運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-05-20 第19回国会 参議院 大蔵委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十日(木曜日)    午前十一時十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大矢半次郎君    理事            藤野 繁雄君            小林 政夫君            菊川 孝夫君            東   隆君    委員            青柳 秀夫君            岡崎 真一君            木内 四郎君            白井  勇君            山本 米治君            土田國太郎君            前田 久吉君            三木與吉郎君            成瀬 幡治君            堀木 鎌三君   政府委員    大蔵政務次官  植木庚子郎君    大蔵省主税局長 渡辺喜久造君    大蔵省主税局税    関部長     北島 武雄君    大蔵省銀行局長 河野 通一君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省主税局税    制第一課長   白石 正雄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の二  重課税回避及び脱税防止のため  の条約実施に伴う所得税法特例  等に関する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○日本国における国際連合の軍隊の地  位に関する協定の実施に伴う所得税  法等臨時特例に関する法律案(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) これより大蔵委員会を開会いたします。  日本国アメリカ合衆国との間の二重課税回避及び脱税防止のための条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案を議題といたします。先ずその内容の説明を聴取いたします。
  3. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 条約のほうはどういたしましようか。
  4. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 一つ要点だけを。
  5. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 昨日参議院の外務委員会全会一致の御承認を得まして、近く本会議にも御上程願えると思つておりますが、租税関係条約、二重課税防止のための条約、これが二つあるわけでございますが、それの実施に伴いまして、一応簡単な法律ではありますが、法律を作る必要があるのじやないかというので、御審議を願うために上程してあるわけでございますが、そのような次第でございますので、法律の基になつていると考えられます条約につきまして、極く簡単に御説明申上げたいと思います。その次に法律案について御説明申上げたいと思います。  条約二つに分れておりまして、一つ所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約、それからもう一つは、遺産相続及び贈与に対する租税に関する二重課税回避及び防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約、こういうふうに二つなつで、おります。  要するに、所得税法人税の二重課税防止のための条約と、相続税二重課税防止のための条約であります。  従来日本は他の国と国際的に条約を結びまして、二重課税防止ということをやつてつたことはございませんで、今度が初めてであるわけでありますが、ただ二重課税防止のために外国との間に交換文書取り交わして一応やつていたという事例一つございます。それは大正十二年の法律船舶の二重課税防止に関する法律というのがございまして、船舶所得につきましては、相互免除主義原則に基きまして、相手国がそれを承認するならば日本も免除しよう。例えば日本の郵船がアメリカのサンフランシスコに支店を持つている、アメリカのプレジデント・ラインが日本の横浜に支店を持つている、そこにおのずから所得も生れるわけでございますし、そうした場合におきましてアメリカのほうで免税すれば日本のほうでも免税する、こういつたようなことができる基礎的な法律かございます。その基礎的な法律に基きまして、交換文書を交換することによりまして、従来やつておりますのは、アメリカイギリスカナダ等相当数の国がやつております。併しこれは今申しましたように、条約でやつているわけではないわけでありますし、殊にその対象となりますものは船舶所得こいつた非常に限定されたものであります。今度考えられておりますのは、所得税相続税の両者についてのものでございますが、先ず所得税に対する条約から申しますと、これが全体で二十条からなつておりまして、本文が二十条、それに前人と末文がついております。それで、一応冒頭の第一条におきまして、先ず以てどういう税がこの二重課税防止対象になるか。アメリカ合衆国におきましては連邦所得税、それから日本におきましては所得税及び法人税アメリカにおきましては御承知のように、法人に対する課税所得税名前課税されておりますので、連邦所得税という名前を使いますことによりまして、日本所得税法人税とがこれに当るわけでございます。条約がお手許にございませんのでおわかりにくいかも知れませんが、昨日の外務委員会で一、二質問のあつた点など或いは御疑問として残るかと思いますので、この機会にその辺を中心ちよつと御説明しておいたほうがいいと思いますが……。
  6. 小林政夫

