○
政府委員(佐藤一郎君) 今回の
財政法と会計法の改正は、主として
財政、会計の
手続の簡素化、これを三年ぐらいに亘りまして毎年できるだけや
つて参
つたのでありますが、なおそれに引続きまして簡素化すべきものを極力いたしたいと、こういう方針で改正案をお出ししたわけであります。
特にそのうちで問題になりますのは、今御一緒に御
審議を願うことにな
つております、いわゆる積雪寒冷地帯の
予算の
執行との関連でございます。積雪寒冷地帯につきましては、最近は、特に
予算の成立等においても二十八年度のように非常に遅れたような特殊な
事情も加わりまして、なかなか予定
通りに年度内に
工事が
執行できない、どうしても繰越をせざるを得ない事態が非常に多いと、こういう
状況にあるわけであります。従いまして、積雪寒冷地帯の特に公共事業等でございますが、これにつきまして、何とかそうした
予算の円滑な
執行ができるような仕組を考えて欲しい、こういう御要望が非常に強くな
つて参
つてお
つたのであります。それで今回会計年度につきまして、積雪寒冷地帯の
予算執行の会計年度だけは少し延ばして欲しい、こういう御要望等も出て参
つたわけであります。で、私
どものほうといたしましては、
財政制度全般の見地から、会計年度をこの分だけ変えるということは到底できないので、その代りと申しますか、できるだけ一つそういう御要望の趣旨に副いまして、できる限り
財政法の趣旨の許す最大限度に、そういう
執行の円滑のための便宜的な
規定を置こう、こういうことになりまして、それが今回の改正の一つの中心点にな
つているのであります。
先ず逐条的に御
説明をいたします。
財政法の十五条、これはあとの繰越
制度の改正に伴う当然の
整理の条項でございますので、ここでは御
説明を省きます。
その次の三十四条は、従来
支払計画等の通知を一々会計検査院にや
つてお
つたのでありますが、これはもつとまとま
つた形で実際上の通知をやることにいたしまして、まあ少しでも
手続を簡素化しようというので、検査院の了解も得ましてこれを削
つたわけであります。
その次の四十三条、これの二項の改正でございます。これが
只今申上げましたいわゆる繰越
制度をできるだけ簡単に、又便宜を図るようにしたい、こういう趣旨の改正でございます。これにつきましては、従来、四十三条の条文をお読み願うとわかるのでありますが、四十三条では、各省各庁の長は、繰越計算書を作製いたしまして、大蔵大臣の承認を経なければならない。繰越をしようとしますときには、大蔵大臣の承認を経なければならないと、こういうことが第一項に先ず
規定してご奪いまして、それを受けまして第二項において、その大蔵大臣の承認があ
つたときには、その経費については
予算の配賦があ
つたものとみなす、こういうことにな
つているのであります。御承知のように、国会の議決を経ました
予算も、
財政法の三十一条のいわゆる
予算の配賦という一応形式的な
手続を経て初めて
執行ができる、こういう仕組にな
つております。それで繰越しの場合には、
昭和二十八年度に仮に繰越しましたものは二十九年度において使えるわけでありますが、それはいわゆる成立した
予算のほかにこの配賦があ
つたものとみなすわけであります。こういう
規定があ
つたのであります。でこの
規定の書き方が相当問題が従来からあ
つたのでありますが、承認を経るということを前提にしまして、その承認を経た
金額が
予算の配賦があ
つたものとみなす、こうな
つてお
つたわけであります。そこで従来承認を大蔵大臣はどういうふうにいたしたかといいますと、二十八年の例で言いますと、いよいよその繰越しがほぼ決算的にも確実な
数字が固まりまして、何円という細かい
数字まではつきり、これはもう二十八年度中にはどうしてもできない、翌年に繰越さざるを得ないということがほぼ確定した
金額を承認するのであります。従いまして、大蔵大臣のところに承認の
申請が参り、それを大輪蔵大臣が承認いたしますのは、三月三十一日、即ち年度のぎりぎりのところが、若しくは更に四月に入りましていわゆる出納
整理期間中に承認を行うのであります。その結果、承認にも多少の
