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1954-03-11 第19回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会   ————————————— 昭和二十九年三月十一日(木曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大矢半次郎君    理事            藤野 繁雄君            小林 政夫君            菊川 孝夫君    委員            青柳 秀夫君            岡崎 真一君            土田國太郎君            前田 久吉君            三木與吉郎君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            東   隆君            堀木 鎌三君            平林 太一君   委員外議員            堀  末治君            島村 軍次君            秋山 長造君   公述人    東京新聞論説委    員元税制調査会    委員      福良 俊之君    十条製紙株式会    社専務取締役経    団連財務委員会    委員      金子佐一郎君    全日本自治団体    労働組合中央執    行委員長    占部 秀男君    東京法人会連合    会常任理事税制    委員長     中村 重喜君    元税制調査会及    び地方制度調査    会委員     三好 重夫君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○相続税法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣送付) ○酒税法の一部を改正する法律案(内  閣送付) ○砂糖消費税法の一部を改正する法律  案(内閣送付) ○物品税法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○揮発油税法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○入場税法案内閣送付) ○しやし繊維品課税に関する法律案  (内閣送付)   —————————————
  2. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) これより所得税法改正その他税制改正に関する公聴会を開会いたします。  公述人のかたは、東京新聞論説委員、元税制調査会委員福良俊之君、十条製紙株式会社専務取締役経団連財務委員会委員金子佐一郎君、全日本自治団体労働組合中央執行委員長占部秀男君、東京法人会連合会常任理事税制委員長中村重喜君、元税制調査会及地方制度調査会委員三好重夫君の五名であります。公述人の各位は御多忙中にもかかわらず当委員会にわざわざ御出席下さいまして、厚く御礼申上げます。今回の税制改正は、国税地方税を通ずる相当広汎なものでありまして、現下我が国経済事情よりして慎重検討を要するものがあると思われます。この際、各方面の権威ある方々の御意見を十分拝聴いたしまして審議の十全を期したいと存じます。公述人のかたは何とぞ忌憚ない御意見を御披瀝下さいまして、私ども審議に貴重なる資料を提供して頂きたいと存じます。大体お一人の公述時間は三十分程度といたしまして、その後、各委員質疑があればお答え願いたいと存じます。  なおこの際お諮りいたします。本日は委員外議員方々の御質疑は随時これを許可いたすことにいたしだいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 御異議ないと認めます、よつてさように決定いたしました。  それでは先ず東京新聞論説委員、元税制調査会委員福良俊之君にお願いいたします。
  4. 福良俊之

    公述人福良俊之君) 私、福良であります。本委員会に提案されております税制改正の各案について私の意見を申上げます。今回税制改正が行われるに当りまして、税制調査会は勿論でございますが、国民各層が最も期待いたしましたのは、この際、所得税中心とした直接税の軽減が行われるということに対して多大の期待を持つてつたのであります。又、小笠原大蔵大臣も、月収二万円程度標準家庭についてはこれを無税としたい、こういうふうなことをしばしばおつしやつておられたのであります。そういう意味から申しまして、今度の税制改正は各方面から多大の期待を寄せておつたと、かように承知するのであります。然るに今度の税制改正案を見ますと、この所得税中心とした直接税の大幅軽減、こういう点についてはかなり遺憾の点が多いように思うのであります。お手許にございます資料等につきましても、二十八年度におきましては、国民所得に対する国税地方税も合せた負担率は二〇・五%になつております。然るに二十九年度のそれは、国税地方税を含めまして二一・二%になつております。国民所得に対する租税負担割合、この率だけを以て税が重いとか軽いとか申すことは、多少疑問があるかと思いますけれども我が国のように国民所得が少い、而もその所得の内容について考えて見ましても、すでに言われることでありますけれどもエンゲル係数が五〇%以上に達しておる。社会保障その他の点についても各国に比較して相当遅れておる点がある。そういうところにおいて、国民所得に対して二〇%以上の租税負担率である。こういう現状は決して軽い負担率だとは言い得ないと思うのであります。従いまして、この観点から申上げますならば、何としても税制改正の際には直接税を軽減する。而も直接税の中においては所得税軽減する。次いで法人税軽減する。若しも所得税法人税軽減を大幅にするためにどうしても財源が不足であるというならば、現在の直接税の負担割合間接税負担割合に比較して重過ぎるという点から、多少間接税に移行することは、これはやむを得ない。こういうふうな考えを持つのは当然だと思うのであります。今度この委員会に提案されております税制改正の各案を見ますのに、直接税の軽減所得税中心にして行われておることは申上げるまでもありませんけれども、直接税の軽減と同じ額だけが間接税によつて増徴され、差引純減税額というのはない。この点は我々として誠に残念に思うのであります。一方、私が税制調査会委員として考えて見ましても、この税制調査会が今度の国税地方税を通じての税制改正について答申を提出いたしましたが、この答申そつくりそのまま実現されるとは考えておりませんでしたけれども、お手許に配られておりまする資料によつて見ましても、税制調査会答申と今度の税制改正の各案との間には、相当の開きがあることを御了解下さることと思うのであります。而もこの税制調査会の案と今度の案とを比較して見ますのに、間接税増徴部面においては殆んど税制調査会の意向というものが取上げられており、その税率等については多少緩和が行われておりますけれども、ともかく殆んどが、増税部分については税制調査会答申がそのまま採用されておる。然るに一方、直接税の軽減の点につきますと、純減税七百億円を予想したものに対して、先ほど申上げましたように、増税減税でとんとんということになつておりますために、所得税軽減につきまして著るしくこの軽減割合というものが減少され、更に法人税につきましても税率変更等が全然行われないというふうな結果になつておるのであります。勿論、現在の情勢から考えまして、殊に最近の国際収支の悪化の状況から申しまして、果してこの際、減税をすることがよいかどうかという点については、いろいろ御異論があろうと思います。併し冒頭に申上げましたように、ともかく現在の国税地方税をも含めた租税国民所得に対する負担割合というものが、二〇%を越しておるという現状から考えますならば、できる限り、若しも歳出余裕があり、又歳入に剰余があるならば、これを減税財源に充てるということは、当然なすべきことのように考えるのであります。  所得税につきまして私どもの最も主張いたしたいのは、基礎控除につきましてであります。今度の改正案によりますと、基礎控除が七万円となつております。現行の六万円に比較して一万円だけの引上げになつておりますけれども調査会の案として答申いたしましたのは、御承知のように八万円でございます。七万円が正しいか、八万円が正しいかという点になりますと、これは議論がいろいろございましようけれども、現在の国税徴収上、所得税徴収部面におきまして、現在の所得税納税人員が多い、この納税人員を或る程度減少せしめるというために最も有効なのが、この基礎控除額引上げだと思うのであります。その意味から申しますならば、基礎控除額は今度の改正案で七万円となつておりますけれども、これが八万円に引上げられれば更によかつたのではないかと思うのであります。  それから扶養控除額の問題でありますが、今度の改正案によりますと、三段階に区分されております。申上げるまでもないことでありますけれども扶養者が多ければ多いだけ、それだけ租税負担する力が少いのであります。今まで二段階であつたものを更に三段階に区分する必要があるかどうか。勿論今度の改正の方針の中には、多少、人口問題についての考慮があるかとも思われるのでありますけれども、別に二段階を三段階にする必要が特にあるようにも考えられないのであります。生命保険料控除退職所得控除につきましては、調査会答申がそのまま採用されておりまして、この点については私どもも喜びとするのでありますが、ただ勤労者給与所得に対する控除については、調査会の案といたしましては、七万五千円に引上げることが考慮されておつたのでありますが、この点について全然改正が行われていないということは遺憾と申上げるほかないのであります。給与所得者が他の所得者に比較して、源泉徴収の関係から、税率が同じであつても、その間に相当負担の加重が行われるという点については、皆様すでに御承知通りであります。従いまして、現行の一五%で最高を四万五千円に抑えておりまする控除を七万五千円に引上げるということは、現在の給与所得者立場から考えて私どもは至当だと考えておつたのでありますがこの点が採用されなかつたということは誠に遺憾だと申上げざるを得ないのであります。  その他の点についても申上げなければならない点がありますが、所得税につきましては、我々が最初に申上げましたように、今度の税制改正の最も中心の点であり、而も先ほど申上げましたように、年収二十四万、月収二万円程度標準世帯無税になるということを大蔵大臣のお言葉通り考えて固く信じておつたものが、今度の税制改正ではその通りに実現されなかつたということは誠に残念に思うのであります。  次は法人税の問題でありますが、税制調査会におきましても、第一に、直接税のうち所得税軽減すること、第二に法人税軽減することということを考えておつたのであります。法人税現行税率四二%というものが、地方税をも含めますと表面的に六〇%近い税率になる。これが相当重い税率であるということは、あらためて申上げるまでもないのであります。従つて財源余裕があるならば、第一に所得税軽減し、更に第二に法人税軽減するということが最も望ましいのであります。今度は法人税につきまして特に改正が行われておりません。ただ臨時措置によりまして、各種価格変動準備金或いはその他の方法によりまして、法人負担を、或る業種、業態によつて多少とも緩和するような方向がとられておるのであります。ただこの際に特に申上げておきたいと思いますのは、表面税率が四二%である。併しながら、一体、各法人はどれだけの税率を課されておるかということを考えますのに、今まで各種特別措置によりまして免税されておりまする所得金額というものが相当巨額に上つておるということを申上げて、御参考に供したいと思うのであります。これは大蔵省で調査してもらつた数字でありますけれども、再評価による増加償却額或いは五割増償却額合理化促進法による償却額貸倒れ準備金退職手当金価格変動準備金渇水準備金医薬損失準備金異常危険準備金輸出損失準備金特別修繕引当金重要物産免税控除輸出所得控除、こういうふうな各種特別措置により免税されております所得金額が、二十八年度におきまして千九百四十億円という巨額に達しておるのであります。そこに又今度新らしい措置が加えられるわけであります。果して各企業別にこういつた特別措置によつて減免税を行うことがいいのであるか、或いはこういうものをもつと一般的に法人税率四二%を引下げる方向に持つて行くほうがいいかという点については、いろいろ御議論があろうかと思いますけれども、私はむしろこういつた個別的な減免措置よりも、法人税一般税率というものを引下げる方向に持つて行くほうが正しいように考えるのであります。  その他の税法につきまして若干私の意見を申上げます。  今度の税制改正におきましては、中央地方を通じての税制調整ということも一つの目標であるように思われるのであります。その際に、これ又税制調査会意見でありますけれども地方税のうち、遊興飲食税入場税国税に移管して、その九〇%を地方に還元するという案が立てられております。申上げるまでもなく、地方税財源が著しく偏在しておる、この偏在をどうして是正するかということが、地方財政考える場合に一つの大きな問題だと思うのであります。これらの点につきましては、恐らく午後に三好さんが詳しくお述べになることと思われるので、私は簡略に申上げますが、今度改正案として提出されております中には、遊興飲食税現行のまま地方税として据置かれ、入場税だけが国税に移管されることになつております。入場税遊興飲食税といずれが偏在の度が甚だしいかと申しますならば、遊興飲食税のほうが偏在の度が甚だしいということは、改めて御説明するまでもないのであります。従つて地方税財源調整するという立場から申しますならば、この遊興飲食税入場税とを同時に国税に移管して、そのうちの或る部分人口配分によつて都道府県に戻す、そういう方法のほうが正しいように思われるのであります。然るに残念なことに、肝腎の遊興飲食税現行のまま地方税として置かれ、入場税だけが国税に移管される、こういう結果に相成つておりますために、先ほど申上げました国税地方税とを併せて地方税財源調整という意味から申しまして、かなり大きな効果が殺がれてしまつたということを申上げざるを得ないのであります。  恐らくあとで御質問があろうかと思われますので、しやし繊維税の点についても一言申上げます。この繊維消費税の問題につきましては、税制調査会でもいろいろ議論が分れたところであります。税制調査会答申の中で私どもが最も遺憾としておりますのは、委員会として一つ結論に達しないで、結局、政府の責任においてこの繊維消費税をきめるようにというふうな答申がなされた点であると言わざるを得ないのであります。然るにこの答申の中にも、これは反対意見があつたということは附記されておりますけれども、これは大体、委員会の空気といたしましては、繊維消費税について原糸課税という一つ方向が打出されておるのであります。今度提案されておりまするしやし繊維税と申しますか、この法案におきましては、この課税の問題につきまして、原糸課税から卸の段階課税するようになつております。ただ私どもが研究いたしましたときにも、果して卸というのが如何なる段階であるかというふうな点についていろいろ議論が分れるということで、なかなか税として徴収上困難が生ずるのでないかというふろに考えたことを一言申上げておきたいと思うのであります。  最後に、結論でありますが、今度の税制改正は、先ほど来申上げましたように、直接税の軽減とこれに見合うだけの間接税増徴ということであり、結果においては、国民所得に対する租税負担割合というものは二十八年度よりも重課されておる、こういう点から考えますと、むしろもつと直接税の軽減について考慮を払うべきでなかつたか、こういうふうに考えざるを得ない。それだけを結論として申上げまして私の公述を終ります。
  5. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 質問を願います。
  6. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 一点だけお聞きしたいのですが、税制調査会で、各国にあるようなセールタツクスについてもつと考えるべきじやないか。直接税を軽減しようとするなら、そういう点について考えなければ、間接税相当効果を挙げられないというような点についての御意見があつたろうと思うのですが、調査会意見でなくて、福良さん個人意見でようございます。
  7. 福良俊之

    公述人福良俊之君) お答えいたします。税制調査会でもその意見はございました。ただ申上げなければなりませんのは、税制調査会といたしましては、財政規模を一兆円に圧縮する、そこで余裕財源が出て来る、その余裕財源を挙げて減税に持つてゆく、こういうふうな考慮の仕方をしたのであります。従いまして、直接税の軽減、その一部に見合う間接税増徴という場合にも、歳出需要の多いときならば一般的なセールタツクスというものを考えるべきであるけれども、この際の税制改正については、そこまで考える必要はないのじやないか。又一たびそういう途を開くと、むしろ歳出需要を圧縮するよりも歳出財源を提供するというふうなことになる虞れがありはしないかというので、この一般的な売上税の問題については、委員皆さん反対ということで、今度は取上げられなかつたわけでございます。将来、歳出需要が増大するという場合を考え、又現在の直接税の負担相当過重であるということから考えますと、当然堀木さんのおつしやるようなことを考慮しなければならんときが来るかと思います。
  8. 小林政夫

    小林政夫君 先ほど特に触れられた法人税特別減免措置ですね、これは私も二年ほど前から言つているのですが、先ほど挙げられた再評価による償却増による法人税収減収ということを私は取上げ、この特別減免措置の中に入れての法人税減収と見るべきものでないと思いますが、そのほかの挙げられた問題については、私もまあ今最近の資料を要求中なんでありますけれども税制調査会においてどの程度論議されたか。最近大分、中小企業者等知つて参りましたが、こういう表面税率四二%であつても、実際には三二・三%とかいうようなことを知つてないのです。余り知れておらないと思うのです。そういう点はどの程度論議されたか。
  9. 福良俊之

    公述人福良俊之君) この点につきましては、先ほども申上げましたように、一体法人税税率を下げられるかどうかという問題が第一点でありまして、所得税軽減を第一として、第二に法人税税率をどこまで下げられるか。現在のままで法人税率を下げるとすればどの程度がよろしいか。それから今申上げましたような各種特別措置による減免というものをなくしてしまつて、その場合にどの程度まで下げられるか。これは極めて私的な意見交換でありますけれども、そういうものはございました。それから、更に今度も出ておりますような価格変動準備金に対する問題とか、個別的ないろいろの問題が出た場合に、この個別的な減免措置が果して有効であるかどうか。又それを必要とするならば、その以前に行われておる各種減免措置というものがどれだけの実際的な効果を現わしておるか、そういう点を検討することが大事じやないかというような点では、かなり突込んだ話合いが行われました。併し結果として、御承知のように法人税については、国税において四二%を四〇%に引下げる。当面必要な減免措置については新しく考えるということで、今度提案になつておるような諸措置が新たに加わつたと、こういうふうに考えておるわけであります。
  10. 小林政夫

    小林政夫君 只今の実際の法人税収というものは、表面税収による四二%よりも、まあもう少し正確に計算してみないとはつきり数字的には言えないのですけれども、三二・三%くらいになつておると思いますが、そういうことが、今読み上げられた数字に基く数字というものは、調査会で正式に各調査委員の人がわかるように資料として出されたわけですか。皆さんがその頭があつて特別減免措置については再検討をして、今、福良さんのお説のようにならすべきじやないか。何も特別に法人負担を軽くするということでなしに、全体の法人負担としては変りないわけです。それをならすべきだというような積極的な意見、その個々の減免措置経済効果があるかどうかという検討は勿論なさつたでありましようけれども、その前に、振出しに戻つて税率自体について軽減する場合に、そういつた減免措置をこの際できるだけ廃止して……私はああいつた個個の減免措置をやつておるとだんだん拡がる一方だと思うのであります。それは成る程度経済効果があるからやるわけですけれども、それよりも根本的な四二%という税率について考えたほうが、より普遍的ではないか、こういう考えで言つておるわけであります。その点は十分数字を頭においての議論が行われたのですか。
  11. 福良俊之

    公述人福良俊之君) お答えいたします。只今の問題につきましてはかなり真剣な意見交換が行われました。併し御指摘のように、この数字を全部の人たちが頭において、そして検討したかという点になると、そこまでは行つていなかつたと、かように思います。
  12. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 法人税のことなんですが、同族会社というのですか。大体個人のようなものが多いのじやないかと思います。法人で。そういうような点についてはどんなふうにお考えですか。
  13. 福良俊之

    公述人福良俊之君) この点につきましては税制調査会でもいろいろ問題になりまして、現在のいわゆる法人の中に同族会社的な性格を持つておるものが非常に多い。而も小資本の法人においては殆んどそれが同族会社的なものだという意味で、従来のような同族会社考え課税することは小法人にとつては少し酷ではないか、こういう考え方が強く現われまして、御承知のように地方税段階で、その小法人についての法人事業税を、所得五十万円以下と五十万円以上というふうに分けて税率考えるということで、何らかこの面に対する救済をしよう、こういうような考え方になりました。こんなお答えでよろしうございますか。
  14. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 もう少し私は何か結論めいたものがなかつたかと思うのです。
  15. 福良俊之

