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1954-05-28 第19回国会 参議院 地方行政委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十八日(金曜日)    午前十時二十九分開会    ―――――・―――――  出席者は左の通り。    委員長     内村 清次君    理事            石村 幸作君            堀  末治君            小林 武治君    委員            伊能 芳雄君            伊能繁次郎君            木村 守江君            田中 啓二君            長谷山行毅君            館  哲二君            島村 軍次君            秋山 長造君            若木 勝藏君            松澤 兼人君            笹森 順造君            加瀬  完君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    国 務 大 臣 小坂善太郎君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    国家地方警察本    部次長     谷口  寛君    国家地方警察本    部総務部長   柴田 達夫君    国家地方警察本    部警備部長   山口 喜雄君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君    常任委員会専門    員       伊藤  清君   参考人    熊本佐敷町警    察署長     山下 金作君    横浜警察本部    長       小林 正基君    警 視 総 監 田中 榮一君    名古屋市警警察    本部長     宮崎 四郎君    国家地方警察警    部    (国警埼玉県本    部)      村松  栄君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件警察法案内閣提出衆議院送付) ○警察法施行に伴う関係法令の整理  に関する法律案内閣提出衆議院  送付)   ―――――――――――――
  2. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今より地方行政委員会開会いたします。  本日午前中は、警察法案及び警察法施行に伴う関係法令の整備に関する法律案について、参考人かたがたに御出席をお願いいたしまして御意見出聴取することにいたします。  開会に当りまして、本法案に対する参考人として御出席下さいました各位に御挨拶申上げます。本法律案につきましては、先に公聴会を二回に亘つて開き、公述人から意見を聞いたのでございまするが、本法律案重要性に鑑みまして、なお意見を聞きたい方面から本日ここに参考人として御出席をお願いいたした次第でございます。参考人かたがたからは、主として自治体警察の側から見た警察法案首都警察特殊性から見た警察法案警察法案に関連していわゆる警察における特高訓練問題等の主要問題について順次公述を願いたいのでございます。各位お人の発言時間は十五分見当といたします。御意見は議題のほかに亘らないようにお願いをいたします。又御意見に対しまして委員各位から質疑があれば、御遠慮なくお答えを頂きたいと思います。  参考人かたがたは、熊本佐敷警察署長山下金作君、横浜警察本州長小林正基君、警視総監田中栄君、名古屋警察本部長宮崎四郎君、国家地方警察警部国警埼玉県本部村松栄君、以上五名のかたがたでございます。
  3. 伊能繁次郎

    伊能繁次郎君 参考人かたがたのお集りの席上でお尋ねをするのもどうかと思うのでありますが、先般の理事会で御相談を願つた結果と、本日おいでを願つた参考人かたがた人選との間に我々了承しかねる点がありまするので、この点委員長お尋ねをしたいと思います。先だつて理事会において私ども承知するところでは、町村関係警察について佐敷警察署長から、都市警察関係については横浜警察本部長から、国都警察の問題について田中警視総監、更に只今委員長お話のあつた警察学校における特高警察関係については警察大学校長をお呼びを頂く、そしてその教育を受けた関係の人については委員長任という了解の下に私どもは了承いたしておりまするが、本日参考人喚問人選を拝見いたしますると、名古屋市の警察本部長宮崎君が御出席になつておられる。我々はこの点については警察大学校長が御出席であるものと了承いたしておつたのでありますが、何が故に宮崎君が出られたかということについて委員長にお伺いしたい。
  4. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今伊能君の発言の要点、即ち警察大学校長の問題でございますが、勿論当時の委員長からこれは以前の理事会提出をいたしておりました参考人の件につきましては、これはすでに印刷物を以ちまして理事かたがたに対しましては十分と御了解を得ておつたわけであります。ただ問題はそれを出席をさせるかどうかという点だけは保留されておりました。併しながら当時の理事会おきまして、参考人出席に対しまして伊能君の所属されるところの自由党のほうから、大体半分程度委員長が要求しておるところの半分程度、四人ぐらいの公述参考人出席をしてもらいたい、こういうような発言がございましたが、委員長といたしましては、時間の制約をいたしまして、そうして十五分程度にするから、これは五人にしてもらいたいという点で了承いたしました。ただ警察学長の問題も勿論その当時の印刷物にも書いてありますし、委員長発言をいたしました。併し当時理事会おきまして、これは警察学長はこの教育責任者ではあるけれども、併しながらその教育を担当し、本当に責任を持つたほうはこれは国家警察であるということが明らかになりまして、ただ警察学校はその教室を貸し、そうして生徒に対しまするところの一般的な学校内での責任は持つておるけれども教育に対する責任国家警察本部がこれを持つて、そうして教授を派遣しておるということがはつきりいたしたわけであります。そういたしますと、やはりその生徒教授をいたしましたその教官の点、或いは又これが関係するところの自治体関係するような点に対しましては、大学校長はその責任者ではないということが明らかになりましたから、私は直ちに発言を加えまして、そうしてその宮崎名古屋警察本部長を呼ぶということはこれははつきり申上げた点でございます。同時に又この点はその翌日の委員会おきましても特に発言を求めまして、そうしてこの点は名前もはつきりと載つておるような速記録が確かにあると存じます。そうしてあと生徒の問題につきましてはこれは委員長任、いわゆるすべての手続き及びその選定については委員長一任ということか記録上明らかになつておるのです。だからして私はここに発言を加えて了承したものだということを確認の上に委員長一任の即ち参考人選定の件によりまして、ここに参考人を呼んだような次第でございますからして、この点は伊能委員おきましても、よく委員会の席上におられまして了承されておつたとは存じまするが、ただその後その委員会に御出席でちよつと席をはずしておられましたところの理事でありますところの堀理事のほうから、少し異議のある点が、自分は了承しておらなかつたという点が、発言委員長にも届いておりましたけれども、併しこれは委員会委員長一任参考人皆様がたの同意を得た事情であります以上、私はこの問題は重要な関係があると認めまして、ここに参考人といたしまして今日公述を聞くような手配をとつたような次第でありますからして、どうか伊能委員におかせられましても了承せられまして、そうしてこの議事進行がスムースに行きますように御協力をお願いいたしておきます。
  5. 伊能繁次郎

    伊能繁次郎君 只今お話で、私どもとしては勿論委員長一任については了承いたしておるのでありますが、その前提として大体どういうかたがたを呼ぶかという点については、十分理事会その他委員会においてお話願つたことは只今委員長指摘通りであります。従つて具体的な人選について私ども委員長一任を申上げましたのは、最後の国家地方警察関係教育を受けたかた一人についてであつて、その他のかたがたについては一応理事会並び委員会においていろいろお話合いをして十分懇談の結果であつて、必ずしも私どもとしては名古屋警察本部長宮崎君を呼ぶことについては十分な了解をいたしておらなかつた、この点は他のかたがたの御意見も伺わなければならんと思いますが、殊に委員長只今説明を頂きました特高教育の問題について宮崎君が如何なる関係を持つておられるかということについては、只今委員長の御説明だけではどうも私には了承しがたい。警察学校長は庁舎を貸すだけで責任国家地方警察本部が持つておるということであれば、国家地方警察本部の……そういう事実が仮にありとした場合においては、国家地方警察本部教官をしておられる立場のかたを呼ぶほうが適切ではなかつたか、かように考えるのでありますが、その点名古屋市の警察本部長委員長指摘の問題と如何なる重要な関連があるかということについても一応念のために伺つておきたい。
  6. 内村清次

    委員長内村清次君) この点につきましては、これは参考人も今はつきりここに見えておりまするからして、委員長委員会に諮りまして、而も又委員長一任になりました上において参考人が来ておりますから、参考人からよくその関係の点につきまして皆様方聞かれまして、そうしてそれが果してこの問題について直接の関係者ではないかどうかという点はあなたのほうで御判断をして、更には質疑のときに委員長にその発言をとつて頂きたいと思います。    〔「了解」、「議事進行」と呼ぶ者あり〕
  7. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは只今から参考人参考公述を聞くことにいたします。  先ず第一に熊本佐敷警察署長山下金作君。
  8. 山下金作

    参考人山下金作君) 私は大正八年四月から今日まで満三十五年間勤続し、その間内外勤、刑事、特高駐在詰、各主任、署長等、あらゆる仕事をいたして、県下十五カ署を転任し、現在は県下唯一佐敷警察署長をいたしております。  戦前から終戦までの警察警察国家だとか政党警察であつたとよく言われますが、一体具体的にどんなことをしたか。私が実際したこととそれから見聞したことを只今から申上げますが、氏名だけは現存して相当な重要な地位にある人もありますので、差控えさせて頂きますが、御必要がございましたらあとで書面を以て申上げます。  私が警察学校を出て第一線の水俣警察署に着任して暫くは、ただ学校で教えられたことを実際の活社会に如何に実行するかということで精一杯で、政治のことなんか考えたこともありませんでしたが、一二年を過ぎまして暫くいたしますと、警察は時の与党に加勢をするということがだんだんわかりました。それから政争がだんだん激しくなりまして、警察もその政争の中に自然に捲き込まれて、選挙後は必ず署長は勿論幹部は栄転させる、又は時によつては首になるというようなことがあり、時によつては平署員でも事務の都合により退職を命ずるという辞令一本でばたばたとやめさせられるようなことがありました。特に激しくなつたの大正十二、三年頃の政変頃からであつたと思いますが、そのときは丁度政友会内閣ができたときでありました。栄転して来られた署長選挙取締に対して訓辞せられたのは、選挙取締は不偏不党、与野党の区別なく厳正公平に取締をして、署長中心に打つて一丸となり、情報等は細大漏れなく報告せよという言語、態度共に誠に署員を奮い立たせるものがありましたが、先輩監督者のやつている仕事は、その署長訓辞とは裏腹で露骨に与党に対しては有利に仕事をしている、いわゆる職務質問をすべきときにでもしないばかりか、却つてこれに迎合して野党側運動状況等を教えて与党運動し、野党に対しては必要以上の職務質問をなしたり或いは干渉圧迫を加える。ときによつては用件で外出しているということがはつきりいたしているにかかわらず、野党側と見られる者に対してはこれを署に連行して公安を害するという理由によりまして署長に報告し、これを又署長は快く受入れて豚箱にどんどんと放り込んで行きました。私も大体はうすうすこれは知つおりましたが、前の署長のときとは非常に違つて、いよいよ露骨に干渉弾圧を加えているような状況はつきりいたしましたので、私は一体どうすればよいかと案じておりますと、先輩の或る人が私に対して、「山下君、選挙ばあんまりまじめに取締りおつと、首なるばい、そりよきよあんたたちや若きやけん、ええ工合にして早よ出世すごてせにやと」こういうふうに教える。いわゆる署長訓辞は厳正不公平に取締をして、野党情報はどんどん報告をし、与党のことは言わないでもよろしい、いわゆる署長訓辞は、野党に厳重に取締をして、弾圧を加えまして、与党便宜を与えて与党候補者を当選させることが選挙取締要領、虎の巻というようなことであるという秘伝を教えてくれました。私は案もらつたほやほやのときでありましたし、首になつては大変と思いまして、先輩の教えや監督者の指導によりまして成績を挙げることに努めておりましたが、丁度そのときに津奈木村の村長選挙がありました。丁度九人の伯仲した選挙でありました。署長は丁度選挙の参謀のようなことになりまして采配を振つておりましたが、私に対して、野党候補者を一人連れ出して温泉にうまく罐詰めをせよというようなことで、私はその命令を受けまして、その野党議員を一人連れ出して温泉に連れて行つて罐詰めにいたしました。ところがその野党議員に夜中に逃げ出されまして、それで非常にお目玉を食いまして、私が如何にも野党側に有利にしたというようなことに勘違いをせられまして、私は人吉警察署転勤になりました。そういうわけで私は人吉署転勤をいたしますというと、幸か不幸か丁度半年ばかりいたしますというと政変がありまして、民政党内閣になりました。ところが私に対しては、その人吉地方与党人たちは、これは左遷して来た巡査だというようなことで非常に受けがよくて、非常にもてたわけであります。そのときは、もうすでに警察に対しは、その政党病膏肓に入りつつあるようなときでありまして、署長幹部は栄転、左遷、又は首になりましたが、入れ替りまして前に浪人をしておつた人が復活して、一巡査に至るまで復活した人たちが、次の内閣では又首になることを覚悟で仕事をするので、非常に与党幹部の信用も篤く、当るべからざるところの勢いでありました。その政争はますます激甚を加えまして、警察政争中心となり、昭和三、四年の頃の政変では、知事、警察部長は勿論、署長の大半と一巡査に至るまで、少しでも色のついた者はやめさせられて、入れ替りに又浪人組が復活し、昭和五、六年頃になりますというと、政友会側に属するところの浪人組は、元警務課長会長として六日会を作りました。民政党の側に属するところの浪人組は、もと北警察署長会長といたします清志会を組織し、警察半数交代の源平さながらの現職浪人二組の警察が完全にでき上り、中立的警察官吏の存在は殆んど認められぬようになりまして、昨日の友は今日の敵、お互い同僚もいつ敵になるかわからん、同僚にも心を許せないという暗澹たるものがありました。これでは本来の警察仕事のできるわけはありません。これによつてつた国民の迷惑というものは非常に至大なものがあつたと私は忸怩たるものが現在あります。  かようにして現職与党組み、権力と金力と法律の背景によりまして、道徳も理窟もあつたものではなく、ひたすら与党党勢拡張を図り、選挙ともなれば、勝てば官軍敗ければ賊、文字通り無茶苦茶にまさに戦場のごとく実力を行使するので、浪人組はこれ又野党組み現職組非違摘発、監視、一面には力には力で以て対抗するという戦法で必然的に暴力へ発展して、野党青年行動隊のごときものができ上り、県下至るところに暴行脅迫、傷害は数限りなく、あの御船町におけるところの現職巡査部長出勤途上を、野党員が余りの弾圧に堪えかねまして、日本刀で切つたつたという不祥事件も発生しました。この巡査部長は現在八千把町に居住しまして、増加恩給をもらいましたが、頭と手が不具になりまして、誠に惨めな生活をいたして現在来ております。  警察選挙干渉のほうを申上げますると、初めは裏面でじわりじわりとやつておりますが、あとは強引に表面に立ちまして、警察中心のようになり、選挙中は一般警察事務は殆んど放任状態で、制服員最小限度にとどめ、全部私服勤務とし、署長室与党選挙対策本部と早変りして、与党幹部警察幹部秘密会議は頻繁に行われ、いよいよ警察も職員の異動が一段落して勢揃いができますと、町村役場から有権者名簿を取寄せまして、がり版刷りでこれを謄写いたしまして、二、三百戸程度巡査責任を持たせまして、党派別有権者色分名簿を作るのであります。この色分名簿は、その責任を持ちました巡査がその責任区域与党幹部と協議して色分けをするのでありまするが、最初は与党を二、三割少くしておいて、期日が切迫するに連れてだんだん増加させて行つて成績の上るようにするのがこの色分名簿を作る巡査のこつであります。(笑声)その色分名簿基礎にして、巡査からは各候補者得票見込表というのを旬報又は週報といたしまして、期日が切迫いたしますというとこれを日報で出させまして、署長はこれを基礎にしまして与党連絡をとりまして、その表の正確を期するのであります。そのほかには有権者系統表運動員系統表与野党運動員分担区域表選挙ブローカー名簿等を作り、不公平取締資料というよりは、与党運動資料を作成し、与党幹部連絡をとり、野党幹部運動員の動静は、視察や尾行によりまして逐一署長に報告して、署長はこれを総合判断して警察部長へ報告すると共に、与党へ通謀して、与党候補者の当選を期することは勿論であります。一面野党側違反は小さい形式犯でも即時検挙して、警察が盛んにデマを飛ばして、野党候補者違反を検挙されたから、当選しても失格するから駄目だと、選挙民が死んだ票になる投票はしないという心理状態を運用する方法をとりまして、実際に検事局で起訴されようとされまいと、そんなことはお構いなし、どんどん引張るので、それがため野党側は苦戦となり、落選したため署長選挙妨害で告訴された事実もあります。それがためか知りませんが、あとから検事局から、選挙違反選挙中は現行犯か、検事の指揮のあつたとき以外には、選挙終了後でなければ検挙することはできないときめられました。このことは昨年の四月選挙から漸く選挙中でも検挙して差支えないという通牒を私は受けております。かくして署長当落予想与党候補者が危いとなれば、俄然与党は勿論、警察は活況を呈して、(笑声野党側幹部運動員は迂闊に外出したら引張られるという状況で、いよいよ切羽つまれば切崩しと申しまして、野党側の弱いと見られる幹部又は運動員警察までどんどん張つて来て与党に入党することを強制いたしまして、聞かない者はどんどん留置場にぶち込んでしまう。そうして与党側のほうから手を廻して貰い下げをなさしめて、精神を入れ替えたから出すと与党側の顔役に渡して、翌日の新聞には、爾後感ずるところあり何々党に入党するという広告をさせたものであります。(笑声)一方与党にはあらゆる便宜を与えるのみならず、警察官運動を督励して歩き、いよいよ追込戦となれば実弾射撃と称して、警察官が張込んで与党に買収せしめ、甚しき至つて署長みずから各戸を買収して歩いたものであります。牛深署長の某は各戸を買収して歩いたために、浪人組から告発されて懲役刑に処せられた事実があります。又宮地署長某は、署長みずから野党側に属するという料理屋を土足のままで臨検して、客を逃がしたということで、これを毆打、打擲して、これ又懲役に処せられ、人吉警察の某氏は、選挙中四浦村の村区長与党に引入れるため毆打暴行を加え、いずれも告訴されて懲役に処せられたという事実もあります。この選挙取締の結果が警察官奥の出世と首の境目であるから、自然と真剣にならざるを得ないわけで、署長の各候補者得票見込表は、開票結果と何票の差もなく、時には開票とぴつしやりと合つたという神業のようなこともありました。  佐敷警察署の小さな警察が今後やつて行けるかどうか。予算問題とか、或いは犯罪捜査問題についてはあとで御質問に応じてお答え申上げます。
  9. 内村清次

  10. 小林正基

    参考人小林正基君) 私から都市警察の問題についてお話申上げたいと思います。都市警察の問題について、或いは公安委員長代表が、或いは自警の代表がいろいろと皆さんの前に御意見を開陳いたしておりますから、私は実務家といたしまして、主として運営の面から都市警察というものを存置することが必要であるという点について申上げてみたいと思うのであります。  私どもは六カ年有余に亘りまして、困難なるときを克服して今日まで都市警察というものを盛上げて参つたのでありますが、今回は完膚なきまでにこの都市警察というものを粉砕せられまして、府県警察一本になるというのが今回の法案のようでございます。私ども都市警察を設置することが、警察運営上、能率的に見ても非常に効果のあるものであるという理由といたしますことは、都市というものの特殊性というものを十分御理解になつて頂きたいと思うのであります。その特殊性のありますいわゆる都市というものは国家的に重要なる地域でありまして、産業上からも、又財政の上からも、文化の上からも、交通上の関係からも中枢地帯であります。従つてこれら重要なる地帯は、これと密接不可分関係におけるところのあらゆる行政というものが運営せられなければならんと思うのであります。そういう点から考えましても、自治体といたしまして最も重要なる事務一つ行政一つでありますところの警察行政というものが、この行政の面と一体となつて有効適切に運営されるということが極めて必要なことは論を待たないところであります。その特殊たる状態警察上から見て申上げますならば、都市交通というものと警察との関係でございます。農山漁村におけるところの交通都市、殊に大都市におけるところの交通状態というものは、全く比較にならないほどの輻輳した状態でございます。又取締の場合におきましても、到底駐在巡査都市におけるところの交通巡査との関係においては比較できないような状態を持つておるのであります。又少年の問題にいたしましても、悪の温床は都市、殊に大都市に集まつておると言われるのでございましてこの悪質なる犯罪の中心地帯でありますところの都市警察というものは、その実態をよく見極めてこれに適合したところの警察運営をいたさなければならんのであります。又カフエー、キヤハレー、パチンコ、売笑婦、その他の問題を中心とするところの風紀の取締の問題につきましても、警察というものは農村における警察と非常な差異を持つておることは御承知通りであります。又密貿易とか麻薬とか覚醒剤取締、殊に最近における覚醒剤の青少年に及ぼすところの影響というものは極めて甚大なるものがございまして、只今国会においてもこれが強く取上げられて改正せられるような趣きに聞いておりますが、一日も早くこれが実施せられまして、この覚醒剤によるところの社会悪というものを排除しなければならんという実情から推しても、これらの問題は都市実態警察というものの密接な関係を持つておるわけであります。外国人に対する関係おきましても同様であります。又駐在巡査と派出所におけるところの巡査勤務が著しく違つておりますことは皆さんの御承知通りでございます。又教養訓練の場合において、都市警察のほうが如何に徹底するか、又如何に徹底せしめなければならないか。駐在おきましては一週間に一度の大体招集によつて教養訓練通達等をいたすのであります。ところが都市におけるところの交通勤務は大体一日おきでございますから、教養訓練その他にいたしましても一日おきにこれを訓練いたすのであります。又警備上に集団的に、或いは最も我々が注意をしなければならないところの兇悪なる集団的破壊活動というものは、都市中心にして発生しておることは今更申上げるまでもございません。二十七年度前半において火炎びんその他によつて攻撃を受けた状態というものも、主として都市に多かつたということは如実にこれを物語つておるのであります。これらの事態に対処して、我々が完全なる警備警戒の体制を布くためには、日常において特殊なる訓練を施し、指導的に機敏且つ十分なる対策を立てるために日常の訓練というものが必要であります。そういうような場合においては農村における訓練と、又都市における訓練とは著しく差異がございまして、我々はこういうような専門化された特殊性というものをよく認識し、それを十分に頭に入れて実際に即応するような警察活動をするというためには、専門的且つ高度に技術化されたところの警察運営というものが必要である、そういうふうに我々は考えるのであります。従いまして、私どもはあえて能率化という問題から、府県に統合するということだけが唯一の途ではなくして、六年間におけるところの実績というものを最も率直に虚心なる気持を以て検討いたした上に、伸ばすべきものは伸ばすというような考えに立つてこれを判断して頂きたいと思うのであります。殊に大都市における問題に至りましては、特殊性等の問題等が必ず最も近き時日においてこれが結論を出さなければならんという重大なる時期に際会いたしておると私は考えるのでありますが、そういうような場合におきまして、その問題が解決を見ない現在において、六年間我々が常々として努力し、盛り立て、且つ、多大の経費を投じて育成して来たところのこの警察というものを、一片の法律を以て取上げるということは、全く我々としては情なきことであり、無謀なことに考えられる点が多々あるのであります。これらの重要なる基本問題というものを解決した上において、都市警察というものを若し府県一本にすることがよろしいという結論の場合にはそうしてもよろしゆうございましようが、これらの基本というものの結論を出さないで、今日においてただ警察という問題、現実に何らの支障なく運営されている部分の都市警察というものまでも取上げるということは、我々として承服しがたい点でございます。  次に府県警察に統合いたしますと、大都市警察の能率が低下するという問題について申上げてみたいと思うのであります。それは警察行政において大都市警察的要素と農山漁村警察的要素を混在せしめると能率が低下すると私どもは申上げるのでありますが、そういうことはない、例えば神奈川県において横浜を合併いたしましても、横浜にふさわしい方法をとればそういうことはないではないかという意見がございますけれども、私どもから申上げれば、やはり府県一本になりますれば、あらゆる計画というもの、訓練というものも画一的になるというのは、これは実際の例に徹して明らかであります。従つてどもは無理にこれを統合するということなく、特殊性を、生かし、その実際運営上の能率というものを上げる方向に検討を加えるということか最も必要ではないかというふうに考えるのであります。  第三に申上げますことは、能力の点から見て一体都市警察というものは駄目じやないかというような御意見がよくなされるのでありますが、その能力の点ということはなかなか判定しかたい問題でございます。併しながら私どもは全部の自治体警察というものが能力があつて十分であるということは申上げないのであります。警察運営の面から、財政の面から、人事管理の面から、あらゆる点から考慮して、この程度であるならば警察というものが維持できるし、又育成して行つて効果が上るという点を判定いたしまして、この六年間の実績を生かしながら局主警察の実を上げるという方向に十分の努力をいたさなければならんものではないか、そういうふうに考えるのであります。然らばどの点を以てこれを判定するかということについては相当困難なる点はございますが、少くとも我々は二十万以上の三百乃至四百というような警察力を持つたところの都市警察というものは、人事の交流等も考慮に入れつつ、十分に警察能力というものを発揮することができるのではないか、そういうふうに考えるのであります。殊に大体五百名以上の定員を有するところのいわゆる三十万前後以上の警察というものは、鳥取県における六百五十二名の定員に対する状態等から考えましても、特に鳥取県等は都市といわず農村にこれが散布いたしておるところの警察力でありますが、五百名、六百名の都市における集中力を持つておる警備力というものは、相当大なる力を持つておるものでございます。従つて我々はこれら三十万前後以上の警察というものは、独立してその事務を遂行するところの能力があると我々は考えるのでございます。  次に第四といたしまして、今回の警察法の改正というのは経費を縮減するというようなことを取上げられまして、非常に強く推進せられておるようでございますが、私どもは一本になりませんでも、我々は自治体の財政というものを危殆に瀕することなく、財政当局と十分なる連繋をとりまして、経費の節減という方向には努力をいたしておるのであります。横浜のほうを申上げますと、定員は三千五百三十二名でございますが、現在は三百七十四名欠員をいたしております。下補充の方針でございます。従つて三十九年度の最後においては五百名を削減するという見込みを以て二十九年度の予算を組んでおります。私どもは終戦当時大体横浜は千八百名の定員でございましたが、それが三千五百人になりました。従つて刑事訴訟法の改任、労働基準法によるところの勤務の増加、警察官のつまり休暇等によるところの減員、犯罪の増加というようなこと等を見ましても大体二千六百から八百程度のところに二、三年のうちには縮減して、一方機動力を考慮に入れつつ警察運営を遺憾なくやりたいというふうに実際考えておるのであります。従つてこういうような大体構想で参りますれば、大都市といえども経費の節減ということは一本化せずとも、大体大同小異の程度において符合をいたすと考えるのであります。大阪等においてもすでに八千六百の定員を七千六百、一千名減員いたしまして運営いたしておる実情でございます。最後に、いろいろ取上げておられる問題等がございますが、自治体に置きますと、府県警察との連絡協調に欠けるとか、治安上大都市とその周辺地域との一体性に鑑みて、大都市の治安確保上から府県警察一本にしたほうがいいというような御意見がありますが、もとのように、現在のように自治体警察府県警察というものが別個の立場に立つておる場合は或いはあり得るという点がございましようが、今回の法案によりますという場合において、府県警察都市警察というものを同性格に置かれるならば、中央において統一指揮監督もでき、必要なる事案については強力にこれを調整することができるわけであります。従つてこれらの御齢というものは理論上はいろいろございましようけれども、実際においてはあり得ない。又なくすることができると私どもは考えるのであります。現在においては神奈川県においては国警と自治警と何らその間に溝もなく、大事件がございますれば、全部が事前に協定いたしまして出動計画を立てておるということでございまして、そういうような今八市ございますが、八市と国警とで連携をとつてつておりますものが、仮に大都市横浜と国警とある場合において、そこに問題が起るいうようなことは大体想像できかねるのであります。周辺の問題等もそう御心配になるような点はないのでございまして、現在の状態から見ましても、八割は横浜市内に居住、割は神奈川県下、割は神奈川県以外の県、大阪等の実例に見てもさような点でございます。お互いに現在でも神奈川県国警又は他の自治警でも横浜の犯罪を協力検挙し、我々も又協力するという実際を示しておりますので、今後においてもそういうような心配のある点はなかろうと、そういうふうに考えるのであります。私どもは六年の経験に照しまして、持ち得る程度都市警察というものを存置せしめることが民主的な運営からも、又我々六年の貴重な実績というものを活かす上においても、又将来における警察成績を低下せしめないという見地からにおいても、都市警察の存置ということを強く皆様方に訴えたいと思うのでございます。
  11. 内村清次

