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1954-06-28 第19回国会 参議院 農林委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年六月二十八日(月曜日)    午前十一時四分開会   —————————————   委員長補欠 六月十五日片柳眞吉委員長辞任につ き、その補欠として森八三一君を議長 において委員長に指名した。   委員異動 六月十五日委員片柳眞吉君、上林忠次 君及び河野謙三辞任につき、その補 欠として飯島連次郎君、岸良一君及び 溝口三郎君を議長において指名した。 六月十六日委員野溝勝辞任につき、 その補欠として河合義一君を議長にお いて指名した。 六月二十一日委員松浦定義辞任につ き、その補欠として菊田七平君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     森 八三一君    理事            宮本 邦彦君            江田 三郎君    委員            雨森 常夫君            川口爲之助君            佐藤清一郎君            重政 庸徳君            関根 久藏君            横川 信夫君            飯島連次郎君            岸  良一君            溝口 三郎君            河合 義一君            清澤 俊英君            菊田 七平君            鈴木 強平君   委員外議員            小野 義夫君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       中田 吉雄君   説明員    農林省農林経済    局長      小倉 武一君    農林省農林経済    局金融課長   松尾  亮君    農林省農林経済    局統計調査部作    物統計課長   原  政司君    農林省蚕糸局長 寺内 祥一君    食糧庁総務部長 新沢  寧君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十九年四月及び五月における  凍霜害等被害農家に対する資金の  融通に関する特別措置法の一部を改  正する法律案衆議院提出) ○農林政策に関する調査の件  (昭和二十九年産麦価に関する件)  (昭和二十九年六月における雹害及  び凍霜害等被害農家救済に関す  る件)  (昭和二十九年度農林関係予算実施  に関する件) ○政府に対する申入れの件 ○繭糸価格安定法の一部を改正する法  律案内閣送付)   —————————————
  2. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは只今から委員会を開きます。  審議に入りまする前に、一言お願いやら御挨拶を申上げます。  私、今般当農林委員会委員長という重責を汚すことになりました。誠に菲才であり、不敏でありまして、御期待に副い得ないものが多々あると思いますが、皆様の御協力、御支持を頂きまして、大過なきを得たいと念願いたしておりまするのであります。何とぞよろしくお引廻しをお願いいたします。  なお、この際御報告を申上げます。上林、北、河野松浦の各委員の諸君が辞任をせられまして、新たに飯島、岸、溝口菊田の各議員が当委員会委員に就任いたされましたので御報告を申上げます。   —————————————
  3. 森八三一

    委員長(森八三一君) 続いて審議に入りたいと思います。最初に継続審査に相成つておりまする昭和二十九年四月及び五月における凍霜害等被害農家に対する資金融通に関する特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  この継続審査の議案は、先国会におきまして、臨時国会が早い機会に開かれるのではないかというような含みもございまして継続審査に相成つた次第であります。なお、当時六月における凍霜害雹害等の被害状況資金需要額、これが融資に対する政府の方針並びに地方動向等につきまして、農林当局でも調査中であるというようなこともありまして、こういうような措置に相成つておる次第でありますので、この際その後における情勢につきまして農林当局説明を求めまして、質疑に入りたいと思つております。  それでは農林省からその後の情勢調査の結果を御報告をお願いいたします。それでは被害状況報告をお願いいたします。
  4. 原政司

    説明員原政司君) 私、統計調査部作物統計課長原でございますが、只今お許しを得まして、私からお手許に配付いたしました資料中心といたしまして御説明をさせて頂きたいと思います。  お手許に配付いたしました資料は、表紙が割合に白いのと、それから少し茶つぽいのと両方ございまして、白いほうが昭和二十九年六月九日、十日の降霜による農作物被害概況、これは一口に申上げますと、北東北或いは北海道にございました例の凍霜害でございます。それから茶つぽいほうのは表題にございますように、五月二十七日の主として北関東或いは長野等中心といたしました凍霜害被害状況でございます。二通り資料を御配付申上げておりますから、それによりまして御説明をさせて頂きたいと思います。  御承知のように、今年の凍霜害を振返つてみまするというと、四月の二十七日並びに二十八日に広汎に亙りまして凍霜害がございましたが、その後只今手許に配付いたしましたような五月二十七日並びに六月九日、十日ということに追打ち的な又凍霜害があつたわけでございます。そのほか今年の農作物関係いたしまする凍霜害を振返つてみまするというと、雹害といたしましては、五月の四日に石川県或いは新潟、富山などの北陸中心といたしまして雹の害がございましたが、更に六月の三日から七日に亙りましては茨城県その他関東に雹害があつた次第でございます。そのほか五月の九日、十日には北海道の例の暴風害がございましたのでございまして、まあ枚挙にいとまない災害の連続だということになろうかと思います。  そこで御配付申上げました資料につきまして、その範囲から言いましても、又程度から申上げましても相当大きなものでございました六月九日、十日の凍霜害状況について、御配付申上げました資料について御説明をいたしたいと思います。  配付いたしました資料は頁にいたしまして六頁までございますが、第一頁には被害を受けました凍霜害が参りました六月九日、十日の状況をかいつまんで書いてございます。二頁に当時の霜の降り方或いは作物の生育の状況等から見まして、被害作物別にどのようになつたかということを一覧表にまとめたのであります。それから三頁並びに四頁につきましては、これを府県別作物別に且つ程度別にいたしました表でございます。それから五頁は凍霜害を受けました作物のうちで、或いは再播種をいたしましたり、或いは再植付をするということが適当ではなかろうかと言われておるような、そういう概略的な面積を御参考までに添付いたしたのでございます。それから六頁、最後の表は凍霜害当時、気象台或いは測候所におれかまして観測いたされました結果を表示いたしたのであります。めくつて頂きましたついでに六頁の表から簡単に申上げますというと、六月九日並びに十日の低温状況御覧通りでございまして、これを要約いたしますれば、大体岩手県から青森県の東部、それから北海道の帯広、あの辺にかけまして非常に低温の度が強いというふうに御覧頂けるかと思います。なお仙台或いは東北の秋田、山形等につきましては、さほどの低温ではないように見受けられるのであります。併し何分これは測候所の百葉箱の最低気温観測値でございますから、実際の地温なり或いは植物の温度等につきましては、本表の表よりはかなり下廻つておるというのが従来の一般観測の結果のようであります。さようなことをお含み頂きまして当時の気象状況御覧頂きたいと思います。さような低温が参りました結果といたしまして、受けました被害概況は二頁に表示をいたしましてまとめてございます。水稲につきましては、大体田植が終つておるか、或いは最終近くになつておりますし、又潅排水、水をはります等の関係からさほどの問題はないと思いまするし、又陸稲、「さつまいも」につきましては、作物の分布が丁度凍霜害がございました地方には非常に少うございまして、これも又数量といたしましては非常に少いわけでございます。麦につきましては、岩手県の北のほう並びに青森県の太平洋岸につきましては、丁度穂孕期或い出穂開花の時期に遭遇いたしまして、結果的には不稔粒が続出するというような被害概況でございます。数字につきましては、小麦が大部分でございますが、御覧通りでございます。それから馬鈴薯につきましては、主として今申上げました麦類と同様に、青森岩手並び北海道馬鈴薯の主産地でございまして、丁度萠芽をいたしまして、これから伸長しようという時期でございましたので、相当面積に亙りまして被害をこうむつております。なお雑穀につきましては、丁度場所柄大豆、「あわ」或いは「ひえ」、「とうもろこし」等の我が国におきまする主産地等関係もございましては、御覧通り非常にかなりの広い面積被害をこうむつております。面積から申上げますると、大豆を筆頭といたしまして、「ひえ」、「あわ」、「とうもろこし」その他各種の雑穀に亙りまして、かなりひどい被害をこうむつております。蔬菜は別といたしまして、果樹につきましては、青森並び岩手県におきましては、丁度あそこが「りんご」の産地でございまするが、最近になりまして次第に判明して参りましたが、中が凍害を受けまして大きくならない、或いは黒くなつて落果するというようなのが、凍霜害を受けましてからかなりの日を経過して判明して参つております。そのほか工芸作物につきましても若干の被害がございますが、御覧通り被害状況でございます。  それからさような一般的な全体をトータルいたしました被害面積並びに減収量につきまして、これを府県別にいたしましたのが、先ほど申上げました通り、三頁並びに四頁に亙りまして府県別にこれを掲載いたしたのでございます。これを一々御説明申上げますと、大変時間もとるかと思いまするので、是非これを表によりまして御覧を頂きたいと存ずる次第でございます。なお、最後に申遅れましたが、桑につきましては、岩手県におきましてあそこが山桑等を織込んだ養蚕が行われておりまするが、山桑並び栽培桑かなりひどい被害を受けております。その点を先ほど果樹或いは蔬菜の次に加えて御説明を申上げます。  以上非常に要約的に簡単に御説明を申上げましたが、以上が六月の九日、十日に北海道或いは岩手青森県などに参りました凍霜害の全貌でございます。  なお茶つぽい紙のほうの五月二十七日の凍霜害につきましては、これも大体この表示のスタイルといたしましては、只今申上げましたのとほぼ同様でございますが、二頁に五月二十七日の凍霜害状況をここへ要約してあるわけでございます。先ほども申上げましたように、五月二十七日の凍霜害は主として群馬並びに山梨、岐阜を中心といたしました北関東或いは福島県にかかりまする雹が主なるものでございます。なおその中でも主たる被害と申上げますれば桑がその中心なつておるわけでございます。併し先ほどの六月九日、十日の被害に比べますれば、その規模、程度等かなり軽いかと承知しております。その詳細につきましては、それぞれ表示をいたしてございまするので、御質問がございますればお答えをいたしまして補足をいたしたいと思つております。  甚だ簡単でございますが、お手許にお配りいたしました資料に基きまして被害概況を御説明さして頂いた次第でございます。
  5. 森八三一

    委員長(森八三一君) それではなお続きまして、只今被害状況報告に関連して、資金関係につきまして経済局長から御説明を願うことにいたします。
  6. 小倉武一

    説明員小倉武一君) 営農資金関係でございますが、お配りしてございます資料の詳細につきましては後刻金融課長から御説明をさせます。  この資料の一番最後の紙を御覧なつて頂きますと、只今統計調査部のほうからの御説明資料と若干元の資料が古い資料を使つておりまするので、金額に異動が実は生ずるかと思いまするが、一応これまでのやり方で推算いたしますると、総計の一番しまいのほうに九千八百五十七万九千円と出ております。約一億が融資所要額の推定になるわけでございます。従いまして六月の被害のものといたしまして、これだけ考えなくてはならん、かように存じておるのであります。やり方といたしまして、法律がございませんので、これまでのようにやるわけには実は参らないのでございまするが、実際問題として法律ができる前にと申しますか、できるまで待つということでは時期を失することにもなりますので、実際問題として事務的にできる工夫をいたしまして、府県並びに信連のほうで御承知願えれば、あとから法律が追つかけるという恰好で進行してはどうか、かように存じておるのであります。
  7. 松尾亮

    説明員松尾亮君) それではお手許にお配りしてありまするこういう上に半片が附きました三枚綴りの資料がございまするが、それにつきまして融資所要額計数について概略説明申上げます。  先ず、一番上の紙の半片の紙を御覧願いたいと存じますが、当初政府原案として提出されました法律によりますると、三億を限度といたしまして四月の凍霜露に対して融資をやるという案であつたのでございます。これが1の四月二十一、二十八日凍霜害三億一百四十二万円でございます。つまり三億円を限度とするというのはこの計算に基いたのであります。その後におきまして、五月四日に北陸地方雹害がございました。それから五月九日、十日に北海道及び東北の方面に暴風雨による害があつたのであります。更に五月二十七日、先ほど統計調査部のほうから報告のありました凍霜害が更に群馬長野等地方にあつたわけでございます。その結果は、被害調査農林省としての調査が終つておりませんでしたので、取りあえず国会におかれまして修正されまして、2から4までの、五月四日の雹害から五月二十七日の凍霜害までを加えまして一億五千万円限度を増額されまして、四億五千万円の限度の修正を加えられたのであります。その関係は次の表を御覧願いますると、四月から五月までの雹害に至るまで三億五千七百万円の作物被害に対する融資所要額統計として上のほうに出ております。これは作物被害だけでありまして、従来の方式によりまして、四月凍霜害に対して政府原案で出したと同じ方式計数を弾きまして計算いたしましたのが三億五千七百七十四万二千円。前の紙に返つて頂きまして、5となつておりますが、北海道耕作上の損失に対する融資希望額というのがございますが、これが暴風雪害の際に作物被害がなくて、被害がなくてというのは言葉が少し適当ではございませんが、要するに耕作上再播種を要します或いはそのための肥料を買つたりする新たな費用が加わる、これに対する資金が必要であるというので融資希望があつたのでありますが、その現地希望額をそのままを査定せずに出しますると、八千七百万円となるのであります。これを加えますると、四億四千五百十二万一千円であります。四億五千万円の限度範囲内に収まるわけでございます。但しこの耕作上の損失に対する融資希望額というのは、国会法律案を修正されましたときに加わつたのでありますが、まだ未査定のものでありまして、更に道からの報告を待つて査定を加える予定でございます。これがすでに成立いたしました関係法律の内容になつておりまする計数でございます。その後国会閉会の真際になりまして、六月に入りましてから、六月三日に茨城雹害、それから最後の表を御覧願いまするが、「九月十日」となつておりますが、「六月九日、十日」の誤まりであります。九日、十日の東北北海道に凍霜害があつたのでございますが、これにつきまして、全然県の報告もまだほんの取りあえずの報告があつたのみであります。又農林省としましても、勿論調査を済ませておりませんので、継続審査に亙るわけでございまするが、その関係被害先ほど報告がありましたように判明いたしましたので、同じように計算いたしたものであります。但し只今局長からも申上げましたように、さつき統計調査部から説明がありました数字は今朝でき上りました数字でありまして、この融資所要額計算基礎になりましたのは六月十八日の統計調査部数字を元にいたしました計算で、新らしい数字によりますると、若干の異動が出るかと思いまするが、大体資料でも御覧願いまするように、茨城雹害関係で七百三十五万九千円、東北北海道の凍霜害が九千百二十二万三千円、合せて九千八百五十七万九千円と、六月だけで約一億円の融資を必要とする、こういう計数が出て参つたのであります。  以上概略でございまするが、只今までの経過を申上げました。
  8. 森八三一

