはできるものと、こういうふうに解釈しているわけです。ただ設置法にもつと明らかにこの問題を具体的に書くということが、いろいろな意味でベタ—でありますれば、その方法をとつても結構と思つております。
  47. 江田三郎

    江田三郎君 農林省としては、今のあなたのような考え方で、別に設置法にあつてもなくてもいいじやないか、こういうことは言えると思うのですけれども、先般の委員会で、外務次官あたりからの言い分を聞いているというと、設置法にないじやないか、こういうことをしばしば言つているわけなんでありまして、これは共管にするというようなことなら、やはり設置法の改正まできちんとして置かなければ、将来やはり問題を残すと思うのです。それはやはりそのほうがベタ—であることはきまつているのですから、ベタ—ならそうしてもよろしいというならば、そういう工合にお運びを願いたいと思います。それからこの海外協会の仕事について、今、鈴木さんのほうからも質問がありましたが、どうも海外協会のやる仕事が、局長のお話ではどうもはつきりしない。そういう点少しぼやかして説明しているのじやないか。ここで農林省だけで通用するような説明をしているのじやないかというような印象を我々としては受けるわけなんでして海外移民に関するいろいろ実務を海外協会にやらすと、こういうことになるなら、実務という言葉がどういう内容を持つているかということはわかりませんけれども、少くとも実務ということになると、単なる事務ということではなかろうと思うのです。もつと内容を持つているだろうと思うのです。常識的に私たちはそう考える。そうしますというと、成るほど農林省のほうで、この募集なり、選考なり、訓練なりの予算農林省のほうに付いている。併しながら、実務は海外協会でやらすんだということになると、農林省というものは全くこれはトンネル機関になつてしまうのじやないかという印象を非常に強く受けるわけなんですが、更に根本的にはそういうような閣議決定になるらしいというのですけれども閣議決定にまだ法的根拠もはつきりないような、こういう海外協会連合会というようなものをなぜ閣議決定に名前を持出して来なければならんかということが我々にとつては腑に落ちないのでして、あなたの説明を聞くというと、相当立入つて一緒に仕事をして行くんだということだけれども、どうもそれは少し弁解であつて、実態は法的根拠もない海外協会連合会というものに全部をやらして、あなたのほうは予算のトンネルだけではないか、機構の縮小とか、整理とかいうことが言われるときに、ここで又新らしい機構を作るだけじやないか。そこへ行く一段階として、先ず本年度あなたのほうはトンネル機関、来年度は機構の更に縮小に逆行して新らしい機構をもう一つ作る、こういうことになるのではないかという印象を受けますがそうではございませんか。
  48. 平川守

    説明員平川守君) 率直に申しまして、御承知のような経緯を経まして、外務省或いは海外協会、農林省、それぞれ非常に違つた意見を持つて対立しておつたわけでございますから、その妥協案を政調会が作るに当りましても、それぞれやはり何と申しますか、思惑が違うといつたようなことはあろうかと思うのであります。で、私どもといたしましては、まあただ対立だけしておりましても、実際問題としても本年度の仕事も動かないという心配もございまするので、この程度に先ず農林省が正式にこの問題についての所管を持ち、正式な監督官庁として海外協会に臨む、又その監督については農林省方針によつて運用されるということになりまするならば、私どもの勿論理想かから申せばいろいろ問題はありまするけれども、あとは実力の問題によつて相当に我々の思のように引ずることができるだろう、まあこれは極めて率直なことでございまするけれども、そういうふうに実は考えております。御心配のような考え方を他のいろいろ第三者の人も持つておられるかたもございます。確かにこの案について或いは海外協会、或いは外務省においては別の考え方を持つてこれ又実力を以てこの妥協案を思うように引ずろうと考えているだろうと思います。その辺はそれぞれ考え方が違うわけでありましてまああとの運用によつてこの妥協案が右にも左にも傾くということになろうかと思うのであります。私どもの考えでは、最小限度これだけのことでもありますれば、相当に移民行政の運営を正しい方向に向け得るものと、併し決してこれで十分であり、満足であるというわけではございません。ございませんけれども、少くとも当初この問題が論ぜられまする以前の状態のように、農林省は全然これにタッチできないのだ、行政組織として全然その所管でないのだ、こういう状態でありましては全く手も足も出ないのであります。これだけのことがありますれば、よほどその点は私どもの理想とするに近い運用ができるのではないかというふうに考えております。
  49. 江田三郎