    公述人福良俊之君) 結論というと非常にむずかしいのでありますけれども委員の中からは、つまり従来の同族会社とみなすという考え方ですね。その考え方については多少考慮する必要がありはしないか。つまり同族会社とみなしてすべての課税条件を整える、これは小法人、特に親戚が出資してやつておるというふうな場合には酷じやないか、こういう意見はかなり強くありました。まあその程度お答えしか申上げるわけにいかんと思います。
  16. 土田國太郎

    土田國太郎君 只今福良さんの御説明は大体において私どもも同感でありまして、今度の減税措置が完全に行われなかつたということは誠に遺憾に思います。そこで一つお聞きしたいことは、標準家族月収二万円以下を無税是非ともそれを実現をしなければならんと思つておりまするが、これに並行してあなたのお考えを伺いたいのでありまするが、例の所得税における基礎控除が今回七万円になつたわけなんですが、この控除について、こういうふうな考えも浮ぶのですが、百万円の所得のかたも二十万円の所得のかたも一体に、或る程度の基準は止むを得ないのですが、その点は止むを得ないのですが、月収二万円のかたが無税なつたというようなことに相成りますれば、今申上げた百万円の所得のある人と、まあ二十五万円としましようか、二十五万円の所得の者とは、非常に家計面或いはその人の地位、身分等によつて経費が違うわけです。それを一律に七万円なり八万円なりの基礎控除というものでいいのか。これは社会政策上或る程度所得をその国民に与えたいという観点から言つておるのか、或いはそういう点について控除額がこのままただ一律で行くべきか、或いはそういう点は考えなくてもいいのかという点についてのお考え、その点を一つお伺いしたい。ちよつと妙なことですが……。
  17. 福良俊之

    公述人福良俊之君) 大変むずかしい問題だと思うのです。これは恐らく大矢さんあたりのほうがお詳しいと思いますけれども、私は私なりに考えを持つております。と申しますのは、この基礎控除という概念が果してどういうものであるかという点についていろいろ議論があろうと思います。併し例えば六万円の基礎控除月五千円、これは大体最低の生活のための、何といいますか再生産費には償わないけれども、食糧費その他そういつたものにおよそ見合うという考え方が、この基礎控除の中に入つておると思う。従つて年々生活が変つて来るという場合に、この基礎控除というものがだんだんと引上げられて来ておるのだと思うのです。そういう意味から申しますと、年収二十五万円の人に六万円或いは七万円の基礎控除があり、百万円の人に六万円或いは七万円の基礎控除を設けるということは、どうも均衡を失しておるのじやないかというふうなお考えのように思いますけれども、これは、やはりその収入の如何にかかわらず、それだけのものを一応所得の中から差引いて考えるという考え方で、そう大して無理がないのじやないか、こういうふうに思います。
  18. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 シヤウプ勧告によつて日本の税制が非常に変りましたのですけれども、その点についての税制調査会における意見はどういうふうであつたかという点を伺いたいのであります。私は、国のいわゆる国税というものと地方税……地方税も府県税と市町村税、こう分れておりますが、国税のほうも直接税更に間接税、いろいろの体系になつておりますけれども、どうも余りはつきりし過ぎて、シヤウプさんの勧告で、はつきり国の税はこれだけ、府県のほうはこれだけ、市町村はこれだけで、何といいますか負担をはつきりして、その使途もはつきりする、責任の所在をはつきりするという点を非常に明確にされましたけれども、そのために実際の手続というものが非常に複雑になりまして、今まで市町村役場でやつておりましたいろいろの取扱いを全部税務署が直接やる。又、県のほうも県の事務所をつくつてやる。このために殖えた人員というものは莫大なものなんです。でありますから、徴税費というものは私は非常にたくさんになつて来たと思つております。それから税の権衡を失しないようにという点から言えば、所得税一本で附加税をつけて行くということは、所得税の基礎に誤まりがあればますますそれが過大になりますから、他の税で補つて行くことはこれは考えなけりやなりませんが、いやしくも税である以上は、所得税そのものが基礎を間違えるということがおかしな話なんです。所得税を慎重に決定すれば、附加税というものも、これは、パーセンテージは一割でも二割でもそれが正しいことになるわけでございますから、私はこれはまあ自分の希望を述べて恐縮でございますけれども税制調査会等においては、もつとシヤウプさんの勧告を検討して、できるだけ一つ手数がかからないで効果の挙がるような行き方を、これはお考えになつたのだと思うのでございますけれども、今日のこの会合において、この際、伺つておきたいのでございます。どうも今のやり方ですと、余りに所得税の附加税とか或いはその他の、前の土地家屋に対する附加税というようなものも認めたような認めないような、又何か今度は「たばこ」等に対する附加税というようなものが逆に出て来たり、何か税制というものが宙ぶらりんに混乱しているような気がしてしようがないのですけれども、そういうような点についてのお考えを伺いたのです。
  19. 福良俊之

    公述人福良俊之君) お答えいたします。シヤウプ税制の問題につきましては税制調査会でもいろいろ検討が行われました。そしてシヤゥプ税制の長所或いは短所についてかなり強い議論が行われました。特にシヤゥプ税制のうちで問題になりまする附加価値税、これにつきましてはいろいろ議論があります。で、理論的には正しいものである、併し現在の日本の情勢に、一体、附加価値税というものがそのまま採用できるかどうかということで、結局これは税の理論としては正しくても、実際には適用しがたいものである、そういう意味で附加価値税を廃止するというふうな考え方にも進んだのであります。それから、その他の税目につきましても、シヤゥプ税制では、御承知のように府県段階と市町村段階というものを区別して、府県の税収は何と何、市町村の税収は何と何というふうに区分されたのでありますが、現在の日本の行政機構のうちに占める府県というものの意義、そういうふうなものも考えて、これを市町村と同じように完全自治体と考えるか、或いは国と市町村との中間的な性格を持つたものと考えるかというふうな点でいろいろ議論がありまして、御承知のように、固定資産税のうち償却固定資産税を府県段階に移すとか、或いは市町村民税のうちの半分を府県民税という形で移すとかいうふうな考え方が出て来たのであります。これは申上げるまでもないのでありますけれども、シヤウプ税制がそのまま実施された後の状況を見て参りまして、余りにも理想に走り過ぎて現実の日本の情勢に適しない、こういうふうな考慮から、税制調査会におきましては今申上げましたような考え方なつたと申上げてよろしいかと存じます。
  20. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) ちよつと地方税の関係のことについて一、二点お伺いしたいのですが、先ほどお話を聞いておりますと、入場税遊興飲食税と二つを国税に移管して、それによつて地方財政偏在を是正すべきであつたにもかかわらず、遊興飲食税が府県税にとどまつて入場税だけ国税に移管したために、その偏在是正という目的が極めて中途半端なものになるというようなお話を承わつたのであります、で、私も勿論この二つのものは、そのいろんな面から言つて、これは一体的なもので、政府が最初二つの税金を国税に移管する方針でおつたにもかかわらず、遊興飲食税だけもとに戻して、入場税だけ取上げて、而もその遊興飲食税をもとに戻すについては業者の運動方法その他について我々いろいろないまわしい噂を聞きますだけに、この点は、残すがいいとか国税に移管するがいいという論議にかかわらず、非常に遺憾に考えて、その点については私も全然同感でございますけれども、併し大体この入場税なり遊興飲食税なりを国税に移管するということがいいか悪いかということになりますと、私の考えによりますれば、これを国税に移管して地方税偏在を是正するというようなことには、にわかに賛成できない。と申しますのは、国の税金にしても同じことでありますが、今日地方税検討する場合に何よりも第一に考えて頂かなければならないのは、やはり地方財政の累積した赤字をどうするかという問題だと思う。で、地方制度調査会答申ですから、今日の地方財政の赤字三百億ということを指摘しておられる。従いまして、先ずこの赤字をどう手当をして行くかということになりますが、自治庁あたりの意見によりますれば、或いは政府全体の意見としましても、これは地方財政の赤字は地方が身分不相応な事業をどんどんやつたためのいわば自業自得の赤字であるから、地方自体でその始末をすべきであるというような大体の考え方のようです。併しこれは、地方制度調査会でも論議されました通り、又事実必ずしもそうとは言い切れないで、むしろ只今府県の性格云々の話がありましたが、制度の上では府県を完全自治体として認めておりながら、その実態においては依然として、昔の中央集権と言いますか、官治統制と言うか、そういう中央からの紐が非常に強くついておる。そのためにいろんな面で赤字を出しておつて、その赤字の責任についても、これは地方自体というよりも政府自身のやり方が悪い、そのための赤字であつて、政府自身がこの赤字の手当につきましては大部分の責任を負うべきものじやないか、こう私は考えるのであります。そうでありますからして、仮に地方税の面において地域的な偏在があるからこれを是正するというのでありますならば、地方から、そうでなくても乏しい財源を国に引上げるということでなしに、先ず第一には、やはり国のほうからの何らかの手当を考えるべきじやないか。にもかかわらずそういう国の責任のほうはいい加減にされまして、そうしていきなり、地方の税金の中でも入場税なんかというのは最も徴収率がいい、恐らく二十八年度、今年の決算を見ましても、又昨年或いは一昨年の決算を見ましても、これはもう殆んど一〇〇%徴収しておるのです。そういう非常に伸張度の高い、そうして徴収のしやすい入場税などを地方から取上げてしまうということは、地方の固有財源を強化して行くという基本方針からいたしますというと、いささかこれは的が外れているではないかというように私は考える。で、よく偏在是正ということを言われるんですけれども偏在ということも必ずしも入場税遊興飲食税に限つたことではないのでありまして、事業税にいたしましても、自動車税にいたしましても、その他いろいろな税金、すべて府県に地域の大小があり、人口の大小がある限りにおいては、皆それぞれに入場税遊興飲食税と同じ程度偏在はあるわけなんです。にもかかわらず、遊興飲食税入場税だけを国にとり上げる。そうして入場税のごとき、その全額ではなくして、一割は差引いて、あとの九割だけを地方に還元するというようなことになりますと、私どもはその意図奈辺にありやということを疑わざるを得ないのです。やはりこの入場税も、国に取り上げるべきではなくして、やはり地方の最も格好なる固有財源として、そのまま地方に残して、そうしてでこぼこの面なり或いは財政のこの赤字というような面は、或いは国の所得税なりその他の方面からの地方への還元というような方法考えられるのが、本当に地方自治体というものを強化して行く上においての本筋じやないかというように考えるのです。そうでなくて、今のままで参りますと、地方の自治体、特に府県なんかの財政状態というものはますますこれは緊迫して来ることはわかつておる。而も他面においては知事官選というような動きが非常に強い。
  21. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 秋山議員に申上げますが、成るべく要点をかいつまんで質疑して頂きたい。
  22. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) これが要点なんです。すぐ終ります。そういうことになりますと、地方から財源を取り上げてそうして地方をますます困らして、これは地方ではとても一人立ちをしないから、もう制度的にも中央集権に持つて行くというようなことに非常に利用され易いのではないかというような気がするのですが、その点について再度御見解をお伺いしたい。
  23. 福良俊之

    公述人福良俊之君) 只今御指摘のような御意見も承わりました。併し私どもとしては、現在の地方財政調整する上には、今度の案にもございますように、法人税所得税、酒税の一部を地方に還元するという方法によつて、先ほど偏在度が遊興飲食税入場税以外にもあるじやないか、そういう面は是正ができ、而もこの地方税二つを国税に移管することによつて、更にこれを再配分するということによつて地方偏在度というものはより是正される、かように考えております。
  24. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) まだ御質疑があるかも知れませんけれども、時間の都合上、福良さんに対する質問はこれで打切りたいと思います。   —————————————
  25. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 次に十条製紙株式会社専務取締役、経団連財務委員会委員金子佐一郎君にお願いいたします。
  26. 金子佐一郎

