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1954-05-19 第19回国会 参議院 内閣委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十九日(水曜日)    午後四時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小酒井義男君    理事            植竹 春彦君            長島 銀藏君            竹下 豐次君    委員            石原幹市郎君            西郷吉之助君            白波瀬米吉君            井野 碩哉君            松本治一郎君            矢嶋 三義君            山下 義信君            八木 幸吉君            木村禧八郎君            三浦 義男君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    保安政務次官  前田 正男君    保安庁人事局長 加藤 陽三君    保安庁経理局長 石原 周夫君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○防衛庁設置法案内閣提出衆議院  送付) ○自衛隊法案内閣提出衆議院送  付)   —————————————
  2. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) それでは只今より内閣委員会を開会いたします。  防衛庁設置法案及び自衛隊法案、以上二法案につき吉田総理に対する総括質問を行います。
  3. 松本治一郎

    松本治一郎君 吉田君、今日は一問一答ができるから、お互いは落ち着いてゆつくりやりましよう。国会においての質疑応答は、一言一句、御覧の通り、熱心に間違いなく速記され、日本政治史になるものでありますから、国民代表としての議員質問に対しては、一国の首相として筋の通つた応答をされておかなければなりません。叱りつけたような態度や声であつてはなりません。私には、態度がどうであろうとも、声がどんなに高かろうと、別に何ともない。そんなことは私にとりましては釣鐘に蜂であります。釣鐘に蜂ということは、蜂が釣鐘を刺したほどもこたえないということであります。これから、只今この内閣委員会審議にかかつておりまする防衛庁設置法及び自衛隊法の二案は違憲法案確信いたしまして、この法案粉砕の決意を持つて問い質さんとするものであります。  第一にお尋ねせんとすることは、去る五月の六日汚職問題について吉田君に緊急質問をしたときに、吉田君は私の質問にはろくろく答えないで、松本君は我々に罵詈讒謗を言う、罵詈讒謗には答える責任はないと言つて、乱暴にも答弁打切つた。不明朗なものがあると思考して、それに対して質問するのが、どうして罵詈讒謗であるか。罵詈讒謗とは事実にもないことを言つて罵ることであります。私は、世間周知の事実となつておる疑獄汚職の問題について、国民がその真相を聞き、知りたがつていることを、国民代表として、国会を通して問い質すので、それがどうして悪いのですか。それを君は罵詈讒謗と言うのか。吉田君、君が国会において君が気に入るような質問をすることが罵詈讒謗でない質問だと考えているとすれば、一国の首相としての頭を疑わざるを得ないのである。併し君はなかなかの名優だ。君が今年の正月、夕刊福日付主催首相とスターの初春問答のその席上で、自分は千両役者だと言い、国会でも演出があり、脚本もできている。ここで怒れとか、ここで笑えとかきまつていると、種明かしをしておる。罵詈讒謗言つて答弁打切つたのは、君特有の演出ではないか。新聞記者ステツキを振り上げたり、コツプの水をかけるといつた暴力演出をやることは、国民の中にも暴力肯定者を生んでおるのである。君の生命を狙つたあの暴漢の出現も、君自身が国民に手本を示した結果ではないか。国会では演出も芝居もする必要はない。それこそ国民に対する侮辱である。君の言う罵詈讒謗とは一体どこを指して言つたのであるか。この際それをはつきりと指摘してもらいたい。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 防衛庁設置法案及び自衛隊法案は、これは違憲政府考えておりません。又、政府としては相当の研究をいたした後に提案をいたしたものでありますから、これは政府としては飽くまでも違憲考えておりません。その他の御質問問題外でありますからお答えをいたしません。
  5. 松本治一郎

    松本治一郎君 絶えず罵詈讒謗言つて答弁打切つた、この絶えず罵詈讒謗とは何を指しておるかということを問うておるのである。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは自衛隊設置法案とは関係がありませんから、お答えはいたしません。
  7. 松本治一郎

    松本治一郎君 関係のないことはない。絶えず罵詈讒謗、こう言つて質問打切つておるじやないか。答えることのできないのに、罵詈讒謗とはどういうわけか。暴言じやないか。それであるとすれば、一国の首相としての態度であり、答弁であるか。今日の中田議員質問に対し、あの答弁ぶりが一国の首相としての答弁吉田君は考えておるか。  その次に聞きたいことは、これも又汚職問題に関する私の緊急質問に対して、吉田君の答弁は、政党政治がある限り政治献金のあることは当然だと言つておる。そういう考え方は、今日まで保守政党が政権を利用して政商どもに儲けさし、そのリベートを取つて来た考え方で、決して浄財ではなく、汚財であることには間違いないのである。浄財というものはそんな悪い繋がりを持つものではないのである。個人が余財を公共福祉のために寄附献金するものを言うのである。吉田君は汚財による汚生活、私財による私生活混淆同一考えておるのじやないか。国会において、議員が、吉田首相を初め各閣僚や政党幹部連などの、あの目に余る豪壮な邸宅や豪奢な生活について質問すると、吉田君は、私は私生活については答弁しないことを主義としておるから答えないと言つておる。又、大臣政党幹部らが料亭などに遊ぶくらいのことはやらしてもよいではなかと、しやあしやあと答弁しておる。私たちが言う私生活とは、自分労力報酬として得た金によつて生活することである。その範囲のものについてとやかく言うほどの野暮ではない。ときには一家つて芝居見に、花見等に行くこともあろう。併し、一席何万円、何十万円とかかる赤坂やその他の花街においてする遊興は、自分労力報酬によつてはできるものではない。そういう金は、結局、国民の税金による、国庫から儲けさせてやつた政商どもから返してくれるリベート以外の何ものでもないであろう。今日問題になつておる疑獄汚職こそは何よりの証明ではないか。吉田君は若い頃からその道の通人として知られている。(笑声)君が奉天総領事時代に発揮した通人振りは、当時の国会の問題にまでなつたと記憶しているが、それは時効にかかつているものとして、善意に解釈して、ここで言うことを遠慮しておこう。併し雀百まで踊り忘れずの譬に漏れず、今日でも壮者を凌ぐ御発展だそうだが、その財源はいずこにあるのか。(笑声)国費の負担者である国民の中には、生活苦のために、人生において最も悲惨事中の悲惨事である一家心中日ごとに殖えておるという、この事実をどう考えるか。吉田君の国会での施政方針演説の中には、必ず、政治の要諦は民生の安定にあると述べておる。吉田君は民生安定の政治をやつていると思つておるか。現在の世界戦争のあり方は一変しておる。今までの戦略戦術などは過去の遺物に過ぎない。今問題になつておる防衛庁設置自衛隊云々言つて、三千億近い血税を以て軍備するよりも国民生活安定のために使うことこそが無形の城塞であり、真の国防の道ではないか。国民の信頼のない政治には真の国防はないのである。吉田君、今からでも遅くはない。アメリカ日本になることを捨てて、世界日本になる道を進む勇気はないか。一つそれを……(笑声
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 防衛庁法案等関係のないことでありますから、お答えはいたしません。
  9. 松本治一郎

    松本治一郎君 関係のないことはない。関係の有無のわからないくらいの総理大臣ですかね。答えないとするならば答えないでいい。これは冒頭に申上げた通り速記録として立派にできるのだから、それを国民に僕は配るから、そうして国民答弁を、答えを得ようと考えている。  その次に聞きたいことは、去る五月の十五日、神田の学士会館で行われたアメリカ三軍記念会において、アメリカ軍事顧問団長ヒギンス少将はこう言つておる。即ち、「今日、一九五四年のアメリカ三軍記念日を迎えて、ここに、私及び他の軍事顧問団将校諸君が、我々の軍事同盟国である日本陸海空軍将校たちと共に交歓することができたのは、私の非常な喜びとするところである。過去一年間、日本アメリカとは、日本三軍を再建するために、あらゆる困難を克服して来た。私は来年の三軍記念日に当つて、これからの一年を顧みた際、必ずや同様の満足を得られるであろうことを確信する」と言つておる。又、この会に出席した増原保安庁次長は、その挨拶において次のように語つておる。「ヒンギス少将も言われた通り、我々は過去一年間において非常な曲折を経て努力して来た。併しその成果に対して我々は必ずしも満足するものではなく、今後も努力したい。どうぞ協力をお願いする」と言つておる。ヒギンス少将は先月一日正式に軍事顧問団長に就任したものである。就任後最初に行われたこの言明は、ワシントンで行われたものでなくして、東京で行われたものであります。アメリカ日本に対する考え方はつきりと言明しておるのである。又、過日の衆議院内閣委員会において、木村保安庁長官自衛隊軍隊であることを認めておる。ところが吉田君は今日まで、再軍備はいたしませんとたびたび言明して来ておるが、第十六回国会外務委員会で、君は、日本戦争を放棄し、軍備を放棄したのであるから云々言つておる。首相の従来の言明は、国会及び国民の前に再軍備の事実をかくす煙幕ではなかつたか。ここで私は次の二点を吉田君に質したい。  第一点は、首相ヒギンス少将挨拶をどう考えるか、第二点は、木村保安庁長官も認め、ヒギンス少将はつきり軍隊だと言つておるほどに軍備を進めて来たことについて、首相の今までの言明と食い違いを生じておるが、吉田君はこれについてどういう政治的責任をとるのか。これをちよつと聞きたい。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 重ねて申上げますが、政府は再軍備いたしません。又、外国の将校の言論に対しては、私は批評を差控えます。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に伺いますが、総理自衛隊漸増方針は、アメリカから経済援助を受けて本日まで参つたわけですが、今後もその方針であるかどうか伺います。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えしますが、日本防衛力漸増ということは日米安全保障条約に約束いたしておるところであります。アメリカ援助とは別に、援助を得る限りにおいてやるのでなくて、日本の必要に応じ、日本防衛の必要上に要するだけの軍備をいたすつもりであります。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 現にMSA援助を要請して受入れることになつたわけであります。従つて今後もその方針だとすれば、近く総理アメリカ外遊されるわけでございますが、軍事援助を要請ずるつもりであられるかどうか、承わります。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、軍事援助を求むるために外遊をしたらという考えではないのであります。又、外遊についてはまだ確定いたしておりませんから、先ほども議場でお答えいたした通り、まだ諸君に報告する段階に達しておりません。但し防衛のためにアメリカ援助を求めるというようなことは、これは条約以外のことには一切口を出さないつもりであります。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理外遊されるということは、すでに外務大臣の名において八カ国に通告されたことですし、先ず九〇%間違いないと予想される事実だと思うのです。総理アメリカ行つて軍事援助については要請しないということでありますが、若しアメリカ側から、日本自衛力を急増して欲しい、こういう軍事援助をあちらでお話があつた場合、これを拒否するところの心構えがあられるかどうか伺います。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは将来のことであるからして、ここに私は発言いたしません。果してそういう要望があるかないかということが未定の今日においては、私はお答えはできません。
  17. 山下義信

