運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-10-13 第19回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月十三日(水曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————   委員の異動 十月十二日委員山本米治君辞任につ き、その補欠として入交太藏君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事            藤野 繁雄君            杉山 昌作君            菊川 孝夫君            東   隆君    委員            青柳 秀夫君            岡崎 真一君            木内 四郎君            白井  勇君            西川甚五郎君            安井  謙君            土田國太郎君            豊田 雅孝君            前田 久吉君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            森下 政一君   国務大臣   大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省主税局長 渡辺喜久造君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○租税金融制度及び専売事業等に関  する調査の件  (法人税軽減に関する諸問題の件)  (国際通貨基金総会状況等に関す  る件)   —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今より委員会を開会いたします。  本日は最初法人税軽減に関する諸問題、次には大蔵大臣出席を求めまして、大臣国際通貨基金会議を終えてお帰えりになりましたから、向うの状況並びにその他の問題がありましたら、大臣より説明を聞きまして、三番目に名古屋証券取引所争議問題について説明を求める予定でございます。  最初法人税軽減に関する諸問題につきまして、渡辺主税局長から説明を求めます。
  3. 渡辺喜久造

    説明員渡辺喜久造君) 資料を何枚か提出してございますので、それを御覧願いながら一応の御説明を申上げます。  法人税対象なつております法人というものは、一体どういう姿になつているか、とかく目にうつりますものは非常に大きな会社でありましたり、或いは御承知かと思いますが、銀座八丁の中で実は個人企業でやつているのは、まあ二軒ぐらいらしいので、あとは全部あすこの表通りの店は法人なつているわけなんですが、まあ世間一般の人は必ずしもそういうふうに御覧なつていないのじやないかと思いますが、勿論皆さんがたその辺はよくおわかりだと思いまするが、一応それを数字の上で並べてみましたらどうなつているかというのが、一番最初にございます法人払込資本金階級別の表でございます。これは毎年国税庁で作つております会社表というのがございまして、昭和二十八年の分は、これは二十九年の一月現在の姿でございます。法人という名前になつている総数が三十七万一千、相互会社とか医療法人企業組合といつたような特殊なものを抜かしまして、普通まあ会社と呼ばれておりますものが三十六万二千ございます。ところで資本別に見て参りますと、そこにございますように十億円を超えておる金額のものが百四、十億円から一億円までのものが六百四十八、一億円から五千万円までのものが五百四十三、五千万円から一千万円までのものが三千九十八、五百万円から一千万円までのものが八千七百十八、この三十六万三千という数で、設立後初年度のまだ決算期が到来していないものが五万八千ある。このことはまあ一つは非常に新しい会社がどんどんできて行くことを示しているものでございますが、これは大部分は従来個人企業経営をしておりました人たちが新しい法人形態とつて行く。従いましてこの分につきましては内容が我々のほうにはつきり統計的に出ておりませんが、大部分は小さな会社であるということは言い得ると思つております。普通まあ法人ということになりますと、大体少くとも一千万円以上とか、或いは五百万円以上とか、余ほど下げて考えてみましてもその辺に考えられるのですが、五百万円未満のものが数から言いますと、圧倒的に多うございまして、五百万円以上のものは、そこで御覧になりましてもおわかりになりますように、まあ数から言いまして一万ちよつと、一千万円を超えるものということになりますと、更にその数はずつと減りまして、五千にも足りないという数字になるわけでございます。併しこれは数の問題でありまして、一応所得金額ということになつて参りますと、相当大きな部分がこの十億超、或いは一億円から十億円というところに入つてしまうわけでございまして、その利益金額というところを御覧頂きますとわかりますが、これは税金をまだ払う前の課税所得として出て来る利益金額でございますが、四千三百七十六億という数字の中で、その約半額が七百五十足らずの大きな会社なつております。そして残りの分がまあ小さな会社、従いまして下のほうの階層になつております。二十万円以下の資本金額でありますとか、五十万円から二十万円までの法人ということになります。数は非常に多うございますが、これはまあいわば同族会社であると同時に、個人形態と殆んど違わないような姿のものが大部分のように見えます。従いまして負担権衡の問題を考えて参ります場合におきましては、どうしてもこうした下の層における個人法人との境い目が非常にはつきりしていないというような面の点まで考えまして、その場合の個人負担法人負担とが、どんなふうになつているのかという点も十分研究して行く必要があんるじやないかというふうに考えております。なお、この利益金額は一応会社の収益をそのままとつておりまして、税務署のほうで、その申告について調査しまして、更正決定などが行われました場合のものは、その更正決定をした後の金額が入つております。更正決定の済んでおらない分は、申告金額をそのままとつている。時間的にどうしてもそうならざるを得ませんので、まだ最終的な数字というわけには参つておりませんが、大体これによりまして、その姿は一応、まあ三十六万二千ある会社の中で、一体会社実態というものがどういう姿になつているかということは御理解願えんじやないかというふうに思つております。  