    公述人金子佐一郎君) それでは二十九年度税制改正の問題に亘りまして少しく卑見を述べさして頂きたい。  私どもはこの税制改革におきましては相当減税というものを期待しておつたのでございます。それは昨年税制調査会等におきましての案の内容を見ましても、国民負担相当軽減すると考えておりましたが、今回、予算の関係もありまして、減税といたしましては、所得税中心として三百二十一億円、それから又一方、増税として、繊維消費税等を中心といたしまして二百七十六億円、なお煙草の収益をこれに加えますと、結局三百二十一億円の増税となり、結局は国民負担としては、減税増税とんとんという形になつてしまつたのであります。まあ併しこれはいろいろな事情でやむを得ないといたしましても、特に我々といたしましては、所得税においては勤労所得税控除引上げ、或いは法人税の四二%をせめて四〇%に一律減税というものも期待しておつたのでありますが、これも又一応将来の問題に繰延べられたようであります。こういうような事情の下に今回の税制改正考えられておるわけでございますが、このうちにおきまして、いろいろ全般に亘つても多少意見はございますが、時間のことも考慮いたしまして、少しく重点的に意見を述べたいと思います。  特に今日財界において非常に問題になつておりますのは、やはり資産の再評価に関する問題であります。これは本日は税制の問題に局限されますならば、租税特別措置法の一部改正に関する法律といたしまして取上げられた増資の促進策といたしまして、新規増資に対する一割配当を非課税とするということが問題の中心なんでありますが、たまたまこの問題に意見を述べますのは、現在まだ立案中のように伺つておりますところの企業資本充実のための特別措置法、言い換えてみれば資産再評価の強制に関する法律案がどうしてもこれに関連して参りますので、或いはその点御了解が得られますならば、それを、これの関係において、主としてこの今回の税制改革の特別措置法を中心として意見を述べさして頂きたいと思います。  この新規増資を促進するという意図は、これは申すまでもなく我が国の企業が借入金に多く依存いたしておりまして、戦争前までは自己資本が六〇%、他人資本が四〇%というような率が、大体において現在は反対になつておるわけであります。従つて企業の安定性はなく、非常に企業の底が浅いということで、何かちよつとした変動にも大きく企業の基礎が揺り動かされているというような状態は、早く直さなければならんということは、前から言われているところでございますが、これにはやはり新規増資を促進することが一番の大切なことであり、又でき得るならば再評価をさせてそして資本食いつぶしを是正しながら、一方、資本構成を是正するということに、この問題を考えなければならんと思うのであります。そこで、こういう法律案が取上げられたと考えますので、その趣意においては財界全般から申しましても異論はないのでありますが、ただ問題になりましたこの新規増資に対しまして、これに対する配当金一割を非課税とする、又、再評価の積立金を資本に繰入れた場合に対する資本に対する配当金、これは五%まで非課税とすると、こういうわけでありますが、この問題については条件があるのであります。それには三つの条件が考えられております。先ず再評価の限度額八〇%まで実施した企業でなければ許されない。又減価償却も法定減価償却の範囲額の九〇%以上実施することが必要でございます。更にこの場合の配当率は二割を上廻つてはならない。この三つを見まして、三点について少しく意見を述べてみたいと思います。  再評価の限度額八〇%、これは非常に簡単なように考えられるのでありますが、今回の強制措置考えております案を仄聞いたしますのに、これに対する陳腐化資産があつたり又これらの類似の事情にある企業については、一応八〇%まで普通の資産の場合のごとく再評価をいたしましても、国税庁長官の許可を得て減額することができるということになつているわけでございます。ここで再評価の強制という問題がしばしば出るたびごとに、我々として非常に問題だと考えるのは、やはり陳腐化資産の見解であります。これは客観性が非常に薄いのであります。従つて、陳腐化というものは何であるか、又その企業の所有する資産が陳腐化しておるといつても、それはどの程度においてこれを評価することが正しいか、こういうことになりますと、恐らくなかなかきめ手がないのではないか。そこで、この問題を強制する以上は処罰規定もありましようし、又これらの制限規定によつて課税になるか或いは課税にされるという重大な問題とも関連して参りますので、この陳腐化の扱いが今後この問題について相当の論議の中心になるだろうということが想像されるのであります。従つて、この陳腐化は各企業においても慎重にやるでありましようが、又当局においてもこれらの点を十分考えて、これらの扱い上の問題といたしまして相当考慮が払われないと、問題は或る意味においては骨抜きになる虞れもあるのではないかと思います。ただこれは少しく細かい話でありますが、当局の考えは一応再評価を八〇%まで強制の線までやらして、あとでこれを取り崩して陳腐化の額を出すという考え方については、これは是非改めなければならないと思います。これは会社は、一応こういう架空な八〇%という数字を、これを帳簿に記帳し、或いは内訳として台帳にこれを記帳せしめ、場合によつては総会にまでその決算書類を出した後において、その会社が陳腐化資産を持つという理由において、その後においてわざわざこれを取りますということは、甚だ意味もないし、経理上の手続も大変なのであります。これは少くとも、一応計算することは書類上でやりまして、陳腐化の線を出しまして、それを国税庁長官の許可を得た後において初めてこれは会社の帳簿に影響を与えるようにすることが当然であろうと思います。それまでは、仮に仮定的にその八〇%という再評価額を載せても減価償却をすることができず、会社はただそのまま手を拭いて、陳腐化資産の額が国税庁長官によつて許可されるまでは何ら実務的に進展しないのでありまして、従つて何ら意味がないということが結論的に言えるのではないかと思います。  それから減価償却の法定限度額の九〇%まで実施するということは、財界におきましても、資本食い潰しをしながら配当したり何かする、又新規の増資をしてこれに又配当をつけて行くということは、それは現在の真面目な考え方から言えば反対すべきではなかろうかということで、これに対しては余り議論はございません。特に限度額九〇%というのは、再評価の強制が八〇%であるならば、これに対しての九〇%、言い換えて見れば、七割二分の程度に当りますので、これらは当然やつて然るべきだというような、むしろ積極的な意見もあるようであります。ただ問題になりますのは、やはり配当率を二割で抑えるということであります。これは相当の異論があるであります。なぜ二割に抑えることがいけないかといいますと、今後、各会社がこのように新規増資をし、又一方、再評価の強制によつて資本の繰入等が促進されるならば、勢い現在の配当率はおのずと二割程度以内に引下げられて行く傾向が見られるのであります。従つてこの制限を加えるということは、一般の企業に対しては殆んど有名無実の制限ということになるのではないかと思います。すでに現在でも一割五分の配当をしている企業は総会社数の大体四割と聞いておるのでございます。すでに現在でも四〇%が一割五分の配当をしているならば、恐らくこのような増資並びに資本繰入等が考え通りに行われるならば、恐らく配当も二割以内に当然収まると思う。併しながら企業の経営努力というものは、やはり何といつても収益を増して、できるならば配当も或る程度まで殖やして行きたいというところに企業努力の目的もあり、又一般に株価等におきましても何らか重苦しい制限的な圧力があるということは、株価にも必ずしも影響なしとは言えない。従つてそういうような企業努力をせんとする企業のためにも、又現在のような自由の尊重されているときに、配当制限ではないにいたしましても、一応配当制限の感がある二割、而もこれを殆んどの企業が恐らくこの中に自動的に追い込まれるであろうという時期においては、むしろこれを撤廃したほうがよいという意見相当あることを申し添えておきます。特に株式市場などにおいては、当然二割になるのだけれども、二割以上としてはいけないという制限があると、勢いそこに何らか気分的に圧迫が、言い知れず株価なり企業の将来についての望みをそこでチエツクするということが指摘されております。  この問題に絡みまして、一言申上げておきたいのは、一方、再評価の強制という法律におきまして、一割五分の配当を三年後からやろうとする企業においては、再評価積立金の四割を資本に繰入れなければならない。又減価償却も九〇%以上やらなければならないというような条件が、これ又ついて行くのであります。併し先ほど申上げた通り、償却の九〇%に対しては、一般に対しては異論はないのでありますが、この一割五分の配当制限ということと、再評価積立金の資本金への繰入を四割を条件としている。これは相当に問題だと指摘されております。これは立案する立場から言えば、一割五分以上配当する場合にこの条件が必要であるから、かかる企業は一割五分以内に配当をとどめておけば、四割の繰入れもしなくても済むのではないか、こういうことを言うならば、勢い大部分の企業は、一割五分以内に配当を引下げるということが、暗に強い圧力としてこれが強要される感があるのです。この点も非常に問題になりますので、再評価積立金の四割を資本金に繰入れるということが、各企業の実情にとつては誠になかなかであります。それは、資本金と再評価積立金との割合の問題であります。若しも資本金が非常に大きく、再評価積立金が割合に少い場合においては、再評価積立金の四割は資本の〇・五に当る場合もあり、一対一以下の場合、或いは相応額程度におさまる場合もありましよう。かかる会社が無償株交付をいたしまして、これらの積立金を資本に繰入れることは、この三カ年間において、或いはさして困難とも考えられないのであります。併し、中には再評価積立金が非常に大きく、資本金額が非常に少い、こういう場合におきましては、その四割を入れる場合には、資本を三倍にも四倍にもしなければならないという企業があるのであります。これは配当が一割五分以下であるので、一応問題にはならないようでありますけれども、電気事業関係の企業のごときは、資本金と再評価積立金の割合は、多きは十倍近くになつておるのであります。かかる企業が現在一割五分以下の配当であるために、この繰入れは強要されないことになるでありましようが、他に類似企業のあることも十分それで察知できるのでございます。そこで、こういうような企業は、この三ヵ年間に一割五分以上の配当、言い換えてみれば、一方において二割まで非課税措置考えられているならば、せめて二割配当くらいしようというような企業があるといたしますれば、勢いこの四割の繰入れを努力するでございましよう。併しこれに減価償却と違いまして、分部操作によつて、その影響が内部にとどまらないのであります。これは、言い換えますと、無償株を交付いたしますと、勢い株数が増大いたしまして、これによつて新規増資を、同じくこの三ヵ年間に、その中に織込んで実施しようという場合におきましては、株数が殖える株価が圧迫される、又安い株価があると、なかなか新規増資というものはやりにくい。場合によつては失権株等が多く出る場合もありましよう。而も増資には多少配当等も考慮しなければならんのに、一方、現在といたしましては、二割を起えることが、非常に企業の非課税課税という立場から言えば、企業に及ぼす影響が多いのです。そこで、勢いこの問題と絡み合つて、新規増資を折角促進しようという意図が、場合によつては、これによつて実際的に阻害されるのではないか。こういうようなことが言われておるわけでございます。そこで、この再評価の強制の場合におきまして、最もやはり問題になりますのは、今の再評価積立金の資本繰入れを四割条件として入れることだけは、むしろ取りやむべきではないか、又、取りやめることが困難であつても、この四割はもつと率を減らすべきではないかということが、財界の多くの方々の御意見のように伺つておるのであります。  それから税としての関係におきましては、再評価税は今回強制する以上は当然撤廃されて、然るべきものと期待しておつたのでありまするが、これ又、第一次、第二次に六%徴収したといういきさつもありますので、その六五%、言い換えてみれば、丁度第一次、第二次の再評価程度に当るまでは、六%の半分、三%を徴収し、一五%以上、言い換えてみれば第三次の再評価額に相当する分は免税とするということが考えられているようでありますが、これもいろんな事情からかかる結果になつておるとは思いまするけれども、むしろ強制する場合にはこの際すつきりと免税にすることが望ましいと考えられております。特にこの再評価税を免税とすることが問題であるために、土地がこの再評価の強制から洩れていることであります。仮りに土地を再評価をやるとしても、結局減価償却ができないから無意味ではないかという一部の意見もあるようでありますが、今回の再評価の強制は、資本構成の是正というところにあるのでありまして、土地だけが昔の簿価のまま安くそのままになつていて、これが再評価積立金として自己資本の増大に役立たないでいる、又バランス・シートを見ましても土地が非常に格安にひとり取残されているということも、今回の措置の趣意を考えますと、そこに矛盾があるのではないか。むしろ土地も、強制しないまでも、再評価税六%を取るならば、恐らく企業としてもこの方面にこの問題を解決して行ける可能性が強く出て来るのだと考えられているわけであります。この点も考慮しなければならないと思うのであります。  それから地方税といたしましては、固定資産税と、この再評価の強制の問題とは、強くからみ合つているといわなければなりません。何となれば、地方税のうちで固定資産税は企業にとりましても相当負担になつております。仮りに再評価税の六%や三%というものは一時的の税負担であり、それも企業収益がありますれば、法人税軽減と相待つて、その担税力はおのずから出て来るのでありますが、固定資産税は、これは全く別個の性格を持つものと考えられます。そこで、再評価をこの三ヵ年に各会社が段階的にやるといたしましたら、このために固定資産税が増すということは甚だ強制する趣意を鈍らせるものである、こういうことであります。そこで、是非この問題については、恐らく自治庁においても十分勘案されているとは思いまするけれども、再評価を強制してこれを実施しても、現在の固定資産税がそれより増すことがないように措置されることを切望する次第であります。そして三年後に全般の企業が、この強制の結果、再評価を完了いたしました暁においては、これらを改めて再検討して、これら新しい課税標準を見出して、そして税率等調整した上で、ここに初めてこの問題を改めて解決すべき時期が来るのだと思います。それまでは、この再評価をやつたために固定資産税が増すというような、各企業にとりましてはその施行の時期によりまして非常に不公平になるということがないように願いたいと考えるわけでございます。  まあこれらを、現在各企業の実情から申しまして、財界としては、この再評価の強制並びにこれらの特別措置に対する問題点として要望いたしておきたいと存じます。  それから、これは別の問題ではございますが、交際費、接待費、機密費に対する課税であります。これは昨年この問題につきまして私も私見をここで述べておきましたけれども、今日の社会情勢、経済事情から言えば、冗費を節約するという趣意について反対する者は誰もないと思いますけれども、この税がなぜ昨年実施することが躊躇されたかというならば、やはりこれには課税上の困難な問題が絡まつているからであります。税制は、その目的は仮によくても、それを実際行う場合に多くの税務行政上の混乱をもたらすということになり、ひいてはその負担が不公平になるようなことがあつてはならないのでありまして、若しこの税制が認められるならば、その点について十分なる検討が必要であると思います。それは簡単なことではありますが、交際費、接待費、機密費というところの経理上の要素の把握であります。どうしてこれを掴むか、会議費用というものは課税しない。販売費、宣伝費等には課税を恐らくいたしますまい。これは経理上によつていろいろと考え方によつて処理せられるものであります。従つてこれがために折角軌道に乗りかけた税務行政の上に何らか又混乱を生ずることが我々としては心配なのでございます。それから、恐らくや当局においても、この具体的な法案についてでその交際費の割合を計算するということ、これが非常にむずかしい。売上代金が多ければ、当然、交際費、接待費が多くてよろしい、こういうことならば、この問題も合理的でありますが、売上代金が如何に多くても、交際費が非常に少い場合もあり、又、売上代金が少くても、交際費、接待費を多く使う企業もありましようし、まして不況の場合には、交際費、接待費が勢い殖えるとか、或いは弱小企業になれば勢いこういう問題が、余計出費せざるを得ないというような点がありますので、できる限り或る一定限度の以下の問題につきましては、これを免税にする等、特別な考慮がこれに払われることを希望する次第であります。  丁度予定の時間が参りましたので……。
  27. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 質疑を願います。
  28. 小林政夫

    小林政夫君 今の交際費の点ですが、大体お説と同感なんですが、ただ最近の情勢も噛み合して、政府の特別な助成を受けて政府資金を使つておるとか、或いは利子補給を受けるというようなものについて、妥協するというか、それはやむを得んじやないかというお考えはありませんか。
  29. 金子佐一郎

    公述人金子佐一郎君) 今の御意見でございますが、この点は、交際費、接待費というものが果して会社の必要経費であるかどうかという認定であります。仮にこれが間接な何らかの形で会社のためになるということで使われる交際費、接待費があるならば、それを使わなければ結局会社はそれ以上の損をするというような結果が出るかも知れないという点が、やはり交際費、接待費のむずかしいところであります。そこで、今のような政府の特別な補助等を受けている企業が、この問題につきまして特別にこれを考えるかどかということは、私どもといたしまして、この問題を特別に扱うというような大きな要素ではないのではないか。従つてそれにリンクしてまで考える必要は一応なくて、かかる企業につては、やはり一般企業と同じ程度の適用を、若しも法律が成立したならばさしてもよろしいのじやないか。こう考えるのでございます。
  30. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 今のお話で一つお聞きしたいことは、第一点、陳腐化資産の問題が片付かなければ資産再評価を行わないことは、非常に何と申しますか、手続きの上から見ても、又その他の考慮から見ても、非常に困るんだとおつしやることもよくわかるんですが、それだけに陳腐化を査定しなければ再評価しないということになつたら、いつまでも再評価ができなくなるのではないかという点が第一点であります。  それからもう一つは配当制限の問題でありますが、配当制限について、どうも私ども考え方経済事情に通じないせいかもしれませんが、資産を再評価して二割の配当となると、利益金は余ほど高くなくちや二割の配当はできないと思いますが、再評価に対して税金を負ける以上は、実際おつしやつたような点でも実例的には非常に少いものになるだろうということも考えられますと同時に、その程度の或る種の制限というものはどうもなくちや公平の原則に反するのではないか、こう思うんですが、その二点についてお考えを伺いたい。
  31. 金子佐一郎

    公述人金子佐一郎君) 陳腐化の問題はおつしやる通りだと思います。陳腐化は飽くまでも、再評価いたします場合には、一般の資産よりも非常に低目に見なければならない。それは明らかなことでございますが、私が特に申上げましたことは、この陳腐化の把握が非常に困難だというわけであります。問題を広く考えますれば、或る見方から行けば、日本の機械設備等は大部分陳腐化しているじやないかというような、これは甚だ行き過ぎかもしれませんが、そういう意見もないわけではない。併し我々はそこまで考える必要はない。その企業が減価償却を行なつて行くのに、それが適正でない限りはその実施が困難である。又、生産力においても収益力においてもそれだけのものを生まないということであれば、どうしてもそれを低目に見積ることが妥当で、若しもこれをオーバー・バリユーいたしますれば、企業を不堅実にして、又、企業自身も減価償却費をその陳腐化資産から生み出す利益では負担できない、こういうことにもなるわけであります。ただ問題の要点は、陳腐化を査定する場合におきまして、企業の実情をよく考えてもらうということが企業側の希望であります。又、当局側から言えば、この強制を逃れんために、徒らに陳腐化である、陳腐化であると言つて評価替をいたしまして、この強制の線から逃れて行くということがあつてもならないという問題でございます。従つて、この問題は実務的にどう扱うかという点でありますので、なかなか法文的にこれを規制することは困難だと思います。併し、かかる問題は、企業側とその当局との折衝において、恐らく相当の問題を起すのであるし、又これがいろいろな配当制限その他罰則規定等の条件にもなつておりますので、十分慎重にすること以外には、ちよつと具体的にはこれをどうするという考え方はむずかしいということも併せて考えてはおります。  それから第二の御質問の二割配当制限は、当然かかる減税措置から行けば、条件として適正であろうという御意見であります。これは或る意味におきまして考えられることであります。二割以上も配当しながら経営されておる企業ならば、一割まで配当に対して非課税にする必要はなかろう、こういう考え方でありましよう。これもそのように考えられますならば、一つ考え方と思います。けれども、この二割の制限があるというために、企業といたしましては、企業努力というものがそこで抑えられる。仮に二割五分配当をすることが不当であるというような場合においては、これは当然抑えなければなりませんけれども、他の条件が満足されておる場合に、二割以上の配当というものは我々としてはできないのであります。何となれば、仮に五分増配いたしますならば、一割の免税を放棄しなければならない。目の子で考えましても、一割五分の金で五分の配当を増すということは、当然、企業経営者としては抑えられる。若し他の条件が満足されていて二割五分配当をしたいというような意欲が仮にあり、企業努力が払われるということがそれによつてチエツクされるということがどうかということと、一方、株式などは生き物でありますので、当然そういう制限がなくても二割の中におさまつているでありましようけれども、併し何かそこに制限がはつきりして参りますと、もう二割以上の配当は期待できないということによつて、株価なども微妙な影響を蒙むるのではないかというようなことも、株式市場の相当方々が強く主張されておる点でありまして、これらを御参考に賜われば幸いだと思つております。
  32. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 どうも私の質問が悪かつたのかも知れませんが、第一点は、陳腐化がむずかしい、むずかしいとおつしやつていて、而もその陳腐化を再評価の前提条件できめなければならんとおつしやつていては、再評価というものは、いつまでたつてもできないのじやなかろうか、こういうことなんでございます。結局、再評価をやつてからどれだけの陳腐化資産を取りますかという問題に行かなければ実際上できないのじやなかろうか、こういうことなんであります。
  33. 金子佐一郎

    公述人金子佐一郎君) その点もはつきりわかります。それは、一応再評価をいたしまして、それから仮にこれも査定が相当困難であつても陳腐化資産というものを各会社は出すでありましよう。その出したもので許可を得てから、それを取りますということがはつきりするということは、間違いありません。又、私は計算上から言つてもそうしなければならないと思つております。けれども、この取りますという言葉が、帳簿に一旦記帳いたしまして、それから改めてこれだけ減額するという措置まではさせる必要はないのじやないか。この場合におきまして、再評価を八〇%なら八〇%までの強制の線まで、その会社は一応書類で計算いたしまして、その書類に、本来ならここまで再評価をすべきであるけれども、当社は特殊の事情においてこの線まで減額を許してもらいたいという、計算をいたしました理由をつけた書類を添付いたしまして、国税庁長官に出せばよろしい。そのとき受け付けられたときに、初めてその会社は再評価を実施する意思がはつきりいたしておりますので、あとは国税庁長官の認可を待つだけでございます。認可があつて初めてその会社の実情に合つた評価の限度額がきまつたのでありますから、それによつて初めて帳簿に記載する、いわゆる帳簿に載つております資産を具体的にそれによつて評価するように、経理上の手続をとればよろしいということでございます。前のようにその計算をしなければならないということ、これも明らかであるし、そういう書類を調製するということも必要でございましようが、ただその額は、その会社といたしましては、陳腐化が実情に即した再評価の額でございます。それを架空的な計算上の数字をわざわざ帳簿に書き、それから台帳のほうにまで影響を及ぼして行く手数というものは、意味がないのじやないか、こういう点を申上げた次第であります。
  34. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 暫時休憩いたしまして、午後は一時半から続行いたします。    午後零時二十三分休憩    —————・—————    午後一時四十五分開会
  35. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 午前に引続きまして公聴会を開きます。  全日本自治団体労働組合中央行委員長占部秀男君にお願いをいたします。
  36. 占部秀男

