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1954-05-20 第19回国会 参議院 内閣委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十日(木曜日)    午前十時十八分開会  出席者は左の通り。    委員長     小酒井義男君    理事            植竹 春彦君            長島 銀藏君            竹下 豐次君    委員            石原幹市郎君            西郷吉之助君            白波瀬米吉君            高瀬莊太郎君            松本治一郎君            矢嶋 三義君            山下 義信君            八木 幸吉君            木村禧八郎君            三浦 義男君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長    佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    保安政務次官  前田 正男君    保安庁人事局長 加藤 陽三君    保安庁経理局長 石原 周夫君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○防衛庁設置法案内閣提出衆議院  送付) ○自衛隊法案内閣提出衆議院送  付)   —————————————
  2. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 只今より内閣委員会開会いたします。  防衛庁設置法案及び自衛隊法案、右二法案につき吉田総理に対する総括質疑を続行いたします。
  3. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 昨日山下委員の御要請によりまして国防会議内容についての政府の案を出すようにということで、私がお取計らいしようと申したのでありますが、併し実は政府部内におきましてもこの内容構成如何相当研究を要すべきものがありますので、只今せつかく検討中であります。従いまして政府といたしましては政府自体の定まつた案というものは実は持合せはないわけであります。お説は御尤もであります。至急に我々はその案を練りまして御参考に供したいとこう思つておる次第でありますが、只今のところは今申上げました通り慎重に検討中であるということを御了承をお願いいたしておきたいと思います。(「おかしいじやないか」と呼ぶ者あり)
  4. 山下義信

    山下義信君 この国防会議政府案の御発表を願いましたことは昨日申上げましたように、言うまでもなく防衛法案の而も防衛庁設置法の重大な問題でありますので、これが別の法律案で定めることになつておるのでありますか、その内容が判明しない限りにおきましては本案審議に重大な支障があることは明白でございますので、法律案の少くとも原案、若し法律案原案ができていなければ、その要綱を御発表願いたいと申上げましたところが、今朝御発表になるようにお約束下さつたのであります。只今政府の御説明を承わりますと、まだ何にも内容がきまつていないということであります。昨日の政府のお言葉とは非常に相違することになるのでありますが、さすれば昨日はどうして明朝発表するとおつしやつたのかと追及申上げなければならんのでありますが、併し私はそういうことを追及申上げようとは思わないのであります。ただ国防会議内容が未だ政府のほうで案が固まつていないということにつきましては我々といたしましては驚き入るのほかはないのでありまして、然らばこのままで果して審議の継続ができるかどうかということの重大な問題にぶつからざるを得ないのであります。これは今日の総理への質疑が済みましたあとで、私は特に本問題の取扱につきまして委員長理事会開会を要求したいと思うのであります。  つきましては、これは政府のほうでまだ案が固まつていないということでありますから、もはや何をか言わんやでありましてお尋ねすることはないのでありますが、少くともどういう点が問題になつておる、どういう点が固まつていないのであるかというような点につきましてこの際率直に一つお話を願いたいと思うのであります。  それから然らばいつまでに政府国防会議構想についてお考えをおまとめになるか。又この国防会議関係法律案はいつ国会にお出しになるかというお見通しだけはこの際政府のお考えを御発表願いたいとかように思うのでございます。
  5. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この内容の点について最も検討を要するものは構成員であります。即ちこの構成員のうちに民間人をとり入れるか、とり入れるとすると何名ぐらいにすべきか、これが一点。  次はこの事務局設置であります。事務局総理府の下に設置すべきか、或いは保安庁の内局にこれを設置すべきか。この二点であります。これは相当慎重に検討を要すべき問題と我々は考えます。  次にこの法案についての提出時期でありまするか、これは只今申上げました通り、事きわめて重大で相当検討を要すべきものでありせつかく検討しております。成るべく早く提出いたしたいと考えておりますが、その時期等についてはここでははつきりしたお約束はできんということを御了承願いたいと思います。
  6. 山下義信

    山下義信君 只今提出時期につきまして政府の御答弁は極めてあいまいであつたのでありますが、然らばお尋ねいたしますが、この防衛法案審議中に御提出に相成る見込がありますか  どうか。なけらねばないで率直にこの際一つ明確にお答えおき願いたいと思います。
  7. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今検討中でありまして、せつかく早く提出いたしたいと思つておりまするが、今会期も極めて切迫いたしておりますので、会期中に果して提案できるかどうかということについての確たるお約束はいたしかねる次第であります。
  8. 山下義信

    山下義信君 私は会期中という言葉は使わなかつたのでありますが、この防衛法案審議中にお出しになりますかどうかということを承わつておきたいと思います。少くとも構想はお固めになりまして法律案でなくても我々の審議に差支えない程度の政府のお考えを確定されてお出しになりますかどうかということを私伺つておきたいと思います。
  9. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 成るべく御要望に副いたいと考えております。
  10. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 只今木村長官発言は私は重大だと思いますので関連して質問いたします。それは昨日も私質問のときに申上げましたが、防衛関係についての政府答弁はときと場所で常に食い違いを生じているわけです。これを国民はほうかむりとか或いはごまかし答弁だと、こういうふうに国民は非常に不信の念を持つていますし又不安がつているわけです。昨日この国防会議設置の問題に関する私の質問のときに、慎重検討中という答弁をして、更に山下委員から追及されてあなたは確たる答弁をしたわけです。でこの国防会議設置についての問題が政府部内で協議されるようになつたのはすでに昨年の秋からです。保守三派で長い間話合いされて一応要綱が決定したのは一月ですが国会に出されたのは二月になつておる。それから数カ月たつているのに本日の段階になつてなおこの要綱すら我々の審議段階に出せないということは、我々の審議権を無視していることになると思うのです。昨日私が申上げましたように防衛庁の第一条には「国防会議設置について定めることを目的とする」。とある。国防会議設置目的なんです。その目的としているところの国防会議のこの内容について概要すらこの審議段階に出せないというようなことは怠慢も甚だしいことと思うのです。昨日山下委員質問に対しては保守三派の交渉の段階に最も問題となつておりました点についてあなたは明快な答弁をした、その点を私は更に責任を追及するわけです。昨日の委員会では関係閣僚統合幕僚会議の議長を以て構成し、その責任態勢をとる、こういう答弁をあなたはされて、それらの概要を本日の委員会提出説明するということを約束されたわけです。ところがこの問題は特に改進党の意向があつて、旧軍人の民間人を入れよとか、或いは産業人を入れよとかいろいろな意向があつて、この二法案国会に出すまでにまとまらずに、一応提出しておいて然る後に検討しようという形で本日まで来たことはあなた自身御承知通りです。それを昨日山下委員に明確に総理出席の下における本委員会答弁をしておきながら、今朝になつて更に慎重審議に逆戻りして、昨日約束されたところの資料提出と、それに基く説明ができなくなつたという事情如何なるものか。そういうような僅か二十時間足らずに委員会における答弁が変るようでは我我は二法案審議はできません。責任を追及します。
  11. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 責任を追及されることは御勝手でありますが、(「勝手じやないですよ」と呼ぶ者あり)私が昨日答弁したのはこういう意味であります。まだきまつておりません、どういう構想を持つておるか、という山下委員のお尋ねでありまするから、それで自分としてはこういう構想を持つておるんだ、併しながら事重大であるから、この点については十分検討中である、こう申したのであります。
  12. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連ですから簡単に伺いますが、あなたの昨日の発言では、国防会議構成その他について大体政府部内の意向が固まつたのでそれをここに提出して、昨日の言葉で言えば明日提出して説明しますということを二度繰返したじやないですか、その言葉と今の発言とは全くこれは相反しているものです。重ねて伺います。
  13. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 政府部内、即ち私の構想を昨日申上げたのであります。これも確定案でないということははつきり私は昨日申上、げたつもりであります。事重大であるから十分に慎重審一代して法律案にまとめて提出する、こういう意味であります。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 昨日山下委員最後資料として提出されたいということを要求をしたのであります。委員長もやはり資料として提出されることを要求されたのであります。従つて、今日ここで審議する場合にはその資料がここに出ていなければならないわけです。これははつきり食言で昨日の約束と違つておるのです。資料として提供するということがはつきり速記録にも載つておりますので、山下委員最後に重ねて資料として要求したのですから、委員長からもこれは資料として出すように改めて要求して頂きたい。昨日のあれと前提が違いますから。
  15. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 確かに私は資料として提供したいということは申上げた次第であります。これは私は取消しません。申しました。併し局内に帰りましていろいろその資料について協議したのであります。然るところまた部内といたしましても確定していないという次第でありますから資料としては提出はできません。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行。そうしますと、この審議はどうなるのですか。昨日そういう約束をされて、そして昨日もそのはつきりとまだまとまつていないということは確かに言われました。言われましたが、ここでお約束しておいて帰つてみたならばこれは事情が変更されたというのでは、それは木村長官責任問題じやないですか。我我答弁する際そういう無責任答弁されたことに対しては、やはりそれは責任があるわけです、御答弁に対して。その点はどうされますか。そうしませんと、我々審議する場合本日資料として提供せられる、そういうことであつたわけですから、今後の審議の場合、我々資料を要求したときいつでもその資料についてはどうも審議中に間に合わないことが多いのですよ。これでは十分に重大法案審議することにならないのであつて、私はあくまでも本日というお約束であつたのですから、これは若しできないならば前のお言葉をお取消になるか、或いはここで陳謝されるか、何らかされなければならないはずだと思うのです。
  17. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は昨日確かにそういうことは申しました。今日そういうものは出せないということに至つた事情については私はここで陳謝してよろしい。取消してもよろしい。事実は事実であります。さよう御了承を願います。
  18. 山下義信

    山下義信君 昨日のことにつきましては今長官が陳謝なさいました。それはそれでいいと思う。いいと思いますが、今日私とお約束下さつたのは、防衛法案審議中に国防会議に関する政府決定要綱は必ず出すように努力するとお約束下さつた新らしいお約束のあることを、私どもこの際確認したいと思いますから、その点一つ申上げておきます。
  19. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 必ず出すということはここではつきり申上げることはできません。努力するということを申上げます。
  20. 山下義信

    山下義信君 私どもは、政府のほうのお考えはそれはあなたのほうのお勝手でよろしいのでありますが、我々といたしましては、国防会議要綱我我にお示しがない限りは、本案審議に重大な支障のあることをはつきり申上げておきたいと思います。
  21. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは質疑を開始いたします。
  22. 八木幸吉