    委員長内村清次君) 次に警視総監田中榮一君。
  12. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 警視総監の田中栄でございます。今回の警察法の改正審議に当りまして、参議院の地方行政委員会におかれましては、今回改正の審議参考のために我々自治体警察側を代表しまして、数名の警察長を参考人として御招致願い、たとえ短時間でありましても、我々の意見を開陳させる機会を与えて頂きましたことは、全国自治体警察官八万五千人のために誠に喜びに堪えない次第でございまして、このことは謹んで私からお礼を申上げておきます。私がここに出ました理由は、主として首都警察の特異性について申述べることでございますので、この点を中心にして申上げて見たいと存じます。先ず第に首都警察の特異性、それから今回の警察法改正に関する私どもの考え方、最後に改正案と首都警察との関係につき、この点につきまして簡単に申述べてみたしと思います。現在東京都は御承知のごとくに先般新聞で発表になりましたごとくに、人口七百五、六十万の大都会でございまして、特に警視庁の管轄いたしておりまするところは、二十三区六百数十万の人口を擁しておりまして、世界第三の大きな警察でございます。警察の定員その他から申しますと、恐らく世界第一の大警察ではないかと存じております。昭和二十八年度の都の総予算八  百三十一億八千四百四十四万のうちで、警視庁で使つております予算が百七億六千七百十万という厖大な経費をかけて現在首都警察運営に当つております。然らばこの都総予算のパーセンテージはどうかと申しますると、一二・九四%の割合に相成つております。かくのごとくこの大警視庁を運営いたす場合におきまして、現在百七億の大きな予算を使つてつておりますそのうちに、先年来私どもがこの首都警察として警備警察に要する経費について相当国家的事務も若干やつておるので、これに対して何らかの助成をして欲しいというような要望をいたしたのでありまして、その結果昨年度におきましては四億八百万円くらいの国家助成を頂いております。それを差引きますと、結局百三億程度のものがすべて都民税を財源とする都費を以て運営をいたしておるのでございます。  そこで現在この警視庁の扱つておりまする一体国の仕事と都民生活に直結した警察事務との割合はどうなつておるかということをいろいろ研究たのでありまするが、この点は非常に調査の方法、或いはその狙いによりまして非常に動くのでございます。予算面から申しますると、国の費用と認むべきものが全体の七%でございます。それから先ず直接個有の国の警察事務をやつておると認められるものが、大体八・一%ということになつております。それからいろいろ事務を一体この都民生活と首都警察事務というものがどこで区別できるかということが非常にむずかしいのでありまして、概算的にこれを仕業の内容とか本質とかそういうものから比べてみますると、先ず全体の一五%乃至二〇%の間が一応国の事務ではないか、あとの八〇%乃至八五%が直接都民生活に直結した警察事務ではないかと、かように一応判別ができるのであります。併しながらこの判別も必ずしも正確なものではないことを念のためにお断り申上げておきたいと思います。  そこで、現在警視庁の首都警察の特異性というものはどういうことであるかと申しますると、これは私が六カ年の警視総監としての今までの経験から申上げるのでございますが、これも考えようによつては又違つて来るかも存じませんが、先ず首都警察としての重点は、御承知のように首都は政府があり、又これに伴うところのいろいろな諸施設がある。或いは国会関係、或いは外国の大公使館もございまするし、又皇居もある。或いは駐留軍の重要な施設もある。そのほかいろいろ国家的の施設もございまして、これに対する警備、警戒、これは最も重要なものでございます。或いは又政府の顕官要路の身辺の警戒、こうしたものも或る意味においては国家的事務であり、首都警察の重要なる仕事であろうと考えております。そのほか政府の所在地であるが故に、これに対するいろいろな運動、陳情、或いは集団運動、集団陳情といつたようなものがありまして、これに対する警備警戒の取締り、こうしたものが相当頻繁に行われております。従つて他の都市では見られないような特別な或いは集団陳情、或いはデモというものが頻繁に毎日繰返されておる。これに対する取締りというものは、これ又首都警察一つの特徴であろうと考えております。そのほかに首都警察としましては、特に他の公安関係仕事、或いは検察庁、公安調査庁、国警本部、そのほか入国管理庁であるとか、いろいろな治安関係当局との連絡の上において仕事をやつて行く、これも首都警察の特異性でございましよう。そこで私の考えますのは、この首都警察というものは二つの意味がある、警察的に重要なものが二つある。一つは今申上げたように警備警察とか、直接警察活動の意味においての首都警察重要性、こういうものがあろうかと思います。又或る意味においては、もう一つの意味におきましては、政府の重要政策を遂行して行き、それを推進して行くためにはどうしても地元に強力なる警察設備がなければならん、この意味の首都警察というものはややもいたしますれば、政府の直接指揮下にある私兵化した警視庁、こういうようなことも応考えられないことはないのでありまして、私ども首都警察としての重要な意義は前者にあると思うのであります。若し政府がさようなことを考えることは、これは又誤つた考えでありまして、これは飽くまで首都を守る、警備を行う警備警察に重点を置く、政府の重要施設を守る、これがいわゆる首都警察の重要なる意義でありまして、政府の育つていることを必ず警視庁がこれをやらなくちやいかん、何でもかんでもやらなくちやいかんというようなものではないのでありまして、要するに首都警察重要性と申しまするのは、前者の警備警察、公知警察、こうしたものに重点を置かれまして、それを主とした警察でなくてはならん、かように思うのであります。かような意味におきまして、昨年度は四億の経費を国から頂いておるわけであります。  それから時間がございませんから、次に今回の警察法改正につきまして、我々の持つておる考え方を簡単に申述べさして頂きたいと存じます。御承知のごとくに、昭和二十三年に新らしい警察制度ができたのでありまするが、この間に皆様も御承知のように、非常に大きな公安事件が全国に発生いたしました。この発生した場所は、大体におきまして大都市でございます。それだけ大都市というものが治安の上に重要なる地位を占めておるということがこれによつてわかるのであります。勿論これに対する処置といたしましては、或いは全部が全部非常に満点である警備をやつた、或いは措置が非常によかつたとは申上げかねるのであります。中には失敗もあり成功もあつたのであります。併しながら六カ年間における大きな国内の治安確保に我々の今までの尽しましたいろいろな努力、又いろいろな払われた苦心というものは想像以上のものでございます。御承知のように我々の部下の印藤巡査は一部の者に或る思想犯罪の上におきましてこれは撲殺されました。又札幌市の白鳥警部はこれもその犠牲者の一人でございます。そのほか数々のいろいろな苦しい死闘を今日まで続けて参つて、漸く今日の治安の安定を得ているのでございます。従いまして、私どもが主張したいのは、今日までの治安確保は一体誰がやつて来たかということであります。この点を是非一つ御認識を願いたいと思うのであります。勿論国家地方警察もやるのであります。併しながら実際に血を流し、本当に犠牲者を出しながらやつて来たのは都市警察でございます。今までのこの尊い経験、尊い体験、それをこの警察法の上にやはり生かして頂くことが本当の私は警察法の改正であろうと思うのであります。然るに今回の警察法の改正につきましては、自治体警察側の意見というものは全然聞いて頂かれないのであります。私は非常にこの点は悲しく思つておるのであります。我々の今まで払つた六カ年の苦心努力というものは全然それが採用されていない。又仮に採用されなくとも私ども意見を聞いて頂くということだけで、我々は欣然として警察法の改正に協力をせねばならん立場にあるのでございます。曾つて大橋前法務総裁が、私どもが参りましたときに、総裁は政府が法案を作るときには業者の意見なんか聞いたことがないと言つたのであります。これに対しまして、又半面におきましては、警察官が業者だと言つたような義憤も感じたのでありまするが、併し物は考えようでありまして、この表現も又或る意味においては極めてユーモアに富んだ表現だつたと思います。まあ仮に大橋前法務総裁のおつしやつたことが我々が業者であると仮にいたしました場合において、国家の治安を確保する業者は二つある。一つ国家地方警察本部であり、又一つ自治体警察でございます。この二つの業者がある場合に、この業者の組織を根本的に改訂しようとするこの大きな警察制度の改革に、一つの業者の意見を聞いて他の一つの業者の意見を聞かないということは、これは少し政府として余りにもひどいやり方ではないか、これが私どもの受ける感じでございます。私どもの仮に意見が聞かれましても、その意見の殆んど大部分は聞かれない、採用されないかも知れません。されなくても我々はそれでよろしい。聞いて、頂くということだけで我々はそれで以てよろしいのであります。それが全然聞かれずに極秘のうちに作られた、こういうことは本当に私はこの警察制度を作る上において将来大きな禍根を残すのではないか。かように考えております。(「同感だ」と呼ぶ者あり)警察制度が閣議で決定せられました後に国警の或る課長が私のもとに参りまして、是非国警長官が自治体警察幹部のかたに会つて懇談をしたいというお話がございました。私は地元の警視総監でございまするので、結構だ、それでは一つみんなと諮つて全う、こういろいろやつてみましたけれども、やはり私どもとしては、すでに閣議で決定されたもので、我々の意見を如何に開陳してもそれは変更されない、そういうものに我々が御相談あずかつても何にもならんじやないか、かような意見が全部を支配いたしまして、私も止むを得ん、遂に国警長官との折角の会見の申込みがございましたが、これを拒否せざるを得ないような羽目に陥つてしまつたのでございます。かような意味におきまして、私は本日の改正につきまして、こうした改正案が通るということは将来の警察に大きな禍根を残すということを私はここで申上げてみたいと思うのであります。  次に、首都警察と改正案との関係でございまするが、三多摩地方は非常に人数が少いので、従来もこれは警視庁に入りたいという地元の希望、警察官の希望もございましたので、これを一つにまとめて頂いたことは私はこれでよかつたと思します。併しながら人事の面におきまして、およそ民主警察の根幹は人事の中立にあると私は考えております。先ほども佐敷警察署長選挙干渉のことをいろいろ具体的に申述べましたが、これも人事の独立があつたならば、私はああしたことは、あんな不幸なことはなかつたと感ずるのであります。今回の警察法の改正におきまして、私は飽くまで人事というものを筋を通して人事を独立する、併しながら絶対の独立はいかん、或る程度公安委員会に、地方の公安委員会に自主性を認める、そうして中央がそれに同意を与えるとか或いは中央において或る程度コントロールする、それで十分に警察の人事というものは中央において、たとえ地方の公安委員会がこれを持ちましても、絶対にその人事というものは、或る意味におきまして予算を持ち、或いは通信を持ち、教育を持ち、鑑識も持ち、あらゆる面におきまして又指揮命令権を持ち、指示権を持ち、或いは中央において警察長の罷免権を持つてつたならば、人事統制はたとえ形式的に地方に移譲をいたしましても、絶対に私はできるというような確信を持つてつたのでございます。併しながら今回の改正はそれが十分にできませんで、誠に残念でありまするが、少くとも私の所論といたしましては、人事の独立を持ち、それによつて警察が民主警察の基盤を築き、而も警察は従来ややもいたしますれば、自治体警察はどうも国の政策に副わないような活動をするのではないかというような護りもございましたが、少くとも私は自治体警察官は国家地方警察官と同様に国家のために、社会のために、公共のために身を犠牲に供するというその精神においては全部の警察官が皆同じであろうと私は考えております。  どうかさような意味におきまして、私は今回の警察法が仮にどうなるかわかりませんが、私といたしましては、この人事の中立性がこの民主警察の基盤であるということを申上げまして、私の説明を終りたいと思います。
  13. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちよつと議事進行についてお願いがある、意見がある。只今までの三人の参考人の御陳述は今度の警察法改革についてのそれぞれのお立場からの御意見、それからあとに残された三人の参考人のかたの御意見は、陳述は今度の警察法の中に勿論盛込まれておる警察大学の教育の内容についての御陳述ではありますけれども、多少趣きが異なつております。相当もう最初の陳述から時間が経過もいたしておりますので、能率的に議事を運んでもらいますために一応ここで一区切りにして頂きまして、そうして以上三人のかたの御陳述に対して質問を許して頂きたい。
  14. 内村清次

    委員長内村清次君) わかりました。どうですか。
  15. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 今の秋山君の御意見に私は異議ないのでありまするが、その三人の陳述に対する質問は打切りとしないで、あとの二人のかたにも関連がある場合には又質問をするというふうにして頂きたい。
  16. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 この間の理事会でも大体お打合せがありましたように、一応五人のかたの陳述を終りましてから、いろいろ関連した、今若木さんのおつしやるように関連することもあると思いますから、先ずこの通り進めて、最後に質問にされたいと思います。
  17. 内村清次

    委員長内村清次君) どうです。秋山さん、今のように若木君の発言もありましたが、どうせ参考人のかたもここに一緒にいらつしやいますから、やはりこの質疑終了までおられますから……。まあ今の三人のかたの問題は、これは警察法に関するところの各自治警の、まあ委員長としまして参考人を呼びますときの、あの状態おきまする人口と警察の問題の段階における参考人でございますから、これと一緒にしまして、委員かたがた質疑をされるようにしては如何でございますか。
  18. 秋山長造

    ○秋山長造君 了承。
  19. 内村清次

    委員長内村清次君) よろしゆうございますか……それではそういうふうにして進行いたします。  名古屋警察本部長宮崎四郎君。
  20. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 委員長にちよつとお伺いしますが、私の題名は何になつておりますか。
  21. 内村清次

    委員長内村清次君) あの中にありましたように、警察法案に関連していわゆる警察における特高訓練の問題、あの問題について参考意見を聞きたいと思います。
  22. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 私名古屋警察本部長宮崎と申します。  名古屋市の警察が独立しましてから今日まで六年半になるわけであります。私がここで詳しく説明いたしませんでもすでに御承知かと思いますが、現行警察法の中に非常に大事な点が三つあると思うのであります。組織が地方分権的になつていることが一つ、それからもう一つ運営を民主主義的に行うということが一つ、それから国民の自由或いは権利を極度に保護する、尊重するという建前になつているかと思うのであります。一般的な警察の組織或いは運営の民主化の点につきましては、これは法律できまりました通り全国的に行われております。又警察の実際を動かして行く警察活動の根本方針についても大体全国的に法の要求する通りに行われていると思うのであります。私どものおります名古屋おきましても、この点につきましては特に注意をいたしまして努力をしているわけであります。結局戦前のように権力的な警察よりも、国民或いは市民との間に温かい血の流れのあるような警察を作るのがいいのではないかというように考えるのであります。警察と国民が一体となつて初めて仕事ができる、かような考えを持つているのであります。そういう方針で、まあ簡単に申しますれば警察法の前文、或いは第一条、そういう大事な方針をそのままに一つ守り抜くというように行かなければならんものかと私は考えているのであります。大体警察は法の執行者であるわけでありますから、そういうような立場にあるのはこれは当然だと思うのでありますが、同じ法の執行につきましても、権力的な考え方よりもサービス的な考え方、そういうことが、実際は警察本来の仕事をやつて行くのにいいのではないかと、こういうようにつねづね思つており、大体まあできる限りそういう努力をしているつもりであります。まだまだ至らないことを恥じる次第であります。  そういう建前でやつてきて参りました大体一般的な治安を名古屋についてみてみますると、おおよその市民のかたの御理解と御協力によりまして、大体合格点をとつているように私は考えているのであります。ところがそういうやり方をしておると、国の全体の治安に関するような場合にうまく行かんのじやないかというような御心配があるようにも見えるのであります。幸いにそれらの方面につきましてもそれぞれ努力を重ねまして、一応或る程度大きな事件もなくはなかつたのでありますが、そういう事件についても一応の解決をすることができまして、大体御期待に副い得たかと考えております。今日までそういうつもりで仕事をして来ておるのであります。  昨年の初めに実は問題になつておりますような教養に行つた者がおる。その者が帰つて参りまして、私に報告するところを聞いておりまして、私やや疑問を持つたのであります。法の執行者として、或いは国民と共にある警察としてというような立場から、やや疑問を感じておる点もありまして、名古屋については、そういうことの中で私が必ずしも穏当でないというように考えるものについてはこれを行わないようにして今日までやつて来たわけであります。そういうようないきさつがありますために、又そのことが世間にも出ておりまして、今日私が特にここに呼出されたかと思つておるのでありますが、そういう進み方をしておるところに今度の法律改正が出たのであります。修正案によりますとやや変つたのでありますが、政府提出の原案におきましては、全くの中央集権警察であるように見えたのであります。全くの中央集権警察法律ができて、今までの民主的な警察から全く性格的に変つてしまうというように私非常に驚いたのでありますが、そういう根本的な変革をしないでも、日本の治安を維持するという立場から申しますれば、地方的な問題の解決のためのことは従来通りといたしましても、国家的な治安を解決するという立場から考えましても、必ずしも政府原案に見るようにまあ極端な中央集権をおやりにならないでも私できるのではないか、かように考えておるわけであります。殊に、これは私個人の考えかもわかりませんが、私といたしましては、警察というのはできるだけ権力的でないというところが生命かと思うのであります。場合によつては権力を強く打出して実力を行使しなければならん場合もありますが、警察仕事の中にはたくさんのサービス的な性質のものもあるのであります。そういうところをうまく運営することによつて市民と警察との間に、まあ血が流れると申しますか、そういう共感が湧けば、私は権力を伴う、或いは実力を必要とするというような事態に対処しても、そのとき市民なり国民の非常に大きな援助々得ることができる、協力を得ることができる、御支援を得ることができるというようなことで、問題の解決が私行われるのではないかと思うのであります。そういう意味で考えますと、私サービスという立場から考えますと、今度の案にありますような府県に統合をされますよりも、市町村の警察として残しておくほうが実はサービスという立場からすればいいんじやないか。県政でいろいろ仕事をしおられる、いろいろ市のほうにも仕事がある。よく内容を見てみますと、県でなさつておる仕事よりも市町村でしておる一般の仕事のほうが実は住民に対しては直接的であり、又大部分がサービスに繋つておるもののように思うのであります。警察おきましても、まさにその通りすることのほうが実はいいのではないか、かように考える次第であります。ところが原案を提出せられました政府、或いは国警の挙げられておりまするような、或いは非能事だとか或いは小さ過ぎて仕事ができないとか、いろいろ理由が挙げられておるわけでありますが、それらの理由も当らないわけではないのであります。あまりに小さいために却つて警察本来の仕事ができにくいというようなところもなくはないのであります。又自警連としましては、六年の間に非常にたくさんのお願いを政府にしたわけであります。これは主として財政を確立する、警察の財源を頂きたいというような立場からであつたのでありますが、それらに対してももう殆んど手を打つて頂けないというようなために、財政難から投げ出したいというようなところもなくはないというような状況であります。併しながら若し財政もできる、或いは市民も要望しておる、そういうような所で希望的に見て警察の力を発揮するに都合がいい、或いは適当であると思われるような警察であつたならば、それをその市に残しておいたほうが私は県にお取上げになるよりも、先ほど私の理論として申上げておりまするサービスに通じておるということからいいんではないか、かように考えておつたのであります。今度の法案がそういう点を抹殺いたしまして、一本の警察になるということになつておるわけでありますが、その提案者が先ほど申しました特別な講習をやつておられる向きと同一であるというような点で、これは非常に大きな問題のようにも私考えますし、そのことは実は将来の日本警察のために、或いは日本の全体の政治のために非常に心配になると、かように考えるのであります。このことを表面だつてまあ訴えるというわけに行かないものですから、非常に困つたことになつておるわけであります。私は法案の反対をまあ今日までやつて、今もやつておるわけでありますが、この法律は現行法に比べまして、非常に中央集権的な警察ができ上りつつあるというようなことに非常な心配を持つておる。もう一つは、この法律が、まあ私だつて考え方が違うようなのでどうかと思うのですが、そういう……。
  23. 内村清次

    委員長内村清次君) 宮崎君ちよつと時間が大分迫つて来ましたから……。
  24. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) そういう関係かたがたが御提案になつておるので、私にはちよつと理解がしにくいかと思います点もあります。いずれにいたしましても、私が聞いて知つておるようなことがありますと、非常に困つたことだ。そういうものがその中央集権的な警察の中を運用するのに一緒について廻るならば、私は日本の警察全体のために非常に心配になるというように考えておりますので、そういうように一つ了解をお願いいたしたい。
  25. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは次に国家地方警察警部村松栄君。
  26. 村松栄

    参考人村松栄君) 委員長にお聞きしますが、私のお話することは、内容は何か題目を……。
  27. 内村清次

    委員長内村清次君) あなたは警察大学のほうにおつて生徒として行かれましたが、そのときのいろいろ教授の方法だとか、それから又これは新聞その他で見られたか知りませんが、手紙の秘密の開封の問題だとか、そういうような問題の教授と、あなたの生徒として受けた内容につきましてお話を願いたいと思います。
  28. 村松栄

    参考人村松栄君) 私は先ず私の経歴を申上げますが、私は昭和十二年の十月の拝命であります。それから駐在の受持ちを約三カ年やりまして、それから内勤になつて警防係或いは統計司法補助、それから巡査部長になりまして、経済係をやりました。それから警部補になりまして、次席、それから教養課勤務、それから警察学校教官、それから司法主任等をやりまして、昭和二十六年の二月から警備課勤務となつて現在に至つております。  お話教育の問題でございますが、よく特高教育と申しますが、私は特高教育とは思つておりません。警備の情報収集の要領について教授を受けたわけです。その受けた時期を申上げますと、昭和二十七年の四月初旬から五月の終りまでの大体二カ月でございました。それでその内容を申上げますと、大体二カ年も前のことでいろいろ記憶をよみがえらしておりますのでありますけれども、大体の基本教育と申しまして、これは情報の、いわゆる日共の革命勢力の戦略戦術とか、或いは国際問題とか、そういうものの教育が大体一カ月以上、大体五週間くらいと記憶しております。五週間か六週間だと思いますが、そのほか技術訓練を受けたのが大体一週間くらいだと思います。そのほか尾行、張込みとか、実科がありましたので、その技術訓練が大体只今申上げた通りであります。その技術訓練の内容でありますが、尾行、張込み、それから写真撮影それに封筒のあけ方でございますとか、(「大きい声で言つて下さい」「はつきり」と呼ぶ者あり、笑声)それから鍵のあけ方、(「ひどいもんだな」と呼ぶ者あり、笑声)こういうものについて教育を受けました。併しその教育を受ける前提といたしまして、例えば封筒のあけ方につきましても、これは一つの協力者がおるわけです。これは当然協力者が前提になりまして、その協力者が封筒を持つて参りまして、その内容を協力者が大体わかつておりますので、それは何か機関紙が入つている、印刷物があるからあけて見て下さいと協力者から言われてあけるように教わつておりますので、(「スパイ」と呼ぶ者あり)これはやはり法律まで犯してそういうものをあけてはいかんということを厳重に注意をされておるのであります。(「法律を犯しているじやないか」「だまつて聞け」と呼ぶ者あり)そうしてその時間を申上げますと、時間数の多い技術訓練は尾行、張込みとか写真とかそういうものが多くて、大体そういうものを教わつた時間は、本当に講習の一部の、五週間か四週間と記憶しております。従つてそこにおいて実際に身につけて帰るということはなかなか不可能であると思いまして、只今でもそういうことはやつておりません。(「身につけばやるのか」と呼ぶ者あり、笑声)大体の内容を申上げますと、以上の通りであります。
  29. 内村清次

    委員長内村清次君) 一応参考人の陳述は終りましたから、各委員質疑を願います。
  30. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 只今の最後の村松君の問題につきましては、後刻更に詳細に承わりたいと思いますが、最初警視総監まで三人のかたがた宮崎君の発言も大体都市警察存置、若しくは従来の国家警察の誤まりということに大体意見が集中されておると思いますので、そういう点につきまして二、三御質問申上げたいと思います。  第一に、山下佐敷警察署長にお伺いいたします。大変興味のある御発言を聞かして頂きまして、我々も非常に感銘いたしました。我々も実はその当時の警察の被害者でありまして、いつもそういう警察のいろいろ内輪的な事情から我々は弾圧を喰つて来たのであります。併しお話のような警察の内輪話、裏話というようなことは、実際にそういう方面にタッチする機会もございませんでしたのでよくわかりませんでした。そこでお伺いいたしたいことは、熊本県は由来非常に政争の激しい所であるということでありますが、これは山下署長が経験されたことは熊本県独特な傾向でありましようか。或いは山下君のお友達などにおいて、他の府県におきましても大なり小なりそういつた傾向があつたということをお聞きになつておりますか、この点先ず第一に伺いたいと思います。
  31. 山下金作

    参考人山下金作君) お答えいたします。そういうようなことは熊本県の特殊事情だろうという疑問もおありのことと思いますが、併し決してそうではありません。これは日本全国大同小異であつたと私は思つております。それはどうしてかと申しますと、私の同僚や友人が、熊本県は余り政争が激しいから、大変であると言うて、鹿児島県、福岡県、高知県、大阪府に出向したり或いは復活したり、又新規に友達が採用された者がありますが、この同僚に私も、「どうも熊本県は激しうしてやりにくいから、よそに世話してくれ」と言つて頼んだことがありますが、その友達が言うには「熊本県があつさりして露骨にやるけん、却つてよかばい。(笑声)他府県なら内輪に内訂してやりにくかけん、又よそは苦労が多かけん、そこで辛棒しろ」と言うてくれた人間ばかりでなくして、却つて熊本県に大分県から逆戻りして来たというような、これは私は名前もはつきりあとで書面ででも申上げますが、帰つて来た私の同僚があります。そういうところからいたしますと、いずこも同じ秋の夕暮という言葉がありますが、(笑声)全国殆んど同じであつたと私は思つております。
  32. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、それは政争の激しいという熊本県の特殊的な事情ではなくて、山下署長がその当時お聞き及びの、少くとも全国的な一つの傾向であるということは了解できるわけであります。新婚早々の山下署長が、その当時においてそういう一つの指令と申しますか、全国的な通牒、通達というものがあつたものであろうということは想像はできるでしようが、どの筋から一体そういう通牒なり、通達なりというものが出て来たというようにその当時お考えになりましたか。
  33. 山下金作

    参考人山下金作君) 私はその当時は監督者でもありませんし、又勿論署長でありませんから、その筋ということはわかりませんが、選挙の筋といいますと、地方には部落々々に、まあ今でいいますとボスといいますか、顔役がおるのであります。その顔役が又巡査に対して、お前たちは働かんば首切ららるぞと言つておどかします。実際私が体験したことでもおどかされておりましたが、なにやあ、あんなことを言つたつてできるものかと言つて、たかをくくつてつたところ、あに図らんや、人吉から植木の警察に三日たたんうちにその人の言つた通りに転任させられ、そうして途中で電話がかかつて来て、警務課長の前に出て来い、出て行きますと、お前はときの侍、火の奉行、お上に逆うとやめさせてしまうぞ、そうして今度働かす、失敗したならばやめさするけん、今度一生懸命でもり返せと言つてやられた事実からいたしますというと、どうも私は中央の上からずうつと下のほうへ部落の幹部まで来ておつたろうと思つております。
  34. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私たち選挙のときには、まあ以前の警察でありますが、選挙をやるときには、政府が変れば、警察部長から下は駐在所の巡査に至るまで全部変るんだ、勝てば官軍負ければ賊軍、源平の戦いそのままであるということは、選挙の演説のときによく雷つたもんでありますが、今のお話によりますと、上からずうつと来たというお話でありますが、(笑声)その当時においてそういう指令が上からずうつと来たということを御自身でお気付きになつておられましたか。
  35. 山下金作

