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1954-04-22 第19回国会 参議院 通商産業委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十二日(木曜日)    午前十時五十五分開会   —————————————   委員の異動 四月十九日委員草葉隆圓君辞任につ き、その補欠として大谷贇雄君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中川 以良君    理事            松平 勇雄君            海野 三朗君    委員            石原幹市郎君            大谷 贇雄君            小林 英三君            西川彌平治君            酒井 利雄君            岸  良一君            豊田 雅孝君            西田 隆男君            三輪 貞治君            天田 勝正君            武藤 常介君   政府委員    外務政務次官  小滝  彬君    通商産業政務次    官       古池 信三君    通商産業省重工    業局長     徳永 久次君    通商産業省繊維    局長      吉岡千代三君    中小企業庁長官 岡田 秀男君   事務局側    常任委員会専門    員       林  誠一君    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   説明員    法務省民事局第    四課長     長谷川信蔵君    大蔵省銀行局総    務課長     大月  高君   参考人    双葉鋳造株式会    社社長     稲川 次郎君    株式会社東横製   作所取締役社長  鈴木 孝也君    株式会社牟田鋳    工所営業部長  斎藤 早一君    成和工業株式会    社社長     渡辺貞之助君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○通商及び産業一般に関する調査の件  (米国における可燃性織物禁止に関  する件)  (下請代金支払問題に関する件) ○委員長報告   —————————————
  2. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは只今より通商産業委員会を開きます。  本日は最初可燃性織物アメリカにおける輸入禁止の件に関しまして調査をいたします。質疑の通告がございます。石原君。
  3. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 アメリカにおける可燃性織物法に関します問題につきましては、すでに先般来本委員会でもいろいろ意見を交換いたしまして、その後アメリカにある日本大使館におきましても、全員非常に熱心に御協力を頂いておるようでありまして、だんだん先方空気も緩和といいまするか、いろいろの研究をしてくれておるやに仄聞いたしております。又日本におきましても、その後衆議院におきましては本会議決議を以ちまして、この問題をアメリカ国会並びに政府に対しまして要請をいたしておりまするし、又先般は可燃性織物の対象となつておる全国輸出関係業界並びに生産者等が集まりました全国大会等も開かれまして、それらの総意向うに伝えられておるように思うのであります。そこで最初外務政務次官に対しまして私はその後アメリカにおけるこの問題に対して如何なるような情勢になつているか、殊に本日より向うにおいて公聴会が開かれるやに仄聞いたしております。先ず最初にその後の情勢についてお聞きしたい。
  4. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 御指摘のように部内でもこれは非常に重大な問題として関心を集めておりますので、外務省のほうでも始終在京米国大使館並びに在米日本大使館連絡いたしましてあらゆる措置をとるように依頼をし、又訓令をいたしておるのであります。井口大使初め全員が一致協力してこの問題に当つて来たのでありますが、極めて最近の情報によりますると、いろいろの方面連絡をとりまして、先方日本趣旨を徹底せしめるように努力いたしました結果、相当の反響を呼んで来ておるようであります。先ず第一に商務長官は十九日にビユーロー・オブ・スタンダード、基準局でありますか、規格局でありますか、これに対しまして、現行の規格絹等の薄物を含めて織物可燃性危険性を判定するに適当であるかどうかに関して、一週間の期限を以て再調査をするように命じたようであります。商務省はこの調査の完了次第直ちに議会及び連邦商業委員会等対策を協議する予定であるということが在米大使館のほうから育つてつております。又連邦商業委員会は十九日に日本政府及び日本関係業者の重大な関心に応え、特にニユーヨークのハンカチ工業協会ハンカチーフ・インダストリーズ・アソシエーシヨン及びナシヨナル・ウイメンズ・ネツクウエア・アンド・スカーフ・アソシエーシヨン、これは全国婦人首装飾品と言うのですか、首に着るもの、ネツクウエア及びスカーフ協会のようでありますが、この二つの文書による要求に基いて、先ず第一に仕上寸法を二十四インチ平方以下のハンカチーフ、又は寸法の如何にかかわらず、ハンカチーフ及びスカーフ全部がこの法律衣料と申しますか、アーチクル・オブ・ウエヤリングアパレル、衣料品の定義に入るかどうかということに関する結論を定めるに先立つて関係方面の意向を十分に聴取することにしたということについては、口頭により、公聴会のほうは開催しないが、五月十一日までに利害関係者文書による意見書提出があることを期待するという旨を発表いたしたのでありまして、更に二十日に至りまして、上院の各州間のインターステート商業委員会委員長であるパーテルという、これはコネクテイカツト州選出の共和党の議員のようでありますが、このパーテル議員特別声明を発しまして、この法律の執行がもたらすべき影響に関して、委員会の受理しつつある陳情から察すると、日本からの輸入組製品を主として、この法律はその目的を越えて危険性の少いところの織物の流通を禁止し、国内業者にも不測の損害を与えるに至る虞れがある。そこで行政的手段を以てしてはその是正が困難であると思われるので、調査の上この法律適用基準を不適当と認められた場合は、委員会は必要な立法措置をとる用意があるという趣旨を発表いたしたようであります。このように日本の非常な熱烈な陳情、又いろいろ申出に対しては、十分向うでも注意を払つておるようでありますが、更に本日から開かれまする公聴会に対しましても、現地における輸入業者及び関係業者日本代表者とも連絡をとりまして、できるだけこの公聴会においても有利な、利益が出て来るように努力をしておるという報道に接しておる次第であります。
  5. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 アメリカにありまする日本大使館の非常な努力並びに各方面からの陳情その他によりまして、情勢が非常に好転の空気に向かつておりますることは、誠に我々としても感謝に堪えないところでありまして、今後ともこの目的貫徹達成に一層の努力をしたいと思うのでありますが、この際一言通産省のほうにもお聞きしておきたいのでありますが、これは日本業界といたしましても、今後アメリカがどういう措置をとつてくれるにいたしましても……。
  6. 中川以良

    委員長中川以良君) 石原委員発言中ですが、外務政務次官只今衆議院のほうで採決がありますので、お呼びに来ておりますが、御退席願つてもよろしうございますか。
  7. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 政務次官はいいでしよう。
  8. 中川以良

    委員長中川以良君) よろしうございますか……どうぞ。
  9. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 業界としても、この問題の将来に対してやはりいろいろ研究しておかねばならんと思うのでありますが、先般新聞紙の報ずるところによりますると、不燃加工の実験にも成功したとかいうような報道もあつたのであります。又通産大臣は、先般の委員会におきまして、不燃加工等の施設、機械等についても、いろいろ研究を加えているというようなお話もありましたので、こういう方面についてのその後の様子、並びに只今政務次官からいろいろ詳しい報告があつたのでありますが、通産省のほうでキヤツチされているその他の情勢或いは報告等がございましたならば、この機会に併せてお聞かせを願いたいと思います。
  10. 古池信三

    政府委員(古池信三君) 只今お尋ねのありましたこの絹軽目ものに対します不燃性加工の問題でございますが、これは先般も本委員会におきまして我々から申上げましたように、この点に関する研究を進めるように、いろいろと協力をして参つているのであります。その結果最近相当加工技術において見るべきものがあるように承わつておりますけれども、何分現在の段階におきましては、未だ試験期を脱しないと存じます。従つてその技術が成功いたしたといたしましても、これを実際の工業化した場合に、採算上果して有利なりや否やというような問題については、なお今後十分に検討をいたす必要があると考えます。従いまして今直ちにこれを実用化して、輸出の面において直ちにこれによつて相当に有利な条件を作り得るかどうかということは、未だ問題であろうと存じます。
  11. 吉岡千代三

    政府委員吉岡千代三君) 情報につきましては、二日おきに外務省を中心にいたしまして、担当官連絡会議を開きまして、関係業界等も含めまして、情報の収集に努めております。従いまして只今外務政務次官からお述べになつた通りでございまして、先ほどお答えになりました公電と同趣旨電報UPAPから二十日に入つております。内容は先ほど外務政務次官からお述べになつた通りでございます。只今APから電報として入つておりますのは、これは従来外務省情報としても、同趣旨のことが、在日大使館等から入手いたしておりますが、この二十二日、本日と申しますか、今夜から開かれまする公聴会は、直接にはこの施行細則に関する公聴会であつて従つてそのスカーフハンカチーフ衣料に入るか入らないかという問題は、この公聴会としては直接の問題にならないであろうというようなことを、連邦商業委員会の筋として、そういうことを言つているということが、UP電報で来ております。従いましてこの解釈の問題、スカーフハンカチーフの問題は、依然としてその形において残される、これをどういう形において決定するかということは、その問題として別個に公聴会を開いた上で、FTCがきめるのであるというふうに承知いたしております。それでその点が先ほど外務政務次官からお述べになりました二十日にFTCが発表いたしました五月十一日までに、この問題について、スカーフハンカチーフ衣料に入れるべきであるか否かということについて、利害関係者文書による意見提出を求めておる。従つて口頭による公聴会は開かないが、外務省の見解によりますと、この文書による意見書提出ということが、この問題についての公聴会に代るべき措置とこういうことになるのではなかろうかという解釈でございます。  それから不燃加工の問題につきましては、国立の横浜繊維工業試験所、並びに神奈川県の繊維工業試験所、その他民間におきましても、研究を進めておるわけでありまして、これにつきまして、工業技術院として、試験研究補助金の受付を今月一ぱいこの問題について延長いたしまして、助成を図るという方針をとつておることは、先日お答えした通りでございます。でそのうちにはすでに内地試験をいたしまして、更にアメリカにテスト・ピースを送りまして、その結果を得ておるものもあるわけでございますが、この問題は先ほど政務次官から申上げました通り、実験室的に成功いたしましても、それについてどの程度加工費なり、設備費がかかるか。何分この品物自体が非常に僅かな利潤によつて成立つている性質のものでございますから、その状態によつては必ずしもこれで安心するというわけには行かない、又これを或る期間使用いたしました場合に、その効果がどうなるであろうか、まあいろいろな点にまだ問題を残しておるわけであります。かたがた現在適用除外の問題について交渉中でございますので、その辺の関係もございまして、これにつきましては、発表等については特に慎重な態度をとるという考えでおる次第でございます。
  12. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 だんだんアメリカ側情勢もわかつたのでありまするが、非常にアメリカ側空気も幾らか好転して参つたということも、この問題の本質がわかりましてから、各方面からの陳情要請、その他が非常に大きく影響したことと思うのであります。殊に申すまでもなくアメリカは輿論を非常に尊重する国であります。  そこで私は委員長一つお願いを申上げたいのであります。衆議院では本会議決議を以てこれを要請したのでありまするが、公聴会も差迫つておりまするので、まあ参議院といたしましては、この今までの当委員会における論議の経過から見ましても、各委員ともこの問題に対しては、何人も異論がないと思うのでありまして、そこでこの可燃性織物に対しまして適用除外といいまするか、適当なる本法の、アメリカ可燃性織物禁止法施行に対しまして、思いやりの深い配慮をしてもらいまするように、本委員会総意として、それを代表して委員長からアメリカ大使館を通じてなり、アメリカ政府並びに国会に対して、この委員会空気を速急に伝えて頂くようなお取計らいを願いたいと思うのでありますが、各委員にお諮りを願いまして、さような措置をとつて頂きたいということを私から要望いたしたいと思います。
  13. 中川以良

    委員長中川以良君) お諮り申上げます。只今石原委員よりの御発言は、私どもも全く同感とするところでございます。殊にこの可燃性織物米国における輸入禁止の問題に関しましては、当委員会におきましても、先般来数度に亙りまして、全く超党派的に審議をいたしまして、米国政府並びに国会善処方全員ことごとく要望いたしておりまする次第であります。従いまして只今石原委員の御発言にございましたごとく、できまするならば本会議において、これの決議をいたしたいのでございまするが、併しアメリカにおいては本日より公聴会が開かれまするので、本会議を開催する暇がございませんので、只今の御趣旨のごとく、本委員会における総意といたしまして、委員長より、米国大使館に出向きまして、大使にその旨を伝達をいたし、本国のほうに善処方を要望をしてもらいたいと存じまするが、さような取計らいにして御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 中川以良

    委員長中川以良君) それではさように決定をいたします。  つきましては、委員長といたしまして次のような事項を米国大使申入をいたしたいと存じます。   可燃性絹物法施行さるる時は軽目絹織物の対米輸出は殆ど不可能となり、日本当該産業及び関連産業に甚大なる打撃を与え、かつ多数の従業員家族生活危殆に陥れ、延  いては国民感情を刺戟し、日米経済外交の将来にも悪影響を及ぼす惧れがある。  よつて、私は本委員会総意により、貴国会並びに貴国政府本法施行につき、思いやりの深い配慮を与えられるよう貴大使を通じ、ここに懇願する次第である。  こういう意味を外交文書といたしまして、その書簡を以ちまして直接大使なり、或いはこれに代るべき人に会いまして、本日申入をいたしたいと存じます。
  15. 松平勇雄

    松平勇雄君 この要請の案は、私は大体は結構だと思うのでありますが、今度アメリカ側に対しまして要請することは、軽目絹織物除外してくれということじやないと思うのであります。で私は理由としては、このハンカチスカーフというものは織物じやないから、この当の目的からまあ外れているから、だからハンカチスカーフだけは除外としてやつてもらいたいということを言うのじやないかと思うのですね。若しこの軽目織物でも、着物だつたらこれは僕は危ないと思う。いけないと思うのです。そこでやはりハンカチスカーフをここへ入れて頂いたらどうかと思います。
  16. 西田隆男

    西田隆男君 私この案文、今見たのですがね。如何にも哀願するようなふうに書いてあるが、「思いやりの深い」だけは削られたらどうです。特別な考慮を払われるとか、与えられるというような文句に代えられて、「思いやりの深い」云々というのは実に憐みを乞うようです。
  17. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと速記をとめて下さい。    午前十一時十九分速記中止    ——————————    午前十一時三十七分速記開始
  18. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて下さい。  それでは只今懇談でいろいろ御指摘がございました点を訂正をいたしまして、次のような次第を申入れることにいたします。   可燃性織物法施行さるる時は軽目絹織物及びその製品の対米輸出は殆ど不可能となり、日本当該産業及び関連産業に甚大なる打撃を与え、かつ多数の従業員家族生活危殆に陥れ、延いては国民感情を刺戟し、日米経済外交の将来にも悪影響を及ぼす惧れがある。  よつて、私は本委員会総意により貴国会並びに貴国政府本法施行につき特別の配慮を与えられるよう貴大使を通じ、ここにお願する。       参議院通商産業委員長  只今ので御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 中川以良

    委員長中川以良君) それではさような次第を外交文書といたしまして持参をいたし、更に口頭において然るべく伝達をいたすことにいたします。
  20. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 この問題に関連してお尋ねをしておきたいのですが、曽つてこれが論議せられたる際に、川俣地方その他この件に関連する地方金融に対してどういう緊急措置をとつておられるだろうかということを質問したわけですが、できるだけのことをやるという当時政府の答弁だつたのですが、その後どういう対策がとられ、又実情はどんなになつておるかということと、それからもう一点は、問題になつてから相当月日にもなりますし、今後又これが解決を見るまでには相当まだ月日がかかりはしないかという懸念があるわけですが、これらの損失に対して特別の税の減免措置等も考えられるかと思うのでありますが、そういう点について政府はどんなふうに考えておられますか、お伺いしたいと思います。
  21. 古池信三

    政府委員(古池信三君) この一番最初に問題になりましたのは、業界からのお申出によりまして、輸出信用保険をどうするかということでありますが、これに対しましては早速関係保険会社に通牒をいたしまして、これは制限をしないで、従来通り条件で引受けるようにということに手配をいたしております。それから金融問題につきましては、福島県の県庁のかたに御上京を願いまして、中小企業庁から、県の保証協会その他の融資の条件については、今回の問題の発生によつて不利にならないように、十分好意を以て当つて頂きたいということをお願いをし、了承をされた次第であります。今のところその程度であります。
  22. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 税の特別の減免措置等についてはまだ考慮せられておらんでしようか。農業関係などについては、災害が起きるとすぐそういうようなことを考えるのですが、こういう海外の事情から来る不可抗力によつて地方当該産業が、殆んど場合によつては全滅しようというような際には、やはり税の特別の減免措置などをすぐ通産当局としては手を打たれる必要があると思うんですが、そういう点について御意見を伺いたい。
  23. 古池信三

    政府委員(古池信三君) 只今の御意見、誠に御尤もだと存じます。私どもとしましては、只今までのところは、専らアメリカ側制限を緩和する方面に主力を尽しておりまして、成るべく内地業界損失を最小限にしたいというわけでございますので、万一その損害が現実に出た場合の税の減免措置につきましては、現在は具体的に進めておりませんけれども、当然この問題につきましても大蔵省当局と折衝いたしまして、これに対処するようなことを考えて行かなければならんと存じております。
  24. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 お話のように、対外的な措置はこれは非常に重要でありますし、それは大いに手を尽さなければならんのですが、そちらのほうに気がとられて、国内関係でやろうと思えばやり得るし、又やる必要のあるような措置が手ぬかりになつておるんじやないかというようなことが非常に懸念せられるのであります。そういう点について金融についても一層手を尽されるようにすると同時に、今の税の減免措置などは、こういう際には私は考えるべきものだと思う。そういう点について業界からの陳情がないと何もやらんというんじやなく、陳情があつてもなくてもやらなければならんと思うものについては政府のほうで手を打たれる。それでないと陳情したものだけが利益を受けて、そういうことについて手をつけないような階層は常に損をするというようなことになるのは私は今の政治の欠陥だと思います。そういう点について金融措置と、それから税の措置について御研究を願いたいと思います。その結果大蔵当局等と折衝せられた経過を適当な機会報告を願いたいと思います。
  25. 古池信三

    政府委員(古池信三君) 只今の御説、誠に御尤もでございますので、御趣旨に副うように努力をして参りたいと存じます。ちよつと速記をとめて頂きたいと思います。
  26. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  27. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて下さい。  ほかに御質疑はございませんか。  それでは本日は午前中は一応この程度にいたしておきたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 中川以良

