○
参考人(萩尾直君) 萩尾でございます。私
どもといたしましては今回御立案にな
つております
委託販売輸出保険制度に非常に賛成をいたすものであります。結論を先に申上げて恐縮でございますが、私
どものほうで
作つております製品は御案内のように大きなものになりますと十万キロの発電機から小さなものはランプ一個に至りますまでで、いろいろなあらゆる電機品を
作つておるわけでございます。ところが我が国の電気機械
産業についてはもうすでに御案内のこととは存じますけれ
ども、
輸出に関しましては非常な特殊な事情にあるものなんであります。と申しますのは、東芝もそうでございますが、例えば三菱電機さんにいたしましても、富士電機さんにいたしましても、この電機の技術というものは残念ながら従来欧米のほうが先進いたしておりまして、常に世界の水準に達するためには
海外から技術の援助を仰がざるを得なか
つたのであります。現在でも戦後のブランクを埋めますためにそういう必要があるのでありますが、
戦前からそういう状況でありました。そんな
関係で
外国の有力
会社と技術提携等いたしますというと、
販売につきまして
戦前は大体のところ
販売圏というもの、
販売地域といいますものもきめられてしまうのであります。即ち東芝で申しますならば
内地は勿論いいのでありますし、いわゆる外地と称しましたところ、それから北支等の特殊地域とかいうところに
輸出を自由に許してくれたのでございますが、フイリピンから東南ア
方面、南米
方面には
輸出は許されなか
つたのであります。ところが戦争中、殊に戦争後
アメリカ等におきましても独占禁止法或いは国際カルテルの禁止が非常にやかましく叫ばれるようになりまして、御案内の
通り大きな向うの
会社でそういう国際的にカルテルを作るようなことは憲法違反であるということで訴えられたりしているようなところもあるのでありますが、そういう
関係から現存におきましては、大体の
海外のそういう
会社と契約いたしましても、酷い
販売地域の制限を受けるということがなくな
つたのであります。即ち逆に言いますならば、私
どもの作りましたものは世界のどこに売りましても大体差支えないのが通例でないかと思います。そのようでありますので、戦後
輸出の必要が叫ばれ、勿論それに努力しているのでありますが、
輸出をしようと思いましても実は
輸出については無経験と
言つて過言でないのであります。そこでいろいろと案を立てまして
輸出を戦後初めてやり始めて見たが、あらゆるところでぶつか
つてしまうのであります。と申しますのは、先ず第一に
海外で、
日本で立派な電気機械ができるなんということを知
つている人は先ずないのであります。特殊な人は別でありますが、一般の人にはそういうものはございません。そこで文書等、即ち広告であるとか、或いはカタログを送りますとか、いうようなことで
宣伝をいたすのでありますが、如何せん現物を見たことがないのでありますからして、何かや
つているらしいがどんなものかわからないし、又欧米のものが安く買えるからそれのほうが安心だというのが普通の心理でありまして、なかなかとつついてくれません。そこで何が一番必要であるかと申しますと現物を送ることなんであります。ところが売れるか売れないかわからないものを
外国商社が金を出して買
つて行
つて、みずからの危険においてこれを売
つてやろうという親切な人はまあ少いと
言つてよろしいと思います。そこで私
どもができるだけ
会社の経理の許します限り見本品を送
つているのでありますが、従来は五百ドルまでしか許されない。
委託販売につきましても
制度はありますけれ
どもなかなか手続が面倒である、又且つ
委託販売にはいろいろな危険が伴うものでありますが、それの損失を填補してもらうような保護
政策がないというようなことで、見本を送ることすらなかなか困難であります。ところが今回
委託販売輸出保険制度をお設け下さるということでありますので、双手を挙げて賛成をするわけなんであります。特に我が国の最も、これは電気機械のみならずほかの
商品についても同様かと存じますが、重要な
市場であります東南ア
方面でありますとか或いは中南米乃至は中近東
方面の国々はいずれも外貨の不足に悩んでいるとい
つてもよろしいと思います。一部の石油の権益かなんかで大いに外貨をただで稼いでおられるところもありますけれ
ども、金のない商人がたくさんいるのであります。併し非常に欲しが
つていることは事業なんでありまして、そういうところから、今申上げましたあらゆる地域から
委託販売の申出は非常に多いのであります。尤も東芝の製品といたしましては、発電機でありますとか、或いは変電所の設備でありますとか、乃至は電気機関車でありますとかというようないわゆる重電機と申しますか、或いはプラント物と由しますか、そういうものにつきまして