    小林政夫君 相当この交渉を始めてから今日まで時間をかけていますね。ここが問題点つたのか。
  7. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 条約を御覧願いますと、連邦所得税の下に括弧して「附加税を含む」という字が入つているのですが、この附加税というのはとういうのかと、実は昨日外務委員会で御質問がありました。と申しますのは、シヤウプ勧告前におきまして、日本においては、地方税所得税附課税といつたような恰好のことをやつて参りましたので、この附加税というのがどういう税かという御疑問のようでございまして、御尤もな質問でございますが、アメリカにおきましては、御承知だと思いますが、イギリスでも同じでありますが、ノーマル・タックスサー・タックスという二つの税になつているわけでございまして、最近ではこの二つ区分が殆んどアメリカではなくなつて来ておりますが、このサー・タックスについて一番御理解を得やすいと思いますのは、曾て日本分類所得税総合所得税というのをやつていたことがあります。分類所得税というのは比例税率課税し、総合所得税というのは累進税率課税して行く、その分類所得税のようにいろいろ区分はございませんで、一率に三%の税率でございますが、これがノーマル・タックス、そしてサー・タックスというのが累進税率になつております。これは個人の場合でございますが、そのサー・タックスを従来我々は附加税と訳しておりまして、ここに「附加税を含む」とありますその附加税のわけでございまして、地方税としての税ではないわけでございます。なお同じように御質問になりました一点の、地方税についてはそれでは二重課税防止はできないのかという点につきましては、我々もいろいろ検討して見ましたが、結局地方税におきましては各国の差が相当激して、特にアメリカの場合におきましては、ステートがかなり大きな権力を持つているわけでございまして、連邦政府交渉してもなかなか地方税の問題は片付かない。今まで地方税関係アメリカと二重課税防止条約を結んでいる国はどこもございません。アメリカ連邦の税については、二十数カ国と二重課税防止条約を結んでおりますが、地方税関係ではそうした関係はございません。従いまして日本としましても、地方税関係ちよつと我々も自信がございませんし、権限関係から行きましても難かしい実情にあるわけでございまして、結局先ず取上げらるべきものは、アメリカにおいては連邦所得税日本においては所得税及び法人税、そして将来同じような種類の税が、名前は変りましても作られたら、それはこの条約対象の中に入ることになつておりまして、これは国際間の二重課税防止条約のいわば慣例的な扱いでございます。  それから条約は第二条においていろいろな用語の定義をいたしまして、第三条以下に一応実質的な二重課税防止規定を盛つているのでございますが、大体これは二つに分れると申上げていいと思つております。と申しますのは、そもそも二重課税が行われますのは、御承知のように、日本所得税でいえば、日本住所を持ち、或いは一年以上居所を持つている者であれば、その人の所得の全部について所得税がかかる。そうでない人であつても、日本にある事業とか、そうしたものから生れる所得については税がかかる。そうして同じことがアメリカにおいてもあるわけでございまして、例えば法人の例を挙げたほうが分りがいいかと思いますが、日本商社ニューヨーク支店を持つておりますと、その商社ニューヨーク支店利益をも含めて日本法人税課税になる。ところが、ニユーヨークの商社利益に対しましてはアメリカ所得税課税になる。即ちニューヨーク支店における利益に対しましては、日本法人税アメリカ所得税両方課税になる。ここに二重課税の問題があるわけであります。そこで、これを防止する方法としましては、実は国内法でもできるのです。すでに、アメリカでは古くから内国歳入法百三十一条という規定がありまして、アメリカ商社の、日本にある支店で得た利益に対して、日本法人税がかかつた場合に、法人税アメリカ所得税から控除してやる。日本でも、昨年本委員会で御審議を願いました所得税法及び法人税法改正によりまして、今申しました、商社ニューヨーク支店における利益に対して納めた税金控除する、こういつたような規定になつておりまして、その意味では、二重課税防止は一応はできるわけでございます。ただ、こういうことの起りますのは、結局、アメリカ課税権日本課税権とが競合するが故に起るわけでありまして、従つて、二重課税防止をしようとした場合、アメリカ課税権がぐつと強く出て参りますと、強く出て参つたその分をそのまま是認して控除してやらないと、負担納税者のほうへ行く。ここで競合する課税権をどう調整するか。特に今申しました支店といつたような関係の、まあ、我々は制限納税義務者と呼んでおりますが、支店があり、それと同種のものの、そうした制限納税義務者に対する課税権をどういうふうに調整するかという、制限納税義務者の調整問題だと思つております。それが、実は第三条から第十三条まで一応条約の中に入つております。一番よく問題になりますのは、商社関係でありまして、商社アメリカ商売をした場合において、どういう姿でアメリカ税金がかかるか。これは、やはりはつきりさしておきませんと、商社としてはなかなかアメリカへ出て行きにくい問題であります。勿論ただ単純に、アメリカ会社から注文を受け、品物をこちらから売つてつてやる。これはアメリカ税金がかかるわけではございません。ただアメリカにおきまして、例えば、エーゼントを持つた場合に、そのエーゼントがどういう姿のエーゼントの場合にはアメリカ税金がかかるか。或いは更に進みまして、そこに支店を持ち、事務所を持つ場合には当然かかるわけでございますが、その辺の境目をどこにどういうふうに引くかという問題が出て来るわけでございますが、考え方としましては、条約におきましては、恒久的な施設を持つている場合はアメリカ税金がかかる。それでは恒久的施設とは何だ。これは第二条の定義できめておりまして、事務所、工場、作業場、支店、倉庫、その他事業を行う一定の場所、こういうふうになつております。併し、いろいろ注釈がついておりまして、代理店でありましても、そこに商売の包括的な権限が与えられている場合におきましては恒久的な施設があるものと見る。それから、単に仕入れだけやる事務所があつても、それは恒久的な施設があるものとは見ない。綿花なら綿花仕入れだけする事務所日本紡績会社アメリカに持ちましても、アメリカ税金課税の問題にはならん。ただ商社がそこで仕入れをし、同時に、例えば、南米などへ又転売するという場合には恒久的施設に入るといつたようないろいろな原則がきめられておりまして、その恒久的施設を持つた場合にはアメリカ税金がかかり、そうでない場合はかからん。こういつた問題が一番基本的な大きな問題になつているわけですが、そういつたような規定とか、それから、例えば、日本が相当外債を持つておりますが、そうした場合におきまして、現在の国内法でやりますと、利子を払う場合、日本源泉課税する。この源泉課税の率を一体どういうふうにするか。向うには住所があるわけでして、その意味からすると、債権者国のほうにも、或る程度税金を取る権利があるのじやないか。同時に、源泉がこちらから生れるのだから債務者国税金を取る権限があるのではないか。こういつたようなことで、これは曾つてよく争いの因になつたのですが、そういう場合におきましては、今度の条約におきましては、百分の十五を越えない、こういうところで一応の話合いを進めております。その他、例えば日本から向うへ人が行つた場合に、その場合の課税関係をどうするか。これは同じような関係でして、アメリカから日本へ人がやつて来た、例えば今度のハイフエッッのような人がやつて来た場合には、一体どういう条件を備えたら日本でこれに税金をかけるか。そういつた関係の個々の制限納税義務者に対する課税関係、これを一応先ず規定しまして、これをいろいろ種類がございますので十三条までで規定しております。それから十四条の規定は、これは今度は全然逆の関係でありまして、アメリカ課税を受けました場合に、日本に本店のある商社税金をどうするか。これは先ほど言いました、アメリカで言えば内国歳入法百三十一条の規定日本で言いますと法人税法所得税法にそれぞれの規定がございまして控除する。その控除することによりまして二重課税防止をしよう。ところがこれも正確に言いますと多少違いまして、アメリカで納めました税金を全額控除するのは、アメリカ税金日本税金に比べて安かつた場合だけでありまして、向うのほうがいろいろな関係負担が高い場合におきましては、その高い分に相当するものは控除しない。それを全部控除しますと、結局国内所得に対する税金まで食い込むという趣旨でありまして、これは各国同じような考え方をとつておりますし、今度の条約におきましてもその点は変りありません。  ただ一応それと今度のその十四条の関係で非常に特色がありますのは、配当に対する課税をどう考えるか。これが一番大きな特色になつております。と申しますのは、アメリカ法人税日本シヤウプ勧告による改正前の法人税と同じようなものでありまして、とにかく法人に対する課税個人に対する課税と全然関係ないのだと、こういう考え方法人税ができております。日本法人税は御承知のように、まあ、いわば所得税の前取り関係、こういう考え方配当に対して二割五五分控除をしている。そこで日本会社からアメリカ会社或いは個人配当をもらつた場合に、その二割五分控除するかしないか、この問題が実は相当議論中心なつたわけであります。まあイギリスアメリカとの関係を見ておりますと、一応イギリス法人に対する課税が、日本法人に対する課税と同じような経路になつておりますものですから、イギリス法人が納めた税金、これをアメリカでやはり控除するような形になつておりますので、その代りイギリスアメリカ法人税を、性格は違うがイギリス法人税と同じように見て控除してやろうというような例もございますので、やはりこの点は、はつきりさすべきじやないか。そこで種々交渉した結果としまして、アメリカの人が日本からもらつた配当については二割五分控除するということを、結局、結論としましては、向うも承認しました。ただその代りこちらも一応の譲歩ということになるわけですが、御承知のように配当に対しては源泉課税しておりまして、これは国外へ払う場合も同じように源泉課税しておりますが、日本法人税所得税の前取りだという点を強く主張する関係からしまして、更に源泉課税までやるのは行過ぎじやないかというので、この源泉課税の分だけは、これは日本課税権を放棄する。ここで妥協ができたわけです。この規定につきまして我々が強く固執しましたゆえんのものは、他の点におきましては結局アメリカ日本との間における課税権の競合をどう調整するかという問題でありまして、納税者負担におきましては、余り変りはないわけなのです。日本でとるか、アメリカでとるか、ただこの点になりますと、この二割五分控除を認めること自身は、納税者自身利益になるわけであります。外資導入とかいろんなことが、やかましく言われております現在におきまして、理窟も通るものであると考えられますので、この点は是非通そうというので、何とか納得させたわけです。従いましてアメリカの人としましては、同じ三割配当をもらつたとしましても、アメリカ会社から三割配当をもらつた場合に比べますと、日本会社からもらつた三割配当というのは、国内でも同じことでありますが、遥かに税引手取としては有利な配当になつて来る、こういう結論になるわけでありまして、外資導入などに相当貢献し得るのじやないかと考えております。なお、あとの規定は大体いろいろな調整関係でございますが、先ほど申しましたように、公共的施設とかいろいろな点におきまして、はつきりしない漠然とした基本原則だけがきめられているわけでありますので、細目については両国の当局が、それぞれ自国の分についてはきめるわけでございますが、日本商社が、アメリカ税務当局のやつた措置がこの条約に違反していると思いましたときにおきましては、勿論向う異議申立をし、訴訟を起すことはできます。併し同時に、この条約の結果としまして、日本関係当局に申出まして、日本関係当局が、成るほどそれは日本商社の言うことが尤もだということを理解した場合におきましては、日本のそうした当局からアメリカ当局に直接交渉しまして、妥当なる結論に持つて行くということがこの条約で約束してございます。これはアメリカ商社につきましても同じことが起り得るわけですが、とかく税の問題は専門的になりますし、殊に言葉の違つた国へ行きまして、外国税法でいろいろの処置を受ける場合におきまして、不便を感じているようでありますが、条約ができますと、日本税務当局相談相手になつてもらえるというようなこと、而もそれが直接アメリカ税務当局ともいろいろな交渉を持つている、こういうような意味におきまして、適正な課税を受ける方途が非常に得やすいのじやないかというようなことも、この条約の持つ効果であろうと思つております。更にお互い情報交換ということも一応規定されております。従つて外国人課税などなかなかむずかしい点もあるのですが、情報交換などが更にできますので、その辺の適正も期し得るのじやないか。  昨日外務委員会での御質問の一点は、一体この条約のある場合と、ない場合とどう違うのだ、条約ができたことによつてどういう効果を持つかという御質問一つございました。これは確かに問題の中心を突いた御質問でして、それは先ほど来申上げました幾つかの点でおわかり願えると思いますが、もう一ぺん要約をして申上げますと、一つの点は、制限納税義務者に対する課税権関係相互に調節し合うという点でございます。これは国内法だけではできません問題でして、アメリカのほうで、例えば日本で、映画「羅生門」などが向うへ行く、映画料金をもらう場合におきましては、アメリカ国内法だけですと、制限納税義務者関係から三割の源泉課税をすることになつております。それが、この条約ができますと一割五分の源泉課税になるわけです。そういつたような関係で、制限納税義務者に対する課税権お互いに調整し合う。これはこの条約一つの直接的な効果だと思つております。それから無制限納税義務者に対する関係につきましては、おおむね国内法で或る程度調節できるのでありますが、先ほど申しました配当の二割五分控除のような点になりますと、なかなか向うとしては、この条約がなければ納得しない問題だろうと思つております。この条約はそれをはつきり謳つておりますから、この点においては効果がある。更に繰返すことになりますが、自国関係当局に不平を申出ることができ、その関係当局を通して相手国関係当局交渉してもらうことができるというようなことは、具体的な事例にぶつかりまして非常に効果を持つのじやないかと考えております。更に情報交換その他によりまして、お互いが緊密に結び付き得るという意味におきまして、この条約そのものの持つ効果というものは、日米間の経済交流を促進する意味におきまして、相当高く評価されていいのじやないかというふうに思つております。  それから全体としましては、できるだけ対等な双務的な関係で全体ができていると我々は思つておりますが、その場合、昨日の外務委員会の御質問一つは、形式的には対等であつても、実質的には不平等なことになつておらんかという御質問があつたのであります。その点につきましては、我々も非常に関心を持ちまして、実質的にも不平等にならんようにということを留意したつもりでおります。その一つの例でありますが、例えばローヤリテイに対する課税関係の問題、或いは支払債務課税関係問題等におきましては、よく相互に免除し合う、両方とも課税しないというのが普通出て来る条約の型でございますが、御承知のように、日本から払う分が割合に多くて、向うから貰う分が少いという実体を見て参りますと、お互いにまけ合うということは、形式の上では双務的であつても、実質的には失うところが多い、こういうような点も考えられますので、あつさりまけ合うということをしないで、一応の制限で、一五%を限度として課税する。日本では国内法で大部分がすでに一五%制限の中になつております。アメリカのほうは条約がありませんと、三割になつております。従つて差つての問題としましては、措置法まで考えますと、日本原則としては現行と大して変らない。アメリカのほうは、これによつて直接一割五分下つて来る。こういうような結果になるわけでありまして、そのような実体的なところを考えまして、できるだけお互いが平等な立場でやりとりできるような恰好に持つて行つたつもりでおります。  それからもう一つ昨日の御質問で、アメリカが他の二十数カ国と条約を結んでいるが、アメリカがほかの国と結んでいる条約と、この条約と、どういう点が違うか、違う点を幾つか挙げて見ないかというようなお話がございました。結局アメリカという国は一つでありましても、相手国の税制が違うものですから、おのずから或る程度違いが出て来るのは止むを得ないところでありますが、恒久的施設といいます、先ほどの支店等に対する課税関係、これは大体どこの国と結んでいる条約も、これと同じような型になつておりまして、我我もまあその型で、そう不思議はないと思つております。違います点は、今のローヤリテイとか債務利子とか、そういうものに対する課税関係、これはどちらかと言いますと、相互免除のやり方をとつている事例のほうが多うございます。ただ先ほど申しましたような実体的な関係を考えまして、この場合におきましては、相互免除の形をとらないで、制限課税の形をとつた。それから制限納税……例えばハイフェッッのような人がこちらへやつて来て、どういう条件の場合に課税するかといつたような金額の問題がありますが、あまり小さな金額を稼いで帰つたというような場合は課税しないけれども、一定額以上だつた課税するということになつているわけですが、この金額は、日本生活レベルから言いまして、よその国の金額と比べますと、相当低いのじやないかというところに決められている。あとは、先ほど申しました十四条における配当関係で、二割五分控除、この関係がほかの国の税法にはない。ほかの国との全納にはない新らしい型のものである。こういうわけでございます。  それから、これは私、大分因縁がございまして、一番初めに交渉に当りましたとき、私、実はワシントンへ行つて交渉して参つた問題でありますが、それが二年ほどかかつた。どういう点で、それが遅れたか。大体第一点は、二割五分控除のことを向うに呑ませる。この点が一番大きかつたと思います。私が向うと話しましたときも、その点を抜きにすれば、実は大体話は付きかけていたのです。併しその点がどうしても向う承知できない。イギリス所得税日本所得税と、精神は同じだけれども大分恰好が違うから、従いましてどらも簡単に呑めない。従つて、例えばアメリカ商社支店法人税を、アメリカ商社の本店の法人所得税から控除する。これは問題はないのですが、配当に対する関係をそういうふうな控除をすることは、これはちよつと呑めない。これがまあ実は一番大きな問題として残ります。と申しまして、私もちよつとこの問題をそう簡単に置いていい問題だと思いませんものですから、この点を留保して来ました。私の行つたとき留保したのは、この点と、実は外に航空機関係相互免除の問題。当時まだ日本の航空機がアメリカに行つておりませんものでしたから、これは日本の航空機が行くようになつてから相互免除すべきで、それまではまだ相互免除すべきでないということで頑張り、これはそれほど大して、どうせ行くことになつていたのですから、問題ではなかつたのですが、まあ主な点は今の配当関係中心です。で、これは大体話がつくのに相当な時間がかかつて、又同時に、実はそれと並行しまして日本商社、その数は多くなかつたのですが、大分古い税金、戦争前の税金アメリカのほうで訴訟になつておりまして、これがちよつと税額にしましても百万ドルを越えるような額の訴訟問題がありました。これは綿花のヘッディングの問題に対する課税関係でありまして、今これを払うというと相当大きな額でもございますので、商社の問題というよりも、我々の方の関心は、それだけのドルを払うのが、理窟があれば止むを得ないが、理窟がないなら無駄に払うのはいやだ。そこでこの条約交渉と一緒にその問題を片づけよう。こういう気持もございまして、その二つ関係、あとの方は実は従でございますが、前のほうが主でございます。その話合いがつくのに実は相当の期間がかかつたのです。同時に、大体話がまとまりまして、できたあとで、今度は又いろいろ条文の細かい点の手直しが、字句修正が多かつたのでありますが、そういう関係で、一年前の国会に、できれば出したいと思つて交渉を進めていたのでございますが、遅れたというのが実情でございます。  次に相続税関係については、余り詳しく御説明するのもどうかと思いますが、ごく簡単に申しますと、やはり相続税につきましても同じような二重課税の問題がございますので、考え方としましては、先ず以てその制限納税義務者に対する課税をどうするか。ただ相続税関係は、アメリカ日本と制度が非常に違うわけです。と申しますのは、アメリカ相続税は遺産税でありまして、日本相続税は御承知のように遺産取得税であります。従つてアメリカですと、被相続人が亡くなつて一千万ドルの遺産があれば、それに対して課税する。日本相続税の場合には、五人で相続すれば、それぞれの人の得た相続額に対して課税する。更に違いますのは贈与税の関係であります。アメリカでは贈与税を遺産税の補完税と考えておりますために、贈与がありました場合には贈与者に課税をいたします。日本の贈与税は贈与を受けた者に課税する。そういうふうに非常に喰い違つておりますので、果してこの両者の調整ができるかという点、いろいろ議論してみたのですが、結局、一つの贈与、一つの相続があつた場合に、納税義務者は誰であれ、二重に税金がかかるのはおかしい、こういう観念で割切ることによつて、二重課税防止条約を結べばいいのではないか。そういう建前で以て全体を作つてございます。  従いまして、先ず第一としましては、制限納税義務者に対する課税をきめるという意味におきまして、財産の所在関係はつきりしまして、同時に、その納めた税金を無制限納税義務者のほうの国では差引こう、こういう考え方で、できております。こちらのほうは交渉の過程におきましてもそれほど大きな議論はございませんで、大体所得税のほうに釣られまして時間的に遅れたというわけでございます。  以上が大体今度の二重課税防止条約の概要、或いはそれに関するいろいろな経過等でございまして、時間もございませんで、非常に大雑把でございますので、或いはあとで御質問によつてお答えしたいと思います。  そこで今度御審議をお願いしております法案について簡単に申しますと、条約の上にはつきり書いてあることは、これはもう法律のほうで改めて一々規定する必要はないのじやないかという考え方で進んでおりますが、ただ条約のほうでは、例えば先ほどもちよつと触れましたが、利子等に対する課税におきましては一五%を超えてはならない、こういうような規定になつております。従いまして、あとどういうふうに考えて行くか。超えてはならないという規定があるから、それでもういいじやないかという考え方もあり得ると思いますが、それではどうもはつきりしない点もあるのじやないだろうか。そこで、現在措置法でいろいろ一〇とか五とかに下げてはおりますが、基本税率が二〇になつておりますので、これを一五とするという生きた条文を一つつて行きたい、これが法律の第二条でございます。  それからアメリカにおきましては、原則としましては、相続税の場合に制限納税義務者に対する控除が割合低いのですが、今度条約が結ばれましたので、国内における人と同じ程度の控除を認めてやろうというような話が出まして、大体それによる利益日本の側の人が受けるのが大部分でございますが、日本のほうにも、一応国内の人だげに認め、制限納税義務者には認めないという利益一つでありまして、それがそこにある未成年者控除でございます。向うのほうでも認めようということで、それじやこちらのほうでもこの未成年者控除をこの条約に伴つて認めて行こうというので、それが第三条の規定でございます。  それから徴収をお互いに助け合おうという条文が条約の中にあるのでございますが、これは実は一般的な徴収ではございませんで、この条約従つても本来免除すべからざる税金を課そうとか、いろいろなことによりまして、この条約に籍口して免除を受けたといつた特殊の場合におきまして、お互いに徴収を助け合おう、こういう非常に限られた規定がございます。これは何でそんな規定があるのか、ちよつと理解しにくいと思いますが、当初はアメリカは、よその国と税の徴収のやりとりをかなりやつたのですが、どうもやつてみますと工合が悪い、いろいろの行過ぎが出て来るというので、それはちよつとむずかしい。併しこの条約に結びついている分だけはまあやろうじやないか。恐らくこれは実効は非常に少いと思います。併し一応そういう条文を向うが是非入れようというので入れましたので、我々も入つて弊害ないというので承知したわけですが、それを国内法としてどうやるかということは、それは条約だけでは、はつきりいたしませんので、これを一応おきめ願いたいというので、第四条の規定が入つております。  それからなお、条約にも多少委任的な事柄がございますが、条約だけでは、はつきりしません点もございますので、この条約実施のために必要なことは省令で定めるという委任命令の授権を頂きたい。  大体以上が条約及び条約に伴う法律案の概要でございます。
  8. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 質疑を行います。
  9. 小林政夫

    小林政夫君 先ず条約のほうを伺いますと、英文のほうを見るとわかるのですが、これは文章の間違いじやないかと思いますが、第三条の(3)はこれでいいのですか、書き方は。特に後段のほうで「独立の立場でその恒久的施設を有する企業と取引を行つたと仮定した場合に取得しうべき産業上又は商業上」、いいですか。
  10. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) どういう点か、もう一遍教えて頂きたいと思いますが、考え方といたしまして、アメリカのナシヨナル・シテイならナシヨナル・シテイの支店日本にある、その場合に、ナシヨナル・シテイの支店利益としてどういうものをみて、それにどう課税するか、そういう点、これは始終問題になる点ですが、そういう場合におきましては、ナシヨナル・シテイの支店を独立した企業と見て、その場合にどれくらいの利益がナシヨナル・シテイの支店として上げ得たであろうか、これを想定いたしまして、それによつて課税して行こう。これは条約以外においても大体こんな考えを持つております。従いまして、本店との間に、ナシヨナル・シテイの支店に例を取りますと、金のやり取りがある。本店から金がたくさん来ていれば、行ざ過ぎになつております場合には、こちらのほうにおいて利子を払うといつたような計算になるでありましようし、逆に日本で集めた預金がアメリカへ行つて、本店のほうで利用されておるということになりますと、本店のほうから相当の利子をとるという計算で全体を考えている。こういう考え方であります。
  11. 小林政夫