そこで、よく御議論に出ます問題としましては、大きな会社におきましては、いろいろ特別租税措置法よる軽減がなされていて、実効税率が非常に低い。小さな法人だけが実効税率が高い。従つてその意味で非常に負担が不権衡じやないかという御議論をよく伺わされるのですが、この点につきましては、その次の表を御覧願いたいと思つております。これはそこにも書いてありますように、二十八年の二月一日から二十九年の一月三十一日までにおきましていろいろ免税所得なつている分、それから特別償却なつている分、引当金及び準備金なつている分というものの、その金額を一応書き上げたものでございます。総額でこれをただずつと寄せて参りますと、そこにありますように千六十六億という相当大きな金額なつております。そこでこれをよく実効税率の御議論が出ます場合におきましては、こういういろいろ免税或いは償却積立金というものは、全部まあ本来の租税負担からいえば考えられないものであり、従つて経済政策的にこういう措置がなされているんだ。従つてこういう措置による前の姿のものが本来の所得であり、従つてその所得と睨み合つた税額、その二つからの関係におきまして出たその税率が、これが本当の正しい税率だ。実効税率の御議論は大体そういうところで出発しているように見ておりますが、一応そこで御覧願いましてわかりますように、順々にまあ説明して参りますと、重要物産免税といいますのが、これは古くからやつているものでありまして、開業或いは増設の場合におきまして、その後三年間税金を、法人税所得税を免除する、こういう規定の分でございます。重要資産が政令で以てそれぞれ指定されております。それから輸出所得控除の問題、これは昨年の八月に施行になつた分でございまして、これは十三億と出ておりますが、今申しましたような関係がございまして、一年分にはなつておりません。二十八年の八月から出た分でございまして、同時に八月以後の契約にかかる分が入つておりますので、いわばまだ頭を出しただけという姿のものでございまして、一応平年度になつて参りますと、この数字相当大きくなつて行くものと思つております。  それから特別償却が二つありまして、一つが五割増償却、これはまあ合理化法による分がこの五割増償却でございます。初年度において五割まで償却できる。尤もこの償却不足は五ヵ年繰越すことができることになつております。それから初年度五割増償却、これはやはり機械指定してございまして、その特定機械につきましては五割増加した分を三年間続けて償却することができる。普通の償却率よりも五割増の分を三年間続けてやることができるといつた規定なつているものでございます。五割増償却のほうでございますと、機械指定と作業の指定と両方がなされております。この償却というのは考え方によりますと、初めにおいて償却して参りますと、あとのほうではおのずから償却額が減りますから、いわばまあ前に税金を払うかあと税金を払うかという差でございまして、全然税金がなくなつてしまう、課税から全然なくなつてしまうという性格のものではないということだけをちよつと附け加えさして頂きたいと思います。  それから引当金及び準備金の中で、貸倒準備金、これはもう改めて申上げるまでもないと思います。渇水準備金というのは、これは電力会社に設けられているものでございます。電力会社料金算定の場合におきまして、相当まあ一応の基準によりまして、水力による分がどのくらい、火力による分がどのくらい、火力によりました場合におきましては、石炭をどれだけ焚くというので料金算定が出ておりますが、その年その年によりまして非常に渇水の年もありますし、増水の年もある。増水の年にまあ石炭を焚かなかつたということになりますと、おのずから電力会社利益としては相当金額が出ますが、それを利益だからといつてすぐに課税をして参りますと、渇水のときにまあ相当大きな赤字が出るという問題がございますので、それを平準化する意味におきまして、豊水のときにおきまして出た利益の中で、一部を渇水準備金として積立ててよろしいといつた制度のもので、いわば企業利益平準化させようという目的に出ているものでございます。それから違約損失補償準備金というのがございますが、これは取引所に認めている制度でございまして、これもまあいわば利益平準化を中心とするものでございますが、取引所におきましてまあパニツク、或いはそれまでに行かないものでも、まあ相当違約が出、損が出る。貸倒準備金と多少性格が似たようなものでございます。そういう場合を考慮いたしまして一定の額を積立ててよろしいということになつておりまして、これは相当部分現金で以て積立てて行かなければならないということになつております。その次にあります異常危険準備金でございますが、これはかなり古くから実はあつた制度でございまして、法制化したのは最近でございますが、関東震災あとで実はできた制度でございまして、相当大きな大火がたまにある。一年だけでなかなか保険として十分補填できないといつたような、そうした大きな火災などの場合を予想しまして火災保険の料率にも通常の危険率のほかにそうしたものを考えた場合の料金の率が実は入つておるわけでございまして、そういう点を考慮しまして、一応そうした異常危険の場合を考えた準備金を作る。平常の危険率以上に保険事故が発生しました場含におきましては、この準備金を取崩すといつたような考えかたでできているものでございます。それから価格変動準備金は、これはすでに御承知のところと思いますが、本年の改正で大分従来よりも緩和された積立方をでき得るようになつておりまして、相当これからは利用できるものだというふうに思つております。それから輸出損失準備金、これはキヤンセル準備金と我々は呼んでおりますが、日本の貿易がまあ余りまだ外国の事情も十分わからなかつたというようなこともございまして、随分クレームがたくさん出まして、折角一応利益上つたと思いましても、そのクレームの故に実に本当に利益が上つていなかつたといつたような事実がかなりございましたので、この輸出損失準備金という制度、これは昨年設けたものでございます。それから特別修繕引当金というのがございます。これは熔鉱炉のような場合の引当金でございますが、熔鉱炉は御承知通り五年ほど経ちますと、中を全部煉瓦を捲き変えなければならん、これは五年まではもつわけでございますが、五年目になりますと、急に一遍に大きな修繕費が出て来る、併しまあこの修繕費原因を尋ねて参りますと、その五ヵ年間に順々使つて行つたということがその原因をなしているものでございますので、これを修繕費相当額を五年に分けまして毎年積立てて行くことによりまして、一度に大きい修繕費会社のほうで計上しなくても済む、どちらにしましても損失に見なければならん修繕費でありますが、それを毎年ずつ見て行こう、こういうものでございます。