    委員長(森八三一君) 今の説明に対しまして質疑がおありになると思いますが、この際お諮りをいたします。小野議員から閉会中に岩手等被害状況について現地調査をされましたので、その模様について委員外発言をいたしたいという要求がございます。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないと認めまして、小野議員発言を許可いたします。
  10. 小野義夫

    委員外議員小野義夫君) 先ず委員長並びに委員各位にお礼を申上げます。私にこの六月九日、十日の凍霜害について御報告機会を与えて下さいまして誠に有難うございました。  私は他に用件もございまして、岩手に参りましたところが、衆議院農林委員であるところの田子一民君が是非参議院に、今議題なつているのであるから、君も一つ一緒にこれから県庁の当局と共に見てくれということで、丁度二十日、二十一、二十二日の在日間に亙りまして、最も被害の甚大でありまする九戸郡、二戸郡、それから岩手県の三郡に亙りまして各町村に参りまして、そしてつぶさにその実情を聞き且つ拝見して参つたのでございまするが、岩手県といたしましては、もはや一つ報告書並び陳情ができ上つておりまして、ここに別冊になつております。これは委員長のお手許に差出したいと存じますので、又一つ機会によつて御覧願いたいと思いますが、先ず岩手県の全体の損害は十四億それがしと計上しておるのでございまして、青森を加えて大体農産物の減収その他の被害は三十億に達するということでございます。御承知通りに、岩手県もいろいろ平坦部海岸部とそれから山地、こう三つになつておるのでありまするが、私の廻つた所はいずれも標高二、三百メートル乃至五百メートルになんなんとするいわば山岳地帯でございまして、一般冷害を受ける可能性の多いところに今度は丁度九日の晩から十日にかけまして零下三、四度の冷い空気が沈滞して風がないのです。でありますから、上からずつと下へ沈下したという状態でございまして、山があつたり或いは木があつたりする所はその害を免れておるのですが、実地で気流が少しも動かないところがそのまま凍り付いてしまつたということでございまして非常なものであります。まあ殊に惨害を極めておりまするのは、岩手には各村に私が廻つた所で或いは三百軒或いは百五十軒という新らしく入植した開墾地帯農民がおるのでございまして、ここは水稲等を作るわけにはいかんから、主として「あわ」とか、「ひえ」とか、豆とか、こういうものをその開墾用の食物として作つておるのですが、これは今の豆類が全部、それから例えば「あわ」、「ひえ」が、この辺は「あわ」、「ひえ」が常食でございます。その常食の「あわ」、「ひえ」が根本的に参つておる、馬鈴薯もやられておる。それから桑も痛められておる、それから山の牧畜用の草でございまするが、萩もいかんし、それから「かや」、それから熊笹のような比較的寒気に堪えられるようなものと思われるものが全部やられてしまつて、全山紅葉とか、全山黒葉という言葉も出ておりますが、真赤になつておるのです。山がさような次第でございまするから、畑地の凍結というものは非常なすごいものでございまして、その間に水田は割合やはり温度がそんなに低下しないので苗は植えたままの状態ではありまするけれども、葉先が少し赤くなつたという程度に過ぎないのですが、「たばこ」のごときも殆んどまあ半作以下に、まあ下葉のほうが皆枯れてしまつておるようなわけでございます。かような状態でございまして、これはまあいろいろの今後対策もございましようが、一番先にこれは困つたと思われるのは、その今の農業災害の問題でございます。今後もまあ非常に岩手地方に起つて来る、北海道にも起つて参るのでありまするが、農業災害のその作物の対象になるものはいわゆる米である、或いは麦である、小麦である、その他若干のものがありまするが、今のような「ひえ」だの「あわ」だの、或いはその他の豆類であるとか、「たばこ」であるとか、そういうような寒冷地帯の主食若しくはこれに匹敵するところの重要なる農家の収入が保険されてはおらない、ですから先ず農業災害救済するのにつきましては、保険が先行するということは、これは今日政府財政の建て方及び農民救済の根本でありまするところのこの保険が本当の保険額基礎に立つてない、全国共通でなければそれはいかんという理論の上に立つてつて、いわゆる寒冷地帯寒冷地帯の独立の保険を構成するか、或いはそういうふうに、要は農業保険である、農業保険という見地から立てば米ばかり作るところの保険は米でいいけれども、米を絶対に作らん地帯における農業保険は意味をなさないことになるのでありますから、これは一つ皆様陳情も痛烈な陳情がございまするが、これは対策として御研究を願いたいというのが第一点でございます。  それから今度は、まあ営農資金ということになるのでございまするが、播き返し、「あわ」をもう一遍播いてみる、「ひえ」をもう一遍播いてみるといつて、まあ播き返しなどをやりますけれども、もはや季節が非常に遅れておるのでございます。三十日も遅れて今播き返しをやりましても収穫は非常に少いものがあり、それから麦は鎌を入れてみなければわからんのですが、大体今やつてみると半分ぐらいの作になるのじやないかというような状態でございまして、今年は今の状態であれば再び非常な大きな冷害を招致する危険性は、気候の今までの足どりから見まして顕著なものがあるのでございまして、この点につきましても本委員会におかれましては、深甚のこの冷害対策についてどういう手を打つかということについて、実際につきまして詳細なる御調査と御研究を煩わしたい。それから取りあえず今の営農資金は、まあ向うの事情を申しまするというと、馬鈴薯も多少は取つてつたのであるが、自家用のものをまあ食べるものを出して、もう一遍値付けたり、或いはそういう播き返しに要するものも自分らの食糧を出しているというようなことでございまして、まあこれの何とか代りを頂戴したいというようなことを申しておるのでございます。それから牛に食わせる折角の草がなくなつて、今後飼料に対して相当難儀をするというような点も述べております。まあ見まして誠に、丁度まだ入植して二年ぐらい経つたものまで、古いものは三年ぐらいで実際気の毒なような人たちがこの甚大なる凍霜害を受けて途方に暮れておるというような所が相当少くないのであります。  大体これに青森も大同小異であろうと存ずるのでありますが、そんな事情で私は取りあえず、非常に被害実情が惨状を極めているということだけを皆さんに御認識を願つておけば結構だと思います。甚だ失礼いたしました。
  11. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは只今から本件に関しまして質疑をお願いし、続いてこの取扱いにつきまして御協議を願いたいと存じます。  只今農林省からは小倉経済局長並びに説明員として金融課長の松岡君、作物統計課長の原君が出席いたしておりますので、質疑のかたは順次御発言を願います。
  12. 菊田七平

    菊田七平君 只今説明がありました東北の問題は、今朝おまとまりになつたということであるので、今後の対策であると思いますが、茨城雹害に対しましては、もうすつかり損害の結果はわかつておると思うので、これに対して当局としてどういう措置をとつたらいいとお考えになつておりますか。
  13. 小倉武一

    説明員小倉武一君) 先ほど説明いたしました被害額、それに伴う融資の所要額の中に負担分を計上してあるのであります。ただ融資の問題につきましては、法案の関係がまだ成立いたしませんので、事務的に進めるわけには参りませんでしたのですが、資料が整いまして、又先ほど委員長からお話がありました通り臨時国会ということも、差当りいつという日取りもまだ決定に至らないということでございますから、私ども事務的にできることを今後至急進めたいと、かように存じております。法律が成立しませんので、これまでの行き方通り行けるかどうか若干疑問がございまするが、事実を先に進めて行きまして、あとで国会のほうで法案を御審議願うということになりまするのは、甚だ実は面白くないことになりまするけれども、実態を本委員会で大体この辺ということで御了承願えれば、そういう線でできる範囲の事務を進めて行く、かようなつもりで進行したらどうかと、かように思うのであります。
  14. 菊田七平

    菊田七平君 まあいろいろと当局としても措置をとつておられることとは思いますけれども、何しろ雹害は、面積は狭いのですけれども、被害のその人その人に対するものは非常に大きいものでございまして、現在において次の営農に移るのにどうにも方法がないという声が非常に強いので、法案は要するに東北被害がわからなかつたの審議未了にはなつておりますけれども、災害ですから、差当りの政府としてできるだけの措置をとつてもらわないと因るので、それだけを要望しておきます。
  15. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 六月の九日、十日の凍霜害実情只今小野君から聞いたわけでありますが、いずれにいたしましても、この凍霜害或いは雹害等の非常な惨害をこうむつた個々の農民としては、これは容易ならん生活の窮状に追込まれるわけでありまするが、この法律案が継続審議ということになつて、臨時国会がいつ開かれるか目鼻もつかんというような現状において、政府として緊急にどういうふうな措置をとるのか、私は差当りこういつた農民に対しては、法律は先ず通さねはならんのでありますが、継続審議であつて、どうも臨時国会がない限りは、緊急にこれが対策というものを政府自体として持たねばならん緊要な問題だと私は思うのです。それについてどういう考えでありますか。今日直ちに農林大臣に来てもらうならば、これが一番いいことなのでありますが、農林大臣の意向なり、又政務次官なり、どういう考えを持つておられるか、一つお聞きしたいと思いますが、まあ差当り経済局長でも結構です。
  16. 小倉武一

    説明員小倉武一君) 実はそういう政治的な関係もございまするので、先ほどもちよつと申上げたのでありますが、政府としてということになりますると、法律ができていない前に先行してしまうと、後年度に損失補償なり利子補給なりを約束するということになりますので、財政法その他の関係で、政府でこうやるということを決定するということは、なかなかちよつと国会との関係の上におきましても行きかねるのではないかと存じます。と申しましても、法案成立まで荏苒日重ねておるということも、これは又許されないことでありまするので、統計調査で以て災害の高が決定いたしました以上は、それに基きまして、従来のやり方があるわけでございまするので、所要の融資額を出しまして、大蔵省とも事務的に話合を進あまして、先ほど申上げましたような一億といつたような線が一応ここに出ておるわけでありまするので、そういう線に基きまして、事実上県庁或いは信用組合連合会、こういつたところで我々と事務的な話合を了した上で融資の筋を進めて頂く、そうしてそれを法律ができた場合に遡つて追認すると、こういう恰好にして行つたらどうかと、こういう工合に考えるのであります。こういうやり方を理詰めにやつて行きますると、法案が成立いたしません関係上、若干危惧はあるのでございますが、そこは一つ御了承願えれば、そういう線で即刻に進めて行きたいと、かように存じておるのであります。
  17. 関根久藏

    ○関根久藏君 只今のお話で、法案があとになつて、それまでは何とか或いは信連とか県に心配してもらう、大蔵省とも打合せをしたと、こういうお話なんですが、併し法案ができなくも災害救済をしなくてはならないので、さような場合に財政法の関係があるかどうかは知りませんけれども、何らかのそこに救済措置を講ずるような方法は政府としては当然あるべきじやないでしようか、その途はないのですか。
  18. 小倉武一

    説明員小倉武一君) 救済の途もいろいろございますけれども、例えば継続審議なつておりますところの営農資金の問題について実は申上げておるのでございます。営農資金の利子補給、それから損失補償等を政府がやるということにいたしまして、併し政府がやるにつきましては、法律が成立するということが必要なことになりまするので、正式には法律が成立してからでございまするが、と申しまして、それを持つてつたのでは遅くなるからして、法案が成立した場合でも同じでございまするが、県或いは市町村が損失補償の契約をやる、或いは融資の斡旋をするといつたようなことになりまするので、そういうことは進めまして、そうしてあとで法案が成立した場合にそれを追認すると申しますか、遡つて法律上正式に国が損失補償の補助をする、或いは利子補給の補助をするといつた恰好に持つてつて、実質的な効果を同じように挙げると、そういうことをやりたいと考えておるわけであります。
  19. 関根久藏

    ○関根久藏君 実質上の効果を挙げるために、あとになつてそういうことをするのでなしに、やはり政府の責任においてさようなことはできないのですか、利子補給をするとか、損失補償をするとか、そういうことはできないのですか。
  20. 小倉武一

