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1954-02-25 第19回国会 参議院 通商産業委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十五日(木曜日)    午前十一時十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中川 以良君    理事            松平 勇雄君            加藤 正人君    委員            石原幹市郎君            大谷 贇雄君            西川彌平治君            高橋  衛君            岸  良一君            豊田 雅孝君            西田 隆男君            海野 三朗君            三輪 貞治君            武藤 常介君            白川 一雄君            黒川 武雄君   政府委員    通商産業政務次    官       古池 信三君   事務局側    常任委員会専門    員       林  誠一君    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   説明員    通商産業省通商    局長      牛場 信彦君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○通商及び産業一般に関する調査の件  (日英通商会談に関する件)   —————————————
  2. 中川以良

    委員長中川以良君) それでは只今より通商産業委員会を開きます。  本日は先般英国に行つておられた牛場通商局長が帰えられましたので、日英協定に関する問題につきましてお話を承わることにいたしたいと思います。
  3. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 先般成立いたしました日英協定につきましては、この協定の表面上の主題は勿論支払協定延長ということでございます。これは一年ごとに延長せられることになつておりまして、本年の末まで延長するように協議ができたわけであります。協定内容につきまして若干修正がございましたが、これは本質的なものでありませんで、イギリス為替管理やり方が変りまして、ドルとのレートを毎日バンク・オブ・イングランドがマーケツト状況を見ながら建てて行くということにしましたために、日本もそれに追随してポンドと円との相場を動かして行く。併しその動く範囲は勿論上下一%ずつという極めて僅かのものでありまして、これは実質的な意味はない変更でございます。  今回の協定で従来とやや異なりましたところは、裏付けになります貿易尻の問題につきまして相当詳細に話合いまして、或る種の計画ができたということでございます。只今スターリング地域貿易は、御承知通り一昨年までは出超であつたのでありますが、昨年は先方の非常な輸入制限の結果としまして、輸出が一昨年に比べて約半減いたしまして、一年間に約一億ポンド以上のこちらの持出しになつてしまつたという状況であります。従いまして私ども今回の会談に臨みますに当りまして、とにかく先方輸入制限を緩和させるということに主な目的を置きまして、支払協定自体の問題もさることながら、輸入制限緩和が達成されなければ協定意味がなくなるということを強く申しまして、先方に当つたわけでございます。  それから第二点といたしましては、今年は一応お互いに目標の数字をきめて均衡した形で以て貿易をやつて行こうじやないかというこの二点を貿易に関しまして特に強く申入れた次第であります。  それに附随いたしまして金融の問題といたしましては、現在日本ポンドが殆んど枯渇いたしましたので、或る程度の簡単に申せば借金をいたしたいということも申出たわけであります。前の二つ貿易問題がむしろ主眼であつたわけであります。そこで輸入制限緩和につきまして私どもの要求いたしましたことは、従来は日本は殆んどドル地域と、イギリス貿易管理上は殆んどドル地域と同じ扱いを受けておりまして、ドルからの輸入は極めて強く絞つておりますが、それと同じ程度に絞られておると、これは非常に困るから、スターリング地域相互の間の、スターリング地域内の各国の貿易、これは或る程度特恵的な地位が与えられているのは止むを得ないけれども、それ以外の貿易に関しては日本に対して一番いい待遇を与えてもらいたい、最恵国待遇と申したらいいでしよう、それから一定の枠を作ることは、これは止むを得ないかも知れないが、枠の範囲においては品目別の小さな区別はやめてもらいたい。それから第三点といたしましては、日本輸出品の中で繊維品が一番大きな比重を占めるのであるから、繊維品に対する特殊な制限はやめてもらいたい。それから更に第四点としましては、香港、シンガポール、アデンと申しますようないわゆる中継港でありますが、これが他地域に再輸出するために日本品輸入するという場合には一切の制限を撤廃してもらいたい。地場商品につきましてはもう昨年中にも一切制限を取つております。再輸出のほうも自由にしてもらいたいという四点を申出た次第であります。  これに対しましてれ先方植民地に一々問合せを出しまして、日本との貿易をどういう恰好でやるつもりか、或いはどの程度日本から輸入できると思うかということを問合せた様子であります。そのために当初大分時間をとりまして、先方が具体的な回答をよこしたのが昨年の末であつたわけであります。その結果は大体において私ども希望が容れられたといつてよいと思うのであります。ただ残りました制限は、日本からの繊維品につきまして特に制限をしておる植民地がある。これは東アフリカにケニア、ウガンダ、タンガーニカと、あすこに三つありますが、それをまとめて東アフリカと申しております。その土地においては日本からの繊維品輸入は特別に制限する。それからジヤマイカサイプラスジヤマイカはカリブ海にございます、サイプラスは地中海でございますが、この小さな二つ植民地、これは日本品に限らず一般的に繊維製品輸入制限を加えておるので、日本品もそれと同様に制限を加えるということになる。併しそれ以外の土地においては私ども希望通り総額限度までは品目別区別をきめないで、輸入の申請を受付ける。そして総額に一ぱいになるまではライセンスを与えることとするからという話でございます。それから中継港につきましても大体において全部制限を取払つてくれました。中継港についても一定の枠と申しますか、金額は一応表には載つけたんでございますが、その金額は必ずしも最高限ではなくて、若し日本がこれ以上に輸出ができるならばそれでも結構であるということを申しておつた次第であります。  以上が主として植民地について申上げたわけであります。  英本国につきましては、これは当初から私どものほうでも無制限日本品を入れろということは無理なことはよく承知しておりましたので、具体的な品目を作りまして、一種の貿易計画を作ろうという申込をしたわけであります。その結果この資料にもございますが、輸出が……これには出ておりませんで、いずれ後ほど取揃えまして提出いたします。英本国との間におきましては輸出が大体千四百五十万ポンド、それから輸入が大体千六百万ポンドというような計画になりまして、輸出の中で現在まで日本から入つてつた品物に対して六百八十万ポンドの枠を置き、それから今まで禁止されておつたものに対して新たに七百七十万ポンドの枠を出すということになりまして、その七百七十万ポンドのうち一番大きいのが綿布及び人絹布でありまして、これを合せて三百三十万ポンド、これに更にメリヤス類を加えますと三百六十万ポンドの枠ができたわけであります。