委託販売ということはあり得ないのでありますが、例えば扇風機でありますとか、ランプでありますとか、或いけ螢光燈でありますとか、照明器具、配線器具、ラジオ、家庭電気器具で申しますならば洗濯機でありますとか、トースター、アイロンとい
つたようなものであります。そういうものは、これは
皆様が
日本内地でお買いになるときでも、電機店においでになりまして手にと
つて御覧にな
つて初めて、どれを買おうかということをおきめになるのであります。併しそれらのものもいろいろ多数並べておきませんというと、五百ドルぐらいの見本
輸出でや
つておりますれば数個しか送れないわけであります。物によ
つては一個しか送れない。それでは駄目なんでありまして、やはり豊富に
商品を陳列いたしまして、そうして初めは多少の危険がありましても、或いは不利な状況でありましても、とにかく
日本の
商品の認識を新たにしてもら
つて、そうして成るほどこれはいいわいというので買
つて頂く途を講ずるのが、一番よろしいかと思うのであります。今回の
法律案は大変に私たちには都合のいいことだと思
つております。なおこのことは御案内のかたが案外に少いのじやないかと存じますけれ
ども、我が国の電気はどういうわけでこういうふうになりましたか存じませんが、御家庭に行
つております電気は電圧が百ボルトでありまして、周波数は関東地方が五十サイクル、関西地方が六十サイクル、御案内の
通りでありますが、こういう国は世界中探しても、まあよほど探さないとないのであります。大抵のところが二百二十、三十というのが家庭に行
つている電気でありまして、サイクルのほうは五十、六十というのがございますけれ
ども……そこで今扇風機にいたしましても、或いは洗濯機にいたしましても、これは
外国に送りますときには、そういうような電圧のものを送らなければならない、つまり
輸出向のものを特別に作るのであります。外観は全然同じでありますけれ
ども、電気的な性能が違うのであります。これを
委託販売にいたします場合に、若しこれが売れないというときには、これを持
つて帰らなければならんのでありますけれ
ども、持
つて帰つても売れないのであります。でありますからどうしても外地でこれを、不利な条件でも或いは処分しなければならんときもあるかも知れません。併しそういう損失を
業者が到底背負い得るものではないのでありますし、若しその損失を背負うような
価格をほかの
商品にかけますならば、ただでさえ高い我が国の電機品が、到底競争
値段を出すことができないわけでありますから、こういう損失をこの保険法によ
つて補填して頂きますならば、我々は安心してこういう
商品をどんどん
委託販売に付することができると思います。
そこで事務局のほうからお与え下さいましたお求めになる
意見について、要約して申上げたいと存じます。
第一番目が、
委託販売輸出保険制度を新たに実施することにより、
委託販売が、どの程度
伸びるものか、又これにより
販路拡張が可能となるか。という御
質問でございますが、これに対しましては
海外の顧客と申しますか、商社は、
委託販売制度による買付けが他の条件よりも、先ほどから申上げますように、いろいろ便利なところがあります。即ち
自分の金をとにかく使わないでコミツシヨン稼ぎだけで行くのでありますからして、そういうことで
委託販売制度が有利でありますし、又こちらから
輸出いたしますものといたしましても、この
保険制度によりまして損失補償を受けられることになりますから、新
市場を開拓する、まあ電気で言いますならば世界中が新
市場と申してよろしいのでありますが、そういう新
市場を開拓したり、或いは
商品の
販売の拡張のためには大いに
委託販売制度を活用することになると存じまするので、
販売は
相当伸びるものと、まあ
数量的には申上げられませんけれ
ども、大いに期待するわけであります。又今日
戦前のように、或いは三井物産でありますとか、三井商事でありますとか、大倉商事とかいう大商社の支店がございますと、これは本店のほうから支店のほうに
商品を移して頂いて、向うのほうで
商品を持
つておるということができましたけれ
ども、現在はまだそれが望めない状況でございますので、今直ちに我が国の商社の支店又は代理店が各地に設けられてない今のような状況におきましては、なお更この
委託販売制度があることによ
つて販路が拡張できると信じます。
二番目の御
質問の
委託販売に対して大体無差別に本保険を付してよいかどうか。
市場の性格、
商品の特長等に
従つて或る程度まで限定する必要はないか、ということでありますが、私
