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1954-03-22 第19回国会 参議院 電気通信委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十二日(月曜日)    午後一時三十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     左藤 義詮君    理事            島津 忠彦君            久保  等君    委員            津島 壽一君            石黒 忠篤君            新谷寅三郎君            山田 節男君            三浦 義男君   政府委員    郵政政務次官  飯塚 定輔君   事務局側    常任委員会専門    員       後藤 隆吉君    常任委員会専門    員       柏原 栄一君   参考人    日本文化放送協    会会長     徳川 宗敬君    お茶の水女子大    学教授     波多野完治君            宝井 馬琴君            大浜 英子君    日本放送労働組    合中央執行委員    長       中塚 昌胤君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○放送法第三十七条第二項の規定に基  き、国会承認を求めるの件(内閣  送付)   —————————————
  2. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 只今から電気通信委員会を開会いたします。  放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件(予備審査)を議題といたします。  本日は参考人の御意見を伺うことになつております。先ず参考人の方に申上げます。  本日は御多用のところ御出席を頂きまして有難うございました。厚く御礼を申上げます。なお当委員会におきましては、先日来日本放送協会昭和二十九年度収支予算事業計画及び資金計画について審査をいたしておるのでありますが、今回の案は、ラジオ及びテレビジョン受信料改訂のことを含んでおりますので、当委員会におきましては、このことの一般に及ぼす影響等の点を考えまして、極めて慎重に審査をいたしておるのでありますが、本日は放送関係又は深い関心をお持になられる方の御意見をお伺いいたしたいという意味におきまして、皆様の御出席願つた次第であります。これから伺います御意見は、主眼受信料改訂において頂きたいのでありますが、これに関連して、NHK経営経理放送番組その他についてお述べ頂くことができれば大変結構であります。御発表の時間は人数の関係等を考えまして、多少の出入は差支ございませんが、大体御一人二十分程度にお願いいたしたく、又御意見お述べの際は、受信料改訂についての賛成、不賛成を明らかにして頂きたいと存じます。  委員各位に申上げますが、参考人に対する御質疑は、他の御用事をお控えの方や、又御加減の悪い方もありますので、御意見の終つた都度お願いしたいと思います。  それではこれより御意見の御発表をお願いいたします。日本文化放送協会会長徳川宗敬君。
  3. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) 本日は日本放送協会昭和二十九年度収支予算事業計画及び資金計画の御審議に当りまして、各界の意見を御聴取になつて審査の御参考になされるために、私もここにお呼び出しを受けたのでありますが、察するところ、只今私は民間放送関係しておりますので、民間放送経営者立場からの意見を申上げろという御趣旨かと拝察いたします。  今回郵政大臣意見書を附して国会承認を求めておられる問題の主眼は、只今委員長の仰せになりました通り受信料値上げの点でありまして、この値上げラジオ値上げテレビジョン値上げ二つの部門に分れておるのであります。併しながら私は民間放送の中でもラジオ放送のみに関係しておりますので、ここでは主としてラジオ受信料値上げに対しまして意見を申上げたいと存じます。元来NHK経営郵政大臣がその意見書の中にも述べておられます通り協会自体機関である経営委員会がその全権と全責任とを持つて専らその経営を掌つておられますので、一般国民には遺憾ながらその内容をつまびらかにすることができないのであります。従つて今回の値上げが果してNHK経理面から見まして、真に妥当性があるや否やを正確に判定することは非常に困難であります。それで私どもはこの値上げの結果が、民間放送にどんな影響を与えるかということを、自分たち立場から判断いたしまして、その見解を申上げるだけでありまして、値上げの可否を決定的に断定するだけの資料を持ち合せていないというのが、実は正直な話であると申上げなければならないと思うのであります。  ところで、先ず第一に、事業計画の中の建設計画におきまして、老朽設備の改良及び取替えについては、その規模内容がどのようなものであるか、具体的に明確に示めされておりません。勿論放送施設が改善されて、立派になることに何ら異存はなく、誠に結構なことと思いますが、例えばごの建設計画一つとして挙げられておる技術研究施設の整備について見ますと、NHK技術研究所が若しも現在の運営をそのまま続けるとするならば、民間放送としてはここにいささか不服を申上げなければならないのであります。同研究所の機構を改めて、NHKを含めた一般放送界でこれを利用できるような制度としない限り、広く我が国電波技術の発展に寄与する度合が少いと申さなければならないのであります。これは計画概説でも調われておる我が国技術水準の向上に資するという点といささか矛盾するのではないかとも思われるのであります。又同じ所で放送文化研究についても、放送文化進歩発達を図ると言つておられますが、これらの研究の結果なり、施設なりが広く民間放送にも均霑されることにならなければ、受信料値上げ意味が本当に徹底したと言えないと、かように思うのでありまして、又次に計画概説の第一に諸経費節減に留意して、業務合理的運営につとめる。」とありますが、人件費において、NHK計画には納得のできかねる点がないとは言えません。一例を東京技術要員にとつてみましても、NHKが三百四十九名、ラジオ東京が百十四名、文化放送が六十二名でありまして、ラジオ東京文化放送とを加えても、百七十三名も少いのでありまして、勿論NHKには御承知の通り第一、第二放送国際放送、そのほか駐留軍のFENという放送がありますが、それにしても三百四十九名という技術要員には再検討の余地があるのではないかと思われる。私は民間放送経営しておりまして特にそのことが痛感されるのであります。これは一例に過ぎませんが、これを類推いたしますと、編成或いは業務の面においても、人員に関して同様のことが言われるのではないかとさえ感ずるのであります。  第三に、出演謝金等の増額についてでありますが、大臣意見書にもありますように、NHKにおける出演謝金は二五%値上げ著作権料それから作品委嘱料は五〇%の値上げということでありますが、これは民間放送、即ち地方の小さい局も含めた民間放送局全般の重大な問題であるのであります。出演料値上げが実質的にも、心理的にも民間放送局を刺激し、延いては不当なせり上げ競争にまで走らせる虞れがないとは言い切れないものがあります。特に娯楽番組においてこれが行われる場合には、その影響民間放送においては見逃し得ないと存ぜられるのであります。なお、これは若し杞憂であれば幸いでありますが、若しもこの値上げを契機として芸能関係専属的傾向が一層強化されるということが予想されるとするならば、それは我々民間放送にとりまして身近に感ずる問題であります。例えばこれは一例でありますが、NHK落語家専属に対抗して、ラジオ東京がとられました落語家五人の専属も、これはラジオ東京自衛上とらざるを得なかつたところでありまして、文化放送もその余波から逃れることができず、やはり自衛上の処置をとらなければならないような羽目になつて来るのであります。  又これと同様の問題として考えられますことは、海外音楽家の招聘についてであります。海外から有名な音楽家NHKが招聘されるのは、いわゆる文化の高揚を目的とする高度の芸術的放送充実を図るためにも誠に結構なことではありますけれども我が国の最近の実情から見ましても、これにはおのずから限度があると考えられます。ヒツシユというテナーを二回、ブタペスト四重奏団を二回招聘されたのであります。それにはそれぞれの理由があるとは存じますが、日本の貴重な外貨を節約すべき今日、高い入場料を取り、血の出るような外貨を使うことに十分留意して頂きたいと思います。又それと同時に、民間放送と徒らに競争されるというような傾向のある点につきましては、特段の御配慮を願いたいと考えるのであります。NHKと各民間放送局とがそれぞれの分野で放送効果を挙げることが望ましいと考えるのであります。  次は、地域別放送充実に関してであります。このローカル局充実については、今回の値上げによる増収をローカル局充実に充てるということでありますが、この地域別放送が大部分中央局の中継である限り、或いは放送施設技術要員の増加を余りしなくとも、番組面でローカル色士出すことは不可能とは考えません。けれども現在すでに各地方民間放送局が県民の放送局として十分その使命を果している以上、NHK地域別放送には或る限度があるのではないかと存じます。地方民間放送局は、その殆んどが地方新聞をバツクとしており、放送を利用する側も、又放送局の職員も大体その地方人たちでありまして、地方各種団体とも資金面で緊密な協力が行われております。従いましてNHKの力を以てしても、これらの地方民間放送局以上にローカル局としての特色を発揮することは或いは困難かと思われるのであります。むしろ私はNHKとしては中央局電波をあまねく地方に流すということに意を用いられ、僻遠の地域NHKが受持つという気持で、徒らに地方民間放送局競争をしないほうが立派な態度ではないか、又そのほうがNHK本来の任務であり、経費の節約にもなることであると考えられるのであります。  まあ以上幾つかの例を挙げて民間放送一員としての私の私見を申上げたのでありますが、これを要するに、NHK値上げの前に諸経費節減と、公益放送を主体とすべきNHKの性格からして、国民一般納得の行くような経営合理化をなされたかどうか。そうして民間放送との調整上、なおNHKに考慮して頂く点はないかどうか、これらの諸点を御審議に際して十分御考察を願いたいと存ずるのであります。  冒頭申上げました通り、私は十分な資料を持つことができませんので、国会が慎重御審議の上、大所高所から御判断になつた御決定に対しましては、十分これを尊重いたしますが、一般の輿論におきましても論じられております通り政府の施策が今日耐乏生活による物価抑制方向に向つておりますときに、NHKのごとき独占事業聴取者大衆にその財源を転嫁すると思われるような値上げは、対社会的、対国家的な一般論からいたしましても考慮を要するものではないかと考えられますし、又民間放送という立場からいたしましても、今回の値上げには、無条件で直ちに同調しかねる事情にあることを御諒察願いたいと存ずるのであります。  なお、一言附加えさせて頂きたいことは、従来何度か行われましたNHK受信料値上げの場合には、民間放送との問題はそれほど大きく取上げられなかつたのに、今回に至つてそれが問題視されるようになつて来たということであります。今から約三十年も前、NHKが発足された当時は、ラジオ普及ということがNHK存在の大きな理由でもありましたし、又大きな目的一つでもあつたと思うのであります。然るに最近では急速に民間放送発達し、整備されて参りましたので、今日ではラジオ普及というNHK目的は大体においてその任務を達成してしまつたと申しても差支えないと考えられるのであります。従いまして今日のNHKは、ラジオに関する限りそのあり方に変更のあるのは当然であります。親鳥が卵を艀してその雛を育て上げてしまえば、親鳥と成育したその雛との関係は昔のままではあり得ないのが自然であります。独占的企業としてラジオの育成に努力されて参りましたNHKに対しましては、我々は感謝の念を禁ずることができませんが、だからといつて、すでに民間放送の成育した只今では、NHKがその独占性を解消して民間放送と無理のないように並存して、お互いに張合つて対抗するというようなことなく、ずべて納得ずくで行く方向に切替えられるのがいわゆるデモクラシーの本旨にかなうやり方ではないかと思うのであります。従いましてNHK受信料値上げの場合などは、NHKの将来のあり方がもつと公共企業化すべきであるという見通しによつて計画されるのが至当ではないかと思います。勿論このようなことは必然的に将来放送法の改正の問題が起つた際にとくと考うべき問題であると存じますが、ラジオ放送全般の健全な発達を図るためには、今から十分研究を重ね、遺漏なきよう準備をする必要があると存じますので、蛇足とは存じますが、ここに一言附加えて申上げた次第であります。  以上私の所見を申上げましたが、先ほど委員長からお話のありましたように、賛否を明らかにしろというお話でありましたので、私といたしましては以上のような理由で、このたびの値上げには賛成できないということを申上げたいと存じます。
  4. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 有難ございました。  徳川参考人に御質疑はございませんか。
  5. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 徳川さんに一つだけ伺いますが、今お話の中に、技術研究とか放送文化研究でもつと民間放送のほうでも利用しやすいようにしてくれというお話がございましたが、これは実は私はこの委員会を通じまして数回NHKの当事者に警告をしました。郵政省にもそういう注意をしておるのであります。そのたびに十分そのつもりでやつておるので、御要望があればどんな技術研究でも引受けるし、又どういうふうな資料でも提供いたしますということを繰返し述べておられるのですが、今のお話ではそれが十分に行つていないような印象を与えるお言葉がありましたが、実情はどうなんでしようか。それから若しできればどういう事柄についてのNHK研究所協力民間放送として望まれますか、その点も若し伺えればお話願いたいと思います。
  6. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) 只今新谷委員から、研究機関民間で利用することについて、前にNHKのほうにお申入があつたということを伺いまして、誠に有難く思つておるのでありますが、私ども希望といたしまして、現在でも決して門戸を鎖しておられるというわけではないと思いますけれども、今度の値上げをされる、そしてこれらの研究所を拡充されるという場合には、よ一層民間に対するいろいろなお取計らいを願いたいという希望を今申述べたのでありまして、ここで今具体的にどうこうということを申上げる今準備はございませんけれども、そういう点につきましては、なお今後十分研究いたしまして希望を述べさして頂きたい、かように考えております。
  7. 山田節男