その次の大きなものは罐詰類でありまして、鮭罐を百五十万ポンド、それからみかん罐詰を六十万ポンドという枠がきまりました。このみかんの六十万ポンドは必ずしもこれに捉われないで、需要があればもつと買うということを申しておりましたが、現在すでに八十万ポンド以上の契約が大体できておる様子であります。それ以外に、玩具、陶磁器、それから紙製品ボタン類、漆器、象牙細工、それから箒、電球、合板、紙というようなものにつきまして少しずつではありますがクウオータをくれました。これらのものは戦前もイギリスには出ておつたものであります。今度別に新らしく特に先方日本の新らしいものを買つたというわけではないのでありますが、要するに向うは昔に返つたという状況であります。これにつきまして先方にはいろいろ反対はあつたようでありますが、こういうクウオータをよこすことに同意いたしました。更にその後の状況を見てみますと、先方約束した通りに大体やつてくれておるようであります。  各植民地がどういう線をとつておるかということは、これは非常にたくさん数もございまして、世界の各方面に散らばつておるものでありますから非常に情報がつかみにくいのでありますが、今回は植民地側輸入に関する公表をした場合には直ちにその写しをロンドンの我がほうの大使館にくれることになつております。それで一々チエツクできるようになつておりますが、現在までのところは約束した通りに大体なつておるようであります。本国におきましても、このきまつたクウオータ協定の成立いたしました翌る日に発表をしてくれまして、業界も全部周知したという状況であります。  それからその次のバランストレード均衡貿易という観念でございますが、これにつきましては先方は非常に難色を示したわけであります。元来、私どもが今度向うに言い出しましたことは、すべて向うから求める、要求するということが多かつた、これは当然のことで、昨年は大いに絞られたわけでありますから、それを元に戻してくれということで当然要求が多くなるわけでありますが、なかんずく日本からの輸入制限を緩和するということになりますと、先方といたしましても、政府の立場として少くとも対日輸出というものを昨年の程度くらいには維持する、或いはできれば少し増加するということでなければ政治的にとても困る。輸入制限緩和なんということをやれないような状況になるし、又やつたら非常に評判が悪くなるだろうということを初めから申して頑張つてつたのであります。従いまして向う貿易を拡大したい、併し拡大するということと均衡にするということとは必ずしもこれは同時に行えるとは限らないのであつて、何もその均衡にこだわる必要はないじやないかというようなことも申したのであります。併しこれに対して私どもがとにかく支払協定というものは、大体均衡貿易を想定してできたものと思つておるし、又日本の現在の状況から言つて、又今年も赤字を出すようなことは到底できないのだ、ですから我々としては何と言われてもとにかく自分が稼ぐポンドだけしか使えないのだということを申しました。これは先方も、それでは仕方がないということで大体二億九百五十万ポンドという目標額で収まつたわけでありますが、併し最後までイギリスのほうがもつと売れるのだ、又日本にもイギリス品に対してはもつと大きい需要があることをよく知つておるということを頻りに申しておつた次第であります。従いまして今回の輸入制限緩和は、これは向うから申せば輸出を振興する、乃至は少くとも維持するためにまあやつてくれたということでありまして、日本品を特に買いたいから、或いは日本品に対する需要が非常に多いからという意味では実は余りなかつたということを言わざるを得ないと思うのであります。  それからもう一つ金融の話でありますが、これにつきましても原則的に当初から見解が対立いたしまして最後まで解けなかつた次第であります。と申しますのは、私どもはとにかく支払協定というのは当然或る種の金融便宜の供与ということを含んだものと了解する。そうでなければ季節的な貿易の変動に対処して行くことはできないのではないか。現に曽つて日本は一億三千万ポンドをたて込んで非常に困つたのだけれども、その場合も引続きポンド輸出はやつていたのだ。これは実質的には日本イギリスに対して相当量クレジツトを供与したと同じことになつてつた。ところが現在では形勢が変つて日本のほうがマイナスになつたけれども、その際にはイギリス側で援助してくれるのが当然ではないかと申したのであります。先方はもうそんなことは到底問題にはならない、支払協定というのはこれは常に相手方が必要なだけのポンドバランスを持つているということを想定してできているのであつて、勝手に使つてしまつたから金を貸してくれと言われても、これは到底不可能な、精神に全然反するのだということを非常に強く申しました。これは考えようによつて非常に得手勝手な議論なんでありますが、この見解最後まで対立いたしておつたのであります。従つてクレジツトの問題は非常に難航したのでありますが、最後に、これはまあ政治的考慮によるものでありますか、とにかく或る程度の金は貸そうということで落ちついたのであります。ただこれはもう例外的で且つ最終であるというような非常な強い表現がしてありまして、これ以上は御免をこうむるという態度であつたのであります。以上が日本側先方側から、何と申しますか得たと申しますか、先方コミツトさした諸点でありますが、これに対して我がほうがどういう点でコミツトしたかということを次に申上げたいと思います。  今回参りまして、先方が非常に興味を持ちましたのは日本外貨予算の立て方、それからその運用でありまして、日本輸入が全部外貨予算によつて行われておる、而もそれが全部公表されておるという状況でありますために、これに対してはこちらも全然隠しだてをするというようなことはしないで全部向うに言つたわけでありますが、向うとしては外貨予算制度に乗つかつて何とかコミツト日本から取りたい、外貨予算制度にはまるような約束をさせたいということであります。これは今回の協定英本国及び植民地日本との間が本当の約束になるわけでありますが、その限りにおいては日本側が五千万ポンドほどの出超になつておるような契約になつております。従いまして先方といたしましては、国内に説明するためにも日本から或る程度はつきりしたイギリス品輸入に対する約束を取付けざるを得ないということがあつたかと思われるのであります。非常にこの点は熱心に研究したものと見えまして、最後に同意いたしましたのは、外貨予算只今自動承認制というのがあるのは御承知通りでありますが、それにつきまして一年間に或る程度金額を計上してくれ、そうして品目も大体昨年の十月一日にきめた品目をそのまま続けてもらいたい。そして具体的にはその一年間にきめた金額の半分を四—九の外貨予算に計上してくれということであります、それが第一点。  それから次にこれも外貨予算雑輸入という制度がありまして、これは余り意味がないことでありますが、先方も非常に重要視いたしまして、雑輸入についてもやはり或る程度金額年間を通じて約束をして、その半分を四—九の外貨予算に計上してくれ、これが第二点であります。併しこれもやはり八月以降におきまして更に先のことは再検討しようということになつております。従いましてはつきり約束いたしましたのは、要するに一年間にきめた金額の半分を四—九の予算に計上しようということ、それから品目を変えないということをこちらが約束したわけであります。それから個々の商品につきまして或る程度コミツトを求めまして、日本のほうも先ほど申しましたようにいろいろ要求したわけでありますので、それとの交換で以て同意した点が数点あるわけであります。  第一はイギリス本国からの輸入でありますが、これにつきましては第一に、毛織物相当量買つてくれということであります。