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1954-03-23 第19回国会 参議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十三日(火曜日)    午前十一時二十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大矢半次郎君    理事            藤野 繁雄君            小林 政夫君            菊川 孝夫君    委員            青柳 秀夫君            木内 四郎君            白井  勇君            安井  謙君            山本 米治君            前田 久吉君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            堀木 鎌三君   国務大臣   大 蔵 大 臣 小笠原九郎君   政府委員    法制局次長   林  修三君    大蔵省主計局総    務課長     佐藤 一郎君    大蔵省主税局長 渡辺喜久造君    大蔵省主税局税    関部長     北島 武雄君    大蔵省銀行局長 河野 通一君    大蔵省為替局長 東条 猛猪君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省主税局税    関部鑑査課長  木谷 忠義君   参考人    カーボンブラツ    ク懇和会専務理    事       中原 乾二君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○外国為替銀行法案内閣提出) ○関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣送付)   —————————————
  2. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) これより大蔵委員会を開会いたします。  外国為替銀行法案を議題といたしまして質疑を行います。
  3. 小林政夫

    小林政夫君 この法案は、為替専門銀行作つて貿易金融を整備すると言いますか、一歩その段階へ踏み切るということですが、それと関連して、貿易金融を正常化するという意味において、外貨ユーザンスのことについて大臣はどういうような御方針でおられるか。当面輸入ユーザンス等をやらない、当面の措置としてはそういうことをやつておられますが、そういうことについてどういうふうな御見解でおられるのか。当面の措置と将来の方針と併せて……。
  4. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 輸入については大体この頃抑制するという立場をとつているものですから、ユーザンスその他についてもできるだけのそういつた立場でものをやつておりますが、併し大体から言いまして、この長い目で見ますれば、今のは、これは小林さんも御承知のように、特に顧著に現われておるのは自動承認制アメリカのドルの分でしたが、今年の契約が、昨年の一月から六月までが一億四百何万ドルに比べて、今年は一月ひと月で一億八百万ドルになつて来たので、そういつた点から非常な対策を必要としてやつているのでありますが、今後はやはりユーザンスは、そういう長い目で見て行けば、或る程度ユーザンスはこれは望ましいことであつて、これは私どもは今のように窮屈にすべきではないと考えております。但し当面とにかくほかに方法がございませんので、輸入に対する各種の措置といたしまして、応急的なああいう措置をとつた次第でございますから、そういうふうに一つ御了承頂きたいと思います。
  5. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 では甚だ議事の進行を阻害する形になるので申訳けないが、どうも昨日大蔵大臣の御説明を承つたのですが、どこまで行つても、もやもやしてはつきりしないのです。それで、なぜ端的に、為替専門銀行一行作るならば、そういう専門銀行法作つて、そうして、これはこういう使命を持つてやるのだ、そうして政府はこれだけ援助するのだ、他の従来の為替銀行に対してはどの程度にとどめるのだというふうな点が、どうも、いや複数制建前とするのだと言われながら、差当り複数制を採用するところの行政方針はない、これはもう法律案建前と先ず第一に違つて来るのです。事実上又それだけの必要性がないということもよくわかるのです。或いは暫らくの間と言われているのだが、今後、本法案の目的とするような本当為替銀行複数で生存して行くだろうかという点を考えますと、戦前貿易程度でも東京銀行が殆んどやつてつたということが言い得るわけですね。だからそういう点から考えますと、どうも一行だけで行くというふうな考え方、そうなると、現在やつておる昨日お挙げになつた十二行との関係というふうな問題について、どういうふうな方針で行かれるかということがおのずから明確にならなければならん。こういうふうに根本的にその問題について疑問を持つのです。この臨時金融制度懇談会で、国内金融の面と貿易金融の面とについての調整から或る程度の反対があつたということはわかるし、又外国為替銀行円資金による裏付というものも考えられなければならないということもよくわかるのです。そういうふうなものが、こう全部、なんと申しますか、この法律を読んではどれも解決されないままに、一応十億円の外国為替専門銀行ができて、そうしてそれには支店設置国内支店制限はされるが国外設置外貨預託だけで育てて行こう、その程度のもので一体いいか。それから、そのために外銀との関係はどういうふうに将来調節して行くのかという問題、外国為替銀行とどう調整して行くかという点が、どうも私にはもう少しはつきりした方針ができなくちやならないのだろうというふうに考えるのですが、そういうものはできてからすべて考えるのだとおつしやると、実は法律案の内容は我々が知らないで、形式的な文書だけ知つて、この法案を賛成なり反対なりするということになつてしまつては、非常に空虚な責任を尽したような感じが、効果が上がらないような気がいたします。金融懇談会答申にもなかなかいろいろな問題が出たようでありますが、国内金融でも一体どこに支障があるのかというふうな点も、なぜこういう法律によつてこういうふうな銀行の作り方をしなくちやいけないのか、一体それは民間金融機関根本があるのか、日本銀行根本があるのかという問題もあるわけなんです。で、更に国外においては外国銀行との、国内国外において外国為替銀行とどこに問題点があるのかというようなことも我々考えざるを得ないのですが、もう少し端的に御説明を願えないだろうかと、こう思いますが、昨日と同じようなところをまだ御質問の程度は出ていないので申訳ないが、これも大蔵大臣の御答弁の然らしめるところだから勘弁してもらいたい。重ねてそういう点は、はつきりしてもらいたい、こう思うのです。
  6. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは昨日も申上げている通りに、あなたの考えだと、この外国為替銀行の当初と、それから先へ行つて外国為替銀行働きというものとが、多少一つのものとしてお考えになつているから、いろいろな点が違つて来るのじやないかと思うのです。私どもは立法上特殊銀行一つ作つて行くということは、今日の対外関係から見てよくない、かように考えておるのでありまして、従つて単一なる外国為替銀行法作つて特権を与えてこれをやるという考え方は持つておりません。又そのことはこれは対外関係上面白くないと思います。然らば為替銀行業務は又一つ銀行で足りるかというと、これはあなたに御説明するまでもないことだが、現にアジア方面におけるイギリスの銀行だけでも或いはチヤータード・バンクあり・マーカンタイル・バンクあり、ホンシヤン・バンクありというふうな工合で、幾つもある。又アメリカ銀行はいわゆるそういつた特にチヤータード的なものはありませんけれども、併し主として為替業務を扱つておる銀行は、例えば、今、日本に来ている或いはナシヨナル・シテイでも、チエーズ・ナシヨナルでも、或いはバンク・オブ・アメリカでも扱つているというような状態でありまして、従つてどもは、外国為替銀行というものを、単一なるものを考え法案をこれは出しておるのではない。これは繰返し何度お尋ねになつてもこれはそう申上げるほかありません。従つて、それならば行政上はどうか。行政上といたしますれば、資格のあるものを、すでに法律があるのですから、法律に基いてやらなければなりませんから、有資格のこういつた銀行が出て来まして申請があつて、而もその銀行が、営業上、私どもが必要と認めるということになりますれば、これは認めなければなりませんが、これはあなたがおつしやつたように、現在の段階では、そういう今の私が昨日あなたに申したように、東京外国為替銀行大阪外国為替銀行式銀行もできることは先ずあるまい、こう思うのでありまして、従つて差向き一行を予定するというのが実際ではあるまいか。併し法律そのものはもう少し先々のことを考えておりまするし、さつき申上げた対外関係に関する配慮から、私どもは、法律上有資格のものが出て来れば、一体、大抵のものは独占的に物をやるのはよくないのでありまして、競争的に物をやるというのがこれは望ましいのでありますから、よく物ができるならばこれは二つでも三つでも許していいと思うのでありますが、ただ現実の問題としては、そういうことができるのは差向き少いじやないか、こう考えておるのであります。  それで、今お話の中に、それじや一体この法律案狙い所はどこなんだ。これは言い換えますれば外国専門為替銀行を作るのだ、こういうことがはつきりしておるのでありまして、片手間外国為替をやる、そういうことでは、今日の日本為替或いは貿易関係から見て機能を果し得ない、任務を果し得ない、こう考えるのでありますから、この点で、私ども専門銀行が入用だろう。併し専門銀行は入用であるといいましても、現に為替を営んでおる銀行は十二あります。十二ありますが、これは実際において、御承知のように、そのうちの十一というのは大体においていわば片手間にやつておる銀行でありまして、営業本体がそこにないのであります。従つて、これらの為替業務はそのまま継続してもらうことは当然でありまして、何らこれを制限する意思は持ちませんが、併しこれが外国為替銀行という形に生れ変つて行く性質のものではない、こういうふうに考えておるのであります。従いまして、外国為替銀行を作りましても、さつき申した通りどもは何ら特権的なものは与えない。併し為替業務を行なつて内地店舗等についての若干制限をしまするならば、結果として、外国店舗を作りたい、こういうときには、これは言葉は少し悪いかも知れませんが、先ずその銀行に許してやろう、こういう考え方を持つております。それから外国においてこういうものを扱つておるのだから、この日本政府国庫代理事務をやらしてやろう、こういうふうに考えております。そうして、更に、これが外国為替取扱業務分量が大きくなるにつれて、例えば日本がその時に持つておる外貨は、今、外国為替を扱つておる銀行に殆んどすべて預けております。金額に不同がありますが、全部預けております。この金額の不同というものが一層取扱分量が差を生ずるに従つて大きくなるだろうと思います。それから特別に円の資金等援助を与えるという考え方は私どもつておりませんが、輸出貿易の伸長、その他の関係で、為替を取扱うものの分量が殖えて来れば、従つて為替資金を受ける点においても、この点は実質上、力は違うのでありまするから出て来るであろう、こういうふうに考えまするので、特別なことをしないでも、そういうような諸点から相待ちまして、私は現在のところ外国為替業務のみで銀行十分営業は立ち行くものであると、かようなふうに考えておるのであります。ただ、よく言われるのは、日本占領治下で、大体外国為替銀行に今まで扱つてもらつておりましたので、又現在でも十二の銀行のうち十一の銀行は、自分の扱つておる分量も若干ありますが、主としては、やはり外国銀行仕事は頼んでおる。窓口は自分でやつておるが、実際の仕事はみな頼んでおつて、ニユーヨークなどに行つてみればわかるように、ほんの数人しかおらないというのが実情なんで、そういうことでありますので、そういうことは、もう今のこの日本貿易現状からみて、どうしてもここに専門銀行が出て、そうして国際的に外国為替銀行等と肩を並べ得る、こういうものができることが必要なんで、その点から、外国をも刺戟せずに、併し準拠法としてこれを出して、あとは現実の問題としては行政措置に任すということでありまするけれども、併し繰返し申しまするが、そのほかの銀行業務を妨げるとか、ほかの銀行業務制限するとか、こういう意味は毛頭持つておりません。こういう点をすつきりさして、一つ銀行にしてしまつたらいいではないかというお考えもあろうかと思いますけれども、これは先ほども申したのでありますが、今の国際環境からみるとさようなことはどうも事情が許されませんので、又望ましくもございませんので、本案を出しておる、そういうふうに一つ御了承を願いたいと思います。
  7. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 やや昨日おつしやつたことが系統立つて来たのですが、念のために一つ一つつてお聞きしたい。もう少し掘り下げてお聞きしたいと思うのですが、特権的なものはやらないというお考えですが、外国支店拡充国庫代理店外貨預託を比較的ここへ集める、為替資金関係から円が要る場合にも或る程度援助をしよう、こういうふうなことをして、この銀行が成り立ち得る程度にそのことを考える、こういうのが行政御処置でございますか。
  8. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 成り立ち得るということは、銀行の当業者がこれはやるべきことでありまして、例えば、こちらが期待しておるのに業務が縮小しておる。一向業務が拡張されないとすれば、例えば、預けてやろうにも、これは大体その分量に応じて預けてやろうというのでありますから、それに伴わないことが起つて参りましよう。そういうことがありまするので、これは政府行政措置としてよりも、むしろ成り立つか成り立たんかは当業者本当努力如何による、経営如何にある、こう思います。政府がこれを特権的な銀行というならば、助けてやつて、是非とも成り立たすということも必要でありますけれども特権的には考えておりません。
  9. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 まあ現在の外国為替を扱つておる十二行の中の十一行までは内国金融が主で、外国為替のほうは片手間にやつておるようでは困る、こういう点があるわけでございますね。それで差当りは、従つて片手間でやらないような銀行、併し従来のは大体従来の形で置いておくつもりだとおつしやいますと、今、特定の外国為替を主にやつている銀行について、無論、当業者努力なしに物事は考えられないと思いますが、やはりともかくも外貨預託を相当やれば、率直に言えば、今のところ為替銀行が成り立つか成り立たないかということは、外貨預託をやるか、国庫代理店をやらせるかということで、それが一番私は営業上の大きな利益だと思うのですが、そういうものが、結局行政指導で行くとすれば、やはりこの銀行が成り立つて行くには、現在程度輸入量、現在の外国貿易に関した金融というものでは……、大体支店拡充とか、その他、今おつしやる特殊に貿易金融面から貿易を伸張促進するようにしたいとおつしやる意図は、少くとも現在以上に何かなくちやそういう業務拡張はできないんじやないか、こういうふうに私は考えますが、実際問題として、やつぱりそれが一つの目安にならなければならぬ。本来言うと。それじや何のためにこういう法律案お作りになるのか。現在でもいいじやないかという議論になつて来ると思うのです。従来のでは困るのだとおつしやるところに、行政的なものが或る程度出て来なくちや肯けないんじやないか。急に貿易量が多くなる見込みは差当りないのだ、どうしてそう考えられるのか、こう考えるのですが、如何でございましようか。
  10. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 私の申すことはもう同じことに尽きるのでありますが、つまり外国為替業務のごとき複雑なものを、引き合うからと言つて引き合うところだけに店舗を設けて、片手間にやられては困る。やはり国際的に大きくやつてもらいたいという希望を持つておる。又これができればこれに準拠してやろうとするものがあることは明かでありまするので、そこで今申した通り取扱い分量も殖えて参りますれば、取扱い数量に応じて外貨預託のようなことをやる。又この銀行本体から、今の国庫代理店としてこれを取扱わせる。これは当然私はやらなければならんことであるし、しますので、そういうことをやつて行く。又為替銀行が、これは従来の例でもおわかりでございますが、今ある為替銀行の……為替銀行言つてはいけませんが、為替のほんの一小部分を取扱つておる銀行でありますが、これは従来でもそういうことを戦前でもやつておりましたが、実はそれ以上に余り伸びていないのであります。ところがその時分にありました専門銀行というものは、つまり自己の運命をかけてやつておるのでありまするから、その点で大変違うのですな。片手間仕事と。自分のところの運命をかけてやつておる。片手間でやつておるところでは、その銀行人事にいたしましても、例えば役員にいたしましても、為替に慣れておるからと言つて、或いはその点のエキスパートだからと言つて、何も重役になつたりするのではありません。為替銀行なら、為替を全く知らないような重役というものはないわけなんで、その点からも相当人事が違つて来る。そういうこともありまして、やはり専門銀行になればそれだけの努力も怠らぬでしようし、又それだけの働きをしますから、自然そこへ為替取引がどうしても余計集まることは、これは勉強するところへどうしても集まつて来ますから、そういうことになる。そういう次第でございますので、私どもはどうしても片手間では困る、こういうことをここで繰返し申さなければならん。