    八木幸吉君 日本憲法の特色は戦争放棄であります。この規定我が国が再び世界平和の脅威にならないことを誓うざんげの意味消極面と、人類を戦争の惨禍から救わんとする世界平和の高遠な理想謳つた積極面の二つの面を包含しておるわけでありますが、世界のきびしい現実は遂に我が国軍備を有せざるを得ない現状に立至りました。私は現在の段階において我が国独立国として軍備を持つことは必要と認めるものでありますが、同時に現行憲法を改正せずしてこれを行うことは法の尊厳のためにこれを否とするものであります。この観点に立ちまして憲法防衛法案関係について御質問を申上げたいと思います。  先ず第一にお伺い申上げたいのは、正当防御権についてであります。総理昭和二十一年六月二十八日の衆議院会議におきまして、次の通り国家正当防衛権に関する見解を表明しておられます。「戦争放棄ニ關スル憲法草案條項ニ於キマシテ、國家正當防衛権ニ依ル戰爭ハ當ナリトセラルルヤウデアルガ、私ハ斯クノ如キコトヲ認ムルコトガ有害デアルト思フノデアリマス、近年ノ戦爭ハクハ國家防衛權ノ名ニ於テハレタルコトハ顕著ナル事實デアリマス、故ニ正當防衛権認ムルコトガ偶々戦争誘發スル所以アルト思フノデアリマス、(中略)正當防衛權ヲ認ムルト云フコトソレ自身ガ有害デアルト思フノデアリマス、」即ちこの総理の御答弁によりますと、正当防衛権をお認めになつておられないかのごとく受取れるのでありますが、如何でございましよう。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、正当防衛権独立国である以上は当然の権利でありまして、これは否認をいたそうとしてもいたすことのできない本質のものであります故に、正当防衛権如何に私が申しても、国家としては打ち得るはずと私は確信するのであります。然らばこの事態をどうするか、憲法制定の当時は最も高遠なる理想の下に、戦争放棄、又戦争を以て、武力といいますか戦力を以て、正当防衛の名の下に戦力を以て抗争をするということは好ましくない。この高遠な理想を以て憲法九条はできたのでありますが、お話通り爾来事態は深刻なる回転をいたしており、現に共産主義国との間においては、朝鮮の例を以て見てもわかる通りに、相手方は名義の立たない侵略をいたして、朝鮮問題が起つて来たのであります。この事態に処する以上は、国としては正当防衛権をあくまでも擁護して、そうして本来の国家独立国家として持つ権能、権力を以て自己防衛に当る、これは当然なことであります。この事態の変化といいますか、いずれにしても国としては正当防衛の名において宣戦の布告をするというようなことはいたすまじきものであるということは今なお考えております。又正当防衛権の名の下に国際紛争の解決をなすというようなことは、あくまでもいたさないつもりでありますが、不幸にして緊急な攻撃をこうむつた場合、防禦にその武力以外に手段がない場合には、正当防衛権といいますか、いずれにしても直接の侵略防衛に当るという手段を講ずるほか、国の独立は守ることができないはすであります。ここに今日防衛庁設置及びその他の二法案を議会に提出したわけであります。
  24. 八木幸吉

    八木幸吉君 只今の御説明国家防衛権はお認めになつているということがよくわかつたのでありますが、次にお伺い申上げたいのは、自衛権自衛権行使関係についてでございます。  総理は第六国会衆議院外務委員会において、「日本戦争を放棄し、軍備を放棄したのであるから、武力によらざる自衛権はある、外交その他の手段でもつて国家自衛する、守るという権利はむろんあると思います。」かように御答弁になつております。又第七国会におきましても、「武力を除く自衛権国家がもとより持つておるところであることを言明いたしております。」かように述べておられるのであります。そこで私のお伺い申上げたいのは、日本自衛権は持つている。併し自衛権行使憲法にて戦力保持が禁止されている関係上、武力によることはできない、即ち日本自衛権武力によらざる自衛権、その行使警察民衆力等による自衛権ということになると思いますが、このことをお認めになるでありましようか。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。日本として只今申した通り国際紛争手段として武力を用いることは断然いたさないつもりでありますが、緊急止むを得ざる場合においてそれに相当手段を講ずることは、自衛権範囲に属するものである。こう私しは断定いたさざるを得ないのであります。而うして私が申した外交その他というのは、即ち日米安全保障条約における国の防衛力でありまして、安全保障条約によつて行使する武力が、それが憲法の禁止であるというのでなくて、私は条約その他の力によつて行使する。このたびの保安隊の拡張についても、これはしばしば申すようでありますが、日米安全保障条約範囲内においていたすのであつて、直ちに戦力を以て防衛に当るというのではないのであります。日米安全保障条約のその範囲において、当るのであつてお話のような意味合と少し違うのではないか。これは言葉を換えて言えば、外交一つ手段としても言い得ると私は、思います。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今八木委員の伺つている点は、憲法解釈を伺つているわけですよ。あなたは憲法自衛権について、二十一年六月二十六日当時の日本進歩党の原君の質問に対して、憲法解釈として自衛権発動としての武力行使というものはあり得ないのだ。自衛権はあるけれども自衛権発動としての武力行使はこの憲法ではできないのだという憲法解釈をされているわけです。だから、八木委員は、その自衛権は、即ち警察とか、或いは民衆の団結による自己保存自衛権であつて今度の二法案のように、外敵対抗目的として、武力を備えて外敵の侵入に対して武力行使することは、曾つてあなたが下した憲法解釈と矛盾するのではないかと、その食言責任を追及しているわけで、それにお答え願いたい。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは今申した通り、このたびの防衛力増強ということは、日米安全保障条約範囲においてなすことでありますから、私どもとしては何らの矛盾も感じません。
  28. 八木幸吉

    八木幸吉君 今矢嶋君から原君に対する御答弁のことをお話になりましたが、速記録によつて読んでみます。これは総理のお言葉であります。「自衛権ニ付テノ尋ネデアリマス戦争抛棄ニ關スル本案規定ハ、直接ニハ自衛権否定ハシテ居リマセヌガ、第九條第二項ニ於テ一切ノ軍備ト國交戦權認メナイ結果、自衛權發動トシテノ戦争モ、又交戦權モ抛棄シタモノデアリマス、(中略)故ニ我ガ國ニ於テハ如何ナル名義以ナシテモ交戦権ハ先ヅ第一自ラ進ンデ抛棄スル抛棄スルコトニ依ツテ世界ノ平和ノ確立ノ基礎ヲ成ス、全世界平和愛好國先頭ニ立ツテ世界平和確立ニ貢麟スル決意先ヅ此憲法ニ於テ表明シタイト思フノデアリマス」これが原君に対する当時の吉田首相の御答弁であります。  そこで私の伺いたいのは、たとえ事実としての自衛権行使は、例えば警察等によるその行使認められましても、制度としての自衛権行使、即ち自衛権行使目的とした組織制度、即ち今回の自衛隊のごときものは憲法第九条第二項の立前として認めないことになると思うのでありますが、如何でございましようか。
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り、このたびの防衛力増強ということは、日米安全保障条約範囲においていたすのであります。又日米安全保障条約目的とするところは、憲法において戦争を放棄したという条項と、自衛権とを調和する目的を以て日米安全保障条約ができたのであります。ゆえにこのたびの防衛力増強ということは、それが日米安全保障条約範囲であるならば、私は憲法違反責任政政府としては負うべきものではないと考えるのであります。
  30. 八木幸吉

    八木幸吉君 総理只今日米安全保障条約のことを御引用になりましたが、私は憲法条文そのもの防衛法案との関係についてなお質問を進めたいと思います。つきましては、憲法第九条の解釈についてお伺いをいたすのでありますが、憲法第九条第一項の「国権発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」これが御承知の第一項の文面でありますが、この条文の「国権発動たる戦争」という文句は「国際紛争を解決する手段としては」にかかると解釈されますか。即ちこの第一項は、自衛戦争はこれを禁止していないと考えるのでありますか。念のためにお伺いをいたします。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは独立国である以上は、直接の侵害を受けた場合、或いは緊急の侵害を受けた場合に、これに対して自衛手段がないということはあり得べからざることであります。そこで只今申した通り憲法規定自衛権の調和を図るために、日米安全保障条約というものを作つたのであります。その日米安全保障条約規定によつてこのたび漸増をいたしたわけでありますから、私はこれは憲法上の問題はないと思うのであります。
  32. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に憲法第九条第二項前段の「前項の目的を達するため」という意味は、同条第一項後段の「国際紛争を解決する手段として」にかかるか、又は第一項前段の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」にかかるとお考えになりますか、如何でありますか。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府委員からお答えいたさせます。
  34. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 只今のお言葉にありました第九条第一項について見ますと、これは前段の、いわゆる「国際平和を誠実に希求し」そういうことに繋がつているのでありまして、要するに第二項においては、目的如何を問わず戦力は保持しない、かように憲法制定の当時から政府としては考えて参つております。
  35. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に第九条第二項中の、「陸海空軍その他の戦力」とある「陸海空軍」とは如何なる意味であるか、その定義をお伺いいたします。
  36. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 定義はいろいろございますが、たびたび申上げましております通りに、この軍隊というものは、先ず第一に外国即ち外敵と戦いを交えることを任務とするという条件と、それからその活動については、交戦権行使に当るということが厳格な意味においての定義であろうと思います。さように考えますと、交戦権行使に当らないという場面においてその条件に欠けるところがございますからして、そういう厳格な意味での軍隊には、これははまらないかも知れない。併し普通常識的に条件定義考えまして、およそ外敵と戦う能力を持つものは軍隊だという定義をお立てになるということになれば、その点から言えばこれは軍隊と申上げてもよろしいということになろうと思います。
  37. 八木幸吉

    八木幸吉君 陸軍と、海軍と、空軍と三つ分けて、おのおのの持つ意味伺いたいと思います。例えば陸軍とはどういうものであるか、海軍とはどういうものであるか、空軍とはどういうものであるか、この意味を承わりたい。
  38. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは実は海軍と申しましても陸戦隊どもございますからして、どうも私ども法律屋として的確なる定義を下せと仰せられまししも、これは困難であると思います。従つて大きな常識から言つて空軍と言えば空で戦いを交えるもの、海軍と言えば主として海の上で戦いを交えるもの、陸軍と言えば陸の上でと、かような意味で重点主義で大きく申上げざるを得ないものであろうと思います。
  39. 八木幸吉

    八木幸吉君 非常に自明の理を伺つているようにお思いになるかも知れませんけれども、「陸海空軍その他の戦力」というのは、これは憲法にきめられた言葉でありまして、従つてその解釈相当厳格でなければならない。然るに今の法制局長官の御答弁によりますと、先ず陸戦を主としたるもの、海戦を主としたるもの、空戦を主としたるもの、おのおの軍隊であるという、常識の範囲を出でないのでありますが、然らばこの憲法第九条、第二項の「陸海空軍」というのは、先ず常識の社会通念に従つて解釈してよいかということを念のためにもう一遍伺つておきます。
  40. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御尤もに存じます。私ども考え方は、二項が重点を置いて恐れておりますのは、要するに装備、実力、これが何に使われるかわからんから、その実力を持つことをここで禁止しておるのであつて、その実力が仮に内乱のためという名目を持つておりましようとも、これがすぐ外へ向つて大きな威力を及ぼすようなことになれば、これは又憲法としては相当心配せざるを得ないという意味で、この「戦力」という段階に達した力というものを一つに恐れておる。従つて陸海空軍たる戦力と申しましようか、さようなものになつてはいけない、目的が他の目的であつてはいけないというふうに考えませんと憲法の趣旨は貫き得ないと存じますからして、従いまして我々が重点をおいて考えておりますのは、あくまでもこの戦力の規模ということでありまして、その上に「陸海空軍」という名前がついておりますけれども、これは一つ言葉の例示という程度のものであつて、これは深く突き詰めるだけの憲法解釈上の実益はないように考えます。
  41. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に第九条第二項中の、「陸海空軍その他の戦力」との関係についてお伺いいたします。私は「陸海空軍」は自明の理として戦力であり、「その他の戦力」とは戦力ではあるが、軍隊ほど明瞭ならざるものを意味すると思うが、如何でありますか。言葉を換えて申しますと「陸海空軍」は顕在的の戦力である。「その他の戦力」は潜在的戦力とでも申すべきものを包含いたしておる、かように考えますが、如何でありますか。
  42. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 只今申しました趣旨から敷衍いたしますれば、軍事目的を持つておるような戦力、この戦力はもとよりいかんことであるが、なお軍事目的を持つておらなくても、およそ一定規模のいわゆる近代戦遂行能力という規模になつて戦力、こういうものはいかん。即ち目的、任務の如何を問わず、一定規模に達した実力はいけない、かように解しておるわけであります。
  43. 八木幸吉