    江田三郎君 送出する移民の決定権はどこが持つのですか。
  50. 平川守

    説明員平川守君) これについては農林省と外務省、団体が相談をしてきめるということになつております。
  51. 江田三郎

    江田三郎君 いろいろな事情があつて、これでも一歩前進だと言われればそうかも知らんということになりますけれども、併し本当に農林省のほうがあとは実力だ、こういうなら、こういう決定を待たなくても、すでに本年度予算で募集、選考、訓練等の予算農林省にはちやんと付いているのですから、それだけを厳重に頑張つて行つたところでやれるはずなんです。それをこうしまで操まなければならんということは、どうも私ども農林省の実力なるものに多少危惧の念を持たざるを得んわけです。この募集なり、選考なり、訓練の予算農林省に付いているというなら、その実務をわざわざ海外協会連合会にやらすというようなことをきめる必要はないことなんでして、移民は先ほど鈴木さんも言つておられましたように、将来技術移民或いは養蚕の移民というようなものも出て来ておる。そういうときに、当然農林省としてはこういう海外協会連合会ということでなしに、例えば養蚕関係の農業協同組合であるとか、その他の農業団体の協力を求めなければならんことが多かろうと思うのです。そういうときに実務を一元的に海外協会連合会にやらすというようなことは、却つて今までよりも農林省のほうでは枠をはめられることになつてしまうのではないか、一層縛られるのではないか、こういう気もするわけでして、その点は、この実務については一元的に海外協会連合会にやらすのではなしに、農林省予算範囲内で適当と思う行使をしていいのか、それぞれの必要な農業団体等についても協力を求めてもいいのか、そういうことに団体についても、いわゆる実務の一部をやらしてもいいのかどうか、その点はどうなつておりますか。
  52. 平川守

    説明員平川守君) これはこういう決定がありませんでも、本年度予算においては募集その他の経費が農林省に組んであるわけでございますが、ただ春以来非常に困つておりますことは、例えば渡航費が外務省に組んである。で、農林省は募集、選考を仮にいたしましても、実際問題として外務省が農林省の選考したものに対して渡航費を与えないのだ、こういうことを言つております限りにおいては、どうも農林省としても無責任な、渡航費がもらえるかどうかわからんような選考はやるわけには行かないということで実際上抑えられておつたわけであります。そういう意味においては確かに実力の欠けたところがあるわけでありまして、従つてこういうことがはつきりまりませんと、実際予算がありまするにかかわらず、動き得なかつたという状態にあつたわけでございます。もとより、これはたびたび申上げまするように、妥協案でありまするので、例えば只今御指摘のような、この団体に実務を一元的にやらせるというようなことはマイナスではないか、これは時として或いはそういう場合もあろうかと思うのでありますけれども、実際問題としての農業団体の協力ということについては、これはもう問題ない、団体のほうでも勿論承知しておるわけでございます。ただ団体のほうの申します言い分は、この海外協会というものが全然知らない間に、海外協会を全然通さずに他の団体から募集をするというようなことは困るということを申すわけでありまして、この点については勿論いろいろ議論もあろうかと思いまするけれども、何分にも移住費というものを外務省が握つておる。外務省がその外郭団体としての海外協会というものを使うのである。こういう方針でありまする限りは、やはりこの渡航費というものをもらわなければならん。移民の募集につきましては、この団体が全く無関係に動くということができにくい状態にあるわけであります。そういう意味においてかような妥協が行われたのであります。併し団体そのものの構成なり、或いは運用なりにつきましては、なお今後の問題としてこれが改正等については十分まだ議論の余地はあると思つております。
  53. 江田三郎

    江田三郎君 いろいろ我々としては非常に不満とするところでして、そういう点は今のお話のように、今後海外協会の法制化の問題がここで取上げられておりますからして、そういう機会にもつと根本的にやつて行かなければ仕方がない。まああなた方の苦労をされている点もわかりますけれども、どうも私は近頃農林省の実力というものに対して疑いを持つのでして、先ほど来食糧増産費用公共事業費用というようなものについてもそうでありますし、又外務省と農林省関係なんかを見ても、例えばアメリカの過剰農産物あたりを持つて来るやり方なんかについても、本当に農林省というものが日本の農民なり、農業のことを考えているかということについて疑いを、懸念を持たざるを得んわけなんです。最後に、もう一つだけ質問しますが、先ほどのお話で、外務省の中へこの移民関係関係各省の連絡会を設ける、こういう話がありましたが、この連絡会に海外協会は参加しますか、しませんか。
  54. 平川守

    説明員平川守君) 一般的には参加する予定のようであります。
  55. 江田三郎

    江田三郎君 まだはつきり法制化もされていないような団体関係各省の連絡会に参加するということは適当とお考えになりますか。
  56. 平川守

    説明員平川守君) 連絡会の内容にもよるかと思いますが、この連絡会は移民事務を円滑に関係の各方面が協力して行うというための事務上の連絡会でありまするので、この海外協会というものに対して只今申しましたような移民渡航費の貸付事務をさせるというようなことが前提になりまするならば、やはり実際問題としてそういうことも一緒に相談をしなければならんという場合が非常に多かろうかと思つておるのであります。
  57. 江田三郎