毛織物は御承知通りいわゆる不要不急品ということで、昨年毛製品輸出とリンクいたしまして、或る程度金額買つたのでありますが、その後はもうリンクをやめまして、現状では殆んど全部買わないようにしようという方針であつたわけでありますが、先般この点を非常に強く希望いたしまして、結局昨年実際入つた量と同じぐらいの金額を買うことにいたしておる次第であります。  その次にオートバイでありまして、これもやはり不要不急品ということで外貨予算上殆んど影を没しておつたわけでありますが、昨年ドイツとの協定を作りました関係で若干ドイツから輸入したわけであります。それをイギリスは非常に気にいたしまして、ドイツと比較して差別待遇をされるのは困る、ドイツと同じ待遇にしてくれということで、それではドイツから買つたのと同じ額だけ買いましよう、将来ドイツのほうから買わないことになりますと、あなたのほうからも買わないことになりますよということで妥結いたしました。  その次に、終戦後割合にたくさん入つておりましたウイスキーと、それからお菓子が少し入つてつたそうでありますが、その二つにつきまして、これはドル共通の額でいいから、とにかくチヤンスを与えてくれということ、これは国内需要と申しますか、或る程度駐留軍需要もありますので、金額はうんと絞るからドル共通額ということで妥結したのであります。以上が英本国からの輸入であります。  それから植民地からの輸入につきまして、東アフリカの綿花、これはいわゆるウガンダ綿と称するもので、米綿或いはエジプト綿に近いものであります。これを相当量買つてくれということ、これは今年まではイギリス本国は一手買付をやつておりまして、日本は買おうと思つて余り買えなかつたものなのであります。品質的には相当量買つても差支えないというもので、これを買うことにいたしました。  それから塩とコーヒーでありまして、これはいずれも大体アデンから出て来るものであります。これも昨年の実績程度買うことに約束した次第であります。それから更にもう一つ、ケニヤのマガジ灰を買えということを頻りに申したのでありますが、これは断りまして、先方もそれを了承した次第であります。  それからもう一つ大きな問題になりましたのは石油でありまして、石油がなぜこう揉めたかと申しますと、昨年の十月に予算を組みましたときにポンド地域からの石油を思い切つて実は削つたのでありまして、大体従来外貨予算が二割乃至二割二、三分くらいのポンド割当をしておりましたのを、昨年の十月の一日に一挙に一五%くらいに削つてしまつたのであります。それはまあこういうことを黙つて見ていると結局イギリス石油日本から追出されてしまうというふうに考えたのでありましよう。非常に強くこの点を主張しまして、日本の全体の石油輸入量のうちで公正な割り前をこちらにもらいたいということで、結局揉み合いました結果、大体二割乃至二割五分程度のところで落ちついた次第であります。これは毎年の着到ベースで考えるわけでありますから、あらかじめなかなか金額はきめられないのでありますが、あとから調整するというようなやり方によつてこの実行をして行くよりないと思う次第であります。  以上が大体日本側からイギリス約束した点であります。そのほかに問題になりましたのは、例えば海運の問題でありまして、海運につきましては御承知通り平和条約におきまして日本世界海運に対してどの国の海運に対しても差別待遇をしないということを約束しておりました。従つてその通り履行してくれということを向うが申したのであります。これにつきましては昨年の秋以来、東京で実は交渉しておりまして、最近円満に妥結した次第であります。  それからもう一つ映画収入の送金のことでありますが、これにつきましても結局先方はアメリカと平等の待遇をしてくれということで、これは勿論尤もなことでありまして、現にそうやつておるわけでありますから、新らしい義務を負うわけではありませんが、約束をいたしたわけであります。  更に旅行関係でありますが、これはイギリス為替管理法上は、海外旅行をする人は一定限度までは自由に金を持ち出せることになつておるのであります。ところが従来日本に対してはその特典が適用されておらなかつたのでありますが、今回はそれを日本に対しても適用するということでありまして、従いまして例えば英本国或いは濠州あたりから人が日本に来ようという場合には、特別の許可なくして一定金額は持つて来られる、これは日本にとつて有利な点であります。  それから最後通商航海条約を早く結んでくれ、これは私どものほうで初めから強く申しました。まあガツトの問題のことも相当遅れてまあ向うをいやがらせたのでありますが、通商航海条約のことも申出でまして先方もこれをテイクノートするということになつております。まあ先方もこの問題につきましては最近新らしい型の通商航海条約をどこの国とも結んだ経験がないようでありまして、そういうような点で遅れておる節も見受けられるのでありますが、とにかく私ども希望向うも十分に了承しておる次第であります。  以上が大体協定内容であります。簡単ながら御説明させて頂きました。まあ今回の協定交渉はこの従来の例から申しますと、貿易の話をし出してもなかなか向うは受付けない。大体金融協定延長ということだけで、あとは知らんという態度に出やしないかということを実は危惧しておつたのでありますが、案外向う貿易の話に乗つて来たという点は確かに認められます。併しその理由といたしまして、これは私の個人的な考え方でありますが、感じられますことは、イギリス国際収支の改善……ポンドの強化のためにとつて参つた措置が大体転換期に来ておる、そこに丁度私どもが行き合せたという点もあるように思うのであります。即ちイギリスは一昨年の後半期から昨年にかけまして極度の輸入制限を行いました。更に第三国の持つておるポンドの量というものを極力少くするという政策をとりまして、それによつて国際収支を改善し、且つポンドの価値を維持したのであります。事実相当成功したことは御承知通りでありますが、併しながらこの政策を続けて行けば、結局列国がイギリスのものを買わなくなることは、これ又当然の帰結であります。殊にそういう現象が日本とか、それから南米諸国において顕著になつて来たということが、私どもが行きます前から向うでは問題になつてつたようであります。従いましてこの際日本マーケツトを維持するためには、どうしても日本に対してもポンドを稼がせる機会を与えなければならんということで、今回の貿易に関する話合いが順調に進められて来たのではないかと思うのであります。従いまして先ほどもちよつと申上げましたように、先方の狙いは飽くまで自分のほうの輸出を伸ばす、輸出を維持するという点であるわけであります。私もイギリスに行つておりまして、丁度年も変りまして、いろいろ一年の総決算或いは新年度に対する希望乃至は抱負というようなことが各新聞雑誌そのほか政府の要人或いは業界の主脳者というような人から非常にそれが発表されておつたのでありますが、それらを通じて非常に強く印象付けられましたことは、輸出に対する熱意が非常に強いものであるということであります。これは恐らく想像以上に輸出の努力ということにもう全力を挙げてやるという気がまえが見受けられる、その気魄には私どもは打たれざるを得なかつたのであります。元来イギリス目標はできるだけ早い機会ポンドをコンバーテイブルにして貿易制限を撤廃したいということであります。そのためには年間三億ポンドぐらいの黒字を出す必要がある、金ドル準備も五十億ドルぐらいは殖やす必要があるという一応の目標があるのでありまして、そこまではまだまだ距離は遠いのでありますが、とにかくその目標に向つて全力を挙げてやるのだということが、各界の代表者は勿論でありますが、言論界におきましても一致して叫ばれておるところであります。いろいろな政治問題よりも国民の主たる関心が輸出に向けられておるということは私ども非常に強く感じた次第であります。
  4. 中川以良