    小林政夫君 その実態はわかつておるのですが、(3)の後段のほうの「独立の立場でその恒久的施設を有する企業と取引を行つたと仮定した場合」は、「企業として取引を行つた」ということはどういうことになるのですか。
  12. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 多少読みにくいようでございますが、間違つておるとも思つておりませんが、「恒久的施設が独立の企業として同一又は同様の条件で同一又は同様の活動を行い、且つ独立の立場で……。」
  13. 小林政夫

    小林政夫君 その恒久的施設を有する……。
  14. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 「その恒久的施設を有する企業」というのは、初めのほうは「その恒久的施設」というのは、これは支店と御了解願いたいと思います。それからあとの「恒久的施設を有する企業」というのは、これを本店と考えて頂きたい。
  15. 小林政夫

    小林政夫君 そうですか。
  16. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 先に英文ができまして、あとで日本文ができた関係もございますので、非常におわかりにくくて恐縮でございますが、初めのほうは「恒久的施設」、あとのほうは「その恒久的施設を有する企業」というので、前のほうが支店で、あとのほうが本店、私もちよつと直ぐに見ましたらわからないようなわけですから、御理解しにくいのは御尤もと思います。恐縮でございます。
  17. 小林政夫

    小林政夫君 次は、この五項で「細目を取りきめることができる。」これはどういうことを取りきめようとしておるのですか。
  18. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 問題となりますのは、例えば総係費をどう見るか、或いは細かい原価計算的なものが、一々できなかつた場合に、売上げ按分でやるとか、収入按分でやるとか、そういつたような問題になると思います。従つて、そういうようなやり方をどういう場合に適用するか、どういう場合にまでは細かい一応原価計算的な経費をきめて行くか、こういうようなことにつきましての細目の問題、これは国内の一応の事務の取扱としては、いろいろ取扱の慣例なり、内規的なものがあるわけであります。それを両国同じように辻つまを合せて行こう、こういうつもりでございます。
  19. 小林政夫

    小林政夫君 この第六条について、先ほどの外務委員会質問があつて、形式的には平等であるけれども、具体的には、こういうことについて、実際的にも大体平等だ、こういう説明があつたわけですが、百分の十五とすることによつて、確かに実際的にも平等でしようか。
  20. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) まあこの問題は非常に、実は最近割合にそういうこともないわけですが、問題になつた議論なんでございます。多少ペダンテイックなことを申上げまして恐縮ですが、第一次世界大戦のあとにおいて、国際連盟がこの二重課税防止の問題を取上げまして、そうして二重課税防止条約は、御承知のように、それぞれの国の税制が違いますために、多角的にはなかなか結べない。どうしても二国間で結ばなければならない。そこで国際連盟といたしましては、やはりこのことは二国間で結ぶ二重課税防止条約のモデルを作ろうじやないか。こういうような委員会が実はできまして、二つ委員会ができまして、一つは財政学者クラス、当時のセリグマン、ジヨシア・スタンプ、そうした一流の学者が集まつて、片方では主税局長クラスの実際家を集めて、議論をしたことがありましたが、その委員会一つ結論に達し得なかつた二つのモデルを作らざるを得なかつた。と言いますのは、実はこの問題でございまして、債権をたくさん持つている国は、こういう債権者国課税すべきだ、債務を持つている国は債務者国課税すべきだ、これが課税者にとつては結局そう大きな違いではないのですが、先ほど申上げました課税権の競合問題で大分議論になりました。そういう問題のあるところの規定なんでございまして、アメリカは実は、黙つておりますと、三重課税するわけであります。日本としましては、どちらかと言いますと、債務者的な立場をとつているだろうと思います。本当ならば、こちらは全部とりたい。現状を考えてみますと、こちらのほうは本法において二十、措置法で以ていろいろ負けざるを得ない状態になつているわけでありまして、向うは三十、そういうことになつておりますと、十五くらいで妥協してみましても、向うは半分に負けたつもりでいるわけですが、こちらとしては負ける分は比較的少い。現在の措置法による分が一時的なものとしましても、こちらのほうは五程度負けたことになるのだということを考えてみますれば、平等だと言われるかどうか。これはいろいろな意見があるだろうと思いますが、他の国が完全に課税権を放棄してしまうのに比較すれば、相当違つた姿のものであろうと申していいのではないか。我々もそうした形式だけを考えないで、実態を考えたいということを申上げ得るのではないかと思つております。
  21. 小林政夫

    小林政夫君 次は、大分前に読んだからポイントが狂うかも知れませんけれども、第八条の(b)につきまして、条文に即して御説明願いたい。
  22. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 日本の現在の国内法は、この間の改正で実はこの「選択することができる」。という、この選択するほうだけの国内法になつております。従いまして、一応ほかの建前をとつておりました場合に、例えば不動産課税に対して丁度ロイヤルテイ課税と同じように収入金額の何割といつたような課税をとつておりました場合に、この条約が選択することができるという特殊な道が開けるわけでございまして、日本では選択することができるというその道だけでございましては、特に現行の税法の立場におきまして、この八条というのは、日本に関する限りにおいては特別の意味はない、こういうふうに御理解願つていいと思います。
  23. 小林政夫

    小林政夫君 次は十二条の(d)項。この一番末尾の「売上高及び資産額に比例して両締約国間に配分する。」これは実際にはどういうふうにやるのですか。売上高、資産額に比例してというのは……。
  24. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) まあ売上高だけというのもどうだろうか。そこで、やはり資産額も加味して……、資産額だけというのもどうだろうか……。
  25. 小林政夫

    小林政夫君 加味するというのは……。
  26. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 要するにそれぞれのウエイトを持たせまして、五割は売上高、五割は資産額によるとか、そういつたような考え方、その場合に、五割五割がいいか、或いは四割六割がいいか、そういう細目については更にお互いが話合うべき問題があろうと思つておりますが、一応両方をとつた或るウェイトを持たしたところで二つのものをフアクターとして取入れる、こういう考え方でございます。
  27. 小林政夫

    小林政夫君 先ほどかなり詳細な説明があつたわけですが十四条の(a)項と(b)項との、即ちアメリカ側と日本側とに関する書き方の相違ですね。これは両国の税法上の相違に基くものであると理解していいわけですか。
  28. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) さようでございます。
  29. 小林政夫

    小林政夫君 次に、今問題になつ配当の問題については、これは日本側のことだけ、日本側というか、アメリカ人が日本から受取る、日本法人から受取るだけのことが書いてあるので、日本人が合衆国の法人から配当を受けるという場合は、普通の今のままでやれるから、特にここに挙げなくてよろしい。こういうわけですね。合衆国の法人から日本人が配当を受けるという場合に……。
  30. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 合衆国の法人から日本の株主が配当を受ける場合、合衆国の法人法人というのは先ほど申したような性格のものを考えております。現在我々のほうでは二割五分控除というものは認めておりません。従いまして、これが若し認めるということになれば、認めたほうがいいのじやないかという議論が、私は今あり得ないと思いますが、若しあつたとした場合、これは国内法でやることは構わないことでありまして、ただ条約の上で日本のほうも合衆国の法人税をそういう特殊なものとして認むべきのではないか。日本について認めるなら合衆国についても認めろ。実は英米の関係においてはそうなつております。イギリス所得税の性格から強くニユアンスが出ておりますが、イギリス法人に対する所得税を引く。その代りアメリカ法人からはイギリス所得税を引く。アメリカ法人所得税イギリス法人所得税の性格と違うけれども、併しお互いの双務的な関係の故に、違う性格でありましても条約の上でこれを認めることになつております。日本関係におきましては、まあ二のほうでこちらが譲歩した関係もありまして、向うとして条約の上で向う法人税を引くということを認めることは約束しておりません。ただ国内的に考えましてそういうことが是非いいということになれば国内法でやる。これは条約の外の問題でございます。
  31. 小林政夫

    小林政夫君 これは、今、日米の立場が違うからそういうこになるわけですね。アメリカ日本の資本を入れたいというような場合には相当問題になるでしよう。  次は相続税関係条約について、第五条の二項で一番末尾、「当該財産について各締約国が課する租税の額に比例して両締約国間に配分される」、これを説明して下さい。
  32. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) この規定は非常にややこしい規定でありまして、結局、日本にある財産に対しては、日本課税して、アメリカのほうから差引く。アメリカにある財産についてはアメリカ課税して日本のほうから差引く。これがごく普通の例でございますが、これは例えばアルゼンチンならアルゼンチンにあつたという財産についてどうするか。この場合におきまして、更にもう一つ、こういうややこしい問題があるのですが、所得税の場合には、制限納税義務者というものは日本なら日本だけにしかない。アメリカには無制限納税義務者ですね。恩典のあるのは日本だけでございまして、これも全然例外はないことはないのですが、原則としては大体無制限納税義務者として属している国が一つ、尤もアメリカの場合は必ずしもそうも言えませんが……。ところが相続税の場合は、先ほど申上げたような関係で、向うは遺産税です。従つて被相続人がアメリカ人である。相続人が日本にいる。そうすると、向うは被相続人を対象に考えますから、アメリカにおいても無制限納税義務者、それが日本は相続人を対象にしますから、こちらは制限納税義務者、そうすると、アルゼンチンにある財産はアメリカから課税権が行くわけでございますから、日本でも課税権が行くわけでございます。そういうような関係がございますので、結局お互いが自分のほうでそういうものを抜かしてお互い取り合いがある。その取り合いの割合でアルゼンチンのやつを分け合おう……。
  33. 小林政夫

    小林政夫君 ちよつとその点、設例を以て……。
  34. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) それでは白石課長から。
  35. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 例えば今の場合におきまして、アメリカ日本にそれぞれ財産がある。更にメキシコならメキシコに財産がある。そのメキシコにある財産に対して日本のほうでは百なら百の相続税がかかる。アメリカのほうではそれに五十なら五十の税がかかる。それはメキシコにある財産についてかかるわけでございますね。その場合に、それを引き合うわけでございます。メキシコにある財産につきましては、百と五十と両方の二重課税になりますから、これを控除し合わなくちやならん、その場合に、控除する総合計は「租税の額のうちいずれか少い方の額に等しいものとし」とありますから、今の場合に百と五十であれば控除する合計は五十だ。五十以上は引かない。その五十をどのようにして引き合うかとなりますと、この五十を、百と五十の、日本課税する百とアメリカ課税する五十と、五十と百の比例で按分してそれぞれ引き合うぞというのが、この規定でございます。
  36. 小林政夫

    小林政夫君 それから、何でもないことですが、この法律案の、第四条の「国税及びその滞納処分費と、同順位とする。」第四条の最後です。それの実際の扱いはどうなつていますか。
  37. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) これは、国税の滞納処分をいたしました場合、滞納処分費がかかるわけです。例えば売払つたという場合に手続上の費用がかかるわけですが、そのような滞納処分費は、本税よりも優先して取るというような順位がきまつているわけです。そういう意味におきまして、今回アメリカの税を取る場合におきましても、その順位はこれと同じように取扱うのだという意味規定でございます。
  38. 小林政夫

    小林政夫君 それはわかるのですが、同じ一つの財産が、全部、国税及び滞納処分費と、アメリカの税とを払うに足りればいいのですが、少し不足するという場合には、どうするのですか。
  39. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 従いまして、例えば本来の税金が一〇〇あつた、それから滞納処分費が五〇かかつた、ところが取つたところの、滞納処分したところの金が八〇であつたという場合におきましては、八〇から先ず滞納処分費の五〇を取つた残り、三〇だけがアメリカにやるべき税金だということに、三〇だけやるということに相成るのであります。
  40. 小林政夫

