○
説明員(
大月高君)
日本銀行券預入令等を廃止する
法律案につきまして、
本案の順序に従いまして御
説明申上げたいと思います。
この
法律の本文は二
勅令及び一
法律を廃止する
法律でございます。
一つは
日本銀行券預入令でございまして、御
承知のように、
金融緊急措置令を実施いたしました当時、
昭和二十一年三月二日前に流通しておりました旧
日本銀行券の
強制通用力を失わせるという
措置をいたしますと同時に、これをすべて
金融機関に対する
預貯金というものにすることにいたしました。そして、その引出しにつきましては、
一定の
制限の下に、新
日本銀行券によ
つて引出させる、こういうことを
目的といたしてお
つた勅令であります。
日本銀行券預入令の
特例の件と申しますのは、この旧
日本銀行券と新
日本銀行券を交換いたしますにつきまして、旧
日本銀行券に証紙を添付いたしまして、暫定的に新
日本銀行券と同様の
流通力を認めてお
つた勅令であります。
第三の旧
日本銀行券の未
回収発行残高に
相当する
金額の一部を
国庫に納付するに伴う
日本銀行への
交付金に関する
法律と申しますのは、お手許にお配りしてございますように、旧円を次第に回収して参りますと、事実上、
日本銀行としては
引換を要しない旧
日本銀行券ができるわけでございましてその分は
日本銀行の形式上の
利益になるわけであります。その
利益は本来
日本銀行の
利益となるべき性質のものでございませんので、真実に
利益となりました分は、これを
国庫に納付せしむる、そして暫定的には七億円の
金額を現在
国庫に納付いたさしておるわけでありますが、最終的に旧
日本銀行券の整理が完了いたしましたときに、仮にその
利益が七億円を割
つておつたということになりますと、
国庫への納付金が多過ぎた、こういうことになりますので、その多過ぎた分はこれを又
日本銀行に交付する、こういう調整のための
法律でございまして、
日本銀行券預入令の実施に伴う
あと始末に関する
法律にな
つておるわけであります。
今回はこの三つの
法律を廃止するという
法律案を
提出いたしたわけでありますが、これに関連いたしまして、現在旧
日本銀行券がまだ二十八億ばかり未処理にな
つておるわけでございまして、この銀行券をどうするかという問題に関連いたしまして、特に
引揚者の持
つて帰りました旧
日本銀行券の問題がございますので、この処理を経過的に
規定した、その他、
刑事事件によりまして領置いたしております旧
日本銀行券の処理も合せて考えたい、こういう大綱のものでございます。現在旧
日本銀行券がどういうような状況にな
つておるかと申しますことは、本日お配り申上げました旧銀行券処理状況という表を御覧願いたいと思います。この表によりますと、
昭和二十一年三月末当時切替を実行いたしましたときの銀行券の発行高は二百三十三億余りあつたわけでございます。その後四月一日で旧券として引落した額が、つまり逆に申しますとまだ返
つて来なかつた残りの旧
日本銀行券は四十五億あつたわけでございます。その四十五億がどういうようにその後推移いたして参つたかと申しますと、3でございますが、以後の
引換額が十六億、これは
引揚者の
持帰り金の交換、
刑事事件押収分の交換、それから特別な
事情による交換、それらを合せまして現在四十五億のうちで十六億は交換済でございます。そういたしますと、残りが二十八億余りになるわけでございまして、これが4の現在の未
引換額でございます。この中にはまだどういう原因で
引換にな
つておらないかということの判然といたしておらない分もございますが、推定も加えまして、ここに分類いたしたわけであります。大分類といたしましては、一つは国内
関係、一つは国外
関係、一つはその他の差引行方不明分と、こういうように三つに分類をしておるのであります。
国内
関係といたしましては、検察庁に現在保管されておるものが五十七万でございます。
税関が引揚保管したものが二千四百四十九万幾ら、これが今回主として御
審議の対象になります
引換の対象たる旧
日本銀行券であります。それからその他例えば連合軍が内南洋等において接収いたしましたそれを
日本銀行に預けておる。それから例えば預入令の結果に基いて新旧銀行券の交換がございました