    委員長中川以良君) 御質疑を願います。
  5. 加藤正人

    加藤正人君 今度の交渉は非常に長期に亙つて牛場局長その他非常に御苦労でありまして、その点は非常に感謝しております。この交渉の結果もイギリスの二月十日に行われたイギリス会議の情景などを新聞で見ますと、例の左派の闘士であるハロルド・ウイルソンなどが、盛んに修正討論をやつて声涙下つて憤慨しておつたというような状態を見ると、非常にイギリス側がこの交渉の結果損害を招くことになつて、同時に日本側はそれだけ有利な交渉の結果を収めることになるようでありますが、併しながらこれは一年経過して見て、果してその結果においてそうなるかどうかということには、全く種々なる疑義が含まれておるのであります。第一、コロニーのほうはともかくとして、ドメステイツクのほうなどは自主的の態度をとるでありましようし、今後はこれは日本との交渉に待つて行かなければならない。総額二億九百五十万ポンドという一応の枠がきまつておりますけれども、果して日本輸出貿易が我々の願う程度のように推進し得るかどうかという点には非常にまだ問題が残つておると思うのであります。併しながら一応の交渉の結果といたしまして、その後英本国などからは生地綿布というようなものの引合が続いて参つておりますが、これは小口の交渉でありますが、引続き我々の期待するような結果が現われるかどうかわからん、この点について政府はどういうふうに今後推移、経過するだろうというお見込でありましようか。そういう一点を伺いたいのと、それから今度の交渉では協定第二条の為替レートの条項が、従来は円とポンドの取引は、円とドルと、ドルポンド協定レートを使うことになつているが、今度はドルポンドの実勢レート、即ち自由相場を基準とするように改められるということは実質的にはこのレートの切下げを意味するものであるというように言われておるのでありますが、これは具体的にそういうふうな結果になるものであるかどうか、この点についても詳細に御説明を願いたい。  なおこの通商協定と同時に日本の現在の状態から見てポンドの不足が甚だしい、これを救うために必要な金融措置というものを同時に解決されると思つたのでありますが、これは一応の原則的の了解にとどまつて具体的の問題の決定は別の交渉に譲つたということでありますが、これはいつどういう会合でそれが推進されるように了解が得られておるのか、この点についても伺いたい。このポンドの不足というのはますます甚だしくなつておる今日でありますから、この点も非常に急を要すると思うのでありますが、以上の点について御説明を願いたい。
  6. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 第一点の今後の輸出の見通しとしましてはいずれ又私どものほうで試算いたしました数字も資料として提出いたしたいと思つております。ただどういうふうにこの輸出を伸ばして行くかという問題は、主として輸出産業の努力に待つほか実はないわけでありまして、私どもといたしましてはできるだけ間口を拡げて通路を開けるという職能しか実はないわけなのであります。ただ先ほどちよつと御説明が足りなかつたと思いますが、今回の規約におきましてはつきり約束いたしましたが、英国の植民地日本におきましてはこれは私ども日本のほうが輸出超過になるような、当然貿易の趨勢はそうなるわけであります。事実趨勢もそうなつておるわけでありまして、手を握つて今後のポンド地域内の独立国とのいろいろな協定、或いは輸出入の調整というふうなところに乗出すわけでありますから、収支を合せるという点においてはこちらの行動の自由は確保されておるというふうに考えておる次第であります。  その次にこの協定第二条の変つたことでありますが、これは昨年のたしか八月頃からイギリス為替管理の方法が変りまして、従来はポンドドルとのレートは中値二ドル八十セントということに固定しておつたのでありますが、その固定を外しまして大体英蘭銀行が毎日の市中の動きを見て建値をきめて行くということになつたわけであります。その建値の範囲はその国際通貨基金の規定によつてドル八十の上下一%ということになつておるのでありますが、その範囲で建値をきめて行くということになつたのでありますので、日本もその建値を適用してくれということになつた結果がこの第二条となつておるわけであります。これは全然円のレートとは関係ないわけであります。円は御承知通り現在ドルのほうにペツグしておるわけでありまして、ポンドドルとの関係ポンドが上下するに連れて円が動きますが、併しそれは三百六十円には何ら影響のない問題であります。  最後金融措置につきましては具体的に金額もきまつて昨年と大体同じ条件でスワツプを認めるということになつておりまして、これは金額の点は向う側との話合いで発表しないことになつておるのでありますが、現在どの程度まで実施したかということもまだ私存じませんですが、使おうと思えば使える金が現在あるわけであります。
  7. 加藤正人

    加藤正人君 この二十九年一月二十五日に改訂になつたポンド裁定相場の一ポンド千八円ですが、ポンドの対ドル実勢相場の採用によつて千十一円六十銭になり、更にその後の相場の変動により千十五円二十銭というふうに変つて参りました。その関係で従来千八円であつた円の価値がもつと安くなるような結果に、めぐりめぐつてなるというようなことにはなりませんですか。
  8. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これはドルに対してポンドの価値が上つた結果これはそういうことになつておるわけでありまして、従いましてドルが実は下つたので、逆に言いますと、ドルが下つたと言うと語弊がありますが、ドルポンドに比べてやや安くなつた従つてドルにペツグしている日本の通貨は安くなる、こういうことであります。
  9. 加藤正人

    加藤正人君 そういうことですね、お付き合いでそういうことになるわけですね。
  10. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかに御質疑ありませんか。
  11. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 先ほど或いは話が出たかも知れませんが、イランとの石油の問題なんかというものはこの日英会談では全然話が出なかつたのですか。
  12. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これはこの会談とは関係ないのでありますが、私どもがロンドンにおります間にイラン石油に関してイギリスが了解を取付けられるように努力せよという訓令はありました。これは大使館のほうで話をされたと思いますが、その結果やはり先方はもう暫らくたてばあの石油の問題も解決すると思うから、ともかく少し待つてくれということで、結局あの問題の解決するまでというはつきりしたことは申しておりませんが、とにかく当分の間は現実の買付けはやらないようにしろという話でこれはきまつておるわけであります。
  13. 中川以良

    委員長中川以良君) 今のに関連して伺いたいのですが、当分の間買付けをしないようにしろということですが、将来は直接イランの油を買付けたり、或いはバーターで以てこつちへとれるというようなことができる可能性があるのか、又そういうことに対して日本政府は努力をしておるのか、イランの油はいかんという考え方で以て交渉しておるかどうか、その点はどうですか。
  14. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 現在イランとイギリス、アメリカとの間で話が行われておるのは御承知通りでありますが、あの話は将来イランの石油の販売権を誰が持つかということが眼目のようでありまして、現在まで入つた情報によりますと、大体九割から九割五分は英米のほうで持つ、あとのフリー・オイルを五分か一割か、大体その程度のところではないかということでありますが、従つてその五分なり一割なりのイランが自由に処分できる油ができました場合は、これは勿論日本は如何なる方法によつても買取ることができるのであります。市場開拓というような意味で、若しそういうような運びになれば日本としても輸出と見返りにあそこの石油を買うことは有利と考えております。ただイギリスとの関係におきまして、日英の貿易全体に余り有益でない措置は当分の間とらないほうがいいというふうに考えておる次第であります。
  15. 中川以良

    委員長中川以良君) 只今、そのものに対しましてイラン側のいろいろな希望もあり西山大使がイランに行つていろいろ交渉をしておるようでありますが、その経過はどういうふうになつておりますか。
  16. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これは外務省のほうからお話申上げたほうがいいと存じますが、具体的な買付交渉ではないように聞いております。
  17. 海野三朗