それから退職給与引当金、これはまあ一番額も大きうございまして、これも特に御説明申上げる必要もないと思いますが、一応労働協約等によりまして退職手当契約があります場合におきまして、それに対しての引当金としておくと、この分は四分の一は現金——預金で以て積立てておかなければならん、これにつきましても当初は相当やかましいことを言つておりましたために、中小企業が非常に使いにくい制度なつていたと思いますが、最近におきましては、かなり緩和しまして、中小企業税務署長のほうに届出れば、同時にその規約或いは規程が合理的なものであればそれを認めて、これを積立てる。前には労働基準監督署の承認とかいろいろの問題があつたのでありますが、そういうことは一応今度やめまして、勿論大きな会社であれば、それいう制約は必要でございますが、中小企業におきましては、必らずしもそうでないというような制度に直してございます。  以上が大体その主な内容でございます。これを御覧願いましてもおわかりだと思いますが、一番大きな金額なつておりますものは、貸倒準備金それから異常危険準備金退職給与引当準備金価格変動準備金渇水準備金、こういつたようなものでございまして、私の考えるところによりますれば、必らずしもこれは経済政策的にみまして、まあ保護的なと言つたような性格というよりか、むしろ多分に会計学的にみまして、或いは税の本来の理窟からみて、こういう準備金があるということが、なんら必要でこそあれ、そこに別に問題はないのじやないかというふうに考えております。本当に経済政策的に言うことになりますと、重要物産免税でありますとか、輸出所得控除でありますとか、特別償却でありますとかいつたようなものが、問題になるのじやないかと思いますが、これらはいずれもそれぞれの理由があつてのことでありまして、必らずし特定会社を特に保護するという性格のものではないのじやないかと思つております。  先ほど申しましたそれらの利用されている状況から考えてみて参りますと、貸倒準備金、それから価格変動準備金退職給与引当準備金、この三つは可なり広く利用されているようでございます。尤も冒頭申しましたように、三十六万あります会社の中で五万八千が新規のやつでございますから、三十万ほどの中で、二十万、五十万といつたような程度資本金のものがまあ半分以上を占めておるわけでございますので、どうもこのへんの小さな会社になりますと、果してどこまでこれを利用しておるかという点は、これは必らずしも行きわたつてないと思いますが、併しこれは相当利用できる制度であるということは我々考えております。  それで法人との負担の問題になりますと、ちよつと我々気になりますのは、個人との負担権衡の問題でございます。特にそれが小さな法人の場合において、問題が顕著であるわけでございます。順序は逆になりますが、一番最後のほうを御覧願いたいと思います。この表は従来も度々御提出を申上げました表でございますが、利益が三十万円の場合、五十万円の場合、百万円の場合、二百万円の場合、五百万円の場合、こう分けまして、しかも利益半額を配当し、或る程度の賞与も出す、そうしたような場合におきまして、どれだけの税金負担しておるか、それは一面では国税、一面では地方税、こういうものを全部負担した場合に、一体どれくらいの負担になるかという表を個人法人を通じての負担としてみているわけでございます。従いましてその負担相当の大きな額になるわけでございます。同時にそうした会社が若し個人経営であつた場合には、一体どれだけの負担になるかというのがその次の個人の場合でございます。負担率から言いますと、確に非常に大きな率になつているわけであります。特に上のほうにおいて、その感が深いのですが、法人の場合と個人の場合と比較してみますと、むしろ個人のほうの負担が高いのじやないかということが、ここに一応出て参るわけでございます。三十万円の場合でありますれば、法人の場合は、そうした個人法人負担を全部含めまして百円当り二十四円三銭に対しまして、個人の場合には二十七円十六銭になつておる、以下同じでございます。  併しこうした表は一応どちらかと言いますと、想定に基いた表でございますので、実態の姿はどうなるかという点がその前の表でございます。これは選びかたは極めてアトランダムに選んだわけでございまして、早急に作りましたので、大体大蔵省に近い、要するに端的に言えば、四谷の税務署において、いくつかの法人アトランダムに選びまして、それに実際の資本金収入金額所得、それから実際どんなふうなことをやつていて、それがどれだけの負担を負つておるか、この会社ならば、全部個人に直した場合に、どういう姿になるかという点を比較してみたわけでございます。Aの場合についてだけ申しますと、すでに払込資本金が二十万円、茶、のりの小売をやつております。こういう程度会社相当多いわけでございます。所得が三十九万五千円、給料として三十万円同時に家賃として二万四千円を払つておる。課税所得が七万一千円、配当は全然しておりません。法人税が三万百五十円ですが、事業税とか、そういうものを含めまして、全部で四万四千百七円かかつております。この場合におきましては、利益処分は全然しておりませんので、結局給与だけが個人のほかでもつて所得税がかかるわけでございます。個人におきましては、所得税住民税で、所得税が一万四千七百五十円、住民税が三千三百五十五円、全部合計しまして六万二千二百十二円ということになります。法人の場合におきましては、課税所得が七万一千八百九十六円でありますが、個人の場合にこれを全部引直してみますと、これが三十九万五千八百九十六円になります。と申しますのは、一面は個人の場合でございますと、借家料というものは所得税対象になるわけでございますが、個人企業でありますれば、こういうものは個人企業取得営業取得に入つて来るわけでございます。損金処分の三十万の俸給、これも営業取得に入つて来る。従いまして、結局三十九万五千円というものが所得金額になります。減価償却その他の額これは見積りでございますが、借家料の場合におきましては、これは個人のほうでは見積られるのですが、法人企業でありますれば、これは経費に落ちるわけでございますが、課税所得になりますと、三十八万六千二百九十六円、これの所得税がかかり、事業税がかかり、府県民税がかかる。こういうふうになりますと、この人が個人で若しやつていれば、七万四千二百十七円の税金を払わなければならなかつたであろうということが一応考えられるわけであります。