どもは
市場の性格とか
商品の特長等にかかわらず本
保険制度を無差別に適用さるべきものであると存じます。但し先ほ
どもどなたかから御
意見がございましたが、実施後工合が悪いという場合は、この
法律案にもございまするが、
通産大臣の権限によ
つて、或いは地域、或いは
商品に対してこの保険法の適用を保留するようなことをお
考え願えればいいのでありまして、少しばかりの心配があるからとい
つてこの法律が万が一成立しないというようなことでは大変困ると思います。又現在の状況から見まして或る地域と申しますか、に
委託販売をしていいかどうかというようなことはなかなかわからない。又或る
商品を
委託販売に付してよいかどうかということも、結果を見なければこれは予測できないことであります。例えば先方の
市場の
取引上の倫理観念が我々の倫理観念と違
つてお
つたり、或いは経済機構と申しますか、そういうものが不備である等のために
委託代金の回収が不能であるというような場合が起りますならば、その地域と申しますか、或いはその商社と申しますか、或いは或る一定の
商品について限定を与えて頂ければいいので、全般的に初めからどれとどれとはいけないとか、いいとかいうようなことを申されては困ると思います。
三番目の御
質問の、本
制度を実施することにより
投売りを助長するようなことはないか。本
制度のために旧来の得意先に損害を与え、延いては当方の正常
輸出を主とする
輸出業者に脅威を与えることにならないか、ということでありまするが、この
投売りを助長するかどうかは運用が悪ければそんなことも起り得るかとも
考えます。併しながらこの
法律案によりますというと、あらかじめ保険に付しますときたは
販売価格の届出をいたしましたりすることにな
つておりますし、且つ又補填されます額は損害の八〇%である。而もその損害算出の基準の規定されていることでありますから、これによ
つて非常にうまいことができるというような
制度ではないように思います。
又、且つ現地での残品の処分は
通産大臣の許可を要するということにな
つておりまするから、先ほど二人の
参考人からお申述べになりました
通り、これが単に役所の認定だけで許可するとかしないとかいうことでなくて、
輸出業者の組合であります私
どもの属しております
日本機械
輸出組合でありますとか、或いは又更に信用保険のほうでは
輸出信用保険
審議会というのがあるのでありますからして、その辺に必要な諮問を発し下さ
つて、それの
意見を重んじて頂くならば、お互い同士
投売りによ
つて国際的に迷惑をかけたり、或いは
国内の同業他社に迷惑をかけたりすることは最小限度にとどめられるのじやないかと思います。
それからその次の正常
輸出を主とする
輸出業者に脅威を与えるかどうか、これはもう与えないと私は
考えるのであります。先ほどから申上げますように、御注文
生産品と申しますか、大きなもの、発電機でございますとか或いは変電所でございますとか、電車とか、そういう御注文
生産品には
委託販売はないわけでありますから、自然大量仕込み
生産品と申しますか、そういうものについてのみこれが起り得るのでありますけれ
ども、この法律ができたことによ
つて今まで正常
輸出、どちらが正常か私にはよくわからないのでありますけれ
ども、正常
輸出をしておられたかたでも、
委託販売のほうが工合がいいとお
考えになれば、そちらに移行なさることは自由なんでありまして、何ら差支えないのではないかと思います。
委託販売が正常でないとお
考えになるところがおかしいと思うのでありまして、
委託販売も正常な
輸出であると
考えて頂きたいと思うのであります。
それから四番目に第十条の四にある
通産大臣の承認は例外を規定したものというが、どんなときに与えられるのが至当であるか、これに或る程度の限定が必要とならないか、こういうのでありますが、これはちよつと私御
質問の要旨が十分よく呑み込めないので、或いはとんちんかんなお答えになるかと存じますが、
通産大臣の承認を経ますことは、先ほど申上げましたように、
外国に対して不当な
投売りだという印象を与えるようなことをしたり、或いは同業の者が後の
輸出に差支えるような
投売りをされるというようなときには困るから、どこかでこれをチエツクして頂きたいので、
考えれば
通産大臣しかないと思うのでありますが、その場合に先ほどから少しくどくなりましたけれ
ども申上げますように、
輸出組合でありますとか、或いはこの信用保険
審議会でありますとかいうところに御諮問下さいますならば、業界の事情にもよく通じていることでありますからして、そういうことも防げると思いますが、ただ
一つ希望いたしたいことは、こういうような場合に