あと、いろいろな
事情で、こういう旧
日本銀行券は交換してもらえまいかというようなことで、
日本銀行へ相談に見える。法令上これは交換ができませんからというようなことで、ただお持ちにな
つてお
つても、又流通しても困りますから、こちらでお預りいたしますというようなことで、
日本銀行でお預りしたもの。こういうものが四百四十九万、或いは百二十一万、その程度あるわけでございます。そういうものを、はつきりいたしておりますものを合せまして三千万余あるわけでございます。
国外
関係におきましてはすでに現物を処分済のものが十五億見当でございます。それから
終戦時に
政府勘定として在外代理店に寄託されていたものが八千四百万ほどございまして、その合計が十六億幾らにな
つております。
それから第三か行方不明の分でございまして、十二億ばかりあるわけでございますが、いろいろ聞込んだ不確
実情報による分類を大体や
つてみますと、沖繩で回収の上焼かれたと伝えられておるものが二億、南樺太でソ連に接収されたと伝えられるものが八千万、二十七年の七月三十一日連合軍が焼いたものが二百万、こういうような内訳にな
つておるわけであります。(注)にあります数字は、この二十八億のうち七億は確実に
利益になるであろうというので、内入れといたしまして
国庫に納付済の
金額でございます。
こういうような
日本銀行券の状況にな
つておるわけでございますが、この附則の第一項でございます、「この
法律は、公布の日から起算して六月以内で政令で定める日から施行する」、これは現在
税関から旧円は返しておるのでありますが、
相当に
引揚者のうちで遠隔の地におりまして、なかなか趣旨が徹底しないであろうから、これに趣旨を徹底せしめるという意味、それから交換をいたします
金融機関に取扱の要領を周知徹底せしめる時間、そういうような準備期間を見ておるわけでございますが、できるだけ早い
機会に準備の整い次第これを実行いたしたい、こういうのであります。
第二項はどういう旧券を
引換えるか、それからいつまでに
引換えるかということを書いたわけであります。この旧
日本銀行券は外国その他政令で定める地域からの
引揚者の持
つて帰つた旧
日本銀行券、これを
引換の対象にいたしたい。例えば琉球諸島とか、大東諸島、それから歯舞群島、そういうようなものがこの政令の
規定事項として
規定されておるわけでありますが、そういうところから内地に帰
つて来た人の、引揚に際して持
つて参りました旧
日本銀行券についてこれを適用する趣旨であります。その一号は旧外国為替管理法、旧金、銀又は白金等の地金又は合金の輸入の
制限又は禁止等に関する件、その他法令が並んでおりますが、これは精神を同じくいたしまして、逐次法令の形式が変
つて参りましたのを列挙いたしたものでありまして、結局これらの法令に基きまして携帯輸入が認められない、そのために
税関で預
つておつた旧
日本銀行券であります。これは返還を受けてから三月以内にこの交換の
措置をやる。ただ
法律の施行前にすでに逐次返しておりますので、そういうような人についてはこの
法律の施行の日から三月以内に交換をしよう、こういうことであります。それから二十八年の九月一日以後帰
つて来る人については、
税関の保管ということをや
つておりませんので、それらの人人につきましては
法律の施行の日から三月以内にこの交換を実行する。それから三号はその後更に遅れて帰
つて来る人につきましては到着の日から一カ月以内に
引換える こういうことであります。この三号の点につきましては一月は非常に短かいじやないかという御疑問もあるかと思いますが、現実にこの
法律の施行後におきましては、
税関を通過いたしますときに、現実にそこで交換をして渡すということにいたしたいと存じますので、具体的な支障は起きないものと考えております。
第三項はそれでは新
日本銀行券を引替えるにいたしまして、
引揚者一人につきどのくらい渡すかという問題でありますが、これは最も実体的な
規定だと存じます。ここに書いてございますのは
金額が五万円以下の場合には、その
全額を交換する。五万円を超えております場合には、超えた
金額の七〇%を交換する、しかしその