    委員長中川以良君) 暫時休憩いたします。    午前十一時五十分休憩    ——————————    午後三時十九分開会
  29. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは休憩前に引続き只今より再開いたします。  最初に御報告をいたしますが、午前中の委員会で御決議になりました可燃性織物アメリカにおける輸入禁止の問題につきまして御協議いたしました点を、本日午後一時半にアメリカ大使館に赴きまして、親しく伝達をいたしておきました。丁度一等書記官のハラルドソン、それから二等書記官ステイブンソン両氏に会いまして、委員会におきまする総意として伝えたのであります。非常に好意的にこれを受入れまして、衆議院の先般の決議は早速ワシントン打電をした、本日は参議院通商産業委員会総意によるお申入に対しましては、直ちに一つ今日の公聴会に間に合うように自分はワシントンのほうに打電をいたすということを言明をいたしたのであります。その際に、特に申しましたことは、非常に同情するけれども日本において一部誤解の点があるようであるから、この点は一つよく了解をしてもらいたい、ということは、この法律作つてアメリカ日本絹織物輸入を阻止したように思われておるが、一年前にこの法律アメリカにおいて作つて、実施の時期まで一年間の余裕をおいて、それに対応する処置をとつてもらう期間を十分においておつたのだ、不幸にして日本がこの法律が出たことを知らなかつたためにこういう事態に会つたのであつて、決して作為的にアメリカはしたのではないという点を強調して言つておりました。それからこの法律によつて輸入が禁止せられるであろうという大体の推定の額は、一カ年間に約五百乃至六百万ドルである、これは日本全体の輸出の額から見ると極めて微々たるものである、こういうような点に対して余りに神経質にならないようにというような話が出たのであります。殊に最近特需を一週間に五百乃至六百万ドルぐらいは出しておる、然るにかかわらず、日本においては、或いは金融がつかないからとか、或いは又値段が引合わないというような点でこの注文を受けないでおる者がたくさんある、こういう点でも輸出に対する努力が足りない点があるので、こういう点もどうぞ今後注意をしてもらいたいというような話があつたのであります。それに対しまして、私は、最初の点につきましては、日本国会なり、政府なりの誠にミステイクであつて、一年間知らなかつたという点は遺憾である、それであるから、今日その準備ができていないので特にお願いをしているのだという点をよく申しておきました。それから五百乃至六百万ドルの僅かの輸出が阻害されると言つておるけれども、それは地方的に見ては非常に重要なる産業であつて、而も綿布と違つて、繭から糸、織物に至るまで、全部が純国産であるので、これが輸出できないということは、その地方産業に及ぼす影響は極めて重大であるので、今日日本輸出に対して懸命な努力を払つておる際に、決してこれは軽視できないのであるという点も強調いたしておきました。  なお特需の問題等につきましては、我々は合理化をやり、低物価政策を似て是非遺憾のないように善処いたしたいという点を申しておいたのであります。非常に友好的に話してくれました。更に不燃性加工について日本も是非努力をして頂きたいということを向うも申しておりました。最近アメリカから送つて参りましたこれは綿布に対する不燃性加工の処理方法、これを一部くれまして、一つ皆さんで見て頂いて研究を願いたいということでございましたので、これはいずれ翻訳をいたしまして、お手許に差上げることにいたします。以上のような次第でございます。   —————————————
  30. 中川以良

    委員長中川以良君) 本日は日程になつておりまする日平産業の不渡手形の問題に関しまして、同社の下請業者のかたがたから実情を親しく伺うことにいたしております。参考人のお方に御挨拶申上げます。先般皆様方から御陳情を私は承わつたのでございまするが、特に委員会に諮りまして、親しく委員諸君にもお話を願いたいと存じまして、本日お出ましを願いましたところ、御多用中を各方面より御出席を頂きまして誠にどうも有難うございました。厚く御礼を申上げます。  本委員会におきましては、下請代金の支払問題につきましては、非常に深い関心を先年以来これに払つておりまして、この問題につきましては、何回か調査をいたし、更に公正取引委員会等に対しまして、当委員会の意向を十分に申入れまして、御承知のごとく、下請代金の支払準則等をも作ることに至つたような次第でございます。この代金の手形の不渡という問題を取上げて研究をいたしますることは今回が実は初めてでございます。先般御陳情を承わりましたので、これは今日極めて重要なる問題と存じまして、特に本日はこの点に関しまして皆さん方の御忌憚のない御意見を承わり、只今のお立場に対しまして十分に御同情を申上げまして、当委員会といたし、善処をいたしたいと考えておりまする次第でございます。本日は図らずも本会議が延びまして、大分長い間お待たせをいたしまして誠に恐縮に存じ上げます。これから逐次御陳述を願いまするが、お一人当り約十五分におきましてお述べを頂きたいと存じます。なお、お述べになりました重複いたしまする点等はできるだけ御省略を頂きまして、特に当委員会調査の上に参考になる点をいろいろな角度の面からお漏らしを頂きたいと存じます。一応皆様のお話を承わりましたあと、委員の諸君より御質疑を申上げることにいたします。  それでは最初双葉鋳造株式会社稲川社長にお願いをいたします。
  31. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) 双葉鋳造株式会社の社長の稲川でございますが、私この日平産業の下請工場の協力会を作りまして、その委員長をいたしておりまするので、従来の総括的な経過を御報告申上げまして、いろいろと御参考にして頂きたいと考えるのであります。説明の前に、参議院の通産委員会におきましては、常日頃極めて中小企業の問題に対し、又特に支払の問題、或いはこうした問題に対しまして非常なる熱意を持たれ、関心を持たれて、本日我々をここにお呼び頂きましたことを厚くお礼を申上げます。  御承知の通り、日平産業は先般三月十五日に相当に不渡手形を出しまして、銀行の取引停止となつた状況になりまして、我々関係の下請業者、或いは商社等におきましては、非常な衝撃を受けまして、等しく不安と焦燥のうちに問題の速かな解決とその維移を注意しておつたのでありますが、不幸にして、中途におきまして宮嶋社長が逮捕されるという事態が起き、一向に日平の再建問題は進展いたしませんので、東京地区、神奈川地区、埼玉地区の下請業者が打つて一丸となりまして、横の連絡をとり、日平産業再建促進協議会という会を作りまして、これが対策に腐心いたしておりまして、先般衆参両院に請願をいたしたような次第でございます。御承知の通り、日平産業は横浜工場と富岡の兵器工場と、工作機械、或いはデイーゼル・エンジンをやつておる工場であります、茨城県の伊讚美の農業用の軽油発動機をやつておる工場の三個所になつておるのでありますが、私どもの主として関係しておりますのは、横浜の五器工場並びに工作機、デイーゼル・エンジンの工場でありまして、これに対する売掛の総額というものは現在全体を入れましては約四億五千万の状況であります。現在の実情においてはこれらの手形が不渡になつ関係上、すでに倒産したものが約数十社ございまして、まだまさに倒産せんとするものが数知れないような状況でございます。これらの従業員の総数というものは約一万五千人でございまして、家族数を入れますれば七万人の家族というものがこれらの大きな影響を受けておるという状況であります。この不渡に対する処置といたしましては、各下請業者の買戻し、或いは又第三者に渡つておりますので、甚だしきは高利貸その他の面におきまして割引を余儀なくされてやつたような面がありまして、極めて強硬なる取立を食つて差押をされておるもの、或いは工場閉鎖をしたもの、甚だしきは発狂に近い状況にあるような、極めて悲惨な状況なども現われておるような状況であります。  私どもは日平の本社に対しまして、四月の十二日に各地区の代表委員が五十名参集いたしまして、副社長に会見いたしまして、協力工場及び商社の現に有する債権の名簿を提出されたい、或いは債権の確認書を発行してもらいたい、或いは債権者の大会を開くように協力工場及び商社以外の債権を知らせてもらいたい、或いは会社における売上金の処理の状況について参加させられたいというようなことを申入れいたしましたが、会社側からは四月の十五日に、債権の明細書は委員長を通じて提出があれば照合して確認をしよう、債権者の大会は大口の債権者を集めて会をやりたいが、現在検察庁にそれぞれの書類等が押収されておる関係で十分なる調査ができない、従つてそれらの面の調査ができて整備ができ次第行いたい。なお最後の四項、五項目については回答を保留するというようなことでありましたので、なお加えて債権者の納得のでき得る担保を提供せられたいということも申入れましたが、これらはすべて四月十七日に会社の重役会議を開いた結果、四月末日までには債権者の納得のできるような再建案を立てることができると思うので、それまで待つてもらいたいというような状況になつておる次第であります。  現在私ども調査いたしました状況によりますと、約九十五社を調査いたしたのでありますが、そのうち五十万円以下が三十九社、五十万円以上百万円以下のものが十社、百万円以上五百万円以下が三十六社、五百万円以上一千万円以下が八社、一千万円以上が二社、合計九十五社。この九十五社の調査の状況は、債権の額はこのような状況であります。従いまして、従来これらの債権の状況につきましては、単に業者が一カ月、二カ月に納めたものではありませんので、甚だしきは八カ月、十カ月間の支払が全部不渡になつたというような極めて深刻な状況でありまして、中には殆んど納品をして六カ月たつて漸く代金をもらつたら、それが不渡になつてしまつたというような現状等もあるのであります。いずれにいたしましても、かような状況でございまして、殆んど日平の実情を見まするというと、いわゆる大口の債権者又は金融機関等におきましては、いわゆる担保を取り、或いは紐付きの融資である関係上、銃弾の売上げとか、そういうものは殆んど大口の江商であるとか或いは住友金属、或いは金融機関のほうに紐付きで回収されて行くというような状況でありまして、最近四千二百万の金が日平に入るのでありますが、これらも紐付きで江商のほうに入つてしまう。そのうち二千万は委任状が出ているので当然江商に入るといたしましても、その差額等も江商に入る。江商は国の債権に対しても、これを抑えて行くというようなことで、少しもそれらの金が下請の業者或いは商社等には一銭も廻つて行かないというような現状で、極めて弱小なる下請業者はただただ傍観しているような状況でありまして、極めて情けないような状況に置かれておる状況であります。何とかこういう点につきましても、会社側にいろいろと申入をいたしまして、できる限り紐付き、或いはその他の面において、いわゆる大資本を持つておる商社、その他金融機関等に入る部面も極めて平等に下請業者或いは商社等にも、或いは工場の従業員等にも、それらの金が廻るように、ただ単なる契約その他によつて、日平が倒産に近い状況になつた以上は、共々にこれらの面を平等に一つ配分して、そうしてそれらが少しでも生き延びるような方法をとつてもらいたいということを痛切に要望しておるのでありまするが、これらはのれんに腕押しのような状況でありまして、日平産業自体におきましても、いろいろと担保その他の問題になりますというと、日平産業には代表取締役は宮嶋社長一人である、他の取締役は全部代表取締役としての代表権がないというようなことで、最後の場合には逃げられるような状況でありまして、私どもとしましては、取締役会の決議に基き、或いは代表取締役を設定して、我々の真の交渉相手になつてもらいたいということを要望しておるのでありますが、それらの点も何ら行われておらないような状況にあるのでありまして、非常にその去就に迷つておつたような状況でありますが、本日の新聞紙上にありますのに、何かどなたかが出て会社の再建を引受けるようだというようなことも出ておりますが、今のところ我々といたしましては、全くこの問題から各関係工場も、明日の日にも閉鎖をしなければならん、或いはすでに貸金の遅払等も相当ありますので、誠に困窮した状況にあるのであります。以上簡単でございますが……。
  32. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。  それでは次に株式会社東横製作所の鈴木社長にお願いいたします。
  33. 鈴木孝也

    参考人(鈴木孝也君) 私東横製作所の鈴木でございます。今私どもの日平産業の下請工場の協力会の委員長をやつております稲川さんからいろいろ大体のお話がありましたが、具体的に私どもがどういうふうな状況で以て日平産業とお取引願うようになり、それから今日に及んだかというようなことを、私どもの横浜工場の一ブロツクといたしましては五十一社現在まとまつておりますが、皆さんがそのような状況の下にありますので、一応私の会社を例にさして頂いてお話して行きたいと思います。私はこのほかに太平工業株式会社という会社の社長も昨年の六月から引受けまして、そしてその工場も昨年の三月から仕事をやつておりまして、日平が支払が悪くなつて来て、そして売掛金が一銭も払わないという状況にありましたものですからして、私の東横製作所としましては八月の十四日に呼ばれまして、十五日から、君のところでなければできない仕事があるから早速この仕事をやつてくれという仕事が、印刷機械のロールだと思いましたが、あの附近には余り大きな機械を持つている工場が少い関係と、又ほかの仕事で以て忙しいので断られたのかも知れませんが、私のところに来まして、そして「幾らでもいいから、急ぐのだからこの仕事をやつてくれ」「そうですか、それでは支払を一体どういうふうにしてくれますか」と言いましたところが、二十日締切で五日払い、五〇%乃至六〇%くらい払える、こういうようなお話で以て取引が始まつたのであります。その仕事も私どものほうで以て君のところで幾らでもいいからということで始まつたので、うちのほうでは大体一万八千円くらいにその仕事を見たのであります。そして納めましてその月に注文書をもらつて見たところが、君のところは少し値段がよすぎるから、それで六千円に負けてくれ、こういうことで以て、一万二千円の値引きをせられて、そして押付けられてしまつて、発注しても注文書をなかなか切つてくれない、そういうような状況で以ておるうちに、九月、十月頃に地雷の仕事が始まりまして、その間に内燃機関の仕事もやつておりましたが、地雷の仕事が始まりまして、君のところで一つどれをやるかということで、私のほうでは一番大きな仕事で、一番まとまつて金高の多いものというふうに持つてつたのですけれども、一番むずかしいスプリングの仕事をやつております。そういつたような状況の下に約現在の不渡まで参つたのでありますけれども、その間にいろいろと検収表が上らないとか、それから納品しても注文書が来ない、そういうような状況で、社内のあれが全然なつておらないというような状態で、今日になつてしまつたのでございますが、まあ一番私どもがその間に会社側に不正だというようなことを告げたいし、又お願いしたいということは、大企業にいろいろな資金面だとか、それから融資面が優先されておる中で、我々には八月から十二月まで一銭も払われていない、そして十二月の月に私どもが集金に参りましたら、一係長が、君のところは一体何だ、君のところばかりじやないか、金々というのは……、というので約二百万ほどの売掛があつたのですが、そのうちの支払金額が三月十五日の約束手形で以て十万円なんです。こういうような状況であつたのであります。それから私どももいろいろと、こんな十万円じや八月から十一月まで仕事をして、そうして二百万からの仕事をしておつて十万円の支払じやもう話にもならない、どんなことをしても半分はもらわなければいかんということで本社へも参りましていろいろお話をしたんですけれども、本社のほうではそれじや工場のほうへ行つてくれ、工場のほうへ行きますと、工場のほうでは本社のほうへ行つてくれというようなことで全然話にもならないような状況でございますが、まあ一応私どもがそういう形でずるずるで取引してしまつたということは日平産業の皆さんがいろいろまあ嘘を言つたような形で以て、こつちの注文のほうは注文のほうで以てうまいことを言い、又納品するほうは納品するほうで以てうまいことを言つてつてつてしまう、こういうような状況で現在に至りました。で、横浜の下請工場の中ではこれは鈴木木型と申すのですが、その工場は日平産業の支払をもらえないがためにその主人は病気してしまつて、なお又それを看病したり、心配した余りにその奥さんが死んでしまつた、こういう状況であつて、もうどんなことをしても何とか諸官庁の皆さんや、又衆議院参議院の皆さん方、通産委員会の皆さん方にお願いして、そうして理窟抜きで何とか中小企業の我々が日平産業の下請工場ばかりじやない、もう全日本のこの下構工場の中小企業者が安心して働けて、そうしてお金をもらつて、もう従業員にのみだけでも給料を払つて行かれるような状態に一つ協力お願いしたいと思いまして、まあ本日も皆さんのところへ私が廻つてつたのですが、もう理窟抜きで一つこの参議院の通産委員会に参りましたら、国会を通じてもう何といつて一つ大企業者が中小企業の面倒を見てくれるんだというような恰好に持つてつてもらうように一つお願いして見てくれ、いろいろこの日平産業の件に関しましても私も本社のほうへも参りましていろいろお話しましてもさつぱり誠意のあるお話は承われない、それで石原副社長が責任を持つて私のところへ来てくれれば御回答申上げるということであつて、我々は再三参りましても、ちよぴりちよぴりと少しずつその返事をしてそうして終局的には私ではわからない、社長がいなければわからないというようなことなんでございます。一応横浜工場の一般状況としてはそういうような状況でもう不渡手形をもらつていてその買戻しのために、百万円不渡手形を持つていると買戻しをすると二百万円である。こういうような状況になつておりました。経営者も仕事もできずに、そうして銀行とか、それから保証協会とか、そういうところを走り廻つている、そうして殆んどが五〇%とか、又鈴木木型のごときは一〇〇%ぐらいの仕事をやつておつたもので、今じや仕事もないということと、それから現在我々のところに仕掛品の一部のものが残つております。そういつたものを幾らかの少い金で以て買集めて歩いて、そうしてそれを一万か二万の部品で以て組立てられるものを、成るべく現金で以て一万か二万か五万くらいで以てあとの金をかけりや組立てられるというようなものを全部集めて歩いて、そして組立てて、それを大きな商社へ持つてつて納めている。そのお金はどういうふうになつておるかさつぱりわからない。こういうような状況で以て、もう一にも二にも我々中小企業者が泣かなけりやならない。それには何らの保護政策も何もない。こういうことを何とか国会を通じて、我々も労働者並みに一つ何かしらの恩典と申しましようか、救済と申しましようか、潰れた場合の救済の方途を一つお考えになつて頂きたいと思います。これで終ります。
  34. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。  それでは次に株式会社牟田鋳工所の斎藤営業部長にお願いいたします。
  35. 斎藤早一