    八木幸吉君 今度は観点を変えてお伺いいたしますが、政府は従来から「戦力」とは近代戦争を有効、的確に遂行し得る能力、こういうふうに定義付けられておりますが、従つて陸海空軍」と言いますけれども、近代戦争遂行能力がなければこれを「戦力」とは言わない。こういう御解釈のように私は拝聴いたします。現に木村保安庁長官は、外敵の不当な攻撃に対処する実力があれば軍隊であり、自衛隊軍隊であると、明瞭に衆議院において断定をしておられます。同時に併し政府は、軍隊必ずしも戦力ではない、少くとも自衛隊戦力ではない、こういう御見解は、昨日の当委員会において総理の御答弁においても明らかであります。又木村長官は、戦力軍隊とは混同されてはならんと、かようにいつも仰せられておるのでありますが、併し戦力定義を、政府解釈するように、近代戦争を有効、的確に遂行し得る総合的能力というのであれば、世界各国において戦力を持つ国は、アメリカ、ソ連、若しくはイギリスがこれに入るかも知れませんが、この三国以外は全然戦力を持たない、こういう結果になるわけであります。併し近代戦は一国と一国が戦うということは極めてまれでありまして、単独で外敵に当り得ないとの理由を以て、その国が戦力たる軍備を有しないとは、これは社会の通念が許さないと思うのであります。何か故にかくのごとき常識と相反した解釈が出るかと言えば、これは政府戦力軍隊とを別の観念とお考えになつている結果であると私は思います。私の考えでは、軍隊戦力の概念の中核を成すものであつて軍隊戦力の概念とは別のものではないのであります。戦力軍隊との関係は、論理的にこれを言えば上位概念と下位概念との関係であつて、それを別の概念とお考えになるから間違つた結論が出るのであると私は思います。  そこで私は政府伺いたいのは、政府戦力と非戦力との区別の判定基準を、如何ようにお立てになるかということを先ず伺つてみたいと思います。
  44. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この判定基準について、数学的に的確なる表のような形で基準を作ることは不可能であることは、この憲法制定当時からすでに金森国務大臣が答えておりますし、あらゆる学者が皆言つているところであると私は信じております。従いまして、さような意味で軍艦何隻、陸上何万ということは申しかねまするので、結局これを大きくつかまえて近代戦の遂行能力というようなことを申上げておつて日本がいわゆる普通に常識的に考えられる本格的な戦争というものを独自で遂行し得るような力を持てば、もとよりこの「戦力」に該当するに至る、かような基準を設けて考えておるわけであります。
  45. 八木幸吉

    八木幸吉君 今金森国務相の当時の御答弁を御引用になりましたが、当時の金森国務相の御答弁は、戦力であるか戦力でないかということの中心点は、極めてはつきり我々はわかる。併し戦力と非戦力との限界になると甚だそこがややこしくなると、こういう御答弁をなすつていらつしやるわけであります。そこでそれでは一体戦力でないものと戦力であるものとの区別はどの辺に置いたらよかろうかということについては、先ず警察力であるか警察力以上のものであるかという点が一番大きな基準になるのだろう、こういう御答弁を金森国務相にいたしましても、その他のかたにいたしましてもされておるわけであります。この意味はどういうことであるかというと、当時警察予備隊なり保安隊が議論の中心でありましたから、警察予備隊というものの非常に拡充されたものと、軍隊というもののその限界点というものが甚だあいまいである。殊に保安隊というものは、その目的が国内治安の維持に当るものであるという目的からしてもこのことが言えるのじやないかというのが、その当時の政府の一本調子の答弁の一番の論拠であつたわけであります。ところが今回は御承知通り自衛隊法というものは、国内治安の維持を目的とするというところから一歩出まして、外敵に当ることもその任務となつた以上は、只今までの警察予備隊のときに、政府が一番これが戦力でないという有力な論拠とされましたところの、国内治安の維持という面は解消したわけであります。そこで今度の戦力戦力でないものとの判定、若しくは戦力警察力との判定の基準となるものが、その目的の問題は解消して、その機能が果して戦力に該当するや否やということが論議の中心にならなければならん、かように私は考えます。ところが今回のこの自衛隊法というものは、目的只今申しました通り外敵の直接侵略に対して国の安全を守る、これはもう一点疑いないのところの軍隊であり、即ち戦力であるところのこれは目的であります。然らば内容たる実質はどうであるか、こう申しまするならば、軍艦あり、飛行機あり、戦車あり、而も相当の陸海空の幕僚機関を持ち、国防会議を持ち、誰が何と言いましても客観的には軍隊と言わざるを得ない。即ちその任務といたしましても、外敵侵略に対し、我が国防衛する。機能といたしましても装備編成等において一定の客観的機能を持ち、且つ常備的なものであるといたしますならば、これを戦力の中核たる軍隊であると言つていささかも差支えない。こう私は考えるのでありますが、如何でありましよう。
  46. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私どもといたしましては、あくまでもその総合された実力が戦力に達するか否か、客観的の基準によつて判断すべきものと考えておりますからして、只今今の自衛隊そのものの装備編成を総合したものが未だ戦力に達せずという趣旨において憲法には違反しない、かように考えておるわけであります。その目的についてはもとより憲法において自衛権というものは明らかに認められているわけであります。即ち戦力に達せざる実力を自衛のために働かすということも憲法の当然容認するところである、かように考えております。
  47. 八木幸吉

    八木幸吉君 只今法制局長官は総合的の実力、こういうことをおつしやいましたが、それに関連して木村保安庁長官衆議院内閣委員会における御答弁において、例えば広島に投下された原子爆弾のごときものを仮に日本が持つているとしても、その原子爆弾そのものだけでは戦力とは言えない、原子爆弾を運ぶ軍艦も必要であろうし、又軍艦を護衛する飛行機も必要であろう、その三軍バランスのとれた能力、実力がなければ軍隊と言えないのだ、こういつたようなことまで仰せられたのでありますが、それでは仮に日本自衛隊が三十万にふえようが五十万にふえようが軍艦が少く飛行機が少ければ戦力ではない。従つて憲法に違反しない。こういう結論になるわけでありますが、私はどうもこれは甚だ行き過ぎた結論であると思うのであります。現に緒方副総理衆議院での御答弁におきまして、一体自衛隊というものは警察でもない、軍隊でもない、その間にある特殊のものであると私は思う、かように御答弁になつておりますが、私は仮にこの副総理答弁が正しいといたしましても、軍隊警察の間に存在するところの特殊の部隊というのがとりも直さず憲法第九条第二項の「陸海空軍その他の戦力」、この「その他の戦力」に該当すると信じますが故に憲法違反である、かように考えますがこれに対して如何考えますか。
  48. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私どもは客観的の基準をあくまでも貫いているわけでございますからして、只今申しましたように総合された実力というものが戦力に達すればこれはもとより憲法の禁ずるところでありますけれども、それに達せざる限度のものは自衛のため持つことは当然許される、治安維持のためにも許されますし自衛のためにも許される、かように考えます。
  49. 八木幸吉

    八木幸吉君 総合された実力というお言葉でありますが、具体的にそれはどの程度の兵備を有し、どの程度の艦船を有し、どの程度の飛行機を有したときに初めて総合戦力であるかという大体の基準をお示し願いたい。
  50. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほどもお答えいたしました通り、近代戦の遂行能力と申上げておつて、これについての数学的の根拠は到底ことの性質上困難でございますということを申上げて来ているのでございますが、衆議院等においての御説明の際の一つの手掛りとして、例えば現在日本はアメリカの陸海空の三軍によつて守られている、このアメリカの陸海空軍の御やつかいにならずに日本で独自の防衛力を持つというようなことができるようなそういう時期ということになればこれは戦力でございましよう。そういうような角度からの御説明はいたしたことはございます。
  51. 八木幸吉

    八木幸吉君 戦力に対しての数学的の答弁は困る、ちよつと申されない、それならば又一番最初に御答弁になりました点に帰りまして、陸海空軍定義も要するに常識以上を出ない。この両方を寄せて私が結論すれば、結局常識的に解釈のできる軍隊というよりほかしかたがない。日本の今の自衛隊は誰が考えてみても常識的の軍隊でございますから憲法違反である、こう考えるのでありますがこの点如何ですか。
  52. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の言葉を以てお答え申上げますれば、常識を以て判断される近代戦遂行能力、これを持つようになれば憲法に牴触するという問題が起ろうというわけでありまして、先ほど触れましたように軍隊とかなんとかということは憲法そのものの第九条第二項の戦力の判定の基準としては、これはむしろ任務の問題であつて主たる要素にはならない、かように考えているわけであります。
  53. 八木幸吉

    八木幸吉君 今度は観点を変えまして、木村長官衆議院で近代戦を有効的確に逸行し得る実力と言えば、裏を返せば他国に攻撃して脅威を与えるような実力と、こういう裏面解釈をしていらつしやる。そこで私の伺いたいのは近代戦を有効的確に遂行し得るのは、アメリカ、ソ連のごとき軍備を有するものだけでありますが、かような軍備を有しないものでも、例えば自衛隊がだんだん増強されて来てその実力よりも低い実力を持つた他の国はこの日本自衛隊の実力というものが脅威になる。そういたしますならば、やはり日本自衛隊そのものも他国の脅威になれば政府の言う意味でも戦力になると考えますが如何ですか。
  54. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど衆議院お答えの例を私の口から申上げたものでございますが、今の木村長官の言われたこととおつしやいます他国を侵略するようなものは勿論この戦力という問題に引つかかつて参ることは当然のことと考えております。
  55. 八木幸吉

    八木幸吉君 つまり陸海空三軍のバランスのとれた総合戦力でなくても、他国を脅威する力となり得ると思うのでありますが、その関係如何にお考えになりますか。
  56. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 近代戦を遂行するために陸海空のバランスがとれなければならないものかどうか、そのバランスがどういう比率であるべきかという、これは細かい軍事上の問題になると思います。要するに私どもお答えとして大きな観点から申しまして、近代戦を遂行できるような能力、そのバランスの内訳というものは存じませんけれども、そういう能力はいけない、かようなことになるわけであります。
  57. 八木幸吉

    八木幸吉君 次に交戦権についてお伺いいたします。政府交戦権意味を国が戦争を行う権利と解されますか。国家が国際法上有する権利と解されますか。又憲法第九条第二項で否認する交戦権戦争だけでありますか。武力行為並びに武力による威嚇をも含むのでありますか。
  58. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは一貫して政府といたしましては、国際法上交戦国として持つている個々の権利、これを意味しているものと考えます。従いまして戦時国際法の適用の場合もあるかも知れませんが、およそ戦時国際法に当てはまるような場面において与えられている交戦者の権利、かように考えます。
  59. 八木幸吉

    八木幸吉君 戦力がなければ交戦権規定も不必要であると私は思いますが、これは二重のだめ押しであるとお考えになりますか。又戦力なき交戦権をお認めになりますか、どうですか。
  60. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今お言葉にありました通りに、これも憲法制定当時から政府としてお答えしているのでございますが、今のだめ押しと申しますか一方において戦力という実力を禁止し、一方においては交戦権という法律上の権利というものを禁止する。二重の禁止をここで設けている、かように考えて参つております。
  61. 八木幸吉

    八木幸吉君 憲法の前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」この前文の言葉、それから日本国民は「政府の行為により再び戦争の惨禍が起ぬことのないようにすることを決意する」この言葉、並びに憲法公布記念式典に賜わつた勅語の「日本国民は正義と秩序とを基調とする永遠の平和が実現することを念願し」のお言葉、これらを考えてみますと、当時我が国としては我が国を防備するが、ごとき組織を持つことは夢想もしなかつた、こう考えるのでありますが如何でありますか。これは総理お答えをお願いしたい。
  62. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 当時は御承知のように敗戦の直後でございまして、完全な武装解除ということは占領政策としても出て来ておつたわけでありますから、国民の気持にそういう気持があつたことは否定できないと思います。ただ只今御指摘の憲法そのものと前文との関係は、これは小乗的な考えと或いは大乗的な考えと、二通り考え方があると思います。小乗的に申しましても説明はできますが、少くともこれはもつと大所高所から、戦争というものは好ましくないから、平和の維持というものについての、諸国民の信義と公正というものに信頼するのだという大きなところから述べられているのだろうと、かように考えております。
  63. 八木幸吉