    山下義信君 松本委員質問に関連して質問したいと思います。私もヒギンス少将言葉に対しまして質問いたしたいと存じておりましたところが、只今松本委員から御質問がありました際に総理からはお答えがございません。併しこれは非常に重大な問題だと思います。顧問団長ヒギンス少将日本アメリカとは軍事同盟国であるということを申されたことは、新聞紙上に明らかに報道されております。MSA協定によりまする日米防衛関係性格は、私は軍事同盟性格ではないと考えております。それを、保安庁幹部が列席しておりまして、その挨拶を聞き流して、これを承認したごとき形でありますことは、私どもといたしましては、これは断じて見逃すことができないと思います。日米関係は果して軍事同盟関係であるか。MSA協定は私は軍事同盟関係ではないと思う。我々は反対の立場にありますけれども自由諸国防衛関係に寄与するということは、飽くまでこれは経済的の寄与の性格であるということを政府は声明しておるのです。軍事同盟という関係は、私は由々しき関係であると思いますから、このヒギンス少将言明に対しまする政府所信政府考え方はどうであるかということにつきましては、一言なからずんばあるべからずと思いますので、是非御答弁願いたい。又、木村保安庁長官は、保安庁幹部が列席しておりましてこういう挨拶を受けましたことを、而も日本の陸軍、海軍、空軍の三軍将校たちと歓を交えると言つて、明らかにこういう言葉使つて、欣然としてそれに相応しておるというがごときは、これは見逃すことができないと思いますので、木村保安庁長官所信を併せて御答弁願いたいと思います。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本アメリカ軍事上の関係は、日米安全保障条約規定しておる以外は一歩も出ないのであります。又、今ヒギンス少将の表現については、私はこれには批評を加えません。
  19. 山下義信

    山下義信君 然らば総理は、日米関係軍事同盟関係であるということを否定されますか、肯定されますか。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは只今申した通り日米安全保障条約規定通りであります。
  21. 山下義信

    山下義信君 その規定通りということは、軍事同盟規定でないと解してよろしうございますか。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御解釈は御自由であります。
  23. 山下義信

    山下義信君 解釈は自由とおつしやつては困ります。政府解釈を我々が勝手に、自由にきめることはできません。政府の基本的な御方針一つ明確にお示しを願いたいと思います。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 基本的の方針日米安全保障条約に書いてあります通りであります。
  25. 山下義信

    山下義信君 従いまして、それは日米軍事同盟ではないでしようということを申しておるのでございますから、一つ忌憚なくおつしやつて頂きたいのであります。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 忌憚なく申して日米安全保障条約規定通りであります。(笑声
  27. 山下義信

    山下義信君 木村保安庁長官所信をお示し願いたいと思います。
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 去る五月十五日の学士会館における各国の武官の集りに、増原次長が出席したことは事実であります。併しそれに対しての挨拶がどうであつたかということは、私は詳細に報告も受けなければ、又、存じません。併し今、松本委員から、こういう発言があつたということについて、私は申上げたい。恐らく増原次長は、いわゆる呼ばれた、招待を受けた一人として、儀礼的の辞礼言葉として申したものと私は了承しております。そこで、日本アメリカとの関係についてヒギンス少将がどういう意味のことを言つたにしろ、これは我々といたしましては、彼の言に従うべき筋合いのものではありません。日本独立国家である以上は、日本独自の見解を以てアメリカと互いに手を繋いで行くべきものだと考えております。而うし日本アメリカとの間に安保条約は締結されております。その線に向つて我々はアメリカ協力態勢をとつて行きたい。恐らくそのような意味のことを増原次長は申されたものと私は了解しております。
  29. 山下義信