  11. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 大蔵大臣は答弁することを一つことにおきめになつて、それ以上発展をさせないし、そこでもうそれ以上触れないという御態度かとも思いますが、それならばもう大蔵大臣にそう聞かなくていいのですが、実はもう少し私は大蔵大臣為替銀行に対する御抱負をお聞きしたかつたのですが、今おつしやつた中で、対外上よくない、国際関係上よくないということは、これはどういう見地に基いてお言いになるのでありますか。
  12. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) それは対外上よくないというのは、一つのみの為替銀行があつて、それが特殊の法律に基いて特権を持つてこれに臨んでおるとすれば、外国から見るときには、これは日本政府を代表しておる、こういう工合に見られて、どこで仕事をするのにも非常にやりにくいということになつておることは、往年の正金銀行台湾銀行朝鮮銀行等の実例で、これはよく知つておるのであります。これらの銀行発展は、私どもはシンガポールにおる時分に、こういう銀行発展はアンリライアブルだと書いたような文書が実は或るところから廻つてつたようなものもその当時はありまして、これは、やはりそういつたものでなくて、やはり普通の市民銀行として、民間銀行としてやつて行くということが是非必要であると私ども考えておるのです。その点で、これは対外上の点は今日のところ、特にこの一行にするということは、これは少くともアメリカ式考え方から言えば非常によくない。それから又、よその国から見たときに、ひとりアメリカに限りませんが、そういう特権銀行があるということは非常によくないと私は思います。
  13. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それで、議論はよして、大体のお考え方はわかりました。ただこの法律建前から見まして、今おつしやつたようですと、実は第四条に、大蔵大臣免許を受けなきやならんとして、免許にかけながら、こういう条件が整つてつたならば免許しなければならないのじやなくて、免許することができるようになつておるのです。つまりそこら辺の要するに法律に基いてできたら、全部それを許すのだというお考え方と、この法律建前とは、違つて来るのでございますが、そういう点はどうでございましよう。
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) あれは先ほど申しました通りに、法の建前としては複数建前は飽くまでとつておるのでございまするから、単一なものを考えたことはございませんが、差当りのところは、実際問題として考えるのに、日本の現在の為替分量等で、とにかく今のところ、まだ通商航海条約のできた国がほんの二、三カ国しかないような状況で、普通のことは言えませんから、そういうときに考えられるのはどうしても一行になる。こういうふうに思うのであります。従いまして大蔵大臣は、これは銀行の面は、支店を作るのでもそうでありますが、そことしては或いは引合うからそこへ支店を作らしてくれということもありましようけれども、但しそうでなくて、やはり全体の予算を見渡してみて、全体の、特にこの場合でありますれば、世界の情勢を見渡してみて、国際金融状況から、又、日本為替現状からこれは必要だというものに認めるということ以外に、私はないと思う。危険を冒さしてまでやらすということは、これは望ましいことではございません。併し法の建前は数年に互る先のことまで考えて行かなければなりませんので、法としては、こういたしておりますが、飽くまで現在考えておる差向きのところは、行政上は一行だけが現実の問題として浮び上つて来るものと考えております。
  15. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 大体だんだんわかつて来たのですが、今度はもう少し具体的に、その特殊の専門銀行お作りになるときには、この答申趣旨希望は出ておるわけですが、そういうものを、特殊銀行を認可されるときにこれらの趣旨をどの程度とり上げられるものか。そうしてお考えになるか。こういう点を具体的にお示し願いたいと思います。
  16. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) これは昨日も申上げましたが、私ども特に原案を妥当とするものは多数でありまして、その大きく要望されておる点がありまして、これは昨日特に堀木さんの指摘された点で、これも私は十分これに織り込んで行かなければならないと考えておるのであります。その一つはどうかというと、現在、為替をやつておる銀行業務を縮小さすとか何とか、そういう考え方は持ておりません。それから、従つて、例えば外貨を預けるときにも、これは量には差があります。仕事分量に差がありますが、この点については別に区別をしようとは考えておりません。片方特権的に見ようとは考えておりません。それから私どもは、この銀行は十億以上の資本を持つて願い出るときに、申請しましたときに、恐らく実際問題として十億の資本では足らんと思います。三十億か、現在の場合ですから少くとも二、三十億の資本のものは出て来るでございましよう。そのときに、例えば普通銀行民間銀行で是非出資したい、現にそういうことを申出ておられるところもあるのでございまして、そういうときに、その株のうち例えばそれが何億円持つとかいうようなこともいろいろ起つて参りましよう。長期信用銀行に各銀行が株を持つているような工合に、やはり各銀行が株を持つて来るのじやないか。株を持たれれば自然その考え方を代表するような意味の、俗に言う社外重役ですが、社外とは言えません、株主ですから言えませんが、重役というものもこれは入つてもらう。或いは又非常に適当な人がおれば、重役に限らず幹部行員としても入つてもらつて然るべきものじやなかろうか、こういうような工合に思つております。即ち主として資本構成の点と、それから人的構成の点で、これらの人の考え、普通の銀行の意向を幾らか反映さしたい、こういうふうに考えておるのであります。  それから又、よく言われるのは、今は生産金融から言うと、為替を最後まで一貫してやらんといかんということが、一番強く言われておるのでありまして、為替銀行のみがその為替のみを扱うということは、活溌に仕事ができませんということを、よく言われます。併し仕事というものは、何も私は、一貫して、ものをずつと初めからしまいまでやらなければならんものじやなくて、それが連絡さえすれば、きちんきちんと緊密な連絡さえあればそれでいいものじやないか。従つて普通の銀行が或いは今のような生産のほうをやつておる。併しそこからでき上る品物は、輸出いたしまする場合は、輸出関係をその銀行と結び付ける、為替関係を結び付ける。或いは又、向うから入れる場合の為替関係はこの為替銀行がやる。併しその後内地に入れましてからの生産金融については、これはその普通銀行がやる。こういうことが考えられますので、そういつた工合に連絡を密にしてもらえばよろしい、こういうふうに考えております。それも或る意味から言いますれば、例えば若干の株を持つとか、或いはその銀行代理店と言いますか、何かそういうようなことをやるようなことも一つの方法でございましよう。まあいろいろ連絡の方法についてはございましようが、そういうふうなことでいろいろな各界の御意向を織込んで参りたい、こう考えております。
  17. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 大体私はこれで大蔵大臣に対する質問は終ります。
  18. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 一点だけお伺いしておきます。まだたくさんお聞きしたいことがありますが、今、大蔵大臣も生産から輸出までずつと一貫してやらなければならんと言われますように、これを又言う人は、銀行の系列からということを盛んに言つておりますね。そのときに、こういう特殊の機構を作りましても、系列配置しつつあるときに、あとの十一行がそれぞれ系列を持つて、生産から輸出の段階まで系列化しているときに、あんまりこれは商売に実際問題としてならんのじやないか。失業という点については或る程度統制してみて、法律でしつかりといろいろの点から保護を加えるということになつたら、これは別ですけれども、これはあなたのほうは、構想としては、今の東京銀行が大体なると私は想像するのですがね、為替銀行に。ところが東京銀行というのは大体系列が余りないのじやないですか、従来の関係から言いまして。そうするとなかなかこれだけの法律ではあなた方の期待されるような強力なる為替銀行として育つて行くかどうかということについて、多少私は疑問を持つのですが、この点を一つ
  19. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今、菊川さんのお尋ねですが、実はちよつと先の答弁が悪かつたかも知れませんが、実は為替専門銀行は系列ということを考えておりません。ただこういう生産から為替までの金融について、一本で行くほうがいいじやないかということを、これは現状は、占領下でそうであつたものですから、そういうことを言われますが、併し生産するものの金融生産金融と、それから又輸出に対するものもあるし、両方ありますが、その金融は別に考える。それは普通の銀行でやつておる。併しこれが為替に現われて、輸出入為替のときだけはこの銀行に持つて行くということの連絡も付くという意味を私は申したのでありまして、連絡ということを申したので、実は為替専門銀行が系列化するという考え方は持つておりません。
  20. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 次に、この法律を拵えるときに、大分、市中銀行から反対があつた。いろいろ反対論を唱えている銀行の幹部連中が意見を僕らのところに書類で送つて来られたのですが、そういう強力な、有力銀行から反対されたので、だからこの法律は、まあそちらの顔も立てる、何か言い逃れできるように拵えられた傾向がはつきり見れるのですが、大蔵省の銀行局が本当に純粋な立場から考えられるのだつたら、恐らくこんな、ゆるいと言いますか、ゆるいようなものじやなしに、もつと強くこれを育てるような構想で実は立案されるだろうと思う。ところが市中銀行のいわゆる有力筋から猛烈に反対されたので、先ず先ず今のところはどつちにもつかんような、この法律を作つたつて作らなくたつて大して影響のないような法律になつてしまつたきらいがあるのじやないか、こういうふうに思うのですが、どうですか、その点。
  21. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) それは私どもも市中銀行の意見をしばしば聞きました。金融懇談会においても聞きましたほか、なお私どものところなどへも直接訪ねて来られていろいろ話を聞きましたが、その話にもいろいろありまして、その一つは、例えば今あなたがおつしやつたような銀行くらいでは弱体じやないか、もつと大きい一大為替銀行を作つたらどうか、従つて自分たちも喜んで出資しましよう、そうして一つ日本を代表されるような意味での為替銀行を作りたい、こういう意味のような、積極的な御要望も、これは名前を挙げませんが、財界の最も有力なる人に、そういう意見もありまして、自分銀行でも喜んで出資しましようと言つてくれるところもあるのであります。それに反して、又、何もそう急いで作らんでも、今のままで置かれても一向差支えないと思う、どういう点が一体あなた方は不自由なんですかということを言われるので、これはこれこれだということを言つて、どうしても、今、為替専門銀行の必要なことを説いたが、それならもう少し今あるものをその使命を果すように仕向けられたらどうか、こう言われましたが、これはなかなかむずかしいのは勿論でありまして、私どもはその困難なことをお話申上げました。そこで、ただ問題は、一番よく言われたのは、ただ一つ銀行だけを作るという考え方はどうかということが言われましたが、これは私どもがこの間から申上げておる通り一つ為替銀行のみを考えておらんのでありますから、従つてそういう資格を備えて、又国際的に見てもう一つ許すという時期が来れば許してもいいというようなことで、こうなつたのですが、まあこれによつて為替専門銀行が一歩を進めることになり、而もその銀行がいわゆる為替専門を標榜して専門的にやることになりますれば、相当私は機能を発揮することになつて、当分は暫らく別として、為替銀行としての機能は相当発揮されるだろうと考えておるのです。
  22. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 為替専門銀行ができるのですから、十分に利用されること、この銀行が非常に信用を内外において博すること、而もそのためには基礎が強固になつて行かなければならん。私は素人ですがそう考えるのですが、そういう点から考えて、今はなかなか為替と言つたつてそうたくさんはないと思います。ましてや十一のほかの銀行もやつているのでありますから、これは今までは平等にやつてつた。その為替銀行専門銀行として守り立てる上においては、或る程度援助をせなければならんと思いますが、いろいろな監督は受けるのですけれども、これを大きなしつかりしたものにするための援助はどういうことがあるのですか。この法律を読んでも余りないのですが、実際面においては、又、蔭でこつそりやるというようなことになると大変だか、その点はどういう……
  23. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) それは蔭でどうこうということはしない考えであります。但し丁度昨日あたりから堀木さんに申上げているごとくに、国庫代理店において、これは一つこの銀行は海外でやつてもらう、日本が御承知のように、アメリカにも、イギリスにも、或いはフランスにも外債等を持つている、又社債等がありますので、そういう支払等を現にやつておりますが、こういうことは国庫代理店でやつて見よう、それから、その次は、比較的為替銀行としては海外の店舗を先ずこの銀行に認める、どこどこに店を置きたいというときには先ずこの銀行にそれを認めるということにいたしたいと思つております。  その次はいわゆる預託金でありますが、これはその公平を期さなければなりませんので、この銀行為替取扱分量に応じまして恐らくこれはもつと多くなります。現在も多くなつておりますが、これに応じて預託をしてやる、そういうことを考えておりますが、ここだけを特別待遇をするという考え方は持つておりません。
  24. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それじや数量の何パーセントぐらいまでは大体ここで扱われるようになることを期待しているんですか。
  25. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 大体戦前その他の状況から見ますと、この銀行為替取扱がまあ三割ぐらいまで行けるのじやないか、戦前は四割ぐらいまでですが、三割ぐらいまで行けるのではないかと思います。それから、これは為替通商航海条約が広まつて参りますと、この銀行為替取扱数量は更に殖えると思います。というのは、約十二行でありますけれども、そのうちの数行は、ニユーヨークには店を持つておりますが、余り直接の関係のないところには店は持ちませんので、為替網というほどのものはないのです。為替の店は向うにありますけれども、実際の仕事も、これはさつき申しました通りニユーヨークあたりへ行つて御覧になればわかるが、仕事外国銀行で扱わしてしまつている。窓口が自分だから自分のところに数字は載せますけれども、そういうこともあります。
  26. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一つ最後に聞きたいのは今度は支店を、儲からんかも知れませんけれども設置させなければならん。今後東南アジア各地で、これは商売にならんでしようけれども、実際に為替銀行支店が要るという場合が出て来ると思いますが、それは第九条では設置することができるということだけで、させたいというような力はこれは大蔵大臣にはないのですか。その点はどうなんですか。それは必要は生じて来ると思いますがどうです。今は通商航海条約は結ばれている国が少いけれども、こんな状態ではいけないので、だんだん結んで行かなければならない。賠償も片付けて行かなければならん。或いは役務賠償なんかも現実の問題になつた場合に実際扱わせなければならんと思いますが、そのときに支店を設けなければいかんという場合が生じて来ると思いますが、どうでしよう。
  27. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 中共貿易暫らく変りなく、現状通りだと見まして、先に考えられるのは、例えば香港とか仏印とか、或いはタイ或いはシンガポール、更にインドネシア、向うへ行つてボンベイとか、カルカツタ、カラチというものが考えられる。こちらへ来てフイリツピン、マニラが考えられる。これはいずれも店ができると思いますが、現在綿花だけについての関係から、それを扱つている或る為替銀行は、一つぐらいはそこへ店を持つでしようが、専門為替銀行はなかなか持とうとしません。それくらい……、或る店では引合わんですが、或る店ではそれがあるために非常に引合うという、こういうことがたくさんあるのですが、それで全体に為替網を張りますと、店がもう引合わんものが引合うということになつて参りますので、これは全然私の意見ですけれども、まあ海外に十五ぐらい店を最初持つようになるであろう。それで大体年間まあ十億ドルぐらいの貿易関係を扱うのではないか。そうすれば、まあ相当のことは行ける、こういう意味で、それくらいの取扱いはあるだろうと見ておるのです。
  28. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 他に御発言もないようでありますので、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  30. 野溝勝