    参考人(斎藤早一君) 私牟田鋳工所の斎藤でございます。本日社長が参るところでありますが、私が代理として参りました。只今稲川委員長並びに鈴木社長より大きな点或いは附随した点をお話になられたのでございますが、私もやはり重複いたしますので、私の工場で如何に日平と関係したか、或いはその他の推移を御参考に供したいと思います。その前に前提といたしまして、私の牟田鋳工なるものの一応の御参考の栞として、どういう工場であるかということを申述べます。私の工場は大正五年に鋳物工場として発足いたしまして、只今まで約四十年間、いわゆる川口さんでやつておられるような鍋、釜の類ではなくして、いわゆる高級鋳物と称する船或いは工作機械のベツドとかいう高級鋳物、これは双葉の稲川委員長と同じでございますが、高級鋳物をやつてつたのでございます。戦時中は蒲田工場と申しまして一万五千坪の工場を持ちまして、本社は品川の大崎にございますが、そこに約七千坪、曽つては約七百人ぐらい従業員を使つて一応中小企業としては相当上のほうの工場として参つたのであります。戦争中のいろいろな関係で従業員が只今八十五人、その他役員を混ぜまして約百人の工場でございますが、三月三十一日私の工場は臨時休業をいたしたのであります。三月三十一日を以て四十年の老舗工場を一応臨時休業をいたした、そういう私の工場の経緯でございます。日平さんとの取引と申しますのは、日平産業が創立、私は昭和十二年と存じますが、昭和十二年以来お顧客さんとして出入りをしております。戦争中はおよそ日平産業の仕事を九〇%私の工場でやつてつたのであります。戦後、或いはこの一年間でございます、一年間約一〇%から三〇%やつております。私のところが臨時休業いたした原因といたしますのは、これは金融の引締その他いろいろございます。日平産業のために潰れたということはこれは近因ではございません、遠因でございます。ではなぜそういうような遠因があつて私のほうが一応臨時休業をいたしたかと申上げますと、日平さんの例にとつて見ますと、私たちいわゆる鋳物と申しますのは、御存じと存じまするが、銑鉄或いはコークス或いは砂、そういうものを一応問屋などから買いまして、注文を頂いてから、その銑鉄やその他の材料によつて、いわゆる機械屋、機械工場と違いまして、私たちは従業員を使つていわゆる無から有を生ぜしめるというような素材の部門を担当いたします。注文を頂きましてから、日平さんの品物は大きくて約二十日間くらいかかります。それでそれを発送いたしましていわゆる検収から購買、それに参りますのは約短くて一月、長いときになりますと二月でございます。三月かかりまして検収通知というのを私の工場に送付して参ります。そこで初めて金額の請求書を出すのであります。今までの例から申しますと、請求書が納まつて請求書を発送いたしましてから約一月ぐらいたちまして五〇%から三〇%ぐらいの支払を受けております。そうしますと、注文を頂きましてから、長いときで先ず約二月、三月目に初めてお金を頂く。そのときにでございます。手形は約、長くて百二十日、短くて九十日でございます。そうしますと約七カ月というものを、私のほうで注文を頂きましてから金を五〇%頂くのに七カ月かかるのでございます。私のほうで一番困つたことは、十月の三十日までは日平の手形はこれは落ちました。落ちましたし又金融機関でも割つてくれたのであります。その後私の会社で以て約二百二十万手形を頂いております。これは六月三十日最終期限のやつが二百二十万、ところがこれは銀行は勿論相手にいたしません。街の金融機関、これも初めは二十銭以上で割引いておつたのでありますが、およそ一月頃から街の金融機関もいわゆる日平の手形そのものと又或いはそれに附随して工場或いは社宅、そういうものを抵当物件として取る。いわゆる日平の手形はこれはつけたしでありまして、社宅やその他を抵当に取つてそれで金を貸すという形に、そういう形で割引く。そういう状態で非常に私たち日平の手形を二百二十万も持ちまして何ら金が……ただ空文にしか過ぎない、金が入つて来ないのであります。そういうような遠因が一応私の工場を臨時休業いたした因となつておるのであります。これは日平産業自体ばかりではございません。私たちのお顧客でそういう事態もありますが、一番甚だしいのは日平産業でございます。今までの例で一応私たちの臨時休業の近因を述べましたが、ここで私の工場を臨時休業いたしましたが、本日参考人としてお呼ばれいたしまして、私たちが述べたいのは、私の工場も会社更生法その他のことで再建策をいたしておりますが、日平産業では下請業者が四百社ちよつとございます。この大企業は四百社の下請を使つてやらなくてはならない。併しその下請に対しては非常に支払の面その他で何ら誠意がないというか、まあ或いは事実できないのかも知れませんが、自分たちは恩恵を受けておる割に下請に対しては何らそういう点支払をしてくれない、こういう点が非常に私たち中小企業の悩みであります。どうか先ほど鈴木社長が申上げましたように、中小企業に対して、これは私が申すまでもなく中小企業というものは全日本相当なパーセンテージを占めておる、その中小企業に対して一日平の問題でこれだけのいろいろな犠牲、或いは例えて言えば倒産或いは今申上げました病人とかと、というような非常な社会問題を出しておる、そういう状態をよく一つ御認識願いまして中小企業に対する何らかの措置、具体的にはいずれ中川委員長から申上げるかも知れませんが、何らかの措置をして頂いて、私のところが臨時休業いたしました、これを一つのモデルケースとしますならばこういうことである、問題はこういうことで出たのだという一つの御参考に供して、それに対して何らかの中小企業に対して打つて頂く手がございましたらば私は本懐といたします。終ります。
  36. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。  それでは最後に成和工業株式会社の渡辺社長にお願いいたします。
  37. 渡辺貞之助

    参考人渡辺貞之助君) 成和工業株式会社社長をいたします渡辺でございます。本日は特に私ども中小企業者の大企業の経営破綻から受ける打撃、又破綻を来たさんとも平素における支払状況が非常に悪いことから来る窮状に対し深甚なる御同情を寄せて頂きまして特に貴重な時間を私どもにお割き頂きました参議院の各位に私日平産業伊讚美工場関係の下請業者を代表いたしまして、又日本全国の中小企業者の切なる気持も甚だこれは僣越でございますが、代表させて頂きまして深く御礼を申上げる次第でございます。  時間でございますが、只今までお話申上げました三社のかたがたは横浜工場関係協力工場のかたがたでございますが、私だけは特に茨城にあります日平産業伊讚美工場の関係でありまして一社で事情を申上げますので少し時間がかかりますので多少時間の御容赦を願います。  私どもがこのたびの日平産業の経営破綻による不渡を受けましたのは一般に公表される前一カ月先立つて二月の十五日でございました。これは支払銀行が常陽銀行の下館支店になつておりましたので、手形交換所を経由しない関係上、いわゆる手形不渡になる関係上、新聞紙も取上げませず社会一般の問題にはならなかつたわけでありますが、いわば打撲傷による内出血と申しますか、実際には二月十五日からこの不渡の問題で非常な窮地に陥つておつたわけであります。もう一日待て二日待て、そのうちに決済できるからというて二月の十五日から二十六日まで待ちましたが、とうとう決済できませんで、一旦三月二日手形を切替えまして、今度は手形交換所加盟銀行の支払場所になりましたが、三月三日になりまして今度私は全部準備できましたかと申しましたところが、千八百万ばかりのうち一千万しかできない、八百万まだ準備ができてないということで、私ども下請工場は、まあ例えば親会社に対する子会社みたいなものでございますから親会社が経営破綻を来たしてはその影響するところ我々自身も窮地に陥ることになるので何とか親会社の不渡りを解除いたしたいということから五十万以上の手形が約八百万ありましたので我々自身が奔走いたしましてこれを進んで三月十五日まで延ばしまして、殊に宮嶋社長も最後の努力を傾けておる時期でもありましたのでせめて十日の時間の余裕があれば或いは繋ぎの資金その他積極的な挽回策も講じてくれはせんかという頼みから延ばしたのでありますが、不幸にして三月十五日は総不渡に直面するような根本的な経営破綻に陥りましたので、未だに我々みずから進んで期日を延ばした手形さえも実はまだ全然支払を受け得ない状態になつております。その打撃を受けております。協力工場の数は伊讚美工場だけの数でございますが、極く少額の例えば四十六円とか百二十五円とかいうものまで入れますと二百九十九社ございます。そのうち一万以下が五十四社、一万以上十万までが七十七社、十万以上百万以下が百二十二社、百万以上が四十六社ございます。このうち一千万を超すものが約二社でございます。
  38. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 もう一遍……。
  39. 渡辺貞之助

    参考人渡辺貞之助君) 一万以下、これは極く少額のものが含まれてございますが、五十四社ございます。それから一万以上十万以下が七十七社になつております。十万以上百万以下が百二十二社になつております。百万以上が四十六社になつております。
  40. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 一千万以上は。
  41. 渡辺貞之助

    参考人渡辺貞之助君) 一千万以上は約二社になります。大体一千万前後が三社になつておりますけれども。それで最後の私ども取りました債権でございます、債権の総額は最近なお出て参りましたので違つて参りましたが、確実にわかつておりますのが伊讚美工場関係だけで一億三千六十七万五千円余になつております。その後六千万ほど出て参つております。従つて総計一億九千万、二億に近い債権額がここに残つておるわけでございます。その内訳、約半額が手形でございまして、あとの二分の一は手形も何も受取つてない。いわゆる売掛でございます。この売掛の中には昨年の八月から未だに一回も支払を受けていない工場もございます。  私の会社の例を申上げますと、昨年の六月に実は日本建鉄の不渡を受けまして、非常な打撃をこうむつたわけでございますが、その後漸く日平産業に受注面を転換いたしまして、八月末から納入を始めまして、手形を最初に受けましたのが十月でございましたが、これが今度の二月十五日に不渡になりまして未だにそのまま持つております関係上、全然私自身も実は日平からは一回も支払を受けていないということになるのであります。このような点から考えますと日平産業のこの資本構成を実はこうして見ますと、少くとも伊讚美工場だけでも二億と実に零細な中小企業者の資金を集めまして、二億という金が何と申しますか、それを足場にして資本の一部が構成されておる。殊にこのたび私ども非常にまあ慨歎に堪えないと申しますか、むしろ火のような憤りを感ずる点は、こういうふうな零細な資金を集めました日平産業の資本を動かしておつた宮嶋社長が六千万という資金が使途不明である。最低六千万が使途不明である、或いは八千万に及ぶ金額もこの使途が明瞭でない、計上しようによりましては一億さえどうも使い方が不適当であるというふうに聞いております。その巨額の資金を構成する我々中小企業者の実情は、先ほど二社のかたが具体的な例を申上げておりますけれども、殊に伊讚美工場関係は農家の土間に二台乃至三台の工作機械を備えまして、ここに三人乃至四人の工員及びその工場主が、一〇〇%日平産業の仕事をいたしまして、月に十万乃至十二、三万の仕事をし、それが半年集まつて六、七十万になる。これが唯一の財産でもあり、生活の基であります。全部これは不渡を食つている。如何にして生活を続けるか、粥をすすらんとしてもそれさえできない。且つこれは地域的な特徴でございますが、伊讚美の工場は下館の殆んど町端れ、野原の中にある工場でありまして、他に適当な注文を出す工場がございませんから、このたびの経営破綻によつて伊讚美工場の運営がとまりますれば、この下請工場約一〇〇%ほど、この仕事をしている工場が六十社ほどございますが、これは他に転換の途なく、全く生活の方法が立たないという窮地に陥るわけであります。現に伊讚美工場は二月の十五日の不渡以来、私どもが部品を納入する力がもう尽きましたので、約一カ月ほど休業状態に陥つております。併しながら親工場を殺しては我々下請工場が生きる途がないというので、お手許にお届けしております協力会の協約書でございますが、これは丁度宮嶋社長が逮捕される直前でございましたが、私、まだ実は正式にこの代表に選ばれておつたわけでございませんけれども、すでに委任状が約八千ほど私の手許に集まつておりましたので、この協力工場の実情に照らして、この協約が実行されるならば、伊讚美工場が動く、又我々もこれによつて辛うじて自分の工場を運営を続け得るという最低の線を出しまして、且つ紳士的にこれは誠実に実行しようという気持でこの協約書を締結したわけでございます。不幸にして実際の実行の状況は現況においては伊讚美の工場も十分に操業はできず、又私ども下請工場も生きて行かれないというふうに、売掛の、営業収入が非常に少い上にその五割を我々が受取るというパーセントが実際は三〇%にも及ばん程度でございますし、受けておる手形も地方の農機具代理店の振出した手形を受取りますので換金の方法もございませんので、如何に親子ともども生きようという念願を持ち続けましても、現状が続く限りにおいては親子ともども倒れる。親工場、伊讚美の工場も運営がとまり、私どもも工場を閉鎖せねばならんという状態に陥つて参りましたので、最近では単なる協力関係だけではこれは途が立たんと甚だ不本意でありますが、債権者の立場に立つて途を開かねばなるまいというふうに考えざるを得ない状態に押詰められて参りました。協力会は理事、常任理事、理事長とそれぞれ役員を選出しておりますが、理事会は毎週一回、常任理事会は殆んど毎日、私責任も受けておりますので、二月の二十日頃から約二カ月自分の工場へ出ますのがこれは栃木でございますので、まだ三回ほど、東京へ出ましても私自身の事務所に出ますのもせいぜい十回ちよつと顔出すくらいで、殆んど早朝から夜遅くまで私どもの生きる途を開き、又できることならば親工場の再建を図りたいと思つて努力は続けておりますが、遺憾ながら所期の目的にむしろ反するような状態にございますので、到底我々自身の手を以てしては如何ともしがたいと存じますので、どうか国会政府その他各方面の御指導、御援助、御支持によりまして私どもの切なる念願、親工場を再建し、私ども下請が何とか生きて行ける途の開かれまするように御配慮、お力添えを頂きたいと念願しておる次第でございます。  なお茨城工場は農業用の発動機を作つておりますが、その発動機の販売価格のうち約六〇%乃至七〇%ぐらいは私どもの資材並びに加工部品を納めて構成されておるのでございまして、只今農閑期のために十二、一、二、三とストツクされまして、四千台の軽油発動機の実際の有所権はむしろ私どもに帰属する、このくらいに考えておりますが、やはり日平産業にしますと帳簿上自分の帳簿に載つておるものは自分のものだというふうに考え、なかなかそれを私どもに渡すというような気持は今のところ持つておりませんが、最近大分認識を深めてもらいましたので或いは伊讚美工場を生かし、私ども協力工場が辛うじて生業を続け得る何らかの方法を講ずる気持になつてくれはせんかと思うところまで辿りついては来ておりますが、具体的にはまだこれといつた処置には来ておりません。従つてども進んで自主的な具体策を立てまして、単に債権を取立てるという気持、考えでなしに親工場を盛り上げて我々一体となつて生きて行くという方向に進むべく、更に団結を固め積極的な努力に入ることに申合せができておるわけでございます。重ねて申上げますが、到底微力な私ども中小業者だけを以てしては途を開くことは困難というよりむしろ不可能に近いことでありまするから、どうか皆さんの深い御理解と熱烈なる御支持、御指導によりまして生きる途の開かれまするように各般に亙つて一つ積極的、具体的な方策を立てて、且つ速かに実施のお願いのできますように重ねて懇願いたす次第であります。
  42. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございます。
  43. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) 先ほどいろいろとお説明申上げましたが、二、三申添えたい点がございますので委員長のお許しを頂きまして述べさせて頂きます。  今の下請工場がどうして日平のような支払の悪い工場の仕事をあえてするかということを皆さんが疑問に思われると思うのでその点を申上げたいのですが、それは現在の緊縮財政の影響もあるし、或いはその他の日本の底の浅い経済状況から見てなかなか有効需要がない、非常に業者も多い、従つて他の仕事というものはなかなか得られない、加えて日平産業が特に日本政府のほうから重要産業としての指定工場となつておるというところに業者も皆非常な信頼感を持ち、又間違つても必ずこれは政府なり或いはその他の金融機関からこれは必要な重要工場として必ず残るべきものであるということを皆さんが考えられて今一時工合が悪くとも何とかなるだろうというような大きな期待を持つてこの仕事をしておつたというところにこうした結果が生れたのであります。  なお又先ほど横浜工場並びに本社その他の下請工場の数を申上げませんでしたが、下請協力工場が約二百、商社が百五十、合計三百五十社でありまして、現在日平が出しておる手形は四億五千万円、未払のいわゆる買用代金というものが二億五千万あるのであります。従いましてそのほかに又いわゆる未検収、検収になつておらないというものも五、六千万の額はあると聞いております。いずれにいたしましても、会社の社長並びに関係証拠書類が押収されておるので、正確な数字を我々はつかむことができないというような現状でありまして、先ほど伊讚美の関係の渡辺さんからお話がありましたが、伊讚美工場は一カ月前にそうした問題があつたので、いろいろと横の連絡もとり、組織が速かにできたわけです。ところが横浜関係の、本社関係のかたは何としても名簿がないので、いろいろとあちらこちらの手づるを求めて、漸く先般先ほど申上げた日平産業再建促進協議会というものができ上つたのでありまして、これは徒らに債権を取立てようというのではなくて、飽くまでも我々は協力をして、そうして親工場に生きてもらつて、その代金をだんだんに回収したいという精神の下に始まつた会でありますが、実際的な問題としていろいろ折衝いたしましても先ほどのような状況でありまするので、到底四月三十日になつても再建策が立てられないかも知れん。止むを得ないから、今のところでは整理を申請するとか或いは破産を申請しなければならんのではないか。そのことは先ほど申上げました通り、いわゆる大きな会社なり、商社は、それぞれの債権を確保して安心をしておる。銀行等におきましては、千葉銀行の古荘頭取に会つたのですが、頭取の曰く、我々は十分担保を取つておる、而も七千五百万円に対してはこれは紐付きである、貿手は日銀で割つた、併し日平の問題からして買戻しはしたが、これらは紐付きで返る、若しそういう金が入つて我々のほうに金が戻つて余つたら、会社の従業員に払う、その金が余つたら、皆さんのほうに行くのだということを言つておられたが、理窟はそうでありますけれども、我々実際の中小企業者の見方としてはいわゆる政治の貧困と言いますか、全く中小企業に対する何らかの方法がとられていない。先ほどこちらからのお話がありましたが、少くとも労働者に対しては失業保険の制度があつて、六カ月間というものは失業手当が出る。ところが中小企業者が倒産した場合には、これの救済策というものは何らない。これはただもう要保護者として一月二千円のいわゆる手当が最悪の場合出る。全く業者が倒れるまでには本当にもうあらゆるものを売払つて、そうしてどうにか生き繋いで行つて、もう二進も三進も行かない、どうにもならんという窮状に追込まれるので、中には弱い人は首をくくつたり或いはその他の方法で自殺したりするという現状になつておる。これらに対しては何とか通産委員会におかれても十分その点を御検討願つて、でき得れば私は中小企業者に対するところの納税の額等において、過去の納税額の実績を見て、その額に対する何%かをそういう場合に出してやるというような保険制度というようなものを設けるとか、或いはその他の方法において何らかいわゆる中小企業者のそうした場合に対するところの対策として私は社会的にもやらなければならんじやないか、かように考えておるわけであります。是非一つ委員の各位におかれましてもその点御考慮を願いたいと思います。  なお加えまして、私どもは先般中小企業庁に参りまして岡田長官或いは石井振興部長等にお目にかかり、いろいろと窮状を話しましたところ、極めて熱心に我々に対するいろいろな指導、対策等も指示願つたのですが、何と申しましても今の法制下においては商工中金等において行う融資というものはいわゆる組合金融である。組合に対しては金融ができる、或いは組合員にはできるけれども、こうした場合に対する融資の方法がない。又金融公庫等においても少額な五十万円程度のものは何らかの方法でやつてもやれるけれども、併し今の法制下においては何らの打つ手はないのだ、こういうことでありまして、私どもは何らかこういう場合にでき得るならば、政府におきましてもこういう大企業の会社が倒れた場合には何らか再建策ができるでしようが、それらの工場にはいわゆる相当なる資産もあり、担保もあるので、そうした下請工場の債権というものを担保として何らか金融の方途ができるような措置一つ国で請じて頂いておきたいということを切にお願いするのであります。そうすることによつて少くとも例えば二億の債権があるならばそれを担保として一時五千万円なら五千万円を出してもらう。そうするとそれらの業者は例えば日平が再建されるまではたとえ半年かかるか一年かかるかわからんが、その間でも多少繋ぎができるというようなことができるのじやないかというようなことを切に希望しておく次第であります。  なお又先般請願書にも書いてありますように、税の問題でございますが、これは不渡手形或いは売掛によるところの債権が解決するまでは、納税の面において利益計算は勿論のこと、利益によつて通算されて行く。不良債権であろうが、売掛であろうが、それらはやはり利益のある会社では全部これを税の対象と見られる。従つてこれらに対しては、何とかその徴収の猶予とか、延滞利子の免除とかというような特別な便法を講じて頂いて、さなきだに会社が苦しい中をそういう税の面において倒れてしまうというようなことのないような面も一つ考えて頂きたいという点をお願いしたのであります。特に又日平産業というのは、いわゆる通産省の重要工場として国が指定した工場である、こういう点に対して、私は国としても相当な責任があると思うのです。而もドルを稼ぐ兵器工場として極めて重要な工場でありますので、これらが汚職問題に関連し、いろいろな面で再建が非常に遅れて来ておる。果してどうなるかわからないという状況でありますので、私どもとしては神奈川、横浜、東京地区の債権者は挙つてこの三十日の結果を見まして止むを得なければ破産の申請をする以外に途はない。そうしてそうした大口債権者その他特殊な債権者に金が流れて行くことを防いで、そうしていわゆる債権の平等といいますか、平等なる形において皆さんに金が返るように何とか方法を講じたい。併しそれをやつて見てもなかなか半年や一年では解決しない。ただそうして見るだけであつて、実際の窮状というものは救われません。これらに対しては何とか、むずかしいことでありましようが、何分の一つ委員のかたがたの御同情によりまして、できるだけの善処方をひたすら懇願する次第であります。
  44. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。それでは委員諸君より質疑を願いますが、政府側より本日は中小企業庁より岡田長官、石井振興部長、それから重工業局より徳永局長、法務省から長谷川民事局第四課長が出席しております。
  45. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 他の委員からもいろいろ質疑がありましようが、時間の関係上一括して参考人その他のかたに質問をいたします。  先ず第一は、参考人のかたがたに御質問したいのでありますが、今承わつておりますと、日平事件が表面化する前から支払遅延の状態は相当甚だしいものがあつたようでありますが、一方御承知の通り、我々通産委員としても、前々から非常にやかましく言いました結果、公正取引委員会が親企業の支払遅延については断固取締をするという方針を昨年からとつておるのであります。その場合にはいろいろ事情を承わればなかなか有効需要も少いという点で支払の悪い日平の下請をなお甘受しなければならんというような面もあるようでありますが、匿名で公取に申告すれば直ちに公取は出動するのだ、その下請の迷惑にならんような行き方で公取が善処するということになつておるのでありますが、この表面化前の支払遅延の甚だしい際に公取と匿名ででもいいから関係をつけて善処をしよう、こういうふうに考えられる気持はなかつたかどうか、これは将来、只今いろいろ御要望がありましたが、我々もあらゆる努力をして今後の対策を御要望通り具体的に立てるのでありますけれど、具体的に立てたその対策が実行せられない、いろいろ迂遠の策をせられる結果、これを端的に中小企業界に利用せられないということになりますと、如何なる努力も先ずその効果は半減するということになると思うのでありまして、その点について日平事件の表面化前にどういう気持を皆さんがお持ちになつたか、これは下請全体に関する今後の私どもの判断の資料として重要なることだと思うのでありまして、この点を先ず第一に伺いたいのであります。  それから第二には、先ほど来参考人のかたがたいろいろ御説明になり、殊に稲川さんはそういう債権の確保についてできるだけの努力をせられたようであります。併しそれは殆んど受入れられない、一方大に債権のほうは有利に事が展開しつつある。これは実に中小企業界として堪えがたきことだと私思うのでありまして、こういう面については業界、或いは普通の監督官庁だけでなく、法務省の厚意ある支援を受けなければいかんと思うのでありまして、現実に本日あたりは債権確保についていろいろ参考人のかたがたが陳述せられましたが、それで一体いいのかどうか、足らざるところはどこにあるのか、確保すれば事は好転するのだということを具体的に法務省当局から伺いたいと思うのであります。  それから第三には、これは重工業局長に質問したいのでありますが、私が承知しておるところによりますと、伊讚美地区で第一回の不渡を出したのは二月の五日でありまして、これは日平が買戻しをした。横浜本社からの第一回の不渡が三月十五日、銀行取引停止になつたのが十九日、武器等製造法の第四条の但書の規定によります通産大臣の許可書が出されたのは三月十三日なんであります。これが東京通産局から日平本社に交付せられたのは四月の九日であります。ところが只今言いますように、すでに第一回の伊讚美地区外の不渡は二月の五日、横浜本社からの第一回の不渡は三月の十五日、その許可書が通産局から現実に渡つたのは四月の九日、そこに相当事態の容易ならざることが明らかになつてから時日が遷延しておるのであります。この点に関しまして武器等製造法の第四条但書によつて許可書の発行というものは会社の経理内容等の審査をしないでただ申請さえあればそのまま許可するのかどうか、又この法律によつて監督官庁として監督の責任にありまする通産省は今回のような問題についてはどういう責任をとるか、又その監督をせられるつもりなのか、この点を伺いたいのであります。  もう一つこれに関連いたしまして、商法の第三百八十一条によりますと、監督官庁の職権によつて整理手続の申請を裁判所に申立てることもできるようにあるのでありますが、こういう点について監督官庁としての意図はどういうものか、この点を伺いたいのであります。  それから第四でありますが、これは中小企業庁に質問したいのでありますが、差当りの対策として金融面において、又税に対する特別措置をどういうふうに考えておるか、それから第二には将来かような事件が起きて参つた場合にはどういう制度を今から準備せられて将来事なきを期するというふうに考えておられるか、その点について伺いたいのであります。以上四点を質問いたします。
  46. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) 只今先生からお尋ねの、公正取引委員会に対しての申出をなぜやらなかつたかというような御質問でございますが、私個人の考え方でございますが、こうした面は日平のみならず極めて多過ぎるのです。例を引きますれば、芝浦系統の会社などではこれと同様に極めて支払が悪い。例えば二百万円あるものに対してはせいぜい三十万円、それも百二十日から百七十日というような手形しか出さない、幾ら売掛があつても、お百度を踏んで行つてもなかなか出さない。これはほかの例えば池貝の元館山製作所も現在富士電機から資本が入つて館山製作所というものがありますが、これらはデイーゼル・エンジンを作つておりますが、これは最近の例でありますが、百万円の売掛に対して二十万円を九月の末の手形で払う、こういうことが現実に出ておる。こういう方面が殆んど現在の我々鋳造業、殊に機械鋳物、産業機械或いはその他の関係の鋳物をやつておる工場が殆んどそういう状況です。もうそういうことは一つ一つ申立てればその工場自身が動かなくなつてしまう。じや他に現金取引をする相手があるか、現在現金取引しておるという所は殆んど……私も川口の鋳物工業組合の理事長をしておりますが、一割あるかないかです。あとの九割は全部手形取引、而も最も短かいので大体において六十日、七十日、こういうのが殆んどこれ又一割かそからしかありません、あとの八割は百二十日から百八十日というような程度の状況でありまして、恐らく業者としてはそれを申出て見ても殆んど片つ端からであつて、同時に又そういう申出をすることによつて若しそういう問題が表に出た場合には、あとに転換する仕事がないので工場が動かなくなつてしまうというような非常な懸念を持つておるというので、そういう点から私どもは公正取引委員会にまだ申出ておらないというような現状であります。
  47. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは法務省の民事局の長谷川君から……。
  48. 長谷川信蔵