    山下義信君 木村保安庁長官は、然らば日米関係軍事同盟でないということでよろしうございますか。そういう見解をとられますか。
  30. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 軍事同盟という今の解釈はどうおとりになろうと私は存じませんが、少くともアメリカ日本との間には日米安全保障条約が締結されておるのであります。そうしてアメリカ駐留軍日本の現在の保安隊、将来は自衛隊になりましようが、これはともどもに手をとつて日本の安全を護り抜こうということになつておるのであります。その約束をとらえて軍事同盟とおつしやれば軍事同盟でありましよう。併し我々といたしましては、今総理の言われたように、安保条約を履行する義務があるのでありますから、その意味において日本アメリカ協力態勢をとつて行こうというのであります。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと議事進行について。このMSA協定によつて軍事顧問団日本自衛隊関係を持つて来ると、今のヒギンス少将言葉は重大である。更にこの際、この審議を円滑にするために、日米安全保障条約というものは軍事同盟であるかないかということを、イエスかノーかでいいから、ほかのいろいろの説明は必要ございません。松本委員或いは山下委員の伺つておるのは、日米安全保障条約軍事同盟であるかどうか、その点ここではつきりさせて頂きたい。そうすれば審議は非常に円滑に今後行くわけです。一番重要な点に触れておるのですから、はつきりさして頂きたい。
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点についてお答えします。  普通の意味における軍事同盟じやないと私は思つております。いわゆる軍事同盟というものは、もう少し進んで、両国が互いに他国に対して戦いを交えるときを想像して、その間に処すべき処置について取り結ぶものであろうと思います。日米安全保障条約は御承知のように、日本の安全を、延いては極東の平和を維持するために結んだものでありますから、純粋意味における軍事同盟と解すべきものではないと、私はこう考えております。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじや純粋意味でない軍事同盟というものはどういうものですか。
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは軍事同盟解釈如何によるのでありまして、一番初めに申しておりますように、こういう日本防衛のために取り結んだ条約をもつて軍事同盟条約と仰せになるならば、それでもよかろう、こういう意味であります。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、あと矢嶋委員質問するでしようから、私はこれ以上いたしません。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その件については後刻伺います。今の私の展開しておる質問を続けます。新聞によりますと、総理外遊されて経済援助を要請するであろうと伝えられておりますが、私もそうであろうと想像いたしますが、如何ようでございますか。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほども申した通り、私のこのたび参ることについては未だ確定もしておらないのであります。又どういう話をするかということも従つて確定をいたしておりませんから、それをお答えすることはできません。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは大きく、今度の総理外遊目的は何でございましようか、伺つておきます。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これもお答えができません。先ほど会議で申した通りお答えする段階に参つておりませんから、お答えはできません。
  40. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 六月四日の出発を前にして、国民代表として、大まかな外遊目的一言答弁できないとは何事でありますか。私は重ねて一部でもよろしいから承わります。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 六月四日に出発するという予定を外務省は組んでくれたのでありますが、それはまだ確定をいたしておるわけではないのであります。
  42. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではこの件の質問を私は結びますが、総理只今答弁によりますと、アメリカ行つた場合において、軍事援助のことについては触れない、要請する意思はない……。極東向けの二十五隻の艦艇貸与、このうちの十七隻を日本は要求しておつたわけですが、このたびの艦艇貸与協定では四隻のみ認められただけである。従つて私は、こういう要望総理はするのではないか。或いは七月からの新会計年度を控えて、日本の来年度の自衛力漸増と関連して、MSA援助額についても話合いをするのではないか。こういうことを私は一応考え、更にアメリカ側は、池田さんが渡米されたときに、三十二万五千の保安隊増強というものをはつきりと要望された。従つて総理アメリカに渡られたのちは、自衛隊の或る程度の増強というものが話合いに出るのではないか。更に東南アジアの防衛機構に対する参加、更に、ここに外電が伝えておりますが、総理外遊されたならば、太平洋同盟参加準備の要請が必らず総理になされるであろう、こういうふうに外電が伝えているわけですが、かくのごとき、この日本自衛軍備に関することについては、一切あなたからは話を切り出さない。又向うから話があつた場合にはそれには触れない。こういうふうに先ほどのあなたの答弁をまとめて了承するわけですが、その通りでございますね。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ほども申しました通り、未だお話する段階に至つておりませんから、何を言わないとか、何を言うとかいうことは、お話できる段階でないのであります。
  44. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 併し、あなたは先ほど軍事援助等についての話合いは一切触れないつもりだ、こういうことをあなたは答弁されたじやございませんか。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のところ、そういう考えは持つておりません。只今何らの、具体案を持つて参るという予想はいたしておりません。
  46. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では時間の関係で次に移りますが、国民はこの防衛法案提案に当つて軍備を肯定している国民でも、果して自主的な軍隊ができるであろうか、曾ての関東軍下における満洲国軍みたいになるのじやないかということを心配しております。例えば中古兵器貸与或いは装備、訓練に対するこの顧問団の指導、或いは今度の艦艇貸与協定を見ましても、アメリカ側が返却を希望することになれば、貸与期間の満了前でもいつでも日本から引揚げることができる、こういうことになつているわけです。総理は、果して自主的な軍隊がこれでできるか、部隊ができるか、こういうふうに考えているかどうか。それから更に、海外派兵の問題については、国民が最も心配しているところでありますが、海外派兵というものを絶対に起させない、この確信があるか。総理大臣から伺います。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  48. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは総理から伺います。
  49. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 事が詳細な点に亘るから申上げますが……。
  50. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 吉田総理大臣答弁を要求しております。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答え申上げます。
  52. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本自衛隊が果して立派に任務を尽すことができるかということでありますが、私は立派な自衛隊を作り得るものと考えております。今アメリカから中古品武器をもらつて、それでいいということでありまするが、我々はアメリカから何も中古品武器をもらつて満足するのではありません。今後MSA協定によつてアメリカから供与を受けるものも、極めて新しいものを我々は供与を受ける考えであります。又アメリカも恐らく新しいものを供与されることであろうと我々は確信いたしております、又、船の問題にいたしましても、差当り四隻貸与を受けるのでありますから、引続いて我々はアメリカから貸与を受けられるものと確信をいたしております。これらの船によりまして十分なる訓練をいたしますれば、立派な日本の海岸警備の役に立ち得るものと確信をしておる次第であります。なお海外派兵のことにつきましては、申すまでもなく、防衛庁設置法自衛隊法において明記いたしております通り自衛隊は、我が国の平和と独立を維持し、国の安全を守るために作られるものでありまするから、海外の派兵なんということは法制上できるものでありません。従いまして、政府は将来派兵をするというような考えは持つておりません。
  53. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは総理に率直に伺いますが、国民国会も、もろもろの条約協定等から、海外派兵というものが起り得るのではないかと非常に心配いたしております。従つて、参議院では海外派兵禁止の決議を国会に出そうと考えておりまするが、こういう海外派兵禁止の決議案が国会で可決されることに総理は賛成されますか。それとも望ましくないことだとお考えになつていらつしやいますか。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いずれにしても、只今のところ、政府海外派兵考えておりません。
  55. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はそういうことを伺つているのではないのです。禁止決議を出すということを総理は賛成か反対か、これなんです。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは決議案を見てからお答えいたします。
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 決議案の内容は、日本国憲法からして海外派兵ということはあり得べからざることだ、これだけなんです。如何です。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いずれにしても、只今政府海外派兵考えておりません。
  59. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこが問題なんで、あなたは考えておられない。それじや禁止の決議をすることになつた、賛成か反対か、それも表明されない。それから、あなたは、これは戦力ではない、再軍備でないと言つているが、アメリカ軍隊だ、戦力だ、こういうふうに認めている。その一つの現われが、はつきりと、先ほど話が出ましたヒギンス少将が、日本軍事同盟国だ、こういうふうに英語でしやべつている。この状態で、果してあなたが考えられているところの自衛隊というものが、日本国民の手で自由になるところの、自主的な日本防衛するところの軍隊となり得るかどうか。あなたの意に反して海外派兵をしなければならないという立場に追込まれることがあるのじやないかという点を、国民は懸念しているのでありますが、これに対するあなたの信念を伺つておきます。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の信念は海外派兵をいたさない信念であります。
  61. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは、軍事顧問団が六百五十名という大人数が日本におりますが、こういう軍事顧問団が長らく自衛隊にいることは望ましいことですか、望ましくないことですか。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  63. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 軍事顧問団のことにつきましては、もうたびたび申上げた通り、とにかくMSA協定によつてアメリカから日本に対して供されました武器について、その操作等についての処置方を軍事顧問団が掌るわけであります。自衛隊の指揮命令等については断じて関与するものではありません。従いまして、アメリカ軍事顧問団によつて自衛隊がその自主性を失うというようなことは毫もないのであります。而して軍事顧問団は、我我といたしましては、逐次減少し、これを一日も早く将来本国へ帰つてもらいたいと希望しております。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 アメリカは、アメリカ極東における権益を守るために、又アメリカ世界政策の一環として、日本に再軍備をさせようと、こういうようにしているわけでございますが、その根底には武力を持つた力の外交というものが潜んでおります。而もそれは中共並びにソヴイエトを仮想敵国とするものだと私は考えますが、総理はこのアメリカ協力しながら日本自衛隊を急増して参るわけでありますが、日本の置かれている立場から、中共並びにソヴイエトを仮想敵国とするところのアメリカ日本に対するところの政策に対して、如何お考えでありますか。賛成ですか。それともこれに対して如何なる批判を持たれておられますか。所見を伺います。
  65. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はアメリカ政府がお話のような考えを持つておるかどうかは存じません。日本政府としては、日本防衛に必要な程度の防備はいたしますが、それが他国から強要されたからどうこうということは、我我は断じていたさないつもりであります。
  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ということは、中共並びにソヴイエトを仮想敵国とするような、そういうアメリカの外交政策には日本としては同調いたしかねる、こういうふうに総理答弁を私は了承するのでございますが、さようでございますね。
  67. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御了承は御勝手でありますが、日本政府としてはソヴイエト及び中共を仮想敵国として防衛をいたすのではないのであります。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では次に伺いますが、警察予備隊並びに保安隊と、この自衛隊は、質的に変化をしたものと総理はお考えになるかどうか。その点、伺います。
  69. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  70. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申すまでもなく、自衛隊は現在の保安隊とその性格、任務は変更しております。即ち保安隊は、保安庁法第四条で明白でありまする通り、我が国の平和と秩序を維持し、人民の身命、財産を保護するために特別に必要である場合に初めて行動する部隊であるのであります。自衛隊は、それに加うるに、我が国の平和と独立を維持し、国の安全を守るために、いわゆる外部からの不当侵略に対して、これを防禦、防衛するための任務を持つておるのでありますから、この意味から以ちまして任務と性格は変つておると申して差支えないと思います。こういうことを言われるわけですね。
  71. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 戦力を持つ軍隊違憲でありますからして、持たないということを繰返し申しております。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 戦力を持たない軍隊にはどんな軍隊があるのですか。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 現在日本防衛隊のごときものはそうであります。
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 少し恥かしうございませんか。あなたがそういうことを言うから、大磯のあなたの私邸は繁昌するのですよ。私たち先般公聴会をやりましたが、たとえ再軍備賛成の人にしましても、現在の保安隊、警備隊もそうであるが、ましてや、このたびの二法案によつてできるところの自衛隊は、はつきり軍隊である、戦力であると、こういうふうに、すべての人が公述されております。反省される点はございませんか。
  75. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ありません。
  76. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで私は総理のその態度から心配になる点があるのでございますが、この二法案を見ますと、総理へ非常に権力というものが集中して参ります。現在でも、新憲法で総理は行政権も握られておる。非常に高い地位に立たれておる。更に警察法改正というものがある。こうなつた場合、非常に権力の集中が、総理として、飽くまでも民主主義を守つて行くという立場から、これらの運用に当つて総理としての心構えを私は承わつておきたいと思います。
  77. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いろんな権力を集中されつつあるということは事実でありましようが、この集中はそれぞれの機関を通じて発動するのであつて、専制国におけるごとく、或る元首とか、元帥とか、ヒツトラーとかいうような者が、その権力を独断で以て、独断専行をいたすのではなくして、それぞれの機関を通じていたすのでありますから、これは従来の考え方とは全然違う考え方であります。即ち民主主義の線によつて行動するものと御承認を願いたいと思います。
  78. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは、それと関連して具体的に伺いますが、国防長官には旧軍人を任命することはあり得るとお考えになるかどうか。更に、あなたの諮問機関となるところの国防会議の構成というものは、如何ようにすれば、政治軍事への優先というものが保持されるか。どういうふうにお考えになつておられるか。
  79. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 所管大臣からお答えいたします。
  80. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちよつと待つて下さい、防衛庁設置法案目的というのは、これは国防会議を作ることが大きな目的になつているのですよ、その基本的な問題について総理答弁がないということは、私は遺憾極まりない。総理から伺います。
  81. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 所管大臣からお答えいたします。
  82. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 国防会議のことにつきましては、御説御尤もであります。国防会議の構成内容を如何にすべきか、これは重大事でありまするから、このことについては法律を以てきめたいと考えております。従いまして国会において十分その際に御審議を願いたい。ただ我々の考えといたしましては、国防会議を構成されるべき人たち、これをどう持つて行くか、これにつきましては、大体において民間からも入れるべき説もあります。又、政府が全責任を持つてやるのであるから、主管閣僚を以て構成すべきであるというような議論も出て来るのであります。それらについては十分検討いたしたい、こう考えております。
  83. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理は民主的に云々と言われますが、このたびの法案を見ますと、例えば第七十六条防衛出動のときは、緊急の必要があるときは国会の承認を得ないで出動することができると、こうなつておるのです。あなたは先般の参議院の警告決議案さえ無視されたではないですか。すでに衆議院では重要法律案が審議終了したわけですが、参議院の警告決議を率直に受入れるお考えはございませんか。そういう院の決議さえ無視する。それから輿論を沸かしたところの検察庁法の十四条の発動、これらは、あなたの今までの汚職の事態が明白になつたならば云々という公約にも全く裏切つた行為である。そういうのであれば、この二法案が通過した後には、いつあなたの独断で、日本軍隊を、或いは東南アジアに、或いは大陸に出動させるようなことが起り得るかも知れないと懸念されるわけですが、この国会があるからそういう心配はないと言われるかも知れませんが、先般の警告決議に対するあなたの無視というようなこともあつたわけでありますから、この際、承わつておきます。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の答弁は、先ほど申した通りであります。即ち、総理大臣に権力が集中されても、それは諸機関を通じて発動せしむるのであるから、民主主義に反することはないと、その私の言明に信用がおけないと言えばそれまでであります。
  85. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたの言明は、あなたにはお気の毒ですが、最近は国民が非常に信用をおかなくなつております。それは今日、中田君が本会議でも質問しておりましたが、不信任が、五八%という高率を示して参つているわけです。で、私はあなたの公約違反について更に伺うのでありますが、この日本自衛力の急増については、飽くまでも、国民生活日本の経済力の充実と相待つてやられるということを言われておりましたが、最近の日本の中小企業の状態を御覧なさいまし。戦争が済んで十年もたつて、未だに住宅がなくて困つている人がたくさんおります。更に昨年の災害のことを思い出して御覧なさい。国会で、三・五・二の三カ年計画で災害復旧をすると言つて一つも実施しなかつたじやありませんか。災害地の方々は出水期を控えて非常に戦々兢々としている状況です。更に昨年の春の総選挙の当時を思い起してもらいたい。そのときの、あなたが総裁をしておるところの自由党の選挙公約というものは、ああいう日本の自主性を脅かされるようなMSAを受入れる、或いはそれに伴つて基本人権を侵害する虞れのあるところの秘密保護法を制定する、こういうあらゆる基本人権を制約しているところの防衛法案を成立させる、こういうような公約は全然なかつたわけです。選挙においてこういう公約がなく、あなたがこれを押し通そうとするそのこと自体、これは私は民主主義というものを全く蹂躙した、主権在民の日本国憲法を無視した政治行為であると、こういうように国民のすべてが、大部の人が思つておりますが、私もその点、非常に遺憾に思うわけでございますが、この点あなたは国民如何ように納得ができるように説明いたしますか。御所見を承わりましよう。
  86. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 我が党としては、これまで公約いたしたことは順次励行実現さしております。又、今、住宅等の例をお引きになりましたが、財政の緩急に応じて、住宅建設については政府としてはできるだけの努力をいたしております。これは財政一般の関係がありますから、悉く満足を与えるということはできないでありましようが、併しながら今年も相当の増額をいたしております。即ち、我が党とし、我が政府として公約いたしたことは、順次成立いたしておると我々は確信いたすのであります。これを無視し若しくは公約を踏みにじつたというような考えは、毛頭いたしておりません。
  87. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 矢嶋君に申上げますが、割当の時間が終りますから……。
  88. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これだけです。では総理に最後に伺います。総理は長いこと総理大臣として政権の座に坐つて来られたわけですが、その間に、警察予備隊から保安隊、警備隊、更に自衛隊、こういう形で日本自衛力増強を図つてつたわけですが、この間におけるあなた並びに吉田内閣の大臣の発言というものは、随分と変つて来ております。例えば例を上げますと、警察予備隊が創設された当時の担当者であつた岡崎当時の官房長官は、「この警察予備隊というものは絶対に将来軍隊にするものじやないのだ。アメリカの通信等によつて、将来この警察予備隊は軍隊になるのじやないかということが伝えられ、国民は心配しているようであるが、絶対そういうものではないのだということをはつきりと答弁いたしておきます」と、こういう速記を残されております。又その後就任された大橋国務大臣は、「警察予備隊並びに保安隊というものは、国内治安を目的とするものであつて、これは絶対に外敵に対抗してはならないものだ。外敵はアメリカ駐留軍に任してあるのであつて、外敵に対抗するということは、これは、はつきりと憲法九条に違反することになる。併しこの警察予備隊並びに保安隊は外敵に対抗するものでないから憲法違反ではない。」こういうふうに述べられております。更に、ここにおられる木村保安庁長官も、「外敵を相手として装備或いは編成、訓練するようなものは、これは憲法違反になるが、保安隊、警備隊はそうでないから、憲法に違反しない。」こういうふうに国民に説明して参つております。あなた自身、警察予備隊並びに保安隊についても、「治安維持の必要上急設したものであつて、これは軍隊となるものでない。軍隊を作る意思は全くない」と、こういうことを言明されて来られたのです。それが、このたび外敵対抗を主目的とするところの部隊というものがここに生れようとしておるわけであつて、これらの吉田内閣誕生以来本日に至るまでの過程を眺めてみますと、全く国民並びに国会に嘘をついて来たということになるわけであつて、これらについてあなたは責任を感じておられないかどうか。私はこれは非常に、国民政府並びに国会に対する信頼をかち得る点からも、更には遵法精神の高揚という立場からも、非常に私は遺憾なことだと思うのでございますが、それをお感じになつていらつしやいますか。最後に承わつておきます。
  89. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この保安庁法改正をする必要に至つたことは、しばしば申すようでありますが、米国側がその駐留軍を漸減する、而して日米安全保障条約には、日本としては防衛力を漸増するという約束になつておるのであります。これは諸君が協賛せられた日米安全保障条約に明記しておるところであります。この条項に従つて、米国政府がその駐留軍を漸減するについて、日本政府としては防衛力を漸増するという処置をとつたのであります。政府としては、ここに戦力を未だ持たない軍隊を持つのであるからして、憲法違反でもなければ、従来申した軍隊という気持が、戦力を持たない軍隊である、或いは戦力を持つ軍隊であるという意味で、軍隊は持たないということの発言がしばしばなされたのでありましようが、事情の変化と共に、アメリカ駐留軍の兵力を漸減する以上は、日本として、日本政府としては、これに対応する処置を講じなければならん。それが即ち防衛庁法の改正になつた次第であります。私は、政府としては何ら今日までとつて来た処置に対してやましいところはないと考えるのであります。
  90. 山下義信