    ○野溝勝君 この際、意見を簡単に述べて本案に賛成をいたします。  先般来、私は本委員会におきまして、この外国為替銀行法案について局長その他等と十分質疑を交わしました。そこで、種々問題点につきましては、同僚菊川君から繰り返し質問があつたようです。そういう点を私どもは心配しておるのであります。一体、昨日来、大臣堀木君との質疑を聞いておりますると、実に大臣自身に自信がないのです。  大臣は明確に国際場裡に立つて競争をして行く上におきましては、為替関係の操作が我が国経済に影響するところが大きい、今日まで非常な損をしておるという点を具体的に挙げて、説明し、日本の経済の復興と貿易の振興のために役立たせるためにも必要だ、だから専門銀行に等しきものを作るのだ、こう言つて下されば問題ないんです。この論議とこの理論体系に反対するものはおかしいと思う。これは頭の中の鋲が二つ三つ欠けておると思うんだ。それがそういうことをあなたがはつきり言わないところに問題点があつたのです。併し市中銀行の反対があつて、今日の金融資本主義の下における内閣でございますから、そこに困難があることも我々は予知しておるんです。併し何と申しましても、市中銀行で反対であつたからといつて日本の国が大きな損失と貿易の不振を招いていることに対して、政府がまあまあと言つておるわけに行きませんから、大勢に従つて法案は出されたと思うのです。ですから一歩前進の金融政策としての意味で本案に賛成いたします。  ついては、大蔵大臣におかれては、質問のありましたごとく、心配しておるのは、折角かような構想によつてできた専門銀行が、途中で以てあぐらをかいたりデツトロツクに乗り上げるようなことがあつては困りますから、これをうまく育ててもらわなければならない。若し施策を誤まれば国家全体としても経済的な大きな損失ですから、充分留意して欲しい。併し育て上げるためには、特別にこれを優遇するということになると、市中銀行が作為して又問題その他を起すこともあり、いろいろの問題点もありましようが、難産ではあつたが出産した以上、生んだ子は自由に生きて行けと言つたのでは、今日の国際資本主義競争の中にあつて親の義務は果せない。いわんや或いは金融操作には実際問題として大臣のおつしやる通りできないと思う。そこで非常に脆弱ですから、これは多分東京銀行がなると思うが、いずれの銀行がなるか知りませんが、誰がなつても、昔の正金銀行のような工合に直ぐは行かないと思う。ですから未熟の点があるんでございますから、こういう点は政府に於て本法案を出された趣旨から見て、これを育つように、円数量初め融資等政府としましてはあらゆる支援をされたい。支援することが日本貿易及び経済の上に大きな役立ちを果すということの裏付けとなるのでありますから、政府の育成するということを条件において私は本案に賛成をいたします。
  31. 小林政夫

    小林政夫君 私も本案に賛成をいたします。賛成するに当つて特に要望を附して置きたいのでありますが、本行の公共性並びに国際性に鑑みて、金融界或いは貿易界、生産界、各界の心からなる協力が得られるように、本行の資本及び人事の交流に関し、特段の工夫を払つて頂きたい。特に本行を設立する経過的にも、国内の貿易金融或いは生産金融について齟齬の起らないように御配慮願いたいと思う。それから今も野溝さんから御発言がありましたが、やはり折角作つたんであるから、この銀行が育つように、本来の目的に副うように十分な配慮を加えて頂かなければならん。それには量的に差等を付けるということでありますが、政府保有外貨の重点的な預託、それから為替貿易資金確保のために円資金の融通等についても、まあ質的な差異は少いということでありますが、日銀等も十分な協力ができるように、この資金の融通の途を確保してやる必要があると思う。それから、先ほどもちよつと大臣は簡単に触れましたが、この専門銀行を作るに当つては、貿易金融というものを正常化する必要がある。当面の輸入阻止というために、輸入外貨ユーザンスを規制されておるようでありますが、本来、貿易金融ユーザンスなき貿易金融ということはあり得ないものであつて、これだけの銀行を作るということであれば、当然、貿易金融を正常化する上においてユーザンス制は十分に活用すべきものであろうと思います。輸入の抑制ということは、そのユーザンスをやめるということで考えるのはむしろ邪道であつて為替管理を行なつておる際でもあるから、別途の方法で講じるべきである。今が非常事態ということで、金融の便を与えるとして……、抑制するというようなことをお考えなんでしようけれども、成るべくそういつた、折角この銀行を作る以上は、そういつた貿易金融を正常化するような御配慮を願いたい。又為替相場についても、今は何から何まで公定というようなことでありますが、この公定レートを維持することについては、政府為替銀行から為替を買取る相場さえ、売買を無制限に、公定レートで買取るということにしておきさえすれば、他の手数料その他について一々公定する必要はない。そういうようなことは自由にして、それこそ大いに生命をかけた為替銀行自分の能力を一〇〇%発揮できるような仕組、他の片手間にやつておる銀行とは、そこにサービスの点においても優劣がつくような余地を与える必要があるんではないか。この点を特に要望いたしまして賛成をいたします。
  32. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 私も本法案に賛成するものであります。今までの政府の御答弁を伺つておりますと、かなり消極的なように見受けられまするけれども、新らしく生れる銀行に対する私どもの期待というものは非常に大きいのでございますから、どうか一つ、野溝委員小林委員からもお話がございましたが、できるだけ一つ積極的にこの銀行が育成されて、日本の経済のために役に立つように御努力あらんことをお願いいたしまして、賛成をいたします。
  33. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は改進党を代表いたしまして賛成いたします。併し実はこの法律は、質疑を通じてもおわかりのように、今後の行政運用に殆んどかけられている。で、今のような御答弁の範囲で実際所期の目的が達せられるかどうか、又不正があるかどうかという点すら、端的になかなか我々が了解することがむずかしいというふうな情勢でありますが、大蔵大臣としては、本法案による外国為替専門銀行ができる際には、十分明るいところで、その金融政策という、殊にこの外国為替銀行をどう運用して参るかという行政の基準を大臣の責任においてお作りになる、そうしてその方向で運用されて行くということを特に強い希望として附加えて賛成いたします。
  34. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 他に御発言もないようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。外国為替銀行法案を原案通り可決することに賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  36. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお諸般の手続は前例により委員長に御一任願いたいと存じます。それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     藤野 繁雄  白井  勇     小林 政夫  安井  謙     菊川 孝夫  山本 米治     青柳 秀夫  野溝  勝     木内 四郎  堀木 鎌三
  37. 小林政夫

    小林政夫君 本当はこの法案を上げる前に質問したかつたのだけれども、審議促進の意味であとに譲つたのですが、今討論で言つた点ですが、特に最後の点ですね。ユーザンス問題と、それから為替相場の改定の正常化という問題について、先ほど大蔵大臣から、当面の措置、将来においてはユーザンスは大いに認めたいということだつたのですが、まあそういう点について、当面の措置としても、なぜユーザンスを認めないようにしなければならないかという点や、それから為替相場の問題、一応まああなたの見解を先に聞かして下さい。
  38. 東条猛猪

    政府委員(東条猛猪君) 先ほど小林委員から今度の法案に関連しましてのいろいろ御要請がございましたが、私どもその御趣旨につきましては非常に同感の点が多いのでございますから、特にこの為替相場の手数料について、政府で何から何まで拘泥せずに、相当銀行間の競争を許し、又いろいろとサービスを図るというようなことに考えたらどうかと、こういう点でありまするが、将来の方向といたしましては、もう仰せのように、政府は基準となる相場をきめまして、あとの手数料、或いは細かいサービスその他の点は銀行間の競争に待つということが正常な姿でありますることはもう御趣旨通りであると思います。ただ只今までの実情におきましては、何といたしましても、これらの銀行が発足いたしまして、独立後、日も浅いということで、一方、外国銀行の今までの日本における業務の活動の状況等を見ておりますると、必ずしも全然これを、まあ自由放任と申しますか、そういうことにすることがいろいろの力の関係或いは採算の関係等から見ていいかどうか、相当私ども実はまだ疑問に思つておりまして、当面の措置といたしましては、値幅をきめ、或いは手数料の幅をきめるということになつておるわけであります。もう少しよくこの情勢を見、特に只今御決定頂きました外国為替専門銀行の今後の力の伸び加減等を見まして、先ほど仰せのように基準はきめても、あとは公正な業者の競争関係が殖えて来るということには、目標としては是非持つて行きたいと思います。但し小林委員仰せの通りに、いろいろ順序と申しますか手だてがあると思いますので、そういうような方向に向いまして逐次我々としては注意をいたして参りたいと思つております。  ユーザンス制の問題につきましても非常に強い御要望がございまして、これも我々為替決済の正常な姿からいたしまするとお話の通りだと思つております。但し先ほどもちよつとお話もございましたが、只今のところは、ここ数カ月は、国際収支の問題或いは為替の面において、言葉は悪いのでございますが、非常時というような様相を呈しておるのではなかろうか。この際におきましては、正常な方針を暫く見送りましても、まあ事態の乗り切りということに力を尽したいと、かような考え方をいたしておりますが、現在のような決済の仕組が、私ども決して理想的なもの、望ましいもの、或いは正常なものとは考えておりません。お話のように現行のユーザンス制度ということが正常な姿であろうと思つてないのであります。
  39. 小林政夫

    小林政夫君 おおむね局長の答弁で満足ですが、当面のユーザンスを規制することと関連して、そういうまあ今のような規制をやられるならば、外銀ユーザンス或いは外国商社のユーザンスを、こういうふうに国内金融の引締めのあおりを外に転じて行つて外から受ける。これはやはり外資導入ではありますが、そういうことはこの際どう考えますか。
  40. 東条猛猪

    政府委員(東条猛猪君) 今のお話の外銀ユーザンス乃至外人商社のシツパーズ・ユーザンスの取扱いをどうするかという問題、先ずこの外銀ユーザンスの問題につきましては、私ども日本側の為替銀行ユーザンスを規制いたしておりまする限り、外銀ユーザンスにつきましても同様の措置をとるべきである。若し外銀ユーザンスを特殊の事例として認めるということがありとすれば、同様の事例につきましては、日本銀行の取扱いの場合においてもユーザンス制度を認めるべきである。かように考えております。併しながらこれは今後に非常に又いろいろむずかしい問題が出て来ると思いまするが、差向きのところは、銀行ユーザンスは成るべく日本側の銀行外銀差当り措置としては規制をいたしたいと、かように考えております。  シツパーズ・ユーザンスの問題でございますが、これは御承知通り、現在の法令におきましては六カ月未満はいわゆる標準決済ということで認められておるのであります。これを規制するかどうか、これは銀行ユーザンスとの関係におきましてなかなかむずかしい問題であろうと思います。銀行を規制しておいて商社のユーザンスを六カ月といえどもあけておくことが適当かどうか、これはいろいろ考え方のある問題だと思いますが、金融機関との関係と、商社同士の長い、いわば取引関係に基きまする信用の授受とは、或いは多少わけて考えてもいいのじやなかろうかという考え方もございまして、只今のところは六カ月未満は標準決済としてあけておるわけでございます。この場合におきましても、御指摘のように、外人商社と日本側の商社とのバランスと申しますか、権衡と申しますか、こういう問題につきましては、御承知のように残念ながら現在はまだ外国商社が力が強いわけでございまするから、その辺の取扱いにつきましては相当考えなければならないのではないかと思つております。  いろいろくどく申上げましたが、要は制度の途を開けるということであるんならば、勿論従来の考え方からいたしまして、外国側のいろいろの便宜を利用することも必要ではありまするが、これと劣らない配慮を日本側の銀行、商社についても、その力が備わつて行くように考える必要がある、その間のバランスを失することはよほど考えものである、かように考えております。
  41. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩    —————・—————    午後二時四十三分開会
  42. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 休憩前に引続きまして会議を開きます。  この際お諮りいたします。関税定率法の一部を改正する法律案につきまして、カーボンブラツク懇和会専務理事中原乾二君を参考人として意見を聞くことにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 御異議ないと認めます。これより関税定率法の一部を改正する法律案(予備審査)を議題といたしまして質疑を行います。
  44. 小林政夫