    参考人山下金作君) 十分私は気付いておりました。それでもうこれはお上のほうから来ておるのだから、その通りしなければやめさせられて飯が食えんから一生懸命やるよりしようがないといつて、泣きの涙でやつておりました。或る時のごときは、もうお前はやめさせる、これは昭和六年のときでありましたか、やめさせる、それでお前は今度はやれ、やらにややめさせるぞというようなことで植木へ行きましたが、植木で、幸いなことには、丁度昭和六年の十二月に政変がありまして、今度は若槻内閣がぐらつとひつくり返つて犬養内閣ができた。いい按配だ、今度は命が助つた、(笑声)それから浪人しておつた警務課長が復活してやつて来て、そうして、おい、山下、干渉したけん首だと申されるので、どうぞ助けて下さい、一生懸命やりますからというようなことを言つて転任させられました。そういうところからいたしますと、私はその当時からずうつと上から来ておつたと思います。
  36. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 戦前のことは大体それでわかりました。私たち警察法を審議している場合におきまして、政党の勢力が警察の中に介入して来ることはないかということを心配しておるのであります。話を返しまして、それでは今は山下署長自治体警察署長であろうと考えます。或いは町長の選挙でありますとか、或いは町会議員の選挙その他の選挙において、誰かからやはりそういうボスのような人から選挙に手伝つてくれとか、或いはそういうことをお聞きになつたことがありますか。それとも自治体警察になつてから選挙に何も関係しなくて非常に気が楽になつたとお考えになりますか。
  37. 山下金作

    参考人山下金作君) 現在は私の所の公安委員長は宗教連盟の理事長をしておられまして、布教師をしておられます。そしてほかの委員の方も、政党には何も関係のない本当の事業家のお方でありまして、常に町長の選挙、或いは町会議員の選挙には、どつちにも片寄つてはいかん、それをあなたがするとやめさせられる、あなたが中立で厳然としてやれば首は大丈夫じやけん、私どもに委しておけというお示しでありますから、私は非常にこれは喜んで、こぎやん警察ならどぎやんしたつて首は大丈夫よかばい、昔の警察のごとき、何もわからん、新聞も読まん人が、ただ政党に属しているというだけで、働かんばやめさせるばい、今度の巡査は大体そつちのほうに働くどろかというようなことを言われておりましたが、私は現存非常に気が楽になりまして、大丈夫、これで本当の警察ができておると、こう思います。  そこで先まで申上げますが、今度若しこの警察法が通つたなら、私は余命幾ばくもない警察官としての生命は、もう五十八歳でありまするから、杖突つばつて警察署長をするわけに行きませんから、六十一までもやつたら大手を振つて私はやめても差支えはございませんが、後輩の警察官諸君が私のような苦しみを受けるかと思うと、私は残念でたまりません。(拍手)
  38. 秋山長造

    ○秋山長造君 宮崎参考人なり村松参考人への質問あと廻しにいたしまして、先に御陳述になりました田中警視総監へ数点に亘つて質問いたしたい。先ほどのお話によりましても、戦後の日本の警察力の中心国家警察よりも自治体警察にあつたということも、数の上からして余りにもはつきりしております。又大きな犯罪か主として大都市中心に起つておるという実情から考えましても、戦後の治安維持のために自治体警察が果した役割は誠に大きかつた、これもよくわかります。  そこでお尋ねいたしたいのは、田中警視総監は全国の自治体警察の協議会の会長をしておられるはずでありますからして、政府の今度の警察改革に対する提案説明によりますと、従来の国家警察自治体警察と、どちらも仲よくやめさして、その中間をとつて都道府県警察を設置するのだ、こういう説明なんです。そこで当然全国の自治体警察の協議会長という重要な仕事をしておられる田中警視総監に対しまして、或いは又警視総監の背後にある全国の自治体警察に対して、今度の警察改革につきましては当然政府側から折入つての御相談なり御協議なりがあつて然るべきものと私どもは考えておつた。当然あつたものと考えておつた。にもかかわらず、今の御陳述では全然そういう協議も相談もなしに、一方的に国警側におきまして立案をされたのが今度の警察法であるというような御説明でございましたが、本当に全然政府側からも、国警側からも、今度の警察法の立案については何の相談もなかつたのかどうか、その点先ずお尋ねしたい。
  39. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 今回の警察法の改正法案は、先般犬養法務大臣の議会におきまする説明要旨を私も何回も熟読玩味をいたしました。その中には、従来の国家地方警察自治体警察とを廃止して、ここに新たに自治体警察である府県警察を新らしく作るのだと、かように言われております。私もこういうことが本当に行われるならば、大変これは警察の将来のためは勿論のこと、国民のためにも結構のことであると喜んでおつたのであります。ところが、さてこの政府原案をよく拝見いたしますると、絶対に私はこれは自治体警察でないと断言いたします。何となれは、自治体警察というのは人事の独立があつて初めて自治体警察なんでありますが、現に国家地方警察本部においていろいろな事務がどしどし進められ、現に警視庁の機構におきましてもどしどし事務が進められておる。私どもには全然相談はございません。併し我々もこの場に当つて八十年の伝統を持つておる警視庁が勝手にお隣りの人の手によつてどしどし改組されるということは、我々先輩に対して申訳ないという考えから、事務的に国警本部のほうにはお願いいたしまして、私ども意見をこういうふうに採用してもらいたいということを国警本部のほうには申入れをしてございます。国警本部におかれましても、警視庁の伝統を尊重されまして、いろいろと御勘案を願つておるようでありまするが、併しながら今の原案を拝見いたしまして、誰か何と言いましても、これか自治体警察であるということを誰が断言できると思いますか。私は絶対にこれは自治体警察でないと断言いたすのであります。殊にこの人事というものが公安委員会の手に委ねられ、公安委員会において行政管理、運営管理を行われてこそ初めて自治体警察でございます。警視総監が中央から任命せられ、それから又府県の本部長が中央から任命せられる、殊にこの警視正以上が国家公務員であり、それから又警部以下が地方公務員である。これはおのずから意識的に国家公務員と地方公務員だというお互いの感じがあるわけでございます。結局地方公務員というものが国家公務員に管理されるというような言わず語らずのうちにそうした感じを持つのでありまして、こうした点からも私は国家公務員が天下りになつて来ると……。仮に国家公安委員会が地方の公安委員会の同意を得るといたしましても、その形式は同意を得ることにいたしましても、やはり主体性は地方の公安委員会に任免権を持たせるごとによつて府県警察というものが自治体警察になる、かように私は考えておるのであります。  それから次に今までのこの重要なる警察制度の革命ともいわれる今日のこの制度改革に、一体八万五千の現有勢力を持つ自治体警察に相談があつたかという御質問でありましたが、私は冒頭に申述べましたごとくに何らの相談もございません。先ほど申述べましたごとくに閣議の決定になつてから後に一度協議をしたいという話がございまして、私も何とかして一つ協議会を進めたいと思いまして、自治体警察署の諸君にいういろいろと苦心をして、何とか協議会を計らおうじやないかということで努力をいたしましたが、結局それは水泡に帰しました。結局拒否することに相成つたのでありまして、私どもといたしましては、この大きな制度改革に八万五千の自治体警察官の意見も全然入れられずにこの制度が進められておるというのは少し無謀ではないか、かように私は考えるのであります。
  40. 秋山長造

    ○秋山長造君 で、繰返して申上げますが、政府は我々に御説明になつたところでは、従来の国警も従来の自治警も仲好くやめてどちらを主にし、どちらを従にするということでなしに、仲好くやめて二つ加えて二で割つて、そうして中間をとつて都道府県警察を作るのだと、だからどちらにどうということがないのだという至極公平な御説明があつたのです。ところが、今首都警察に重任を帯びておられるあなたのお話では一言半句の御相談もなかつたと、こういうことになりますと、名前はどうでありましようとも、実質的には従来の五万前後の国家警察に八千五千という厖大な陣容を擁しておるところの自治体警察が一方的に吸収されたと解釈してよろしいのでございますか。
  41. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私は吸収されたとは存じませんが、とにかくこの自治体警察の根本義というものがここに若し政府の原案のような、修正されたような意見で仮に行くといたしましても、相当大部分の自治体警察の根本原理というものはここで壊滅に瀕したと、その意味においてはその国家地方警察に吸収されたというような結果になるのでありまするが、私どもといたしましては吸収されたという感じは持つておりませんが、結果におきましてはそういう形になつたことは誠に遺憾に堪えないと思います。
  42. 秋山長造

    ○秋山長造君 吸収されたというのは、もうすでに完了したことで言葉がちよつと不適当でありますが、今度の警察法を強行すれば、自治体警察が従来の国察警察に実質上吸収されることになるであろうというように解釈してよろしゆうございますか。
  43. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私はさように解釈いたしております。
  44. 秋山長造

    ○秋山長造君 その場合、私ども非常に疑問を持つのですが、あなたがたにいたしましても、従来独立独歩の立場におきまして治安の重責に当つて来られたはずなんです。にもかかわらず、あなたがたに何の相談もなしに一方的に吸収されるというような事態になる前に、なぜあなたがたのほうで政府なり或いは国警当局なりに対して厳重な抗議を申込まれなかつたのか、余りにも私は無責任じやないかと思うのですが、その点は如何ですか。
  45. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 大変御尤もな御意見でございます。大体におきまして、この政府原案が閣議において決定をせられました以上は、我々といたしましても、政府その他に陳情いたしましてもこれは無駄であると考えております。それは従来の警察法の改正の数次の経験からいたしまして、政府が一遍きめた以上は我々自治体側が如何にその陳情いたしましても、なかなかその原案というものが変更にならんことは、数次の警察法改正によつて明らかな事実でございます。で、さような点から考えまして、今後は主として国会方面にいろいろ我々の意のあるところをお伝えいたしまして、御了解を願つて、そうして、この自治体警察というものを存続させて参頂きたいという意味から、今まで国会方面にあらゆる手を尽しまして、又各方面の御協力を得まして、国会方面に陳情、陳述その他あらゆる手段を尽しまして、今日まで運動を展開して来た次第でございます。
  46. 秋山長造

    ○秋山長造君 只今の御発言によりまして、今度の警察法の立案につきましては、従来は国警当局と自治体当局との間に何ら民主的な協議は行われていない、一方的に強行されておるのだという事実はよくわかります。で、そこで更に、すでにこの警察法案に基きまして、着々当局においては一本化の準備が行われておるというお話でありましたが、身分の切替えなり、或いは三万人を整理するというこの整理の問題なり、更に又事務の引継ぎなり、そういうような問題についても民主的な協議の機会というものは与えられておるのですか、それともおらないのですか、その点はつきりして頂きたい。
  47. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 勿論これは国警察といたしましても、いろいろな都合から正式に我々のほうに向つて協議会を開催するというようなことはございません。止むを得ませんので、私のほうのその方面を担当しておる課長を国警本部のほうに差し出しまして、そうしていろいろと事務的な打合わせをやつておると、かような方法で今折衝を続けておるような次第でございます。
  48. 秋山長造

    ○秋山長造君 問題を少し変えてお尋ねいたしますが、警視庁は何と申しましても、この全国人口の十分の一という大東京の治安をあずかつておられる。その機構においても、又装備、人員においてもこれは世界屈指というような大規模なもののようであります。で、その責任をとつてつて来られましたあなたに対して、従来いわゆる政治的な男というか、いろいろな方面からする政治的な圧力というものがかかつて来たことがあるかないか、これは率直にお尋ねしたい。
  49. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 只今の御質問に対して、はつきりお答えいたしまするが、この民主警察の有難いところは、中央の政治的な勢力というものが全然かからずに、飽くまで厳正公平、中立な立場におきまして、首都の治安確保、警察組織、公務を忠実にやることができましたのは、これは全く私はこの民主的な警察制度の一つの恩典であつたと、かように考えまして、従来中央からの政治的な圧力とか、或いは圧迫とか、そういうものは全然過去六カ年有余になりまするが、受けたことはございません。
  50. 秋山長造

    ○秋山長造君 昨年の末以来、世論を非常に騒がしておりますいわゆる疑獄、汚職事件、この問題については、御承知通り検察権に対しまして、検察庁法十四条の指揮権の発動をいたしまして、これ又非常な輿論の反撃を買つているわけなんです。あれらの問題については警視庁においても、警視庁の立場において捜査に従事されたと思うのでありますが、あの指揮権の発動に類するごとき政治的な働きかけなり、圧力というものはあなたにかからなかつたかどうか、その点更にお伺いしたい。
  51. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 警視庁におきましては、当時検察庁と協定をいたしまして、造船疑獄は東京地方検察庁においてこれを取扱われる、警視庁においては陸運関係の疑獄を取扱うことに方針をきめ、又保全経済会並びに日殖関係の詐欺横領事件等につきまして、捜査を進めたのでございます。これにつきましては、先ほど申しましたごとくに、少なくとも警視庁に関する限りは何らの中央から、外部からの圧力、圧迫、そうしたものは一切ございませんで、現有もなおその警視庁の捜査方針に基きまして、鋭意捜査を実行いたしている次第であります。
  52. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点はわかりましたが、成るほど政治的な圧力というものはなかつたというお話でありますから、一応その点了承いたすよりしようがございません。併しながらこの重大な捜査に当つておられる警視庁が今度の警察法改正によりまして、いわば大きな大変革の波に呑み込まれようとしている、それだけにその部内における人心の動揺なり、その他事務のやりにくいというような点は想像にかたくないと思う。で、そういうような面からして、事実上従来やつて来られたこれらの疑獄、汚職の摘発という重大な仕事が鈍つて来る。或いはそれに非常な思わない障害が出て来て、結局いい加減な結論になつてしまうというような虞れはないかどうか。
  53. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 今回の警察法の改正につきましては、私も最もその点が心配になりましたので、或いは警察署長会議を開催して、或いはそのほか幹部の会合のあらゆる機会に臨みまして、少なくとも警察法改正に伴う身分の切替えその他の点について、一般の警視庁管下の警察官が人心の動揺不安のために、万一にも職務執行を怠たるようなことがあつては申訳ない、是非この点は責任を以て我々が給与の点等も十分に一つ改訂をし、直ちにこれが引下げられるようなことは絶対にしないように努力するから、是非一つ安定をして執行をやつてくれと、こういうことを機会あるごとに、事あることに私のほうから徹底をいたしまして、まあそうした関係上、只今のところは比較的平穏に首都の治安確保のために警視庁が一体になつて邁進をいたしておるような次第であります。
  54. 秋山長造

    ○秋山長造君 あとの問題もありますし、時間も非常に差迫つておりますので、もう一点だけ簡単に御質問いたしたいと思います。と申しますのは、今度の警察会議についていろいろ理由を挙げられておりますが、やはり本当の一番大きな理由は、いわゆる警備警察の強化ということが狙いになつておるというふうに考えざるを得ない。そこで従来いわゆる共産党関係等のいろいろな事件は主として大都市に起つておる。そこで当然共産党関係の組織にいたしましても、或いは又右翼団体の組織にいたしましても、殆んど自治体警察の受持つておられる地域にあるわけです。そこで当然それらの情報或いはいわゆる暴力的な運動の動き、そういうものは一番あなたが詳しい情報を持つておられると思います。手つ取早く言えば、日本全国の最近の治安状況というものの一番肝心なところはあなたが知つておられるんじやないかと想像するのです。そこでお尋ねいたしたいのは、最近の治安状況、主として警備警察面から見た最近の治安状況というものについて簡単に要点だけお話を願いたい。
  55. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 只今の御質問、私も今必要な資料を持合わせておりませんので、詳しいことを申上げるのは、又誤謬があつたり或いは取違いがあると申訳ございませんので、若しお許しを得るならば、又別な機会に一つ説明さして頂くことをお許し下されば非常に幸いだと思つております。
  56. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちよつと誤解があつたようですから、只今私が同じ質問の中に暴力的な動きということと、それから最初のほうに共産党の問題とを一緒くたに質問をいたしましたので、その点共産党即暴力運動だ、暴力活動だというような誤解を与えた向があるかと思いますので、その点は取消しておきます。  要するに国警当局のほうでよく共産党共産党ということを言われますので、私はその言葉をそのままあなたに御質問をしただけでありまするから、その点は一つ誤解のないように皆さんにもお願いしておきます。
  57. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 只今田中警視総監に対する秋山君の質問が出た。そこでお伺いしたいのでありますか、世間には首都警察国家警察でなければならない、こういう議論をする人がいます。又各国においてもそういう実例があるということを言つております。そこで警視総監は、首都警察の任務は公安を維持したり或いは警備を充実したりすることである、こういう点を非常に力説されておつた。その点につきまして、首都警察というものは国家の警察でなければならないという議論に対しまして、警視総監としては如何ようにお考えになるのですか。
  58. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私は六カ年首都の警視総監といたしまして勤務いたしましたその体験からいたしまして、首都警察国家警察にせねばならないという理由はないと私は考えております。例えばよく例示といたしまして、ワシントンの警視庁はあれは首都警察で、国家警察ではないかと言われまするが、御案内のごとくにワシントンというところは特殊な所でございまして、政府だけの所在地でございまして、あのワシントンの市には殆んど工場も産業もございません。そこに住んでおる者は主として政府の関係の者が住民として住んでおる、それに伴ういわゆる商店があるのでありまして、あのワシントンのDCの市民というものは選挙権すらないような状況でございます。従つてこれは歴史的に一つ国家警察として発展をいたしておるのでございます。又ロンドンにおきましても、一つの王室護衛の点から発展をして、これが一つ国家警察になつておると思うのでありまするが、東京に関する限りは政治の中心地であり、それよりももつと文化、経済、教育等あらゆる方面の中心地となつておりまして、先ほども申述べましたごとくに六百数十万の人口を抱えた大きな自活体でございます。従つて警視庁の現在の任務といたしましては、もとより首都の警備警察関係も重要でありますが、それと共にこの六百数十万の生命、身体、財産を保護するといういわゆる都民警察と申しまするか、民主警察と申しまするか、そうした面の警察諸執行務というものが非常に厖大なものでございます。さような意味から。パーセンテージにいたしまして一五%か二〇%の国家警察事務をやらせるために特に警視庁を、首都警察国家警察にしなければならないというその理由は私は成立たないと思うのであります。やはり何と申しましても六百数十万の都民の日常生活というものは極めて重要なものでありまして、これを守るための警察というものは、必ずしも私は国家警察でなくてもできることであると、かように考えております。
  59. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私の手許に国家地方警察本部より提出されております年次別国警自警別犯罪検挙率調というのがございます。これは警視総監の手許には恐らく行つていないと思います。これを見ますと二十五年、二十六年、二十七年、二十八年と、こう年次別にありまして、国警と自警と分けてあります。それが犯罪の項目別と申しますか、殺人、強姦、放火、強盗、そこに計がございまして、それから窃盗、その他刑法犯とありまして、刑法犯総数というのがございます。項目数にいたしますと、全部で三十数項目ございまして、これに対して自警と国警とそれぞれ比較してあります。パーセンテージがあります。この如何なるものを見ても国警の検挙数が自警の検挙数よりはよくなつております。全部がそうであります。これは普通こういう数字を見る者からすれば、或るものは国警のほうが検挙数が多いということも考えられる。或るものは自警のほうが検挙数が多いということも考えられる。全部が全部こういうふうに国警のほうが自警の検挙率よりもよいということは、私はちよつと不思議に思われます。恐らく大都市警察おきましての検挙数は、犯罪が発生したということが、他の地区で発生したものも大都市において検挙したということで一〇〇%、或いはそれ以上の検挙率を示しておるという場合があると思う。そうすると自警がすべての場合に国警よりも検挙率が劣つておるということは、弱体の市町村の警察において特に著しく検挙率が低いのか、大都市の自治警においても検挙率が国警に比較して低いのかという疑問が生じて参ります。これは自治警御自身の考えとするならば、こういう数字が信用できるかどうかということは、正しく判断ができると思うのです。警視総監として、或いは全国の自治警の協議会の会長としてどういう御意見ですか。
  60. 田中榮一

    参考人田中榮一君) この只今拝見いたしました国家地方警察本部の御発表になりました資料十九の年次別国警自警別犯罪検挙単調、これはどういう資料の收集の方法においてやつたか私は確認をいたしておりませんが、自警と一品に申しましても、自警の中には東京都のような大きな所、それから又ここにおいでになつておりまする佐敷町のような小さい、定員が十数名の所、一切ございます。そこでこの犯罪の検挙、殊にこの表に書いてございます窃盗でございますが、窃盗が昭和二十八年度におきまして、国警が検挙率七一%、それから自警が五五%となつております。この窃盗のいわゆる犯罪の発生率と申しまするものは大都会ほど非常に発生率が高まつております。そうしてそれに対する検挙率というものが比較的農村地帯よりは若干低下しておるような状況でございます。勿論これは検挙率の高いところもございまするし、低いところもございます。そうした点を総合的にいたしますると、或いはこの表に示すごとくに検挙率が国警よりも自警のほうが低いことがあり得ることもこれも考えられるのであります。併しながらまあ最近の状況おきましては、自治体警察側におきましても相当検挙率が逐次向上をしつつある。ただこの窃盗につきましては、以上のような理由で非常に発生率が多いためにかような数字を示しておるのではないか、かように考えております。
  61. 伊能繁次郎

    伊能繁次郎君 最前松澤委員から首都警察国家警察でなければならないかどうかという点について、お答えがあつたのですが、最前総監のお話では、今回の改正で、或いは改正前のお話つたかも知れませんが、三多摩地方も警視庁でやるということになつて非常に犯罪捜査、警備、その他諸般の状況で便利になつたというようなお話を伺つた。そうすると、今回の改正案は犬養法務大臣或いは小坂新大臣が説明しておられますように、府県警察自治体警察である、かように言つておりますことと、あなたが言われた東京都全般について警視庁が警察責任に任ずるというほうが従来の二十三区よりも職務の執行上いろいろな面においていいんだという点を考え合せますと、今回の改正については、大阪とか横浜とか、最前名古屋横浜警察責任者お話を伺つておりまして、これには御議論があろうと思いますが、少くとも首都警察については、私ども警察のことは素人でありますが、最前のあなたのお話を伺うと、今回の首都警察特殊性からいつて、府県自治体警察になる範囲が東京都全体に亘るということによつて、従来の二十三区よりも警察官理上ベターな面が生じておるというような御意見も拝聽したのですが、その辺のところは感情を抜きにして、府県自治体警察であるという観念に立つて考えたときにあなたのお考えはどうか、伺つておきたい。
  62. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 東京都に関しまする限りは、他の府県と若干事情が異なつておると思います。と申しますのは、現在東京特別区の警察官の数が大体二万四千五百八十八名でございます。それから三多摩並びに都下太市の自警、国警を合せまして大体三千数百名ではないかと思うのであります。その関係上、二万五千名と二千名の警察官がおるということは、これは別になつても別に差支えないのでありまするが、御承知のように東京都民の生活の実態というものは大体三多摩方面から相当こちらに入つております。勿論千葉とか浦和とかの関係はございますが、特に東京都下の三多摩地方からの住民の複雑な生活実態からいたしますると、又犯罪の発生の態様からいたしますと、警視庁との極めて密接な関係にございます。それから又従来三多摩の国警、自警の警察官というものは、昔警視庁におつた関係上、警視庁というような名前に憧れておりまして、同じ名刺を使うにも、東京都巡査よりは警視庁巡査のほうが非常に誇りを持つといつたような、まあつまらないことでありまするが、そうしたことからいたしまして、従来から警視庁に入らしてもらいたい、かような希望が非常に強く起つております。それから又地元の有力者のかたがたも是非一つ警視行の仲間入りさしてくれんか、それから又、三多摩地方から警視庁に転入を希望するというものも非常に多うございます。それから又警視庁のいわゆる給与の率が三多磨地方と異なりまして、非常に良好でございますが、さような関係から三多摩地方の国警、自警の警察官としては、是非警視行の傘下に加えさしてもらいたい、又市長なり町当局、あらゆる方面からさような希望がございます。又警視庁の実態から申しましても、大きな建物の下に小さな建物があるということよりも、むしろ一つうちの母屋に入れてしまつたほうがいいじやないか、私は管理上そのほうがよろしいと申上げたのでありまして、その点は首都という点から他の県と多少事情が異なつておりますので、或いは私の申上げたことが理窟に合わんじやないかというお叱りを受けるかも知れませんが、警視庁の首都という実態からさように申上げた次第であります。
  63. 伊能繁次郎

    伊能繁次郎君 それから最前自治体警察の本質的な問題は人事の独立でなければならない、かようなお話がございました。この点は私どもも了承できる面がございます。ということは、あなたが六年以上勤務をされておるということは、警保局長、警視総監、主役が時の内閣と運命を共にしなければならんというような時代と違つて、六年間も一つ仕事をおやりになられると―いうことについては、私ども共感を持つのでありますが、今回の衆議院修正は、警視総監の任免、その他地方の警察本部長の任免についても或る程度の修正が加えられております。而も府県は従来の形式とは撮つた自治体警察、この点についての論議はあなたから伺いましたが、少くとも法律上は自治体警察として警察特殊性とか、特異性とか、警察の総合性とか、こういう問題についちや私よりも専門家のあなたのほうがよく御存じだろうと思いますが、そういう面と睨み合せて、自治体警察の独立性が人事だけのものであるかどうかという問題、それから今回の衆議院修正程度によつて一応人事の独立性の相当な面も確保できているんじやないかと、かように私は考えるのですが、単に人事的な問題だけが自治体警察の本質だと私は考えないのですか、そのほかの、人事の問題とほかに何か私どもが伺つておくことかあれば、自治体警察の本質的な問題について伺つておきたい。
  64. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 私の申上げたのはこれは民主警察の理論、筋を通すということにおいて申上げたのでございまして、先般衆議院おきまして相当な修正が加えられまして、地方公安委員会の同意を得て国家公安委員会が任命する、かように修正されまして、この点は一歩―私は民主警察に近付いたということで、我々としては非常に喜んでおる次第であります。ただ理論的に申上げたのでございまして、邪論的に申上げますと、やはりこの地方の、府県の公安委員会が任金権を持つて、中央がこれを或る程度抑制すると申しまするか、中央の同意を得るとか、そういうようなことでやることが私は形の上におきましても民主的であり、殊に経費を相当地方が持つのでございますから、東京都におきましても、又今後どれだけ来るかわかりませんけれども、一応警視庁において事務的に計算いたしたところを申上げますと、三多摩地方の自治警、国警を吸收するために約十一億の金が必要でございます。そして国から大体今までの計算したところによりますると、三億九千万とそのほかに従来頂いておつた四億が来るといたしますると、八億ということになるわけであります。八億の国庫から頂いた金と、それから従来の百八億プラス十一億で百十九億になりますから、仮に八億数千万円を引きましても、東京都といたしましては百十億の都民税による負担によつてこの警察を賄つて行かなくてはならん、かような実情でございます。従いまして、都民といたしましては、都民感情としましては、百十億を負担をする、そして又その警察庁長官が、東京都公安委員会の同意を得るにいたしましても、形の上においてやはり中央において任命されるというところに都民感情としては何となくどうも理解しがたい点がある。そこが私どもとしましては、まだ完全な自治警であるということが理解できない。又これは私だけの気持でなくて、東京都議会全員さような気持を以て現在進んでおるわけであります。それからなお中央の国家公安委員会の組織にいたしましても、国務大臣がその国家公安委員長になるということは、やはり警察国家再現になるのじやないかという一般の社会の世論、世論の向きどころがどうもそこにあるのではないか、かように考えまして、我々もきまつた以上はしようがないのでありますが、これなんかももう少し御考慮願うことが適切ではないかと考えておる次第であります。
  65. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私は簡単に田中警視総監に伺いたいと思いますが、この法案で非常に心配される点がある。それは警察庁の長官の職務権限のほうに関する問題でありますが、これによりますると、警察庁としては、この所掌事務において都道府県の警察を指揮監督することができる、こういうふうにある。これがいわゆる行き適ぎをなせば必ず政党的な警察になつてしまうことは明らかであります。ところがこれと似たようなことが現在の管区本部のほうにおいても行われておる。それはこういうふうなのが出ておる。管区本部の権限は非常に限定されておるにかかわらず、管区本部を必要とするところの事例としてこういうことが掲げられてある。革命勢力の活動の内偵指示、騒擾事件に対するところの措置の指令、知能犯及び強行犯の捜査検挙に関するところの指揮、こういうふうなことが管区本部を必要とするところの事例の内容になつておる、こうなつて参りますと、これは明らかに管区本部のいわゆる行政事務以上に逸脱してし願うところのものであると私は考える。そこでこれは管区本部のほうからこういう必要な内容としてあなたのほうに達せられておるだろうと思うのであります。これは実際においてこの必要な内容がどのように行われておつたのであるか、この点を伺いたい。
  66. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 只今の規定の警察庁長官が府県本部長を指揮するということでありまするが、これは私は限られたる公安関係の所掌について指揮するということにつきましては、自治体警察側といたしましては、是非そうして貰いたいという意見を述べておるわけでございます。ただ我々が非常に心配しておりますることは、この警察庁長官の指揮というものが、あらゆる点においてこれが拡張解釈をされまして、いろいろの点につきまして指揮命令されるということになりますると、これは非常に弊害を生ずる。殊に法第二十三条の「刑事部においては、警察庁の所掌事務に関し、左に掲げる事務をつかさどる。刑事警察に関すること。犯罪の予防に関すること。保安警察に関すること、犯罪鑑識に関すること。犯罪統計に関すること。」、かように明定いたしておりますが、この二、三、四、五は別といたしまして、「刑事警察に関すこと。」、これは刑事警察選挙取締にも当然含むものと考えております。従つて警察の所管事務に関して、将来佐敷警察所長の言つたようなああした昔の選挙干渉的な指揮命令が行われるといたしますると、これが最も警察を毒し、又警察の威信を失堕するものである、かように考えておる次第であります。従つてこの指揮命令というものはもつと絞つて行かなければ、国民の権利というものか擁護されないという結果に相成るのであります。  それから今一つ、管区警察局の組織でありますか、これは自治体警察側といたしましては、管区警察局の必要なし、これは当然廃止すべしという意見を持つております。何となれば昔の内務省におきましても、警保局があり、その下に極く少数の課がございまして、その警保局長、課長を通じまして、全国の都道府県の警察部長に指揮命令を発しております。従つて今更ここに、今までも、この管区本部というものの存在というものは我々は本当に疑つております。どうしてこういうことか必要であるかということを疑つております。従つて今更もう一回ここに管区警察局を二つ殖やすということは考えられないことであります。又通信関係の技術上の必要から管区警察局を置くというならば、これは我々といたしましては、わかるのでありますが、単に地方の本部長を指揮命令するような形における管区警察局というものは却つて指揮命令系統を複雑にし、いろいろの点において支障を来たすのではないか、かように考えております。
  67. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そうすると、現行法において管区本部が先ほど申上げたような三点ですね、これを必要とするというふうなことは、管区本部のいわゆる行政事務を越えた越権行為である、こういうふうに私は考えるのでありますが、この点如何ですか。いわゆる革命勢力の活動の内偵を指示したり、騒擾事件に対するところの措置を指令したり、そういうことをしたりすることは越権行為ではないか。
  68. 田中榮一