    説明員小倉武一君) 利子補給も、損失補償も、あとになるわけでございまするので、只今予算が計上してないからできないとか、できるとかいうような問題ではございません。その点はないのでございまするが、ただ法律が成立していないと正式にこういう措置を進めて参るということができないのでございます。それに代る措置ということになりますると、これは又全然話が変つて参りまするので、只今継続審議いたされておりまする法案に関連いたしまして、その措置を法案が成立する前に実は進めたい、従いまして、例えば村なり県なりで農家営農資金の供給を受けるということになりますると、今日から契約ができますれば、法案が通つた場合に今日からの問題についての利子補給、損失補償をするということでありまするので、その点は営農資金融通につきましては、実は法案が通つて、そのときからその利子補給をするという意味ではなくて、実態に即応して必要な融資をすれば、後にできる法律で以て利子補給をする、こういうことで以て法案が通らん場合を仮定しますと、それは非常に困るのでございますけれども、通れば如何ほどか融資の枠も多くし得られる、こういう点で仕事を進めて行く、こういうわけであります。
  21. 関根久藏

    ○関根久藏君 どうもその点が私にはわからないのです。どうせそういうことに結果においてはなるでしようが、この際においてそういう損失補償の契約なり、利子補給の契約なり、政府としてできる方法はないのですか。
  22. 小倉武一

    説明員小倉武一君) これは私なかろうかと思います。
  23. 関根久藏

    ○関根久藏君 ないということになれば、こういうふうに、一方においては災害を受けて営農資金を借りることができる、同じ災害を受けたけれども、時期が少し遅くなつて、国会も開かれないで、同じ位地にあるものが救済されないということは、これは何とかこういう場合を予想して、そういう緊急の事態に合うようなことのできることが政府の権能にあるようにしなければ、これは実際問題として困るじやないですか、そこはどうしても方法はないのですか。
  24. 小倉武一

    説明員小倉武一君) これは私が責任を以て御答弁するのはちよつとまずいのじやないかと思いますが、むしろ大蔵省のほうがいいのじやないかと思いますが、私はそれは非常にむずかしいのじやないか、ここで法制上できないというところまでが私の申上げられることなので、あとで間違うかも知れませんが、後年度の利子補給、損失補償を約束するのでございまするので、これは正式にここですぐやるというわけには私参らんというふうに思います。ただそういうわけでございますので、実質上それと同じ結果になるような措置を進めれば結局いいのじやないかということで、そういうことを緊急実行したい、そのための一億ということでございますれば、一億の目安を置きまして、取りあえずは県、市町村が損失補償の契約をして頂いて、それをあとで法案が成立した場合に当然追認するということで進めるということで実効は全く同じことができはしないか、かように存ずるのであります。
  25. 関根久藏

    ○関根久藏君 それは実際は結果においては少しも変りがないでしよう。又実効においてもそれは結構です。併しかような、国会閉会中で時期がずれているときには、何とか緊急の措置ができる方法が政府にありそうなものじやないですか。それは大臣が非常手段をやつておいて、そういう契約をしておいて、あとで追認を求めるという方法はこれはないものですか。
  26. 小倉武一

    説明員小倉武一君) 先ほどお答えした通りでございまして、まあ法律になるか、或いは法律の形式をとらなくても、そういう契約をすることについて国会の承認があるということがなければできないというように私は存じます。
  27. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 只今論議されておりますが、これは法律がある以上そこに問題が残つておると思います。併しながら、本農林委員会においては満場一致意見を取りまとめまして、政府にかように取計らうように進言すれば政府もやりよいのじやないかと思います。取計らうには、先ず四十二億の損に対して一億の営農資金融資で各府県は満足しておるかどうか、これを先にお尋ねしたいのですが、政府といたしましては、一億を出す関係において、一億で足りるように各府県とも話合が済んでおるのでございますか。
  28. 小倉武一

    説明員小倉武一君) 府県との話合は勿論進めておりません。ただ一億という計算につきましては、先ほど作物統計課長から報告がございましたが、あの線と合せて数字を整理しなければなりませんので若干動くかと思いますが、それにしてもお尋ねのように数十億、三十億、四十億ということでございますれば、趣くその中の一部ということになりまして、勿論府県或いは府県関係者等の要望されるところと相当大きな開きがございまして、必ずしも十分な満足と申しまするか、そういうことを得られることが困難だと思いますが、ただ計数の弾き方といたしましては、従来の弾き方、特に本年度につきましては、五月の関係もございまするので、それと同じような弾き方をいたしておりますので、話合を進めれば無理でも御了解願えるのじやないかと思います。
  29. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 さように一億で話合ができる見通しがあるなら、この際参議院農林委員会の意見を委員長に取りまとめ願つて政府が緊急措置を講じられるような、例えば県信連或いは各府県、市町村に対して臨時措置を講ずるような文書が発行できるように願いたいと思います。  この機会一つお尋ねしたいのですが、四月、五月の凍霜害に対しまして営農資金四億五千万円は法律で可決されましたけれども、当時衆議院においては附帯決議が出ております。参議院においては、おのおの意見を以て助成、補助を相当しなければならん、去年と同様に扱うならば相当の補助、助成を必要とする、例えば防虫剤の農薬の問題或いは肥料の問題、こういう問題については、国会が延長になり、或いは休会に入つてからも、各委員からも政府筋に要望が出ておると思います。その結果はどのように今なつておりますか、どのような助成が取りまとめられましたか、この機会に御発表願いたいと思います。
  30. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 関連して……、昨年の凍霜害に際して政府がとつた対策と、今回、これは融資だけの問題であますが、どうして昨年と同じような対策政府としてとられなかつたのか、只今鈴木委員から話があつたように、肥料とか、或いは種子その他の問題等が相当昨年はあつたわけであります。勿論昨年の凍霜害に対しましては行過ぎた感もあつたわけでありますが、これらは勿論十分考慮してそうしてやらねばなりませんが、年次によつて農民に別な待遇を与えるというようなことは私はなすべきではないと考えます。それについて政府はどういうふうに考えておられるか、一つ併せてお願いしたいと思います。
  31. 小倉武一