    小林政夫君 最近、カーボン・ブラツクのメーカーと思われるほうから、大分需要にマツチするような製品ができて来た、従つて関税率の減税を早期に打切つてもらいたい、こういう陳情があるわけです。そういう点について、現在のカーボン・ブラツクの生産状態及びあなたの御覧になつた需要との関係においてどういう状態にあるか、御説明を願いたいと思います。
  45. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) カーボン・ブラツクには、大きく分けまして、ゴム工業に使うものと、印刷インク工業に使うものとがございます。日本の商品の八〇%はゴム工業に使つております。約一〇%が印刷インクに使つております。その他が塗料とか、一般に使われているのでございます。日本には御承知通り、国内には一トンも生産がなかつたのでありますが、昭和十六年にアメリカ日本に対して輸出を禁止いたしまして、それから慌てて国内で生産を開始いたしたのであります。併し戦争の終る頃まで非常に幼稚なものでございまして、戦争が終りましたときには、各社ともアメリカから再び安い良いものが来たならば生産ができないというので、皆、生産途中にあるものを放棄してしまつたのであります。ところが終戦後、一、二年アメリカからやはり来なかつた。それで政府は再び各生産会社に再開を促した、そうして今日に至つたものであります。昭和二十四年まで、二十四年におきましても、まだ需要者が大いに生産者を督励いたしまして、さあ作れ作れということであつたのであります。二十五年から輸入が順調に来るようになつた、もう要らないというので、そつぽを向いたような状態であります。併しカーボン・ブラツクの生産会社は、皆、大企業でございまして、この生産を続けてだんだん合理化されて、昨年は八千七百トン生産いたしております。それで昨年の消費が一万五千トン程度であります。約七千トンが昨年輸入されております。そういう態勢になりましたので、ここに関税問題を政府でお取上げになつたのであります。関税のことをずつと申上げますと、昭和六年までは一〇%に相当する従量税がかけられております。昭和七年に日本石油が台湾でカーボン・ブラツクを作るようになりましたときに、一五%に相当する従価税がかけられるようになりました。終戦後、二十六年にこれを一〇%に下げたのであります。そのときは殆んどカーボン・ブラツクは政府輸入でございまして、例の貿易公団が扱つておりました。消費者も、それから生産者も、関税ということについては殆んど無関心でありました。どういうわけで一〇%がきまつたか、その成行きについてもよくわからなかつた。当時の担当官に聞いて見ますと、厳重な輸入統制であるから関税は上げる必要はなかつた、成るべく下げたほうがいいというので、一〇%にしたということを伺つております。国内生産がそういうふうに非常に旺盛になつて参りましたので、これは昨年政府がお取上げになつたのは、生産業者の陳情によつたものではなかつた。通産省でこれを二〇%が適当であるということでお取上げになつたのでありましたが、昨年の夏の議会で、これを二〇%に上げて、今年の三月三十一日まで一〇%据置きということになつたのであります。その据置きの理由は、まだ相当の量を輸入しなくちやならない、従つてその体制ができるまで据置くということでございましたが、そのとき、昨年の夏問題になつておりましたようなカーボン・ブラツクは、今日では国内で生産されるようになつたと私は考えております。その時期において国産のメーカーから、議会、お役所に対して、この三月三十一日を以て打切つて頂きたいという陳情が出ておるんだと思います。一方、消費者におきましては、現実に一割カーボン・ブラツクの関税が上るということは非常に大きな負担である、だから、これはどうせ国内で、できないものもある、だから関税は上げないでもらいたい、こういうことでございます。二十九年度の現在における国内の生産能力は一万二千トンに達しております。一万二千トンの生産能力を持つておりますが、現在の状態では到底それだけの生産をしても価格の面で売れるとは考えられないのであります。
  46. 小林政夫

    小林政夫君 ゴム用が八〇%で印刷用が一〇%ですか。
  47. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) はい。
  48. 小林政夫

    小林政夫君 その他が一〇%ですか。その用途別には需給関係はどうなんですか。
  49. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) どちらも今の生産量では足りません。ゴム用のほうも現在の生産力では足りませんし、印刷インク用も足りません。併しいつでも国内消費を全部カバーするぐらいな体制は整つております。
  50. 小林政夫

    小林政夫君 現在では足らないが、いつでも充足するだけの体制が整つているということは、どういうことですか。
  51. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) それは関税が前提になつております。
  52. 小林政夫

    小林政夫君 関税を二〇%にすればいつでも国内需要量だけは作り得る、こういうことですか。
  53. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) さようでございます。昨年政府の原局で見通されましたときには、昨年の春において、国内製品は平均して現在の輸入値段よりは二割高い、だから一割は関税を上げる、一割は企業の合理化によつて下げさせようという、そういう狙いでありまして、それは現在もその状態は大体続いております。
  54. 小林政夫

    小林政夫君 そういうことであれば、関税を上げるということよりも、外貨の割当をしなければ、国内で生産能力がある、あなたのお話を額面通り受けて、品質的にも量的にも全然輸入をする必要はないんだ、国内の生産能力及び生産設備によつて需要に応じ得るだけのものは国内生産ができる、こういうことであれば、関税の問題じやない、勿論、関税はまあ外貨割当というものがなくなつたときにおいては考えなければなりませんけれども外貨の割当さえしなければ輸入する必要はない。その点はどうですか。
  55. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 関税を一割に戦後改めましたときの役所のお考えはそういうお考えでございました。ドルに関する限りは将来とも外貨の統制は続くのだ、だから関税は大きく上げる必要がないというふうに伺つておりました。ところが昭和二十六年、昭和二十七年、あの外貨が豊かになつて参りまして、そんなことは、カーボンみたいなものはけちけちするようなことはないじやないかというような御意向が一部にございまして、非常に輸入に対して緩やかになりました。そのために、折角伸びかかつたものがとまつた考えます。今日、又、外貨がむずかしくなつたから外貨の面で搾る。外貨の面で搾つたり緩めたりすることは、これは産業というものは健全に発達して行かないものと私は考えております。
  56. 小林政夫

    小林政夫君 そうすると、まあ念のためにもう一度聞いておきますが、品質的にも数量的にも国内需要に応じ得るだけの生産体制は整つておる、こう了承していいのですか。
  57. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) カーボン・ブラツクは、御承知でもありましようが、煤であります。この煤は、現在アメリカにおいては四十種類のものがございます。国内で生産されておりますのは約十種類でございます。それからアメリカのような選択をしたいということだと、これは日本じや求められない。それから、この品質を決定するはつきりとした線がない。化学薬品のように純度できめるとか大きさできめるとかいうものじやないのです。従つて、有名な消費大工場におきましても、甲の会社と乙の会社とが御意見が違う。品質の問題になりますと、今日でも需要者と生産者とは相当水掛論になつております。品質だけを論ぜられない。価格と品質と常に絡み合つたもので議論をされるので、私どもも何が議論の焦点になつておるかということに苦しむのであります。非常にこれは軍配を上げにくいと思います。
  58. 小林政夫

    小林政夫君 あなたの団体は、メーカーと消費者と両方の団体ですか。
  59. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 両方が入つております。
  60. 小林政夫

    小林政夫君 そうすると、あなたの御意見は両方噛み合わしてのまあ中正な御意見を承わつていいわけですか。
  61. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 只今メーカーの立場を申上げると、一部需要者は、例えば五千トンの輸入をいたしますと、平均一トン十万円でございますから関税が上ると五千万円支払いが違います。従つて、需要者が反対する理由は、はつきり出て参ります。そこで私は、今、生産者の立場と需要者の立場と、それから客観的の生産状況を申上げたので、三つ絡んで申上げたことになるわけであります。
  62. 小林政夫

    小林政夫君 そうすると、あなたのほうの会が、生産者、消費者両方によつて組織されておるとすると、会内で自主的な調整というのはできないのですか。
  63. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) これは非常に利害が対立いたしておりまして、こういう大きな問題はちよつと会内で調整いたしかねるのであります。両方共、官庁及び議会に協力を求め、御理解を求めるように運動しておる。私自身は、役所にも、それから議会にも陳情することはいたさない方針でございまして、これは議会みずからが御批判頂く、それから役所みずからが御指導頂く、一切陳情には行かない方針で今までやつて参りました。
  64. 小林政夫

    小林政夫君 積極的にあなたが陳情されたわけではないので、今日は参考人として御出席を求めておるわけでありますが、一応、会の専務理事としての御意見でなしに、あなた個人として、消費者にも接しられ、生産者にも接しられていろいろ聞かれた結果として、個人的な見解では、この税率の問題についてはどういうふうにお考えになりますか。
  65. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) これから個人的なことを申させて頂きます。  私が当時の関係者から命ぜられまして、戦争中からカーボン・ブラツクの問題に移りまして、カーボン・ブラツクがなければ飛行機のタイヤも自動車のタイヤもできないという、非常に苦境に陥つたときに、カーボン・ブラツクに飛び込んで、どうしてもカーボン・ブラツクを作らなければならん。終戦後アメリカから円滑に来るかと思つたら来なかつた。その後OITという名目で日本に分けてくれることになりました。これは非常に好意のように思つておりますが、私自身は非常な侮辱であると思います。アメリカ日本に分けてくれるということは、裏返せばアメリカの御意向に副わなければやらんぞという意味が含まれている。昭和十六年に、それまで日本のカーボン・ブラツク工業は、しばしば起ろうとしたものが、輸入によつて完全に押されて、十六年にぽつつり切られてしまつた。そうして戦後はOITという名前で来ている。こういうことで、日本の産業の独立、民族の独立はあり得ない。少くとも自分関係しておることに関しては一日も早く独立いたしたい、そういう念願に燃えております。懇和会というと如何にも穏かな会のようですが、私の仕事の七〇%、八〇%は、技術問題と取組んでおりまして、なごやかな会合というようなものではないのでありまして、速かに自立態勢を整えたいということに努力をしておるわけでございます。
  66. 小林政夫

    小林政夫君 そうすると、中原さんの御意見では結論的には関税を二〇%にしたほうがいい、こういうのですね。
  67. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 二〇%に上げることは、差当りは需要者の損である。需要者の負担が増すと思います。今これがもやもやしている間はなかなか産業が伸びないのじやないか。従つて政府がお取上げになつたときにも、軽工業局長がおつしやつたように、これは一つの呼び水であるという、私は誠にその通りだと思います。これによつて早く確立されて、確立された以上は関税なんかが意味をなさないような時代が来るように持つて行きたいと考えております。
  68. 小林政夫

    小林政夫君 先ほども二〇%に上げることによつて消費者は五千万円の負担増になる、こういうことでありましたが、それは輸入量を前年度と同量に抑えての見積りですか。そうして又、関税を二〇%にした場合に、今まで一〇%の時代に国内メーカが言つてつた値段を、二〇%の輸入品に合わして国内製品をも引上げる含みがあつて、それだけの負担増になるのか。その点はどうですか。
  69. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 輸入量と申上げましたが、輸入量はその年々に変つて参りますから、大体輸入品の平均単価は十万円と考えております。  それから今のお話で、関税が上つたならば国内品もそれだけ上るのじやないかという御懸念のように伺いますが、カーボンブラツクは、私ども関係いたしまして過去十年間に、市況によつて上げさしたことは一度もない。そのために、如何にも今日私が生産者の代表のように見えますけれども、生産者と私どもの争いというのは非常に激しい。如何なる不足している場合にも市況によつて上げさしたためしはございません。だから、今後も関税が上つて輸入品が上つたから国産品が上るだろうとか、或いは下げ惜しむだろうとかいうことは、私ども関係しておる限り、ないと存じております。
  70. 小林政夫

