○
説明員(
牛場信彦君) 先般成立いたしました
日英協定につきましては、この
協定の表面上の主題は勿論
支払協定の
延長ということでございます。これは一年ごとに
延長せられることにな
つておりまして、本年の末まで
延長するように協議ができたわけであります。
協定の
内容につきまして若干修正がございましたが、これは本質的なものでありませんで、
イギリスの
為替管理の
やり方が変りまして、
ドルとのレートを毎日バンク・オブ・イングランドが
マーケツトの
状況を見ながら建てて行くということにしましたために、
日本もそれに追随して
ポンドと円との相場を動かして行く。
併しその動く
範囲は勿論上下一%ずつという極めて僅かのものでありまして、これは実質的な
意味はない変更でございます。
今回の
協定で従来とやや異なりましたところは、裏付けになります
貿易尻の問題につきまして相当詳細に
話合いまして、或る種の
計画ができたということでございます。
只今スターリング地域の
貿易は、御
承知の
通り一昨年までは
出超であ
つたのでありますが、昨年は
先方の非常な
輸入制限の結果としまして、
輸出が一昨年に比べて約半減いたしまして、一
年間に約一億
ポンド以上のこちらの持出しにな
つてしま
つたという
状況であります。従いまして私
ども今回の
会談に臨みますに当りまして、とにかく
先方の
輸入制限を緩和させるということに主な目的を置きまして、
支払協定自体の問題もさることながら、
輸入制限緩和が達成されなければ
協定の
意味がなくなるということを強く申しまして、
先方に当
つたわけでございます。
それから第二点といたしましては、今年は一応お互いに
目標の数字をきめて
均衡した形で以て
貿易をや
つて行こうじやないかというこの二点を
貿易に関しまして特に強く申入れた次第であります。
それに附随いたしまして
金融の問題といたしましては、現在
日本が
ポンドが殆んど枯渇いたしましたので、或る
程度の簡単に申せば借金をいたしたいということも申出たわけであります。前の
二つの
貿易問題がむしろ主眼であ
つたわけであります。そこで
輸入制限緩和につきまして私
どもの要求いたしましたことは、従来は
日本は殆んど
ドル地域と、
イギリスの
貿易管理上は殆んど
ドル地域と同じ扱いを受けておりまして、
ドルからの
輸入は極めて強く絞
つておりますが、それと同じ
程度に絞られておると、これは非常に困るから、
スターリング地域相互の間の、
スターリング地域内の各国の
貿易、これは或る
程度特恵的な地位が与えられているのは止むを得ないけれ
ども、それ以外の
貿易に関しては
日本に対して一番いい
待遇を与えてもらいたい、
最恵国待遇と申したらいいでしよう、それから
一定の枠を作ることは、これは止むを得ないかも知れないが、枠の
範囲においては
品目別の小さな
区別はやめてもらいたい。それから第三点といたしましては、
日本の
輸出品の中で
繊維品が一番大きな比重を占めるのであるから、
繊維品に対する特殊な
制限はやめてもらいたい。それから更に第四点としましては、香港、シンガポール、
アデンと申しますようないわゆる
中継港でありますが、これが他
地域に再
輸出するために
日本品を
輸入するという場合には一切の
制限を撤廃してもらいたい。
地場商品につきましてはもう昨年中にも一切
制限を取
つております。再
輸出のほうも自由にしてもらいたいという四点を申出た次第であります。
これに対しまし
てれ先方は
植民地に一々問合せを出しまして、
日本との
貿易をどういう恰好でやるつもりか、或いはどの
程度日本から
輸入できると思うかということを問合せた
様子であります。そのために当初大分時間をとりまして、
先方が具体的な回答をよこしたのが昨年の末であ
つたわけであります。その結果は大体において私
どもの
希望が容れられたとい
つてよいと思うのであります。ただ残りました
制限は、
日本からの
繊維品につきまして特に
制限をしておる
植民地がある。これは
東アフリカにケニア、
ウガンダ、タンガーニカと、あすこに三つありますが、それをまとめて
東アフリカと申しております。その
土地においては
日本からの
繊維品の
輸入は特別に
制限する。それから
ジヤマイカと
サイプラス。
ジヤマイカはカリブ海にございます、
サイプラスは地中海でございますが、この小さな
二つの
植民地、これは
日本品に限らず一般的に
繊維製品の
輸入制限を加えておるので、
日本品もそれと同様に
制限を加えるということになる。
併しそれ以外の
土地においては私
どもの