    八木幸吉君 憲法の前文は侵略の虞れが全然ないということを前提としている。ところが自衛隊法は他国の侵略を前提としている。従つて我が国の安全を保持する方法について、根本的な変革があつた認めていいのですか。
  64. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 根本的な変革があつたとは私ども考えられません。これも昔話で恐縮でございますけれども憲法審議の際においても、この憲法は一体無抵抗主義か、無抵抗主義ではございませんということを政府として答えておるのでありますからして、根本的に少しも変りはないと考えております。
  65. 八木幸吉

    八木幸吉君 その点まだ議論はありますけれども時間がありませんから次に移ります。
  66. 山下義信

    山下義信君 関連して。先ほどから大変有益な憲法論、戦力論を伺つたのでありますが、私は理論的な質疑応答も大変有益に拝聴するのですが、国民が率直に知りたいことは具体的に申しますと、今回のこの防衛法案ができ上つたら一体どれだけの実力を今回の自衛隊が持つているかということですね。それは兵力、兵員の数とか隊員の数とか借りた船の数とか言うんでなしに、それぞれ或いは全部が挙げて我が国自衛に当るならどれだけの自衛ができるかという実力の程度ですね。これが私は具体的に問題だと思う。つまり換言すれば、どの程度の直接侵略があつたならば、我々の自衛隊でその防衛ができるのかということの実力の程度を具体的に一つお示しを願いたいのです。理論ばかり闘わせて戦力戦力でないのだ何だかんだと言つても、今のこの自衛隊ができたらどれだけの防衛ができるのか、どれだけの敵が防げやられるのかという程度を具体的に一つお示しを願いたい。この見当がつかんじや何のことだかわけがわからない。政府にはこの程度の力ができたらどの程度の侵略には対抗し得られるのだという目安がなくちやならんはずですが、それを具体的に一つかわりやすくお答えを願いたい。
  67. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通り日本は独自で外部からの侵略を防ぎ切れないと政府考えております。然るが故に日米間において安全保障条約というのが締結されて、主としてアメリカの力によつて日本防衛態勢を立てて行こうという建前をとつておるわけであります。日米安全保障条約国会において批准されたのもまさにこの観点から来たものと私は考えております。そこで政府といたしましては、独立国家たる以上は、アメリカの力はいつまでも頼るということはどうであろうか。従いまして日本においても自衛力の漸増方式をとつて徐々に日本の国に相当の力を加えて行こう、こういう建前をとつていることはこの法案自体によつても明らかであるところであります。そこでどれぐらいの力が現在の日米間の実力によつて防げるかということは、これは私は的確に数字を挙げて申すことはできません。ただ日米間においてのいわゆる安全保障条約の下において、アメリカの駐留軍、日本自衛隊相待つて国の安全を期して行こうということが趣旨であるのであります。
  68. 山下義信

    山下義信君 自衛隊独自の防衛力を聞いているのであつて、然らば自衛隊如何なる場合でも日米共同でなくちや行動しないのですか。どんなことがあつてもどんな小さい直接侵略が来ても、ことごとく日米協力でなければこの自衛隊というものは発動しないのですか。
  69. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この点につきましては外部から侵略して来るところの侵略範囲如何によると思います。アメリカ駐留軍の手によらずして、日本自衛隊のみによつて防ぎ得れば無論独自の立場によつて防ぐことは当然であります。その如何なる程度のものが日本において完全かということの度合に一にかかるということを考えております。
  70. 山下義信

    山下義信君 ですから直接侵略の向うの敵勢力がどの程度の勢力ならば自衛隊独自で防げるのかということがなくては、自衛隊自身の訓練も、自衛精神の隊員の訓育も何にもできやせんと思う。どの程度のいわゆる防衛ができるのか。自衛隊独自の防衛力の実力の程度を聞いておる。その点はつきり一つお答え願いたいと思います。
  71. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは日本周辺のいわゆる人員配備と言いましようか、それは的確に我々は把握することはできないわけでありまするが、少くとも日本自衛隊、現在においては十一万、この法案が通過いたしますると陸上部隊が十三万になるのであります。これと併せて海上自衛隊、これは只今のところ極めて貧弱であるのであります。空軍いわゆる航空自衛隊も僅かに練習機相当のものしか持つておりませんので、これらの程度において日本はどれだけのものを防げるかということになりますると、私は極めて率直に申しますると大きな部隊については困難である、侵略については困難であろうかと考えております。そこにおいてアメリカの駐留軍とやむを得ず手をにぎつて行くよりほかにない。ところで先刻申上げました通り日本独立国家である以上は、日本の財政力の許す範囲においてこれを徐々に増加して行かなければならん。こう考えております。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 随分無理な答弁をしていると思うのです。それは外敵が侵入して来ると、それは我が国にとつて脅威である。即ち我が国にとつては、外敵が来た場合にはこれは戦力です。これを自衛隊法の八十八条によつて武力行使によつて排除するために、それに打ち勝つところの、排除できるところの戦力を蓄積しようと今努力中なんですよ。即ち再軍備の道を歩いている。ところが憲法があるので、その憲法の制約を受けるものであるから、欺瞞的なほほかぶり的な再軍備コースをたどる答弁でごまかしているわけです。そこで私は伺いますが、さつきの八木委員は、重点を戦力交戦権定義から、曾つて憲法制定国会以来、定義付けられた、答弁されたことを根拠にして食い違いが来ている。従つてすでにこの二法案憲法違反であるという筋で伺つたわけですが、そこで私は伺いたいというのは、法制局長官なんですが、あなたは金森国務大臣戦力論を挙げて八木委員答弁されておりましたが、金森国務大臣は、憲法制定国会で、戦力というのをこういうふうに定義していますよ。戦力とは戦争又はこれに類似する行為において、これを使用することによつて目的を達成し得る一切の人的及び物的力を言うと、こういうふうに制定国会答弁されている。あなたが先ほど言われたような形で金森国務大臣戦力というものを定義していません。従つてこの定義から言えば、明らかに現在の保安隊警備隊にしても、ましてやこの自衛隊というものは、憲法違反であるというのは明確である。これをどうお考えになるかということが一つと、ここで総理に、それと関連するのですが、一つ伺いたいのは、あなたは二十七年の六月十八日保安庁法を審議したときの当院の内閣委員会で(「簡単々々」と呼ぶ者あり)外敵侵入に対するものでないから、保安隊憲法第九条二項と関係がないと、こういうふうに答弁されております。ところがこのたびの自衛隊外敵侵入に関連あることになつたから、あなたの曾つて答弁からするならば、先ほど八木委員から出された九条第二項の交戦権と関連があつて、あなたの発言そのものから憲法違反であるということになるじやございませんか。これをどういうふうにお考えになるか、総理からお伺いいたします。
  73. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 金森さんの答弁、その他幣原国務大臣吉田総理、いろいろ当時答弁されております。従つて、いろいろの言葉のニユアンスのあることは否定できないと思います。その根本の趣旨においては、例えば外国と戦争が可能であるような、そういう兵力というような言葉を使つてお答えしている場合もあるわけです。でありますから、非常に一つ一つ言葉は精密を欠くかも知れませんけれども、その根本の精神においては、私どもが今日お答えしている通りだろうと思います。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちよつと総理に私に対する答弁をしてもらいたい。
  75. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ついでに私からお答えいたしますが、この保安庁関係の際に、先ほど八木委員からもお話がありましたが、目的のほうを先に立てて御説明申上げましたが、それは確かにその通りであります。と申しますのは、第一に憲法第九条の解釈については、目的を非常に重点をおいてお考えになつておるかたもある。それから私どものように客観主義をとらないで実力そのものでございますという考えを貫いておるものもございます。併し少くとも警春予備隊或いは保安隊というものは、目的から申しましても国内の治安或いは内乱に対するものでございますから、目的論で御心配のかたにはそれを御説明申上げますればそれですぐ御納得になる。かような意味目的論を御説明したことは確かにございます。
  76. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 先ほど木村委員発言を許しておりますから、これで関連質問は一応終つて頂きます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 法制局長官の御答弁政府側のこの憲法戦力との考え方は非常にはつきりしたわけです。要するに近代戦争遂行能力を持つことは第一項違反になる虞れがあるからそれを禁止しておるというんでしよう、要するにね。それで今程度の自衛隊の装備では近代戦争遂行能力にならないということなんですが、その客観的な基準というものについてははつきりわからないわけです、御答弁では。問題はその能力が大きいか小さいかでなく、その能力が一項違反になるならないかが判定の基準になるのじやないですか。第一項違反になるかならないかが判定の基準になつて従つて装備が仮に小さくても第一項違反になるような実力であつたら、これは憲法違反になるのではないか。そういう判定をしなくしちやならないのであつて、ただあなたが言うような客観的に大きいか小さいかで判定すべきじやないと、こう解釈するのですが、どうですか。
  78. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) もとよりこの九条の第一項においては自衛戦争そのものさえも否定はいたしておりません。併しこの自衛のためと言え、或いは侵略のためと言え、大きな実力を持つことが恐しいから、従つて二項ができて来ておることは、木村さんのお気持と或いは通ずるところがあるかも知れません。これは金森さんもそういうことで、即ち第一項の担保の趣旨から第二項があるのだということは言えると思います。併しながらとにかく第二項は戦力はいけないのだということで、何のための戦力というようなことを書いておらんわけであります。戦力というものは戦いを遂行し得る能力、今日の事態においては即ち近代戦争を遂行し得る実力、こう見ざるを得ませんから、これを私どもは文字に忠実に読まざるを得ない、かように考えております。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど法制局長官は、その客観的な基準によつて判定するのだと言われたけれども、客観的な基準というそれは戦力の大きさということなのですよ。ところがこれが憲法違反であるかないかを判定するときには、政府側の立場に立つても、その近代戦争を遂行する能力というものが第一項違反になるかならないか、そういうことで判定すべきじやないか、こういうことを聞いているわけですよ。
  80. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは又他の機会にしつくりと一つお答えさせて頂きたいと思いますが、要するに第一項違反にならないようにという気持がこの第二項の根本にあることはおつしやる通りであります。併しながら法文を解釈する上においては、やはり文理解釈を先に考えなければいけません。従つておよそ戦力の保持を禁止しているという以上は、戦力とは何かということだけをつかまえて一応は考えなければいけない、それに重点をおいて考えなければならないことは、これはあとで十分御説明申上げます。
  81. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 八木委員まだ少し時間が残つておりますが。
  82. 八木幸吉

    八木幸吉君 自衛隊法第七条の内閣総理大臣自衛隊の指揮監督権を有するということと、旧憲法十一条の統帥権との関係、それを伺いたいと思います。
  83. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) およそ部隊というものがあります場合に、それを指図する即ち指導をする権能があることは当然でございますが、これを三権分立の分類から分けて参りますと、申上げるまでもなく立法権ではない、司法権ではない、これは行政権であります。そういう意味現行憲法の下においてはどうしても行政権の最高責任者である総理大臣に持つて行かなければならん、これはもう当然のことだろうと思います。旧憲法時代においては一応三権分立の形はとつておりますけれども、併し御承知のように統帥権の独立という形は非常にむしろ超憲法的な形で出て参りまして、そうして内閣もそれについては責任を負わない、議会は勿論のことというような形のものがあつたわけです。これは天皇は統帥大権を持つておるというところから来ておるかとも思いますが、そういう意味では同じ部隊の統率権ではございますけれども、旧憲法時代の統帥権的なものは今日の憲法においては許され得ないと考えております。
  84. 八木幸吉

    八木幸吉君 衆議院の調査によれば英米に属する十九カ国は全部大統領又は国王が軍隊の最高指揮権を持つております。ただフランスだけが名義上は軍の最高指揮権は大統領で、総理大臣が軍隊を指揮監督しておる、こういう制度になつておりますが、これに対する御見解は。
  85. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは外国は皆その根本が異なつておりますからして、ここで簡単な言葉説明するには適しないと存じますけれども、あとで詳しく申上げたいと思いますが、要するに今日における日本憲法においては如何に逆立ちをいたしましようとも行政権以外のところには持つて行けない、これだけははつきり申上げられると思います。
  86. 八木幸吉