    山田節男君 徳川さんに民間放送のまあ責任者としてお伺いしたいことは、さつき出演者謝金を今年度NHKにおいて二五%上げる、そうしてNHKのほうで落語家専属をやれば、ラジオ東京も五名かの落語専属家を置いた、これは若しおわかりになればNCB出演者謝礼ですね、これが全体のどのくらいの。パーセントを占めておるか、パーセンテージだけでもおわかりになりませんか、二十七年、二十八年くらい。今年度はまだ完了しませんが、大体NCB出演者謝礼としてお支払になるものが全体の費用の何パーセントくらいかかつているかということはおわかりになりませんか。
  8. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) 出演料の問題についてお尋ねがございましたが、今日その資料を実は持つておりませんので、若しも御要求がございますならば、早速書面で一つ御報告申上げたいと思います。
  9. 山田節男

    山田節男君 それは一つお願いしたいと思います。それから次には、これは公共放送商業放送と並立して行くわけですから、出演者について、このままにしておけば勿論競争が非常に起るわけであります。従つてこの出演者謝礼せり上げといいますか、これはどつちからせり上げるか知らんがとにかく放送局のほうで或る特定の人に対しては競争するということは、これはあり得ることです。で、民間放送として、こういつた芸能関係出演者に対しての謝礼というものを、民間放送だけで協定をして一つの格付というか、或いはないとすれば今後そういうような気運があるか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  10. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) 只今山田委員からの出演謝礼に対して、民間放送側協定があるかないか、又将来そういうような協定ができる見込みがあるかどうかという御質問とぞんじます。やはり民間放送が発足いたしましてからまだ日も浅いためもございますし、又これが別々の企業体になつておるという関係上、その協定というものは甚だ困難であります。併しながらここに馬琴さんがおいでになつてつて、それは料金が高いほうがいいとおつしやるかも知れませんが併しこれはだんだん年が経過いたしますに従いまして、おのずから或る一定の所に落着くんじやないかと、こう思います。従いまして或る時期には協定もできることが期待されるんじやないかと思いますが、現在はまだそれは私はないと存じております。私どものほうの放送局も発足以来まだ満二年になつたばかりであります。今後続けてやつております間に、そのような極くリーズナブルな線が出て参るんじやないかということも、実は希望として考えおる次第であります。
  11. 三浦義男

    三浦義男君 徳川さんにお伺いしたいんですが、今のお話では、民間放送立場ということが非常に強調されたようでありますが、私まあこれは考えますに、民間放送というものはこんなふうに続々これから現われて参るような情勢なんざんすね。こういう情勢について如何でございますか。協会長としてどこまでもその今の趨勢で以て殖えて行くことに御賛成でございますか、どうですか。
  12. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) 只今三浦委員から民間放送の数がますます増して行くのじやないかという御心配の御質問でございましたが、周波数の数というものはさまつているのでありまして、現在すでに出揃いました民間放送の数が大体は頭打ちになつているのじやないかというふうに思うのであります。併し周波数をたくさん持つておられるのはNHKでございますから、まあ将来NHKあり方がどう変りますか知りませんが、それによつては又民間放送の数も従つて殖えて来るということも予想できるのでございますけれども、現在の実情では先ず大体この辺で落着くのじやないかというふうに私は観測しているのでございます。
  13. 三浦義男

    三浦義男君 まあ場所によりましては民間放送で以て非常にまあ経営の困難な所があり、又一つの県で二つも三つも持ちたいというような出願が出ているようなんですがね、これは今おつしやるように周波数で以てまあコントロールされるようにはなつておりますけれども、そういう形勢が非常に多いようなんですが、こういうことにつきましては、協会なんかとは余り御相談なしに地方から出て参るものでございましようか。
  14. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) 私は先ほど申上げましたように、民間放送一員として今日は出席したのでありまして、この周波数に関する認可に権限は郵政省で持つておりまして、私から何とも申しあげられません。併しまあ三浦さんの御心配になるような乱立というようなことはもうこの程度でとまるんじやないか、私ども同業者といたしましても、勿論そう乱立することは好まないのでありまして、これは郵政当局が適当な御処置をなさるものと私は信じております。
  15. 久保等

    久保等君 一つお尋ねいたしますが日本文化放送人件費ですね、人件費言つても特に給与関係経費総額が総経費の大体何パーセントくらいになつているのか。それから更に給与ベースベースがおよその見当ででも結構ですが、どのくらいになつておられるのか、その二点だけちよつと御存じでしたらお尋ねいたしたいと思うのですが。
  16. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) 人件費総額が総経費の何パーセントになつているかという点につきまして、実は今ここに資料を似ておりませんが、これは後刻又申しあげますが、この給与ベース関係は、私のほうで調べましたものを申しあげますと、この標準は大体一万八千百八十九円、それから他のほうを申しあげましようか。
  17. 久保等

    久保等君 そうですね、二、三若しおわかりでしたらば…。
  18. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) これはまあほかのことでございますから私はよくわかりませんが、私のほうで今手許に持つております資料では、ラジオ東京が五百六十二名で一万九千九百八十円、これはおよそであります。それから大坂のほうへ参りまして新日本放送が二百八十七名、一万九千八百五十六円、それから朝日放送が二百四十名、一万七千三百二十九円、それから名古屋の中部日本放送が三百名、一万七千三百三十一円と、こういうふうになつておりますが、他局関係はこれはただ御参考に申上げただけで、確実なことはわかりません。
  19. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 一つだけ委員長から伺いますが、政府の低物価政策の折柄余り賛成できないというお話でございまするが、民間放送のほうでは電波料をお上げになるようなお見通しはございませんかる特に日本文化放送は今度十キロから五十キロになすつたのでございますが、そういう点からも電ぱ波料が今の程度で相当期間行くものであるか、或いは競争が激しくて引き下げになるか、或いは値上げになるような傾向にありますか、その大体のことを伺いたいのです。
  20. 徳川宗敬

    参考人徳川宗敬君) 民間放送、特に私のほうの文化放送電波料が上がるか下がるかという御質問でありましたが、これは文化放送について申上げますと、文化放送は昨年の暮に五十キロの増力許可を得ておるのであります。それで只今鋭意その準備をしておりますが、本月の三十日からいよいよ十キロが五十キロの出力を出すということに相成るのであります。従いまして文化放送としては、この五十キロになります機会に値上げをいたすということを先日発表いたしました。その程度は大体同じ五十キロ局であるラジオ東京の少し下回りという程度に事実はなつております。これはなぜそのような値上げをしたかという御質問があると思いますけれども、これは今申上げましたように文化放送といたしましては、出力が増大いたしまして、そうしてサービス・エリアが広くなるということが一番の大きな理由でありまして、従来低かつたものがやつと五十キロのほかの放送局並みなつというのであります。なおこの値上げにつきましては、このラジオの宣伝というものが広告の媒体といたしまして、その媒体価値が非常に上つて参つた。これは勿論二年前のすべての局が開局したときと比べますと非常にその媒体価値というものが上つて来ておる。従つてその媒体価値上つたのに対して聴取率も上つて来ておる。それから番組編成というものにもいろいろ費用がかかつておるというような実情から、やはりこれは一つ値上げ理由になると考えておるのでありますが、文化放送におきましては、今回は五十キロの増力に関して値上げをいたしたいというのが実情でございます。
  21. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 次に、お茶の水女子大学教授波多野完治君にお願いいたします。
  22. 波多野完治