    小林政夫君 前回この問題について税関部長の意見をちよつと伺つたのですが、今のような中原さんの意見だと、関税を上げても国内品を今までの値段よりも市価に合わして釣上げるということはない、こういうことであると、輸入量は全然変らない、そうして輸入品だけの値段が高くなるというようなことですが、いろいろメーカー及び消費者から意見の具申があろうと思うのでありますが、もう一度あなたのこの問題についての御見解を聞かして頂きたいと思います。
  71. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) カーボン・ブラツクの関税率につきましては、昨年の国会に御提案いたしましたのでありますが、その前に各省からいろいろ関税率について改正を要するものはないかと照会いたしまして、通産省におきましてはカーボン・ブラツクの関税率を上げてもらいたいという要望がございました。而もその上げてもらいたいという要望のありましたのは、メーカー側とそれからユーザー側とを共に管轄している面からの申出でございました。比較的公正に物事を考えているであろうというふうに私ども考えたのであります。そこで更に通産省からもいろいろ資料を徴しまして検討いたしましたところ、やはりこの際、関税率を上げておいたほうが国内産業保護の見地からよろしかろうという結論になりまして、昨年の国会に御提案申上げたわけであります。その際いろいろ御議論がございまして、結局、関税率の引上げは結構ではあるが、即ち別表輸入税表の関税率を引上げることは結構であるけれども差当りの問題としては、暫定的に従来の一〇%の率を適用するようにという国会の御修正があつたわけであります。そこで、今度この減税の期限の切れますにつきまして、如何いたしたらよろしいであろうかということを、卒直にいつてつたわけでありますが、折角、国会が御修正になつたものをこれを覆えすには、やはり従来のデータに比べて新らしいデータがないと、なかなかこれはやりにくいのでございます。そこで更に最近の資料等を検討したのでありますが、昨年の国会で御修正になりました当時の状況と比べまして、この免税を打切るだけの新らしい状態になつたというふうには、実は私どももまだ自信がなかつたのであります。勿論、最近の情勢におきましては、カーボン・ブラツクのメーカー側におきましてストツクが大分できたように聞いております。従いまして関税率一〇%ということは、メーカー側にとりまして相当痛いことであるには違いないように思つたのでありますけれども、今暫らく国会の御決定に従いまして、様子を見て、その上で更に今までの国会の御決定の趣旨を御変更願う程度の新らしい状態に達したときに、初めて減税を打切るというような措置を講じたほうがよろしかろうと思いまして、差当り更に一年間の関税率軽減の措置をお願いいたした次第でございます。只今カーボン・ブラツク懇話会の中原さんが、いろいろおつしやいましたが、カーボン・ブラツク懇話会の中原さんのお立場もなかなか辛いお立場じやなかろうかというふうに私ども考えております卒直に申しますと、当初カーボン・ブラツク懇話会というメーカー側とユーザー側とを合体した会があつた。それがやはり全体としては関税率の引上げが好ましい、少くともそれには反対でないというような意向も当時伝わつておりましたので、いろいろ資料を検討いたしました結果、昨年のような提案をお出し申上げたわけです。その結果、只今申しましたような経過によりまして修正になり、只今に至つておるわけであります。私どもとしましてはこの御決定を御変更願う程度の新らしい事情の発生は今のところちよつと見受けられないというわけで、更に暫定的に一年間の延長をお願いしたわけであります。
  72. 小林政夫

    小林政夫君 ただほかのものと一緒に暫定的に減税するといつて、又一律にどの品目も来年三月三十一日まで、こういうことになると、又来年の今頃になるともう一年、こういうことになるのですね。それでちよつと様子を見るという見加減が、やはり他のここに並べてある特別減税措置をとつたものと同等のウエイトがあるのか。或いはこの問題については、例えば十二月三十一日までこういうふうにやつて様子を見る、こういう方法もあると思うのですが、その点についてはどうですか。
  73. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 関税定率法の付則におきまして暫定的に関税率の軽減免除をいたしておるわけでありますが、それにはやはり物によりまして多少のニユアンスがあるように私どもつております。例えば或る品目については三月末日までというのは、それ以上絶対延ばさないというような初めからの意向のときもございますし、それから大体においてこれは延ばさなければならんかも知れないけれども、一応そのときになつて改めて見直そうということで、暫定的に一年間限つておるのもあります。或いは又、一年ではむずかしかろう、二、三年は続けなければならんかなという感じがございましても、或いは事情の変化によつて又見直す場合において免税を打切つたほうがいいことがあるかも知れないというふうに、いろいろニユアンスがものによつてあるわけであります。カーボン・ブラツクにつきましては、私の率直な考え方を申しますと、むしろ、できれば、できるだけ早い機会において軽減措置を打切つたほうがいいほうの品目に属するものと考えております。
  74. 小林政夫

    小林政夫君 ちよつと速記をとめて前田さんの意見を聞きたい。
  75. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  76. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 速記をつけて。
  77. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今、話を聞いてみるというと、量的にも需要に応じ得るところの態勢が整つておる。こういうふうなお話でありましたから、そうすると、現在の設備では、現在ではフルに働いていないのですか。どのくらい働いているのですか。
  78. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 只今六〇%ぐらいな活動をいたしております。
  79. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 六〇%働いているのですか。
  80. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) はい。
  81. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうすると、それは六〇%働いているというのは、輸入があるから、全部働かせると、能率を全部上げると過剰になるからということなんですか、その六〇%働いているところの理由は。
  82. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 先ほど申上げましたように、アメリカのように品質にバラエテイが日本ではないから、そこには一部分はすでに今日働かしても売れない点があるだろうと思います。併しすでに関税部長からお話がありましたように、国内には相当ストツクができております。従いまして生産は下げているのです。それから関税が実施されるということになりましたならば急激に増産ができますので、そういう意味も含ませた態勢でございます。
  83. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 さつきもお話のあつたように、アメリカのカーボン・ブラツクの種類は四十種類ぐらいある。日本には十種類ぐらいしかないということで、どう見たつてタイヤなんかに使うのであつたならば日本にできたところのカーボン・ブラツクでもいいが、いわゆる印刷用のインクを作るためにはアメリカのものを輸入しなければいけない、こういうふうな話もありますが、如何ですか。
  84. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 印刷インクには二通りございまして、一つは新聞インクでございます。新聞インクが黒では三分の二くらいを占めております。それから三分の一ぐらいが、それ以外の印刷のインクを占めているのです。その新聞以外の印刷におきまして、非常に高級な印刷、写真版の入つた高級の紙に印刷するそのインクは、現在では国産品では生産されておりません。これはインク用というものが最もカーボン・ブラツクの関税に関係のあるところであります。関税が値上げになつたら、それは三菱化成、東京ガス、日鉄化学、この三者において太刀打ちできるということをはつきり申しているのです。
  85. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうすると、現在暫定的な一〇%というものを二〇%の関税にしたらば、日本においても必要な三分の一の、立派なカーボンができて、輸入の必要はなくなつて来るというようなことを考えていいのですか。
  86. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 私はそういうふうに考えております。
  87. 小林政夫

    小林政夫君 念のために聞きますが、輸入品がトン当り十万円とすると、国内品の単価は十万円くらいですか、トンで。まあ物によるでしようが……。
  88. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 先ほどは平均を申上げましたので、輸入品でも最低が七、八万円から大きいのは六十万円ぐらいまでのものがございます。そうして一番大量に使われます、ゴム用の平均が、大体ゴム用が大部分でございますが、そういうものを平均いたしまして大体CIF十万円ぐらい、それに一割掛けまして大体十一万五千円ぐらいで輸入品が出ております。国産は大体十三万円ぐらいであります。もう一割上りますと十二万五千円ぐらいになるでございましよう。国産は十二万五千円ぐらいまでの線に下げよう。具体的に申しますと、そういうことであります。併し、個々の品質によりましては非常に高い物もありますが、高い物は高い物なりに、やはりその圏内にあるわけであります。そういう問題と同じ問題があるわけでございます。
  89. 小林政夫

    小林政夫君 米国ではいろいろバラエテイがあつて、四十種類ぐらいある。日本では十種類ぐらいしかない。これは作ろうと思えば技術はあるのですか。米国のバラエテイに相応する……。
  90. 中原乾二

    参考人(中原乾二君) 昨年の一年間における国産のカーボン・ブラツクの技術は非常な飛躍でございまして、私の見ている限りは大体どういう品種でも作り得る。ただ非常に少量しか要らないようなものが経済的に成り立つかどうかということには疑問を持ちますが、大口に使われるものについては大体経済的に成り立つと考えております。
  91. 小林政夫

    小林政夫君 関税部長に伺いたい。この件を決定するについて、あなたのほうではいろいろの人の意見を聞いておられるでしようけれども、我々が判断するのに、こういうところの意見は聞いておいてもらわなければいかんというのがありますか。今の中原さん以外に……。
  92. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) カーボン・ブラツクのメーカー側とユーザー側とを包含してできておりますカーポン・ブラツク懇話会の専務理事の中原さん個人の御意見かも知れませんが、今のようなお話でございます。ただユーザー側から申しますと、日本のカーポン・ブラツクは品質がまだ落ちておるということを言つておられるのでありますが、その点もやはり一つの判断の資料ではなかろうかと思われます。そこで若し参考的に意見をお聞きになるということでございましたら、或いは品質の点について、日本のものと向うのものとどの程度であろうか、又、日本の現在の技術はどの程度であろうかということを、別途、又、技術面のかたからお聞きになつたらよろしいのではないかと、こう考えます。
  93. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  94. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 速記をつけて下さい。
  95. 小林政夫

    小林政夫君 これは私の質問する趣旨を誤解してもらうと困るのだが、うちの緑風会では、強力に、こうしてもらいたい、この原案がよろしいという考えなんですけれども、私自身の勉強のために聞くと、コーンスターチの製造のための「こうりやん」「とうもろこし」を免税にしたのですね。これははつきりコーンスターチ用に供するということが確認できるのですか。
  96. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 関税定率法の一部を改正する法律案の第十三条の規定でございますが、この規定によりまして減税又は免税いたします場合におきましては、あらかじめ税関長が承認した工場においてやることになつておりまして、そうして工場を特定し、原料をはつきり確認いたしまして、その上で又製品を確認するということになつておりますので、漏れるようなことはないわけでございます。
  97. 小林政夫

    小林政夫君 それはもう確認は、この法規上は一々報告をとるということになつておるから問題はないのですけれども、実際僕は素人で全然知らないですから、製造工程等において、技術的に考えて、この通り運営できるのですか。
  98. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 従来から、これは現行関税定率法第九条第二項において、各品目について行われているのでありますが、従来の実績から申上げますれば、何ら只今までに支障は生じておりません。
  99. 小林政夫

    小林政夫君 それは従来、ほかの品種についてはそうですけれども、コーンスターチについてというのです。
  100. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) コーンスターチを製造いたしております会社は、日本では実は一つしかございませんので、これは誠にはつきりいたしております。
  101. 小林政夫

    小林政夫君 そのコーンスターチを作るメーカーは一つだけれども、その工場でコーンスターチ以外のものを作つているでしよう。
  102. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) その会社におきましては、コーンスターチだけを作つております。
  103. 白井勇

    ○白井勇君 私、全くの素人でわかりませんが、十三条の配合飼料のうち、政令で定めるというのは、何を意味しておるのですか。
  104. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 現在、飼料につきましては、実行上、農林省と打合せまして、どういう飼料かというテイピカルなものがあるわけでありますが、これを今度は政令で書くわけであります。その政令の内容といたしまして、只今予定いたしておりますのは例えば飼料の品質改善に関する法律の施行規則の規定に基きまして、三種以上の混合飼料でなければならん。それから、或いは「とうもろこし」については三つ割り以上に粉砕し、又は挽いて砕いてあるなど、現在農林省と打合せて実行いたしますことを法律で規定いたしますわけであります。即ち他の用途に使用できない程度の配合飼料でなければならん、大体の考え方はそういうつもりであります、
  105. 白井勇

    ○白井勇君 十二条では、主要食糧と申しますが、ここに書いてありますが、米、大麦、小麦、大豆、これはどういうふうになつておりまして免税減税の措置がとられておるわけですか。
  106. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 大豆につきましては、現在、定率法の附則におきまして、附則の別表甲号において免税いたしておるわけであります。今年の三月の末日までの免税期限でございまするが、更に一年間延長するように御提案いたしておるわけであります。
  107. 白井勇

    ○白井勇君 これは細かいことですけれども、これは米や麦、大豆は、今免税になつているから問題ないようですけれども、本来の建前からいいますと、税率が、例えていいますと、米につきましては一応一五%ですね、それから大豆におきましては一〇%、それから小麦におきましては二〇%、それぞれ或る程度のきざみがある、これは一体どういう考え方に基くのですか。
  108. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 鑑査課長より技術的なお答えを申上げます。
  109. 木谷忠義

    説明員(木谷忠義君) お答えいたします。農産物の関税につきましては、主要農産物は、消費者の側から見すと、成るべく関税が安いほうが負担が軽くなつてよろしいということでございます。又一方、生産者の側からしますと、農村保護と申しますか、農業保護の見地から、日本全人口の約四割七分くらいが農村人口でございまして、そのほうの保護の面から言いますと、農産物の関税は相当高くあるほうがよろしいという意見もございます、それで昭和二十六年の関税率一般改正の際には、これら主要農産物について、そのことにつきまして非常に細かく検討をいたしました結果、米につきましては前戦からの税率でありました一割五分、それを大体基準にいたしまして、一割五分ということに現在の税率はきまつたわけでございます。それから大豆につきましても、同様に、戦前からの税率がこれは従量税でございましたのですが、大体一割程度の税率がきまつたのでございます。それから小麦につきましては、小麦は日本の裏作奨励という見地から、戦前、昭和七年でございますが、相当高率の関税をかけてこれが定められた税率がありましたものですから、小麦についてはなお増産を相当奨励しなければならんという見地も農林省は持つていまして、そういつた保護の意味考えまして米より一段高い二割ということにきまつておりました。大体これが関税定率法の別表の税率でございます。
  110. 白井勇

    ○白井勇君 そうなりますと、昔の状態であれば、基本的にはそういうようなことでよかつたのか、知れませんけれども、而も二十六年あたりでこういう基本的な税率がきまるということ、になりますと、どうも私たち素人から見るというと、こういうふうに小麦が二十で大豆は十だ、米は十五だというふうにきざみ方をつけるのならば、どうも実態に合わないような感じを持つわけですが、これはどういうものですかね。今取りあえず無税になつておりますから問題はないと思いますが、基本的な建前としてはちよつとおかしいような感じがするのですが、戦前ならばまだ今のお話もわかるかも知れませんけれども、恐らく二十六年にそういう基本的なものがきまつたとしますれば、ちよつと変なような感じがしますが、どうですか。
  111. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 只今の御趣旨は、恐らく戦後の事情によりまして、一五%という税率は高いのじやないかと、こういうお話じやなかろうかと思いますが、主食につきましては、農林省で農業経済の観点から非常に大きな関心を持つておりまして、消費者の立場から見ますれば、現在免税になつておるからよろしいのでございますが、恒久的な税率といたしましても、或る程度将来の場合を見通しまして相当程度の保護関税をとつておいてもらいたいというのは、農林省の伝統的な強い要望でございます。昨年ガツトへ仮加入の際にいろいろ審議いたしましたときにも、主食関係については絶対に据置きをしないでくれという要求さえも初めはあつたくらいであります。我が国独得の農家経済保護の見地からそういう主張が出て参ると思うのであります。昭和二十六年この税率を決定いたしましたときにも、約二年近くに亘りましていろいろ各省と折衝したわけでありますが、その結論といたしまして、恒久的な税率としてはこの程度の関税率が最も望ましいということで出ておるわけであります。
  112. 白井勇