従いまして、やはりどうも法人形態とつたことにおきまして、百円当り税金ということから申しますと、十五円七十一銭、個人であつたならば十八円七十四銭払うべかりしでなかつたかということになるわけでございます。これが多少違つた姿とつておりますのはDの場合でございます。この場合におきましては総所得金額が八十七万千三百円損金処分給与が二十六万四千円、こういうほかにこれは税務署の認定の関係かと思いますが、一応いわゆる益金処分による分がそこに入つて来ております。従いまして課税所得が六十万七千三百円になり、而も片方で以て相当給与が、益金処分給与もございますところもありまして、個人所得税相当かかつて参りますので、この場合におきましては、個人の場合であつたらば、百円当り四十二円五十九銭であつたろうに、法人なるが故に、むしろ四十六円三十八銭に殖えた。こういう具合に相成つております。  こういう場合も或る程度考えられますが、併しそれはどちらかと言いますと、極めて稀な例ということが言える。これに対しましてむしろB、C、E、F、Gにみられますように、法人なつたほうが負担がどうも安いのではないか。従いまして、それがいろいろな現われとして出て参りますのが、先ほど申しましたように、例えば一番冒頭の表で御覧願いましてもわかりますように、新しい会社が五万八千もできておる。法人ならばといつたような傾向が最近数年非常に顕著に出て来ておるわけでありまして、法人負担を考えます場合におきまして、一体どう考えて行くべきか、勿論大会社中小会社負担ということと併せて、個人企業である場合と、中小法人であつた場合と、それから更に企業を結びつけますと、中小企業者個人企業ということになりますと、更に企業所得との関係をどう考えて行くか、問題が相当ややこしい関係なつて参るわけでありまして、こういうふうに考えて参りますると、或いは個人企業者のほうが一番税金が重いといつたようなことも考えられるのでありますが、ただ昨日も実は自治庁の連中と話合つたのでございますが、事業税関係もございますので、どうもこれは我々のほうも責任の一半があるのですが、市町村税民税なんぞに出て参りますところでは、どうも給与所得者所得税がまるまる出ておるのに、中小企業のほうはどうもそれが出ていないのではないか、こういう批判を随分受ける。これにつきましては、国税庁相当努力しておりますが、まだそういつた非難が絶えない。それが市町村民税に参りますと、一応同じようにならべられる関係からしまして、どうも勤労所得者負担が重いのではないか、こういつたような非難も受けておるわけでございまして、総合的に考えて行く上におきましては、やはりこういつた問題も全部一応お考え願いまして、減税するとすれば、どういう姿の減税が可能か、実はその点になりますと、今年はとに角としまして、明年はなかなか財源からしまして無理な点が出て来るのではないかと思つておりますが、それは別としましても、どういう点に重点をおいて考えて行くべきかという点についての御検討をお願いすべきものじやないかというふうに考えております。  一応法人負担状況、それからそれの構成などにつきまして簡単に御説明だけいたしておきます。
  4. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今主税局長の御説明に対して御質疑をお願いしたいと思いますが、この表がなかなか複雑でございますから御質疑のし易いように懇談の形式にしては如何かと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ではさよう取計らいます。速記を中止して懇談に移ります。    午前十一時五分懇談会に移る    ——————————    午前十一時四十八分懇談会を終る
  6. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今懇談会はこれにて終了いたしまして、速記を始めます。  次に、大蔵大臣が御出席になりましたので、大臣には先般国際通貨基金会議に御列席にもなつておりますので、そういう海外の御報告並びに前回の委員会以後の財政経済一般問題につきまして、この機会に御説明願いたいと思います。
  7. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 私は先月の二十四日より二十九日まで開かれた世界通貨基金並びにいわゆる世界銀行、国際復興開発銀行の第九回の年次総会に出席したわけであります。ワシントンで開かれまして、今日約五十六ヵ国が加盟しているような状況でありまして、まあ総会におきましては、国際通貨基金のほうで最も問題となつたのは、去年と同様にいわゆる通貨の交換性回復という問題でありまして、いわゆるコンヴアーテイビリテイという問題が話題の中心となつたわけです。大体の空気を申しますと、西ドイツ、オランダは、もう早くやるべきだという強い主張をしておりましたが、イギリス側は、昨年の総会においては、もうコンヴアーテイビリテイの問題は議論の時期でなくして実行の時期だということを言いましたけれども、本年はアメリカその他の経済状況等も見なければならんというようなことを申しまして、極めて慎重な態度をとつておるようであります。まあ多数の国々はまだそこまで行かない国が多いのでありましてまあ大体コンヴアーテイビリテイの問題はいろいろ議論は出ましたが、まあ私が感じたままを率直に申上げれば、ここ半年やそこらは実行されることでもない、恐らく実行さるるとしても一年くらい先の問題であろう、こういうような感じを持つた次第です。  この国際通貨基金出席しまして、私としては日本がいろいろ日本の貨幣価値の維持或いは為替問題等に対して努力しておることについて申述べて、同時に戦争後日本が今なお差別待遇を受けたり、日本の貿易に或いは制限を受けたりしておることがあるのは誠に遺憾である。従つて日本としては何も各国と特別な待遇をしてくれということを毛頭求めないけれども、併し各国と平等に扱つてもらいたい。つまりイコール・フイーテイングの下にすべてをやらしてもらいたい、これが日本の強い希望だということを特に強調をいたしておきました。これについてはよほど同感する向きも多かつたように思いますが、まあ直接これに対して別に答弁とか何とかいうものは、これは議会と違うからあるわけでございませんので、こちらの主張を申述べただけの次第であります。いわゆる世界銀行のほうにおきましては、これはまあいろいろ日本が昨年四千万ドル借りておる。その後も又引続き現在約六、七千万ドルの借款を申出ております。いろいろな調査団を送つておる、これらに対する配慮を感謝すると共に、これは日本の立場でなく、アジア全体の立場から、一体加盟国のうちでアジアで加盟しておる国が、人口では四割八分占めておるのに、貸出を受けておる金額は僅かに一割一分五厘に過ぎない。