    説明員長谷川信蔵君) 長谷川であります。只今債権確保に関して法律の現況上それでいいと考えておるかどうか、今後なお欠陥があるとすればそれを是正するような意思があるかないかというような御質問だつたように承わつておるのでありますが、私実はただ法律解釈程度を聞くのだから出て来いというので間に合せに出て参つたようなわけで、果して適格があるかどうか存じませんけれども、法務省では企業の保護とかそういつたこともさることながら、大体民事一般ということについての立法がそれでいいかどうかというようなことを考えてやつてつておるわけであります。それで先ず従来からございます制度につきましてはまあ破産とか……併し破産になりますと企業というものが全部解体されます。従つて企業としての価値が全部崩れて企業としてなら相当な価値があるものが、それが個々ばらばらにされてしまうと経済的な価値が非常に少くなつて、一般債権者に必ずしも利益でないのみならず、国家的に考えましても企業というものは成るべく維持して行く必要があるということから、会社更生法という法律が最近作られたわけであります。その場合においては、企業を盛り立てながら、債権者の利益を考え、企業も考えて、最も妥当るな線で返済を続けて行く、そのことがむしろ企業を破産に導くよりも、国家的にも利益であろうし、債権者自身にとつても有利であるというようなことから、会社更生法が制定されておるわけであります。現在の状態では相当まだ成立後日浅いのでありまして、相当会社更生法、会社更生手続が、制度が利用されて参つておらないのでありまして、まだこの更生計画が認可になる、従つてこの更生計画が完全に実施されたという段階まで来ておる会社は、どのくらいあるか、殆んどないのじやないかと思いますが、その結果よくわかつておりませんが、今開始の申立、乃至開始決定があるというような会社が相当ございますので、このような事件が非常に多いということは、やはり破産などによるというようなことよりも、会社更正法によつて、会社の企業を維持しながら、債権者も相当保護されて行く、このほうがいいんではないかというようなことで、利用されている面が相当多くなりつつあるのではないかと思つておる次第であります。それからなおそれ以外の策としては、先ほど御指摘になりました会社の整理ということもありますし、それから強制和議もあるわけでございますけれども、併し整理は余り利用されて参つておりません。和議もそれほど利用されていないようであります。やはりこれらの欠陥等を考慮して、会社更生法というものが作られたわけでありますが、これによるのが一番理想的だと一般も考えて、これが利用されて参つて来つつあるのだろうと、こう思つております。更にこれ以外に考慮する余地があるかどうかということになりますと、私も大体この程度でいいんではないかと思いますが、先ほども申しますように、その任に適格でない、そのようなことを申述べる適格はないと考えられますので、私だけで申上げるわけには参りませんので、この辺で失礼させて頂きます。
  49. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) 只今二つお尋ね頂いたわけでありますが、第一のこの日平産業、武器等製造事業を扱つております、許可事業として扱つておるかどうかということですが、私担当の方から聞きましたところでは、まだこの会社につきましては、許可はいたしていないというふうに聞いているわけです。今豊田先生、通産局から、いつというふうに、日付を挙げて御指摘を頂いたのでありますが、私の聞いておりますのと、少し違いますのですが、その点はもう少し帰つて調べて見ます。私は来る前担当課長から聞きましたところでは、申請が出ておつたのではあるが、二月頃会社の状況も大分怪しくなつて来たので、許可を下すのを保留しておつたというふうに聞いておるわけです。それから法の解釈の問題といたしましては、経過規定のあれでございまして、法の施行前におきまする受注のものにつきましては、いろいろな法制にも、経過規定として既成事実を尊重するというような方針でできておるわけです。法の施行前に受注しております仕事をその注文分だけをやる限りにおきましては、許可するというふうに、法の規定はできているそうであります。厳密に最後まで許可が抑え得るかどうかは疑問であるというのが、一応の解釈になるそうでございます。それが許可の問題についての私の承知し考えておるところでございます。  それから第二のお尋ねでございました会社の整理を監督官庁に申請しなければならんという点につきまして、どう考えておるかというお尋ねの点でございますが、その法律に謳われております監督という意味は、ただ一般的に通産省の所管産業であるというふうな意味ではなしに、当該企業の事業につきまして、経理監督といいますか、含んだ監督を行なつておる、責任を持つておる場合といいますか、その事業の社会的な影響から見ましてその企業が社会に迷惑をかけないように運行されることに政府が責任を持つような意味で監督し、従いまして常時その経理内容についても審査監督の責任を持つておるというような立場に政府があるわけでありますが、そういう場合を意味するのであつて法律解釈の問題としては武器等等製造法のように、この事業の濫立防止といいますか、という観点からの許可制を取つておるというような場合には、お挙げになりました条文の解釈には該当しないというふうに法律解釈上はなるというふうに私は承知しているわけであります。それはそれといたしまして、現実に日平産業が民需品及び武器を生産している有力な会社といたしまして、私どもの所管の会社になつておるということは事実でありまするし、それが今回のようなことになりまして、いろいろな御迷惑をおかけしていることにつきましては非常に恐縮いたしておるわけであります。たさ私どもが今いろいろ企業の経営振りにつきましての下請関係に随分御迷惑をおかけしているということは、その事情もいろいろお聞きしたのでありますが、私ども従来この会社が新聞を賑わしておりました一二・七ミリの受注の際に出血受注といういろいろな問題がありましたが、その生産に関します限りは日平産業の過去の経歴及びその技術陣容と申しますか、というような点だけについて考えますれば、最も受注の適格性を持つておる企業というふうに考えておるわけであります。その意味で一二・七ミリの特需の発注が、こういう際に重工業局としては発注を受ける適格企業としての推薦をいたしたような事情もあるわけであります。ただその後その生産に要しまする設備が問題になつておりますし、そしてその設備につきまして設備資金の借入をめぐりまして、企業の経世者及び経営振りにつきましてのとかくの批判も耳にしておつたのであります。その面から結局金を出します金融機関としては、貸す前にいろいろその点を調べた結果として、どうもそのままでは、現状では貸せないというような判決といいますか、金融機関の意向が出たというふうに承知いたしております。併しそれは現在経営者及び経営振りの問題でありまして、金融機関の注文等によりまして改善の余地もあることと思いまするし、改善された企業としてはその最も技術設備、或いは過去の経験を活かしながらうまく生きて行くことを我々は希望しておりますというのが私どもの立場であろうと思います。
  50. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 現在日平関係の下請に関連して、応急措置として如何ようなことを考えておるかというお尋ねに対しましては、実は特別の智慧がないのでございます。先ず先般も多数の下請のかたがたが私どものほうにもお見えになりましたときにもでき得る限りの努力をして、相手でありまする日平産業の幹部に債権の確認を求めるというふうな措置をとられることに更に一般の努力をされるよう、私どものほうとしても申入をいたしますと同時に、この日平関係で焦付いた債権、それによつて下請のかたがいろいろと損害を受けられておる、その損害を救済するという形において、私どもがこの際金融をつけるということは、ちよつとこれは困難であろう。非常にお気の毒な、冷たいような態度ではありまするが、この日平産業によつて各下請業者が損をされた点をこの際は我慢をして、将来は取れればこれはもとより取る方面に対する努力は傾注するのでありますが、差当り目をつぶつて、その他の残りの力を結集して、仮に生産の転換をするなり、注文先の転換をするなりして、懸命の努力をして再建をするという計画を一つ、確立されて、その再建の計画によつて今後再び相当のところまで回復して行くのだということを、従来の取引の金融機関なり、その他機関に一つ話をしてもらう。そういうことになりますれば、そういう性質の金であれば、或る程度何か長い金でなければ再建のための資金としては不適当でありましようから、いわゆる中小企業金融公庫の金、特に四月から乙方式によりますところの公庫の貸出ということも始まつていることでありまするから、或る程度の御用立ができるのじやなかろうか。中には従来金融機関とはさつぱり取引がないというかたも多々あられるのでありますが、さようなかたに対しましては国民金融公庫としてどこまで御後援ができるかということを検討すべきではないか、或いは又これは多少今後の研究を要する問題でありまして、必ずできるというふうにすぐは申せないのでありますが、金融機関が下請業者のために割引きました不渡手形を、この際金融機関として単名に切替えてやるということを、金融機関が非常にあつさりと認めるというふうなことでございますれば、その六カ月以上の期間に亙るものについては信用保険の対象とするということによりまして、さような例によりまして、金融機関の一種の肩替り資金ではございまするが、信用保険上特例を見るということができないであろうか。いずれにいたしましても、この日平関係の下請の問題や、今後かような類似の事例が起るといたしましても、下請が親会社によつてこうむつた損害を救済してやるという形においては、如何にも私どもとしても手が出しがたいという態度を現在のところ持しておるわけであります。実際上の取扱といたしましては、先ほどお話の出ました会社更生法の適用があるということになりまして、下請の代金が五カ年以上棚上げになるということになりますれば、債権は半分を損金に算入するということは、現在においてもさようなことに相成つておるのであります。なお今後こういうふうな事例の場合における税法上の取扱といたしましては、国税庁としても非常に心配をいたしておるのでありますが、焦付き債権の貸倒れ扱いをもう少し緩和することができるかどうか、又延納という問題につきましてはこれはできるのでございますけれども、かような気の毒な場合におきましては無利息によります延納が認められるかどうかというような点について、今具体的に国税庁方面と折衝をいたしておる段階でございます。青色申告でございますればかような場合に会社が非常に損失をこうむつたという場合におきましては、既納の税金の払戻しということはこれは現在でもでき得る仕組でございますが、いずれにいたしましても、税法上の扱いは延納を無利息でしてもらうということが実情としては簡単なようで一番ききめがあるのではないかと思いまして、さような免税の折衝に努力をしているのであります。なお下請と親会社との関係につきましては、当委員会の特別の御尽力によりまして、私どもといたしましても公正取引委員会と密接な連繋をとりまして、これを何とか支払関係を適正な状態に持つて行きたいという努力をいたしているのでありまして、先般当委員会におきまして、公取の委員長が特に機械その他の業種につきまして不当なる下請代金の支払遅延ということについての基準を一応発表されました。この程度で皆様方に親工場としてはやつてもらいたいのだという一つの呼びかけをいたすことに相成ると思うのであります。その後私どものほうといたしましては、公取と打合せをいたしました結果、大体親工場といたしまして百四十程度の親工場を選んで、その支払の状況を調査をいたし、なお下請といたしましては、この百四十全部になりますと如何にも数が多くなつて調査が不可能かと思いますので、うち八十ほどを抜取りまして、それにつきまして十乃至十五の下請を選び上下から調査をして、その状況がどうであるかということを新たな基準に照らして調査をして見ようということにいたして準備を着々いたしているのであります。これらの調査ができますることによりまして、一般の空気もやはり又喚起されましようし、具体的に不当な支払遅延がございますれば、公取によりまする警告等の措置もとられようかと思うのであります。まあかような措置をやりまする一方、だんだんと金融の引締の問題も中小企業だけではなしに、親のほうにもかなり苦しい影響を与えておるようでありまするので、まあ支払促進をいたすにつきましても親の状況と下請の状況と見合いにいたしましてやりませんと、或いはそれによつてつて親のほうの困つた状態になります。ことを促進するというような結果に相成つても困るとは思うのでありまするが、今ともかく機械部門が一番下請関係は多いものでございますから、実情を調査いたしましてその関係を適正な状態に持つて行こうと、まあさようなこともやはり一方においてはかような不幸な事柄の発生を防ぐ一助ともなるのではないかと、かように考えておるのであります。
  51. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 先ほど稲川委員長からお答えがあつたのでありますが、公正取引委員会申出ることは現在の未払状況が余りに一般化しておるという点、又後のたたりが恐しいというような点で、行くに行かれんというようなお話であつたのでありますが、そういうふうに遠慮しておるともういよいよ未払状況はだんだん悪化して行く、そうしてこれは将来も同じような憂目を見られるということに私はなると思う。匿名で申出たことで公取は出動するということになつておるのでありますから、今後は十分に御利用になるということが、私は当該業者の方は勿論全体中小企業下請業界に対してのむしろ義務じやないか、それくらいお考え願わんといかんと思うのですが、この点について一つ意見を伺いたい。  それから次に法務当局のほうでありますが、私は新らしい立法制度のことなどをお尋ねしておるのじやないのでありまして、現行の手続で何か特別いい方法はないか。先ほど稲川委員長から債権確認書も請求したけれども、まあ何だかんだと、言われて余り事ははつきりしない、売上金処理にも参加したいと言つたけれども、これもはねられた、担保の提供を要求したけれどもこれも再建案の出るまでまあ待てというようなことでずるずるべつたりになつておるというようなことでありますが、何か現行法制の下においてさような場合には、こういうような最も効目があるというような点を法務当局から一つつてもらえないものかと、こういう意味でありまして、もう一度伺いたいと思うのであります。  それから重工業局長関係でありますが、これは第三条によりましてこの武器製造の正式許可はまだ受けておらんと思うのでありますが、第四条の但書のほうで試験的製造する場合の許可が出ておるように用いておるのであります。試験的製造にせよ、一応通産大臣から許可が出ておるということであるならば、これはまあ普通の関係の工場とは関係が違うのでありまして、そういう点において苦しそうであるならば今までお考えになつておるのとは違つた積極的な監督措置なり或いは先ほど申上げましたような法的手続もとつていいのじやないか、これは御研究を願い、そして一段と積極的な行き方をしてもらいたいと思うのであります。特にこの際希望しておきたいと思いますのは、再建案を石川一郎氏なんかが作つておるということを聞いております。又後任社長もきまつたやにも聞くのでありますが、やがてこれは武器等製造法によつて正式の許可申請が出て来ると思うのでありまして、そういう含みの下に今参考人のかたがたから非常に声涙共に下るような未払に苦しんでおる実情を訴えられておるのでありまして、これの債権の確保なり債務の履行について最善を尽すということを、再建案作成者なり或いは後任社長一同を通産省へ招致せられまして、そうしてむしろそういうことがうまく行かなければ、武器等製造法による許可などは以てのほかだという強硬なる態度を示してもらいたいと思いますが、この点について御意見を伺いたいと思うのであります。  それから中小企業庁長官には、緊急対策についていろいろお話がありましたが、今後かような事態が、今のようなデフレ政策の推進等によつていよいよ出て来るんじやないか、従つて今までの考えだけでは私は容易ならん段階に入つて来ると思うのでありまして、かような非常時には非常時的な立法が必要じやないかというような見地からいたしまして、中小企業信用保険制度をこの際改正せられて、かような不渡が起つたような場合にも、保険料を支払い、保険契約さえしておれば保険事故がカバーできるというような、画期的な制度を、これはいろいろ制限を附せられてもいいと思うのでありますが、おやりになるようなお考えがあるかどうか、これは前にも一応提案いたし御意見を聞こうと思つたのでありますが、当時は研究をするということであつたのでありますが、その研究の結果如何に考えられておるか、その点を承わりたいと思います。以上。
  52. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) 只今豊田先生から公正取引委員会にもつと勇気を持つてしなければいかんというお話がございましたが、十分今回の問題で我々も身にしみて感じておりますので、今後は十分そうした匿名を以ちましてこの方面提出しまして、折角当局が骨を折つて作つて頂きました面の成果のあるように、私どももそれによつて得るところのあるように努力をいたしたいと考えております。
  53. 斎藤早一