    説明員小倉武一君) 昨年の凍霜害等に対する措置と今回の措置とが大きく違うということについてのお尋ねでありますが、実は私のほうといたしましては、そういう助成よるいろいろの措置は所管が全然違つた関係なつておりまして、私からその点についてお答えすることがちよつとむずかしいものでございますので、所管の局長のほうから一つお答えを願いたいと思います。
  32. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 補助金のことにつきましては、私のほうの所管でありますから私からお答えいたします。四月の凍霜害がありました当初におきましては、大蔵省なり或いは政党方面におきましても、今回は補助金は一切出さない、保険の前払と申しますか、それと、それから只今審議なつておりまする営農資金融通ということで措置するという方針であつたのでございます。その後五月にも凍霜害がございまして、我々といたしましては、これはやはり何らかの補助金を出さなければならないというふうに考えまして、殊に昨年の凍霜害と比べまして規模が小さいと申しますか、全国的な被害の量は少いのでありますが、併し今年は損害を受けました部分的な地域のひどさにおきましては、昨年よりもひどいというようなところもあるわけでございます。そこで蚕糸局といたしましては、昨年と同じように肥料、農薬等の補助金を出したほうがよかろうと思いまして、そういうような計算もいたし、関係方面と折衝いたしたのでありまするが、肥料につきましては、昨年度は特別の冷害であつたので、個人補償になるから、これは本年は絶対にいかんという大蔵省の方針であります。農薬につきましても同じような方針でありましたが、我々といたしましては、最後までいろいろ交渉を続けておつたのでございますが、結局財政当局の方針といたしまして本年は予備金も出さない、それから補正予算も出さない、既定予算の範囲内においてできるだけの補助をできるならしよう、こういうような方針が固まつて参りました。そこで蚕糸局の予算も御承知通り原則として一割の節約がございます。その節約分を戻してやるというような話がありまして最近漸くまとまりました。まだ最後決定になつておりませんが、大体この線できまりそうだというお話がありましたが、蚕糸局におきまして蚕糸局予算を原則としての一割の削減をいたしますると約千八百万円出て来るわけでございます。これにその一割削減以上にもう少し勉強せよという話がありましたので、なお一千万円を捻出いたしまして、合計二千八百万円という経費を捻出いたしまして、これを動力噴霧器、一台先ず五万円の小型の動力噴霧器、これの半額補助ということで補助金を出すということで大体話がきまりかかつておりましたが、その金額が余りに少いので、せめて四千万にしてくれという御要望もございまして、又六月に入りましてからの凍霜害につきましては、先ほどお伺いいたしました通り岩手県におきましても桑もやられておりますが、より以上に他の農産物も被害を受けておりますので、これに対する対策も同時に考えるというようなことにおきまして、改良局のほうにおきまして自分の所管の予算を節約して、これを約千二百万捻出いたしまして、合計四千万ということに、これもやはり動力噴霧器でございます。従いまして、総額は四千万、動力噴霧器の半額補助ということになつております。そのうち二千八百万が蚕糸局関係、千二百万が改良局関係というようなことでどうやら話がまとまりかかつておるというところでございます。
  33. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 非常に蚕糸局長及び改良局長の御尽力で農林省の各関係局の予算を削つて、それを補助金、助成金として出す、非常な御苦労を願つて恐縮に存じますが、なお一層努力せられて助成の途をあけるようにお願いしたいと思います。なお、議事進行でお尋ねしたいのですが、今日は重要な麦の問題もございますので、或いは繭糸価格の生糸或いは玉糸などの価格の問題などもあろうと思いますが、引続き午後遅くまでおやりになるのでございますか、万一そういうことでなければ、議事の進行上につきまして、只今議題なつておる問題については意見の取りまとめを願つて他の議案に移つては如何かと存じます。
  34. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今鈴木委員の議事の今後の進め方をどうするかということでございますが、あとに重要な問題も控えておりますので、大体質疑が終りますれば、皆様の御意向を取りまとめて、この問題をどういうふうに扱つて行きまするか、委員会の意向をまとめてみたいと思つておるのでございますが、大体この辺で質疑が終りますといたしますれば、懇談に移りまして取りまとめをしたいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは速記を中止して下さい。    〔速記中止〕
  36. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは速記を始めて。  それでは只今審議中の昭和二十九年四月及び五月における凍霜害等被害農家に対する資金融通に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきましては、只今の懇談で政府に善処方を申入れることに決定いたしましたので、その申入に関する文書は後刻案を作成いたしましてお諮りをいたすことにいたします。時間が十二時を経過いたしましたので、ここで暫時休憩いたしまして、午後は案件も非常に山積いたしておりますので、正一時から開くことにいたしたいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないと認めます。暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩    —————・—————    午後一時三十二分開会
  38. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは休憩前に引続きまして会議を開きます。  先ず農林政策に関する調査としまして、本年度麦類価格の件を議題といたします。当面の非常に重要な問題として各方面の関心を高めておりまする本年度産麦類の価格につきましては、すでに新聞報道等によつて承知のことと存じますが、いろいろのいきさつを経まして、今日米価審議会にお手許に参考としてお配りをいたしておりますような諮問が行われておる模様であります。つきましては、この際、この問題についての御審議を願いたいのでありますが、先ず最初に本日の米価審議会にこの諮問が行われるに至りました経緯につきまして、農林当局説明を求めたいと思います。
  39. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 麦の価格のきめ方につきましては食糧管理法の規定があるわけでございますが、生産者価格と申しますか、政府の買入価格と、それから売渡価格を政府が毎年六月に定めることになつておるわけでございます。生産者価格につきましては、昭和二十五年産及び昭和二十六年産の麦の買入価格を基準といたしまして、それにパリテイ指数を乗じて得た額を基準といたしまして、生産事情その他の経済事情を参酌して定める、こういうことになつておるわけでございます。又政府の売渡価格につきましては、家計費、米価その他の経済事情を参酌して定めるということになつておるわけでございます。ところが只今お話もございましたように、本年以降、政府といたしましては低物価政策を強力に推進して行こうという方針をとつておるわけでございます。ところが今申上げましたような法律の規定に基きまして麦の価格を算出するわけでございますが、それの基礎となりますパリテイ指数はこの一年間に約七%ほど上昇しておるわけでございます。従いましてこのパリテイ価格の上昇を麦の価格に織込んで行くという問題と、低物価政策を維持して実現して行くということの間にむずかしい問題がございまして、部内におきましても、この点に関しまして如何に結論を出して行くかということに関しまして種々論議を重ねた次第でございますが、一応只今資料としてお手許にお配りしましたような諮問案に両者の考え方を調整いたしまして案を取りまとめ、本日米価審議会会を開きまして、これに諮問をいたしておるというわけでございます。米価審議会の答申に基きまして、これによつて最終的には価格決定いたすという段取りになつておるわけでございます。そこで今回米価審議会に諮問をいたします案につきまして、それのどういう考え方に基いて算出いたしましたかを資料に基きまして御説明を申上げたいと存じます。  表紙を開きまして第一頁に、諮問案としての価格が政府買入価格、標準売渡価格と書いてございますが、買入価格につきましては、小麦二千六十八円、裸麦二千百七十三円、大麦千六百十二円、標準売渡価格は小麦二千百七十円、裸参矛二百七十五円、大麦千七百二十円ということで御意見を承わることにしておるわけでございます。そこで政府の買入価格でございますが、買入価格につきましては、今申上げたような事情で、考え方の基本といたしましては、最近麦の価格は一年間の推移を眺めますと、非常に安定した経過を辿つておりますし、又需給関係につきましても、大体相均衡した状態を示しておるというふうな判断に立ちまして、且つ政府の現在とらんとしております低物価政策に即応することといたしまして、現行の麦の価格の水準を維持して行きたいという考えで、この案ができておるわけでございます。そこで一応法律の規定に基きまして基準年次の額にパリテイ指数を乗じましたものが価格の基準となるわけでございますが、小麦につきましては、そのパリテイ価格そのままを採用したわけでございます。大麦、裸麦につきましては、パリテイ価格に現在の政府買入価格を勘案いたしまして、それぞれ加算をいたしてきめておるわけでございます。昨年は大麦、裸麦につきましては、パリテイ価格を基準といたしまして、それに基準年次以降におきまして小麦と大麦、裸麦の三者の間の需給関係が非常に変つております。従いまして、価格の趨勢も基準年次とは違つた価格が現実に現出しておりましたことを勘案いたしまして、先ず第一段といたしましては、小麦と大麦及び裸麦の実際の市場の価格の実態に即応いたしました調整を加えております。それから更に米のときと同じような考え方に基きまして、特別加算額を加えて昨年は決定したわけでございます。小麦につきましてはパリテイ価格に特別加算額を加えた額で決定したわけでございます。本年度につきましては、低物価政策に即応するという観点から、一応今申上げましたようなことで小麦につきましてはパリテイ価格そのものを採用いたし、大麦、裸麦につきましては、パリテイ価格に昨年の特別加算額というものと意味は異にいたしますが、加算をいたしておるわけでございます。その加算金額は大麦につきまして二十六円、裸麦につきまして二十一円、特別加算と申しますかをしておるわけでございます。その計算の内容に入りまして、細かい数式を二頁以降に書いております。添付資料の(二)の(1)のところに、二十九年産麦の政府買入価格の算定方式が掲げてございますが、上段のほうに書いてありますのは、いわゆるパリテイ指数に基いて算出いたしました価格が出ておるわけでございます。政府買入価格と一番下のほうに書いてありますすぐ上の段に小麦二千六十八円、裸麦二千百五十二円、大麦千五百八十六円と、こう出ておりますが、これがパリテイ価格でございます。それに小麦はそのままパリテイ価格を採用いたし、裸麦、大麦は二十六円、二十一円を加算いたしまして、小麦二千六十八円、裸麦二千百七十三円、大麦千六百十二円という買入価格の案を決定いたしておるのでございます。それから、ずつとその次にございます表は、パリテイ指数を算定いたします細かい各項目別の内容でございますが、これは後ほど御覧置き願いたいと存じます。それからパリテイ価格の内容の次に、添付資料の(二)の(3)といたしまして、生産事情に基く参酌価格というのが出ております。これは先ほど簡単に申上げましたように、買入価格を決定いたします場合には、パリテイ価格と、もう一つは生産事情に基く参酌価格が一つの考慮の要素になるわけでございますが、いわゆる豊凶指数に基く価格でございます。これは現在までに判明いたしております六月一日現在の麦の予想収穫高に基いて出しておるわけでございますが、次の頁を見て頂きますとおわかりになりますように、裸麦、大麦いずれも基準反収量よりも殖えておりますために、この豊凶係数はマイナスの要素といたしまして、参酌価格は先ほど申上げたパリテイ価格よりもそれぞれ低い価格で出ておるわけでございます。従いまして、現在の建前といたしましては、いわゆる豊のほうは特に参酌の要素として用いない、凶のほうを要素として用いるということで、実際上諮問案の原案を決定いたします場合には、このいわゆる豊凶指数を用いて算出いたしました価格は加味されておらないわけでございます。一応御参考としてここに添付いたしてあるわけでございます。次は添付資料の(二)の(4)は、これは麦の銘柄及び等級間格差があるわけでございますこれが、は非常に技術的な内容になりますので御説明は省略させて頂きます。従来の実際の実績によりまして、銘柄及び等級間の歩留り等によりまして格差を求めているわけでございます。それによりまして政府の買入価格、諮問案として出しました価格は三等三類の価格でございますので、それを基準にいたしまして格差を出しまして、実際の銘柄別、等級別の価格ができるわけでございます。それから(二)の(5)も、実際政府が買入れます場合には包装代込で買入れるわけでございますが、その際の包装代として加算すべき額がここに掲げてございます。包装代は昨年米価決定の際に包装代の改訂をいたしたわけでございますが、その米の際の改訂価格をそのまま麦の場合にも路襲いたしております。従つて昨年産の麦のときと比べますると、この十四頁の表に書いてあります通り、それぞれ相当の値上りをしているということになつているわけでございます。  以上で、大ざつぱでございますが、政府買入価格につきましての算出のやり方の御説明を終えまして、次に標準売渡価格のほうの御説明に入りたいと思います。  十五頁に書いてあります価格は、諮問案として今日御審議を願つております標準売渡価格が、ここに第一頁に出ております小麦二千百七十円、裸麦二千二百七十五円、大麦千七百二十円ということになつているわけでございます。その基礎となりました数字は、製品としての想定消費者価格を小麦粉五百三十五円、精麦五百四十円、それぞれ十キロ当りでございますが、と推定いたしまして、それから加工流通経費を控除いたしまして逆算して原麦の売渡価格を出したわけでございます。ここに書いております想定消費者価格は、本来ならば本年におきます実効米価、米の実効価格とそれから実際の精麦なり、小麦粉なりの市場価格との間の比率によりまして算出するというのが従来のやり方であつたわけでございますが、それによりますと、十七頁に、添付資料(三)の(3)、対米価比の価格の算出という資料御覧頂きますように、その想定消費者価格と申しますか、本年の資料に基きまして算出いたしますときは、精麦が五百七十四円、小麦粉が五百三十八円になるわけでございまして、それで加工流通経費を控除いたしまして逆算すると、小麦二千百七十八円、裸麦二千四百四十一円、大麦千八百五十二円になるわけでございますが、低物価政策に則るということで、昨年きめました際の想定消費者価格をそのまま維持して行くという建前で、今の十七頁の表で御覧頂けるような結果を用いませんで、昨年の想定消費者価格をそのまま基礎といたしまして、今回の標準売渡価格を算定した次第でございます。なお、標準売渡価格を算定いたします場合のもう一つの参酌要素として家計麦価があるわけでございますが、それが十六頁に書いてあるわけでございます。家計費の上昇比率によりますれば、麦価はこれ以上超えてはならんという意味合の価格が家計費に基く上限価格でございますが、それは製品といたしましては、精麦六百二十七円、小麦粉六百二円、これから逆算いたしました原麦価格は小麦二千四百五十七円、裸麦二千七百円、大麦二千四十七円となるわけでございますが、先ほども申上げましたような事由で、できるだけ消費者価格を低い水準に据置くということで、この家計費に基く上限価格というものは採用いたしませんで、十五頁の資料にございますような、昨年において採用いたしました想定消費者価格から逆算したものを以て本年におきます標準売渡価格といたしたい、こういう考えでございます。  以下あとのほうに最近におきます米価、麦価等の動きを資料として付けておきましたが、これはのちほど御覧おきを願いたいと思います。大体今申上げましたような考え方の基礎に立ちまして、本年の買入格価及び売渡価格を決定いたしたいという考えの下に、本日米価審議会に現在諮問をして御意見を求めている次第でございます。
  40. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今の総務部長の説明に対しまして御質疑のかたは順次御発言を願います。  それでは一つ私から質問さして頂きますが、この決定の前後における実勢麦価は農林省調査ではどういう数字が出ておりますか。この価格決定、諮問案の決定について、実勢麦価というものがどういうように考慮按配されたのか、若しそういうような実勢麦価というものが、最後案の決定に何らかの役割を務めておるとすれば、そのいきさつを一つ説明を頂きたいと思います。
  41. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) お答え申上げます。先ほど申上げましたように、本年の価格決定に当りましては、麦価の実勢を大体基調といたしてきめる、こういう考えを持つておるのでございますが、これは資料が全国的に亙つておりませんで、非常に主産地と申しますか、それに片寄つておるかと思いますが、裸麦につきましては、四、五月頃におきましては約二千三百円、大麦は千七百二十円乃至三十円、小麦につきましては大体二十八十円乃至九十円くらいというのが大体生産地におきます麦価の実際に現われました価格であるというふうに見ておるわけでございます。
  42. 江田三郎

    ○江田三郎君 最初にちよつと申上げておかなければいかんのですが、どうも委員長というものが合法的手続によるものなりや否やということについてちよつと疑問を持つておるわけなんですが、それはほかのほうと関連して国会全体できまるものと思いますので、まあそのことは追つて解決つくものとして、それはちよつと棚上げにしておいて行くわけですが、その立場だけ申上げておきます。  それで政府のほうにお尋ねしますが、昨年加算が行われて、本年も加算が行われておりますけれども、昨年の加算とは違つた意味で付けている、こういうことですが、昨年の三菱についてのそれぞれの加算の額、その意味と言われますから、意味と言いますが、その意味、それから本年の加算はそれとは違つた意味と言うのですから、意味がどういうように違つたのか、その点を先ずお聞かせ願いたいと思います。
  43. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 昨年におきましては、先ほど申上げましたように、小麦につきましてはパリテイ価格に特別加算額といたしまして二%加算をいたしたわけでございます。それから大麦及び裸麦につきましては、これは一つ小麦の価格と大、裸の価格が基準年のときと事情が違つているということを一つの要素にいたしまして、又もう一つは特別加算額という意味合で両方の数字が加算されておりますが、これは実を申上げますと、いろいろ価格決定の過程におきましては経緯がございまして、何と申しますか、理論的に出て参ります特別加算額と小麦の価格と、それぞれの合計ということよりも三麦の間の比率を政策的にこういう比率に持つて行きたいというような意味合が加わつて参りましたために、やや理論的に算出して出て参ります価格と変つてつておりますが、いずれにいたしましても、そういう只今申上げましたような意味合におきまして、小麦はいわゆる特別加算額だけで二%、大麦、裸麦につきましては特別加算額と小麦との間の価格の調整をとるという意味合で、両者を合せまして四・五%を上げていると、こういうことになつております。
  44. 江田三郎

    ○江田三郎君 だから、それは昨年の二%という特別加算はどういう意味でお付けになつたんですか。
  45. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) ちよつと今御説明しましたのが間違いましたので修正してお答え申上げます。昨年の小麦につきましては、パリテイと特別加算額の三%、それから大麦、裸麦につきましては、小麦との価格の関係を調整するという意味合におきまして、大麦は五・七%、裸麦四・四%、それから特別加算額という意味合で大麦、裸麦については四・五%ずつ上げておるわけでございます。それから小麦、大麦、裸麦、それぞれの特別加算額の意味合といたしましては、パリテイ指数につきましては、いわゆる価格の変化だけが現われておるわけでございますが、資材投下量或いはその基礎なつております家計費の量的変化を取入れてございませんという意味合で、米価のときに特別加算額という考え方が二十七年以来採用されておるわけでございますが、その考え方を麦の場合も取入れまして特別加算額というものを出したわけでございますが、計算の当初におきましては、米において採用されましたような方式、考え方、計算の方法によりまして特別加算額を算出いたしましたのを、三麦の間の関係を調整いたしまして、それぞれ調整を加えた数字として二%、四・五%という形で最終的の率はきまつておりますが、その基本といたしましては、米価の際に考えられたと同じ意味合で特別加算額が麦の場合も二十八年度においては取入れたということでございます。
  46. 江田三郎

    ○江田三郎君 ちよつと説明がこう複雑過ぎて、聞いておつてわからんようになつてしまうんですが、特別加算というものを昨年付けておつた、それを本年特別加算を付けないという理論的な根拠は何であるかということと、それから大麦、裸麦について対小麦比価というものも見ておつたわけですが、それは今年の二十一円なり、二十六円というものには考えられているのかどうか。今年の二十一円なり二十六円というのはどういう根拠を持つているのかということを一つわかりやすく説明してもらいたいと思います。
  47. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) これは昨年におきます特別加算額は、何と申しますか、パリテイ方式の修正というような意味合でたしか採用されたというふうに考えるわけでございますが、本年もいろいろな経済条件、社会条件を一応無視して考えますれば、やはり特別加算額という考え方は当然取入れらるべきものというふうに考えるわけでございますが、冒頭に申上げましたような事情でございますので、現在政府がとらんとしている政策との関連におきまして、法律で定められております限度と申しますか、限度で価格をきめるといたしますと、法律ではパリテイ価格を下らない範囲内できめるのだという規定があるわけでございます。その限度といたしましては、小麦はパリテイ価格そのまま、大麦、裸麦につきましては、パリテイ価格そのままでありますと、大麦、裸麦と申しますような粒食の系統の麦につきましては、やはり今後ともできるだけ国内的に自給度を高めて行くという意味合を考えて行かなければならないという考え方から、法律上の定められておりまする限界で直ちに価格をきめることは妥当でないという考え方で、二十六円なり二十一円の加算をいたすということになつておるわけでございます。
  48. 江田三郎