    参考人波多野完治君) 私はお茶の水女子大学において教育心理学を担当しておりますほかに、東京大学において視聴覚教育の講義をいたしております。で、視聴覚教育と申しますのは、主として映画、放送、スライド、その他のものを教育に利用するということでございます。それから文部省の中に教育放送協議会というものが設けられておりまして、これが東京では日本文化放送を通じまして毎日十五分ずつ教育的な放送を出しております。それの教育放送協議会は、その放送の企画の監督をするというふうなことになつておりますが、その放送協議会会長をいたしております。そういうふうな関係で恐らく今日参考意見を述べるようにというふうに言われたものと存ずるのでございます。  それで私といたしましては、そういう視聴覚教育立場から、主として教育放送関係する問題と、それから娯楽放送の問題、これも視聴覚教育のほうの立場から。それから第三番目にローカル放送の問題という、この三つの点から私の意見を申上げてみたいと思うのでありますが、結論のほうを先に申上げますと、私は値上げに関しては止むを得ないんじやないかというふうに考えております。どんな場合でも値上げというものは好ましくないものでありまして、昨年新聞が二百二十円から二百八十円に上りましたときにも、私どもは決してこれを望ましいとは思わなかつたのでありますが、併しその値上げに反対すべき場所を放送局でも下さいませんでしたし、勿論新聞ではそういう意見を開陳さしてくれることができなかつたのであります。今度の場合にも決して望ましいとは私は思つておりませんのでありますが、併しいろんな事情からこの程度値上げは止むを得ないのじやないかというふうに思つております。  NHKでは第一放送と第二放送を持つておりまして、第二放送は十六時間の放送の殆んど全部が教育放送であります。午後はときどきスポーツの放送どもありますが、主としてこれは教育放送でありまして、いわば学校及び社会の一般に成人教育及び母親などの教育というものと、それから学校のための教育放送を出しているものであります。ところで教育放送と申しますものは、普通の放送と非常に性質の違つたところがございまして、相手は主として未成年の者でありますので、その内容には特別の吟味を必要といたします。間違つたことを放送いたしますと、それをそのまま鵜呑みにしてしまうようなことがありますので、放送内容には吟味の上にも吟味を加えなければならないということ、それからこの放送は非常に短時間に一過性でありますので、よほどここのところは注意して聞かせなければならないというふうな、そういうことを特別に注意する必要がある。放送のやり方というものに特別に注意する必要があります。それから放送は一方向的でありまして、つまり子供のほうから先生に聞き返すというふうなことがやりにくい。そういうことが放送ではやりにくいことでありますから、ワン・ウエイと申しますが、そのワン・ウエイという性質がありますために質問ができませんので、その内容が聞いただけで十分にわかるようなふうにしなければならない。そのためには子供の年齢や、それからその地域の特性なども十分考慮して放送の仕方を気を付けなければならないというふうなことがございます。そのために放送のやり方に特別な研究が必要なばかりでなく、子供の反応を調べまして、放送聴取の状況が満足なものであつたかどうかというふうなことの反応を調べましてその反応の結果を絶えず学校放送なり、その他の教育的な放送の改善に振向けて行くということが必要になるわけであります。で、そういうような特別の研究を必要とするところに加えまして、学校放送は相当たくさんの聴取者が聞いているものでありますが、併しこれは全部無料でありまして、現在のところ聴取料というものを学校放送に対しては取つていないのであります。そういうことで商業放送などにおける放送とは非常に違つたところがあるわけであります。で、第一放送と第二放送と両方を合せてNHKの性格というものを検討してみませんと、第一放送の部分だけと、それから商業放送放送種目というものを比べておりますと非常な誤解が生ずるのじやないかというふうに思うわけであります。第一放送と第二放送と両方をかみ合せてNHKの性格というものを考えてみる必要があるのじやないかと思うのであります。それから大人向の放送でありますと、その放送効果というものが大人から直接に聞えて来るわけです。投書がありましたり、或いはモニターから直接それを聞くことができるのでありますが、子供の場合には直接の声、子供から直接聞えて来る声と、それから子供をつかんでいる先生たちから聞えて来る声と、この両方を見なければ本当の放送効果というものはわかりませんので、そういう点でいろいろな特殊の装置が必要になつて参ります。そういうふうな装置を持つておりませんと、教育放送というものは十分に効果のあるようなふうに改善されて行かないのでありますが、そういうふうなものも大人向の放送を主として考えているような商業放送では余り重要にはならないのであります。ところがNHKのほうではこういうものは殆んどその公共放送としての生命を制するといつてもいいほどの重要性があるだろうと思うのであります。  それから次に、商業放送の中における教養放送又は教育放送でありますが、これは私が昨年の七月から今年まで、半年ほどの間文部省放送というものをやつてみまして非常に感じたのでありますが、今までのところ相当金をかけてやつてみた番組もあるのでありますが、なかなか商業放送の中で教育放送をやるということはむずかしいところがあります。娯楽放送の中にぽつんと教育放送が入りますので、そういうふうなところが非常にむずかしいのと、それからコンマーシャル・メッセージが入つて来るのが気に入らないというふうな意見がたびたびいろいろなほうから言われて参りまして、非常にむずかしいところがございます。併しそれにもかかわらず、商業放送の中に教育放送又は教養放送というものをできるだけたくさん入れるようにして行かなくちやいけないというのが私の考えなんでありますが、併し教育放送というものを本当に効果あらしめるためにはコンマーシャル・メッセージなしの放送というものを考えなければどうしてもいけないということが、この半年ばかりやつてみてよくわかつたのでございます。ところが文部省の放送のほうは、予算が非常に少ししかありませんで、電波料を賄うことができませんために、プログラムの編成費だけしか金がないものでありますから、そういう方法がとれませんので、現在のところではそういうふうに行かないのであります。NHKのほうはコマーシャル・メッセージというものが全然ありませんので、非常にいい環境の下で教育放送を行うことができる。こういう公共放送を持つているという日本放送法が非常な強みになつているというふうに私は考えております。で、来年度から文部省放送では十五分、といつてもコンマーシャルが入りますので、正味は十二分でありますが、その十二分に対して一プログラム三万三千円の予算をかけてやることになつているのでありますが、多分これだけの金をNHKのように一日三十二時間として一年間通算いたしますと十五億ほどになるようでありますで、教育放送といつても割合に簡単で、ラジオ・ドラマとか、そういうふうな方法をとらないものであつても、放送編成及び実施には相当な金がかかるものだということがわかるのでありまして、そういうふうな点からいつて、今度の値上げはまあ止むを得ないのじやないかというふうに思うわけであります。  その次に、娯楽放送の問題でありますが、この娯楽放送はコンマーシャルの娯楽放送と、それから公共放送としての娯楽放送では非常にあり方が違つている面があるだろうと思うのであります。で、この点で非常に参考になりますのは、カナダの放送組織でありますが、カナダの放送協会の理事をしておりますダヴィドソン・ダントンというカナダの放送協会の理事の人がアメリカへ来て講演したものがございますが、その中で、カナダでは娯楽放送と教養放送というものは区別していないんだということを言つているんであります。つまり商業放送のほうでは大勢の聴取者を集めるということが目的でありまして、本当の主眼はコンマーシャルにあるのでありますから、コンマーシャル・メッセージのところを聞かせるということが主眼なのでありますから、成るべく大勢の人に聞かせるということが主眼になつておりますが、公共放送としてはそういうことは考えられないので、いつも娯楽と教育性というものとを二つ考えて行くというところが特色だろうと思うのであります。それでそういう点からいつでも二つの量、二つの数、何といいますか、二つの要素を考えなくちやならない。一つは、聴取者の数であつて、どのくらいな聴取者が聞いているかということ、併しながらそれだけでは駄目なんで、その聴取者がどのくらいの量の満足をしたか、満足量というものを考えなくちやいけない。即ち公共放送の娯楽放送では、聴取者の数掛ける満足量というもので以てプログラムの成功か成功でないかということを計らなくちやいけないということを言つておるのであります。併しながら商業放送のほうの娯楽プログラムにおいては、満足量のほうは必要がないんでありまして、聴取者の数というものだけが問題になつて来るわけであります。で、そういうような点から公共放送の娯楽放送というものが、教養というものもいつでも考えて行かなくちやならず、そうして多少ずつでも国民の教養及び文化水準というものを高めるということを目標にして行かなければなりませんから、そのためにいろいろな工夫も必要になりますし、又研究ども必要でありましようし、それから相当な冒険もしなければならないというふうなことがありまして、商業放送にはわからないようないろいろな費用がかかるということになるだろうと思うのであります。  それからもう一つ、これはNHKが余り今までやつていないことでありまして、特にやらなければならないことだと思うのでありますが、それはやはりカナダのダントン氏が言つていることで、よいプログラムであればあるほどプロモーシヨンが必要だということを言つております。プロモーシヨンというのは、そのプログラムについての聴取の推進でありますが、一般によい。プログラムを出してやれば、いずれ聴取者は聞いてくれるものだというふうに考える人が多いものだけれど、殊に放送をやつている人がそう考えがちだ。併しそういうものではなくて、よいプログラムであればあるほど、その聴取を推進させるという必要があるということをこのカナダの放送局の人は言つているのであります。で、この仕事はNHKでは余り今までやつていないんでありまして、NHKラジオ新聞というふうなものが出ている程度でありまして、それがやられていないと思います。で、今までのところではNHKだけが独占的に放送を出していた頃には、新聞のラジオ欄などがそのプロモーシヨンの役割を果していたと思いますが、最近では商業放送と新聞とのタイ・アップということが非常に顕著になりましてからは、そういうふうなことがだんだんに行われなくなつて来ている。そういたしますとNHKの多少でも国民文化を高めて行くための努力としてのよいプログラムというふうなものが、どこによつてそういう放送が行われておるかということを国民に知らせるかという問題が起ると思います。これを新聞に広告するということもできるかも知れませんし、又そのほかいろいろな方法があるかも知れませんけれども、いずれにしてもプロモーシヨンというものがなければ、本当によいプログラムを国民の耳まで到達させるということは不可能なようであります。そういうふうなことからいつても、公共放送ではよいプログラムをこしらえるというだけではなくて、それを聞かせる努力のための費用が必要ではないかというふうに思うのであります。それからもう一つ、カナダの放送局の人が言つていることで、非常に面白いと思うことは、大体放送というものは両方から悪口、両方というのは右と左ですが、両方から悪口を言われている程度で丁度よいんだということを言つておるのであります。片方からほめられて片方からばかり悪口を言われるというようではやはり本当ではないんじやないかというふうに思うのであります。  第三番目に、ローカル放送の問題でありますが、ローカル放送は、今日では商業放送のローカル放送が大分殖えて参りましたが、私どもが非常に放送教育のほうから言いまして遺憾だと思つて、おりますことは、本当に放送が届いて欲しい地域放送局が余りだくさんできないで、もう十分に放送局がたくさん存在している地域にばかり放送局がますます殖える傾向あるということであります。即ち僻地の放送というものが、商業放送では振興されて行かないのであります。なぜかと言いますと、商業放送はたくさんの聴取者をつかまえるということが目標でありますから、余り人の大勢いないような地域放送局をこしらえるという努力が少いのであります。そういう点から言いまして、NHKが努力してできるだけ僻地の放送局を建設したり保持したりして行くという努力がありませんと、日本のように非常に文化が中央に片寄つているような傾向のある所ではこれはますくひどくなる虞れがある。そうでなくて、公共放送というものがあつて、それが商売にならないような所にでも放送局を置いて、それを維持して行くということがどうしても必要だろうと思います。先ほど商業放送地方で相当できるようになつて来ているから、もはやNHKとしては中央から電波を流すだけでいいのだし、ローカルの局というものは不必要ではないかというような御意見があつたようでありますが、本当に日本の僻地まで商業放送が行くようになつているかどうかということが先ず問われなければならないのじやないかというふうに思います。  それから第二に、ローカル放送の点で、今までのNHKのやり方を見ますと、非常にローカル放送の企画も貧弱でありますし、それからそれについての予算も余り多くなかつたと思います。これは今までの予算の枠内でやるということからいつて、どうしてもそういうふうになつたのだろうと思いますが、今度値上げができました場合には、ローカル放送のほうに相当な予算を廻して地方独自のプログラムを出す。場合によればそれを中央の電波で以て出すというふうなこともできるようになるのじやないかというふうに思うのであります。私ども東京放送局から受取る謝礼と、地方に行きまして地方NHK放送して受取る謝礼とが非常に違うのであります。地方では大体たばこのケース一つというふうなことになつているのでありますが、そういうふうなことではローカル放送の向上ということは非常に困難じやないかと思います。  それから謝礼の問題でありますが、放送謝礼は私どもの経験から申しますと、大体学術雑誌の原稿料と同じくらいか、或いはそれより少しいい程度というふうに考えられます。NHK放送謝礼というものは、大体その程度になつているように思うのであります。放送というものの性質から言いまして、やはりこれは新聞の原稿料か或いは総合雑誌の原稿料程度謝礼は出るようにすべきじやないかというふうに思うのであります。その原稿を書いた上に、実際に放送局に行つて放送しなければならないのでありますから、その放送のための労力というものをそこにプラス・アルフアとして加えることができれば一番いいと思いますが、若しそれができなくても、少くとも原稿料程度のものは出すようにしなければいけないのじやないか。大体十五分の放送で原稿用紙八枚或いは九枚というふうにして計算いたしますと、只今までの放送謝礼というものは非常に少いのであります。二五%増額してもまだ大変少いのじやないかというふうに考えるのであります。  商業放送公共放送との両立ということは、私は日本放送法の非常に大きな特色だと思います。そういう点から日本放送法というものは、世界のいろいろな放送組織のうちでも最もよくできているうちの一つだというふうに私は考えておりますが、その放送法を効果あらしめるためにも、この程度値上げは止むを得ないのじやないかというふうに思います。
  23. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 有難うございました。波多野参考人に御質疑はございませんか。
  24. 三浦義男

    三浦義男君 先ほどお話のありました学校放送のことで、それを効果あらしめるために特殊の設備が入用なんだというようなことをおつしやいましたが、特殊の設備というのはどういうことをお指しになつておられるのですか。
  25. 波多野完治

    参考人波多野完治君) プログラム・アナライザーというような道具が一番いいのでございます。これは非常に高くてNHKでも幾つかしか持つていないのでありますけれども、そういうふうなものが使えない場合には、聴取している状況をずつと観察いたしまして、その観察記録を取るとか、或いは観察室を特別にこしらえまして、そうしてそこへ、これは主として幼児又は低学年の子供でございますけれども、それを入れまして、それを放送をしている状況を外から見るのでございます。ところがそれを見ているほうは中の事情がよく見えますけれども、中にいる子供にはその観察されているということが全然気が付かないような装置がございます。ワン・ウエイ・スクリーンと言いまして、そういうふうなものを通して観察するというようなことをいたしまして、それで子供たちの聴取状況というものを見るという必要がございます。
  26. 山田節男

    山田節男君 これはあなたが教育放送のほうの専門家として、先ほど来教育放送についているくお話になりましたが、今のNHKの第二放送で主として教育関係のものをやつている。これは村の小学校の卒業生、中学、高等学校、大学等いろいろ教育程度が違つている。聴取者の層が非常に多いわけであります。NHKのごときは、殊に全国のネット・ワークであるからには、そういう層が非常に多いと思います。そういう意味であなたの専門の立場から、今の第二放送の十六時間放送の中に入れられるかも知れんが、極めて高度な文化的な文化放送といいますか、政治問題にしても経済問題にしても、或いは自然科学の問題にしても、普通の聴取者の中で、もつと高度ないわゆる大学教授のレクチュアというような程度のものを、聴取者のほうが相当要求しているのじやないかと思います。そういう意味から言うと、現在のNHKの第二放送の中の番組に入れ得る時間があればいいのですが、若しないとすれば、やはり今のイギリスのBBCがやつている第三放送というものが、公共放送立場から言えば、これは経費はどうであろうと、むしろ経済上の利害を無視してもやるべき一つのプロジェクトじやないかと思うのですが、その点に対する見解はどうですか。
  27. 波多野完治

    参考人波多野完治君) いわゆる第三放送の問題につきましては、只今の御意見と私全く同一でございます。第三放送というものはどうしてもやらなくちやならないのじないかというふうに思つているのでございます。いろいろな形で、イギリスでは第三放送という形で行われておりますし、フランスではいわゆるラジオ・ソルボンヌという形で行われております。こういうふうなものは国内だけとして考えますと非常に聴取者が少いのでございまして、余り効果がないように見えるかも知れませんが、国外の人が非常にたくさん聞いているらしいのでありまして、イギリスの場合でも国内の人よりも国外の人のほうが余計聞いているんじやないかと言われておりますが、ラジオ・ソルボンヌの場合はイタリー、スペインくらいまでの人が聞いて、そうして手紙をよこすというようなことがあるのでありまして、そういう点から言いまして、日本文化がアジア地区では一番高いと思いますので、そういうふうなことから言ましても、一種の海外放送というふうな形をも含めた意味で、どうしてもこれはやつたほうがいいんじやないかというふうに思つておりますが、商業放送ではこれはできないことでございますから、是非これは将来考えるようにして頂きたいというふうに思います。
  28. 山田節男

    山田節男君 これは直接あなたの御意見を求めることは多少無理かと思いますが、折角ですからお聞きしますが、文部省が教育放送民間放送局のエヤー・タイムも買つて放送しておる。さつきその点にも話が触れられましたが、こういつたような、政府教育放送という場合に、民間のエヤータイムも買うというか、むしろこれは公共放送の今の第二放送の時間を割愛してやるべきが当然じやないかと思いますが、先ほども非常に貧弱な予算で以てやつておる。これは私から言えば、番組編成は独立であつて、又NHKが独自の立場から番組編成をする自主性を持つておりますが、この教育放送内容によりますと、大体今文部省が意図しておる教育放送というものは、そう政治的なものでもない。それから政府の息がかかつたといつても、教育に関する限りそう左右イデオロギーが著しく色彩が強いものじやないだろうと思います。その内容は私は知りませんが、いわゆる教育放送立場から、こういうことがいいかどうか。アメリカは御承知のように民間放送だけが、例えばワシントンにおいては、これはテレビジョンもそうでありますが、いわゆる教育委員会で独自の放送局を持つている。州にもみずからの放送局を持つてつて教育を主体とした放送をやる。そういうようなことから見て、今のあなたのお話から言えば、今日文部省のやり方というものは正しいというか、妥当というか、こういう点に対する御見解はどうですか。
  29. 波多野完治

