○国務
大臣(愛知揆一君)
外貨予算の問題につきましては、当
委員会におきましても折にふれて申上げてお
つたのでありますが、去る三月三十一日に第二百回の閣僚
審議会におきまして
昭和二十九年度上期外国為替予算を決定いたしたわけでございます。その内容につきましては、同日取りあえず当
委員会に対しましてもその概要をお届け申上げておきましたので概要につきましては御承知と存ずるのでございますが、その内容なり、或いは決定いたしました方針、
考え方というようなことにつきましては、今日
説明をさせて頂きたいと思うのでございます。
先ず第一に当
委員会にもかねて申上げてお
つたと思いますが、二十九年度の
外貨予算の輸入貨物に対するところの輸入外貨の割当は、年間を通じまして二十億ドルということを基礎にいたしておるわけでございます。これはいわゆる
外貨予算の編成ということになりますと、二十一億五千万ドル
程度の予算ということになるのでありまして、現実の外貨の決済に対する時期等の関係で予算といたしましては二十一億ドル余りになるわけでございます。そこでこのいわゆる二十億ドル基準ということにいたしましたのは、先ず輸出と、それから特需とにつきまして、それぞれ輸出計画、或いは特需の獲得計画から見ますと、よほど内輪に見まして作りましたのでありまして、一方、輸出と特需はそれぞれ一月以来御
説明申上げておりまするように十三億六、七千万ドル及び七億六千万ドル
程度というふうに見込んでございますが、輸入外貨の積算の基礎としての外貨獲得の計画としては輸出は十二億五千万ドル
程度、特需は七億一千万ドル
程度というふうに内輪に見まして、さような規模にいたしたのであります。
それから第二の枠としての
考え方は、
昭和二十九年度中においては国際収支を均衡に戻すことは望ましいことではあるが、これを強行すると却
つて無理ができるという
考え方から二十九年度末における国際収支の赤字を九千万ドル乃至一億ドルというふうにきめたわけでございます、即ち二年の努力で以て
昭和三十年度において国際収支の均衡を回復して行こう、こういう
考え方をと
つたわけでございます。そういう関係から先ほど申しましたような規模に相成るわけでございますが、その結果あとで主要な物資別につきましての大体の見込を申上げたいと存じまするが、先ず先ずこの
程度の輸入計画ができまするならば、輸出用の原材料、或いは生活必需物資の食糧その他とい
つたようなものにつきましては、十分需給の均衡がとれる必要なものが確保できるという恰好に
なつたものと思うのであります。併しながらその半面におきましては、勿論のこととは存じまするが、不用不急品等は徹底的に削減をいたすことにな
つたのでございます。
さて、それで以上申しましたような
考え方で、この内容が大体どういうことになるかということの概略を申上げますると、前年度と同様に先ず
最初六カ月間の上期の予算を作
つたわけでございます。この六カ月間の期におきまする予算の総額は、輸入貨物の予算として十億五千万ドル、それから貿易外の予算を三億一千余万ドル、合計十三億六千余万ドルの計算にいたしたわけでございますが、これを二十八年度の同期間の六カ月の修正予算と比較いたしますると、修正予算と言えば常識的には大体実績に近いものと御覧頂いてよろしいかと思いますが、それに比べますると、輸入貨物の関係で約一億六百万ドルの減少に
なつております。それから貿易外の関係では、八千四百万ドル余りの減少に
なつておりますから、貨物と貿易外と通計いたしますと、一億九千余万ドルの減少ということに六カ月間で相成るわけでございます。
それでお手許に資料が配付してあ
つたと存じますが、その各項目のうちに特に特色のあるものと思われまする点の二、三について、例示的に御
説明いたしたいと存じます。
先ず第一に食糧の関係でございますが、食糧は金額にいたしますと二億二千五百余ドルに相成
つております。この点について補足して申上げますが、今回の
政府のやり方といたしましては、いろいろの国会内にもご
意見がございましたので、それをも十分参酌さして頂きまして、物によりましては細かい地域別、或いは品目別等の詳細に亘るような数字は、
政府としては公表しないという
建前をとりました。従いましてこの公表のものでは如何にも抽象的であるわけでございますが、情報関係その他に対しましても、求められる場合におきまして、大体の見込というものは
政府側として御
説明をし、或いはお答えをしておるような関係に
なつております。
そこでこの食糧につきましては、
只今申しました金額の基礎はどういうふうに
考えておるかということでございますが、第一に二十九年度は米も麦も平年作であろうということを
前提にいたしておるわけでございます。そうして米についてこれを申上げますならば、二十九年度中の
日本内地への到着量は、別に予算のほうで策定いたしました輸入食糧補給金の根拠といたしました、いわゆる買上量百十四万五千トンというものを基準にいたしまして、このために必要な年間の買付量を九十七万五千トンと算定をいたしたわけでございます。このうち上期の六カ月間におきまして約五十万トンを計上することといたしたわけでございます。同様に小麦につきましても二十九年度の到着量は百八十四万三千トンとしてこれに必要な年間の買付量を百七十五万八千トンと算定をいたしまして、このうち上期において八十五万トンの必要量を計上いたしたような次第でございます。これらはいずれも食糧政策を差当り変更しない、従来