    江田三郎君 私はそういうような法的根拠を持たんような団体が、そんな各省の連絡会あたりへ出て行くというのは、これは行政のル—ルをはずしておると思うのです。そこまで必要なら、なぜ早くこの団体の法制化をしておかないか、そもそもその法制化されていないような団体に三億からの金を取扱わすということ自体が大変な間違いなんでして、その団体のよし悪しについても意見もありますけれども、よし悪しを別にしても、行政のル—ルからしても、今度の今言われるところの案の内容を聞いて見ますと、我々としては長く不審に堪えない点が多いわけです。とにかくこういうやり方では、戸叶君の見解ではありませんけれども、却つて将来に大きな禍根を残すのじやないかということを感ぜざるを得んのでしてそれであなた方だけを責めても仕方がないと思いますから、ただそういう意見だけを申添えておきます。
  58. 戸叶武

    戸叶武君 私も最後に農林当局に注文いたしますが、外務省の小瀧次官が来たときも、私は小瀧君に相当痛烈に警告を発したのは、とにかく移民政策の重要な出発点に当つて、移民行政を何とかしてこの外務省の外郭団体として海外協会連合会を成立せしめるのに当つて、先ず第一にこの成立の動機が不純である。とにかく移民ボスと、それから移民関係で営利を営むところの船会社と結託し、外務省の古手官僚と結び付いて、そうしてこの予算をむしり取つてこれを作り上げたのが海外協会なるものであります。その第二点においては、その構成において、形式だけは一応体裁のいいようなものを作つておるが、その中核としての実体は、いろいろ問題のある人々を含んでおる。個人的なことになると、いろいろな人に対して当りさわりがあるけれども、そういう不用意な形において作り上げた、この構成メンバ—から言つても権威がない。それからそういう成立動機とこの構成によつてなされたものは実務担当の資格は当然ない。非常に疑問とするところである。それは今、江田君が言つたように、我々は法制化をする前に、待つたをかけなければならない性格を持つておるこの協会に三億からの予算を与え、而も官庁を主として協議段階に入つて来たところの移民連絡会にのし上つて来る、こういう事績を稼いで、農林省が今後これをコントロ—ルするなり、監督するのは、それは実力の問題だと言つておるが、それは引かれ者の小唄だと思う。実際上においてこういう既成事実を作り上げてしまつてから、これだけの悍馬を御するだけの力は農林省にない。而も外務省の外郭団体として、主務官庁としての外務省はどちらかと言えばこれは引ずつておる形です。私はこれはもう非常に今後問題を残すと思う。これは顔を洗い直して出直してもらいたいと私は率直に考えておる。私は実際緒方さんがこの間歩いた跡をずつと細かく東南アジア方面を歩いたのですが、海外の日本に対する考え方、日本に対する期待というものは、今の古い移民ボスや、古手外務官僚が考えておる感覚とは全然違う。そういうものに対処するだけの構えのないものが、戦前におけるところの一つ而ものが浮かび上がつて来て、こういうものをでつち上げたということにおいては、今後における私は日本の移民政策に非常な暗影を投ずると思う。こういうのは移民行政を担当して、外務省と共管関係にあるからという形だけの農林省は、お役所としてはそれで済むかも知れないが、少くとも予算に対して我々が相当の審議権を持つところの国会において、ただ非常に国会においても一種の官庁行政から影響されてセクシヨナリズムになつておる。そして外務委員会等は、これにはほかに外務関係の重大な問題が一ぱいあつたので、こういうものがずつとまかり通つたのだと思うのでありますが、これは外務委員会の問題だけではなくて、国会全体のやはり再検討しなければならん重要問題だと思う。そういう点においてとにかく農林委員会においては相当に異論があつた。むしろ海外協会そのものに対して不信の声が強かつたことはこの前からはつきりしておる。そういうことを何ら顧慮することもなく、聞き流す程度でもつて、外務省のやることは外務省が勝手にやれるのだというような思い上つた形で以て、今のようにどんどん議を作つて行くという態度なら、作つて行つたがいい。こつちもそれに対処するところの考え方を表示して行かなくちやならない。少くともそういう農林委員会においての意見というものが、外務次官も出た席において十分展開せられ、又農林省においてもその意見というものを十分聞いているはずだ。それでいろいろ悍馬に引きずられていて、やれ監督だの、やれ指導だのと言つても、それはお飾りものに過ぎないので、問題は農林省が持つているところの今のこの予算化されたところの費用をどうやつて使うか。軽率な使い方をしたら我々承知しない。こういう点において、我々この農林委員会の意思というものを十分反映して、外務省の今の持つている無性格な行き方に引きずられて行かないように、私たちは十分警告を発する、外務省を追撃するよりも、農林省のだらしなさを、実力によつてつてやるというけれども、実力でやれない無用さがあつたなら、容赦なく私は外務省より農林省を叩く、そういうつもりですから、十分その点を含んで善処されたいと思う。
  59. 鈴木強平