而も国際復興開発銀行は、その使命とするところが経済の復興とそれからその国の経済の開発ということ、いわゆるコンストラクシヨンとデヴエロツプメントとなつているが、デヴエロツプメントのほうについて非常にまだ十分といえない。特にアジア諸国のようないわば後進国、未開諸国に対してはもつとこれを積極的にやるべきじやないか、少くとも今申上げた四割八分の人口に対して、貸出額が一割一分五厘にとまることでは、どうもその使命上十分とも申しにくいというまあ意味の話を言いました。イランとか或いはビルマは、今日本の代表が言つた通りで、その後の演説にもしばしば引用しまして、それらの国がもう少し世界銀行からの便益を与えられたいと主張しておりました。又私がいろいろな会合へ臨んだときも、どうもよく言つてもらつたというので、私に向つて乾杯を申込んで来るくらいで、これはまあ久しぶりでアジアのために支援しておつたという感じを強く持たれたわけであります。大体そんなのが総会の空気であります。  そのほかにも総会外で、投資諸国のまあ非公式な会合がありました。これはイギリスとかアメリカとか、その他主な国は皆人つておりますが、日本もまあ投資諸国のうちへ入れられて別な会合へ臨んだわけであります。これはちよつとおかしいのでありますけれども、投資する可能性があるということでしよう。そこでその会合等へも出席しまして、いろいろ意見を述べるというような機会もありました。  それからなお御承知のごとく世界通貨基金のほうも、それから世界銀行のほうもそれぞれ常任理事を今一人出しておるのでありますが、これは日本だけの投票では一人出せないので、日本とビルマとセイロンとタイと、この四ヵ国で一人出せるということになつておるので、そこでまあ多少従来問題もあつたでございましようが、これら各国に皆丁度私がおるホテルの部屋へ集まつてもらいまして、よく懇談を遂げて、それで常任理事はいつも日本が出す、それからどルマ、タイ、セイロンはそれぞれ代る代るその常任理事代理を出す、こういうことに協定をしまして、それぞれ調印をいたしました。だから今後こういう関係は非常に円滑に行くと思います。なお、これらの各国ともまあ一席設けて交歓をしておきましたから、大変なごやかにものことが進んでおるように存じます。  世界銀行の借款のことでありますが、これはこの問題について総裁のブラツク氏に会いました。二十九日の日にブラツク総裁に会つて、いろいろ人を派遣してくれたり調査をしてくれたことについて感謝すると共に、まあ今頼んでおる問題について促進方を実は促した。そのうち農業の問題につきましてはもうすでに調査を終つたから、およそいつ頃できるかという話をしたのですが、もう少し調査の仕上げに手間取る。まだとても十月とか十一月というふうにはむずかしいということを申しておりましたが、大体来年の一月くらいには調査は仕上るんじやないかと私は考えております。そのときに、どうもあなたのところは、昨年あなたに僕が会つたときに、どうも最初の赤ん坊を生むには非常に骨が折れるけれども、二番目からはよくなるから、今度は手続が面倒だけれども我慢してくれと言つたが、今度は二番目の子供だから早く生んでもらいたいものだという、去年の話をそのまま言葉にとつて言つたら、いや、やはり子供というものは向うでは九ヵ月は胎内にはおらん、それではどうも丈夫に行かんから、まあ丈夫な子供を生むためにはもう少し時間を貸してもらいたいというようなことを申しておりました。なお、その節の約束によりまして、電源開発の電力の調査の人は先週の月曜日に日本に着くようになる。更に今日十三日、このインダストリーの工業のほうとマイニングの鉱業、この両方に、向うのほうの技師で調査する人がそれぞれ日本へもう今日着くことに相成つております。そうしますると、一応日本で申込んでいるものの全部の調査団が来ますので、それはどのくらいかかるかというと、日本へ着きまして四週間、又は五週間現地調査にかかるということであります。まあそんな工合で、そのほうは大体順調に進んでいると存じます。なお、念のために申上げておきますが、さつき申した通り、世界銀行におきましても五十六ヵ国も加入しておるのでありまするから、条件はいつでも相当むずかしい、同時に日本だけが重い条件をつけられるわけでもない、又日本だけが軽い条件でもない、これは各国が一様でないとまとまりませんので、各国が皆一応満足しなければなりませんので、相当むずかしい条件が付けられると思いますが、いずれにいたしましても、そんな工合で、進行状況は大体において順調だと存じております。  そのほか丁度行つた機会でもありましたので、向うの要路の人々にもいろいろ面会いたしました。そうして日本の財政経済の立場をよく話をすると一緒に、日本側で大体希望しているような事柄を一応私の話として申述べましたが、これはまだ話の途上の問題でございまするので、これ以上申上げにくいと存じます。まあそんなことが向うの会議なり、又会議後の事柄であります。  ワシントンを終りまして、一日の日にニユーヨークに出まして、これはニユーヨークの財界の主なる人々に会いまして、特に最近における日本経済の事情等については私、英語朗読演説をやりまして、それは刷り物に刷つて配つたりしたので、相当理解を深めたと存じます。それからあとは一路こちらのほうへ帰つて参つたと、こういうような次第でございます。  なおその間の国内の経済状況は、御承知の、誠に私どもも向うでびつくりしたような洞爺丸を中心とするあの十五号台風、これは誠に悲惨なことで、私ども実は原因がよくわからず誠に驚き入つたのでありましたが、そういつた事柄等が起り、又災害が、私ども立つ時分に全然予期もしませんような災害が起つたこと等で、目下この災害対策等にも、例えば早くつなぎ資金を出すというような処置につきまして折角努力いたしておる次第であります。  ほかには大した変りはございませんが、だんだん予算の編成期にもなつて参りまするので、各省から一応まあ概算的なものが出て参りまして、それが先般、この五日ですか、新聞に、丁度私の留守中出たのですが、相当大きな数字に上つて、これからも漸次これらについての折衝もやらなきやならんかというふうに考えられております。まあ尤も予算のことは、これは皆さんのほうがよく御承知のように、大体はまあ十二月に入つてから真劍味をいよいよ加えて来、そしていよいよまとまるのは十二月の末或いは一月の十日くらいにならんと最終のまとまりはむずかしいんじやないかと思いますが、只今のところ各省出揃いの予算についていろいろ検討を加えておるというような次第でございます。  一応私から極く簡単に向うへ参りましたことと、その後のことについて委員長のお言葉に従つて御報告申上げる次第でございます。