希望通り総額の
限度までは
品目別の
区別をきめないで、
輸入の申請を受付ける。そして
総額に一ぱいになるまではライセンスを与えることとするからという話でございます。それから
中継港につきましても大体において全部
制限を取払
つてくれました。
中継港についても
一定の枠と申しますか、
金額は一応表には載つけたんでございますが、その
金額は必ずしも
最高限ではなくて、若し
日本がこれ以上に
輸出ができるならばそれでも結構であるということを申してお
つた次第であります。
以上が主として
植民地について申上げたわけであります。
英本国につきましては、これは当初から私
どものほうでも無
制限に
日本品を入れろということは無理なことはよく
承知しておりましたので、具体的な
品目を作りまして、一種の
貿易計画を作ろうという申込をしたわけであります。その結果この資料にもございますが、
輸出が……これには出ておりませんで、いずれ後ほど取揃えまして提出いたします。
英本国との間におきましては
輸出が大体千四百五十万
ポンド、それから
輸入が大体千六百万
ポンドというような
計画になりまして、
輸出の中で現在まで
日本から入
つてお
つた品物に対して六百八十万
ポンドの枠を置き、それから今まで禁止されてお
つたものに対して新たに七百七十万
ポンドの枠を出すということになりまして、その七百七十万
ポンドのうち一番大きいのが綿布及び
人絹布でありまして、これを合せて三百三十万
ポンド、これに更に
メリヤス類を加えますと三百六十万
ポンドの枠ができたわけであります。その次の大きなものは
罐詰類でありまして、
鮭罐を百五十万
ポンド、それから
みかんの
罐詰を六十万
ポンドという枠がきまりました。この
みかんの六十万
ポンドは必ずしもこれに捉われないで、
需要があればもつと買うということを申しておりましたが、現在すでに八十万
ポンド以上の
契約が大体できておる
様子であります。それ以外に、玩具、陶磁器、それから
紙製品、
ボタン類、漆器、
象牙細工、それから箒、電球、合板、紙というようなものにつきまして少しずつではありますが
クウオータをくれました。これらのものは戦前も
イギリスには出てお
つたものであります。今度別に新らしく特に
先方が
日本の新らしいものを
買つたというわけではないのでありますが、要するに
向うは昔に返
つたという
状況であります。これにつきまして
先方にはいろいろ反対はあ
つたようでありますが、こういう
クウオータをよこすことに同意いたしました。更にその後の
状況を見てみますと、
先方は
約束した
通りに大体や
つてくれておるようであります。
各
植民地がどういう線をと
つておるかということは、これは非常にたくさん数もございまして、
世界の各方面に散らば
つておるものでありますから非常に情報がつかみにくいのでありますが、今回は
植民地側が
輸入に関する公表をした場合には直ちにその写しをロンドンの我がほうの大使館にくれることにな
つております。それで一々チエツクできるようにな
つておりますが、現在までのところは
約束した
通りに大体な
つておるようであります。
本国におきましても、このきま
つたクウオータは
協定の成立いたしました翌る日に発表をしてくれまして、
業界も全部周知したという
状況であります。
それからその次の
バランストレード、
均衡貿易という観念でございますが、これにつきましては
先方は非常に難色を示したわけであります。元来、私
どもが今度
向うに言い出しましたことは、すべて
向うから求める、要求するということが多か
つた、これは当然のことで、昨年は大いに絞られたわけでありますから、それを元に戻してくれということで当然要求が多くなるわけでありますが、なかんずく
日本からの
輸入制限を緩和するということになりますと、
先方といたしましても、
政府の立場として少くとも対
日輸出というものを昨年の
程度くらいには維持する、或いはできれば少し増加するということでなければ政治的にとても困る。
輸入制限緩和なんということをやれないような
状況になるし、又や
つたら非常に評判が悪くなるだろうということを初めから申して頑張
つてお
つたのであります。従いまして
向うは
貿易を拡大したい、併し拡大するということと
均衡にするということとは必ずしもこれは同時に行えるとは限らないのであ
つて、何もその
均衡にこだわる必要はないじやないかというようなことも申したのであります。併しこれに対して私
どもがとにかく
支払協定というものは、大体
均衡貿易を想定してできたものと
思つておるし、又