    参考人(斎藤早一君) 只今も稲川委員長から申上げましたが、私の会社に、一回、これは去年だと思いますが、公取委員会からのかたがわざわざおいで下さいまして、日平産業の売掛に対する支払状況というものを克明に調査して頂いた。これは匿名でどこかの会社が公正取引委員会、公取に申上げたのか、その点は不明でございますが、そういうことが一回ございました。その結果その次の日の朝日新聞かに日平産業に対して公取が云々ということを発表してあつたと思いますが、その結果、たしか僅かながらも支払がそのときにはよかつたということを記憶しております。
  54. 長谷川信蔵

    説明員長谷川信蔵君) 先ほど御質問の趣旨を誤解したようでありまして、甚だ恐縮に存じます。名案と申されましても、このような事態に立ち至りますと、我々いろいろ考えて見ましてもなかなか名案も浮かばんのでありまして、先ず個々的な債権債務の関係ということになりますれば、これは通常の訴訟判決等もあり、或いは和解その他の方法で債務名義をとつてそれで強制執行なり何なりするという以外に手がないわけであります。併しそれだつてこのような破産的な状態、破産状態的な姿になつて参りますと、そのような手当もなかなかうまく行くはずもございません。相当債権者が多いということになつて参りますと、そのような方法ができるとも考えられません。そうなつて参りますれば、どうしても我々のところで考えることは、どうしても理窟つぽくなるのでありますが、債権者を平等に保護するという建前が始終我々の頭にあるわけでありまして、どうしても足らないものは足らないなりに債権者を平等に保護するということがどうしても頭にこびりつく関関係で、どうしても破産とか、会社更生法とか、或いは整備法とか、和議法とかいうことに頭が入つて参りましてなかなか名案が浮かばんのでありまして甚だどうも遺憾ではありますけれども、御勘弁頂きたい、このように考えております。
  55. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) 只今豊田先生から御注意頂きました御趣意、会社がうまく更生の途を迫ることになりそうな場合に、まあ責任者に対して私は十分の本件に対する善処を要望したいと思います。私ども先ほども申上げましたように、この会社がうまく立直ることも希望いたしておるようなわけでございますが、いわゆる財界のお偉方があとの更生のためにお乗出し頂きましてうまく収拾されることを実は期待いたしておるようなわけであります。さようにしてその方向に歩み出すということになりました場合には、只今注意頂きました点、十分体しまして私どもといたしましても責任者に善処を切に希望いたしたいというふうに思つております。
  56. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 下請が親工場の事故によつて非常な困つた事態にならないように一種の保険制度みたいなものを考えたらどうだろうかというお話でありますが、確かにこの親企業が経営がうまく行かんというために下請が非常な苦しい立場に陥れられるということに対しましては、何とかこれを防止することに智慧を出さねばならんと思うのでありますが、その場合に私どもとしては同時にやはりその他の場合、第三者の経営不振によつて自分があふりを食うて自分も巻添えを食うというふうな事例が例えば問屋の関係にも出て参りましようし、或いは横の関係においても出て来る。確かに親工場と下請との関係はかなり目立つ顕著な事例でありますが、それと似たような事例が他にもまあいろいろあるわけであります。これらを一つずつ取上げて他からは取上げんという不公平のそしりを受けないで、うまく親と子会社との関係を工合よく保険で補うというふうな仕組が一つ考えられんものかどうか、私どもといたしましては更に智慧を出して見たいと思うのでありますが、この事業がうまく行かんということの原因には、自由経済の下におきましては政府側として中身に立入つてまでいろいろやることができんということから、確かに万一の場合を用意して保険で救つてやろうというのも確かに一つの智慧だとは思う。のでありますが、又こういう場合の保険というものが非常に危険な保険であるということになれば基金というものもかなり猛烈な基金が要るということにも相成らんだろうか、かなりいろいろと紛糾する点もあろうかと思うのでありますが、さような構想につきましては私どもとしても実はまだ全然無準備でございますので、いろいろとお智慧を拝借しながら研究して参りたいと思つております。
  57. 小林英三

    ○小林英三君 先ほど豊田委員から重要な御質問がありまして私の聞かんとするところをすでに御質問になつたのでありますが、先ず豊田委員の質問に対する重工業局長、或いは中小企業庁長官から聞きました答弁に関連いたしまして先ず最初お尋ねしたいと思うのでありますが、豊田委員から許可の問題、二月の何日かににすでに伊讚美工場のほうで不渡があつたと、ところが中小企業のいわゆる下請工場の今代表者の諸君がおつしやつたのには、これはその特需等によつて通産省が推薦をして立派な工場ということで今日まであつた、それがためにまあいろいろ支払は悪かつたけれども政府がこれだけ力を入れておるので、これはもう安心だというような考え方で三県下だけでも二百からの下請工場……。
  58. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと御発言中でございますが、只今銀行局の総務課長が見えておりますので念のために申上げておきます。
  59. 小林英三

    ○小林英三君 そこでそれはもう下請工場の代表の諸君がおつしやるので当然だろうと思う。先ほど重工業局長の話によりますと、豊田君の質問によりまして許可の問題は二月頃に会社の経営状態がどうも不如意のような状態である、申請は出ておつたけれどもこれはそのまま保留しておつた、こういうことのお話があつた。ところが中小企業庁長官の話では今日下請に対する支払代金の円滑のために相当大量の親工場の内容の調査等もしていると、これは結構な話でありますが、どうですか、一方の同じ通産省の同じ内部において重工業局のほうでは許可すべきものをどうも内容が悪いようであるからもう少し見合せようということがすでに二月項、二月下旬頃にそういうことがあつたと、中小企業庁のほうではこれだけの大きな親工場、而も何百というような関係者の下請工場もあるのにそれに全然お気付きがなくておられるのか。この同じ通産省の中においてもこういうことは噂にもお聞きにならなかつたか。
  60. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 日平につきましては実は私どもはこの下請の問題は今になつて初めてやつているわけではございません。一昨年の暮頃から着手いたしまして、昨年やや組織的に公正取引委員会調査をいたしたのであります。その結果に基きまして昨年の暮に特にこの支払状況の不当に悪いと思われるもの十社を公取で呼びつけまして、そうして現状が非常によくないのに対して先ず年末を越すという意味においてどの程度の支払改善をするかと、第二段として一月から三月までの間にどの程度の支払改善をするかということを要求いたしたのでありますが、その中にはこの日平が入つているのであります。その結果、日平といたしましては公正取引委員会からのいろいろの戒告なり、注意がありましたために、従来単なる買用であつたものを手形に直したものもかなりあつたようであります。ともかく日平が下請に対する支払改善について努力をやろうといたしかけた途端にすでに他の原因による会社経理の悪化が急速に進行して下請の支払改善を遂に果し得るまで命が続かなかつたというのが現状でございまして、今度やらんといたしておりますものは、前回やつたもの等も一部重複いたしまするが、更に広く範囲を拡げて新らしき意味の調査を更にやろう、こういう意味でございます。
  61. 小林英三

    ○小林英三君 それから中小下請工場の代表の諸君にお伺いしたいのですが、先ほど東京、横浜、埼玉等の同じ被害者の諸君が或る一つの団体を結成されている、日平産業の再建促進協議会というのが結成されておる。そこでいろいろ税金の問題、或いは債権を担保にして政府から融資をしてもらいたいとか、或いはそれと同時に日平の親工場の再建を我々は念願して、共にこれを被害を全部回収すると同時に、日平の親工場も再建したい、こういうお話があつたのでありますが、これは皆さんの日平を再建して行きたいという御希望は日平本社の幹部、これらが十分に皆さんの心持を体しておるかということを先ずお聞きしたい。
  62. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) 小林先生の御質問でございますが、日平の本社の重役といたしましては、何と申しましても代表取締役がおりません、小菅に行つておりますので……。その他の役員に面会を申込みましても、副社長の石原氏が出て参りまして、我々も日平の再建を念願しておるのだということも十分説明はいたしておりまするので、石原副社長は十分その点は了承しております。
  63. 小林英三

    ○小林英三君 そこで私は通産大臣がおれば通産大臣にお聞きしたいのですが、中小企業庁長官にお聞きしますが、今下請工場の代表者諸君の念願というものは自分たちの被害をなくするのは、取返したいのは勿論であるが、それにはやはり日平本社の再建をしたい、こういうことも大きな念願の一つのよりに思うのですが、例えば昨年のあの大風水害のときには政府は、我々もそうでありますが、いち早くいろいろな政府もできるだけの手を打つて融資をした。これはもう農家にも何にもみんな融資をした。ところが中小企業というものは、今度のような場合は、丁度あの際の大風水害と同じよりなものだと私は考える。信用しておつて仕事をまじめにやつておつたものが、一たび手形の不渡によつてこういうことになり、二進も三進も行かない、こういう状態なんでありますが、これは勿論今後の問題については豊田委員からもお話があつたのでありますが、我々も何らかの手を打つてこの問題を救済してやりたいと考えております。取りあえず今の日平産業の再建という問題が近く起ると思います。又起るような場合において中小企業庁あたりが介入をして、そうしてこれを共にそういう方向に導いてやるというような御意思がございましようか。
  64. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 日平問題の一番急速且つ合理的な解決ということを考えますれば、日平の本社がつまり再建計画を速かに確立いたしまして、そうして金融的にも成る程度の裏付けができて動き出すと、こういうことになりますれば、これは下請のかたたちも従来通り日平の関係において仕事が運ぶし、そうして新らしく納入する代金の支払はもとより、過去のものについても徐々にもらえるということについて具体的な目安がつくわけでありますから、これに越したことは私はないと思うのであります。従いましてさような再建計画が日平本社についてできるということになりますれば、先ほど重工業局長が申しましたように、新らしく日平の再建を担当する責任者に対しましては重工業局は直接その監督の立場から、私どものほうは下請の利益を適当に納得さすという建前から、それぞれ適切な処置を願うように話をするということは、これはまあ職権とか何とかいうことでなしに申してよろしいのではないかと思つておりまするが、その半面、私どもは先ほどここで申上げましたことをいろいろ申したのでありまするが、日平本社そのものが今のような形で再建して来ますれば、この下請に対しまする、つまり先ほど申しましたいろいろの援助の措置と申しますか、金融措置というものも他に転換するときよりは我々としてはやりやすいのじやなかろうかと思うのであります。そういう関係から申しますれば、私は先ほどは一番つらい場合のことを申したのでありまして、日平は暫らくおいて、この際一つつらいけれども日平の関係を外して再建をやるというくらいの意気込みでおやりになつて、而もその計画がかなり金融機関等から見ても成るほど或る程度行けるというふうなところまで来れば、それでもまあ何とか行くような方法はないだろうかというようなことを申したのであります。これは、一番工合のいいのは、本社そのものの再建が一日も早くできるということがあらゆる意味においていいと思いまするし、我々といたしましてもその方向に援助できるものでありますれば全力を尽したいと、かように思うのであります。
  65. 小林英三

    ○小林英三君 私は企業庁長官に今お尋ねしましたのは、中小企業庁というのは中小企業者の代弁者として生れた企業庁であつて、殊に日平産業の下請工場の諸君は日平産業の再建と相待つて我々の債権を回収して行きたい、こういう念願に燃えておりまするし、現在の日平産業の内容というものが、社長は小菅に行つている、あとどうなるかわからんと、こういうような場合におきまして、横浜、神奈川、埼玉或いは東京等の二百件の債権だけでも一億五千万もある。そのほかにも未払のものがある。手形だけでもそのくらいのものがあるというようなことでありますので、日平産業がいろいろな力によつて再建をして行くということにつきましては、中小企業庁も中小企業者の代弁者として骨を折つて頂く、それにはやはり中小企業者の債権というものも十分頭に入れて、それに力を注いでやるというような取持をして頂くことができるかどうか、こういうような問題について私はお尋ねしておるわけです。
  66. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 官庁としてかような具体的な経済問題に余りにも介入するということはおのずから限度があろうかと思うのでありますが、今のところはやはり日平産業というものはどう行くのか、やはり経済界の中におのずから斡旋役もございまするし、或る程度の姿が出て来ぬということになりますると、今の段階では私どもが動くということ自体も、甚だどうかと思われる点もございまするので、専ら下請のかたがたの相談相手としていろいろ私どものほうでも智慧を出すなり激励をいたすなりいたしておる段階でございます。もう少し日平関係の再建計画そのものが民間側の立場から或る程度固まつて来ないということになりますると、今のところ私どもとして直接手を出すというのには時期が早いかと考えておるのであります。
  67. 小林英三

    ○小林英三君 長官の言われることは御尤もです。私のお尋ねいたしておりますことは、そういう機運が醸成されて、何か有力者の人たちの音頭取があつて、そうして再建の話が持ち上つたような場合において、中小企業、つまり下請業者の代表者なんかの意を体して、或いは折角できておりますそういう再建協議会、下請の再建協議会、或いは日平産業会社の当事者等を呼んで、そういうような機運が醸成された場合においては、中小企業庁がその間に介入して犬馬の労をとつてやることが望ましいということの質問なのです。私は今どうこうするという意味ではない。
  68. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) そのときどきの情勢によりまして、私どものほうにそういう人が来て頂いて、お話するのがよろしいというような見通しがつきますればさようなこともよろしうございましようし、今後の情勢の推移に応じまして、我々として最善の努力をいたしたいと、かように考えております。
  69. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 私は四人のかたのお話を承わりまして、誠に御同情を申上げるというよりも、私自体が中小企業者でありまするが故に、本当にこう自分自体がぞつとするような私は今感じがしておるのであります。而も私は、過去において皆様のような状態に今までにおいて、実は終戦後四回やつております。四回やつた二つのものは解決をしておりますが、今現在二つのものがまだ未解決になつておるのでございます。でありまするので、私は今日は、今の段階で一つ角度を変えて皆様に甚だ御無礼になるかも知れませんし、皆様が非常にお困りになつておるところへ私が質問をすることが、少し御無礼になるかも知れませんが、過去のこういう場合にぶつかつた場合にとつて来たことと、又これからこういう問題がたくさん出て来ると私は思つておるのです。その場合に、未然にこれを防がなければならないと考えておるのでありますが、そういう意味において、皆様が過去にとつて来られたことがいいとか悪いとか、どうとかということではないのでありますから、その点を一つ御了解下さいまして、率直に私の質問にお答えを頂きたいと私は考えております。  第一に私は伺いたいと思いますることは、今協力会というお言葉がちよちよくございますが、この下請の仲間の協力会というものは誠に私はこれはよい団結であると考えておりますが、私の過去の経験から言いますると、誠に協力会というものは、相当にこういう事態が起らない前に、ずつと前から協力会をやつていなければならないので、その協力会のやはり動きが即日平産業のすべての問題にタツチして行かなければならなかつたのでありまするが、そういう点についての協力会の結成、それから動きというようなものに対して一つ伺いたいと、こう思つております。  それからその次には、この下請が従来直接の請負でございますか、或いは工賃請負でございますか、又鋳物のようなものは勿論材料持だと私は考えておりますが、併し銑鉄を支給するということもありますが、そういう材料持の下請であるかどうか。  それからその次は、単価の問題でありますが、私の過去の経験から見まして恐らくかような事態の発生する会社というものの下請単価というものは、相当よろしいというのがまあ通例でございます。その下請単価のよいということに釣られてしまつて、そうしてつい深入りをしたというような傾向がないか。  それから伊讚美工場は六〇%乃至七〇%を下請に出しておるということを先ほど御陳述がございましたが、この伊讚美工場の月産の製造高でなくてもよろしうございます、製造台数でもよろしうございますが、どのくらいあつたものであるか、一つつておきたいと思います。この点を私は最初に伺つて、それから次の質問に入りたいと思いますから……。
  70. 渡辺貞之助