    ○白井勇君 そういたしますと、私、根本的にお伺いしてみたいのですが、その税率をきめます場合に、一応委員会があつて、そこできまつて国会に出て来るわけですね。今のお話のようにしますと、この税率につきましてはそれぞれ担当の各省にあらかじめお打合せになつて、その動きを大体とつておると、こういうふうに考えていいですか。
  113. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 各省の要求がそのまま通つておるということはございません。各省から思い思いにそれぞれの各省的立場から要求がございますので、私どものほうにおきましてはこれを統一的に見まして、更に場合によりましては財政的見地等をも噛み合せまして、いわば査定と申しますか、独得の案を作つておるわけであります。
  114. 白井勇

    ○白井勇君 そうしますと、私、農林省に当つたわけじやありませんけれども、先ほど申上げましたように、少くとも二十六年の段階から見ますればおわしいじやないかという気持を私は持つております、これは私の意見ですが……。先ほどカーボン・ブラツクの話が出ておりましたが、活性炭はどこに入つておりますか。
  115. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 活性炭は税番号千七百十三号木炭その他に入るかと解釈して取扱つております。
  116. 白井勇

    ○白井勇君 私もこれは誠に素人でよくわかりませんけれども、実はちよつと調べてみたのですが、これにつきましては、先ほどカーボン・ブラツクにつきましての関税率引上げの問題が出ておりましたが、主務省の通産省からは非常に強い要望がありまして、最近工場も六割ぐらいしか操業していないし、日本でも相当いいものができると、こういうことで、少くともこれは一〇%か二〇%にしてくれという要望があるが、それが据置きになつておるのは、これはどういうわけですか。
  117. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 活性炭につきましては、通産省の当該担当部局から関税率を引上げてもらいたいという要望がございましたので、私どものほうで調べましたところを御披露いたしますと、我が国における生産状況につきましても、年々相当の上昇を示しております。数学的に申上げますと、昭和二十六年度におきましては三千九十一トンの生産でございましたのが、二十七年度におきましては四千八百八十五トン、更に昭和二十八年度におきましては、四月から十月までの半年の数字でございますが、四千百四十トンというふうに、年々生産は上昇いたしております。これに対比いたしまして、輸入のほうは極めて微々たる数量でございまして、昭和二十六年度は五百四トン、二十七年度が二百十五トン、二十八年の四月から十月まで百七十トンというふうに、全体としまして輸入品の占める割合は極めて低いのであります。こういう点から見ますと、或いは若干価格の点におきまして引上げましたほうが、メーカーには都合がよろしいかとも思うのでありますが、公けに説明いたす場合におきまして、現在の関税率においても生産は相当伸びて輸入は大したことはないということになりますと、これを積極的に引上げるだけの理由付けが私どものほうになかなかできにくいということで、お断わりいたしたのであります。
  118. 白井勇

    ○白井勇君 そうすると、聞きましたところでは、もともとここに入ることがまずいのだという考え方があるのですね。実際私どもそう思うのですが、何も木炭ばかりから作るわけではないし、やはりこれはむしろ薬品なみの二〇%にしろという要求もあるわけであります。通産省あたりでは、最近、亜炭から何か非常に優秀なものができるという考え方が工業化できるところまで来ているようですが、そういう段階からいたしますと、今お話のように、差当りのところは輸入は少いかも知れないけれども、むしろこれから国内の亜炭を活用して、それによつて活性炭を安く作ろうというような工業化をするには、僅かのことではあるけれども、やはり二〇%なら二〇%ということにして、はつきりこの点を抑えておつてもらわんと、国内の産業の基礎がやはり安定しないと、こういう考え方があるのですね。誠にこれは尤もなことのように私は聞いておるのですが、これは一つもう一遍考え直してみられるお考えがないかどうか伺いたい。
  119. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 税表の分類につきましては、従来までのところ税番号の千七百十三号の木炭その他で一〇%の課税をしておるわけでありますが、これに対しまして六百九十五号の薬材、化学薬、医薬及びこれらの調合品(別号に掲げるものを除く。)は二〇%の率でございますが、この分類に入れたほうが適当ではなかろうかという意見もあるわけであります。私のほうにおきましては、果して今までの分類を変更すべきかどうかについては、更に慎重に研究しなければならんと考えております。それから又、活性炭の関税について一〇%を二〇%に上げる自主的の根拠につきましては、先ほど申上げたように、大蔵省といたしまして、これを公けに取上げて国会にお願いするほどの説明は、実は私どもなかなかできにくいということと、それからもう一つは、ガツトの仮加入におきまして、一応活性炭は関税率の据置きから除外品目になつております。フリー・ハンドはとれるわけでございますが、日本といたしましては、本年中には関税交渉を行いましてガツトに正式に加入いたしたい希望を持ち、又これを期待しておるわけであります。その際におきまして、引上げる場合におきましては、よほどの理由がないと、実は対外的の関係におきましても或いは悪影響があるのではあるまいかと、こういう気持も実はいたしておるわけであります。かたがた今回の関税定率法の改正におきましては、別表の輸入税率を変えないという態度をとつたわけでございます。
  120. 白井勇

    ○白井勇君 私はこれ以上申上げませんけれども、通産省では、一応、関税関係でも余り外国に影響はないと、こういうふうに、今のお話のように見ておるようです。まあこれは通産省でも、余りこれを問題にしますと、又、大蔵省に睨まれるし、事務当局としては余り委員会でしやべつてもらいたくないという話でありましたから、私は控えるつもりでおりましたけれども、まあちよつと申上げたのですが……。なお先ほどカーボン・ブラツクの話もありましたけれども、やはりこれは国内のいろいろな資源を活用して産業を興すというような意味合いにおきまして、なお一考を要する点がありますれば、よく通産省とお打合せになつて、又お考え願うということに一つ努力を願いたいという希望だけ申上げておきます。
  121. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 御希望はよく了承いたしました。十分考えさして頂きます。ただ関税率につきましては、なかなかこれはむずかしいのでございまして、或る関税率を引上げてくれないかという御要求がありますと、大蔵省としてはすぐ飛び付きそうなものでありますが、なかなかそうは行かないのであります。引上げようと思うからには、必ずそれに対するユーザー側のことも考えなければなりません。或いは関税率を引上げさえすれば、それでいい顔ができるかと言えば、必ずしもそうでない。引上げた場合におきましては、それに対するメーカー側のことも考えてやらなければなりません。なかなかむずかしいのでありまして、活性炭につきましては、只今縷々申上げましたように、ユーザー側の抵抗を排除いたしまして而も引上げるだけの積極的な理由に乏しいものと私ども考えたわけでありますが、なお活性炭のメーカーの状況等につきましては、今後十分にその様子を見て参りたいと存じます。
  122. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 十三条の第一項の第二号ですね、「油の製造に使用するための落花生」、こう書いてあるが、油製造のために落花生は現在どのくらい輸入しておるのですか。
  123. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ちよつと只今計数を調べておりますので、わかり次第お答えいたします。
  124. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 それから第四号の「アセトン及びブタノールの製造に使用するための変性糖みつ」、これもどのくらいの数量において輸入しておるか、おわかりになつたらお知らせ頂きたいと思います。
  125. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 只今の「油の製造に使用するための落花生」と共に、数字をはつきり調べましてお答えいたします。
  126. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 二十一条の第一項の第一号ですね、「あへんその他の麻薬」、こういうふうなものを、「政府輸入するもの及び政府の許可を受けた者が輸入するもの」と、こうなつているが、これもどのくらいの数量を輸入しているか、お知らせを願いたいと思います。
  127. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 二十一条の一号につきまして、「政府輸入するもの及び政府の許可を受けた者が輸入するもの」の数字につきましては、最近はないように記憶いたしておりますが、これもよく調べましてお答えいたします。
  128. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 それから附則の第八項です。「小学校又は盲学校、ろう学校若しくは養護学校の小学部若しくは保育所の児童の給食の用に供する乾燥脱脂ミルクで、……政令で定めるところにより、」と書いてありますが、これは乾燥脱脂ミルクの免税は政令でどういうふうに定められるお考えですか。
  129. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 現行の附則に基きまして制定しておる政令がございますが、それによりますれば、免税申請の手続、或いは免税を受けた輸入者の記帳義務、必要ある場合の業務報告、給食用以外の用に供した場合の報告等を政令で規定いたしております。この改正法におきましても、大体同様な趣旨によりまして政令を制定する予定であります。
  130. 小林政夫

    小林政夫君 今の数量の問題で、今度新らしく入つた木材の甲の「パイン、フアー、シダーその他の針葉樹」、「ロ その他」、建築用材だと思つておりますが、これはどのくらい輸入されるものですか。
  131. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 昭和二十九年度におきまして林野庁で見込んでおりますのは、約五十万石でございます。ただこれは多分に希望的数字も入つているようでありまして、果してその程度輸入が実現できるかどうかは疑問の点もあるかと存じますが、とにかく従来の実績よりも遥かに多くの数字を輸入したいという気持のようであります。
  132. 小林政夫

    小林政夫君 値段はドルですか。ポンドですか。それからどこから輸入するのですか。
  133. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 只今林野庁で見込んでおりますのは、数量にいたしまして五十万石、単価石当り四千円という見込みでございます。
  134. 小林政夫

    小林政夫君 輸入先は……。
  135. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 先ほど藤野先生から御質問がございました、油を製造するための落花生の輸入額はどの程度であるかということでありますが、昭和二十八年度におきまして、四月から十二月までの数字でございますが、七百七十四万八千円でございます。なおアセトン及びブタノールを製造するための変性糖みつの輸入価格は、同じ昨年の四月から十二月までの期間におきまして三億一千百八十六万八千円という数字に相成つております。
  136. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今この陳情書を見てみますと、新聞社の代表からは紙が足らないから無税にしてくれ、一方の洋紙界のほうでは余るからというようなことになつているが、一体どちらが本当でしようか。
  137. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 最近におきまする新聞用紙の需給状況を数字的に申上げますと、昭和二十七年におきましては、国内生産の新聞用紙の数量は六億一千四百五十二万六千ポンド、これに対しまして昭和二十八年におきましては九億九百五十八万九千ポンドというふうに、飛躍的に増加いたしております。昭和二十九年におきましては、これは見込みでございますが、一応十億四千六百万ポンド程度は生産されるのじやなかろうかという予想でございます。これに対しまして国内の消費でございますが、消費は昭和二十七年におきまして六億四千五百七十四万六千ポンドでありまして、二十八年におきましては九億二千三百三十八万六千ポンド、昭和二十九年におきましては十億三千九百万ポンドでございますが、なお只今申しました生産の数字のほかに、二十七年におきまして輸入いたしました新聞用紙の数量が千六十二万六千ポンド、二十八年におきまして二千七百三万六千ポンドという数字に相成つております。これを対照いたしますと、若干生産よりも消費のほうが多いようになつておりますが、生産の数字と輸入の数字とを加えましたものと、それから国内消費とを較べてみまして若干の差が出ますところは、これはいわゆる代替品によりまして補なつているようでありまして、この数字を見ますと、生産のほうは年々順調に増加いたしておるようであります。ただ消費のほうは、これは戦争前のような建頁ということになりますれば、これは遙かに需要が増加するわけでございますが、この現在程度の建頁であるならば、大体において生産は需要を賄なつて丁度いいのではなかろうかと、こういう通産省の見込みのようであります。但しこれにつきましてはいろいろ議論のあるところでありまして、必らずしも十二分にストツクがあるようには生産はできておりません。大体消費におつかつ程度の生産であります。従いまして、通産省においては昭和二十九年度におきまして万一緊急輸入をするような事態があつた場合におきましては、約十五日程度の新聞用紙の輸入を確保する程度の資金をリザーヴしておる、こういう意向のようであります。
  138. 小林政夫

    小林政夫君 輸入先は……。
  139. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 昨年輸入いたしましたのはカナダでありまして、昭和二十七年に輸入いたしましたのはアメリカでございます。なお昨年輸入契約いたしましたものの中で、フインランドから参りましたものがまだ本年度一ぱいに全部入つて来ないという見込みになつておりまして、フインランド物が或る程度二十九年度に繰越すということになつております。
  140. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 二十七年度はどこから……。
  141. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 二十七年はアメリカでございます。これがあとで問題になりました詐欺事件の新聞用紙でございます。
  142. 小林政夫

    小林政夫君 いや、今、私の聞いたのは建築用材のほうですよ。新聞じやないんですよ。
  143. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 大変失礼いたしました。新聞用紙と思いまして新聞用紙の輸入先を申上げましたが、木材は只今のところアメリカとカナダを予定いたしております。  先ほど藤野先生から、政府又は政府の許可を受けて麻薬類を輸入した数量はどのくらいあるかというお尋ねでございましたが、昭和二十七年度及び二十八年度中におきまして、輸入業者政府の許可を受けまして輸入いたしました実績は若干ございまして、ペルーの国からコカ葉二十六トンを合計で輸入いたしております。
  144. 小林政夫

    小林政夫君 建築用材が安いということですか、入れるのは。この輸入に仰ぐというのは日本の木材資源の節約のためなんですか。狙いは何ですか。
  145. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 価格といたしましては、運賃その他を加えますと日本のよりも安くないようであります。ただ木材資源を保護する、保存する意味におきまして、林野庁で相当輸入さしておる、こういうわけであります。価格におきまして国産品よりも多少高いのでありまして、免税してくれ、こういう要求であります。只今の木材の価格は、更により正確に申上げますと、つが属におきましては、最近CIF価格で四千百七十円でございます。ただこれにチヤージ等を加えるわけでありますが、これに大体同じものではございませんが、杉の小角という国産品によりますと、市価は四千三百五十円でございますので、先ほどのつが属の四千百七十円のCIF価格でチヤージを加えまして、大体国産品より安くはならない数字になるのではないか、こういうふうに考えております。
  146. 小林政夫