    参考人波多野完治君) これは非常に問題がデリケートでございまして、私の意見では、商業放送の中にできるだけ教養的なものを多くして行くようにしなくちやいけないのじやないか。商業放送というものはもう初めから娯楽本位になつて行くべきものだというふうにきめて、そういうふうに放置するというよりも、何とかして商業放送の中に教養的な要素というものを入れ、又それをだんだん多くして行くように私どもとして努力して行かなくちやならないのじやないかというふうに考えているのでございます。それが一つでございます。それからもう一つは、文部省放送は、初め特別の放送局というものを建てて、それで商業放送電波を買うというやり方でなくて行くことを初め計画したようでございますが、昨年の大蔵省の査定で、その放送局の設立計画が削られてしまいましてただ放送するというための予算だけが出たのです。そんな関係でどうしても民間放送局を通じて放送をするというほかに方法がなくなつてしまつた。それからもう一つは、而も外で企画を立ててやるということもできなくなりましたので、文部省の中で企画してやるという以外になくなりまして、現在のような形をとつているわけです。現在のような形でありましても、その商業放送の中に教育的なものを盛込んで行くというだけの意味は果たしいるように思います。それから文部省でやつておりますのは、青年学級で学習するための材料を提供するというふうな意味がございまして、そういう意味ではその当時までNHKのほうの放送で一番足りなかつた社会教育的な放送のプログラムを出すという意味があつたものでありますから、そういう意味ではまあ或る程度一つの意義があるのじやないかというふうに考えております。
  30. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 私から一つお伺いしますが、第二放送が十六時間、主として教育、教養の面でございますが、相当その中に娯楽的なものが含まれている。中には第一放送でやつたのを、又時間を変えるために再放送もしている。その度が余り過ぎますと第二放送本来の意義を失つてしまうという、又民間放送とのいろいろな分野が非常に混淆して来る。第三放送を必要とするくらいなら、むしろ第二放送をもつと教育のほうに主力を注ぐべきじやないかというような意見も聞くようでございますが、その方面の専門のお立場から、現在の第二放送が、十六時間のうちで持つております大体の時間の割合は、これで十分であるとお考えでありまするか。或いはもう少し娯楽等を片寄らないようにすべきであるとお考えになりますか。そのお考えを伺うことができましたら伺いたいと思います。
  31. 波多野完治

    参考人波多野完治君) 只今の御意見は、実は私がふだん感じておる通りなんでございまして、一面のそういう部分はNHKとして十分反省してもらわなければならないと思いますが、又こういうことも考えたほうがいいんじやないかと思います。それは子供の放送の場合は別でありますが、成人向の教養放送というものは、娯楽放送と余り区別をしないほうがいい。で、本当に高度な教養と、本当に高度の娯楽というものはむしろ一つになるべきものだろうと思うのでありますが、そこまで行かないにしても、或る程度まで娯楽的なもののあとで少し固いものが入るというふうな形になるのが望ましいわけでありまして、そういう意味で第一放送でやつたもののうちで、非常に教養的な意味が高くて、それを再放送すれば確かに第二放送としての価値があるというふうなものは再放送するというふうな形をとつたらばどうかと思うのでございます。たしかイギリスのBBCでは四時間放送というものをやつているようでありますが、これは第二放送でやつているのでございます。四時間放送というのは、例えば芝居の全曲を全くそのまんま切らないでやるというふうなことであります。で、カナダの放送では三時間放送というのをやつておりました。これは水曜日の午後三時間使つてつているのでありますが、カナダでは第一放送と第二放送とがございませんで、あそこはフランス語の放送と英語の放送というふうに分れています関係から、第二放送を置くことができませんので、第一放送で三時間放送というのをやつているのでありますが、この聴取率が大体六%乃至七%、聴取人口の六%乃至七%と言われているようであります。そういうふうに水曜日の午後こういういいものをやるのだということにいたしますと、そのために却つて放送を馬鹿にしているような人までか放送を聞くようになることもあると思いますので、第一放送は娯楽でばからしいものばかりやる。第二放送は固いものばかりやるというふうに余りいたしませんで、むしろ第一放送のいいものは、本当に高度なものだつたならば、第二放送でもたびたび放送して見る。それから第二放送の中で特別によかつたものは、第一放送でも出して見るというふうな交流は或る程度までやつたほうがいいかも知れないと思います。現在のままでは委員長の仰せの通りであるのであります。
  32. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) もう一つ聴取の調査でございますが、放送文化研究所その他いろいろなほうでやつているのでございますが、余りこれに力を入れ過ぎますと、つい大衆的な、むしろ国民の文化を低める方面に片寄りやすいというので、民間放送公共放送とそれぞれ存在を主張して参りますためには、やはり聴取者のことを意識せずにおれないという、こういう問題もあると思いますが、現在の聴取率の調査の方法その他につきまして、何か御意見がございましたら、お教えを願いたいと思います。
  33. 波多野完治

    参考人波多野完治君) この聴取率の調査は、アメリカで広告放送のために発達して来たものでありますから、どうしても先ほど言いましたような聴取率聴取者の数というものが主になつておりまして、それの満足量というほうが余り考慮されない傾向がございますので、併し先ほども言いましたプログラム・アナライザーみたいなものを使いますと、或る程度のなには、聴取内容的な方面のことも出て参ります。それからモニター制度というふうな方法で、聴取内容的な方面を考慮することもできると思いますが、現在のところではまだ本当に完全な聴取状況の、つまり文化的な立場からの調査というものはできないようでございます。それで大体放送のほうの、放送の心理学とか社会学の方面では、こういうふうに言われているのであります。聴取率ばかりでなく、いわゆる考え深い少数者の意見というものを十分に考慮して行かなければならないということを言われています。どうしてもラジオというものは大衆的なものでありますから、大勢の人のことばかり考えたがるのでありますけれども、併し考え深い聴取者というものの意見を何らかの方法で入れて行くというふうなことをして参りませんと、恐らくNHKのプログラムが非常に堕落するという虞れが十分にあると思います。
  34. 山田節男

    山田節男君 あなたがさつきも話されたのであつて民間放送教育放送のことをちよつと触れられたのですが、東京商業放送二つあるのですが、現在の放送内容、プログラムの内容からいつて教育価値が非常に高いか、或いは余りないか、それから若しわかればアメリカの民間放送或いはいわゆるカナダの放送、大分お詳しいらしいが、その教育価値、あなたのほうの立場から御覧になつた現在の民間放送のプログラム全体から見て、聴取者に対する教育価値というものがどの程度あるか、その評価というものはできないのですか。著しく高いか、普通か、或いは余りないか、これは外国に比べて特に日本民間放送、いわゆる勧善懲悪というものでなく、極く現代的に見た教育、知らず知らず教育的のレベルを上げて来るというほうに指向した番組編成にあるかどうか、そういう意味での御判断はどうですか。
  35. 波多野完治

    参考人波多野完治君) まだ完全にこのプログラムの分析をやつてみたわけでありませんので、はつきりした御返事はできないのでありますが、私の大体の印象と、それから大分前に調査したその調査の記憶で申上げますと、日本商業放送は、娯楽物について言いますと、大体アメリカの娯楽放送と同じ水準まで来ておると言いますか、落ちていると言いますか、そこまで来ておるように思うのであります。併しながら娯楽以外の例えば論説風のことをジャーナリストに話をさせたりなんかするような、そういうような放送の点ではアメリカの商業放送では余りやつていないようなことをやつておりましてそういう点でアメリカの商業放送よりもむしろ活気があるというふうに考えられるのじやないかと思います。全体としては、私は日本商業放送は、商業放送としてはいいほうだというふうに判断いたしております。商業放送が始まりましてから最初の一年ぐらいまでは大変プログラムがよかつたのでありまして、品位もありましたし、それからいろいろな公共放送ではできないような大胆な企画などもございまして非常によかつたように思うのであります。一年たつ頃からだんだんと落ちて来ているんじやないかというふうな印象を私は持つております。併しながらそれでもまだアメリカの放送よりは高いものがかなりある。それはどういうわけかということを考えてみる必要があると思いますが、日本の場合にはまだ大体聴取者が一千一百万くらいであります。ところがアメリカの場合には生きているラジオが八千万台でありますから、一億五千万に対して八千万といいますと、まあ非常に受信機の普及率が多いのであります。それで余りものを読んだりなんかすることのない人たちが、アメリカではラジオを聴くことが多いのであります。日本ではそういうふうになつておりませんために、本を読んだり、或いは新聞を見たりする階層と、それからラジオを聞く階層とがダブつてつたりしまして、オーバーラップしておりまして、そのために或る程度まで民間放送の質が下らないで済んでいるのじやないかというふうに考えております。これがもつと急速に受信機の台数が普及いたしまして、本も読まないというふうな、新聞も見ないというふうなところまで受信機が普及いたしましたときに、果して現在の程度の、現在でも相当下つているのでありますけれども、現在の程度さえも維持することができるかどうかということになると、非常に心配だと思います。むしろ今から相当の手を打つておいて、できるだけいいものをみんなが聞いて喜んで行くというふうな気分を作つて行かなければいけないんじやないかというふうに思うのです。そのためにはNHK任務が相当大きいんじやないかというふうに考えております。
  36. 山田節男

    山田節男君 この民間放送がまあ非常に自粛して、アメリカよりか教育的価値が高いという御判断のようですが、今お話なつたように、民間放送が初めはやはり公共的な性質ということに鑑みて相当自粛してやつているだろうと思うのですが、ところがこれはどうしたつて聴取者が殖え、それから商業放送ですからスポンサーを付けなくちやならない。そうするとこれももうすでに二年もたつと民間放送に慣れ、勢いこのスポンサーのほうからいろいろの広告の内容にまで立入るというか、条件が出るだろうと思う。現に大きなものは持つているということですが、これは私は当然な話だと思うのです。むしろ今日の民間放送がスタートにおいて非常に自粛しちやつて、初めはスポンサーも黙つております。次第にこれが殖えて来ますと、度重つて来ると如何にして自分の商品をアトラクチブにするかということ、これは当然な要求だと思う。商業放送経営者としてはこれを無視することはできない。そこで商業放送経営者としてはそういうスポンサーの要求と、それからプログラムのいわゆる公共性を持つた教育的価値というか、文化的価値というものに対して、そこに僕は何と申しますか、フリクションが起きて来ると思う、経営上当然。幸い経営者が飽くまで放送の公共性というものに鑑みて、厳重にその点を重視して警告すればいいと思うのです。商業放送の本質から言えば、スポンサーの意図が強くなつて来るのはこれは止むを得んことだと思うのですね。そこでこういうように民間放送が非常に全国にも殖えたわけですが、こういうものに対する一つ教育番組といいますか、教育的な価値を高からしめるための自主的な民間放送が自主的にそういうものを私は持つべきものじやないかと思うのですが、こういう点が外国にあるか、アメリカ等にあるか私は知りませんが、又そういう必要性がもう現在の段階以後においては必要だとお感じになるかどうか、その点一つお聞きしたい。
  37. 波多野完治

    参考人波多野完治君) 只今のような商業放送の中に教育的なものを持つて来るということは是非必要だと存じまして、それでアメリカでは放送コードを大分前に作りましたときには、大体一五%くらいを教育的な、或いは教養的なものにすること、というような一句を挿入してあつたんでありますが、それをまあその後、たしか二十七年でございましたか、廃止いたしましてから後でも相当有力なネットワークなどが、例えばNBCみたいな所は教育放送の部門ということを相変らず残して、そのことによつてつて聴取率を高めているのです。NBCの放送ならば一流のものをやるから間違いないんだというようなことで行つているようであります。ただローカルの非常にひどい所などでは、そういうふうな余力がありませんので、そういうふうなことができないだろうと思うのでありますが、この商業放送では十分に経営的に成立つという見通しがついて参りますと、だんだんとそういうふう察力ができて来るのじやないか。それで現在では放つておいてもそういうふうに行くんじやないかという楽観論も立つのでございます。尤もこれで競争が非常に激しくなつて参りますとそうなるかどうかわかりませんですけれども東京だの大阪だののように相当経営的に楽になつて参りますと、恐らくラジオ編成権というものが、相当独立を主張いたしまして、スポンサーに対して或る程度の権威を持ち得るということが可能であろうと思うのです。地方のほうではなかなかそういうふうなことがやりにくい、地方のほうでは経営が非常に困難なようでありますから、なかなかやりにくいのじやないかというふうに思つております。  それから先ほどテレビジョンのことを言い落しましたが、テレビジョンの場合には、アメリカの場合でありますが、経営が困難であつたためでありますが、そのためにスポンサ院の圧力が非常に強くなりまして、なかなかうまく行きませんで、結局現在のところでは、非常にプログラムが落ちてしまつて、まあアメリカ全体、殊に教育者などもつているというふうな状況になつているようであります。日本では或る二、三の所ならば放つておいてもいいのじやないかと思います。それから勿論多少それについて、民間放送の中からそういう指導的な声が上つて来ればなお結構だと思います。   —————————————
  38. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 次に宝井馬琴君にお願いいたします。
  39. 宝井馬琴