日本の現在の
状況から
言つて、又今年も赤字を出すようなことは到底できないのだ、ですから我々としては何と言われてもとにかく
自分が稼ぐ
ポンドだけしか使えないのだということを申しました。これは
先方も、それでは仕方がないということで大体二億九百五十万
ポンドという
目標額で収ま
つたわけでありますが、併し
最後まで
イギリスのほうがもつと売れるのだ、又
日本にも
イギリス品に対してはもつと大きい
需要があることをよく知
つておるということを頻りに申してお
つた次第であります。従いまして今回の
輸入制限緩和は、これは
向うから申せば
輸出を振興する、乃至は少くとも維持するためにまあや
つてくれたということでありまして、
日本品を特に買いたいから、或いは
日本品に対する
需要が非常に多いからという
意味では実は
余りなか
つたということを言わざるを得ないと思うのであります。
それからもう
一つの
金融の話でありますが、これにつきましても原則的に当初から
見解が対立いたしまして
最後まで解けなか
つた次第であります。と申しますのは、私
どもはとにかく
支払協定というのは当然或る種の
金融便宜の供与ということを含んだものと了解する。そうでなければ季節的な
貿易の変動に対処して行くことはできないのではないか。現に
曽つて日本は一億三千万
ポンドをたて込んで非常に困
つたのだけれ
ども、その場合も引続き
ポンド輸出はや
つていたのだ。これは実質的には
日本が
イギリスに対して
相当量の
クレジツトを供与したと同じことにな
つてお
つた。ところが現在では形勢が
変つて日本のほうがマイナスにな
つたけれ
ども、その際には
イギリス側で援助してくれるのが当然ではないかと申したのであります。
先方はもうそんなことは到底問題にはならない、
支払協定というのはこれは常に相手方が必要なだけの
ポンドの
バランスを持
つているということを想定してできているのであ
つて、勝手に使
つてしま
つたから金を貸してくれと言われても、これは到底不可能な、精神に全然反するのだということを非常に強く申しました。これは考えようによ
つて非常に得手勝手な議論なんでありますが、この
見解は
最後まで対立いたしてお
つたのであります。
従つてクレジツトの問題は非常に難航したのでありますが、
最後に、これはまあ
政治的考慮によるものでありますか、とにかく或る
程度の金は貸そうということで落ちついたのであります。ただこれはもう例外的で且つ最終であるというような非常な強い表現がしてありまして、これ以上は御免をこうむるという
態度であ
つたのであります。以上が
日本側が
先方側から、何と申しますか得たと申しますか、
先方に
コミツトさした諸点でありますが、これに対して我がほうがどういう点で
コミツトしたかということを次に申上げたいと思います。
今回参りまして、
先方が非常に興味を持ちましたのは
日本の
外貨予算の立て方、それからその運用でありまして、
日本の
輸入が全部
外貨予算によ
つて行われておる、而もそれが全部公表されておるという
状況でありますために、これに対してはこちらも全然隠しだてをするというようなことはしないで全部
向うに言
つたわけでありますが、
向うとしては
外貨予算の
制度に乗つか
つて何とか
コミツトを
日本から取りたい、
外貨予算の
制度にはまるような
約束をさせたいということであります。これは今回の
協定は
英本国及び
植民地と
日本との間が本当の
約束になるわけでありますが、その限りにおいては
日本側が五千万
ポンドほどの
出超にな
つておるような
契約にな
つております。従いまして
先方といたしましては、
国内に説明するためにも
日本から或る
程度はつきりした
イギリス品輸入に対する
約束を取付けざるを得ないということがあ
つたかと思われるのであります。非常にこの点は熱心に研究したものと見えまして、
最後に同意いたしましたのは、
外貨予算上
只今自動承認制というのがあるのは御
承知の
通りでありますが、それにつきまして一
年間に或る
程度の
金額を計上してくれ、そうして
品目も大体昨年の十月一日にきめた
品目をそのまま続けてもらいたい。そして具体的にはその一
年間にきめた
金額の半分を四—九の
外貨予算に計上してくれということであります、それが第一点。
それから次にこれも
外貨予算上
雑輸入という
制度がありまして、これは
余り意味がないことでありますが、
先方も非常に重要視いたしまして、
雑輸入についてもやはり或る
程度の
金額を
年間を通じて
約束をして、その半分を四—九の