    公述人占部秀男君) 占部でございます。今度の税制の改革につきまして、我々は労働組合を代表いたしておりますので、一般勤労者立場から簡単に申述べて見たいと存ずるわけであります。  先ず第一番に、今度の国税関係でございますが、今度税制改正される重要な点として政府のほうで提案理由の説明の中心になりました点は、国税負担が重いので、情勢の許す限り軽減を図ることが望ましい、こういうようなことが申されておりますが、同時に又歳入総額の減少を来すことがないような税制改正をいたしたい、こういうようなことも述べられておるわけでございます。この点につきまして、総括的に我々が考えまして、果して現在の歳入総額というものを減さないようなやり方の下に国民の重い負担軽減できるかどうかということについては、相当これは機械的な行き方かも知れませんが、建前として矛盾したような形になつているのじやないかというふうに考えておるわけでございます。特にこの減税の面でございますが、我々実態をお話すると非常によくわかると思いますが、最近の勤労者は非常に税金の重さに悩んでおります。これは率直に申しまして、我々のほうで大蔵省その他から入手いたしましたいろいろな資料によりましても、戦前一二%ちよつとであつたところの税金というものは、今日勤労者全般を通して二〇%以上になつているというような資料も出ておりますし、又各国所得負担の比較を見ましても、例えば月所得三万六千円程度勤労者、こういうものについては、国税については米国或いはイギリス等では殆んど取られていない。然るに日本の場合では御存じのように相当な額が取られておる。こういうような点からいたしましても、又我我の実態といたしまして、例えば今諸外国の比較になりましたが、実態からいたしましても非常に税金が重いわけであります。この間のベース改訂のときでもそうでございますが、実はあのベース改訂は約一二%幾らの表面的な計算になつておりますが、実際、私自身が地方の役人として、地方の公務員として頂いたベース引上げの実際の内容は僅かに五・七%でありまして、それ以上は税金その他の問題で実は上つてない。つまり税金というものはそれほど勤労者の上に覆いかぶさつておるというような現状でございます。従いまして、今度の税制改革につきまして、特に国税面におきましては、いわゆる所得税を減らしたというような形があるわけでございますけれども、我々の見解からいたしますと、これは単に辻棲を合したような形の、実際問題として申訳ないのですが、僅かばかりの軽減であつて、実際としては、少くとも現在の実情では、四万円から四万五、六千円程度取れるものは、これは勤労者でございますので、この程度所得税がかからないというような行き方に行つてもらわないと、大衆的な生活はできないのじやないかというような考え方を持つておるわけでございまして、この点につきまして、我々は、もつと所得税軽減という、いわゆる何と申しますか、課税の除外の額の引上げ、こういうような点についてお願いをしたいというように考えておるわけでございます。これと反対というような形ではございませんけれども、特に法人税軽減問題につきましては、今度のこれを見ましても我々はもつと高度な税率というものを取つてもいいのじやないか。細かい点もございますが、今公述の場合でありますので申述べませんが、そういうような考え方を持つているわけでございまして、この点、減税というけれども、実際の勤労大衆の生活の上には余り減税になつていない。かような点を率直に申述べたいと存じます。同時に、この面につきましては、非常に今度の改正が、僅かばかりの所得税減税ということの裏腹の関係において、間接税において相当大衆課税的に我々の上にかかつて来ておるのではないかということも、我々は危惧しておるわけでございます。これは内容を一々細かく申上げなくともおわかりのことと思いますけれども、砂糖消費税の問題につきましても、今日、砂糖を食べるということは一般的な問題でありまして、こういう問題に税金がかけられる。或いは、酒税の問題についても、一級酒或いはビール等にはかけられるということでございますが、一級酒やビールは大衆酒場へ行つてみんな飲んでおるわけでございます。こういう点についても相当高くなる。例えば繊維の消費税にしましても八十五億増というようなことになつておりますが、これは、現在反物で七、八千円くらいのものは、本当に例えば女房の着物一枚にしてもぺらぺらなものなんです。これは大衆的にはやはり買わなくちやならない程度のものであり、殊に洋服の問題につきましても、これは御承知のように二万五、六千円というと出来上りですから決して上等の品ではないわけですから、そういつたものにつきましても、この問題がかかつておるというような点、いろいろな点から考えまして、相当直接税においては減らしておる、この点については認めますが、その代りに、いわゆる大衆課税になるところの間接税においては相当殖えておるのではないか。こういうようなことを考えますと、我々は今度の税制改革をもう少し考えて頂きたいというふうに思つておるわけであります。特にその考え方方向は、少くとも所得税の問題については、今言つたように大衆の最低の生活を守れるような減税方法を講じて行かなければ、今後のいろいろな労働組合の、技術的な場合にもありますけれども、結局、賃金要求というようなもの、そうしたものが更に激化するような形になつて来はせんかというところを我々は憂えまして、そういう点について率直に意見を申上げる次第であります。特に最近いろいろな問題でデマが飛んでおりますが、労働組合の立場から言いますと、決してトラブルを好むものではなくて、食えないので止むを得ないという形が多いのであります。そういう点も一つ国会の皆様方が率直にお考えを願いまして、トラブルを起さない、争議を起さなくて済むように、最低限度の線までの税金の軽減ということを特にお願いを申上げたいと思うわけでありまして、そうした意味合におきまして、今度の国税についての改革は不十分であるという一点にとどまるのではないか、かように考えるわけでございます。これが第一に国税についてのささやかな意見でございます。  第二に地方税の改革の問題でございます。この問題につきましては、単に労働組合という立場ばかりではなく、私の所属しております組合が、全国の都道府県或いは市町村、いわゆる地方自治体の職場の組合でございますので、職場の立場からも含めて意見を申上げたいと思います。  地方税について特に私たちが考えますことは、今度の改正によりますと地方団体の自立態勢というものを強化するために独立財源の充実を図るということを、改正の趣旨の大きな中心点にしておるわけでございます。この点につきましては、この考え方に我々は少しも異存はございません。その通りして頂きたいと思うのでございますが、実際今度の改正が果してそういうものになつておるかどうか、こういう点につきまして、私たちは非常な疑問を持つわけでございます。これはもう案の内容にもございますので贅言を省きたいと思いますが、ともかくも地方の収入というものは、やはり三分の一程度であつて、あと大部分は国庫の補助金或いは負担金或いは地方財政平衡交付金、地方債、そういうようなことで賄われておる現状でございますが、今度のこの改正によりますと、地方の税収入の結果、総額においては殖えて来る。たしかに殖えて来ておりますが、その殖えるパーセンテージというものは僅かに七、八%ではなかろうかというふうに我々は考えております。    〔委員長退席、理事藤野繁雄君着席〕  依然として国庫補助或いは負担金或いは地方の今度の交付税或いは譲与税になりますけれども、そうした国から与えられておるような形の税金が少くも五〇%以上を占めておるわけであります。地方の自立態勢を整えさせるために独立財源を与えるのだという建前であるならば、少くともこれが逆にならなければならないと我々は考えておるのであります。最低限度五〇%は地方に独立財源を与え、そうしてその他の問題は国庫その他地方債で賄われる、こういうような税制改革であるならば、我々は成る程度ぎりぎり一ぱいの線まで行つても、成るほどこの問題は独立財源地方への充実を図つた、こういうふうに言い得ると思うのでありますが、依然として半ば以上は国のもので支給されるような形のもので賄われておる。こういうような点につきまして、これは羊頭を掲げて狗肉を売るというようなたぐいと言つては申訳ないのでありますけれども、そういうような結果に陥つておるのではなかろうかということを、内容的に我々は卒直に考えるわけであります。特に今度の問題で、この点につきましては「たばこ」の消費税の問題であるとか、不動産の取得税の問題であるとか、或いは揮発油の譲与税の問題であるとか、いろいろ問題がございますが、この「たばこ」の消費税にいたしましても、結局は「たばこ」の小売価格を上げてやるということになりまするので、これは大衆課税になるのでありますが、特にこの技術的な面につきましても、市町村で百十五分の十をもらい、府県で百十五分の五をもらうというようなことになつておりますが、これはもつと率を上げてもらわなければ、到底さつき言つたような目的の財源内容にはならんじやないか、こういうことが考えられるわけでございます。更に不動産の取得税にいたしましても、まあ新築家屋の百万円、それから土地の六十万円というような、非課税の限界と言いますか、措置と言いますかがありますが、今日我々が借りておるような家でも、まあ結局は間借りをしておる人たちが多い。或いはアパートに住まつておる人たちが多い。結局この税金をそのまま入つておる人たちがいわゆる転嫁される率が多くなるのでありまして、これもやはり大衆課税のような傾きが率直に言つてあるわけであります。こういうような形で独立財源の充実を図るという、そうした方法の仕方は、これは非常にまずいのではないかというふうに考えられるわけであります。  第二に、地方団体相互間における税の配分の合理化を期するのだと、こういうような方針がございますが、この点はやはり第一と同じように大事なことであると思いますが、内容的には、やはりそういうふうになつてないんではないかということが考えられるわけであります。まあ入場税を取上げて譲与税の形で支給する、こういうようなことがございますが、この入場税を取上げること自体が、今日の都道府県いわゆる地方公共団体の場合ではこれは非常に重大問題であります。本当に地方の事務態勢というものをおのずから自立的に、何と申しますか、先ず国の繁栄は地方の繁栄にあるという立場から、いわゆる辞譲の立場からやつて頂くのであるならば、この地方税を取上げるというようなことのないようにして頂いて、その分だけ地方財源が今日のこの税制改革上から出て来る結果よりはプラスするような形に持つてつてもらわなけりやならないのじやないかというように考えるわけであります。それは地方の自立的な財源というものを弱化させる一番大きな原因になるんではないか、政府の意図とは反対の現象が出るんではないかということを、私は非常に憂えるわけでありますが、特にその内容面におきましても、入場税国税に移管した場合に、その九割を人口に按分して譲与税として出すと、こういうことがありますが、この九割にしても非常に不安定な形でありますし、従来独立財源であつたものが今度は国家の紐付きになる、かような形になるというようなことは、これは逆行するような行き方ではないかというふうに考えられるわけであります。  更にこの問題については、特に道府県民税の問題がございますが、この道府県民税は、これはもう内容的にはおわかりのことと思うので詳しくは申上げませんけれども、ともかくも今年はいいといたしましても、来年、再来年というように長くこの税金がこういう形態をとつて行きますと、どうしても税を上げるということを道府県と市町村の間で競うような形になりまして、いわゆる県民、まあ市民も県民もこれは同じでありますけれども、その課税される住民の側からいいますと二重課税が強行されるような危険性がここに出て来るのではないかということを、私たちは職場の実態をよく知つておりますので、これは考えられるわけであります。特に、成績を云々されておる現状でありまして、職階制その他いろいろな点が布かれまして、能率化ということは極度に我々の上にはかかつて来ておりますが、この税の問題につきましてはそういう点が非常に激しいのであります、実際問題として。地方財政が苦しいから激しいのであります。激しいところへ、こういう方向で、一方には道府県民税がある、一方には市町村民税があるという形になりますと、どうしても強行する部面が出て来て、これは二重課税が強化されるような結果が生れるのではなかろうかということを見通しまして、この点についてはよく一つとくと留意をお願いいたしたいと存ずる次第であります。  それから第四の問題といたしましては、この政府の考え方としては、道府県に対して住民が広く負担を分けて持つというような税種をいろいろと考えたというような点がこの中には載つております。併しこの点につきましては、その考え方自体は、これはいろいろな税金、道府県税或いは「たばこ」消費税等で現われておりますが、勤労者立場から考えますならば、やはり富の度合によつて負担をするような形を地方税の上においてもはつきりと出して頂きたい。そうしないと、一般化するというか、広くなるというような形で、逆に大衆だけが税負担が相対的には重くなるような結果がいろいろと出て来るのではないかということを心配いたしまして、そういう点についての意見を申上げる次第でございます。  最後に申上げたいことは、今度の問題で、平衡交付金がなくなつたということは、これは非常に大きな問題でございます。勿論これは私が申上げるまでもなく、終戦後の地方自治体の行政のやり方といいますか、そうしたものが、いわゆる地方自治法というものによりまして、国とはいわゆる自立したような形でともかくもやつて行けるような方向が採られて来た。そのための財源というものの処置が相当考えられて来ておることは事実でございますが、最近は更にそれが、終戦前のいわゆる国の、何と申しますか、紐付きという言葉は悪いのですが、自主性のない地方行政、地方財政のほうへ持つて行かれておる危険性があるのではないかというふうに我々は考えるのであります。例えば先ほども例を挙げました地方の独立財源の問題と、国からもらうものとの比率の問題でありますが、ここのところ一、二年、やはり国からもらう部分のほうが殖えておるような感じが我々はしておるのでありますが、特にこの平衡交付金の問題で、今度は交付税の問題でございますけれども、この交付税そのものが国の中央集権化の方向を表わしているのではないかという点を我々は心配するわけであります。と申しますのは、従来、平衡交付金は、これは御存じのように地方の財政計画の中で計画的に立てられて、大蔵省の査定でそれが決められて、国の予算が配付されるという形になつておりますけれども、ともかくも各地方自治団体の基準需要額というものと、それから基準収入額というものと、これを相殺して穴が明く、その穴に対してはこうしようというような形がとられていたわけであります。ところが今度の交付税になりますと、いわゆる所得税その他、法人税、酒税というようなものの徴収額から二〇%与えられるというようなことになります。そうしますと、国の収入の枠で地方の収入の枠が律せられるような、制約されるようなことになりまして地方財政のいわゆる融通性というような形が非常に締められるのではないかということを我我は恐れるわけであります。つまり国の予算、国の財政というものが地方の財政を或る程度縛るという結果になりやせんかということを私たちは恐れるわけでありますが、而もこの交付税のこれをよく見ますと、一定の額で決められてしまいますので、仮りに二〇%のものをもらつても、足りないような場合、不足額が出た場合にはどうなるか、こういうような場合が地方財政計画の上から考えられるわけでありますが、そうした点についての裏付けは今日この問題についてはないわけでありまして、どうしても、この平衡交付金制度は、少くとも交付税制度よりは、よりよい、こういう観点から、平衡交付金制度を残して頂きたい。次善の策として残して頂きたいということを、私は地方団体の職場の者として意見を申上げたいと思うのであります。特に地方団体の実情につきましては贅言する必要はないと思いますけれども、年度当初から四百億から五百億というような赤字があるとさえ言われておりますし、事実今日そうしたもののしわ寄せというものが、地方のほうでは首切り或いは給与の引下げというふうな形で現われておるわけであります。例えば今度の国家公務員のベース改訂でございますが、国家公務員の場合には、ベース改訂をやりますとすぐベースが改訂になります。地方公務員の場合では国に準じてやるということになります。従つて財政の幅のある所はやれますけれども、財政の幅のない所は国家公務員のように、折角国会でああいうきめ方をして頂いても、実際問題としては月給が上らないというような所が相当出て来ておりまして、私たちは今ここにその点については、各市、各県毎にいわば闘うと言いますか、そういう状態にあるわけでございますが、どうぞ一つ地方税制の面につきましてもそうした点で御留意を願いまして、我我職場の者にそうしたトラブルが起らないように、一つ御配慮を願いたいというふうに考えるわけでございます。    〔理事藤野繁雄君退席、委員長着席〕  以上非常に簡単でございましたが、私の今度の国税及び地方税改正に対する意見を申述べました。御清聴有難うございました。
  37. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 質疑を願います。
  38. 土田國太郎

    土田國太郎君 只今の御説明で、遊興飲食税であるとか或いは入場税であるとかを地方に置くべしという御意見のようでありまするが、これは私が申上げるまでもなく、地方々々によつて入場税遊興飲食税が非常に偏頗である、普遍的でないということは御承知通りでありますが、中央から金をもらうことはいいが、地方地方で独立財源は与えよというようなことになるのだが、この偏頗のために、遊興飲食税入場税のないところの財政の欠陥はどうして避けるかということと、この二つの税を、地方の業者が、興行者並びに料理飲食店が中央へ移管を好まないというので、むしろ地方自治団体よりも業者それ自身が猛烈な今度の運動をせられたことは御承知通りなんだが、その業者が移管をいやだというわけは、あなた方、地方においでになつて、よくその事情はおわかりになろうと思いますが、その点を一つやはりお伺いしたいと思うのです。
  39. 占部秀男

    公述人占部秀男君) 第一の点でございますが、入場税そのものも地方によつてたくさんとれる所もあるし、まあ非常に少い所もある。これは税金のことでありますので、我々の考えとしては、やはり取つたものをあと使う、いわゆる支出に見合うところの平衡的な作用を、平衡交付金その他の問題としてこれは扱うべきではないかというふうに、私たちは考えておるわけであります。直接、入場税そのもので徴税というようなことになりますと、これは単に入場税の問題だけでなくて、いろいろな税金についても、やはりそういうようなアンバランスといいますか、その土地々々によつて土地のローカルな特殊なニユアンスによるあれがあるわけでありますから、そういう点についてはやはり平衡交付金というような形で、支出に見合うところの徴税をすべきであるというような考え方を、我々は持つておるわけであります。  それから第二の地方の業者の状態でありますが、これは今、私、実は猛烈な反対があつてこの点については国税移管になつたというお話を聞いたわけでありますが、私自身は業者の中にも入つてまあ実際に聞いたこともございませんし、この間の事情については余り詳しく卒直に言つて存じてないわけであります。
  40. 土田國太郎

    土田國太郎君 先ほど府県民税が二重課税になるという虞れ、危険がある、こういうことですが、まあそれは、その府県においての運営に悪ければ或いはそうなるかも存じませんが、御承知通り、現在地方においての事業税というやつは、私は完全な二重課税ではないかというふうに考え、特にこれは大会社はそれは別で、そう苦労にもならないでしようが、まあ約三十万近くある日本の法人の中の九〇%は中小企業が占めておる。そのほかの商工業者も数限りなくあるんだが、その連中だけ地方において事業税を負担しておつて、今の中小企業というものは地方の俸給をおとりになつている方より以上に非常に過重な課税を受けておるのは、これは計算すればはつきりわかることなんで、皆さん方より非常に苦労しております。こういうような問題についてあなた方はどんなふうお考えになるか。
  41. 占部秀男

    公述人占部秀男君) 実はその点も申述べたい思いまして書いては参つたのでありますけれども、余り長くなると思つて省略いたしましたが、やはり個人の事業税については基礎控除というものを上げるべきじやないか、こういうような考え方を持つておるわけであります。
  42. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) 私は交付税の問題についてちよつとお伺いしたいのですが、地方財政の財政調整を、従来の平衡交付金でやるか、それとも今度政府が考えておる地方交付税でやるかということについては、それぞれ言い分があるわけでありますが、我々政府のほうから聞いた説明によると、大体、地方自治を確立するためには地方財政の自主化を図らなきやいかん、その自主財政を確立するためには平衡交付金制度では結局まあ積み上げ方式で、基準財政収入額と基準財政需要額とを積上げて、そうしてその差額を国でみるということになるのだけれども、併し実際にはその通りには行かないで、大蔵省が適当に査定をやるだから結果的には地方財政中央依存度というものが非常に大きくなる。それに反して交付税のほうは、大蔵省でどうこうする、査定するとかせんとかいうことでなしに、法律でちやんと二〇%というものが決まつているんだから、それで自動的にそれだけのものが地方へ還つて来る。だからそれだけ中央の按排をする範囲というものがせばまるから、それだけ逆に地方の自主性というものは強化されるのではないか。だから交付税のほうがいいのではないかというような非常に尤もな説明なんですがね。そういうことをしきりにおつしやる。それに対してどうも我々としては、わかるようでもあるし、わからんようでもあるのですが、実務に携わつておられる占部さんからその点についてもう少し詳しく説明を願いたい。
  43. 占部秀男