    八木幸吉君 憲法改正は国民の間にその機運が盛上つ来たときにやる、これは何を標準にされますか。又政府がそれを判定されたときに、内閣がこの議案を国会に提案する権能があると思いになりますか。
  87. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 結局は憲法みずからの示します通り国民の過半数によつてきめられることでありまして、最終の判定権者は国民そのものでございます。ただこの制定の、今お言葉にありましたように改正に当つて議案を誰が出すか。これはもとより唯一の立法機関としての国会がお出しになることは当然のことでありますけれども、それ以外において政府も又普通の法律案の場合と同様に、その国会に御審議の種をお出しする権能は持つておる。これは曾て予算委員会においてお答えいたしました通りでございます。
  88. 八木幸吉

    八木幸吉君 防衛法案憲法違反と決定したときは、憲法第九十九条に国務大臣並びに国会議員が憲法を尊重する義務がありますが、違反として決定されたとき、その義務に反した責任はどういう形でとりますか。
  89. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私ども憲法に違反するような法律案を御提案申上げておるとは絶対に信じませんし、又今後もさようなことはないと確信いたしております。
  90. 八木幸吉

    八木幸吉君 最後にもう一点。最高裁判所の田中長官が、五月三日朝日新聞紙上に憲法のあり方と題しまして「政治に関する法は或る意味において非常に守られにくいもので、或る既定事実が出て来ると、仮に或る処置が無効であつても元の正常状態に戻すことは不可能なことがあるから、そういう点はむしろ純然たる政治的責任になつて法律がそこまで及ばないことになる。」この談話は私は法の或る意味における無力を告白したもので、最高裁判所長官言葉としては極めて重大であると思いますが、同時に軍備という既定事実を作り上げて後にこれが憲法違反であるという判定が下されたときに元の状態に復帰することが不可能であるということを示唆しておると思うのであります。  そこで私は最後政府にお尋ねいたしたいのは、自衛隊憲法違反であるとは多くの学者並びに国民の大多数の通念であるにもかかわらず、憲法の改正を行わずして自衛隊設置を強行し、万一憲法違反の判決が下されましたときには、この政治責任はどのようにお取りになるか、この点を最後総理から特に伺いたいと思います。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府只今申した、違憲とは考えておりません。併しこれは違憲なりと判定する者は国民であると思います。総選挙その他において判決が下るものと思います。
  92. 八木幸吉