  8. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではこの機会に大臣に御質疑がございましたらお願いいたします。
  9. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 大臣あちらにおられます間にレート切下げの問題につきまして何か質問をお受けになるとか或いは御発言になつたことはありませんか。
  10. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) レート切下げについてはアメリカ側の人に特に強い質問を受けたのはございません。特に政府側の人は全然さような意思がないことをよく承知しておりますので質問を受けませんでしたが、一、二の商社の人からそういう噂があるが、そういう考えを持つておるのかどうかということを聞かれましたので、日本はレート切下げの必要もなく、又切下げる意思もないと、こういうことをはつきりと言いまして、なおニユーヨークの商工会議所における演説におきましてもこの点をはつきりと私は申述べておきました。まあ最近の状況等を大目で見まして大体みな了解しておるようでございます。
  11. 野溝勝

    ○野溝勝君 大臣に簡単にお伺いいたします。今豊田君からの質問ですが、私からお答えしておいたという意味ですね、レート切下げに対する……。それはどの程度意味でお答えしておいたのですか。
  12. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 日本は現在のところレート切下げの必要もない。又切げる意思も全然持つていないと、この政策を続けて行くことによつてそういう日本の貨幣価値を増すからということについて話をして、はつきりと否定しておりまするから、それ以上問いませんでしたがね。
  13. 野溝勝

    ○野溝勝君 それから先ほど小笠原さんから御報告があつたのでございますが、第一が海外の投資の点、第二が貿易の点、第三が世界銀行等に対する占で大変努力されたようですが、その貿易拡大の点ですね、この際いま少しく一つ内容的に御説明願いたいと存じます。
  14. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 向うで申述べました意味は、日本はカリフオルニア州一州よりも狭いところに八千七百万の人口がおつて、輸出貿易による以外には日本の生きる途はないんだ、然るにこの日本が生きなきやならん輸出貿易に対して、例えば或る国では関税がなかなか重い。現にアメリカではそういうことを言つておきました。あなたのほうでいろいろ重い関税を課しておるものがあるという実例を挙げて言つておきましたが、こういうものに対する税の引下げ方も非常に必要である。同時にいわゆる特恵関税の趣意の盛り込まれておるガツト加入ということが何より必要であるということについての話も申述べました。それから各所でいろいろ日本のものに対する制限をまだしておるのです。輸入制限等をしておるが、こういうことは結局日本がそれでは生きる途を閉ざされるということになるのだからということを言いまして、実は日本自体は輸出貿易の増加についてどういうことをやるんだと、こういうことにつきましては、日本は今のいわゆる一連の健全な政策をやることによつて国内の物価も漸次下つて行く、それで日本のものが国際競争力を持つて出やすくするということが一つと、又日本がいろいろと日本の企業を近代化し、合理化するということによつて、これは世界銀行からも借款等をそれでしておるのであるが、それによつてこのコストを下げるということに骨折つておる。更に生産性向上という問題は、この間こちらへ向うから人も来ましたし、今後やはりMSAの関係の適用か何かで生産性向上について向うでもう少し努力してもらえんかということについても話をしましたが、そういうことによつて要するにコストの引下げを行いたいということと、それから又一方日本が輸出の増加は勿論であるが、或る程度自給度の向上で輸入を少くすることが非常に必要である。従つて農業等によつて、食糧などがたくさん輸入されるのだから、農業などに対する世界銀行の金が出る、或いは世界銀行の金のほかに、よく言われておる余剰農産物の円で得る金をそれに使わしてもらうというようなこと等で日本の食糧増産に資することになると、これで大変日本が入れなくて済むことになるから、国際収支均衡を早からしめることになり、又日本で農産物食糧が殖えることは、国民思想の上にも非常に大きな定安の役割をするからというような意味のことも申述べておきました。大体問われるといろいろ答えたのでしてまとめて特に貿易対策として申述べた機会はございませんでしたけれども、いろいろ聞かれるのでそんなような話をいたしました。  なお皆聞かれるのには、中共貿易をどう考えるかということは、これは至るところで聞かれます。このことに対してはこういうふうに私は答弁しておきました。日本は隣接国の中共のことであるからできるだけ取引をしたいと考えておる。併しながら中共貿易が非常に大きいものと私は考えていない。それは以前の満州とか北支那が日本の勢力範囲にあつたときと違つて、今日ではそういうふうでなくなつておるし、又中国自体でいろいろの物がたくさんできることになつておつて、例えば日本の繊維品等が非常に行つておつた時分とちよつと情勢が変つて来ておるという状況等についていろいろ話をしまして、日本で一番必要なのは実は国産するというものもあるが、それより遠くアメリカから、或いはカナダから、或いはインドから持つて来なければならないような鉱石であるとか石炭であるとかというもの、例えば鉄鉱石は海南島から持つて来れば非常に安く行く。或いは北支から持つて来れば非常に安く買える石炭等を遠くから運んでおるというようなことがあるので、こういう点について日本は早く資格を得たいということを申しますと、皆これは尤もだというふうに感じておるようでした。
  15. 野溝勝

    ○野溝勝君 私はほかのことはもう少し大蔵大臣にお伺いしなければよく内容的には突き詰めるわけには行きませんが、今の過剰農産物の輸入について、特に日本の農民の立場、日本経済の立場から主張されましたことにつきましては、この点だけは感謝いたします。この点私はゆつくりあとでもう少し聞きたいのですが、この点誠に重大な日本の、何と言いますか、経済的にも財政的にも重大な問題でございます。この点は又あとでお伺いいたします。  そこであと政府にお聞きしておきたいことは、今の大臣の話の中で、コスト引下げについて見解を述べた、その際アメリカの原料高の問題については大臣は話されたかどうか。もう一つはガツト加入ですね、英国の態度に対する米国の見解、この点についてどういう見解があつたか、この二点だけお伺いいたしまして私の大臣に対する質問を終ります。