    参考人田中榮一君) この国警長官か全国の警察の通常管理をやる。その行政管理をやるごとにつきましても、いろいろ我々といたしまして議論のあるところでございまするが、現在の状況としまして管区本部というものが余り活動をいたしておりませんので、そういう点から我々としましては、あつても仕方がなかろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  69. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 治安の確保ということは、これはまあいろいろな角度から私は考えなければならんと思います。ただ単にそれを取締るというふうな角度から治安の確保ということになりますというと、いわゆる警察国家を再現するような形をとつて来る。ところかこの問題は、日本のいわゆる立派な独立であるとか、政治が立派になるとか、或いは民生が豊かに保障されて来るとか、そういうふうなところにおいて初めて治安の確保かあるように思われる。そこでそういう点から、先ほど秋山君の質問に対して警視総監は、ざつくばらんに機会を得て申上げてもいいというような話がありましたが、そういう点から私は先ずこの法案を検討する上に鑑みまして、是非そういう機会を持ちたいと思うのでありまして、この点は秘密に亘るなら亘るでもよし、委員長のほうで適当にお取計らい願いたい、こう考えております。
  70. 加瀬完

    ○加瀬完君 いろいろ伺いたい点もあるのでありますが、時間もないようでありますから、端的に一点警視総監に伺います。  先ほど秋山委員のほうからも出た問題でございますが、今度の警察法の改正につきまして、自治体警察側には何らの意見も聴取されなかつたということを聞いて我々は驚いているのであります。そこで今一番自治警、国警間を統一いたしたとき問題になつておりますのは、この自治警警察官と国警察官の間の給与の差額の問題だろうと思うのであります。何らの事前の打合せもこういう面に対して行われておらないといたしますと、これは自治警の警察官としては国警に統合されましたとき、当然これは、只今おきましては若干のその間の調整ができたといたしましても、将来これは給与を不本意ながら引下げられるのじやないか。或いは高給なるが故に退職を迫られるのじやないか、こういう不安というものは当然持たざるを得ないと思うのであります。或いは同一の条件にありながら、国警と自治警の警察官同士の間におきましても、給与の問題では非常に円満な統一ということはこういう問題から欠けて来るということも又予想されるわけであります。或いは先ほど山下さんがおつしやつたように、最も公平、中正に警察行政本来の任務を遂行するためには、どうしても一番必要なことは警察官の身分の安定である。ところか内閣の変るたびに首を切られるのじやないかという不安も今度増すということになりまして、これは政府が説明されるように、治安の確保とか或いは治安能率の増進というものも、こういう面から非常にまずい結果になつて来るのじやないかということを心配されるわけであります。こういう点、自治警側の立場におきまして、給与の問題、或いは政府が警察行政に介入するためから来る身分の不安定、こういう問題が絶対に自治警が府県警察という名の下に統合された場合、自治警でありました警察官の間に身分の不安定という不安がないかどうか、この点御説明頂きたいと思います。
  71. 田中榮一

    参考人田中榮一君) これは重大な問題でございまして、本当から申しますと、自治体警察官の全員の不安というのは、今後自分たちの身分がどうなるかということ、その中には自分たちの給与がどういうふうになるかということが非常に大きな不安で、一抹の憂慮と申しますか、不安な気持で現在勤務しておるのであります。ただ警視庁に関する限りは、市と府県というものが一体となつた東京都という形になつておりますので、東京都庁の職員に倣うことになりますので、さして給与の変化はないので、この点幸い首都警察官として安んじて職務につき得るような状況になつております。そのほか大都市警察おきましては、府県警察、国警と比較いたしますると、非常にその給与の率がよろしいのでありまして、結局今後この大都市警察が国警と一緒になるという場合におきまして、どうしても現在の給与の必要以上に高い所はこれは若干減額されることはこれは止むを得ないと思つております。我々の自治体警察の中にも、或る所は非常に高率な給与を受けている。まあこの点は勿論その都市の財政状況からそうなつたと思いまするが、と申しまして、その都市だけが非常な高率の給与であるということは、全体としてもやはりこれを適当にならす必要かあるのじやないか。そういう所はこれは若干減額になるかも知れませんが、概してやはりこの現在の給与というものが確保されることを皆念願いたしております。むしろ減額されるのじやなくして、たとえ昇給がストツプしても、とにかく現在の給与率よりも下るということは、非常に二十年、三十年警察界のために身を捧げて来ました警察官といたしましては、最も辛いところでございます。そこでこの退職金等におきましても、非常に減額になる虞れもございまするので、かかる点につきまして、我々としましては、何とか給与の差等を成るべく一つこれは国警の警察官自体が低いならば、これをできるだけ上げて、そうして机を並べて仕事をしている者が、同じ警部が月給が三万円も一万五千円も違うということは、これは非常に能率の上に支障を来たすことになりますので、私どものほうとしましては、国警の警察官もできるだけ給与をよくして、そうしてその同じ警部が非常な差が出ないように、低いところはこれを上げて、非常に高いところはこれをとめる。そして成るべく早い機会にこの両者が調整とれて、明朗に勤務できるようにということを実は念願いたしております。ただ現状からいたしますと、あらゆる点におきまして、どうも給与がたとえ下らなくてもストップされる、数年間ストツプされるのじやないかというような心配もございまして、その点におきまして相当やはり不安動揺するのでございます。この点につきましては、むしろ横浜本部長、或いは名古屋本部長から実情を御説明申上げたほうが或いは適当じやないかと考えております。
  72. 加瀬完

    ○加瀬完君 結局制度の上からも、現状の自治体警察から見ますれば、これは政府の介入というのがはつきりして来るわけでありますから、山下さんのおつしやるように、その点でも身分上の、不安を生ずる。或いは給与の上でも今総監の御説明のような、不安を生ずる。そういうことになつて参りますと、治安能率の上にこの身分上の不安というものが悪影響を及ぼさないか。この点について小林さんからでも結構であります。もう一度申上げますと、自治体警察警察官が制度上、給与上、現状よりは遥かに身分的な、不安に陥るわけであるが、これが治安能率の上に影響を及ぼさないか。その点をお答え頂きたい。
  73. 小林正基

    参考人小林正基君) 只今の御質問にお答えいたします。この給与の調整は極めて困難な問題でございまして、なかなか両方のものが都合のいい満足する状態というものは得がたいものであろうと思うのでありますが、私ども人事管理の上から見ますれば、同じ神奈川県の警部というものと横浜から入りましたところの警部というものが、非常な給与の差額があるわけでございます。例えば警部にいたしまして十八年勤めておりますものが横浜市警では二万一千二百円もらつておるわけでありますが、国警では一万四千六百円でございます。従つて六千六百円の差等があるということになります。これを差額によつて調整するという場合に、若しも同じ課にその二人の者が大体同期生として勤務したという場合には、一方は自治警におつた故に六千何がしの調整金がもらえる、一方は国警におつたために今回はそれをもらえないということが、ここに席を連ねておつてそういう問題が毎日々々、それから俸給を受けるたびにそれが現実的に身に響いて来る、こういう心理というものは非常に大きな人事管理上の問題をかもすのではないか。従つてどもが非常に惧れておりますものは、法律の上では条例で定めて調整金を出すと申しますが、これはこういう困難な問題がございますから、必ず短時日に打切られるというような虞れがあるということでございます。そういうような場合吉において給与の差額のひどいということは大都市の場合において、特に都市の大きくなれば大きくなるほど差額が大きいわけでございます。こういうような問題を無理してまでも一本化しなくても、警察運営上差支えなく中央で調整が付くならば、あえて府県一本というような無理押しをしなくても差支えないのではないか、こういうふうに考えます。従つて治安上にもそういう人事管理の面というものは秩序の維持と申しますか、規律上にも影響がないということは保しがたい。そういうふうに私ども考えるのであります。  もう一つ、総監は恩給の問題に言及いたしませんでしたが、恩給の問題についても、非常に本法を基準といたします関係上差が出て参るわけであります。仮に、これは私の所でございませんが、大阪で調査をいたした資料でございますが、二十年勤続した者が現在退職いたしますと十三万四百十六円の恩給が付くわけでございます。ところがこれが新法律によりまして府県警察に移行いたしましてなお五年間勤続いたして二十五年といたします。そのとまに恩給を幾らもらえるかというと十万九千八百八十円というふうに、ここに約二万何がしかの差等というものが生れる、こういうような不備の点等があるわけでありまして、給与の全体の問題につきましても、必ず相当長く人事管理上、問題というものが残されるものである。この点については特に参議院におかれましても、とくにお考えを願う必要があるのではないか。いずれ私ども自警連ではこれを詳細にいたしましてお願いいたしたいと考えておるわけであります。
  74. 内村清次

    委員長内村清次君) 大体もう時間も相当たつておりますが、それで田中総監に御質問されますのは、又若木委員からの提案もございまして、又田中警視総監も別の機会を得たい、こういうような発言もあつておりますから、この警察法の審議期間中に実は委員長といたしましても、別の機会に田中総監の出席を要求するというようなことも一度理事会に諮りたいと思いますから、その前に、田中総監の質疑の終りまする前に堀君から発言を求められておりますから、堀君の発言を許します。
  75. 堀末治

    ○堀末治君 田中総監に一言お尋ね申上げますが、先ほど秋山君の御質問の中にいろいろあなたがお答えになつたが、この組織がよろしくないということについてあなたが非常に強調なされた。今度の制度の改正は非常によろしくないということについて非常に熱烈におつしやつたのでありますが、それに対して秋山君は、然らばなぜ厳重に抗議をせなんだか、こういう御質問が出た、それに対してあなたは陳情しても無駄だ、閣議決定になつたことはなかなか変えられないと思つて無駄だと思つたからやらなかつた、なお国会の方面に対してはあらゆる手段を尽した、こういう御答弁であつたのであります。それで私その点について非常に遺憾に思うのでありますが、私はあなたを存じ上げてからもう六年になります。二十四年からこの地方行政に籍を置きまして、何か事のあるたびごとにあなたがお出かけになります。なお又私的の会合におきましても、あなたさんとはたびたびお会いしておつたのであります。然るにもかかわらず、国会方面に対してはあらゆる手段を尽した、こうおつしやつておりますけれども、遺憾ながらこの組織かよろしくない、かくなるか故によろしくないということは、私のような議員に言つても役に立たんとあなたは思召したのかも知れませんけれども遺憾ながら私にただ言もあなたがこの点についておつしやつて頂けなかつた。而もあなたはアメリカへいらして「アメリカところどころ」という文献をお書きになつて私にも送られた。私もそれに対して全部通読して誠に参考になつて有難いというお手紙を上げたのであります。さようなわけで今回初めてあなたからこの制度がよろしくないということの痛切な御意見を承わるので、私非常に遺憾に思うのであります。殊に私まあ自由党の総務の末席を汚しているのでありますが、今記録を持ちませんから何日であつたかちよつと記憶がございませんか、今のこの給与並びに身分の調整については、あなたは人の事務官を連れられて総務会に陳情に見えまして、そのとき私もあなたの傍におつてあなたの陳情を聞いて、要するにこの問題はなかなか面倒な問題だと思つて、どうか十分な措置を講じなければならない、かように思つてつたのであります。さような事実があるにもかかわらず、あなたはこの問題に対して何も我我におつしやつて頂けないということは私は非常に遺憾に思う。併し私はあなたに除外されたことに対しては私の不徳のいたすことで、これは何とも仕方ございませんが、併しあなたがいわゆるこの自治警の連合会の会長として、なお又首都警察の警視総監として重要なポストにおられるあなたが一片憂国の至情がございましたら、何故これらの点について私どもに陳情をなすという御勇気がなかつたか、閣議で決定したのはいたし方ないと思うというような、何故そんな卑怯な態度を取つて、今になつてこういうことを言われるか。私はあなたの心情に対して甚だ遺憾に思うのであります。あえてこれに対してはあなたから答弁を伺う必要はない。御答弁の必要はないけれども、この満座の中において、尽すべき手段を尽さないでおつて、そうして国警のほうから何らの相談にもあずからなかつたということの方的批判をなさることに対しては、非常に遺憾に思います。本当にこの警察制度が今の警察制度に変えられるならば、我々祖国をして再び警察国家に戻す、前途を誤るのだというような憂国の至情があつたならば、我々の所に訴えて来るのが私は当然あなたの立場からなさるべきだと思います。然るにもかかわらず何もなさらないで、こういう御意見を発表なさることに対しては私は非常に遺憾に思うのであります。あえて答弁を頂かないでもようございますが、私これだけあなたに申上げておきます。それからもう一つ……(「質問じやない」「参考人や証人にそういうことは許されないぞ」「国会法違反だ」と呼ぶ者あり)
  76. 内村清次

    委員長内村清次君) 静粛に願います。
  77. 堀末治

    ○堀末治君 それからもう一つ、給与の問題につきまして事務的の折衝をしている、こういうことでございますが、そのときもあなたさんは我々の総務会にいらつしやい、ましていろいろとお話なさいました。そのときも実は何もこの制度がまずいということを一言もおつしやらないでしまつたことを私は遺憾に思います。そうして給与の問題についてお話があつたのでありますが、私はこの給与の点については小林さんに一言お尋ね申上げたいのでありますが、実はいわゆる政府が考えたのは今の地方財政が如何に赤字で苦しんでいるか、その要するに主たる原因はいろいろございましようけれども警察制度の今の自尊のためになかなか経費が嵩む。同時に又学校方面において要するに自治体が非常な負担になつているということは、恐らくあなた様がたも御承知だと私は思うのであります。なぜ然らば警察制度のために赤字になつているかと申しますと、失礼ながら非常に他のものとの給与が高い。これは警察官として給与の高いことに対しては私は決して反対はいたしません。併し他の給与と余りにバランスがとれないで高いということに対しては、要するに私は甚だ賛成できないか、非常にこの高いということに対してあなたさんがたがどう考えておられますか。その点だけあなたのお考えを一言聞かせて頂きたいと思います。
  78. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 只今大変お叱りを受けましたけれども、私は堀先生に直接お会いして今回の改正法につきましてお話をしたことは或いはなかつたかも存じません。先生以外のほかのかたにも私は直接お目にかかつてお願いしたことはございません。私どもの申上げるのは、個人でなくして党本部に対して数回出まして御説明申上げております。  それからこの給与の面につきましても、丁度先生もいらつしたと思いまするが、私とそれから小野人事部長が参りまして、警視庁のこと、それからそのほかのことにつきましても詳しく数字を全総務のかたに差上げまして、一時間に亘りまして御説明いたしました。それから更に今回の警察制度は我我としては賛成しがたいということも総務会の席上皆さんもいらつしやいましたからお聞きとり願つたと思うのでありまするが、この席上に私から重々御説明を申上げました。それから更に過去六カ年間におきまして、いつも警察制度の改正につきましては、参議院の地方行政委員会に我々が出まして、毎回皆様がたに御説明申上げております。そうしてその説明の本旨は六年前も今もちつとも変つておりません。同じことを申上げておるのでございます。従つてこの点につきまして、私が先生にお目にかかつて直接お願いしなかつたことはあつたかも知れませんと存じますが、党本部に対して、党本部の幹部のかた、そのほかあらゆる方面に、私が行かない場合におきましては他の公安委員かたがた並びに自警の警察長のかたがたが全部お伺いしまして、いろいろとお願いしておるはずでございます。その点だけ一つ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  79. 内村清次

    委員長内村清次君) 堀委員委員長として御注意申上げます。これは本日の重大なこの警察法の審査に当りまして、わざわざ他の時間の間を削いて、そうしてこの会を開いておりますのに、遠路からたくさん参考人かたがたも公務を、……して来ておられるのです。だからしてこのような重大なときに対しまして、参考人のかたががたの陳述に対してはこれは質疑の形では当然委員のおかたがたとして、そうして質疑をされるのが当然でございましようけれども、ここで面罵めいたような、いわゆる院の品位にかかわるような御発言をなさることは、私は委員長といたしましてどうしても承服できない。この点に対しましては御注意申上げます。
  80. 堀末治

    ○堀末治君 了承いたしました。
  81. 小林正基

    参考人小林正基君) 只今の御質問にお答えします。どうも私ども非常に遺憾に考えますことは、何か警察を持つておるために財布が非常に赤字になるというようなことで、厄介者扱いされておるようなふうに見られることは非常に残念に思うのでございます。市町村から国へ参りましても、これは給与がございます以上相当数のものは維持しなければならない。先ほど私が申上げました通り統一いたしませんでも、市の財政と睨み合わせて、又国の方針に従いまして緊縮の方針をとつて、なお且つ能率を下げないような方向に努力をしておるという現実を御調査頂ければ、そういう点について御理解が頂けると思うのであります。で、実際その大都市において非常に給与のかかるということは、ひとり警察だけの問題ではないわけでございます。警察も他の市役所の一般職員も同様な扱いを受けて今日に至つておるのでありまして、この問題がひとり警察のみの問題として採上げられるということになりますれば、これは由々しき問題でございまして、もつと大きく政府の立場において市町村、いわゆる地方公務員の給与を如何に全体の国の財政から緊縮方針或いは基準を以て定めて行くかというような根本的な問題において解決をお願いいたしませんと、警察だけ、我々も申上げれは好んで自治体警察に入つたわけじやないのであります。国会でおきめになりまして、今度は自治体警察を置くと、お前はそつちに行けということで配置を受けて市役所と同じような給与にしてやろうというので、どんどん俸給を上げて頂いたわけであります。(笑声)ところが今お前らもらいすぎておつたと、だから取るぞと、これは法律のあらゆる制定の場合においても既得権というものはできるだけ支障のない限り尊重するというのか法の精神でございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)こういう面から申上げても、この点はひとりお前のほうは余計もらつてつたじやないかというようなことでなしに、円満に人事管理上も推移がうまく行くようにということを考えながら、お互いに不平のないような基準というものを特にお考え頂くことが大切じやないかと思います。
  82. 秋山長造

    ○秋山長造君 先ほど私の警視総監に対する質問に関連して、若木委員からこの席で今日の治安状況説明することは適当でないということについて、又別な機会を作つて頂きたいという委員長への希望がありましたが、私も全く同じ希望を持つておりますので、この点は警察法の審議に関連して最も重大なポイントになる点でございますから、委員長において是非然るべくお取計らいを願いたい。それから宮崎参考人お尋ねをいたしますが、先ほどのあなたの御陳述の中に、昨年末講習生が帰つて警察大学の講習生が帰つて来てからの報告の中に、非常に疑問を感じた点があつたので、それは大変なことだと思つて抑えたというようなお言葉があります。又更に如何に国家的な治安の立場からとはいえ、こういうことを今日の警察で教えたりやつたりするということは、誠に困つたことであると思つて、黙つてつたというような重大な含みを持つた発言があつたわけです。で、この機会にその困つたことだという内容はどういうことなんだ。又あなたの部下の職員が警察大学において講習を受けて来たその内容はどういうことなんだ。その点について御陳述を願いたい。
  83. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 昨年の、先ほど申しましたときに、昨年の暮と申しておればそれは譲りでありまして、昨年の春であつたのであります。東京のほうから特別の講習をするからということで御通知がありまして、私のほうにも受講生を派遣したらどうかということでまあ派遣したわけであります。帰つて来ました者の報告を聞きますと、どうも私の考えているところとやや違つているようであります。率直に申上げますと、どうも警察法第一条の関係で工合が悪いんじやないかというような気がしたのであります。これは私自分で行つたわけではないので、私の部下が東京に参りまして、受けました講習について概要の報告を受けて、まあさように感じたわけであります。私決して申上げることを拒否するというようには考えておりませんか、直接それをやられたかたなり、或いは受けられたかたもあるようであります。私の口からよりも、先ずそのかたからお聞き下さつたほうがいいのじやないか。私も決して全然言わんと言うような頑張つているつもりではありませんが、まあ事の筋が私は聞いていることなんです。一つ先ずそういう責任者のかたからよくお調べと申しますか、お聞きをお願いしたらどうかと、かように感じます。
  84. 秋山長造

    ○秋山長造君 先ほどの村松参考人の御陳述の中に、警察大学で五週間乃至六週間に亘りまして、日共の戦略戦術の講習を受けた。そうしてそれに関連して、技術訓練を一週間ばかり受けた。その内容は尾行、張込み、写真撮影、封筒の開け方、鍵の開け方というようなものを訓練を受けた、こういうこれは経験者の御陳述があつた。で、あなたが今おつしやつている非常に重大な問題で警察法第一条に抵触する内容だとおつしやるのは、今村松参考人かおつしやつたようなことと符合するのであるかどうか。その点御答弁を願いたい。
  85. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 一部符合するようには思うところもありますが、もう少しお聞きになつたほうがいいかと思います。(「はつきり言え」「しやべつたらいいじやないか」と呼ぶ者あり)
  86. 加瀬完

    ○加瀬完君 宮崎さんは先ほど、私が聞いて知つていることのようなことがあつては困るからというようなお話をなさつた。あなたが聞いて知つている困ること、というのは一体どういうことなのか。それを秋山委員は今伺いたい、それを伺わないと、仮に村松さんのおつしやることがどういうこれから更に細かい説明があろうとも、あなたのほうのお聞きになつたこと、或いは講習生から報告を受けたこと、その全貌というものがわかりませんと、比べ合せることができない。是非これはおつしやつて頂きたい。(「言つたらいいじやないか」と呼ぶ者あり)
  87. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 私具体的に事実については報告は受けておりますか、聞いているたけであります。それを私が解釈いたしまして、これはどうも憲法違反の疑いがありはしないか、或いは警察法第一条に違反しておりはせんか、そういうふうなことを考えたのであります。
  88. 秋山長造

    ○秋山長造君 あなたは参考人として見えているのですから、そういう抽象的なことを我々はここであなたから幾ら聞いて見ても何にも意味はない。そこでそういうそんなことをおつしやらずに、もう少し具体的にあなたが部下から聞いた事実というのはどういう内容のことなのか、どういう事実なのか、そのことを具体的におつしやつて頂きたい。言えない理由はないと思う。言つて下さい。
  89. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 私がそういうことを申上げないでも、まだここにそういうことをはつきり言えるおかたがおられるはずであります。先ずそういうところに聞いて頂きたいと思う。私はこのことは極めて重大な問題であると思うのです。一つ先ずそういうところにお聞き下さい。(笑声
  90. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 宮崎名古屋警察本部長発言を躊躇されているということは、あの村松君のほう、実際に受講されたほうから先に聞いて、その後に宮崎君が発言したいということであるか、或いは発言するこの場所か適当でない、公開の席上では言いにくいということであるか、或いは又は他の国警関係とか、自警関係とかいつたような関係発言しにくいと言われるのか、順序のことであるならば、私どもは先に村松君の話を聞いて、それからあとで聞いてもよろしい。併しこの場所が適当でないというならば、場所は又変えるか、或いは形を変えるかすることか必要であると思うし、或いは国警関係と自警関係との間の関係が工合が悪いというのであるならば、これは又別途に考慮しなきやなりません。その点を明らかにして頂きたいということです。  もう一つはあなたの部下が報告……、受講された場合においてはやはりそれぞれ成規の手続をとつて、どういう科目についてどういう内容の講義があつた、これを完全に欠席しないで受講して来たという公式の報告があるはずであります。恐らく先ほど宮崎君がおつしやつたことは、単に口頭でこういう話がありましたというだけで、これは大変だとお思いになつたことではなかろうと思う。ちやんと講習に行つて来たということの報告があると思う。そういう報告をお読みになつて、御覧になつて、これは大変だとお思いになつた、その点を明らかにして頂きたい。
  91. 内村清次

    委員長内村清次君) 宮崎君に申上げますがね、只今宮崎君も松澤委員の御発言をよく聞かれたことだと思うのですが、改めて委員長から申上げませんけれども、場所を変えるか、或いは何かあなたのおつしやつたようなこと、言われるような御希望がありますか。どうやつたならば発言するというような御希望ございますか。
  92. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 部下の報告でありますが、一応口頭で報告を受けたのでありますが、極めて重要な部分もあるようでありましたので、文書で上司に報告をしておけということを申しておきました。大体の概要は書いて出してあるように思うのであります。それによつて私は承知をしておつて、直接私がどうこうというわけではないわけであります。私の供述のことでありますが、できることならば私は別にそれを直接受けておるわけでもないので、そういうことをおやりになられた向きでも、恐らく新聞にも出て大分問題にもなつておりますので、いろいろお考えになつて、もう率直にお話をしようというような御気分になつておるかも知れません。そういうところでお聞きになつたほうかいいじやないかと私はそう思うのであります。と申しますのは、これを、この問題は警察法改正ということと又非常に重大な関連がありますが、同時に又これは警察法が改正になろうがなるまいが、警察自体のこれは大問題だと私はこう考えております。従つて、問い詰められると言わなければなりませんが、日本の警察がどうかなるとも思いますので、軽々にも言えない、こういうように思うのであります。従つて、どうしてもというようなお気持があるならば、私は是非参議院のかたがただけというような機会を作つて頂きましてお聞きになるならば、私の知つている限りはこれは言わなければならんと、かように考えております。
  93. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今又、委員各位宮崎君から発言がありましたような通りでございますがどういたしますか。
  94. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 よくわかりました。宮崎君のおつしやることは。先に聞いてもらいたいということは、そういう講義をした当事者に先ず聞いてもらいたいということ。一体宮崎君の御希望はこういう公開の席上で言うということは非常に困る、参議院議員だけということであるならば、又自分の知つている範囲内のことは話してもいい、こういうようなお話のように思う。そこで私はやはりこの問題は警察そのものの根本に触れる問題でありますから、やはりそれを聞く機会を委員長において拵えて頂きたい、こう思います。
  95. 内村清次