    八木幸吉君 若し最高裁判所が、例えば社会党左派がお出しなつたように、提訴によつて憲法違反であると、こういう判定を下しましたときに、政府責任如何ようにしておとりになりますか。
  93. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 如何ようにと申されましても、これはそういうことはあり得ることと私ども考えておりませんが、要するにそれは一言にして言えば、政治責任というものがあればその政治責任ということにお答えせざるを得ないと思います。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は昨日木村保安庁長官にフリゲート艦の九隻の出動にていて、北海道の暴風雨遭難についての救助の問題ですが、その私は責任を質したいんです。昨日の御答弁では満足できないんです。で、本日の朝日新聞をお読みになりましても非常に問題はあると思うのです。それはフリゲート艦が出動するときに演習をしているんですね、実弾演習をしている。そうしてそれが現地に到着するのが非常に遅れておるわけです。従つて昨日保安庁長官は何ら海難救済、人命救済というものを総理は怠つたことはないと言つておりますけれども、結果として非常に怠つておるのです。先ずお伺いしたいことはなぜあんなに遅れたか、五日も後に着いてどうして救済ができるか、又着いてからもあと又台風が起つたということで釧路沖の安全なところに退避しておるのです。その点についてもつと具体的にどうして救難が遅れたのか、そうして又なぜ現場に行つてから退避したのか、ほかの船は操業をしておるのです。ほかの船は操業しておるのに千五百トンもあるあの軍艦がどうして退避してしまつたのか。これについては非常な不満が起つておるのですから。で昨日は報道陣が行つているから明らかになると言つておりましたが、報道陣がすでにそういう点について非常な遺憾があつたことを伝えておるのです。この際その責任について明確にお答えを願いたい。
  95. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 北海道の当局からフリゲートの出動を要請したことが遅れたのであります。要請してから直ちに出動の準備はいたしております。併し木村委員も御承知通り船はすぐ出せるものではありません。相当の距離を行くには油を積まなければなりません。これらについては相当な時間を要する。この間において出発が遅れた事実は毫もありません。出動については十分に手当はしております。南方に避難したことは、これはその当時風速三十数メートルの低気圧が来たのであります。これを一時南方に退避するということは、これは船乗りとしては当然の処理であります。その他の点について救助いたして現地に到着した後においては適当な処置をとつてあることは報道によつても明らかであります。私は決して乗組員が怠慢とか、或いは救助を遅れたというようなことはないと確信しております。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 油を積むと言いましたけれども、これは日本が油を積んだのではないようでありますね。その出発準備について非常に遅れておると思う。アメリカ側が油を積んでおる、こういうことが報告されております。それから退避したと言うのです。相当の台風であつたから退避したと言いますけれども、ほかの船は操業しておるのです。ほかの船は非常な危険を冒して操業しておるのにそれよりも安全であるべき千五百トンのフリゲート艦九隻が安全な所に退避してしまつて、そうして作業を中止したということはどういうことでありますか。時間がありませんから、その点についてあとで詳しく何か報告を。
  97. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点ちよつと私が誤解しておつたから申上げます。退避したのじやありません。南方に針路を向けただけであります。この間において終始警備隊の担当地域においては捜査の任に当つてつたのであります。退避ではありませんからこれを訂正いたします。(「方向を間違えたのだろう」と呼ぶ者あり、笑声)
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 油の問題です。
  99. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通り保安隊は油をすぐ積むことを準備したのであります。併し油を積入れるについても、船は九隻でありますので相当な手間をとるのは当然であります。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは自衛隊法案審議するに当つて私は非常に重要な問題になつて来ると思うのです。で我々の判断ではアメリカの油を積んだ、又出動するときに何かアメリカ側の了解がなければできないのじやないか。何かそこに秘密的な申合せがあるのではないか。特に又軍事顧問団との関係が出て来て、アメリカの指示を仰がなければ出動ができないのではないか。そういうようなことを我々はいろいろ想像されて来るのです。そこで今度の出動についてはこれは平時のことであつて、これを出動の経過については、或いは結果については具体的にまだ検討する必要があるのです。併し持時間が二十分しかない。従つて私この問題については多くを費やすことができない。ですから今度の詳しく経過、過程、結果について報告書を出して頂きたいと思います。それによつて又他日質疑をいたしたいと思います。
  101. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 報告書は出します。併しただ一言申上げたいのは、今木村委員がアメリカの制肘を受けるというような御発言であります。これはあんたの邪推と考えます。決してさようなことはありません。私は断じてさようなことはないとここで申上げます。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に総理大臣にお伺いしたいのですが、この二法案の提案理由は三つになつて分けられてあります。その第一は現在の国際及び国内の諸情勢に鑑みて、この際更に自衛力を増強することを適当と認めるに至つたということが第一の理由であります。それから第二の理由は、そこで今度はこの三軍ですね、陸軍海軍空軍、いわゆるこれは自衛隊と呼んでおりますが、三つの自衛隊を作る必要が出て来たということが第二の理由、第三の理由は内部からの侵略に対する我が国防衛を明確に規定しなければならなくなつた、この三つが提案理由になつておるわけであります。そこでこの三つの提案理由について細かいことはあとで担当大臣に伺いますが、総理の基本的な考え方をお伺いいたしたいのであります。先ず第一の現在の国際及び国内事情の情勢に鑑みて、防衛法案を出さざるを得なくなつたと言われますが、どういうわけで国際及び国内の諸情勢からいつて、この際自衛力を増強しなければならなかつたか、その国際的理由及び国内的理由についてお伺いいたしたいのであります。これは吉田総理大臣にお答え願いたい。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣に答弁いたさせます。
  104. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 国内情勢から申しますと木村委員も恐らく御承知でありましようが、相当国内における共産党活動が熾烈になつております。これと同時に国際間におきましても我々は終始日本周辺の情勢に目を向けておることは当然であります。殊に日本周辺においては日本解放軍というようなものまで組織されておるというところの情勢も入つております。いろいろそれらの観点から考えてみまして、日本において速かに防衛体制を立てることが適切であろうと考えております。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 昨日総理は国力に応じて漸増するということを言われておる。ところが国力はどうなつておるかと言えば、一兆円予算の問題は大体通貨なんかも昭和二十七年度を目標として、そうして生活水準も昭和二十七年度を目標としておる。そうしますと国内の経済事情、経済力から言えばむしろ十一万の保安隊は多過ぎるのであつて、国際収支の面を見ましても非常な日本経済は危機に立つておるわけです。従つて多少国内の経済力からいつたらむしろ縮小すべきである。昭和二十七年度の水準に縮小すべきであつて決してこれをふやすという理由は出て来ないわけです。国際情勢から言つてもですよ、総理もすでに認めておられるように戦争の危機は遠のいたと言つておる。従つて国内、国際情勢から言つて、この際増強しなければならない理由はどうしてもわからない。而もこれは自主的に日本できめるというのだと思いますけれども日本の自主的の立場できめるならば、むしろ十一万は縮小すべき情勢にあるにもかかわらず、増強しなければならんというのは、MSAとの関係においてアメリカから要請された即ち日米安全保障条約を締結して、それによつて、義務付けられて来ておる。殊に今度はMSAの協定によつて五百十一条(a)3項によつて、再軍備しなければならなくなつて来ておる。従つてこれは自主的にやるのではなくMSA協定によつて軍備させられる。そういう情勢にあると思う。そうでなければこの提案理由はわからないわけです。この点についてこれは総理が昨日言われたことに対する質問でありますから総理からお答えを願いたい。
  106. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国内における治安その他の状況から或いは国外の状況から、防衛の必要上から措置をとらなければならん理由が一つ。更に米国としては駐留軍を引揚げて漸減したいという希望があり、それに対して漸増するという国際条約の義務があり、アメリカ側からして強要されたわけではありませんが、日本自身が自主的に考えてみて、できるだけのことをいたすべきであり、又国力から考えてみて一兆円予算を恐れるという必要はここに申しませんが、いずれにもても財政規模の縮小をいたさない実情にあることは必然でありますが、然るにもかかわらず、日本防衛或いは自衛ということは一日もゆるがせにできないから、政府としてはこれだけのことをいたすことに決心したのであります。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛をゆるがせにできない一つの国内的理由として治安関係から言われましたが、治安関係については今の自衛隊で十分ではないのですか。而もそれをふやすときには国力に応じてやるということになつていて、むしろ非常に経済的に危機の状態になつて来て国力は充実していない。外貨を御覧になつても一時十億ドルもあつたものがだんだんと減つて、実際使える外貨は今年度末には五億を割るのではないか、こういう御心配までなさつている。政府は一兆円予算によつて昭和二十七年度の生活水準、通貨量、生産規模、そこにまでこれを縮小均衡の線に持つて行こうとしている。それだのにこれをふやすのは国力に応じたものじやないのです。これは逆なんです。而も今言われましたように、国際情勢はすぐ戦争が起るのではない。むしろだんだんこれは戦争の危険よりも戦争のない方向に進んでおる。どうしても私はわからない。
  108. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 戦争が遠のいた、危険は遠のいたと、私もそう思います。併し国際的の大きな戦争は遠のいたとしましても、御承知通りいわゆる国際戦争にあらざる一つ武力行使というものがあることは当然であります。北鮮を見ましても或いはインドシナを見ても、そういうことは我々は好むところではありませんが、現に起つておるのであります。而もそういう紛争が起るのは、ただ国外からばかりじやなしに、国内と国外との勢力とが相待つて日本の安全を害しようということになつては相成らんのであります。この面から見ても、我々は一日も早く日本の防備体制を立てることが必要であろうと考えております。今お話になりました日本国民生活ということも無論考えなくちやならん、これは我々としても考えておるのであります。でき得る限り国民の生活に支障を来さない程度にということを眼目にして予算を編成しておるわけであります。  御承知通り、外国の予算を見ても、日本のいわゆるこういう国防費に使う費用は各国と比例いたしまして非常に私は少いものであろうと考えております。木村議員も御承知通り欧米各国においては相当ないわゆる国防費を使つておるのであります。それらの点等を勘案いたしましても日本の予算に盛られました国防費というものは私は極めて妥当なものであろうと、こう考えるのであります。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この二法案によつてこれから増強する三軍はMSA協定と関係があるかないか。これは総理に伺つておるのです。
  110. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) もう一度説明して。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二法案により増強する三軍とMSA協定との関係です。これは関係があるのか、ないのか。
  112. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) MSA協定とは直接の関係はありません。我々は自衛力を増強する上から言つて承知通りアメリカの援助を受けるのですか。その援助を受ける方法又は程度、こういうことは日本が自主的にきめてアメリカと相談することになつております。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 直接の関係はないけれども、間接の関係はある。併し間接の関係において何か秘密協定みたいなものはないかどうか。我々が一番心配するのは、例えば軍事顧問団と指揮権との関係が今後重大な問題になると思います。  それからその国防会議がどうもはつきりしない点について、やはりそういう非常にデリケートな点があるのではないか。最近アメリカ側から要人が頻繁に日本に来ております。又総理も外遊されるについてはどうもそういう軍事秘密協定みたいなものが結ばれ、或いはそういう話合がされておるのではないか。それだからヒギンズ少将は御承知のように今後の新しい軍事顧問団となるために赴任された人ですから、ヒギンズ少将が軍事同盟という言葉を使われたことは重大な意義があると思います。そういう点について伺います。
  114. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) MSA協定以外に秘密協定を結ぶとか、そんなことは考えておりません。又断じてありません。ヒギンズ少将は何と言われているか、我々には的確なことは知りませんが、これは日本とアメリカと手を取組んで日本防衛体制を十分に立てて行くという趣旨のことを私は言つておるんじやないかと考えております。御承知通り軍事顧問団というのはアメリカから供与を受けまする装備品、これらについて操作或いは管理、その他の点について我々に対して指示をするわけでありまして、自衛隊の指揮とか監督とかいうようなことについては断じて干渉するわけでもありません。又さようなことについて我々は干渉させてはいけないというふうに考えております。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんので次に簡単に伺いますが、第二の理由として三軍を創設する必要が出て来たということなんですが、三軍バランス、この方式によつて今までの保安隊とここで非常な性格が変つて来るのです。はつきり軍隊になると思いますが、そこでさつきの憲法との関係でありますが、この点は焦点が非常に明らかになつて来たと思います。これまでの論議の結果、政府はいろいろ思想統一をやつた結果、結局近代戦争遂行能力というものを持つていなければよろしいのだ、こういうところに最後の結論が来たわけです。  そこで問題は、それだけでは本当は片附かないので、なぜ近代戦争遂行能力を持つていけないかと言えば、憲法第九条一項を侵す危険があるからいけないということなんであつて従つてこの近代戦争遂行能力のいわゆる程度と言いますか、そういうものは外国を侵略したり、自衛力以上に出る危険があるかないかというと、これは政府解釈に立つての話です。政府解釈に立つてもそういう問題があるのです。さつき法制局長官が客観的、客観的と言いましたけれども、結局それは憲法九条一項を侵す危険があるかないかということが判定の基礎になるのであつて、そうなれば三軍バランス方式をとればジエツト機もあり、軍艦もあり、更に誘導弾その他もこれから研究して、そういうものを用いるようになるのですから、明らかにこれは憲法第九条一項を侵す可能性が出て来るのです。従つてこれは憲法違反の疑いは濃厚であると思います。その点はどうなんですか。
  116. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) さつきは関連質問でありましたから御遠慮申上げたのでありますが、只今のお尋ねに対してもう少し私のほうからむしろ整理を加えてお答えいたしたいと思います。恐らく木村委員のおつしやりたい気持は、第九条第一項との関係においてはこれを極めて形式的にお考えになつて国際紛争解決の手段としては武力を使つてはいけないと書いてある、武力とは政府の言う戦力とは違うだろう、ぴんから切りまであるだろうということをきつと心の中にお秘めになつておる。それで、第二項でそれを禁止しているのだろう、だからどんな小さいものでもいかんのじやないかとおつしやりたくてきつとそれの御質問があつたのじやないかと思つたのです。そういうふうに考えて来ますと、武力とはおよそ実力なんですから、国内治安の、場合によつては或る種の紛争に対して威嚇の役に立つかも知れません。それこそ心配しますれば国内の治安のための警察も持てなくなつてしまう。これはそういう意味ではないので、やはり一項と二項の間に関係はあります。第二項は第一項の備えですと申上げておりますが、それはもつと大きなところに趣旨があるので、そういうことを言つてつた警察も持てなくなるのでありますから、憲法の法律的解釈というものは、第二項の戦力というものは戦力として考えなければいけないと思います。こういうことであります。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私は本当から言えば戦力なき軍隊はあり得ないので、前から木村長官はマツチ一本でも戦力になり得るのだ、そういう実力になり得るのだと言つてつたのです。従つて戦力なき軍隊なんてないのです。あり得ないと思います。併し私は政府のほうの考え方を誤解しているわけじやないと思うのです。政府のほうの思想統一によつて結論ずけられたということは、第一に憲法第九条一項に自衛権認めているということが基礎になつておると思うのです。そういう国内警察行動は勿論直接間接の侵略に対する自衛実力行動は禁止しておらないというのが第二点だと思うのです。併し近代戦争遂行能力を持つことは第一項違反に利用される虞れがあるから、第二項で禁止されているのだとこういう解釈だと思うのです、従つて前項の一及び二を勘案すれば、戦力に達しない自衛実力組織を持つことは当然可能である、その目的が国内警察力たると外敵に対する防禦力とを問わない、こういうのが政府の思想統一された見解だと思うのです。そこでこの思想が統一された見解からいうと、結局問題は近代戦争遂行能力を持つことは第一項違反に利用される虞れがあるから、こういうことであつて従つてさつきから法制局長官が近代戦争遂行能力というものはそれは客観的に見てまだ日本がそれに達していない、だから憲法違反じやないとこう言つているのです。従つて今の私が述べましたようなことが政府の統一せられた見解であるとすれば、そこにも問題があるということを言つておるのです。それは客観的にある、近代戦争遂行能力を量で図るのでなくて、それが九条一項違反になる危険があるかないかで判定すべきじやないか、こういう私の質問なんです。それはおわかりでしよう。
  118. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) よくわかつております。要するに第二項は何のために備えたのだろうかというところから話をたどつて行けばあなたのお気持と大分通ずるところがあるわけです。即ち第一項だけで第二項がなかつたという場合を考えてみますと、とにかく第一項では自衛権は勿論のこと、自衛戦争をすることすら禁止されていないわけです。それだけのことなんです。ところがそれではその意味の大きな恐ろしい場面というものはやはり濫用の形で想定されるから、その意味で備えとして第二項が出て来た。話の筋は政府のたびたび申上げおることであり、又あなたのお言葉の中の大部分を構成しておる次第であります。併しながら今度は法律解釈の場面においてこれを考えました場合においては、この第一項と第二項との関連において完全に一項の侵犯行為を防ぐ素地が第二項でできておるか、こういう問題になろうかと思います。ところがそこまでは徹底しておらない。それが徹底しておるというならば先ほど私が例を挙げて申上げましたように、国際紛争解決の手段として武力を用いる、その武力というものは要するに実力ですから、その規模なんということはないわけでどんなものでも持てないことになつてしまう。そんなばかなことをきめておるわけはない。第一項の武力と第二項の戦力とはやはり独自に考えなければ意味をなさないというのが私たちの気持です。
  119. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 木村委員、時間が超過しております。もう一言で。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 問題は近代戦争遂行能力というものにこの自衛隊が該当するかどうかということが焦点になつて来ると思うのです。これは先ほど国家的な基礎によつて判定するといいますけれども、それはじや具体的に何かということはわからんわけです。ただ漠然と駐留軍がいなくなつたときに日本を守れる程度のもの、こう言うだけです。ところが今度の二法案によつて増強される三軍というものは、アメリカから援助を受ける援助武器の内容を見ても、それから私資料として要求いたしましたが、それは非常な近代的な装備というものが予想されておるわけです。例えば対空特科軍とか独立戦車大隊とかそれからあとで資料を頂けばわかつて来ると思いますけれども、こういう幕僚監部の機構組織というものを検討して行けばだんだんわかつて来る。誘導弾とか原子兵器とかそういうものはだんだん装備されて来るのです。そうなれば今度の自衛隊程度でも憲法九条一項に違反する実力は十分持ち得る、そういうことで私ははつきり憲法違反である、こう私は断定せざるを得ない。先ほど法制局長官がこう言われました、相通ずるところがあると言われましたけれども、それは誤解されないように願いたいことは、私が先ほど申述べたのは政府側の思想統一による今度の再軍備憲法との関係質問したのであつて、私は又別の解釈を持つておるのですけれども、その点は誤解がないように願いたいと思うのです。  それから最後伺いたいのは、提案理由の第三です。外部からの侵略に対する我が国防衛を明確に規定する、こういうことが第三の理由になつておる。そこで外部からの侵略に対する我が国防衛をこの際どうして明確にしなければならないか、この必要性について明確に伺いたいと思うのです。
  121. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは自衛隊目的はつきりすることによつて隊員の覚悟もできて来るわけであります。又国民一般についても自衛隊というものはどういう性格を持ち、任務を持つものかということを周知することについて大きな意味があるだろうと思います。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はそういう答弁を予想していなかつた。なぜこれは必要になつたか、これはMSA協定の結果じやないですか。MSA協定五百十一条(a)三項のこれを実行するためにこういうふうに明確化しなければならなくなつて来ておる、そうではないのですか。
  123. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛隊を組織するについて必要なものをMSA援助によつて供与を受けようとするのであります。逆であります。(「時間時間」「関連はやめて下さい」と呼ぶ者あり)
  124. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 簡単にやつて下さい。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後です。只今の木村保安庁長官の御答弁は逆だと思うのです。MSA協定によつて増強しなければならなくなつたので、日本のほうが増強する必要からMSA協定の援助を受けておる、これは今まで政府がずつとそういう態度をとつていますが、これは全くごまかしだと思う。なぜならば私が一番先に質問したように、日本の現在の状況から言えば日本の国力から言つて、国際情勢から言つて日本はむしろ十一万を縮小しなければならない状況なんです。にもかかわらず増強するということは外部からの関係から来ておる。即ちMSA協定から来ておるのです。全くこれは逆だと思う。国民をごまかすことも甚だしいと思う。その点もう一回はつきり伺います。
  126. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) はつきり申上げます。私は木村委員とは逆であります。MSA協定は要するに自衛隊において使用すべき装備をアメリカから援助を受けるということであります。MSA援助を受けるから日本自衛隊を増強するというわけじやありません。増強すべき自衛隊について用うべき装備をアメリカから供与を受けるというのであります。(「にわとりと卵だ」と呼ぶ者あり)
  127. 三浦義男