  16. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 原料引下げについての話は私はいたしませんでした。それとガツトの問題については、イギリスのバトラー蔵相と会いましてガツト加入についてバトラー蔵相に会つたときに……、バトラー氏は日英支払協定について非常に骨折つてくれて非常にこの頃は都合がよくなつた。それで大体日本のスターリング・エーリアに対する貿易額が非常に増加をしておる、あなたの御承知通り、その礼を言うと一緒に、日本は貿易による以外に生きる途はない、それにはガツト加入が是非必要だということを言いまして、ガツト加入についての手続なり努力方を頼んでおきましたが、そのときによく日本の言われておる不正競争、それに対しても話がちよつと出ました。それからなおランカシアの声、これは反対の声ですね、ランカシアの声も余り軽く考えてもらつては困るということもそのときに言いましたが、併しバトラー蔵相自身は日本の立場をよく理解しておつて、ガツト加入はさして上げなければいかん、そうは言いませんでしたが、そういう気持を持つておることは明らかに看取することができたと私は思います。
  17. 野溝勝

    ○野溝勝君 これは今日あなたから御報告の中で、過剰農産物の輸入の抑制という点についてあなたが非常に考えておられる、この点は重大な問題でございますから、直ちに政府におかれましても農林当局と十分話されて、こういうことが解決すれば一つには日本の農民の生産意欲もずつと高まつて来ると思う。この点だけは十分に一つ解決するように御努力願いたいと思います。
  18. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) はい。
  19. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 簡単にお尋ねしますが、大臣お帰りなりまして、国内におきましては、今大臣お話しになりましたように災害その他がありまして、各省の予算の要求は相当厖大なものが出ておるということはもうすでにお聞きになつたはずだと思います。ところが一面において為替価値の維持に努力する旨を強調しておられましたから、それと来年度の予算編成というものは非常に困難だという工合に大臣にお感じになつたと思いますが、そこで今大体各省の要求予算というものは一兆八千億ぐらいが出ておる、こういうことが報ぜられておる。大体において今年の規模ぐらいにやはりしなければならんというお感じをお持ちになつて、その決意でお臨みになるかどうか、この点をお伺いしておきたい。
  20. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) どういたしましても今の日本の状況から申しますると、私どもが繰返しこの前申した通りに、二十九年度と三十年度の両年は少くとも縮小均衡でこの財政の思い切つたいわゆる均衡予算の編成が必要である、こういう考え方を持つておつたのでありまして、この点は少しも変りはございません。従いまして明三十年度の予算も二十九年度予算と同じ方針で、この方針を堅持して、いわゆる一兆予円算に盛込まれておる均衡予算の精神を貫きたい、かように考えております。
  21. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それは今大臣お帰りになつたら新党運動その他で政治情勢が極めて何と申しますか、混沌としておりまして非常に困難だと思いますが、それには非常な御決意が要ると思いますが、又一面におきまして、今年の大学の卒業生なんか殆んど就職口がなく、七〇%くらいは就職できないのではないかと言われております。それのみならず、デフレ政策の影響を受けまして、ほうぼうで人員整理ということがあつて首切りが出ておる。新たに学校を出て来る者も就職はできない。更にその上に失業者が出て来るという工合ですから、これらの対策も相当お考えを願わなければ、今後の大きな社会不安になるだろうと思うのですが、これらは当然考慮されて、余りに強く締める締めるばかりでずつと出てしまうと社会不安が出て来る。そこに、中ソ共同声明も大臣お帰りになつてお読みになつたでしようけれども、あなたがたから言うと平和攻勢、俗に言う平和攻勢というものが出て来ると、それと失業者の群というものはどうしても結び付くだろうと思う。そこに大きな混乱を来たすと思うのですが、これは今度の予算編成に当つて考慮願わなければならんと思いますが、御決意はありますか。
  22. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) その点誠に御尤もでありまして、この点は前回たしかこちらにお伺いした節も申上げたと思いますが、予算も非常に各方面とも切り詰めなければならんけれども、社会保障的なもの、その他ああいう一連のものはこれはどうしても若干増加せざるを得ないだろう。せざるを得ないという言葉は適切を欠くかも存じませんが、増加すべきであると言つたほうが適切かも知れませんが、これは十分考えたいと思つております。
  23. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 もう一点、中ソ共同声明ですが、あれは我々もよくなかなか真意のつかめない点もございますが、大体におきましてつかめましたところは、やはり思想的な問題は別といたしましても、後藤新平氏がとつたような、いわゆる中共、ソヴイエトとも一つ経済面においては提携して行く。まあここへ御出席なつたのは主としてアメリカ圏内と申しますか、アメリカと西欧陣営内の諸国であると思うのです。五十六ヵ国出ておりますけれども、それのみに頼つて、そうして八〇%、九〇%までこの辺と協同して行つて日本がやつて行けるか。今の中ソの共同声明ともこの際は多少は受入れるという態勢に向つて行かなければならない。この点を、お帰りになりました新らしい感覚でどうこれを受取られたか、これを伺つておきたいと思います。これは大きな問題だと思います。