審査のための時日を要しますからして、四月に入りましてからいわゆる空白ができるわけであります。理論的に申しますと、その間は繰越しした事業を一時ストップをしなければならんという甚だいわば無理な事態になるのでありまして、これについてできるだけ、本来であれば、例えば二月であるとか、せいぜい三月の上旬には承認の
申請を受けて、それに対して承認を与える、そうして四月に入りますれば直ちに仕事がスムースに、一日の空白もなく行える、こういうふうな仕組にすべきである。即ち事前承認、本来もともと事前承認の
規定でありながら、実際問題としてどうしても先ほど申上げましたような空白を生ずるということは、甚だ繰越し事業の施行を円滑を欠かぜることになる。こういうことで改正をしたのであります。
そこで、その書き方を、改正条文にございますように「前項の承認があ
つたときは、
当該経費に係る
歳出予算は、その承認があ
つた金額の範囲内において、これを翌年度に繰り越して
使用することができる。」即ち二月の下旬頃になりまして、そろそろこの経費は大体とても年度内にはできない、大体五百万円くらいは繰越す、こういうことがわか
つて参りましたらば、先ず五百万円の繰越し承認を大蔵大臣に求めてその承認を得るわけであります。ところが三月三十一日にいわゆる年度を越すときには五百万円までは要らなかりた、四百八十五万円繰越せばよかつと、こういうことでありますれば、四百八十五万円というものだけを繰越す。即ちその承認があ
つた金額の範囲内において繰越し
使用することができると、こういうふうに、いわゆる承認の
金額と、それから実際の繰越しすべき
金額、即ち配賦せられたものとみなす
金額と分けて考える。従来はその四百八十五万円がはつきりするまでは承認
申請をしなか
つたわけであります。それで非常に
手続上遺憾な点があ
つたわけであります。この点をはつきりいたしまして、繰越しの承認をできるだけ年度の締切り以前に承認を与えてやる、こういう仕組にしたいというのがこの四十三条の
規定であります。それから各省の大臣はこの承認の枠の中で適当に必要な範囲において繰越しができるわけであります。
それから四十三条の三でございます。これは
只今の繰越しの問題に関連いたしまして新たに設けた
規定であります。これは「各省各庁の長は、繰越明許費の
金額について、
予算の
執行上やむを得ない事由がある場合においては、
事項ごとに、その事由及び
金額を明らかにし、大蔵大臣の承認を経て、ての承認があ
つた金額の範囲内において、翌年度にわた
つて支出すべき
債務を負担することができる。」これはどういうのかと申しますと、例えば三月の中旬になりまして、新たにいろいろ、な障害があ
つたのを克服してやつと契約を結ぶというような段階に
なつた場合に、その契約
金額が一千万円である。ところが、その一千万円の
金額を、例えば三月の十五日におきまして、それは刑底全部は三月中には
執行できないこはこれは明らかであります。そういしますと、三月中に行われるという
見込のものと、三月以後に繰越さなけばならないというものとを分けまして、その繰越さなければならない部分については、大蔵大臣の承認を経ました上で別に契約をするわけであります。即ち五百万円なり一千万円なりの
金額がありますと、二十八年度の三月三十一日までにやる分と、四月を越えて繰越す分と、いわゆる二本に契約をするのであります。これが非常に
手続上厄介なわけでありまして、繰越しの承認を経ましたならばそれと同時に一本で契約をし得る、こういう途を開きたい、こういうのがこの四十三条の三でございます。これはいわゆる
財政法の会計年度の原則、一会計年度に原則として
予算の
債務負担と
執行をやると、こういう会計年度の原則の重要な例外をなすわけであります。この
規定を置きますのには、私
どもといたしましても、非常に重大な例外でありますので、よくく考えたのでありますが、まあこの
程度のいわゆる年度越しの
債務負担の
規定を置きましても、一方においてそう弊害はなかろう。且つ又、先ほど申上げましたような繰越しの
手続というものを極力簡素化したい、こういう要求も考えまして、この改正案を御
提案申上げたわけであります。
それから次に会計法でありますが、会計法におきまして第十三条の
規定を改正いたしました。ここにおきまして「各省各庁の長は、必要があるときは、