    公述人占部秀男君) この点は非常に大事なところなんでありますが、大蔵省から実際査定されることは事実でありますが、又、地方財政計画の中で府県或いはその他の資料というものが取入れられて、地方自治庁のほうとして更正するという形が第一番にとられて、大蔵省の査定になるわけでございますけれども、このときに、やはり無理な査定といいますか無理な財政計画といいますか、実行しても全然駄目だというような、まあ全然駄目ということはありませんが、無理な地方財政計画については、やはり知事なり市町村長なり、いろいろな面から働きかけがあるわけであります。実際のその材料を以てですね。或いは大蔵省の査定の場合でも、やはり実際の地方の実情を訴えて、その点についての、まあ資料としてこの査定について仮に最初考えていた見解も、あとになつて成るほど実情がそうなるというので少し殖やすとかそういうようなことができるわけであります。ところが、今度の交付税になりますと、はつきりと、もう税金の何割というふうにきまつてしまう。そこで、もう、がちんとされている。逆に今政府のほうで言われたようなことは、私から言わしむれば機械的な考え方ではないか。つまり、数字の上だけ上つておるから、数字の上でこれはもう政府ではどうしても手をつけられないのだから、逆に数字の上ではもう地方のほうが自主的になつているのじやないかというようなことを言われているのじやないかと私は思うわけであります。ですから、私は平衡交付金の制度そのものは万全ということは考えておりませんけれども、少くとも地方の意向を反映して、或る程度の調節的な弾力性のあるというような点について、僕はむしろ交付税の形よりも平衡交付金のほうが、これは地方としては自主的な形が実際上は取り得るのではないかということを、まあ今までの折衡や何かを我々がいろいろ職員の立場からやつておりますから、そういうような実例から見て考えられるわけであります。
  44. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) 更にもう一つお伺いしたいのですが、この入場税遊興飲食税の問題なんですが、この二つの税金は一体のものとして、地方制度調査会でも税制調査会答申でも国に取上げるということになつておりましたし、又政府の原案もそういうことになつてつたのが、中途において御承知のようないきさつで入場税だけ国に取上げられるということになつた。その点についての只今の御意見に対しては私も賛成するものでありますが、地方で実際にこの両税を賦課徴収をやつて行かれる上において、どうも数字なんかから我々が想像いたしました場合、入場税のほうは割合徴収率もいい。ところが遊興飲食税のほうは極めて悪い。その極めていいということは、結局非常に税金が取りいい。手数が簡単だということにあるのではないかと思うのですが、それを国に取られて、そうして遊興飲食税のほうは残つておる。而もその徴収率が悪いということは、それだけ取りにくい税金だということになるのだろうと思います。その点について、遊興飲食税がなぜそのように取りにくい税金か、又徴収率が非常に低いかということについて一つお尋ねをしたいのです。それから、同時に又今年の地方財政の実情を見ますと、前年度より一層苦しくなることはわかつております。そうなりますと、すべての税金について非常な徴収強化が行われることになると思う。その場合に一番取りにくい遊興飲食税を今後如何にしてかなりの程度まで徴収成績を挙げて行く自信が地方団体としてはあるのかどうか。  この二点について御意見を伺いたい。
  45. 占部秀男

    公述人占部秀男君) 今の点については、これは地方団体はもう相当つている。率直にいつてそう言えるのです。  あとの問題の点から申しますと、如何にしての税金を合理的に成績を挙げて行くような取り方があるかという点については、恐らくどこでもこれは、税の主管者と言いますか、当局のほうで相当研究しているのでありますが、未だにこの問題については一つ結論というものがどこの県或いは市でも出ていないような状況であります。なぜそういうことになるのかというと、これは税そののもの対象が非常に表面に見えないような場合が多いということです。つまり現場にしよつちゆういて、それを見るようなことができない。而も入場税のようにチケツト制ならチケツト制という形で、仮に或る程度のものは税金を、この入場券のようにして出せるものでありますと、割合にいいのですが、そういうこともできない。こういうような点が一つと、それからもう一つは、やはり非常に悲しいことでありますけれども、この税を査定する場合に、而もいろいろな遊興飲食をするというような商売の関係から、相当地方的には或る程度手心を加えてもらいたいというような運動が、何と申しますか功を奏すると言つちや申訳ないのですが、功を奏するような場合もまあ二、三ある。こういう点については、例えば我々職員組合の立場から言いますと、そうした点について自粛、粛正をしろというので、組合自体がそういうような会或いは税をやつている人たちについての肅正をやつておりますけれども、ただこの肅正が単に組合だけの問題ではなくて、いろいろな政治的なものに繋がつている形もあるし、いろいろな地方ボス的な形に繋がつている場合もあるというので、非常にこの点については、やりにくい税金の実は一つになつているわけであります。  入場税遊興飲食税とを比較いたしますと、まあそういうような点が率直に言えるのじやないかというふうに考えております。   —————————————
  46. 大矢半次郎

  47. 中村重喜

    公述人中村重喜君) 私、東京法人連合会の中村でございますが、法人会と申しますと、税務署単位にできている会でありまして、本来の目的は、何と申しますか、民主的な税務の円満な伸長を期するために税務機関と協力をして行うという団体であります。従つて業者の単純な利益団体という立場にはおりません。現在は東京法人連合会が中心になりまして、法人会総連合というものを結成いたしておりますが、大体におきまして中小法人の団体であります。中小法人と申しますれば、現在の法人の総数二十六万の中の九九%を占めているのであります。又この中小法人の九〇%というものは同族会社であります。同族会社と申しますれば、昔の財閥の財産保全を目的といたしました、いわゆる保全会社というのを連想するのでありますが、現在におきますところの同族会社というものは、殆んど全部がこの中小法人の営業の実体をなしているという状態であります。  右のような次第でありますから、私が本日この席において申述べます意見も、主として中小法人という観点より申上げる次第であります。  それで改正案の大体についてでありますが、大きな税制改正が一朝一夕の間に盛り上つて来るというようなことは、今までの税制上の改正にもございませんし、我々としても大きな根本的な改正のためには相当の年月がかかるということは無論予期しておつたのでありますが、何分、今回の税制改正は、いろいろ調査会もできまして、なかなか発足が本格的でありましたので、我我としては非常に大きな期待を一応抱いておつた次第でございますが、結果より申しますれば、何が改正されたかというよりも、むしろ何が改正されなかつたかということのほうが重要な感じがいたすのでありまして、我々としてはまだ幾多の問題を将来に持ち残しておると考える次第であります。まあ今回従来の自然増収によりまして減税を図るという方式は打切られたのでありまするが、併し本年において果して自然増収はないのか。若しあつた自然増収というのは如何なる用途に使われるのか。減税以外の如何なる用途に使われるか。かようなことにつきましては、我々としては少なからず不安と疑問とを持つておる次第であります。  それで、第一に申上げたいのは、現在の税法若しくは税制を見るにつきまして、これはいろいろの見方があると思うのでありますが、我々としては、現在の税法殊に法人税法一つの著しい特色といたしまして、いろいろの特別の減税措置、これは各種の準備金、或いは積立金、特別償却といつたような形式をとつておるのでありますが、このような特別の減税上の恩典というものが非常にたくさんあるということであります。これは従来恐らく戦時経済のときにおいてもなかつたような現象ではないかと思うのであります。現在のかような特典というものは恐らく十幾種に上つておると思うのでありますが、これは税法を不当に煩雑にしておるばかりでなく、又いろいろな方面に非常な負担の不均衡というのを生んでおるのであります。税率が低い時代におきましては、その減税の特典というのもさほどの力を持つておらんのでありますが、現在のように非常に重い税率税法におきましては、この減税特典というものは非常に大きな特権をなし、又それが一つできれば更に新たなる不均衡を生んで来るというような状態にあります。そしてこの各種の恩典の現状はどうであるかと申しますれば、大体においてこの政治的の発言力の大きな企業のために設けられたものであり、すでに既得権を重ねておりまして、而もこれが漸次拡大せられて行く傾向を持つておるのであります。この減税措置によりますところの租税減収というものが幾らあるかということは、これは我々局外者の正確に計算することはできないことでありますが、恐らく五百億円を超えてということはいろいろの人が申上げられるところであります。この五百億円というものは、これはやはり国民徴税者の負担に帰するところでありまして、これは殆んど補助金と変らないような作用をなしておる。我々としては、税金の行方について大きな関心を持つていると共に、この減税の行方についても大きな関心を払わざるを得ないのであります。今次の改正におきましても、工業の関係について又新たな一つ減税措置が加えられておりますが、これはそれぞれにおいて相当の理由あることは勿論であります。併しながら一つ追加されれば更に一つの不均衡を生んで来て、漸く、漸次拡大せられて来る傾向があることは、これは否定できないと思うのであります。それで、これは税制上におきましても、双今申しましたように、この煩雑と不均衡とを生んでおるばかりでありません。我々中小法人立場におきましては、これは大法人と中小法人との間に甚だしい負担の不均衡を生んで来るということについて重要な問題がある次第であります。それで、我々といたしましては、右のような負担の不均衡状況に鑑みまして、中小法人に対しては特に法人税率軽減してもらいたいという要望を常に持つておる次第であります。現在のこの特別の減税措置を利用しておりまするところの大法人が、実際に負担しておるところの法人の、法人税負担即ち法人の実効税率というものは、これはいろいろ業種によつて差異もありますが、或る種の業種によりましては二二%になつております。平均して、恐らく特典を利用する大法人の実効税率は三〇%を下つておるということであります。この点より見ますれば、すでにこの大法人におきましては、朝鮮ブーム以前の三五%以下の税率負担しておる、そうして一方ではこの法人の九九%を占めておるところの中小法人、これは主として資本金一千万円以下のものをとつておるのでありますが、この九九%を占めるところの中小法人というものは、依然として法定税率通りの四二%の税率をそのまま負担しておる、かような状態になつておるのであります。それで、今回の税制調査会におきましても、この中小法人負担の問題をとり上げられたのでありますが、今その考え方として、国税地方税を通じて、殊に事業税の軽減によつて中小法人負担軽減しようという考え方、これは一方の筋を通した考え方と思うのでありますが、併し今回の政府の税制改正におきましては、ないことは、我々として非常に遺憾に存ずる次第であります。我が国におきましても、従来は、会社の種類別なり又株主の数によりまして会社を区分して、そうして差別的の課税をやつた時代もあります。この中小法人負担軽減につきましてはいろいろの方式もあるのでありますが、我々は現在としては尤もな実際的な方法といたしまして、この法人所得の決定額以下のもの即ち百五十万円以下の分については、三五%の朝鮮ブーム以前の税率を適用してもらいたい。かような要望をつけております。この所得額百五十万円以下といたしましたのは、大体まあ五百万円ぐらいの会社につきまして一割五分ぐらいの配当ができるような状態を見てやつてはどうか、そういう点から来ておるのであります。  それから、その次に同族会社の積立金の課税のことにつきまして申上げたいと存じます。只今申上げました通り、この同族会社は即ち中小法人であります。又、現在の同族会社というものは、昔のような財閥関係の財産保全の会社ではありませずして、全く零細な中小企業者の会社形態をとつておるものに過ぎないのであります。この同族会社に対するところの積立金の課税は、これは申すまでもなく、シヤウプ税制によりまして、この留保所得に対する利息的の意味を以て作られた税金でありますが、この税金は今回の改正におきましては、従来の累積額に対するところの税金は免除せられることになりました。これは結構なことでありますが、それによつてこの税が創設せられました当判の意味の大半は失われたと思うのであります。又これの税率の動きを見ましても、最初は二%及び七%でありましたものが五%一本となり、更にこれが今回は倍加して一〇%となるわけでありますが、どういう筋道でこういう税率が動いて来るのか、我々の了解し得ないところであります。要しまするに、この税金は、次第にその姿が変りまして、もう創設当初の意義を失つて、今は漠然と個人の企業とのつり合いという点に根拠を持つておるらしいのでありますが、若しそうでありとすれば、これは臨時措置などによつて解決すべき問題ではないのであります。それで我々といたしましては、この税金をこれは全面的に撤廃してもらいたい。この税金の実態というものは、今は中小法人のみに対するところの一つの特別の税金に過ぎない状態であります。これは全面的に撤廃してもらいたい。若しやむを得なければ、英米におけるように、実際に事業をやつておる法人には適用せずして、財産保全を目的としておるところの保全会社式のものだけに適用してもらいたい。かような要望を持つておる次第であります。  それから次に繊維消費税の問題でございますが、これについて一言申上げます。この税金の新設に当りましては、納税義務者を誰にするかにいうことが長く決定せず、いわばあちこち持ち廻られたというようなことは、これは税制改正のあり方につきまして、我々国民として非常に深刻な不満と失望を抱いた次第であります。又、今回最後に落ち着きましたところの卸売階段課税というものも、これもいろいろ複雑なものであり、又いろいろの従来の経緯に鑑みましても円満なる執行ということはよほど困難と考えます。又この繊維に対するところの課税が絶対あり得ないということは無論我々も考えておらないのであります。現在の物品税の中には繊維関係のものは入つておらんのでありますが、或いは奢侈的という立場をとりましても、繊維に関するところの課税が絶対にあり得ないということは無論考えないのでありますが、今回の繊維消費税は、これは一応撤回せられて、そうして十分再検討を加え、国民としても納得の行くような形式において繊維課税考えるべきである。かような考えを持つておる次第であります。  それから所得税関係におきまして一つ問題を取上げますが、これは所得の雑所得と一時所得というのがございますが、これは一緒にして、そうしてこれは相当軽い課税を考うべきできではないかという点であります。非常に軽微な問題のようでありますが、又一つの技術的の問題に過ぎないように考えられるのでありますが、私どもこれを取上げましたのは、やはりこれは所得税税制の根本に触れるところがありまするし、又本当に我々が要求しておるところの租税上の公平というものは何であるかというような問題にも触れると考えるのでありますから、これは租税の立法をされるかたにも、徴税当局のかたにも、十分御検討を求めたいという意味において、この問題を取上げた次第であります。現在この租税というものが非常に国民に対するところの重圧感を与えておりますのは、いろいろの原因もあります。税率の高いという点もあります。併し、すべてのものに税金がかかる、如何なる種類のものでも、又如何に零細なものでも税金がかかる。税金のかからぬものはないというような点が、これがやはり国民に対するところの一つ租税重圧感の原因になつておるのではないかと思うのであります。この種の所得につきましては、我が国においては、所得税法の創設以来、営利の事業に属せざる一時の所得というものは、半世紀以上も課税しなかつたのでありますが、これがいろいろの変化もありまして、昭和二十五年にいわゆる雑所得というものを設けて、そうしてすべてここへ落ち込んで来たものは、ここで拾い上げて税金を取るという建前になつたわけであります。これも一応の理由はあるのでありますが、元来、雑所得とか一時所得とか申しましても、なかなかこれが区別し得るようなものではありません。一例を申しますと、一般人の原稿料、講演料などというものも、これも従来は一時所得というところの中に入つてつたのでありますが、一時所得のときに、昭和二十七年でございますか、十万円以上の控除金を作つたときに、わざわざ講演料その他は控除金のないところの雑所得に移し替えたような例もあるのであります。又、一方では、所得税法のほうにおきましては、いろいろ重要な所得、或いは有価証券の譲渡所得とか或いは山林所得とか、いろいろ重要な所得がだんだん軽く課税をせられて行くという傾向があるのに反しまして、本当に細かな所得、自分の庭にできた「たけのこ」といつたような、こういう細かな所得がやはり最後のところで総合課税せられて、そうして何の軽減考えられておらん。而もこれが実際においては殆んどこういう所得課税せられておらないのでありますから、公平と言つても、つまり立法家が法律に書いて、紙の上の公平として満足しておるだけでありまして、実際上においては却つて不均衡を生んでおる。こういう点から、国民のこの租税に対するところの重圧感というものが生れて来る、かように考えるのであります。  これで大体要点だけを申述べたのでありますが、今後の税制改正におきましては、我々としての要望といたしましては、やはり国税地方税を通じて、この法人課税については、これは従来の法人の実在説によるのか、或いはシヤウプの税制によるところの擬制説によるのか、この根本をはつきりきめて、そうして一貫した建前をはつきりすることがやはり必要ではないか。問題は理論的の問題になるのでありますけれども、結局いろいろ実際問題にはいろいろと理論的な立場が顔を出して参ります。そうして我々の考えよりすれば、やはり政府の都合のいいような場合に、こういう理論的の立場があれこれと採られる。かようなわけでありますから、これはどうしても将来においては一貫した筋道の通つた建前をとるべきでないかというのであります。  それから中小法人同族会社につきましては、これは実際、その実態と申しますか、本当の現在の中小法人のあり方、生態というものに対しまして、これを十分に把握せられて、これに対して適切な税法上の建前を、その課税の形態と申しますか、これを考えて頂きたいという点であります。  それから最初に申しました法人税におきますところのいろいろの特別の減税措置、これは我々と観点を変えましても、やはりこれは一つ総合的に、全部一度検討を遂げて、果して所期の効果を達成しておるのかどうかということを十分一度総合的に検討をして、そして、こういう措置税制上無論或る程度までは認められるのでありますが、最近においては、我々としては、これは一つの行き過ぎであると考えられるのでありますが、これについての方針を検討すべきではないか、かように考えるのであります。  恐れ入りますが、地方税につきましてほんの一言だけ一つ申上げることをお許し願いたいと思います。今回の地方税改正は、我々の立場から一口に申しますと、まあ税金の……つまり税金を取るほうの立場からの税制改正が主でありまして、我々の納税者としての希望というものは余り聞き入れられるところが少く、我々の期待したところの負担軽減ということも行われず、又新らしい税金などができて、税制は却つて複雑となつておる。これはいろいろの理由もありましようが、とにかく納税者としては大いに期待したところと違うという感じが第一にいたすのであります。  それから第二に、この地方税というもののいろいろの税金の性質が、何だかそのときの都合によつてつて来て、あいまいな税制上の性格を持つておるというような感じがいたすのであります。例えば道府県税、市町村民税などというものは、これはまあ事実上、国税の付加税のようになつております。法人税割というものは、これは我我として非常に重大な関係があるのでありますが、これはいろいろこの課税上の根拠については、なお疑問があるのでありますが、実際においては法人税率引上げたといつたような恰好になります。又、事業税というものはこれは著しく重税の恰好をとりまして、事実上は殆んど素朴な所得税となつておるように思います。又、償却資産税というようなものも、これは見方によつて一つの事業税にほかならんと思うのでありまして、このようにいろいろ税金そのものが性質を変えている。そして税制上の性格があいまいになつて、その負担の関係も明瞭を欠くような感じがするのであります。そして我我中小法人立場よりいたしますと、これらの税金の負担は、殊にこの中小法人、中小企業者に対するところの考慮が払われておられないというような感じがいたしております。法人税割の軽減ということも、これも税制調査会答申にはありましたが、今度行われておりませんし、それらを法人事業税軽減というものも、幾らか行われたのでありますが、まあ殆んど言うに足らない。又、固定資産税のようなものも、大きな企業に対しては非常な特別な配慮がなされておるのでありますが、小さなものに対しては、殆んど配慮がありません。又、償却資産税といつたようなものも殆んど零細な資産、一件二千円以上のようなものもやはり依然として網羅、課税をしておるというような状態にありまして、中小法人立場よりいたしましては、やはり地方税がいろいろあいまいな形を以ていろいろと覆い重なつて負担となつておる、かように考えるのであります。  それで、ほんの一言だけお許し願いますが、事業税でございますが、これはもう事業税も所得税と殆んど同じような基礎控除ができるようになりまして、一種の所得税となつたのでありますが、これは考え方としては、やはり地方税としては、税制的には、やはり適当な外形標準をとり得た事業の種目を次第に拡大して行つて、そしてやはり物税的な性格を取り戻すべきだと考えておるのであります。差当りといたしましては、税率軽減ということが最も緊要でありますが、法人事業税につきましては、政府の原案を見ましても、多少の軽減はありますが、我々の立場から従来主張いたしておりましたのは、所得の百五十万円以下の金額については百分の八、これを超えるものについては百分の十の税率にしてもらいたい、かような要望を従来持つております。  それから回定資産税でありますが、これは制度の建前といたしましては、やはり一定の安定性ありということが妥当と考えるのでありまして、やはり方法といたしまして、三年程度くらいは評価額を据置くほうが、いろいろの意味において妥当ではあるまいかと考えております。  償却資産税、これは一種の事業税と考えられるのでありますが、これにつきましては、差当りといたしましては、例の工具、器具、備品等を、一つ償却資産税より除外してもらいたい。又償却資産税の免税点は十万円程度までに引上げてもらいたい、かように考えております。  次に不動産取得税でありますが、これは、今回は固定資産税の税率の引下げと見合いまして作られたのでありますが、恐らくこの税金は将来地方税としてだんだん増強せられまして、税制におけるところの不動産の重課というものの傾向をますます拡大して行くのではないかというような虞れを多分に抱いております。従つてこの不動産取得税の課税の範囲と程度につきましては、余ほど慎重に考えて行く必要があるのではあるまいか。これに対しますところの、現在の私の要望といたしましては、住宅建設用の土地につきましては、やはりこれは地積を標準にとつて、百坪程度くらいは免税にして頂きたい。又、殊にアパート建設の敷地については、アパートなればやはり子供の遊び場、いろんな何も要りますので、これについては特別の考慮をして頂きたい。  それから新築だけでなく、やはり中古住宅の売買ということは、これもやはり住宅問題の解決上、一つ重要な点をなしておりますので、中古家屋の売買等についても、相当程度までの免税をして頂きたい。  それから法人税割でありますが、これはどこも、この税金の創設されました理由その他は伺つておるのでありますが、現在の法人税制の建前から見て、果してかような税金が十分な根拠を持つておるかという点は疑問を抱いておるのでありますが、これは我々中小法人立場からいたしましては、やはり法人税額八十万円以下くらいの部分については、やはり二割程度軽減、かようなことを考えて頂きたいという要望を持つております。  只今申しましたところは税制の全般に触れる問題ではありませんので、主として中小法人という立場から、特に我々として関心を抱いております問題につきまして所見を申述べた次第であります。どうも有難うございました。
  48. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 質疑を願います。
  49. 小林政夫

