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菊川孝夫君 私は
財政法第四十二条の特例に関する
法律案に対しまして反対をいたします。
反対の理由は、安全保障諸費が二十七年度
予算に計上された際も、私どもは真向からこれに反対をいたしたのでありますが、而もこれは一年限りに終るものというふうに
考えておつたにかかわらず、この五百六十億はどうしても
アメリカから使わされる、こういうような印象を深くするのであります。特に今年は一兆の
予算だ一兆の
予算だと
言つておりながら、やはり五百六十億だけはまあ
現実にはみ出したことになるわけであります。なおこの安全保障諸費については、これが使われるために、或いは今まで開墾者が開墾しておつた土地が演習場として取上げられる、又はそう大きな軍用道路が必要でないところへ道路を無理に拡張して付けるために耕作地が取上げられる、住宅地が立ち退きをさせられるというような事実も生じて来るわけであります。現在の
国際情勢を
考えましたときに、
アメリカの最初に安全保障条約を締結いたしました当時の
世界政策と今日の
アメリカの
世界政策にはこれはもう誰が
考えても多少変更がなされている。即ち、先ず在外部隊はでき得る限り引揚げて、そして外地における陸上警備は外人部隊に担当させる。
アメリカの本国は主として空軍並びに海軍で似て防衛をするのだ。これらの現地外人部隊の援助をするというのが、大体今の
アメリカの方針のように思われます。そういう際に、何ももういつ引揚げるかわからんような
アメリカの要請によ
つて、兵舎をこしらえたり或いは道をこしらえたりする必要はないじやないか。
従つてもうこの際はこれをもう打ち切
つていいんじやないか。相当
アメリカの政策の変更、又
国際情勢の変化も
考えなければならん。朝鮮動乱勃発当時の緊迫した
国際情勢と今日の
国際情勢は、少くとも私は話合いによ
つて解決しなければならんということを米ソ両陣営の指導者といえども認めざるを得ない段階へだんだん来ているんじやないか。この間のビキニの水爆の実験によ
つて日本の漁船がこうむつた被害というのは
世界中に大きなセンセーシヨンを与えたのであります。なおだんだんと水爆の大きな実験がシベリヤの原野或いは太平洋のど真中で行われることによ
つて、場合によりましては、これは季節風で以て
日本へずつと吹いて来て、その灰が降るようなことも起り得るかも知れないというような段階に
なつているのでありまするからして、これではというので、両陣営ともこれはもう戦争手段によ
つて解決するというよりも、徐々にではあるけれども、やはり話合いによ
つて解決する、国際の緊張が緩和される方向に向いつつあるのだ、そういう矢先に、
アメリカの軍事基地をこしらえるための費用を、而も去年使えなかつたやつを又二十九年度へ繰越してそして使
つて行こうというようなことは無駄なことである。もうそんなものを作るのは時代遅れだ。それよりもむしろ積極的にこれは話合いによ
つて解決をして、これは戦争させないようにする、こういう行き方が今の情勢に合つた行き方じやなかろうかと私は思う。
その
意味におきましてもこの際
政府は、
アメリカの言うことは何でも言うことを聞くのじやなしに、情勢変化ということ、むしろ今年のこの残つたやつを水害対策のほうへ廻してもらう、このくらいな外交折衝に乗り出すべきであるにもかかわらず、まあ五百六十億組んであるのだから、何でも
向うの言う
通りにやるのだ、これは現地の大佐や中佐級はそんなことを
考えているかも知れないけれども、
世界の情勢は大きな転換をしている際に、これを繰越しするということは大きな目から見ても、これは情勢に適合しないものである、かように
考えるのであります。又これらの
アメリカとの
関係によ
つて国内に特例法を設けてまでも支持しなきやならんということは、如何にも
アメリカのまだ力がうんと
日本に加わ
つているような嫌いがあり、どうもそういう気がして、この際独立だ独立だと
言つておりながら、隷属国にだんだんなるような我々は嫌いがするのであります。
従つてこういう際でありまするから、ひと思いにこの際これを断ち切るような
一つ方向に出るべきではないかと思うのでありますが、大体この安全保障諸費を
予算として出されるときにも問題があ
つたので、使い途を
はつきりせよということをやかましく言つたにかかわらず、あの当時まあ漠然たる答弁を、小笠原
大蔵大臣が本
委員会において
ちよつと読まれましたような程度の答弁で以て押し切
つてしま
つたのが安全保障諸費であります。従いまして安全保障諸費というのは、
向うの連中からするなら、五百億の金があるのだからこの際は使わしておけというような態度で出ているというふうに思えてならないのでありますが、まあ大蔵省主計局の当局から良心的な答弁を何回も繰返してなされました。できるだけそういうことのないように
努力をした結果、今日この段階に
なつているのだという、その事務当局の御
努力につきましては、我々も認めるにやぶさかではないのでありますが、併しながらこの出発点そのものが、大体がこれはもう占領の落し子でありますので、この際はこれを断ち切るべきであると、そういうふうに
考えます。
もう
一つ最後に申上げておきたいのは、今各方面で汚職という汚職、疑獄事件というのがやかましく国民の批判の的に
なつております。なかんずくこれらの安全保障諸費を使いまして行なかつた工事に対しましてとかくの風評があるわけでありまして、これはまあ検察当局の追及或いは取調によ
つて明らかになることと思いまするけれども、今ここで具体的な例までも挙げて申上げることははばかりたいと思うのでありますけれども、避けたいと思いますが、
アメリカの
関係官とそれから
日本の業者とが話合いをいたしまして、そして成るほど
財政法上の指名競争入札であるとか、或いは一般の入札
制度によ
つて請負わすような方法は形式的にはとられておるけれども、事前にすでに
アメリカの
関係官を招待するとか或いは饗応するとか、
物品の贈与をしてこれを買収してしまう。で、
アメリカも、なかなかマツカーサー元帥のステートメントを読んでおりますると、実に立派なものでありまして、何らそこに非の打ちどころはないのでありますけれども、なかなか現地の人たちの行いそのものがマツカーサー元帥のあの当時のステートメント
通りには行
つていないのであります。極端な例を申上げますと、数寄屋橋で
日本人を川へ投げ込むというような乱暴をするやつもおるのでありますから、現地の将校連中の中でも、芸者を抱かせれば業者に対しまして請負をさせるように
日本政府当局に対して圧力を加える、そしてその道路請負をやらせる、そのときには当然今流行語のリベートというやつで、請負つた業者のほうからその現地の
関係官に対しまして、現地の
関係官というのは
アメリカの兵隊さんに対しまして、饗応費としてリベートされているというのは
現実に起
つておるじやないか。そうして値段がどうも高過ぎる、こういうことも言われておるわけであります。
以上のような
関係から、これらはもうこの際
一つ断ち切るべきである。こういつたような、いろいろどの観点から
考えましても本案には絶対に賛成するわけには行かない。従いまして真向からこれに対しましては反対をいたします。