    小林政夫君 三〇だけでいいですね。
  41. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) はい。
  42. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) ちよつと速記を……。
  43. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  44. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 速記をつけて下さい。
  45. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この条約は、アメリカ側から締結方を申入れがあつたのか。それとも日本から進んで申入れを行なつたものであるか。その点。
  46. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 話が出ましたのは、先ほどもちよつと申しましたが、二十六年の十二月でございます。私が第一回に参りましたのは二十六年の十二月でございます。そういう時期でございまして、占領下にあつたものでございますから、日本の外交関係というのはまだ本当に正式に認められていなかつた時期の故もあつたと思いますが、話としましてはアメリカのほうから出て参りました。そうして日本としましても、先ほど来申しておりますように、条約を締結する、これは条約の内容次第でございますが、内容によりましては、その条約を締結することによりましても日本としても大いに得るところがあるのじやないかというので、この話に乗つて行き、同時に、内容的に日本としてできるだけ対等の立場で、同時に日本としても有利な立場をとるようにして行く考え方で、実は話を進めて参つたわけです。話の起きたのは、アメリカ側から、アメリカとしてはこういうことを希望しているが、日本として応ずる意思なきや、こういう点で話は進めました。
  47. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 速記をとめて下さい。    [速記中止〕
  48. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 速記をつけて下さい。  暫時休憩いたします。午後は一時半から続行いたします。    午後零時三十五分休憩    —————・—————    午後二時十分開会
  49. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 休憩前に引続いて会議を開きます。  日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律案を議題といたしまして、質疑を行います。
  50. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この法律は、ここにも書いてありまするように、朝鮮に行動する国連軍を指しておるわけであります。大体この国際連合の軍隊は、朝鮮の動乱があのような状態で、だんだん片づきつつありますので、相当減つて来ておるだろうと思うのですが、現在この法律の適用を受ける該当人員、それから該当国、国別の人員というのを、大体おわかりになつておる範囲で、あなたのほうで調査されたのはどのぐらいになつておりますか。国別の人員を一つお知らせ願いたいと思います。
  51. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) お話のように、朝鮮における動乱の激しかつたときにおきましては、相当いたのでありますが、その時分におきましても、大体在日の国連軍は一万ぐらいだつたろうというふうに聞いております。現在ではずつと減少しまして、呉、広地区、及び東京のエビス・キヤンプ、これにおるのが大部分でございますが、その数は正確には知り得ませんが、五、六千から、四、五千名ぐらいでございます。  それから派遣国の関係でございますが、合衆国のほかには、イギリスの本国、それからカナダ、オーストラリア、ニユージーランド、ベルギー、ルクセンブルグ、コロンビア、エチオピア、フランス、西ドイツ、ギリシア、イタリア、オランダ、ノールウエー、フイリピン、スエーデン、タイ、トルコ、こういつたような国の名前が出ておりますが、大部分の人は濠州軍であるというふうに承知しております。各国の人員の細かい数字は遺憾ながら持つておりません。
  52. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この法律の適用を受ける場合には、派遣国から、それぞれ何名おつてどこにおる、これはこの法律によつて処置をしてもらいたい、こう言つて来ることにならなければならんと思うのですが、その点がどうなつておりますか。それはないのですか。向うからちやんと通告はあるはずだと思うのですが……。
  53. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 何名どこにどうおるといつた意味の通告は別になくてもやれることにできておりますし、又それは大体余り予定しておりません。具体的に事例が出て参りました場合に、例えば所得税などにおきましては、そういう地位にあるものについては課税しない。それから関税とかいろんな問題になりますと、それぞれの用途に応じまして課税しない。こういう措置を講ずることによりまして大体目的は達し得るわけでございまして、あらかじめどこに何人の者が駐留しておるということを是非知らなければならないといつたことは思つておりません。
  54. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは、この法律はまだできていないが、今日までは、どの法律でこれらの軍をどういう扱いをして来られたか、お知らせ願いたいと思います。税法上……。
  55. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 今日までの関係は、事実問題としましては、一応この法律の場合と同じようなことになつていたわけでございますが、法律的にはまあ特別にどうこうといつたような規定はございません。ただ国際間の問題でございますので、その間にどう措置すべきかという点でいろいろと、争いというのも語弊がありますが、意見の一致を見ていなかつた。従いまして全体としてはまあ見送りの恰好でペンデイングになつていた。従いまして、若し違つた措置が講じられる場合におきましてはこうなるぞといつたような点の一応のデータなどはとつてありますが、併し一応両者の話合いがつくまでは見送るという恰好になつていたわけでありまして、法律の上でどうこうといつたようなことにはなつておりません。従いまして、この条約及び法律によりましてこうきめた場合におきましては、そういつた過去のペンデイングになつていた問題もこの機会に片づけよう、こういう考え方になつております。
  56. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 法治国で、独立国である自分のところの法律でもきまつておらない、ところが一応この法律と同じようなことをやつてつたということは、一体どうなるのですか。不法侵入をされて、そして居座られておつたのと同じことで、仮に日本の保安隊がどこかへ行つてそういうことをやるということは、これは許されないことだと思うのですが、その点を如何お考えになつておりますか。よその国へ行つて税金も払わずに、日本法律でもきまつていない。少くともこれは何とか早くきめて何とかしなきやならん問題なんです。特に講和条約発効後の撤退期間内においてこれは片づける問題ではなかつたか。僕はこう思うのですが、講和条約が発効してから一年でしたか九カ月でしたか後には撤退する、だからその期間中はおるのも止むを得ないけれども、その期間が過ぎておる以上は、何らかの協定なり何なりできておらなければならん。それから国内法の整備もそのときにやつぱりしなければならない問題ではなかつたか。これは法律的に私はそう考えるのですが、これは政治の問題だと思うが、主税局長では、この問題言われてもお困りだろうと思うけれども、率直に、我々国民として考えた場合に、そういうふうに与えられるのですが、その点どうですか。あなたのほうも、税法上、減税、免税処置はできないというにもかかわらず税金がとれない。とらなくてもいいという理由はどこにもない。今日すでどういう態度で来たか、御説明願いたいと思います。
  57. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) おつしやるような考え方、一応私たちも御尤だと思つております。従いまして、できるだけ早急にこの問題を解決する。ただ話合いがずつと進められておつたものでございますから、話合いが進められている過程におきまして、話合いのない状態と同じように扱うこともどうだろうか、こういうふうな考え方があり得たわけでございまして、従いまして、話合いが結局決裂してしまうような姿になれば、勿論、国内法によつて措置しなければならんわけでありますが、話合いが進められていた。それが時期的に相当の時間がかかりましたために、御指摘のような当然この時期までという時期までに結論が出なかつたことは、非常に遺憾でありますが、できるだけこちらとしては余り変にならんような結論に持つて行きたいということで、いろいろ強く主張した面もあつたのでございますので、時間が或る程度かかつたということで、止むを得なかつたものではないかと考えております。
  58. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) なお若干輸入品についての説明を申上げますが、関税の面におきましては、当初どのようにしてこれを現在の法規の上にルールに乗せるかということについて、私ども大変悩んだのであります。結局、国連軍軍隊が公用のため輸入いたしますところの物品に対しましては、便宜上、軍当局から、関税その他の課徴金については、将来締結さるべき協定に従う旨の保証書を一枚徴しまして、若し税金をとるようになりましたら納めるという保証書を徴しまして、関税法上、輸入免許前引取、或いは他所揚というようなルールによりまして処理いたしておつたものであります。
  59. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 まあこれはどういう角度から見ましても、今日までこれを遅れさしたということにつきましては、国際的に考えた場合に、やはり親善国と申しますか、仲良くやつている国とは或る程度それはそれぞれ認め合わなければならんという、その国際政治上の問題は考えられると思うのです。併し、だからと言つて、政府は勝手に国会の承認も経ずにそういう取扱いをやるということは、これはもうどう考えても、これは憲法違反になる。それから独立国のみずからの主権だとか、自衛力だとか言つておりながら、主権を放棄したことになつている。その期間だけは従つてあなた方も、直ぐ期限までに、いついつが期限だから、期限までに法律を通してもらいたいということをよく言われる。一年も二年も期限が過ぎて、而もまだできないということであつたなら、これは一応帰つてもらうなり、或いは何らかの仮の取極めをしておかなければならんと思うのですが、そういう取極めなしに、ただ税金もとらん、そうして遅れた、こういうことですか。何ら臨時的の取極めというものもなかつたのですか。申合せとか……。
  60. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 取極めと言つたやかましいものは正直ところ別にございません。まあ形式的の取極めといつたものがあるとすれば、それはやはり国会の御承認を得る必要があるわけでございまして、従いまして、事実問題としまして、交渉が片方で続けられていた。従つて、出る結論をやはり見た上で措置したほうがいいじやないかと、そういうふうに考えられますので、まあ交渉のまとまるまで一応見送つていたということでありまして、まあ国内法的に考えますといろいろ遺憾の点もありますが、やはり国際間の関係でありますので、まあ国内法的な観点だけでものを措置できないというような事情もある。結果といたしましては止むを得なかつたのじやないかと、かように考えております。
  61. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 では、この問題をついでにお尋ねいたしておきますが、この国連軍のほうは、これはこの法律でこれからやろうとするのだが、今、麻布の狸穴にあるソヴイエトの代表部というものは、まだ人もおりますし、あるのですが、あれはどういうふうに取扱つているのですか、税法上……。それからあの人たちも向うから輸入品として何らか物資の補給等もあるだろうと思いますが、これらの取扱いはどうしてやつているのですか。これも戦時中ということで、これはまだ講和条約はできないから、交戦国、交戦国というわけじやないが、まあ戦争だというふうな扱いになる。戦争国とするならば何もものを送らせるわけに行かんが、どういうふうになつているか。
  62. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 国際法的にどういう地位にああいう姿を置くかということは、或いは専門の方に御答弁を願うべきものかと思つております。講和条約が締結されておりませんですから、従いまして、正式の外交官としてあの地位を認めるというのも、これもまだできないわけでございます。まあ交戦国の代表というのも妙な恰好でございますので、どういうふうに解すべきか、ちよつと私、今よく御答弁できかねますが、現在扱つております扱いとしましては、外交官に準じたものとしまして、例えば、直接税におきましても課税はしていない、こういうことになつております。それからなお関税等の取扱いにおきましても、外交官に準ずる扱いということにしているわけであります。
  63. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういうふうな扱いは、やはり何かの国際法、或いは国際慣行というようなものによつてつておられるのですか。ただ、まあそれよりしようがないだろう、いわゆるもう長いものには巻かれろ式におやりになつているのかどうか。これも一遍伺つておきます。
  64. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 我々は一つ国際慣行によつてつている、かように解しております。
  65. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その国際慣行というのは、一体どういう前例、今までの歴史的にどういう慣行であつたか。これはあなたは国際慣行だと言つたつて、常識的な国際慣行で、国際慣行というものは、こういうときには、この戦争が終つたときにはこういうふうに扱つてつた、それから、このときにはこういうふうに扱つてつたというので、国際慣行というのはあると思うのです。それから、第一次大戦のときにはこういうふうに日本の連中は外国で扱われて来た。これに酬いるためにやつているのだとか、いろいろ方法はあろうと思うのですね。もう長く経つておりますから、やはり一応の国際慣行によるならよるで、こういう根拠によつてつたということは、はつきりしておかなければいかんと思うのですがな。
  66. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) まあ国際慣行によつているというふうに聞いておりますが、それじやどういうふうな慣行、どういう事実の上にそういう国際慣行ができておるか、その点になりますと、非常に恐縮でございますが、私からまだ答弁いたしかねますので、外務省の関係の者を呼びまして御答弁を申上げさしてもいいと思つておりますが。
  67. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これは一つあなたのほうも調べておかれて、この問題は事実どういうふうに、これは理窟に合うように、これは止むを得ぬし、両方ともこれはまあ長いものに巻かれろ式で止むを得ぬと思うけれども、いつまでもそんなことじやなしに、やはり理窟に合うようにして置いて、安易に、よそでもこうやつておる、だからただ長いものに巻かれろ式にやつてつたのでは、主権の回復だ何だと言つてみたところで、これは駄目だと思うので、やはり堂々と主張すべきところは主張し、又我々が向う交渉すべき点は交渉して、それで、よその歴史もこうなつているからというので、一応取極めはできないにいたしましても、話をつけて、その上で私はそういう扱いをせらるべきだと思うのですがな。
  68. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) お話の点は御尤もと思いますので、その御趣旨に副いたいと思つております。
  69. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 特に私は申上げたいのは、日本人に対する税の追求については極めてきびしくやつておられるにもかかわらず、そういう点について仕方ないからと言つてつて置くということは、これはもうあなた方の一番やはり大事な仕事だと思う。で、筋の立つように、筋を通す筋を通すと言われるならば、やはり筋を通して行かなきや駄目だと思うのです。その点一つ、まあこれは聞いても渡辺さんじや、ちよつと失礼だけれども、やはり政治的な問題だと思うので、もう最前から大蔵大臣が出よ言うのだけれども、なかなか大蔵大臣もそんなことに対しては知らんし、話にならんので、……。  では次へ進んで、逐条的に二、三疑問点をお尋ねいたします。  第一条の「しやし繊維品の課税に関する法律(昭和二十九年法律第何号)」、こういうものがございますが、これはまだ法律案が衆議院において審議中である。而も我々が灰関するところによると、これは確かな情報としてここで申上げてもいいと思うのだが、又これも政府原案をみずから与党である自由党の諸君が審議未了にしようとしておるということを、我々はもうはつきりと情報としてつかんでおる。これはよもや間違いないと思う。渡辺さんの前だけれども、はつきり僕は申上げてもいい。私の言うことは、まあ大地をうつ鎚がはずれても、よもやこれははずれない。これだけは、中曽根君じやないけれども政治的生命を賭けてここで断言して置く。にもかかわらず、この第一条に「しやし繊維品の課税に関する法律」という字句が入つておるけれど、このままここで仮に本委員会において通つたといたしましたならば、やはりこの字句も我々は賛成して通したということになるのです。はつきり言つて、この何号ということは入つておりませんけれども、ところがこの法律はできない。こうなつた場合に、まさかあなたのほうで勝手に、これは法律向うが通らなかつたのだから消しておきますということはできないと思うのです。そう考えても、私は、これはまあ細かいことであるかも知れないが、やはりこれも筋を通さなきやいかん。これを渡辺氏はどう考えるか。やはりこれはここで削除する、一応そういう見通しがついたとなれば、又あとで入れるといたしましても削除しておくのが私は正しいのじやないか、かように考えるけれども、あなた方の立法技術から、それは削除しなくてもいいのだという確かな根拠を一つお示し願いたい。
  70. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 政府といたしましてはしやし繊維品の課税に関する法律案についてはこれの成立を是非お願いしたいという気持においては変りません。まあ併しそういつたような問題を別にしまして、立法技術的なこととしての御質問のようでございますので、その観点から御説明申上げますと、このままでお通し願いましても、その場合に例えばこのしやし繊維品の法律が結局成立しなかつた。そういつた場合におきましては、結局まそ死文的なものがここに載つているというだけでございまして、これによつて特に実害的なものはないというふうに解釈しております。考えかたとしましては、一つはここではもう削除しておいて、そしてしやし繊維品を通すときにおいて、若し通すならば、そちらのほうで以つてこれを付則で以てここへ入れる。こういう整理の仕方もあろうとは思つておりますが、併しこのままお通し願いましても、まあその場合にしやし繊維品の法律が成立しなかつた場合に、これは一応死文的に存在する。で、将来の問題としまして、菊川さんのお見通しの通りになつた場合には、形式的な整理の意味におきまして、将来機会を得てこれを直すと、こういう措置が講じらるべきものであろうと、かように考えております。
  71. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これは私はその死文的なものになつてしまうという上で、やはりこの字句は削除はできんと思うのです。このままやはり生きて来ると思うのですが、併しこれは見通しとして、今私の申上げることはどなたも否定できんだろうと思うのですが、その際にこの死文的なものを入れると、そのときになつてから、来年更に又これを一部を改正する法律案としてお出しになる、こういうふうに渡辺さんの今の説明から受取れますけれでも、我々青年時代にやはり官庁に職を得ておつたときには、非常に法制局が健在でございまして、「てにをは」までも一字でもやかましく言つてつて、終いには字引を引出してまでも論議をやつた。そのくらいにやつたので、従つて法律の条文形態というものは非常に整つてつた。而も国民が読んでもよくわかつたと私は思うのですがね。最近などは何でも羅列主義になつちやつて、それはまあ勿論今まで命令だとか規則で定めておるものも全部法律にするという関係上、そういう点もあるだろうと思いますが、それならそれで折角平仮名にしてわかりやすくしようとするときでありまするから、やはり法律の条文も、もうそろそろあの戦後の混乱時代ではなしに一応整えて行く。こういう形で行かなきや私はならないのじやないか。その際にもう死文になることはわかりきつているものは、この際むしろ削除したほうがいい、こういうふうに思うんだが、削除したら悪いか。その悪い理由を一つ聞かしてもらいたい。
  72. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 政府としましては、先ほど申しましたようにこの法案につきましても是非成立を期待しているわけでございまして、従いまして当然これが不成立になるから削除するというお考えにつきましては、それで結構ですというわけには、ちよつと行きかねるわけでございます。で、政府のやりかたとしましては、これは先ほど申しましたように二色あるわけでございまして、一応この条文からは削除しておいて、そしてしやし繊維のこの法律につきまして、その付則のほうにこの法律改正する条文を入れておく、これも一つの行きかただというふうには思います。併しまあ先ほど来申上げておりますように、我々としましては、この法律につきましても、なおまだ成立についての望みを捨てておりませんのですから、まあこれで削除していいという御答弁は我々としてはいたしかねる、そういう次第でございます。
  73. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 政府としてこれを期待している、こうおつしやるのですが、政府という意味は、まあ閣議で、これを何とかして通そう、こういうふうな決定でもしておられるのか、それともこいつはまあこうして出しておくけれども、審議未了にしられても止むを得ん、それで与党とそれから与党から出ておる閣議に列席しておる連中との間で対立して、与党の連中はこんなものを通しては大変だというわけで握り潰そうとしておるし、政府のほうはけつを叩いてこれを何とかして成立させようと、こういう努力が払われておるのか、あなたが政府というのは大蔵省の主税局としてこれを期待しておると、こういう意味ですか。これはどつちのことですか。
  74. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 政府とはどういう意味だと言われますと、私も多少いろいろな政府があるような感じでちよつとおかしいと思いますが、大蔵大臣以下大蔵省としましては、すでにこの法案は成立さすべきものじやないかと、かように考えて努力している次第でございます。
  75. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじや主税局長閣議にでも出席して、これが速やかなる通過を要請したり、或いは自由党の政調会或いは総務会等に対して、あなたのほうでは猛烈に運動してこれを通すべき努力をやつておられるのですか、もう諦らめているのじやないかな、本当のことを言うと。
  76. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 私は閣議に出席できる身分ではございませんから(「説明員として行けるだろう」と呼ぶ者あり)閣議でどうこういうことはありませんが、大蔵大臣、政務次官等の話を聞いていますと、一応与党の幹部とも相談してみよう、こういう情勢になつておるようであります。
  77. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これらの問題についてはやはり大臣、政務次官にこの二点について伺いたいと思いますが、一つお取計らい願いたいと思います。  次に第二条に国際連合という言葉を使つておりますね、国際連合には、まあ「国際連合の軍隊」のうちには「決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣しており」ということになつておりますが、従いましてこれは仏印に若しも……仏印の状態はああいうふうになつておりますけれども、仏印に派遣するということになつつて、この法律は適用はされないものか、厳格に解釈するか。朝鮮に行つておるからしてここにおるのを認める。朝鮮じやなしに今度は仏印に同じようにイギリスが或いはオーストラリアが行くというようなことになつて、兵力が増強されるということになつても、やはり朝鮮にも従来濠州兵はおる、併し大きな部隊というのは仏印に行つておる。こういうふうになつた場合に、一体、皆オーストラリアであるから或いはカナダ兵であるからというので、この法律の適用を受けることになるのか、こういうふうになるのですか。それとも仏印のほうに行動が始まつたということにでもなれば、別に又協定を結ぶときに更に法律を作る、こういうふうになるですか。この点を伺つておきたい。仏印ばかりじやない、その他のアジア地域……。
  78. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) ここにいつております「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定第一条に規定する国際連合の諸決議に従つて」云々、こういうふうに書いてあります。これは協定のほうを見ますと、「『国際連合の諸決議』とは、千九百五十年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会決議並びに千九百五十一年二月一日の国際連合総会決議」というふうに一応協定の上にはつきり謳つてございます。ここにある決議というのは朝鮮に対する兵方派遣の決議で、従いまして他の例えばお引きになりました仏印等に対する兵を出すといつた問題におきましては、これはもうこの決議の中に入つておりませんから、従いましてここにおける法律国際連合の軍隊の中に入らない。こういうふうに御理解願つて結構でございます。
  79. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に、国際連合という言葉を使つておりますけれども、これは安全保障条約で駐留しているアメリカ軍はこの中には含まないものである。ところがあの国際連合決議から言うならば、アメリカも参加しておりますね。だからアメリカは二重に適用を、国際連合としても適用を受ける、それから安全保障条約に基くところの特別措置も受ける、この二重の適用と、こういうことになるのですが、この点を一つつておきたい。合衆国軍隊の……。
  80. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) おつしやるように、合衆国の軍隊は行政協定の一関係で駐留しておりますし、又国際連合の決議で以て駐留しておる、両方の部類があるわけでございますが、その合衆国の軍隊の中で、どの部分がこの国際連合関係条約で一応条約の適用を受ける、そのどの部分が行政協定関係の適用を受ける、なかなかそこの間が区別も非常にむずかしい点があろうかと思います。そこでこの協定に伴いまする協定についての合意された公式議事録というのがございまして、この公式議事録の中では、合衆国の軍隊は、その派遣関係の目的から言いまして、この国際連合決議といつたような問題によるものがありましても、全部行政協定関係規定の適用を受ける、こういうことに一応公式議事録で取極めができております。
  81. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういたしますと、合衆国軍隊のほうはすべては行政協定に基くところの税法上の特例法律によつて処理をされる、朝鮮に仮に出動しておりましても……。それからこれに言う国際連合とはアメリカ合衆国を除くその他の派兵国である、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  82. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 適用についてはおつしやる通りに御解釈を願つて結構でございます。
  83. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その次に第三号の「(日本国に通常居住するものを除く)」こうあるのですが、これは、例えば日本に居留民として来ておる、学生その他が留学生として来ておつた、その連中が臨時に軍属に採用をされる、こういうのはここには適用をされないのですか。実際問題として軍属に採用されたといつた場合には、軍属の証明も持つて来てなかなか困難だと思うのだが、あなたのほうの解釈によると日本国に居住するものを除くというのは、そういう意味を言うのであるか、或いはそれともほかの意味を含んでおるのか、御説明を願いたい。
  84. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 結論から申しますと、おつしやる通りでございます。これは行政協定の場合も同じでありまして、結局この場合に、所得税免除の問題が一番大きくなるのでございますが、従来日本で以てすでに例えば商売でもしていたと、こういう人は当然日本に納税義務を持つていたわけでございます。そういろ人がたまたま軍属になつたからといつて税金は免除しない、そこで日本における軍の軍属になるために、わざわざアメリカとか、そういつたよその国から来た人だけについて、これの免税を認めて行こう、こういうふうな考え方でございます。それではもうすでに軍属になつた場合においてはわからんじやないかと、こういうふうな御疑問が第二におありのようでございましたが、現在まで一応主としてこれは行政協定の関係で一番大きく出て来ておる事例でございますが、向うから一応の経歴などを書いたものを出して頂きまして、そうしてこういう人については、これはここに言う軍属の条件に該当するものと認める。で、ここに言うこういう人はその括弧の中の「日本国に通常居住する者」というものに認められざるを得ない。こういうふうな区別をしておりまして、それによりまして全体としての扱いをしております。
  85. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に四号の「二十一歳未満」という、この法律的基礎ですが、これは日本の扶養家族の年齢、これは同じ税法ですが、扶養控除を受けるところの年令とこの年令をどういうふうに調整しておられるか、この二十一歳というのは何か根拠があつておつけになつたのですか。
  86. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 扶養控除関係曾つては年齢を一応制限しておりましたが、シヤウプの税制改正の機会だと思いますが、年齢の制限ということは一応除いてしまいまして、結局他の所得者の所得によつて生活しているといつた生活の依存関係でございますね、これだけで現存やつております。この二十一歳の関係は行政協定の交渉の機会におきまして、やはりこの辺に線を引きました。国連軍の場合におきましても、同じような扱いをしていいだろうというわけでございます。
  87. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に五号に「派遣国の歳出外資金により」こうあるのですが、これはどういう意味か御説明願いたい。
  88. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) ここにあります「軍人用販売機関等」というのは米軍の場合でありますとPXに当るものというふうにお考え願つていいと思つております。ああいうところで扱つておりますものは結局まあその国の予算の歳出によつて買うのじやなくて、歳出外資金で買う、国で買う場合におきましてはこれは国自体のその目的、軍人の個人的な生活のための目的といいますか、まあ軍自体のための目的といつたような関係の点でまあ調達しておるようでありまして、従いましてこの軍人用販売機関というのは、国そのものではないけれども、まあ国に準ずるもの、そういうような意味におきまして、派遣国の歳出外資金で以て買つておるというような関係でありまして、そういう意味で以てこの派遣国の歳出外資金という言葉を使つておる次第であります。
  89. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 第五条の国税犯則取締法等特例、この点についてでありますが、先ほど冒頭にお尋ねしたのと関連を持つておるわけですが、今までは勿論法律によつて特別な扱いをして来たわけでもなしに認めて来たのでありますが、だから国税犯則取締法等特例、これによつて何ら処分も今まではできなかつた。何をやられてもどうせ認めてあるのだから、何をやられてもこれは処分もできない。こういうことになつておるのだが、この点一つつておきたい。向うのやり次第だ、ということは酒と煙草を持つて来て、それを外に売つた、こういうような軍人販売機関で買つて来たものを日本人に横流しをした、こういうことをやつてつてもやれなかつた、こういうことですか。
  90. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 我々としましてはそういう事犯がありますれば一応それは話合いは話合いとして、犯則としてはやはり処置すべきものだというふうに思つてずつと来ておりますが、行政協定関係関係のある米軍関係におきましては、いろいろな事例がありますが、国連軍といいますか、一応米国以外の国の軍隊につきましての問題は今のところ現実の問題としてまあ事例が出ておりませんものですから、具体的にどうこうということは問題にならん、こういう次第でございます。
  91. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 いや、私のお尋ねするのは、国連軍は質が悪い。むしろアメリカよりも質が悪いということはオーストラリア、或いは特にオーストラリアのごときは非常に彼らは質が悪い。又彼らは非常に反目的でもあるわけです。もうあれたちの反日態度というのは全くひどいので、なめ切つて、恐らく国税違反も相当やつてつたと思うのです。で、特権も認めて、正式には認めておらないとすると、何をやられても今までまあこれを頬被りするよりしようがなかつたのか。それともあんた事例がないと言うけれども、事例がないというはずはないと思うのだ。彼らこそ最も悪質だと思うのですがな。何なら挙げてもいいのですが、具体的の事例を。呉あたりで調査したのがある。
  92. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) まあ税の関係としてはございませんが、何か神戸で以て問題になつた事件がありましたね。
  93. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 あれは英軍とね。
  94. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) それからその後におきまして、一九五三年十月二十六日に東京で以て日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書、議定書の附属書、こういうものが一応できまして、刑事裁判権につきましては、この附属書によりまして、大体現在ここで考えておりますことと同じような措置ができるということに取極めができておつたわけでございまして、従いましてこの附属書の調印された以後におきましては、条約的なものがありませんでも、国内的な法規で以て措置できることになつていたわけでございますが、具体的な事例として、それによつて措置したということは、我々まあ聞いておりません。結局事態そのものが問題になつたことはなかつたと解すべきものと思います。
  95. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 最後に一つお尋ねしておきたいのは、こういうこの法律、今も説明されましたように、何カ国かの軍隊が来ております。だからイギリスもおればカナダもおる、イタリアもおればギリシヤもおる、ドイツもおるという工合で、各国から来ているわけですが、従つてこれは公布されました場合には、やはり各国語にそれぞれ翻訳をして、そうして向うに通達を今までしておられるのか。これは伺つておくのですが、英文のものを向うに渡して周知方を徹底しておくのか、これの取扱い方をあんたのほうでどういうふうにおやりになるのですか。というのは、こんなものは前例がない法律なんです。これはただ官報に載せたというのは、日本の官報に載るのであつて日本人にはわかる。併し適用を受けるのは日本人じやないのでありますから、それぞれ言語も違うこれらに対する取扱いをどういうふうに一体処理されようとするのか、伺つておきたい。
  96. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 従来までまあ話を進めて行く過程におきまして、或いはその他の問題を処理する過程におきまして、まあ国際連合の全体を一応代理するような、或いは代表するといいますか、人がずつと来ていたわけでございまして、それとまあ我々は話して来たわけでございます。一応これが成立します。そうすると、結局これは条約のほうを御覧になるとおわかりになりますが、それぞれの国が同意すれば、それを日本政府にその同意書を寄託しまして、そこで二国間の条約はつきり結ばれるわけでありまして、それによつてこの規定法律も動いて行く。従いまして従来の経過から言いますれば、国際連合の代表的な人たちとお話合いを進めて来たわけでありますが、今後につきましては、それで大体十分目的が達し得るのか、或いは更に今御指摘のように、相当各国語に訳さざるを得ないのか、まあその辺などにつきましては、更に実態に即してよく検討もし、適切な措置をとりたいと考えております。
  97. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじや税関部長に伺いますが、今まで各税関で、これらの国連軍の軍隊がいろいろのものを持ち込んだり、送つて来られる。その際にあなたのほうで、これは少くともアメリカとの行政協定に基いて定められた法律にも違反しておるという事例があつたかどうか。この点あつたとするなら、どういうのがあつて、その処理はどういうふうになつているか、これを一つつておきたい。
  98. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 一般の国連軍については一時横流しがあつたという風評は飛んでおつたわけであります。ただその横流しと申しますのは、恐らくPX等が免税で以て入れましたものを買つて、それを日本人に譲渡す場合でありますが、併しこの譲渡しを新らしく輸入とみなして税金を取るというのは、今度の準用いたしておりますところの行政協定特例法によつて初めて出て来るわけであります。ですから、今度のこの法律がない間は、PXが免税で入れましたものを軍人が買つて、そうしてこれを日本人に譲渡しても、まあ通称は横流しと申せるかも知れませんけれども、関税法では何らの罰則が適用されなかつたわけでございます。そこで国連軍は犯則が多いにかかわらず、やつてないじやないかというようなことが出ると思うのであります。本当のその当時行われました事例は、恐らくはやはりPXから購入いたしましたものを日本人に譲渡するということはあつたわけであります。これについては只今申しましたようなわけで、私どもといたしましても、法律規定がございませんので、無免許譲受北の共犯として処罰することができないのであります。ただ本当に船に乗つて来て、まあ金塊を密輸入するということは現行の法令でも処罰することはできるわけでありますが、これについては私どもは実はそのような事例は聞いたことがございません。大部分が市中においてPXから買つたものをいわゆる横流ししておつた、こういう事例のように存じております。従いまして関税法上特に密輸入として今まで上がつた事件は存じません。
  99. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 我々の聞いておるところによりますと、このオーストラリヤ、それからイギリス等の軍隊は、軍人がアメリカの軍人に比べまして非常に給与が悪い。ところが付合いはそれと同じようにやつて行きたいというところから、今あなたの言われましたような、PX等で買つて来て盛んに横流しをやつて、それで飲み代を稼いでおつたということを、呉のほうへ行つて我々が調査したところによると、そういう事犯が随分あつたわけです。この法律ができても、恐らくなかなか絶えない、こう見られるのですが、これらについての取締りのために、これは先ほど説明した呉とそれから広あたりで、相当の人員でも配置しないと、やはりやられるのじやないかと思うのですが、これらについて、この法律をこしらえましても、実際に厳重に実施しないと意味がないと思うのです。これはもう考えておられるのか。
  100. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 御説の通りに、この法律が通過して実施になりますれば、PX等で買いましたものを日本人に譲渡す場合には、譲受人たる日本人から税金を徴収する。仮に譲受人が免許を得ないで、従つて税金を納めはいで、これをほしいままにして使つておりますれば、これは関税法違反になる。その場合におきまして、軍人のほうの立場はと申しますと、これは譲り渡しについて許可を得なければならんことになつております。その譲り渡しについて許可を得ないということと、もう一つは譲り受けるについての無免許輸入の共犯という恰好になるわけであります。この場合についてなかなか範囲がとりにくいと思うのでありますが、今度この法律実施になりますれば、呉税関事務所あたりにおきましては相当しつかり褌を締めてかからんと駄目だと思つております。ただ御承知の通りにこの税関の定員はやはり行政整理のあおりを食いまして、目下定員法で削減さるべき運命になつておりますが、私どもといたしましては、できるだけ重点的に人を配しまして、いやしくもこういつた事例については断固としてこの特例法を適用いたしまして取締るつもりで万端用意いたしております。
  101. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 大蔵大臣の代理で出席されました政務次官に伺つておきたいのですが、この日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律案というのが、今漸く国会に出されたのでありますが、講和条約発効後一定期間を限つて占領軍がおることができましたが、この占領軍が一定の期間が過ぎますると、すべてあれは九カ月でしたか、一年でしたか、撤退しなければならないにもかかわらず、何らの協定もなしにおつたわけですが、協定のことはこれは外務委員会の問題ですから暫らくおくといたしまして、然らば国内法に基くところの所得税法等の臨時特例というのも、アメリカの行政協定に基くところの臨時特例にございまして、アメリカ軍が一応その特例の適用を受けておりました。併し国連軍についてはその適用はなかつたわけです。従つて協定もなしに、それから国内法のそういう臨時特例の適用も受けてないにもかかわらず、この法律が実質的にはあると同じようなと申しますか、あるよりもより以上広い特例を大蔵省でやつて来た、これは事実だと思う。税金もかけてないし、それから関税のほうも殆んど税金をとつていない、これと同じようなことをやつて来たとするならば、国内法律上の技術から申しましても、自主権の侵害、まさに国権の侵害であるということは言えると思う。而もそれは誰がやつて来たかというと、政府が勝手にやつて来て、国会で、こういうことを当分やりますから、協定ができませんから一つ認めてもらいたいという報告もされておりません。勝手に政府がやつて来たということになると、我々から言うならば、まさに屈辱的な外交であると言わなければならんと思うのでありますが、これについて大蔵大臣の代理として植木政務次官が今日までこの問題とはどういうつもりで取組んで来たか、この点を政府を代表して所信を明らかにして頂きたいと思います。
  102. 植木庚子郎