    ○江田三郎君 どうもよく聞いていてわからんですが、パリテイ価格というのは今年の麦を作るためにいろいろ投資をした、その投資をした肥料なり、いろいろなものがありますが、そういうものから出て来ると我々は考えているわけですが、これからの今の政府の意図するデフレ政策ですか、これはまあ将来の問題なので全然同じ時限にある問題じやないと思うのですが、今まで投資したもので値段がきまるということになれば、昨年取上げられた特別加算の方式というものを変える要素はないように思うのですが、その点パリテイ価格というものの考え方を根本的に変えたのかどうか、そういう点は一体どうなつているのですか。
  49. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 確かにパリテイ価格を採用いたします考え方といたしましては、これは米の場合と麦の場合とやや意味合が違うのではないかと思うわけでございますが、米につきましては、何と申しますか、とれた米は全部政府が買うという建前になつておりますので、米の生産された期間並びに米を政府に販売する期間におきまする農家購入物資の価格の変化ということがパリテイ価格を採用する場合の基礎となる、その期間もそのような期間のとり方をされているわけでございますが、麦につきましては、一応現在の食管法の建前といたしましては、過去に投下された資本の回収ということではなくて、将来の再生産という意味合で規定があるわけでございます。そういう意味合におきまして麦の価格をきめます場合のパリテイ指数というものは、本来ならば将来あるべきパリテイ指数をとるべきであるわけでありますが、将来の予測ということは困難でございますので、現在わかつております一番新らしい時点の指数をとつて算出した、それを一番最低限といたしまして、その上にいろいろの経済的な事情等を加味いたしまして価格を決定いたすわけでございますが、昨年におきましては、なおパリテイ指数なり、物価は上昇傾向にあつたわけでございますし、又麦の不作という状態に直面して来たときでございますので、パリテイ価格をそのまま採用いたしませんで、種々の加算をいたしたわけでございますが、本年度は一応従来まで挙つて来た最新の数字をとつて一応パリテイ価格を出しているわけでございますが、今後におきましては、政策的な要請もあり、又実際の見通しとしても、価格は今後必ずしも上昇傾向に進むということの断言はできませんので、とにかく現在いわゆる一番新らしい資料を用いた価格が一番将来の価格に近いのではないかという意味合から、本年は一番最近、時点として五月のパリテイ指数を用いて出しましたパリテイ価格というものを、今回政府原案と申しますか、といたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  50. 江田三郎

    ○江田三郎君 今の答弁で行きますと、米の場合のパリテイ価格と麦の場合のパリテイ価格というものは、まあ一方が余勢政府買上となつており、片一方は支持価格だということだけでなしに、今の答えで行くと、それだけでなしに、根本的に違うものだという答えでしたが、そうなんですか、それは一つどういうことに明らかにされているのですか、何かあなたのほうに今まで出された省令か何かではつきりしているわけですか。
  51. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 法文関係では、何と言いますか、米の価格につきましては、こういう算式を用いてやるのだということははつきり書いてございません。麦につきましては、相当詳しく価格の決定方式が掲げられておるわけでございますが、考え方の基本といたしましては、今、先生もおつしやいましたような、麦の場合は支持価格的のものであり、米の場合には全量買上ということが、やはりそれぞれの価格を決定する場合の考え方の大きな基本になるのだというふうに考えております。
  52. 江田三郎

    ○江田三郎君 そうでなしに、今あなたが言われたのは、そういうことだけでなしに、米の場合は既往の投資という点からパリテイ価格を考えるんだが、麦の場合には既往の投資ということだけでなしに、将来の物価の趨勢についても考えるんだ、ただそういうものが予測しにくい場合があるから、最も新らしいときのパリテイの数字で行くんだと、こういうことで、将来の物価の趨勢というものを考えて行くというあなたの説明で行くと、麦ではそうだというのですが、そういうことと、米の場合は根本的に違うわけですか、それははつきりそうなんですか。
  53. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 米の場合には、御承知通り政府の全量買上でありますので、いわゆるバツク・ペイということで、実際に価格決定をいたしました時点以降におきますパリテイ指数の変化も織込みまして、次年度におきまして調整する途が残されておるわけであります。ところが麦の場合におきましては、政府が全量買入ではございませんので、六月にきめましたならば、その価格が将来を支配するわけでございます。そういたしますと、本来ならば、将来出廻つてから以降の価格のあり方を推定して価格をきめるのが、それが本来であろうと思うのでありますが、そういう推定というものは実際上不可能でございますので、一番最近時点のパリテイ指数を採用したということでございます。それから米の場合、過去の投資を償うということを申上げましたが、ちよつとこれは言葉が足らないのでございまして、現在の米の価格のきめ方におきましては、実際上いろいろ米の生産の形態なり、販売の形態なりを考えまして、法令上の規定はございませんけれども、一応大体生産期間といたしまして、七月以降約三カ月、それからそれ以降約九カ月の間を販売期間というふうに見まして、これを一年を通じて、七月から翌年の六月までの指数をとるわけでございますが、価格決定当初におきましては、翌年のことまでわかりませんので、取りあえずそのときの状態においてきめまして、翌年パリテイの変化に基きまして、バツク・ぺーなり何なりの措置によつてその間の調整をいたすという仕組みになつております。
  54. 江田三郎

    ○江田三郎君 私が今までパリテイ価格について考えておつたこととあなたの言われるのと違うから私は聞くのでして、麦の場合には、あなたの説明で行くと、将来の物価の趨勢についても考慮するのだ、ところがそれが予測しにくいから、最近のパリテイの数字で行くんだということになれば、将来の物価の趨勢について予測しにくいからというのだつたらこれは意味がないことですれ、そうやることは……。併し将来の物価について推定をして行くと言われる以上は、若しその推定が誤まつた場合には一体どうなるのですか。そのときにはどういう補償をされるわけですか。そうして今の場合に、将来の物価を推定をしてと言われるけれども、将来の物価というものはどの程度上り、どの程度下るという見通しを付けておられるか、それが変つた場合には一体どうなるのか、そういう点、今まで私どもが考えておつたパリテイ価格に対する考え方とちよつと違うものだから、よくわからんから重ねてお尋ねします。
  55. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) これは理論の問題と実際の技術的の問題とあるわけでございますが、理論的の問題から言えば、将来の指数を推定して六月における価格をきめるのが本来であろうと思うわけでありますが、将来の予測は、例えば上るか下るかということは誰も予測できないわけでございますので、将来経済上の変化のないということを前提といたしまして、一番最新の数字をとる、こういう建前にしておるわけでございます。ただ従いまして、法律上の規定もありまして、非常に大きな経済上の変化が後に出て参りますれば、これはそのときに修正をする、価格の修正をするという道は残されておるわけでありますが、一応の建前といたしましては、非常に大きな経済の変化はないという前提に立ちます限りにおいて、一番近い数字というものは、一番最近のものが一番それに近いじやないかというのであります。
  56. 江田三郎

    ○江田三郎君 そういう答えになると、将来の物価を推定して行くけれども、それはわからんのだということなら、そのことは消してしまつていいわけですね。推定して行くんだけれども、それはわからんのだというなら消してしまつていい。そうすると、五月のパリテイ指数だけが残つて行く、そうすると、去年五月のパリテイ指数でやつた全然同じ条件で考えなければならん、理論的な結論はこうなると思うのです。そこで去年加えておつた特別加算というものを今年加えないという理由は、ただ豊凶指数の問題だけですか、ほかに何かありますか。
  57. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 昨年度も本年度も価格決定の要素として豊凶指数は直ちに計算に乗つて来てはおりません。ただ政府の麦の取上げ方の問題といたしまして、昨年度におきましては、まだ麦の間接統制に入りましてから非常に日が短かかつたというようなこともありまして、大麦、裸麦につきましては、政府がこれを把握するための相当意識的な考え方をここに乗せて行かなくちやならない。昨年の価格を決定いたします場合の一つの要素になつておるわけでございますが、本年におきましては、一応間接統制に入りましてから、二年の年月を経過いたしまして、麦の価格の推移を見ておりますと、大体需給事情にいたしましても、価格にいたしましても、非常に安定した状態を示しておる。従つて政府がきめます価格は、いわゆる何と申しますか、これ以上下つては生産者にとつて非常に困るという支持価格的な意味合で価格をきめておきますならば、それによつて現在の実勢価格というものを、政府が価格をきめることによつて或いは上げたり下げたりするという効果は生じないのではないか、実勢価格というものは維持され、而も生産者が困るような最低価格を割らないという保証がここに与えられれば、食管法で規定されている麦の間接統制の目的は達成されるのではないかという考え方に基きまして、本年は買入価格をきめておるわけでございます。
  58. 江田三郎

    ○江田三郎君 どうも食違いやしませんか。将来の価格を考えるというけれども、これはわからんというから、これは消してしまわなければならん、そうすると、去年と同じことで行かなきやならん、その際豊凶指数を特別加算に考えたというなら別だけれども、豊凶指数は特別加算の中に考えられていないのだということになれば、去年の価格決定の条件と今年の価格決定の条件というものは同じでなければならんと思うのです。何も違つたことはないと思うのです。ただ去年は制度切換え早々だと、今年はそうではないと言われますけれども、去年加算を付けられた条件と今年の条件とは私は別に変つた政策があり得るはずはないと思うのです。制度切換え早々であろうと、二年目であろうと、三年目であろうと、それは同じことなんですよ。そうすると、去年の立て方が間違つてつたというのか、或いは去年が正しくて今年が間違つている、今年のは根本的にやり変えたというのか、どちらかということにならざるを得んと思うのです。それから実勢価格ということを言われますけれども、先ほど委員長の質問に対してお答えになつた実勢価格というものから言つても、今度の価格というものがすぐ農民を納得せしむるものではないと思う。更に食生活の転換というような面から、粒食というような面から、この大麦、裸の対小麦比価というものを去年は考えられておつたというのですけれども、その条件も何ら変つたことはないと思うのでして、要するに結論的に言えば、今までの農林省或いは政府がこの価格決定に使つてつたただパリテイ価格というだけでなしに、それに加味されるいろいろな要素というものを今年は相当変更したということは、これはもう今の話から押詰めて行つたら当然そうなると思うので、これは実際言うたら、あなたをそういじめたつて仕方がないから余りむずかしく言つても仕方がないと思いますが、ただ私お聞きしたいのは、大麦、裸麦の対小麦比価というものを相当変えられておるのは、外麦の輸入ということによつて供給の条件が違つて来たのかどうか、その点はどうですか、或いは違つて来るのかどうか。
  59. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 大麦、裸麦と小麦との需給関係でございますが、これは需給の立て方といたしましては、国内産は先ずどれくらい生産でき、流通市場に廻り得るかということを推定いたしまして、それと需要量とを比較して足りない分を輸入するということになつておるわけでございますから、輸入によつて大麦、裸麦と小麦との間の需給関係は昨年と今年の間に変化を来たしておるということはないわけであります。小麦と大、裸との間の需給関係は大体去年と今年と同じ形であろうというふうに考えるわけであります。それから実勢価格について私先ほど数字を申上げましたが、あれは政府の買入価格と直ちには比較しにくいのでありまして、一つは主産地の価格を申上げておりますために、等級、銘柄等の点について若干そのまま比較できない点がございますし、それから包装小麦、それから政府の場合はその包装抜きの裸価格でございますので、それらをならして比較いたしますと、大体政府の現在考えております原案と実勢価格につきましては、大体水準的に同じ線にあるというふうに考えておるわけであります。
  60. 江田三郎

    ○江田三郎君 この外麦の輸入の問題については、日本の需給関係を考えて、それからやるのだけれども、それはまあそう言うて見るだけであつて、本年度アメリカの来食糧年度において、予算年度において何ぼ入れるか知りませんけれども、そういうことはあなたがそうおつしやつてみるだけで、実際にはそんなことになりはしないのですから、細かいこと言つたつてこれはいかんと思うのですが、ただあなたを責めてみたところで仕方がないから余り言わんのですけれども、これは大臣でも出て来れば、そういうことについて申上げてみたいと思いますけれども、やめておきますが、ただ私これに関連してもう一つ聞いておきますが、やがて米のバツク・ペイの問題が出ますが、これについてはどういう方針ですか。
  61. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) これはまだ大蔵省と実際的な交渉に入つておらないわけでありますが、食糧庁なり農林省の考えといたしましては、これは当初からバツク・ペイをするというお約束で買つておるわけでありますから、これは農林省の考え方としては、その線を押して行きたい、こういうふうに考えておるわけであります。ただ最近のいろいろな政策上、財政事情関係がございますので、今後大蔵省との折衝はいたさなければならないと思います。
  62. 江田三郎