    委員長内村清次君) 委員長といたしましては、別に又聞く機会というその機会の点につきまして、これは又理事会にかけなくちやなりませんけれども、やはり私は折角宮崎君も名古屋からここへ出ていらつしやる参考人としては、やはりこの警察法関係につきましては重大な関係がありますので、やはりここで自分の聞いただけでも言つてもらつて、そしてお互いの判断によりこの警察法案の審議に便利にして頂くというようなことを委員長としては考えておるわけですが、別の機会ということは、これ又考慮がありましようけれども、実は今日是非一つ聞かせて頂きたい。それでないと、折角ここまでお呼びいたしました意味がどうもないように委員長としては考えておりますが、どうでございましようか。
  96. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 会期も迫つていることであります。我々としましては、警察法審議そのものの期間の間に聞きたいと思いますけれども、併し実際上時間がないということであれば、この席上でできる限りのことをお聞きして、更に微に入り細を穿つて公開の席上で発言することはできないとお考えになれば、秘密会もよろしいと思います。ただ併し、私は昨日も申上げましたように、この問題については、必要がある場合に、国警の担当の政府委員或いは国務大臣というものがいるほうが都合がいいというのであれば呼んで頂いたほうがいいと思います。その点のことも考慮して、先ず概括的な説明から聞いて行くということで結構だと思います。
  97. 内村清次

    委員長内村清次君) 私も大体同感でございますからして、そのように委員長としては取計らいたいと思います。宮崎君、聞かれた通りでございますが、委員長の意思もそこにあるわけですが、折角の機会でございますから、あなたの言われる範囲内の、又報告を受けた範囲内の問題でもいいですから、是非御発言願います。
  98. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) どうも大分人がおられるようでありまして、私はそういう席上で申上げるのはどうかと思う節もあります。従つて、そういうことはそういうところにしてもらつて、その他のものなら何でも申上げますが、そのことだけは一つ秘密会か何かにして頂きたいと思います。
  99. 内村清次

    委員長内村清次君) どうですか、秘密会の要求をされておりますが、秘密会にしてよろしゆうございますか。(「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  100. 堀末治

    ○堀末治君 あとの時間もございますから、あとの時間が済んでからなさつて頂いたら如何でございましようか。そのときから秘密会にして頂いて……。
  101. 秋山長造

    ○秋山長造君 只今の堀委員の御発言ちよつと聞きとれなかつたのですけれども、もう一度おつしやつて頂きたい。
  102. 堀末治

    ○堀末治君 それはここの日程がきまつておりますし、総理大臣が二時半に見えるということになつておりますから、それに障つては……少し私は委員長と話合いをしたこともございますので、総理大臣に対する質問の終つたあとで秘密会にして、今日のことでありますから、そうしてお聞き願つたほうがいい、こういうふうに思います。
  103. 秋山長造

    ○秋山長造君 おつしやる意味は二時半から総理の質問があるので、ここで暫時休憩して、そうしてそれが終つた後に再開をして、そうして今の点も十分究明をする、こういうお話ですか。
  104. 堀末治

    ○堀末治君 そうです。そのほうがよろしいじやございませんか。
  105. 内村清次

    委員長内村清次君) ほかに御発言はございませんか。
  106. 木村守江

    ○木村守江君 只今いろいろなお話がありましたが、この間の地方行政委員会委員長理事会の決定では、今日呼んだ証人が終つて、午後から大体二時半から総理に対する総括質問をやる、そういうような決定を出しましたので、これは一応やはり委員長理事会おきめ願つてきめて頂きたいと考えます。
  107. 堀末治

    ○堀末治君 ちよつと総理の出席の時間で私に来いと言つて来ましたから、何か無理なお願いが出されるかも知れませんから、成るべくなら今木村君の発言通り理事会で取扱うことにお取計らいを願いたいと思います。(「さつきのはどうした」「とりやめか」と呼ぶ者あり)
  108. 島村軍次

    ○島村軍次君 只今の問題につきましては、このまま休息をして、そうしてあと秘密会にするかどうかという問題は理事会で御決定を願うということで、保留のまま休憩をされんことをお願いいたします。
  109. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今の勘村落の御発言御異議ございませんね。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 内村清次

    委員長内村清次君) ではそのようにいたしまして、暫時休憩をいたします。    午後一時四十七分体感    ―――――・―――――    午後七時四十六分開会
  111. 内村清次

    委員長内村清次君) これより休憩前に引続き、地方行政委員会を再開いたします。  理事会の結果について御承認を得たいと思います。理事会おきましては、先ず宮崎参考人からの意見を聽取する、そののちに吉田総理に対する総括質問をやる、そののちに宮崎参考人及び村松参考人に対して各委員から質疑を約一時間程度する、こういうことに決定をいたしましたから、御承認願いたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 内村清次

    委員長内村清次君) 御異議ないと認めます。  それでは秘密会に入ります。議員以外のかたはどうか退席して下さい。    午後七時四十八分秘密会に移る
  113. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは参考人宮崎四郎君。
  114. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 非常に我が儘を申上げまして申訳ないと思うのでありますが、私この問題は警察法審議にも非常に重要な関係がある。又現行警察法の下でも非常に重要な問題だとかように考えますので、是非お聞取を願いたいとは思うのであります。そうでありますが、先ほどのように質問をかけられましても、余り外部に聞かれると警察のために私よくないことだと思うのであります。そういう意味で、是非非に一つ秘密会にというようにお願いをしたのであります。そんなにしなければならんことならば言わんで帰つたらいいじやないかというようなお考えもあるかと思いますが、私はこれはいつまでたつても、何というか、黙つておることはできない問題である。而もこれは誰から聞かれても言えるという問題でもありませんので、今日まで私はこの問題を極く限られたかたがたにだけ申上げたのであります。国家公安委員会に申上げたり、これは決して事和かに申上げたわけではないので、戦前の特高も三舎を避くるようなことをやつておられるので、法案の取扱いを御慎重にお願いをしたいということを申上げたのであります。又閣僚の一、二にも会つてお願いをいたしまして、こういうことがあると、非常に大変なことだとまあ私としては考えるから、一つ是非御善処を願いたいということをお願いしたのであります。野党のほうにはどうかと思いますので、私は自由党の最党幹部にお会いをいたしまして、実はかような現行法下で許されないような事態が起つておる、そういうことを企画したかたがたがこの今度の法案を立案されておるようだが、まあこれは大変なことだと思うので、一つ法案の取扱いなり今後の考え方については十分御慎重にお願いをしたいということを申上げて、まあ警察がよくなるためにということでお願いをして見たのであります。今日までその成果が現われるものであろうと実は期待をしておつたのでありますが、不幸にして国警当局においても余り本気になつて考えておられませんようであります。又与党の自由党においても、恐らく私のお話を聞かれたかたは相当お考えを願つたかと思うのでありますが、何様余り口外のできないことであるため、この大勢を制するに至らなかつたのではないか、かように考えるのであります。政府の閣僚におかれましても、私は同様な地位にあられて、やはり非常に苦慮はせられながら、実際はそれを如何ともしがたかつたというような事情ではないかと思うのであります。この点を一つあらかじめお話を申上げたいと思うのであります。  それから、まあこういう事情でありますので、実はどこかに訴えて早く現状を面したいというように考えるわけでありますが、事が余りに重大であり、私は決して国警の悪口を言うつもりはありません。泥試合をしようとも思つておりません。併し、これを私がどこかで口外いたしますならば、それは必ず国警を毒するだけでなく、その揆ね返りは必ず市警にも来る。そうすると、結果的に考えてみますと、これは日本警察全体の不信を買う元になると、こう私判断するのであります。大きくは日本の警察が日本の国民から不信を買うというようなことが起りますならば、これは私は大変なことだと思うのであります。それが実は治安維持に一番癌になることであります。警察と民衆の間に隔離される幕があるというようなことになつては大変だと思うのであります。私特に秘密会をお願いする次第であります。さような状況で、若し口外をいたしますれば、そういう民心を警察から離すという一つのもう何とも警察にとつては言うことのできないような大きな影響を与える一面、又国警と自治警の間に今度の法案か若し成立しまして、そうして統一されても、これ又おかしな空気ができるというようにも考えますので、心配はしながらも実はそれを触れ廻るということはできないと、かように考えておつたのであります。幸いに私、その問題がどこからああいうところに出たのか私には想像がつかんのでありますが、とにかく問題になつて、本日ここに呼び出されましたので、参議院の良識に訴えまして、一つこの問題をよくお考え願いまして、法案の是非も一さることながら、警察をよくするという意味で一つ十分お聞取りを願いたいと思うのであります。先ほど国警からおいでになつております村松さんがお話になりましたように、特別の警備係の講習を警察大学でやつておられるようであります。期間は一回につき五十日のようであります。のようでありますというのを附加えるのは聞いておるからであります。訓育、法学、警備情報概論、情報活動の要領、実科、実地訓練、総合実習、検討会、こういうような科目に分れてやつておられるようであります。訓育、法学は問題はありません。又警備情報概論につきましても、大体そのときの警備情勢をお話になるのだろうと思うのであります。そういう点は私問題でないと思うのでありますが、情報活動の要領と申しますところで、警備活動の目的或いは心構え、手段、方法というような点にやや心配になる点があるのであります。警備情報官の立場を捨てて警備情報マンの立場になつて仕事をやるのだというように報告を受けております。このことはどうも私服警察官が私服警察官として情報をとるという立場とは大分違うような気がするのであります。ここらが心配になる一つの点であります。権力をバツクにするな、原則は身分、目的偽装である、結局まあ秘密警察になるということであります。警察目的のための手段であることを忘れるな、日共の非合法テクニツクはこういうふうになつているから、それに対応して警察もあらゆる手段というわけにも行きますまいか、できるだけ有効な手段をとらなければいかんというお話になつて来るかと思うのであります。そういう心構えで以てどういう手段方法をとるかと申しますと、新聞に出まして、先ほど村松さんが御返答になつたような点も確かにあるのでありますが、私が先ほど憲法違反の疑いかありはしないかということを申上げましたのは住居侵入であります。犯罪の捜査又は情報收集のために人の家に入り込む、こういうことであります。習つた生徒の報告によりますと、相手の留守を見届けて見張り二人以上を以て見張らしておいて、家屋内或いは事務所等に入り込んで文書を盗み取る、それは文書と書いてありますが、証拠品の場合も或いはあるかも知れませんが、私直接そういう点は聞いておりません。ただ文書を盗み取る問題があります。まだほかにたくさんいろいろな方法がありますが、私法律上疑義があるという点を申上げたいのであります。施錠のしてある家屋に侵入する場合日、或いは鞄の錠を開けるときの方法、こういうことも教えられるそうであります。それから先ほど村松さんのお申しになりました封のしてある書類の中身を抜き取るために糊を溶かして開き、又元に戻すというようなこと、これらか私一番心配になるのであります。その他の盗み聞きをするとかいうような点もありますが、もう一つ相手の所持する鞄の中から文書を盗み取る、或いは家屋に侵入して支署を盗み取るというようなことが教えてあるようであります。どの先生がこういうことを教えたかと言うて聞きますと、講師として出ておられる先生が、殆んど漏れなくこのことを指導をされたそうであります。時間は先ほど申しましたようなことで、五十日の中に警備訓育、法学、警備情報概論、情報活動の要領、実科、実科というのは写真の写し方や鍵の開け方、開封の仕方、こういうようなことの実習があつたようでありますが、そういうようなことを三十日間やりました。五十日のうち三十日間やつたあとの十日間は実地訓練をやられて、あとかどうか知りませんが、とにかく十日間実地訓練があつた、十日間総合実習があつた、こういうようなことになつております。その間、三回検討会があつたそうであります。検討会というのは、今まで講習をやつた成果についてお互いに検討する、或いは地方の実情を話す、そういうようなことであるそうでありますが、ここで私が聞いて非常に遺憾に思つた点がありますので申上げておきたい。検討会に出まして、私のほうの人が出たのは昨年の二月の六日から始まりました講習であつたのでありますが、そこの検討会に出ていろいろまあ極端なお話がある、私のほうでは創設以来非合法は一切やつてはならんという建前で進んでおるのであります。その警部補は行つてみて講習を受けた結果、結果と申しますか、講習を受けておるうちに非常に疑問を持つて、中途において検討会がありましたと芝、いろいろ激しい気負い立つた御報告なり或いは意見の開陳があるのを聞いておつてびつくりしてしまいまして、そこでこういうことを申上げたそうであります。どうも私の所では如何なる場合吉にも非合法はやつてはいかんということを固く言われて大体そのつもりでやつておる、ところが今回ここに来てみたところが非合法手段をやれと言われた、今まで私は信念を持つて警察に御奉公できるというように考えておつたところがどうも私の警察信念は今度の講習に来て何だか工合が悪くなつて来たというような述懐をして、まあ批判を仰いだのであろうと思いますが、そういうことを言つたところが、急に座が白けてしまつたというようなことがあつたそうであります。その後は私のほうから出ておる者は何だか場違いの者が出て、何と申しますか、桃色か或いは桃色と赤の中間かぐらいに思われて変な玉が出ておるという眼で見られたそうであります。そういうことがあつているうちに、この大阪管区で警備課長の会議がありました。大阪の管轄の府県の警備課長と、六大市の、まあ大阪の地区と申しますと四大市でありますが、四大市の警備課長が集つて会議があつて、そこで警備の担当官から、どうも君のほうから東京に来ているのはおかしいじやないか、あれは身許は確つかりしておるかというようなことをいろいろ聞かれてどういうことがあつたかというので聞いてみると、只今のような状況であつたということであります。私のほうで私らが考えまして、警備係として、まあ理想的とは申しかねても立派なものだということで、確信を持つてつている人が、そういうところに入ると、まるで赤か何かのように見られるという事態が起るということは、これは非常に大きな問題だと私考えておるのであります。私が役人になりました頃、昭和八年頃でありますが、館さんがここにおいでになるようでございますが、よく当時の事情を御存知だと思いますが、当時新官僚とか、新々官僚とか言われる人があつたようであります。この人かたは大体非常に何と申しますか、革新的な気持を持つておられた人たちのようでありますが、そういうかたがたが自分たちだけがこの治安を守つておるとか、又国の発展に寄与しておるとかいうような、非常に気負い立つた気持を持つておられたかたであつたのでありますが、併し現在の国警の警備係の中に同じような空気が流れかけているのではないか、それが実は戰前のような状況を起したので、又ここで同じようなことが起つて来ると大変なことになるのではないか、というように実は心配をしておるのであります。帰つて参りましたこの講習生が非常にびつくりして課長に申上げた。課長が私のところに報告に来てこういう報告をしましたので、私はびつくりしてしまつたのであります。特別講習をするから出してくれないかと言われるので出したのでありますが、よもやこういうことが行われていたろうとは夢思わなかつたのであります。従つて私はこれは大変なことだというように気がついたのであります。従つてこれはどういうことを習つて来ても、名古屋では一切非合法はやらんのだから、そういうことは開き流してしまえ、で従来通りの方針で名古屋ではやるようにということでやつて来たのであります。恐らくほかの大都市についても、六大都市以外はこの講習に人づておらないようでありますが、恐らく六大都市のほかの都市でも大体同様ではないかと考えております。ところが中小自治体についてはこれは人物か余りいないだろうということであろうと思いますが、そのことは又警察出にとつては仕合せであつたと思うのでありますが、講習に入れさせてもらつておりません。従つて大体の自治体警察はこういうことをやつておらなかつたと思うのであります。現に恐らくやつていないだろうと思います。併し一つ私遺憾なことがあると思うのでありますか、私の警備課に、昨年の夏実は自分の所の県の警備でこういうことをやつておるから一つお前の所もやれと言われたが、どうしたものだろうというように相談に来たのかあるのであります。それを聞いて私のほうでは、名古屋では非合法は一切やらんことにしておる、あなたのほうもそういう非合法はよそがおやりになつてもやらないほうかおためであろうと言つて帰したそうであります。その警察が現在非合法をやつておるかやつておらないか、そういうことは我々調べておりません。併しそういうことが起つたということを考えますと、実際におきましては、国警において教えられただけではなく、行われておるということが想像がつくのであります。現に検討会においては非常に激しい非合法を自慢するかのごとく英雄的な考え方で話しておられた人かあるようであります。私はそれを聞いて慄然とするのであります。そういう考え方で共産党に対しておりましたならば、私は共産党に警察は負けやせんか、こういうふうに思うのであります。非公開の前に申上げました通り、私は警察は法の執行者として飽くまで法にようなければならんと、かように考えておるのであります。法によつてサービス的な気持で本当の公僕になり切つて初めて私は立派な警察になり得るのではないか、かように考えておるわけであります。従つてこういうことが行われるととんでもないところに来はしないか。殊に共産党に対してたけのように言われておりますが、共産党そのものが実は非合法化されておりません。何とかして非合法化してその方法をどうするかというような、これは国のもう一つの政治の問題として大きく共産党と対決する態度をきめ、方法をきめて頂くことのほうが先であつて、そういうことかきまらない先に或る権力のある人がその人の考えでこのくらいは輿論が支持するのではないかというようなことで、違法を指導されるならば、これはとんでもないことだと思うのであります。口先で共産党にだけ限定するようにどんなに言つておりましても、それがやがて普通の人に及んで来ますことは、吉田総理大臣が戦争の末期には何らかの罪名に問われて拘引をせられるというような状況が起つたのであります。共産党に向うがごとくして言われておりりますが、実際はいつどの人のところに来るかわからないということを考えなければならんと思うのであります。  それから新聞を見ておりまして感じましたことでありますが、信書を侵すということについて、協力者が出した信書を見るように言つておられるのであります。協力者が出したものでなくて、協力者が出さないでも信書を入手することまで教えておられるようであります。非常な問題をはらむと考えております。又信書についても郵便類には一切触れないような御説明がついておるようでありますか、実際は出た者に開いてみますと、必ずしもそうではないように思うのであります。これは若しお確かめをしなければならんということでありますならば、私のほうの講習を受けておる者がありますから、その者について一つお取調べなり、御調査をお願いしたいと思うのであります。  それから申し落しましたが、一回の講習に大体四十人程度で、昨年中までに十三回ばかり講習が終つておるそうであります。私のほうが出るようになりましたのは、昨年の春からで、講習が済んだ者が四人おるはずであります。
  115. 内村清次

    委員長内村清次君) 只今宮崎参考人の陳述は終了いたしました。よつて秘密会はこれを解くことといたします。委員会の傍聴を許可することにいたします。    午後八時十六分秘密会を終る
  116. 内村清次

    委員長内村清次君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  117. 内村清次

    委員長内村清次君) 速記を始めて。  只今から吉田総理大臣に対する総括質問をいたします。
  118. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私はこの際首相に二、三質問したいと思うのであります。首相の外遊につきましては、国会におきましても又国民の立場から見ても、非常に注目されておるところの問題でありますが、先般の法務委員会おきましての答弁では、外遊の準備はしておるけれども、まだきまつておらないから目的は発表できない、こういうふうな御答弁があつたようであります。新聞紙上、そういうふうな方面では六月四日に出発するというようなことも言われておるのでありますか、一体これはどういうふうになつておるのか、伺いたいと思います。
  119. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 私は外遊する準備はいたしておりますが、いつ出発するか、国会開会中でありますからして、まだ決定はしておりません。従つて又外遊の目的等については未だここでお話する時期になつておりませんから、本会議で述べた以上の説明はいたしません。
  120. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 そういたしますと、なぜ一体それがきまらないのか、この四日に立つというようなことも言われておる段階においてまだきまらないのであるか、いわゆる国内の事情であるか、或いは対外的な事情からきまらないのか。
  121. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 只今申した通り国会開会中でもあります。従つて確定したことはお話ができない。予定についても確定はいたさない。
  122. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 国会開催中であるからということできまらない、そうなりますと、この防衛法案であるとか、或いは教育法案、或いは警察法案、こういうふうなものがきまつたのちにおきめになるのでしようか、この点をお伺いしたい。
  123. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 国会が終りましたのちに決定をいたすつもりであります。
  124. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 国会については、更に延長するというふうな御意向でもありますか、その点をお伺いしたい。
  125. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) これは国会の情勢にもよりますことでありますから、国会と御相談いたしたいと思います。
  126. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 我々が今審議をいたしておるところの警察法案は二月の十七日に提案されまして、参議院に送付されたのは五月の十五日であります。参議院の審議はいわゆる会期の延長を含めても僅かに一週間しかないのであります。これでこの重要な法案の審議が終るかどうか、或いは審議をなし得るものかどうか、こういうことについてどうお思いになりますか。
  127. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 警察法の 審議のことでありますから、担当している私からお答えいたします。  二月十五日に衆議院の本会議に提案せられまして御指摘のごとく今日の十五日に本院に送られたわけでございますが、その間ずつと警察法の審議に当つてつたわけではございません。それは私ども参議院の良識におきまして、きめられた範囲内においてできる限り御審議を頂けるものと期待しておる次第でございます。
  128. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 今の小坂大臣の御答弁に対しては、私は非常な不満を持つものであります。参議院の良識を以てこれは審議をされておるであろう、或いはその期間内に打上げてくれるだろう、こういうふうなお考えは、これはしばしば言われているように参議院というものを軽視しているからではないか。これだけの重要法案と考えられておるところの法案が僅か一週間ぐらいで以て参議院において打上げられると、そういうふうなお考えを持つことがすでに私はどうかと思うのであります。首相もそういうふうにお考えになつているかどうか、この点を伺いたい。
  129. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣から御説明した通りであります。
  130. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 お思いになると言うのであるからして、私はそれ以上追及しませんけれども、誠に我々から見れば心外に堪えないことであります。  次に首相に伺いたいのは、アメリカのいわゆる輿論、そういうふうな方面を見ましても、知事官選論であるとか、或いは教育法案であるとか、或いはこの警察法の制定であるとか、財閥の復活であるとか、こんなふうにして吉田内閣は非常な逆コースを辿つておるのであります。その傾向を非難しておる。噂のごとくいわゆる首相の外遊が親善であるとか、日本を理解させるためであるとかいうことであるならば、この点についてどういう心構えを持つて外遊なされるのであるか、この点を伺いたい。
  131. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 外遊については只今申した通り、本会議に申した以上の説明は私はできかねます。
  132. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私は外遊の目的は何であるかということについては先ほど伺つて、そうしてそれに対しては答えられないのだから、これはそれ以上追及しません。今私の伺つたのは、アメリカにおいでになつた場合に、アメリカの輿論としては逆コースを非難しておる。そういうことに対して先ず首相はどういう心構えでおいでになるか、その心構えを聞いておるのであります。
  133. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 一々外国の新聞の批評に対して私は責任を以てお答えをいたすわけには参りません。
  134. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 責任を以てお答えにならないとしても、そういう心構えだけは必要じやないか、向うに行つた場合に必ずこういう話はいろいろな首相が出られる場所においては出ると思う。それに対する心構えを私は伺つておるのであります。
  135. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 只今申した通り、外国の新聞の批評に対して一々どういうことを返事をするということは、私はこの席ではお答えいたしかねます。
  136. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それでは次に憲法の改正の点について伺いたいと思うのであります。これは御承知通り新憲法は、日本の封建的な国家から民主主義国家に移行するところの期間として劃期的なものであつた、そうしてそれに基いて諸制度を改革して来たのであります。ところが吉田内閣になりましてからいわゆる自衛軍の創設であるとか、或いは地方財政委員会の廃止であるとか或いは破防法であるとか、或いはスト規制法、独占禁止法の緩和、教育法案警察法、こういうふうに新憲法は実質的に改正されつつあるのではないか、こう私は考える。殊に本日も我々は伺つたのでありまするが、又首相もこれは新聞紙上あたりで御存じのことだと思う。警察学校におけるところの特高的な訓練をしておる。明らかにこれは憲法に違反するところの事実であると思う。そういうことがあえてなされておるということは、再軍備に限らず、いわゆる憲法の実質的改廃じやないか、こういうふうに考えるのでありますが、これに対するところの御見解を伺いたい。
  137. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 私は政府がなしておる今日までのことは、憲法を実質的に改正するという考えはないし、又実質的に改正しておるとは考えておりません。
  138. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 実質的に改正する御意思がないといたしましても、現実においては今申上げた通り、憲法に違反する疑いあるもの、或いはそれ以上のものが具体的に出ておるではありませんか。これが私の言う、いわゆる実質的に憲法が改正されつつあるのであります。こう判断する基になるのであります。これに対する首相の御見解を伺いたい。
  139. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 御判断は御自由であります。併しながら政府としてはそういう意見を異にいたしております。
  140. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それでは実質的に改正されてはおらないというところの認識を持つておられる、それでは憲法の改正についてはどういうふうに今後お考えになるか、この点を伺いたい。
  141. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 憲法改正についてはしばしば申します通り、基本法である憲法は軽々しく改正いたすべきものではない。従つて私は憲法を改正する今日意思はございません。
  142. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 その憲法の改正につきましては、首相はそういうふうに答弁されまするけれども、現にあなたの党であるところの自由党では、憲法改正調査会というふうなものを作られておるはずである。そういう調査会等におけるところのいろいろな構想とか、或いはいろいろな見解とか、そういうものがあるだろうと思う。首相はそれを御存じであるか。それを伺いたい。
  143. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 憲法委員会においてどういう論議をなされておるか、私にはまだ報告はありませんが、併し憲法委員会を設けた趣意は、国の憲法を如何に運用せられるか、又運用せらるべきかというようなこと、或いは憲法に関しての一切のことを研究いたすことが政党としていたすべきものである。あえて憲法改正ばかりではないのであります。その目的を以て憲法委員会が作られておるわけであります。報告についてはまだ受取つておりません。
  144. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 その憲法の改正の構想としては、私が先ほどいろいろな点を挙げましたが、こういう点について当然触れることになるでありましようか、或いはどうでありましようか。その点の見通しを伺いたい。
  145. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 憲法委員会においては、自由討議をいたしておるのであります。如何なることが問題になつておりますか、又将来問題になるかということについては、私は直接関係いたしておりませんから、見通しは持つておりません。自由党の憲法委員会に携つておる人にお聞きを願います。
  146. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 その内容とか構想とかいうようなことについては、今明言できないと、併しながらおよそ首相の立場から見まして、いつ頃が一体改正の時期になるかというところのお見通しくらいは私はあるだろうと思う。その点についてどうですか。
  147. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 改正するということは考えておりませんから、従つて将来の見通しに対しては私は持つておりません。
  148. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 誠にこれは心外な御答弁であると思うのです。これだけの、一体各方面におけるところの憲法に違反するところの疑いがあつたり、或いは再軍備にしてもそうであります。そういう事態が起つているのに、なお今以て改正するところの意思がないからそういうことは答えられないというのは、甚だ以て私は心外に堪えない。併しこれ以上私はこの問題を追及いたしません。  次にもう一点伺いたいのは、今度のこの国会におきましては、汚職問題にからんで、いわゆる検察庁に対するところの指揮権の濫用、こういう問題が起つた従つて衆議院では不信任案が提案された。又参議院では警告決議案が出た。輿論も又吉田内閣に対してはもはや退陣を要求しておる。先般の朝日新聞の輿論調査を見ましても、二十四年に一七%の支持しないというような結果が、今回は四八%に上昇しておる。これは吉田内閣の道義的責任を無視しているその点を考えれば、社会におけるところの道義頻廃の要因をそれが作つておるものであることを恐れる愛国の至情から発したものであると思うのでありますが、この点はどうお考えになつておりますか。
  149. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 指揮権発動については、本会議等において政府の所信を開陳いたしております。その所信に従つて指揮権を発動いたしたのであります。それに対する批判は御自由であります。而して、果して政府のやり方が悪いということであれば、国民が選挙その他において、その国民の信念を表象せられるものと考えます。
  150. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私は法律従つてそれは発動したということを聞いております。併しあれだけの問題を起し、又衆議院においても参議院においても、いわゆる吉田内閣の道義的責任を追及しておる。これは社会悪を誘導するところの一つの原因になると私は考えられる。こういう点を国民は私と同様に考えておるだろうと思う。これがあなたの内閣を支持しないというパーセントが上昇したところだろうと思います。この点について伺つておるのです。
  151. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 政府の所信は先ほど申した通りであります。国民が何と考えるか、総選挙その他において結果が出ると考えております。
  152. 秋山長造