    参考人(宝井馬琴君) 今日はNHK値上げ問題について、出演者の芸能人としての参考人で呼ばれたものだと輩ます。先ほどからいろいろ御意見を伺つておりましたが、私は出演者立場として考えてみたことを申上げてみたいと思います。  これは値上げの問題について可否をはつきりせいと、こういう委員長のお言葉でありましたが、これは私は値上げには賛成でありまして、それは私ども出演料から割出しまして、終戦前の出演料と現在のNHK出演料とは大体百倍に至つておりません。現在の物価指数から考えてみまして、殆んど百倍以下五十倍ぐらいの値上率というものは何一つありません。全部それ以上に上つているはずであります。併しこれが公共放送であるという建前であるために、我々は低額な出演料でもこれを忍んで出ているというのが実情ではないかと思います。それで二年ほど前から民間放送ができまして、先ほども落語家五人が民間放送NHKに対抗するために引抜かれたということを、徳川さんは民間放送の代表者として言われたようでありますが、あれは事情は反対でありまして、民間放送落語家五人を引抜いてNHKへ出さぬ手段をとつたために、NHKでは民間放送へ出てもNHKを断らないようにしてもらいたいと我々の所へ交渉があつたのであります。それは我々は大衆にいつも接しておりますので、一つ民間放送に縛られるということは、実際においていやであります。けれども民間放送はスポンサーがついて相当な多額な出演料を払うために、経済上止むを得ずその方法をとるのではないかと思います。それは我々は国家に何の保証も受けていない。自分で生活をして自分でやつて行く。病のために倒れ、或いは怪我をしてもそこには自分の力で常に賄つて行かなくてはならないという、自分を守ることに専念しておる者としてはこれは止むを得ないと思います。それで、それでは全国に放送網を持つNHKは或る特殊の人たちだけは放送ができないというようなことになつてはならないという考えから、特に我々にはそういう交渉があつて、我々も承知をしたわけであります。大体この出演料の問題でありますが、委員の皆様も国会討論会だとか、或いは議会の中の意見発表されるのに出演されたことがあると思うんです。大体どの程度謝礼を受けておられるか、車代を受けておられるか、お帰りがけにコーヒーを飲んで自動車に乗つて帰られたらば、多少足りないくらいな程度ではないかと思います。あれを二五%上げるということを、私はパーセンテージを見まして二十五倍だと間違えたんであります。(笑声)二十五倍ぐらいにしてもそう大した多額なものではないと思います。併しそれが二五%と来ては、二割や三割や上つたのでは値上りの部類に属さないのでありますが、現在の放送料が五十円で、六十七円ですか、に値上げずる審議を今国会でなすつていらつしやるということでありますが、現在の低物価政策をとつておられる政府としては、これは非常につらいことではあろうと思いますけれども公共放送であるから我々が我慢をしていた。数年間の物価の値上りに対して、そのときに便乗して上げていたならばこんな問題は全然起きずに、我我ももう少し恵まれていたんではないかと思います。それを公共放送であるがために今まで遠慮しておつたというこの遠慮深さが今日問題を起しているんじやないかと思うのであります。  それからこれは民間放送NHKとの問題でありますが、これは民間放送は非常に高度の出発をしていたはずでありますが、だんだんとスポンサーの意見やら或いは聴取者を如何にしてもかき集めなければならないというので、いろいろな手段が金にものを言わせて行つて来るだろう、それに対して民間放送では殆んど黒字であるということを私どもは聞いております。私は民間放送が始まつて殆んど民間放送には出ておりません。併し極めて最近に出るようになりました。出てみて驚いたのであります。NHKの毎週放送するニヵ月分ぐらいは一回の放送でもらえるようであります。それを当然私のほうで要求しておりますのはスポンサーが払うのであつて民間放送局が払うのではないんでありまして、スポンサーの要求に応じて私どもがもらうので、大体それが妥当な値段であるのに、その十分の一程度出演料で、而も全国へ流しているというこの責任は、出演者にとつては非常に大事なもので、自分の命を賭けてやるために、大体一回の放送で、局へ打合せに行き、テストをする、その回数なども大体三、四回は最低やつております。そういうような往復の旅費だとか、或いは手当だとかいうものに対して殆んど一文の手当も受けておりません。こういうようなことも、今度の聴取料の値上げによつて幾分でも恵まれるのではないかと思うのであります。  それからもう一つ、これは地方のローカル放送の問題でございますが、地方のローカル放送は、大体各地方にこの頃民間放送商業放送ができましてから、相当その地方色を出しているのですが、NHKの場合は費用関係で殆んど地方色を出しておりません。出す費用がないのであります。併し地方の要望がないかというと非常に多いのであります。それは民間放送で出し得なかつたものをNHKならば出し得るというような考え方を聴取者がみているのじやないか。それは地方へ行きました場合に常に考えることは、東京のみで、先ほどもその意見が出ましたが、いいものを流しておいて地方局はそのままでもいいではないかというような御意見もあつたようでありますが、これは私から考えますと殆んどあべこべでありまして、むしろ中央の文化地方へもつとうんと流さなくちやいかんのじやないかと思います。大体大都会には相当な人たちがいて、又それに恵まれているのですけれども、山間僻地、漁村、農村に入つて参りますと、殆んどそういう機会に恵まれないのであります。それが放送局の或いは公開録音とか、そういうものによつて、そういうものに接するということは、その地方人たちが非常に喜んでいる事実を我々はたくさん知つておりまして、そういう場合にも是非地方のいわゆるローカル放送に中央の学術的な問題も、或いは演芸方面ももつと強く行かなければならない。これは地方の要望もちよいよい私ども耳にしての言葉でありまして、実際にそれは喜ばれるという事実を我々体験して見知つているのです。それがためにこれは削るよりはむしろどんどん殖やして行かなければならない。その費用が現在NHK地方局には殆んどないに等しいものでありまして、我々が長崎或いは北海道というような山間へ参ります場合も、大体において東京出演料、それから旅費、宿泊料、そういうものを含めて参りますので、実際一回行つてつて来ますと九州だとか、或いは北海道へ行つて参りますと、数日間を往復に要するのであります。その数日間の小遣にも足りない程度でそちらに行つているのが、実情なんでありまして、そういうのは手当をしてもらえばいいわけでありますが、手当ができなくても我々としては犠牲を払つてもその地方人たちに接してみたいし、その地方人たちが喜ぶ顔をみたいという気持だけで行つているのでは、これからますます生活が苦しくなつて来た場合に、それも放棄しなくちやならないというような問題が起きて来るのじやないかと思うのでありまして、それから技術の面で非常に費用がかかる。こういうような問題もあつたようでありますが、これは我々現在考えてみまして、NHKに十三スタジオがあるのですが、殆んど一日中このスタジオが空いている時が少いのであります。第一放送と第二放送国際放送と使つておりますと、大体録音を取つてやるのですが、録音を取る時間が、スタジオが空いていないためにどのくらい不自由をしているかわからないときがたくさんあるのでありまして、そういう場合には夜遅く行つてやる。大体帰りが一時か二時になることもあります。それはそういう放送が終つてスタジオが空いてからやるというような場合に往々にしてこれを使われておるのでありますが、こういうような建物の設備だとか、或いは又技術の面でも、相当NHKでは研究しているようであります。これは我々がたとえ十二時、一時、二時になつて、或いは徹夜で録音を取つたりする場合でも、殆んど一つの楽しみにしてこの仕事に携わつている人たちをよく我々見るのであります。その人たちがそれほど努力しているほど恵まれていないのが実情なのじやないかと思うのであります。夜遅くなつて、或いは夜中になつて帰る場合でも、省線はなくなる、あらゆる乗物がなくなつた場合に、夜中に腹が減つてもうどん一つも自分の手銭で食べる。我々の出演料から一緒に食べようじやないかというようなことまでしなければならんように、恵まれていないらしい実情が我々の目に映るのであります。給与の面でそれだとすると、技術の研究の面でも、相当あるように見えても窮屈なのではないかと思います。  それから経費の問題でありますが、現在まで私ども考えておりましたのは、NHK経費、我々の出演料というものは聴取料で賄われていて、その範囲以外を一歩も出ていないということを初めて現在知つたのでありまして、今までは相当国家から補助を受けているのじやないか、国家から補助を受けておる金であるから、我々も多額な出演料は要求できないのだというような、いつとはなしにそんな考えを持つていたのが現在まで続いていたのですが、今日参考人として呼ばれるために、その中味をちよつと見て、これならばもう少し前に値上げをさして、我々ももう少し恵まれた出演料をもらつておいたほうがよかつたのではないかとさえ考えているのであります。公共放送ということが大体の主眼であるために、そういうようなことを今まで考えずにやつてつたのであります。ただ全国の人たちに聞いてもらう、それが自分の使命であると考えて、費用出演料というようなことを一切考えずに今までやつていたのが我々なんです。こういう際に、これはもう少し恵まれてもいいのではないか。現在から三割、大体三割の値上げですから、我々の出演料も三割上るのではないかと思つたら二割五分だということですが、(笑声)上る。パーセンテージからしても、余りいいものではないと思います。そういう意味で、これは値上げの方面に対しては、私は低物価政策をとつているこの際であるから問題が起きたのであつて、今までならば何の問題もなく解決した問題じやないかと思います。時期を失したということは、これはNHKの失態であつて、それだけ遠慮をしていたのではないかと、好意に解釈をしているのですが、そういう意味で、値上げに私は賛成なのであります。  それから民間放送の場合には殆んど黒字である。併し民間放送は黒字になるわけでありまして、これはNHKがすでに過去三十年に近い長い間に建設をして来たその母屋へ入つて、ひとりでに流しておれば、皆がいやでも聞くように、ダイヤルさえ廻せば聞えるようになつて来たところに出て来た商業放送というものは非常に得をしておつて、大して苦労がなくて、皆が聞くようになつている、そこへ出て来たのでありますから、公共放送であるから今まで払つて参りました努力というものを商業放送がそれほど買つていないのじやないか、こういうふうに考えるのであります。まあこういう点で、これから先、大体番組を見ますとわかるのでありますが、先ほどアメリカだの、カナダだの、各方面の御意見を私参考に伺つていたのですが、NHNは大体日本中の隅々まで持つていて、国民の大多数が信用している放送だということだけは確かでありまして、一時は商業放送に殆んどダイヤルを半数以上合せていたのが、地方の奥地に行けば行くほど、NHKのダイヤルに合せるようになつて来た傾向が最近多いのであります。それはどういうことであるか、私どもによくわからないが、やはり元の信用で多少返つて来た。そのためにその信用を落さない技術の研究だとか、或いは又出し物の研究だとかは相当費用もかかつて行くけれども、これはやつて行かなければならないのではないか。そういう意味で、私は大体三割程度値上げは当然だと考えるのであります。  それから給与の問題なのでありますが、これは局に勤めている人たちなんですが、この大臣意見書にもありましたが、この放送局というのは現在民放ができましてから数が多くなつたのですが、昔は放送局と言えばNHKだけだつたのですが、戦争前までの職員というものは、大体において給与を当てにしていない職員が大半を占めておつた。それは採用するときに、若しいけない人間があつてはいけない。この出演者と交渉をする場合に、それによつて利得を得たりなんかするようなことがあつてはいけないという建前ではないかと思うのであります。芝浦で発声して愛宕山へ移つた時分に、二、三そういうスキャンダルがあつたように私も聞いておりますが、それから今度自粛をして、大体家庭のいい人以外には職員に採らない。その給料を家べ持つて帰らなくても、家は立派にやつていられるような人たちがたくさん勤めておる。(笑声)これは事実なんでありますが、それが終戦後、そういうようないい家庭の人たちが大体いけなくなつてしまつて、(笑声)今は給料を取つていなければ、それによつて生活をして行かなければいけないようになつたのではないかと思うのですが、その人たちに対して、大体の給与ベースが、ほかの商業放送と比べて低いのでありまして先ほどの給料の表を見ますと、ちよつと低いようであります。大体民放では二万円程度の平均になつているようですが、NHKでは一万五千八百円というのが大体のベースになつているようであります。それだけの違いがある。この人たちも今度の値上げによつて恵まれて行くのではないか。民放にまで追いつかないまでも或る程度まで恵まれて行くのじやないか、そういうふうに考えまして、ただ考えますことは、ダイヤルを廻せば商業放送が幾らでも聞えるようになつて来ました。大体において聞えるようになつて来たときに、聴取者としてはどこを聞いているか。これは大きな問題であろうと思うのですが、商業放送だけしか聞かない。NHKのは聞かなくて、もいいから聴取料を払わないというわけに、大体機械を持つている人たちはいかん、こういうのであります。でありますから、どこも一律な値上げをされるということは非常に御不満ではあろうと思いますが、併し大体において良心的な番組を組んでやつて行くNHK放送を全然聞かぬわけには行かんだろう。相当な程度聞いておられるだろう。学校放送とか、或いはそういう教養的な番組商業放送にはないのでありますから、殆んどなしに等しいものでありまして、又そういうものではスポンサーがつかない。聞き手が少ければスポンサーがついて来ないのですから、結局これはNHKを聞かないと言つても、聞いておるのではないかと思います。そういう意味で、たくさんの聴取者から三割ずつの値上げということは、この際本当に忍びないものであるけれども、戦争に敗けて日本が独立をして来るまでに、常に叫ばれておりましたのが文化国家ということでありますが、それは早いニュースに、或いは又学問的なことも全然手をつけられなかつた地方の山間の人たちが、それに接するということは、この際五十円の聴取料が約三割程度の上り方は、農村でもそれほどこたえないのではないかと思います。ただ値上げという問題だけがこたえるのであつて、率としたらば、金額にしたらば、大してこたえないのではないかと考えるのでありまして、まあそういう意味で、これから改善をして行く内容を見まして、この程度は私は賛成だと考えます。
  40. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 有難うございました。宝井参考人に御質疑が、ございませんか。
  41. 山田節男