    ○海野三朗君 只今のことに関連してでありますが、出光が石油をイランから直接買つて来た、そうしたところが何か新聞の報ずるところによるとそれが正しいとか、或いはイギリスから没収されるとか何とか新聞に見えましたのですが、あれはどういうことですか。イランから直接出光が買つて来たでしよう、あれはどういうようなことになつておるのですか。
  18. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) イランの石油は昨年でしたか私ちよつと忘れましたが、要するにイランが国有化を強行いたしましてからイギリスとイランとの間は紛争になつておりまして、イギリスはその石油の所有権は飽くまでもアングロイラニアンというイギリスの会社にあるのだという建前でおることは御承知通りであります。而も出光が買いましたのは、昨年石油輸入の資金を割当てました際に出光に若干のドルを割当てたわけでございますが、そのドルの使い方はこれは結局石油を買うということになつておるわけであります。イランは日本為替管理法から申しますとドル地域になつておるものでありますから、結局そのドルを使つて出光がイランから石油買つたということであります。これはまあ政府の責任外のことでありまして、どうにもしようがないということで、イギリスはその点に関しては了解いたしたのであります。併しながら将来は一つこれはとめてくれということで、その後のドルの割当におきましてはイランからは買わないという条件を付けてドルの割当を行うということによつて現在のところ輸入をとめておるわけであります。出光の買いました石油も一月の末までに全部日本に到着いたしました。現在いろいろ話が行われておるということを聞きますが、これはまあすべて将来買えるようになつたときの話であると了解いたしております。
  19. 海野三朗

    ○海野三朗君 日本で、つまりドルの割当を日本でできないというのはどういうわけなんですか、イギリスに対して遠慮しているわけですか。
  20. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) イランから石油を買わないということは、確かに対英関係を考慮した上からであります。
  21. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでわかつた只今のこの表でありますが、昭和二十七年度日英貿易というこの表でございますね。この表で(1)として対英輸出実績となつて日本がない、(イ)国別実績となつてずつとオーストラリア、ビルマ、セイロンと書いてありますが、これはことごとく日英貿易に入るものですか。
  22. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これらの国との、日英というのはちよつとその或いは日本スターリング地域の間としたほうがよかつたかと思いますが、これらの国との貿易は現在全部ポンドを使つてつておりますので、一まとめにしてここに計上してある次第でございます。
  23. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますとこれは日英でなくして、つまりポンド地域との貿易ということなんでしよう。
  24. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) そうなんでございます。これは非常に相済みませんでした、日本ポンド地域との間ということに御訂正願いたいと思います。
  25. 海野三朗

    ○海野三朗君 さようでございますか。ポンド地域の計がここに二〇九、六三三というのでありまして、それから今度対英輸入実績が一七一、四九五と、こうなつております。そうしますと輸出のほうが多くて輸入のほうがこの二十九年度の二月十八日までは少いということなんですか。
  26. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これは一昨年の数字でありまして、一昨年はこのように輸出超過であつたのでありますが、一枚めくつて頂いた昭和二十八年度になりますと今度は輸入超過になつていることがおわかりになると思います。
  27. 海野三朗

    ○海野三朗君 これは一昨年ですか。
  28. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) はあ。
  29. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 さつきの又続きみたいになるのですが、イランなり英国なり或いはアングロイラニアン会社が米国の関係も幾らかあるかも知れませんが、この問題の解決までという、その見通しはどのくらいのものでしようか。いろいろの折衝によることでしようけれども……。
  30. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これはまあ私どもいる間にも新聞にいろいろ報道が出まして、イギリスの国会なんかでも質疑応答があつたのでありますが、なかなかそのはつきりいつまでというようなことは申せないというのが大体の空気のように存じます。併しイギリスとイランの間の国交も回復いたしまして、大使の交換も行われましたし、現に又アメリカを含むイギリス石油の代表が向うに行つて話をしているというような状況で、まあ人によつては三月一ぱいぐらいには片付くのじやないかということを申しておる者もある次第であります。
  31. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 これはちよつと幼稚な質問になるかも知れませんが、将来イランとの石油の取引が正式に始まるというふうになれば、イランが持つている一割或いは五分の自由なものの取引、或いは又正式な新らしい機構での交易と両方になるでしようが、これとの取引が始まれば今までの石油のアメリカその他から入れているよりも非常に有利なものになるのですか、どういうことになるのですか。
  32. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 昨年出光の買いましたのは非常に有利だつたわけでありまして、これは恐らくイランのほうで非常に石油が余つてつたということと、将来のこのイギリス側との折衝の上において或る程度の実績を作つおきたいという、いろいろの考慮があつたことと存じます。今後若しその英米、イランの間で話がつきまして、一定石油がイランが売つてもいいということになつた場合を想像して見ますと、これは恐らくやはり国際値段でなければ売らないのじやないか、又国際値段以下で売るというような理由はないわけである。若しそういう値段以下でなければ売れないという場合はむしろイランは販売を英米に任せてそのローヤリテイをもらうほうが有利だというふうに考えるのじやないかと想像される次第であります。
  33. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 あちらへ行つておられる間に会談に直接は出なかつたかも知れませんが、英国市場における日本商品の評判、それから今後日英商品の競争力をどういうふうに判断をされておられたか、そういう点について。
  34. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 日本商品の評判ということにつきましては、私ども非常に関心を持つてつたのでありますが、いわゆる商標、意匠の盗用という問題、これは陶磁器などについて一昨年から昨年にかけて大分起つたのでありますが、その後日本政府のとりました措置に対しては、イギリス政府は少くとも非常に満足の意を表しておりまして、極めて公正にやつてくれたということで何ら問題はないと言つております。ただ業界一般にはまだ日本品と言えばとにかく悪いものである、且つ人の意匠を盗むものだという気風は非常に強いものでありまして、従いましてこの協定ができましたあとイギリス議会における討論等におきましても、反対党はそういう一種の感情論をして政府を攻撃し、且つ業界の利益を述べるというようなところがあるのでありますが、実際問題としてそういう商標侵害というような問題は現在はないのであります。ただ私どものおりましたときにちよつと問題になりましたのは、日本輸出品につきましてクレームがついてそのクレームがセトルされたにもかかわらず、実際に送金に日本の業者がなかなか送らないということがありまして、これも帰りましてからいろいろ話をして大体これは解決いたしたいと思つております。競争力という問題、これは非常に大事な問題であります。私どももあらゆる機会に関心を持つて調べて参つたのでありますが、結局これはイギリス側の論説にも相当出ておりますが、日本品は決して昔みたいに安くはない、安売をするだけの力がないので、この際日本品に対して門戸を開けたところでそう恐れる必要はないのだ、こういう議論がちらほら見かけられまして、私どももこれは遺憾ながら或る程度事実であります。まあこれが今回イギリス側が割合大きく輸入制限を緩和した裏の考えであるとも見えない点はないのであります。まあ商品別に見まして、やはり繊維類は普通なれば十分に出るという感じがいたします。それから又罐詰ども日本余りむちやな値段の吊上げなどやらなければ日本の出せる範囲向うは買うだろうという感じがいたしております。それからそのほかの雑貨類につきましては、これは物によつても違いますが、大体におきまして世界的に日本商品は競争力があるのでありまして、これも輸出余り支障がないのじやないかと思つております。ただ問題は鉄鋼類でありまして、これは一昨年はヨーロツパが非常な鉄鋼飢饉であつた日本から相当な鉄が出ておつたことは御承知通りでありますが、最近は事情ががらりと変りまして、各国ともむしろ過剰生産という状況になつて来ております。勿論造船の厚板などは、造船が盛んになればこれは足りないのでありまして、まだ日本でも造れる余地があると思いますが、造船自体がだんだん不景気になつて来ておるような状況でありますので、鉄鋼の輸出ということはなかなかむずかしいのじやないか。ヨーロツパに対する輸出ということはむずかしいのじやないか。これはシユーマン・プラン自体が現在輸出カルテルのような傾向をとつて来ております。最近非常にイギリス側にも働きかけまして、イギリスも一緒にやつてくれということを申しておる。イギリスも或る程度協調せざるを得ないのじやないかと観測されますが、そういうことになりますと、値段の点でなかなか競争がむずかしくなるというふうに考えた次第であります。勿論東南アジア等後進地域は又別でありますが、ヨーロツパに対してはそういうような感じを持つております。
  35. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 もう一つ伺いたいのですが、これは会談外のことだと思いますけれども、英国のやり方から見て、日本の中共貿易に今後参考になるようなことを何か考えておるということはありませんでしたか。
  36. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) イギリス日本と、中共貿易に関しまして根本的に違う点は申すまでもないことでありますが、日本は国民政府のほうを中国政府として認めておる、イギリスは北京政府のほうを中国政府として認めておるという点で、どうしてもこちらのほうは或る程度ハンデイキヤツプがあるということは、これは止むを得ないことだと思うのであります。併しながらイギリスでも国家として別に特別に何か中共貿易促進策をとつているという点は認められないのでありますが、業界が非常によくまとまりまして、いわゆる貿易ミツシヨンのようなものを適時に出して、話をしておるということは認められます。殊に最近は中共貿易よりむしろ対ソ貿易に非常に力を入れておりまして、私どもイギリスを立つ頃でありましたが、三十数人のイギリスの実業家がモスコーへ参りまして、たしか三年か四年に亙つて総額にして二、三億ポンド輸出をするというような、貿易をするというような、いわゆる契約と申しますか、協定と申しますか、そういうようなものを作つたということも報道されておりました。現在それが、まあ金を持つて来てロンドンのマーケツトで売つてポンドを稼いで、イギリスから物を買うというような、非常にイギリスにとつてはいいお得意になつておるものですから、対ソ貿易は非常に熱心のように見受けられました。
  37. 中川以良