    政府委員植木庚子郎君) お答え申上げます。今回のこの臨時特例に関する法律で処理しようとします実態と、おおむね近いところのものが実際上行われて来ておつた疑いがあり、或いはそうじやないかと思われる。その点甚だ不都合だというお叱りをこうむつておりますが、この点につきましては、大蔵当局といたしましては、成るべくそれぞれ根拠に基いて処理をするのが適当であると考えまして、今日までそれぞれ外交関係の面におきましても、当局を通じて折衝しておりまして、その結果、今回こうしたことを協定ができ、又法律も御審議をお願いするというようなことに相成つておるのであります。従来の問題といたしましては、日本国との平和条約、それの第三章第五条a項の第三項に書いてあります規定でありますが、「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと」という、こういう規定がございます。そうしてそれは「日本国は、国際連合憲章第二条に掲げる義務、特に次の義務を受諾する」と書いてあります三つ列挙したうちの第三項にあるのであります。この平和条約の趣旨から考えましても、でき得る限りこうした援助的な態度に出ることが穏当であろうという考えの下に、今日まで政府としては処理して参つた次第でございます。
  103. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その点が外務大臣の岡崎君もいつも言つているところなんです。何かあると、その平和条約のその条章を持ち出して、あらゆる援助を与えるんだと言つて、今日まで来たんですが、それでは大蔵省としては、その外交問題は暫く外務委員会に譲るといたしまして、あらゆる援助を与えるというのならば、その平和条約に基いてでも、この法律臨時特例というやつを拵えておけばよかつた。別に国連軍の地位に関する協定が実施されなくても、あらゆる援助を与えなければならんのでありますから、そのときにそれじや所得税法等の臨時特例、臨時法というものを一応国内法的に制定して、そうして国会の承認を得ておかなければならんが、ただあなたの言わんとするところは、あらゆる援助を与えるということを平和条約で締結した、それは国会の一応の承認を得ているんだから、あらゆる援助だから何をやつてもいいんだ、こういうような御解釈でおやりになつたんですか。そのときに国内法的にでき得る限りのあらゆる援助というのは、法律を持えてあらゆる援助を与える、こういうふうにできるわけでございますが、そのときに何故やらなかつたか。
  104. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) お話のような点は確かに一つ考え方であると思いますが、結局やはり具体的な内容と言いますか、どの程度までそれを認めて行くかという点につきまして、やはりいろいろ外交的な交渉もあつたものでございますから、その交渉結論を待つまで一応そのままにしておこう、同時に交渉が今度成立いたす段階になつて参りましたので、この機会に作ろう、こういうわけでございまして、まあ一方的にどんどん作つておけばよかつたのじやないか——ただその作る内容の問題につきましてやはりいろいろな論論があつたわけでござまして、そういうような点もございましたので、つい現在までまあ見送らざるを得なかつた、かような実情でございます。
  105. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) なお関税関係につきましては、先ほど一応国連軍の軍隊が公用に興するため輸入するものにつきましては、現行関税法との関連におきまして、既存のルールにのせて一応処理したわけでありますが、その他の事項、例えば公用船に対しては、一応現在の、今度の国連協定におきましては噸税は免除することになつておりますが、それが他の商業貨物等を積載した場合におきましては、行政協定におきましては噸税を徴収することになつております。この点につきましては、私どもといたしましても噸税を徴収したものがございます。国連軍の公用船に対しても噸税を徴収したものもございますし、それから又国連軍の軍人が自動車を輸入した、携帯用品でなくて、あとで自動車を輸入した場合におきましては免税にしてくれという話がございましたが、これは自動車に対する税金は徴収いたしております。
  106. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に政務次官にもう一つつておきたいのは、しやし繊維品の課税に関する法律ですけれども、これは僕らの知り得た、これは確かな、それこそ先ほども言つたのですが、中曽根君じやないですが、政治的生命をかけて発言するのですが、政府がみずから提出したのにかかわらず、与党たる自由党が、第一に先に立つてこの法案を審議未了にしようとしているし又そう決定しておるということは公然の秘密になつておるのですが、にもかかわらずこの第一条には「しやし繊維品の課税に関する法律」ということをちやんと謳つてある。それはまあ野党が結束してこれを審議未了にするなり或いは否決するということは、これは止むを得ないといたしましても、与党が先に立つてこれを審議未了にしよう、或いは否決しようとかかつているのですから、まあ否決はできないものですから、止むを得ず苦肉の策として審議未了にしようとしていることは、はつきりしている。よもや植木さん、今更ここで美辞麗句を並べて答弁されようとも、ここ一週間か二週間のうちの会期中にこの問題は明らかになると思うのです。これは間違いないと思う。だからそれならばもうこんな、どうせこれは陽の目を見んことははつきりしているのですから、こんなものを第一条に挙げておく必要はない。これは削除すべきである。これは野党であつて而も一番真正面から対立している我々でさえわかつておるのだから、誰でもこれはわかつていると思う。それにもかかわらず、こんなものをここへ載せておくということは、これは人をなめた話だと思う。まさに国会をなめた話だと思う。こういうふうに私は思うのですが、どうですか。その後のしやし繊維品の課税に関する法律ということについて、あなた政務次官として国会と政府、大蔵省との間の連絡の任に当る重要な職にあられまして、これらのことについて、私の言うことは間違つておるか。あなたの態度をはつきりして伺いたい。間違つておるなら速記録にちやんと間違つておると載せておいて下さい。
  107. 植木庚子郎

