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参考人(
竹俣高敏君) 先ず
最初に、どういう方法で
資産、
信用力を調べるかということでございますが、言い換えますれば、結局、
銀行の見方になるわけでございます。それで、私どもは船だけには限らないのでございますが、すべて企業を見ます場合に、大体集約いたしまして五つのポイントを先ずつかみます。その五つのポイントとは何かと申上げますれば、これは常識でおわかりになることと思いますが、企業は
経営でございますから、
経営者を先ず見なきやならん。これが先ず第一点でございます。それから第二点は、その企業が、我々の言葉では事業の素質と申しておるのでございますが、結局、企業の育成価値如何ということでございますね。それが第二点。それから第三点は現況がどうであるかということです。第四点は、これは
銀行から特に見ますので、財政
状態如何ということ、言い換えますれば、バランス・シートを見るということ。それから第五点、最後の点、これは或る
意味で金融の
結論になる問題でございますが、償還能力如何ということ。別の言葉で言えば、これは収支の
関係を先ず見まして結局収益から返して行くというのがオーソドツクスでございますので、結局最後に、収支
状態と言
つても何でございますが、結局償還能力と見たらよろしゆうございますので、この五つの点から見ます。なぜこういう五つに分けるかと申しますと、
経営者如何ということは、今後の
経営がその
経営者に任してどの程度に期待していいかという、いわば一種の期待感と申しますか、そういうものでございます。それから第二の、事業の素質、言い換えれば育成価値如何ということも、結局これは将来にかかる問題でございます。言い換えれば、見通しの問題に繋がりますので、そういうようなことだけでは見方によ
つて見通しとはかなり開きができて来る、そういうようなことではいかんので、現況は如何ということで、第三番目に現況如何ということを入れたのであります。同様に、財政
状態如何ということも、これは現実の財政
状態であ
つて、結局過去の何期間かの結果並びに財政
状態の現われたバランス・シート、これはもう予想とか何とかいうことを許さない非常に厳格なものであるということで、まずそういうことです。それから最後の償還能力ということは、やはり収支予想に基きますから将来の見通しということになりますが、
経営者の如何を
考え、企業の育成価値如何を
考える。現在損しておるというのは、財政
状態というものはいわば
人間の
一つの体力みたいなものです。仮に一時間か二時間調子の悪いことがあ
つても、言い換えれば飯を食わないことがあ
つても、体力の強いやつはいいわけです。或いは素質がいい、
人間で言えば頭が非常にいい、非常にいい事業であ
つても、財政
状態が悪いと、すぐ脆く倒れてしま
つて、その素質を活かすべくもないということもございますので、今申上げましたような五つの項目というものは
一つも抜き差しならんものだというふうに、一応
考えます。これを、今度は船の
海運業の問題でございますので、それに当てはめて
考えますれば、
経営者のほうは特にほかの事業と変ることはない。言い換えれば従来の
経営者の経歴であるとか手腕、それからその社長、会長以下何人か重役さんがおられまするが、その中の融和の
状態、それから業界の風評、それからもう
一つは、そういう
会社は多くの
銀行取引を持
つておられまするから、
銀行の風評というものがございます。そうい
つたようなものを総合いたしますると、先ず大体
経営者がどうであろうかという総合
判断が成立つ、こうお
考え頂けばいいと思います。
それから次に事業の素質及び育成価値ということを特に
海運業界において言うと、かなりむずかしいのでございますが、御
承知のように
海運事業と申しましても、定期船業者もございます、いわゆるライナーがございます。それからトラムパーがございます。それからみずから運航されないところのオーナーがございます。それから、こういうのとちよつと感じが違うのでございますが、今申上げましたのは
貨物船でございますが、
油槽船をや
つておられるタンカー
会社がございます。タンカー
会社をなぜのけるかと申しますと、結局
海運事業というのは、或る所に荷物を揚げ卸しして、而も非常に能率的にやる、これが国際的に世界に信用を得るゆえんです。ところがタンカーのほうになりますと、油を出し入れするということはそれほどの技術は必要でないというので、一応これは分けたほうが実際はいいと思いますので、我々は分けておりますが、大体において、ライナー
会社から申上げますと、特にこのライナー、定期船をや
つておられる
会社は、国際
信用力、別の言葉で言えば「のれん」とい
つたようなことが極めて大切でございますので、これを
考える。……少し飛ばしますが、トラムパーについては結局やはり手腕、国際
信用力、それから今度造る船の採算とい
つたようなものをこれは皆
考えます。それからオーナーについては少し違いまして、その船をどこへ貸すか、これは極端に言えば、どこへ貸してもいいと思いますが、大体どこへ貸すかという
系統がきま
つておりまして、或いは今度
造船のときに求めて来たこの船はどこへ貸すかということがきま
つておりまするから、その貸し先の良さ悪さということを勘案いたしまして、結局その
会社の採算の良さ悪さとい
つたようなものを
考える。まあ以下詳しく申上げますれば切りがございませんが、大体そうい
つたようなことで、その企業の育成価値と
会社の素質とい
つたようなものを見て行く。
それから次に第三番目の現況如何ということは、これは結局保有船舶量或いはその持
つておる船、船舶構成と言いますか、何トンくらいの、或いは何ノツトのどういう船級のものを持
つておるか、その大きさ少なさから見て行く、まあそういうことでございますね。
それからトン当りの収益、そうい
つたようなものを見て、財政
状態は、これは特別に申上げるまでもございませんで、バランス・シートの分析であるという、まあ一言で申上げておきます。
それから償還能力、これはオーソドツクスから申上げますれば収益能力の分析でございますが、御
承知のように、なかなか将来の船
会社は収益から返すということもできません。それによ
つてまあ
利子補給というような問題に発展したのだろうと思いますが、にもかかわらず、国際的に太刀打ちできるような競争が成り立
つためには、特に
開発銀行なんかを動員して金を出さなければならん。その場合に、それではその償還能力を何で見るかというようなことが出て参りますれば、先ず最も明確に出て参りまするのは
担保余力の有無でございます。それから次に、これは特に
市中銀行なんかで気にするのでございますが、金を貸して、まあどうせ状況が悪いのですからそう簡単にはとれないが、利息は払
つてもらわないと困る。従
つて我々は利払能力ということで順序を付けるというようなことで、利払能力を
考えます。
以上申上げました五つの項目を成るべく
数字的に言い表わそうということで、
数字で取上げまして、その五つの項目それぞれにつきましてまあ大体レベルに達しておるものをBに、それから特にレベルより上に擢んでておるものをA、それ以下のものをC、決定的に駄目なものをDというふうに大体四段階くらいに
考えます。それでその五つの項目についてA、B、C、D、それぞれ付くと思いますが、
経営者はいいが素質はBであるとか、素質はいいが
経営者が悪い、という場合には、これは無
意味である、なぜならば、結局例えて申上げますれば、
経営者が悪ければ信用が置けんではないかということになりますので、その四つを睨みまして、結局総合的に、これは
融資の
対象として
順位として最もこれはよろしいとか、これはどのくらいだというような判定をして行くというようなことできめております。