    山下義信君 私はこの防衛法案につきまして、重要な諸点を数点伺いたいと思います。総理にお願いするのでございますが、私はお言葉尻をとりましてどうこうしようとは考えません。それで率直に一つお答えを願いたい。若し総理お答えが何か政府部内で食い違うというようなことがございますならば、保安庁長官もおられまするし、法制局長官もおられるのでありますから、そこはうまく合せて頂けばいいと思います。総理忌憚のない御意見を一つ簡明に承われば結構と思います。  第一点は、只今質問者も申しておりましたが、戦力があるかないかは別といたしまして、自衛隊軍隊言つてよろしゆうございましようか、軍隊と言つちやいけないでしようかという点ですね。自衛隊軍隊であるかどうかということなんです。これはまあ有りていに申しますと、木村長官も衆議院で、いや軍隊と是非言いたければ言つてもいいというようなお言葉もある。それで、戦力があろうとあるまいと、今回の自衛隊が直接侵略に対抗する、即ち外敵と戦いをするということに、はつきりなつたのですから、私はその目的意味で、内容とか戦力とかいうことでなしに、自衛隊の任務として外敵と戦いをするのだということになれば、戦いをする部隊は軍隊言つていいのだろうと、私は木村長官の説にどうも同意せざるを得ぬように思うのでありますが、総理は、自衛隊軍隊でありますか、ありませんか、軍隊言つていいでしようかどうでしようかということを、率直に一つ承わりたいと思います。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは軍隊という意味合いが何であるかという定義の問題であろうと思います。少くとも私は、戦力を持つ軍隊日本の憲法としては持つことを禁じられておる、こう解釈いたすのであります。
  92. 山下義信

    山下義信君 その御解釈も、私は一応やはり何と申しますか、これも一種の御解釈と思う。私は今その持つているところの実力のどうとかいう程度ではなしに、目的が、火を消すのは消防隊だ、泥棒をつかまえるのは警察だというように、目的が外敵に対抗して外の敵と戦いをするということになれば、これは世間の言うところのいわゆる軍隊言つていいのじやないか、軍隊ではないかと、こう思いますが、その目的の上から、どう総理はお考えになりましようか。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。軍隊なりや否やということは、これは定義のしようによつて軍隊とも言えましようし、軍隊と言つちやいかんとも言えましようが、私は、これは用語の問題であり、又国民がこれに対して何と考えるか。戦力を持つ軍隊のみを軍隊と言うか、持たなくとも軍隊と言えるのだと言えば、これはそれでもいいと私は思います。これは一に国民解釈一つと思います。
  94. 山下義信

    山下義信君 御尤もでありますが、この法案の中には、はつきりと自衛隊目的が外敵と今度戦いをするのだということが書いてある。それで、目的の上から言えば、軍隊ではない、国民がどう考えるかとおつしやいましたが、国民は全部軍隊と見ておる。政府だけが軍隊でないと言葉の綾で言つていると、こう世論は言つておりますから、目的の上から軍隊言つてよいのならよいとおつしやつて頂けば、それで私は、はつきりするのではないかと思う。
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それでありますから、軍隊ということが、国民軍隊に対する了解が、戦力はなくとも外敵に当る以上は軍隊である、こう国民が解するならば、それでもいいと私は思います。
  96. 山下義信

    山下義信君 従つて、その意味で、軍隊ということになつて来ますと、私は言葉をどうも揚げ足を取るようになるといけませんから、その点、遠慮いたしたいと思うのですが、軍隊ということになると、陸上自衛隊なら陸軍であり海上自衛隊というのは海軍であり、航空自衛隊というのは空軍でありまして、いわゆる三軍を持つということになつて、自然これは憲法違反の虞れが生じて来る。虞れではない、憲法違反ということになつて来るように思いますが、総理はどう考えられましようか。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほども申しました通り、戦力に至らない間は憲法上も自衛隊を持つて差支えないものと私は思うのであります。併しながら、戦力を持つような強大な軍隊、或いは何と言いますか、お話のような防衛力を持つに至れば、これは憲法違反になるから、慎しまなければならない。又そういう強大な軍隊を持たないために安全保障条約があるのであつて、又、安全保障条約がある以上は、強力なる戦力を持つ軍隊を持つ必要はないのであります。又、これを避けるために安全保障条約を締結いたしたわけであります。このたび防衛庁法改正ということになつたのは、先ほども申す通りアメリカ駐留軍が漸減する、条約従つて漸減するという以上は、これに対する適当な措置を講じなくちやならない。即ち防衛庁法の改正ということになつたわけであつて、改正されたものが軍隊であるという国民の了解なら軍隊言つて差支えないと思います。併し、軍隊という言葉は忌み言葉でない。忌み言葉は即ち、戦力を持つ、或いは国際紛争の解決の具に供する、これは憲法違反と思いますが、然らざる場合においては、軍隊であろうが、何と言おうが、これは一向差支えないことだと私は思つております。
  98. 山下義信