    ○秋山長造君 先ず第一にお尋ねいたしたいことは、政府の治安対策につきましてその根本方針をお伺いしたい。
  153. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 政府の治安対策につきましては、(秋山長造君「いや総理大臣から伺いたい」と述ぶ)しばしばこの委員会おいて申上げげておりますように、基本的な人権を擁護する、こういう信念に基いております。
  154. 秋山長造

    ○秋山長造君 只今治安対策の根本方針は基本的人権を擁護する、こういうお話がありました。それは吉田総理の方針でもあることと思います。ところが最近我々が見聞きするいろいろな事件を通じまして、政府の治安対策は基本的人権の擁護を方針とするのではなくして、少くとも或る一部の国民に関する限りは、基本的人権を積極的に蹂躙しても構わないという方針の下に治安対策を立てておられるように思われる。通信の秘密を侵すとか、或いは思想調査をやる、こういう問題に対して吉田総理は如何にお考えになりますか。
  155. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  156. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 基本的人権を蹂躙しても構わんというような考え方を持つておるものがあるとすれば、それが一般の基本的人権を侵すことになりますから、そういうことのないように、法を守るという建前に立つて治安を考えております。今のお話の中にありましたような、憲法に反するというようなことは、厳に慎しむべきことでありますので、政府はそういうものに対して法を守る(秋山長造君「警察大学でやつているじやないか」と述ぶ)ということが政府の方針であります。
  157. 秋山長造

    ○秋山長造君 今回の警察の改革によりまして、総理大臣の手許には自衛隊十五万、又従来の国家警察七万、更に自治体警察九万、合計三十一万というものの指揮権か集まつて参るのでありまして、これは恐らくアメリカにもイギリスにもないところの強大なる権力でございまして、強いて例を求めれば、ヒツトラー或いはスターリンのあの独裁権力にも等しいところの強大なる権力であります。こういう強大な権力を一人の人間に集中するということが日本の将来のために危険とお考えにならないかどうか。
  158. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お答えします。今私がヒツトラー若しくはスターリンというようなお話がありましたが、自衛隊或いは警察隊その他はことごとく機関を通じて行動いたすのであつて、私が自由に動かしておるのではないのであります。これが法律による機関を通じて、そして指揮権なりその他は発動いたすのでありますから、ヒツトラー若しくはスターリンとは私は考えが違うと思います。
  159. 秋山長造

    ○秋山長造君 ヒトラーにしてもスターリンにしても、二十世紀の今日如何なる独裁家もやはり民主主義の粉飾の下に権力を動かしておることは御承知通りであります。従いまして、法律なり何なりというものは一応ある。併し終局においてその権力を動かすところの人というものはたつた一人なんです。今度の日本のいろいろな改革によりまして、やはり最高の、終局の責任者は吉田総理一人ということになつて来るのでありますが、そういうことをやつて行くことが、この民主主義で立つて行こうという日本の方向を大きく別な方向へ向け変えることにならないかどうか。権力を又そこまで一点に集中して行くということは、大きな腐敗と独善との温床になるとお考えにならないかどうか。
  160. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 私はそうは考えません。何となれば、民主主義の下にでき上つた各種の機関を通じて行動いたすのでありますから、独裁主義とか或いはヒツトラー、スターリン等のやり方とは全然違うのであつて、飽くまでも民主主義を基としてでき上つた機関を通じて行動いたすのでありますから、御意見は私において承服ができない。
  161. 秋山長造

    ○秋山長造君 先般来衆議院の法務委員会、或いは参議院の本会議、或いは郵政委員会、或いは本日はこの地方行政委員会おきまして、警察大学において、相手の留守の間に見張りを外につけて、そして家の中に忍び込んで文書を盗み出すとか、或いは錠がかけてある家をこじ開けて物を取つて出ると、或いは人の持つておる鞄の錠を開けて、そして気付かれないように文書を盗みとる、或いは封をしてある文書を盗みとつて来て、そうして中を開けて見て、知らん顔をして糊付けをして返すというようなことを教えられておるのである。その問題について小坂担当大臣は、本会議おきまして、それは飽くまで共産党の活動を探るためにのみ限られた範囲でやつてつおるのだ、そして又それも非合法にはやつておらないのだというような答弁がございました。これこそ憲法によつて保障されたすべての国民に対する無差別、平等、基本的人権の尊重、人間の尊厳というこの憲法の大方針を少くとも、はつきり申上げますが、共産党員のかたがたに対してだけは政府は適用しない、そういう人たちには憲法の保護がないのだ、こういう扱い方をなさつておると受取らざるを得ないのでありますが、吉田総理はそういうお考えをお持ちであるかどうか、吉田総理大臣にお伺いしたい。
  162. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣の答弁、即ち私の答弁と御承知を願います。
  163. 秋山長造

    ○秋山長造君 この問題は、先ほど若木委員の憲法改正の問題とも関連をいたしまして、憲法の一番重大なこれはポイントになる問題でございます。にもかかわらずこれに対する答自弁をなさらないのは、答弁しにくい事情があると私は了承いたすよりしようがございません。  そこで、次にお尋ねいたしますが、政府は今回の警察改正によりまして、飽くまで警察の政治的中立を確保した、或いは不偏不覚に運営をして行くんだということを、その第一条、二条、三条という総則のところに繰返し謳つておられます。にもかかわらず、あの警察運営の最高の責任を持つ国家公安委員会委員長にはあなたが任免自由自在という国務大臣が当然委員長になつて、采配を振うことになつておるのであります。こういうやり方を以てどうして警察の政治的中立なり或いは不偏不党の建前というものが保障さるのか、その点について総理大臣の御方針をお伺いしたい。
  164. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 先ほど申した通り、民主主義に基いて構成せられた機関を通じて行動をいたすのでありますから、御意見とは私の考え方は違います。
  165. 秋山長造

    ○秋山長造君 国家公安委員会の構成は、民主主義になつておらない。従来の国家公安委員会は、五人の人が対等な権限と立場を持ちまして、そうして委員長委員間の互選になつてつた。これこそ民主主義なんです。ところが、今度のはそうではなくして、五人の委員以外に、これは初めから一方的に委員長というものがきめられて、そうしてそれに総理大臣の部下であるところの国務大臣が当然そのポストに坐ることになつておる。こういうやり方で警察の政治的中立なり不偏不党の精神というものが貫かれるものかどうか。先ほどお話になりました検察庁法十四条の発動によつて政府は検察権を政治的に抑えられた。今度はこの国家公安委員長たる国務大臣のポストを利用して、そうして警察をば政治的に抑えたり政治的に引ずつたりする慮れがあると考えるのでありますが、その点について総理の御見解をお伺いしたい。
  166. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  167. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) これはしばしば秋山委員にお答えいたしておるのでありますが、公安委員会は五人の委員によつて構成されております。
  168. 内村清次

    委員長内村清次君) 総理大臣からお答え願います。
  169. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 政府委員はそのためにおるのですから、政府委員からお答えいたします。
  170. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 国家公安委員長が国務大臣であることから中立性を侵されるということでありますが、そうではないのでありまして、採決権を行使するに過ぎないのでありまして、表決権は五人の委員の奇数委員においてすでに行使されておる。而も警察の本来中立性を保つべき職能からいいまして、そのような御心配の懸念はないと考えております。
  171. 内村清次

    委員長内村清次君) 総理に対する時間が非常に少いのですから、成るべく一つ総理大臣から答弁をお願いいたします。(「異議なし」「名議長一と呼ぶ者あり)
  172. 秋山長造

    ○秋山長造君 総理大臣は、従来しばしば公私の席上におきまして、知事官選論を唱えて来られました。又先般も衆議院、参議院の内閣委員会おきまして、同じように知事官選を唱えられたそうであります。で総理大臣としては、今7日の民選知事というものを近い将来に官選知事に持つて行こうという強い御方針のようでありますが、その点について総理の御方針をお伺いしたい。
  173. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 私は知事は官選にいたしたほうが地方行政その他からいたしましてよいと考えますが、政府の方針として今きめておりません。即ち、総理大臣としての方針はきめておりません。私は単に私見を述べただけであります。
  174. 秋山長造

    ○秋山長造君 私見を述べたにいたしましても、あなた個人としては、近い将来に知事を官選に持つて行きたいという強い御希望があるのでありますか、どうでありますか。その点もう一遍伺いたい。
  175. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 只今申した通り、政府として、又私としてもまだ決定はいたしておりません。私見といたしては、官選がよいと思います。
  176. 秋山長造

    ○秋山長造君 そういうお考えの下に立案された今回の警察法における府県警察というものは、政府は自治体警察であると強弁しておられますけれども、近い将来に当然そのまま国家警察に一本にすぐ切換え得るような建前になつておると思うのでありますが、その点如何ですか。
  177. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 主管大臣からお答えいたします。(「総理大臣、総理大臣」と呼ぶ者あり)
  178. 内村清次

    委員長内村清次君) 発言は許しておりません。総理大臣からお願いいたします。
  179. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  180. 秋山長造

    ○秋山長造君 主管大臣からは聞いておるからつ……。
  181. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 知事官選というものは、正式の議題になつておりません。従いまして、この場合はそういう前提の下に御議論願いたいと思います……。
  182. 内村清次

    委員長内村清次君) 発言は許しておらん。
  183. 秋山長造

    ○秋山長造君 総理大臣にお伺いしますが、総理大臣は新聞の伝えるところによりますと、来月の四日の外遊に当つて、羽二重だとか或いは釣竿だとか、白足袋だとかいろいろなお土産をどつさり持つて出発なさるということが新聞に大きく書いてあつた。でそういう問題はともかくといたしまして、これだけの僅かな期間に防衛法案であるとか、警察法案であるとか、こういう重大な法案をろくろく慎重審議の余裕も与えないで、無理やりに押通そうとなさつておるのでありますが、この警察法なり或いは防衛関係法というものはアメリカへ出発なさる場合の重要なこれはお土産になる法案でありますがどうでありますか。
  184. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 別段お上産になる法案と考えておりません。(「おります」と呼ぶ者あり、笑声
  185. 秋山長造

    ○秋山長造君 そこでもう一度お尋ねをいたしますが、(「馬鹿らしくて答弁できないのだよ」と呼ぶあり、その他発言する者多し)
  186. 内村清次

    委員長内村清次君) 静粛に願います。
  187. 秋山長造

    ○秋山長造君 吉田総理は政府の治安の根本対策として、一人の無辜を牢獄に投ずるよりも、三人の泥棒を逃したほうがまだましであるどいう昔からの金言がございます。その金言についてあなたはその通りが日本の国家がとるべき治安の根本方針であるとお考えにならないかどうか。いや総理にお尋ねいたしたい。
  188. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣からお答えをいたします。
  189. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 法をまげる者かあればこれを制裁する。併し制裁する方法も将来法を守らしむるような方法で指導いたしたいというのが私どもの考えであります。
  190. 秋山長造

    ○秋山長造君 もう一度総理にお伺いいたしますが、小坂担当大臣のお言典によりまと、繰返し繰返し政府の治安の根本方針は基本的人権を守ることたということを繰返しておられる。ところが実際に警察がやつておるところの行動というものは、この基本的な人権をまもるという根本方針としばしば食い違つておるところの行動をとつておられるように思うのでありますが、その点について総理は憲法を飽くまで守るという御信念を持つておられるのかどうか。
  191. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 憲法は飽くまでもこれは守る信念で参つております。
  192. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど総理の外遊の問題につきましては、若木君から質問がありまして、本会議で答弁した以上には答えられないというお話でありました。私は観点を変えまして、政府が重要法案と考えているいろいろの法律案を提案いたしまして、これは政府といたしましては、いわゆる重要法案というものは会期中に上げたいという御意思があるものと了解いたします。併し会期はもうすでに迫つているのであります。従つて問題は、総理の外遊の日時がきまつているならば、重要法案についても慎重審議することかできないという状態に追込まれるわけである。従つて現在の状態おきましては、またまだ参議院におきまして、防衛二法案なり或いは警察法案なりというものは審議の始まつたばかりであります。逐条審議に至るまで相当の日時がかかると考えるのでありますが、会期延長につきまして吉田総理は何か考えていらつしやるか、重要法案を審議させるためには更に会期を延長するようなことを御希望になつていらつしやるか、或いは外遊の期日がほぼ確定しているからこれ以上に会期を延長することはできないとお考えでございますか、この点を一つ
  193. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 私は外遊の希望は持つておりますが、期日については光に申した通り未だ確定いたしておりません。又各種の重要法案が会期中に参議院において議了せられることを希望いたしております。従つて未だ会期延長等については政府としては考えておりません。
  194. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 会期の問題につきましては、これは勿論要法案を審議する側にある国会の意思によつて決定されるべきものと考えます。政府がどんなに希望されましても、必ずしもその通りつに会期が延長されるかどうかわかりませんが、併し問題は我々が重要法案に対して慎重審議をしようとすればどうしても日が足らないということが起つて来るわけであります。併し総理が外遊するという日時がきまつているならば、それ以上は延ばすことができないという一つのめどがあるわけであります。私が質問申上げたいことは、こういう重要法案がまだ十分審議されないままに、或る政党の力によつて非常に強行されて法作業が通過するという場合、我々といたしましては、国民に対し新らしい法律を作つたという責任を負わなければならないわけでありますが、現在の段階としてで、防衛二法案にいたしましても、警察法案にいたしましても、十分に審議されているという段階になつていないのであります。そこで会期の延長の問題につきましては、これはまだ吉田総理として確たる考え持ておいでになりませんが、私たちつがただ心配することは、会期のことが非常に外遊等の関係によりまして生存起つているということになれば、我々国会議員としての十分の職責を尽すことができないので、この点を明らかにして頂きたいと考えるのでありまして、総理の外遊の日時は発表できないといたしましても、会期の延長ができるそこに何らかのゆとりがあるのつかどうか、もう一度お伺いしたいと存じます。
  195. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 只今申した通り、私の外遊出発の期日等については今全然確定いたしておりません。一に国会の終了後において考えるつもりでおります。そこで政府としては重要法案その他が会期内において参議院で議了せられることを期往いたし、ただその議了せられることを希望いたしております。
  196. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで、重慶法案でありますが、政府は法案提出される場会員におきましては、一々レツテルを貼つて、これが重要法案であるということを特に国会側に中人をしているわけではない。従つて何が重要法案であるかということは国会自身がきめる問題であろうと考えますが、現在問題となつております警察法案は政府にとつて非常に重要な重要法案であるとお考えでございますかどうか。
  197. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 政府として提出いたした法案はことごとく重要法案なりと考えておるのであります。これに対して差別を付けて、これは重要である、これは重要でないなどというような差別は付けておる考えはないのであります。これに対する御審議は国会会自身がせられることと思います。
  198. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 一つの例をとつて申上げますと、政府が提案されております奢侈繊維税の問題にいたしましても、総理大臣が総裁でありますところの自由党自身がこれを審議未了にするということを考えている。この問題も恐らくは政府にとりましては重要法案一つであるということはこれは疑いを入れない。ところがこの法律の審議未了を策している人かある。それが自由党の党員であるということはこれは実に驚き入つた話であります。政府の提案いたしましたすべての法律案がことごとく重要法案であるというならば、なぜ総理は政府の立場から奢侈繊維税に対してこれを促進する努力をなさらないのか、この点は如何ですか。
  199. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 各法案とも議了せられ、若しくは通過いたすことを政府としては極力努力いたしておるのであります。これに対して或いは議了せず、或いは流したというのはこれは国会自身において選択せらるべき問題であつて、政府としてはことごとく重要法案として議会において議了せられることを切望いたしておるのであります。
  200. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 政府の見解によりますと、警察権というものは統治権である。国の統治権であるということを言われているのでありますが、新しい憲法の下におきまして国の統治権ということはどういう意味を持つものでございますか。
  201. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  202. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 国がありまする以上、国土があり、国民があり、統治権があるということになつております。統治権の主体が誰であるかということが問題でありまするが、民主憲法におきましては、国民が統治権の主体であるということであります。
  203. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は新しい憲法の下におきましては、旧憲法のごとき統治権という考え方は当らないのではないかとこう考えます。これを仮に行政権と言えば別であります。統治権というのはやはり天皇の下における統治権、或いは統治の大権という観念にほかならないのでありまして、政府が不用意思に統治権と言われることは如何にもその言葉が権威的に我々に対して与える意味を持つておりますけれども、我々はこれを統治権とは考えません。そういう考え方は新憲法の下におけるやはり依然として旧憲法的な観念が横行していると私は考えなければならないのでありますが、古川総理は如何でございますか。
  204. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  205. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 統治権という言葉憲法学者、公法学者におきましても、我妻或いは田上教授等等が使つておられるのでございまして、統治権の主体が天皇であられるということは旧憲法下でありつまして、民主憲法下におきましては統治権の主体は国民である、こういうことであります。
  206. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで警察権の本来の姿を国の統治権であるという考え方で政府はおるのでありますが、私は警察作用というものは国の統治権、仮にそういえば、統治権に属するもの以外に警察作用というものは考えられると思うのでありますが、警察作用用というものがすべて統治権でありますかどうですか。
  207. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  208. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 統治権に基く作用、こう申しておるのであります。統治権即ち警察権というのじやないのです。警察権というのは統治権に基く作用でありまして、国と地方の両者の利害に関係を持つのであります。その権能を国と地方公共団体との間に如何に配分するかは国の行政上の責任、地方自治の本旨というものを総合的に勘案すべきものと考えてつおります。
  209. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 折角総理大臣に出席して頂いたのでありますから、成るべく総理大臣に質問をし、総理大臣にお答え願いたいと思います。今回の警察法の改正によりますと、国務大臣を以て国家公安委員長にするということでありますが、警察法の中におきまつしては警察というものは不偏不覚、中正公正でなければならつないということを言つておるのであります。国務大臣は政党に属することは明らかであります。従つて国務大臣であるところの国家公安委員長という人の考え方によつて著しく警察作用というものが政党的な色彩を帯びるという心配があるのでありますが、大ざつぱなところでよろしいのですが、総理大臣として如何お考えでございますか。
  210. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 大ざつぱにお答えをしますが、いわゆる国家公安委員長の意思は表決権若しくは発議権というようなものはないのでありまして、その委員会の結果について委員長が裁断する場合はありましようが、飽くまでも民主主義でやつて行きたいと考えんております。
  211. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 総理にそれ以上どうも質問するのは御遠慮申上げます。  一つお伺いしたいことは、曾つて吉田総理大臣はそこにいらつしやる斎藤国警長官を罷免なさろうとしたことがある。このときには国家公安委員会が独立した一つの権限を持つておりまして、総理大臣の力によつて罷免することはできなかつた。そのとき以来総理大臣は国が治安の責任を持たなければならない、現在のような、その当時のつような国家公安委員会の構成であつては総理大臣の威令も行われないからつ、是非とも警察法を改正しなければならないという考えを持つて今日まで来られたように思うのでありますが、警察法の改定について、斎藤国警警長官を罷免できなかつたというその一つのことが原因となつておつられるかどうか。
  212. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) ここに斎藤長官もおられますから、当事の事情はおわかりでしようが、私は今お話のようなことがあつたことを記憶いたしません。従つて又新警察法はこれは当局が作つたものであつて、そうしてこれが閣議において了承したものであります。私が原動力になつてつたものでないということをお答えいたします。
  213. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 吉田総理は大変国政全般に対していろいろ考えていらつしやるから、あの有名な斎藤国警長官の回罷免問題については一記構想はないとおつしやるのも或いは御無理でないかも知れません。併しその当時政府としては、それこそ当時の官房長官は増田甲子七君でありました。国務大臣は樋貝君でありました。全力を挙げて斎藤国警長官の罷免を策したつのであります。ところが当時の公安委員長は辻君でありましたが、公安委員会としては罷免に値する何らの事故もないということを明確に述べまして、遂に政府の要望を蹴つてしまつたのであります。併しその当時の政府増田官房長官の話によれば、どうしても警察法というものは変えなければならない、そのときから吉田政府といたしましては、警察法の改正ということ企図して来られたのであります。勿設直接吉田総理が命令を下して今回の警察法の改正について指示されたということは或いはないかも知れない、併しそれは政府の責任でありますから、吉田内閣総理大臣がそれを御承知でなければならないはずであります。その点は如何ですか。
  214. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 只今申上げた一通り、私において記憶がごございません。
  215. 笹森順造

    ○笹森順造君 私ども只今この警察法をこの委員会において審議をしておるわけでございますが、短い時間に総理にいろいろお尋ねしたいこともありますけれども、併し中心をやはりこの警察法の審議に置いてお尋ねしたいと思います。併しながら詳細に亘る条文等のことはこれは担当大臣もおりますので、私ども今まで審議をし、質疑応答を続けて参りましたし、又今後においても総括質問なり逐条審議の機会がありますので、そういう点について今日は総理にお尋ねする考えはございません。従つて、総理だけが直接御関係になる根幹的な大方針のようなものたけを伺つておきまして、今後の担当大臣といろいろ相談する上の私どもの考え方の基本といたしたいと思いますから、そういうおつもりでどうぞお答えをお願いしたいと思います。  そこで、私かお尋ねしなければならんのは、只今この統治権の問題、或いは行政権の問題等お話もございましたけれども、私どもはやはり国権の炭山高機損であるこの同会において一たび立法的なことを、その任を遂げました上は、すべてこれは行政の面においてその職務及び権能は総理大臣の手許に移されるわけであります。従つて今度審議しておりまするこの警察法おきましても、その提案の趣旨、或いは又この提案されました法律が軍営されますることについての、その責任の衝がすべて総理大臣のところつに行くわけであります。従いまして、私はここでお尋ねをしたいのは、この警察法というものが数年前に現警察法が制定されまして今日まで至つておるのでありまするが、その当時のことを私ども振り返つて記憶を辿つて見ますと、これは占領当時における立法でございました。この占領当時における立法は占領政策を遂げるために行われたものであるがために、往々にして国民の思想、感情に合わず、或いは又国情に即しないものがあつたというので、そのことを独立後にしばしば国会においても申されましたように、総理においても行過ぎを是正しなければならないというようなことを考えておられましたが、やはりその意味でこの法律案内閣から提案されたものであるかどうか、総理にお尋ねしたいと思います。
  216. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) これはお話通り占領政策の行過ぎと私も考えておるのであります。何となれば、占領当時における事情としては、日本を以て警察国家となし、或いは又中央集権が過度に行われて、遂に軍国主義になつたというような考え方もあつたろうと思います。そこで成るべく政府の権力を分散させる、又警察についてもこれを国家警察、自治警察等に分けて、そうして二つの制度を設けた。その結果はどうかというと、或いは能率的でなかつたり、或いは又余計不必要な何といいますか、経費がかかるというような面もあり、又更に進んで申せば警察国家警察及び自治警察を設けた当時においては海陸軍というものは考えられなかつたので、従つて海陸軍に代るというような力を持たすというような考え方もあつたようであります。併しながら今日保安隊といいますか、防衛隊ですか、防衛隊も漸増するというようなことになつておりますから、警察隊の力は漸減さして、そうして保安隊、防衛隊のほうに移すという考え方をいたすべきである。即ち人員の減員をいたすべきである。即ち占領政策是正の一環として政府はこの法案提出いたしたということであります。
  217. 笹森順造

    ○笹森順造君 私どもは、占領政策の日本に望みたましたところのものの中には、只今首相の述べられましたように、私ども自身がやはり民族の歴中と因習に対しまして謙虚な反省をしなければならない画があつて、而も又それが行過ぎて日本の環境に合わないというものもあつたに相違ありませんけれども、それにしても最も今まですべてを失われたものを取返したものの一つは、これは首相もやはり国会でしばしば述べられましたように民主主義の一線であろうかと思います。この民主主義の一線を私どもが確保するために、すべての法律の上にこの精神が織込まれて来た。従つて当時やはり警察国家であつたと疑われまする日本が、自治警察国家警察を置きまして、そうしてこの民主主義の実を挙げるために努力して来たことは、その当時必要であつたと私どもは考えるわけであります。然るに今お話のごとくこの民衆に親しまれ、又よい成績を挙げて今日まで育くまれて来ました自治警察を国警と共にこれを廃止いたしまして、一本にする。この一本にするということが更に又日本の国を最も輝かしい将来の民主主義の線と、而も又警察の責務を充実するために用いられますならば、私どもは誠にこれは結構だと思います。ただこの場合に、この法律を見ますると、こういう精神でどうも貫かれていないように窺われますので、又陰惨なる昔のような警察国家を作るのではなかろうかという点がありますので、この点が非常に私も懸念するわけです。恐らくは総理大臣もこれを懸念しておられるだろうと思う。そこでこの法案の中にそういうようなものが全然ないということで、信頼してお出しになつているかどうか知りませんけれども、私は国会の質疑においてそれがはつきりした場合には、潔くこの修正に応ずるという態度でなければならんと思うのでありますが、どうお考えになりますか。お尋ねいたします。
  218. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 政府は飽くまでも民主主義の基盤において警察法の制定をいたしたつもりであります。若し又将来お話のもうな民主主義に反するような事態が起るといいますか、運用その他においてそういう事態が起れば、政府としては喜んで改正をいたすつもりでおります。
  219. 笹森順造

    ○笹森順造君 これもすでに衆議院で論議をし尽し、修正された一点でありますことは多分総理も御存じだろうと思うのでありますが、これは大きな点であります。つまり総理大臣が任命すべきところのものを、特に国家公安委員会が任命して、総理大臣に相談をするというようなことに変つて参りましたが、この修正点は私どもは更に民主主義の原則を貫く一歩前進たというふうに考えておりまするか、衆議院の修正について、吉田総理大臣は如何なる御見解をお持ちでございますか。
  220. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 主管大臣がお答えいたします。
  221. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 国会の修正に対しましては、政府はこれを尊重いたし、又拘束を受けるとということでございます。
  222. 笹森順造

    ○笹森順造君 そこで、先ほど来いろいろと申されておりまして、なおまた解明されておらない点で、而もこれは決して細かいことではなく、大筋のことでありまするから、総理がすぐお答え願え得ると思うので、それは申すまでもなく国家公安委員は、先ほど来ほかの委員からお尋ねのありました通りに、すべて不偏不党、又公平中正でなければならない。従つてこのこ委員は必ず総理大臣が任命されます場合にも、国会の承認を得るという原則を貫いて来ているわけであります。ところがこの国家公安委員会委員長だけは何故に一番その上に来る委員長だけは国会で承認を求めないのか。これはどういうわけであるか。一つこの点だけは是非小坂大臣ではなくて、吉田総理からお答えを願わなければ、これは大事な点でおります。
  223. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) これは詳細に亘り、私には答えられないむずかしい問題でありますので、主管大臣からお答えいたさせます。
  224. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) それはよい意味において政府の意見を国家公安委員と交流するということでございます。
  225. 笹森順造