通産大臣の承認を一々するということはこれはなかなか面倒なんであります。そこで何か或る一定のものについては初めからそういう何と申しますか、あらかじめ承認を得ておく。つまり初めに保険を付しますときから承認を得ておくというようなこともお願いできないか。例えば残品を
内地に持
つて帰ることが著しく不利なようなもの、例えば私よくわかりませんが、向うに
委託販売を頼んだが売れなか
つたので持
つて帰るが、その間に腐敗してしまう、悪くな
つてしまうとい
つたようなもの、或いは持
つて帰るのに非常な運賃がかか
つて、
商品から比べたら運賃のほうが高くなるというようなものは、これはそのたびごとに承認を得て、この頃は大分役所も早くなりましたけれ
ども、二週間なり一月なり待たされておるのでは困りますからして、そういう僅かのものについてはあらかじめ承認を与えておくとい
つたような便法は講じて頂きたいものだと思
つております。又現地で処分をすることが他の
業者又は今後の
取引に
悪影響を与えないということが明らかな場合には、これも又あらかじめ承認をして頂いたならばどうかと思うのであります。なおその他本
法律案についての
意見というのもございますが、中には
外国商社で不誠実なものもおるわけなんです。
委託販売を頼んで物は売
つたけれ
ども、回収代金を着服しちや
つたというようなものがあるかも知れません。これはまあ昔から
日本にもあります
制度の中に、酒屋、米屋で金を借倒して、あちらこちら転々として歩くというような者は酒屋、米屋の同
業者でブラツク・リストに載せるということがあるわけであります。こういう悪徳
業者と申しますか、好ましからざる
外国業者は是非
一つその事例を
国内においても公表するというのは少しどうかと思いますが、どこかに行けばわかるというふうにしておいて頂いて、それにもう一遍ほかの商社が引つかかるというようなことのないように、大体こういう悪徳
業者というのは口はうまいし、条件はなかなか初めはいいのですからして、引つかかりやすいのでありますから、私
どもはそういう
委託販売ではございませんけれ
ども経験いたしておることがございます。そういうときに、何だそういうことを知
つていればあんなところと
取引しなか
つたのにと思うのでありますが、そういうことを知るすべがありません。幸いにして今度はこれを届出ておくことにな
つているし、あとの始末まで
通産大臣の承認を要するということにな
つておりますからして、そういうことがよくわかるかもわかりませんから、いわゆる
外国のそういう悪徳
業者のブラツク・リストを
通産省あたりで持
つて頂いて、我々の便宜を図
つて頂くと大変有難いと思います。
それからこの法律上の保護を悪用するという人があるかも知れんなということも伺
つたのでありますが、例えば擬装
輸出と申しますか、まあ早い話が罐詰を送るのに石の入
つた罐詰を送るというようなことをや
つて半数をそうした。そうすると石ですから若干金がかか
つたかも知らんが、向うで売れなか
つたというのであとの残りの半分の
商品を安く売
つてしまう。併しその半分の
商品の代価は勿論もら
つてしまう。で、損失は石の罐詰で実は損失をしておるのですから、その額をこの保険によ
つてもらう、八〇%ですか……そういうことも
考えればできると思います。二年ぐらい前にもビルマに若干そういうことと似たことがあ
つて議会でも問題に
なつたと思いますが、亜鉛鉄板を送りますのに材木をたくさん挾んで行
つたというのがあります。それでそういうことによ
つて恩典を運用するようなことがありましたならば、これは何か他の法律によるかどうか私よくわかりませんけれ
ども、罰則を設けられてはどうかと思う。例えばそういう不都合なことがあ
つた場合には、この保険の恩恵に浴することを一定期間とめるというようなこともあ
つて然るべきじやないかと思うのであります。
それからこれは、
政府委員のかたがおいでになりましたならば、ちよつと伺いたいと思
つたのでありますが、外地で処分の場合、初めに届出ました外地以外で処分した場合でもこの恩典が浴されるかどうか。念のため伺いたいと思うのであります。即ちパキスタンで売れなか
つたからインドに持
つて行
つてこれを処分した、我が国にも持ち帰らないで……、そういう場合にやつぱり損失が生ずるわけでありますが、その場合にもあらかじめ届けてある地域外の外地でこれを処分した場合も適用はできるのかどうか。できそうに解釈したいのでありますけれ
ども、伺
つて見たいと存じます。その他
輸出振興の一般的な
希望も多々あるのでございますけれ
ども、大分おしやべりが過ぎましたからこの辺で私の
意見の開陳は終りたいと思います。