    山下義信君 大変はつきりした御答弁を頂きまして、総理から、軍隊言つてよいと、そういう意味なら軍隊言つてよいと、初めてお言葉が出たのでありますが、これは一つ後日のことに残しておきましよう。  第二点は、防衛方針に関する政府の基本的なお考え、これは総理は飽くまでも防衛力漸増方針で行くんだ、その方針でここまで来たんだと、こうおつしやる。それは飽くまで憲法の許しておる範囲内でやるのだとおつしやる。そこで問題は、今度の自衛隊増強がもう憲法に許されておるぎりぎりの点まで来ておるか。まだ憲法に許されたる範囲内に余裕があるか。言い換えたら、漸増方針というのは、今後も漸増して行くのか。漸増方針は、今日まで来たが、これ以上は限界だ、危険線だと、こうお考えになりますか。今後まだ漸増して行くんだ、まだ憲法に許されておる範囲内に余裕があるのだとお考えになりますか、政府の基本的な防衛漸増方針といいますか、その方針を承わりたいと思います。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 防衛力漸増については、二つの条件があると思います。第一は国力これを許すか許さないか、第二は国外の情勢がどうであるかという、二つの条件から考うべきものだと思います。今日においては、日本の国力からいつてみても、直接侵略に対応するにしても、今度計画いたしました大きさ以上に持つということは、国力これを許さないと思うのであります。将来は将来であります。現在のところこれだけの漸増をいたす。将来どうなるか、それは将来の状況によるわけで、日本の国が取られても、直接侵略に耐えないという事態になつて防衛力は持たないということは考えられないことであつて、そのときにおいて政府考えますが、将来これだけの、来年はこれだけの漸増をいたす、再来年はこういうふうな漸増をいたすというような計画は立てておりません。これは全然……、国力の発展にもよるでありましようし、又、国外の事情にもよるでありましよう。外敵といいますか、日本を侵略する虞れのある外界の事情如何によつて考うべきことであつて、今日あらかじめ、例えばソヴイエトを仮想敵国として考えるとか何とかいうような考えではなくして、日本の国力がそれだけ漸増することが極限であるという考えで以て、現在の防衛力を考え提案いたしたわけであります。
  100. 山下義信

    山下義信君 大変うまく御答弁なさるので、困るのですが、そうすると、漸増方針というものの目標がどこにあるかということが実は伺いたいのです。それで、国力の許す限りという表現をお使いになりますものですから、つかまえどころがなくて、大変うまい御答弁をなさるのですが、従つて私がお尋ねしておるのは、今の憲法の範囲内でまだ漸増の余地があるかどうか。そうしてその漸増というのは、一体どこまで、日本防衛力をどの点まで持つて行こうとするか。言い換えれば、憲法を改正しても或る程度までは増強しようという目標があるのか。飽くまでも現行憲法の範囲内にとどめると、いつもあなたがおつしやる、憲法は改正せぬ、再軍備はいたさん、飽くまでも漸増だと言つて軍備反対のような強い言葉でおつしやる、あの現行憲法の範囲内でとどめるという確たる決意の漸増方針か。その目標はどこに持つていらつしやるかということを承わりたい。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 目標は、只今申した通り、国力如何及び外界の事情如何。外界の事情が、日本自衛が非常に危険にさらされたという場合には考えざるを得ないと思いますが、現在のところは、この防衛方針でたくさんであると私は確信するものであります。
  102. 山下義信

    山下義信君 それでは問題を変えまして、次は憲法改正の問題でございますが、結局、現行憲法の、この政府防衛増強が、これがその限界を超えない……、まあ限界内でやつているかどうかということにもなるわけでありますが、憲法改正をせざるを得ぬ状態に、もうすでに……、今日我々の立場から見ますと、憲法違反だ、こう言つているのでありますが、憲法改正をせざるを得ない状態に現実がある。かように世論も言つているし、我々も言つている。事実又そうなんです。政府はいろいろ憲法に合せるために言葉を非常に苦心しておられるわけであります。従つて私の伺いたいと思いますることは、憲法改正の時期が近付きつつありや、近いかどうかということです。で、いつも総理の言われるように、断じて憲法は改正いたしませんということを、無条件でそのまま国民は信じてよろしいかどうか。やがて憲法を改正せざるを得ない、その憲法改正の時期は近いのかどうかということを伺いたいと思います。有りていに申しますれば、お隣りの木村長官は、衆議院で、憲法の改正が近付いたということを、これはもうおつしやつていられるのです。総理新聞を御覧にならんか知れませんが、大変な反響を呼んでいるわけです。そこで憲法の改正は近付いているかどうかということについて所信を伺いたいと思います。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は、憲法の改正が近付きつつありとは、同じ内閣におりますが、信じておりません。(笑声)成るべく避けたいと考えます。仮にそういう必要があつても、何かのこと、例えば条約であるとか、その他の方法で以て、成るべく避けたいと考えます。故に、近付きつつありということは、木村君の立場から、或いは又信念からそうお考えになつたのでありましようが、私は信念として成るべく憲法改正に至らないようにいたしたい。又いたさない決心でおります。
  104. 山下義信

    山下義信君 でも、まあ、有りていに申しますと、自由党のほうでも大変大規模な憲法調査会をお設けになり、又、憲法改正論者の鳩山自由党、或いは改進党とも合同を呼びかけておいでになるという事態を見ると、国民は、ははあ、これは吉田内閣もやがて憲法改正を、ああ言い切つているけれどもやるのだなという印象を受けている。そこへ木村長官が憲法改正近付きつつありと言うのですから、これは、吉田はもうあんなことを言つても、やがて憲法改正するのだと、こう見ている。憲法改正が近付いているということを総理は否定なさるのですね、総理は……。
  105. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は否定したいと思います。
  106. 山下義信

    山下義信君 木村長官、一言なかるべからず。
  107. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この際、誤解があるといけませんから申上げます。私は憲法改正が近付きつつありとは申上げておりません。憲法改正の論議がです。(「近付きつつありか」と呼ぶ者あり、笑声
  108. 山下義信

    山下義信君 論議が……。
  109. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは近付いております。誤解のないように……。
  110. 山下義信

    山下義信君 この内閣は余りよいことをなされたことがないのでありますが、いろいろ新らしい言葉を発明されただけは、(笑声)これはまあ内閣の手柄であるかもわかりませんが、次に伺いますことは、今度は陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊というものを持ちまして、それらが皆それぞれ一つの独立の形をなして、いわゆる三軍方式というものを採られるので、これは非常な重大な意義があると私は思うのであります。で、これはどういう理由で三軍方式を採られるか、こういうことをはつきり一つお示しを願いたいと思う。……総理お答えになりませんか。
  111. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは私から申上げるのがいいのじやないでしようか。
  112. 山下義信

    山下義信君 そうですが。でも総理は、あなた、自衛隊の最高指揮官です。最高指揮官が何もおつしやらないことは……。
  113. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 専門に亘ることですから……。
  114. 山下義信

    山下義信君 そうですが。それでは長官から一つ聞きましよう。
  115. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まさに仰せの通り三軍方式と言えば三軍方式で、そういう陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊……。
  116. 山下義信

    山下義信君 ちよつと待つて下さい。……いいのですね。時間はあるのですね。私の質問関係があれば御連絡下さい。関係なからねばよろしいわけです。関係ないですね、私の質問に……。途中で切られると困るのです。もうすぐ済みますから、一応段切りをつけて頂きたい。
  117. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) どうぞ続けて下さい。
  118. 山下義信