外貨予算に計上してくれ、これが第二点であります。併しこれもやはり八月以降におきまして更に先のことは再検討しようということにな
つております。従いましてはつきり
約束いたしましたのは、要するに一
年間にきめた
金額の半分を四—九の
予算に計上しようということ、それから
品目を変えないということをこちらが
約束したわけであります。それから個々の
商品につきまして或る
程度コミツトを求めまして、
日本のほうも先ほど申しましたようにいろいろ要求したわけでありますので、それとの交換で以て同意した点が数点あるわけであります。
第一は
イギリス本国からの
輸入でありますが、これにつきましては第一に、
毛織物を
相当量買つてくれということであります。
毛織物は御
承知の
通りいわゆる
不要不急品ということで、昨年
毛製品の
輸出とリンクいたしまして、或る
程度の
金額を
買つたのでありますが、その後はもうリンクをやめまして、現状では殆んど全部買わないようにしようという方針であ
つたわけでありますが、先般この点を非常に強く
希望いたしまして、結局昨年実際入
つた量と同じぐらいの
金額を買うことにいたしておる次第であります。
その次にオートバイでありまして、これもやはり
不要不急品ということで
外貨予算上殆んど影を没してお
つたわけでありますが、昨年
ドイツとの
協定を作りました
関係で若干
ドイツから
輸入したわけであります。それを
イギリスは非常に気にいたしまして、
ドイツと比較して
差別待遇をされるのは困る、
ドイツと同じ
待遇にしてくれということで、それでは
ドイツから
買つたのと同じ額だけ買いましよう、将来
ドイツのほうから買わないことになりますと、あなたのほうからも買わないことになりますよということで妥結いたしました。
その次に、終戦後割合にたくさん入
つておりましたウイスキーと、それからお菓子が少し入
つてお
つたそうでありますが、その
二つにつきまして、これは
ドルと
共通の額でいいから、とにかくチヤンスを与えてくれということ、これは
国内の
需要と申しますか、或る
程度駐留軍の
需要もありますので、
金額はうんと絞るから
ドルと
共通額ということで妥結したのであります。以上が
英本国からの
輸入であります。
それから
植民地からの
輸入につきまして、
東アフリカの綿花、これはいわゆる
ウガンダ綿と称するもので、
米綿或いは
エジプト綿に近いものであります。これを
相当量買つてくれということ、これは今年までは
イギリス本国は一手
買付をや
つておりまして、
日本は買おうと
思つても
余り買えなか
つたものなのであります。品質的には
相当量買つても差支えないというもので、これを買うことにいたしました。
それから塩とコーヒーでありまして、これはいずれも大体
アデンから出て来るものであります。これも昨年の実績
程度買うことに
約束した次第であります。それから更にもう
一つ、ケニヤの
マガジ灰を買えということを頻りに申したのでありますが、これは断りまして、
先方もそれを了承した次第であります。
それからもう
一つ大きな問題になりましたのは
石油でありまして、
石油がなぜこう揉めたかと申しますと、昨年の十月に
予算を組みましたときに
ポンド地域からの
石油を思い切
つて実は削
つたのでありまして、大体従来
外貨予算が二割乃至二割二、三分くらいの
ポンド割当をしておりましたのを、昨年の十月の一日に一挙に一五%くらいに削
つてしまつたのであります。それはまあこういうことを黙
つて見ていると結局
イギリス石油が
日本から追出されてしまうというふうに考えたのでありましよう。非常に強くこの点を主張しまして、
日本の全体の
石油の
輸入量のうちで公正な割り前をこちらにもらいたいということで、結局揉み合いました結果、大体二割乃至二割五分
程度のところで落ちついた次第であります。これは毎年の着到ベースで考えるわけでありますから、あらかじめなかなか
金額はきめられないのでありますが、
あとから調整するというような
やり方によ
つてこの実行をして行くよりないと思う次第であります。
以上が大体
日本側から
イギリスに
約束した点であります。そのほかに問題になりましたのは、例えば
海運の問題でありまして、
海運につきましては御
承知の
通り、
平和条約におきまして
日本は
世界の
海運に対してどの国の
海運に対しても
差別待遇をしないということを
約束しておりました。
従つてその
通り履行してくれということを
向うが申したのであります。これにつきましては昨年の秋以来、東京で実は
交渉しておりまして、最近円満に妥結した次第であります。