    参考人渡辺貞之助君) 御質問の第一、協力会の結成についてでございますが、これは丁度経営者が労働組合の結成を毛嫌いするような傾向が過去にあつたように、親工場としましては、下請業者が団体を作りますと、例えば支払を促進してくれとか、いろいろな要求が出はせんかという気持から、昨年社内にそういう議があつた場合に、担当部長などは、それはどうも今時期でないということで、それを阻むような意向もありまして、実は沙汰やみになつたということも聞いております。私もそのときにはその動きに関係しておりませんので、この問題が起きかかる少し前、協同組合の結成のことを提唱しました場合に、協同組合ならいいけれども、全下請業者を打つて一丸とする団体の結成は困るという意見がございました。そのために遅れたわけでございませんが、この協力会は親会社がすでに経営破綻に瀕する状態になりましてから、私ども及ばずながら協力して盛り返したいというので結成したような経過でございます。  材料の手持はこれは、伊讃美の関係では輸送用の材料、箱を作ります。これは勿論材料は手持でありますし、それから、鋳物を納めるところも、銑鉄その他の材料は手持でありまして製品を納めますが、あとは、材料業者が納めた材料を支給されまして、賃加工して納めるというふうになつております。  なお下請の単価でございますが、これは確かに率がいいので、それに釣られて深入りしたという傾向もあつたかと存じます。別にこれは日平産自身伊讃美工場に単価をよくして我々を釣るというような悪意なり故意があつたとは思つておりませんけれども、非常に能率が上りまして、低コストで生産されるために、市場に出ましてもこれを取扱う特約店、代理店は、他の発動機を扱うよりも利幅が多いという事情にありますので、伊讃美の工場自体は昨年一カ年で四千万円くらいの利益を挙げて、これが本社の横浜工場に吸上げられて、これが還元されないために、第一の不渡が伊讃美に関係して起きたというような事情もございます。下請業者も他の関係の下請をするよりは確かに率がいいので、同じ日平産業の仕事をしましても、横浜の仕事を好まず、伊讃美の仕事に一〇〇%行くという傾向がございました。確かに単価がよかつたことはよかつたのであります。なお発動機の販売価格の約六〇%乃至七〇%、平均して約六五%になると思いますが、これは伊讃美の工場は組立だけやりまして、部品は一切外注に頼つております。そのために日平全体の資産内容をよく存じませんが、少くとも従業員数、その他工場の規模から申しますと、伊讃美は恐らく十分の一乃至五分の一程度の比重しか持つておりませんが、下請業者の債権は、横浜に余り違わないくらい、伊讃美の金額は最近でも一億九千万に及んでおります。そういうような事情がございます。これは製品の性質にもよりまして、横浜とは非常に違つた事情があるわけでございます。横浜は平均にしまして、よく存じませんが、伊讃美は全部見込生産でございまして、生産額も一昨年僅か月産三百台足らずでありました。昨年は非常に急増いたしまして、千台から千五百台、十一月には千八百台まで参りました。採算のベースは千二百台で採算に乗りますので、非常な利益を挙げておつたわけでございます。  なお伊讃美に関連しまして、この機会に特に御認識を深めて頂き、その認識の下に再建への格別なる御援助を賜わりたいと存じます事情がございますので、多少時間もかかりますが、是非お聞きとりを願いたいと思いますが、伊讃美の工場単独には明らかに採算に乗つておりました。現在でも運営さえ続けば採算に十分百乗つているわけです。私ども微力なものでありますから、日平全体を如何に再建するかということについては、何ら具体策は持つておりませんけれども、すでに打撃を受けました六十日の間にいろいろな方法を研究いたしまして、ただ徒らに外部の力によつて更生の途を迫るのでは余りに意気地ないとも存じますし、折角採算の立つておる工場の仕事をしておるわけでございますから、これが若し本社の再建が遅れるならば、経営を分離して出発をすれば、これは速かに再建の策は立つわけでございます。又それをどうしてもここで急いで何らかの積極第をとらればならない事情にありますのは、四千台の製品は、在庫は四月、五月、六月、これは農村の最需要期でございます。この機会を外しますと、これは型も昨年の型でございまして、いわゆるB型であります。今年は全然新らしいF型に入りまするので、この機会を外しますと、一億二千万くらいの製品が、或いはスクラツプに近いものになつてしまう。売掛金が全国の代理店、特約店に約二千万ほどございますが、これも生産を続けて、製品がだんだん代理店に送込まれれば、いわゆるところてん式に売掛金は集まつて参りますが、現在はすでに営業収入の予定の半分にも達しないくらいになつております。日平さんは潰れた、破産をした、社長も逮捕された、再建は見込が立たない、これに払込むのは馬鹿らしいというお気持も若干あつたでございましようし、又いわゆる金詰りの点もございましようけれども、非常に営業収益が悪くなつております。折角生産が上つて確立できた全国の販売網が、ここ一、二カ月殆んど麻痺状態になつております。このままで一カ月、二カ月たちますと、販売網は崩壊してしまう。そうしますと、たとえ伊讃美の本社が再建されまして、伊讃美の工場が生産が始まりましても、到底採算に乗るまでに至らない。その間に勿論我々下請業者は、他に転換の途がない。地域的に非常に不便な状況にあるわけでございますから、先ほど岡田長官も申されたように、他に転換更生の途を辿れというような御指導でもありますが、これはその途がないのでございます。どうしてもこの伊讃美の工場は、それこそ遅くともここ一週間、二週間にも速かにその生産を軌道に乗せなければ、あの工場は手足になる協力工場は全部死んでしまう。親工場は回復しても、もう工場自体の運営が乗りにくい。又手持の四千台の発動機は、今の時期を外しては、これは型が古いためにスクラツプに近いような状態になつてしまう。そうしますと全部の債権者に非常な損害を及ぼしますと同時に、国の大切な資材も無駄になるというような事態に追込まれておりますが、この窮地から脱するためには、勿論本社の再建がまだ、一カ月、二カ月、三カ月かかるというような事態ならば、何とかしてこれを切離してでも生きる途を辿りたい、このように念願しておりますし、且つ又非常に時間的にこれはもう急いでいるというような事情にございます。最近二億程度でございますか、資産も丁度二億程度しかないのでございまして、これはもうあの工場は日平の工場であるが、同時に半分は下請業者の工場に近いものでございます。その点から申しましても、何とかこれはこの分だけは切離せばすぐにも生きる状態にあるわけでございます。その途の開けることを、非常に切実に、且つ緊迫した状態において念願しているわけでございます。これはもう明日、明後日からでも、今の役員、又は新役員ができるならば、そのかたとその面の打開策を一つ相談して、その途の開けるということを、よく理解を以て進むことのできるようにお願いしたいと、こう思つております。これは資金の面にも約五千万ほど私ども受けるべき手形、二月に一千五百万円、三月に一千五百万円受ける手形を受けておりませんのと、不渡になつておりますのがすでに二千万以上になつておりますので、これを埋めるために、約五千万ほどの資金は必要でございます。その程度の資金繰りがつけば、忽ち月千台、千五百台の生産が起るわけでございますから、十分採算が立つて行く、これは実績に徴して確信を持てるわけでございますから、そういう面で一つ方面のかたがたの御指導と御援助を受けて、是非この途が早急に開かれることを熱願しているわけでございます。  なお先ほど会社の更正法を適用し、或いは商法の整理の条項の適用をして、更正の途を図つたらというような御意向やら、御答弁もあつたわけでございますが、これは実は私ども下請業者にとつては、実に死を意味することなんでございます。日本建鉄が昨年六月やはり不渡を出しまして、十二日に不渡を出しまして、二十四日には商法による整理の条文による申請の決定をいたしました。その後どういう経過を辿つておるかと申しますと、八月に再建集会が一回行われました。十月に又もう一回行われました。ただ抽象的にいい整理案を立てるべく努力しております、暫らくお待ち願いたい……。で十二月になりました頃は、これは整理案を裁判所の命令によつて六カ月間には立てねばならんはずのものが、年末御多端の折柄、お集まり願うのも恐縮かと存じますから、状況を報告するというパンフレツトをもらつて……、私はもらつております。三月も挨拶で、同じパンフレツトが私のところに参りまして、遺憾ながらまだ整理が立ちません。暫らく御猶予願いたいというだけで、いつ払うのか、払わないのか、その方針さえ立たないで、裁判所から財産の保全命令を受けておるから、それでどうやら工場をかつかつ運営しつつ、続いておるわけでございます。私ども不渡を受けたけれども、未だに全然これはもう支払うことができるや、できないやらわからんままで、いわゆる踏んだり蹴つたりのままにおるわけであります。実は日平産業のこの問題を見て、私ども一番恐れているのは、実は会社更正法を適用して、債権を三年、五年棚上げをする案を持出しはせんか、これが出れば、もう到底伊讃美の工場に関する限りは、我々に死を意味するわけであります。親工場は立直つたが、下請の工場、子会社は全部潰れた、それには更正法が有効である、こういうことが認められるならば、更正法は有効でございますが、これは余りに債務……、会社の保護に厚くして、債権者も大口の銀行などはこれで三年待とうと、五年待とうと、その間利子は計上されますし、殊に具体的な例では、千葉銀行は三十億乃至四十億か、五十億と称される横浜工場に、二億円の債権に対して担保を取つておりまして、どんなに待つたつて、この債権は疵つく、損われる心配はございません。何年待とうと、そのため千葉銀行が倒れるということはないと思います。私ども伊讃美に関する限り……、勿論横浜工場の下請業者も同じでございますが、特に伊讚美の工場に関する限りは、今後二カ月債権が棚上げされて、あの工場の再開ができなければ、もうすでにこれには更正の途なしという事態に追詰められておるわけでございます。何としてもこれでは会社に適策がなければ、我々自身、自主的に具体策を立てて、経営分離の方法をとるなり、生きる途を打開すべく、その動きに入ろうと思うくらいな状態でございます。どうかその辺も一つよく事情、というより、むしろ窮状を御諒察下さいまして私ども切なる念願が何とかして途の開けますように、これに格別の御指導と御援助を切にお願いするわけであります。
  71. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 この協力会、協力工場ですね。その協力工場、協力会を結成するという者に対して、まあ会社が阻止したというような形に相成つたように、さつき聞きましたですね。
  72. 渡辺貞之助

    参考人渡辺貞之助君) ええ、ただこれはちよつと、私どもが結成しようと思つたのではなくて、会社の内部に協力会とか、そういつたものを作つて協力したほうがよかろうという意向があつたが、それはまずいというので沙汰やみになつたという次第なんです。
  73. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 会社が協力会の結成を阻止したのでなくて、業者がやめたというのですか。
  74. 渡辺貞之助

    参考人渡辺貞之助君) それは私どもにはまだそういうふうな動きは出て来ていなかつたのであります。会社の中の使用人がこういうものを作つたらどうでしようかということで、課長、部長に相談したら、部長のほうでそれは今のように支払の悪い状況下において結成されては尚更この仕事がやりにくくなりはせんかという懸念を以て、それはせんほうがよろしい、今は時期でないという意味で作らなかつた。業者のほうから盛り上つて協力会を結成しようという動きはこの問題が起るまではなかつたわけであります。
  75. 鈴木孝也

    参考人(鈴木孝也君) この下請工場の協力会ということは、横浜工場で、横浜周辺の下請業者が一昨年あたりから坂本製作所の社長が中心になりまして、再三日平産業の横浜工場に向いまして、協力会を認めてくれ、そしてより一層協力さしてくれと、それで又協力会を結成することによつて生産工程がスムースに行つて、そして生産コストが下るんじやないか、こういうようなことも要請しておりますが、一向に、どういうお考えか存じませんが、横浜工場としては、工場長の許まで行つておりましても、それは暫らく待つてくれと、こういうような状況で以て結成できないでおつた次第でございます。
  76. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 これはかような事態が発生するしないにかかわらず、協力工場はどうしても僕は作らなければならん、今後の中小企業は、そういう一軒のところに多くの工場が集まる場合においては絶対私は不可欠のものであるということをもう信念的に考えておるのであります。従つて、今私らの関係しておりまする再建整備をやつておる工場は、再建整備に関係する工場は、協力会というものが相当結束いたしまして今活動しておるのでありますが、これは、まあ例えば、そんなことを申上げては甚だ失礼でありますが、ちよつと遅かつたという嫌いが大きくここに感じられる。同時に、これは日平さんのような厖大な工場の再建整備には、この協力会が相当大きな役割を演じておる事例もあるのでありますが、果して日平さんにさようなものができておるかどうかということは、私もまだ内容を知つておりませんのでわかりませんし、又その協力会の内容がどういうふうな内容で今進んでおられるか、共同の金を借りるというところまで結束が行つておるならば、相当私は強い力になるのじやないかと思つております。現に協力会において、いわゆる協力会の名において金を借りて、みずから立ち上ろうとしているところも多々あるのでありますが、先ほど企業庁の長官のお話があつたように、今の段階として、私は恐らく日平さんをどうこうするなんということは、これは企業庁長官のおつしやつた通りだと私は思うのです。でありまするので、むしろこの協力会というものに大きな一つお考えを頂かなければならんのではないか。これは私の過去の経験からさように今考えておるのでありまして、どの程度に皆さんの協力があるのかということはわかりませんから、まあその程度でありまするが、どんな程度でございますか。
  77. 渡辺貞之助

    参考人渡辺貞之助君) 現在の協力会はまだ勿論協力会というか、法人格を持ち得るものでございませんので、この協力会自体が金融の途を直接つけるということは不可能と思つております。中小企業庁の石井振興部長並びに指導三課長の河合課長お二人の御指導を受けまして、急速にこの協力会の会員を単位とした協同組合を広範囲に結成しまして、幸い一応質権として設定されたしました千五百万円の債権も持つておりますので、これを日平から債権の代りに譲受けまして、中小企業金融公庫に担保に入れて、協同組合がその金融を受ける、或いは協力会が会社を作りまして、この会社を通して常陽銀行或いは中小企業金融公庫から融資の途を講じたらというようなことまで考えておりまして、その準備に入つております。協力会自体はこの事態が起きましてから同時に急速に結成したわけでありまして、如何にして我々の生きる途を日平として講じてくれるか、又生きる途が閉ざされた場合には、債権が如何にして守られるかというので、定例に週一向理事会を開いております。又進んで我々の打開できる途を開くためには、協同組合の結成とか、或いは別に法人格を備える会社を建てまして、こういう途で金融その他の方法を進んで行かねばならんと思つております。
  78. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 これは中小企業庁のかたにもお聞きしたいのでありますが、会社更生法の適用を受けておる会社でございますと、この会社更生法の適用を受けるまでになかなか手間取るのであります。非常に手間取る。これは皆さん御承知だろうと思います。手間取つて、会社更生法が適用されまして、さてそれから再建というものにメスを入れるわけです。そうすると、メスを入れても三カ月も五カ月も又かかるというような次第のようでありますが、これは何か一つ再建整備法を適用するのに、いま少し便利にやる方法はないものですか。第一それを一つつて見たい。
  79. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 今の会社更生法の適用をされる、その適用するまでの手続が非常に面倒だというお話でありますが、確かにその点もございましようが、同時に又参考人のかたが申されましたように、更生法に一旦適用になりますると、すべての債権が棚上げになつてしまう。非常に力のある、経済力のある人が持つておる債権は棚上げされても将来の楽しみがあるからこれは却つてよろしい、けれども持ちこたえる力のない債権がそれと同様に棚上げされたのではたまらないという点があるわけであります。そういう点を総合して、会社更生法というものを、多少今申したよりな点が中小企業者に有利になるよりな方法で改正するというようなことが一体考えられるものかどうか、さような点につきまして、私どものほうとしては、あの手この手と研究を今しておるところでございまするが、何しろ債権保全の問題になりますると、下請だけの債権は特別扱いにして、他のものは別だということでうまく収まるものかどうかはいろいろの角度から研究する必要があるだろうと思うのであります。その点につきましての具体的なお答はよういたしかねるのでありますが、その点につきまして、まだ法務省のほうに意見を申上げる段階に至つておらんのであります。ただ内輪で何かいい方法はないかという心持で調査をしておる段階であります。
  80. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 下請は今お話を承わりますと、鋳物のようなものは材料持であるが、あとはいわゆる機械加工が大部分であるという話を聞いておりますが、恐らくこの整理をいたしますときには第一に払わなければならないものがいわゆる工賃でございますな、賃金でございます。この賃金に、下請の今の仕事が殆んど賃金に準ずるものであると思うのでありますが、これはやはり従業員の工賃を一番優先的に払わなければならないと同じように、下請のいわゆる賃金請負……、賃金と同じようなものでありますから、これを優先的に払う方法があるかないか。
  81. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) まあさようなところを一つ根拠といたしますと、この会社更生法等の適用、下請の債権をいま少しく実情に合うような扱いができるかどうかということを現在いろいろ研究しておるという段階でございます。
  82. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 もう一つだけ……、今の会社更生法を適用いたしますると、いわゆる工賃に準ずるようなものが他では現在全く棚上げになつておるのであります。而もその今まで受入られておらないような未検収のもの等は、向うへ材料が行つておりながら、そういうものが皆向うのものになつてしまうというようなことで、いわゆる売上げになつておらないようなものが相当大きな額が行つておる。そしてその大きなものはもう返らないというような状態になつておりまするが、そういうものに対するお考えはどうでございましようか。
  83. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) まあ現在の法律の扱いから言いますれば、必ずしもそれが下請に有利に運んでおらんようであります。これはまあいわゆる動産の保存の先取特権等をどうするかということ、又仮に下請のかたがたにおいても大体そういうふうなことをあらかじめ予見して何か怪しうなつたらすぐ法律的な扱いをとるというふうなこともなかなか上手でないかたが多いようであります。それはそれといたしましても動産について先取特権を例えば下請なんかについて認める方法がありや否やというふうないろいろの点について、弱い者の債権保護を簡易にやる方法が、而も取引の安全を損わない善意な第三者に対してむやみな損害を与えない形においてやる方法がありや否やという問題を捉えて考えるべき問題の一つであろうと思うのであります。そういう趣味でまあ相当これは腰を据えて研究をいたさねばならん問題と思うのであります。或る程度の構想がややまとまりますれば、今度は法務省のほうへお願いをいたしまして、扱いとしては法務省のほうで今度は取上げて頂くということになろうかと思います。
  84. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 もう一つだけ、今のその浪費いたしまして、米検収で請求しても出し得ないというようなことが皆さんのところにどのくらいおありになりますか。それから私はもう一つ、これはあなたがたに非常に失礼な質問になりますが、昨年の八月頃からもう一銭も金をもらわないでおるというような、もう半年以上でございますがね、そういう状態に立至つているのにそれを今まで放つて置くという方法は一体どうしたのです。一体まあ率直な話をしますと……。
  85. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) 一応御尤もな御質問でございますが、それはその面だけを見た見方でありまして、その間に長い取引の面におきましては手形も取つておりますので、手形が順次落ちているわけです。数字的に一例を申上げますというと、これは私の会社ですが、例えば昨年の六月に売上げの合計が五百五十五が一千六百三十円ありました。これに対しまして六十万の手形をもらつた、五百五十五万余に対して六十万の手形をもらつた。その次に今度は七月の請求残高が六百八十万二千三十六円あるところへ持つて来て九十万の手形をもらつた。その後八月には請求残高が八百二十八万八千十四円あつたところへ二百万円の手形をもらつた。九月には九百三万三千九百七円あるところへ持つて来て三百二十万の手形をもらつた。というような状況でありまして、順次手形をもらつておるわけでありまして、ですからしよつちゆう残されておるのは……、十一月一千二百五十九万とか、十二月一千五百五十九万、十一月が一千二百五十九万、これに対して四百万もらつたというふうな工合に順次もらつておるのであります。しよつちゆうただ売掛残が残つている。そういう状況でやつておりますから、ですから取引を例えば八月から始められて浪費しても接収して伝票が出て支払になるまでには一カ月から一カ月半かかつちやう。それから手形を百二十日の手形をもらつてから二月になつて一つも金をもらえなかつたということになる。手形が落ちないからそういう結果になつておるわけです。
  86. 中川以良