    ○江田三郎君 仮に米のバツク・ペイを若ししない、そういうことがある場合には、現在の食管法は、或いはそれに伴ういろいろな政令というようなものはそのままにしておいてもやれるわけですか、その際には法律の改正を要しますか、その点はどうですか。
  63. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 米価につきましては、食管法には非常に漠然たる規定しかございませんので、バツク・ペイをするか、しないかということは法令の範囲内では明らかにされておりません。ただ米の場合に考えられておるパリテイ価格の性格からバツク・ペイをしなければならんという結論が出て参るわけでありまして、法令的には実はその点のしつかりした規定を欠いておるわけであります。
  64. 江田三郎

    ○江田三郎君 そうすると、現在の法令はそのままにしておいて、バツク・ペイをしないということも合理的にできる、そうですね。
  65. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) 法令だけの表面的解釈とすればお話の通りになると思います。
  66. 江田三郎

    ○江田三郎君 ほかのかたも質問があると思いますから、又あとで……。
  67. 清澤俊英

    清澤俊英君 聞くのが蛇足になるようなところもあると思うのだけれども、最後の答申案によつて審議会が今日、明日に持たれておることは御承知通りであります。そこで今の部長のお話を聞いてみますと、いろいろ農林省と大蔵省の間に政治的な折衝が大分行われて、今日提出せられた諮問価格に対しても相当議論があつたらしい。その議論の重点は、今、江田君の質問したような、価格が重点でなく、デフレ政策による物価の体系との睨み合せによる問題が中心であつたと思うのだが、そういうことが中心であるならば、率直に部長そういう点を明らかに聞かしてもらつたほうがいいのだと思う。今の部長の話だというと、この価格はどうしても正当なんだ、農林省自身が考えているようなことになつて来ると誠に僕ら取扱上困る。もつと率直に内容的なことを、委員会ですからね、農林省自身が考えていた考え方と、大蔵省なら大蔵省、経審なら経審が考えていることとが、どう食違つたぐらいのことを率直に出せないですか、ということと、これが本当にあなたが言うように、まあ確信のあるものだとすれば、なぜこれを農林省案として最後までいろいろ折衝しておられたのか、或いは新聞の記事はみな嘘なのかどうか、それだけでいいです。あなたにこれ以上のものを責めるのは無茶な話ですから。ああいう新聞記事のような経緯をとつてきめられたかどうか、それだけでいい。
  68. 新沢寧

    説明員(新沢寧君) この価格原案ができます場合にいろいろ紆余曲折があつたことは巷間伝えられている通りでございますが、一応最終的に政府原案としてきまりましたのでありますので、一応この原案の持つ意味につきまして、本日は御説明申上げた次第でございます。
  69. 森八三一

    委員長(森八三一君) ちよつと速記を止めて下さい。    午後二時三十三分速記中止    —————・—————    午後二時五十六分速記開始
  70. 森八三一

    委員長(森八三一君) 速記を始めて丁さい。只今議題なつておりまする昭和二十九年産麦類の価格に関しまする件につきましては、まだ十分審議が尽されたというわけではございませんが、本日から米価審議会も開かれまして、本件の決定が進行を見ておりますので、懇談の際に皆様の御意思の一致したところを取りまとめて見ますると、以下朗読いたしまするようなことかと存じますので、本委員会の総意でこれを決定いたしまして、政府並びに委員会に申入をいたしまして、それぞれ善処を願うことにいたしたいと存じます。    昭和二十九年産麦類の価格に関する申入   政府が意図している昭和二十九年産麦類の価格は、麦類増産の緊要性に鑑み真に遺憾とするところであつて、特に大麦及び裸麦の政府買入価格を現有価格より引下げんとするがごときは農業政策及び食糧政策上失当も甚だしいものと言わなければならない。   よつて政府はその意図するところを改むるよう当委員会の総意により申入する。  以上であります。なお、本申入は農林大臣、大蔵大臣に文書を以て手交申入をいたします。なお開催中の審議会に対しましては、当委員会はこういうような結論がなされた旨を伝えまして、委員諸君の善処を要望するという手続にいたしたいと考えますが、如何でございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議ないようでございますので、本件につきましてはさよう決定いたします。  なお、懇談の際にお話のございました昭和二十九年度予算に関連して、政府のとりつつあります措置について意思表示をすべきであるということにつきましては、明日当委員会を継続開催することに先刻御了解を得ておりますので、その際に予算全体の問題として取上げて結論を下してみたいというような取運びにさして頂きたいと思います。   —————————————
  72. 森八三一

    委員長(森八三一君) この際、休憩前に御審査を頂きました昭和二十九年六月における雹害及び凍霜害等被害農家救済に関する申入につきまして案文を取りまとめましたので御報告を申上げまして御了解を得たいと思います。一応朗読をいたします。   本年六月における雹害及び凍霜害等被害農家に対する労農資金融通に対して、目下当院において継続審査中の「昭和二十九年四月及び五月における凍霜害等の被災農家に対する資金融通に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が次回国会において新らしい事態に即応するよう修正成立する見込を以て、この際政府において遺憾なく措置せられたい。   なお被災農家救済助成についても前例に準じて善処せられたい。   右申入する。  以上であります。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 森八三一

    委員長(森八三一君) 別段御異議ないようでありますので、本件につきましては朗読いたしました案を確定いたします。
  74. 江田三郎

    ○江田三郎君 今の決定は異議ないのですが、ちよつとそれに関連して政府のほうにお聞きしておきたいのですが、この災害に伴つて被災農家救済助成について政府のほうで何らかの支出をしたという場合には、この農林省関係の本年度予算の枠の中から他の部分を節約して出すということになるのか、それはそれだけのものがプラスされるのか、その点はどういう方針なのか、その点だけちよつと……。
  75. 松尾亮

    説明員松尾亮君) 只今御質問がありました点につきましては、昨年以来相当巨額の災害に対する融資をいたして参つておるのでありますが、それが本年度におきましても利子補給予算等を相当計上いたしております。で、それが若干当初の融資計画よりも下廻つておりますので、従つて利子補給予算に若干の余裕を生ずる見込みであります。これを二十九年度の災害に振替えて使用することに……。
  76. 江田三郎

    ○江田三郎君 いや、私のお聞きしたのはその問題じやなしに、救済助成について支出をする場合にはどうなるかということなんです。
  77. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 本年度の救済の助成金につきましては、今まで大蔵省と相当に折衝いたしておりましたが、今年度は予備金も出さない、補正予算も出さない。従つて既定予算の流用で行くということになつております。
  78. 江田三郎

    ○江田三郎君 そうすると、既定予算の流用で行く場合、主としてどういうような予算から出るわけですか。
  79. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 只今まで大体話がきまつておりますのは、蚕糸局関係におきましては蚕糸局の予算が幸い蚕糸業振興費という一つの項であつて、あとは全部目でございますので、そこで他の費目を節約いたしまして、その分を動力噴霧器の購入費のほうへ流用いたします。その金額は一般の節約で約千八百万円、そのほかになおぎりぎり一千万円捻出いたしまして、二千八百万円を捻出いたしまして動力噴霧器のほうに振替えるということでございます。なお改良局のほうにおきましても同じような噴霧器の項目がございますので、それに他の費用から流用いたしまして約一千二百万円、合計四千万円というものを今回の凍霜害対策として出そうということに話が大体まとまりかかつておりますので、まだ節約がはつきりきまつておりませんが、最後的決定ではありませんが、凍霜害に関する限りそういう線で大体話がまとまつております。
  80. 江田三郎

    ○江田三郎君 私は今日はそれだけ伺つておくだけにしておきまして、そういうようなこの予算のやりくりについては明日、全体のこの予算節減の問題がありますから、そのときにもう一度触れたいと思います。   —————————————
  81. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは次に継続審査中の繭糸価格安定法の一部を改正する法律案議題といたします。去る六月一日行われました農林、大蔵両大臣宛の玉糸の価格安定に関する申入に対するその後の政府におきまする措置、見通し並びに十四日の委員会で関根委員から御質問のありました本年度産繭価の維持等を中心として、最近の情勢等について先ず政府の御説明を求めます。
  82. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 先ず玉糸の買入の問題から御説明をいたします。  先般も当委員会からお申入がございました趣旨にも副いまするように、又輸出振興並びに蚕糸業安定という繭糸価格安定法の目的から申しまして、玉糸につきましても、これは輸出向けの玉糸であります二二五中につきましては、我々といたしましては、これを買上の品目の中に入れるという点については異議がないわけでございます。その後大蔵省と交渉いたしておるのでございますが、財政当局の考え方は、先ず第一には玉糸の二二五中は輸出だけしかできない糸であるから、これが輸出不振になり価格が下つた場合に、買上げたらあとの仕末に困るという点が先ず第一点と、それから玉糸の輸出というものが将来も継続的に輸出し得るものであるかどうかという点について多少の疑問がありまして、これはアメリカの業者の一部の話ではございますが、昨年、一昨年も玉糸が輸出されたのでございますが、併しこれは生糸のほうが高過ぎるからその代りに玉糸を買入れたのであつて、若しも生糸の値段が我々が十分買得る程度の価格に下がつて来れば、玉糸の需要はそう伸びないであろうというまあ意見を持つている者があるのでございます。これはアメリカの業界の全体の意見だとも即断いたしかねるのでありますが、相当の有力な者か私直接面談したときにそういうことを言つておりましたので、果して生糸と同じように将来も輸出が有望であるかという点につきましては、なおもう少しアメリカにおきまする需要を調査してみないと多少の不安が残つている点があるわけであります。そういう点で直ちに玉糸を買上生糸の品種として指定するところまでは政府部内における意見が一致しておらないのであります。なお、それともう一つ、買上が成りますと資金の問題がございまして、御承知通り只今のところは糸価安定特別会計法の資本金としては三十億しかございません。これが安定法施行以来今日まで約二年の間に預金部に委託しておりましたので、その利子ができまして只今は活用し得る金額が三十二億でございますが、これ以外に資金がございませんし、なおあの糸価安定特別会計法には借入をする規定もございませんので、先ず買入を始めますと、あの資金を使つて買入れなければならんのですが、これが本年の最低価格十九万円で買上げましても、約一万五、六千俵しか買えないわけでございますが、只今の見通しにおきましては、これだけではちよつと糸価の安定を維持するのには不足であるというふうに考えられますが、これは不足の場合には、それぞれ後にもお話が出るかも知れませんが、その対策はいろいろ考究いたしておりまするが、従いまして、そういう買上の資金の増額の目途が付きませんと、なお玉糸まで加えて買上ということにつきましては、そういう処置をとつてからでないと直ちに指定できないということが又一つあるわけでございます。それからもう一つは、玉糸の只今輸出の検査の格付の方法を改正しようということが国際的にも議論になつておりまして、大体案がまとまりまして、只今外国のほうと交渉中でございまして、これでよろしいということになれば、直ちにこれを施行したいと思つております。大体只今のところは九月一日からこれを施行したいと思つております。こういうふうに検査の方法が変りますると、従来と違つて多少格付が厳格になりまするので、従いまして、この輸出向けの格付というものがはつきりいたしまするまでは、買上の指定をするということはもう少し研究しなければならんということがありまして、お申込の趣旨に副い、又安定法の第一条の目的から言いまして、買上に指定することは農林省としては異存ないのでありますが、そういうような関係方面ともう少し交渉し、研究を積んで行かなければならんので、もう少し御猶予頂かなければならないという事情でございます。なお、現在の生糸の価格の情勢は、すでに御承知でもございましようが、五月末頃から下つて参りまして、只今二十万円を割りまして十九万円台に来ておるわけでありまして、これが十九万円になりますれば、政府が買出動をしなければならんわけでございますが、若しもそういう状態になりまして、なお且つ糸の価格が最低価格で維持されても、それ以下に繭価が下つたときにはどうするかという御心配の向きもありますが、そういう事態に対する措置といたしまして、只今継続審査をお願いいたしておりますが、繭糸価格安定法の中にそういう場合の規定が入つておるわけでありますが、これが若しも通過いたさない前にそういう事態が参りましても、現行の規定の場合におきましても、政府はそういう場合には必要なる措置をとらなければならないという規定になつております。ただその必要なる措置という具体化を改正案の中に入れたのでありますが、幸いにあの改正法で企図いたしましたものは、そういう場合には農林大臣が指定いたします農業協同組合の連合会に共同保管をして頂きまして、これに対して金利、倉敷の補償をするということでありますので、これは大蔵省と話が付きしまして、金利、倉敷の予算が確保できますれば、法律が通過しなくてもやれる措置でもありまするので、改正法でああいうものを入れましたのは、そういう場合には必ずそういうことをやるということをお約束する意味におきまして法律に書いたのでありますが、話が付きますれば、予算さえありますれば契約ができるわけでございまするから、若しもああいう法律が通らない前にそういう事態がありますれば、現行法の第十一条の場合の具体化という意味において、そういう措置をとりたいと思つておりまするし、これにつきましては、大蔵省とも大体の打合せといたしましては、そういう事態があつたらば予備金支出等によつてつてもよろしいというところまで我々事務当局の間では一応話をしておるわけであります。
  83. 森八三一