    山下義信君 それじや長官、どうぞ。
  119. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通り、今度の防衛庁設置法案自衛隊法案によりますると、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊、こういう三つを創設することになつておるのであります。そこで、これらの部隊の行動につきましては、それぞれ責任者があります。併しこれを如何に動かすかということにつきましては、最高指揮官でありまする総理大臣は、保安庁長官、内局、これらに対して十分統制をとつて行くつもりであります。  そこで、これをどういう……、形は整つておるのでありまするから、その内容をどうするかということにつきましては、これは今後残された大きな問題であろうと思います。で、只今のところでは、主として陸上の方面が重きを置かれておるという状態であります。併しながら御承知の通り、我が国の海岸線九千マイルになんなんとしておるのであります。これを警備するということは、相当力を持たなくちやならんと考えております。現在持つております船舶では、到底これは海岸の警備は全きを期することはできません。この方面について相当力を注がなくちやならんことと考えます。申すまでもなく、警備隊、いわゆる今度の海上自衛隊は、いわゆる人命救助にまで関与するわけであります。従いまして、或いは最近に起りました北海道のああいう遭難についてもこれは動くわけでありますから、そのためには相当の船が要りまするから、この方面に力を延ばしたいと考えております。併し御承知の通り、船を造るということについては非常に金がかかるということ、もう一つは、船を動かすのに乗員の訓練、これが一番重要問題であります。船ができても、これを十分に動かすところの人がなければ役に立たないのであります。その乗員の養成については相当年月はかかります。一通り訓練……、完全なものを養成するのには五カ年かかると見ております。我々は三年でやりたいと思つておりまするが、先ず五カ年かかると見なけりやなりません。これは今から着々と手をつけておいても、本当に動くということは相当先のことであろうと思います。申すまでもなく、日本では、今十分なる船が財政上許すことはできませんから、アメリカのほうからこの艦船の供与を得たい、こう考えております。現に交渉しております。この方面に力を相当注ぎたい。  それから空の話であります。御承知の通り空のほうについては、今、力は何もありません。率直に申しまして実に貧弱なものであります。これは相当整備するについても、非常な金と人が要るのであります。併し我々は今のような程度ではいかんと思つております。現に海上の警備にいたしましても、飛行機でやることはできないのであります。現在北海道におけるあの遭難にいたしましても、我々のほうで飛行機を持つておれば、もつと手取り早く遭難船を発見することができただろうと思います。残念ながら持つておりません。この方面においても相当力を注ぎたいと考えておる次第であります。これは二十九年度におきましても大したことにはならんということは、誠に私は日本として残念に思つております。この方面にも、財政力その他から勘案して、許す限りはこれは増加して行かなければならんと考えておる次第であります。併し三軍方式といつて十分にバランスのとれたものを作るというこは、私は今の程度においてはどうしてもできかねると思います。本当にバランスのとれたものを作るということは……。それに対してどう処置すべきかということについては、我々は非常に今研究しておるわけでありまして、まだ結論には到達しておりません。
  120. 山下義信

    山下義信君 三軍方式をとられる理由といいますか、その状況は、懇切な御答弁を頂きましてよくわかりました。私の伺うのは、言葉が足りなかつたのですが、三軍方式をとります以上は、いわゆる独力の防衛力を持とうという一つの狙いでありまして、これは日本が他国の協力なしに日本防衛をやつてのけよう、いわゆる独力防衛主義というものの上に立つて三軍方式をとられたものではないかと、私はかように感ずる。若しそうならば、総理は、日本が独力で防衛力を持とうとするがごときことは、いつもこれは憲法の許さざるところであるというのが御持論なんです。そうすると、この方向というものは、いわゆる世間でいうところの再軍備への方向というものになつて来るのじやないか。従つて集団安全保障方式を今とつている、それとは全く違つた方向を示すではないか。今回の自衛隊三軍方式というのは、根底に、そういう現在の集団安全方式とは異なつた方向への独力防衛主義というものを将来に目指した考え方で、三軍方式を考えたのじやないかという、こういう質問でございますが、はつきり一つその点をお答え願いたい。
  121. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) よくわかりました。  独力で以て、いわゆる日本防衛をして行く、その下における三軍方式であるか、そういうことでありますか。
  122. 山下義信

    山下義信君 そういうことです。
  123. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 率直に申します。我々日本国民の将来考えられることは、私はそこにあると思います。併し日本の現情を見て、そんなことは到底できません。できることじやありません。従いまして、我々の現在狙つておるところは、最大限度アメリカとどういう協力態勢をとつて行こうかという点にあるのであります。申すまでもなく、アメリカにおいても、いつまでも日本防衛をするということは、国内情勢からいつても私はできかねることと思います。徐々にこれは引揚げられることはもう当然であります。併しそれは年数がかかることでありますので、その間において我々はアメリカとの間に協力態勢を整えて行くという方針の下に、日本の財政力の許す範囲内においてやつて行こう、こういう考えの下にやつておるわけであります。これは独力で以て日本防衛態勢を整えて行く方針の下に、いわゆる三軍主義をとつて行こうということになりますると、これはもう日本の国力は到底許すことじやありません。又、日本の国力が許すといたしまして、御承知のように、そういう段階に行けば憲法改正という問題は当然起つて来よう。こう考えております。今の段階においては到底私はできるものでないと考えます。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単ですから……。今、木村保安庁長官保安庁の警備隊について、北海道の海難に関する救助のことに触れましたが、実はこれについて、まあ御承知だと思いますが、非難ごうごうたるものがあるわけですね。五月十七日の読売新聞を御覧になりましても、九日に台風が起つて保安庁のあのフリゲート艦九隻が着いたのは十四日なんですね。而も翌十五にふたたび低気圧が来たという理由で、海難の捜索を一時中止しまして、この釧路沖の安全なところに引揚げてしまつた。そのために捜索が非常に遅れて犠牲が非常に大きくなつたんじやないか。一体フリゲート艦九隻というのは何をしておつたのか。特に海上保安部の人たちも非常に憤慨して、一千五百トンもあるフリゲート艦が若し海上保安庁の所属であつたら退避させなかつたろう、巡視船ですら風速三十五米で操業した例がたびたびあるんだ。それだのに退避してしまつて、そのためにあの捜索が非常に遅れてしまつて、犠牲を非常に大きくしている。それから二、三日前ラジオでもこれは言つておりました。非難ごうごうたるものがあるのです。このようなフリゲート艦をこれから海上自衛隊にすると言つたつて、これは私は実におこがましい次第だと思う。それで私は第四条違反でないかと思うのです。保安庁法の第四条、任務が書いてある第四条違反じやありませんか。これは「海上における警備救難の事務を行うことを任務とする。」ということになつておる。この任務を怠つたことになる。それであの被害を非常に大きくした。この責任を非常に私は重大ではないかと思うのです。これについて、どういう経過であつたのか、そうして又これに対してどういう責任をおとりになるのか。私は関連質問でありますから、長い時間を費やして具体的にまだ御質問できないのでありますが、実は重大な責任だと思うのです。
  125. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今の御発言に対して私は申上げますが、木村委員はその材料をどこでお取りになつたか、これを私はお聞きしたい。恐らくただ新聞だけの材料であろうと思います。詳細なる材料はどこで得られたかと私は反問いたしたいと思います。我々はさようなフリゲート艦が任務を怠つておるとは断じて考えておりません。丁度これは、私は時間は忘れましたが、十一日の午後であつた、夜であつたろうと思います。私のところに電話がかかつて北海道のほうから是非フリゲート艦を出動さしてもらいたいという、どうしようかと言うので、すぐ出せということで準備に着手さしたのであります。十二日の午後一時に、これは油を積まなくちやなりませんから、横須賀港を出港いたしました。十四日の午前五時三十分頃に現地に到着して直ちに捜索したのであります。ところが夜半から台風のため、これは三十メートル以上の台風であります。その台風のために一時南方に退避したのであります。それから十五日の午前六時頃台風の眼がここを通過いたしましたから、十六日の午前七時頃に現地に戻つてその捜索を再開いたしました。十七日の午後八時頃まで作業実施の後、油を積んで、その後、更に捜索方針打合せのために室蘭に向つた次第であります。この第一船隊群の総合発見状態を申しますると、出漁中の漁船が八十五隻、うち行方不明として捜索中のものは六隻を確認いたしました。無人標流漁船が一隻、行方不明捜索中の第五こはる丸というのであります。漁網——漁業の網であります——それを収得したのが六件、漁具収得が三件、ブイの収得が一件。それからブリッジの天井板が一件、機械室の天蓋一件、船体破片が二件、これは船名も皆わかつております。十分に活動したのであります。この船には報道陣も相当入つておるはずであります。報道陣を乗せるように私は言つております。この報道陣が帰りますると、その事情は十分判明することと私は考えております。決してフリゲート艦はやたらに退避したわけでも何でもありません。尽すべきことは十分尽したはずであります。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の質問時間でございませんで、関連質問ですから多くは申しませんが、他日又具体的に、もつと私は質問し、それから責任を持つて追及したいと思う資料として我々は、今報道陣と言われましたが、新聞を今のところは信用するよりほかありません。読売新聞の五月十六日、十七日、それから二日前のラジオでも、民の声として、これは非常な非難ごうごうたるあれを言われている。こんなことでフリゲート艦というものは、一体、人命を救助すると言つておるけれども、何をやつておるか、こんなことで国を護れるか——そういう議論も出て来ておる。今伺つたところだけでは私もその真偽はわかりません。従らに退避したのではないと言つておるけれども、どうして退避したかという原因をはつきり私は説明してもらいたいし、又、第一管区海上保安本部仲西警備救難部長がはつきり述べておる。これに対して相当批判的な見解を述べているのです。従つて、これに対しては改めて又十分質問をし、又責任の所在をはつきり明らかにしたい。政府も十分それを用意しておいて頂きたいと思います。
  127. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 矢嶋委員に申上げます。質問の時間も少し超過しておりますから、簡単にお願いいたします。
  128. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 いや、関連ですから……。只今山下委員から言われました三軍方式の質問ですが、簡単に伺います。木村長官は何かアメリカ協力して云々と言われておりますが、池田さんがアメリカ行つた場合、地上部隊を主体とする早期増強ということを要望されたわけです。実際援助のほうを見ても、陸上だけに援助があつて、海と空のほうには援助を非常に渋つておるようです。これはアメリカとすればどういう考えを持つているのですか。私は推察するのに、海と空だけは向うで半永久的に押えて、日本には青年も多いことであるから、陸上自衛隊だけを日本の青年だけで増強しよう、こういう方針に立つておるのではないか、こういうふうに私は考えるのでありますが、仮に三軍を打立てる場合にも、こういうアメリカ方針にあなたが協力されてやられたのでは、国民としてたまらないと思うのですが、どういうふうにお考えになつておりますか。
  129. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今あなたの仰せになつたようなことは決してありません。アメリカも、空と海のほうにもできるだけの援助はしたいと申出ておることは事実であります。併し、それは、援助されても、これを動かす乗員の養成については、先ほど申上げました通り、なかなか容易ならんものがあるのであります。それらの点と睨み合せて、我々はこれを徐々に強化して行きたいと、こう考えております。
  130. 山下義信