    ○三浦義男君 私はこの二法案審議するに当りまして、総理が初めてお見えになつたので親しくいろいろな点についてお聞きしたいと思つたのでありますが、時間もございませんし又同僚委員もたくさん質問されておりまして、私のお聞きしたいようなことも大分もうデスカスされておりますので、私は極く簡単に非常に常識的なことについてお伺いをいたしたいと思うのでありますから、簡略に一つ答弁を率直にお願いしたいのであります。  昨日も山下委員自衛隊の漸増の方針はどうだろうかというような御質問がありましたのに対して、総理長官も漸増の方針は、アメリカの駐留軍の漸減に伴つて、国際情勢国内情勢の二つの条件をよく勘案して自主的に日本がきめるのだ、こうおつしやつたのであります。これは確かにその通りだと思うのでありますが、さてそういうことになりましたときに、この日本自衛力というものは現在の駐留軍プラス自衛隊で先ず今の段階では十分だとお考えになつて、それがアメリカ軍が減つて行く、それに伴つて日本がふやして行く。こういうようなことになりますと、日本自衛隊の増強が全体どこまで進んで行くのかということが国民は非常に不安だと思うのであります。で大体その数については恐らく的確な御検討もないと思いますが、全体増強というものはどの程度まであらましの考えとしてお考えになつているか。どうかということが一つ。  現在とられておりますのは、志願兵制度であります。この志願兵制度で参りますと、立派な自衛隊を作ります限度が恐らくあろうと思うのであります。幾らアメリカの兵隊が退いて行つて日本がこれにプラスすると言つても、この志願兵制度をとつている限りにおいてはそうたくさんの兵隊、兵隊と言つちやいけません、自衛隊員の増強はできない。若しそういうふうにその志願兵制度の持つております限度をこすような場合の漸増が考えられましたときには、ここでどうしても徴兵制度のようなものを考えなければならない。この徴兵制度ということが今国民が非常に心配しているところだと思うのであります。つきましては、志願兵制度をとつておる下で漸増できます大体の範囲、限度、それと今後徴兵制度をどうお考えになつているかということを一つ総理に率直にお願いいたしたいと思います。簡単で結構です。
  128. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。現在の日本防衛、これは日米安全保障条約の下における防衛が果して完全であるかどうか。これは相当疑いがあると思います。然らばその詳細については米国軍としても我々としても発表はできませんが、とにかく最小限度のところで抑えて、そしてあの防衛計画を立てているのであります。その防衛計画の中から米国が駐留軍を減したい、漸減したいと言えば、自然日本政府としてはこれに対して漸増を以て応じなければならない。然らばその漸増はどこまで行くのだというお尋ねでございますが、これは成るべく少くしたいというのは理の当然のことであります。又日本の漸増の限度は更に徴兵制度の有無ということのみならずほかに又日本の国力ということもあります。又国外の環境ということもあります。この環境は、御承知通り成るべく平和へということに各国が努力いたしているので、この各国の努力に我々も協力して、そして各国ともできうべくんば防備撤廃と言いますか、軍備撤廃とまで行きたいと思いますが、これは国際状況、客観的な状況によるところであつて、我々が如何にも左右はできませんが、全体の傾向から申せば、世界としては平和への道に努力いたしているのであります。若しこの平和への努力が目的を達するならば、日本防衛力も、防衛漸増の方針も、漸減の方針に進んで行けるわけであると思います。いずれにしても政府としては最少限度の漸増と言いますか、漸増も最少限度を目標といたしているので、その漸増のためには、今年はこれだの漸増で一応国力の上から考えてみても案を立てなければならない。又志願兵制度でもこのくらいな漸増ならば考えられ得るというころの最少限度を考えて案を立てているものであります。将来はということは、将来は将来おのずから計画を立てると申すよりほかお答えのしようがないと思います。
  129. 三浦義男

    ○三浦義男君 そうしますと、現在の志願兵制度の下で、只今の国内の情勢から言つて現在と申しますか、これから作られます自衛隊の制服定員は、先ずこれらが限度であるというふうに考えてよろしいわけでけか。
  130. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 志願制度におのずから限度のあることは言うまでもないことであります。然らばどのくらいの数字が限度かと申しますると正確なことはわかりませんが、大体において二十二、三万が限度であろうと考えております。それ以上人を要するということになりますと、今お話の徴兵制度を布くよりほかに道はないと考えております。そこで徴兵制度を布くということになりますと、これは憲法改正の問題になるわけであります。我々といたしましては、今総理から申されたように最少限度で何とかして日本自衛力を漸増して行つて国防の全きを期したい。こう考えております。
  131. 三浦義男

    ○三浦義男君 そうしますと、憲法改正をやらないで漸増し得る限度は、先ず二十二、三万というふうに心得てよろしいわけですね。  次にお伺い申上げたいのは、お伺い申上げたいというか、或いは私の強い希望を申上げたいのでありますが、この自衛隊の今後のあり方でございます。自衛隊は勿論私が申上げるまでもなく国民のものである。国民の理解と協力がございませんければ、その力を発揮することは断然できません。で、そのためには自衛隊というものはどうしても国民から愛されなければならない。この愛せられる自衛隊のあり方として、一つの方途に過ぎないかも知れませんが、自衛隊は災害が起きた場合には、災害の救助のために大いに働き、又平時におきましてもいろいろな土木工事とか通信工事に働き得るというような条項もできております。又今度の改正では、平時におけるそういう方面における活動がもつと拡がつて行くようなふうにも見えるので、私は非常に結構だと思います。こういう方面に大いに働いていわゆる自衛隊が国土の建設部隊であるというような気持で、こういうふうな国土の荒廃の復旧とか或いは資源の開発とかいう方面に是非一つ大きな力をいたして頂きたいと思うのであります。新聞に報ずるところによりますと、今度総理が外遊されて、そして一億二千万ドルの借款を成立させたいというような御希望もあるということを言つております。その借款は何に使われるかと申しますと、電源の開発とか、或いは愛知用水とか、或いは弾丸道路ということまで新聞で散見するのでありますが、こういうような大土木工事に対して、この自衛隊の勿論それは一部でございましようが大いに協力をして、そしてこれらが本当に成果を挙げるということになりましたならば、私は自衛隊そのものが国民に非常な認識を得る、非常な称讃を得る、愛される自衛隊ができ上る、こう思うのであります。この点につきましては長官はまあ非常に御認識が深いと思うのでありますが、最高指揮官としてこれからこういう方面に大いに力をいたされます総理としては、こういう方面に積極的に御推進なされるおつもりであるかどうか、私は是非それをお願い申上げたいのでありますが、総理のお考え如何でございますか。お伺いいたします。
  132. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お考え通りであります。私もその通り考え、又木村長官もその通り考えられて災害のある場合或いはその土木工事、道路工事というようないろいろな民生に有益な工事等については保安隊を進んでこれに当らしめるという考えでおられますが、併しこれは直接所管大臣からお聞きになつたほうが御安心だろうと思いますので所管大臣から。
  133. 三浦義男

    ○三浦義男君 実は災害のときにはまあ非常にこの自衛隊が、現在では保安隊でありますが、保安隊が活動されたということは事実でありますが、せつかく今申上げたようなこの平和的な仕事に力をいたされたということは未だ聞かないのであります。これはまあ年月もまだ短かかつたからかも知れませんが、是非災害のときは勿論でありますが、この方面についてのいわゆる平和の仕事について、これは或いは担当官庁においてはきらうかも知れません。そういう自衛隊のようなものが入つて来るということをきらうきらいが私はないとは限らんと思います。併しこれは保安庁長官が例えば閣議でこういう仕事をやらせないかというまさか売込みもできますまいが、総理のほうからむしろこういう仕事には大いにやれというようなお言葉があれば保安庁長官も非常にやりやすいと思うのであります。どうぞそういうことで御努力を願いたいと思います。
  134. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今お説の通り災害のときばかりじやなしにふだんのときにも保安隊の施設部隊を活用したらどうか、誠にその通りであります。現在やつております。保安庁としてはまあ甚だ宣伝が下手でそれらのことはあまり明らかにしていないのでありますが相当つております。現に感謝状を一杯もらつております。岐阜の武藤知事からも懇切なる感謝状をもらつております。そのほか平時においてふだんのときにおいてこれを活用しておる事実があります。今後ますます御趣旨の通りやりたいと思います。
  135. 三浦義男