    山田節男君 これはまあ宝井参考人は芸能界の大政治家という話を聞くのですが、先ほどNHK出演料が非常に低い、こういうお話なんですが、こういうことは私は当り前じやないかと思うのですがね。現在こうして公共放送、更に非常にたくさんな商業放送ができまして、ラジオに加うるに今度はテレビジョンも、これも次第に全国のネットワークの線に沿つて今拡張されつつある。今あなたいろいろ出演料についてのお話がありましたが、要するに芸能界の人々が非常に封建的である。従つてNHKがこれだけ出すというのを喜んでもらわれて、長期に出演されれば身銭を切らなければならんということでありながら、一方において無形的に全国の者が聞いてくれるという一つのプライドといいますか、そういう有利の点を考えられて、あえて薄謝に甘んじておられた。併しこうして放送が、ラジオからテレビジョンというものに拡つて来た場合、やはり出演者といいますか、殊に芸能家はやはりこれは一種の労働組合的な、労働組合と言つちやおかしいが、例えば落語なら落語を商売にしている方々の団体、これが私は相当やはり強化されなくちやならない。これはアメリカの例を見ましても、音楽連盟だとか、或いはいろいろな芸能家がおのおのユニオン、労働組合を持つている。それがやはり放送業者と団体交渉をやつて非常に細かい規定を作つている。ただ単に出演料という問題だけでなくて、あなたの今の話によれば、あなたたちの語られたことを、これをテープに取ればこれはどこへでも放送ができる。これは録音機と同じようなものです。そういうことになつて来ると、あなたの放送というものは、ただ単にスタジオに行つて放送するだけのものではなくて、いろいろな複雑な権利があるわけです。それを現にあなたが主張していない。この点がやはり合理化というか、今あなたがおつしやつたことを見ると、旧態依然とした封建性を持つてつて、殊にあなたのようなそういう世界においては、そういう封建色が強いと思う。強いがやはりこれは相撲界での力道山みたいに、やはり合理的な方面に行かなければいけない。そのほうが勝つんだ。力道山のやつたことは、相撲の世界における封建制に対するこれは非常に大きな私は革命だと思う。同時に力道山が一遍出れば五百万、六百万、一千万円の金が取れるのです。ところがああして東富士や千代の山というけれども、一千万の金が取れるどころではないのです。これは今日の放送に出られる芸能家諸君が経済的に恵まれぬという点、これは私は今の封建性については十分私は反省されなくちやいかんと思う。そこで私お伺いしたいのですが、今伺つたような、あなたのような少くとも一流の講釈師がやはり老後のことを考えなければならんということは実に気の毒な話です。これは国宝的な存在でなくても、文化勲章くらいもらうかも知れん。とにかくあなたぐらいになつてそういうことを心配しなければならんということは、これは何といいますか、自分の生命、自分の生活を自主的に守る一つの才能を持つてつて、それで自分の老後の生活を保障されているということは当然なんです。それができないということは、これはどこに原因があるかと言えば、NHKが悪いというよりも、むしろ芸能者のほうに封建性があつて、我我から言えば、実に何といいますか、日本的な考え方か、一つのプライドを持つて「武士は食わねど高揚子」というような気持、ここに私は非常に大きな原因があるのじやないか。従つてみんな放送ができて、NHKの従来の報酬を……、この際、ただ金ということでなくて、経営の部面ではあなたのような芸能家がこれはやつばり考えなくちやならん問題であつて、そこでお伺いするのですが、どうでしよう。これは芸能家、殊にあなたのような商売をやつているような方は、いろいろ協会があるわけですか。音楽家においても然り、こういうような人たちが職能別に、落語は落語、音楽は音楽というふうに、独自な自主的なユニオン、組合ができるような気運ありますか。それともあなたはそういうものによつて、団体交渉によつて出演料も或いは団体交渉において格付けをして行くのだというような必要性を認めておられるかどうか。まああなたは政治家だから、センスの問題だが、御意見を伺つておきたいと思います。
  42. 宝井馬琴

    参考人(宝井馬琴君) 只今大変結構なお話なんですが、封建制度のような中に我々育つて参りまして、常に考えるのですが、我々が芸術に参加してやつて行く上において、金銭だとか、或いは組合だとかいうようなことは常に考えないのです。本当にそれに専念していると、そういう面倒くさいことは仕事に差支えを生じて来るのです。(笑声)大体組合はあるのです。それで見渡したところ音楽関係だとか、或いは又割合新らしい仕事をしている人たちの組合は、或る程度自主的に進んでいるらしいのです。これも或る程度なんです。それ以外はただ組合があるという名のみではないかと思うのです。行く行くはそれは強化して行くべきなんですけれども、殆んど各自が自分の仕事に専念している。それから格付けの問題なんかも、団体で交渉ということはちよつと不可能に近いです。ということは、団体が認めた価値を大衆が認めるかどうかということなんです。これは大衆が認めればNHKにしても、商業放送にしても、幾らでも望むだけ出すんですから、商業放送の場合は特にそうなんです。NHKの場合は、どういう階級の者はどれだけの規格という規格を一歩も出て来ないのです。ですからそういう交渉でも、ちよつと団体交渉というのな、これから先五十年百年たてば別かも知れません。現在程度ではちよつと不可能だと思うのです。これはなるべきことを私は望んでいるわけでございます。  それから先ほどちよつと言い漏らしたのですが、著作権の問題なんですが、これは著作権を持つている人たちの作品をやる場合です。これは文筆を以て立つている人たちの組合、著作権協会というのがあつて、それによつて日本中に目を見張つていてくれるわけなんです。我々の場合は殆んど日本中へ目を見張る機関がないのであります。録音を取りまして、それが今は幾らでもずるければ何本にでもそれがなるのでありまして、何遍かけて、十本にしようと二十本にしようと本人にはわからないうちになるわけです。そういう面で商業放送がああいう不道徳なことをしている例がたくさんあるのです。本人が知らん間に放送している。そういうようなことでも気がつかなければそのまま泣寝入りの場合が多いのです。そういうような調査をする機関をこしらえるほど我々仲間のものが恵まれていないのが実情じやないかと思うのです。将来はそれをもつとこしらえて行くように恵まれたいと思います。もつと頭も進まなくちやいかんと思うのです、全体において。それからNHKの場合でも、大体我々が先ほどの教養と娯楽と両方を兼ねたものをいたして行きたいというのは、もう常に我々の念願していることなんです。その場合にいいものができ、いいものをこしらえてもらおうと思つても、NHKの原稿料や何かではいいものをこしらえてくれない憾みがたくさんあるのです。そういうような面でも実に不自由を感ずるのです。行くくはそういう組合をこしらえたいと考えているわけであります。   —————————————
  43. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 次は大浜英子君にお願いいたします。
  44. 大浜英子

    参考人(大浜英子君) 私は経理のことと技術のことは全然わかりませんので、今日参考人としてお呼びになつたのラジオの聞き手として、殊にラジオを朝から晩までやつておりますので、朝から晩まで家にいるところの婦人、殊に家庭婦人の、聞き手としての立場から参考人とお呼びになつたのだろう、こう思うのでありまして、この立場から意見を申述べたいと思います。  最初に、先ほどお問いになりましたNHK値上げの問題でございますけれども値上げと言えば、何でも消費面を扱つております婦人でございますから、ちよつとびつくりしてラジオまでがというので以て一応反対したいのがその立場なんでございますけれどもラジオに関しては、むしろ男の方よりも婦人のほうが番組でも何でもよく知つておりますし、それからその内容でもNHKとその他商業放送との区別、或いは特徴、そういつたものなんかも割合によく知つているのだろうと、こういうふうに思つております。それで非常にラジオを利用しているという立場、殊に教養に関することについては非常に熱心に婦人たちラジオを聞き逃がさないでいると思います。で、婦人の時間とか主婦の時間というようなものがどこにもございますけれども、殊にNHKにはそれが組織的にきちんとあるように思うのですけれども、そういうふうなものについては、どんな田舎に参りましても、大体若い人も年寄りも聞き漏らさずに聞いているように私は感じておりますし、又そういうように聞いております。それでそういう意蒙ら、そういう社会的のいろいろな事実、そういつたことに非常に疎い婦人、そうしてラジオによつて世の中のいろんなことを正しく知りたい、そうして間違わずにどつちにも片寄らないものを知りたいということを願つて、そうしてラジオを聞く婦人にとつてNHK値上げというものは、これは喜んで賛成しなくても、これは仕方がないものだと思つております。  で、結論を申しませば私も賛成というところに参ります。そしてそれを賛成いたします以上、殊に組織的にやつておりますところの婦人の時間、つまり教養、いろいろ世の中の事実、間違いない判断というものを知りたがつている婦人にとつて、そういう面をもつと改善してもつとよくわかりやすく、そうして誰もが、殊に婦人が間違いない判断をラジオによつてできる、そういうふうにいろんな内容番組なんかを改良させてもらいたい。で、家庭、家族の生活の民主化というものが戦争後非常に大事なことになつて、そうして婦人たちが本当の正しい民主化というような、民主化の上に立つた生活をすることによつて日本全体というものもよくなつて行く、このことは間違いのないことでございまして、こういう面からも啓蒙とか教養、そういつた面で以てラジオというものが婦人のために進歩的な、そうして、間違いない役割を果して欲しいということを希望して、そうしてそのNHKの値上というものに賛成したい。  簡単でございますけれども、もう皆様の御意見がありましたから、これだけを申上ザたいと思います。
  45. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 有難うございました。大浜参考人に御質疑はございませんか。
  46. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 大浜さんにちよつとお伺いしますが、我々としても家庭は持つておりますが、一般的にこの都会の家庭では、そういう今お話なつたような婦人の教養面等で、新聞やラジオ、テレビ、いろいろございます。或いは、雑誌等がございますけれども、何が一番利用されておりますか。中にはラジオを聞くより新聞がいいというふうな話もありましようし、或いは今お話のようにラジオが一番利用しやすいという方もございましよう。婦人の家庭における生活から考えまして、概してどういうものが一番利用されておりますか、そういう点を一つお伺いしたい。
  47. 大浜英子

    参考人(大浜英子君) 今の場合でございますけれども、やはり非常に家の中の仕事というものは朝から晩まで手の放せないことがたくさんございまして、雑誌を読むとか、新聞を読むというと、まとまつた手をあける時間が要りますので、掃除をしながらラジオを聞くとか、縫物をしながらラジオを聞くとか、そういう意味で以て非常によくラジオが使われている。そうしてラジオでこういうことを言つていた、ああいうことを言つていたということを非常に農村の人たちからも聞くことがあるのでございますが、私はラジオが一番今、殊に婦人の時間というものは丁度お昼のあとでございますから、行渡つているというふうに感じております。それでよく農村の、非常にひどい純農村なんかの人が参りますのですけれども、皆して例えば親と子、それからお嫁さんとお姑さん、そういつたようなものが一緒に聞いて、そうしてどちらもがいやな思いをせずに、而も自分たちの不平とか不満というようなものをちよつと考え直させるようなものが欲しい、そういうものを婦人の時間に求めているのでございまして、或る程度NHKの婦人の時間というものは、或る程度でありますが、そういう要求というものが果せているのじやないか、そういう感じを受けております。
  48. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 次には日本放送労働組合中央執行委員長中塚昌胤君にお願いいたします。
  49. 中塚昌胤