    ○笹森順造君 それをお尋ねしましたのは、吉田総理の政治責任を実はお尋ねしたいがためにお尋ねしている。先ほど来お話のありましたように、そこが一番大事な点で、つまり過去において私どもは、政党内閣でありまするこの内閣が、必ず選挙等において政治干渉をするということがあつたわけです。私も実はこの点について副総理に細かくお尋ねをいたしましたところ、これはやはり正しい物の考え方としては理論的には成立しない、だが政党内閣である以上は止むを得ないという答えをして、論理の不徹底でありながらも、内閣の必要上、政党内閣としてこれは止むを得ないのではないかというお答えがあつたのであります。この副総理の言葉をそのまま総理大臣としてのお言葉と受取つてよろしゆうございますか。それをお尋ねいたします。
  226. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 副総理が何と答えられたか、私は存じませんが、併しながら、今主管大臣からお答えしたこと、私の面前にてお答えせられたことは、私の意見であります。
  227. 笹森順造

    ○笹森順造君 それ以上言つても、これは私自身は速記録において明らかに吉田総理大臣が信任さるる副総理で、総理大臣の代りに出て来たときのお答えでありまするから、これは小坂大臣以上に私はこれを受取るよりほか方法がない。これは御否定なさらんと思いますが、御否定なさいますか。
  228. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 只今申しました通り、私は副総理が何と申されたか存じませんが、併しながら、今小坂主管大臣がら答えられたことは、私が現に聞いておることでありますから、私の意見と御承知願います。
  229. 笹森順造

    ○笹森順造君 時間もないようでありますから、最後に一点だけお尋ねしておきます。  私どもが総理大臣の職務、総理大臣の権能というものは、やはりこれは国会において信任を受けて、この最高の政治の機関たる国会からの信任委託によつてその仕事をしておりなさる。従つて、すべての責任は、行政に対する責任はやはり国会において負うべきものであると考えております。而して、その総理大臣は行政各般の長として一切の指揮監督をやつておいでなさる、これは言うまでもない。その職務なり、或いは又権能なりというものは、すべてこれは公務員としてすべての国民のための幸福、自由、これらのために奉仕すべきものでなければならんということを考える。私は総理大臣は、やはり行政の長として、謙虚なる気持がなければならんということを考え、或いは内政においても外交においても、このお気持ちがありますかということを曾つて衆議院におい私は首相にお尋ねしたときに、それはそのつもりであるということのお答えは、よもや御自身でお答えになつたことだからお忘れになつてはおりますまいと思う。ところが、私はそういう権能を総理大臣が持つているということは、その目的は何であるかというと、これ又至高なる人権の尊重であるであるとか、真の自由の保護であるとかいうことでなければならん。警察法においてもやはりこれを基として行くべきものと私は考えている。従つて、総理大臣の権能が大きなものであるということは、決して私どもは反対はしておらない。併し、その権能が大きくなるということは、次第々々に募つて参りますると、いろいろな問題が起つて来る。旧懸法と違つて新憲法は大臣の任命ばかりでなく、罷免権も持つと規定して、非常に大きな権能を持つている。而も又今度は三軍の統帥としての地位に似たようなものも先ほど御説明のごとく民主主義の機関によるとしても、それも又与えられているということになる。而も又今明確なお答えはありませんけれども、当然国家公安委員会委員の任命は国会の承認を得なければできないか、委員長たけは総理大臣だけが任命し得るということになつて、そういう権能も持つているということになつて、かくのごとくしてだんだんと法律できますのでありましようけれども、憲法できめられておりまする国民の自由の権能がますます圧縮せられ、そして国会においてきめたものも次第々々にこれが狭まつて行くということになつて、総理大臣の権能がますます大きくなつて行く。このことが私は非常に憂えられる点でありまして、いわゆる中央集権の下にあらゆる権能がこの総理大臣に集中するということが果してこれがよいことかどうか。而もこれが善政が行われておるのでありますならば、これも又結構だと思いましようけれども、併しながら、それが果して現にどういう状況になつているか、国会においても参議院においてもしばしば問題になりましたような、ああいう汚職の問題等もありまする現状において、一方においては権力が集中し、他方においては悲惨なる国民の集積があるという場合に、その次に来るべきものは一体何であるかということを思いますときに、この権力の集中というものと現在の国情に対して総理大臣は如何なる御観察をお持ちになつておるか。どうかこの点について、根本的なる国を指導し得る御方針をこの際に最後に明確にして頂きたいと思う次第であります。
  230. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 政府と申しますか、私といたして飽くまでも民主主義を貫徹して参りたいと思うのであります。仮にお話のように総理大臣に権力が集中せられても、民主主義に基いてできた各機関を通じてその権力といいますか、総理大臣の権能を行うのでありますから、いわゆるお話のような集中されたがために次に独裁的になるというような懸念はないのである。又私においてそういうことは決していたさない決心でおります。
  231. 加瀬完

    ○加瀬完君 主管大臣の御説明によりますと、警察法の改正は政府の治安責任の明確化のためであるという御説明でありますが、総理大臣も同じような御見解であると承知してよろしいか。
  232. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) その通りであります。
  233. 加瀬完

    ○加瀬完君 治安の責任という点から、見るならば、政治、経済の安定というものが基本条件として取上げられなけならないと思いますが、この点そのように了解してよろしゆうございますか。
  234. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お話通りと考えます。
  235. 加瀬完

    ○加瀬完君 政治、経済の安定ということで、一体国民は今何を一番阻んでおるでありましようか。こういう点から見て、政界汚職の徹底的な浄化ということを国民は望んでおると思います。汚職捜査は打切つて警察法だけを改正すれば治安責任が明確化されるという理由はどこにあるのでございましようか、御説明を頂きたい。
  236. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) ちよつと御質問の趣旨がわかりませんか、警察法だけ改正すれは汚職等の問題はなくなるというような御質問でございますか。
  237. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうではございません。汚職捜査は打切つて警察法だけ改正するとしても、私は総理の御見解に従えば政府の治安責任は完全にはなつて来ないと思いますが、併し汚職捜査は打切つて警察法の改正だけを強引に進めておられる。これだけで治安責任が全うされるという御理由を承わりたしい、こういうことです。
  238. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 政府は捜査を打切るということはいたしておりません。捜査は飽くまでもいたすがよいということを言つておるので、決して何らの干渉も何もいたしておりません。
  239. 加瀬完

    ○加瀬完君 十四条が発動されたことによりまして、汚職捜査は進んだのでございましようか、とまつたのでございましようか。
  240. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 政府の考えますところによれば、逮捕をさせないことによつて捜査が妨げられるとは考えられないのであります。何となれば逮捕をする場合、これは逮捕は基本的人種の最も垣大なことであります。むやみにこれを発動すべきものではないと思うのであります。若し捜査ができないものならばこれはやむを得ないかも知れません、か、これを幹事長の場合に適用といいますか、幹事長の場合について言えば、逃亡する憂いもない、或いは又証拠浬滅をする憂いもない。その場合にこれを捕縛しなければ捜査ができないということは、これは旧警察法その他の場合において考えられることでありまするか、現在の新憲法のもとにおいては、逮捕ということは基本人権の根本をなすもので、逃亡の憂いなき、又証拠煙滅の憂いのない場合にこれをいたすべきものではないと思うのであります。検察庁としても飽くまでも基本人権を尊重して捜査は継続する。若し又これを逆に裏から申して、幹事長において逃亡若しくは証拠津波を図れば、これはみずから自己の責任若しくは罪跡を証明するものである。かくのごときことはいたすはずがないのであります。故に私は政府としては、十四条を発動いたしましたが、捜査は飽くまでも継続して慎重にこれを捜査を続けるがいいということを申しておるのであります。
  241. 加瀬完

    ○加瀬完君 総理の御見解には二つの過誤があると私は思うのであります。一つは検察庁法第六条の捜査権よりも内閣の一般行政権を優先させたという点であります。二つは捜査上における逮捕の必要の有無というものは検察庁当局の判断を待つべきであつて、これを内閣が逮捕の当不当を判定すべきものではないと考えます。なぜかと申しますと、検察庁は事実捜査に困難を来しまして、聞くとこるによりますると、捜査の見通しがつかないままに捜査陣の解散をしてしまつたそうであります。結局これは事実上捜査の打切りであります。これでも捜査を打切られたのではないとおつしやられるのでございましようか。
  242. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 私は飽くまでもそう考えて、政府はその信念のもとに指揮権発動をいたしたのであります。現に法律において、指揮権発動は主管大臣の権限円にあるので、決して検察庁のみがこれを自由にいたすべきものではない。さほどに逮捕ということは重大な基本人権の根本をなすものである。故に政府としてはいやしくもこれをさせないというのが政府の考え方であります。
  243. 加瀬完

    ○加瀬完君 私がこの問題を伺いますのは、先ほどから委員のかたから質疑か重ねられました政党の政治偏向が国家公安委員長という名の下に中正たるべき警察行政に介入することと恐らく同じケースと考えるからであります。そこで総理は捜査は打切つたのじやない、逮捕をしなくても捜査はできると言いますけれども、事実検察庁は捜査の困難を逮捕を拒否されたために来たしておるのであります。そのために捜査陣が解散しておるのであります。これを体どう御覧なさるのでありますか。どう御判断なさるのでありますか。
  244. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 捜査陣を解散したかどうかは知りませんが、解散いたしても検察庁としては飽くまで捜査ができ得べき権限があり、又地位におるものと考えます。
  245. 加瀬完

    ○加瀬完君 徹底的な摘発捜査ができないで捜査陣が解散したのであります。その責任は政府にある。そこで捜査を打切つたか否か、問題になりますが、若しも検察庁が捜査陣を解散させたことが事実であるとすれば、総理はこの責任をおとりになりますか。
  246. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) むしろこれは解散した事実があるならば、検察庁がその責任をとるべきであつて、政府としては一般検察庁の指揮権を持つておるのでありますから、政府の真に考えるところによつて十四条つ指揮権発動ということは、政府として誤つておらんと思います。
  247. 加瀬完

    ○加瀬完君 それはおかしいことだと思います。捜査の権限というものはこれは検察当局なんです。この捜査権限というものに対して一般行政を持つておる内閣が抑えつける。そのために捜査が支障を来たす。その原因は検察庁にあるということは甚だおかしい。
  248. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 政府としては検察当局に指揮する権能がある。又指揮した結果によつて政府は責任はとりますが、今捜査ができなくなつた、困難になつた、これは誰が決定をいたすのでありますか。政府としては困難であつても、基本人権を尊重する意味から飽くまでも捜査をもつと続けると同時に、基本人権をも侵すがごとき逮捕のごときはいやしくもすべきものでないという見解を持つております。
  249. 加瀬完

    ○加瀬完君 問題は、問題はですね。この治安の責任を明確化するということは政治経済の安定によるということを総理は御確認になつておる。そこで現在国民が一番政治経済の安定の基礎として望んでおることは政界汚職の徹底的な浄化なんです。それにブレーキをかけておるのが政府だということになりましても、治安の責任がないとおつしやられるのでございますか。
  250. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) ブレーキはかけておりません。
  251. 加瀬完

    ○加瀬完君 ブレーキをかけておるという証拠に検察庁は捜査ができなくて、事実上捜査陣を解散しておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)これ以上ブレーキをかけるという、これ以上のことがありますか。(「そうだそうだ」と呼ぶ者ありその他発言する者多し)
  252. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 私は繰返して申しますが、逮捕せずして捜査をするのが今日新憲法の下における基本人権の尊重と考えております。政府はその信念に基いて指揮権発動をしたのであります。
  253. 加瀬完

    ○加瀬完君 一般的にはそういうことが言えても、特に政党或いは内閣中心にあるべき者に逮捕のことが及んだときに、突如として十四条というものは発動しておる。世間誰が考えてもこれが吉田総理が真に国民の人権尊重のために、佐藤さんの場合こういうことを発動したとは一人も思つていないと思う。そのために捜査が非常に支障を来たしておるということは厳然たる事実だ。それをも、これによつて非常に治安の責任の明確を欠いておる、そういうことにも責任がないというのでは先の御答弁とは非常に食い違いがあるのじやないかと思います。その点如何ですか。
  254. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 食い違つておるとは考えません。
  255. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは逆に、自分の政党の利益に相反することは、政治経済の安定も、政府の治安責任もお考えにならないと、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  256. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 御解釈は御自由であります。併しながら政府の考えておることは今申した通りです。
  257. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういうお考えでおやりになりまするときに、国家公安委員長というものを任命することは、明らかにこれは政党によるところの政治介入というものを露骨に現わしている一つの計画だ。これを如何に抗弁しても、中正公平たるところの警察権には政府は第三者的な立場をとると言つても、これは御答弁にならないと思う。この点は如何ですか。
  258. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 御判断は、御批評は御自由であります。併しながら政府の考えておるところは先ほど申した通りであります。
  259. 加瀬完

    ○加瀬完君 時間がありませんから別の問題を伺います。この警察法を改正いたしまして、国家警察的な性格というものを非常に強化いたしましたのは、自衛隊は軍隊であると、こういう前提に立つてのことでございましようか。
  260. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 所管大臣からお答えいたさせます。(「自衛隊の問題だ」「いやそうじやない警察の問題だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  261. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 国警の(「君は所管大臣じやない」と呼ぶ者あり)性格を非常に強くしたとおつしやいますが、しばしば申しておる通り、この警察法の中にあります組織、機構としての警察の権限におきましては、府県自治体警察、これは完全なる自治体警察である、府県を主とした自治体警察に一本化する、こういうことでありまして、あなたの御質問の趣旨はちよつとわかりかねるのであります。
  262. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういうことはあなたが自分で質問して一人でわかつておるだけの話で、ほかのものには一つもわからない。何が自治体警察だ。私が聞いているのは、少なくとも現にある自治体警察というものの性格を国家権力の中央集権的な方向へぐつと引き張つて来たのは事実だ。そこでそういう方法をとるということは、自衛隊は軍隊であるということをお認めになつてのことか。自衛隊は軍隊になつていることをお認めになつているかどうかということは、私は総理に直接お答え頂きたい。
  263. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 前提が、私は今しばしば申しているように、前提が変つているのでありまして、あなたの独断に基く前提の、前提を変えての仮定には私は意見を異にすると申上げるより仕方がありません。(「総理答弁」「自衛隊の問題だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
  264. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 国務大臣たる小坂君からお答えいたします。(「自衛隊の問題だ」と呼ぶ者あり)
  265. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 前提をおいて、これは自衛隊を軍隊であるという認識に立つていると、こういうのでありますが、その前提が間違つていると申上げている。
  266. 加瀬完

    ○加瀬完君 それならば伺います。警察予備隊令によれば、第三条の任務のところに「警察予備隊は、治安維持のため特別の必要がある場合において、内閣総理大臣の命を受け行動するものとする。」二項に、「警察予備隊の活動は、警察の任務の範囲に限られるべきものであつて、」とこう書いてある。よく聞いていて下さい。その次に保安庁法になりますと、第四条の任務に「保安庁は、わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し、運営し、及びこれに関する事務を行い、あわせて海上における警備救難の事務を行うことを任務とする。」こう書いてある。ところがこれが自衛隊法案になりますると、第三条の任務のところで、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」と書いてある。こうなつておりますとね、一番初めの予備隊が作られたるときの「警察の任務の範囲に限られるべき」ということは消えてなくなつてしまつている。だから新警察法ができた半面に、自衛隊というものは軍隊だという前提に立つて考えるであろうと、こういう質問が当然出て来るじやありませんか。これは総理大臣にお答え頂きたい。
  267. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 自衛隊は、今お読上げになりましたように、自衛隊の任務が書いてあるのであります。(「担当大臣じやないから答えられない」「総理答えろ」と呼ぶ者あり、その他発言するもの多し、議場騒然)
  268. 内村清次

    委員長内村清次君) 小坂君、あなたに発言の許可を与えたのじやありません。
  269. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 国務大臣たる小坂君からお答えいたさせます。
  270. 加瀬完

    ○加瀬完君 担当大臣じやないから答えられない。
  271. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 自衛隊は我が国におきまする……。
  272. 内村清次

    委員長内村清次君) あなたには発言を許しておりません。(「総理大臣答えなさい」「陸海空軍の総司令官答えなさい」と呼ぶ者あり)
  273. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 国務大臣たる小坂君に、私に代つて答弁いたさせます。
  274. 加瀬完

    ○加瀬完君 僕は小坂大臣の答弁では満足が行かないので、御面倒でも総理大臣にお答えを頂きたいと、委員長にお願いをしているのであります。
  275. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 御満足行くか行かないかわかりませんが、小坂君の答弁を以て私の答弁と御承知願いたい。
  276. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 自衛隊の任務、第三条で規定してございます、それは国の安全を保つために、又平和と独立を守るために、直接及び間接侵略に対して我が国の防衛をすることを主たる任務とする、こういうのです。警察法おきましては、これは組織法としての警察法として、従来のこの国警、自治警とわかれておりますものを、府県警察たる自治体警察にすると、こういうことになるのでありまして、警察の職能というものは常時国民の治安の確保に当るということでありまして、その間におのずから相違があることば御承知通りであります。(「警察はいいです。自衛隊のことまで君が答弁するのは間違いだよ」と呼ぶ者あり)
  277. 加瀬完

    ○加瀬完君 只今の小坂大臣の御答弁でははつきりいたしませんので、総理大臣に自衛隊は軍隊であると、私は警察法の改正に伴う自衛隊法案の内容から判断をするのでありますが、そうではないならばそうではないということをお答言え頂きたい。
  278. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) これは始終問題になることでありますが、自衛隊は軍隊なりや、軍隊というものは何であるかということの定義によるものでありまして、これを軍隊なりとお考えになるならば軍隊とお考えになつてよろしいのでありますが、政府としては自衛隊は自衛隊とこう考えるのであります。
  279. 加瀬完

    ○加瀬完君 警察予備隊令の一番初めのところの「警察予備隊の活動は、警察の任務の範囲に限られる」ということを、いつの間にかとつてしまつた。とつてしまつたということは警察業務をやらせるのじやない、軍隊の業務をやらせるのだと解釈するのが当然じやないですか。この警察予備隊令とそれから自衛隊法と、この二つの法案の内容の任務の違いから軍隊であると認定するの、だが、どうですかということなんです。それについて答えてもらいたい。
  280. 内村清次

    委員長内村清次君) いいですか、小坂大臣で……。
  281. 小坂善太郎

    ○国務大臣(小坂善太郎君) 解釈は御自由でございまするが、警察というものは……、(「口まねするな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)いや、あなたの解釈は御自由です。条文についてのあなたの解釈は御自由でございまするが、警察というものは常時治安の維持に当るものでございます。それで警察予備隊は警察予備隊としての職能を持つものでありまするが、自衛隊におきましては、この自衛隊法第三条の任務を遂行するもの、こういうことであります。
  282. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは只今で大体持時間が全部済みました。(「委員長何か言うことないのか、委員長として聞くことないのか」と呼ぶ者あり)  あとは秘密会に入ります。議員のおかたを除くほかは御退席を願います……。    〔伊能繁次郎発言の許可を求む〕
  283. 内村清次

    委員長内村清次君) 秘密会に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。(「やることになつているのだからいいじやないか」と呼ぶ者あり)異議ありませんか。    〔伊能繁次郎発言の許可を求む〕
  284. 内村清次

    委員長内村清次君) 異議ないかと言つておるのです。    〔伊能繁次郎君「発言を求めております」と述ぶ〕
  285. 内村清次

    委員長内村清次君) 異議ないかと動議を出しております。それを返事して下さい。異議ありませんか。    〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  286. 内村清次

    委員長内村清次君) じや、それでは伊能君。
  287. 伊能繁次郎

    伊能繁次郎君 最前私が文書によつて提出いたしました本院規則三十八条第二項による動議をお諮りを頂きます。(「何だそれは」と呼ぶ者あり)
  288. 内村清次

    委員長内村清次君) 暫時休憩いたします。    午後九時四十六分休憩    ―――――・―――――    午後十時二十七分開会
  289. 内村清次

    委員長内村清次君) 休憩前に引続き、地方行政委員会開会いたします。
  290. 伊能繁次郎

    伊能繁次郎君 最前私が要求いたしましたことについては、あえて固執いたしません。(「あえて固執しなくてもいいよ」「秘密会にしないようにしてくれという問題だ」と呼ぶ者あり)
  291. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは伊能君が秘密会に異議ありと言われたことは撤回されてよろしゆうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 内村清次

    委員長内村清次君) それではお諮りいたします。秘密会を開きたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは議員のほか、どうか一つ。    ―――――・―――――    午後十時二十九分秘密会に移る
  294. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは宮崎参考人及び村松参考人に対しまして、御質疑がございますならば一つ質疑をして頂きます。
  295. 秋山長造

    ○秋山長造君 村松参考人お尋ねをいたしますが、先ほど宮崎参考人から、その部下にして警察大学であなたと同じように警備訓練、特別警備講習を受けた者の報告に基いての細かい御陳述があつたわけなんですが、その内容とあなたが昼御陳述になつた内容とかなり範囲が食い違つております。で、その点についてあなたも最前宮崎参考人の御陳述を聞いておられたわけですから、あなたが昼御陳述になつた以外に、宮崎参考人が御陳述になつたことをお認めになるかどうか。あなたの警察大学での受講の経験から一つその点御答弁を願いたい。
  296. 村松栄

    参考人村松栄君) 只今質問でありますが、私が受けた講習の内容というものは午前中前に申上げた通りでありまして、名古屋のかたが受けたのと一緒でありませんので、内容もやはり私が前に申上げただけの内容であります。
  297. 秋山長造

    ○秋山長造君 村松参考人は二十七年の四月の初めから五月の終りまで講習を受けられた、その点は間違いはありませんね。
  298. 村松栄

    参考人村松栄君) 間違いありません。
  299. 秋山長造

    ○秋山長造君 一方名古屋のほうのお話は二十八年の二月十日からの講習を受けておられるので、その間に一年足らずの食い違いがある。で、あなたが講習を受けられた当時は、専ら技術訓練としては尾行、張込み、それから写真撮影、封筒のあけ方、鍵の開け方、その程度の講習しか受けておられない。それ以外に、電話の盗聴であるとか、或いはその他人の話の盗聴であるとかいうような点についての講習なり、或いはそれ以外に何かお受けになつた御記憶はないかどうか、その点を伺いたいと思います。
  300. 村松栄

    参考人村松栄君) それ以外に講習を受けたのは、一つ忘れたのがありましたが、これはパトロールカーの超短波のあれを受けました。そのほかは先ほど申上げた通りであります。
  301. 秋山長造

    ○秋山長造君 これだけの講習を受けられて、受けられたけれども、なかなかむずかしくて身につけて帰ることはできなかつたので、結局全然それは使わないままになつてしまつたというようなお話がありました。併しいやしくも埼玉県から代表として警察大学へ派遣されました建前から言いましても、当然帰られて上司にそれぞれ講習の内容について御報告になつたと思います。そのときに、上司のあなたに対しておつしやつたことはどういうことであつたか。それから又あなた自身こういう講習を受けてどういうような感想を持たれたか。それから又その後あなたが代表で習つて帰られたことについて、警察官なりその他の人たちから何か聞かれたり、或いはあなたの口から今度は別な人に、習つて来たことを講習をする或いは教えるというようなことを要求を受けられたことはないかという三点について。
  302. 村松栄

    参考人村松栄君) 身につけて帰ることが、短時間のために不徹底であるということは確かにございまして、只今でもそういうものをやらなければならない場合に遭遇しないためにやつておりませんし、それから帰りまして、同僚或いは部下に対して口伝えをしたとか、そういうこともございません。これは固く指導してはいけないというふうに禁じられておりますりので、そういうこともいたしておりません。
  303. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 只今秋山君が派遣されてという言葉を使われましたけれども、私は田中警視総監にお伺いしたいのでありますが、これは要求があつたときに自治体警察の新住及び現在の警察官訓練する、これが警察学校の任務であると思います。警視庁としても要求があつた場合に、要求して訓練を受けさせるということがあると思います。やはりそういう場合は、これこれの警察大学における特別の講習を開くからということを警察学校のほうから言つて来て、やはり自主的にそれに参加するという形をとるのでございますか。やはり警察学校からそう言つて来れば何人かの人を出さなければならないということになりますか、その点。
  304. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 従来警察官の教養につきましては、警視庁のごとき大きな警察隊におきましては、みずからの教養機関を持つております。従つてあらゆる特殊学科につきまして警視庁といたしまして独自の教養をいたしておりますが、ただ警察大学におきまする教養、それから管区学校おきまする教養につきましては、やはり広く一般警察官に教養の徹底を図るために便宜警察大学、若しくは管区学校のほうに教養を委託いたしまして、そして若干名を派遣をいたしております。このことは毎年繰返されるいわゆる恒例的な派遣でございまするので、予算の範囲内におきまして若干名を常に派遣をいたしております。その際には警察大学から、これこれの教養について何名ぐらいを派遣してもらいたいという要請がございます。それに基きまして、現在の警察業務の繁閑その他を勘案いたしまして、大学の希望するような数字が出し得るときには出しまするが、或いはそれよりも少い員数を派遣する場合もございます。大体警察大学からの派遣の依頼と申しまするか、連絡がありました際に、警視庁のときは大体において警察学校の通報される員数をこちらが派遣をいたしております。
  305. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 警察法の建前から言えば、自治体警察から要求があつた場合に、自治体警察職員を訓練するということになつておるのですが、自治体はそれでは警察学校でこれこれの講習をするからよこしてくれ、こういう要求があつて、それがまあ自治体警察において適当であると考えられる場合には何人かを送るという形になるのでございますか。
  306. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 大体今までの仕来たりを申上げますと、例えば昭和二十九年度の国警の教養計画というものが立てられるわけであります。その二十九年度の教養計画を立てる場合に事前に自治体警察連合会のほうへ一応連絡がございまして、それによつて自治体警察側からも派遣をいたしますので、大体国警において次々のような教養をするというような大体の方針を示されますので、これに対して自治警側としてもかようなことをして欲しいとか、或いは員数はこうして欲しいというようなことを申入れまして、事前に或る程度の打合せをいたしました上、それによつて国警側の全体としての、国警のみならず自治体警察警察官の教養という方針を樹立いたしまして、それによつて自治体警察側から員数を派遣するのであります。と申しますのは、警視庁のような比較的警察官の多いところは国警側の希望する人員が派遣できるのでございますが、地方の小さな自治体おきましては、一人でも二人でも長期に派遣をいたしますと費用の点もございますし、それからそれだけ実員が減ることになりまして、いろいろの勤務上に支障が来たしますので、成るべく人員を減少さしてもらいたいというのが自治体警察意見でございまして、さような点を考慮して事前に或る程度の打合せをいたしまして、若し国警側が全体として百名を入れようというときに、百名じや多いから或いはそれを七十名にしてくれ、期間が三カ月、三カ月は長いからそれを二カ月にしてくれというように、事前に或る程度の打合せをしました上で、その計画に基いて自治体警察側から警察官の教養を依頼しているわけであります。現在といたしましては、小さな自治体おきましては、みずからの教養機関を持つておりません。又建前として地方の自治体に教養施設を持たせないというのが現在の方針になつておりますので、従つてみずからの教養機関を持たざる自治体警察は、国家警察のほうに教養を一切依頼している、かような実情でございます。
  307. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど名古屋警察長のかたから、実際は小さな都市警察ではなかなか警察大学の要求と申しますか、講習の要請に対して人を送ることができない、結局大きな都市が講習生を送ることになるというお話でありました。ところが今のお話では、逆に警視庁とか或いは大きな都市おきましては、それ自身の教養課程というものができる、従つて中小都市のものが行くというお話でありますが、この点を一つもう一度自治警の連合協議会の会長としての立場からと、それからもう一つはやはり警視庁の警察官の中でも、光りほど来お話のあります情報収集の特別の講習とかいうものを受けた人もあると思いますが、その点について何かお聞き及びのことはありませんか。その二点について。
  308. 田中榮一