    委員長中川以良君) もう一つの御答弁がございます。未検収の分がどのくらいあるか……。
  87. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) 未検収の分は正確に今調査をしまして返答するようにと言うのですが、帳簿を持つて行かれておるのでなかなかわからんと言うのですが、我々の想像では未検収分が少くとも現在の状況において五、六千万あると考えております。
  88. 西川彌平治

    ○西川彌平治君 それじやもう一つだけ、今あなたこういう事態になりまする会社にあることでありますが、今ここに百万円の売掛残がある、今月又百万円納めた、そうすると合計二百万円になりますね、二百万円に対してその一割五分とか二割だけを手形か何かで払つて、あとを翌月に廻す、仮に二割というと二百万円の二割、四十万円だけ払つて、あとの百六十万円は翌月に廻して、そうして今月又百万円あつたからそれを加えて、又その二割を払う、何か日平さんにもそういうような方法があつたのですか、どうですか。
  89. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) その会社の取引の状況によつて皆支払を違えたようです。一定した条件の下に支払つてはおらないようであります。私どもは現在の状況におきましては手形の不渡、或いは今後不渡になるべきもの、売掛金等を見ますというと、金をもらつていないものは未検収を別にしまして二百六十五万しかない、手形は千四百八十万円もらつておる、それだけの手形が不渡になつておる。こういう現状でありまして、必ずしもその売掛八百万円あるとしてその二割しか払わんということではなく、会社の金繰りによつて三割くれることもあるし、五割くれることもある、こういうことであります。
  90. 海野三朗

    ○海野三朗君 参考人のかたがたにお伺いいたしたいのですが、これほど大きな穴があいた、これは一体どこに流れたのでありましようか、この借金というものはつまり日平産業の職責が食うてしまつたんだろうか、どういうふうにお考えになつていらつしやいますか。
  91. 稲川次郎

    参考人(稲川次郎君) 私ども見ておりますところでは、十二億に増資をしまして、相当な金が……、三億の資金が四倍増資をやりまして十二億になつたわけです。ところがその当時日平はかなり銀行方面から借財があつたわけであります。この増資の金の大半を返済してしまつた。特に第一銀行等に対しては全額返してしまつた。宮嶋社長が日平は借金のない会社にするのだというので、借入先に対して全部返してしまつた。そのほかには、日平の工場は終戦後非常に傷んでおりましたので、それらの面に対して修改築をやつた、各所に見違えるほど立派な塗装をし、或いは修理をして本社のごときも、社長室などは実に立派なものです。そうした所へ非常に派手に金をかけたということと、金融機関に返したということと、従来日平自体に相当な何といいますか欠損もあつたでしようから、そういう面に対しても一応埋めて、一時は非常に形がよくなつたのです。その後の状況におきましては、私どもの想像では、やはり会社の経営において増資した金はだんだんと欠損したのではないかと、かように見ております。  もう一つは、いろいろと汚職問題その他言われておりますが、社長が少くとも一億に近い金を政治資金か或いは何の資金か知りませんが、いろいろな面に使つたというふうに想像しておるのであります。
  92. 海野三朗

    ○海野三朗君 昨年武器等製造案がこの委員会において決議されましたときに、私は断固反対をいたしましたのは、今日の事態があることを私は想像したのであります。それにもかかわらずあの武器等製造法案を政府提出して来た。つまりあのあおりを食つて日平産業が、日平産業のみならずあなたがたもつまりそれに巻き込まれた。従つて私は、今日穴があいたというのは誰の責任であるかと申しますと、これは吉田内閣の失政である、私はそれによつて政府が全責任を負うて日平を立ち上らせなければならないのではないか、私はそう思うのです。この前も、昨年のこの法案が審議されたときに、在来の武器製造をやつておるところが皆赤字受注をやつてつたのであります。それを私が親しく日立あたりの工場についても調べたのでありますが、全部赤字なんです。赤字でも、どうにかしてやつて行こうという考えでとにかく金を引きずり廻せばいいのだという漠然たる考えの人が非常に多いと私は思う。それから又この宮嶋社長が莫大なる金を政治資金に廻した。今小管に入つている。これは取りも直さず保全経済会の問題、これとただ形が変つただけなのである。皆さんからの労力と申しますか、つまり下請工場の労力を搾つてそうして代金を支払わずにこれを他に廻したのである。この法案を通した政府がこの責任を負わなければならないと私は考えるのであるが、中小企業庁長官は如何ようにお考えになつておるのか。私は政府当事者、通産大臣がここに出て来て話を聞くのでなければ徹底しないかも知れませんけれども、あの法案を通したときにすでに今日のことが私は想定されたのである。それでありますからこの日平産業が倒れたということに対しては政府が全責任を負つてやらなければならないと考えるが、これに対しては中小企業庁長官どういうふうにお考えになつておるか、これを聞きしたい。
  93. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 武器等製造法が通つたということが今回の日平の倒産に重大な影響があるという御発言でありますが、武器等製造法の所管は重工業局でございまするので、当該局長が一応答弁をするようにいたしたいと思います。
  94. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) 武器等製造法は、あの内容は、御存じの通り目的といたしておりますところは、むしろその以前の状況というのは、企業の濫立と、それから濫立から来る過当競争から起る出血受注という現象、その現象をなくしたいということのために作りました法律であります。その意味で、事業を誰でもやれるという形でなしに、許可制にして絞つて行つたほうがいいのじやないか、それから受注価格にしましても、これが出血と思われる際にはそれに対しての価格にも政府が警告を発することができるというまあ二つの内容を主眼としました法案でございまして、そういう性格から言いまして私ども武器生産の実情からああいう法案を作ることの必要はあつたとこそ思いますが、それが只今お話のございましたような、今回のような問題になる原因になるものというふうにはむしろ思わないのでありまして、むしろ原因はその以前にあつたことでありまして、むしろ法が遅きに失して予防が十分できなかつたということではないかというふうに思う次第であります。
  95. 海野三朗

    ○海野三朗君 私のお伺いしたいのは、仕事を引受けて赤字になることを承知の上でやつておる、そういうふうな会社もやはり通産当局としてはそれを知らないでおつて、このような大穴があいてしまつたのだというふうにお考えになつておることは私は甚だその責任をお考えになつていないと思うのでありますが、この武器等製造法案を通したからこうなつたんじやなくて、あの法案によつて民間が皆あおりを食つた。それで儲けがあると思つて、下請工場では皆代金だけはもらえると思つてやつたんだが、どつこい蔭のほうでは莫大な政治資金が流れたり赤字の受注をやつておつたりした、そういうことが今日の結果を招来したのでありますから、政府の当局としては飽くまでも日平産業が立ち上れるようにやられるべきものではないか、私はこういうことをお伺いする。
  96. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) 日平の企業自身の立ち上りにつきましては、先ほども私我々の気持を申上げましたつもりでありますが、何もどういうものでもあそこはできるという意味ではございませんが、武器の或る種のものにつきましては過去に優れた経験も持ち又優れた技術肴も持つておるという意味におきましてその企業が担当してやればいい品物が比較的安くできるということは私どもは考えておるわけであります。ただ経営者のその人によろしきを得ず又経営振りによろしきを得ずということがあり、そのために金融機関からの援助がなければ企業としては成立つて行かないわけでありますが、本件はさような意味におきまして金融機関からの厳密な批判を受けておるわけでありまして、只今のところ責任者がいない状況で再建策が進んでいない状況でありますが、責任者が出て参りますた挙句、金融機関との話合いにおいて金融機関の信頼のおける経営者及び経営の建直しの方策というものが立てられますようになりますならば、あの企業の過去の技術、経営というものが合わさつてうまく行くのではないかというふうに思いますし、又そうなることを私どもも期待しておるという状況でございます。
  97. 海野三朗

    ○海野三朗君 中小企業庁長官に私はお伺いしたいのですが、この中小企業金融公庫法でありますが、よく調べて見ますと、この金の流し方が甚だそのよろしくないのです。それがなぜかと言うと、例えば三井銀行とか、住友そういうところにやつたその金はその銀行と紐付きの工場だけに借金の肩替りに使つておるそうしてそういうところと関係のないところの工場には金が廻つていないという現状であります。そういう現状に対しては企業庁長官は如何にお考えになつておりますか。銀行のほうが、紐付きのところだけ、自分の関係している会社だけ、やつておる。交渉のない、例えば東京の都民銀行ですか、そういう方面に繋がりを持つている工場が、一つも救われていないという現状、そういうところはよく御承知になつておるのかどうか、その点に対する企業庁長官の御所見を承わりたい。
  98. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 中小企業金融公庫ができましたときに、衆議院で附帯決議がございました。この金は全国津々浦々の中小企業者に地域的にも又業種別にも、偏頗のないように、行渡るように、やらなければいかんという御趣旨であります。私どもといたしましては、その御趣旨を生かすという意味におきまして、いわゆる大銀行から地方銀行、或いは相互銀行、信用金庫、或いは有力なる信用組合、それから別の機関といたしまして、商工組合中央金庫というふうな各種各様の金融機関を代理店に指定いたしまして、そして仕事を始めたのであります。つまり中小企業者と申しましても、それぞれの企業者の内容なり、又従来の仕事のしつぷりから見まして、関係する金融機関がそれぞれ違うわけでございます。従つて三井系統に従来から取引のあつた中小企業者は、三井銀行へ行つてその窓口を通じて、公庫の金を利用して頂く、東京都民銀行にいろいろと関係のある人乃至将来関係のできる人は、都民銀行からこの公庫の金を利用するようにして頂く、又それぞれそういう意味において、信用金庫なり、信用組合なり、商工中金なり、それぞれ自分の得意とする窓口、将来の点から言いますれば、行きやすい窓口というものを狙つて、そこを通じて、公庫の金を利用して頂くわけでありますから、三井へ行く中小企業者が三井と従来から取引がある人が多い、この人に三井銀行に、公庫から与えた枠の範囲内で、公庫の金が流れて行く、これは私どもの予期しておる通りでありまして、それぞれの金融機関がそれぞれの特色のある中小企業者に公庫の金を流して頂きますれば、それで全体的には、満遍なく中小企業者に金が廻つて行くこと相成ろうかと考えておる次第であります。
  99. 海野三朗

    ○海野三朗君 三井銀行では三井系の会社に流しておるというのですよ、それを私は言うのです。例えば住友なら住友の関係した住友系の会社、それだけに廻すというのです。ほかじやなしに、そういうことを今私が伺つたわけなんです。
  100. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 私どものほうでは資本金一千万円以下、製造工業でございますれば従業員三百名以下或いは商業乃至サービス業でありますれば、従業員三十人以下のものが、いわゆる中小企業者、協同組合等又ございますが、さような形の中小企業者に対する金融でございますれば、仮にそれが三井の関係のものでありましても、これは中小企業でありまするから、それに三井銀行が公庫の金を貸付けるということがございましても、それはやはり差支えないことではなかろうかと思つております。あの公庫法に規定のございまする中小企業というもの以外のものに、三井銀行が貸すということがございますれば、これは貸すことはできないのでありまして、その意味において公庫自体が各代理店から参ります書類をよく二重審査をやるというふうに、お叱りを受けるのでありますが、果して各窓口は中小企業に金を貸しておるかどうかいうふうなことを調べまするゆえんもそこにあるわけであります。
  101. 海野三朗

    ○海野三朗君 私が今申しますのは三井とか住友のそういうふうな大財閥系の会社のみが救われるということを申すのです。そうしてそういう系統に属せざる会社が、そうして都民銀行と交渉のあるやつは、この大会社の一族と申しますかそのほうだけが救われておつて、ほかのほうが救われていないということを申上げたのです。それでは私は公平ということは期せられないのではないか。
  102. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) それは法律に即して私のほうとしても調査をいたしまするが、とにかく先ほど申しまする中小企業者でありますれば、それぞれつまり自分の得意とする窓口を持つておるわけでありますから、三井銀行に得意な人という中には御指摘になりましたように、或いは三井の系統の中小企業者が多いということがあるかも知れません。それはよく調べて見ます。併しそれが中小企業者でございますれば、三井銀行からそれに公庫の金が行きましても、それは特に不都合だというふうには申しかねるかと思います。具体的にどういうふうになつておりますか、私のほうとしても調べて見たいと思います。
  103. 海野三朗

    ○海野三朗君 私は只今財閥会社の系統の会社のみ、その子会社のみが救われて一般のほうには廻つていないということを申したのでありますから、その点についてはよくお調べを願つておきます。  それからもう一点私は大蔵省当局にお伺いしたいのでありますが、これほど困つておる現状に対して大蔵省のほうではどのくらい公庫のほうに金を廻すというお考えなのですか。その辺を大蔵省のかたにお伺いします。
  104. 大月高

    説明員(大月高君) 中小企業全般につきましては、根本は、各種の金融機関のできるだけ多い窓口から金を出すというのが根本の考え方でございます。従いまして、例えば今御指摘になりましたような三井銀行とか三菱銀行とかいう銀行におきましても統計的に今の資本金一千万円というようなところを標準にして取つて見ますと、中小企業に対する貸出は大体五〇%程度出ているわけでございます。その他中小専門の民間の金融機関といたしまして信用金庫、信用組合、相互銀行を今監督いたしておりますが、それらは全部貸出といたしましては、貸出金額自体も一千万円以下に抑えまして、中小企業の金融に専念いたす態勢をとつているわけであります。その他政府機関といたしまして、中小企業金融は公庫或いは更に零細な生業資金を出します金融機関といたしまして国民金融公庫等を持つておるわけでありますが、その他商工中金もございます。そういういろいろな窓口を通じて中小金融に配分いたしているわけでございます。全体の今の金融界の資金がそういう金融機関を全部を合せまして三兆ばかりあると思いますが、今のような統計から申しますれば過半数約一兆五千億というような数字は中小金融に廻つておるわけでございます。勿論個々の案件につきましては、それぞれの事由がありまして、必ずしも満足のできるようなことにはなつておらないと存じますけれども中小企業庁のほうもいろいろなお話もございますし、逐次連絡をとりながら、できるだけの対策を講じておる次第でございます。なお中小企業の金融の根本は、やはりその信用力をつけるにあるということならば、信用保険なり或いは信用保証協会の制度なり、その他信用補強の策も併せて講じておる次第でございます。
  105. 天田勝正

    ○天田勝正君 私も、先ず政府側にお尋ねいたしまして、その事柄について参考人等がこの際申出れるほうが便宜だとこう考えましたら然るべくお申出願いたいと思います。そこで私は先ず岡田長官にお伺いいたすわけでありますが、元来この日平産業の問題が、たまたま政治献金等にからんで社会的にも大きな問題になつて来ましたので、本委員会でもこれを一つの例として取上げてはおるのでありますけれども、これは飽くまで例であつて、我が国の商習慣、大工場と下請という関係を見まするならば、これはこれと似た事例というものはたくさんあるのであります。そこで日本の大企業というものが不況になりまするというと、下請工場に対する支払をだんだん遅延せしめ、初めは月末に支払つておつたものが、今度は二月の手形になり三月の手形になり、だんだん延びまして、遂には六カ月の手形なんという想像すべからざる事態が起きて来る。こういうことでありますから、仮に今日おいでになつておられます参考人の各位が、日平でなくて、ほかの工場の下請に変つたといたしましても、この一般的な不安というものは決して防げるものではない。私は何も海野君と討論するつもりはございませんけれども、仮に日平産業だけを政府の責任だとしてこれの再建を政府が責任を負うと仮定をいたしましても、手ぶらではできない、どうしても資金を要するということであつて、その資金は一体国民の税金から成立つ、こういうことであれば、いやしくも、何か立法的な措置のない事実というものを、行政府が勝手にできるわけではありませんのでありますから、私は、この際、若干でも根本的にこの大企業、下請企業との関係政府並びに立法府におる我々のうちで、幾分かでも解決の途が見出せるならば私は幸いだ、こういう立場に立つてお聞きいたしたいと思うわけであります。  そこで質問の第一点は、日本の中小企業とドイツ等の中小企業とは余りに違うという点。ドイツ等は、例を挙げると又長くなりますからそう申しませんが、仮にレンズ工業ならば、これはやはりその一個の商品の単価が仮に安くても完成品として仕上げる、こういうことであります。一つの一種の計器と言えば、どんな小さい工場であろうとも、これがやはりその計器の完成品として市場に出ている。こういうことでありますから、大企業に圧迫されるという事態は余り起きないのであります。ところが日本ではすべてが本当に加工工業であります。こういうところに根本的にこうした問題が次々起きて来る大きな原因があるのでありまして、そこで中小企業庁におきましては、今後やはりこの根本的には中小企業は小さいならば小さいなりに一個の既成品を完成せしむる方向に指導して行かなければ、次々この問題が起きて来ると思いますが、その指導方針について承わつておきたいと存じます。
  106. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 外国の下請というものと日本の下請というものとのあり方の問題であります。これは私日本におきましては、元来いわゆる富国強兵という立場から、明治維新以後、政府がとかく第一線に立つて、経済界を鞭撻しつつ、いわゆる急速に産業を盛上げる態度をとつて来たということから、大企業がやつぱり先頭に立つて完成品を作り、そして自分でやるのには手が廻らんというふうな場合に、部品その他のものを下請に出すというふうな形において多くの産業系列ができ上つて来たのじやないかと思うのであります。アメリカ等におきましては、どつちかと言えば、日本式の下請関係が多いように見受けるのであります。お説の通りにヨーロツパにおきましては、さような例が多いようであります。スイスにおきまする時計の例を見ましても、むしろ細かい部品をマスプロでいろいろの専門工場がやつている。日本で言えばこれが大企業に相当するものでありましよう。それをむしろ中小企業か特殊のデザインによりまして、特殊の機能によつてアツセンブルして立派な時計ができ上るという形が現にあるわけであります。これはまあ一遍に私どもの指導方針如何によつて日本の現に存在している親工場と下請の関係、これが一遍に引つくり返えるような指導をするということが果して妥当であるかどうかという問題も考え併せなければならんと思うのであります。今の日本の姿におきましては、どつちかと言えば、親工場が完成品を作つてその部品を下請に出すという形でありまするから、この現実を一応肯定しまするならば、下請としてはその出す部品の製作についての、専門工場たる正確さと精密さというものを打出して行くということによつて、別の意味であらゆる親工場に対して卑屈な態度をとらんでも堂々と太刀打ができるだけの精密な部品を作るという方向へ一方においては指導するということは無視できないと思うのであります。お説のようなヨーロツパ式のつまりやり方、これは私は今の下請の問題に関連して日平の場合、特に伊讃美の工場等において、下請の皆さんが、殆んど全部部品を出して、そして伊讃美工場がこれを集成して製品作つておられる。その工場がなかなかいかんということでありますれば、逆に今度は協同組合等ができますれば、下請工場が従来の親工場を逆に下請に使つて自分らの出した部品を集成して農業発動機を作らすということが考えられ得るかどうかということを考えますと、今度は、形はよほど遠いますけれども、下請のほうが上に立つような恰好もできるわけであります。今後具体的にどつちの方向で日本の親と下請関係を指導したらいいかということは余り抽象的にはきめ得ないかと思うのであります。お説のような下請関係が成立ち得るということは、これは私もよく承知いたしているのでございまして、それらの点を加味してやつて行きたいと思いますが、当面の形においては、とにかく下請の技術水準というものを向上させまして、一把一からげに親工場から扱われなくても済むだけの技術的な、つまり強みというものを確立することが一番差当つての必要な事柄ではなかろうかと思うのであります。
  107. 天田勝正