    委員長(森八三一君) 只今の蚕糸局長説明に対しまして御質疑のおありのかたは順次御発言を願います。
  84. 清澤俊英

    清澤俊英君 今玉糸の需要は、輸出生糸が高いために玉糸に転換したという面も考えられると、こういう御説明つたと思うのですが、戦前は大体どれくらいですか、玉糸と生糸との差額は勿論あつたのですが、これは私が見るところでは、ここに頂載している資料等から見ましても非常に接近した価格になつておりましたが、差額が余り強く出ておらん。繭価格から見ると、それを対比した上から見ると、余りひどい差額は出ておらん、非常に接近した価格になつておる。これは何か特別な価格として、業者は玉糸の持つ天然的というか、特殊的なあのさびが非常にカーテンその他に向くのだ、そういう特殊需要によつて玉糸の価格が出て来ていると、こういう話で、その問題は、この前玉糸の買上のとき、次官も、局長一つそれはやりましよう、こう言われたときは、そういうことを前提として承認せられたと思うのですが、今急に、誰が言い出したか知らんけれども、生糸の値段が高いから玉糸を買うようになつたというには、余りに近寄り過ぎておるように思いますので、戦前におけるこの差額はどれくらいのものであつたか、それを一つ聞かして頂きたい。
  85. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 実は今資料を持合せておりませんので、戦前における、或いは価格の点につきましてはお説の通りつたかと思いますが、数量的には戦前は玉糸というものはそれほど伸びておらなかつたのでありまして、戦後殊にアメリカ人が東洋に参りまして東洋趣味を味わうようになつてから、あれを衣料に使うというようなことから、輸出が非常に一時伸びたというような情勢がありますので、ただそういう東洋人的なさびを愛するという趣味がアメリカにおいてそう永続的なものかどうかという点について多少の疑問があるわけでございまして、これは実は我々は先ほど申しました通り、これは一つのやはり輸出品であるので、繭糸価格安定法の精神から言つて買上げるべきだという意味におきまして、大蔵省と交渉いたしましたところが、大蔵省のほうで以てこれは輸出一方であると、これが一旦輸出不振になれば政府が買上げなければならない、その輸出不振が将来も続けば政府の手持になつてしまつて処分に困るじやないかというので、いろいろ調べてみたのであります。そういたしますると、必ずしも将来永続的に輸出し得るかどうかという点については、もう少し向うの需要の見通しでありますとか、将来の成行の見通しを立てないと、大蔵省にも強く当れないということを率直に申上げた次第であります。
  86. 関根久藏

    ○関根久藏君 蚕糸局長の御答弁によりますと、繭価が下落した場合には、農業協同組合が保管した場合には金利、倉敷料を政府が補償すると、かようなことが事務当局の間で話合が付いておると、こういうお話ですが、それに間違いはございませんか。
  87. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 只今まだそういう事態になつておりませんので、その処理金が幾らというようなことまで話合が付いておりませんけれども、そういう事態になつたならば予備金支出ということまで考慮できるというような程度の担当の係同士の話になつております。
  88. 関根久藏

    ○関根久藏君 そういう場合には、そうすると金利、倉敷を補償できるわけですね。
  89. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 財政当局と打合せをいたしまして、その予備金支出ということについて閣議決定して頂ければできると思います。又そういう方向に我々は努力いたしたいと考えております。
  90. 関根久藏

    ○関根久藏君 それから共同保管の場合ですが、委託製糸をするような場合にも、共同保管の延長ですから、やはり同じに考えてよろしいのですか。
  91. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 只今申しましたような方向で、乾繭の共同保管をいたしておきまして、それを委託製糸して、糸として政府が買上げるという処置をとりましても、その金利、倉敷を政府が補助いたしますれば、大体加工販売費がそれだけ軽くて済むわけでありますから、大体十九万円で買上げても委託製糸の加工もし得るであろうと考えております。
  92. 関根久藏

    ○関根久藏君 先ほど玉糸の問題のと気に、もう金がない、なかなかそれを増額する見込がないのだというお話があつたのでありますが、現在の三十億の資金を、これを六十億なり或いは九十億なりに殖やすようなお考えがありますか、又それを具体的にするためにどんなふうにお考えになつておりますか。
  93. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) この点につきましても大蔵省の係官と我々の間でいろいろ検討いたしておるのでありまするが、これはそのときの時期によりまして方法が違うと思うのでありまして、例えば国会開会中でございますれば、直ちに糸価安定特別会計法を改正いたしまして、借入金ということを一つ入れて頂ければできるし、或いは予算を更正いたしまして、資本金を三十億を六十億に殖やすという方法もあるわけでございまするが、若しも国会閉会中にこういう事態が起つて金が足りないというような場合になりますると、これは只今申しましたように、糸価安定特別会計の資本金を直ちに殖やすとか、或いは借入金をするというような方法はちよつと不可能でありますが、そういう場合には只今申しましたような予備金支出でありまするか、或いは金融的な処置をとりまして、これに対して金利倉敷を補償するとかいうようないろいろの場合があるわけでございますので、その具体的な方法はいよいよ買上をし、いよいよ資金が足りなくなるということの目度が付いたそのときの情勢によつて、具体的方法は違うのでありますが、必ず何らかの処置によつて十九万円を維持するようにいたしましようということも、これは大蔵省当局と我々も話合をいたしておりますので、只今こういう具体的な方法でやるということは申上げられませんが、十九万円の最低価格を維持するような処置をとろうということは主計局の係官と我々の間では話合をいたしておるわけであります。
  94. 関根久藏

    ○関根久藏君 いずれにいたしましても、三十億の金を殖やすにはやはり法律の改正が必要なんでありますが、元来かような金は、本来ならたんとあればあるほど使わなくて済むので、少しだからいろいろなことをしなくてはならない。さようなことを一つ根本的に考えてやつてもらえば、仮に三十債殖やしても、六十億殖やしても、たんとあればあるほど効力を生ずる、効力を生ずれば使う必要はない。まあたんとにしておくほどこれは結構だと思うのであります。さような意味で一つ御心配願いたいと思うのでありますが、玉糸を買入品に指定する問題にいたしましても、それはさような考え方で行けば、何も玉糸の少しくらいの価格を維持するために買入れるのはそうたくさんの金額ではないと思いますので、そういうほうの問題から考えて玉糸は当然これは指定さるべきものだと思うのです。何とか処置を付けてもらうように、これは質問ではありませんが、お願いをしたいと思うのであります。
  95. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 先ほど蚕糸局長からのお話で非常に蹄に落ちないことがあるので一、二お尋ねいたしますが、玉糸を買つた場合にいわゆる最低価格を作つて政府買入の対象にした場合に、万一価格がそれを割つた場合には政府手持となつて他に転売ができない、輸出向きのものだから国内処理はできないから買入の対象にできない、これは非常におかしな言葉であろうと思う。第一玉糸は統計によれば明治元年以来今日まで毎年一年といえども輸出できなかつたことはない、絶対にないのです。最近なぜ玉糸の輸出が殖えたかということは、支那の柞蚕糸が入らないから特に玉糸の輸出は殖えておる。それどころではありません。玉糸は最近新らしい行き方を以て六十中、百十中ではない、二百二十五中を新たに米国初め欧洲方面で要求して来た。私も去年そうした生糸関係人たちが視察に参りましたところが、ニユーヨークにおきまする全合衆国の生糸協会の総会におきましても、玉糸の将来はどうであるかと私質問いたしましたら、玉糸の将来は今後殖えても絶対に減らない。二十七年度玉糸が殖えて二十八年度はやや減少しておる。先行きはどうかと聞いたところが、はつきりと決して先行き減らないから玉糸については増産して欲しい、ただその中に問題になるのは検査規格をもつとよくしてもらいたい。去年の十月にイタリーにおきまする第四回の国際生糸協会におきまして、それは明らかに取上げられまして、検査の規格は只今局長も言つた通り九月一日からやつてくれというお話でございますが、業界はすでに六月からやつてくれ、ただ横浜の生糸輸出業者から、生産に当つている関係から九月まで先売りしてある、従つてそこに先売りのものがキヤンセルされては困るから九月乃至十月からやつてくれということで、業界ではすでに新たな厳格な検査規格に即応するような態勢ができておる、而も明治元年以来輸出しているものがどうして輸出ができなくなるか、あなたのところへどなたかおいでになつて、生糸が高いから止むなく玉糸を買つた、生糸が下つて来れば玉糸など需要がなくなるということは非常にこれはおかしいと思うのです。先ずこの点について蚕糸局の認識を改めて頂きたいと思いますので、最近支那の柞蚕糸もスイス或いは東ドイツからどんどん欧洲にも入つておる。米国に行かないだけであつて、欧洲にも入つておるし、こうした人文の進むと同時に自然の美しさを喜ぶ、節のある糸を喜ぶ、これも一つの行き方であると思つておるのですが、そうした一外人のお話によつて、生糸が下れば玉糸の輸出の将来性が少くなるという考え方は、非常に私としては蚕糸局長の御発言を聞いて遺憾に思うのですが、それについて蚕糸局長から玉糸の将来性はどうであるかということを、あなたも先年欧洲各国を廻つておられるのでございますから、もう一度御意見を承わりたいと思います。
  96. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 玉糸の輸出の将来性につきましては、先ほど私或る一部の業者がそう言つているということを申上げたので、業界の意見が全部そうだとはまだ即断しかねると申上げましたのでございまして、成るほど明治以来輸出はされておりまして、それがゼロになつたことはないにいたしましても、昨年、一昨年のような一万俵も一万五千俵もの輸出が将来継続するかという点について多少の疑義があるので、なお十分アメリカにおける嗜好でありますとか、需要を調査いたします必要があるということを申上げたのでありまして、将来全然なくなつてしまうとも思つておりませんが、さればといつて昨年、一昨年のような一万俵、一方五千俵というような旺盛な輸出があるかどうかということについて、もう少し向うの市況なり、需要を調査いたしたいと申上げたのであります。
  97. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 蚕糸局長は欧洲からお帰りになつて、一番の需要地である米国をお廻りにならなかつたのでありますから、米国における当時の会議の模様を文書を以てあなたにお届けいたしますから再検討願いたいと思います。  それから将来の買上が又非常に心配であると同時に、生糸については十九万を割つた場合には、三十億で足りなければ予備金を支出しても何とか方法を講ずる、では玉糸がどんなに下つてもかまわないのか、而も玉糸は全生産額の七割五分乃至九割を輸出しておつて、その玉糸は中小企業であつて常に困難に堪えて来ておる。玉糸の政府買入をするには条件として生産費を明らかにせよ、王系業者は中小企業で曾つて生産費を出しておらない、厳格なる生産費を出さないから買上の対象にならない。生糸においては五万五千と明らかに出しておる、なぜ玉糸は出さないかと言われるが、すでに二カ月前に玉糸については生産費を明らかにしてお手許に出ておる、四万五千何がしかになつて出ておると思うのです。そういたしますと、政府筋ではもはやそれが出た以上は原価計算の問題、生産費の問題を取上げて、来ないで、将来売れないからというようなお言葉で言われることは非常に不誠意だと思うのです。かねて統計なつております玉糸の原価計算については、蚕糸局はどういうふうにお考えになつておるか、あれで妥当とお考えになつておりますか、その御認識を承わりたいと思います。
  98. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 玉糸を買上の対象にするということになりますれば、当然只今生糸のほうにおきましては、その生産費を五十カ工場を指定いたしまして、一年間の記帳をつけてもらいまして厳重な調査をいたしまして生産費を出しておりますので、玉糸を若しも買上の対象にするというならば、同じような厳重な生産費の調査を当然やらなければならんことと思います。従いまして、先日業界のほうからお出しになりました数字に近くなるか、或いはそれよりも少くなるか調査をいたして見なければなりませんけれども、そういうような方法によつて正確な生産費というものをつかんで行く努力をしなければならない。それからもう一つは、生糸を買上げるが玉糸は放つておけば玉糸が下つてしまうじやないかという御質問に対しまして、ちよつと私どもの考え方を申上げますと、繭糸価格安定法におきましても、生糸につきましても全部を買上げることにいたしておらないのでありまして、大体生糸にもいろいろ品種がありまするが、そのうちこれだけ買上げれば大体系の平均の水準は維持するであろうと思われます生糸を買うのでありまして、すでに御承知でもありましようが、二十一中については三AからCまで、十四中については四AからB格まで買上げますれば、これが生糸の全取引量の八割くらいを占めておりますので、これよりも高型のもの、或いは格の下廻るものは買わない、それでもこの中心のものを買えば大体系価が維持できるであろうという考えでこういう規定になつておるのでありまして、生糸につきましても、玉糸の価格と生糸の価格との比率を考えて調べて見ますると、尤も最近におきましては大体生糸と玉糸の価格が並行的に上下いたしておりますので、生糸の買上、即ち今指定しておりまする中心となるような生糸を買上げて、その価格を維指すれば玉糸の価格にもそれだけ好影響があろうというふうに考えまして、この法案成立当時は玉糸を抜かしておつたわけでありますが、その後いろいろな事情によりますれば、玉糸と生糸の価格が必ずしも並行はしないであろうということも見通されますので、輸出振興上我々としてはできるだけ買入のほうに入れるように努力はいたしておりますが、いろいろ財政当局との話合及びその結果について研究すべき点が以上あるという点を申上げておるのであります。
  99. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 万一玉糸を買上の対象にする場合には、生糸の場合当時三十億を必要としたのでありますが、玉糸を買上けるとする場合にはどのくらいの資金を必要とするか、お尋ねしたいと思います。
  100. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) これはまだ計算いたしておりません。それからもう一つは、玉糸はこれは中小企業でございまするが、或いは中小企業組合におきまして自主的な調整もし得るという規定があるはずでございますから、若しも価格が下落いたしまして買上げるというような事態になりました場合、その方面の業界における自主的な操短と申しますか、そういうこともやつて頂きました上で、生産量がどのくらいあるかということも研究いたさなければなりませんので、只今のところではどの程度買上げればいいか、従つて資金が幾ら要るかというようなところまでの計算はまだ出ておりません。
  101. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 お説の通り中小企業であるから輸出が伸びない場合或いは最低価格を割つた場合には、その後の生産においては輸出ものでない他に転業或いは違つたものを生産する、こういつた点で或る程度押えられるというお話であれば、なお更輸出の増進の上からいつても最低価格を作つて買上いたしましても、その数量は微量で済むだろうと思うのであります。国外におきましても、特に生糸においては玉糸同様、いつも価格の安定がなされて欲しい、そのために常に国際会議におきましても価格の安定を高く取上げておつて、従つて繭糸価格安定法が生れて最高最低をきめたはずであると思います。そういう意味におきまして玉糸を放任することは、やがて生糸の最低価格にも影響があろうと思うのでございます。お互いに関連性があると思うのです。そこでお話では、農林省では勿論買上の対象にして欲しい、そういう関係で財政当局に交渉しておるが、未だ目度が付かないというお話でございますが、財政関係方面に御交渉なさるにはどの程度の買上が二十九年度に必要であるとか、どの程度資金が必要であるとかいうような数字が出なければ、真の迫つた交渉はできないのじやないかと思うのですが、そうしたまだ具体的の交渉までには入つておらないのでございますか、お尋ねします。
  102. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 先日来玉糸の買上の原則論をやつておるのでありまして、まだ幾ら買上げるから資金を幾ら出してくれというところまでは行つておりません。
  103. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 そういうような意味におきまして、今年はいわゆる政府の緊縮予算からデフレ政策が滲透いたしまして、実勢以下に価格は落ちておると思います。勿論生糸も繭も落ちておる。かような情勢を放任したら大変なことになると思います。かねて審議庁が発表しました上半期の輸出貿易におきましては、生糸の占めておる位置においても前年よりは三割余分に輸出しております。而もこれを手放しておくということは、原則論で時間を費やすということは残念だと思いますが、早急に御交渉になつて、どこで壁に突き当るということを早くやつて頂きたいと思いますので、早急におやりになつて頂けますか、御意見を承わりたいと思います。
  104. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 問題点は只今申上げましたような点でございますので、これを今後も調査の結果をまとめ、研究をいたしまして、できる限り我々といたしましては、先ほど皆様方のお申出の趣旨もございますので、善処いたしたいと考えております。
  105. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 五月三十一日付で以て玉糸の買上価格を設置するように当委員会では満場一致農林省及び大蔵省に向つて善処方を申出たはすでございますが、今後委員会におきましても、政府関係に終始連絡をとつて頂いて、一日も早く買上の対象になるように委員長からお運び願いたいと思います。
  106. 森八三一