    政府委員植木庚子郎君) 只今如何に美辞麗句を並べてもとおつしやいましたが、私率直に申上げまして、この第一条にあります「しやし繊維品の課税に関する法律」云々のこの問題についてでありますが、大蔵当局といたしまして、或いは政府といたしましても、この税法案につきましては、今日まで審議が非常に遅れているということにつきましては、非常に遺憾に思つているのであります。我々といたしましては、皆さまと御同様に予算に関係のある重要な法律につきましては、予算案と同時に通過することを一番に期待いたします。次いでは、それより若干遅れても成るべく早く、いわゆる前年度内に通過して、新年度から新しい法律が実行されることを常に期待しておるのであります。にもかかわらず、今回これに反するような事項が頻々として起りました。これ又非常に残念に思つております。殊にこのしやし繊維品の課税に関する法律につきましては、世上いろいろと伝えられております。仰せのごとく新聞のごときは、つとに早くから自由党内でも審議未了になることに決定しているんだと言わんばかりの報道をしておることを私も承知しております。従つて私はそうした新聞に関係のある記者の諸君に会いまして、非常に間違つた報道を君はやつているじやないか、自由党は、少くとも僕が承知しておること、或いは僕が幹部と連絡し合つていることでは、何らそんな決定はしておらんし、成るほど自由党内の個人では一、二の議員の方々にはそういう方々もあるかも知れません。併しながら党議の決定とか、或いは幹部の総務会その他の決定で以て、これを審議未了にしようというようなことは全然事実がないと私は確信いたしております。私は何回も幹部に確めております。従つてこの法律案につきましては、私は機会あるたびごとに、この審議の促進かたを衆議院の大蔵委員会の方々にもお願いをしておりますし、又党の幹部の方々にも何らかの方法で、成るべく早く一つお願いしたいと、こう言つております。ただ不幸にして今日までこのことが実現されておりません。なお、率直に申上げますと、もう少したつてから、重要な法案が済んでから、いつも重要かも知れませんが、最後に一つ審議することにする、それまで待つてくれ、こう私はいつもおどされておる。併し私としては非常にそれでは困るんだ、何とか早くして下さいと言つておるのだが、そう出られると止むを得ません。議会の運営その他の問題もございましようから、止むを得ず我慢をしておるのでありますが、今なお、ここ数日来特に私は幹部にも言つております。大蔵委員会にもそれぞれ手を経てお願いをしておつて、何とか一つ審議をして頂いて、そうして衆議院全体としてどういう結論になるか知りません、或いは衆議院の大蔵委員会全体としてどういう結論になるか知りませんが、是非とも質疑を仰ぎたいということを熱心にお願いしておる次第でございます。従つて私といたしましては、この法律案の中にこの条項が、この文言が入つておりますことにつきましても、このまま一つお見逃しを願つて、私は是非とも会期が終るまでに、噂によりますと、又会期延長等のことがあるやのことであります。そうしますと、なお更以てその間に是非とも両院を通過して、そうして本当にこの文言が生かされて使うような事態になるように非常に希望し、期待しているというのが私の偽らざる心情であることをお答え申上げておきます。
  108. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 温厚な植木さんの言明されたことを又言うのは私として好まんところでありますが、率直にこの際はつきり申上げておきますが、あなたのお気持ならば、それはそのつもりでなければならんし、これ又そういう答弁をされるのは当然だと思います。あなたのお立場上そうなければならんと思いますが、併し実際のこの法律に対する衆議院特に自由党、与党自由党の態度はけしからんと私は思うんです。これは恐らく確実に審議未了になつて、この次の国会にはこの法律の一部改正というのでこれを削る。こういうふうに出して来なければならんことは、これは火を見るよりも明らかだ。で、そのときの、それ見なさいというために僕はこういう質問をしておるのじやないけれども、あなたがたはここに来ては誠にうまくごまかして、その場さえ通れば、それでいいということではなしに、そういう情勢になつておるという前提に立つて、やはり措置すべきだと思うのです。事は簡単です。事は簡単だけれども、政府はここに来て嘘を言う。しらじらしい白を切るのが癪にさわるんだ。これはとても通らんと思う。これはどうなるかわからんとか、今削除というのは困るからというのならそれはわかる。ところが如何にも通るらしいようなことを言つて、そうして吉田総理も嘘を言うし、小笠原さんでも何でも嘘を言う。この嘘を言つておることは知つておるけれども、政府が責任ある答弁としてはつきりしておかんと、将来必ず問題になる。この問題は大したことではございません、影響するところは。併し政府の臨む態度はけしからんと思う。これはあかんなら、あかんと思うけれども、この条項を今削るわけに行かんし、それでは余りあかんから、これはまあ一つ頼む、こういうことならわかるけれども、私は如何にも通りそうなことを言つておられるから腹が立つんです。
  109. 植木庚子郎