    ○天田勝正君 これは今の質問に関連して私は注文申上げておきますが、私の質問の前提は、長官が御指摘のように、アメリカのほうは日本に似ておる、こういうことは私も承知しておるのであります。但し、日本産業構造を見た場合に、アメリカ式に似せるよりもドイツ式に似せたほうが妥当である、こういう考えの前提に立つておるのであつてアメリカには日本のように数多くの中小企業はございません。そうでありますから、どうしても似せるといたしまするならば、今日このような事態が次々に起きて来る原因が一般的にあるのであるから、それを根本的にだんだんと変えて行かなければならん、私も今までの長い習慣を一時に引つくり返すということは考えておりませんけれども、この面に一つ是非中小企業庁等の専門の官庁で十分一つ検討は今後怠らないようにして頂きたい、こう存じます。  第二の質問は、政府が今考えておりまする中小企業のカテゴリーが私はよくない、こう考えるのであります。それは先にもお話がございましたけれども、中小企業の範疇を資本金においては一千万円、それから従業員においては、製造工場が三百名、サービス業等が三十人、こういうふうに並べて見ますると、如何にもサービス業のほうが製造業の十分の一であるから誠に妥当な措置とつたかのごとく見えるのであります。ところが実際には日本の製造工業のいわゆる中小企業というのは、百名を超えるほうがめつたにないのでありまして、これよりも以下、或いは三十人、五十人というところが圧倒的に多いことは、これは長官も御承知の通りなんであります。どだい三百人に中小企業の範疇を拡げたということそれ自体が私はおかしいと思つておりますけれども、それよりも更におかしいのは、三百人と三十人を比較するのではなしに、あべこべにやはり日本の工場で多いのは三十人から五十人だから、三十人対三十人を一つ比較して見なければならない、そういたしますと、御承知でもありましようが、銀座あたりの宝石商、貴金属商へ行つて見まするならば、僅か二名か三名の従業員しか使つておりません。これが明らかにどの面からいつても中小企業の部類へ入つて融資対象にでも何にでもなる、ところが過日も新聞に出ました通り、こういうよころでは今不景気になつて誠に売行きが悪くなつたと言いつつ、一日に五十万円のダイヤの指輪が必ず一個は売れる、こういうことであります。で、このことを私は考えなければならないのは、一体資本主義の世の中では、資本の多いものが資本の少いものに勝つて行くということは、これは原則であると同時に、もう一つは、資本の廻転率の早いほうが勝つているのであります。同じ一万円を使つても、一年に五回廻転できれば、これは五万円の資本金を持つたのと同じであるし、一万円を一回しか廻転できないところの、仮に単作地帯の農業のごときは、これは一万円しか、資本を持つていないのと同じである。こういうことになるのでありますから、そこで問題になる。サービス業、或いは商業、こういうような関係におきましてはこの廻転が早い、ところが製造工業においては、さつきお伺いいたしますように、六カ月の手形だなんということになると、たつた一年に二回、こういうことより仕方がない、ただ押せ押せということになつているだけである、こういうことを考え併せます場合に、まだまだ今日の商業面に対するところの政府の見方、製造工業に対する見方いうものはよほど変えて頂かなければ私はならないと思うのです。で、こういう観点に立つて政府は一体こうした範疇をどう考えるか、この範疇の考え方によつてすべての融資等も変つて来るのでありますから、私は変えて頂きたいと思いますが、如何お考えになりますか。
  108. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 現在の中小企業として、法律上私どもの役所の行政の対象になつておりますものは、ともかくも先ほど御指摘なつたように、資本金では一千万円、製造工業三百人、サービス業三十人ということであります。これを改正するかせんかというと、これは一つの重大な事柄でございまして、これを仮に三百人とあるものを、成る時期から百人にするんだということになりますれば、これを進められた人の金融というようなことも大変なことでございましよう。考えようによりましては各製造業にいたしましても、各業種々々につきまして、この業種ならば、まあ仮に百人といえばもう大変だ、この業種ならば千人というても大したことはないというふうに、業種別に人間の数というふうなもの、或いは資本金というようなものを抑えるというようなことも、これは或る意味においては妥当なことかと思うのでございます。未だ十分に各業種別にさようの自信のある資料もございませんので、一応従来からの例を踏襲してやつておるというのが現状であります。今急にこれをどうするかということにつきましては、ちよつとお答えいたすだけの用意がないのでございます。
  109. 天田勝正

    ○天田勝正君 これらも又一つ研究願いたいと存じます。それから第三の質問でございますが、先ほど西川委員から、この下請工場に対するところの支払については、他に優先するの途を講ぜられないか、こういうお話がございました。これは大企業と下請企業との間だけ考えればそういうことも想像されないではございませんけれども、一体それなら他の関係、即ち、労働賃金を、それじや下請工場に支払するために犠牲にしてよろしいか、すぐこういう問題が起つて参りまして、総合的に考えますれば直ちにこれを他のすべてのものに優先するというわけには私は行かないんじやないか、そこで資金といたしまするならば、今までのようにただ野放しの商習慣のままに任せておけは、冒頭にも私が指摘いたしましたように、ちよつと金詰りになつて来れば、そのしわ寄せは一切中小企業にやつて、月末で払つていたものを二カ月の手形、三カ月の手形、遂には六カ月の手形ということで、親工場のほうが犠牲を払わずして下請工場ばかりしわ寄せをして来たのが現状なんであります。どこかでこれをとめなければならん。必要ならば立法措置も講じなければならないのでありますが、その一つといたしまして、私はこの下請企業に対する支払は二カ月を超ゆることはできないとか、こういう立法措置を講じなければこの防ぎようがない、やはりここに来ておられる参考人の方々は相当立派な方でありまして、八月頃から、さつき他の委員指摘されたように、だんだんと延びて来たという状況を見れば、これは誠に将来不安であるというようなことの見通しのつかないような人方ではございません。それらも十分見通されておつても、一遍にそれじやお前のところへは仕事はやらん、こう言われると多くの工員を路頭に迷わし、自分の事業にもひびが入るから、承知をしつつもずるずるとついて行くというのが日本の中小企業の惨憺たる状態に陥る大きな原因なんです。でありますからここで中小企業者と対大企業との対等の立場で野放しにしておくということになれば、これは小さいものが弱いのでありますから必ずこれは承知しつつ負けて行く、こういう結果になることは明瞭であります。それでありますから二カ月以上下請工賃等を延ばすことができない、こういう立法なり、行政なりの措置がとれればそれを目安にして銀行等も貸すでしようし、余りにこのように被害が大きくならないうちに少くとも食い止める、こういうことになると思うのですが、これらについて一つお考えを承わりたいと思います。
  110. 岡田秀男

    政府委員(岡田秀男君) 親工場と下請工場との支払関係法律できめて、例えば二カ月以上延びることは相成らんというふうにきめたらどうかというようなお話でございます。さような考えもいろいろ出ておりまして、私ども相当研究いたしたのでありまするが、実際の点から申しますると、法律できめますと、なかなかむずかしい、非常に臨機な処置をとりにくいというふうな点もあろうかと思いますが、幸いに実は新らしく法令を立法しなくても、独占禁止法が昨年改正になりました際に、不公正な取引はしてはならんということがはつきりと打出されまして、その不公正な取引の一つといたしまして、自分が取引上有利な立場に立つておる、その有利な立場を利用して力のないほうに不利益を押付けるというふうなことはこれは不公正な取引方法であるということを公正取引委員会がはつきりと打出したのでありまして、その具体的な例といたしましては、この下請の支払関係において不当な支払遅延をやる、支払条件を不当に悪くすることがいけないということになつておる。それも公正取引委員会といたしましては当委員会の強い鞭撻を受けながら研究を続けました結果、武器とか機械の製造修理を行うような業態につきまして、一応の結論といたしまして親工場がその製品の一部又は全部について下請業者に物を注文した場合におきまして、親企業が下請業者から納品等のものを受けたものについて検査を完了した日から三十日以内に親企業の経営の状況その他の事情から見て支払能力があるにかかわらず下請業者に対しまして下請代金を現金又はこれに準ずる確実な支払手段で払わないということになると、これは不当な圧迫である、不公正な取引である、そして検査を完了するのには大体十日以内に検査を完了するものと見るべきであるというふうなことを独禁法の運用として明らかにいたしたのであります。従いましてこの支払基準というものはこれはあえて機械器具、武器の製造業に一応公取としては限定いたしておりますけれども、大体の経済常識から言えば、恐らく下請関係としてはこの程度で親工場は支払うことが望ましいのであるということをはつきりさしたものであります。同時に一昨年来私どものほうと公正取引委員会協力いたしまして、これは全国の親工場並びに下請工場を一斉にしらみ潰しに一遍に調べるということは不可能でございますから次々にやるのでございますけれども調査をいたしまして、そして不当な支払、つまり自分のところは配当も十分にしておるし、賃金の遅払もない、或いは取引ならば非常に短い関係で払つている、或いは他の支払条件相当良好であるにかかわらず、下請関係だけが悪いというふうなことはこれは不当の支払条件であることは間違いないものでございますから、さようなことをすでに昨年の八月以来私ども協力してやりまして、去年の暮に現在問題になつていますところの日平も公取から呼ばれまして警告を受け、正月の支払、即ち一月から三月までの間にどの程度の支払状況を改善するかという改善計画まで取られたのであります。その結果先ほどお話がございましたように、日平においてもこの暮から我々公取の警告に基きましてかなり一応形式上支払を改善いたしたのであります。ところがその手形が、改善のために出した手形が不幸にして不渡になつたというところに本件の悲劇があるわけでございますが、要するに私どもといたしましては今後も公正取引委員会協力いたしまして、具体的に親工場と下請工場の支払状況を調べて行く、そうして不当な取引については公取から改善の方向について警告をやつて行く、なお各下請企業のほうから私のほうにでも、公取へでも名をお出しになろうと匿名であろうと差支えございませんが、具体的事例として訴えて参られますれば、更にそれを具体的に調査をするということにいたすわけでございます。この独禁法の運用によつて相当の改善ということができ得ようと思います。ただ親工場の支払をむやみに促進いたしますと、却つて下請に害があるという場合もあり得るわけです。親工場がよたよたになつている場合にむやみに下請の贔屓ばかりいたしますと、贔屓の引倒しになるということがあろうかと思いますが、その辺の兼合せをしながら適当な事業状況、支払状況に持つて行くように努力をいたしたい、かように考えております。
  111. 天田勝正

    ○天田勝正君 もう一点だけですが、只今の御答弁ではこれ又希望を申述べておきますが、岡田長官がいろいろ努力されていることは私も認めます。従つて決して責めようとは存じておりません。ただ公正取引委員会は本来独占的な大企業のほしいままな行為を独制する、こういう役割であります。ところが中小企業庁は中小企業者の擁護者という、こういう役割のなんでありますから、おのずから同じ事柄を扱いましても私は違う、こう考えております。でありますから、ときにとつてはむしろ贔屓の引倒しになる危険すらなお冒しながら中小企業者の立場を守つて頂きたい、そこでおのずから公正取引委員会の独占的大企業の恣意を抑えるという、こういう立場に立つて中小企業者を見るのと、丁度調和がとれているのであつて、こちらから恐らく想像しつつ余り贔屓をするのは如何かということを言いますと、とんでもない答えも出て来る危険もあるから、これ又更に一段の努力を願いたいと思います。  それから最後の質問でありますが、これは本来大蔵大臣に質問すべき事柄で、政治の最高方針が決定せないのに銀行局の総務課長に質問するのは私は無理かと思いますけれども、ついででありますから質問いたしておきます。私の考えでは一体この中小企業と言いましても三百人から五名、十名というような本当に零細な工場までも同じような条件で融資の対象にするというそれ自体が、小さいものほど破れて行くという私は大きな危険が胚胎する、こういうふうに存じておりますので、そこで誰が見てもこの対等に見得るものだけの範囲をきめて、そうして政府資金がそこにずつともう何の障害もなしに流れて行くような方法をとらなければならない。これは一つの例ですが、私どもが、例えば大日本紡というような天下の大企業のところに行つて見ますというと、それはローラー・スケートで機織も何もやつておる。こういう状態を見ても伊勢崎銘仙一反織るような工場を見た場合にどう考えたつてこれは大企業のほうに惚れつくのは当り前です。銀行家は決して生産の専門家ではないのでありますから素人が見た場合にこれは大企業に惚れつくのは理の当然でありまして、だから素人が見てもこの対等に扱えるような範囲をそれだけきめて行かなければならん。そこで一つの案といたしましては日本産業構造の実態からいたしまして、例えば十人から二十人までの範囲の工場については、例えばこれこれの金融機関、つまり今の中小企業金融公庫のごときものを数個に分けて、そこへ自然にそこの公庫の金はもうそれしか流れない、こういう方法をとらない限りは三百人から一番小さい五人か十人でありましようが、そこまでも平らにしたというだけではもう小さいほうへはさつぱり行かないという結果になるのであるが、一体個々に再検討を加える用意が事務当局としてもおありでございましようか。
  112. 大月高

    説明員(大月高君) 只今お話は中小企業の範囲をどこにするかという問題の次に、その中に又段階をつけたらどうか、こういうお話だと思うのであります。で中小企業一般を考えますと抽象的にはやはり金融は大きいところに流れやすいということは事実でございまして、勿論実際は企業の質が関係するはずでございますので、例えば五百万円の資本金の会社と百万円の資本金の会社とこう比べましたときに、果して資産内容を勘案いたしますとどちらが金融しやすいかという点になつて参りますと、具体的にはやはり問題はあるかと存ずるのであります。ただ一般論といたしまして大きいところは資産内容もいいであろうということは勿論言い得ると思うのでありますが、具体的に金融の施策といたしまして、今お話のございましたように仮に金融機関を数個に分けるといたしますと、それぞれに資金量を分配するということになるかと存じます。それは、例えば現在の中小企業金融公庫資本金一千万円という制限がございますが、これを例えば現在の資金量を五つに分けまして、二百万円以下のものと四百万円以下のものと六百万円以下のもの、そういうように仮に資金を固定いたしますと、今お話なつたと同じ結果になると思うのであります。併しこういたしますとむしろ資金の融通性を欠くことになりまして片一方に不必要な、むしろ必要な部面に簿く、不必要な部面に厚くというようなことも或いは結果として出るかも知れません。そういう意味で金融機関を細分し、或いはそういう資本金によつて分類をするということはむしろ適当でないかと思うわけであります。ただ中小企業の中にやはり少くとも大別いたしまして中に属するものと小に属するものということは抽象的には言えるかと存ずるわけでありまして、現在の国民金融公庫におきましてはその小に属する部分を主として扱う。中小企業金融公庫においては小のほうの上から中にかけて扱うという大体の常識的な線を引いておる次第でございます。そういたしまして資金量を固定いたしまして、結局中小企業の難点は信用力という点にあるのでありますので信用保証協会にいたしましても、信用保険にいたしましてもやはり小さい企業についてそれを確保するという制度を以て信用力を補強する、その中ではやはりいい企業に対しては金融がつきやすいというように考えて行くほうが適当ではなかろうか、余り細分することはむしろ金融上は害があるのではなかろうか、こう考えております。
  113. 天田勝正

    ○天田勝正君 まあそういう考え方であればよほど我々と違うのですが、或る一つの制度を作つたり、或いは一つ法律を作つたりすれば、必ずそれの弊害というものもこれは若干伴うのです。だから金融上のことだけを捉えて言いますれば、今課長の言うたような点も出て参ることはそれは我々も承知しております。けれども今日の中小企業の状態というものがどこにあるかと言えば大も小も実際には同じように並べられて扱われる。であるから小のほうには更に資金などは来る気遣いはない。私は例えば市中銀行の資金がどのように流れているかということを大蔵委員会等で調べたことがありますけれども、如何に中小企業に行つていないかは一日瞭然なんです。でありますから、この弊害と、これを例えば中小企業金融公庫等もこれを三つの公庫なり四つの公庫なりに分割して、そうして私の言うように誰が見ても平等に見得る企業に対して自然と資金が流れて行く方法をとつたときの資金の融通の阻害という弊害とどちらが多いかというバランスをとつて見なければならん、そのバランスをとつて見た場合には、どうしても今のように融通無碍のようにやつていることが却つて弱いものに味方はしないという結果になる、こういうことを指摘している。でありますから、今これに対して私は初めから無理を承知して質問をしているのであつて、答弁を求めませんけれども、こういう主張についても十分尊重されて、これ又一つ銀行当局でも研究してもらいたいと思う。
  114. 中川以良

    委員長中川以良君) 大変時間が長くなりまして、参考人のかたにも御迷惑でございましたが、なお参考人のお方から何か御意見がございましたら、どうぞ簡単にお述べ頂きたいのでありますが、なければこれで終ります。よろしうございますか……。  皆さん別に御質疑ございませんか。それでは本日はこの程度にいたしておきたいと思いますが、御異議ございませんか、    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは 参考人のお方に申上げます。本日は御多用中を御出席賜わりまして、殊に最初におきましては長い間お待たせいたしまして、又かように長時間に瓦りましていろいろと御意見の御開陳又御答弁等を賜わりまして、本委員会におきましては皆様方のお立場を本当に心から御同情申上げ、これに対しまして善処いたします心がまえ、即ち只今の当面の救済の面、更に将来におけるかような問題に対するあらかじめの予防をいたしまする対策等につきましているろいろと示唆をお与え頂きましたので、私どもは飽くまで皆様方のお立場を尊重いたしまして、誠心誠意公明なる調査をいたし、御期待に副わんことを期しておる次第でございます。只今非常にいろいろ御苦難でございましようが、どうぞ日本産業の振興のためにこの御苦難を御克服になり、一層御奮起賜わらんことをお願いを申上げる次第でございます。  本日は誠にどうも有難うございました。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後七時十一分散会