最高の
金額は二十万円とする、こういうことであります。
現在この二千四百万の旧
日本銀行券がどういうような状況であるかということは表がございますので御覧願いたいと存じます。
税関が引揚保管等をした旧
日本銀行券調という表でございます。これによりますと、全体の
金額が、右から二段目でございますが、二千四百四十三万円幾ら、これが先ほど申上げました二千四百万という数字でございます。その件数が一万九千四百八十八件あるわけでございます。そのうちで五万円以下の分は二千三百六十七万八千二百幾らということでございますので、
金額において殆んど九九%に近い、それから件数から申しましても、五万円を超えておりまするようなものは僅か九件でございますので、これも大
部分が五万円以下になる、こういう数字でございます。そうして
最高金額は十七万五千七百十円、これが今まで判明いたしております。
最高の
金額でありますが、将来
引揚者が持
つて参ります旧券につきましては、こういう
措置が明らかになりますれば、買集め等の手段によ
つて不正に持ち込む者も想像されますので、
最高金額はこの際二十万に抑えておきたいと、ただ今回の
措置については、できるだけ払
つて上げたい、こういう数字でございます。その他その数字をきめますにつきましては、
金融緊急措置令で第一封鎖にいたしました
金額、これが一人につき一万五千円、一家族当り三万二千円という数字がございましたので、これを参考にいたしております。それからこの七〇%という数字をきめましたにつきましては、その当時の郵便貯金の第二封鎖の切捨率は一律に三〇%、つまり交換率は七〇%こういうことでありましたので、これも勘案いたしたわけであります。なお、市中銀行の当時の第二封鎖の切捨率は、切捨てたほうが六九%、生きたほうが一三%というのと比べまして
相当有利にな
つておりますが、これはその後の
再建整備の進行によりまして、まだ返
つて来ているものもございますので、それらの点も勘案したわけでございます。
それから当時でございますと
財産税がかかつたわけでございまして、その
財産税が大体五〇%程度かかるというふうなことも併せて勘案しました。そういうような要素を彼此考えまして、この
金額にいたしたわけでございます。
先ほど
小林委員のお尋ねのありました
在外公館借入金の
関係も勿論頭に入れて考えたわけでございます。この
措置はむしろ今まで交換の
機会の与えられておらなかつた旧
日本銀行券を新券に換えるというのが本筋の考え方でございまして、
在外公館借入金は本来国家の債務でないと言われているものを新らたに国が国家の債務として認めまして払うという、こういう財政
負担が伴う、こういうような問題がございますので、性質としては別の観点から考えているわけでございます。その関連ずけといたしましては在外
財産調査会の答申が昨日あつたわけでございますが、この
日本銀行券の
関係は、そこに諮問いたしまして、全部の在外
財産のこの処理の
関係から見まして、適当であるという御支持を得ている数字でございます。
それから第四項は手続でございまして、こういう
引揚者であるということを立証してもらはなくちやいけない。
それから第五項は
日本銀行が
請求があれば新券を交付する、こういうことであります。
第六項は今の引揚の
関係と別にいたしまして、
刑事事件について差し押えられ、又は領置されていた旧
日本銀行券の件でありまして、
引揚者に準じて
措置いたしたい。それから
あとは手続でございます。
それから今の
国庫納付金の調整の
関係、これは今まで
日本銀行券預入令にございましたのを
法律に移したわけでございます。
あと特に御
説明申上げる点はございません。これらの実施いたしますについての必要な事項を政令で定めるようにいたしているわけでございます。
それからなお、もう一枚お配りいたしてございます表に関しまして、こういう原則を適用いたした結果、どのくらい持
つて帰つた人が、どのくらいもらえるかという交換の割合があるわけでございますが、これで見ますと、結局二十万円持
つて帰えりますと十五万五千円、それから二十六万四千二百八十五円、これで二十万をもらえる場合が
最高になる、こういう慣例を示しているのでございます。