    鈴木強平君 お尋ねしますがね。前年の移民計画、それから二十九年度の移民計画、前年は何か二百三十七家族で、千四百四十名ですか、農業移民計画を立てましたね。それはその通り行きましたか。今年は六百家族で三千五百人、去年の二割四分ですね、その大きな計画を立てて、その計画者が今あなたのお答えによると、三者が寄らなければ決定ができないというようなことであつたらば大変なことだと私は思うのですね。それで去年の実績はどうなつていますか、今年の計画に対してどのような自信がございますか、お伺いいたします。
  60. 平川守

    説明員平川守君) 只今お話の昨年の計画は、お話の数字は実績でありまして、計画は五百戸、五百戸に対して三百三十戸の実績、本年は六百戸の計画でございますけれども、実は従来御承知のような状態でありまして、私どものほうは従来の募集にもタッチしておりませんわけであります。本年度につきましては、今後この方針がきまりますれば、それによつてタッチして行くことになりまするので、只今の見通しとして、この計画がその通り実行できるかどうかということについてはつきり申上げかねるのであります。
  61. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今議題になつておりまする海外移住の問題につきましては、その後の経過を御説明があり、各委員からそれぞれ質疑があつたのでありますが、農地局長も基本的な問題のことは今後に残されておるという発言もあつたのでありまして、各委員から御発言がございましたように、本件につきましては、更に十分内容を極めて、抜本的に遺憾のない取運びをしなきやならんと考えるのであります。御意見がありましたように、更に外務委員会等との関連を保ちつつ、今後に審査を継続するということに取運びをいたしたいと思います。  更に農林当局に希望いたしますが、そういうような過程のうちに、移住に関する機構が法制化されるという段階におきまして、抜き差しなりませんようなことが決定されたといたしますると、問題が非常に困難になるわけでありますので、今日の委員会における各委員の発言の内容を十分含まれまして、政府部内における取運びにつきましては、最善を期せられたいと思います。  それでは一応この問題は更に継続することにいたしまして、本日はこの程度にいたしたいと思います。
  62. 森八三一

    委員長(森八三一君) 時間が相当もう経過いたしておりますが、もうあと一件でございますので、このまま継続させて頂きたいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは次に、前国会中、五月十四日、江田委員の御発言にかかわりまする最近問題になつておりまする土地会社の問題その他農地の問題について、更に江田委員から発言を求められましたので、この際発言を願いたいと思います。
  64. 江田三郎

    江田三郎君 この前の委員会のときに、たまたま大島土地の問題が大き新聞等で扱われましたので、そういうようないわゆる分譲宅地の扱いについて、実情はどうなつておるかということをお聞きいたしましたが、そのときにまだ調べが付いていないということでございましたので、その後の調べもできておりましようと思いますから、この際実情なり、更に又農林省としてどういう対策を持つておられるか承わりたいと思いますが、まあ私どもとしましては、ひとり大島土地の問題だけでなしに、最近類似の問題が方々にあるのじやないか。更にもう一つ一般的に遡つて申しますというと、最近この農地の移動について農業委員会等が適切な処理を欠いているのじやないか、或いはもつと遡つて農林省のほうで農地改革というものをむしろ軽視しているのじやないか、そういうようなことも感ぜざるを得ないわけなんでしてそういうようなことまで触れて一つ最近の農地移動の実情、対策について承わりたいと思います。
  65. 平川守

    説明員平川守君) 先般御要求によりまして調べておりました宅地分譲地の資料については、一応集まりました府県について資料をお配りいたしていると思いますが、分譲予定地として各種の法人が予定しておりまするところの面積は、この表にありまする通りであります。この表にまだ東京が出ておりませんのでありますが、東京についてはいろいろ刑事問題等も起つておりまして、まだはつきりした集計ができかねているのであります。全体としては二百八十九万坪、但しそのうち農地は百二十六万坪というような面積が分譲地として予定をせられております。で、これには農地法との関係から申しますると、農林省として真に止むを得ない住宅地として許可をいたします以前に、かような措置をとりますることは明らかに農地法違反でありまするので、最近におきしましても、そういう問題が刑事問題として起つているようなわけでございます。どうもいろいろ調べますると、ここにありまするように、会社等においてこの農地法の関係を、一種の脱法的な措置で、いろいろ斡旋という形をとりまするとか、いろいろなことを考えているようであります。これに対しまする法制的の対策もいろいろ必要か思うのであります。現在のところまだ成案を得ておりません。それからこういう種類の宅地だけでなしに、いろいろ工事用地とか、或いは鉄道用地でありますとか、学校用地でありすますとか、いろいろな種類の農地の改廃が行われておるのでありまして、二十八年の一月から六月までの一応集計が出ておりますが、これによりますと、農地の転用について都道府県知事が許可いたしましたものは四万七千件余り、大臣の分は僅かでございまして五十八件でございます。正確に申しますと、都道府県知事の分が四万七千三百七十七件、面積は農林大臣の許可いたしました五十八件の分が三百四十一町、それから都道府県知事の許可いたしました分が二千百四町歩、こういう状態になつております。我々といたしましては、農地法の精神、つまり農地を確保し自作農を維持するという精神においては何ら従来の農地改革当時と変更ない、飽くまでもそういう方針をとるということで、例えば農林大臣がこれを許可するに当りましても、重要産業であるという場合におきましても、相当いろいろ面積を削る等をいたしまして、例えば紡績工場の場合にいろいろな宿舎その他の部分については、できるだけ遠慮してもらうとかというようないろいろ、な措置を講じまして極力この改廃面積を圧縮するようにいたしておりますけれども、併し一面国全体の産業なり或いは住宅というような構成面におきましても、これを絶対に認めないというようなこともできません。これらについては例えば住宅地等でありますれば、建設方面ともいろいろ連絡をいたしまして、大体この地域は止むを得ないとかいうようなことを諮つた上で最小限度にいたしておるつもりでございます。決して農林省としてその点をル—ズにやつておるというようなことは私どもとしては決して考えておりませんのであります。
  66. 江田三郎