    小林政夫君 今の、法人税特別減免措置をなるべく廃して、一律に税率を下げるということには大賛成でありますが、二十六万の法人の九九%を占める中小法人の指導団体として、あなたのほうで、一体、全会員にその点が徹底しておるのか。それにしては非常に声が出ない。二年ばかり前から大分言つているけれども、本日の公聴会には大分そういう声が二人の公述人の間から聞かれたのでありますけれども、全体的に輿論としてはまだ非常に微々たるものだと思いますが、会員に十分徹底しておりますでしようか。あなたと同じような気持を全会員の人が持つておられるかどうか。
  50. 中村重喜

    公述人中村重喜君) 中小法人の現在につきましては、ご承知通りいろいろ組織団体もあるようでありますが、まだ何と言つても十分組織化されておりません。私どもは、税務署単位で、而もこれは一つの税務機関との協調団体という立場で組織しておる次第でありますが、お話の通りこの中小法人の声というものはまだ非常に小さなものであります。又、中小法人立場というのが、或いは輸出の六〇%を占めておるとか、或いは二千万人の人を中小企業で養つておるとか言われておりますけれども、実際の声というのはやはり一つの雑音的な声と聞かれ、一つの雑草的な存在と見られておつたような事実もないことはないと思います。併し一昨年、昨年あたり、私もこの団体に関係いたしましたが、やはり大会なども非常に最近は熱を帯びて参つたと思います。何といつてもいろいろ苦痛は抱いておると思いますが、これを一つの大きな声として世間にも聞かれ、又国家の有力な機関にも聞かれるといつたような組織せられた声としては甚だ微弱なものではないかと思つて、この点は非常に私どもとしては遺憾に思つております。
  51. 小林政夫

    小林政夫君 それから中小企業者の足並みが必ずしも今揃つていないと思うのです。というのは、中小企業者の中でも、個人企業と法人という場合に、個人のほうは、どうもやはり法人は税が軽い、こういうことを、同じ中小企業者の間で法人は税が軽いのだということを言うので、従つて中小企業者全体としての、この中小法人というものの税率を軽くするという声が弱くなつているのじやないか。そういうことを言う根本は事業税にあると思うのですが、あなたもちよつと事業税に触れられたと思うのですが、そういう点についてはどういうふうに法人会のほうではお考えになつておりますか。
  52. 中村重喜

    公述人中村重喜君) 法人個人の税負担はどうかという点につきましては、これは大蔵省なり或いは中小企業庁あたりで一つの調査みたいなものを出しておりますが、これはいろいろな前提によつて機械的に作つた調査でありまして、あの表では、実際この法人個人との負担関係がどうなつておるか、従つて法人税率個人税率をどう調和をとるかといつたようなことは出て来ないと思います。我々法人会としては二つの面があります。一つは大法人に対するところの権衡問題です。一つ個人に対するところの権衡の問題です。従来、中小法人個人との権衡ということは、これはどうしても、如何に表を作り算盤をはじいても、いろいろな違つた前提でありますから、これによつて結論が私は出し得ないと思います。けれども、従来は中小法人といえば大きな個人と比較される。そうして一方においては大法人との間の不均衡という点が余り考えられておらん。大蔵省に対して我々が税率を下げてもらいたいというときに、私どもは、これは中小法人と大きな個人との間の権衡をとる、むしろ我々は、個人企業というものは御承知通り最近も大分法人形態をとつております。法人なりの傾向というものは非常に多いのです。我々としては、とにかく個人と中小法人というものは形が変り得るものなんです。ところが中小法人と大法人とはどうかといえば、これはもう大小の差異ではないのです。資法金五十万円の会社と五十億円の会社とは一万倍も違います。それから中小法人を株主二十人とします。大きな会で二十万人、これはもう全然性質が違つておるので、中小法人は如何に勉強しても大法人になれるわけではありません。雲泥の差と言いますか、月鼈の差と言いますか、とにかく質的の差があるのです。個人と中小法人とはどちらでも融通し得るものなんで、我々としては、そこの権衡よりもむしろ中小法人と大法人との権衡という点を主として訴えておる次第です。
  53. 小林政夫

    小林政夫君 あなた方の訴えをされる点はよく了承いたしておりますが、私も賛成なんですが、ただその主張を貫徹するために、どうも同じ中小企業でありながら、大法人等との問題、大企業との問題が問題であるのにかかわらず、ただ国税の面でなくて、地方税の事業税関係で、かなりそこに法人個人との間にはアンバランスがあるというようなことから、対大法人に対する関係、大企業に対する関係において、非常に中小企業者としての足並みが乱れておる。而も一方の個人企業から言うならば、法人は非常にいいというような声が出るので、あなたの今の法人税特別減免措置を廃して、成るべく少くして、そうして一律に税率をきめる。更に中小法人については考えるということが、非常にそれによつてデイスターブされておるのではないか。だから同じ中小企業者としての先ず足並みを揃えるために、法人会としては努力されるべきではなかろうか。こういうことを申上げたわけで、御主張のほどは私はよく了承しております。
  54. 中村重喜

    公述人中村重喜君) その点につきましては、法人会、又我々の姉妹団体でありますところの青色申告団体その他の友誼団体で大いに反省するところがあると思います。又、商工会議所あたりでも、あれは大体中小関係がありますので、私のほうもずつと向うの税製委員会には出ましていろいろ何しておりますが、ただ最近、殊に昨年頃から、私のほうで税制委員会を開きましても、或いは理事会あたりにおきましても、どうも我々がいろいろ世間に訴えておつても、殆んど効果がないと言いますか、聞かれない。そんなふうでは何の必要があつて委員会などを開き、又いろいろ意見書など作文したのかというような意見が非常に出まして、併しこれは私、非常に或る意味においては憂うべき点を持つておると思うのでありますが、併し私どもとしては、まあできるだけ我々の声を組織し、国民の間にも、又政府の間にも御了解の行くような組織された声を掲げたいという気持は十分持つておりますが、何分これは甚だ不十分と思います。   —————————————
  55. 大矢半次郎

  56. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 主として地方税の関係を中心にいたしまして私の所見を開陳いたしたいと思います。  今回政府案として出されておりまする地方税制の大体の構成につきましては、私は賛成であります。と申しまするのは、地方制度調査会税制調査会の両答申案が相当政府案に取入れられておりまして、私、両調査会委員として起草に関係いたしましたので、勢いそうならざるを得ないのであります。この間の事情を御了承を願いたいと思うのであります。  今回の地方税制の大きな組立てで特に目立ちますことは、独立税のほかに、更にその上に譲与税という新らしい制度をこしらえまして、更にその上に交付税という、従来の交付金制度に代る制度をこしらえて、三段構えになつているという点にあると考えるのであります。なぜそういう制度が必要であるか。私、この制度につきまして、この構想の言い出しつぺの一人でありますので、その理由を申上げてみたいと思うのでありますが、なぜそういう構想をとらざるを得ないかと申しますると、よく地方に独立財源を与えよういうことを言われます。各地方団体こぞつて地方に独立財源を与えよということを言われております。又これは地方自治の観点からみまして至極尤ものことであると私ども考えるのでありますが、然らば現状において現制度をそのままにして独立財源を言うがごとく与え得るかどうかということになりますと、これは殆んど不可能であると思うのであります。よく入場税国税に移管されることは地方自治の破壊である、遊興飲食税国税に移管するという主張は地方自治を無視したものであるというふうな意見が吐かれます。私ども多年この仕事に頭を突込んだ者からみますと、誠にこれを聞きましたことだけで、この人はまあ藤四郎だという感じを抱くのでありますが、尤も私どもの頭がそのほうへ固まつてしまつて、そういう感じを持つのかも知れませんが、まあそういうふうに考えられるのであります。なぜかと申しますと、現状において現制度の上に地方財源を与えますと、例えば税ではございませんが、義務教育費の国庫負担であります。今回第三次の補正予算か何かで何十億かの金が議会に要求されるそうでありますが、これは主として東京、大阪のごとき比較的富裕といわれておる団体に行くのであります。この案が出されますのも、東京や大阪が困つておるから、この金をやろうと言われるのではなくして、恐らく、想像いたしますには、そういう法律があるから仕方なく出すという意味で提案されるのじやないかと思うのであります。その通り、いろいろな財源地方に付けようといたしますと、必ずそういう事態を引き起します。何となれば、地方の独立財政を充実するという問題は、地方団体が国の下にたつた一つだけある、その場合に国から何らかの財源を持つて行くということであれば、これは簡単にできることでございます。併しながら地方に独立財源を与えよという要求の陰に、合理的な根拠といたしましては、どうしても一方前後の地方団体の個々が自治の運営に必要な財源を得るようにしてやるという意味であろうと思うのであります。又そうでなければ相成りません。ところが、今日の経済情勢におきましては、御承知のように税源の地域的偏在ということが避けがたい状況でございます。従つてこの地域的偏在というものを或る程度地ならしをしておかなければ、新らしく独立財源を持つて行くということはできません。やりましても、いわゆる富裕団体のほうにたくさん行つてしまいまして、貧弱団体、やらなければならん団体には参らない。丁度池の鯉に麩をやるようなもので、太つた鯉は、もうやらなくてもいいから、痩せた細い鯉に麩をやろうとしても、池に投げると大きなほうの鯉がぱくつと喰べて、どうしても小さいやつが喰べてくれない。丁度それに似たような事態に相成るのであります。従いまして、何らか各貧弱団体にも行き渡るような財源考慮しなければならん。それは財源だけの点からは不可能のことでございまするから、どうしても貧弱団体に行き得るような措置を講じなければならん。そこで思い付きましたのが譲与税でございます。なお、そのほかに富裕団体から財源を吸い上げます手段としましては、今回の案におきましても、例えば道府県民税を創設されておる。これは負担分任の精神から設けられたものでございましようが、一面におきまして、市町村の地域的税源の不均衡を是正するという作用を持つておると私は存ずるのであります。法人税制の引下げのごときも又さようであります。或いは大規模の償却資産税を府県に移すという問題も同じような考え方に出ておると思うのであります。そこで、更にそれらより一歩進めまして、例えば入場税を吸い上げてしまう、そして、それをいわゆる富裕府県と称せられる所へもやるけれども、富裕府県が独立税としてとつておる場合よりも少くそこへやりまして、いわゆる貧弱府県のほうへ比較的多く廻るようにするという工夫が必要になつて来ると私は思うのであります。入場税を今回譲与税として国税に移されましたのも、全くこの趣旨だと存ずるのでありまして、私は賛成であります。私の個人的利害から言えば反対せざるを得ないのでありますが、制度としては賛成であります。この場合、よく誤解があるように見受けるのでありますが、入場税は非常に地域的偏在度が強いものであります。これが譲与税とする一つの理由であると思うのであります。二十八年度の数字つたと思うのでありますが、各税目の人口一人当りの額につきまして、全国平均を一〇〇といたしました場合に、最も偏在度の強いものが入場税でありまして、東京が三六八、島根が一八でありまして、比率にして二〇・四四というものになります。遊興飲食税が東京が二三九でありまして、茨城が最低の二九であつて、八・二四倍、こういうふうな比率が出ておりまして、入場税のほうが確かに偏在度が強いのであります。この偏在度が強いからいけないということで譲与税にするのではないと私は思います。ただ、できる限り中央に吸い上げて地方に他の標準によつて譲与するという税をこしらえるならば、偏在度の強いものを吸上げて、その目的を達成し得る、こういう見地から、この偏在度の強いものを譲与税に先ず好適だということにせられるのだと考えるのであります。なお、このほかに、例えば入場税につきましては、偏在度が強いばかりでなく、必らずしも地方における課税が適正に行われておらない。これは遊興飲食税と異なりまして丁度逆になつておるのでありますが、実情は、私ども知つております範囲では、大都会におきまして比較的重い。重いというのは、適正にとられておりまして、地方に行くほどルーズにとられておる傾向がございます。これはいろいろボス的存在等の関係もございましようが、事実そういうふうになつておるのでありまして、納めておる会社でいえば松竹とか東宝とかいう大会社は間違いなく納めておるけれども個人経営の興行館等におきましては相当のごまかしが行われておるというのが実情のようであります。遊興飲食税の場合はこれと反対でありまして、地方財源漁りのために貧弱府県ほどやかましい。いわば適正にとつてつて、大府県になるほどルーズになつておるという実情にあるようであります。いずれにしましても、この入場税が適正な課税が行われておらないということは、或る程度私は事実だと思うのであります。これが国税という形式に移されることによつてどこまで是正せられますか。これは完全に是正されるとも考えられませんけれども地方税に置いておく場合よりは、統一した国家機関によつて徴収されるということによりまして、相当適正化されて来るのではないか。業者の反対等も、恐らく今日の課税の不適正なことをむしろ証明せられておるのではないかと私は想像いたしておるのであります。もう一つ、この入場税なり、或いは原案に出ておりませんけれども遊興飲食税を譲与税にするのが適当だという理論的な理由の一つは、両税とも必らずしもその団体の所属員が納めているばかりでないという点であります。固定資産税或いは事業税とかいうものは、固定資産税については殊にはつきりいたしておりますが、その団体の構成員がその団体に対して納税をいたすものである。ところが入場税遊興飲食税というようなごときものは、他の団体の者がその団体に来まして納めるという場合が多い。東京におきまして入場税を払つておる人間は、勿論、東京都民が多いかも知れませんけれども、いわゆる地方のお上りさんが上京したついでに芝居見物をして納めるというふうな場合が多いのであります。殊に遊興飲食税のごときにつきましては、例えば熱海市のような温泉地について言えば、熱海市の人が納められる遊興飲食税は極く微々たるものであろうと思います。大部分が他の団体員がそこに来て納めるという税であります。かような税であつてみますれば、これは何らかの標準で、取れるところの団体のみに帰属させないで、一応何らかの形で吸い上げて、別個の標準で地方に分けるということも、一つ合理的根拠があるように思うのであります。  そこで話が前に戻るのでありますが、かような税を吸い上げまして、譲与税という形で人口を標準にして地方に譲与いたします。そうすると、どういうことが起るかと言いますと、これによりまして或る程度税源の偏在の是正が行われます、殊に田舎に税が廻るというだけではございすせん。集まつている税をそのままとつておる場合より減らされておりますから、従つてそこに他の独立税を与え得る余地ができるわけであります。若しこういう制度をとらなければ、たばこ消費税、今度の原案にとつておられますたばこ消費税のようなものは実施困難でありましよう。というのは、いわば行き過ぎの団体に又財源が行くという結果になるからであります。尤も行き過ぎと申しましても、受けるほうの側から言えば、これは幾らもらつても足らないのが現状でありますから、行き過ぎという言葉には余ほど限定した意味を持たせなければなりませんが、国家財政の現状と睨み合せて地方財源を与えるという観点から見ますれば、いわばやらなくてもいい団体に行くということは行き過ぎということができると思うのでありますが、その行き過ぎの団体というものを、或る程度譲与税によつて入場税を吸い上げておくことによつて頭を減らしておくことができますので、たばこ消費税というものもそこに持つて行くことができるというふうになるというわけでございます。  なお、この点につきまして、私、原案に対して不満を持つておりまする点は、なぜ遊興飲食税を同じように譲与税として採用されなかつたかという点でございます。その合理的根拠をいろいろ想像いたしてみましても、結局一つ二つの議論ではない。一つは、どうも遊興飲食税というものは柄の悪い税だから、国税には適当でないという素朴な議論であります。併しそういう客商売をしておるところから所得税法人税を現に国税としてとつておるのでありますから、そういう議論はどうも成り立たんのじやないか。もう一つ考えられることは、先ほど申上げましたように、入場税よりも偏在度が低いから、従つてとられなかつたというのが、一等合理的な根拠ではないかと思うのでありますが、この譲与税を設ける理由は、ただ偏在度だけの問題でないことは、先ほど来申上げた通りであります。地方に独立財源を与える手段として設けられるものでございますから、若し理論的に譲与税に持ち込み得るものがあれば、少しでも余計持ち込んだほうが地方に独立財源をたくさん持つて行き得るわけであります。税制調査会等の答申によりましても、遊興飲食税を譲与税にすることによりまして、たばこ消費税は今回の政府案の倍くらい地方に付けることができるわけであります。更に進みまして、法人事業税のごときものも吸い上げて譲与税とすると仮定いたしますと、酒の消費税も或いは付け得るのじやないかと大見当をつけておるわけであります。従つて先ほど申上げましたように、こういう制度をとられることが地方自治の破壊とか何とかということではなくて、逆に、地方自治の育成と申しますか、何と申しますか、強化する方面において作用しておるということを、とくと御了承願わなければ相成らんと思うのであります。この点につきままして、丁度面白い資料がございます。それを御披露したいと思うのでありますが、全国知事会におかれまして、地方制度調査会に修正意見を出されました。この修正の骨子となります一つの点は、入場税及び遊興飲食税の譲与税化という問題に反対せられまして、たばこ消費税、酒の消費税という二つのものを新らしく持ち込もうという案を立てられたのであります。尤も、このうち、酒の消費税につきましては、これは単に今回政府原案に出ておりますたばこ消費税のような案でございませんで、都会人口一に対して郡部人口十という割合で、人口に按分して配賦しようという案でありますから、いわば一種の譲与税、今回出ております譲与税よりももつと人口的フアクターを加えた譲与税でございますが、そういうものを案に入れられましてできた結果の数字がどうなつて行くか。ちようど地方制度調査会答申案の総額に比較いたしまして、三百八十何億というものを知事会案によりますと国が余計に出さなければならん案になつております。その結果どういう数字が出たかと申しますと、三百八十何億を国から余計出させながら、これが潤おつて行く状況を見ますと、一等少く行つておる所は委員長御出身の岩手県でありますが、三百八十何億を国から出しながら、岩手県については、調査会案に比較いたしまして僅か六百万円殖えるに過ぎないのであります。即ち調査会は十五億四千九百万、現在が七億一千三百万でございますのを、十五億四千九百万円税収入が岩手県に殖えるような案になつておる。これに対して十五億五千五百万、六百万円の増加にしかならないという結果が出ておるのであります。他の府県をとりましてもおおむね似たようなことでございまして、それに対して東京都に対しては、岩手県が六百万円行つている場合に、調査会案に比較して三十三億余計行く算盤になつておるのであります。どうしてもこの譲与税制度というようなものをとらない限りは、こういう結論にならざるを得ないのであります。現行の府県の数字を見ますと、歳出規模に対しまして税収入がどのくらいの割合を占めているかという数字をやはり知事会から出しておられますが、これによりますと、全国の道府県のうち三十四の道府県までは、歳出規模に対しまして税収入の占める割合は二割以下であります。この二割以下三十四という府県の数が、地方制度調査会答申案によりますと、これが二割以下の府県は十二まで減つて参るのであります。地方制度調査会の案に、更に国から持ち出す三百八十何億を足した知事会案におきましては、これが十一に減るに過ぎないのでありまして、大分県一県が地方制度調査会案よりも二割を越すという県になるだけでありまして、あとは何がしか程度は上つているけれども、やはり二割以下の府県を減らすというところには至つておらないのであります。これは私は興味深い数字だと思いますので披露したのでございますが、地方自治の広い立場から考えまして、どうしても入場税というものの譲与税化ということは行われなければ相ならんと思うので、できますことならば更に遊興飲食税がこれに加えられるならば、地方に対して更にタバコ消費税等を付けて頂く案ができるのではないか、いわゆる富裕府県以外の府県或いは市町村等が相当の仕合せをするのではないかと考える次第であります。かようにいたしまして、譲与税制度をとられておる結果、タバコ消費税という独立税が付けられ、而も或る程度地方財源の充実ということが、地域的偏在の是正ということが行われるのでありますが、これを以ていたしましては、なお且つ財源を与えながら地域的偏在を是正し、地方財源を充実するということは不可能でございますので、第三段に交付税という制度を考えられたものと思うのであります。現行のこの交付金の制度につきましてはいろいろな非難がございます。私どももこの制度をいいと思いません。なぜかと申しますと、今日の交付金制度は、地方団体が財源に不足する場合、その不足額を毎年必ず国から埋めてやるという制度であります。これは、一面におきまして地方自治の観点から、又一面におきまして国家財政の観点から、芳ばしからんものであると思うのであります。地方自治の観点から申しますならば、丁度私よく言う例でございますが、子供を独立の生計を営ましてやるということで、親父さんが株だとか借家だとかの収入を子供に自由にとつて自由に使えということで与えたといたします。併しこれでは毎月足らんであろうから、足らんだけは毎月俺のところに言つて来い、足らんだけは幾らでもくれてやろう、こういうものは本当の独立の生計と言うわけに行かないと思うのでありまするが、この子供の暮しはこの程度の収入があれば成り立つであろうと考えますならば、株なり借家なり、それから上ります収入で大体成り立つ程度のものをやつて、以後は親にたかつて来ない。何年もして、どうしても暮しが立たなければ、そのとき又考え直してやろうというので、はじめて独立の生計を伜が営んでおるということになるのだと思うのであります。今日の交付金の制度はそれと同じであります。余談になりますが、私、初めて昭和六年にこの地方財政調整交付金制度というものを提唱いたしました際に、最も心を悩ましました問題の一つは、国家財政に非常に禍を及ぼしはしないかという点であり、いま一つは配付基準の問題でございます。今日とられております交付金の制度は、国家財政に相当の禍を及ぼしていると私は考えるのであります。従いまして、地方自治の面から、又国家財政の観点から、これを交付税に切換えられて、大体地方団体が成り立つであろうという財源を税の形で与えまして、それ以上の面倒は見ない。但しどうしても成立たん場合には、数年後において改めて検討しようという建前になつておるようでありまして、至極結構だと思うのであります。ただここで交付税につきまして一つ問題は、この配付基準であります。これは非常にむずかしい問題でございますが、今日は基準財政収入、基準財政需要というものの差額を穴埋めするという建て方をしておられます。併しこの基準財政収入、基準財政需要というものには、相当程度の人為的要素が織込まれてあります。こういう基準に人為的要素が織込まれるということは、私ども役人をいたしておつた時代からいえば、役人の恣意というものが或る程度差しはさまれる余地があるのであります。結果は多少不合理でありましても、できるだけ機械的な標準で行くのがいいのではないかと考えられます。併しこれは標準の内容を詳細に検討した上でなければ申上げにくい点でありますので、現在のがいけないとまでは申しませんが、考究の余地があるのではないか。又相当据置いていいと考えられますものについては速やかに法律化されることが必要ではないかと考える次第であります。なお個個の事例につきましてちよいちよい意見がございますが、大体の大きな組立てにつきましての私の意見を申述べて、御参考に供します。  先ほど遊興飲食税の問題に触れましたので、ついでに申上げておきたいと思うのでありますが、これは御承知のように非常に適正な課税が行われておらない最も顕著な事例になる税の一つであります。私はこれにつきましては、できればこれを譲与税とし、そうして国税に移される機会において内容を改善されたらどうであろうかと考えておるのであります。即ち、花代及び酒の消費という事実を課税標準にされまして、それでとつて行き、国税として新しく発足されるならば、現在程度の税収入は上げ得るのではないか。而もこれが、捕捉は現在の場合よりも比較的容易に行われるのではないかと思うのであります。即ち、花代については或いは見番等のような機関があります。又、酒につきましては小売店の販売とかいうようなものがございますのでここから押えて行けばいいのではないか。その他の飲食につきましては全部課税対象から外されていいのじやないか。我々が列車に乗りまして、ビール一本飲まないのに、やはり遊興飲食税と称するものをとられる。純旅館に泊りまして酒も飲まないのに、家庭の延長と考えられるようなところにやはり遊興飲食税がとられるという、どうも腑に落ちない点があるのでありまして、只今申上げましたような課税標準を採用されて、税の適正な課税をされるということであれば、税収入はそう減らないで、而もこれを譲与税とせられますならば、更に地方に大きな独立財源が与えされるものではないかと考えておる次第であります。  時間が来たようでありますから、最後に一言、国税地方税を通じて私の希望を申上げたいと思います。  それは徴収面の問題であります。今回、所得税法人税、その他事業税等、相当減税の案が出されておりまして、至極結構でありますが、併し実際の徴収はどうであるかと言うと、数日前の朝日新聞でありましたかの投書欄にも強い非難の投書が出ておりました。事実に当れると否とは私は存じませんけれども、先般も地方に出て聞きますと、どうも似たようなことが行われておる。それは所得税が殆んど割当てのような課税をされておる事実でありまして、私は、若しそういうことが現在行われておるならば、税率を少々引下げられましても、只今も中小企業のものについていろいろ御意見がございましたが、やはり割当ての課税標準さえ殖やせば税額は減らないのでありますから、そういう徴税面の是正と言いますか、適正化と言いますか、そういうことを実際に行われますように、特に税務の御当局に御留意願いたいような気がいたすのであります。まだ申上げたいことがございますが、大ざつぱな点だけを申上げました。
  57. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 質疑を願います。
  58. 堀末治