    参考人(中塚昌胤君) 昭和二十五年の六月に放送法が施行せられましてから、いわゆる公共放送というものと商業放送というものの併立ということが我が国に実現されたのでございますが、その後今日までの間に全国には約三十五、六のいわゆる商業放送会社が設立されまして、今日各方面におきまして、我が国における放送事業のあり方というものについていろいろ論議がされているのでございますが、私は、我が国の経済的並びに社会的及び地理的な状況から見まして、いわゆる公共放送というものの必要性は極めて大きく、これを将来とも維持発展させなければならない。で、この意味から申しまして、現在の公共放送というものの持つております使命は非常に大きいものであるというふうに思うわけでございます。で、我々日本放送労働組合の八千の組合員もこの自覚に基きまして、日夜公共放送の使命の達成のために努力をしているわけでございますが、私はこの八千の組合員を代表いたしましていわゆる公共放送に従事しておる者の立場に立つて、ここに意見を申上げたいと、このように思うわけでございます。  そもそも日本放送協会のここに出されております二十九年度の事業計画収支予算というものは、いわゆる放送法規定されております放送協会の使命を達成することを目的にして立てられ、編成されたものであるというふうに考えるわけでございます。私たちが初めに承知したところによりますと、いわゆるこの全国的に必要な場所に、いわゆる中継放送局、ただ世に電波を出します僻遠の地にあります中継放送局、こういうものを新設し、或いは第二放送施設を増設し、又放送電力の増加を行うのに、放送債券を二億円発行してこういうものをやつて行くというふうになつていたようでございます。ところが今日手許に頂きました予算書によりますと、ラジオ関係放送債券の発行は一切行わない、従つて二十九年度におきましては、放送局の新設その他は一切行わないという方針のようでございます。併しこれは全国あまねく受信できるように放送を行うという放送協会の使命から見ましても、全国の山間或いは僻地にございますラジオの受信者の便宜を図るために、又未だ放送のこの電波が完全に届かない地域、こういう地域にいわゆるサービス・エリアを拡げるというために、こういう点から見ましても、いま一度考え直す必要があるのではないかというふうに考えております。  更に今申上げましたほかに、いわゆる老朽施設の改善関係経費が約三億五千万程度が最初より削減されているようでございます。現在の放送協会地方にございます放送局、これの大部分はすでに十数年前にできたものでございます。従つてすでに老朽しているものが大部分でございまして、その改修或いは増築ということを必要とする状況でございます。又今日の放送技術というものは日進月歩でございまして、公共放送の使命というものを達成するには常に最も新らしい技術を取入れなくてはならない。そうして放送の機動性というものを十分発揮して、放送内容充実を図るということが何より必要ではないか、この点から見ましても、この老朽施設の改善の経費の復活ということが考えられなくてはならないのじやないかというふうに考えるわけでございます。  次に、放送協会は、いわゆる放送番組の編集について公衆の要望を満たすと共に、文化水準の向上に寄与するように最大の努力を図らなければならないというふうに放送法にきめられておりますが、この点から見ますと、二十九年度は特に教育及び産業放送、それから地域的社会生活に直結する放送並びに文化の向上を目的とする高度の芸術的及び教養的放送充実を図る方針を重点としております。この点は協会目的、公衆の要望等からいたしまして、総括的には私は妥当な措置ではないかというふうに思うわけでございますが、この際特に考慮すべき点を一つ二つ申上げたいと思いますが、先ず放送番組の編集権のあり方でございますが、最近NHK放送番組内容についていろいろ批判を受けているようでございます。NHK放送番組政府の御用放送ではないかというふうな厳しい批判を受けているようでございます。放送番組は何人からも干渉され規律されることがあつてはならないということは、これは何より必要なことでございます。我々も今まで特に放送番組の編集に当つては慎重な判断と毅然だる態度をとるべきことを協会当局に要望して参つたわけでございます。今回問題になりました例のユーモア劇場の問題につきましても、あれが問題になりまして、直ちに我々は協会当局に放送番組の自主性、これを確保すべきであるということを強く要望したわけでございます。今後におきましても、我々は労働組合という立場ではございますが一公共放送の重要使命を達成するために、放送番組の編集権の自由、編集の自由を確保するために最大の努力をして行きたいと、このように考えているわけでございます。  次に、放送番組内容を現在より以上に充実をしなくてはならないわけでございますが、即ちこの予算で見ますように、番組経費に重点をおいて、公共放送として国民に健全な教養、娯楽、そうして正確、迅速なニュースを提供しなくてはならないわけでございますが、この点についても、果してこの予算だけで十分であるかどうかという点極めて疑問でございます。我々としてもこの点に十分留意して、公共放送に従事する者として努力して行きたい、このように考えているわけでございます。  次に、地域社会に奉仕する、いわゆるローカル放送の拡充についてでございますが、現在すでに全国には約四十局のいわゆる中継放送局がございます。そうして中継放送業務を行なつているわけでございますが、これらの中継放送局の所在地におけるその地域社会の発展のために、又地元の受信者の要望から見ましても、単に電波を中継するというだけでなしに、ローカル放送が実施できるような施設充実業務態勢をとるようにすべきである、我々はこのように考えまして、前年度及び前々年度におきましても、国会において協会予算が審議されますときに要望して来たことでございます。で、現在の中継放送局の状況を見ますと、四名で業務を行なつておる。ところが最近いわゆる技術要員の不足ということがございまして、この不足を補うために、そのしわ寄せがこういう地方の末端局へしわ寄せされて来ている。そのために四人から三人にだんだん減らされておる。で、やはり地方の、こういう僻遠の中継放送局、仕事は単に電波だけを出しておるというだけでございますが、その地元の人から見ればやはりこれも放送局である。そのために単に技術的な仕事の面ばかりでなしに、そのほかにもやはり受信者に対するサービス等、いろいろな仕事がある。その面から見ましても四人から三人に削られておるという点については、我々としても何とかこれを殖やすようにしなければならないというふうに考えまして今まで努力を続けて来ておるわけでございますが、このような点から見ましても、この中継放送局充実、更にはローカル放送ぐらいはそこからできるというふうな態勢をとつて行く必要があるというふうに考えるわけでございます。で、このようにいたしますために、今直ちに施設の大幅な拡充ということは、財政的な見地から見ましてもむずかしいのではないかというふうに考えますが、少くとも日常のニュース放送ぐらいはそれぞれの中継放送局から提供できるというふうに措置をとられたいというふうに考えるわけでございます。で、これに要する経費というものは我々の判断いたしますところでは、そう多額なものは必要ではない。極く少額のものでできるのじやないかというふうに考えております。  次に、NHKにおける技術研究というものでございますが、これは昭和五年以来すでに二十年余りに亘つて我が国電波技術の発展に寄与して参つたわけでございますが、今日世界における電波技術というものは驚異的な発展を遂げております。又我が国の産業及び学界に寄与するために放送技術の研究ということは、今後とも更に積極的に推し進めて行かなければならないというふうに考えております。特に昨年の二月にテレビジヨン放送が開始されまして、いわゆるマイクロウエーブというものの研究を中心とした電波技術の研究というものは、国家的な見地からいたしましても、極めて重要なる研究課題でございます。なお又テレビジョン放送を大衆化するためには、安い、低廉な受像機というものが売り出されなくてはならない。そういたしませんと、テレビジヨンの普及というものは望み得ない状況でございます。このためにも受像機の研究ということを重点にして今後やつて行かなければならないというふうに考えるわけでございますが、現在のこの技術研究費用というものは、極めて乏しい状況でございます。そのために十分な研究の成果が上げられないというふうな状態にありますので、この際特にこの技術研究費というものを更に増額する必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  以上申上げました協会の使命を達成するために、今日NHKには八千四百五十名の従業員がラジオ、テレビジヨン、それから国際放送に従事いたしておりますが、これらの職員の給与というものは、現在では極めて低い水準にございます。現に給与が低いために、我々の同僚の間から商業放送会社へ、或いは商業テレビジヨン会社に移つて行くという者も出て来ておる状況でございます。NHK放送というものが真に公共の福祉に寄与するために最も良い放送を提供するというためには、優秀な人材を必要とすることは申すまでもございませんが、特に昨年テレビジヨン放送が開始されまして以来、いわゆる専門教育を受けた職員というものが非常に増加いたしまして現在NHKの従業員のうちで、いわゆる新制大学及び旧制の専門学校卒業以上の職員が、全職員のうちで三七・五%を占めております。このように職員の平均学歴というものが極めて高いということは、ほかの民間会社や或いはいろいろな官庁等を調べて見ても、その例がないわけでございます。このような見地からいたしまして、我々は昨年の末に協会当局に対しまして、今年の四月以降、二十九年度の賃金要求を行いまして、たびたび団体交渉を行なつて闘争状態にまで入つて今日に来たわけでございますが、この二十九年度の協会予算に編成されました給与の総額を見ました場合に、我々が極めて謙虚な立場で考えております要求というものとは、なお相当の隔りがあるわけでございます。この点はこの委員会で予算を審議されます場合に是非とも御理解を頂きまして、我々の給与の向上に対して、我々の希望が達成せられまするように御努力をお願いしたい。国会において何らかの措置が講ぜられることを切望するものでございます。  最後に、昭和二十九年度の予算によりますと、二十九年度におきましては受信料が引上げられるということになつております。この点につきましては、先ほども申上げましたように、協会がその使命を達成して行くという場合に、現在の協会には受信料以外の収入源は認められておりません。そうしてこの公共放送として課せられている使命を完全に達成せんとするならば、現在の五十円の受信料では不可能ではないかというふうに考えるわけでございます。従つて或る程度受信料引上げはどうしても止むを得ないのではないかというふうに考えております。この受信料値上げの点に関しまして、最近いろいろ論議されおるようでございます。殊に商業放送は無料であるのにNHKは有料で、而も又受信料を引上げるというのはけしからんという意見や、或いはこのように低物価政策をとつているときに、このように引上げをするのは、インフレ助長の一つの突破口になるというふうな意見もあるようでございます。併し前の意見につきましては、商業放送はいわゆる電波料というものを取つておりまして、この電波料は各スポンサーの売出しております商品の価格に含まれているわけで、結局消費者に負担させられているということが言えるのでございまして、このような点をもつと一般の人に理解してもらう必要があるというふうに考えますと共に、今後に予想されます放送法の改正の際には、いわゆる公共放送の性格及び使命というものを更に明確化いたしまして、十分国民に納得してもらうという必要があるというふうに考えております。なおあとの意見につきましては、受信料というものは電気料金や或いは運賃、或いは石炭の値段というものと違いまして、直接他の物価には影響を及ぼすというものではないのじやないかというふうに考えるわけでございます。併しながらいずれにいたしましても、国民大衆の負担を増すということは決して望ましいことではございません。この点協会当局において更に業務合理化経費の節約ということを行い、又経費の支出に当つては、重点的に支出を行なつて放送目的達成のために効果のあるように使うべきである、そうしてできるだけ国民大衆の負担を軽くするというふうにいたしまして受信料の引上げは最小限にとどめるべきであるというふうに考えているわけでございます。  なおこの際附加えさして頂きたいことでございますが、我々が過去において協会に対しまして主張いたして来ましたいわゆる生活保護法の適用を受けている人たちに対する受信料の免除措置というものが、今回協会当局が決定いたしまして郵政当局がこれを承認されたという点については、我々としても賛意を表したい、このように考えるわけでございます。  以上公共放送に従事いたします組合員の立場から意見を申上げたわけでございますが、我々はいわゆる経営参加というものは認められておりませんし、又経理の公開というものも受けておりませんので、十分な検討の結果に基く意見を述べ得なかつたということを残念に思うわけでございますが、協会のようないわゆる営利を目的としない企業体、このような企業体の労働組合のあり方というものについても、私たちも真剣に検討いたしたいというふうに考えておりますが国会におきましても、放送法の改正という際には十分このような点も御検討して頂きたいというふうにお願い申上げて、私の陳述を終りたいと、このように考えるわけでございます。
  50. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 有難うございました。中塚参考人に御質疑ございませんか。
  51. 久保等