    山下義信君 次は、今、三軍方式について質問しましたついでに、集団安全保障方式について関連して伺うのでありますが、日本は言うまでもなく平和条約によりまして、国連憲章において地域的安全保障方式を原則的に承認をしておるわけであります。従つて、それが安保条約となり今回のMSA協定となり、且つ又、自衛隊増強と、こう来ておるわけです。現在インドシナの戦争の状況と関連して、米国のダレス国務長官は、頻りと東南アジアの集団防衛機構というものを提唱しておるわけです。従つて国民はやはり自然と、そういうような状態になつて来たらば、いわゆるSEATOの中に、東南アジア防衛機構の中に、日本も当然入らなければならんじやないかということを予想し、いろいろ論議されておるわけです。この点について総理はどういう見解をお持ちでありましようか。これは御専門のことでありますから、総理から伺いたい。
  131. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は正直に申しまして何ら承知いたしておりません。又ダレス氏の発言についても大分問題になつてつて、直ちにアメリカの希望を、アメリカの希望というものがどういうものか知りませんが、これに対して関係国が承認もいたしておらないのみならず、議論の種になつておるようであります。日本政府に対しても何らの申入れもありません。何らの交渉もありません。只今のところ……。
  132. 山下義信

    山下義信君 若しそういう問題がお話に出ましたならば、総理は御賛成になりますか。御反対なさいますか。
  133. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは将来のことでありますから、お答えできません。
  134. 山下義信

    山下義信君 日本が東南アジアの主役をつとめるだろうということは世間で予想しておる。このような重要なことを伺つて恐縮ですが、できれば御見解一つ御披瀝を願いたい。
  135. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は只今申した通り、何らの知識のないものでありますから、お答えしにくいわけです。
  136. 山下義信

    山下義信君 次に伺いたいと思いますのは、海外派兵のことであります。これは松本委員も又矢嶋委員も、各委員からも御質疑になりまして、まだ総理からはつきりとした的確な御答弁は承わらない。先ほど総理は、海外派兵はいたしませんと、こうおつしやつた。重大な御答弁と私は承わつております。併し従来、政府は、現在の憲法でも海外派兵をなし得るのだとか、或いは又どうせ敵を叩くには外へ出て行かなければ、飛行機で叩かなければ、防衛はできんから、出る場合もあるのだとか言つて海外派兵必ずしも不可能にあらずという説を述べておられるので、従つて国民海外派兵ということに、非常に心配いたしておる。これは何らか国民の心配を一掃するために、はつきりとした力強い声明を政府はなされる必要があるのではあるまいか。併しながら、肚の中では、場合によつてはこれは海外へやらなければならないという気持があれば、それはできませんけれども、真に海外派兵考えていないのだ、国民を外に出して殺すという気はないのだということならば、何か国民の安心するような声明を、政府はなさるお考えがあるか。或いはこの席において重ねてはつきりとした首相の御言明を得たいと思うのでありますが、如何でございますか。
  137. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私ははつきり申上げますが、海外派兵の意思は毛頭ないのであります。これは、はつきり申します。何となれば、国民が希望せざることをいたすべきではないと思います。今日お話のように、国民の間には、海外派兵をしていいという輿論は、私はまだ生じておらないと思います。故に、政府としても海外派兵考えるべきでないと考えるのであります。
  138. 山下義信

    山下義信君 わかりました。如何なる場合にもございませんね。断じてなさいませんね。
  139. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そう証文をお取りになろうとすると、それに対してお答えできないと言わざるを得なくなりますが、私は今のところ、信念として、いたさないほうがよいと考えます。
  140. 山下義信

    山下義信君 次に伺いたいと思いますのは、兵器産業のことでございます。話がちよつと変りまするが、我が国の兵器産業の在り方につきましては、いろいろ問題があると思うのでありますが、政府は、兵器産業と言いますか、防衛生産と言いますか、我が国の防衛生産工業、兵器生産工業に対しまして、どういうようなお考えを持つているかという、基本的な方針を承わりたい。私はこういう言葉を使いたくないが、立場が違いますから……。世間ではいわゆる防衛生産の育成方針と言うが、我が国の防衛産業関係に対する政府の基本的な方針というものを聞きたいと思います。
  141. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは私から申上げたいと思います。
  142. 山下義信

    山下義信君 総理お答えになりませんか。
  143. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣から……。
  144. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは国民ひとしく防衛生産のことについては十分関心を寄せていることと考えております。そこで問題は、将来日本自衛隊が使用すべき兵器、武器を、アメリカ日本でどれだけ作らせるか、又日本自体においてこれを作るか、この二つなんであります。勿論、域外買付で、アメリカの注文によつて海外において買付けるということもありましよう。ありましようけれども、私はこの二つであろうと思う。それらの点については、私は、できるだけ日本の負担にならないよう、而も将来過剰設備が生ずるような虞れのないように持つて行かなければならん。御承知の通り、一時注文があつても、その注文が杜絶えて、設備が満足に使えない。過剰になつてしまつた日には、これは日本の経済について非常に悪い影響を及ぼす。それらの点を十分睨み合わせなくちやならん。そこで、将来日本アメリカからどれだけの注文があるか。又、日本自衛隊独自として、使うべきはどれだけの数量になるかということを十分に検討して、而もそれが如何なる兵器産業をやつている工場に請負わせるか、これらを睨み合わせて考えるべきであろうと考えます。要は、今申上げましたように、注文が杜絶えて、そうして折角作つた工場設備が役に立たんということにならないようにして行くことが、一番必要であろうと、只今のところ考えております。差当りどこの工場でどうすべきかということについては、我々はまだ何も計画も立てておりません。
  145. 山下義信

    山下義信君 これは一般的な基幹産業をこの際力強く援助して行くか、或いは直接兵器生産工業関係のみに対して直ぐ手をつけて行くかという大きな論争もあるのじやないかと思いますが、まだ結局政府はこの防衛産業に対する根本的な方針は、つまり山が立たん、こういう御説明ですね。
  146. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 現在研究中でございまして、まだ結論に達しておりません。
  147. 山下義信

    山下義信君 関連ですが、兵器産業の一部を国営でやるというようなお考えはありませんか。全部あくまで民営でやるというお考えでありますか。
  148. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは私見でありますが、これは国営でやるよりか民間でやらせることが極めて望ましいと私は考えております。
  149. 山下義信

    山下義信君 これは総理にはお気に入らんことを伺うのでありますが、最近、兵器産業の大きな会社が検挙されまして、そうして日平産業でありますか、それから又、副総理その他の閣僚に献金がなされたということが新聞紙上で報道されていることは、そういうことの事実が何よりでございましようが、兵器産業が請負であれ何であれ非常に防衛関係に関連して、経済界の人たちがこの注文を受けたり、いろいろそれを狙つて来ることは言うまでもない。それが政界と結びまして、そういう政界等に献金が行われるような事態がありましては、いわゆる国の防衛を喰い物にする。いわゆる産業人がそれを喰い物にして、従つて戦争挑発というようなことがそういつたようなところからも起きて来る。これは従来の歴史の証明するところである。私は、兵器産業と政界との関係は、殊に政府との関係は非常に厳粛なものがなくちやならんと考えるのでありますが、総理はどうお考えになりますか。その点についてどういう御配慮をなされるでありましようか。或いは又そういつたような、現在兵器注文を受けている会社等から問題になつている点は、明確にこれは国会等におきまして一つ事態を明白にして頂くというお考えがありましようかどうか。この点を一つ伺いたいと思います。
  150. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見はよく承わりまして、又、今、木村長官の言われる通り研究中であるのでありまして、その研究の場合に、御意見のようなことは十分取入れて、木村大臣も決定せられることであろうと思います。お話のところはよく承わつておきます。
  151. 山下義信

    山下義信君 長官、如何でしようか。その点の御用意がありますか。
  152. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはお説の通り御尤もな御意見であります。それらの点については十分研究いたしたいと思います。併し私は、昔のような軍工廠ですね。ああいうものをやるべきじやないと私は考えております。やはり民間各会社に競争させてしなければ本当の発達はできんと考えております。大所高所からこれは考えて私はそう考えております。それらの点については十分研究いたしたいと考えております。
  153. 山下義信

    山下義信君 私は時間がありませんから多くこの問題に費やすことを避けますが、併し例えば昨年の三月に、政府総理大臣の官邸に、兵器産業に関係の密接にある者を数十名集めて、そうして解散直後においてそれらの産業人と懇談をなさつて、いわゆる選挙に対して援助を求められた事実がある。そういうことを今後なさらんように、いやしくも、それは広く援助を求められるのはいいのでありますけれども、いやしくもあなた方が防衛戦争をなさぬといわれる矢先に、兵器産業、弾丸や鉄砲を造る諸会社に軍用金を突きつけられるというようなことは、これは絶対にお避け願わなければならんことじやと、私は今後そういうことのないように是非一つここで確言を願つておきたいと思うんです。如何ですか。
  154. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話のような会合をいたした記憶がありませんが、よくなお調べて見ます。はつきり記憶がありませんから……。
  155. 山下義信

    山下義信君 一つお願いします。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国防会議は別に法律できめるようです。が、どの程度のことを、どの程度の範囲のことを規定するわけですか。
  157. 山下義信