    江田三郎君 今挙げられた数字だけ見てもこれは大変な面積です。誠に止むを得ざるものと、こう言われますけれども、実際この一月から六月までの知事が許可した二千百四町歩、これだけのものを新らしい耕地を作ろうとしたらどれだけの犠牲を払わなければならんかということなんです。一方においては公共事業費というものが削られている。新らしい耕地なり、土地改良というものはなかなか困難だ、そういうときにこれだけのものが潰されているわけなんです。而もその宅地、分譲地あたりについては、とにかくここへ出ておるように四百二十三町歩というようなものは、合法的な手続をしないで着々と実績が築かれておる。この一つのことは、これは何と申しましても私は農林省が従来の農地改革の精神というものを忘れちやつたのじやないか、こう申しましても決して過言じやないと思うのです。最近問題になりました農業委員会法の一部政正にしましても、私どもはあの法律はでき上つていない、こう考えておりますけれども、あの内容なんかについても、政府としてはあれに賛成だということを言つておられましたけれども、あの一つのことを見ても、町村では農業委員会というものがあるけれども、府県段階に行くというと農業委員会というものはもうなくなつてしまう、勿論今の農業会議というもので何か変則的に副業的のような形でその仕事を取扱わしてはおりますけれども、そういうような一つの機構の改革に対する政府の考え方を見ても、私どもは農地というものについて本当に農林省が強い考え方を持つていないのじやないかということを危惧せざるを得んわけなんです。要するにこの農地なんというものはどうなつたところで、或いは食糧増産というものはどうなつたところで、足らんところはアメリカの過剰農産物処理で入れりやいいのだというようなことが、別に公けにあなた方がおつしやられんでも、農林省の指導理念の底に流れているのではないかということを我我としては危惧せざるを得ないわけなんですが、まあ具体的にお尋ねしますけれども、例えば住宅分譲地の今言いましたところの四百二十三町歩というものについては、これは法に反しているという場合に、合法的な手続を踏んでいないという場合に誰が一体告発するのですか。
  67. 平川守

    説明員平川守君) これは告発は誰でもできるわけでありまして、場合によりましては、農林省自体が行うこともございまするし、或いは県当局が行うこともございます。
  68. 江田三郎

    江田三郎君 少くとも大島土地あたりの問題では、この問題はよほど扱い方が変なことになつておると思うのですが、さような問題について一つ積極的に地方の農業委員会等に任さないで、或いはこの地主、土地所有者と、或いは新らしく土地を所有しようとする者とのこの個人の扱いに任さないで、農林省或いは農林省が連絡をして都道府県にこれらの非合法措置を摘発させると、そういう決意がございますか。
  69. 平川守

    説明員平川守君) 私どもといたしましては、そういう非合法な種類のものに対しましては、農林省自体も時として行なつたこともございますし、府県当局と連絡をとつて告発をさせるということも十分考えております。ただ実際問題といたしまして、検察庁のほうでもよほど悪質のものでありませんと、なかなか取上げてくれないという実際問題がございます。それから更に申しますると、我々は決して農地改革の精神、又農地を守るという意思において従来変つておらんと思いまするけれども、ただそのようないろいろな脱法手段が行われまするように、法自体にもいろいろ問題があろうかと思つおります。例えば告発をいたしましても、誰か犠牲者が出ますると、それだけのことでございまして、農地そのものを守るという結果にならないのです。犠牲者が出て、解放してしまいますと、現在の農地法では止むを得ないということに、処罰以外に方法はない、こういうようなことになつておりまするので、そういう点にもいろいろ問題があるわけです。これらの点につきまして、何らかもつと有効適切に農地の改発を圧縮する、極く必要なる最小限度にとどめるような、もつと有効なる制度、そういうことも考えなければならんということで、いろいろ研究をいたしております。
  70. 江田三郎