政令の定めるところにより、
当該各省各庁所属の
職員又は他の各省各庁所属の
職員に、支出負担行為担当官の
事務の一部を分掌せしめることができる。」即ち、従来から契約をするための支出負担行為担当官というものが置かれてお
つたわけでありますが、それの更に分任支出負担行為担当官というものをここに置きたいと、こういうことであります。
御承知のように例えば公共事業、建設省
関係の土木出張所等がございますが、これらは現在、出納官吏といたしまして、いわゆる
資金前渡官吏ということにな
つておるのであります。で、
資金前渡官吏と申しますのは、事業に応じて一定の、五十万円とか百万円の
金額をあらかじめ支出官から分けてもら
つておきまして、その範囲で契約もすれば
支払いもできるという出納上の責任官吏であります。ところが、この
資金前渡官吏には、一面において、
余りにキヤツシユを巨額なものを渡しますと、これ又弊害があるわけであります。さればとい
つて、できるだ
予算の
執行の円滑を図るために、契約だけは円滑に行いたい。そこで、従来はキヤツシユの範囲で契約ができるということにな
つておりましたのを、分任支出負担行為担当官というものを置きまして、キヤツシユは例えば五十万円しか与えない。併し公共事業を
執行するために三百万円なり五百万円の
金額の契約だけは、もとの支出負担行為担当官の割当に従いまして、その割当の範囲内において適宜に契約をすることができる、こういうふうな仕組にしたい。これもまあいわば現場における公共事業の契約
事務を便宜にしたい。こういう趣旨から置いた
規定であります。
その他の細かいところはこの
規定ができましたための
整理の
規定であります。
それからもう一つ第四十二条の改正であります。これは従来「各省各、庁の長は、出納官吏がその保管に係る現金又は
物品について、これを亡失毀損したときは、遅滞なく、これを大蔵大臣及び会計検査院に通知しなければならない。」こういうことにな
つてお
つたわけであります。
政府の持
つてお
つた木炭が雨で流されたというようなもの、或いは盗まれたというような通知が、そのために非常にたくさん書類とな
つて出て来るのでありますが、ものによりましては一定期間分を取りまとめて通知すればできるというふうにしたいという意味において、「遅滞なく、」というのを削りまして、「
政令の定めるところにより、」というふうに改正をいたしたわけであります。
それから、その次の四十六条の二でございます。これが又、積雪寒冷地帯の
予算の
執行に便宜になるだろうと思
つて入れた
規定であります。これは繰越の承認
手続でありますが、これは従来必らず中央の大蔵大臣のところまで全国の書類が参るわけであります。昔はそれを書類
審査だけで各省から出て来たものに対して承認を与えてお
つたのでありますが、繰越をすることが適当かどうかについて、中央でただ書類
審査をしただけでは不十分でありますので、最近では御承知のように、財務局財務部というようなものが大体腹心を連れて参りまして、それの意見を参酌しまして承認を与えてお
つたのでありますが、ものによりましては大蔵大臣が財務局なり財務部に、もう現場にこの仕事を委任してしまう。それが例えば北海道なら北海道の財務局及び財務部において適宜に繰越承認をし得るようにする。これは実際の
手続並びに日数等から言いますと、これは非常にこの活用によ
つて便宜の途が開かれるわけであります。繰越につきましては、特殊なものは別といたしまして、例えば積雪寒冷地帯における公共事業につきまして、はむしろ財務局或いは財務部に任していいのじやないかというふうに考えておるものが非常に多いのでありますからして、これを活用したい、こう考えております。そのほか多少字句の修正或いは従来の立法を
整理するというような改正が少しずつ行われております。
それから衆議院で修正を受けましたのですが、これはむしろ私
どものミステイクでありまして、例の
予算執行職員等の責任に関する
法律というのがございまして、そこで、この
財政法、会計法の改正に伴
つて当然字句の
整理修正をすべき点を私
どもが落したのでありますから、衆議院でお願いしまして御修正を願
つたのでありまして、何ら実体的な修正ではございません。
以上でございます。