通りということを
前提にいたしておるのでございまして、食糧関係で輸入が相当減少いたしておりまするのは、主として昨年に比べて減少しておりまするのは、凶作対策が必要でなくなるということで、主要食糧の緊急輸入分の残りがまだございますが、それは含めておりますけれ
ども、今年度平年作ということを
前提にいたしました加減でかなりな減少と見ることができたわけでございます。それから食糧の中に実は砂糖も入れてあるのでありますが、砂糖につきましては結論として輸入糖は八十万トンにすることにいたしております。そうしてこの提出いたしました資料におきましてはその半分四十万トンを今期において輸入するということを積算の基礎にいたしておるのでございます。二十八年度の砂糖の消費量は約百八万トンでございました。二十九年度におきましてこの八十万トンの輸入ということにいたしますると、年間の消費量は八十五万トンに相成ります。従
つて相当の減少に相成るわけでございますが、御承知のように最近の砂糖業界関係者等の間におきましては八十万トンの年間の輸入計画があるならば、という関係かと思いまするが、一時見られましたような思惑による砂糖相場の暴騰というようなことは一応鎮静に帰してだんだん下
つておりますことは御承知の
通りでございます。実はこの点も前に申上げたかと思いまするが、二十八年度に比べまするとこの輸入量では消費量が非常に減るのでありまするが、二十七年度と比べれば一割以上も増加するのであります。そういう関係がございまするのと、大体家庭で主婦が購入いたしますところの砂糖はその消費量のうちで四十万トンになるかならないかと推定せられまするので、こういう関係が十分納得して頂ければ不当なる思惑などが起らない、需給の
バランスは十分と
つて行けるというふうに
考えておるわけでございます。
それからその次に、一例といたしまして繊維関係の問題を申上げたいと思います。繊維の原料といたしましては先ず原綿でございますが、二十八年度の輸入並びに輸出計画に基いた綿糸の生産の量は、全部が純綿の糸として計算いたしました綿糸の生産量は一月当り十九万三千梱でございまして、これが今回の輸入計画
外貨予算によりますると二十九年度の生産は月当り純綿糸のベースにいたしますると十八万梱に相成るわけでございます。なお綿布の輸出は
昭和二十八年度におきましては十億ヤールと推定されるのでありますが、二十九年度の綿布の輸出は
目標を十億二千万ヤールといたしまして、その
目標を更に上廻
つた場合には必要な原綿を確保することとして、年間二百十万俵の
外貨予算を組んでおるのでございます。従いまして輸出
目標を突破いたしました場合に今申しました月当り十八万梱という純綿糸ベースの月当り生産量は十八万三千梱となるわけでございます。更に輸出振興のために二十九年度上期から輸出業者に対する外貨割当を実施することといたしたいと思うのであります。又他面におきましてはスフの増産によりまして混紡綿糸が増加いたしますれば綿糸の生産は増加いたしまするので、別途経済政策全体のデフレ的効果による需要の減退と相待
つて、この
程度でありまするならば十分に需要を充足することができる、又価格に対する影響はないというふうに見込んでおるわけでございます。それから繊維の原料で、いま
一つ原毛の関係でございますが、原毛の
外貨予算は御承知のような事情で相当削減せざるを得ないのであります。従
つて二十八年度の七十万俵に対しまして二十九年度は六十一万俵、約九万俵の減少というこれでは計画に相成
つておるのでありますが、スフの増産によりまして高度の混紡を推進することによりまして、生産といたしましては二十八年度の一億九千万ポンドに殆んど相匹敵する一億八千五百万ポンド
程度が確保されるものと
考えられるわけでございます。
その次に特に国会におきまして衆参両院の農林
委員会から御決議も頂戴いたしております関係で、例えば加里質肥料の加里塩の輸入問題でございますが、農林
委員会の御決議、御希望の
通りに大体これは
外貨予算の上でも組んだつもりでございます。年間買付量といたしましては三十万トンといたしておるわけでございます。
その他重要なものとして鉄鋼で申上げますると、大体この輸入計画で参りますると、二十九年度の鉄鋼生産は普通鋼鋼材が五百万トン、それから高炉銑を四百五十万トンということにいたしまして、これに必要な製鋼の原料等を輸入する計画を作
つたわけでございます。これは二十八年度の高炉銑四百五十五万トン、普通鋼鋼材五百三十七万五千トンという実績に比べますればやや減少をいたしておるわけでございますが、全体の二十九年度の国民経済の規模から申しますればこれが適当なところではないかと
考えておるのでございます。
最後に油の関係を申上げたいと思うのでございます。最近逐年急激な石油の需要増加によりまして石油の輸入は急増して参りましたが、二十九年度におきましてはできるだけ輸入を抑制して外貨支払の節約を図ることにいたしたいと