    委員長中川以良君) 私からちよつと、さつきのイランの問題をもう一遍伺いたいのですが、どうもこの前の委員会でも私は政府側にお尋ねしたのですが、日本の燃料政策が一貫性を欠いておる、それから石油の問題にしても英米一緒になつて来るので、この際非常にいいチヤンスだから、イランの油を少しでも入れることが非常ないい利益になるのではないか、又日本の燃料政策から言つても、今後最もそういうような政策をとるべきではないかというふうに考えるのでありますが、今のお話でございますと、どうも英国に気がねして、イランの油は依然として引けないという状態でありますが、イランのほうもいろいろ米を買つてくれ、塩を買つてくれと言つておりますが、石油を買つてもらえば一番いいわけでしようし、殊にバーター貿易を主張しているので、今日輸出が伸びない際、イランの油がバーターで引ければいいと思いますが、そういう意味から先般通産大臣も、やはり日本はできるだけ少しでも入れたいということを考えて、外務省方面にも話しておるということもあつたのです。外務省からもそういう訓令が英国の大使館に行つただろうと思いますが、今のお話だと、どうもそういうようなことは少しも進展していないのみならず、全く退歩してしまつて、非常な気がねをしておると考えられるのですが、それにもかかわらず、一方イギリスから、今日日本が耐乏生活をし、緊縮予算を以て国民と共に苦難を乗切ろうという際に、あの高級なウイスキーとか、或いは高級な洋服地等を輸入せざるを得ないような状態になつて来ておるので、どうもこの辺我我としては割切れない気持があるのですが、そういう点につきましては、局長としてはどういうふうに御対処になつたのでありますか、又どういうふうにお考えか承わりたいと思います。
  38. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) ペルシヤの石油を直接買うということは確かに一つの魅力ではありますが、今も申しましたように、結局輸出という点から考えますと、対英貿易というのは、スターリング地域貿易というものは、日本輸出の三割から四割くらいを占めるものでありまして、差当り日本としてはこちらのほうに力を入れて、この障害になるようなことはできるだけやらないようにしようということが方針とならざるを得ない状況であります。従いまして、そういう大局的に見た場合には、イランの石油は暫らくやはり手をつけないほうがいいのではないか、ただいつまでもということはいかないと思います。この点はイギリス側にも十分申入をしてあるわけですが、幸いにして解決も間近だというふうにも見られますので、暫時昨年きめた政策を続けたいということであると存じます。
  39. 中川以良

    委員長中川以良君) 今のウイスキー、羅沙の問題は。
  40. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これは私ども非常に不要不急品輸入は困ると言つて強く反対したのでありますが、一方我が国からの輸出を見ますと、大部分不要不急品と言われても仕方ないものが相当あるのです。やはりこれは或る程度交渉で、ギヴ・アンド・テークということでいたし方ないと考えております。併し若し将来日本輸出が思う通り伸びなくて、非常にポジシヨンが悪くなるような状況でありますれば、こういうものの輸入に関しては、イギリス側話合いをする余地は十分あります。現に八月以降において値引をするということも協定の中にも謳つてあるわけであります。
  41. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 ちよつと関連して英国向けに有望なものとして罐詰が挙げられたようですが、どんなものでしようか
  42. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 罐詰はさけ罐が一番需要が殖えております。これは実にかかつて日本側がどれだけ出せるかということでありまして、一応百五十万ポンドという枠がありますが、これはこれ以上超過しても構わないと言つております。さけの罐詰は現在政府の一手輸入になつております。近く民間に移るようになつております。それで需要があるようです。みかん罐詰、これも戦前はたくさん出ておりまして、イギリス人は非常にフルーツ・サラダをよく食べるのですか、みかん罐詰は不可欠のものであつたのです。ところが戦後の緊縮時代に全部とめておつたのですが、今度は解禁するということであります。これは日本が売れるだけは買いましようということが実情でありまして、一応六十万ポンドという枠がございますが、現に八十万ポンドつておる、更に今年九月、十月に新らしいみかんの収穫があります際、これは別枠として輸入交渉をしてよろしいということであります。それ以外に、かにの罐詰をいろいろありますが、現在のところ日本側余り輸出力がないことと、ソ連から安いかにが相当入つておりまして、値段の点でちよつと合わないという点があるようです。これも併し値段が合つて来れば、恐らく向うも買うことには異議はないと考えます。
  43. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 英ソの貿易協定ができたというお話でしたが、これはやはりバトル法というか、非常な品目制限の下にやつておるのですか、或いは日本がいろいろ中共等と折衝しておるような行き方と相当違つた行き方でやつておるのですか。
  44. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 貿易協定と申しますのはちよつと言葉が悪かつたのでありますが、イギリス業界の代表が参つて、ソ連のほうは国家貿易でありますから、向う貿易部と話をしたということでありまして、従いまして、貿易品目のうちには相当いわゆる戦略物資も入つておるようでありますが、これは勿論政府としては輸出許可はしないのだということははつきり申しております。従いまして、電気関係の機械なんか大分入つておりますが、大部分は恐らくこれは輸出できないであろうということが新聞にも出ておりました。ただソ連と中共とは金融関係で非常に緩急の度が違つておりまして、中共に対する輸出のほうがよほど厳重な統制を受けております。
  45. 海野三朗