    小林政夫君 今の建築用材と言われるが、木履、下駄用材も入つておるのですか、最近、米、カナダあたりから。僕のほうは木履の産地があるのですがね。
  147. 木谷忠義

    説明員(木谷忠義君) お答えいたします。木材のうちで下駄のほうに主に使います木材は桐でございます。桐は別の項目になつておりまして、今度の免税の項目の中には入つて来ないのであります。
  148. 小林政夫

    小林政夫君 桐は非常に高級なんだけれども、非常に下級な下駄で、我々の松永という町は下駄の町といわれておるが、これは雑木でやつておるわけなんです。それはこの恩恵に浴するのか浴しないのか。最近大分アメリカ、カナダ方面から入つておるようですね。
  149. 木谷忠義

    説明員(木谷忠義君) どういう種類の木材が下駄のほうに現在使われておりますか、なおよく調べてから御返事申上げます。
  150. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 最近の国際的な関税の定率は又そろそろ関税障壁をだんだんと設けられるような傾向にあるように思うのでありますが、日本としては、これらの情勢に対処して、今の関税定率法を改正する法律案、これは条文整理も大分ありますが、一体国際的な傾向に対してどういうふうな態度で臨むかということは一つ大きな問題だと思うのですが、税関部長は一体どう考えておられるのですか。
  151. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 第二次世界大戦後、疲弊した世界経済を建て直すには、これはどうしても自由通商によつて行かなければならんという大きな理想の下に、各国が集まりまして、昭和二十二年にガツトというものができたわけであります。その当時の理想といたしましては、関税障壁を非常に低下して、お互いに通商を自由にやろうじやないかという精神で参つたわけでありますが、その後の世界情勢の変化、即ち一方においてはドルが不足し、一方においてはドルが余る、或いは二つの世界の対立等から物資の交流も思うようにならないということから、次第に、自由通商の精神、当初の溌剌たる自由通商の精神が多少ゆがめられたような恰好になつております。最近におきましては、ガツトにおきまして約束いたしました税率につきましても、その後の事情の変化から、国によつては堪えがたいものとなつて来ておりまして、この頃ガツト税率を引上げてもらいたいというような意見も出て参つておるのであります。ただ関税率につきましては、一番目下のところ大きく支配いたしますのは、何と申しましてもアメリカの動向であろうかと思うのであります。アメリカにおいては御承知通りに、共和党は従来から保護貿易論者が多うございまして、アイゼンハワー大統領が昨年就任いたしました後におきましても、アメリカ対外通商政策というものがなかなか容易に確立しなかつたわけであります。従来の共和党の伝統の方針であるところの保護貿易政策からいえば、自由諸国家の要請を無視して関税率を引上げるということは一応考えられるのでありますが、これに対して政府においては必ずしもその方向には向つていないようであります。昨年の前半におきまして、アメリカにおいて各種の品目について関税の引上げの要請が政府等に提出されたのでありますが、政府においては、或いは関税委員会の答申を大統領が拒否し、或いは又、関税委員会が引上ぐべきであると結論し、或いは又、業者が自発的に取止めるというようなことで、現状におきましては一応関税引上げ運動が若干休止されておるような感がございます。併しこれは恐らくはアイゼンハワー大統領が設立いたしましたランドウル委員会の報告を政府如何にこれを取り入れて行くかという点を各業界は見守つておるようでありまして、このランドウル委員会の報告そのものは、より自由な通商ということをモツトーといたしておりまして、おおむね欧州諸国その他の自由諸国家が要求しておりますものには十分ではありませんけれども、より自由な貿易のほうに持つて行こう、こういうような考えであります。私どもといたしましては、この世界の関税政策が今後如何に変つて行くかということについては非常に興味深く関心を持つて見守つておるのでありますが、差当りにおきましては、来る六月十一日を以て一応期限が参りまする互恵通商協定法の延長に絡んで、現アメリカ政府如何法律の改正を提案するであろうかという点に注目しておるわけであります。大体の方向といたしまして、恐らくはランドウル委員会の報告をそのまま受入れて提案をすることはないであろうけれども、少くとも共和党の年来の伝統であるところの保護貿易政策に徹するということはなかるべしというのが大体一致した意見でございまして、私どもアメリカ政府の今後の動向を注意して見守つておるわけであります。このアメリカ政府の動向が、又同時に私どもが昨年非常に苦心いたしました日本のガツト加入の問題につきましても大きなインフルーエンスを持つて来るのでありまして、ここ数カ月は十二分にアメリカの動向を注意して行く必要があろうかと考えます。大体の方向といたしましては、昔のように関税戦争を引き起すというようなことは各国とも避けたいような希望ではありますが、現実の情勢としては、それぞれの国内事情もありまして、自由通商の理想と国内産業の保護という二つの要請の矛盾に悩んでおるというのが世界各国の状況ではなかろうか、こう考えます。
  152. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういう際に、日本のこの関税定率法は、若干敗戦直後非常に物資が不足して、あらゆる食糧から繊維品、すべてのものが不足をいたしましたので、相当無税で輸入して不足物資を補おうとした傾向があつたことは、これはお認めになると思うのですが、従つて今のフリー、無税というのは大分多いのですが、これらについてもそろそろ再検討しなければならないやつが出て来ておるのじやないかというふうに私は思うのですが、例えば皮類であるとか、その他毛皮の製品、これらについては考えなければならん。それから今年はまあ政府の緊縮予算で、輸出は増進しなければならんが、輸入は極力抑えよう、こういう方針一つあるわけですが、できる限り国内品で、化学製品にいたしましても間に合せるようにしなければいかんというときに、化学製品なんかでも大分無税のものはまだ相当あるわけなんです。これらについて、この機会に定率法改正案を出される場合に、一つ一遍振り返つて見る必要があるのじやないか、かように私は思うのですが、毎年、関税定率法の改正が出されましても、終戦直後の物資不足なときから、今日大分いろいろ余つて来ておる、デフレ傾向に向おうとしておる矢先に、この際ちよつと関税のほうでも考えなければならん問題があると思うのですが、これらについて御検討になつた上、今回お出しになつたかどうか、余り定率のほうの改正はないわけですがね。
  153. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 現在の関税定率法の別表輸入税表は昭和二十六年に全面的に改正をいたしまして、従価税一本やりで来ておるわけでありますが、その改正のときの方針といたしましては、日本が将来ガツトに加入いたします場合におきましても、世界の各国から公正なる税率を現在持つておるというふうに見られないと工合が悪いということもございまして、曾つて課税いたしました奢侈品の従価一〇〇%などという税率は全部廃止いたしまして、最高五割の税率で抑えたのであります。この税率は世界各国におきましても比較的公正、むしろ多少低いほうの税率に属するかと思われるのでありますが、終戦当時の事情と只今と比べて、この関税率を一般的に改訂する意向はないかという御質問でございますが、この点については、昨年日本がガツトに仮加入いたします際に、現行の税目のうち約九二・五%に相当いたしまする品目につきまして、来年の六月まで又は日本がガツトに正式に加入するまでの期間据え置くということを約束いたしたのでありまして、国際的に現在関税率の引上げは縛られておるような状況でございます。但し若し仮にこの制約がない場合において、相当関税率を引上げるのではないかというようなことについては、私どもといたしましては、昭和二十六年に設定いたしました関税率は、比較的国際的に見ても妥当と言われる税率であると考えておりますので、仮にガツトによる制約がない場合におきましても、全般的に関税率を改訂するというようなことは、その必要をまだ感じておらないわけであります。今回の関税定率法の改正におきましても、別表の輸入税表については、只今申しました考え方或いはガツトの仮加入の際の制約等も考えまして関税率の改訂を行なつてないわけでございます。
  154. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それからもう一つお尋ねしたいのですが、税関の問題ですけれども、港湾を視察いたしましたときに、昔、税関長のところへ行けば、殆んど戦前輸入輸出手続を殆んど完了して、税関長が殆んど権限を持つて今までやつてつたのです、そういう事態があつたことはお認めになると思う。古い時代は別といたしまして、かなり税関と申せば税関一本で片がついておつたのですが、盛んに最近は運輸省のほうの海運局関係の役所ができまして、同じような書類をほうぼうへ出さなければならんというので、これについて業者のほうでは、もつと港湾行政と言いますか、港のほうの行政の簡素化をしてもらいたい、どちらかに統一してもらいたい、こういう要望があるわけですが、これは定率法の問題とは違いますけれども、関税部長おいでだから一つお尋ねしておきたいのですけれども、この問題は一つ御検討にあなたのほうはなつておられるかどうか伺いたい。
  155. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 港湾行政機構につきましては、只今御指摘がありましたように、現状では甚だ各種の機関が乱立いたしておりますし、そのために又行政も非能率になつておるという点は否めない事実と思います。戦前におきましては、これは大正十三年に相当大きな港港行政の機構の変革がございまして、その際、動植物の検査、検疫或いは人の検疫等につきまして、すべて税関において統合してやつてつたわけでございます。こういう状態が昭和十六年まで続いたのでありますが、昭和十六年の例の臨戦体制の整備という当時の要請によりまして、逓信省に海務局ができまして、それが更に海運局となり昭和十八年におきましては税関をすべて吸収して、税関というものは一応姿を消した恰好になつております。これが昭和二十一年の六月再び税関が開かれるということになりましたのでありますが、その際におきまして、従来税関が実行いたしておりました仕事については、例えば動植物の検査については、これは農林省が別な検査機関、検査所を持つ、或いは人の検疫については厚生省が別な機関を持つというふうに乱立して参りまして、殊に終戦後のアメリカの占領下におきまして、アメリカ行政機構というのは大体において縦割りになつておりまして、仕事の機能によつて中心から下までずつと縦に一本に貫く線でありますので、そういう思想から日本の昔の海事官庁の機構をすつかりばらばらにしたのが現状でございます。この結果、業者といたしましては、単に税関だけでなく、動植物の検査所にも或いは検疫所にも、その他、又、貿易管理については通商事務所或いは通産局等と、奔走しなければならんわけであります。非常に非能率になつておることは事実であります。これにつきましては、結局、港湾行政機構をどういうふうに持つて行くかということは非常に大きな国の方策の一つでございまするので、私どものほうといたしましては、大きな見地から考えて、昔のように簡素な姿において港の機関が統合されて、そうして各省大臣は別々にその港の官庁を所管事項については指揮監督するという方法で行われるならば、比較的うまく能率的に行われるのじやないかというふうに考えておりますが、なかなか各種の抵抗もございまして、私どもの期待が実現できないような現状でございます、
  156. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それから、これは課長さんでもお答え願いたいと思うが、大体、御方針、御意見がわかりましたので、条文に入りまして、十一条の「加工又は修繕のため輸出された貨物の減税、」これは一体具体的にどういうものを想像してこの条文を設けられたのですか。
  157. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) この条文の考え方を申上げますと、この条文は新設でございまして、従来は日本から輸出されまして五年以内に、元の性質形状のままで入つて来た場合には関税を免除するということになつております。そういたしますと、或る必要がありまして外国へ物を持つて行く、そこで加工又は修理をされて、当初出て行つた姿とは変つた姿で日本に又入つて来る、そういう場合には、入つて来た場合に、全部税金をとられるわけであります。それが場合によりましては非常に酷なことがございます。例えば日本ではどうしても加工修理ができないような機械がございます。輸出先へ持つて行かなければメーカーが直してくれないようなこともございます。そういう場合に、前と性質形状を変じたからと言いまして、次に入つて来るときに全部税金をとるということは非常に酷であると考えられますので、そういう場合におきましては、加工によるところの価値の増加分だけに対して関税をかけることができるように措置いたしてあるのがこの条文でございます。
  158. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いや、これは実際問題として、今そんな十一条のようなものは、現実にそういう品物はあるのでございますか。どういうのが主に利用されておるのかどうかということを聞きたいのですが。
  159. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 現在この規定はございませんので、そういうふうに加工修理された場合、当初のものと性質形状が変りますと全部課税いたしておるのでございますが、今度免税いたさなければならんものと予想される事態につきましては、鑑査課長から最近の事例をちよつと御説明申上げます。
  160. 木谷忠義