それからもう
一つは
映画収入の送金のことでありますが、これにつきましても結局
先方はアメリカと平等の
待遇をしてくれということで、これは勿論尤もなことでありまして、現にそうや
つておるわけでありますから、新らしい義務を負うわけではありませんが、
約束をいたしたわけであります。
更に
旅行関係でありますが、これは
イギリスの
為替管理法上は、
海外旅行をする人は
一定の
限度までは自由に金を持ち出せることにな
つておるのであります。ところが従来
日本に対してはその特典が適用されておらなか
つたのでありますが、今回はそれを
日本に対しても適用するということでありまして、従いまして例えば
英本国或いは濠州あたりから人が
日本に来ようという場合には、特別の許可なくして
一定の
金額は持
つて来られる、これは
日本にと
つて有利な点であります。
それから
最後に
通商航海条約を早く結んでくれ、これは私
どものほうで初めから強く申しました。まあガツトの問題のことも相当遅れてまあ
向うをいやがらせたのでありますが、
通商航海条約のことも申出でまして
先方もこれをテイクノートするということにな
つております。まあ
先方もこの問題につきましては最近新らしい型の
通商航海条約をどこの国とも結んだ経験がないようでありまして、そういうような点で遅れておる節も見受けられるのでありますが、とにかく私
どもの
希望は
向うも十分に了承しておる次第であります。
以上が大体
協定の
内容であります。簡単ながら御説明させて頂きました。まあ今回の
協定交渉はこの従来の例から申しますと、
貿易の話をし出してもなかなか
向うは受付けない。大体
金融協定の
延長ということだけで、
あとは知らんという
態度に出やしないかということを実は危惧してお
つたのでありますが、案外
向うが
貿易の話に乗
つて来たという点は確かに認められます。
併しその理由といたしまして、これは私の個人的な考え方でありますが、感じられますことは、
イギリスの
国際収支の改善……
ポンドの強化のためにと
つて参つた措置が大体転換期に来ておる、そこに丁度私
どもが行き合せたという点もあるように思うのであります。即ち
イギリスは一昨年の後半期から昨年にかけまして極度の
輸入制限を行いました。更に第三国の持
つておる
ポンドの量というものを極力少くするという
政策をとりまして、それによ
つて国際収支を改善し、且つ
ポンドの価値を維持したのであります。事実相当成功したことは御
承知の
通りでありますが、併しながらこの
政策を続けて行けば、結局列国が
イギリスのものを買わなくなることは、これ又当然の帰結であります。殊にそういう現象が
日本とか、それから
南米諸国において顕著にな
つて来たということが、私
どもが行きます前から
向うでは問題にな
つてお
つたようであります。従いましてこの際
日本の
マーケツトを維持するためには、どうしても
日本に対しても
ポンドを稼がせる
機会を与えなければならんということで、今回の
貿易に関する
話合いが順調に進められて来たのではないかと思うのであります。従いまして先ほ
どもちよつと申上げましたように、
先方の狙いは飽くまで
自分のほうの
輸出を伸ばす、
輸出を維持するという点であるわけであります。私も
イギリスに行
つておりまして、
丁度年も変りまして、いろいろ一年の総決算或いは新年度に対する
希望乃至は抱負というようなことが各
新聞雑誌そのほか
政府の要人或いは
業界の主
脳者というような人から非常にそれが発表されてお
つたのでありますが、それらを通じて非常に強く印象付けられましたことは、
輸出に対する熱意が非常に強いものであるということであります。これは恐らく想像以上に
輸出の努力ということにもう
全力を挙げてやるという気がまえが見受けられる、その気魄には私
どもは打たれざるを得なか
つたのであります。元来
イギリスの
目標はできるだけ早い
機会に
ポンドをコンバーテイブルにして
貿易の
制限を撤廃したいということであります。そのためには
年間三億
ポンドぐらいの黒字を出す必要がある、
金ドル準備も五十億
ドルぐらいは殖やす必要があるという一応の
目標があるのでありまして、そこまではまだまだ距離は遠いのでありますが、とにかくその
目標に向
つて全力を挙げてやるのだということが、各界の
代表者は勿論でありますが、
言論界におきましても一致して叫ばれておるところであります。いろいろな政治問題よりも国民の主たる関心が
輸出に向けられておるということは私
ども非常に強く感じた次第であります。