  24. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) これは非常に大きな問題だと思いますが、私どもは飽くまでもいわゆる自由主義陣営の諸国と歩調を共にして進んで行くべきだと思いますが、ただ御承知の経済問題については必ずしも思想問題と矛盾したり齟齬する問題ではございませんから、経済問題について受入れるということについては、これは又別の考えで臨んでいいのじやないかと考えております。
  25. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 最後に、この次の委員会までなかなかお会いできんと思いますので、希望として一つ要望しておきたいのですが、というのは、何と言つても大学卒業者の七〇%も就職できん、それから失業者がどんどん出て来るというのは、我々政治の端くれに携わる者として一番悩みが深い。多少とも雇用量の増大ということにお考えを持たれまして予算編成に当つて頂きたいと思うのですが、社会保障の面よりも、やはり社会保障されているというのではこれはどうしても不安だと思う。やつぱり雇用量の増大というほうに今度の予算は編成方針を御考慮願いたいと思うのです。これを伺いたいと思います。
  26. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) よく御趣意の点を承わつておきまして、私も十分考えてみたいと思つております。
  27. 青柳秀夫

    ○青柳秀夫君 世界銀行の借款について今お話を頂いて感謝に堪えませんが、愛知用水ですね、これはどんなふうになつておるのでございましようか。
  28. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 愛知用水は今の農業の開発の借款のうちでは劈頭第一に来るもののように感じております。従つて、これは大体今の農業開発の金が二千万ドル乃至二千百万ドルというふうに見られているのでありますが、大体そのうち一千万ドルは愛知用水に向けられるものとしてこれが一番最初に決定を見るものじやなかろうか、かように考えております。これが一月早々くらいにまとまるものじやなかろうか、かように考えております。
  29. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣に対しお尋ねしますが、補正予算のことにからみ合いまして、まあ冷害とか十五号がひどかつたわけですが、当然まあ組まれるというようなことを聞いておるわけですが、これには山本政務次官もおつしやつておるのですが、そこで臨時国会とのからみ合いになつて来ると思いますが、これはまあ野党のものが五十三条の手続を経てやつておる、それをまあ受けて立つということになると思うのですが、時期とかいろんなことになるのですが、私はそういう意味じやなくて、一つこういう冷害があつたという、これも思わない予想以上の大きなものだ、十五号の災害よりも大きかつた。ですから当然開かれるものと、こう考えてよろしうございましようか。
  30. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) この国会関係ちよつと私のほうから御返事は何ですが、今の臨時国会が開かれる場合にはどうも現在では少し足りないのではないか。少くとも費目の移し替え等について必要なんじやないかと思いますので、補正予算を私は提出すべきであろうと考えております。従つてまだ数字が固まりませんが、固まれば補正予算の措置をとりたいと思つております。
  31. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは通常国会と臨時国会とのからみ合いになつて来るわけですが、今そういうその数字とかいろんなことの検討があるから、それは通常国会まで持越されるものか。あなたのお考えでいうなら、相当前には数字も、一月以降に数字が固まらなくても、もう少し前にあなたのほうとしては、臨時国会がいつ聞かれてもそれに関しては補正予算が出せるような準備が整うものかどうか、その点についてどうですか。
  32. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) それは災害その他のは今調査をしておりますから、それはじきにわかると思います。その数字に基けば、その数字も出て参りますれば、いわゆる通常国会を待たずにそれだけの数字を取りまとめてもこれを出したいと思つております。
  33. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 もう一点、先ほど菊川君が貿易の問題について触れて、思想と貿易とは別だというようなお言葉があつたのですが、確かに、一兆億予算といつて、財政規模を一兆億ということを組んだだけでは、私はこれに貿易が伴わなければ真の目的は達せられないと思うのです。そこで例えばまあ世界銀行の問題を主としてこれもお聞きになつたわけでございますが、その際ココム協定とかバトル法関係のことについて何か触れられましたか、全然そういうものについては触れておられないのですか。
  34. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 特にココムとかバトル法というようなことは言いませんけれども、これは従来そういうことの主張もしておりまするし、今私が申上げておるように、日本が差別的な待遇を受けることは困るという意味のことには、その意味をもここで言つておるのでありまして、それから今中共貿易に対しても聞かれると、それなどはそう最近では大体余り大きな差別的待遇を受けておりません。中共に対してはあなたはよく御承知通りであります。非常に品目が緩和されました。ただ残つておるものについてももう少し緩和されてもどうかと思われるものもあつてこれは今後とも引続き話をしたらどうかと考えております。
  35. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは他に御質問がございませんければ、本日は衆議院葬等もございますのでこの程度にいたしまするが、次の委員会でございまするが、大体各理事等のお話を伺いますと、来月十日、十一日がよかろうというお話を聞いておりますが、さように取計いたいと存じますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは次回は来月の十日、十一日両日行います。議題等につきましては御質疑の点がございましたならばお申出を願います。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会