    久保等君 二、三ちよつとお尋ねしたいと思いますが、今いろいろ述られた中で、先ず一つには、NHK経営の問題にも関連すると思うのですが、私この際特に御意見として伺つておきたいと思いますのは、やはり今言われたように、放送法の全面的な改正という問題が、今日民間放送が非常に普及して参りました状況の下において緊要な問題になつて参るわけですし、今日郵政当局も鋭意この問題については研究されておるようであります。そこで経営の問題に関連する問題なんですが、大体今度の聴取料の値上げの問題とも関連して、例のいわゆる放送の公共性という問題でとかくの批判が出ておるようであります。そこで特に問題になる点は、何といつて公共放送の使命であります番組編成の自由という問題ですが、この問題について、如何にして公共放送の中立性、公共性を確保して参るかという問題は、具体的に検討して行かなければならない問題でないかと思うのです。例えば一つの考え方として、この番組編成委員会ですか、そういつたような委員会の構成の問題にしても、もう少し何か考慮する余地があるんじやないか。特に労働組合等のこういつた番組編成委員会の中に参加して行くというような問題も一つの考え方としてはあり得るんじやないかと思いますが、何かこういつた中立性の確保といいますか、番組編成の自由を確保して参るというようなことについて、何か具体的に考えておられる点でもあれば、御意見として承わりたいと思います。  それから更にもう一つは、今度予算が非常に年度末押迫つて出されて、国会でもピッチを上げて審議をしなければならないというように考えておるんですが、少くとも今日の放送法の建前から考えてみた場合に、出されて参りました収支予算というものが、非常に日次が切迫した状況のうちに出されて来て、内容を見ますと、放送協会そのものの生の予算というものが出て参つたんじやなくて、いろいろ裏面的な取引が行われた形で予算が出て参つたということが事実だと考えられます。勿論そういつた問題については、当然私ども今後の委員会における審議で十分に審議をしなければならない問題なんですが、少くともこの問題がどういう経過を辿つたかということについては、直接経営責任はないにしても、従業員の立場から見れば、非常に重大な関心を持つておられたと思うし、私は非常にそういう意味で遺憾な点もあつたと考えるのですが、今日定められた放送法の建前からいつても、予算というものが少くとも生の形で国会に出されて参る。当然これについては、政府当局並びに郵政当局が主としてそれに対する意見というものを相並行して国会に出して参つて、そこで国会としては十分に審議をし、結論を出すという建前になつておると思うのですが、出されて参つた予算そのものが、すでに相当紆余曲折を経た形でここへ出されて参つてつて、それ自体に対してイエスかノーかという形に結論を出さざるを得ないという姿に我々置かれておると思うのですが、こういう形は今日の放送法の下においても、立法の精神からいつて相当おかしい形になつておるんじやないかと私ども考えるのですが、そういつた点について、内部的な事情もよく御存じだと思うのですが、どういうふうに考えておられるか。この点も直接経営責任者ではないのですが、事情をよく御存じの立場におられる委員長にその点私お伺いしてみたい、かように考えます。  それから次に特に人の問題ですが、先ほどの徳川参考人意見等から見ますと、民間放送の技術者の問題とNHKの技術者の数の問題を一例として出されておつたのですが、勿論発展過程が全然違うというような状況の下にあつて、技術者の数の問題、人員の問題にしてもほんのここ一、二年間にやつと創立されて人員を獲得して参つた民間の場合の人員というものが、果して理想的というか、一応安定した人員であろうとも考えられないし、いろいろなハンデキャツプもあろうと思いますが、少くとも今の御意見の中にも、人員の面ではむしろ所によつては増員拡充もしなければならないという御意見も出ておつたと思いますが、具体的に、私は或る程度今日のNHK公共放送というものを本当に十分に達成して行くためには、或る程度のその拡充人員というようなものについても、何か日頃考えておられるような具体的な結論が出ておられるのかどうか、その点を総体的な立場から一つ意見があれば伺いたいと、かように考えます。  それからこれは小さな問題かも知れんですが、給与問題ですが、先ほどの参考人の方からも御意見が出ておるわけですが、やはり給与が低いということになつておれば、昨今のように民間放送が非常に急激に発展して参つております状態では、人員がNHKから民間放送に移つて参るということも、これは阻止しようと思つても、やはりNHKの給与が低いということであれば、阻止し得ない一つの私は問題でないかと思うのですが、それで昨今いろいろ民間放送ができて参りまして、これらの事業に携われる従業員の方もやはり元NHKに勤めておられたというような方が相当おられるのじやないかと思うのです。そういうようなNHKから民間に移つてつた方で、その行かれる場合の事情が、先ず新らしく設立せられる民間放送あたりから、協会なり、然るべき機関を通して話が持ち込まれて、適当な人を推薦するという形で出て行く場合が多いのか、それとも全く個々人に当つて、いわば文字通りの引抜きといつたようなことで出て行く場合が多いのか、いわばまあ裏面的に個人にいろいろ条件を持ち出して、それでとにかく、それならばまあ条件がいいから行こうかというような形で行かれる場合が多いのか、これは勿論細かい数字的なことは結構でございますけれども、そういう形、どちらがケースとしては多いか、極めて抽象的な質問でございますけれども、おわかりになつておる範囲内で一つお答えを願いたいというように考えます。以上数点についておわかりの範囲でお答え願いたいと思います。
  52. 中塚昌胤

    参考人(中塚昌胤君) 先ず第一点の、この番組編成の自由について、組合としてもこの自由を確保するために具体的にどういう方法を考えているかというお尋ねでございますが、これは非常にむずかしい問題だと思います。で、現在の放送法の建前から言いますれば、まあ第三条にもございますように、番組の編集の自由というものは確保されておるというふうに見られるわけでございます。併しまあ実際の面におきまして、やはりいろいろな方面からいろいろな有力な意見出される。例えば先日行われましたMSA問題についての街頭録音、これは保守系統のほうからと革新系統のほうからと、まあ両方から御意見があつたわけでございます。保守系統のほうからは、あの街頭録音の担当のアナウンサーは野党的であると、反対の意見を出させるような誘導訊問をしたというふうな意見があつたわけでございますが、又反対のほうからは、先日衆議院の委員会参考人出席されました石垣綾子さんのように、あれは政府の提燈持ちである、外務政務次官だけを出席させてやつた、そういうふうな御意見があつた。まあいろいろ右のほうう、左のほうから、いろいろ有力な御意見が出るわけで、その場合にも協会が自主的にやつておるということは、これは間違いない。併しその自主性がそういういろいろな外部の意見を忖度し、或いはそれによつて動かされるような自主性であるならば、それは本当の自主性であるとは言えないのじやないか。我我が協会経営当局に常に要望しておりますのは、もつと毅然たる態度でやれ、本当にこの番組の自主権というものを確保する毅然たる態度を持つべきであるということを常に要望しているわけなんでございます。で、ぢや組合としてこの番組編成の自由というものを確保するために、直接組合が発言権を持つということになれば、これはやはりこの番組の編集権というものに対して我々が関与することになる、そういうことが果していいかどうかという点も私たちは考えて、まあ今までそういう機会は持たなかつた、こういうわけでございます。で、今放送番組につきましては、この放送番組審議会というものがございます。それのメンバーを見ますと、やはりどちらかと言えば、まあ保守性を帯びた方が多いのじやないかというふうに見られるわけでございます。で、我々としては、やはりこういう正式の機関というものにやはり両方の意見が代表されるような人員的な構成を考えるべきじやないか、そういうふうに考えておるわけでございます。この問題は今後の放送法の改正のときにも、これは組合としてもこの放送法につきまして、今後検討し、研究して行く機関を作りたいというふうに考えておりますので、その際に十分この番組編集権の問題についても考えて行きたいというふうに考えております。  それからここに出されました予算、これが最終的に出て来るまでの間にまあいろいろな問題がございました。やはりこれも最終的に言いますならば、協会が自主的に作つて、それに郵政大臣意見を付けて国会へ出されたということは、これは形式的にはそういうふうに言えると思います。併し実際には、やはり事前に郵政当局との折衝が行われ、で、新聞にも発表されておりますように、自由党の政調会或いは総務会というものによつていろいろ論議されたということは、これは事実でございます。で、まあこういうことが実際政治の面においてはそういうふうにやられるものであろうというふうに我々も考えるわけでございますが、では果してそういうものであつてよいかどうかという点は、私たちとしても大いに考えなくてはならん。やはりこれも今後の放送法の改正の場合に、こういう点も十分検討し、改正すべき点は改正されなくてはならないというように考えております。真に協会が自主的に経営をやつて行くというならば、こういうふうに実際問題として、政府なり与党に、その経営の基礎である予算というものが左右されておるということで果して自主的な経営ができてやつて行けるのかどうかという点は大いに考えなくてはならないというふうに考えております。  それから先ほども徳川参考人のほうから述べられました技術者の人員の問題でございますが、東京における技術要員NHKは多過ぎるのじやないかという御意見があつたわけでありますが、これはNHKは御承知の通り第一放送と第二放送というものをやつておる。それから全国的なネットワークを持つておるわけでございます。従つて東京から出す場合には、これを全国へ流さなくちやならん、そういうための装置、これに要する人員、技術要員というものがございます。それから全国の中継線というものを運用して行くための要員、技術要員というようなものがあるわけでありまして、私は多過ぎるという点はないのじやないかというふうに考えるわけでございます。で、逆に先ほども申上げましたように、全国的に見まして人員不定という面が出て来ておる。例えば殊にテレビジョンの要員というものが非常に少い。そのために最近の例でありますが、テレビジョン要員の中で、一カ月の基準外労働時間が二百時間を上廻つておるというような状況が出て来ております。一週四十三時間が基準の労働時間でありますから、一カ月約百七十時間くらいかと思いますが、それを基準外の労働時間が二百時間を上廻るということを見ますと、どつちが基準でどつちが基準外かわからないというような状況も出て来ております。それから又放送記者の諸君の中にも、そういう一カ月の基準外労働時間が二百時間を超えるというものも出て来ておるわけでありまして、全国的に見まして、人員が不足しておる。私たちとしまして特に再々協会当局にも要望しておりますのは、このテレビジョンの要員の充足というものと、それから先ほど申上げました第四種放送局、いわゆる中継放送局の要員を従来通り四名に復活させるという点を我々再三協会当局に要望しているわけでございます。  それから最後のお尋ねの点の商業放送のほうへ移つてつた人のその移つてつた時の状況でございますが、私が今までに知り得た範囲におきまして今まで移つてつた人は、そういうふうに協会に対して正式に何名出してくれということで、協会のほうから指名して行つたというものではなくして個々人に向うから折衝があつて、それによつて向うへ移つてつたというのが私の知つている範囲ではすべてじやないかというふうに考えております。
  53. 山田節男

    山田節男君 さつき徳川参考人とそれから宝井参考人らの公述で、NHK民間放送との給与ベースが約五千円ばかり開きあるように言つてつたんですが、成るほど名目賃金においてはそういう五千円、四千何百円かの開きがあるが、NHK民間放送商業放送とは違つて非常に福利厚生施設が行き届いておるから、従つて実質賃金では余り差がないのじやないか、こういう声も聞くわけなんです。これは組合として、この問題に対して名目賃金において遥かに商業放送に劣つておる。併しNHKのほうがたしか厚生施設がいいから実質賃金においては民放もNHKも差がないという声があるわけです。これに対して組合としては、これは厳正に考えてNHK商業放送との間において厚生施設、いわゆる実質賃金を増す厚生施設というものは民間放送より遥かにいいと、こういうように見ておられ、従つて実質賃金においては商業放送と大した開きがないというのか。或いは名目賃金で五千円の開きがあるからして、例えば多少の厚生施設民間放送よりよくても実質賃金において遙かに劣る。若し劣るとすればそういう実質賃金を勘案して、今の徳川参考人が言われた程度の四千円か五千円の差というものに対して、どのくらいの差があると見るか。若しこれに対して、組合としてのこの問題に対する見解なり態度があれば示してもらいたい。
  54. 中塚昌胤

    参考人(中塚昌胤君) 先ほど徳川さんのほうから文化放送ベースが一万八千百八十九円であるというふうに言われたわけでございますが、我々はこの民間放送の労働組合から調べた範囲では、これより若干上廻るのじやないか。従つてこの数字が果してどうであるか。まあ一応ここに言われました数字というものは正確なものであるというふうにいたしましても、文化放送の場合の勤続年数、これは企業が始まつてから二年ばかりでございますから、勤続年数は二年、それから文化放送の場合調べましたところによりますと、平均年齢は三十歳ということになつております。それから扶養家族、これも文化放送の場合は家族手当は妻が二千円、そのほかが千円ということになつております。それで平均の家族手当というものが千六百円になつておりますので、家族は一人ぐらいじやないか、平均の扶養家族が。そのように見られるわけでございます。我々のほうを見ますと、平均年齢は三十三歳、平均の勤続年数が七年半でございますが、大体七年から八年、それから扶養家族の平均が二人ということになつております。従つてそういういろんな要素も考えないと、ただ出て来た平均のベースだけでどうこうということは言われないんじやないかというふうに考えるわけでございます。それから今お尋ねの厚生施設の問題でございますが、成るほどできまして三年ばかりの各商業放送会社より協会のほうがいろんな保養所とか寮とかいうものがございます。併しこれはできましてから二十九年、三十年に余る協会の歴史から見てもそういうものがあるということは、これは当然であろうと思いますし、それから現在ございます保養所なり或いは寮というものは、健康保険組合とか或いは協会の共済会というもので作つたものでございます。こういう健康保険組合とか或いは共済会というものは、職員が組合費なり或いは共済会の会費というものを毎月納めておる。我々の給与の一部からそういうものを割いて、それによつてできておるというふうに考えるわけでございます。それから今そういう厚生施設はございますが、殊に地方の田舎の放送局へ行けばわかることでございますが、そういう田舎へ行けば、そういう施設もない、局内の厚生施設も殆んどないと言つていいくらい、宿直の設備等もないために、宿直のアナウンサーとか或いは技術者、そういう者は机の上にまあ寝ておるというような状況もあるわけでございまして決してこの厚生施設充実されているから、実質賃金はいわゆる商業放送とそう変りはないということは、私は絶対に言えないんじやないかというふうに考えております。
  55. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 当委員会を代表いたしまして、参考人の方々にお礼を申上げます。  本日は皆様には何かと御多用のところを特にお繰合せ下さいまして御出席を頂き、且つ有益なる御意見を承わることができましたことを深く感謝し、重ねて厚く御礼を申上げます。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  56. 左藤義詮

    委員長左藤義詮君) 速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会