    委員外議員(堀末治君) 三好さんは幸いに地方制度調査会委員でもあり、なお又、税制調査会委員もなさつて、このたびの地方の制度の改正並びに税制改正の調査については非常な御努力を下さいましたことを私ども非常に感謝するのでありますが、折角併せていろんな御報告を受けておりますが、なかなか尨大な御報告で、一々私ども内容を拝見いたしておりません。幸いに今日こうして参考人としてお出かけ下さいまして、いずれ私ども委員会にかかるこの地方税調査会におけるいろんな状況をお話を頂きまして、非常に私ども参考に相成つたのであります。そこで、一つ二つお尋ね申上げたいと思いますのは、実は交付税の問題でございます。今までの平衡交付金制度を変えて、交付税、前には配付税という制度になつてつた。あの答申を拝見いたしますと、いわゆる交付税を時の政府の都合で濫りに変えないようにしたほうがいいと、こういう、私は字句はよく覚えておりませんが、趣旨はそういうのが盛られておると思うのであります。これは私自身も、二十四年のドツジ・ラインのときです。あの当時の状況をよく知つておるのであります。あの当時の国税、財政の情勢から見ると、急に法律改正して、千数百億を地方に配付さるべきやつを七百幾億にパーセントテージを変えてしまつた。そのときも随分問題があつたのでありますが、政府がああいう緊縮財政のときだつたから随分無理な改正をなさつたと私は思うのであります。さようなことで、平衡交付金制度にも、又、今御説のような欠点のあることは、私どもよくわかりますが、さりとて又この交付税にいたしましても、そのときの政府の御都合で勝手に法律改正して、パーセントが今度は二〇%になつて、随分地方に来ることになつたのですから、結構でしようが、何かの都合で二〇%を一五%乃至は一二%と、こう勝手に変えられたのでは、誠にこれは地方としても困ることだろう、実はこう思うのですが、これらについての答申は、私どもちよつと拝見するに、少しく生ぬるいと言つては失礼かも知れませんが、そういうような感じを受けるのでありますが、これらについての、そのときの状況を一つお聞かせ願いたいと存じます。
  59. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 只今お話の点は誠に御尤もだと思うのでありまして、今日、地方団体が多く赤字を出しました一の大きな原因が、シヤウプ税制でありましたが、とにかくお話の昭和二十四年かの改正地方に行くべき配付税を巻き上げたという点にあることは、私どもも認めざるを得ないのであります。地方制度調査会におきましてはそういう議論が余り出ませんでございました。ただ遊興飲食税或いは入場税国税に移すについて、九〇%を地方にやるといつておるけれども、将来、政府の都合でそれを五〇%にし、或いは七〇%にするというようなことが起りはしないかという御意見がございました。そのとき私はこういう答弁をいたしたのでございます。通常の状態においてそういうことが起るとは考えられない。今お話がございました配付税が減らされたということは、占領治下という特別の異常な圧力でやられたからできたことでございますが、通常の状態においてそういうことは考えられないのみならず、法律できまつておる以上は、どうしても法律改正案というものは議会に提案されるのではないか。政府の独断で減らすということはできないのではないか。議会が減らすことを尤もだと御承認になるならば、そういう時勢であるならば、それもしようがない事態ではないか。若し政府案が無理であるというならば、恐らく議会もお通しにならんであろうから、従つて現在法律でそれを明定しておくということが最善の確保方法である。それ以上のことは考えられないじやないかというお話をした次第であります。これについても同じようなことが言えるのではないかと存じます。
  60. 堀末治

    委員外議員(堀末治君) もう一つ伺いますが、私どもシヤウプ税制時代から地方税をずつと取扱つて来ております。今度も又シヤウプ制税の改革に次ぐ大きい改革で、衆議院ではすでに始めておりますが、参議院はまだ審議に入つておりませんが、いずれその審議に当らなければならないと思つております。それについて今まで地方税審議しておる間に私どもが痛切に感じますことは、政府というより、むしろ大蔵当局の間に、いわゆる国税偏重というような傾向があり、どうしても国税に力が入つて地方税を閑却し、乃至は地方税を軽視すると言いますか、得てして地方税のほうに「しわ」寄せする傾向があるのであります。現にこのたび、地方財政制度の改正を出した政府の担当大臣の要旨の中にも、そのことを漏らしておるような言葉が盛られておるのであります。私どもは実際そういうことを感じておる。成るほど大蔵当局から見れば随分放漫なやり方をしておることも私は認めますけれども、さりとて果して大蔵当局が言うように放漫にやつておるかというと、堅実に実に立派におやりになつておるところもあります。それを十把一からげに眺めて一切を弱い地方税のほうにしわ寄せをして来るという傾向がありますが、これらについて調査会等において御意見が出ましたかどうか。
  61. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 只今お話のような御意見調査会では出ませんでございました。ただ私どもが役人をいたしておりました時代は、ここにおられる委員長の大矢先生ともやり合つたわけでありまして、随分苦労をいたしました。併しその際、痛感いたしましたことは、結局国民の間に地方税に対する認識が足りないということは事実であつたように思います。従つて地方税が如何に重要であるかということを随分説いて廻つておりますが、国民の間に、地方税が如何に重要なものであるか、自分たちの負担の上から考え国税以上に関心を払わなければならないという認識が湧いて来れば、おのずから片付く問題じやないかと思うのであります。今日、案を拵えております現状から見ますと、必ずしも大蔵省のほうでは地方税をそう御軽視になつていないように思うのであります。調査会におきましての御協力振りと言いますか、それから考えまして、私自分が役人をしておる時代に比べて、大矢さんが悪いと言うわけじやありせんが、苦労がまず少いような気がいたしております。少くとも現在の大蔵当局が地方税に対して深い関心を持たれ、協力しておる事実を眼の前に見まして、非常に喜ばしく存じたような次第であります。併し結局、今日の制度で私はその点について立ち入つたことを申上げまするならば、この内閣制度の上で地方税を受持つ大臣のかたが悪口になりますが大蔵大臣に比べて比較的、個人の実力は別にして、ポストから言つて実力が弱いということが、閣議において、下の交渉をする役人にも比較的バツクにならんのじやないかということを考えるわけでございますが、いずれにしろ、帰するところは、どうも一般国民地方税に対する認識という問題になろうと存ずるのであります。
  62. 堀末治

    委員外議員(堀末治君) もう一つ調査会あたりの内幕を聞くようで甚だ恐縮いたしますが、実は私も最初、調査会委員をしておつたのであります。そうして私は調査会の状況を見まして、これは要するに国会議員は入らぬほうがいい。なるべくならば、要するに国会議員はその調査会答申その他を待つて、それを資料として、国会においてこれを適正に判断すればよい。私はかように考えておつて、これはもうやらんほうがいいと思つて、実は他にも理由がありましたけれども、やめさせてもらつた。然るに案外に国会の人も多い。まあそれはともかくといたしまして、最後にいろいろな問題の決を採るときに、いわゆる特別委員として現職のいわゆる当局の諸君が多数お入りになる。そうして或る程度強引に、要するに自分の畑の都合のよいほうに引つぱつてつたような噂を聞いておりますが、今、大矢さんがおりますけれども、それは大矢さんも、今、官吏をおやめになつて、我々と同僚でありますから、若しもそういう感じがございましたら、遠慮なしにこの機会にお話をお聞かせを願いたいと思います。
  63. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 卒直に申上げますと、お話のように、私はあの調査会に議員のかたが入れられたということは構成上必ずしも感心しないのじやないか。又、入つて来られた議員のかたがどうかというような気がいたしました。又この地方団体側の代表者のかたも多過ぎたように感じます。税制調査会のほうではそういうふうになつておりませんので、案の審議が全く政治的色彩なく、進められたように運営の上から考えた次第であります。ただ起草委員はそういう関係のかたからでなく選びましたので、比較的まあ、自分が言うのはおかしいのでありますが、中正な意見が出された。そうして、それが結局大勢を制したように思います。結果から見ればそういう弊害は余りなかつたのじやないかと思うのであります。それから、なるほど臨時委員として官吏のかたがたくさん入つている、これは関係のある条件だけに表決に加わられたのでありますが、これは御指摘になりましたよりは逆でありまして、結論から申しますと、関係ありとして臨時委員で出られたかたの御意見は一〇〇%葬られてしまつたのであります。中にはその委員のかたたちだけがお出しになるような項目もございましたが、結果はちつとも表決に影響いたしておりません。
  64. 堀末治