    江田三郎君 法自体にも問題があるということを言われますけれども、私はそういうことでやはりこの消極的な態度をとつていかんのじやないか、もつと違法なものは違法なものとして、てきぱきやつて行く、それによつてすぐ農地を実際的に転用するという効果がなくても、違法のものは違法のものとしててきぱき処理して行くということが必要なんじやないかと思うのでして特にまあそういう点について、何件でも農林省なり或いは都道府県のほうで、そういう措置をとつたということは、これはやはりそれだけの反響というものはあるわけなんですから、その起きておる事態そのものをどうすることができなくても、将来の問題についてやはり未然に防ぐことはできると思うのです。今のような形だつたら全く罷り通るでやられてしまつて、それで誰も彼もあれよあれよと言つているだけであつて、こういう形でたくさんの耕地が潰されてしまう。まあ一般の経済情勢というものはどうしたところでデフレに入つて行く、最近の新聞あたりで見ますというと、造船その他の事業等については一部帰郷制度ですか、何とかというものをとろうじやないか、一部分工員を郷里に帰してそうして失業保険を与えて行くというような制度をとろうというようなことも問題になつているということが出ておりますけれども、私はまあそういう制度はどうあろうと、つまり今後農村から都市へ出稼ぎせずに、逆に都市から農村への人口の還流、働き手の還流ということは非常に大きくなつて来ると思うのです。今までインフレ傾向でこの土地の移動というものが、農地のほかへの転用ということが行われましたが、まあそういうような傾向は或る程度今後は傾向としては少くなるんじやないかということも考えられますけれども、併しそれだけではとても安心はできないのであつて、この際一つもつと積極的な態度をとつて頂きたい。同時に許可を与えた只今申されました一月から六月までの都道府県知事による二千百四町歩或いは農林大臣による三百四十町歩についても、本当にその内容を細かに検討して行くというと、必ずしもこれが日本の今の置かれた立場からして必要止むを得ないものだけではないじやないか。そういうことを、これは内容を私たちはわかりませんけれども、感じとして持つわけなんでして、今後そういうものの扱いについてもつと厳格にやるように、改めて農林省としても何らかの措置をとつて頂きたいと思うわけです。更にもう一つお開きしたいのは、この演習地の問題がほうぼうにあるわけですけれども、一体この開拓地等をもう一遍演習地に返す、こういうことについて農林省としてどういう考え方なのか、中には従来の開拓地の中で実際に開拓者はそこにいないで、何か不在地主のようなことになつてつて、そういうものが一日も早く補償金を得るがために問題を起しておるところもあるように聞いておるわけでして、実際の開拓に当つているものは何らの法的な権限を持たない。仮に補償を受けるとしても、補償を受けるものは遠く離れたところでほかの職業を憎んでいるものが補償を受ける、こういうような事例も東京近辺でも私たち聞いているわけですが、こういうことについて一体どういうようにやつて行かれようとするのか、演習地の問題についてもお答え願いたいと思います。
  71. 平川守

    説明員平川守君) 農地の改廃を防いで参りますことについて、只今お話のような違法なものに対してどしどし告発をいたし、処分をして参るということについては私どもも早急に研究をいたしまして、実施できるものはできるだけ実施して参りたいと思います。先ほど申しましたように、検察庁ともよく相談をいたすのでありますが、よほど悪質なものでありませんと、なかなか検察庁のほうでも起訴してくれないという実情にございます。この点についても更に検察当局ともよく相談をいたしまして、お話のように実際にそういう事例が起るというだけで他を相当防ぎ得るということもあろうかと思います。そういうこともできるだけやつて参りたいと思いますが、更に先ほど申しましたような法制的な問題についても研究を進めておるわけであります。要するに農地の改廃というものが、真に必要、なる最小限度にとどまるということに持つて参りたいということで研究をいたしておるわけでございます。それからなお演習地の問題につきましては、言うまでもなく一旦解放いたしまして政府としても相当な資金を投下し、開拓者としても非常な苦労を重ねて農地になつておるものでありまするから、これを演習地として調達するというようなことについては、もとより我々としても必要なる最小限度にとどめるという方針でございます。ただ、さればといつて全然何にも認めないかと申しますると、まあそういうわけにも参りませんので、これについては保安庁或いは米軍関係等におきましても、まあ米軍関係は最近殆んどございませんけれども農林省とよく相談をいたしまして、必要なる最小限度を要求するというふうになつております。なおその場合においてもできる限り被害の少い、実害の少い場所を選ぶということで、いろいろ具体的な相談をいたしておるるのであります。ただお話のように一部開拓者の中にもいろいろ不心得と申しますか、本当の開拓農民として適格性を疑われるようなまあ人もおるわけでありまして、こういう人々が一部強力な誘致運動を、するというようなこともございます。で、村或いは県等が、或いは町等が繁栄のためと言いまするか、そういう意味において誘致運動をやるということは随分ございますので、それと開拓地の中の極く一部のそういう不適格者のような人が呼応してやるというようなこともございますので、私どものほうでは相当に警戒をいたしまして、そういう開拓者側のほうに異義がないと言いましても、それについてはよく調べまして、そういう一部の人の意見ではなかろうか、本当の農民として定着したいという希望を持つておる者とそういう者とが、実例はどうなつておるかというようなことを、演習地等の候補地が出て参ります場合には、詳細に調べました上で判断をするということにして、方針といたしましては極力これを避ける、併し万止を得ざるものについては適当のそれらの人々に対する措置を十分考えまして、ただ金をやつて補償するということでなしに、代るべき開拓地を与えるようなことも伴つて、それらの人々の生活の真の安定を図るという方針で行なつておるわけであります。
  72. 江田三郎