    説明員(木谷忠義君) 最近、修繕のために輸出されたものの例としましては、ドリル・ビツト、これは鉱山などで孔をあけますとき鑿岩機の先に付けるドリル・ビツトでございますが、そういつたようなもの、それから時計の検査機械でございますとか、又は紡糸用のポンプ、それから、自動記録硬度試験機と申しますか、こういうふうな例がございます。
  161. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それから十三条でございますが、製造用原料品の減税又は免税という欄に、一、二、三、四、ずつとこれが各項あるわけですが、この製造用の原料品ということになりますると、一番大きなのは棉花だとかそれから羊毛ということになるわけですね、一番大きな製造用の原料品ということになると……。これらにあるのは特別なものばかり、特定なものばかりを少しずつ出しておるのでありますが、もう製造用の原料品ということになれば、原則としてあなたのほうの税関としては……、こつちの、日本の品物が割高だ、割高だということを盛んに言われておりますが、それが対策として、製造用の原料を使つて今度は輸出をするというものについては、すべてこれは免税という方針をおとりになるかどうか。これは一つこれと関連しまして問題だと思うのですが、割高だ割高だと言つて税金を一々かけておつたのでは大変だと思いますが……。
  162. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) この十三条の規定のこちらのところに製造用原料品とありますので、若干誤解を招く元となつておりますが、これは特定の物資を製造するためにどうしても免税又は減税しなければならない場合の規定でございまして、一般的にすべての原料品について減税又は免税するという趣旨ではございません。ここに掲げてありますのは、或いはでき上りますものは無税品になるような場合、例えば飼料ということになりますと、これは税表では無税でございます。ところが入ります「こうりやん」、「とうもろこし」は有税品、無税品を作るようなものについては免税をする趣旨も入つておりますし、或いは又日本において生産を奨励すべきものでありまして、その原料について関税を輸入税表通りにかけるときには、その産業の基礎を危うくするというような場合におきまして免税している事例もございます。例えば四号の「アセトン及びブタノールの製造に使用するための変性糖みつ」そういう趣旨のものであります。油の製造に使用する落花生、落花生としては一般的には免税しないけれども、落花生油というのは極めて重要な油脂食品でございますので、そういうものについては免税するというような、それぞれ目的があつて特定の物資を製造するための原料品を免税いたしておるのでありまして、すべての原料品について免税するという趣旨では毛頭ございません。なお、この十三条の製造用原料品の免税又は減税のほかに、輸出貨物の製造用原料品の減税、免税、又は戻し税というのが十九条に規定してございます。これは特定のまあ歩留その他が相当はつきりしたものでなければ工合が悪いのでありますが、そういうもので特定の輸出品の製造に使用するための原材料については、政令で品目を指定いたしまして免税する措置が講ぜられております。この輸出原材料の製造用原料品の減税、免税又は戻し税につきましては、今後の貿易状況によりまして必要ある品目につきましては、できるだけ政令において指定いたしまして、貿易の振興に多少でもお役に立つようにいたしたいと考えております。
  163. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一つお尋ねしたいのは、砂糖の輸入につきまして、これは、こういうことを言つている論者もあるわけですが、砂糖はこちらで輸入いたしまして製品にしますと、非常に精糖会社というものは儲かるものだ、だからその砂糖の儲けを或る程度、今度は輸出をする場合に、硫安その他の品物が出て行くのに、こちらでは品物が割高であるためになかなか向うへ売れない。だからこういつた割高品を安く売るために、砂糖のほうで儲けたのをそちらへ廻すという操作も行われておる。従つて硫安の輸出代まで砂糖の税金を払わなければならぬことになつて来る。これは砂糖の消費税の際にもう一遍お尋ねしたいと思うが、あなたのほうの輸入の税関行政の面においては、そういうことは関係ないですか。
  164. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 税関行政の面におきましては、そういうことは関係ございません。
  165. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 アメリカが最近関税をグツと急に上げたようなものはないですか。
  166. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 昨年アメリカにおきまして関税引上げ運動の対象になりました品目は、冷凍及び生のまぐろを初めといたしまして、塩水漬けのまぐろの罐詰、それと陶磁器、ミシン、捺染絹スカーフ、時計用の金属製腕輪、それとロザリオと申しまして、キリスト教の儀式に用いる珠数みたいなもの、吹きつけガラス製品等がございますが、結局引上げの実現をみましたのは乾燥いちじくだけであります。
  167. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 陶磁器の七宝焼は……。
  168. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 七宝につきましては、恐らく陶磁器というところで引上運動の対象になつたかと思われます。但しこれにつきましては、只今申しましたように、一品目除きまして、或いは関税引上げのための予備的な審査機関であります関税委員会が拒否いたしましたり、或いは大統領が拒否いたしましたり、或いは又、業者が自発的に運動を中止する等によりまして、実現を見なかつたわけであります。ただ一昨年まぐろの罐詰につきましてガツト税率に関係のない部分について引上げられた経緯はございます。その結果、我が国のまぐろの輸出が急激にとまつたようなこともあつたわけであります。昨年中といたしましては乾燥いちじくが引上げとなつております。
  169. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はさつきこういう質問をしたのは、ランドール委員会の結果、あなたは非常に楽観的な見方を話されて、本当にそういうふうになれば非常にいいかと思つておるわけですけれども、そういうあまいものではないのじやないかと実は私は考えておるのです。併しランドール委員会の報告のようなふうにアメリカがやつて行かなければ、私はアメリカは国際的に孤立しなければならんだろうと片方では思つているのですが、併し国際情勢はそれを許さんのじやないか。それに対して、こうした関税の全般に対して、菊川君が言つておられたのですけれども、考慮してこういうことを考えたか。それに対して今のようなあまい情勢の下にこういうものを作つたんだと、或いはガツトとの関係でこうだとおつしやるのですが、お聞きしたい点は、そういうふうに向うがぱつと上げて来たものに対して、何かこう、報復的と申しますか、と言つちやいけないわけですが、そういうことじや困るからと言つて、こちらのほうから働きかけて下げるというのですか、その了解を得るというようなことは、そういうことはできないものですか。これは又現にやつておられるのですか。
  170. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ランドール委員会の報告につきましては、私も必ずしもそれが全面的に制限されるとは思つておりません。ただお話がありましたように、アメリカ政府としては、自由諸国家の大きな要望であるところの、援助よりも貿易をというような大勢は、これは無視することはできないかと考えます。ガツトの会議におきましても、アメリカは殆んど各国から関税引下げを迫られておるような状況でありまして、これを無視して全然ランドール委員会の報告を採用しないということは、私はまあ考えておらないのでございます。今或る程度ランドール委員会の報告というものに対しまして修正は加えるだろうけれども、大勢としては、やはり西欧等の自由諸国家の要望する方向に少くとも一歩近付けるようにするのではなかろうか、こう考えて申上げたわけであります。なお例えばアメリカ等が日本の主要輸出品に対しまして関税を引上げるというような事態につきましては、それこそガツトというのが一つの交渉の場でございます。ただ日本は残念ながら昨年関税交渉をいたしませんので、仮加入という方式でいたしましたので、現在のガツト加入国のガツトで協定いたしました税率は日本品が目当になつておりません。従つて日本の主要輸出品に対しては、ガツト税率というものが定められてないのが相当多いのでありまして、これについては正式に関税交渉会議があります際に、日本としてはそういう品目に対して各国に引下げを要望すべき筋合いになつて参ります。これが恐らくは、私どものこれは希望的推測かも知れませんが、本年の秋以降におきましてガツトというものは再検討されて、何らかの形で又関税交渉が行われるのではなかろうか、こういう気がいたしまするので、その場においてこそ、私どもは、各国に対しまして、日本の主要輸出品に対して適当な税率の協定をいたしたいと考えておるのであります。
  171. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは逐条でやつておるわけですが、非常に小さな問題ですが、附則の八、九に関連してお尋ねするわけですが、脱脂ミルクの問題です。ここで言うと、学校で脱脂ミルクを若し生徒に使わなくて、それがよそへ流されたような場合は、直ちにその場で関税を取る、こういうことになつているのですが、その場合に、これを支払う義務者ですね、関税を納付をするその義務者は、これは誰になつているのですか。
  172. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは関税の免除を受けました学校給食会から追徴をいたすことになります。
  173. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 実際、変質しているのか、そこの境が非常にむずかしいと思うのですが、実際、学校では、こんなことが行われて問題になつたことがある、子供はこれを飲みたくない。いやがる。そうして給食設備も十分なつていない。そこで配給を受けたというか、この脱脂ミルク二罐なら二罐持つて行く。内地のやつは引替えできるわけですよ。値段もそうしますと二対一ぐらいだと大体とんとんに引合う。ですから、そうやつて子供に、片つ方では学校の先生たちも、そうやつたほうがいいだろう、子供も喜ぶからいいだろうと、こう言う、そういつた場合に、或る程度期間が経つておるから変質になつたというようなことは言えると思うのですが、そういうような変質なのかどうだろうかというようなことについては、一々誰のところへ届けて検査するのか。
  174. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) まあこの規定は大きな目で見まして網を被せてあるわけでありまして、相当悪質なやり方によりまして横流しするという場合のチエツクの考え方でありまして、例えば学童が学校でもらつたのをその場で飲まなくて持つて帰るというような場合には、これは給食用に供したのだというふうに考えるのがよいかと思つております。要は結局悪意を持つて横流しをするというような場合のチエツクする規定でございます。
  175. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 昨日の新聞ですか、馬鹿に又南京虫ですか、飛行機でたくさん入つているようですけれども、実際ああいう密輸入が今でも盛んに行われているのですか。そうしてあなたのほうの統計があるなら、例えば昨年とその前の、前年度と比較して、増加の傾向にあるのかどうか。
  176. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 最近におきまする密輸出入についての事件の検挙の実績を年度別に比較して申上げますと、暦年でございますが、昭和二十六年におきましては、検挙いたしました件数が千四百三十七件、犯則物件の価額は四億二千二百万円、昭和二十七年におきましては、検挙件数は千百四十五件で、犯則物件の価額は五億三千五百万円、更に昭和二十八年の検挙件数は千四百九件でありまして、犯則物件価額といたしましては五億九千八百万円、こういうふうに、犯則の検挙件数においても、犯則物件の価額におきましても、なかなか容易に減少するような恰好にはなつておりません。ただ私ども考えといたしましては、これは密輸が減らないというのではなくて、検挙の能率がむしろ上つたものと私ども考えております。戦後、一時無秩序状態になりましたときにおきましては、機帆船を仕立てまして大つぴらに密輸出入をいたしておりましたが、その後、経済秩序の回復と共に、主として外国貿易船等によりまする密輸出入という形になつてつたのであります。全体の検挙件数は相当上つてはいますが、密輸の大勢といたしましては、やはりだんだん絶対量としては少なくなつて来ているのじやなかろうか、こう考えております。
  177. 小林政夫

    小林政夫君 それではちよつと一言……。ここで林さんを煩わすほどのことはないのですが、附則の十六項で、「この法律の施行前に、この法律による改正前の関税定率法の一部を改正する法律(以下「旧一部改正法」という。)」と、ここで簡単な表示にいたしておる。ところが、この法律は十四項に出ておる法律である。そこで、こういう簡略表示をするならば、十四項のところでやつたほうが読みいいのじやないか。この点についてはどういう御見解ですか。
  178. 林修三

    政府委員(林修三君) 御指摘を受けまして甚だ恐縮でございますが、一応今までの方式といたしましては、実はこういう方式もやつておるのでございます。今御指摘のように最初に法律が出ました際に、そこで直ぐ以下何とかということをやるという例も勿論ございます。ただ、この場合は、実はこれは御覧頂きますと分るのでございますが、これは非常に技術的に相成りますが、十四項のほうは「関税定率法の一部を改正する法律」ということで、これはいわゆる昭和二十六年の法律百十号、そういうものをそのままの形で実は引いておるわけです。この十六項のほうは、「この法律による改正前の関税定率法の一部を改正する法律」、つまり十四項で改正される前の形を実は引いた、そういう多少ニユアンスの意味がございまして、御指摘のような引き方をする場合もあるのでございますが、この場合はそういう意味でございまして、特にこの略示を十四項に入れないで十六項に入れた、かようなことになつておるのであります。
  179. 小林政夫

    小林政夫君 いや、そういうニユアンスが、「この法律による改正前の」という形容詞が付いておるからこそ、私、読んでみてどうも紛らわしいのです。ところが読んでみると、十六項のものと同じだ。「改正前の関税定率法の一部を改正する法律」というのは十四項にある昭和二十六年法律百十号なんです。これはなぜ改正前の云々とやつたかというと、これは今提案されておるものが同名の法律だから、それをやつておるのであつて、それを十分わかりやすくするという意味からいうと、どうも如何にもこれを読むと別の法律じやないかという気がして、やつてみると同じ法律だ。だから簡略表示を用いるならば前のほうに用いたらいいのじやないか。而も十五項において全く同じような、今ちよつと或る法制専門家に聞いても取り違えておつたのは、この十五項の法律とどこが違うのかということなんです。「一部を改正する等」、この「等」があるだけで、違う、非常に紛らわしい法律が竝んでおる。簡略表示を用いるなら前から用いていつたらどうか。成るべく法律というのは一読してわかるように一つ作つてもらいたい。
  180. 林修三

    政府委員(林修三君) 御指摘を受けまして誠に実は恐縮でございまして、この法律の附則は、御指摘を受けます通りに非常に実は技術的にでき過ぎておる嫌いがございます。この点は私どもも卒直に認めるところでございまして、いろいろこれはこの法律の施行期日などの関係で極めて技術的な表現をとつておりますので、今の十匹項と十六項の関係、或いは十五項に「関税定率法等」と「等」という字が加わつただけで別の法律が出て来たり、こういう点は技術的過ぎるとお叱りを受けますことは誠に恐縮でございまして、そういう点は確かにあるわけでありますが、これは今御指摘のような表現方法を勿論今までやつておる例もございます。又強いて弁解いたしますれば、こういう表現方法をやつておる例もあるわけでございます。ただ今度これをとりましたのは、どちらかと申せば、十四項では「附則第四項から第八項までを削る。」と書いて、附則第六項というのは十四項で一応削られるわけである、削られる前の第六項を十四項で引こう、こういうわけでございまして、ここでこの法律の改正前の関税定率法というものを出して来たいという、多少含みというか、そういう意味があつたことは確かにあつたのでありまして、御指摘の点御尤もでございますので、以後はもつとわかりやすく立法することを考えております。
  181. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちよつとお尋ねします。この密輸入の問題についてお聞きしておりますと、件数は同じくらいですが金額が殖えておる、或いは品物も違つておるのじやないかと思いますから、そういうようなことについて一つ資料をお出し願いたいと思います。
  182. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) かしこまりました。
  183. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 この次の委員会で逐条的に一つお聞きしてゆきたいと思いますが、これは条文整理みたいな大分大幅な整理の法律ですから、この際お聞きしておきたいと思いますが、政令で定める、政令で定めるという条項が多いのですね。これらについての、大体こういう政令を作るという政令の要綱と申しますか、そういうものはお考えになつておるのか。これは資料として提出願わなくても結構ですが、あなたのほうの、大体こういう政令をこしらえてこういう取締をするのだという構想はおわかりになつておるのでしようね。
  184. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 仰せの通りでございます。大体政令の構想は私ども考えております。
  185. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会