    参考人田中榮一君) 中小都市おきましては、教養警察官の派遣は予算、人員の点から成るべく少く期間も短くという要求でございます。警視庁といたしましても多数の警察官を擁してはおりますけれども、やはり相当な員数が派遣されて穴があくことは、直接これが警察活動に支障を来たしますので、成るべくなら期間も少く、又員数も成るべく少くということを要請いたしておりますが、併しまあ警視庁といたしましては、人数を他の都市から比較しますと、相当多数の人数を持つておりまので、いろいろ万難を廃して現在国警側の希望する員数だけを取揃えて派遣をいたしておるような次第でございます。  それから第二の点でございますが、私は只今そういう講習に何人行つたかということははつきり記憶しておりませんが、多分警視庁の警察官も勿論この講習には出席をしているものと考えております。
  309. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 村松さんに一つ伺いたいと思います。先ほど宮崎さんの陳述とあなたと比較して見まして、大体似た点がありまするけれども、あなたの御陳述の中には、住居に侵入したりするなどということはなかつたようでありますが、この訓練は受けなかつたのですか。
  310. 村松栄

    参考人村松栄君) 住居に入るという訓練は全く受けておりません。
  311. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 あなたと或いは講習の期間を異にしているところの人も多々あつたろうと思います。そういう人がたとのちには話合いの機会もあつたろうと思うが、そのときにそういうお話は出なかつたのですか。
  312. 村松栄

    参考人村松栄君) あとで講習を受けた人からも私は聞いておりません。
  313. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それではその次にもう一つ伺いたいのは、私先ほどからこの協力者の提供したところの封書についての開け方とか、或いは又閉じ方とかいうようなことを伺つたのですが、これは模擬的なものですか。実際において協力者が持つて来たものについては……この点伺いたつい。
  314. 村松栄

    参考人村松栄君) それはそういう場合が今後あつた場合を仮定いたしまして教わつたのでありまして、現在の状態おきましては、そういう協力者から持つて来たやつを出す、そういうことはまだやつてみておりません。
  315. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 その点が私は非常に疑問に思うのですよ。私の聞きとつた、あなたの陳述から聞きとつた感じでは、実際に協力者がそれを持つて来て、そうしてそれについてやつたようにまあ聞きとつたのでありますが、そうでないとすればあなたの場合は全く模擬的なものになります。或いはそれについてやられた場合ですね。
  316. 村松栄

    参考人村松栄君) はあ。
  317. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 それはどういう方法で実際においてやられるのですか。それは非常に開いてそれを閉めておいてわからんようにするというような方法ですね。それはどういうふうな技術を要するのですか。
  318. 村松栄

    参考人村松栄君) そういうものを仮定して教わつたのは、ただ糊を剥がして開けまして、又それを元通りにしておくというような模擬的なことを教わつたのでありまして、又その方法等も実際にどんなふうな手段でやるかということは、これは又若しそういう場合に遭遇したときに、やはり適法に法律の範囲内においてそれをやらなくちやならんと思いますので、今後の捜査に支障を来たすので申上げられないと思いますから御了承願いたい。
  319. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 まあ申上げられないのであれば、私は強いてそれをお聞きいたしませんが、そうすると、協力者の提出したものについてやるということになれば、協力者を発見するということの又訓練も私は教わつたのではないか、こういうふうに思うのですが、その点はどのように……。
  320. 村松栄

    参考人村松栄君) 協力者は、これはやはり協力者が進んでこちらに情報を提供してくれますので、やはりそれはいろいろ個人的繁がりとか、そういうものの協力者が情報を提供して来るわけです。
  321. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 問題は結局協力者の問題だと思うのです。先ほど村松君からお話になりましたときには、とにかくまあ破壊活動なり何か暴力的な行為をしようとする、或いは企んでおるとかいうような人たちのグループと申しますか、その一人の信書の秘密を憲法に違反しないような状態において開けて見た、あとで封をしておくということを講習でお受けになつた。ところがその協力者なんですが、先ほどちよつと聞いたところによりますと、何かやはりそのグループの中でこちら、つまり警察側に通じておる人がそこにいて、その人たちが信書なら信書を持つて来てくれ、それを剥がして中を読んで又封をして元通りにしておくというふうに了解されたのです。我々の言葉で雷えば、それは一つのスパイ行為と申しますか、スパイ、それがいれば大して憲法違反にならないような恰好で中を覗いてみることができる。併しその協力者がいない場合には、これは確かに憲法違反になると思うのです。或いは法律違反になると思うのです。その協力者というものはどういうものであると教えられたか、その人の家族であるとか、友人であるとか、いろいろあると思うのです。これは確かに仮定であつて、そういう人がいなければ手紙を開けて見るということはできない。又そういうこと自体できない。協力者があるということ、ただ協力者があつた場合にはこうしなさいということを教えられたのか、或いは協力者というものはこういうふうにして連絡をつけろとか、或いは誰々が協力者であるとか、若しくは協力者とみなされる者をこういうようなふうにして利用して信書を持つて来させて、法律違反にならないようなふうにして開けてみなさいというふうに教えられたのか、やはりその協力者というものが問題になると思うのです。どのような講習をお受けになりましたか。
  322. 村松栄

    参考人村松栄君) 協力者についての方法というものは、これも現在行われておりますので、やはり支障を来たすので申訳ないと思いますが……。  ちよつとお伺いいたしますが、協力者を利用する方法についてでございますか。
  323. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 何ですか、あすこにいた人が何か言つたのですが……、今村松君に何かおつしやつたかたはどなたですか。
  324. 内村清次

    委員長内村清次君) あれは山口警備部長です。
  325. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 どういうことをおつしやつたか知りませんけれども……。
  326. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 差支ないからどんどん話せと申しまた。
  327. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は協力者があつた場合にはこうしろ、それから光は大体わかります。ところがその協力者というものが我々の解釈から言えば一種のスパイ、こう考えられる点がある。それを利用するのでありますが、併し誰がそういうふうに協力してくれるかということはわからん。どういう点についてその協力者に接触して行き、そうして警察官法律違反を行わないで、その信書を受取つて開けて読んで、又元に戻す、その協力者というものをどういうふうにして発見なさるかということについて承わりたい、こういうわけであります。
  328. 村松栄

    参考人村松栄君) 協力者を発見するには、やはりそういう活動をしているかどうかということを知りまして、それでその人に接近をして行きまして、そうしてこちらからお願いをいたす次第でございます。
  329. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこが重大なんです。協力者と言えば、自発的に警察情報収集に協力してくれる人、そうしてそれを発見してこちらからお願いして、そうしてその信書を持つて来てもらうということは、これは明らかに特高的な行為です。我々も曾つてそういう特高的な警察によつていじめられた経験を持つている。それですよ、問題は……。グループの中でスパイを拵え、或いはスパイ的なものに接触して行つて警察はこういう情報が欲しいのだ、何かそういう情報を提供してくれないか、或いは誰々の手紙を読んでみたいの、たけれども、それを持つて来てくれないかという依頼は期らかに特高的な行為です。これはあなたがたに犯意があるないにかかわらず、これは明らかに特高的な行為である。あなたの先ほどの陳述では、これは特高的な行為でないということをはつきり言明された。これは明らかに特高的な行為です。それについていわゆる講習はどのようにお考えになりましたか。
  330. 村松栄

    参考人村松栄君) その講習については、協力者を作るということについては、余り重点はなかつたのでありまして、或いは只今申上げた通りのことがあると思いますが、向うからやはり進んで協力してくれた、そういうかたもおります。
  331. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それならいい、向うから持つて来てくれるならばこれは問題じやないのです。併しお願いしたとさつき村松さんがおつしやつたから、お願いするということは、言葉はお願いするというのですけれども、片方は警察官の地位にある。だからお願いすると言つてもそれは要求になる。それから或いは権力によつて威圧するということにもなる。それは特高的な警察であると、こう言うのです。あなた御自身はそういう行為は特高的な行為であるとお考えになりませんか。
  332. 村松栄

    参考人村松栄君) 別に権力を使うとか、或いはそういう威圧的に出るとかいうようなことはいたしませんので、自然のうちにそういう個人的の繋りができますので、別にそういうふうに私は思つておりません。
  333. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 あなたが警察組織の一職員であつて、追及することは非常にお気の毒だと思います。併し警察作用というものがそもそも統治権だと、こういうふうに小坂国務大臣が言つておる。その警察官がお願いすると言つても、これは一対一の関係じやないのです。私たちはそういう特高警察にこれまで苦しめられて来たのです。これば勿論、何も持つて来ないでこれからちよつと本を調査さしてもらいますとこう言つて来るのです。それは一対一です。こつちが拒絶すればいいようなものですけれども、向うは警察権力を持つているのですから、一対一でもやはり向うの要求を聞かなければならない、さあどうぞお通り下さい、私の所にある本はこれだけでございますから、どうぞ御覧下さいと、こう言わざるを得ないのです。警察権というものは統治権であるということであれば、警察官というものは我々普通の人民とは違つた立場にある。これは警察権が統治権であるということから当然の帰結であると思う。ですから、お願いすると言つても、受取るほうの側から言えば、これは単に普通の市井の人の一対一の関係ではないのです。それなら拒絶したらいいではないかと言うけれども、普通の人、我々のような学校も出て、学校の先生をやつていたような人でも、特高警察が来て、見せてくれとか、どういう人々と附合いをしておるとか、或いはこれこれの会食に行つたのではないかということを聞かれれば、全然嘘のことを言うわけには行きません。中には、村松君はそういう御経験はないでしようが、事実共産党のンンパと申しますか、或いはオルグと申しますか、そういう人たちが私たちの所に来て、これは私が教えたところの学生です、アカハタを買つて下さい、こう言つて来るのです。それに金を出せば、これはシンパだと言つて引張られる、警察と人民の関係というものは普通に考えられる以上に深刻であるということを考えて頂きたいと思うのです。まあ村松君に対しましてこれ以上追及いたしましても、これはあなたも警察の一職員であつて、統治権の何たるかということは別にお考えにならずに警察職務に尽瘁されている御苦労はよくわかります。ですから、これ以上申しませんけれども、併し普通に考えられるお願いするという言葉も、警察官から言われる場合には市井の一市民にとつては重大な関係があるということだけは、一つ了解願いたいと思います。
  334. 小林武治

    小林武治君 私は宮崎参考人一つつておきたいのでありますが、あなたは先ほどの言明で、あなたの部下の警部補からあの報告を受けたと、こういうことになつております。その結果については、あなたは重大なことで、又場合によれば漂然とするようなことであると思つたと、こういうふうに言われておりまするが、これらつのことについて反対だとあなたは思つて、かような教育をやめるように国警長官に申入れたことがあるかどうかを先ず伺つておきたい。
  335. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 昨年の五月頃であつたかと思いますが、自治体警察長の連合会で会議が東京にありまして、そのとき私東京に参りまして、ここにおいでの山口君に会つたのであります。山口君というのは、私よく知つておるのであります。君のところではとんでもないことやつているようだと、僕のほうは僕が抑えるからいいけれども、ということを申上げた記憶があります。
  336. 小林武治

    小林武治君 それで昨年二月からの講習の話をされておりましたが、その後も講習生をあなたは派遣しておられたかどうかを聞きたい。
  337. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 派遣いたしております。ただここで一言申上げておきたいと思いますが、第一回に参りました者につきましては、先ほども申上げましたように、非常な誤解を受けましたので、第二回目から行く者については、黙つて聞いておけということを申上げてあります。
  338. 小林武治

    小林武治君 その今の言明は、私非常に奇異に感ぜられるのである。というのは、あなたがそれほど反対をされる講習にあえてあなたが進んで委託をされる、その心情が私にはわからないのです。どういうわけでそういうものになお続けてお出しになつておるが、それを聞きたい。
  339. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 非常にむずかしい問題だと思うのであります、が、実際は断れば断ることもできるのであります。ところが、実際それをやらすかやらさんかというのは、まあ私の考えの問題であつて、行つたからどうということは私は余り考えておらんのでありますが、実は私が若しそれを荒立ててやらないというように角立てて申上げますと、宮崎のところではまあ警備警察については非常に非協力だというように誤解をされるのであります。私は、警備警察自体については決して非協力ではないのであります。それらの点につきましては、愛知の国警のその係にお聞きになるとわかると思いりますが、警備警察自体については非常によく協力をしておるつもりであります。併しながら、程度を超えた協力はできないと思うのであります。又、そうでなくてさえややもすれば国警と自警の間で何かがあるように言われるときに、私が異を立てて頑張り通すと、却つて工合の悪いこともありますので、そういう意味で出しておつたのであります。決して進んでというように、頼んでというようには私考えておりません。
  340. 小林武治

    小林武治君 これは非常におかしいお話で、それほど懐然とするようなことを教える所へあなたが進んであなたの大事な部下を委託されるということは、私には理解できない。進んでお断りになつたらいいと思う。  もう一つつておきたいことは、さような問題をもつと早くなぜ然るべき措置をとられないか、私どもが考えようによつては、警察法が出たからしてかようなことを改めてあなたが世間に持出した、こういうふうに僻んで受取れる心配があるのであります。その点伺つておきたい。
  341. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 警察法が出たから世間に持出したというような誤解を受けたのは、私の不徳のいたすところだと思つております。併し私は決して世間に出したとは今まで思つておらんのであります。世間に訴えるようなやり方は絶対にしておらんのであります。
  342. 小林武治

    小林武治君 それはおかしい。新聞等に出ておるのは私も知つておりまするし、支いろいろな話を聞きますすれば、あなたは特に警察法関係が出てこれに反対する一つの手段として、あなたの言われるのは去年の二月以降も行われていることを今頃持出される。それほど御心配のことならもつと早くにこれをやめることを一つあなたが努力なさるのがあなたの職務に、又あなたの信念に忠実なるゆえんであると思うのでありまして、その点私は特に不可解に思わざるを得ないということを申上げておきます。もう一度お答え願いたい。
  343. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 私は昨年の五月、先ほどのように山口君に申上げた記憶があるということを申上げました。それ以後にそれを是非やめるようにというような折衝はいたしておりません。これは事実であります。併し私がそういうことを申上げたことによつて、大体ひどい非合法の教養はおよそやめられたものであろうと私は大体考えておつたのであります。実際は今度非常に中央集権的な警察ができ上るのでこれは大変だというので調べ直してみましたところが、その後も相変らず行われておつたということがわかつたのであります。従つて私はこれは本当に大変なことになると、かように考えてその筋だけに申上げたつもりであります。
  344. 小林武治

    小林武治君 それでは、その後は必ずあなたの部下はあなたに報告されておると思いますが、その以後何度あなたは講習生をお出しになつておりますか。
  345. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) たしか全体で四回出したのではないかと思いますが……。
  346. 小林武治

    小林武治君 その点も私にはあなたの態度が理解できないということを改めて申上げておきます。
  347. 秋山長造

    ○秋山長造君 宮崎参考人にお伺いしますが、あなたは先ほどの御陳述の中で、信書の秘密はこちらから積極的に集めるのではなくして、向うがら持つて来たもののみをやるのに過ぎないという国警長官の国会での答弁があつたけれども、併しそれ以外のものから手紙を手に入れる方法をも教えておるという御発言があつた。でそれ以外のものというのはどういうものであるか、具体的にお尋ねしたい。
  348. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 郵便集配人を抱き込むというような方法であります。
  349. 秋山長造

    ○秋山長造君 これは誠に重大な御発言ですが、郵便集配人を抱き込む方法というのは具体的にどういうことですか。
  350. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 具体的にどういう方法がということは私聞いておりませんが、郵便集配人を抱き込んで、そうして信書を見るということを教わつたと、こう報告を受けております。詳しいことがどうしても必要であれば、当該の人に来て聞いて頂きたいと思います。
  351. 秋山長造

    ○秋山長造君 これで先般来新聞等でいろいろと騒がれておりまこの信書の秘密を犯すという内容が図らずも明らかになつたわけでありますが、この集配人を抱き込むという意味は我々が常識的に買収するとか、抱き込むとか、或いは手なずけるとか、そういう意味に解釈してよろしゆうございますか。
  352. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) これは私又聞きであつて、そこまで確めておりません。確たるお答えをいたしかねます。
  353. 秋山長造

    ○秋山長造君 ではこの抱き込むという内容はともかくといたしましてこの間国警長官が衆議院の法務委員会なり或いは参議院の郵政委員会なりで答弁されたところによりますと、それはこの郵便物ではなくして、全然宛名もない、何もない、中に何が入つておるかわからないような一種の秘密の手紙を警察への協力者から内緒で見せてもらつて、又そのまま返すのに過ぎない、いやしくも郵便局が預つておる信書等について、それに類するようなことは絶対にしてないというような答弁があつたのでありますが、今おつしやるところによりますと、それだけにとどまらず、郵便局で預つておるところの郵便物についてもやはりこの秘密を犯す、或いは手紙をあけるというような方法を行うこと、行わせることを教えておるという事実には間違いばございませんか。
  354. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 事実に間違いがあろうかどうかは私わからつないのであります。ただそういうことを教育されたという報告を受けておるのであります。聞いておるのであります。私がそういうことを受けたわけではない。事実を見ておるわけではない。その点はそういうふうにお聞き、取り願います。
  355. 秋山長造

    ○秋山長造君 村松参考人に重ねてお伺いいたしますが、今お聞きになつたような事実を教えておる、方法を教えておる、こういうお話なんです。勿論名古屋警察本部長は部下からお聞きになつておるということがございますけれども、あなた御自身警察大学で信書をあける、内密にあける講習を受けられた、そうして又先ほどのお話では協力者を作るというか、利用する方法は現在も行われておる、そうしてこちらから発見してそういう人にお願いする、こういうようなお話がありましたが、そういう協力者というものの中には当然郵便集配人等も含まれておるものと解釈してよろしゆうございますか。
  356. 村松栄

    参考人村松栄君) 私が受講したときには郵便集配人のことについては教わつておりませんし、現在もそういうことは従つてつておりません。私の協力者というのはこれは含まれておりません。
  357. 秋山長造

    ○秋山長造君 その協力者というのは何か特別な職業なり、特別な範囲に限定された人をこの協力者としてこちらからお願いするのか、それとも別に限定されない不特定多数の人から、いろいろな職業を持つた人から、その手紙をはがすという仕事に当る警察官が独自の判断によつて誰でもいいから、郵便配達人でもいいし、学校の先生でもいいし、政治家でもいいし、商売人でもいいし、誰でもいいから警察への協力者を平素から養つておくようにという、こういうふうなことを教わつたのじやないですか。
  358. 村松栄

    参考人村松栄君) 職業に関しましては、これは限定されておりませんですけれども、手紙とかそういうものについては協力者としては私のほうでは利用するとか、そういうことの教育も受けませんし、やはりこれは法律の範囲内においてやるということをよく教わつておりますので、そういうことについてはいたしておりません。
  359. 秋山長造

    ○秋山長造君 法律の範囲内においてとおつしやるけれども、率直に言つてあなたがたがこういう講習を受けられた場合に法律の範囲内ということと、それから信書の秘密を犯す、或いは人に頼んでまで特定の人から特定の人に向けて出されておるところの手紙を途中で横取りして、そうして中を開けて見て、又知らん顔をして糊付けをしてとぼけておるというようなやり方等はどうも矛盾するように思えないか、その矛盾をお感じにならなかつたのですか。
  360. 村松栄

    参考人村松栄君) それは飽くまで協力者が進んで持つて来まして、それでこれは多分中には機関紙か何か入つているのじやないかと思えるから開けて見たらどうかといつて、それを見るような場合が今後あるかも知れない、そういう場合にはその糊というものはこういうふうにはがすほうがいいだろうということを教えられましたが、そういう実際の場面にもぶつからないし、協力者がこれを持つて来るのでありますから、私はその矛盾は感じないでおりました。
  361. 秋山長造

    ○秋山長造君 その協力者自身が他人の手紙をいわば盗んで来て警察に見せるのですから、協力者自身がすでに信書の秘密を犯しておることになるのです。法律違反をやつておる。それを警察のかたが受取つて開けて見るのですから、警察も協力者もどつちもこれは法律違反をやつておるということにはなりませんか。
  362. 村松栄

    参考人村松栄君) いや、協力者は盗んで来るのではなくて、協力者が持つているやつ、これは別に法律違反しないと思います。
  363. 秋山長造

    ○秋山長造君 いや、どこからか協力者自身が、私なら私自身に、秋山殿で誰かから手紙を来たものを、それを私の自発的な意思に基いて警察の人に何でも御覧なさいといつて見せるのは、これはいい。併し今の問題になつているのはそうじやないでしよう。こちつらの人からこちらの人に宛てた手紙をたまたま私という協力者が何か手蔓によつて、それを途中でちよつと手に入れたものを警察に持つて行くのでしよう。だからこれは信書の秘密を犯したということになりませんか。どうでしよう。
  364. 村松栄

    参考人村松栄君) いや、それは協力者が不法に手に入れたものではございませんで、当然協力者が託された品物でありますから、それは又実際面においてそういつた場合にぶつかつた場合、そういうときにはこういうふうにしなければならんというそれは仮想的の問題でありまして、実際そういうことは運が悪いのか何かぶつからないので、やつておりませんので、矛盾を感じておりません。
  365. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連質問村松さんにお伺いしますが、あなたの受けた訓練は、封筒の開け方、鍵の開け方、こういうふうなことがあつたお話されたわけであります。今お話のように、協力者が持つてつて、さあ見て下さいという封書に対しては何も封筒の開け方は必要はない。どうぞ鞄の中を御覧下さいといつて見せてくれるものに鍵の開け方は必要ない。封筒の開け方を教わらなければならないことは、或いは鍵の開け方を訓練させなければならないことは、当然開かない鍵を開け、閉つている見せてはならない封筒を開けようと思うからこういう訓練の必要が生じて来ておると思うのです。それから協力者であろうが何であろうが、持つて来たものは少くも開けてはならない封筒であり、開けてはならない鍵のかかつたもので、そういうものを持つて来るわけです。そうなつて参りますと、そういう如何に協力者であろうと、持つてつたもので、開けてはならない鍵のかかつたものを、開けてはならない封筒を開ける訓練ということに何ら御不審も感じなかつたのですか。これは合法的なことだとお考えになつて、矛盾を感じないで訓練をお受けになつたんでございましようか。
  366. 村松栄

    参考人村松栄君) それは飽くまでも協力者が承諾をしてやる場合に、承諾をしてやることを仮想して教わりましたので、これは別に矛盾は感じないで来ました。
  367. 加瀬完

    ○加瀬完君 協力者が持つてつたにしても、くどいようでありますが、すぐ開けていい封筒は封筒の開け方を必要とすることはない。すぐ開けていい鍵は、鍵の開け方を訓練させる必要はない。わからないように鍵を開けたり、わからないように封筒を開けたりさせる、そういう訓練の仕方を受けて、如何に協力者が持つて参ろうとも、封書の封のしてあるもの、鍵のかかつておるもの、それを隠れて開けるということに不自然さ、不合理さを感じなかつたのですか。
  368. 村松栄

    参考人村松栄君) それは、その訓練を受ける際には、やはり協力者が飽くまでもこれは承諾しておりますので、協力者がこれは納得しているというので、矛盾を感じませんでした。
  369. 秋山長造

    ○秋山長造君 それは協力者ですから納得して持つて来るのは当り前だけれども、協力者自身の手紙ならそれはそれでいいですよ。併し、人の手紙でしよう。人の手紙を協力者が持つて来たのだから、それは違法でないと言うのは、どうも法律の番人としてのあなたがたとしてはおかしいじやないですか。どうですか。あなたがたが何か別な法律犯罪でそういうことを調べられるときに、そういうことに会つた場合に、それはもう無罪だということですぐ放免しますか、どうですか。
  370. 村松栄

    参考人村松栄君) やはりこれは先ほど申上げました通り、やはり協力者がこれを納得しておりますので、矛盾を感じませんでした。
  371. 笹森順造

    ○笹森順造君 大分時間も遅くなつておりますので、今この違法であるか、越権であるかというような方面のお話がずつと続いておつたのですが、少し私こめ機会に時間も遅くなつたし聞いておきたいと思うのですが、そういうことのために随分お話を聞いておりますと、原始的な方法ばかりのようですが、もう少し機械を使うとか、高度の特別な何かそういうことがわかるというようなことは、外国では話を聞いておりますが、日本ではまだ高度なそういうもので中を見る、開けなくても中がわかるというようなものを、何かそういうものを作つておられる、或いは何かそういうものを教わつたことがあるか、これは宮崎さんでも村松さんでもどつちでもいいんですが、或いは警視総監でもいいんですけれども、そういうような発達した方法をやつておるかやつておらんかお尋ねいたします。宮崎さん、如何ですか。
  372. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 私そんなことを存じません。そういう発達した機械があることを存じないのです。
  373. 笹森順造

    ○笹森順造君 葉書ならば……。これはまあ秘密でない極く薄いものならば透せば見える。この透して見ると、本人の意思はこれは見せないつもりで封にしてある。併し、これを透して見るというような方法も原始的な方法としてあるということを聞いておりますが、そういうような訓練村松さんは受けたことがあるかないか、お聞きします。
  374. 村松栄

    参考人村松栄君) 透して見るというような場合は受けておりません。又やつてもおりません。
  375. 笹森順造

    ○笹森順造君 こういう発達した機械で写真をとるとか、或いは又いろいろな化学的な反応をもつてこれを見出すというような方法が外国では発達しておるというふうに聞いています。併し日本でそれがないといえばそれまでの話だと思いますが、話は少しやわらかくなりますけれども、私はまあ方法論のことで実は聞いておるのでありますが、日本には昔から甲賀流の忍術、伊賀流の忍術、そのほか隠密のことを私ども武道家として昔から教わつておる。そうしてこれが全く諸外国のそういうものよりも髪の毛一本あれば金庫でも何でもあけるという方法を実は私は秘伝を教わつております。(笑声、「仙人、だな」と呼ぶ者あり)私はそれをやつたことありません。ただ秘伝を……。(笑声)そこでそういうようなことなどもあるので、これが随分運用されたことがあるので、そういうような日本の昔から伝わつた最高度の科学以上にそういうようなことをするということの講習を何か今度の講習で、日本でもまだその伝統を踏んでおる者もあるのですが、そういうことを講習で何か話を聞いたり利用したりなんかしたという方法論的なものがあつたか、それを技術的な方面で私お尋ねしておきます。宮崎君、ございませんか、そういうような話を聞いたことが。
  376. 宮崎四郎

    参考人宮崎四郎君) 私は講習については聞いたことはありませんが、私滋賀県に勤めておつたことがありますが、滋賀県の警察官でやめられた方で甲賀流の忍術の本を書きまして、そうして警備警察官に非常にいいと思うから是非売つてもらいたいというので見本を送つて頂いたことがありました。私読んでみまして警備課のほうにそれを見せたのでありますが、警備のほうでは笑つてつて一冊も買つてくれなかつたようです。(笑声
  377. 内村清次

    委員長内村清次君) ほかに質疑はございませんか。    〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  378. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは質疑はないものと認めまして、これを以ちまして秘密会を閉じますが、閉じるに当りまして、参考人のおかたがたに御挨拶を申上げます。  今日は非常に長い期間中誠に有益な参考意見を開陳頂きまして、有難うございました。本法案の有力な貴重な審議の参考といたしますことを委員長から申上げまして、厚く御礼を申上げます。    午後十一時三十二分秘密会を終る
  379. 内村清次

    委員長内村清次君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後十一時三十二分散会