    ○三浦義男君 どきぞそういうようなデータをあとで一つお見せ願いたいと思います。私はまあこれで質問をやめます。
  136. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 私は国防会議等の問題そのほか二、三総理にお尋ねしたいと思つておりましたが、先にそれぞれ質問応答がありましてその上この問題につきまして総理にこの席でお伺いいたしましてもはつきりした御返事を得ることはできないと思いますので、すべてあとで長官にお伺いしたいと思つております。ただこの際総理に対しまして二、三私の希望を申述べながらお答えを頂きたいと思うのであります。  総理憲法改正は好まないというお答えをしておられたのでありまするが、この憲法の問題と現在私ども審議しております二法案とは非常に密接な関係がありまして、世間もかなり多数の者が憲法違反法律案ではないかということを言つておるのであります。私もこの問題につきましてはいろいろ研究もいたしてみたのでありまするが、併しこの案の程度でありましたならば私はまだ憲法違反の域まで達していない、ただ併しもうすれすれのところまで来ているだろうというふうに考えております。元来私は日本軍備と申しますか、防衛態勢はこの程度では足りないのだ、もつと大仕掛にしつかりとやらなければ国は守れないであろう、かように平生考えております。そして幾ら国連に将来入るにいたしましても、又米国が幾ら好意を持つて日本を援助してくれるにいたしましても、いやしくも独立国である以上我々は日本人として彼らに永久に依存するというようなそんな恥をそのままに忍ぶわけには参りません。どうしてもできるだけのことはしなければならない。そうして自分の国をほかの国のほうにより重い負担で防衛してくれというようなことを言つておるのはこれは国の非常な恥辱でありまして、国際道義の点から申しましても私はできるだけ少々無理をしてもやはり努めなければならない大きな問題であると思います。でいろいろ経済問題との関係におきまして考えなければならない点が多いことはもとよりであります。現在の経済力から見ましてこの上に急に自衛隊を増員するということは不可能でありましようけれども、又いろいろ軍需産業の設備等が整いそれに従事する国民相当にふえ、又そういう事柄のために国民が非常に気を強くして今までよりも気を取直してしつかり働こうというような気分になりましたならば、これ又経済の発展ということも期待のできないことではないのであります。日本国民の覚悟と努力如何によりましては、私は長いあとのことを考えますると、やはり昔あつたように世界の強大国の一つに教えられることがないということは、これは誰も予言することはできない、私は確かにできるという確信を持つております。かように考えておりますので、将来は是非軍備をしてもいいという憲法に、現在の法律を改正しなければならない、かように考えております。併し総理憲法を改正することは好まないとおつしやいます。これは総理のお考えでありますからそれをいかんともすることはできませんが、併し現在のような状態でありましたならば、一面これは憲法違反であるからいけないのだというような宣伝と申しますかは、大変強く主張されておりまするし、そううして憲法違反でないというほうの宣伝というようなことは割合に力が弱いのでありまして、だんだん憲法違反であるというように国民考えつつあるような傾向があるのではないか。国民軍備の必要を認める、これを増大しなければならないというように考えている国民は私はだんだんふえて行くように思つておりまするけれども、併し憲法違反でありはしないかという疑問を持つ者もだんだんふえて行くような傾向があるように思つております、で一日も早く、と申しましてもそう急激に改正のできる問題でもありません、非常に慎重な態度を以て研究を進めて行かなければなりません。吉田総理は好まないとおつしやいますけれども自由党で憲法改正の委員会などをこしらえておられまするところを見るとやはり幾らか何とかしなければならないだろうというお考えはお持ちになつておるのではないかというふうに私はお察ししておるのであります。併し自由党が熱心に研究されましても甚だ党の諸君に対しては、失礼な言い分ではありまするけれども、現在の国民は現在の政党をそう信頼しておりません。自由党だけで研究いたしましても、又各党等がいたしましても、或いは党利党略というようなことを考えられちや困るというような疑いを持つ者もないとも限りません。私はこの問題は政府が正面に立つて憲法の改正の準備研究を着々とお進めになる必要が非常にある、かように考えておる次第であります。  そこで総理にお伺いいたしまするが、今申しました私の気持はおわかりであろうと思いますが、政府憲法改正の準備と申しまするか、改正という言葉が悪いのでありましたならば憲法研究会というようなものでも組織されまして、しつかり御研究になるお考えはございませんでしようか。ただ憲法の改正と申しましても第九条の問題だけではありません。そのほかに改正しなければならない点が非常にたくさんあるのでありまするから、憲法改正の問題はただ一途に再軍備の問題だけと関連して狭く、窮屈に考える必要はないのでありまして、広く御研究になる必要が私はあるだろうと思つております。我々も研究を進めて行かなければなりませんが私は切にそういうふうに考えておる次第であります。総理の御見解を承わりたいと思います。
  137. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申す、憲法改正は好まないと申すのは、軽々に憲法は改正すべきものではない、今お話のように十分慎重にいろいろな問題を研究もし準備もして後ならとにかく、軽々に憲法を改正するということは口にすべきものではない。その基本法を一たび動かしますと、始終憲法改正ということになりますと、国民のよるところを失うわけでありますから、憲法改正は軽々しくいたすべきものではないという信念からこれを考えておるのであります。  又自由党において憲法委員会というものを作つたゆえんは、憲法は国の基本法としてこれを擁護するなり、或いはいい前例を作つて行くなりして、絶えず憲法の運用については政党としても深い注意を持つて当らなければならない。故に現在の憲法の運用、或いは又是非、或いは将来における、改正いたすとすればどの点かということが先ず政党として最も注意深く慎重に研究を進めるがいいという考えからして憲法委員会をこしらえたわけであります。あえて改正委員会ではないのであります。又政府としても憲法の研究については関係方面において慎重にいたしております。又それぞれの権威者を集めて研究をさしておりますが、併し発表いたして、そうして憲法の研究を、これこれでこれこれの学者或いはその他でもつてつておるということになりますと、徒らに世間を騒がしますから発表はいたしませんが、憲法は国の重要なる法として政府側においても十分研究をするために用意はいたしております。それで政党、政府の研究等が十分済みましたならばお話のようなことも考えます。只今のところは準備時代と申しますか研究時代であつつて、慎重に研究をさせるという考え方で先ず党において憲法委員会作つたのであります。併しお話のところはよく考えます。
  138. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 もう一つ、これも私の希望を申延べるわけでありますが、本会議におきまして総理の外遊の問題につきまして同僚の中田吉雄君から御質問がありました。それに対して総理はまだはつきりきめてないのだから、まだ答弁はできないというお答えであつたのであります。今ここでお答え下さいと申しましてもはつきりお答えにならないだろうと思つております。ただ私の希望を申述べておきたいと思います。そのときの質問によりますと、旅費に三億六千万円とかいう莫大な金をお使いになる予定と聞いておるわけでありますということでありました。それは私は少しも存じませんので、まさかそんな莫大な金は要らないだろうというふうな感じを私は持つたわけであります。若しそういう金額或いはそれに近いような金額でも、この日本の貧乏な際、国民は非常に貧苦に苦しんでおる際に、お使いになるというようなことがあつたら、ただその金それ自体が惜しいということでありませんで、国民の受ける感情、それに伴う思想とかいうようなことをよほど重大に考えなければならないと私は思うのであります。実は私はサン・フランシスコの平和会議の際に、その前にアメリカを一周いたしまして、丁度帰りがけにあの会議の際になりましたので、一週間ばかりサン・フランシスコに滞在いたしまして平和会議を傍聴いたしたのであります。そのときなどもいわゆる大名行例でたくさんなお供が付いて来ておられる。それでアメリカの第二世、第三世の人などから直接何人からも聞いたのでありますが、どうも自分たちはアメリカ人に対して恥かしくてしようがない。日本の幹部の人は自分や数人で仕事ができないだろうか、あんなにお供を付けなければ仕事ができないだろうか、日本で貧乏している際に。自分たちはそういう意味においてアメリカ人に対して甚だ恥かしい気持を、アメリカのみでありません、ほかの国に対して恥かしい思いをしておるというお話をたびたび聞かされたのであります。それから事務局に参りましても、何で事務局の人が忙しいということを見ておりますと、会議の直接のお仕事について忙しい日に会つておられる人は総理以下何人か、数えるほどの今でありまして、あとの人はもう仕事がなくてうろうろしている。そうして事務局の人はその人たちの世話に忙しくて、本当の仕事をするに困つておられるのであります。上官が出張されますとその随員が行き、その随員に又その随員が行く、そうして言葉のちつともわからない人、言葉がわからないでも有能な人がおりますからして、絶対に否認するわけではありませんが、そういうことのためにたくさんの人に迷惑をかけるような人もある。甚だ悪い言葉でありますけれどもうろうろしている人が大部分でありまして、本当に忙しがつている人は非常に少いのだということを私はあのときよく注意して見ておつたのであります。今度は平和会議と違いますが、どういう用を以ておいでになるかも存じませんけれども、どうもそういうふうの傾向があるのじやないか。便乗して行きたい人もたくさんあるだろうと思いますが、この際若しそういう希望者がたくさんありますならば、総理のお力でできるだけ一つうんと抑えて下さいまして、国民の希望するような旅行をして頂くことが必要である、かように私は考えておる次第であります。ずつと古い話でありますけれども、私はヨーロツパにおります際も国際会議など二、三のぞいたことがありますが、その当時はそれほどでもありませんでしたが、サン・フランシスコ会議を見まして、実際私は内容によく私などは直接タツチしておりませんから本当の観察はできなかつたかも知れませんが、そういう感じをいたしたのであります。その点は総理特に御注意下さるように私の希望を申述べておきたいと思います。
  139. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 各委員から憲法改正の問題について質疑があつたわけでありますが、それについて木村長官にちよつとだけ簡単に伺つておきたいのですが、あなたは年の初め頃は募集制度は大体二十万程度だと言われておりましたが、最近は二十二、三万と言われておるわけでありますが、そこで本年度もすでに自衛隊は定員約十六万五千になるわけでありますので、衆議院で言明された取りあえず三十万人の増強計画、それらから逆算いたしますと、昭和三十一年の自衛隊員の募集は半ば強制割当をやるか、それとも憲法を改正して徴兵制度を布かざるを得ないということがあなたの発表した数字を逆算して出て来る。従つて憲法改正並びに徴兵制度の行われるのは早くて三十一年、遅くて三十二年に必至だということが逆算して出て来るのでございますが、如何でございましようか。
  140. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 逆算は数字を以ていたしませんが、大体先ほど申しました通り、陸上のほうで志願制度が二十二、三万程度かと考えております。それ以上に陸上自衛隊を増加しようとするとこれは何かにぶつかる、いわゆる徴兵制度でも布かなければならない、こう考えております。
  141. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従つて三十一年度から実施ですね。
  142. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) あとはどうなるかわかりません。そういう程度が限度かと考えております。
  143. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 私は去る三月十八日の本会議におきまして、この防衛法案に対して自由党を代表して質問をいたしたのでありました。第一には戦力問題、違憲論、第二には総理自衛隊に対する指揮命令権、第三に国防会議について、私どもの意見を付しまして政府の御解明と、並びに政府が心血を注いで世論指導に当られたい旨を強調いたしたのでありましたけれども、所管大臣から十分の御回答を得なかつたし、又総理大臣も病気御欠席であられたのでありまするので、本日はその線に沿いまして再質問いたすわけでありまするけれども、時間も大分たちましたし、御出席のかたがたからどなたから御答弁を頂いても結構でございます。  それで私はその世論指導という点につきまして、これはひとり与党の仕事のみならず、政府自体におかれましても十分に国民各階層に、今回の防衛法案が憲違でないという点、又この総理の指揮権についても、国防会議についても、安全な法律案であるという旨を十分に滲透させて頂きたい、かような意味を以て質問申上げるわけでありまするが、質問を要約いたしまして、本日各委員が言及されなかつた二点についてお伺いいたすのでありまするが、それらの質問に対しても極めて簡単な御答弁で結構でございます。  第一は、この二法案は国内法でありまするけれども、直接侵略への阻止、交戦権の有無等の問題があり又我が国の船舶が拿捕せられたり、或いはこれは船舶を保護して行くといつたような観点からいたしますと、例えば船がつかまつた場合にも、その相手国の軍によつてつかまつたか、警察力によつてつかまつたか、或いは海賊行為であるかといつたような問題も生ずるわけでございましよう。そこで私はこの外国の軍隊戦力と、日本戦力というものを比較法的にこの問題をやはり取扱つて行く必要があろうと存じますので、この国際法上の解釈、国際法を基準とした質問をいたす次第でございます。  そこでお伺いいたしたいことは、スイスとか、インドとか、大韓民国等に、この戦力ある軍隊があるとお考えになるかどうか。  それから第二の質問といたしましては、日本でもやがて憲法を改正するような段階になりますれば、その改正した瞬間から、自衛隊に関する社会通念、又法律上の概念を変えずして、そのまま憲法が改正されると、今日の通念のままに、この戦力なき軍隊戦力ある軍隊になつてしまうであろうということを、国民の多数のうちには疑念を持つて考えておる者がありまするので、この点も政府のお立場から、決してそういうふうな懸念はないのだということを御解明願いまして、そうして国民に納得をさせて頂きたい。かように質問を申上げるわけであります。
  144. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見は誠に御尤もであります。宣伝は我々甚だ下手であるのみならず、又政府として宣伝をいたしますと、直ちにそれがいろいろなふうに解釈されて、政府の立場として、政府としての宣伝は誠に困難であることを先ず御承知願いたいと思います。故に宣伝は不必要なりとは考えておらず、又絶えず宣伝にも努めております。又自由党その他においても努めておりますが、政府としての宣伝は、攻撃は楽でありますが、計画的、若しくは建設的の宣伝は、なかなか国民の耳に入りにくいのであります。故に不必要とは考えませんが、努めていたしますが、全然今日まで努めなかつたわけではないということだけは御了承願いたいと思います。
  145. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今スイス、インド云々というようなお尋ねがございましたが、これはこの防衛力というものは、その国、その国の特殊の事情があるわけであります。例えば日本のごときは海岸線が長いとか、そういうようないろいろな環境があるので、それはやはりその国について判断せらるべきことであろうと存じております。従いまして日本憲法解釈といたしましては、日本の保持する戦力のことを言つておるのでございますからして、我が国の環境から見てこの点はどうかという結論になる、かように考えております。
  146. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 只今総理大臣の御答弁了承いたしましたが、法制局長官の御答弁につきましては、この国際法上、又比較法上から考えますと、同じ概念の下に解釈して行くべきものだといつたような疑問も特に持つておるようでありますが、これについては、一切午後からの所管大臣、並びに法制局長官の御出席を得ましての質問に移したいと存じます。従つて私の質問はこれを以て打切りといたします。
  147. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩    —————・—————    午後四時十三分開会
  148. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 委員会を再開いたします。お手元に配付されました資料について説明を受けます。
  149. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今お手許へ配付いたしました国防会議構成に関する案であります。これは只今保安庁についてせつかく検討中であります。まだ決定案ではないのであります。さよう御了承願います。  一 国防会議は、内閣総理大臣の外、次の者をもつて構成するこ   と。    防衛庁長官    外務大臣    大蔵大臣    通商産業大臣    経済審議長官    なお、必要があるときは、随時関係大臣を出席させるものとすること。  二 議長は、内閣総理大臣をもつて充てること。  三 統合幕僚会議々長は、国防会議に出席し、意見を述べることができるものとすること。    なお、必要があるときは陸上、海上及び航空の各幕僚長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができるものとすること。  四 国防会議の事務は、防衛庁で処理すること。  以上であります。
  150. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは御質問があると思いますが、質疑は明日これをいたすことにいたします。  なお明日以後の日曜については改めて御相談を申上げます。  本日は散会いたします。    午後四時十五分散会