    委員長(森八三一君) 今の鈴木委員との質疑応答を聞きまして、私も一、二質問したいのでありますが、農林省としては玉糸の買上はやらなければならん、異存なはい。ただ財政上の措置について難点があるというように伺つたのでありますが、その難点を打開して行くためには、やはり三十億の資金量の問題になるので、玉糸を扱うためにはどれくらいの資金量を必要とするかという具体的な数字がつかまれなければ、ただ買上の対象にすることは異存ないといつても具体的に進まんのじやないかと私は思うのです。そうすると、今、局長の御答弁の異存はない、やりたいとおつしやつておることと、どうも進行の実態とがぴつたりしてないような気がするのですが、やはり数字をつかんで具体的な折衝に入らなければいかんのじやないか、それにはやはり数字をおつかみになることが大切なんで、それは一体お始めになるのかならんのか、それはどうなんでございますか。
  107. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) この点につきましては、一番初めに申上げました通り、大蔵当局では輸出一点張りでありて、国内で使えないようなものについては買上の対象とすることは困るという、買上をするかしないかの原則論がまだ一致しておらないわけであります。従いまして、まだ数字を持つてつて、それで資金の増額という交渉をするという段階まで来ておりません。資金が足りないということも買上の支障になる一つでございます。先ずこれを買上に指定するという点について我々は指定すべきであると考えておりますが、財政当局は、いや、それは指定しては困る、こう言つておるわけでございます。その原則論から解きほぐして行きませんと、まだ数字のところまで話を進める段階でないわけであります。
  108. 森八三一

    委員長(森八三一君) もう一つ質問さして頂きたいと思いますが、繭糸価格安定法の精神は、円滑な輸出貿易に資するというところにあつたのじやないかと思うのですが、国内需要の調整のために繭糸価格安定法が作られたのじやなくて、輸出貿易に資するという一点に集約されておつたように私は思います。でありますから、三十億という金額の策定にいたしましても、玉糸の出廻り数量の何十%をつかめばそれで市価の安定ができるのだというところに狙いがあつたと思うのです。今その本質論に来て、若し輸出が杜絶えた場合には、国内需要に向けられるものはいかんということになるというと、繭糸価格安定法制定当時の趣旨が、変にこうゆがめられて来ておるという感じを受けるのですが、特に法律の狙つておるところは一体どうであつたのか。あの当時根本さんが農林大臣の頃で、この点明確にしたつもりですが、時の流れに従つて繭糸価格安定法の精神に変化が生じたのですか、その点はどうなんですか。
  109. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) これは繭糸価格安定法の目的、精神は御承知通り輸出振興でございます。従いまして、玉糸も現在は輸出しておりますから、これが将来も輸出の見込みがあるものでありますれば、買入の対象にしてもいいんでありますが、大蔵省がそう言うゆえんのものは、輸出が不振になる、従つて荷が余る、従つて値が下る。そういう場合に買上げても、輸出不振というときには将来輸出の見込みがないという、不振であるならば困るのじやないか、こういう議論をしておるのでありますからして、そこで我々としましても、そういう事態を想像いたしまして、将来も永続的に生糸のごとく値が或る程度安定すれば、海外の需要があるものか、ないものであるかという点に疑義がある。従いまして、先ほど申上げました通り、それは業界の一部にも玉糸というものは将来性がないという議論をする人もありますし、又鈴木先生のように、案をお示しになつた結果、あるのだという意見が両々あるわけでございますので、我々といたしましては、この点をもう少しアメリカの需要、将来性があるものかどうかということを確めた上で、大蔵省にもう一遍強く当つて、必ずこれは一時値が下つて滞貨ができても、将来輸出できるのだという確信を持つた交渉をいたしたいがために、その調査をいたしておるということを申上げておるわけであります。
  110. 清澤俊英

    清澤俊英君 将来というものは、十年も将来ですし、来年も将来なんです。二十五年からの表を見ましても、いつだつたか、その前からのこの輸出の資料等を見ましても、ここ数年は更に変化がない。だんだん輸出量が殖えているようにも見えておりますが、問題は今年只今のこの値下りの問題になつて、大体今日は今年のこれからの新玉糸の輸出がぴたりとまる、こういうふうに考えているのかどうか。一両年の間はどう動くのか、十年、二十年先のことはどうか知りませんが、これから見ますと、ここ四、五年の間は大体全生産の九割近くを輸出してそれを維持している。そう一、二年で変ることはないと思いますが、今年だけでも何か考えられることは一つの方法じやないかと思うのですが、どうも大蔵省の言う議論というものが余り我々にはよくわからんが、その議論そのものを、局長は廻りくどく言つておりますが、どうも私は納得が行かないのです。
  111. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 相にく今戦前のような古い統計を持つておりませんが、戦後の統計で申しましても、玉糸の輸出量が、昭和二十四年におきましては千七百三十七俵、二十五年におきまして九千九十一俵、二十六年におきましては一万二千四百四十俵、二十七年になりまして一万六千百二十七俵ですが、二十八年になりますると七千九百三十二俵というふうに非常にでこぼこがあるわけでして、今年は四月までの統計によりますと二千二百四十俵出ておりますが、昨年同期に比べますと、二千二百六十俵ですから大した違いはございませんが、今年は玉糸も二月以来、例のリンク制を適用いたしておりまして、殊に本糸よりは砂糖のリンク率が少しよくなつておりますから、これだけ出たということが、将来もこれだけ必ず輸出があるかということについては疑問があるわけでございまして、只今申上げましたように、二十四年には千七百俵だつた。それが二十七年には一万六千俵になつているが、二十八年には七千九百に落ちているというような非常な浮動性がございますので、将来も輸出が全体なくなるとは私は申上げませんけれども、一万六千俵だとか、一万俵以上の輸出があるかどうかという点について問題があるのだということを申上げておるわけであります。
  112. 関根久藏

    ○関根久藏君 今の大蔵省のお話の、買上げた糸が輸出ができなくなれば内地で使い途がないので、二二五中そのものは使い途がないのだ、だから買上げられないのだ、こういうのは大変おかしいんじやないかと思うのですが。それはアメリカの嗜好と内地の嗜好は変りありましようが、それは何とかその辺は方法が立つんじやないかと思うのですが、そういうことは絶対的に二二五中は内地で使えないのだということなんですか。
  113. 寺内祥一

    説明員(寺内祥一君) 二二五中という糸は大体輸出向けの糸でありまして、太糸でございますから内地では余り現在では使わない糸でございますが、若しそういう事態になりましたら、内地で使えるような研究をするとか、施薬を転換するとかいうような問題は当然ありますけれども、現在の段階では二二五中は大部分輸出向けでございまして、内地では余り使つておらないのであります。
  114. 鈴木強平

    ○鈴木強平君 今のお話、私自分の話を補足してみたいと思いますが、輸出は必ずしも二二五中に限らないのですが、これが一番多い。六〇中、一一〇中も出ております。細いのも出ております。私が米国に行つたときにジヤーデイーというかたが、有名なかたですが、このかたと一問一答をやつたときも、将来玉糸は殖えるからそのように生産にいそしんでもらいたい。それから国際格付、世界各国が集まつて昭和二十三年には生糸の国際格付をいたしました。その国際格付によつて今日生糸取引が行われておるんですが、同様に玉糸の需要が世界的に喚起せられたから、この際玉糸の検査も日本だけの検査じやなくて国際格付にして欲しい。各国の要望によつて初めて国際格付の話合が去年の十月にできまして、その間半年の間に諸国との間に見本或いは王系の節の大きさ小ささ、そんなものの話合ができて、漸く日本としては一番産額が大きいから、この際玉糸の検査に国際格付をやつてもらいたい、かような段階にまで来ておるのでありますから、蚕糸局長は勿論全部御了承の上で、ただ大蔵省側がわからないというところへ来ておると思います。そこで何かの機会に、できるならば大蔵省と蚕糸局との交渉の相手である大蔵省の局のものを呼んで頂ければ、十分にその機会にその家を解きたいと思います。さようなことがお取計らいできる何がありましたら、お取計らい願いたいと思います。
  115. 森八三一

    委員長(森八三一君) そうしますると、今議題なつておりまする繭糸価格安定法の一部を改正する法律案につきましては、農林省と大蔵省との間に繭糸価格安定法の買上対象にするということを目途にして折衝が進んでおる模様であります。その経過を他日確めることにし、今日はこの程度にしておきたいと思いますが、如何でございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは御異議ないようでありますので、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案は、本日はこの程度にいたしまして、他日適当な機会に、できますれば大蔵当局の出席も求めまして、更に審査を継続することにいたしたいと思います。  ちよつと速記を止めて下さい。    午後三時五十分速記中止    —————・—————    午後四時七分速記開始
  117. 森八三一

    委員長(森八三一君) それでは速記を始めて下さい。  昭和二十九年度予算の節減に関して御協議を願うのでありますが、懇談の席におきまして、早急に政府に申入るべきであるという結論に到達し、その案文がまとまりましたので、朗読いたしまして御審議を頂くことにいたします。案文を一応朗読いたします。    昭和二十九年度農林関係予算実施に関する申入   政府は、昭和二十九年度予算の実施に当つて、公共事業費の一割を節減せんとする意図の由であるが、食糧増産の重要性に鑑み、本年度予算に基く事業量を絶対確保するよう措置されたい。   右申入する。  以上であります。以上の案文で政府に申入することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 森八三一

    委員長(森八三一君) 御異議がないようでありますので、さよう決定いたします。つきましては、本申入は明日委員会開会の直前に、本日麦価等について申入れます際に御足労を頂きまする委員皆様に同様御足労願うことにお願いいたしたいと思いますが、如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 森八三一

    委員長(森八三一君) それではさよう決定いたします。  本日はこれを以て散会いたします。    午後四時九分散会