    山下義信君 私もこれは一緒に、木村君の質問と、今、私もしようと思つておりましたから、併せて伺うんです。国防会議国防の基本方針をお定めになる、そういうことはいいんですけれども、この法律を実施したら、この法律を施行しましたら、自衛隊の出動については国防会議に可否を問わなければできないことになる。そうすると、国防会議というものが法律で決定しなければ、防衛法案が今日参議院で成立いたしましても、自衛隊は動かすこともできんじやないか。でありますから、この国防会議の法律はいつお出しになるお考えかということを、まず第一点に伺わなければなりません。そうしてどういう御構想をお持ちになつているか、ここでお示し願わなければ、防衛法案審議に入ることはできない。防衛庁設置法自衛隊法を幾ら審議しましても、自衛隊が動くには国防会議によらなければならんことになつている。その国防会議がどんなものが作られるのだか法律も出ないようなことでは、我々はこの両法案審議はできない。この法律はいつお出しになりますか。その大体の内容はどういう構想が決定されているかということをお示し願いたい。
  158. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御尤もであります。で、構想について明日私は詳しく申上げたいと思います。
  159. 山下義信

    山下義信君 ここでおつしやつて頂きたい。
  160. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申上げます。
  161. 山下義信

    山下義信君 今日おつしやつて頂きたい。これはもうできておらなければならん筈だ。それでなくて、二法案審議せい、審議せいとおつしやることは無理だ。総理がここにおいでになるときに、大体でよろしゆうございますから……。実に大事なことです。これは構想を御発表願いたい。これは閣僚のみを以て会議の構成をなさるお考えか、或いは民間人をお加えになるか、なかなか重大な問題点がある。どういうふうに大体を御決定なさつたか。或いはまだきまつておらんならきまつておらんでよろしいですから未決定でもいいが、未決定ということはない筈なんです。この防衛法案を御提出になると同時に、少くとも今日の段階では、大綱だけは御決定にならなければ我々審議ができません。
  162. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御尤もであります。そこで……
  163. 山下義信

    山下義信君 御尤もだけじや長官、困る。
  164. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この構想内容をどうすべきかということについては、我々非常に頭を練つております。事実、今お説のように、関係閣僚だけでこれを構成すべきか、或いはこれに民間人を加えるべきか。先ほど松本委員でありましたか、言われましたように、民間人を入れるとして、これは旧軍人が入るのかどうかということも、一つの疑問の点だろうと思つております。それらの点については、いずれ国会の御審議を願わなくちやならんかと考えておりまするが、我々といたしましては、この防衛庁或いは自衛隊を動かすのは全部ときの政府責任においてやるべきことであるから、だからこの構成員であるものは、政府責任者、いわゆる関係閣僚でやるべきものであろうという考えを持つているのであります。併しこれに対する相当有力な反対論があります。民間人を入れ、而も旧軍人は排すべきだという説をなす人もあります。併し今申しましたように、私としましては、これはやはり政府が全責任を負うべきものであるから、関係閣僚と、そうしていわゆる統合幕僚会議の長、これをオブザーバーとして入れるべきである。こういう構想を持つているのでございます。
  165. 山下義信

    山下義信君 明日お発表になるものを、ここで御発表にはなれませんですか。
  166. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 用意しておりませんから。
  167. 山下義信

    山下義信君 それでは明日承わることにいたしますが、大体はこれはやはり諮問機関になさるのですか。或いは或る種の議決機関になさるのですか。
  168. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 諮問機関です。
  169. 山下義信

    山下義信君 飽くまで諮問機関ということになりますか。結局この設置の目的は明日承わるわけでありますが、一応聞いておきたいと思いますことは、いわゆる総理自衛隊の最高指揮官としての強大なる権限を、或る意味において国防会議はチエツクするという、そういう思想を加えている構想でございますか。
  170. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通り、一番問題は、防衛出動つまり部隊を動かすときです。出動です。これが一番大事です。これが根本です。その場合には国防会議によつて可否をきめるということを考えております。
  171. 山下義信

    山下義信君 詳しいことは、他の委員にも御迷惑をかけますから、明日国会へ御発表になりますか。要綱をお出しになりますか……。それでは一つ明日資料として国防会議の要綱を我々に御配付を願いたいと思います。  それでは最後に、私は伺いたいのでありますが、今回の自衛隊、今で申しますと、保安隊の補欠ですね、欠員の補充ですね、非常に成績が悪いと世間で伝えられております。いや、最近は締切りに集計が上つて来たのが、人間が来たのか知りませんけれども、どつと来て、五万でありますか六万でありますか応募者があるということが言われておりますが、実際に成績は悪いのじやないですか。これは現在の補欠の募集がそういう状況でありますが、今後新たに増員する自衛隊の応募者は、これはどうですか、見通しとしては余り人気がよくないのじやないかということが思われますが、率直にこの点を承わりたい。
  172. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申上げます。主として人気が悪いわけじやありません。前回の補欠の補充のとき八千人募集した。それに対しまして応募人員が五万七千三百三十八人でありました。相当の成績であります。そこで落ちた人で相当の立派な人があるわけです。それが落ちて郷里の人たちに申しわけないと言われる。これは困つた問題です。そこで又応募してふるい落された日にはかなわんというので、余ほどの確信のある者が応募するわけです。(笑声)今後の何は現在のところ……。
  173. 山下義信

    山下義信君 総理の前でそんないいことばかりおつしやると……。
  174. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 決していいことばかり言うのじやありません。六万九千四十七名です、十八日現在で……。これは相当確信のある者が受けるわけです。この内訓を申上げますると、どういう区が一番応募者が多いかと申しますと九州です。その次が第一管区、東京を中心とする区が二番目です。中部のほうが第三番目です。北が非常に悪いのです。応募者が比較にならんほど北と九州とは違うのです。そういう状況であります。決して悲観すべき程度じやありません。
  175. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 木村長官が今まで我々に述べていることは、優秀な隊員を確保するためには四倍程度の応募者が必要だと言われていたわけですね。二万八千人に対して六万九千云々というのは未だ曾つてない低率ですね。統計から言えば……。これは必ず質的な低下を来たしている。更にあなたのほうでは、今年度中、陸上自衛隊だけで七万一千七百人補充する予定だと言いますが、一体これで信頼できる素質のいい隊員を確保できますか。今まではできないと言つてつたのですよ、あなたは。
  176. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いや、私は確信があります。
  177. 山下義信

    山下義信君 長官の御説明では非常にいい例を一つお挙げになつたわけでありますが、それは、それもありましよう。併し、私は、総理に申上げておきます。最近の自衛隊の応募者は、実に気の毒な、食えない失業者ですね。工場をもう追われた、そういう失業した工員ですね。労働者それから又、商店の、昔の言葉で申しますと、番頭、丁稚と言いますか、言葉は悪いですが、商店の店員、これがいわゆる中小企業の倒産によつて整理されたといつたような、実にみじめな階級の青年が、もうやむにやまれずしてどつと行つているという、質の内容の状態、これを気をおつけにならなければならん。従つてこれらは政治にも不平を持ち、この社会の生活の上からも、忿懣を持ち、これらが非常に応募者の大多数を占めているということを私は申上げておきたいと思う。これは結局最近の派兵問題のやかましいのやら、そういうようなことから影響して、非常に質も劣り、応募者も減少しているという状態であるということは、如何に自衛隊の設置が国民に不人気かということを明確に物語つていると思いますから、総理は十分一つ調査をしてお考えを願いたいと思います。それから、これは私だけが申しておりましてはいけませんから、時間が来ましたから、私は、最後に総理にお餞別を差上げる。外遊なさいますのでお餞別を差上げたい。何もございません、何もございませんが、私は申上げます。これは若し再軍備をお進めになつて、憲法改正しなければならんような事態があつて国民に諮られたならば、恐らく日本の国内は二つに分れて、流血の惨事が起ります。これを一つアメリカ行つておつしやつて頂きたい。国民はもう絶対に再軍備に反対いたします。海外派兵にも絶対反対、若し憲法改正を諮ろうとするならば、恐らく日本の国内には流血の惨事が起るだろうということを、私は反対党としてお餞別を差上げておきたいと思いますから、どうぞこの餞別を使つて下さい。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、質問じやありませんから、資料の要求ですから、その点お含みおき願います。審議を順調に進めるために、早目に資料を要求しておいたほうが、準備の都合上いいと思いますので、一応申上げますから、控えておいて、これは早く提出できるかどうか、これをお答え願いたいのです。  第一は、MSA供与兵器の品目、数量、金額、性能、それから製造年月の一覧表、これを陸海空別に資料として提出して頂きたい。  第二は、保安隊と陸上自衛隊の部隊編成比較表です。これを、方面隊、管区隊、普通科連隊、特科連隊、そういうものを初め、各種部隊について詳細に明示して頂きたい。  第三、二十九年度の陸海空、三自衛隊の業務計画表を出して頂きたい。  第四、航空自衛隊の二十九年度教育訓練計画表。  第五、二十九年度に新設される対空特科群、それから独立戦車大隊の部隊組織及び人員。  第六、二十九年度における陸上自衛隊の部隊定員及び地域ごとの人員配置表。  第七、航空幕僚幹部の機構組織表。  第八、調達実施本部の機構組織と、調達実施計画表。  第九、二十九年度における海上自衛隊の船隊編成と地方隊の組織一覧表。  第十、陸海空三自衛隊の募集計画表。  第十一、二十九年度の陸海空三自衛隊の留学計画、その留学計画については、人員、派遣時期、派遣先。  こういうものについて、これはこの資料がないと具体的にこの法案の検討が困難でありますから、今、私が申上げたこれは最小限度の資料の要求でありますから、是非これは一般質疑に入る前に、至急これを準備して提出して頂きたい。委員長からもこの点は十分に早く出すようにお願いしたいと思います。
  179. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 長官、一つ資料を早急に出すように私からも申し添えておきます。
  180. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ちよつと一応今のを書いてもらえませんか。間違うといけませんから。
  181. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一応間違いないように書いて出します。
  182. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  183. 小酒井義男

    委員長小酒井義男君) 速記を始めて。  それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後七時二分散会