    江田三郎君 これは私まあ委員長にもお願いいたしますが、まあここで宅地の分譲予定地として出ておるのが、農地は四百二十三町歩ということになつておりますけれども、実体はもつと私は大きいと思うのです。ここに出て来ていないものが相当あると思うのです。それからそういうものとは別にいたしましても、只今の局長のお話でも、一月から六月までに正規の転用を認めたものが二千四百町歩もある、こういう形で耕地をどんどん潰されてしまつたんでは、片方で公共事業費をやれ一割減反対だ、何だと言つてつてみたところで意味はないと思うのですよ。必要止を得んというけれども、耕地を使うほうが安くつくから、そんなことばかりして来るのであつて、耕作者としても目先の利益にとらわれてやるから、こんなことが出て来る、こんなことでは日本の食糧増産というものは誠に憂慮すべき状態になるんです。そういうことについて、その不法な土地の処分については、検察庁ではよほどのことがなければ動かんということは、これは検察庁に対して認識を新たにしてもらわなければならんと思う。その点については委員長としても適当な機会に当委員会に検察庁の関係者でも呼んでもらつて、検察庁としては一体どういう考え方でおるのか、こういうような形で土地を潰されていいのかどうか、非合法がなされておつていいのかどうか、そういう点をやはり十分に本委員会の意見が反映するように、我々の意見が反映するような措置を適当なときにとつて頂きたい、そういうことを希望しておきます。
  73. 清澤俊英

    清澤俊英君 大島土地ですね、問題になつておる……。あれなんか農業委員会、農業委員を全員東京都で告発したとか何とか言つておりますが、その内容はどうなんでしよう。
  74. 平川守

    説明員平川守君) その話はまだ聞いておりません。
  75. 清澤俊英

    清澤俊英君 新聞にはそんなふうに出ていますが、あれまで大きく新聞に出ておるのを知らんとはおかしいじやないか。
  76. 平川守

    説明員平川守君) 今の農業委員を全面的に告発したというような話を聞いておりませんので、調べまして御報告申上げたいと思います。
  77. 清澤俊英

    清澤俊英君 どうも局長おかしいと思うのですがね。この問題が出てから相当日時もたつておるのに、これから調べるじやおかしいじやないでしようか。この前江田君か誰か質問して、お調べになる、こういう話があつたと思うのです。先般も私ちよつと資料を上げましたような、陰で隠れたものは別といたしましても、一応新聞に出ておる、公に知られておるものは少し注意しておりますれば、そういうものはすぐ発見できると思うのです。そういうものを手がかりにしてどういうことが現実に行われておるかということをいま少し注意してもらわんかつたら、末端はぐたぐたになるだろうと思うのですが、何か裁判所へ持つて参りましても、仮に調停等に持つて行つても、本人は、どうあろうと、調停委員や、或いは農業委員会がこういう裁定をしたのだということになれば裁判所は何とすることもないだろう、検察庁も何とすることもないだろうと思う。結局は力で押切られてそういう問題が累積して出て来ておるのが現実だと思うのです。と同時に、何か法文でそれを整備するとか何とか言われるけれども、そういうものに対して私は熱意が余りにどうも欠けているのじやないかと思う。あなた方どうそういう点を取扱つておられるのですか。
  78. 平川守