    委員外議員(堀末治君) あとはもう極く簡単な問題でありますが、先ほど、あなたが大変お触れになりました遊興飲食税、あなた自身もいわゆる家庭の延長であるような宿屋に泊つて遊興飲食税をとられるのはおかしいと言われた。これは私もそう思うのであります。遊興という言葉がすこぶる何と言いますか、私自身非常に不愉快で、今度の答申に、若しなんならばこういう遊興飲食税などという言葉を変えるような御議論が出て、何かそれに対する答申を頂ければよかつたと、実は私はこんなことも思つてつたのでありますが、何もそれについてお話がございますせんでしたか。それについて一つ
  65. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 雑談的には出ましたが、主だつた意見としてそういう意見は出ませんでした。ただ併し、私は、遊興飲食税は飲食税にされたほうがいいのじやないかというように当時からなお存じております。先ほど申上げました通りでございます。
  66. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) ちよつと二、三点お伺いしたいのですが、先ず税金の問題の前提として、地方制度調査会で重要な役割をお務めになつ三好さんですから、一つ根本的なお考え方を承わりたいと思うのですが。あの地方制度調査会答申によりますと、地方財政全般の考え方として、勿論、税金の問題もあるわけですが、それと同時に、現在の地方財政の実態をどうつかむかということがやつぱり前提になつているのじやないか。その場合に、答申によると、現在いろいろな点で赤字が累績をして、大体三百億円、少くとも三百億円程度の手当を国においてしなければいかんということが謳われておる。それから同時に又、これは財政計画の是正として三百億、それから更に又この累績した赤字の解消の方法として再建整備に二百億ということも盛られておるわけであります。それから更に第三としては、地方公共団体の中央金庫というものを設立すべし。大体この三つの問題を前提として、そうして税法改正ということがそのあとに出て来ていると思う。ところが今度の政府の提案によると、そういう大前提になる問題はいずれも僅かに取上げられているが、殆んど無視されておる。そうしてただ税金の面だけで、例えば入場税或いは遊興飲食税というような地方の固有財源を国に吸上げて、そうして、それで地方のデコボコ調整をやろうというようなことで、いわば地方財政の枠内であつちこつち資金を動かすことによつて地方の自前で国のほうが按排してやろう、こういうような傾向が非常に強いのじやないかと思う。そうではなくて、やはりこの際は、地方制度調査会考えられたように、先ず現在の地方財政の赤字をどうするかという問題から、やはり国が手をつけて行かなければ、こういうような多少税金をあつちこつち動かしても、結局、地方の赤字財政というものはますます深刻化されるだけで、解決がつかないのじやないかと思う。その根本的な考え方についてお尋ねしたい。
  67. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 調査会答申で、大体現在よりも三百億程度財源をつけなければ、地方財政計画の上に別に見てやらなければ、十分な財源をやつたということにならないというふうに考えられましたのは、御説の通りであります。これは実際の数字を当局者のかたに聞いて調べなければわかりませんが、交付税の総額を決定せられる際に十分これらの点が検討せられた結果、交付税の総額がああいうところに落ち着いているのじやないかと想像いたすのであります。  それから今の赤字補填の問題は、これと別個に二百億円でありますから、国から特別の融資をしてこれを解消させるという答申案がございます。これは三百億とは全然別個に考えられておつたわけであります。これは先ほど来申上げました意見で触れませんでしたのは、総額の問題でありまして、中のやりくりとおつしやいますけれども、結局、交付税の総額、つまり独立税が幾ら、譲与税が幾ら、差引をすれば地方財政計画に比較して幾ら足らぬところを交付税で見ようという考え方で、きめられておると思いますから、その交付税の総額の中に含められておるべき筋合いのものだと思うのであります。
  68. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) これは言葉を返すようで甚だ失礼なんですけれども、その点はちよつと三好さん、感違いされておるのじやないかと思うので、今度の地方交付税にはその三百億という点は含められていないのです。そのために非常に地方行政委員会でも問題になつているし、又、自治庁自身も、これは最初は含めるつもりで大蔵省へ交渉したようですけれども、大蔵省で一兆円のあの枠で決定なされてしまうというのが実情なんでして、この点はお互い何とかしなければならない。これは大き問題として残るわけです。  それから次に税金の問題についてお尋ねしたいのですが、先ほどの御説明によりますと、入場税は、東京は厳重でであるが地方はルーズだ、それから遊興飲食税はその逆だという御説明があつたのですが、これは必ずしもそうじやないのじやないかと思うので、私ども自治庁からもらつておる詳しい統計によりますと、入場税は大体、多少の比率のでこぼこはありますけれども、全国的に非常に徴収成績がいい。で、まあそれは九〇%から一〇〇%まで行つているような状態のようです。ところが遊興飲食税はそれに反して非常に悪いのです。この悪いという点につきましては、先ほども労働組合の代表のかたがお話になりましたように、一面においては捕捉が非常にむずかしい。特に花代だとか酒代だとかいうような高級飲食といいますか、いわゆる遊興の言葉通りの面では非常に捕捉がむずかしい。でありますから、地方が赤字に困つてどうしても徴税を強化するということになりますと、さつき、はずしたほうがいいとおつしやつてつた軽飲食のほうへ重石がかかつて行く。そして軽飲食のほうが割合つかみ易い。屏風の蔭で行われる遊興のほうは極めて捕捉がむずかしい。又徴収がルーズになるということで、これはもう社会政策的にも、又道義的にも非常に変な、これは実情になつているのです。そういう点について、先ほどの御説明のように、そう簡単に地方はルーズだというようにお考えになることは、少し行き過ぎではないかというように私は考えるのでありますが、御見解を……。
  69. 三好重夫

    公述人三好重夫君) お話になりました徴収成績のお話は、恐らく調定額に対する徴収のお話じやないかと思うので、即ち滞納が多いか少いかという問題に触れてお話になつていると思うのでありますが、私が申上げますのはその調定以前の問題でありまして、調定自体が、極く大ざつぱに言えば、おおむね入場税については大都会では厳格に行われているが、田舎はルーズで、遊興税はほぼその反対になつておる。詳しく申上げますれば、同じ東京都内でも、中心部にあります大映画館等は厳格に行われている。場末に行きました小さい映画館、興行場等は、比較的ルーズになつておる。これが実情でありまして、私が申しますのは、徴収成績ではございませんで、その調定以前の問題について申上げたのでありまして、お話の点とちよつと食い違つておるかと思います。殊に私の申上げましたのは、極く大ざつぱな話でありまして、大体の傾向を申上げたのです。
  70. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) それから更にお伺いしたいのは、偏在度の非常に強い税金は成るべく中央へ吸い上げて、中央から按排したほうがいい、配分したほうがいいという御意見なんですが、それについて、そのお話を一応認めるといたしますと、今度の政府の提案の中に、不動産取得税というのが新らしく顔を出している、この不動産取得税は最も偏在度の強い都市中心の税金じやないかという気がするのですが、この点について、あなたのお立場から考えられて、この不動産取得税というものを、どのように詳価なさるのかということついてお伺いしたいと思います。
  71. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 極く根本的に考えまして、できるだけ地方に独立税の形で行く財源がほしいという観点から申しますならば、不動産取得税のごときものも望ましいものの一つと私は思うのであります。現に税制調査会におきましても、私個人その意見を出したことがございますが、いろんな事情で答申に入らなかつたのであります。成るほど偏在度が相当強いものであるかも知れませんが、税額の総額がそう大きくございませんので、恐らくいろいろと試算せられた結果、納まつておるのではないかと想像をいたしておるのであります。ただ、その不動産取得税については、私は賛成であります。地方税として結構だと思うのでありますが、問題は登録税の関係、先ほど申上げなかつたのでありますが、今日登録税は相当高い率になつておるのでありまして、これに対して更に不動産取得税というものを加えられる、その総合した税負担が不動産について相当過重になるのではないかという或る程度の心配がございます。殊に売りましたほうでは、更に再評価税がかかるのでありまして、かれこれ総合いたしますと、相当過重になるのではないか。ただ一面、固定資産税が或る程度減税しておられます。それがこの不動産取得税の偏在にもかかわらず、納まる結果になつておる一つの原因だと想像するのでございますが、そういうこともございますので、固定資産税の減税と合せ考えて、不動産の移動というものに対する負担が過重になりはしないかということは、一つの研究題目であります。若し相当量課せられるということになれば、私個人意見は、国の登録税を減らされても、この税を地方税に設けてやつて頂きたいという気持がいたします。
  72. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) それからもう一つ、これは全般的な問題ですが、今度の税法改正によりまして、地方税の増収が六百億余りになるようでありますが、この内容を検討してみますと、結局御説明のように、或る面から言いますれば、何らかの意味地方財源、自主財源が強化充実をされたという面がございますけれども、先ほども中小法人の代表のお話がありましたように、これはまあ、いわば政府なり何なり、取る側からのやり繰りであつて、取られる側から見ますと、これは国の国税におきましても、直接税の多少の減税をオーバーして余りあるくらいの間接税増徴というような問題も出ておりましたが地方税におきましても、一層これは負担過重になるのであります。今年の政府の見込んでおります国民所得なんかの前年度との伸び工合と比較しまして、税負担というものが地方税において非常に重くなつて来るのではないか。而も先ほど言いました、三百億の地方赤字だとか、いろんなそういう赤字の再建の問題なんかも未解決のままで放任されておりますから、どうしても地方団体というものは徹底的な税金攻勢をかけるに違いない。そうなりますと、いよいよ税負担というものが重くなつて、一般国民というものは相当苦しくなるのではないかというような気がするのですが、その点についての見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  73. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 地方税自体が常にむずかしい問題になりますのは、各団体に適切な財源を与えながら、而も国民負担の見地からは、納税者に負担の無理がかからないように、その間の調和をどうしてとるかという問題でありまして、今回のような譲与、税割、交付税制等が採用されまして、或る程度地域的調整が行われるということになれば、お話のような無理のかかる点は相当緩和されるのではないかと想像いたしております。殊に事業税等について、或いは固定資産税等について、或る程度減税もされておりますので、現状から見ればそう無理がかからないで済むのではないかと想像をいたしております。ただ一つ、私、固定資産税につきまして、その点、負担者の側から考えなければならん問題は、毎年課税標準の査定が行われることであります。これは今日のごとく或る程度経済情勢が安定した下におきましては、三年なり五年なりの間、据置く意味における台帳課税制度を採用されていいのじやないか。成るほど不動産の売買、移転によりまして利益を挙げるというふうな人は、それはよろしいか知りませんが、私どものように財産とては何もない、漸く家屋敷だけを持つているという人間につきましては、毎年移転される不動産の値上りに比例して、賃貸価格が、課税標準が改訂される、その割に私自身の所得は殖えておらんというものにつきましは、毎年改訂されることによる負担の増加というものは、普通の増税以上の苦しみであります。そういう点につきましては、なお検討して頂く余地があるように想像いたするのでありますが、ただ政府全体の建前としては、そう苦しまぎれに無理な負担がかかるというふうにはなつていないのじやないかと想像いたしておる次第であります。
  74. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) それからもう一点お伺いしたいことは、これは今度の府県民税のかけ方なんでありますが、府県民税は市町村民税の附加税的な扱いになつている。そうなりますと、市町村民税が市町村によつて非常にでこぼこがあるわけです。それに対して附加税的に府県民税をかけるということになりますから、同じ府県民でありながら、住んでいる市町村の場所の違いによりまして、負担が非常にでこぼこになつて来るのじやないか。その点、同じ市町村内の均衡はとれるかも知れませんけれども、県下全般ということになると、これは非常に均衡を失して来るという虞れがないか。
  75. 三好重夫

    公述人三好重夫君) この点につきましては、お説の通りだと思うのでありまして、市町村民税のとり方がいろいろなケースがございますので、それによりまして団体ごとに地域的な負担の不均衡が生ずるということは、これは免れがたいと思うのであります。ただ併し、徴税の便宜という別な面から考えまして、どちらをとるか、多少の負担の不均衡があつても、成るべく簡単に徴税され、又納める側でも簡単に納めることができるというほうに重きを置くか、或いは非常にやかましく負担の均衡という点に重点を置いて、徴税の便宜ということを捨てるかという、両方の釣合の問題だと思うのでありまして、これは恐らく多少の地域的不均衡は忍んでも徴税を簡単にしよう、或いは徴税費をそれによつてうんと軽くしようというふうな考え方をとつておられるのだと思うので、私は制度としてもそういう考え方は止むを得ないのじやないかと思う次第であります。
  76. 秋山長造

    委員外議員(秋山長造君) これは水かけ論になるのですが、併し実際納める側は納得しないと思うのです。それは徴税が簡単でいいということは、取るほうの言うことでありまして、取られるほうから見れば、少々税金が重くても、みんな平等に重いのだつたら、これは我慢する。ところが少々軽くなつたり手続が簡単になりましても、甲の村に住んでおる人の県民税と、乙の町に住んでおる人の県民税が、非に隔たりがあるということになりますと、これはやはり簡単とか簡単でないとかいう問題でなしに、公平の原則ということを非常に欠いて来るのじやないかということを考えるのですけれども、この点は一つ三好さんのほうでそう簡単におつしやらずに、(笑声)考え直して頂きたいと思います。
  77. 三好重夫

    公述人三好重夫君) お話のように水かけ論になるのでありますが、徴税の便宜ということは、ただ団体側の便宜だけではございませんで、納税者側においても、余り厳格にやられるということは、つい墳煩を来たすという結果になるので、これを全然独立して徴収するということになれば、恐らく府県として多大の調査費を使つて、個々のものについて調査をするというようなことも或る程度つて来るのじやないか。それは納税者側にとつて相当負担になるわけであります。現にそういう考え方は、この事業税におきまして恐らく呑み込んでおられるように見受けられるのでありますが、即ち事業税の課税標準は、厳格に負担の均衡ということをやかましくいうならば、これはやはり独自に調査して、独自の課税標準によつてかけるべきものであろうと思います。併しやはり納税者の便宜を図り、税を簡単にするという意味で、所得税課税標準になつ所得を同時に事業税の課税標準に使うというような制度に大呑込みにとつておられるのでありまして、これはひとり団体側だけの便宜ではございませんで、納税者側の便宜も考えての問題だと私は思うのです、そのいずれをとるかということは、結局水かけ論に戻るようでありますが、併しそういう考え方もあり得るし、現にこの制度の下では、比較的そういう徴収方法というものを、事業税においても考えられる同じ線の考え方をここに出しておられるのだと私は想像しております。
  78. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) さつきお話の配分標準の問題ですが、そこで端的に、今度のたばこの消費税について、これは売上高ということになりますと、課税の客体からいうとそのほうがいいと思うのですが、むしろ田舎では、つまりバツトや刻みというか、そういうものを主体にしておる。中央ではピースが主体だ。こういうことになつた場合には、売上金額ということになると、やはり折角一つの独立財源を与えんとする場合にどうかということが一つと、それから配分方法について、これはなかなかむずかしい問題なんですが、やはり人口割ということだけでいいのかどうかということに対して、私はまだ疑問を持つているのですが、何かいいお考えなり或いは論議された点がありましたら、一つお教え願いたい。
  79. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 今の配分標準というのは何ですか。
  80. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) 配分基準ですね、たばこの消費税の……。
  81. 三好重夫

    公述人三好重夫君) たばこ消費税は、これは特別配分を行わないで、売上金額を課税標準にして、普通の税金と同じにとられる配分基準は考えられておらないわけであります。普通は独立税としてとることになつていて、その場合に何を課税標準にするのがいいかということにつきましては、いわば従価でゆくか、従量で行くかという問題がございます。私個人は従量のほうがよろしいと考えるのでありますが、又、確か調査会答申も従量ということになつてつたと思います。ただこれをどうして従価にせられたかは聞いてみないからわかりませんが、恐らく只今問題に出ましたように、課税方法を成るべく簡単にするという意味で、従価にせられたのじやないかと想像するのでありますが、貧弱団体に成るべく財源を余計やるという上から考えますなら、理窟のつく限り従量で行つたほうがよろしいのじやないかと私は考えます。
  82. 島村軍次

    委員外議員(島村軍次君) それから譲与税の人口割の問題はどうですか。
  83. 三好重夫

    公述人三好重夫君) 私は地方税制を大きく三段構えにされておるのでありますが、その独立税以外のものについては、多少の不公平その他がありましても、できるだけ機械的標準がとられたほうがいいのじやないかと思うのです。従いまして、譲与税は人口割で行きましても相当所期の目的を達し得るものでありますから、いろいろな割増人口その他の考慮を払わないで、生の人口でそのまま持つてつたほうが適正じやないか。又揮発油税の譲与税につきましても、先ほど申上げなかつたのでありますが、道路の延長、或いは面積というようなものが標準になつているように見受けるのでありますが、これには、やはり御承知のように、国道の認定とか、府県道の認定とか、相当人為的の要素が加わるので、今日府県道等で猫車も通らない府県道もあるのでありますから、そういうものを標準にこれを譲与されることがいいかどうか。私は極く大ざつぱに呑んで、むしろ同じように人口割でやられたほうが、道路費の実際にかかる実態に即した結果にむしろなるのじやないか。そろばんをやつてみないからわかりませんが、おおよそ、そういうふうに思います。大都会の方面の道路費は随分かかつておる。そのかかつた割には、面積、延長等で行けば幾らも金がいらないということになりますので、むしろ人口割のほうが妥当な結果が出るのじやないか。人口割で出たものを目的税として、道路費以外に使わない、道路費にのみ使えという指定をされれば、それでいいじやないかという感じを持つております。いずれにしましても、国税でも、できるならば人工的な、人為的な要素の加わらぬ配分基準というものが採用できるならば、それに越したことはないんじやないかと思う次第であります。
  84. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 一点だけお伺いしたいのですが、税金を払うほうの側になりますと、今までは税金の、課税の問題だけお話になりましたが、特に徴税の事務の問題でございますが、両方から、例えば税務署も来る、それから市役所もやつて来る、それから県庁もやつて来て、台帳は同じようなものが三つある、それぞれ備えて別の角度からやられる。調べられるほうの側になつてみると、こんなことは一つの所から調べてもらつて、そうして一つの台帳でわかるような方法考えてもらいたいという意見が大分納める方には強いのでございますが、特に地方制度の調査会でこういうような点については、これはもう大事な税制の問題と密接不可分な問題だと思いますので、この点について三好さんの御意見一つお伺いしたいのですが……。
  85. 三好重夫

    公述人三好重夫君) お尋ねになりました点、お説の通りでございまして、地方制度調査会におきましても、又税制調査会におきましても、できるだけ簡素化するという趣旨の下に、事業税については所得税課税標準になつ所得をとるとか、或いは市町村民税につきましては、国税所得税の対象になつ所得をとるとか、そういう行き方をすべきであるという方針であり、又原案もそういう点を織込んでおられるように存じております。
  86. 大矢半次郎

    委員長大矢半次郎君) 本日の公聴会はこれにて終ります。    午後四時二十四分散会