    政府委員植木庚子郎君) よくわかります。よくお言葉の趣旨はおかりますが、私も決してその点しらじらしく非常に通りそうだというようなつもりで申上げておるのではないのでありまして、私の気持、いわゆる大蔵当局の希望、期待というものは、是非ともそうありたいということで非常に努力をしております、こう申上げておるのであります。客観情勢は確かに仰せのごとくなかなか困難な点がほの見えるので、非常に私ども心配しておるのであります。併し私は本当に先ほどから申上げておりますように、野党のかたの衆議院の皆様にも友人の方方にお願いしておりますし、与党の方々には勿論顔を見るたびごとに、いよいよ最後に、繊維税の問題はお願いします、こう言つて頻りに努力しておりますので、是非この点は我々の誠意のあるところを、大蔵省の考えておるところを一つそのままにお受けとり願いたい。決して通らんと思つて、通ると申上げておるのでもなければ、それから通らんと確信しておるのでないことは勿論であります。通らんだろうとは決して思つておりません。私は例えば今参議院のほうにこうやつてつて参りました出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案、これのときにも、一時は新聞等にも審議未了にきめてしまつたのだというような噂も飛んだりなんかしましたが、併し国会内の多数の皆様の良識が、これは是非通さなければならんということがおのずから衆議院の議になりまして、幸いにして通過した、修正は受けましたけれども通過して、非常に遅れて申訳ありませんが、こうやつて参議院で今お願いをしておるというようなこともありますし、繊維税の問題もいろいろそれは経過を辿りましたが、私、大蔵省当局としては、まずまず今日繊維品の課税という問題について、政府原案の程度のごときものは止むを得ない、当然他の物品税その他との権衡上から考えまして、このくらいの消費税を新設することは止むを得ないものと、かように考えておりますので、是非とも審議をしてもらおう、又是非これを通してもらおうという努力を、最後に是非ともやろうという考え方でやつております。この点主税局長も同様でありますし、大蔵省一生懸命になつておりますので、どうぞそういうふうにお受けとり願いたい。
  110. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 あなたのお気持はよくわかりました。気持はよくわかりましたけれども、それではお気持だげで、ここにおける本当の私の聞かんとする質問に対する答弁にはなつておらんと私は思いますけれども、これは押問答でありますから、若しもそういうふうにあなたは甘く見ておられるとするならば、よほど与党から遊離しているのではないか。率直なことを申上げて、もう与党の今の情勢から遊離している。政務次官としての何は、若干これはどうもおかしいぞと言わざるを得ないと思いますけれども、これは議論になりますから、そんなことを言つて、若しも通つてしまつたということになりますと、こちらの負けですけれども、これは私のほうではよほど向うの政治情勢に通じておる。これだけを申上げて、これはもう一週間か十日のうちに明らかになるのですから、それで私の質問は打切ります。
  111. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 他に御発言もないようでございますが、質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  113. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は社会党の第四控室を代表いたしまして、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律案に対しまして反対をいたします。  反対の理由は、先ほどから質疑応答を通じまして、一応我々の考えを申述べた通りでございますが、先ず国連軍の日本駐屯に対しましても、これはおつてもらつては迷惑である。それから国連軍が日本に駐在するところの根拠というのは、先ほども植木政務次官から話があつたような、平和条約に基いてでありますが、その平和条約そのものに対して、我々はこれを承認しないという立場に立つている。これはいろいろの理由もありますが、国連車が平和条約発効後も、この条項を楯にとつて、そうしてとどまるであろうからという見通しが我々はついたからして、これに反対した理由の一つになつておるわけであります。これらがいては日本にとつては決してプラスにはならない、マイナスになると思うのですが、そのマイナスになる外国軍隊に対して所得税その他の税法上の特例を設けまして優遇しなければならんという理由はどこにも見出せない。反対理由の第一点であります。  第二点は、今日までこの法律が制定をされるまで、すでにもう実質上はこの法律があると同様に、又はそれ以上に、これらに特例を認めて来たということは、政府が勝手に、国会の承認も経ずに、政府みずから日本の自主権を放棄して来たものである。仮にこれは日本の軍隊が戦前においてではありますが、どこに行つてでも、こういうことをやつたならば、恐らく内政干渉である、自主権の侵害であるということで強く反対をされたであろう。で、戦争に負けた結果、まあ初めてこういう敗戦という苦杯を日本人がなめましたために、もう色の変つた人たちに対しまして、主張すべき点も十分主張しないような、主張し得ないように私は日本人が気力が失せてしまつた。その第一の理由は、やつぱり吉田内閣の今までの屈辱外交、何でも頭を下げておげばいい、これが国民に大きくそういう気風を植えつけてしまつた。政府みずからがこういうことをやつていたということは、後世の史家は鋭くこの点を批判をするであろうと思います。従つて、これは吉田内閣といたしまして重大なる責任だと思う。仮にどうしても認めなければならないとするならば、講和条約が発効して、国連軍の撤退する期限内にこの協定を結び、又所得税法等の臨時特例に関する法律も制定しておかなければならなかつたと思うのでありますが、今日までこれを等閑に付して、而もようまとめなんだということは、外交上から申しましても、非常な吉田内閣の手落ちであつた。私はかように感じます。こういう点からも、今頃こんなものを出して来るなら、もうどうせ放つておいたのだから放つておけ、こういう意味からも、この法律案に対しまして反対いたすわけであります。  その他いろいろ反対理由はありますけれども、時間の関係上省略いたしまして、この法案に対しましては絶対に承認するわけには行かん。賛成するわけには行かんというところから、我が党を代表して強く反対の意見を申述べておきます。
  114. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 他に御発言もないようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  116. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 多数であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続は前例により委員長に御一任願いたいと存じます。  それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     木内 四郎  東   隆     白井  勇  三木與吉郎     岡崎 真一  小林 政夫     青柳 秀夫  土田國太郎     堀木 鎌三  前田 久吉   —————————————
  117. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 次に、日本国アメリカ合衆国との間の二重課税回避及び脱税防止のための条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案を議題といたしまして質疑を行います。  速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  118. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 速記をつけて下さい。
  119. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この条約の第二条の恒久的施設ですが、これは相互間を比較してみた場合に、どのような比重になるかあなたのほうでお調べになつたことがありますか。日本アメリカが持つているものと、日本が反対にアメリカ側に持つているものとの比重は十対七とか或いは十対五、これは大体わかるだろうと思うんですがね。この協定を結ぶ場合には、当然参考資料としてなければならんと思いますが……。
  120. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 一応の資料はございますので、ちよつと申述べます。アメリカ関係が、アメリカ人で日本にいる、従つて日本課税を受ける、こういつたような関係、多少御質問の部分とその他の部分まで入るかも知れませんが、大体米国人で本邦内に居住する者、これは今いろいろ御議論になりました行政協定関係のああいう課税を受けていない人は別でございます、約八千五百八十人、これは人数主体でございますが、その中に家族も入つておるわけでございますので、事業活動に従事している者と思われる者は、給与所得者をも含めまして、それの四分の一以下だというふうに思つております。申告納税をしております者は昭和二十七年度の確定申告におきまして約千人、それから源泉徴収だけが行われている者が毎月約三百人くらい、それから日本政府に対しての所得税が申告納税の分、これは個人だけでございますが、約一億三千万円。源泉分が二千八百万円。一応はつきりした確定的な数字でございませんが、こういうような数字になつております。それからアメリカ法人日本支店を持つているもの、これは今御質問中心であります。恒久的施設に該当するものでございますが、これが約百七十、それで昭和二十七年の四月から昭和二十八年三月までに終る事業年度におきましてこれらの法人が納付した税金が六億二千九百万円、なお、そのほかに日本に住んでいない、これも御質問の外になりますが、一緒に御答弁申上げておいたほうがいいと思いますので御答弁申しますが、例えば技術援助とか或いは債権の関係とかフイルムの代金だとか、そういつたような関係で以て課税対象となるもので、アメリカに払われておりますものが約百十億円、税金にしまして、まあ平均税率どのくらいになりますか、一割としまして十一億円ぐらいの税金のものでございます。  それから次に今度は逆の関係でございますが、日本商社で以てアメリカのほうに恒久的な施設を持つているもの、これは全体で百十と見ております。主なのはニューヨークにあります五十八、それからサンフランシスコの十四、ロサンゼルスの十二、それからワシントンの七、新聞関係が主ですが、この辺が主なものでございます。
  121. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この協定並びに法律実施に伴いまして、先ほどからも主税局長から、これが制定され、この協定、条約の発効によりまして外資が導入されるというためには非常に好ましいことだ、こういう説明があつたわけですね。今までこの条約ができない前であつたならば、二重課税を事実されることになつてつたんですか、どうですか、その点を伺つておきたい。
  122. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) アメリカには、今朝の午前中にも御説明申上げたんでありますが、内国歳入法百三十一条という規定がありまして、一応日本で納めた税金アメリカ税金から差引く、こういう規定が実はあるわけでございます。従いまして例えばナシヨナル・シテイ・バンクの支店日本にございますが、その日本支店が納めている税金は本店のナシヨナル・シテイ・バンクがニューヨークで納めるその税金から差引かれる。まあその意味ではこの条約ができる、できないということは直接は関係がございません。できる前もできたあとも同じでございます。ただ日本に投資をしており、配当を受ける、こういう場合でございますね、こういう場合におきましては、日本法人税が、これはもうあなた御承知のように、ちよつとイギリス式な税になつているわけでございまして、従いまして国内におきましては、株主の受けた配当から二割五分税額控除があるわけですが、この事実をアメリカはこの条約の前においては認めておりません。丁度名前がたまたま法人税であるということもあろうと思いますが、向うは二割五分控除を認めておりません。それで源泉課税をしておりますその分は、これは日本で納めた税金だからといつて控除をしております。二割五分控除のあの関係向うで認めておりません。それでその点につきまして数度の折衝の結果、日本法人税の性格というものを向うも理解しまして、そうしてそれじや二割五分控除を認めて行こう。これは恐らくこの条約が批准され発効して初めて向うもそういう扱いを認めて行くのじやないかと思います。その意味におきまして、この条約が発効いたしますれば、配当関係においてアメリカの人か日本会社からもらう配当配当が例えば三割だということになつても、税額控除がつきますので、アメリカ会社から三割配当をもらうのに比べまして、税金を抜いた手取りとしては余ほど有利な配当になるかといつたような意味におきまして、まあ外資導入に一応の寄与をすることになるのじやないか、こういう意味で申上げた次第であります。
  123. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういう配当の場合に直ぐ関連して来るわけですが、為替の管理と、例えばこつちで配当を受取りましても、外貨でもつてこれを全部持つて行けるというふうになつているのですが、外資導入の際、これが一つの癌になつていると思うのですが、今の状態では皆国内で預金をしておく、向うに持つて行けばいいのですが、ドルで払つてもらえれば……。例えばこの間の日本軽金属ですか、何か半分くらいの株を買つたというのですが、これは軽金属の配当を受けた場合に、軽金属がドルで払うわけにはいかない。そういう点は一体どうなつているのですか。
  124. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) これは外資に関する法律の第十五条によりますと、「第九条の規定により技術援助の対価若しくは社債若しくは貸付金債権の果実若しくは元本の回収金を外国へ向けた支払により受領しようとする旨が明らかにされた場合において、この法律規定による主務大臣の認可があつたとき、又は社債若しくは貸付金債権の果実若しくは元本の回収金を外国へ向けた支払により受領しようとする場合において、当該社債若しくは貸付金債権につき第十三条の二の規定による大蔵大臣の指定があつたときは、当該認可又は指定を受けた外国投資家について、外国為替及び外国貿易管理法第二十七条の規定により、当該対価又は当該果実若しくは元本の回収金の外国へ向けた支払が認められたものとする。但し、前条の規定により主務大臣又は大蔵大臣が条件を附した場合においては、当該条件に従わなければならない」こういうような規定がありまして、結局大蔵大臣がドル払の配当を認めるか或いは配当は認めてもドル払は認めないか、こういうことをその具体的なケースに従いましてきめて行く、こういうふうになつているわけであります。
  125. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでわかりましたが、そういう場合に日本で外貨払を認められないという場合には、日本の銀行で円で預金をしておかなければならない、この円の預金した分について、これはやはり利息については源泉徴収という問題が起きてくるわけですが、今度のこの法律ではそれはどういうふうに取扱うことになりますか。収入にはなるわけですかね。
  126. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 日本のほうとしましては、ドル払でありましても円払でありましても、一応支払がなされますと課税はいたします。たしか私の記憶にして誤りがなければ、アメリカのほうとしましては、日本で以て円にクローズされて行く、ドルになつて来ないという場合におきましては、これは向う国内法関係でございますが、たしか課税を見送つているような規定があつたのじやないかと思つております。アメリカ国内法としましては……。
  127. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 逆に日本人が向うの株を持つていて向うでドルの配当も受けたが、こちらには持つて来れないというような場合はどうなるのですか。
  128. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 日本課税は、個人の場合、法人の場合、いずれもその全所得金額に対して課税になりますから、アメリカにある場合と日本で得た所得であると関係なしに、総額が課税になるわけです。そしてアメリカにおいて源泉課税を受けますと、その源泉課税を受けた金額だげ差引いた残りの税金日本の金でもつて納める、こういうわけです。
  129. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それからもう一つお尋ねしておきたいのは、向うからレスリングの選手だとか或いは映画俳優とか、いろいろな人がやつて参りまして、こちらで円を稼ぐ。又日本人も向うに行つて興行をやつたり或いはスポーツの選手なんかが行つてドルを稼ぐ、その場合にアメリカはこちらに対しては国を出る際に税金を掛けるわけですが、今度は日本に帰つて来た場合、アメリカで払つて来た場合、こちらでは税金はとられない、こういうことになるのですか。
  130. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) その関係条約の第九条にありまして、今お話になりましたような音楽家或いはスポーツの選手などのような場合におきましては、第九条の(b)が大体該当するものと思います。「滞在期間が当該課税年度を通じて合計九十日をこえず、且つ、その報酬が三千合衆国ドル又はこの額を当該報酬の取得の時における公定の基準外国為替相場で日本円に換算した額をこえないこと」、この条件に当る場合ですね、これは両方にかかりますから、金額が三千ドル以下でありましても期間が九十日を超えますとこの条項に当りません。それから期間が非常に短くて、例えば三十日ぐらいでも、三千ドルを超えますと、やはりこの条項には当りません。要するに九十日を超えないということと、三千ドル以下である、この二つが一応満足されれば、日本の人が向うへ行つてくるくる廻つて来ましても、アメリカ税金はかけない、日本税金だけがかかる。それからアメリカからこちらへ来ていろいろ興行をして参りましても、日本税金はかからなくて、アメリカ税金だけがかかる。この条件を超えますと、そうするとアメリカの人がこちらへ来れば、要するに例えば一万ドルとか二万ドルとか持つて帰るということになれば、日本税金がかかる。アメリカにおきましては日本で得た所得も含めて一応税額は算定しますが、日本で納めた税額はそれは差引く。同じように日本人が向うへ行つていろいろ巡業してくる、報酬を得てそれが三千ドルを越していた、そうすると一応アメリカ税金課税されます。それは日本のほうで、帰つて来てからその一年分の所得の計算による税金の額から、アメリカで払つた税額は差引く、こういうことになるわけであります。ただもう少し正確に言いますと、全額差引かれますものはたびたび申上げておりますが、日本人の場合について言えば、アメリカ税金日本に払つた税金よりも安かつた場合には、税金がまるまる差引いて来ます。向うのほうの税金が高い場合におきましては、按分計算によつて差引かれる。従つて向うの重い分だけは負担になる、こういう結末でございます。
  131. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 もう一つお尋ねしておきたいのは、向うに恒久施設を持つ場合にいたしましても、支店なり営業所を持つ場合にいたしましても、これは国内の一応のバツクがあつてこそ支店というものは稼げるわけですが、例えば三井カムパニーという看板を国内に持つてつて日本の三井物産が世界に雄飛できたので、そういう意味からしますと支店の収入というものは、単なる支店のみに上つた収入とは言えないで、国内のバツクということを考えなければならない。その点が相互に相殺し合うことになるのでありますが、ただその支店だけが来ているのでなくて、国内にナシヨナル・シテイーというものがあるから来ているということになるのですが、これは相当にそういうことは相殺し合うということになつているのですか、これはどうですか。
  132. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 経済的な無形的な関係においての関係一つであると思いますが、それは別に税の計算の上に入つて来ないと思います。併し例えばナシヨナル・シテイーの支店がこちらで仕事をしている。そのシテイーの経費としては支店だけの俸給とか、そういつたもの以外に、ナシヨナル・シテイーの本店にあるいわば総務係——社長の給料といいますか、そういつたようなもの、これはやはり或る程度支店のほうに配分、分担するという考え方で、支店の経費を見て行くべきである。同じような意味におきまして、伊藤忠なり伊藤忠の支店ニューヨークにある。その場合に、国内的な経費としましては、支店長以下のものにいたしましても、俸給だけとつて見れば、社長とかそういうような一般的な各支店を通じて仕事をしているという人の俸給は、これはどのくらいのウエイトを持たせるか、持たせ方はいろいろ議論はありましようが、考え方としましてはやはり支店もそれは一応負う。こういうふうな考え方支店利益を計算して行こう、条約の三条の四項に実はこの規定がございまして「恒久的施設の産業上又は商業上の利得を決定するに際しては、経営費及び一般管理費を含むすべての費用で、その恒久的施設に合理的に配分することができるものは、その生じた場所のいかんを問わず、経費に算入することを認める」、従いまして大体まあ内容は先ほど御説明申した通りでございますが、ナシヨナル・シテイーの支店に配分するのが合理的であると認めます経費は、それが本店の社長の給料でありましてもこれは認める。併しこれはひとり日本側が認めるだけでなくて、伊藤忠のニューヨーク支店の経費を認める場合におきましては、伊藤忠の本社の経費はやはりそれに認める、こういうことになるわけであります。
  133. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それからもう一つ聞きたいのですが、今船会社なんかは全部欠損をいたしておりますが、それからニューヨーク支店或いはロスの支店、ここだけを切り離して、利益を勘定されるのか、郵船が郵船自体としては配当できないでしよう。三井だつて同じことだが、欠損をやつて、欠損の繰越をやつておるのですが、ところがニューヨーク支店だけはこれは儲かるというような勘定をされて、これに対して税金がかかる、こういうことになるのですか。これを一つ伺いたい。
  134. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 船会社の実例は、実はちよつと一般的には不適当じやないかと思います。と申しますのは、船会社関係につきましてはこの第五条にも一応顔を出しておりますが、現在すでに相互免除のことを扱つております。それはこの条約の第五条第二項に、一応交換公文書によつて船舶所得に対する二重課税防止ということで、従いまして郵船会社ニューヨーク或いはシアトル、サンフランシスコに支店を持つておりましても、船会社関係におきましては全然アメリカ課税いたしません。同様にプレシデント・ラインの支店が東京にありましても、或いは横浜にありましても、全然こちらは課税しない。従いまして今の損益関係の問題はまあ全然問題がないわけでございます。船会社事例ちよつと適当でないと思いますが、併し同じような種類事例は貿易商社でもいろいろあるわけでございます。その場合の考え方といたしましては、やはりニューヨークならニューヨーク支店が儲つておれば、ほかのほうで損をしておりましても、ニューヨーク支店というものについての利益を考える。勿論総掛費はやはりこめて考える。それから同じことは丁度ニューヨークのほうの本店が損をしていても、東京の支店が儲かつておれば、日本のほうとしましては、ニューヨークの本店が損しておるということを別に考慮しないで、東京の支店利益だけについて課税して行く、こういう考え方に立つております。
  135. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それからもう一つこの点が考慮されておらなければならないと思うのですが、この前の閉鎖機関の審議の際に、在外資産の返還の問題ですが、これなんかは、もう東京海上なんかで盛んに向うの在外資産が返還される、これはまさか収入として向うでは税金はとられない。それからもう一つ、こちらで連合国財産補償法によつて補償されるものも、恐らくこれはまあ税金はかけないと思うのだが、そうすると、とれないとするならば、在外資産として凍結されておつたものは、返してもらうやつは、これは当然税金対象外になると相互に相殺でき得るものと私は思うのでございますが、この法律なり条約なりから見て、そういうことまで触れていないように思いますが、これは……。
  136. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) その問題は一応ここの条約で扱う問題外の問題として合理的に解決できるのじやないかと思つております。要するに従来凍結されていたというか、日本商社の財産が向うに凍結されていた。それが返還された。これはもう向うとしては新らしい所得がそこに生れたわけじやないのですから、アメリカとしては課税される問題ではない。同じような意味におきまして、日本のほうで何か損失を与えてそれを補償したとしましても、これは損失に対する補償でございますから、新らしい所得としてこれを課税すべき問題じやない。お互い制限納税義務者関係においてはそうだと思います。ただこういうことが起り得るのじやないかと思います。たしかアメリカ税法ではそういう扱いがあつたと思いますが、戦争中に日本に財産を持つていた。それが要するに日本の財産として一応日本に接収されてしまつた。この場合にそれを一応損金に見て利益から落すことが許された。アメリカ国内税法の言うような事例がたしかあつたと思いますが、そういうようなことが例えばあつたと私は記憶しておりますが、それが事実なら、要するに日本で以て新しくそれが補償されたとすれば、前に税金を事実上まけてやつたわけですね、それがありますから、従つて今度新しく入つて来るものは新しい利益としてみて、丁度国内で計算させる場合に、或る債権が取立不能になつた場合におきましては、これを貸倒れと見て一応損金に算入して課税して行く。それが商社が何かの関係で又盛り上つて来れば、それで貸倒れとしてみたものが生返つて払われて来れば、これを実収入として課税する、こういうのはこれは国内でやつている事例なんですが、たしかアメリカにおきましては、戦争中にそうした海外財産の分を損金に見ることができる規定があつたように記憶しておりますが、そういうものに規定の適用を受けて、すでに戦争中に日本にあつた財産ついての分を損金に落してしまつたという会社につきましては、日本国内としては私はそれは損失の補償ですから、日本課税するという問題はこれは起き得ないと思いますが、アメリカのほうとしましては、前に税金控除してやつたが故に、この機会にそれは丁度貸倒れが生返つたと同じような意味において課税所得に見る、こういう扱い、これは税の扱いとしましては適当なる扱いであると我々は考えております。そういう問題は起り得ると思います。
  137. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 もう一つ。第四条の「一方の締約国の企業が、他方の締約国の企業の経営又は資金構成に参加していることにより」という文章ですがね、これはどういう形態を主として言つておられるのですか。企業の経営に参加する、或いは資金構成に参加するというのは、これは株を持つているということ、それを指すのですか。
  138. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) これはいわば、親会社、子会社と言いますか、その関係、或いは親会社、子会社でなくても、事実上、資金関係、資金の関係でやつているとか……。
  139. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 東芝に対するあれなんかそうですか、あれも……。
  140. 渡辺喜久造