    ○海野三朗君 今のことに関連してお伺いいたしますが、只今イランの石油ドルの割当をイギリス貿易に対して遠慮しておるのだというお話でありまするが、私はそういう考えがどうかと思うんです。イギリスという国は、御承知のように、儲けがなければ舌も出さないという国なのであつて、すべて貿易関係することは、日本品が安くさえあれば売れて行くのです。恩恵的に日本をどうするこうするなんということは、私どもには考えられない、あのアングロサクソン人種といたしましては……。そこで私は、イランの石油に対するドルの割当も当然やらなけりやならんじやないかと、それを遠慮しておつても、結局するところ日本人は馬鹿を見る、貿易は伸びないという結果になると、私はこう考えておるのでありますが、今イギリスがソヴイエトに対しての貿易についても、アメリカに対する遠慮なんというようなことは更にやらないで、やはり商売上のことについては抜目なしにぐんぐんやつて行く。そういうふうな考えでなければ日本輸出は伸びて行かないと私は見ておるのですが、通商局長はどういうふうにお考えになつておりますか。
  46. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これは政府の方針で、私から申上げるのはちよつと分不相応と存じますが、要するに現実に昨年の状況を見ておりましても、イギリス側輸入制限をしようということになれば、実際日本品は出なくなつてしまうのでありまして、安くてもなんでも買わないということを向うはやる虞れが相当あるわけであります。又それ以外の金融的ないろいろな便宜にしましても、向うが出さないと言えばこちらはどうにも仕方がないような問題がたくさんあるのでありまして、これは強弱と申しますよりも、そういうような相互依存の関係が相当あるのではないかと思います。そこでイランの貿易は、勿論我々としても軽視しておるわけではありませんが、ポンド地域全体の貿易から比べればおのずから比重は軽いということにならざるを得ないと思います。  又イギリスは対ソ貿易などについてアメリカに遠慮していないのじやないかというお話でありますが、実はそれはそうではないのでありまして、業界のほうが約束しても、政府としては輸出を許可しないということをはつきり申しております。その点決して日本と違つた立場をとつておるのではないのであります。
  47. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 さつきの雑貨が有望だというお話があつたのでありますが、雑貨というのは非常に範囲が広いのでありますが、どういうものに大体有望だという見当をつけられたか、それから繊維もついでに具体的に言つてどういうものか……。
  48. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これは先ほどもちよつと申上げましたように、陶磁器関係、それから玩具とか、それからまあ日本のいわゆる伝統的な輸出品であります漆器とか象牙細工というようなもの、或いは電球、それからこれは雑貨のうちには入らんかも知れませんが、魚の肝油、これなんかは相当需要があるのではないかと思います。これなんかは日本が殆んど独占的に供給しておるようなものであります。それから琺瑯鉄器なども、もう少し工夫をすればイギリスを通じてアフリカの植民地などに出るのじやないか。戦前は相当行つておりましたが、まあ現状のところは私も実はよく実情を知らないのでありますが、需要はあるように聞いております。
  49. 中川以良

    委員長中川以良君) 繊維について……。
  50. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 繊維は、やはり殊にグレイは一番であると思います。これは本国に入りますものは、大部分本国で再加工されまして更に植民地に再輸出されるということになつております。植民地の枠で参りますものも、相当部分本国へやつて本国で加工されるということでありまして、まあ日本としては勿論できるだけ加工綿布を売つて行きたいわけでありますが、現在のところグレイが主体であります。勿論加工綿布も入る余地もむしろ今後は開けておるわけでありまして、業界のこれからの努力によつてそれぞれの加工度の高いものを売ることができれば非常に結構だと思つております。
  51. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 先ほどのイランの石油の問題ですけれども、イランの石油の国有の問題については、すでにイタリーが買つたときと日本買つたときで、前者は国際裁判所、後者は日本の高裁において、明らかにそれはイランの石油であるというふうに認められて、英国側が敗訴しておるわけですが、依然としてイギリスはイランの石油の国有は認めないという態度で臨んでおるのでありますか。
  52. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) その通りであります。
  53. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 そうしますと、これは先ほど解決についてはだんだん進捗しておるというお話がありましたが、もう一回イランの石油を取戻すというのでありますか、それとも具体的に補償の問題等で大体解決をして行くのでありますか、どういうことに今なつておりますか。
  54. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 現在のラインは、私も詳しくは存じませんが、結局国有は認めると、国有は認める代りに補償をよこせと、補償と言つても、イランは金を持つておりませんから、結局販売権を認めまして、その利益によつてなしくずしに払つて行くということではないかと存じます。それから御承知通り、イランというものは、国としては販売網というものは全然持つておらないわけでありまして、結局英米に頼んで石油を売つてもらつてローヤリテイーを取るほうが収入としては安全だというような考慮をしておるようであります。
  55. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 そうすると、販売権も、アメリカが今度遠慮する、それからイギリスも従来の権益等に鑑みまして販売権を渡すと、そうして英米伊の三国共同の販売会社を作るという形だろうと思いますが、これはイランの石油の全部についてそういう販売権を持つのでありますか、それともイランの政府に多少の自己裁量の分を残して、その大部分を三国共同の会社で取扱うと、こういうふうになるのでありますか。
  56. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 共同の会社を作るという話は余り最近はないようでありますが、むしろイギリスイギリスの会社、アメリカはアメリカの会社で以て販売権を取つて販売するということになるのではないかと存じます。イランの手にどのくらい残るかということは、先ほど申しました通り、恐らく多くても一割を出ないのではないかというような観測が行われておるわけであります。
  57. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 そうすると、将来において改善をされるかも知れないという日本側の期待というものは、そのイランの自己裁量に残された一割のものに対してですか、それともその販売権を取つた国から買うという形でありますか。
  58. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) イラン貿易ということになりますれば、その残された一割ということでございます。
  59. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 テヘランのフエデラル・カンパニーというところにおける日本人から実は一昨日手紙が来たのですが、これによりますと、日本に対する好意というものは、昨年まではあつたけれども、今日は全然ゼロになつておると、こういう手紙が来ておるのです。私も今までそういつたような発言をこの委員会でもしておつたのです。日本に対して非常に好意を持つておる、地下資源の開発等にも非常に期待をしておると、こう思つておりましたが、この手紙を見ますと、日本頼むに足らずと、とにかくもう今からどんな手を打つて余り日本に対して信用をしないだろうというようなことが来ておつて、非常に愉快でない日々を今テヘランにおる者は送つておると、こういうふうに手紙が来ております。これはまあ今までの経緯を見るというと、大体納得ができるわけですが、これは先ほど海野さんからお話があつたように、これは政府としては非常に大きな責任問題ではないかと思うのです。裁判でもはつきりイランのものだと認められ、而もイランは売りたい。日本に対する七カ年間契約というようなものはそのまま尊重するというようなことをたびたび声明を出されておるのに、ただ単にイギリスのほうが横槍を入れておるということに対しての遠慮でそれを外貨の割当をしない。そのために、向うでは折角日本に対して売りたいと言つておるのに、日本が買つてくれないので、日本頼むに足らず、こういうふうなことになつて参りますと、勿論対英貿易の全般から比べますればイランの問題は極く小部分になるかも知れませんが、併し日本の東南アジア或いは中近東の貿易地域においてかなり日本に対して好意的に考えておつた一つの国がその好感を捨てるということは、これはやはり大きな問題だと思うのです。こういつたような情勢に対して、これから石油問題の解決と共に再びその好意を取戻すと申しますか、経済的な提携を深めて行くことの可能性と申しますか、そういうものについて通産当局ではどういうふうにお考えになつておりますか。
  60. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) これは一にかかつてイランにどれだけの購買力があるか乃至はイランの金融、財政状況が健全であるかどうかということにかかつておるのでありまして、勿論私ども輸出はしたいのでありますが、輸出しても金が取れないような状況で若しあるとすれば、これは非常に困つたことであります。その問題と石油問題の解決とは、これは非常に密接に関係しておることであつて石油問題を解決するということが即ちイランの立直るということでありますから、先のことは勿論わかりませんけれども、そういう場合には、貿易関係を更に深めて行く素地はできて来るものと考えております。
  61. 高橋衛