考えました。そのために重油と揮発油の二十八年度の年間の消費量は、重油におきましては五百三十七万キロリツター、揮発油は二百十五万キロリツターであ
つたのでありますが、二十九年度においては重油については消費量は二十八年と同様、増加を見込まないということにいたしました。揮発油については約一〇%
程度の増加を見込みまして、重油は五百三十七万キロリツター、揮発油は約二百四十万キロリツターということにいたしたわけでございまして、原油、重油、揮発油の年間の買付量を約九百八十万キロリツター、上期六ケ月間に五百二十万キロリツター計上することといたしたわけでございます。この点につきましては、あとでちよつと補足して申上げたいと思います。
以上が大体重要なる輸入物資についての数個の例でございますが、その半面におきまして、例えば自動車は二十八年度の輸入の実績は完成車が約五千六百台、組立の車が約四千台、合計九千六百台のほかに、補修用部品等を含めまして、千八百万ドル
程度の外貨払いであ
つたのでございますが、二十九年度におきましては
通商協定等に基きまして、どうしても輸入しなければならないものがございまするので、その関係で、千二百台
程度に抑制することにいたしたわけでございます。それからなお不用不急品の輸入でございますが、これ又自動車と同じく
通商協定に基く場合はいたし方ないのでありますが、化粧品、自動自転車、ウイスキー、菓子、バナナ、パイナツプル罐詰、コーヒー豆、紅茶、ココア等とい
つたようなものは、協定において特に掲げられたもの以外は輸入を全然見ておりません。又輸入品目から全く削除して一ドルも割当てないというものが競走用の馬、製造たばこ、テレビジヨン及びその部品とい
つたようなものは、全然外貨の割当をいたさないということにいたした次第でございます。
以上が概略の御
説明でございますが、なお加工貿易の原材料とい
つたようなものにつきましては、割安な輸出用原材料の輸入を確保をして輸出の増加を図るという気持から、加工用貿易原材料の部におきましては、二十九年度においては二十八年度より大幅に拡大をいたしまして、輸出振興のために六千万ドルというような予算を計上いたしました。又自動承認
制度等につきましても、相当の改善を加えたような次第でございます。こういうふうな状況でございまするが、これも前々から中間的に申上げましたように、こうい
つた外貨予算を編成いたしました場合に、国内の物資の需給関係に対して与える影響、或いは物価に対して与える影響等をいろいろ検討いたしまして、いわゆる国内措置が必要であるかどうか、一口に言えば何らかの統制措置が必要であるかどうかというようなことにつきましても、
政府といたしましては非常に慎重な
研究をいたしましたが、その結論といたしましては、先ほ
どもちよつと触れましたが、この
程度のことで
外貨予算の編成ができまするならば、需給関係その他からい
つて差向きいわゆる統制等の措置は必要としないというような結論に
なつたわけでございます。ただ
一つだけ例外と申しますかございますのは油の関係でございまして、この問題につきましても、当
委員会におきまして前に御
説明申上げたことがあると思いますが、これは石炭と重油との調整総合燃料対策としてやはり
考えなければならない問題であることと併せまして、石炭、重油の調整措置と併せて、石油に対しましては若干の使用の規制というようなことを
考えたいと思うわけでございます。余り長くなりますから、極めて簡単に申上げますと、大体三つの内容になります。
その
一つは、
一般に重油の消費節約運動を展開して消費の節減を図りたいということであります。例えば火力発電、セメント製造業における混焼ボイラー等についてはできる限り、専ら石炭を使用して頂くように行政
指導を行いたいということが
一つであります。
それからその二は、煖房用、厨房用、浴場用等強いて重油を使用しなくても済む用途に対しましては、今年の冬に備えまして今から予告いたしまして、できるだけ重油の使用を遠慮して頂きたいということを勧奨すると同時に、今年の十月一日以降必要に応じて消費規制の法的な措置も行いたいということを発表いたしたわけでございまして、先般御
審議を願いました国際的供給不足物資等需給調整の臨時措置法によりまして、この点は今年十月一日以降消費規制を行うだけの準備をいたしておきたいと
考えておるわけでございます。
その三は、農林水産用、船舶用等の内燃
機関用の重油につきましては、これは消費の節約に協力して頂きたいということは勿論でございますが、これらの用途には絶対に重油を必要といたしますので、その必要量につきましては輸入の際から消費者に至りますまでのルートを関係業界の御協力を願
つて、
指導によ
つてこれが確保を図るという
考え方で
只今関係の向きと細かい実施の方法等につきまして協議を進めておるようなわけでございます。
以上が石油につきましての措置でございますが、この半面におきまして石炭につきましては適正出炭の規模といいものを大体四千八百万トンという基準を
考えまして、合理化を図り、コストの引下げを図り、需要者の協力を得て国内資源の活用を図
つて頂きたい、こういうふうに
考えておるわけでございます。
以上大体
外貨予算並びにこれに関連いたしまする
考え方の概略を申上げた次第でございます。