    政府委員渡辺喜久造君) 今御指摘になりました事例は、私よく具体的に知りませんから、すぐにイエス、ノーをお答えできませんが、資金関係で事実上支配している。丁度この規定は、国内法における同族会社の行為否認の規定、あれと同一趣旨の規定だというふうにお考えになつていいと思いますが、結局、親会社、子会社関係にある、或いは資金構成に参加しているためにちよつと異例なことをやつている。例えばこういう事例が考えられるのですが、映画の配給会社アメリカにある。そのアメリカの配給会社の子会社日本にある。それで日本のほうで税金を払うのは好ましくないといつた関係から、配給映画代金を非常に高くして、日本に残る金はもう本当に実費を賄う程度のものしか日本に残さないで、あとは全部アメリカのほうへ持つてつてしまう、利益にしてしまうといつたような関係があり得るわけなんです。それは要するに、親会社、子会社関係であることも考えられますし、そうでない関係であることも考えられるのです。そういうような場合におきまして、それは妥当な料金を超えているというような場合は、この第四条の規定、こういうふうに御理解願つていいと思つております。
  141. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見のあるかたは討論中にお述べを願います。
  143. 小林政夫

    小林政夫君 私は本案には賛成いたしますが、ただこの際、戦前発行された免税約款付外貨債の実施についての租税特別措置法の条項の改正を附則においてしたいと思いますので、次の修正案を提出いたします。案文を朗読いたします。   附則に次の一項を加える。  4 租税特別措置法(昭和二十一年法律第十五号)の一部を次のように改正する。   第二条の六中「利子で、」を「利子のうち、」に改め、「到来するもの」の下に「及び当該利子について所得税を課さない旨若しくは当該利子支払の際所得税の徴収がなされない旨の特約があり、又は特約により当該利子につき課される所得税が国の負担となるもので当該六箇月を経過した日後に支払期日の到来するもの」を加える。  免税約款付外貨債には大体二種類ありまして、その利子につき租税が課されない旨又は租税源泉徴収が行われない旨の約款のあるもの、これは本来の国債の場合でありますが、それと、それからもう一つは本来は地方債、或いは社債として発行されて、その利子について課される租税は、その発行者において負担する旨の約款或いはそのように解釈されるものを含むのでありますが、その曾つての地方債、社債、現在は外貨債処理法によつて国に承継されておるのでありますけれども、この二種類のものについて、先ず第一種の本来の国債であつたものについて考えてみると、これは日本政府としては少くとも好誼的にその利子について所得税を課することができないと考えなければならんと思うのであります。万一所得税を課するということになつたときには、日本国際信用を傷つけることになるので、これは課税をしないということにしなければならない。ところが租税特別措置法第二条の六によると、日米租税協定発効後上六カ月間を経過したのちにおいて米国より支払われる外貨債の利子に対しては所得税を課することになつておるので、この際、その点を改正する必要があるということが一点。それから本来地方債或いは社債であつたもので、その発行者が負担をする、こういうことになつておる所得税負担するというものも、現在は国が引継いでおるわけでありますが、それを国庫としては税金を歳出で負担しても何ら取得するところはないわけです。そういうような見地から、両方の場合を含めて免税にする。国際信義を重んずるという意味から、この際税をとらない、こういうことに改正をしたい。これが私の修正案の提出の理由であります。
  144. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 他に御発言もないようでございますが討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。  先ず討論中にありました小林委員の修正案を議題といたします。小林委員の修正案に賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  146. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 多数であります。よつて小林委員の修正案は可決せられました。  次に、只今の修正部分を除いた原案について採決をいたします。修正部分を除いた原案に賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  147. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 多数であります。よつて本法案は修正議決すべきものと決定をいたしました。  なお、諸般の手続は先例により委員長に御一任願います。それから多数意見者の署名を願います。   多数意見者署名     木内 四郎  三木與吉郎     白井  勇  小林 政夫     岡崎 真一  土田國太郎     青柳 秀夫  前田 久吉     東   隆
  148. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) これを以て本日は散会いたします。    午後四時六分散会