    ○高橋衛君 イランの石油に関連してもう一点だけお聞きいたしておきたいのでありますが、先ほどから英国に遠慮をして日本石油輸入を控えておるというふうな御答弁でありますが、これは日英貿易協定一つの条件になつておるのであるか、それとも又は貿易協定に関連するところのスワツプですか……に関連する一つのはつきりした条件的なものがあるのでありますか、それとも単純に紳士的な態度といいますか、日本人のいわゆる遠慮、言葉通りの遠慮という立場からしておられるのか、その点のことをはつきり一つ御説明願いたいと思います。
  62. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) はつきりした条件にはなつておりませんですが、大体そういう方針で続けるということに対しては了解ができておるわけであります。
  63. 高橋衛

    ○高橋衛君 それは条件になつておらんとしても、例えば文書の交換とかいうふうな形において行われておるのでありますか。
  64. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) そういうことはございませんです。
  65. 高橋衛

    ○高橋衛君 そういうふうな文書の交換によるものは全然ない。そうすると、私ども非常に奇異に感ずるのですが、要するに英米伊の三国の協定がはつきりできて、国際市場で国際価格で売るようにならなければ日本は手が出せんということになれば、そのときは安く買うという特典は殆んどなくなつてしまう、むしろ買つて有利な時代は現在のみであるというふうな感じがするのでありますが、そういうふうな条件になつておるとか、又はそうしなければどうしてもこの協定が実行してもらえんというふうな危惧の点、虞れが具体的にどういうところにあるかという点をもう少し御説明願わんと、我々どうも理解しかねるのであります。
  66. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 勿論この協定の円滑な運行ということから申しますれば、日本がイランの石油買付ければ非常に支障が起るだろう、又そういうような措置をとるだろうということは、私ども十分覚悟しなければならんと思います。そういうようなことは、この会談と直接関係はございませんが、出ておりました。
  67. 高橋衛

    ○高橋衛君 お答えが非常に抽象的であつて、我々ちよつとわかりにくいのでありますが、もう少し具体的に、例えばどんな点にどんなふうな支障を生ずるということを説明して頂きたいと思うのであります。
  68. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 例えば、輸入制限を更にやるとか、金融をとめるとかいうようなことも考えられるのではないかと思います。
  69. 海野三朗

    ○海野三朗君 今のに関連して私はもう一つお伺いいたしたいのは、そういう際に、向う貿易のほうに手心を加えるなら、やはりこちらのほうだつて手心を加える方法があるでしよう。私はそういうふうな遠慮は、非常につまらない遠慮であると思うのであります。それが政府の方針としてそうやられたのだと、ドルの割当をされなかつたのだというお答えであるけれども、それは十分通産当局としても政府に対してはそういうようなことは、意のあるところははつきり述べなさらなければならないのじやないか。ただ政府の方針がこうだからそれを遵奉してやる、それは誠に結構でありまするけれども、やはりこれはこういうふうになつておるのだというようなお考えをば十分述べられたのでありますか、そのドルの割当につきましては……、それも一つ私お伺いいたしたいと思います。
  70. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 通商局といたしましては、大臣に対しては、やめたほうがよいだろうということは申しました。
  71. 海野三朗

    ○海野三朗君 やめたほうがよいということをおつしやつたのですか。
  72. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) つまり、買わないほうがよいだろうということを申上げたわけであります。
  73. 海野三朗

    ○海野三朗君 それは見解の相違でありまするから、これ以上私はお聞きいたしませんが、もう一つ別なことでお伺いいたしたいのは、昨今造船の問題が、非常に汚職が新聞に出ておる。併しそれとは別個に、貿易については船が日本では非常に足りないと私は思つておるのでありますが、通商をやるにいたしましても、とにかく船賃が高い。これが非常にネツクになつておると思うのでありますが、通産当局といたしましてはどういうふうにお考えになつておりますか、船のほうにつきましては……。
  74. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 日本の船舶は、これは私からお答えするのはちよつとおかしいのでありますが、確かに戦前に比べまして減つておりますし、貨物の積取量もまだ非常に低いので、船が殖えることは非常に結構なことでありますが、ただ問題はコストでありまして、現在日本の船は英米の船よりもむしろコストが高いということがあります。造船のコストが高いほかに、運航のコストも高いということがありまして、船会社は現に、よくは存じませんが、相当苦しい状況にあるということもあるのでありまして、政府で船を造るということは勿論今の状況ではできないわけでありまするから、結局船を急に殖やそうと思つても、なかなか金融面その他で以てうまく行かないという状況ではないかと想像いたしております。
  75. 海野三朗

    ○海野三朗君 その船が足りないということに対しては、通産当局は如何なる態度をとつていらつしやるのでありますか、それをお伺いいたしたいと思います。
  76. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 殖えれば結構だと思つております。
  77. 海野三朗

    ○海野三朗君 いや、これを増して行かなければならないということはやはり主張していらつしやるのでありますか。どういうふうな態度でいらつしやるのでありますか、それをお伺いしたい。
  78. 牛場信彦

    説明員牛場信彦君) 特にどういう主張をいたしておるか、私も実は所管外でわからないのでありますが、とにかく日本の船が殖えることは非常に結構なことだと思つております。ただ私どもの手でやれる範囲では、余り有効なそれを促進するような手段はないということであります。
  79. 中川以良

    委員長中川以良君) 本日はこの程度にいたしておきたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 中川以良

    委員長中川以良君) 御異議ないと認めます。なお明日は本問題に対する質疑を続行いたしますが、通産大臣、外務大臣、それから外務省の経済局長の出席を求めております。どうぞさようにお考え頂きまして、質問の御準備をお願いいたしたいと存じます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十八分散会