    説明員平川守君) 前回に御指摘のありました件については、いろいろ研究さしておりますが、つまり一応制度といたしましては、本人がやはり自分の権利は然るべきときに正しく主張をする、こういう前提に立つて制度ができておりまするので、お話のような実際問題として実力で抑えると申しますか、そういうふうなケ—スがあるというようなお話なんですが、或いはそういうこともあるのじやないかと思います。この前の案件もどうもそういうようなことじやなかつたかということで、その法制的の恰好が整つておるように思われますので、それを調べておるわけであります。どうも制度といたしましては、やはり本人が自分の権利については当然の主張は当然の法律の定める時期において必要な手続を以て主張をするという前提に立つております。それを誤まつてしなかつた、或いは実際上何か力の関係と言いますか、実際上の関係で難儀をしておるといつたような形になつておりますと、なかなか法制的には収拾が付かない問題になつて参ると思います。これについてはなかなか非常に顕著なものにつきましては一般的な法律で強制することもできまするけれども、個々の具体的のケ—スになりますると何ともならない、事実上の指導なり、事実上の話合なりということで解決する以外に途のないような場合もあるわけでございます。
  79. 森八三一

    委員長(森八三一君) 先刻江田委員の御意見でありました適当な時期に本件の関係につきまして検察当局等を呼んで、趣旨が十分徹底するようにというような取運びにつきましては、適当なときにさような取計らいをいたします。  なお、この際農林当局に希望いたしますが、勿論御答弁にもありましたように、十分法律趣旨を体して進められておるとは存じますが、更に一瞬今後とも法律趣旨を十分生かして、その精神に副うような措置を講ぜられますように希望いたします。   —————————————
  80. 森八三一

    委員長(森八三一君) 最後に、昭和二十九年産麦類の検査の件でありますが、最近の天候その他の事情からいたしまして、麦の品質が非常に劣悪でありまするために、検査規則によりまする合格いたしますものが非常に率が低下しておるというようなことからいたしまして、相当の地方から、昨年の異常災害のあとを受けて行われましたごとく、六等というような検査を実施されたいというような希望が各地から出ており、本日の委員会におきましても、委員のほうからそういう問題についての発言を求められてかるのでありますが、最近の調査の実績からいたしまして、どういうような情勢になつておるのか、更に本年の実態に則してそういうような臨機な特別措置を講ぜられるようなことが取進んでおるのか、その辺につきまして農林当局から経緯の御説明を求めたいと思うのです。
  81. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 今、委員長からお話がありました今年の麦の検査の成績が去年と比較してどうかというお話でございますが、実はまだ買入が始まつたばかりでございまして、今の検査等級の比率で昨年と比較してどうというまだ数字をはつきり申上げる段階に至つておりません。検査だけの数字で申上げますと、昨年一年の成績よりはむしろいいという検査の成績に実はなつておるのであります。ただこれはまだ始まつたばかりでありますので、そういう数字を以ちまして去年よりいい、悪いということをまだ断定的に申上げる時期じやなかろうかと思つております。昨年実は六等麦を買つたのでございますが、これは凍霜害に始まります異常災害に際しまして、農林省といたしまして、これはいろいろな総合的な災害対策を考えたのでありますが、例えば飯用にいたします麦を延納、売却いたしますとか、その他いろいろ考えました中の一環といたしまして従来買入れませんでした等外の麦に六等という名前を付けて買つたのでありますが、これはかなり買いましたが、実は殆んど正常価格で売れておりません。値引をして入札をしているような段階で、まだ五万一千トン去年買いました中で大体二万六千トンは残つております。それで我々といたしましてはまだ今日の段階では本年産麦につきまして、去年と同じような等級を付けて買うというような結論までは至つておりませんで、むしろ買わないで過したいというふうに現在では考えております。
  82. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 本年産の麦の品質に関しては、只今説明通り、まだ検査数量も少いし、それから検査成績等も従つてはつきりしておらないという御説明でございましたが、産地の実情等から考えますと、本年もこの雨季にたたられまして、大麦におきましても、特に目下収穫中の関東地帯における小麦の品質等に関しては、かなり生産者の間で品質に関して憂慮されておりましてすでに農業団体等を通じて六等麦を設置して欲しいというかなり真摯な要望等がぼつぼつ出おります。従つて特に麦価引下げ等にもこれが相絡みまして、来年度の麦の生産にこれが悪影響を及ぼすようなことがあつてはならないということが我々の一つの憂慮でありますので、そういつた生産地における極めて熱心な要望等にも鑑みまして六等麦を設定して買上をするという用意を持たれることを私は強く要望しておきたいと思います。
  83. 森八三一

    委員長(森八三一君) 別に御発言がなければ、只今問題になつております二十九年産麦類の検査の件につきましては、事態を十分究められまして、特に食糧の国内自給を完成することが必須の命題であり、生産者に対する生産意欲を向上せしめることが、それに関連して一番最大の要諦であることに鑑みられまして、ただ徒らに政府の収支においての赤字ということにかかわることなしに、申し上げましたような趣旨に基きまして、六等麦の買上等についても善処されることを特に希望いたしておきます。  ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  84. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記を始めて……。それでは本日はこれで散会いたします。    午後一時三十四分散会